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特表2023-513389コバルトフリーの層状正極材料及び調製方法、リチウムイオン電池
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  • 特表-コバルトフリーの層状正極材料及び調製方法、リチウムイオン電池 図1
  • 特表-コバルトフリーの層状正極材料及び調製方法、リチウムイオン電池 図2
  • 特表-コバルトフリーの層状正極材料及び調製方法、リチウムイオン電池 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-30
(54)【発明の名称】コバルトフリーの層状正極材料及び調製方法、リチウムイオン電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/525 20100101AFI20230323BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20230323BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20230323BHJP
   C01G 53/00 20060101ALI20230323BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20230323BHJP
【FI】
H01M4/525
H01M4/505
H01M4/36 C
C01G53/00 A
H01M4/62 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022569285
(86)(22)【出願日】2020-02-27
(85)【翻訳文提出日】2022-09-05
(86)【国際出願番号】 CN2020076991
(87)【国際公開番号】W WO2021142891
(87)【国際公開日】2021-07-22
(31)【優先権主張番号】202010054733.9
(32)【優先日】2020-01-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522288153
【氏名又は名称】蜂巣能源科技股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】SVOLT ENERGY TECHNOLOGY COMPANY LIMITED
【住所又は居所原語表記】No.8899,Xincheng Avenue,Jintan District,Changzhou,Jiangsu 213200,China
(74)【代理人】
【識別番号】100112656
【弁理士】
【氏名又は名称】宮田 英毅
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】喬齊齊
(72)【発明者】
【氏名】江衛軍
(72)【発明者】
【氏名】許▲シン▼培
(72)【発明者】
【氏名】施澤涛
(72)【発明者】
【氏名】馬加力
【テーマコード(参考)】
4G048
5H050
【Fターム(参考)】
4G048AA04
4G048AB01
4G048AB04
4G048AC06
4G048AD04
4G048AD06
4G048AE05
5H050AA02
5H050BA17
5H050CA08
5H050GA02
5H050GA10
5H050HA01
5H050HA02
5H050HA05
5H050HA07
5H050HA14
5H050HA20
(57)【要約】
【要約】
コバルトフリーの層状正極材料及び調製方法、リチウムイオン電池を提供する。該方法は、層状ニッケルマンガン酸リチウムマトリックス材料を調製するステップと、前記層状ニッケルマンガン酸リチウムマトリックス材料とコーティング剤を混合して、第1の混合材料を取得するステップと、前記第1の混合材料に第1の焼結処理を行い、前記層状ニッケルマンガン酸リチウムマトリックス材料の表面にコーティング層を形成し、前記コバルトフリーの層状正極材料を取得するステップと、を含み、前記コーティング剤は第1のコーティング剤と第2のコーティング剤を含み、前記第1のコーティング剤はセラミック酸化物を含み、前記第2のコーティング剤はリン酸塩とケイ酸塩のうち、少なくとも1つを含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
層状ニッケルマンガン酸リチウムマトリックス材料を調製するステップと、
前記層状ニッケルマンガン酸リチウムマトリックス材料とコーティング剤を混合して、第1の混合材料を取得するステップと、
前記第1の混合材料に第1の焼結処理を行い、前記層状ニッケルマンガン酸リチウムマトリックス材料の表面にコーティング層を形成し、コバルトフリーの層状正極材料を取得するステップと、を含み、
前記コーティング剤は第1のコーティング剤と第2のコーティング剤を含み、前記第1のコーティング剤はセラミック酸化物を含み、前記第2のコーティング剤はリン酸塩とケイ酸塩のうち、少なくとも1つを含む、ことを特徴とするコバルトフリーの層状正極材料の調製方法。
【請求項2】
前記セラミック酸化物はジルコニア、酸化チタン、アルミナ及び酸化ホウ素の少なくとも1つを含む、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第2のコーティング剤はリン酸リチウムとケイ酸リチウムの少なくとも1つを含む、ことを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記層状ニッケルマンガン酸リチウムマトリックス材料の質量に対する前記セラミック酸化物の質量の百分率は0.15-0.35%であり、
前記層状ニッケルマンガン酸リチウムマトリックス材料の質量に対する前記第2のコーティング剤の質量の百分率は0.4-1.0%である、ことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記第1のコーティング剤と前記第2のコーティング剤とのモル比は0.2-0.6である、ことを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記第1のコーティング剤と前記第2のコーティング剤の粒径はそれぞれ独立して50-300nmである、ことを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記第1のコーティング剤と前記第2のコーティング剤の粒径はそれぞれ独立して50-100nmである、ことを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記層状ニッケルマンガン酸リチウムマトリックス材料の調製は、
リチウム源粉末と水酸化ニッケルマンガンを混合し、第2の混合材料を取得するステップと、
前記第2の混合材料に第2の焼結処理を行い、前記層状ニッケルマンガン酸リチウムマトリックス材料を取得するステップと、を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記リチウム源粉末と前記水酸化ニッケルマンガンを混合する回転速度は800-900rpmであり、混合の時間は10-20minである、ことを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記第2の焼結処理は酸素の体積濃度が90%を超える雰囲気下で行われ、前記第2の焼結処理の温度は800-970℃であり、前記第2の焼結処理の時間は8-12hであり、前記第2の焼結処理の昇温速度は1-5℃/minである、ことを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記リチウム源粉末は水酸化リチウムと炭酸リチウムの少なくとも1つを含む、ことを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記水酸化ニッケルマンガンの分子式はNiMn(OH)であり、0.55≦x≦0.95、0.05≦y≦0.45とする、ことを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項13】
前記層状ニッケルマンガン酸リチウムマトリックス材料と前記コーティング剤を混合する回転速度は800-900rpmであり、混合の時間は10-20minである、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記第1の焼結処理は酸素の体積濃度が20-100%である雰囲気下で行われ、前記第1の焼結処理の温度は300-700℃であり、前記第1の焼結処理の時間は4-10hであり、前記第1の焼結処理の昇温速度は3-5℃/minである、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項15】
得られた前記コバルトフリーの層状正極材料は単結晶正極材料または多結晶正極材料である、ことを特徴とする請求項1~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
得られた前記コバルトフリーの層状正極材料の比表面積は0.1-0.7m/gである、ことを特徴とする請求項1~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
得られた前記コバルトフリーの層状正極材料の中央値粒径は3-15μmである、ことを特徴とする請求項1~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
得られた前記コバルトフリーの層状正極材料のpHは12以下である、ことを特徴とする請求項1~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
層状ニッケルマンガン酸リチウムマトリックス材料と前記層状ニッケルマンガン酸リチウムマトリックス材料の表面に位置するコーティング層を含み、
前記コーティング層は第1のコーティング剤と第2のコーティング剤を含み、前記第1のコーティング剤はセラミック酸化物を含み、前記第2のコーティング剤はリン酸塩とケイ酸塩のうち、少なくとも1つを含むことを特徴とするコバルトフリーの層状正極材料。
【請求項20】
前記セラミック酸化物はジルコニア、酸化チタン、アルミナ及び酸化ホウ素の少なくとも1つを含む、ことを特徴とする請求項19に記載のコバルトフリーの層状正極材料。
【請求項21】
前記第2のコーティング剤はリン酸リチウムとケイ酸リチウムの少なくとも1つを含む、ことを特徴とする請求項19または20に記載のコバルトフリーの層状正極材料。
【請求項22】
前記層状ニッケルマンガン酸リチウムマトリックス材料の質量に対する前記セラミック酸化物の質量の百分率は0.15-0.35%であり、前記層状ニッケルマンガン酸リチウムマトリックス材料の質量に対する前記第2のコーティング剤の質量の百分率は0.4-1.0%である、ことを特徴とする請求項19~21のいずれか1項に記載のコバルトフリーの層状正極材料。
【請求項23】
前記第1のコーティング剤と前記第2のコーティング剤とのモル比は0.2-0.6である、ことを特徴とする請求項20~22のいずれか1項に記載のコバルトフリーの層状正極材料。
【請求項24】
前記コバルトフリーの層状正極材料は単結晶正極材料または多結晶正極材料である、ことを特徴とする請求項19~23のいずれか1項に記載のコバルトフリーの層状正極材料。
【請求項25】
前記コバルトフリーの層状正極材料の比表面積は0.1-0.7m/gである、ことを特徴とする請求項19~24のいずれか1項に記載のコバルトフリーの層状正極材料。
【請求項26】
前記コバルトフリーの層状正極材料の中央値粒径は3-15μmである、ことを特徴とする請求項19~25のいずれか1項に記載のコバルトフリーの層状正極材料。
【請求項27】
前記コバルトフリーの層状正極材料のpHは12以下である、ことを特徴とする請求項19~26のいずれか1項に記載のコバルトフリーの層状正極材料。
【請求項28】
請求項19~27のいずれか1項に記載のコバルトフリーの層状正極材料を含む正極シートを含む、ことを特徴とするリチウムイオン電池。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願はリチウムイオン電池分野に関し、具体的に、コバルトフリーの層状正極材料及び調製方法、リチウムイオン電池に関する。
【背景技術】
【0002】
コバルトフリーの層状正極材料にはコバルト元素が含まれず、コストが低く、構造が安定する等という利点があり、リチウムイオン電池のコストを削減し、リチウムイオン電池の耐用年数を延長し、リチウムイオン電池の安全性を向上させることができる。
【0003】
しかしながら、従来のコバルトフリーの層状正極材料及び調製方法、リチウムイオン電池は改善する余裕がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願は、発明者らの以下の発見に基づいて完成されたものである。
【0005】
従来、コバルトフリーの層状正極材料には、レート能力が悪い問題があるため、リチウムイオン電池の使用性能に影響を及ぼす。発明者らは、これは、主にコバルトフリーの層状正極材料にコバルト元素が含まれないためであることを見出した。具体的には、コバルトフリーの層状正極材料にコバルト元素が含まれないため、コバルトフリーの層状正極材料の導電性が低く、さらに、そのレート能力に影響を及ぼす。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願は、関連技術における技術問題の一つを少なくともある程度解決することを目的とする。
【0007】
これを鑑みて、本願の一態様では、本願は、層状ニッケルマンガン酸リチウムマトリックス材料を調製するステップと、前記層状ニッケルマンガン酸リチウムマトリックス材料とコーティング剤を混合して、第1の混合材料を取得するステップと、前記第1の混合材料に第1の焼結処理を行い、前記層状ニッケルマンガン酸リチウムマトリックス材料の表面にコーティング層を形成し、前記コバルトフリーの層状正極材料を取得するステップとを含み、前記コーティング剤が第1のコーティング剤と第2のコーティング剤を含み、前記第1のコーティング剤がセラミック酸化物を含み、前記第2のコーティング剤がリン酸塩とケイ酸塩の、少なくとも1つを含む、コバルトフリーの層状正極材料の調製方法を提供する。これにより、該方法を使用して、コバルトフリーの層状正極材料の導電性を効果的に改善し、さらに、そのレート能力を高めることができ、コバルトフリーの層状正極材料はコストが低く、構造が安定し、レート能力に優れるという利点を同時に備え、該コバルトフリーの層状正極材料を使用したリチウムイオン電池は良好な使用性能及び低いコストを有する。
【0008】
本願の実施例によれば、前記セラミック酸化物はジルコニア、酸化チタン、アルミナ及び酸化ホウ素の少なくとも1つを含む。これにより、上記セラミック酸化物を使用して、コバルトフリーの層状正極材料の電子導電性を高め、コバルトフリーの層状正極材料のレート能力を向上させることができる。
【0009】
本願の実施例によれば、前記第2のコーティング剤はリン酸リチウムとケイ酸リチウムの少なくとも1つを含む。これにより、上記コーティング剤を使用して、コバルトフリーの層状正極材料のイオン導電性を高め、コバルトフリーの層状正極材料のレート能力を向上させることができる。
【0010】
本願の実施例によれば、前記層状ニッケルマンガン酸リチウムマトリックス材料の質量に対する前記セラミック酸化物の質量の百分率は0.15-0.35%であり、前記層状ニッケルマンガン酸リチウムマトリックス材料の質量に対する前記第2のコーティング剤の質量の百分率は0.4-1.0%である。これにより、コバルトフリーの層状正極材料のレート能力を大幅に向上させると同時に、コバルトフリーの層状正極材料が良好な循環性能を取得することができる。
【0011】
本願の実施例によれば、前記第1のコーティング剤と前記第2のコーティング剤とのモル比は0.2-0.6である。これにより、コバルトフリーの層状正極材料のレート能力を大幅に向上させることができ、且つ不純物相の発生を避け、コバルトフリーの層状正極材料が高い容量を有することを確保することができる。
【0012】
本願の実施例によれば、前記第1のコーティング剤と前記第2のコーティング剤の粒径はそれぞれ独立して50-300nmである。これにより、後続で形成されたコーティング層は高い均一性と緻密性が得られ、コバルトフリーの層状正極材料の循環性能をさらに向上させることができる。
【0013】
本願の実施例によれば、前記第1のコーティング剤と前記第2のコーティング剤の粒径はそれぞれ独立して50-100nmである。これにより、コーティング層の均一性と緻密性をさらに高め、コバルトフリーの層状正極材料の循環性能をさらに向上させることができる。
【0014】
本願の実施例によれば、前記層状ニッケルマンガン酸リチウムマトリックス材料の調製は、リチウム源粉末と水酸化ニッケルマンガンを混合し、第2の混合材料を取得するステップと、前記第2の混合材料に第2の焼結処理を行い、前記層状ニッケルマンガン酸リチウムマトリックス材料を取得するステップとを含む。これにより、コバルトフリーの層状正極材料にマトリックス材料を提供し、コバルトフリーの層状正極材料のコストを削減することができる。
【0015】
本願の実施例によれば、前記リチウム源粉末と前記水酸化ニッケルマンガンを混合する回転速度は800-900rpmであり、混合の時間は10-20minである。これにより、リチウム源粉末と水酸化ニッケルマンガンを均一に混合させることができ、後続の第2の焼結処理を経て、層状ニッケルマンガン酸リチウムマトリックス材料を取得することに便利である。
【0016】
本願の実施例によれば、前記第2の焼結処理は酸素の体積濃度が90%を超える雰囲気下で行われ、前記第2の焼結処理の温度は800-970℃であり、前記第2の焼結処理の時間は8-12hであり、前記第2の焼結処理の昇温速度は1-5℃/minである。これにより、層状ニッケルマンガン酸リチウムマトリックス材料を取得することができる。
【0017】
本願の実施例によれば、前記層状ニッケルマンガン酸リチウムマトリックス材料と前記コーティング剤を混合する回転速度は800-900rpmであり、混合の時間は10-20minである。これにより、層状ニッケルマンガン酸リチウムマトリックス材料とコーティング剤を均一に混合させ、コーティング剤を層状ニッケルマンガン酸リチウムマトリックス材料の表面に均一に付着させることができ、後続の第1の焼結処理を経て、層状ニッケルマンガン酸リチウムマトリックス材料の表面にコーティング層を形成し、コバルトフリーの層状正極材料を取得することに便利である。
【0018】
本願の実施例によれば、前記第1の焼結処理は酸素の体積濃度が20-100%である雰囲気下で行われ、前記第1の焼結処理の温度は300-700℃であり、前記第1の焼結処理の時間は4-10hであり、前記第1の焼結処理の昇温速度0019は3-5℃/minである。これにより、層状ニッケルマンガン酸リチウムマトリックス材料の表面に付着されるコーティング剤がコーティング層を形成し、コバルトフリーの層状正極材料を取得することができる。
【0019】
本願の他の態様では、本願は、コバルトフリーの層状正極材料を提供する。本願の実施例によれば、該コバルトフリーの層状正極材料は、層状ニッケルマンガン酸リチウムマトリックス材料と前記層状ニッケルマンガン酸リチウムマトリックス材料の表面に位置するコーティング層を含み、前記コーティング層は第1のコーティング剤と第2のコーティング剤を含み、前記第1のコーティング剤はセラミック酸化物を含み、前記第2のコーティング剤はリン酸塩とケイ酸塩のうち、少なくとも1つを含む。これにより、該コバルトフリーの層状正極材料はコストが低く、構造が安定し、レート能力に優れるという利点を同時に備え、該コバルトフリーの層状正極材料を使用したリチウムイオン電池は良好な使用性能及び低いコストを有する。
【0020】
本願の実施例によれば、前記セラミック酸化物はジルコニア、酸化チタン、アルミナ及び酸化ホウ素の少なくとも1つを含む。これにより、上記セラミック酸化物はコバルトフリーの層状正極材料の電子導電性を高め、コバルトフリーの層状正極材料のレート能力を向上させることができる。
【0021】
本願の実施例によれば、前記第2のコーティング剤はリン酸リチウムとケイ酸リチウムの少なくとも1つを含む。これにより、上記コーティング剤はコバルトフリーの層状正極材料のイオン導電性を高め、コバルトフリーの層状正極材料のレート能力を向上させることができる。
【0022】
本願の実施例によれば、前記層状ニッケルマンガン酸リチウムマトリックス材料の質量に対する前記セラミック酸化物の質量の百分率は0.15-0.35%であり、前記層状ニッケルマンガン酸リチウムマトリックス材料の質量に対する前記第2のコーティング剤の質量の百分率は0.4-1.0%である。これにより、コバルトフリーの層状正極材料のレート能力を大幅に向上させると同時に、コバルトフリーの層状正極材料が良好な循環性能を取得することができる。
【0023】
本願の実施例によれば、前記第1のコーティング剤と前記第2のコーティング剤とのモル比は0.2-0.6である。これにより、コバルトフリーの層状正極材料のレート能力を大幅に向上させることができ、且つ不純物相の発生を避け、コバルトフリーの層状正極材料が高い容量を有することを確保することができる。
【0024】
本願の他の態様では、本願は、リチウムイオン電池を提供する。本願の実施例によれば、該リチウムイオン電池は、上記のようなコバルトフリーの層状正極材料を含む正極シートを含む。これにより、該リチウムイオン電池は上記のようなコバルトフリーの層状正極材料のすべての特徴及び利点を有し、ここで詳細に説明しない。要するに、該リチウムイオン電池は低いコスト、優れたレート能力、長い耐用年数及び高い安全性を備える。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本願の一実施例によるコバルトフリーの層状正極材料の調製方法を示すフローチャートである。
図2】実施例1におけるコバルトフリーの層状正極材料の走査型電子顕微鏡の写真である。
図3】比較例1におけるコバルトフリーの層状正極材料の走査型電子顕微鏡の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本願の実施例を詳細に説明し、前記実施例の例は図に示される。以下、図面を参照して説明した実施例は例示的なものであり、本願を解釈することにのみ使用され、本願を限定するものとして理解されるべきではない。
【0027】
本願の一態様では、本願は、コバルトフリーの層状正極材料の調製方法を提供する。理解の利便のため、以下、まず本願の実施例による方法を簡単に説明する。
【0028】
本願の実施例によれば、層状ニッケルマンガン酸リチウムマトリックス材料とコーティング剤を混合することにより、コーティング剤が層状ニッケルマンガン酸リチウムマトリックス材料の表面に付着されることができ、第1の焼結処理を経て、層状ニッケルマンガン酸リチウムマトリックス材料の表面にコーティング層を形成することができる。使用されるコーティング剤は第1のコーティング剤と第2のコーティング剤の混合物であり、第1のコーティング剤はセラミック酸化物を含み、第2のコーティング剤はリン酸塩とケイ酸塩のうち、少なくとも1つを含み、ここで、セラミック酸化物はコバルトフリーの層状正極材料の電子導電性を高め、リン酸塩、ケイ酸塩はコバルトフリーの層状正極材料のイオン導電性を高める。即ち形成されたコーティング層はコバルトフリーの層状正極材料の導電性を高め、さらに、コバルトフリーの層状正極材料のレート能力を高めることができるため、コバルトフリーの層状正極材料はコストが低く、構造が安定し、及びレート能力に優れるという利点を同時に備える。
【0029】
本願の実施例によれば、図1を参照し、該方法は以下のステップを含む。
【0030】
S100では、層状ニッケルマンガン酸リチウムマトリックス材料を調製する。
【0031】
本願の実施例によれば、このステップでは、層状ニッケルマンガン酸リチウムマトリックス材料を調製する。本願の実施例によれば、層状ニッケルマンガン酸リチウムマトリックス材料の調製は、まず、リチウム源粉末と水酸化ニッケルマンガンを混合し、第2の混合材料を取得し、次に、第2の混合材料に第2の焼結処理を行い、層状ニッケルマンガン酸リチウムマトリックス材料を取得するステップを含むことができる。これにより、コバルトフリーの層状正極材料にマトリックス材料を提供し、コバルトフリーの層状正極材料のコストを削減することができる。
【0032】
本願の実施例によれば、リチウム源粉末と水酸化ニッケルマンガンの混合は高速混合装置で行うことができ、装置内の材料の充填効率は50-70%であってもよい。本願の実施例によれば、リチウム源粉末と水酸化ニッケルマンガンを混合する回転速度は800-900rpm、例えば800rpm、850rpm、900rpmであってもよく、混合の時間は10-20min、例えば10min、12min、15min、18min、20minであってもよい。これにより、リチウム源粉末と水酸化ニッケルマンガンを均一に混合させることができ、第2の焼結処理を経て、層状ニッケルマンガン酸リチウムマトリックス材料を取得することに便利である。
【0033】
本願の実施例によれば、第2の焼結処理は酸素の体積濃度が90%を超える雰囲気下で行われ、第2の焼結処理の温度は800-970℃、例えば800℃、830℃、850℃、880℃、900℃、930℃、950℃、970℃であってもよく、第2の焼結処理の時間は8-12h、例えば8h、9h、10h、11h、12hであってもよい。第2の焼結処理の昇温速度は1-5℃/min、例えば1℃/min、2℃/min、3℃/min、4℃/min、5℃/minであってもよい。これにより、層状ニッケルマンガン酸リチウムマトリックス材料を取得することができる。
【0034】
本願の実施例によれば、第2の混合材料が第2の焼結処理を経た後、順次に冷却、粉砕及びふるい分けして、層状ニッケルマンガン酸リチウムマトリックス材料を取得し、ここで、冷却は空気中での自然冷却であり、粉砕は機械的粉砕、ローラー破砕または気流粉砕であり、ふるい分けのメッシュ数は300-400メッシュであってもよい。
【0035】
リチウム源粉末の具体的な材料は特に制限されず、当業者はコバルトフリーの層状正極材料に通常使用されるリチウム源粉末に応じて設計することができる。例えば、本願の実施例によれば、リチウム源粉末は水酸化リチウムと炭酸リチウムの少なくとも1つを含むことができる。
【0036】
本願の実施例によれば、水酸化ニッケルマンガンの分子式はNiMn(OH)であってもよく、ここで、0.55≦x≦0.95、0.05≦y≦0.45である。これにより、層状ニッケルマンガン酸リチウムマトリックス材料に前駆体を提供し、層状ニッケルマンガン酸リチウムマトリックス材料は高いニッケル含有量を有し、最終的なコバルトフリーの層状正極材料の容量を向上させることができる。
【0037】
S200では、層状ニッケルマンガン酸リチウムマトリックス材料とコーティング剤を混合し、第1の混合材料を取得する。
【0038】
本願の実施例によれば、このステップでは、層状ニッケルマンガン酸リチウムマトリックス材料とコーティング剤を混合し、第1の混合材料を取得する。本願の実施例によれば、コーティング剤は第1のコーティング剤と第2のコーティング剤を含み、ここで、第1のコーティング剤はセラミック酸化物を含み、第2のコーティング剤はリン酸塩とケイ酸塩のうち、少なくとも1つを含む。これにより、セラミック酸化物は最終的なコバルトフリーの層状正極材料の電子導電性を高めることができ、リン酸塩とケイ酸塩は最終的なコバルトフリーの層状正極材料のイオン導電性を高めることができるため、コバルトフリーの層状正極材料のレート能力を向上させることができる。
【0039】
本願の実施例によれば、層状ニッケルマンガン酸リチウムマトリックス材料とコーティング剤の混合は高速混合装置で行われることができ、装置内の材料の充填効率は30-70%であってもよい。本願の実施例によれば、層状ニッケルマンガン酸リチウムマトリックス材料とコーティング剤を混合する回転速度は800-900rpm、例えば800rpm、850rpm、900rpmであってもよく、混合の時間は10-20min、例えば10min、12min、15min、18min、20minであってもよい。これにより、層状ニッケルマンガン酸リチウムマトリックス材料とコーティング剤を均一に混合させ、コーティング剤を層状ニッケルマンガン酸リチウムマトリックス材料の表面に均一に付着させることができ、後続の第1の焼結処理を経て、層状ニッケルマンガン酸リチウムマトリックス材料の表面にコーティング層を形成し、コバルトフリーの層状正極材料を取得することに便利である。
【0040】
本願の実施例によれば、セラミック酸化物はジルコニア、酸化チタン、アルミナ及び酸化ホウ素の少なくとも1つを含むことができる。これにより、上記セラミック酸化物を使用して、コバルトフリーの層状正極材料の電子導電性を高め、コバルトフリーの層状正極材料のレート能力を向上させることができる。
【0041】
本願の実施例によれば、第2のコーティング剤はリン酸リチウムとケイ酸リチウム(LiSiO)の少なくとも1つを含むことができる。これにより、上記コーティング剤を使用して、コバルトフリーの層状正極材料のイオン導電性を高め、コバルトフリーの層状正極材料のレート能力を向上させることができる。
【0042】
本願の実施例によれば、層状ニッケルマンガン酸リチウムマトリックス材料の質量に対するセラミック酸化物の質量の百分率は0.15-0.35%、例えば0.15%、0.16%、0.18%、0.20%、0.22%、0.24%、0.26%、0.28%、0.30%、0.32%、0.35%であってもよく、且つ層状ニッケルマンガン酸リチウムマトリックス材料の質量に対する第2のコーティング剤の質量の百分率は0.4-1.0%、例えば0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、1.0%であってもよい。発明者らは、セラミック酸化物の含有量及び第2のコーティング剤の含有量はそれぞれ上記範囲内にあると、コバルトフリーの層状正極材料のレート能力を大幅に向上させることができ、しかも、コーティング剤の使用量が多すぎるため、コーティング層が厚すぎて、リチウムイオンの移動速度が低下するという問題、及びコーティング剤の使用量が少なすぎるため、層状ニッケルマンガン酸リチウムマトリックス材料が完全にコーティングされることができず、循環性能が低下するという問題を避けることができ、即ち、セラミック酸化物の含有量及び第2のコーティング剤の含有量をそれぞれ上記範囲内に設定することによって、コバルトフリーの層状正極材料のレート能力を大幅に向上させると同時に、コバルトフリーの層状正極材料は良好な循環性能を得ることができることを見出した。
【0043】
本願の実施例によれば、第1のコーティング剤と第2のコーティング剤とのモル比は0.2-0.6、例えば0.2、0.3、0.4、0.5、0.6であってもよい。これにより、コバルトフリーの層状正極材料のレート能力を大幅に向上させることができ、且つ不純物相の発生を避け、コバルトフリーの層状正極材料が高い容量を有することを確保することができる。例えば、コーティング剤はジルコニアとリン酸リチウムの混合物であり、ジルコニアとリン酸リチウムのモル比が大き過ぎる(例えば0.6より大きい)又は小さすぎる(例えば0.2未満)と、一定の不純物相Zr(POを生成し、コバルトフリーの層状正極材料の容量が低下する。本願のいくつかの好ましい実施例によれば、コーティング剤は同時に第1のコーティング剤と第2のコーティング剤を含む場合、第1のコーティング剤と第2のコーティング剤とのモル比は0.5であってもよい。
【0044】
本願の実施例によれば、第1のコーティング剤と第2のコーティング剤の粒径はそれぞれ独立して50-300nm、例えば50nm、80nm、100nm、150nm、180nm、200nm、250nm、280nm、300nmであってもよい。コーティング剤は後続の第1の焼結処理を経た後コーティング層を形成し、発明者らは、第1のコーティング剤と第2のコーティング剤の粒径が大きいと(例えば300nmより大きい)、コーティング層の均一性と緻密性が低下し、さらにコーティング層のコーティング効果に影響を及ぼし、コバルトフリーの層状正極材料の循環性能に影響を及ぼし、第1のコーティング剤と第2のコーティング剤の粒径が小さい(例えば50nm未満)と、粒子の凝集を引き起こしやすく、同様に、コーティング層の均一性と緻密性が低下し、コバルトフリーの層状正極材料の循環性能に影響を及ぼすことを発見した。本願は第1のコーティング剤と第2のコーティング剤の粒径をそれぞれ上記範囲内に設定することによって、後続で形成されたコーティング層は高い均一性と緻密性を取得し、コバルトフリーの層状正極材料の循環性能をさらに向上させることができる。
【0045】
本願のいくつかの好ましい実施例によれば、第1のコーティング剤と第2のコーティング剤の粒径はそれぞれ独立して50-100nmであってよい。これにより、コーティング層の均一性と緻密性をさらに高め、コバルトフリーの層状正極材料の循環性能を向上させることができる。
【0046】
S300では、第1の混合材料に第1の焼結処理を行い、層状ニッケルマンガン酸リチウムマトリックス材料の表面にコーティング層を形成し、コバルトフリーの層状正極材料を取得する。
【0047】
本願の実施例によれば、このステップでは、第1の混合材料に第1の焼結処理を行い、層状ニッケルマンガン酸リチウムマトリックス材料の表面にコーティング層を形成し、コバルトフリーの層状正極材料を取得する。本願の実施例によれば、第1の焼結処理は酸素の体積濃度が20-100%である雰囲気下で行われることができ、第1の焼結処理の温度は300-700℃、例えば300℃、400℃、500℃、600℃、700℃であってもよく、第1の焼結処理の時間は4-10h、例えば4h、5h、6h、7h、8h、9h、10hであってもよく、第1の焼結処理の昇温速度は3-5℃/min、例えば3℃/min、4℃/min、5℃/minであってもよい。これにより、層状ニッケルマンガン酸リチウムマトリックス材料の表面に付着されるコーティング剤がコーティング層を形成し、コバルトフリーの層状正極材料を取得することができる。
【0048】
本願の実施例によれば、第1の混合材料は第1の焼結処理を経た後、ふるい分けが行われ、ふるい分けのメッシュ数は300-400メッシュであってもよく、コバルトフリーの層状正極材料を取得する。
【0049】
本願の実施例によれば、該コバルトフリーの層状正極材料は単結晶正極材料、又は多結晶正極材料であってもよく、上記コバルトフリーの層状正極材料は良好なレート能力、低いコスト及び安定した構造を取得する。
【0050】
本願の実施例によれば、上記方法を利用して得られるコバルトフリーの層状正極材料の比表面積は0.1-0.7m/gである。これにより、コバルトフリーの層状正極材料は適切な比表面積を有するため、比表面積が大きすぎることによって引き起こされるガス発生現象を効果的に軽減し、また、比表面積が小さすぎることによって引き起こされるレート能力の低下を効果的に軽減する。
【0051】
本願の実施例によれば、上記方法を利用して得られるコバルトフリーの層状正極材料の中央値粒径(D50)は3-15μmである。これにより、コバルトフリーの層状正極材料が高いレート能力を取得することに便利であり、コバルトフリーの層状正極材料がリチウムイオン電池に適用される場合、ガス発生現象の発生を効果的に軽減することができる。
【0052】
本願の実施例によれば、上記方法を利用して得られるコバルトフリーの層状正極材料のPHは12以下である。これにより、コバルトフリーの層状正極材料のアルカリ性が大きすぎることによって引き起こされる塗布が不均一である問題を効果的に軽減することができ、該コバルトフリーの層状正極材料を含むスラリーを集電体に均一に塗布することができる。
【0053】
以上のように、該方法を使用して、コバルトフリーの層状正極材料の導電性を効果的に改善し、さらに、そのレート能力を高めることができ、コバルトフリーの層状正極材料はコストが低く、構造が安定し、レート能力に優れるという利点を同時に備え、該コバルトフリーの層状正極材料を使用したリチウムイオン電池は良好な使用性能及び低いコストを有する。
【0054】
本願の他の態様では、本願はコバルトフリーの層状正極材料を提供する。本願の実施例によれば、該コバルトフリーの層状正極材料は、層状ニッケルマンガン酸リチウムマトリックス材料と層状ニッケルマンガン酸リチウムマトリックス材料の表面に位置するコーティング層を含み、ここで、コーティング層は第1のコーティング剤と第2のコーティング剤を含み、第1のコーティング剤はセラミック酸化物を含み、第2のコーティング剤はリン酸塩とケイ酸塩のうち、少なくとも1つを含む。これにより、該コバルトフリーの層状正極材料はコストが低く、構造が安定し、レート能力に優れるという利点を同時に備え、該コバルトフリーの層状正極材料を使用したリチウムイオン電池は良好な使用性能及び低いコストを有する。
【0055】
本願の実施例によれば、該コバルトフリーの層状正極材料は上記のような方法によって調製されてもよく、これにより、該コバルトフリーの層状正極材料は上記のような方法によって調製されたコバルトフリーの層状正極材料と同じ特徴及び利点を有し、ここで詳細に説明しない。
【0056】
本願の実施例によれば、セラミック酸化物はジルコニア、酸化チタン、アルミナ及び酸化ホウ素の少なくとも1つを含むことができる。これにより、上記セラミック酸化物はコバルトフリーの層状正極材料の電子導電性を高め、コバルトフリーの層状正極材料のレート能力を向上させることができる。
【0057】
本願の実施例によれば、第2のコーティング剤はリン酸リチウムとケイ酸リチウムの少なくとも1つを含むことができる。これにより、上記コーティング剤はコバルトフリーの層状正極材料のイオン導電性を高め、コバルトフリーの層状正極材料のレート能力を向上させることができる。
【0058】
本願の実施例によれば、層状ニッケルマンガン酸リチウムマトリックス材料の質量に対するセラミック酸化物の質量の百分率は0.15-0.35%であってもよく、層状ニッケルマンガン酸リチウムマトリックス材料の質量に対する第2のコーティング剤の質量の百分率は0.4-1.0%であってもよい。これにより、コバルトフリーの層状正極材料のレート能力を大幅に向上させる同時に、コバルトフリーの層状正極材料が良好な循環性能を取得することができる。
【0059】
本願の実施例によれば、第1のコーティング剤と第2のコーティング剤とのモル比は0.2-0.6である。これにより、コバルトフリーの層状正極材料の導電性を大幅に高め、これによりコバルトフリーの層状正極材料のレート能力を大幅に向上させることができ、且つ不純物相の発生を避け、コバルトフリーの層状正極材料が高い容量を有することを確保することができる。
【0060】
コバルトフリーの層状正極材料の結晶タイプ、比表面積、中央値粒径及びPHは、上記で詳細に説明されており、ここで繰り返さない。
【0061】
本願の他の態様では、本願は、リチウムイオン電池を提供する。本願の実施例によれば、該リチウムイオン電池は、上記のようなコバルトフリーの層状正極材料を含む正極シートを含む。これにより、該リチウムイオン電池は上記のようなコバルトフリーの層状正極材料のすべての特徴及び利点を有し、ここで詳細に説明しない。要するに、該リチウムイオン電池は低いコスト、優れたレート能力、長い耐用年数及び高い安全性を備える。
【0062】
当業者は理解できるように、リチウムイオン電池は負極シート、セパレータ及び電解液等も含み、セパレータは正極シートと負極シートとの間に位置し、正極シートと負極シートとの間に収容空間を構成し、電解液は上記収容空間内に充填される。
【0063】
以下、具体的な実施例によって本願の手段を説明し、なお、以下の実施例は、本願を説明するためのものだけであり、本願の範囲を限定するためのものとして理解されるべきではない。実施例に具体的な技術または条件が示されない場合、本分野内の文献に記載の技術または条件または製品の仕様書に従って行われる。
【0064】
実施例1
コバルトフリーの層状正極材料の調製過程は、以下のとおりである。
(1)LiOHとNi0.75Mn0.25(OH)を高速混合装置で均一に混合し、第2の混合材料を取得した。混合の回転速度は850rpmであり、混合の時間は10minであり、装置内の材料の充填効率は55%であった。
(2)第2の混合材料に酸素の体積濃度が95%の雰囲気下で第2の焼結処理を行った。第2の焼結処理の温度は930℃であり、第2の焼結処理の時間は10hであり、第2の焼結処理の昇温速度は4℃/minであった。第2の焼結処理を経た材料にジェットミル粉砕を行い、破砕された材料を325メッシュのふるいに通して、層状ニッケルマンガン酸リチウムマトリックス材料を取得した。
(3)層状ニッケルマンガン酸リチウムマトリックス材料をZrOとLiPOとともに高速混合装置で混合し、第1の混合材料を取得した。混合の回転速度は850rpmであり、混合の時間は10minであり、装置内の材料充填効率は55%であった。層状ニッケルマンガン酸リチウムマトリックス材料の質量に対するZrOの質量の百分率は0.30%であり、層状ニッケルマンガン酸リチウムマトリックス材料の質量に対するLiPOの質量の百分率は0.5%であり、ZrOとLiPOの粒径はいずれも100nmであり、ZrOとLiPOとのモル比は0.56であった。
(4)第1の混合材料に酸素の体積濃度が40%の雰囲気下で第1の焼結処理を行った。第1の焼結処理の温度は600℃であり、第1の焼結処理の時間は5hであり、第1の焼結処理の昇温速度は5℃/minであった。第1の焼結処理を経た後の材料にジェットミル粉砕を行い、破砕された材料を400メッシュのふるいに通し、コバルトフリーの層状正極材料を取得した。
【0065】
実施例2
本実施例のコバルトフリーの層状正極材料の調製過程は実施例1とほぼ同じであり、ステップ(3)では、層状ニッケルマンガン酸リチウムマトリックス材料をTiOとLiSiOとともに高速混合装置で混合し、層状ニッケルマンガン酸リチウムマトリックス材料の質量に対するTiOの質量の百分率は0.15%であり、層状ニッケルマンガン酸リチウムマトリックス材料の質量に対するLiSiOの質量の百分率は0.4%であり、TiOとLiSiOの粒径はいずれも80nmであり、TiOとLiSiOのモル比は0.56であったという点が異なる。
【0066】
実施例3
本実施例のコバルトフリーの層状正極材料の調製過程は実施例1とほぼ同じであり、ステップ(3)では、層状ニッケルマンガン酸リチウムマトリックス材料の質量に対するZrOの質量の百分率は0.4%であり、層状ニッケルマンガン酸リチウムマトリックス材料の質量に対するLiPOの質量の百分率は0.5%であり、ZrOとLiPOのモル比は0.75であったという点が異なる。
【0067】
実施例4
本実施例のコバルトフリーの層状正極材料の調製過程は実施例1とほぼ同じであり、ステップ(3)では、層状ニッケルマンガン酸リチウムマトリックス材料の質量に対するZrOの質量の百分率は0.1%であり、層状ニッケルマンガン酸リチウムマトリックス材料の質量に対するLiPOの質量の百分率は0.5%であり、ZrOとLiPOとのモル比は0.19であったという点が異なる。
【0068】
比較例1
コバルトフリーの層状正極材料の調製過程は以下の通りである。
(1)LiOHとNi0.75Mn0.25(OH)を高速混合装置で均一に混合し、第2の混合材料を取得した。混合の回転速度は850rpmであり、混合の時間は10minであり、装置内の材料充填効率は55%であった。
(2)第2の混合材料に酸素濃度が95%の雰囲気下で第2の焼結処理を行った。第2の焼結処理の温度は930℃であり、第2の焼結処理の時間は10hであり、第2の焼結処理の昇温速度は4℃/minであった。第2の焼結処理を経た後の材料にジェットミル粉砕を行い、破砕された材料を325メッシュのふるいに通し、層状ニッケルマンガン酸リチウムマトリックス材料、即ち最終的なコバルトフリーの層状正極材料を取得した。
【0069】
性能テスト
1、走査型電子顕微鏡を利用してそれぞれ実施例1と比較例1で得られたコバルトフリーの層状正極材料を観察した。実施例1のコバルトフリーの層状正極材料の電子顕微鏡写真は、例えば図2図2の(a)が低倍率の電子顕微鏡図であり、図2の(b)は高倍率の電子顕微鏡図である)に示され、比較例1のコバルトフリーの層状正極材料の電子顕微鏡写真は、例えば図3図3の(a)が低倍率の電子顕微鏡図であり、図3の(b)は高倍率の電子顕微鏡図である)に示される。
【0070】
2、実施例1-4と比較例1で得られたコバルトフリーの層状正極材料それぞれを、導電剤SP(カーボンブラック)、バインダーPVDF(ポリフッ化ビニリデン)と、質量比が92:4:4で混合して正極スラリーを形成し、アルミニウム箔に塗布して正極シートを形成し、リチウム金属を負極シートとして、Celgard2400微孔性ポリプロピレンフィルムをセパレータとして、LiPF(ヘキサフルオロリン酸リチウム)/EC(エチレンカーボネート)-DMC(ジメチルカーボネート)を電解液として、リチウムイオン電池を組み立てた。実施例1-4と比較例1でそれぞれ組み立てられたリチウムイオン電池に充放電テスト及びレート能力テストを行った。充放電テスト結果は表1に示すとおりであり、レート能力テスト(異なるレートでの放電比容量(mAh/g))結果は表2に示すとおりであった。ここで、充放電テストはまず0.1Cレートで電池の容量をテストし、次に、1Cレートで電池の容量をテストした。
【0071】
【表1】
【0072】
【表2】
【0073】
図2図3から分かるように、比較例1のコバルトフリーの層状正極材料の表面は滑らかであり、実施例1のコバルトフリーの層状正極材料の表面には均一且つ緻密であるコーティング層を有する。
【0074】
表1から分かるように、コーティング層がないコバルトフリーの層状正極材料(例えば比較例1)と比較して、コーティング層を有するコバルトフリーの層状正極材料(例えば実施例1-4)の放電比容量、最初の効率及び循環性能はいずれも大きく向上した。
【0075】
表2から分かるように、コーティング層がないコバルトフリーの層状正極材料(例えば比較例1)と比較して、コーティング層を有するコバルトフリーの層状正極材料(例えば実施例1-4)のレート能力はいずれも向上し、特に高いレートで、レート能力は大幅に向上した。
【0076】
実施例3、実施例4を実施例1と比較して、ZrOの含有量が多すぎたり低すぎたりすると、リチウムイオン電池のレート能力はある程度低下することが分かった。
【0077】
本明細書の説明において、「一実施例」、「他の実施例」という参照用語などの説明は、該実施例又は例を組み合わせて説明した具体的な特徴、構造、材料又は特色が本願の少なくとも1つの実施例に含まれることを意味する。本明細書において、上記の用語の例示的な叙述は必ずしも同じ実施例又は例を指す必要がない。さらに、説明される具体的な特徴、構造、材料又は特色は任意の1つ又は複数の実施例又は例において適切な方式で結合することができる。なお、矛盾がない場合、当業者は、本明細書に記載されている異なる実施例又は例及び異なる実施例又は例の特徴を結合及び組み合わせることができる。なお、本明細書では、「第1」、「第2」という用語は、説明目的でのみ使用され、相対的な重要性を示したり暗示したり、示された技術的機能の数を暗黙的に示したりするものとして理解することはできない。
【0078】
本願の実施例を以上で示し、説明したが、理解できるものとして、上記実施例は例示的なものであり、本発明を限定するものとして理解されるべきではなく、当業者は、本願の範囲内で上記実施例に対して変更、修正、置換及び変形を行うことができる。
【0079】
本願は、2020年01月17日に中国国家知識産権局に提出された、特許出願番号が202010054733.9の特許出願の優先権と権益を主張し、その全部を参照により本願に組み込まれる。
図1
図2
図3
【手続補正書】
【提出日】2022-09-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
層状ニッケルマンガン酸リチウムマトリックス材料を調製するステップと、
前記層状ニッケルマンガン酸リチウムマトリックス材料とコーティング剤を混合して、第1の混合材料を取得するステップと、
前記第1の混合材料に第1の焼結処理を行い、前記層状ニッケルマンガン酸リチウムマトリックス材料の表面にコーティング層を形成し、コバルトフリーの層状正極材料を取得するステップと、を含み、
前記コーティング剤は第1のコーティング剤と第2のコーティング剤を含み、前記第1のコーティング剤はセラミック酸化物を含み、前記第2のコーティング剤はリン酸塩とケイ酸塩のうち、少なくとも1つを含む、ことを特徴とするコバルトフリーの層状正極材料の調製方法。
【請求項2】
前記セラミック酸化物はジルコニア、酸化チタン、アルミナ及び酸化ホウ素の少なくとも1つを含む、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第2のコーティング剤はリン酸リチウムとケイ酸リチウムの少なくとも1つを含む、ことを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記層状ニッケルマンガン酸リチウムマトリックス材料の質量に対する前記セラミック酸化物の質量の百分率は0.15-0.35%であり、
前記層状ニッケルマンガン酸リチウムマトリックス材料の質量に対する前記第2のコーティング剤の質量の百分率は0.4-1.0%である、ことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記層状ニッケルマンガン酸リチウムマトリックス材料の調製は、
リチウム源粉末と水酸化ニッケルマンガンを混合し、第2の混合材料を取得するステップと、
前記第2の混合材料に第2の焼結処理を行い、前記層状ニッケルマンガン酸リチウムマトリックス材料を取得するステップと、を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
層状ニッケルマンガン酸リチウムマトリックス材料と前記層状ニッケルマンガン酸リチウムマトリックス材料の表面に位置するコーティング層を含み、
前記コーティング層は第1のコーティング剤と第2のコーティング剤を含み、前記第1のコーティング剤はセラミック酸化物を含み、前記第2のコーティング剤はリン酸塩とケイ酸塩のうち、少なくとも1つを含むことを特徴とするコバルトフリーの層状正極材料。
【請求項7】
前記セラミック酸化物はジルコニア、酸化チタン、アルミナ及び酸化ホウ素の少なくとも1つを含む、ことを特徴とする請求項に記載のコバルトフリーの層状正極材料。
【請求項8】
前記第2のコーティング剤はリン酸リチウムとケイ酸リチウムの少なくとも1つを含む、ことを特徴とする請求項またはに記載のコバルトフリーの層状正極材料。
【請求項9】
前記層状ニッケルマンガン酸リチウムマトリックス材料の質量に対する前記セラミック酸化物の質量の百分率は0.15-0.35%であり、前記層状ニッケルマンガン酸リチウムマトリックス材料の質量に対する前記第2のコーティング剤の質量の百分率は0.4-1.0%である、ことを特徴とする請求項のいずれか1項に記載のコバルトフリーの層状正極材料。
【請求項10】
請求項のいずれか1項に記載のコバルトフリーの層状正極材料を含む正極シートを含む、ことを特徴とするリチウムイオン電池。
【国際調査報告】