(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-30
(54)【発明の名称】パーキンソン病の治療における使用のための、アネトールトリチオンまたはその誘導体4-OH-アネトールトリチオンとドキシサイクリンまたはミノサイクリンとの組合せ
(51)【国際特許分類】
A61K 31/385 20060101AFI20230323BHJP
A61P 25/16 20060101ALI20230323BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230323BHJP
A61K 31/65 20060101ALI20230323BHJP
【FI】
A61K31/385
A61P25/16
A61P43/00 111
A61K31/65
A61P43/00 121
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022573799
(86)(22)【出願日】2021-02-11
(85)【翻訳文提出日】2022-10-07
(86)【国際出願番号】 FR2021050244
(87)【国際公開番号】W WO2021160968
(87)【国際公開日】2021-08-19
(32)【優先日】2020-02-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522319837
【氏名又は名称】プティジャン,オリヴィエ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】プティジャン,オリヴィエ
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086BB04
4C086DA29
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZA02
4C086ZC41
4C086ZC75
(57)【要約】
本発明は、パーキンソン病を治療する分野に関する。より詳細には、本発明は、パーキンソン病の治療における、アネトールトリチオン単独の使用、または抗シヌクレインテトラサイクリンと組み合わせた使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パーキンソン病の治療における使用のための、アネトールトリチオンまたはその誘導体4-OH-アネトールトリチオンから選択される、ミトコンドリア起源のROSの産生を阻害する分子。
【請求項2】
前記分子の1日量が、300mg~1200mg/日である、請求項1に記載の使用のための、請求項1に記載の分子。
【請求項3】
前記治療が、前記パーキンソン病の初期段階の患者または無症候性患者を対象とする、請求項1または請求項2のいずれかに記載の使用のための、請求項1または請求項2に記載の分子。
【請求項4】
(i)アネトールトリチオンまたはその誘導体4-OH-アネトールトリチオンから選択される、ミトコンドリア起源のROSの産生を阻害する分子と、(i)抗シヌクレインテトラサイクリンとの、パーキンソン病の治療における使用のための、組合せ。
【請求項5】
前記テトラサイクリンが、ドキシサイクリン、ミノサイクリン、またはそれらの誘導体の1つから選択される、請求項4に記載の組合せ。
【請求項6】
アネトールトリチオンまたはその誘導体4-OH-アネトールトリチオンの1日量が300mg~1200mgであり、ドキシサイクリン、ミノサイクリン、またはそれらの誘導体の1日量が30mg~200mgである、請求項1に記載の使用のための、請求項5に記載の組合せ。
【請求項7】
ATTがドキシサイクリンと組み合わされる、請求項4~6のいずれか一項に記載の使用のための、請求項4~6のいずれか一項に記載の組合せ。
【請求項8】
L-DOPAによる治療を受けている患者における、請求項4~6のいずれか一項に記載の使用のための、請求項4~6のいずれか一項に記載の組合せ。
【請求項9】
前記治療は、前記パーキンソン病の初期段階の患者または無症候性患者を対象とする、請求項4~7のいずれか一項に記載の使用のための、請求項4~8のいずれか一項に記載の組合せ。
【請求項10】
(i)アネトールトリチオンまたはその誘導体4-OH-アネトールトリチオンなどのミトコンドリア起源のROSの産生を阻害する分子、(ii)抗シヌクレインテトラサイクリン、および(iii)担体を含む、薬学的組成物。
【請求項11】
100mg~400mgのアネトールトリチオンまたはその誘導体4-OH-アネトールトリチオン、およびドキシサイクリン、ミノサイクリン、またはそれらの誘導体の1つから選択される10mg~65mgのテトラサイクリンを含む、請求項10に記載の薬学的組成物。
【請求項12】
ATTおよびドキシサイクリンを含む、請求項10または請求項11に記載の薬学的組成物。
【請求項13】
パーキンソン病の治療における使用のための、請求項10~12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
L-DOPAによる治療を受けている患者における、請求項13に記載の使用のための、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
(i)ATXと(ii)ドキシサイクリンもしくはミノサイクリンのC9誘導体の1つとの、キメラ。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、パーキンソン病を治療する分野に関する。より詳細には、本発明は、パーキンソン病の治療における、アネトールトリチオン(ATT)または4-ヒドロキシ-アネトールトリチオン(ATX)などのミトコンドリア起源のROSの産生を阻害する分子の、それ単独での、またはドキシサイクリンなどの抗シヌクレインテトラサイクリンとの組合せにおける使用に関する。
【0002】
〔従来技術〕
パーキンソン病は、中枢神経系に影響を及ぼす慢性変性神経疾患である。パーキンソン病は、振戦、運動の遅さ、および筋肉のこわばりを引き起こす。この疾患は長期間未治療のままであった。
【0003】
パーキンソン病(PD)の治療が実際に始まったのは、1970年にFDAが発行したL-DOPAの承認を得てからであり、中枢レベルで観察されるドーパミン欠乏を回復することを目的とした治療であった。この論理は、種々のドーパミン作動性アゴニストの場合と同様に、L-DOPA、COMTおよびIMAO-B代謝阻害剤の市場への配置と共に繰り返される。全ての場合において、これらは、運動障害に作用し、その効果が時間と共に否応なく減少する、厳密に対症的な補助的治療である。
【0004】
多くの治療標的が同定されているが、それらのいずれも臨床的に検証されていない。これらの異なるアプローチの中で、ロチゴチン(US2007/0191470)、グリシンの部分的アゴニスト(US2004/0087596)、ドーパミン作動薬とニコチン受容体アゴニストまたはニコチン受容体との組合せ(EP1977746)などを挙げることができる。
【0005】
今日まで、パーキンソン病の病因学的治療はない。
【0006】
〔発明の開示〕
本発明者は、パーキンソン病に関与する2つの経路の阻害を組み合わせた新しい治療アプローチを提案する。提案された戦略は
図1に示されている。この戦略は、ドーパミン作動性ニューロンの死は、ミトコンドリアのROSとシナプス前終末に存在するα-シヌクレイン由来の毒性オリゴマーとの間に形成され、かつ自己持続性である悪循環に本質的に起因するという、これまでに提唱されたことのない仮説に基づいている。この主要メカニズムに追加されたものは:
・ ミトコンドリア機能不全に寄与しそれによってROSの産生に寄与する、炎症誘発性因子の放出に関与するミクログリアの活性化、および
・ ROSと負の循環を形成し、この破壊的システムの維持に関与する、MMP、特にMMP3の活性化
である(
図2参照)。
【0007】
したがって、本発明は、以下を組み合わせることによってこの悪循環を破ることを提案する:
- アネトールトリチオン(ATT)を投与することによって、ミトコンドリアレベルでのROSの産生の阻止、と共に
- ドキシサイクリンとATTとの併用投与という手法による、毒性オリゴマーの産生を止めるためのα-シヌクレイン-プロトフィブリルの平衡の安定化。
【0008】
一方で、アネトールトリチオン(ATT)は、呼吸鎖のIq複合体におけるROSの産生を阻止する特性を有し(Detaille, 2019);この阻止は、MPTPによる毒性からドーパミン作動性ニューロンを保護する(WO2017/042267のマウスで実施された急性モデルに示されるように)。
【0009】
ATTは、ATTのフェノール形態に対応するATXによって置換され得る。
【0010】
他方で、ドキシサイクリンは(i)プロトフィブリルに結合し、それによって、毒性オリゴマーの産生ならびにこれらの毒性オリゴマーの介在ニューロン伝播(シード効果)を阻止することによる抗アミロイド活性を示すが(Gonzalez-Lizarraga, 2017)、(ii)ミクログリアの活性化に伴う炎症反応に対抗し(Bortolanza, 2018)、さらにドーパミン作動性ニューロンにおけるMPPの放出および発現を減少させもする(Bartolanza, 2018; Santa-Cecilia, 2019)。
【0011】
ドキシサイクリンは、パーキンソン病の治療の適応において、提案された適応において利用できるドキシサイクリンといくつかの特性を共有するミノサイクリンまたは他のテトラサイクリンに置き換えることができることに留意すべきである。
【0012】
さらに、本発明者は、ATTがまた、毒性オリゴマーの形成を阻害することができ、ドーパミン作動性ニューロンに関して神経保護的役割を果たすことができることを示した。この結果は、それ単独で既に顕著であるが、ATTがドキシサイクリンと組み合わされた場合、強力な相乗効果を伴う。
【0013】
したがって、本発明者は、ATTの単独での使用が、通常投与される投与量、すなわち最大1日量75mg(Surfalem(登録商標)の用量を参照)よりも高い投与量で、パーキンソン病の症状に顕著な効果を有することを実証した;パーキンソン病の治療において、考慮される投与量は少なくとも300mg/日である。
【0014】
したがって、本発明は、パーキンソン病の治療のための、それ単独での、または抗シヌクレインテトラサイクリンとの組合せにおける、ATTまたはATXの使用に関する。
【0015】
〔発明の利点〕
本発明は、パーキンソン病に対する最初の病因学的治療アプローチを構成する。本発明は、長期間(現時点での追跡によれば、少なくとも3年間)にわたって維持される症状の好転を可能にし、それゆえ、患者に真の利益をもたらす。
【0016】
臨床症例で収集された知見は、疾患の種々の生理学的側面を代表するモデルにおいてin vitroで実施される分析によって確認される。以下に示される実験結果は、パーキンソン病の2つの主要な構成要素、すなわちミクログリアの活性化およびα-シヌクレインの凝集に対して両方を阻害する、ATXの直接的な効果を証明する。これらの結果は、それだけで、ATX(またはATT)を、パーキンソン病の治療における目的の候補とする。さらに、ATXと、α-シヌクレイン阻害剤、この場合ドキシサイクリンと、の組合せは、炎症の低減に対して相乗効果を有することが示される。この組合せはまた、ドーパミン作動性ニューロンの神経保護に相乗的に作用する。さらに、機能不全メカニズムの発生を回避することは非常に興味深い。前記組合せはまた、「シード効果」(すなわち伝播効果)を阻害すること、およびそれによって疾患の進行を予防することを可能にする。
【0017】
ATTとテトラサイクリンとを組み合わせた治療の有益な効果は、少なくとも、患者の状態の安定化を誘導することによって、全てのパーキンソン病患者において期待される。しかしながら、最初の症状が現れたばかりの初期段階の患者におけるこの治療の実施は、または疾患を発症する可能性が高い患者における予防手段としてさえ、症状の非常に顕著な(おそらくは全面的な)退行を可能にし、患者が長期間にわたってこの状態を維持することができることが予見可能である。
【0018】
すべてのパーキンソン病患者に利用可能なこの革新的な治療アプローチは、市場で入手可能な分子の使用に基づくものであり、その無害性が長い間にわたって確立されているという事実によって促進される。この側面は、医師および患者によるその採用にとって非常に好ましい。
【0019】
〔発明の詳細な説明〕
本発明の第1の目的は、パーキンソン病を治療するための、アネトールトリチオン(ATT)またはその誘導体4-OH-アネトールトリチオン(ATX)などの、ミトコンドリア起源のROSの産生を阻害する分子の使用に関し、ここで、1日量は、300mg~1200mgである。
【0020】
ATTおよびATXは、ミトコンドリア起源のROSの2つの特異的阻害剤である。
【0021】
ATXは、ヒトおよび動物の両方において、肝臓によって代謝されるATTのフェノール形態に対応する。この4-OH-アネトールトリチオン形態は、既に記載されている(Li et al., J Pharm Biomed Anal, 2008, 47: 612-617)。ATTの構造は、この代謝中に保存されるので、ATTが有していた抗ROS活性がATXにおいて見出されると考える十分な理由があり、特に、現在市販されている形態である経口投与の後に見出される循環生成物の主要部分はATXである(Yu, 2011)。さらに、ATXは、エステルの形成を可能にするパラ-フェノール基を有する。
【0022】
特定の実施形態において、ATXがそのエステル化形態で、例えば以下のエステル形態:フォスフェート、エチリデンフォスフェート、サルフェート、ヘミスクシネート、アセテート、プロピオネート、イソブチレート、ヘキサノエート、ピバレート、エトキシカーボネート、ニコチネート、またはグリシン、ジエチルグリシン、もしくはバリンエステルなどのアミノ酸のエステルで使用され、このリストは全てを網羅していない。
【0023】
提案された投与量は、末梢損傷を引き起こす疾患を治療するために先行技術において提案された投与量よりも著しく高い。実際、300mg~1200mg/日の投与量は、血液脳関門を通過した後に活性分子がニューロンに到達することを可能にするために必要であると考えられる。この投与量は、例えば、1日あたり、400mg、500mg、600mg、700mg、800mg、900mg、1000mgまたは1200mgのように、病期および/または患者に応じて調節することができる。
【0024】
この病状の標的細胞であるドーパミン作動性ニューロンにおけるATTまたはATXの一定水準を可能な限り確実にするために、この投与量を、1日にわたって一定の間隔で、2回分、3回分または4回分に分けて投与することが好ましい。好ましくは、投与は3回に分割される。患者の生活の質を高めるために、2回に分けて服用することができる。
【0025】
24時間にわたって患者の尿中にATTがほとんど見出され得ないほどに、ATTはO-脱メチル化を介してATXにほぼ直ちにかつ完全に代謝されるので、ATXがATTの活性の大部分を有する限り、ATXの投与量は、ATTについて提案された投与量と同じである(He J. et al. J Pharm Biomed Anal. 2011, 54: 551-556; Li TM. et al. Anal Chim Acta 2007, 594: 274-278; Li WY. et al. J Pharm Biomed Anal. 2008, 47: 612-617)。
【0026】
ATTまたはATXの単剤療法の使用は、症状の発症のための一次予防的治療として、または最初の症状を緩和もしくは取り除き、且つその進行を減速もしくは停止させると考えられ得る。実際、ATTは炎症の阻害およびドーパミン作動性ニューロンにおける毒性凝集体の形成の両方に対して阻害効果を有し、これは、シード効果に関連する疾患の広がりを防止することを可能にする。したがって、本発明の好ましい実施形態において、ATTは、疾患の第1の症状(初期段階)を示す患者またはパーキンソン病を発症する可能性が高い患者に投与される。
【0027】
ATT治療は特に、疾患の初期段階の患者または無症候性患者を対象とする。
【0028】
「無症候性患者」はパーキンソン病を発症する可能性が高いと診断されたが、症状を呈さない患者を意味すると理解される。
【0029】
ATTまたはATXは、L-DOPAで治療された患者に投与することもできる。この実施形態では、L-DOPAで長期間治療された患者が経験する運動障害症状が改善することが期待される。さらに、ATT-テトラサイクリンの組合せを投与することにより、L-DOPAの投与量を減らすことができ、その結果、運動障害の副作用が消失するという結果と共に、症状を制御することが可能になる。
【0030】
本発明の第2の目的は、パーキンソン病を治療するための、(i)ATTまたはその誘導体ATXなどの、ミトコンドリア起源のROSの産生を阻害する分子と、(ii)抗シヌクレインテトラサイクリンとの組合せの使用に関する。
【0031】
「抗シヌクレインテトラサイクリン」とは、ドキシサイクリン、ミノサイクリン、グリシルサイクリン、エラバサイクリン、オマダサイクリン、テトラサイクリン、オキシテトラサイクリン、クロルテトラサイクリン、またはそれらの誘導体の1つを意味すると理解される。
【0032】
「ドキシサイクリン誘導体」は、9-アミノ-ドキシサイクリンおよび9-アミノメチル-ドキシサイクリン、およびそれらのそれぞれのアシル化誘導体、ならびに9-アミノ-4-デジメチルアミノ-ドキシサイクリンおよび9-アミノメチル-4-デジメチルアミノ-ドキシサイクリン、およびそれらのそれぞれのアシル化誘導体を意味すると理解される。
【0033】
「ミノサイクリン誘導体」は、9-アミノ-ミノサイクリンおよび9-アミノメチル-ミノサイクリン、ならびにそれらのそれぞれのアシル化誘導体を意味すると理解される。
【0034】
この使用の特定の実施形態では、ATTまたはその誘導体ATXの1日量が300mg~1200mgであり、ドキシサイクリンもしくはミノサイクリン、またはそれらの誘導体の1つの1日量は30mg~200mgである。
【0035】
投与量は、疾患の段階および/または患者に応じて変わり得る。ドキシサイクリンまたはミノサイクリンの投与量は、例えば、1日当たり、30mg~60mg、60mg~90mg、90mg~120mg、またさらには120mg~200mgであり得る。この1日量は、2回分、3回分または4回分、好ましくは2回分または3回分に分割される。
【0036】
好ましい実施形態において、この組合せは、ATTおよびドキシサイクリンを含む。
【0037】
ATTまたはATXと、ドキシサイクリンまたはミノサイクリンとの組合せは、おそらくそのような治療に加えて、確立された治療が失敗するメカニズムの発生に対する予防的または治癒的アプローチにおいて提案され得る。
【0038】
本発明の好ましい実施形態において、ATTおよびテトラサイクリンの組合せは、疾患の第1の症状(初期段階)を示す患者またはパーキンソン病を発症する可能性が高い患者に投与される。これらの患者において、予想される効果、すなわち、症状の消失またはその出現の予防および長期的な疾患の安定化は、より顕著である。
【0039】
ATT+テトラサイクリンの組合せは特に、疾患の初期段階の患者または無症候性患者を対象とする。
【0040】
分子のこの組合せは、L-DOPAによる治療を受けている患者に投与することができる。これらの2つの治療は相補的であると考えることができる:ATT/ATX-テトラサイクリンの組合せは、パーキンソン病における2つの主要な作用メカニズムを阻害することを可能にし、一方で、L-DOPAはドーパミン作動性ニューロンの機能の喪失を補償する。したがって、2つの治療は、一方ではドーパミン作動性ニューロンの消失の原因に対して、他方では存在する症状を緩和するためにドーパミン水準に対して、相補的な方法で作用することができる。これらの2つの治療を組み合わせることは、特に、標的治療経路の1つが失敗した場合に、完全に有利であり得る。
【0041】
本発明の第3の目的は、ATTまたはATXなどのミトコンドリア起源のROSの産生を阻害する分子、抗シヌクレインテトラサイクリン、および担体を含む薬学的組成物に関する。
【0042】
このような組成物は、1日当たり2回または3回の医薬品投与量を可能にするように製剤化することができる。例として、1日当たり3回の投与量の場合、このような組成物は、100mg~400mgのATTまたはATX、および10mg~65mgのドキシサイクリンもしくはミノサイクリンまたはそれらの誘導体の1つを含んでいてもよい。1日当たり2回の投与量の場合、このような組成物は、150mg~600mgのATTまたはATX、および15mg~98mgのドキシサイクリンもしくはミノサイクリン、またはそれらの誘導体の1つを含んでいてもよい。
【0043】
好ましい実施形態において、薬学的組成物は、ATTおよびドキシサイクリンを含む。
【0044】
本発明の第4の目的は、(i)ATTなどの、ミトコンドリア起源のROSの産生を阻害する分子、(ii)抗シヌクレインテトラサイクリン、および(iii)パーキンソン病を治療するための担体を含む、薬学的組成物の使用に関する。
【0045】
この組成物は、L-DOPAで治療された患者、特にL-DOPA投薬を受けているにもかかわらず症状を示す患者に投与することができる。
【0046】
本発明の第5の目的は、(i)ATXと(ii)ドキシサイクリンもしくはミノサイクリンなどの抗シヌクレインテトラサイクリン誘導体とのキメラに関する。
【0047】
「キメラ」は、縮合生成物とも呼ばれ、4-OH-アネトールトリチオン(ATX)とドキシサイクリンまたはミノサイクリンの9位の誘導体の1つとの縮合反応後に形成される分子を意味すると理解される。
【0048】
好ましい実施形態では、キメラは、ATXとドキシサイクリン誘導体との共役を含む。
【0049】
本発明は、以下の実施例を読むことで一層理解されるであろう。これらの実施例は、例示として提供され、決して本発明の範囲を限定するものとみなされるべきではない、。
【0050】
〔図面の簡単な説明〕
図1:パーキンソン病に関与する2つの経路の阻害を組み合わせた、本発明の主題である治療アプローチのグラフィック表現;これらの経路は、ミトコンドリアROSおよびシナプス前終末に存在するα-シヌクレイン由来の毒性オリゴマーを組み合わせ、かつ自己持続性である悪循環を作り出す。ESK El Sayed, 2018およびRM Meade, 2019による。
【0051】
図2:パーキンソン病におけるニューロンレベルで観察された細胞死メカニズムの模式図;Bortolanza, 2018; El Sayed, 2018; Guo, 2018; Liu, 2018; Mead, 2019; Santa Cecilia, 2019による。(略語:ETC-電子輸送鎖;MMP-マトリックスメタロプロテイナーゼ;mPTP-ミトコンドリア透過性遷移孔;mtDNA-ミトコンドリアDNA;ROS-活性酸素種)。
【0052】
図3:LPSで活性化された培養物中のミクログリアに対するATX、DOX、またはATX+DOXを用いた治療の影響-A-LPSによって活性化された培養物中のミクログリアに対するATXの抗炎症効果。ATX(1~30μM)またはDEX(2.5μM)の存在下または非存在下で、LPS(10ng/mL)に24時間曝露されたミクログリアの培養物におけるTNF-αの放出のELISA試験の手法による測定。データは、炎症誘引物質(inflammogen)の単独存在下における測定値の%として表される平均±標準偏差値を表す(n=3~7ウェル/条件)。
****p<0.0001 対 対照;
##p<0.01、
####p<0.0001 対 LPS。B-LPSによって活性化された培養物中のミクログリアに対するDOXの抗炎症効果。DOX(10~100μM)またはDEX(2.5μM)の存在下または非存在下で、LPS(10ng/mL)に24時間曝露されたミクログリアの培養物におけるTNF-αの放出のELISA試験の手法による測定。データは、炎症誘引物質の単独存在下における測定値の%として表される平均±標準偏差値を表す(n=3~9ウェル/条件)。
****p<0.0001 対 対照;####p<0.0001 対 LPS。C-LPSによって活性化された培養物中のミクログリアに対するATX+DOXを組み合わせた治療の抗炎症効果。ATX(10μM)、DOX(50、100μM)、2つの併用治療(ATX+DOX)またはDEX(2.5μM)の存在下または非存在下で、LPS(10ng/mL)に24時間曝露されたミクログリアの培養物におけるTNF-αの放出のELISA試験の手法による測定。データは、炎症誘引物質の単独存在下における測定値の%として表される平均±標準偏差値を表す(n=5~13ウェル/条件)。
****p<0.0001 対 対照;###p<0.001、####p<0.0001 対 LPS;&&p<0.01 対 ATXまたはDOX単独。
【0053】
図4:PAM3CSK4で活性化された培養物中のミクログリアに対するATX、DOX、またはATX+DOXを用いた治療の影響-A-PAM3CSK4によって活性化された培養物中のミクログリアに対するATXの抗炎症効果。ATX(5~30μM)またはDEX(2.5μM)の存在下または非存在下で、PAM3CSK4(1μg/mL)に24時間曝露されたミクログリアの培養物におけるTNF-αの放出のELISA試験の手法による測定。データは、炎症誘引物質の単独存在下における測定値の%として表される平均±標準偏差値を表す(n=4~12ウェル/条件)。
****p<0.0001 対 対照;#p<0.05、####p<0.0001 対 PAM3CSK4。B-PAM3CSK4によって活性化された培養物中のミクログリアに対するDOXの抗炎症効果。DOX(10~100μM)またはDEX(2.5μM)の存在下または非存在下で、PAM3CSK4(1μg/mL)に24時間曝露したミクログリアの培養物におけるTNF-αの放出のELISA試験の手法による測定。データは、炎症誘引物質の単独存在下における測定値の%として表される平均±標準偏差値を表す(n=4~8ウェル/条件)。
****p<0.0001 対 対照;#p<0.05、###p<0.001、####p<0.0001 対 PAM3CSK4。C-PAM3CSK4によって活性化された培養物中のミクログリアに対するATX+DOXを組み合わせた治療の抗炎症効果。ATX(5μM)、DOX(50、100μM)、および2つの併用治療またはDEX(2.5μM)の存在下または非存在下で、PAM3CSK4(1μg/mL)に24時間曝露されたミクログリアの培養物におけるTNF-αの放出のELISA試験の手法による測定。データは、炎症誘引物質の単独存在下における測定値の%として表される平均±標準偏差値を表す(n=4~12ウェル/条件)。
****p<0.0001 対 対照;#p<0.05、##p<0.01、####p<0.0001 対 LPS;&p<0.05 対 ATXまたはDOX単独。
【0054】
図5:α-シヌクレインのアミロイド凝集に対する、ATX、DOX、またはATX+DOXの阻害効果-A-α-シヌクレインのアミロイド凝集に対するDOXおよびDMFの効果。単量体α-シヌクレイン(αSm)がDOX(100μM)またはDMF(1%)の存在下または非存在下で振盪される条件(600rpm、37℃、96時間)下で、ThTによって放出される蛍光の強度。振盪されないαSmとの比較。実験データは、単量体が処理なしで単独で振盪される状態下で得られた値の%での平均値±標準偏差を表す(n=6~8測定/条件)。
****p<0.0001 対 対照;####p<0.0001 対 振盪αSm。B-α-シヌクレインのアミロイド凝集に対する、場合によりDOXと組み合わせたATXの効果。単量体α-シヌクレインがDOX(10μM)またはATX(1、10または100μM)の存在下または非存在下で振盪される条件(600rpm、37℃、96時間)下で、ThTによって放出される蛍光の強度。実験データは、単量体が処理なしで単独で振盪される状態下で得られた値の%での平均±標準偏差を表す(n=6~8測定/条件)。
**p<0.01、
****p<0.0001 対 振盪αS。
【0055】
図6:ATX化合物の抗凝集効果を示す透過型電子顕微鏡検査。ATX(10μM;αS:ATX)、DOX(10μM;αS:DOX)、または組み合わせられた2つの処理(αS:DOX:ATX)の存在下で産生されたα-シヌクレイン凝集体の画像。スケールバー:1μm(4,000X)および500nm(10,000X)。
【0056】
図7:低ノイズの自然発生的酸化ストレスを受けたドーパミン作動性ニューロンに対するATXの神経保護能力。7日齢の中脳培養物におけるATX(3μM)、DOX(D-3447、Sigma Adrich;10μM)またはアポトランスフェリン(APO;T-1428、Sigma Adrich;150μg/mL)の神経保護効果を説明する図。
【0057】
図8:低ノイズの自然発生的慢性酸化ストレスを受けた培養物におけるドーパミン作動性ニューロンに対するATXおよびDOXの協調的神経保護効果。アポトランスフェリン(APO;150μg/mL)、ATX(0.75μM;3μM)、DOX(7.5μM;10μM)またはATX(0.75μM)+DOX(7.5μM)の組合せで7日間、任意に処理した、中脳培養物中のドーパミン作動性ニューロンの生存。実験データは、アポトランスフェリンの存在下で得られた値の%での平均±標準偏差値を表す(n=4~13ウェル/状態)。
***p<0.001 対 対照;
###p<0.001 対 単独で適用された同濃度のATXまたはDOX。
【0058】
〔実施例〕
〔実施例1:症例の説明〕
この治療用溶液を、パーキンソン病を有する69歳の男性に対して試験した。3年間にわたる事象の履歴(現在追跡調査中)を以下に示す:
- ステージ1:パーキンソン病の症状に対するATTの効果
症状:2018年の初めに、パーキンソン病の最初の徴候が出現した:左手の振戦、歩行ペースの緩慢化、階段の無秩序な下降、筋拘縮の形態の背痛を伴う胴体の前方への傾斜、ならびに種々の明らかな非運動障害(引きこもり、無関心、意思決定困難、人生における喜びの喪失、抑うつなど)の開始、便秘、嗅覚低下。最初に、ATTを単剤療法として試験した。
【0059】
治療:その後、どの投与量を使用するかを決定するという問題が生じた。患者は、良性前立腺肥大症の問題を治療するために、すでにATTを服用しており(特許WO2019/O73173参照)、朝および夕方に与えられた3cp~25mgの投与量で、最大の満足度でATTを使用したが、前記投与量はパーキンソン病を治療するのに不十分であることが判明した。血液-脳関門通過問題が疑われ、濃度変動を極力軽減するため(ヒトにおけるATTの血漿中半減期は約3時間)、1日当たり4回の投与量、すなわち4×6錠/日(600mg/日に相当)に分けることによって4回までこの投与量を増量することとした。
【0060】
結果:非常に目覚ましいことに、3日後には、振戦、嗅覚低下および便秘を除いて、すべての臨床症状が消失した。
【0061】
これらの最初の結果は、パーキンソン病に対するATTの有益な効果の概念の最初の証明となる。相関する方法で、これらは、ROS、特にミトコンドリアROSがパーキンソン病に関与するという仮説を確認する。
【0062】
- ステージ2:ATTとドキシサイクリンとの組合せの効果
症状:2019年4~5月に、患者が激しい作業を行ったときに異常な疲労が現れた。
【0063】
2019年7月に、重度の疲労の状況においてバランス問題が出現したことから、Sinemet(登録商標)の導入が正当化された;L-DOPAはバランスの喪失の問題を解決したが、手の振戦がわずかにのみ改善し、疲労が持続し、患者は歩行速度を速くすることが困難になり、便秘も持続した。小字症が出現した。
【0064】
治療:疲労の悪化に直面し、2019年12月19日、6時間ごとに50mgの投与量でドキシサイクリンを添加するという決定がなされ、この投与量はLCR中の安定な濃度を約0.9μM/L(Dotevall, 1989; Karlsson, 1996)、すなわち、Gonzalez-Lizzaraga(2017)が推奨する濃度の約3倍に保つことを意図したものであった。
【0065】
結果:5日後、患者の疲労問題は大幅に退行し、彼はなんとかより速いペースで歩行し、10日目に疲労感は消失し、患者の歩行ペースは実質的に正常に戻り、彼の手の振戦ももはやほとんど知覚できなかった。1か月の治療後、患者はほとんど背痛を経験せず、小字症は消失した。同時に、Sinemet(登録商標)の投与量を最初の週から20~25%、および今日(2月21日)に50~60%減少させることが可能であった。最後に、2020年1月15日より、用量が1日当たり3回投与[ATT25mgを8錠3回+ドキシサイクリン50mgを3回]に調整されているが、治療効果は失われていない。
【0066】
ATTの服用に関連する鼓腸を除いて、これらの2年間の治療中に重大な副作用が認められなかったことを追記することは重要である。患者の状態は安定している。
【0067】
要約すると:
ATT(150mg、1日4回)で13ヵ月間満足できる
新たな症状が発現し、7カ月間の失敗が続く(常に150mgのATT、1日4回)
ATT+DOX(1日当たりATT600mg+DOX150mg)で13ヵ月間満足できる。
【0068】
結論:ATTによる治療の失敗、そしてその後、ドキシサイクリンに頼った後に観察された回復は、中枢ドーパミン作動性ニューロンの死に至る過程で協働するこれら2つの標的(ROSおよびα-シヌクレインの毒性オリゴマー)のリアリティの最初の検証となる。したがって、この協働は、完全に効果的であり且つ経時的に持続可能であるために選択される療法が、これらの2つの標的のそれぞれに同時に向けられることを意味する。
【0069】
〔実施例2:ミクログリアの活性化に対するATXとドキシサイクリンとの組合せの効果〕
〔1-材料および方法〕
動物の使用のプロトコル:この研究のために用いたマウスは、2010年9月22日の欧州議会および理事会の指令2010/63/EUに従って飼育し、取り扱った。実験プロトコルは、動物実験倫理委員会(Charles Darwin no.5)によって承認された。
【0070】
ミクログリアの精製:Sepulveda-Diazら(Glia, 2016)によって記載され、その後dos-Santos-Pereiraら(Glia, 2020)によって改変されたプロトコルに従って、新生マウスC57BL/6J(Janvier LABS)の脳の機械的解離によって得られた細胞懸濁液から培養物を作製した。使用されるプロトコルは、欧州連合理事会の指令(2010/63/EU)に従う。使用されるプロトコルは、動物実験倫理委員会(Charles Darwin no.5)によって承認された。ポリカチオン、ホウ酸緩衝液pH8.3で希釈したポリエチレンイミン(PEI;1mg/mL)でプレコートした75cm2のコーニング培養フラスコを、15~20日間の培養後にミクログリア細胞の自発的単離を得るために使用し、この単離は、他の細胞集団、特に星状細胞を犠牲にして行われた。フラスコ培養物を維持するために、10%ウシ胎児血清(FBS、Biowest LLC)および1%ペニシリン/ストレプトマイシンカクテルを補充したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)を使用した(Sepulveda-Diazらの出版物に記載されている実験の詳細を参照されたい)。ミクログリア精製工程の後、培養フラスコに付着しているミクログリアをトリプシン処理して、48ウェルマルチウェルNuncプレート中で継代培養物を作製した。これらの培養物を、20mMのHEPESおよび1%のFBSを補充したDMEMの存在下で維持した。
【0071】
培養過程パラダイム:ミクログリアの刺激は、2つの基準炎症誘引物質、LPS(10ng/mL)、Toll様受容体(TLR)4アゴニスト(Dos-Santos-Pereira et al, 2020)またはPAM3CSK4(1μg/mL)、TLR2アゴニスト(Acuna et al, Cells, 2019)を用いた24時間の処理によって得られた。基準抗炎症剤として用いた4-ヒドロキシ-アネトールトリチオン(ATX)、ドキシサイクリン(DOX)およびデキサメタゾン(DEX;2.5μM)を、炎症誘引物質によるミクログリア細胞の活性化を誘発する4時間前に添加した。ATXの原液はDMSO中25mMであり、DOXの原液は蒸留水中10mMであった。ミクログリア細胞に対するDOXの抗炎症効果のメカニズムは、Santa-Ceciliaらによって以前に報告された(Neurotox Res, 2016)。
【0072】
TNF-αレベルの評価:炎症誘引物質による刺激が開始されてから24時間後に回収されたミクログリアの培養培地を、次いで分析まで-20℃で凍結させた。TNF-αを、ThermoFisher(BMS607-3TWO)からのELISAキットを用いて、供給者の指示に従って検出した(dos-Santos-Pereira et al, Glia, 2020)。各試料の吸光度を、SpectraMax i3Xを用いて450nmで測定した。
【0073】
統計解析:実験データを、GraphPad Prism 8.3.1ソフトウェアを用いて、一元配置分散分析試験を適用し、続いて、Student Newman Keuls事後検定を適用することによって解析した。
【0074】
〔2-結果〕
in vitroで活性化されたミクログリアの培養物における炎症に対するATXとドキシサイクリンとの組合せの効果を、それぞれの分子の効果と個々に比較した。ミクログリアの活性化は、2つの異なる実験モデルにおいて試験され、前記活性化はLPSまたはPAM3CSK4のいずれかによって模倣される。
【0075】
LPSによって活性化されたミクログリアで得られた結果を
図3に示し、PAM3CSK4によって活性化されたミクログリアで得られた結果を
図4に示す。
【0076】
ATX単独が炎症マーカーであるTNF-αの放出を阻害できることが観察された(
図3Aおよび4A)。ドキシサイクリン(DOX)単独でも炎症の減少を誘導した(
図3Bおよび4B)。非常に興味深いことに、ATX+DOXの組合せは、別々に試験した分子のそれぞれで得られたものと比較して、TNF-αの放出の阻害を改善した(
図3Cおよび4C)。
【0077】
〔3-結果の考察〕
疾患の神経炎症性成分の再現を可能にする細胞モデル(Sepulveda-Diaz et al, 2016)において、ATXは、基準炎症誘引物質、リポ多糖(LPS)またはPAM3CSK4、TLR-4受容体およびTLR-2受容体のアゴニストのそれぞれ、に対して、(活性化パラダイムに応じて、10μMまたは30μMで)強力な抗炎症効果を発揮したことがここで示されている。同じ実験パラダイムにおいて、DOXは、50~100μMにおいて抗炎症効果を発揮した。ATXとDOXとの異なる組合せを試験することにより、それらのいくつかは、厳密に言えば、古典的に定義付けされているような相乗効果をもたらすことなく、別々に試験された各化合物によって生じるものよりもより強力な抗炎症効果の起源にあることを示すことが可能であった。
【0078】
しかし、使用した濃度に基づいて観察された応答が直線的でなく、ATXまたはDOXであるかどうかにかかわらず、濃度が増加するにつれて効果が減少する場合(例えば、LPSモデルにおいて:100μMがTNFαの放出を約70%阻害した場合に、50μMのDOXはTNFαの放出を50%阻害した;同様に、30μMのATXは、10μM後に観察されたTNFαの放出を3倍低下させず、むしろ15~20%しか低下させなかった)、本明細書中で所望の相乗効果を実証することは困難であるように思われる;しかし、この文脈において、LPSモデルにおいても、2つのドキシサイクリン治療群、DOX50およびDOX100のそれぞれに、同じ濃度の10μMのATXを添加するという単なる事実が、それ単独で使用したドキシサイクリンを用いて観察される利益を増やしたことが観察された(
図3B参照)。PAM3CSK4モデルでも同じ事実が見出された(
図4参照)。本発明者にとって、この現象は、組合せの相乗的ポテンシャルの発現であり、LPSモデルにおいて、10μMのATX+100μMのDOXが基準デキサメタゾンとほぼ同じであるという事実によって補強される判断である。
【0079】
〔実施例3:α‐シヌクレインの凝集に及ぼすATXの効果〕
〔1-材料および方法〕
α-シヌクレインの調製:ヒト組換えα-シヌクレインを、タンパク質のコード配列を含むプラスミドpT7-7を保有する大腸菌株から産生させた(Kaylor et al, J Mol Biol, 2005; Gonzalez-Lizarraga et al, Sci Rep, 2020)。精製工程後、変性条件下でのポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)によって、タンパク質の純度を評価した。α-シヌクレインのストック溶液を、20mMのHEPESおよび150mMのNaClを含む緩衝液中、pH7.4で調製した。凝集プロトコルを開始する前に、微小凝集体を除去するために、タンパク質を12000gで30分間遠心分離した。タンパク質濃度を、Nanodrop 8000分光光度計を用いて280nmで測定した(Gonzalez-Lizarraga et al, Sci Rep, 2020)。
【0080】
ex vitroでのα-シヌクレインの凝集:凝集プロトコルを、以前の研究(Kaylor et al,J Mol Biol, 2005; Gonzalez-Lizarraga et al, Sci Rep, 2020)から選択した。簡単に述べると、α-シヌクレインの凝集を、pH7.4の20mMのHEPESおよび150mMのNaCl中に可溶化された組換えタンパク質(70μM)を、37℃で96時間、軌道振盪(600rpm; Thermomixer Comfort; Eppendorf)することによって得た。ジメチルホルムアミド(DMF)を使用して、この実験プロトコルにおいてATXを希釈した。凝集体構造の形成を、チオフラビン-T(ThT)試験の手法によってモニターした(LeVine et al, Meth Enzymol, 1999)。
【0081】
〔2-結果〕
α-シヌクレインの凝集を防止するATX+DOXの組合せの能力を、単独で試験した各分子の効果と比較して評価した。
【0082】
ex vitroモデルで得られた結果を
図5に示す。
【0083】
図5Aで確認されるように、DOXはこの凝集を阻害することができることが観察された。
【0084】
予想外に、ATXもこの特性を有する。さらに、ATXによる阻害は、低濃度でも効果的である(
図5B)。
【0085】
ATX+DOXの組合せは、このモデルにおいて阻害の利点を改善することができなかった。しかし、異なる代謝経路を経由して作用する2つの分子を組み合わせることは、機能不全メカニズムを予防するために特に有望である。
【0086】
ATXがミクログリアの炎症およびα-シヌクレインの凝集の両方に対して阻害効果を有することが実証されていることは、特にドキシサイクリンなどのα-シヌクレイン阻害剤と組み合わせたパーキンソン病の治療におけるその使用にとって非常に有望な結果である。
【0087】
〔3-結果の考察〕
この実験研究は、タンパク質の単量体形態のアミロイド凝集が軌道振盪によって得られたex vitro試験(Gonzalez-Lizarraga et al, 2017)において、ATX分子がヒト組換えα-シヌクレイン(αS)の凝集を効果的かつ濃度依存的に阻害し得ることを実証することを可能にした。しかしながら、1~50μMの間で観察可能なATXの阻害効果は、10μM(すなわち、それ自体の抗凝集効果を欠く濃度)で使用されたDOXによって増幅されず、2つの分子の作用メカニズムが基本的に異なること:DOXはα-シヌクレインの可溶性単量体-四量体形態を安定化する一方、ATTはα-シヌクレインの将来をその凝集した「毒性オリゴマー」形態に向けて方向転換することに関与するミトコンドリアROSの過剰産生を阻止すること、を想起させる間接的な方法である。
【0088】
〔実施例4:透過型電子顕微鏡法によって可視化したATX化合物のα-シヌクレインの抗凝集効果〕
〔1-材料および方法〕
透過型電子顕微鏡法:目的の処理の任意の存在下で振盪したα-シヌクレイン試料を、透過型電子顕微鏡法によって特徴付けた。各溶液の50μlのアリコートをこの分析に使用した。試料調製プロトコルは、Gonzalez-Lizarragaら(2020)によって詳細に記載されている。画像は、透過型電子顕微鏡、Philips EM 301を用いて得た。
【0089】
〔2-結果〕
結果を
図6に示す。これらの画像から、ATX(10μM)はα-シヌクレインのアミロイド凝集を効果的に減少させる一方、DOXはこの同じ濃度では効果がないことが確認される。10μMのATXによって生成される効果に匹敵する効果が、100μMのDOXを用いて得られた(Gonzalez-Lizarraga et al, 2020)。2つの分子の協調的効果は、この実験では実証できなかった。
【0090】
〔実施例5:低ノイズの自然発生的酸化ストレスを受けた培養中のドーパミン作動性ニューロンに対するATTの神経保護効果、ATTは単独、またはドキシサイクリンと併用である。〕
〔1-材料および方法〕
中脳培養物およびチロシンヒドロキシラーゼ(TH)の免疫検出:マウス中脳培養物を、Troadecら(2001)によって最初に記載され、その後、Rousseauら(2013)によって取り上げられたプロトコルに基づいて作製した。培養物は、妊娠13.5日目に妊娠した母親から取り出したスイスマウス胚(Janvier LABS、Le Genest-St Isles)から作製した。中脳から解離した細胞を、10%ウシ胎児血清(Biowest LLC、Les Ulis、France)を補充した500μlのDMEM/HamF12培地を含む48ウェルプレート中で培養した。約80~100 103個の細胞を最初に各培養ウェルに添加した。1時間後、最初の培地を、20μg/mLのインスリンを補充したDMEM/HamF12培地と交換した。培養培地(350μl)および処理を、in vitroで1日目および3日目に更新した。培養物を、結合および分析の前に合計7日間維持した。DMEM/HamF12培地中の微量Fe(II)サルフェート(1.5μM)の存在は、中脳培養物中のドーパミン作動性ニューロンの進行性消失を引き起こす低ノイズの自然発生的酸化ストレスを誘発するのに十分であった(Rousseau et al, 2013)。基準培養物を150μg/mLのアポトランスフェリン(APO;T-1428、Sigma Aldrich)で処理した。チロシンヒドロキシラーゼの免疫検出を、マウス抗チロシンヒドロキシラーゼ抗体(Immunostar #22941)を用いて実施し、その存在はAlexa-Fluor 555で標識した2sd抗マウス抗体を用いて明らかにした。TH+ニューロンを、以前に記載されたプロトコル(Rousseau et al, 2013)に従ってカウントした。カウントは、アポトランスフェリンで処理した対照培養物で得られた値の%として表される。
【0091】
統計解析:実験データは、平均±標準偏差値に対応する。各実験点についての個々の値(n)は、少なくとも2つの独立した実験から得られる。データはGraphPad Prism 8.3.1ソフトウェアまたはSigmaplot 12.5ソフトウェアを用いて、一元配置分散分析を用いて分析し、その後、Student Newman Keuls事後検定を行った。
【0092】
【0093】
アポトランスフェリンによる処理は、基準保護処理を表す。処理の非存在下では、THで免疫標識されたニューロンが培養物から実質的に消失したことに留意されたい。蛍光画像は、反転されたフォーマットで提示される。
【0094】
図7はATTの保護効果を示しており、DOXおよびアポトランスフェリンの保護効果よりも優れていると思われる。
【0095】
図8は、2つの濃度のATTの効果、2つの濃度のDOXの効果、およびそれらの組合せの結果を比較したものである。ATTについては、試験した2つの濃度は0.75μMおよび3μMであり、3μMの濃度は基準処理(この場合はアポトランスフェリン)に匹敵する保護効果を示したが、0.75μMではほとんど効果を示さなかった(APOの保護の0.6%に等しい保護)。DOXに関しても、2つの濃度、7.5μMおよび10μM、について試験したが、10μMの濃度で最大効果が観察された一方、7.5μMではDOXの保護効果はアポトランスフェリンの保護効果の27%にしか達しなかった。非常に興味深いことに、0.75μMのATTと7.5μMのDOXとの組合せは、APOの保護と同等の保護を提供し、これは2つの分子の相乗効果を明らかに実証する。
【0096】
〔3-結果の考察〕
ATXの神経保護能力は、ここでは、DOXも保護的であるドーパミン作動性神経変性の細胞モデルにおいて実証される(
図7および8を参照されたい)。DOXとATXとの異なる組合せの評価は、ほとんどまたは全く効果がない各化合物の濃度を用いて進行中であるが、提示された最初の一連の実験データは、特にATX(0.75μM)+DOX(7.5μM)の組合せについて、協調的効果を明確に実証している(
図8)。
【0097】
〔結論〕
このATT+DOXの組合せがこの悪循環を断ち切ることができるのは、異なる相補的な作用メカニズムの結果であることを強調することは重要である。当該悪循環は、自己持続性でありかつ最終的にはニューロンの変性につながり、ここでは以下の一連の事象が疾患の影響下で連続的に結び付く:
・ 自己凝集し、毒性オリゴマーを形成する可溶性α-シヌクレイン、
・ ミトコンドリアの外膜に付着し、その機能不全を引き起こし、事実上の電子的漏出およびROSの過剰産生を誘発する、これらの毒性オリゴマー、
・ 最後に、循環を閉じる、未変性の可溶性形態から毒性凝集形態へとα-シヌクレインの産生を方向転換させるROSの過剰産生、
・ そして、同時に、このシステムは、シード効果を介して細胞から細胞へと段階的に広がる(
図1を参照されたい)。
【0098】
本特許において報告した症例によって非常によく示されているように、前記疾患が繁栄することを可能にするこの負の循環を破ることによって、ATT-DOXの組合せは、単剤療法の選択によって患者がさらされる治療失敗のリスクから患者を保護する;問題の患者は、ATT-DOXの組合せによる治療に入って14ヶ月であり、現在のところ全てが患者にとってうまくいっていることに留意されたい。
【0099】
最後に、非常に興味深いことに、本研究では、ATXの抗凝集効果を透過型電子顕微鏡法によって確認した。
【0100】
〔展望-実験プロジェクトの継続〕
プロジェクトの残りの部分は、ATT-DOX治療が、L-DOPAによって誘発される運動障害を阻害できることを検証することにある。第一段階は、L-DOPAによって誘発される運動障害のモデルを確立して、それ単独で、またはDOXと同時に投与されるATTの抗運動障害効果を試験することである。DOXは、抗運動障害の基準分子として使用される(Bortolanza et al, 2020)。ATXが、DOXと同様に、抗運動障害効果を発揮するかどうか、およびDOX/ATXの組合せが動物の行動を協調的な方法で改善するかどうかを決定することが論点となるであろう。使用される運動障害のげっ歯類モデルは、「内側前脳束」レベルでの6-ヒドロキシドーパミンの定位注入によって黒質の片側性病変を誘発し、それによって黒質において90%を超えるドーパミン作動性ニューロン消失が生じ、同側背側線条体におけるほぼ完全なドーパミン枯渇を引き起こすことにある。ニューロンの消失の程度は、アポモルヒネ回転試験によって確認され、損傷ラットは、この試験に対する動物の応答に従って、異なる実験群に均等に分配される。病変の2週間後(14日目)、L-DOPAおよびベンセラジドHCl(末梢DOPAデカルボキシラーゼ阻害剤)による毎日の処理によって、損傷ラットを運動障害にする。これらの処理は、2週間の期間にわたって実施される。L-DOPA処理の開始の10日後(24日目)に、目的の化合物(DOX、ATT)を単独で、または組み合わせて投与し、これらの動物における異常な運動またはAIMS(異常不随意運動)を、文献(Dos-Santos Pereira et al, 2021; Bortolanza et al, 2020)において体系化され、詳細に記載されたプロトコルに従って評価する。最後に、目的の化合物がL-DOPAの期待される運動効果を妨害しないかどうかを決定するために、動物を試験する。この目的のために、水平挙動、常同症および立ち上がり行動を、自動ビデオ監視システムを使用して、目的の治療の任意の存在下で、L-DOPA下で測定する。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【
図1】パーキンソン病に関与する2つの経路の阻害を組み合わせた、本発明の主題である治療アプローチのグラフィック表現;これらの経路は、ミトコンドリアROSおよびシナプス前終末に存在するα-シヌクレイン由来の毒性オリゴマーを組み合わせ、かつ自己持続性である悪循環を作り出す。ESK El Sayed, 2018およびRM Meade, 2019による。
【
図2】パーキンソン病におけるニューロンレベルで観察された細胞死メカニズムの模式図;Bortolanza, 2018; El Sayed, 2018; Guo, 2018; Liu, 2018; Mead, 2019; Santa Cecilia, 2019による。(略語:ETC-電子輸送鎖;MMP-マトリックスメタロプロテイナーゼ;mPTP-ミトコンドリア透過性遷移孔;mtDNA-ミトコンドリアDNA;ROS-活性酸素種)。
【
図3】LPSで活性化された培養物中のミクログリアに対するATX、DOX、またはATX+DOXを用いた治療の影響-A-LPSによって活性化された培養物中のミクログリアに対するATXの抗炎症効果。ATX(1~30μM)またはDEX(2.5μM)の存在下または非存在下で、LPS(10ng/mL)に24時間曝露されたミクログリアの培養物におけるTNF-αの放出のELISA試験の手法による測定。データは、炎症誘引物質(inflammogen)の単独存在下における測定値の%として表される平均±標準偏差値を表す(n=3~7ウェル/条件)。
****p<0.0001 対 対照;
##p<0.01、
####p<0.0001 対 LPS。B-LPSによって活性化された培養物中のミクログリアに対するDOXの抗炎症効果。DOX(10~100μM)またはDEX(2.5μM)の存在下または非存在下で、LPS(10ng/mL)に24時間曝露されたミクログリアの培養物におけるTNF-αの放出のELISA試験の手法による測定。データは、炎症誘引物質の単独存在下における測定値の%として表される平均±標準偏差値を表す(n=3~9ウェル/条件)。
****p<0.0001 対 対照;####p<0.0001 対 LPS。C-LPSによって活性化された培養物中のミクログリアに対するATX+DOXを組み合わせた治療の抗炎症効果。ATX(10μM)、DOX(50、100μM)、2つの併用治療(ATX+DOX)またはDEX(2.5μM)の存在下または非存在下で、LPS(10ng/mL)に24時間曝露されたミクログリアの培養物におけるTNF-αの放出のELISA試験の手法による測定。データは、炎症誘引物質の単独存在下における測定値の%として表される平均±標準偏差値を表す(n=5~13ウェル/条件)。
****p<0.0001 対 対照;###p<0.001、####p<0.0001 対 LPS;&&p<0.01 対 ATXまたはDOX単独。
【
図4】PAM3CSK4で活性化された培養物中のミクログリアに対するATX、DOX、またはATX+DOXを用いた治療の影響-A-PAM3CSK4によって活性化された培養物中のミクログリアに対するATXの抗炎症効果。ATX(5~30μM)またはDEX(2.5μM)の存在下または非存在下で、PAM3CSK4(1μg/mL)に24時間曝露されたミクログリアの培養物におけるTNF-αの放出のELISA試験の手法による測定。データは、炎症誘引物質の単独存在下における測定値の%として表される平均±標準偏差値を表す(n=4~12ウェル/条件)。
****p<0.0001 対 対照;#p<0.05、####p<0.0001 対 PAM3CSK4。B-PAM3CSK4によって活性化された培養物中のミクログリアに対するDOXの抗炎症効果。DOX(10~100μM)またはDEX(2.5μM)の存在下または非存在下で、PAM3CSK4(1μg/mL)に24時間曝露したミクログリアの培養物におけるTNF-αの放出のELISA試験の手法による測定。データは、炎症誘引物質の単独存在下における測定値の%として表される平均±標準偏差値を表す(n=4~8ウェル/条件)。
****p<0.0001 対 対照;#p<0.05、###p<0.001、####p<0.0001 対 PAM3CSK4。C-PAM3CSK4によって活性化された培養物中のミクログリアに対するATX+DOXを組み合わせた治療の抗炎症効果。ATX(5μM)、DOX(50、100μM)、および2つの併用治療またはDEX(2.5μM)の存在下または非存在下で、PAM3CSK4(1μg/mL)に24時間曝露されたミクログリアの培養物におけるTNF-αの放出のELISA試験の手法による測定。データは、炎症誘引物質の単独存在下における測定値の%として表される平均±標準偏差値を表す(n=4~12ウェル/条件)。
****p<0.0001 対 対照;#p<0.05、##p<0.01、####p<0.0001 対 LPS;&p<0.05 対 ATXまたはDOX単独。
【
図5】α-シヌクレインのアミロイド凝集に対する、ATX、DOX、またはATX+DOXの阻害効果-A-α-シヌクレインのアミロイド凝集に対するDOXおよびDMFの効果。単量体α-シヌクレイン(αSm)がDOX(100μM)またはDMF(1%)の存在下または非存在下で振盪される条件(600rpm、37℃、96時間)下で、ThTによって放出される蛍光の強度。振盪されないαSmとの比較。実験データは、単量体が処理なしで単独で振盪される状態下で得られた値の%での平均値±標準偏差を表す(n=6~8測定/条件)。
****p<0.0001 対 対照;####p<0.0001 対 振盪αSm。B-α-シヌクレインのアミロイド凝集に対する、場合によりDOXと組み合わせたATXの効果。単量体α-シヌクレインがDOX(10μM)またはATX(1、10または100μM)の存在下または非存在下で振盪される条件(600rpm、37℃、96時間)下で、ThTによって放出される蛍光の強度。実験データは、単量体が処理なしで単独で振盪される状態下で得られた値の%での平均±標準偏差を表す(n=6~8測定/条件)。
**p<0.01、
****p<0.0001 対 振盪αS。
【
図6】ATX化合物の抗凝集効果を示す透過型電子顕微鏡検査。ATX(10μM;αS:ATX)、DOX(10μM;αS:DOX)、または組み合わせられた2つの処理(αS:DOX:ATX)の存在下で産生されたα-シヌクレイン凝集体の画像。スケールバー:1μm(4,000X)および500nm(10,000X)。
【
図7】低ノイズの自然発生的酸化ストレスを受けたドーパミン作動性ニューロンに対するATXの神経保護能力。7日齢の中脳培養物におけるATX(3μM)、DOX(D-3447、Sigma Adrich;10μM)またはアポトランスフェリン(APO;T-1428、Sigma Adrich;150μg/mL)の神経保護効果を説明する図。
【
図8】低ノイズの自然発生的慢性酸化ストレスを受けた培養物におけるドーパミン作動性ニューロンに対するATXおよびDOXの協調的神経保護効果。アポトランスフェリン(APO;150μg/mL)、ATX(0.75μM;3μM)、DOX(7.5μM;10μM)またはATX(0.75μM)+DOX(7.5μM)の組合せで7日間、任意に処理した、中脳培養物中のドーパミン作動性ニューロンの生存。実験データは、アポトランスフェリンの存在下で得られた値の%での平均±標準偏差値を表す(n=4~13ウェル/状態)。
***p<0.001 対 対照;
###p<0.001 対 単独で適用された同濃度のATXまたはDOX。
【国際調査報告】