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特表2023-513406ポイント・オブ・ケアマイクロ流体インビトロ診断システム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-30
(54)【発明の名称】ポイント・オブ・ケアマイクロ流体インビトロ診断システム
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/08 20060101AFI20230323BHJP
   G01N 37/00 20060101ALI20230323BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20230323BHJP
   C12Q 1/686 20180101ALI20230323BHJP
   C12Q 1/70 20060101ALN20230323BHJP
   C12Q 1/6888 20180101ALN20230323BHJP
【FI】
G01N35/08 A
G01N37/00 101
C12M1/00 A
C12Q1/686 Z
C12Q1/70
C12Q1/6888 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022573803
(86)(22)【出願日】2021-02-10
(85)【翻訳文提出日】2022-10-07
(86)【国際出願番号】 IB2021051046
(87)【国際公開番号】W WO2021161171
(87)【国際公開日】2021-08-19
(31)【優先権主張番号】62/972,119
(32)【優先日】2020-02-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.JAVA
2.PYTHON
(71)【出願人】
【識別番号】522319734
【氏名又は名称】エマージング バイラル ダイアグノスティクス(ホンコン)リミテッド
【氏名又は名称原語表記】EMERGING VIRAL DIAGNOSTICS(HK)LIMITED
【住所又は居所原語表記】UNITS 1708-1710,17/F,PROSPERITY CENTER 25 CHONG YIP STREET,KWUN TONG,KOWLOON HONG KONG(CN)
(74)【代理人】
【識別番号】100116687
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 爾
(74)【代理人】
【識別番号】100098383
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100155860
【弁理士】
【氏名又は名称】藤松 正雄
(72)【発明者】
【氏名】ラウ,ロ ティン
(72)【発明者】
【氏名】チュウ,ル ヘイ
(72)【発明者】
【氏名】ツァン,ユ ルン
(72)【発明者】
【氏名】ラウ,ジョンソン イウ-ナム
【テーマコード(参考)】
2G058
4B029
4B063
【Fターム(参考)】
2G058DA07
4B029AA23
4B029BB13
4B063QA01
4B063QA19
4B063QQ10
4B063QQ42
4B063QQ52
4B063QR08
4B063QR42
4B063QR55
4B063QR62
4B063QS25
4B063QX01
(57)【要約】
1回の実行で複数の異なる分析物を検出するための完全自動化マイクロ流体システム(100)は、リモートコンピュータシステム(102)と、照明源および検出モジュールを有するマイクロ流体分析器(300)と、複数の電球(224)、試料タンク(204)および少なくとも1つの試薬タンク(210)を有するカートリッジ(200)と、を備え、各電球(224)は、マイクロ流体分析器(300)によって密封可能である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1回の実行で複数の異なる分析物を検出するための完全自動化マイクロ流体システムであって、
リモートコンピュータシステムと、
前記リモートコンピュータシステムと接続されたマイクロ流体分析器であって、照明源および検出モジュールを有する、マイクロ流体分析器と、
複数の電球、試料タンクおよび少なくとも1つの試薬タンクを有する、カートリッジであって、各電球が前記マイクロ流体分析器によって密封可能である、カートリッジと、を備える、完全自動化マイクロ流体システム。
【請求項2】
前記検出モジュールがカメラを含む、請求項1に記載の完全自動化マイクロ流体システム。
【請求項3】
前記カートリッジが最大40個の呼吸器病原体を保持するための空間を含む、請求項1に記載の完全自動化マイクロ流体システム。
【請求項4】
前記リモートコンピュータシステムが約1時間で前記分析を完了する、請求項3に記載の完全自動化マイクロ流体システム。
【請求項5】
約1時間での1回の実行で40個の異なる分析物を検出するための完全自動化マイクロ流体システムであって、
リモートコンピュータシステムと、
前記リモートコンピュータシステムと接続されたマイクロ流体分析器であって、照明源および検出モジュールを有する、マイクロ流体分析器と、
複数の電球、試料タンクおよび少なくとも1つの試薬タンクを有する、カートリッジと、を備える、完全自動化マイクロ流体システム。
【請求項6】
前記検出モジュールがカメラを含む、請求項5に記載の完全自動化マイクロ流体システム。
【請求項7】
前記カートリッジが最大40個の呼吸器病原体を保持するための空間を含む、請求項5に記載の完全自動化マイクロ流体システム。
【請求項8】
前記リモートコンピュータシステムが約1時間で前記分析を完了する、請求項7に記載の完全自動化マイクロ流体システム。
【請求項9】
異なる生物学的内容を有する複数の分析物を検出するための実質的に自動化されたマイクロ流体システムであって、
リモートコンピュータシステムと、
前記リモートコンピュータシステムと接続されたマイクロ流体分析器であって、照明源および検出モジュールを有する、マイクロ流体分析器と、
複数の電球、試料タンクおよび少なくとも1つの試薬タンクを有する、カートリッジであって、各電球が前記マイクロ流体分析器によって密封可能である、カートリッジと、を備え、かつ前記リモートコンピュータシステムが、前記カートリッジに関連付けられた前記複数の分析物を、前記分析物のすべてが処理されている間に分析する、マイクロ流体システム。
【請求項10】
前記検出モジュールがカメラを含む、請求項9に記載の完全自動化マイクロ流体システム。
【請求項11】
前記カートリッジが最大40個の呼吸器病原体を保持するための空間を含む、請求項9に記載の完全自動化マイクロ流体システム。
【請求項12】
前記リモートコンピュータシステムが約1時間で前記分析を完了する、請求項9に記載の完全自動化マイクロ流体システム。
【請求項13】
請求項9に記載の複数の分析物を分析するための方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、分析物を検出するためのシステムおよび方法に関する。具体的には、本発明の態様は、様々な生物学的、化学的、または診断学的アッセイおよびそれらの方法で使用するためのマイクロ流体システムに関する。
【背景技術】
【0002】
歴史を通じて多種多様な重症呼吸器症候群からのパンデミックの脅威が世界に頻繁にもたらされている。例えば、香港では1957年の悪名高いH2N2アジアインフルエンザ、および1968年のH3N2香港インフルエンザがあり、どちらも数百万人の死者を出した。世界保健機関(WHO)によると、季節性インフルエンザ/流行は、世界中で約300~500万人の重症患者、約29万~65万人の呼吸器系の死亡をもたらすと推定されている。1918年型の(スペインインフルエンザのような)インフルエンザのパンデミックが今日起こった場合、世界中で1億8000万~3億6000万人の死者が出ると予測されている。香港における最近の2018/2019年冬のインフルエンザシーズンを別の例として挙げると、A(H1)型インフルエンザを主なウイルスとして14週間続いた。625例の重篤なインフルエンザの症例が記録され、ピーク時には357人が死亡し、1日に7人が死亡した。全体の死亡率は57%であり、特に65歳以上の死亡率は80%にも達した。
【0003】
1997年のH5N1亜型鳥インフルエンザ、2003年のSARS、2009年のH1N1(ブタインフルエンザ)パンデミック、2013年のH7N9、および最近のMERS-CoVを含むがこれらに限定されない、新しい伝染性のウイルス病原体が過去数十年間に出現しており、これらの病原体の死亡率は極めて高く、SARS CoVは15%を超え、H5N1は50%にまで達する。このような新たで伝染性の病原体は何千人もの人々を入院させ何百人もの死者を出している。
【0004】
一般的な上気道障害および下気道障害のような重度および比較的軽度の呼吸器感染症は、いずれも、発熱、咳、頭痛、体の痛み、鼻詰まりなどのインフルエンザ様の無差別な症状を呈しており、臨床検査なしでの異なる感染性病原体の鑑別診断を困難にしている。疑わしい症状の患者からの試料は、主に政府または病院の施設にある、分子検査施設を有する研究所に届ける必要がある。また、処置全体が完了するまでに数日かかることもある。現場の医師、特にウイルス検査能力を持たない可能性の高い民間の診療所や研究所での診療では、患者に必要なのは入院なのか隔離なのかの区別するのは困難である。それは、鑑別診断を行うのに必要な時間が長すぎるためである。このことは、臨床および公衆衛生システムに多大な影響と困難をもたらし、パンデミックにおける比較的軽度の呼吸器感染症例のほとんどで、不必要な社会不安を煽る可能性がある。
【発明の概要】
【0005】
上記の背景を考慮すると、時間およびアクセシビリティが鑑別診断の重要な要因となる。
【0006】
問題を緩和するために、本発明の態様は、シンプルさ、操作しやすさ、高速、手頃な価格および高感度という特徴を有し、かつ特定のインビトロ診断(IVD)デバイスを有するポイントオブケア(POC)診断ツールを提供する。このようなデバイスは、疑わしい患者の迅速な検査を可能にし、かつ伝染性ウイルスのうちのいずれか1つに感染しているかどうかを判断するために、診療所、研究所および公衆衛生施設を含む現場の医療ユニットのほとんどに配置され得る。本発明のPOC診断ツールは、地域における人々の間でのウイルスの拡散を制御するためのシステムをさらに提供する。
【0007】
本発明のさらなる態様は、様々な生物学的、化学的、または診断学的アッセイで使用するための、迅速で、正確で、多重で、低コストで、試料から結果への、高スループットの完全自動化システムを提供することである。
【0008】
本発明の別の態様は、アッセイ作業手順を、完全自動化を用いたワンストップソリューションに簡素化することである。これは、従来のアッセイに見られる複数の複雑な作業手順を組み合わせている。
【0009】
本発明のさらに別の態様は、完全自動化試験を提供し、かつ約1時間での1回の実行で最大40個の呼吸器病原体を検出することである。
【0010】
要約すると、本発明は、診断における以下の課題(i)包括的な多重化能力の欠如、(ii)流行している拡張された株の範囲の不足、(iii)局所的または地域的な重要度の低さ、(iv)設備およびアッセイにかかる高いコスト、(v)試料から結果への複雑な取り扱い、(iv)検出病原体の単位の識別能力の欠如(すなわち、定量的な結果ではなく定性的な結果のみを示すことが可能)を解決するのに役立つ。
【0011】
したがって、本発明の実施形態は、一態様では、1回の実行で複数の異なる分析物を検出するための完全自動化マイクロ流体システムであって、このシステムは、リモートコンピュータシステムと、照明源および検出モジュールを有するマイクロ流体分析器と、複数の電球、試料タンクおよび少なくとも1つの試薬タンクを有するカートリッジと、を備え、各電球がマイクロ流体分析器によって密封可能である。
【0012】
さらに別の態様では、約1時間での1回の実行で40個の異なる分析物を検出するための完全自動化マイクロ流体システムであって、このシステムは、リモートコンピュータシステムと、照明源および検出モジュールを有するマイクロ流体分析器と、複数の電球、試料タンクおよび少なくとも1つの試薬タンクを有するカートリッジと、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0013】
当業者は、図の要素は簡潔さおよび明確さのために示されており、すべての接続およびオプションが示されているわけではないことを理解し得る。例えば、商業的に実現可能な実施形態において有用または必要である、一般的であるがよく理解されている要素は、本開示のこうした様々な実施形態で障害物の少ない図を容易にするために、しばしば描写されない場合がある。特定の作用および/またはステップが特定の発生順序で記載または描写され得ることがさらに理解され得る一方で、当業者は、順序に関するそのような特異性が実際には必要とされないことを理解し得る。本明細書で使用される用語および表現は、特定の意味が別途本明細書に記載されている場合を除き、それぞれに対応する調査および研究領域に関して定義され得ることも理解され得る。
【0014】
図1】一実施形態によるアッセイシステムの例の概略図である。
図2】一実施形態によるカートリッジの例の概略図である。
図3】一実施形態によるカートリッジの例の概略上面図である。
図4】一実施形態によるカートリッジの複数の試薬タンクの例の概略底面図である。
図5】一実施形態によるカートリッジの試薬タンクインターフェースの例の概略図である。
図6】一実施形態によるカートリッジの試料ポートの例の概略図である。
図7】一実施形態によるカートリッジのバルブの例の概略図である。
図8】一実施形態によるカートリッジの抽出モジュールの例の概略図である。
図9a】一実施形態によるカートリッジの第1の計測チャンバの例の概略図である。
図9b】一実施形態によるカートリッジの第2の計測チャンバの例の概略図である。
図10】一実施形態によるカートリッジの逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)チャンバの例の概略図である。
図11】一実施形態によるカートリッジの電球定量ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)領域の例の概略図である。
図12】一実施形態によるカートリッジの電球の例の概略図である。
図13a】一実施形態による、密封前の図11のqPCR電球定量領域内の電球一列分の概略図である。
図13b】一実施形態による、密封後の図11のqPCR電球定量領域内の電球一列分の概略図である。
図14】一実施形態による、密封後の図11のqPCR電球定量領域内のすべての電球の概略図である。
図15a】一実施形態による、キャップが開位置にある試料装置の例の概略図である。
図15b】一実施形態による、キャップが閉位置にある図15aの試料装置の概略図である。
図15c】一実施形態による、図15aおよび図15bの試料装置をカートリッジに挿入する概略図である。
図16】一実施形態によるマイクロ流体分析器の例の概略図である。
図17】一実施形態によるマイクロ流体分析器の制御システムの例を示す図である。
図18】一実施形態による、マイクロ流体分析器における密封モジュールの例の断面図である。
図19】一実施形態による、リモートコンピュータシステムにおける制御アプリケーションの例示的なユーザインターフェースである。
図20】一実施形態によるアッセイのワークフローを示すフローチャートである。
図21】一実施形態による、カートリッジ内のアッセイのワークフローを示すフローチャートである。
図22a】一実施形態による電球の密封ステップを示す。
図22b】一実施形態による電球の密封ステップを示す。
図22c】一実施形態による電球の密封ステップを示す。
図22d】一実施形態による電球の密封ステップを示す。
図22e】一実施形態による電球の密封ステップを示す。
図23】一実施形態による、制御材料を用いたフルランにおける、全135個の電球のうちの45個の検出可能な電球の増幅曲線を示す。
図24】インフルエンザBウイルスを含有する20μlの臨床試料を用いたフルランにおける、全135個の電球のうちの45個の検出可能な電球の増幅曲線を示す。
図25】本発明のマイクロ流体システムが適用され得る分野を示すチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
実施形態は、本明細書の一部を形成し、実例として、実施され得る特定の例示的な実施形態を示す添付の図面を参照してより完全に説明され得る。これらの実例および例示的な実施形態は、本開示が1つ以上の実施形態の原理の例示であり、示されている実施形態のうちのいずれか1つを限定することを意図するものではないことを理解して提示されてもよい。実施形態は、多くの異なる形態で具現化されることができ、本明細書に記載の実施形態に限定されると解釈されるべきではなく、むしろ、これらの実施形態は、本明細書の開示が徹底した完全であるために記載され、本発明の開示の範囲を当業者に完全に伝達し得るように係る実施形態が提供される。とりわけ、本発明は、方法、システム、コンピュータ可読媒体、装置、またはデバイスとして具現化され得る。したがって、本発明は、完全にハードウェアの実施形態、完全にソフトウェアの実施形態、またはソフトウェアおよびハードウェアの態様を組み合わせた実施形態の形態をとり得る。したがって、以下の詳細な説明は、限定的な意味で理解されるべきではない。
【0016】
図1を参照すると、アッセイシステム100は、カートリッジ200、マイクロ流体分析器300、試料装置202、リモートコンピュータシステム102および通信ネットワーク104を備える。マイクロ流体分析器300は、アッセイを実行するためにカートリッジ200を受け入れるように構成されている。マイクロ流体分析器300は、WI-FIホットスポットまたは他のプロトコルを介してリモートコンピュータシステム102に無線でリンクして、マイクロ流体分析器300とリモートコンピュータシステム102との間の通信を可能にしてもよい。リモートコンピュータシステム102は、マイクロ流体分析器300とデータを交換し、ユーザが制御アプリケーションに向けたパラメータに従ってそれを制御し得る。一例では、ユーザは、制御アプリケーションを操作して、アッセイのための動作パラメータを入力してもよく、リモートコンピュータシステム102は、マイクロ流体分析器300に所定の動作を実行させるための(制御アプリケーションによって生じる、つまり引き起こされる)コマンド信号を生成してもよい。リモートコンピュータシステム102は、動作で収集されたデータに基づいた動作レポートを生成および作成してもよい。リモートコンピュータシステム102は、マイクロプロセッサ(図示せず)、およびマイクロプロセッサ(図示せず)に接続されたコンピュータ可読記憶媒体またはメモリ(図示せず)を含み得る。リモートコンピュータシステム102は、動作レポートを印刷するためにプリンタ106に接続してもよい。
【0017】
一実施形態では、動作レポートは、生物学的または診断学的アッセイ情報を含有してもよい。
【0018】
一実施形態では、アッセイシステム100はプリンタ106を含まないことがある。
【0019】
一実施形態では、マイクロ流体分析器300は、収集された試料を受け取るように構成されたインターフェースを含んでもよい。
【0020】
特定の例では、通信ネットワーク104は、WI-FIホットスポットネットワークを含まないことがある。リモートコンピュータシステム102は、任意の無線通信プロトコルおよび/または有線通信プロトコルを介してマイクロ流体分析器300と通信してもよい。
【0021】
一実施形態では、通信ネットワーク104は、ユニバーサルシリアルバス(USB)通信ネットワークである。
【0022】
場合によっては、リモートコンピュータシステム102は、クラウドサーバプラットフォーム(図示せず)と通信してもよい。例えば、通信チャネルを介して、WI-FI(例えば無線接続)を介して、または有線接続を介して、リモートコンピュータシステム102は、動作中に収集されたデータをクラウドサーバプラットフォームにアップロードしてもよい。クラウドサーバプラットフォームは、収集した生データをユーザが分析できるようにするために、分析ソフトウェアを実行してもよい。クラウドサーバプラットフォームはさらに、収集されたデータに基づいた動作レポートを生成および作成し得る。
【0023】
図2を参照すると、カートリッジ200はカートリッジベース202を含み、試料タンク204、溶解タンク206、溶解タンク206の上部に配置されたプラグ208、アッセイ操作のための試薬を受け入れるまたは含有するように構成された複数の試薬タンク210、および廃棄物収集タンク212がその中に配置されている。すべての液体の動きは、プラグの垂直方向の動きによって実現される(シリンジのように機能する)。
【0024】
図3を参照すると、カートリッジは、抽出モジュール214、RT-PCRチャンバ216、第1の計測チャンバ218a、第2の計測チャンバ218b、qPCR前タンク220、複数の電球224を含むqPCR電球定量領域222、複数のマイクロ流体バルブ226、カートリッジ200の構成要素のうちの少なくとも1つとの間で流体を誘導および移送するように構成された複数のマイクロ流体チャネル228をさらに備える。プラグ208の動きおよびバルブ226のオンオフを制御することにより、流体の動きの良好な制御を実現することができる。
【0025】
一実施形態では、カートリッジ200は、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリプロピレン(PP)、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、環状オレフィンコポリマー(COC)、シクロオレフィンポリマー(COP)、シリコーン、ウレタン樹脂、またはそれらの組み合わせを含み得るポリマーで作製される。
【0026】
一実施形態では、カートリッジ200は、射出成形から作製される。
【0027】
一実施形態では、シリカビーズまたはジルコニウムビーズ、またはそれらの両方は、溶解タンク206内に予め装填/予め被覆されている。
【0028】
一実施形態では、複数の試薬タンクは、溶解緩衝液、結合緩衝液、洗浄緩衝液、溶出緩衝液、およびマスターミックスのうちの少なくとも1つを受け入れ、保持するように構成される。
【0029】
一実施形態では、試薬タンク210は、溶解緩衝液を含有する溶解緩衝剤タンク210aと、結合緩衝液を含有する結合緩衝剤タンク210bと、2つの洗浄緩衝剤タンク210cおよび210dと、溶出緩衝剤タンク210eと、RT-PCRマスターミックスタンク210fと、リアルタイムPCRマスターミックスタンク210gとを備える。
【0030】
一実施形態では、試薬タンク210は、緩衝液およびマスターミックスを含むが、これらに限定されないすべての試薬とともに既にパッケージ化されている。
【0031】
図4を参照すると、一実施形態では、各試薬タンク200は、試薬タンク200の上部に配置されたカバーと、試薬タンク200の下部に配置されたホイル211であって、試薬タンク200に試薬が収容されるように構成されたホイル211と、をさらに備える。
【0032】
図5を参照すると、各試薬タンク200は、底部に配置された試薬タンクインターフェース230であって、試薬タンク210内の試薬がカートリッジ200内のマイクロ流体チャネル228およびチャンバに流れることを可能にするために、ホイル211と相互作用するように構成された試薬タンクインターフェース230をさらに含む。試薬タンクインターフェース230は、ホイル211を貫通するための少なくとも1つの押出機構232と、試薬が試薬タンク210からホイルの貫通孔を通って、突出チャネル234、およびカートリッジ200内のマイクロ流体チャネル228およびチャンバに流れることを可能にするように構成された突出チャネル234とを含む。プラグ208の移動を制御することによって、ホイル211は、アッセイ操作中に少なくとも1つの押出機構232に向かって移動する。
【0033】
図6を参照すると、試料タンク204は、試料ポート236をさらに含み、試料ポート236は、試料装置202の底部にシールを受けるように構成されたリング238と、シールを破るように構成された押し上げ240とを含む。リングは、試料の漏れを防止するために、試料装置202のシールと緊密に嵌合するように構成されている。押し上げ240はまた、試料がマイクロ流体チャネル228を通して、カートリッジ200内の他の構成要素に流入できるように構成されたチャネルを含む。
【0034】
図7を参照すると、カートリッジ200上に配置されたバルブ226は、バルブ226を閉じるように押されている。これらは、以下の動作モードで説明されているように、アッセイ操作中の流体の流れを制御するために、マイクロ流体チャネル228上に設置される。
【0035】
バルブは、制御的に流体経路を切り替えて選択する。これらは、アッセイ操作のためにカートリッジ200内の流体の流れを導くのに役立つ。
【0036】
図8を参照すると、抽出モジュール214は、核酸を捕捉するように構成されたケータ分離膜242を含む細長い涙滴形状のチャンバと、脱気器244と、細長い涙滴形状のチャンバの両端に配置された入口246aおよび出口246bとを備える。入口246aおよび出口246bは、どちらもマイクロ流体チャネルに接続されている。チャンバの長辺は、流体が抽出モジュール214を通過するときに気泡生成を低減することができる。ケータ分離膜242は、細長い涙滴形状のチャンバの最も広い部分に設置される。抽出モジュール214は、抽出のための試料を継続的に受け取り、ミリリットルの体積で試料を扱うように構成されている。本発明の抽出モジュール214は、したがって、より多くの試料/分析物が、アッセイのために、システムの感度を高めることができる。いくつかの実施例では、抽出モジュール214は、最大約1mlの試料を扱うことができる。
【0037】
一実施形態では、分離膜242は、粉砕ガラス粉末、ガラス繊維、シリカ膜、シリカビーズ、シリカ粒子、またはそれらの組み合わせを含み得る材料で作製される。
【0038】
図9aを参照すると、第1の計測チャンバ218aは、液体体積を計測するための規定された構造体積を有する細長いラウンドエッジ八角形チャンバを含む。この楕円形チャンバは、気泡トラップを防止するために入口250aの近くに配置された複数の流量制限器248をさらに含む。RT-PCRチャンバ216の入口に接続された出口250bは、入口250aの反対側の端部に配置されている。
【0039】
他の実施例では、液体体積を計測する規定された構造体積は10~50ulである。
【0040】
図9bを参照すると、第2の計測チャンバ218bは、液体体積を計測するための規定された構造体積を有する楕円形チャンバを含む。楕円形チャンバは、楕円形チャンバの両端に配置された複数の孔251をさらに有する。孔251は、マイクロ流体チャネルに接続されている。傾斜252は楕円形チャンバの両端に配置されており、この傾斜は、楕円形チャンバの底部から楕円形チャンバの最深部の約5分の3(3/5)まで徐々に上昇する。傾斜は気泡トラップを防止する。
【0041】
他の実施例では、傾斜は、楕円形チャンバの底部から楕円形チャンバの最深部の約3/4まで徐々に上昇する。
【0042】
他の実施例では、液体体積を計測する規定された構造体積は1~10ulである。
【0043】
図10を参照すると、RT-PCRチャンバ216は、PT-PCRの反応体積を制限するための規定された構造体積を有するU字形チャンバを含む。本チャンバは、U字形チャンバ、入口256aおよび出口256b上に実質的に等しく分布する複数の流量制限器254をさらに含む。入口256aおよび出口256bは、U字形チャンバの両端に配置されている。入口256aおよび出口256bは、マイクロ流体チャネルに接続されている。傾斜258はU字形チャンバの両端に配置されており、傾斜258は、U字形チャンバの底部からU字形チャンバの最深部の約2分の1(1/2)まで徐々に上昇する。
【0044】
他の実施例では、反応体積を制限するために規定された構造体積は、20~100ulである。
【0045】
一実施形態では、RT-PCRチャンバは射出成形型によって作製される。
【0046】
図11を参照すると、qPCR電球定量領域222は、マイクロ流体チャネルを介してqPCR前タンク220に接続されている。qPCR電球定量領域222はマイクロ流体チャネル260および複数の電球224を含み、各電球224が、それぞれの入口をマイクロ流体チャネル260に接続する。
【0047】
一実施形態では、マイクロ流体チャネル260に接続された120(120)個の電球224が存在する。
【0048】
図12を参照すると、電球224は、密封可能な入口マイクロ流体チャネル262、密封可能な入口マイクロ流体チャネル262に接続された電球楕円形チャンバ264、および逆さスペード形状チャンバ266を含み、逆さスペード形状チャンバ266の頭部/先端は、電球楕円形チャンバ264に接続されている。密封可能な入口マイクロ流体チャネル262は、密封可能な機能を提供するために、他のマイクロ流体チャネル228よりも浅い。電球楕円形チャンバ264の内面は、気泡トラップを防止するように丸い形状であり、電球楕円形チャンバ264の底面は、電球224の内側からの光信号の最大伝送を可能にするように研磨されている。逆さスペード形状チャンバ266は、逆さスペード形状チャンバ266内の圧力の蓄積を引き起こす、楕円形チャンバへの液体の流入による圧縮空気を保持するように構成されている。逆さスペード形状チャンバ266の形状は、コンパートメントを最大化し、かつPCR中の気泡の発生を防止するように設計されている。傾斜268は逆さスペード形状チャンバ266の入口に配置されており、傾斜268は、気泡トラップを低減するために、入口のマイクロ流体チャネルの底部から逆さスペード形状チャンバ266の底部まで徐々に低下する。
【0049】
各電球楕円形チャンバ264をプライマーおよびプローブでスポットしてから、乾燥プロセスを行う。テンプレートおよびマスターミックスが電球224に流れ込んだとき、スポットされた材料は再懸濁された。
【0050】
図13aおよび図13bを参照すると、各電球262の入口は、qPCR電球定量領域222内を通るマイクロ流体チャネルから密封および分離されてもよく、それによってqPCRは、分離された電球224内で実行されてもよい。図13aに示すような電球224は密封されていない構成であり、図13bに示すような電球224は密封された構成である。電球262の入口は、密封ライン270によって密封されている。したがって、電球224は互いに分離されてもよい。そのような個々の電球224におけるテンプレートは、割り当てられたプライマー/プローブにそれぞれ従って、単一のPCR増幅を受けることができる。
【0051】
図14を参照すると、qPCR電球定量領域222内の全列の電球が密封され得る。
【0052】
図15aを参照すると、試料装置202は、容器272、シール274、および容器の開口部を閉じるように構成されたキャップ276を含む。シール274は、容器内の試料が試料装置202から漏れるのを防止する。シール274は、上述のような方法で、試料ポート236によって開かれ得る。シール274は、軟質プラスチック、ゴム、シリコーン、熱可塑性エラストマー(TPE)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、熱可塑性ゴム(TPR)を含み得る材料で作製されてもよい。図15bは、キャップ276を有する試料装置202が容器272と結合されていることを示す。15cを参照すると、試料装置202は、試料ポート236に取り外し可能に取り付けられている。試料装置202は、試料を収集するために取り外され、アッセイのためにカートリッジ200の試料ポート236に戻して取り付けられ得る。痰、鼻咽頭綿棒および鼻咽頭吸引など様々な種類の試料は、試料装置202に移送され得る。
【0053】
図16を参照すると、マイクロ流体分析器300は、(i)電子/制御コンパートメントおよび操作コンパートメントを含むエンクロージャーと、(ii)操作コンパートメント内に配置された流体作動システムであって、カートリッジ上のマイクロ流体ネットワーク内の試料および試薬の移送を操作して生化学反応およびアッセイ操作を行うように構成された流体作動システムと、(iii)操作コンパートメント内に配置された細胞溶解システムであって、細胞を分解してDNAを損傷することなく放出するように構成された細胞溶解システムと、(iv)生化学反応を実行するために設計された熱的条件を提供するように構成された熱制御システムと、(v)照明源、および電球からの蛍光信号、例えば電球内のtaqManプローブによって生成された信号を検出するように構成された検出モジュール、を含んだ光学検出システムと、(vi)異なる電力をマイクロ流体分析器300の異なる構成要素に供給および分配するように構成された電源システムと、(vii)マイクロ流体分析器300の内部温度を安定させるように構成された換気システムと、(viii)マイクロ流体分析器300のステータスを監視し、異常な挙動が見られたときに異常を報告するように構成されたシステムセンサネットワークシステムと、(ix)カートリッジ200を密封して密閉システムを形成するように構成されたカートリッジ200密封モジュールと、(x)カートリッジ200を受け入れるように構成されたカートリッジ処理システムと、を備える。
【0054】
カートリッジ処理システムは、格納式トレイ302をさらに含み、格納式トレイ302は、カートリッジ200を受け入れるように構成されたカートリッジスロット304をさらに含む。伸長位置では、格納式トレイ302は、ユーザがカートリッジスロット304にカートリッジ200を装填することを可能にする。格納位置では、格納式トレイ302は、アッセイが実行され得る操作位置にカートリッジ200を配置する。またカートリッジ200は、qPCR電球定量領域222が照明源によって照射され、かつ電球224から発せられた信号が検出モジュールによって取り込まれる位置にある。
【0055】
一実施形態では、照明源は、約250nm(紫外線)~約880nm(赤外線)の範囲の光または電磁波を放射する。一例では、照明源は異なる設定に好適なフィルタに対応する。
【0056】
一実施形態では、検出モジュールはカメラである。
【0057】
図17を参照すると、マイクロ流体分析器300は、リモートコンピュータシステム102に接続するように構成された通信ポートに接続されたメインボードをさらに含む。メインボードはまた、アッセイを実行するためにマイクロ流体分析器300内のすべてのシステムに接続されている。メインボードは、マイクロプロセッサ(図示せず)と、およびマイクロプロセッサに接続されたコンピュータ可読記憶媒体またはメモリ(図示せず)とを含み得る。
【0058】
流体作動システムは、モータドライバボード、カートリッジのプラグ208を作動させるように構成されたプラグモータ、およびカートリッジ200上のバルブ226を作動させるように構成されたバルブモータをさらに含む。
【0059】
細胞溶解システムは、カートリッジ200の溶解タンク206と相互作用するように構成された超音波制御基板および超音波ホーンをさらに含む。
【0060】
熱制御システムは、熱制御基板と、TR-PCRおよびqPCR中にカートリッジ200内のテンプレートおよび試薬を加熱するように構成された熱電ヒータと、温度センサと、ファンとをさらに含む。場合によっては、熱電ヒータは、マイクロ流体分析器300内の操作位置にあるときにカートリッジ200の下方に配置されるヒートプレートである。
【0061】
電源システムは電源ユニットを含む。
【0062】
システムセンサネットワークシステムは、検出ユニットボード、位置決めモータ、およびリニアスキャナ読み出しを含む。
【0063】
図18を参照すると、マイクロ流体分析器300は、密封ワイヤを含んだ電球密封モジュール306をさらに含む。カートリッジ200がマイクロ流体分析器300内の操作位置にあるとき、密封ワイヤは、電球262の入口に近接する位置に配置される。密封ワイヤは、電球262の入口の材料を溶融させるための熱を生成し、それによって電球224の入口を密封するように構成されている。
【0064】
一実施形態では、密封ワイヤは加熱プレート上に配置される。いくつかの実施例では、密封ワイヤは、電球224の入口に近接する任意の位置に設置され得る。
【0065】
一実施形態では、高温剥離層は、カートリッジ200のプラスチック材料への粘着性接触を防止するために、密封ワイヤ上にコーティングされる。
【0066】
図19を参照すると、本発明の一実施形態による、リモートコンピュータシステム102における制御アプリケーションのユーザインターフェースを示す。これは、アッセイおよびそのカートリッジ処理システムの動作を含むがこれらに限定されない、マイクロ流体分析器300での動作を制御し得る。また、マイクロ流体カートリッジシステム100で実行され得る異なるアッセイ操作モードを提供する。場合によっては、ユーザインターフェースはグラフィックユーザインターフェース(GUI)である。
【0067】
図20を参照して、ここでアッセイ操作400の方法に着目する。まず試料収集ステップ402では、試料を収集し、試料装置202に装填する。次いで、試料挿入ステップ404では、試料装置202は、試料タンク204でカートリッジ200に挿入される。次いで、カートリッジ200は、カートリッジ装填ステップ406における伸長位置で、格納式トレイ302のカートリッジスロット304上に移される。アッセイステップ408は、リモートコンピュータシステムまたはマイクロ流体分析器のユーザインターフェースにおけるユーザの入力によって開始されてもよい。
【0068】
図21を参照すると、マイクロ流体分析器のマイクロコントローラは、アッセイステップ408において、カートリッジ内で以下の操作をもたらす。
【0069】
まず、溶解ステップでは、分析対象試料は溶解タンク206に装填される。次いで、溶解タンク206内の試料を、溶解試薬タンク210aからの溶解緩衝液と混合する。超音波ホーンをオンにして、試料中の分析物の表面構造を分解するための溶解タンク206内のシリカビーズを、核酸を放出しかつ溶解緩衝液中に懸濁させるように激しく撹拌する。
【0070】
分離ステップでは、結合試薬タンク210b内の結合緩衝液は、分離膜242への核酸の結合能力を増強するための溶解タンク206内に流入する。次に、混合物は、分離膜242が位置する抽出モジュール214を介して廃棄物収集タンク212に流れる。核酸は膜242によって捕捉されて膜242に結合する。
【0071】
洗浄緩衝剤タンク210cおよび洗浄緩衝剤タンク210dからそれぞれ分離膜242への洗浄緩衝液を使用する洗浄ステップ1および2に続いて、溶出ステップでは、溶出緩衝液を溶出緩衝液タンク210eから分離膜242へ流すことによって、核酸を溶出させる。
【0072】
RT-PCRマスターミックスタンク210fからのRT-PCRマスターミックスは溶出液とともに、第1段階のRT-PCRステップで逆転写(RT)および1回目のPCR増幅を受けるために、第1の計測チャンバ218aを通してRT-PCRチャンバ216に押し込まれる。
【0073】
RT-PCR内のアンプリコンは、希釈ステップで第2の計測チャンバ218bに押し込まれる。アンプリコンの希釈比は、計測チャンバ218のサイズに依存する。
【0074】
第2段階のqPCRステップでは、リアルタイムPCRマスターミックスタンク210g内のリアルタイムPCRマスターミックスが計測チャンバ218を通って流れ、qPCR前タンク220に到達する。このステップでは、2回目の増幅のために、希釈されたアンプリコンをPCRマスターミックスと混合する。qPCR前タンク220内の混合物は、120個の電球224に均等に等分されたqPCR電球定量領域222に装填される。各電球224は、(製造プロセスの1つであるスポッティングマシンを用いて)病原体のための単一の特異的なプライマー/プローブを含有する。装填後、電球224は密封される。
【0075】
図22a~eは、電球224を密封するプロセスを示す。まず、カートリッジ200がマイクロ流体分析器300に装填され、マイクロ流体分析器300の配置により、カートリッジ200をその中の操作位置に配置する。この位置で、密封ワイヤは、図21aに示すように、電球262の入口の底部に置かれている。アッセイを開始すると、図21bに示すように、テンプレートが電球224に流れ込み、テンプレートにそれを装填する。すべての電球が装填されるとすぐに、図21cに示すように、カートリッジ200が密封ワイヤに押し付けられる。同時に、電流が密封ワイヤに流れ始め、電球262の入口を溶かすための熱を生成し始め、それによって図21d~eに示すように電球224を密封する。さらに、カートリッジ200が密封ワイヤおよびヒートプレートに押し付けられているため、電球224は、この時点で、qPCRのための良好な熱サイクルを提供するヒートプレートと良好に接触している。
【0076】
熱サイクルが開始すると、検出モジュールがqPCR電球定量領域222を横切って移動し、各サイクルで電球224からの蛍光信号を拾い上げる。すなわち、定量リアルタイムPCRは光学検出ステップで実現され得る。
【0077】
一例では、1回の実行における総サイクル数は40である。
【0078】
蛍光は、所望の波長で照明源によって誘導され、検出モジュールによって捕捉される。
【0079】
次いでデータ取得ステップでは、画像またはスペクトルデータが、さらなるデータ分析のためにリモートコンピュータシステムに送信される。
【0080】
一実施形態では、検出モジュールは、その視野がqPCR電球定量領域222全体を覆う距離に配置される。検出モジュールは、qPCR電球定量領域222を横切って移動するのではなく、各サイクルで、すべての電球224からの蛍光信号を一度に拾い上げる。
【0081】
一実施形態では、所望の波長は約250nm(紫外線)~約880nm(赤外線)の範囲である。一例では、照明源は異なる設定に好適なフィルタに対応する。
【0082】
いくつかの実施例では、3つの電球224が、単一種類の病原体を検出するためのセットとして一緒に使用される。つまり、これら3つの電球224はすべて、病原体のための同じ特異的なプライマー/プローブを含有する。この設定では、約1時間続く1回の実行で40個の異なる病原体が検出され得る。
【0083】
いくつかの例では、1つの電球224が、単一種類の病原体を検出するために使用される。この設定では、約1時間続く1回の実行で120個の異なる病原体が検出され得る。
【0084】
1つの特定の実施形態において、アッセイシステムは、25個の異なるウイルスおよび12個の異なる細菌を一度に検出することができる。検出対象のウイルスおよび細菌は、表1のリストから選択される(新しく表を更新したので、注意のこと):
【表1】
【0085】
本発明のアッセイシステムの有用性を実証するために、制御材料は、試料装置202内に分配され、システム自体によってのみ自動的に処理される。図23は、卓上操作と一致するCt値を有する優れた増幅曲線を得たことを示す。上部曲線および下部曲線は、それぞれ、qPCRプロセスにおける各熱サイクルに対するFAM(プローブ)およびCy5(受動参照色素)の蛍光信号を表す。
【0086】
図24を参照すると、増幅曲線が、20μlの臨床試料を用いた実行用のカートリッジの各電球から得られる。臨床試料は、卓上手順により、インフルエンザBウイルスを含有することが確認された。この実験の詳細は、20μlのNPA試料を780μlのVTMに懸濁させたことである。NPA試料は、Flu-Bに感染したことが以前に確認された。S.PombeおよびB-Subプラスミドから抽出したRNAを、それぞれ、抽出および第1段階の増幅の対照として使用した。実行はかなりスムーズだった。Flu-B、GAPDHおよび他の3つの対照、すなわち、qPCR、SUC-1、およびB-subのプライマーおよびプローブを含有する電球から、識別可能に微細な形状の増幅曲線を得ることに成功した。一方、不規則にパターン化された信号が、病原体に非特異的なプライマーおよびプローブを含有する他の電球から得られた。この結果により、実際の臨床試料で病原体を検出するための完全自動化システムが実証された。
【0087】
図25は、本発明のアッセイシステムが適用され得る分野を示す。上記に開示される実施形態は、生物学的/診断学的アッセイに関連するが、本発明は、電球が適切なプローブでスポットされている限り、他の非生物学的分析物を検出するために使用され得る。このように、本発明は、異なる分野における分析物を検出するための、迅速で、正確で、多重で、低コストで、試料から結果への、完全自動化システムプラットフォームを提供する。
【0088】
例示的な実施形態は、示されるもの以外の追加のデバイスおよびネットワークを含んでもよい。さらに、1つのデバイスによって実行されていると説明された機能が、2つ以上のデバイスによって配布されかつ実行されてもよい。複数のデバイスを単一のデバイスに組み合わせることもでき、組み合わされたデバイスの機能を実行することができる。
【0089】
本明細書に記載される様々な参加者および要素は、本明細書に記載される機能を容易に実現するために1つ以上のコンピュータ装置を操作することができる。任意のサーバ、ユーザデバイス、またはデータベースを含む上述の図面の要素のうちのいずれかは、本明細書に記載の機能を容易に実現するために任意の好適な数のサブシステムを使用してもよい。
【0090】
本出願に記載されるソフトウェアコンポーネントまたは機能のいずれかは、例えば、従来のまたはオブジェクト指向の技術を使用した、例えば、Java、C++、またはPythonなどの任意の好適なコンピュータ言語を使用して、少なくとも1つのプロセッサによって実施され得るソフトウェアコードまたはコンピュータ可読命令として実行されてもよい。
【0091】
ソフトウェアコードは、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み取り専用メモリ(ROM)、ハードドライブもしくはフロッピーディスクなどの磁気媒体、またはCD-ROMなどの光学媒体などの非一時的コンピュータ可読媒体に一連の命令またはコマンドとして記憶され得る。任意のそのようなコンピュータ可読媒体は、単一の計算装置上に、または単一の計算装置内に存在してもよく、システムまたはネットワーク内の異なる計算装置上に、または異なる計算装置内に存在してもよい。
【0092】
上述のような本発明が、モジュール式または一体式でコンピュータソフトウェアを使用して制御ロジックの形態で実施され得ることが理解され得る。本明細書で提供される開示および教示に基づいて、当業者は、ハードウェア、ソフトウェア、またはハードウェアおよびソフトウェアの組み合わせを使用して本発明を実施するための他の方法および/または手段を知り得、理解し得る。
【0093】
上記の説明は例示であり、限定的ではない。実施形態の多くの変形は、本開示の見直しにより、当業者に明らかになり得る。したがって、範囲の実施形態は、上記の説明を参照して決定されるべきではなく、代わりに、それぞれの完全な範囲または等価物とともに、特許請求の範囲を参照して決定されるべきである。
【0094】
任意の実施形態からの1つ以上の特徴は、範囲の実施形から逸脱することなく、任意の他の実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせられ得る。「a」、「an」または「the」の記述は、特に反対のことが示されない限り、「1つ以上」を意味することが意図される。「および/または」の記述は、特に反対のことが示されない限り、この用語の最も包括的な意味を表すことが意図される。
【0095】
本システムの1つ以上の要素は、特定の機能を達成するための手段として請求され得る。そのような手段追加機能要素が特許請求の範囲に記載されたシステムの特定の要素を説明するために使用される場合、本明細書、図面、およびそれらの前の特許請求の範囲を有する当業者は、対応する構造が、特別なプログラミングの後にコンピュータに見られる機能性を使用して、および/または上記の特許請求の範囲またはステップに記載された機能性を達成するために1つ以上のアルゴリズムを実行することによって、特に記載された機能を実行するようにプログラムされたコンピュータ、プロセッサ、または(場合によっては)マイクロプロセッサを含むことを理解することができる。当業者によって理解されるように、アルゴリズムは、数式、フローチャート、叙述、および/または当業者が記載されたプロセスおよびその等価物を実行するのに十分な構造を提供する任意の他の方法で、本開示内で表現され得る。
【0096】
本開示は多くの異なる形態で具現化され得るが、図面および考察は、本開示が1つ以上の発明の原理の例示であり、図示された実施形態に、任意の1つの実施形態を限定することを意図しないことを理解して提示される。
【0097】
上述のシステムおよび方法のさらなる利点および修正は、当業者には容易に生じ得る。
【0098】
したがって、本開示は、そのより広い態様において、特定の詳細、代表的なシステムおよび方法、ならびに上記で示されかつ説明された例解的な実施例に限定されない。本開示の範囲または趣旨から逸脱することなく、上記の明細書に対して様々な修正および変形を施すことができ、本開示は、それらが以下の特許請求の範囲およびそれらの等価物の範囲内にある場合に限り、すべてのそのような修正および変形を網羅することが意図される。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9a
図9b
図10
図11
図12
図13a
図13b
図14
図15a
図15b
図15c
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22a
図22b
図22c
図22d
図22e
図23
図24
図25
【国際調査報告】