(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-31
(54)【発明の名称】弾性関節運動可能な先端を備えたガイドワイヤ
(51)【国際特許分類】
A61M 25/092 20060101AFI20230324BHJP
A61M 25/09 20060101ALI20230324BHJP
【FI】
A61M25/092
A61M25/09 510
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022520864
(86)(22)【出願日】2020-10-16
(85)【翻訳文提出日】2022-06-03
(86)【国際出願番号】 US2020055991
(87)【国際公開番号】W WO2021076894
(87)【国際公開日】2021-04-22
(32)【優先日】2019-10-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522135673
【氏名又は名称】エンブレイス メディカル エルティーディー.
(74)【復代理人】
【識別番号】110003797
【氏名又は名称】弁理士法人清原国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100082072
【氏名又は名称】清原 義博
(72)【発明者】
【氏名】タル,ミカエル,ガブリエル
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA28
4C267BB02
4C267BB07
4C267BB52
4C267CC08
4C267FF03
4C267GG23
4C267GG24
4C267HH08
(57)【要約】
【解決手段】血管アクセスのためのガイドワイヤは、ガイドワイヤを患者の血管構造に最初に挿入する間の、血管壁への損傷リスクを最小限にするように構成された弾性関節運動可能な先端を有する。ガイドワイヤは、ガイドワイヤの先端区分および/またはその芯部材に、局所的に柔軟性のある部分を有してもよい。
【選択図】
図4C
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガイドワイヤであって、該ガイドワイヤは、
先端区分で終わるガイドワイヤ本体を含み、前記先端区分は、局所的な関節屈曲部分、前記関節屈曲部分から遠位方向に延在する前方部分、および、前記関節屈曲部分から近位方向に延在する後方部分を含み、
ここで、前記関節屈曲部分は、前記ガイドワイヤ本体の残りの部分における屈曲に対する抵抗よりも実質的に小さい、屈曲に対する抵抗を有するように構成され、それによって、前記前方部分は、前記関節屈曲部分を中心に前記後方部分に対して弾性関節運動可能である、ガイドワイヤ。
【請求項2】
前記関節屈曲部分は、長さが約3mm以下であり、前記ガイドワイヤ本体の遠位端から約5mm以内まで離れている、請求項1に記載のガイドワイヤ。
【請求項3】
前記関節屈曲部分は、前記前方部分が前記後方部分に対して強制的に関節運動させられることから解放された場合に、関節運動前の向きおよび/または前記前方部分と前記後方部分の並びを弾性復元するように構成されている、請求項1に記載のガイドワイヤ。
【請求項4】
前記関節屈曲部分は、前記先端区分の前記前方部分が前記後方部分に対して強制的に関節運動させられた場合に、前記ガイドワイヤ本体が血管壁に長手方向に圧縮されるのに伴って、前記先端区分の前記後方部分が弾性復元可能に座屈するのを促進するか、および/または、それを引き起こすように構成されている、請求項1に記載のガイドワイヤ。
【請求項5】
前記ガイドワイヤは、前記ガイドワイヤ本体の長さの大部分またはその全長に沿って延在する弾性の芯部材を含み、前記芯部材は、前記先端区分に沿って前記関節屈曲部分を組み込んでいる、請求項1に記載のガイドワイヤ。
【請求項6】
弾性の前記芯部材は、前記関節屈曲部分の近位に拡幅部を含み、弾性の前記芯部材は、前記拡幅部から前記ガイドワイヤ本体の遠位端まで、前記前方部分に沿って直径が実質的に大きくなる、請求項5に記載のガイドワイヤ。
【請求項7】
前記後方部分に沿ったところの弾性の前記芯部材は、直径が前記関節屈曲部分と実質的に同様である、請求項5に記載のガイドワイヤ。
【請求項8】
経管的に血管に人工物を送り込むためのガイドワイヤであって、該ガイドワイヤは、
ガイドワイヤ本体であって、前記ガイドワイヤ本体は、ガイドワイヤ近位区分、先端区分、および、前記ガイドワイヤ近位区分と前記先端区分との間に延在するガイドワイヤ中間区分を含む、ガイドワイヤ本体を含み、
前記ガイドワイヤ中間区分の長さの大部分またはその全長に沿ったところの前記ガイドワイヤ中間区分における屈曲に対する抵抗は、前記ガイドワイヤ近位区分の長さの大部分またはその全長に沿ったところの屈曲に対する抵抗よりも小さく、
前記先端区分は、局所的な関節屈曲部分を含み、局所的な前記関節屈曲部分は、前記ガイドワイヤ中間区分、局所的な前記関節屈曲部分から遠位方向に延在する前記先端区分の前方部分、および、局所的な前記関節屈曲部分から近位方向に延在する前記先端区分の後方部分における屈曲に対する抵抗よりも実質的に小さい、屈曲に対する抵抗を有し、それによって、前記先端区分の前記後方部分および/または前記ガイドワイヤ中間区分に対する、前記先端区分の前記前方部分の局所的な弾性関節運動に影響を及ぼす、ガイドワイヤ。
【請求項9】
前記関節屈曲部分は、前記先端区分の前記前方部分が前記後方部分に対して強制的に関節運動させられた場合に、前記ガイドワイヤ本体が血管壁に長手方向に圧縮されるのに伴って、前記先端区分の前記後方部分が弾性復元可能に座屈するのを促進し、それを引き起こすように構成されている、請求項8に記載のガイドワイヤ。
【請求項10】
前記先端区分は、全長が20mm以下である、請求項8に記載のガイドワイヤ。
【請求項11】
前記先端区分は、全長が10mm以下である、請求項8に記載のガイドワイヤ。
【請求項12】
前記先端区分は、全長が5mm以下である、請求項8に記載のガイドワイヤ。
【請求項13】
前記関節屈曲部分は、スリット、係合部、陥凹部、コイル状区分のうちの少なくとも1つ、あるいはそれらの任意の組み合わせを含む、請求項8に記載のガイドワイヤ。
【請求項14】
前記ガイドワイヤは、前記ガイドワイヤ本体の長さの大部分またはその全長に沿って延在する弾性の芯部材を含む、請求項8に記載のガイドワイヤ。
【請求項15】
前記芯部材は、狭幅部の近位にある第1の芯部材直径から、前記狭幅部の遠位にある、前記第1の芯部材直径よりも小さい第2の芯部材直径まで、直径が縮小している、請求項14に記載のガイドワイヤ。
【請求項16】
前記芯部材は、前記関節屈曲部分の近位に拡幅部を含み、前記拡幅部は、前記拡幅部の近位にある第3の芯部材直径から、前記拡幅部の遠位にある、前記第3の芯部材直径よりも大きい第4の芯部材直径まで、芯部材の直径を拡大する、請求項15に記載のガイドワイヤ。
【請求項17】
前記第3の芯部材直径は、前記第2の芯部材直径と等しいか、あるいはそれより小さく、および/または、前記第4の芯部材直径は、前記第1の芯部材直径と実質的に等しい、請求項16に記載のガイドワイヤ。
【請求項18】
前記芯部材は、前記芯部材の前記狭幅部と前記拡幅部との間にある柔軟性のある素材のマトリックスに少なくとも部分的に埋め込まれており、それによって、前記ガイドワイヤ中間区分の長さの大部分またはその全長に沿ったところの前記ガイドワイヤ本体の全体の直径が、前記第1の芯部材直径と実質的に等しくなる、請求項17に記載のガイドワイヤ。
【請求項19】
前記芯部材は、前記芯部材の前記狭幅部と前記拡幅部との間にある円筒形のコイル状部材で少なくとも部分的に覆われており、それによって、前記ガイドワイヤ中間区分の長さの大部分またはその全長に沿ったところの前記ガイドワイヤ本体の全体の直径が、前記第1の芯部材直径と実質的に等しくなる、請求項17に記載のガイドワイヤ。
【請求項20】
前記コイル状部材は、ばねおよび/または弾性金属合金で形成されており、前記コイル状部材は、前記狭幅部で、もしくはこれに近傍するところで、および/または、前記拡幅部で、もしくはこれに近傍するところで前記芯部材に固定される、請求項19に記載のガイドワイヤ。
【請求項21】
前記芯部材は、前記先端区分に沿って前記関節屈曲部分を組み込んでいる、請求項14に記載のガイドワイヤ。
【請求項22】
前記関節屈曲部分は、前記ガイドワイヤ本体に沿って5mm以下の長さを有する、請求項8に記載のガイドワイヤ。
【請求項23】
前記関節屈曲部分は、前記ガイドワイヤ本体に沿って3mm以下の長さを有する、請求項8に記載のガイドワイヤ。
【請求項24】
前記関節屈曲部分は、1mm以下である、請求項8に記載のガイドワイヤ。
【請求項25】
前記芯部材は、選択的に熱処理された形状記憶合金で形成されている、請求項12に記載のガイドワイヤ。
【請求項26】
前記熱処理は、目的とする長さの部分の温度を、約1分以下の期間にわたって約500℃以下まで上昇させるように構成されている、請求項25に記載のガイドワイヤ。
【請求項27】
前記熱処理は、任意選択で、溶接、リベット接合、ろう付けまたははんだ付けによって、コイル状部材の遠位端を前記関節屈曲部分の遠位にある前記芯部材に固定する前に行われる、請求項25に記載のガイドワイヤ。
【請求項28】
前記先端区分の前記前方部分と前記後方部分との間に形成された角度が縮小した場合に、前記関節屈曲部分における屈曲に対する抵抗が増加する、請求項8に記載のガイドワイヤ。
【請求項29】
前記前方部分と前記後方部分との間にある最小限許容される関節角度は、150°と90°の間である、請求項28に記載のガイドワイヤ。
【請求項30】
前記最小限許容される関節角度は、135°と95°の間である、請求項29に記載のガイドワイヤ。
【請求項31】
前記先端区分の前記前方部分と前記後方部分とが並んでいる場合に、前記関節屈曲部分における屈曲に対する抵抗は、前記先端区分によって血管壁が突き刺されるのに対する抵抗よりも小さい、請求項8に記載のガイドワイヤ。
【請求項32】
前記先端区分の前記前方部分および前記後方部分がそれらの間に最小限許容される関節角度を形成する場合に、前記関節屈曲部分における屈曲に対する抵抗は、前記先端区分の前記後方部分の座屈に対する抵抗よりも大きい、請求項8に記載のガイドワイヤ。
【請求項33】
前記関節屈曲部分の全長は、0.5mm以下である、請求項8に記載のガイドワイヤ。
【請求項34】
前記関節屈曲部分の直径は、前記後方部分の直径、および/または、前記ガイドワイヤ中間区分と実質的に等しい、請求項8に記載のガイドワイヤ。
【請求項35】
前記関節屈曲部分の中心は、前記ガイドワイヤ本体の遠位端から5mm以内である、請求項8に記載のガイドワイヤ。
【請求項36】
前記関節屈曲部分の中心は、前記ガイドワイヤ本体の遠位端から1mm以内である、請求項8に記載のガイドワイヤ。
【請求項37】
キットであって、該キットは、
請求項8に記載のガイドワイヤと、
遠位にある針先端に遠位方向に近傍した斜角開口部を含む針と、を含み、
前記斜角開口部は、前記先端区分の前記前方部分が血管壁に押しつけられた場合に、前記前方部分が、前記斜角開口部から軸方向に突出するのに伴って、前記関節屈曲部分を中心に関節運動するように構成されるように、構成された長さを有する、キット。
【請求項38】
前記斜角開口部は、長さが前記前方部分と等しいか、あるいは前記前方部分よりも最大2mm大きい、請求項37に記載のキット。
【請求項39】
前記斜角開口部は、長さが前記前方部分と等しいか、あるいは前記前方部分よりも最大2mm小さい、請求項37に記載のキット。
【請求項40】
ガイドワイヤであって、該ガイドワイヤは、
先端区分を含む細長い芯部材を含み、前記先端区分は、患者の血管に挿入するための遠位端で終わっており、
前記先端区分は、血管壁に前記遠位端を押しつける挿入力に応じて、前記先端区分を、実質的に真っすぐの構成から折り畳まれた構成に遷移させるように構成された屈曲抵抗プロファイルを有し、折り畳みは、前記遠位端が押しつけられている前記血管壁の組織を前記遠位端が実質的に突き刺すことなく生じる、ガイドワイヤ。
【請求項41】
前記折り畳みによって、前記遠位端を含有する前記先端区分の一部を、意図したガイドワイヤの操作方向に向いた状態から、前記意図したガイドワイヤの操作方向から離れた側に向いた状態に遷移させることができる、請求項40に記載のガイドワイヤ。
【請求項42】
前記折り畳みによって、前記血管壁で、引留め点から前記ガイドワイヤの前記遠位端を解放することができる、請求項40に記載のガイドワイヤ。
【請求項43】
屈曲抵抗は、弾力性があり、それによって、前記折り畳みは、弾性復元可能であり、前記先端部分を前記実質的に真っすぐの構成に戻す、請求項40に記載のガイドワイヤ。
【請求項44】
ガイドワイヤであって、該ガイドワイヤは、
ガイドワイヤの遠位端で終わる先端区分を含み、
ここで、前記先端区分は、屈曲抵抗プロファイルを特徴とし、前記屈曲抵抗プロファイルは、第1の屈曲抵抗を特徴とする第1の領域、第2の屈曲抵抗を特徴とする第2の領域、および、第3の屈曲抵抗を特徴とする第3の領域を含み、前記第2の領域は、前記第1の領域と前記第3の領域との間に位置付けられ、
前記第2の屈曲抵抗は、前記第1の屈曲抵抗と前記第3の屈曲抵抗の両方よりも小さく、
前記第1の領域は、前記ガイドワイヤの前記遠位端を含み、
前記第1の領域、前記第2の領域、および、前記第3の領域の少なくとも一部は連続しており、これらはすべて、前記ガイドワイヤの前記遠位端から20mm以内に位置している、ガイドワイヤ。
【請求項45】
前記第2の領域の中心は、前記遠位端から10mm未満に位置している、請求項44に記載のガイドワイヤ。
【請求項46】
前記第2の領域の中心は、前記遠位端から5mm未満に位置している、請求項44に記載のガイドワイヤ。
【請求項47】
前記第2の領域は、前記ガイドワイヤに沿って5mm未満の長さに及ぶ、請求項44に記載のガイドワイヤ。
【請求項48】
前記第2の領域は、前記ガイドワイヤに沿って3mm未満の長さに及ぶ、請求項44に記載のガイドワイヤ。
【請求項49】
患者の血管にガイドワイヤを挿入する方法であって、該方法は、
患者の血管に内腔の開口部を挿入する工程と、
ガイドワイヤの遠位端が前記開口部から突出して、下側の血管壁と接触し、そこに引留め点を形成するまで、前記内腔に前記ガイドワイヤの前記遠位端を挿入する工程と、
(1)前記ガイドワイヤの前記遠位端から近位方向に延在する前記ガイドワイヤの先端区分を座屈させて、それによって、前記ガイドワイヤの前記遠位端を前記引留め点から解放し、そして(2)前記ガイドワイヤの前記先端区分を非座屈状態に弾性的に戻して、前記ガイドワイヤの前記遠位端を前記血管の内部の意図した操作方向に向けるのに十分なように、前記ガイドワイヤの近位部分に挿入力をかける工程と、を含む、方法。
【請求項50】
かけられる前記挿入力は、前記ガイドワイヤの前記遠位端が前記引留め点で前記血管壁の組織を大幅に突き刺すのに不十分なものである、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
かけられる前記挿入力は、前記先端区分が、第1の位置の近位にある第2の位置で座屈する前に前記第1の位置で屈曲するのに十分なものである、請求項49に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、そのいくつかの実施形態において、血管にアクセスするためのデバイスおよび方法に関し、より具体的には、ただしこれに限定されないが、ガイドワイヤおよび/または血管アクセスキットに関する。
【背景技術】
【0002】
セルディンガー法は、現在、血管にアクセスするための好ましい手法とされており、この手法では、針が血管を突き刺し、針が血管の内部にあることが確認されると、針を通じてガイドワイヤを挿入し、血管の所望の場所へと操縦し、その後、針を取り出し、指定された領域でガイドワイヤの上にカテーテルを位置付けることができる。
【0003】
セルディンガー法を使用する場合に、血管の意図せぬ穿孔や切開というのは、まれな失敗ではない。針先端が血管の中心線の近くに、それに対して鋭角に配置されている場合、ガイドワイヤは、記載されているような不要な穿孔を引き起こすことなく、針先端から出てくるはずである。オペレータは、挿入した針を介して、正確に針が配置されていることに対する肯定的な指標と想定される返血を行ってもよいが、しかし、多くの場合、針先端が反対側の血管壁に近すぎるか、さらにはそこに部分的に突き刺さるか、および/または、血管に対する針のアクセス角度が浅すぎる(例えば、約60°よりも大きい)。しかし、ガイドワイヤは、針を通じて血管に強制的に押し込まれ、特に、そのガイドワイヤが、針を通じて血管を進行することができるのに十分な押し込み性(pushability)を備えるように設計されているので、ガイドワイヤの先端は、血管壁を穿孔したり、および/または、血管壁層を切開したりする可能性がある。
【0004】
血管へのアクセスを形成する際に、血管壁を意図せずに突き刺す(例えば、穿孔および/または切開)という問題は、特に血管において顕著であり、ここでは、壁が薄肉かつ柔軟であり、それによって、オペレータは、針からの抵抗を一切感知することなく、意図せずに形成してしまった突き刺し口を通じて血管の外にガイドワイヤを進行させ続けてしまう場合がある。
【0005】
この背景技術は、請求される主題の範囲を決定する際の補助となることを意図するものではなく、請求される主題を、以上に提示した欠点または課題のうちのいずれかまたはすべてを解決する実装形態に限定するものとしてみなすことを意図するものでもないことに注意されるべきである。この背景技術の欄にあるいずれの技術、文献、または参考文献も、記載されている題材が本明細書で請求される主題のうちのいずれもの先行技術であることを認めるものとして解釈されるべきではない。
【発明の概要】
【0006】
本開示は、そのいくつかの実施形態において、血管にアクセスするためのデバイスおよび方法に関し、より具体的には、ただしこれに限定されないが、血管へのアクセスを形成する場合に、血管壁への意図せぬ穿刺を防止するように構成されたガイドワイヤおよび/または血管アクセスキットに関する。
【0007】
ある実装形態では、ガイドワイヤは、先端区域で終わるガイドワイヤ本体を含み、先端区域は、局所的な関節屈曲部分、局所的な関節屈曲部分から遠位方向に延在する前方部分、および、局所的な関節屈曲部分から近位方向に延在する後方部分を含む。関節屈曲部分は、ガイドワイヤ本体の残りの部分における屈曲に対する抵抗よりも実質的に小さい、屈曲に対する抵抗を有するように構成され、それによって、前方部分は、関節屈曲部分を中心に後方部分に対して弾性関節運動可能である。経管的に血管に人工物を送り込むためのガイドワイヤは、含む。
【0008】
別の実装形態では、ガイドワイヤは、ガイドワイヤ本体を含み、ガイドワイヤ本体は、ガイドワイヤ近位区分、先端区分、および、ガイドワイヤ近位区分と先端区分との間に延在するガイドワイヤ中間区分を含む。ガイドワイヤ中間区分の長さの大部分またはその全長に沿ったところのガイドワイヤ中間区分における屈曲に対する抵抗は、ガイドワイヤ近位区分の長さの大部分またはその全長に沿ったところの屈曲に対する抵抗よりも小さい。先端区分は、局所的な関節屈曲部分を含み、局所的な関節屈曲部分は、ガイドワイヤ中間区分、局所的な関節屈曲部分から遠位方向に延在する先端区分の前方部分、および、局所的な関節屈曲部分から近位方向に延在する先端区分の後方部分における屈曲に対する抵抗よりも実質的に小さい、屈曲に対する抵抗を有し、それによって、先端区分の後方部分および/またはガイドワイヤ中間区分に対する、先端区分の前方部分の局所的な弾性関節運動に影響を及ぼす。
【0009】
別の実装形態では、ガイドワイヤは、先端区分を含む細長い芯部材を含み、ここで、先端区分は、患者の血管に挿入するための遠位端で終わっている。先端区分は、血管壁に遠位端を押しつける挿入力に応じて、先端区分を、実質的に真っすぐの構成から折り畳まれた構成に遷移させるように構成された屈曲抵抗プロファイルを有し、ここで、折り畳みは、遠位端が押しつけられている血管壁の組織を遠位端が実質的に突き刺すことなく生じる。
【0010】
別の実装形態では、ガイドワイヤは、ガイドワイヤの遠位端で終わる先端区分を含み、ここで、先端区分は、屈曲抵抗プロファイルを特徴とし、屈曲抵抗プロファイルは、第1の屈曲抵抗を特徴とする第1の領域、第2の屈曲抵抗を特徴とする第2の領域、および、第3の屈曲抵抗を特徴とする第3の領域を含み、第2の領域は、第1の領域と第3の領域との間に位置付けられ、第2の屈曲抵抗は、第1の屈曲抵抗と第3の屈曲抵抗の両方よりも小さく、第1の領域は、ガイドワイヤの遠位端を含み、第1の領域、第2の領域、および、第3の領域の少なくとも一部は連続しており、これらはすべて、ガイドワイヤの遠位端から20mm以内に位置している。
【0011】
別の実施形態では、キットは、本明細書に記載されているいずれかの新規なガイドワイヤの実施形態に従ったガイドワイヤと、遠位にある針先端に遠位方向に近傍した斜角開口部を含む針と、を含む。斜角開口部は、先端区分の前方部分が血管壁に押しつけられた場合に、前方部分が、斜角開口部から軸方向に突出するのに伴って、関節屈曲部分を中心に関節運動するように構成されるように、構成された長さを有する。
【0012】
別の実装形態では、患者の血管にガイドワイヤを挿入する方法は、患者の血管に内腔の開口部を挿入する工程と、遠位端が開口部から突出して、下側の血管壁と接触し、そこに引留め点(catch point)を形成するまで、内腔にガイドワイヤの遠位端を挿入する工程と、を含む。上記方法は、(1)ガイドワイヤの遠位端から近位方向に延在するガイドワイヤの先端区分を座屈させて、それによって、ガイドワイヤの遠位端を引留め点から解放し、そして(2)ガイドワイヤの先端区分を非座屈状態に弾性的に戻して、ガイドワイヤの遠位端を血管の内部の意図した操作方向に向けるのに十分なように、ガイドワイヤの近位部分に挿入力をかける工程をさらに含む。
【0013】
本明細書に記載されているガイドワイヤ、キット、または方法のいずれの実施形態においても、以下に挙げられる特徴のうちのいずれか1つ以上が任意の組み合わせで提供される場合がある。
【0014】
関節屈曲部分は、長さが約3mm以下であり、ガイドワイヤ本体の遠位端から約5mm以内まで離れていてもよい。
【0015】
関節屈曲部分は、前方部分が後方部分に対して強制的に関節運動させられることから解放された場合に、関節運動前の向きおよび/または前方部分と後方部分の並びを弾性復元するように構成されていてもよい。
【0016】
関節屈曲部分は、先端区分の前方部分が後方部分に対して強制的に関節運動させられた場合に、ガイドワイヤ本体が血管壁に長手方向に圧縮されるのに伴って、先端区分の後方部分が弾性復元可能に座屈するのを促進するか、および/または、それを引き起こすように構成されていてもよい。
【0017】
ガイドワイヤは、ガイドワイヤ本体の長さの大部分またはその全長に沿って延在する弾性の芯部材を含んでもよく、芯部材は、先端区分に沿って関節屈曲部分を組み込んでいる。
【0018】
弾性の芯部材は、関節屈曲部分の近位に拡幅部を含んでもよく、弾性の芯部材は、拡幅部からガイドワイヤ本体の遠位端まで、前方部分に沿って直径が実質的に大きくなる。
【0019】
後方部分に沿ったところの弾性の芯部材は、直径が関節屈曲部分と実質的に同様であってもよい。
【0020】
関節屈曲部分は、先端区分の前方部分が後方部分に対して強制的に関節運動された場合に、ガイドワイヤ本体が血管壁に長手方向に圧縮されるのに伴って、先端区分の後方部分の弾性復元可能な座屈を促進し、それを引き起こすように構成されていてもよい。
【0021】
先端区分は、全長が20mm以下であってもよい。
【0022】
先端区分は、全長が10mm以下であってもよい。
【0023】
先端区分は、全長が5mm以下であってもよい。
【0024】
関節屈曲部分は、スリット、係合部、陥凹部、コイル状区分のうちの少なくとも1つ、あるいはそれらの任意の組み合わせを含んでいてもよい。
【0025】
ガイドワイヤは、ガイドワイヤ本体の長さの大部分またはその全長に沿って延在する弾性の芯部材を含んでいてもよい。
【0026】
芯部材は、狭幅部の近位にある第1の芯部材直径から、狭幅部の遠位にある、第1の芯部材直径よりも小さい第2の芯部材直径まで、直径が縮小してもよい。
【0027】
芯部材は、関節屈曲部分の近位に拡幅部を含んでもよく、拡幅部は、拡幅部の近位にある第3の芯部材直径から、拡幅部の遠位にある、第3の芯部材直径よりも大きい第4の芯部材直径まで、芯部材の直径を拡大する。
【0028】
第3の芯部材直径は、第2の芯部材直径と等しいか、あるいはそれよりも小さくてもよく、および/または、第4の芯部材直径は、第1の芯部材直径と実質的に等しくてもよい。
【0029】
芯部材は、芯部材の狭幅部と拡幅部との間にある柔軟性のある素材のマトリックスに少なくとも部分的に埋め込まれていてもよく、それによって、ガイドワイヤ中間区分の長さの大部分またはその全長に沿ったところのガイドワイヤ本体の全体の直径が、第1の芯部材直径と実質的に等しくなる。
【0030】
芯部材は、芯部材の狭幅部と拡幅部との間にある円筒形のコイル状部材で少なくとも部分的に覆われていてもよく、それによって、ガイドワイヤ中間区分の長さの大部分またはその全長に沿ったところのガイドワイヤ本体の全体の直径が、第1の芯部材直径と実質的に等しくなる。
【0031】
コイル状部材は、ばねおよび/または弾性金属合金で形成されていてもよく、コイル状部材は、狭幅部で、もしくはこれに近傍するところで、および/または、拡幅部で、もしくはこれに近傍するところで芯部材に固定される。
【0032】
芯部材は、先端区分に沿って関節屈曲部分を組み込んでいてもよい。
【0033】
関節屈曲部分は、ガイドワイヤ本体に沿って5mm以下の長さを有していてもよい。
【0034】
関節屈曲部分は、ガイドワイヤ本体に沿って3mm以下の長さを有していてもよい。
【0035】
関節屈曲部分は、ガイドワイヤ本体に沿って1mm以下の長さを有していてもよい。
【0036】
芯部材は、選択的に熱処理された形状記憶合金で形成されていてもよい。
【0037】
熱処理は、目的とする長さの部分の温度を、約1分以下の期間にわたって約500℃以下まで上昇させるように構成されていてもよい。
【0038】
熱処理は、任意選択で、溶接、リベット接合、ろう付けまたははんだ付けによって、コイル状部材の遠位端を関節屈曲部分の遠位にある芯部材に固定する前に行われてもよい。
【0039】
先端区分の前方部分と後方部分との間に形成された角度が縮小した場合に、関節屈曲部分における屈曲に対する抵抗が増加してもよい。
【0040】
前方部分と後方部分との間にある最小限許容される関節角度は、150°と90°の間であってもよい。
【0041】
最小限許容される関節角度は、135°と95°の間であってもよい。
【0042】
先端区分の前方部分と後方部分とが並んでいる場合に、関節屈曲部分における屈曲に対する抵抗は、先端区分によって血管壁が突き刺されるのに対する抵抗よりも小さくてもよい。
【0043】
先端区分の前方部分および後方部分がそれらの間に最小限許容される関節角度を形成する場合に、関節屈曲部分における屈曲に対する抵抗は、先端区分の後方部分の座屈に対する抵抗よりも大きくてもよい。
【0044】
関節屈曲部分の全長は、0.5mm以下であってもよい。
【0045】
関節屈曲部分の直径は、後方部分の直径、および/または、ガイドワイヤ中間区分と実質的に等しくてもよい。
【0046】
関節屈曲部分の中心は、ガイドワイヤ本体の遠位端から5mm以内であってもよい。
【0047】
関節屈曲部分の中心は、ガイドワイヤ本体の遠位端から1mm以内であってもよい。
【0048】
折り畳みによって、遠位端を含有する先端区分の一部を、意図したガイドワイヤの操作方向に向いた状態から、意図したガイドワイヤの操作方向から離れた側に向いた状態に遷移させることができてもよい。
【0049】
折り畳みによって、血管壁で、引留め点からガイドワイヤの遠位端を解放することができてもよい。
【0050】
屈曲抵抗は、弾力性があってもよく、それによって、折り畳みは、弾性復元可能であり、先端部分を実質的に真っすぐの構成に戻す。
【0051】
関節屈曲部分は、前方部分が後方部分に対して強制的に関節運動させられることから解放された場合に、関節運動前の向きおよび/または前方部分と後方部分の並びを弾性復元するように構成されていてもよい。
【0052】
関節屈曲部分は、先端区分の前方部分が後方部分に対して強制的に関節運動させられた場合に、ガイドワイヤ本体が血管壁に長手方向に圧縮されるのに伴って、先端区分の後方部分が弾性復元可能に座屈するのを促進するか、および/または、それを引き起こすように構成されていてもよい。
【0053】
第2の領域の中心は、遠位端から10mm未満に位置していてもよい。
【0054】
第2の領域の中心は、遠位端から5mm未満に位置していてもよい。
【0055】
第2の領域は、ガイドワイヤに沿って5mm未満の長さに及んでいてもよい。
【0056】
第2の領域は、ガイドワイヤに沿って3mm未満の長さに及んでいてもよい。
【0057】
斜角開口部は、長さが前方部分と等しいか、あるいは前方部分よりも最大2mm大きくてもよい。
【0058】
斜角開口部は、長さが前方部分と等しいか、あるいは前方部分よりも最大2mm小さくてもよい。
【0059】
かけられる挿入力は、ガイドワイヤの遠位端が引留め点で血管壁の組織を大幅に突き刺すのに不十分なものであってもよい。
【0060】
かけられる挿入力は、先端区分が、第1の位置の近位にある第2の位置で座屈する前に第1の位置で屈曲するのに十分なものであってもよい。
【0061】
本明細書で使用される技術的または/および科学的単語、用語、または/および句は、本明細書に明確に定義または記述されない限り、本開示が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じか、あるいは同様の意味を有する。矛盾が生じた場合、定義を含め、本特許明細書が優先される。
【0062】
主題となる技術の様々な構成は、主題となる技術の様々な構成が例示として示され記載されている本開示から当業者には明らかになるであろうことが理解されよう。認識されるであろうが、主題となる技術は、他の異なる構成をとることができ、そのいくつかの詳細は、様々な他の点において、すべてが主題となる技術の範囲から逸脱することなく変更することができる。したがって、概要、図面および詳細な説明は、その本質において例示とみなされるべきであって、制限的なものとみなされるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0063】
本開示のいくつかの実施形態は、単なる例として、添付の図面を参照して本明細書に記載される。ここで図面を詳細に具体的に参照すると、図示した細部は、例としてのものであり、本開示のいくつかの実施形態の例示的な説明を目的とするものであることが強調される。これに関して、本開示のいくつかの実施形態がどのように実践され得るのかは、添付の図面とともになされる詳細な説明から、当業者には明かになる。
【
図1A】
図1A~
図1Cは、先行技術のガイドワイヤの側面図(
図1A)と、従来のセルディンガー法を使用して血管に送り込まれたガイドワイヤの断面側面図(
図1B~
図1C)とを概略的に示している。
【
図1B】
図1A~
図1Cは、先行技術のガイドワイヤの側面図(
図1A)と、従来のセルディンガー法を使用して血管に送り込まれたガイドワイヤの断面側面図(
図1B~
図1C)とを概略的に示している。
【
図1C】
図1A~
図1Cは、先行技術のガイドワイヤの側面図(
図1A)と、従来のセルディンガー法を使用して血管に送り込まれたガイドワイヤの断面側面図(
図1B~
図1C)とを概略的に示している。
【
図2A】
図2A~
図2Cは、いくつかの実施形態に従って、弾性関節運動可能な先端部分を含む例示的なガイドワイヤのいくつかの図を概略的に示している。
【
図2B】
図2A~
図2Cは、いくつかの実施形態に従って、弾性関節運動可能な先端部分を含む例示的なガイドワイヤのいくつかの図を概略的に示している。
【
図2C】
図2A~
図2Cは、いくつかの実施形態に従って、弾性関節運動可能な先端部分を含む例示的なガイドワイヤのいくつかの図を概略的に示している。
【
図3A】
図3A~
図3Eは、いくつかの実施形態に従って、例示的な血管アクセス法を使用して
図2の例示的なガイドワイヤを送り込むための方法の実施に当たって考えられるシナリオを表したいくつかの図を概略的に示している。
【
図3B】
図3A~
図3Eは、いくつかの実施形態に従って、例示的な血管アクセス法を使用して
図2の例示的なガイドワイヤを送り込むための方法の実施に当たって考えられるシナリオを表したいくつかの図を概略的に示している。
【
図3C】
図3A~
図3Eは、いくつかの実施形態に従って、例示的な血管アクセス法を使用して
図2の例示的なガイドワイヤを送り込むための方法の実施に当たって考えられるシナリオを表したいくつかの図を概略的に示している。
【
図3D】
図3A~
図3Eは、いくつかの実施形態に従って、例示的な血管アクセス法を使用して
図2の例示的なガイドワイヤを送り込むための方法の実施に当たって考えられるシナリオを表したいくつかの図を概略的に示している。
【
図3E】
図3A~
図3Eは、いくつかの実施形態に従って、例示的な血管アクセス法を使用して
図2の例示的なガイドワイヤを送り込むための方法の実施に当たって考えられるシナリオを表したいくつかの図を概略的に示している。
【
図4A】
図4A~
図4Eは、いくつかの実施形態に従って、例示的な血管アクセス法を使用して
図2の例示的なガイドワイヤを送り込むための方法の実施に当たって考えられる他のシナリオを表したいくつかの図を概略的に示している。
【
図4B】
図4A~
図4Eは、いくつかの実施形態に従って、例示的な血管アクセス法を使用して
図2の例示的なガイドワイヤを送り込むための方法の実施に当たって考えられる他のシナリオを表したいくつかの図を概略的に示している。
【
図4C】
図4A~
図4Eは、いくつかの実施形態に従って、例示的な血管アクセス法を使用して
図2の例示的なガイドワイヤを送り込むための方法の実施に当たって考えられる他のシナリオを表したいくつかの図を概略的に示している。
【
図4D】
図4A~
図4Eは、いくつかの実施形態に従って、例示的な血管アクセス法を使用して
図2の例示的なガイドワイヤを送り込むための方法の実施に当たって考えられる他のシナリオを表したいくつかの図を概略的に示している。
【
図4E】
図4A~
図4Eは、いくつかの実施形態に従って、例示的な血管アクセス法を使用して
図2の例示的なガイドワイヤを送り込むための方法の実施に当たって考えられる他のシナリオを表したいくつかの図を概略的に示している。
【
図5A】
図5A~
図5Iは、いくつかの実施形態に従って、
図2の例示的なガイドワイヤの遠位部分における異なる例示的な変形例の断面側面図を示している。
【
図5B】
図5A~
図5Iは、いくつかの実施形態に従って、
図2の例示的なガイドワイヤの遠位部分における異なる例示的な変形例の断面側面図を示している。
【
図5C】
図5A~
図5Iは、いくつかの実施形態に従って、
図2の例示的なガイドワイヤの遠位部分における異なる例示的な変形例の断面側面図を示している。
【
図5D】
図5A~
図5Iは、いくつかの実施形態に従って、
図2の例示的なガイドワイヤの遠位部分における異なる例示的な変形例の断面側面図を示している。
【
図5E】
図5A~
図5Iは、いくつかの実施形態に従って、
図2の例示的なガイドワイヤの遠位部分における異なる例示的な変形例の断面側面図を示している。
【
図5F】
図5A~
図5Iは、いくつかの実施形態に従って、
図2の例示的なガイドワイヤの遠位部分における異なる例示的な変形例の断面側面図を示している。
【
図5G】
図5A~
図5Iは、いくつかの実施形態に従って、
図2の例示的なガイドワイヤの遠位部分における異なる例示的な変形例の断面側面図を示している。
【
図5H】
図5A~
図5Iは、いくつかの実施形態に従って、
図2の例示的なガイドワイヤの遠位部分における異なる例示的な変形例の断面側面図を示している。
【
図5I】
図5A~
図5Iは、いくつかの実施形態に従って、
図2の例示的なガイドワイヤの遠位部分における異なる例示的な変形例の断面側面図を示している。
【
図6A】
図6A~
図6Bは、いくつかの実施形態に従って、コイル状部材を含む第1の例示的なガイドワイヤの斜視図と、断面側面図とをそれぞれ示している。
【
図6B】
図6A~
図6Bは、いくつかの実施形態に従って、コイル状部材を含む第1の例示的なガイドワイヤの斜視図と、断面側面図とをそれぞれ示している。
【
図7A】
図7A~
図7Bは、いくつかの実施形態に従って、弾性関節運動前と後との、コイル状部材を含む第2の例示的なガイドワイヤの断面側面図を概略的に示している。
【
図7B】
図7A~
図7Bは、いくつかの実施形態に従って、弾性関節運動前と後との、コイル状部材を含む第2の例示的なガイドワイヤの断面側面図を概略的に示している。
【
図8A】
図8A~
図8Dは、いくつかの実施形態に従って、
図6Aの例示的なガイドワイヤを形成するための方法の実施に当たって考えられるシナリオを表したいくつかの図を概略的に示している。
【
図8B】
図8A~
図8Dは、いくつかの実施形態に従って、
図6Aの例示的なガイドワイヤを形成するための方法の実施に当たって考えられるシナリオを表したいくつかの図を概略的に示している。
【
図8C】
図8A~
図8Dは、いくつかの実施形態に従って、
図6Aの例示的なガイドワイヤを形成するための方法の実施に当たって考えられるシナリオを表したいくつかの図を概略的に示している。
【
図8D】
図8A~
図8Dは、いくつかの実施形態に従って、
図6Aの例示的なガイドワイヤを形成するための方法の実施に当たって考えられるシナリオを表したいくつかの図を概略的に示している。
【
図9A】
図9A~
図9Dは、いくつかの実施形態に従って、ガイドワイヤの挿入の透視動画からの静止画である。
【
図9B】
図9A~
図9Dは、いくつかの実施形態に従って、ガイドワイヤの挿入の透視動画からの静止画である。
【
図9C】
図9A~
図9Dは、いくつかの実施形態に従って、ガイドワイヤの挿入の透視動画からの静止画である。
【
図9D】
図9A~
図9Dは、いくつかの実施形態に従って、ガイドワイヤの挿入の透視動画からの静止画である。
【発明を実施するための形態】
【0064】
次の説明および例は、開示されている本発明のいくつかの例示的な実装形態、実施形態、および構成を詳細に例示している。当業者であれば、本発明の範囲に包含される本発明の多数の変形および変更が存在することを認識するであろう。したがって、特定の実施形態例の説明は、本発明の範囲を限定するものとみなされるべきではない。
【0065】
本開示は、そのいくつかの実施形態において、血管にアクセスするためのデバイスおよび方法に関し、より具体的には、ただしこれに限定されないが、血管へのアクセスを形成する場合に、血管壁への意図せぬ穿刺を防止するように構成されたガイドワイヤおよび/または血管アクセスキットに関する。「ガイドワイヤ(guidewire)」(あるいは「ガイド・ワイヤ(guide wire)」)という用語は、シース、カニューレ、カテーテル、あるいはガイドワイヤ上の任意の他のデバイスを内腔または血管に通すなどによって、体内の血管に沿って目的とする位置に人工物を通すための、体内の血管で選択して、送り込むのを促進するために構成された任意の薄肉の部材を指す。いくつかの実施形態では、ガイドワイヤという用語は、例えば、任意選択で、患者の血管構造の深くまで人工物を送るために規定された別のガイドワイヤを挿入する前に、血管アクセスを形成する過程で使用される血管アクセスワイヤを含む。
【0066】
図1Aは、細長いガイドワイヤ本体(11)を有する、先行技術のガイドワイヤ(10)を概略的に示しており、これは、一般的な市販のガイドワイヤにおける場合と同様に、遠位区分(13)に隣接した近位区分(12)を含んでいる。当該技術分野で知られているように、ガイドワイヤを屈曲部などに通して、患者の血管構造内に押し込みやすくするために、近位区分(12)およびその外径を形成している構造部材は、その長さに沿って(あるいはその全長に沿って徐々に)ある点で幅が狭くなっていてもよい。遠位区分(13)は、コイル状部材、あるいは弾性塗料または弾性マトリックスで覆われていてもよい。血管の内部に押し込まれた場合のガイドワイヤの遠位区分の柔軟性および操縦性を改善しつつ、その座屈を防止するために、この設計の概念が展開されたが、初期のガイドワイヤの血管へのアクセスに関する課題は解消されていなかった。
【0067】
従来のセルディンガー法の一部を表わす
図1B~
図1Cで示されているように、最初に、針(20)が、その針先端(21)が反対側の血管壁OBWに近傍するように位置付けられるまで、血管BVに挿入される。その後、針(20)を介して、ガイドワイヤ(10)の遠位区分(13)が血管BVに差し込まれる。関連刊行物において、遠位区分(13)は比較的柔軟性があるとみなされているが、針(20)の先端(21)に近傍した斜角開口部(22)から出た、遠位区分(13)の初期突出長さ(15)は、関節屈曲するには短すぎるものであり、これは、
図1Cで示されているように、屈曲に対するその抵抗が、ガイドワイヤ(10)のその遠位端(16)によって突き刺されるのに対する血管壁OBWの抵抗よりも大きいからである。
【0068】
図2A~
図2Cは、経管的に血管に人工物を送り込むために構成された例示的なガイドワイヤ(30)のいくつかの図面を概略的に示している。
図2Aで示されているように、ガイドワイヤ(30)は、ガイドワイヤ遠位部分および/またはその芯部材を有するガイドワイヤ本体(31)を含み、これは、中間区分(35)および先端区分(40)を含む。ガイドワイヤ中間区分(35)は、以上に記載されている先行技術のガイドワイヤの遠位区分の一部であり、これは、ガイドワイヤ近位区分と比べてより大きな柔軟性および/または弾性を有していてもよい。
【0069】
先端区分(40)は、(
図3Bで示されているように)血管にアクセスするためのアクセス針(例えば、
図1Bで示されている針(20))を通じて出るように規定されるガイドワイヤ(30)の初期突出長さ(38)の長さを少なくとも有する全長を有し、任意選択で、先端区分(40)は、長さが初期突出長さ(38)の2倍から3倍である。先端区分(40)は、任意選択で、全長が約20mm以下であり、任意選択で、約10mm以下であり、任意選択で、約5mm以下であり、任意選択で、全長が約1mmと約4mmの間である。
図2Bは、先端区分(40)の一部の拡大概略図である。先端区分(40)は、先端区分の異なる部分が異なる屈曲抵抗を有するような屈曲抵抗プロファイルを特徴とする。屈曲抵抗プロファイルは、このような長手方向の圧縮に伴って、先端区分(40)の近傍にある前方部分(42)(これは、関節屈曲部分(41)から近位方向に延在する)と後方部分(43)(これは、関節屈曲部分(41)から遠位方向に延在する)との相対的な弾性関節運動を促進するか、および/または、これを引き起こすように構成された関節屈曲部分(例えば、点、領域、長さ、または範囲)(41)を含んでいてもよい。関節屈曲部分(41)の中心は、有利には、ガイドワイヤ遠位端(37)から約5mm以内であってもよく、任意選択で、具体的には約1mm以内であってもよい。関節運動は、例えば、1つの方向、複数の特定の方向、または任意の方向に関節屈曲部分(41)を中心として、あるいはその中で屈曲、関節屈曲、または回動する形態であってもよい。関節屈曲部分(41)は、任意選択で、スリット、係合部、陥凹部、コイル状区分のうちの少なくとも1つ、あるいはそれらの任意の組み合わせを含む。あるいは、関節屈曲部分(41)は、熱処理および/または化学処理などによって、先端区分(40)の他の部分と異なるように、あるいはこれらに加えて適当な状態にされてもよく、任意選択で、寸法(例えば、直径)の変化によって関節屈曲部分(41)に影響を及ぼすことなく、適当な状態にされてもよい。弾性関節運動は、関節屈曲力が途絶えると、あるいは特定の閾値よりも低下すると、近傍にある部分(42)および(43)および/または関節屈曲部分(41)が復元して、応力なしで、あるいは少ない応力で相対的な位置決めがなされることを意味する。任意選択で、先端区域(40)の前方部分(42)および後方部分(43)は通常、互いに並び、これは、弾性関節運動がなされて関節屈曲(関節運動)力が途絶えた後に、関節屈曲部分(41)の復元弾性関節運動によって作り出された内部応力に起因して、関節屈曲部分(41)ならびに/または前方部分(42)および後方部分(43)が、前方部分(42)と後方部分(43)が相対的に並ぶところに向かって弾性復元する傾向があることを意味する。
【0070】
いくつかの実施形態では、関節屈曲部分(41)を含む先端区分の領域(第2の領域と呼ばれる場合もある)は、先端区分(40)の前方部分(42)および後方部分(43)(それぞれ、第1の領域および第3の領域と呼ばれる場合もある)よりも屈曲に対する抵抗が小さく、それによって、そこに屈曲力ないしモーメントをかけることによって、前方部分(42)が、任意選択で、実質的に関節屈曲しないままであるか、あるいはガイドワイヤ本体(31)の残りの部分に対して真っすぐのままでさえある後方部分(43)に対して関節運動(例えば回転)を行う。応力が加えられない場合は、先端区域(40)の前方部分(42)および後方部分(43)が、任意選択で、通常互いに並ぶか、あるいはそれらの間に名目上の位置決め角度αnomを形成し、これは、任意選択で、135°を超え、任意選択で、具体的には150°を超え、任意選択で、具体的には約180°である(すなわち、前方部分(42)および後方部分(43)は、通常、互いに真っすぐのものである)。前方部分(42)および後方部分(43)が名目上の相対的な位置決め、または応力が加えられていない相対的な位置決めからずれた場合は、任意選択で、関節屈曲部分(41)における屈曲に対する抵抗が増加する。いくつかの実施形態では、ガイドワイヤ(30)は、最大限許可される力Fmaxがかけられた場合に、前方部分(42)と後方部分(43)の間に最小限許容される関節角度αminを有するように構成されるか、および/または、規定され、これは、任意選択で、90°よりも大きく、任意選択で、約150°と約90°の間であり、任意選択で、具体的には約135°と約95°の間である。
【0071】
いくつかの実施形態では、関節屈曲部分(41)における屈曲に対する(最小)抵抗は、先端区分(40)の近傍した部分(42)および(43)が並ぶ場合に、(例えば、
図3Bで示されるように)ガイドワイヤ(30)の遠位端を血管壁(静脈の内壁構造)に押しつけると先端区分(40)を血管壁に突き刺すのに十分な最小限の軸方向の力よりも小さく、抵抗は、関節運動の程度に伴って、徐々に増加する。この特徴は、血管にガイドワイヤ(30)を差し込む間などに、宿主血管壁の意図せぬ穿孔を防止するのを助けるのに有利であるとみなされる可能性がある。
【0072】
任意選択でさらに、関節角度が、最小限許容される関節角度αminに近づくと、屈曲に対する抵抗が増加し、後方部分(43)を含む先端区域(40)の残りの部分である非関節運動部分の座屈に対する抵抗よりも大きくなる。この特徴は、ガイドワイヤ(30)を血管にさらに押し込むと、患者の血管構造を通じて、先端区域(40)を血管壁やアクセス針から離れて前方に、そして、場合によってはガイドワイヤの意図した操作方向とは反対に向け、それによって、アクセス針の近位にある血管壁への損傷(例えば、切開)を防止するか、あるいは軽減するのをさらに助け、任意選択で、その前に血管壁を意図せず突き刺した後でさえ、これを助けるのに有利である。
【0073】
いくつかの実施形態では、ガイドワイヤ(30)は、
図3Aに示されている針(120)などの少なくとも他の血管アクセス部材を含むキットに設けられている。キットはまた、シースおよび/またはダイレータを含んでいてもよい。針(120)は、遠位にある針先端(121)に遠位方向に近傍した斜角開口部(122)を含む。針(120)とガイドワイヤ(30)とは、斜角開口部(122)が先端区分(40)の前方部分(42)と長さが同様であるように構成され、それによって、ガイドワイヤ本体が血管壁に押しつけられると、前方部分(42)は、遠位にある針先端(121)に対して軸方向に突出するのに伴って、関節屈曲部分(41)を中心に関節運動するように構成される。いくつかの実施形態では、斜角開口部(122)は、長さが前方部分(42)と等しいか、あるいはそれよりも最大2mm大きい。あるいは、斜角開口部(122)は、長さが前方部分(42)と等しいか、あるいはそれよりも最大2mm小さくてもよい。
【0074】
次に、
図3A~
図3Eを参照するが、
図3A~
図3Eは、ガイドワイヤ(30)を送り込むための方法の実施に当たって考えられるシナリオを表したいくつかの図を概略的に示しており、これらは、任意選択で、例示的な血管アクセス法の一環としてのものである。いくつかの実施形態では、この血管アクセス法は、針(20)などの異なる種類のアクセス針を使用して適用できる。しかし、いくつかの例では、上記方法の結果を最大限にするために、および/または、血管壁を意図せず突き刺す可能性をさらに軽減するか、あるいは防止するために、針(120)を使用してこの例示的な手法を適用することがさらに有利である場合がある。
【0075】
最初に、針先端(121)が反対側の血管壁OBWに近傍するように位置付けられるまで、針(120)が、概して、意図したガイドワイヤの操作方向に血管BVに挿入される(
図3A)。その後、ガイドワイヤ(30)が針(120)に差し込まれ、それによって、先端区分(40)が斜角開口部(122)を介して針先端(121)を越えて突出するが(
図3B)、場合によっては、反対側の血管壁OBWに小さな陥凹部または圧縮部を引き起こして、引留め点を作り出し、ここで、ガイドワイヤの先端は、意図された操作方向にさらに移動することを抑制される。陥凹部または圧縮部は、そこにかけられる押付力に応じた大きさや、組織弾性および圧縮に対する抵抗を有してもよい。この段階では、関節屈曲部分(41)はすでに、針の斜角開口部(122)から少なくとも部分的に前方に(遠位方向に)突出している。
【0076】
図3Cは、血管BVにさらに押し込まれた後のガイドワイヤ(30)を示している。両方(先端区分(40)における長手方向の圧縮、および、反対側の血管壁OBWにおける圧縮に対する抵抗)が上昇すると、関節屈曲部分(41)に作用するモーメントが最終的には、屈曲に対する初期抵抗を超え、それによって、図示されているように、前方部分(42)が後方部分(43)に対して関節運動する。
【0077】
血管壁に対するガイドワイヤ本体(31)の長手方向の圧縮が特定の閾値(任意選択で予め定められた閾値、あるいは予め定められた範囲内)を超える場合、関節角度が名目上の位置決め角度α
nomと最小限許容される関節角度α
minの間にある場合、先端区分(40)は、ガイドワイヤ本体(31)の残りの部分に対して、関節屈曲部分(41)上に(近位方向に)座屈形状で座屈するように構成されている(
図3D)。前に記載されているように、座屈は、作り出された圧縮力が血管壁OBWを突き刺すのに十分になる前に生じるように設定されている。先端区分(40)は、任意選択で、選択または予め定められた向きに座屈するように構成され、それによって、座屈形状にある先端区分(40)の頂点(44)は、ガイドワイヤ本体(31)および血管壁OBWから離れるように、血管BV内で前方を向いている。
【0078】
さらに、後方部分(42)が血管壁OBWに対して実質的に水平であり、その側面の長さの大部分またはその全長に沿ってそれに押しつけられた場合に、それを通じて血管壁OBWにかけられる圧力が減少する。そのため、関節運動した前方部分(42)は、反対側の血管壁OBWに向かうさらなる横進行に対してストッパとして有効に機能し、それによって、ガイドワイヤ本体(31)の頂点(44)よりも近位部分の前方向の進行に影響を及ぼす。ガイドワイヤ(30)の血管BVへの前方向のさらなる進行に伴って、先端区分(40)は、任意選択で、(例えば、
図3Eに示されているように)前方に跳ね、血管輪郭に対してより真っすぐの形状を取り戻すことができる。
【0079】
図4A~
図4Eは、例示的な血管アクセス法を使用してガイドワイヤ(30)を送り込むための方法の実施に当たって考えられる他のシナリオを表したいくつかの図を概略的に示している。この一連のシナリオは、挿入後に血管壁を意図せずに突き刺した後の、ガイドワイヤ(30)の使用における起こり得る結果および/または考え得る利点に関するが、これは、ガイドワイヤがアクセス針から出るのに伴って、ガイドワイヤによる血管壁の初期突き刺しを引き起こす。例えば、ガイドワイヤ(30)および針(120)を含む専用キットを使用している場合と異なり、針(20)のような既製品の針を使用していると、このような出来事がより起こりやすい場合がある。
【0080】
示されているように、針先端(21)が意図せずに反対側の血管壁OBWを突き刺し、内部の血管壁層IWLの前に止まるまで、針(20)が血管BVに挿入される。その後、ガイドワイヤ(30)が針(20)に差し込まれ、それによって、内部の壁層IWLに達し、関節屈曲部分(41)が斜角開口部(22)に近傍するように位置するまで、先端区分(40)が関節屈曲部分(22)を介して針先端(21)を越えて突出する(
図4B)。このような段階で、関節屈曲部分(41)は自由に前方部分(42)を関節運動させることができ、針の先端区分(40)のさらなる進行に対する抵抗が増加して、
図4Cに示されているように、後方部分(43)、ガイドワイヤ(30)の残りの部分および針(20)を含む他の部材すべてに対して、前方部分(42)を関節運動させる。
【0081】
関節角度が名目上の位置決め角度α
nomと最小限許容される関節角度α
minの間にある場合は、先端区分(40)は、ガイドワイヤ本体(31)の残りの部分に対して、関節屈曲部分上で(近位方向に)座屈形状に座屈するように構成される(
図4D)。ガイドワイヤの先端区分(40)は、内側の壁層IWLを通じて反対側の血管壁OBWをさらに突き刺すのに十分な軸方向の力に達する前に座屈が起こるように設定されるように構成される。先端区分(40)は、任意選択で、選択または予め定められた向きに座屈するように構成され、それによって、座屈形状にある先端区分(40)の頂点(44)は、ガイドワイヤ本体(31)および血管壁OBWから離れるように、血管BV内で前方を向いている。
【0082】
さらに、後方部分(42)が内側の壁層IWLに対して実質的に水平であり、その側面の長さの大部分またはその全長に沿ってそれに押しつけられた場合に、それを通じて内側の壁層IWLにかけられる圧力が減少する。そのため、関節運動した前方部分(42)は、反対側の血管壁OBWに向かうさらなる横進行に対してストッパとして有効に機能し、それによって、ガイドワイヤ本体(31)の頂点(44)よりも近位部分の前方向の進行に影響を及ぼす。ガイドワイヤ(30)の血管BVへの前方向のさらなる進行に伴って、先端区分(40)は、任意選択で、(例えば、
図4Eに示されているように)前方に跳ね、血管輪郭に対してより真っすぐの形状を取り戻すことができる。
【0083】
図5A~
図5Iを参照すると、
図5A~
図5Iは、ガイドワイヤ(30)のいくつかの例示的な変形例の断面側面図を示している。
図4Aは、中間区分(35)の一部と先端区分(40)全体と共に、ガイドワイヤ(30)の変形例(50)を示している。ガイドワイヤの変形例(50)は、ガイドワイヤの長さの大部分またはその全長に沿って延在する弾性の芯部材(51)を含み、これは、任意選択で、Ni-Ti合金などの金属合金で形成されたものである。芯部材(51)は、第2の遷移点(36)で幅が狭くなり、それによって、ガイドワイヤ中間区分(35)の長さの大部分またはその全長に沿ってよりもガイドワイヤの先端区分(40)の長さの大部分またはその全長に沿って幅が狭くなる。また、先端区分(40)に沿って延在する芯部材(51)の部分も、中間区分(35)に沿って延在する芯部材(51)の残りの部分に対して、ならびに、任意選択で、ガイドワイヤ近位区分(32)に対しても偏心する。芯部材(51)は、先端区分(40)に沿った柔軟性のある素材のマトリックス(52)に少なくとも部分的に埋め込まれており、座屈に対して最小限の抵抗を有し、それによって、先端区分(40)の断面全体は、ガイドワイヤ中間区分(35)に沿った芯部材(51)の残りの長さと同心である。ワイヤの狭幅部は、慣性モーメントを減少させ、それによって、結果として、長手方向の圧縮に伴って座屈力を減少させる。中心間の距離に対する偏心、およびワイヤの直径に対する偏心によって、非対称の構造が形成され、よって、長手方向の圧縮に伴って座屈力を減少させか、および/または、モーメントが生み出されることに起因して、座屈から屈曲に動きを変えることができる。柔軟性のあるマトリックスで覆うことで、ワイヤの一般的な直径を維持しながら、小さい半径で大きな屈曲力が可能になる。
【0084】
図5Bは、ガイドワイヤの変形例(50)の先端区分の変形例(55)を示しており、ここで、先端区分は、2つの長手方向に離れた点(56)および(57)で幅が狭くなり、それによって、先端区分(40)の遠位部分(58)は、先端区分の近位部分(59)よりも柔軟になり、座屈に対する抵抗が小さくなり、一方、近位部分(59)は、ガイドワイヤ中間区分(35)よりも柔軟になり、座屈に対する抵抗が小さくなる。
図4Cは、ガイドワイヤの変形例(50)の先端区分の変形例(60)を示しており、ここで、芯部材(51)は、先端区分(40)に沿って短い陥凹部の形態の少なくとも1つの関節屈曲部分(61)を有し、これは、関節屈曲部分(61)に隣接した先端区分(40)の近傍した部分(62)および(63)の相対的な弾性関節運動を促進するように、あるいは引き起こすように構成されている。
【0085】
図5Dは、ガイドワイヤの変形例(50)の先端区分の変形例(65)を示しており、ここで、芯部材(51)は、ガイドワイヤの遠位端(37)から離れて離間した遠位端(66)を有し、それによって、芯部材の遠位端(66)とガイドワイヤの遠位端(37)との間に延在する先端区分(40)の最遠位部分(67)がマトリックス(52)のみによって占められるようにする。そのマトリックス(52)は、マトリックス(52)に埋め込まれた芯部材(51)よりも実質的により柔軟性があるか、あるいは展性があるので、最遠位部分(67)は、関節屈曲部分(41)として機能的に構成され、芯部材の遠位端(66)を中心に、先端区分(40)の残りの部分に対する弾性関節運動を促進する。
【0086】
図5Eは、ガイドワイヤの変形例(50)の先端区分の変形例(70)を示しており、ここで、芯部材(51)の狭幅部は、ガイドワイヤ中間区分(35)から先端区分(40)の第1の側面(71)に沿って真っすぐに偏心して延在し、湾曲部分(72)で先端区分(40)の第2の側面(73)に向かって湾曲し、第2の側面(73)は、任意選択で、第1の側面(71)の反対側であり、芯部材(51)の狭幅部は、ガイドワイヤの遠位端(37)に向かって先端区分(40)の第2の側面(73)に沿ってさらに真っすぐに偏心して延在して終わる。この形態では、湾曲部分(72)は、関節屈曲部分(41)として機能的に構成されるか、および/または、湾曲部分(72)の遠位にある先端区分(40)の部分は、先端区分(40)の残りの部分に対して関節運動部分(42)として機能的に構成されていてもよい。
【0087】
図5Fは、ガイドワイヤの変形例(50)の先端区分の変形例(75)を示しており、ここで、芯部材(51)の狭幅部分は、ガイドワイヤ中間区分(35)から同心的に真っすぐに延在し、先端区分(40)の長さの少なくとも一部分に沿って徐々に幅が狭くなり続ける。芯部材(51)は、ガイドワイヤの遠位端(37)で拡大し、任意選択で、ガイドワイヤ中間区分(35)の外径まで拡大し、そして、ガイドワイヤ(30)の丸みを帯びた先端を形成する。芯部材(51)は、先端区分(40)に関節屈曲部分(76)を有し、これは、任意選択で、スリットまたは陥凹の形態のものを有し、関節屈曲部分(76)に隣接した先端区分(40)の近傍した部分(77)および(78)の相対的な弾性関節運動を促進するか、あるいは引き起こすように構成される。
【0088】
図5Gは、先端区分の変形例(75)の変形例(80)を示しており、ここで、芯部材(51)は、ガイドワイヤ中間区分(35)に沿ったところの芯部材の直径よりも実質的に薄肉であるが、先端区分(40)の近位方向に近傍した部分(78)に沿ったところよりも最遠位部分(77)に沿って厚肉である。厚さの差は、屈曲に対するワイヤの抵抗に影響を及ぼし、よって、先端区分(75)が区分(78)より前に屈曲することを防止する(
図3Dに示されているように、区分(42)は、屈曲した区分(43)とは対照的に、真っすぐに保たれる)。
図4Hは、先端区分(75)の異なる変形例(81)を示しており、ここで、関節屈曲部分(76)は、コイルまたはばねとして構造的におよび/または機能的に構成される。コイル状領域は、関節屈曲部分と屈曲メカニズムとを規定し、ここで、ばね内で作り出される力に起因してコイル状領域が圧縮されて撓められる。
【0089】
図5Iは、ガイドワイヤ(30)の変形例(82)を示しており、ここで、先端区分(40)に沿ったところの芯部材(51)は、ガイドワイヤ中間区分(35)に沿ったところよりも実質的に幅が狭くなっており、第2の遷移点(36)における先端区分(40)の側面からガイドワイヤの遠位端(37)における先端区分(40)の反対側の側面まで螺旋状に巻かれている。芯部材(51)は、先端区分(40)に沿ってマトリックス(52)に少なくとも部分的に埋め込まれ、座屈に対する抵抗が最小限であり、それによって、先端区分(40)の断面全体は、ガイドワイヤ中間区分(35)に沿ったところの芯部材(51)の残りの長さと同じ外径を有する。先端区分(40)の螺旋状の構造は、真っすぐの設計に比べて屈曲に対するその抵抗を大幅に減少させる。
【0090】
図6A~
図6Bは、それぞれ、ガイドワイヤ(30)の別の例示的な変形例(85)の斜視図と、側面断面図とを示している。この変形例では、ガイドワイヤ(30)は、ガイドワイヤの長さの大部分またはその全長に沿って延在する弾性の芯部材(86)を含み、これは、任意選択で、Ni-Ti合金などの金属合金で形成されたものである。芯部材(86)は、第1の遷移点(34)で幅が狭くなり、それによって、ガイドワイヤ近位区分(32)の長さの大部分またはその全長に沿ったところよりもガイドワイヤ中間区分(35)の長さの大部分またはその全長に沿って幅が狭くなる。芯部材(86)は、第2の遷移点(36)でさらに幅が狭くなり、それによって、ガイドワイヤ中間区分(35)の長さの大部分またはその全長に沿ったところよりもガイドワイヤの先端区分(40)の長さの大部分またはその全長に沿って幅が狭くなる。
【0091】
芯部材(86)は、ガイドワイヤ先端区分(40)および中間区分(35)に沿ってカバー要素(87)で覆われており、ガイドワイヤ近位区分(35)の最大または平均の直経と同様または同一の最大または平均の直経を有し、それによって、ガイドワイヤ(30)は、通常、少なくともその長さの大部分に沿って略一定の直径を有する。カバー要素(87)は、その長さの大部分またはその全長に延在するコイル状構造を形成するコイル状部材を含む。コイル状構造によって、良好な柔軟性特性および同様の押し込み性を維持しながら、同じ直径を有する単一ワイヤよりも良好に屈曲する半径が可能になる。カバー要素(87)は、コイル構造の固定した巻き戻しまたは矯正を行うように構成されたコイル構造の局所的な固定した変形(88)を有する。そのため、固定した変形(88)は、固定した変形(88)と分離した先端区分(40)の近傍した部分(42)および(43)の相対的な弾性関節運動を促進するために、関節屈曲部分(41)として機能的に構成される。
【0092】
図7A~
図7Bは、コイル状部材を含むガイドワイヤ(100)の断面側面図を概略的に示している。ガイドワイヤ(100)は、任意選択で、ガイドワイヤ(30)の変形例であり、例えば、
図3A~
図3Eおよび/または
図4A~
図4Eを参照して記載されているような例示的なシナリオに沿って上記方法を実施する場合などに、構造、機能および/または実装形態がそれに本質的に同様であるか、および/または、少なくとも部分的に同様である。ガイドワイヤ(100)は、ガイドワイヤ本体(101)を含み、ガイドワイヤ本体(101)は、ガイドワイヤ近位区分(102)、先端区分(103)、および、相互接続または隣接したガイドワイヤ近位区分(102)と先端区分(103)との間に延在するガイドワイヤ中間区分(104)を含む。ガイドワイヤ中間区分(104)の長さの大部分またはその全長に沿ったガイドワイヤ中間区分における屈曲に対する抵抗は、ガイドワイヤ近位区分(102)の長さの大部分またはその全長に沿ったところの屈曲に対する抵抗よりも小さい。
【0093】
先端区分(103)は、局所的な関節屈曲部分(105)を含み、局所的な関節屈曲部分(105)は、ガイドワイヤ中間区分(104)における屈曲に対する抵抗、ならびに、先端区分(103)の近傍した(関節屈曲部分(105)から遠位方向に延在する)前方部分(106)および(関節屈曲部分(105)から近位方向に延在する)後方部分(107)における屈曲に対する抵抗よりも実質的に小さい、屈曲に対する抵抗を有し、それによって、後方部分(107)および/またはガイドワイヤ中間区分(104)に対する前方部分(106)の局所的な弾性関節運動に影響を及ぼす。関節屈曲部分(105)は、前方部分(106)が既に関節運動して後方部分(107)に対して傾斜している場合に、ガイドワイヤ本体(101)が血管壁を十分に長手方向に圧縮するのに伴って、後方部分(107)の弾性復元可能な座屈を促進し、それを引き起こすように構成される。先端区分(103)は、ガイドワイヤ本体(101)全部に沿った押し込み性およびガイドワイヤ中間区分(104)に沿った横方向の柔軟性の増加など、必要とされる特性全体を実質的に保持するために、ガイドワイヤ本体(101)の近位区分(102)および中間区分(104)に比べて長さが非常に短い。しかし、先端区分(103)は、処理する血管内における前方部分(106)の関節運動と、後方部分(107)の座屈の両方を促進するのに十分な長さでなければならない。いくつかの実施形態では、先端区分(103)は、全長が約20mm以下であり、任意選択で、具体的には約10mm以下であり、あるいは任意選択で、具体的には約5mm以下である。関節屈曲部分(105)の全長は、任意選択で、約3mm以下であり、任意選択で、約1mm以下であり、あるいは任意選択で、約0.5mm以下であり、そして(例えば、その中心が)ガイドワイヤ本体の遠位端から約5mm以内まで離れており、任意選択で、具体的には約1mm以内まで離れている。関節屈曲部分は、任意選択で、直径が後方部分(107)の直径および/またはガイドワイヤ中間区分(104)と実質的に等しい。
【0094】
いくつかの実施形態では、関節屈曲部分(105)は、屈曲に対する可変抵抗を有するように構成され、任意選択で、前方部分(106)と後方部分(107)との間に形成される関節角度βが縮小し、(
図7Aに示されているように)真っすぐの場合の第1の角度β1から(
図7Bに示されているように)完全に関節屈曲した場合の第2の角度β2になるなどした場合に、可変抵抗が拡大する。いくつかの実施形態では、前方部分(106)と後方部分(107)とが並んだ場合に、関節屈曲部分(105)における屈曲に対する抵抗は、先端区分(103)によって血管壁が突き刺されるのに対する抵抗よりも小さく、それによって、前方部分(106)は、血管壁を通じて意図せず突き刺したり、または突き刺し続けたりするのではなく、関節屈曲部分(105)を中心に関節運動する可能性がより高くなり、関節屈曲した場合に(すなわち、関節角度が実質的にβ1よりも小さく、β2により近い場合に)、前方部分(106)は、ストッパとして機能し、さらなる突き刺しに抵抗するように構成される。第2の角度β2は、任意選択で、最小限許容される関節角度βであり、任意選択で、150°と90°の間であり、任意選択で、具体的には135°と95°の間である。先端区分(103)は、関節角度βが第1の角度β1と第2の角度β2の間にある場合に、ガイドワイヤ本体(101)の遠位端に接する血管壁から逆にかけられる力によって、後方部分(107)の座屈を引き起こすか、あるいはその可能性を増加させることができる内部応力を作り出すように構成される。いくつかのこのような実施形態では、前方部分(106)および後方部分(107)が第1の角度β1よりも大きな、最小限許容される関節角度(第2の)角度β2などの関節角度βを形成する場合に、関節屈曲部分(105)における屈曲に対する抵抗は、先端区分(103)の後方部分(107)における座屈に対する抵抗よりも大きい。
【0095】
弾性の芯部材(108)は、ガイドワイヤ本体(101)の長さの大部分またはその全長に沿って延在し、任意選択で、必須ではないが、例えば、単一の素材または押出からできている。芯部材(108)は、任意選択で、Ni-Ti合金などの形状記憶合金および/または超塑性合金で形成されており、先端区分(103)に沿って関節屈曲部分(105)を組み込んでいる。芯部材(108)は、ガイドワイヤ近位区分(102)およびガイドワイヤ中間区分(104)に隣接した第1の遷移点(111)で、もしくはこれに近傍するところで少なくとも1つの狭幅部(109)を含んでいてもよい。狭幅部(109)は、比較的急峻であってもよい(例えば、例として直径が1つ以上の傾斜および/または段差状に縮小)。いくつかの実施形態では、狭幅部から遠位方向に、芯部材(108)は、ガイドワイヤ中間区分(104)の長さに沿って、直径が円錐台と同様に連続的かつ徐々に縮小する(図示されるように)。狭幅部(109)は、狭幅部(109)の近位にある第1の芯部材直径D1から、狭幅部(109)の遠位にある、第1の芯部材直径D1よりも小さい第2の芯部材直径D2まで、芯部材(108)の直径を縮小する。第1の芯部材直径D1は、任意選択で、ガイドワイヤ本体(101)の全体の外径に実質的に等しく、任意選択で、0.2mmと1.2mmの範囲内であり、あるいは任意選択で、0.3mmと0.6mmの範囲内であり、あるいは任意選択で、約0.45mmである。第1の芯部材直径D1は、第1の遷移点(111)を含むガイドワイヤ近位区分(102)の長さの大部分またはその全長に沿って実質的に一定であってもよい。第2の芯部材直径D2は、第1の芯部材直径D1よりも少なくとも約0.1mm小さくてもよく、第1の遷移点(111)の遠位に数ミリメートル以内に位置し、任意選択で、約1mm以内に位置していてもよい。
【0096】
先端区分(103)は、第2の遷移点(114)でガイドワイヤ中間区分(104)に隣接し、示されているように、狭幅部なしで関節屈曲部分(105)まで、またはそこを超えるまで略円錐形を続けてもよいが、しかし、芯部材(108)は、第2の遷移点(114)で、もしくはこれに近傍するところで、第2の狭幅部を含んでいてもよい。芯部材(108)はまた、関節屈曲部分(105)の近位に拡幅部を含んでもよく、それによって、芯部材(108)は、拡幅部(110)の近位にある第3の芯部材直径D3から、拡幅部(110)の遠位にある第4の芯部材直径D4(第3の芯部材直径D3よりも大きい)まで、直径が拡大している。第3の芯部材直径D3は、任意選択で、第2の芯部材直径D2よりも実質的に小さく、例えば、第2の芯部材直径D2の約50%以下、任意選択で、第2の芯部材直径D2の約3分の1である。拡幅部(110)は、比較的急峻であってもよく(例えば、図示されているように、直径が1つ以上の段差状に拡大)、あるいは前方部分(106)に沿って徐々に傾斜してもよい。第4の芯部材直径D4は、第1の芯部材直径D1と実質的に等しいか、あるいはそれよりも小さくてもよく、任意選択で、先端区分(103)の最大直径であり、任意選択で、具体的にはその前方部分(106)の先端区分(103)の最大直径である。
【0097】
芯部材(108)は、円筒形のコイル状部材で少なくとも部分的に覆われており、これは、狭幅部(109)と拡幅部(110)の間に(任意選択で、狭幅部(109)の近傍から拡幅部(110)の近傍まで)延在する。コイル状部材(112)は、実質的に一定の外径を有しており、第1の芯部材直径D1および/または第4の芯部材直径D4と実質的に等しく、それによって、ガイドワイヤ本体(101)の全体の直径は、ガイドワイヤ中間区分(104)の長さの大部分またはその全長に沿ったところを含み、実質的に一定であるか、および/または、第1の芯部材直径D1と等しい。コイル状部材(112)は、任意選択で、ばね、および/または、例えば、ステンレス鋼もしくは金めっきされたタングステンなどの弾性金属合金で形成されており、狭幅部(109)で、もしくはこれに近傍するところで、および/または、拡幅部(110)で、もしくはこれに近傍するところで、そのそれぞれの端部が芯部材(108)に固定される。
【0098】
図8A~
図8Dは、ガイドワイヤ(100)の先端区分(103)を形成するための方法を実施するに当たって考えられるシナリオを表したいくつかの図を概略的に示している。第1の任意のシナリオは、研削などによって、芯部材(108)の長さ部分(115)を薄肉化することを含んでもよく(
図8Aに薄肉化前が示されている)、それによって、第1の芯部材直径D1からこの長さに沿って直径がより薄肉に縮小し、任意選択で、円錐形状に縮小し、拡幅部(110)の近位方向に近傍した第3の芯部材直径D3を有する(
図8Bに示されているように)。薄肉化された長さ部分(115)は、任意選択で、関節屈曲部分(105)の遠位方向にある先端区分(103)の長さに等しく、任意選択で、具体的にはその後方部分(107)の長さに等しい。芯部材(108)の長さ部分(115)を薄肉化することによって、この長さに沿って屈曲および/または座屈に対するその抵抗が減少される。
【0099】
図8Bは、第2のシナリオも示しており、ここで、関節屈曲部分(105)は、芯部材(108)の目的とする長さ(116)に焦点を合わせた局所的な熱処理によって適当な状態にされ、これは、任意選択で、約5mm以下であり、任意選択で、具体的には約3mm以下であり、あるいは任意選択で、具体的には約1mm以下である。熱処理には、レーザ加熱、誘導加熱および/またはジュール(例えば、直接通電)加熱の使用が含まれてもよい。例示的なレーザ加熱は、連続的であってもよく、あるいはレーザ源(117)から投影された複数のレーザパルスとして施され、芯部材(108)の一方側またはその付近の目的とする長さ(116)に正確に向けられてもよい。任意選択で、熱処理は、目的とする長さ(116)に沿って、芯部材(108)の部分の温度を、選択された期間にわたって、任意選択で、約1分以下の期間にわたって、任意選択で、正味合計で数秒にわたって、約500℃以下までなどの選択された最大温度まで上昇させるように構成されている。熱処理は、関節屈曲部分(105)を形成する治療領域の柔軟性を増加させるように構成されており、それによって、屈曲に対するその抵抗と、任意選択で、その降伏強度も増加する。
【0100】
関節屈曲部分(105)の形成に続いて、コイル状部材(112)は、中間区分(104)および先端区分(103)の長さに沿って芯部材(108)上に配置され(
図8Cに示されているように)、その後、そこに固定されることができる。コイル状部材(112)の遠位端は、芯部材(108)に、関節屈曲部分(105)の遠位方向に固定され、任意選択で、接着、溶接、リベット接合、ろう付けまたははんだ付けによって固定され、任意選択で、(
図8Dに示されているように)先端部材(118)の遠位端が、芯部材(108)の自由端(119)に固定されてもよい。先端部材(118)は、その解放を防止するためにコイル状部材(112)の外径と等しい、あるいはそれよりも大きい最大外径を有してもよく、その最大外径は、任意選択で、第1の芯部材直径D1および/または第4の芯部材直径D4と等しい。コイル状部材(112)の近位端は、接着剤を使用した結合などによって、芯部材(108)に固定されてもよく、任意選択で、狭幅部(109)の近傍に固定されてもよい。いくつかの実施形態では、先端部材(118)は、以前に、関節屈曲部分(105)を形成するために熱処理において施される同一のレーザ源(117)を使用して、芯部材(108)および/またはコイル状部材(112)に溶接される。レーザ源(117)は、芯部材(108)に対して第1の位置から、芯部材(108)に対して第2の位置まで、そして、目的とする長さの熱処理過程のために必要とされるレーザ作動パラメータの第1のセットから、先端部材(118)の溶接過程のために必要とされるレーザ作動パラメータの第2のセットまで、レーザ源(117)をずらすようにプログラムされたCADシステムに接続されてもよい。
【実施例】
【0101】
実施例1
ガイドワイヤの金属芯部は、中心をガイドワイヤの遠位端からおよそ3mm離して、およそ1mm径のスポットサイズで施されるレーザによって熱処理を施した。レーザの下でワイヤを回転させ、より高い柔軟性を有する区分を形成するために、先端の部分に熱処理を施した。
【0102】
その後、ガイドワイヤは、2020年8月30日付けで動物試験により試験した。ガイドワイヤは、試験ヒツジの血管に、水平から60度を超える角度で挿入した。ガイドワイヤの挿入手順は、挿入中に透視下にて観察した。
【0103】
結果は、
図9A~
図9Dに示されている。
図9Aは、針を通じて最初に血管に差し込まれるガイドワイヤを示している。
図9Bでは、血管壁上に急峻な挿入力を押しつけ、そこに窪みを形成している。
図9Cは、下側の血管壁を穿刺することなく、以上に記載されているガイドワイヤの座屈が解放されると、ガイドワイヤの先端が弾性復元するのを示している。
図9Dは、血管に展開し、血管構造に進行させる準備ができたガイドワイヤを示している。
【0104】
本明細書で使用される場合、単数の文法形態で書かれている以下の用語「a」、「an」、および「the」のそれぞれは、「少なくとも1つ」、または「1つ以上」を意味する。本明細書において、句「1つ以上」の使用は、「a」、「an」、または「the」のこの意図された意味を変更しない。したがって、本明細書で使用される場合、用語「a」、「an」、および「the」は、本明細書で別途明確に定義または記述されない限り、または文脈が別途明確に指示しない限り、記述された複数の実体または対象を指し、それらを包含することもできる。また、例えば、本明細書で使用される場合、句「ユニット」、「デバイス」、「アセンブリ」、「メカニズム」、「構成要素」、「要素」、および「工程または手順」は、それぞれ、複数のユニット、複数のデバイス、複数のアセンブリ、複数のメカニズム、複数の構成要素、複数の要素、および複数の工程または手順を指し、それらを包含することもできる。
【0105】
本明細書で使用される場合、以下の用語「含む(includes)」、「含むこと(including)」、「有する(has)」、「有すること(having)」、「含む(comprises)」、および「含むこと(comprising)」、ならびに、それらの言語上/文法上の変形、派生語、または/および活用のそれぞれは、「含むが、これらに限定されない」を意味し、記述された構成要素、機能、特徴、パラメータ、整数、または工程を特定するものとして解釈されるべきであり、1つ以上のさらなる構成要素、機能、特徴、パラメータ、整数、工程、またはそれらの群の追加を排除しない。これらの用語のそれぞれは、「実質的に・・・からなる」という句と意味が同等であるとみなされる。
【0106】
本明細書で使用される場合、用語「方法」は、開示されている本開示の関連分野で実務者によって、既知の工程、手順、様式、手段、または/および手法から既知であるか、あるいは容易に開発される工程、手順、様式、手段、または/および手法を含むが、これらに限定されない、所与のタスクを達成するための工程、手順、様式、手段、または/および手法を指す。
【0107】
本開示全体を通して、パラメータ、機能、特徴、対象、または寸法の数値は、数値範囲の形式に関して記述または記載されている場合がある。本明細書で使用される場合、そのような数値範囲の形式は、本開示のいくつかの例示的な実施形態の実装形態を示すものであり、本開示の例示的な実施形態の範囲を確固として限定するものではない。したがって、記述または記載された数値範囲は、その記述または記載された数値範囲内のすべての考えられる部分的な範囲および個々の数値(数値は全体として、整数または小数で表される場合がある)も指し、これらを包含する。例えば、記述または記載された数値範囲「1~6」は、「1~3」、「1~4」、「1~5」、「2~4」、「2~6」、「3~6」などのすべての考えられる部分的な範囲と、「1」、「1.3」、「2」、「2.8」、「3」、「3.5」、「4」、「4.6」、「5」、「5.2」、および「6」などの、記述または記載された数値範囲「1~6」内の個々の数値も指し、これらを包含する。これは、記述または記載された数値範囲の数値幅、範囲、または大きさにかかわらず適用される。
【0108】
さらに、数値範囲を記述または記載するために、「第1の数値付近と第2の数値付近との間の範囲にある」という句は、「第1の数値付近から第2の数値付近までの範囲にある」という句と同等であるとみなされ、同じことを意味し、したがって、2つの同等の意味の句は、互換的に使用される場合がある。例えば、室温の数値範囲を記述または記載するために、「室温とは、約20℃と約25℃との間の範囲の温度を指す」という句は、「室温とは、約20℃から約25℃までの範囲の温度を指す」という句と同等であるとみなされ、同じことを意味する。
【0109】
本明細書で使用される場合、用語「約」は、記述された数値の±10%を指す。
【0110】
本開示の特定の態様、特徴、および機能は、明確にするために、複数の別個の実施形態の文脈または形式で例示的に記載および提示され、単一の実施形態の文脈または形式で任意の適切な組み合わせまたは部分的な組み合わせで例示的に記載および提示される場合もあることを十分に理解されたい。逆に、単一の実施形態の文脈または形式で組み合わせまたは部分的な組み合わせで例示的に記載および提示される本開示の様々な態様、特徴、および機能は、複数の別個の実施形態の文脈または形式で例示的に記載および提示される場合もある。
【0111】
本開示は、特定の例示的な実施形態およびその例によって例示的に記載および提示されてきたが、その多くの変更、修正、または/および変形が当業者には明らかであることは明白である。したがって、このような変更、修正、または/および変形はすべて、添付の特許請求の範囲の広い範囲の精神内に入るものであり、それによって包含されるものであることが意図される。
【0112】
本開示において引用または参照されるすべての刊行物、特許、または/および特許出願は、それぞれの個々の刊行物、特許、または/および特許出願が参照により本明細書に組み込まれるように具体的かつ個々に示されたのと同じ程度まで、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。さらに、本明細書における任意の参考文献の引用または特定は、そのような参考文献が本開示の先行技術を表しているか、あるいはそれらに対応していることを認めるものとして解釈または理解されてはならない。欄の見出しが使用される限り、それらは必ずしも限定するものとして解釈されるべきではない。
【0113】
本明細書で記載される物または動作の特徴または特性の絶対値について記載されている場合、用語「本質的」、「実質的に」、「本質的に」、「およそ」、および/または他の程度の用語もしくは句は、数字範囲を具体的に記載することなく使用される。本明細書で記載される物または動作の特徴または特性に適用される場合、これらの用語は、その特徴または特性に関連した所望の機能をもたらすことと一致した特徴または特性の範囲を指す。
【0114】
本開示で説明される実装形態に対する様々な変更形態は、当業者であれば容易に明らかになることができ、本明細書で定義される一般的原理は、本開示の精神または範囲から逸脱することなく他の実装形態にも適用されることができる。したがって、本開示は、本明細書に示される実装形態に限定されるように意図されておらず、本明細書に開示される請求項、原理および新規な特徴と矛盾しない最も広い範囲が許容されるべきである。「例示的」という単語は、本明細書では「例、事例、または例示として機能すること」を意味するために使用される。本明細書で「例示的」であるとして記載されるいかなる実装形態も、必ずしも他の実装形態よりも好ましいまたは有利であると解釈されるべきではない。
【0115】
また、別個の実装形態の文脈で本明細書に記載される特定の特徴は、単一の実装形態において組み合わせて実施されることができる。また、逆に、単一の実装形態の文脈で記載される様々な特徴は、複数の実装形態において別個に、または任意の適切な部分的な組み合わせで実施されることができる。さらに、特徴は、特定の組み合わせで動作するとして以上で記載され、初めにそのように請求されていることさえあるが、請求される組み合わせからの1つ以上の特徴は、場合によってはその組み合わせから削除されてもよく、請求される組み合わせは、部分的な組み合わせ、または部分的な組み合わせの変形でもよい。
【0116】
本明細書で開示される方法は、記載される方法を達成するための1つ以上の工程または動作を含む。本方法の工程および/または動作は、特許請求の範囲から逸脱することなく互いに交換され得る。言い換えれば、工程または動作の特定の順序が指定されていない限り、特定の工程および/または動作の順序および/または使用は、特許請求の範囲から逸脱することなく変更され得る。
【国際調査報告】