(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-31
(54)【発明の名称】ウイルス検出
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/6844 20180101AFI20230324BHJP
C12Q 1/6888 20180101ALI20230324BHJP
C12M 1/00 20060101ALI20230324BHJP
C12M 1/34 20060101ALI20230324BHJP
C12N 15/09 20060101ALI20230324BHJP
C12Q 1/6834 20180101ALI20230324BHJP
【FI】
C12Q1/6844 Z
C12Q1/6888 Z
C12M1/00 A
C12M1/34 B
C12M1/34 Z
C12N15/09 Z
C12Q1/6834 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022544840
(86)(22)【出願日】2021-01-25
(85)【翻訳文提出日】2022-09-13
(86)【国際出願番号】 GB2021050161
(87)【国際公開番号】W WO2021148816
(87)【国際公開日】2021-07-29
(32)【優先日】2020-01-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(32)【優先日】2020-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】520381193
【氏名又は名称】センス バイオディテクション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100097456
【氏名又は名称】石川 徹
(72)【発明者】
【氏名】ヘンリー ジョン ランブレ
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド ロイド
【テーマコード(参考)】
4B029
4B063
【Fターム(参考)】
4B029AA07
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4B063QX02
(57)【要約】
本発明は、試料中の標的病原体インフルエンザAウイルス及びインフルエンザBウイルス並びに任意に呼吸器合胞体ウイルスを検出及び識別するためのキット及び方法、並びに該キットを含み、かつ該方法における使用のための装置を対象とする。本発明は、制限酵素、ポリメラーゼ、及びオリゴヌクレオチドプライマーを利用して、標的病原体の存在下で、増幅産物を生産し、該増幅産物をオリゴヌクレオチドプローブと接触させてディテクタ種を生産する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料中の標的病原体インフルエンザA及びインフルエンザBを検出及び識別するためのキットであって、該キットは各病原体に対する:
h)プライマー対であって:
iii.5'から3'の方向に、制限酵素認識配列及び切断部位、並びに病原体由来RNA中の第1のハイブリダイゼーション配列とハイブリダイズすることが可能な領域を含む、第1のオリゴヌクレオチドプライマー;並びに
iv.5'から3'の方向に、制限酵素認識配列及び切断部位、並びに該病原体由来RNA中の該第1のハイブリダイゼーション配列の上流の第2のハイブリダイゼーション配列の逆相補鎖とハイブリダイズすることが可能な領域を含む、第2のオリゴヌクレオチドプライマーを含み、
該第1のハイブリダイゼーション配列及び該第2のハイブリダイゼーション配列が、20塩基以下により隔てられている、前記プライマー対;
i)ニッキング酵素ではなく、該第1のプライマー及び該第2のプライマーの認識配列を認識し、かつそれらの切断部位を切断することが可能な制限酵素;並びに
j)プローブ対であって:
iii.該病原体由来RNAの存在下で生産される増幅産物中の少なくとも1つの種の第1の一本鎖検出配列とハイブリダイズすることが可能であり、かつそのプローブが、その検出を可能にする部分と結合している、ハイブリダイゼーション領域を有する第1のオリゴヌクレオチドプローブ;及び
iv.該増幅産物中の該少なくとも1つの種の該第1の一本鎖検出配列の上流又は下流の第2の一本鎖検出配列とハイブリダイズすることが可能であり、かつそのプローブが固体材料又は固体材料とのその結合を可能にする部分と結合する、ハイブリダイゼーション領域を有する、第2のオリゴヌクレオチドプローブ、を含み
ここで、少なくとも1つの該標的病原体に対する該プローブ対の該第1のオリゴヌクレオチドプローブ及び該第2のオリゴヌクレオチドプローブのうちの一方が、そのハイブリダイゼーション領域の3'末端におけるDNAポリメラーゼによる伸長が阻止されて、該ハイブリダイゼーション領域中で該制限酵素により切断されることが可能でない、前記プローブ対、を含み、
該キットは:
k)逆転写酵素;
l)鎖置換型DNAポリメラーゼ;
m)dNTP;及び
n)1以上の修飾dNTP、も含む、前記キット。
【請求項2】
インフルエンザA及び/又はインフルエンザB由来RNAに対する前記第1のハイブリダイゼーション配列及び前記第2のハイブリダイゼーション配列が、インフルエンザゲノムの分節1、2、3、5、7、又は8のうちの1つの中にあり、又はこれに由来する、請求項1記載のキット。
【請求項3】
病原体呼吸器合胞体ウイルスに対する構成要素a)、b)、及びc)をさらに含む、前記標的病原体インフルエンザA、インフルエンザB、及び呼吸器合胞体ウイルスを検出及び識別するための、請求項1又は2記載のキット。
【請求項4】
同じプライマー対及びプローブ対を使用して、呼吸器合胞体ウイルスA及び呼吸器合胞体ウイルスBの両方を検出する、請求項3記載のキット。
【請求項5】
呼吸器合胞体ウイルスに由来するRNAに対する前記第1のハイブリダイゼーション配列及び前記第2のハイブリダイゼーション配列が、呼吸器合胞体ウイルスA及びBのNS2(非構造タンパク質2)、N(核タンパク質)、F(融合糖タンパク質)、M(マトリックス)、又はL(ポリメラーゼ)遺伝子のうちの1つの中にあり、又はこれに由来する、請求項4記載のキット。
【請求項6】
各々の病原体に対する前記プローブ対の前記第1のオリゴヌクレオチドプローブ及び前記第2のオリゴヌクレオチドプローブのうちの一方が、そのハイブリダイゼーション領域の3'末端におけるDNAポリメラーゼによる伸長が阻止されて、該ハイブリダイゼーション領域中で前記制限酵素によって切断されることが可能でない、請求項1~5のいずれか1項記載のキット。
【請求項7】
阻止されたオリゴヌクレオチドプローブが、1以上の配列ミスマッチ及び/又は1以上の修飾、例えばホスホロチオエート結合の存在により、前記制限酵素によって切断されることが可能でなくなっている、請求項1~6のいずれか1項記載のキット。
【請求項8】
前記阻止されたオリゴヌクレオチドプローブが、該阻止されたオリゴヌクレオチドプローブがそれに対してハイブリダイズする前記増幅産物中の種の3'末端が、前記鎖置換型DNAポリメラーゼによって伸長され得るように、さらなる領域を含む、請求項1~7のいずれか1項記載のキット。
【請求項9】
病原体に対する前記阻止されたオリゴヌクレオチドプローブ(複数可)が、その病原体に対する前記プライマー対及び/又は前記制限酵素と混合して提供される、請求項1~8のいずれか1項記載のキット。
【請求項10】
病原体に対する前記プローブ対の前記第1のオリゴヌクレオチドプローブ及び前記第2のオリゴヌクレオチドプローブの両方が、そのハイブリダイゼーション領域の3'末端におけるDNAポリメラーゼによる伸長が阻止されて、該ハイブリダイゼーション領域中で前記制限酵素によって切断されることが可能でない、請求項1~9のいずれか1項記載のキット。
【請求項11】
少なくとも1つの前記病原体に対する前記第1のオリゴヌクレオチドプローブ及び前記第2のオリゴヌクレオチドプローブのうちの一方の前記ハイブリダイゼーション領域が、その病原体に対する前記第1のプライマー若しくは前記第2のプライマーのうちの一方のハイブリダイズ領域に対する5塩基以上の相補性を有し、又は該ハイブリダイズ領域の前記逆相補鎖を有する、請求項1~10のいずれか1項記載のキット。
【請求項12】
前記第1のオリゴヌクレオチドプローブの前記ハイブリダイゼーション領域が、前記第1のオリゴヌクレオチドプライマー及び前記第2のオリゴヌクレオチドプライマーのうちの一方の前記ハイブリダイズ領域に対する5塩基以上の相補性を有し、かつ前記第2のオリゴヌクレオチドプローブの該ハイブリダイゼーション領域が、該第1のオリゴヌクレオチドプライマー及び該第2のオリゴヌクレオチドプライマーのうちの他方の該ハイブリダイズ領域の前記逆相補鎖に対する5塩基以上の相補性を有する、請求項11記載のキット。
【請求項13】
前記1以上の修飾dNTPが、αチオール修飾dNTPである、請求項1~12のいずれか1項記載のキット。
【請求項14】
各病原体に対する前記制限酵素が同じである、請求項1~13のいずれか1項記載のキット。
【請求項15】
前記第1のオリゴヌクレオチドプローブの検出を可能にする前記部分が、比色定量色素若しくは蛍光定量色素であるか、又は比色定量色素若しくは蛍光定量色素との結合が可能である部分、例えばビオチンである、請求項1~14のいずれか1項記載のキット。
【請求項16】
前記第2のオリゴヌクレオチドプローブの固体材料との結合を可能にする前記部分が、一本鎖オリゴヌクレオチドであり、該一本鎖オリゴヌクレオチドが、各病原体に対し異なっている、請求項1~15のいずれか1項記載のキット。
【請求項17】
1本鎖オリゴヌクレオチド部分の配列が、2~4塩基のDNA配列モチーフの3以上の反復コピーを含む、請求項16記載のキット。
【請求項18】
前記第1のオリゴヌクレオチドプライマー及び/又は前記第2のオリゴヌクレオチドプライマーが、前記制限酵素認識配列及び前記切断部位の上流に、例えば長さ5又は6塩基の安定化配列を含む、請求項1~17のいずれか1項記載のキット。
【請求項19】
前記オリゴヌクレオチドプライマーの前記ハイブリダイズ領域が、長さ9~16塩基である、請求項1~18のいずれか1項記載のキット。
【請求項20】
前記病原体由来RNA中の前記第1のハイブリダイゼーション配列及び前記第2のハイブリダイゼーション配列が、0~15塩基又は3~20塩基、例えば3~15塩基により隔てられている、請求項1~19のいずれか1項記載のキット。
【請求項21】
前記増幅産物中の前記少なくとも1つの種の前記第1の一本鎖検出配列又は前記第2の一本鎖検出配列のいずれかが、請求項20で規定する塩基に対応する配列の少なくとも3つの塩基を含む、請求項1~20のいずれか1項記載のキット。
【請求項22】
プロセス対照を実施するための構成要素、例えば:
b)プライマー対であって:
iii.5'から3'の方向に、制限酵素認識配列及び切断部位、並びに対照核酸中の第1のハイブリダイゼーション配列とハイブリダイズすることが可能な領域を含む、第1のオリゴヌクレオチドプライマー;並びに
iv.5'から3'の方向に、制限酵素認識配列及び切断部位、並びに該対照核酸中の該第1のハイブリダイゼーション配列の上流の第2のハイブリダイゼーション配列の逆相補鎖とハイブリダイズすることが可能な領域を含む、第2のオリゴヌクレオチドプライマーを含み、
該第1のハイブリダイゼーション配列及び該第2のハイブリダイゼーション配列が、20塩基以下により隔てられている、前記プライマー対;
d)ニッキング酵素ではなく、該第1のプライマー及び該第2プライマーの認識配列を認識し、かつそれらの切断部位を切断することが可能な制限酵素;並びに
e)プローブ対であって:
iii.該対照核酸の存在下で生産される増幅産物中の少なくとも1つの種の第1の一本鎖検出配列とハイブリダイズすることが可能であり、かつそのプローブが、その検出を可能にする部分と結合している、ハイブリダイゼーション領域を有する第1のオリゴヌクレオチドプローブ;及び
iv.該増幅産物中の該少なくとも1つの種の該第1の一本鎖検出配列の上流又は下流の第2の一本鎖検出配列とハイブリダイズすることが可能であり、かつそのプローブが固体材料又は固体材料とのその結合を可能にする部分と結合する、ハイブリダイゼーション領域を有する、第2のオリゴヌクレオチドプローブ、を含む、前記プローブ対
をさらに含む、請求項1~21のいずれか1項記載のキット。
【請求項23】
対照核酸をさらに含む、請求項22記載のキット。
【請求項24】
前記病原体由来RNAの存在下で生産される病原体ディテクタ種及び/又は対照核酸の存在下で生産される対照ディテクタ種の存在を検出するための手段をさらに含む、請求項1~23のいずれか1項記載のキット。
【請求項25】
前記病原体ディテクタ種及び/又は前記対照ディテクタ種の存在を検出するための前記手段が、核酸ラテラルフローである、請求項24記載のキット。
【請求項26】
前記核酸ラテラルフローが、前記第2のオリゴヌクレオチドプローブの固体材料との結合を可能にする前記部分と配列特異的にハイブリダイゼーションすることが可能な固定化核酸を利用する、請求項25記載のキット。
【請求項27】
前記病原体ディテクタ種及び/又は前記対照ディテクタ種の存在を検出するための前記手段が、例えばカーボン又は金、好ましくはカーボンを使用した比色定量又は電気化学シグナルを生成する、請求項24~26のいずれか1項記載のキット。
【請求項28】
請求項1~27のいずれか1項記載のキットを含む、装置。
【請求項29】
動力付きの装置である、請求項28記載の装置。
【請求項30】
加熱手段を含む、請求項28又は29記載の装置。
【請求項31】
使い捨て診断装置である、請求項28~30のいずれか1項記載の装置。
【請求項32】
試料中の標的病原体インフルエンザAウイルス及びインフルエンザBウイルスを検出及び識別するための方法であって、該方法は各病原体に対して:
d)該試料を、
vii.プライマー対であって:
5'から3'の方向に、制限酵素認識配列及び切断部位、並びに病原体由来RNA中の第1のハイブリダイゼーション配列とハイブリダイズすることが可能な領域を含む、第1のオリゴヌクレオチドプライマー;並びに
5'から3'の方向に、制限酵素認識配列及び切断部位、並びに該病原体由来RNA中の該第1のハイブリダイゼーション配列の上流の第2のハイブリダイゼーション配列の逆相補鎖とハイブリダイズすることが可能な領域を含む、第2のオリゴヌクレオチドプライマー、を含み、
該第1のハイブリダイゼーション配列及び該第2のハイブリダイゼーション配列が、20塩基以下により隔てられている、前記プライマー対;
viii.ニッキング酵素ではなく、該第1のプライマー及び該第2のプライマーの認識配列を認識し、かつそれらの切断部位を切断することが可能な制限酵素;並びに
ix.逆転写酵素;
x.鎖置換型DNAポリメラーゼ;
xi.dNTP;及び
xii.1以上の修飾dNTP、
と接触させて、該病原体由来RNAの存在下で増幅産物を生産すること;
e)工程a)の該増幅産物を、
ii.プローブ対であって:
該病原体由来RNAの存在下で生産される該増幅産物中の少なくとも1つの種の第1の一本鎖検出配列とハイブリダイズすることが可能であり、かつそのプローブが、その検出を可能にする部分と結合している、ハイブリダイゼーション領域を有する第1のオリゴヌクレオチドプローブ;及び
該増幅産物中の該少なくとも1つの種の該第1の一本鎖検出配列の上流又は下流の第2の一本鎖検出配列とハイブリダイズすることが可能であり、かつそのプローブが固体材料又は固体材料とのその結合を可能にする部分と結合する、ハイブリダイゼーション領域を有する、第2のオリゴヌクレオチドプローブ、を含み
ここで、少なくとも1つの該標的病原体に対する該プローブ対の該第1のオリゴヌクレオチドプローブ及び該第2のオリゴヌクレオチドプローブのうちの一方が、そのハイブリダイゼーション領域の3'末端におけるDNAポリメラーゼによる伸長が阻止されて、該ハイブリダイゼーション領域中で該制限酵素により切断されることが可能でなく、かつ工程a)の実施と同時に該試料と接触し;
ここで、該第1のプローブ及び該第2のプローブの該増幅産物中の該少なくとも1つの種とのハイブリダイゼーションにより、病原体ディテクタ種が生産される、前記プローブ対と接触させること;並びに
f)工程b)で生産された該病原体ディテクタ種の存在を検出することであって、ここで該病原体ディテクタ種の存在が、該試料中の該標的病原体の存在を示す、前記検出すること、を含む、前記方法。
【請求項33】
病原体呼吸器合胞体ウイルスに対する工程a)、b)、及びc)をさらに含む、前記標的病原体インフルエンザAウイルス、インフルエンザBウイルス、及び呼吸器合胞体ウイルスを検出及び識別するための請求項32記載の方法。
【請求項34】
プロセス対照を実施すること、例えば:
d)対照核酸を:
iii.プライマー対であって:
5'から3'の方向に、制限酵素認識配列及び切断部位、並びに該対照核酸中の第1のハイブリダイゼーション配列とハイブリダイズすることが可能な領域を含む、第1のオリゴヌクレオチドプライマー;並びに
5'から3'の方向に、制限酵素認識配列及び切断部位、並びに該対照核酸中の該第1のハイブリダイゼーション配列の上流の第2のハイブリダイゼーション配列の逆相補鎖とハイブリダイズすることが可能な領域を含む、第2のオリゴヌクレオチドプライマー、を含み、
該第1のハイブリダイゼーション配列及び該第2のハイブリダイゼーション配列が、20塩基以下により隔てられている、前記プライマー対;
iv.ニッキング酵素ではなく、該第1のプライマー及び該第2のプライマーの認識配列を認識し、かつそれらの切断部位を切断することが可能な制限酵素;
vi.鎖置換型DNAポリメラーゼ;
vii.dNTP;並びに
viii.1以上の修飾dNTP、
と接触させて、該対照核酸の存在下で対照増幅産物を生産すること;
e)工程a)の該対照増幅産物を:
ii.プローブ対であって:
該対照増幅産物中の少なくとも1つの種の第1の一本鎖検出配列とハイブリダイズすることが可能であり、かつそのプローブが、その検出を可能にする部分と結合している、ハイブリダイゼーション領域を有する第1のオリゴヌクレオチドプローブ;及び
該対照増幅産物中の該少なくとも1つの種の該第1の一本鎖検出配列の上流又は下流の第2の一本鎖検出配列とハイブリダイズすることが可能であり、かつそのプローブが固体材料又は固体材料とのその結合を可能にする部分と結合する、ハイブリダイゼーション領域を有する、第2のオリゴヌクレオチドプローブ、を含み
ここで、該第1のプローブ及び該第2のプローブの該対照増幅産物中の該少なくとも1つの種とのハイブリダイゼーションにより、対照ディテクタ種が生産される、前記プローブ対と接触させること;並びに
f)工程b)で生産された該対照ディテクタ種の存在を検出することであって、ここで該対照ディテクタ種の存在が、該方法のプロセス対照の役割を果たす、前記検出すること、をさらに含む、請求項32又は33記載の方法。
【請求項35】
全ての前記標的病原体、及び存在する場合は前記対照核酸に対して同時に実施する、請求項32~34のいずれか1項記載の方法。
【請求項36】
前記認識配列及び前記切断部位が二本鎖である場合に、前記1以上の修飾dNTPを使用して前記DNAポリメラーゼにより前記逆相補鎖に1以上の修飾が組み込まれ、該逆相補鎖の切断が阻止されるために、前記制限酵素がその切断部位のプライマー鎖のみを切断する、請求項32~35のいずれか1項記載の方法。
【請求項37】
工程a)が、50℃以下の温度で実施される、請求項32~36のいずれか1項記載の方法。
【請求項38】
工程a)の実施中、温度が増加、例えば開始時の周囲温度、例えば15~30℃の範囲から、40~50℃の範囲の温度まで増加する、請求項32~37のいずれか1項記載の方法。
【請求項39】
前記試料が、鼻腔又は鼻咽頭のスワブ又は吸引液である、請求項32~38のいずれか1項記載の方法。
【請求項40】
前記病原体由来RNA、及び/又は前記オリゴヌクレオチドプライマー、及び/又は前記制限酵素、及び/又は前記DNAポリメラーゼ、及び/又は前記dNTP、及び/又は前記1以上の修飾dNTP、及び/又は前記オリゴヌクレオチドプローブ、及び/又は前記病原体ディテクタ種及び/若しくは前記対照ディテクタ種を検出するための前記手段が、請求項2又は4~27のいずれか1項に規定された通りである、請求項32~39のいずれか1項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(背景)
(技術分野)
本発明は、試料中のインフルエンザAウイルス及びインフルエンザBウイルス並びに任意に呼吸器合胞体ウイルスを検出及び識別するためのキット及び方法、並びに該キットを含み、かつ該方法における使用のための装置を対象とする。
【背景技術】
【0002】
(関連技術)
インフルエンザは気道の伝染性ウイルス感染症である。インフルエンザAはヒトにおいて最も一般的な型のインフルエンザウイルスであり、季節性インフルエンザの流行、及び時にパンデミックの主たる原因となる。インフルエンザBウイルスは、比較的流行の原因となる頻度が低い。また、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)は2つの株(サブグループA及びB)からなり、主に乳児及び高齢者を冒す伝染病の原因となる。RSVが広まる季節はインフルエンザの季節と重複する。インフルエンザと同時にRSVにも感染した患者を特定するための分子診断法の使用は、管理を効果的にし、適切な治療選択をし、かつ流行及びパンデミックを予防するのに有益である。
【0003】
ポリメラーゼに基づく核酸配列増幅方法は、分子診断の分野で広く使用されている。最も確立された方法であるポリメラーゼ連鎖反応(PCR)では、典型的に各標的配列用の2つのプライマーが関与し、周期的指数関数的増幅のプロセスにおける温度の周期的変化を使用して、プライマーのアニーリング、DNAポリメラーゼによる伸長、及び新たに合成されたDNAの変性を達成する。温度周期変化の要件は複雑な装置を必要とし、このことが特定の応用におけるPCRベースの方法の使用を制限している。
【0004】
鎖置換増幅(Strand Displacement Amplification)(SDA)(EP0497272; US5455166; US5712124)は、等温でのPCRの代替法として開発され、ポリメラーゼ増幅の間の二本鎖DNAのアニーリング及び変性を達成するために温度周期変化を必要とせず、代わりに鎖置換型ポリメラーゼと組み合わせた制限酵素を使用して、2本のDNA鎖を分離する。
【0005】
SDAでは、各プライマーの5'末端にある制限酵素部位が、1以上のαチオールヌクレオチドの存在下で増幅産物に導入され、制限酵素を使用して、その認識部位の未修飾ヘミホスホロチオエート形態の鎖のみを切断するその能力により、制限部位にニックを形成する。鎖置換型ポリメラーゼは、各ニックの3'末端を伸長させ、下流のDNA鎖を置換する。指数関数的増幅はセンス及びアンチセンス反応物の対形成から得られる。ここでセンス反応物から置換された鎖はアンチセンス反応物の標的としての役割を果たし、逆も同様である。SDAは典型的に実行に1時間以上かかり、このことが臨床診断の分野における利用のためのその潜在性を大いに制限している。さらに、増幅後の産物の特異的検出及び反応の開始のために別々のプロセスが要件となるため、この方法は顕著に複雑さを増す。
【0006】
その後Maplesらの文献(WO2009/012246)では、その特異的二本鎖認識配列に結合した後、DNAの2本鎖のうちの一方のみ切断することができる制限酵素のサブクラスである、ニッキング酵素を用いたSDAを実施した。彼らはこの方法をニッキング及び伸長増幅反応(NEAR)と呼んだ。制限酵素ではなく、ニッキング酵素を利用するNEARはまた、その後ソフトウェアで最適化したプライマーを使用して(WO2014/164479)、及びウォームスタート又は制御下の温度低下(WO2018/002649)を通じてこの方法の改良を試みた他の研究者らによって利用されている。しかしながら、ごく少数のニッキング酵素のみが利用可能であるため、特定の応用のための所望の特性を有する酵素を見いだすことはより困難である。
【0007】
制限酵素又はニッキング酵素を使用するSDA(NEAR)のきわめて重大な欠点は、この方法により二本鎖核酸産物が生産され、従って増幅シグナルの効率的検出のための本質的プロセスを提供しないことである。これにより、例えば低コストの診断装置におけるその有用性が顕著に制限される。生産される増幅産物の二本鎖の性質は、増幅法をシグナル検出と組み合わせるのに困難を提示する。それは、最初に二本鎖を分離しないことにはハイブリダイゼーションベースの検出を実施することができないためである。そのため、より複雑な検出方法、例えば分子ビーコン及び蛍光物質/クエンチャープローブが必要となる。このことは、分離プロセス工程を要求することでアッセイプロトコルを複雑にする場合があり、マルチプレックスアッセイを開発する潜在性を顕著に低下させる。
【0008】
SDAの限界を克服するための分子診断アッセイに対する要件として、迅速、高感度かつ特異的な核酸配列検出のための増強された増幅方法を利用すること、並びにインフルエンザ及びRSVの効率的検出を可能にすることが重要となる。本発明は、核酸増幅を組み込み、かつ5'制限部位を有するプライマー対に加えて、オリゴヌクレオチドプローブの対を利用して効率的シグナル検出を可能とするディテクタ種を生産する、試料中のインフルエンザAウイルス及びインフルエンザBウイルス並びに任意に呼吸器合胞体ウイルスを検出及び識別するためのキット及び方法に関する。
【発明の概要】
【0009】
(概要)
本発明では、試料中の標的病原体インフルエンザA及びインフルエンザBを検出及び識別するためのキットであって、該キットは各病原体に対する:
a)プライマー対であって:
i.5'から3'の方向に、制限酵素認識配列及び切断部位、並びに病原体由来RNA中の第1のハイブリダイゼーション配列とハイブリダイズすることが可能な領域を含む、第1のオリゴヌクレオチドプライマー;並びに
ii.5'から3'の方向に、制限酵素認識配列及び切断部位、並びに該病原体由来RNA中の該第1のハイブリダイゼーション配列の上流の第2のハイブリダイゼーション配列の逆相補鎖とハイブリダイズすることが可能な領域を含む、第2のオリゴヌクレオチドプライマーを含み、
該第1のハイブリダイゼーション配列及び該第2のハイブリダイゼーション配列が、20塩基以下により隔てられている、前記プライマー対;
b)ニッキング酵素ではなく、該第1のプライマー及び該第2のプライマーの認識配列を認識し、かつそれらの切断部位を切断することが可能な制限酵素;並びに
c)プローブ対であって:
i.該病原体由来RNAの存在下で生産される増幅産物中の少なくとも1つの種の第1の一本鎖検出配列とハイブリダイズすることが可能であり、かつそのプローブが、その検出を可能にする部分と結合している、ハイブリダイゼーション領域を有する第1のオリゴヌクレオチドプローブ;及び
ii.該増幅産物中の該少なくとも1つの種の該第1の一本鎖検出配列の上流又は下流の第2の一本鎖検出配列とハイブリダイズすることが可能であり、かつそのプローブが固体材料又は固体材料とのその結合を可能にする部分と結合する、ハイブリダイゼーション領域を有する、第2のオリゴヌクレオチドプローブ、を含み
ここで、少なくとも1つの該標的病原体に対する該プローブ対の該第1のオリゴヌクレオチドプローブ及び該第2のオリゴヌクレオチドプローブのうちの一方が、そのハイブリダイゼーション領域の3'末端におけるDNAポリメラーゼによる伸長が阻止されて、該ハイブリダイゼーション領域中で該制限酵素により切断されることが可能でない、前記プローブ対、を含み、
該キットは:
d)逆転写酵素;
e)鎖置換型DNAポリメラーゼ;
f)dNTP;及び
g)1以上の修飾dNTP、も含む、前記キットを提供する。
【0010】
本発明のキットは標的病原体インフルエンザA、インフルエンザB、及び呼吸器合胞体ウイルスを検出及び識別するためのものであり、ここでそれらは病原体呼吸器合胞体ウイルスに対する構成要素a)、b)、及びc)をさらに含むものとする。また、キットは試薬、例えば反応緩衝液、塩、例えば二価金属イオン、添加剤、及び賦形剤を含み得る。
【0011】
キットは、標的病原体の存在下で生産されたディテクタ種の存在を検出するための手段をさらに含み得る。例えば、キットは、核酸ラテラルフローストリップ、電気化学プローブ、及び/又は比色定量色素若しくは蛍光定量色素、及び/又は電気シグナルの変化を検出するための装置、及び/又はカーボン若しくは金をさらに含み得る。
【0012】
本発明によるキットは、その使用方法の実施のための指示書とともに提供され得る。
【0013】
また、本発明は、標的病原体を検出及び識別するための本発明のキットの使用を提供する。
【0014】
本発明はまた、試料中の標的病原体インフルエンザAウイルス及びインフルエンザBウイルスを検出及び識別するための方法であって、該方法は各病原体について:
a)該試料を、
i.プライマー対であって:
5'から3'の方向に、制限酵素認識配列及び切断部位、並びに病原体由来RNA中の第1のハイブリダイゼーション配列とハイブリダイズすることが可能な領域を含む、第1のオリゴヌクレオチドプライマー;並びに
5'から3'の方向に、制限酵素認識配列及び切断部位、並びに該病原体由来RNA中の該第1のハイブリダイゼーション配列の上流の第2のハイブリダイゼーション配列の逆相補鎖とハイブリダイズすることが可能な領域を含む、第2のオリゴヌクレオチドプライマー、を含み、
該第1のハイブリダイゼーション配列及び該第2のハイブリダイゼーション配列が、20塩基以下により隔てられている、前記プライマー対;
ii.ニッキング酵素ではなく、該第1のプライマー及び該第2のプライマーの認識配列を認識し、かつそれらの切断部位を切断することが可能な制限酵素;
iii.逆転写酵素;
iv.鎖置換型DNAポリメラーゼ;
v.dNTP;並びに
vi.1以上の修飾dNTP
と該病原体由来RNAの存在下で接触させて、増幅産物を生産すること
b)工程a)の該増幅産物を:
i.プローブ対であって:
該病原体由来RNAの存在下で生産される増幅産物中の少なくとも1つの種の第1の一本鎖検出配列とハイブリダイズすることが可能であり、かつそのプローブが、その検出を可能にする部分と結合している、ハイブリダイゼーション領域を有する第1のオリゴヌクレオチドプローブ;及び
該増幅産物中の該少なくとも1つの種の該第1の一本鎖検出配列の上流又は下流の第2の一本鎖検出配列とハイブリダイズすることが可能であり、かつそのプローブが固体材料又は固体材料とのその結合を可能にする部分と結合する、ハイブリダイゼーション領域を有する、第2のオリゴヌクレオチドプローブ、を含み
ここで、少なくとも1つの該標的病原体に対する該プローブ対の該第1のオリゴヌクレオチドプローブ及び該第2のオリゴヌクレオチドプローブのうちの一方が、そのハイブリダイゼーション領域の3'末端におけるDNAポリメラーゼによる伸長が阻止されて、該ハイブリダイゼーション領域中で該制限酵素により切断されることが可能でなく、かつ工程a)の実施と同時に該試料と接触し;
ここで、該第1のプローブ及び該第2のプローブの該増幅産物中の該少なくとも1つの種とのハイブリダイゼーションにより、病原体ディテクタ種が生産される、前記プローブ対と接触させること;並びに
c)工程b)で生産された該病原体ディテクタ種の存在を検出することであって、ここで該病原体ディテクタ種の存在が、該試料中の該標的病原体の存在を示す、前記検出すること、を含む、前記方法を提供する。
【0015】
本発明の方法は標的病原体インフルエンザAウイルス、インフルエンザBウイルス、及び呼吸器合胞体ウイルスを検出及び識別するためのものであり、ここでそれらは病原体呼吸器合胞体ウイルスに対する工程a)、b)、及びc)をさらに含むものとする。
【0016】
いくつかの実施態様において、本発明のキット及び方法は、同じプライマー対を使用して呼吸器合胞体ウイルスA及び呼吸器合胞体ウイルスBの両方を検出する。また、本キット及び方法では、呼吸器合胞体ウイルスA及び呼吸器合胞体ウイルスBに対して同じプローブ対を利用することができる。
【0017】
本キットは、プロセス対照を実施するための構成要素をさらに含み得、また対照核酸を含み得る。本方法は、プロセス対照の実施をさらに含み得る。
【0018】
単一の標的病原体を参照した本発明の方法の実施態様を
図1に示す。
【0019】
様々な実施態様において、標的病原体の存在下、本キット及び方法では理想的には高感度検出に好適な多くのコピーの病原体ディテクタ種を迅速に生産する。
【0020】
本発明は、増幅産物の効率的検出、従ってインフルエンザAウイルス、インフルエンザBウイルス、及び任意に呼吸器合胞体ウイルス(RSV)の効率的検出のための本質的なプロセスを提供することに加え、迅速増幅を包含するため、公知のキット及び方法よりも有利である。
【0021】
本発明は、SDAが増幅産物の二本鎖特性により増幅シグナルを効率的に検出するための本質的なプロセスを提供しないという、ニッキング酵素によるSDA(NEAR)を含むSDAを利用するキット及び方法の主要な欠点を克服する。本発明では、増幅産物中の少なくとも1つの種とハイブリダイズしてその迅速かつ特異的な検出を促進する対をなすオリゴヌクレオチドプローブを使用することにより、この制約を克服する。これらのオリゴヌクレオチドプローブの使用は、いくつかのさらなる利点を提供する。第1のオリゴヌクレオチドプローブはその検出を可能とする部分と結合し、第2のオリゴヌクレオチドプローブは固体材料又は固体材料とのその結合を可能にする部分と結合されている。例えば、そのハイブリダイゼーション領域の3'末端におけるDNAポリメラーゼによる伸長が阻止され、制限酵素によって切断されることが可能でないオリゴヌクレオチドプローブの使用は、予期せぬことに増幅の顕著で不利な阻害をもたらさず、一本鎖領域を含む病原体プレ-ディテクタ種が効率的に生産される。本発明のこの態様は、阻止されたプローブが、プレ-ディテクタ種に含まれる反対側の増幅産物鎖に偏る非対称増幅をもたらすと仮定され得るため、直観に反する。実際には、露出された一本鎖領域が他のオリゴヌクレオチドプローブのハイブリダイゼーションに容易に利用可能であるため、前記プレ-ディテクタ種は効率的に生産され、かつ理想的には効率的検出に好適となる。好ましくは、第1のオリゴヌクレオチドプローブは、そのハイブリダイゼーション領域の3'末端におけるDNAポリメラーゼによる伸長が阻止され、かつ該ハイブリダイゼーション領域中で制限酵素により切断されることが可能でない。
【0022】
本発明の本質的試料検出アプローチは、例えば一方のアンプリコン鎖を他方の鎖よりも過剰に生産することを目的として、不均一なプライマー比を使用することにより「非対称」増幅を実施することを含む、SDAの重大な制約を克服するための過去の試みと根本から対照をなす。本発明は、非対称増幅を必要とせず、かつアンプリコンの一方の鎖を他方よりも過剰に生産する必要もなく、代わりに第1及び第2のオリゴヌクレオチドプローブの増幅産物中の種の同鎖とのハイブリダイゼーション後のディテクタ種の生産に重点を置く。ディテクタ種の生産を含む本発明の本質的な試料検出アプローチは、理想的には他の検出方法、とりわけ検出を実施する簡素化された、迅速かつ低コストの手段を提供する、例えば第2のオリゴヌクレオチドプローブをラテラルフローストリップ上にプリントすることによる、核酸ラテラルフローとの組合わせに好適である。本発明を核酸ラテラルフローと組み合わせるとまた、各々試料中の異なる標的病原体について設計された異なる配列を有する、ラテラルフローストリップ上の不連続位置に結合された複数の第2のオリゴヌクレオチドプローブの差次的ハイブリダイゼーションに基づく効率的なマルチプレックス系が可能となる。さらなる実施態様において、第2のオリゴヌクレオチドプローブ中の固体材料とのその結合を可能とする部分としての一本鎖オリゴヌクレオチドの使用によりラテラルフロー検出の効率が増強され、前記部分との逆相補的配列をストリップ上にプリントする。後者のアプローチはまた、複数の標的の増幅にわたる単一の「ユニバーサル」検出系として最適化され、製造されたラテラルフローストリップを可能とする。これは、ラテラルフローストリップに結合された配列を規定することができ、かつ病原体由来RNAの配列に相当するものである必要はないためである。従って、本発明における、対をなすオリゴヌクレオチドプローブの不可欠な要件は、ニッキング酵素を用いるSDA(NEAR)を含むSDAを上回る、多くの利点を提供する。
【0023】
本発明では、ニッキング酵素ではない制限酵素(複数可)及び1以上の修飾dNTPの使用が要求されるため、ニッキング酵素を用いて実施されるSDA(NEAR)と根本的に異なるものであり、そのようなニッキング酵素依存的な方法を上回るいくつかのさらなる利点を有する。例えば、ニッキング酵素よりはるかに多くの、ニッキング酵素ではない制限酵素を利用可能である。このことは、本発明の使用する制限酵素(複数可)を数多くの潜在的酵素から選択し、所与の応用、例えば反応温度、緩衝液適合性、安定性、及び反応速度(感度)に対し優れた特性を有するものを識別することができることを意味する。本発明のこの重要な利点のために、本発明者らはニッキング酵素を用いて達成可能であるより低い至適温度及びより速い速度を有する制限酵素を選択することができる。そのような制限酵素は、低コストの診断装置での利用にはるかに好適である。さらに、1以上の修飾dNTPを使用するという要件は、制限酵素にそれらの制限部位の一方の鎖のみを切断させることに加え、重要な利点を提供する本発明に不可欠な特徴である。例えば、特定の修飾dNTP、例えばαチオールdNTPを用いると、それを組み込んだDNAの融解温度(Tm)が低下する。このことは、オリゴヌクレオチドプライマー及びプローブが、増幅の間に生産された修飾dNTPを含む任意の競合する相補鎖よりも増幅産物中の種とのハイブリダイゼーションについて高い親和性を有することを意味する。さらに、修飾dNTP塩基挿入の結果として増幅産物のTmが低下すると、二本鎖DNA種の分離が促進され、それにより増幅速度が増強され、至適温度が低下し、感度が向上する。
【0024】
SDAを上回る本発明の多くの利点を合わせると、制限酵素又はニッキング酵素(NEAR)の使用により、低コストの使い捨て診断装置において、公知の方法では不可能な増幅速度の向上及び増幅シグナルの単純な可視化により本発明の有用性が提供される。
【0025】
上記本発明の態様の様々な実施態様及びさらなる態様は、以下により詳細に記載する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
(図面の簡単な説明)
【
図2】第1のオリゴヌクレオチドプローブがそのハイブリダイゼーション領域の3'末端におけるDNAポリメラーゼによる伸長が阻止され、該ハイブリダイゼーション領域中で制限酵素によって切断されることが可能でなく、当該プローブを工程a)において試料と接触させる、方法の模式的表示。
【
図3】第2のオリゴヌクレオチドプローブの固体材料との結合を可能とする部分が、一本鎖オリゴヌクレオチドである、方法の工程b)及びc)の模式的表示。
【
図4】工程a)において試料をさらに第3及び第4のオリゴヌクレオチドプライマーと接触させる、方法の工程a)の部分の模式的表示。
【
図5】第2のオリゴヌクレオチドプローブを固体材料、ニトロセルロースラテラルフローストリップに結合させた、本発明において利用する方法の実施(実施例1を参照されたい)。
【
図6】
図6A及び6B。第1のオリゴヌクレオチドプローブがそのハイブリダイゼーション領域の3'末端におけるDNAポリメラーゼによる伸長が阻止され、該ハイブリダイゼーション領域中で制限酵素によって切断されることが可能でなく、当該プローブを工程a)において試料と接触させる、本発明において利用する方法の実施(実施例2を参照されたい)。
【
図7】
図7A、7B、7C、及び7D。2以上の異なる標的核酸の存在が同じ試料中で検出される、本発明において利用する方法の実施(実施例3を参照されたい)。
【
図8】標的核酸中の第1及び第2のハイブリダイゼーション配列が5塩基により隔てられている、本発明において利用する方法の実施(実施例4を参照されたい)。
【
図9】第2のオリゴヌクレオチドプローブの固体材料との結合を可能とする部分が抗原であり、対応する抗体を固体表面、ニトロセルロースラテラルフローストリップと結合させる、本発明において利用する方法の実施(実施例5を参照されたい)。
【
図10】
図10A及び10B。第2のオリゴヌクレオチドプローブを固体材料と結合させることを可能とする部分が3塩基DNA配列モチーフの4つの反復コピーを含む一本鎖オリゴヌクレオチドであり、前記一本鎖オリゴヌクレオチド配列の逆相補鎖が固体材料に結合されている、本発明において利用する方法の実施(実施例6を参照されたい)。
【
図11】臨床検体中のRNAウイルス検出のための、本発明において利用する方法の使用(実施例7を参照されたい)。
【
図12】
図12A及び12B。異なる温度での本発明において利用する方法の実施(実施例8を参照されたい)。
【
図13】
図13A及び13B。インフルエンザAを検出するための本発明において利用する方法の実施の、公知の方法との比較(実施例9を参照されたい)。
【
図14】
図14A及び14B。本発明を使用する標的病原体インフルエンザA、インフルエンザB、及び呼吸器合胞体ウイルスの検出及び識別(実施例10を参照されたい)。
【発明を実施するための形態】
【0027】
(詳細な説明)
本発明は、試料中のインフルエンザAウイルス及びインフルエンザBウイルス並びに任意に呼吸器合胞体ウイルスを検出及び識別するためのキット及び方法を提供する。
【0028】
病原体由来RNAは、ウイルスゲノムRNA、転写による一本鎖RNAに由来する一本鎖RNA、例えば自発的解離、若しくは酵素的変質、若しくは熱変性による二本鎖の解離後の試料中の二本鎖RNAに由来する一本鎖RNA、又は例えば転写による二本鎖DNAに由来する一本鎖RNAを含む、一本鎖RNAであり得る。
【0029】
存在する場合、対照核酸は、RNA、DNA、RNA及びDNAの両方の塩基を含むキメラ、又はRNA/DNAハイブリッドであり得る。一実施態様において、プロセス対照が逆転写酵素の活性を含むように、対照核酸はRNAを含む。
【0030】
典型的に、本発明で使用するオリゴヌクレオチドプライマーは、病原体由来RNAとともにRNA及びDNAの両方の鎖を含むハイブリッド二本鎖を形成するDNAプライマーである。しかしながら、他の核酸、例えば非天然塩基及び/又は代替の骨格構造を含むプライマーも使用し得る。
【0031】
病原体由来RNAの存在下、第1のオリゴヌクレオチドプライマーは、病原体由来RNA中の第1のハイブリダイゼーション配列とハイブリダイズする。ハイブリダイゼーション後、第1のプライマーの3'ヒドロキシル基は逆転写酵素(例えば、M-MuLV)によって伸長され、伸長した第1のプライマー及び病原体由来RNAを含む二本鎖種を生産する(
図1を参照されたい。ここで、病原体由来RNAは「標的」と呼ぶ)。逆転写酵素は該伸長においてdNTP及び1以上の修飾dNTPを使用する。これがDNAであり、第1のプライマーが該伸長においてdNTP及び1以上の修飾dNTPを使用するDNAポリメラーゼによって伸長される場合を除き、同じプロセスは対照核酸の存在下で起こる。第1のプライマーの5'末端の制限酵素認識配列及び切断部位は典型的に、それに対する逆相補的配列が一般に病原体由来RNA又は対照核酸配列中に存在しないため、ハイブリダイズしない。従って、一般に第1のプライマーを使用して、制限酵素認識配列及び切断部位の一方の鎖を、続いて生じる増幅産物種に導入する。第1のプライマーの伸長後、「標的」除去が起こる。標的除去により、伸長された第1のプライマー種は、第2のオリゴヌクレオチドプライマーの第2のハイブリダイゼーション配列の逆相補鎖とのハイブリダイゼーションのためにアクセス可能となる。病原体由来RNAについて、「標的」除去は、例えばRNAのRNase H分解により達成され、逆転写酵素のRNase H活性又はこの酵素の別途の追加を通じて達成され得る。あるいは、二本鎖DNA、例えば対照核酸中の一本鎖領域を含む一本鎖DNAについて、「標的」除去は追加の上流のプライマー又はバンププライマー(bump primer)を使用した鎖置換によって達成され得る。あるいは、「標的」除去は、特に、所与の病原体由来RNAから短い伸長産物のみが生産された場合に、自発的な解離後に発生し得、又は「標的」除去は、二本鎖伸長第1のプライマー種中の1以上のDNA又はRNA塩基対の一過的開口が、鎖置換した第2のオリゴヌクレオチドプライマーのハイブリダイゼーション及び3'ヒドロキシルの伸長を可能とするに十分に発生する、鎖侵入によって起こり得る。第2のオリゴヌクレオチドプライマーの第2のハイブリダイゼーション配列の逆相補鎖とのハイブリダイゼーション後、鎖置換型DNAポリメラーゼは、dNTP及び1以上の修飾dNTPを用いて、前記プライマーの3'ヒドロキシルを伸長する。制限酵素の二本鎖制限認識配列及び切断部位が形成され、1以上の修飾dNTP塩基(複数可)が逆相補鎖に取り込まれて該制限酵素による該鎖の切断を阻止する作用をする。制限酵素はその認識配列を認識し、切断部位の第1のプライマー鎖のみを切断する。これにより、3'ヒドロキシルが生成され、それは鎖置換型DNAポリメラーゼによりdNTP及び1以上の修飾dNTPを用いて伸長され、第1のプライマー鎖が置換される。制限酵素の二本鎖制限認識配列及び切断部位が形成され、1以上の修飾dNTP塩基(複数可)が逆相補鎖に取り込まれて該制限酵素による該鎖の切断を阻止する作用をする。従って、2つのプライマー配列が並置された二本鎖種が生産され、制限酵素の部分的に阻止された認識部位が存在する。続いて第1のプライマー鎖及び第2のプライマー鎖の制限酵素による切断が起こり、2つの二本鎖種が生産され、一方は第1のプライマー配列を含み、他方は第2のプライマー配列を含む。続いて、第1のプライマー鎖及び第2のプライマー鎖の連続的切断及び置換が周期的増幅プロセスにおいて起こり、ここで置換された第1のプライマー鎖は第2のプライマーの標的として作用し、置換された第2のプライマー鎖は第1のプライマーの標的として作用する。
【0032】
病原体由来RNAの存在下では、増幅産物は例えば温度周期変化を一切要さずに生産される。
【0033】
本発明の不可欠な態様は、増幅産物を直接検出するのではなく、第1及び第2のオリゴヌクレオチドプローブの両方の増幅産物中の少なくとも1つの種との特異的ハイブリダイゼーション後に、ディテクタ種が生産されることである。第1のオリゴヌクレオチドプローブは、その検出を可能にする部分と結合し、前記少なくとも1つの種の第1の一本鎖検出配列とハイブリダイズする。第2のオリゴヌクレオチドプローブは、固体材料又は固体材料とのその結合を可能にする部分と結合されており、該少なくとも1つの種の第1の一本鎖検出配列の上流又は下流の第2の一本鎖検出配列とハイブリダイズする。従って、ディテクタ種は、該少なくとも1つの種の同じ鎖とハイブリダイズする第1及び第2のオリゴヌクレオチドプローブを含む。
【0034】
当業者であれば、
図1を参照することにより、いずれの標的病原体に対しても、増幅産物が、いくつかの異なる種、例えば第1のプライマー及び第2のプライマーの両方の全長又は部分的配列又は逆相補的配列からなり、当該配列は病原体由来RNA中の第1及び第2のハイブリダイゼーション配列と結合するプライマーが1以上の塩基によって隔てられているならば、病原体由来RNA由来配列により隔てられ得る一本鎖検出配列を含む種を含むことが明らかであろう。さらに、該種のいずれかを第1及び第2のオリゴヌクレオチドプローブとハイブリダイズさせ、ディテクタ種を形成させるために選択することができることは、明らかであろう。
【0035】
ディテクタ種が検出された場合、ディテクタ種の存在は、試料中の標的病原体の存在を示す。
【0036】
オリゴヌクレオチドプローブ対(一方のプローブは検出用、もう一方のプローブは固体材料との結合用)を利用することにより、本発明は迅速かつ効率的なシグナル検出を提供する。これにより、より複雑な二次検出法の要求が克服され、例えば核酸ラテラルフローによって、標的病原体の存在下生産されるシグナルの効率的可視化が提供される。
【0037】
本発明において、少なくとも1つの該標的病原体に対する第1のオリゴヌクレオチドプローブ及び第2のオリゴヌクレオチドプローブのうちの一方が、そのハイブリダイゼーション領域の3'末端における鎖置換型DNAポリメラーゼによる伸長が阻止されて、該ハイブリダイゼーション領域中で該制限酵素により切断されることが可能でない。制限酵素によって切断されることが可能でないという用語は、制限酵素が該オリゴヌクレオチドプローブのハイブリダイゼーション領域の、増幅産物中の少なくとも1つの種とのハイブリダイゼーション後に該オリゴヌクレオチドプローブを切断することができないことを意味する。これは、オリゴヌクレオチドプローブが制限酵素によって切断されることが可能であるとすると、それにより鎖置換型ポリメラーゼによる置換後にオリゴヌクレオチドプローブのハイブリダイゼーション領域の阻止された3'末端が除去されるためである。2以上の制限酵素をキット又は方法において使用する場合、阻止されたプローブが、キット又は方法において使用されるいずれの制限酵素によっても切断されることが可能でないことが望ましい場合がある。一実施態様において、該阻止されたオリゴヌクレオチドプローブは1以上の配列ミスマッチ及び/又は1以上の修飾、例えばホスホロチオエート結合の存在のために制限酵素によって切断されることが可能でない状態になる。制限酵素認識配列及び切断部位は、任意に阻止されたオリゴヌクレオチドプローブのハイブリダイゼーション領域の増幅産物中の少なくとも1つの種とのハイブリダイゼーションの後に該オリゴヌクレオチドプローブから除外され、又はそうでなくとも機能的でない状態にされ得る。本発明のキットのさらなる実施態様において、標的病原体に対する阻止されたプローブは、その病原体に対するプライマー対及び/又は制限酵素と混合して提供され得る。さらなる実施態様において、阻止されたオリゴヌクレオチドプローブを方法の工程a)の実施と同時に、すなわち工程a)を実施する間に試料と接触させ、その結果阻止されたオリゴヌクレオチドプローブが、病原体由来RNAの存在下で生産される増幅産物の生産中に存在するようにする。
【0038】
同様に、阻止されたプローブは対照核酸に使用可能である。
【0039】
例えば、
図2に示す実施態様において、第1のオリゴヌクレオチドプローブは阻止され、増幅産物中の少なくとも1つの種の第1の一本鎖検出配列とハイブリダイズして、一本鎖領域を含むプレ-ディテクタ種を形成する。該少なくとも1つの種は、その3'ヒドロキシル基を伸長する鎖置換型DNAポリメラーゼによって伸長され、従ってさらに該プレ-ディテクタ種を安定化し得る。従って、該実施態様において、該阻止されたオリゴヌクレオチドプローブが追加の領域を含み(プレ-ディテクタ種安定化領域)、阻止されたオリゴヌクレオチドプローブがハイブリダイズする増幅産物中の種の3'末端を鎖置換型DNAポリメラーゼによって伸長することができる。従って
図2に示すように、「安定化プレ-ディテクタ種」が生産される。阻止されたオリゴヌクレオチドプローブ中のこの追加のプレ-ディテクタ種安定化領域が、増幅産物中の少なくとも1つの種中の第1又は第2の一本鎖検出配列のいずれかとハイブリダイズする領域の上流にある。阻止されたオリゴヌクレオチドプローブ及び適切な濃度のプライマーのハイブリダイゼーション領域の配列は、増幅産物中で生産される特定の比率の関連する種が各周期において阻止されたオリゴヌクレオチドプローブとハイブリダイズし、そのような種の残存するコピーが周期的増幅プロセスへの参加に利用可能であり続けるように、最適化され得る。オリゴヌクレオチドプローブは、例えば3'リン酸修飾の使用により伸長を阻止され、また例示された実施態様において、その検出を可能とする部分、例えば5'ビオチン修飾と結合させる。あるいは、単一の3'修飾は、伸長を阻止するために、及びその検出を可能とする部分として使用することができる。様々な他の修飾が、C-3スペーサーなどのオリゴヌクレオチドの3'末端を阻止するために利用可能であり、その代わりにミスマッチ及び/又は修飾塩基(複数可)を利用することもできる。例えば、オリゴヌクレオチドプローブは、修飾塩基又は増幅産物中の少なくとも1つの種とミスマッチしたハイブリダイゼーション領域の下流に1以上の塩基を含み得、そのためにハイブリダイゼーション領域の3'末端がDNAポリメラーゼによって伸長されることが阻止される。従って、オリゴヌクレオチドプローブは、その3'末端に阻止されていないヒドロキシルを含み得、なお同様にそのハイブリダイゼーション領域の3'末端におけるDNAポリメラーゼによる伸長が阻止される。露出された一本鎖領域が第2のオリゴヌクレオチドプローブとのハイブリダイゼーションに容易に利用可能であり続けるため、該プレ-ディテクタ種は理想的には効率的検出に好適となる。第2のオリゴヌクレオチドプローブは、核酸ラテラルフローストリップのニトロセルロース表面に結合させることができる。これにより、プレ-ディテクタ種がそれを流れる際に、配列特異的ハイブリダイゼーションが容易に起こり、ディテクタ種がストリップ上の規定された位置に局在するようになる。核酸ラテラルフローストリップのコンジュゲートパッド中に、又は増幅反応の間に存在し得るストレプトアビジン結合カーボン、金、又はポリスチレン粒子などの検出部分に結合する色素は、標的病原体の存在下で生産されるディテクタ種の存在の迅速な色ベースの可視化を提供する。
【0040】
別の実施態様において、第2のオリゴヌクレオチドプローブは、そのハイブリダイゼーション領域の3'末端における鎖置換型DNAポリメラーゼによる伸長が阻止され、かつ該ハイブリダイゼーション領域中で制限酵素により切断されることが可能でない。第2のオリゴヌクレオチドプローブは、試料と接触させる前に、電気化学プローブの表面、96ウェルプレート、ビーズ、若しくはアレイ表面などの固体材料と結合させること、又は固体材料とのその結合を可能とする部分と結合させることができる。増幅中に生産された特定の比率の少なくとも1つの種は、周期的増幅プロセスにさらに参加する関連するプライマーとハイブリダイズするのではなく、その生産後第2のオリゴヌクレオチドプローブとハイブリダイズする。第2のオリゴヌクレオチドプローブとのハイブリダイゼーション後、該少なくとも1つの種はオリゴヌクレオチドプローブ上でポリメラーゼによって伸長され、安定したプレ-ディテクタ種を生産する。また、第1のオリゴヌクレオチドプローブ及び検出部分は、本方法の工程a)の実施と同時に試料と接触させることができ、第2のオリゴヌクレオチドプローブの部位で該表面に局在するようになる。増幅プロセスの間の部位での検出部分の蓄積を検出することにより、試料中に存在する標的病原体のコピー数の定量化を提供するリアルタイムシグナルを得る。従って、本発明の方法の実施態様により、工程a)、b)、及びc)のうちの2以上を同時に実施する。
【0041】
阻止されたオリゴヌクレオチドプローブを使用しても、本発明者らは増幅速度の一切の顕著な阻害を観察せず、プレ-ディテクタ種が最適周期的増幅プロセスを破綻させることなくリアルタイムで蓄積されることが示される。これは、一方のアンプリコン鎖を他方よりも過剰に生産することを目的として、不均一なプライマー比を利用することにより、非対称SDAを運用する試みとは対照的である。阻止されたオリゴヌクレオチドプローブを使用して反応物から一方のアンプリコン鎖を除去し、それにより他方の鎖の比率を増加させることを模索するのではなく、本発明は、増幅プロセスの間の一本鎖領域の露出を促進するために、阻止されたプローブを利用した、ディテクタ種の生産及び検出に焦点を当てている。従って、本発明者らは該実施態様における増幅プロセスへの阻害効果を一切観察しなかっただけでなく、ある実施態様において、本発明者らはディテクタ種の量の少なくとも100倍の増加に相当する生成したシグナルの、予期せぬ増強を観察した(実施例2を参照されたい)(
図6)。
【0042】
さらに、阻止されたオリゴヌクレオチドプローブの使用は、プローブを阻止することなく多工程プロセスで核酸ラテラルフローを用いてNEARを統合する試みの報告を上回る根本的な利点となる。例えばWO2014/164479では、48℃での30分間という長時間のインキュベーションが、核酸ラテラルフローを使用して増幅産物を可視化するために要求されていたが、これは、ポイントオブケア診断装置、特に低コスト又は使い捨て装置におけるその方法の使用の主要な障壁となる。まったく対照的に、本発明では、より低いインキュベーション温度、例えば40~45℃で5分以内に同等の増幅が容易に実施される。さらに直接的な比較研究(実施例9を参照されたい)では、本発明で利用する方法は、ニッキング酵素ではない制限酵素の使用、修飾dNTP塩基の使用、及び該阻止されたオリゴヌクレオチドプローブの使用の組合わせから得た公知の方法(WO2014/164479)と比較して、予期せぬ非常に優れた速度を示す。
【0043】
一実施態様において、各々の病原体に対するプローブ対の第1のオリゴヌクレオチドプローブ及び第2のオリゴヌクレオチドプローブのうちの一方は、任意に対照核酸が存在する場合にそのハイブリダイゼーション領域の3'末端におけるDNAポリメラーゼによる伸長が阻止されて、該ハイブリダイゼーション領域中で制限酵素により切断されることが可能でない。
【0044】
また、第1のオリゴヌクレオチドプローブ及び第2のオリゴヌクレオチドプローブのうちの他方(すなわち、オリゴヌクレオチドの一方又は両方)も、そのハイブリダイゼーション領域の3'末端におけるDNAポリメラーゼによる伸長が阻止されて、上記の通り該ハイブリダイゼーション領域中で制限酵素により切断されることが可能でないことは認識されよう。従ってさらなる実施態様において、病原体に対するプローブ対の第1のオリゴヌクレオチドプローブ及び第2のオリゴヌクレオチドプローブのうちの両方が、そのハイブリダイゼーション領域の3'末端におけるDNAポリメラーゼによる伸長が阻止されて、該ハイブリダイゼーション領域中で制限酵素により切断されることが可能でない。このさらなる実施態様において、本発明のキットで標的病原体に対する阻止されたプローブがその病原体に対するプライマー対及び/又は制限酵素と混合して提供される場合、両方の阻止されたプローブを混合して提供する必要はなく、かつ本発明の方法では両方の阻止されたプローブを工程a)の実施と同時に試料と接触させる必要はない。
【0045】
本発明の不可欠な態様は、ニッキング酵素ではないが、該認識配列及び切断部位が二本鎖であり、逆相補鎖の切断が1以上の修飾dNTP、例えばそのポリメラーゼによる取込み後のヌクレアーゼ抵抗性を付与するdNTPを用いて鎖置換型DNAポリメラーゼによって該逆相補鎖に取り込まれた1以上の修飾の存在により阻止される際に、その認識配列を認識し、その切断部位の一方の鎖のみを切断することが可能な制限酵素の使用である。
【0046】
「制限酵素」[又は「制限エンドヌクレアーゼ」]は、特定の認識配列に結合した後、特定の切断部位で二本鎖核酸分子の一方又は両方の鎖の1以上のホスホジエステル結合を切断する幅広いクラスの酵素である。多数の制限酵素が利用可能であり、3,000種超が報告されており、600種超が市販されており、多種多様な異なる物理化学特性及び認識配列特異性がカバーされている。
【0047】
「ニッキング酵素」[又は「ニッキングエンドヌクレアーゼ」]は制限酵素の特定のサブクラスであり、特定の認識配列と結合した後、特定の切断部位で二本鎖核酸分子の一方の鎖のみを切断することが可能であり、他方の鎖をインタクトなまま残す。ごく少数の(c.10)ニッキング酵素のみが利用可能であり、天然の酵素及び操作された酵素の両方がある。ニッキング酵素には、ボトム鎖切断酵素(bottom strand cutters)Nb.BbvCI、Nb.BsmI、Nb.BsrDI、Nb.BssSI、及びNb.BtsI並びにトップ鎖切断酵素(top strand cutters)Nt.AlwI、Nt.BbvCI、Nt.BsmAI、Nt.BspQI、Nt.BstNBI、及びNt.CviPIIがある。
【0048】
本発明において限定的に利用されるニッキング酵素ではない制限酵素は、二本鎖核酸の両方の鎖を切断することが可能であるにもかかわらず、その認識配列と結合した後、特定の状況下でその二本鎖DNA切断部位の一方の鎖のみを切断し、又はニック形成することもできる。これは、いくつかの方法で達成し得る。本発明との関連性が特に高いことに、このことは切断部位での二本鎖核酸中の鎖の一方が、二本鎖核酸標的部位の一方の鎖が修飾されており、それにより一方の鎖上の切断部位のホスホジエステル結合がヌクレアーゼ抵抗性修飾、例えばホスホロチオエート(PTO)、ボラノホスフェート、メチルホスフェート、又はペプチド-ヌクレオチド間結合を用いて保護されているために切断することが可能でない状態にされている際に達成され得る。特定の修飾ヌクレオチド間結合、例えばPTO結合は、化学合成によりオリゴヌクレオチドプローブ及びプライマー中に設けることができ、又は例えば1以上のαチオール修飾デオキシヌクレオチドを使用して、ポリメラーゼにより二本鎖核酸に取り込ませることができる。従って、一実施態様において、1以上の修飾dNTPはαチオール修飾dNTPである。典型的に、取り込まれてヌクレアーゼ抵抗性をより効果的に付与するS異性体を利用する。
【0049】
利用可能なニッキング酵素ではない制限酵素の数が非常に多いため、異なる特性を有する多種多様な酵素を所望の性能特性、例えば所与の応用のための発明における使用のための、温度プロファイル、速度、緩衝液適合性、ポリメラーゼの交叉適合性、認識配列、熱安定性、製造性などについてスクリーニングするために利用可能である。対照的にごく少数のニッキング酵素しか利用できないという事実より、ニッキング酵素を使用する公知のキット及び方法の潜在性は制限され、例えばより低い反応速度(感度、結果を得るまでの時間)及びより高い反応温度がもたらされ得る。本発明における使用のために選択されるニッキング酵素ではない制限酵素は天然の又は操作された酵素であり得る。
【0050】
本発明における使用のためのニッキング酵素ではない制限酵素の選択において、当業者であれば修飾が適当な位置に取り込まれて関連する鎖の切断が阻止され、他方の鎖の切断は阻止されないことを確保するために、適切な切断部位を有する酵素を特定することが必要であることを認識するであろう。例えば、修飾dNTP、例えばαチオールdNTPを使用する実施態様において、プライマー配置に十分な柔軟性を提供し、それにより病原体由来RNAが適切な位置で修飾ヌクレオチド塩基位置を含み、その取込み後に関連する鎖の切断が阻止されるようにするために、非パリンドローム認識配列を有する非対称制限酵素など、認識配列の外に切断部位を有する制限酵素を選択することが好ましい場合がある。例えば、αチオールdATPを使用する場合、プライマーが適切に切断されることを確保するために、関連するオリゴヌクレオチドプライマーの制限酵素切断部位の逆相補的配列は、該逆相補鎖中の切断部位の下流にあるアデノシン塩基を含むが、プライマー配列中の切断部位の下流にあるアデノシン塩基は含まない。従って、理想的にはその認識配列の外で切断する非パリンドローム認識配列を有する非対称制限酵素は、本発明における使用に好適である。その認識部位中で切断する部分的又は縮重パリンドローム配列を認識する制限酵素も使用することができる。ヌクレアーゼ抵抗性ヌクレオチド結合修飾、例えばPTOを使用すると、様々な異なるクラスの多種多様な市販の二本鎖切断因子による、いずれかの鎖の切断を阻止することができる。そのようなクラスの二本鎖切断因子には、本発明の方法におけるその使用を可能にするための、部分的又は縮重パリンドローム及び非対称制限酵素配列の両方を有するIIS型及びIIG型制限酵素がある。
【0051】
制限酵素(複数可)は典型的に、0.1~100単位の量で本発明において利用され、ここで1単位は総反応体積50μl中所与の温度(例えば、37℃)で1時間に1μgのT7 DNAを消化するのに要求される作用剤の量として定義する。しかしながら、量は選択した酵素の活性、酵素の濃度及び形態、病原体由来RNAの予測濃度、反応体積、プライマーの濃度、反応温度などのいくつかの要因に応じて異なり、いかなる方法であれ限定するものとみなすべきではない。当業者であれば、本発明で利用される制限酵素が、効果的かつ効率的機能、pH制御、及び酵素の安定化のために、好適な緩衝液及び塩、例えば二価金属イオンを要求することを理解されよう。
【0052】
一実施態様において、2以上の、例えば各病原体及び存在する場合、任意に対照核酸に対する制限酵素は、同じ制限酵素である。単一の制限酵素のみを使用することによって、本発明は多くの点で簡素化される。例えば、他の反応成分と適合可能なただ一つの酵素は、識別され、本発明の実施について最適化され、製造され、かつ安定化される必要がある。また、単一の制限酵素を利用することで、オリゴヌクレオチドプライマーの設計が簡素化され、増幅プロセスの対称性が支持される。
【0053】
本発明において、制限酵素は核酸二本鎖の一方の鎖のみを切断し、従って切断後に、それらは効率的なポリメラーゼの起点部位(priming site)として作用し得る露出された3’ヒドロキシル基を提示する。ポリメラーゼは、プライマーを伸長し、塩基対合相互作用を用いてDNA又はRNA鋳型鎖の逆相補的「コピー」を生成することにより、核酸の鎖又はポリマーを合成する酵素である。鎖置換能を備えたポリメラーゼは、鎖を適切に置換させて増幅プロセスに影響を及ぼすため、本発明において利用される。「鎖置換」という用語は、合成中に遭遇する下流のDNAを置換させるポリメラーゼの能力を指す。異なる温度で動作する鎖置換能を備えた様々なポリメラーゼが特徴づけられており、市販されている。例えば、Phi29ポリメラーゼは鎖を置換させる能力が非常に強い。バチルス種由来ポリメラーゼ、例えばBst DNAポリメラーゼ大断片は、典型的に高い鎖置換活性を示し、本発明における使用によく適する。大腸菌(E. coli)クレノウ断片(エキソ-)は、広く使用されているもう1つの鎖置換型ポリメラーゼである。鎖置換型ポリメラーゼ、例えばKlenTaqは、内在の酵素の関連する活性ポリメラーゼドメインのみのクローニング及び任意のエキソヌクレアーゼ活性のノックアウトなどによって、容易に操作することができる。本発明において、RNA依存的DNA合成(逆転写酵素)活性も要求される。この活性は、鎖置換型ポリメラーゼにより、及び/又は工程a)の別個の追加の逆転写酵素、例えばM-MuLV若しくはAMVによって実施することができる。従って、本発明のキット及び方法において、逆転写酵素及び鎖置換型DNAポリメラーゼは、同じ酵素であり得る。
【0054】
ポリメラーゼは典型的に、本発明において、酵素、試薬の濃度、及び所望の反応温度に応じて最適化された適切な量で、利用される。例えば、0.1~100単位のバチルスポリメラーゼを使用することができ、1単位は、65℃、30分の間に25nmolのdNTPを酸不溶性材料に取り込む酵素量として定義する。しかしながら、量はいくつかの要因、例えばポリメラーゼ活性、その濃度及び形態、病原体由来RNAの予測濃度、反応体積、オリゴヌクレオチドプライマーの数及び濃度、並びに反応温度に応じて決まり、いかなる方法であれ限定するものとみなすべきではない。
【0055】
当業者であれば、ポリメラーゼがポリメラーゼ活性を有するためにはdNTPモノマーが要求されること、またポリメラーゼは緩衝塩、二価イオン、及び安定化剤などの成分を含む適切な緩衝液を要求することを知悉するであろう。さらに、鎖置換型ポリメラーゼによる取込み後のプライマーの逆相補鎖の切断を阻止するために、1以上の修飾dNTPを本発明において使用する。典型的に、単一の修飾dNTPを使用する場合、本発明で使用されるdNTPは対応する塩基が除外される。例えば、修飾dNTPがαチオールdATPである実施態様において、dNTPはdTTP、dCTP、及びdGTPのみを含み、dATPは含まない。対応する天然のdNTP塩基を除去することで、修飾塩基のみがポリメラーゼによる取込みに利用可能となるため、プライマーの逆相補的配列中の全ての要求されるボトム鎖の切断部位が阻止されることが確保される。しかしながら、対応する天然のdNTP塩基の完全な又は部分的除去は、必須ではない。dNTPは典型的に本発明において、他のポリメラーゼ方法で利用されている濃度と同程度の濃度、例えば10マイクロモルから1ミリモルの濃度範囲で使用され得るが、活性を最大化し、バックグラウンドシグナルの生成を回避するために1からの合成を最小化することを目的として、本発明において使用するdNTP濃度は任意の所与の酵素及び試薬について最適化することができる。特定のポリメラーゼが1以上の修飾dNTP塩基のより低い速度での取り込みを示し得ることを考慮すると、1以上の修飾塩基を、未修飾dNTPよりも高い相対濃度、例えば5倍高い濃度で本発明において使用することができるが、これは、非限定的なものとみなされるべきである。
【0056】
1以上の修飾dNTPの使用は、制限酵素にそれらの制限部位の一方の鎖のみを切断させることに加え、重要な利点を提供する本発明に不可欠な特徴である。例えば、特定の修飾dNTP、例えばαチオールdNTPを用いると、それを組み込んだDNAの融解温度(Tm)が低下する。このことは、本発明において使用するオリゴヌクレオチドプライマー及びプローブが、増幅の間に生産された修飾dNTPを含む任意の競合する相補鎖よりも増幅産物中の種とのハイブリダイゼーションについて高い親和性を有することを意味する。この重要な特徴は、例えば、置換された鎖の1つがその逆相補鎖とハイブリダイズして「非生産的」終点種を生産する際に、1以上の修飾塩基の存在がハイブリダイゼーションのTmの低下をもたらすことにより、それは該置換された鎖のさらなるプライマーとの「生産的」ハイブリダイゼーションより容易に解離するため、増幅速度が増強される。ホスホロチオエートヌクレチド間結合は、Tm(二本鎖のちょうど半数の一本鎖がハイブリダイズする温度)を付加当たり1~3℃低下させ、物理化学特性を大きく変化させ得ることが報告されている。また、本発明者らはホスホロチオエートヌクレオチド結合がDNA配列中に存在すると、鎖置換速度が増強することを観察した。さらに、本発明において使用するオリゴヌクレオチドプローブは、例えば本方法の工程a)の実施と同時に試料と接触させたか、工程a)の実施の後に試料と接触させたかにかかわらず、任意の競合修飾種よりも増幅産物中の種に対して高い親和性を有し、従って優先的にハイブリダイズし、又はハイブリダイズした鎖を置換させさえして、ディテクタ種の生産を促進し得る。それに含まれる修飾ヌクレオチド間結合の結果、増幅産物種のTmの低下及び置換の増強は、本方法の速度を根本的に増強させ、迅速な増幅が起こるのに必要な温度を低下させる役割を果たす。
【0057】
1以上の修飾ヌクレオチドの使用による速度増強に加えて、オリゴヌクレオチドプライマー及び本発明のプローブのハイブリダイゼーションの特異性も強化される。典型的に、1つの特定のヌクレオチドの全ての塩基が増幅産物中で置換されると仮定すると、プライマー及びプローブのハイブリダイゼーション部位には、典型的に修飾塩基を含み、ホスホロチオエートヌクレオチド間結合に起因するTmの低下は、例えば非特異的ハイブリダイゼーションによる配列ミスマッチが許容される可能性がより低いことを意味する。
【0058】
従って、1以上の修飾dNTPを利用する本発明の不可欠な特徴は、増幅の感度及び特異性の両方を増強し、そのような修飾ヌクレオチドを要件としない公知のキット及び方法、例えばソフトウェアで最適化されたプライマーを使用するNEARの変法(WO2014/164479)又はウォームスタート若しくは制御下の温度低下(WO2018/002649)を含むNEAR(WO2009/012246)とはまったく対照的である根本的な利点をもたらす。
【0059】
いくつかの異なる修飾dNTP、例えばポリメラーゼによるその取込み後にヌクレアーゼ抵抗性を付与する修飾dNTPが存在し、制限酵素による切断に対する抵抗性及び実施態様において、所与の応用のための本発明の成績を高める他の特徴を達成するために、本発明において利用可能である。ヌクレアーゼ抵抗性及びTmの低下を提供するαチオールdNTPに加え、ポリメラーゼ取込みの潜在性を有し、ヌクレアーゼ抵抗性を付与することが報告されている修飾dNTPには、ボラーノ誘導体、2'-O-メチル(2'OMe)修飾塩基及び2'-フルオロ塩基などの同等のヌクレオチド誘導体がある。ポリメラーゼによって取り込まれ、本発明の特定の態様を増強するための本発明において使用され得る他の修飾dNTP又は同等の化合物には、結合親和性を低下させるもの、例えばイノシン-5'-三リン酸又は2'-デオキシゼブラリン-5'-三リン酸、結合特異性を増加させるもの、例えば5-メチル-2'-デオキシシチジン-5'-三リン酸、又は5-[(3-インドリル)プロピオンアミド-N-アリル]-2'-デオキシウリジン-5'-三リン酸、及びGCリッチ領域の合成を増強するもの、例えば7-デアザ-dGTPがある。特定の修飾によりTmを増加させることができ、本発明の実施態様においてハイブリダイゼーション事象を制御する潜在性をさらに提供する。
【0060】
本発明の方法の工程a)、b)、及びc)は、広範囲の温度で実施することができる。当業者であれば、各工程の最適温度は、関連するポリメラーゼ及び制限酵素の至適温度並びに、オリゴヌクレオチドプライマーのハイブリダイズ領域の融解温度によって決定されることを認識されよう。注視すべきことに、本方法は、工程a)で温度周期変化を要件とせずに実施することができる。さらに、増幅工程a)では、温度の制御された増減、ホットスタート若しくはウォームスタート、プレヒート、又は制御された温度低下が一切要求されない。本発明は、広い温度範囲、例えば15℃~60℃、例えば20~60℃又は15~45℃にわたり、工程を実施することを可能とする。実施態様に従って、工程a)は50℃以下、又は約50℃の温度で実施する。本発明において使用するためのニッキング酵素ではない多種多様な制限酵素が利用可能であることを考慮すると、ニッキング酵素を使用する代替法と比較して相対的に低い温度で迅速な速度を有する制限酵素を選択することが可能である。また、1以上の修飾ヌクレオチドを使用することで、増幅に要求される温度が低下する。公知の方法と比較して、最適な温度プロファイルを低くする潜在性を有することに加え、本発明の方法は、並外れて広い温度範囲で実施することができ本発明のキットは、並外れて広い温度範囲で使用することができる。そのような特徴は、低コストの診断装置での本発明の使用に非常に魅力的である。ここで加熱制御は使い捨て装置又は機器を不要とする装置が商業的に現実的でない点までそのような装置の商品原価を高める複雑な物理的制約を課す。本発明を使用して、例えば周囲温度又はおよそ37℃で標的病原体の迅速な検出を実施することができるいくつかのアッセイが開発されている。従って、さらなる実施態様において、工程a)は45℃以下、又は約45℃の温度で実施する。ユーザ工程を簡素化し、結果が出るまでの全体的な時間を短縮するために、標的温度より低い温度で本方法を開始することが好ましい場合がある。従って、本方法のさらなる実施態様において、工程a)の温度は増幅の間に増加する。例えば、本方法の温度は、周囲温度、例えば20℃から開始して、一定期間、例えば2分間にわたり増加させ、最終温度、例えばおよそ45℃又は50℃に達する。一実施態様において、開始周囲温度、例えば15~30℃の範囲から、40~50℃の範囲の温度までの増加など、工程a)の実施の間温度を増加させる。
【0061】
本発明の低温における潜在性及び汎用性は、公知のキット及び方法とは対照的に、タンパク質又は低分子などの他のバイオマーカーを検出するための免疫アッセイ又は酵素アッセイなど、様々な他のアッセイに必要な条件と適合することを意味する。従って、本発明は例えば試料中の関心対象とする核酸及びタンパク質又は低分子を含む複数の種の同時検出に使用することができる。ニッキング酵素ではない制限酵素、鎖置換型DNAポリメラーゼ、存在する場合は別個の逆転写酵素、オリゴヌクレオチドプライマー、オリゴヌクレオチドプローブ、dNTP及び1以上の修飾dNTPを含む本発明に要求される成分は、安定保存のために減圧凍結乾燥され、又は凍結乾燥され、反応は続いて再水和によって、例えば試料の追加に際して誘発され得る。そのような安定保存のための減圧凍結乾燥又は凍結乾燥には、典型的に1以上の賦形剤、例えばトレハロースを、成分を乾燥させる前に追加することが要求される。減圧凍結乾燥又は凍結乾燥のための非常に多種多様なそのような賦形剤及び安定剤が公知であり、本方法の実施に要求される成分の好適な組成を特定するための試験に利用可能である。
【0062】
当業者であれば、本発明のキット及び方法がポリメラーゼベースの増幅法を利用し、PCR又は他のポリメラーゼベースの増幅法を増強することが示されている1以上の添加剤を加えることにより増強され得ることは、明らかであろう。そのような添加剤には、これらに限定はされないが、テトラヒドロチオフェン1-オキシド、L-リジン遊離塩基、L-アルギニン、グリシン、ヒスチジン、5-アミノ吉草酸、1,5-ジアミノ-2-メチルペンタン、N,N′-ジイソプロピルエチレンジアミン、テトラメチレンジアミン(TEMED)、塩化テトラメチルアンモニウム、シュウ酸テトラメチルアンモニウム(tetramethylammonium oxylate)、メチルスルホンアセトアミド、臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、ベタインアルデヒド、テトラエチルアンモニウムクロリド、(3-カルボキシプロピル)トリメチルアンモニウムクロリド、テトラブチルアンモニウムクロリド、テトラプロピルアンモニウムクロリド、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド(DMF)、N-メチルホルムアミド、N-メチルアセトアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、L-スレオニン、N,N-ジメチルエチレンジアミン、2-ピロリドン、HEP(N-ヒドロキシエチルピロリドン)、NMP(N-メチルピロリドン)、及び1-メチル、1-シクロヘキシル-2-ピロリドン(ピロリジノン)、δ-バレロラクタム、N-メチルスクシンイミド、1-ホルミルピロリジン、4-ホルミルモルホリン、スルホラン、トレハロース、グリセロール、Tween-20、DMSO、ベタイン、及びBSAがある。
【0063】
本発明者らの研究より、本発明は、非常に低いコピー数、単一コピー数の検出さえ含み、広範囲の標的病原体レベルにわたり有効であることが明らかとなった。オリゴヌクレオチドプライマーは、典型的に病原体由来RNAに対し大過剰に提供する。典型的に、各プライマーの濃度は10~200nMの範囲内であるが、限定するものではないとみなすべきである。プライマー濃度が高いとハイブリダイゼーションの効率が増強され、従って反応速度が増加し得る。しかしながら、高濃度ではプライマーダイマーなどの非特異的バックグラウンド効果も観察され得るため、オリゴヌクレオチドプライマーの濃度は、本発明を利用する任意の所与のアッセイについての最適化プロセスの一部を形成する。一実施態様において、各プライマー対の第1及び第2のオリゴヌクレオチドプライマーは同じ濃度で提供する。別の実施態様において、プライマー対の第1及び第2のオリゴヌクレオチドプライマーの一方を、他方より過剰に提供する。周期的増幅プロセスの自然対称性のために、一方のプライマーを他方より過剰に提供する実施態様において、反応速度は低下し得るが、特定の状況において、それは本発明における非特異的バックグラウンドシグナルを低下させ、かつ/又は第1及び第2のオリゴヌクレオチドプローブのハイブリダイズしてディテクタ種を生産する能力を増強するために使用することができる。選択した検出手段で検出するのに十分なディテクタ種が生産される前に、例えば両方のプライマーが制約となるほどではないレベルで存在することが望ましい。
【0064】
本発明のためのオリゴヌクレオチドプライマーの設計にはいくつかの検討事項がある。第1及び第2のオリゴヌクレオチドプライマーは各々、5'から3'の方向に制限酵素認識配列及び切断部位並びにハイブリダイズ領域の1つの鎖を含む。ここで該ハイブリダイズ領域は第1のプライマーの場合は病原体由来RNA中の第1のハイブリダイゼーション配列と、第2のプライマーの場合は標的核酸中の第1のハイブリダイゼーション配列の上流の第2のハイブリダイゼーション配列の逆相補鎖と、ハイブリダイズすることが可能である。従って、一対のプライマーは病原体由来RNAの領域を増幅するように設計される。プライマーの制限酵素認識配列は典型的に、病原体由来RNA配列中には存在しないため、最初のハイブリダイゼーション事象の間にオーバーハングを形成した後、アンプリコンに導入される(
図1を参照されたい)。非対称制限酵素を使用する場合、切断部位は典型的に認識配列の下流にあり、従って任意にプライマーのハイブリダイズ配列中に存在し得る。
【0065】
オリゴヌクレオチドプライマーは、その切断後に切断部位の配列5'は、所望の反応条件下でその逆相補鎖とハイブリダイズし続け、かつ鎖置換型DNAポリメラーゼによって3'ヒドロキシル基の伸長後切断部位の下流の鎖が置換するのに十分な融解温度(Tm)を有する上流プライマーを形成するように設計する。従って、さらなる「安定化」領域がオリゴヌクレオチドプライマーの5'末端に含まれる場合がある。その最適な長さは、関連する制限酵素の認識配列に対する切断部位の位置及び本方法の工程a)における増幅に利用される温度などの他の要因によって決定される。従って、一実施態様において、1以上のプライマー対の、例えば全てのプライマー対の第1及び/又は第2のオリゴヌクレオチドプライマーは、制限酵素認識配列及び切断部位の上流の、例えば5'末端、及び例えば5又は6塩基長の安定化配列を含む。
【0066】
プライマー設計では、最適な配列特異的ハイブリダイゼーション及び鎖置換を可能にして特異的かつ高感度な増幅を確保するために、各ハイブリダイズ領域の配列及び長さを規定する必要がある。検出したい病原体由来RNAの配列中のプライマーの位置決めはプライマーのハイブリダイズ領域の配列を様々に規定し、従って増幅の感度及び特異性が最適化され、オリゴヌクレオチドプローブとの適合性を有するプライマーを選択することができる。従って、異なるプライマー対をスクリーニングして、本発明の成績を高めるための最適な配列及び位置決めを特定することができる。典型的には、プライマーのハイブリダイズ領域の長さは、その理論的Tmが所望の反応温度で効率的なハイブリダイゼーションを可能にするが、同時に切断後にも容易に置換されるように、設計する。プライマーの設計中、ハイブリダイズ配列及び置換された鎖の配列の理論的Tmは、期待される反応温度及び選択した制限酵素の状況下で検討する。これは、配列の長さが長くなると生じ得る配列由来結合特異性に向かう理論的改善により比較検討される。本発明者らの様々な研究により、本発明において効果的に使用するプライマーの設計には、かなりの汎用性があることが示された。一実施態様において、第1及び/又は第2のオリゴヌクレオチドプライマー対のハイブリダイズ領域は、6~30塩基長、例えば9~16塩基長である。さらなる実施態様において、修飾、例えば非天然塩基及び代替ヌクレオチド間結合、又は無塩基部位をプライマーのハイブリダイズ領域に利用して、それらの特性を精緻にすることができる。例えば、Tmを増強する修飾、例えばPNA、LNA、又はG-clampは、アンプリコンをより短くし、従って増幅速度を増強することができるより短くより特異的なプライマーハイブリダイゼーション領域を可能とし得る。
【0067】
本発明者らの様々な研究により、本発明を使用して達成される速度及びその感度は、短いアンプリコンを有することにより増強され、従ってある実施態様においてそのハイブリダイズ配列を含む両方のプライマーの全長を短くすること、及び病原体由来RNAの第1及び第2のハイブリダイゼーション配列の間に例えば10又は15ヌクレオチド塩基以下のただ1つの短いギャップを有するプライマーを位置決めすることが好ましい場合があることが明らかとなった。一実施態様において、病原体由来RNAの第1及び第2のハイブリダイゼーション配列は20塩基以下、例えば0~15又は0~6塩基により隔てられ、ある実施態様において、それらは3~15又は3~6塩基、例えば5、7、又は11塩基により隔てられる。さらなる実施態様において、例えば1~2塩基だけ、ハイブリダイゼーション配列はオーバーラップしている。
【0068】
本発明において、インフルエンザA及び/又はインフルエンザB由来RNAに対する第1及び第2のハイブリダイゼーション配列は、インフルエンザゲノムの分節1、2、3、5、7、又は8のうちの1つの中にあり、又はそれに由来し得る。インフルエンザA由来RNA及びインフルエンザB由来RNAに対する配列は、同じ又は異なる分節の中にあり、又はそれらに由来し得る。呼吸器合胞体ウイルス由来RNAに対する第1及び第2のハイブリダイゼーション配列は、呼吸器合胞体ウイルスA及び/又はBのNS2(非構造タンパク質2)、N(核タンパク質)、F(融合糖タンパク質)、M(マトリックス)、又はL(ポリメラーゼ)遺伝子のうちの1つの中にあるか、又はそれらに由来し得る。呼吸器合胞体ウイルスA及び呼吸器ウイルスB(Respiratory Virus B)由来RNAの両方に対する第1及び第2のハイブリダイゼーション配列は、同じ遺伝子に由来し得る。呼吸器合胞体ウイルスA及び呼吸器ウイルスB由来RNAに対する第1及び第2のハイブリダイゼーション配列は、好ましくは呼吸器合胞体ウイルスA及び呼吸器ウイルスBの両方のゲノム中で保存されている。
【0069】
本発明における使用のための、オリゴヌクレオチドプローブの対の配列の設計にはいくつかの検討事項がある。まず、第1の一本鎖検出配列とハイブリダイズする第1のオリゴヌクレオチドプローブのハイブリダイゼーション領域及び第2の一本鎖検出配列とハイブリダイズする第2のオリゴヌクレオチドプローブのハイブリダイゼーショ領域は典型的に、それらがオーバーラップせず、又は最小限のオーバーラップを有し、両方のオリゴヌクレオチドプローブが増幅産物中の少なくとも1つの種と同時に結合することを可能とするように、設計する。また、増幅産物中の1以上の種に効率的に標的化させることを確保し、両方のオリゴヌクレオチドプローブを同じ鎖に結合させるために、それらは典型的に主に増幅産物種の一方の鎖の切断部位の位置及びその逆相補鎖上の切断部位の反対側の位置の間にある配列とハイブリダイズするように設計する。任意の所与のプライマー対について、いずれの鎖もオリゴヌクレオチドプローブによる標的化のために選択することができる。オリゴヌクレオチドプローブが典型的に、本方法においてポリメラーゼにより伸長されないことを考慮すると、ハイブリダイゼーション領域の配列は増幅産物中の種の関連配列に基づいて設計され、このことはそれらのTm、%GC、及び得られる実験成績データを決定する。一実施態様において、第1及び/又は第2のオリゴヌクレオチドプローブのハイブリダイゼーション領域は9~20ヌクレオチド塩基長である。標的病原体由来RNAの第1及び第2のハイブリダイゼーション配列が0塩基によって隔てられている一実施態様において、オリゴヌクレオチドプローブのうちの一方のハイブリダイゼーション領域の配列は、オリゴヌクレオチドプライマーのうちの1つに対応する場合があり、他方のオリゴヌクレオチドプローブのハイブリダイゼーション領域は、他のオリゴヌクレオチドプライマーの逆相補鎖に対応し得るか、又は対応する。しかしながら、本発明の所望の実施態様のためのオリゴヌクレオチドプローブの特性を最適化して、該オリゴヌクレオチドプローブを病原体に対するプライマー対及び/若しくは制限酵素と混合して提供する場合、又は本方法の工程b)の全て若しくは一部を工程a)と同時に実施する場合のあらゆる阻害効果を回避するため、ハイブリダイゼーション領域の長さを縮めることができる。病原体に対する第1又は第2のオリゴヌクレオチドプローブが制限酵素の認識配列及び切断部位を包含し、かつ該オリゴヌクレオチドプローブをその病原体に対するプライマー対及び制限酵素と混合して提供し、又は本方法の工程a)の実施と同時に試料と接触させる場合、該プローブ中の切断部位は、例えばプローブの化学合成中に修飾ヌクレオチド間結合、例えばホスホロチオエート結合を含めること、又は該認識配列を除去するためにミスマッチを導入することにより、典型的に阻止される。ハイブリダイズ領域以外にも、オリゴヌクレオチドプローブの配列及びそれらが含み得る任意の修飾ヌクレオチド塩基、ヌクレオチド結合、又は他の修飾にはかなりの汎用性がある。オリゴヌクレオチドに化学的に挿入してそれらの特性を変更し、本発明の実施態様において利用され得る修飾塩基、例えば2-アミノ-dA、5-メチル-dC、Super T(登録商標)、2-フルオロ塩基、及びG clampは、Tmの増加を提供する一方、他の修飾塩基、例えばIso-dC及びIso-GはTmを増加させずに結合特異性を増強させることができる。他の修飾、例えばイノシン又は無塩基部位は、結合の特異性を低下させ得る。ヌクレアーゼ抵抗性を付与する公知の修飾には、逆向きdT及びddT及びC3スペーサーがある。修飾によりTmを増加又は低下させることができ、本発明の実施態様においてハイブリダイゼーション事象を制御する潜在性を提供する。オリゴヌクレオチドプローブのハイブリダイズ領域中での修飾塩基の使用は、例えばハイブリダイズ領域の長さを増加させることなくその結合親和性を増強させることにより、オリゴヌクレオチドプローブの性能を向上させる機会を提供する。一実施態様において、一方又は両方のオリゴヌクレオチドプローブ中の修飾塩基は、関連する一本鎖検出配列との相補性を有する増幅産物中の任意の種より効率的に、従って、それに勝って、それらがハイブリダイズすることを可能とする。
【0070】
病原体に対する第1及び第2のオリゴヌクレオチドプローブのうちの一方がそのハイブリダイゼーション領域の3'末端における伸長を阻止され、該ハイブリダイゼーション領域中で制限酵素により切断されることが可能でない場合、典型的に該阻止されたオリゴヌクレオチドプローブは追加の5'領域を含み、記載されている通りプレ-ディテクタ種を安定化させる機会が提供される(
図2を参照されたい)。一実施態様において、該阻止されたオリゴヌクレオチドプローブは、例えばオリゴヌクレオチドプライマーのうちの一方の正確な配列に相同な配列を含むが、そのハイブリダイゼーション領域の3'末端における鎖置換型DNAポリメラーゼによるその伸長を阻止する修飾及び制限酵素切断部位を阻止する単一のホスホロチオエートヌクレオチド間結合を含む。そのような実施態様は、アッセイ設計を簡素化し、非特異的バックグラウンド増幅をもたらし得る追加の配列モチーフを導入しないことを確保する。
【0071】
ディテクタ種を生産する第1及び第2のオリゴヌクレオチドプローブの対は、好ましくは生産されるディテクタ種のコピー数が検出の容易な該ディテクタ種について利用される手段の検出限界を十分に上回るレベルで提供される。さらに、第1及び/又は第2のオリゴヌクレオチドプローブ(複数可)によるハイブリダイゼーションの効率は、その濃度に影響される。典型的に、工程a)の実施と同時に試料と接触させるオリゴヌクレオチドプローブの濃度は、オリゴヌクレオチドプライマーの濃度と同程度、例えば10~200nMとなり得るが、それは限定するものでないものとみなすべきである。一実施態様において、対をなす一方又は両方のオリゴヌクレオチドプローブの濃度は、対応する対をなす一方又は両方のオリゴヌクレオチドプライマーの濃度より過剰に提供されるのに対し、別の実施態様において、対をなす一方又は両方のオリゴヌクレオチドプローブの濃度は、対応する対をなす一方又は両方のオリゴヌクレオチドプライマーよりも低濃度で提供される。対をなす一方又は両方のオリゴヌクレオチドプローブを増幅工程a)の実施後に試料と接触させる場合において、濃度をより高くすると、必要に応じて最も効率的なハイブリダイゼーションを達成することが可能となり、工程a)の結果として生じ得る増幅に対する阻害について何ら検討する必要はない。
【0072】
ハイブリダイゼーション配列は、本発明の使用のためのオリゴヌクレオチドプライマー及びオリゴヌクレオチドプローブの両方の重要な特徴である。ハイブリダイゼーションとは、標的核酸(病原体由来RNA若しくは対照核酸)又は増幅産物中の種と結合するオリゴヌクレオチドプライマー又はプローブの能力である配列特異的ハイブリダイゼーションを指し、各核酸の配列中の相補的塩基の間の水素結合による塩基対合に起因する。典型的な塩基対は、アデニン-チミン(A-T)、又はRNA若しくはRNA/DNAハイブリッド二本鎖の場合はアデニン-ウラシル、及びシトシン-グアニン(C-G)であるが、核酸塩基の様々な天然及び非天然類似体も特定の結合選好性を有することが公知である。さらに、本発明において、オリゴヌクレオチドプローブ又はプライマーの相補的領域は、必ずしも標的核酸又は増幅産物中の種中のそのハイブリダイゼーション配列との完全かつ正確な相補性を有する配列中の完全に天然の核酸塩基を含む必要はない:むしろ、本方法の実施のためには、オリゴヌクレオチドプローブ/プライマーは制限酵素による切断及び鎖置換型DNAポリメラーゼによる伸長を含む本発明の正しい運用に必要な二本鎖配列を形成するのに十分なその標的ハイブリダイゼーション配列との配列特異的ハイブリダイゼーションが可能でありさえすればよい。従って、そのようなハイブリダイゼーションは、正確に相補的ではなく、非天然塩基又は無塩基部位を有していても、起こり得る。一実施態様において、本発明で使用するオリゴヌクレオチドプライマー又はオリゴヌクレオチドプローブのハイブリダイズ領域は、病原体由来RNA、対照核酸、又は増幅産物中の種の関連する領域の配列との完全相補鎖、又は必要に応じて、その逆相補的配列からなり得る。他の実施態様において、1以上の非相補的塩基対がある。いくつかの状況では、本発明においてオリゴヌクレオチドプライマー及び/又はプローブの混合物を使用することが有利な場合がある。従って、例として病原体由来RNAが2つの多型位置を有する一塩基多形(SNP)部位を含む場合、オリゴヌクレオチドプライマー及びその位置で異なるオリゴヌクレオチドプローブの1:1混合物(各成分はSNPの各塩基に対する相補性を有する)を利用することができる。オリゴヌクレオチドの製造時に、合成プロセスの間1以上の塩基を無作為化することは、常套的に実践される。本発明における使用のためのオリゴヌクレオチド、例えばプライマー及びプローブの長さは、当業者によって容易に決定できる。非限定的な例として、そのようなオリゴヌクレオチドの長さは、最大約200、例えば最大約100塩基であり得る。
【0073】
当業者であれば、ポリメラーゼを含む増幅プロセスが、1からの合成及び/又はプライマー間結合に起因するような非特異的バックグラウンド増幅を課題とし得ることを理解されよう。本発明は典型的に、アンプリコンの長さができるだけ短くなるように、例えばプライマーのハイブリダイズ配列、病原体由来RNAにおける第1及び第2のハイブリダイゼーション配列の間のギャップ、及び任意の安定化領域の長さを可能な範囲で最小化することにより設計されている場合、より迅速な増幅を示すのに対し、所与の反応温度での機能を依然として保持する。より短いアンプリコンを用いると、増幅産物種を生産するために必要な全ての配列がオリゴヌクレオチドプライマーによって提供されるという事実から、非特異的バックグラウンドが悪化する場合がある。1から合成されたDNA又はプライマー間結合を介して「連結された」第1のオリゴヌクレオチドプライマー及び第2のオリゴヌクレオチドプライマーの両方を含む非標的特異的様式でアンプリコンが生産された場合は、擬陽性の結果が発生し得る。本発明においてオリゴヌクレオチドプローブ対を使用することで、追加的特徴を包含する本発明の様々な実施態様について任意の非標的特異的バックグラウンドシグナルの可能性を最小化することが可能になる。オリゴヌクレオチドプローブ対を使用することで実現されるそのような実施態様は、この点で公知のキット及び方法に比べて大きな利点がある。
【0074】
1つのアプローチは、病原体由来RNA中の第1及び第2のハイブリダイゼーション配列を分離し、オリゴヌクレオチドプローブを使用して標的ベースの配列特異性チェックを提供することである。従って、一実施態様において、病原体由来RNAの第1及び第2のハイブリダイゼーション配列は3~15又は3~6塩基、例えば5、7、又は11塩基により隔てられる。プライマー間のこのギャップは最適なサイズギャップを提示し、短いアンプリコンの速度増強を維持しながら、増幅産物中の種の追加的特異性チェックを提供する。従って一実施態様において、増幅産物中の少なくとも1つの種の第1又は第2の一本鎖検出配列が、該3~15塩基、又は3~6塩基に対応する少なくとも3塩基の配列を含む。例えば、本発明者らは実施例4(
図8)に示すように、特異的標的病原体依存的増幅産物を非標的特異的バックグラウンド増幅産物から識別する潜在性を実証した。
【0075】
一実施態様において、第1及び第2のオリゴヌクレオチドプローブのうちの一方のハイブリダイゼーション領域は、その病原体に対する第1又は第2のプライマーのハイブリダイズ領域又はハイブリダイズ領域の逆相補鎖との5塩基以上の相補性を有する。
【0076】
別の実施態様において、本発明において利用する第1のオリゴヌクレオチドプローブのハイブリダイゼーション領域は、第1及び第2のオリゴヌクレオチドプライマーのうちの一方のハイブリダイズ領域とのある程度の相補性、例えば5塩基以上の相補性を有し、かつ/又は第2のオリゴヌクレオチドプローブのハイブリダイゼーション領域は、第1及び第2のオリゴヌクレオチドプライマーの他方のハイブリダイズ領域の逆相補鎖とのある程度の相補性、例えば5塩基以上の相補性を有する。
【0077】
さらなる実施態様において、第1及び/又は第2のオリゴヌクレオチドプローブのハイブリダイゼーション領域は、上記の通り病原体由来RNA中の第1及び第2のハイブリダイゼーション配列の間のギャップとのある程度の相補性又は逆相補性を有し得る。
【0078】
代替アプローチでは、第1及び/又は第2のオリゴヌクレオチドプライマー対の濃度を減少させ、1からの増幅及びプライマー間結合に起因するバックグラウンドの確率を低下させる。増幅速度を維持することを確保するために、3'末端における鎖置換型DNAポリメラーゼによる伸長が阻止された追加のオリゴヌクレオチドプライマー対を使用することができる。この実施態様において、阻止されていない第1及び第2のオリゴヌクレオチドプライマー対は、初回のハイブリダイゼーション及び伸長事象について病原体由来RNA由来のアンプリコンを生産するために十分な濃度で利用可能であり、続く増幅は好ましくは高濃度で提供される阻止されたプライマー(複数可)を用いて続行される。ここで阻止されたプライマーの切断は、3'阻止修飾を除去し、かつ増幅プロセスを損失なく続行させるために、その伸長及び鎖置換の前に起こる(
図4を参照されたい)。従って、一実施態様において、本発明はさらに、少なくとも1つの病原体に対する:(A)5'から3'の方向に制限酵素の認識配列及び切断部位並びに病原体由来RNA中の第1のハイブリダイゼーション配列とハイブリダイズすることが可能な領域の1つの鎖を含み、かつ3'末端におけるDNAポリメラーゼによる伸長が阻止される、第3のオリゴヌクレオチドプライマー;及び/又は(B)5'から3'の方向に制限酵素の認識配列及び切断部位並びに病原体由来RNA中の第2のハイブリダイゼーション配列の逆相補鎖とハイブリダイズすることが可能な領域の1つの鎖を含み、かつ3'末端におけるDNAポリメラーゼによる伸長が阻止される、第4のオリゴヌクレオチドプライマーを利用する。そのような実施態様を含む本発明の方法において、第3及び第4のプライマーを本方法の工程a)において試料と接触させる。さらなる実施態様において、存在する場合、第3のオリゴヌクレオチドプライマーは第1のオリゴヌクレオチドプライマーより過剰に提供され、かつ存在する場合、前記第4のオリゴヌクレオチドプライマーは前記第2のオリゴヌクレオチドプライマーより過剰に提供される。第1及び第2のオリゴヌクレオチドプライマーの濃度を大幅に低下させ、これを第3及び第4のオリゴヌクレオチドプライマーの存在により埋め合わせることにより、非標的依存的バックグラウンド増幅の除去の観点で最大の潜在的利益を得る。オリゴヌクレオチドプライマー合成中に、例えば3'リン酸又はC-3修飾の使用を通じて容易に達成できるポリメラーゼ伸長を阻止するための3'修飾の存在以外では、第1及び第2のプライマーに利用されるものと同じ設計パラメータが、第3及び第4のプライマーに適用される。
【0079】
上記の通り特異性の増強及びバックグラウンド増幅の除去を提供する本発明の方法の実施態様は、配列確認の厳密さを向上させ、それにより特異性の損失なく低温反応を実施することが可能となり、かつ/又はマルチプレックス性を増加させて、複数の反応が複数の標的の同時検出により実施されることが可能となる。また、この厳密な特異性の利点は、本方法が広い温度範囲及び準最適条件(例えば、試薬濃度)でも特異性を損失することなく許容できることを意味する。例えば、本発明者らは全ての構成要素の濃度を20%ずつ増減させて本発明を実施し、本発明者らは本方法の工程a)で増幅を実施した後、かなりの期間を周囲温度で本方法を実施したが、各事例において、特異性の損失は一切観察されなかった。従って、そのような実施態様は、公知のキット及び方法を上回る本発明の重要な利点となり、低コスト及び/又は使い捨ての診断装置での利用に理想的に好適であることを意味する。
【0080】
ディテクタ種の検出は、試料中に存在する他の試薬及び構成要素からディテクタ種の存在を差次的に検出する任意の技術によって達成することができる。標的病原体を区別するため、及び対照核酸が存在する場合、検出方法により各病原体ディテクタ種及び対照ディテクタ種を差次的に検出する。各々の病原体ディテクタ種及び任意に対照ディテクタ種を検出するための方法は、好ましくは同じである。ディテクタ種の検出における使用に利用可能な多種多様な物理化学的技術から、第1のオリゴヌクレオチドプローブ及び第2のオリゴヌクレオチドプローブの増幅産物中の関連する種とのハイブリダイゼーション後にのみ存在する高感度シグナルを生成することが可能な技術を本方法の使用について優先した。当業者であれば、第1のオリゴヌクレオチドプローブに容易に結合させることができる様々な比色定量色素又は蛍光定量色素が存在し、その視覚による又は装置を使用した(例えば吸光度又は蛍光分光法)検出の基礎を形成することができることは明らかであろう。
【0081】
従って一実施態様において、第1のオリゴヌクレオチドプローブの検出を可能とする部分は、比色定量色素若しくは蛍光定量色素、又は比色定量若しくは蛍光定量色素との結合を可能とする部分、例えばビオチンである。比色定量色素を使用する場合、同じ又は異なる色素を各々の標的病原体及び任意に対照核酸に対して使用することができる。一実施態様において、全ての標的病原体及び、存在する場合、対照核酸に対して、同じ色素を使用する。
【0082】
比色定量色素を利用する本発明の実施態様は、蛍光励起及び検出を行う装置を必要とせず、潜在的に標的核酸の存在を目で判断できるという利点がある。比色定量検出は、本発明におけるその使用の前に、第1のオリゴヌクレオチドプローブに比色定量色素、又は比色定量色素と結合可能な部分を直接結合させ、あるいは増幅産物中の種とのその結合の後にプローブに色素又は部分を特異的に結合させ(attaching)、又は結合させる(binding)ことにより達成することができる。例えば、第1のオリゴヌクレオチドプローブには、引き続きそれを検出するためのストレプトアビジンをコンジュゲートした比色定量色素とのその結合を可能にするビオチン部分を含み得る。検出に使用できるそのような比色定量色素の一例は、金ナノ粒子である。同様の方法では、様々な他の本質的比色定量部分を利用することができ、これらは非常に多くのものが公知であり、例えばカーボンナノ粒子、銀ナノ粒子、酸化鉄ナノ粒子、ポリスチレンビーズ、量子ドットなどがある。吸光係数の高い色素はまた、本方法における高感度リアルタイム定量の潜在性を提供する。
【0083】
所与の応用に適切な色素を選択する際には、いくつかの検討事項を考慮する。例えば、溶液中で可視比色定量検出の実施を意図した実施態様において、検出のしやすさから、一般的により大きなサイズの粒子及び/又は、より吸光係数の高い粒子を選択することが有利である一方、可視検出を意図するラテラルフロー膜を組み込んだ実施形態では、膜に沿ってより迅速に拡散する、より小さいサイズの粒子の能力から利益を受ける場合がある。様々なサイズ及び形状の金ナノ粒子が利用可能であるが、ポリスチレン又はラテックスをベースとしたミクロスフェア/ナノ粒子を含むいくつかの関心対象とする他の比色定量部分も利用可能である。また、この性質の粒子はいくつかの色を利用可能である。いくつかの色は、本方法の実施中に異なるディテクタ種にタグ付加し、差次的に検出する、すなわち検出反応中に「マルチプレックス」に比色定量シグナルを生成するために、有用となり得る。
【0084】
蛍光定量検出は、適切な励起刺激の下でディテクタ種の引き続きの検出を導く蛍光シグナルを放出する任意の色素の使用を通じて達成することができる。例えば、直接蛍光検出用の色素には、限定はされないが:量子ドット、ALEXA色素、フルオレセイン、ATTO色素、ローダミン、及びテキサスレッドがある。オリゴヌクレオチドプローブに結合させた蛍光色素部分を利用する本方法の実施態様においてまた、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)、例えば核酸検出のためのTaqMan定量PCR又は分子ビーコンベースの戦略の利用に基づく検出を実施することも可能である。それにより、シグナルはディテクタ種と色素の結合後に増加又は低下する。一般的に、蛍光定量アプローチを使用する場合、いくつかの異なる検出装置、例えばCCDカメラ、蛍光スキャナ、蛍光ベースマイクロプレートリーダー、又は蛍光顕微鏡などを使用して、蛍光シグナルの生成を記録することができる。
【0085】
さらなる実施態様において、第1のオリゴヌクレオチドプローブの検出を可能とする部分が、基質との接触後に検出可能なシグナル、例えば比色定量若しくは蛍光定量シグナルを生じる酵素である。当業者であれば、いくつかの酵素基質システム、例えばELISA及び免疫組織化学検出が利用可能であり、診断の分野で常套的に使用されていることは明らかであろう。セイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)がその一例である。ディテクタ種の検出のために第1のオリゴヌクレオチドプローブに結合された酵素を利用することは、いくつかの潜在的利点、例えば検出感度の増強及び基質の追加を含む分離した工程を通じたシグナル発色の制御の向上を提供する。他の好適な比色定量酵素には:グリコシルヒドロラーゼ、ペプチダーゼ又はアミラーゼ、エステラーゼ(例えば、カルボキシエステラーゼ)、グリコシダーゼ(例えば、ガラクトシダーゼ)、及びホスファターゼ(例えば、アルカリホスファターゼ)があり得る。このリストは、いかなる方法においても限定的なものとみなされるべきではない。
【0086】
別のアプローチにおいて、病原体又は対照ディテクタ種の存在は電気的に、例えばインピーダンスの変化又は伝導性シグナル変化、電流測定シグナル変化、ボルタンメトリーシグナル変化、又は電位差測定シグナル変化によってディテクタ種の存在下で検出される。このように、一実施態様において、ディテクタ種は電気シグナルの変化によって検出される。電気シグナルの変化は、電気シグナルの変化を増強する化学基など、第1のオリゴヌクレオチドプローブの検出を可能にする部分によって促進される場合がある。電気シグナルの検出は非常に感度が高いため、前記検出の部分は単純にオリゴヌクレオチド配列であり得るが、ある実施態様において、シグナルは金属、例えば金及びカーボンなどの電気シグナルを増強することが知られている化学基の存在によって、増強される。
【0087】
一実施態様において、ディテクタ種の蓄積に起因する電気シグナルの変化は増幅中の水性反応で検出することができ、他の実施態様において、電気シグナルの検出は、その検出のための第2のオリゴヌクレオチドプローブによって仲介される特定の部位、例えば電気化学的プローブの表面へのディテクタ種の局在化によって促進される。
【0088】
一実施態様において、ディテクタ種の存在の検出により、カーボン又は金、好ましくはカーボンを使用して比色定量又は電気化学的シグナルが生成される。
【0089】
一実施態様において、ディテクタ種は核酸ラテラルフローによって検出される。核酸が典型的にはニトロセルロースでできた膜を通じたその拡散により他の反応構成要素から分離される核酸ラテラルフローは、迅速かつ低コストの検出方法であり、比色定量、蛍光定量、及び電気的シグナルを含む様々なシグナル読取値を結合させることができる。核酸ラテラルフローは、本発明におけるディテクタ種の検出における使用によく適しており、いくつかの利点を提供する。一実施態様において、ディテクタ種中の第1のオリゴヌクレオチドプローブを使用して比色定量色素又は蛍光定量色素を結合させ、ディテクタ種中の第2のオリゴヌクレオチドプローブを使用して、該色素をラテラルフローストリップの規定された位置に局在化させる、核酸ラテラルフロー検出が実施される。このようにして、迅速な検出を実施して、目又は読取装置により結果を可視化することができる。核酸ラテラルフローでは、第2のオリゴヌクレオチドプローブのディテクタ部分として抗原を利用し、関連する抗体をラテラルフローストリップ上に固定することができる。あるいは、ラテラルフローストリップ上のプレ-ディテクタ種又はディテクタ種のハイブリダイゼーションを介する配列特異的検出は、容易に実施することができ、マルチプレックスの潜在性が向上した抗体ベースのアッセイに代わる簡素化された低コストの代替法を提供する。本発明のオリゴヌクレオチドプローブ対を利用しない公知のキット及び方法、例えばSDAは、典型的に配列特異的ハイブリダイゼーションに基づく検出に利用可能でない二本鎖DNA産物を生産する。本発明では対照的に、ディテクタ種は、位置特異的ハイブリダイゼーションベースの検出を使用することにより、特にマルチプレックス検出に適応する。カーボン又は金のナノ粒子は、核酸ラテラルフローに容易に利用可能である。ディテクタ種の局在により、カーボン又は金が局所に集中し、それぞれ黒又は赤色が現れる。一実施態様において、第1のオリゴヌクレオチドプローブは、配列特異的ハイブリダイゼーションによるストリップ上への局在化の前に比色定量色素とのその結合を可能とする、ビオチンなどの部分を含む。
【0090】
ディテクタ種の空間的配置は、例えば特定の位置でのディテクタ種のハイブリダイゼーションベースの結合が許容される場合、ディテクタ種の検出に利用される技術と密接に関連する。迅速かつ特異的な検出を促進するだけでなく、そのような物理的結合は、複数の異なる標的病原体のマルチプレックス検出における本発明の使用を増強し得る。一実施態様において、第2のオリゴヌクレオチドプローブは、核酸ラテラルフローストリップ又は電気化学的プローブの表面、96ウェルプレート、ビーズ、又はアレイ表面に結合させる。従って、増幅産物中の少なくとも1つの種は、そのような位置でのディテクタ種の形成後に容易に検出されるその対応する第2のオリゴヌクレオチドプローブの物理的位置に局在するようになる。あるいは、一本鎖オリゴヌクレオチドを固体材料とのその結合を可能にする第2のオリゴヌクレオチドプローブと結合する部分として使用することは、有利となり得る。このようにして、固相に結合されたオリゴヌクレオチドの配列を標的核酸配列とは独立に規定し、結合効率を増強することができる。従って、一実施態様において、第2のオリゴヌクレオチドプローブの固体材料との結合を可能とする部分が、一本鎖オリゴヌクレオチドである。該一本鎖オリゴヌクレオチドは、ハイブリダイゼーションの親和性及び効率を向上させ、本発明の成績を増強させるように設計することができる。例えば、本発明のある実施態様において、第2のオリゴヌクレオチドプローブをラテラルフローストリップに直接結合させるのではなく、第2のオリゴヌクレオチドプローブ中に存在する一本鎖オリゴヌクレオチド部分との効率的ハイブリダイゼーションが可能なストリップ上ハイブリダイゼーション用に最適化された配列を有する別個の捕捉オリゴヌクレオチドを利用する。
【0091】
様々な研究において、本発明者らは一本鎖オリゴヌクレオチドを第2のオリゴヌクレオチドプローブの結合部分として使用する核酸ラテラルフローによる本発明の成績を顕著に高め、ストリップ上ハイブリダイゼーション配列を強化した。例えば、G-Cリッチ配列をストリップ上ハイブリダイゼーションに利用することができ、又は第2のオリゴヌクレオチドプローブの長さを補うよりTmの高いより長い配列を利用することができる。あるいは、該一本鎖オリゴヌクレオチド部分は、その親和性を増強するための1以上の修飾塩基又はヌクレオチド間結合、例えばPNA、LNA、又はG-clampを含むことができる。本発明者らは、一本鎖オリゴヌクレオチド部分に反復配列モチーフを利用すると、その予測Tmによっては予測されない予期せぬハイブリダイゼーション効率の増強が観察されることを認めた。従って、一実施態様において、一本鎖オリゴヌクレオチド部分の配列は、2~4塩基のDNA配列モチーフの3以上の反復コピーを含む。例えば、そのような配列モチーフを利用した様々な研究において、本発明者らは核酸ラテラルフローによる検出感度が、多くは100倍以上のシグナル増強により、大幅に増強されることを観察した。
【0092】
従ってディテクタ種の存在が核酸ラテラルフローによって検出される一実施態様において、核酸ラテラルフローが、第2のオリゴヌクレオチドプローブの固体材料との結合を可能にする部分との配列特異的ハイブリダイゼーションを可能とする1以上の核酸を利用する。
【0093】
さらなる利点は、結合のための固体材料から、又は検出手段から病原体由来RNA配列を分離することにより付与される。これは、一本鎖オリゴヌクレオチドを第1のオリゴヌクレオチドプローブ中の検出部分として及び/又は第2のオリゴヌクレオチドプローブとの結合部分として使用することにより可能となる。このようにして、結合のための関連する固体材料、又は該固体材料を含む装置、例えば核酸ラテラルフローストリップ、及び/又は検出手段は、病原体由来RNAの配列を考慮せずに、最適化し、規定することができる。そのような「ユニバーサル」検出装置は、標的ごとに変更することを必要とせずに、使用することができる。例えば、効率的なストリップ上ハイブリダイゼーションをする能力を有し、意図しないクロストークを規定し得ないオリゴヌクレオチド配列の適合するセットに対応する線がプリントされた核酸ラテラルフローストリップが、複数の標的病原体の検出のための本発明のオリゴヌクレオチドプライマー及びプローブの開発とは独立して最適化され、効率的に製造されている。
【0094】
いくつかの実施態様において、検出は定量的に実施することができる。従って、試料中の一本鎖標的核酸のレベルは、本方法の工程c)において定量化することができる。定量化は、単一の終点ではなく、反応の時系列の中の複数の時点で例えば比色定量的、蛍光定量的、又は電気的にディテクタ種を測定することにより、達成することができる。定量の代替戦略には、ドロップレットデジタルPCRに類似した試料の連続希釈がある。さらなる実施態様において、試料中の標的病原体のレベルは、半定量的に決定することができる。例えば、核酸ラテラルフローストリップ上の比色定量シグナルの強度が、試料中の標的病原体のおよそのレベルに対応する。あるいは、阻害因子を使用することもでき、それにより阻害因子を克服し、検出可能なコピー数のディテクタ種を生産するためには、標的病原体のコピー数が一定の規定されたコピー数を超えなければならない。
【0095】
本発明において、第2のオリゴヌクレオチドプローブは固体材料又は固体材料とのその結合を可能にする部分と結合される。実施態様においてまた、任意に1以上の他のオリゴヌクレオチドプライマー及びプローブを固体材料又は固体材料とのその結合を可能にする部分に結合することができる。当業者であれば、オリゴヌクレオチドの固体材料との結合は、様々な異なる方法において達成することができることは明白であろう。例えば、適切に修飾されたオリゴヌクレオチドプローブと結合又は反応させる目的に有用となるように、十分な密度の官能基を備えた、又はそれらと結合することができる、又はそれらに官能基付与することができるいくつかの異なる固体材料が利用可能である。さらに、ビーズ、樹脂、表面コーティングプレート、スライド、及びキャピラリーを含む、多種多様な形状、サイズ、及び形態のそのような固体材料を利用可能である。オリゴヌクレオチドの共有結合に使用されるそのような固体材料の例には、非限定的に、スライドグラス、ガラスビーズ、フェライトコアポリマーコーティング磁気マイクロビーズ、シリカマイクロ粒子又は磁気シリカマイクロ粒子、シリカベースキャピラリーマイクロチューブ、3D反応性ポリマースライド、マイクロプレートウェル、ポリスチレンビーズ、ポリ(乳酸)(PLA)粒子、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)マイクロ粒子、制御された細孔ガラス樹脂、グラフェンオキシド表面、及び官能基付与アガロース又はポリアクリルアミド表面がある。ポリアクリルアミドなどのポリマーは、ポリマーの生成に使用されるモノマー(例えば、アクリルアミドモノマー)間の重合反応中に、官能基付与オリゴヌクレオチドが共有結合し得るというさらなる利点を有する。官能基付与オリゴヌクレオチドを重合反応に含めて、共有結合したオリゴヌクレオチドを含む固体ポリマーを生産する。そのような重合は、生産されるオリゴヌクレオチド結合固体材料のサイズ、形状、及び形態を制御して、オリゴヌクレオチドを固体材料に結合させる高度に効率的な手段となる。
【0096】
典型的に、オリゴヌクレオチドプローブを任意のそのような固体材料と結合させるために、3'又は5'末端に官能基を有するオリゴヌクレオチドを合成するが、官能基はオリゴヌクレオチドの生産プロセス中に、ほとんど全ての塩基位置で付加することもできる。続いて、オリゴヌクレオチド中の官能基(複数可)及び関連する固体材料上の官能基の間で特異的反応を実施して安定な共有結合を形成させ、固体材料に結合されたオリゴヌクレオチドを得ることができる。典型的に、そのようなオリゴヌクレオチドは、5'又は3'末端で固体材料と結合する。例として、2つの一般的に使用され、信頼性の高い結合化学では、チオール(SH)又はアミン(NH3)基及びオリゴヌクレオチド中の官能基を利用する。チオール基は、固体担体上のマレイミド部分と反応してチオエステル結合を形成し得る一方、アミンはスクシンイミジルエステル(NHSエステル)修飾カルボン酸と反応してアミド結合を形成し得る。他にもいくつかの化学を使用することもできる。オリゴヌクレオチドプローブの固体材料との化学的コンジュゲートだけでなく、本発明における使用のために、固体材料上でオリゴヌクレオチドプローブを直接合成することが可能であり、潜在的に有利である。
【0097】
他の実施態様において、第2のオリゴヌクレオチドプローブは固体材料とのその結合を可能にする部分と結合される。1つの戦略は、アフィニティー結合の方法を利用するものであり、それにより特異的結合を可能にする部分をオリゴヌクレオチドプローブと結合させてその関連するアフィニティーリガンドとの結合が促進され得る。これは、例えば抗体抗原結合若しくはポリヒスチジンタグなどのアフィニティータグを使用して、又は相補的核酸を固体材料、例えばニトロセルロース核酸ラテラルフローストリップと結合させる核酸ベースのハイブリダイゼーションを使用することにより、実施することができる。例示的なそのような部分は、ビオチンである。ビオチンは、それ自体がビーズ又は別の固体表面と結合しているストレプトアビジン又はアビジンと高いアフィニティーで結合することができる。
【0098】
本発明では、2以上の標的病原体を検出し、これらを識別する。一実施態様において、本発明の方法は、全ての標的病原体に対して同時に実施される。2以上の病原体由来RNAの存在下で生産されたディテクタ種の検出は、各々マルチプレックス検出を可能とする特定のシグナル、例えば異なる比色定量色素又は蛍光定量色素又は酵素と結合させることができる。あるいは、マルチプレックス検出は、固体材料とのその結合を可能にする部分を通じて直接的又は間接的に第2のオリゴヌクレオチドプローブを固体材料と結合させることにより、達成することができる。そのようなアプローチでは、異なる検出手段に頼るのではなく、病原体ディテクタ種及び存在する場合、対照ディテクタ種の物理的分離を利用する。従って、例えば核酸ラテラルフロー上で単一の色素を使用して、複数の病原体(及び対照核酸)を検出することができ、生産された各々の異なるディテクタ種がラテラルフローストリップ上の特定のプリントラインに局在し、第2のオリゴヌクレオチドプローブとの直接的又は間接的な配列ベースのハイブリダイゼーションにより、差別化された検出の基礎が形成される。あるいは、電気的検出アレイを使用することができ、複数の異なる第2のオリゴヌクレオチドプローブをアレイの特定の領域と結合させ、これによりマルチプレックス反応にあり、複数の異なるディテクタ種を同時に生産し、各ディテクタ種は、マルチプレックス検出を可能とするアレイの不連続領域に対するハイブリダイゼーションによって局在化される。
【0099】
上記検出プロセス、例えば核酸ラテラルフロー及び電気的検出、並びにそれらにより同じ試料中の複数の異なる標的病原体を容易に検出可能であることは、本発明が対をなすオリゴヌクレオチドプローブを本質的要件とすることによって可能となる。従って、対をなすオリゴヌクレオチドプローブは、公知のキット及び方法を上回る本発明の利点を強力に実証する。
【0100】
本発明のキットは、プロセス対照を実施するための構成要素、例えば:
a)プライマー対であって:
i.5'から3'の方向に、制限酵素認識配列及び切断部位、並びに対照核酸中の第1のハイブリダイゼーション配列とハイブリダイズすることが可能な領域を含む、第1のオリゴヌクレオチドプライマー;並びに
ii.5'から3'の方向に、制限酵素認識配列及び切断部位、並びに該対照核酸中の該第1のハイブリダイゼーション配列の上流の第2のハイブリダイゼーション配列の逆相補鎖とハイブリダイズすることが可能な領域を含む、第2のオリゴヌクレオチドプライマーを含み、
該第1のハイブリダイゼーション配列及び該第2のハイブリダイゼーション配列が、20塩基以下により隔てられている、前記プライマー対;
b)ニッキング酵素ではなく、該第1のプライマー及び該第2のプライマーの認識配列を認識し、かつそれらの切断部位を切断することが可能な制限酵素;並びに
c)プローブ対であって:
i.該対照核酸の存在下で生産される増幅産物中の少なくとも1つの種の第1の一本鎖検出配列とハイブリダイズすることが可能であり、かつそのプローブが、その検出を可能にする部分と結合している、ハイブリダイゼーション領域を有する第1のオリゴヌクレオチドプローブ;及び
ii.該増幅産物中の該少なくとも1つの種の該第1の一本鎖検出配列の上流又は下流の第2の一本鎖検出配列とハイブリダイズすることが可能であり、かつそのプローブが固体材料又は固体材料とのその結合を可能にする部分と結合する、ハイブリダイゼーション領域を有する、第2のオリゴヌクレオチドプローブ、を含む、前記プローブ対をさらに含み得る。
【0101】
本発明の方法は、プロセス対照を実施すること、例えば:
a)対照核酸を:
i.プライマー対であって:
5'から3'の方向に、制限酵素認識配列及び切断部位、並びに該対照核酸中の第1のハイブリダイゼーション配列とハイブリダイズすることが可能な領域を含む、第1のオリゴヌクレオチドプライマー;並びに
5'から3'の方向に、制限酵素認識配列及び切断部位、並びに対照核酸中の該第1のハイブリダイゼーション配列の上流の第2のハイブリダイゼーション配列の逆相補鎖とハイブリダイズすることが可能な領域を含む、第2のオリゴヌクレオチドプライマー、を含み、
該第1のハイブリダイゼーション配列及び該第2のハイブリダイゼーション配列が、20塩基以下により隔てられている、前記プライマー対;
ii.ニッキング酵素ではなく、該第1のプライマー及び該第2のプライマーの認識配列を認識し、かつそれらの切断部位を切断することが可能な制限酵素;
iii.鎖置換型DNAポリメラーゼ;
iv.dNTP;並びに
v.1以上の修飾dNTP
と該対照核酸の存在下で接触させて、対照増幅産物を生産すること;
b)工程a)の該対照増幅産物を:
ii.プローブ対であって:
該対照増幅産物中の少なくとも1つの種の第1の一本鎖検出配列とハイブリダイズすることが可能であり、かつそのプローブが、その検出を可能にする部分と結合している、ハイブリダイゼーション領域を有する第1のオリゴヌクレオチドプローブ;及び
該対照増幅産物中の該少なくとも1つの種の該第1の一本鎖検出配列の上流又は下流の第2の一本鎖検出配列とハイブリダイズすることが可能であり、かつそのプローブが固体材料又は固体材料とのその結合を可能にする部分と結合する、ハイブリダイゼーション領域を有する、第2のオリゴヌクレオチドプローブ、を含み
ここで、該第1のプローブ及び該第2のプローブの該対照増幅産物中の該少なくとも1つの種とのハイブリダイゼーションにより、対照ディテクタ種が生産される、前記プローブ対と接触させること;並びに
c)工程b)で生産された該対照ディテクタ種の存在を検出することであって、ここで該対照ディテクタ種の存在が、本方法のプロセス対照として作用する、前記検出すること、をさらに含み得る。
【0102】
本方法のこの実施態様において、対照核酸を逆転写酵素と接触させることもできる。
【0103】
プロセス対照は、好ましくは標的病原体の検出と同時に実施する。プロセス対照は、好ましくは本発明の方法と並行して、かつ同じ容器/機材/装置などにおいて実施する内部対照である。試料中の標的病原体の定性的検出は、例えば患者における感染の認識に重要であるため、偽陰性又は擬陽性の結果は、例えば患者の治療に関する結論をもたらし得るため、避けることが望ましい。内部プロセス対照は、検査結果の妥当性を確認するのに役立つ。対照ディテクタ種の存在の検出は、本方法の実施に成功しているかどうか、例えば増幅産物/標的病原体由来ディテクタ種の非存在下においてさえ増幅が起こっているかを示す。標的病原体に関して陰性の結果が出た場合、定性的内部対照を検出すべきである。そうでないと、本方法の実施は無効であるとみなされる場合がある。しかしながら、標的病原体に関して陽性の結果が出た場合、定性的内部対照は必ずしも独立して検出される必要はない。
【0104】
存在する場合、対照核酸は、RNA、DNA、RNA及びDNAの両方の塩基を含むキメラ、又はRNA/DNAハイブリッドであり得る。一実施態様において、プロセス対照が本発明において使用され得る逆転写酵素の活性を含むように、対照核酸はRNAを含む。対照核酸は、病原体由来RNAに使用するものと同じプライマーの一方又は両方、及び/又は同じ制限酵素、及び/又は同じオリゴヌクレオチドプローブの一方又は両方を使用して設計することができる。対照核酸に使用するオリゴヌクレオチドプローブの1つは、好ましくは病原体由来RNAに使用するプローブとは異なり、その結果対照核酸の存在下で生産された増幅産物/ディテクタ種と、病原体由来RNAの存在下で生産された増幅産物/ディテクタ種を、差次的に検出することが可能となる。対照核酸及び病原体由来RNAに対するオリゴヌクレオチドプローブの一方が同じである場合、それは好ましくは第1のオリゴヌクレオチドプローブである。非限定的な例として、対照核酸は最大500塩基の長さ、例えば最大200又は100塩基の長さであり得る。
【0105】
別途明記されない限り、先行する病原体由来RNAに関するキット及び方法の特徴に関する記載は、適切な場合、対照核酸及び対照核酸プライマー、プローブ、制限酵素、増幅産物、ディテクタ種などにも適用されることは認識すべきである。従って、例えば対照核酸に対するプローブ対の第1及び第2のオリゴヌクレオチドプローブのうちの一方、好ましくは第1のオリゴヌクレオチドプローブは、そのハイブリダイゼーション領域の3'末端におけるDNAポリメラーゼによる伸長が阻止され、該ハイブリダイゼーション領域中で制限酵素により切断されることが可能でなく、かつ好ましくは本方法の工程a)の実施と同時に対照核酸とも接触させる。
【0106】
本発明のキット、装置、及び方法は、インフルエンザ及びRSV感染の診断、予後、又はモニタリングに使用することができる。また、本発明のキット、装置、及び方法は、1以上の他の疾患、例えば呼吸器感染症などの他の感染症、例えば、ライノウイルス、アデノウイルス、コロナウイルス(例えば、SARS-CoV-2)、又はパラインフルエンザウイルスをさらに検出するように構成され得る。
【0107】
本発明は、幅広い試料種を用いた使用になじむ。好適には、試料は生体試料若しくは環境試料、例えばヒト試料、例えば:鼻腔スワブ若しくは吸引液、鼻咽頭スワブ若しくは吸引液、咽喉スワブ若しくは吸引液、中咽頭スワブ若しくは吸引液、又は喀痰又は任意の形態の組織生検若しくは体液由来の上記ヒト若しくは動物試料のいずれかに由来する試料である。また、本発明者らは以下の臨床検体:VTM中の鼻腔スワブ、VTM中の鼻咽頭スワブ、希薄調製培地、液体エイミズ中の咽喉スワブ、2M NaOH/イソプロパノールを介して処理した後、DNA捕捉ビーズにより処理した喀痰、液体エイミズ中の口腔スワブの少なくとも10~20%を含む広範囲の試料において本方法を実施した。これらの実験では、様々な臨床応用に対する本発明の顕著な汎用性及び関連する試料において阻害が観察されないことが実証された。このことは、PCRを阻害する生体検体中に見いだされる阻害因子によって阻害される他の方法とは全く対照的であり、従って複雑な試料調製手順を何ら必要とせずに、低コスト又は使い捨て装置におけるキット及び方法の使用の潜在性が実証される。本発明の方法において使用する前に、試料を処理に付してもよいし、付さなくてもよい。好適な方法は当業者に周知されている。例えば、試料を本発明の方法におけるその使用の前に、処理し、精製し、ろ過し、化学的若しくは物理的溶解に付し、緩衝液交換に付し、エクソーム捕捉に付し、又は夾雑物質を除去し、例えばそれを部分的に除去し得る。
【0108】
本発明において、標的病原体ゲノムが-ve鎖一本鎖RNAウイルスである場合、+ve鎖転写物も試料中に存在する場合があり、いずれかの鎖又は両方の鎖を同じオリゴヌクレオチドプライマー及びプローブを使用して本発明において増幅させ、一本鎖標的核酸として検出することができる。
【0109】
先に言及した通り、本発明のキット及び方法は、理想的には装置、例えば使い捨て(又はワンショット)診断装置における使用に好適である。従って、本発明はまた、上記キット、特に病原体由来RNAの存在下で生産されたディテクタ種の存在を検出するための手段を含むキットを含む装置、例えば核酸ラテラルフローストリップを提供する。装置は動力付き装置、例えば電動装置であり得、また装置は加熱手段を含み得、かつ自己充足型装置、すなわち補助検査機器を必要としない装置であり得る。
【0110】
また、本発明の方法は、病原体由来RNAシグナルを増幅するために検出工程c)とは独立して使用することができ、そのような方法は、例えば増幅シグナルを保存し、かつ/又は輸送して、必要であれば将来の日時に、かつ/又は別の場所で標的病原体を検出及び識別する場合に使用することができる。増幅されたシグナルは、本方法の実施を通じて生産されるプレ-ディテクタ種又はディテクタ種を含む。従ってさらなる実施態様において、本発明は、本発明の方法の工程a)及び工程b)の全部又は一部を含む、病原体由来RNA、先に規定したように、試料中のシグナルを増幅する方法を提供する。本発明のキットに関して本明細書に記載された本発明の全ての任意かつ/又は好ましい実施態様はまた、本発明の方法及び装置、並びにそれらの使用に関しても適用され、逆もまた成り立つことは理解されよう。
【0111】
以下の実施例は、本明細書に記載の通り、本発明の様々な態様及び実施態様(実施例10)並びに本発明において利用される方法(実施例1~9)をさらに例示する役割を果たす。これらの実施例は、いかなる方法でも限定するものとみなされるべきではない。
【実施例】
【0112】
(実施例)
(材料及び方法)
以下の材料及び方法は、別途示されない限り、以下の実施例において使用する。
オリゴヌクレオチド:別途示されている場合を除き、カスタムオリゴヌクレオチドは、Integrated DNA Technologies社によりホスホロアミダイト法を使用して製造された。
核酸ラテラルフロー:カーボンナノ粒子を、様々なビオチン結合タンパク質、例えばストレプトアビジンと非共有結合性吸着を介してコンジュゲートさせた。典型的に、コロイド性カーボン懸濁液をホウ酸緩衝液中で調製し、続いてプローブ式超音波処理装置を使用して超音波処理を行った。その後、カーボンを室温でのインキュベーションによりビオチン結合タンパク質に吸着させた。カーボンは反応混合物中で直接使用するか、又はガラス繊維コンジュゲートパッドに適用した。ラテラルフローストリップは、製造業者(Merck Millipore社)のガイドラインに従って、減圧凍結乾燥した糖及び視覚的外観を改善するために使用する添加剤を含むコンジュゲートパッドを、試料パッド、ニトロセルロース膜、及び吸着パッドと組み合わせることにより構築した。ラテラルフローストリップでそれを使用する前に、本方法において検出することとなるディテクタ種の配列の逆相補鎖を含む関連オリゴヌクレオチド(複数可)を、ニトロセルロース膜上の規定された位置にプリントし、UV架橋を介して膜と結合させた。
【0113】
(実施例1)
(第2のオリゴヌクレオチドプローブを固体材料、ニトロセルロースラテラルフローストリップと結合させる、本発明において利用する方法の実施)
本実施例では、第2のオリゴヌクレオチドプローブを固体材料、ニトロセルロースラテラルフローストリップと結合させ、第1のオリゴヌクレオチドプローブを増幅工程a)の実施と同時には試料と接触させない本発明において利用する方法の実施を示す。
【0114】
5'から3'の方向に:7塩基の安定化領域;5塩基のニッキング酵素ではない制限酵素認識配列;及び標的核酸中の第1のハイブリダイゼーション配列の逆相補的配列を含む12塩基のハイブリダイゼーション領域を含む全長24塩基の第1のオリゴヌクレオチドプライマーを設計した。同じ安定化領域及び制限酵素認識配列を含むが、標的核酸中の第2のハイブリダイゼーション配列の逆相補鎖とハイブリダイズすることが可能な12塩基のハイブリダイズ領域を含む第2のオリゴヌクレオチドプライマーを設計した。本実施例において、第1の制限酵素及び第2の制限酵素は、同じ制限酵素である。制限酵素は、その5塩基認識配列の下流のトップ鎖切断部位を有する非対称の二本鎖切断制限酵素である。標的核酸中の第1及び第2のハイブリダイゼーション配列は1塩基により隔てられている。
【0115】
オリゴヌクレオチドプライマーは標的核酸を使用して設計し、それによりプライマーの逆相補鎖の切断部位の下流のヌクレオチド塩基がアデノシンとなり、その結果αチオールdATPが本方法における修飾dNTPとして利用される。ホスホロチオエート修飾を鎖置換型ポリメラーゼによって挿入し、該逆相補鎖の切断を阻止する。
【0116】
5'から3'の方向に:増幅産物中の少なくとも1つの種に相補的な12塩基領域;6塩基の中間スペーサー領域;及び合成中に付加される3'ビオチン修飾を含む全長20塩基の第1のオリゴヌクレオチドプローブを設計し、ここで該ビオチン修飾により、第1のオリゴヌクレオチドプローブを比色定量色素、カーボンナノ粒子と結合させることが可能となる。ビオチン結合タンパク質に吸着させたカーボンを調製し、第1のオリゴヌクレオチドプローブで飽和させた。5'から3'の方向に:10×チミジン塩基を含む中間スペーサー;増幅産物中の前記少なくとも1つの種における第1の一本鎖検出配列の下流の第2の一本鎖検出配列とハイブリダイズすることが可能な13塩基領域の3×反復配列を含む全長49塩基の第2のオリゴヌクレオチドプローブを設計した。およそ30pmolの該第2のオリゴヌクレオチドプローブを核酸フローストリップ上にプリントした。
【0117】
1.6pmolの第1のプライマー;0.1pmolの第2のプライマー;Enzo Life Sciences社製の250μM 2'-デオキシアデノシン-5'-O-(1-チオ三リン酸) Sp-異性体(Sp-dATP-α-S);各々60μMのdTTP、dCTP、及びdGTP;2Uの制限酵素;及び2Uのバチルス鎖置換型DNAポリメラーゼを含む、反応液を調製した。核酸標的(一本鎖DNA標的)は、適切な反応緩衝液中10μlの総反応体積で、様々なレベル(++=1amol、+=10zmol、NTC=標的なし対照)で追加した。反応液を45℃で7分間又は10分間インキュベートした。続いて、6.5μlの終結反応ミックスを0.056mgml-1のコンジュゲートカーボンを含む60μlのラテラルフロー実行緩衝液に加えた後、プリントされた線で当該ストリップと結合させた第2のオリゴヌクレオチドプローブを含む核酸ラテラルフローストリップに負荷した。
【0118】
図5に、本実施例の実施で得られたラテラルフローストリップの写真を示す。矢印は、第2のオリゴヌクレオチドプローブをニトロセルロースストリップ上にプリントし、従って陽性シグナルが出現している位置を示す。カーボンシグナルの存在に対応する明確な黒い線は、両方の標的レベル、両方の時点で標的核酸の存在下でのみ観察され、本方法による標的核酸配列の迅速かつ高感度な検出を実証する。
【0119】
(実施例2)
(第1のオリゴヌクレオチドプローブがそのハイブリダイゼーション領域の3'末端におけるDNAポリメラーゼによる伸長が阻止され、該ハイブリダイゼーション領域中で制限酵素によって切断されることが可能でなく、当該プローブを工程a)において試料と接触させる、本発明において利用する方法の実施)
本実施例は、第1のオリゴヌクレオチドプローブがそのハイブリダイゼーション領域の3'末端におけるDNAポリメラーゼによる伸長が阻止され、当該プローブは該ハイブリダイゼーション領域中で制限酵素によって切断されることが可能でなく、当該プローブを工程a)の実施と同時に試料と接触させる、本発明において利用する方法の実施を実証する。そのような実施態様において、本発明者らは増幅速度の一切の顕著な阻害を観察せず、プレ-ディテクタ種が最適周期的増幅プロセスを破綻させることなくリアルタイムで蓄積されることが示される。本発明者らは該実施態様における増幅プロセスへの阻害効果を一切観察しなかっただけでなく、本発明者らはディテクタ種の量の少なくとも100倍の増加に相当する生成したシグナルの、予期せぬ増強を観察した。
【0120】
(実施例2.1)第1のオリゴヌクレオチドプローブが3'末端におけるDNAポリメラーゼによる伸長が阻止され、制限酵素によって切断されることが可能でなく、当該プローブを工程a)の実施と同時に試料と接触させる、本方法の実施態様を利用して、実施例1で使用したアッセイの変法を設計した。実施例1で利用したものと同じオリゴヌクレオチドプライマー、制限酵素、dNTP、修飾dNTP、及びポリメラーゼを使用したが、5'から3'の方向に:5'ビオチン修飾;8塩基の中間領域;増幅産物中の少なくとも1つの種にハイブリダイズすることが可能な13塩基領域;3'リン酸修飾(ビオチン修飾により、第1のオリゴヌクレオチドプローブを比色定量色素、カーボンナノ粒子との結合が可能となる。リン酸修飾は、鎖置換型DNAポリメラーゼによるその伸長を阻止する)を含む全長21塩基の代替の第1のオリゴヌクレオチドプローブを設計した。ビオチン結合タンパク質に吸着させたカーボンを調製し、第1のオリゴヌクレオチドプローブで飽和させた。
【0121】
5'から3'の方向に:増幅産物中の該少なくとも1つの種において第1の一本鎖検出配列の上流に第2の一本鎖検出配列とハイブリダイズすることが可能な14塩基領域;6塩基中間スペーサー配列;14塩基ハイブリダイズ領域の反復;第2の6塩基中間スペーサー配列;及び10×チミジン塩基スペーサーを含む全長51塩基の代替の第2のオリゴヌクレオチドプローブを設計した。およそ30pmolの該第2のオリゴヌクレオチドプローブを核酸フローストリップ上にプリントした。
【0122】
0.8pmolの第1のプライマー;0.8pmolの第2のプライマー;0.6pmolの第1のオリゴヌクレオチドプローブ;300μM Sp-dATP-α-S;各々60μMのdTTP、dCTP、及びdGTP;2Uの制限酵素;及び2Uのバチルス鎖置換型DNAポリメラーゼを含む、反応液を調製した。核酸標的(この場合、一本鎖DNA標的)は、適切な反応緩衝液中10μlの総反応体積で、様々なレベル(++=1amol、+=10zmol、NTC=標的なし対照)で追加した。反応液を45℃で6分間インキュベートした。続いて、5μlの終結反応ミックスを0.03mgml-1のコンジュゲートカーボンを含む60μlのラテラルフロー実行緩衝液に加えた後、核酸ラテラルフローストリップに負荷した。反応中に第1のオリゴヌクレオチドプローブが存在しなかった場合にディテクタ種が生産されないことを実証するために、対照反応を実施した。ラテラルフローストリップの検出中にプローブが存在することによるあらゆる意図せぬ影響の対照をとるために、同等レベル(0.6pmol)のプローブを工程a)の後に該対照に追加した。
【0123】
図6Aは、その発色後の核酸ラテラルフローストリップの写真を提示する。反応中に第1のオリゴヌクレオチドプローブを提供した場合、カーボンナノ粒子の堆積に相当する明確なシグナルが両方の標的レベルで観察された。予想通り、反応中に第1のオリゴヌクレオチドが提供されなかった場合、いずれの標的レベルでもシグナルは検出されなかった。本実験では、第1のオリゴヌクレオチドプローブが3'末端におけるDNAポリメラーゼによる伸長が阻止され、第1又は第2の制限酵素によって切断されることが可能でなく、当該プローブを工程a)の実施と同時に試料と接触させる、本方法の実施態様におけるディテクタ種の生産を大幅に増強する潜在性を明確に実証する。実施例1とは対照的に、等濃度の第1及び第2のオリゴヌクレオチドプライマーを提供し、より迅速な増幅が可能となることは、注目に値する。
【0124】
(実施例2.2)次に、全く異なる標的核酸を用いた方法の前記実施態様の汎用性を実証する別個のアッセイを設計した。オリゴヌクレオチドプライマー及びオリゴヌクレオチドプローブは、実施例1及び2.1に記載したのと同様に、関連標的核酸、一本鎖DNA用に設計した。
【0125】
0.8pmolの第1のプライマー;0.4pmolの第2のプライマー;0.6pmolの第1のオリゴヌクレオチドプローブ;300μM Sp-dATP-α-S;各々60μMのdTTP、dCTP、及びdGTP;2Uの制限酵素;及び2Uのバチルス鎖置換型DNAポリメラーゼを含む、反応液を調製した。核酸標的(一本鎖DNA標的)は、適切な反応緩衝液中10μlの総反応体積で、様々なレベル(+=1amol、NTC=標的なし対照)で追加した。反応液を45℃で6分間インキュベートした。続いて、5μlの終結反応ミックスを0.08mgml-1のコンジュゲートカーボンを含む60μlのラテラルフロー実行緩衝液に加えた後、核酸ラテラルフローストリップに負荷した。工程a)の実施と同時に試料とも接触させた、第1のオリゴヌクレオチドプローブの短縮されたバリアントを含む対照反応を実施した。
【0126】
図6Bは、その発色後の核酸ラテラルフローストリップの写真を提示する。標的核酸の存在下、明確な陽性シグナルが視認され、標的なし対照ではシグナルは視認されなかった。これにより、アッセイの適切な設計及び運用、並びに第1のオリゴヌクレオチドプローブが、3'末端におけるDNAポリメラーゼによる伸長を阻止され、第1又は第2の制限酵素によって切断されることが可能でなく、当該プローブを工程a)の実施と同時に試料と接触させる、方法の実施態様の頑健な潜在性が実証された。第1のオリゴヌクレオチドプローブの短縮形態を利用した対照アッセイでは、予想通り、ごく最小限のシグナルのみが観察され、ディテクタ種を効率的に生産するための工程a)における増幅の実施と同時に第1のオリゴヌクレオチドプローブの適切なハイブリダイゼーションが要求されることが実証された。
【0127】
(実施例3)
(2以上の異なる標的核酸の存在が同じ試料中で検出される、本発明において利用する方法の実施)
本実施例では、試料中の2以上の異なる標的核酸を検出するための方法の潜在性を実証する。本方法におけるプライマーに加えて2つのオリゴヌクレオチドプローブを使用することは、同じ試料中の2以上の異なる標的核酸の検出に理想的に好適な方法で増幅産物を検出するための不可欠なアプローチを提供する。本実施例において、第2のオリゴヌクレオチドプローブの配列特異的ハイブリダイゼーションに基づいて、代替ディテクタ種を差次的に検出できることが実証される。
【0128】
まず、本方法を2以上の異なる標的核酸の検出に利用することができることを実証するために、本発明者らは2つの異なる標的(A及びB)を検出するためのオリゴヌクレオチドプライマー及びプローブの適合性を有するセットを開発した。各事例において、5'から3'の方向に以下の特徴:5'ビオチン修飾、7塩基の安定化領域、5塩基の制限エンドヌクレアーゼ認識部位、制限酵素の切断部位にホスホロチオエート結合を含む標的A又はBの3'末端と相補的な11~13塩基領域、及び3'リン酸修飾を含む、第1のオリゴヌクレオチドプローブを設計した。5'から3'の方向に:標的A又はBの5'末端に相補的な12~14塩基領域、5×チミジン塩基の中間スペーサー、及び第2のオリゴヌクレオチドプローブの固体材料との結合を可能にする部分である12塩基の一本鎖オリゴヌクレオチド部分を含む、第2のオリゴヌクレオチドプローブを設計した。各標的の一本鎖オリゴヌクレオチド結合部分の配列は、各ディテクタ種のラテラルフローストリップ上の異なる位置への結合を可能とするために、異なる配列を使用して設計した。分離した位置に各一本鎖オリゴヌクレオチド検出部分に対する逆相補的配列を含むオリゴヌクレオチドの30pmolの不連続スポットを含む、核酸のラテラルフローストリップを準備した。
【0129】
0.032mgml-1のビオチン結合タンパク質に吸着されたカーボンを含む65μlの適切な緩衝液中の0.5pmolの標的A及び標的Bに対する第1のオリゴヌクレオチドプローブ;0.5pmolの標的A及びBに対する第2のオリゴヌクレオチドプライマーを含む、反応液を構築した。異なるレベルの各標的(+=0.1pmol、++=1pmol)を加えて反応を別個に分離し、両方の標的を一緒に加えた。標的なし対照(NTC)も実施した。
【0130】
図7Aに、本実験で得られたラテラルフローストリップの写真を示す。ディテクタ種を含むカーボンの堆積に対応する明確な黒いスポットが、両方の標的レベルで、両方のアッセイについて観察された。さらに、両方の反応が同時に実施された場合、標的A及びBの両方に対応するシグナルが観察された。バックグラウンドシグナル又は異なるアッセイ間でのクロストークは、観察されなかった。
【0131】
本方法の頑健性を実証するため、さらなる実験を続けて試料中の規定された配列の3つの異なる標的核酸の検出のための本方法の潜在性を実証するために、3つの別個のアッセイを開発した。上記と同様の方法論を利用した。
図7Bに、得られたラテラルフローストリップの写真を示す。標的P1、P2、及びP3は、示されているように個別に、及び様々な組み合わせで追加した。第2のオリゴヌクレオチドプローブの一本鎖オリゴヌクレオチド検出部分に対する逆相補鎖を核酸ラテラルフローストリップ上の分離した線にプリントした。黒いシグナルは、全ての事例で迅速高感度検出について予測された位置に局在するカーボンと結合したディテクタ種の堆積を示し、意図せぬアッセイ間のクロストークも、一切のバックグラウンドシグナルもない。別個の4つのアッセイを含む同等の実験では、試料中の規定された配列の4つの異なる標的核酸(P1、P2、P3、及びP4)の検出方法の潜在性が実証される。結果を
図7Cに示す。この4標的実験において、P4は陽性対照として全ての反応液中に存在し、他の標的は分離した反応液に別個に加えた。示されているラテラルフローストリップの写真は、カーボンと結合した関連するディテクタ種の存在に対応する予測された位置に明確な黒いバンドを示す。そのようなマルチプレックスアッセイは、いくつかの異なる病原体によって引き起こされる疾患の診断検査に使用されるべき方法の潜在性を実証する。ここで対照アッセイのディテクタ種の存在を検出することが、本方法が実施に成功したことを示し、かつラテラルフローストリップ上の1以上の他のディテクタ種の可視化が、適切な臨床検体中の関連する原因病原体(複数可)の存在を示す。2以上の病原体が同じ検体中に存在する共感染を観察することは、そのような診断応用、例えば感染症の分野においては稀であるが、本発明の方法は、検出することとなるマルチプレックス反応の標的の任意の組合わせに対して高度の汎用性を有する。
図7Dでは、4つの標的(P1、P2、P3、及びP4)の異なる組合わせが加えられる実験の結果を示す。各標的を別個に検出し、非特異的バックグラウンドを生ずることなく各標的が除外された場合に他の3つの標的を検出する能力は、本発明の方法の検出の注目に値する特異性を実証する。
【0132】
上記及び様々な他の実験においてまた、本発明者らは非常に低い標的濃度で、例えば1z mol(600コピー)又は17ymol(10コピー)で3~5個の標的を検出するためのマルチプレックスアッセイを実施している。本実施例では、本発明者らは試料中に規定された配列の2以上の異なる標的核酸の存在を検出する方法の潜在性、及び例えば核酸ラテラルフローによるその迅速、低コストなシグナル検出の潜在性を明確に実証した。2以上の異なる標的核酸が同じ試料中で容易に検出され得ることは、本方法の並外れた有利な特徴である。検出することとなる追加の各標的核酸について、追加のセットのオリゴヌクレオチドプライマーが要求される。追加のプライマーは非特異的増幅産物を形成する傾向を高めるために、このことは、公知の方法において2以上の異なる標的核酸の存在を検出することの顕著な困難を提示する。本方法において、この課題は例えば修飾塩基の使用、改良酵素の選択、及び追加の配列特異的ハイブリダイゼーション事象を利用するオリゴヌクレオチドプローブを使用するディテクタ種の形成に起因する特異性増強によって克服する。
【0133】
(実施例4)
(標的核酸中の第1及び第2のハイブリダイゼーション配列が5塩基により隔てられている、本発明において利用する方法の実施)
本実施例では、標的核酸中の第1及び第2のハイブリダイゼーション配列が5塩基により隔てられている、方法の実施を実証する。オリゴヌクレオチドプライマーには存在せず、2つのオリゴヌクレオチドプライマーが第1及び第2のハイブリダイゼーション配列間にギャップをとるように設計されている場合、病原体依存的方法で病原体増幅産物中にのみ生産される病原体由来配列を使用する能力は、1からの合成又はプライマー間結合から生じる一切のバックグラウンドシグナルを克服し得る方法の実施態様において特異性が増強される潜在性を提供する。該実施態様において、増幅産物が適切な病原体由来配列を含む場合にのみ、病原体ディテクタ種が生産されるようにするために、第1又は第2のオリゴヌクレオチドプローブの配列特異的ハイブリダイゼーションを、2つのハイブリダイゼーション領域間のギャップを利用して設計する。
【0134】
本実施例では、本発明者らは病原体由来RNA中の第1及び第2のハイブリダイゼーション配列間のギャップの配列においてのみ異なる様々な異なる増幅産物に対する第2のオリゴヌクレオチドプローブのハイブリダイゼーションを実証するために、様々なアッセイを設計した。第2のオリゴヌクレオチドプローブは、増幅産物中の少なくとも1つの種に対する11塩基ハイブリダイズ領域をその5'末端に含むように設計した。該領域は、第1のオリゴヌクレオチドプライマーの逆相補的配列である7塩基配列及び2つのプライマー間のギャップから得た増幅産物中の追加の病原体由来配列に対する逆相補的配列である5塩基配列から構成される。また、第2のオリゴヌクレオチドプローブは、5'から3'の方向に5×チミジン塩基の中間スペーサー及び固体材料とのその結合のための12塩基一本鎖オリゴヌクレオチド部分を含む。該部分の逆相補的配列を含む30pmolのオリゴヌクレオチドをプリントしたニトロセルロース核酸フローストリップを準備した。第1のオリゴヌクレオチドプローブは、第2のオリゴヌクレオチドプライマーと配列は同じであるが、5'ビオチン修飾、3'リン酸修飾、及び制限酵素切断部位の位置にホスホロチオエートヌクレオチド間結合を含むように設計した。
【0135】
4つの異なる人工標的核酸配列(T1、T2、T3、及びT4)を設計し、その各々が第1及び第2のハイブリダイゼーション配列に対応する正確な配列を有していたが、第1及び第2のハイブリダイゼーション配列間では5つの塩基において相違があった:T1は、第2のオリゴヌクレオチドプローブの11塩基ハイブリダイズ領域に対する完全相補性を有する検出に適切な塩基を含み;T2は、ギャップの5つの塩基のうち4つのミスマッチを含み;T3は、ギャップの5つの塩基のうち4つの塩基が除去されるように設計され、従って増幅産物の種は4塩基短くなっている。T4は、ギャップの5つの塩基のうち2つのミスマッチを含む。
【0136】
3.6pmolの第1のオリゴヌクレオチドプライマー;1.8pmolの第2のオリゴヌクレオチドプライマー;2.4pmolの第1のオリゴヌクレオチドプローブ;300μM Sp-dATP-α-S、60μM dTTP、dCTP、dGTP;12Uの制限酵素;適切な反応緩衝液中60μlの総反応体積中の12Uのバチルス鎖置換型DNAポリメラーゼを含む反応液を構築した。各反応に1amol標的(T1、T2、T3、又はT4)を加えた後、45℃で6.5分間インキュベートしてから、60μl中53.5μlの反応液をラテラルフローストリップ上で実行した。ラテラルフローストリップへの反応液の適用前に、1.5pmolの第2のオリゴヌクレオチドプローブ及び2μgのビオチン結合タンパク質に吸着させたカーボンをコンジュゲートパッドに堆積させて5分間乾燥させた。
【0137】
図8に、本実験で得られた核酸ラテラルフローストリップの写真を示す。標的T1を用いて得られたストリップは、ニトロセルロースの固体材料に結合したディテクタ種に結合させたカーボンに対応する明確な黒い線を示し、これによりオリゴヌクレオチドプライマー及びプローブを含む本実施例において開発したアッセイが、適切に機能し、迅速かつ高感度な検出のための潜在性を有することが立証された。標的T2及びT3を用いて実施された反応は、陽性シグナルに相当する一切のカーボンも示さなかった。これにより4つのミスマッチ及び4塩基の除去は両方とも、第2のオリゴヌクレオチドの反応中に生産されたプレ-ディテクタ種と効率的にハイブリダイズする能力を失わせることが立証された。非常にかすかなシグナルがT4を使用して生産されたストリップ上に観察された。このことは、わずか2つのミスマッチ塩基の存在によりストリップ上の線に結合することが可能なディテクタ種を生産するプレ-ディテクタ種とのハイブリダイゼーションに成功した第2のオリゴヌクレオチドプローブの能力の大幅な低下がもたらされることを示している。ポリアクリルアミドゲル電気泳動を反復反応を用いて実施し、全ての標的についての全ての反応が適切に機能し、顕著な量の増幅産物が生産されたことを確認した。4塩基短縮された標的T3を用いて実施した反応においては、予測されるサイズシフトが視認された。
【0138】
本実施例では、本発明の不可欠な特徴である第1及び第2のオリゴヌクレオチドプローブが、増幅産物の迅速かつ高感度の検出を提供するだけでなく、どのようにプライマーハイブリダイゼーション単独に起因する増幅産物を乗り越えて増幅産物のさらなる病原体配列ベースの特異性チェックを提供するために使用され得るかを実証する。この強力な技術は、1からの合成又はプライマー間結合に起因する特定のアッセイにおける非標的特異的バックグラウンド増幅から生じる従来技術の方法の公知の課題を克服する。本方法は、従来技術の方法と比較しての特異性の増強を示すのに対し、高感度の検出及び迅速、低コストの結果の可視化は維持されることを実証する。
【0139】
(実施例5)
(第2のオリゴヌクレオチドプローブの固体材料との結合を可能とする部分が抗原であり、対応する抗体を固体表面、ニトロセルロースラテラルフローストリップと結合させる、本発明において利用する方法の実施)
本発明で利用する方法において、いくつかの異なる部分を第2のオリゴヌクレオチドプローブを固体材料と結合させるための部分として利用することができる。本実施例では、設計されたディテクタ種を使用して第2のオリゴヌクレオチドプローブの固体材料との結合を可能とする部分が抗原であり、対応する抗体を固体表面、ニトロセルロースラテラルフローストリップと結合させる、方法を実施することができることを実証する。
【0140】
第2のオリゴヌクレオチドプローブは、増幅産物中の少なくとも1つの種との相同性を有する領域を含む32塩基の配列及び合成時に付加された3'ジゴキシゲニンNHSエステル修飾を含むように設計した。ヒツジから精製されたFab断片抗ジゴキシゲニン抗体(Sigma-Aldrich社)を、スポット及び空気乾燥によって核酸ラテラルフローストリップ上に固定化した。
【0141】
第2のオリゴヌクレオチドプローブの性能を、様々なレベルの標的(+++=1pmol;++=0.1pmol;+=10fmol;NTC=標的なし対照)を、0.016mgml-1ビオチン結合タンパク質に吸着されたカーボンを含む、カーボン核酸ラテラルフロー反応を用いた検出のために必要な試薬を含む60μlの設計された反応緩衝液に加えた実験において実証した。ストリップは、2.5mMホウ酸及び0.5% Tween20を含む0.2μlの緩衝液中の0.5μgの抗ジゴキシゲニンFab断片をストリップ上にスポットして準備した。溶液をラテラルフローストリップのニトロセルロース膜中で2時間にわたり乾燥させた。反応液を45℃で2分間インキュベートし、設計されたディテクタ種を形成させた後、各反応の全反応ミックスをラテラルフローストリップに適用した。
【0142】
図9に、本実験で生産されたラテラルフローストリップの写真を示す。ラテラルフローストリップ上のカーボンの堆積に相当する黒いスポットが各標的レベルで視認され、NTCでは視認されず、ディテクタ種が特異的に検出されていることを示している。検出部分(カーボン)を結合させるためのビオチンベースのアフィニティー相互作用及び固体材料結合部分のための抗体ベースのアフィニティー相互作用の組合わせを示す。本実施例は、第2のオリゴヌクレオチドプローブの固体材料との結合に利用可能な異なるアプローチの観点で、本方法の汎用性を実証する目的に適う。
【0143】
(実施例6)
(第2のオリゴヌクレオチドプローブを固体材料と結合させることを可能とする部分が3塩基DNA配列モチーフの4つの反復コピーを含む一本鎖オリゴヌクレオチドであり、該一本鎖オリゴヌクレオチド配列の逆相補鎖が固体材料に結合されている、本発明において利用する方法の実施)
本実施例は、第2のオリゴヌクレオチドプローブを固体材料と結合させることを可能とする部分が3塩基DNA配列モチーフの4つの反復コピーを含む一本鎖オリゴヌクレオチドである、方法の実施を示す。上記の通り、第2のオリゴヌクレオチドプローブの検出部分として一本鎖オリゴヌクレオチドを利用する方法の実施態様は、核酸ラテラルフローによる検出を容易にし、同じ試料中の複数の異なる標的核酸の検出を容易に実現する、本方法の単純で汎用性の高い態様を提示する。さらに、一本鎖オリゴヌクレオチド検出部分を事前に規定し、効率的なストリップ上ハイブリダイゼーションのために最適化して、検出感度を増強し、核酸ラテラルフローストリップの効率的なスケールアップ製造に備えることができる。
【0144】
本方法の一態様において、本発明者らはDNA配列モチーフの複数の反復コピーから構成される一本鎖オリゴヌクレオチド検出部分の使用による、ストリップ上ハイブリダイゼーションの予期せぬ改善を観察した。本実施例では、複数の横並び実験(side-by-side experiments)の結果を提示する。ここでラテラルフローストリップに直接結合された第2のオリゴヌクレオチドを用いたアッセイの成績は、3塩基DNA配列モチーフの4つの反復コピーを含む一本鎖検出部分の使用により大幅に高められ、かつ前記一本鎖オリゴヌクレオチド配列の逆相補鎖はラテラルフローストリップと結合されている。
【0145】
(実施例6.1)第1のオリゴヌクレオチドプローブがそのハイブリダイゼーション領域の3'末端におけるDNAポリメラーゼによる伸長を阻止され、該ハイブリダイゼーション領域中で制限酵素によって切断されることが可能でなく、当該プローブを工程a)の実施と同時に試料と接触させる、方法の実施態様を利用して、アッセイを設計した。5'から3'の方向に:5'ビオチン修飾;7塩基の中間領域;ニッキング酵素ではない5塩基の制限酵素認識部位;制限酵素の切断部位にホスホロチオエート結合を含む標的中の第1のハイブリダイゼーション領域とハイブリダイズすることが可能な13塩基領域;及び3'リン酸修飾(ビオチン修飾により、第1のオリゴヌクレオチドプローブの比色定量色素、カーボンナノ粒子との結合が可能となる。リン酸修飾は、鎖置換型DNAポリメラーゼによるその伸長を阻止する)を含む全長25塩基の第1のオリゴヌクレオチドプローブを設計した。
【0146】
同じ標的種(I及びII)を検出するための2つの代替の第2のオリゴヌクレオチドプローブを設計した。第2のオリゴヌクレオチドプローブ「I」は、5'から3'の方向に:標的中の第2のハイブリダイゼーション配列の逆相補鎖とハイブリダイズすることが可能な14塩基領域の3×反復配列;及び9×チミジン塩基スペーサーを含むように設計した。核酸ラテラルフローストリップを、30pmolのプローブを含むスポットを用いて調製した。
【0147】
5'から3'の方向に:標的中の第2のハイブリダイゼーション領域の逆相補鎖とハイブリダイズすることが可能な14塩基領域;5×チミジン塩基の中間スペーサー;及び第2のオリゴヌクレオチドプローブの固体材料との結合を可能にする部分として働く3塩基配列モチーフの4×反復配列を含む12塩基の一本鎖オリゴヌクレオチド部分を含む、代替の第2のオリゴヌクレオチドプローブ「II」を設計した。5'から3'の方向に:11×チミジン塩基スペーサー;第2のオリゴヌクレオチドIIの固体材料との結合を可能とする部分を形成する3塩基の配列モチーフに対する逆相補鎖の12×反復配列を含む36塩基領域を含むように、追加の一本鎖オリゴヌクレオチドを設計した。第2のオリゴヌクレオチドプローブIIについて、30pmolの該追加の一本鎖オリゴヌクレオチドをスポットした、核酸ラテラルフローストリップを準備した。
【0148】
0.016mgml-1のビオチン結合タンパク質に吸着させたカーボンを含む60μlの適切な緩衝液中の、0.5pmolの第1のオリゴヌクレオチドプローブを含む、オリゴヌクレオチドプローブI及びIIの成績を試験するための反応を実施した。IIの反応は同様に構築したが、0.5pmolの第2のオリゴヌクレオチドプローブIIを追加した。核酸標的(設計されたアッセイ試薬から得た増幅産物中の少なくとも1つの種を代表する一本鎖DNA標的)を、様々なレベルで(+++=1pmol、++=0.1pmol、NTC=標的なし対照)追加した。構築した反応液を45℃で2分間インキュベートした後、全反応ミックスを適切な核酸ラテラルフローストリップに負荷した。
【0149】
図10Aは本実験で得たラテラルフローストリップの写真を示す。左のパネルには第2のオリゴヌクレオチドプローブIを用いた結果を示し、右のパネルには第2のオリゴヌクレオチドプローブIIを用いた結果を示す。カーボンと結合したディテクタ種の堆積に対応する黒いスポットを標的の存在下で可視化した。反復配列モチーフを含む第2のオリゴヌクレオチドプローブIIについて、全ての標的レベルでより強いシグナルを観察した。
【0150】
(実施例6.2)次に、本方法の該実施態様の汎用性及びその広い応用性を実証するために、別個のアッセイを完全に異なる標的核酸について設計した。オリゴヌクレオチドプローブは、実施例6.1に記載されているのと同様の方法で、関連する標的核酸、一本鎖DNAについて設計した;ここでも第2のオリゴヌクレオチドプローブの2つの形式を「I」及び「II」と呼び、様々な標的レベル(+++=1pmol、++=0.1pmol、+=0.001pmol)を使用した。
図10Bに示された生産されたラテラルフローストリップの写真に示されているように、さらに著しい効果が観察された。試験したうち2つの低標的レベルにおいて、第2のオリゴヌクレオチドプローブIは一切のシグナルを生成せず、一方対応する反復配列オリゴヌクレオチドプローブIIは、堆積したカーボンの黒いスポットによって示される明確な陽性シグナルを生成した。
【0151】
本実施例では、DNA配列モチーフの反復コピーを含む第2のオリゴヌクレオチド検出部分を利用した、ラテラルフローハイブリダイゼーションベースの検出に対する著しい改善を示す。これは、ディテクタ種の核酸ラテラルフローベースの検出の感度を100倍の改善が得られることを実証する。シグナル強度が増強され、シグナルがより迅速に発生し、これにより例えば核酸ラテラルフローによる迅速な検出を伴う応用への適用を容易にする本発明の該実施態様の潜在性が実証される。さらに、第2のオリゴヌクレオチドプローブと結合された検出部分としての一本鎖オリゴヌクレオチドの使用の潜在性を例証する。
【0152】
(実施例7)
(臨床検体中のRNAウイルス検出のための、本発明において利用する方法の使用)
本実施例では、第1のオリゴヌクレオチドプローブを増幅工程a)の実施と同時に試料と接触させ、第2のオリゴヌクレオチドプローブの固体材料との結合を可能にする部分が3塩基DNA配列モチーフの4つの反復コピーから構成される一本鎖オリゴヌクレオチドであり、かつ該一本鎖オリゴヌクレオチド配列の逆相補鎖が固体材料と結合されている、方法の実施態様を用いる、臨床検体中のRNAウイルスを検出する方法の実施を実証する。様々な研究において、本発明者らはウイルスゲノム抽出物などの非常に低いコピー数のRNA標的を常套的に検出している。例えば、定量化されたウイルスゲノム抽出物を用いて、本発明者らは本発明の方法を利用して、100未満のゲノム相当コピーのウイルスを結果まで合計10分未満で検出し、増幅工程a)を5分未満とする。この注目に値する速度及び感度から、診断の分野における応用方法の潜在性が実証される。従って、本実施例において、本発明者らは病原性一本鎖RNAウイルスを検出するアッセイを開発し、ウイルスに感染した臨床検体を使用したそのアッセイの成績を実証した。
【0153】
5'から3'の方向に:各塩基間のホスホロチオエート結合を含む8塩基の合成安定化領域;5塩基のニッキング酵素ではない制限酵素認識部位;及び一本鎖RNAウイルスゲノム中の領域を標的化するように設計された、標的核酸中の第1のハイブリダイゼーション配列の逆相補的配列を含む12塩基のハイブリダイズ領域を含む全長25ヌクレオチド塩基の第1のオリゴヌクレオチドプライマーを設計した。同じ安定化領域を含むが、ホスホロチオエート結合を含まず、及び同じ制限酵素認識配列を含むが、第2のハイブリダイゼーション配列の逆相補鎖とハイブリダイズすることが可能な12塩基のハイブリダイズ領域を含む第2のオリゴヌクレオチドプライマーを設計した。本実施例において、第1の制限酵素及び第2の制限酵素は、同じ制限酵素である。標的核酸中の第1及び第2のハイブリダイゼーション配列は0塩基により隔てられている。
【0154】
オリゴヌクレオチドプライマーは標的核酸を使用して設計し、それによりプライマーの逆相補鎖の切断部位の下流のヌクレオチド塩基がアデノシンとなり、その結果αチオールdATPが本方法における使用のための修飾dNTPとして利用される。ホスホロチオエート修飾を鎖置換型DNAポリメラーゼ又は逆転写酵素によって挿入し、該逆相補鎖の切断を阻止する。
【0155】
5'から3'の方向に:第1のオリゴヌクレオチドプローブの比色定量色素、カーボンナノ粒子との結合を可能とする、合成時に付加される5'ビオチン修飾;8塩基の安定化領域;第1のオリゴヌクレオチドプローブ中の該制限酵素の切断部位が合成中に付加されたホスホロチオエートヌクレオチド間結合によって保護される、ニッキング酵素ではない制限酵素のための5塩基の認識配列;増幅産物中の少なくとも1つの種とハイブリダイズすることが可能な11塩基領域;及び鎖置換型DNAポリメラーゼによる伸長を妨げる3'リン酸修飾を含む、全長24塩基の第1のオリゴヌクレオチドプローブを設計した。
【0156】
5'から3'の方向に:増幅産物中の該少なくとも1の種の第1の一本鎖検出配列の下流の第2の一本鎖検出配列とハイブリダイズすることが可能な、14塩基領域;5×チミジン塩基を含むスペーサー;ラテラルフローストリップ上でそれに対する逆相補鎖が固定化された3塩基DNA配列モチーフの4×反復配列を含む全長31塩基の第2のオリゴヌクレオチドプローブを設計した。11×チミジン塩基を含む中間スペーサー;第2のオリゴヌクレオチドプローブの3塩基配列モチーフに相補的である3塩基配列モチーフの12×反復配列;を含む、全長47塩基の固定化されたラテラルフローにプリントされたオリゴヌクレオチドを設計した。5'から3'の方向に:第2のオリゴヌクレオチドプローブ上のものとは異なる5×トリプレット反復配列;5×チミジン塩基を含む中間スペーサー;合成中に付加された3'ビオチン分子を含む20塩基の長さのラテラルフロー対照オリゴヌクレオチドを設計した。対照オリゴヌクレオチドは、ラテラルフローストリップ上のその逆相補鎖と結合し、カーボンラテラルフロー手順が成功しているかどうかを検証する。
【0157】
1.8pmolの第1のプライマー;9.6pmolの第2のプライマー;3.6pmolの第1のプローブ;1pmolの第2のプローブ;Enzo Life Sciences社製の300μM Sp-dATP-α-S;各々60μMのdTTP、dCTP、及びdGTP;28Uの制限酵素;14Uのバチルス鎖置換型DNAポリメラーゼ;35Uのウイルス逆転写酵素;3.5U RNase H、3μgのビオチン結合タンパク質に吸着させたカーボンを含む、反応液を調製した。臨床設定で患者から収集した5μlの鼻咽頭スワブ試料(Discovery Life Sciences社から入手)には、7つのウイルス陽性試料及び6つのウイルス陰性臨床試料が含まれる(PCRアッセイにより検証済み)。反応は、適切な反応緩衝液中で70μlの体積で実施した。反応液は45℃で4分30秒インキュベートした後、全反応液をおよそ50pmolの第2のオリゴヌクレオチドプローブの3塩基トリプレット反復配列部分の逆相補鎖(下)及び対照オリゴヌクレオチドの逆相補鎖(上の線)をプリントされた核酸ラテラルフローストリップに負荷した。
【0158】
図11に、本実施例の実施で得られたラテラルフローストリップの写真を示す。矢印は、第2のオリゴヌクレオチドプローブのトリプレット反復配列部分との逆相補鎖がプリントされている、従って陽性シグナルが出現する位置(+)、及びラテラルフローの実行に成功したか否かを検証する、従ってアッセイに陽性でも陰性でも出現する対照オリゴヌクレオチド(CTL)との逆相補鎖の位置を示す。上のパネル(+ve)には、ウイルス陽性の臨床試料を用いて、下のパネル(-ve)には、ウイルス陰性の試料を用いて、得られた結果を示す。標的核酸の存在を示す明確な黒い線が陽性試料の各々において存在し、これにより本発明の方法による臨床検体の迅速な検出が実証された。偽陽性は観察されず、例えば1からの合成又はプライマー間結合を通じたディテクタ種の非特異的生産の完全な不存在が実証された。偽陰性は観察されず、本方法の頑健性及び異なる臨床検体中に存在する異なる標的核酸コピー数レベルにわたるその感度が立証された。
【0159】
(実施例8)
(異なる温度での本発明において利用する方法の実施)
本発明において利用する方法は広範囲の温度にわたって効率的に実施され、温度の周期的変化を要求も、任意のホットスタート若しくはウォームスタート、プレヒート、又は制御された温度低下も要求しない。本実施例では、異なる温度範囲にわたる典型的なアッセイの実施を示す。所望の至適温度を有する酵素を選択し、その取込み後にハイブリダイゼーションの融解温度を低下させるホスホロチオエート塩基を使用して、増幅が予期せぬ広範囲の温度にわたり実施され、通常は低い温度範囲をカバーするアッセイが、容易に開発された。さらに別個の実験では、本発明において利用する方法を使用して開発されたアッセイが、工程a)の開始前に試料をプレヒートすることを要さずに開発され、ここで温度を工程a)における増幅の実施の間に増加させる場合に成績の低下は観察されないことが実証される。
【0160】
(実施例8.1)第1のオリゴヌクレオチドプローブが3'末端におけるDNAポリメラーゼによる伸長を阻止され、制限酵素によって切断されることが可能でなく、当該プローブを工程a)の実施と同時に試料と接触させる、アッセイを設計した。5'から3'の方向に:7塩基の中間領域;制限酵素の認識部位;及び標的核酸、DNA標的中の第1のハイブリダイゼーション配列とハイブリダイズすることが可能な11塩基領域を含む、第1のプライマーを設計した。5'から3'の方向に:7塩基の中間領域;第1のプライマーと同じ制限酵素の認識部位;及び標的核酸中の第2のハイブリダイゼーション配列の逆相補鎖とハイブリダイズすることが可能な12塩基領域を含むように、第2のプライマーを設計した。
【0161】
5'から3'の方向に:5'ビオチン修飾;6塩基の中間領域;第2位にミスマッチを含む制限酵素の認識部位の塩基;第6位にG-clamp修飾を含む標的中の第1のハイブリダイゼーション領域とハイブリダイズすることが可能な10塩基領域;及び3'リン酸修飾(ビオチン修飾により、第1のオリゴヌクレオチドプローブを比色定量色素、カーボンナノ粒子との結合が可能となる。リン酸修飾は、鎖置換型DNAポリメラーゼによるその伸長を阻止する)を含むように、全長21塩基の第1のオリゴヌクレオチドプローブを設計した。
【0162】
5'から3'の方向に:標的中の第2のハイブリダイゼーション配列の逆相補鎖とハイブリダイズすることが可能な11塩基領域;4×チミジン塩基スペーサー及び第2のオリゴヌクレオチドプローブの固体材料との結合を可能とする部分として働く3塩基配列モチーフの4×反復配列を含む12塩基を含むように、第2のオリゴヌクレオチドプローブを設計した。5'から3'の方向に:11×チミジン塩基スペーサー;第2のオリゴヌクレオチドの固体材料との結合を可能とする部分を形成する3塩基の配列モチーフに対する逆相補鎖の11×反復配列を含む33塩基領域を含むように、追加の一本鎖オリゴヌクレオチドを設計した。第2のオリゴヌクレオチドプローブについて、30pmolの該追加の一本鎖オリゴヌクレオチドをスポットした、核酸ラテラルフローストリップを準備した。
【0163】
1.5pmolの第1のプライマー;1.0pmolの第2のプライマー;1pmolの第1のオリゴヌクレオチドプローブ;Enzo Life Sciences社製の60μM Sp-dATP-α-S;各々60μMのdTTP、dCTP、及びdGTP;並びに様々なレベルの標的DNA(++=1amol,+=10zmol,NTC=標的なし対照)を含む適切な緩衝液中で反応液を調製した。構築した反応液は、標的温度(I=37℃;II=45℃;III=50℃;及びIV=55℃)で2分間インキュベートした後、最終的な5Uの制限酵素及び5Uのバチルス鎖置換型DNAポリメラーゼの25μlの最終反応体積への追加によって反応を開始した。その後、反応液を5分間(T1)又は8分間(T2)、関連する標的温度でインキュベートした。インキュベーションに続き、各反応液を1.5pmolの第2のオリゴヌクレオチドプローブ及び8μgのビオチン結合タンパク質に吸着させたカーボンを含む、75μlの緩衝液に移した後、核酸ラテラルフローストリップの試料パッドに適用した。
【0164】
図12Aは、各標的レベル、温度、及び時点での実験で得たラテラルフローストリップの写真を示す。観察された明確な黒い線は、標的存在下で生産されたカーボンに結合されたディテクタ種の堆積に対応する。全ての温度において、8分以内に両方の標的レベルで標的の存在下、非常に強いシグナルが出現し、本方法による効率的増幅の広い温度範囲が実証された。NTC試料中での非特異的増幅は観察されなかった。また、45℃及び50℃でわずか5分後に強力な増幅が観察され、このアッセイの最適温度が40℃~50℃である可能性が高いことが示された。
【0165】
(実施例8.2)第1のオリゴヌクレオチドプローブが3'末端におけるDNAポリメラーゼによる伸長を阻止され、第1又は第2の制限酵素によって切断されることが可能でなく、当該プローブを工程a)の実施と同時に試料と接触させる、第2のアッセイを設計した。5'から3'の方向に:6塩基の中間領域;制限酵素の認識部位;及び標的核酸に対する12塩基ハイブリダイゼーション領域を含む、第1及び第2のプライマーの両方を設計した。標的中の第1及び第2のハイブリダイゼーション配列が10塩基により隔てられるように、プライマーを設計した。
【0166】
5'から3'の方向に:5'ビオチン修飾;6塩基の中間領域;第4位にミスマッチを含む制限酵素の認識部位の塩基;標的中の第1のハイブリダイゼーション領域とハイブリダイズすることが可能な12塩基領域;及び3'リン酸修飾(ビオチン修飾により、第1のオリゴヌクレオチドプローブを比色定量色素、カーボンナノ粒子との結合が可能となる。リン酸修飾は、鎖置換型DNAポリメラーゼによるその伸長を阻止する)を含む全長23塩基の第1のオリゴヌクレオチドプローブを設計した。
【0167】
5'から3'の方向に:標的中の第2のハイブリダイゼーション配列の3塩基の逆相補鎖とハイブリダイズすることが可能な13塩基領域並びに第1及び第2のハイブリダイゼーション配列間の10塩基のギャップ;第2のオリゴヌクレオチドプローブの固体材料との結合を可能とする部分として働く3×チミジン塩基スペーサー及び3塩基配列モチーフの4×反復配列を含む12塩基を含むように、第2のオリゴヌクレオチドプローブを設計した。5'から3'の方向に:11×チミジン塩基スペーサー;及び第2のオリゴヌクレオチドの固体材料との結合を可能とする部分を形成する3塩基の配列モチーフに対する逆相補鎖の12×反復配列を含む36塩基領域を含むように、追加の一本鎖オリゴヌクレオチドを設計した。第2のオリゴヌクレオチドプローブについて、30pmolの該追加の一本鎖オリゴヌクレオチドをスポットした、核酸ラテラルフローストリップを準備した。
【0168】
6pmolの第1のオリゴヌクレオチドプライマー;8pmolの第2のオリゴヌクレオチドプライマー;6pmolの第1のオリゴヌクレオチドプローブ;Enzo Life Sciences社製の60μM Sp-dATP-α-S;各々60μMのdTTP、dCTP、及びdGTP;60μgのビオチン結合タンパク質に吸着されたカーボン;並びに適用可能である場合、標的を含む適切な緩衝液中で反応液を調製した。構築した反応液は、開始温度(I=15℃;II=45℃)で2分間インキュベートした後、最終的な20Uの制限酵素、20Uのバチルス鎖置換型DNAポリメラーゼ、及び40Uの逆転写酵素を100μlの最終反応体積への追加によって反応を開始した。酵素追加後、開始温度を15℃とした反応を、他の反応とともに直ちに45℃に移した。
【0169】
続いて、反応液を45℃で6分間インキュベートした。インキュベーション後、各反応液を3pmolの第2のオリゴヌクレオチドプローブを含む核酸ラテラルフローストリップの試料パッドに移した。
図12Bは各温度のインキュベーション条件での実験で得たラテラルフローストリップの写真を示す。観察された明確な黒い線は、標的存在下で生産されたカーボンに結合されたディテクタ種の堆積に対応する。増幅工程a)で温度を15℃から45℃に増加させた反応において、差は観察されなかった。プレヒートした反応と同程度の著しい増幅速度が得られ、NTC試料では非特異的増幅は観察されなかった。
【0170】
本実施例8は、本発明において利用する方法を使用して、公知の方法と比較して低い最適温度プロファイルを有し、かつ並外れて広い温度範囲にわたる高感度の検出を利用することができるアッセイを容易に開発することができることを実証する。また、本方法は、工程a)の実施において温度を増加させるプレヒートを用いることなく実施することができることを実証する。そのような特徴は、低コストの診断装置での本方法の使用に非常に魅力的である。ここで高温及び厳密な加熱制御は使い捨て装置又は機器を要さない装置が商業的に現実的でない点までそのような装置の商品原価を高める複雑な物理的制約を課す。さらに、増幅開始前に試料をプレヒートする公知の方法の要件を回避することにより、本方法は、より少ないユーザ工程でより簡素化された一連の操作で実施することができ、従ってそのような診断装置の使いやすさが向上し、結果が出るまでの全体的な時間が短縮される。
【0171】
(実施例9)
(インフルエンザAの検出のための本発明において利用される方法の成績の公知の方法に対する比較)
本実施例では、この事例ではインフルエンザA標的の検出について本発明において利用される方法の、WO2014/164479で開示された公知の方法に対する比較評価を提示する。公知の方法は、ニッキング酵素を要求し、1以上の修飾dNTPの使用を要求しないという点で、本発明において利用する方法と根本的に異なる。本発明において利用される方法は非常に優れた感度及び特異性を有することを実証する。
【0172】
この比較評価のために、本発明において利用される方法を使用して標的病原体インフルエンザAに対するアッセイをまず開発した。第1のオリゴヌクレオチドプローブが3'末端におけるDNAポリメラーゼによる伸長を阻止され、制限酵素によって切断されることが可能でなく、当該プローブを工程a)の実施と同時に試料と接触させる、方法の実施態様を利用して、該アッセイを設計した。オリゴヌクレオチドプライマー及びオリゴヌクレオチドプローブの設計は、他の実施例に記載したアプローチと同様のアプローチに従って、病原体由来RNA中の第1及び第2のハイブリダイゼーション配列間に6塩基のギャップを設けて、実施した。
【0173】
(実施例9.1)第1の例では、各方法の反応は、等しいプライマー比を使用して実施した。本発明の方法のために:2pmolの第1のオリゴヌクレオチドプライマー;2pmolの第2のオリゴヌクレオチドプライマー;1.6pmolの第1のオリゴヌクレオチドプローブ;Enzo Life Sciences社製の60μM Sp-dATP-α-S;各々60μMのdTTP、dCTP、及びdGTP;並びに様々なレベル(+++=10zmol;++=100コピー;+=10コピー;NTC=標的なし対照)のインフルエンザAゲノムRNA抽出物を標的として含む適切な緩衝液中で反応液を調製した。構築した反応液は、周囲条件(c.20℃)で5分間プレインキュベートした後、5Uの制限酵素、5Uのバチルス鎖置換型DNAポリメラーゼ、及び10Uの逆転写酵素を25μlの最終反応体積への追加によって反応を開始した。酵素の追加後、反応液を45℃で8分間(T1)又は15分間(T2)インキュベートした。インキュベーション後、各反応液に75μl緩衝液中の60μgのビオチン結合タンパク質に吸着させたカーボンを追加し、全100μlの体積を試料パッド上に1.5pmolの第2のオリゴヌクレオチドプローブを含む核酸ラテラルフローストリップに移した。
【0174】
公知の方法のために:6.25pmolの第1のオリゴヌクレオチドプライマー;6.25pmolの第2のオリゴヌクレオチドプライマー;各々200μMのdATP、dTTP、dCTP、及びdGTP;並びに様々なレベル(+++=10zmol;++=100コピー;+=10コピー;NTC=標的なし対照)のインフルエンザAゲノムRNA抽出物を標的として含む適切な緩衝液中で反応液を調製した。構築した反応液は、周囲条件(c.20℃)で5分間プレインキュベートした後、4UのNt.BbvCI、20UのBst大断片DNAポリメラーゼ、及び10UのM-MuLV逆転写酵素を25μlの最終反応体積への追加によって反応を開始した。酵素の追加後、反応液を45℃で8分間(T1)及び15分間(T2)インキュベートした。インキュベーション後、60μgのビオチン結合タンパク質に吸着させたカーボン及び5pmolの第1のオリゴヌクレオチドプローブを含む75μl緩衝液を各反応液に追加し、全100μlの体積を試料パッド上に5pmolの第2のオリゴヌクレオチドプローブを含む核酸ラテラルフローストリップに移した。
【0175】
図13Aでは、様々な標的レベル及び示された時点での、本発明において利用する方法(I)を用いた実験及び公知の方法(II)を用いた実験において得られるラテラルフローストリップの写真を示す。観察された黒い線は、標的存在下で生産されたカーボンに結合されたディテクタ種の堆積に対応する。公知の方法を使用して仮にも何らかのシグナルを観察することを可能にするまでに、何度かの試行が必要であり、酵素及び緩衝液、並びに顕著に高いレベルのプライマー、dNTP、及び酵素の特定の組合わせを使用する必要があった。本発明において利用する方法(I)を用いると、プレヒートなしでわずか8分後の最も短い時点ですらわずか10コピーという最低の標的レベルでさえも、生産されたディテクタ種を明確に確認することができた。当業者にとって自明でない公知の方法を最適化する取り組みの後でさえも、最も高い標的レベル(+++=10zmol)かつ最も長い時点(15分)でかすかなシグナルしか観察されなかった。
【0176】
(実施例9.2)さらに、自明ではない詳細な試みを行った後、この実施例9.2に記載の通り、非常に高濃度の第1のプライマーを用いた、2:1の比の第1及び第2のオリゴヌクレオチドプライマーを使用することによってのみではあるが、公知の方法の成績を高めることが可能であった。本発明において利用する方法は、ここでも実施例9.1に記載の通り、実施した。公知の方法については、反応は第1のオリゴヌクレオチドプライマーのレベルを12.5pmolに増加させたことを除き、実施例9.1に記載の通り実施した。各事例において、以下の標的レベル:+++=1zmol;++=100コピー;+=10コピー;NTC=標的なし対照を使用した。
【0177】
図13Bでは、様々な標的レベル及び示された時点での、本発明において利用する方法(I)を用いた実験及び公知の方法(II)を用いた実験において得られるラテラルフローストリップの写真を示す。観察された黒い線は、標的存在下で生産されたカーボンに結合されたディテクタ種の堆積に対応する。ここでも、本発明において利用する方法(I)は、最も短い時点において、わずか10コピーの標的という非常に低い標的レベルにおいてさえ、視認されるシグナルを伴う、注目に値する速度を得ることが実証された。公知の方法を用いると、最も高い標的レベル(+++=1zmol)でもかすかなシグナルしか観察されず、最も長い時点(15分)においても100コピー試料において非常にかすかなシグナルが視認された。しかしながらまた、NTCストリップでも方法を機能させるために要求される非常に高いオリゴヌクレオチドプライマーレベル及び酵素レベルの結果としての非特異的産物に対応し得るかすかなシグナルが観察された。これらのデータは、WO2014/164479における、30分のインキュベーション時間を報告したデータと一致する。この公知の方法を使用して実施される増幅を高速化するために並外れて高いプライマーレベルの追加を要求することは、同じ試料中での2以上の異なる標的病原体の検出のためのその潜在的応用性を大幅に制限する。それは、非特異的産物に伴う問題を悪化させることなく総プライマーレベルをさらに増加させるための範囲が非常に限られているためである。
【0178】
本実施例9は、増幅がはるかに迅速に実施され、感度がより高く、かつより明確な結果のシグナルが生成するという、WO2014/164479に開示された公知の方法を上回る本発明において利用する方法の著しい優位性を実証する。プレインキュベーションをせずにわずか8分で、本発明において利用する方法は、わずか100コピーの標的を用いて、60倍の標的レベルを用いる最高の標的レベルで15分間行い得る公知の方法において生成し得るよりも強いシグナルを生成した。この公知の方法に対する本発明において利用する方法の利点は、それがニッキング酵素ではない制限酵素である、異なるクラスの酵素を要求すること、及びそれが増幅の感度及び特異性を増強する1以上の修飾dNTP、例えばホスホロチオエート塩基の使用を要求することから生じる。さらに、阻止されたオリゴヌクレオチドプローブの使用は、増幅のシグナル検出との効率的カップリングを可能とし、ディテクタ種の形成の間の効率的な配列ベースのハイブリダイゼーションに由来する特異性の増強を促進する。これらの利点により、本方法は、診断の分野での利用及び簡素化された、超高速の、ユーザ重視の、低コスト診断装置、例えば使い捨て又は機器を要さない分子診断検査装置の開発に理想的に適する。
【0179】
(実施例10)
(標的病原体インフルエンザA、インフルエンザB、及び呼吸器合胞体ウイルスの検出及び識別)
本実施例では、標的病原体インフルエンザA、インフルエンザB、及び呼吸器合胞体ウイルス(RSV)を検出及び識別するための本発明のキット並びに各病原体の検出におけるその使用を記載する。本実施例において、RSVに対するプライマー対及びプローブ対はRSVA及びRSVBの両方のゲノムにおいて保存された配列を標的化する。また、本キットは、プロセス対照を実施するための、一本鎖対照核酸並びに対照核酸に対する構成要素a)プライマー対、b)制限酵素、及びc)プローブ対を含む。キットにおいて、各病原体及び対照に対する制限酵素は同じであり、各病原体及び対照に対するプローブ対の第1のオリゴヌクレオチドプローブのうちの一方が、3'末端におけるDNAポリメラーゼによる伸長を阻止され、制限酵素によって切断されることが可能でない。さらに、各病原体に対する阻止されたオリゴヌクレオチドプローブは、その病原体のプライマー対と混合して提供される。
【0180】
各病原体のプライマー対を、他の実施例に記載のアプローチと同様のアプローチに従い、病原体由来RNAの第1及び第2のハイブリダイゼーション配列の間のギャップを4~8塩基として設計した。各プライマーは5'から3'の方向に:中間領域(6~8塩基);5塩基の制限酵素認識配列;及びハイブリダイゼーション領域(11~14塩基)を含む。各事例において、プローブ対の第1のオリゴヌクレオチドプローブは、5'から3'の方向に:5'ビオチン修飾;中間領域(6~8塩基);第4位のミスマッチを含み、又は制限酵素による切断を阻止するためのホスホロチオエート修飾を含む制限酵素の認識部位の塩基;関連病原体の存在下で生産される増幅産物中の第1の一本鎖検出配列にハイブリダイズすることが可能な領域(11~14塩基);及び3’リン酸修飾を含み、ここでビオチン修飾により第1のオリゴヌクレオチドプローブの比色定量色素、カーボンナノ粒子との結合が可能となり、かつリン酸修飾により鎖置換型DNAポリメラーゼによるその伸長が阻止されるように設計した。各事例において、プローブ対の第2のオリゴヌクレオチドプローブを、5'から3'の方向に:増幅産物中の第2のハイブリダイゼーション配列の逆相補鎖の3塩基以上とハイブリダイズすることが可能な領域並びに第1及び第2のハイブリダイゼーション配列間のギャップ; 3×チミジン塩基スペーサー及び第2のオリゴヌクレオチドプローブの固体材料との結合を可能とする部分として働く3又は4塩基の配列モチーフの3又は4つの反復配列を含む12塩基を含むように設計した。追加の一本鎖オリゴヌクレオチドを、5'から3'の方向に:10又は11×チミジン塩基スペーサー;並びに第2のオリゴヌクレオチドの固体材料との結合を可能とする部分を形成する3又は4塩基配列モチーフに対する逆相補鎖の反復配列を含む30~40塩基領域を含むように設計した。30pmolの該追加の一本鎖オリゴヌクレオチドをスポットした、ラテラルフローストリップを準備した。
【0181】
対照プライマー対について、プライマーを上記アプローチと同様のアプローチに従うが、対照核酸中の第1及び第2のハイブリダイゼーション配列の間にギャップを含まない対照核酸を検出するように設計した。プローブ対を上記アプローチと同様のアプローチに従うが、プローブ対の第2のオリゴヌクレオチドが11×チミジン塩基スペーサーを有し、反復する3又は4塩基の配列モチーフを含まず、かつラテラルフローストリップ上に直接プリントされるように設計した。また、本キットには、各病原体に対する第1及び第2プライマーの認識配列を認識し、かつそれらの切断部位を切断することが可能なニッキング酵素ではない制限酵素;逆転写酵素;鎖置換型DNAポリメラーゼ;dNTP(dTTP、dCTP、dGTP)及び1つの修飾dNTP(αチオールdATP)を含めた。
【0182】
本実施例では、本キットを使用して、試験試料中の各病原体のウイルスゲノム抽出物から500コピーを検出した。対照核酸は1amolの濃度で使用した。増幅後、2つの反応液を合わせ、ラテラルフロー検査ストリップに適用した。
【0183】
反応は、適切な緩衝液、塩、及び添加剤を含む50μLの最終反応体積で実施した。試験試料、対照核酸及び適切な量のプライマー(40~160fmol/μl)及び第1のオリゴヌクレオチドプローブ(40~140fmol/μl)に加え、各反応液には:60μM Enzo Life Sciences社製Sp-dATP-α-S;各々60μMのdTTP、dCTP、及びdGTP;3μgのコンジュゲートカーボン;10Uの制限酵素;10Uの鎖置換型DNAポリメラーゼ;並びに25Uの逆転写酵素を含めた。全ての必要な成分を追加した後、反応液を2分間にわたり温度を15℃から48℃まで増加させながらインキュベートし、その後48℃で7分間インキュベートした。インキュベーション後、反応液を続いて核酸ラテラルフローストリップ上に堆積させた。該ストリップの試料/コンジュゲートパッドには、同様にして各病原体に対する5pmolの第2のオリゴヌクレオチドプローブを堆積させた。
【0184】
図14Aは、標的病原体インフルエンザA、インフルエンザB、又はRSVのうちの1つを含む試料について取得したラテラルフローストリップの写真を示す。
図14Bは、試料が各々標的病原体同様インフルエンザA、インフルエンザB、又はRSVのうちの2つを含む、同様の実験から取得したラテラルフローストリップの写真を示す。病原体が加えられていない対照実験(Ctrl)及び病原体が加えられておらず、かつ対照核酸も除外されている対照実験(NTC)を実施した。検査ストリップ上で観察される黒い線は、関連する標的病原体(複数可)及び/又は対照核酸の存在下で生産されるカーボンと結合したディテクタ種の蓄積に対応する。各病原体に対応する線は、試料中にその病原体が存在する場合にのみ観察された。このことは、最も一般的に遭遇する臨床状況である単一の標的病原体が試料中に存在する場合だけでなく、2以上の標的病原体の存在下においても、キットが特異性を有することを実証している。本実施例10には、本発明のキットの実施態様が記載され、そのキットの使用を例証する。本実施例は、本発明のキットが顕著に迅速なマルチプレックス検査における低レベルのインフルエンザA、インフルエンザB、及びRSVの高感度かつ高い特異性での検出及び識別を可能にすることを実証する。従って、本キットは、診断の分野での利用及び簡素化された、超高速の、ユーザ重視の、低コスト診断装置、例えば使い捨て又は機器を要さない分子診断検査装置の開発に理想的に適する。
【0185】
本明細書及び以下の特許請求の範囲の全体を通じて、文脈から別途要求されない限り、「含む(comprise)」及び「含んでいる(containing)」の用語、並びに「含む(comprises)」及び「含んでいる(comprising)」などの変形は、言及されている整数、工程、整数の群、又は工程の群の包含を意味するが、あらゆる他の整数、工程、整数の群、又は工程の群を除外するものではないことは理解されよう。本明細書において引用されている全ての特許及び特許出願は、その全体が参照により組み込まれている。
【0186】
本発明のさらなる態様には、本明細書に記載の全ての任意かつ/又は好ましい本発明の実施態様も適用され、以下を含む:
1. 試料中の標的病原体インフルエンザA及びインフルエンザBを検出及び識別するためのキットであって、該キットは各病原体について:
a)プライマー対であって:
i.5'から3'の方向に、制限酵素認識配列及び切断部位、並びに病原体由来RNA中の第1のハイブリダイゼーション配列とハイブリダイズすることが可能な領域を含む、第1のオリゴヌクレオチドプライマー;並びに
ii.5'から3'の方向に、制限酵素認識配列及び切断部位、並びに該病原体由来RNA中の該第1のハイブリダイゼーション配列の上流の第2のハイブリダイゼーション配列の逆相補鎖とハイブリダイズすることが可能な領域を含む、第2のオリゴヌクレオチドプライマーを含み、
該第1のハイブリダイゼーション配列及び該第2のハイブリダイゼーション配列が、20塩基以下により隔てられている、前記プライマー対;
b)ニッキング酵素ではなく、該第1のプライマー及び該第2のプライマーの認識配列を認識し、かつそれらの切断部位を切断することが可能な制限酵素;並びに
c)プローブ対であって:
i.該病原体由来RNAの存在下で生産される増幅産物中の少なくとも1つの種の第1の一本鎖検出配列とハイブリダイズすることが可能であり、かつそのプローブが、その検出を可能にする部分と結合している、第1のオリゴヌクレオチドプローブ;及び
ii.該増幅産物中の該少なくとも1つの種の該第1の一本鎖検出配列の上流又は下流の第2の一本鎖検出配列とハイブリダイズすることが可能であり、かつそのプローブが固体材料又は固体材料とのその結合を可能にする部分と結合する、第2のオリゴヌクレオチドプローブ、を含み;
ここで、少なくとも1つの該標的病原体に対する該プローブ対の該第1のオリゴヌクレオチドプローブ及び該第2のオリゴヌクレオチドプローブのうちの一方が、3'末端におけるDNAポリメラーゼによる伸長が阻止されて、該制限酵素により切断されることが可能でない、前記プローブ対、を含み、
該キットは:
d)逆転写酵素;
e)鎖置換型DNAポリメラーゼ;
f)dNTP;並びに
g)1以上の修飾dNTP、も含む、前記キット。
2. 各々の前記病原体に対する前記プローブ対の前記第1のオリゴヌクレオチドプローブ及び前記第2のオリゴヌクレオチドプローブのうちの一方が、3'末端におけるDNAポリメラーゼによる伸長が阻止されて、前記制限酵素により切断されることが可能でない態様1記載のキット。
3. 病原体に対する前記プローブ対の前記第1のオリゴヌクレオチドプローブ及び前記第2のオリゴヌクレオチドプローブのうちの両方が、3'末端におけるDNAポリメラーゼによる伸長が阻止されて、前記制限酵素により切断されることが可能でない、態様1又は2記載のキット。
4. 少なくとも1つの前記病原体に対する前記第1のオリゴヌクレオチドプローブ及び前記第2のオリゴヌクレオチドプローブのうちの一方が、その病原体に対する前記第1のプライマー又は前記第2のプライマーのうちの一方のハイブリダイズ領域又はハイブリダイズ領域の逆相補鎖との5塩基以上の相補性を有する、態様1~3のいずれか1つ記載のキット。
5. 前記第1のオリゴヌクレオチドプローブが、前記第1のオリゴヌクレオチドプライマー及び前記第2のオリゴヌクレオチドプライマーのうちの一方のハイブリダイズ領域との5塩基以上の相補性を有し、かつ前記第2のオリゴヌクレオチドプローブが、該第1のオリゴヌクレオチドプライマー及び該第2のオリゴヌクレオチドプライマーの他方のハイブリダイズ領域の逆相補鎖との5塩基以上の相補性を有する、態様5記載のキット。
6. プロセス対照を実施するための構成要素、例えば:
a)プライマー対であって:
i.5'から3'の方向に、制限酵素認識配列及び切断部位、並びに対照核酸中の第1のハイブリダイゼーション配列とハイブリダイズすることが可能な領域を含む、第1のオリゴヌクレオチドプライマー;並びに
ii.5'から3'の方向に、制限酵素認識配列及び切断部位、並びに対照核酸中の該第1のハイブリダイゼーション配列の上流の第2のハイブリダイゼーション配列の逆相補鎖とハイブリダイズすることが可能な領域を含む、第2のオリゴヌクレオチドプライマーを含み、
該第1のハイブリダイゼーション配列及び該第2のハイブリダイゼーション配列が、20塩基以下により隔てられている、前記プライマー対;
b)ニッキング酵素ではなく、該第1のプライマー及び該第2のプライマーの認識配列を認識し、かつそれらの切断部位を切断することが可能な制限酵素;並びに
c)プローブ対であって:
i.対照核酸の存在下で生産される増幅産物中の少なくとも1つの種の第1の一本鎖検出配列とハイブリダイズすることが可能であり、かつそのプローブが、その検出を可能にする部分と結合している、第1のオリゴヌクレオチドプローブ;及び
ii.該増幅産物中の該少なくとも1つの種の該第1の一本鎖検出配列の上流又は下流の第2の一本鎖検出配列とハイブリダイズすることが可能であり、かつそのプローブが固体材料又は固体材料とのその結合を可能にする部分と結合する、第2のオリゴヌクレオチドプローブ、を含む、前記プローブ対、をさらに含む、態様1~5のいずれか1つ記載のキット。
7. 試料中の標的病原体インフルエンザAウイルス及びインフルエンザBウイルスを検出及び識別するための方法であって、該方法は各病原体について:
a)該試料を、
i.プライマー対であって:
5'から3'の方向に、制限酵素認識配列及び切断部位、並びに病原体由来RNA中の第1のハイブリダイゼーション配列とハイブリダイズすることが可能な領域を含む、第1のオリゴヌクレオチドプライマー;並びに
5'から3'の方向に、制限酵素認識配列及び切断部位、並びに該病原体由来RNA中の該第1のハイブリダイゼーション配列の上流の第2のハイブリダイゼーション配列の逆相補鎖とハイブリダイズすることが可能な領域を含む、第2のオリゴヌクレオチドプライマー、を含み、
該第1のハイブリダイゼーション配列及び該第2のハイブリダイゼーション配列が、20塩基以下により隔てられている、前記プライマー対;
ii.ニッキング酵素ではなく、該第1のプライマー及び該第2のプライマーの認識配列を認識し、かつそれらの切断部位を切断することが可能な制限酵素;
iii.逆転写酵素;
iv.鎖置換型DNAポリメラーゼ;
v.dNTP;並びに
vi.1以上の修飾dNTP
と該病原体由来RNAの存在下で接触させて、増幅産物を生産すること;
b)工程a)の該増幅産物を:
i.プローブ対であって:
該病原体由来RNAの存在下で生産される増幅産物中の少なくとも1つの種の第1の一本鎖検出配列とハイブリダイズすることが可能であり、かつそのプローブが、その検出を可能にする部分と結合している、第1のオリゴヌクレオチドプローブ;及び
該増幅産物中の該少なくとも1つの種の該第1の一本鎖検出配列の上流又は下流の第2の一本鎖検出配列とハイブリダイズすることが可能であり、かつそのプローブが固体材料又は固体材料とのその結合を可能にする部分と結合する、第2のオリゴヌクレオチドプローブ、を含み;
ここで、少なくとも1つの該標的病原体に対する該プローブ対の該第1のオリゴヌクレオチドプローブ及び該第2のオリゴヌクレオチドプローブのうちの一方が、3'末端におけるDNAポリメラーゼによる伸長が阻止されて、該制限酵素により切断されることが可能でなく、かつ工程a)の実施と同時に該試料と接触させ;
ここで、該第1のプローブ及び該第2のプローブの該増幅産物中の該少なくとも1つの種とのハイブリダイゼーションにより、病原体ディテクタ種が生産される、前記プローブ対と接触させること;並びに
c)工程b)で生産された該病原体ディテクタ種の存在を検出することであって、ここで該病原体ディテクタ種の存在が、該試料中の該標的病原体の存在を示す、前記検出すること、を含む、前記方法。
8. プロセス対照を実施すること、例えば:
a)対照核酸を:
i.プライマー対であって:
5'から3'の方向に、制限酵素認識配列及び切断部位、並びに該対照核酸中の第1のハイブリダイゼーション配列とハイブリダイズすることが可能な領域を含む、第1のオリゴヌクレオチドプライマー;並びに
5'から3'の方向に、制限酵素認識配列及び切断部位、並びに対照核酸中の該第1のハイブリダイゼーション配列の上流の第2のハイブリダイゼーション配列の逆相補鎖とハイブリダイズすることが可能な領域を含む、第2のオリゴヌクレオチドプライマー、を含み、
該第1のハイブリダイゼーション配列及び該第2のハイブリダイゼーション配列が、20塩基以下により隔てられている、前記プライマー対;
ii.ニッキング酵素ではなく、該第1のプライマー及び該第2のプライマーの認識配列を認識し、かつそれらの切断部位を切断することが可能な制限酵素;
iii.鎖置換型DNAポリメラーゼ;
iv.dNTP;並びに
v.1以上の修飾dNTP
と該対照核酸の存在下で接触させて、対照増幅産物を生産すること;
b)工程a)の該対照増幅産物を:
i.プローブ対であって:
該対照増幅産物中の少なくとも1つの種の第1の一本鎖検出配列とハイブリダイズすることが可能であり、かつそのプローブが、その検出を可能にする部分と結合している、第1のオリゴヌクレオチドプローブ;及び
該対照増幅産物中の該少なくとも1つの種の該第1の一本鎖検出配列の上流又は下流の第2の一本鎖検出配列とハイブリダイズすることが可能であり、かつそのプローブが固体材料又は固体材料とのその結合を可能にする部分と結合する、第2のオリゴヌクレオチドプローブ、を含み;
ここで、該第1のプローブ及び該第2のプローブの該対照増幅産物中の該少なくとも1つの種とのハイブリダイゼーションにより、対照ディテクタ種が生産される、前記プローブ対と接触させること;並びに
c)工程b)で生産された該対照ディテクタ種の存在を検出することであって、ここで該対照ディテクタ種の存在が、本方法のプロセス対照として作用する、前記検出すること、をさらに含む、態様7記載の方法。
【国際調査報告】