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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-31
(54)【発明の名称】疾患を診断するシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/14 20060101AFI20230324BHJP
   A61B 10/00 20060101ALI20230324BHJP
【FI】
A61B3/14
A61B10/00 H
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022545065
(86)(22)【出願日】2021-01-23
(85)【翻訳文提出日】2022-09-16
(86)【国際出願番号】 US2021014821
(87)【国際公開番号】W WO2021151046
(87)【国際公開日】2021-07-29
(31)【優先権主張番号】62/965,080
(32)【優先日】2020-01-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/059,349
(32)【優先日】2020-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ZIGBEE
2.JAVASCRIPT
3.JAVA
4.VISUAL BASIC
5.PYTHON
(71)【出願人】
【識別番号】520184594
【氏名又は名称】レティスペック インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】RETISPEC INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 護晃
(74)【代理人】
【識別番号】100168642
【弁理士】
【氏名又は名称】関谷 充司
(74)【代理人】
【識別番号】100217076
【弁理士】
【氏名又は名称】宅間 邦俊
(74)【代理人】
【識別番号】100218604
【弁理士】
【氏名又は名称】池本 理絵
(72)【発明者】
【氏名】グリブル,アダム・ジェームス
(72)【発明者】
【氏名】ウェストライヒ,ジャレッド・ローン
(72)【発明者】
【氏名】ウッド,マイケル・フランク・ギュンター
(72)【発明者】
【氏名】シャケド,エリアフ
(72)【発明者】
【氏名】アザン,アロン
【テーマコード(参考)】
4C316
【Fターム(参考)】
4C316AA09
4C316AA10
4C316AA30
4C316AB06
4C316AB16
4C316FB21
4C316FB26
4C316FB27
4C316FZ01
4C316FZ02
(57)【要約】
本開示は、疾患を診断するシステム及び方法を提供する。いつかの態様においては、撮像システムが提供され、撮像システムは、光で眼の網膜を照明するように構成された光源と、前記網膜から戻ってきた光を受信して前記網膜の1つ又は複数の空間スペクトル画像を生成するように構成された1つ又は複数の撮像デバイスと、前記網膜の1つ又は複数の空間スペクトル画像を受信し、前記1つ又は複数の空間スペクトル画像を評価し、及び神経変性病理を示す1つ又は複数のバイオマーカを特定するように構成されたコンピューティングデバイスと、を含む。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光で眼の網膜を照明するように構成された光源と、
前記網膜から戻ってきた光を受信して前記網膜の1つ又は複数の空間スペクトル画像を生成するように構成された1つ又は複数の撮像デバイスと、
前記網膜の前記1つ又は複数の空間スペクトル画像を受信し、前記1つ又は複数の空間スペクトル画像を評価し、及び神経変性病理を示す1つ又は複数のバイオマーカを特定するように構成されたコンピューティングデバイスと、
を含む、撮像システム。
【請求項2】
前記1つ又は複数の撮像デバイスは、スペクトルセンサを含む、請求項1に記載の撮像システム。
【請求項3】
前記スペクトルセンサは、ハイパースペクトルセンサ又はマルチスペクトルセンサを含む、請求項2に記載の撮像システム。
【請求項4】
前記神経変性病理は、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、多発性硬化症、プリオン病、運動ニューロン疾患(MND)、ハンチントン病(HD)、脊髄小脳失調症(SCA)、脊髄性筋萎縮症(SMA)、脳アミロイドアンギオパチー(CAA)からなる群から選択される、請求項1に記載の撮像システム。
【請求項5】
前記バイオマーカは、アミロイド形成又はタウタンパク質形成を含む、請求項1に記載の撮像システム。
【請求項6】
網膜観察デバイスをさらに含み、前記1つ又は複数の撮像デバイス及び前記光源は、前記網膜観察デバイスに統合されている、請求項1に記載の撮像システム。
【請求項7】
前記網膜観察デバイスは、眼底カメラである、請求項6に記載の撮像システム。
【請求項8】
前記1つ又は複数の空間スペクトル画像は、複数の網膜領域のスペクトル画像を含む、請求項1に記載の撮像システム。
【請求項9】
前記複数の網膜領域のそれぞれについて、前記1つ又は複数の空間スペクトル画像は、複数の波長範囲におけるスペクトル画像を含む、請求項8に記載の撮像システム。
【請求項10】
前記スペクトル画像は、対応する網膜領域に関する空間情報を含む、請求項9に記載の撮像システム。
【請求項11】
前記空間情報は、前記対応する網膜領域におけるテクスチャ、構造、及びパターンを含む、請求項10に記載の撮像システム。
【請求項12】
前記1つ又は複数の空間スペクトル画像の評価は、前記画像のピクセル単位の分析を使用する、請求項1に記載の撮像システム。
【請求項13】
光で眼の網膜を照明するように構成された光源と、
前記網膜から戻ってきた光を受信して前記網膜の少なくとも1つのスペクトル画像及び少なくとも1つの空間画像を生成するように構成された1つ又は複数の撮像デバイスと、
前記網膜の前記少なくとも1つのスペクトル画像及び前記少なくとも1つの空間画像を受信し、前記画像を評価し、神経変性疾患を示す1つ又は複数のバイオマーカを特定するように構成されたコンピューティングデバイスと、
を含む、撮像システム。
【請求項14】
前記1つ又は複数の撮像デバイスは、前記少なくとも1つの空間画像を生成するように構成された空間カメラと、前記少なくとも1つのスペクトル画像を生成するように構成されたハイパースペクトルカメラと、を含む、請求項13に記載の撮像システム。
【請求項15】
前記1つ又は複数の撮像デバイスは、前記スペクトル画像及び前記空間画像を含む画像を生成するように構成されたハイパースペクトルカメラを含む、請求項13に記載の撮像システム。
【請求項16】
前記バイオマーカは、アミロイド形成又はタウタンパク質形成を含む、請求項13に記載の撮像システム。
【請求項17】
神経変性疾患を診断する方法であって、
光源を用いて光で眼の網膜を照明すること、
1つ又は複数の撮像デバイスによって少なくとも1つの空間スペクトル画像を生成することであって、前記1つ又は複数の撮像デバイスは前記網膜から戻ってきた光を受信するように構成されている、生成すること、
前記少なくとも1つの空間スペクトル画像を評価することであって、前記画像が前記1つ又は複数の撮像デバイスから前記少なくとも1つの空間スペクトル画像を受信するように構成されたコンピューティングデバイスによって評価される、評価すること、及び、
神経変性疾患を示す1つ又は複数のバイオマーカを特定すること
を含む、方法。
【請求項18】
前記少なくとも1つの空間スペクトル画像の評価は、前記画像のピクセル単位の分析を使用する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記1つ又は複数の撮像デバイスは、スペクトルセンサを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記スペクトルセンサは、ハイパースペクトルセンサ又はマルチスペクトルセンサを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記神経変性疾患は、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、多発性硬化症、プリオン病、運動ニューロン疾患(MND)、ハンチントン病(HD)、脊髄小脳失調症(SCA)、脊髄性筋萎縮症(SMA)、脳アミロイドアンギオパチー(CAA)からなる群から選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
前記バイオマーカは、アミロイド形成又はタウタンパク質形成を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項23】
神経変性疾患を診断する方法であって、
コンピューティングデバイスにより、網膜の1つ又は複数の領域から複数の空間スペクトル画像を含む網膜画像モザイクを取得すること、
前記コンピューティングデバイスにより、前記複数の空間スペクトル画像を分析して神経変性病理を示す1つ又は複数のバイオマーカを特定すること、及び、
前記コンピューティングデバイスにより、前記網膜の1つ又は複数の領域における前記バイオマーカの存在又は非存在を示すデジタル表現を生成すること、
を含む、方法。
【請求項24】
前記デジタル表現から前記神経変性病理の確率を予測することをさらに含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記デジタル表現は、前記網膜画像モザイク上に重ねられたヒートマップである、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記複数の空間スペクトル画像を分析することは、各画像のピクセル単位の分析を使用することを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
前記複数の空間スペクトル画像は、スペクトルセンサを含む1つ又は複数の撮像デバイスによって生成される、請求項23に記載の方法。
【請求項28】
前記スペクトルセンサは、ハイパースペクトルセンサ又はマルチスペクトルセンサを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記神経変性病理は、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、多発性硬化症、プリオン病、運動ニューロン疾患(MND)、ハンチントン病(HD)、脊髄小脳失調症(SCA)、脊髄性筋萎縮症(SMA)、脳アミロイドアンギオパチー(CAA)からなる群から選択される、請求項23に記載の方法。
【請求項30】
前記バイオマーカは、アミロイド形成又はタウタンパク質形成を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項31】
光で眼の網膜を照明するように構成された光源と、
前記網膜から戻ってきた光を受信して前記網膜の1つ又は複数の空間スペクトル画像を生成するように構成された1つ又は複数の撮像デバイスと、
網膜の1つ又は複数の領域からの前記1つ又は複数の空間スペクトル画像を含む網膜画像モザイクを取得し、前記1つ又は複数の空間スペクトル画像を分析して神経変性病理を示す1つ又は複数のバイオマーカを特定し、及び、網膜の前記1つ又は複数の領域における前記バイオマーカの存在又は非存在を示すデジタル表現を生成するように構成されたコンピューティングデバイスと、
を含む、撮像システム。
【請求項32】
網膜の1つ又は複数の血管がセグメント化され、前記バイオマーカが前記1つ又は複数の血管若しくは血管壁に沿って特定される、請求項1、13、及び31のいずれか一項に記載のシステム、又は、請求項17又は23に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2020年1月23日に出願された米国仮出願第62/965,080号及び2020年7月31日に出願された米国仮出願第63/059,349号に対する利益及び優先権を主張し、それらの全体は参照することにより本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、眼の特性を測定及び分析するための光学的技術を使用することによって、疾患、例えば、アルツハイマー病を診断するシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
アルツハイマー病(AD:Alzheimer’s disease)は、衰弱性でかつ致命的な神経変性疾患である。疾患の確認は、一般に死後に行われる。既存の診断システムのいくつかは、侵襲性の高い処置や撮像デバイスを含んでおり、それらは、コスト、複雑さ、又は有害な放射性トレーサの使用などの理由によって、利用し難いか又は適切でないことが多い。
【0004】
ADに関連する病理(病態)の早期検出、診断、及び、予防的又は治療的介入に対する患者の反応を追跡するために患者母集団をスクリーニングする、臨床医によって容易に操作及びアクセスが可能な非侵襲性の検出システムのニーズが存在する。
【0005】
視神経や網膜は、脳が発達する過程で伸び出た部分であり、脳に影響を及ぼす多くの状態、例えば、アミロイドβ(Aβ)タンパク質の蓄積、網膜層の構造に対する変化、並びに、化学的組成、構造、及び機能における他の変化が、これらの構造にも現れる。眼は、これらの物理的変化を特定するために光を用いた様々な非侵襲的な技術を用いて容易に検査され得るため、光学的分析は上記ニーズに非常に適している。
【発明の概要】
【0006】
本開示は、疾患を診断するシステム及び方法を提供する。いくつかの態様においては、撮像システムが提供される。撮像システムは、眼の網膜を光で照明するように構成された光源と、網膜から戻ってきた光を受信して網膜の1つ又は複数の空間スペクトル画像を生成するように構成された1つ又は複数の撮像デバイスと、網膜の1つ又は複数の空間スペクトル画像を受信し、1つ又は複数の空間スペクトル画像を評価し、及び神経変性病理を示す1つ又は複数のバイオマーカを特定するように構成されたコンピューティングデバイスと、を含む。いくつかの実施形態において、1つ又は複数の撮像デバイスは、スペクトルセンサを含む。スペクトルセンサは、例えば、ハイパースペクトルセンサ又はマルチスペクトルセンサであり得る。
【0007】
いくつかの実施形態において、神経変性病理(神経変性病態)は、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、多発性硬化症、プリオン病、運動ニューロン疾患(MND:Motor neurone diseases)、ハンチントン病(HD:Huntington’s disease)、脊髄小脳失調症(SCA:Spinocerebellar ataxia)、脊髄性筋萎縮症(SMA:Spinal muscular atrophy)、脳アミロイドアンギオパチー(CAA:cerebral amyloid angiopathy)からなる群から選択される。いくつかの実施形態において、バイオマーカは、アミロイド形成又はタウタンパク質形成を含む。
【0008】
いくつかの実施形態において、システムは、網膜観察デバイスをさらに含んでもよく、1つ又は複数の撮像デバイスと光源とは、網膜観察デバイスに統合される。網膜観察デバイスは、例えば、眼底カメラである。いくつかの実施形態において、1つ又は複数の空間スペクトル画像は、複数の網膜領域のスペクトル画像を含む。いくつかの実施形態において、複数の網膜領域のそれぞれについて、1つ又は複数の空間スペクトル画像は、複数の波長範囲におけるスペクトル画像を含む。スペクトル画像は、対応する網膜領域に関する空間情報を含む。空間情報は、対応する網膜領域におけるテクスチャ(texture)、構造(formations)、及びパターン(patterns)を含み得る。いくつかの実施形態において、1つ又は複数の空間スペクトル画像の評価は、画像のピクセル単位の分析を使用する。
【0009】
いくつかの実施形態においては、撮像システムが提供される。撮像システムは、光で眼の網膜を照明するように構成された光源と、網膜から戻ってきた光を受信して網膜の少なくとも1つのスペクトル画像及び少なくとも1つの空間画像を生成するように構成された1つ又は複数の撮像デバイスと、網膜の少なくとも1つのスペクトル画像及び少なくとも1つの空間画像を受信し、画像を評価し、神経変性疾患を示す1つ又は複数のバイオマーカを特定するように構成されたコンピューティングデバイスと、を含む。いくつかの実施形態において、1つ又は複数の撮像デバイスは、少なくとも1つの空間画像を生成するように構成された空間カメラと、少なくとも1つのスペクトル画像を生成するように構成されたハイパースペクトルカメラと、を含む。いくつかの実施形態において、1つ又は複数の撮像デバイスは、スペクトル画像及び空間画像を含む画像を生成するように構成されたハイパースペクトルカメラを含む。いくつかの実施形態において、バイオマーカは、アミロイド形成又はタウタンパク質形成を含む。
【0010】
いくつかの実施形態においては、神経変性疾患を診断する方法が提供される。方法は、光源を用いて光で眼の網膜を照明すること、1つ又は複数の撮像デバイスによって少なくとも1つの空間スペクトル画像を生成することであって、1つ又は複数の撮像デバイスは網膜から戻ってきた光を受信するように構成されている、生成すること、少なくとも1つの空間スペクトル画像を評価することであって、画像が1つ又は複数の撮像デバイスから少なくとも1つの空間スペクトル画像を受信するように構成されたコンピューティングデバイスによって評価される、評価すること、及び、神経変性疾患を示す1つ又は複数のバイオマーカを特定すること、を含み得る。
【0011】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つの空間スペクトル画像の評価には、画像のピクセル単位の分析が使用される。いくつかの実施形態において、1つ又は複数の撮像デバイスは、スペクトルセンサを含む。いくつかの実施形態において、スペクトルセンサは、ハイパースペクトルセンサ又はマルチスペクトルセンサを含む。いくつかの実施形態において、神経変性疾患は、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、多発性硬化症、プリオン病、運動ニューロン疾患(MND)、ハンチントン病(HD)、脊髄小脳失調症(SCA)、脊髄性筋萎縮症(SMA)、脳アミロイドアンギオパチー(CAA)からなる群から選択される。いくつかの実施形態において、バイオマーカは、アミロイド形成又はタウタンパク質形成を含む。
【0012】
いくつかの実施形態においては、神経変性疾患を診断する方法が提供される。方法は、コンピューティングデバイスにより、網膜の1つ又は複数の領域から複数の空間スペクトル画像を含む網膜画像モザイクを取得すること、コンピューティングデバイスにより、複数の空間スペクトル画像を分析して神経変性病理を示す1つ又は複数のバイオマーカを特定すること、及び、コンピューティングデバイスにより、網膜の1つ又は複数の領域におけるバイオマーカの存在又は非存在を示すデジタル表現を生成すること、を含む。
【0013】
いくつかの実施形態において、方法は、デジタル表現から神経変性病理の確率を予測することをさらに含んでもよい。いくつかの実施形態において、デジタル表現は、網膜画像モザイク上に重ねられたヒートマップである。いくつかの実施形態において、複数の空間スペクトル画像を分析することは、各画像のピクセル単位の分析を使用することを含む。いくつかの実施形態において、複数の空間スペクトル画像は、スペクトルセンサを含む1つ又は複数の撮像デバイスによって生成される。スペクトルセンサは、例えば、ハイパースペクトルセンサ又はマルチスペクトルセンサで構成され得る。いくつかの実施形態において、神経変性病理は、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、多発性硬化症、プリオン病、運動ニューロン疾患(MND)、ハンチントン病(HD)、脊髄小脳失調症(SCA)、脊髄性筋萎縮症(SMA)、脳アミロイドアンギオパチー(CAA)からなる群から選択される。いくつかの実施形態において、バイオマーカは、アミロイド形成又はタウタンパク質形成を含む。
【0014】
いくつかの実施形態においては、撮像システムが提供される。撮像システムは、光で眼の網膜を照明するように構成された光源と、網膜から戻ってきた光を受信して網膜の1つ又は複数の空間スペクトル画像を生成するように構成された1つ又は複数の撮像デバイスと、コンピューティングデバイスと、を含む。コンピューティングデバイスは、網膜の1つ又は複数の領域から1つ又は複数の空間スペクトル画像を含む網膜画像モザイクを取得し、1つ又は複数の空間スペクトル画像を分析して神経変性病理を示す1つ又は複数のバイオマーカを特定し、網膜の1つ又は複数の領域におけるバイオマーカの存在又は非存在を示すデジタル表現を生成するように構成され得る。
【0015】
いくつかの実施形態において、システム又は方法の任意のものは、網膜の1つ又は複数の血管をセグメント化し、1つ又は複数の血管若しくは血管壁に沿ってバイオマーカを特定するように使用され得る。
【0016】
本開示は、例示的な実施形態の非制限的な例によって、指摘される複数の図面を参照して、以下に続く詳細な説明においてさらに説明され、図面において、同様の参照符号は図面のいくつかの図全体を通して同様の部品を示す。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1A】光源及び撮像デバイスを有するシステムの例示的な実施形態の概略図である。
図1B】網膜観察デバイスに含まれる光源及び撮像デバイスを有するシステムの例示的な実施形態の概略図である。
図1C】網膜観察デバイスの外部に光源及び撮像デバイスを有するシステムの例示的な実施形態の概略図である。
図1D】網膜観察デバイスに含まれる撮像デバイス及び網膜観察デバイスから独立した光源を有するシステムの例示的な実施形態を示す図である。
図1E】システムの例示的な実施形態のより詳細な概略図である。
図2A】分光器(スペクトロメータ)からの対応するライン走査によって取得された例示的な眼底カメラビューを示す図である。
図2B】セグメント化された視神経円板(optic disc)の(複数の)領域を示す図である。
図3A】例示的な眼底カメラを示す図である。
図3B】分光器からの例示的な画像を示す図である。
図3C】ハイパースペクトルカメラからの例示的な画像を示す図である。
図3D】カラー眼底カメラからの例示的な画像を示す図である。
図4】単一スペクトル信号を処理する方法の例示的なフローチャートである。
図5A-B】図5Aは、アミロイドステータスがポジティブの被験者及びアミロイドステータスがネガティブの被検者の円板の光学密度スペクトルの例示的なプロットであり、図5Bは、アミロイドステータスがポジティブの被験者及びアミロイドステータスがネガティブの被検者の中心窩の光学密度スペクトルの例示的なプロットである。
図5C】耳側円板領域からの平均結果の例示的なプロットである。
図6】アミロイドステータスによる耳側ゾーン内の反射率信号の波長有意性の例示的なプロットである。
図7A-B】図7Aは、アミロイドステータスによる耳側ゾーン内の反射率信号比の波長有意性の例示的なグラフであり、図7Bは、アミロイドステータスによる耳側ゾーン内の光学密度信号比の波長有意性の例示的なグラフである。
図8】波長特徴識別法の例示的なフローチャートである。
図9A】網膜撮像(網膜イメージング)からの種々の特徴を使用するアンサンブル予測モデルの一例を示す図である。
図9B】網膜撮像からの種々の特徴を使用するアンサンブル予測モデルの一例を示す図である。
図10A-B】図10Aは、アンサンブルモデルから計算される確率アミロイドステータスの例示的なプロットであり、図10Bは、予測モデルからのアミロイドステータスの分類のための受信者操作特性曲線の例示的なプロットである。
図11】ハイパースペクトル画像又はマルチスペクトル画像のセットを処理する方法の例示的な実施形態を示す図である。
図12】網膜の単一場所から複数の波長で撮像された複数の3D画像の表現の一実施形態を示す図である。
図13】CNN入力として使用され得る網膜上の6つの異なる場所で撮像された画像の積み重ねを示す図である。
図14】網膜の画像に重ね合わされたヒートマップの6つの異なる場所で撮像された画像の例示的な表現を示す図である。
図15A-B】図15Aは、アルツハイマー病を患う被験者からの代表的な組織学的スライドにおいて特定されたアミロイド及びタウタンパク質を示す図であり、図15Bは、健康な被験者からの代表的な組織学的スライドにおいてアミロイド及び/又はタウタンパク質の非存在を示す図である。
図16図15A及び15Bの被験者と同じ被験者からの脳切片のスペクトル透過結果を示す図である。
図17A】網膜の血管を分析する方法を示す例示的なフローチャートである。
図17B図17Aの方法に関連する画像の例示的な表現を示す図である。
図17C】AIを用いた網膜内の血管のセグメンテーションの例示的な表現を示す図である。
図18】例示的なコンピュータベースシステム及びプラットフォームのブロック図である。
図19】例示的なコンピュータベースシステム及びプラットフォームのブロック図である。
図20】クラウドコンピューティング/アーキテクチャの例示的な実装の概略図である。
図21】クラウドコンピューティング/アーキテクチャの例示的な実装の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
上記で特定された図面は、現在開示されている実施形態を示すが、議論において指摘されるように、他の実施形態も企図される。本開示は、代表として例示的な実施形態を提示するものであり、限定するものではない。現在開示されている実施形態の原理の範囲及び趣旨内に属する多数の他の修正形態及び実施形態が当業者によって考案され得る。
【0019】
以下の説明は、例示的な実施形態のみを提供するものであり、本開示の範囲、適用可能性、及び構成を限定することを意図するものではない。むしろ、例示的な実施形態の以下の説明は、1つ又は複数の例示的な実施形態を実装するための可能な説明を当業者に提供するであろう。種々の変更が、現在開示されている実施形態の趣旨及び範囲から逸脱することなく、要素の機能及び配置構成において行われてもよいことが理解されるであろう。実施形態の例は、図を参照して以下のように説明される。種々の図における同一、同様、同じように作用する要素は、同一の参照符号で識別され、これらの要素の繰り返しの説明は、冗長性を回避するために一部省略される。
【0020】
本発明の方法及びシステムは、アルツハイマー病(AD:Alzheimer’s disease)に関連する1つ又は複数の病理(病態)や他の神経変性疾患、例えば、パーキンソン病(PD)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、多発性硬化症、プリオン病、運動ニューロン疾患(MND)、ハンチントン病(HD)、脊髄小脳失調症(SCA)、脊髄性筋萎縮症(SMA)、脳アミロイドアンギオパチー(CAA)、他の形態の認知症、及び、脳又は神経系の同様の疾患に関連する1つ又は複数の病理(病態)の存在を検出するために使用され得る。いくつかの実施形態において、本開示のシステム及び方法は、神経変性疾患、特にアルツハイマー病を示す、Aβ、タウ、リン酸化タウ、及び他の神経タンパク質のタンパク質凝集体を検出するために使用され得る。いくつかの実施形態において、検出されるタンパク質凝集体は、タウ神経原線維変化、アミロイドβの沈着物(deposits)又はプラーク(plagues)、可溶性アミロイドβ凝集体、又はアミロイド前駆体タンパク質のうちの少なくとも1つを含み得る。これら検出されるタンパク質は、脳アミロイド及び/又は脳タウと相関があるため、脳内の病理(病態)を示すことができる。システムは、リスクのある母集団の特定、診断、及び治療に対する患者の反応の追跡を可能にする。
【0021】
いくつかの実施形態において、本開示のシステム及び方法は、総タウ(T-tau)、タウPET、及びリン酸化タウ(P-tau)を含むが、それらに限定されないタウ病理又はタウオパチーを示すバイオマーカを検出してもよい。いくつかの実施形態において、タウオパチーを示すバイオマーカは、リン酸化ペアヘリカルフィラメントタウ(pTau)、早期タウリン酸化、後期タウリン酸化、pTau181、pTau217、pTau231、総タウ、血漿Aβ42/40、神経原線維変化(NFT:neurofibrillary tangle)、及びミスフォールドタウタンパク質の凝集を含むが、それらに限定されない。いくつかの実施形態においては、ニューロフィラメント光タンパク質(NFL:neurofilament light protein)、ニューロフィラメント(NF:neurofilament)、又は異常な/上昇したニューロフィラメント光タンパク質(NFL)濃度が検出され得る。いくつかの実施形態においては、神経変性疾患又は神経損傷の代用マーカ、例えば、網膜や視神経の体積喪失又は他の変化、神経感覚網膜内の変性、及び視神経円板軸索損傷が検出され得る。いくつかの実施形態においては、炎症反応又は神経炎症が検出され、神経変性疾患の指標とされてもよい。いくつかの実施形態において、そのような炎症反応は網膜組織で検出される場合がある。そのような反応の例は、網膜ミクログリア活性化、変性する神経節細胞(神経節神経変性)、又はアストロサイト活性化を含むが、それらに限定されない。本開示の方法及びシステムにおいて有用な他のタンパク質凝集体又はバイオマーカは、αシヌクレイン及び、TDP43(TAR DNA binding protein-43:TAR DNA結合タンパク質43)、及び、例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれるタウ病理のためのバイオマーカ(Molecular and Cellular Neuroscience,Volume97,June 2019,Pages18-33)で説明される他のものを含む。いくつかの実施形態において、本開示のシステム及び方法は、患者の眼の組織、脳組織、中枢神経系の組織、末梢神経系の組織内で、又は、脳脊髄液(CSF:cerebrospinal fluid)内で、又は、そのような形成物やそれらのバイオマーカが生じる任意の他の組織内で、1つ又は複数の神経変性疾患を示すタンパク質凝集体又はバイオマーカの存在若しくは非存在を検出するために使用され得る。いくつかの実施形態において、本開示のシステム及び方法は、染料やリガンドを使用することなく、1つ又は複数の神経変性疾患を示すタンパク質凝集体又はバイオマーカを検出する。いくつかの実施形態においては、染料又はリガンドが本明細書に開示されている方法及びシステムを補助するために使用されてもよい。いくつかの実施形態において、光学的検査の結果は、解剖学的MRI、FDG PET、血漿テスト、及び/又はCSF総タウを用いて確認され得る。
【0022】
いくつかの実施形態において、眼における神経変性疾患に関連する病理を検出するために非侵襲的な眼のための光ベースの検出システムが提供される。システムは、患者の眼の組織内、脳組織内、中枢神経系の組織内、脳脊髄液(CSF)内、又は、AD関連病理の形成やそれらのバイオマーカが発生する任意の他の組織内においてAD関連病理の兆候を探すために、網膜等の眼底の一部の光学的検査に使用され得る。デバイスは、アルツハイマー病のリスクのある母集団を特定し、診断し、治療及び介入の有効性を追跡するためのアクセス可能かつ非侵襲的な手順を提供する光ベースのツールである。いくつかの実施形態において、疾患は、まず第1の撮像モダリティを使用して探索されるべき組織の特定の領域を決定することによって検出され得る。この検出された情報は、タンパク質凝集体を含むがこれに限定されない1つ又は複数のAD関連病理の存在を判定するために第2の撮像モダリティを誘導するために使用することができ、タンパク質凝集体は、タウ神経原線維変化、アミロイドβ沈着物、可溶性アミロイドβ凝集体、又はアミロイド前駆体タンパク質の少なくとも1つを含む。例えば、第1の撮像モダリティは、網膜内の血管の場所を特定するために使用されてもよく、第2の撮像モダリティは、その後、AD関連病理がより顕著である可能性がある血管のスペクトル特徴を分析するために使用されてもよい。システムは、リスクのある母集団の特定、診断、及び治療に対する患者の反応の追跡を可能にする。
【0023】
撮像システム
【0024】
いくつかの実施形態において、アルツハイマー病等の疾患を診断するシステムは、網膜観察デバイス、網膜を照明する光源、及び、網膜によって反射されて網膜観察デバイスによって受信された光(光源からの光の反射光)から網膜の測定値又は画像を生成する撮像デバイスを含む。網膜観察デバイスは、網膜及び/又は眼底の他の部分で反射された光を収集するように構成された任意の光学アッセンブリ、例えば1つ又は複数のレンズの構成であってもよい。いくつかの実施形態において、システムは、撮像データを分析するコンピュータシステムをさらに含んでもよい。
【0025】
病理検出のために網膜の1つ又は複数の画像を撮像するように構成された網膜撮像システムは、図1Aに示されるように、撮像デバイス102及び光源103を含み得る。いくつかの実施形態において、撮像デバイスは、以下でより詳細に説明するように、網膜の1つ又は複数の空間スペクトル画像を撮像するように構成されたハイパースペクトル又はマルチスペクトルカメラの形態であり得る。いくつかの実施形態において、撮像デバイス及び光源は、光源から光を眼105の網膜に向け、及び網膜で反射された光を撮像デバイスに向けるように構成された光学要素104を有するハウジング115の内部に配置され得る。いくつかの実施形態において、ハウジング115は、ハンドヘルド(手持ち式の)ハウジングであり得る。いくつかの実施形態において、撮像デバイス102、光源103、又はその両方は、病理データを取得して分析するためのコンピューティングデバイス106と通信可能であり得る。
【0026】
図1Bに示されるようないくつかの実施形態において、撮像デバイス102及び光源103は、光源からの光を眼105の網膜に向け、及び網膜で反射された光を撮像デバイスに向けるように構成された光学要素104を有する網膜観察デバイス101(例えば、眼底カメラ)に(ハウジング115がある状態で又はない状態で)統合され得る。撮像デバイスからの出力は、コンピューティングデバイス106に結合される。コンピューティングデバイスは、画像設定並びに走査及び位置決め設定を含む、撮像デバイスのうちの1つ又は複数の撮像デバイスの設定を制御するように構成されてもよい。いくつかの実施形態において、撮像デバイス102及び光源103は、眼底カメラ等の網膜観察デバイス101に統合され得る。
【0027】
図1Cは、撮像デバイス102及び光源103が網膜観察デバイス101の外部にあり、光学要素104が外部ポートを介して撮像デバイス及び光源と結合されるように構成された一実施形態を示す。図1Dは、光源103が網膜観察デバイス101から独立している一実施形態を示す。
【0028】
図1Eは、眼底からの空間スペクトルが、外部カメラポートを有する眼底カメラ(すなわち、トプコンNW8、EX、又はDX)等の網膜観察デバイス101によって取得され得る実施形態のより詳細な概略図である。照明は、眼底カメラ内に統合されたキセノンフラッシュランプであってもよい光源103によって提供され、光は、眼底カメラ対物レンズを含む光学要素104によって眼に向けられる。光学要素104は、眼で反射された光を受信し、それを外部カメラポートに向かわせる。フィールドレンズ107は、眼底カメラの外部カメラポートに取り付けられている。フィールドレンズを出た光は、ビームスプリッタ108によって2つのビーム経路に分割される。ビームスプリッタからのビーム経路の相対強度は、各撮像デバイスによって収集される信号を最適化するために、50/50、30/70、又は他の組み合わせであり得る。ビームスプリッタの一方のビーム経路は、60mm焦点距離マクロレンズ110を通過した後、撮像デバイス113に至る。撮像デバイス113は、PCO pixelflyカメラ等のカメラ112を有する、Specim VIR V10E又はSpecim VNIR V10E等の光学分光器111であってもよい。ビームスプリッタ108の他方のビーム経路は、60mm焦点距離マクロレンズ109を通過し、デジタル単一レンズレフレックスカメラ(すなわち、キャノンE90)又はスナップショットハイパースペクトルイメージャ(すなわち、Ximea MQ022HG-IM-SM4X4-VIS)等の撮像デバイス102に接続される。撮像デバイス102及び113からの出力は、コンピューティングデバイス106に結合される。トリガー機構114は、撮像デバイスに結合されてそれらのタイミングを同期させてもよいし、トリガー機構は、トリガー信号を制御するためにコンピューティングデバイスに結合されてもよい。トリガー機構は、キセノンランプのフラッシュ等の光源のタイミングをさらに制御してもよく、あるいは、他の実施形態において、眼底カメラのキセノンフラッシュランプは、キセノンフラッシュによって照明されたときに撮像デバイスは眼の画像を取り込むように、撮像デバイスでの画像の取得をトリガーしてもよい。眼底カメラを用いることにより、図2Aに示されるように、眼底の種々のビューが取得され得る。取得される眼底カメラビューは、分光器からの対応するライン走査と共に図2Aに示されている。図3Aは、例示的な眼底カメラを示し、図3B~3Dは、分光器、ハイパースペクトルカメラ、及びカラー眼底カメラからの例示的な画像を示す。
【0029】
光源は、広いスペクトルの光、例えば、UV(紫外)、可視、近赤外、及び/又は赤外波長範囲の光を放出する広帯域光源であってもよいし、あるいは、狭いスペクトル又は単一波長の光を放出する狭帯域光源であってもよい。光源は、単一の連続スペクトルの光を放出してもよいし、複数の不連続スペクトルの光を放出してもよい。光源は、一定の波長範囲及び強度を有する光を放出してもよくし、波長範囲及び強度が調整可能であってもよい。光源は、単一光源で構成されてもよいし、上述した同種又は異種の複数の光源の組み合わせで構成されてもよい。光源は、キセノンランプ、水銀ランプ、LED、又は任意の他の光源であってもよい。光源は、網膜で反射された光を収集するように構成された同一の光学アセンブリを用いて網膜観察デバイスを介して網膜に光を向けてもよいし、又は、光源は、異なる光学経路を介して網膜に光を向けてもよい。
【0030】
いくつかの実施形態においては、光源の出力をフィルタリングし、網膜で反射された光をフィルタリングし、又は、1つ若しくは複数の撮像デバイスに入る光をフィルタリングするために1つ又は複数の光学フィルタが用いられてもよく、これにより、選択された波長の光のみが1つ又は複数の撮像デバイスによって受信され得る。光学フィルタは、調整可能又は切り換え可能(すなわち、フィルタホイール又は音響-光調節可能フィルタ)であってもよく、これにより、1つ又は複数の波長若しくは波長範囲の光が同時に又は順にフィルタを通過するために選択され得る。
【0031】
撮像デバイスは、空間画像、スペクトル測定値、又は空間スペクトル画像を生成してもよい。空間画像は、モノクロ(グレースケール)カメラによって生成されるような、各画像ピクセルについて単一の光強度値を有する2次元画像である。光干渉断層撮影法(OCT:optical coherence tomography)、共焦点顕微鏡法等の撮像デバイスを用いて3次元空間画像が生成されてもよい。スペクトル測定値は、光学分光器によって生成されるような光の波長成分の測定値である。スペクトル測定値は、狭い範囲又は広い範囲の波長であってもよいし、連続又は不連続の波長若しくは波長範囲(スペクトル帯)のセットであってもよい。スペクトル測定は、吸光度、反射率、波長シフト(レーザ等の狭帯域光源に対する波長シフトを測定するラマン分光法等)、又は他のスペクトル特性に基づいて行われ得る。撮像デバイスは、カメラ、分光器、ハイパースペクトルデバイス、マルチスペクトルデバイス、RGBカメラ、顕微鏡(通常又は共焦点)、光干渉断層撮影法システムのうちの1つ又は複数とすることができ、光干渉断層撮影法システムは、画像を受信し、コンピュータと通信して分析のために画像を送信するように構成された撮像デバイス(カメラのような)を含む。撮像デバイスは、独立した装置の形態であってもよいし、網膜観察デバイス又は同様なデバイスに組み込まれるセンサの形態であってもよい。
【0032】
空間スペクトル画像(又は、単に「空間スペクトル(spatial spectra)」又は「スペクトル画像(spectral image)」)は、各画像ピクセルに光のスペクトル測定値を有する2次元画像である。例えば、空間スペクトル画像は、第3の次元がスペクトルである3D画像として見ることができる。いくつかの実施形態において、空間スペクトル画像は、解剖学的位置に関連し得る空間情報を含むことができる。いくつかの実施形態において、空間スペクトル画像は、被撮像領域のパターン、形成物、及び/又はテクスチャ(patterns, formations and/or textures)に関連する情報を含むことができ、それらは画像が取り込まれたときの異なる波長に基づいて観察され得る。例えば、特定の病理形成は、全ての波長ではなく、1つ又は複数の波長で観測されてもよい。空間スペクトル画像は、ハイパースペクトルカメラ、マルチスペクトルカメラによって、或いは、ポイント分光器を2次元で走査し又はライン分光器を1次元で走査する(プッシュブルームイメージャ又はウィスクブルームイメージャとしても知られている)ことによって生成され得る。ライン分光器は、走査することなく、ラインに沿った各ピクセルのスペクトル測定値を有する1次元空間スペクトル画像(すなわち、1×n)を生成することもでき、ポイント分光器は、走査することなく、ポイント「画像(image)」(すなわち、1×1)を生成することができる。いくつかの撮像(イメージング)技術では、スペクトル画像が3次元体積内の各ピクセルについて生成される3次元スペクトル画像の生成も可能である。一般に、マルチスペクトルカメラは、カラー(RGB)カメラ(3つの波長成分を測定するが、他のマルチスペクトルカメラは10以上の波長成分又はスペクトル帯を測定することが可能である)のように、高い空間分解能を有するが、スペクトル分解能が低い画像を生成する傾向があり、ハイパースペクトルカメラは、高いスペクトル分解能を有するが、空間分解能が低い画像を生成する傾向がある。走査型分光器は、高い空間分解能と高いスペクトル分解能の両方を有する画像を生成することができるが、追加の走査光学部品及びソフトウェア必要とする。空間スペクトル画像は、モノクロカメラを用い、異なる波長を順次測定することによっても生成され得る。この場合には、異なる波長の光でターゲットを照明することによって(光源及び/又は光源から放出される光の波長を変更することによって、及び/又は、光源の出力で使用される光学フィルタを変更することによって)又はカメラによって受信される光をフィルタリングするために光源とターゲットとカメラとの間の光学経路内の任意のポイントに光学フィルタを配置することによって、異なる波長を順次測定する。
【0033】
純粋な空間画像は、各ピクセルにおける個々の波長成分の測定値をそのピクセルについての単一の強度値に結合することによって空間スペクトル画像から生成することもでき、ハイパースペクトルカメラは、空間スペクトル画像と空間画像の両方を生成するために使用され得る。いくつかの実施形態において、光源及び/又は撮像デバイスは、網膜観察デバイスと同じハウジング内に含まれてもよいし、網膜観察デバイスに取り付けられてもよいし、又は、網膜観察デバイスと別個に設けられてもよい。例えば、眼底カメラは、広帯域照明と、眼底の画像を撮像するための一体型又は外部のカメラを含む撮像光学部品とを備えることによって、眼底を撮像するために使用され得る。いくつかの実施形態においては、2つ以上撮像デバイスが同時に又は連続して画像を撮像するために使用され得る。これは、異なる撮像デバイスを使用して高い空間分解能を有する画像と高いスペクトル分解能を有する画像の両方を得るために行われ得る。これはまた、第1の撮像デバイスからの画像を分析して空間的特徴及び/又はスペクトル特徴を特定し、どの第2の撮像デバイスを使用するべきか、及び/又は、第2の撮像デバイスで網膜のどの位置又はどの部分を撮像すべきかを決定するためにも行われ得る。場合によっては、第2の撮像デバイスを使用する代わりに、第1の撮像デバイスが異なる設定で使用されて異なる空間的特徴及び/又はスペクトル的特徴を有する網膜の第2の画像を撮像することができる。いくつかの実施形態においては、第1の撮像デバイスが第1の画像を生成するために網膜観察デバイスと結合され、その後、第2の撮像デバイスが第2の画像を生成するために網膜観察デバイスと結合され得る。
【0034】
いくつかの実施形態において、ビームスプリッタ(部分反射ミラー等)は、網膜観察デバイスに結合され、網膜観察デバイスによって収集された光を、ビームスプリッタに結合された2つ以上の撮像デバイスの間で同時に(任意の強度比で)分割するために使用され得る。いくつかの実施形態において、ビームリダイレクトデバイス(可動ミラー等)は、網膜観察デバイスに結合され、網膜観察デバイスによって収集された光を2つ以上の撮像デバイスに(任意の時間比で)順次リダイレクトする(向け直す)ために使用され得る。2つ以上のビームスプリッタ及び/又は2つ以上のビームリダイレクタが、3つ以上の撮像デバイスの間で光を分割し及び/又はリダイレクトするために直列で使用されることも可能である。一般に、システムは、照明を提供して眼の後部を撮像する眼底カメラ(内部統合カメラを使用する)と、眼底カメラの外部カメラポートに結合されたビームスプリッタと、ビームスプリッタの第1の出力に結合されて空間スペクトル画像を取得するハイパースペクトルカメラ又はマルチスペクトルカメラと、ビームスプリッタの第2の出力に結合されて眼底の後部表面のポイント又は眼底の後部表面を横切るラインの高分解能スペクトル測定値を取得する分光器(スペクトロメータ)と、で構成され得る。
【0035】
いくつかの実施形態において、撮像デバイスの出力は、コンピュータ(PCやラップトップ)等のコンピューティングデバイスに結合され得る。いくつかの実施形態において、スペクトル画像は、空間スペクトルイメージャから読み取られてコンピューティングデバイスに送られ、水銀ランプや明確に規定されたスペクトル特徴を有する他の光源の予め取得されたスペクトルを使用して波長較正が実施され得る。水銀スペクトルのピークの波長の位置は、NIST規格によって、明確に規定され特徴付けられた波長を有する。水銀ランプスペクトルの既知の波長及びピークの位置と、スペクトル撮像デバイスによって測定されたスペクトル、及び、測定されたスペクトルにおいてそれらの波長及びそれらのピークの位置が現れるピクセルとを比較することで、その画像についてピクセルと波長の対応付け(マッピング)が計算され、以降の画像における光の波長を知ることが可能になる。水銀ランプのピークが測定されたスペクトル画像のピクセルは、それらのピークの既知の波長に割り当てられ得る。既知の水銀ランプピークのそれぞれが測定されたピクセルに注目することによって、各空間ピクセルと波長値とを対応付ける(マッピングする)補間関数が算出され、この補間関数は、以降のスペクトル測定において各ピクセルの波長値を正しく割り当てるために使用され得る。
【0036】
いくつかの実施形態において、画像間の空間における位置合わせ(アライメント)を確実にするため、異なるスペクトル画像又は空間画像の間でレジストレーションが実施され得る。これは、2つ以上の画像内で対応する空間特徴を識別し、それらの空間特徴が、共通の位置合わせされた座標系でオーバーラップするように画像の位置をシフトさせる(並進及び/又は回転させる)ことによって行われ得る。そして、共通の位置合わせされた座標系に対する各画像についての計算されたシフトは、以降の画像をシフトするために使用され得る。いくつかの実施形態においては、2つ以上の撮像デバイスが同時に使用されるとき、時間的な整合を確保するために、画像撮像のトリガーが実施され得る。これは、共通のトリガーラインを撮像デバイスの全てに接続し、時間同期した画像の撮像を行うために、手動で又はコンピュータからトリガー信号を送出することによって行われ得る。
【0037】
スペクトル画像は、図2Aに示されように、視神経円板(神経乳頭)、網膜、及び中心窩を含む眼の種々のコンポーネント(構成要素)内のピクセルを識別するために領域的にセグメント化され得る。さらに、視神経円板内の領域は、図2Bに示されように、耳側リム(temporal rim)、鼻側リム(nasal rim)、下方リム(inferior rim)、上方リム(superior rim)、及びカップ領域(cup regions)を含むより多くの特定のコンポーネントにさらにセグメント化され得る。撮像された眼のコンポーネントのセグメンテーションは、種々の方法で実施され得る。いくつかの実施形態において、セグメンテーションは、手動で実施され得る。いくつかの実施形態において、セグメンテーションは、自動セグメンテーションアルゴリズムによって実施され得る。いくつかの実施形態において、視神経円板の耳側領域内のピクセルは、個々のピクセルのアミロイドステータス及びタウステータスを示すメトリック(指標)を決定するために後続の計算において使用される。他の領域から抽出された値もまた、個人のアミロイドステータス又はタウステータスに関連する情報、並びに他の眼の病理又は全身の病理に関連する情報を含み得る。例えば、他の領域からの抽出された値は、スペクトル撮像によって測定可能なアミロイド沈着又はタウタンパク質沈着を含むことがあり、又は、組織に対するこれらのタンパク質の影響を示すことがある。さらに、他の領域から抽出された値は、黄斑変性及び糖尿病網膜症等の眼底の他の病理に関連する情報を含むことがあり、これらもスペクトル撮像によって測定可能であり得る。
【0038】
シングルスペクトル分析
【0039】
図4は、シングル(単一)スペクトル信号を処理する方法の例示的な実施形態を示す。ステップ300において、スペクトル情報が患者の一方の又は両方の眼の網膜の1つ又は複数の領域から取得される。画像に関連するスペクトル情報は、ステップ302において、病理を示す1つ又は複数のパターンを特定するために評価され得る。ステップ304において、特定されたパターンの有意性が判定され、1つ又は複数の病理が、ステップ306において診断され得る。
【0040】
いくつかの実施形態において、取得されたスペクトルの光学密度及び/又は反射率は、アミロイド形成又はタウ形成の存在又は非存在を判定するために使用され得る。光学密度及び反射率を決定する方法は、以下で説明される。さらに、本開示は、アミロイド形成又はタウ形成の存在又は非存在に関して有意性を有する、光学密度及び反射率の波長範囲(複数可)並びに光学密度及び反射率比を特定する方法を提供する。
【0041】
それぞれの領域(円板領域、網膜、中心窩等)におけるスペクトル値は、空間的に平均化されて各領域についての平均スペクトルSaveが生成される。ここで、Saveは、その領域に含まれる全てのピクセル値の平均である。
【0042】
各領域からの平均スペクトルは、平均光学密度(OD:optical density)を計算するために、前もって取得されたホワイト基準スペクトルSrefと共に使用される。ホワイト基準スペクトルSrefは、拡散広帯域反射標準ターゲット、例えば、スペクトラロンターゲットを撮像し、取得された画像の平均スペクトルを計算することによって取得される。ODは、物質がどれほど光を吸収するかの尺度であり、OD値が高いほど物質による吸収レベルが高いことに対応する。各領域の光学密度は、
OD=log(Sref/Save
として計算され得る。
【0043】
ODスペクトルは正規化される。これは、スペクトルを700~800nmの間の値で又は他の波長の値で割ることによって、或いは、標準正規変量(SNV:standard normal variate)正規化等の他の信号正規化法によって行われ得る。
【0044】
いくつかの実施形態においては、反射率スペクトルRが計算され得る。反射率は、撮像された物質の光反射率の尺度であり、反射率の値が高いほど物質がより高い反射特性を有することを示す。いくつかの実施形態において、反射率Rは、
R=log(Save/Sref
として計算され得る。
【0045】
いくつかの実施形態において、反射率スペクトルは、700nmと850nmの間の波長に対しても正規化される。あるいは、反射率スペクトルは、標準正規変量(SNV)、最小値最大値、又は他の正規化法によって正規化されることも可能である。
【0046】
ODスペクトルの例は、図5A、5B、及び5Cに、アミロイドステータスがポジティブ(陽性)の被検者及びアミロイドステータスがネガティブ(陰性)の被験者の円板全領域、中心窩、及び円板の耳側領域について示されている。図5Aにおいて、アミロイドステータスがネガティブの被験者の円板の光学密度スペクトル310は、アミロイドステータスがポジティブの被験者の円板の光学密度スペクトル312とは区別される。図5Bにおいて、アミロイドステータスがネガティブの被験者の中心窩の光学密度スペクトル314は、アミロイドステータスがポジティブの被験者の中心窩の光学密度スペクトル316とは区別される。図5Cにおいて、アミロイドステータスがネガティブの被験者の耳側円板領域の光学密度スペクトルは、1つの正の標準偏差318及び1つの負の標準偏差320によって境界付けられて示されており、1つの正の標準偏差322及び1つの負の標準偏差324によって境界付けられて示されているアミロイドステータスがポジティブの被験者の耳側円板領域の光学密度スペクトルとは区別される。
【0047】
OD及びR値のどの波長又は波長範囲が、被験者のステータスのアミロイドステータス及びタウステータスと有意に相関するかを評価するため、アミロイドステータス及び/又はタウステータスがネガティブの被検者及びアミロイドステータス及び/又はタウステータスがポジティブの被験者の群から取得されたスペクトルについての各波長におけるR及びOD値について統計的有意性検定(例えば、スチューデントt検定)が実施され得る。統計的有意性検定は、各波長における値が被験者のアミロイドステータス及び/又はタウステータスと有意に相関しているか否かを識別するものである。有意性検定の例には、t検定、ピアソン相関、スピアマン相関、カイ2乗、ANOVAなどがある。図6に示されるプロットのような有意性プロットを使用することで、値が有意である波長又は波長範囲が特定され得る。この例において、有意性は、0.05より小さいp値を有することとして規定され、それはODスペクトルの600~700nmの波長範囲であることが明らかである。有意性のある波長又は波長範囲が特定されると、それらの波長又は波長範囲の光のみを測定するように、撮像デバイス、光源、及び/又はフィルタを選択又は設計することによって、システムは、(コスト、サイズ、速度、及び他の因子について)最適化され得る。
【0048】
このようなアプローチは、測定される試料(サンプル)の任意のステータスについてスペクトル値の有意性を評価するために使用され得るものであり、ヒトのアミロイドステータス又はタウステータスに限定されない。例えば、このようなアプローチは、他の眼内病理や他の組織の測定にも拡張することができる。眼内病理には、例えば、黄斑変性、糖尿病網膜症、及び緑内障のような病理があり、測定可能な組織には、例えば、皮膚、筋肉、腱、血管がある。さらに、このようなアプローチは、他の生物の組織についても適用され得る。このようなアプローチは、これら異なる病理及び/又は組織タイプについて同じように用いられ得るが、有意であると判定されるスペクトル値は、それぞれの場合において異なってもよい。場合によっては、2つ以上の病理又は疾患状態について試料を分析することが望ましい場合がある。例えば、2つ以上の病態を有する被験者を特定して診断するため、又は、第1の疾患状態の存在が第2の疾患状態についての分析の結果に影響を及ぼすことが分かっている場合に、第1の疾患状態を有する被験者を特定して第2の疾患状態の分析から第1の疾患状態を有する被験者を排除するためである。
【0049】
R及びOD値の有意性に加えて、種々の波長におけるR及びOD値の比率の有意性についても評価され得る。R及びODの各波長依存性スペクトル値が他の全てのR及びOD値で割られ、全ての比率が統計的有意性について評価され得る。これらの有意性比率の結果は、波長のニューマレイタ(分子)、デノミネータ(分母)をX軸、Y軸として有する2D画像としてプロットされ得る。個人のアミロイドステータスについての2D有意性比率のプロットの例が図7A~7Bに示されている。この例において、有意性は、0.05より小さいp値を有することとして規定され、これは、各画像の輪郭エリア内にはっきりと表れている。図7A~7Bに示される例において、特定される比率領域(F1、F2、F3)が有意性を示し、モデル開発のための特徴として使用される。
【0050】
各波長における値及び各波長における値の比率の有意性を評価する一般的なアプローチが図8に示されている。このプロセスは、任意のスペクトルタイプのデータに一般化され得るものであり、関心のあるパラメータ、この場合、個人のアミロイドステータス及び/又はタウステータスについての信号の有意性を評価することができる。図8の例示的なフローチャートに示されるように、各波長における値及び各波長における値の比率についての波長特徴識別方法は、スペクトル信号を測定するステップと、スペクトル信号を補正及び/又は較正するステップ、とを含み得る(ステップ400、402)。パラメータに対する各波長におけるスペクトル値の有意性が計算され(ステップ404)、その計算された値が有意であると判明した場合、その関連する波長は、有意であるとして記録される(ステップ406)。有意であると判明しなかった場合、全ての他の波長に対する各波長の値の比率が計算され(ステップ408)、その後、各波長比におけるスペクトル値のパラメータに対する有意性が計算される(ステップ410)。その計算で有意であると判明した場合、その波長比が有意であるとして記録される(ステップ412)。波長又は波長比が有意であると判明すると、その個人に関連する走査(スキャン)/画像は、有意な波長又は波長比における対照画像と比較され得る(ステップ414)。
【0051】
このようなアプローチは、測定される試料の任意のステータスについてスペクトル値の比率の有意性を評価するために用いられ得るものであり、ヒトのアミロイドステータス又はタウステータスに限定されず、例えば、他の眼内病理に拡張され得る。さらに、このアプローチは、他の生物の組織にも適用され得る。このアプローチは、これらの異なる病理及び/又は組織タイプについて同じように用いられ得るが、有意であると判定されるスペクトル値の比は、それぞれの場合において異なってもよい。
【0052】
いくつかの実施形態において、システムは、中赤外波長範囲、具体的には、5900nm~6207nm及び/又は6038nm~6135nmの範囲、特に6053nm及び6105nmの波長に関心を有するスペクトル測定を含んでもよい。アミロイドβの蓄積過程は、何年にも及ぶことがあり、その過程において、アミロイドβは、可溶性形態とプラーク形態の両方で存在し、αヘリックス構造とβシート構造に折り畳まれ(フォールディングされ)、それらの構造の相対的な濃度は経時的に変化する。それらの構造及びそれらの濃度比は、蓄積過程の進行の関数であり、ADの存在及び進行の臨床評価を行うための重要なバイオマーカである。このタンパク質の折り畳み(フォールディング)構造の違いにより、スペクトル吸光度及び反射率が異なることが知られており、アミロイドのαヘリックス構造が6053nmにピークを有する一方、そのタンパク質のβシートは6105nmにピークを有する。したがって、網膜において観測されるピーク吸光度及び反射率は、濃度比の指標になり、例えば、6079nm付近にピーク吸光度ある場合、バランスされて混合されている証拠になり得る。比率が構造のうちの一方の構造のピーク吸光度に向かう傾向があるほど、そのピーク吸光度を有する構造の濃度は高くなる。6038nm~6135nmの範囲を特に見るスペクトルイメージャは、これらのバイオマーカを測定するために使用され得るる。他の重要な波長は、5900nm、6060nm、6150nm、及び6207nmであり、それらは、臨床的に重要な構造(βヘアピン、βシート、アミロイドβ1-42フィブリル、Tyr及びPheアミノ酸)に関連する。
【0053】
本明細書に開示された特徴識別の方法は、関心のある任意の試料の分析についてスペクトル値の波長範囲及びスペクトル値比率の波長範囲を特定することにも拡張され得るものであり、生物組織の分光法に限定されない。例えば、この方法は、製薬プロセスモニタリング、工業プロセスモニタリング、危険性物質識別、爆発物識別、及び食品プロセスモニタリングの用途のために拡張され得る。このアプローチ(方法)は、試料中の関心のある特性を有する有意な特徴を調査するために、他の光学的及び分光法的モダリティに拡張され得る。例えば、この方法は、ラマン分光法、蛍光分光法、レーザ誘起ブレイクダウン分光法、及び他の光学モダリティを含む種々の光学モダリティと共に使用され得る。
【0054】
R及びODスペクトルとR及びODスペクトルの比率の両方の有意の波長領域は、スペクトルの有意特徴として識別され、機械学習(ML:machine learning)又は人工知能(AI:artificial intelligence)アルゴリズムへの入力として使用されて、既知のステータス(状態)を有する(複数の)個人から取得されたスペクトルで訓練されたモデルに基づいて、個人のアミロイドステータス又はタウステータスを予測することができる。MLモデルは、ロジスティック回帰、ディシジョンツリー、ランダムフォレスト、線形判別分析、ニューラルネットワーク(畳み込みニューラルネットワークを含む)、単純ベイズ(naive bayes)分類器、最近傍分類器、又は他のML若しくはAI技術等の方法を含むことができる。
【0055】
いくつかの実施形態においては、図9A及び図9Bの例に示されるように、アンサンブル手法が採用され得る。ここで、網膜イメージングから抽出された他の特徴(血管蛇行性等)と共に上記で説明した統計的有意性検定によって識別された特徴は、個人のMLモデルを訓練するための特徴として使用され、モデルの出力は、個人のステータス(状態)を予測するための結合出力を計算するためにモデルの出力に適用される種々の重みと組み合わせて考慮される。
【0056】
R及びODスペクトルとR及びODスペクトルの比率の両方の有意な波長領域は、スペクトルの有意特徴として識別され、機械学習(ML)又は人工知能(AI)アルゴリズムへの入力として使用されて、既知のステータスを有する(複数の)個人から取得されたスペクトルで訓練されたモデルに基づいて、個人のアミロイドステータス又はタウステータスを予測することができる。MLモデルは、ロジスティック回帰、ディシジョンツリー、ランダムフォレスト、線形判別分析、ニューラルネットワーク(畳み込みニューラルネットワークを含む)、単純ベイズ分類器、最近傍分類器、又は他のML若しくはAI技術等の方法を含むことができる。図9A図9Bの例に示されるように、アンサンブル手法のような他のMLアプローチも採用され得る。ここで、網膜撮像から抽出された他の特徴(血管蛇行性等)と共に上記で説明した統計的有意性検定によって識別された特徴は、個人のMLモデルを訓練するための特徴として使用され、これらのモデルの出力は、個人のステータスを予測するための結合出力を計算するためにモデルの出力に適用される種々の重みと組み合わせて考慮される。
【0057】
そのようなアンサンブルモデルは、ハイパースペクトル、マルチスペクトル、及び分光法イメージングから識別された特徴だけでなく、組織/血管酸素化、血管蛇行性、カップ対円板比、網膜神経線維層厚、及び画像テクスチャメトリックを含むがこれらに限定されない網膜画像から抽出された特徴も含むことができる。さらに、個人に関する人口統計学情報及び他の医療情報は、そのようなアンサンブルモデルへの入力として使用することもでき、情報は、年齢、性別、眼内病理、併存症、レンズステータス(自然対人工)、直前の眼科手術、撮像中に拡張ドロップが使用されたか否か、及び任意の他の人口統計学情報又は健額康情報を含むが、それらに限定されない。
【0058】
アンサンブルモデルにおいて、異なるデータタイプ(すなわち、スペクトル、空間、人口統計等)は、それぞれ異なる機械学習又は人工知能アルゴリズムによって独立に処理されてそれらのアルゴリズムの出力がさらなるアルゴリズムへの入力として使用されるか、又は、複合のデータタイプ(すなわち、結合された空間スペクトルデータ)が同じアルゴリズムで直接使用されて、複数のデータドメインでの評価に基づく出力を生成することが可能である。いくつかのケースでは、後者の方法が用いられる。その理由は、後者の方法の方が複数のドメイン間のデータの相関をよりよく捉えることができ、データタイプを結合させる分析が、データセット全体ではなく、独立したアルゴリズムからの抽出された出力を使用して実施されるだけである場合にはこれらの相関が失われる可能性があるからである。
【0059】
空間網膜画像を使用するアンサンブルモデルにおいて、分析アルゴリズムは、網膜画像全体、網膜画像の所定の部分、又は画像のセグメント化された部分(セクション)のみを使用してもよい。このタイプのアンサンブルモデルは、セグメンテーションを実施するための基準としてしばしば使用される視神経円板等の特徴が画像内に存在しなくても、使用され得る。このタイプのモデルは、例えば、関連する情報が局所化されておらず且つ画像の広いエリアにわたって現れる場合には画像全体を分析し、例えば、関連する情報が非常に局所化されている場合には画像の一部、又は画像のセグメント化された部分のみを分析するようにしてもよい。
【0060】
いくつかの実施形態において、機械学習又は人工知能アルゴリズムは、ピクセル単位の予測を行うように設計され得る。ピクセル単位の予測は、チャネル単位の予測の場合にそうであるように、単一ピクセルからのデータのみ又はピクセル群の全体のスペクトルデータを合わせたもののみではなく、各ピクセルのスペクトルデータ及び2つ以上の隣接又は近傍するピクセルからのスペクトルデータ間の関係に基づいて行われる。既存の畳み込みニューラルネットワークは、特徴ベクトルを作成するために最後のレイヤー又はネットワークとしてチャネル単位のプーリングをしばしば使用する。これらの実施形態において、チャネル単位のプーリングは、ピクセル単位のプーリングと、それに続く最大プーリングに置き換えられる。ピクセル単位の予測が使用されるのは、ピクセル単位の予測が互いから空間的に切り離される複数の情報ピースにアルゴリズムが依存することを防止するからであり、ピクセル単位の予測は、モデルの過剰適合を低減し、性能を向上させるため、関連する情報が局所的であるときに重要である。ピクセル単位の予測は、アルゴリズム出力をテストし、検証し、説明する機能を向上させることも可能にする。その理由は、アテンションマップ、入力歪み、又は他の同様の方法に依存するアルゴリズムとは異なり、この方法は、画像中の信号の位置が、信号が存在すると予想される正しいエリアに対応していることの確認を可能にするため、アルゴリズムの「ブラックボックス(black-box)」を開き、出力予測をより透明性の高いものにすることができるからである。
【0061】
眼からのR比特徴及びOD比特徴からの特徴を使用するアンサンブルモデルに基づく個人のアミロイドステータスの予測の例が、アミロイドステータスがネガティブの10人の個人及びアミロイドステータスがポジティブの10人の個人について図10Aに示されている。このモデルの結果は、図10Bの受信者操作特性曲線(ROC)を使用して評価され、0.9を超える曲線下側面積(AUC:area under the curve)を提供しており、アミロイドステータスについて開発されたモデルの高い予測能力を示している。
【0062】
ハイパースペクトル分析
【0063】
図11は、ハイパースペクトル画像又はマルチスペクトル画像のセットを処理する方法の例示的な実施形態を示す。ステップ500において、患者から取得された画像から網膜画像モザイクが提供される。スペクトル空間CNN(ステップ502)が疾患信号予測確率を記述するヒートマップを作成するために使用される(ステップ504)。ステップ506において、作成されたヒートマップが評価され、病理を示すことができる最終スコアが出力される。
【0064】
所与の患者について、アミロイドステータス又はタウステータスの予測を支援するために種々の情報源が利用可能であってもよい。例えば、患者は、網膜内の種々の他の空間領域と共に、視神経円板の耳側リム、鼻側リム、下方リム、及び上方リム、カップ、中心窩を含む領域のサブセットからのスペクトルデータを有してもよい。個人のモデルは、これらの領域のそれぞれからのデータを使用して開発され得る。また、さらなるモデルが、血管の蛇行性からのデータ(カラー又はハイパースペクトル画像から決定される)、神経線維厚からのデータ(OCTから決定される)、血管酸素化、瞳孔拡張、炎症反応、人口統計データ等からのデータを用いて開発され得る。個々のモデルは、所与の被験者のアミロイドステータ又はタウステータスがポジティブ又はネガティブである確率を出力する。これら全てのモデルが訓練されると、アンサンブルモデルから予測が生成可能になり、アンサンブルモデルは、所与の個人についてデータが利用可能な全てのモデルが結合されたものであり得る。最終的な予測は、利用可能なモデルからの重み付けされた出力の組み合わせであり得る。各モデルに与えられる重みは、そのモデルからの予測が訓練セットにおける被験者のアミロイドステータス又はタウステータスとどの程度有意に相関するかに基づくものであり得る。これらの重みは、追加データが利用可能になることで調整され得る。アンサンブルモデルの背景にある理論的根拠は、予測を行うために利用可能なデータの組み合わせが各個人で異なるであろうという現実に対処することである(例えば、一部の被験者は、耳側リムからのデータを有しているが、下方リムからのデータを有していないかもしれないし、その逆であるかもしれない)。さらに、利用可能な種々のデータソースに対して予測を生成するために異なる機械学習アルゴリズムが使用され得る。アルゴリズムの選択は、データのサイズ及び性質に基づいて行われ得る。
【0065】
いくつかの実施形態において、アルゴリズムの設計は、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)ファミリーからの最先端のアルゴリズム(EfficientNet、ResNeXt、ViT、Scaled-YOLOv4)をベースに築くことができ、カラー(RGB)画像の代わりにハイパースペクトル画像を受容するようにアーキテクチャを修正し、分析の空間スペクトル要件をサポートするようにレイヤーを適合させ、マルチスペクトル及び/又はハイパースペクトル網膜画像内の信号を検出するために必要とされる能力に従って、ネットワークの幅、深さ、及び長さを変更する。各モデルは、(出力に近い)最後のレイヤーを置き換えるようにさらに適合され得るため、ネットワークの最後の特徴テンソルは、チャネル単位の方法の代わりにピクセル単位の方法でプールされる。
【0066】
ニューラルネットワークへの入力は、各患者の両方の眼からのHSIのコレクション(集合体)である。例えば、各眼について、網膜上の異なる解剖学的位置を中心とする最大7個の画像の集合体が使用され得る。位置は、視神経円板、網膜の中心、中心窩、上方、下方、耳側、及び鼻側のうちの1つ又は複数を含むことができる。いくつかの実施形態において、各位置について、水平ライン上で画像の中心で交差するライン分光器データ(ラインスペクトルグラフデータ)が、任意選択で取得され得る。いくつかの実施形態において、各眼について、カラー眼底画像が撮像され、より深い洞察を得るためにおそらくはAIで使用され、また、眼科医が、網膜症、黄斑変性症、緑内障、白内障、高血圧等のような診断及び病理を特定することができる。
【0067】
図12は、複数の波長で網膜の単一の場所から取得された複数の3D画像の表現の一実施形態を示す。異なる波長で取得(撮像)された画像は、異なるテクスチャ及び構造を示している。単一の場所からの画像の各セットは、CNNに対して画像の一部分を形成した画像の積み重ね(スタック)になる。CNNへの入力は、網膜の複数の場所で取得されたHSIの複数の積み重ね(スタック)を含むことができる。図12に示されるように、異なるチャネルは、画像の異なるテクスチャ及び構造を示し得る。図示されるように、例えば波長帯2では見られるが、波長帯10では見られない一部の血管及び他の構造又はテクスチャが存在し、その逆も同様である。例えば、図13は、CNN入力として使用され得る網膜上の6つの異なる場所で取得(撮像)された画像の積み重ね(スタック)を示す。CNNからの出力は、疾患の存在の可能性に関連する確率スコアを含むことができ、いくつかの実施形態において、画像は、図14に示されるような画像を含むことができる。図14は、図13に示される画像に、生成されたヒートマップが重ね合わされた画像の例示的なセットを示す。背景には、オリジナルの網膜画像の表現が存在しており、ヒートマップは、背景に重ね合わされたカラーである。ヒートマップは、タンパク質形成を示す空間スペクトルパターンである1つ又は複数のホットスポット510を示す。ヒートマップの重ね合わせによって、ユーザは、ホットスポットがオリジナルの網膜画像内のどこに該当するのかを知ることができる。これらのヒートマップ画像は、AIへの入力として使用され得る。
【0068】
いくつかの実施形態において、アルゴリズムは、既知の疾患状態を有する患者からの対応するデータのデータベースを使用して訓練され得る。複数の患者と健康な人の対照セットとが使用され得る。データは、各患者から取得することができ、収集されたデータ及び/又は画像は前処理され得る。低品質な画像(本発明者らが特許において既に規定したいくつかの基準に従う)が排除され、画像は正規化され得る。データは、交差検証法における複数のフォールドを使用して、訓練、検証、及びテスト用の3つのセットに分割され、テストセットでテストする前に、訓練データを使用して、異なるフォールドからの異なるモデルを一緒にアンサンブルすることができる。いくつかの実施形態において、訓練セットは、訓練中にAIに提示され、実際の学習のために使用され、テストセットは、未見のデータに対するモデルの性能を評価するために訓練プロセス中に頻繁に使用され、検証セットは、AIの開発者とは完全に分離して提供され、新しいデータでモデルを検証するために1回だけ使用される。時として、画像ごとのレベルでの訓練が難しい場合がある。その理由は、例えば、情報が視神経円板の画像では明らかであるが中心窩の画像では明らかでない場合や、情報が左眼では明らかであるが右眼では明らかでない場合など、単一の被験者から取得される画像の全てにおいて、関連情報が明らかでないか又は存在しないことがあるからである。そのような場合、一部のラベル(ポジティブ対ネガティブ)がAIをミスリードする可能性があるため、画像ごとのレベルでの訓練が難しくなる。この問題に対処するため、いくつかの実施形態において、単一の被験者の画像の一部又は全てが画像の1つのモザイクになるように連結され、1つの全体試料として分析される。このようにすれば、たとえ信号が画像のうちの1つの画像のみにおいて明らかである場合でも、このモザイクに割り当てられた訓練ラベルは、正しく、AIをミスリードしないことになる。いくつかの実施形態において、最終的なアルゴリズムは、複数のアルゴリズムのアンサンブルであってもよく、これは、ML/AIにとって一般的な方法である。画像は患者から撮像され、低品質な画像は除外されて再び撮像され、画像は、最終スコアを生成するためにアルゴリズムによって使用される前に、訓練データセットの場合と同じモザイク形態にコンパイルされる。予測のためにAIを使用する場合、特定の臨床基準に基づいて一部の患者を除外することができる。例えば、緑内障等の特定の病理や特定の民族性が訓練及び検証セット内で過小評価されていた場合、AIがそれらに対して要求されたように動作する見込みが小さくなる可能性がある。全ての画像に対してAIを実行すること、及び患者から臨床データを取得することが可能である。
【0069】
収集又は計算された空間データ又はスペクトルデータのうちの任意のものを使用する前に、品質保証基準を適用して、データが、機械学習又は人工知能アルゴリズムから信頼性のある予測出力を生成するのに十分な品質であることを確認することができる。例えば、特定のピクセルにおいて最高スペクトルバンドと最低スペクトルバンドの差として規定されるスペクトルダイナミックレンジは、ハイパースペクトル又はマルチスペクトル又は分光器データにおける各ピクセルについて計算することができ、また、プリセットされたパーセンタイル閾値より小さいスペクトルダイナミックレンジを有するピクセルを拒否することができる。その理由は、低いスペクトルダイナミックレンジを有するデータは情報が少なく、使用できない場合があるからである。別の例として、飽和したデータポイントの数(すなわち、測定デバイスの最大値)を入力画像のデータポイントの総数で割った値として規定された飽和比を計算し、プリセットされた閾値を超える飽和を有する画像を拒否することができる。その理由は、過度の飽和は情報の喪失をもたらすからである。データポイントは、画像のピクセルで測定された全体の強度値であってよいし、そのピクセルにおける1つだけの又は複数のスペクトル(波長)成分の強度であってもよい。しかしながら、全ての飽和がアルゴリズムの予測パワーを低下させるわけではなく、プリセットされた閾値より小さい一部の飽和は、場合によっては、予測パワーをある程度までさらに改善することができる。これは、少数のデータポイントにおける飽和が、測定された信号が撮像デバイスの最大範囲に達していることを示し、そのことは、撮像された被験者が照明されて強く反射し、それにより、非飽和データポイントが、明瞭な画像及び正確な結果を提供することができる良好な強度及びダイナミックレンジを有する信号を生成している可能性が高いことを示すからである。データポイントが飽和していない場合、被撮像体が十分に照明されておらず、撮像デバイスのダイナミックレンジがフルに活用されていない可能性がある。品質保証基準のさらなる例として、画像の不鮮明さ(ぼやけ具合)又は画像の鮮明さを隣接する画像ピクセル間の強度の変化に基づいて計算し、プリセットされた閾値を超える不鮮明さを有する画像又は画像の所定の部分を拒否することができ、あるいは、画像の均質性を全ての画像ピクセルにわたる強度の変化に基づいて計算し、過剰な均質性又は過少の均質性を有する画像又は画像の所定の部分を拒否することができる。
【0070】
「品質保証(quality assurance)」基準のそれぞれについて、データが受容され又は拒否されることになる閾値が設定され得る。スペクトルダイナミックレンジパーセンタイルは変動し得るが、いくつかの実施形態において、その範囲は、ピクセルの5番目のパーセンタイルについて20%のスペクトルダイナミックレンジである。いくつかの実施形態において、最大5%の飽和ピクセルが許容され得る。不鮮明さは、0~1のスコアで測定することができ、1は完全にぼやけたものである。いくつかの実施形態において、最大で0.2の不鮮明さが許容され得る。均質性は、画像のサブセクションにおけるヒストグラムを調査し、異なるヒストグラムにわたるエントロピーを計算することによって測定され得る。いくつかの実施形態において、閾値は、1.3以上のエントロピーを有する画像を拒否するように設定される。品質保証基準に基づいて、光源及び/又は撮像デバイスの設定が、例えば飽和比を改善するために光源の強度を増加又は減少させることによって調整することができ、この手順は繰り返され得る。
【0071】
アルツハイマー病では、発症前に脳内のアミロイドレベルとタウレベルの両方が上昇する。アミロイドレベル及びタウレベルは、ADを発症する被験者が、最初の識別可能な異常のエビデンスとしてのアミロイド沈着バイオマーカの上昇(これは、異常なアミロイドPETスキャン又は低CFS Ab42若しくはAb42/Ab40比によって検出される)のバイオマーカエビデンスと、それに続く、病理タウ(これは、CSFリン酸化タウ及びタウPETを介して検出される)のバイオマーカエビデンスとを有する傾向があることと相関している。これは、アミロイド病理が可溶性タウの放出の変化を誘発し、後のタウ凝集につながるためであると考えられる。図8に示されたアミロイドステータスの予測のためのこれらの方法及び開発されたアミロイドステータスについてのモデルの予測能力は、タウレベルとアミロイドレベルが相関していることから、個人のタウステータスを予測するためにも有効であると考えられ得る。
【0072】
組織中のタウタンパク質を検出するためのハイパースペクトルイメージングの能力は、図15A、15B、及び16に示されている。図15Aは、コンゴレッド(Congo red)で染色されたアルツハイマー病を患う個人からの脳組織の組織学的スライドの例を示している。識別されるアミロイド沈着及びタウタンパク質沈着を組織全体に有しており、アルツハイマー病の診断と矛盾しない。図15Bは、同様にコンゴレッドで染色された健康な個人からの脳組織の組織学的スライドの例を示している。組織内に識別されるアミロイド沈着及びタウタンパク質沈着はなく、アルツハイマー病のネガティブ診断と矛盾しない。図16は、アミロイド沈着及びタウ沈着を有する図15Aで組織学的に検査された同じ個人からの脳切片の対応するハイパースペクトル測定値を、アミロイド沈着及びタウ沈着を示さない図15Bの健康な対照試料と比較して示す。タウタンパク質がある組織及びタウタンパク質がない組織で測定されたスペクトルの差は図16において明らかであり、特に、光透過率の減少がタウ沈着を有する個人からの組織切片を通して測定され、この光透過率の現象は、タウタンパク質によるこれらの波長の光の吸収によるものであると理論付けられる。ターゲットライン602はアルツハイマー病を患う個人の平均(値)であり、対照ライン600は健康な個人の平均(値)である。タウ及びアミロイドタンパク質を有する人(すなわち、アルツハイマー病患者)における透過率の低下は、健康な組織と、タウ及びアミロイドタンパク質を有する組織とを区別できることを示している。これらの結果は、スペクトル測定が健康な組織とタウタンパク質を含む組織とを識別するために使用され得ることを示している。
【0073】
眼は、中枢神経系の延長上にあり、視神経によって脳に直接リンクされているため、βアミロイドやタウ等のアルツハイマー病の進行の一部として脳内に生成されるタンパク質が脳から眼底へ移行する。そのため、眼においてこれらのタンパク質を検出することにより、脳内におけるこれらのタンパク質の存在又は非存在やアルツハイマー病の発症リスクを示すことができる。ここで示されたような脳組織におけるタウを測定する能力は、同様に、網膜及び視神経円板等の眼内組織におけるタウを測定し、これらの測定値を、脳内のタウのレベルについてのプロキシ(代替)として使用することが可能であることをさらに示している。
【0074】
いくつかの実施形態において、本明細書で説明される方法は、図17A~17Bに示されように、網膜の血管及び血管壁を分析するために使用され得る。撮像された画像からの正確な血管セグメンテーションを抽出するためにアルゴリズムを使用することができ、血管に沿ったアミロイドのマーカ、すなわち、血管アミロイドーシスを正確に見つけるためにAIを使用することができる。それは、多数の血管変化、並びに、眼内疾患及び脳アミロイドアンギオパチー(CAA:cerebral amyloid angiopathy)等のアミロイド関連疾患に関連する可能性がある他の血管病理にも及ぶ。図17Bに示されるように、血管をセグメント化するためにモデルを使用することができ(ステップ700)、投影が開発され得る(ステップ702)。血管セグメンテーションが抽出され(ステップ704)、AIが血管に沿ったアミロイドマーカを特定するために使用され得る(ステップ706)。
【0075】
HSI画像等の画像から血管を自動的に抽出するためにCNNセグメンテーションAIが開発されている。HSI画像は、AIに入力され、AIは、図17Cに示されるように、血管のセグメンテーションを示す2つの確率マップ(probability map)を出力する。1つは動脈用のマップであり、もう一つは静脈用のマップである。それらのマップは、AIが血管の存在を予測する各ピクセルの輝度がより高いそれら自身の画像である。これらのマップは、通常は0.5に等しいが設定可能である閾値によって2値化される。出力された動脈及び血管の2値のセグメンテーションは、血管の構造と血管に沿ったスペクトルの特徴を処理する別のAIに送られて、疾患に関連するバイオマーカが検出される。
【0076】
いくつかの態様において、本開示は、眼の光学特性を測定するシステムを提供し、システムは、網膜観察デバイス、網膜観察デバイスによって観察される眼の網膜を照明するように構成された光源、網膜によって反射された光源からの光を受信し、網膜の1つ又は複数の空間又はスペクトル画像を生成するように構成された1つ又は複数の撮像デバイス、及び、1つ又は複数の撮像デバイスによって生成された画像を受信し、画像に基づいて疾患状態を示す1つ又は複数のメトリック(指標)を計算し、疾患状態の判定を行うように構成されたコンピューティングデバイスを含む。いくつかの実施形態において、そのような判定は、機械学習又は人工知能アルゴリズムを使用し、疾患状態を示すメトリックのうちの1つ又は複数を、既知の疾患状態がポジティブ及びネガティブの被験者から測定された対応する値のデータベースと比較することで行われ得る。
【0077】
いくつかの実施形態において、1つ又は複数の撮像デバイスは、少なくとも1つのハイパースペクトル又はマルチスペクトル撮像装置と少なくとも1つの光学分光器とを含む。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの空間画像及び少なくとも1つのスペクトル画像は、同じ撮像デバイスによって生成されるか、又は同じ撮像デバイスの出力からコンピューティングデバイスによって生成される。いくつかの実施形態において、システムは、1つ又は複数の光学要素をさらに含み、光学要素は、2つ以上の撮像デバイスが網膜によって反射された光を受信して網膜の画像を同時に又は連続して生成することを可能にする。いくつかの実施形態において、システムは、光源によって放出されるか又は撮像デバイスのうちの1つ又は複数によって受信される光の波長を制限するために1つ又は複数の光学フィルタをさらに含む。いくつかの実施形態において、疾患状態を示す1つ又は複数のメトリックはスペクトル画像における不連続な波長又は波長範囲に基づいて計算される。いくつかの実施形態において、不連続な波長又は波長範囲は、機械学習又は人工知能アルゴリズムを使用して被験者から測定されたスペクトル画像のデータベースをポジティブ及びネガティブな既知の疾患状態と比較し、疾患状態を示す1つ又は複数のメトリックに関連する波長を決定することによって選択される。
【0078】
いくつかの実施形態において、光源は、疾患状態を示すメトリックを計算するために適切な波長の光のみを放出するように構成され、又は、システムは、さらに光学フィルタを含み、1つ又は複数の撮像デバイスによって受信される光の波長を、疾患状態を示すメトリックを計算するために適切な波長に制限する。いくつかの実施形態において、システムは、撮像デバイス又は光源のうちの1つ又は複数を同期させるためにトリガー制御部をさらに含む。いくつかの実施形態において、システムは、波長較正源をさらに含み、コンピューティングデバイスは、波長較正源から撮像デバイスのうちの1つ又は複数によって測定される波長較正信号を受信し、対応する波長較正信号から1つ又は複数のスペクトル画像についてピクセルから波長への変換を計算するようにさらに構成される。
【0079】
いくつかの実施形態において、疾患状態を示す少なくとも1つのメトリックは、スペクトル画像又は空間画像のうちの少なくとも1つの画像の各ピクセルについて計算される。いくつかの実施形態において、コンピューティングデバイスは、スペクトル画像を眼の種々のコンポーネントにセグメント化し、そのコンポーネントの平均化されたスペクトルデータに基づいて各コンポーネントについて疾患状態を示すメトリックを計算するようにさらに構成され得る。いくつかの実施形態において、スペクトル画像の複数のコンポーネントへのセグメンテーションは自動セグメンテーションアルゴリズムによって実施される。いくつかの実施形態において、疾患状態を示すメトリックは、異なるコンポーネント間の疾患状態のメトリックの比(率)に基づいて計算される。いくつかの実施形態において、システムは、システムのホワイト基準スペクトルを生成するためにホワイト基準光源及びターゲットをさらに含む。いくつかの実施形態において、疾患状態を示すメトリックは、1つ又は複数の波長若しくは波長範囲のホワイト基準スペクトルに対して計算された網膜の光学密度又は反射率に基づいている。いくつかの実施形態において、疾患状態を示すメトリックは、2つ以上の異なる波長又は波長範囲における光学密度又は反射率の比率に基づいている。いくつかの実施形態において、比率を計算するために使用される波長又は波長範囲は、既知の疾患状態がポジティブの被験者及び既知の疾患状態がネガティブの被検者から測定された対応する値のデータベースに対して実施された統計的有意性検定に基づいて決定される。いくつかの実施形態において、コンピューティングデバイスは、1つ又は複数の空間画像からの特徴を抽出し、抽出された特徴のみに基づいて又は抽出された特徴とスペクトルデータメトリックとの組み合わせに基づいて、疾患状態を示す1つ又は複数の空間データメトリックを計算するようにさらに構成される。いくつかの実施形態において、コンピューティングデバイスは、同じ又は異なる撮像デバイスから第2の画像を生成するための最も適切な撮像デバイス設定を決定するために第1の画像を使用するように構成される。いくつかの実施形態において、コンピューティングデバイスは、人口統計学的情報又は他の医療情報を受信し、人口統計学的情報又は他の医療情報に基づき、1つ又は複数のスペクトルデータ若しくは空間データメトリックと組み合わせて、疾患状態の1つ又は複数のさらなるメトリックを計算するようにさらに構成される。
【0080】
いくつかの実施形態において、コンピューティングデバイスは、空間データ又はスペクトルデータについて1つ又は複数の品質保証メトリックを計算し、品質保証メトリックがプリセットされた品質保証閾値を上回るか又は下回るデータ又はデータの一部を拒否するようにさらに構成される。いくつかの実施形態において、システムは、光干渉断層撮影、ラマン分光法、又は1以上の次元で眼底を測定する他のデバイス等の1つ又は複数のさらなる撮像デバイスをさらに含み、コンピューティングデバイスは、撮像デバイスの出力のみに基づいて又は疾患状態の他の計算されたメトリックとの組み合わせに基づいて、疾患状態を示す1つ又は複数のさらなるメトリックを計算するようにさらに構成される。いくつかの実施形態において、疾患状態のメトリックは、眼のアミロイドステータス若しくはタウステータス、又は、アルツハイマー病の非存在、存在、進行、若しくは発症のリスクを示している。いくつかの実施形態において、機械学習又は人工知能アルゴリズムは、ロジスティック回帰、ディシジョンツリー、ランダムフォレスト、線形判別分析、ニューラルネットワーク(畳み込みニューラルネットワークを含む)、単純ベイズ分類器、最近傍分類器、又は他のML技術若しくはAI技術のうちの1つ又は複数に基づいている。
【0081】
図18は、本開示の1つ又は複数の実施形態による例示的なコンピュータベースシステム及びプラットフォーム800のブロック図である。しかしながら、これらのコンポーネントの全てが1つ又は複数の実施形態を実施するために必ずしも必要とされるわけではなく、コンポーネントの構成配置やタイプの変形が、本開示の種々の実施形態の趣旨又は範囲から逸脱することなく行われ得る。いくつかの実施形態において、例示的なコンピューティングデバイス及び例示的なコンピュータベースシステム及びプラットフォーム800の例示的なコンピューティングコンポーネントは、本明細書で詳述されるように、多数のメンバー及び並列トランザクションを管理するように構成されてもよい。いくつかの実施形態において、例示的なコンピュータベースシステム及びプラットフォーム800は、データの評価、キャッシング、検索、及び/又はデータベース接続プーリングのための種々の方策(various strategies)を組み込んだスケーラブルコンピュータ及びネットワークアーキテクチャに基づいてもよい。スケーラブルアーキテクチャの一例は、複数のサーバを動作させることが可能なアーキテクチャである。
【0082】
いくつかの実施形態においては、図18を参照すると、例示的なコンピュータベースシステム及びプラットフォーム800のメンバーコンピューティングデバイス802、メンバーコンピューティングデバイス803、及びメンバーコンピューティングデバイス804(例えば、クライアント)は、ネットワーク805等のネットワーク(例えば、クラウドネットワーク)上で、サーバ806及び807等の別のコンピューティングデバイスとの間で互いにメッセージを送受信することが可能な任意のコンピューティングデバイスを含んでもよい。いくつかの実施形態において、メンバーデバイス802~804は、パーソナルコンピュータ、マルチプロセッサシステム、マイクロプロセッサベース又はプログラマブルな家電製品、ネットワークPCなどであってもよい。いくつかの実施形態において、メンバーデバイス802~804内の1つ又は複数のメンバーデバイスは、無線通信媒体を使用して通常接続するコンピューティングデバイスを含んでもよく、そのようなデバイスとしては、携帯電話、スマートフォン、ページャ、ウォーキートーキー、無線周波数(RF)デバイス、赤外線(IR)デバイス、CB、これらのデバイスのうちの1つ又は複数を組み合わせた統合デバイス、任意のモバイルコンピューティングデバイス等がある。いくつかの実施形態において、メンバーデバイス802~804内の1つ又は複数のメンバーデバイスは、有線又は無線通信媒体を使用して接続することが可能であるデバイスであってもよく、そのようなデバイスとしては、PDA、POCKET PC、装着可能コンピュータ、ラップトップ、タブレット、デスクトップコンピュータ、ネットブック、ビデオゲームデバイス、ページャ、スマートフォン、ウルトラモバイルパーソナルコンピュータ(UMPC:ultra-mobile personal computer)、及び/又は、有線及び/又は無線通信媒体(例えば、NFC、RFID、NBIOT、3G、4G、5G、GSM、GPRS、WiFi、WiMax、CDMA、衛星、ZigBee等)を通じて通信するために装備される任意の他のデバイス等がある。いくつかの実施形態において、メンバーデバイス802~804内の1つ又は複数のメンバーデバイスは、1つ又は複数のアプリケーションを実行してもよく、そのようなアプリケーションとしては、特に、インターネットブラウザ、モバイルアプリケーション、ボイスコール、ビデオゲーム、ビデオ会議、及び電子メール等がある。いくつかの実施形態において、メンバーデバイス802~804内の1つ又は複数のメンバーデバイスは、ウェブページ等を受信し、及び送信するように構成されてもよい。いくつかの実施形態において、本開示の特別にプログラムされた例示的なブラウザアプリケーションは、任意のウェブベース言語を使用して、グラフィクス、テキスト、マルチメディア等を受信し、及び表示するように構成されてもよく、そのようなウェブベース言語には、ハイパーテキストマークアップ言語(HTML:HyperText Markup Language)等の標準一般化マークアップ言語(SMGL:Standard Generalized Markup Language)、無線アプリケーションプロトコル(WAP:wireless application protocol)、無線マークアップ言語(WML:Wireless Markup Language)等のハンドヘルドデバイスマークアップ言語(HDML:Handheld Device Markup Language)、WMLScript、XML、JavaScript等を含むが、それらに限定されない。いくつかの実施形態において、メンバーデバイス802~804内の1つのメンバーデバイスは、Java、.Net、QT、C、C++、及び/又は他の適切なプログラミング言語によって特別にプログラムされてもよい。いくつかの実施形態において、メンバーデバイス802~804内の1つ又は複数のメンバーデバイスは、種々の考えられるタスクを実施するアプリケーションを含むか又は実行するために特別にプログラムされてもよく、そのようなタスクには、限定されないが、メッセージング機能、ローカルに保存またはアップロードされたメッセージ、画像及び/又はビデオ、及び/又はゲームを含む種々の形態のコンテンツのブラウジング、サーチング、プレイイング、ストリーミングなどがある。
【0083】
いくつかの実施形態において、例示的なネットワーク805は、例示的なネットワーク805に結合された任意のコンピューティングデバイスに対し、ネットワークアクセス、データ伝送、及び/又は他のサービスを提供してもよい。いくつかの実施形態において、例示的なネットワーク805は、少なくとも1つの専用ネットワークアーキテクチャを含み、実装してもよく、専用ネットワークアーキテクチャは、例えば、限定されないが、グローバルシステムフォーモバイルコミュニケーション(GSM:Global System for Mobile communication)アソシエーション、インターネットエンジニアリングタスクフォース(IETF:Internet Engineering Task Force)、及びワールドワイドインターオペラビリティフォーマイクロウェーブアクセス(WiMAX:Worldwide Interoperability for Microwave Access)フォーラムによって設定された1つ又は複数の規格に少なくとも部分的に基づいてもよい。いくつかの実施形態において、例示的なネットワーク805は、GSMアーキテクチャ、一般パケット無線サービス(GPRS:General Packet Radio Service)アーキテクチャ、ユニバーサルモバイルテレコミュニケーションシステム(UMTS:Universal Mobile Telecommunications System)アーキテクチャ、及び、ロングタームエボリューション(LTE:Long Term Evolution)と呼ばれるUMTSのエボリューションのうちの1つ又は複数を実装してもよい。いくつかの実施形態において、例示的なネットワーク805は、上記のうちの1つ又は複数の代替として又はそれと共に、WiMAXフォーラムによって規定されたWiMAXアーキテクチャを含み、実装してもよい。いくつかの実施形態において、また任意選択で、上記で又は以下で説明する任意の実施形態と組み合わせて、例示的なネットワーク805は、例えば、ローカルエリアネットワーク(LAN:local area network)、ワイドエリアネットワーク(WAN:wide area network)、インターネット、バーチャルLAN(VLAN:virtual LAN)、エンタープライズLAN、レイヤー3バーチャルプライベートネットワーク(VPN:virtual private network)、エンタープライズIPネットワーク、又はその任意の組み合わせのうちの少なくとも1つを含んでもよい。いくつかの実施形態において、また任意選択で、上記で又は以下で説明する任意の実施形態と組み合わせて、例示的なネットワーク805上の少なくとも1つのコンピュータネットワーク通信情報は、限定されないが、NFC、RFID、狭帯域モノのインターネット(NBIOT:Narrow Band Internet of Things)、ZigBee、3G、4G、5G、GSM、GPRS、WiFi、WiMax、CDMA、衛星、及びその任意の組み合わせ等の、1つ又は複数の通信モードに少なくとも部分的に基づいて送信されてもよい。いくつかの実施形態において、例示的なネットワーク805は、ネットワークアタッチドストレージ(NAS:network attached storage)、ストレージエリアネットワーク(SAN:storage area network)、コンテンツデリバリネットワーク(CDN:content delivery network)、或いは、他の形態のコンピュータ又は機械可読メディア等のマスストレージを含んでもよい。
【0084】
いくつかの実施形態において、例示的なサーバ806又は例示的なサーバ807は、ネットワークオペレーティングシステムを実行するウェブサーバ(又は、一連のサーバ)であってもよく、その例は、Microsoft Windows Server、Novell NetWare、又はLinuxを含んでもよいが、それに限定されない。いくつかの実施形態において、例示的なサーバ806又は例示的なサーバ807は、クラウド及び/又はネットワークコンピューティングを提供するために使用されてもよい。図18に示されていないが、いくつかの実施形態において、例示的なサーバ806又は例示的なサーバ807は、電子メール、SMS、メッセージング、テキストメッセージング、広告コンテンツプロバイダ等のような、外部システムに対する接続を有してもよい。例示的なサーバ806の特徴のうちの任意の特徴は、例示的なサーバ807に実装されてもよい、また、その逆も同様である。
【0085】
いくつかの実施形態において、例示的なサーバ806及び807の一方又は両方は、非制限的な例において、認証サーバ、検索サーバ、電子メールサーバ、ソーシャルネットワーキングサーバ、SMSサーバ、IMサーバ、MMSサーバ、交換サーバ、写真共有サービスサーバ、広告提供サーバ、金融/銀行関連サービスサーバ、旅行サービスサーバ、又は、メンバーコンピューティングデバイス801~804のユーザのための同様に適切な任意のサービスベースサーバとして働くように特別にプログラムされてもよい。
【0086】
いくつかの実施形態において、また任意選択で、上記で又は以下で説明する任意の実施形態と組み合わせて、例えば、1つ又は複数の例示的なコンピューティングメンバーデバイス802~804、例示的なサーバ806、及び/又は例示的なサーバ807は、特別にプログラムされたソフトウェアモジュールを含んでもよく、特別にプログラムされたソフトウェアモジュールは、スクリプト言語、リモートプロシージャコール、電子メール、ツイート、ショートメッセージサービス(SMS:Short Message Service)、マルチメディアメッセージサービス(MMS:Multimedia Message Service)、インスタントメッセージング(IM:instant messaging)、インターネットリレーチャット(IRC:internet relay chat)、mIRC、Jabber、アプリケーションプログラミングインターフェース(an application programming interface)、シンプルオブジェクトアクセスプロトコル(SOAP:Simple Object Access Protocol)メソッド、共通オブジェクトリクエストブローカーアーキテクチャ(CORBA:Common Object Request Broker Architecture)、HTTP(:Hypertext Transfer Protocol、ハイパーテキストトランスファープロトコル)、REST(:Representational State Transfer、代表的状態転送)、又はその任意の組み合わせを使用して、情報を送信し、処理し、受信するように構成されてもよい。
【0087】
図19は、本開示の1つ又は複数の実施形態による別の例示的なコンピュータベースシステム及びプラットフォーム900のブロック図である。しかしながら、これらのコンポーネントの全てが1つ又は複数の実施形態を実施するために必ずしも必要とされるわけではなく、コンポーネントの構成配置やタイプの変形が、本開示の種々の実施形態の趣旨又は範囲から逸脱することなく行われてもよい。いくつかの実施形態において、示されたメンバーコンピューティングデバイス902a、メンバーコンピューティングデバイス902b~メンバーコンピューティングデバイス902nは、それぞれ、プロセッサ910に結合されたランダムアクセスメモリ(RAM)908又はFLASH(登録商標)メモリ等のコンピュータ可読媒体を少なくとも含む。いくつかの実施形態において、プロセッサ910は、メモリ908に記憶されたコンピュータ実行可能プログラム命令を実行してもよい。いくつかの実施形態において、プロセッサ910は、マイクロプロセッサ、ASIC、及び/又は状態機械(ステートマシン)を含んでもよい。いくつかの実施形態において、プロセッサ910は、プロセッサ910によって実行されると、本明細書で説明した1つ又は複数のステップをプロセッサ910に実施させることができる命令を格納する媒体、例えば、コンピュータ可読媒体を含んでもよく、又はそれと通信可能であってもよい。いくつかの実施形態において、コンピュータ可読媒体の例は、クライアント902aのプロセッサ910等のプロセッサにコンピュータ可読命令を提供することが可能な電子、光学、磁気、又は他のストレージデバイス又は送信デバイスを含んでもよいが、それらに限定されない。いくつかの実施形態において、適切な媒体の他の例は、フロッピーディスク、CD-ROM、DVD、磁気ディスク、メモリチップ、ROM、RAM、ASIC、構成されたプロセッサ、全ての光媒体、全ての磁気テープ若しくは他の磁気媒体、又は、コンピュータプロセッサがそこから命令を読み取ることができる任意の他の媒体を含んでもよいが、それらに限定されない。同様に、種々の他の形態のコンピュータ可読媒体は、ルータ、プライベート若しくはパブリックネットワーク、又は、他の送信デバイス若しくはチャネル(有線と無線の両方)を含むコンピュータに命令を送信又は搬送してもよい。いくつかの実施形態において、命令は、例えば、C、C++、Visual Basic、Java、Python、Perl、JavaScript等を含む任意のコンピュータプログラミング言語からのコードを含んでもよい。
【0088】
いくつかの実施形態において、メンバーコンピューティングデバイス902a~902nは、マウス、CD-ROM、DVD、物理的又は仮想的キーボード、ディスプレイ、又は、他の入力デバイスや出力デバイス等の多数の外部又は内部デバイスを含んでもよい。いくつかの実施形態において、メンバーコンピューティングデバイス902a~902n(例えば、クライアント)の例は、限定されないが、パーソナルコンピュータ、デジタルアシスタント、携帯情報端末、スマートフォン、ページャ、デジタルタブレット、ラップトップコンピュータ、インターネット家電、及び他のプロセッサベースデバイス等のネットワーク906に接続される任意のタイプのプロセッサベースプラットフォームであってもよい。いくつかの実施形態において、メンバーコンピューティングデバイス902a~902nは、本明細書で詳述された1つ又は複数の原理/方法に従って1つ又は複数のアプリケーションプログラムを特別にプログラムされてもよい。いくつかの実施形態において、メンバーコンピューティングデバイス902a~902nは、Microsoft(登録商標)、Windows(登録商標)、及び/又はLinux(登録商標)等のブラウザ又はブラウザ対応アプリケーションをサポートすることが可能な任意のオペレーティングシステム上で動作してもよい。いくつかの実施形態において、示されたメンバーコンピューティングデバイス902a~902nは、例えば、Microsoft CorporationのInternet Explorer(登録商標)、Apple Computer,Inc.のSafari(登録商標)、Mozilla Firefox、及び/又はOpera等のブラウザアプリケーションプログラムを実行するパーソナルコンピュータを含んでもよい。
いくつかの実施形態において、メンバーコンピューティングクライアントデバイス902a~902n、ユーザ912a、ユーザ912b~ユーザ912nは、例示的なネットワーク906を通じて互いに、及び/又は、ネットワーク906に結合された他のシステム及び/又はデバイスと通信してもよい。図19に示されるように、例示的なサーバデバイス904及び913は、プロセッサ905及びメモリ917、プロセッサ914及びメモリ916をそれぞれ含んでもよい。いくつかの実施形態において、サーバデバイス904及び913は、ネットワーク906に結合されてもよい。幾つかの実施形態において、1つ又は複数のメンバーコンピューティングデバイス902a~902nは、モバイルクライアントであってもよい。
【0089】
いくつかの実施形態において、例示的なデータベース907及び915の少なくとも1つのデータベースは、データベース管理システム(DBMS:database management system)によって管理されたデータベースを含む、任意のタイプのデータベースであってもよい。いくつかの実施形態において、例示的なDBMS管理データベースは、それぞれのデータベースにおけるデータの編成、記憶、管理、及び/又は取り出しを制御するエンジンとして特別にプログラムされてもよい。いくつかの実施形態において、例示的なDBMS管理データベースは、質問(クエリ)、バックアップ及び複製、規則の施行、セキュリティの提供、計算、変更及びアクセスロギングの実施、及び/又は、自動最適化を行う能力を提供するように特別にプログラムされてもよい。いくつかの実施形態において、例示的なDBMS管理データベースは、Oracleデータベース、IBM DB2、適応型サーバエンタープライズ、ファイルメーカ、Microsoft Access、Microsoft SQL Server、MySQL、PostgreSQL、及びNoSQL実装形から選択されてもよい。いくつかの実施形態において、例示的なDBMS管理データベースは、本開示の特定のデータベースモデルに従って、例示的なDBMS内で各データベースのそれぞれの各スキーマを規定するために特別にプログラムされてもよく、特定のデータベースモデルは、階層モデル、ネットワークモデル、リレーショナルモデル、オブジェクトモデル、又は、何らかの他の適切な機構であって、フィールド、レコード、ファイル、及び/又はオブジェクトを含むことができる1つ又は複数の適用可能データ構造をもたらすことができる、何らかの他の適切な機構を含んでもよい。いくつかの実施形態において、例示的なDBMS管理データベースは、格納されるデータに関するメタデータを含むように特別にプログラムされてもよい。
【0090】
いくつかの実施形態において、本開示の例示的な発明のコンピュータベースシステム/プラットフォーム、例示的な発明のコンピュータベースデバイス、及び/又は、例示的な発明のコンピュータベースコンポーネントは、ウェブブラウザ、モバイルアプリ、シンクライアント、端末エミュレータ、又は他のエンドポイント1104を使用して、限定はしないが、サービスとしてのインフラストラクチャ(IaaS:infrastructure a service)1110、サービスとしてのプラットフォーム(PaaS:platform as a service)1108、及び/又はサービスとしてのソフトウェア(SaaS:software as a service)1106等のクラウドコンピューティング/アーキテクチャ925において動作するために特別にプログラムされてもよい。図20及び21は、クラウドコンピューティング/アーキテクチャ(複数可)の例示的な実装の図を示し、クラウドコンピューティング/アーキテクチャ(複数可)において、本開示の例示的な発明のコンピュータベースシステム/プラットフォーム、例示的な発明のコンピュータベースデバイス及び/又は例示的な発明のコンピュータベースコンポーネントが、動作するために特別に構成されてもよい。
【0091】
いくつかの実施形態において、患者の病理情報は、進行(退行)を調べるために、同じ患者の個人履歴と比較することができる。患者の進行(退行)は、他の母集団コホート及びそれらの過去の進行(退行)と比較されることもできる。
【0092】
サーバは、1つ又は複数のニューラルネットワークによって機械学習アルゴリズムを実装することができる。機械学習アルゴリズは、ロジスティック回帰、変分オートエンコーディング、畳み込みニューラルネットワーク、又は、神経変性疾患関連病理を特定し及び識別する(見分ける)ために使用される他の統計手法を含むことができる。機械学習アルゴリズムは、先験的に検証された、スペクトル散乱モデル、他の散乱モデル、又は光学物理モデルを用いることもできる。ニューラルネットワークは、複数の層であって、それらの一部が規定され、それらの一部が規定されない(又は隠される)複数の層を含んでもよい。ニューラルネットワークは、教師あり学習ニューラルネットワークである。
【0093】
いくつかの例において、ニューラルネットワークは、ニューラルネットワーク入力層、1つ又は複数のニューラルネットワーク中間隠れ層、及びニューラルネットワーク出力層を含んでもよい。ニューラルネットワーク層ーのそれぞれは、複数のノード(又は、ニューロン)を含む。ニューラルネットワーク層のノードは、典型的には直列に接続される。所与のニューラルネットワーク層の各ノードの出力は、後続のニューラルネットワーク層の1つ又は複数のノードの入力に接続される。各ノードは、論理プログラミングユニットであり、その入力、重み(ある場合)、及びバイアスファクター(複数可、ある場合)に基づいてデータを変換又は操作するための活性化関数(伝達関数としても知られる)を実施して出力を生成する。各ノードの活性化関数は、特定の入力(複数可)、重み(複数可)、及びバイアスファクター(複数可)に応答して特定の出力をもたらす。各ノードの入力は、スカラー、ベクトル、行列、オブジェクト、データ構造、及び/又は他のアイテム或いはそれに対する参照であってもよい。各ノードは、他のノードと独立に、そのそれぞれの活性化関数、重み(ある場合)、及びバイアスファクター(ある場合)を記憶してもよい。いくつかの例の実施形態において、ニューラルネットワーク出力層の1つ又は複数の出力ノードの決定は、当技術分野で理解されるように、以前に決定された重み及びバイアスファクターを使用して、スコアリング関数及び/又はディシジョンツリー関数を使用して計算又は決定することができる。
【0094】
いくつかの例において、分類(第2のニューラルネットの出力)は、被験者が神経変性病理若しくは神経変性病理の前兆を有するか、又は、神経変性病理の可能性について事前スクリーニングされてさらなる調査を必要とするかについての1つ又は複数の結論であり得る。このような神経変性病理の結論は、1つ又は複数の病理に基づくことができ、1つ又は複数の病理は、ニューラルネットワークによって分類され、例えば、結合重み付きスコア、スコアカード、又は確率的決定を用いて決定又は計算される。例えば、アミロイドβとタウ神経原線維変化の両方の存在又は確率的分類は、神経変性病理の高い確率的結論につながる場合がある。いくつかの例において、結論は、例えば、患者の過去の分光法情報と比較することによって、患者の病理の経時的な変化に基づくこともできる。いくつかの例において、ハイパースペクトル反射率情報は、ニューラルネットワークへの入力情報としても使用され、それは、神経変性病理を分類するのをさらに支援する。
【0095】
上記説明から、種々の使用及び条件に対して本開示の実施形態を採用するために、本開示の実施形態に対して変形及び修正が行われてもよいことが明らかになるであろう。そのような実施形態は、同様に添付特許請求項の範囲内にある。
【0096】
本明細書の変数の任意の規定における要素の列挙の記載は、その変数の、列挙された要素の任意の単一要素又は組み合わせとしての規定を含む。本明細書の一実施形態の記載は、その実施形態を、任意の単一の実施形態として又は任意の他の実施形態又はその一部分との組み合わせとして含む。
【0097】
本明細書で述べた全ての特許及び出版物は、それぞれの独立した特許及び出版物が、参照によって組み込まれることを具体的にかつ個々に指示されたかのような場合と同じ程度に、参照によって本明細書に組み込まれる。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図3D
図4
図5A-B】
図5C
図6
図7A-B】
図8
図9A
図9B
図10A-B】
図11
図12
図13
図14
図15A-B】
図16
図17A
図17B
図17C
図18
図19
図20
図21
【国際調査報告】