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特表2023-513465ジオポリマー及び固体粒子を含む、開放多重空隙を有する固体材料並びにその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-31
(54)【発明の名称】ジオポリマー及び固体粒子を含む、開放多重空隙を有する固体材料並びにその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 39/14 20060101AFI20230324BHJP
   C01B 39/14 20060101ALI20230324BHJP
   C01B 33/26 20060101ALI20230324BHJP
   B01J 39/02 20060101ALI20230324BHJP
   G21F 9/12 20060101ALI20230324BHJP
   B01J 20/16 20060101ALI20230324BHJP
【FI】
B01J39/14
C01B39/14
C01B33/26
B01J39/02
G21F9/12 501F
G21F9/12 501D
G21F9/12 501J
B01J20/16
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022545883
(86)(22)【出願日】2021-01-25
(85)【翻訳文提出日】2022-09-26
(86)【国際出願番号】 FR2021050126
(87)【国際公開番号】W WO2021152248
(87)【国際公開日】2021-08-05
(31)【優先権主張番号】2000821
(32)【優先日】2020-01-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502124444
【氏名又は名称】コミッサリア ア レネルジー アトミーク エ オ ゼネルジ ザルタナテイヴ
(71)【出願人】
【識別番号】522120004
【氏名又は名称】オラノ・リサイクレイジ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】アルバン・ゴサール
(72)【発明者】
【氏名】アニエス・グランジャン
(72)【発明者】
【氏名】ダヴィド・ランベルタン
(72)【発明者】
【氏名】ニコラ・ファブルーグ
【テーマコード(参考)】
4G066
4G073
【Fターム(参考)】
4G066AA22B
4G066AA23B
4G066AA30B
4G066AA61B
4G066AB24B
4G066AC11B
4G066AE10B
4G066BA01
4G066BA09
4G066BA20
4G066BA22
4G066BA31
4G066CA12
4G066CA45
4G066CA46
4G066DA07
4G066FA03
4G066FA07
4G073BA02
4G073BA04
4G073BA05
4G073BA57
4G073BA63
4G073BA75
4G073BA82
4G073BB03
4G073BB07
4G073BB48
4G073BC02
4G073BD03
4G073BD15
4G073BD21
4G073BD26
4G073CB03
4G073CE01
4G073CM09
4G073CZ02
4G073CZ50
4G073DZ02
4G073FC04
4G073FC13
4G073FD02
4G073FD18
4G073GA11
4G073GA12
4G073GA13
4G073GA16
4G073GA19
4G073GB02
4G073GB03
4G073UB48
(57)【要約】
本発明は、ミクロ多孔質及びメソ多孔質ジオポリマーから作製された無機マトリックスを含む、開放多重であり、かつ、少なくとも部分的に相互接続された空隙を有する固体材料であって、ミクロ多孔質及びメソ多孔質ジオポリマーから作製された側面又は壁によって区切られた、少なくとも部分的に相互接続された開放マクロ細孔が規定され、マクロ細孔及び/又は側面若しくは壁の中に分布している、ジオポリマーとは異なる少なくとも1種の固体化合物の粒子を含む、材料に関する。前記材料を調製するための方法もまた開示される。本発明はまた、少なくとも1種の金属又はメタロイドカチオンを、それを含有する液体媒体から分離するための方法であって、前記液体媒体を、前記材料と接触するように配置する、方法にも関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミクロ多孔質及びメソ多孔質ジオポリマーから作製されたマトリックスを含む、開放多重空隙及び少なくとも部分的に相互接続された空隙を有する固体材料であって、ミクロ多孔質及びメソ多孔質ジオポリマーから作製された側面又は壁によって区切られた、少なくとも部分的に相互接続された開放マクロ細孔が画定され、ジオポリマーとは異なる少なくとも1種の固体化合物の粒子が、マクロ細孔及び/又は側面若しくは壁の中に分布している、材料。
【請求項2】
粒状体、顆粒、又はビーズ等の粒子の形態である、又はモノリスの形態である、特に300μm~10又は数十cm、例えば10、30、40、50、又は更には100cmのサイズを有する、請求項1に記載の材料。
【請求項3】
前記ジオポリマーとは異なる少なくとも1種の固体化合物の粒子が、2nm~100μm、好ましくは10nm~10μm等の平均サイズ、例えば直径を有する、請求項1又は2に記載の材料。
【請求項4】
前記ジオポリマーとは異なる少なくとも1種の固体化合物の粒子が、ナノメートル粒子、サブミクロン粒子、及びミクロン粒子からなる群から選択される、請求項3に記載の材料。
【請求項5】
前記ジオポリマーとは異なる少なくとも1種の固体化合物の粒子が、活性粒子である、請求項1から4のいずれか一項に記載の材料。
【請求項6】
前記活性粒子が、少なくとも1種の固体金属カチオン交換体化合物の粒子、触媒粒子、及び吸着剤化合物粒子からなる群から選択される、請求項5に記載の材料。
【請求項7】
前記固体金属カチオン交換体化合物が、ゼオライト、アルカリ性ケイチタン酸塩(silicotitanates)、配位ポリマー(金属-有機構造体)粒子、及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項6に記載の材料。
【請求項8】
前記ジオポリマーとは異なる少なくとも1種の固体化合物の粒子の量が、材料の総質量に対して、0.1~30質量%、好ましくは5~15質量%である、請求項1から7のいずれか一項に記載の材料。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の材料の調製方法であって、少なくとも以下の連続工程:
a) 油相及び水性相を含む混合物の剪断を伴う機械的攪拌によって、連続水性相中に分散した油相の液滴から形成される水中油エマルジョンを調製する工程であり、水性相が、活性化溶液と、溶解/重縮合によりジオポリマーを形成することができるアルミノケイ酸塩源と、任意選択に界面活性剤とを含み、少なくとも1種の固体化合物の粒子が、連続水性相とエマルジョンの連続水性相中に分散した油相の液滴によって形成された界面に存在する、工程と、
b) エマルジョンを静置し、選択したサイズ及び形状が得られるようにそれを形成及び成形し、重縮合によってジオポリマーマトリックスを形成する、工程と、
c) 油相を除去することにより、請求項1から8のいずれか一項に記載の材料を得る工程と
を含む、方法。
【請求項10】
混合物の油相が、7~22個の炭素原子、好ましくは12~16個の炭素原子を有する1種又は複数の直鎖又は分岐鎖アルカン、例えばドデカン及びヘキサデカンからなる、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
工程a)の前に、油相及び水性相を含む混合物を調製するために以下の連続サブ工程a1)~a4):
a1) 水中又は界面活性剤を含む水溶液中で、少なくとも1種の固体化合物の粒子の水性溶液を調製する工程と、
a2) 工程a1)の最後に得られた粒子の水性懸濁液に油相を添加し、これにより油相及び水性懸濁液からなる水性相を含む二相混合物が得られる、工程と、
a3) 水性活性化溶液を、工程a2)の最後に得られた二相混合物の水性相に添加する工程と、
a4) 溶解/重縮合によりジオポリマーを形成することができるアルミノケイ酸塩源を、工程a3)の最後に得られた二相混合物の水性相に添加する工程と
が実施される、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
工程a2)の後、工程a3)の前に、油相と水性懸濁液からなる水性相とを含む二相混合物が、剪断を伴う機械的撹拌を受け、及び/又は工程a3)の後、工程a4)の前に、二相混合物が、剪断を伴う機械的攪拌を受ける、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
化学反応を触媒するための、流体を濾過するための、又は流体中に含有される物質の分離若しくは抽出するための、請求項1から8のいずれか一項に記載の材料の使用。
【請求項14】
少なくとも1種の金属カチオン又はメタロイドカチオンを、それを含有する液状媒体から分離するための方法であって、前記液状媒体を、請求項1から8のいずれか一項に記載の材料と接触するように配置する、方法。
【請求項15】
液状媒体が、水性溶液等の水性液状媒体である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記液状媒体が、原子力産業及び施設並びに放射性核種を使用する作業に由来する液体及び流出物から選択される、請求項14又は15に記載の方法。
【請求項17】
前記カチオンが、0.1ピコグラム~500mg/L、好ましくは0.1ピコグラム~100mg/Lの濃度で存在する、請求項14から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記カチオンが、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、重金属、希土類、アクチニド、希ガス、及びその同位体、特にその放射性同位体から選択される元素のカチオンである、請求項14から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記カチオンが、Sr、Cs、Co、Ag、Ru、Fe及びTl並びにその同位体、特にその放射性同位体から選択される元素のカチオンである、請求項14から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記カチオンが、134Cs、又は137Cs、又は90Srのカチオンである、請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジオポリマー及び空隙内に分布した固体粒子を含む、階層開放空隙を有する材料としても知られている、開放多重空隙を有する固体材料に関する。
【0002】
より詳細には、本発明は、ミクロ多孔質及びメソ多孔質ジオポリマーから作製された鉱物、無機マトリックスを含む、開放多重空隙を有する固体材料であって、ミクロ多孔質及びメソ多孔質無機ジオポリマーから作製された側面又は壁により画定された、少なくとも部分的に相互接続された開放マクロ細孔が定義され、かつ、ジオポリマーとは異なる別個の分離した少なくとも1種の固体化合物の粒子が、マクロ細孔中及び/又は側面若しくは壁中に分布している、材料に関する。
【0003】
マトリックスは「骨格」とも称される。
【0004】
粒子は特に、活性粒子、特に無機固体金属カチオン交換体化合物、吸着剤の粒子、又は触媒の粒子であってよい。
【0005】
本発明による材料は、特にモノリスの形態であってもよい。
【0006】
本発明はまた、前記材料を調製するための方法に関する。
【0007】
本発明は、多数の分野、例えば、触媒、金属カチオン分離、又はゼオライト等の選択的吸着剤の粒子を一体化することによる固相上での抽出の分野に適用されてよい。
【0008】
本発明は、より具体的には、流出物、特に液状流出物の処理及び特に、金属カチオン、例えばストロンチウムカチオンをそこから除去することを特に目的とした、放射性液状流出物の処理の分野に適用されてよい。
【0009】
したがって、本発明はまた、前記材料を使用して、媒体、特に液状媒体中に含有されている金属カチオン、特に放射性又は毒性金属カチオンを分離する方法に関する。
【背景技術】
【0010】
固定床を使用する方法は、目的のイオン又は分子に関する輸送特性を最適化するために多重空隙を有する材料、かつ、可能な限りヘッド損失を抑制しながら床として作用するのに十分な大きさの開発を必要とする。これらの多重空隙を有する材料は、特にマクロ多孔質材料であり、マクロ多孔質材料は、その空隙内にナノメートル、サブミクロン又はミクロン単位の活性粒子からなる活性部位に含む。
【0011】
ナノメートル、サブミクロン又はミクロン単位の活性粒子をその空隙内に含むこれらの多孔質材料の調製は、第1の方法によれば、他で得られたナノメートル、サブミクロン又はミクロン単位の活性粒子及び無機結合剤からの顆粒化によって実施されてよい。
【0012】
次いで、全体が冷間圧縮され、結合剤が粉末混合物に凝集力を与える。結合剤は、直接圧縮法では乾燥状態で使用され、又は湿式造粒法では水性媒体中で使用される。湿式造粒法では、ナノメートル、サブミクロン又はミクロン単位の活性粒子が、結合剤とともに懸濁させられ、凝集力を確保し、通常続いて、押出し成形又は熱処理、例えば乾燥又は焼結が行われる。最も頻繁に使用される無機結合剤は、粘土系のものである。この方法は工業的であり単純である。この方法はまた、いずれのタイプの粒子にも適応可能である。しかしながら、この方法では、材料の制御された空隙率を得ることは不可能であり、固定床用途のための輸送特性(流体力学的及び拡散特性)が不良となる。加えて、こうして得られた「タブレット」は、低い機械的強度を有する(特許文献1)。
【0013】
ナノメートル、サブミクロン又はミクロン単位の活性粒子をその空隙内に含むこれらの多孔質材料の調製は、第2の方法によれば、他で得られた多孔質材料、例えば、シリカゲル、多孔質ガラス、ソルゲルプロセスにより得られたシリカ等の多孔質シリカを転換することによって実施されてよい。
【0014】
この第2の方法は、要求されるナノメートル、サブミクロン又はミクロン単位の活性粒子の特性を得るために、基材を有し、その空隙率が適切に制御され、化学処理を施される、ことからなる(非特許文献1及び非特許文献2)。
【0015】
この方法は、全てのタイプの活性粒子に置き換えることが難しいが、それは、各タイプの粒子は異なる組成を有し、したがって特定の処理を必要とするためである。この方法は複雑であり、いくつかの工程を必要とし、したがって、工業的に置き換えることを困難にしている。更に、この方法は、空隙の目詰まりを引き起こし、したがって、活性部位への接近性が不良なことがある。
【0016】
ナノメートル、サブミクロン又はミクロン単位の活性粒子をその空隙内に含むこれらの多孔質材料の調製は、第3の方法によれば、多孔質材料を機能化することによって実施されてよい。この方法は、「骨格」として作用する多孔質材料を予備機能化し、次いで、予備機能化されたグラフトからの骨格の構造で活性材料を徐々に成長させる(特許文献2、及び非特許文献3)ことからなる。
【0017】
この場合も、この方法は複雑であり、いくつかの工程を必要とし、任意のタイプの粒子に置き換えることは困難である。この方法はまた、細孔の目詰まりを引き起こすこともある。
【0018】
ナノメートル、サブミクロン又はミクロン単位の活性粒子をその空隙内に含むこれらの多孔質材料の調製は、第4の方法によれば、基材多孔質材料に、ナノメートル、サブミクロン又はミクロン単位の活性粒子を含有する懸濁液を含浸させることによって実施されてよい(特許文献3及び特許文献4)。
【0019】
この方法は、実施が簡単であるが、いくつかの含浸工程を必要とする。これらの含浸工程では、一方では、基材多孔質材料の細孔の目詰まりが生じ、他方では、基材中に挿入される粒子の量、又は細孔ネットワークへの粒子の挿入の均一性を完全に制御することはできないため、管理が複雑である。最後に、固定床流出物処理操作での材料の使用中に活性粒子の放出を誘発し得る、基材への粒子の不良な粘着力が観察される場合もある。更に、このタイプの合成は、機械的強度が低い材料をもたらすことある(特許文献3)。
【0020】
ナノメートル、サブミクロン又はミクロン単位の活性粒子をその空隙内に含むこれらの多孔質材料の調製は、第5の方法によれば、ナノメートル又はサブミクロン単位の活性粒子を含む水中油型エマルジョンを使用して実施されてよく、エマルジョンは、界面活性剤の存在、若しくは活性粒子(ピッカリング型乳濁液)、又はこれら2つの組み合わせによって安定化される。水性相で無機酸化物前駆体は、油相が抜き取られたとき、骨格を形成することによって混合物に凝集力を加えることを可能にする(特許文献5及び特許文献6)。この方法は、骨格が酸化物からなるようにする(主にシリカを使用する)ことを必要とし、制御が複雑であり、比較的高価な前駆体(アルコキシド)を使用し、かつ工業化が困難である、ゾルゲル型の合成を含む。
【0021】
更に、この方法は、小さなサイズ(最大数百nm)の活性粒子の挿入に限定され、いくつかのカテゴリの活性粒子にとって合成が非常に難しい場合があり、かつ、工業的に管理することが難しい場合がある。
【0022】
最後に、得られた材料の肺胞多孔質構造では、固定床用途のための良好な流体力学的輸送特性が得られず、潜在的に、材料骨格に組み込まれた活性粒子の一部に対する、処理される流出物の接近が、困難になる。
【0023】
したがって、上記の点から、多重空隙を有する材料について、特に、機械的に強固であり、活性粒子を均一に組み込むことができる、相互接続されたマクロ空隙を有する材料について、依然として満たされていない要求があり、これらの活性粒子が前記マクロ空隙内を循環する流出物に対して容易にアクセス可能であり、少なくとも先行技術の材料よりもアクセス可能性が高いようにする要求がある。
【0024】
多種多様な形状及びサイズ、例えば、ミリメートルから数十センチメートルのサイズを有し得る材料もまた要求がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0025】
【特許文献1】FR-A1-2791905.
【特許文献2】WO-A1-2016/0382016.
【特許文献3】FR-A-3035660
【特許文献4】FR-A1-3037583.
【特許文献5】FR-A1-3015476
【特許文献6】WO-A1-2012/049412.
【非特許文献】
【0026】
【非特許文献1】Didi Y., Said B., Cacciaguerra T., Nguyen K.L., Wernert, V., Denoyel R., Co D., Sebai W., Belleville M.P., Sanchez-Marcano J., Fajula F., Galarneau A., "Synthesis of binderless FAU-X (13X) monoliths with hierarchical porosity", Microporous and Mesoporous Materials, 281 (2019) 57-65.
【非特許文献2】Said B., Cacciaguerra T.,Tancert F., Fajula F., Galarneau A., "Size control of self-supported LTA zeolite nanoparticles monoliths", Microporous and Mesoporous Materials, 227 (2016) 176-190.
【非特許文献3】F. Liguori, P. Barbaro, B. Said, A. Galarneau, V. Dal Santo, E. Passaglia, A. Feis, "Unconventional Pd@Sulfonated Silica Monoliths Catalysts for Selective Partial Hydrogenation Reactions under Continuous Flow" Chemcatchem, 9 (2017) 3245-3258.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0027】
本発明の第1の目的は、とりわけ、そのような材料の要求に対応することである。
【0028】
本発明の目的は、更に、先行技術の材料、特に上記で引用した先行技術文献に記載された材料の欠点、制限及び不利益を有さず、これらの材料の問題を解決する、材料を提供することである。
【0029】
更に、信頼性があり、限定された数の工程を含み、汎用性があり、その性質及び(例えば、ナノメートル、ミクロン又はサブミクロン単位の)サイズにかかわらず、あらゆる種類の活性粒子に適合させることができる、材料の調製方法に対する要求がある。特に、この方法は、再現可能であり、工業規模に容易に置き換えることが可能であるように、実施が簡単でなければならない。
【0030】
本発明の第2の目的は、とりわけ、そのような方法に対する要求を満たすことである。
【課題を解決するための手段】
【0031】
上記の第1の目的及び他の目的は、本発明によれば、ミクロ多孔質及びメソ多孔質ジオポリマーから作製された(無機)マトリックスを含み、開放多重であり、かつ、少なくとも部分的に相互接続された空隙を有する固体材料により達成される。マトリックスでは、ミクロ多孔質及びメソ多孔質ジオポリマーから作製された側面(表面、前面)又は壁によって区切られた、少なくとも部分的に相互接続された開放マクロ細孔が画定され、ジオポリマーとは異なる分離した別個の少なくとも1種の固体化合物の粒子が、マクロ細孔及び/又は側面若しくは壁の中に分布している。
【0032】
「ジオポリマー」又は「ジオポリマーマトリックス若しくは骨格」という用語は、本発明の範囲内で、微粉砕材料(すなわち、一般に、アルミノケイ酸塩源)と食塩溶液(すなわち、活性化溶液)を含有する混合物の硬化後に得られる乾燥状態の固体多孔質材料であって、前記混合物は、時間経過に伴う凝結及び硬化が可能である、多孔質材料を指す。この混合物はまた、「ジオポリマー混合物」、「ジオポリマー組成物」又は「ジオポリマーペースト」とも呼ばれる。ジオポリマーの硬化は、食塩溶液、例えば高pH食塩溶液(すなわち、活性化溶液)中で、ジオポリマー混合物の微粉砕材料の溶解/重縮合の結果である。
【0033】
より詳細には、ジオポリマー若しくはジオポリマーマトリックス又は骨格は、非晶質アルミノケイ酸塩無機ポリマーである。前記ポリマーは、シリカ及びアルミニウム(すなわち、アルミノケイ酸塩源)を本質的に含有し、強アルカリ性溶液(活性化溶液)により活性化され、配合物中の固体/溶液の質量比が低い、反応性材料から得られる。ジオポリマーの構造は、ケイ酸塩(SiO4)とアルミン酸塩(AlO4)が酸素原子共有によってその頂点で結合した四面体で形成されたSi-O-Al格子から構成される。この格子内には、AlO4 -錯体の負電荷を補償することを可能にする、補償カチオンとしても知られる、1種又は複数の電荷補償カチオンが存在する。前記補償カチオンは、有利には、アルカリ金属、例えば、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)及びセシウム(Cs)、アルカリ土類金属、例えば、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)及びバリウム(Ba)、並びにこれらの混合物からなる群から選択される。
【0034】
上記で定義されたジオポリマーは、本発明によれば、マクロ多孔質、メソ多孔質及びマクロ多孔質であり、かつ、一般に1.5g/cm3未満、特に1.2g/cm3未満、具体的には0.9g/cm3未満、より具体的には0.6g/cm3未満の密度を有する。
【0035】
「マクロ多孔質ジオポリマー」という用語は、マクロ細孔を有するジオポリマーを意味し、「メソ多孔質ジオポリマー」という用語は、メソ細孔を有するジオポリマーを意味し、「ミクロ多孔質ジオポリマー」という用語は、ミクロ細孔を有するジオポリマーを意味する。
【0036】
本発明によれば、「マクロ細孔」という用語は、(細孔は一般に円形の断面を有するため)断面の直径によって一般に定義される平均サイズが500Å超である細孔を意味し、「メソ細孔」という用語は、平均サイズが20~500Åである細孔を意味し、「ミクロ細孔」という用語は、平均サイズが20Å未満、例えば5~10Åである細孔を意味する。1nm=10Åであることに留意されたい。
【0037】
メソ空隙は、典型的にジオポリマーの全空隙に対して20~33体積%である。
【0038】
本発明による材料の骨格、マトリックスを形成するジオポリマーは、前記骨格、前記マトリックス中に画定されたマクロ細孔をも含む。
【0039】
マクロ空隙は、典型的にジオポリマーの全空隙に対して20~80体積%である。
【0040】
空隙は、窒素吸着-脱着又は水銀圧入によって測定され得る。
【0041】
ミクロ空隙は、ジオポリマーの全空隙に対して、典型的に15体積%未満、特に10体積%未満、とりわけ5~10体積%である。
【0042】
ジオポリマーにおいて、マクロ空隙、メソ空隙及びミクロ空隙に相当する全空隙は、ジオポリマーの全容積に対して、70体積%超、特に75体積%超、とりわけ80体積%超である。
【0043】
本発明による材料は、開放多重であり、(すなわち、マクロ空隙、ミクロ空隙及びメソ空隙)かつ、少なくとも部分的に又は更には全体的に完全に相互接続された空隙を有する固体材料であり、階層的開放であり、かつ、少なくとも部分的に又は全体的に相互接続された空隙を有する材料とも称されるものである。
【0044】
より正確には、本発明による材料は、開放され、接続された(又は相互接続された)空隙を有する。
【0045】
本発明によれば、この空隙は多重であり、すなわち、マクロ空隙、ミクロ空隙及びメソ空隙を同時に含む。
【0046】
この空隙はまた、開放されており、すなわち、材料と接触するように配置された流出物等の流体がアクセス可能である。この空隙はまた、少なくとも部分的に接続され(相互接続され)、又は更には完全に相互接続されており、すなわち、流体は、相互接続された細孔を介して、材料の中を通過することができる。この空隙はまた、粒子へのアクセスを可能にする。
【0047】
開放空隙の概念は、材料の全ての孔径、すなわち、マクロ細孔、ミクロ細孔及びメソ細孔に適用される。細孔(マクロ細孔、ミクロ細孔及びメソ細孔)は、開放されており、孔径にかかわらず、全てが少なくとも部分的に接続され、互いに相互接続され、又は更には完全に接続され、互いに相互接続されている。
【0048】
したがって、マクロ細孔は相互に接続され、メソ細孔及び/又はミクロ細孔と接続されてよく、メソ細孔は相互に接続され、ミクロ細孔及び/又はマクロ細孔と接続されてよく、ミクロ細孔は相互に接続され、マクロ細孔及び/又はメソ細孔と接続されてよい。
【0049】
マクロ細孔の開放及び相互接続を生じさせるものは、ミクロ細孔及びメソ細孔の存在だけではない。2つのマクロ細孔が互いに相互接続されることもある。
【0050】
要約すると、マクロ細孔の相互接続は、メソ細孔及びミクロ細孔の存在とは無関係である。
【0051】
驚くべきことに、粒子、特に活性粒子が本発明による材料中に存在することで、マクロ細孔の相互接続は、粒子を含まない同じ材料と比較して大幅に強化されたこと、更に、本発明による材料は、粒子を含まない同じ材料とは異なり、部分的に閉じた肺胞マクロ細孔を含まないことが観察された(実施例を参照されたい)。
【0052】
有利には、本発明の範囲内で使用されるジオポリマーは、ジオポリマー材料の第1の主表面を材料の第2の主表面に接続するパーコレーションマクロ細孔(percolating macropore)を有する。
【0053】
本発明によれば、「主表面」という単語は、周りの環境に対して材料の端を定める材料の外側部分を意味する。主表面は、典型的に、空洞、特に肉眼で見える閉塞されていない空洞を有する。
【0054】
本発明による材料は、先行技術において記載又は示唆されていない特定の構造を有し、更に、特定の材料、すなわち、特に本発明による材料のマトリックスである骨格を構成するジオポリマーからなる。
【0055】
本発明による材料は、このマトリックス中でアクセス可能である、ジオポリマーとは異なる少なくとも1種の固体化合物の粒子、例えば活性粒子を更に含む。
【0056】
本発明によれば、ジオポリマーとは異なる少なくとも1種の固体化合物の粒子、例えば活性粒子が単に存在することに加えて、実質的に境界を有さず、ジオポリマーマトリックスから独立した、ジオポリマーとは異なる、少なくとも1種の固体化合物の粒子の性質及びサイズを選択可能であることが重要である。
【0057】
実際、本発明による材料は、まず、ミクロ多孔質及びメソ多孔質側面(表面、前面)又は壁によって区切られた、少なくとも部分的に相互接続された開放マクロ細孔(言い換えると、開放された少なくとも部分的に相互接続されたマクロ空隙)が画定されたマトリックス又は骨格を有し、多重空隙若しくは階層的空隙を有する材料として、又は異なる規模の空隙、より具体的には3つの規模の空隙を有する材料として、定義され得る。したがって、本発明による材料は、マクロ空隙、メソ空隙及びミクロ空隙の組み合わせを含む。更に、本発明による材料において、マクロ細孔は、開放され少なくとも部分的に相互接続されており、又は更には完全に相互接続されており、純粋な肺胞構造を有しているわけではなく、このことは、驚くべきことに、本発明による材料中にジオポリマーとは異なる少なくとも1種の固体化合物の粒子が存在することによる。
【0058】
本発明による材料において、開放され相互接続されたマクロ細孔は、材料で流出物等の流体の輸送を可能にし、これらの粒子がマクロ細孔の壁、側面の内側にある場合には、それ自体が開放され相互接続されたメソ細孔及びミクロ細孔が、ジオポリマーとは異なる少なくとも1種の固体化合物の粒子に容易にアクセス可能であることを保証している。
【0059】
言い換えれば、多重空隙及びマクロ細孔間の相互接続性は、材料内での流出物等の流体の輸送及び粒子へのアクセス可能性を非常に好ましく最適化することを可能にする。
【0060】
良好な相互接続は、ジオポリマーとは異なる少なくとも1種の固体化合物の粒子の良好なアクセス可能性をもたらし得るが、系統的なものではないことに留意するべきである。したがって、マクロ細孔の実質的な相互接続を得ることは可能であるが、粒子は、壁、側面に完全に埋め込まれアグロメレート化する。壁、側面がメソ多孔質でもミクロ多孔質でもない場合には、したがって、これらの粒子はアクセス不可能であり、材料は満足のいくものではなくなるであろう。本発明による材料では、開放され相互接続されたミクロ細孔及びメソ細孔のおかげで、特にマクロ細孔により、粒子の良好なアクセス可能性が常に得られる。
【0061】
本発明による材料の機械的強度は、機械的に非常に強固であるジオポリマー骨格(一般にアルミノケイ酸塩)によって保証される。
【0062】
一般に、ジオポリマーマトリックスは、金属酸化物マトリックスに対して多くの利点を有する。
【0063】
ジオポリマーの合成は、ゾル-ゲルプロセスによる金属酸化物の合成よりも制御が簡単である。
【0064】
ジオポリマーの合成は、金属酸化物(主としてアルコキシド)を合成するために使用されるものよりも安価な前駆体を必要とする。
【0065】
ジオポリマーマトリックスは、金属酸化物マトリックスよりも優れた機械的強度を有する。
【0066】
ジオポリマーマトリックスはメソ細孔を含み、一方、金属酸化物マトリックスはメソ細孔を含まない。金属酸化物中にメソ空隙を生じさせるためには、エマルジョン配合物に追加の化合物を加える必要があるため、系がより複雑化する。
【0067】
最後に、要約すると、本発明による材料は、階層的空隙を有し、機械的に強固であり、特にマクロ細孔間の既存の相互接続性により、粒子、一般に活性粒子(例えば、液体又は気体流出物等の流体を処理する文脈における特定の用途のためのもの)を組み込み、材料中に分布した粒子に対する、処理される流出物等の流体の強化されたアクセス可能性を与える。
【0068】
言い換えれば、本発明による材料は、ジオポリマーとは異なる少なくとも1種の固体化合物の粒子が挿入された、開放され相互接続されたマクロ細孔を有し、これらの粒子はアクセス可能である。
【0069】
有利には、本発明による材料は、粒状体、顆粒、若しくはビーズ等の粒子(この場合、これらの粒子は、ジオポリマーとは異なる別個の分離した少なくとも1種の固体化合物の粒子ではない)の形態、又はモノリスの形態であってよい。
【0070】
材料粒子又はモノリスは、300ミクロン(μm)~10又は数十cm、例えば10、10、30、40、50、又は更には100cmのサイズ(その最大寸法、例えばその直径によって一般に定義される)を有し得る。
【0071】
したがって、サイズという用語は、一般に、材料粒子又はモノリスの最大寸法を意味する。
【0072】
300~500ミクロンのサイズは、カラムのパッキングによる固定床での使用に、特に適している。
【0073】
本発明によれば、モノリスという用語は、平均サイズが少なくとも1mmである固体物体を意味する。
【0074】
有利には、ジオポリマーとは異なる少なくとも1種の固体化合物の粒子は、2nm~100μm、好ましくは10nm~10μmである平均サイズ、例えば直径を有し得る。
【0075】
サイズという用語はまた、本明細書において、ジオポリマーとは異なる少なくとも1種の固体化合物の粒子の最大寸法、例えば直径を意味する。
【0076】
ジオポリマーとは異なる少なくとも1種の固体化合物の粒子のサイズは、特定の対象用途のために選択されてよい。
【0077】
有利には、ジオポリマーとは異なる少なくとも1種の固体化合物の粒子は、ナノメートル粒子、サブミクロン粒子、及びミクロン粒子からなる群から選択されてよい。
【0078】
本発明によれば、「ナノメートル粒子」という用語は、その直径によって一般に定義される平均サイズが2~100nmである粒子を意味し、「サブミクロン粒子」という用語は、その直径によって一般に定義される平均サイズが100nm~1μmである粒子を意味し、「ミクロン粒子」という用語は、その直径によって一般に定義される平均サイズが1~100μmである粒子を意味する。
【0079】
ジオポリマーとは異なる少なくとも1種の固体化合物の粒子は、完全に無機の鉱物粒子、すなわち、1種又は複数の無機固体化合物のみからなる(100%)粒子であってよい。
【0080】
ジオポリマーとは異なる少なくとも1種の固体化合物の粒子は、部分的に有機である粒子、すなわち、1種又は複数の無機固体粒子と、1種又は複数の有機固体化合物とを含む粒子であってよく、これは特に「MOF」粒子に当てはまる(下記参照)。
【0081】
有利には、ジオポリマーとは異なる少なくとも1種の固体化合物の粒子は、活性化合物の粒子、又は単に活性粒子であってよい。
【0082】
「活性粒子」又は活性化合物の粒子という用語は、一般に、(不活性粒子とは対照的に)化学反応、収着現象、触媒プロセス等の化学的、物理的又は物理化学的プロセス、例えば触媒作用又は抽出において、特に液体又は気体流出物の処理のために、作用することができる粒子を意味する。
【0083】
好ましくは、これらの活性粒子は、少なくとも1種の固体金属カチオン交換体化合物の粒子、触媒粒子、及び吸着剤化合物粒子からなる群から選択される。
【0084】
有利には、固体金属カチオン交換体化合物は、ゼオライト、アルカリ性ケイチタン酸塩、配位ポリマー(金属-有機構造体)粒子、及びこれらの混合物からなる群から選択されてよい。
【0085】
ジオポリマーとは異なる少なくとも1種の固体化合物の粒子の形状に対する制限はない。
【0086】
有利には、ジオポリマーとは異なる少なくとも1種の固体化合物の粒子は、球体若しくは回転楕円体の形状、又は針状形状を有していてよい。
【0087】
有利には、ジオポリマーとは異なる少なくとも1種の固体化合物の粒子の含有量は、材料の総質量に対して、0.1~30質量%、好ましくは5~15質量%である。
【0088】
本発明によれば、上記の第2の目的は、上記の本発明による材料の調製方法によって達成される。
【0089】
この調製方法は、少なくとも以下の連続工程:
a) 油相と水性相とを含む混合物の剪断を伴う機械的攪拌によって、連続水性相中に分散した油相の液滴から形成される水中油エマルジョンを調製する工程であり、水性相が、活性化溶液、(活性化溶液中でアルミノケイ酸塩源の)溶解/重縮合によってジオポリマーを形成することができるアルミノケイ酸塩源と及び任意選択に界面活性剤を含み、(ジオポリマーとは異なる別個の分離した)少なくとも1種の固体化合物の粒子が、連続水性相とエマルジョンの連続水性相中に分散した油相の液滴によって形成された界面に存在する、工程と、
b) エマルジョンを静置し、選択されたサイズ及び形状が得られるようにそれを形成及び成形し、重縮合によってジオポリマーマトリックスを形成する、工程と、
c) 油相を除去することにより、上記の本発明による材料を得る工程と
を含む。
【0090】
有利には、エマルジョンは、選択されたサイズ及び形状の鋳型内で形成され成形される。
【0091】
本発明による方法は、特に上記で引用した文献に示された先行技術において記載又は示唆されたことがない特定の工程の特定の順序を含む。
【0092】
本発明による方法は、本発明による材料、すなわち、階層的空隙を有し、機械的に強固であり、粒子、特に活性粒子(例えば、液体又は気体流出物を処理する文脈における特定の用途を有する活性粒子)を組み込み、処理される流出物等の流体に対する粒子の強化されたアクセス可能性を与える材料の合成、調製を可能にする。
【0093】
本発明による方法は、合成後の粉砕又は圧縮工程を必要とせずに、制御された形状及びサイズ、例えば1ミリメートルから数十センチメートルの範囲(上記参照)で、前記材料を合成することを可能にする。
【0094】
特に、本発明による方法は、材料のサイズ及び形状に何らかの制限を課さずに、材料の合成を可能にすることに留意することが重要である。
【0095】
したがって、例えば、形成される最終材料、すなわち材料からなる物体のサイズを制限するのは、工程b)で使用され得る鋳型のサイズのみである。
【0096】
本発明による方法は、特に、ジオポリマーとは異なる少なくとも1種の固体化合物の粒子、例えば活性粒子を含むエマルジョンの連続相内での、ジオポリマーをベースとする無機結合剤の合成に必要とされる試薬の使用によって特徴付けられる。
【0097】
本発明によれば、エマルジョンの調製方法は、特にジオポリマー骨格のマクロ細孔間のより良好な相互接続性を可能にし、したがって、材料中を循環する流体の活性粒子へのより良好なアクセス可能性が得られるように最適化される。
【0098】
本発明によれば、新規かつ予想外の方法で、ジオポリマーとは異なる少なくとも1種の固体化合物の粒子、例えば活性粒子及び任意選択に界面活性剤、並びに少なくとも1つのシーケンス、例えば2つの均質化シーケンスを含むプロトコルを使用して、連続相としてジオポリマーの水性活性化溶液を有するエマルジョンが安定化される。
【0099】
後者の2つのパラメーター(すなわち、粒子及び任意に界面活性剤、並びに少なくとも1つの均質化シーケンスを含むプロトコルを使用する安定化)は、細孔、特に、非肺胞状であり、より良好に相互接続され、活性粒子へのより良好なアクセスを可能にする、マクロ細孔の形成を可能にする。
【0100】
言い換えれば、本発明による方法では、工程a)において、水中油型エマルジョンが調製され、より具体的には連続水性相に分散した油相であり、この水性相は、活性化溶液と、溶解/重縮合によりジオポリマーを形成することができるアルミノケイ酸塩源とを含む。このエマルジョンは、ジオポリマーとは異なる少なくとも1種の固体化合物の粒子、特に活性粒子の存在下で安定化される。エマルジョンを安定化させるために粒子と相乗的に作用することができる界面活性剤を添加することが、必要とされる場合もある。
【0101】
このエマルジョンのパラメーターを制御すること、特に油滴のサイズを制御することにより、方法の異なる工程(下記の工程a3)及びa4)を含む)の制御を通じて、材料の最終空隙を制御することが可能になる。
【0102】
アルミノケイ酸塩源を挿入することで、溶解/重縮合プロセスによりエマルジョンの水性相でジオポリマー型無機結合剤を得ることが可能になる。
【0103】
工程a)で調製されたエマルジョンは一般的に、エマルションの総体積に対して、40体積%~80体積%、好ましくは50体積%~60体積%の油相を含む。
【0104】
エマルジョンで固体粒子の濃度は、0.05質量%~20質量%、好ましくは1質量%~10質量%であってよい。
【0105】
混合物の油相は一般的に、1種又は複数の油からなる。「油」という用語は、当業者にとって周知であり、広く使用されている。
【0106】
本発明による方法は、任意の種類の油で適切に実施することができる。
【0107】
有利には、混合物の油相は、一般的に、7~22個の炭素原子、好ましくは12~16個の炭素原子を有する1種又は複数の直鎖又は分岐鎖状のアルカン、例えばドデカン及びヘキサデカン、からなる。
【0108】
好ましくは、混合物の油相は、ドデカンからなる。
【0109】
工程a)で実施される機械的攪拌は、剪断を伴う機械的攪拌である。
【0110】
有利には、剪断速度は、1000~20000rpm、好ましくは2000~15000rpmであってよく、より好ましい剪断速度は10000rpmであってもよい。
【0111】
材料のマクロ空隙のサイズは、エマルジョンの剪断速度に作用することによって制御されてもよい。剪断速度が増加すると、マクロ空隙のサイズは減少する。
【0112】
工程a)において実行される剪断を伴う機械的攪拌(機械的攪拌が剪断と一緒に行われる)は、異なる方法で実施されてよく、これらの方法のそれぞれは、特定の空隙を得ることを可能にする。実際には、より高い剪断速度は、より低い剪断速度に比べて、より小さいマクロ細孔の形成を促す。したがって、エマルジョンの剪断は、ホモジナイザーを使用する機械的剪断、又は超音波を用いた超音波処理剪断であってよい。
【0113】
好ましくは、工程a)で実施される剪断を伴う機械的攪拌は、乳化を目的とした装置、例えばUltraturrax(登録商標)分散-均質化型装置を使用して実施される。工程a)は上記混合物を乳化する工程と言うことができる。
【0114】
言い換えれば、剪断を伴う機械的攪拌という用語は、一般的に、インペラーロッドを備えた撹拌デバイス、又は好ましくは、ローター/固定子システムを有する分散ロッドを装備することができる均質化又は分散デバイス(例えば、Ultra-Turrax、IKA(登録商標)型)を使用する機械的攪拌を意味する。
【0115】
既に上記で特定した通り、有利には、均質化又は分散デバイスにより設定された剪断速度は、1000~20000rpm、好ましくは2000~15000rpmであってよく、より好ましい剪断速度は10000rpmであってよい。
【0116】
「アルミノケイ酸塩源」という表現と「シリカ及びアルミニウムを本質的に含有する試薬材料」という表現は、本発明において、類似したものであり、互換的に使用され得る。
【0117】
本発明による材料のジオポリマーマトリックスを調製するために使用され得るシリカ及びアルミニウムを本質的に含有する試薬材料は、有利には、非晶質アルミノケイ酸塩を含有する固体源である。これらのアルミノケイ酸塩は、特に、例えば、イライト、束沸石、カオリナイト、パイロフィライト、アンダルサイト、ベントナイト、カイヤナイト、ミラナイト(milanite)、グロベナイト(grovenite)、アメサイト、コージェライト、長石、アロフェン等の天然アルミノケイ酸塩鉱物、メタカオリン等の焼天然アルミノケイ酸塩鉱物、純粋なアルミノケイ酸塩をベースとする合成ガラス、アルミナセメント、軽石、それぞれ石炭の燃焼から得られ、高炉内で鉄鉱石を鋳鉄に変換するとき得られるフライアッシュ又は高炉スラグ等の工業プロセスからの焼副生成物若しくは残渣並びにこれらの混合物から選択される。
【0118】
「活性化溶液」という用語は、ジオポリマー形成の分野で周知である高pH食塩溶液を意味する。後者は、シリカ、コロイド状シリカ及び石英ガラスからなる群から特に選択されるケイ酸塩化合物を任意選択に含有してもよい、強アルカリ性水性溶液である。
【0119】
「活性化溶液」、「高pH食塩溶液」及び「強アルカリ性溶液」という表現は、本発明において、類似したものであり、互換的に使用され得る。
【0120】
「強アルカリ性」又は「高pH」という用語は、pHが9超、特に10超、とりわけ11超、より具体的には12超である溶液を意味する。言い換えれば、活性化溶液は、0.01M超、特に0.1M超、とりわけ1M超、より具体的には5~20MのOH-濃度を有する。
【0121】
活性化溶液は、イオン溶液又は塩の形態で上記の補償カチオン又は補償カチオンの混合物を含む。したがって、活性化溶液は、ケイ酸ナトリウム(Na2SiO3)、ケイ酸カリウム(K2SiO2)、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)、水酸化カルシウム(Ca(OH)2)、水酸化セシウム(CsOH)及びこれらの誘導体等の水性溶液から特に選択される。
【0122】
工程b)では、エマルジョンを静置して放置し、ジオポリマー骨格が、エマルジョンの連続相中で重縮合によって形成され得るようにする。
【0123】
この放置、静置工程の間に、合成エマルジョンの加工性により最終材料のサイズ及び形状が規定される。したがって、エマルジョンの加工性に従って、モノリス、ビーズ又は顆粒が得られる。
【0124】
「加工性」という用語は、硬化して最終材料を形成する前の特定の時間間隔において、すなわち、エマルジョンが、硬化して材料を形成する前の、まだ液状又はゲル化した外観を有しているときに、(例えば鋳型を使用して)エマルジョンが形成され成形される能力を意味する。
【0125】
この工程は、工程b)で得られたエマルジョンを、10~60℃の温度、例えば40℃の温度で、本発明による材料が形成されるのに十分な時間放置することによって実行され得る。この時間は、例えば、2時間~3週間、例えば24時間~7日間であり得る。
【0126】
工程c)において、材料の細孔内に依然として存在する油相が除去される。
【0127】
油相は、当業者に公知の任意の技術によって除去することができる。
【0128】
油相は、特に、例えばソックスレー抽出器内での洗浄、続いて、乾燥、超臨界CO2等の超臨界流体で処理、水熱処理、熱処理、又はこれらの異なる処理の組み合わせによって、除去することができる。
【0129】
洗浄により、油相から有機残渣を除去することができ、有機残渣は基本的にマクロ細孔内に存在する。
【0130】
この洗浄は、有機溶媒、例えばTHF、アセトン及びこれらの混合物、例えばTHF-アセトン混合物、好ましくはTHFとアセトンの50-50混合物により実行され得る。
【0131】
この洗浄は、12~36時間、例えば24時間にわたり実行されてよい。
【0132】
好ましくは、この洗浄は、有機溶媒を還流することによって実行される。
【0133】
乾燥は、洗浄に使用される有機溶媒を、一般的に5~10日、例えば7日間の持続時間にわたり、室温にて蒸発させることによって実行され得る。
【0134】
或いは、乾燥は、例えば90℃の温度に加熱することにより実行されてもよい。
【0135】
乾燥は、超臨界CO2等の超臨界流体を使用して行われてもよい。
【0136】
本発明による方法では、本発明による材料、すなわち、特にエマルジョンの安定化に使用される(ただし、材料の求められる用途にも使用される)粒子、好ましくは活性粒子、特に、ナノメートル、サブミクロン又はミクロン粒子を含む、マクロ多孔質材料(ここで、マクロ空隙は油相により生成される)が、任意選択に界面活性剤の相乗的な助力によって、得られる。空隙、(材料のジオポリマー骨格によって付与される)機械的強度、材料の形状及びサイズ、活性サイズの性質及びサイズは、したがって同時に制御される。
【0137】
この方法は、実施が簡単であり、工業的に容易に置き換えられる。
【0138】
要約のために、本発明による材料、すなわち活性粒子を含む多重空隙を有する材料の製造、調製に関して、本発明による方法の利点及び予想外の効果を、とりわけ、以下に列挙する。本発明の方法のこれらの利点のいくつかは、この方法により得ることができる材料に関連する利点であり、実質的に上記に既に記載されたものである。
【0139】
・ 多重空隙及びマクロ細孔間の相互接続性は、エマルジョン(特に油滴のサイズ)を制御することにより完全に制御され、それにより、材料内での、流出物等の流体の輸送特性、及び流体の活性粒子へのアクセス可能性を最適化することが可能になる。
【0140】
・ ジオポリマーマトリックスのメソ空隙及びミクロ空隙が、材料のマクロ細孔の側面、壁コアに組み込まれ得る活性粒子へのアクセス可能性の増大を確保する。
【0141】
・ 最終材料の機械的強度は、強固なアルミノケイ酸塩ジオポリマー骨格によって確保される。
【0142】
・ 本発明による方法は、任意のタイプの粒子、特に活性粒子で、それらの粒子の性質、サイズ、特に2nm~100μm、好ましくは10nm~10μm、粒径分布(ナノメートルでも、サブミクロンでも、又は更にはミクロンでもよい)にかかわらず実施することができる点に留意することが非常に重要である。
【0143】
このためには、出発エマルジョンを得て安定化させるためにパラメーターを適合させることだけが単に必要である。
【0144】
・ 活性部位のサイズは、他で得られる、本発明による材料の配合物に組み込まれた粒子のサイズ(ナノメートル、サブミクロン又はミクロン)に直接対応する。
【0145】
・ 得られた成形された最終材料のサイズは、完全にモジュール式であり、例えば、工程b)で使用される鋳型に依存する。
【0146】
・ 本発明による方法は、温和な条件下で、低温にて、一般的に室温及び大気圧下で実行される。本発明による方法は、特に活性化溶液及びアルミノケイ酸塩源のために、安価で毒性のない試薬を使用する。反応媒体は、基本的に水性である。
【0147】
・ 本発明による方法は、簡単で信頼性があり、実施が容易であり、安価で容易に入手可能な試薬を使用する。本発明による方法は、簡単な設備及び装置で実施することができる。特に、本発明による方法は、(下記の工程a3)及びa4を含む)工程の全てが単一の反応器内で実施することができる方法である。言い換えれば、本発明による方法は、「ワンポット」方法として記載されてよい。
【0148】
したがって、工程a)でエマルジョンを生成するために使用された容器、反応器が、後に、工程b)及び工程c)において鋳型として使用される場合、工程b)は、工程a)で使用されたものと同じ反応器である単一の反応器、容器内で実施することができる。
【0149】
・ 本発明による方法は、工業的規模に容易に置き換えられる。
【0150】
有利には、工程a)の前に、油相及び水性相を含む混合物を調製するために以下のサブ工程a1)~a4):
a1) 水中又は界面活性剤を含む水性溶液中で(ジオポリマーとは異なる別個の分離した)少なくとも1種の固体化合物の粒子、好ましくは活性粒子の水性溶液を調製する工程と、
a2) 工程a1)の最後で得られた粒子の水性懸濁液に油相を加え、これにより油相と水性懸濁液からなる水性相とを含む二相混合物が得られる、工程と、
a3) 水性活性化溶液(ケイ酸アルカリ)を、工程a2)の最後で得られた二相混合物の水性相に加える工程と、
a4) 溶解/重縮合によりジオポリマーを形成することができるアルミノケイ酸塩源を、工程a3)の最後で得られた二相混合物の水性相に加える工程と
が実行される。
【0151】
一般的に、工程a1)で調製された粒子の水性懸濁液は、2g/L~1000g/Lの粒子濃度を有する。
【0152】
懸濁液で粒子の濃度は、調製された材で所望される、ジオポリマーとは異なる少なくとも1種の固体化合物の粒子の最終濃度に従って選択される。
【0153】
界面活性剤は、アニオン性、カチオン性、非イオン性界面活性剤及びこれらの混合物から選択されてよい。界面活性剤の例は、テトラデシルトリメチルアンモニウムブロミド(TTAB)である。
【0154】
工程a1)で調製された水性懸濁液で界面活性剤濃度は、一般的に、粒子の質量に対して、0.1質量%~20質量%である。
【0155】
有利には、工程a2)の後、工程a3)の前に、油相と水性懸濁液からなる水性相とを含む二相混合物は、剪断を伴う機械的撹拌を受け、及び/又は工程a3)の後、工程a4)の前に、二相混合物は、剪断を伴う機械的攪拌を受ける。
【0156】
剪断を伴うこの機械的攪拌は、既に詳細に上記に記載されている。
【0157】
本発明はまた、化学反応を触媒するための、流体を濾過するための、又は流体に含有される物質の分離若しくは抽出するための、本発明による材料の使用に関する。この流体は、いかなる物理的状態であってもよく、特に液体又は気体状態であってもよい。
【0158】
本発明による材料は、特に、排他的にではなく、少なくとも1種の金属カチオン又はメタロイドカチオンを、それを含有する液状媒体から分離するための方法であって、前記液状媒体を、本発明による材料と接触するように配置する、方法に使用されてよい。
【0159】
この媒体は、液体又は気体媒体であってよい。
【0160】
本発明による材料は、その優れた特性、例えば、優れた交換容量、優れた選択性、高い反応速度のため、そのような使用に特に適している。
【0161】
この優れた効果は、少量の活性粒子、例えば、ゼオライト等の無機固体金属カチオン交換体化合物の粒子により得られる。
【0162】
加えて、その特定の構造からもたらされる、本発明による材料の優れた機械的強度及び機械的安定特性は、カラム内でのコンディショニング及び分離方法の連続的実施を可能にし、したがって、例えば複数の工程を含む処理チェーン又はラインにおいて、既存の設備に容易に組み込まれ得る。
【0163】
有利には、前記液状媒体は、水性溶液等の水性液状媒体であってよい。
【0164】
前記液状媒体は、処理液又は工業廃液であってもよい。
【0165】
有利には、前記液状媒体は、原子力産業及び施設並びに放射性核種を使用する作業から得られる液体及び流出物から選択されてもよい。
【0166】
一般的に、前記カチオンは、0.1ピコグラム~500mg/L、好ましくは0.1ピコグラム~100mg/Lの濃度で存在してよい。
【0167】
「金属」という用語はまた、前記金属の同位体、特に放射性同位体をも網羅し、「メタロイド」という用語はまた、前記メタロイドの同位体、特に放射性同位体をも網羅する。
【0168】
有利には、カチオンは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、重金属、希土類(スカンジウム、イットリウム及びランタニド)、アクチニド、希ガス、並びにその同位体、特にその放射性同位体から選択される元素のカチオンであってよい。
【0169】
ゼオライトは、そのようなカチオンの分離に特に適している。
【0170】
例えば、カチオンは、Sr、Cs、Co、Ag、Ru、Fe及びTl並びにその同位体、特にその放射性同位体から選択される元素のカチオンであってよい。
【0171】
特に、カチオンは、134Cs、又は137Cs、又は90Srのカチオンであってよい。
【0172】
この方法は、方法において使用される、本発明による材料に本質的に付随する全ての利点を有し、既に上記に記載されている。
【0173】
以下では、特に実施例の対象である具体的な実施形態とともに、本発明をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0174】
図1】実施例1で調製されたゼオライトLTAのサブミクロン粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)により得られた画像を示す図である。図1に適用されたスケールは1μmである。
図2】プロトコルP0を使用する実施例1で調製されたゼオライトLTAのサブミクロン粒子を組み込んだジオポリマーを含むモノリスの写真を示す図である。
図3A】実施例1で調製されたモノリスの内部のSEM画像を示す図である。図3Aに適用されたスケールは70μmである。
図3B】実施例1Aで調製されたモノリスの内部のSEM画像を示す図である。図3Bに適用されたスケールは70μmである。
図4】純粋な合成ジオポリマー(実施例1B)(曲線A)、並びにP0によりゼオライトによって合成されたジオポリマー(実施例1)(曲線B)、及びP0によりゼオライトを含めずに合成されたジオポリマー(実施例1A)(曲線C)という2つのジオポリマーの細孔径分布を示すグラフである。x軸は細孔径(単位:nm)を表し、y軸はdV/dlog(D)細孔体積(単位:cm3/g・nm)を表す。
図5】サブミクロンゼオライトLTA(曲線A)、P0により合成されたゼオライトを含まないジオポリマー(実施例1A)(曲線B)、P0により合成されたゼオライトLTAを含むジオポリマー(実施例1)(曲線C)の回折図を示すグラフである。x軸は2θ(単位:°)を表し、y軸は強度(任意の単位)を表す。
図6A】プロトコルP1に従って、実施例2で調製されたジオポリマーモノリスのSEM画像を示す図である。図6Aに適用されたスケールは70μmである。
図6B】プロトコルP2に従って、実施例2で調製されたジオポリマーモノリスのSEM画像を示す図である。図6Bに適用されたスケールは70μmである。
図6C】プロトコルP3に従って、実施例2で調製されたジオポリマーモノリスのSEM画像を示す図である。図6Cに適用されたスケールは70μmである。
図7】プロトコルP1、P2及びP3に従って実施例2で調製されたモノリス中の細孔径分布を示すグラフである。x軸は細孔径(単位:nm)を表し、y軸はdV/dlog(D)細孔体積(単位:cm3/g・nm)を表す。
図8】プロトコルP0に従って調製されたジオポリマーゼオライト(サブミクロンゼオライト粒子を含まない)及びプロトコルP0、P1、P2及びP3に従って調製されたジオポリマーモノリス(ゼオライト粒子を含む)について決定されたKd(単位:mL/g)(実施例3)の値を示す棒グラフである。
図9】実施例4で使用されたミクロンゼオライト粒子のSEM画像を示す図である。図9に適用されたスケールは5μmである。
図10】ゼオライト4Aのミクロン粒子(曲線A)、プロトコルP3に従って調製されたゼオライト4Aの粒子を含まないジオポリマー(曲線B)、及びプロトコルP3に従って調製されたゼオライト4Aの粒子を含むジオポリマー(曲線C)の回折図(実施例4B)を示すグラフである。x軸は2θ(単位:°)を表し、y軸は強度(任意の単位)を表す。
図11】実施例5で使用されたCSTのナノメートル粒子の粒径分布分析を示すグラフである。x軸はサイズ(単位:μm)を表し、y軸は%(単位:数)を表す。
図12】CSTのナノ粒子(曲線A)、プロトコルP3に従って調製されたCSTを含まないジオポリマー(曲線B)、及びプロトコルP3に従って調製されたCSTのナノ粒子を含むジオポリマー(曲線C)の回折図(実施例5B)を示すグラフである。
図13】純粋なジオポリマーに関して生成された窒素吸着等温線を示すグラフである。x軸は相対圧力(P/P°)を表し、y軸は窒素吸着量(単位:cm3/g)を表す。
【発明を実施するための形態】
【0175】
以下では、下記の実施例を参照して本発明を説明するが、これらは例示のみを目的としており、限定を目的としていない。
【実施例
【0176】
(実施例1)
この実施例では、本発明による、サブミクロンゼオライトを組み込んだジオポリマーを含むモノリシック材料の製造を実行する。
【0177】
より正確には、この実施例では、本発明による、ゼオライトLTA(水性媒体でSrの効率的かつ選択的な吸着剤として知られる)のサブミクロン粒子を、マクロ多孔質ジオポリマーマトリックス、すなわち「骨格」内に組み込む。
【0178】
・ ゼオライトLTAのサブミクロン粒子の合成
ゼオライトLTAのサブミクロン粒子を合成するためのプロトコルは以下の通りである。
- 2.65gのNaOHペレット(Sigma-Aldrich(登録商標)社により販売)及び5.75gのNaAlO2粉末(VWR(登録商標)社により販売)を、それぞれ26.25mL及び35mLの水に別々に溶解させる。
- 次いで、2つの溶液をオートクレーブで数分間激しく撹拌しながら混合する。
- 次いで、2gのSiO2粉末(Evonik Industries(登録商標)社から入手可能なAerosil(登録商標)380)を、オートクレーブに添加し、オートクレーブを気密封止する。
- 40℃で20時間、次いで70℃で24時間、熱処理を行う。
- 得られた粉末を濾過により最終的に回収し、水で洗浄し、80℃で一晩乾燥させる。
【0179】
300~500nmのサイズのゼオライトLTAのサブミクロン粒子が、最終的に得られる(図1を参照)。
【0180】
・ ゼオライトLTAのサブミクロン粒子を組み込んだジオポリマーを含むモノリスの形態での材料の製造。
上記の合成したゼオライトLTAのサブミクロン粒子を組み込んだジオポリマーを含む材料を合成するためのプロトコルは、以下のプロトコルP0であり、最初に以下の連続工程を含む。
- 工程1: 617mgの(サブミクロン粒子からなる)ゼオライトLTA粉末を、界面活性剤、すなわちテトラデシルトリメチルアンモニウムブロミド(TTAB)(Sigma-Aldrich(登録商標)社により販売)により34.8g・L-1に濃縮された1.774mLの水性溶液に加える。粉末を加えた濃縮水性溶液を超音波浴に15分間置いた。
- 工程2: さらに、粉体を加えた濃縮水性溶液に、5mLの油相、すなわちドデカン(Sigma-Aldrich(登録商標)社により販売)を加える。
- 工程3: 修飾ケイ酸カリウム水性溶液をベースとする、Betol(登録商標) K5020T(Wollner(登録商標)社から入手可能)と呼ばれる、81質量%の市販無機結合剤で構成され、かつ、30質量%のSiO2、18質量%のK2O、及び52質量%のH2O;並びに19質量%のKOH(85%、Sigma-Aldrich(登録商標)社により販売)で構成された、2.12mLの溶液を加える。
- 工程4: 2.64gのメタカオリン粉末(BASF社製Metamax(登録商標))を加える。
- いわゆる「UT」工程5: S25N-18G分散ヘッドを装備したUltra-Turrax(登録商標)ホモジナイザーを使用して、混合物を、10000rpmの剪断速度で1分間最終的に剪断する。
【0181】
このようにして、工程5の最後にエマルジョンを得る。
【0182】
この粘性のエマルジョンを、直径1cmの円筒型内に入れ、48時間静置して放置した。
【0183】
脱型後、高さ約4cm、直径1cmの固体モノリシック円筒状材料が得られる。
【0184】
次いで、このモノリシック材料を、50-50のTHF-アセトン混合物によりソックスレー抽出器で洗浄して、ドデカンを除去し、次いで80℃にて乾燥させる。
【0185】
乾燥の24時間後、その寸法を保持した固体及び強固なモノリスが得られる(図2)。
【0186】
(実施例1A)
この実施例では、実施例1に類似するがゼオライトLTAのサブミクロン粒子を含まないモノリスの形態で材料を製造する。このモノリスを、プロトコルP0と呼ばれる実施例1と同じプロトコルに従って合成する。
【0187】
(実施例1B)
この実施例では、純粋なジオポリマー(純粋な合成ジオポリマー)、すなわち、プロトコルP0に従って、サブミクロンゼオライトなしで、TTABなしで、かつ、エマルジョンを形成するために油を加えずに製造する。
【0188】
得られたジオポリマーは、71.3m2・g-1の比表面積を有する。
【0189】
(実施例1C)
この実施例では、実施例1、1A及び1Bで調製した材料の特性決定を行う。
【0190】
・ 実施例1及び実施例1Aにおいて調製した2つのモノリスの内部を、走査型電子顕微鏡(SEM)によって観察する。
得られた画像を図3A及び図3Bに示す。
【0191】
以下のことが観察される。
- ゼオライト粒子が存在しない場合には、材料は、相互接続がない(又はごくわずかしかない)肺胞細孔を有する。
- ゼオライトの存在下では、材料のミクロ構造は完全に異なる。細孔はもはや肺胞構造を有さず、その相互接続が強化されている。
【0192】
・ 実施例1及び1Aで調製したモノリスを窒素吸着-脱着により分析して、その比表面積(BETモデル)及び細孔径分布(<60nm、BJHモデル)を決定する。
ゼオライトを含むジオポリマー(実施例1の材料)及びゼオライトを含まないジオポリマー(実施例1Aの材料)それぞれについて、34.4及び37.8m2・g-1の比表面積が測定される。
【0193】
図4は両方の材料のメソ細孔径分布を示す。
【0194】
この図は、実施例1Bで調製した純粋なジオポリマーのメソ細孔径分布も示している。
【0195】
純粋な合成ジオポリマー(実施例1B)及びゼオライトを含めずプロトコルP0を使用して調製した材料(実施例1A)は、19~20nm付近を中央とする細孔径分布を有するが、ゼオライトを含めてP0プロトコルを使用して合成した材料(本発明による実施例1)は、約27nmを中央とすることが観察される。
【0196】
したがって、配合物でゼオライトの存在は、メソ細孔のサイズを増大させることができる。
【0197】
図13は、純粋なジオポリマーの吸着等温線を示す。この等温線は、IUPAC分類においてIV型形状を有し、低圧力での曲線の形状により、ジオポリマーの構造中のミクロ細孔の存在を示す。
【0198】
次いで、実施例1及び実施例1Aにおいて調製した2つのモノリスを粉末形態に粉砕し、X線回折(XRD)分析を行う。
【0199】
XRD分析を、純粋なサブミクロンゼオライトLTA粉末についても実施する。
【0200】
これらの分析の結果を図5に示す。
(注意: 図5では、「純粋なジオポリマー」について言及しているが、これは、サブミクロンゼオライトを含めず、TTABを含めずに合成し、かつ、エマルジョンを形成するために油を加えないで合成したジオポリマー(実施例1Bのジオポリマー)である。
【0201】
図5に示す3つの回折図は、ゼオライトLTAのサブミクロン粒子が、本発明による実施例1で調製した材料で、確かにマクロ多孔質ジオポリマーの構造に組み込まれていることを示す。
【0202】
(実施例1D)
この実施例では、ストロンチウム(Sr)を含有する流出物の汚染除去に対する、本発明による実施例1で調製した材料及び実施例1Aで調製した材料の有効性を検討した。
【0203】
言い換えれば、この実施例では、本発明による実施例1で調製した材料及び実施例1Aで調製した材料を、Sr吸着材料としての用途に関して試験した。
【0204】
したがって、溶液でSrの収着試験を実施して、実施例1で調製した材料のジオポリマー骨格に挿入されたゼオライトLTAが実際に有効であることを実証することを可能にする。
【0205】
ストロンチウム収着を測定するために使用するパラメーターは、以下の式に従って計算されるKd(mL/gを単位とする分配係数)である。
【0206】
【数1】
【0207】
この式中、
- [Sr]init及び[Sr]finはそれぞれ、溶液での初期及び最終Sr濃度(mg/L)を表し、
- Vは、溶液の体積(mL)であり、
- mは、材料の質量(g)である。
【0208】
これらの収着試験に使用するプロトコルは以下の通りである。
- 0.05mol/LのNaNO3、50ppmのCa(Ca(NO3)2塩の形態で加える)、2ppmのCs(CsNO3塩の形態で加える)、及び2ppmのSr(Sr(NO3)2塩の形態で加える)を含む50mLのマトリックス(水性溶液)に、50mgの材料(モノリシック形態)を入れる。
- 全体を回転攪拌機で24時間攪拌する。
- 攪拌後、15mlの上清をシリンジで抽出し、この試料を0.22μmのシリンジフィルターで濾過し、次いで、誘導結合プラズマ(ICP)により残留Sr濃度を分析する。
【0209】
・ ゼオライトを含まないジオポリマーモノリス(実施例1A)は1128mL/gのKdを有する一方で、ゼオライトLTAの粒子を含有するジオポリマーモノリス(本発明による実施例1)は5024mL/gのKdを有する。
この結果は、マクロ多孔質ジオポリマー中に埋め込まれたゼオライトLTAの粒子(本発明による実施例1)が、実質的に5倍という大幅に改善された汚染除去を可能にすることを示している。
【0210】
これは、汚染された流出物によるゼオライト粒子へのアクセス可能性を明らかに示している。
【0211】
(実施例2)
この実施例では、モノリス材料のマクロ空隙に対する製造方法の影響を検討するために、サブミクロンゼオライトを組み込んだジオポリマーを含むモノリシック材料を、各種方法によって調製する。
【0212】
したがって、材料のマクロ空隙及びマクロ細孔の相互接続性に対する製造方法の影響を観察するために、「UT」工程と呼ばれる1つ又は2つの追加工程を、プロトコルP0の異なる工程(実施例1の工程1、2、3、4及び5(「UT」)と呼ばれる)に加えた。
【0213】
したがって、プロトコルP1、P2及びP3と呼ばれる、3つの新しいプロトコルを試験し、下記の表1に記載する。
【0214】
加えられた材料の量は、実施例1で使用されたものと同様である。したがって、プロトコルP0、P1、P2及びP3を使用して得た最終材料は、全く同じ最終的化学組成を有する。
【0215】
【表1】
【0216】
実施例1及び実施例2の特定の文脈において本明細書に示されたプロトコルP0、P1、P2、P3及びP4の説明は、容易に一般化することができ、特に異なる工程の特定の条件は、上記の「課題を解決するための手段」に関して容易に一般化することができることを留意することは重要である。
【0217】
使用したプロトコルに関係なく、エマルジョンを系統的に安定化させ、次いで、鋳型内に入れて48時間静置してジオポリマー骨格の凝結、及び高さ数センチメートル、直径1cmの円筒形モノリスの形成を得た。
【0218】
ドデカンを除去するために50-50のTHF-アセトン混合物によりソックスレー抽出器で24時間洗浄した後、モノリスを24時間80℃にて乾燥させる。
【0219】
次いで、得られたモノリスのそれぞれの内部を、走査電子顕微鏡(SEM)により観察する。
【0220】
得られた画像は、図6A図6B及び図6Cに示されている。
【0221】
以下のことが観察される。
- プロトコルP1(図6A)は、細孔が僅かに相互接続されるように見える、いわゆる「肺胞」材料を生じさせる。
- プロトコルP2(図6B)は、非肺胞及びより相互接続された細孔の存在を生じさせることと同様に、肺胞細孔残基を有する中間ミクロ構造を生成する。
- プロトコルP3(図6C)は、大部分の非肺胞及び強力に相互接続された細孔を生じさせる。
【0222】
モノリスを窒素吸着-脱着により分析して、その比表面積(Brunauer、Emmett及びTellerモデル、「BET」)並びにその細孔径分布(<60nm、Barrett、Joyner、Halendaモデル、「BJH」)を決定する。プロトコルP1、P2及びP3で調製した材料それぞれについて、33.1、30.6及び31.5m2・g-1の比表面積を測定する。
【0223】
図7は3つの材料における細孔径分布(<60nm)を示す。
【0224】
各材料の細孔径分布は、ゼオライトを含みP0を使用して合成した材料について得られたものと同様に、27nmを中央とする。
【0225】
したがって、合成プロトコルの変更は、メソ細孔径分布に影響を及ぼすようには見えない。
【0226】
したがって、これらの結果は、壁のメソ空隙を変更しない、マクロ空隙及び材料のマクロ細孔の相互接続性に対する製造工程の反転の影響を明らかに示している。
【0227】
これらの結果は、プロトコルP3が好ましいプロトコルであり、次いでプロトコルP0、次いでプロトコルP2、最後にプロトコルP1の順になることを示す。
【0228】
(実施例3)
この例では、サブミクロンゼオライトLTA粒子を含有するジオポリマーを含むモノリシック材料の汚染除去の有効性に対する製造方法の影響を検討する。
【0229】
この目的で、ストロンチウムを含有する流出物の汚染除去に対する、プロトコルP1、P2及びP3に従って調製した材料の有効性を検討した。
【0230】
実施例1Dで実施した実験と同様の「バッチ」実験を実施した。
【0231】
図8は、プロトコルP1、P2及びP3によって調製した材料で得たKd値を示す。
【0232】
図8はまた、(プロトコルP0に従って実施例1Aで調製した)ゼオライトを含まないジオポリマーモノリスにより得たKd値(1128mL/gのKd、実施例1C参照)、及びプロトコルP0に従って調製したゼオライトLTA粒子を含有するジオポリマーモノリスにより得たKd値(本発明による実施例1、5024mL/gのKd、実施例1D参照)を示す。
【0233】
図8では、Kd値間の明確な差が観察される。これは、汚染除去されるべき流出物に対して活性ゼオライト粒子がより多く又はより少なくアクセス可能になるようにする材料のさまざまな内部空隙ミクロ構造のためである。
【0234】
したがって、
- プロトコルP0及びP3に従って調製した材料は、非肺胞型でより相互接続されたミクロ構造を有し、かつ、より高いKd値を有する。
- プロトコルP1に従って調製した材料は、非常に肺胞型であり、相互接続が少ない構造を有し、かつ、ゼオライトを含まない材料のKdの僅か2倍であるKdを有する。
- プロトコルP2に従って調製された材料は、中間ミクロ構造を有し、したがって中間Kdを生じる。
【0235】
ここでも、これらの結果は、プロトコルP3が好ましいプロトコルであり、次いでプロトコルP0、次いでプロトコルP2、最後にプロトコルP1の順になることを示す。
【0236】
(実施例4)
この実施例では、本発明による、ミクロサイズのゼオライトを組み込んだジオポリマーを含むモノリシック材料の製造を実施する。
【0237】
より正確には、この実施例では、本発明による、ゼオライト4A(水性媒体でSrの効率的かつ選択的な吸着剤として知られる)のミクロン粒子を、マクロ多孔質ジオポリマーマトリックス内に組み込む。
【0238】
ゼオライト4Aのミクロン粒子は、CTI(Ceramiques Techniques Industrielles)社によって製造される市販の粒子である。
【0239】
図9は、これらの粒子のSEM画像を示し、そのサイズは4~5μmである。
【0240】
製造プロトコルP3(実施例2に記載)を使用し、サブミクロンゼオライトの質量は、同質量のミクロンゼオライトで置換されている。
【0241】
このように、プロトコルP3の最終段階の終わりに、粘性のエマルジョンが得られる(工程「UT」)。
【0242】
この粘性のエマルジョンを鋳型内に入れ、48時間静置する。
【0243】
脱型後、モノリシック材料が得られる。
【0244】
次いで、このモノリシック材料を、50-50のTHF-アセトン混合物によりソックスレー抽出器で洗浄して、ドデカンを除去し、次いで80℃にて乾燥させる。
【0245】
24時間の乾燥後、高さ数センチメートル、直径1cmの円筒形モノリスが得られる。
【0246】
次にモノリスを粉末形態に粉砕する。次いで、X線回折(XRD)分析を実行する。
【0247】
(実施例4A)
この実施例では、実施例4に類似するがゼオライト4Aのミクロン粒子を含まないモノリスの形態で材料を製造する。このモノリスを、ミクロンゼオライトを含めず、TTABを含めず、かつ、エマルジョンを形成するのに油を加えずに、プロトコルP3と呼ばれる実施例4と同じプロトコルに従って合成する。
【0248】
次にモノリスを粉末形態に粉砕する。次いで、X線回折(XRD)分析を実行する。
【0249】
(実施例4B)
この実施例では、実施例4及び4Aの最後に得られた粉末のX線回折(XRD)分析を実行する。
【0250】
XRD分析を、ミクロンゼオライト4A粉末についても実施する。
【0251】
これらのXRD分析の結果を図10に示す。
(注意:図10では、「純粋なジオポリマー」について言及しているが、これは、ミクロンゼオライトを含めず、TTABを含めずに合成し、かつ、エマルジョンを形成するために油を加えないで合成したジオポリマー(実施例4Aのジオポリマー)である。
【0252】
図10に示す3つの回折図は、ミクロンゼオライト4A粒子が、確かにマクロ多孔質ジオポリマーの構造に組み込まれていることを示す。
【0253】
(実施例4C)
この実施例では、ストロンチウム(Sr)を含有する流出物の汚染除去に対する、本発明による実施例4で調製した材料の有効性を検討した。
【0254】
このために、実施例1Dで実施した試験と同様の「バッチ」試験を実施した。
【0255】
活性粒子を含まないジオポリマー(実施例1D参照)の1128mL/gのKdを超える、5528mL/gのKdが得られ、材料の有効性が示された。
【0256】
(実施例5)
この実施例では、本発明による、ナノメートル結晶性ケイチタン酸塩(CST)粒子を組み込んだジオポリマーを含むモノリシック材料の製造を実行する。
【0257】
より正確には、この実施例では、本発明による、結晶性ケイチタン酸塩(CST)(水性媒体でSrの効率的かつ選択的な吸着剤として知られる)のナノメートル粒子を、マクロ多孔質ジオポリマー「骨格」マトリックス内に組み込む。
【0258】
ナノメートルCST粒子は、UOP社によって製造される市販の粒子である。
【0259】
図11は、これらの粒子のレーザー粒径分布分析を示し、超音波による分散後の溶液で、粒子のサイズが約10~20nmであることを示す。
【0260】
製造プロトコルP3(実施例2に記載)を使用し、サブミクロンゼオライトの質量は、同質量のCSTで置換されている。
【0261】
このように、プロトコルP3の最終段階の終わりに、粘性のエマルジョンを得る(工程「UT」)。
【0262】
この粘性のエマルジョンを鋳型内に入れ、48時間静置する。
【0263】
脱型後、モノリシック材料が得られる。
【0264】
次いで、このモノリシック材料を、50-50のTHF-アセトン混合物によりソックスレー抽出器で洗浄して、ドデカンを除去し、次いで80℃にて乾燥させる。
【0265】
24時間の乾燥後、高さ数センチメートル、直径1cmの円筒形モノリスが得られる。
【0266】
次にモノリスを粉末形態に粉砕する。
【0267】
(実施例5A)
この実施例では、実施例5に類似するがナノメートルCST粒子を含まないモノリスの形態の材料を製造する。このモノリスを、プロトコルP3と呼ばれる実施例5と同じプロトコルに従って合成する。
【0268】
次にモノリスを粉末形態に粉砕する。
【0269】
(実施例5B)
この実施例では、実施例5及び5Aの最後に得られた粉末のX線回折(XRD)分析を実行する。
【0270】
XRD分析を、ナノメートルCST粉末についても実施する。
【0271】
これらのXRD分析の結果を図12に示す。
(注意:図12では、純粋なジオポリマーについて言及しているが、これは、CSTを含めず、TTABを含めずに合成し、かつ、エマルジョンを形成するために油を加えないで合成したジオポリマー(実施例4Aのジオポリマー)である。
【0272】
これら3つの回折図は、ナノメートルCST粒子が、確かにマクロ多孔質ジオポリマーの構造に組み込まれていることを示す。
【0273】
(実施例5C)
この実施例では、ストロンチウム(Sr)を含有する流出物の汚染除去に対する、本発明による実施例5で調製した材料の有効性を検討した。
【0274】
このために、実施例1Dで実施した試験と同様の「バッチ」試験を実施する。
【0275】
活性粒子を含まないジオポリマー(実施例1D参照)の1128mL/gのKdを超える、4732mL/gのKdが得られ、材料の有効性が示された。
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【国際調査報告】