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特表2023-513491アスパシタラビン薬学的組成物およびその使用
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  • 特表-アスパシタラビン薬学的組成物およびその使用 図1
  • 特表-アスパシタラビン薬学的組成物およびその使用 図2A
  • 特表-アスパシタラビン薬学的組成物およびその使用 図2B
  • 特表-アスパシタラビン薬学的組成物およびその使用 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-31
(54)【発明の名称】アスパシタラビン薬学的組成物およびその使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/506 20060101AFI20230324BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230324BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20230324BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20230324BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20230324BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20230324BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20230324BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20230324BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20230324BHJP
   A61K 47/69 20170101ALI20230324BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20230324BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20230324BHJP
【FI】
A61K31/506
A61P35/00
A61P35/02
A61K9/20
A61K9/48
A61K9/06
A61K9/10
A61K9/14
A61K9/08
A61K47/69
A61K47/32
A61K47/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022547205
(86)(22)【出願日】2021-02-04
(85)【翻訳文提出日】2022-08-03
(86)【国際出願番号】 IL2021050137
(87)【国際公開番号】W WO2021156869
(87)【国際公開日】2021-08-12
(31)【優先権主張番号】62/969,769
(32)【優先日】2020-02-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】518181121
【氏名又は名称】バイオサイト リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】弁理士法人大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シュミロフ、マルガリータ
(72)【発明者】
【氏名】テスラー、ショシ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA09
4C076AA11
4C076AA22
4C076AA29
4C076AA36
4C076AA53
4C076AA60
4C076AA93
4C076BB01
4C076BB11
4C076BB13
4C076BB14
4C076BB16
4C076BB40
4C076CC27
4C076EE16E
4C076EE16Q
4C076EE23E
4C076EE23Q
4C076EE39E
4C076EE39Q
4C076FF15
4C076FF36
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA10
4C086BC42
4C086GA02
4C086GA07
4C086GA13
4C086GA14
4C086MA02
4C086MA05
4C086MA17
4C086MA23
4C086MA28
4C086MA35
4C086MA37
4C086MA43
4C086MA52
4C086MA55
4C086MA59
4C086MA66
4C086NA02
4C086NA03
4C086ZB26
4C086ZB27
(57)【要約】
本発明は、(BST-236およびAstarabine(登録商標)としても知られる)アスパシタラビンまたはその薬学的に許容される塩と、安定剤および/または可溶化剤と、を含む組成物であって、安定剤および/または可溶化剤が、線状ポリマーまたはその誘導体、包接化合物(すなわち、シクロデキストリン)、およびそれらの組み合わせなどの少なくとも1つの水溶性の安定剤および/または可溶化剤から選択される、組成物に関する。本発明は、特に新生物疾患の治療に使用するための、組成物の使用にさらに関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(S)-2-アミノ-4-((1-((2R,3S,4S,5R)-3,4-ジヒドロキシ-5-(ヒドロキシメチル)テトラヒドロフラン-2-イル)-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリミジン-4-イル)アミノ)-4-オキソブタン酸(アスパシタラビン)またはその薬学的に許容される塩と、
少なくとも1つの水溶性の安定剤および/または可溶化剤と、
を含む組成物。
【請求項2】
(S)-2-アミノ-4-((1-((2R,3S,4S,5R)-3,4-ジヒドロキシ-5-(ヒドロキシメチル)テトラヒドロフラン-2-イル)-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリミジン-4-イル)アミノ)-4-オキソブタン酸(アスパシタラビン)またはその薬学的に許容される塩と、
少なくとも1つの水溶性の安定剤および/または可溶化剤と、
を含む組成物であって、
-80℃~30℃の範囲の温度で少なくとも1か月間貯蔵される場合、および、
水溶液として製剤化されて-80℃~30℃の範囲の温度で少なくとも24時間貯蔵される場合に、化学的かつ物理的に安定である、組成物。
【請求項3】
(S)-2-アミノ-4-((1-((2R,3S,4S,5R)-3,4-ジヒドロキシ-5-(ヒドロキシメチル)テトラヒドロフラン-2-イル)-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリミジン-4-イル)アミノ)-4-オキソブタン酸(アスパシタラビン)またはその薬学的に許容される塩と、
少なくとも1つの水溶性の安定剤および/または可溶化剤と、を含む組成物であって、
水溶液中の前記組成物内の前記アスパシタラビンの濃度が、20~1000mg/mlである、組成物。
【請求項4】
前記少なくとも1つの水溶性の安定剤および/または可溶化剤が、線状ポリマー、包接化合物、またはそれらの組み合わせである、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記線状ポリマーが、非イオン性である、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記線状ポリマーが、イオン性である、請求項4に記載の組成物。
【請求項7】
前記線状ポリマーが、ポリ(ビニルアルコール)、ポリアクリルアミド、ポリエチレングリコール(ポリエチレンオキシド)(PEG)、ポリエチレンオキシド(PEO)もしくはポリオキシエチレン(POE)、ポリオキシプロピレン(ポリ(プロピレンオキシド))と2つのポリオキシエチレン(ポリ(エチレンオキシド))とを含むトリブロックコポリマー(ポロキサマー)、ポリビニルピロリドン(PVP)、またはそれらの任意の組み合わせを含む、請求項4~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記組成物が、アスパシタラビンと、ポロキサマーと、を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記組成物が、アスパシタラビン、および、ポロキサマーとポリビニルピロリドン(PVP)との組み合わせを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記包接化合物が、シクロデキストリンである、請求項4に記載の組成物。
【請求項11】
前記組成物が、アスパシタラビンと、シクロデキストリンと、を含む、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記アスパシタラビンと、前記線状ポリマーまたは前記包接化合物との重量比が、99:1~1:10である、請求項4に記載の組成物。
【請求項13】
前記線状ポリマーまたは前記包接化合物が、0.1%~30%w/wの重量パーセンテージである、請求項4に記載の組成物。
【請求項14】
前記組成物が、非経口組成物、経口組成物、鼻腔内組成物、または吸入組成物として製剤化される、請求項1~13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
前記非経口組成物が、溶液、懸濁液、注射または注入のための乳剤、注射または注入のための粒子、注射可能送達系としてのリポソーム、注射または注入のための粉末、および注射のためのゲルから選択される、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
前記非経口組成物が、静脈内、動脈内、筋肉内、皮下、腹腔内、脳内、脳室内、くも膜下腔内、または皮内投与経路によって投与される、請求項14または15に記載の組成物。
【請求項17】
前記経口組成物が、錠剤、丸剤、カプセル、糖衣錠、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁液、粉末、または液体形態から選択される、請求項14に記載の組成物。
【請求項18】
前記組成物が、注入または注射のために、水性媒体中で製剤化され、前記水性媒体が、2.2~8のpH範囲である、請求項1~17のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項19】
前記pH範囲が、4~8である、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
アスパシタラビン塩が、酢酸塩、塩酸塩、臭化水素塩、TFA塩、メタンスルホン酸塩、リン酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、ホウ酸塩、安息香酸塩、トルエンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、アスコルビン酸塩、重硫酸塩、硫酸塩、マレイン酸塩、ギ酸塩、マロン酸塩、ニコチン酸塩、およびシュウ酸塩からなる群から選択される請求項1~19のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項21】
前記アスパシタラビン塩が、塩酸塩である、請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
新生物疾患を治療する方法であって、かかる治療を必要とする対象に、請求項1~21のいずれか一項に記載の組成物を投与することを含む、方法。
【請求項23】
前記新生物疾患が、血液がんおよび非血液がんからなる群から選択される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記血液がんが、白血病、リンパ腫、骨髄腫、および骨髄異形成症候群(MDS)からなる群から選択される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記白血病が、急性骨髄性白血病(AML)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、慢性骨髄性白血病(CML)、および慢性リンパ芽球性白血病(CLL)からなる群から選択される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記AMLが、新たに診断されたAML、二次AML、および再発/難治性AMLからなる群から選択される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記リンパ腫が、ホジキンリンパ腫および非ホジキンリンパ腫からなる群から選択される、請求項24に記載の方法。
【請求項28】
前記組成物が、非経口、経口、または吸入によって投与される、請求項22~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記組成物が、静脈内、動脈内、筋肉内、皮下、腹腔内、脳内、脳室内、くも膜下腔内、または皮内投与経路によって投与される、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記組成物が1日用量で投与され、前記アスパシタラビンの投薬量が、少なくとも3日間の間、前記対象の表面積の約0.3g/m~約10g/mの範囲にある、請求項22~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記組成物が、15分~24時間の範囲の期間の間、静脈内注入によって投与される、請求項30に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(BST-236、Astarabine(登録商標)、またはアスパシタラビンとしても知られる)(S)-2-アミノ-4-((1-((2R,3S,4S,5R)-3,4-ジヒドロキシ-5-(ヒドロキシメチル)テトラヒドロフラン-2-イル)-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリミジン-4-イル)アミノ)-4-オキソブタン酸またはその薬学的に許容される塩と、少なくとも1つの水溶性の安定剤および/または可溶化剤と、を含む薬学的組成物であって、少なくとも1つの水溶性の安定剤および/または可溶化剤が、線状ポリマー、包接化合物(すなわちシクロデキストリン)、およびそれらの組み合わせから選択される、薬学的組成物に関する。本発明は、具体的には新生物疾患の治療に使用するための、組成物の使用にさらに関する。
【背景技術】
【0002】
バイオアベイラビリティ、薬物動態、または部位特異性の増加などの所望の特徴を付与するためのプロドラッグの使用は、薬学的開発の分野で認識されている概念である。例えば、抗体への薬物の直接的または間接的なコンジュゲートは、薬物の解離が最小限な状態で標的部位に到達することができる安定なコンジュゲートを作製する。薬物標的化は、効力を最大にするために、薬物の選択的放出の機序と組み合わせられ得る。
【0003】
国際特許出願公開第2017/093993号は、医学的に危うい対象における新生物疾患の治療に使用するための、アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、およびグルタミンからなる群から選択される単一のアミノ酸にコンジュゲートされたシタラビンを含むプロドラッグについて教示している。具体的には、本出願は、シタラビンおよびアスパラギン酸のコンジュゲートであり、シタラビンがアスパラギン酸の側鎖のカルボキシル基に共有結合しているアスパシタラビンが、急性リンパ球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、または骨髄異形成症候群(MDS)を有する患者に投与され、それによってこれらの患者の生存が延長される方法について教示している。
【0004】
本発明の発明者らは、アミノ基およびカルボン酸基を有する、等電点の中性電荷を有するアスパシタラビン(「遊離塩基化合物」)が水性媒体への低い溶解度を有する一方で、水性媒体に可溶性であるアスパシタラビン酸塩は安定ではなく、経時的に分解されることを見出した。したがって、アスパシタラビンを含む安定かつ高濃度の溶液および/または高投薬量組成物についての満たされていない必要性が存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
一態様によれば、本発明は、(S)-2-アミノ-4-((1-((2R,3S,4S,5R)-3,4-ジヒドロキシ-5-(ヒドロキシメチル)テトラヒドロフラン-2-イル)-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリミジン-4-イル)アミノ)-4-オキソブタン酸(アスパシタラビン)またはその薬学的に許容される塩と、少なくとも1つの水溶性の安定剤および/または可溶化剤と、を含む組成物を提供する。
【0006】
一態様によれば、本発明は、(S)-2-アミノ-4-((1-((2R,3S,4S,5R)-3,4-ジヒドロキシ-5-(ヒドロキシメチル)テトラヒドロフラン-2-イル)-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリミジン-4-イル)アミノ)-4-オキソブタン酸(アスパシタラビン)またはその薬学的に許容される塩と、少なくとも1つの水溶性の安定剤および/または可溶化剤と、を含む組成物であって、組成物が、-80℃~30℃の範囲の温度で少なくとも1か月間貯蔵される場合、および、水溶液として製剤化されて-80℃~30℃の範囲の温度で少なくとも24時間貯蔵される場合に、化学的かつ物理的に安定である、組成物を提供する。
【0007】
一態様によれば、本発明は、(S)-2-アミノ-4-((1-((2R,3S,4S,5R)-3,4-ジヒドロキシ-5-(ヒドロキシメチル)テトラヒドロフラン-2-イル)-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリミジン-4-イル)アミノ)-4-オキソブタン酸(アスパシタラビン)またはその薬学的に許容される塩と、少なくとも1つの水溶性の安定剤および/または可溶化剤と、を含む組成物であって、水溶液中の組成物内のアスパシタラビンの濃度が、20~1000mg/mlのアスパシタラビンまたはその薬学的に許容される塩である、組成物を提供する。
【0008】
本発明の別の態様によれば、少なくとも1つの水溶性の安定剤および/または可溶化剤は、線状ポリマー、包接化合物(すなわち、シクロデキストリン)、およびそれらの組み合わせから選択される。
【0009】
さらなる一態様では、本発明は、新生物疾患を治療する方法であって、かかる治療を必要とする対象に、(S)-2-アミノ-4-((1-((2R,3S,4S,5R)-3,4-ジヒドロキシ-5-(ヒドロキシメチル)テトラヒドロフラン-2-イル)-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリミジン-4-イル)アミノ)-4-オキソブタン酸(アスパシタラビン)またはその薬学的に許容される塩と、少なくとも1つの水溶性の安定剤および/または可溶化剤と、を含む薬学的組成物を投与することを含む、方法を提供する。本発明の別の態様では、少なくとも1つの水溶性の安定剤および/または可溶化剤は、線状ポリマー、シクロデキストリン、およびそれらの組み合わせから選択される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
本発明とみなされる主題は、本明細書の結論部分において特に指摘され、明確に特許請求される。しかしながら、本発明は、構成および操作の方法の両方に関して、それらの目的、特色、および利点と一緒に、付属の図面とともに閲読されると、以下の詳細な説明を参照することにより最も良好に理解され得る。
【0011】
図1】(i)Tween20、1%(非線形ポリマー)、(ii)PEG400(未希釈)、(iii)1%w/wのポロキサマーを含む水溶液、(iv)2%w/wのポロキサマーを含む水溶液、および(v)1%w/wのポロキサマーおよび5%w/wのPVPを含む水溶液とのアスパシタラビンの溶解度(mg/ml)を示す図であり、「P188」が、ポロキサマー188であり、「PVP」が、ポリビニルピロリドンである。溶解度は、pH4.5の室温で24時間後に測定した。
図2A】77:23(図2A)または10:1(図2B)の重量比で、アスパシタラビンおよびポロキサマー188を含む乾燥組成物の安定性を示す図である。
図2B】77:23(図2A)または10:1(図2B)の重量比で、アスパシタラビンおよびポロキサマー188を含む乾燥組成物の安定性を示す図である。
図3】20%w/wの(pH4.5の室温で24時間後の)異なる種類のシクロデキストリン、および10%w/wのアスパシタラビンを含む、水溶液へのアスパシタラビンの溶解度を示す図である。
【0012】
例示の簡潔性および明確性のために、図に示される要素は必ずしも縮尺通りに描かれていないことが理解されるであろう。例えば、要素のうちのいくつかの寸法は、明確性のために他の要素と比較して誇張されている場合がある。さらに、適切とみなされる場合、参照符号は、対応するかまたは類似の要素を示すために図の間で繰り返され得る。
【発明を実施するための形態】
【0013】
アスパシタラビン薬学的組成物
【0014】
一態様によれば、本発明は、(S)-2-アミノ-4-((1-((2R,3S,4S,5R)-3,4-ジヒドロキシ-5-(ヒドロキシメチル)テトラヒドロフラン-2-イル)-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリミジン-4-イル)アミノ)-4-オキソブタン酸(アスパシタラビン)またはその薬学的に許容される塩と、少なくとも1つの水溶性の安定剤および/または可溶化剤と、を含む薬学的組成物を提供する。
【0015】
一態様によれば、本発明は、(S)-2-アミノ-4-((1-((2R,3S,4S,5R)-3,4-ジヒドロキシ-5-(ヒドロキシメチル)テトラヒドロフラン-2-イル)-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリミジン-4-イル)アミノ)-4-オキソブタン酸(アスパシタラビン)またはその薬学的に許容される塩と、少なくとも1つの水溶性の安定剤および/または可溶化剤と、を含む薬学的組成物であって、少なくとも1つの水溶性の安定剤および/または可溶化剤が、線状ポリマー、包接化合物、およびそれらの組み合わせから選択される、薬学的組成物を提供する。別の実施形態では、包接化合物は、シクロデキストリンである。
【0016】
一実施形態では、塩は、酢酸塩、ヒドロクロリド、臭化水素塩、TFA塩、メタンスルホン酸塩、リン酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、ホウ酸塩、安息香酸塩、トルエンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、アスコルビン酸塩、重硫酸塩、硫酸塩、マレイン酸塩、ギ酸塩、マロン酸塩、ニコチン酸塩、およびシュウ酸塩からなる群から選択される。一実施形態では、塩は、塩酸塩である。各可能性は、本発明の別個の実施形態を代表する。
【0017】
一態様によれば、本発明は、(S)-2-アミノ-4-((1-((2R,3S,4S,5R)-3,4-ジヒドロキシ-5-(ヒドロキシメチル)テトラヒドロフラン-2-イル)-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリミジン-4-イル)アミノ)-4-オキソブタン酸(アスパシタラビン)遊離塩基と、少なくとも1つの水溶性の安定剤および/または可溶化剤と、を含む薬学的組成物であって、少なくとも1つの水溶性の安定剤および/または可溶化剤が、線状ポリマー、包接化合物、およびそれらの組み合わせから選択される、薬学的組成物を提供する。別の実施形態では、包接化合物は、シクロデキストリンである。
【0018】
一態様によれば、本発明は、(S)-2-アミノ-4-((1-((2R,3S,4S,5R)-3,4-ジヒドロキシ-5-(ヒドロキシメチル)テトラヒドロフラン-2-イル)-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリミジン-4-イル)アミノ)-4-オキソブタン酸(アスパシタラビン)塩と、少なくとも1つの水溶性の安定剤および/または可溶化剤と、を含む薬学的組成物であって、少なくとも1つの水溶性の安定剤および/または可溶化剤が、線状ポリマー、包接化合物、およびそれらの組み合わせから選択される、薬学的組成物を提供する。別の実施形態では、包接化合物は、シクロデキストリンである。
【0019】
本発明のいくつかの実施形態によれば、アスパシタラビンと水溶性安定剤および/または可溶化剤との重量比は、99:1~1:10である。一実施形態では、比は、99:1~99:9である。別の実施形態では、比は、99:9~99:49である。別の実施形態では、比は、99:49~1:1である。別の実施形態では、比は、1:2~1:5である。別の実施形態では、比は、1:5~1:10である。各可能性は、本発明の別個の実施形態を代表する。別の実施形態では、重量比は、80:20~60:40である。別の実施形態では、重量比は、40:60~20:80である。別の実施形態では、重量比は、30:70~10:90である。
【0020】
別の実施形態では、アスパシタラビンまたはその薬学的に許容される塩の重量パーセンテージは、組成物の総重量に対して1%~99%である。別の実施形態では、アスパシタラビンまたはその薬学的に許容される塩の重量パーセンテージは、組成物の総重量に対して75%~95%である。別の実施形態では、アスパシタラビンまたはその薬学的に許容される塩の重量パーセンテージは、組成物の総重量に対して50%~80%である。別の実施形態では、アスパシタラビンまたはその薬学的に許容される塩の重量パーセンテージは、組成物の総重量に対して10%~80%である。別の実施形態では、アスパシタラビンまたはその薬学的に許容される塩の重量パーセンテージは、組成物の総重量に対して10%~50%である。別の実施形態では、アスパシタラビンまたはその薬学的に許容される塩の重量パーセンテージは、組成物の総重量に対して10%~30%である。別の実施形態では、アスパシタラビンまたはその薬学的に許容される塩の重量パーセンテージは、組成物の総重量に対して5%~15%である。別の実施形態では、アスパシタラビンまたはその薬学的に許容される塩の重量パーセンテージは、組成物の総重量に対して1%~10%である。各可能性は、本発明の別個の実施形態を代表する。
【0021】
一実施形態では、少なくとも1つの水溶性の線状ポリマーおよび/または包接化合物の重量パーセンテージは、組成物の総重量に対して0.1~30%w/wである。別の実施形態では、重量パーセンテージは、組成物の総重量に対して0.1~0.5%w/wである。別の実施形態では、重量パーセンテージは、組成物の総重量に対して0.5~1%w/wである。別の実施形態では、重量パーセンテージは、組成物の総重量に対して1~2%w/wである。別の実施形態では、重量パーセンテージは、組成物の総重量に対して2~5%w/wである。別の実施形態では、重量パーセンテージは、組成物の総重量に対して5~10%w/wである。別の実施形態では、重量パーセンテージは、組成物の総重量に対して10~20%w/wである。別の実施形態では、重量パーセンテージは、組成物の総重量に対して1または3%w/wである。各可能性は、本発明の別個の実施形態を代表する。別の実施形態では、包接化合物は、シクロデキストリンである。
【0022】
本発明のいくつかの実施形態によれば、少なくとも1つの水溶性の安定剤および/または可溶化剤は、水溶性線状ポリマーである。別の実施形態では、線状ポリマーは、イオン性または非イオン性である。いくつかの実施形態では、非イオン性水溶性線状ポリマーは、ポリ(ビニルアルコール)、ポリアクリルアミド、ポリエチレングリコール(ポリエチレンオキシド)(PEG)、ポリエチレンオキシド(PEO)もしくはポリオキシエチレン(POE)、ポリオキシプロピレン(ポリ(プロピレンオキシド))と2つのポリオキシエチレン(ポリ(エチレンオキシド))とを含むトリブロックコポリマー(ポロキサマー)、ポリビニルピロリドン(PVP)、それらの誘導体、またはそれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、イオン性水溶性線状ポリマーは、ポリ(ビニルアルコール)、ポリアクリルアミド、ポリエチレングリコール(ポリエチレンオキシド)(PEG)、ポリエチレンオキシド(PEO)もしくはポリオキシエチレン(POE)、ポリオキシプロピレン(ポリ(プロピレンオキシド))と2つのポリオキシエチレン(ポリ(エチレンオキシド))とを含むトリブロックコポリマー(ポロキサマー)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリアスパラギン酸(PAA)、ポリスクシンイミド(PSI)、ポリスチレンスルホン酸、ポリスチレンスルホネート、それらの誘導体、またはそれらの任意の組み合わせのイオン誘導体を含む。
【0023】
別の実施形態では、少なくとも1つの水溶性の線状ポリマーは、ポロキサマーである。別の実施形態では、少なくとも1つの水溶性の線状ポリマーは、ポロキサマーとポリビニルピロリドン(PVP)との組み合わせである。各可能性は、本発明の別個の実施形態を代表する。
【0024】
別の実施形態では、本発明の組成物は、アスパシタラビンと、ポロキサマーと、を含む。別の実施形態では、組成物は、アスパシタラビン、および、ポロキサマーとポリビニルピロリドン(PVP)との組み合わせを含む。別の実施形態では、組成物は、アスパシタラビンと、シクロデキストリンと、を含む。各可能性は、本発明の別個の実施形態を代表する。
【0025】
本発明のいくつかの実施形態によれば、少なくとも1つの水溶性の安定剤および/または可溶化剤は、包接化合物である。「包接化合物」という用語は、アスパシタラビンが「ゲスト」として収容される空洞を有する「ホスト」として機能する化合物を指す。いくつかの実施形態では、包接化合物は、カリックスアレーン、シクロデキストリン、またはそれらの組み合わせである。別の実施形態では、包接化合物は、カリックスアレーンである。別の実施形態では、包接化合物は、シクロデキストリンである。別の実施形態では、少なくとも1つの水溶性の安定剤および/または可溶化剤は、シクロデキストリンである。別の実施形態では、シクロデキストリン(CD)の非限定的な例としては、α-CD、β-CD、γ-CD、HP-β-CD(ヒドロキシプロピル化)、SBE-β-CD(スルホブチル-エーテル-修飾)、RM-β-CD(ランダムメチル化)、またはそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0026】
本発明のいくつかの実施形態によれば、組成物は、-80~30℃の温度で少なくとも1か月間、または水溶液として少なくとも24時間貯蔵される場合、化学的かつ物理的に安定である。
【0027】
「化学的安定性」は、本明細書では、組成物内のアスパシタラビン化合物の不活性化に起因する安定性として定義される。したがって、高い化学的安定性は、アスパシタラビン化合物の経時的な反応/分解/劣化する傾向を低減することを意味する。
【0028】
「物理的安定性」は、本明細書では、組成物の物理的構造であるマクロ(可視)構造における変化の可能性の低減に起因する、組成物の安定性として定義される。したがって、「高い物理的安定性」は、例えば、本発明の組成物の透明な水溶液、その後経時的に懸濁することを意味する。
【0029】
「水溶性安定剤」という用語は、アスパシタラビン遊離塩基化合物またはその薬学的に許容される塩を安定化し、その分解/劣化を防止し、組成物および活性成分の化学的かつ物理的安定性を維持する水溶性である、化学成分を指す。いくつかの実施形態では、水溶性安定剤はまた、可溶化剤でもある。いくつかの実施形態では、水溶性安定剤は、水溶性線状ポリマー、包接化合物、またはそれらの組み合わせから選択される。別の実施形態では、包接化合物は、シクロデキストリンである。
【0030】
「水溶性可溶化剤」という用語は、水に可溶性であり、アスパシタラビン「遊離塩基化合物」またはその薬学的に許容される塩を水相に可溶化する化学成分を指す。いくつかの実施形態では、水溶性可溶化剤はまた、安定剤でもある。いくつかの実施形態では、水溶性可溶化剤は、水溶性線状ポリマー、包接化合物、またはそれらの組み合わせから選択される。別の実施形態では、包接化合物は、シクロデキストリンである。
【0031】
一実施形態では、本発明の組成物またはそれを含む水溶液の貯蔵温度範囲は、-80~30℃である。別の実施形態では、本発明の組成物またはそれを含む水溶液の貯蔵温度範囲は、15~30℃である。別の実施形態では、本発明の組成物またはそれを含む水溶液の貯蔵温度範囲は、25~30℃である。別の実施形態では、本発明の組成物またはそれを含む水溶液の貯蔵温度範囲は2~8℃である。別の実施形態では、本発明の組成物またはそれを含む水溶液の貯蔵温度範囲は、8~15℃である。別の実施形態では、本発明の組成物またはそれを含む水溶液の貯蔵温度範囲は、0~15℃である。別の実施形態では、本発明の組成物またはそれを含む水溶液の貯蔵温度範囲は、0~10℃である。別の実施形態では、本発明の組成物またはそれを含む水溶液の貯蔵温度範囲は、0~20℃である。別の実施形態では、本発明の組成物またはそれを含む水溶液の貯蔵温度範囲は、0~30℃である。別の実施形態では、本発明の組成物またはそれを含む水溶液の貯蔵温度範囲は、-80~10℃である。各可能性は、本発明の別個の実施形態を代表する。
【0032】
一実施形態では、組成物は、少なくとも1か月間、上で考察された温度範囲(すなわち、-80℃~30℃)で安定である。別の実施形態では、組成物は、少なくとも2か月間安定である。別の実施形態では、組成物は、少なくとも3か月間安定である。別の実施形態では、組成物は、少なくとも4か月間安定である。別の実施形態では、組成物は、少なくとも5か月間安定である。別の実施形態では、組成物は、少なくとも6か月間安定である。別の実施形態では、組成物は、少なくとも7か月間安定である。別の実施形態では、組成物は、少なくとも8か月間安定である。別の実施形態では、組成物は、少なくとも9か月間安定である。別の実施形態では、組成物は、少なくとも10か月間安定である。別の実施形態では、組成物は、少なくとも11か月間安定である。別の実施形態では、組成物は、少なくとも1年間安定である。別の実施形態では、組成物は、1~3か月間安定である。別の実施形態では、組成物は、3~6か月間安定である。別の実施形態では、組成物は、6~9か月間安定である。別の実施形態では、組成物は、6~24か月間安定である。別の実施形態では、組成物は、12~24か月間安定である。別の実施形態では、組成物は、乾燥組成物である。別の実施形態では、組成物は、水溶液である。各可能性は、本発明の別個の実施形態を代表する。
【0033】
一実施形態では、組成物は水溶液として製剤化され、-80℃~30℃で水溶液として少なくとも24時間安定である。別の実施形態では、水溶液は、-80℃~30℃で24時間~36時間安定である。別の実施形態では、水溶液は、-80℃~30℃で24時間~48時間安定である。別の実施形態では、水溶液は、80℃~30℃で24時間~72時間安定である。別の実施形態では、水溶液は、80℃~30℃で24時間~最大1週間安定である。
【0034】
本発明のいくつかの実施形態によれば、水溶液中の本明細書に記載の薬学的組成物内のアスパシタラビンの溶解度は、少なくとも20mg/mlである。本発明のいくつかの実施形態によれば、水溶液中の本明細書に記載の薬学的組成物内のアスパシタラビンの溶解度は、20~1000mg/mlである。一実施形態では、溶解度は、20~200mg/mlである。一実施形態では、溶解度は、20~500mg/mlである。一実施形態では、溶解度は、20~200mg/mlである。一実施形態では、溶解度は、20~50mg/mlである。別の実施形態では、溶解度は、50~75mg/mlである。別の実施形態では、溶解度は、75~100mg/mlである。別の実施形態では、溶解度は、100~125mg/mlである。別の実施形態では、溶解度は、125~150mg/mlである。別の実施形態では、溶解度は、150~200mg/mlである。別の実施形態では、溶解度は、150~300mg/mlである。別の実施形態では、溶解度は、250~500mg/mlである。各可能性は、本発明の別個の実施形態を代表する。別の実施形態では、溶解度は、150~500mg/mlである。別の実施形態では、溶解度は、200~750mg/mlである。別の実施形態では、溶解度は、500~1000mg/mlである。別の実施形態では、溶解度は、150~1000mg/mlである。各可能性は、本発明の別個の実施形態を代表する。
【0035】
本発明のいくつかの実施形態によれば、水溶液中の本明細書に記載の薬学的組成物内のアスパシタラビンの濃度は、少なくとも20mg/mlである。本発明のいくつかの実施形態によれば、水溶液中の本明細書に記載の薬学的組成物内のアスパシタラビンの濃度は、20~1000mg/mlである。一実施形態では、濃度は、20~200mg/mlである。一実施形態では、濃度は、20~500mg/mlである。一実施形態では、濃度は、20~200mg/mlである。一実施形態では、濃度は、20~50mg/mlである。別の実施形態では、濃度は、50~75mg/mlである。別の実施形態では、濃度は、75~100mg/mlである。別の実施形態では、濃度は、100~125mg/mlである。別の実施形態では、濃度は、125~150mg/mlである。別の実施形態では、濃度は、150~200mg/mlである。別の実施形態では、濃度は、150~300mg/mlである。別の実施形態では、濃度は、250~500mg/mlである。別の実施形態では、濃度は、150~500mg/mlである。別の実施形態では、濃度は、200~750mg/mlである。別の実施形態では、濃度は、500~1000mg/mlである。別の実施形態では、濃度は、150~1000mg/mlである。各可能性は、本発明の別個の実施形態を代表する。
【0036】
本発明のいくつかの実施形態によれば、組成物は、非経口組成物、経口組成物、鼻腔内組成物、または吸入組成物として製剤化される。一実施形態では、非経口組成物は、溶液、懸濁液、注射または注入のための乳剤、注射または注入のための粒子、注射可能送達系としてのリポソーム、注射または注入のための粉末、および注射のためのゲルから選択される。別の実施形態では、非経口組成物は、静脈内、動脈内、筋肉内、皮下、腹腔内、脳内、脳室内、くも膜下腔内、または皮内投与経路によって投与される。別の実施形態では、経口組成物は、錠剤、丸剤、カプセル、糖衣錠、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁液、粉末、または液体形態から選択される。各可能性は、本発明の別個の実施形態を代表する。
【0037】
本発明のいくつかの実施形態によれば、組成物は、薬学的に許容される担体をさらに含む。一実施形態では、担体は、水、生理食塩水、等張溶液、デキストロース水溶液、複数の電解質注射水溶液、またはグリセロール水溶液である。各可能性は、本発明の別個の実施形態を代表する。
【0038】
本発明のいくつかの実施形態によれば、組成物は、注入または注射のために、薬学的に許容される担体中で製剤化され、担体が、水、生理食塩水、等張溶液、注入のための許容される溶液、デキストロース水溶液、またはグリセロール水溶液から選択され、組成物が、2.2~8のpH範囲を有する。一実施形態では、pH範囲は、4~8である。別の実施形態では、pH範囲は、7~8である。別の実施形態では、pH範囲は、4~5である。別の実施形態では、pHは、生理的である。別の実施形態では、緩衝液は、必要なpH範囲を維持および/または調整するために使用される。別の実施形態では、緩衝液は、2.2~8の範囲のイオン化pKを有する薬学的に許容される単一のイオン緩衝液系またはポリイオン緩衝液系であり得る。別の実施形態では、様々な緩衝液、例えば、ACES(N-(アセトアミド)-2-アミノエタンスルホン酸);アセテート;N-(2-アセトアミド)-2-イミノ二酢酸;BES(N,N-ビス[2-ヒドロキシエチル]-2-アミノエタンスルホン酸);ビシン(2-(ビス(2-ヒドロキシエチル)アミノ)酢酸);ビス-トリスメタン(2-[ビス(2-ヒドロキシエチル)アミノ]-2-(ヒドロキシメチル)プロパン-1,3-ジオール);ビス-トリスプロパン(1,3-ビス(トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミノ)プロパン);カーボネート;シトレート;3,3-ジメチルグルタル酸;DIPSO(3-[N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)アミノ]-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸);N-エチルモルホリン;グリセロール-2-ホスフェート;グリシン;グリシン-アミド;HEPBS(N-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-N'-4-ブタンスルホン酸);HEPES(N-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-N'-2-エタンスルホン酸);HEPPS(N-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-N'-(3-プロパンスルホン酸));HEPPSO(N-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-N'-(2-ヒドロキシプロパンスルホン酸));ヒスチジン;ヒドラジン;イミダゾール;マレエート;2-メチルイミダゾール;MES(2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸);MOBS(4-(N-モルホリノ)-ブタンスルホン酸);MOPS(3-(N-モルホリノ)-プロパンスルホン酸);MOPSO(3-(N-モルホリノ)-2-ヒドロイ(hydroy)プロパンスルホン酸);オキサレート;ホスフェート;ピペラジン;PIPES(1,4-ピペラジン-ジエタンスルホン酸);POPSO(ピペラジン-N,N'-ビス(2-ヒドロキシプロパンスルホン酸));スクシネート;亜硫酸塩;TAPS(3-[[1,3-ジヒドロキシ-2-(ヒドロキシメチル)プロパン-2-イル]アミノ]プロパン-1-スルホン酸);TAPSO(3-[[1,3-ジヒドロキシ-2-(ヒドロキシメチル)プロパン-2-イル]アミノ]-2-ヒドロキシプロパン-1-スルホン酸);酒石酸;TES(2-[[1,3-ジヒドロキシ-2-(ヒドロキシメチル)プロパン-2-イル]アミノ]エタンスルホン酸);THAM(トリス)(2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-プロパン-1,3-ジオール);およびトリシン(N-(2-ヒドロキシ-1,1-ビス(ヒドロキシメチル)エチル)グリシン);限定されないが、アセテート、N-(2-アセトアミド)-2-イミノ二酢酸、2-(ビス(2-ヒドロキシエチル)アミノ)酢酸、カーボネート、シトレート、3,3-ジメチルグルタレート、ラクテート、マレエート、オキサレート、スクシネート、および酒石酸緩衝液を含むカルボン酸誘導体緩衝液;限定されないが、ビシン、グリシン、グリシン-アミド、ヒスチジン、およびトリシン緩衝液を含むアミノ酸誘導体緩衝液;限定されないが、グリセロール-2-ホスフェートおよびホスフェート緩衝液を含むリン酸誘導体緩衝液;ならびにハンクス平衡塩溶液、アール平衡塩溶液、ゲイ平衡塩溶液、HEPES緩衝生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、Plasma-lyte、リンゲル溶液、酢酸リンゲル、乳酸リンゲル、クエン酸生理食塩水、トリス緩衝生理食塩水、酸-シトレート-デキストロース溶液、およびエリオットB溶液などの他の緩衝液系;ならびにそれらの任意の組み合わせが使用され得る。各可能性は、本発明の別個の実施形態を代表する。
【0039】
他の実施形態では、非経口投与のための薬学的組成物は、水溶性形態の活性成分の水溶液を含む。加えて、活性化合物の懸濁液は、適切な油性注入懸濁液として調製され得る。好適な親油性溶媒またはビヒクルとしては、ゴマ油などの脂肪油、またはオレイン酸エチル、トリグリセリド、もしくはリポソームなどの合成脂肪酸エステルが挙げられる。
【0040】
他の実施形態では、本発明の組成物は、液体製剤として製剤化され得る。別の実施形態では、組成物は、乾燥組成物である。
【0041】
いかなる理論または作用機序にも拘束されることを望むものではないが、本発明の組成物のアミノ酸-シタラビンコンジュゲートであるアスパシタラビンをがん細胞に輸送し、これらのコンジュゲートを細胞内で切断して細胞成長を停止または細胞を死滅させるシタラビンを放出する。がん細胞において遊離シタラビンおよび遊離シタラビン代謝産物が検出されるので、本発明のコンジュゲートは、プロドラッグとして機能する。本発明の組成物において本明細書で用いられる少なくとも1つの水溶性の線状ポリマー、包接化合物、またはそれらの組み合わせに起因して、これらのプロドラッグは、安定化および/または溶解される。別の実施形態では、包接化合物は、シクロデキストリンである。
【0042】
組成物は、溶液、懸濁液、乳剤、錠剤、丸薬、カプセル、粉末、徐放性製剤などとして製剤化され得る。組成物は、トリグリセリド、微結晶セルロース、トラガカントガム、またはゼラチンなどの従来の結合剤および担体とともに、座剤として製剤化され得る。各可能性は、本発明の別個の実施形態を代表する。
【0043】
組成物は、限定されないが、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、グルコン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化カルシウム、乳酸ナトリウムなどを含む賦形剤をさらに含み得る。必要に応じて、組成物はまた、少量の糖アルコール、湿潤剤、または乳化剤、およびpH調整剤を含有し得る。ベンジルアルコールまたはメチルパラベンなどの抗菌剤;アスコルビン酸または亜硫酸水素ナトリウムなどの抗酸化剤;エチレンジアミン四酢酸などのキレート化剤;および塩化ナトリウムまたはデキストロースなどの浸透圧を調整するための薬剤も想定される。各可能性は、本発明の別個の実施形態を代表する。
【0044】
経口投与のための本発明の組成物は、アスパシタラビンまたはその薬学的に許容される塩、ならびに線状ポリマー、包接化合物、またはそれらの組み合わせから選択される少なくとも1つの水溶性の安定剤および/または可溶化剤を、当該技術分野で既知の追加の構成成分と組み合わせることによって、容易に製剤化することができる。かかる構成成分は、対象による経口摂取のための錠剤、丸薬、糖衣錠、カプセル、液体、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁液などとして、本発明の組成物を製剤化することを可能にする。経口使用のための薬理学的調製物は、固体構成成分を使用し、必要に応じて、好適な補助剤を添加した後、任意選択的に、生じた混合物を粉砕し、錠剤または糖衣錠コアを得るために顆粒の混合物を加工して作製され得る。好適な構成成分は、特に、ラクトース、スクロース、マンニトール、またはソルビトールを含む糖などの充填剤;例えば、トウモロコシデンプン、小麦デンプン、米デンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガカントガム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチル-セルロース、カルボメチルセルロースナトリウムなどのセルロース調製物である。必要に応じて、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、もしくはアルギン酸、またはアルギン酸ナトリウムなどのそれらの塩などの崩壊剤が添加され得る。別の実施形態では、包接化合物は、シクロデキストリンである。
【0045】
加えて、本発明の化合物の胃環境への曝露を防止することが望ましい場合、腸溶性コーティングが有用であり得る。
【0046】
経口的に使用され得る薬学的組成物は、ゼラチンから作製されたプッシュフィットカプセル、ならびにゼラチンから作製された軟質の密封カプセル、およびグリセロールまたはソルビトールなどの可塑剤を含む。プッシュフィットカプセルは、ラクトースなどの充填剤、デンプンなどの結合剤、タルクまたはステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤、および任意選択的に安定剤との混和物中に活性成分を含有し得る。
【0047】
ソフトカプセル内では、活性化合物は、脂肪油、液体パラフィン、または液体ポリエチレングリコールなどの好適な液体に溶解または懸濁され得る。加えて、安定剤が添加され得る。
【0048】
頬側投与の場合、組成物は、従来の様式で製剤化された錠剤またはトローチの形態をとり得る。
【0049】
吸入による投与の場合、本発明による使用のための活性化合物は、好適な推進剤、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロ-テトラフルオロエタン、または二酸化炭素を使用して、加圧パックまたは噴霧器からのエアロゾルスプレー提示の形態で好都合に送達される。加圧エアロゾルの場合、投薬量単位は、計量された量を送達するためのバルブを設けることによって決定することができる。吸入器または吸引器で使用するための、例えばゼラチンのカプセルおよびカートリッジは、ペプチドの粉末混合物およびラクトースまたはデンプンなどの好適な粉末基剤を含有して製剤化され得る。
【0050】
鼻腔内組成物は、粉末、水溶液、または非水溶液として製剤化され得る。本発明の溶液を投与する好ましい方法は、スプレーデバイスを使用することである。スプレーデバイスは、単回(「単位」)用量システムまたは複数回用量システムであり得る。粉末製剤は、好ましくは、エアロゾル化された形態で患者に投与され、それによって、患者の吸入(鼻からの吸入)からのエネルギーが、粉末を鼻腔内でエアロゾル化するために使用されるか、または圧縮空気を介してなど、デバイス自体がエアロゾル化エネルギーを提供する。
【0051】
アスパシタラビン組成物を調製するプロセス
【0052】
さらなる一態様によれば、本発明は、アスパシタラビンまたはその薬学的に許容される塩、ならびに少なくとも1つの水溶性の安定剤および/または可溶化剤を含む、本明細書で上記の組成物を調製するプロセスを提供し、プロセスは、
・アスパシタラビンまたはその薬学的に許容される塩、ならびに少なくとも1つの水溶性の安定剤および/または可溶化剤の比が、99:1~1:10であるように、アスパシタラビンまたはその薬学的に許容される塩、ならびに少なくとも1つの水溶性の安定剤および/または可溶化剤を、水性もしくは有機溶媒またはそれらの混合物に混合することと、
・水性混合物が使用される場合、混合物のpHを2.2~8のpHに調整することと、
・任意選択的に、組成物を乾燥させて乾燥組成物を得ることと、を含む。
【0053】
別の実施形態では、乾燥組成物は、非経口、経口、鼻腔内、または吸入組成物へとさらに製剤化される。
【0054】
一実施形態では、有機溶媒は、エタノール、メタノール、プロピレングリコール、ジメチルアセトアミド(DMA)、ポリエチレングリコール(PEG)を含む。
【0055】
本発明のいくつかの実施形態によれば、混合ステップは、2~30℃の温度で行われる。一実施形態では、温度は、2~8℃である。別の実施形態では、温度は、2~15℃である。別の実施形態では、温度は、8~15Cである。別の実施形態では、温度は、8~25℃である。別の実施形態では、温度は、15~25℃である。各可能性は、本発明の別個の実施形態を代表する。
【0056】
本発明のいくつかの実施形態によれば、アスパシタラビン組成物を調製するプロセスにおけるpHは、2.2~8に調整される。本発明の一実施形態では、pHは、4~8に調整される。別の実施形態では、pHは、4~5に調整される。別の実施形態では、pHは、生理的である。各可能性は、本発明の別個の実施形態を代表する。
【0057】
本発明のいくつかの実施形態によれば、調整されたpH溶液の乾燥は、当該技術分野で既知の任意の方法、例えば、凍結乾燥、真空乾燥、加熱、およびそれらの任意の組み合わせを使用して行われる。
【0058】
治療的使用
【0059】
さらなる一態様によれば、本発明は、新生物疾患を治療する方法であって、かかる治療を必要とする対象に、本明細書で上記の組成物を投与することを含む、方法を提供する。
【0060】
一実施形態では、対象は、高用量または標準用量の抗がん剤、例えば、シタラビンによる治療に適していない医学的に危うい対象である。医学的に危うい対象は、高齢の対象、肝機能障害を有する対象、腎機能障害を有する対象、膵臓機能障害を有する対象、骨髄機能障害を有する対象、小脳機能障害を有する対象、免疫学的障害を有する対象、難治性または再発性血液がんを有する対象、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択され得る。
【0061】
本発明のいくつかの実施形態によれば、新生物疾患は、血液がんおよび非血液がんからなる群から選択される。別の実施形態では、血液がんは、白血病、リンパ腫、骨髄腫、および骨髄異形成症候群(MDS)からなる群から選択される。一実施形態では、白血病は、急性骨髄性白血病(AML)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、慢性骨髄性白血病(CML)、および慢性リンパ芽球性白血病(CLL)からなる群から選択される。別の実施形態では、AMLは、新たに診断されたAML、二次AML、および再発/難治性AMLからなる群から選択される。別の実施形態では、リンパ腫は、ホジキンリンパ腫および非ホジキンリンパ腫からなる群から選択される。各可能性は、本発明の別個の実施形態を代表する。
【0062】
本発明のいくつかの実施形態によれば、組成物は、非経口的、経口、または吸入によって投与される。一実施形態では、組成物は、静脈内(i.v.)、動脈内、筋肉内、皮下、腹腔内(i.p.)、脳内、脳室内、くも膜下腔内、または皮内投与経路によって投与される。別の実施形態では、組成物は1日用量で投与され、アスパシタラビン投薬量は、少なくとも3日間の間、対象の表面積の約0.3g/mの~約10g/mの範囲にある。別の実施形態では、投薬量は、約0.3g/m~約1g/mの範囲である。別の実施形態では、投薬量は、約1g/m~約2g/mの範囲である。別の実施形態では、投薬量は、約2g/m~約5g/mの範囲である。別の実施形態では、投薬量は、約2.5g/m~約10g/mの範囲である。別の実施形態では、投薬量は、約3g/m~約10g/mの範囲である。別の実施形態では、投薬量は、約5g/m~約10g/mの範囲である。別の実施形態では、期間は、少なくとも4日間である。別の実施形態では、期間は、少なくとも5日間である。別の実施形態では、期間は、少なくとも6日間である。別の実施形態では、期間は、少なくとも7日間である。別の実施形態では、期間は、少なくとも10日間である。別の実施形態では、組成物は、15分~24時間の範囲の期間の間、静脈内注入によって投与される。別の実施形態では、組成物は、15分~0.5時間の範囲の期間の間、静脈内注入によって投与される。別の実施形態では、組成物は、0.5時間~1時間の範囲の期間の間、静脈内注入によって投与される。別の実施形態では、組成物は、1時間~3時間の範囲の期間の間、静脈内注入によって投与される。各可能性は、本発明の別個の実施形態を代表する。
【0063】
ある特定の実施形態によれば、薬学的組成物は、30分~24時間の間、静脈内注入によって投与される。本発明の組成物は、局所的に投与してもよく、追加の活性剤および/または賦形剤をさらに含み得る。
【0064】
さらなる実施形態によれば、本発明の化合物は、シタラビンの標準ケア用量よりも、少なくとも1.5、2、3、5、10、15、20、または少なくとも30倍高い1日投薬量で投与される。各可能性は、本発明の別個の実施形態を代表する。
【0065】
いくつかの実施形態によれば、本発明の組成物は、対象が寛解に達するまで、少なくとも月1回投与される。追加の実施形態によれば、組成物は、対象が寛解に達するまで、少なくとも月2回投与される。さらなる実施形態によれば、組成物は、対象が寛解に達するまで、少なくとも週1回投与される。さらにさらなる実施形態によれば、組成物は、対象が寛解に達するまで、少なくとも週2回投与される。なおさらなる実施形態によれば、組成物は、少なくとも1週間の間、または対象が寛解に達するまで、1日1回投与される。さらなる実施形態によれば、組成物は、少なくとも1週間の間、または対象が寛解に達するまで、少なくとも1日1回投与される。
【0066】
いくつかの実施形態によれば、組成物は、少なくとも2、3、4、5、6、8、10、12日間1日1回、または少なくとも連続14日間月1回投与される。代替的に、組成物は、少なくとも2、3、4、5、6、もしくは12日間1日1回投与されるか、またはさらに代替的に、組成物は、患者が寛解に達するまで、毎日または週2回投与される。
【0067】
組成物はまた、連続注入のための徐放性送達システム、ポンプ、および他の既知の送達システムによって送達され得る。用量レジメンは、その薬物動態に基づいて、所望の循環レベルの特定の化合物を提供するように変動し得る。したがって、用量は、治療剤の所望の循環レベルが維持されるように計算される。
【0068】
典型的には、有効用量は、化合物の活性および有効性、ならびに対象の状態、ならびに治療される対象の体重または表面積によって決定される。用量および用量レジメンはまた、特定の対象における化合物の投与に伴う任意の有害な副作用の存在、性質、および程度によって決定される。
【0069】
定義
【0070】
本明細書で使用される場合、「薬学的組成物」は、本明細書に記載化合物のうちの1つ以上、または生理学的に許容されるそれらの塩もしくは溶媒と、生理学的に好適な担体および賦形剤などの他の化学的構成成分との調製物を指す。薬学的組成物の目的は、対象への化合物の投与を容易にすることである。
【0071】
「乾燥組成物」という用語は、本明細書において、水溶液中にない本発明の組成物を指す。別の実施形態では、「乾燥組成物」は、乾燥ステップの後の、アスパシタラビンおよび少なくとも1つの水溶性の安定剤および/または可溶化剤を含む組成物を指す。「乾燥組成物」は、任意の製剤(液体、水溶液、非経口、経口、鼻腔内、または吸入組成物)の調製のためにさらに使用することができる。
【0072】
「腎機能障害」、「肝機能障害」、「膵臓機能障害」、「骨髄機能障害」、および「小脳機能障害」という用語は、臓器/組織機能、例えば、腎臓、肝臓、膵臓、骨髄、および小脳が正常状態と比較して減少している状態を指す。一般に、臓器/組織機能障害は、臓器機能の検査項目の任意のいずれか1つ以上の測定値が正常値(基準値)の範囲から逸脱していることを特徴とする状態である。
【0073】
「標準ケア用量」および「推奨最大用量」のシタラビンという用語は、本明細書では互換的に使用され、ヒト対象への投与のためにUSFDAによって承認されたシタラビンの投薬量、例えば、1日用量を指し、この投薬量は、許容できない有害作用を引き起こさず、70歳以下の適合対象が、典型的には、最大3g/m(標準用量は100~400mg/mである)の1日用量のシタラビンで治療され得、75歳以上の対象が、最大20mg/mの対象の表面積の1日用量のシタラビンで治療され得るように、対象の年齢および物理的状態に依存する。しかしながら、75歳以上の対象のうちのほとんどは、その重篤な有害作用に起因して、シタラビンでは全く治療することができないことに留意するべきである。
【0074】
「治療」、「治療する」、「治療すること」などの用語は、疾患の進行を遅くする、停止させる、または逆行させることを含むことを意味する。これらの用語はまた、疾患が実際に排除されていない場合でさえ、疾患の進行自体が遅くなるかまたは逆転されていない場合でさえ、疾患の1つ以上の症状を軽減、緩和、減衰、排除、または低減することを含む。対象は、哺乳動物、好ましくはヒトを指す。
【0075】
本明細書に記載の数値に関する「約」という用語は、記載の値+/-10%として理解されるものである。
【0076】
薬物の「薬学的に許容される塩」という用語は、IUPAC条約に従った塩を指す。薬学的に許容される塩は、薬物と組み合わせた塩形態の不活性成分である。典型的な薬学的に許容される塩としては、本発明の化合物と、薬学的に許容される鉱物、塩基、酸、または塩との反応によって調製される塩が挙げられる。酸性塩は、酸付加塩としても知られている(以下本明細書を参照されたい)。薬学的に許容される塩は、当該技術分野で既知である(Stahl and Wermuth,2011,Handbook of pharmaceutical salts,Second edition)。酸は、酢酸、塩酸、臭化水素酸、メタンスルホン酸、リン酸、クエン酸、乳酸、コハク酸、酒石酸、ホウ酸、安息香酸、トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、アスコルビン酸、硫酸、重硫酸、マレイン酸、ギ酸、マロン酸、ニコチン酸、シュウ酸、およびトリフルオロ酢酸からなる群から選択される。一実施形態では、塩は、塩酸塩である。各可能性は、本発明の別個の実施形態を代表する。
【0077】
「薬学的に許容される」という用語は、連邦もしくは州政府の規制機関によって承認されているか、または動物、特にヒトにおいて使用するための米国薬局方もしくは他の一般に認められた薬局方に列挙されていることを意味する。
【0078】
「担体」という用語は、治療化合物とともに投与される希釈剤、アジュバント、賦形剤、またはビヒクルを指す。かかる薬学的担体は、水などの滅菌液体、およびピーナッツ油、大豆油、鉱油、ゴマ油など、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールなどの、石油、動物、植物、もしくは合成起源のものを含む油、または他の合成溶媒であり得る。
【0079】
以下の実施例は、本質的に、単に例示的かつ非限定的であるとみなされるものである。本発明が関係する当業者には、本発明の範囲から逸脱することなく、多くの修正、置換、および変形が行われ得ることが明らかであろう。
【0080】
実施例1
【0081】
アスパシタラビン溶解の試み
【0082】
アスパシタラビンまたはその塩酸塩を、それらの組成物を調製するために、様々な条件(各構成成分/条件での別個の実験)で様々な成分とともに撹拌した。多くの組成物は、(例えば、低い純度または高い分解パーセンテージを示す)不十分な化学的安定性、または(組成物は、不安定な懸濁液、濁った溶液、溶液中の沈殿物などの形態であった)物理的安定性を示した。構成成分の中でも、有機溶媒(例えば、グリセロール、エタノール、ポリエチレングリコール(PEG、例えばPEG400)、ジメチルアセトアミド、およびプロピレングリコール)およびポリマー(例えば、ポリオキシエチル化12-ヒドロキシステアリン酸、ポリエチレングリコール、ソルビタンモノラウレート、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリエチレン/プロピレンオキシドのトリブロックコポリマー(ポロキサマー)、およびシクロデキストリン、および/またはそれらの誘導体)を試験した。試験した条件は、様々な温度(4~30℃)、pH範囲、撹拌持続時間を含んでいた。ポロキサマー、シクロデキストリン(およびそれらの誘導体)、PVP、ポリエチレングリコール、またはそれらの組み合わせが、アスパシタラビンの安定化および/または溶解に成功したことが見出された。図1および表1の比較結果を参照されたい。
【0083】
【表1】
【0084】
実施例2
【0085】
本発明の組成物
【0086】
アスパシタラビンおよびポロキサマー188を含む組成物(組成物1)
【0087】
以下からなる乾燥組成物:
10%w/wのアスパシタラビンまたはその薬学的に許容される塩;
0.5~5%w/wのポロキサマー188
pHを調整するための0.1MのNaOH。
【0088】
乾燥組成物は、少なくとも12か月間安定であった。乾燥組成物は、注射または注入のために、生理学的水溶液にさらに溶解させることができる。
【0089】
アスパシタラビンおよびシクロデキストリンを含む組成物
【0090】
組成物2a:
【0091】
以下からなる水溶液の組成物:
10%w/wのアスパシタラビンまたはその薬学的に許容される塩;
20~30-%w/wのCaptisol(SBEβCD);および
pHを調整するための0.1MのNaOH。
【0092】
組成物2b:
【0093】
以下からなる水溶液の組成物:
10%w/wのアスパシタラビンまたはその薬学的に許容される塩;
20~30-%w/wのKleptose HP(K-HP);および
pHを調整するための0.1MのNaOH。
【0094】
組成物2c:
【0095】
以下からなる水溶液の組成物:
10%w/wのアスパシタラビンまたはその薬学的に許容される塩;
20~30-%w/wのKleptose HPB(K-HPB);および
pHを調整するための0.1MのNaOH。
【0096】
組成物2d:
【0097】
以下からなる水溶液の組成物:
10%w/wのアスパシタラビンまたはその薬学的に許容される塩;
20~30-w/w%のKleptose HPB LB(K-HPB LB);および
pHを調整するための0.1MのNaOH。
【0098】
アスパシタラビンおよびポロキサマー188およびPVPを含む組成物(組成物3)
【0099】
以下からなる組成物:
10%w/wのアスパシタラビンまたはその薬学的に許容される塩;
5~%w/wのPVP;
1%w/wのポロキサマー188;および
pHを調整するための0.1MのNaOH。
【0100】
アスパシタラビンおよびPEG400を含む組成物(組成物4)
【0101】
以下からなる組成物:
10%w/wのアスパシタラビンまたはその薬学的に許容される塩;
90~%w/wのPEG400。
【0102】
実施例3
【0103】
本発明の組成物の安定性および溶解度
【0104】
実施例2に記載の組成物1、2a~2d、3を水溶液に室温で溶解させた。組成物4は、未希釈のPEG400中のアスパシタラビンである。24時間後にアスパシタラビンの溶解度を測定し、代表的な結果を図1に提示する。理解することができるように、ポロキサマー188、PEG、およびポロキサマーとPVPとの組み合わせを含む組成物の溶解度は、高い溶解度を示した。
【0105】
別の研究では、アスパシタラビン塩酸塩を、pH約5の異なる安定剤/可溶化剤(表2を参照されたい)の3%水溶液に添加した。溶液の溶解度および安定性は、表1で理解することができるように、室温で24時間後に試験した。
【0106】
【表2】
【0107】
したがって、アスパシタラビンまたはその薬学的に許容される塩と、ポロキサマー、PEG、PVP、またはそれらの組み合わせと、を含む本発明の組成物は、50mg/mlを超える溶解度を有する安定な溶液を提供する。
【0108】
第3の研究では、77:23(a)または10:1(b)の重量比のアスパシタラビンまたは薬学的に許容される塩とポロキサマー188とを混合し、pHを4.5に調整し、生じた溶液を凍結乾燥させた。図2A(77:23比)~2B(10:1比)に示されるように、乾燥組成物の安定性を経時的に試験した。
【0109】
最終研究では、室温、pH4.5で24時間後に20%w/wの異なるシクロデキストリンの存在下でアスパシタラビン溶解度を測定し、結果を図3に示す。
【0110】
提示された結果を考慮すると、本発明の組成物は、アスパシタラビン濃度(溶解度)、および純度、および溶液の外観に関して、経時的に安定であることが示されている。本発明の組成物内のアスパシタラビンのこの安定性および溶解度は、少なくとも1つの水溶性の線状ポリマー、シクロデキストリン、またはそれらの組み合わせの使用に起因する(例えば、表2および図1~3を参照されたい)。
【0111】
本発明は、特に本明細書で上に示され記載されているものによって限定されないことが当業者によって理解される。むしろ、本発明の範囲は、本明細書で上記の様々な特色、ならびに変形および修正の組み合わせおよび部分的な組み合わせの両方を含む。したがって、本発明は、特に記載の実施形態に限定されるものとして構築されるものではなく、本発明の範囲および概念は、以下の特許請求の範囲を参照することによってより容易に理解されるであろう。
図1
図2A
図2B
図3
【国際調査報告】