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特表2023-513509再循環システムおよび当該再循環システムを備える供給システム
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  • 特表-再循環システムおよび当該再循環システムを備える供給システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-31
(54)【発明の名称】再循環システムおよび当該再循環システムを備える供給システム
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04 20160101AFI20230324BHJP
   H01M 8/04746 20160101ALI20230324BHJP
   H01M 8/04313 20160101ALI20230324BHJP
   H01M 8/04537 20160101ALI20230324BHJP
【FI】
H01M8/04 J
H01M8/04746
H01M8/04313
H01M8/04537
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022547681
(86)(22)【出願日】2021-02-04
(85)【翻訳文提出日】2022-09-27
(86)【国際出願番号】 IB2021050899
(87)【国際公開番号】W WO2021156781
(87)【国際公開日】2021-08-12
(31)【優先権主張番号】102020000002239
(32)【優先日】2020-02-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522211357
【氏名又は名称】アルコ フューエル セルズ ソチエタ レスポンサビリタ リミタータ
【氏名又は名称原語表記】ARCO FUEL CELLS S.R.L.
【住所又は居所原語表記】Via Ercolana 670, 40059 Medicina (Bologna), Italy
(74)【代理人】
【識別番号】100159905
【弁理士】
【氏名又は名称】宮垣 丈晴
(74)【代理人】
【識別番号】100142882
【弁理士】
【氏名又は名称】合路 裕介
(74)【代理人】
【識別番号】100158610
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 新吾
(74)【代理人】
【識別番号】100132698
【弁理士】
【氏名又は名称】川分 康博
(72)【発明者】
【氏名】ダンツィ,アンジェロ
(72)【発明者】
【氏名】マンドゥリーノ,ピエトロ
【テーマコード(参考)】
5H127
【Fターム(参考)】
5H127AB04
5H127AB29
5H127AC02
5H127AC03
5H127BA02
5H127BA22
5H127BA23
5H127BA28
5H127BA33
5H127BA59
5H127BA60
5H127BB02
5H127DB53
5H127DB87
5H127DC04
5H127DC09
5H127DC87
(57)【要約】
燃料電池(101)内で水素を再循環させるためのシステムが説明される。再循環システムは、燃料電池の出口(103)に接続可能な入口(3)と、燃料電池に水素を供給するためのライン(104)に接続可能な出口(4)とを有するタンク(2)を備える。再循環システムは、第1の逆止弁(CV1)および第2の逆止弁(CV2)を備える。第1の逆止弁(CV1)は、燃料電池からタンクへの流れ(F1)を調整するために燃料電池の出口(103)とタンクの入口(3)との間に挿入することができ、第2の逆止弁(CV2)は、タンク(2)から供給ライン(104)への水素の流れ(F2)を調整するために、タンクの出口(4)と水素供給ライン(104)との間に挿入することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの基本的な燃料電池(101)のための、好ましくは基本的な燃料電池のスタックのための、水素の再循環システムであって、
前記基本的な燃料電池(101)は、第1の反応物、例えば水素のための第1の入口側(101a)と、第2の反応物、例えば酸素のための第2の入口側(101b)とを有し、
前記第1の入口側(101a)は、前記第1の反応物のための入口(102)と、前記基本的な燃料電池で生じる反応の少なくとも第1の副生成物、例えば水のための出口(103)とを有し、
前記再循環システムは、前記基本的な燃料電池の前記出口(103)に接続することができる入口(3)と、前記第1の反応物を前記基本的な燃料電池に供給するためのライン(104)に接続することができる第1の出口(4)とを有するタンク(2)を備え、
前記再循環システムは、前記基本的な燃料電池から前記タンクへの第1の流れ(F1)を許容または阻止するために、前記基本的な燃料電池の前記出口(103)と前記タンクの前記入口(3)との間に挿入することができる少なくとも第1の逆止弁(CV1)と、前記タンク(2)から前記第1の反応物を供給するための前記ライン(104)への前記第1の反応物の第2の流れ(F2)を許容または阻止するために、前記タンクの前記出口(4)と前記第1の反応物を供給するための前記ライン(104)との間に挿入することができる少なくとも第2の逆止弁(CV2)と、を備え、前記第1の逆止弁(CV1)は一方向弁であり、前記第2の逆止弁は一方向逆止弁(CV2)である、再循環システム。
【請求項2】
前記タンク(2)は、使用時に、前記第1の出口(4)の下に配置される少なくとも前記第1の副生成物のための第2の出口(5)を有する、請求項1に記載の再循環システム。
【請求項3】
前記第2の出口(5)を介した前記タンク(2)からの前記第1の副生成物の流れを調整するための、前記第2の出口(5)と連通する第1の弁(6)を備える、請求項2に記載の再循環システム。
【請求項4】
前記タンク(2)内の前記第1の副生成物の液面を監視するための液面センサ(7)を備え、前記第3の弁(6)は前記液面の関数として制御される、請求項3に記載の再循環システム。
【請求項5】
前記タンク(2)は、少なくとも、生じ得る前記反応の第2の副生成物のための第3の出口(8)を有し、前記第3の出口(8)は、好ましくは、使用時に、前記第1の出口(4)と実質的に同じ高さに配置されており、
前記再循環システムは、前記第3の出口(8)を介した前記タンク(2)からの前記第2の副生成物の流れを調整するための、前記第3の出口(8)と連通する第2の弁(9)を備える、請求項1から4のいずれか一項に記載の再循環システム。
【請求項6】
第1の反応物のための第1の入口側(101a)および第2の反応物のための第2の入口側(101b)を有する複数の基本的な燃料電池を備える燃料電池のスタック(101)を備える発電プラントであって、
前記第1の入口側は、第1の反応物、特に水素のための入口(102)と、燃料電池の前記スタック(101)で生じる反応の少なくとも第1の副生成物、特に水のための出口(103)とを有し、
前記発電プラントは、燃料電池の前記スタック(101)に前記第1の反応物を供給するための供給ライン(104)と、前記第1の反応物を供給するためのシステム(105)と燃料電池の前記スタック(101)との間で前記供給ラインを遮断する供給弁(106)と、請求項1から5のいずれか一項に記載の再循環システム(1)と、を備え、
前記再循環システム(1)では、前記タンク(2)の前記入口(3)は、燃料電池の前記スタック(101)の前記出口(103)と前記タンク(2)の前記入口(3)との間に挿入された前記第1の逆止弁(CV1)を介して燃料電池の前記スタックの前記出口(103)と連通しており、前記タンク(2)の前記第1の出口(4)は、前記タンク(2)の前記出口(4)と前記第1の反応物の前記供給ライン(104)との間に挿入された前記第2の逆止弁(CV2)を介して前記供給ライン(104)の前記第1の反応物の流れに従って前記供給弁(106)の下流で、前記第1の反応物を供給するための前記供給ライン(104)と連通している、発電プラント。
【請求項7】
前記第1の逆止弁(CV1)は、前記第1の逆止弁(CV1)の上流側の圧力が、前記第1の逆止弁(CV1)の下流側の圧力より大きい場合に、前記燃料電池のスタック(101)から前記タンク(2)への前記第1の副生成物の流れを可能にするように構成されている、請求項6に記載の発電プラント。
【請求項8】
前記第2の逆止弁(CV2)は、前記第2の逆止弁(CV2)の上流側の圧力が前記第2の逆止弁(CV2)の下流側の圧力より大きい場合に、前記タンク(2)から前記第1の反応物の前記供給ライン(104)への前記第1の反応物の流れを可能にするように構成されている、請求項6または7に記載の発電プラント。
【請求項9】
前記供給弁(106)と通信しており、前記燃料電池のスタック(101)の性能が低下するとき、例えば前記燃料電池のスタック(101)の端子の電圧が不安定になったときに、前記供給弁(106)を閉じるように構成されたコンピュータ化された指令および制御ユニット(11)を備える、請求項6から8のいずれか一項に記載の発電プラント。
【請求項10】
前記燃料電池のスタック(101)を制御するためのデバイス(108)を備え、前記コンピュータ化された指令および制御ユニット(11)は、前記燃料電池のスタック(101)の前記端子の前記電圧が所定の値を下回った場合に、前記供給弁(106)を閉じるように構成されている、請求項9に記載の発電プラント。
【請求項11】
前記コンピュータ化された指令および制御ユニット(11)は、前記液面センサ(7)と通信しており、前記タンク(2)内の前記第1の副生成物の液面の関数として前記第1の弁(6)を開くように構成されている、請求項4および請求項9または10に記載の発電プラント。
【請求項12】
第1の反応物のための第1の入口側(101a)および第2の反応物のための第2の入口側(101b)を有する燃料電池のスタック(101)を備える発電プラントを再循環させるための再循環方法であって、前記第1の側は、第1の反応物、特に水素のための入口(102)および少なくとも第1の副生成物のための出口(103)を有し、前記方法は、
前記第1の反応物の前記入口(103)を、供給弁(106)を用いて、前記反応物を供給するための供給ライン(104)と連通させ、前記第1の反応物を前記燃料電池のスタック(101)に供給し、前記燃料電池のスタック(101)を作動圧力に維持するステップと、
前記燃料電池のスタックの前記出口(103)を、前記燃料電池のスタックからタンクへの前記第1の副生成物の流れ(F1)を可能にする第1の逆止弁(CV1)を使用して、前記タンク(2)と連通させるステップと、を含み、
前記第1の逆止弁(CV1)は、前記第1の逆止弁(CV1)の上流側の圧力が前記第1の逆止弁(CV1)の下流側の圧力よりも大きい場合に、前記燃料電池のスタック(101)から前記タンク(2)への前記第1の副生成物の流れを可能にするように構成されており、前記タンク(2)内の圧力は動作圧力に適合しており、前記方法は、
第2の逆止弁であって、特に当該第2の逆止弁(CV2)の下流の圧力が当該第2の逆止弁(CV2)の上流の圧力より小さい場合に、前記タンクから前記供給ラインへの気体の流れ(F2)を可能にする第2の逆止弁によって、前記タンク(2)を、前記供給弁(106)の下流で且つ前記燃料電池のスタック(101)の上流で、前記供給ライン(104)と連通させるステップと、
前記燃料電池のスタックの前記第1の側に過剰な水が存在する場合、例えば前記燃料電池のスタック(101)の端子の電圧が所定の値を超えて低下する場合に、前記供給弁を閉じて、前記燃料電池のスタックへの前記第1の反応物の供給を遮断するステップと、を含み、
供給の遮断は、前記第1の逆止弁(CV1)の上流および前記第2の逆止弁(CV2)の下流の負圧を決定し、
前記負圧は、前記タンク(2)内で圧縮された前記第2の反応物が前記燃料電池のスタック(101)に供給されるように、前記第1の逆止弁(CV1)の閉鎖および前記第2の逆止弁(CV2)の開放を決定し、
前記タンクから来る前記気体は、所定の最小圧力値に達するまで消費され、
前記方法は、前記第1の反応物の供給を遮断する前記ステップの後に、前記タンク内で前記所定の最小圧力値に達したときに前記供給弁を開くステップを含み、前記所定の最小圧力値は、前記供給弁の下流の前記供給ライン内の過圧を決定し、前記第1の反応物の前記供給ライン内の過圧は、前記第1の反応物によって、前記燃料電池のスタックに存在する反応の副生成物、特に水を前記タンク(2)に向かって押す、再循環方法。
【請求項13】
前記タンク(2)内の前記副生成物の最大液面に達したときに、前記反応の副生成物、特に水を前記タンクから空にするステップを含む、請求項12に記載の再循環方法。
【請求項14】
前記燃料電池のスタックへの前記第1の反応物の供給を遮断する前記ステップおよび後続する前記供給弁を開く前記ステップが、前記システムの前記圧力値に関係なく、所定の時間間隔で定期的に実行される、請求項12または13に記載の再循環方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、再循環システムに関し、特に、電池、例えばリチウム電池の充電に適した、燃料電池に基づく発電プラントのための、水素を再循環させるためのシステムに関する。本発明はまた、再循環システムを備える発電プラントに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、水素および酸素を直接化学結合させることによって発電するように設計された特殊なデバイスである。これらの2つの反応物は、燃料電池のスタック、すなわち、適切な触媒膜によって分離された適切な材料で作られた一連のプレートに適切に運ばれる。
【0003】
各膜は、基本的に電極として機能し且つ膜を介して上記反応物の拡散を促進する、いわゆるガス拡散層(GDL)と組み合わされる。
【0004】
各々触媒膜の片側(カソードまたはアノード)にある上記プレートの表面に形成された適切なフローチャネル内を流れる上記反応物は、反応の副生成物として、単純な水蒸気および電流である電子の流れを生成するように、結合する。
【0005】
基本セルのスタックに加えて、燃料電池はまた全体として、いわゆるBOP(バランスオブプラント)を備えており、BOPは、例えば、スタックの内部に空気を吹き込むためのブロワー、水素用の一連の弁、冷却水用の弁および導管など、燃料電池の正しい動作に必要な一連のデバイスからなる。
【0006】
燃料電池の通常の動作中、水素は基本セルまたはスタックのアノード側に送られ、そこから膜の触媒作用のおかげで、プロトンが膜自体を通って移動し、カソード側に存在する酸素と結合し、それによってセルのカソード側に蓄積する水蒸気を形成する。スタック内の水の存在は、燃料電池の正しい動作に不可欠である。特に、触媒膜およびガス拡散層の両方が反応のために十分に湿っていなければならない。
【0007】
スタック内の必要な湿度を保証するために、適切なシステムが使用され、このシステムは、カソードに蓄積される水の再循環または外部の予備からの水の直接補充、または例えば、燃料電池から来るカソードのフローから水分を取り出し、それをブロワーから来る乾燥したフローに移す加湿器など、ガス状反応物の加湿を含む。しかしながら、セル内の水の量は一定の間隔内にとどまる必要があり、過剰であってはならない。
【0008】
セル内の大量の水の存在は実際、いわゆる「フラッディング」、すなわち、正しい反応、および、したがって燃料電池の動作を阻害し得る水の過剰な蓄積を発生させ得る。セル内の余分な水はすべて、アノード側およびカソード側の両方で適切にパージされなければならない。
【0009】
セル内の生じ得る大量の水は、好ましくは、水素および酸素が反応する場所、すなわち、カソード側で形成されるが、特定の量の水はまた、水素のみが存在するセルのアノード側に移動し得る。
【0010】
反応に必要な酸素を供給するためにスタックのカソード側を流れる空気は通常、動作自体の一部として適切な且つ非常に自然な態様で、余分な水を除去するのに十分な圧力を生成できる適切なファンまたはコンプレッサによって導入される。
【0011】
一方、アノード側では、水素が静的な態様で圧力下で存在しており、したがって、アノード側の水は徐々に増加する態様でのみ蓄積し得る。
【0012】
したがって、余分な水の排出および燃料電池の正しい動作を可能にするために、アノード側での適切な且つ繰り返しのパージ動作が必要である。アノード側でこれらのパージを実行するために、燃料電池は、例えば定期的に開くことができる専用のパージ弁を備える。
【0013】
すべての基本セルで実行されるこの必要且つ避けられないパージ動作には、いくつかの重大な欠点がある。
【0014】
通常、アノードのパージ動作および水素の管理による燃料電池の全体的な効率の低下は、最大15%またはそれ以上にさえ達し、これは、例えば燃料電池システムなどの高効率システムにとって非常に大きな影響を与える値である。
【0015】
水素がアノード側で常に圧力下にあることを考慮すると、上記のパージ弁が開くと、突然の圧力降下およびスタックから抜け出す水素の流れが発生し、アノード側に存在する水を引き込む。
【0016】
しかしながら、パージ動作は、水を取り除くことに加えて、反応の目的に対して失われるかなりの量の水素を取り除き、セルの効率に悪影響を及ぼす。水素は事実上、最も密度の低い気体および元素であるので、少量および短時間のパージでも、かなりの量の失われた水素を特定できる。
【0017】
さらに、規制に従って可燃限界未満に濃度を抑えるために、外部および閉鎖環境に導入された水素をさらに希釈する必要があり、したがって、パージ弁からの出口で適切な空気の流れで希釈する必要がある。
【0018】
さらに、パージは、スタックの通常動作時の圧力と比較して低い圧力、通常、周囲圧力の環境に向かって強制的に実施されなければならないことを考慮すると、損失を避けるために、すなわち、パージされた水素を回収することが望ましい、または必要な場合には、セルの通常動作時の圧力値よりも高い圧力値にパージされた水素を再圧縮してシステム内の循環に戻す水素用の特定のコンプレッサを用いることが通常必要である。
【0019】
この解決策は、主に水素コンプレッサの比較的高いコストと、燃料電池によって吸収される、その動作に必要なエネルギーとのために、コストおよび効率の点で大きな影響を及ぼす。パージしている水素を失う方が、それをシステムに戻すよりも望ましい場合もある。
【0020】
数千または数万ワットのオーダーのかなりの電力出力の場合、そのようなデバイスの複雑さは、再循環される水素の量がシステムにとって重要になる場合に、セルのコストを数千または数万ユーロのオーダーという極めて多額に増大させ、その利用を市場の外に置きさえする。
【0021】
特許文書US2009104478A1は、特に燃料電池のアノードの圧力を制御し、同時に水素の再循環を得るための、コンプレッサの使用に対する代替の解決策を示す。
【0022】
アノード側にある水および気体は、定期的に電磁弁34を作動する制御ユニット38によって制御される電磁弁34を介してアノードから定期的に排出され、貯蔵タンクに集められて分離される。
【0023】
次に、気体の一部は、制御ユニット38によって制御される電磁弁37によって、タンクからアノードに再び供給される。
【0024】
制御ユニット38はまた、タンク30内の主圧力が所望の値に達するまで調整されるように、セルに水素を供給するための電磁弁33を制御する。制御ユニット38は、とりわけ、電磁弁33および37を適切に制御して、アノード内の圧力を所望のプリセット値に調整した状態に保つ。
【0025】
圧力を制御する、より一般的には水素を再循環させるための特許文書US2009104478A1のシステムは、適切な態様且つ特定の時間で電磁弁を制御するための非常に高度な電子機器を必要とする。
【0026】
圧力は、電力を供給して制御する必要のある対応する電磁弁によってプラントの個別のブランチで制御される。システムの平衡は、弁を正確に制御することによって得られる。
【発明の概要】
【0027】
これに関連して、本発明の主な目的は、上記の欠点の少なくともいくつかを克服することである。
【0028】
本発明の目的は、燃料電池のアノード側に蓄積した水の除去によってパージされた水素の100%を回収することを理論的に可能にする、単純で安価な再循環システムを提供することである。
【0029】
この目的は、添付の特許請求の範囲の請求項の1つまたは複数に記載されている技術的特徴を備える再循環システムによって達成される。従属請求項は、本発明の可能な異なる実施形態に対応する。
【0030】
第1の態様によれば、本発明は、燃料電池発電システムのための水素を再循環させるためのシステムに関する。
【0031】
再循環システムは、燃料電池に提供される水のアノード出口に接続することができる入口と、燃料電池に水素を供給するためのラインに接続することができる出口とを有するタンクを備える。
【0032】
このシステムは、燃料電池からタンクへの流れを調整するために、燃料電池のアノード出口とタンク入口との間に挿入できる一方向逆止弁を備える。弁は、特に水素供給ラインに設けられた供給弁が開いているとき、発電システムの通常の動作圧力で開いている。
【0033】
供給弁は、燃料電池を水素源と連通させ、開かれると、必要に応じて減圧弁を介して、プラントを所定の作動圧力にし、水素を燃料電池に供給する。
【0034】
再循環システムは、タンクから水素供給ラインへの流れ、特に水素の流れを調整するために、タンク出口と供給弁の下流の水素供給ラインとの間に挿入できる一方向逆止弁を備える。
【0035】
このように、水素供給弁が開いているとき、燃料電池とタンクは所定の動作圧力にあり、燃料電池とタンクとの間の一方向逆止弁は開いており、タンクと供給ラインとの間の一方向逆止弁は閉じている。
【0036】
本発明の一態様によれば、例えばフラッディングによって燃料電池の性能が低下した場合、供給弁が閉じられる。
【0037】
このように、負圧がタンクと供給ラインとの間の一方向逆止弁および供給弁の両方の下流に発生する。
【0038】
この負圧はタンクから水素を引き出し、タンクと供給ラインとの間の一方向逆止弁が開く一方、燃料電池とタンクとの間の逆止弁が閉じる。
【0039】
タンク内に存在する水素は燃料電池に供給され、燃料電池それ自体が消費し、圧力がさらに低下する。
【0040】
本発明の一態様によれば、主に燃料電池による水素消費のために、タンク内の圧力が所定の最小値を下回ると、供給弁が開く。
【0041】
作動圧力で水素を供給するための新しい流れは、燃料電池とタンクの間の逆止弁の開放と、タンクと供給ラインの間の逆止弁の閉鎖とを決定する。タンクを作業圧力まで再び満たすことができるようにするには、水素供給の流れが、最初にアノード側のスタック内を通過させられなければならず、したがって、アノード側から余分な水を自然に取り除くことになる。
【0042】
アノード側から除去された水はその後、タンク、特にその底に集められる。
【0043】
燃料電池内とタンク内の圧力は再び作動圧力に達し、供給弁が新たに閉じるまで、すべてが上記のように進行する。
【0044】
本発明の一態様によれば、タンクに蓄積された水は、例えば適切な排出弁によって、水素を失うことなく下から除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
本発明のさらなる特徴および利点は、関係する水素再循環システムを備える発電プラントの好ましいが非排他的な実施形態の以下の非限定的な説明においてより明白である。
図1】本発明による水素再循環システムを備えた発電プラントのブロック図を示す。
【0046】
以下、本発明の範囲を限定することなく、本発明による水素再循環システムを備えた発電プラントのブロック図を示す、例示のみを目的として提供された添付の図面を参照して説明がなされる。
【発明を実施するための形態】
【0047】
添付の図面を参照して、数字100は本発明による発電プラントを示し、当該発電プラントは本発明を理解するために必要な範囲においてのみ説明される。
【0048】
プラント100は、水素と酸素との間の反応が既知の方法で起こり、電子の流れおよび水蒸気を生成する、複数の適切に積み重ねられた基本的な燃料電池によって既知の方法で形成された燃料電池のスタック101を備える。
【0049】
この明細書はまた、基本的な燃料電池および基本的な燃料電池のスタックの同様の動作を前提として、単一の基本的な燃料電池を備えるプラント100を指し得る。
【0050】
スタックは、第1の側101aすなわちアノード側と、第2の側101bすなわちカソード側とを有する。
【0051】
アノード側101aは、第1の反応物、特に水素の入口側であり、一方、カソード側101bは、スタック101で起こる反応のための第2の反応物、特に空気または酸素の入口側である。
【0052】
概略的に示されるように、アノード側101aは、水素のための入口102と、水素およびスタック101で起こる反応の少なくとも1つの副生成物のための出口103と、を有する。
【0053】
プラント100は、動作圧力または作動圧力で水素を、通常、スタック101に提供する、水素を供給するためのライン104を備える。
【0054】
ライン104は、所定の圧力でライン104に水素を供給する、ブロック105として概略的に表される供給システムにつながる。
【0055】
プラント100は、システム105とスタック101との間のライン104を遮断する供給弁106、好ましくは電磁弁を備える。
【0056】
水素の圧力は、好ましくは、例えばブロック107として概略的に表される圧力調整器によって、水素を供給するための方向Vにおいて弁106の下流の動作圧力に調整される。
【0057】
調整器107は、動作圧力を、例えば、1.20バールから1.75バールの間の値に調整する。プラント100の一実施形態では、動作圧力は、好ましくは、1.45バールであり得る。
【0058】
1つの好ましい実施形態では、動作圧力は1.75バールに等しい。
【0059】
プラント100は、ブロック108で概略的に示された、スタック101を制御するためのデバイスであって、スタック101の正しい動作を監視するデバイスを備える。
【0060】
デバイス108は、例えば、スタック101の端子の電圧を監視するための電圧計、またはスタック101を構成する各単一セルの電圧を測定するための適切なシステムを備える。
【0061】
プラント100は、再循環システム、特に、全体が数字1で示されるアノード再循環システムを備える。
【0062】
有利なことに、システム1は、水素を消失させないこと、すなわち、プラント1に水素全体を実質的に保持することを可能にする。
【0063】
システム1はまた、プラント1の動作に必要な水を超えた水であって、スタック自体をフラッディングさせて動作に悪影響を与える可能性のある水を、スタック101からパージする、すなわち排出するために使用される。
【0064】
再循環システム1は、再循環入口3および出口4を有するタンク2を備える。
【0065】
入口3は、スタック101のアノード側101aの出口103に接続可能であり、図示の例では、当該出口103に接続されている。
【0066】
システム1は、図示の例では、出口103と入口3を連通させる弁CV1を備える。弁CV1は、開位置と閉位置との間で切り替えることができる。
【0067】
弁CV1は、スタックからタンクへの第1の流れF1を調整するために、スタック101の出口103とタンク2の入口との間に挿入することができ、図示の例では、スタック101の出口103とタンク2の入口との間に挿入されており、弁CV1が開いているとき、タンク2はスタック101と流体連通している。
【0068】
弁CV1は、好ましくは一方向タイプであり且つ弁CV1の上流の圧力が作動圧力以上である場合に、すなわち、弁CV1の上流の圧力が参考例の1.75バールに等しい場合に開いている。
【0069】
弁CV1は、好ましくは、いわゆる逆止弁または逆流防止弁であり、すなわち、制御を必要とせず且つその動作がその上流および下流の圧力によって決定される自動弁である。
【0070】
弁CV1は、スタック101内の圧力がタンク2内の圧力よりも高い場合に、流れF1を通過させる。
【0071】
タンク2の出口4は、水素供給方向Vにおいて供給弁106の下流の供給ライン104に接続可能であり、図示の例では、水素供給方向Vにおいて供給弁106の下流の供給ライン104に接続されている。
【0072】
システム1は、図示の例では、タンク2の出口4を供給ライン104と連通させる第2の弁CV2を備える。弁CV2は、開位置と閉位置の間で切り替えることができる。
【0073】
弁CV2は、タンク2から供給ライン104への第2の流れF2を調整するために、タンク2の出口4と供給ライン104との間に挿入することができ、図示の例では、タンク2の出口4と供給ライン104との間に挿入されており、弁CV2が開いているとき、タンク2はライン104と流体連通している。
【0074】
弁CV2は、好ましくは一方向であり且つ弁CV2の下流の圧力が動作圧力よりも低い場合に、すなわち、弁CV2の下流の圧力が参考例の1.75バール未満である場合に開く。
【0075】
弁CV2は、好ましくは、いわゆる逆止弁または逆流防止弁であり、すなわち、制御を必要とせず且つその動作がその上流および下流の圧力によって決定される自動弁である。
【0076】
弁CV2は、タンク2内の圧力が供給ライン104内の圧力よりも高い場合に、流れF2を通過させる。
【0077】
好ましくは、タンク2は、概略的に示されるように、使用時に、出口4の下に配置される排水出口5を有する。
【0078】
再循環システム1は、好ましくは、ブロック6として概略的に表される、出口5または排出を制御するための弁を備える。
【0079】
弁6は、例えば、電磁弁であり、以下でより詳細に説明するように、タンク2から出口5を通って出てくる副生成物の流れ、特に水の流れを調整するために、出口5が開いている開構成と、出口5が閉じている閉構成との間で制御することができる。
【0080】
システム1は、好ましくは、タンク2内の水位を監視するための、ブロック7として概略的に表される液面センサを備える。
【0081】
有利には、弁6は、センサ7によって検出されるタンク2内の水位の関数として制御される。
【0082】
図示の実施形態では、タンク2は、好ましくは、使用時に、再循環出口4と実質的に同じ高さに配置される通気出口8を有する。
【0083】
再循環システムは、出口8と連通している、ブロック9として概略的に表される通気弁を備える。
【0084】
弁9は、例えば、電磁弁であり、タンク2に存在する気体の流れを調整するために、出口8が開いている開構成と、出口8が閉じている閉構成との間で制御することができる。
【0085】
再循環システム1は、弁106の下流、特に調整器107の下流のプラント100内の圧力に対応するタンク2内の圧力を監視するための、ブロック10で概略的に示されている圧力センサを備える。
【0086】
定常状態では、通常の動作条件下で、センサ10は、作動圧力または動作圧力を、例えば、供給ライン104によって維持される上記の1.75バールを測定する。
【0087】
プラント100は、好ましくは、プラント100を制御するための、ブロック11で概略的に示されているコンピュータ化された指令および制御ユニットを備える。
【0088】
ユニット11は、供給弁106と通信しており、スタック101の性能が低下したときに、例えば、スタックの端子の電圧が不安定になったときに、弁106を閉じるように構成される。
【0089】
好ましくは、ユニット11は、スタック101を制御するためのデバイス108と通信しており、例えば、スタック101の端子の電圧が所定値未満になった場合、またはスタックのセルの電圧が不安定になった場合に、供給弁106を閉じるように構成される。
【0090】
一実施形態では、ユニット11は、定期的に、例えば、1分間隔で、または適切に設計された不規則な間隔で、供給弁106を閉じるように構成される。
【0091】
図示のように、ユニット11は、好ましくは、液面センサ7および排水弁6と通信しており、タンク2内の水位の関数として弁6を開くように構成される。
【0092】
一実施形態によれば、弁6は、自動システムによって制御され、好ましくは、実質的に機械的な自動システムによって制御され、実質的に機械的な自動システムは、例えば液位計など、すなわち、それに組み込まれたものである。
【0093】
ユニット11は、特に、弁106の下流の供給ライン104の圧力を監視するために、圧力センサ10と通信している。
【0094】
コンピュータ化されたユニット11は、センサ10によって監視されるスタック101およびタンク2内の圧力が所定の最小値を下回った場合に、供給弁106を開くように構成されている。
【0095】
ユニット11は、通気弁9と通信しており、通気弁9を開構成と閉構成との間で制御する。
【0096】
一実施形態によれば、弁CV1および/または弁CV2は電磁弁であり、弁CV1および/または弁CV2を操作するように構成されたコンピュータ化された指令および制御ユニット11と通信している。
【0097】
使用時、供給弁106は、プラント1の開始時に開かれ、その下流の圧力は、スタック101内およびタンク2内の両方で、例えば圧力調整器107によって、作動圧力または動作圧力に、例えば上記の1.75バールになる。プラントの動作圧力は弁CV1の開放を決定する。
【0098】
弁CV1は、圧力変動のおかげで、外部からの介入なしに、自動的に開く。
【0099】
圧力センサ10は、供給圧力を監視し、弁106は開いたままであり、弁106の下流のプラント内の圧力は、常に動作値または作動値のままである。
【0100】
同時に、供給ライン104は、弁106によって、スタック101内の反応によって消費された水素を継続的に回復させる一方、水は燃料電池のアノード側に蓄積し始める。
【0101】
アノード側に蓄積された水が過剰な値に達すると、スタックのフラッディングを防止するために、ユニット11によってパージ動作が開始される。過剰な値は、デバイス108によって検出され、例えばスタック101の性能の低下によって浮き彫りにされる。
【0102】
コンピュータ化されたユニット11は、供給弁106の閉鎖を強いる。
【0103】
これらの条件では、スタック101内の反応および関連する水素消費により、弁106の下流に負圧が生じる。
【0104】
この負圧は、弁CV1の自然な閉鎖および弁CV2の自然な開放を決定し、タンク2から供給ライン104内に水素を引き出す。
【0105】
実際、作動圧力でタンク2内にある水素は、逆止弁CV2を開き、スタック101は、タンク2内に存在する水素を、アノード側で供給される。
【0106】
反応により、タンク2内の圧力は動作圧力を下回り、スタック101に供給し続ける。
【0107】
圧力が所定の最小値、例えば、1.25バールに達すると、ユニット11は、弁106を開放させる。
【0108】
一実施形態では、弁106は、圧力センサ10から来る信号によって直接電圧制御され得る。
【0109】
代替実施形態では、弁106の開閉は、必要に応じて、プラント内の圧力に関係なく、定期的に実行される。
【0110】
弁106が開くと、供給システム105から来る水素の流れは、スタック101に流れ、タンク2にも流れ、図示の例では、500ミリバールである圧力ジャンプを有する。
【0111】
この水素の流れは、スタック101のアノード側からタンク2に余分な水を運び、圧力は動作圧力に戻る。
【0112】
排水された水は、タンクの上部に溜まるより軽い水素とは離れたままタンク2の底に溜まる。動作圧力でタンク2に存在する水素は、記載されるように、供給弁106が閉じられたときにスタック101に供給することができる。
【0113】
排水弁6は、タンク2の上部に残る水素を失うことなく水を除去するように、好ましくはコンピュータ化されたユニット11を使用して、または液位計によって操作され得る。
【0114】
弁6の開閉は、好ましくは、液面センサ7によって見出されるタンク2内の水位に基づいて制御される。
【0115】
図示の例では、水位が例えば所定の値を超えると、ユニット11は弁6を開く。
【0116】
通気弁9は、例えば、アノードに蓄積する微量の不活性ガスを除去するために使用される。
【0117】
有利には、それは、好ましくはユニット11を使用して、水素の使用効率を維持しつつ、著しく低いまたは無視できる頻度で作動され得る。
【0118】
説明された解決策には、重要な利点がある。
【0119】
このシステムは、コンプレッサや複数の電磁弁に基づく高度な制御システムを必要とせずに、簡易で自然な方法で水素を再循環させる。
【0120】
このシステムでは、アノードの水のパージも可能である。
【0121】
使用される構成要素の消費量はゼロまたは低く、プラントの効率に悪影響を与えない。
【0122】
タンクは、燃料電池の通常動作中にアノード側から除去された余分な水を集めることができる。このタンクの容量は、スタックの公称電力に関連しているので、平均水素消費量に関連している。
【0123】
再循環システム1を備えたプラント100は、例えば、リチウム電池パックおよびユーザ負荷と連動させることができる。
【0124】
特に、好ましい用途は、リフトトラックおよび同様のシステムのパワーパックであり、燃料電池およびリチウム電池パックセットは、従来の完全な鉛またはリチウム電気パックに対する代替物を構成する。
【0125】
このデバイスは、ガスボンベのような加圧式であろうと、金属水素化物(ただしこれに限定されるものではない)などの異なる方法であろうと、あらゆる貯蔵システムで利用可能なすべての水素を、および、燃料電池、より一般的にはあらゆる発電システムが、例えば、燃料電池とリチウム電池パックとの間に他の電力手段を使用するかまたはしないかに関わらず、電気自動車のような移動型システムの、または、UPSやAPSのようなエネルギーを生成して貯蔵する定置型システムのユーザ負荷に接続されたリチウム電池パックに適切に接続されなければならないすべてのそれらの用途で利用可能なすべての水素を、効率的且つ経済的に使用するためにも使用され得ることを理解されるべきである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0126】
【特許文献1】US2009104478A1
図1
【国際調査報告】