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特表2023-513548好酸球介在性炎症疾患を診断、治療およびモニタリングするための高分子量ヘパリン組成物および方法
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  • 特表-好酸球介在性炎症疾患を診断、治療およびモニタリングするための高分子量ヘパリン組成物および方法 図1
  • 特表-好酸球介在性炎症疾患を診断、治療およびモニタリングするための高分子量ヘパリン組成物および方法 図2
  • 特表-好酸球介在性炎症疾患を診断、治療およびモニタリングするための高分子量ヘパリン組成物および方法 図3A
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  • 特表-好酸球介在性炎症疾患を診断、治療およびモニタリングするための高分子量ヘパリン組成物および方法 図7
  • 特表-好酸球介在性炎症疾患を診断、治療およびモニタリングするための高分子量ヘパリン組成物および方法 図8
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  • 特表-好酸球介在性炎症疾患を診断、治療およびモニタリングするための高分子量ヘパリン組成物および方法 図11
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-31
(54)【発明の名称】好酸球介在性炎症疾患を診断、治療およびモニタリングするための高分子量ヘパリン組成物および方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/727 20060101AFI20230324BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20230324BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20230324BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20230324BHJP
   A61K 47/55 20170101ALI20230324BHJP
   A61K 31/573 20060101ALI20230324BHJP
   A61K 51/06 20060101ALI20230324BHJP
【FI】
A61K31/727
A61P1/00
A61P29/00
A61K45/00
A61K47/55
A61K31/573
A61K51/06 200
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022548199
(86)(22)【出願日】2021-02-10
(85)【翻訳文提出日】2022-08-08
(86)【国際出願番号】 US2021017453
(87)【国際公開番号】W WO2021163190
(87)【国際公開日】2021-08-19
(31)【優先権主張番号】62/972,224
(32)【優先日】2020-02-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508087147
【氏名又は名称】ユニヴァーシティー オブ ユタ リサーチ ファウンデーション
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(72)【発明者】
【氏名】グライヒ ジェラルド ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】コンディー ラッセル モリス
(72)【発明者】
【氏名】レイファーマン クリスティン エム
(72)【発明者】
【氏名】ピーターソン キャスリン エイ
(72)【発明者】
【氏名】エッカート デブラ
(72)【発明者】
【氏名】サファリ ヘディエ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA95
4C076BB01
4C076BB13
4C076BB21
4C076CC04
4C076CC16
4C076EE30
4C076FF70
4C084AA17
4C084MA52
4C084MA66
4C084NA13
4C084NA14
4C084ZA66
4C084ZB11
4C085HH03
4C085KA29
4C085KB79
4C085LL05
4C086AA01
4C086AA02
4C086DA10
4C086EA27
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA05
4C086MA52
4C086MA66
4C086NA13
4C086NA14
4C086ZA66
4C086ZB11
(57)【要約】
高分子量ヘパリンを含む組成物が本明細書に開示される。組成物は、約20kDa~約40kDaの平均分子量を有し、少なくとも50%の純度を有する高分子量ヘパリンの有効量、および薬学的に許容可能な賦形剤を含む。本明細書において、対象の好酸球関連炎症を治療する方法も開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
約20kDa~約40kDaの平均分子量を有するヘパリンの有効量であって、前記ヘパリン中のヘパリン鎖の少なくとも50%は、少なくとも20kDaの分子量を有する、ヘパリンの有効量と、薬学的に許容可能な賦形剤とを含む、組成物。
【請求項2】
前記ヘパリンが、少なくとも20kDaの平均分子量を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ヘパリンが、少なくとも30kDaの平均分子量を含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記ヘパリンが、少なくとも40kDaの平均分子量を含む、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記ヘパリン中のヘパリン鎖の少なくとも60%は、少なくとも20kDaの分子量を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記ヘパリン中のヘパリン鎖の少なくとも70%は、少なくとも20kDaの分子量を有する、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記ヘパリンの有効量は、約3mgである、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記ヘパリンの有効量は、約1mgである、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記ヘパリンの有効量は、約0.5mgである、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記ヘパリンが、一つ以上の好酸球顆粒タンパク質に結合するように構成される、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記一つ以上の好酸球顆粒タンパク質に対する前記ヘパリンの結合アフィニティは、前記一つ以上の好酸球顆粒タンパク質に対する低分子量ヘパリンの結合アフィニティよりも大きい、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記一つ以上の好酸球顆粒タンパク質は、主要塩基性タンパク質1(MBP-1)、主要塩基性タンパク質2(MBP-2)、好酸球由来ニューロトキシン(EDN)、好酸球カチオン性タンパク質(ECP)、および好酸球ペルオキシダーゼ(EPO)のうちの一つ以上を含む、請求項10に記載の組成物。
【請求項13】
前記組成物が、経口投与されるように構成される、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
前記組成物が、好酸球性食道炎を治療するのに治療的に有効である、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
前記ヘパリンにコンジュゲートされた治療剤をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項16】
前記治療剤が、グルココルチコイドである、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
前記ヘパリンにコンジュゲートされた放射性標識造影剤をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項18】
前記放射性標識造影剤が、99mTcである、請求項18に記載の組成物。
【請求項19】
対象において好酸球関連炎症を呈する組織を治療する方法であって、前記対象に、約20kDa~約40kDaの平均分子量を有するヘパリンの治療有効用量であって、前記ヘパリン中のヘパリン鎖の少なくとも50%は、少なくとも20kDaの分子量を有する、ヘパリンの治療有効用量と、薬学的に許容可能な賦形剤とを含む、組成物を投与することを含み、前記ヘパリンは、前記組織中の一つ以上の好酸球顆粒タンパク質に結合して、前記好酸球関連炎症を低減させる、方法。
【請求項20】
組織において好酸球関連炎症を低減させる方法であって、対象に、約20kDa~約40kDaの平均分子量を有するヘパリンの治療有効用量であって、前記ヘパリン中のヘパリン鎖の少なくとも50%は、少なくとも20kDaの分子量を有する、ヘパリンの治療有効用量と、薬学的に許容可能な賦形剤とを含む、組成物を投与することを含み、前記ヘパリンは、前記組織中の一つ以上の好酸球顆粒タンパク質に結合して、前記好酸球関連炎症を低減させる、方法。
【請求項21】
前記ヘパリンが、少なくとも20kDaの平均分子量を含む、請求項19または20に記載の方法。
【請求項22】
前記ヘパリンが、少なくとも30kDaの平均分子量を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記ヘパリンが、少なくとも40kDaの平均分子量を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記ヘパリン中のヘパリン鎖の少なくとも60%は、少なくとも20kDaの分子量を有する、請求項19または20に記載の方法。
【請求項25】
前記ヘパリン中のヘパリン鎖の少なくとも70%は、少なくとも20kDaの分子量を有する、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記ヘパリンの治療有効用量は、約3mgである、請求項19または20に記載の方法。
【請求項27】
前記ヘパリンの治療有効用量は、約1mgである、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記ヘパリンの治療有効用量は、約0.5mgである、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記一つ以上の好酸球顆粒タンパク質に対する前記ヘパリンの結合アフィニティは、前記一つ以上の好酸球顆粒タンパク質に対する低分子量ヘパリンの結合アフィニティよりも大きい、請求項19または20に記載の方法。
【請求項30】
前記一つ以上の好酸球顆粒タンパク質は、主要塩基性タンパク質1(MBP-1)、主要塩基性タンパク質2(MBP-2)、好酸球由来ニューロトキシン(EDN)、好酸球カチオン性タンパク質(ECP)、および好酸球ペルオキシダーゼ(EPO)のうちの一つ以上を含む、請求項19または20に記載の方法。
【請求項31】
前記組成物が、経口投与されるように構成される、請求項19または20に記載の方法。
【請求項32】
前記組成物が、好酸球性食道炎を治療するのに治療的に有効である、請求項19または20に記載の方法。
【請求項33】
前記ヘパリンにコンジュゲートされた治療剤をさらに含む、請求項19または20に記載の方法。
【請求項34】
前記治療剤が、グルココルチコイドである、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記ヘパリンにコンジュゲートされた放射性標識造影剤をさらに含む、請求項19または20に記載の方法。
【請求項36】
前記放射性標識造影剤が、99mTcである、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
対象の器官の医療画像を作成する方法であって、
放射性標識ヘパリンが好酸球顆粒タンパク質に結合して、放射性標識ヘパリン/好酸球顆粒タンパク質複合体を形成する条件下で、前記放射性標識ヘパリンを対象に投与することを含む、対象において前記器官の粘膜組織中の好酸球顆粒タンパク質を検出すること、および
前記器官の前記粘膜組織において、前記放射性標識ヘパリン/好酸球顆粒タンパク質複合体を検出し、これにより、前記器官の前記粘膜組織における前記放射性標識ヘパリン/好酸球顆粒タンパク質複合体の検出が、前記対象の前記器官の医療画像を作成すること、を含む、方法。
【請求項38】
対象の好酸球性食道炎を診断する方法であって、
放射性標識ヘパリンが好酸球顆粒タンパク質に結合して、放射性標識ヘパリン/好酸球顆粒タンパク質複合体を形成する条件下で、前記放射性標識ヘパリンを対象に投与することを含む、対象の食道の粘膜組織中の好酸球顆粒タンパク質を検出すること、および
前記食道の前記粘膜組織において、前記放射性標識ヘパリン/好酸球顆粒タンパク質複合体を検出し、これにより、前記食道の前記粘膜組織における前記放射性標識ヘパリン/好酸球顆粒タンパク質複合体の検出が、前記対象の好酸球性食道炎を診断すること、を含む、方法。
【請求項39】
好酸球性食道炎と診断された対象における、好酸球性食道炎の変化を検出する方法であって、
a)請求項37に記載の方法に従って、好酸球性食道炎と診断された対象の食道の第一の医療画像を作成すること、
b)請求項37に記載の方法に従って、工程(a)の対象の食道の第二の医療画像を作成すること、および
c)工程(b)の医療画像と、工程(a)の医療画像を比較し、これにより、工程(a)の医療画像と比較された工程(b)の医療画像における変化の検出が、前記対象の好酸球性食道炎における変化を検出すること、を含む、方法。
【請求項40】
対象における好酸球脱顆粒を検出する方法であって、
放射性標識ヘパリンが好酸球顆粒タンパク質に結合して、放射性標識ヘパリン/好酸球顆粒タンパク質複合体を形成する条件下で、前記放射性標識ヘパリンを対象に投与することを含む、対象の好酸球顆粒タンパク質を検出すること、および
前記放射性標識ヘパリン/好酸球顆粒タンパク質複合体を検出し、これにより、前記放射性標識ヘパリン/好酸球顆粒タンパク質複合体の検出が、前記対象における好酸球脱顆粒を検出すること、を含む、方法。
【請求項41】
罹患器官に治療剤を送達する方法であって、対象に、治療剤にコンジュゲートされたヘパリンを含有する組成物の治療有効量を投与することを含む、方法。
【請求項42】
前記ヘパリンは、約20kDa~約40kDaの平均分子量を有し、前記ヘパリン中のヘパリン鎖の少なくとも50%は、少なくとも20kDaの分子量を有する、請求項37~41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
対象において好酸球関連炎症を治療する方法であって、前記対象に、約20kDa~約40kDaの平均分子量を有するヘパリンの有効量であって、前記ヘパリン中のヘパリン鎖の少なくとも50%は、少なくとも20kDaの分子量を有する、ヘパリンの有効量と、薬学的に許容可能な賦形剤とを含む、組成物の治療有効量を投与することを含む、方法。
【請求項44】
前記ヘパリンが、少なくとも20kDaの平均分子量を含む、請求項42または43に記載の方法。
【請求項45】
前記ヘパリンが、少なくとも30kDaの平均分子量を含む、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記ヘパリンが、少なくとも40kDaの平均分子量を含む、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記ヘパリン中のヘパリン鎖の少なくとも60%は、少なくとも20kDaの分子量を有する、請求項42または43に記載の方法。
【請求項48】
前記ヘパリン中のヘパリン鎖の少なくとも70%は、少なくとも20kDaの分子量を有する、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記ヘパリンの治療有効用量は、約3mgである、請求項41または43に記載の方法。
【請求項50】
前記ヘパリンの治療有効用量は、約1mgである、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記ヘパリンの治療有効用量は、約0.5mgである、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記ヘパリンが、一つ以上の好酸球顆粒タンパク質に結合するように構成される、請求項42または43に記載の方法。
【請求項53】
前記一つ以上の好酸球顆粒タンパク質に対する前記ヘパリンの結合アフィニティは、前記一つ以上の好酸球顆粒タンパク質に対する低分子量ヘパリンの結合アフィニティよりも大きい、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
対象において好酸球関連炎症を治療する方法であって、対象に、治療剤にコンジュゲートされたヘパリンを含有する組成物の治療有効量を投与することを含む、方法。
【請求項55】
前記器官は、卵巣、乳房、脳、筋肉、心臓、肺、胃、近位大腸、遠位大腸、小腸、膵臓、甲状腺、皮膚、眼、精巣、胸腺、胆嚢、子宮、食道、または主要血液器官である、請求項37または41に記載の方法。
【請求項56】
前記主要血管器官が、前記肝臓、脾臓、腎臓、または膀胱である、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記好酸球顆粒タンパク質は、主要塩基性タンパク質1(MBP-1)、主要塩基性タンパク質2(MBP-2)、好酸球由来ニューロトキシン(EDN)、好酸球カチオン性タンパク質(ECP)、または好酸球ペルオキシダーゼ(EPO)である、請求項37~40、および52~53のいずれかに記載の方法。
【請求項58】
前記好酸球顆粒タンパク質が、MBP-1である、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記放射性標識ヘパリンの放射性標識が、99mTcである、請求項37~40または55~57のいずれかに記載の方法。
【請求項60】
前記放射性標識ヘパリンが、前記対象に経口投与される、請求項37~40または55~58のいずれかに記載の方法。
【請求項61】
前記対象は、前記放射性標識ヘパリンを、1回以上の嚥下で、嚥下する、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
前記放射性標識ヘパリンは、1mlの一定分量で、15分かけて前記対象に経口投与される、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
洗浄工程をさらに含む、請求項37~40または55~62のいずれかに記載の方法。
【請求項64】
前記洗浄工程は、前記放射性標識ヘパリンの前記1回以上の嚥下の後で、対象が液体を嚥下することを含む、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
前記液体が、水である、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
前記洗浄工程が、医療画像の作成の前、中、または後に実施される、請求項64に記載の方法。
【請求項67】
前記液体の投与は、1回以上の嚥下により、前記対象が前記液体を嚥下することを含む、請求項62に記載の方法。
【請求項68】
前記液体が、1~100mlの体積で投与される、請求項64~67のいずれかに記載の方法。
【請求項69】
前記ヘパリン、または前記放射性標識ヘパリンのヘパリン部分は、高分子量ヘパリン、低分子量量ヘパリン、または未分画ヘパリンである、請求項1~68のいずれかに記載の方法。
【請求項70】
前記ヘパリン、または前記放射性標識ヘパリンのヘパリン部分は、高分子量ヘパリンである、請求項69に記載の方法。
【請求項71】
前記高分子量ヘパリンが、1mg未満の量で投与される、請求項70に記載の方法。
【請求項72】
前記高分子量ヘパリンが、0.1mg~1mgの範囲の量で投与される、請求項70に記載の方法。
【請求項73】
前記放射性標識ヘパリンの放射性標識は、0.3mCi~3mCiの範囲の量で投与される、請求項1~72のいずれかに記載の方法。
【請求項74】
前記対象がヒトである、請求項1~73のいずれかに記載の方法。
【請求項75】
前記放射性標識ヘパリン/好酸球顆粒タンパク質複合体が、単光子放出コンピュータ断層撮影法(SPECT)、陽電子放射断層撮影(PET)スキャン、X線、従来型またはコンピュータ断層撮影法(CT)、SPECTとCTの組み合わせ、または磁気共鳴画像法(MRI)のうちの一つ以上を使用して検出される、請求項37~40または55~74のいずれかに記載の方法。
【請求項76】
前記医療画像が、三次元である、請求項37~40または55~74のいずれかに記載の方法。
【請求項77】
前記医療画像が、二次元である、請求項37~40または55~74のいずれかに記載の方法。
【請求項78】
前記治療剤が、グルココルチコイドである、請求項41~56のいずれかに記載の方法。
【請求項79】
前記グルココルチコイドが、モメタゾン、フルチカゾン、ブデソニド、プレドニゾン、またはソルメドロールである、請求項78に記載の方法。
【請求項80】
その必要のある前記対象を特定することをさらに含む、請求項41~56または78~79のいずれかに記載の方法。
【請求項81】
その必要のある前記対象が、請求項37~40、43、および54に記載の方法のいずれか一つにより特定される、請求項80に記載の方法。
【請求項82】
前記組成物が、前記対象に、経口、静脈内、光学的、または局所的に投与される、請求項41~56、78~81のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年2月10日に出願された米国仮出願第62/972,224号の出願日の利益を主張する。先に出願された当該出願の内容は、参照により本明細書にその全体が組み込まれる。
【0002】
本開示は、概して、高分子量ヘパリンを含む組成物およびその使用方法に関する。開示対象は、様々な状態の撮像、診断、モニタリング、および/または治療に適用され得る。例えば、本明細書に開示される組成物および方法は、好酸球性食道炎などの好酸球が関連する炎症、および好酸球が関連する状態の撮像、診断、モニタリング、および/または治療に使用され得る。
【背景技術】
【0003】
好酸球性食道炎(EoE:Eosinophilic esophagitis)は、世界中の人々に影響を及ぼしている食道の慢性疾患である。症状には、嚥下障害(液体または固体またはその両方の嚥下の困難)、食片固着(食道内に固形食物が固着する)、嚥下痛(痛みを伴う嚥下)、胸やけ、胸痛、喘息、下痢および嘔吐が含まれる。成人に当該疾患が発生する一方で、小児にも現れることがある。EoEの症状は、上部内視鏡を受ける成人の最大で10%が罹患している食道のアトピー性アレルゲン性炎症状態と類似している。
【0004】
この疾患の原因は確定的には特定されていないが、研究者らは、いくつかの原因因子を特定している。一般集団と比較し、EoE患者の一等親血縁者では発生率が高いため、遺伝的素因がこの疾患において少なくとも部分的には機能している可能性がある。環境的要因も重要である可能性があるが、EoEは、単純な食道の季節性アレルギーではない。嚥下型のエアロゾル化ステロイドを用いる現行の治療法があるが、奏効率は50%より少し良い程度である。
【0005】
食物の過感受性は、成人および小児の両方のEoEでも重要な役割を果たしている。しかし、成人における除去食に関するデータでは、小児で観察されたデータよりも強固な応答が少なかった。EoEでは、炎症は食道の様々な部分で発生する。コホート内で、罹患食道の近位、遠位、またはその両方の部分の発生率はほぼ同じである。しかしかかる浸潤物は各個体で変化があり、多くが、近位では浸潤の度合いが低い。EoEは、食道の管腔構造にも影響を及ぼす。炎症領域は、罹患食道の全体に均一には分布していない。疾患は多くの場合、パッチ状で存在するか、または25~30cmの長さの成人食道の選択セグメントに存在する。顕著な輪または溝が狭窄へと発達する場合もあり、これが食道を閉鎖させて、嚥下痛、嚥下障害、食片固着を発生させ、そして救急来院となる。したがって、症状が悪化し、食道内腔が狭窄されてしまう前に、迅速なEoEの治療を行って症状を軽減することが重要である。
【0006】
EoEは、食道胃十二指腸内視鏡(EGD)検査により診断することができるが、一部の症例は、EGD中には「環状食道」として存在することが全くなく、この方法では診断が困難な場合がある。EoEを確実に特定するために現在臨床医が利用可能な確定的手段は、生検標本中の好酸球の存在を検出することである。組織サンプルはEGD中に採取され、その後、従来的な組織学的分析で検査されて、EoE症例を確定または棄却することができる。しかし、当該疾患はパッチ状の性質があるため、生検用の組織サンプルの採取が複雑化する。EoEの臨床的疑いが高い場合、コンセンサスがとれた実務としては、食道全体で4~5か所のサンプリングが必要である。しかし特に粘膜好酸球増多症がパッチ状である場合、依然としてEoEが過少診断となる可能性がある。したがって、診断およびモニタリングに対し、よりアクセス可能な方法に対するニーズが存在する。
【0007】
EoEの発生率が急速に上昇しているにもかかわらず、最先端の診断技術は未だ不充分であり、完全にはこの疾患を特徴付けることができない。さらに、利用可能な治療は、好酸球が関連する炎症を適切に標的化および局部集中することができない。そのため、例えばEoEなどの好酸球が関連する炎症および状態を撮像、診断、モニタリング、および治療するための非侵襲的で正確な、そして包括的な技術を開発するニーズが存在する。
【発明の概要】
【0008】
この要約は、米国特許規則連邦規則法典第37巻の1.73に準拠するために提供される。本開示の範囲もしくは意味を解釈または制限するために使用されないことを理解し、提出する。
【0009】
本明細書において、約20kDa~約40kDaの平均分子量を有する高分子量ヘパリンの有効量、および薬学的に許容可能な賦形剤を含む組成物が開示され、この場合において当該ヘパリン中のヘパリン鎖の少なくとも50%は、少なくとも20kDaの分子量を有する。
【0010】
本明細書において、対象において好酸球関連炎症を呈する組織を治療する方法が開示され、当該方法は、対象に、約20kDa~約40kDaの平均分子量を有するヘパリンの治療有効用量、および薬学的に許容可能な賦形剤を含む組成物を投与することを含み、この場合において当該ヘパリン中のヘパリン鎖の少なくとも50%は、少なくとも20kDaの分子量を有し、この場合において当該ヘパリンは、当該組織中の一つ以上の好酸球顆粒タンパク質に結合し、好酸球関連炎症を低減させる。
【0011】
本明細書において、組織において好酸球関連炎症を低減させる方法が開示され、当該方法は、対象に、約20kDa~約40kDaの平均分子量を有するヘパリンの治療有効用量、および薬学的に許容可能な賦形剤を含む組成物を投与することを含み、この場合において当該ヘパリン中のヘパリン鎖の少なくとも50%は、少なくとも20kDaの分子量を有し、この場合において当該ヘパリンは、当該組織中の一つ以上の好酸球顆粒タンパク質に結合し、好酸球関連炎症を低減させる。
【0012】
本明細書において、対象中の器官の医療画像を作成する方法が開示され、当該方法は、対象中の当該器官の粘膜組織において好酸球顆粒タンパク質を検出すること、当該対象に、放射性標識したヘパリンを、当該放射性標識ヘパリンが好酸球顆粒タンパク質に結合して放射性標識ヘパリン/好酸球顆粒タンパク質複合体を形成する条件下で、投与すること、および当該器官中の粘膜組織において、当該放射性標識ヘパリン/好酸球顆粒タンパク質複合体を検出し、当該器官の粘膜組織における放射性標識ヘパリン/好酸球顆粒タンパク質複合体の検出によって、当該対象中の器官の医療画像が作成されること、を含む。一部の態様では、放射性標識されたヘパリンは、約20kDa~約40kDaの平均分子量を有するヘパリンを含み、この場合において当該ヘパリン中のヘパリン鎖の少なくとも50%は、少なくとも20kDaの分子量を有する。
【0013】
本明細書において、対象中の好酸球性食道炎を診断する方法が開示され、当該方法は、対象中の当該食道の粘膜組織において好酸球顆粒タンパク質を検出すること、当該対象に、放射性標識したヘパリンを、当該放射性標識ヘパリンが好酸球顆粒タンパク質に結合して放射性標識ヘパリン/好酸球顆粒タンパク質複合体を形成する条件下で、投与すること、および当該食道中の粘膜組織において、当該放射性標識ヘパリン/好酸球顆粒タンパク質複合体を検出し、当該食道の粘膜組織における放射性標識ヘパリン/好酸球顆粒タンパク質複合体の検出によって、当該対象における好酸球性食道炎を診断すること、を含む。一部の態様では、放射性標識されたヘパリンは、約20kDa~約40kDaの平均分子量を有するヘパリンを含み、この場合において当該ヘパリン中のヘパリン鎖の少なくとも50%は、少なくとも20kDaの分子量を有する。
【0014】
本明細書において、対象中の好酸球脱顆粒を検出する方法が開示され、当該方法は、対象において好酸球顆粒タンパク質を検出すること、当該対象に、放射性標識したヘパリンを、当該放射性標識ヘパリンが好酸球顆粒タンパク質に結合して放射性標識ヘパリン/好酸球顆粒タンパク質複合体を形成する条件下で、投与すること、および当該放射性標識ヘパリン/好酸球顆粒タンパク質複合体を検出し、当該食道の粘膜組織における放射性標識ヘパリン/好酸球顆粒タンパク質複合体の検出によって、当該対象における好酸球脱顆粒を検出すること、を含む。一部の態様では、放射性標識されたヘパリンは、約20kDa~約40kDaの平均分子量を有するヘパリンを含み、この場合において当該ヘパリン中のヘパリン鎖の少なくとも50%は、少なくとも20kDaの分子量を有する。
【0015】
本明細書において、罹患器官に治療剤を送達する方法が開示され、当該方法は、対象に、治療剤にコンジュゲートされたヘパリンを含有する組成物の治療有効量を投与することを含む。一部の態様では、ヘパリンは、約20kDa~約40kDaの平均分子量を有し、この場合において当該ヘパリン中のヘパリン鎖の少なくとも50%は、少なくとも20kDaの分子量を有する。
【0016】
本明細書において、対象において好酸球関連炎症を治療する方法が開示され、当該方法は、対象に、約20kDa~約40kDaの平均分子量を有するヘパリンの有効量、および薬学的に許容可能な賦形剤を含む組成物の治療有効量を投与することを含み、この場合において当該ヘパリン中のヘパリン鎖の少なくとも50%は、少なくとも20kDaの分子量を有する。
【0017】
本明細書において、対象において好酸球関連炎症を治療する方法が開示され、当該方法は、対象に、治療剤にコンジュゲートされたヘパリンを含有する組成物の治療有効量を投与することを含む。一部の態様では、ヘパリンは、約20kDa~約40kDaの平均分子量を有し、この場合において当該ヘパリン中のヘパリン鎖の少なくとも50%は、少なくとも20kDaの分子量を有する。
【0018】
本明細書に組み込まれ、およびその一部を構成する添付の図面は、いくつかの態様を例示し、説明と共に、本発明の原理を説明する役割を負う。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、胃食道逆流症(GERD:gastroesophageal reflux disease)の患者1、およびEoEの患者2~5に対する、99mTC-ヘパリンの経口投与から1時間後に取得された、単光子放出コンピュータ断層撮影法/コンピュータ断層撮影法(SPECT/CT)のスキャンの冠状画像および矢状画像を示す。99mTc-ヘパリンの局在性は画像中で赤色で明白であり、そして患者3では矢状画像状の食道において突出していた(横隔膜下の赤色は、胃および/または腸である)。99mTc-ヘパリンの食道局在性は、患者1(EOEなし)または患者4(EoEが治療され、炎症がない)では明白ではなかった。患者5では、食道結合は強度が低く、連続的な存在は少ないが、それでも図2では明らかであった。
図2図2は、99mTc-ヘパリンの経口投与から1時間後の、5名の患者(冠状画像、患者1、3、4、5。患者2については部分的な回転画像)に対する単光子放出コンピュータ断層撮影法(SPECT)スキャンの画像を示す。画像は、患者が15分間にわたって99mTc-ヘパリンを嚥下し、その後に100mlの水(弱く結合した99mTc-ヘパリンを洗い流すため)を嚥下した後に取得された。画像には、胸骨上端(患者1、3、および4の画像で明白であり、ならびに患者2ではもっとぼんやりとしている)、右肩(患者5の画像)、および乳房/乳頭(患者2以外の他の患者の画像で明白であり、患者2では左乳房/乳頭マーカーが不明瞭)を含む、解剖学的な位置合わせマーカーが含まれる。 Tc99m-ヘパリンの食道局在性は、患者2、3および5の画像ではっきり明白である。
図3A図3A~Bは、5名の患者の各々の近位(図3A)および遠位(図3B)の食道生検標本の好酸球顆粒主要塩基性タンパク質-1(eMBP-1:eosinophil granule major basic protein-1)の免疫染色を示す(200x顕微鏡画像)。
図3B】同上。
図4図4は、表面プラズモン共鳴による、固定MBPへのヘパリン結合の分析を示す。RU(縦座標)は、MBPへのヘパリン結合の尺度である応答単位を指す。最も強い結合は、最初の検出分画に近いピーク1における、BioGel P60カラムから溶出するヘパリンによるものであることに留意されたい。対照的に、ピーク2のヘパリンは、MBPにほとんど結合しなかった。Col6早期ピーク1は、体積34mLで溶出され、Col6後期ピーク1は、93mLで溶出された。固定:EMBP-1(2100-2800 RU);および分析物:0.216μg/mLのヘパリン分画。
図5A図5A~Dは、表面プラズモン共鳴による、固定MBPへのヘパリン結合の分析を示す。RU(縦座標)とは、応答単位を指す。図5Aは、医療グレードのヘパリン(通常、患者の抗凝固治療に採用される)を使用した、様々な濃度の未分画ヘパリンを示す。
図5B図5B~Dは、BioGel P60カラムからの異なる濃度の分画の結合を示す(図6)。固定:EMBP-1(2100~2800 RU)(図5A、未分画ヘパリン、図5B、Col6、後期ピーク1、図5C、Col6、早期ピーク1、および図5D、エノキサパリン(enoxaparin))。
図5C】同上。
図5D】同上。
図6図6は、BioGel P60(95cm×1.2cm)で分画化されたヘパリンのクロマトグラムである。ヘパリンは防腐剤を含有し、およそ100mlの体積で開始して溶出された。およそ100mlの体積の後のカラム溶出液は、ヘパリンを含有しなかった。最大で100mlの溶出液のみが、ヘパリンを含有した。
図7図7は、USP分子量標準を用いたゲル浸透カラムのキャリブレーションを示し、当該標準の屈折率によって保持時間が測定された。この表は、分子量が判明している標準と、計算分子量との間の関係性を列挙する。
図8図8は、図6に示されるBioGel P60カラムからのヘパリン分画12 #2の分析を示す。当該分画は、Col6早期ピーク1と呼称される。分析は、図7に記載されるゲル浸透クロマトグラフィーにより行われる。図4に示される表面プラズモン共鳴により、このヘパリンは、eMBP1にしっかりと結合した。
図9図9は、図6に示されるBioGel P60カラムからのヘパリン分画22 #1の分析を示す。当該分画は、Col6後期ピーク1と呼称される。分析は、図7に記載されるゲル浸透クロマトグラフィーにより行われる。表面プラズモン共鳴によるeMBP1への結合については、図4を参照のこと。
図10図10は、様々な分子量のヘパリンと、表面プラズモン共鳴による固定eMBP1への最大結合との間の関係性を示す
図11図11は、高分子量ヘパリンが、約33mL~約50mLの間で溶出する分画中に含有されたクロマトグラムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は、本発明の様々な態様の以下の詳細な説明およびこれに含まれる実施例、ならびに図面およびそれらの前述および後述の説明を参照することにより、より容易に理解され得る。
【0021】
別途定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、開示される方法および組成物が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと類似または同等であるいずれの方法および材料も、開示される方法および組成物の実践または試験において使用することができるが、特に有用な方法、デバイス、および材料は、記載するとおりである。
【0022】
本開示は、記載される特定のシステム、デバイス、および方法に限定されるものではなく、これらは変化する場合がある。本記述において使用される専門用語は、特定のバージョンまたは実施形態を記載することのみを目的としており、範囲の限定であることは意図されない。本開示のこうした態様は、多くの異なる形態で具現化され得る。むしろ、これらの実施形態は、本開示が詳細および完全であり、その範囲が当業者に完全に伝達されるように提供される。
【0023】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形の「a」、「an」、および「the」には、文脈によって明確に別途示されない限り、複数の参照が含まれる。本明細書において実質的に任意の複数の用語および/または単数の用語の使用に関して、当業者は、文脈および/または用途に適切であるように、複数形から単数形および/または単数形から複数形に翻訳することができる。様々な単数形/複数形の置換は、明白性のために、本明細書に明示的に記述され得る。本明細書で使用される「または」という語は、特定のリストのうちの任意の一つのメンバーを意味し、またそのリストのメンバーの任意の組み合わせも含む。
【0024】
本明細書で使用される「任意選択的」または「任意選択的に」という用語は、後に説明される事象または状況が生じる場合もあり、または生じない場合もあることを意味し、また、その説明が先述の事象または状況が生じる事例および生じない事例を含むことを意味する。
【0025】
本明細書で使用される場合、「試料」という用語は、対象からの組織または器官、細胞(対象内にあるもの、対象から直接採取されたもの、または培養もしくは培養細胞株から維持された細胞のいずれか)、細胞溶解物(または溶解物分画)もしくは細胞抽出物、または細胞もしくは細胞材料(例えば、ポリペプチドまたは核酸)に由来する一つ以上の分子を含有する溶液を意味する。試料はまた、細胞または細胞成分を含有する任意の体液または排泄物(例えば、限定されないが、血液、尿、便、唾液、涙、胆汁)であってもよい。
【0026】
範囲は、本明細書では、「約」の一つの特定の値から、かつ/または「約」の別の特定の値までであるとして表現されてもよい。こうした範囲が表現される時、別の態様は、一つの特定の値から、かつ/またはもう一方の特定の値までを含む。同様に、値が近似値として表現される場合、先行する「約」の使用によって、特定の値が別の態様を形成することが理解されることになる。範囲の各々の端点は、他方の端点との関連において、および他方の端点とは独立して、意義があることがさらに理解されることになる。
【0027】
当業者であれば理解するように、例えば明細書の提供の観点などの全ての目的に対し、本明細書に開示されるすべての範囲は、その範囲の上限と下限との間の各介在値を包含すること、および当該記載される範囲中の任意の他の記載値または介在値を包含することが意図される。本明細書に開示される全ての範囲は、全ての可能性のある部分範囲およびその部分範囲の組み合わせも包含する。列挙される任意の範囲は、少なくとも等しい半分、3分の1、4分の1、5分の1、10分の1などに細分される同範囲を充分に記載し、および可能にするものとして容易に認識され得る。非限定的な例として、本明細書において検討される各範囲は、下部3分の1、中部3分の1、および上部3分の1などに容易に細分化され得る。また、当業者によって理解されるように、例えば「最大で」、「少なくとも」などの全ての文言は、列挙された数を含み、上記で検討されたようにその後に部分範囲へと細分化され得る範囲を指す。最後に、当業者によって理解されるように、範囲は、各個々の数値を含む。したがって、例えば、1~3個の細胞を有する群は、1、2、または3個の細胞を有する群を指し、ならびに1個以上の細胞~3個以下の細胞の範囲を有する群を指す。同様に、例えば、1~5個の細胞を有する群は、1、2、3、4、または5個の細胞を有する群を指し、ならびに1個以上の細胞~5個以下の細胞の範囲を有する群を指す、などとなる。
【0028】
さらに、特定の数が明示的に列挙される場合であっても、当業者は、かかる列挙は、少なくとも列挙される数を意味すると解釈されるべきであることを認識するであろう(例えば、他の修飾語句を伴わない「二つの列挙」の最低限の列挙は、少なくとも二つの列挙、または二つ以上の列挙を意味する)。さらに、「A、B、およびCのうちの少なくとも一つなど」に類似した慣習が使用される場合、概してかかる構造は、当業者が当該慣習で理解するであろう意味で意図される(例えば、A、B、およびCのうちの少なくとも一つを有するシステム」は、限定されないが、A単独、B単独、C単独、AおよびBを一緒に、AおよびCを一緒、BおよびCを一緒に、ならびに/またはA、BおよびCを一緒に有するシステムを含む、など)。「A、B、またはCのうちの少なくとも一つなど」に類似した慣習が使用される例では、概してかかる構造は、当業者が当該慣習で理解するであろう意味で意図される(例えば、A、B、またはCのうちの少なくとも一つを有するシステム」は、限定されないが、A単独、B単独、C単独、AおよびBを一緒に、AおよびCを一緒、BおよびCを一緒に、ならびに/またはA、BおよびCを一緒に有するシステムを含む、など)。さらに、記述内容、例示的実施形態、または図面のいずれでも、二つ以上の代替的な用語を提示する実質的に任意の離接的な用語および/または語句は、当該用語のうちの一つ、当該用語のいずれか、または両方の用語を含む可能性を予期すると理解されるべきであると、当業者に理解されるであろう。例えば、「AまたはB」という語句は、「A」または「B」または「AおよびB」の可能性を含むと理解されるであろう。
【0029】
さらに、本開示の特性がマーカッシュ群で記述される場合、当業者は、本開示が、マーカッシュ群の任意の個々の構成要素または構成要素の下位群に関しても記載されていると認識するであろう。
【0030】
すべてのパーセンテージ、部分、および比率は、別段で指定されない限り、局所用組成物の総重量に基づいており、すべての測定は約25℃で行われる。
【0031】
本明細書で使用される場合、「約」という用語は、例えば、現実世界での測定または取り扱い手順を通じて発生し得る;これらの手順における不注意なエラーを通じて発生し得る;組成物もしくは試薬の製造、供給源、または純度における差異を通じて発生し得る、などの数量の変動を指す。典型的には、本明細書で使用される場合、「約」という用語は、記載される値の1/10まで、例えば±10%まで記載される値よりも大きい、もしくは小さい、または記載される値の範囲よりも大きい、もしくは小さいことを意味する。「約」という用語は、当該変動が、先行技術によって実施される公知の値を包含しない限り、当業者によって均等であると認識される変動も指す。「約」という用語が先行するそれぞれの値または値の範囲は、記載された絶対値または値の範囲の実施形態を包含することも意図される。「約」という用語による修飾の有無に関わらず、本開示に列挙される定量値は、列挙される値に対する均等、例えば、発生する可能性があり、当業者によって均等であると認識されるであろう、かかる値の数量における変動を含む。本開示の文脈により別段であることが示される場合、またはかかる解釈と矛盾する場合、当業者には容易に明白であるように、上述の解釈は修正され得る。例えば、例えば「約49、約50、約55、」などの数量の列記において、「約50」は、例えば49.5より大きく、52.5より小さい、前値と後値の間の間隔の半分未満に延長される範囲を意味する。さらに、本明細書に提供される「約」という用語の定義を考慮して、「約~未満」の値、または「約~超」の値という文言を理解するべきである。
【0032】
概して、本明細書で使用される用語は一般的に、「オープン」な用語として意図されていることが、当業者に理解される(例えば、「含有すること」という用語は、「限定されないが~を含有すること」と解釈されるべきであり、「有すること」という用語は、「少なくとも~を有すること」と解釈されるべきであり、「含有する」という用語は、「限定されないが、~を含有する」と解釈されるべきである、など)。さらに「含有すること」、「包含すること」または「~を特徴とする」と同義である「含むこと」という移行用語(transitional term)は、包括的でオープンエンドであり、追加の列記されない要素または方法の工程を除外するものではない。様々な組成物、方法、およびデバイスが、様々な構成要素または工程を「含むこと」という単位で記載されている(「限定されないが、~を含有すること」という意味として解釈される)が、当該組成物、方法およびデバイスはまた、様々な構成要素および工程「から本質的になる」または「からなる」可能性もあり、かかる専門用語は、本質的に閉鎖的な要素群を規定すると解釈されるべきである。対照的に、移行文言(transitional phrase)の「~からなる」は、特許請求の範囲において指定されていないすべての要素、工程または成分を除外する。移行文言の「~から本質的になる」は、特許請求の範囲を、指定される物質または工程、および本発明の「基礎および新規の特徴に実質的な影響を及ぼさないもの」、に限定する。
【0033】
本明細書で使用される場合、「含む(comprise)」という語、ならびに「含む(comprising)」および「含む(comprises)」などのこの語の変化形は、「含むが、限定されない」を意味し、例えば、他の追加物、構成要素、整数、または工程を除外することを意図するものではない。
【0034】
本明細書で使用される場合、「対象」は、個人を意味する。対象は、霊長類、例えば、ヒトなどの哺乳動物であり得る。「対象」という用語には、ネコ、イヌなどといった飼育動物、家畜、例えば、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギなど、および実験動物、例えば、マウス、ウサギ、ラット、アレチネズミ、フクロネズミなども含まれる。本明細書で使用される場合、「対象」および「患者」という用語は、交換可能である。
【0035】
本明細書で使用される場合、「治療剤」という用語は、患者の望ましくない状態もしくは疾患を治療する、対抗する、向上させる、または改善するために利用される剤を意味する。部分的には、本発明の実施形態は、好酸球が関連する炎症の治療を対象とする。
【0036】
「有効量」という用語は、本明細書において、対象に投与されたとき、対象組織の撮像、対象における障害の診断、および/または対象の症状もしくは障害のモニタリング、を含む、化合物の目的の実施に適切である化合物の量を指すために採用される。「有効量」を含む実際の量は、障害の重大度、患者の大きさおよび健康状態、撮像モダリティ、診断様式、モニタリング様式、ならびに投与経路を含むがこれに限定されない、多くの条件に応じて変化する。当業者であれば、医療分野で公知の方法を使用して適切な量を容易に決定することができる。
【0037】
「治療有効量」という用語は、本明細書において、対象に投与されたとき、対象において障害の症状を低減させることができる、または意図される組織治療領域の質感、外観、色調、感覚もしくは水和を向上させることができる化合物の量を指すために採用される。「治療有効量」を含む実際の量は、障害の重大度、患者の大きさおよび健康状態、ならびに投与経路を含むがこれに限定されない、多くの条件に応じて変化するであろう。当業者であれば、医療分野で公知の方法を使用して適切な量を容易に決定することができる。
【0038】
本明細書において、「薬学的に許容可能」または「美容的に許容可能」という文言は、適切な医学的判断の範囲内で、過剰な毒性、刺激、アレルギー反応、または他の問題もしくは合併症を伴わずにヒトおよび/または他の哺乳動物の組織と接触して使用することに適し、合理的な利益/リスク比に見合った、それら対象となる剤/化合物、塩、組成物、剤形を指すために採用される。一部の態様では、薬学的に許容可能とは、連邦政府または州政府の規制当局によって承認されるか、または米国薬局方に列記されるか、または哺乳動物(例えば、動物)で、より具体的にはヒトにおける使用に関して他の一般的に認識されている薬局方に列記されることを意味する。
【0039】
本開示が、「医師」という用語、および特定の職位または役割による様々な医療専門家に関する追加的な用語に言及する場合、本開示のいかなるものも、特定の職位または職務権限に限定されることは意図しない。医師または医療専門家には、医師、看護師、医療専門家、または技術者が含まれ得る。これらの用語または職位のいずれも、別段の明示的な区分が無い限り、本明細書に開示されるシステムのユーザーと相互交換可能に使用され得る。例えば、医師への言及は、一部の実施形態において、技術者、看護師、または他のヘルスケア提供者にも適用し得る。
【0040】
「組織」という用語は、特定機能の実施において一体化される、類似した専門化細胞の任意の凝集体を指す。
【0041】
「障害」という用語は本開示において、別段の示唆がない限り、疾患、状態、または病気といった用語を意味するよう使用され、および相互交換可能に使用される。
【0042】
本明細書で使用される場合、「投与する」、「投与すること」、または「投与」という用語は、対象に、化合物(対象となる剤とも呼称される)、化合物(対象となるの剤)の薬学的に許容可能な塩、または組成物を、対象により直接、またはヘルスケア提供者により投与することを指す。
【0043】
本明細書で使用される場合、「治療する」、「治療される」、または「治療すること」という用語は、両方の治療的処置を指し、その目的は、医学的状態の症状の頻度を減少させる、または症状の発生を遅らせる、またはそうでなければ有益もしくは望ましい臨床結果を得ることである。本発明の目的に対し、有益または所望の臨床結果としては限定されないが、状態の一つ以上の症状の逆転、低下、または軽減;状態、障害または疾患の程度の減少;状態、障害または疾患の状態の安定化(すなわち、悪化しない);状態、障害、もしくは疾患の発生の遅延または進行を遅くさせること;状態、障害または疾患の状態の向上;および寛解、が挙げられ、検出可能の可否に関わらず、状態、障害もしくは疾患の向上または改善の有無に関わらない。治療には、過度な副作用を伴わずに臨床的に意義のある応答を惹起させることを含む。「治療」には、治療を受けない場合の予測生存期間と比較して、生存期間が延長するも含む。
【0044】
「阻害すること」という用語は、本発明の組成物を投与して、症状の発生を防止すること、症状を軽減すること、症状を低減すること、疾患および/もしくはその症状の進行を遅延または減少させること、または疾患、状態もしくは障害を除去すること、を含む。
【0045】
一部の態様では、本明細書に開示される組成物方法は、「その必要のある」と呼称される場合もある、かかる検査、診断、モニタリングおよび/または治療を必要とする対象とともに利用され、または対象に対して利用されてもよい。本明細書で使用される場合、「その必要のある」という文言は、対象が、特定の方法もしくは治療の必要があると特定されていること、または状態を有すると特定されていること、および当該方法(例えば組織の撮像、状態の診断、状態のモニタリング)または治療が、特定の目的に対して対象とともに利用されている、または対象に対して利用されていること、を意味する。
【0046】
例えば一部の態様では、本発明は、少なくとも50%の純度を有する高分子量ヘパリンまたはその塩、および薬学的に許容可能な担体または希釈剤を含有する医薬組成物、または本明細書に規定される医薬組成物の有効量を対象とする。
【0047】
本明細書に開示される組成物は、それらが活性である任意の経路により、従来的な方法で投与されてもよい。投与は、全身、局所、吸入、または経口であってもよい。例えば、投与は、限定されないが、非経口、腹腔内、経皮、経口、口腔、もしくは眼経路、または膣内、吸入、デポ注射もしくはインプラントであってもよい。一部の態様では、非経口の投与経路は、皮下、静脈内、皮内、および筋肉内であってもよい。したがって本発明の組成物(単独または他の医薬品との組み合わせのいずれか)の投与様式は、限定されないが、舌下、注射(皮下または筋肉内に注入される短時間作用性、デポ型、インプラントおよびペレットを含む)、局所(皮膚への塗布用の軟膏またはクリームを含む)、吸入(鼻腔スプレーを含む)、および/または膣クリーム、座薬、ペッサリー、膣リング、肛門坐剤、子宮内デバイス、および例えばパッチやクリームなどの経皮形態の使用によるものであってもよい。
【0048】
特定の投与様式は、適応症または目的に依存する。特定の投与経路および投与レジメンの選択は、最適な臨床応答を得るために、臨床医に公知の方法に従って、臨床医によって調整または漸増されるものとする。投与される化合物の量は、有効な量である。投与される用量は、治療される対象の特性、例えば、治療される特定の動物、年齢、体重、健康状態、現在の治療の種類、そしてもしあれば治療の頻度に依存し、当業者(例えば、臨床医によって)によって容易に決定され得る。 一部の態様では、本明細書に開示される方法で使用される用量または投与レジメンは、Ashoor TM,et al.,Nebulized heparin and salbutamol versus Salbutamol alone in acute exacerbation of chronic obstructive pulmonary disease requiring mechanical ventilation:a double blind randomised controlled trial,Korean J Anesthesiol.2020年2月28日、またはHiremath M,et al.,Heparin in the long-term management of ligneous conjunctivitis:a case report and review of literature,Blood Coagul Fibrinolysis.2011年10月;22(7):606-9に記載される用量または投与レジメンであってもよい。
【0049】
経口投与については、組成物は、高純度の高分子量ヘパリンと、当分野に公知の薬学的に許容可能な担体とを組み合わせることにより容易に製剤化され得る。かかる担体は、本発明化合物を、治療される患者による経口摂取のための錠剤、丸薬、糖衣錠、カプセル、液体、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁液などとして製剤化させる。経口用の医薬調製物は、固形賦形剤を添加し、任意で得られた混合物を粉砕し、顆粒混合物を処理して、望ましい場合には適切な補助剤を添加した後、錠剤または糖衣錠のコアを得ることにより、取得され得る。適切な賦形剤としては限定されないが、例えばラクトース、スクロース、マンニトール、およびソルビトールをはじめとする糖などの充填剤;例えば限定されないが、トウモロコシデンプン、小麦デンプン、米デンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガカントガム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、およびポリビニルピロリドン(PVP)などのセルロース調製物が挙げられる。所望の場合には、例えば限定されないが、架橋ポリビニルピロリドン、アガーもしくはアルギン酸またはそれらの塩、たとえなアルギン酸ナトリウムなどの崩壊剤が加えられてもよい。
【0050】
経口的に使用され得る医薬組成物としては限定されないが、ゼラチンから作製される押し込み型カプセル、ならびにゼラチンと、例えばグリセロールまたはソルビトールなどの可塑剤から作製される軟質密封カプセルが挙げられる。押し込み型カプセルは、例えばラクトースなどの充填剤、例えばデンプンなどの結合剤、および/または例えば滑石もしくはステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤、および任意で安定剤と混合された活性成分を含有し得る。軟質カプセルでは、活性化合物は、例えば脂肪油、液体パラフィン、または液体ポリエチレングリコールなどの適切な液体中に溶解され、または懸濁されてもよい。さらに、安定剤を加えてもよい。経口投与用のすべての組成物は、かかる投与に適した用量であるものとする。一部の態様では、組成物は、小腸で溶解してもよい。
【0051】
本明細書で使用される場合、「担体」という用語は、担体、賦形剤、および希釈剤を包含し、例えば角質層または有棘層などの組織の層を横切り、医薬品、化粧品または他の剤を運搬または輸送することに関与する、例えば液体もしくは固体の充填剤、希釈剤、賦形剤、溶媒、または封入材料などの材料、組成物、またはビヒクルを意味する。化合物の医薬組成物は、適切な固相もしくはゲル相の担体または賦形剤を含んでもよい。かかる担体または賦形剤の例としては限定されないが、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、様々な糖類、デンプン、セルロース誘導体、ゼラチン、および例えばポリエチレングリコールなどのポリマーが挙げられる。
【0052】
本明細書で使用される場合、「粘膜組織」は、体内の様々な空洞を裏打ちしている組織である。粘膜組織の例としては限定されないが、鼻、副鼻腔、気管支、肺、結膜、口腔、舌、食道、胃、幽門、十二指腸、空腸、回腸、上行結腸、盲腸、虫垂、横行結腸、下行結腸、直腸、肛門、尿道、および膀胱を裏打ちしている粘膜組織が挙げられる。粘膜組織は、上皮表面、粘液を分泌する腺上皮、基底膜、および結合組織を有する粘膜下組織を含む。したがって放射性標識されたヘパリン/好酸球顆粒タンパク質複合体は、対象において、上皮表面上で、腺上皮組織中で、基底膜上または基底膜中で、および粘膜組織の粘膜下結合組織中で、検出され得る。一部の態様では、粘膜組織は、対象の食道内にあるか、または食道由来である。
【0053】
本明細書で使用される場合、「好酸球顆粒タンパク質」は、好酸球中に顆粒を含むタンパク質である。好酸球が活性化されると、顆粒タンパク質は、細胞から周囲組織に放出される。放出された顆粒タンパク質は、周囲組織、例えば、食道粘膜組織中で、病的な炎症性応答を引き起こし得る。好酸球顆粒タンパク質の例としては限定されないが、主要塩基性タンパク質(MBP)、主要塩基性タンパク質1(MBP-1)、主要塩基性タンパク質2(MBP-2)、好酸球由来ニューロトキシン(EDN)、好酸球カチオン性タンパク質(ECP)、および好酸球ペルオキシダーゼ(EPO)が挙げられる。好酸球顆粒タンパク質の他の例は、Kita et al.,Biology of Eosinophils,Chapter 19 of Immunologyにおいて提供されており、本書は、その好酸球顆粒タンパク質の例の教示について参照により本明細書に組み込まれる。いくつかの態様では、好酸球顆粒タンパク質はMBP-1であり得る。
【0054】
本明細書で使用される場合、「高分子量ヘパリン」とは、約20kDa以上の分子量を有するヘパリンおよび/またはヘパリン塩(例えば、ヘパリン硫酸塩)を指す。ヘパリンポリマーは、典型的には、多分散系線状ポリマーの混合物からなる。すなわち、様々な長さの分子鎖を有し、そのためヘパリン鎖の分子量は変化して、一つの数では完全に記載することができない。したがって、高分子量ヘパリンは、より具体的には、約20kDaを超える平均分子量を有するものとして記載される。平均分子量は、数平均(すなわちサンプル中の分子数で割ったサンプルの総重量)として計算され得る。本明細書で使用される場合、「低分子量ヘパリン」とは、約8kDa未満の分子量を有するヘパリンおよび/またはヘパリン塩(例えば、ヘパリン硫酸塩)を指す。例えば、エノキサパリンは、低分子量ヘパリンファミリーの産物であり、約4.5kDaの分子量を有する。ヘパリンポリマーは、典型的には、多分散系線状ポリマーの混合物からなる。すなわち、様々な長さの分子鎖を有し、そのためヘパリン鎖の分子量は変化して、一つの数では完全に記載することができない。したがって、低分子量ヘパリンは、より具体的には、約8kDa未満の平均分子量を有するものとして記載される。平均分子量は、数平均(すなわちサンプル中の分子数で割ったサンプルの総重量)として計算され得る。
【0055】
本明細書で使用される場合、「未分画ヘパリン」または「ヘパリン」とは、様々な長さの分子鎖を伴い、3~30kDaの範囲の分子量を有するヘパリンポリマーを指す。「未分画ヘパリン」または「ヘパリン」は多分散性であり、(高分子量ヘパリンおよび低分子量ヘパリンの場合のように)特定の限定的な分子量範囲を有する分子分画を隔離するように分画化されていない。
【0056】
本明細書で使用される場合、「放射性標識」は、例えばヘパリンなどの物質に付着されて、システムまたは組織を通過する際に物質を追跡することができる同位体組成物である。放射性標識された物質の非限定的な例は、限定されないが、放射性標識された高分子量ヘパリン、放射性標識された低分子量ヘパリン、ならびに放射性標識された未分画ヘパリンを含む放射性標識ヘパリンである。本明細書に提供されるように、本明細書に記載される方法は、限定されないが、放射性標識された高分子量ヘパリン、放射性標識された低分子量ヘパリン、および放射性標識された未分画ヘパリンを含む、本明細書に開示される放射性標識ヘパリンのいずれかを用いて使用することができる。一部の態様では、放射性標識ヘパリンは、99mTc-ヘパリンであってもよい。他の放射性標識の例としては限定されないが、111In、14C、3H、13N、18F、51Cr、125I、133Xe、81mKr、および131Iが挙げられる。例えばヘパリンなどの物質に付着され得る他の放射性標識は、表1に見出すことができる。例えば、99mTcなどの放射性標識は、当業者に公知の市販の試薬を使用して、例えばヘパリンなどの物質に付着されることができる。一部の態様では、99mTc-ヘパリンは、以下の実施例1に示されるように調製されることができる。
【表1】

【0057】
ここで、範囲に従い、または任意の類似の様式に従い権利請求され得る、群内の任意の部分範囲または部分範囲の組み合わせを含む、任意の当該群の任意の個々の構成要素を追放または除外する権利は、いかなる理由に対しても本開示の完全な量目未満で留保され得る。さらにここで、任意の個々の置換、構造もしくはその群、または権利請求される群の任意の構成要素を追放または除外する権利は、いかなる理由に対しても本開示の完全な量目未満で留保され得る。本開示全体を通して、様々な特許、特許出願、および公表文献が参照される。これらの特許、特許出願および公表文献の開示内容は、本開示の日付において当分野の当業者に公知である当分野の状況をさらに詳細に解説するために、その全体で参照により本開示に組み込まれる。引用される特許、特許出願および公表文献と本開示の間に不一致がある場合には、本開示が優先される。
【0058】
本明細書に開示されるように、EoEは概して食道の炎症として、または食道を収縮、またはさらには塞ぎさえする、より顕著な輪もしくは溝として、患者に存在し得る。EoEは、嚥下障害、食片固着、嚥下痛、ならびに他の症状を引き起こす可能性があり、診断されずにいた場合、および/または治療されずにいた場合には痛みを伴い危険である。さらに、好酸球関連炎症は、他の器官および組織でも発生し、さらなる痛みを伴う症状および/または危険な状態を引き起こし得る。
【0059】
生検標本でのEoE診断における重要な要素は、好酸球の存在である。正常な食道組織は、好酸球を含有しない。これらの白血球は、赤色染料のエオジンに対するアフィニティに名前が由来する。通常、好酸球は血流、胃、小腸および大腸、ならびにリンパ系に存在するが、EoEでは病理学的に食道に浸潤する。いくつかの臨床的証拠から、炎症は、好酸球濃度と共に増加することが示唆されている。好酸球の独特の特徴は、著しくカチオン性のタンパク質を含有する顆粒である。当該顆粒は、電子密度の高い中心コアと、および電子-X線透過性のマトリクスから構成される。コアは主に主要塩基性タンパク質1(MBP-1)からなり、マトリクスは、好酸球ペルオキシダーゼ(EPO)および好酸球由来ニューロトキシン(EDN)、ならびに特に好酸球カチオン性タンパク質(ECP)からなる。MBP-1は、顆粒タンパク質の約52%(ヒト)~55%(モルモット)を占める、5つの非対システインを含む非常に塩基性(11を超える等電点)の13.8kDaのタンパク質である(例えば、Abu-Ghazaleh RI,et al.,Eosinophil granule proteins in peripheral blood granulocytes;J Leukoc Biol 52:611-618,1992を参照のこと)。C型レクチンファミリー(レクチンは糖に結合する)の一種であり、好酸球顆粒において、1分子当たりで最も高い濃度を有する。EPOは、顆粒において質量当たりで最も高い濃度を有し、一方でEDNとECPは、RNAse 2ファミリーの一種である。脱顆粒した際、好酸球はこれらのタンパク質の各々を周囲組織に放出する。これらのうち、MBP-1のみが、ヒスタミン放出を刺激する。またMBP-1は、気管支上皮細胞を剥離させ、気管支の超反応性を引き起こす。一方でMBP-1とEPOの両方ともが、一過性の気管支収縮を誘発する。これらのタンパク質は、EoEの生検中に豊富に見出される。近年の発見により、好酸球顆粒カチオン性タンパク質により誘導される気管支肺C線維の感受性亢進は、気道の好酸球浸潤と関連する気管支の過敏反応性と慢性的な咳の病因の寄与因子である可能性がさらに示唆されている。
【0060】
この分子に関する初期の研究で、ヘパリンとともに沈殿したことが示されていることから、おそらく電荷に基づいた相互作用が示唆される。その後の研究で、MBP-1は、哺乳動物細胞、細菌、および特定の寄生虫の形態に毒性があることが示され、臓器機能障害と関連した多数の好酸球関連疾患において、炎症部位に沈殿していたことが示された。ヘパリンは、用量関連様式で、MBP-1の細胞障害作用を中和した。さらにその後、研究により、ヘパリンは、二つの他の顕著なカチオン性タンパク質、すなわち好酸球ペルオキシダーゼと好酸球カチオン性タンパク質よりも、より強くMBP-1と相互作用することが示された。MBP-1に対するヘパリンのアフィニティは、MBP-1上の特定の部位に局在する能力に起因する可能性がある。したがって、MBP-1への結合は、毒性作用を中和し、毒性に関連する症状を軽減する。理想的には、好酸球関連炎症を発現している組織に局在し、MBP-1と結合することによって組織に治療効果をもたらす組成物で、MBP-1が標的化されてもよい。
【0061】
本明細書において、食道全体の活性EoEを可視化し、疾患活動性をモニタリングするために使用され得る方法および組成物が開示される。一部の態様では、本明細書に開示される方法および組成物は、EoE患者が現在必要とするEGD処置および生検の回数の減少をもたらし得る。さらに、本明細書に記載される結果から、他の器官における好酸球関連炎症も、Tc99m-ヘパリンの結合により検出され得ることが明らかである。したがって一部の態様では、放射性標識造影剤、例えばTc99m-ヘパリンを、全身の好酸球関連疾患の診断剤として使用することができる。
【0062】
また本明細書において、高分子量ヘパリンを含む組成物、および好酸球関連炎症(例えば、食道)の位置特定および治療に対し、高分子量ヘパリンを使用する方法が開示される。未分画ヘパリンおよび低分子量ヘパリンを、好酸球関連炎症の位置特定に使用してもよい。一部の態様では、未分画ヘパリンを含む本開示の組成物は、好酸球関連炎症(例えば、食道)の位置特定および/または治療に使用されてもよい。本明細書に開示される組成物および方法の利点としては限定されないが、例えば好酸球関連炎症の直接的な標的化のために、一つ以上のグルココルチコイドと高分子量ヘパリンがコンジュゲートされること、および消化管の好酸球関連炎症および/または一つ以上の好酸球関連疾患が治療されること、が挙げられる。
【0063】
本明細書に開示される組成物および方法は、少なくとも二つの利点を有する。第一に、好酸球関連炎症の位置特定に対し、高分子量ヘパリンを利用することで、低分子量ヘパリンよりも好酸球性炎症部位にしっかりと結合する。次いで、好酸球性炎症の位置特定に使用されるヘパリン(例えば、高分子量ヘパリン)の量を少なくすることができ、一つ以上の炎症部位に、より多く割合の放射能が局在するという期待が持てる。さらに、本明細書に開示される組成物および方法を使用することで、ヘパリンの量を少なくすることができ、それに伴い、好酸球性炎症の位置特定に使用される放射能の量も少なくすることができ、放射能への患者の暴露を限定することができる。さらに本明細書に記載される組成物および方法を使用して、体内および全身の好酸球性炎症(例えば、好酸球性炎症に罹患するヒト身体の任意の器官)を特定することができる。
【0064】
第二に、高分子量ヘパリンを含む組成物は、低分子量ヘパリンと比較して、eMBP-1の毒性作用を中和する効果が高い可能性がある。一部の態様では、高分子量ヘパリンは、一つ以上の好酸球性炎症の部位に適用される、または送達されることにより、医薬品として機能する能力を有する。例えば、一部の態様では、例えば好酸球性食道炎などの好酸球関連消化管疾患を、高分子量ヘパリンを経口投与して好酸球性炎症を中和することにより治療するために,高分子量ヘパリンを含む組成物が使用され得る。さらに、高分子量ヘパリンを使用して、好酸球関連炎症を標的化することができるため、そして例えばフルチカゾンやブデソニドなどのグルココルチコイドは高分子量ヘパリンとコンジュゲートされることができるため、一部の態様では、高分子量ヘパリンは、一つ以上のグルココルチコイドの前、後、または同時に投与されて、好酸球関連炎症を治療することができる。
【0065】
高分子量ヘパリンは、好酸球関連炎症部位の位置特定、およびeMBP-1の毒性作用の中和に有効であり得る。一部の態様では、高分子量ヘパリンは、一つ以上の好酸球性炎症部位に適用される(例えば、治療剤)または送達されることにより、医薬品として機能することができる。一部の態様では、高分子量ヘパリンを使用して、好酸球関連炎症を標的とすることができるため、トレーサー(例えば、放射性標識された造影剤)および/または治療剤を高分子量ヘパリンにコンジュゲートして、好酸球関連炎症への標的送達を行うことができる。
【0066】
歴史的に、高分子量ヘパリンは回避され、低分子量ヘパリンの方が好まれてきた。一般的に、ヘパリンは、ポリマー鎖の長さ、そしてそれゆえの分子量という観点で固有の不均一性を有している。典型的には、一般的な投与経路(すなわち、静脈内または皮下)により、大量の高分子量ヘパリン鎖を投与することで、ヘパリンへの曝露から生じる合併症であるヘパリン誘発性血小板減少症(HIT)の発生率が増加し、肢血栓性合併症や、生命を脅かす血栓性合併症が発生する可能性があると考えられている。HITにおいて、ヘパリンが血小板因子4(PF4:platelet factor)に結合したとき、免疫系はヘパリンに対する抗体を形成する。次いで、抗体は、ヘパリン/PF4との複合体を形成し、血小板に結合して活性化させ、その結果、血栓を形成させ、血小板数の低下を生じさせる。HITにより静脈血栓塞栓症が生じ、場合によっては動脈血栓症(HITTとして知られる)も生じる可能性がある。高分子量ヘパリン鎖が関連する疑いのあるHITのリスクにより、臨床用途の医療分野では低分子量ヘパリンが好まれてきた。しかし、ヘパリンが静脈内および/または皮下ではなく、経口的、吸入、または局所的に投与される場合には、HITのリスクは大幅に減少し得る。
【0067】
さらに、鎖長の均一性が欠落していることにより、特定の分子量のヘパリンの単離において、大きな困難が生じる。いくつかの技術は、標的とする平均分子量の組成物の作製に成功しているが、それでも分子量は大きく変動するため、組成物は高純度(すなわち、標的とする範囲の分子量を有する組成物の割合が高い)ではない。低分子量ヘパリンに焦点が当てられていたことから、低分子量ヘパリンを精製する方法が研究されてきたが、高分子量ヘパリンを精製する方法の開発には同様の進歩は見られなかった。
【0068】
好酸球顆粒主要塩基性タンパク質-1。好酸球顆粒主要塩基性タンパク質-1(eMBP-1)は、分子量が約14kDaの顕著なカチオン性分子であり、好酸球顆粒内で顆粒のコアに局在する。この分子に関する初期の研究で、ヘパリンとともに沈殿したことが示されていることから、おそらく電荷に基づいた相互作用が示唆される。その後の研究で、eMBP-1は、哺乳動物細胞、細菌、および特定の寄生虫の形態に毒性があることが示され、臓器機能障害と関連した多数の好酸球関連疾患において、炎症部位に沈殿していたことが示された。ヘパリンは、用量関連様式で、eMBP-1の細胞障害作用を中和した。さらにその後、研究により、ヘパリンは、二つの他の顕著なカチオン性タンパク質、すなわち好酸球ペルオキシダーゼと好酸球カチオン性タンパク質よりも、より強くeMBP-1と相互作用することが示された。eMBP-1に対するヘパリンのアフィニティは、eMBP-1上の特定の部位に局在する能力が原因である可能性がある。したがって、eMBP-1への結合は、毒性作用を中和し、毒性に関連する症状を軽減する。本明細書に開示されるように、eMBP-1は、好酸球関連炎症を発現している組織に局在し、eMBP-1と結合することによって組織に治療効果をもたらす組成物で標的化されてもよい。本明細書で使用される場合、「eMBP-1」および「MBP-1」は同じタンパク質を指し、同じであることを意味し、相互交換可能に使用される。
高分子量ヘパリンまたは未分画ヘパリンを含む組成物
【0069】
本明細書において、患者に投与されるように構成されたヘパリンを含む組成物が開示される。一部の態様では、組成物は、高分子量ヘパリン(HMWH)またはその塩(例えば、ヘパリンナトリウム)、および薬学的に許容可能な賦形剤を含む。HMWHは、高純度を有することができる。すなわち、ヘパリン鎖のかなりの割合が、高分子量を有する。一部の態様では、組成物は、未分画ヘパリン(UFH)またはその塩(例えば、ヘパリンナトリウム)、および薬学的に許容可能な賦形剤を含む。
【0070】
一部の態様では、HMWHは、約20kDa以上の平均分子量を含む。一部の態様では、HMWHは、20kDa、21kDa、22kDa、23kDa、24kDa、25kDa、26kDa、27kDa、28kDa、29kDa、30kDa、またはそれらの間の個々の値または範囲の平均分子量を含み得る。さらにHMWHは、30kDaを超える平均分子量を有し得ることも予期される。一部の態様では、HMWHは、約35kDaの平均分子量を含む。一部の態様では、HMWHは、約40kDaの平均分子量を含む。一部の態様では、HMWHは、40kDaを超える平均分子量を含む。一部の態様では、HMWHの平均分子量は、本明細書に開示される値の間の個々の値、または本明細書に開示される値の間の範囲の間の個々の値である。
【0071】
HMWHの平均分子量は、好酸球性炎症を発現する部位への結合を最適化するように選択され得る。HMWHは、低分子量ヘパリン(LMWH)または未分画ヘパリン(UFH)よりもeMBP-1に対し高いアフィニティを呈するため、HMWHは、LMWHまたはUFHよりも、好酸球性炎症部位にしっかりと結合する。一部の態様では、比較的高い平均分子量(例えば、30kDa)を有するHMWHは、比較的より低い平均分子量(例えば、20kDa)を有するHMWHよりも、しっかりと結合し得る。一部の態様では、HMWHの結合アフィニティは、HMWHの平均分子量と直線的に増加する。したがって、HMWHの平均分子量が増加するにつれて、好酸球性炎症の位置特定に必要とされるヘパリンの量を減少させることができ、より多くの割合の投与されたヘパリンが、炎症部位に局在するという期待が持てる。
【0072】
HMWHの純度は、規定の閾値を超える分子量を有するヘパリン鎖の量によって定義することができる。例えば、規定の閾値は、20kDaであってもよく、それにともないHMWHの純度は、20kDa未満の分子量を有するヘパリン鎖と比較して、20kDa以上の分子量を有するヘパリン鎖の割合、パーセンテージ、または比率に基づいて決定することができる。一部の態様では、HMWH中のヘパリン鎖の少なくとも約50%は、20kDa以上の分子量を有してもよく、これは50%の純度(すなわち、高純度)とも呼称され得る。一部の態様では、20kDa以上の分子量を有するHMWH中のヘパリン鎖の合計割合は、60%、70%、80%、90%、95%、95%超、またはそれらの間の個々の値または範囲であってもよい。したがって、HMWHの組成物は、60%の純度、70%の純度、80%の純度、90%の純度、95%の純度、95%超の純度、またはそれらの間の個々の値もしくは範囲を有すると記載されてもよい。一部の態様では、HMWHは、規定の閾値を下回る分子量を有する分子鎖の最大量によって定義されることもできる。例えば、HMWHは、50%、40%、30%、25%、20%、15%、10%、5%以下、5%未満、またはそれらの間の個々の値もしくは範囲の割合で、20kDaを下回る分子量を有するヘパリン鎖を含み得る。一部の態様では、HMWHは、低分子量鎖を規定するカットオフ(例えば、8kDa)を下回る分子量を有する分子鎖の最大量により定義されることもできる。例えば、HMWHは、50%、40%、30%、25%、20%、15%、10%、5%以下、実質的に0%、またはそれらの間の個々の値もしくは範囲の割合で、8kDaを下回る分子量を有するヘパリン鎖を含み得る。
【0073】
一部の態様では、比較的高い純度(例えば、80%)のHMWHは、低純度(例えば、50%)のHMWHよりも、好酸球関連炎症部位への高い局在性を示し得る。一部の態様では、HMWHの局在率は、HMWHの純度が増加するにつれて上昇する。したがって、HMWHの純度が増加するにつれて、好酸球性炎症の適切な位置特定に必要とされるヘパリンの量を減少させることができ、より多くの割合の投与されたヘパリンが、炎症部位に局在するという期待が持てる。
【0074】
一部の態様では、HMWHの「純度」を定義するために使用される分子量の規定閾値は、20kDa以外の値であってもよい。規定閾値は、HMWH組成物に対する望ましい最小平均分子量に基づいて設定してもよい。例えば、HMWHの純度を評価するための規定閾値は、20kDa、21kDa、22kDa、23kDa、24kDa、25kDa、26kDa、27kDa、28kDa、29kDa、30kDa、35kDa、40kDa、40kDa超、またはそれらの間の個々の値もしくは範囲であってもよい。同様に、低分子量鎖のカットオフは、8kDa以外の値であってもよい。例えば、カットオフは、5kDa、6kDa、7kDa、8kDa、9kDa、10kDa、11kDa、12kDa、12kDa超、またはそれらの間の個々の値もしくは範囲であり得る。
【0075】
高純度が、比較的高い閾値(例えば、30kDa)によって定義される場合、高純度が、比較的低い閾値(例えば、20kDa)によって定義される場合よりも、HMWHは、好酸球関連炎症部位により多く局在し得る。一部の態様では、HMWHの局在率は、純度閾値が増加するにつれて上昇する。したがって、HMWHの純度閾値が増加するにつれて、好酸球性炎症の適切な位置特定に必要とされるヘパリンの量を減少させることができ、より多くの割合の投与されたヘパリンが、炎症部位に局在するという期待が持てる。
【0076】
本明細書に開示される組成物は、特定の量のHMWHヘパリンを含んでもよい。一部の態様では、特定の量のHMWHは、好酸球関連炎症部位に到達または局在するように構成されたHMWHの用量であってもよい。一部の態様では、特定の量のHMWHは、治療有効量のHMWHであってもよい。一部の態様では、特定の量のHMWHは、好酸球関連炎症部位に局在し、その撮像および/または診断を促進するように構成されたHMWHの用量であってもよい。例えば、好酸球関連炎症部位が、食道または食道の一部である場合、組成物は、約15000ユニット、約10000ユニット、約5000ユニット、約4000ユニット、約3000ユニット、約2000ユニット、約1000ユニット、約500ユニット、約250ユニット、約250ユニット未満、またはそれらの間の個々の値もしくは範囲から選択されるHMWHの量を含んでもよい。HMWHの量は、約100mg、約90mg、約80mg、約70mg、約60mg、約50mg、約40mg、約30mg、約20mg、約10mg、約5mg、約4mg、約3mg、約2mg、約1mg、約0.5mg、約0.5mg未満、またはそれらの間の個々の値もしくは範囲であってもよい。一部の態様では、ヘパリンの量は、(例えば、滅菌生理食塩水を用いて)希釈されて、約15mL、14mL、13mL、12mL、11mL、10mL、約9mL、約8mL、約7mL、約6mL、約5mL、約4mL、約3mL、約2mL、約1mL、約0.9mL、約0.8mL、約0.7mL、約0.6mL、約0.5mL、約0.4mL、約0.3mL、約0.2mL、約0.1mL、約0.1mL未満、またはその間の個々の値もしくは範囲の最終量を提供してもよい。HMWHの用量は、標的とする好酸球関連炎症部位の大きさに基づいて変化し得る。より大きな部位および/または器官を標的化するためには、より多量のHMWHが必要とされ得る。好酸球関連炎症部位が、本明細書に詳述される食道以外の異なる部位または器官である場合、HMWHの量は、本明細書に記載される量であってもよく、または当業者に明白であるように、好酸球関連炎症部位を適切に標的化するために必要な、より多い値または小さな値であってもよい。
【0077】
本明細書に記載されるように、組成物は概して、比較的少量のHMWHヘパリンまたはその塩を含む。その理由は、eMBP-1に対する高いアフィニティと、高純度の組成物によって、LMWHまたはUFHと比較し、必要とされる用量は少なくなるためである。一部の態様では、本開示の組成物および方法におけるHMWHの量は、同じ結果に必要とされるLMWHまたはUFHの量よりも60%、50%、40%、30%、20%または10%であってもよい。したがって、投与されるヘパリンの合計量は、一般的に許容されるLMWHまたはUFHの用量と比較して少なくなるため、少量のHMWHによるHITのリスクは相対的に低くなる。さらに、LMWHやUFHでさえ、その純度は低いため(すなわち、多分散性が高い)、一般的にある程度の量の高分子量鎖を含んでいる。したがって、一部の事例では、組成物中の高分子量鎖の合計量は、LMWHまたはUFHの一般的に許容されている用量中に存在する高分子量鎖の合計量と実質的に類似している可能性があり、したがって、HITのリスクはそれほど高いものではない。さらに、HMWHが本明細書に記載されるように経口投与される場合、HITのリスクは、ヘパリンの静脈内投与および/または皮下投与に一般的に関連するリスクの程度と比較して、大幅に減少する可能性がある。
【0078】
一部の態様では、組成物は、未分画ヘパリンを含んでもよい。一部の態様では、未分画ヘパリンは、ヘパリンナトリウムであってもよい。一部の態様では、ヘパリンナトリウムは、1000USP単位、5000USP単位、10,000UPS単位、またはその間の任意の量であってもよい。
【0079】
一部の態様では、本明細書に開示される方法で使用される用量または投与レジメンは、Ashoor TM,et al.,Nebulized heparin and salbutamol versus Salbutamol alone in acute exacerbation of chronic obstructive pulmonary disease requiring mechanical ventilation:a double blind randomised controlled trial,Korean J Anesthesiol.2020年2月28日、またはHiremath M,et al.,Heparin in the long-term management of ligneous conjunctivitis:a case report and review of literature,Blood Coagul Fibrinolysis.2011年10月;22(7):606-9に記載される用量または投与レジメンであってもよい。
【0080】
一部の態様では、本明細書に開示される組成物は、経口投与される。例えば、組成物は、対象によって経口的に嚥下されてもよい。一部の態様では、組成物は、シリンジ、スポイト、または他のデバイスを用いて経口投与されてもよい。
【0081】
一部の態様では、本明細書に開示される組成物は、経口溶液または局所溶液として、経口投与または局所投与されてもよい。例えば、UFHまたはHMWHを含む組成物は、限定されないが、EoEおよび好酸球性胃腸炎を含む好酸球性GI障害(EGID)、ならびに限定されないが潰瘍性大腸炎およびクローン病を含む炎症性腸疾患を治療するための経口溶液または局所溶液として製剤化されてもよい。
【0082】
一部の態様では、本明細書に開示される組成物は、鼻腔スプレーとして吸入により投与されてもよい。例えば、UFHまたはHMWHを含む組成物は、好酸球性慢性鼻副鼻腔炎または鼻ポリープを治療するための鼻腔スプレーとして製剤化されてもよい。
【0083】
一部の態様では、本明細書に開示される組成物は、局所的に投与されてもよい(例えば、点眼薬)。例えば、UFHまたはHMWHを含む組成物は、限定されないが、好酸球性結膜炎、季節性および/または通年性アレルギー性結膜炎、春季カタル、アトピー性角結膜炎、巨大乳頭結膜炎、または接触性皮膚結膜炎を含む、アレルギー性の病態生理学的構成要素を有する眼疾患の治療用の局所投与のために製剤化されてもよい。
【0084】
本明細書に開示される組成物は、さらなる投与経路に対し、構成または製剤化されてもよい。例えば、組成物が、EoE以外の他の好酸球が関連する状態および疾患を治療するために投与される場合、異なる投与経路が必要、または好ましい場合がある。一部の態様では、本明細書に開示される組成物は、胃腸の好酸球関連疾患を治療するために、静脈内、局所的、吸入および/または経口的に投与するように構成される。一部の態様では、経口(または局所)投与によって治療され得る胃腸の好酸球関連疾患は、EoE、好酸球性胃炎、および/または好酸球性胃腸炎を含む。一部の態様では、本明細書に開示される組成物は、鼻、副鼻腔および肺の炎症を治療するために、吸入により投与するように構成される。一部の態様では、本明細書に開示される組成物は、結腸を治療するために、浣腸により投与するように構成される。一部の態様では、本明細書に開示される組成物は、膀胱における好酸球関連炎症を治療するために、カテーテルにより投与するように構成される。一部の態様では、本明細書に開示される組成物は、アレルギー性病態生理学的構成要素を有する眼の好酸球関連の炎症または疾患を治療するために、点眼により投与するように構成される。一部の態様では、本明細書に開示される組成物は、皮膚の好酸球関連の炎症および/または疾患を治療するために、クリームまたは軟膏として局所投与するように構成される。
【0085】
組成物は、食道への投与に関して実質的に記述されているが、組成物は、さらなる組織または器官への投与のためにも構成され得る。一部の態様では、標的とされる好酸球関連炎症または好酸球性疾患は、消化管(例えば、口、食道、胃、小腸、大腸、または結腸)、肺、鼻、眼、皮膚、1か所以上の関節、1か所以上の筋肉、1か所以上の神経、心臓、腎臓、膀胱、子宮、前立腺、乳房、リンパまたは血液に特異的であってもよい。
【0086】
一部の態様では、組成物は、一つ以上の追加の剤をさらに含むことができる。一部の態様では、組成物は、例えばHMWHにコンジュゲートされた放射性標識造影剤などのトレーサーをさらに含むことができる。例えば、放射性標識造影剤は、99mTcであってもよい。しかし例えばポジトロン放出断層撮影に使用されるトレーサーなどの他のトレーサーも、好酸球性炎症部位への高分子量ヘパリンの結合を検出するために採用され得る。一部の態様では、トレーサーは、表1の任意のトレーサーまたは標識であってもよい。したがって、組成物が本明細書に記載されるように投与される場合、従来の撮像モダリティ(例えば、X線)を使用して、好酸球関連性の炎症および/または疾患を可視化してもよい。例えば、EoEの場合、組成物は、食道全体の可視化を促進するために投与され得る。
【0087】
一部の態様では、トレーサーを使用して、好酸球関連の炎症および/または疾患を診断することができる。例えば、トレーサー(すなわち、診断剤)を含む組成物は、本明細書に記載されるように投与されてもよく、そして従来の撮像モダリティ(例えば、X線)を使用して、患者の一つ以上の画像を捕捉してもよい。HMWHの局在性は、一つ以上の画像において、検出されたトレーサーの位置と濃度に基づいて評価することができる。したがって、患者は、一つ以上の画像に基づいて、好酸球が関連する炎症および/または疾患と診断されてもよい。一部の態様では、患者の少なくとも一つの第一の画像は、第一の時点で取得され、患者の少なくとも一つの第二の画像は、第二の時点で取得される。第一の画像と第二の画像を比較して、炎症および/または疾患の活動性の進行をモニタリングおよび評価することができる。一部の態様では、追加の画像を追加の時点で取得して、患者のモニタリングと評価を継続してもよい。一部の態様では、組成物の別の投与は、第一の画像、第二の画像、および追加画像のいずれかのそれぞれを取得する前に行うことができる。しかし一部の態様では、組成物の単回投与が、複数の画像セットに対し、適切な放射性標識を提供することができる。組成物は、治療に関して本明細書に記述される好酸球が関連する状態および疾患のいずれかをモニタリングおよび評価するために利用することができる。
【0088】
一部の態様では、組成物は、HMWHにコンジュゲートされた治療剤をさらに含むことができる。一部の態様では、組成物は、患者への投与用の治療剤の治療有効量をさらに含む。一部の態様では、治療剤は、好酸球が関連する炎症および/または疾患に対して治療効果を有するように構成される(または製剤化される)。本明細書に開示されるように、組織結合型eMBP-1に対するHMWHのアビディティがあるため、治療剤をHMWHにコンジュゲートすることによって、治療を炎症領域に直接標的化させることができる。ゆえに、治療剤(例えば、HMWH/治療剤複合体)にコンジュゲートされたHMWHを、好酸球関連炎症の一つ以上の部位に直接標的化することにより、ケアに必要とされる治療剤の量(または用量)を減少させ、それに伴い、治療剤の投与に関連した任意の副作用を限定または最小化することができる。したがって、治療剤の治療有効量は、HMWHまたは別の標的化機構の非存在下での治療剤の投与と通常関連する治療有効量よりも、少なくすることができる。一部の態様では、治療剤は、好酸球関連疾患に対する有効な治療である、グルココルチコイドである。一部の態様では、グルココルチコイドは、モメタゾン、フルチカゾン、ブデソニド、およびメチルプレドニゾロンのうちの一つ以上である。好酸球が関連する炎症または疾患に対する追加の治療剤は、当業者には明白であるように、予期される。
【0089】
本明細書に開示される組成物は、当業者には公知であるように、様々な追加の構成要素または添加剤をさらに含むことができる。一部の態様では、組成物は、塩化第一スズをさらに含む。一部の態様では、組成物は、安定化剤をさらに含む。一部の態様では、組成物は、味覚マスキング剤をさらに含む。
放射性標識された造影剤を含む組成物
【0090】
本明細書において、放射性標識された造影剤を含む組成物が開示される。一部の態様では、放射性標識された造影剤は、ヘパリンを含む。一部の態様では、ヘパリンは、高分子量ヘパリンであってもよい。一部の態様では、ヘパリンは、低分子量ヘパリンであってもよい。一部の態様では、放射性標識は、99mTcであってもよい。一部の態様では、放射性標識されたヘパリンは、約20kDa~約40kDaの平均分子量を有するヘパリンを含み、この場合において当該ヘパリン中のヘパリン鎖の少なくとも50%は、少なくとも20kDaの分子量を有する。
【0091】
一部の態様では、例えば99mTc-ヘパリンなどの放射性標識された造影剤を含む、放射性標識された造影剤または本明細書に開示される組成物のいずれかは、対象に、経口的にまたは静脈内注射によって投与することができる。一部の態様では、本明細書に記載の方法のいずれかにおいて、例えば99mTc-ヘパリンなどの放射性標識された造影剤を対象に投与する方法は、経口であってもよい。経口投与は、食道の日常的なバリウム試験と同様の摂取を伴う場合がある。放射性標識された造影剤は、粘稠性の混合物(すなわち、スクラロース)中に懸濁されてもよい。増粘剤の例としては限定されないが、例えば寒天、アルギン酸塩、カラギーナン、カッシアゴム(cassia gum)、セルロースガム、ジェランガム、グアーガム、ヒドロキシプロピルセルロース、コンニャクゴム、ローカストビーンガム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、微結晶性セルロース、ペクチン、およびキサンタンゴムなどの食物デンプンが挙げられる。他の粘性剤(viscosifier)としては、蜂蜜、リュウゼツラン花蜜(agave nectar)、ナツメヤシ花蜜(date nectar)、クズまたはクズ根、アロー根、コーンシロップ、高粘度ジュース(thick juices)、メープルシロップ、ココナッツオイル、およびパーム油が挙げられる。
【0092】
本明細書において、放射性標識されたヘパリン(例えば、Tc-99m-ヘパリン)を調製する方法が開示される。一部の態様では、方法は、医療グレードの窒素を流しながら、20mg/mLの塩化第一スズ二水和物を滅菌水中で調製することを含んでもよい。一部の態様では、方法は、0.3mLの溶液を0.22マイクロフィルターを通して濾過すること、およびこれを1~150mgの低分子量ヘパリンナトリウムと混合すること、をさらに含んでもよい。一部の態様では、方法は、0.3mLの溶液を0.22マイクロフィルターを通して濾過すること、およびこれを1~150mgの高分子量ヘパリンナトリウムと混合すること、をさらに含んでもよい。一部の態様では、Tc99m-ヘパリンは、撮像当日に調製されてもよい。一部の態様では、方法は、Tc-99mの較正をさらに含んでもよい。一部の態様では、Tc-99mは、患者の投与時間の間に較正されてもよい。一部の態様では、較正工程は、Tc-99m発生装置を使用して、0.4mLでTc-99mを溶出することをさらに含んでもよい。一部の態様では、方法は、較正されたTc-99mにヘパリン溶液を添加すること、およびTc-99m-ヘパリン溶液(例えば、放射性標識された溶液)をインキュベートすること、をさらに含んでもよい。一部の態様では、インキュベート工程は、20℃で約5分であってもよい。一部の態様では、Tc-99m-ヘパリン溶液(例えば、放射性標識された溶液)は、経口投与用に調製されてもよい。一部の態様では、Tc-99m-ヘパリン溶液(例えば、放射性標識された溶液)は、滅菌生理食塩水中で希釈されてもよい。一部の態様では、Tc-99m-ヘパリン溶液(例えば、放射性標識された溶液)は、滅菌生理食塩水中で希釈され、1、5、10または15mLの最終体積とされてもよい。一部の態様では、Tc-99m-ヘパリン溶液(例えば、放射性標識された溶液)は、滅菌生理食塩水中で希釈され、15mLの最終体積とされてもよい。一部の態様では、放射性標識されたヘパリンは、約20kDa~約40kDaの平均分子量を有するヘパリンを含み、この場合において当該ヘパリン中のヘパリン鎖の少なくとも50%は、少なくとも20kDaの分子量を有する。
【0093】
一部の態様では、ヘパリンは、低分子量ヘパリンであってもよい。一部の態様では、ヘパリンは、高分子量ヘパリンであってもよい。ゆえに放射性標識されたヘパリンは、放射性標識された高分子量ヘパリン、または放射性標識された低分子量ヘパリンを含んでもよい。一部の態様では、放射性標識されたヘパリンは、約20kDa~約40kDaの平均分子量を有するヘパリンを含み、この場合において当該ヘパリン中のヘパリン鎖の少なくとも50%は、少なくとも20kDaの分子量を有する。
【0094】
本明細書に開示される放射性標識されたヘパリンは、様々な用量で調製されてもよい。例えば、放射性標識されたヘパリンは、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.5、2.0、2.5、3、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、8.5、9.0、9.5、または10.0mCiであってもよい。一部の態様では、放射性標識されたヘパリンの用量は、0.3mCi~約1mCiであってもよい。一部の態様では、放射性標識されたヘパリンの用量は、1.0mCiであってもよい。一部の態様では、放射性標識されたヘパリンの用量は、10mCiであってもよい。一部の態様では、放射性標識されたヘパリンは、Tc-99m-ヘパリンであってもよい。一部の態様では、Tc-99m-ヘパリンの用量は、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.5、2.0、2.5、3、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、8.5、9.0、9.5、または10.0mCiであってもよい。一部の態様では、Tc-99m-ヘパリンの用量は、0.3mCi~約1mCiであってもよい。一部の態様では、Tc-99m-ヘパリンの用量は、1.0mCiであってもよい。一部の態様では、Tc-99m-ヘパリンの用量は、10mCiであってもよい。一部の態様では、1~100mgのUSPヘパリンを、0.1~30mCiの放射性標識(例えば、Tc-99m)を用いて標識してもよい。一部の態様では、約88mgのUSPヘパリンを、約30mCiの放射性標識(例えば、Tc-99m)を用いて標識してもよい。一部の態様では、約0.1~約1mgのヘパリンを使用して、放射性標識(例えば、Tc-99m)で標識してもよい。
【0095】
一部の態様では、Tc-99mへの結合に使用されるヘパリンの用量は、ヘパリンの形態またはタイプに応じて変更してもよく、または変動してもよい。一部の態様では、高分子量ヘパリンを使用することで、未分画ヘパリンと比較して、例えば食道組織での取り込み速度が速くなるため、より少ない量または用量の放射性標識の使用が可能となる。一部の態様では、1mg~88mgの未分画(または低分子量)ヘパリンを、0.3~30mCi Tc-99mで標識してもよい。
【0096】
一部の態様では、使用されるヘパリンが高分子量ヘパリンである場合、高分子量ヘパリンの用量または量は、未分画ヘパリンが必要とされ、使用され、または要求される量と比較して、少なくてもよい。一部の態様では、放射性標識で標識する高分子量ヘパリンの量は、0.1~約1mg、1mg~2mg、または2mg~3mgであってもよい。一部の態様では、1mgの高分子量ヘパリンを使用して、放射性標識で標識し、3mgの未分画ヘパリンよりも良好に結合させることができる。一部の態様では、0.1mg~88mgの高分子量ヘパリンを、0.3~30mCi Tc-99mで標識してもよい。
【0097】
一部の態様では、UFHまたはLMWHと比較して少量のHMWHを使用して、組織中のeMBP1に結合させることができる。例えば、1mgのHMWHを使用することで、3mgのUFHよりも良好な画像を生成することができる。更に、3mgのUFHと3mCiの結合を使用することにより、ヘパリンのわずかな分画が標識される(18,000個のヘパリン分子当たり1Tc)。ヘパリン(例えば、HMWH)を1mgに減少させることによって、ヘパリンと放射性標識との比は、6000個以下のヘパリン分子当たり約1Tcにまで増加する)。eMBP1への結合に関して、少量の冷ヘパリン(cold heparin)が、温ヘパリン(hot heparin)と競合するため、より高い特異的活性を有するヘパリンが、より良好な画像を生成する。
【0098】
一部の態様では、本明細書に開示される組成物は、静脈内、局所、および/または経口(例えば、本明細書に開示される組成物を嚥下することによる)で投与され、胃腸の好酸球関連疾患を特定することができる。一部の態様では、経口投与後に検出され得る胃腸の好酸球関連疾患としては限定されないが、好酸球性食道炎、好酸球性胃炎、好酸球増多症候群、および好酸球性胃腸炎が挙げられる。一部の態様では、本明細書に開示される組成物を吸入により投与することにより、鼻、副鼻腔および肺の炎症を特定することができる。一部の態様では、本明細書に開示される組成物を静脈内投与することにより、心臓の炎症を特定することができる。一部の態様では、本明細書に開示される組成物を浣腸により投与することにより、結腸を調べることができる。一部の態様では、本明細書に開示される組成物をカテーテルにより投与することにより、膀胱における好酸球関連炎症を特定することができる。一部の態様では、本明細書に開示される組成物を点眼により投与することにより、眼の好酸球関連炎症を特定することができる。
【0099】
本明細書において、放射性標識されたヘパリンを対象に投与することを一部として含む方法が開示される。一部の態様では、放射性標識されたヘパリンは、約20kDa~約40kDaの平均分子量を有するヘパリンを含み、この場合において当該ヘパリン中のヘパリン鎖の少なくとも50%は、少なくとも20kDaの分子量を有する。一部の態様では、放射性標識されたヘパリンは、対象に経口投与される。一部の態様では、食道における放射性標識ヘパリンの滞留時間は、造影剤の粘度を変化させることにより制御することができ、および/または嚥下する間の時間間隔を増加させることによって制御することができ、それにともない、造影剤が好酸球顆粒タンパク質と接触および結合するための時間をより多く提供することができる。さらに、頭が足よりも下になるように対象を横にさせ、食道内にいくらかの逆流があるようにすることで、造影剤と、対象の食道の粘膜組織との間の接触を延長させることができる。
【0100】
一部の態様では、放射性標識された造影剤(例えば、99mTc-ヘパリンなどの放射性標識されたヘパリン)は、15分間かけて経口投与されることができる。一部の態様では、放射性標識された造影剤(例えば、99mTc-ヘパリンなどの放射性標識されたヘパリン)は、1mlの一定分量で15分間かけて経口投与されることができる(例えば、1ml/分)。一部の態様では、15mlの放射性標識造影剤が投与されてもよい(例えば、対象により経口的に嚥下される)。一部の態様では、対象は、1mlの放射性標識造影剤を15回嚥下することができる。一部の態様では、放射性標識造影剤を嚥下する回数は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、または15回であってもよい。一部の態様では、放射性標識造影剤(例えば、99mTc-ヘパリン)の1mlの一定分量は、対象が仰臥位である間に、シリンジで対象に投与されてもよい。一部の態様では、対象は、少なくとも1、5、10、15、20、25、30分、またはその間の任意の分数の間、仰臥位で留まってもよい。一部の態様では、対象は、仰臥位で留まった後、1、2、3、4、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、65、70、75、80、85、90、95、100ml、またはその間の任意の量を嚥下してもよい。一部の態様では、対象は、少なくとも15分間仰臥位で留まった後、100mlの水を嚥下してもよい。一部の態様では、方法は、放射性標識造影剤の投与後に水を投与して、弱く結合したヘパリンを除去することをさらに含んでもよい。水は、放射性標識造影剤の各投与後、または放射性標識造影剤の全てが対象に投与された後に投与されてもよい。一部の態様では、対象は、放射性標識造影剤の各々の投与後、または放射性標識造影剤の全ての投与後に、1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、65、70、75、80、85、90、95、100ml、またはその間の任意の量の水を嚥下してもよい。一部の態様では、対象は、約7mlの水を15回飲み込むことで、100mlの水を嚥下してもよい。一部の態様では、放射性標識造影剤の最後の嚥下から約15~30分後で、最初に水を嚥下してもよい。
【0101】
一部の態様では、放射性標識造影剤は、0.5mL~1,000mLの間の全ての体積を含む、約0.5mL~約1,000mLの体積で、対象に投与されてもよい。当業者であれば、当分野に公知の方法により、対象の年齢、性別、体重および全体的な状態に基づき、対象に投与される放射性標識造影剤の体積を決定することができる。例えば、一部の態様では、対象に投与される放射性標識造影剤の量は、約0.5mL~約5mLであってもよい。一部の態様では、対象に投与される放射性標識造影剤の量は、約5mL~約250mLであってもよい。一部の態様では、対象に投与される放射性標識造影剤の量は、約10mL~約125mLであってもよい。一部の態様では、対象に投与される放射性標識造影剤の量は、約15mL~約100mLであってもよい。したがって対象に投与され得る放射性標識造影剤の体積は、例えば、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、または100mL、およびその間の全ての体積であってもよい。一部の態様では、放射性標識された造影剤は、99mTc-ヘパリンであってもよい。一部の態様では、放射性標識されたヘパリンは、放射性標識された未分画ヘパリンであってもよい。一部の態様では、放射性標識されたヘパリンは、放射性標識された高分子量ヘパリンであってもよい。一部の態様では、放射性標識されたヘパリンは、放射性標識された低分子量ヘパリンであってもよい。一部の態様では、放射性標識されたヘパリンを含む組成物は、本明細書に開示される方法のいずれでも使用され得る。一部の態様では、放射性標識されたヘパリンを含む組成物を使用して、eMBP-1を検出することができる。一部の態様では、放射性標識されたヘパリンを含む組成物を使用して、eMBP-1に結合することができる。一部の態様では、本明細書に開示される方法における放射性標識ヘパリンは、高分子量ヘパリンであってもよい。
【0102】
高分子量ヘパリン。ヘパリンは、長鎖グリコサミノグリカンから構成され、様々な数の硫酸化反復二糖単位からなる多様な分子量を有し得る。本明細書において、高分子量ヘパリン(例えば、20~30kDaと推定される)を含む組成物が開示される。一部の態様では、高分子量ヘパリンを含む組成物は、未分画ヘパリンよりも、好酸球関連炎症の位置特定について、有効性の高い試薬であり得る。一部の態様では、高分子量ヘパリンを含む組成物を使用して好酸球関連炎症を治療することができ、未分画ヘパリンよりも、有効性が高い場合がある。
【0103】
本明細書において、20~30kDaと推定される高分子量ヘパリンが、他の低分子量型ヘパリンよりも、好酸球顆粒eMBP-1に対し、しっかりと結合するという驚くべき発見が開示される。他の低分子量型ヘパリンよりも高いアフィニティでeMBP-1に結合する高分子量ヘパリンを含む組成物の能力によって、好酸球性炎症の位置特定のためにこれまで使用されていたよりも少ないヘパリンの使用が可能となり、および高分子量ヘパリンを含む当該組成物を、一つ以上の好酸球関連疾患の治療に使用することが可能となった。本明細書において、テクネチウム-99Mでヘパリンを標識する実験が開示されているが、例えばポジトロン放出断層撮影に使用されるトレーサーなどの他のトレーサーも、好酸球性炎症部位への高分子量ヘパリンの結合を検出するために採用され得る。一部の態様では、トレーサーは、表1の任意のトレーサーまたは標識であってもよい。
【0104】
一部の態様では、好酸球関連炎症または好酸球性疾患は、組織特異的または器官特異的であり得る。一部の態様では、好酸球関連炎症または好酸球性疾患は、消化管、肺、鼻、眼、皮膚、1か所以上の関節、1か所以上の筋肉、1か所以上の神経、心臓、腎臓、膀胱、子宮、前立腺、乳房、リンパまたは血液に特異的であってもよい。
【0105】
一部の態様では、好酸球関連炎症または好酸球性疾患は、好酸球性胃腸障害であり得る。好酸球性胃腸障害の例としては限定されないが、好酸球性食道炎、好酸球性胃炎、好酸球性胃腸炎、好酸球性腸炎、好酸球性胆嚢炎、および好酸球性大腸炎が挙げられる。好酸球関連炎症は、潰瘍性大腸炎またはクローン病を含む炎症性腸疾患であり得る。一部の態様では、好酸球関連炎症または好酸球性疾患は、好酸球性膵炎であり得る。一部の態様では、好酸球関連炎症または好酸球性疾患は、好酸球性肝炎であり得る。一部の態様では、好酸球関連炎症または好酸球性疾患は、好酸球性腹水症であり得る。一部の態様では、好酸球関連炎症または好酸球性疾患は、肺の好酸球性症候群であり得る。肺の好酸球性症候群の例としては限定されないが、好酸球性喘息、好酸球性気管支炎、好酸球性肺炎、および好酸球性胸膜炎が挙げられる。一部の態様では、好酸球関連炎症または好酸球性疾患は、好酸球性心筋炎であり得る。一部の態様では、好酸球関連炎症または好酸球性疾患は、好酸球性冠動脈炎であり得る。一部の態様では、好酸球関連炎症または好酸球性疾患は、好酸球性鼻副鼻腔炎であり得る。一部の態様では、好酸球関連炎症または好酸球性疾患は、好酸球性鼻ポリープであり得る。一部の態様では、好酸球関連炎症または好酸球性疾患は、好酸球性眼障害であり得る。好酸球性眼障害の例としては限定されないが、アレルギー性結膜炎(例えば、季節性および通年性)、巨大乳頭結膜炎、および角結膜炎(アトピー性および春季)が挙げられる。一部の態様では、好酸球関連炎症または好酸球性疾患は、好酸球性結膜炎、春季カタル、または接触性皮膚結膜炎であり得る。一部の態様では、好酸球関連炎症または好酸球性疾患は、好酸球性腎炎であり得る。一部の態様では、好酸球関連炎症または好酸球性疾患は、好酸球性膀胱炎であり得る。一部の態様では、好酸球関連炎症または好酸球性疾患は、好酸球性前立腺炎であり得る。一部の態様では、好酸球関連炎症または好酸球性疾患は、好酸球性子宮内膜炎であり得る。一部の態様では、好酸球関連炎症または好酸球性疾患は、好酸球性子宮筋層炎(子宮)であり得る。一部の態様では、好酸球関連炎症または好酸球性疾患は、好酸球性乳腺炎であり得る。一部の態様では、好酸球関連炎症または好酸球性疾患は、好酸球性ニューロパチーであり得る。一部の態様では、好酸球関連炎症または好酸球性疾患は、好酸球性滑膜炎であり得る。一部の態様では、好酸球関連炎症または好酸球性疾患は、好酸球性筋炎であり得る。一部の態様では、好酸球関連炎症または好酸球性疾患は、好酸球性脂肪織炎であり得る。一部の態様では、好酸球関連炎症または好酸球性疾患は、好酸球性筋膜炎(シュルマン症候群)であり得る。一部の態様では、好酸球関連炎症または好酸球性疾患は、慢性鼻副鼻腔炎または鼻ポリープであり得る。
【0106】
一部の態様では、好酸球性疾患は、好酸球性膀胱炎、好酸球性筋膜炎、好酸球性大腸炎、好酸球性食道炎、好酸球性胃炎、好酸球性胃腸炎、多発血管炎を伴う好酸球性肉芽腫症、好酸球性肺炎、好酸球増多症候群、春季カタル、巨大乳頭結膜炎、アトピー性皮膚炎、慢性鼻副鼻腔炎、または移植片拒絶反応であり得る。
【0107】
一部の態様では、好酸球関連炎症は、寄生虫疾患;アレルギー反応;喘息;自己免疫性疾患;薬剤反応;環境曝露;局所接触;遺伝子疾患;移植片拒絶反応;血液疾患もしくはリンパ性疾患、または好酸球の分化、化学誘引、活性化の因子の発現を伴う炎症反応もしくは免疫反応、またはそれらの組み合わせによって引き起こされ得る。寄生虫疾患の例としては限定されないが、蠕虫感染および外部寄生虫が挙げられる。薬剤反応の例としては限定されないが、薬物過敏反応(例えば、長期的な続発症の可能性がある、好酸球増多症および全身症状を伴う薬剤反応(DRESS:drug reactions with eosinophilia and systemic symptoms))が挙げられる。一部の態様では、好酸球関連炎症は、固形腫瘍(例えば、悪性腫瘍)、リンパ腫、または白血病によって引き起こされ得る。一部の態様では、活性化因子は、がんのマーカーであり得る。一部の態様では、好酸球は、消化管のがんを示し得る。
【0108】
一部の態様では、好酸球関連炎症または好酸球性疾患は、好酸球関連症候群であり得る。
【0109】
一部の態様では、好酸球関連症候群としては、好酸球増多筋痛症候群(EMS:eosinophilia myalgia syndrome)および毒性オイル症候群(TOS:toxic oil syndrome)が挙げられる。好酸球増多筋痛症候群および毒性オイル症候群としては限定されないが、しばしば神経症状や皮膚の変化を伴う、重度の筋肉痛と過好酸球増多症(末梢血液および/または組織)または好酸球増多症が挙げられる。EMSの流行症例は、汚染されたL-トリプトファン曝露に起因する。TOSの流行症例は、アニリンで変性した菜種油に起因する。
【0110】
一部の態様では、好酸球関連症候群としては、多発血管炎を伴う好酸球性肉芽腫症(チャーグ・ストラウス症候群)が挙げられる。多発性血管炎を伴う好酸球性肉芽腫症(チャーグ・ストラウス症候群)の症状としては限定されないが、過好酸球増多症を伴う壊死性血管炎;抗好中球細胞質抗体(例えば、ANCA1およびANCA2サブバリアント);喘息、好酸球増多症、アレルギーの既往、固定されていない肺浸潤物、副鼻腔の異常、および血管外性好酸球を含む6つの基準のうちの4つ、が挙げられる。
【0111】
一部の態様では、好酸球関連症候群としては、好酸球増多症を伴う発作性血管浮腫(グライヒ症候群)が挙げられる。好酸球増多症を伴う発作性血管浮腫(グライヒ症候群)には限定されないが、周期性再発性血管浮腫、過好酸球増多症、およびIgM値増加が含まれ得、多くの場合、二次性/反応性の過好酸球増多症候群のいくつかの可能性のある臨床症状の一つであるクローン性T細胞を伴う)。過好酸球増多症候群には、末梢血の過好酸球増多症、過好酸球増多症に関連する臓器損傷が含まれ得る。
【0112】
一部の態様では、好酸球関連症候群には、高IgE症候群が含まれ得る。高IgE症候群には限定されないが、多くの場合、湿疹と顔面異常を伴う過好酸球増多症およびIgE値増加を伴う遺伝性免疫不全症候群;公知の遺伝子変異;常染色体優性高IgE症候群、signal transducer and activator of transcription 3(STAT3)の変異、および常染色体劣性高IgE症候群、dedicator of cytokinesis 8(DOCK8)変異が含まれ得る。
【0113】
一部の態様では、好酸球関連症候群は、IgG4関連疾患を含み得る。IgG4-関連疾患には限定されないが、主要な所見として線維症、組織および器官の腫瘍様腫脹、組織好酸球増多症、およびIgG4増加を伴う障害スペクトラムが含まれる。
【0114】
一部の態様では、好酸球関連症候群には、オーメン症候群が含まれ得る。オーメン症候群には限定されないが、多くの場合、紅皮症、肝脾腫大症、およびリンパ節腫脹症を伴う過好酸球増多症を伴う重度の複合免疫不全症、ならびに常染色体劣性遺伝性疾患(例えば、RAG1またはRAG2の組み換え活性化遺伝子における反復突然変異)が含まれる。
【0115】
一部の態様では、好酸球関連炎症または好酸球性疾患は、好酸球性皮膚病であり得る。本明細書において、限定されないが、表皮(例えば、好酸球性海面状態);真皮、結合組織(例えば、好酸球性蜂巣炎);真皮、血管(例えば、好酸球性血管炎);毛包(例えば、好酸球性毛嚢炎);皮下脂肪(例えば、好酸球性脂肪織炎);筋膜(例えば、好酸球性筋膜炎);筋肉(例えば、好酸球性筋炎);および神経(例えば、好酸球性神経炎)を含む様々な疾患と関連した、異なる、および重複するコンパートメントが開示される。
【0116】
一部の態様では、好酸球関連炎症または好酸球性疾患は、アレルギー性接触皮膚炎;好酸球増多症を伴う血管リンパ球過形成;幼児の環状紅斑;アトピー性皮膚炎;水疱性類天疱瘡および類天疱瘡バリアント;コクシジオイデス症;薬疹;好酸球性筋膜炎;放射線療法に関連する好酸球性、多形性および掻痒性の発疹;好酸球性膿疱性毛嚢炎:すべてのバリアント;新生児中毒性紅斑;口腔粘膜の好酸球性潰瘍;好酸球性血管炎;顔面肉芽腫;寄生(疥癬、南京虫、および皮膚幼虫移行症を含む、寄生虫/外部寄生虫);色素失調症;木村病;ランゲルハンス細胞組織球増殖症;菌状息肉症およびセザリー症候群/皮膚リンパ腫;肥厚性好酸球性皮膚炎;類天疱瘡バリアント、水疱性類天疱瘡および妊娠性類天疱瘡を含む;天疱瘡バリアント;妊娠関連皮膚病;偽リンパ腫;じんましん/血管浮腫;血管炎;またはウェルス症候群(好酸球性蜂巣炎を伴う様々な疾患)であり得る。参照により本明細書に組み込まれるStarr J,et al,Mayo Clin Proc 75:755-759,2000を参照のこと。
医療画像の作成方法
【0117】
一部の態様では、本明細書に開示される組成物は、好酸球関連炎症の撮像用に構成され得る。例えば、開示される組成物は、放射性標識されたヘパリンを含み得る。本明細書に開示されるように、組成物は、例えばHMWHにコンジュゲートされた放射性標識造影剤などのトレーサーを含み得る。一部の態様では、放射性標識された造影剤は、99mTcであってもよい。
【0118】
本明細書において、放射性標識されたヘパリンを使用して、組織、器官、もしくは身体部分、またはそれらの組み合わせの医療画像を作成する方法が開示される。本明細書において、組織、器官、もしくは身体部分、またはそれらの組み合わせのうちの一つ以上の医療画像を作成する方法が開示される。また本明細書において、対象の好酸球関連炎症を診断する方法が開示される。さらに本明細書において、対象の好酸球脱顆粒を検出する方法が開示される。一部の態様では、放射性標識されたヘパリンは、例えばHMWHにコンジュゲートされた放射性標識造影剤などのトレーサーを含む。
【0119】
また本明細書において、対象の器官の医療画像を作成する方法が開示される。一部の態様では、方法は、対象の器官の粘膜組織において、好酸球顆粒タンパク質を検出することを含んでもよい。一部の態様では、方法は、放射性標識ヘパリン(例えば、放射性標識された高分子量ヘパリン)が好酸球顆粒タンパク質に結合して、放射性標識ヘパリン/好酸球顆粒タンパク質複合体を形成する条件下で、放射性標識ヘパリンを対象に投与することを含んでもよい。一部の態様では、方法は、器官の粘膜組織において、放射性標識されたヘパリン/好酸球顆粒タンパク質複合体を検出することを含んでもよい。一部の態様では、器官の粘膜組織において、放射性標識されたヘパリン/好酸球顆粒タンパク質複合体を検出することにより、対象の器官の医療画像が作成されてもよい。一部の態様では、ヘパリンは、約20kDa~約40kDaの平均分子量を有し、この場合において当該ヘパリン中のヘパリン鎖の少なくとも50%は、少なくとも20kDaの分子量を有する。
【0120】
さらに本明細書において、対象において、好酸球関連炎症を呈する組織を撮像する方法が開示される。一部の態様では、方法は、放射性標識された高分子量ヘパリン(またはその塩)の有効量、および薬学的に許容可能な賦形剤を含む組成物を、対象に投与することを含み、この場合において高分子量ヘパリンは、組織中の一つ以上の好酸球顆粒タンパク質に結合する。方法は、放射性標識された高分子量ヘパリンを検出して、組織の医療画像を作成することをさらに含む。一部の態様では、放射性標識された高分子量ヘパリンを検出することは、好酸球顆粒タンパク質に結合する放射性標識ヘパリンに由来する複合体を検出することを含む。高分子量ヘパリンは、高純度を有することができる。すなわち、ヘパリン鎖のかなりの割合が、高分子量を有する。一部の態様では、ヘパリンは、本明細書に記載されるように、99mTc、または別の放射性標識された造影剤もしくはトレーサーで標識される。一部の態様では、医療画像は、食道に沿った溝、輪、および/または狭窄(すなわち、EoEの症状)を含む。
【0121】
一部の態様では、方法は、一つ以上の放射性標識された造影剤を含む組成物を、対象に投与することを含んでもよい。一部の態様では、方法は、一つ以上の放射性標識造影剤を含む組成物を対象に投与して、対象の組織、器官、または身体部分の粘膜組織における好酸球顆粒タンパク質の検出を強化することを含んでもよい。一部の態様では、組成物は、本明細書に開示される組成物のいずれか、例えば放射性標識されたヘパリンであってもよい。一部の態様では、組成物は、放射性標識された造影剤を含んでもよい。一部の態様では、組成物は、99mのTc-ヘパリン、111In-ヘパリン、もしくは14C-ヘパリン、またはそれらの任意の組み合わせを含んでもよい。一部の態様では、放射性標識された造影剤は、99mTc-ヘパリンであってもよい。放射性標識ヘパリン/好酸球顆粒タンパク質複合体の例としては限定されないが、99mTc-ヘパリン/MBP-1、99mTc-ヘパリン/MBP、99mTc-ヘパリン/MBP-2、99mTc-ヘパリン/EDN、99mTc-ヘパリン/ECP、および99mTc-ヘパリン/EPOが挙げられる。
【0122】
一部の態様では、放射性標識された造影剤、例えば99mTc-ヘパリンを含む組成物を対象に投与した後、方法は、一つ以上の技術および/またはプロセスを使用して、対象の組織、器官、または身体部分(例えば、食道の粘膜組織)において放射性標識造影剤/好酸球顆粒タンパク質複合体を検出することをさらに含んでもよい。一部の態様では、ヘパリンは、約20kDa~約40kDaの平均分子量を有し、この場合において当該ヘパリン中のヘパリン鎖の少なくとも50%は、少なくとも20kDaの分子量を有する。一部の態様では、一つ以上の好酸球は、脱顆粒していてもよく、および一つ以上の炎症パッチを生じさせていてもよく、それにより医療画像が作成され、炎症の分布および/または好酸球顆粒タンパク質の沈着がマッピングされる。これらの画像は、好酸球性食道炎の解剖学的および/もしくは病態生理学的な検出ならびに/または試験を行うために使用することができる。医療画像を作成するために使用され得る技術の例としては限定されないが、単光子放出コンピュータ断層撮影法(SPECT)、陽電子放射(PET)スキャン、X線、従来型またはコンピュータ断層撮影法(CT)、SPECTとCTの組み合わせ、または磁気共鳴画像法(MRI)が挙げられる。一部の態様では例えば、任意選択でSPECTをMRIおよび/またはCTスキャンと組み合わせて使用して、好酸球性食道炎のパッチを有する食道の医療画像を作成することができる。対象の皮膚上の位置合わせマーカーを使用して、対象を位置づけて、対象を毎日撮像できるようにすることもできる。例えば、レーザーを使用して、対象を再現性良く位置付けることができる。これにより、複数のスキャンを使用して正確に比較することが可能となる。一部の態様では、医療画像は、三次元であってもよい。一部の態様では、医療画像は、二次元であってもよい。
【0123】
一部の態様では、組成物が本明細書に記載されるように投与される場合、従来の撮像モダリティ(例えば、X線)を使用して、好酸球関連の炎症および/または疾患を可視化してもよい。例えば、EoEの場合、組成物は、食道全体の可視化を促進するために投与され得る。一部の態様では、トレーサーを使用して、好酸球関連の炎症および/または疾患を診断することができる。例えば、トレーサー(すなわち、診断剤)を含む組成物は、本明細書に記載されるように投与することができ、そして従来の撮像モダリティ(例えば、X線)を使用して、患者の一つ以上の画像を捕捉してもよい。HMWHの局在性は、一つ以上の画像において、検出されたトレーサーの位置と濃度に基づいて評価することができる。したがって、患者は一つ以上の画像に基づいて、好酸球が関連する炎症および/または疾患に関して診断されてもよい。一部の態様では、患者の少なくとも一つの第一の画像は、第一の時点で取得され、患者の少なくとも一つの第二の画像は、第二の時点で取得される。第一の画像と第二の画像を比較して、炎症および/または疾患の活動性の進行をモニタリングおよび評価することができる。一部の態様では、追加の画像を追加の時点で取得して、患者のモニタリングと評価を継続することができる。一部の態様では、組成物の別の投与は、第一の画像、第二の画像、および追加の画像のそれぞれを取得する前に行われる。しかし一部の態様では、組成物の単回投与が、複数の画像セットに対し、適切な放射性標識を提供することができる。組成物は、治療に関して本明細書に記述される好酸球が関連する状態および疾患のいずれかをモニタリングおよび評価するために利用することができる。
【0124】
一部の態様では、一つ以上の医療画像が、放射性標識造影剤の投与の開始から24時間以内に作成され得る。一部の態様では、第一の医療画像が、放射性標識造影剤の投与(または摂取)の開始から24時間以内に作成され得る。一部の態様では、第一の医療画像が、放射性標識造影剤の投与(または摂取)の間のいずれかのときに作成され得る。一部の態様では、本明細書に開示される方法のいずれかは、低線量平面X線を実施することをさらに含んでもよい。一部の態様では、低線量平面X線は、放射性標識造影剤の経口投与から2時間後、4時間後、6時間後、8時間後、および/または24時間後に実施されてもよい。
【0125】
また本明細書において、対象の好酸球性食道炎を診断する方法が開示される。一部の態様では、方法は、対象の食道の粘膜組織において、好酸球顆粒タンパク質を検出することを含んでもよい。一部の態様では、方法は、放射性標識ヘパリン(例えば、放射性標識された高分子量ヘパリン)が好酸球顆粒タンパク質に結合することができる条件下で、放射性標識ヘパリンを対象に投与することを含んでもよい。一部の態様では、方法は、食道の粘膜組織において、放射性標識ヘパリン/好酸球顆粒タンパク質複合体を検出すること、それにより食道の粘膜組織における放射性標識ヘパリン/好酸球顆粒タンパク質複合体の検出が、対象における好酸球性食道炎を診断すること、を含んでもよい。一部の態様では、方法は、放射性標識ヘパリンが好酸球顆粒タンパク質に結合して、放射性標識ヘパリン/好酸球顆粒タンパク質複合体を形成する条件下で、放射性標識ヘパリンを対象に投与することを含んでもよい。一部の態様では、方法は、食道の粘膜組織において、放射性標識ヘパリン/好酸球顆粒タンパク質複合体を検出することを含んでもよい。一部の態様では、食道の粘膜組織において、放射性標識ヘパリン/好酸球顆粒タンパク質複合体を検出することで、対象における好酸球性食道炎を診断することができる。一部の態様では、放射性標識ヘパリン/好酸球顆粒タンパク質複合体は、99mTc-ヘパリン/MBP-1であってもよい。
【0126】
さらに本明細書において、対象の好酸球性疾患または好酸球関連炎症を診断する方法が開示される。一部の態様では、方法は、放射性標識された高分子量ヘパリンまたはその塩の有効量、および薬学的に許容可能な賦形剤を含む組成物を、対象に投与することを含み、この場合において高分子量ヘパリンは、組織中の一つ以上の好酸球顆粒タンパク質に結合する。方法は、放射性標識された高分子量ヘパリンを検出することをさらに含み、この場合において放射性標識された高分子量ヘパリンを組織中で検出することにより、対象における好酸球性疾患または好酸球関連炎症が診断される。一部の態様では、放射性標識された高分子量ヘパリンを検出することは、好酸球顆粒タンパク質に結合する放射性標識ヘパリンに由来する複合体を検出することを含む。高分子量ヘパリンは、高純度を有することができる。すなわち、ヘパリン鎖のかなりの割合が、高分子量を有する。一部の態様では、放射性標識された高分子量ヘパリンの検出は、食道に沿った溝、輪、および/または狭窄(すなわち、EoEの症状)を検出することを含む。
【0127】
さらに本明細書において、好酸球性食道炎と診断された対象における、好酸球性食道炎の変化を検出する方法が開示される。一部の態様では、方法は、(a)本開示方法に従い、好酸球性食道炎と診断された対象の食道の第一の医療画像を作成すること、(b)本開示方法に従い、工程(a)の対象の食道の第二の医療画像を作成すること、および(c)工程(a)の医療画像と、工程(b)の医療画像を比較すること、を含んでもよく、それにより工程(a)の医療画像と比較された工程(b)の医療画像における変化を検出することで、対象の好酸球性食道炎における変化を検出する。一部の態様では、医療画像は、三次元であってもよい。一部の態様では、医療画像は、二次元であってもよい。
【0128】
また本明細書において、対象において、好酸球関連炎症を呈する組織をモニタリングする方法が開示される。一部の態様では、方法は、放射性標識された高分子量ヘパリンまたはその塩の有効量、および薬学的に許容可能な賦形剤を含む組成物を、対象に投与することを含み、この場合において高分子量ヘパリンは、組織中の一つ以上の好酸球顆粒タンパク質に結合する。方法は、放射性標識された高分子量ヘパリンを検出して、組織の第一の医療画像を作成すること、および放射性標識された高分子量ヘパリンを検出して、組織の第二の医療画像を作成すること、をさらに含む。一部の態様では、放射性標識された高分子量ヘパリンを検出することは、好酸球顆粒タンパク質に結合する放射性標識ヘパリンに由来する複合体を検出することを含む。方法は、第一の医療画像と、第二の医療画像とを比較することをさらに含み、それにより第一の画像と第二の画像との間の変化を検出して、組織の好酸球関連炎症における変化を検出する。高分子量ヘパリンは、高純度を有することができる。すなわち、ヘパリン鎖のかなりの割合が、高分子量を有する。一部の態様では、ヘパリンは、本明細書に記載されるように、99mTc、または別の放射性標識された造影剤もしくはトレーサーで標識される。一部の態様では、第一の画像と第二の画像は、食道に沿った溝、輪、および/または狭窄(すなわち、EoEの症状)を含む。
【0129】
一部の態様では、食道の第一の医療画像は、EoEと診断された対象で作成され、対象の食道のその後の医療画像との将来的な、または次の比較のための基準としての役割を果たす。一部の態様では、二つの異なる時点で撮影された二つの、または医療画像を使用して、EoEの変化または進行を判定してもよい。一部の態様では、第一の医療画像を使用して、EoEの治療が対象において有効である(または有効でない)かを判定してもよい。例えば、対象でEoEの治療を開始した後に第二の医療画像が作成され、第二の医療画像が、治療を開始する前に作成された第一の医療画像と比較して、放射性標識ヘパリン/好酸球顆粒タンパク質複合体(すなわち、炎症)の面積の減少を示した場合、対象においてEoE治療が有効であることを示すことができる。逆に、対象でEoEの治療を開始した後に第二の医療画像が作成され、第二の医療画像が、治療を開始する前に作成された第一の医療画像と比較して、放射性標識ヘパリン/好酸球顆粒タンパク質複合体(すなわち、炎症)の面積が同じ、または増加を示した場合、対象においてEoE治療が有効ではないことを示し得る。
【0130】
一部の態様では、本明細書において、対象の好酸球脱顆粒を検出する方法が開示される。一部の態様では、方法は、対象において、好酸球顆粒タンパク質を検出することを含んでもよい。一部の態様では、方法は、放射性標識造影剤が、好酸球顆粒タンパク質に結合することができる条件下で、放射性標識造影剤を対象に投与することを含んでもよい。一部の態様では、方法は、放射性標識造影剤/好酸球顆粒タンパク質複合体を検出することを含んでもよく、それにより、放射性標識造影剤/好酸球顆粒タンパク質複合体の検出が、対象における好酸球脱顆粒を検出する。一部の態様では、方法は、放射性標識ヘパリンが好酸球顆粒タンパク質に結合して、放射性標識ヘパリン/好酸球顆粒タンパク質複合体を形成する条件下で、放射性標識ヘパリンを対象に投与することを含んでもよい。一部の態様では、方法は、放射性標識ヘパリン/好酸球顆粒タンパク質複合体を検出することを含んでもよい。一部の態様では、放射性標識ヘパリン/好酸球顆粒タンパク質複合体を検出することで、対象における好酸球脱顆粒を検出することができる。
【0131】
本明細書に開示される方法のいずれかにおいて、器官は、卵巣、乳房、脳、筋肉、心臓、肺、胃、近位大腸、遠位大腸、小腸、膵臓、甲状腺、皮膚、眼、精巣、胸腺、胆嚢、子宮、食道、または主要血液器官であってもよい。一部の態様では、主要血液器官は、肝臓、脾臓、腎臓、または膀胱であってもよい。
【0132】
本明細書に開示される方法のいずれかにおいて、好酸球顆粒タンパク質は、主要塩基性タンパク質1(MBP-1)、主要塩基性タンパク質2(MBP-2)、好酸球由来ニューロトキシン(EDN)、好酸球カチオン性タンパク質(ECP)、または好酸球ペルオキシダーゼ(EPO)であってもよい。一部の態様では、好酸球顆粒タンパク質は、MBP-1であってもよい。
【0133】
本明細書に開示される方法のいずれかにおいて、放射性標識は、99mTcであってもよい。
【0134】
例えばポジトロン放出断層撮影に使用されるトレーサーなどの追加のトレーサーも、好酸球性炎症部位へのHMWHの結合を検出するために採用され得る。一部の態様では、トレーサーは、表1の任意のトレーサーまたは標識であってもよい。
【0135】
本明細書に開示される方法のいずれかにおいて、放射性標識ヘパリンは、対象に経口投与されてもよい。本明細書に開示される方法のいずれかにおいて、対象は、放射性標識ヘパリンを、1回以上の嚥下で、嚥下することができる。本明細書に開示される方法のいずれかにおいて、放射性標識ヘパリンは、1mlの一定分量で、15分かけて対象に経口投与されてもよい。
【0136】
本明細書に開示される方法のいずれかにおいて、方法は、洗浄工程をさらに含んでもよい。一部の態様では、洗浄工程は、放射性標識ヘパリンの1回以上の嚥下の後で、対象が液体を嚥下することを含んでもよい。一部の態様では、液体は、水であってもよい。一部の態様では、医療画像の作成の前、間、または後に、洗浄工程を実施してもよい。一部の態様では、液体の投与は、1回以上の嚥下により、対象が液体を嚥下することを含んでもよい。一部の態様では、液体は、1~100mlの体積で投与されてもよい。
【0137】
本明細書に開示される方法のいずれかにおいて、ヘパリン、または放射性標識ヘパリンのヘパリン部分は、高分子量ヘパリン、低分子量ヘパリン、または未分画ヘパリンであってもよい。一部の態様では、ヘパリン、または放射性標識ヘパリンのヘパリン部分は、高分子量ヘパリンであってもよい。一部の態様では、高分子量ヘパリンは、1mg未満の量で投与されてもよい。一部の態様では、高分子量ヘパリンは、0.1mg~1mgの範囲の量で投与されてもよい。一部の態様では、放射性標識ヘパリンの放射性標識は、0.3mCi~3mCiの範囲の量で投与されてもよい。
【0138】
一部の態様では、HMWHは、約20kDa以上の平均分子量を含む。例えば、HMWHは、20kDa、21kDa、22kDa、23kDa、24kDa、25kDa、26kDa、27kDa、28kDa、29kDa、30kDa、またはそれらの間の個々の値または範囲の平均分子量を含んでもよい。一部の態様では、HMWHは、30kDaを超える平均分子量を有してもよい。一部の態様では、HMWHは、約35kDaの平均分子量を含む。一部の態様では、HMWHは、約40kDaの平均分子量を含む。一部の態様では、HMWHは、40kDaを超える平均分子量を含む。一部の態様では、HMWHの平均分子量は、本明細書に開示される値の間の個々の値、または本明細書に開示される値の間の範囲の間の個々の値である。
【0139】
一部の態様では、HMWHの「純度」を定義するために使用される分子量の規定閾値は、20kDa以外の値であってもよい。規定閾値は、HMWH組成物に対する望ましい最小平均分子量に基づいて設定してもよい。例えば、HMWHの純度を評価するための規定閾値は、20kDa、21kDa、22kDa、23kDa、24kDa、25kDa、26kDa、27kDa、28kDa、29kDa、30kDa、35kDa、40kDa、40kDa超、またはそれらの間の個々の値もしくは範囲であってもよい。同様に、低分子量鎖のカットオフは、8kDa以外の値であってもよい。例えば、カットオフは、5kDa、6kDa、7kDa、8kDa、9kDa、10kDa、11kDa、12kDa、12kDa超、またはそれらの間の個々の値もしくは範囲であり得る。
【0140】
本明細書に開示される方法のいずれかにおいて、対象は、ヒトであってもよい。
治療方法
【0141】
現在、ヘパリンは、好酸球関連疾患、または好酸球関連炎症の治療には使用されていない。本明細書に開示されるように、ヘパリンは、eMBP-1の毒性を中和することができる。したがって、eMBP-1に対する高分子量ヘパリンのアビディティが高いほど、例えば、eMBP-1などの好酸球タンパク質の中和に対する有効性が高い分子が導かれ、ゆえに、好酸球関連疾患および好酸球関連炎症に対する有効性が高くなる。
【0142】
本明細書において、対象において、好酸球関連炎症を呈する組織を治療する方法が開示される。また本明細書において、組織の好酸球関連炎症を減少させる方法が開示される。一部の態様では、方法は、高分子量ヘパリンまたはその塩の有効量、および薬学的に許容可能な賦形剤を含む組成物を、対象に投与することを含む。一部の態様では、高分子量ヘパリンまたはその塩は、組織において、一つ以上の好酸球顆粒タンパク質に結合する。高分子量ヘパリンまたはその塩は、高純度を有してもよい。すなわち、ヘパリン鎖のかなりの割合が、高分子量を有する。一部の態様では、方法は、未分画ヘパリンまたはその塩の有効量、および薬学的に許容可能な賦形剤を含む組成物を、対象に投与することを含む。一部の態様では、未分画ヘパリンまたはその塩は、組織において、一つ以上の好酸球顆粒タンパク質に結合する。
【0143】
本明細書において、対象の好酸球関連炎症を治療する方法が開示される。方法は、約20kDa~約40kDaの平均分子量を有するヘパリンの有効量を含む組成物の治療有効量を投与することを含んでもよい。一部の態様では、ヘパリン中のヘパリン鎖の少なくとも50%は、少なくとも20kDaの分子量を有する。一部の態様では、方法は、未分画ヘパリンの有効量を含む組成物の治療有効量を投与することを含んでもよい。一部の態様では、組成物は、薬学的に許容可能な賦形剤をさらに含む。一部の態様では、ヘパリンは、少なくとも20kDaの平均分子量を含む。一部の態様では、ヘパリンは、少なくとも30kDaの平均分子量を含む。一部の態様では、ヘパリンは、少なくとも40kDaの平均分子量を含む。一部の態様では、ヘパリン中のヘパリン鎖の少なくとも60%は、少なくとも20kDaの分子量を有する。一部の態様では、ヘパリン中のヘパリン鎖の少なくとも70%は、少なくとも20kDaの分子量を有する。一部の態様では、ヘパリンの治療有効用量は、約3mgである。一部の態様では、ヘパリンの治療有効用量は、約1mgである。一部の態様では、ヘパリンの治療有効用量は、約0.5mgである。一部の態様では、ヘパリンは、一つ以上の好酸球顆粒タンパク質に結合するように構成される。一部の態様では、一つ以上の好酸球顆粒タンパク質に対するヘパリンの結合アフィニティは、一つ以上の好酸球顆粒タンパク質に対する低分子量ヘパリンの結合アフィニティよりも大きい。
【0144】
本明細書において、罹患した組織、器官、または身体部分に治療剤を送達する方法が開示される。一部の態様では、方法は、治療剤を、罹患器官に送達することを含む。本明細書において、対象の一つ以上の好酸球性疾患または好酸球関連疾患を治療する方法が開示される。一部の態様では、方法は、対象に、治療剤にコンジュゲートされたヘパリンを含有する組成物の治療有効量を投与することを含んでもよい。一部の態様では、ヘパリンは、高分子量ヘパリンであってもよい。一部の態様では、ヘパリンは、未分画ヘパリンであってもよい。
【0145】
一部の態様では、本明細書に開示される組成物は、HMWHにコンジュゲートされた治療剤をさらに含んでもよい。一部の態様では、本明細書に開示される組成物は、未分画ヘパリンにコンジュゲートされた治療剤をさらに含んでもよい。一部の態様では、組成物は、患者への投与用の治療剤の治療有効量をさらに含んでもよい。一部の態様では、治療剤は、好酸球が関連する炎症および/または疾患に対して治療効果を有するように構成される。したがって一部の態様では、高分子量ヘパリンの治療効果、および治療剤の治療効果は、好酸球が関連する炎症および/または疾患の部位に対し、組み合わせて使用され得る。本明細書に開示されるように、組織結合型eMBP-1に対するHMWHのアビディティがあるため、治療剤をHMWHにコンジュゲートすることによって、治療を炎症領域に直接標的化させることができる。ゆえに、HMWH/治療剤複合体を、好酸球関連炎症の一つ以上の部位に直接標的化することにより、ケアに必要とされる治療剤の量(または用量)を減少させ、それに伴い、治療剤の投与に関連した任意の副作用を限定することができる。したがって、治療剤の治療有効量は、HMWHまたは別の標的化機構の非存在下での治療剤の投与と通常関連する治療有効量よりも、少なくすることができる。一部の態様では、未分画ヘパリンの治療効果、および治療剤の治療効果は、好酸球が関連する炎症および/または疾患の部位に対し、組み合わせて使用され得る。本明細書に開示されるように、組織結合型eMBP-1に対するHMWHのアビディティがあるため、治療剤を未分画ヘパリンにコンジュゲートすることによって、治療を炎症領域に直接標的化させることができる。したがって、治療剤の治療有効量は、未分画ヘパリンまたは別の標的化機構の非存在下での治療剤の投与と通常関連する治療有効量よりも、少なくすることができる。一部の態様では、治療剤は、好酸球関連疾患に対する有効な治療である、グルココルチコイドである。一部の態様では、グルココルチコイドは、モメタゾン、フルチカゾン、ブデソニド、およびメチルプレドニゾロンのうちの一つ以上である。好酸球が関連する炎症または疾患に対する追加の治療剤は、当業者には明白であるように、予期される。
【0146】
本明細書において、対象の好酸球関連炎症を治療する方法が開示される。一部の態様では、対象に、治療剤にコンジュゲートされたヘパリンを含有する組成物の治療有効量を投与することを含んでもよい。一部の態様では、ヘパリンは、高分子量ヘパリンであってもよい。一部の態様では、ヘパリンは、未分画ヘパリンであってもよい。一部の態様では、組成物は、経口的に、静脈内に、吸入により、光学的に、または局所的に、対象に投与されてもよい。
【0147】
一部の態様では、HMWHは、約20kDa以上の平均分子量を含む。例えば、HMWHは、20kDa、21kDa、22kDa、23kDa、24kDa、25kDa、26kDa、27kDa、28kDa、29kDa、30kDa、またはそれらの間の個々の値または範囲の平均分子量を含んでもよい。一部の態様では、HMWHは、30kDaを超える平均分子量を有してもよい。一部の態様では、HMWHは、約35kDaの平均分子量を含む。一部の態様では、HMWHは、約40kDaの平均分子量を含む。一部の態様では、HMWHは、40kDaを超える平均分子量を含む。一部の態様では、HMWHの平均分子量は、本明細書に開示される値の間の個々の値、または本明細書に開示される値の間の範囲の間の個々の値である。
【0148】
HMWHの平均分子量は、好酸球性炎症を発現する部位への結合を最適化するように選択されてもよい。HMWHは、低分子量ヘパリン(LMWH)または未分画ヘパリン(UFH)よりもMBP-1に対し高いアフィニティを呈するため、HMWHは、LMWHまたは未分画ヘパリンUFHよりも、好酸球性炎症部位にしっかりと結合する。一部の態様では、比較的高い平均分子量(例えば、30kDa)を有するHMWHは、比較的低い平均分子量(例えば、20kDa)を有するHMWHよりも、しっかりと結合し得る。一部の態様では、HMWHの結合アフィニティは、HMWHの平均分子量と直線的に増加する。したがって、HMWHの平均分子量が増加するにつれて、好酸球性炎症の位置特定に必要とされるヘパリンの量を減少させることができ、より多くの割合の投与されたヘパリンが炎症部位に局在して、毒性のあるカチオン性好酸球タンパク質を中和するという期待が持てる。
【0149】
HMWHの純度は、規定の閾値を超える分子量を有するヘパリン鎖の量によって定義され得る。例えば、規定の閾値は、20kDaであってもよく、それにともないHMWHの純度は、20kDa未満の分子量を有するヘパリン鎖と比較して、20kDa以上の分子量を有するヘパリン鎖の割合、パーセンテージ、または比率に基づいて決定することができる。一部の態様では、HMWH中のヘパリン鎖の少なくとも約50%は、20kDa以上の分子量を有してもよく、これは50%の純度(すなわち、高純度)とも呼称されてもよい。一部の態様では、20kDa以上の分子量を有するHMWH中のヘパリン鎖の合計割合は、60%、70%、80%、90%、95%、95%超、またはそれらの間の個々の値または範囲であってもよい。したがって、HMWHの組成物は、60%の純度、70%の純度、80%の純度、90%の純度、95%の純度、95%超の純度、またはそれらの間の個々の値もしくは範囲を有すると記載され得る。一部の態様では、HMWHは、規定の閾値を下回る分子量を有する分子鎖の最大量によって定義されることもできる。例えば、HMWHは、50%、40%、30%、25%、20%、15%、10%、5%以下、5%未満、またはそれらの間の個々の値もしくは範囲の割合で、20kDaを下回る分子量を有するヘパリン鎖を含み得る。一部の態様では、HMWHは、低分子量鎖を規定するカットオフ(例えば、8kDa)を下回る分子量を有する分子鎖の最大量により追加的に定義されることもできる。例えば、HMWHは、50%、40%、30%、25%、20%、15%、10%、5%以下、5%未満、またはそれらの間の個々の値もしくは範囲の割合で、8kDaを下回る分子量を有するヘパリン鎖を含み得る。
【0150】
一部の態様では、比較的高い純度(例えば、80%)のHMWHは、低純度(例えば、50%)のHMWHよりも、好酸球関連炎症部位への高い局在性を示し得る。一部の態様では、HMWHの局在率は、HMWHの純度が増加するにつれて上昇する。したがって、HMWHの純度が増加するにつれて、好酸球性炎症の適切な位置特定に必要とされるヘパリンの量を減少させることができ、より多くの割合の投与されたヘパリンが、炎症部位に局在するという期待が持てる。
【0151】
さらに一部の態様では、HMWHの「純度」を定義するために使用される分子量の規定閾値は、20kDa以外の値であってもよい。規定閾値は、HMWH組成物に対する望ましい最小平均分子量に基づいて設定してもよい。例えば、HMWHの純度を評価するための規定閾値は、20kDa、21kDa、22kDa、23kDa、24kDa、25kDa、26kDa、27kDa、28kDa、29kDa、30kDa、35kDa、40kDa、40kDa超、またはそれらの間の個々の値もしくは範囲であり得る。同様に、低分子量鎖のカットオフは、8kDa以外の値であってもよい。例えば、カットオフは、5kDa、6kDa、7kDa、8kDa、9kDa、10kDa、11kDa、12kDa、12kDa超、またはそれらの間の個々の値もしくは範囲であってもよい。
【0152】
高純度が、比較的高い閾値(例えば、30kDa)によって定義される場合、高純度が、比較的低い閾値(例えば、20kDa)によって定義される場合よりも、HMWHは、好酸球関連炎症部位により多く局在し得る。一部の態様では、HMWHの局在率は、純度閾値が増加するにつれて上昇する。したがって、HMWHの純度閾値が増加するにつれて、好酸球性炎症の適切な位置特定に必要とされるヘパリンの量を減少させることができ、より多くの割合の投与されたヘパリンが、炎症部位に局在するという期待が持てる。
【0153】
高純度が、比較的高い閾値(例えば、30kDa)によって定義される場合、高純度が、比較的低い閾値(例えば、20kDa)によって定義される場合よりも、HMWHは、好酸球関連炎症部位により多く局在し得る。一部の態様では、HMWHの局在率は、純度閾値が増加するにつれて上昇する。したがって、HMWHの純度閾値が増加するにつれて、好酸球性炎症の治療または減少に必要とされるヘパリンの量を減少させることができ、より多くの割合の投与されたヘパリンが、炎症部位に局在するという期待が持てる。
【0154】
本明細書に記載される組成物は、特定の量のHMWHヘパリンを含んでもよい。一部の態様では、特定の量のHMWHは、好酸球関連炎症部位を治療(または好酸球関連炎症部位に到達)するように構成されたHMWHの用量であってもよい。一部の態様では、特定の量のHMWHは、治療有効量のHMWHであってもよい。一部の態様では、特定の量のHMWHは、好酸球関連炎症部位に局在し、その撮像および/または診断を促進するように構成されたHMWHの用量であってもよい。例えば、好酸球関連炎症部位が、食道である場合、組成物は、約15000ユニット、約10000ユニット、約5000ユニット、約4000ユニット、約3000ユニット、約2000ユニット、約1000ユニット、約500ユニット、約250ユニット、約250ユニット未満、またはそれらの間の個々の値もしくは範囲から選択されるHMWHの量を含んでもよい。HMWHの量は、約100mg、約90mg、約80mg、約70mg、約60mg、約50mg、約40mg、約30mg、約20mg、約10mg、約5mg、約4mg、約3mg、約2mg、約1mg、約0.5mg、約0.5mg未満、またはそれらの間の個々の値もしくは範囲であってもよい。一部の実施形態では、ヘパリンの量は、(例えば、滅菌生理食塩水を用いて)希釈されて、約10mL、約9mL、約8mL、約7mL、約6mL、約5mL、約4mL、約3mL、約2mL、約1mL、約0.9mL、約0.8mL、約0.7mL、約0.6mL、約0.5mL、約0.4mL、約0.3mL、約0.2mL、約0.1mL、約0.1mL未満、またはその間の個々の値もしくは範囲の最終量を提供してもよい。HMWHの用量は、標的とする好酸球関連炎症部位の大きさに基づいて変化することができる。より大きな部位および/または器官を標的化するためには、より多量のHMWHが必要とされてもよい。好酸球関連炎症部位が、本明細書に詳述される食道以外の異なる部位または器官である場合、HMWHの量は、本明細書に記載される量であってもよく、または当業者に明白であるように、好酸球関連炎症部位を適切に標的化するために必要な、より多い値または小さな値であってもよい。
【0155】
一部の態様では、組成物は、未分画ヘパリンを含んでもよい。一部の態様では、未分画ヘパリンは、ヘパリンナトリウムであってもよい。一部の態様では、ヘパリンナトリウムは、1000USP単位、5000USP単位、10,000UPS単位、またはその間の任意の量であってもよい。
【0156】
本明細書に記載されるように、組成物は概して、比較的少量のHMWHヘパリンを含む。その理由は、MBP-1に対する高いアフィニティと、高純度の組成物によって、LMWHまたはUFHと比較し、必要とされる用量は少なくなるためである。したがって、投与されるヘパリンの合計量は、一般的に許容されるLMWHまたはUFHの用量と比較して少なくなるため、少量のHMWHによるHITのリスクは相対的に低くなる。さらに、LMWHやUFHでさえ、その純度は低いため(すなわち、多分散性が高い)、一般的にある程度の量の高分子量鎖を含んでいる。したがって、一部の事例では、組成物中の高分子量鎖の合計量は、LMWHまたはUFHの一般的に許容されている用量中に存在する高分子量鎖の合計量と実質的に類似している可能性があり、したがって、HITのリスクはそれほど高いものではない。さらに、HMWHが本明細書に記載されるように経口的、吸入、または局所的に投与される場合、HITのリスクは、ヘパリンの静脈内投与および/または皮下投与に一般的に関連するリスクの程度と比較して、大幅に減少する場合がある。その理由は、HMWHの経口投与および局所投与の両方ともが吸収されず、ゆえに抗凝固を生じさせないためである。
【0157】
一部の態様では、本明細書に開示される組成物は、経口溶液または局所溶液として、経口投与または局所投与されてもよい。例えば、UFHまたはHMWHを含む組成物は、限定されないが、EoEおよび好酸球性胃腸炎を含む好酸球性GI障害(EGID)、ならびに限定されないが潰瘍性大腸炎およびクローン病を含む炎症性腸疾患を治療するための経口溶液または局所溶液として製剤化されてもよい。
【0158】
一部の態様では、本明細書に開示される組成物は、鼻腔スプレーとして吸入により投与されてもよい。例えば、UFHまたはHMWHを含む組成物は、好酸球性慢性鼻副鼻腔炎または鼻ポリープを治療するための鼻腔スプレーとして製剤化されてもよい。
【0159】
一部の態様では、本明細書に開示される組成物は、局所的に投与されてもよい(例えば、点眼薬)。例えば、UFHまたはHMWHを含む組成物は、限定されないが、好酸球性結膜炎、季節性および/または通年性アレルギー性結膜炎、春季カタル、アトピー性角結膜炎、巨大乳頭結膜炎、または接触性皮膚結膜炎を含む、アレルギー性の病態生理学的構成要素を有する眼疾患の治療用の局所投与のために製剤化されてもよい。
【0160】
一部の態様では、組成物は、経口投与されてもよい。例えば、組成物は、対象によって経口的に嚥下されてもよい。一部の例では、組成物は、シリンジ、スポイト、または他のデバイスを用いて経口投与されてもよい。一部の態様では、組成物は、一定期間にわたり投与されてもよい。一部の態様では、組成物は、5分間にわたり投与される。しかし、組成物は、約1分、約2分、約3分、約4分、約6分、約7分、約8分、約9分、約10分、約10分超、またはそれらの間の個々の値もしくは範囲にわたり、投与され得る。一部の態様では、組成物は、一定期間にわたり、別個の部分で、または一定分量で投与される。例えば、組成物は、約1mlの一定分量で、約5分間にわたり(例えば、約1ml/分)、対象に投与されてもよく、または対象により経口的に嚥下されてもよい。一部の態様では、対象は、約1mlの組成物を、5回嚥下してもよい。しかしながら、組成物を嚥下する回数は、1、2、3、4、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15回、15回超、またはその間の範囲であってもよい。一部の実施形態では、一定分量または嚥下は、約1mL、約2mL、約3mL、約4mL、約5mL、約5mL超、またはそれらの間の個々の値もしくは範囲を含み得る。一部の態様では、組成物は、対象が仰臥位である間に、対象に投与される。一部の態様では、対象は、約1分、約5分、約10分、約15分、約20分、約25分、約30分、またはそれらの間の個々の値もしくは範囲の間、仰臥位で留まる。一部の態様では、対象は、投与後の指定された期間、飲食を行わない。一部の態様では、対象は、約1分、約5分、約10分、約15分、約20分、約25分、約30分、またはそれらの間の個々の値もしくは範囲の間、飲食を行わない。一部の実施形態では、対象は、投与後、または一定期間仰臥位に留まった後、水を嚥下する。一部の態様では、対象は、少なくとも約15分間、仰臥位で留まった後に、約100mlの水を嚥下する。しかし、対象は、約1mL、約5mL、約10mL、約15mL、約20mL、約25mL、約30mL、約35mL、約40mL、約45mL、約50mL、約55mL、約60mL、約65mL、約70mL、約75mL、約80mL、約85mL、約90mL、約95mL、約100mL、100mL超、またはその間の個々の値もしくは範囲の量の水を嚥下してもよい。一部の態様では、対象は、約6~7mlの組成物を、15回嚥下してもよい。しかしながら、組成物を嚥下する回数は、1、2、3、4、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15回、15回超、またはその間の範囲であってもよい。一部の態様では、嚥下は、約1mL、約2mL、約3mL、約4mL、約5mL、約6mL、約7mL、約8mL、約9mL、約10mL、約10mL超、またはそれらの間の個々の値もしくは範囲を含んでもよい。一部の態様では、患者は、組成物をそれぞれ嚥下した後、または組成物の各一定分量の後に、水を嚥下する。一部の態様では、患者は、組成物をそれぞれ嚥下する間、または組成物の各一定分量の間に、上述のように指定された期間、待機する。一部の態様では、好酸球性炎症を治療する目的で組成物が投与される場合、対象は、投与後に水を嚥下する必要はない。一部の態様では、ヘパリン(例えば、HMWH)は、好酸球性炎症を治療または減少させる目的で、放射性標識にコンジュゲートされることなく経口投与されてもよく、当該投与は、投与後に任意の量の水を嚥下する工程を含まない。当業者には明白であるように、投与のための追加の様式または手順も予期される。
【0161】
一部の態様では、組成物は、別経路で投与される。例えば、組成物が、好酸球性食道炎以外の他の好酸球が関連する状態および疾患を治療するために投与される場合、異なる投与経路が必要、または好ましい場合がある。一部の実施形態では、本明細書に開示される組成物は、胃腸の好酸球関連疾患を治療するために、静脈内、局所的、吸入および/または経口的に投与するように構成される。一部の実施形態では、経口(または局所)投与によって治療され得る胃腸の好酸球関連疾患は、好酸球性食道炎、好酸球性胃炎、および/または好酸球性胃腸炎を含む。一部の実施形態では、本明細書に開示される組成物は、鼻、副鼻腔および肺の炎症を治療するために、吸入により投与するように構成される。一部の態様では、本明細書に開示される組成物は、結腸を治療するために、浣腸により投与するように構成される。一部の実施形態では、本明細書に開示される組成物は、膀胱における好酸球関連炎症を治療するために、カテーテルにより投与するように構成される。一部の態様では、本明細書に開示される組成物は、アレルギー性病態生理学的構成要素を有する眼の好酸球関連の炎症または疾患を治療するために、点眼により投与するように構成される。一部の態様では、本明細書に開示される組成物は、皮膚の好酸球関連の炎症および/または疾患を治療するために、クリームまたは軟膏として局所投与するように構成される。
【0162】
組成物は、食道への投与に関して実質的に記述されているが、組成物は、さらなる組織または器官への投与のためにも構成され(または製剤化され)てもよい。一部の態様では、標的とされる好酸球関連炎症または好酸球性疾患は、消化管(例えば、口、食道、胃、小腸、大腸、または結腸)、肺、鼻、眼、皮膚、1か所以上の関節、1か所以上の筋肉、1か所以上の神経、心臓、腎臓、膀胱、子宮、前立腺、乳房、リンパまたは血液に特異的であってもよい。
【0163】
一部の態様では、好酸球関連炎症または好酸球性疾患は、本明細書に開示される疾患または障害または症候群のいずれかであってもよい。当業者には明白であるように、追加的な好酸球関連炎症および好酸球性疾患が本明細書に予期される。
【0164】
一部の態様では、治療剤は、グルココルチコイドであってもよい。一部の態様では、グルココルチコイドは、モメタゾン、フルチカゾン、ブデソニド、プレドニゾン、またはソルメドロールであってもよい。一部の態様では、ヘパリンは、一つ以上のグルココルチコイドとコンジュゲートされてもよい。グルココルチコイドは、好酸球関連疾患に対する有効な治療である。本明細書に開示されるように、ヘパリン-グルココルチコイド複合体(例えば、グルココルチコイドにコンジュゲートされたヘパリン)は組織結合型eMBP-1に対するアビディティがあるため、グルココルチコイドをヘパリンにコンジュゲートすることによって、治療は、炎症領域に直接標的化することができる。さらに、好酸球関連炎症の一つ以上の部位に対して、ヘパリン-グルココルチコイド複合体を直接的に、より効率的に(および選択的に)標的化することにより、ケアに必要とされるグルココルチコイドの量(または用量)を減少させ得、したがって、グルココルチコイドの投与に関連するいずれの副作用も限定し得る。
【0165】
一部の態様では、罹患した組織、器官、または身体部分は、本明細書に開示される任意の組織、器官、または身体部分であってもよい。一部の態様では、罹患した組織、器官または身体部分は、皮下脂肪、筋膜、筋肉、筋内膜、線維組織、腸間膜、卵巣、乳房、脳、筋肉、心臓、肺、胃、近位大腸、遠位大腸、小腸、膵臓、甲状腺、皮膚、粘膜、眼、精巣、胸腺、胆嚢、子宮、肝臓、脾臓、腎臓、食道、膀胱、胆管、血管、洞、喉頭、気管、胸腺、神経、脊髄、神経節、横隔膜、または主要血液器官であってもよい。一部の態様では、罹患した組織、器官、または身体部分は、鼻の粘膜および/または洞の粘膜であってもよい。一部の態様では、主要血液器官は、肝臓、脾臓、腎臓、または膀胱であってもよい。
【0166】
一部の態様では、本明細書に開示される方法のいずれかにおいて、本明細書において、その必要のある対象を特定することを含む工程が開示される。一部の態様では、その必要のある対象は、本明細書に開示される方法のいずれかにより特定され得る。一部の態様では、対象は、ヒトであってもよい。
本明細書に記載される組成物を作製する方法
【0167】
本明細書において、高分子量ヘパリン組成物を作製する方法が開示される。一部の態様では、方法は、ゲル浸透クロマトグラフィーを使用して、分子量を測定し、HMWHヘパリンを精製および単離することを含む。一部の態様では、高分子量ヘパリン組成物を作製する方法は、異なる分子量の分子を分離するための当業者に公知の任意の方法を使用して実施してもよい。
【0168】
一部の態様では、方法は、ヘパリンを凍結乾燥すること、凍結乾燥ヘパリンを水中で再懸濁すること、および再懸濁されたヘパリンをクロマトグラフィーカラムに適用すること、を含んでもよい。凍結乾燥ヘパリンを使用することにより、クロマトグラフィーカラムに適用される(再懸濁された)ヘパリンは濃縮物であってもよく、より多くの量のヘパリンをカラムに適用することができる。一部の態様では、ヘパリンは、クロマトグラフィーカラムに適用される前に、凍結乾燥および再懸濁されない。一部の態様では、ヘパリンは、保存剤を含まないヘパリンまたは医療グレードのヘパリンであってもよい。本明細書に開示される方法において使用されるヘパリンの濃度は、選択されたカラムの能力に依存し得る。一部の態様では、カラムは、ゲル浸透カラムであってもよい。一部の態様では、カラムは、ポリアクリルアミドゲル(例えば、Bio-Gel P-60)カラムであってもよい。一部の態様では、ヘパリンは、ポリアクリルアミドゲル(例えば、Bio-Gel P-60)のカラム上で分画化されてもよい。一部の態様では、任意のカラムを使用してもよい。一部の態様では、当業者に公知の任意のカラムを、異なる分子量の分子を分離するために使用してもよい。一部の態様では、ヘパリンは、保存剤を含まないヘパリンまたは医療グレードのヘパリンであってもよい。一部の態様では、医療グレードのヘパリン、USP、60ml、2000単位/mlを凍結乾燥してもよく(粉末0.9gmの重量)、粉末は、水に再懸濁されてもよく、約2.0mL~約3.0mL(例えば、2.4mL)の再懸濁ヘパリンをカラムに適用してもよい。一部の態様では、ヘパリンは、約232nmでの吸光度により検出され得る。一部の態様では、青色デキストラン(約2,000kDaの分子質量)およびビタミンB12(1356Daの分子質量)を使用して、カラムを較正してもよい。一部の態様では、青色デキストランは、約33mLで溶出され得、ビタミンB12は、約100mLで溶出され得る。一部の態様では、ヘパリンは、約33mL~80mLの間で溶出する分画に含有され得る。一部の態様では、高分子量ヘパリンは、約33mL~約50mLの間で溶出する分画に含有された。
【0169】
本発明は、その特定の好ましい実施形態に関して詳細に記載されているが、他のバージョンも可能である。したがって、添付の特許請求の範囲の主旨および範囲は、本明細書内に含まれる記述および好ましいバージョンに限定されるべきではない。本発明の様々な態様を、以下の非限定的な実施例を参照して解説する。
【実施例
【0170】
実施例1 好酸球性食道炎を有する患者における、99mテクネチウム標識ヘパリンの経口投与
【0171】
好酸球性食道炎(EoE)は、慢性食道炎の2番目に多い原因である、食道の炎症性疾患であり、1番の原因は、胃食道逆流症(GERD)である(Hiremath G,et al.Dig Dis Sci 2018;and Hiremath GS,et al.Dig Dis Sci 2015;60:3181-93)。相当数の研究結果から、子供、青年および若年成人に共通して影響を及ぼすEoEの有病率が増加していることが明らかとなった(Noel RJ,et al.N Engl J Med 2004;351:940-1;Prasad GA,et al.Clin Gastroenterol Hepatol 2009;7:1055-61;およびDellon ES,et al.Clin Gastroenterol Hepatol 2014;12:589-96 e1)。この疾患は、嚥下困難(嚥下障害)を頻繁に呈し、時には食物が食道に詰まって嚥下を妨げ、救急受診に至ることもある(Liacouras CA,et al.J Allergy Clin Immunol 2011;128:3-20 e6;quiz 21-2)。発症は潜行性である場合があり、そのため、および他の理由から、診断はしばしば遅れ、不可逆的な後遺症を潜在的に発現させてしまう(Schoepfer AM,et al.Gastroenterology 2013;145:1230-6 e1-2)。
【0172】
EoEの診断は、患者の既往歴の特徴と、複数の食道生検を伴う食道胃十二指腸内視鏡検査(EGD)からの所見に基づいて行われる(Furuta GT,Katzka DA.N Engl J Med 2015;373:1640-8)。この疾患は、不規則な「斑点」状で食道に存在するため、少なくとも五つ、好ましくはより多くの生検を取得するべきである(Gonsalves N,Kahrilas PJ.Neurogastroenterol Motil 2009;21:1017-26)。高倍率視野(HPF)当たり、15個以上の好酸球を示す組織標本は、EoEの診断基準を満たす。現在の診療における当該疾患の評価と管理は困難である:第一に、疾患を鑑定するたびに、意識下(中等度)鎮静のもとで内視鏡を実施する必要性がある。第二に、意識下(中等度)鎮静は、当日の患者を無能力化させてしまう。第三に、生検上の好酸球数を用いた組織病理学検査の結果は、数日から1週間以上の間、得ることはできない。第四に、食道の好酸球性炎症は不規則で、「斑点」状であるため、複数回の生検を行っても、正確または完全には疾患活動性(患者が経験する症状を含む)を反映する結果を得られない場合がある。そして最後に、内視鏡と生検の評価は、高価である(Saffari H,et al.J Allergy Clin Immunol 2012;130:798-800;and Salek J,et al.Aliment Pharmacol Ther 2015;41:1288-95)。
【0173】
過去の研究により、好酸球は、好酸球主要塩基性タンパク質-1(eMBP-1)を含む、独特の著しくカチオン性の顆粒タンパク質を、罹患した食道の組織内に放出することが示されている。この沈着は、好酸球数よりも疾患活動性の良い指標である可能性がある(Kephart GM,et al.Am J Gastroenterol 2010;105:298-307;Peterson KA,et al.Dig Dis Sci 2015;60:2646-53;およびSaffari H,et al.Am J Gastroenterol 2016;111:933-9)。電子顕微鏡による食道標本の検査により、組織中の好酸球の約81%が膜を破壊したこと(Saffari H,et al.J Allergy Clin Immunol 2014;133:1728-34 e1)、および免疫染色の検査により、組織が、細胞外に沈着した顆粒タンパク質で染色されることが示された(Salek J,et al.Aliment Pharmacol Ther 2015;41:1288-95;およびKephart GM,et al.Am J Gastroenterol 2010;105:298-307)。(Protheroe et al.,Clin Gastroenterol Hepatol 2009,7:749-755)。 著しく塩基性の好酸球顆粒タンパク質が、EoEの炎症を起こした食道に沈着しているという認識に基づき、99mテクネチウム標識ヘパリン(Tc99m-ヘパリン)を使用して、炎症が位置特定され得るかを試験した。ヘパリンは、通常に身体内に存在する著しく酸性の分子であり、放射性物質による検出のために標識されることができ、eMBP-1にしっかりと結合して、結晶性複合体を形成する(Swaminathan GJ,et al.Biochemistry 2005;44:14152-8;Swaminathan GJ,et al.J Biol Chem 2001;276:26197-203;Gleich GJ,et al.Proc Natl Acad Sci U S A 1986;83:3146-50;およびGleich GJ,et al.J Exp Med 1974;140:313-32)。過去の研究から、Tc99m-ヘパリンは、生体外において、EoE患者の生検標本で炎症を特定すること、そしてEoEに罹患していない患者では炎症を特定しないことが示されており、このことから、EoEの撮像にTc99m-ヘパリンを使用することの実現可能性が示唆される(Saffari H,et al.J Allergy Clin Immunol 2013)。
【0174】
本明細書において、5名の患者における、Tc99m-ヘパリンの経口投与に関する実現可能性、生体分布、および線量測定を判定したことを記述する。
【0175】
患者。5名の患者には、EoEを有さない1名の対照、EoEを有する4名の患者が含まれ、インフォームドコンセントに署名後、研究が行われた。患者1は34歳の男性で、GERDと一致する断続的な逆流症状があり、事前にEGDを受けたことはなかった。逆流症状はH2-受容体ブロッキング抗ヒスタミン治療に対して反応性であり、断続的に摂取していた。患者2は、EoEを有する38歳の男性で、長期にわたる嚥下障害、および著しい汎食道狭窄があり、過去のピーク好酸球数は22/HPFで、内視鏡スコアリングは、E1R2E0F1S1であった(EREFSスコアリング:E=浮腫、R=輪、E=滲出液、F=溝、S=狭窄、およびスコア範囲)(Dellon ES,et al.Clin Gastroenterol Hepatol 2016;14:31-9)。患者3は、EoEと最近診断された53歳の男性であり、嚥下に重度の疼痛を伴い(嚥下痛)、40mgのオメプラゾールで治療され、ピーク好酸球数は70/HPFで、内視鏡スコアリングはE1R2E2F1S1であった。患者4は、EoEを有する29歳の男性で、ピーク好酸球数は40/HPFであった。1日40mgで8週間のオメプラゾール治療の後、内視鏡を再び行い、E1R0E0F1S0スコアリングと、ピーク好酸球数は、35/HPFであった。彼は、少なくとも週に2回発生する一過性の嚥下障害が続いていることを訴えた。患者5は、胃潰瘍(消化管出血)、および嚥下障害を伴うEoEの既往を持つ34歳の男性である。過去の内視鏡では、E1R0E0F1S0の内視鏡スコアリングと、45/HPFのピーク好酸球数が示されており、高用量のプロトンポンプ阻害剤療法での2カ月にわたって症状を示したままであった。
【0176】
以下に示されるその後の解析により、患者1および4は、画像評価の時点で活動的な好酸球関連炎症の証拠が無かったこと、患者4はさらなる治療を受けており、炎症は存在しなかったことが明らかとなった。対照的に、患者2、3および5は、活動性の好酸球関連炎症の証拠があり、検査時に顕になった。
【0177】
Tc99m-ヘパリン標識。撮像当日、滅菌水中、20mg/mLの塩化第一スズ二水和物(Sigma-Aldrich,MO;製品番号31669)を、医療グレードの窒素を流しながら調製し、0.3mLの溶液を0.22マイクロフィルターを通してろ過して、88mg(1.5mL、5000単位/0.5mL)のヘパリンナトリウム注射液(すなわち、未分画;APP Pharmaceuticals LLC、プエルトリコ、バーセロネータ;NDC 63323-543-02)と混合した。Tc-99m、30mCiを、患者投与時間に対して較正し、Tc-99m発生装置(Lantheus Medical Imaging社、マサチューセッツ州ビルリカ)から0.4mLで溶出された。次いでこれをヘパリン溶液に加え、20℃で約5分間インキュベートした。品質管理は、製造業者の指示に従って、アセトンでの薄層クロマトグラフィーにより実施された(Whatman no.31,chromatography strip No.150-001,Biodex Medical Systems社、ニューヨーク州シャーリー)。患者への経口投与については、放射性標識された溶液を滅菌生理食塩水中で希釈し、最終体積を15mLとした。
【0178】
撮像プロトコル。患者は試験前、一晩絶食した。位置合わせマーカーである20μCi Tc-99mを、胸骨上端、両乳頭、へそ、および両腸骨稜の6か所に配置した。およそ30mCiのTc99m-ヘパリンを15分間かけて経口投与(1mL/分)して、患者は仰臥位になりながら、シリンジで投与された1mlの一定分量を嚥下した。Tc99m-ヘパリンnの摂取中、胸部および上腹部上で、デュアルヘッド型単光子放出コンピュータ断層撮影(SPECT/CT)カメラ(Symbia Intevo、Siemens Healthineers、イリノイ州ホフマンエステート)を使用して動的撮像(60フレーム/分、15分、900フレーム)を実施した。その後、患者を休息させ、15分間、平らの状態で仰向けにさせた。そして30分の基準で、100mlの水を摂取し、次いで「眼から大腿」のSPECT/CT撮像を行った。さらに30分後、平らの状態で仰向けになり、約60分の基準で全身の前部および後部の平面撮像を実施した。その後、各患者は撮影エリアを離れることを許可されたが、経口投与から約2時間後、4時間後、6時間後、8時間後、および24時間後に、5回の追加の前部および後部の全身平面撮像セッションのために戻った。胸部、腹部、骨盤、および近位下肢の低線量平面X線(トポグラム)を、これらの各時点で実施し、Tc99m-ヘパリンの位置特定を支援した。
【0179】
全身、腹部器官、および食道の放射能計数は、各時点で前部および後部の平面画像の両方から記録した。対象領域を、Siemensソフトウェア(Symbia.Net Siemens Healthineers社、イリノイ州ホフマンエステート)を使用して平面画像上に手動で定義し、幾何平均を計算して記録した。SPECT/CTおよび平面画像を、OsiriX DICOM(Digital Imaging and Communications in Medicine)Viewer ソフトウェア(Pixmeo SARL社、スイス、ベルネ)を使用してさらに分析した。
【0180】
視覚的評価。3人の観察者が、0~4の視覚的アナログスケール(0=取り込みなし、1=わずかな取り込み、2=軽度の取り込み、3=中程度の取り込みであるが、腸内の強度よりも低い、および4=腸と同程度の取り込み)で、近位、中部、および遠位の食道に対するTc99m-ヘパリン結合の視覚的強度スコアを等級分けして記録した。
【0181】
内視鏡、病理組織、および免疫染色。患者は、撮像手順が完了してから1日後にEGDを受けた。生検標本を、近位、中部、および遠位の食道から採取し(患者1名あたり合計で約9個)、病理組織検査およびeMBP-1顆粒タンパク質染色のために提出した。HPF当たりのピーク好酸球数は、各個人について現行のとおり、ホルマリン固定標本のヘマトキシリンエオジン染色切片に対する組織病理検査により判定された。 免疫染色については、生検標本をマイケル培地に移し、洗浄して、各部位から1ブロック内に凍結包埋した。標本ブロックを凍結切片にした。連続切片を、間接免疫蛍光法によってeMBP-1に対するポリクローナル抗体で染色し、蛍光顕微鏡により調べて、完全な好酸球、および細胞外好酸球顆粒タンパク質沈着を識別した。抗体染色切片を、正常なウサギIgGで染色した連続切片(陰性対照)と比較し、陰性(検出可能なeMBP-1なし)から3+の基準画像を用いて視覚アナログスケールで等級分けした(Talley NJ,et al.Gastroenterology 1992;103:137-45)。さらに、ヘマトキシリンエオジン染色切片を、形態学的な特徴および方向性について、比較検証した。
【0182】
線量測定。様々な時点での食道の前部および後部の計数を、パーセント-注入放射能(percent-injected radioactivity)に変換した。経時的な器官当たりのパーセント-注入放射能の値は、Simulation,Analysis,and Modeling Software II(SAAM II)、ソフトウェア(Epsilon Group、バージニア州シャーロッツビル)を使用して適合された。放射能の時間積分を、成人男性モデルを使用して、the Organ Level INternal Dose Assessment/EXponential Modeling(OLINDA/EXM)2.0(登録商標)dyna(OLINDA/EXM)2.0ソフトウェアに入力した(Stabin MG,Siegel JA.J Nucl Med 2018;59:154-160)。嚥下されたTc99m-ヘパリンは、International Commission on Radiological Protection(ICRP)Human Alimentary Tract(HAT)model(ICRP 2006)の標準的な動態に従うものと仮定された。
【0183】
統計解析。スピアマンの順位相関係数は、Tc99m-ヘパリン結合強度とピーク好酸球数/HPCの間の視覚等級スコア、eMBP-1免疫染色等級、および食道疾患の内視鏡スコアの間の相関性、ならびに平面画像の幾何平均数とeMBP-1免疫染色等級の間の相関性について、IBM SPSS Statistics V25を使用して計算された。
【0184】
新たに調製されたTc99m-ヘパリンの分析から、95%を超えるTc-99mが、ヘパリンに結合していたことが示された。Tc99m-ヘパリンは、患者において忍容性良好であり、消化管を介してそれほど吸収されなかった。なんらかの有害反応を報告した患者はいなかった。放射能の大部分は、平面画像によって確認されるように、24時間後には減衰した。
【0185】
Tc99m-ヘパリンの全身の生体分布を、患者において決定した。さらに、より詳細な生体分布とトレーサー動態を、注入から最大で約24時間後まで、食道組織において測定した。表5は、個々の器官および全身に対する放射線量推定値を要約している。
【表2】


【0186】
図1は、Tc99m-ヘパリンの経口投与から約1時間後に取得された、1名のGERD患者、4名のEoE患者(患者2~5)のSPECT/CTスキャンの冠状画像および矢状画像の生体分布を示す。放射能は赤色で示されており、特に患者1および4は、食道への結合を示さなかった。患者2は、近位食道および遠位食道の両方で放射能を示した(中部食道ではない)。重度のEoEを伴う患者3は、食道全体で著しい放射能結合を示した。患者5は、上部食道に放射能結合を示した。したがって、放射能沈着は、EoEの3名の患者で明白であり、患者3では、冠状画像と矢状画像の両方で顕著であった。図10および図11で示される所見は、嚥下からおよそ1時間後、およそ午前8時に取得された。食道へのTc99m-ヘパリンの結合は、午前半ばのおよそ10時に患者が食物を食べた時点で検出できなかった。
【0187】
図2は、SPECT解析による、およそ1時間での個々の患者における食道の生体分布を示している。OsiriX DICOM Viewerソフトウェアを使用した、図1に含まれるCT構成要素は含まれていない。図1に示されるように、画像は、患者が15分間にわたって99mTc-ヘパリンを嚥下し、その後に100mlの水(弱く結合したTc99m-ヘパリンを洗い流すため)を嚥下した後に取得された。画像は、胸骨上端(患者1、2、3、および4)、右肩(患者5)、および乳房/乳頭(患者1、3、4、および5の画像で明白であるが、患者2では左乳房/乳頭マーカーは不明瞭である)を含むマーカーを識別するように標識される。Tc99m-ヘパリンの食道結合は、患者2、3および5で明白に観察された。胃、乳房/乳頭マーカーの下の食道末端、および腸において、局在も観察される。これらのSPECT画像は、患者間の差異をより明確に示している。患者1および4は、食道における放射能結合の証拠を示さず、患者2、3および5は、結合を示している。
【0188】
表3は、近位、中部、および遠位の食道セグメントにおけるTc99m-ヘパリンの視覚的等級付け、各セグメントに対して合計した内視鏡からのEREFSスコア、各セグメントの生検の組織病理解析でのHPF当たりのピーク好酸球数、近位および遠位の食道セグメントの生検標本に対する結合放射能およびeMBP-1免疫染色スコアの測定値(eMBP-1免疫染色に関し、中部食道からの生検標本は取得されなかった)、を含む、患者の所見を要約している。図3A~Bは、個々の患者の近位(a)および遠位(b)の食道生検におけるeMBP-1免疫染色の代表的な蛍光顕微鏡画像を示す。
【0189】
視覚的なTc99m-ヘパリン結合スコアに関し、3人の評価者の間で強度等級付けが一致しており、各評価者は他者の等級付けを知らないまま独立して評価を行った。GERDの患者1は、好酸球浸潤の証拠がなく、eMBP-1沈着もなかった(表3および図3)。患者2は、EoEを有し、特に遠位食道が、42/HPFのピーク好酸球数を示した。好酸球数は近位では増加しなかったが、免疫染色により、比較的顕著なEoEの内視鏡所見と連動して、eMBP-1沈着の証拠が示された。このことから、近位での疾患活動性の存在が示唆される(表3および図3)。患者3は重度のEoEに罹患しており、三つの領域において、75/HPFを超えるピーク好酸球数であり(15/HPFを超えるピーク好酸球数は、EoEを示すことに留意)、ならびに最大等級3+のeMBP-1免疫染色であった(表3および図3)。患者4は、EoEと診断されており、撮像時には治療中であった。追跡された様々なパラメータで、所見から、試験時には炎症がないことが示された(EREFSスコア0、ピーク好酸球数の増加なし、生検標本においてeMBP-1染色の証拠なし、表3および図3)。患者5は、近位食道および中部食道にEoEを有し(近位では91/HPFのピーク好酸球数、中部食道の生検標本では32/HPFのピーク好酸球数)、0.5+のeMBP-1免疫染色であった(表3および図3)。
【0190】
前部および後部の全身画像からの幾何平均放射能計数も、表3に示す。病理組織学的に好酸球が無い患者1および4は、それぞれ6625および5010の放射能計数であった。一方で、患者3は、三つのセグメントにおいて高い好酸球数を有し、66,323カウントの幾何測定値であり、食道において最大の放射能計数を示し、患者1および4の10倍を超えていた。
【表3】



*P=近位、M=中部、およびD=遠位の食道セグメント。
# 内視鏡からのEREFSスコアの合計:E:浮腫、R:輪、E:滲出液、F:溝、S:狭窄。例えば、患者3は、(近位、中部、および遠位の食道セグメントについてE1R0E2F1S0、E1R0E2F1S0、E1R0E2F1S0)のスコアを有し、これらのスコアを各セグメントについて合計して記録数(4、4、4)を導き出す。
**経口投与から2時間後の、前部および後部の平面画像からの幾何平均計数。
## 免疫蛍光の局在によるeMBP-1スコア
【0191】
Tc99m-ヘパリン結合と炎症マーカーとの間の関連性を試験する相関解析から、有意な関係性が示された:(1)ピーク好酸球/HPFと、Tc99m-ヘパリン結合強度の視覚的等級スコアの間、rs=+0.84 p=0.001;(2)Tc99m-ヘパリン結合強度の視覚的等級スコアと、eMBP-1免疫染色等級の間、rs=+0.87 p=0.001;(3)対象とほぼ同様の領域の平面画像の幾何平均放射能計数と、eMBP-1免疫染色等級の間、rs=+0.98 p=0.005;および(4)EREFS合計内視鏡スコアと、Tc99m-ヘパリン結合等級の視覚的等級スコアの間、rs=+0.91 p<0.001。
【0192】
本明細書に記載される実験は、EoEの患者と、EoEではない患者における、Tc99m-ヘパリンの分布と線量測定を試験するために実施された。結果は、組織生検標本の好酸球浸潤とeMBP-1沈着により示されるように、嚥下されたTc99m-ヘパリンは、好酸球関連炎症を発症している活動性EoEの患者の食道に一過性に結合することを示す。対照的に、好酸球関連食道炎症の証拠がない2名の患者では、そのような結合は検出されなかった。試験された患者において、嚥下されたTc99m-ヘパリンは消化管を通過し、ほとんど吸収されなかった。したがって線量測定は大部分が、消化管を通過する速度により決定され、左右の結腸が、最も大きな放射能暴露を受けた。放射線線量測定は、胃内容排出を評価するために、核医学部門で日々使用されている他の経口投与剤のTc99mに相当する。
【0193】
表3および図1~3に示す結果は、Tc99m-ヘパリン結合の生体分布は、EoE患者における好酸球関連炎症のマーカーと相関することを示している。最も顕著なTc99m-ヘパリン結合を示す食道領域は、生検において、好酸球浸潤と広範なeMBP-1組織沈着も示していた。さらに、組織病理検査によって評価された好酸球関連炎症の発生と、組織におけるeMBP-1免疫染色と、Tc99m-ヘパリン結合との間には有意な関連性があった。
【0194】
図1図2の比較から、解剖学的マーカーに沿ったSPECT画像で、食道の方向性、識別および検査に充分であることを示している。ゆえにCTの実施は必須ではなく、または最小限の放射線曝露で実施して、食道のTc99m-ヘパリン結合を識別することができる。重要なことは全体的な放射線曝露を減少させ得ることである。Tc99m-ヘパリンは、心筋の損傷を特定するため(Kulkarni PV,et al.J Nucl Med 1978;19:810-5;and Duska F,et al.Nuklearmedizin 1985;24:111-4)、および血栓を位置特定するため(Utne HE,et al.Application of 99mTc-labelled heparin.Eur J Nucl Med 1981;6:237-40;and Kitschke B,et al.Int J Nucl Med Biol 1984;11:235-41)に、初期の研究で採用されていたが、EoEにおいて好酸球関連炎症を検出するために嚥下されたTc99m-ヘパリンを使用することは今回が初めてである。
【0195】
この研究から、Tc99m-ヘパリンの全体的な生体分布、その消化管通過、および食道炎症領域におけるeMBP-1への結合が示される。さらに本研究で採用されているTc99m-ヘパリンは、88mgのヘパリンと30mCiのテクネチウム99mであったが、過剰量の非標識の「冷たい」ヘパリンが生じていた。Tc99m-標識ヘパリンと冷ヘパリンのモル比を計算すると、1/100,000個のヘパリン分子が放射性標識されたことが示される。ゆえに、製剤中のヘパリンの割合を少なくすることで、インビトロ試験で確認されるように、組織におけるeMBP-1へのTc99m-ヘパリンの結合がさらに選択的なものとなる。
【0196】
本明細書に記載されるように、患者試験で使用されるヘパリンは、30mCi テクネチウム99m(明確なシグナルを最大化する)、および88mgのヘパリン(過去の研究から、患者に忍容性良好であったことが示唆された)を用いて標識された(Saffari H,et al.J Allergy Clin Immunol 2014;133:1728-34 e1)。しかし、この量のヘパリンは、必要量を超えている可能性が高い。例えば、テクネチウム99m標識ヘパリンおよび非標識ヘパリンのモル比を計算すると、100,000分子ごとにおよそ1個のヘパリン分子が放射性標識を担持することが明らかになった。言い換えれば、放射性標識された(温)ヘパリン分子(eMBP-1に結合することによって陽性応答を出すことができる)の各々に対し、eMBP-1の結合部位に対して競合する(そしてeMBP-1への結合を減少させる)99,999個の非標識(冷)ヘパリン分子が存在するということである。したがって、非標識ヘパリンを少なくして生成された99mTc-ヘパリンを採用することで、eMBP-1への結合に関する「冷」阻害が減少するはずである。言い換えれば、1mgのHMWHを使用することで、非標識ヘパリンによる「冷」阻害が減少し、シグナルが改善されるであろう。表4は、eMBP-1への結合に関し、30mCiテクネチウムm99で標識された88mgのヘパリンと、30mCiテクネチウムm99で標識された8mgヘパリンを比較した結果を示す。結果から、88mgのヘパリンと30mCiテクネチウム99mを使用して作製された99mTc-ヘパリンは、8mgのヘパリンと30mCiテクネチウム99mを使用して作製された99mTc-ヘパリンよりも、プレート上でのeMBP-1への結合において劣っていたことが示された。これらの実験について、ウェルは、リン酸生理食塩水緩衝液中、0.27mg/mLのeMBP-1で一晩被覆され、非被覆ウェルは、比較(バックグラウンド)に使用された。標識される99mTc-ヘパリンの量は、88mgおよび8mgであり、上部に列記され、標識に使用される30mCiテクネチウム99は、左に列記される。ウェルは洗浄され、計数を行い、結果は、μCi結合として列挙される。比率は、非被覆ウェルに結合したバックグラウンド(BKG)計数で除算された結合平均計数を示す。
【表4】


【0197】
現在のところ、食道における好酸球関連炎症の特定には、複数回の食道生検と、それに続く好酸球の計数を用いた組織病理学検査が必要である。過去の研究では、99mテクネチウム(Tc99m)で標識されたヘパリンが、好酸球性食道炎(EoE)患者の罹患食道からの組織標本に結合したことが示されている。そこで、Tc99m-ヘパリンが、EoE患者の好酸球関連炎症の検出のための撮像プローブとして役立つかが試験された。
【0198】
食道の明白なモデリングを用いた新たな画像ベースの線量測定モデルを利用した、EoE患者と非EoE患者におけるTc99m-ヘパリンの経口投与の生体分布と放射線線量測定を試験した。
【0199】
新たに調製されたTc99m-ヘパリンを、5名の患者に経口投与した。投与から24時間以内に、全身シンチグラフィーにより、食道および他の腹部器官における放射能を測定した。撮像手順の後、内視鏡検査および生検標本の分析が実施された。食道の放射能の生体分布を、生検組織の組織病理検査により得られた好酸球数、および好酸球顆粒主要塩基性タンパク質-1(eMBP-1)に対する免疫染色と比較した。器官当たりの注入線量のパーセントとしての放射能値は、Simulation,Analysis,and Modeling Software II(SAAM II)を使用して適合され、放射能の時間積分は、成人男性モデルを使用して、Organ Level INternal Dose Assessment/EXponential Modeling(OLINDA/EXM)2.0(登録商標)dynaソフトウェアに入力された。
【0200】
Tc99m-ヘパリンの経口投与は、5名の患者すべてにおいて忍容性良好であった。放射能の90%以上が食道に結合せず、消化管を通過した。経口投与中、食道全体を動的に視覚化することができ、静止画像が捕捉された。食道に結合した放射能は、活動性EoE疾患の無い患者よりも活動性EoE疾患の患者で高く、高倍率視野(HPF)当たりの好酸球数、ならびに免疫染色によるeMBP-1の細胞局在および細胞外局在を含む、好酸球関連炎症のマーカーとも関連していた。
【0201】
本実施例に示されるように、Tc99m-ヘパリンの経口投与は忍容性良好であり、経口投与されたTc99m-ヘパリンの生体分布は、ほぼ排他的に消化管に局在している。放射線暴露は下部消化管で最も高く、他の経口投与される診断用放射性医薬品と同等であった。このことから、Tc99m-ヘパリンシンチグラフィーが、食道における好酸球関連炎症の評価に有用であり得ることが示される。
【0202】
実施例2 表面プラズモン共鳴(SPR)を介したEMBP-1へのヘパリンSEC分画の結合
【0203】
様々なヘパリン型を試験し、eMBP-1へのそれらの結合を決定した。分画ヘパリンを、サイズ排除クロマトグラフィーにより評価した。
【0204】
表面プラズモン共鳴。SPR解析は、Xantec Bioanalytics社(ドイツ、デュッセルドルフ)の低電荷密度ポリカルボン酸ハイドロゲル表面(HLC200M)を使用して、HBS(HEPES緩衝生理食塩水)ランニング緩衝液(10mM HEPES pH7.4、150mM NaCl)中、Bruker Scientific社(マサチューセッツ州ビルリカ)MASS-1機器で、実施された。eMBP-1のおよそ1500~3000個の応答単位(RU)が、チオールカップリングを介して表面に固定された。具体的には、カルボン酸表面を、75mMのスルホ-NHS、100mMの1-エチル-3[3-ジメチルアミノプロピル〕カルボジイミド塩酸塩(EDC)(4分、10μL/分)で最初に活性化し、続いて、30mMのホウ酸ナトリウム pH8.0中、50mMの2-(2-ピリジニルジチオ)エタンアミン(PDEA)(6分、10μL/分)で活性化した。次いでeMBP-1(10mM酢酸ナトリウム、pH5.25中、0.6μM)を固定し(6分、10μL/分)、続いて1M NaClおよび0.1M NaAc、pH4.0中、50mMシステインでキャッピングした(4分、10μL/分)。eMBP-1固定を除き、当該工程は、各チャンネルの「A」スポットおよび「B」スポットの両方で実施された。eMBP-1固定は、「B」スポットで行われ、「A」スポットはインライン対照として残した。eMBP-1リガンド(分画ヘパリンおよび非分画ヘパリン、ならびにエノキサパリン)の結合を、等しい量/体積比(約0.2μg/mL~12μg/mLの範囲)で、25μL/分、8分の結合相と30分の解離相で、三重に試験した。リガンド注入の間、6Mグアニジン-HCl(50μL/分)の2回の5秒パルスで表面再生を行った。データは、インラインブランク表面を差し引く(B-A)ことにより補正され、各リガンド注入前に実施されたランニング緩衝液注入を使用して二重参照された。
【0205】
図4~5は、表面プラズモン共鳴による、固定MBPへのヘパリン結合の分析を示す。より具体的には、図4は、最も強い結合が、BioGel P60カラムからピーク1において溶出するヘパリンによるものであることを示す。対照的に、ピーク2のヘパリンは、MBPにほとんど結合しなかった。図5Aは、医療グレードのヘパリン(通常、患者の治療に採用される)を使用した、様々な濃度の未分画ヘパリンを示す。図5B~Dは、BioGel P60カラムからの異なる濃度の分画の結合を示す。図6は、ゲル浸透クロマトグラフィーによるヘパリンの分画化を示す。
【0206】
これらの研究の一部として、低分子量ヘパリン(約5kDa)を含む様々な分子をプローブした。しかし、未分画ヘパリン(例えば、未分画USP医療グレードヘパリン)は、eMBP-1に低分子量ヘパリンよりも良好に結合した。様々なヘパリン型に対する追加実験を行った。これらの実験により、一連のヘパリン分子が生成され、表面プラズモン共鳴による分析が行われたところ、高分子量ヘパリン(20kDaと推定)が様々な低分子量ヘパリンよりも、しっかりとeMBP-1に結合したことが示された。
【0207】
これらの発見は、テクネチウム-99Mで標識された高分子量ヘパリンが、好酸球関連疾患における好酸球性炎症の位置特定に有用であることを実証する。さらに、ヘパリンがeMBP-1の毒性効果を中和できること、およびeMBP-1の組織沈着と臓器機能不全との関連性が判明していることから、これらの発見は、ヘパリンの高分子量型がeMBP-1中和の好ましい剤であり得ること、ゆえに好酸球性疾患の治療剤となり得ることを実証する。高分子量型は、その顕著なアフィニティと、eMBP-1を中和すると推定される能力に基づいて、好酸球性炎症の位置特定、およびMBPの毒性効果の中和に好ましい試薬であり、ゆえに好酸球関連疾患の治療に好ましい試薬でもあり得る。
【0208】
現在、患者のケアに利用されている未分画USPヘパリンを、テクネチウム-99Mで標識して、好酸球性炎症を位置特定する。本明細書に記載されるデータは、本技術を利用して、好酸球性食道炎中の炎症を特定することを示す。初期試験では、30mCiのテクネチウム-99Mで標識された88mgのUSPヘパリンを試験した。最近の研究では、2.8mgのヘパリンと、3mCiのテクネチウム-99Mを使用した。高分子量ヘパリンが、eMBP-1に対してこのような顕著なアビディティを有するという実験結果から、わずか1mg以下の高分子量ヘパリンをテクネチウム99Mでの標識に使用し得ることが示唆される。この見解をサポートするために、低分子量ヘパリンまたは未分画ヘパリンの場合よりも高い割合の高分子量ヘパリンが組織においてeMBP-1に結合すること、それゆえに高い割合の放射能が、これら部位に局在すると仮定した。テクネチウム-99M結合型ヘパリンの結合が高くなると、炎症領域に高割合が結合するという仮定の下で、全体として低い放射能を使用することが可能となるはずである。
実施例3 ゲルろ過によるによる高分子量ヘパリンの精製
【0209】
保存剤を含まない、医療グレードのヘパリンを、0.5MのNH4HCO3中、20℃で、BioGel P-60(Bio-Rad Laboratories社)の1.2cm×95cmのカラム上で分画化した。結果を図11に示す。カラムを、青色デキストラン(分子質量約2,000kDa)およびビタミンB12(分子質量1356Da)で較正し、青色デキストランを33ml(カラムの空隙体積)で溶出し、ビタミンB12を100mlで溶出した。図11に示される結果を繰り返し、非常に良い一致を得た。
【0210】
BioGel P-60での医療グレードヘパリンのクロマトグラフィー。医療グレードのヘパリン、USP、60ml、2000単位/mlを凍結乾燥し(粉末0.9gmの重量)、粉末を水に溶かして、合計2.4mlをカラムに適用した。ヘパリンは、232nmでの吸光度によって検出された。青色デキストランは33mlで溶出され、ビタミンB12は100mlで溶出された。ヘパリンは、33ml~80mlの間で溶出する分画に含有された。約100mlより後の吸光度は、低分子量成分によるものであり、特徴解析されなかった。高分子量ヘパリンは、空隙体積33mlから約50mlまでに溶出する分画に含まれた。
【0211】
様々な改変およびバリエーションが、本発明の主旨および範囲から逸脱することなく本発明において為され得ることが当業者には明白であろう。
【0212】
本発明の他の態様は、本明細書に開示される本発明の明細書および実施の検討から当業者には明白であろう。明細書および実施例は、本発明の真の範囲および主旨とともに、例示としてのみ検討されることが意図される。
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【国際調査報告】