(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-31
(54)【発明の名称】内燃機関用シェル形軸受
(51)【国際特許分類】
F16C 9/04 20060101AFI20230324BHJP
F16C 17/02 20060101ALI20230324BHJP
F16C 33/10 20060101ALI20230324BHJP
F02F 1/20 20060101ALI20230324BHJP
【FI】
F16C9/04
F16C17/02 Z
F16C33/10 Z
F02F1/20
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022548228
(86)(22)【出願日】2021-02-26
(85)【翻訳文提出日】2022-08-08
(86)【国際出願番号】 EP2021054848
(87)【国際公開番号】W WO2021170809
(87)【国際公開日】2021-09-02
(31)【優先権主張番号】BR1020200039474
(32)【優先日】2020-02-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】BR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512012425
【氏名又は名称】マーレ メタル レーベ ソシエダーデ アノニマ
【氏名又は名称原語表記】MAHLE Metal Leve S/A
【住所又は居所原語表記】Rodovia Anhanguera, sentido interior - capital, km 49,7, 13214-970 Jundiai - Sao Paulo, Brazil
(71)【出願人】
【識別番号】506292974
【氏名又は名称】マーレ インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】MAHLE International GmbH
【住所又は居所原語表記】Pragstrasse 26-46, D-70376 Stuttgart, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ドス サントス フェヘイラ マテウス
【テーマコード(参考)】
3G024
3J011
3J033
【Fターム(参考)】
3G024AA55
3G024BA23
3G024FA07
3J011BA02
3J011KA02
3J011MA03
3J011NA01
3J033AA05
3J033AB03
3J033BA02
3J033BB02
3J033EB03
3J033GA03
(57)【要約】
本発明は、シェル形軸受の輪郭を定める2つの半円形セグメント(1)を備えた内燃機関用のシェル形軸受に関し、シェル形軸受は、シェル形軸受の少なくとも1つのセグメント(1)の内面に沿って長手方向に中央に延びる油溝(2)を備え、油溝(2)は、シェル形軸受の体積の10%までの割合の体積を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シェル形軸受の輪郭を定める2つの半円形セグメント(1)を備えた内燃機関用のシェル形軸受であって、
前記シェル形軸受の少なくとも1つのセグメント(1)の内面に沿って長手方向に中央に延びる一定の油溝(2)を備え、
前記油溝(2)が、前記シェル形軸受の体積の10%までの割合の体積を備える
ことを特徴とする、シェル形軸受。
【請求項2】
前記油溝(2)が、台形(3)、長方形(4)、及び正方形(5)のうちの1つの形状を含む
ことを特徴とする、請求項1に記載のシェル形軸受(1)。
【請求項3】
前記油溝(2)が、アルミニウム又は青銅の基材により構成されている
ことを特徴とする、請求項1に記載のシェル形軸受(1)。
【請求項4】
前記セグメント(1)の内面が、コーティングを含むことを特徴とする、請求項1に記載のシェル形軸受(1)。
【請求項5】
前記油溝(2)が、1mm以上7mm以下の幅(A)を有することを特徴とする、請求項1に記載のシェル形軸受(1)。
【請求項6】
前記油溝(2)が、0.1mm以上2mm以下の深さ(B)を有することを特徴とする、請求項1に記載のシェル形軸受(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関用のシェル形軸受に関する。具体的には、本発明は、作動するときに、内燃機関の作動条件に適合する油の流れを維持すると同時に利用される油の流れを低減するように最適化された油溝を備えるシェル形軸受に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関は、本質的に、1つ以上のシリンダと、クランク軸組立体又はクランク軸組立体とを備えるエンジンブロックを備え、クランク軸組立体は、1つ以上のヘッドに関連付けられ、クランク軸組立体は、ピストン、コネクティングロッド、及びクランク軸によって構成される。
【0003】
コネクティングロッドは、ピストンをクランクシャフトに相互接続する部分であり、シリンダの内部におけるピストンの交互の直線運動をクランクシャフトの連続的な角運動に変換する。コネクティングロッドは、基本的には、コネクティングロッドヘッドと呼ばれる大きな孔又はアイを備え、ここで、クランクシャフト、ステム又は本体、及びコネクティングロッドフットと呼ばれる小さな孔又はアイが関連付けられ、それは、ガジオン又はピンによってピストンに取り付けられる。
【0004】
内燃機関の作動中、ピストンは、直線的かつ往復的に移動する。それぞれのコネクティングロッドは、各ピストンと接続して移動し、クランクシャフトに関連するそのヘッドは、クランクシャフトの角運動をもたらす円運動を表す。
【0005】
内燃機関の正確な機能を実現可能とするためには、クランクシャフトと内燃機関の他のコンポーネントとの間の接触が、軸受、より一般的にはシェル形軸受又はブッシュとして知られる軸受によって実現されることが必要である。その具体的な構成がどのようなものであっても、それらは一般に滑り軸受として知られている。
【0006】
内燃機関では、摺動軸受は、(i)エンジンブロックに対するクランクシャフト軸受として、(ii)クランクシャフトに対するコネクティングロッド軸受として、及び(iii)カムシャフト軸受として、とりわけ他のあまり一般的でない用途として利用され得る。
【0007】
具体的には、クランクシャフト上で利用するために開発された軸受は、シェル形軸受と呼ばれる。一般に、シェル形軸受は、主に鋼鉄である、鉄金属の2つのセグメントを備え、各セグメントは、半円形又は「C」字形の半分を形成し(コネクティングロッドへの取付を容易にする目的を有する)、2つのセグメントは、スリーブと同様に、環状形状で関連付けられる。
【0008】
シェル形軸受の外面は、変形することなく、そのハウジングとの強固な接触を可能にし、その正しい支持を確実にし、摩耗(摩擦)によって発生する熱の正しい放散を提供し、このようにして組立体の過熱を防止することができる、硬度特性を呈する。
【0009】
逆に、シェル形軸受の内面は、例えば、特に、銅又はアルミニウムをベースとする合金などのいくつかの金属合金によって構成され得るコーティングを含み、良好な順応性に加えて、摩耗及び摩擦に対する耐性を常に求め、内燃機関の過酷な運転条件下を含む長い作動寿命を提供する。
【0010】
シェル形軸受は、それ自体が摩擦低減の機能を実現することができるが、可動部(クランクシャフト)とシェル形軸受の内面との間に潤滑剤を追加することによって、その性能が大幅に改善される。この理由から、シェル形軸受の設計の主な目的の1つは、一般に、可変かつ高衝撃荷重下で、これらの表面間に油の皮膜を確立し、維持することである。
【0011】
通常の動作では、クランクシャフトとシェル形軸受の内面とは、流体潤滑の条件下で、それらの間に形成された油のフィルムによって互いに分離された状態に維持される。
【0012】
この点において、この油膜の最大化は、クランクシャフトと軸受との間の接触を防止するために、シェル形軸受及び他の構成要素の作動寿命において支配的である。したがって、求められるのは、内燃機関の潤滑システムの特性に適合する、可能な限り大きな厚さの油膜を提供するようなシェル形軸受を設計することである。
【0013】
こうした点を踏まえ、特許文献1は、部分的な油溝、すなわち、シェル形軸受のセグメントの180°の全範囲の約45°を通って延びるセクションをそのセグメントの1つに備えるシェル形軸受を指す。
【0014】
しかしながら、部分的な油溝は、油膜の最大化を可能にせず、言い換えれば、従来技術の油溝は、その断面がシェル形軸受のセグメント全体に及ばないという事実によって、最良の油膜を提供にしないことが観察される。
【0015】
特許文献2及び特許文献3は、シェル形軸受のセグメントの1つにおいて、シェル形軸受のセグメントの全範囲の180°を通って延在する可変油溝を備えるシェル形軸受に言及している。
【0016】
しかしながら、機能的ではあるが、従来技術で見出される、この解決策は、シェル形軸受の最良の可能な性能を達成するような最適な油溝を設定しない。
【0017】
これは、シェル形軸受の油溝のバリエーションが、シェル形軸受に関連するクランクシャフト及びコネクティングロッド組立体の流体力学的潤滑の状態に直接影響を及ぼすためである。
【0018】
その結果として、内燃機関のためのシェル形軸受が必要となり、そのセグメントの1つには、シェル形軸受に関連するクランクシャフトとコネクティングロッドの組立体のより良好な性能を得るために、シェル形軸受のセグメントの180°の範囲を通って延在する一定の油溝を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】米国特許出願公開第10072699号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第8905639号明細書
【特許文献3】中国特許出願公開第100580261号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明の目的は、油の流れを低減するように最適化され、油が内燃機関の作動状態に適切に維持される、油溝を備える内燃機関用シェル形軸受を提供することである。
【0021】
油の流れの減少条件下で油膜の改善された条件をもたらす特定の分野/体積を備えた油溝を含む、内燃機関用のシェル形軸受の規定もまた、本発明の目的である。
【0022】
さらに、本発明の目的は、コストを増加させることなく軸受のための油の需要が低減される、内燃機関における利用のためのシェル形軸受を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0023】
従来技術の欠点を克服することを目的として、本発明の目的は、シェル形軸受の輪郭を定める2つの半円形セグメントを備える内燃機関用のシェル形軸受によって達成され、シェル形軸受は、シェル形軸受の少なくとも1つのセグメントの内面に沿って長手方向にかつ中央に延びる一定の油溝を備え、油溝は、シェル形軸受の体積の10%までの割合の体積を備える。
【0024】
本発明の目的はまた、台形、長方形、及び正方形のうちの1つの形状を有する油溝を備えるシェル形軸受によっても達成される。
【0025】
さらに、本発明の目的は、アルミニウム又は青銅の基材よりなる、油溝を含むシェル形軸受によって達成され、基材は被覆されているか又は被覆されていない。
【0026】
以下、図面に示す実施形態の一例に基づいて、本発明をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1a】従来技術のシェル形軸受の第1のセグメントの斜視図である。
【
図1b】従来技術のシェル形軸受の第2のセグメントの斜視図である。
【
図2】本発明に係るシェル形軸受のセグメントの斜視図である。
【
図3】
図2に示すシェル形軸受のセグメントの油溝の種類を示す図である。
【
図4】シミュレーションテストの結果を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
従来技術において既に明らかにされているように、シェル形軸受は、クランクシャフトとそれに関連するコネクティングロッドとの間の摩擦を低減する機能を有する滑り軸受を備える。
【0029】
さらに、シェル形軸受の性能は、可動部(クランクシャフト)とシェル形軸受の内面との間に潤滑剤を加えることによって著しく改善される。
【0030】
この理由から、シェル形軸受の設計の主要な目的の1つは、一般的に可変かつ高衝撃荷重下で、これらの表面間に油膜を確立し維持することである。
【0031】
したがって、クランクシャフトと軸受との間の接触を防止するためなどの油膜の最大化は、シェル形軸受及び他の構成要素の作動寿命において支配的である。
【0032】
図1a及び
図1bでは、内燃機関で使用するための従来技術のシェル形軸受の半円形セグメント、又は半割を示し、
図1aでは、シェル形軸受が、シェル形軸受のセグメントの全180°の約45°から約160°まで延在するセクションである部分油溝を備えるシェル形軸受が示され、
図1bでは、シェル形軸受のセグメントの全180°に沿って延在する可変油溝を備えるシェル形軸受が示される。
【0033】
このようにして、前述のように、従来技術の、これらのシェル形軸受は、シェル形軸受の最良の可能な性能を達成せず、最適な油溝を設定しない。
【0034】
対照的に、本発明の対象は、
図2に見られるように、シェル形軸受のセグメント1の全範囲の180°を通って延びる一定の油溝2を備えるシェル形軸受に関する。
【0035】
具体的には、本発明の対象は、シェル形軸受の少なくとも1つのセグメント1の内面に沿って長手方向に中央に延びる一定の油溝2を有するシェル形軸受の輪郭を定める2つの半円形セグメント1を備える、内燃機関用のシェル形軸受に関し、油溝2は、シェル形軸受の体積の10%までの割合の体積を備える。
【0036】
より具体的には、本発明の対象である、内燃機関用シェル形軸受の油溝2は、設計の条件及び適用に応じて、それぞれ1mm以上7mm以下、0.1mm以上2mm以下の間で変化し得る溝幅A及び溝深さBを含む。
【0037】
さらに、
図3に見られるように、シェル形軸受の油溝2は、一定であることに加えて、台形3、長方形4、及び正方形5のうちの1つの形状をさらに備えてもよい。
【0038】
これらの形状は、油溝2が一定であることに加えて、シェル形軸受の体積の10%までの体積を含むことを常に条件として、油溝2の任意の形状が、本発明の目的に従うように、本発明の目的に対して限定的ではないことを強調しなければならない。
【0039】
図4及び
図5に示されるように、本発明のシェル形軸受は、実行された試験、すなわちシミュレーション試験及び動力試験の結果によって、従来技術と区別されると有利である。
【0040】
具体的には、試験結果は、従来技術のシェル形軸受と比較して、本発明のシェル形軸受の油の圧力を増加させることに関して、より良い性能(動力試験)と共に、油の流れの減少(シミュレーション試験)を実証した。
【0041】
その結果、
図4に示すグラフ(シミュレーション試験)では、従来の設計(比較例)と比較して、本発明のシェル形軸受の油溝2の幾何学的形状について、油の流れが比較されている。観察され得るように、利用される油の流れの4%の減少が見出された。
【0042】
図5(動力試験)に示されるグラフに関連して、黒い四角は本発明のシェル形軸受の油溝2を指し、黒い菱形はそれぞれ、従来技術の可変及び部分油溝を指し、試験結果は、本発明のシェル形軸受のより良好な性能を証明している。
【0043】
その結果、本発明のシェル形軸受は、油の流れを低減し、内燃機関の作動の適切な条件を維持するために、最適化された油溝を提供すると有利である。
【0044】
それに加えて、代替構成では、シェル形軸受は、アルミニウム又は青銅の基材によって構成された油溝2を備え、セグメント1の内面は、コーティングを含むか、又はコーティングを含まない。
【0045】
したがって、本発明は、従来技術よりも有利なシェル形軸受を提供し、具体的には、従来技術の油溝と比較して、一定の油溝2を使用して油の流れの改善された状態を提供することによって、このように、コストを増加させることなく油の需要を低減する必要がある、内燃機関の利用を可能にする。
【0046】
さらに、本発明によってもたらされる解決策は、シミュレーション及び動力試験によって検証されており、その結果は、本発明のシェル形軸受の利点を実証している。
【0047】
好ましい実施形態の例が説明されたが、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲の内容によってのみ限定される他の可能なバリエーションを含み、可能な均等物がそこに含まれることが理解されるべきである。
【国際調査報告】