(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-31
(54)【発明の名称】ロボットマニピュレータの衝突時の力制限
(51)【国際特許分類】
B25J 19/06 20060101AFI20230324BHJP
【FI】
B25J19/06
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022549098
(86)(22)【出願日】2021-02-10
(85)【翻訳文提出日】2022-10-17
(86)【国際出願番号】 EP2021053129
(87)【国際公開番号】W WO2021160635
(87)【国際公開日】2021-08-19
(31)【優先権主張番号】102020103857.7
(32)【優先日】2020-02-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521181769
【氏名又は名称】フランカ エーミカ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】FRANKA EMIKA GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100122426
【氏名又は名称】加藤 清志
(72)【発明者】
【氏名】スペニンガー、アンドレアス
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707BS10
3C707KS16
3C707KS20
3C707KS21
3C707KS33
3C707KS35
3C707KT03
3C707KT06
3C707KX10
3C707LU06
3C707MS14
3C707MS27
3C707MS29
(57)【要約】
本発明は、以下のステップを有す、ロボットマニピュレータ(1)のための方法に関する:-ロボットマニピュレータ(1)が対象物(3)に作用させる最大許容力を指定する(S1)ステップ、-ロボットマニピュレータ(1)の基準点(7)の目標位置(5)を指定する(S2)ステップ、-基準点(7)の現在の位置を決定する(S3)ステップ、-バネ剛性に基づいて、およびロボットマニピュレータ(1)の基準点(7)の現在の位置と指定された目標位置(5)との間の差に基づいて人工バネ部品の現在の基準力を決定する、インピーダンス調整を実行するステップ、及び、-現在の基準力が指定された最大許容力を超えた場合に、ロボットマニピュレータ(1)が緊急制御プログラムを実行するように制御する(S5)ステップ。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットマニピュレータ(1)を操作するための方法であって、以下のステップ:
-前記ロボットマニピュレータ(1)が前記ロボットマニピュレータ(1)の近傍にある対象物(3)に対して及ぼし得る最大許容力を指定する(S1)ステップと、
-前記ロボットマニピュレータ(1)の基準点(7)の目標位置(5)を指定する(S2)ステップと、
-前記ロボットマニピュレータ(1)の前記基準点(7)の現在位置を決定する(S3)ステップと、
-インピーダンス調整を行うことにより、前記ロボットマニピュレータ(1)を制御し(S4)、前記インピーダンス調整は人工バネ部品を有し、前記人工バネ部品の現在の基準力は、指定されたバネ剛性と、前記ロボットマニピュレータ(1)の前記基準点(7)の前記現在位置と指定された前記目標位置(5)との差に基づいて決定されるステップと、
-前記現在の基準力が指定された前記最大許容力を超えた場合に、前記ロボットマニピュレータ(1)が緊急制御プログラムを実行するように制御する(S5)ステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記緊急制御プログラムは、前記ロボットマニピュレータ(1)の停止、前記ロボットマニピュレータ(1)の元の経路への戻し、すべての動きおよび/または力コマンドを終了して代替調節モード、特にアドミタンス調節および/または重力補整モードへの切り替え、のうち少なくとも1つの制御プログラムを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記最大許容力は、ユーザーインターフェース(9)でのユーザーの入力を検知することで指定される、請求項1~請求項2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項4】
前記最大許容力は、データベースを用いて指定され、身体部位の1つに関しそれぞれ関連する前記最大許容力を有する人体の複数の身体部位が前記データベースに格納される、請求項1~請求項2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
最大許容力は人体の特定の身体部位と前記ロボットマニピュレータ(1)との衝突のカメラベースの検出に基づいて選択され、人体の衝突した身体部位は前記データベースに格納されている身体部位に割り当てられ、割り当てられた身体部位に関連する前記最大許容力が選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記データベース内の全ての前記最大許容力、又は前記最大許容力から選択された1つは、前記ロボットマニピュレータ(1)のエッジ形状及び/又は前記ロボットマニピュレータ(1)によって実行されるタスク又はタスククラスに応じて適合される、請求項4~請求項5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記目標位置(5)は、前記ロボットマニピュレータ(1)の前記基準点(7)の所望の経路を指定することによって指定される、請求項1~請求項6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記ロボットマニピュレータ(1)の前記基準点(7)の前記現在位置は、冗長センサー信号に基づいて決定される、請求項1~請求項7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記ロボットマニピュレータ(1)の前記基準点(7)の前記目標位置(5)は、前記ロボットマニピュレータ(1)が前記対象物(3)の表面に対して前記目標位置(5)の方向に力を及ぼすように、前記対象物(3)の表面の背後に指定されている、請求項1~請求項8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
ロボットマニピュレータ(1)と、前記ロボットマニピュレータ(1)に接続された制御ユニット(11)とを有するロボットシステム(100)であって、前記制御ユニット(11)は、前記ロボットマニピュレータ(1)が前記ロボットマニピュレータ(1)の近傍にある対象物(3)に作用させることができる最大許容力を指定し、前記ロボットマニピュレータ(1)の基準点(7)の目標位置(5)を指定し、前記ロボットマニピュレータ(1)の前記基準点(7)の現在位置を決定し、インピーダンス調整を行って前記ロボットマニピュレータ(1)を制御するよう設計され、前記インピーダンス調整は人工バネ部品を有し、前記人工バネ部品の現在の基準力は、所定のバネ剛性に基づいて、および前記ロボットマニピュレータ(1)の前記基準点(7)の現在位置と指定された前記目標位置(5)との差に基づいて決定され、前記現在の基準力が所定の最大許容力を超えた場合に緊急制御プログラムを実行するために、前記ロボットマニピュレータ(1)を制御する、ロボットシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットマニピュレータの操作方法および対応するロボットシステムに関する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
本発明の目的は、ロボットマニピュレータを操作する際の安全性を向上させることである。
【0003】
本発明は、独立請求項の特徴から生じるものである。有利な改良および実施形態は、従属請求項の主題である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の第1の態様はロボットマニピュレータを操作するための方法に関し、以下のステップ:
-ロボットマニピュレータがロボットマニピュレータの近傍にある対象物に対して及ぼし得る最大許容力を指定するステップと、
-ロボットマニピュレータの基準点の目標位置を指定するステップと、
-ロボットマニピュレータの基準点の現在位置を決定するステップと、
-インピーダンス調整を行うことにより、ロボットマニピュレータを制御し、インピーダンス調整は人工バネ部品を有し、人工バネ部品の現在の基準力は、指定されたバネ剛性と、ロボットマニピュレータの基準点の現在位置と指定された目標位置との差に基づいて決定されるステップと、
-現在の基準力が指定された最大許容力を超えた場合に、ロボットマニピュレータが緊急制御プログラムを実行するように制御するステップと、
を含む。
【0005】
本発明の第1の態様による方法の全てのステップは、好ましくは、ロボットマニピュレータの制御ユニットによって実施される。特に、制御ユニットは、対応するステップを実行するために、対応するインターフェースと少なくとも1つのコンピューティングユニットとを有する。ロボットマニピュレータの基準点の現在位置は、特に位置決定手段、特に位置センサーの助けを借りて決定される。位置決定手段は、好ましくは、ロボットマニピュレータの関節角度センサー、外部カメラユニット、ロボットマニピュレータの関節角度センサーからのデータと外部カメラユニットからのデータとをセンサーデータフュージョンするセンサーフュージョンユニット、及びロボットマニピュレータの冗長関節角度センサー、のうちの少なくとも1つを含む。
【0006】
ロボットマニピュレータの環境からの対象物は、ワークピースや他の物体、あるいは生物、特に人間であってもよい。
【0007】
ロボットマニピュレータがロボットマニピュレータの近傍にある対象物に及ぼす最大許容力を表す「最大許容力」という用語は、原則として対象物に及ぼすことができる「最大許容圧力」という用語と置き換え可能である。力と圧力とは、表面積が異なるだけであり、力の概念が、対象物上の力の分布に関係なく、ロボットマニピュレータによる対象物上の絶対的な負荷を示すのに対し、圧力の概念は、最大許容力が伝達される対応する接触面積を考慮する。この点で、圧力と力とはいつでも相互に変換可能であり、特に接触圧力の基準領域は、ロボットマニピュレータの構造部分がその周囲の物体に完全に接触していると判断されることを前提に決定される。基準面の前の仮定に代わるものとして使用される保守的な仮定は、ロボットマニピュレータの部分の突出した形状、例えばエッジ、シェルセグメント、又はロボットマニピュレータのそれぞれの構造部分の他の突出した部分の表面の仮定である。
【0008】
ロボットマニピュレータ自体は、特に、関節によって互いに接続された多数のリンクを有し、アクチュエータ、好ましくは電気モータが、ロボットマニピュレータの関節においてロボットマニピュレータの対応する制御および可動性を可能にする。さらに、ロボットマニピュレータの遠位端にはエンドエフェクタが配置されることが好ましく、このエンドエフェクタは、例えば、ワークピースの機械加工などのタスクを実行するために使用される。下記及び上記で使用されるロボットマニピュレータの基準点という用語は、好ましくは、ロボットマニピュレータ上の、特に好ましくはロボットマニピュレータのエンドエフェクタ上の予め定義された位置として理解されるものである。ロボットマニピュレータの基準点は、このように、常に、ロボットマニピュレータの本体、特にロボットマニピュレータのエンドエフェクタに物理的に固定されていると考えられる。
【0009】
ロボットマニピュレータの基準点の現在位置は、特に、ロボットマニピュレータの基準点がどこにあるか、特に、固定座標系またはロボットマニピュレータのベースまたは台座に固定された座標系との関係で示す。言い換えれば、基準点の位置は、したがって、空間内の位置を指定し、特に、ロボットマニピュレータの基準点が空間内でどのように移動するか、または現在どこに位置しているかを示すものである。
【0010】
本発明の第1の態様によれば、ロボットマニピュレータは、特にタスクの実行時に、インピーダンス調整によって制御される。インピーダンス調整の実施結果は、ロボットマニピュレータのアクチュエータに対応するコマンド変数を持つターゲット変数となる。インピーダンス調整は、少なくとも1つの人工バネ部品を有する。さらに、インピーダンス調整は、現在の速度に対抗する抵抗力を発生させる人工的な減衰成分を持つことができる。人工バネ部品は、基準点の所定の目標位置からの偏向と、その偏向に伴う復元力との相関を生成する。この復元力を、上記と下記とで人工バネ部品の基準力と称する。このように、偏向と力とには明確な関係がある。目標位置からの偏向が大きいほど、基準力は大きくなる。基準力は復元的に配置され、基準点が目標位置から偏向した後に解放されると、基準力は目標位置の方向に復元する効果を発揮する。
【0011】
目標位置は、特に固定された座標系、すなわち空間的に固定され動かない座標系に対して静的に指定することができる。代替的に、目標位置は、一連の多数の目標位置を瞬間的に考慮する意味で理解することもできる。後者の場合、ロボットマニピュレータの基準点は所定の経路上を移動し、所定の経路上の各位置は、理想的には特定の時点における基準点の位置にも対応する。指定された移動経路の場合の目標位置からの偏向は、一方では、偏向が空間的に考えられた指定された経路の固定された目標位置から考えられるという単純な場合に対応し、代替的に好ましくは経路に沿って連続的に移動した目標位置からの現在の偏向とすることができる。後者の場合、空間上の予め定義された位置群によって経路が定義されるだけでなく、予め定義された位置に時間情報が付与されるため、予め定義された経路を「予め定義された軌道」と呼ぶことができる。指定された軌道からの偏向は、指定された経路上の現在位置に存在する目標点からの偏向を適宜含む。
【0012】
この偏向から求めた力が、指定された最大許容力を超えた場合、緊急制御プログラムを用いてロボットマニピュレータを制御する。
【0013】
したがって、最大許容力を超えているかどうかが、特に位置センサーからの位置情報のみに基づいて確認されることは、本発明の有利な効果である。最大許容力の確認には、安全重視な観点で取り扱いの難しい力センサーおよび/またはトルクセンサーは不要である。ロボットマニピュレータが対象物に及ぼす最大許容力を超えていないかどうかを、実装が容易な冗長位置判定手段、特に位置センサーを用いて冗長情報で確認することが有利である。
【0014】
有利な実施形態によれば、緊急制御プログラムは、ロボットマニピュレータの停止、ロボットマニピュレータをその元の経路への戻す移動、すべての移動および/または力コマンドを終了することによる代替コントローラモード、特にアドミタンス調節および/または重力補償モードへの切り替え、のうちの少なくとも1つの制御プログラムを含む。
【0015】
さらなる有利な実施形態によれば、最大許容力は、ユーザーインターフェースにおけるユーザーからの入力を検出することによって指定される。ユーザーインターフェースは、特にタッチセンサー式の画面、キーボードおよび/またはマウス、ボタン、スイッチ、音声操作などで操作可能な画面である。
【0016】
さらなる有利な実施形態によれば、最大許容力は、データベースを使用して指定され、人の多数の身体部位と、身体部位の1つに関するそれぞれの最大許容力が関連付けられてデータベースに格納される。データベースは、特に中央コンピュータユニットに格納され、特にロボットマニピュレータの制御ユニットは、対応するインターフェースを介してデータベースからデータを取得できるようになっている。身体部位は、特に人体の表面部位に関連して定義され、例えば、大腿部の前部、大腿部の後部、顔、胸部などである。本実施形態によれば、最大許容力がそれぞれの身体部位に割り当てられるので、ロボットマニピュレータが対応する身体部位に衝突した場合、ロボットマニピュレータによって異なる最大許容力が人の身体に加えられ得る。この実施形態は、有利には、人間の身体部位によって力や圧力に対する感受性も異なることを考慮している。
【0017】
さらなる有利な実施形態によれば、最大許容力は、人の特定の身体部位とロボットマニピュレータとの間の衝突のカメラベースの検出に基づいて選択され、人の衝突した身体部位は、データベースに格納されている身体部位に割り当てられ、割り当てられた身体部位に関連する最大許容力が選択される。カメラベースの衝突検出の利点は、ロボットマニピュレータと人との衝突する身体部位を容易に検出できることである。この衝突する人の身体部位に応じて、関連する最大許容力をデータベースからわずかな労力で有利に決定することができる。
【0018】
さらなる有利な実施形態によれば、データベース内のすべての最大許容力または最大許容力のうちの選択された1つは、ロボットマニピュレータのエッジ形状に応じて、および/またはロボットマニピュレータによって実行されるべきタスクまたはタスククラスに応じて適合される。特に、ロボットマニピュレータのエッジがより尖り、鋭くなった場合に、最大許容力を減少させるという調整である。ロボットマニピュレータのこのようなより尖った鋭いエッジは、ロボットマニピュレータの鈍く丸い形状と比較して、人物とロボットマニピュレータとの衝突においてこの人物にとってより不快であり、またこの対象物とのロボットマニピュレータとの衝突で対象物を容易に損傷させてしまう。調整には次の2つのオプションがある:計算量が少ない第1の変形例では、衝突の影響を受ける身体部位と関連する最大許容力がまずデータベースから選択され、この選択された力が調整される。第2の変形例では、現在問題となっている人の身体部位に対する許容力のデータベースで選択された値をさらに調整する必要がなく、そのまま採用できるように、データベース内のすべてのエントリが連続的に調整される。
【0019】
さらなる有利な実施形態によれば、目標位置は、ロボットマニピュレータの基準点の所望の経路を指定することによって指定される。ロボットマニピュレータの基準点の所望の経路を指定することは、多数の目標位置を指定することと理解できるが、より簡便には、所望の経路上の単一の目標位置の経過と理解し、所望の経路と所定の時間情報とを合わせて所望の軌道と呼ぶことができる。後者の場合、目標位置からの偏向とは常に、基準点の望ましい軌道上における現在の目標位置からの偏向を指す。有利には、最大許容力を超えているかどうかをチェックする方法は、ロボットマニピュレータの基準点によって所望の経路が横断されている間にも実施することができ、特に、基準力に対するロボットマニピュレータの意図的ではない又は計画外の停止も検出されるような方法で、実施することができる。なぜなら、ロボットマニピュレータを静止させたり減速させたりしている間、目標位置の位置は望ましい経路を進み続け、必然的に目標位置からの基準点の偏向が大きくなり、基準力が最大許容力を超えて緊急制御プログラムが実行されるまで、その偏向は続くからである。
【0020】
さらなる有利な実施形態によれば、ロボットマニピュレータの基準点の現在位置は、冗長センサー信号に基づいて決定される。例えば、ロボットマニピュレータの関節の複数の位置センサーなど、同じ種類のセンサーから冗長センサー信号を供給することができる。しかし、冗長センサー信号の概念は、異なる測定原理を排除するものではなく、例えば、ロボットマニピュレータの関節上の関節角度センサーからの測定値は、外部カメラユニットからのセンサー信号と融合することもでき、外部カメラユニットの検出領域は、ロボットマニピュレータの周囲とロボットマニピュレータ自体とを完全に包含することが好ましい。
【0021】
さらなる有利な実施形態によれば、ロボットマニピュレータの基準点の目標位置は、対象物の表面の背後に指定され、ロボットマニピュレータが対象物の表面に目標位置の方向に力を及ぼすようにすることができる。本実施形態は、特に、ロボットマニピュレータによって力を加えようとする対象として、物質的な対象に対して好適に適用される。しかしながら、力調節のために力センサー及び/又はモーメントセンサーを使用せずに、本実施形態によれば、基準点の目標位置からのロボットマニピュレータの基準点の偏向に基づいて対応する基準力を推測するために、インピーダンス調整の助けを借りて上記及び下記のストラテジが使用される。対象物(上記では物質的な対象ともいう)の表面に近づいた場合、すなわち、目標点を対象物の方向にさらに移動させた場合、ロボットマニピュレータと対象物との接触はある地点で発生する。このまま目標点を対象物表面の後方に仮想移動させると、対象物表面の抵抗によりロボットマニピュレータが追従できず、対象物表面にあるロボットマニピュレータの基準点の現在位置と、さらに移動させた基準点の目標位置との間に偏向が生じてしまう。その結果、ロボットマニピュレータは対象物に力を加えることになる。この力(基準力)が最大許容力を超える場合、緊急制御プログラムが実行される。この実施形態は、有利には、ロボットマニピュレータによって対象物に所望の力を及ぼす可能性も提供する。
【0022】
本発明の他の態様は、ロボットマニピュレータと、ロボットマニピュレータに接続された制御ユニットとを有するロボットシステムに関し、制御ユニットは、ロボットマニピュレータによってロボットマニピュレータの周囲の領域内の対象物に及ぼされ得る最大許容力を指定し、ロボットマニピュレータの基準点の目標位置を指定し、ロボットマニピュレータの基準点の現在の位置を決定し、インピーダンス調整を実行することによってロボットマニピュレータを制御し、インピーダンス調整は、人工バネ部品を有し、人工バネ部品の現在の基準力は、予め定められたばね剛性に基づいて、ロボットマニピュレータの基準点の現在の位置と指定された目標位置との差に基づいて決定され、現在の基準力が予め定められた最大許容力を超える場合、緊急制御プログラムを実行するようにロボットマニピュレータを制御するように設計される。
【0023】
提案されたロボットシステムの利点と好ましい改良は、提案された方法と関連して上記でなされた記述の類推的かつ対応する移転から生じるものである。
【0024】
さらなる利点、特徴、および詳細は、以下の説明から明らかになり、その中で、場合によっては図面を参照しながら、少なくとも1つの例示的な実施形態が詳細に説明される。同一、類似、および/または機能的に同一の部品には、同一の参照番号を付す。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】
図1は、本発明の例示的な実施形態による方法を示し、および、
【
図2】
図2は、
図1による方法を実行するために使用されるロボットシステムを示す。
【0026】
図中のイラストは模式的なものであり、縮尺どおりではない。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1は、ロボットマニピュレータ1を操作するための方法を示し、以下のステップ:
-ロボットマニピュレータ1がロボットマニピュレータ1の近傍にある対象物3に対して及ぼし得る最大許容力を指定するS1ステップと、
-ロボットマニピュレータ1の基準点7の目標位置5を指定するS2ステップと、
-ロボットマニピュレータ1の基準点7の現在位置を決定するS3ステップと、
-インピーダンス調整を行うことにより、ロボットマニピュレータ1を制御しS4、インピーダンス調整は人工バネ部品を有し、人工バネ部品の現在の基準力は、指定されたバネ剛性と、ロボットマニピュレータ1の基準点7の現在位置と指定された目標位置5との差に基づいて決定されるステップと、
-現在の基準力が指定された最大許容力を超えた場合に、ロボットマニピュレータ1が緊急制御プログラムを実行するように制御するS5ステップと、
を含む。
【0028】
この
図1で説明したような方法は、
図2のロボットシステム100で実行される。
図1にはない上記参照符号は、したがって、
図2を直接参照している。以下、
図2のロボットシステム100を参照しながら、その方法をより詳細に説明する。
【0029】
図2は、
図1の方法を実施するためのロボットシステム100を示す。ロボットシステム100は、ロボットマニピュレータ1と、ロボットマニピュレータ1に接続された制御ユニット11とを有する。制御ユニット11は、ロボットマニピュレータ1が対象物3、ここでは具体的には人体3との衝突の影響を受ける人体3の身体部位に作用させ得る最大許容力を指定する。この場合、まずロボットマニピュレータ1の関節にあるトルクセンサーで衝突を検出する。これに対し、影響を受ける身体部位は、カメラベース、すなわち、外部のカメラシステム(図示せず)に基づいて決定される。本実施例では、人体3の肘である。制御ユニット11は、人体3の肘に加えられる可能性のある最大許容力をデータベースに問い合わせる。このデータベースの最大許容力は、ユーザーインターフェース9を介してユーザーによって指定される。ユーザーインターフェース9は、ロボットマニピュレータ1の制御ユニット11に接続されるユーザーコンピュータである。対応する身体部位、すなわち人体3の肘には、データベース上で対応する最大許容力が割り当てられている。この最大許容力が読み出される。また、制御ユニット11は、ロボットマニピュレータ1の基準点7の現在目標位置5を指定するようになっているので、衝突により、ロボットマニピュレータ1のエンドエフェクタに配置されていると考えられるロボットマニピュレータ1の基準点7の現在位置の偏向が大きくなっていくことになる。この基準点7の連続的な目標位置5は、その指定された軌道上でそれに応じて継続される。このロボットマニピュレータ1の基準点7の現在位置は、制御ユニット11によって連続的に決定される。さらに、ロボットマニピュレータ1は、その制御ユニット11によってインピーダンス調整を行うことによって制御され、インピーダンス調整は、人工バネ部品を有し、人工バネ部品の現在の基準力は、指定されたバネ剛性に基づいて、およびロボットマニピュレータ1の基準点7の現在の位置と規定の目標位置5との差に基づいて決定されている。この基準力が、衝突の影響を受ける身体部位に関連する最大許容力を超える場合、緊急制御プログラムを実行する。緊急制御プログラムには、衝突までに実行した経路にロボットマニピュレータを一時的に戻し、現在の姿勢のままロボットマニピュレータ1全体を停止させるというものがある。
【0030】
本発明は、好ましい例示的な実施形態によってさらに詳細に例示および説明されてきたが、本発明は、開示された例によって限定されず、本発明の範囲から逸脱することなく、当業者によって他の変形形態をそこから導き出すことができる。したがって、考えられる変形形態が多数存在することは明らかである。例として言及された実施形態は、実際には例を表すだけであり、保護の範囲、可能な用途、または本発明の構成を制限するものとして決して解釈されるべきではないことも明らかである。むしろ、前述の記述および図の説明は、当業者が例示的な実施形態を実施することを可能にし、開示された本発明の概念を知っている当業者は、明細書のより広範な説明など、特許請求の範囲およびそれらの法的同等物によって定義される範囲から逸脱することなく、例えば、例示的な実施形態で引用される個々の要素の機能または配置に関して、様々な変更を行うことができる。
【0031】
1:ロボットマニピュレータ
3:対象物
5:目標位置
7:基準点
9:ユーザーインターフェース
11:制御ユニット
100:ロボットシステム
S1:指定
S2:指定
S3:決定
S4:制御
S5:制御
【国際調査報告】