(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-31
(54)【発明の名称】センサ較正の検証
(51)【国際特許分類】
G01N 21/27 20060101AFI20230324BHJP
A61B 5/1495 20060101ALI20230324BHJP
A61B 5/1459 20060101ALI20230324BHJP
【FI】
G01N21/27 F
G01N21/27 Z
A61B5/1495
A61B5/1459
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022549272
(86)(22)【出願日】2021-02-16
(85)【翻訳文提出日】2022-10-06
(86)【国際出願番号】 GB2021050372
(87)【国際公開番号】W WO2021165662
(87)【国際公開日】2021-08-26
(32)【優先日】2020-02-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521478072
【氏名又は名称】サイロジカ コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】バーウェル、ニコラス ポール
(72)【発明者】
【氏名】クレイン、バリー コリン
(72)【発明者】
【氏名】マッケンジー、アラスデア アラン
(72)【発明者】
【氏名】パーキンス、ロバート
(72)【発明者】
【氏名】サガー、プラヴェーン
【テーマコード(参考)】
2G059
4C038
【Fターム(参考)】
2G059AA01
2G059BB13
2G059CC04
2G059EE01
2G059EE07
2G059EE11
2G059GG02
2G059JJ17
2G059KK01
4C038KK05
4C038KK08
4C038KL01
4C038KL07
(57)【要約】
試料中の分析物の濃度とのセンサ4による検知物質9の光学特性の測定との較正された関係によって表される、センサ4の較正40を検証する方法であって、検知物質9の上記光学特性は、上記試料中の上記分析物の上記濃度とともに変化するスペクトルを有し、スペクトルは、上記光学特性が上記分析物の濃度とともに変化しない等吸収波長λを有し、上記方法は、検知物質9が上記試料に曝露されている間に光の3つ以上の波長で上記光学特性の測定を行うステップS10と、上記光学特性の上記測定が上記較正された関係と不一致であるかどうかを判定するステップS16と、上記光学特性の上記測定が上記較正された関係と不一致であることに応答して警告信号を出力するステップS18とを含む方法が提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料中の分析物の濃度とセンサによる検知物質の光学特性の測定との間の較正された関係によって表される、前記センサの較正を検証する方法であって、前記検知物質の前記光学特性は、前記試料中の前記分析物の前記濃度とともに変化するスペクトルを有し、前記スペクトルは、前記光学特性が前記分析物の濃度とともに変化しない等吸収波長を有し、
前記方法は、
前記検知物質が前記試料に曝露されている間に光の3つ以上の波長で前記光学特性の測定を行うステップと、
前記光学特性の前記測定が前記較正された関係と不一致であるかどうかを判定するステップと、
前記光学特性の前記測定が前記較正された関係と不一致であることに応答して警告信号を出力するステップと
を含む方法。
【請求項2】
前記方法は、前記較正された関係に従って前記測定から前記試料中の前記分析物の濃度測定値を導出するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記較正された関係は、前記濃度と、一対の波長での前記光学特性の測定間の比率との関係を含み、
前記濃度測定値を導出するステップは、2つの波長での前記光学特性の前記測定間の比率を算出するステップと、前記較正された関係に従って前記比率から前記濃度測定値を導出するステップとを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記濃度測定値は、前記等吸収波長で行われていない前記光学特性の2つの測定間の比率を用いて算出された測定値を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記較正された関係から前記光学特性の前記測定の偏差測定値を求めるステップと、
前記偏差測定値が所定の閾値を超える場合、前記光学特性の前記測定が前記較正された関係と不一致であると判定するステップと
をさらに含む、請求項1から4までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記較正された関係に従って種々の波長での前記測定から前記試料中の前記分析物の複数の濃度測定値を導出するステップをさらに含み、前記偏差測定値は、前記複数の濃度測定値間の変動測定値である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記較正された関係は、前記濃度と、各対の波長での前記光学特性の測定間の複数の比率との間の関係を含み、
前記試料中の前記分析物の複数の濃度測定値を導出するステップは、前記各対の波長での前記光学特性の前記測定間の比率を算出するステップと、前記較正された関係に従って前記比率から前記複数の濃度測定値を導出するステップとを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記変動測定値は変動係数である、請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
前記3つ以上の波長のうちの1つは前記等吸収波長である、請求項1から8までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記3つ以上の波長のうちの1つは、前記検知物質の前記光学特性の前記スペクトルが最大又は最小を有する波長である、請求項1から9までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記光学特性は、吸収及び発光のうちの一方であり、前記スペクトルは、それぞれ吸収スペクトル及び発光スペクトルのうちの一方である、請求項1から10までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記光学特性は発光であり、3つ以上の異なる波長で前記光学特性の測定を行うステップは、前記3つ以上の波長の各波長について、
第1の波長の光を用いて前記検知物質を励起するステップと、
前記3つ以上の異なる波長の前記各波長で前記検知物質が発した光の強度を測定するステップと
を含み、前記第1の波長は、前記3つ以上の波長のそれぞれについて同じである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記光学特性は吸収であり、3つ以上の異なる波長で前記光学特性の複数の測定を行うステップは、前記3つ以上の波長の各波長について、
前記3つ以上の波長の前記各波長で光を用いて前記検知物質を励起するステップと、
第2の波長で前記検知物質が発した光の前記強度を測定するステップと
を含み、前記第2の波長は、前記3つ以上の波長のそれぞれについて同じである、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記光学特性は吸収であり、3つ以上の異なる波長で前記光学特性の複数の測定を行うステップは、前記3つ以上の波長の各波長について、
前記3つ以上の波長の前記各波長で光を用いて前記検知物質を照射するステップと、
前記3つ以上の波長の前記各波長で前記検知物質が透過した光の強度を測定するステップと
を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記検知物質は、平衡状態にある2つの種を含み、前記2つの種間の平衡は、前記試料中の前記分析物の前記濃度に依存する、請求項1から14までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記分析物は、二酸化炭素、及び水素イオンのうちの一方である、請求項1から15までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記試料は血液又は間質液を含む、請求項1から16までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記検知物質は発光性化合物を含み、任意選択的に、前記発光性化合物は蛍光性化合物である、請求項1から17までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記検知物質は、8-ヒドロキシピレン-1,3,6-トリスルホン酸を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記光学特性の前記測定を行うステップは、複数の時点で生の測定を行うステップと、前記生の測定を時間平均化するステップとを含む、請求項1から19までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記分析物の前記濃度と前記光学特性の前記測定との間の前記較正された関係を求める初期較正ステップをさらに含む、請求項1から20までのいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサの較正を検証する方法に関する。特に、本発明は、検知物質の光学特性を測定するセンサの較正を検証することに関する。
【背景技術】
【0002】
環境中の、ガス状及び非ガス状の双方のいくつかの異なる物質の混合物を含み得る特定の分析物の濃度を求めることができることが、多くの領域において望ましい。例えば、透析治療のような又は集中治療での患者の監視のようないくつかの臨床設定では、患者の血液中の二酸化炭素濃度又はカリウム若しくはナトリウム等のイオン濃度をリアルタイムで正確に求めることができることが重要であり、救急治療設定における臨床医に、連続的なリアルタイム測定データを供給することは、多くの場合、治療管理をガイドする手段として極めて有益である。別の例は、食品産業での制御された環境の監視であり、そこでは、酸素又は汚染物質ガスの存在が、食品の腐敗を引き起こすリスクの原因となるため、望ましくない可能性がある。
【0003】
或る既知の種類のセンサは、発光性化合物、例えば、標的分析物の濃度に依存する特性を有するルミネセンスを有する蛍光有機色素を使用する。分析物を含む試料に発光性化合物が曝露されている間に該発光性化合物を励起するとともにそのルミネセンスを測定することによって、試料中の分析物の濃度を求めることができる。この種のセンサは、連続して動作されることができ、そのため、分析又は他の同様に面倒な手技のために、試料、例えば血液の試料又は食品が保存されている雰囲気の試料を定期的に採取する必要がないという利点を有する。他のシステムは、検知物質による光の透過を測定し、これを用いて試料中の分析物の濃度を求めることができる。
【0004】
しかしながら、センサによって報告される分析物濃度の値は、エラーが生じやすい。分光光度計及び蛍光光度計の使用が過去50年にわたって推進されてきており、以前において分析エラーを生じさせた変数の多くが減らされてきた。これらエラーは一般に、検出システム内における光源、検出器、及び電子ノイズからの計器ドリフトによって引き起こされていた。検出化学反応がないブランク試料が分析物からいかなる吸収又は蛍光干渉も自動的に参照する、ダブル・ビーム方式分光光度計及び蛍光光度計もまた、多くの測定におけるエラーを減らしてきた。しかしながら、これらの種類のシステムのいくつかは、扱いにくいとともに保守及び運転にコストがかかる可能性がある。
【0005】
安価なファイバ光学部品デバイスの出現が、信号安定性の必要性を再び強調しているが、その理由は、これらのデバイス、特に、重症患者における分析物の侵襲的又は半侵襲的な連続測定に向けたデバイスの多くが、長期の時間期間にわたって使用されるからである。これらの場合、長時間にわたる、低レベルのドリフトの結果、非常に不正確な測定が生じ得る。これらのファイバ光学部品システムにおけるドリフトは多くの場合、LED又はレーザ・ダイオード等の光源からの光の強度又は波長におけるドリフト、検出システムの感度におけるドリフト、及び検出化学反応のフォトブリーチングによるものである。ドリフトを低減するためにいくつかの技法が開発されてきたが、センサによって報告される値は依然として長時間にわたってドリフトする可能性がある。
【0006】
特に、目下、センサによって報告される濃度の値がドリフトしているかいないか、またどれくらいドリフトしているのかを確立することは困難である。センサが作業者の知らないうちに誤ったデータを提供する場合、このデータに基づいて治療決定を行うことは患者にとって危険である可能性がある。これを回避するために、センサ装置は、ドリフトの推定された値に基づいた時間間隔でセンサの定期的な再較正を必要とし得る。これらの時間間隔は、保守的に選択されやすく、自身のセンサを頻繁に再較正する必要がある作業者に過度の負担を生じさせる。さらに、値が較正と較正との間に予期されるよりも速くドリフトを生じないという保証がない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Ge et al., “High-stability non-invasive autoclavable naked optical CO2 sensor”, Biosensors and Bioelectronics, 2003:18:857-865
【非特許文献2】Ge et al., “Study on low-cost calibration-free pH sensing with disposable optical sensors”, Analytica Chimica Acta, 2012:734:79-87
【非特許文献3】Rovati et al, “Plastic Optical Fiber pH Sensor Using a Sol-Gel Sensing Matrix”, MOH. YASIN Sulaiman W. Harun and Hamzah AROF, eds. Fiber Optic Sensors
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、報告された値が信頼されることができるものであるという確証を臨床医及び他の作業者に提供するために、また、再較正が必要とされるときを示すために、センサによって報告された値を検証する方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様によれば、試料中の分析物の濃度とセンサによる検知物質の光学特性の測定との較正された関係によって表される、センサの較正を検証する方法であって、上記検知物質の上記光学特性は、上記試料中の上記分析物の上記濃度とともに変化するスペクトルを有し、スペクトルは、上記光学特性が上記分析物の濃度とともに変化しない等吸収波長を有し、上記方法は、上記検知物質が上記試料に曝露されている間に光の3つ以上の波長で上記光学特性の測定を行うことと、上記光学特性の上記測定が上記較正された関係と不一致であるかどうかを判定することと、上記光学特性の上記測定が上記較正された関係と不一致であることに応答して警告信号を出力することと、を含む方法が提供される。
【0010】
等吸収波長を有するスペクトルの3つ以上の測定を行うことによって、測定が前の較正された関係と一致するかどうかが判定されることができる。較正された関係は、三次元空間における表面を定義すると考えられることができ、この空間の次元は、種々の波長での3つの測定である。表面上の点は、較正された関係と一致する3つの値の組合せを表す。したがって、光学特性の測定が、この空間に、較正された関係によって定義された表面上の点にある(又は上記点に十分に近い)点を画定するかどうかを判定することによって、測定が較正された関係と一致するかどうかが判定されることができる。3つの測定を有することにより、すべての波長に等しく影響するドリフト又はエラーと、種々の波長に異なるかたちで影響するドリフトとを方法が検出することが可能となる。較正が無効であると判定された場合に警告信号を出力することによって、作業者にかかる負担が減るが、その理由は、再較正がもっぱら、測定が実際に無効であるというリスクがある場合に行われるからである。さらに、作業者は、警告が提示されない場合に測定が有効であるという確証を与えられる。
【0011】
一実施例では、方法は、上記較正された関係に従って上記測定から上記試料中の上記分析物の濃度測定値を導出することをさらに含む。濃度を求めることは、作業者に報告するために必要とされる可能性が高く、そのため、それを検証プロセスの一部として算出することは、濃度測定値が、較正を検証するのに必要とされることができ、較正目的で較正を生の測定値と別個に関連付ける必要がないことを意味する。
【0012】
一実施例では、上記較正された関係は、上記濃度と、一対の波長での上記光学特性の測定間の比率との関係を含み、上記濃度測定値を導出するステップは、2つの波長での上記光学特性の上記測定間の比率を算出することと、上記較正された関係に従って上記比率から上記濃度測定値を導出することと、を含む。2つの測定間の比率を用いることは、乗法因子によりすべての波長での測定に影響するエラーの特定の共通の原因を補償することができるため、有利である。
【0013】
一実施例では、複数の濃度測定値は、上記等吸収波長で行われていない上記光学特性の2つの測定間の比率を用いて算出された測定値を含む。等吸収波長での測定は濃度とともに変化しないため、等吸収波長から離れての測定の比率を用いることは、分析物の種々の濃度で算出された比率間のコントラストを高めることができる。
【0014】
一実施例では、上記方法は、上記較正された関係から上記光学特性の上記測定の偏差測定値を求めることと、上記偏差測定値が所定の閾値を超える場合、上記光学特性の上記測定が上記較正された関係と不一致であると判定することと、をさらに含む。偏差測定値は、較正された関係からドリフトのレベルの明示を与え、方法が警告を出力すべきである十分に定義された適切なレベルを設定するのに用いられることができる。
【0015】
一実施例では、上記方法は、上記較正された関係に従って種々の波長での上記測定から上記試料中の上記分析物の複数の濃度測定値を導出することをさらに含み、上記偏差測定値は、上記複数の濃度測定値間の変動測定値である。3つの測定を用いて、複数の濃度測定値は、それら測定のうちの種々の測定又はそれら測定の組合せを用いて求められることができる。これらの濃度測定値が一致しない場合、このことは、較正された関係がもはや有効でないという明示である。
【0016】
一実施例では、上記較正された関係は、上記濃度と、各対の波長での上記光学特性の測定間の複数の比率との関係を含み、上記試料中の上記分析物の複数の濃度測定値を導出するステップは、上記各対の波長での上記光学特性の上記測定間の比率を算出することと、上記較正された関係に従って上記比率から上記複数の濃度測定値を導出することと、を含む。上述したように、比率は、いくつかのタイプの共通のセンサ・エラーの排除を考慮する。比率が不一致となる場合、これにより、他のタイプのエラーが測定を無効にするのに十分に大きいものとなっていることを方法が検出することが可能となる。
【0017】
一実施例では、上記変動測定値は変動係数である。このことは、絶対光度が実質的に異なる場合であっても、他の組の値の変動と同等の一組の値の変動測定値をもたらす便利な技法である。
【0018】
一実施例では、上記3つ以上の波長のうちの1つは上記等吸収波長である。等吸収波長で直接測定することにより、特定のタイプのエラーがより早く検出されることが可能となるが、その理由は、等吸収波長での測定の値は濃度とともに変化しないはずであり、したがって、変化はエラーを示すからである。
【0019】
一実施例では、上記3つ以上の波長のうちの1つは、上記検知物質の上記光学特性の上記スペクトルが最大又は最小を有する波長である。これにより種々の濃度での測定間に最も大きいコントラストがもたらされ、それにより、測定の感度及び信頼性が高まる。
【0020】
一実施例では、上記光学特性は、吸収及び発光のうちの一方であり、上記スペクトルは、それぞれ吸収スペクトル及び発光スペクトルのうちの一方である。吸収スペクトル及び発光スペクトルは、光学特性を角度分解測定又は他の複雑な測定技法を必要とすることなく測定することができるため、光学特性の測定に好都合な選択である。
【0021】
一実施例では、上記光学特性は発光であり、3つ以上の異なる波長で上記光学特性の測定を行うことは、上記3つ以上の波長の各波長について、第1の波長の光を用いて上記検知物質を励起することと、上記3つ以上の異なる波長の上記各波長で上記検知物質が発した光の強度を測定することと、を含み、上記第1の波長は、上記3つ以上の波長のそれぞれについて同じである。この測定方式は、単波長の光が装置によって生成されるとともに検知物質に透過されることを必要とするだけであり、それにより、装置内に必要とされる発光体の構成が単純になる。上記測定方式は、検知物質が単一の励起帯を有するが複数の波長で発光する場合に最も適切である。
【0022】
一実施例では、上記光学特性は吸収であり、3つ以上の異なる波長で上記光学特性の複数の測定を行うことは、上記3つ以上の波長の各波長について、上記3つ以上の波長の上記各波長で光を用いて上記検知物質を励起することと、第2の波長で上記検知物質が発した光の上記強度を測定することと、を含み、上記第2の波長は、上記3つ以上の波長のそれぞれについて同じである。この測定方式は、光が種々の励起波長について同じ波長で発せられるため、単一の検出器を必要とするだけである。上記測定方式は、検知物質が複数の異なる励起帯で励起されることができるが単一の波長で発光する場合に最も適切である。
【0023】
一実施例では、上記光学特性は吸収であり、3つ以上の異なる波長で上記光学特性の複数の測定を行うことは、上記3つ以上の波長の各波長について、上記3つ以上の波長の上記各波長で光を用いて上記検知物質を照射することと、上記3つ以上の波長の前記各波長で前記検知物質が透過した光の上記強度を測定することと、を含む。この測定方式もまた、単一の検出器を必要とするだけであり、また、検知物質から発せられた光を捕捉することが難儀である物理的な構成において有利である。
【0024】
一実施例では、上記検知物質は、平衡状態にある2つの種を含み、上記2つの種間の平衡は、上記試料中の上記分析物の上記濃度に依存する。平衡状態にある2つの種は、検知物質のスペクトルにおいて等吸収点をもたらし得、2つの種の異なる光学特性により、分析物の濃度に対する変化の検出が可能となる。
【0025】
一実施例では、上記分析物は、二酸化炭素、及び水素イオンのうちの一方である。これらは、生物学的実施又は臨床実施において測定するのに特に望ましい分析物であり、測定の有効性の確証を有することは、患者治療にとって重大であり得る。
【0026】
一実施例では、上記試料は血液を含む。血液は、臨床設定において一般的に採取される媒体であり、身体内の多くの重要な物質のレベルを示す。
【0027】
一実施例では、上記検知物質は、8-ヒドロキシピレン-1,3,6-トリスルホン酸を含む。これは、血液中の二酸化炭素濃度の検出を考慮する、すぐに利用可能なpH感受性色素である。
【0028】
一実施例では、上記光学特性の上記測定を行うことは、複数の時点で生の測定を行うことと、上記生の測定を時間平均化することと、を含む。時間平均化は、方法が検出するように最初に意図されている長期型のドリフトを示さない測定の過度変化に対する方法の感度を下げることができる。これにより、誤った警告の発生が低減する。
【0029】
一実施例では、上記分析物の上記濃度と上記光学特性の上記測定との上記較正された関係を求める初期較正ステップをさらに含む。初期較正は、後の測定と比較するベースラインと、センサ装置の較正の初期の有効性における確証とを提供する。
【0030】
ここで、本発明の実施例を添付の図面を参照しながら非限定的な例として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本発明が実施されることができるセンサ装置の概略図である。
【
図2】血液中の分析物濃度の体外測定のためのセンサ・プローブの可能な構成の概略図である。
【
図3】血液中の分析物濃度の血管内測定のためのセンサ・プローブの可能な構成の概略図である。
【
図4】血液中の分析物濃度の皮下測定のためのセンサ・プローブの可能な構成の概略図である。
【
図5】pHの値の範囲にわたる、8-ヒドロキシピレン-1,3,6-トリスルホン酸(HPTS:8-Hydroxypyrene-1,3,6-trisulfonic acid)の吸収スペクトルのグラフである。
【
図6】pHの異なる値でのHPTSの吸収スペクトル及び発光スペクトルの双方を示すグラフである。
【
図7】種々のpH値での、代替的な検知物質であるフェノールレッドの吸光度スペクトルのグラフである。
【
図8】種々のpH値での、さらなる代替的な検知物質であるセミナフトローダフルオル(SNARF(登録商標)(SNARF:seminaphtharhodafluor))の発光スペクトルのグラフである。
【
図9】較正された関係を求める方法のフローチャートである。
【
図10a】試料中の分析物の濃度と種々の波長で行われた光学特性の測定の比率との較正された関係のグラフを示す。
【
図10b】試料中の分析物の濃度と種々の波長で行われた光学特性の測定の比率との較正された関係のグラフを示す。
【
図10c】試料中の分析物の濃度と種々の波長で行われた光学特性の測定の比率との較正された関係のグラフを示す。
【
図10d】試料中の分析物の濃度と種々の波長で行われた光学特性の測定の比率との較正された関係のグラフを示す。
【
図11】センサの較正を検証する方法のフローチャートである。
【
図12】光学特性の測定への分析物濃度の変化の影響を示すグラフである。
【
図13】光学特性の測定への一定のドリフトの影響を示すグラフである。
【
図14】較正された関係と不一致となった、光学特性の測定を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本開示は、センサの較正を検証する方法を提供する。
図1は、本明細書に開示される方法が用いられることができる種類のセンサ装置を示す。そのようなセンサ4の一例は、二酸化炭素濃度を検知するpHセンサとすることができる。センサ装置は、検知物質9と、分析システム30とを含む、センサ4を含む。
【0033】
センサ4は、検知物質9の光学特性を測定するのに用いられる光を発するように構成された光源10を含む。例えば、検知物質9が発光性化合物である場合、光源10は、発光性化合物を励起するのに必要とされる波長及び強度で光を発することが可能な任意の光源とすることができる。例えば、光源10は、レーザ・ダイオード又はLEDを含むことができる。光源10は、連続光源、振動強度を用いる光源、又はパルス光源であってもよい。
【0034】
センサ4は、検知物質から受ける光を検出するように構成された検出器14をさらに含む。検出器14は、検知物質9が発する波長で光を受けることに応答して信号を生成することが可能な任意のデバイスとすることができる。例えば、検出器14は、電荷結合デバイス、能動画素センサ、フォトダイオード、又はフォトレジスタを含むことができる。検出器14によって出力される信号は、検知物質9から受ける光の強度を表すことができる。
【0035】
センサ4は、検知物質9への光及び該発光性化合物からの光を誘導するように配置された光ファイバ16を含む。光ファイバは、全内部反射を用いて光が該ファイバから損失されないようにする。このことは、光が効率的に検知物質へ伝送及び該検知物質から伝送されることができ、信号を向上させ、より高品質でより確実な測定に備えることを意味する。それらはまた、小さく且つ可撓性にされることができ、そのため、患者の体内に挿入されねばならないセンサに特に適している。例えば、光ファイバ16は、PMMAファイバ光学部品を含むことができる。光ファイバ16は、光導波路として機能し、適切な場合、任意の他の好適な光導波路が光ファイバ16の代わりに用いられることができる。
【0036】
センサ4は、検知物質9が設けられているセンサ・プローブ8を含む。センサ・プローブ8は、センサ4のうち試料に直接曝露されるコンポーネントとすることができる。一実施例では、試料は血液を含む。センサ4は、センサ・プローブ8を光源10及び検出器14に接続するように構成されたコネクタ21をさらに含む。センサ4の一部又は全部は使い捨てとすることができる。このことは、センサ4が患者の体内で分析物濃度を測定するのに使用される臨床状況において簡便である。そのような場合では、センサ4のうち患者に挿入される部分は滅菌されていなければならず、患者間で再使用され得ない。例えば、検知物質9を含むセンサ・プローブ8のみが使い捨てとすることができ、検出器14又は光源10は使い捨てでなくともよい。
【0037】
分析システム30は、センサ4を制御するとともに検出器14から受信した信号の処理を行うことによって、方法を実行するように構成されている。分析システム30は、センサを較正するように、及び/又は、センサ4による測定に基づいて分析物の濃度測定値を導出するように構成されることもできる。分析システム30は、有線接続、例えばシリアル若しくはイーサネット(登録商標)接続、又は、センサ装置用に特別に設計された別のインタフェースの種類を介して、センサ4に接続されることができる。代替的に、ブルートゥース(登録商標)又はWi-Fi等の無線接続が用いられてもよい。分析システムは、検出器14によって出力される信号を受信し、それら信号をセンサ4に送信して、例えば光源10を制御することもできる。
【0038】
図2~
図4は、臨床状況において、また、センサ4がセンサ・プローブ8を含む場合に用いる、センサ4の特定例の実施例を示す。
【0039】
図2は、センサ4がバイパス・センサである実施例を示す。そのようなセンサは、ポンピングされる血液中の分析物の濃度を監視するために、外部血液ポンプ内で使用されることができる。分析物濃度、特に酸素又は二酸化炭素の測定値は、例えば血液の適切な酸素供給レベルを維持するために、外部血液ポンプによる血液ポンピング速度の制御の一部として用いられることができる。この場合、使い捨てセンサ・プローブ8がバイパス・ループ61に取り付けられ、そのため、検知物質9が、バイパス・ループを通る血液に曝露される。コネクタ21は、使い捨てセンサ・プローブ8をセンサ4の残りの部分に接続する。サーミスタ又は別の好適な温度センサ20が、血液の温度を測定するためにセンサ・プローブ8内に取り付けられている。
【0040】
図3は、センサ4が血管内センサである実施例を示す。検知物質9は、カテーテルを介して患者に挿入される光ファイバ16の先端に位置付けられている。センサ・プローブ8は、温度センサ20とともにファイバ光学部品16を含む。センサ・プローブ8は、コネクタ21を介してセンサ4の残りの部分に接続されている。
【0041】
図4は、センサ4が間質液センサである実施例を示す。この場合、センサ4は、センサ・プローブ8と、外側部品54とを含む。センサ・プローブ8は皮膚52を穿刺し、間質液中の分析物濃度を測定する。皮膚52を穿刺するために格納式針が使用されることができ、センサ4は分析システム30に無線接続される。代替的に、分析システム30は外側部品54内に配置されてもよい。皮膚温度を測定するために温度センサが設けられる。この温度センサは、皮膚52に貫入しているセンサ・プローブ8内に設けられることができるか、又は、外側部品54内において皮膚52の近くに設けられることができる。
【0042】
検知物質9は、試料中の分析物の濃度とともに変化するスペクトルを有する光学特性を有する任意の好適な物質とすることができ、このスペクトルは、光学特性が分析物の濃度とともに変化しない等吸収波長を有する。検知物質9は、ポリマー層内に固定されたセンサ・プローブ8内に設けられることができる。検知物質9の光学特性は、吸収強度とすることができ、スペクトルは、吸収スペクトルとすることができる。
【0043】
いくつかの実施例では、検知物質9は発光性化合物である。発光性化合物の光学特性は、ルミネセンス発光強度(蛍光発光強度又は燐光発光強度等)とすることができ、スペクトルは、発光スペクトルとすることができる。発光性化合物の別の光学特性は、そのルミネセンス寿命(蛍光寿命又は燐光寿命等)とすることができる。
【0044】
検知物質9の量が少ない用途では、励起光の背景に対し検知物質9による吸収を検出することが困難である可能性がある。したがって、検知物質は、ルミネセンス発光スペクトルを有する発光性化合物であることが好ましい。特に、発光性化合物は、該発光性化合物が励起される波長範囲とは異なる波長範囲にわたって光を発することが好ましく、その理由は、これにより、励起光と検知物質から発せられた光とが容易に区別されるからである。
【0045】
検知物質9が発光性化合物である場合、ルミネセンス発光スペクトルは、蛍光発光スペクトル又は燐光発光スペクトルとすることができる。しかしながら、燐光発光スペクトルは、スピン禁制遷移に関係するため、蛍光発光スペクトルよりも一般的に弱い。したがって、検知物質9に励起光への強い光応答を与えるために、発光性化合物は、該発光性化合物が分析物と相互作用すると変化する蛍光発光スペクトルを有することが好ましい。
【0046】
したがって、検知物質9は蛍光体を含む発光性化合物であることが好ましい。蛍光体は、蛍光発光による光を吸収及び光を再び発することができる部分である。通常、蛍光体は、電磁スペクトルの可視領域内の光を吸収する。蛍光体は通常、電磁スペクトルの可視領域内の光も発する。「電磁スペクトルの可視領域」とは、約400nm~約700nmの波長を有する電磁放射線を意味する。蛍光体はまた、電磁スペクトルの可視領域外で放射線を吸収及び/又は発することもできる。したがって、好ましい実施例では、検知物質9は、蛍光体を含む発光性化合物であり、蛍光体の蛍光発光スペクトルは、分析物の存在下で変化する。
【0047】
発光性化合物の光学特性(発光性化合物の発光スペクトル等)の変化は、分析物との相互作用によって引き起こされる。分析物と発光性化合物との相互作用の可能な形態は、
発光性化合物のプロトン化と、
発光性化合物の脱プロトン化と、
発光性化合物の励起状態の衝突消光と、
発光性化合物の孤立電子対への結合と、
結合を容易にするための任意の他の非共有結合相互作用と、
を含む。
【0048】
相互作用の他の形態が可能である。これらの相互作用は、発光性化合物の1つ又は複数の光学特性を変え、これら特性は光学的に検出されることができる。
【0049】
いくつかの場合において、分析物と発光性化合物との相互作用が発光性化合物の衝突消光に関与する場合のように、分析物は発光性化合物に結合しない。しかしながら、他の場合では、イオン結合又は共有結合等の化学結合が、分析物と発光性化合物との間に形成されることができる。そのような場合、発光性化合物は受容体部分を含むことができる。受容体部分は、分析物に結合することができる部分である。受容体部分が一般に、好都合には分析物に結合し、他の化学種には結合しないため、発光性化合物は受容体部分を含むことが好ましいであろう。したがって、受容体部分を含む発光性化合物は一般に、分析物に特に関連付けられた光信号を生成し、この光信号は他の種からの干渉に対しては低い感度を有する。種々の異なる分析物についての検知物質9として使用されることができる発光性化合物の多くの例を、単に例示目的で以下に挙げる。
【0050】
一実例では、発光性化合物は、式(I)、すなわち
【化1】
の部分すなわちピラニン又はその誘導体を含むことができる。例えば、非特許文献1を参照のこと。この部分は、ヒドロキシ基以外の任意の点においてポリマー層のポリマーに結合されることができる。式(I)の化合物は、別個の受容体及び蛍光体を含まず、蛍光体自体が受容体として働く。式(I)の部分は、CO
2が水の存在下で酸(炭酸)を形成するため、酸又はCO
2を検出するのに用いられることができる。酸(CO
2によって形成される炭酸等)の存在下で、式(I)の部分のヒドロキシ基がプロトン化される。しかしながら、酸又はCO
2の濃度が下がるにつれ、ヒドロキシル部分が脱プロトン化し、蛍光体中全体で非局在化した負電荷を残し、化合物の蛍光発光スペクトル及び蛍光吸収スペクトルを変える。この変化は、式(I)の部分を含む発光性化合物が相間移動剤とともに高分子マトリックス中に固定される場合に特に促進される。例示的な相間移動剤は、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムヒドロキシドである。
【0051】
用いられることができる好適なピラニン誘導体は、式(II)、すなわち、
【化2】
の部分である。
【0052】
例えば、非特許文献2を参照のこと。
【0053】
別の実例では、発光性化合物は、式(III)、すなわち
【化3】
の部分又はその誘導体を含むことができる。この部分は、ポリマー層のポリマーに任意の点において結合されることができる。式(III)の化合物は、式(I)の部分及び(II)の部分と同様にして挙動する、すなわち、別個の受容体及び蛍光体を含まず、蛍光体自体が受容体として働く。酸(CO
2によって形成される炭酸等)の存在下で、式(III)の部分のヒドロキシ基がプロトン化される。しかしながら、酸又はCO
2の濃度が下がるにつれ、ヒドロキシル部分が脱プロトン化し、蛍光体中全体で非局在化した負電荷を残し、化合物の蛍光発光スペクトル及び蛍光吸収スペクトルを変える。式(III)の化合物の吸光度スペクトルは、
図8に示されている。
【0054】
他の発光性化合物が知られており、多くの場合、商業的に入手可能であり、これら化合物もまた、発光性化合物として使用されることができる。いくつかの実施例では、検知物質は、8-ヒドロキシピレン-1,3,6-トリスルホン酸(HPTS)を含む。
【0055】
酸又はCO
2を検出するために使用されることができる発光性化合物のさらなる例は、以下、すなわち
【化4】
である。
【0056】
この発光性化合物の発光スペクトル及び励起スペクトルは、
図7に示されている。例えば、非特許文献1を参照のこと。
【0057】
酸又はCO
2を検出するのに使用されることができる発光性化合物のなおもさらなる例は、以下、すなわち
【化5】
である。
【0058】
この発光性化合物の発光スペクトル及び励起スペクトルは、
図7に示されている。例えば、非特許文献3を参照のこと。
【0059】
上記から、センサ4が多種多様な分析物の光学検知に使用されることができることは明確であろう。分析物は例えば、イオン、ガス、無機化合物又は有機化合物であり得る。分析物は試料中にガスとして存在していてもよく、又は代替的に、別の物質、例えば、間質液又は血液等の液体中に溶解又は懸濁されていてもよい。分析物は、有機化合物である場合、一般に、小有機化合物、例えば、20個未満の炭素原子を含む有機化合物である。小有機化合物の特定の例は、糖類、糖アルコール、及び、尿素又はケトン等の代謝産物を含む。分析物の特に好ましい例は、CO2、及び酸(H+、すなわちpHセンサ)である。
【0060】
本明細書に開示される方法は、試料中の分析物の濃度とセンサ4(例えば、
図1のセンサ4)による検知物質9の光学特性の測定との較正された関係によって表される、センサ4の較正の検証に関する。上記に説明されたセンサのような個々のセンサ4は、それらの製造及び挙動にばらつきがあり、それらばらつきは、センサ装置によって報告される値が正確であるようにするために使用前に較正される必要がある。較正された関係は、
図9に示された方法のような方法を用いて求められることができる。
【0061】
図9は、分析物の濃度と光学特性の測定との較正された関係を求める方法を示す。ステップS20において、検知物質9が分析物を含む試料に曝露されている間に検知物質9の光学特性が測定され、ステップS22において、試料中の分析物の濃度が独立した方法によって測定される。例えば、試料は、特別に調製された較正試料とすることができ、試料中の分析物の濃度は既に分かっているものとすることができる。代替的に、試料はその後、分析物の濃度を独立して求めるために既知の挙動を有する別のデバイスを用いて分析されることができる。ステップS20及びS22は、種々の濃度の分析物を有する多くの種々の試料について繰り返される。必要とされる繰り返し数は、較正方式及び所要の精度に応じて様々である。例えば、分析物の濃度に伴う、検知物質9の光学特性の変化が、特定のモデルに従うことが分かっている場合、モデルのパラメータを求めるのに繰り返しはほんの僅かしか必要とされ得ず、正確な数はモデルに応じて決まる。代替的に、そのようなモデルが存在しない場合、較正測定から確実に内挿されるために他の濃度での挙動を可能にするのに多数の繰り返しが必要とされ得る。
【0062】
ステップS24において、分析システム30が光学特性の測定された値と濃度とを用いてセンサ4の較正を求める。これは、モデルのパラメータを求めるためにステップS20及びS22において行われた測定にモデルを適合させることを含み得るか、又は、較正測定間に内挿を含み得る。ステップS24の出力は、検知物質9が新たな試料に曝露されている間に検知物質9の光学特性の測定から新たな試料中の分析物の濃度を求めるのに用いられることができる較正された関係を含む較正データ40である。
【0063】
較正データ40の一例が
図10に示されている。
図10(a)は、増加する濃度の二酸化炭素に曝露された蛍光二酸化炭素センサから得られた吸収スペクトルを示す。3つの種々の励起波長、すなわち、405nm(強度が二酸化炭素濃度とともに増加する)、417nm(等吸収点)、及び469nm(強度が二酸化炭素濃度とともに減少する)で発光性化合物9を励起すると、該化合物の蛍光出力は540nmで測定された。スペクトルのこれらの組を用いて、種々の波長での測定について
図10(b)~
図10(d)に示されたグラフのようなグラフの形態の較正された関係を定義することができる。
図10(b)~
図10(d)は、
図9の方法のステップS24の際に求められた較正された関係に従って、
図10(a)における405nm、417nm及び469nmで行われた光学特性の測定の比率の関数として分析物の濃度を示す。後で説明されるように、種々の波長での2つの測定の比率を用いることは、いくつかの実施例において利点を有する。
【0064】
較正された関係は、試料中の分析物の種々の濃度に対応する、
図10(a)に示されたスペクトルのような、光学特性のスペクトルを定義する。濃度の他の考えられ得る値に対応する、連続した一連のそのようなスペクトルが、
図10(a)に示されたスペクトルの間、上、及び下に存在し、それらスペクトルのすべてが、較正された関係によって定義される。それにより、較正された関係は、分析物の濃度と光学特性の測定とに関する。以下でさらに詳細に説明されるように、本明細書に開示される較正を検証する方法は、光学特性の3つ以上の測定を行うことを含む。光学特性の3つの測定が行われると、較正された関係は、三次元空間内に表面を画定し、この空間の次元は、3つの測定のそれぞれの考えられ得る値であり、表面上の点は、較正された関係と一致する3つの値の組合せを表す。表面上の各点は、分析物の濃度の関連値を有する。これは、測定が較正された関係と一致するかどうかを判定するのに使用されることができる。
【0065】
センサ4の連続動作中、多くの因子が光学特性の測定にドリフトを生じさせ得る。いくつかの実施例では、光源10は、測定が行われる各波長について1つずつ、複数の別個の光源を含み、これら光源のいずれも、較正後に波長又は強度がドリフトする可能性があり、検出器が受ける光の測定された強度に変化を誘発する可能性がある。さらに、較正後、2つの吸収ピークのうちのいずれかに(光学的又は化学的)干渉がある場合、これらもまた、強度に明らかな変化を生じさせる。蛍光を発する、試料中に存在する外部材料もまた、エラーを生じさせる可能性があり得る。連続測定中、エラーに起因する、光学特性の測定の変動と、分析物の濃度の変化に起因する、測定の「真の」変動とを区別することは困難である。エラーは、分析物濃度の変化を隠す可能性があるか、又は、分析物濃度が変化したという誤った表示をもたらす可能性がある。このことは、患者に治療を投与するためにデータに従う臨床医にデータが提示される場合に極めて重大である。
【0066】
検知物質9が等吸収点を有するスペクトルを有するため、このタイプのエラーが検出され得る。等吸収波長では、光学特性は、分析物の濃度とともに変化しない。一実施例では、検知物質9は、平衡状態にある2つの種を含み、2つの種間の平衡は、試料中の分析物の濃度に依存する。この平衡により等吸収点が生じる。
図5は、418nmでの等吸収点A
iを示す。これは、
図12~
図14ではλ
iによって概略的に例示されている。等吸収点は、2つの種を含む検知物質9による光の吸収がそれら種間の平衡が変化する際に一定のままである波長である。
図5の例では、光の吸収は、pHが変わる場合であっても一定のままである。これは以下のように説明されることができる。
【0067】
検知物質の吸光度は、ランベルト・ベールの法則、すなわち
A=εlc
方程式1
によって表され、
式中、
Aは、特定の波長での吸収であり、
εは、特定の波長での検知物質の吸光率又はモル吸光係数であり、
lは、検知物質を通る光路長であり、
cは、検知物質の濃度である。
【0068】
吸光度は、方程式2、すなわち、
【数1】
を用いて、測定された強度から求められ、
式中、
I
0は、検知物質に入る光の強度であり、
Iは、検知物質を出る光の強度である。
【0069】
図5の例では、検知物質9の分析濃度は、
c
1+c
2=c
方程式3
のように全体的平衡状態で一定であり、
式中、c
1及びc
2は、検知物質9が含む平衡状態にある2つの種の濃度である。
【0070】
双方の種について光路長が同じであるとすると、所与の波長での検知物質の全体的吸光度は、
A=l(ε1c1+ε2c2)
方程式4
である。
【0071】
しかしながら、等吸収点において、2つの種の吸光率は同じである、すなわち、
ε1=ε2=ε
方程式5
である。
【0072】
したがって、等吸収点における吸光度は、
Ai=l(ε1c1+ε2c2)=lε(c1+c2)=lεc
方程式6
である。
【0073】
したがって、等吸収点における吸光度は、分析物濃度とともに変化しないが、等吸収波長での、光路長l、検知物質の分析濃度c、及び検知物質9の吸光率に左右される。これもまた、検知物質の発光が測定される場合に有効である。各種による発光は各種による吸光に比例し、そのため、発光スペクトルは、吸収スペクトルが等吸収点を示す同等の理由で等吸収点を示す。等吸収点の存在により、分析物濃度の変化は、等吸収点の上及び下の波長で光学特性の逆の変化を生じさせるが、その理由は、一方の種の濃度の減少が他方の濃度の増加を生じさせるからであり、逆もまた同じである。このことは、以下にさらに説明されるように、分析物濃度の変化に起因する変化と、エラーに起因する変化とを区別することが可能であることを意味する。
【0074】
図11は、この洞察を利用するセンサの較正を検証する方法を示す。較正は、
図9の方法を用いて求められるような較正された関係によって表される。一実施例では、方法は、例えば
図9の方法を用いて、分析物の濃度と光学特性の測定との較正された関係を求める初期較正ステップを含む。センサ4は、
図1に示されているようなセンサ4であり、検出器14と光源10とを含む。センサ・プローブ8は、上述した検知物質のような検知物質9を含み、センサ4は、検知物質9の光学特性を測定する。
【0075】
ステップS10において、方法は、検知物質が試料に曝露されている間に光の3つ以上の波長で光学特性の測定を行うことを含む。ステップS10において行われる測定は、検知物質9の特別な選択に或る程度依存する、種々のやり方で得られることができる。光学的特性が吸収である場合、ステップS10は、3つ以上の波長の各波長について、3つ以上の波長の上記各波長での光を用いて検知物質9を照射することと、3つ以上の波長の上記各波長で検知物質9が透過する光の強度を測定することと、を含む。
【0076】
検知物質9は好ましくは、発光性化合物であり、より好ましくは、蛍光性化合物である。ファイバ光学部品16を含むセンサ4は、単波長の光で励起されると、等吸収点を有する2つの重複する発光ピークを示す、単一の吸収ピークを有する蛍光性化合物とともに展開されている。この場合、光学特性は発光であり、ステップS10は、3つ以上の波長の各波長について、第1の波長の光を用いて検知物質9を励起することと、3つ以上の異なる波長の上記各波長で検知物質9が発した光の強度を測定することと、を含み、第1の波長は3つ以上の波長のそれぞれについて同じである。この実施は、発光スペクトルにおいて2つの重複するピークを生じさせるのに単波長の光のみが必要であるため、いくつかの状況において好ましいものであり得る。これにより光源10の複雑性が低減し、さらに、光源10からの出力のいかなる変化も発光ピークの双方に等しく影響する。これにより、変化が、以下でさらに記載されるレシオメトリック法によりエラーとして効果的に取り除かれることが可能となる。しかしながら、この実施タイプには、検出器14が種々の波長での光間を区別することができることが必要とされる。
【0077】
HPTS等の他の検知物質について、種々の波長での励起により結果として単一の発光ピークが得られる。例えば、
図7に例示されているように、HPTSを405nm、470nm、及び418nmで励起することによる信号により、結果として525nmでの単一の蛍光発光が得られる。3つの波長での光が時間的に分離されたパルスでもたらされる場合、3つの異なる波長での励起による蛍光信号が時間的に解析されることができ、各波長での励起による吸収が求められることができる。この場合、光学特性は吸収であり、ステップS10は、3つ以上の波長の各波長について、3つ以上の波長の各波長での光を用いて検知物質9を励起することと、第2の波長で検知物質9が発した光の強度を測定することと、を含み、第2の波長は3つ以上の波長のそれぞれについて同じである。このことは、検出器14がもっぱら光の強度を検出することができ、波長を検出することはできないが、光源10が複数の異なる波長で光を発することができることを必要とする場合に好ましいであろう。
【0078】
一実施例では、3つ以上の波長のうちの1つは等吸収波長である。上記で論じたように、等吸収点における吸光度は、等吸収点での、光路長l、検知物質の分析濃度c、及び検知物質の吸光率に直接左右される。3つ以上の波長のうちの1つが等吸収波長であるとともに等吸収点における吸光度が較正点で求められる場合、光路長及び検知物質の分析濃度に対する(例えばフォトブリーチング又は化学的干渉に起因する)いかなる変化も、等吸収点の変化を監視することによってその後の使用時に直接検出されることができる。
【0079】
一実施例では、3つ以上の波長のうちの1つは、検知物質の光学特性のスペクトルが最大又は最小を有する波長である。分析物濃度に応じての光学特性の変化は、スペクトルが最大又は最小を有する点で最も大きく、したがって、この実施例はさらにコントラストを高める。波長の選択は、特定の分析物濃度、例えばゼロで、スペクトルが最大又は最小を有するところを考慮することによってなされ得る。
【0080】
一実施例では、ステップS10は、複数の時点で生の測定を行うことと、これら生の測定を時間平均化することと、を含む。生の測定を時間平均化することは、光学特性の測定の変動又は過度変化に対する方法の感度を下げ、それにより、警告信号が誤って生成される可能性が低減する。
【0081】
ステップS12において、方法は、較正された関係に従って種々の波長での測定から試料中の分析物の複数の濃度測定値を導出することを含む。センサ4の較正は、分析物の濃度と光学特性の測定との関係を提供する。さらに、多くのシステムにおいて、濃度値は予め、ユーザへの報告のために算出される必要がある。したがって、測定が較正された関係と一致するかどうかを判定する上で濃度を用いることは、生の測定を用いる別個の比較はいっさい必要とされないことを意味する。しかしながら、いくつかの実施例では、方法は、濃度を算出するステップを含まなくともよく、測定が較正された関係と不一致であるかどうかの判定は、光学特性の測定に基づいて直接行われてもよい。
【0082】
ステップS12において、較正された関係は、濃度と各対の波長での光学特性の測定間の複数の比率との関係を含み、ステップS12は、各対の波長での光学特性の測定間の比率を算出することと、較正された関係に従ってそれら比率から複数の濃度測定値を導出することと、を含む。このことは、複数の測定値が特定のタイプのエラー又はドリフトを補償され、そのため、センサ4がこれらのエラーを補償するように再較正される必要がないことから、有利である。例えば、
図6に示されているように、405nm(A
1)及び470nm(A
2)においてHPTSの吸収ピークがある。したがって、
図5に示された2つのピークの比率について、方程式1を用いると、
【数2】
である。
【0083】
2つの濃度c
1及びc
2は、ピークが関連付けられる種に起因して2つのピークのそれぞれでの吸収が顕著であると仮定すると、上記で論じた検知物質が含む2つの種の濃度に対応する。双方の波長(特に双方が同じ光ファイバ16に沿って伝送される場合)での光について光路長が同じである以上、この条件はなくなり、比率は、この考えられ得る変数を排除し、それにより、例えば、光ファイバ16の温度関連の膨張及び収縮に起因して変化する光路長によって引き起こされ得る測定ドリフトが低減する。さらに、I=I
010
-Aであり、そのため、測定方法が、双方の波長で測定を行うのに同じ光源10が使用されるようなものである実施例では、光源10の強度I
0の変化はピークの比率にも影響せず、その理由は、I
0のいかなる変化もIの比例的な変化を生じるからである。したがって、再較正の頻度が減り、消費されるユーザ時間は少ない。比率を用いた結果が
図13に示されている。分析物濃度の各値について光学特性の一群の有効スペクトルが存在する。2つの実線は、例えば、光路長の種々の値又は光源10からの光の入射強度に対応する、分析物濃度C
1での2つの有効スペクトルを示す。同様に、点線は、分析物濃度C
2についてのそのような2つのスペクトルを表す。種々の濃度でのスペクトルに関して、例えば入射強度がとることができる値の全範囲にわたって中間スペクトルが存在する。しかしながら、測定の比率を用いて複数の濃度測定値を導出する場合であっても、これは、較正関係がその後の測定の間中に持続することを意味しない。他のエラーが、他の波長での測定からの3つ以上の波長のうちの1つでの測定に異なるかたちで影響する可能性があり、したがって、依然としてドリフトを生じさせる。したがって、比率が用いられる場合であっても較正を検証する必要性が依然としてある。
【0084】
一実施例では、複数の濃度測定値は、等吸収波長で行われていない光学特性の2つの測定間の比率を用いて算出された測定値を含む。等吸収波長での測定は分析物濃度とともに変化しないため、等吸収波長での測定ではない光学特性の2つの測定の比率を用いることは、分析物濃度が変化するにつれて比のコントラストを高め、それにより、濃度測定値の感度を高める。特に、光学特性の2つの測定間、すなわち、2つの測定のうちの一方が等吸収波長よりも大きい波長で行われ、2つの測定のうちの他方が等吸収波長よりも小さい波長で行われる、2つの測定間の比率を用いることは、コントラストのより大きな向上をもたらす。
【0085】
ステップS14において、方法は、較正された関係から光学特性の測定の偏差測定値を求めることを含む。
図11の方法において、偏差測定値は、ステップS12において算出された複数の濃度測定値間の変動測定値である。しかしながら、濃度測定値を算出することを含まない実施例では、偏差測定値は、光学特性の測定から直接算出されることができる。濃度測定値は、任意の特定の波長での測定が分析物の各濃度について異なる値を有するものとするように、各測定から個別に求められることができる。測定のうちの種々の測定を用いて求められた濃度測定値を比較することは、測定が較正された関係と一致するかどうかを判定する好都合なやり方を提供する。代替的に、3つ以上の波長のうちの1つが等吸収波長である実施例では、偏差測定値は、較正時の等吸収波長での光学特性の測定からの等吸収波長での光学特性の測定の偏差であり得る。
【0086】
一実施例では、偏差測定値は変動係数である。最も適切なものに応じて、他の変動測定値、例えば、或る範囲の濃度測定値、標準偏差、又は同等物が用いられてもよい。
【0087】
ステップS16において、方法は、光学特性の測定が較正された関係と不一致であるかどうかを判定することを含む。
図11の方法において、光学特性の測定は、ステップS14において求められた偏差測定値が所定の閾値を超える場合、較正された関係と不一致であると判定される。3つ以上の測定が較正された関係と一致する場合、ステップS14において求められる複数の濃度測定値は同じであるはずである。例えば、
図12において、λ
1での実線における黒点に対応する濃度は、λ
2での実線すなわちC
1における黒点に対応する濃度と同じとなる。しかしながら、λ
2での白点に対応する濃度は、光学特性のスペクトルが白点と交わる、C
1とC
2との間の濃度である。したがって、白点及び黒点から求められた濃度測定値は異なっており、一組としての測定は較正された関係と不一致であり、較正以降に何らかのドリフトが生じたことを示す。偏差測定値と所定の閾値との比較が有利であるが、その理由は、この所定の閾値が、それを超える測定が不一致であるとみなされる、十分に定義された閾値を示し、測定が経時にわたってどれくらいドリフトしたかの定量的測定値を提供するからである。したがって、センサ4によって報告された測定は、報告された値に著しいエラーを生じさせるほどにはドリフトがまだ大きくないことが分かっている場合に用いられ続けることができ、それにより、センサ4が再較正されねばならない頻度を減らす。
【0088】
図9の方法のステップS24に関して説明されたように、光学特性の3つの測定が行われると、較正された関係は、三次元空間における表面を定義し、この空間の次元は、3つの測定のそれぞれの考えられ得る値であり、表面上の点は、較正された関係と一致する3つの値の組合せを表す。したがって、より包括的に、ステップS16は、光学特性の測定が、この空間に、較正された関係によって定義された表面上の点にある(又は該点に十分に近い)点を画定するかどうかを判定することを含む。一実施例では、偏差測定値は、較正された関係によって定義された表面からの、光学特性の測定によって画定された点の最も短い距離の測定値である。例えば、3つ以上の波長での光学特性の測定(黒点によって表されている)が
図12の実線にあたる場合、分析物の濃度はC
1であると判定されることができる。光学特性の測定が点線にあたる場合、分析物の濃度はC
2であると判定されることができる。しかしながら、3つの異なる波長での光学特性の測定が、λ
1及びλ
iで黒点によって、また、λ
2で白点によって示される場合、3つの測定は較正によって定義されたスペクトルのいずれにもあたらず、これら測定は、較正された関係と不一致であると判定されることができる。測定が較正された関係と不一致であるかどうかの判定は、このやり方で、いくつかの実施例では光学特性の測定に直接基づいて、濃度測定値を算出することなく行われることができる。
【0089】
図11の方法では、ステップS12において導出される複数の濃度測定値は、2つの異なる波長での測定間の比率を用いて算出される。比率を用いての結果は、
図13に明示されている。分析物濃度の各値について光学特性の一群の有効スペクトルが存在する。2つの実線は、例えば、光路長の種々の値又は光源10からの光の入射強度に対応する、分析物濃度C
1での2つの有効スペクトルを示す。同様に、点線は、分析物濃度C
2についてのそのような2つのスペクトルを表す。種々の濃度でのスペクトルに関して、例えば入射強度がとることができる値の全範囲にわたって中間スペクトルが存在する。
図14に示されているように、3つの測定が、黒点によって示された測定である場合、考えられ得るスペクトルはいっさい測定と一致しておらず、測定は、レシオメトリック方式が用いられる場合であっても測定が較正された関係と不一致であると確かめられることができる。それにより、不一致の判定は、比率を用いて補償されることができないエラーについてのみ行われることができ、警告信号はもっぱら、補償されることができないドリフトが生じる場合に出力される。同様に、等吸収点における吸光度は、以下、すなわち、
【数3】
によって示される。
【0090】
較正において求められ、次いで、較正後に連続して測定及び比較される場合の比率、すなわち、
【数4】
及び
【数5】
は、光源によって生じたエラーを示す。これは、上記で論じたように、等吸収波長での光学特性の測定がもっぱら、分析物濃度ではなく、エラーを生じさせる因子に応じて変化するはずであるからである。したがって、A
1及びA
2における測定エラーは、A
3で求められたオフセットを利用することによって補正され得る。
【0091】
ステップS18において、方法は、光学特性の測定が較正された関係と不一致であることに応答して警告信号を出力することを含む。この警告信号は、センサ装置によって報告された値がもはや信頼され得ないことをユーザに警告し、それにより、例えば、臨床医が患者の血液中の特定の物質の濃度に関する誤解に基づいて臨床決定を行うことを防止する。警告信号は、センサ4が再較正される必要があることをユーザに警告する。したがって、再較正は、センサ4が信頼できる値をもはや報告しないほど実際にドリフトした場合にのみ行われる。これにより、必要ではない場合がある定期的な較正を行う時間の浪費が減る。警告は、任意の好適なやり方で提供されることができる。例えば、警告は、聴覚的な警告及び視覚的な警告のうちの一方又はそれらの組合せであってもよい。
【0092】
いくつかの実施例では、方法は、ユーザに確認サンプルをとることを促すことができる。光学特性の測定された値は次いで、較正定数からの予測された値と比較されて、補正乗数を算出して各個別の測定された値に適用することができ、したがって、エラーを補正するとともに監視を続けることを可能にする。
【0093】
検証プロセス時に行われる測定は、ユーザに報告される濃度測定値を生成するのに用いられるのと同じ測定とすることができる。したがって、一実施例では、方法は、較正された関係に従って測定から試料中の分析物の濃度測定値を導出することをさらに含む。これにより、監視又は任意の好適な措置の判定のために値がユーザに報告されることが可能となる。一実施例では、ユーザに報告される濃度測定値は、光学特性の3つ以上の測定を用いて算出される3つ以上の濃度測定値の平均とすることができる。
【0094】
一実施例では、較正された関係は、濃度と、一対の波長での光学特性の測定間の比率との関係を含み、濃度測定値を導出するステップは、2つの波長での光学特性の測定間の比率を算出することと、較正された関係に従ってその比率から濃度測定値を導出することと、を含む。上記で論じたように、測定間の比率を用いて濃度測定値を求めることは、特定のタイプのエラーを補償する上で利点を有する。したがって、値をユーザに報告する場合に用いることも同様に有利である。一実施例では、濃度測定値は、等吸収波長で行われたのではない光学特性の2つの測定間の比率を用いて算出された測定値を含む。これにより比のコントラストが増し、それにより、濃度測定値の感度が高まる。ユーザに報告された濃度測定値は、等吸収波長で行われたのではない光学特性の2つの測定間の比率を用いて直接算出されることができるか、又は、光学特性の異なる対の3つ以上の測定を用いてそれぞれ算出された複数の比率の平均とすることができる。
【国際調査報告】