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特表2023-513629両親媒性ポリマー、及び抗原を標的送達するためのナノ粒子の生成を改善するためのそれらの使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-31
(54)【発明の名称】両親媒性ポリマー、及び抗原を標的送達するためのナノ粒子の生成を改善するためのそれらの使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 9/107 20060101AFI20230324BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20230324BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20230324BHJP
   A61K 38/02 20060101ALI20230324BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20230324BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20230324BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20230324BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20230324BHJP
   A61P 7/06 20060101ALI20230324BHJP
   C07K 14/435 20060101ALN20230324BHJP
   C07K 7/08 20060101ALN20230324BHJP
【FI】
A61K9/107
A61K47/32
A61K47/02
A61K38/02
A61P37/02
A61P29/00
A61P19/02
A61P17/00
A61P7/06
C07K14/435 ZNA
C07K7/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022549327
(86)(22)【出願日】2021-02-16
(85)【翻訳文提出日】2022-10-14
(86)【国際出願番号】 EP2021053711
(87)【国際公開番号】W WO2021165227
(87)【国際公開日】2021-08-26
(31)【優先権主張番号】20157797.0
(32)【優先日】2020-02-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522324509
【氏名又は名称】トパス セラピューティクス ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【弁理士】
【氏名又は名称】水谷 馨也
(74)【代理人】
【識別番号】100175651
【弁理士】
【氏名又は名称】迫田 恭子
(74)【代理人】
【識別番号】100122448
【弁理士】
【氏名又は名称】福井 賢一
(72)【発明者】
【氏名】ディジゴウ レイナルド
(72)【発明者】
【氏名】ムンガルパラ ディシャ
(72)【発明者】
【氏名】ポールナー ヨハネス
(72)【発明者】
【氏名】セレシ ムハレム
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA17
4C076BB11
4C076CC04
4C076CC07
4C076CC14
4C076CC18
4C076DD21
4C076DD29
4C076EE15
4C076FF16
4C076FF70
4C084AA02
4C084BA17
4C084BA18
4C084BA42
4C084CA18
4C084MA22
4C084MA66
4C084NA14
4C084ZB071
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA17
4H045CA40
4H045DA86
4H045EA20
4H045EA50
(57)【要約】
本発明は、
a)数平均分子量(Mn)が20,000g/mol以下の両親媒性ポリマーを含むミセル、及びb)少なくとも1つのT細胞エピトープを含む少なくとも1つのペプチドを含むナノ粒子を提供する。本発明は更に、これらのナノ粒子を含む医薬組成物、及び特異的免疫応答を抑制するための組成物の使用を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノ粒子であって、
a)数平均分子量(Mn)が20,000g/mol以下の両親媒性ポリマーを含むミセルと、
b)少なくとも1つのT細胞エピトープを含む少なくとも1つのペプチドと、を含む、ナノ粒子。
【請求項2】
前記ナノ粒子が、前記ミセルによって少なくとも部分的にコーティングされた固体疎水性コアを更に含み、前記コアが、酸化鉄、CdSe/CdS/ZnS、銀及び金を含む群から選択される追跡可能な無機材料を含む、請求項1に記載のナノ粒子。
【請求項3】
前記ペプチドが、前記ミセルの外側に会合している、請求項1又は2に記載のナノ粒子。
【請求項4】
前記両親媒性ポリマーが、10,000g/mol以下、好ましくは6,000g/mol以下、最も好ましくは6,000~1,000g/molの数平均分子量(Mn)を有する、先行する請求項に記載のナノ粒子。
【請求項5】
前記両親媒性ポリマーが、以下の構成ブロックを含み、
式中、Rはヒドロカルビル基又は置換ヒドロカルビル基であり、好ましくはRはC4~C22アルキル基、好ましくはC8~C20アルキル基である、先行する請求項に記載のナノ粒子。
【請求項6】
Rが直鎖アルキル基、好ましくは直鎖C11~C17アルキル基であり、最も好ましくはRが直鎖ペンタデシル基である、請求項5に記載のナノ粒子。
【請求項7】
前記両親媒性ポリマーが、ポリ(マレイン酸-alt-1-オクタデセン)、ポリ(マレイン酸-alt-1-ドデセン)及びポリ(マレイン酸-alt-1-テトラデセン)を含む群から選択され、好ましくは、前記ポリマーが、ポリ(マレイン酸-alt-1-オクタデセン)であり、
前記ポリマーの数平均分子量が、6,000~1,000g/molである、先行する請求項のいずれかに記載のナノ粒子。
【請求項8】
前記ペプチドが、前記ミセルに共有結合しているか、又は非共有結合している、先行する請求項のいずれかに記載のナノ粒子。
【請求項9】
前記ナノ粒子が、6~7のpHで負に帯電している、先行する請求項のいずれかに記載のナノ粒子。
【請求項10】
前記ナノ粒子が、動的光散乱によって測定して、100~10nm、好ましくは50~10nm、より好ましくは20~40mの流体力学的直径を有する、先行する請求項のいずれかに記載のナノ粒子。
【請求項11】
請求項1から10に記載のナノ粒子を含む医薬組成物。
【請求項12】
請求項1から10に記載のナノ粒子を含む、特異的免疫応答の抑制に使用するための医薬組成物。
【請求項13】
前記応答が、自己免疫疾患、好ましくは尋常性天疱瘡、落葉状天疱瘡、後天性表皮水疱症、水疱性類天疱瘡、瘢痕性類天疱瘡、グッドパスチャー症候群、顕微鏡的多発血管炎、多発血管炎性肉芽腫症(肉芽腫、ウェゲナー)、血栓性血小板減少性紫斑病、免疫性血小板減少性紫斑病、ブドウ膜炎、HLA-B27関連急性前部ブドウ膜炎、多発性硬化症、視神経脊髄炎、I型糖尿病、脱力発作を伴う又は伴わないナルコレプシー、セリアック病、疱疹状皮膚炎、アレルギー性気道疾患/喘息、重症筋無力症、橋本甲状腺炎、自己免疫性甲状腺疾患、グレーブス病、自己免疫性甲状腺疾患、自己免疫性副甲状腺機能低下症、自己免疫性甲状腺疾患、抗リン脂質抗体症候群、自己免疫性アジソン病、自己免疫性溶血性貧血、慢性炎症性脱髄性多発性神経炎、ギラン・バレー症候群、自己免疫性好中球減少症、線状限局性強皮症、バッテン病、後天性血友病A、再発性多軟骨炎、アイザックス症候群(後天性神経性筋強直症)、ラスムッセン脳炎、モルバン症候群、スティッフパーソン症候群、悪性貧血、Vogt-小柳-原田症候群、原発性胆汁性肝硬変、自己免疫性I型肝炎、自己免疫性II型肝炎、全身性エリテマトーデス、リウマチ性関節炎、多発性筋炎/皮膚筋炎、シェーグレン症候群、強皮症、尋常性白斑及び円形脱毛症を含む群から選択される自己免疫疾患に関連する、請求項12に記載の特異的免疫応答の抑制に使用するための医薬組成物。
【請求項14】
ナノ粒子を生成する方法であって、
i)20,000g/mol以下の数平均分子量(Mn)を有する両親媒性ポリマーを得ることと、
ii)場合により、前記両親媒性ポリマーを精製することと、
iii)前記両親媒性ポリマーのミセルを形成することと、
iv)少なくとも1つのペプチドを添加して前記ナノ粒子を形成することと、を含む、方法。
【請求項15】
工程i)が、好ましくはラジカル開始剤として2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオニトリル)を使用するラジカル共重合合成工程である、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自己免疫疾患、アレルギー又は他の慢性炎症状態の予防及び治療において使用するための、並びに制御性T細胞を生成するためのナノ粒子を提供する。特に、本発明は、数平均分子量(Mn)が20,000g/mol以下の両親媒性ポリマーを含み、ナノ粒子を水溶性にするミセル、及び少なくとも1つのT細胞エピトープを含む少なくとも1つのペプチドを含むナノ粒子に関する。本発明はまた、ナノ粒子を含む医薬組成物に関する。医薬組成物は、特異的免疫応答の抑制が有益である疾患を治療又は予防するために、対象において少なくとも1つのT細胞エピトープに特異的な制御性T細胞を生成するために使用することができる。
【0002】
更に、本発明は、ナノ粒子の生成方法を提供する。
【背景技術】
【0003】
自己免疫疾患は、患者及び医療システムにとってかなりの負担となる。現在の治療法は、主に、かなりの副作用を伴う免疫抑制薬に依存している。一般的な免疫状態をそのままにして疾患特異的免疫病態のみを標的とする自己抗原特異的免疫療法は、アンメット・メディカル・ニーズを象徴するものである。
【0004】
自己抗原に対する免疫寛容は、制御性T細胞による欠失、クローン麻痺又は抑制を含む、潜在的に病原性の自己反応性リンパ球を制御する複数の機構によって維持される。したがって、自己免疫疾患は、自己反応性リンパ球の不十分な制御に起因する可能性があり、自己免疫疾患の免疫療法の主な目的は、調節を回復することによる自己抗原に対する寛容の誘導である。自己寛容を回復させるための特に有望な方法は、自己抗原特異的CD4+CD25+FOXP3+制御性T細胞の操作であると考えられるこれらの細胞の養子移入により、自己免疫又は炎症状態を予防することができる。
【0005】
肝臓は、循環に入る血液媒介抗原、例えば食物抗原に対する望ましくない免疫応答の抑制において中心的な役割を果たす。肝臓のこの基本的な機構は、外部タンパク質抗原又は自己抗原に対する有害な免疫応答を特異的に下方制御するために使用することができる。そのようなタンパク質に由来する抗原性ペプチドは、ナノサイズの担体にカップリングされ、静脈内投与されると、特定の肝臓細胞、肝臓類洞内皮細胞(LSEC)による取り込みを誘発し、その後寛容原性免疫応答を誘発する食物抗原を模倣する。したがって、ペプチド特異的免疫寛容は、定義された免疫疾患を引き起こす抗原に対して誘導され、有害な免疫反応の改善又は根絶さえももたらす可能性がある。したがって、この方法は、進行中の疾患を治療するために使用することができ、また、予防の状況においてそれぞれの疾患を予防するために使用することもできる。
【0006】
例えば、肝臓における神経抗原の異所性発現は、多発性硬化症(MS)の動物モデルである実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)を有するマウスにおける自己免疫性神経炎症を予防することができる。この知見は、自己免疫応答を制御及び抑制する大きな能力を有する神経抗原特異的制御性T細胞(Treg)を生成する肝臓の能力によって説明することができる。LSECは、この効果を達成するために重要な役割を果たす。LSECは、その表面にMHC/HLAクラスI及びクラスII分子を発現し、したがって、それぞれCD8+T細胞(交差提示を介して)及びCD4+T細胞の両方にペプチドを提示する能力を有する。LSECによるペプチド抗原提示は、ナイーブ及びTエフェクター細胞をインビトロで抗原特異的にTregに変換する。これは明らかに、LSECが血液媒介抗原に対する耐性を確立することができる生理学的機構である。
【0007】
血液媒介抗原のように、粒子表面に疾患特異的抗原性ペプチドとコンジュゲートしたナノ粒子は、静脈内注射後に肝臓を標的とする。おそらく飲作用によるLSECによる取り込み時に、ナノ粒子はエンドソーム区画に蓄積し、そこでペプチド抗原が粒子の表面から放出される。これは、MHC/HLA分子によって媒介されるLSEC表面での抗原性ペプチドの提示をもたらす。Tregのその後の生成は、その抗原ペプチドエピトープに基づいて、それぞれの自己抗原に特異的な免疫寛容を付与するという証拠がある。
【0008】
国際公開第2009/067349号は、制御性T細胞の数及び/又は活性を増加させることによって自己免疫障害の治療に使用するためのアリール炭化水素受容体(AHR)転写因子リガンドに連結された生体適合性ナノ粒子を含む医薬組成物を開示している。
【0009】
国際公開第2013/072051号は、特異的免疫応答の抑制が有益である疾患を治療又は予防するために、対象において少なくとも1つのT細胞エピトープに特異的な制御性T細胞を生成するのに使用するための医薬組成物を開示している。ナノ粒子は、ナノ粒子を水溶性にする両親媒性ポリマーを含むミセル、及びミセルの外側に会合した少なくとも1つのT細胞エピトープを含むペプチドを含む。分子量30,000~50,000g/mol、純度約90%の両親媒性ポリマーとして、市販のポリ(無水マレイン酸-alt-1-オクタデセンを用いることが一般的に提案されている。
【0010】
しかし、特定の医療用途では、効率的な精製方法を使用して非常に高い純度でナノ粒子を生成できることが重要である。
【0011】
特異的免疫応答の抑制が有益である疾患、例えば自己免疫疾患、アレルギー、移植、治療薬若しくは遺伝子ベクターに対する抗薬物抗体(ADA)の抑制、又は炎症が過剰、慢性若しくは有害である疾患を治療及び予防するための改善されたナノ粒子が当技術分野で依然として必要とされており、当該医薬組成物はヒト対象における使用に適している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】国際公開第2009/067349号
【特許文献2】国際公開第2013/072051号
【発明の概要】
【0013】
本発明によれば、上記の問題は、
a)数平均分子量(Mn)が20,000g/mol以下の両親媒性ポリマーを含むミセル、及び
b)少なくとも1つのT細胞エピトープを含む少なくとも1つのペプチドを含むナノ粒子によって解決される。
【0014】
本発明者らは、驚くべきことに、数平均分子量(Mn)が20,000g/mol以下の両親媒性ポリマーを含むナノ粒子をより容易に及びより高い純度で生成できることを見出した。
【0015】
本発明のナノ粒子の効果の根底にある理論に縛られるものではないが、LSECによるナノ粒子の取り込み時に、ミセルの外側に会合した少なくとも1つのペプチドは、加水分解、タンパク質分解又はエンドソーム中の他の活性のいずれかによって放出され、血液媒介抗原であるかのように処理され、免疫寛容原性環境でT細胞に提示されることが現在理解されている。低分子量両親媒性ポリマーは、インビボ放出時に個々のポリマー分子を排出することができる。これは、ナノ粒子にとって好ましい排泄経路を表すと思われる肝胆排泄を提供する。
【0016】
驚くべきことに、数平均分子量(Mn)が20,000g/mol以下の低分子量の両親媒性ポリマーを容易に排泄できることを見出した。また、低分子量の両親媒性ポリマー及びそれらの代謝産物が処理後に体内から迅速に除去されることも予想される。
【0017】
本発明者らは、驚くべきことに、低分子量の両親媒性ポリマーが本発明のナノ粒子の生成中に有利な特性を有することを見出した。低分子量の両親媒性ポリマーは、固体コアのコーティング中に、高分子量の両親媒性ポリマーよりも生成される凝集体が少ない。更に、低分子量の両親媒性ポリマーは、高分子量の両親媒性ポリマーと比較して、より効率的に精製することができる。特に、低分子量の両親媒性ポリマーを本発明のナノ粒子に使用すると、非結合ポリマーをより効率的に分離することができる。
【0018】
本発明は、ナノ粒子を含む医薬組成物を更に提供する。
【0019】
本発明はまた、特異的免疫応答の抑制が有益である疾患を治療又は予防するために、対象において少なくとも1つのT細胞エピトープに特異的な制御性T細胞を生成するのに使用するためのナノ粒子を含む医薬組成物を提供する。
【0020】
最後に、本発明は、
i)数平均分子量(Mn)が20,000g/mol以下の両親媒性ポリマーを得ること、
ii)場合により、両親媒性ポリマーを精製すること、
iii)両親媒性ポリマーのミセルを形成すること、
iv)少なくとも1つのペプチドを添加してナノ粒子を形成することを含む、ナノ粒子を生成する方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】オレイン酸鉄錯体の合成を示すフローチャートである。
図2】超常磁性酸化鉄ナノ粒子(SPION)の合成を示すフローチャートである。
図3】低分子量ポリ(無水マレイン酸-alt-1-オクタデセン)(LM-PMAOD)の合成を示すフローチャートである。
図4】低分子量ポリ(マレイン酸-alt-1-オクタデセン)(LM-PMAcOD)の合成を示すフローチャートである。
図5】SPIONのポリマーコーティングを示すフローチャートである。
図6】本発明のナノ粒子へのペプチドのカップリングを示すフローチャートである。
図7】本発明のナノ粒子の透過型電子顕微鏡(TEM)画像(倍率100倍)を示す図である。
図8】ゲル浸透クロマトグラフィー及び較正標準としてのポリスチレンを使用して決定されたLM-PMAcODの分子質量分布を表すグラフである。
図9】HM-PMAcOD-SPION試料の精製のSECクロマトグラムを示す図である。
図10】HM-PMAcOD-SPION試料の精製のSECクロマトグラムを示す図である。
図11】HM-PMAcOD-SPION試料の精製のSECクロマトグラムを示す図である。
図12】精製LM-PMAcOD-SPION試料のサイズ排除クロマトグラフィーの結果を示す図である。
図13】コーティング後の生成物のSECクロマトグラムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明によれば、数平均分子量(Mn)が20,000g/mol以下の両親媒性ポリマーを含み、ナノ粒子を水溶性にするミセル、及び少なくとも1つのT細胞エピトープを含む少なくとも1つのペプチドを含むナノ粒子が提供される。ナノ粒子は、ミセルによってコーティングされた固体疎水性コアを更に含むことができる。
【0023】
本出願によれば、「ナノ粒子」という用語は、「ナノスケール粒子」と互換的に使用される。そのような粒子は、1~999nm、好ましくは2~600nm、5~500nm、10~300nm、30~100nm又は40~50nmの直径を有する。
【0024】
本発明の文脈において、ナノ粒子は、少なくともミセルと、ミセルに会合したペプチドとによって形成された構造である。ペプチドは、ミセルの外側に会合するか、又はミセルの内側に封入されてもよい。
【0025】
本発明の一実施形態では、本発明のナノ粒子は、固体疎水性コア、数平均分子量(Mn)が20,000g/mol以下の両親媒性ポリマーを含み、ナノ粒子を水溶性にする、コアをコーティングするミセル、及び少なくとも1つのT細胞エピトープを含む少なくとも1つのペプチドを含む。
【0026】
ミセル
本発明の文脈において、「ミセル」という用語は、水溶液中に分散した両親媒性分子の凝集体に関する。両親媒性分子の親水性部分は周囲の溶媒と接触しており、両親媒性分子の疎水性「尾部」領域をミセルの内側に隔離し、したがってナノ粒子を水溶性にする。このタイプのミセルは、順相ミセル(又は水中油型ミセル)としても知られている。
【0027】
ミセルは、1つだけでなく、2つ以上、例えば2つ、3つ又は4つの両親媒性ポリマー分子によっても形成することができる。ミセルは、同じ両親媒性ポリマー分子又は異なる両親媒性ポリマー分子によって形成することができる。一般に、本明細書の文脈において、「a」又は「the」は、特に明記しない限り、「1」に限定することを意図しない。
【0028】
好ましい実施形態では、ミセルは、両親媒性ポリマーの単層によって形成される。
【0029】
そのようなミセルは、両親媒性ポリマーによって形成された二重層又はリポソームと構造的に異なってもよい。この場合、構造は、本発明のナノ粒子に含まれていないか、又は有意な割合(例えば、10%以下、5%超、又は好ましくは1%超)まで含まれていない。
【0030】
本発明の一実施形態では、両親媒性ポリマーは、ミセルの少なくとも70%、好ましくは少なくとも90%を生成するために使用される。好ましい実施形態では、ミセルは両親媒性ポリマーからなる。
【0031】
本発明のいくつかの実施形態では、ナノ粒子は、固体疎水性コアを含まない。他の実施形態では、ナノ粒子は、ミセル及び固体疎水性コアを含む。
【0032】
本発明のナノ粒子を生成する方法を以下に詳細に記載する。
【0033】
両親媒性ポリマー
本発明の両親媒性ポリマーは、一般に、8~23個、好ましくは8~21個、最も好ましくは16~18個の炭素原子の長さを有する疎水性脂肪族鎖を含む疎水性領域を含む。
【0034】
両親媒性ポリマーの親水性領域は、水溶液中で負に帯電していてもよい。
【0035】
本発明の好ましい実施形態では、両親媒性ポリマーは溶液中で自発的にミセルを形成する。固体疎水性コアが存在する場合、両親媒性ポリマーは固体コアの周りにミセルを形成し、ナノ粒子を水溶性にする。
【0036】
両親媒性ポリマーの数平均分子量(Mn)は、20,000g/mol以下、好ましくは10,000g/mol以下、又は6,000g/mol以下、より好ましくは6,000~1,000g/mol、最も好ましくは3,000~6,000g/molである。
【0037】
数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を使用して、好ましくは較正標準としてポリスチレンを使用して決定することができる。
【0038】
好ましい実施形態では、数平均分子量は、温度40℃のPLゲル混合Dカラム、90/10%(v/v)のテトラヒドロフラン/酢酸からなる移動相、流速1.0ml/分、温度35℃の屈折率検出器及び較正標準としてのポリスチレンを組み合わせて使用して決定される。
【0039】
最も好ましい実施形態では、数平均分子量の決定は、GPC及び以下の測定条件を使用する。
【0040】
両親媒性ポリマーは交互コポリマーであってもよい。交互コポリマーは、交互配列で分布した2種のモノマー単位を含むコポリマーである。
【0041】
本発明の一実施形態では、両親媒性ポリマーは、無水マレイン酸と少なくとも1つのアルケンとのコポリマーである。
【0042】
両親媒性ポリマーの生成に使用されるアルケンは、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-トリデセン、1-テトラデセン、1-ペンタデセン、1-ヘキサデセン、1-ヘプタデセン、1-オクタデセン、1-ノナデセン又は1-エイコセンの1つ又は複数から選択することができ、好ましくはアルケンは1-オクタデセンである。
【0043】
本発明の好ましい実施形態では、両親媒性ポリマーは、無水マレイン酸とアルケンとのコポリマーである。
【0044】
本発明の好ましい実施形態では、両親媒性ポリマーは、疎水性アルキル側鎖を有する主な親水性ポリ無水マレイン酸骨格を有する。典型的には、側鎖は、5~23個の炭素原子、特に9~21個の原子を有することができる。最も好ましい実施形態では、側鎖は直鎖状であり、10~18個の炭素原子を有する。
【0045】
両親媒性ポリマーは、以下の構成ブロックを含むことができ、
式中、Rはヒドロカルビル基又は置換ヒドロカルビル基である。本発明の好ましい実施形態では、Rは、C4~C22アルキル基、例えばC7~C19アルキル基である。
【0046】
更により好ましい実施形態では、Rは、直鎖アルキル基、好ましくは直鎖C7~C17アルキル基であり、最も好ましくはRは、直鎖ペンタデシル基又は直鎖ノニル基である。
【0047】
両親媒性ポリマーは、上で定義した構成ブロックからなってもよい。
【0048】
本発明による他の実施形態では、両親媒性ポリマーは、上で定義した構成ブロックの少なくとも50%、好ましくは少なくとも70%、最も好ましくは90%超を含む。
【0049】
好ましい実施形態では、両親媒性ポリマーは、ポリ(マレイン酸-1-オクタデセン)、ポリ(マレイン酸-1-テトラデセン)又はポリ(マレイン酸-1-ドデセン)を含む群から選択され、好ましくは、ポリマーはポリ(マレイン酸-1-オクタデセン)であり、ポリマーの数平均分子量は6,000~1,000g/molである。
【0050】
特に好ましい実施形態では、両親媒性ポリマーは、ポリ(マレイン酸-alt-1-オクタデセン)、ポリ(マレイン酸-alt-1-ドデセン)及びポリ(マレイン酸-alt-1-テトラデセン)を含む群から選択され、好ましくは、ポリマーはポリ(マレイン酸-alt-1-オクタデセン)であり、ポリマーの数平均分子量は5000~1000g/molである。
【0051】
本発明の両親媒性ポリマーを生成する方法も以下に詳細に記載する。
【0052】
ペプチド
本発明のナノ粒子は、少なくとも1つのT細胞エピトープを含む少なくとも1つのペプチドを更に含む。(本発明のナノ粒子に固体疎水性コアが存在しない実施形態では)ペプチドは、ミセルの外側に会合していてもよく、又はミセルの内側に封入されていてもよい。したがって、ペプチドは、ミセルの外側又はミセルの内側に局在してもよい。
【0053】
ペプチドは、ミセルに共有結合していてもよく、又は非共有結合していてもよく、好ましくはミセルに共有結合していてもよい。
【0054】
好ましい実施形態では、カルボジイミド又はスクシンイミドカップリングなどの当技術分野で公知のペプチドを共有結合的にカップリングする方法を使用して、ペプチドをミセルに共有結合させる。好ましくは、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)化学を使用して、ペプチドをミセルに共有結合させる。
【0055】
本発明の文脈において、「ペプチド」という用語は、サイズを限定することを意図するものではなく、特に、ペプチドは、全タンパク質又は8~2,000個のアミノ酸、好ましくは8~200個のアミノ酸、8~100個のアミノ酸、9~60個のアミノ酸、又は10~20個のアミノ酸を含むことができる。この用語はまた、融合ポリペプチドとして互いに連結することができる異なるペプチドの組み合わせを含む。
【0056】
本発明の好ましい実施形態では、ペプチドは、10~20個、例えば13~17個のアミノ酸を含む。
【0057】
特に好ましい実施形態では、ペプチドは15個のアミノ酸を含む。
【0058】
ペプチドは、少なくとも1つのT細胞エピトープを含む。T細胞エピトープ及び選択されたT細胞エピトープを同定する方法は当技術分野で公知であり、例えばRammense et al.,1999(Immunogenetics 50 213-219)及びSanchez-Trincado et al.2017(J Immunol Res.2017:2680160.doi:10.1155/2017/2680160.Epub 2017 Dec 28)の刊行物に記載されている。本発明の文脈において、T細胞エピトープは、制御性T細胞を誘導するペプチド配列である。少なくとも1つのエピトープは、ナノ粒子が投与される対象の細胞によって提示され得る必要がある。好ましくは、ペプチドは、複数の主要組織適合抗原複合体タイプで提示されることを可能にするいくつかのエピトープを含む。
【0059】
制御性T細胞は主にCD4+であるので、MHCクラスII上の提示が主な目的である。この対象、例えばヒト対象のHLA型は、エピトープの選択の一部として容易に試験することができる。特定のMHC分子上に提示することができる特定のペプチドのエピトープは公知であり、及び/又は例えば適切なソフトウェアによって日常的に選択することができる。
【0060】
ペプチドは、公開されたデータに基づいて、特定のHLA制限エレメントと会合して、MHC/HLAに高い親和性で結合し、T細胞を大いに刺激及び活性化することを確実にするように設計される。理想的には、好まれるペプチドは、天然にプロセシングされたペプチドから推測され、免疫優性として特徴付けられる。
【0061】
ペプチドは、天然源から合成、組換え発現又は単離又は修飾されてもよい。制御性T細胞が生成されるペプチド又は少なくともエピトープは、好ましくは、例えば自己免疫疾患又はアレルギーの治療又は予防の文脈において、炎症性免疫応答が抑制されるペプチド/タンパク質に由来する。ペプチドは、例えば、アレルゲン、既知の自己免疫抗原、又はその断片若しくは誘導体であってもよい。ペプチドは、様々な抗原からの様々なエピトープを組み合わせることができる。
【0062】
本発明の好ましい実施形態では、ペプチドは、デスモグレイン-3(Dsg3)由来の抗原ペプチドである。例えば、ペプチドは、配列番号1~3によって特徴付けられる1つ又は2つ以上のデスモグレイン-3ペプチドであってもよい。
【0063】
本発明の一実施形態によれば、ナノ粒子は、少なくとも1つのT細胞エピトープを含む1種類のペプチドのみを含む。
【0064】
更なる実施形態によれば、本発明は、異なるナノ粒子を含む組成物を提供し、各ナノ粒子は、同じアミノ酸配列を有する多数のペプチドを含むが、組成物は、ペプチド配列が互いに異なるナノ粒子の混合物を含む。組成物は、例えば、2~6個の異なるペプチドを含む異なるナノ粒子を含むことができる。一態様では、異なるナノ粒子の組成物は、それぞれが配列番号1~3の1つを特徴とする3つの異なるタイプのナノ粒子を含むことができる。
【0065】
固体疎水性コア
本発明の一実施形態では、ナノ粒子は、ミセルによって少なくとも部分的にコーティングされた固体疎水性コアを含む。
【0066】
コアは、好ましくは酸化鉄、CdSe、銀又は金を含む無機コアであってもよい。
【0067】
コアの直径は、2nm~500nm、好ましくは3nm~25nm、より好ましくは5nm~15nmであってもよい。コアの直径は、透過型電子顕微鏡(TEM)又は小角X線散乱(SAXS)を使用して決定することができる。
【0068】
例示的な無機コアは、オレイン酸又は別のカルボン酸(C14~C22、好ましくはC16~C18)によって安定化された酸化鉄ナノ粒子、量子ドット(例えば、トリオクチルオキシンホスフィノキシドによって安定化されたCdSe/CdS/ZnS)、例えばスルホン化合物によって安定化された金ナノ粒子である。
【0069】
そのような無機コア自体は、典型的には水などの水性溶媒中で安定ではないが、それらをポリマーミセルに埋め込むと水溶性になる。両親媒性ポリマーの疎水性部分はナノ粒子の疎水性コアと相互作用し、コアを取り囲むポリマーの単一コーティング層の形成をもたらす。コーティングプロセスにおいて、両親媒性ポリマーは、リガンド交換によってコアの疎水性部分を置き換えることができ、したがって、二重層ミセルがコアの周りに形成される。本発明の一実施形態では、ポリマーはコア粒子の表面のオレイン酸を少なくとも部分的に置換し、ポリマーの親水性部分は酸化鉄コアの表面と相互作用し、ポリマーの疎水性部分は互いに相互作用して酸化鉄コアの周りに二重層ミセルを形成し、結果としてポリマーでコーティングされた酸化鉄が得られる。
【0070】
本発明の好ましい実施形態によれば、コアは超常磁性である。
【0071】
本発明の特に好ましい実施形態では、コアは、オレイン酸によって安定化することができる超常磁性酸化鉄ナノ粒子(SPION)である。
【0072】
コアは、好ましくは、例えば、蛍光、電子顕微鏡又は他の検出方法におけるそれらの特徴によって、本発明のナノ粒子を追跡可能にする。
【0073】
ナノ粒子
本発明者らは、本発明で使用するためのナノ粒子が、インビボで対象の肝臓類洞内皮細胞にペプチドを移入するのに適していることを見出した。
【0074】
ナノ粒子は、それらを標的とする、又は肝臓類洞内皮細胞及び/又はクッパー細胞などの特定の細胞への標的化を増強する部分、例えば炭水化物又はタンパク質を更に含むことができる。そのような部分は、例えば、受容体媒介エンドサイトーシスを介した循環からの取り込みを増強又は加速することができる。適切な修飾の例は、マンノースなどの炭水化物である。
【0075】
ナノ粒子は、ミセルを形成するポリマーによって、負に帯電していてもよく、又は帯電していなくてもよく、好ましくは、ナノ粒子は、pH6~7で負に帯電している。ポリマーコーティングは、ナノ粒子の負電荷をもたらす酸、例えばカルボン酸基を含むことができる。
【0076】
本発明のナノ粒子は、pH6~7(測定中のpH)で-20~-50mV、好ましくは-25~-45mV、より好ましくは-28~-42mVのゼータ電位を有することができる。ゼータ電位は、Malvern Zetasizer Nano ZS機器を使用して測定することができる。
【0077】
本発明のナノ粒子は、動的光散乱(DLS)によって測定して、10~100nm又は10~70、好ましくは10~50、より好ましくは20~40m、最も好ましくは22~32nmの流体力学的直径(z平均)を有することができる。
【0078】
本発明のナノ粒子は、動的光散乱(DLS)によって測定して、0.50未満、好ましくは0.05~0.45、より好ましくは0.10~0.40の多分散性指数を有することができる。
【0079】
流体力学的直径及び多分散性指数の決定は、電気泳動光散乱分析法、好ましくはMalvern Zetasizerを使用して行われる。一実施形態では、流体力学的直径及び多分散性指数を決定する方法は、電気泳動光散乱、使い捨てポリスチレンキュベット、Zetasizer Software 7.12、ミリQ水を使用して行われる。20nm及び100nmのナノスフェア径標準(NIST認証又は同等物)を0.9%塩化ナトリウム水溶液で希釈し、試験試料を水で希釈する。使用前に、全ての水性試薬を0.22μmの膜に通して濾過する。本発明の最も好ましい実施形態では、流体力学的直径及び多分散性指数を決定するための方法は、以下の分析条件と組み合わせて電気泳動光散乱を使用して行われる。
【0080】
データの評価は、キュムラント平均としてDLSでも知られているパラメータである平均直径(Z平均、強度によるnm)及びサイズ分布の尺度として使用される多分散性指数(PDI)に基づく。
【0081】
更に、本発明のナノ粒子は、0.1~5mg/mL、好ましくは0.5~4mg/mL、より好ましくは1~3mg/mLの総ポリマー含有量を有することができる。総ポリマー含有量は、GPCによって決定される。総ポリマー含有量を測定するために、ペプチドを加水分解し、粒子を破壊する(例えば、6M HCl溶液を使用する。)。EDTAの添加後にポリマーを抽出する。溶媒の蒸発後、残渣を再溶解し、ポリマー含有量をGPCによって決定する。
【0082】
総ポリマー含有量の決定は、好ましくは、以下の試薬及び参照標準である水(HPLCグレード)、アセトニトリル(HPLCグレード)、BHTを含むテトラヒドロフラン(THF-HPLCグレード)、100%酢酸(分析グレード)、37%塩酸(分析グレード)、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩二水和物(分析グレード)、酢酸エチル(分析グレード)、水酸化ナトリウム(分析グレード)及びポリ(マレイン酸-alt-1-オクタデセン)を参照材料として使用して行われる。
【0083】
総ポリマー含有量を決定するためのクロマトグラフィー条件は以下の通りである。
【0084】
本発明の特に好ましい実施形態では、ナノ粒子は、数平均分子量が6,000~1,000g/mol以下のポリ(マレイン酸-alt-1-オクタデセン)のコーティングによって封入された酸化鉄コア、及び好ましくはミセルに共有結合している少なくとも1つのT細胞エピトープペプチドを含むペプチドを含む。
【0085】
したがって、一態様では、本発明は、
a)以下の構成ブロックを含む両親媒性ポリマーを含むミセルであって、
式中、Rがヒドロカルビル基又は置換ヒドロカルビル基であり、好ましくはRが直鎖アルキル基、好ましくは直鎖C11~C17アルキル基であり、ポリマーの数平均分子量(Mn)が6,000~1,000g/molである、ミセル、
b)少なくとも1つのT細胞エピトープを含む少なくとも1つのペプチド、及び
c)ミセルによって少なくとも部分的にコーティングされた固体疎水性コアであって、酸化鉄、CdSe/CdS/ZnS、銀及び金を含む群から選択される追跡可能な無機材料を含む、固体疎水性コアを含むナノ粒子を提供する。
【0086】
ポリマーの数平均分子量は、好ましくは、6,000~1,000g/molである。
【0087】
ナノ粒子は、好ましくは、動的光散乱によって測定して、50nm~10nmの流体力学的直径を有する。
【0088】
医薬組成物
本発明は更に、本発明のナノ粒子を含む医薬組成物を提供する。
【0089】
使用されるペプチドは、0.01~2mM、好ましくは0.1~1mM、最も好ましくは0.45mM~1mMの濃度で医薬組成物中に存在することができる。
【0090】
好ましい実施形態では、組成物中の遊離(非結合)ポリマーの量は、ポリマーの総量の10%未満、好ましくは5%未満、最も好ましくは2%未満である。
【0091】
本発明の医薬組成物は、少なくとも1つの適切な賦形剤及び/又は希釈剤を更に含むことができる。希釈剤は、好ましくは、水又は水性、例えばリン酸緩衝生理食塩水(PBS)、リンゲル液、TRIS緩衝液又は塩化ナトリウム溶液などの緩衝液である。適切な防腐剤は、含まれていても含まれていなくてもよい。
【0092】
特にヒト対象への投与のために、組成物が好ましくは無菌であり、生物学的に適合性であることは明らかである。
【0093】
本発明の好ましい実施形態では、医薬組成物は、D-マンニトール、TRIS及び/又はL-乳酸中に分散した本発明のナノ粒子を含む。
【0094】
本発明の一実施形態では、医薬組成物は、固体疎水性コアを含まない本発明のナノ粒子を含み、このナノ粒子は、D-マンニトール、TRIS及び/又はL-乳酸中に分散している。この緩衝液の使用は、粒子がこの緩衝液中で非常に安定であり、後で凍結乾燥することができるという利点を有する。
【0095】
更に、医薬組成物は、本発明の2種類以上のナノ粒子を含むことができ、異なる種類のナノ粒子は、ミセルの外側に会合する異なるペプチドを有する。ナノ粒子の混合物を使用することにより、いくつかの自己抗原性ペプチドによって同時により広い免疫寛容を誘導することができる。これらのペプチドは、単一の免疫原性タンパク質又は異なるタンパク質に由来してもよい。
【0096】
本発明の好ましい実施形態では、医薬組成物は、2~6の異なるタイプのナノ粒子を含み、好ましくは、異なるタイプのナノ粒子の全ての会合したペプチドは、少なくとも1つのT細胞エピトープを含む。
【0097】
本発明の具体的に好ましい実施形態では、医薬組成物は、3~4の異なるタイプのナノ粒子を含み、異なるタイプのナノ粒子の全ての会合したペプチドは、少なくとも1つのT細胞エピトープを含む。特に、各ナノ粒子は、Dsg3由来の異なる抗原性ペプチドと会合することができる。
【0098】
医薬組成物は、100μM未満、好ましくは0.5~80μM、最も好ましくは1~50μMの濃度でナノ粒子を含むことができる。医薬組成物中に2種以上のナノ粒子が存在する場合、それぞれが100μM未満、好ましくは0.5~80μM、より好ましくは1~50μMの濃度で存在することができる。
【0099】
本発明の医薬組成物は、異なるタイプのナノ粒子を等モル濃度で含むことができる。
【0100】
したがって、一態様では、本発明は、
a)以下の構成ブロックを含む両親媒性ポリマーを含むミセルであって、
式中、Rがヒドロカルビル基又は置換ヒドロカルビル基であり、好ましくはRが直鎖アルキル基、好ましくは直鎖C11~C17アルキル基であり、ポリマーの数平均分子量(Mn)が6,000~1,000g/molである、ミセル、
b)少なくとも1つのT細胞エピトープを含む少なくとも1つのペプチド、及び
c)ミセルによって少なくとも部分的にコーティングされた固体疎水性コアであって、酸化鉄、CdSe/CdS/ZnS、銀及び金を含む群から選択される追跡可能な無機材料を含む、固体疎水性コアを含むナノ粒子を提供する。
【0101】
医薬組成物中のポリマーの数平均分子量は、好ましくは6,000~1,000g/molの範囲である。
【0102】
本発明の医薬組成物中のナノ粒子は、好ましくは、動的光散乱によって測定して、50nm~10nmの流体力学的直径を有する。
【0103】
好ましい態様では、本発明は、少なくとも3つの異なるタイプのナノ粒子を含む医薬組成物を提供し、各ナノ粒子は、
a)以下の構成ブロックを含む両親媒性ポリマーを含むミセルであって、
式中、Rがヒドロカルビル基又は置換ヒドロカルビル基であり、好ましくはRが直鎖アルキル基、好ましくは直鎖C11~C17アルキル基であり、ポリマーの数平均分子量(Mn)が6,000~1,000g/molである、ミセル、
b)1つのT細胞エピトープを含む1つのペプチド、及び
c)ミセルによって少なくとも部分的にコーティングされた固体疎水性コアであって、酸化鉄、CdSe/CdS/ZnS、銀及び金を含む群から選択される追跡可能な無機材料を含む、固体疎水性コアを含み、
3つの異なるタイプのナノ粒子は、ペプチド配列が互いに異なり、第1のタイプのナノ粒子は、配列番号1を有するペプチドを含み、第2のタイプのナノ粒子は、配列番号2を有するペプチドを含み、第3のタイプのナノ粒子は、配列番号3を有するペプチドを含む。
【0104】
医療用途
本発明の医薬組成物は、特異的免疫応答の抑制が有益である疾患を有する対象への投与に使用するために意図され、製剤化される。
【0105】
医薬組成物は、それを必要とする対象に投与することができる。
【0106】
対象への投与に必要な用量及び濃度は、症例の事実及び状況に応じて担当の医療従事者によって決定することができる。例示的な用量は、例えばヒト対象について、患者の体重あたり0.03μmol~0.90μmolを含むことができる。
【0107】
投与は、例えば、2回、3回又は4回、例えば、1、2、3、4、5、6、7、10又は14日間の投与間隔をおいて、繰り返すことができる。
【0108】
好ましくは、医薬組成物は、特異的免疫応答の抑制が有益である疾患の治療又は予防など、特異的免疫応答の抑制に使用するためのものである。より好ましくは、医薬組成物は、特異的免疫応答の抑制が有益である疾患を治療又は予防するために、対象において少なくとも1つのT細胞エピトープに特異的な制御性T細胞を生成するのに使用するためのものである。
【0109】
疾患は、定義された自己抗原に関連する自己免疫疾患であってもよい。本発明の文脈において、「自己免疫疾患」という用語は、Hayter et.al.(Autoimmunity Reviews 11(2012)754-765)によって定義されていると理解される。好ましい実施形態では、自己免疫疾患は、尋常性天疱瘡、落葉状天疱瘡、後天性表皮水疱症、水疱性類天疱瘡、瘢痕性類天疱瘡、グッドパスチャー症候群、顕微鏡的多発血管炎、多発血管炎性肉芽腫症(肉芽腫、ウェゲナー)、血栓性血小板減少性紫斑病、免疫性血小板減少性紫斑病、ブドウ膜炎、HLA-B27関連急性前部ブドウ膜炎、多発性硬化症、視神経脊髄炎、I型糖尿病、脱力発作を伴う又は伴わないナルコレプシー、セリアック病、疱疹状皮膚炎、アレルギー性気道疾患/喘息、重症筋無力症、橋本甲状腺炎、自己免疫性甲状腺疾患、グレーブス病、自己免疫性甲状腺疾患、自己免疫性副甲状腺機能低下症、自己免疫性甲状腺疾患、抗リン脂質抗体症候群、自己免疫性アジソン病、自己免疫性溶血性貧血、慢性炎症性脱髄性多発性神経炎、ギラン・バレー症候群、自己免疫性好中球減少症、線状限局性強皮症、バッテン病、後天性血友病A、再発性多軟骨炎、アイザックス症候群(後天性神経性筋強直症)、ラスムッセン脳炎、モルバン症候群、スティッフパーソン症候群、悪性貧血、Vogt-小柳-原田症候群、原発性胆汁性肝硬変、自己免疫性I型肝炎、自己免疫性II型肝炎、全身性エリテマトーデス、リウマチ性関節炎、多発性筋炎/皮膚筋炎、シェーグレン症候群、強皮症、尋常性白斑及び円形脱毛症を含む群から選択される。
【0110】
より好ましくは、自己免疫疾患は、尋常性天疱瘡、グッドパスチャー症候群、顕微鏡的多発血管炎、血栓性血小板減少性紫斑病、多発性硬化症、視神経脊髄炎、I型糖尿病、脱力発作を伴う又は伴わないナルコレプシー、セリアック病、自己免疫性アジソン病、自己免疫性溶血性貧血及び後天性血友病Aを含む群から選択される。
【0111】
本発明によれば、「治療する」という用語は、対象における特定の疾患の症状の緩和、及び/又は特定の障害に関連する確認可能な測定値の改善を指すために使用される。
【0112】
両親媒性ポリマー及びナノ粒子を生成する方法
両親媒性ポリマー及びそれを含むナノ粒子を生成する方法を例1~4に示す。
【0113】
数平均分子量(Mn)が20,000g/mol以下の両親媒性ポリマーを得る1つの方法は、無水物のポリマーを生成する工程と、無水物を加水分解して酸を得る工程とを含む二工程法を用いて合成することにある。ポリマーの無水物形態を加水分解して酸性形態を得る工程は、以下のように例示することができる。
【0114】
本発明はまた、
i)数平均分子量(Mn)が20,000g/mol以下の両親媒性ポリマーを得ること、
ii)場合により、両親媒性ポリマーを精製すること、
iii)両親媒性ポリマーのミセルを形成すること、及び
iv)少なくとも1つのペプチドを添加してナノ粒子を形成することを含む、ナノ粒子を生成する方法を提供する。
【0115】
ペプチドがミセルによって封入される本発明の実施形態では、工程iv)は工程iii)の前に行われる。これらの実施形態では、ペプチドは、ミセル形成の前に両親媒性ポリマーに添加される。
【0116】
本発明のナノ粒子に使用される両親媒性ポリマーは、ラジカル開始剤を使用したラジカル共重合により調製することができる(工程i)。
【0117】
ポリマーの分子量は、反応物の濃度又はラジカル開始剤の量を変えることによって制御することができる。ポリマーの分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィーによって分析することができる。
【0118】
共重合は、1,4-ジオキサン、キシレン又はクロロベンゼンなどの有機溶媒中で行うことができる。
【0119】
多くのラジカル開始剤が当技術分野で公知であり、これらには、種々の過酸化物及びアゾ系化合物が含まれる。適切な過酸化物の例は、過酸化ベンゾイル、ラウリルペルオキシド、ジ-t-ブチルペルオキシド、2,4-ジクロロベンジルペルオキシド、t-ブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、ジアセチルペルオキシド、ジエチルペルオキシカルボナート、t-ブチルペルベンゾアート及びペルボラートである。適切なアゾ型化合物としては、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオニトリル)、p-ブロモベンゼンジアゾニウムフルオロボラート、p-トリルジアゾアミノベンゼン、p-ブロモベンゼンジアゾニウムヒドロキシド、アゾメタン及びフェニル-ジアゾニウムハリドが挙げられる。好ましくは、ラジカル開始剤は、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオニトリル)である。
【0120】
共重合は、70~120℃、好ましくは90~110℃などの高温で行うことができる。
【0121】
好ましくは、共重合は、混合物を70~120℃、好ましくは90~110℃に加熱することによって開始される。
【0122】
本発明の方法の好ましい実施形態では、工程i)は、反応物を混合する工程、混合物を脱酸素する工程、混合物を加熱する工程、次いで混合物を冷却する工程を含む。その後、ポリマーを溶解し、一晩撹拌してもよい。形成された固体は、好ましくは遠心分離を使用して回収することができる。
【0123】
本発明の方法の好ましい実施形態では、工程ii)は、ポリマーへの塩基(例えばNaOH)の添加を含む。好ましくは、塩基は、ほとんど全ての固体が溶解するまで、高温、好ましくは60℃などの50℃~70℃でポリマーと反応される。得られた懸濁液を酸性化することができる(例えば、pH<2)。その後、反応混合物を酢酸エチルなどの有機溶媒で抽出することができる。有機層を水酸化ナトリウム溶液で抽出することができる。再度、酢酸エチル等の有機溶媒で抽出した後、乾燥して精製両親媒性ポリマーを得ることができる。
【0124】
ポリマーを更に精製することができる(工程iii)。好ましくは、ポリマーをn-ヘキサン又はn-ヘプタンで抽出することによってポリマーを更に精製する。抽出は、10g/L超、好ましくは100g/lの濃度で行うことができる。
【0125】
更に、両親媒性ポリマーの追加の精製工程を工程i)とii)の間に加えることができる。この追加の精製工程では、重合の粗反応生成物を溶解し、沈殿させる。好ましい実施形態では、溶媒はジクロロメタンであり、ポリマーはメタノール/ヘプタン又はアセトニトリル/イソプロパノールの混合物を使用して沈殿される。使用される混合物は、例えば95/5%(v/v%)のメタノール/ヘプタン、10/90(v/v%)のアセトニトリル/イソプロパノール又は5/95(v/v%)のアセトニトリル/イソプロパノールを含有することができる。好ましい実施形態では、沈殿混合物は、-10~10℃、好ましくは-5~5℃の温度で添加される。
【0126】
加水分解及び後処理後の両親媒性ポリマーの純度は、1H NMRによって測定することができる。
【0127】
本発明の方法において、ミセルは、両親媒性ポリマーを含む溶液を形成することにより形成される。好ましくは、ミセルは水溶液中で形成される。共安定剤を両親媒性ポリマーに添加して、ミセル形成を改善することができる。
【0128】
工程iv)で使用されるペプチドは、最新技術の固相化学を使用して合成することができる。
【0129】
ペプチドは、ミセルに共有結合していてもよく、又は非共有結合していてもよい。
【0130】
本発明の方法の好ましい実施形態では、ペプチドは、当技術分野で公知のペプチドカップリング技術、例えばカルボジイミド又はスクシンイミドカップリングを使用してナノ粒子の表面にカップリングされる。
【0131】
本発明の方法の特に好ましい実施形態では、ペプチドは、水相中のEDC化学(1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド)を介してナノ粒子の表面にカップリングされる。
【0132】
得られたナノ粒子は、カップリング試薬及び任意の低分子量成分を除去するために集中的な洗浄及び濾過工程を使用して精製することができる。
【0133】
好ましい実施形態では、ナノ粒子を生成する方法は、
a)疎水性コアナノ粒子を得ること、
b)好ましくはラジカル共重合を使用して、数平均分子量(Mn)が20,000g/mol以下の両親媒性ポリマーを得ること、
c)場合により、両親媒性ポリマーを精製すること、
d)疎水性コアナノ粒子と両親媒性ポリマーとを混合してミセルを形成すること、
e)少なくとも1つのペプチドを添加してナノ粒子を形成することを含む。
【0134】
上記の工程i)~iii)及びiv)の議論は、それぞれ工程b)~d)及びe)にも当てはまる。
【0135】
工程a)の疎水性コアは、溶液中の適切な反応物を使用して合成することができる。本発明の方法の好ましい実施形態では、疎水性コアは、有機溶媒の存在下で反応物としてカルボン酸の金属塩及び塩を使用して合成することができる。好ましくは、反応は、酸素制限下で高温で行われる。
【0136】
ミセルは、工程e)におけるコアの周りの両親媒性コポリマーの配置によって形成することができる。好ましくは、工程d)は、両親媒性ポリマー及びコア粒子を可溶化こと、薄膜が形成されるまで溶媒を除去すること、高温及び周囲圧力で塩基性水溶液を添加して水性コロイド分散液を形成すること、溶液を希釈すること、並びに場合により溶液を濾過するサブ工程を含む。その後、いくつかの洗浄工程を適用することができる。
【実施例
【0137】
本発明は、本発明によるナノ粒子の合成を詳細に記載する以下の実施例によって説明される。
【0138】
これらの実施例は、本発明の範囲を限定するものと見なされるべきではなく、本発明を例示するものと見なされるべきである。
【0139】
実施例1:超常磁性酸化鉄結晶コア(SPION)の調製
オレイン酸鉄錯体の合成を図1に模式的に示す。
【0140】
第1の工程では、オレイン酸、水酸化ナトリウム及び塩化鉄を70℃で還流下で混合することによってオレイン酸鉄錯体を合成した。生成物を分液漏斗中で数回の洗浄工程によって精製し、次いで硫酸ナトリウムで乾燥させ、ロータリーエバポレータで濃縮した。これにより、酸化鉄結晶コアが得られた(図1)。
【0141】
第2の工程(図2)では、オレイン酸鉄錯体を室温で1-オクタデセンに溶解し、完全に溶解するまで撹拌した。次いで、オレイン酸を添加し、脱酸素し、酸化鉄ナノ結晶を形成するために300℃で3時間加熱した。
【0142】
冷却後、生成物を、磁気分離及びアセトン/テトラヒドロフラン(THF)を使用するいくつかの洗浄工程によって精製した。精製したSPIONをクロロホルムで希釈し、ロータリーエバポレータで濃縮して、サイズ分布が狭く結晶性が良好なSPIONを得た。
【0143】
実施例2:低分子量ポリ(マレイン酸-alt-1-オクタデセン)(LM-PMAcOD)の調製
低分子量ポリ(マレイン酸-alt-1-オクタデセン)(LM-PMAcOD)の合成は、図3及び図4に模式的に示す2段階プロセスで達成した。
【0144】
第1の工程では、無水マレイン酸(48.9mmol)及び1-オクタデセン(48.2mmol)を10mlの1,4-ジオキサンに溶解した(1,4-ジオキサンの阻害剤を3gの酸化アルミニウムで濾過することによって予め除去した)。その後、5.79mmolのAIBN(2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオニトリル))を添加した。フラスコに冷却器を装備し、続いて窒素を流し、窒素過圧に維持した。混合物を撹拌しながら100℃に加熱した。加熱を開始してから1時間後、加熱板をストッパーごと取り外し、反応物を空気に曝露した。混合物を撹拌しながら2日間室温に冷却した。生成物をジクロロメタンとの共蒸発によって精製し、イソプロパノール及びアセトニトリルで沈殿させた。数平均分子量(Mn)が2,500~4,000g/molの低分子量ポリ(無水マレイン酸-alt-1-オクタデセン)(LM-PMAOD)を得た。
【0145】
第2の工程では、LM-PMAODを水酸化ナトリウム溶液中でポリ(マレイン酸-alt-1-オクタデセン)(LM-PMAcOD)に加水分解した。生成物の精製及び残留1-オクタデセンなどの不純物の除去のために、H2SO4、酢酸エチル及びNaOHによる酸塩基抽出を行った。生成物を硫酸マグネシウム上で乾燥させ、クロロホルムと共蒸発させ、最後にn-ヘプタン中での固液抽出によって精製した(図4)。
【0146】
得られたポリマーの数平均モル質量(Mn)及び質量平均モル質量(Mw)は、ゲル浸透クロマトグラフィーを用いて求めた。
【0147】
1.5mgのLM-PMAcODの試料を1.0mLのTHF(安定剤なし)に溶解し、GPCに供した。ポリスチレンを較正標準として使用した。溶離液としてテトラヒドロフランを用い、流速は1ml/分とした。温度は30℃に設定した。
【0148】
生成したLM-PMAcODの数平均モル質量(Mn)は1540g/mol、質量平均モル質量(Mw)は2410g/molであった。したがって、1.56のPDI値が試料について計算され、これは非制御フリーラジカル重合によって生成されたポリマーに特徴的である(図8を参照されたい)。
【0149】
実施例3:SPIONのポリマーコーティング
SPIONのポリマーコーティングを図5に模式的に示す。
【0150】
実施例3a:実施例2で得られた100mgのLM-PMAcODを100mL丸底フラスコ中で4mLのクロロホルムに溶解した。ポリマーが完全に溶解するまで混合物を加熱した。実施例1で得られた3.3mLのオレアート-SPION溶液を混合物に添加し、続いて280RPMのロータリーエバポレータで40℃で15分間、10mbar超で蒸発させた。次いで、10mLの5mM NaOHを混合物に添加し、全ての黒色固体が溶解するまで50℃で15分間ロータリーエバポレータで撹拌した。溶液を70mLの25mM NaOHを使用して8倍希釈して、ポリマー全体を溶解した。得られた溶液をロータリーエバポレータで15分間撹拌し、褐色の溶液を得た。
【0151】
生成物を0.45μm及び0.2μmのPESフィルターで濾過した。その後、プローブをタンジェンシャルフロー濾過(TFF)によって精製した。
【0152】
実施例3b:実施例2による加水分解後、市販の30~50kDaポリマー(#419117 メルク)を用いて同じ手順を行った。TFFによるポリマーコーティングされたSPIONからの非結合ポリマーの除去は不十分であったので、Miltenyiカラムを使用して追加の磁気分離を行い、PMAcOD-SPIONバッチMX0194を精製した。
【0153】
実施例4:ペプチド及びペプチドカップリング
ペプチドカップリング及びナノ粒子合成を図6に模式的に示す。
【0154】
ペプチドの合成は、固相ペプチド合成(SPPS)を使用してCからN方向へのFmoc化学を介して達成した。各アミノ酸のαアミノ基をフルオレン-9-イルメトキシカルボニル(Fmoc)基で保護し、側鎖官能基も様々な適切な保護基でブロックした。
【0155】
一般に、SPPSは、N末端脱保護とそれに続くカップリング反応の反復サイクルからなる。第1のFmoc保護アミノ酸を樹脂にカップリングさせた。その後、アミン基をジメチルホルムアミド(DMF)中のピペリジンの混合物で脱保護し、次いで、第2のFmoc保護アミノ酸の遊離酸とカップリングさせた。所望の配列が得られるまでサイクルを繰り返した。各工程の間に樹脂を洗浄した。各カップリング反応の完了を定性的ニンヒドリン試験によって監視した。合成の最後の工程において、粗ペプチド樹脂をDMF及びメタノールで連続的に洗浄し、乾燥させた。次いで、ペプチドから保護基を除去し、トリフルオロ酢酸(TFA)を使用して樹脂からペプチドを切断した。得られた粗ペプチドを、開裂混合物からエーテル沈殿によって単離した。
【0156】
更に、ペプチドを分取HPLCによって精製して純度要件に到達させ、適切な溶媒-緩衝系を使用することによって対イオンTFAを塩化物と交換した。最後に、精製したペプチドを凍結乾燥した。
【0157】
使用するペプチドは、N末端にアミノ酸を有し、C末端に遊離酸(HCl塩)を有し、15アミノ酸の長さを有する。
【0158】
遊離ペプチド(出発物質)の特徴付けをLC-MSによって行った。
【0159】
本出願の実施例で使用されるペプチド配列及び計算されたモノアイソトピック質量を表1に示す。
【0160】
【表1】
【0161】
ペプチドの分子量は、マルチモードエレクトロスプレー大気圧化学イオン化質量分析によって測定した。
【0162】
ホウ酸/四ホウ酸ナトリウム十水和物(SBB)緩衝液中の1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)化学を用いて、実施例3aで得られたミセルの表面にペプチドをカップリングさせた。
【0163】
SBB緩衝液中のEDCを実施例3で得られたミセルに添加した。室温で15分後、ペプチドを添加し、反応混合物を室温で2時間15分間撹拌した。
【0164】
得られたナノ粒子溶液を濾過し、タンジェンシャルフロー濾過(TFF)精製によって精製した。
【0165】
実施例5:ナノ粒子の特徴付け
実施例4で得られたナノ粒子を、様々な分析方法を使用して更に特徴付けた。
【0166】
酸化鉄コアの特徴付けは、TEM及びSAXSを使用して行った。5%(w/v)D-マンニトール、5mM TRIS及び6mM L-乳酸中に分散させたナノ粒子についてTEM測定を行った。
【0167】
実施例4で生成したナノ粒子のTEM分析に基づく、計算された粒径結果を表2に要約する。代表的なTEM画像を図7に示す。
【0168】
【表2】
【0169】
5%(w/v)D-マンニトール、5mM TRIS及び6mM L-乳酸中に分散させたナノ粒子についてSAXS測定を行った。
【0170】
実施例4で生成したナノ粒子のSAXS分析に基づく、計算された粒径結果を表3に要約する。
【0171】
【表3】
【0172】
粒径及び分布の特徴付けは、動的光散乱(DLS)によって行った。流体力学的直径(z平均)及び多分散性指数は、Malvern Zetasizer Nano ZS又は同等の機器を単峰性モードで使用して決定した。
【0173】
5%(w/v)D-マンニトール、5mM TRIS及び6mM L-乳酸中に分散させた実施例4で生成したナノ粒子についてこれらの測定を行った。
【0174】
結果を表4に要約した。これらの結果から、製剤は粒子を安定化し、大きな粒子の割合を減少させることができることを観察することができる。
【0175】
【表4】
【0176】
粒子の表面電荷は、Malvern Zetasizer Nano ZS機器を使用してpH6~7(測定中のpH)でゼータ電位を測定することによって分析した。5%(w/v)D-マンニトール、5mM TRIS及び6mM L-乳酸中に分散させた実施例4で生成したナノ粒子についてこれらの測定を行った。
【0177】
結果を表4に要約した。
【0178】
【表5】
【0179】
総ポリマー含有量は、GPCを使用して決定した。ペプチドを加水分解し、粒子を6M HCl中で破壊した。EDTAを添加した後、PMAcODを酢酸エチルで抽出した。溶媒を蒸発させた後、残渣を分析前にTHF/酢酸混合物に再溶解した。
【0180】
結果を表5に要約した。
【0181】
【表6】
【0182】
ナノ粒子の分光特性を、フーリエ変換赤外分光法(FTIR)によって決定した。
【0183】
主要な吸収帯の割り当てを表6に要約する。
【0184】
【表7】
【0185】
実施例6:異なるサイズの両親媒性ポリマーの効果
本発明のナノ粒子における異なるサイズの両親媒性ポリマーの効果を研究した。SPIONを、数平均分子量が3100、4800及び5900g/molのPMAcODポリマーでコーティングした。
【0186】
これらのポリマーを合成し、精製し、特徴付け、その後、オレアート-SPIONのコーティング反応に使用した。コーティング後、TFF精製を使用して過剰なポリマーを除去した。
【0187】
a)分子量の異なるポリ(マレイン酸-alt-1-オクタデセン)(PMAcOD)の合成
無水マレイン酸と1-オクタデセンのフリーラジカル重合により、長さの異なる3種類のポリ(マレイン酸-alt-1-オクタデセン)を合成した。開始剤として2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオニトリル)を使用して、1,4-ジオキサン中で反応を行った。混合物を100℃に加熱することによって重合を開始した。次に、精製後、水酸化ナトリウム溶液を用いてポリマーを加水分解し、PMAcODを得た。
【0188】
高分子量のポリマーは、より濃縮された条件下で重合を行うこと、及び/又は少ない量の開始剤で重合を行うことによって合成した。
【0189】
3つのポリマーの合成に使用した反応物の量を表7に要約する。
【0190】
【表8】
【0191】
無水マレイン酸の加水分解及び後処理後のポリマーの純度を1H-NMR(400Hz、30mgの試料、10mgの安息香酸標準、700μLのD-クロロホルム)によって測定し、ポリマーの長さをゲル浸透クロマトグラフィー(Agilent PL-gel mixed-D、300×7.5mm ID、5μm、THF/酢酸(90/10)中2mg/mL、15分間の泳動)によって分析した。
【0192】
b)異なる長さの両親媒性ポリマーの効果
様々な長さのPMAcODを使用してオレアート-SPIONをコーティングした。
【0193】
最初に、同じポリマー対SPION重量比を使用してコーティングを行った。最良のコーティング条件を見出すために、ポリマー対SPIONモル比を一定に保った。凝集体の量を比較した。凝集体が最も少ない方法を繰り返し、続いてTFFを使用して精製した。ポリマーの除去及び凝集体の量を、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を使用してTFF中に監視した。
【0194】
オレアート-SPIONをPMAcOD3100、PMAcOD4800及びPMAcOD5900)でコーティングして、最適なポリマー/SPION比を決定した。
【0195】
オレアート-SPIONをコーティングするために、ポリマー及びナノ粒子をクロロホルムに溶解した。その後、クロロホルムを蒸発させた。コーティング手順の最後の工程において、水酸化ナトリウム水溶液をフラスコに添加し、50℃で混合した。PMAcOD3100には100mgのポリマーを使用した。100mgのポリマー及び145mgのポリマーを有するPMAcOD4800コーティングについて比較した。100mgのポリマー及び177mgのポリマーを有するPMAcOD5900コーティングについて比較した。このようにして、等量のモノマーをPMAcOD3100に関して等量のポリマー鎖と比較した。
【0196】
サイズ排除クロマトグラフィーを使用することにより、どの条件が最小量の凝集体をもたらすかを決定した。
【0197】
結果を表8に要約した。
【0198】
【表9】
【0199】
c)精製後の異なるポリマー長の影響
以前に使用したのと同じプロトコルを使用して、オレアート-SPIONをコーティングした。全てのポリマーについて、同じ量のポリマー鎖を使用した。コーティング後、PMAcOD-SPIONをTFFによって精製した。ポリマーPMAcOD5900の最終量を除去することは困難であるため、0.15gのポリマー(PMAcOD3100を用いた標準的な実験と比較して0.79当量)を用いてこのコーティングも試みることにした。
【0200】
SECを使用して、試料中に凝集体及びポリマーがどの程度残っているかを決定した。コーティング後、PMAcOD3100は5.9%の凝集体を含み、PMAcOD4800は6.2%の凝集体を含み、PMAcOD5900は10.7%の凝集体を含んでいた。これは、前のセクションで説明したデータと一致した。
【0201】
次に、PMAcOD-SPIONをTFFによって精製した。粒子を膜にロードし、その後、5mM NaOH/45mM NaClですすいだ。10DV(PMAcOD3100の場合)又は20DV(PMAcO4800及びPMAcOD5900の場合)(DV=TFF精製における透析濾過体積)ごとに試料を採取し、(その後)SECによって測定した。TFF精製中に、ポリマーの減少及び凝集体の増加を追跡するために工程内試料も採取した。
【0202】
結果を表9に要約した。
【0203】
【表10】
【0204】
実行1、2及び4のTFF生成物を0.2μmフィルターで濾過した。実行1も0.1μmフィルターで濾過して凝集体の量を減少させた。
【0205】
試料の濾過の前後に、動的光散乱(DLS)測定を行い、Z平均直径及び多分散性指数(PDI)を決定した。PMAcODコーティングSPIONの全てのバッチは、26~28nmのZ平均直径を示し、PDIは0.25~0.33であった(表11を参照されたい)。
【0206】
鉄の量は、原子吸光分析(AAS)を使用して、濾過後に38~50mgであると決定され、これは83~110%の鉄回収率に相当する。
【0207】
結果を表10に要約する。
【0208】
【表11】
【0209】
実施例7:分子量の異なるポリマーを有するPMAcOD-SPIONの精製の比較
市販の高分子量PMAcOD(30,000~50,000g/molのMn)及び低分子量PMAcOD(3,000~5,000g/molのMn)でコーティングしたSPIONを、実施例1から4に記載のように生成した。その後、タンジェンシャルフロー濾過(TFF)精製を使用して非結合物質を除去した。容易にスケーリングすることができるので、TFFはコーティングされたSPIONSの精製に選択される方法である。残余分及び透過液試料のサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)分析を行って、TFF精製プロセスを監視した。高分子量ポリマー及び低分子量ポリマーでコーティングされたSPIONのTFFを使用した精製効率を比較した。
【0210】
a)高分子量PMAcOD-SPIONの精製
第1の工程では、粗HM-PMAcOD-SPIONの試料を、TFFによる精製の前にSECを用いて分析した(粗試料、図9を参照されたい)。粗HM-PMAcOD-SPIONのバッチは、HM-PMAcOD-SPIONのメインピークのわずかなショルダー部分(RT:15.541)を示し、このバッチが最小量の大きな凝集体を含み、分散液中に21.2%(a/a)の非結合ポリマーが遊離している(RT:16.698)ことを示した。
【0211】
続いて、ポリマーコーティング後のHM-PMAcOD-SPIONを非結合ポリマー分子から分離するために、高分子量PMAcOD-SPION試料を300kDaのTFF膜を使用してTFFによって濾過した。図9及び図10に示すように、分離は達成されなかったが、HM-PMAcOD-SPION及びHM-PMAcODポリマーの両方が濾過後の透過液に含まれていた。
【0212】
したがって、これを低減できるかどうかを確認するために、いくつかの選択肢を試験した。しかし、いずれも成功しなかった。HM-PMAcOD-SPIONの保持力が低すぎるため、生成物をあまり失うことなくSPIONとポリマーの良好な分離を得ることができなかった。100kDaと孔径を小さくした膜は、ポリマーコーティングされたSPIONの保持を可能にしたが、同時にポリマーの保持及び濃縮をもたらした(図11に示す)。
【0213】
結論として、300kDaのTFF膜を用いた濾過も100kDaのTFF膜を用いた濾過も、非結合HM-PMAcOD材料からのHM-PMAcOD-SPIONの精製が可能でないことが見出された。
【0214】
b)低分子量PMAcODコーティングSPIONの精製
第2の方法では、低分子量PMAcODコーティングSPIONを、TFF(100kDa濾過膜)を使用して精製した。再び、残余分及び透過液試料のサイズ排除クロマトグラフィー分析を行って、TFF精製プロセスを監視した。結果を、2つのバッチ(バッチMX0373A及びMX0374A)について図12に示す。
【0215】
LM-PMAcOD(3,000~5,000g/molのMn)を使用することにより、100kDaのTFF膜上の非結合ポリマーの効率的な拡散及びLM-PMAcOD-SPIONからの90%を超える非結合ポリマーの除去が示された。
【0216】
コーティング(MX0373A及びMX0374A)、TFF(100kDa膜)精製(MX0373E及びMX0374E)及び最終的な0.1μm濾過(MX0373F及びMX0374F)後の生成物のSECクロマトグラムを図13に示す。
【0217】
更に、TFF精製後(100kDa濾過膜、バッチMX0373E及びMX0374E)及びTFF精製とそれに続く0.1μm濾過後(バッチMX0373F及びMX0374F)の試料のSECデータを以下の表12に示す。
【0218】
【表12】
【0219】
提供されたデータから分かるように、LM-PMAcOD-SPIONをTFFによって効率的に精製することが可能であったが、HM-PMAcOD-SPIONの精製は非効率的であり、純粋な生成物をもたらさなかった。
【0220】
実施例8:酸化鉄コアを含有する高分子量ポリマーベースのミセルと比較した、酸化鉄コアを含有する低分子量ポリマーベースのミセルのマウスにおける静脈内注射後のインビボ安全性
a)実施例3bで生成されたバッチMX0194を、1mmol Fe/kg体重及び2mmol Fe/kg体重の用量でメスCD1マウスに静脈内注射した。1匹のマウスが2mmol Fe/kgで死亡し、これを試験品目に関連すると定義した。注射の14日後にマウスを安楽死させた。マッチさせた対照と比較して絶対臓器重量の有意な増加が見られ(表13を参照されたい)、これを試験品目の注射の有害作用と定義した。
【0221】
b)実施例3aに従って生成したPMAcOD-SPIONバッチを、1mmol Fe/kg体重(合計3mmol Fe/kg体重)の用量でメスCD1マウスに、注射1と注射2との間及び注射2と注射3との間に14日間おいて3回静脈内注射した。最後の注射の24時間後に動物を安楽死させた。肝臓重量のわずかであるが有意ではない増加が見られ、肺重量の増加は見られなかった(表13を参照されたい)。
【0222】
高分子量ポリマーベースのナノ粒子による臓器重量への影響は、実施例8a及び8bで生成したバッチについて鉄コアが類似していたという事実に起因する、高分子量ポリマーの長期有害効果に関連している。
【0223】
比較研究の結果を表13に要約する。
【0224】
【表13】
【0225】
したがって、低分子量ポリマーは、高分子量ポリマーよりも毒性が低いことが示された。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【配列表】
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【国際調査報告】