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特表2023-513631固定部分が設けられたハウジングを備える切除装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-31
(54)【発明の名称】固定部分が設けられたハウジングを備える切除装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/12 20060101AFI20230324BHJP
   A61B 17/42 20060101ALI20230324BHJP
【FI】
A61B18/12
A61B17/42
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022549336
(86)(22)【出願日】2021-02-17
(85)【翻訳文提出日】2022-10-07
(86)【国際出願番号】 EP2021053887
(87)【国際公開番号】W WO2021165319
(87)【国際公開日】2021-08-26
(31)【優先権主張番号】2024926
(32)【優先日】2020-02-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522324727
【氏名又は名称】ダーク・カール・ルク・コーマン
【氏名又は名称原語表記】COEMAN,Dirk Carl Luc
【住所又は居所原語表記】De Pretlaan 3,2950 Kapellen,Belgium
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ダーク・カール・ルク・コーマン
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160KK03
4C160KK04
4C160KK16
4C160KK36
4C160MM32
(57)【要約】
固定部分が設けられたハウジングを備える、細胞組織を除去するための切除装置。固定部分は、細胞組織と固定部分の内面とによって閉空間が形成されるように、細胞組織上に配置されるように構成されている。固定部分はさらに、空気排出手段を介して閉空間から空気を除去することによって、内面の近くに細胞組織を固定的に保持するように構成されている。切除装置は、切断要素が固定部分に対して引込位置と伸長位置との間で移動可能であるように、ハウジング内に移動可能に配置された切断要素をさらに備える。切断要素は、切断要素の遠位端に配置されるとともに切断要素が伸長位置にある時に固定部分によって保持された細胞組織のセクションを切断するように構成された電極を備えている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞組織を除去するための切除装置(100)であって、前記切除装置は、
-固定部分(120)が設けられたハウジング(110)であって、前記固定部分(120)は、細胞組織(T)と前記固定部分(120)の内面とによって閉空間が形成されるように、前記細胞組織(T)上に配置されるように構成されており;前記固定部分(120)は、空気排出手段を介して前記閉空間から空気を除去することによって、前記内面の近くに前記細胞組織(T)を固定的に保持するようにさらに構成されている、ハウジング(110)と、
-切断要素(130)が前記固定部分(120)に対して引込位置と伸長位置との間で移動可能であるように、前記ハウジング(110)内に移動可能に配置された切断要素(130)であって、前記切断要素(130)が、前記切断要素の遠位端に配置されるとともに前記切断要素が前記伸長位置にある時に前記固定部分(120)によって保持された細胞組織のセクション(S)を切断するように構成された電極(140)を備える、切断要素(130)と、
を備える、切除装置。
【請求項2】
前記切断要素(130)は、前記ハウジング(110)に対して軸(A)に沿って並進可能であり、前記軸(A)は、前記ハウジングの縦方向に従って配向されている、請求項1に記載の切除装置。
【請求項3】
前記固定部分(120)は、前記細胞組織と接触するように構成されたエッジ(124)を有する少なくとも1つの直立壁を備え、前記伸長位置において、前記切断要素(130)は、前記固定部分の前記エッジを越えて延びない、請求項1又は2に記載の切除装置。
【請求項4】
前記固定部分(120)は、実質的にカップ形状である、請求項1から3までのいずれか1項に記載の切除装置。
【請求項5】
前記切断要素は、前記軸(A)に沿って測定された少なくとも3mm、好ましくは少なくとも6mm、より好ましくは9mmの距離にわたって並進可能である、請求項1から4までのいずれか1項に記載の切除装置。
【請求項6】
前記切断要素(130)は、前記ハウジング(110)の前記軸(A)に沿って回転可能である、請求項1から5までのいずれか1項に記載の切除装置。
【請求項7】
前記切断要素(130)は、複数の示された切断位置の間で回転可能であり、各示された切断位置は、組織のそれぞれのセクションに対応する、請求項6に記載の切除装置。
【請求項8】
前記複数の示された切断位置は、4つの象限(I,II,III,IV)を備える、請求項7に記載の切除装置。
【請求項9】
少なくとも前記固定部分(120)は透明な材料から製造されている、請求項1から8までのいずれか1項に記載の切除装置。
【請求項10】
前記ハウジングの遠位端の方向に、前記軸(A)に沿って外側に延び、女性患者の子宮頸部等の体腔に挿入されるように構成された、前記切除装置(110)を前記体腔の壁と位置合わせするための、ガイドロッド(200)をさらに備える、請求項1から9までのいずれか1項に記載の切除装置。
【請求項11】
前記電極は、第1及び第2副電極(141,143)を備えるバイポーラ電極である、請求項1から10までのいずれか1項に記載の切除装置。
【請求項12】
前記電極(140)が第1副電極(141)を形成し、前記ガイドロッド(200)が前記第2副電極を形成する、請求項10及び11に記載の切除装置。
【請求項13】
前記電極はループ電極である、請求項11又は12に記載の切除装置。
【請求項14】
前記ループ電極は、前記軸上の投影で見て、少なくとも3mm、好ましくは少なくとも5mm、より好ましくは少なくとも10mmの距離にわたって半径方向に延びる、請求項13に記載の切除装置。
【請求項15】
前記ハウジング(110)は、細長い中間部分(112)を備え、前記固定部分(120)は、前記細長い中間部分(112)の遠位端に配置され、前記中間部分を通して前記空気排出手段を介して前記閉空間から空気を除去することができるように、前記細長い中間部分(112)に動作可能に接続されている、請求項1から14までのいずれか1項に記載の切除装置。
【請求項16】
前記空気排出手段は、空気除去チャネル(113)が形成されるように、前記切断要素(130)から離間して前記切断要素(130)の周りに配置された前記細長い中間部分によって形成され、前記中間部分は、空気ポンプに接続可能な空気排出インターフェース(111)を備えている、請求項15に記載の切除装置。
【請求項17】
1つ又は複数の更なる空気除去チャネルが前記細長い中間部分によって形成されている、請求項16に記載の切除装置。
【請求項18】
前記切断要素(130)に接続された作動要素(150)をさらに備え、前記作動要素(150)は、前記ハウジング(110)の近位端に配置され、前記切断要素(130)を前記引込位置と前記伸長位置との間で移動させるように、及び/又は前記切断要素を前記軸(A)に沿って回転させるように構成されている、請求項1から17までのいずれか1項に記載の切除装置。
【請求項19】
前記作動要素(150)は、アクチュエータハウジング壁(116)を備えるアクチュエータハウジングセクション(115)内に配置され、前記アクチュエータハウジング壁(116)は、前記作動要素の位置制限要素(153)によって係合されるように構成された複数の位置決め突起を備える、請求項18に記載の切除装置。
【請求項20】
前記複数の位置決め突起は、複数の軸方向に配向された並進チャネル(118)及び接線方向に配向された配向チャネル(119)を定義する、請求項19に記載の切除装置。
【請求項21】
前記位置制限要素(153)は、前記作動要素(150)が前記ハウジング(110)に対して移動及び位置決めされるように、前記複数の位置決め突起とスライド係合する、請求項20に記載の切除装置。
【請求項22】
前記アクチュエータハウジング壁(118)は、前記複数の軸方向に配向された並進チャネル(118)及び接線方向に配向された配向チャネル(119)に対応するインジケータ(220a,220b,220c)をその外側に備えることができる、請求項20又は21に記載の切除装置。
【請求項23】
アクチュエータハウジングセクション(115)は、前記ハウジング(110)の前記近位端に設けられ、前記軸Aに沿った縦方向に見て並んで配置された複数のスロット(240)を備え;前記切除装置は、前記切断要素(130)が位置決め当接要素(250)を越えて移動することを防止するように構成された位置決め当接要素(250)をさらに備え、前記位置決め当接要素(250)は、前記複数のスロット(250)の1つのスロット内に配置可能である、請求項18に記載の切除装置。
【請求項24】
前記複数のスロットは、貫通孔を形成し、前記位置決め当接要素(250)は、前記位置決め当接要素が前記アクチュエータハウジングセクション(115)上に配置された時に前記スロットを通って延びることが意図された当接部を備えており、前記当接部は、前記切断要素(130)が前記当接部を越えて移動することを防止するように構成されている、請求項23に記載の切除装置。
【請求項25】
前記位置決め当接要素(250)は、好ましくは前記ハウジング(110)と係合するように構成された可撓性又はバネ仕掛けのクリップを使用して、前記ハウジング(110)上でクリップ可能である、請求項22又は23に記載の切除装置。
【請求項26】
前記固定部分(120)は、前記ハウジング(110)の前記遠位端に解放可能に取り付け可能に構成されている、請求項1から25までのいずれか1項に記載の切除装置。
【請求項27】
前記固定部分(120)には、その内面に1つ又は複数の空気溝(113a,113b)が設けられ、前記1つ又は複数の空気溝は、前記内面にわたって延びている、請求項1から26までのいずれか1項に記載の切除装置。
【請求項28】
前記固定部分には複数の目盛インジケータ(125)が設けられ、前記複数の目盛インジケータは、前記固定部分(120)上の円弧に沿って見て均等に分布されている、請求項1から27までのいずれか1項に記載の切除装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞組織を除去するための切除装置に関し、その切除装置は、固定部分が設けられたハウジングを備える。
【背景技術】
【0002】
電気サージカルツール(電気外科ツール)は、組織を通過する電流を使用して、その組織を切断、凝固、乾燥又は電気で破壊(fulgurate)する。電気サージカルツールは高周波電流を生成し、電極を介してその電流を患者の体に送る。電気サージカルツールを使用すると、電気サージカルスモークが発生する。サージカルスモークには、有害な有機及び無機化合物が含まれている。換言すれば、サージカルスモークは有害なエアロゾル化された粒子を含む。患者に加えて、これらのエアロゾル化された粒子は、吸入されたときに医療従事者にとって有害である。さらに、エアロゾル化された粒子は、処置された組織からの細菌、ウイルス又はウイルスDNAを含む可能性がある。これにより、病原体を周囲に伝染させる可能性がある。
【0003】
サージカルマスクは、サージカルスモークの有害成分を十分に濾過しない。さらに、サージカルマスクは緩くフィットすることが多く、エアロゾル化された粒子がサージカルマスクのすべての濾過機能を迂回して吸入されることを可能にする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、サージカルスモークの放出を排除又は減少させる切除装置を提供することである。本発明の更なる目的は、取り扱いが改善された切除装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、この目的のために、細胞組織を除去するための切除装置を提供し、その切除装置は、固定部分が設けられたハウジングを備え、固定部分は、細胞組織と固定部分の内面とによって閉空間が形成されるように、細胞組織上に配置されるように構成されている。固定部分は、空気排出手段を介して閉空間から空気を除去することによって、細胞組織を固定的に保持するようにさらに構成されている。切除装置は、切断要素が固定部分に対して引込位置と伸張位置との間で移動可能であるように、ハウジング内に移動可能に配置された切断要素をさらに備えている。切断要素は、切断要素の遠位端に配置されるとともに切断要素が伸長位置にある時に固定部分によって保持された細胞組織のセクションを切断するように構成された電極を備えている。
細胞組織と固定部分とによって形成される閉空間から空気を除去することにより、その閉空間内の気圧が低下する。このようにして、少なくとも部分的な真空が作られる。部分的な真空は、細胞組織を固定部分に押し込む。このようにして、細胞組織が固定部分に保持される。このようにして、固定部分は、外科医の処置中に組織が動くことを実質的に防止する。
これにより、切除装置の操作中に外科医が誤ってスリップアップする可能性が減少する。さらに、切断の質が向上し、除去される組織の量が必要な量に制限され得る。これにより、全体的な患者の回復率が向上する。
追加の利点は、組織を切断する時に、生成されたサージカルスモークがチャンバー内に含まれていることである。これにより、発生したスモークの拡散が大幅に減少するか又は完全になくなることさえあり、それによって有害な病原性のリスクが減少する。
【0006】
好ましくは、切断要素は、ハウジングに対して軸に沿って並進可能であり、軸Aは、ハウジングの縦方向に対応する。切断要素がハウジングに対して並進可能であるので、切断要素の切断深さを効率的に制御することができる。
【0007】
好ましくは、固定部分は、その開放端に、細胞組織と接触するように構成されたエッジを有する少なくとも1つの直立壁を備え、伸長位置において、切断要素は、固定部分のエッジを越えて延びない。
好ましくは、少なくとも1つの直立壁は周壁を備え、エッジは実質的に円形の形状を有する。
より好ましくは、固定部分は、実質的にカップ形状である。
【0008】
好ましくは、切断要素は、軸Aに沿って測定された少なくとも3mm、好ましくは少なくとも6mm、より好ましくは9mmの距離にわたって並進可能である。
【0009】
好ましくは、切断要素は、ハウジングの軸Aに沿って回転可能である。
このようにして、オペレータは切断方向及び切断の合計サイズを簡単な方法で決定することができる。これにより、組織の選択的なセクションのみを正確に除去できる。このようにして、組織の過剰な量の除去が回避され、これにより患者の治療が改善され、患者のより迅速な回復が可能になる。
【0010】
好ましくは、切断要素は、複数の示された切断位置の間で回転可能であり、各示された切断位置は、切断される組織のそれぞれのセクションを表す。
このようにして、切除装置を操作している間、視覚的なフィードバックが外科医に提供される。複数の示された切断位置の間で切断要素が回転可能であるので、切断される組織の全部分を除去するために必要とされる切断方向を、容易に維持することができる。
換言すれば、外科医が患者を検査し、その後除去される必要がある組織の位置を知っている時、外科医は組織上に切除装置を配置し、複数の示された切断位置を使用して、それぞれの切断位置に対応する必要な組織のみを除去することができる。
組織が固定部分に固定的に保持されているので、外科医は、組織の必要な部分のみを効率的に除去するために、複数の示された切断位置に頼ることができる。これにより、組織除去後の病理組織学的分析が改善され、トータルの検査時間が短縮される。
好ましくは、複数の示された切断位置は、4つの象限(I,II,III,IV)を備える。
【0011】
好ましくは、少なくとも固定部分は、透明な材料から製造されている。少なくとも固定部分を透明な材料から製造することによって、操作者は、固定部分に固定的に保持された組織を連続的に検査することができる。
【0012】
好ましくは、切除装置は、ハウジングの遠位端の方向に、軸Aに沿って外側に延び、女性患者の子宮頸部等の体腔内に挿入されるように構成された、切除装置を体腔の壁と位置合わせするための、ガイドロッドをさらに備える。
【0013】
好ましくは、ループ電極は、第1及び第2副電極を含むバイポーラ電極である。
ここでの利点は、典型的なモノポーラ電極が、ジェネレータに戻る前に、アクティブ電極から身体の複数の層を通って表面に向かって電流を循環させるという洞察に基づいている。これは、医原性火傷を引き起こしたり、ペースメーカー等の電子機器に干渉したりする可能性がある。バイポーラ電極を使用することにより、他の電子機器との干渉のリスクが低減又は実質的に排除される。さらに、凝固がより効率的に行われ、周囲の組織への熱傷が軽減される。
更なる利点は、バイポーラ電極を使用した時、低い動作温度のために、発生するサージカルスモークが実質的に少なくなるという発明者の洞察に基づいている。これにより、有害な病原性のリスクがさらに軽減される。
【0014】
好ましくは、電極が第1副電極を形成し、ガイドロッドは第2副電極を形成する。
【0015】
好ましくは、電極はループ電極である。
【0016】
好ましくは、ループ電極は、軸上の投影で見て、少なくとも3mm、好ましくは少なくとも5mm、より好ましくは少なくとも10mmの距離にわたって半径方向に延びる。
【0017】
好ましくは、ハウジングは、細長い中間部分を備え、固定部分は、その細長い中間部分の遠位端に配置され、中間部分を通して空気排出手段を介して閉空間から空気を除去することができるように、その細長い中間部分に動作可能に接続されている。
【0018】
好ましくは、空気排出手段は、空気除去チャネルが形成されるように、切断要素から離間して切断要素の周りに配置された細長い中間部分によって形成され、中間部分は、空気ポンプに接続可能な空気排出インターフェースを備えている。
より好ましくは、1つ又は複数の更なる空気除去チャネルが細長い中間部分によって形成されている。
【0019】
好ましくは、切断要素に接続された作動要素がさらに備えられ、作動要素は、ハウジングの近位端に配置され、切断要素を引込位置と伸張位置との間で移動させるように、及び/又は切断要素を軸Aに沿って回転させるように構成されている。
【0020】
好ましくは、作動要素は、アクチュエータハウジング壁を備えるアクチュエータハウジングセクション内に配置されている。アクチュエータハウジング壁は、作動要素の位置制限要素によって係合されるように構成された複数の位置決め突起を備えている。
これにより、少なくとも安定性、位置フィードバック及び/又は配向フィードバックの点から見て、切除装置の取り扱いを改善することができる。
好ましくは、複数の位置決め突起は、複数の軸方向に配向された並進チャネル及び接線方向に配向された配向チャネルを定義する。
【0021】
好ましくは、位置制限要素は、作動要素がハウジングに対して移動及び位置決めされるように、複数の位置決め突起とスライド係合する。
【0022】
好ましくは、アクチュエータハウジング壁は、複数の軸方向に配向された並進チャネル及び接線方向に配向された配向チャネルに対応するインジケータをその外側に備えることができる。
【0023】
好ましくは、アクチュエータハウジングセクションは、ハウジングの近位端に設けられ、軸Aに沿った縦方向に見て並んで配置された複数のスロットを備え、切除装置は、切断要素が位置決め当接要素を越えて移動することを防止するように構成された位置決め当接要素をさらに備え、位置決め当接要素は、複数のスロットの1つのスロット内に配置可能である。
縦方向に沿って見てスロットが並んで配置されているので、位置決め当接要素と、複数のスロットを備えたアクチュエータハウジングセクションとの間の協働により、切断要素の切断深さを迅速かつ容易に設定することができる。
より好ましくは、複数のスロットは、貫通孔を形成し、位置決め当接要素は、位置決め当接要素がアクチュエータハウジングセクション上に配置された時にスロットを通って延びることが意図された当接部を備えており、当接部は、切断要素が当接部を越えて移動することを防止するように構成されている。
このようにして、切断要素を引込位置から伸長位置に移動させた時、切断要素が当接部と係合し、その結果、切断要素の移動が制限されるであろう。
【0024】
好ましくは、位置決め当接要素は、好ましくは、ハウジングと係合するように構成された可撓性又はバネ仕掛けのクリップを使用して、ハウジング上でクリップ可能である。
これにより、クリップを使用して、ハウジングに、特にそのアクチュエータハウジングセクションに位置決め当接要素を固定することにより、切除装置の切断深さを所定の値に容易に設定することができる。
【0025】
好ましくは、固定部分は、ハウジングの遠位端に解放可能に取り付け可能に構成されている。
解放可能な固定部分は、例えば鉗子をさらに使用することなく、固定部分に固定的に保持された切断組織を除去することを可能にする。
【0026】
好ましくは、固定部分には、その内面に1つ又は複数の空気溝が設けられ、1つ又は複数の空気溝は、内面にわたって延びている。
空気溝は、固定部分の吸着面積を実質的に拡大する。このようにして、組織は改善された方法で固定部分により均一に保持される。
【0027】
好ましくは、固定部分には複数の目盛インジケータが設けられ、複数の目盛インジケータは、固定部分上の円弧に沿って見て均等に分布されている。
このような目盛インジケータを備えた固定部分を使用すると、簡単な方法で外科医に視覚的なフィードバックが提供され、これにより、患者のリスクが軽減され、介入(intervention)後の患者の回復が改善される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
添付の図面は、本発明のデバイスの現在好ましい非限定的な例示的な実施形態を示すために使用される。添付の図面と併せて読む時、以下の詳細な説明から、本発明の特徴及び目的の上記及び他の利点がより明らかになり、本発明がよりよく理解されるであろう。
【0029】
図1A図1A及び図1Bは、引込位置及び伸張位置にある切除装置の例示的な実施形態の断面図を示す。
図1B図1A及び図1Bは、引込位置及び伸張位置にある切除装置の例示的な実施形態の断面図を示す。
図2図2は、切除装置の更なる例示的な実施形態の断面図を示す。
図3A図3Aは、切除装置の縦方向に垂直な面で見た切除装置の正面図を示す。
図3B図3Bは、切除装置の縦方向に垂直な面で見た切除装置の正面図を示す。
図4A図4Aは、作動要素の例示的な実施形態の概略図を示す。
図4B図4Bは、作動要素の例示的な実施形態の概略図を示す。
図4C図4Cは、作動要素の例示的な実施形態の概略図を示す。
図5図5は、切除装置の例示的な実施形態の斜視図を示す。
図6図6の(A)は図5の例示的な実施形態の側面図を示し、(B)及び(C)は例示的な実施形態による電極を備える切断要素の遠位端の拡大部分を示す図である。
図7図7は、例示的な実施形態による図5に示される細長い中間部分のB-B断面図を示す。
図8図8の(A)及び(B)は、好ましい実施形態による固定部分の正面図である。
図9図9は、切除装置の例示的な実施形態による固定部分の斜視図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1A及び図1Bは、固定部分120が設けられたハウジング110を備える切除装置100の例示的な実施形態を示す。切除装置100は、例えば生検処置において、細胞組織Tを除去するように構成されている。より一般的には、切除装置100は、人又は動物の体の任意の部分から組織を除去するための任意の手続で使用され得る。
【0031】
固定部分120は、切除装置の細長いハウジング110の遠位端に配置されるとともに、細胞組織T上に配置されるように構成されている。
図示された固定部分は、ハウジング110の縦方向軸Aに沿った方向にある距離にわたって基部122から延びる少なくとも1つの周壁121を備える。少なくとも1つの壁121は、距離rで軸Aを取り囲むように配置されている。距離rは、好ましくは少なくとも5mm、より好ましくは7mm、さらにより好ましくは少なくとも10mmである。少なくとも1つの壁121は、基部122を介してハウジング110に結合されてもよいし、ハウジングと一体的に形成されてもよい。代替的に、少なくとも1つの壁121は、例えば結合手段等を使用してハウジングに直接的に結合されてもよい。このようにして、固定部分120は、中空なコアの範囲を定める。
固定部分は、固定部分120の開放端123の範囲を定めるエッジ124を有する少なくとも1つの直立壁を備える。エッジ124は、細胞組織と接触するように構成されている。換言すると、エッジ124はストッパーとして機能する。好ましくは、エッジは、固定部分120の円形ストップ面を定義する。このような実施形態では、距離rは、円形接触領域の半径と見なされ得る。
固定部分120が細胞組織上に配置された時、細胞組織Tと固定部分120とによって実質的に閉じた空間が形成される。固定部分が多くの形状をとり得ることは明らかであろう。好ましくは、固定部分120は、吸着カップのようなカップ状の形状を備える。更なる好ましい実施形態では、固定部分は透明な材料から製造される。固定部分120は、空気排出手段111を介して閉空間から空気を除去することによって細胞組織Tを固定的に保持するようにさらに構成されている。好ましくは、固定部分は、切除装置及びその固定部分の意図された目的に応じて、15mmから50mmの間、より好ましくは20mmから40mmの間の直径を有する。
【0032】
切除装置100は、細長いハウジング100内に移動可能に配置された切断要素130をさらに備える。切断要素130は、固定部分120に対して引込位置180と伸長位置190との間で移動可能である。引込位置180では、切断要素130は、固定部分120によって定義された閉空間の外側に配置される。延伸位置190では、切断要素130は、固定部分120によって定義される閉空間内に配置される。
切断要素130は、その遠位端に配置された電極140を備える。電極140は、図1Bによって示されるように切断要素120が伸長位置にある時に、固定部分によって保持された細胞組織のセクションSを切断するように構成されている。固定部分120によって保持された細胞組織Sは、閉空間の容積全体を満たすように図1Bに示されているが、保持された細胞組織は、閉空間の容積を部分的にのみ、特に少なくとも固定部分の壁近くの容積のみを満たしてよいことに留意されたい。
【0033】
一実施形態によれば、切断要素130は、ハウジング110に対して軸Aに沿って並進可能であり、軸Aは、ハウジング110の縦方向に従って配向されている。切断要素130は、軸Aに沿って測定された少なくとも3mm、好ましくは少なくとも6mm、より好ましくは少なくとも9mmの距離にわたって並進可能であり得る。軸Aに沿って測定された距離にわたって切断要素130を並進させることは、切削深さを設定又は変更することに対応する。好ましい実施形態では、切断要素130は、固定部分のエッジ124を越えて延びない。切断要素130は、軸Aを中心に回転可能であってよい。
【0034】
ハウジング110は、固定部分との間に配置されるとともに、作動要素150に結合された、中間部分112、好ましくは細長い中間部分112をさらに備え、固定部分120は、中間部分112の遠位端に配置されている。中間部分112は、中間部分112を通して空気排出手段を介して閉空間から空気を除去することができるように、固定部分120に動作可能に接続されていてよい。例示的な実施形態では、真空管等の空気排出管が中間部分112に配置されていてよい。好ましい実施形態では、空気排出手段は、空気除去チャネル113が形成されるように、切断要素130から離間して切断要素130の周りに配置された中間部分112によって形成される。換言すれば、中間部分は、少なくとも部分的に中空な中心を備え、それを通して空気を排出することができる。
【0035】
中間部分112には、空気排出インターフェース111が設けられていてよく、空気排出インターフェース111は、空気ポンプ(図示せず)又は真空ポンプに接続可能であり、空気ポンプ又は真空ポンプは、手動で駆動可能であり得るか又は電動機等の電気駆動手段を備えていてよい。通常、空気ポンプ又は真空ポンプは、どの手術室でも容易に利用可能である。空気排出インターフェース111は、真空管の出口及び/又は入口と互換性のある結合インターフェースを備えていてよい。図1Aは、空気排出インターフェース111が中間部分112に設けられていることを示しているが、当業者には、固定部分120又はハウジング110の他の部分に空気排出インターフェースを設けてよいことが直ちに明らかであろうことを留意されたい。
【0036】
切除装置100は、切断要素130に接続されている作動要素150を備えていてよい。作動要素150は、ハウジング110の近位端で固定部分120の反対側に配置され得る。作動要素150は、引込位置200と伸長位置190との間で切断要素を動かすように構成されている。さらに、作動要素150は、軸Aを中心に切断要素を回転させるように構成されている。作動要素150は、切断要素130に接続されている。
【0037】
切断要素130は、作動要素150から中間部分112を通って固定部分120まで延びていてよい。切断要素130は、近位に配置された作動要素150から、ハウジングの中間部分112の近位端の貫通孔を通って延びていてよい。中間部分112が空気除去チャネル113を備える実施形態では、空気シール等のシール114を配置することができる。空気シール114は、貫通孔を通る空気漏れを制限するように構成されている。このようにして、空気除去チャネル113内の真空レベルが実質的に維持され得る。
【0038】
図1Bは、切断要素130が伸長位置190に配置されていることを示している。外科医は、切断要素を引込位置180から伸長位置190に移動させることができる。切断要素130を動かすことにより、電極140は、図1Bに示されるように、組織のセクションSを切断する。選択的に、外科医は切断要素130を回転させることができる。より具体的には、切断要素130を引込位置180から伸長位置190に移動させることによって、固定部分120によって定義された閉空間内に電極140が挿入された時、電極140が組織Sと接触するようになる。好ましくは、電極140は、例えば固定部分の上壁等の固定部分120の上部を介して閉空間内に挿入される。
【0039】
図2は、切除装置100の更なる実施形態を示す。類似又は同一の部品は、図1A及び図1Bと同じ参照番号で示され、図1A及び図1Bについて上記で与えられた説明は図2の構成要素にも適用される。
図2の実施形態では、切除装置は、特に子宮頸部内外円錐生検用に構成されている。従って、切除装置は、ガイドロッド200を備える。ガイドロッド200は、切除装置110を子宮頸部と位置合わせするために女性患者の子宮頸部に挿入するように構成されている。
ガイドロッド200は、ガイドロッドの第1端201でハウジング110に固定され、ハウジング110の軸Aに沿って固定部分120の方向にその第2端202まで延びる。このようにして、子宮頸部との切除装置100の位置合わせが改善され、外科的不正確さが実質的に解消される。
ガイドロッド200は、固定部分120を越えて延びることが好ましい。固定部分を越えて延びることにより、ガイドロッド200は、切除装置の位置合わせをさらに改善する。
【0040】
好ましい実施形態では、切断要素130は、アクティブ電極141及びリターン電極142を備えるバイポーラ電極を備える。電極140は、ループ電極であってよい。ガイドロッドは、バイポーラ電極のリターン電極142として機能することができる。任意選択で、電極140は、互いに反対側に配置されたアクティブ電極及びリターン電極を備えていてよい。図2の好ましい実施形態では、電極は、少なくとも3mm、好ましくは少なくとも5mm、より好ましくは少なくとも10mmの距離にわたって延びるループ電極である。
【0041】
図2は、特に、切断要素130が常に正確に位置合わせされるように、切断要素130の軸がガイドロッド200と平行に配置されていることを示している。
【0042】
切断要素130は、電極に電力を供給するように構成された電源160に動作可能に接続され得る。第1及び第2導体(図示せず)が設けられていてよく、第1導体はアクティブ電極を電源160に電気的に接続し、第2導体はリターン電極を電源160に電気的に接続する。ガイドロッド200がバイポーラ電極のリターン電極を備える実施形態において、第2導体はガイドロッド200に電気的に接続される。
【0043】
図2は、ハウジング110が、作動要素150を収容及び/又は作動要素150と係合するように構成されたアクチュエータハウジングセクション115を備えることをさらに示す。アクチュエータハウジングセクション115及び作動要素150の更なる実施形態は、図4A図4B及び図4Cで詳細に論じられるであろう。
図2は、アクチュエータハウジングセクション115が、軸Aに沿ってハウジングの近位方向に延びるアクチュエータハウジング壁116を備えることをさらに示している。アクチュエータハウジング壁116は、作動要素150の少なくとも一部を収容するように構成された少なくとも部分的に中空なコアの範囲を定める。
アクチュエータハウジング壁116は、複数の位置決め突起117を備えていてよい。アクチュエータハウジングセクション115の実施形態は、図4A図4B及び図4Cに関してさらに詳しく説明されるであろう。
【0044】
可能な実施形態によれば、例えば真空管等において、真空ポンプ210と空気排出インターフェース111との間に三方弁170が配置されていてよい。三方弁は3つの位置を備え、第1位置は、空気が閉空間から除去されて固定部分が組織を固定的に保持するように、真空ポンプ210を空気排出インターフェース111と流体的に接続する。第2位置では、三方弁170は、閉空間を流体的に遮断してその中の真空が維持されるように構成されている。第3位置では、三方弁170は、汚染された空気が真空ポンプに実質的に到達しないように、閉空間を容器と流体的に接続するように構成されている。
【0045】
図3A及び図3Bは、装置の縦方向軸に垂直な面で見た、切除装置、特に切断要素及びそのガイドロッドの正面図を示す。図3A及び図3Bは、特に、図1A図1B及び図2に示される電極140の代替的な実施形態を示す。
電極140は、モノポーラ又はバイポーラであり得る。本出願の文脈において、モノポーラ電極は、単一のアクティブ電極及びインアクティブ(不活性)リターン電極を備える切断要素である。インアクティブ電極は、例えば、手術台であってもよい。換言すると、患者の身体がリターン電極として機能する。バイポーラ電極は、アクティブ電極及びリターン電極を備える切断要素である。換言すると、バイポーラ電極は、第1副電極と第2副電極とを備える。モノポーラ電極とは対照的に、第1及び第2副電極は両方とも、切除位置に又はそのすぐ近くに位置する。アクティブ電極は第1副電極とも呼ばれ、リターン電極は第2副電極とも呼ばれる。リターン電極がアクティブ電極であってもよい。
【0046】
図3Aは、第1副電極141から第2副電極142まで延び、軸Aに実質的に垂直な平面内にループを形成することができる電極ワイヤ143を示す。図3Aは、第2副電極が第1副電極141と平行に配置されていることを示しているが、以下に説明するように、ガイドロッド200が第2副電極を形成してもよいことは明らかであろう。ループの一部は、軸Aの半径方向距離dに配置されていてよい。電極ワイヤ143は、切断要素130が軸Aに沿って並進される時に、軸Aに平行な平面に沿って組織が切断されるように構成されている。これは、円形ループ、半円形ループ、矩形ループ等である。距離は4~11mmの範囲であり得る。好ましい実施形態では、電極141がアクティブ電極であり、ガイドロッド200がバイポーラ電極のリターン電極として機能する。これにより、患者がより迅速に回復することを可能にするきれいな切断が得られる。さらに、これにより、切断セクションからの切断組織を容易に除去することが可能になる。
【0047】
図3Bは、図2の実施形態の電極の正面図を示す。電極140は、(図2に示すように)軸Aに沿って互いにある距離を置いて配置されるとともに電極ワイヤ143によって電気的に接続された第1副電極141と第2副電極とを備えている。電極ワイヤ143はループを形成することができ、電極ワイヤ143は軸Aから固定部分の少なくとも1つの壁121まで半径方向に延びるとともに戻る。このようにして、切断要素が軸Aに沿って並進された時に、電極は軸の半径方向の線に沿って組織を切断するであろう。ループ状に配置された電極ワイヤ143は、切断要素が回転された時に、軸Aの周りの回転の接線方向に組織を切断する。これは、例えば、円錐生検中に、子宮頸管の一部のような子宮頸部の組織等の組織の選択部分のみを切断するために使用され得る。
【0048】
図4A図4B及び図4Cは、好ましくはハウジング110のアクチュエータハウジングセクション115に配置された作動要素150の好ましい実施形態を概略的に示す。類似又は同一の部分は、図2と同じ参照番号で示されている。図1A図1B及び図2について上記で与えられた説明は、図4A図4B及び図4Cの構成要素にも適用される。
【0049】
図4Aは、特に、アクチュエータハウジングセクション115内に配置された作動要素150の軸Aに沿った切断図を示す。アクチュエータハウジングセクション115は、軸Aに沿うハウジングの近位方向に延びるアクチュエータハウジング壁116を備えている。アクチュエータハウジング壁116は、作動要素150の少なくとも一部を収容するように構成された少なくとも部分的に中空なコアの範囲を定める。アクチュエータハウジング壁116は、複数の位置決め突起117を備えていてよく、位置決め突起117のそれぞれは、ハウジング110に対する作動要素150の固有の位置を定義する。
【0050】
アクチュエータハウジングセクション115の内部の展開図を示す図4Bに示されるように、位置決め突起117は格子パターンで配置される。位置決め突起117は、特に、複数の切断位置I,II,III,IV及び複数の列A,B,Cに分散されており、これらの列は、軸Aに沿って見たときに、互いの縦方向の距離でそれぞれ配置されている。位置決め突起は、好ましくは、4つの切断位置に分配される。
4つの切断位置は、軸Aに垂直な平面上の投影で見られる円の円周に沿って均等に分散される。4つの切断位置は、それぞれ0°-90°、90°-180°、180°-270°及び270°-360°の切断角度を表す。例えば6つ又は8つの切断突出部等、4つより多い数の切断位置を設けることができることは明らかであろう。換言すると、切断要素130は、複数の示された切断位置の間で回転可能であり、各示された切断位置は、組織のそれぞれのセクションに対応する。好ましい実施形態では、複数の示された切断位置は、4つの象限を備える。
外科医が作動要素を第1回転位置から任意の角度で任意の切断位置に位置された第2回転位置まで(例えば第1切断位置Iの0°から第2切断位置IIに配置された127°まで)回転してよいことは、当業者には明らかであろう。アクチュエータハウジングセクションには、それぞれの角度及び切断位置を示す分度器が設けられていてよい。
4つの位置決め突起117AI,117AII,117AIII,117AIVは好ましくは第1列Aに配置され、4つの位置決め突起117BI,117BII,117BIII,117BIVは第2列Bに配置され、4つの位置決め突起117CI,117CII,117CIII,117CIVは、第2列Bに配置される。
複数の位置決め突起は、複数の軸方向に配向された並進チャネル118及び接線方向に配向された配向チャネル119を定義する。位置決め突起は、並進チャネルが少なくとも3mm、好ましくは少なくとも5mm、より好ましくは少なくとも10mmの切断深さを定義するように配置されてもよい。
並進チャネル118及び配向チャネル119は、作動要素150上に配置された位置制限要素153を意図した位置に案内するように構成されている。位置制限要素153は、作動要素150が、ひいては切断要素が、ハウジング110に対して動かされて位置決めされるように、位置決め突起とスライド係合する。
さらに、アクチュエータハウジング壁116は、外科医が切断距離及び配向の視覚的なフィードバックを得ることができるように、それぞれの列A,B,C及び任意選択で切断位置I,II,III,IVに対応するインジケータ220a,220b,220cをその外側に備えることができる。
引込位置において、作動要素150は、例えば、位置制限要素153が切断位置Iにおける第1列Aの位置決め突起117AIと係合し、それによって切断要素のスタート位置を決定するように位置決めされ得る。
組織の事前評価に基づいて、外科医は、組織の2つのセクションを例えば4mmの深さで除去する必要があることを知っている。外科医は、インジケータと共に作動要素150によって提供される視覚的フィードバックに基づいて、作動要素を列Bに並進させるとともに切断位置IIIに回転させることを知る。
この切除装置により、到達することが物理的に困難な生検、及び限られた量のスペースのために可視性が制限される組織除去操作を、効果的かつ簡単な方法で行うことができる。さらに、本発明の洞察は、子宮頸部内外円錐生検が本質的に困難であるとともに患者にとって危険であり、そのような手術が不妊及び他の望ましくない問題を引き起こす可能性があるという事実にさらに基づいている。特に、10代から中年の年齢層に位置する女性患者では、そのような手術は行われないことが多い。切除装置が組織を固定的に保持し、アクチュエータハウジングセクションと連動する作動要素が外科医に改善された視覚的フィードバックを提供するので、そのような介入は依然として安全にかつ高い成功率で実行され得る。
【0051】
図5は、好ましい実施形態による切除装置100の斜視図を示す。
【0052】
図示の例示的な実施形態では、切除装置100は、ハウジング110を備えている。ハウジング110は、細長い中間部分112を備えている。ハウジング110は、ハンドリング部分230をさらに備えている。ハンドリング部分230は、使用者が切除装置100を容易に操作できるように設けられている。図示の好ましい実施形態では、ハンドリング部分230は、細長い中間部分112に対して角度を付けて配向されている。換言すると、ハンドリング部分230及び細長い中間部分は、互いに対して角度を形成する。ハンドリング部分230のそのような角度配向により、外科医は、介入の領域に関する視野を遮ることなく、切除装置100を保持して操作することができる。
【0053】
ハンドリング部分230は中間部分112と一体的に形成されていてよく、すなわち、ハンドリング部分及び中間部分は単一ピースから形成されていてよい。このように、一体的に形成されたハンドリング部分230及び中間部分112は、使用者が切除装置を正確に位置決めすることを可能にする頑丈なハウジング110を形成する。
代替的に、ハンドリング部分230は、解放可能な方法で中間部分112に連動接続されていてよい。中間部分112をハンドリング部分230に好ましくは解放可能な方法で連動接続するために、接続インターフェース231aが設けられていてよい。ハンドリング部分230の接続インターフェース231aは、中間部分112によって設けられた対応する接続インターフェース231bを受け入れるように構成されるか、又はその逆であってよい。例えば接続インターフェース231b上に設けられた対応する雄ねじがねじ込まれ得る雌ねじがハンドリング部分230の接続インターフェース231aに設けられるか、又はその逆であってよい。
更なる例によれば、接続インターフェース231a,231bは、雄部分が、接続インターフェースの一方に設けられるとともに、対応する他の接続インターフェースに設けられた雌部分と連動係合するように構成された、ラチェット状ロック機構のそれぞれの部分をそれぞれ形成してよい。これにより、ハンドリング部分230を中間部分112に接続するとともに中間部分112から取り外すことが可能になる。
解放可能な中間部分112及び/又はハンドリング部分230を有することにより、細長い中間部分112及びハンドリング部分230を互いに独立して製造することが可能になる。これは、そのような切除装置の製造プロセスを単純化する。また、中間部分112が例えば使い捨てアイテムであってよく、ハンドリング部分230が再利用可能なアイテムであってよい。
【0054】
図5から明らかなように、空気排出チャネル113は、細長い中間部分112からハンドリング部分230の端部までさらに延びる。図1Aに関して説明したように、空気排出インターフェース111は、複数の位置に設けられてよい。図5に示される例示的な実施形態では、空気排出インターフェース111は、ハンドリング部分230の端部近くに配置されている。このようにして、真空管及びその接続要素のような空気排出手段は、それらが「邪魔にならない所」にあるとともに、外科医の行動を妨げたり外科医の視界を妨げたりしないように、介入領域から比較的遠くに位置決めされる。
【0055】
ハンドリング部分230には、電源(図示せず)から電極に電力を供給するように構成された電力結合手段232が設けられていてよい。このため、電極が移動している間でも電力が電源から電極に伝達されるように、電力結合手段232に電気接点(図示せず)が設けられる。電気接点は、例えば、カーボンブラシ、ブラシ接点又はスリップリングであり得る。
【0056】
図示の切除装置100は、固定部分120をさらに備える。固定部分120は、ハウジング110の細長い中間部分112の遠位端に配置されている。図5の好ましい実施形態では、外科医が、介入の領域に関する視覚的なフィードバックを得て、固定部分が細胞組織を固定している時でさえも、安全に介入を行うことができるように、固定部分120が透明である。このようにして、介入の質及び患者の回復がさらに改善される。
【0057】
図示の好ましい実施形態によれば、固定部分120は解放可能である。解放可能な固定部分120は、例えば鉗子等をさらに使用することなく、固定部分120内に固定的に保持された切断組織を除去することを可能にする。より具体的には、組織が切断されると、固定部分120が組織を保持する。次いで、除去可能な固定部分が切断された組織を保持する。このように、除去可能な固定部分120は、2つの目的を有益に果たす。一方で、固定部分は、介入後の医学的合併症のリスクの大幅な減少とともに、外科的介入を安全に行うことを可能にする。一方、固定部分120は、除去された組織の保持具として利用可能である。従って、切断組織の汚染が実質的に減少されるか又は完全に回避される。これにより、組織除去後の病理組織学的分析が改善され、トータルの検査時間が短縮される。
【0058】
好ましい実施形態(図示せず)によれば、固定部分120は、ハウジング110、特に細長い中間部分112に対して回転可能である。また、細長い中間部分112は、ハンドリング部分120に対して回転可能であってよい。このような好ましい実施形態により、外科医は、快適な方法で切除装置を保持しながら、最初の切断角度を設定することができる。その利点は、そうでなければ外科医が最初の切断角度を設定するために切除装置全体を回転させなければならないという洞察に基づいている。上で詳述したように、内部円錐又は外部円錐介入の状況では、手術スペースが厳密に制限され、外科医の負担となる。回転可能な固定部分120及び/又は中間部分112を有することは、より人間工学的なツールを外科医に提供し、介入を単純化する。
【0059】
固定部分120には、好ましくは、図9に示されるように、複数の目盛インジケータ125が設けられている。好ましくは、複数の目盛インジケータ125は、固定部分120の円弧線に沿って均等に分布されている。円周線は、好ましくは円形である。複数の目盛インジケータ125は、図9に関してさらに詳しく説明されるであろう。
【0060】
図5は、作動要素150及びアクチュエータハウジングセクション115の好ましい実施形態を示す。アクチュエータハウジングセクション115は、切除装置のハウジング110に備えられる。図示の実施形態では、アクチュエータハウジングセクション115は、複数のスロット240を備える。スロット240のそれぞれは、位置決め当接要素250を受け入れるように構成されている。スロット240は、軸Aに沿った縦方向に見て並んで配置されている。換言すれば、スロットは、軸Aに沿って見て、ある距離だけ離間されている。スロット240は、アクチュエータハウジング壁116の外側から内側まで延びている。換言すると、各スロット240によって貫通孔が形成されている。
【0061】
位置決め当接要素250は、複数のスロット240のいずれのスロットにも配置可能である。位置決め当接要素250は、それぞれのスロットを通ってアクチュエータハウジング壁116の内側まで延びるように構成された突起を備える。突起は、軸Aに沿って見て、切断要素130が当接部を越えて移動することを防止する当接部を形成する。従って、位置決め当接要素250は、切断要素130の切断深さを設定又は制限することを可能にする。
より具体的には、突起がスロットを通って延びるように位置決め当接要素250を配置することによって、位置決め当接要素250の移動は、スロット240の開口部の範囲を定めるアクチュエータハウジング壁116によって制限される。さらに、アクチュエータハウジング壁116の内側の突起によって形成される当接部は、切断要素130の移動を制限する。従って、位置決め当接要素250と複数のスロット240が設けられたアクチュエータハウジングセクション115との間の協働により、切断要素130の切断深さを迅速かつ容易に設定することが可能となる。
スロット240は互いに所定のピッチ距離で設けられていてよく、これは隣り合うスロット間の距離が同じであることを意味する。スロット240は、例えば、縦方向軸Aに沿って見て、2mm毎に設けられていてよい。代替的に、スロット240は、互いから相互に異なる場合がある所定の距離で配置されていてよい。例えば、第1スロットと第2スロットとの間に4mmの距離が存在し、第2スロットと第3スロットとの間に2mmの距離が存在していてよい。
上記の好ましい実施形態の位置決め当接要素240は、図4A及び図4Bに関して詳述した並進チャネル118内の位置制限要素153の協働と同様に機能することが明らかであろう。位置決め当接要素250は、図4A及び図4Bの実施形態よりも製造が構造的に複雑でない好ましい実施形態であり、切断深さの正確なゲージを簡単な方法で外科医に提供する。
外部円錐及び/又は内部円錐介入に特に有益な好ましい実施形態では、スロットは、約4mm、10mm、20mm及び30mmの切断深さの選択を可能にするように配置される。
【0062】
位置決め当接要素250は、除去可能な方法でハウジング110に取り付けられることができる。好ましくは、位置決め当接要素250は、切除装置のハウジングにクリップ可能である。換言すれば、位置決め当接要素250は、位置決め当接要素251と切除装置100とを一緒に保持する可撓性又はバネ仕掛けのクリップを備える。これにより、クリップを使用して、位置決め当接要素250をハウジング110に、特にそのアクチュエータハウジングセクション115に固定することによって、切断深さを所定の値に容易に設定することが可能となる。
【0063】
図示されていない好ましい実施形態によれば、切断要素又は作動要素150は、ハンドリング部分に配置された手(ハンド)又は指で操作されるトリガーによって操作可能である。手で操作されるトリガーは、例えば、切断要素130を回転させるように構成されていてよく、この場合、ハンドトリガーを特定の距離にわたって握ると、握った距離に関して対応する量の角度にわたって切断要素が回転することになるであろう。代替的に又は組み合わせて、トリガーは、任意選択で作動要素150を使用して、所定量の角度(例えば360°)だけ切断要素130を回転させるように構成されていてよい。これにより、外科医の介入が簡素化される。代替的に又は組み合わせて、足(フット)で操作されるペダルに同様の機能が設けられていてよい。上述の手で操作されるトリガー又はフットペダルは、真空ポンプ又は三方弁を操作するように構成することもでき、従って操作の可能性がさらに高まる。
【0064】
図6の(A)は、図5に示される切除装置100の好ましい実施形態の側面図であり、切断要素130がハウジング110とは別に示されている。
【0065】
図6の(A)は、切断要素130がハウジングの近位端Pでハウジング112内に挿入され得ることを示している。切断要素130は、特に、軸Aに沿って切断要素130をハウジング112内にスライドさせることによって、ハウジング112内に挿入可能である。
【0066】
図6の(A)は、図示の好ましい実施形態によれば、切断要素130が作動要素150及び電極140を備えることも示す。作動要素150は、切断要素130の近位端Pに配置されている。電極140は、切断要素130の遠位端Dの近くに配置されている。
切断要素130は、遠位端と近位端との間に延びる細長いシャフト131を備えている。切断要素130は、電源(図示せず)から電極140に電力を伝達するように構成された導電体132を備えている。導電体132は、受電セクションから電極140まで細長いシャフト131を通って延びている。
受電セクション133は、切断要素130がハウジング110内に配置される時に、受電セクション133が例えば電力結合手段232等に電気的に接続することができるように、配置及び寸法決めされる。受電セクションは、電源(図示せず)から電力を直接受け取ることもできる。受電セクション133は、切断要素130の伸長位置と引込位置との両方、又はその間の任意の位置で、電力結合手段232に電気的に接続することができる。このようにして、電源が投入された時に電極140が機能することが保証される。
【0067】
好ましい実施形態によれば、細長いシャフト131は、導電体132を少なくとも部分的に形成し、例えば、細長いシャフト131は、ステンレス鋼等の導電性材料から部分的に製造され得る。これは、切除装置に頑丈な切断要素130を有利に提供すると同時に、電極140に電力を供給する導電体を提供する。好ましくは、細長いシャフトはコーティングされるか又は表面層が設けられる。コーティング又は表面層は、細長いシャフトの表面が組織に接触した時に患者の身体に不要な電流が流れることを防ぐために、電気絶縁性である。また、そのような実施形態では、電極140のみが組織を切断又は焼灼できるので、望ましくない焼灼又は切断が防止される。代替的に、細長いシャフト131は中空であってもよい。中空シャフト131は、導電体を収容することができる。
【0068】
図6の(B)及(C)は、図6の(A)に示される切断要素130の遠位端に配置された電極140の異なる好ましい実施形態を示す。
【0069】
図6の(B)は、例えば、子宮頸部の腔の外側及び子宮頸部の外部開口部の近くに位置する組織を切除するために、外部円錐介入のために最適に成形された電極140を示す。
図示の電極140は、切断要素130から離れて延びる比較的長い横方向部分と、切断要素に沿って延びる比較的短い縦方向部分とを備える。好ましくは、横方向部分は、図6の(B)に示されるように、電極の遠位端で切断曲線を定義するように湾曲されている。横方向部分は、縦方向軸Aに対して実質的に垂直である。好ましくは、横方向部分の長さは、5mmから20mmの間、より好ましくは7mmから15mmの間である。縦方向部分は、縦方向軸Aに実質的に平行である。好ましくは、縦方向部分の長さは、1mmから10mmの間であり、より好ましくは2mmから8mmの間である。
図6の(C)は、例えば子宮頸部の腔の内側に位置するとともに子宮頸部の外部開口部を越えて位置する組織を切除するために、内部円錐介入のために最適に成形された電極を示す。図示の電極140は、切断要素130から離れて延びる比較的短い横方向部分と、切断要素に沿って延びる比較的長い縦方向部分とを備えている。横方向部分は、縦方向軸Aに対して実質的に垂直である。好ましくは、横方向部分の長さは、1mmから4mmの間である。縦方向部分は、縦方向軸Aに実質的に平行である。好ましくは、縦方向部分の長さは、10mmから50mmの間、より好ましくは15mmから45mmの間、最も好ましくは20mmから40mmの間である。
図6の(B)及び図6の(C)に示される電極140は、モノポーラである。モノポーラ電極は、より容易に構築可能であり、切除装置の製造コストを削減する。固定部分120と組み合わせて、そのようなモノポーラ電極の使用は、組織を切断することによって発生するスモークが空気排出手段を使用して排出されるので、行為中の外科医又は患者に対して医学的脅威とならない。
【0070】
図7は、図5に示された断面B-Bの正面図を示す。図7は、特に、切除装置100のハウジング110の細長い中間部分112の好ましい実施形態の断面図を示す。中間部分112は、切断要素ハウジングセクション260を備えている。切断要素ハウジングセクション260は、細長いシャフト131を収容するように設計されている。切断要素ハウジングセクション260は、切断要素ハウジングセクション260と細長いシャフト131との間の距離が最小、例えば5mm未満、好ましくは2mm未満となるように設計されている。このようにして、切断要素130の移動の自由度が実質的に制限されるので、切断偏差が減少する。換言すれば、切断要素130の移動は、縦方向軸Aの方向のみに、又は前記軸Aの周りを回転する方法のみで可能とされる。切断要素130の改善された回転案内のために、切断要素ハウジングセクション260の内周は、円形であってもよい。
【0071】
切断要素ハウジングセクション260は、電極ハウジングセクション261に接続されている。電極ハウジングセクション261は、切断要素ハウジングセクション260から外側方向に半径方向に延びる。電極ハウジングセクション261は、電極140、例えば図6の(B)及び図6の(C)に示される電極140の通過を可能にするように構成されている。
切断要素ハウジングセクション261は、好ましくは、切除装置の全体寸法を最小に保つことができるように狭い。電極ハウジングセクション261が延びる半径方向距離は、好ましくは少なくとも3mm、好ましくは少なくとも5mm、より好ましくは少なくとも10mmである。
切断要素ハウジングセクション260と電極ハウジングセクション261との組み合わせにより、例えば図6の(A)、(B)及び(C)に示される切断要素130を切除装置に容易に挿入することが可能になる。これにより、外科医は、介入を開始する前に、切断要素を容易に交換したり、切除装置を装填したりすることができる。
【0072】
図1A及び図1Bのハウジング110によって形成される単一の空気除去チャネル113に加えて、図7に示される中間部分112は、複数の更なる空気除去チャネル113を備えている。別の言い方をすれば、1つ又は複数の更なる空気除去チャネル113は中間部分112に備えられる。図示の例では、2つの更なる空気除去チャネル113が設けられている。更なる空気除去チャネル113は、固定部分120からの空気除去を改善する。また、更なる空気除去チャネル113は有利には冗長である。より具体的には、組織、体液又は液体が空気除去チャネル113の1つ又は複数を遮断する時に、固定部分は、空気除去チャネル113の少なくとも1つが少なくとも部分的に開いたままである限り、細胞組織を保持し続けることができる。
【0073】
図示の例示的な実施形態では、更なる空気除去チャネル113は、電極ハウジングセクション261に対して隣接して配置される。複数の更なる空気除去チャネル113を配置することは、更なる空気除去チャネル113のそれぞれを形成するハウジング壁が切除装置に構造強度を提供するという利点を有する。従って、切除装置は、外科医が介入をより正確に行うことを可能にする、より頑丈で堅いものである。
【0074】
図示の実施形態では、更なる空気除去チャネル113は、電極ハウジングセクション261に平行であるとともに、実質的に同様の幅を備える。空気除去チャネル113の細長い断面形状は、切除装置のハウジング全体の幅を最小に維持しながら、最大の可能な空気流を有することを可能にする。2つよりも多い空気除去チャネル113が設けられてもよいこと、又はその形状が異なっていてもよいことは、当業者に明らかであろう。空気除去チャネルは、例えば切断要素ハウジングセクション260及び電極ハウジングセクション261を取り囲むように設けられていてよい。任意選択で、切断要素ハウジングセクション260及び電極ハウジングセクション261も真空ポンプに接続される。
【0075】
図8の(A)及び(B)は、好ましい実施形態による固定部分120の正面図を示す。図示の実施形態では、固定部分120の壁の内面には、1つ又は複数の空気溝113a,113bが設けられている。空気溝113a,113bは、空気除去チャネル113及び/又は切断要素ハウジングセクション260及び電極ハウジングセクション261に流体接続可能である。空気溝113a,113bは、固定部分120内のより広い領域に真空を分配するので、使用中の固定部分120内の真空レベルを改善する。別の言い方をすれば、空気溝は、切除装置の使用中の固定部分120内の真空レベルを改善する、空気除去チャネルへの大きな空気入口を提供するように設計されている。より大きな空気入口は、組織の保持に悪影響を及ぼすであろう、空気除去チャネルへの空気入口を細胞組織が塞ぐ状況を実質的に回避する。空気溝は、固定部分内に組織をより均一に保持することを可能にし、それによって、組織固定、切断精度、視認性及び/又は耐久性に関して、切除装置の全体的な機能を改善する。
【0076】
図8の(A)の例示的な実施形態では、2つの空気溝113a,113bが示されている。好ましくは、2つの空気溝113a,113bのそれぞれでの吸引は、別々にオン及びオフにされることができ、これにより、外科医が2つの空気溝113a,113bを制御して、吸引がない状況、又は第1空気溝113a及び/又は第2空気溝113bで吸引がある状況を作り出すことが可能になるであろう。
【0077】
第1空気溝113aは、複数の実質的に半径方向に延びるアームを有する円弧溝を備えている。円弧溝は、切断要素ハウジングセクション260の開口部を取り囲み、そこを通って切断要素がその距離で延びる。空気溝113aの延びるアームは、固定部分の第1空気溝113aの吸引面積を実質的に拡大する。円弧溝は、吸引及び/又は真空が固定部分120内に均等に分配されるように、アームを流体的に相互接続する。好ましい実施形態では、特に外部円錐介入を考慮して、第1空気溝113aは、標本領域に対応するとともに、吸引を提供するように制御されてよく、その一方で、第2空気溝113bは、吸引を提供しないように制御されてもよく、それにより、切除装置を体から除去している間、切断標本が固定部分120に付着したままであることを可能にする。
【0078】
第1空気溝を囲む円弧を形成する第2空気溝113bが固定部分120の壁に設けられている。第2空気溝の円弧は、第1空気溝113aの円弧に関してより大きな径を有している。第2空気溝113bは、エッジ124の近くに位置する組織が固定部分によってしっかりと保持されるように、固定部分120の最も外側の領域に真空を得るために吸引を提供することを可能にする。このようにして、固定部分は改善された方法で組織を保持する。第2空気溝113bは、切断要素ハウジングセクション260の開口部から第2空気溝の円弧形状部分まで半径方向に延びる溝部分を備えている。その半径方向に延びる溝部分は、円弧形状の第2空気溝113bを空気除去チャネル113又は切断要素ハウジングセクション260及び/又は電極ハウジングセクション261に流体的に接続する。
【0079】
第1及び第2空気溝の複数の向き、形状及び形態が可能であることは、当業者に明らかであろう。図8の(B)は、切断要素ハウジングセクション260の開口部を取り囲むように第1空気溝113aが円形に成形されている、そのような更なる例示的な実施形態を示している。第2空気溝113bは、2つの円形部分を備え、第1円形部分が、第2円形部分を取り囲むとともに、固定部分120のエッジ124の近くに配置されている。第2円形部分は、第1空気溝113bを取り囲んでいる。
【0080】
図9は、図8の(B)に示される固定部分の例示的な実施形態の斜視正面図である。
【0081】
図9は、特に複数の目盛インジケータ125を示す。複数の目盛インジケータ125は、第2空気溝113bの円弧の近くに、すなわち固定部分120の周囲の近くに、配置されるとともに、好ましくは均等に、分布されている。固定部分120が例えば女性の子宮頸部等に配置された時に、目盛インジケータ125は、切断要素130に設けられたダイヤルとともに、固定部分120に対する切断要素130の角度方向に関する視覚的フィードバックを外科医に提供する。
このような実施形態は、そうでなければ、外科医が彼又は彼女の介入を視覚的に追跡するために、又は切除装置を用いた手術からの個人的な筋肉のフィードバックに完全に頼るために、医用画像装置の使用を必要とするであろうため、特に有用である。医用画像装置の使用又は個人的な筋肉のフィードバックへの依存は、介入を実行する際にエラーを起こしやすく、多くの場合、患者の医学的合併症や不妊にさえつながる。このような目盛インジケータ125を有する固定部分120を使用することにより、視覚的なフィードバックが簡単な方法で外科医に提供され、患者のリスクが軽減され、介入後の患者の回復が改善される。
例示的な類推によれば、目盛インジケータ125は、時計の数字に対応する。この類推によれば、12時、3時、6時及び9時の目盛インジケータは、図4Bで説明した4つの象限の切断位置I,II,III,IVの境界に対応する。複数の切断位置を定義できることは明らかであろう。例えば、目盛インジケータは、それらが角度的に離間されるように配置されてよく、各位置の間の角度は例えば20°である。
図9では、外科医が切断要素ハウジングセクション260を介して切断要素130を挿入できることが明らかである。外科医は、切断要素130の引込位置及び伸張位置で切断要素を回転させることができる。切断要素130を引込位置で回転させると、介入を実行するための正しい開始位置にその切断要素を位置決めすることが可能となる。外科医は、第1目盛インジケータ125によって示される必要な位置まで切断要素130を回転させることができる。
切断要素130を伸長位置に移動させると、介入が開始されるとともに、固定部分120によって保持された組織が軸Aに沿って切断される。その後、外科医は、第2目盛インジケータまで切断要素130を回転させることができる。従って、第1及び第2目盛インジケータの間で組織が切断される。外科医は、切断要素130を引き込み及び/又は切除装置全体を引き込み、介入を終了させることができる。縦方向軸A又はその一部に対して切断要素が360°回転され得ることは明らかであろう。
好ましくは、回転の意図された目盛りを視覚的に示すことに加えて、目盛インジケータ125のそれぞれは、外科医に触覚的フィードバックを提供して、所定のセクションを切断することを支援し、及び/又はそれぞれの目盛インジケータ125の対応する位置で効率的かつ慎重に切断要素130、より具体的にはその電極140が配置及び/又は引き込まれるためのスペースを作り出す、窪み又は凹部を備える。使用された電極140に最もよく対応する固定部分120の半径に目盛インジケータ125が設けられてよいことは当業者にとって明らかである。
【0082】
好ましい実施形態によれば、切除装置にはスプリングバック機構(図示せず)が設けられ、スプリングバック機構は、切断要素130が所定の回転位置に達した後に、切断要素130を伸長位置から引込位置に移動させるように構成されている。例えば、スプリングバック機構は、切断要素が360°回転した時に切断要素を動かすことができる。別の例によれば、スプリングバック機構は、切断要素が90°回転した後に切断要素130を移動させる。切断要素の所定の回転位置は、目盛インジケータ125に対応していてよい。
【0083】
図9に示す実施形態は、切断要素130のダイヤルとともに目盛インジケータ125が、そうでなければ医療画像を使用してのみ見ることができるであろう切断要素130の位置の視覚的フィードバックを外科医に提供するので、内部円錐介入に特に有用である。さらに、図示の電極140は、切断要素130から離れて延びる比較的短い横方向部分と、切断要素に沿って延びる比較的長い縦方向部分とを電極が備えているので、内部円錐介入に特に適している。横方向部分は、縦方向軸Aに対して実質的に垂直である。好ましくは、横方向部分の長さは、1mmから4mmの間である。縦方向部分は、縦方向軸Aに実質的に平行である。好ましくは、縦方向部分の長さは、10mmから50mmの間、より好ましくは15mmから45mmの間、最も好ましくは20mmから40mmの間である。
【0084】
これまでのどの図にも示されていないが、切除装置に照明手段が設けられていてよい。照明手段は、光を発するように構成されている。照明手段は、特に内部円錐又は外部円錐介入の間、外科医の視認性を向上させる。照明手段は、ハウジング110上に配置されたLEDダイオードとして実施されていてよい。照明手段は、ハウジング内、例えばハンドリング部分230内に一体化されていてもよい。照明手段は、例えば、切除装置の円周領域全体が照らされるようにハンドリング部分を取り囲む照明リングとして具現化されていてよい。介入領域、すなわち固定部分によって固定的に保持されている組織に照明手段が向けられ得る。照明手段には、照明手段から放射された光を固定部分に導き、それによって固定部分によって固定的に保持された組織又は固定的に保持されることが意図された組織を直接照明する光誘導手段も設けられていてよい。
【0085】
上述の実施形態では、切断要素には、切断操作を実行するための電極が設けられているが、代替的に又は電極に加えて、切断操作を実行するために、以下の要素:高調波メス(harmonic scalpel)のような超音波切断手段、レーザー切断手段、機械的切断手段のうちの少なくとも1つが設けられていてよい。さらに、シーリング操作を実行するために、以下の要素:超音波シーリング手段、レーザーシーリング手段、機械的シーリング手段のうちのいずれか1つが設けられていてよい。
【0086】
特定の実施形態に関連して本発明の原理を上で述べたが、この説明は、単に例としてなされたものであり、添付の特許請求の範囲によって決定される保護の範囲を限定するものではないと理解される。
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図5
図6
図7
図8
図9
【国際調査報告】