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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-31
(54)【発明の名称】選択的粉末溶融のための設備の較正
(51)【国際特許分類】
   B22F 10/28 20210101AFI20230324BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20230324BHJP
   B33Y 50/02 20150101ALI20230324BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20230324BHJP
   B29C 64/153 20170101ALI20230324BHJP
   B29C 64/268 20170101ALI20230324BHJP
   B29C 64/393 20170101ALI20230324BHJP
   B22F 12/30 20210101ALI20230324BHJP
   B22F 12/49 20210101ALI20230324BHJP
   B22F 10/85 20210101ALI20230324BHJP
   B22F 12/41 20210101ALI20230324BHJP
【FI】
B22F10/28
B33Y10/00
B33Y50/02
B33Y30/00
B29C64/153
B29C64/268
B29C64/393
B22F12/30
B22F12/49
B22F10/85
B22F12/41
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022549341
(86)(22)【出願日】2021-02-11
(85)【翻訳文提出日】2022-08-16
(86)【国際出願番号】 EP2021053375
(87)【国際公開番号】W WO2021165145
(87)【国際公開日】2021-08-26
(31)【優先権主張番号】102020201952.5
(32)【優先日】2020-02-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.QRコード
(71)【出願人】
【識別番号】518171878
【氏名又は名称】リアライザー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Realizer GmbH
【住所又は居所原語表記】Hauptstrasse 35, 33178 Borchen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス レッドラー
(72)【発明者】
【氏名】マイノルフ テッパー
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル イーゼンベルク
【テーマコード(参考)】
4F213
4K018
【Fターム(参考)】
4F213AC04
4F213AQ01
4F213AR07
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL03
4F213WL13
4F213WL76
4F213WL85
4F213WL92
4K018CA44
4K018EA51
4K018EA60
(57)【要約】
本発明は、特に、選択的粉末溶融法により材料粉末から対象物を製造するための設備(10)を較正するための方法であって、設備(10)は、溶融すべき粉末および製造すべき対象物を収容するために設けられた造形室(22)と、造形室(22)内に高さ調整可能に設けられた造形プレート保持体(24)であって、製造すべき対象物と共に造形プレートを支持するために設けられた造形プレート保持体(24)と、制御可能な光学ユニット(20)であって、レーザ源(18)と、複数のレンズ(16)と、調整可能に配置された複数のミラー(14)を備えたミラーアセンブリとを備え、レーザ源(18)から放射されたレーザビーム(L)を造形室内の、材料粉末を溶融すべき点(S)に選択的に向けるように構成された制御可能な光学ユニット(20)とを備える、方法に関する。この場合、方法は、造形室(22)内の造形プレート保持体(24)上にスキャンフィールドプレート(26)を配置するステップと、制御可能な光学ユニット(20)を用いて、スキャンフィールドプレート(26)上の予め規定された位置に複数の光学的な基準点を作成するステップと、ミラーアセンブリのミラー(14)を較正データセットに基づき相応に調整することによって、制御可能な光学ユニット(20)を用いてスキャンフィールドプレート(26)上に測定パターン(M)を作成するステップと、光学的な基準点と測定パターンとの間の相対的な位置決めを決定するステップとを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
選択的粉末溶融法により材料粉末から対象物を製造するための設備(10)を較正するための方法であって、
前記設備(10)は、
溶融すべき粉末および製造すべき対象物を収容するために設けられた造形室(22)と、
前記造形室(22)内に高さ調整可能に設けられた造形プレート保持体(24)であって、前記製造すべき対象物と共に造形プレートを支持するために設けられた造形プレート保持体(24)と、
制御可能な光学ユニット(20)であって、レーザ源(18)と、複数のレンズ(16)と、調整可能に配置された複数のミラー(14)を備えたミラーアセンブリとを備え、前記レーザ源(18)から放射されたレーザビーム(L)を前記造形室内の、前記材料粉末を溶融すべき点(S)に選択的に向けるように構成された制御可能な光学ユニット(20)と
を備え、
前記方法は、
前記造形室(22)内の前記造形プレート保持体(24)上にスキャンフィールドプレート(26)を配置するステップと、
前記制御可能な光学ユニット(20)を用いて、前記スキャンフィールドプレート(26)上の予め規定された位置に複数の光学的な基準点(O1~O3)を作成するステップと、
前記ミラーアセンブリの前記ミラー(14)を較正データセットに基づき相応に調整することによって、前記制御可能な光学ユニット(20)を用いて前記スキャンフィールドプレート(26)上に測定パターン(M)を作成するステップと、
前記光学的な基準点(O1~O3)と前記測定パターン(M)との間の相対的な位置決めを決定するステップと
を含む、方法。
【請求項2】
前記相対的な位置決めの決定に基づいて、前記較正データセットを適合させるステップをさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
決定された前記相対的な位置決めが1つ以上の予め決定された条件を満たすまで、前記方法を反復的に実施する、請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記光学的な基準点(O1~O3)のうちの少なくとも1つの基準点は、前記ミラーアセンブリの前記ミラー(14)のうちの少なくとも1つのミラーの極端位置または特徴付けられた別の位置に相当しており、かつ/または前記基準点(O1~O3)のうちの少なくとも1つの基準点は、前記レーザビーム(L)の、前記スキャンフィールドプレート(26)に垂直に入射するビーム路に相当している、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
好ましくは一直線上に位置していない3つ以上の光学的な基準点(O1~O3)が設けられている、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記測定パターン(M)は、互いに交差する線分によって形成された複数の十字(M1~M4)を備え、前記線分は、好ましくは互いに直角を成して交差している、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記相対的な位置決めの決定および場合により前記較正データセットの適合を、前記相対的な位置決めをパターン認識の利用下で決定するように構成された読取り装置を用いて自動化して実施する、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
選択的粉末溶融法により材料粉末から対象物を製造するための設備(10)を較正するための方法であって、
前記設備(10)は、
溶融すべき粉末および製造すべき対象物を収容するために設けられた造形室(22)と、
前記造形室(22)内に高さ調整可能に設けられた造形プレート保持体(24)であって、前記製造すべき対象物と共に造形プレートを支持するために設けられた造形プレート保持体(24)と、
制御可能な光学ユニット(20)であって、レーザ源(18)と、複数のレンズ(16)と、調整可能に配置された複数のミラー(14)を備えたミラーアセンブリとを備え、前記レーザ源(18)から放射されたレーザビーム(L)を前記造形室(22)内の、前記材料粉末を溶融すべき点(S)に選択的に向けるように構成された制御可能な光学ユニット(20)と
を備え、
前記方法は、
前記造形室(22)内の前記造形プレート保持体(24)上にスキャンフィールドプレート(26)を配置するステップと、
前記ミラーアセンブリの前記ミラー(14)を較正データセットに基づき相応に調整することによって、前記制御可能な光学ユニット(20)を用いて前記スキャンフィールドプレート(26)上に測定パターン(M)を作成するステップと、
前記スキャンフィールドプレート(26)上に一義的な識別要素(ID)を作成するステップと、
場合により、さらに、前記制御可能な光学ユニット(20)を用いて、前記スキャンフィールドプレート(26)上の予め規定された位置に複数の光学的な基準点(O1~O3)を作成し、前記光学的な基準点(O1~O3)と前記測定パターン(M)との間の相対的な位置決めを決定するステップと
を含む、方法。
【請求項9】
前記一義的な識別要素(ID)は、前記設備(10)のシリアル番号、瞬時の反復番号、使用された較正データセットおよび/またはデータベースアクセス用のキー値をコード化するQRコード、一次元コード、バーコードおよび/または英数字コードを含む、請求項8記載の方法。
【請求項10】
較正のために実施された方法および識別要素に関するデータをデータベースに格納するステップをさらに含む、請求項8または9記載の方法。
【請求項11】
選択的粉末溶融法により材料粉末から対象物を製造するための設備(10)であって、
溶融すべき粉末および製造すべき対象物を収容するために設けられた造形室(22)と、
前記造形室(22)内に高さ調整可能に設けられた造形プレート保持体(24)であって、前記製造すべき対象物と共に造形プレートを支持するために設けられた造形プレート保持体(24)と、
制御可能な光学ユニット(20)であって、レーザ源(18)と、複数のレンズ(16)と、調整可能に配置された複数のミラー(14)を備えたミラーアセンブリとを備え、前記レーザ源(18)から放射されたレーザビーム(L)を前記造形室(22)内の、前記材料粉末を溶融すべき点(S)に選択的に向けるように構成された制御可能な光学ユニット(20)と、
前記制御可能な光学ユニット(20)を、請求項1から10までのいずれか1項記載の方法を実施するために制御するように構成された制御ユニットと
を備える、設備(10)。
【請求項12】
前記制御可能な光学ユニット(20)は、気密に閉鎖されたハウジング(12)を備え、前記ハウジング(12)内には、前記調整可能に配置された複数のミラー(14)のうちの少なくとも幾つかのミラーと、前記複数のレンズ(16)のうちの少なくとも幾つかのレンズとが配置されており、前記ハウジング(12)は、前記ハウジング(12)から前記造形室(22)内への前記レーザビーム(L)の入射を可能にする透明なディスク(12a)を備える、請求項11記載の設備(10)。
【請求項13】
請求項11または12記載の設備(10)と、
光学的な基準点(O1~O3)と測定パターン(M)との間の相対的な位置決めを決定し、かつ/またはスキャンフィールドプレート(26)上の一義的な識別要素(ID)を読み取るように構成された読取り装置と
から形成されている、システム。
【請求項14】
前記読取り装置は、さらに、前記相対的な位置決めの決定に基づいて較正データセットを自動的に適合させるように構成されている、請求項13記載のシステム。
【請求項15】
前記読取り装置は、さらに、前記一義的な識別要素(ID)に関するデータをデータベースに格納し、かつ/または前記データベースから読み取り、かつ/または使用者に表示するように構成されている、請求項13または14記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、選択的粉末溶融法により材料粉末から対象物を製造するための設備を較正するための方法であって、設備は、溶融すべき粉末および製造すべき対象物を収容するために設けられた造形室と、造形室内に高さ調整可能に設けられた造形プレート保持体であって、製造すべき対象物と共に造形プレートを支持するために設けられた造形プレート保持体と、制御可能な光学ユニットであって、レーザ源と、複数のレンズと、調整可能に配置された複数のミラーを備えたミラーアセンブリとを備え、レーザ源から放射されたレーザビームを造形室内の、材料粉末を溶融すべき点に選択的に向けるように構成された制御可能な光学ユニットとを備える、方法に関する。さらに、本発明は、制御可能な光学ユニットを、このような方法を実施するために制御するように制御ユニットが構成されているような設備と、このような設備と読取り装置とから形成されているシステムとに関する。
【0002】
選択的粉末溶融の分野に関する従来技術については、純粋に例として、独国特許出願公開第19905067号明細書、独国特許出願公開第10112591号明細書、国際公開第98/24574号、独国特許出願公開第102009038165号明細書、独国特許出願公開第102012221641号明細書、欧州特許出願公開第2052845号明細書、独国特許出願公開第102005014483号明細書および国際公開第2017/084781号を参照されたい。
【0003】
選択的粉末溶融法によって、例えば機械部品、工具、補綴具、装飾品などのような成形体を、相応の成形体の幾何学形状記述データに相応して、金属製またはセラミックス製の材料粉末から1層ずつ積層することによって製造することができることが知られている。製造プロセスでは、連続して複数の粉末層が互いに上下に被着され、それぞれの粉末層は、次に続く粉末層の被着前に、合焦されたレーザビームによって、成形体のモデルの選択された横断面領域に相当する所定の領域で加熱される。これによって、材料粉末が、照射を被った領域で溶融されて、一連の硬化された区分を形成する。
【0004】
このような方法を実施するための設備の制御可能な光学ユニットに個々の構成要素によって与えられる種々異なる外的かつ内的な影響、例えば、熱膨張に基づく構成要素同士の間のまたは構成要素内の機械的な誤差またはずれに基づき、溶融平面において、ミラーアセンブリのミラーによって制御すべき目標位置と、実際に存在する実際位置との間の位置偏差が生じてしまう。
【0005】
この実際位置の検査および場合によっては補正のために、レーザビームを用いた従来の方法では、測定パターンが較正データに基づいて、そのために配置すべき、スキャンフィールドプレートと呼ばれることが多い媒体に記述される。次いで、測定用に設けられた測定設備を用いて、スキャンフィールドプレートにおける実際座標を表す測定パターンが測定される。このようにして求められた測定値に基づいて、制御可能な光学ユニットの構成要素の制御のために、較正データにおける補正が行われ、設備の制御ユニットに適切に格納される。この工程を複数回連続して実施することによって、実際座標をその目標値に反復的に近付けることができ、これによって、実際座標へのシステム上の外乱影響時にも、最終的な反復回数の後では、実際座標と目標座標との間の任意の小さな偏差を得ることができる。しかしながら、動的な外乱影響の場合には、反復列の収束(Konvergenz)が不足していることに基づいて、より多くの回数の反復が実施されなければならないかまたはプロセスが完全に個別化されて新たに開始されなければならないということを前提としなくてはならない。
【0006】
実際、上述した較正工程には種々様々な観点で欠点があるということが判明しており、本発明の課題は、このような設備を較正するための、従来技術に基づき公知の方法を有利に改良することである。
【0007】
特に、上述した方法における主要な動的な外乱影響は、設備の光学システムと機械システムとの間の相対位置もしくは位置決め精度によって与えられていることが判明している。較正工程のために、制御可能な光学ユニットによって照射することができるようにするために、スキャンフィールドプレートは、設備内に機械的に位置決めされなければならないので、詰まるところ、その結果、制御可能な光学ユニットの自由度、例えば、光学ユニットの個々の構成要素相互の相対的な位置決め、つまり、特に調整可能に配置された複数のミラーと、レーザ源との相対的な位置決めに、これに対して相対的なスキャンフィールドプレートの位置決めおよびロックに関するさらに別の自由度が加わることになる。これらの付加的な自由度によって、上述した動的な外乱影響が生じるかまたは少なくとも全ての空間自由度および回転自由度に関する更なる誤差が生じてしまう。
【0008】
この問題を解決するために、本発明に係る方法は、本発明の第1の態様によれば、造形室内の造形プレート保持体上にスキャンフィールドプレートを配置するステップと、制御可能な光学ユニットを用いて、スキャンフィールドプレート上の予め規定された位置に複数の光学的な基準点を作成するステップと、ミラーアセンブリのミラーを較正データセットに基づき相応に調整することによって、制御可能な光学ユニットを用いてスキャンフィールドプレート上に測定パターンを作成するステップと、光学的な基準点と測定パターンとの間の相対的な位置決めを決定するステップとを含む。
【0009】
本発明によれば、測定パターンのための機械的な基準、つまり、幾何学的に絶対的な基準が、もはや使用されるスキャンフィールドプレート上に形成されるのではなく、設備内でのスキャンフィールドプレートの機械的な連結に左右されずに、光学的な基準点が、スキャンフィールドプレート上の予め規定された位置に設定されるので、機械的な自由度による不確実さを完全に排除することができ、これによって、本発明に係る方法の精度および収束が、従来技術に基づき公知の方法に比べて大幅に改善される。特に、光学的な基準点は、測定パターンを作成するために使用される較正データに左右されずに生成され、ひいては、本来の較正工程に左右されずに静的な基準を形成するということを留意すべきである。
【0010】
本発明に係る方法は、相対的な位置決めの決定に基づいて、較正データセットを適合させるステップをさらに含むことができるので、対象物のための後続の製造方法において、対象物の改善された精度を得ることができるようにするために、外乱影響を直接補正することが可能である。しかし、当然ながら、本発明に係る方法は、光学的な基準点と測定パターンとの間の決定された相対的な位置決めに基づいて、使用される較正データセットが製造工程の十分な精度を可能にするか否かを確認することによって、このような設備を認定するためにのみ使用されてもよい。
【0011】
相対的な位置決めの決定に基づいて較正データセットを適合させる場合には、特に、例えば、決定された相対的な位置決めが1つ以上の予め決定された条件を満たすまで、本発明に係る方法の反復実施を行うことができる。予め決定された条件としては、1つ以上の空間次元における最大偏差および/または回転自由度に関する最大偏差が考えられてもよいし、例えば上述した偏差が様々な重み付けと共に含まれていてよい、組み合わされたより複雑なパラメータが使用されてもよい。
【0012】
本発明に係る方法において更なる不確定要素を排除または低減することができるようにするために、光学的な基準点のうちの少なくとも1つの基準点は、ミラーアセンブリのミラーのうちの少なくとも1つのミラーの極端位置または特徴付けられた別の位置に相当しており、かつ/または基準点のうちの少なくとも1つの基準点は、レーザビームの、スキャンフィールドプレートに垂直に入射するビーム路に相当していてよい。こうして、基準点を作成するための上述したミラーの配向時の機械的な不確定要素および/またはビーム路内での光学構成要素に対する所定の角度下でのレーザビームの屈折による光学的な結像誤差を低減または完全に取り除くことができる。
【0013】
本発明に係る方法は、理論的には既に1つまたは2つの光学的な基準点によって実施することができるが、好ましくは、3つ以上の光学的な基準点が設けられていて、これらの基準点は、特に一直線上に位置していないことが望ましい。これによって、基準点の量と測定パターンとの間の全ての回転自由度が排除される。
【0014】
測定パターンは、それぞれの目標位置と実際位置との関係に関する情報を導き出すことができる限り、原則的に任意の形態をとることができるが、測定パターンは、互いに交差する線分によって形成された複数の十字を備え、線分は、好ましくは互いに直角を成して交差していてよいことが判明している。これらの交差点は、1つには、極めて正確な測定可能な幾何学的なデータポイントを提供し、もう1つには、自動化されたプロセスにおけるパターン認識によって比較的簡単に検出可能かつ読取り可能である。
【0015】
これに関連して、本発明に係る方法は、さらに、相対的な位置決めの決定および場合により較正データセットの適合を、相対的な位置決めをパターン認識の利用下で決定するように構成された読取り装置を用いて自動化して実施してよい。こうして、本発明に係る方法を自動化して実施することができ、このことは、本発明に係る方法の効率および精度をさらに改善することができる。
【0016】
選択的粉末溶融のための設備を較正するための公知の方法の更なる欠点は、データセットにおいて行われた適合および個々の反復ステップを追跡できるようにするために、使用されたスキャンフィールドプレートを一義的に識別する必要があるという事実に関連して生じる。特に、例えば設備のシリアル番号、瞬時の反復番号、最後に使用された補正データなどのような情報は、スキャンフィールドプレートと共に、設備から使用される測定装置に、逆に、使用された測定装置から設備に、確実に移行されなければならない。これらの情報の移行は、従来公知の方法では、相応の設備および装置の操作員が手動で実施する必要がある、つまり、スキャンフィールドプレートは、ラベルまたはこれに類するものの貼付によって特徴付けられるので、ここには更なるエラーの原因が存在することになる。なぜならば、このような手動で実施される活動では、経験上、混同または混乱を引き起こす可能性があり、このような混同または混乱は、最悪の場合、それまでに実施された全ての反復プロセスを無駄にする可能性があるからである。
【0017】
この問題を排除するために、本発明に係る方法における本発明の第1の態様に対して代替的にまたは付加的に提供することができる本発明の第2の態様によれば、造形室内の造形プレート保持体上にスキャンフィールドプレートを配置した後、ミラーアセンブリのミラーの相応を較正データセットに基づき相応に調整することによって、制御可能な光学ユニットを用いてスキャンフィールドプレート上に測定パターンを作成する前、作成している間または作成した後、さらに、スキャンフィールドプレート上に一義的な識別要素を作成し、場合により、本発明の第1の態様によれば、さらに、制御可能な光学ユニットを用いて、スキャンフィールドプレート上の予め規定された位置に複数の光学的な基準点を作成することができ、光学的な基準点と測定パターンとの間の相対的な位置決めを決定することができることが提案される。
【0018】
第1の態様による本発明に係る較正方法の実施中に、または例えば従来技術に基づき公知の機械的な位置決めデータのために光学的な基準点の作成が省かれる公知の較正方法に関連して、一義的な識別要素を直接スキャンフィールドプレート上に作成することによって、設備の使用者が、使用されるスキャンフィールドプレートを自分で一義的に識別するという責任から解放される。したがって、これに関連して、操作員ミスが確実に排除される。
【0019】
特に一義的な識別要素は、設備のシリアル番号、瞬時の反復番号、使用された較正データセットおよび/またはデータベースアクセス用のキー値をコード化するQRコード、一次元コード、バーコードおよび/または英数字コードを含むことができる。当然ながら、考えられる任意の別の識別要素が設けられてもよく、例えば、メタデータ、例えばタイムスタンプ、較正工程中の設備の操作員の識別およびこれに類するものがコード化されてもよい。
【0020】
方法は、較正のために実施された方法および識別要素に関するデータをデータベースに格納することをさらに含むことによって、識別要素自体においてコード化すべき情報を減少させることができる。なぜならば、こうして、相応の較正工程の一義的な識別がコード化されさえすればよく、ひいては、関連する全てのデータをデータベースに格納することができる。この場合、相応のデータへのアクセスは、キー値としての一義的な識別によって可能である。
【0021】
別の態様によれば、本発明は、選択的粉末溶融法により材料粉末から対象物を製造するための設備であって、溶融すべき粉末および製造すべき対象物を収容するために設けられた造形室と、造形室内に高さ調整可能に設けられた造形プレート保持体であって、製造すべき対象物と共に造形プレートを支持するために設けられた造形プレート保持体と、制御可能な光学ユニットであって、レーザ源と、複数のレンズと、調整可能に配置された複数のミラーを備えたミラーアセンブリとを備え、レーザ源から放射されたレーザビームを造形室内の、材料粉末を溶融すべき点に選択的に向けるように構成された制御可能な光学ユニットと、制御可能な光学ユニットを、本発明の第1および/または第2の態様に係る方法を実施するために制御するように構成された制御ユニットとを備える、設備に関する。
【0022】
この本発明に係る設備では、制御可能な光学ユニットは、気密に閉鎖されたハウジングを備え、このハウジング内には、調整可能に配置された複数のミラーのうちの少なくとも幾つかのミラーと、複数のレンズのうちの少なくとも幾つかのレンズとが配置されており、ハウジングは、ハウジングから造形室内へのレーザビームの入射を可能にする透明なディスクを備えていてよい。このように閉鎖されたハウジングは、「光学系ボックス」と呼ばれることが多く、上述した設備用の単一のモジュール構成要素として設けられている。
【0023】
さらに、本発明は、上述した設備と、光学的な基準点と測定パターンとの間の相対的な位置決めを決定し、かつ/またはスキャンフィールドプレート上の一義的な識別要素を読み取るように構成された読取り装置とから形成されている、システムに関する。光学的な基準点/測定パターン/一義的な識別要素は、本発明の第1の態様および/または第2の態様によれば、スキャンフィールドプレートに設けられている。
【0024】
特に、読取り装置は、さらに、相対的な位置決めの決定に基づいて較正データセットを自動的に適合させ、かつ/または一義的な識別要素に関するデータをデータベースに格納し、かつ/またはデータベースから読み取り、かつ/または使用者に表示するように構成されていてよい。これらの情報を表示するためには、任意の公知の表示装置が設けられていてよく、これらの表示装置は、設備に組み込まれていてもよいし、表示すべきデータを任意のデータ接続線を介して獲得してもよい。
【0025】
本発明の更なる特徴および利点は、以下に記載の本発明の実施形態から、この実施形態を添付の図面と一緒に見ることによってさらに明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明に係る設備を概略的に示す図である。
図2】本発明に係る方法において図1に示した設備で使用されるスキャンフィールドプレートを概略的に示す図である。
【0027】
図1には、まず、選択的粉末溶融法により材料粉末から対象物を製造するための設備が、純粋に概略的に横断面図で示してあり、この設備には符号10が付されている。
【0028】
設備10は、光学構成要素と機械構成要素とを備えており、これらの構成要素は、この分野における慣用の名称集では、光学システムと機械システムとを形成している。ここで、主要な光学構成要素は、いわゆる光学系ボックス12内に収容されており、この光学系ボックス12は、特に、調整可能に配置された複数のミラー14と、レンズシステム16とを収容している。ここでは図面を見やすくするために単に1つのミラー14だけが示してあり、また、レンズシステム16も単に概略的に示してある。全体として、ミラー14と、レンズシステム16と、レーザビームを光学系ボックス12内に入射させる外部に配置されたレーザ源18とは、制御可能な光学ユニット20を形成している。光学ユニット20の構成要素を制御ユニット(図示せず)によって適切に制御することによって、レーザビームLを、レンズシステム16の通過およびミラー14での反射後に、透明なディスク12aを通って所定の角度で光学系ボックス12から造形室22内に向けることができ、このとき、レーザビームLは、入射平面における、設備10の通常運転時に材料粉末を選択的に溶融させたい目標位置Sに当射するようになっている。
【0029】
しかしながら、本較正工程のためには、造形プレートも材料粉末も、造形室22において高さ調整可能に設けられた造形プレート保持体24に載置されておらず、造形プレート保持体24にはスキャンフィールドプレート26が載置されている。このスキャンフィールドプレート26は、レーザビームLの入射によってマークを記述することができる材料から製造されている。そのために、例えば陽極酸化されたアルミニウムプレートが使用されるが、このような設備において材料粉末を溶融するために典型的に使用されるレーザビームによって記述することができる他の適切な材料も考えることができる。
【0030】
しかしながら、図1では、レーザビームLは目標位置Sでスキャンフィールドプレート26に当射せず、考えられる種々様々な外乱影響によって実際の実際位置Pに当射する。スキャンフィールドプレート26へのレーザビームLの入射の目標位置Sと実際位置Pとの間の偏差は、制御可能な光学ユニット20の制御の適切な較正によって低減させることができる。まず、制御可能な光学ユニット20の座標系K1における外乱が、目標位置Sと実際位置Pとの間の偏差の原因となり得る。そこで、従来技術において従来慣用であるように、スキャンフィールドプレート26に対する、レーザビームLの入射によって実際位置Pで発生しているマークの絶対位置を、両位置の間における偏差のための尺度としてとったとすると、機械システムの座標系K2における外乱も付加的に考慮する必要がでてきてしまう。なぜならば、造形プレート保持体24に対するスキャンフィールドプレート26の位置決めおよび回転位置と、更なる自由度、例えば造形室22に対する光学系ボックス12の相対的な位置決めとが、別の外乱源または誤差源を成しているからである。このような機械的な外乱源は、測定ごとに異なっていることがあるので、このような外乱源は、動的なシステム上の欠陥であり、このような欠陥によって、特定された反復方法が収束しないかまたは有意に迅速に収束しないことが生じてしまう。
【0031】
従来技術に基づき公知のこの方法とは異なり、本発明によれば、スキャンフィールドプレート26への照射は、図2に示したパターンがスキャンフィールドプレート26上に作成されるように実施される。まず、3つの光学的な基準点O1~O3から成る光学座標系がスキャンフィールドプレート26上に作成され、これらの3つの基準点O1~O3は、較正に曝されない正確に規定された点に常に作成され、これらの点は、好ましくは、光学ユニット20のミラー14のうちの少なくとも1つのミラーが終端位置または別の箇所に特徴付けられた位置にあり、かつ/またはディスク12aを通るレーザビームLのビーム路ひいてはスキャンフィールドプレート26への当射が鉛直に行われるように特徴付けられており、これによって、結像誤差を排除することができる。
【0032】
基準点O1~O3から形成された光学座標系に対して相対的に、複数の十字のマークM1~M4が、較正データセットを用いてスキャンフィールドプレート26上にレーザビームLによって記述される。測定パターンMを形成するマークM1~M4を作成するために、設備10の制御ユニットによって、特に設備10の通常運転時にも使用されるはずの較正データセットを使用することにより、機械システムに左右されずに、マークM1~M4の予期された目標位置と実際の実際位置との間の偏差を、これらの相対的な位置決めを決定する後続のステップにおいて算出することができる。
【0033】
その後、この算出に基づいて、補正された較正データセットを作成することができ、これによって、目標位置への実際位置の反復的な接近を複数回のステップで達成することができる。スキャンフィールドプレート26上のマークM1~M4の読取りと、次いで行われる、新しい較正データセットの作成とは、専用の外部の読取り装置において実施することができる。
【0034】
さらに、念のために付言しておくと、スキャンフィールドプレート26上にはレーザビームLを用いて識別要素IDがさらに記述されており、図2に示した実施形態では、バーコードおよびQRコードならびに英数字コードが例として示されているが、実際には、通常、これらのコードのうちの1つのコードだけが使用される。
【0035】
この識別要素によって、例えば、瞬時の反復、設備10のシリアル番号およびその他の関連データをコード化することができ、次いで、これらを同じく自動化して読み取ることができ、連続する反復またはそれぞれ異なる設備によるスキャンフィールドプレート26のマーキングおよびハンドリングの際の操作ミスを排除することができる。
図1
図2
【国際調査報告】