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特表2023-513640コピー保護のためのコンピュータ実装方法、データ処理装置およびコンピュータプログラム製品
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  • 特表-コピー保護のためのコンピュータ実装方法、データ処理装置およびコンピュータプログラム製品 図1
  • 特表-コピー保護のためのコンピュータ実装方法、データ処理装置およびコンピュータプログラム製品 図2
  • 特表-コピー保護のためのコンピュータ実装方法、データ処理装置およびコンピュータプログラム製品 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-31
(54)【発明の名称】コピー保護のためのコンピュータ実装方法、データ処理装置およびコンピュータプログラム製品
(51)【国際特許分類】
   G06T 7/00 20170101AFI20230323BHJP
   G07D 7/20 20160101ALI20230323BHJP
【FI】
G06T7/00 610Z
G07D7/20
G06T7/00 350B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022556703
(86)(22)【出願日】2020-11-24
(85)【翻訳文提出日】2022-06-17
(86)【国際出願番号】 EP2020083208
(87)【国際公開番号】W WO2021105121
(87)【国際公開日】2021-06-03
(31)【優先権主張番号】19211566.5
(32)【優先日】2019-11-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.QRコード
(71)【出願人】
【識別番号】522206504
【氏名又は名称】ヨーロピアン セントラル バンク
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100111453
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻井 智
(72)【発明者】
【氏名】クラウディオ ベッリーニ
(72)【発明者】
【氏名】マーティン アイヘンベルガー
(72)【発明者】
【氏名】エリザベス シュルツ
【テーマコード(参考)】
3E041
5L096
【Fターム(参考)】
3E041AA02
3E041BA01
3E041BA07
3E041BA11
3E041BA12
3E041BA14
3E041BB01
3E041BC01
3E041DB01
5L096AA06
5L096CA17
5L096FA23
5L096FA37
5L096FA52
5L096FA62
5L096FA69
5L096GA30
5L096GA51
5L096GA55
5L096JA03
5L096KA04
(57)【要約】
文書の少なくとも一部のデジタル表現の不正処理を防止するためのコンピュータ実装方法を提供する。文書の少なくとも一部のデジタル表現の不正処理を防止するためのコンピュータ実装方法、データ処理装置及びコンピュータプログラム製品が提供され、特に文書は紙幣である。本方法は、データを提供するステップを含み、データはテスト要素の少なくとも一部のデジタル表現に基づく。デジタル表現は、テスト要素の少なくとも1つの部分に対応する画像ファイルであってもよい。本方法はまた、文書の少なくとも1つの部分の少なくとも1つの特徴的特性を表すデータに関してデータを分析するステップを伴う。本方法は、テスト要素の少なくとも1つの部分のデジタル表現に基づくデータが、少なくとも1つの特徴的特性を表すデータと類似している場合、禁止手段を起動するステップをさらに含む。禁止手段は、テスト要素の少なくとも1つの部分のデジタル表現に基づくデータの、特にデータのコピー及び/又は送信及び/又は印刷及び/又は複製を含む、さらなる処理を禁止する。代替として、禁止手段は、データがデータ処理装置によって送信及び/又は印刷及び/又は複製及び/又はさらに補正されるのを防止するようにデータを補正する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
文書の少なくとも一部、特に紙幣の一部のデジタル表現の不正処理を防止するためのコンピュータ実装方法であって、
a)訓練用文書の少なくとも一部を提供するステップと、
b)検査装置、特にスキャン装置および/またはカメラなどの外観検査装置によって前記訓練用文書の前記少なくとも1つの部分のデジタル表現を表すデータを記録するステップであって、特に、前記検査装置は、50dpi~2000dpiの範囲内、特に100dpi~1000dpiの範囲内、さらに特には200dpi~600dpiの範囲内、さらに特には300dpi~400dpiの範囲内の解像度を有する、前記訓練用文書の前記少なくとも1つの部分データファイルを提供するように構成される、記録するステップと、
c)人工知能によって、前記訓練用文書の前記少なくとも1つの部分の前記デジタル表現を表す前記データ内の特徴的特性を表すデータを識別するステップであって、前記特徴的特性は、前記文書または前記文書が適用される物質の物理的性質であり、それに基づいて客観的な観察者はテスト要素を前記文書であると考え得る、前記識別するステップと、
d)データを提供するステップであって、前記データは、前記テスト要素の少なくとも一部の前記デジタル表現に基づき、特に、前記テスト要素の前記少なくとも1つの部分の前記デジタル表現は、前記テスト要素の前記少なくとも1つの部分に対応する画像ファイルである、前記提供するステップと、
e)前記人工知能によって前記文書の前記少なくとも1つの部分の前記少なくとも1つの特徴的特性を表すデータに関して、前記テスト要素の前記少なくとも1つの部分の前記デジタル表現に基づく前記データを分析するステップと、
f)前記テスト要素の前記少なくとも1つの部分の前記デジタル表現に基づく前記データが、前記人工知能によって前記少なくとも1つの特徴的特性を表すデータと類似している場合、禁止手段を起動するステップと、
を含み、
前記テスト要素の前記少なくとも1つの部分の前記デジタル表現に基づく前記データのさらなる処理が、前記禁止手段によって禁止され、かつ/または、
前記テスト要素の前記少なくとも一部の前記デジタル表現に基づく前記データは、前記データのさらなる処理が防止されるように前記禁止手段によって補正され、
前記テスト要素の前記少なくとも1つの部分の前記デジタル表現および前記少なくとも1つの特徴的特性を表す前記データに基づく前記データの類似性は、客観的な観察者による前記類似性の前記評価に関連し、
前記方法は、前記文書の前記少なくとも1つの部分の前記デジタル表現に関して、前記テスト要素の前記デジタル表現の前記少なくとも1つの部分を表す前記データを認証しない、
コンピュータ実装方法。
【請求項2】
g)検査装置によって、特にスキャン装置および/またはカメラ等の外観検査装置によって、前記テスト要素の前記少なくとも1つの部分の前記デジタル表現に基づく前記データを記録するステップであって、特に、前記検査装置は、50dpi~2000dpiの範囲内、特に100dpi~1000dpiの範囲内、さらに特には200dpi~600dpiの範囲内、さらに特には300dpi~400dpiの範囲内の解像度を有する、前記テスト要素の前記少なくとも1つの部分のデータファイルを提供するように構成される、前記記録するステップ、
をさらに含む、請求項1に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項3】
ステップc)が、機械学習を含む前記人工知能によって実行される、請求項1または2に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項4】
h)ステップc)で識別された前記データを記憶メモリに記憶するステップであって、特に、前記データは暗号化および/またはエラーコーディングされて記憶される、前記記憶するステップ、
をさらに含む、請求項3に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項5】
前記検査装置は、ステップb)および/またはg)において、
-前記検査装置に関する前記アイテムの角度方向、
-トリミングおよび/または切断された、前記検査装置によって検査される前記アイテム、
-前記検査装置によって提供される解像度、
-前記検査装置に関する前記アイテムの歪み、および
-前記検査装置によって検査される前記アイテムに適用されるスケーリング効果
のうちの少なくとも1つから実質的に独立して、前記データを記録するように構成される、請求項2から4のいずれか1項に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項6】
前記検査装置は、反射モードおよび/または透過モードで動作し、特に、前記検査装置は、検出器および放射線放出源を備える、請求項2から5のいずれか1項に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項7】
前記ステップe)およびf)は、機械学習を含む前記人工知能によって実行される、請求項3から6のいずれか1項に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項8】
前記特徴的特性は、
-アイテムの表面上に配置および/もしくは印刷された、ならびに/またはアイテム内に含まれるコントラストレベルおよび/または色および/またはマークの単一または複数の特定の分布、
-アイテムの表面上に配置および/もしくは印刷された、ならびに/またはアイテム内に含まれるマークの単一または複数の形状、
-単一または複数のモアレパターン、微細構造、マイクロテキスト、肉眼では見えないデジタルセキュリティマーキング機構、ギョーシェ、レインボー、凹レンズ、光学可変素子、ホログラム、光学レンズ、ウォーターマーク、QRコードおよびフィンガープリント、
-前記アイテムの表面に配置された、および/または前記アイテム内に含まれる単一または複数の特定の材料であって、特に、前記特定の材料は、紙、ポリマーおよび綿等の織物のうちの少なくとも1つを含む、単一または複数の特定の材料、
-前記アイテムの表面上に配置された、および/または前記アイテム内に含まれる単一または複数のセキュリティ機構であって、特に、前記セキュリティ機構は、ホログラム、マイクロレンズ、埋め込みセキュリティスレッド、窓、ラベルおよび記号のうちの少なくとも1つを含む、単一または複数のセキュリティ機構、ならびに、
-それらの組み合わせ
のうちの少なくとも1つである、請求項1から7のいずれか1項に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項9】
ステップe)は、基準値を判定することを含み、前記基準値は、前記文書の前記少なくとも1つの部分の前記少なくとも1つの特徴的特性を表す前記データが、前記テスト要素の前記少なくとも1つの部分の前記デジタル表現に基づく前記データと類似している確率に基づくものであり、前記基準値は、前記基準値が所定の閾値よりも大きい場合に真であり、ステップf)は、前記基準値が真である場合に前記禁止手段を起動することを含む、請求項1から8のいずれか1項に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項10】
前記基準値を判定することは、前記テスト要素の前記少なくとも1つの部分の前記デジタル表現に基づく前記データのピクセル化を考慮に入れ、特に、前記基準値を判定することは、前記テスト要素の前記少なくとも1つの部分の前記デジタル表現に基づく前記データの解像度および/または色分布および/またはコントラスト分布および/または輝度分布も考慮に入れる、請求項9に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項11】
前記方法は、前記方法の前記それぞれのコードが記憶される記憶メモリを備える第1のデータ処理装置内でローカルに、もしくは遠隔で実行されるように構成され、前記第1のデータ処理装置は、前記方法の前記それぞれのコードが記憶される記憶メモリを備え、前記第1のデータ処理装置は、第2のデータ処理装置とのデータ接続部を介して接続され、前記方法は、前記データ接続部を介して前記第2のデータ処理装置上で実行される、請求項1から10のいずれか1項に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項12】
ステップd)における前記テスト要素の前記少なくとも1つの部分の前記デジタル表現に基づく前記データは、第1のデータ処理装置から第2のデータ処理装置への前記データの送信に基づいて提供され、特に、前記少なくとも1つの部分の前記デジタル表現は、前記テスト要素の一次元もしくは二次元部分を表す、請求項1から11のいずれか1項に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項13】
前記方法は、60秒未満の期間内、特に100ミリ秒~30秒の期間内、特に1秒未満の期間の間の期間内に実行される、請求項1から12のいずれか1項に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか1項に記載の方法を実行するための手段を備える、データ処理のための装置。
【請求項15】
命令を含むコンピュータプログラム製品であって、前記コンピュータプログラム製品がデータ処理のための装置によって実行されると、前記命令は、前記データ処理のための装置に、請求項1から13のいずれか1項に記載の方法を実行させる、コンピュータプログラム製品。
【請求項16】
前記コンピュータプログラム製品のコードは、暗号化および/またはエラーコーディングされて記憶されている、請求項15に記載のコンピュータプログラム製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コピー保護のためのコンピュータ実装方法、データ処理装置およびコンピュータプログラム製品に関する。
【背景技術】
【0002】
航空券や紙幣等のセキュリティ関連文書は、偽造行為の対象となることが多い。偽造文書にアプローチするための1つの対策は、疑わしい文書の真正性の評価に関する。しかしながら、このアプローチは、疑わしい文書に対して認証プロセスを実行する時点でオリジナルの文書が既に複製されているという意味でダウンストリームの活動である。したがって、認証関連の対策はあまり望ましくない。
【0003】
オリジナルの文書自体の複製は、スキャン装置、プリンタおよび/またはコピー装置によって実行することができる。これに関連して、別のアプローチは、セキュリティ関連文書を認識し、その複製を実行する前に禁止する方法に関する。
【0004】
上述した行為を防止する目的で、様々なセキュリティ機構が存在する。それらは、例えば、前述の装置内の特別な検出器によって認識される、印刷されたグラフィックデザイン要素であってもよい。次いで、検出器は、所望の行為を妨げる応答、例えば処理の拒否または高度に劣化した画像の印刷をトリガすることができる。そのようなグラフィック要素は、セキュリティ文書の図柄の一部であるような外観を有するように設計されてもよい。そのような要素の使用の例は、米国特許第5,845,008号に見出すことができる。他の場合には、視覚的にほとんど知覚できない特別な信号を、印刷されるデザインに追加することができ、その結果、そのデザインは、前述の装置内の特別な検出器によって認識され、その後、上述のような応答をトリガすることができる。そのような要素の使用の例は、米国特許第6,449,377号に見出すことができる。
【0005】
しかしながら、これらのセキュリティ機構には固有の脆弱性がある。グラフィックデザイン要素は、それらを図柄の一部のように見せる試みがなされた場合でも、それらの意図された目的のために容易に認識され得ることが多い。その結果、グラフィックデザイン要素を僅かに変更して、特殊な検出器がそれらをもはや識別せず、したがって偽造者の所望の行為を中断することができないようにすることができる。グラフィックデザイン要素はまた、正当なユーザが保護を意図していない他の文書に前記要素を適用することによって誤用される可能性があり、その結果、人は、前記文書に対するスキャン、コピーまたは印刷行為を完了することができなくなる。
【0006】
デジタルウォーターマークなどの特殊な信号はまた、印刷された文書が歪んだように見える望ましくない特色を有する可能性がある。紙幣の図柄の場合、これは特に望ましくない可能性がある。信号強度を犠牲にしてでも、歪みを低減する場合があり、通常は妥協が求められる。
【0007】
機械学習と組み合わせた人工知能(AI)は、顔認識及び他の物体識別などの用途にますます使用されるようになっている。そのような用途では、無限の数の潜在的な画像が存在し、これらをロバストに認識しなければならない可能性がある。例えば、灰色リスの画像を灰色リスと認識するように訓練されたアプリケーションは、灰色リスのサイズ、ポーズ、年齢、色の濃淡、照明または他のいくつかの個々の特徴のうちの任意の1つに遭遇する可能性がある。個人の顔を確実に認識するように設計されたアプリケーションは、同様のバリエーションに直面しなければならず、アプリケーションの計算複雑性および計算リソースのニーズを最低でも増大させる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、従来技術によるコピー保護のための公知の方法、それぞれのデータ処理装置およびそれぞれのコンピュータプログラム製品の欠点を克服するか、または、少なくとも低減することである。
【0009】
目的とする技術的課題は、独立請求項の主題に従って解決される。利点(好ましい実施形態)は、以下の発明を実施するための形態および/または添付の図面ならびに従属請求項に記載されている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一態様によれば、文書の少なくとも一部のデジタル表現の不正処理を防止するためのコンピュータ実装方法が提供される。本方法によれば、データが提供され、データはテスト要素の少なくとも一部のデジタル表現に基づく。テスト要素の少なくとも1つの部分のデジタル表現に基づくデータは、文書の少なくとも1つの部分の少なくとも1つの特徴的特性を表すデータに関して分析される。テスト要素の少なくとも1つの部分のデジタル表現に基づくデータが、少なくとも1つの特徴的特性を表すデータと類似している場合、禁止手段が起動される。次いで、テスト要素の少なくとも1つの部分のデジタル表現に基づくデータのさらなる処理が、禁止手段によって禁止される。代替として、テスト要素の少なくとも1つの部分のデジタル表現に基づくデータは、データがデータ処理装置によって送信および/または印刷および/または複製および/またはさらに補正されるのを防止するように、禁止手段によって補正される。
【0011】
本方法の文脈内で、文書は、セキュリティ関連文書、特に紙幣、小切手、札、チケット、パスポートまたは航空券のうちの1つであってもよい。これらの文書形式では、文書に類似するテスト要素のそれぞれのデジタル表現の不正処理は、経済的およびセキュリティ関連の両方の理由で重大なリスクを有する。これらのリスクは、不正処理を防止するための方法によって回避または少なくとも低減される。
【0012】
本方法の文脈内で、テスト要素は、客観的な(バイアスを持たない)観察者によって上記のタイプのうちの1つの文書であると潜在的に考えられ得るアイテムを指す。言い換えれば、本文脈内のテスト要素(サンプル、プローブ)は、客観的な観察者がテスト要素をオリジナルの文書であると誤って考える可能性があるような、オリジナルの文書に十分に類似したものであってもよい。例えば、偽造紙幣が紙幣の現物と考えられる可能性がある。テスト要素とオリジナルとの間にかなりのずれがあるにもかかわらず、客観的観察者の誤解が存在する可能性がある。これに関して、文書とテスト要素とが互いに直接比較される場合、そのようなずれは容易に認識される可能性がある。しかしながら、客観的な観察者の記憶は限られている。したがって、客観的な観察者がオリジナルの文書に即座にアクセスすることなくテスト要素のみを検査する場合、観察者はテスト要素を(オリジナルの)文書であると考える可能性がある。客観的な観察者は、当該分野の専門家である必要はなく、オリジナルの文書を一般的に使用する者であると考えられる。テスト要素の一部は、特に、テスト要素の一次元または二次元部分である場合がある。
【0013】
本方法の文脈内で、デジタル表現は、通常はコンピュータ言語で書かれ、したがってコンピュータ可読コードであるデジタルコードを指す。したがって、アイテム(オリジナルの文書、テスト要素または訓練用文書)の一部のデジタル表現は、アイテムの一部を表すデータファイルとすることができる。データファイルは、デジタルコードによってアイテムの性質を記述するのに適する場合がある。
【0014】
本方法の文脈内では、提供されるデータは、完全なデータファイルである必要はない。提供されるデータは、データファイルの断片、例えば、テスト要素の一部を表す画像ファイル、テキストファイルまたはpdfファイルの断片であってもよい。通常、テスト要素のデータは、画像ファイルの少なくとも一部である。したがって、データは、第1のデータ処理装置から別のデータ処理装置に送信されるとき、データのストリングであってもよい。
【0015】
特に、アイテム(オリジナルの文書、テスト要素または訓練用文書)のデータファイルは、文書(テスト要素または訓練用文書)の画像ファイル、テキストファイルまたはpdfファイルであってもよい。データファイルは、50dpi~2000dpiの範囲内、特に100dpi~1000dpiの範囲内、さらに特には200dpi~600dpiの範囲内、さらに特には300dpi~400dpiの範囲内の解像度を有する画像ファイルであってもよい。
【0016】
本方法の文脈内で、文書の特徴的特性は、文書または文書に適用される物質の物理的性質であってもよく、それに基づいて客観的な観察者は、テスト要素を(オリジナルの)文書であると考える可能性がある。この特徴的特性については、後に更に詳しく説明をする。
【0017】
本方法の文脈内で、データの類似性は、テスト要素を表すデータと文書とが互いに等しいことを要求しない。本方法によるデータは、基本的に、そのデータがデジタル表現である各アイテムの性質に関する。しかしながら、これらの性質は、当然ながら、例えば様々な利用可能なデータファイルフォーマットまたはコンピュータ言語に起因して、様々なデータによって記述される可能性がある。したがって、様々なアイテムに関連するデータは、データが、特徴的特性と実質的に類似している可能性のあるテスト要素の性質を記述することができる場合、互いに類似していると考えることができる。例えば、文書の特徴的特性は、互いに平行に配向された2本の青色線であってもよい。次いで、テスト要素のデータは、互いに平行な2本の青色線を記述してもよい。しかしながら、テスト要素に関連するデータは、異なるコンピュータ言語で書かれてもよい。代替として、線の色を記述するために、テスト要素に関して異なるカラーコードが使用されてもよい(例えばRGB対CYMK)。基礎となるコードに関するこれらのずれとは独立して、テスト要素の特性は、特徴的特性とは異なってもよいが、依然として類似していると承認することができる。これに関して、特性の類似性は、客観的な観察者による類似性の評価に関する。本方法はまた、文書のデータとの類似性が判定されるときに、テスト要素の少なくとも1つの部分のデジタル表現のピクセル化を考慮に入れてもよい。さらに、本方法は、テスト要素の解像度および/または色分布および/またはコントラスト分布および/または輝度分布特性を考慮に入れてもよい。したがって、本方法は、テスト要素のデータを解釈し、データが関連するアイテムの性質を認識するように構成されてもよい。その性質が特徴的特性と類似している場合、それぞれのデータは、本方法の意味の範囲内で互いに類似していると考えることができる。特性の類似性に関する評価は、真正性に関する評価とは異なることに留意されたい。本方法は、文書に関連するテスト要素の特性またはテスト要素自体を認証しない。これについては後述する。
【0018】
本方法の文脈内で、禁止手段は、ソフトウェアまたはハードウェア実装構造であってもよい。禁止手段は、いくつかのデータに対するアクションが適用されるかどうかを判定するように構成されてもよい。これに関して、禁止手段は、バス構造、インターフェース、データ処理ユニット、記憶メモリ等に命令を発行するように構成されてもよい。したがって、禁止手段は、データ処理装置の残りの構成要素が禁止手段と比較してスレーブであるようなマスタ機能を有してもよい。
【0019】
本方法の文脈内で、データのさらなる処理は、データのコピーおよび/または送信および/または印刷および/または複製を含んでもよい。したがって、禁止手段によって、データに適用される全てのこのような行為を禁止することができる。したがって、さらなる処理は、データファイルの送信だけでなく、そのようなデータファイルの一部に適用される任意の行為、例えば、それぞれのデータのストリングの複製も指す。
【0020】
本方法の文脈内で、データを補正することは、マーク/属性/フラグを含むようにデータを補正することを含んでもよく、マーク/属性/フラグは、データ処理装置によってデータが送信および/または印刷および/または複製および/またはさらに補正されることを防止する。したがって、禁止手段は、他のデータ処理装置がデータの処理が禁止されていることを直ちに認識するように、データを補正するように構成されてもよい。代替として、禁止手段はまた、データを削除するように構成することもできる。
【0021】
したがって、テスト要素の少なくとも一部のデジタル表現に基づくデータのさらなる処理を、データが文書の少なくとも1つの特徴的特性を表すデータと類似している場合に有利に禁止する方法が提供される。言い換えれば、テスト要素が文書と十分に類似している場合、そのデジタル表現のさらなる処理が、有利には禁止される。
【0022】
人工知能(AI)の支援を用いた従来技術の顔認識および他の物体識別の前述の問題(無数の潜在的な画像が認識されることになる)とは対照的に、紙幣等のセキュリティ文書の分野では、認識されるべき画像の数ははるかに少なくなると予想することができる。特に、認識させたいものは有限、おそらく数百種類であると予想することができる。基本的な画像とは、例えば、所与の一連の紙幣の金種および面(正面または背面)の平坦で均一に照明された画像を意味する。当然ながら、個々のシリアル番号および他の識別子等の変動ならびに印刷品質および登録ならびに画像の解像度の小さな変動が予想される。
【0023】
本明細書に記載の本発明の目的は、平均的な人によって(セキュリティ機構の認証なしに)セキュリティ文書を表すと考えられる形態のセキュリティ文書画像を認識する手段を提供することであるため、前記文書の全ての考えられる変形を認識する必要はない。その理由は、所与のセキュリティ文書表現が、複製の場合にセキュリティ文書として許容するには歪み過ぎていることが平均的な人によって発見された場合、本発明によれば、デジタル画像の複製を防止する必要がないからである。したがって、本発明の訓練セットおよび検出プロセスに必要な対応する計算リソースは、例えば顔認識手順におけるAIアプリケーションのための典型的な訓練セットおよび計算リソースよりも大幅に小さいと予想することができる。
【0024】
本発明のさらなる利点は、本発明の方法が、デジタル文書画像のセキュリティ機構を認証せず、単に、平均的な人が実際のセキュリティ文書画像として認識可能な訓練セット内の基本画像に、画像が十分に類似していると認識するだけである点である。例えば偽造紙幣を綿密に検査すると、真正紙幣との違いが必ず明らかになるが、本発明の方法は、綿密な検査を行わない。それにもかかわらず、平均的な人は、違いを認識せず、したがって複製された文書がセキュリティ文書を表すと考え、典型的には両替が行われる短時間では偽造として認識されないものの偽造に関するような十分に小さい違いが存在する。対照的に、AIが例えば人間の顔認識に使用される場合、所与の顔を「認証する」際のエラーは、重大な法的結果をもたらす可能性がある。
【0025】
本発明は文書画像の特別な信号を検出せず、したがってコピーコードなどの追加の機構をセキュリティ文書に追加する必要がないため、本発明の検出コードにアクセスする人に明らかな利点はない。
【0026】
実際、特別な信号、コピーコード又はグラフィック設計要素を使用する必要がないという事実自体が、本発明の大きな利点である。上述したように、これらの技術の使用は、美的に好ましくないと同時に、セキュリティの脆弱性を作り出す方法でセキュリティ文書を視覚的に変更する可能性がある。本発明の方法では、セキュリティ文書の設計者は、画像が検出器によって全体的に認識されるため、審美的に破壊的であるおよび/または脆弱性を作り出す特別な機構の追加に関わる必要はない。
【0027】
本発明のさらに別の利点は、そのセキュリティ文書が最初に作成されたのが検出器の実装前であるか実装後であるかにかかわらず、訓練セットに任意のセキュリティ文書を使用することができる点である。対照的に、コピー防止が、検出の実装後にのみ作成された特別な信号、コピーコードまたはグラフィック設計要素の使用に依存する場合、新しいコードを含むセキュリティ文書を検出する可能性はない。逆に、検出器が古いコピーコードを検出しない場合、まだ使用されている可能性がある文書を検出することができず、したがって、コピー防止のための従来技術の認証方法を使用してそれらのコピーを防止することができない。
【0028】
別の態様によれば、テスト要素の少なくとも1つの部分のデジタル表現に基づくデータは、検査装置によって記録されてもよい。検査装置は、外観検査装置とすることができ、画像認識またはコンピュータビジョン技術に基づいてもよい。検査装置は、特に、スキャン装置(ピックアップヘッド)および/または撮像装置および/またはカメラであってもよい。検査装置は、アイテムの画像ファイル、テキストファイルまたはpdfファイルとすることができるアイテムのデータファイル(文書、テスト要素または訓練用文書)を提供するように構成されてもよい。検査装置は、50dpi~2000dpiの範囲内、特に100dpi~1000dpiの範囲内、さらに特には200dpi~600dpiの範囲内、さらに特には300dpi~400dpiの範囲内の解像度を有する画像ファイルを提供するように特に構成されてもよい。したがって、テスト要素が存在する場合、本方法は、有利には、検査装置によるテスト要素の少なくとも1つの部分のデジタル表現に基づくデータの作成を含んでもよい。したがって、本方法は、テスト要素の一部を表すデータの操作のリスクが低減されるように、それぞれのデータを提供する外部リソースに依存しない。
【0029】
別の態様によれば、訓練用文書の少なくとも一部が提供されてもよい。訓練用文書の少なくとも1つの部分のデジタル表現を表すデータは、検査装置によって記録されてもよい。検査装置は、特に前述のタイプのうちの1つであってもよい。文書の少なくとも1つの部分の特徴的特性を表すデータは、人工知能(AI)および/または機械学習(ML)によって、訓練用文書の少なくとも1つの部分のデジタル表現を表すデータ内で識別することができる。
【0030】
本方法の文脈内で、人工知能(AI)は、決定を引き出すように構成されたソフトウェアまたはハードウェアベースの技術、例えばアルゴリズムを指す。AIはまた、意図された目的に関して提供されたデータを自動的に活用し、それぞれの結果をユーザに自動的に提供するように構成することもできる。
【0031】
本方法の文脈内で、機械学習は、AI機能を含み得るソフトウェアまたはハードウェアベースの技術を指す。MLは、決定を引き出すプロセスを改善するために複数の入力を含むように構成されてもよい。言い換えれば、MLは、単一の入力に基づいて決定を引き出す精度と比較して、決定を引き出す精度の見込みを改善するために、いくつかの同様の入力を認識するように構成されてもよい。例えば、いくつかの同様の訓練用文書が提供される場合、MLは、これらの訓練用文書の全てが共通して有する特徴的特性を識別するように構成することができる。さらに、MLはまた、異なる値を有する紙幣など、セットの個々の訓練用文書が異なる場合でも、訓練用文書のセット内の特徴的特性を識別するように構成することができる。
【0032】
本方法の文脈内で、訓練用文書は、少なくとも1つの特徴的特性を識別するために使用される文書とすることができる。特徴的特性に基づいて、客観的な観察者は、(オリジナルの)文書と比較してテスト要素の類似性を評価することができる。言い換えれば、訓練用文書を使用して、テスト要素が分析される特質のセットについて、AIおよび/またはMLなどの方法(または関連するソフトウェア又はハードウェアベースの手段)を訓練することができる。これに関して、訓練用文書の少なくとも1つの部分のデジタル表現を表すデータは、AIおよび/またはMLに提供される。次いで、AIおよび/またはMLは、これらのデータ内で、何に関してテスト要素を分析するかを判定する特徴的特性を表す特質を識別するように構成されてもよい。
【0033】
したがって、本方法は、有利には、何に関してテスト要素を分析するかを定義して、テスト要素と文書との類似性を評価するために、訓練用文書に含まれるどの特質が適切な特徴的特性として機能し得るかを自動的に評価する訓練プロセスを含む。そのように設計された方法は、テスト要素が分析される特性についての所定の入力に依存しない。
【0034】
別の態様によれば、特徴的特性を表し、訓練用文書に基づいて判定されたデータは、記憶メモリに記憶されてもよい。特に、データは、暗号化および/またはエラーコーディングされて記憶されてもよい。さらに、データはまた、ローカル方式(同じデータ処理構造内)または非ローカル方式(サーバおよび/または外部メモリ上)で記憶されてもよい。データは、データベースを構築するために記憶メモリ内に記憶されてもよい。したがって、テスト要素を分析するときにデータが使用され得るように、特徴的特性を表すデータの利用可能性を有利に保持することができる。
【0035】
別の態様によれば、検査装置は、検査装置に関するアイテムの角度方向、トリミングおよび/または切断(mutilated)された、検査装置によって検査されるアイテム、検査装置によって提供される解像度、検査装置に関するアイテムの歪み、検査装置によって検査されるアイテムに適用されるスケーリング効果、ならびに、それらの組み合わせのうちの少なくとも1つから実質的に独立して、テスト要素または訓練用文書の少なくとも1つの部分のデジタル表現を表すデータを記録するように構成されてもよい。検査装置によって検査されるアイテムは、ユーザによる様々な行為の対象となる可能性がある。そのような行為は、一般に、データの記録に影響を及ぼす可能性がある。そのように設計された検査装置を利用する方法は、外部の影響に対して有利にロバストである。
【0036】
別の態様によれば、検査装置は、反射モードおよび/または透過モードで動作してもよい。検査装置は、検出器及び放射線放出源を備えてもよい。検出器は、放射線放出源によって放出され、検査されるアイテムによって反射された、または、検査されるアイテムを通って遷移した放射線を検出するように構成することができる。検査装置によって検査されるアイテムは、反射モード及び透過モードの一方においてのみ識別可能であり得る特性を含んでもよい。したがって、そのように構成された検査装置を有する方法は、特性を識別し得るモードとは独立した全ての要件を満たす。
【0037】
別の態様によれば、AIおよび/またはMLは、文書の少なくとも1つの部分の少なくとも1つの特徴的特性を表すデータと比較して、テスト要素の少なくとも1つの部分のデジタル表現に基づくデータの類似性に関して分析を実行するように構成されてもよい。AIおよび/またはMLが、テスト要素の少なくとも1つの部分のデジタル表現に基づくデータが少なくとも1つの特徴的特性を表すデータと類似していることを発見した場合、AIおよび/またはMLはまた、続いて禁止手段を起動するように構成されてもよい。そのように構成された方法は、特徴的特性を表すデータを判定するために使用されるのと同じAIおよび/またはMLを含む。したがって、有利には、潜在的な多様性が低減されるように、方法全体の間に同じおよび/またはML(基準)が均一に適用される。
【0038】
別の態様によれば、テスト要素の少なくとも1つの部分のデジタル表現に基づくデータは、AI及び/又はMLによって特徴的特性を表すデータに関して分析されてもよく、特徴的特性を表すデータは、記憶メモリに記憶される。記憶メモリは、ステップが互いに時間的に独立して有利に実行され得るように、分析のための特徴的特性に関するデータを記憶する可能性を提供する。
【0039】
別の態様によれば、特徴的特性は、アイテムの表面に配置および/もしくは印刷および/もしくは適用された、ならびに/または、アイテム内に含まれるコントラストレベルおよび/または色および/またはマークの単一または複数の特定の分布のうちの少なくとも1つであってもよい。特徴的特性はまた、アイテムの表面に配置および/もしくは印刷された、ならびに/または、アイテム内に含まれるマークの単一または複数の形状のうちの少なくとも1つであってもよい。さらに、特徴的特性は、単一または複数のモアレパターン、微細構造、マイクロテキスト、肉眼では見えないデジタルセキュリティマーキング機構、ギョーシェ、レインボー、凹レンズ、光学可変素子、ホログラム、光学レンズ、ウォーターマーク、QRコードおよびフィンガープリントのうちの少なくとも1つであってもよい。さらに、特徴的特性は、アイテムの表面に配置され、および/または、アイテム内に含まれる単一または複数の特定の材料のうちの少なくとも1つであってもよく、特に、特定の材料は、紙、ポリマーおよび綿等の織物のうちの少なくとも1つを含む。また、特徴的特性は、アイテムの表面に配置され、および/または、アイテム内に含まれる単一または複数のセキュリティ機構のうちの少なくとも1つであってもよい。セキュリティ機構は、ホログラム、マイクロレンズ、埋め込みセキュリティスレッド、セキュリティフォイル、透明または半透明の窓、ラベルおよび記号のうちの少なくとも1つを含んでもよい。さらに、特徴的特性は、前述のものの任意の組み合わせであってもよい。そのように構成された方法は、安全性に関して有利に改善される。特徴的特性は先験的に判定されたものではないため、テスト要素がどの基準に基づいて分析されるかは一般に未知である。したがって、テスト要素は、所定の公知の基準に従って設計することができない。さらに、考えられる特徴が広範囲であるために、各特徴は、一般に、特徴的特性として作用するその適合性に関して個別に評価することができる。したがって、本方法は、その信頼性に関しても有利に改善される。
【0040】
別の態様によれば、訓練用文書を表すデータ内で識別された特徴的特性は、検査装置に関するアイテムの角度方向、トリミングおよび/または切断された、検査装置によって検査されるアイテム、検査装置によって提供される解像度、検査装置に関するアイテムの歪み、前記検査装置によって検査されるアイテムに適用されるスケーリング効果、および、それらの組み合わせのうちの少なくとも1つから独立であってもよい。したがって、特徴的特性は、通常の使用中に文書(訓練用文書)に影響を及ぼし得る様々な外的影響に関してロバストであることができる。
【0041】
別の態様によれば、本方法は、基準値を判定するステップを含んでもよい。基準値は、文書の少なくとも1つの部分の少なくとも1つの特徴的特性を表すデータが、テスト要素の少なくとも1つの部分のデジタル表現に基づくデータと類似している確率に基づいてもよい。基準値は、基準値が所定の閾値よりも大きい場合に真とすることができる。基準値を判定するステップは、文書の少なくとも1つの部分の少なくとも1つの特徴的特性を表すデータに関して、テスト要素の少なくとも1つの部分のデジタル表現に基づくデータを分析するステップ内に含まれてもよい。さらに、禁止手段の起動は、基準値が真であるかどうかに依存してもよい。それぞれの確率に基づいて、テスト要素を表すデータが特徴的特性を表すデータと類似しているかどうかを示す基準値を判定してもよい。したがって、そのように構成された方法は、有利には、それぞれのデータ間のある程度までのずれを考慮に入れるが、方法は、それぞれのデータの類似性を依然として確実に判定することができる。
【0042】
別の態様によれば、本方法は、テスト要素の少なくとも1つの部分のデジタル表現に基づくデータが文書の少なくとも1つの特徴的特性を表すデータと類似しているかどうかを分析する前に、データを操作するステップを含んでもよい。特に、データは、特殊な性質に関してデータを分析するために変換および/またはフィルタリングされてもよく、例えば、1D若しくは2Dフーリエ変換、対数変換またはラプラシアンフィルタがデータに適用されてもよい。そのように構成された方法によれば、データの特別な性質も有利に分析することができる。
【0043】
別の態様によれば、本方法は、テスト要素の少なくとも1つの部分のデジタル表現に基づくデータが文書の少なくとも1つの特徴的特性を表すデータと類似しているかどうかの評価に関して、1000万分の1またはより良い偽陽性率および/または偽陰性率を提供するように構成することができる。一般に、客観的な観察者がテスト要素の一部が文書の少なくとも一部と類似していると考える事象は、陽性事象に割り当てられる。逆に、客観的な観察者がテスト要素の一部が文書と類似していないと考える事象は、陰性事象に割り当てられる。これに関して、テスト要素がデータによって記述されるピクセル化効果および/またはそれぞれの解像度および/または色分布および/またはコントラスト分布および/または輝度分布に関して修正されても、テスト要素と文書との類似性は依然として存在することができる。偽陽性事象は、要素の一部が文書と類似していないにもかかわらず、データの類似性が承認されたことを示す。偽陰性事象は、要素の一部が実際に文書の一部と類似しているにもかかわらず、データが互いに非類似であると承認されたことを示す。偽陽性率および偽陰性率は、基本的に統計的検定に依存する方法の信頼性を示す。割合は、所望の性能に達するために十分に大きなデータセットに基づいて経験的に試験される。本方法はまた、偽陽性もしくは偽陰性に対するトレランスが高いように、および/または、陽性であるが確定的ではない回答をトリガする事例に対して二次的でより徹底的な判定プロセスを使用するように構成されてもよい。そのように構成された方法は、有利には、許容可能なフォールトトレランスを用いて、データの類似性を確実に判定する。
【0044】
別の態様によれば、本方法は、基準値が判定されたときに、テスト要素の少なくとも1つの部分のデジタル表現に基づいたデータのピクセル化を考慮に入れてもよい。基準値を判定すると、本方法は、テスト要素の少なくとも1つの部分のデジタル表現に基づいたデータの解像度および/または色分布および/またはコントラスト分布および/または輝度分布をさらに考慮に入れてもよい。そのように構成された方法では、様々な効果が考慮されるため、基準値の精度が向上する。
【0045】
別の態様によれば、本方法は、第1のデータ処理装置内でローカルに実行可能であるように構成されてもよい。第1のデータ処理装置は、本方法のそれぞれのコードを記憶することができる記憶メモリを備えてもよい。代替として、本方法はまた、遠隔で実行可能であるように構成されてもよい。代替によれば、第1のデータ処理装置は、データ接続部を介して、第2のデータ処理装置と接続されてもよい。次いで、本方法は、データ接続部を介して第2のデータ処理装置上で実行可能であるように構成されてもよい。そのように構成された方法は、データ処理構造とはほとんど独立して実行可能である。有利には、サーバ-クライアントシステムに基づいて、または、例えばネットワーク接続が利用可能でない場合にはローカル方式で実行することもできる。
【0046】
別の態様によれば、本方法はコードに基づいてもよく、本方法のそれぞれのコードは、100kB~50MB、特に200kB~10MB、さらに特には500kB~1MBのバイナリサイズを有してもよい。コードが同程度の小さいサイズを有するので、コードは、スキャン装置、プリンタ、コピー装置等の非ハイエンドデータ処理装置においても有利に実装することができる。
【0047】
別の態様によれば、テスト要素の少なくとも1つの部分のデジタル表現に基づくデータは、第1のデータ処理装置から第2のデータ処理装置へのデータの送信に基づいて提供されてもよい。言い換えれば、本方法は、データ処理装置間で送信されるデータに作用するように構成されてもよい。データが文書の少なくとも1つの部分の少なくとも1つの特徴的特性を表すデータに類似している場合、さらなる送信を禁止することができる。要素の少なくとも1つの部分のデジタル表現は、テスト要素の一次元又は二次元部分を表してもよい。例えば、要素のラインごとのスキャンが、スキャン装置からデータ処理ユニットに送信されてもよい。本方法は、有利には、このデータを認識し、文書の少なくとも1つの部分の少なくとも1つの特徴的特性を表すデータに関してデータを分析するように構成されてもよい。
【0048】
別の態様によれば、本方法は、60秒未満の期間内、特に100ミリ秒~30秒の期間内、特に1秒未満の期間の間の期間内に実行可能であるように構成されてもよい。そのように構成された方法は、有利には、要素の印刷またはスキャン等のリアルタイムの通常のデータ処理手順中にも、許容可能な時間消費で適用することができる。
【0049】
別の態様によれば、本方法は、文書の少なくとも1つの部分のデジタル表現に関して、テスト要素のデジタル表現の少なくとも1つの部分を表すデータの認証を回避するように構成されてもよい。本方法の目的は、これらのデータ間の類似性の判定とすることができる。本方法は、文書に関して要素を認証することを意図していない。認証プロセスは、セキュリティ上の理由から認証された施設に保存される、非常に重要なプロセスである。本方法は、一般に、通常の顧客にも利用可能な共通のハードウェア又はソフトウェア(コピー装置および/またはプリンタおよび/またはスキャン装置)で実装されるように構成されているため、本方法は有利には認証機能を含まず、その結果、認証プロセスの詳細は機密に保たれる。
【0050】
別の態様によれば、データ処理のための装置が提供される。装置は、上述の方法を実行するための手段を備えてもよい。さらに、装置はまた、上述の方法の修正を実行し得るような手段を備えてもよい。特に、データ処理のための装置は、CPU等のデータ処理ユニットを備えてもよい。データ処理ユニットは、データを分析および/または処理および/または補正するように構成されてもよい。データ処理装置は、データを記憶するための記憶メモリ、他のデータ構造と通信するためのインターフェース、および、異なる構成要素間でデータを送信するためのデータバスのうちの少なくとも1つをさらに備えてもよい。さらに、データ処理装置は、スキャン装置(ピックアップヘッド)、プリンタまたはコピー装置の構成要素であってもよい。したがって、示された方法を実行するように有利に構成された簡単で効果的なデータ処理装置が提供される。
【0051】
別の態様によれば、データ処理のための装置は、モバイル装置において一般的に使用される下位ARM型マルチコアCPUまたは同様のCPUを備えてもよい。装置は、4MB~8GBの範囲内、さらに特には16MB~2GBの範囲内、さらに特には64MB~512MBの範囲内、さらに特には128MB~256MBの範囲内のメインメモリをさらに備えてもよい。本方法は、示されたサイズのメインメモリを使用し、ローカルまたはリモート方式で、示されたCPUタイプ上で実行可能であるように構成されてもよい。
【0052】
別の態様によれば、コンピュータプログラム製品が提供される。コンピュータプログラム製品は、データ処理装置によって実行されると、装置に上述の方法を実行させる命令を含んでもよい。命令は、コンピュータプログラム製品のコードの結果であってもよい。コンピュータプログラム製品は、スキャン装置(ピックアップヘッド)、プリンタまたはコピー装置で実装されるのに適したコンピュータ言語で書かれてもよい。コンピュータプログラム製品はまた、揮発性もしくは不揮発性記憶メモリ、ハードディスクドライブ、または、USB記憶メモリ、CD等のコンピュータ可読媒体に記憶されるように構成されてもよい。コンピュータプログラム製品は、データ処理ユニットの外部または内部メモリから実行可能であるように構成されてもよい。したがって、外部または内部記憶メモリなどの様々な構成中に示された方法を実行するように有利に構成されたコンピュータプログラム製品が提供される。
【0053】
別の態様によれば、コンピュータプログラム製品のコードは、暗号化および/またはエラーコーディングされて記憶されるように構成されてもよい。基礎となる技術及び命令のいくつかは、セキュリティ上の理由から秘密に保たれるべきである。したがって、コードが暗号化されて記憶される場合、基礎となる技術および命令は、有利には公開が防止されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0054】
本発明のさらなる態様及び特徴は、添付の図面を参照した本発明の好ましい実施形態の以下の説明から導かれる。
【0055】
図1】本方法の簡略化された概略フローチャートである。
図2】データの記録のために検査装置を利用するデータ処理装置の簡略化された概略図である。
図3】訓練用文書及びテスト要素の簡略化された概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0056】
図1は、文書の少なくとも一部のデジタル表現の不正処理を防止するための方法100による簡略化された概略フローチャートである。方法100は、ボックスによって示されるいくつかのステップを含む。破線を有するボックスは、単独でまたは任意の組み合わせで任意選択であるステップを示す。したがって、本方法は、少なくともステップ110、120、130を含む。ステップ132、134に関しては、両方のうちの一方のみが存在する必要がある。ステップ132および134は、互いに代替である。
【0057】
ステップ110では、データが提供され、データは、テスト要素の少なくとも一部のデジタル表現に基づく。これに関して、データを提供することは、さらなる任意選択のステップ140、190および182に依存してもよい。ステップ140では、テスト要素(またはその一部)は、テスト要素の性質を表すデータを記録できるように配置される。この目的のために、検査装置が使用されてもよい。検査装置は、スキャンユニットまたはカメラ等の外観検査装置とすることができ、画像認識またはコンピュータビジョン技術に基づいてもよい。検査装置は、テスト要素を記述するデータを生成するように構成されてもよい。例えば、生成されたデータは、例えば、テスト要素の表面上に配置および/もしくは印刷された、ならびに/または、テスト要素内に含まれるコントラストレベルおよび/または色および/またはマークの分布に関する情報を含んでもよい。特に、記録されたデータは、テスト要素を表す画像ファイルであってもよい。したがって、データは、検査装置によって作成された画像ファイルの一部であってもよい。これに関して、画像ファイルは、アイテムの(グラフィック)性質を記述するための通常の手法である。検査装置は、記録されたデータを直接提供するように構成されてもよい。したがって、ステップ140は、データをステップ110に直接提供してもよい。代替として、データはステップ190に従って提供される。ステップ190では、データは、例えばストリングとして、第1のデータ処理装置から第2のデータ処理装置に送信される。第1のデータ処理装置は、例えば通常のCPUであってもよく、第2のデータ処理装置は、例えばネットワークプリンタに実装されてもよい。CPUおよびネットワークプリンタは、データバス、例えばネットワーク接続によって接続されてもよい。本方法は、ステップ190において、送信されるデータが本方法の適切な手段によって認識されるように構成されてもよい。本方法は、データが傍受され、および/または、そのコピーが作成されて提供されるように構成されてもよい。したがって、ステップ140および190からデータをステップ110に直接提供してもよい。代替として、ステップ110に提供する前に、ステップ182においてデータを記憶メモリに記憶してもよい。記憶メモリは、外部メモリであっても、内部メモリであってもよい。記憶メモリは、メインメモリ、ハードディスクドライブまたはUSB記憶メモリ、CD等のコンピュータ可読媒体であってもよい。ステップ182においてデータを記憶メモリに記憶することにより、方法の時間的独立性が提供される。
【0058】
ステップ120では、テスト要素の少なくとも1つの部分のデジタル表現に基づくデータは、文書の少なくとも1つの部分の少なくとも1つの特徴的特性を表すデータに関して分析される。文書の特徴的特性は、特殊なバーコード等の文書のグラフィック特性または構造特性であってもよい。したがって、本方法は、データを解釈し、データが文書の特徴的特性に類似する特徴を表すかどうかを分析するように構成されてもよい。通常、テスト要素のデータは、画像ファイルの少なくとも一部である。この画像ファイルが例示的な特殊バーコードに類似した特性を含む場合、本方法は、それぞれのデータが互いに類似していると判定する。
【0059】
特徴的特性を表すデータも、本方法に提供されてもよい。これに関して、ステップ150において、訓練用文書が提供されてもよい。ステップ160では、訓練用文書の性質を表すデータを記録できるように、訓練用文書を検査してもよい。データの記録は、検査装置、特にテスト要素に関して前述したような外観検査装置によって実行されてもよい。特に、記録されたデータは、訓練用文書を表す画像ファイルであってもよい。ステップ170では、訓練用文書に関して記録されたデータ内で少なくとも1つの特徴的特性が識別されてもよい。この目的のために、人工知能(AI)および/または機械学習(ML)技術を適用してもよい。したがって、データ(通常は画像ファイル)は、テスト要素との類似性を評価するための適切な基準を表す特質について、AIおよび/またはMLによって検査されてもよい。ステップ170で選択された特徴的特性は、同様の方法でテスト要素において実現されると、客観的な観察者がテスト要素と訓練用文書とが互いに類似していると考えることのできる特性である。代替として、ステップ150及び160が数回繰り返され、これは、いくつかの訓練用文書が提供されることを意味する。したがって、AIおよび/またはMLによってステップ170で識別された少なくとも1つの特徴的特性はまた、複数の訓練用文書に関して記録されたデータのセットに依存する場合がある。特徴的特性が識別されると、その特性を表すデータを、データの類似性に関する評価のためにステップ120に提供してもよい。代替として、ステップ184において、特徴的特性を表すデータを外部または内部の記憶メモリに記憶してもよい。したがって、本方法は、ステップ150、160および170とは無関係に適時に実行することができる。さらに、ステップ184において、様々な考えられる特徴的特性を有するためにデータベースを構築してもよい。本方法がサーバ-クライアントベースの構造で実装される場合、これは特に興味深い。
【0060】
テスト要素を表すデータと文書の特徴的特性との類似性の評価は、ステップ120で実行される。ステップ130では、テスト要素の少なくとも1つの部分のデジタル表現に基づくデータが、少なくとも1つの特徴的特性を表すデータと類似している場合、禁止手段が起動される。したがって、ステップ130は、それぞれのデータが互いに類似していると本方法によって考えられる場合の、本方法の技術的効果を説明する。禁止手段は、ステップ132および134に関して説明した少なくとも1つの技術的効果を引き起こすように構成されてもよい。ステップ132によれば、テスト要素に関するデータは、禁止手段によってさらなる処理が禁止される。禁止手段は、マスタ機能を備えてもよい。禁止手段は、その後、それぞれのデータのさらなる処理が禁止されるような命令を発行してもよい。代替として、ステップ134によれば、データは、データが他のデータ処理装置によって送信および/または印刷および/または複製および/またはさらに補正されることが防止されるように、禁止手段によって補正される。これに関して、データには、データのさらなる処理が禁止されることを示す特別なフラグおよび/または属性および/またはマークを割り当てられてもよい。
【0061】
代替として、本方法は、ステップ120および130もAIおよび/またはMLによって実行され得るように構成されてもよい。したがって、AIおよび/またはMLを適用して、テスト要素のデータと特徴的特性との類似性を判定することもできる。
【0062】
図2は、データの記録のために検査装置を利用するデータ処理装置200の簡略化された概略図である。データ処理装置200は、方法100を実行し得るように構成されてもよい。さらに、データ処理装置200は、ステップ140および160に関して前述した外部検査装置に接続される。本実施形態による検査装置は、放射線放出源220と、検出器232、234とを備える。ここで、放射線放出源220および検出器232、234は、データ処理装置200に接続された外部構成要素である。代替として、放射線放出源220および検出器232、234は、データ処理装置200の内部構成要素であってもよい。放射線放出源220および検出器232、234は、スキャン装置、プリンタまたはコピー装置においてデータ処理装置200と組み合わせられてもよい。
【0063】
アイテム210(文書、テスト要素または訓練用文書)は、放射線放出源220がアイテム210に向かって放射線を放出し得るように配置される。放射線放出源220によって放出される放射線は、アイテム210を調査するのに適した任意の波長を有してもよい。特に、放射線は、UV光および/または可視光および/またはIR放射線に対応する波長を有してもよい。放射線放出源220の動作は、データ処理装置200によって発行されたそれぞれの命令に依存してもよい。次いで、検査装置は、検出器232がアイテム232によって反射された放射線を検出し得るように構成されてもよく、放射線の反射は、アイテム210の物理的性質に依存する。したがって、アイテム210の物理的性質に関する情報が取得され、アイテム210のデジタル表現を生成することができる。デジタル表現は、検出器232によって生成されてもよく、データ処理装置200と通信されてもよい。代替として、データ処理装置200は、検出器232から受信した情報に基づいてアイテム210のデジタル表現を生成する。さらに、検査装置は、検出器234がアイテム210を通って遷移した放射線を検出するように構成されてもよい。放射線が反射モードで検出されるか透過モードで検出されるかに応じて、アイテムの異なる物理的性質を評価することができる。
【0064】
図3は、訓練用文書310及びテスト要素320の簡略化された概略図である。訓練用文書310は、デジタル表現が不正処理を禁止されることになる文書と実質的に同様であってもよい。訓練用文書310は、破線のボックスによってそれぞれ囲まれた様々な特性332、334、336、338を含む。これらの特性は、例えば、第1の特性332等のマークの分布であってもよい。第2の特性334は、いくつかの同心円を含む。したがって、第2の特性334は、線状検査が同心円の中心と一致する限り、訓練用文書310の線状検査に関して特に不変である。第3の特性336は、互いに平行に配向された2本の個別の線を含む。第4の特性338は、訓練用文書310上に印刷された文字ベースのコードを含む。文字ベースのコードは、訓練用文書310のシリアル番号であってもよい。特性は、訓練用文書310内の位置、色、輪郭等のいくつかの性質に関して変化してもよい。当然ながら、本方法の文脈内で特徴的特性に関して説明したもの等のさらなる特性は、訓練用文書310の一部であってもよい。訓練用文書310に含まれる特性は全て、文書とテスト要素320との類似性を評価するための特徴的特性として役に立つことができる。異なる訓練用文書310は、図3に示す訓練用文書310と共通の示された特性のいくつかを有してもよい。しかしながら、訓練用文書はまた、いくつかの特性に関して互いに異なっていてもよい。
【0065】
テスト要素320も存在する。テスト要素320は、いくつかの特性333、335、337、339を含む。これらの特性は、それらの位置、分布、データフォーマット、数、形状等のいくつかの性質に関して、訓練用文書310の特徴からはずれている。訓練用文書310とテスト要素320とを直接比較すれば、これらのアイテム間のずれを適切に識別することができる。しかしながら、テスト要素320が訓練用文書320とは無関係に検査される場合、人は、テスト要素320を(オリジナルの)文書であると考える可能性がある。この誤解は、文書が現在存在しない場合に、訓練用文書310または(オリジナルの)文書の特性の正確な性質の記憶が限られているために生じる可能性がある。したがって、客観的な観察者は、テスト要素320が訓練用文書310と類似していると承認する可能性があるものの、これらのアイテムを詳細に比較すると、これらのアイテム間にかなりの違いがある可能性がある。その結果、客観的な観察者は、テスト要素320の特性333、335、337、339のデジタル表現に基づくデータが、訓練用文書310の特徴的特性332、334、336、338を表すデータと類似していると識別する可能性がある。したがって、テスト要素320を表すデータの処理は、禁止され、あるいは、データがそれ以上処理されないように、禁止手段によってデータが補正される。
【0066】
本発明を特定の実施形態を参照して上述したが、本発明は、これらの実施形態に限定されるものではなく、特許請求される本発明の範囲内にあるさらなる代替案が当業者に想起されることは疑いようがない。
【0067】
実施形態1.文書の少なくとも一部、特に紙幣の一部のデジタル表現の不正処理を防止するためのコンピュータ実装方法であって、
a)データを提供するステップであって、前記データは、テスト要素の少なくとも一部の前記デジタル表現に基づき、特に前記テスト要素の前記少なくとも1つの部分の前記デジタル表現は、前記テスト要素の前記少なくとも1つの部分に対応する画像ファイルである、前記提供するステップと、
b)前記テスト要素の前記少なくとも1つの部分の前記デジタル表現に基づく前記データを、前記文書の前記少なくとも1つの部分の前記少なくとも1つの特徴的特性を表すデータに関して分析するステップと、
c)前記テスト要素の前記少なくとも1つの部分の前記デジタル表現に基づく前記データが、前記少なくとも1つの特徴的特性を表す前記データと類似している場合、禁止手段を起動するステップと
を含み、
前記テスト要素の前記少なくとも1つの部分の前記デジタル表現に基づく前記データのさらなる処理が、前記禁止手段によって禁止され、かつ/または、
前記テスト要素の前記少なくとも1つの部分の前記デジタル表現に基づく前記データは、前記データのさらなる処理が防止されるように前記禁止手段によって補正される、
コンピュータ実装方法。
【0068】
実施形態2.d)検査装置によって、特にスキャン装置および/またはカメラなどの外観検査装置によって、前記テスト要素の前記少なくとも1つの部分の前記デジタル表現に基づく前記データを記録するステップであって、特に、前記検査装置は、50dpi~2000dpiの範囲内、特に100dpi~1000dpiの範囲内、さらに特には200dpi~600dpiの範囲内、さらに特には300dpi~400dpiの範囲内の解像度を有する、前記テスト要素の前記少なくとも1つの部分のデータファイルを提供するように構成される、記録するステップ
をさらに含む、実施形態1のコンピュータ実装方法。
【0069】
実施形態3.e)訓練用文書の少なくとも一部を提供するステップと、
f)検査装置、特にスキャン装置および/またはカメラなどの外観検査装置によって前記訓練用文書の前記少なくとも1つの部分のデジタル表現を表すデータを記録するステップであって、特に、前記検査装置は、50dpi~2000dpiの範囲内、特に100dpi~1000dpiの範囲内、さらに特には200dpi~600dpiの範囲内、さらに特には300dpi~400dpiの範囲内の解像度を有する、前記訓練用文書の前記少なくとも1つの部分のデータファイルを提供するように構成される、記録するステップと、
g)人工知能および/または機械学習によって前記訓練用文書の前記少なくとも1つの部分の前記デジタル表現を表す前記データ内の特徴的特性を表すデータを識別するステップと
をさらに含む、先行の実施形態のいずれかのコンピュータ実装方法。
【0070】
実施形態4.h)ステップg)で識別された前記データを記憶メモリに記憶するステップであって、特に、前記データは暗号化および/またはエラーコーディングされて記憶される、記憶するステップ
をさらに含む、実施形態3のコンピュータ実装方法。
【0071】
実施形態5.前記検査装置は、ステップd)および/またはにおける前記データを、
-前記検査装置に関する前記アイテムの角度方向、
-トリミングおよび/または切断された、前記検査装置によって検査される前記アイテム、
-前記検査装置によって提供される解像度、
-前記検査装置に関する前記アイテムの歪み、および
-検査装置によって検査されるアイテムに適用されるスケーリング効果
のうちの少なくとも1つから実質的に独立して記録する、実施形態2から4のいずれか1つのコンピュータ実装方法。
【0072】
実施形態6.前記検査装置は、反射モードおよび/または遷移モードで動作し、特に、前記検査装置は、検出器及び放射線放出源を備える、実施形態2から5のいずれか1つのコンピュータ実装方法。
【0073】
実施形態7.前記ステップb)及びc)は、前記人工知能および/または機械学習によって実行され、特に、前記人工知能および/または機械学習は、ステップc)において、前記テスト要素の前記少なくとも1つの部分の前記デジタル表現に基づく前記データが、前記文書の前記少なくとも1つの部分の前記少なくとも1つの特徴的特性を表す前記データと類似しているかどうかを判定する、実施形態3から6のいずれか1つのコンピュータ実装方法。
【0074】
実施形態8.前記特徴的特性は、
-アイテムの表面上に配置および/もしくは印刷された、ならびに/または、アイテム内に含まれるコントラストレベルおよび/または色および/またはマークの単一または複数の特定の分布と、
-アイテムの表面上に配置および/もしくは印刷された、ならびに/または、アイテム内に含まれるマークの単一または複数の形状と、
-単一または複数のモアレパターン、微細構造、マイクロテキスト、クリプトグリフ、ギョーシェ、レインボー、凹レンズ、光学素子、ホログラム、カイネグラム、光学レンズ、ウォーターマーク、QRコードおよびフィンガープリント、
-アイテムの表面に配置され、および/または、アイテム内に含まれる単一または複数の特定の材料であって、特に、前記特定の材料は紙、ポリマーおよび綿等の織物のうちの少なくとも1つを含む、単一または複数の特定の材料、
-前記アイテムの表面上に配置された、および/または、前記アイテム内に含まれる単一または複数のセキュリティ機構であって、特に、セキュリティ機構はホログラム、マイクロレンズ、埋め込みセキュリティスレッド、窓、ラベリングおよび記号のうちの少なくとも1つを含む、単一または複数のセキュリティ機構、ならびに、
-それらの組み合わせ
のうちの少なくとも1つである、先行の実施形態のいずれかのコンピュータ実装方法。
【0075】
実施形態9.ステップb)は、基準値を判定することを含み、前記基準値は、前記文書の前記少なくとも1つの部分の前記少なくとも1つの特徴的特性を表す前記データが、前記テスト要素の前記少なくとも1つの部分の前記デジタル表現に基づく前記データと類似している確率に基づくものであり、前記基準値は、前記基準値が所定の閾値よりも大きい場合に真であり、ステップc)は、前記基準値が真である場合に前記禁止手段を起動することを含む、先行の実施形態のいずれかのコンピュータ実装方法。
【0076】
実施形態10.前記基準値を判定することは、前記テスト要素の前記少なくとも1つの部分の前記デジタル表現に基づく前記データのピクセル化を考慮に入れ、特に、前記基準値を判定することは、前記テスト要素の前記少なくとも1つの部分の前記デジタル表現に基づく前記データの解像度及び/又は色分布及び/又はコントラスト分布及び/又は輝度分布も考慮に入れる、実施形態9のコンピュータ実装方法。
【0077】
実施形態11.前記方法は、前記方法の前記それぞれのコードが記憶される記憶メモリを備える第1のデータ処理装置内でローカルに、もしくは、遠隔で実行されるように構成され、第1のデータ処理装置は、前記方法の前記それぞれのコードが記憶される記憶メモリを備え、前記第1のデータ処理装置は、第2のデータ処理装置とのデータ接続部を介して接続され、前記方法は、前記データ接続部を介して前記第2のデータ処理装置上で実行され、かつ/または、
ステップa)における前記テスト要素の前記少なくとも1つの部分の前記デジタル表現に基づく前記データは、第1のデータ処理装置から第2のデータ処理装置への前記データの送信に基づいて提供され、特に、前記少なくとも1つの部分の前記デジタル表現は、前記テスト要素の一次元若しくは二次元部分を表し、かつ/または、
前記方法は、60秒未満の期間内、特に100ミリ秒と30秒との間の期間内、特に1秒未満の期間の間の期間内に実行される、
先行の実施形態のいずれか1つのコンピュータ実装方法。
【0078】
実施形態12.前記文書の前記少なくとも1つの部分の前記デジタル表現に関して、前記テスト要素の前記デジタル表現の前記少なくとも1つの部分を表す前記データを認証しない、先行の実施形態のいずれか1つのコンピュータ実装方法。
【0079】
実施形態13.実施形態1から12のいずれか1つの方法を実行するための手段を備える、データ処理のための装置。
【0080】
実施形態14.命令を含むコンピュータプログラム製品であって、前記コンピュータプログラム製品がデータ処理のための装置によって実行されると、前記命令は、前記データ処理のための装置に、実施形態1から12のいずれか1つの方法を実行させる、コンピュータプログラム製品。
【0081】
実施形態15.前記コンピュータプログラム製品のコードは、暗号化および/またはエラーコーディングされて記憶されている、実施形態14のコンピュータプログラム製品。
図1
図2
図3
【国際調査報告】