(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-03
(54)【発明の名称】血液ポンプの配置と血管内血液ポンプ
(51)【国際特許分類】
A61M 60/178 20210101AFI20230327BHJP
A61M 60/237 20210101ALI20230327BHJP
A61M 60/411 20210101ALI20230327BHJP
【FI】
A61M60/178
A61M60/237
A61M60/411
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022548045
(86)(22)【出願日】2021-02-02
(85)【翻訳文提出日】2022-10-04
(86)【国際出願番号】 EP2021052434
(87)【国際公開番号】W WO2021156255
(87)【国際公開日】2021-08-12
(32)【優先日】2020-02-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507116684
【氏名又は名称】アビオメド オイローパ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジース トルステン
(72)【発明者】
【氏名】ケルクホフス ヴォルフガング
(72)【発明者】
【氏名】ロドリゲス-ブリマーズ クリスティーン
(72)【発明者】
【氏名】キーセリッツ エレン
【テーマコード(参考)】
4C077
【Fターム(参考)】
4C077AA04
4C077BB10
4C077DD10
4C077EE01
4C077FF04
4C077KK25
(57)【要約】
患者の血管系への経皮的挿入のための血管内血液ポンプは、ポンプデバイス30および供給カテーテル36を備える。ポンプデバイスは、血流入口、血流出口、および、血液を入口から出口に輸送するためのインペラを備えたポンプ部を備え、ポンプデバイスはさらに、ポンプ部に接続され、インペラを駆動するように適合された駆動部を備える。供給ラインは、インペラを駆動するための電気エネルギーを、駆動部に供給する。供給カテーテル36は、インペラを駆動するための電気エネルギーを供給する。ポンプ部32は、駆動部31と供給ライン36との間に軸方向に配置される。ポンプ部は、可撓的に屈曲可能なカニューレ35を含み、送電ライン44は、カニューレ35が曲がる事象において、破裂するのを防ぐように、カニューレ35を横切って配置される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の血管系への経皮的挿入のための血管内血液ポンプであって、前記血管内血液ポンプは、ポンプデバイスおよび供給ラインを備え、
- 前記ポンプデバイスは、血流入口、血流出口、および、前記血流入口から前記血流出口に血液を輸送するために回転軸の周りで回転可能なインペラを有するポンプ部と、前記ポンプ部に接続され、前記インペラを駆動するように適合された駆動部とを備え、
- 前記供給ラインは、少なくとも前記インペラを駆動するための電気エネルギーを前記駆動部に供給するように適合され、
- 前記ポンプ部は、前記駆動部と前記供給ラインとの間の前記回転軸に沿って配置されることを特徴とする、血管内血液ポンプ。
【請求項2】
請求項1に記載の血管内血液ポンプであって、前記ポンプ部に沿って延び、前記供給ラインを、前記駆動部のモータと電気的に接続する導電性接続を備えることを特徴とする、血管内血液ポンプ。
【請求項3】
請求項1または2に記載の血管内血液ポンプであって、前記ポンプ部は、縦軸を有し、前記縦軸に沿って屈曲可能なカニューレを備えることを特徴とする、血管内血液ポンプ。
【請求項4】
請求項3に記載の血管内血液ポンプであって、前記ポンプ部の前記血流出口は、前記カニューレの遠位端部に配置されることを特徴とする、血管内血液ポンプ。
【請求項5】
請求項3または4に記載の血管内血液ポンプであって、前記導電性接続は、前記カニューレの壁に沿って延び、前記供給ラインを前記駆動部の前記モータと電気的に接続する、1つ以上の送電ラインを備えることを特徴とする、血管内血液ポンプ。
【請求項6】
請求項5に記載の血管内血液ポンプであって、前記駆動部の前記モータは、複数のモータケーブルを含み、電気コネクタは、好ましくは前記血流出口の近位にある前記カニューレの遠位端部において、または、前記カニューレの遠位端部に対して遠位方向に離れて提供され、前記複数のモータケーブルの各々は、前記1つ以上の送電ラインのうちの1つの送電ラインにそれぞれに接続され、前記電気コネクタは、好ましくはプリント回路基板であり、前記電気コネクタは、好ましくは絶縁材料によって、より好ましくはポリウレタンなどのポリマーコーティングによって覆われることを特徴とする、血管内血液ポンプ。
【請求項7】
請求項6に記載の血管内血液ポンプであって、前記1つ以上の送電ラインの各々は、撚りワイヤであることを特徴とする、血管内血液ポンプ。
【請求項8】
請求項6に記載の血管内血液ポンプであって、前記1つ以上の送電ラインの各々は、単一のワイヤであることを特徴とする、血管内血液ポンプ。
【請求項9】
請求項5に記載の血管内血液ポンプであって、前記駆動部の前記モータは、前記カニューレに沿って延びる前記1つ以上の送電ラインを構成する複数のモータケーブルを含み、電気コネクタは、好ましくは前記血流入口の近位にある前記カニューレの近位端部において、または、前記カニューレの近位端部の近傍で提供され、前記複数のモータケーブルの各々は、前記供給ラインにそれぞれ接続され、前記電気コネクタは、好ましくは、プリント回路基板であり、前記電気コネクタは、好ましくは絶縁材料で、より好ましくは、ポリウレタンなどのポリマーコーティングで覆われることを特徴とする、血管内血液ポンプ。
【請求項10】
請求項5から9のいずれか1項に記載の血管内血液ポンプであって、前記1つ以上の送電ラインは、前記カニューレの前記縦軸に平行な長手方向に、前記カニューレの前記壁に沿って、好ましくは、前記カニューレの中央湾曲面によって事前に決定された、前記カニューレの中立屈曲面に沿って延び、前記長手方向に伸縮可能であることを特徴とする、血管内血液ポンプ。
【請求項11】
請求項5から9のいずれか1項に記載の血管内血液ポンプであって、前記1つ以上の送電ラインは、前記カニューレの中央湾曲面によって事前に決定された、好ましくは前記カニューレの中立屈曲面に沿って配置された、少なくとも1つの屈曲可能な管の内側の前記カニューレの前記壁に沿って延びることを特徴とする、血管内血液ポンプ。
【請求項12】
請求項11に記載の血管内血液ポンプであって、前記1つ以上の送電ラインは、前記少なくとも1つの屈曲可能な管の内側にたるんで敷設されることを特徴とする、血管内血液ポンプ。
【請求項13】
請求項11または12に記載の血管内血液ポンプであって、前記1つ以上の送電ラインの各々に、1つの屈曲可能な管が設けられることを特徴とする、血管内血液ポンプ。
【請求項14】
請求項11から13のいずれか1項に記載の血管内血液ポンプであって、前記複数の少なくとも1つの屈曲可能な管は、前記カニューレの内部に中立屈曲面を形成するように、前記カニューレの前記壁の反対側に配置されることを特徴とする、血管内血液ポンプ。
【請求項15】
請求項14に記載の血管内血液ポンプであって、前記カニューレは、偶数の血流入口ポート、より好ましくは、4つの血流入口ポートを有することを特徴とする、血管内血液ポンプ。
【請求項16】
請求項11から15のいずれか1項に記載の血管内血液ポンプであって、前記少なくとも1つの屈曲可能な管は、形状記憶合金でできていることを特徴とする、血管内血液ポンプ。
【請求項17】
請求項16に記載の血管内血液ポンプであって、前記形状記憶合金は、ニチノールであることを特徴とする、血管内血液ポンプ。
【請求項18】
請求項5から9のいずれか1項に記載の血管内血液ポンプであって、前記1つ以上の送電ラインは、前記カニューレの前記壁に沿って蛇行状に延びることを特徴とする、血管内血液ポンプ。
【請求項19】
請求項18に記載の血管内血液ポンプであって、前記1つ以上の蛇行状に延びる送電ラインは、前記カニューレの中央湾曲面によって事前に決定された、前記カニューレの中立屈曲面に沿って配置されることを特徴とする、血管内血液ポンプ。
【請求項20】
請求項5から9のいずれか1項に記載の血管内血液ポンプであって、前記1つ以上の送電ラインは、前記カニューレの前記壁に沿って螺旋状に延びることを特徴とする、血管内血液ポンプ。
【請求項21】
請求項20に記載の血管内血液ポンプであって、前記カニューレは、前記カニューレの前記壁に沿って螺旋状に延びる1つ以上の補強巻線を含み、前記カニューレの前記縦軸に対して、螺旋状に延びる前記1つ以上の送電ラインの角度方位は、前記1つ以上の補強巻線および前記1つ以上の送電ラインが重なるように、前記1つ以上の螺旋状に延びる補強巻線の角度方位とは異なり、好ましくは、前記角度方位は、少なくとも5°、好ましくは少なくとも10°異なることを特徴とする、血管内血液ポンプ。
【請求項22】
請求項20または21に記載の血管内血液ポンプであって、前記カニューレは、前記カニューレの前記壁に沿って螺旋状に延びる、1つ以上の補強巻線を含み、前記カニューレの前記縦軸に対して螺旋状に延びる前記1つ以上の送電ラインの角度方位は、前記1つ以上の補強巻線および前記1つ以上の送電ラインが重なるように、前記1つ以上の螺旋状に延びる補強巻線の角度方位と反対であることを特徴とする、血管内血液ポンプ。
【請求項23】
請求項20に記載の血管内血液ポンプであって、前記カニューレは、前記カニューレの前記壁に沿って螺旋状に延びる1つ以上の補強巻線を含み、前記1つ以上の螺旋状に延びる送電ラインは、前記1つ以上の螺旋状に延びる補強巻線の間に配置されることを特徴とする、血管内血液ポンプ。
【請求項24】
請求項23に記載の血管内血液ポンプであって、前記1つ以上の螺旋状に延びる補強巻線は、互いに螺旋状に入れ子とされるように、前記カニューレの前記縦軸に対して軸方向に平行に配置された複数の補強巻線を含み、前記1つ以上の螺旋状に延びる送電ラインは、2つ以上の前記螺旋状に延びる補強巻線の間に、前記複数の送電ラインのうちの正確に1つの送電ラインが配置されるように構成された複数の送電ラインを含むことを特徴とする、血管内血液ポンプ。
【請求項25】
請求項24に記載の血管内血液ポンプであって、前記補強巻線のうち2つから9つが存在することを特徴とする、血管内血液ポンプ。
【請求項26】
請求項23から25のいずれか1項に記載の血管内血液ポンプであって、前記1つ以上の螺旋状に延びる補強巻線のうちの1つまたは2つまたは3つは、前記1つ以上の螺旋状に延びる送電ラインの各々の間に配置されることを特徴とする、血管内血液ポンプ。
【請求項27】
請求項23から26のいずれか1項に記載の血管内血液ポンプであって、前記補強巻線が、電気絶縁層の上に配置され、前記送電ラインが、前記電気絶縁層の下に配置される、またはその逆になるように、前記電気絶縁層は、前記螺旋状に延びる補強巻線と、前記螺旋状に延びる送電ラインとの間に配置されることを特徴とする、血管内血液ポンプ。
【請求項28】
請求項20に記載の血管内血液ポンプであって、前記カニューレは、前記カニューレの前記壁に沿って螺旋状に延びる1つ以上の補強巻線を含み、前記送電ラインのうちの少なくとも1つの送電ラインは、前記補強巻線のうちの各補強巻線によって形成されることを特徴とする、血管内血液ポンプ。
【請求項29】
請求項28に記載の血管内血液ポンプであって、隣接する補強巻線が、電気絶縁層の上下に交互に配置されるように、前記電気絶縁層は、前記螺旋状に延びる補強巻線の間に配置されることを特徴とする、血管内血液ポンプ。
【請求項30】
請求項20から29のいずれか1項に記載の血管内血液ポンプであって、前記1つ以上の螺旋状に延びる補強巻線は、フラットワイヤでできていることを特徴とする、血管内血液ポンプ。
【請求項31】
請求項20から30のいずれか1項に記載の血管内血液ポンプであって、前記補強巻線は、形状記憶合金でできていることを特徴とする、血管内血液ポンプ。
【請求項32】
請求項5から31のいずれか1項に記載の血管内血液ポンプであって、前記1つ以上の送電ラインは、前記カニューレの前記壁の内側に配置されることを特徴とする、血管内血液ポンプ。
【請求項33】
請求項5から32のいずれか1項に記載の血管内血液ポンプであって、前記カニューレの前記壁は、第1のフォイルと、前記第1のフォイルに結合され、前記第1のフォイルを覆う第2のフォイルとを備え、少なくとも1つの補強部材は、前記第1のフォイルと前記第2のフォイルとの間に、好ましくは、前記1つ以上の送電ラインとともに配置されることを特徴とする、血管内血液ポンプ。
【請求項34】
請求項33に記載の血管内血液ポンプであって、前記第1のフォイルおよび前記第2のフォイルは、ポリウレタンでできていることを特徴とする、血管内血液ポンプ。
【請求項35】
請求項3から34のいずれか1項に記載の血管内血液ポンプであって、前記カニューレは、その縦軸に沿って最大180°曲げられたときに座屈しないように構成されることを特徴とする、血管内血液ポンプ。
【請求項36】
請求項1から35のいずれか1項に記載の血管内血液ポンプであって、前記インペラは、軸方向に半径方向に、斜流に、または遠心方向に送るインペラであることを特徴とする、血管内血液ポンプ。
【請求項37】
請求項1から36のいずれか1項に記載の血管内血液ポンプであって、前記供給ラインは、好ましくは少なくとも圧力センサラインをさらに含む供給カテーテルの形態であることを特徴とする、血管内血液ポンプ。
【請求項38】
請求項1から37のいずれか1項に記載の血管内血液ポンプであって、前記血管内血液ポンプを、患者の血管の壁にアンカ固定するように適合された少なくとも1つのアンカを備えることを特徴とする、血管内血液ポンプ。
【請求項39】
請求項38に記載の血管内血液ポンプであって、前記アンカは、拡張可能かつ折り畳み可能なスパイクを備えることを特徴とする、血管内血液ポンプ。
【請求項40】
請求項1から39のいずれか1項に記載の血管内血液ポンプであって、前記血管内血液ポンプの遠位端部領域に、アンカ固定構造を備えることを特徴とする、血管内血液ポンプ。
【請求項41】
請求項40に記載の血管内血液ポンプであって、前記アンカ固定構造は、前記遠位端部領域の軸方向端部にフックまたはループを備えることを特徴とする、血管内血液ポンプ。
【請求項42】
請求項41に記載の血管内血液ポンプであって、前記ループは、柔らかく弾性のある材料から作製され、前記血管内血液ポンプの前記軸方向端部において非外傷性遠位延長部を形成することを特徴とする、血管内血液ポンプ。
【請求項43】
請求項41に記載の血管内血液ポンプであって、前記ループは、前記血管内血液ポンプの非外傷性遠位延長部に設けられることを特徴とする、血管内血液ポンプ。
【請求項44】
請求項40から43のいずれか1項に記載の血管内血液ポンプであって、前記アンカ固定構造は、前記遠位端部領域の軸方向端部に、ネックヘッド構造を備えることを特徴とする、血管内血液ポンプ。
【請求項45】
請求項44に記載の血管内血液ポンプであって、前記ネックヘッド構造のヘッドとネックとの間の接続面は、前記血管内血液ポンプの縦軸に対して90°傾斜しているか、または、前記接続面は、アンダーカットを形成するように、前記血管内血液ポンプの前記縦軸に対して90°を超えて傾斜していることを特徴とする、血管内血液ポンプ。
【請求項46】
請求項44または45に記載の血管内血液ポンプであって、前記ネックヘッド構造は、前記遠位端部領域のくぼみに形成されることを特徴とする、血管内血液ポンプ。
【請求項47】
請求項44または45に記載の血管内血液ポンプであって、前記ネックヘッド構造は、非外傷性遠位延長部の端部に形成されることを特徴とする、血管内血液ポンプ。
【請求項48】
請求項40から47のいずれか1項に記載の血管内血液ポンプと、前記血管内血液ポンプの前記アンカ固定構造に接続するように適合されたコネクタを備える接続カテーテルとを備えることを特徴とする、導入器セット。
【請求項49】
請求項48に記載の導入器セットであって、前記コネクタは、前記血管内血液ポンプの前記アンカ固定構造に引っ掛けるように適合されたフックを備えることを特徴とする、導入器セット。
【請求項50】
請求項48に記載の導入器セットであって、前記コネクタは、前記血管内血液ポンプの前記フックまたはループの周りを閉じるまたは把持するように適合された第1のグリップおよび第2のグリップを有するグリッパを備えることを特徴とする、導入器セット。
【請求項51】
請求項50に記載の導入器セットであって、前記グリッパは、把持面を有し、前記把持面は、前記接続カテーテルの縦軸に対して90°傾斜していることを特徴とする、導入器セット。
【請求項52】
請求項50に記載の導入器セットであって、前記グリッパは把持面を有し、前記把持面は、アンダーカットを形成するように、前記接続カテーテルの縦軸に対して90°を超えて傾斜していることを特徴とする、導入器セット。
【請求項53】
血管内血液ポンプを患者に配置する方法であって、前記血液ポンプは、血流入口および血流出口と、回転軸の周りで回転可能であり、前記血流入口から前記血流出口へ血液を輸送するためのサイズおよび形状を有するインペラとを有するポンプ部を備え、前記血液ポンプは、前記ポンプ部に接続され、前記インペラを駆動するためのエネルギー、好ましくは電気エネルギーを供給するように適合された供給ライン、好ましくは供給カテーテルをさらに備え、前記方法は、
- 第1のガイドワイヤを、前記患者の心臓を介することを含む、前記患者の血管系を介して配置するステップであって、これによって、前記第1のガイドワイヤは、前記血管系の動脈側の第1の経皮的アクセスを介した、好ましくは腋窩動脈または鎖骨下動脈を介した第1の端部と、前記血管系の静脈側の第2の経皮的アクセスを介した、好ましくは鎖骨下静脈または腋窩静脈を介した第2の端部とを用いて前記患者の体から延出するようになる、配置するステップと、
- 前記血管内血液ポンプを、前記第2の経皮的アクセスを介して前記患者の体内に配置するさらなる手順において、前記第1のガイドワイヤを使用するステップと、を含むことを特徴とする、方法。
【請求項54】
請求項53に記載の方法であって、
- 前記患者の血管系の前記静脈側から、前記患者の心臓の前記中隔に作成された通路を介して、前記心臓の左側に、経中隔鞘を挿入し、前記第1のガイドワイヤの前記第1の端部を、前記経中隔鞘を介して、前記心臓の左側に進め、前記経中隔鞘を引き戻すステップと、
- 好ましくは、前記経中隔鞘は、第3の経皮的アクセスを介して、下大静脈の下の静脈、好ましくは大腿静脈に挿入され、さらに、前記第2の経皮的アクセスを介して、上大静脈の上の静脈に、スネアカテーテルを挿入するステップ、前記スネアカテーテルを、前記第1のガイドワイヤに向かって、前記上大静脈へ進めるステップ、前記第1のガイドワイヤを、前記スネアカテーテルで捕捉するステップ、および、前記スネアカテーテルの助けを借りて、前記第1のガイドワイヤの前記第2の端部を、前記第3の経皮的アクセスへ、および前記第2の経皮的アクセスから移動させるステップを含む、ステップと、
- 好ましくはバルーンカテーテルを使用して、前記中隔を介して前記通路を拡張するステップと、
- 導入器隔鞘の前部が、前記心臓の左側部分、好ましくは左心室に延びるように、好ましくは前記バルーンカテーテルの助けを借りて、前記中隔を介して前記導入器隔鞘を進めるステップと、
- 適用可能な場合、前記バルーンカテーテルを引き抜くステップと、
- 操作可能なカテーテル、好ましくはスワンガンツカテーテルを、前記導入器隔鞘を介して、前記心臓の左側部分、好ましくは前記左心室に進めるステップと、
- 好ましくは、第2のガイドワイヤを、前記第1の経皮的アクセスを介して、前記心臓の左側部分、好ましくは前記左心室へ進めるステップと、
- 前記操作可能なカテーテルの助けを借りて、好ましくは前記第2のガイドワイヤで示される方向に沿って、好ましくは前記スワンガンツカテーテルのバルーンを膨らませ、前記患者の血流を追跡することにより、前記第1のガイドワイヤの前記第1の端部を、前記第1の経皮的アクセスに向かって、前記第1の経皮的アクセスから出るように案内するステップと、のうちの1つ以上を含むことを特徴とする、方法。
【請求項55】
請求項54に記載の方法であって、
- カップリングカテーテルの前端部を、好ましくは形状適合方式で、前記第1のガイドワイヤの前記第1の端部に取り付け、前記カップリングカテーテルの前記前端部が、前記第2の経皮的アクセスを介して、前記患者の体から延出するまで、前記第1のガイドワイヤを使用して、前記カップリングカテーテルを、好ましくは、前記患者の体から前記操作可能なカテーテルを引き抜くと同時に、前記患者の心臓を介することを含む、前記患者の血管系を介して案内するステップと、
- 前記血管内血液ポンプの遠位端部を、前記カップリングカテーテルに、好ましくは形状適合方式で結合し、前記ポンプ部を、好ましくは、大動脈弁を横切って、前記心臓の左部分に配置するように、前記中隔を介することを含む、前記患者の血管系を介して、前記血管内血液ポンプを進めるステップと、
- 好ましいステップであって、好ましくは、前記血管内血液ポンプの周囲からの複数のスパイクを、半径方向に折り畳まれた構成から半径方向に拡張された構成に移動させ、血管の壁に係合することによって、前記血管内血液ポンプを前記血管の前記壁に、好ましくは大動脈壁にアンカ固定するステップと、
- 前記カップリングカテーテルを、前記血管内血液ポンプの前記遠位端部から切り離し、前記カップリングカテーテルを前記患者の体から引き抜くステップと、
- 前記導入器隔鞘を、前記患者の体から引き抜くステップと、のうちの1つ以上を含むことを特徴とする、方法。
【請求項56】
請求項54に記載の方法であって、
- 前記第1のガイドワイヤの前記第1の端部を、前記第2の経皮的アクセスを介して前記患者の体から延出するように保ちながら、前記操作可能なカテーテルを前記患者の体から引き抜くステップと、
- 前記導入器隔鞘の前端部が、前記第2の経皮的アクセスを介して前記患者の体から延出するまで、前記導入器隔鞘を前記第1のガイドワイヤに沿って、前記患者の心臓を介することを含む、前記患者の血管系を介して案内するステップと、
- 前記血管内血液ポンプの遠位端部に設けられたループを介して前記第1のガイドワイヤの前記第2の端部を供給し、前記第1のガイドワイヤの前記第2の端部が、前記導入器隔鞘の前記前端部から延出するまで、前記第1のガイドワイヤの前記第2の端部を、前記導入器隔鞘を介して進めるステップと、
- 前記ポンプ部を、好ましくは、大動脈弁を横切って、前記心臓の左部分に配置するように、前記第2の経皮的アクセスを介して前記導入器隔鞘から延びる前記第1のガイドワイヤの前記第1の端部および前記第2の端部を把持し、前記血管内血液ポンプを、前記導入器隔鞘に沿って、前記中隔を介することを含む、前記患者の血管系を介して進めるステップと、
- 前記血管内血液ポンプの前記遠位端部に設けられた前記ループから、前記第1のガイドワイヤを解放または供給停止し、前記導入器隔鞘から前記第1のガイドワイヤを引き抜くステップと、
- 前記導入器隔鞘を前記患者の体から引き抜くステップと、
- 好ましいステップであって、好ましくは、前記血管内血液ポンプの周囲からの複数のスパイクを、半径方向に折り畳まれた構成から半径方向に拡張された構成に移動させ、血管の壁に係合することによって、前記血管内血液ポンプを血管の壁に、好ましくは大動脈壁にアンカ固定するステップと、のうちの1つ以上を含むことを特徴とする、方法。
【請求項57】
血管内血液ポンプを患者に配置する方法であって、前記血液ポンプは、ポンプデバイスを備え、前記ポンプデバイスは、血流入口、血流出口、および、回転軸の周りで回転可能であり前記血流入口から前記血流出口に血液を輸送するためのサイズおよび形状を有するインペラを有するポンプ部と、前記ポンプ部に接続され、前記インペラを駆動するように適合された駆動部とを備え、前記血液ポンプは、前記ポンプデバイスに接続され、前記インペラを駆動するためのエネルギー、好ましくは電気エネルギーを少なくとも前記駆動部へ供給するように適合された供給ライン、好ましくは供給カテーテルをさらに備え、前記方法は、
- 前記患者の胸腔へアクセスするステップと、
- 前記心臓の左心室にアクセスするために、前記患者の前記心臓の頂端壁を介して穿刺を形成するステップと、
- 前記ポンプ部の前記血流入口が、前記心臓の前記左心室に配置され、前記ポンプ部の前記血流出口が、前記患者の大動脈に配置され、前記供給ラインが、前記頂端壁における前記穿刺を介して前記患者の体から延出し、前記駆動部が、前記大動脈に配置されるように、前記ポンプデバイスを、前記頂端壁における前記穿刺を介して進めるステップと、を含むことを特徴とする、方法。
【請求項58】
請求項57に記載の方法であって、好ましくは、前記血管内血液ポンプの周囲からの複数のスパイクを、半径方向に折り畳まれた構成から、半径方向に拡張された構成に移動させ、血管の壁に係合することによって、前記血管内血液ポンプを、血管の壁に、好ましくは大動脈壁にアンカ固定するステップを含むことを特徴とする、方法。
【請求項59】
患者に血管内血液ポンプを配置するためのキットであって、以下のツール、すなわち、
- 穿刺先端または別個の穿刺針および拡張器を含み得る経中隔鞘(17)と、
- 第1のガイドワイヤ(20A)と、
- 第2のガイドワイヤ(20B)と、
- 導入器隔鞘(19)と、
- スネアカテーテル(18)と、
- バルーンカテーテル(22)と、
- 操作可能なカテーテル(23)と、
- 接続カテーテル(25)または管(24)のいずれかと、を備えることを特徴とする、キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者の心臓の左心室を補助するために患者に血管内血液ポンプを配置する方法、そのような方法で使用するための配置ツール、および配置方法に特に適した血管内血液ポンプに関する。
【0002】
したがって、本発明は、一般に、血管内血液ポンプに関する。体外血液ポンプ、または、患者の腹部、胸腔、または他の体腔に配置される血液ポンプとは対照的に、血管内血液ポンプは、患者の心臓などの血管に配置され、「心臓内」血液ポンプとも呼ばれる。本発明は、限定的ではないが、特に、患者の血管系に経皮的に挿入される血管内血液ポンプに関する。
【背景技術】
【0003】
血管内血液ポンプは、血液ポンプが数日または数週間患者に埋め込まれる短期使用、または、血液ポンプが数週間または数か月(たとえば、6か月以上)から、たとえば2年間まで埋め込まれる長期使用のいずれかにおいて、患者の心臓の機能をサポートすることが知られている。軸方向血液ポンプ、遠心式血液ポンプ、または斜流血液ポンプなど、様々なタイプの血管内血液ポンプが知られており、これらは混合型血液ポンプと呼ばれることもある。これらのタイプの血管内血液ポンプは、経皮的切開を介してカテーテルによって患者の血管系に挿入することができる。
【0004】
血管内血液ポンプは、典型的には、血流入口および血流出口と、回転軸の周りで回転可能であり、血流入口から血流出口に血液を輸送するためのサイズおよび形状を有するインペラとを有するポンプ部を備える。血管内血液ポンプは、インペラを駆動するための駆動部をさらに備える。以下、ポンプ部と駆動部とを合わせて「ポンプデバイス」と呼ぶ。さらに、血管内血液ポンプは、典型的には、ポンプデバイスに接続された供給カテーテルを備え、カテーテルの近位端部は、患者の体から延出する。本明細書において、「近位」は、外科医に近い位置、または外科医に向かう方向を指し、「遠位」は、外科医から離れた位置、または外科医から患者に向かう方向を指す。供給カテーテルは、送電ライン、パージ流体ライン、センサライン、駆動ケーブルなどの、ポンプデバイスのための任意の供給ラインを囲み得る。
【0005】
インペラが内部モータによって駆動される場合、ポンプデバイスは、共通のハウジング内のポンプ部および駆動部の両方を含み得、ポンプ部は、血流入口、血流出口、およびインペラを備え、駆動部は、ポンプ部に軸方向に取り付けられ、インペラを駆動するためのモータを備える。モータを駆動するための電気エネルギーは、供給カテーテルを介して供給ラインを経由して供給される。インペラが、患者の体外に位置する外部モータによって駆動される場合、供給カテーテルは、駆動部の一部として屈曲可能な駆動ケーブルを囲み得、駆動ケーブルは、外部モータをインペラに接続し、運動エネルギーをインペラに供給する。
【0006】
本明細書に記載の配置方法は、上記のケーブル駆動血液ポンプにも適し得るが、この文脈において好ましいものは、完全に十分な埋込可能ポンプデバイスを形成するように、ともに取り付けられたポンプ部と駆動部との両方を含む血管内血液ポンプである。
【0007】
典型的には、左心室補助デバイス(LVAD)として機能する血管内血液ポンプは、大腿動脈および大動脈を介して、患者の心臓の左心室に挿入される。しかしながら、石灰化により、動脈血管の内径が小さくなることがあるが、そのような問題は通常、静脈血管では発生しない。この状況では、大腿動脈を介して血液ポンプを配置することは不可能な場合がある。他の状況では、血液ポンプが大きすぎて、石灰化していない動脈血管からでも導入できない場合がある。たとえば、長期のデバイスは、比較的かさばり、直径が大きく(たとえば、16フレンチ以上、最大18フレンチ)、したがって、動脈側を介して挿入するのが困難である場合がある。したがって、たとえば、大腿静脈を介して、さらに心房中隔の左心室への穿孔を介して、血液ポンプが、比較的大きな内径を有する静脈側を介して挿入される他の挿入技法が説明されている。大腿静脈を介して血液ポンプを導入すると、心室系の静脈側の血圧が非常に低くなるため、入口点を介して大腿静脈から血液が漏れるリスクが大幅に減少するというさらなる利点がある。
【0008】
たとえば、血液ポンプを大腿静脈に引き込み、さらに大静脈と、心房中隔の穿孔とを介して、左心室に引き込むための連続ガイドワイヤを形成するために、静脈側および動脈側からそれぞれ挿入され、患者の心臓内で磁気的に接続されている2本のガイドワイヤを使用することが、米国特許出願公開第2006/0155158A1号から知られている。しかしながら、患者の心臓内で2本のガイドワイヤを発見し、確実に接続することには問題がある。
【0009】
別の問題は、たとえば、患者がベッドを離れて歩き回ることを許可するなど、患者が移動可能であることが望ましい長期使用において生じる。すなわち、血液ポンプが大腿骨アプローチで挿入される場合、すなわち、鼠径部の小さな切開を介してアクセスされる大腿動脈または大腿静脈を介して挿入される場合、供給カテーテルが鼠径部で患者から経皮的に出るため、患者の移動性を制限し、歩行を困難にする。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
したがって、本発明は、LVADとして機能するように、患者の心臓に血管内血液ポンプを配置することに関する。これに関連して、本明細書でさらに開示されるものは、血管内血液ポンプ、ならびに開示される配置方法における使用に特に適した配置ツールである。
【0011】
患者に上記のタイプの血管内血液ポンプを配置する方法は、第1の原理に従って、第1のガイドワイヤを、患者の心臓を介することを含む、患者の血管系を介して配置するステップであって、これによって、第1のガイドワイヤは、腋窩動脈または鎖骨下動脈などを介した、血管系の動脈側の第1の経皮的アクセスを介した第1の端部と、血管系の静脈側の第2の経皮的アクセスを介した第2の端部とを用いて、患者の体から延出するようになる、配置するステップと、次に、血管内血液ポンプを、第2の経皮的アクセスを介して、すなわち、患者の血管系の静脈側から、患者の体内に配置するさらなる手順において第1のガイドワイヤを使用するステップとを含む。
【0012】
静脈および動脈の両方から、患者の体から延出するように、第1のガイドワイヤを、患者の血管系全体に配置することは、以下の手法で達成され得る。第1に、経中隔鞘は、患者の心臓の中隔に作成された穿孔を介して、患者の血管系の静脈側から心臓の左側に挿入され、ここで、中隔穿孔は、好ましくは心房中隔の穿孔である。次に、第1のガイドワイヤの第1の端部が、経中隔鞘を介して心臓の左側部分に進められる。その後、経中隔鞘が引き戻され得る。第2に、中隔を介した通路が、たとえば、PTAバルーンカテーテルによって拡張され得る。第3に、導入器隔鞘は、導入器隔鞘の前部が、心臓の左側部分、好ましくは左心室に延びるように、中隔を介して進められる。このプロセスは、PTAバルーンカテーテルによって有利にサポートされ得る。PTAバルーンカテーテルが使用された場合、これは、血管系から引き抜かれ得る。第4に、スワンガンツカテーテルなどのバルーンカテーテルは、導入器隔鞘を介して、心臓の左側部分、好ましくは左心室に進められる。その後、バルーンカテーテルのバルーンを膨らませ、第1のガイドワイヤの第1の端部は、患者の血流後のバルーンカテーテルの助けを借りて、第1の経皮的アクセスに向かって、第1の経皮的アクセスから出るように案内される。その結果、第1のガイドワイヤは、心臓を含む患者の血管系を通過し、その両端部を用いて患者の体から延出する。
【0013】
好ましくは、スワンガンツカテーテルのバルーンを膨張させる前に、第2のガイドワイヤが、動脈アクセス(上記の「第1の」経皮的アクセス)を介して、心臓の左側部分、好ましくは左心室に進められ得、バルーンカテーテルは、第2のガイドワイヤによって示される方向に沿って、動脈アクセスに向かって、動脈アクセスから出るように案内される。
【0014】
さらに好ましくは、経中隔鞘が手順の開始時に挿入されるとき、経中隔鞘は、経皮的アクセスを介して、下大静脈の下の静脈、好ましくは、典型的には、知られているセルディンガー技法によって、患者の鼠径部において、アクセスされ得る大腿静脈に挿入され得る。経中隔鞘およびガイドワイヤを、心房中隔を介して、心臓の左側部分、特に左心室まで進めると、心臓における湾曲を含む人間の心室系内の自然な湾曲によって、下大静脈から比較的容易に出てくる。下大静脈の下の静脈への経皮的アクセスは、上記の「第2の」経皮的アクセスとは異なり得、したがって、「第3の」経皮的アクセスと呼ばれ得る。この場合、スネアカテーテルは、第2の経皮的アクセスを介して、鎖骨下静脈または腋窩静脈など、上大静脈の上の静脈に挿入され、上大静脈を介して、下大静脈において、第1のガイドワイヤに向かって進められ得、ここで、スネアカテーテルは、第1のガイドワイヤを捕捉し、第1のガイドワイヤの第2の端部を、第3の経皮的アクセスへ、第2の経皮的アクセスから出すために使用される。
【0015】
第1のガイドワイヤが、両端部を用いて心室系から延出するように配置された後、第1のガイドワイヤの助けを借りて、心臓の左側に血管内血液ポンプを配置する様々なオプションがある。第1のオプションは、以下のステップを備え得る。第1に、カップリングカテーテルの前端部は、好ましくは形状適合方式で、第1のガイドワイヤの第1の端部に取り付けられ、カップリングカテーテルの前端部が、第2の経皮的アクセスを介して、患者の体から延出するまで、第1のガイドワイヤを使用して、患者の心臓を介することを含む、患者の血管系を介して案内される。好ましくは、バルーンカテーテルは、カップリングカテーテルが進められている間、患者の体から引き抜かれる。第2に、血管内血液ポンプの遠位端部は、好ましくは形状適合方式でカップリングカテーテルに結合され、そのポンプ部を、好ましくは大動脈弁を横切って、心臓の左部分に配置するように、心房中隔を介することを含む、患者の血管系を介して進められる。この構成では、心臓を介して左心室に延びる血管内血液ポンプの供給カテーテルは、左心室にループを形成し、心臓壁に横たわるようになり得、それによって、血液ポンプをサポートし、血液ポンプが動作中に左心室に移動することを阻止する。
【0016】
任意選択で、血管内血液ポンプは、大動脈壁などの血管壁にアンカ固定され得る。これは、血管内血液ポンプの周囲からの複数のスパイクを、半径方向に折り畳まれた構成から、半径方向に拡張された構成に移動させ、血管の壁に係合することによって達成され得る。特に、拡張可能なスパイクは、血管壁を部分的に貫通し得る。スパイクは、血管壁に深く浸透するのを阻止する停止部を有し得る。第3に、カップリングカテーテルは、血管内血液ポンプの遠位端部から切り離され、患者の体から引き抜かれる。最後に、導入器隔鞘が、患者の体から引き抜かれ得る。
【0017】
第1の配置原理に従って、第1のガイドワイヤの助けを借りて、心臓の左側部分に血管内血液ポンプを配置する第2のオプションは、以下のステップを備え得る。第1に、バルーンカテーテルは、第1のガイドワイヤの第1の端部が、第2の経皮的アクセスを介して、患者の体から延出するように保ちながら、患者の体から引き抜かれる。第2に、導入器隔鞘は、導入器隔鞘の前端部が、患者の体から、第2の経皮的アクセスを介して延出するまで、患者の心臓を介することを含む、患者の血管系を介して、第1のガイドワイヤに沿って案内される。第3に、第1のガイドワイヤの第2の端部は、血管内血液ポンプの遠位端部に設けられたループを介して供給され、第1のガイドワイヤの第2の端部が、導入器隔鞘の前端部から延出するまで、導入器隔鞘を介して進められる。第4に、ポンプ部を、好ましくは大動脈弁を横切って、心臓の左側に配置できるように、中隔を介することを含む、患者の血管系を介して、導入器隔鞘に沿って、血管内血液ポンプを進めるために、第1の経皮的アクセスを介して、導入器隔鞘から延出する、第1のガイドワイヤの第1および第2の端部が、把持および使用される。第5に、第1のガイドワイヤは、血管内血液ポンプの遠位端部に設けられたループから解放されるか、または供給停止され、導入器隔鞘から引き抜かれる。最後に、導入器隔鞘が、患者の体から引き抜かれ得る。この場合も、血管内血液ポンプは、たとえば、血管内血液ポンプの周囲からの複数のスパイクを、半径方向に折り畳まれた構成から、半径方向に拡張された構成に移動させ、血管の壁に係合することによって、大動脈壁などの血管の壁にアンカ固定され得る。上記のように、拡張可能なスパイクは、血管壁を部分的に貫通し得、スパイクが血管壁に深く浸透するのを阻止するための停止部を有し得る。
【0018】
上記の第1の配置原理のすべての態様において、供給ラインは、ポンプ部を外部モータと接続し、ポンプ部に運動エネルギーを提供する駆動ケーブルを備え得る。ポンプ部は、拡張可能な回転子さえも備え得る。しかしながら、説明された配置原理は、たとえば静脈血管系によって提供されるように、心臓に向かって、心臓内に進められるために、比較的大きな血管断面積を必要とする非拡張性血液ポンプに特に適している。直接駆動を備えた血管内血液ポンプ、すなわち、駆動部が、ポンプ部に軸方向に接続され、ポンプ部とともに埋め込まれる血液ポンプを適用することが特に好ましい。なぜなら、長く可撓性のある駆動ケーブルは、左心室に至るまで、風を受ける経路全体に沿って配置されるのに特に適していないからである。この場合、電気エネルギーは、供給ラインを介して駆動部に供給され得る。
【0019】
供給カテーテルまたは供給ラインを、患者の血管系の、動脈側ではなく静脈側に配置することは、動脈血管の組織が、供給カテーテルに成長して入り込む傾向がある長期使用のために有利であり得る。また、この配置では、供給カテーテルまたは供給ラインは、動脈血流をまったく妨げないので、したがって、このように配置された血管内血液ポンプを用いて、より高い血流量を達成することができる。
【0020】
血管内血液ポンプを患者に配置する方法の第2の原理によれば、血液ポンプは、経心尖アクセスを介して挿入され得る。この方法は、心尖の患者の心臓の壁に穿刺を開けて、心臓の左心室にアクセスすることによって、患者の胸腔にアクセスするステップを含み得る。患者の胸腔へのアクセスは、好ましくは、低侵襲性の手順で実行される。この方法は、ポンプデバイス、すなわち駆動部を含むポンプ部を、頂端壁の穿刺を介して左心室に進め、ポンプデバイスの遠位端部を前方に進めるステップと、ポンプデバイスを左心室および大動脈弁を介して、大動脈に向けて進めるステップと、血流入口が左心室に配置され、血流出口が大動脈に配置され、駆動部も大動脈に配置されるが、供給カテーテルは、心尖における穿刺を介して延び、皮膚を通じて患者の体から出るように、血液ポンプを配置するステップとを含む。これは、血管内血液ポンプのポンプ部が、以下でさらに説明されるように、駆動部と供給カテーテルまたは供給ラインとの間に軸方向に配置されることを必要とする。
【0021】
また、第2の原理による配置方法は、患者の大動脈の内壁に係合するアンカデバイスによって、患者の体内に血液ポンプの位置を固定するステップをさらに含み得る。血管内血液ポンプは、大動脈から左心室に移動する傾向があるため、これは特に有用である。これは、患者の動きと、血液ポンプを後方に左心室へ押し込む血液ポンプのポンプ圧力とによって引き起こされ得る。供給カテーテルが大動脈弓を介して延びる場合、これは、それほど問題ではなく、それによって、ある程度の固定を提供するので、依然として有利であり得る。
【0022】
上記のように、血管内血液ポンプの遠位端部領域は、好ましくは、アンカ構造を備えており、血管内血液ポンプは、最小構成要素として、ポンプデバイスおよび供給ラインをさらに備え、ポンプデバイスは、インペラを有するポンプ部と、インペラを駆動するための駆動部とを備える一方、供給ラインは、インペラを駆動するためのエネルギーを供給する。
【0023】
アンカ構造は、すでに述べたように、血管内血液ポンプを、患者の大動脈などの患者の血管の壁にアンカ固定するように適合された少なくとも1つのアンカを備え得、アンカは、拡張可能で折り畳み可能であるスパイクを備え得る。
【0024】
しかしながら、血管内血液ポンプは、さらにまたは代わりに、すなわち、血管内血液ポンプの遠位端部を、第1の配置原理の第1のオプションに従って、カップリングカテーテルに、または、第1の配置原理の第2のオプションに従って、第1のガイドワイヤに接続するために、上記の配置方法で使用するために、完全に異なるアンカ構造を備え得る。
【0025】
第1の好ましい実施形態によれば、そのようなアンカ構造は、血管内血液ポンプの遠位端部に、フックまたはループを備える。次に、カップリングカテーテルは、血液ポンプのフックまたはループ、または血液ポンプのフックが引っ掛けられるループに引っ掛けるための、対応するフックを備え得る。1つの形態では、ループは、血管内血液ポンプの軸方向端部において、非外傷性遠位延長部を形成するように、柔らかく弾性のある材料から作製され得る。典型的なピグテール形状またはJ形状の非外傷性遠位延長部は、そのようなループによって置き換えられ得る。あるいは、従来の非外傷性遠位延長部は、好ましくはその遠位端部にループを提供され得る。カップリングカテーテルを使用して、血液ポンプを前方に押すことと、他方の端部をわずかに引くこととの両方によって、血液ポンプが、患者の血管系を介して案内される間、J型またはピグテール型の非外傷性延長部が伸縮し、解放後に反動し得る。
【0026】
第2の好ましい実施形態では、そのようなアンカ構造は、血管内血液ポンプの端部領域の軸方向端部に、ネックヘッド構造を備え得る。この場合、カップリングカテーテルは、ネックヘッド構造に接続するためのグリッパを備え得る。好ましくは、コネクタは、ネックヘッド構造のヘッドの周りをグリップするように適合された第1のグリップおよび第2のグリップを備えたグリッパを有する。ネックヘッド構造の代わりに、フックまたはループが設けられている場合、同じグリッパを同様に使用して、血管内血液ポンプのフックまたはループの周りを閉じることができる。ネックヘッド構造は、血管内血液ポンプの端部領域の軸方向端部から遠位方向に延び得る。あるいは、ネックヘッド構造は、組織に損傷を与える可能性を回避するために、血管内血液ポンプの前部空洞内にいくらか隠されて提供され得る。
【0027】
好ましくは、ネックヘッド構造のヘッドとネックとの間の接続面は、血管内血液ポンプの縦軸に対して90°傾斜しているか、または接続面は、アンダーカットを形成するように、血管内血液ポンプの縦軸に対して90°を超えてさえも傾斜し得る。垂直または負にさえも傾斜した接続面の間に完全な適合を提供するために、グリッパ表面は、同様に、ネックヘッド構造のアンダーカットとの嵌合を形成し、アンダーカットするために、接続カテーテルの縦軸に対して90°だけ、または90°を超えてさえも傾斜している。このように、血液ポンプが、接続カテーテルを使用して、血管系を介して慎重に引かれる場合、ヘッドに作用する力、より具体的には、ヘッドとネックとの間の接続面に作用する力は、純粋に軸方向の力であり、第1および第2のグリップを、ヘッドの後ろで閉じたままに維持するための力は、最小となり得る。これらの閉鎖力は、血液ポンプの縦軸に垂直な方向に半径方向に作用し、したがって、血液ポンプが、患者の血管系を介して案内されるときに接続面に作用するいかなる引っ張り力も、グリッパの閉鎖力に対抗する力成分を有さない。従来の接続カテーテルにおけるグリッパ表面は、典型的には、丸みを帯びているため、不利である。
【0028】
異なるタイプの駆動を使用することができる。好ましくは、駆動は、複数のポストを含む固定子を備え得、各ポストは、回転磁界を生成するように制御できるコイル巻線を有する。次に、インペラは、インペラの回転を引き起こすために回転磁界に結合するための、対応する複数の永久磁石を有し得る。あるいは、駆動は、電気モータによって駆動される回転子を備え得、回転子は、複数の永久磁石を含み、インペラは、回転子の回転をインペラに伝達するように構成された磁気結合を形成するために、回転子の磁石に磁気的に結合された、対応する複数の永久磁石を備える。両駆動では、電気構成要素は、ハウジングによって囲まれ、血液との接触はない。電気モータの回転運動は、インペラに磁気的に伝達される。しかしながら、生理食塩水などのパージ流体でパージされた駆動など、他のタイプの駆動も同様に使用され得る。
【0029】
血管内血液ポンプは、好ましくは、左心室から大動脈に血液をポンプするように構成された左心室補助デバイス(LVAD)であることが理解されよう。血流入口は、ポンプデバイスの近位端部に配置され得、血流出口は、ポンプデバイスの遠位端部に配置され得る。これは、血液が外科医から離れる方向、すなわち供給カテーテルから離れる方向に強制されるため、「強制ポンプ」と呼ばれ得る。これは、供給カテーテルが、患者の血管の静脈側に配置される用途に適用される。逆に、血流入口は、ポンプデバイスの遠位端部に配置され得、血流出口は、ポンプデバイスの近位端部に配置され得る。これは、血液が外科医に向かう、すなわち供給カテーテルに向かう方向に吸引されるため、「吸引ポンプ」と呼ばれ得る。これは、供給カテーテルが、患者の血管の動脈側に配置される用途に適用する。
【0030】
好ましくは、血管内血液ポンプは、強制ポンプであり、より好ましくは、ポンプ部が、駆動部と供給カテーテルまたは供給ラインとの間に軸方向に配置されている強制ポンプである。十分な埋込可能ポンプデバイスとして統合されたポンプ部および駆動部を有する従来技術の血管内血液ポンプでは、配置は異なり、すなわち、ポンプ部は、駆動部と供給カテーテルとの間に軸方向に配置される。これらの従来技術の血管内血液ポンプは、典型的には、吸引ポンプとして動作するが、同じ血液ポンプを、強制ポンプとして同様に使用できるように、インペラの回転が逆にされ得る。しかしながら、そのような血液ポンプの主な用途は、吸引ポンプとしての使用のためであるため、同じ血液ポンプが、強制ポンプとして使用される場合、流量特性はそれほど良くない。これは特に、ポンプ部が、純粋な軸流ポンプとして設計されていないが、少なくとも半径方向の構成要素を含む場合、すなわち、斜流の、または混合タイプのポンプとして、または遠心ポンプとして形成されている場合である。ポンプの半径方向の構成要素は、遠心ポンプの効果を有しているので、ポンプから血流に伝達される運動エネルギーに寄与する。そのようなポンプが逆方向に動作するとき、そのような半径方向の構成要素は、運動エネルギーの生成のために失われるだけでなく、逆効果でさえある。性能におけるこの損失は、インペラのより高い回転速度によって許容または補償される必要があるが、回転速度には一定の制限がある。
【0031】
したがって、本発明による強制血液ポンプの好ましい設計は、ポンプデバイスおよび供給ラインを備える。ポンプデバイスは、通常の手法のポンプ部を備え、すなわち、ポンプ部は、血流入口と、血流出口と、血流入口から血流出口に血液を輸送するために、回転軸の周りで回転可能なインペラとを有する。ポンプデバイスは、ポンプ部に接続され、インペラを駆動するように適合された駆動部をさらに備える。好ましくは、駆動部は、当該技術分野で一般に知られているように、ポンプ部に軸方向に接続され、ポンプ部とともに埋め込まれる。供給ラインは、少なくとも、インペラを駆動するための電気エネルギーを駆動部に供給するように適合される。したがって、供給ラインは、少なくとも電気ケーブルを含むか、または電気ケーブルからなる。しかしながら、供給ラインは、好ましくは、電気ケーブル、ならびに、たとえば、1つ以上のガラス繊維の形態で、圧力ラインなどのさらなる構成要素を含み得る供給カテーテルとして形成される。重要なことに、ポンプ部は、駆動部と供給ラインまたは供給カテーテルとの間の回転軸に沿って配置される。したがって、供給ラインまたは供給カテーテルは、駆動部ではなくポンプ部に取り付けられる。
【0032】
血流入口が、患者の心臓に位置し、血流出口が、大動脈に位置するように、この血管内血液ポンプが、患者の血管系に配置される場合、血液ポンプは、強制ポンプとして、すなわち、供給ラインまたは供給カテーテルから離れる、したがって、外科医から離れる方向に動作することができ、供給ラインまたは供給カテーテルは、動脈血管系を通過せず、したがって、血液ポンプによってサポートまたは生成される血流を妨げないという利点を与える。したがって、血液ポンプのタイプに関係なく、この方式で、より高い血流量を達成することができる。血液ポンプが、軸方向-半径方向血液ポンプ、斜流血液ポンプ、または遠心血液ポンプなどの半径方向の構成要素を有する場合、特定の利点が生じる。ここで、駆動部は、ポンプ部の遠位に配置されるので、駆動部によって駆動されるインペラは、血流出口の近くに配置され、血流出口を介して半径方向に、または、少なくとも半径方向の構成要素を用いて血液を送ることができ、血液ポンプは、比較的高い血流量を提供することができる。
【0033】
インペラを駆動するためのエネルギーは、好ましくは、供給ラインから、ポンプ部を横切って、駆動部に導電的に伝達される。したがって、供給ラインを駆動部のモータと電気的に接続するために、導電性接続が、ポンプ部に沿って延びるように提供され得る。
【0034】
上記のタイプの血管内血液ポンプは、典型的には、ポンプ部の一部としてカニューレを備え、そのようなカニューレは、本明細書に記載の血管内血液ポンプでも提供され得る。カニューレは通常、大動脈弁を介して延びるポンプ部の一部であり、一部の用途では、大動脈弁と僧帽弁との両方を介して延びる。患者の血管系を介して血液ポンプが操作可能となるために、カニューレは、その縦軸に沿って屈曲可能である。カニューレは、患者の心臓に適切に取り付けられたときに想定される形状に、事前に湾曲され得る。
【0035】
ポンプ部の血流入口は、好ましくは、供給ラインまたは供給カテーテルに近いカニューレの遠位端部に配置されるが、ポンプの血流出口は、カニューレの遠位端部、すなわち、モータ部の隣に配置され得る。したがって、駆動部におけるモータによって駆動されるインペラは、同様に、血流出口を介して直接ポンプ部から血液を押し出すことができるように、駆動部の隣に配置される。
【0036】
カニューレは、静脈および心臓を介して、大動脈弁を横切って所定の位置に操作されるときに、かなりの屈曲を受けるので、供給ラインと、ポンプ部を横切る駆動部との間の導電性接続が、そのような操作中に破裂することを防ぐために、特定の措置を講じる必要がある。たとえば、対応する送電ラインは、カニューレの内腔を介して緩く延びることができる。しかし、そのような配置は、乱流や血液凝固を引き起こす可能性があるので、これは好ましくない。むしろ、カニューレの壁に沿って送電ラインを配置することが好ましい。
【0037】
たとえば、供給ラインの電気ケーブルの撚りワイヤ、または、特定の撚りワイヤまたは単一の供給ライン、たとえば、通常、ポリマーラッカーの絶縁体を運ぶ駆動部におけるモータのモータケーブルは、カニューレの壁に沿って、好ましくは、カニューレの中立屈曲面に延び得る。たとえば、カニューレの他の領域は、中立屈曲面の領域のカニューレの領域と比較して、より少ない力で伸長するように作られているので、カニューレの中立屈曲面は、それに沿ってカニューレが曲がる可能性が最も高い面である。たとえば、カニューレの中立屈曲面は、カニューレの中央湾曲面によって事前に決定され得、これは、カニューレが、患者の心臓に適切に配置されたときに想定される曲率に対応する。
【0038】
たとえば、送電ラインは、カニューレの壁に沿って、カニューレの縦軸に平行な厳密な長手方向に、好ましくは、相互屈曲面に沿って延びることができ、それらが伸長によって破裂することを阻止するために、長手方向に伸縮可能であり得る。
【0039】
あるいは、送電ラインは、少なくとも1つの屈曲可能な管の内側のカニューレの壁に沿って延び得る。以前に説明したように、屈曲可能な管は、好ましくは、相互屈曲面に沿って配置されるが、これは、送電ラインが、管の内側にたるんで敷設される場合、必要条件ではない。
【0040】
送電ラインのそれぞれに1つの屈曲可能な管を設けることができるか、または複数の送電ラインが、屈曲可能な1つ以上の管を通ることができる。
【0041】
特定の実施形態では、カニューレ内に相互屈曲面を作成するために、カニューレの縦軸に沿って、カニューレの壁の反対側に、複数の屈曲可能な管が設けられる。たとえば、1つの管を通る2つの送電ラインと、他の管を通り、圧力センサの光ファイバとともにある第3の送電ラインとを備えたカニューレの反対側に、1つの屈曲可能な管が設けられ得る。あるいは、壁の各側に2つの管を配置し、各ラインに1つの管を配置することもできる。カニューレの壁の反対側に配置された送電ライン(または他のライン)の状況では、カニューレの反対側に配置された送電ラインが、隣接する入口ポートを分離するブリッジを介してまっすぐに続くように、少なくとも血流入口に、偶数の入口ポートを提供することが有利である。
【0042】
好ましくは、屈曲可能な管は、ニチノールなどの形状記憶合金でできている。
【0043】
さらにその代わりに、送電ラインは、カニューレの壁に沿って蛇行状に延び得る。これは、カニューレを曲げることに起因するカニューレの壁の延びが、蛇行状に延びる送電ラインの延びよりも、はるかに大きいという効果を有する。この効果は、蛇行状に延びる送電ラインが、カニューレの中立屈曲面に沿って配置されていない場合でも達成され、これは、上記のように、カニューレの中央湾曲面によって事前に決定され得る。特に、送電ラインが、カニューレの壁に完全に固定されておらず、わずかにずれることが許容される場合、カニューレを曲げても、蛇行状に延びる送電ラインがまったく延びない場合がある。たとえば、蛇行状に延びる送電ラインは、カニューレの壁の中または上に、特定の点においてのみ固定され得る。
【0044】
さらに別の代替によれば、送電ラインは、カニューレの周りに螺旋状に延びるように配置され得る。その効果は、蛇行状に延びる送電ラインの場合と実質的に同じである。
【0045】
たとえば、カニューレは、カニューレの壁に沿って螺旋状に延びるリング形状の補強要素または補強巻線などの補強構造を含み得、螺旋状に延びる送電ラインは、それらの補強巻線または補強要素に対して特定の関係で配置され得る。
【0046】
螺旋状に延びる送電ラインを含む第1の実施形態では、カニューレの縦軸に対する螺旋状に延びる送電ラインの角度方位は、補強巻線と送電ラインとが重なるように、1つ以上の螺旋状に延びる補強巻線の角度方位とは異なり得る。送電ラインが補強巻線の間に滑り込むことを避けるために、角度方位は、好ましくは、少なくとも5°、好ましくは少なくとも10°異なる。より好ましくは、送電ラインの角度方位は、補強巻線の角度方位と逆であり、たとえば、一方では+5°であり、他方では-10°であるか、または、一方では+20°であり、他方では-20°である。
【0047】
第2の実施形態では、螺旋状に延びる送電ラインを、1つ以上の螺旋状に延びる補強巻線の間に配置して、それらの間に入れ子にすることができる。複数の補強巻線が存在する場合、これらの巻線は互いに入れ子にすることができ、複数の螺旋状に延びる送電ラインが提供される場合、これらは、好ましくは、これら送電ラインのうち、ちょうど1つの送電ラインが、2つの補強巻線の間に配置されるように構成され得る。この構成は、螺旋状に延びる補強巻線のうちの複数、たとえば、2つまたは3つが、隣接する送電ラインの間に存在するようなものであり得る。好ましくは、2つから9つの螺旋状に延びる補強巻線が存在し得る。3つの送電ラインおよび9つの補強巻線がある場合、個々の送電ラインの間に、3つの補強巻線が配置され得る。その結果、より多くの補強巻線が存在するほど、カニューレの縦軸と、補強巻線の方位との間の角度が小さくなり、これは、補強巻線の幅に応じて、カニューレの周りの送電ラインの螺旋の回転数は、螺旋状に延びる補強巻線の数とともに減少することを意味する。したがって、螺旋状に延びる送電ラインの角度は、補強巻線の数および幅によって制御され得る。したがって、事前に決定された幅のフラットワイヤから、螺旋状に延びる補強巻線を作製することが好ましい。
【0048】
最も好ましくは、補強巻線は、ニチノールなどの形状記憶合金でできている。螺旋状に延びる補強巻線と、螺旋状に延びる送電ラインとの間に電気絶縁層を配置して、補強巻線を絶縁層の上に配置し、送電ラインを絶縁層の下に配置するか、またはその逆にすることが好ましい。このようにして、送電ラインは互いに、より具体的には、補強巻線に対して絶縁される。
【0049】
さらに別の代替実施形態では、1つ以上の送電ラインは、螺旋状に延びる補強巻線のそれぞれによって形成され得る。この場合も、補強巻線が互いに接触し、短絡することを防ぐために、隣接する補強巻線が、絶縁層の上下に交互に配置されるように、螺旋状に延びる補強巻線の間に電気絶縁層を配置することが好ましい。
【0050】
上記のすべての実施形態および代替案において、それらを保護するために、カニューレの壁の内側に送電ラインを配置することが好ましい。好ましくは、カニューレの壁は、第1のフォイルおよび第2のフォイルを備え、第2のフォイルは、第1のフォイルに結合され、第1のフォイルを覆う。前述の補強巻線などの少なくとも1つの補強部材が、好ましくは送電ラインとともに、第1のフォイルと第2のフォイルとの間に配置され得る。たとえば、第1および第2のフォイルは、ポリウレタンでできていてもよい。
【0051】
カニューレの近位端部および/または遠位端部に、プリント回路基板または単なる絶縁コーティングなどの1つ以上の電気コネクタを設けることができる。たとえば、カニューレの遠位端部に、または遠位端部の遠位にある電気コネクタが提供され、モータケーブルの各々を、撚りワイヤまたは単一のワイヤと接続するために使用され得る。したがって、撚りワイヤまたは単一のワイヤは送電ラインを形成し、上記の手法のうちの1つでカニューレに沿って敷設される。撚りワイヤは、撚りワイヤにおける1つの撚りワイヤが断線した場合でも導電性があるため、単一のワイヤよりも好ましい。好ましくは、供給ラインを介して到着する電気ケーブルの撚りワイヤは、カニューレを横切って延びる送電ラインを形成し得、その後、カニューレの遠位端部に設けられた電気コネクタを介して、駆動部の個々のモータケーブルに電気的に接続され得る。より好ましくは、撚りワイヤは、供給ラインから到着する電気ケーブルの撚りワイヤとは異なり得、カニューレを横切って延びる目的で、特定の必要条件に適合させることができる。この場合、特定の撚りワイヤ、または別の特定の単一のワイヤを、一方の端部を、モータケーブルに接続し、もう一方の端部を、供給ラインの電気ケーブルの撚りワイヤに接続するために、カニューレの両端部に電気コネクタが設けられる。最後に、1つ以上の電気コネクタは、カニューレの近位端部においてのみ、すなわち、モータケーブルが、1つ以上の屈曲可能な管を介して案内される上記の実施形態におけるように、モータケーブルがカニューレ全体を横切って延びる場合に提供され得る。
【0052】
上記のように、1つ以上のアンカは、ポンプデバイスを、患者の心臓の内部のポンプデバイスの位置を安定的に固定するように、たとえば、患者の大動脈壁にアンカ固定するために、ポンプデバイスの遠位端部に、すなわち、好ましくは駆動部に提供され得る。
【0053】
最も好ましくは、カニューレは、その縦軸に沿って最大180°曲げられたときに座屈しないように構成される。たとえば、カニューレが左心房から大動脈まで延び、それによって、左心室をブリッジするようになっている場合、事前に決定されたカニューレの曲率は、180°からそれほど離れていないが、カニューレは、患者の静脈を介して操作される場合、ほぼ縦方向に伸縮した構成をとる必要がある。
【0054】
一般に、血液ポンプは、長期使用で使用されるように構成され得、血液ポンプは、好ましくは、患者において少なくとも4週間、より好ましくは少なくとも6か月間作動するように構成される。
【0055】
前述の要約、ならびに好ましい実施形態の以下の詳細な説明は、添付の図面と併せて読むと、より良く理解されるであろう。本開示を例示する目的のために、図面を参照する。しかしながら、本開示の範囲は、図面に開示された特定の実施形態に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【
図1】第1の配置原理に従って、静脈血管系を介した血管内血液ポンプの配置を示す図である。
【
図2】第1の配置原理に従って、静脈血管系を介した血管内血液ポンプの配置を示す図である。
【
図3】第1の配置原理に従って、静脈血管系を介した血管内血液ポンプの配置を示す図である。
【
図4】第1の配置原理に従って、静脈血管系を介した血管内血液ポンプの配置を示す図である。
【
図5】第1の配置原理に従って、静脈血管系を介した血管内血液ポンプの配置を示す図である。
【
図6】第1の配置原理に従って、静脈血管系を介した血管内血液ポンプの配置を示す図である。
【
図7】第1の配置原理に従って、静脈血管系を介した血管内血液ポンプの配置を示す図である。
【
図8】第1の配置原理に従って、静脈血管系を介した血管内血液ポンプの配置を示す図である。
【
図9】第1の配置原理に従って、静脈血管系を介した血管内血液ポンプの配置を示す図である。
【
図10】第1の配置原理に従って、静脈血管系を介した血管内血液ポンプの配置を示す図である。
【
図11】第1の配置原理に従って、静脈血管系を介した血管内血液ポンプの配置を示す図である。
【
図12】第2の配置原理に従って、静脈血管系を介した血管内血液ポンプの導入を示す図である。
【
図13】第2の配置原理に従って、静脈血管系を介した血管内血液ポンプの導入を示す図である。
【
図14】第2の配置原理に従って、静脈血管系を介した血管内血液ポンプの導入を示す図である。
【
図15】第2の配置原理に従って、静脈血管系を介した血管内血液ポンプの導入を示す図である。
【
図16】第3の配置原理に従って、人間の心臓の頂点を介して左心室に導入される血管内血液ポンプを示す図である。
【
図17】第1の実施形態による血管内血液ポンプを示す図である。
【
図18】第2の実施形態による血管内血液ポンプを示す図である。
【
図19A】第3および第4の実施形態による血管内血液ポンプを示す図である。
【
図19B】第3および第4の実施形態による血管内血液ポンプを示す図である。
【
図19C】第3および第4の実施形態による血管内血液ポンプを示す図である。
【
図20】第5の実施形態による血管内血液ポンプを示す図である。
【
図21A】第6および第7の実施形態による血管内血液ポンプを示す図である。
【
図21B】第6および第7の実施形態による血管内血液ポンプを示す図である。
【
図22A】第8の実施形態による血管内血液ポンプを示す図である。
【
図22B】第8の実施形態による血管内血液ポンプを示す図である。
【
図22C】第8の実施形態による血管内血液ポンプを示す図である。
【
図23A】第9および第10の実施形態による血管内血液ポンプを示す図である。
【
図23B】第9および第10の実施形態による血管内血液ポンプを示す図である。
【
図23C】第9および第10の実施形態による血管内血液ポンプを示す図である。
【
図23D】第9および第10の実施形態による血管内血液ポンプを示す図である。
【
図24】アンカ固定構造に取り付けるための接続カテーテルの適切なグリッパとともに、ポンプデバイスの遠位端部に提供される異なるアンカ固定構造を示す図である。
【
図25】アンカ固定構造に取り付けるための接続カテーテルの適切なグリッパとともに、ポンプデバイスの遠位端部に提供される異なるアンカ固定構造を示す図である。
【
図26】アンカ固定構造に取り付けるための接続カテーテルの適切なグリッパとともに、ポンプデバイスの遠位端部に提供される異なるアンカ固定構造を示す図である。
【
図27】アンカ固定構造に取り付けるための接続カテーテルの適切なグリッパとともに、ポンプデバイスの遠位端部に提供される異なるアンカ固定構造を示す図である。
【
図28】アンカ固定構造に取り付けるための接続カテーテルの適切なグリッパとともに、ポンプデバイスの遠位端部に提供される異なるアンカ固定構造を示す図である。
【
図29】アンカ固定構造に取り付けるための接続カテーテルの適切なグリッパとともに、ポンプデバイスの遠位端部に提供される異なるアンカ固定構造を示す図である。
【
図30】アンカ固定構造に取り付けるための接続カテーテルの適切なグリッパとともに、ポンプデバイスの遠位端部に提供される異なるアンカ固定構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0057】
図1から
図16は、血管内血液ポンプを患者の心臓に配置するための様々な原理を示す。
図1は、左心室2、左心房3、右心室4、右心房5、および大動脈6の上部を露出している人間の心臓1の断面を示す。さらなる理解に関連するものは、鎖骨下動脈7、上大静脈8、下大静脈9、および大腿静脈10の位置、ならびに大動脈弁11、僧帽弁12、心房中隔13、および心室中隔14の位置である。参照番号15で指定されているものは、患者の皮膚である。
【0058】
動脈血管系は、左心房3、左心室2、大動脈6、および鎖骨下動脈7を備え、静脈血管系は、大腿静脈10、下大静脈9、上大静脈8、右心房5、および右心室4を備える。心房中隔13は、左心房3と右心房5とを隔離し、心室中隔14は、左心室2と右心室4とを隔離する。
【0059】
第1の配置原理によれば、静脈血管は、セルディンガー技法に従って、経皮的アクセス16Aによってアクセスされる。好ましくは、大腿静脈10にアクセスするが、代替的には、大腿静脈の代わりに(図示せず、上大静脈8につながる)鎖骨下静脈にアクセスすることができる。しかしながら、以下に説明されるプロセス、すなわち、第1のステップで、静脈系および心房中隔を介したガイドワイヤを、心臓の左側部分に配置するために、
図1に示すように、経中隔鞘17の先端を使用して、大腿静脈10にアクセスし、下部経皮的アクセス16Aを介して、経中隔鞘を、心房中隔13に向けて挿入し、心房中隔13を穿孔することが有利である。あるいは、別の針を使用して、中隔に穿孔することもできる。次に、
図2に示されるように、第1のガイドワイヤ20Aが、経中隔鞘17を介して、心臓の左側部分へ進められ、左心室2に達する。心臓の湾曲を含む人間の心室系内の自然な湾曲のために、経中隔鞘を進め、ワイヤを、心房中隔を介して、心臓の左側部分、特に左心室まで案内することは、下大静脈から来る場合、比較的容易である。しかしながら、第1の配置原理のさらなる手順ステップは、上大静脈から来ることを実行する方がより容易である。したがって、
図3に示すように、スネアカテーテル18は、上大静脈8に配置された隔鞘19を介して進められ、第1のガイドワイヤ20Aを引き上げる。隔鞘19は、血管内血液ポンプを血管系に導入するために後で使用され得る。隔鞘19およびスネアカテーテル18は、上大静脈アクセスを介して、鎖骨下静脈または腋窩静脈などの上大静脈の上の静脈に挿入され、上大静脈8を介して、下大静脈9における第1のガイドワイヤ20Aに向かって進められ得、スネアカテーテル18の端部に設けられた適切なグリップを用いて、第1のガイドワイヤ20Aを捕捉するために使用される。第1のガイドワイヤ20Aは、スネアカテーテル18を使って捕捉されると、
図3において矢印で一般的に示されるように、その後、隔鞘19に引き込まれ、第1のガイドワイヤ20Aの後端部20Arが、患者の体の外側に現れるまで、上部経皮的アクセス(図示せず)から出される。この目的のために、経中隔鞘17は、スネアカテーテル18が右心房の第1のガイドワイヤ20Aを把持できるように、短い距離だけ引き抜かれる。後端部20Arが、上部経皮的アクセス(図示せず)を介して引き出された後、経中隔鞘17は、患者の体から完全に引き抜かれ得る。
【0060】
次に、
図4に示されるように、示される実施形態ではPTAバルーンであるが、任意の種類のバルーンであり得るバルーンカテーテル22が、ガイドワイヤ20Aに沿って隔鞘19を介して、さらに心房中隔を介して案内され、拡張するように膨張され、それにより、心房中隔13を介する灌流を拡張する。心房中隔13を介する灌流が適切な大きさに増加されると、隔鞘19は、
図5に示されるように、左心房3に延びるように、PTAバルーン22上を進められる。
【0061】
その後、PTAバルーン22が引き抜かれ、示されている実施形態では、スワンガンツカテーテルであるが、ピグテールカテーテルなどの任意の適切なガイドカテーテルであり得る操作可能なカテーテル23を、代わりに挿入することができる。スワンガンツカテーテル23は、
図6に示されるように、左心室2に到達するまで、第1のガイドワイヤ20Aに沿って案内される。次に、第1のガイドワイヤ20Aを動脈経皮的アクセス16Bに案内するさらなる手順を支援するために、第2のガイドワイヤ20Bが、好ましくは、鎖骨下動脈7を介して左心室2に導入される。より具体的には、第2のガイドワイヤは、X線イメージングで見ることができる。その後、スワンガンツカテーテル23の遠位端部におけるバルーン23Aが膨張し、自然血流が、血管系を介して鎖骨下動脈7に至るまで、第1のガイドワイヤ20Aとのスワンガンツカテーテル23のさらなる動きをサポートすることとなる。第2のガイドワイヤ20Bの提供は、任意である。第2のガイドワイヤ20Bの代わりに、グリップを備えた接続カテーテルを使用して、第1のガイドワイヤ20Aの前端部20Afに取り付けることができる。しかしながら、接続カテーテルを使用して、第1のガイドワイヤ20Aの前端部20Afを捕捉する場合でも、患者の血管系を介して単にガイドワイヤを引っ張るのでは、患者の血管組織に害を及ぼす可能性があるので、スワンガンツカテーテルを使用して、押すことによって、第1のガイドワイヤ20Aをさらに進める。
【0062】
図8に示すように、第1のガイドワイヤ20Aの前端部20Afおよびスワンガンツカテーテルのバルーン23Aが、外科医に見えるようになると、接続カテーテル25を、第1のガイドワイヤ20Aの前端部20Afにしっかりと固定することができる。接続カテーテル25は、スネアカテーテル18と同じであり得る。その後、
図9に示すように、第1のガイドワイヤ20Aにしっかりと取り付けられた結合カテーテル25は、動脈経皮的アクセス16Bから、静脈側の上部経皮的アクセス(図示せず)に向かって反対方向に案内される。接続カテーテル25が進められている間、第1のガイドワイヤ20Aが引っ込められ、同時に、スワンガンツカテーテル23も引っ込められる。
図9は、スワンガンツカテーテル23の(その間収縮している)バルーン23Aが、第1のガイドワイヤ20Aの前端部20Afに取り付けられた接続カテーテル25の前端部25Aとともに、後方方向の隔鞘19に入った瞬間のそのような動きを示している。
【0063】
次に、
図10に示されるように、接続カテーテル25の前端部25Aは、隔鞘19を介して患者の体の外に到達するとき、ポンプデバイス30の遠位端部に取り付けられ、ポンプデバイス30が、大動脈弁11をブリッジするまで、ポンプデバイスを、隔鞘19を介して心臓の右側部分に、逆方向に案内するために使用される。ここに示す実施形態では、ポンプデバイス30の端部に柔らかいピグテール延長部が設けられ、接続カテーテル25の前端部25Aが、ピグテール延長部の遠位端部のループに取り付けられる。
【0064】
図10に示される位置に到達すると、接続カテーテル25が切断されて取り外される一方、
図11に示すように、心臓を介して左心室に延び、その中でループを形成する血液ポンプの供給カテーテル36は、左心室の心臓壁に接するようにさらに進められる。この構成では、供給カテーテル36は、ポンプデバイス30の位置をサポートし、その動作中にポンプデバイス30が左心室に移動するのを防ぐ。任意選択で、
図11に同様に示されるように、スパイク40が設けられ、ポンプデバイス30から延ばされ、ポンプデバイス30を大動脈6にアンカ固定することができる。
【0065】
第1のガイドワイヤ20Aが患者の血管系を介して、静脈側および動脈側の両方で患者の体から全体が延出する第1の原理による上記の配置方法は、任意選択で、以下に説明するように、変更することができる。第1の配置原理の第2のオプションによれば、
図1から
図8に関連して上記で説明したすべてのステップは、同じように実行され得る。しかしながら、
図12に示すように、第1のガイドワイヤ20Aの前端部20Afが、患者の血管系の動脈側の外に到達すると、スワンガンツカテーテル23は完全に引き抜かれ得る。次に、
図13に示されるように、管24が隔鞘19に挿入され、同様に、患者の体の外に達するまで、その前端部24Aを用いて、ガイドワイヤ20Aに沿ってさらに案内される。あるいは、管24は、血管系を介して反対方向に案内され得る。
【0066】
次に、
図14に示されるように、後端部20Arは、
図14に示されるように、ポンプデバイス30のピグテール41の端部において、ループ41Aを介して、隔鞘19に、さらに患者の体の外側の管24の前端部24Aの外に達するまで、管24の全体を介して供給される。したがって、端部20Afおよび端部20Arの両方は、患者の動脈側の管24から延出する。次に、
図15に示すように、第1のガイドワイヤ20Aの端部20Afおよび端部20Arの両方が、管24とともに引っ張られ、同時に、ポンプデバイス30は、患者の心臓内の所望の位置に到達するまで進められる。管24の直径は、ポンプデバイス30が血管系内に進められている間、その遠位端部において管24に接触するように選択される。したがって、ポンプデバイス30が、
図15に示される位置に到達すると、第1のガイドワイヤ20Aは、ピグテール延長部41のループ41Aから、(ここでは、図示されない)動脈経皮的アクセス16Bを介して供給停止され得、管24は、同じ動脈経皮的アクセス16Bを介して、患者の体から除去され得る。最後に、任意のスパイク40が、大動脈6の壁に延ばされると、
図11に示されるのと同じ最終配置が達成される。
【0067】
第2の配置原理による配置方法が
図16に示される。ここで、患者の心臓1は、患者の胸腔を介してアクセスされ、穿刺は、左心室2にアクセスするために心臓の頂端壁を介して作成される。この場合、ポンプ部32は、駆動部31と供給ライン36または供給カテーテルとの間に再び配置される。本明細書で後述する血管内血液ポンプは、この第3の配置原理に従って、患者の心臓内に配置するのに特に適している。より具体的には、ポンプ部30の血流入口33が左心室2に配置され、ポンプ部32の血流出口34が患者の大動脈6に配置されるように、ポンプデバイス32は、頂端壁の穿刺を介して進められる。供給ライン36は、頂端壁の穿刺を介して患者の体の外から延び、駆動部31は大動脈に配置される。したがって、
図1から
図5に示されるような第1の配置原理に関連して上記で説明されたすべての利点は、この第3の配置原理で同様に達成される。
【0068】
以下、第1および第2の配置原理に特に有用な好ましい血管内血液ポンプが、血管内血液ポンプの9つの異なる実施形態を示す
図17から
図23に関連して説明される。
【0069】
図17から
図23に示されるような血液ポンプは各々、ポンプ部30と、これらの実施形態では、供給カテーテルとして例示され、ポンプデバイス30の近位端部に通常の手法で取り付けられた供給ライン36とを含む。ポンプデバイスは、駆動部31およびポンプ部32を含み、ポンプ部32は、様々な入口ポートを有する血流入口33と、様々な出口ポートを有する血流出口34と、血流入口と血流出口との間に延びるカニューレ35とを含み、カニューレは、屈曲可能である。ポンプ部32は、駆動部31に配置されたモータによって駆動される、ここには示されていないインペラをさらに含み、インペラは、血流出口34の領域に配置され、血液を血流出口34から斜流に推進するように、軸方向および半径方向の構成要素を有する。重要なことに、すべての実施形態において、ポンプ部32は、供給ライン36と駆動部31との間に配置されている。
【0070】
図17に示される第1の実施形態では、電気コネクタ42が、血流出口34の隣のカニューレ35の遠位端部に設けられる。電気コネクタ42は、個々のモータケーブルが取り付けられているプリント回路基板であり、示されている例では、3つのケーブル、すなわち、外部導体、中性またはゼロ導体、および保護導体であり、まとめてモータケーブル43と呼ばれる。また、遠位電気コネクタ42に取り付けられているものは、対応する送電ライン44A、44B、および44Cであり、これらは、まとめて送電ライン44と呼ばれる。電気コネクタ42は、ポリウレタンなどの絶縁材料によって覆われている。示される実施形態では、送電ライン44は、供給カテーテル36を介してポンプデバイス30に到達する電気ケーブル45における対応する導体の延長部である。したがって、送電ライン44は、典型的には、撚りワイヤである。送電ライン44は、カニューレ35の縦軸に沿って、すなわちカニューレ35の中立屈曲面に沿って厳密に長手方向に延び、その結果、カニューレ35の屈曲時の送電ライン44の破裂が阻止される。それに加えて、適切な伸縮能力を備えた送電ライン44が選択され得る。電気ケーブル45の導体が十分に伸縮可能ではない場合、それらは、カニューレ35を横切って延びる送電ライン44を形成するために、より伸縮可能な撚りワイヤで置き換えることができる。このために、(ここに示されている)血流入口33の近位位置に、1つ以上の追加の電気コネクタが必要とされる。
【0071】
図18は、モータケーブル43が送電ライン44を形成し、カニューレ35の長さに沿ってポンプデバイス30の近位端部まで延びるという点で第1の実施形態とは異なる第2の実施形態を示し、個々のモータケーブル43A、43B、43Cの各々は、対応するプリント回路基板にはんだ付けされている。ここでは、モータケーブル43の破裂を回避するために2つの措置が講じられており、これらの措置は、個々に、または、ここにおけるように、ともに講じることができる。第1に、モータケーブル43は、管46を介して案内され、実施形態では、モータケーブル43ごとに1つの管46が示される。管46は屈曲可能であり、好ましくは、ポンプデバイスの操作性を妨げないように低い曲げ剛性を有する。さらに好ましくは、管46は弾性的に屈曲可能であり、すなわち、屈曲力が十分に減少すると、自動的に元の形状に戻る。第2に、モータケーブル43はたるみを持って配置され、たるみは、屈曲可能な管46が、カニューレ35とともに曲げられたときに、モータケーブル43が破裂することなく伸縮するのに十分である。
【0072】
図19Aおよび
図19Bは、カニューレ35の内部に中立屈曲面を作成するように、2つの屈曲可能な管46が、カニューレ35の反対側に配置されるという点で、第2の実施形態とは異なる、第3の実施形態を示す。
図17から
図23に示すように、ポンプデバイス30は、伸縮した構成で示され、弛緩状態で、湾曲した構成を想定し、
図19Aおよび
図19Bに示す実施形態の屈曲可能な管46は、好ましくは、カニューレ35の、事前に決定された中央湾曲面に沿って配置される。この場合、モータケーブル43に大きなたるみを与える必要は特にない。
図19Bに見られるように、第1の供給ライン44Aおよび第2の供給ライン44Bは、2つの屈曲可能な管46のうちの一方に配置され得、第3の供給ライン44Cは、光ファイバまたはガラスファイバ撚り線のような圧力ライン47とともに、2つの屈曲可能な管46のうちの他方に配置され得る。
【0073】
図19Cに示される第4の実施形態では、屈曲可能な管46は、等しい角距離でカニューレ35に沿って長手方向に配置されている。示される例では、屈曲可能な管46の間の角距離は120°である。たとえば、圧力ライン47のために、第4の屈曲可能な管46が提供される場合、角距離は90°になる。
【0074】
第5の実施形態が
図20に示される。ここで、送電ライン44は、厳密な軸方向には配置されていないが、カニューレ35の縦軸に沿って蛇行状に配置される。特に、送電ライン44が各々撚りワイヤで構成されている場合、ここでは、供給カテーテル36を介して到達する送電ライン45の導体の延長として表され、カニューレ35の屈曲による送電ライン44の破裂が、効果的に阻止される。あるいは、蛇行状に配置された送電ライン44は、個々のモータケーブル43などの単一のワイヤによって形成され得る。蛇行状に配置された送電ライン44の可撓性は、カニューレ35の壁に対する特定の間隔を置いた部分点でのみ送電ライン44を固定することによってさらに高めることができる。
【0075】
図21Aは、カニューレ35がカニューレ35の安定性を高めるための補強要素48を含む、血管内血液ポンプの第6の実施形態を示す。補強要素48は、
図21Aに示されるように、リング形状であり得るか、または
図21Bおよび
図21Cに示されるように、1つ以上の螺旋巻きによって形成され得る。同じまたは同様の補強材が、上記の実施形態のカニューレ35に同様に提供され得る。この実施形態にとって重要なことは、送電ライン44Aから44Cが、カニューレ35の縦軸に沿ってカニューレ35の周りに螺旋状に延びるという事実である。カニューレ35の縦軸に対して螺旋状に延びる送電ライン44Aから44Cの角度方位は、リング形状の補強要素48の角度方位とは異なる。
図21Aに示す特定の実施形態では、補強要素48は、螺旋状に延びる補強巻線48Aとして形成され、螺旋状に延びる送電ライン44Aから44Cの角度方位は、螺旋状に延びる補強巻線48Aの角度方位とは異なり、補強巻線48Aと送電ライン44とが重なるようになる。好ましくは、角度方位は、少なくとも5°、好ましくは少なくとも10°、
図21Bの例では約20°異なる。
【0076】
図21Cに示される第7の実施形態では、螺旋状に延びる送電ライン44の角度方位は、螺旋状に延びる補強巻線48Aの角度方位に対して逆であり、すなわち、円形方位と比較して、約+40°および-40°である。
【0077】
第8の実施形態は、
図22Aから
図22Cに示される。ここで、螺旋状に延びる送電ライン44Aから44Cは、螺旋状に延びる補強巻線48Aの間に配置され、その結果、送電ライン44の各々は、2つの送電ライン48Aの間に入れ子にされる。
図22Bに示す断面図から分かるように、螺旋状に延びる補強巻線48Aが全部で3つ存在し、補強巻線は、フラットワイヤでできており、好ましくはニチノールなどの形状記憶材料を備える。
図22Cに見られるように、血流入口33は、それぞれに沿って電力供給ライン44のうちの1つが敷設されている、それぞれの3つのブリッジによって分離された、3つの入口ポートを有する。
【0078】
図23Aから
図23Cは、よりさらに螺旋状に延びる補強巻線48Aを有する第9の実施形態を示す。全体として、6つの補強巻線48Aがカニューレ35に沿って配置され、送電ライン44Aから44Cは、常に2つの補強巻線48Aが、隣接する送電ライン44間に配置されるように、隣接する送電ライン44間に個々に配置される。
【0079】
図23Cは、カニューレ35の壁を介した断面を示す。電気絶縁層49は、補強巻線48Aが絶縁層の下に配置され、送電ライン44Aから44Cが絶縁層49の上に配置されるように、補強巻線48Aと、送電ライン44Aから44Cとの間に配置される。それに加えて、壁は、カニューレ35の壁の外層および内層を形成する2つのフォイル50、51を備えることが理解される。補強部材48または補強巻線48Aは、これらのフォイルの間に、適用可能な場合、
図23Aから
図23Cに示される実施形態の場合のように、送電ライン44とともに配置される。
【0080】
隣接する送電ライン44の間に3つの補強巻線48Aが配置されている第10の実施形態が、
図23Dに示される。したがって、この実施形態では、全部で9つの補強巻線48Aが存在する。
【0081】
あるいは、補強巻線48Aは、カニューレ35に沿って延びる送電ライン44を形成することができ、絶縁層49を使用して、それらを互いに隔離することができる。
【0082】
図24から
図30に関して、接続カテーテル25を、ポンプデバイス30の対応するアンカ固定構造に取り付けるための好ましいアンカ固定構造および好ましいグリップが説明される。これらのアンカ固定構造および接続カテーテルは、血液ポンプを、静脈血管系から、心房中隔を介して、左心室および大動脈まで案内するために、第1の配置原理による上記の配置方法において有用である。
【0083】
したがって、
図24Aは、ポンプデバイス30の駆動部31のハウジングであり得る、ポンプデバイスの遠位端部30Aを示す。ループ60は、遠位端部30Aに提供され、ポリマー隔鞘内のワイヤからなり得る。
図24Bは、接続カテーテル25がループ60にどのように取り付けられるかを示す。したがって、旋回可能なグリップ26A、26Bは、ループ60に到達し、ばね要素27は、2つのグリップ26A、26Bをともに押し、グリップ26A、26Bを閉じた状態に保持する。グリップ26A、26Bが接続カテーテル25内に引っ込められると、グリップ26A、26Bは、開くことを阻止される。この位置では、ポンプデバイス30は、患者の血管系を介して安全に案内される。
図24Cでは、接続カテーテル25は、グリップ26A、26Bではなくフック28を含み、フック28は、ポンプデバイス30の遠位端部30Aにおいてループ60に引っ掛かる。フックがカテーテル25の前端部25Aにおいて引き出されると、ループ60は、フック28から緩むことを安全に阻止される。
【0084】
図25Aおよび
図25Bは、ループ60がポンプデバイス30のハウジングの遠位端部ではなく、ポンプデバイスの遠位端部30Aを形成するピグテール41の遠位端部43Aにおいて提供されるという点でのみ、上記の実施形態とは異なる同様の実施形態を示す。
【0085】
したがって、導入器セットは、ポンプデバイス30の遠位端部30Aにアンカ固定構造を有する血管内血液ポンプと、アンカ固定構造に接続するように適合された接続カテーテル25とを備え得る。
【0086】
図26Aから
図26Cは、ポンプデバイス30の遠位端部30Aにおいてループ60を有する異なる実施形態を示す。ここで、ループ60は、ポンプデバイス30のハウジング内に一体的に形成される。
【0087】
図24から
図26に示される実施形態は、
図9から
図11に関連して説明したように、第1の原理の第1のオプションによる配置方法に関する一方、
図27は、
図12から
図15に関連して説明されるように、第1の配置原理に従って血液ポンプを配置する第2のオプションと関連して、同じアンカ固定構造をどのように使用できるかを示す。したがって、第1のガイドワイヤ20Aは、ループ60を介して供給され得、さらに、端部20Arおよび端部20Afの両方が、隔鞘24を介して供給され得る。次に、血管系を介して血液ポンプを案内するために、端部20Arおよび端部20Afをグリッパ80で把持することができる。
【0088】
図28Aは、ループ60ではなく、ピグテール41の端部41Aにおけるネックヘッド構造を示す。したがって、接続カテーテル25のグリップ26A、26Bは、ネックヘッド構造の周りを閉じるように相補的な表面を有する。より具体的には、ネックヘッド構造は、ヘッド70およびネック71と、ヘッド70とネック71との間の接続面72とを含む。接続面72は、ピグテール41の縦軸に対して90°傾斜している。グリップ26A、26B上の対応する協調面26Cは、同様に、接続カテーテル25の縦軸に対して90°傾斜している。
図28Cは、2つの表面72、26Cがどのように協調するかを示している。2つの表面72、26Cの間に作用する任意の力は、厳密に軸方向であり、これにより接続が改善される。
【0089】
図29は、同様の設計を示している。しかしながら、ここでは、接続カテーテル25が取り外された後の、患者の血管系における組織への損傷を防ぐために、ヘッド70は、ポンプデバイス30の遠位端部30Aにおけるくぼみに配置される。
【0090】
図30は、再びネックヘッド構造を示す。しかしながら、この実施形態では、協調面26C、72は、それぞれの縦軸に対して90°を超えて傾斜しているので、各面はそれぞれ、ヘッドおよびグリップに対してアンダーカットを形成する。このグリッパ構造は、
図30における2つの矢印によって示されるように、ヘッド70およびグリッパ26A、26Bが、反対側の軸方向に移動されるときに自己増強する。
【0091】
したがって、第1の配置原理に従って患者に血管内血液ポンプを正確に配置するためのキットは、以下のツール、すなわち、
- 穿刺先端または別個の穿刺針および拡張器を含み得る経中隔鞘17と、
- 第1のガイドワイヤ20Aと、
- 第2のガイドワイヤ20Bと、
- 導入器隔鞘19と、
- スネアカテーテル18と、
- PTAバルーンカテーテルなどの中隔を延ばすためのバルーンカテーテル22と、
- スワンガンツカテーテルなどの操作可能なカテーテル23と、
- (
図1から
図11に関連して説明された第1の配置原理の第1のオプションによる)接続カテーテル25、または(
図1から
図8および
図12から
図15に関連して説明された第1の配置原理の第2のオプションによる)管24のいずれかとを備え得る。
【国際調査報告】