(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-03
(54)【発明の名称】高フランジ性、超高強度、延性を有する熱間圧延鋼、当該熱間圧延鋼を製造する方法及びその用途
(51)【国際特許分類】
C22C 38/00 20060101AFI20230327BHJP
C22C 38/58 20060101ALI20230327BHJP
C22C 21/02 20060101ALI20230327BHJP
C22C 18/00 20060101ALI20230327BHJP
C22C 18/04 20060101ALI20230327BHJP
C21D 9/46 20060101ALI20230327BHJP
C21D 8/02 20060101ALI20230327BHJP
【FI】
C22C38/00 301W
C22C38/00 301A
C22C38/58
C22C21/02
C22C18/00
C22C18/04
C21D9/46 T
C21D9/46 U
C21D8/02 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022548808
(86)(22)【出願日】2021-02-11
(85)【翻訳文提出日】2022-10-11
(86)【国際出願番号】 EP2021053290
(87)【国際公開番号】W WO2021160721
(87)【国際公開日】2021-08-19
(32)【優先日】2020-02-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500252006
【氏名又は名称】タタ、スティール、アイモイデン、ベスローテン、フェンノートシャップ
【氏名又は名称原語表記】TATA STEEL IJMUIDEN BV
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100172557
【氏名又は名称】鈴木 啓靖
(72)【発明者】
【氏名】ラダカンタ、ラナ
【テーマコード(参考)】
4K032
4K037
【Fターム(参考)】
4K032AA01
4K032AA02
4K032AA05
4K032AA11
4K032AA12
4K032AA14
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4K032CE01
4K037EA01
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4K037EA06
4K037EA11
4K037EA13
4K037EA15
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4K037EB05
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4K037FD03
4K037FD04
4K037FD05
4K037FD06
4K037FE01
4K037GA05
4K037GA08
4K037JA06
(57)【要約】
本発明は、超高強度レベルにおいて高フランジ性を有し、高い全伸び、曲げ性及び靭性値を有する熱間圧延(HR)ストリップ鋼、並びに当該熱間圧延鋼を製造する方法及びその使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量%で、
C:0.10~0.30;
Si:0.50~1.50;
Al:0.010~1.00;
Mn:1.00~3.00;
場合により、以下の合金元素:
V:0.10未満
Nb:0.10未満
Ti:0.10未満
Mo:0.50未満
Cr:1.50未満
Cu:1.00未満
Ni:0.50未満
B:0.0030(30ppm)未満
のうちの1種又は2種以上;
不可避的に含まれる以下の元素:
N:0.0100(100ppm)未満
S:0.005未満
P:0.020未満
を含み、残部がFeと製鉄及び製鋼プロセスから生じるその他の不可避不純物とであり、(Si+Al)が0.80~2.50である、超高強度、優れた延性及び優れたフランジ性を有する熱間圧延鋼ストリップであって、
前記熱間圧延鋼ストリップが、
降伏強度:少なくとも1100MPa、
最大引張強度:少なくとも1200MPa、
降伏比:少なくとも0.85、
全伸び:少なくとも6.0%、
穴広げ率:少なくとも30%、及び、
厚み1mmにおける曲げ角度:少なくとも70°
を有し、
前記熱間圧延鋼ストリップのミクロ組織が、
焼戻しマルテンサイト:40~85体積%、
フレッシュマルテンサイト:60~15体積%、
残留オーステナイト:1体積%未満、及び、
セメンタイト又はその他の炭化物:実質的に存在しない
からなる、前記熱間圧延鋼ストリップ。
【請求項2】
前記熱間圧延鋼ストリップが、重量%で、
Al:0.030~1.00
を含む、請求項1に記載の熱間圧延鋼ストリップ。
【請求項3】
前記熱間圧延鋼ストリップが、
降伏強度:少なくとも1100MPa、
最大引張強度:少なくとも1200MPa、
降伏比:少なくとも0.85、
全伸び:少なくとも8.5%、
穴広げ率:少なくとも50%、
厚み1mmにおける曲げ角度:少なくとも80°、
-40℃におけるシャルピー衝撃靱性:少なくとも40J、及び、
室温におけるシャルピー衝撃靱性:少なくとも100J
を有し、
前記熱間圧延鋼ストリップのミクロ組織が、
焼戻しマルテンサイト:40~85体積%、
フレッシュマルテンサイト:60~15体積%、
残留オーステナイト:1体積%未満、及び、
セメンタイト又はその他の炭化物:実質的に存在しない
からなる、請求項1又は2に記載の熱間圧延鋼ストリップ。
【請求項4】
前記熱間圧延鋼ストリップが、重量%で、以下の量の元素:
V:0.010~0.10;
Nb:0.010~0.10;
Ti:0.010~0.10;
Mo:0.050~0.50;
Cr:0.10~1.50;
Cu:0.030~1.00;
Ni:0.020~0.50;
N:0.0005~0.0100;
S:最大で0.002
のうちの1種又は2種以上を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の熱間圧延鋼ストリップ。
【請求項5】
前記ミクロ組織が、少なくとも55体積%の焼戻しマルテンサイトと、最大で45体積%のフレッシュマルテンサイトとからなる、請求項1~4のいずれか一項に記載の熱間圧延鋼ストリップ。
【請求項6】
前記熱間圧延鋼ストリップが、少なくとも1.65重量%及び最大で2.50重量%のMnを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の熱間圧延鋼ストリップ。
【請求項7】
Al及びSiの合計が、少なくとも1.00重量%である、請求項1~6のいずれか一項に記載の熱間圧延鋼ストリップ。
【請求項8】
溶融めっきによって得られる金属コーティング層、例えば、Zn層又はZn系合金層又はAl系合金層が設けられている、請求項1~7のいずれか一項に記載の熱間圧延鋼ストリップ。
【請求項9】
前記亜鉛合金コーティング層が、0.3~4.0重量%のMgと、0.05~6.0重量%、好ましくは0.1~5.0重量%のAlと、場合により、最大で0.2重量%の1種又は2種以上の追加元素と、不可避的不純物と、残部の亜鉛とからなる、請求項8に記載の熱間圧延鋼ストリップ。
【請求項10】
超高強度、優れた延性及び優れたフランジ性を有する熱間圧延鋼ストリップを製造する方法であって、
前記方法が、以下の工程:
重量%で、
C:0.10~0.30;
Si:0.50~1.50;
Al:0.030~1.00;
Mn:1.00~3.00;
場合により、以下の合金元素:
V:0.10未満
Nb:0.10未満
Ti:0.10未満
Mo:0.50未満
Cr:1.50未満
Cu:1.00未満
Ni:0.50未満
B:0.0030(30ppm)未満
のうちの1種又は2種以上;
不可避的に含まれる以下の元素:
N:0.0100(100ppm)未満
S:0.005未満
P:0.020未満
を含み、残部がFeと製鉄及び製鋼プロセスから生じるその他の不可避不純物とであり、(Si+Al)が0.80~2.50である組成を有する厚い又は薄いスラブに、溶融鋼を鋳造する工程;
前記スラブを、好ましくは1100℃以上で、好ましくは30分間以上、加熱又は再加熱する工程;
前記スラブを熱間圧延ストリップに、
前記厚いスラブを中間ゲージ、通常、35~45mmに粗圧延して、鋳放しの構造体をブレークダウンし、次いで、熱間圧延ストリップに仕上げ熱間圧延することにより、或いは、
前記薄いスラブを熱間圧延ストリップに直接圧延によって熱間圧延することにより、
熱間圧延する工程、ここで、仕上げ熱間圧延温度(FRT)は、前記鋼のAr3温度より高く、Ar3は、冷却中にオーステナイトからフェライトへの変態が開始する温度であり;
ランアウトテーブル上で20℃/秒を超える冷却速度で前記熱間圧延ストリップを加速冷却する工程;
次いで、前記冷却した熱間圧延鋼ストリップを(Ms-50)℃~(Ms-160)℃の温度で巻き取る工程、ここで、Msは、鋼のマルテンサイト開始温度であり;
前記巻き取った熱間圧延ストリップを周囲温度までさらに冷却する工程;
前記熱間圧延鋼ストリップを酸洗いする工程
を含む、前記方法。
【請求項11】
前記スラブが、重量%で、以下の量の元素:
V:0.010~0.10;
Nb:0.010~0.10;
Ti:0.010~0.10;
Mo:0.050~0.50;
Cr:0.10~1.50;
Cu:0.030~1.00;
Ni:0.020~0.50;
N:0.0005~0.0100
のうちの1種又は2種以上を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
ミクロ組織が、少なくとも55体積%の焼戻しマルテンサイトと、最大で45体積%のフレッシュマルテンサイトとからなる、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
前記鋼が、少なくとも1.65重量%及び最大で2.50重量%のMnを含み、且つ/或いは、Al及びSiの合計が、少なくとも1.00重量%である、請求項10~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
溶融めっきによって得られる金属コーティング層、例えば、Zn層又はZn系合金層又はAl系合金層が設けられる、請求項10~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記亜鉛合金コーティング層が、0.3~4.0重量%のMgと、0.05~6.0重量%、好ましくは0.1~5.0重量%のAlと、場合により、最大で0.2重量%の1種又は2種以上の追加元素と、不可避的不純物と、残部の亜鉛とからなる、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
請求項1~9のいずれか一項に記載の熱間圧延鋼の、輸送機関用の部品又は工学用途の部品のための使用。
【請求項17】
車両のシャシー若しくはサスペンション部品(例えば、下部コントロールアーム)、フレームレール、バンパービーム、バッテリーボックス、大型トラックのフレーム、又はクレーンブームのための請求項16に記載の熱間圧延鋼の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超高強度レベルにおいて高フランジ性を有し、高い全伸び、曲げ性及び靭性値を有する熱間圧延(HR)ストリップ鋼、並びに当該熱間圧延鋼を製造する方法及びその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
熱間圧延(HR)鋼の強度が上がると、成形性が低下することはよく知られている。輸送機関及び自動車用途におけるHR鋼の主な適用分野は、シャシー及びサスペンション(C&S)、例えば、下部コントロールアームである。その他の分野は、トラックのフレームレール、バンパービーム、又は電気自動車用のバッテリーボックスである。これらの用途に使用されるHR鋼の標準的な厚みは4.5mm未満である。より厚いゲージのHRストリップ鋼、例えば、最大12mmのHRストリップ鋼は、工学用途、例えば、クレーンブーム又は大型トラックのフレームのための輸送機関用途に使用され得る。
【0003】
軽量化の観点からは、鋼ストリップのゲージを減らすことができるようにするために、上記の用途に高強度の鋼を使用することが不可欠である。したがって、通常1000MPaを超える最大引張強度(Rm)を有する超高強度鋼(UHSS)がこの目的に有用である。
【0004】
HR鋼のこれらの用途では、両立が難しい機械的特性が要求される。高強度に加えて、鋼はまた、冷間成形によってコンポーネントを作製するために良好な成形性も有する必要があり、これは、冷間成形が熱間成形と比較してエネルギー効率の高い製造ルートであるためである。さらに、優れた衝撃靭性又はエネルギー吸収能力もまた、バンパービーム、バッテリー筐体、クレーンブーム又はフレームレール等の用途に必要である。コンポーネントを組み立てるためには、鋼の低炭素当量を典型的に特徴とする良好な溶接性も必要である。
【0005】
しかしながら、鋼の引張強度が増加するにつれて、成形性パラメータは減少する。成形性は、鋼板に対する一般的な用語であり、これは、いくつかの機械的操作、例えば、延伸、曲げ、絞り及びフランジ加工中の材料の挙動の組み合わせと評価される。コンポーネントの形状に応じて、材料の任意の特質又は2若しくは3以上の特質の組み合わせが、板金成形時に重要になる。一般的な自動車のC&S部品には、伸びフランジ性(stretch-flangeability)もまた重要である。このタイプの成形性には、高い穴広げ性能(HEC)及び良好な全伸びが必要である。通常、ロール成形加工で製造されるフレームレール、バンパービーム又はバッテリー筐体を作成するには、曲げ加工性が重要である。クレーンブームの製造はまた、良好なHEC、曲げ性及び伸びも必要である。
【0006】
超高強度レベルの鋼において、高い成形性及び高い衝撃靭性値を達成することは困難である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、高いフランジ性、良好な伸び、曲げ性及び衝撃靭性と組み合わされた超高強度を有する熱間圧延鋼ストリップを提供することである。
【0008】
本発明の目的はまた、優れた溶接性を有する熱間圧延鋼ストリップを提供することである。
【0009】
本発明の目的はまた、そのような鋼を製造する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
目的の1又は2以上は、請求項1に記載の熱間圧延鋼によって達成される。好ましい実施形態は、従属請求項のいずれかに記載されている。
【0011】
第2の態様によれば、本発明はまた、本発明による鋼を製造するための請求項10に記載の方法において具体化される。
【0012】
第3の態様によれば、本発明はまた、輸送用の部品又は工学用途の部品の製造のための熱間圧延鋼の使用において具体化される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本発明の熱機械的処理を示す概略図である。
【
図2】
図2は、厚い鋳造スラブを処理するための熱間圧延機(
図2a)及び直接圧延機を備えた薄いスラブ鋳造設備(
図2b)を示す概略図である。
【
図3】
図3は、曲げサンプルの形状及び定義を示す図である。
【
図4】
図4は、シャルピーサンプルの形状及び定義を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明による鋼は、必須元素として炭素、ケイ素、アルミニウム及びマンガンを含む。鋼中のこれらの合金元素の含有量の範囲は、重量%で、
C:0.10~0.30;
Si:0.50~1.50;
Al:0.010~1.00;
Mn:1.00~3.00;
場合により、以下の合金元素:
V:0.10未満
Nb:0.10未満
Ti:0.10未満
Mo:0.50未満
Cr:1.50未満
Cu:1.00未満
Ni:0.50未満
B:0.0030(30ppm)未満
のうちの1種又は2種以上;
不可避的に含まれる以下の元素:
N:0.0100(100ppm)未満
S:0.005未満
P:0.020未満
を含み、残部がFeと製鉄及び製鋼プロセスから生じるその他の不可避不純物とであり、(Si+Al)が0.80以下である。別段の指示がない限り、すべての組成パーセンテージは重量%であることに留意すべきである。
【0015】
炭素は鋼中に0.10~0.30%、好ましくは0.10~0.26%、より好ましくは0.10~0.23%の量で存在する。炭素は、鉄において強い固溶硬化を引き起こし、主に強度及び焼入れ性の観点で添加される。炭素は、熱間圧延後のランアウトテーブル冷却中に、オーステナイトが臨界冷却速度(20℃/秒)超でフェライト及び/又はパーライトに変化しないことを保証する。Cが0.10%未満であると、所望のRmレベル1000MPa以上、好ましくは1200MPa以上が得られず、Cが0.30%を超えると、成形部品の溶接性が不良になる可能性がある。低炭素当量値により溶接性もまた向上する。炭素の適切な最小値は0.16%である。
【0016】
ケイ素は、鉄の格子において置換型の固溶強化により強度を高めるために1.50%以下で添加される。鋼中のSiのその他の重要な効果は、Siが炭化物(セメンタイト及びその他の炭化物)の析出を遅らせることである。その結果、焼戻しに供された際にマルテンサイト相はそのマトリックス中に悪影響を及ぼす鉄炭化物を形成しない。Siが0.50%未満では、強化効果及び炭化物形成の抑制効果が不十分であり、意図した効果が得られない。一方で、Siが1.50%を超えると、鋼の熱機械的処理(スラブの再加熱、熱間圧延、巻き取り等)中に過剰な酸化物が形成される可能性がある。これらの酸化物スケールは、熱間圧延、酸洗、コーティング及び全体的な表面外観に悪影響を及ぼす。さらに、Si含有量が1.50%を超えて、熱間圧延中の圧延力が増大し、鋼が脆くなり、鋼を熱間圧延することが非常に困難なレベルになる。したがって、本発明によるSiの量は、典型的には0.50%~1.50%であり、好ましくは0.60%~1.30%、より好ましくは0.70%~1.10%である。
【0017】
アルミニウムは、本発明による鋼中のSiに相当する挙動を示す。意図的に添加すると、鋼の固溶体強化元素として機能する。マルテンサイトの焼戻し中の炭化物析出速度もまた遅くなる。Alが0.030%未満の場合には、強化効果及び炭化物形成の抑制効果は無視することができる。0.030%未満のアルミニウムの値は、製鋼中の脱酸工程からの残留物であるとみなされる。したがって、0.030%の最小値が好ましい。一方で、Alが1.00%を超えると、鋼の熱機械的処理(スラブ再加熱、熱間圧延、巻き取り等)中に過剰な酸化物が形成される可能性がある。Alはまた、フェライトからオーステナイトへの変態温度を上昇させ、鋼をオーステナイト相で仕上げ熱間圧延するために高温で熱間圧延する必要性を要求する。これは、低温では変態区間フェライト(intercritical ferrite)が出現するためである。より高い温度では、より多量の酸化物が発生する可能性がある。これらの酸化物スケールは、熱間圧延、酸洗い、コーティング及び全体的な表面外観に悪影響を及ぼす。Siの存在と組み合わせてAlが1.00%を超えると、熱間圧延中の圧延力もまた、鋼を非常に脆くし、熱間圧延を困難にするようなレベルまで増加する。さらに、1.00%を超えるAl含有量は、連続冷却時のフェライト形成にかかるインキュベーション時間を短縮することにより、ランアウトテーブルでの冷却時にフェライト形成を促進し得る。フェライトは、フレッシュマルテンサイト及び焼戻しマルテンサイトとの脆い界面を導入するため、本発明にとって悪影響を及ぼす相である。これらの界面は、鋼の成形性、伸び及び衝撃靭性を低下させる変形による損傷開始(damage initiation)の核生成部位として機能する。したがって、本発明におけるAlは、0.010~1.00%、好ましくは0.030~1.00%、好ましくは0.20~0.80%、より好ましくは0.30~0.80%で存在する。
【0018】
Si又はAlは別個に、マルテンサイト焼戻し時の固溶強化及び炭化物析出抑制の効果を示すが、両元素が存在する場合には、これらの元素の相乗効果はまた、別個の効果と同様である。したがって、本発明における(Si+Al)の合計含有量は、所望の炭化物抑制効果及び所望の強度レベルを達成するために、少なくとも0.80%、好ましくは少なくとも1.00%である必要がある。Al及びSiのいずれもが存在する場合には、特に熱間圧延、酸洗い及びコーティング中に鋼の処理を容易にするいくつかの利点が存在し得る。SiとともにいくらかのAlが存在すると、高温処理時にスケール中の酸化物特性が変化する。これにより、熱間圧延後のスケールの酸洗いが容易になる。
【0019】
下に記載するように、本発明において、巻き取り段階で熱間圧延鋼に形成される初期マルテンサイトがコイル冷却中に調質される。Si及びAlの別個の効果又は相乗効果による、鋼のこの自己焼戻し(コイル冷却)中の炭化物形成の抑制は、本発明にとって重要である。その結果、マルテンサイトは、炭化物を形成することなく転位密度のみを減少させる。炭化物は鋼の伸び、成形性及び衝撃靭性に悪影響を及ぼす。これは、それらが本質的に脆く、変形時に損傷開始の核生成部位として機能するためである。
【0020】
マンガンは、1.00~3.00%の量で存在する。Mnの主な効果は、強度及び靭性を高めることである。1.00重量%未満のレベルにおいて、目的の効果は得られないが、3.00%を超える量において、鋳造における問題及び偏析が生じる。鋼における変形メカニズムもまた、Mnによる室温までのオーステナイト安定化により、変態誘起塑性(TRIP)に変化する可能性がある。これは、製品で目的とするすべての機械的特性(すなわち、衝撃靭性、成形性、強度)の良好な組み合わせを達成するのに役立たない。好ましくは、Mn含有量は、1.20~2.70%である。一実施形態において、Mn含有量は1.40~2.60%、好ましくは1.50~2.50%、より好ましくは1.60~2.50%である。一実施形態において、Mnの適切な最小量は1.65%であり、Mnの適切な最大量は1.95%である。
【0021】
本発明の鋼における必須の合金元素(すなわち、C、Si、Al及びMn)の上記の効果とは別に、これらの合金元素の別の総合的な効果は、鋼の焼入れ性を高めることである。それらは、オーステナイト化後の冷却中にパーライト相又はフェライト相の形成を回避するのに役立つ。この特徴により、鋼は、熱間圧延後且つ巻き取り前のランアウトテーブル冷却中に、特定の冷却速度を超えてこれらの相を回避可能である。これらのより軟らかい(フェライト)相と不均一な(パーライト)相の存在は、最終製品で良好な機械的特性及び成形性を得るのに悪影響を及ぼす。この理由は、それらがミクロ組織内に脆い非整合界面を促進するためである。
【0022】
群V、Nb、Ti及びMoから選択される1種又は2種以上のマイクロ合金化元素が任意に存在する。これらのマイクロ合金元素は、炭化物、窒化物又は炭窒化物による析出硬化によって強度を高める。これらはまた、鋼の溶接性も向上させる。
【0023】
本発明の別の任意元素であるクロムもまた、鋼の焼入れ性を高める。
【0024】
銅が存在する場合、固溶体強化と銅析出物による析出硬化との両方によって鋼の強度が増加する。ニッケルは衝撃靭性を高め、銅の存在により鋼の熱間加工中に発生する可能性のある熱間脆性に対抗する。
【0025】
合金元素として存在する場合、これらの任意の合金元素の好ましい添加物は、重量%で、
V:0.010~0.10;
Nb:0.010~0.10;
Ti:0.010~0.10;
Mo:0.050~0.50;
Cr:0.10~1.50;
Cu:0.030~1.00;
Ni:0.020~0.50
である。
【0026】
窒素、硫黄及びリンは、製鋼及び精錬プロセスの結果として鋼中に存在する残留元素である。それらの量は、0.005%未満のS及び0.020%未満のP及び0.0100%未満のNに制限される。これらより多い量は、機械的特性、成形性及び溶接性に悪影響を及ぼす。好ましくは、Sは0.002%未満であり、Nは0.0005~0.0100%である。指定された範囲の窒素は、Cと同様の効果をもたらし、マイクロ合金元素の炭窒化物を形成することによって強度に寄与する。
【0027】
任意の合金元素並びに窒素、硫黄及びリン元素は、指定された範囲内で互いに独立して変更可能である。これらは、本発明による鋼において、相乗効果ではなく、相加効果を有することが見出された。
【0028】
第2の態様によれば、本発明はまた、最終製品において所望のミクロ組織を達成する熱間圧延ストリップの製造方法において具体化される。したがって、本発明による方法は、上述の化学的性質を有する熱間圧延鋼を製造する方法である。
【0029】
鋼を製造する方法は、以下の工程:
溶融鋼をスラブに鋳造する工程;
スラブを、好ましくは1100℃以上の温度で、好ましくは30分以上の時間、再加熱する工程;
中間ゲージにスラブを、通常、35~45mmに粗圧延して、鋳放しの構造体をブレークダウンする工程;
鋼をストリップに熱間圧延する、好ましくは鋼のAr3温度より高い仕上げ熱間圧延温度(FRT)で鋼をストリップに熱間圧延する工程、ここで、Ar3は、冷却中にオーステナイトからフェライトへの変態が開始する温度であり;
ランアウトテーブル上で20℃/秒を超える冷却速度で熱間圧延ストリップを加速冷却する工程;
冷却した熱間圧延鋼ストリップを(Ms-50)℃~(Ms-160)℃の温度で巻き取る工程、ここで、Msは、鋼のマルテンサイト開始温度(℃)であり;
鋼を室温までコイル冷却する工程;
熱間圧延鋼ストリップを酸洗いする工程;
場合により、熱間圧延ストリップをZnコーティング又はZn系合金コーティング又はAl系合金コーティング又は任意のその他のコーティングでコーティングする工程
を含む。
【0030】
誤解を避けるために記載すると、Msは℃で表されている。好ましくは、FRTはAr3+50℃超である。
図1に、熱間圧延及び室温までの冷却処理の概略図を、概略的な連続冷却変態(CCT)図に重ねて示す。室温は約20℃と定義される。特に本発明による熱間圧延プロセスが厚いスラブに基づく従来の熱間圧延機で実施される場合、再加熱は好ましくは60分以上の時間実施される。
【0031】
本発明は鋳造方法によって限定されない。鋼は、鋳造厚みが150~350mm、典型的には225~250mmである従来の厚いスラブとして鋳造され得、鋳造厚みが50~150mmである薄いスラブとして直接ストリップ工場で(in direct strip plant)鋳造され得る。従来の熱間圧延機を含むプロセス及び薄いスラブの鋳造/直接圧延機を含むプロセスの概略例をそれぞれ
図2a及び2bに示す。従来の厚いスラブの鋳造の場合には、スラブの再加熱が必要であり、スラブを周囲温度から再加熱し(通常、厚い鋳造スラブはスラブヤードで鋳造温度から周囲温度まで冷却されている)、組成に関してスラブを均質化する。したがって、マイクロ合金元素が存在する場合には沈殿物を溶解させ、仕上げ圧延機における仕上げ熱間圧延が、FRT>Ar3において依然として実行され得るような温度をスラブにもたらすためにも、再加熱温度はまた1100℃を超える必要がある。多くの場合、これには1150~約1250℃の(スラブ)再加熱温度が必要である。薄いスラブ鋳造の場合には、鋳造スラブは、薄いスラブを鋳造した直後に均質化炉において均質化処理に供され、ここで、均質化温度は1100℃超である必要があり、通常は約1125~1150℃である。これにより、マイクロ合金元素が存在する場合に析出物が形成されるのを防止し、さらに、仕上げ圧延機における仕上げ熱間圧延をFRT>Ar3において依然として実行され得るような温度を薄いスラブにもたらす。本発明によれば、薄いスラブの鋳造ルートの再加熱又は均質化時間は、好ましくは30分以上である。
【0032】
最終的なミクロ組織にフェライトが存在しないようにするために、オーステナイト相で鋼の熱間圧延を実行する必要がある。オーステナイト相における熱間圧延の別の目的は、熱間圧延力を低減することであり、したがって、仕上げ圧延温度(FRT)は、鋼のAr3よりも少なくとも50℃高い温度に維持することが好ましい。
【0033】
熱間圧延後、鋼ストリップはランアウトテーブルで冷却される。ここでの要件は、臨界冷却速度よりも高い速度で鋼を冷却して、オーステナイトからの望ましくない相変態を回避することである。特にフェライト及びパーライトは、最終製品の機械的特性及び成形性に悪影響を及ぼすため、生成されてならない。したがって、ROT-CRは、フェライト及びパーライトの形成を回避するために臨界冷却速度を超える必要がある。上記の臨界冷却速度がストリップの厚み方向で超える限り、オーステナイトからの変態を確実にするため、臨界の最大ROT-CRは存在しない。不必要に高いROT-CRは、冷却後のストリップの平坦度に影響を与え、適切な冷却停止温度で停止する制御の問題を引き起こし得るため、適切な最大ROT-CRは約300℃/秒、好ましくは約200℃/秒、より好ましくは約150℃/秒である。実用的なROT-CR範囲は、20~100℃/秒であり、これはストリップの厚みに応じて、空冷、層流冷却又はウォータージェット冷却によって達成可能である。実用的な理由から、ランアウトテーブル冷却速度(ROT-CR)は、ストリップ表面の平均冷却速度として定義される。
【0034】
次いで、熱間圧延された鋼ストリップは、(Ms-50)℃~(Ms-160)℃の温度範囲で、鋼のMsより低い温度で巻き取られる。Ms未満で巻き取ることは、その後のコイル冷却がマルテンサイト及びオーステナイトの相混合物で開始し、初期マルテンサイト含有量が40~85体積%であることを保証するためである。初期マルテンサイト含有量がこの量より多い場合には、言い換えると、巻き取り温度(CT)がMs-160℃未満の場合には、効果的な焼戻しを行うにはコイル冷却に利用可能な時間が短く、温度が低すぎるために、初期マルテンサイトの必要な焼戻し効果が得られず、鋼の高い延性、成形性及び衝撃靭性が達成されない。初期マルテンサイト含有量が40体積%未満である場合には、マルテンサイトの過度の焼戻しが起こり、製品は本発明の文脈における超高強度鋼ではない。
【0035】
コイル冷却中、初期マルテンサイトの焼戻しが継続的に起きる。同時に、鋼がコイル内で冷却されると、新しいフレッシュマルテンサイトが形成される。鋼中にSi及びAlが存在するために、焼戻しマルテンサイト内に炭化物は形成されない。さらに、マルテンサイトからオーステナイトへの炭素のいくらかの分配により、非常に少量のオーステナイトが室温で変態せずに残る可能性がある(別名、残留オーステナイト)が、その量は好ましくは、最大で1体積%(0体積%を含む)に制限される。
【0036】
鋼が室温まで冷却された後、熱間圧延された鋼の酸化物(スケール)は、酸溶液(例えば、HCl)において高温(80~120℃)で酸洗いすることにより、又は酸洗い及び表面の機械的ブラッシングの組み合わせにより除去される。この工程は、鋼の表面を、コーティングされていないHR鋼として直接使用するのに適したものにしたり、場合により耐食性が必要な場合にコーティングプロセスに適したものにしたりするために必要である。
【0037】
場合により、HR鋼ストリップは、使用中に良好な耐食性を示すためにコーティングされ得、例えば、Zn又はZn系合金又はAl系合金による溶融コーティング又は電着により、或いは、任意のその他のコーティング技術によりコーティングされ得る。
【0038】
上記方法により、所望のミクロ組織が得られて、目的の機械的特性が得られる。本発明はまた、上記方法及び鋼の化学成分(steel chemistry)に従って製造された鋼物品であって、体積%で以下のミクロ組織:
焼戻しマルテンサイト(巻き取り中の初期マルテンサイト):40~85%、好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも60%;
フレッシュマルテンサイト(巻き取り後のコイル冷却中に形成されるマルテンサイト):15~60%、好ましくは最大で50%、より好ましくは最大で40%;
残留オーステナイト:最大で1体積%(0体積%を含む);
セメンタイト又はその他の金属炭化物:0体積%
を含む鋼物品において具体化される。
【0039】
本発明による鋼の化学成分、方法及びミクロ組織は、以下の機械的特性及び成形性をもたらす。
降伏強度(Rp):少なくとも1100MPa
最大引張強度(Rm):少なくとも1200MPa
降伏比(Rp/Rm):少なくとも0.85
全伸び:少なくとも6.0%(JIS5)
穴広げ性能:少なくとも30%
厚み1mmにおける曲げ角度:少なくとも70°。
【0040】
好ましくは、シャルピー衝撃靭性は、-40℃において少なくとも40ジュールであり、室温において少なくとも100ジュールである。
【0041】
本発明による鋼の化学成分、方法及びミクロ組織は、好ましくは以下の機械的特性及び成形性をもたらす。
降伏強度(Rp):少なくとも1100MPa
最大引張強度(Rm):少なくとも1200MPa
降伏比(Rp/Rm):少なくとも0.85
全伸び:少なくとも8.5%(JIS5)
穴広げ性能:少なくとも50%
厚み1mmにおける曲げ角度:少なくとも80°
-40℃におけるシャルピー衝撃靭性:少なくとも40ジュール、及び、
室温におけるシャルピー衝撃靭性:少なくとも100ジュール。
【0042】
鋼の強度値は、主にミクロ組織内の硬質成分の存在に起因する。マルテンサイトは鋼中の強い相であり、コイル冷却中のMs未満の低温焼戻しにより、マルテンサイトはその強度をあまり失わない。したがって、本発明におけるフレッシュマルテンサイト及び焼戻しマルテンサイトのいずれもが、本発明において超高強度値を達成することに関与している。さらに、鋼中にSi及びAlが存在することに起因して炭化物が存在しないことにより、変形中の鋼の損傷開始が減少し、高い全伸び値がもたらされる。残留オーステイトは、衝撃靭性に対するその低い安定性により悪影響を及ぼすため、1体積%未満に最小化される。
【0043】
残留オーステナイトは、コイル冷却中にマルテンサイトからオーステナイトへの炭素分配によって生じる。炭素は、Ms温度を低下させることによってオーステナイトの安定性を高める。しかしながら、異なる変形及び成形プロセス中に残留オーステナイトの機械的安定性を制御することは困難であるため、本発明において残留オーステナイトは意図的に回避される。残留オーステナイトは、伸び(すなわち、延伸性(stretchability))及び衝撃靭性を高めるという有益な効果のために、非常に高い機械的安定性を有する必要がある。これらの特性を改善するには、非常に高い炭素飽和度と、微細なフィルムタイプの形態(fine film-type morphology)が必要である。低温連続冷却プロセス中、例えば、コイル冷却における高い炭素過飽和は、達成するのが非常に困難である。オーステナイトの機械的安定性が低い場合には、オーステナイトは急速にマルテンサイトに変態し、全伸びに影響を与えるマトリックス相との脆い界面を生成する。機械的安定性の低い残留オーステナイトは、動的荷重プロセス、例えば、衝撃でより速く変態し、衝撃靭性を低下させます。したがって、本発明では、より均質なミクロ組織が、多量の残留オーステナイトが存在することなく、焼戻しマルテンサイト及びフレッシュマルテンサイトによって生成された。言い換えれば、残留オーステナイトの存在は意図的に回避され、その最大量は1体積%に制限されている。
【0044】
本発明において残留オーステナイト相を回避又は最小化する別の動機は、Zn又はZn合金コーティング鋼の溶接中の液体金属脆化(LME)現象の傾向を低減することである。ミクロ組織に残留オーステナイト相を有するZn又はZn合金コーティング鋼は、溶接中にLMEを起こしやすいことが知られている。
【0045】
これは、(Ms-50)℃~(Ms-160)℃で低温巻き取りを使用することによって達成され、この温度範囲は、実質的な炭素分配が、多量のオーステナイトを安定化するとは予測されない温度範囲である。
【0046】
Rp、Rm及び全伸びは、EN 10002-1/150 6892-1に準拠した、圧延方向に平行な引張試験によるJIS No.5試験片形状を使用した室温での準静的(歪み速度3×10-4s-1)引張試験から決定された。引張試験片の形状は、圧延方向におけるゲージ長50mm、幅25mm及び厚み3.2mmで構成されていた。0.2%のオフセット歪みにおける鋼の強度は、降伏強度(Rp又はYS)として測定される。最大引張強度に対する降伏強度の比(Rp/Rm)は降伏比として表される。
【0047】
曲げ性は、厚み3.2mm、長手方向及び横断方向の両方における40mm×30mmの試験片に対する、VDA238-100規格に準拠した3点曲げ試験によって決定された。曲げ軸は30mm寸法に沿っており、曲げ半径は0.4mmであった。異なる厚み(それぞれ2.8、3.2及び3.5mmの厚み)のストリップから得られた曲げ角度は、以下の式を使用して厚み1.0mmに対応する角度に変換された:厚み1.0mmにおける曲げ角度=測定角度×実際の厚み(mm)の平方根。これらの変換された曲げ角度から、特定の熱処理条件について、長手方向及び横断方向における試験片の最低値が、本発明の範囲を主張するために採用された。
【0048】
鋼のフランジ性又は穴広げ性能(HEC)は、穴広げ試験によって決定された。寸法90mm×90mm×3.2mmの試験片が、巻き取られた状態の鋼(as-coiled steel)から切り出された。試験片の中央に直径10mmの穴が開けられ、ISO/TS 16630:2003(E)規格に準拠して穴広げ試験が実施された。HEC値は、式:HEC=(穴の初期直径の拡張(expansion of the initial hole diameter)/初期直径)×100%により決定した。
【0049】
シャルピー衝撃靭性は、ASTM A370規格に準拠して、フルサイズのシャルピーVノッチ(CVN)試験片(55mm×10mm×10mm)を使用して測定された。試験は、圧延方向に対して平行及び垂直なVノッチを機械加工することにより、両方のシート方向で行われた。
【0050】
上記のすべての機械的試験について、少なくとも3個の試験片が各条件に対して試験され、平均値が報告されている。
【0051】
ミクロ組織は、手法の組み合わせ(光学顕微鏡、X線回折(XRD)、走査型電子顕微鏡(SEM)及び膨張率測定)を使用して分析された。(l×w×t)10mm×5mm×3.2mmの試験片に対する膨張率測定試験は、試験片を10℃/秒の速度で950℃まで加熱し、2分間保持し、100℃/秒(Msのための急冷)又は0.3℃/秒(Ar3のための徐冷)の速度で室温まで冷却することによって行われた。膨張率測定のデータから、Ms及びAr3温度が決定された。鋼を巻き取った後の初期マルテンサイト(すなわち、コイル冷却後に焼戻しされる焼戻しマルテンサイトでもある)の量は、以下の文献「A general equation prescribing the extent of the austenite-martensite transformation in pure iron-carbon alloys and plain carbon steels」D.P. Koistinen, R.E. Marburger, Acta Metallurgica, vol. 7, 1959, pp. 59-60に示されているKoistinen-Marburger式:
【数1】
[式中、Msはマルテンサイト開始温度(℃)であり、CTは巻き取り温度(℃)であり、したがって、(Ms-CT)は、コイル冷却の開始時におけるMs未満の過冷却を反映し、そのため、初期マルテンサイトの量の尺度である。]
を使用して決定された。
【0052】
残留オーステナイトの量は、サンプルの厚みが1/4である位置でXRDによって決定された。XRDパターンは、Panalytical Xpert PRO標準粉末回折計(CoKα線)により45~165°(2θ)の範囲で記録された。相比の定量的決定は、リートベルト精密化用のBruker Topasソフトウェアパッケージを使用したリートベルト解析によって実行された。ミクロ組織中の炭化物、フェライト、パーライト及びベイナイトの量は、高解像度のSEM画像を分析することによって決定された。初期マルテンサイト及び該当するその他の相(残留オーステナイト、炭化物及びその他の決定された相)の割合を、総量から差し引くことによって、フレッシュマルテンサイトの割合は得られた。
【0053】
亜鉛又は亜鉛合金コーティングの組成は限定されない。コーティングは様々な方法で適用され得るが、標準的なGIコーティング浴を使用する溶融亜鉛めっきが好ましい。Zn系コーティングは、合金元素としてAlを含有するZn合金を含み得る。好ましい亜鉛浴組成は、0.10~0.35重量%のAlを含み、残部が亜鉛及び不可避不純物である。
【0054】
その他の亜鉛コーティングもまた適用され得る。一例は、WO2008/102009による亜鉛合金コーティング、特に0.3~4.0重量%のMgと、0.05%~6.0重量%、好ましくは0.1~5.0%のAlと、場合により最大で0.2重量%の1種又は2種以上の追加元素と、不可避的不純物と、残部の亜鉛とからなる亜鉛合金コーティング層を含む。主な合金元素としてMg及びAlを含む好ましいZn浴は、以下の組成:0.5~3.8重量%のAl;0.5~3.0重量%のMg;場合により最大で0.2%の1種又は2種以上の追加元素;残部の亜鉛及び不可避的不純物を含む。通常0.2重量%未満の少量で添加される追加元素は、Pb、Sb、Ti、Ca、Mn、Sn、La、Ce、Cr、Ni、Zr及びBiを含む群から選択され得る。Pb、Sn、Bi及びSbは通常、スパングル(spangle)を形成させるために添加される。好ましくは、亜鉛合金中の追加元素の総量は最大で0.2重量%である。これらの少量の追加元素は、通常の用途ではコーティング又は浴の特性を大きく変化させない。好ましくは、1種又は2種以上の追加元素がコーティング中に存在する場合には、それぞれが0.02重量%未満の量で存在し、好ましくはそれぞれが0.01重量%未満の量で存在する。追加元素は通常、溶融亜鉛めっき用の溶融亜鉛合金による浴中でドロスが形成されるのを防止するため、又はコーティング層にスパングルを形成させるためにのみ添加される。
【0055】
別の実施形態において、金属コーティングは、(市販の純粋な)アルミニウム層又はアルミニウム合金層を含む。溶融コーティング、例えば、アルミニウム層のための典型的な金属浴は、ケイ素と合金化されたアルミニウム、例えば、8~11重量%のケイ素と、最大で4%の鉄と、場合により最大で0.2%の1種又は2種以上の追加元素(例えば、カルシウム)と、不可避不純物と、残部のアルミニウムとにより合金化されたアルミニウムを含む。ケイ素は、接着性及び成形性を低下させる厚い鉄-金属の金属間層の形成を防止するために存在する。鉄は、好ましくは1~4%、より好ましくは少なくとも2%の量で存在する。
【実施例】
【0056】
真空誘導炉で装入物を溶融することによって、寸法が200mm×100mm×100mmである、7種の本発明の化学成分A~B及びD~Hの鋼インゴットと、比較の鋼Cとを鋳造した。これらの鋼の化学組成を表1に示す。鋼A~B及びD~Hは、本発明の定義された境界内のC、Si及びAlを含むが、比較の鋼は、本発明の定義された境界外のAl及びSiを含む。すべてのインゴットを1200℃で1時間再加熱し、厚み25mmまで粗圧延した。次いで、ストリップを再度1200℃で30分間再加熱し、すべての鋼のオーステナイト相領域にある900℃を超えるFRTにより、2.8、3.2mm、3.5mm及び12mmの最終厚みに熱間圧延した。膨張率測定により測定した鋼のAr3及びMsもまた表1に示す。
【0057】
熱間圧延後、鋼をすぐに様々な冷却速度におけるランアウトテーブル冷却に供し、次いで、異なる開始CTから室温まで冷却することにより、コイル冷却シミュレーションをマッフル炉で行った。次いで、ストリップを酸洗いして、従来の方法で酸化物を除去した。
【0058】
鋼の様々な処理条件を表2にまとめる。A、B及びCは、類似のM及びAr3を有する。鋼AのFRT温度は953℃であり、鋼BのFRT温度は939℃であり、鋼CのFRT温度は945℃であり、いずれもAr3より少なくとも50℃高い。鋼A及びBについて、本発明の定義された下限の外側にある3℃/秒の遅いランアウトテーブル冷却速度(ROT-CR)を使用した。本発明の定義された境界外である2種のさらなる巻き取り温度(200℃及び480℃)もまた、本発明で必要とされる境界内のFRT及びCTを有する鋼A及びBに対して使用した。200℃のCTは(Ms-160)℃よりもはるかに低く、480℃はこれらの鋼のMsを上回っている。これらの条件を比較目的で使用した。本発明の範囲外の化学成分を有する鋼Cについて、すべての処理条件(FRT、ROT-CR及びCT)を本発明の定義された境界内で選択した。鋼D~Fについて、処理パラメータの1セット(FRT、ROTCR及びCT)が本発明の特許請求の範囲内であった。しかしながら、その他のセットについて、FRT及びROTCRを同じに維持したが、CTだけを比較目的でより高く維持した。この場合において、鋼D~Fの(Ms-50℃)よりも高い375℃のCTを使用した。実際、このCTはMs温度よりわずかに高かった。鋼G~Hについて、すべての処理パラメータを本発明に必要な境界内に維持した。
【0059】
記載されているように、様々な機械的特性の評価及びミクロ組織の特性評価のために、最終鋼ストリップから試験片を取り出した。厚み12mmの熱間圧延鋼をシャルピー衝撃試験片の作製に使用し、厚み2.8mm、3.2mm及び3.5mmの鋼ストリップをその他のすべての特性評価に使用した。
【0060】
様々な処理条件について、ミクロ組織の相含有量を表3に示し、引張特性を表4に示し、曲げ試験及びHEC試験の結果を表5に示し、シャルピー衝撃靭性を表6に示す。
以下は、引張試験及び曲げ試験の結果を示すために表で使用されている略語及び記号である。Rp=降伏強度、Rm=最大引張強度、AJIS5=JIS5試験片を使用した全伸び、BA=曲げ角度、L=曲げ軸が圧延方向に平行である長手方向における試験片、T=曲げ軸が圧延方向に垂直である横断方向における試験片。
【0061】
表3は、鋼A及び鋼Bが、本発明の必要な範囲内である275~375℃のCTで、定義された境界内のFRT及びROT-CRを使用することによって、それぞれ85体積%未満及び少なくとも15体積%の焼戻しマルテンサイト及びフレッシュマルテンサイトからなるミクロ組織を達成したことを示す。さらに、これらの処理条件について、鋼のミクロ組織は炭化物を含まず、残留オーステナイト含有量は1体積%未満であった。それらのミクロ組織は、その他の相、例えば、フェライト、ベイナイト又はパーライトを含まなかった。
【0062】
Ar3より50℃以上高い温度におけるFRTで、20℃/秒を超えるROT-CRに供された場合の鋼A~Bは、これらの鋼のMsを超える480℃で巻き取られると、かなりの量のベイナイト及び残留オーステナイトと、いくらかの量の、Ms未満で形成されるフレッシュマルテンサイトとを有するミクロ組織が得られた。Al及びSi含有量のため、この巻き取り条件ではこれらの鋼に炭化物は存在しなかった。高い残留オーステナイト含有量は、Msを超えるベイナイト変態中のオーステナイトにおける炭素富化と、Ms未満のコイル冷却中に形成されたフレッシュマルテンサイトとによって引き起こされた。多量の残留オーステナイトを有するこれらのベイナイトミクロ組織は、本発明で意図されたミクロ組織とは異なる。
【0063】
同様に、鋼A及びBがこれらの鋼のMs-160℃よりもはるかに低い200℃で巻き取られる場合には、鋼のミクロ組織はまた、本発明に必要とされるミクロ組織とは異なるミクロ組織になる。このCT条件は、85体積%を超える焼戻しマルテンサイトと15体積%未満のフレッシュマルテンサイトを有する。一方で、本発明に必要な範囲内のFRT及びCTを有するが、3℃/秒(20℃/秒未満)の遅いROT-CRを有する鋼A及びBは、それらのミクロ組織において、ベイナイトマトリックス及びかなりの量の残留オーステナイトに加えて、かなりの量のフェライト及びパーライトを示した。巻き取り前のROT-CRが遅いため、フェライト、パーライト及びベイナイトが形成された。
【0064】
鋼Cは、鋼C中のSi及びAlの量が少ないため、すべてのパラメータが本発明に必要な範囲内である処理中に、かなりの量の炭化物(2.3体積%)を形成した。
【0065】
上記のミクロ組織の結果として、表4~6に示す特性が得られた。鋼A及び鋼Bは1100MPaを超えるRp及び1200MPaを超えるRmを達成し、降伏比は0.85を超え、全伸び(AJIS5)は8.5%を超えた。CTが高すぎる場合(480℃)には、本発明で目標とするRp及びRmの最小レベルは、より軟らかい相(ベイナイト及び残留オーステナイト)の存在のために鋼A及びBにおいて達成されないが、全伸びは高い。480℃のCTでの低いRp値はまた、降伏比が0.85未満となる原因となった。一方で、CTが低すぎる場合(CT=200℃)には、Rp及びRmは高い降伏比とともに目標値を上回っているが、全伸びはあまりに低い(8.5%未満)。全伸びが低いのは、ミクロ組織に存在する初期マルテンサイトの量が多すぎる(=焼戻しマルテンサイトが85体積%を超える)ことと、有効な焼戻しが生じるには時間が少なく、温度が低すぎるためにコイル冷却中の焼戻し効果が欠如していることとが原因である。
【0066】
3℃/秒の遅いROT-CRに関して、ベイナイト、フェライト、パーライト及び残留オーステナイトからなる軟らかい相の形成により、鋼A及びBは、1100MPaより低いRp値及び1200MPaより低いRm値を有する。さらに、全伸びは高いが、降伏比は0.85を下回っている。
【0067】
鋼Cは、炭化物抑制元素であるSi及びAlの不在に起因してミクロ組織に炭化物が存在するため、低いRp、Rm、降伏比及び全伸びの値を達成した。炭化物は機械的特性に悪影響を及ぼし、変形時に損傷を促進する。したがって、鋼Cでは低いレベルの引張特性が得られた。
【0068】
引張特性と同様に、本発明の定義された処理変数(FRT、ROTCR及びCT)内で処理された場合には、鋼A及びBの曲げ性及びHECもまた高い(表5)。厚み1.0mmにおける80°の最小曲げ角度が達成され、50%の最小HEC値もまた得られた。しかしながら、CTが高く、鋼のMsを超える場合(すなわち、480℃)には、最小曲げ角度及びHECのいずれも低く、それぞれ厚み1.0mmにおける80°及び50%の目標値を下回っている。これは、フレッシュマルテンサイト、ベイナイト及び残留オーステナイトを含むこれらの鋼のミクロ組織の多相の性質により(表3)、変形が行われた際に、これらの相の界面に多数の損傷開始部位が存在したためである。フレッシュマルテンサイトとして存在するマルテンサイトと、残留オーステナイトからTRIP効果によって形成されたマルテンサイトとはいずれも、ベイナイト及び未変態の残留オーステナイトよりも強度のある相である。一方で、鋼A及び鋼Bに最適な量の焼戻しマルテンサイト及びフレッシュマルテンサイトを含む理想的な処理条件では、これらの相間の硬度又は強度の差が小さく、曲げ及び穴広げの際に均一な変形を引き起こした。これにより、理想的な処理条件で高いHEC値及び曲げ値が生じた。
【0069】
さらに、鋼A及び鋼BのCTがMsよりもあまりに低い(200℃)と、ミクロ組織に存在する焼戻しマルテンサイトの量があまりに多い(85体積%超)ため、曲げ性及びHEC値もまた低い(表3)。巻き取りのちょうど最初に存在するこの初期マルテンサイトの有効な焼戻しの欠如は、低い延性を引き起こし(これは表4の全伸び値にも反映される)、曲げ性及びHECによって測定されるこれらの鋼の低い成形性を引き起こした。
【0070】
遅いROT-CRを使用した場合(3℃/秒)には、フェライト及びパーライトのより軟らかい相の存在はまた、表5からわかるように、鋼A及びBの曲げ性及びHEC値も低下させた。これは、ベイナイトと、荷重時の残留オーステナイトの変態後に得られるマルテンサイトとからなる、より柔らかい相とより硬い相との脆い界面のためである。
【0071】
鋼Cの曲げ性及びHEC値は非常に低く、それぞれ厚み1.0mmにおける最小値80°及び最小値50%を大幅に下回っている。鋼Cにおけるこれらの低い成形性パラメータは、処理変数が本発明の特定の範囲内であったにもかかわらず、鋼中の非常に低いAl及びSi含有量が、炭化物の形成を促進したことによって引き起こされた(表3)。
【0072】
本発明に従って処理された鋼Aの横断方向における試験片のシャルピー衝撃靭性は(長手方向における試験片よりも低い値を示した)、室温及び-40℃で試験した場合に、それぞれ100J及び40Jより高い。480℃の高いCT及び200℃の低いCTに関する当該値は、本発明で記載した理想的な処理経路により得られた最小値よりもはるかに低い。上で記載したように、これらの低い靭性値は、残留オーステナイトからマルテンサイトへの自然発生的な変態(spontaneous transformation)、不均一な硬い相及び軟らかい相の存在、並びに低い焼戻し効果によって引き起こされる脆性破壊によりもたらされる。さらに、鋼C中の炭化物の存在はまた、室温及び極低温の両方における低いシャルピー衝撃靭性値ももたらす。
【0073】
したがって、上で論じたように、これらの例は、鋼が本発明の組成に従って設計され、本発明に従って処理される場合には、鋼は、それらのミクロ組織効果により、意図したとおりの高い引張特性、成形性及び靭性特性を達成することを示している。本発明で定義された境界外で行う場合、すべての特性の同様の良好な組み合わせは達成されない。
【0074】
【0075】
鋼A~G中のNb含有量は残留レベルである。これらの鋼には合金元素としてニオブは添加されていない。鋼Hには合金元素としてニオブが添加されている。
【0076】
鋼A~Bは約1.8%のMn含有量を有し、鋼D~Hは約2.35%のMn含有量を有し、Si及びNbの量が変化する。Mnの効果は、Msの減少であり、フレッシュマルテンサイトに対する焼戻しマルテンサイトの比率のシフトを引き起こす。鋼D~HのA JIS5、HEC及び曲げ角度は、鋼A及びBよりも低い値を示すが、それでも鋼D~Hは目的に適合している。
【0077】
表3に示すように、鋼D~Hは、本発明に必要な範囲内に含まれる275℃(鋼D~F)及び300℃(鋼G~H)のCTに対して定義された境界内のFRT及びROT-CRを使用することにより、85体積%未満の焼戻しマルテンサイト及び少なくとも15体積%のフレッシュマルテンサイトからなるミクロ組織を達成した。さらに、これらの処理条件について、鋼はミクロ組織内に炭化物を含まず、残留オーステナイト含有量は1体積%未満であった。これらのミクロ組織は、その他の相、例えば、フェライト、ベイナイト又はパーライトを含まなかった。
【0078】
鋼D~Hはまた、1100MPaを超えるRp、1200MPaを超えるRm、0.85以上の降伏比、及び6%を超える全伸び(AJIS5)を達成した(表4)。本発明の定義された処理変数(FRT、ROTCR及びCT)内で処理された場合には、鋼D~Hの曲げ性及びHECもまた高い(表5)。これらの鋼において、厚み1.0mmにおける70°の最小曲げ角度及び30%の最小HEC値が達成されている。
【0079】
しかしながら、鋼D~FのCTが高い、すなわち、鋼のMsをわずかに上回る375℃である場合には、鋼のミクロ組織は、本発明のミクロ組織で達成することを意図していない、いくらかの量のベイナイトと1体積%を超える残留オーステナイトとを含み(表3)、フレッシュマルテンサイト及び焼戻しマルテンサイトの含有量もまた本発明で定義された範囲外である。これらの意図しないミクロ組織は、375℃のCTについてのこれらの鋼に、所望の超高強度をもたらさない。良好な曲げ性及びHEC値は達成されるが(表5)、ベイナイト及び残留オーステナイトからなる軟らかい相が存在するため、Rp値は1100MPa未満であり、Rm値は1200MPa未満であり、降伏比は0.85未満である(表4)。したがって、本発明の定義された境界内の化学組成を有し得る鋼は、本発明の定義されたウィンドウ内で処理が行われない場合には、所望の機械的特性のすべてを達成することができるとは限らない場合がある。
【0080】
【0081】
【0082】
【0083】
【0084】
【0085】
図面の簡単な説明
本発明を以下の非限定的な図によって説明する。
【0086】
【0087】
厚い鋳造スラブを処理するための熱間圧延機の概略図を
図2aに示し、直接圧延機を備えた薄いスラブ鋳造設備の概略図を
図2bに示す。
【0088】
図3及び4は、曲げサンプル及びシャルピーサンプルの形状及び定義を示す。
【国際調査報告】