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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-03
(54)【発明の名称】ナトリウムイオンバッテリーパック
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/054 20100101AFI20230327BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20230327BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20230327BHJP
【FI】
H01M10/054
H02J7/00 302A
H01M10/44 P
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022548874
(86)(22)【出願日】2021-02-12
(85)【翻訳文提出日】2022-10-04
(86)【国際出願番号】 GB2021050356
(87)【国際公開番号】W WO2021161044
(87)【国際公開日】2021-08-19
(31)【優先権主張番号】2002016.0
(32)【優先日】2020-02-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514065058
【氏名又は名称】ファラディオン リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100120754
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 豊治
(72)【発明者】
【氏名】バーカー,ジェレミー
(72)【発明者】
【氏名】ライト,クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】ロッチ,ノエル
【テーマコード(参考)】
5G503
5H029
5H030
【Fターム(参考)】
5G503AA01
5G503BA01
5G503BB01
5G503CA11
5G503DA16
5G503GB03
5H029AJ01
5H029AK01
5H029AK02
5H029AL06
5H029AL11
5H029AL13
5H029AM01
5H029HJ18
5H030AA01
5H030AS01
5H030AS08
5H030AS14
5H030BB01
5H030DD05
5H030DD06
5H030FF43
5H030FF44
(57)【要約】
本発明は、1以上のナトリウムイオンセルおよび1以上の電圧変換器を含むナトリウムイオンバッテリーパックに関する。そのようなナトリウムイオンバッテリーパックの方法および使用も開示する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1以上のナトリウムイオンセルおよび1以上の電圧変換器を含むナトリウムイオンバッテリーパック;該1以上のナトリウムイオンセルは、>0.0V~<2.0Vの範囲の最小動作電圧(セルVmin)と、>3.60V~<4.30Vの範囲の最大動作電圧(セルVmax)との間で動作可能であり;さらに、該ナトリウムイオンバッテリーパックが2以上のナトリウムイオンセルを含む場合、2以上のナトリウムイオンセルはすべて、同じセル公称電圧プロファイルおよび同じ電気化学的設計を有する。
【請求項2】
バッテリー管理システム(BMS)をさらに含む、請求項1に記載のナトリウムイオンバッテリーパック。
【請求項3】
1以上のナトリウムイオンセルのすべてが、セルVminがセルVmaxの>0%~55%、好ましくはセルVmaxの>0%~50%、さらに好ましくはセルVmaxの>0%~45%である電圧範囲で動作可能である、請求項1または2に記載のナトリウムイオンバッテリーパック。
【請求項4】
1以上のナトリウムイオンセルが、>3.70V~≦4.25Vの範囲のセルVmaxの間、好ましくは>3.8V~≦4.20Vの範囲のセルVmaxの間で動作可能である、請求項1~3のいずれかに記載のナトリウムイオンバッテリーパック。
【請求項5】
1以上の電圧変換器のそれぞれが、1より多くのナトリウムイオンセルに接続されている、請求項1~4のいずれかに記載のナトリウムイオンバッテリーパック。
【請求項6】
1以上の電圧変換器の少なくとも1つがDC/DC変換器である、請求項1に記載のナトリウムイオンバッテリーパック。
【請求項7】
少なくとも1つのDC/DC変換器が双方向DC/DC変換器である、請求項6に記載のナトリウムイオンバッテリーパック。
【請求項8】
双方向DC/DC変換器がブースト変換器および/またはバック/ブースト変換器から選択される、請求項7に記載のナトリウムイオンバッテリーパック。
【請求項9】
1以上の電圧変換器の少なくとも1つが、スタンドアローン型回路構成の一部であるか、または、バッテリー管理システム(BMS)に組み込まれているか、もしくは連結されている、請求項1~8のいずれかに記載のナトリウムイオンバッテリーパック。
【請求項10】
以下の条件を満たす量の比エネルギーを送達するための、請求項1~9のいずれかに記載のナトリウムイオンバッテリーパックの使用:
(バッテリーVmaxと0Vとの間のエネルギー差)×(1以上の電圧変換器の効率)/(1以上のナトリウムイオンセルの質量+1以上の電圧変換器の質量)>(バッテリーVmaxとバッテリーVmaxの60~70%との間のエネルギーの差)/1以上のナトリウムイオンセルの質量;
該バッテリーVmaxは、1以上の電圧変換器の非存在下で1以上のナトリウムイオンセルを含むナトリウムイオンバッテリーパックの最大出力電圧として決定される。
【請求項11】
ナトリウムイオンバッテリーパックの直列に接続されている1以上のナトリウムイオンセルの両端間で測定される電圧が≦60%Vmaxであるときに、ナトリウムイオンバッテリーパックの端子電圧を>60%バッテリーVmaxに上昇させるための、請求項1~9のいずれかに記載のナトリウムイオンバッテリーパックの使用。
【請求項12】
1以上のナトリウムイオンセルを含むバッテリーからの利用可能なエネルギーにアクセスする方法であって、以下の段階を含む方法:
a)1以上の電圧変換器および1以上のナトリウムイオンセルを含むナトリウムイオンバッテリーパックを提供する段階、該1以上のナトリウムイオンセルは、>0~<2.0Vの範囲の最小動作電圧(セルVmin)と、>3.6V~<4.30Vの範囲の最大動作電圧(セルVmax)との間で動作可能であり;さらに、該ナトリウムイオンバッテリーパックが2以上のナトリウムイオンセルを含む場合、2以上のナトリウムイオンセルはすべて、同じセル公称電圧プロファイルおよび同じ電気化学的設計を有する
b)ナトリウムイオンバッテリーパックを電子応用機器と関連付けるか、または統合する段階、および
c)1以上の電圧変換器の少なくとも1つを直接的または間接的に動作させて、ナトリウムイオンバッテリーパックの出力電圧をバッテリーVmaxの60%超に上昇させる段階;
該バッテリーVmaxは、1以上の電圧変換器の非存在下で1以上のナトリウムイオンセルを含むナトリウムイオンバッテリーパックの設計最大出力電圧として決定される。
【請求項13】
1以上の電圧変換器の少なくとも1つを、電子応用機器の動作電圧範囲の一部または全体にわたって断続的に動作させる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
少なくとも1つの電圧変換器を、ナトリウムイオンパックの少なくとも1つのナトリウムイオンセルの出力電圧がVmaxの60%以下であるときに動作させる、請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
1以上の電圧変換器の非存在下で1以上のナトリウムイオンセルを含むナトリウムイオンバッテリーパックの利用可能および/または送達可能な比エネルギーを少なくとも3%増大させるための、請求項1~9のいずれかに記載のナトリウムイオンバッテリーパックの使用。
【請求項16】
1以上の電圧変換器の非存在下で1以上のナトリウムイオンセルを含むナトリウムイオンバッテリーパックの利用可能および/または送達可能な体積エネルギー密度を少なくとも3%増大させるための、請求項1~9のいずれかに記載のナトリウムイオンバッテリーパックの使用。
【請求項17】
請求項1~9のいずれかに記載のナトリウムイオンバッテリーパックと統合または関連付けられた電子応用機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリーパック内に存在するナトリウムイオンセル内の利用可能なエネルギーを電気機器に効率的に送達することを可能にするように設計されたナトリウムイオンバッテリーパックに関する。本発明はまた、ナトリウムイオンセル内の利用可能なエネルギーを効率的に送達する方法、および本発明によるナトリウムイオンバッテリーパックを採用する電気機器に関する。誤解を避けるために、スーパーキャパシターは本発明の範囲内に包含されない。
【背景技術】
【0002】
ナトリウムイオンバッテリーは、現在一般的に使用されているリチウムイオンバッテリーと多くの点で類似している;それらはどちらもアノード(負極)、カソード(正極)および電解質材料を含む再利用可能な二次バッテリーであり、どちらもエネルギーを貯蔵することができ、どちらも同様の反応メカニズムを介して充電および放電する。ナトリウムイオン(またはリチウムイオン)バッテリーの充電中にNa(またはLi)イオンはカソードからデインターカレートし、アノードに挿入される。その間に、電荷のバランスを取る電子は、カソードから、充電器を含有する外部回路を通って、バッテリーのアノードに入る。放電中は、同じプロセスが反対方向に起こる。
【0003】
リチウムイオンバッテリー技術は近年多くの注目を浴びており、現在使用されているほとんどの電子応用機器に好ましいポータブル型バッテリーを提供しているが、リチウムは供給源として安価な金属ではなく、大規模な用途で使用するには高価すぎると考えられている。対照的に、ナトリウムはリチウムよりもはるかに豊富であり、特に配電網にエネルギーを貯蔵するような大規模な用途に関し、ナトリウムイオンバッテリーは将来的にエネルギーを貯蔵するためのより安価で耐久性の高い方法を提供するという期待は大きい。それにもかかわらず、ナトリウムイオンバッテリーを商業的に実現するためには、さらなる研究が必要である。
【0004】
どのような充電式バッテリーにおいても、実用上利用可能なエネルギーは、各セルの放電深度(DoD)と電圧の関数である。従来のリチウムイオンバッテリー、例えば、リチウムコバルト酸化物(LCO)、リチウムニッケルマンガンコバルト酸化物(NMC)またはリチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物(NCA)カソード材料、炭素またはケイ素アノード、銅アノード集電体およびアルミニウム含有カソード集電体を含むセルを使用するバッテリーの場合、このようなセルが完全放電状態で貯蔵されるか、または0ボルトもしくは0ボルト近くまでサイクルダウンされるときに、問題が生じることがある。例えば、負(アノード)電極集電体からの銅の溶解はカソードの放電容量の低下を招きやすく、リチウムイオンバッテリーのサイクル時間は次第に短くなってしまうであろう。しかしながら、リチウムイオンセルを0ボルト近くまでサイクルダウンすることに関する実際の問題は、リチウムイオンセルが不安定であり、過熱しやすく、予想外に引火するリスクがある点である。これまでのところ、負極集電体に銅の代わりにアルミニウムを使用することによって銅の溶解をなくそうとする試みは、成功していない。これは、完全放電したセルにおいてリチウムとアルミニウムとの間に合金化反応がもたらされるためである。リチウム/アルミニウム合金が形成しないようにリチウム対して十分に高い電位で動作する代替的な負(アノード)電極材料は存在するが、これが可能な負極材料は、例えばLiTi12など、ほんの少ししか知られていない。
【0005】
これらの問題を軽減するために、標準的なリチウムイオンバッテリーを取り扱うための確立されたやり方は、約90~約30%(LFP、LiFePOバッテリーについては20%)の充電状態を必要とすることであり、すなわち、それらの放電深度(DoD)は、約70%~80%以下でなければならない。リチウムイオンバッテリーは、少なくとも2または3回の充電/放電サイクルを使用した後、少なくとも約40%の充電段階まで最終充電することにより製造直後に状態調整され、0ボルトまたはその付近での貯蔵状態がすべて回避される。しかしながら、これらの予防措置の結果、約30%(またはLFPでは約20%)の充電状態において標準的リチウムイオンバッテリーに残存するエネルギーにはアクセスすることができず、したがって無駄になっている。
【0006】
一方、ナトリウムイオンバッテリーは、完全放電したとき、および0ボルトまでサイクルダウンされたときに、極めて安定であり、本出願人は、非常に低い充電状態(例えば、S.O.C 0%~<30%)であっても、ナトリウムイオンセルの寿命に影響を及ぼすことなく、ナトリウムイオンセル内のエネルギーの実質的にすべて(例えば、>95%)にアクセスし、繰り返しアクセスすることができることを見出した。しかしながら、商業的に実現可能なナトリウムイオンバッテリーの設計は、現時点では、一般的用途で使用される多くの電気システムが、鉛酸セルおよびリチウムイオンセルを、サイクル寿命を最大化し、バッテリーの安全性を確実にする電圧ウィンドウ内に維持するように設計された、狭いレガシー電圧(legacy voltage)限界を採用しているという事実によって、妨げられている。例えば、市販の公称12Vの鉛酸バッテリー(Yuasa NPC24-12I Industrial VRLA、6セルを直列で採用)は、14.5V~10.5Vの間の電圧ウィンドウでのみ動作する。表1に、一般的なセル化学成分(cell chemistry)について公表されている電圧限界を挙げる。
【0007】
【表1】
【0008】
これらの電圧ウィンドウの結果として、インバーターやモーターのような電子構成要素も、これらの限界内で動作するように設計されてきた。ナトリウムイオンセルは別として、他の化学成分はすべて、最小電圧(Vmin)がセルVmaxの>60%である電圧範囲でのみ動作することができることがわかる。ナトリウムイオンセルのみが、Vminが<60%セルVmaxである電圧範囲で動作することができる。別の言い方をすると、ナトリウムイオンセルは、他のタイプの再充電可能なセルよりもはるかに広い電圧範囲を有し、したがって、既存の電子構成要素との適合性がはるかに低いという点で特徴的である。
【発明の概要】
【0009】
したがって、本発明の目的は、バッテリーパックに採用される1以上のナトリウムイオンセルからの利用可能なエネルギーへの効率的で包括的なアクセスが容易になるように設計された、ナトリウムイオンバッテリーパックを提供することである。具体的には、本発明の目的は、ナトリウムイオンセルからのエネルギーのすべて、または少なくとも実質的にすべてへの実際的なアクセスを可能にし、それによってナトリウムイオンセルからの利用可能な全エネルギーを増加させる、ナトリウムイオンバッテリーパックを提供することである。他の目的は、ナトリウムイオンセルが低いセル電圧、すなわち電子構成要素の典型的な下限より低い電圧にあるときに、ナトリウムイオンセルからのエネルギーのそのような実際的なアクセスを可能にすることである。さらに他の目的は、バッテリーパックに接続された任意の外部電子構成要素の要件と整合するようにバッテリー出力電圧を制御することができる、ナトリウムイオンバッテリーパックを提供することである。これに加えて、本発明の目的は、ナトリウムイオンバッテリーパック内のナトリウムイオンセルの使用可能な比エネルギーを増加させること(すなわち、単位質量当たりの使用可能なエネルギーJ/Kgを増加させること)、および/またはナトリウムイオンバッテリーパックもしくはナトリウムイオンセルの体積エネルギー密度を、コストウィンドウ内で達成可能な最大値まで増大させることである。さらに、目的は、安全性、サイクル寿命および速度性能のようなナトリウムイオンセル性能のいかなる観点にも影響を及ぼさない、ナトリウムイオンバッテリーパックを設計することである。
【0010】
本発明の目的はまた、ナトリウムイオンバッテリーおよび/またはその中に含有される1以上のナトリウムイオンセルが>0~<2.0Vの範囲のセルVminで動作可能であるナトリウムイオンバッテリーからのエネルギーのすべて、または少なくとも実質的にすべて、すなわち、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも93%、さらに好ましくは少なくとも95%を送達する方法を提供することである。さらなる目的は、本発明によるナトリウムイオンバッテリーパックに接続される電子応用機器を提供することである。
【0011】
本明細書で使用される場合、本文脈における「動作可能」という用語は、ナトリウムイオンセルが、本発明によるセルVmaxとセルVminとの間で動作することができることを意味する。このようなセルは、本発明によるバッテリーパックに使用される。上述したように、対照的に、非ナトリウムイオンセル化学成分は、本発明によるセルVmaxとセルVminとの間で動作可能でない(すなわち、動作することができない)。
【0012】
以下に記載するように、本発明によるナトリウムイオンバッテリーパックは、従来のバッテリー化学成分で利用可能であるよりもはるかに大きな入力電圧範囲へのアクセスが可能になるように設計されており、これにより、使用可能なエネルギーの量は増加する。とりわけ、本発明は、ナトリウムイオンセルに低電圧で存在するエネルギーを、使用に利用可能であり、通常なら無駄になるはずのエネルギーに変換する、効率的でコスト効果の高い手段を提供する。理想的には、本発明のナトリウムイオンバッテリーパックは、バッテリーパックの質量を不必要に増加させない構成要素を用いて設計される。
【0013】
もっとも広い観点において、本発明は、1以上のナトリウムイオンセルおよび1以上の電圧変換器を含むナトリウムイオンバッテリーパックを提供する。好ましくは、ナトリウムイオンバッテリーパックは2以上のナトリウムイオンセルを含む。
【0014】
1以上のナトリウムイオンセルは、>0.0V~<2.0Vの範囲のセルVminと、>3.60V~<4.30Vの範囲のセルVmaxとの間で動作可能である。上記のように、これらのセルVminおよびセルVmax電圧範囲内で動作する(すなわち、動作可能である)ナトリウムイオンセルの能力は、他のセル化学成分によって共有されることのないナトリウムイオンセルの固有の特徴である。
【0015】
好ましくは、1以上のナトリウムイオンセルは、>0.0V~≦1.50Vの範囲のセルVminの間、理想的には>0.0V~≦1.0Vの範囲のセルVminの間で動作可能である。好ましくは、1以上のナトリウムイオンセルは、>3.70V~≦4.25Vの範囲のセルVmaxを有し、理想的には>3.70V~≦4.20Vの範囲のセルVmaxの間で動作可能である。
【0016】
いくつかの態様において、1以上のナトリウムイオンセル、好ましくは1以上のナトリウムイオンセルのすべては、セルVminがセルVmaxの>0%~55%、好ましくはセルVmaxの>0%~50%、さらに好ましくはセルVmaxの>0%~45%である電圧範囲で動作可能である。この場合もやはり、上記のように、これらのVmin/Vmaxのパーセンテージ内で動作可能であるナトリウムイオンセルの能力は、他のセル化学成分によって共有されることのないナトリウムイオンセルの固有の特徴である。
【0017】
2以上のセルは、同じセル電圧、好ましくは公称セル電圧を有し、すべて同じ電気化学的設計のものである。本明細書で使用される「同じセル電圧プロファイル」または「同じセル公称電圧プロファイル」という用語は、同じ電圧対容量関係を意味する。
【0018】
さらに、表1に示し、本明細書で用いるような「公称」(または「通称」)セル電圧は、例えば製造業者によってセルまたはバッテリーに割り当てられた(指定された)セル電圧値を意味することを意図しており、セルの電気化学に基づく。
【0019】
セルまたはバッテリーの実際の測定電圧は、セルまたはバッテリーが放電するにつれて低下する。さらに、例えば、製造中、またはセルもしくはバッテリーの寿命の間に、この公称セル電圧値からの変動が生じ得ることは、理解されるであろう。変動は、セルまたはバッテリーの使用中の老化の間にもっとも顕著であることができる。しかしながら、当業者なら理解するように、セルまたはバッテリーに割り当てられた公称セル電圧は一定のままである、すなわち、割り当てられた公称電圧は、上記のように実際の測定電圧が低下しても変化しない。
【0020】
2以上のナトリウムイオンセルはまた、典型的には、同じ電気化学的設計のものである。「同じ電気化学的設計」とは、それらが同じセル構造と同じセル化学成分の組み合わせを共有することを意味する。とりわけ、2以上のナトリウムイオンセルの電極/電解質化学成分、電力密度(単位質量または単位体積当たり)、およびエネルギー密度(単位質量または単位体積当たり)は、したがって、バッテリーへの最初の取り付け時には実質的に同じである。
【0021】
2以上のナトリウムイオンセルのすべてが同じ電気化学的設計および同じ公称電圧を有する結果、それらはナトリウムイオンバッテリーパック内で一斉に動作する、すなわち、2以上のナトリウムイオンセルは、最初はすべて実質的に同様に挙動する。このアレンジメントの利点は、ナトリウムイオンバッテリーパックの寿命がはるかに長くなる点である。
【0022】
本明細書で使用される場合、本発明のナトリウムイオンバッテリーパック内の1以上の電圧変換器は、ナトリウムイオンセルを含むナトリウムイオンバッテリーパックの出力電圧(端子電圧としても知られる)を、ナトリウムイオンバッテリーパックの外部にある任意の電子構成要素に許容可能なレベルに整合させる(好ましくはブーストする)手段を提供する。これは、セルの完全放電が広い電圧ウィンドウにわたってのみ起こる硬質炭素アノードを含むナトリウムイオンセルに、とりわけ有用である。
【0023】
いくつかの態様において、本発明は2以上の電圧変換器を使用する。これらは、例えば、物理的および/もしくは性能的特性、ならびに/またはタイプ、ならびに/または動作モードに関して、同じであるか、類似しているか、または互いに完全に異なってることができる。
【0024】
いくつかの態様において、1以上の電圧変換器のそれぞれは、個々のセルに別々に接続される。それに加えて、または代替的に、1以上の電圧変換器のそれぞれは、1より多くのセルに接続されることができる。1以上の電圧変換器は、1以上のナトリウムイオンセルを含むナトリウムイオンバッテリーの内側および/または外側に接続されることができる。
【0025】
低電圧のセル内のエネルギーがより高い電圧に変換されない場合、それは使用に利用することができず、したがって、これはセルの有効比エネルギーに悪影響を及ぼすことになる。低電圧(<60~70%セルVmax)でナトリウムイオンセルに残存する(したがって無駄になる)エネルギーは、セル内の全エネルギーの14%にも達する可能性がある。
【0026】
したがって、もっとも理想的には、ナトリウムイオンパックの直列に接続されている1以上のナトリウムイオンセルの両端間で測定される電圧が≦60%(好ましくは≦70%)バッテリーVmaxであるときに、ナトリウムイオンバッテリーパックの端子電圧を>60%(好ましくは>70%)バッテリーVmaxに上昇させるために、1以上の電圧変換器を提供する。
【0027】
「バッテリーVmax」はセルVmaxにパック内の直列セル数を乗じたものであり、1以上の電圧変換器の非存在下におけるそのようなセルの総電圧に関連する。したがって、これは、1以上の電圧変換器の非存在下におけるバッテリーの最大動作電圧である。
【0028】
表1を参照して説明した「セルVmax」は、1以上の電圧変換器の非存在下におけるセル自体の最大動作電圧である。
ナトリウムイオンバッテリーパックの端子電圧は、ナトリウムイオンバッテリーパック内の直列に接続されている1以上のナトリウムイオンセルの両端間で測定される電圧に相当する。
【0029】
好ましくは、1以上の電圧変換器の効率は、変換時に得られるエネルギーが、抵抗加熱およびスイッチングによって1以上の電圧変換器で失われるエネルギーよりも大きくなるようなものである、すなわち、電圧変換のエネルギー効率は高くなければならない。さらに、1以上の電圧変換器の質量は、1以上の電圧変換器の質量の影響が、「アップコンバージョン」からの比エネルギーへの追加的な寄与を上回らないようなものであることが好ましい。同様の議論は、パックと1以上の電圧変換器との総体積に当てはまる。
【0030】
好ましい電圧変換器はDC/DC変換器であり、これは、1つの電圧レベルの直流源を別の電圧レベルに変換する電子回路または電気化学的機器を一般に含む電力変換器の一種である。とりわけ好ましくは、DC/DC変換器は、電力が順方向および逆方向の両方に流れることを可能にする双方向DC/DC変換器である。典型的なDC/DC変換器としてはブースト変換器およびバック/ブースト変換器が挙げられるが、本発明はこれら2つのタイプに限定されない。一般的に言えば、ブースト変換器はDC電源からの電圧を上昇させる一方、バック/ブースト変換器は出力電圧を上昇および低下させる。
【0031】
電圧変換器回路構成(circuitry)に応じて、1以上の電圧変換器(例えば、DC/DC変換器)は、一定の出力電圧をもたらすか、または既存もしくは既知の電圧プロファイルを再現する。1以上の電圧変換器は、特に少なくとも1つがDC/DC変換器である場合、スタンドアローン型回路構成の一部であることができ(以下の実施例で使用されるように)、または、バッテリー管理システム(BMS)のような別の構成要素に組み込まれているか、もしくは連結されていることができる。したがって、いくつかの態様において、本発明は、バッテリー管理システム(BMS)をさらに含む。
【0032】
本明細書で使用される場合、本文脈における「バッテリー管理システム」(BMS)という用語は、一般にエネルギー貯蔵機器の管理システムも包含する。バッテリー管理システムは、再充電可能なバッテリー(セルまたはバッテリーまたはエネルギー貯蔵機器)を、例えば、安全動作領域外での動作からそれを保護すること、バッテリーの状態をモニタリングすること(エネルギー貯蔵機器)、二次データを計算し、そのデータを報告し、それを、例えば、それぞれのセル内の電荷のリバランスにより使用して、バッテリーの性能を制御すること(エネルギー貯蔵機器)によって、管理する電子システムである。本発明のナトリウムイオンバッテリーパックに使用されるナトリウムイオンセルは、セルの充電/放電性能を損なうことなく少なくとも0ボルトまで安全に放電することができるので、関連するバッテリー管理システムは、安全動作領域の下限のモニタリングに関わる必要がなく、または、これら低レベルで電荷を均等化するための手段を実行する必要がないが、それにもかかわらず、ナトリウムイオンセルを最高充電で管理することは重要である。したがって、BMSは、典型的には個々のセル電圧、電流および温度をモニタリングし、バッテリー安全システムを制御し、好ましくは、セルバランシングを採用する。
【0033】
有利には、1以上の電圧変換器は、少なくとも1つのナトリウムイオンセルまたはバッテリーパックの質量を不必要に増加させず、したがって、ナトリウムイオンバッテリーパックの使用可能な比エネルギーは、少なくとも1つのナトリウムイオンセル単独の使用可能な比エネルギーよりも確実に高い。本発明は、好ましくは、重量が軽く、抵抗加熱およびスイッチングによって失われるエネルギーの量が非常に少ない高効率の1以上の電圧変換器を採用する。
【0034】
DC/DC変換器は、リチウムイオンセルの出力電圧が特定の応用/機器の電圧要件に確実に合致するように、リチウムイオンセルと組み合わせて使用するほか、電子応用機器内で使用することも知られているが、今日まで、ナトリウムイオンバッテリーパックの外部の電子構成要素(例えば、電子応用機器)に許容可能なレベルにナトリウムイオンバッテリーパックの出力電圧を整合させる手段を提供するための、1以上のナトリウムイオンセルおよび1以上の電圧変換器(そのうちの少なくとも1つは、DC/DC変換器であることが好ましい)を含むバッテリーパックの先行開示はない。さらに、今日まで、ナトリウムイオンバッテリーパックの特定の設計が、バッテリーパックに採用される少なくとも1つのナトリウムイオンセルからの利用可能な全エネルギーの増加を提供することができることを記載する従来技術の開示も、ナトリウムイオンバッテリーパックの特定の設計が、ナトリウムイオンバッテリーパックからの利用可能な比エネルギーの増加を提供することができることを記載する開示も、体積エネルギー密度の増大を達成することができるナトリウムイオンバッテリーパックの特定の設計の開示もない。
【0035】
したがって、本発明は、1以上のナトリウムイオンセルおよび1以上の電圧変換器(そのうちの少なくとも1つは、上記のようなDC/DC変換器であることが好ましい)を含むナトリウムイオンバッテリーパックであって、ナトリウムイオンバッテリーパックの送達可能な比エネルギーが以下の条件を満たす、前記ナトリウムイオンバッテリーパックを提供する(その使用を含む):
(バッテリーVmaxと0Vとの間のエネルギー差)×(1以上の電圧変換器の効率)/(1以上のナトリウムイオンセルの質量+1以上の電圧変換器の質量)>(バッテリーVmaxと60~70%バッテリーVmaxとの間のエネルギー差)/1以上のナトリウムイオンセルの質量;
該バッテリーVmaxは、1以上の電圧変換器の非存在下で1以上のナトリウムイオンセルを含むナトリウムイオンバッテリーパックの最大出力電圧として決定される。
【0036】
好ましくは、ナトリウムイオンバッテリーパックの送達可能な比エネルギーは、以下の条件を満たす:
(バッテリーVmaxと0Vとの間のエネルギー差)×(1以上の電圧変換器の効率)/(1以上のナトリウムイオンセルの質量+1以上の電圧変換器の質量)>(バッテリーVmaxと60~65%バッテリーVmaxとの間のエネルギー差)/1以上のナトリウムイオンセルの質量;
該バッテリーVmaxは、1以上の電圧変換器の非存在下で1以上のナトリウムイオンセルを含むナトリウムイオンバッテリーパックの最大出力電圧として決定される。
【0037】
誤解を避けるために、本明細書で使用される場合、1以上の電圧変換器の非存在下で1以上のナトリウムイオンセルを含むナトリウムイオンバッテリーパックの最大出力電圧、すなわちバッテリーVmaxは、ナトリウムイオンバッテリーパックの初期設計最大電圧として定義される。このような初期設計最大電圧が典型的にはパックのサイクル寿命にわたって低下するという事実は、厳密に言えば、本出願人のバッテリーVmaxの定義において無視される。
【0038】
他の態様において、本発明は、1以上のナトリウムイオンセルおよび1以上の電圧変換器(そのうちの少なくとも1つは、上記のようなDC/DC変換器であることが好ましい)を含むナトリウムイオンバッテリーパックであって、体積エネルギー密度が以下の条件を満たす、前記ナトリウムイオンバッテリーパックを提供する(その使用を含む):
(バッテリーVmaxと0Vとの間のエネルギー差)×(1以上の電圧変換器の効率)/(少なくとも1つのナトリウムイオンセルの体積+1以上の電圧変換器の体積)>(バッテリーVmaxと60~70%バッテリーVmaxとの間のエネルギー差)/少なくとも1つのナトリウムイオンセルの体積;
該バッテリーVmaxは、1以上の電圧変換器の非存在下で1以上のナトリウムイオンセルを含むナトリウムイオンバッテリーパックの最大出力電圧として決定される。
【0039】
好ましくは、体積エネルギー密度は、以下の条件を満たす:
(バッテリーVmaxと0Vとの間のエネルギー差)×(1以上の電圧変換器の効率)/(1以上のナトリウムイオンセルの体積+1以上の電圧変換器の体積)>(バッテリーVmaxと60~65%バッテリーVmaxとの間のエネルギー差)/1以上のナトリウムイオンセルの体積;
該バッテリーVmaxは、1以上の電圧変換器の非存在下で1以上のナトリウムイオンセルを含むナトリウムイオンバッテリーパックの最大出力電圧として決定される。
【0040】
さらなる態様において、本発明は、1以上の電圧変換器の非存在下で1以上のナトリウムイオンセルを含むナトリウムイオンバッテリーパックであることができる場合のときの送達可能な比エネルギーまたは送達可能な体積エネルギー密度よりも少なくとも3%(好ましくは少なくとも5%)高い送達可能な比エネルギーまたは送達可能な体積エネルギー密度を有するナトリウムイオンバッテリーパックを生産するために、1以上の電圧変換器(好ましくは上記のようなDC/DC変換器)を1以上のナトリウムイオンセルと組み合わせて使用することを提供する。
【0041】
他のさらなる態様において、本発明は、ナトリウムイオンバッテリーパックの直列に接続されている1以上のナトリウムイオンセルの両端間で測定される電圧が≦60%(好ましくは≦70%)バッテリーVmaxであるときに、ナトリウムイオンバッテリーパックの端子電圧を>60%(好ましくは>70%)バッテリーVmaxに上昇させるための、本発明によるナトリウムイオンバッテリーパックの使用を提供する。
【0042】
先に説明したように、「バッテリーVmax」は、セルVmaxにパック内の直列セル数を乗じたものであり、このようなセルの総電圧に関連する。
これに加えて、または代替的に、1以上の電圧変換器は、ナトリウムイオンパックの1以上のナトリウムイオンセルのセル電圧が≦60%(好ましくは≦70%)セルVmaxであるときに、ナトリウムイオンバッテリーパックの端子電圧を>60%(好ましくは>70%)バッテリーVmaxに上昇させるために提供される。同様に先に説明したように、「セルVmax」は、セル自体の最大動作電圧である。
【0043】
上記を要約すると、別のさらなる態様において、本発明は、ナトリウムイオンバッテリーパックの直列に接続されている1以上のナトリウムイオンセルの両端間で測定される電圧が≦60%Vmaxであるときに、ナトリウムイオンバッテリーパックの端子電圧を>60%バッテリーVmaxに上昇させるための、上記のようなナトリウムイオンバッテリーパックの使用を提供する。この前者の場合のVmaxは、バッテリーVmaxおよび/またはセルVmaxと解釈すべきである。
【0044】
他の好ましい態様において、本発明は、1以上のナトリウムイオンセルを含むバッテリーからの利用可能なエネルギー、好ましくは比エネルギーにアクセスする方法であって、以下の段階を含む方法を提供する:
a)1以上の電圧変換器および1以上のナトリウムイオンセルを含むナトリウムイオンバッテリーパックを提供する段階、該1以上のナトリウムイオンセルは、>0.0~<2.0Vの範囲のセルVminと、>3.60V~<4.30Vの範囲のセルVmaxとの間で動作可能であり;さらに、該ナトリウムイオンバッテリーパックが2以上のナトリウムイオンセルを含む場合、2以上のナトリウムイオンセルはすべて、同じセル公称電圧プロファイルおよび同じ電気化学的設計を有する;
b)バッテリーパックを電子応用機器と関連付けるか、または統合する段階;および
c)1以上の電圧変換器の少なくとも1つを直接的または間接的に動作させて、ナトリウムイオンバッテリーパックの出力電圧をバッテリーVmaxの60%超、好ましくはバッテリーVmaxの70%超に上昇させる段階;
該バッテリーVmaxは、1以上の電圧変換器の非存在下で1以上のナトリウムイオンセルを含むナトリウムイオンバッテリーパックの最大出力電圧として決定される。
【0045】
この方法において、1以上の電圧変換器は、直接的または間接的に動作させることができる。
間接的動作では、例えば、応用機器の電力要件に応えて(例えば、BMSまたは他のコンピューターソフトウェアによって)生成される信号を使用することができる。これに加えて、1以上の電圧変換器は、電子応用機器の動作電圧範囲の一部、全体、または外側(例えば、最小動作電圧未満)にわたって、必要とされる出力電圧プロファイルに応じて、連続的または断続的に動作させることができる。
【0046】
好ましくは、1以上の電圧変換器は、1以上のナトリウムイオンセルの出力電圧がVmaxの70%以下であるときに動作させる。非常に好ましくは、1以上の電圧変換器は、1以上のナトリウムイオンセルの出力電圧がVmaxの60%以下であるときに動作させる。
【0047】
当業者なら、1以上の電圧変換器(そのうちの少なくとも1つは、DC/DC変換器であることが好ましい)が応答時間を有すること、そして、変換器がエネルギーを消費するにつれ1以上の変換器において電圧の一部が失われるので、1以上の変換器が例えば放電サイクルにおいてVmaxの60%未満の電圧を確実に上昇させるためには、1以上の変換器のうちの少なくとも1つが、望ましい電圧に達する少し前、例えば電圧がVmaxの60%に到達する少し前にスイッチオンされることが有益であることを、よく知っているであろう。
【0048】
他の好ましい態様において、本発明は、1以上の電圧変換器の非存在下で1以上のナトリウムイオンセルを含むナトリウムイオンパックの利用可能および/または送達可能な比エネルギーならびに/あるいは送達可能な体積エネルギー密度を少なくとも3%(好ましくは少なくとも5%)増大させるための、本発明によるナトリウムイオンバッテリーパックの使用を提供する。
【0049】
好ましくは、1以上の電圧変換器(好ましくは、少なくとも1つのDC-DC変換器を含む)は、低電圧(例えば、<3.5~<2.5ボルト)で利用可能なエネルギーのすべて、または実質的にすべて(好ましくは少なくとも90%、非常に好ましくは少なくとも95%)を、予め決定された狭くてより高電圧のウィンドウ(例えば、4.2V~3.5Vまたは4.2~2.5V)内で利用可能なエネルギーに、効率的に、高いコスト効果で、不必要な質量なしで、変換することができる。有利には、本発明は、1.5Vの最小セル電圧で利用可能なセルエネルギーの94~95%を、2.4V~4.2Vの電圧ウィンドウ内で利用可能なエネルギーへ変換することを達成する。本発明は、理想的には、静的貯蔵システムおよびモバイルシステムでの使用に適している。
【0050】
さらに好ましい態様において、本発明は、静的または固定的応用(大規模エネルギー貯蔵など)、バックアップ電源、およびポータブル型(モバイル型)応用(モバイル型の電話、コンピューター、タブレットなどのほか、電気自動車用の始動、点灯および点火(SLI)バッテリーおよびモーター駆動における応用など)に応用可能な電子応用機器に、とりわけ、このような電子応用機器のバッテリーパック出力電圧が低電圧(例えば、バッテリーVmaxの≦70%、好ましくは≦60%)であるときに、接続して使用するのに非常に適したナトリウムイオンバッテリーパックを提供する。したがって、本発明は、本発明によるナトリウムイオンバッテリーパックと統合または関連付けられる電子応用機器を提供する。
【0051】
本明細書で使用される「ナトリウムイオンセル」は、任意の二次ナトリウムイオン電気化学セルを意味するものとして定義され、適した例としては、非水性ナトリウムイオンセル、水性ナトリウムイオンセル、ナトリウム空気セルおよびナトリウム酸素セルが挙げられる(ただし、本発明はこれらの例に限定されない)。複数のこのような電気化学セルは、任意の小規模または大規模エネルギー貯蔵機器、例えば、限定されるものではないが、バッテリー、バッテリーモジュール、電気化学的機器、およびエレクトロクロミックデバイスにおいて利用することができる。本発明による「ナトリウムイオンバッテリーパック」という用語は、上記のように1以上の電圧変換器と関連付けられるか、統合されるか、または組み合わせて使用される、任意のそのような小規模または大規模エネルギー貯蔵機器を包含する。典型的には、パックは、容器と、有利には安全システムおよびバッテリー管理システムとを含む。
【0052】
典型的には、本発明のバッテリーパックに使用されるナトリウムイオンセルは、i)負極材料および負極集電体を含む負極と、ii)正極材料および正極集電体を含む正極とを有する。適した負極材料としては、非晶質炭素、硬質炭素、ケイ素、および他の任意の材料、例えば、スズ、ゲルマニウム、またはアンチモンなどの合金化金属が挙げられ、それらの構造は、充電/放電中のナトリウムイオンの挿入/除去が可能になるように適合されている。有利には、負極集電体および正極集電体は、低電圧(すなわち、上記の好ましいセル電圧範囲内)および/もしくは低充電状態(例えば、20%未満の充電状態)の条件下で安定であり、ナトリウムに溶解せず、またはナトリウムと合金化しない、1以上の導電性材料を含む。好ましくは、1以上の導電性材料は、ナトリウムと合金化および/または他の形で反応せず、単独で、またはさまざまな量の1以上の他の元素との組み合わせで、純粋な形態にあるか、合金または混合物として不純な形態にあることができる。さらに好ましくは、1以上の導電性材料のうちの少なくとも1つは、銅、アルミニウム、およびチタンから選択される1以上の金属を含む。理想的には、集電体の一方または両方が、単独で、またはさまざまな量の1以上の他の元素との組み合わせで、純粋な形態、または合金もしくは混合物としての不純な形態で、アルミニウムを含む。例えば、不純または家庭用グレードの供給源からの低グレードのアルミニウムが特に好ましく、これにより、明らかに重要な商業的利点が達成される。炭素コーティングされた負極集電体は、活性負極材料と負極集電体との間のより良好な付着、ひいてはより低い接触抵抗をもたらすなどの便益を生み出すので、同様に有用である。炭素コーティングを含む集電体もまた、速度性能を改善することが見出され、これにより、電流が迅速に充電/放電されることが可能になる。ナトリウムイオンセルが、炭素コーティングを含む正極集電体を包含する場合、同様の利点が得られる。炭素コーティングされた正極および負極集電体を包含するナトリウムイオンセルは、特に電気的に効率的である。
【0053】
本発明のナトリウムイオンセルに使用される正極(カソード)材料としては、充電および放電中にナトリウムイオンがインターカレートおよびデインターカレートすること(それらの格子または層状構造に入ることおよび出ること)を可能にする任意の材料が挙げられる。適切な例としては、TiSなどの金属硫化物化合物、金属酸化物化合物、リン酸塩含有化合物、ポリアニオン含有化合物、プルシアンブルー類似体、および以下の一般式のニッケル酸塩または非ニッケル酸塩化合物が挙げられる:
1±δ 2-c
[式中、
Aは、ナトリウム、カリウムおよびリチウムから選択される1以上のアルカリ金属であり;
は、酸化状態+2の1以上の酸化還元活性金属、好ましくは、ニッケル、銅、コバルトおよびマンガンから選択される酸化状態+2の1以上の酸化還元活性金属を含み;
は、0より大きく+4以下の酸化状態の金属を含み;
は、酸化状態+2の金属を含み;
は、0より大きく+4以下の酸化状態の金属を含み;
は、酸化状態+3の金属を含み;
0≦δ≦1;
Vは>0であり;
W≧0であり;
Xは≧0であり;
Yは≧0であり;
WおよびYの少なくとも1つは>0であり、
Zは≧0であり;
Cは、0≦c<2の範囲にあり、
V、W、X、Y、ZおよびCは、電気化学的中性を維持するように選択される]。
【0054】
理想的には、金属Mは1以上の遷移金属を含み、好ましくは、マンガン、チタンおよびジルコニウムから選択され;Mは、好ましくは、マグネシウム、カルシウム、銅、スズ、亜鉛およびコバルトから選択される1以上であり;Mは、好ましくはマンガン、チタンおよびジルコニウムから選択される1以上の遷移金属を含み;Mは、好ましくは、アルミニウム、鉄、コバルト、スズ、モリブデン、クロム、バナジウム、スカンジウムおよびイットリウムから選ばれる1以上である。任意の結晶質構造を有するカソード活性材料を使用することができ、その構造は、O3またはP2またはそれらの誘導体であることが好ましいが、特に、カソード材料が相の混合物を含む、すなわち、いくつかの異なる結晶質形態で構成される不均一な構造を有することも可能である。層状金属酸化物カソード材料が特に好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0055】
ここで、以下の図面を参照して本発明を説明する:
図1図1は、参照実験1で使用されるナトリウムイオンバッテリー(電圧変換器なし)の概略図であり、このバッテリーは、負荷に直接的に給電するために使用される。
図2図2は、参照実験1による、295Wの負荷に接続され、56V~35Vの動作ウィンドウ内で放電された、ナトリウムイオンバッテリー(電圧変換器あり)の放電電圧プロファイルを示す。
図3図3は、実験2で使用した本発明によるナトリウムイオンバッテリーパックの概略図である。このバッテリーパックでは、バッテリーパックが56Vから35Vの間で動作するときにDC/DC変換器が採用され、結果は、DC/DC変換器のスイッチングおよび加熱によるシステム内の損失を明示している。
図4図4は、実験2による、295Wの負荷に接続され、56V~35Vの動作ウィンドウ内で放電された、本発明によるNaイオンバッテリーパック(電圧変換器あり)の放電プロファイルを示す。この場合のバッテリーパックの出力電圧は、48Vで一定である。比較のために、参照実験1(電圧変換器なし)からの電圧プロファイルも示す。
図5図5は、実験3で使用した本発明によるナトリウムイオンバッテリーパックの概略図である。
図6図6は、実験3による、295Wの負荷に接続され、56V~18Vの動作ウィンドウ内で放電された、本発明によるNaイオンバッテリーパック(電圧変換器あり)の放電プロファイルを示す。この場合のバッテリーパックの出力電圧は、48Vで一定である。比較のために、参照実験1および参照実験2からの電圧プロファイルも示す。
図7図7は、計算Bで使用される、本発明によるナトリウムイオンバッテリーパックのシミュレーションモデルの概略図であり、バッテリーパックは56Vから18Vの間で放電されるが、DC/DC変換器は38V未満でのみ使用されることを前提としている。結果は、DC/DC変換器の追加によって生じるエネルギー損失は最小化されることを示す。
図8図8は、計算Bで使用される、295Wの負荷に接続され、56V~18Vの動作ウィンドウ内で放電された、本発明による仮想Naイオンバッテリーパック(電圧変換器を有する)の放電プロファイルのシミュレーションモデル(シミュレーションモデル2)を示し、電圧変換器は、放電電圧が38Vまで低下したときにのみ動作させる。
【発明を実施するための形態】
【0056】
以下の実験において、本発明によるバッテリーパックには、2つのタイプのバック/ブーストDC/DC変換器のうちの一方、すなわち、Mean Well Enterprises Co. Ltd.から入手可能なMeanWell SD-1000L-48変換器、またはVicor Corporationから入手可能な変換器のいずれかを採用する。これらの変換器は容易な入手可能性のために選ばれており、特定の性能および/または物理的特性のために選ばれたわけではなかった。適切な質量、効率、体積および電圧特性を有する任意の適した電圧変換器を、本発明によるナトリウムイオンバッテリーパックに用いることができることは、理解されるであろう。補完すると、MeanWell SD-1000L-48変換器は、入力電圧範囲が19V~72Vである幅広い入力電圧のバック/ブースト変換器であり、1.675kgの質量を有する。この変換器の寸法は、295mm×125mm×41mmである。
【0057】
Vicor Corporationから入手可能な変換器は、16V~50Vの入力ウィンドウおよび255gの重量を有する。この変換器の寸法は、85.93mm×35.50mm×9.4mmである。
【実施例
【0058】
一般的な実験方法
試験媒体として、安全システム、BMSなどと一緒に直列の14個のナトリウムイオンセルを含む、300Whのナトリウムイオンバッテリーパックを選択した。このパック内のセルはすべて同じセル公称電圧プロファイルおよび同じ電気化学的設計を有し、これは、それらが最初はすべて実質的に同様に挙動することを意味する。このパックを56Vまで充電した後、295Wの電子負荷を通して放電させた。パックのヒューズ取り付けおよび配線は、最大25アンペアの電流をとるように設計した。BMSからのデータ流を用いて放電中のパックの電圧を測定し、記録した。その結果を図2、4および6に示す。全エネルギー出力も測定した。各実験について収集したすべてのデータを以下の表2に示す。
【0059】
参照実験1-DC/DC変換器なしのパックのパック電圧下限35Vまでの放電。
図1に示すように、56Vから35Vへ放電するように設計された14S 1P 300Whナトリウムイオンバッテリーパックを、295Wの電子負荷に直接的に接続した。経時的に放電電圧を測定した。その結果を図2に示す。この実験(DC/DC変換器なし)は、下記の実験2および3の結果と比較するための参照またはベンチマークを提供する。これらの実験において、電子負荷は、バッテリーパックが放電し、増加していく電流を負荷が引いて一定の電力出力を維持するときに、電圧を降下させることに留意されたい。
以下の表2に示すように、参照実験1の全出力エネルギー、すなわち電子負荷による使用に利用可能なエネルギーは、322Whである。
【0060】
実験2-DC/DC変換器を通してのパックのパック電圧下限35Vまでの放電。
この試験は、48Vの一定出力をもたらすMeanWell SD-1000L-48 DC/DC変換器をパックと負荷の間に導入した点を除き、実験1と同じであった。実験2で試験するために設計されたナトリウムイオンバッテリーパックの概略図については、図3を参照されたい。バッテリーパックを56Vまで充電した後、35Vまで放電させた。バッテリー電圧プロファイルを経時的に測定した。その結果を参照実験1の電圧放電曲線とともに図4に示す。図4から、同じ電圧ウィンドウにわたってDC/DC変換器の使用によって生じるエネルギー損失があることが分かる。この場合、DC/DC変換器へのバッテリーパックエネルギー入力は322Wh、全出力エネルギーは297.5Whであった。これらの結果から、この電圧ウィンドウにわたるDC/DC変換器のエネルギー効率は92.38%であることがわかる。
注:この試験において、電子負荷は、放電の全体を通して48ボルトで一定になるにようにし、DC/DC変換器から一定の電流を引く。
【0061】
実験3-DC/DC変換器を用いた、パック電圧下限を18Vに設定しての放電。
試験セットアップは、ここではパック電圧の下限を18Vに設定した点を除き、実験2と同じであった。図5に示す概略図参照。バッテリーパックを56Vまで充電した後、18Vまで放電させた。バッテリー電圧プロファイルを経時的に測定した。その結果を図6に示す。また、参照実験1(変換器なし)からのベンチマーク放電電圧曲線、およびカットオフ電圧が35Vである実験2からの放電電圧曲線も示す。実験1および2に対し電子負荷の駆動時間が増大していることが図6からわかり、負荷は一定電力であったので、追加的なエネルギーは、この加わった駆動時間の関数である。
【0062】
この実験3において、DC/DC変換器へのバッテリーパックエネルギー入力は390.55Whであり、電子負荷に利用可能な全出力エネルギーは353.4Whであった。参照実験1と比較して、このDC/DC変換器の使用は、利用可能なエネルギーの9.75%の増加をもたらした。
この電圧ウィンドウにわたり、DC/DC変換器のエネルギー効率は90.49%であった。
【0063】
注:この試験において、電子負荷は、放電の全体を通して48ボルトで一定になるようにし、DC/DC変換器から一定の電流を引く。
【0064】
結果のまとめおよび分析
利用可能エネルギーの増加
以下の表2に示す結果によって示されるように、商業的DC/DC変換器の使用により、最小セル電圧をシステムまたはアプリケーションが許容しうる最小電圧と同じになるように設定した場合に比べ、より広いセル電圧ウィンドウにアクセスすることが可能になった。
【0065】
実験2の場合、利用可能なエネルギーの減少(-7.61%)は、その動作中に変換器がエネルギーを消費するためである。
実験3の場合、全エネルギー便益は、約10%の使用可能エネルギーの増加である((353.4-322)/322)。利用可能なエネルギーのこのような著しい増加により、ナトリウムイオンセルの使用において、これまで実現されていなかった重要な商業的利点を得ることが可能になるであろう。
【0066】
【表2】
【0067】
シミュレーションモデル1-計算A
より効率的なDC/DC変換器を使用すると、利用可能なエネルギーの向上のパーセンテージが上昇することが予想される。例えば、実験3の条件下で市販の変換器を使用するが、変換器の平均効率が97%であれば、全エネルギー増加量は17.5%になることが計算できる。
【0068】
シミュレーションモデル2-計算B(バッテリーパック電圧がバッテリーパックから給電されている応用機器の最小動作電圧に近づいた場合にのみ、DC/DC変換器を動作させる)
このシミュレーション実験は、実験3で使用したものと同一のバッテリーパック内のDC/DC変換器を、バッテリーパックの寄生負荷を低減するために、バッテリーパック電圧がカットオフ電圧に近づいたときにのみ動作させるときに、アクセス可能であると予想されるエネルギーの量をモデル化する。このシミュレーションモデルバッテリーパックの概略図を図7に示す。
【0069】
バッテリーパックから給電される応用機器が35Vの最小動作電圧を有し、バッテリーパックが38V(スイッチアウト(switching out)を防止するために35Vよりもわずかに高い)の見掛け電圧下限を有するように設計されていると仮定すると、バッテリーを最初に38Vの限界に達するまでは実験1(変換器なし)のように動作させ、18Vのバッテリー限界に達するまで38Vの負荷端子で一定電圧を引き継いで供給するようにDC/DC変換器を動作させることができれば、これが達成され得る。
【0070】
上記のように、このシミュレーション実験で使用されるバッテリーパックは実験3のものと同じであり、したがって、バッテリーパックは56V~18Vの同じ電圧ウィンドウで動作するため、バッテリーパック出力エネルギーは390.55Whとなる。
【0071】
また、実験3で収集したデータから、56Vと38Vの間のバッテリー出力エネルギーは299.9Whである。DC/DC変換器はこの電圧ウィンドウでは動作していないため、エネルギー損失はない。
【0072】
DC/DC変換器の効率を約90%と仮定すると、38V未満においてバッテリー出力電圧は38Vまでブーストされると予想される。この実施例に適した変換器としては、約90%の効率を有するVicor Corporation DCM3414x50M53C2yzzが挙げられる。図8は、この計算Bに基づく、Naイオンバッテリーパックのシミュレーションモデル放電プロファイルを示す。
【0073】
実験3について上記表2に示した結果から、38Vと18Vの間のバッテリー(DC/DC変換器あり)からの利用可能なエネルギーは、(390.55Wh-299.9Wh)=90.65Whである。したがって、負荷に利用可能な追加的エネルギーは90.65Wh×90%=81.6Whとなる
これにより、バッテリーパックとパートタイム式DC/DC変換器システムの全エネルギー出力は(299.9Wh+81.6Wh)=381.5Wh、全体的効率(56V~18Vの平均)は97.7%となる
したがって、このシミュレーションモデルの全出力エネルギーは、参照である実験1と比較して18.47%の増加を示す。これはまた、シミュレーションモデルAを上回る増加である
【0074】
シミュレーションモデル3-同様に計算B、ただし、バッテリーパックの利用可能な比エネルギー密度を高めるために、質量を減少させたDC/DC変換器を使用
利用可能な比エネルギー密度(Wh/Kg)の増大は、DC/DC変換器の重量を減少させる結果として得ることができる。Mean Well変換器は質量が大きいため、この目的に最適な変換器ではない(計算C参照)が、Vicor Corporationからの変換器(DCM3414x50M53C2yzz)は、重量が軽く、低電圧範囲においてMean Well変換器に匹敵する効率を有する。したがって、Vicor Power変換器を38V未満および18Vの範囲でのみ動作させると、56~38Vの間の利用可能なパック比エネルギー密度に約15%の増加がもたらされることが計算できる。上記表2より:((41.9-36.5)/36.5)×100)
【0075】
シミュレーションモデル4-計算D(利用可能なセル比エネルギー密度を増大させるために、質量を減少させたDC/DC変換器を使用した調査)
利用可能なセル比エネルギーおよび利用可能なパック比エネルギーの増加を確保することが好ましい。これは、それにより、パック設計においてより大きな柔軟性がもたらされるためである。重量が4.90kgであった実験1のセル単独と、同じセルを、38V未満および18Vの範囲でのみ使用されるVicor Power変換器とつなぎ、重量が全体で5.16kgであったものとを比較すると、56~38Vの間の利用可能なセル比エネルギー密度は65.7Wh/kg(322/4.9)から74Wh/kg(381.5/5.16)に増大し、13%増大している。
【0076】
シミュレーションモデル5-計算E(バッテリーパックの利用可能な体積エネルギー密度を増大させるために、体積を減少させたDC/DC変換器を使用した調査)
DC/DC変換器を使用した結果として体積エネルギー密度の増大を確保するためには、体積の小さな変換器を使用する必要がある。Vicor Corporation (DCM3414x50M53C2yzz)からの変換器は体積が小さく、良好な効率を有する。体積が6.696Lであった実験1のパック単独と、同じパックを、38V未満および18Vの範囲でのみ使用されるVicor Power変換器とつなぎ、体積が全体で6.725Lであったものとを比較すると、56~38Vの間の利用可能な体積エネルギー密度は実験1の48.1Wh/L(322/6.696)から56.7Wh/L(381.5/6.725)に増大し、利用可能なパック体積エネルギーの増大は18%増大である
【0077】
シミュレーションモデル6-計算F(利用可能なセル体積エネルギー密度を増大させるために、体積を減少させたDC/DC変換器を使用した調査)
利用可能なセル体積エネルギー密度および利用可能なパック体積エネルギー密度の増大を確保することが好ましい。これは、それにより、パック設計においてより大きな柔軟性がもたらされるためである。体積が4.416リットルであった実験1のセル単独と、同じセルを、38V未満および18Vの範囲においてのみVicor Power変換器とつなぎ、体積が全体で4.445リットルであったものとを比較すると、56~38Vの間の利用可能な体積エネルギー密度は実験1の72.9Wh/リットル(322/4.416)から85.8Wh/L(381.5/4.445)に増大し、利用可能なセル比エネルギー密度の増大は18%増大である。
【0078】
上記の作動中(live)のバッテリーパックおよびシミュレーションモデル実験で実証されるように、DC/DC変換器を包含させると、ナトリウムイオンバッテリーパックだけでなく、そのようなバッテリーパックが含有する個々のナトリウムイオンセルについても、利用可能なエネルギー、比エネルギー密度の予想外の増大、および体積エネルギー密度の増大がもたらされる。とりわけ意外なのは、DC/DC変換器を包含させることによってナトリウムイオンセルに重量(および体積)が加わる場合であっても、これらの改善された結果を得ることができ、それにもかかわらず、上記のシミュレーションモデルの計算が示すように、最適化された質量および効率を有するDC/DC変換器が使用される場合、さらに比エネルギー密度の増大さえも予想される点である。本発明によるナトリウムイオンバッテリーパックは、セル内に保持される、したがって無駄になるエネルギーを減少させ、充電サイクル間の時間を長くし、任意の特定用途に必要とされるセルを少なくするために、軽量および小型になる潜在性を有するため、これらの結果は商業的に非常に好都合である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【国際調査報告】