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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-03
(54)【発明の名称】キメラ抗原受容体の最適化
(51)【国際特許分類】
   C07K 14/725 20060101AFI20230327BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20230327BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20230327BHJP
   C07K 16/00 20060101ALI20230327BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20230327BHJP
【FI】
C07K14/725 ZNA
C12N5/10
C07K19/00
C07K16/00
C12N15/12
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022549228
(86)(22)【出願日】2021-02-09
(85)【翻訳文提出日】2022-08-12
(86)【国際出願番号】 CN2021076247
(87)【国際公開番号】W WO2021160124
(87)【国際公開日】2021-08-19
(31)【優先権主張番号】202010091790.4
(32)【優先日】2020-02-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522322815
【氏名又は名称】ベイジン イムノチャイナ ファーマシューティカルズ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(74)【代理人】
【識別番号】100136249
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 貴光
(72)【発明者】
【氏名】キ フェイフェイ
(72)【発明者】
【氏名】ヘ ティン
(72)【発明者】
【氏名】ルー シンアン
(72)【発明者】
【氏名】ディン ヤンピン
(72)【発明者】
【氏名】ション フイン
(72)【発明者】
【氏名】リアン メンメン
【テーマコード(参考)】
4B065
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065CA24
4B065CA25
4B065CA44
4H045AA10
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA50
4H045DA76
4H045FA72
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、キメラ抗原受容体、特に細胞内シグナル伝達ドメインの最適化に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
CD3ζ由来の改変シグナル伝達ドメインであって、
天然配列と比較して、前記改変シグナル伝達ドメインは、免疫受容体チロシン活性化モチーフにおける一つまたは複数のチロシンリン酸化部位の突然変異を含み、
任意選択的に、前記チロシンリン酸化部位は、配列番号:4のY21、Y32、Y59、Y71、Y90およびY101に対応する残基から選択され、
任意選択的に、前記突然変異は欠失または置換である、
ことを特徴とする、改変シグナル伝達ドメイン。
【請求項2】
Y90が削除されるかまたはFで置換され、特にY90がFで置換される、請求項1に記載の改変シグナル伝達ドメイン。
【請求項3】
CD3ζ由来の改変シグナル伝達ドメインであって、
天然配列と比較して、前記改変シグナル伝達ドメインが、膜近傍領域における一つまたは複数のアミノ酸残基の突然変異を含み、
任意選択的に、前記膜近傍領域のアミノ酸残基は、配列番号:4のR1、V2、K3、F4、S5、R6、S7、A8、D9、A10、P11、A12、Y13、Q14、Q15、G16、Q17およびN18に対応する残基から選択され、
任意選択的に、前記突然変異は欠失または置換である、
ことを特徴とする、改変シグナル伝達ドメイン。
【請求項4】
V2が削除またはLで置換され、D9が削除またはEで置換され、および/またはQ15が削除またはKで置換され、特にQ15がKで置換される、請求項3に記載の改変シグナル伝達ドメイン。
【請求項5】
CD3ζ由来の改変シグナル伝達ドメインであって、
天然配列と比較して、前記改変シグナル伝達ドメインは、免疫受容体チロシン活性化モチーフにおける一つまたは複数のチロシンリン酸化部位の突然変異を含み、
任意選択的に、前記チロシンリン酸化部位は、配列番号:4のY21、Y32、Y59、Y71、Y90およびY101に対応する残基から選択され、
且つ、前記改変シグナル伝達ドメインが、膜近傍領域の一つまたは複数のアミノ酸残基の突然変異を含み、
任意選択的に、前記膜近傍領域におけるアミノ酸残基は、配列番号:4のR1、V2、K3、F4、S5、R6、S7、A8、D9、A10、P11、A12、Y13、Q14、Q15、G16、Q17およびN18に対応する残基から選択され、
任意選択的に、前記突然変異は欠失または置換である、
ことを特徴とする、改変シグナル伝達ドメイン。
【請求項6】
改変シグナル伝達ドメインがY90F置換を含み、且つV2L、D9Eおよび/またはQ15K置換のうちの一つまたは複数を含み、特にV2L、Q15KおよびY90F置換、またはV2L、D9E、Q15KおよびY90F置換を含む、請求項5に記載の改変シグナル伝達ドメイン。
【請求項7】
配列番号:6、8または10に示されるアミノ酸配列を含むか、本質的にそれからなるか、またはそれからなる、CD3ζ由来の改変シグナル伝達ドメイン。
【請求項8】
CD3ζ由来のシグナル伝達ドメインを改変する方法であって、
CD3ζシグナル伝達ドメインの免疫受容体チロシン活性化モチーフ内の一つまたは複数のチロシンリン酸化部位を突然変異させる工程、および/または
CD3ζシグナル伝達ドメインの膜近傍領域における一つまたは複数のアミノ酸残基を突然変異させる工程を含む、方法。
【請求項9】
請求項1から7のいずれか一項に記載の改変シグナル伝達ドメインまたは請求項8に記載の方法によって得られた改変シグナル伝達ドメインを含む、キメラ抗原受容体。
【請求項10】
請求項9に記載のキメラ抗原受容体を含む、動物細胞。
【請求項11】
CD3ζ由来のシグナル伝達ドメインを含むキメラ抗原受容体を最適化する方法であって、
CD3ζシグナル伝達ドメインの免疫受容体チロシン活性化モチーフ内の一つまたは複数のチロシンリン酸化部位を突然変異させる工程、および/または
CD3ζシグナル伝達ドメインの膜近傍領域における一つまたは複数のアミノ酸残基を突然変異させる工程を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キメラ抗原受容体(Chimeric Antigen Receptor,CAR)の最適化、特に細胞内シグナル伝達ドメインの改変に関する。
【背景技術】
【0002】
CAR-T技術は、抗体の特異性とT細胞の殺傷効果を組み合わせて、養子免疫の効果的な方法を形成する(Benmebarek et al., Int. J. Mol. Sci. 20: 1283, 2019)。最初のCARは通常、細胞外抗原結合ドメイン、ヒンジ領域、膜貫通領域、および細胞内シグナル伝達ドメインで構成される(Gross et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86: 10024-10028, 1989;Eshhar et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90: 720-724, 1993)。第2世代のCARは通常、膜貫通領域と細胞内シグナル伝達ドメインの間に位置する細胞内共刺激ドメインを追加する(Imai et al., Leukemia 18: 676-684, 2004;Zhao et al., Cancer Cell 28: 415-428, 2015)。第3世代のCARは、二つの共刺激ドメインを追加する(Zhong et al., Mol. Ther. 18: 413-420, 2010)。CAR-T技術は血液腫瘍の治療に大きな成功を獲得しているが、反応しない、または反応後に再発する患者もおり、治療効果の持続性と毒性の副作用にはまだ欠陥がある。さらに、CAR-Tは、固形腫瘍の治療において、治療効果の制限やオフターゲット効果など、さらに多くの障害に直面している。CAR-Tの治療効果と安全性に関する二つの重要な問題は、1)CAR-Tの体内での増幅と持続性が不十分であること;及び2)CAR-Tは、サイトカインストーム、神経毒性、オフターゲット効果などの毒性の副作用を引き起こす可能性があることである。
【0003】
上記現象の原因は、現在のCAR分子で使用されている各部品が基本的に野生型であり、その結果、抗原認識ドメインが標的分子に結合するときに免疫シナプスの形成に最適な結合状態に達しない可能性があり、または、免疫シナプス形成後の細胞内へのシグナル伝達が強すぎるか弱すぎるため、CAR-T細胞の体内での生存、増幅、腫瘍細胞殺傷性能の持続、および免疫系全体の機能調節に影響を与え、最終的には臨床治療効果と安全性の違いに反映されるためである。
【0004】
本発明は、CAR分子、特に細胞内シグナル伝達ドメインを最適化することにより、CAR-T細胞の体内での増幅効率および持続時間を改善し、腫瘍殺傷効率を高め、そして毒性の副作用を低減し、最終的に臨床効果の改善、病気の再発と副作用の減少の目的を達成する。
【発明の概要】
【0005】
本発明の一態様は、CD3ζ由来のシグナル伝達ドメインを改変する方法に関する。一実施形態では、この方法は、CD3ζシグナル伝達ドメインの免疫受容体チロシン活性化モチーフ(immunoreceptor tyrosine-based activation motif)における一つまたは複数のチロシンリン酸化部位を突然変異させることを含む。別の実施形態では、この方法は、CD3ζシグナル伝達ドメインの膜近傍領域(near-membrane region)における一つまたは複数のアミノ酸残基を突然変異させることを含む。さらに別の実施形態では、この方法は、CD3ζシグナル伝達ドメインの免疫受容体チロシン活性化モチーフにおける一つまたは複数のチロシンリン酸化部位を突然変異させること、およびCD3ζシグナル伝達ドメインの膜近傍領域における一つまたは複数のアミノ酸残基を突然変異させることを含む。本発明はまた、前記方法によって得られた改変シグナル伝達ドメインに関する。
【0006】
本発明の一態様は、CD3ζ由来の改変シグナル伝達ドメインに関する。一実施形態では、改変シグナル伝達ドメインは、免疫受容体チロシン活性化モチーフにおける一つまたは複数のチロシンリン酸化部位の突然変異を含む。別の実施形態では、改変シグナル伝達ドメインは、膜近傍領域における一つまたは複数のアミノ酸残基の突然変異を含む。さらに別の実施形態では、改変シグナル伝達ドメインは、免疫受容体チロシン活性化モチーフにおける一つまたは複数のチロシンリン酸化部位の突然変異、および膜近傍領域における一つまたは複数のアミノ酸残基の突然変異を含む。
【0007】
本発明の一態様は、キメラ抗原受容体を最適化する方法に関する。この方法は、一つのステップとして、CD3ζ由来のシグナル伝達ドメインを改変する上記の方法を含む。本発明のキメラ抗原受容体を最適化する方法(具体的には、CD3ζ由来のシグナル伝達ドメインを改変する方法)は、単独で、またはキメラ抗原受容体を最適化する他の方法(例えば、共刺激ドメインを改変する方法)と組み合わせて使用することができる。本発明はまた、前記方法によって得られる最適化されたキメラ抗原受容体に関する。
【0008】
本発明の一態様は、最適化されたキメラ抗原受容体に関する。このキメラ抗原受容体は、一つの部品として、上記のCD3ζ由来の改変シグナル伝達ドメインを含む。本発明の最適化されたキメラ抗原受容体は、CD3ζ由来の改変シグナル伝達ドメインだけでなく、改変共刺激ドメインなどの他の改変された部品も含み得る。
【0009】
本発明の一態様は、本発明の改変シグナル伝達ドメインを含むキメラ抗原受容体に関する。本発明の一態様は、本発明のキメラ抗原受容体を含む動物細胞に関する。一実施形態では、動物は哺乳動物(例えば、イヌ、ネコ、ブタ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、およびウマ)である。一実施形態では、動物は、げっ歯類(例えば、マウス、ラット、ハムスター、モルモット、およびウサギ)または非ヒト霊長類(例えば、サル、類人猿、およびチンパンジー)である。一実施形態では、動物はヒトである。一実施形態では、前記細胞は、T細胞、B細胞またはNK細胞などのリンパ球である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、CAR分子の部品とそれらのCAR-T機能への影響を示す。
図2図2は、ベクトルpLenti-CARの構造概略図を示す。
図3図3は、抗原刺激を受けた後のCD3ζ非改変(CD3ζ-0)CAR-T細胞とCD3ζ改変(CD3ζ-3、CD3ζ-12およびCD3ζ-14)CAR-T細胞の増殖速度の比較を示す。
図4図4は、CD3ζ非改変(CD3ζ-0)CAR-T細胞とCD3ζ改変(CD3ζ-3、CD3ζ-12およびCD3ζ-14)CAR-T細胞の抗原刺激後細胞培養10日目のPD-1+LAG-3+細胞の比率の比較を示す。
図5図5は、各グループにおける白血病マウスのCAR-T細胞治療持続性の比較を示す。
図6図6は、各グループにおける白血病マウスのCAR-T細胞治療効果の比較を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
特に断らない限り、本発明の実施は、当該技術分野範囲内の分子生物学(組換え技術を含む)、微生物学、細胞生物学、生化学および免疫学の従来の技術を使用する。これらの技術は、文献で完全に説明されている。
【0012】
特に断らない限り、本明細書で使用される技術的および科学的用語は、本発明が属する分野における当業者により共通して理解されるのと同じ意味を有する。
【0013】
1.シグナル伝達ドメイン
【0014】
キメラ抗原受容体は通常、細胞内シグナル伝達ドメインとしてCD3ζサブユニットを含む。T細胞活性化の過程で、T細胞受容体(TCR)は、MHC-抗原ペプチド複合体に結合した後、CD4またはCD8およびCD28などの分子の助けを借りて、TCR/CD3複合体におけるCD3ζサブユニットのITAMモチーフのチロシンを、SrcファミリーキナーゼLckおよびFynによってリン酸化させる。各CD3ζサブユニットには、3つの免疫受容体チロシン活性化モチーフ(ITAM)があり、これによりシグナル増幅が可能になる。リン酸化されたCD3ζサブユニットは、ZAP70分子内のタンデムSH2ドメインを介してZAP70分子を募集およびリン酸化することができる。次に、リン酸化されたZAP70は一連の下流反応を引き起こし、最終的にT細胞の活性化を引き起こす。Kersh et al., Science 281: 572-575 (1998); Chae et al., Int. Immunol. 77: 1225-1236 (2004)を参照。
【0015】
CD3ζサブユニットの3つのITAMには、合計6つのチロシンリン酸化部位がある(配列番号:4のY21、Y32、Y59、Y71、Y90、Y101に対応)。これら6つのチロシン部位のリン酸化の順序と数は、T細胞が活性化できるかどうかに重要な役割を果たし、活性化後のT細胞の発育と分化の方向に重要な役割を果たす。CD3ζ中の冗長な免疫受容体チロシン活性化モチーフは、T細胞の分化と枯渇を促進できる。一方、CD3ζサブユニットの活性化中、その膜近傍領域の空間的コンフォメーションも免疫シナプスの形成に重要な役割を果たす。Guy and Vignali, Immunol. Rev. 232(1): 7-21, 2009を参照。
【0016】
本発明において、CD3ζシグナル伝達ドメインの免疫受容体チロシン活性化モチーフ、特にその中のチロシンリン酸化部位を改変することにより、CD3ζシグナル伝達ドメインによって下流に伝達されるシグナルの強度が調節され、CAR-T細胞の体内生存期間を延長し、CAR-T細胞の枯渇を遅らせ、最終的にCAR-Tの治療効果を高め、再発を減らす目的を達成する。一方、膜近傍領域のアミノ酸残基を改変することにより、活性化中の膜近傍領域の空間的コンフォメーションを変化させ、CD3ζシグナル伝達ドメインのシグナル強度と効率を調節し、そしてT細胞の活性化程度および発育と分化の方向を制御し、最終的にCAR-Tの治療効果を高め、CAR-T療法の毒性の副作用を低減する。
【0017】
本発明において、CD3ζは、例えば、NP_000725.1に記載のアミノ酸配列を含んでもよい。ここで、シグナル伝達ドメインは、第52~163位のアミノ酸残基(配列番号:4)に対応する。あるいは、CD3ζは、対立遺伝子産物、アイソフォーム、ホモログ、パラログなどの他の天然に存在する同一アミノ酸配列であってもよい。このような場合、CD3ζ由来のシグナル伝達ドメインは、他の天然に存在する同一アミノ酸配列中の、NP_000725.1に記載のアミノ酸配列の第52~163位のアミノ酸残基に対応する部分である。
【0018】
2.シグナル伝達ドメインの改変方法
【0019】
本発明の一態様は、CD3ζ由来のシグナル伝達ドメイン(例えば、配列番号:4、NP_000725.1に記載のアミノ酸配列の第52~163位に対応する)を改変する方法に関する。この方法は、CD3ζシグナル伝達ドメインの免疫受容体チロシン活性化モチーフにおける一つまたは複数のチロシンリン酸化部位を突然変異させることを含む。一実施形態では、チロシンリン酸化部位は、配列番号:4のY21、Y32、Y59、Y71、Y90およびY101に対応するアミノ酸残基から選択される。一実施形態では、チロシンリン酸化部位はY90である。一実施形態では、前記突然変異は、欠失または置換である。一実施形態では、前記置換は保守的な置換である。保守的な置換とは、同じタイプのアミノ酸間の置換を指す。一実施形態では、前記置換は非保守的な置換である。非保守的な置換とは、異なるタイプのアミノ酸間の置換を指す。アミノ酸のタイプは、サイズ、電荷、酸またはアルカリ度、親水性/疎水性、極性、両親媒性などの様々な特性の観点から言うことができる。一実施形態では、Y21、Y32、Y59、Y71、Y90、およびY101のうちの一つまたは複数が削除される。一実施形態では、Y90が削除される。一実施形態では、Y21、Y32、Y59、Y71、Y90およびY101のうちの一つまたは複数がFで置換される。一実施形態では、Y90はFで置換される。
【0020】
本発明の一態様は、CD3ζ由来のシグナル伝達ドメイン(例えば、配列番号:4、NP_000725.1に記載のアミノ酸配列の第52~163位に対応する)を改変する方法に関する。この方法は、CD3ζシグナル伝達ドメインの膜近傍領域における一つまたは複数のアミノ酸残基を突然変異させることを含む。一実施形態では、前記膜近傍領域のアミノ酸残基は、N端からの第1~18位のアミノ酸残基、すなわち、配列番号:4のR1、V2、K3、F4、S5、R6、S7、A8、D9、A10、P11、A12、Y13、Q14、Q15、G16、Q17およびN18に対応するアミノ酸残基から選択される。一実施形態では、前記膜近傍領域のアミノ酸残基は、V2、D9およびQ15から選択される。一実施形態では、前記突然変異は、欠失または置換である。一実施形態では、前記置換は保守的な置換である。保守的な置換とは、同じタイプのアミノ酸間の置換を指す。一実施形態では、前記置換は非保守的な置換である。非保守的な置換とは、異なるタイプのアミノ酸間の置換を指す。アミノ酸のタイプは、サイズ、電荷、酸またはアルカリ度、親水性/疎水性、極性、両親媒性などの様々な特性の観点から言うことができる。一実施形態では、V2、D9および/またはQ15が削除される。一実施形態では、V2はLで置換され、D9はEで置換され、および/またはQ15はKで置換される。
【0021】
本発明はまた、前記方法によって得られた改変シグナル伝達ドメインに関する。
【0022】
3.改変シグナル伝達ドメイン
【0023】
本発明の一態様は、CD3ζ由来の改変シグナル伝達ドメインに関する。このシグナル伝達ドメインの天然配列(配列番号:4、例えば、NP_000725.1に記載のアミノ酸配列の第52~163位に対応する)と比較して、改変されたシグナル伝達ドメインは、免疫受容体チロシン活性化モチーフにおける一つまたは複数のチロシンリン酸化部位の突然変異を含む。一実施形態では、チロシンリン酸化部位は、配列番号:4のY21、Y32、Y59、Y71、Y90およびY101に対応するアミノ酸残基から選択される。一実施形態では、チロシンリン酸化部位はY90である。一実施形態では、前記突然変異は、欠失または置換である。一実施形態では、前記置換は保守的な置換である。保守的な置換とは、同じタイプのアミノ酸間の置換を指す。一実施形態では、前記置換は非保守的な置換である。非保守的な置換とは、異なるタイプのアミノ酸間の置換を指す。アミノ酸のタイプは、サイズ、電荷、酸またはアルカリ度、親水性/疎水性、極性、両親媒性などの様々な特性の観点から言うことができる。一実施形態では、Y21、Y32、Y59、Y71、Y90、およびY101のうちの一つまたは複数が削除される。一実施形態では、Y90が削除される。一実施形態では、Y21、Y32、Y59、Y71、Y90およびY101のうちの一つまたは複数がFで置換される。一実施形態では、Y90はFで置換される。
【0024】
本発明の一態様は、CD3ζ由来の改変シグナル伝達ドメインに関する。このシグナル伝達ドメインの天然配列(配列番号:4、例えば、NP_000725.1に記載のアミノ酸配列の第52~163位に対応する)と比較して、改変されたシグナル伝達ドメインは、膜近傍領域における一つまたは複数のアミノ酸残基の突然変異を含む。一実施形態では、前記膜近傍領域のアミノ酸残基は、N端からの第1~18位のアミノ酸残基、すなわち、配列番号:4のR1、V2、K3、F4、S5、R6、S7、A8、D9、A10、P11、A12、Y13、Q14、Q15、G16、Q17およびN18に対応するアミノ酸残基から選択される。一実施形態では、前記突然変異は、欠失または置換である。一実施形態では、前記置換は保守的な置換である。保守的な置換とは、同じタイプのアミノ酸間の置換を指す。一実施形態では、前記置換は非保守的な置換である。非保守的な置換とは、異なるタイプのアミノ酸間の置換を指す。アミノ酸のタイプは、サイズ、電荷、酸またはアルカリ度、親水性/疎水性、極性、両親媒性などの様々な特性の観点から言うことができる。一実施形態では、V2、D9および/またはQ15が削除される。一実施形態では、V2はLで置換され、D9はEで置換され、および/またはQ15はKで置換される。
【0025】
本発明の一態様は、CD3ζ由来の改変シグナル伝達ドメインに関する。このシグナル伝達ドメインの天然配列(配列番号:4、例えば、NP_000725.1に記載のアミノ酸配列の第52~163位に対応する)と比較して、改変されたシグナル伝達ドメインは、免疫受容体チロシン活性化モチーフにおける一つまたは複数のチロシンリン酸化部位の突然変異を含み、且つ膜近傍領域における一つまたは複数のアミノ酸残基の突然変異を含む。一実施形態では、前記チロシンリン酸化部位は、配列番号:4のY21、Y32、Y59、Y71、Y90およびY101に対応するアミノ酸残基から選択される。一実施形態では、前記チロシンリン酸化部位はY90である。一実施形態では、前記膜近傍領域のアミノ酸残基は、N端からの第1~18位のアミノ酸残基、すなわち、配列番号:4のR1、V2、K3、F4、S5、R6、S7、A8、D9、A10、P11、A12、Y13、Q14、Q15、G16、Q17およびN18に対応するアミノ酸残基から選択される。一実施形態では、前記膜近傍領域のアミノ酸残基は、V2、D9およびQ15から選択される。一実施形態では、前記突然変異は、欠失または置換である。一実施形態では、前記置換は保守的な置換である。保守的な置換とは、同じタイプのアミノ酸間の置換を指す。一実施形態では、前記置換は非保守的な置換である。非保守的な置換とは、異なるタイプのアミノ酸間の置換を指す。アミノ酸のタイプは、サイズ、電荷、酸またはアルカリ度、親水性/疎水性、極性、両親媒性などの様々な特性の観点から言うことができる。一実施形態では、Y21、Y32、Y59、Y71、Y90、およびY101のうちの一つまたは複数が削除される。一実施形態では、Y90が削除される。一実施形態では、Y21、Y32、Y59、Y71、Y90およびY101のうちの一つまたは複数がFで置換される。一実施形態では、Y90はFで置換される。一実施形態では、R1、V2、K3、F4、S5、R6、S7、A8、D9、A10、P11、A12、Y13、Q14、Q15、G16、Q17およびN18のうちの一つまたは複数が削除される。一実施形態では、V2、D9およびQ15が削除される。一実施形態では、R1、V2、K3、F4、S5、R6、S7、A8、D9、A10、P11、A12、Y13、Q14、Q15、G16、Q17およびN18のうちの一つまたは複数が置換される。一実施形態では、V2はLで置換され、D9はEで置換され、および/またはQ15はKで置換される。
【0026】
一実施形態では、天然配列(配列番号:4、例えば、NP_000725.1に記載のアミノ酸配列の第52~163位に対応する)と比較して、改変されたCD3ζシグナル伝達ドメインは、Y90F置換を含む。一実施形態では、改変されたCD3ζシグナル伝達ドメインは、V2L、D9Eおよび/またはQ15K置換のうちの一つまたは複数を含む。一実施形態では、改変されたCD3ζシグナル伝達ドメインは、Y90F置換を含み、且つV2L、D9Eおよび/またはQ15K置換のうちの一つまたは複数を含む。一実施形態では、改変されたCD3ζシグナル伝達ドメインは、Q15K置換を含む。一実施形態では、改変されたCD3ζシグナル伝達ドメインは、V2L、Q15KおよびY90F置換を含む。一実施形態では、改変されたCD3ζシグナル伝達ドメインは、V2L、D9E、Q15KおよびY90F置換を含む。
【0027】
一実施形態では、改変されたCD3ζシグナル伝達ドメインは、配列番号:6、8または10に示されるアミノ酸配列を含むか、本質的にそれからなるか、またはそれからなる。
【0028】
4.キメラ抗原受容体を最適化する方法
【0029】
本発明の一態様は、キメラ抗原受容体を最適化する方法に関する。この方法は、一つのステップとして、CD3ζ由来のシグナル伝達ドメインを改変する上記の方法を含む。
【0030】
本発明のキメラ抗原受容体を最適化する方法(具体的には、CD3ζ由来のシグナル伝達ドメインを改変する方法)は、単独で、またはキメラ抗原受容体を最適化する他の方法(例えば、共刺激ドメインを改変する方法)と組み合わせて使用することができる。
【0031】
本発明はまた、前記方法によって得られた最適化されたキメラ抗原受容体に関する。
【0032】
5.最適化されたキメラ抗原受容体
【0033】
本発明の一態様は、最適化されたキメラ抗原受容体に関する。このキメラ抗原受容体は、一つの部品として、上記のCD3ζ由来の改変シグナル伝達ドメインを含む。
【0034】
本発明の最適化されたキメラ抗原受容体は、CD3ζ由来の改変シグナル伝達ドメインだけでなく、改変共刺激ドメインなどの他の改変された部品も含み得る。
【0035】
一実施形態では、本発明は、CD19を標的する最適化されたキメラ抗原受容体を提供する。このキメラ抗原受容体は、
(1)CD19を標的する抗原結合ドメイン、特に配列番号:2の第23~267位のアミノ酸、
(2)ヒンジ領域、特にCD28ヒンジ領域、特に配列番号:2の第268~307位のアミノ酸、
(3)膜貫通領域、特にCD28膜貫通領域、特に配列番号:2の第308~333位のアミノ酸、
(4)共刺激ドメイン、特にCD28共刺激ドメイン、特に配列番号:2の第334~374位のアミノ酸;および
(5)シグナル伝達ドメイン、特に改変CD3ζ、特に配列番号:6、8および10から選択されるアミノ酸配列
を含む。
【0036】
特に明記しない限り、本明細書に記載の技術案は任意に組み合わせることができる。
【0037】
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【0038】
実施例
実施例1 細胞内CD3ζシグナル伝達ドメインの改変
【0039】
この実施例では、CD19を標的する抗原のscFv、CD28ヒンジ領域、CD28膜貫通領域、CD28共刺激シグナル伝達ドメイン、およびCD3ζシグナル伝達ドメインを順次含むCAR分子を例として、改変されたCD3ζシグナル伝達ドメインのCAR-T細胞の特性と機能への影響を示す。
【0040】
CD19 CAR分子のヌクレオチド配列は配列番号:1、アミノ酸配列は配列番号:2に示される。
【0041】
CD3ζの細胞内シグナル領域のシグナル伝達に関連するアミノ酸部位を改変することにより、最終的に、CAR-T細胞の細胞内シグナル伝達経路を改善し、CAR-T細胞の体内増幅能力と持続能力を高め、サイトカイン分泌を改善し、それによってCAR-T細胞の抗腫瘍活性を改善する。
【0042】
未改変のCD19 CAR分子の場合、CD3ζ細胞内領域(CD3ζ-0)のヌクレオチド配列は配列番号3、アミノ酸配列は配列番号:4に示される。
【0043】
改変されたCD19 CAR分子の場合、CD19 CAR CD3ζ-3のヌクレオチド配列は配列番号:5、アミノ酸配列は配列番号:6に示される;CD19 CAR CD3ζ-12のヌクレオチド配列は配列番号:7、アミノ酸配列は配列番号:8に示される;CD19 CAR CD3ζ-14のヌクレオチド配列は配列番号:9、アミノ酸配列は配列番号:10に示される。
【0044】
上記の各CD3ζ細胞内シグナル伝達ドメインは、遺伝子合成法により合成され、細胞外結合領域、ヒンジ領域、膜貫通領域、および細胞内共刺激ドメインとPCRにより連接し、完全なCAR分子を形成した。CARをコードする分子をレンチウイルスベクターpLenti6.3/V5(Thermo Fisher、Waltham、MA、USA)に挿入した(図2)。
【0045】
この実施例では、CD3ζシグナル伝達ドメインが改変されたCARの分子構造は、αCD19-CD28-CD3ζ-0、αCD19-CD28-CD3ζ-3、αCD19-CD28-CD3ζ-12、およびαCD19-CD28-CD3ζ-14を含む。
【0046】
1.CD3ζが改変されたCAR-T細胞の体外増殖能力と特性の変化
【0047】
T細胞は健康なボランティア(Miaotong(Shanghai)Biotechnology Co., Ltd.、China)の末梢血単核細胞から分離された。単離・精製されたT細胞をKBM581培地(Corning、USA)に1.5×106細胞/mlで接種して培養し、1:1のT細胞数とCD3/CD28 Dynabeads(Thermo Fisher)の比率でDynabeadsを培養システムに添加し、さらにIL-2(Shandong Jintai Bioengineering Co., Ltd.、China)(500 IU/ml)を添加し、48時間培養後、未改変または改変のCD3ζを含むCARをレンチウイルスによってT細胞に形質導入した。ウイルス感染の24時間後、細胞を遠心分離して培地を交換し、IL-2(500 IU/ml)を含む新鮮なKBM581を加えて培養を続けた。細胞培養の4日後、培養システム内のすべての細胞を収集し、培養システム内のDynabeadsを磁気スタンドで取り出し、T細胞を遠心分離して計数し、20Gy照射後のK562-CD19+細胞(National Experimental Cell Resource Sharing Platform、China)をセルトリ細胞として、T細胞をIL-2(500 IU/ml)を含む新鮮なKBM581に1.0×106細胞/mlで接種し、培養を続けた。培養7日目と9日目に、細胞をそれぞれ遠心分離して計数し、IL-2(500 IU/ml)を含む新鮮なKBM581を添加して培養を継続し、対応細胞サンプルをフローサイトメトリーで検出し、CARの発現率および免疫枯渇分子PD1、LAG3の発現を分析し、培養7日目から9日目までの各グループのCAR-T細胞の増殖速度を計算した。以上は、基本的に先行記録を参照して実行された(Gattinoni et al. Nature Medicine 17(10): 1290, 2011)。
【0048】
図3に示すように、未改変のCD3ζ-0と比較して、48時間の標的抗原刺激後に、改変されたCD3ζ-3およびCD3ζ-12の対応CAR-T細胞の増殖速度は約一倍向上された。これは、CAR-T細胞が対応する腫瘍細胞と接触すると急速に増幅し、腫瘍の殺傷速度を上げ、免疫回避による再発のリスクを防ぐのに役立つ。
【0049】
図4に示すように、未改変のCD3ζ-0と比較して、改変されたCD3ζ-12およびCD3ζ-14は、枯渇状態(PD-1+ LAG-3+)になるCAR-T細胞の割合を約5%減少させた。これは、対応CAR-T細胞の体内生存サイクルを延長し、病気の再発リスクを減らすのに役立つ。
【0050】
2.CD3ζが改変されたCAR-T細胞の体内抗腫瘍能力、増殖能力、持続能力の変化
【0051】
単離・精製されたT細胞を、IL-2(500 IU/ml)を含む新鮮なKBM581に1.5×106細胞/mlで接種して培養し、1:1のT細胞数とCD3/CD28 Dynabeadsの比率でDynabeadsを添加し、48時間培養後、T細胞にそれぞれCD3ζ-0、CD3ζ-3、CD3ζ-12、およびCD3ζ-14 CARを含むレンチウイルスを形質導入して、対応CAR-T細胞を調製した(同時に、対照実験のために、レンチウイルス未感染T細胞を培養した)。ウイルス感染の24時間後、細胞を遠心分離して培地を交換し、計数し、0.8×106細胞/mlでIL-2(500 IU/ml)を含む新鮮なKBM581に接種して培養し、元のDynabeadsを維持して刺激培養し、48時間ごとに細胞を遠心分離して培地を交換し、0.8×106細胞/mlでIL-2(500 IU/ml)を含む新鮮なKBM581に接種して培養し、11日目に細胞を回収して計数し、対応細胞サンプルをフローサイトメトリーで検出し、CARの発現率を分析した。細胞を凍結保存溶液に再懸濁し、後で使用するために液体窒素に保存した。合計36匹の6~8週齢のNCGマウス(Jiangsu Jicui Yaokang Biotechnology Co.,Ltd.、中国)を6匹のマウス/グループ、合計6グループに分けた。各マウスに尾静脈から1.0×106個のNalm-6-LAE細胞(ATCC, 米国)を注射してから5日後、ルシフェラーゼ生体内イメージング(Lumina II Small Animal Intravital Imaging System、PerkinElmer、米国)によってマウスを分析し、マウス白血病モデルの構築に成功したかどうかを検証した。マウス白血病モデルの構築に成功した後、各グループのマウスにCD3ζ-0、CD3ζ-3、CD3ζ-12、およびCD3ζ-14 CD19-CAR-T細胞(2×106細胞/マウス)を注射した。コントロールとして、他の二つのグループのマウスに、それぞれ対応数のT細胞と対応体積の生理食塩水を注射した。CAR-T細胞注射後2、4、8、12、21、28日目にマウス末梢血CAR-T検出を行い、採血前1日または採血後1日のマウスの生体内イメージング解析を行った。そのうち、T細胞注射グループと生理食塩水注射グループはすべて注射後28日以内に死亡し、死亡前の各末梢血CAR-T細胞検出では、純粋なT細胞と生理食塩水を注射したグルーでは、末梢血ではCAR-T細胞は検出されなかった。
【0052】
図5に示すように、未改変のCD3ζ-0と比較して、CD3ζ-3、CD3ζ-12、およびCD3ζ-14の対応CAR-T細胞の体内持続性は、顕著的に向上された。具体的には、Nalm-6細胞をNCGマウスに注射してB-ALL白血病モデルを作成した後、マウスの尾静脈にCD19 CAR-T細胞注射して治療した後、マウスの末梢血中のCAR-T細胞が検出された。未改変のCD3ζ-0コントロールグルーでは、21日後にマウスの末梢血ではCAR-T細胞は検出されなかったことに対して、CD3ζ-3、CD3ζ-12、およびCD3ζ-14のグルーでは、CAR-T細胞注射後28日にマウスの末梢血中ではCAR-T細胞は高いレベル検出可能であった。図6に示すように、未改変のCD3ζ-0と比較して、CD3ζ-12およびCD3ζ-14の対応CAR-T細胞の体内持続性は、顕著的に向上された。具体的には、Nalm-6細胞をNCGマウスに注射してB-ALL白血病モデルを作成した後、マウスの尾静脈にCD19 CAR-T細胞注射して治療した。CD3ζ-0グループおよびCD3ζ-3グループでは、それぞれ1匹のマウスが再発したが、CD3ζ-0グループの再発したマウスはより高い腫瘍負荷を持っていた。CD3ζ-12とCD3ζ-14グループのマウスには再発はなかった。これは、改変されたCAR-T細胞の抗腫瘍特性が強化され、疾患再発のリスクが低下することを示す。
【0053】
以上の体外および体内の実験結果から、本発明者によるCD3ζの改変、特にCD3ζ-12およびCD3ζ-14は非常に成功しており、CAR-T細胞の体内持続性および抗腫瘍性能を大幅に改善したことが分かる。これは臨床治療にとって非常に価値がある。
【0054】
この明細書は、当業者が本発明を実施できるようにするのに十分である。実施例は、例示のみを目的として提供されており、本発明の範囲を限定することを意図していない。実際、本明細書に記載されている内容に加えて、本発明の様々な改変は、当業者にとって明らかであり、添付の特許請求の範囲内にある。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【配列表】
2023513821000001.app
【国際調査報告】