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▶ エスダブリュエム ルクセンブルクの特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-03
(54)【発明の名称】高密度多層型再構成植物シート
(51)【国際特許分類】
   A24B 3/14 20060101AFI20230327BHJP
   A24B 15/167 20200101ALI20230327BHJP
   A24B 15/12 20060101ALI20230327BHJP
   A61K 36/81 20060101ALI20230327BHJP
   A61K 9/70 20060101ALI20230327BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20230327BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20230327BHJP
   A61K 47/14 20170101ALI20230327BHJP
   A61P 25/34 20060101ALI20230327BHJP
【FI】
A24B3/14
A24B15/167
A24B15/12
A61K36/81
A61K9/70
A61K47/10
A61K47/12
A61K47/14
A61P25/34
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022549314
(86)(22)【出願日】2021-02-18
(85)【翻訳文提出日】2022-09-07
(86)【国際出願番号】 EP2021053976
(87)【国際公開番号】W WO2021165372
(87)【国際公開日】2021-08-26
(31)【優先権主張番号】2001614
(32)【優先日】2020-02-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521190440
【氏名又は名称】エスダブリュエム ルクセンブルク
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】弁理士法人大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リゴウレイ、クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】ジャルダン、セドリック
【テーマコード(参考)】
4B043
4C076
4C088
【Fターム(参考)】
4B043BB12
4B043BB16
4B043BB22
4B043BB25
4B043BC03
4B043BC20
4B043BC24
4C076AA71
4C076AA93
4C076BB27
4C076CC01
4C076CC10
4C076DD37
4C076DD38
4C076DD41
4C076DD43
4C076DD45
4C076DD46
4C076FF67
4C088AB49
4C088AC01
4C088MA13
4C088MA32
4C088NA07
4C088ZC39
(57)【要約】
本発明は、タバコを燃焼させることなく加熱する装置である非燃焼加熱式タバコに適した高密度多層型の再構成植物シートに関する。
【選択図】なし
1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
再構成植物シートであって、
2つの繊維性支持体であって、各繊維性支持体が、微細化された植物繊維、及び、植物抽出物を含む、該2つの繊維性支持体と、
前記2つの繊維性支持体の間に介在する植物抽出組成物と、
エアロゾル生成物質と、を含み、
当該シートが、0.60g/cm以上の密度を有する、再構成植物シート。
【請求項2】
請求項1に記載の再構成植物シートであって、
当該シートが、0.62~1.50g/cmの密度を有する、再構成植物シート。
【請求項3】
請求項1または2に記載の再構成植物シートであって、
前記植物がタバコ植物である、再構成植物シート。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載の再構成植物シートであって、
前記エアロゾル生成物質の固形分の総含有量が10~30重量%である、再構成植物シート。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載の再構成植物シートであって、
前記植物抽出物の固形分の総含有量が30~60重量%である、再構成植物シート。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載の再構成植物シートであって、
前記植物抽出物の固形物の総含有量と、前記エアロゾル生成物質の固形物の総含有量との合計が40~80重量%である、再構成植物シート。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかに記載の再構成植物シートであって、
当該シートが、250~1050μmの厚さを有する、再構成植物シート。
【請求項8】
請求項1~7のいずれかに記載の再構成植物シートであって、
当該シートが、200g/m超の坪量を有する、再構成植物シート。
【請求項9】
請求項1~8のいずれかに記載の再構成植物シートであって、
前記エアロゾル生成物質が、ソルビトール、グリセロール、プロピレングリコール、トリエチレングリコール、エリスリトール、プロパンジオール、乳酸、安息香酸ベンジル、二酢酸グリセリル、三酢酸グリセリル、クエン酸トリエチル、ミリスチン酸イソプロピル、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、再構成植物シート。
【請求項10】
請求項1~9のいずれかに記載の再構成植物シートであって、
当該シートがカレンダー処理されている、再構成植物シート。
【請求項11】
請求項1~9に記載の再構成植物シートの製造方法であって、
(a)微細化された植物繊維を製紙機に通し、基材ウェブを作製するステップと、
(b)植物抽出物を前記基材ウェブに接触させ、繊維性支持体を形成するステップと、
(c)植物抽出組成物を前記2つの繊維性支持体の間に接触させ、湿潤した再構成植物シートを形成するステップと、
(d)前記湿潤した再構成植物シートを乾燥させ、再構成植物シートを製造するステップと、を含み、
前記ステップ(b)及び/または前記ステップ(c)において、前記シートにエアロゾル生成物質を組み込むステップをさらに含む、方法。
【請求項12】
請求項11に記載の再構成植物シートの製造方法であって、
前記ステップ(d)で製造された前記再構成植物シートをカレンダー処理するステップをさらに含む、方法。
【請求項13】
請求項1~10のいずれかに記載の再構成植物シートを含む、非燃焼加熱式タバコに使用される消耗品。
【請求項14】
請求項1~10のいずれかに記載の再構成植物シートの、加熱装置における非治療的な使用。
【請求項15】
治療目的の加熱装置において使用するための、請求項1~10のいずれかに記載の再構成植物シートであって、
前記植物が薬用植物から選択される、再構成植物シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、タバコを燃焼させることなく加熱する装置である非燃焼加熱式タバコの分野に属し、その主題は、製紙プロセスによって得られる高密度多層型の再構成植物シートである。
【背景技術】
【0002】
タバコの燃焼時に有害成分が発生するのを避けるために、タバコを燃焼させることなく加熱する装置である非燃焼加熱式タバコが多数開発されている。このような非燃焼加熱式タバコの一例が、特許文献1及び2に記載されている。タバコを充填したスティックをこのような加熱装置(非燃焼加熱式タバコ)に入れると、タバコは燃焼することなく燃焼温度より低い温度で加熱装置によって加熱され、ユーザが加熱装置を通して空気を吸い込むときにエアロゾルが形成される。タバコの加熱中に生成されるエアロゾルは、タバコの煙に代わるものであり、ユーザによって吸い込まれたときに、有利な官能特性を有する。これにより、ユーザは、ニコチンやタバコのアロマ(芳香)を吸い込むことを可能にし、それと同時に、ユーザの有害成分への曝露を著しく低減することができる。
【0003】
ユーザがこのような加熱装置(非燃焼加熱式タバコ)を採用するためには、このような加熱装置によって得られる経験が、従来の紙巻きタバコで得られた経験に可能な限り近いこと、すなわち、各パフが満足のいく官能特性を有することが重要である。
【0004】
天然のタバコ葉は、ユーザに、満足のいく経験を与えることができないので、特に、十分な量のエアロゾルを容易に生成することができないので、このような加熱装置には適していない。
【0005】
再構成タバコは、十分な量のエアロゾルを容易に生成することができるので、このような加熱装置に適している。しかしながら、再構成タバコから生成されたエアロゾル中のタバコのアロマを薄めることにより、エアロゾルの官能特性をさらに改善することができる。
【0006】
改善方法の1つは、タバコのアロマをより多く含むエアロゾルを生成するために、スティック中に含まれる再構成タバコの質量を増やすことであり、これによって、満足のいく官能特性を提供することができる。しかし、この場合、吸引抵抗が増加するため、ユーザがエアロゾルを満足のいくように吸い込むのを妨げることになる。
【0007】
したがって、エアロゾルの吸引抵抗と官能特性との間に妥協点を見出すことが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2016/026810号
【特許文献2】国際公開第2016/207407号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の主題は、再構成植物シートであって、
2つの繊維性支持体であって、各繊維性支持体が、微細化された植物繊維、及び、植物抽出物を含む、該2つの繊維性支持体と、
2つの繊維性支持体の間に介在する植物抽出組成物と、
エアロゾル生成物質と、を含み、
当該シートが、0.60g/cm以上の密度を有する、再構成植物シートに関する。
【0010】
従来の再構成植物シート、すなわち、密度が低く、かつ単一の繊維性支持体からなるシートと比較して、本発明による再構成植物シートは、有利なことに、生成されたエアロゾルが改善された官能特性を有し、かつ、吸引抵抗が過度に高くなってユーザの満足度を低下させることなく、加熱装置に導入するタバコの質量を増やすことができる。このように、本発明による再構成植物シートによれば、従来の再構成植物シートでは不可能であった、エアロゾルの吸引抵抗と官能特性の向上との間の有利な妥協点を得ることができる。
【0011】
本発明の第2の主題は、本発明による再構成植物シートの製造方法であって、
(a)微細化された植物繊維を製紙機に通し、基材ウェブを作製するステップと、
(b)植物抽出物を基材ウェブに接触させ、繊維性支持体を形成するステップと、
(c)植物抽出組成物を2つの繊維性支持体の間に接触させ、湿潤した再構成植物シートを形成するステップと、
(d)湿潤した再構成植物シートを乾燥させ、再構成植物シートを製造するステップと、を含み、
ステップ(b)及び/またはステップ(c)において、シートにエアロゾル生成物質を組み込むステップをさらに含む、方法に関する。
【0012】
本発明の第3の主題は、本発明による再構成植物シートを含む、非燃焼加熱式タバコに使用される消耗品に関する。
【0013】
本発明の第4の主題は、治療目的の加熱装置において使用するための、本発明による再構成植物シートであって、植物が薬用植物から選択される、再構成植物シートに関する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の第1の主題は、再構成植物シートであって、
2つの繊維性支持体であって、各繊維性支持体が、微細化された植物繊維、及び、植物抽出物を含む、該2つの繊維性支持体と、
2つの繊維性支持体の間に介在する植物抽出組成物と、
エアロゾル生成物質と、を含み、
当該シートが、0.60g/cm以上の密度を有する、再構成植物シートに関する。
【0015】
一般的に、本発明の再構成植物シートは、0.62~1.50g/cmの密度を有し、好ましくは0.65~1.25g/cm、より好ましくは0.70~1g/cm、さらに好ましくは0.71~0.89g/cmの密度を有する。
【0016】
本発明の再構成植物シートの密度は、その坪量をその厚さで割ることにより求めることができる。
【0017】
植物シートの坪量は、以下の方法を用いて求めることができる。まず、測定対象の再構成植物シートの端から約15cmの位置で、テンプレート(寸法:57.5×43.5cm)を使用して、0.25mのサンプルを切り出す。次に、サンプルを四つ折りにしてホットプレート上に載せて乾燥させ、エアロゾル生成物質を除去することなく水分を除去する。そして、乾燥させたサンプルを計量して、植物シートの坪量を求める。
【0018】
植物シートの厚さは、再構成植物シートに適した規格NF EN ISO534(2011年12月)に記載されている方法を用いて求めることができる。
・再構成植物シートの厚さを測定するために使用される対照のパーチメント紙の平均厚さを測定する(各パーチメント紙上のピンポイント位置で、最低6回測定する)。
・再構成植物シートのサンプルを2枚のパーチメント紙の間に挟む。
・マイクロメータのプローブを所定位置に配置し、(厚さ測定のためサンプルを安定化させるための)30秒間の待機時間を経た後、測定を開始する。
・パーチメント紙上のピンポイント位置で、最低6回測定する。
・再構成植物シートの厚さは、測定された全体の厚さ(再構成植物シート+2枚のパーチメント紙)の平均から、パーチメント紙の平均厚さの2倍を引くことにより求めることができる。
【0019】
一般的に、本発明の再構成植物シートは、200g/m超の坪量を有し、好ましくは275~950g/m、より好ましくは300~650g/m、さらに好ましくは310~460g/mの坪量を有する。
【0020】
一般的に、本発明の再構成植物シートは、250~1050μmの厚さを有し、好ましくは350~800μm、より好ましくは360~700μm、さらに好ましくは375~515μmの厚さを有する。
【0021】
特定の一実施形態では、本発明の再構成植物シートは、0.71~0.89g/cmの密度、310~460g/mの坪量、及び、375~515μmの厚さを有する。
【0022】
当業者であれば、所望の高密度を達成するために、再構成植物シートの坪量及び厚さを調節する方法を知っているであろう。例えば、上記の厚さ及び/または密度の値を得るために、本発明の再構成植物シートは、カレンダー処理に供され得る。したがって、本発明の一実施形態では、本発明の再構成植物シートは、カレンダー処理され得る。
【0023】
本明細書で使用するとき、「繊維性支持体」という用語は、微細化された植物繊維から作製された基材ウェブと、植物抽出物とから形成されるものを意味する。基材ウェブは、一般的に、製紙プロセスによって得られる。
【0024】
一般的に、繊維性支持体は、60~200g/mの坪量を有し、好ましくは80~175g/m、より好ましくは100~155g/mの坪量を有する。
【0025】
また、繊維性支持体は、100~300μmの厚さを有し、好ましくは150~275μm、より好ましくは180~265μmの厚さを有する。
【0026】
基材ウェブは、25~150g/mの坪量を有し、好ましくは、坪量の最小値は、55g/m、60g/m、65g/m、70g/m、75g/m、80g/m、または85g/mであり得る。
【0027】
基材ウェブは、70~300μmの厚さを有し、好ましくは140~275μm、より好ましくは170~250μmの厚さを有する。
【0028】
有利なことに、上記の範囲内の坪量及び/または厚さを有する基材ウェブは、所望の高密度を有する再構成植物シートを得ることを可能にする。
【0029】
基材ウェブ及び繊維性支持体の坪量及び厚さは、一般的に、上述の再構成植物シートの坪量及び厚さを測定する方法と同様に測定される。
【0030】
特定の一実施形態では、本発明の再構成植物シートは、2つ以上の繊維性支持体、好ましくは3つ、4つ、または5つの繊維性支持体、より好ましくは3つまたは4つの繊維性支持体を含み得る。
【0031】
特定の実施形態では、植物抽出物組成物は、2つの繊維性支持体の間に介在する。
【0032】
本明細書で使用するとき、「微細化された植物繊維」という用語は、植物繊維のフィブリル化及び/または切断を可能にする微細化ステップを施した植物繊維を意味する。この微細化ステップは従来、再構成製紙タバコを製造するプロセスなどの製紙プロセスで行われている。しかし、この微細化ステップは、キャストリーフ再構成タバコを製造するプロセスでは行われていない。
【0033】
一般的に、繊維性支持体は、同一種の植物または複数種の植物の微細化された繊維を含み得る。
【0034】
本明細書で使用するとき、「植物抽出物」という用語は、植物のあらゆる水溶性生成物を意味する。有利なことに、植物抽出物には、ニコチンや、エアロゾルに官能特性及び/または治療特性を付与する化合物が含まれる。
【0035】
本明細書で使用するとき、「植物抽出物組成物」という用語は、上記に定義した植物抽出物を含有する組成物を意味する。
【0036】
植物抽出物組成物は、本発明の再構成植物シートの2つの繊維性支持体の間に層を形成する。有利なことに、植物抽出物組成物は、例えば、植物外来性の接着剤を使用することなく、2つの繊維性支持体を互いに貼り合わせることによって、本発明の再構成植物シートの結合を維持することを可能にする。
【0037】
例えば、植物抽出物組成物中の植物抽出物の固形分の濃度は、45重量%超であり、好ましくは50~70重量%、より好ましくは55~65重量%、さらに好ましくは58~62重量%であり得る。
【0038】
有利なことに、このような濃度の植物抽出物の固形分を含有する植物抽出物組成物は、本発明の再構成植物シートの結合を向上させる。
【0039】
植物抽出物組成物は、植物抽出物に加えて、エアロゾル生成物質、添加剤、またはそれらの組み合わせも含有し得る。
【0040】
添加物としては、植物ダスト;CaCOなどの希釈剤;グアーガム、ジャガイデンプン、寒天、またはそれらの任意の組み合わせなどのテクスチャリング剤;カカオパウダ、クエン酸三カリウム、粉末芳香剤、またはそれらの任意の組み合わせなどの粉末香料;カプセル化された香料;ベータカロチン、粉末アプリコットジュース、ウコン、またはそれらの任意の組み合わせなどの着色剤;シリカゲル、多糖類ゲル、アルミナゲル、またはそれらの任意の組み合わせなどのゲル;あるいはそれらの任意の組み合わせ、特に植物ダストが挙げられる。
【0041】
植物ダストは、エアロゾルに植物の香りを付与する芳香化合物を含み得る。植物ダストは、様々な植物部分に由来し得る。植物部分は、植物部分そのものであってもよいし、または、様々な植物部分を処理したものであってもよい。植物ダストは、植物部分の細断、叩解、または混合などの1つ以上の処理によって得ることができる。
【0042】
本明細書で使用するとき、「エアロゾル生成物質」という用語は、例えば加熱された空気と接触して加熱されたときにエアロゾルを生成することができる化合物を意味する。
【0043】
エアロゾル生成物質は、2つの繊維性支持体の一方、2つの繊維性支持体の両方、植物抽出物組成物、またはそれらの組み合わせに含まれ、好ましくは、2つの繊維性支持体の両方、植物抽出物組成物、またはそれらの組み合わせ、より好ましくは、2つの繊維性支持体の両方に含まれる。
【0044】
本発明の再構成植物シートに含まれるエアロゾル生成物質の固形分の総含有量(重量%)をSAGとする。一般的に、SAGは、10~30重量%の範囲であり、好ましくは12~25重量%、より好ましくは13~22重量%、さらに好ましくは15~21.5重量%の範囲であり得る。
【0045】
上記の範囲よりも大きいSAGを有する再構成植物シートから生成されたエアロゾルは、口腔及び/または喉の望ましくない火傷(「ホットパフ」として知られる現象)を引き起こす恐れがある。
【0046】
一般的に、エアロゾル生成物質は、ポリオール、非ポリオール、またはそれらの組み合わせであり得る。一般的に、ポリオールであるエアロゾル生成物質は、ソルビトール、グリセロール、プロピレングリコール、トリエチレングリコール、エリスリトール、プロパンジオール、またはそれらの組み合わせであり得る。一般的に、非ポリオールであるエアロゾル生成物質は、乳酸、安息香酸ベンジル、二酢酸グリセリル、三酢酸グリセリル、クエン酸トリエチル、ミリスチン酸イソプロピル、またはそれらの組み合わせであり得る。
【0047】
一実施形態では、エアロゾル生成物質は、グリセロール、プロピレングリコール、またはそれらの組み合わせであり、好ましくは、グリセロールである。
【0048】
エアロゾルは、本発明の再構成植物シートの加熱時に発生する。有利なことに、芳香化合物を含む植物抽出物は、このエアロゾルに植物由来の芳香を付与する。再構成植物シートを単に交換するだけで、ユーザは、再構成植物シートを加熱することによって生成されるエアロゾルの香りを容易に変更することができる。
【0049】
再構成植物シートを加熱することによって生成されるエアロゾルの官能特性及び治療特性は、本発明の再構成植物シートに含まれる植物抽出物の固形分の総含有量に依存する。
【0050】
植物抽出物の固形分の総含有量(重量%)は、使用される植物、より詳細には、使用される植物における芳香化合物または治療特性を有する化合物の含有量に依存する。
【0051】
本発明の再構成植物シートに含まれる植物抽出物の固形分の総含有量(重量%)をSPとする。一般的に、SPは、30~60重量%の範囲であり、好ましくは35~55重量%、より好ましくは37~50重量%の範囲であり得る。
【0052】
有利なことに、このような高い含有量により、非常に満足のいく官能特性を有するエアロゾルを生成することが可能となる。
【0053】
SPは、以下の方法を用いて求めることができる。まず、測定対象の再構成植物シートを、1mm以下の粒径になるように粉砕する。次に、再構成植物シートを沸騰した水と45分間混合し、植物抽出物をすべて抽出する。そして、測定対象の再構成植物シートの試料の乾燥重量と、植物抽出物を抽出した後の繊維性残渣の乾燥重量との差がSPとなる。
【0054】
一実施形態では、植物抽出物の固形物の総含有量と、エアロゾル生成物質の固形物の総含有量との合計、すなわちSP+SAGは、40~80重量%の範囲であり、好ましくは45~75重量%、より好ましくは50~72重量%、さらに好ましくは55~70重量%の範囲であり得る。
【0055】
一実施形態では、植物抽出物の固形物の総含有量と、エアロゾル生成物質の固形物の総含有量との比、すなわちSP/SAGは、1.0~3.5の範囲であり、好ましくは1.25~3.25、より好ましくは1.50~3.10、さらに好ましくは1.75~2.70の範囲であり得る。
【0056】
有利なことに、本発明の再構成植物シートが上記の範囲のSP/SAG比を有する場合、生成されるエアロゾルの官能特性は、さらに満足のいくものとなる。
【0057】
特定の一実施形態では、本発明の再構成植物シートは、16~21.5重量%のSAG、37~50重量%のSP、及び55~70重量%のSP+SAGを有する。
【0058】
特定の一実施形態では、本発明の再構成植物シートは、0.71~0.89g/cmの密度、310~460g/mの坪量、375~515μmの厚さ、16~21.5重量%のSAG、37~50重量%のSP、及び、55~70重量%のSP+SAGを有する。
【0059】
さらなる特定の一実施形態では、本発明の再構成植物シートは、0.83~0.89g/cmの密度、310~460g/mの坪量、375~515μmの厚さ、16~20重量%のSAG、43~50重量%のSP、及び、60~70重量%のSP+SAGを有する。
【0060】
植物繊維、繊維性支持体の植物抽出物、及び、植物抽出物組成物の植物抽出物は、互いに独立して、胞子植物、種子植物、またはそれらの組み合わせから選択される植物から得ることができる。特に、植物は、タバコ植物、食物植物、芳香植物、香気植物(香りの良い植物)、薬用植物、大麻科の植物、またはそれらの任意の組み合わせから選択される植物であり得る。
【0061】
特定の一実施形態では、植物は、タバコ植物である。
【0062】
植物が薬用植物である場合、再構成植物シートを加熱することによって生成されたエアロゾルは治療特性も有するので、再構成植物シートは治療のために使用することができる。
【0063】
有利なことに、複数の植物の組み合わせから得られる植物抽出物は、幅広い範囲の官能特性及び/または治療特性を提供することを可能にする。また、複数の植物の組み合わせは、その組み合わせ中の特定の植物、例えば薬用植物の不快な官能特性を、その組み合わせ中の別の植物、例えばタバコ植物、芳香植物、または香気植物の心地良い官能特性によって中和することを可能にする。
【0064】
一実施形態では、植物繊維は第1の植物から取得し、繊維性支持体の植物抽出物、及び、植物抽出物組成物の植物抽出物は第2の植物から取得するようにしてもよい。
【0065】
別の実施形態では、植物繊維、及び、繊維性支持体の植物抽出物は第1の植物から取得し、植物抽出物組成物の植物抽出物は、第2の植物から取得するようにしてもよい。
【0066】
別の実施形態では、植物繊維、及び、植物抽出物組成物の植物抽出物は第1の植物から取得し、繊維性支持体の植物抽出物は第2の植物から取得するようにしてもよい。
【0067】
別の実施形態では、植物繊維は第1の植物から取得し、繊維性支持体の植物抽出物は第2の植物から取得し、植物抽出物組成物の植物抽出物は第3の植物から取得するようにしてもよい。
【0068】
有利なことに、再構成植物シートの製造に複数の植物の組み合わせを使用することにより、再構成植物シートの機械的特性、及び/または、エアロゾルの官能性、化学的特性、または治療的特性を調節することが可能となる。実際、植物繊維は、繊維性支持体の形成を可能にする機械的特性を有していない場合があり、かつ、植物抽出物は、所望の官能特性、化学的特性、及び/または治療特性をエアロゾルに付与する場合がある。反対に、植物繊維は、繊維性支持体の形成を可能にする機械的特性を有している場合があり、かつ、植物抽出物は、所望の官能特性及び/または治療特性をエアロゾルに付与しない場合がある。
【0069】
植物がタバコ植物である場合、タバコ繊維及びタバコ抽出物は、任意のタバコ植物またはタバコ型の植物、例えば、バージニアタバコ、バーレータバコ、空気乾燥タバコ、暗色空気乾燥タバコ、オリエンタルタバコ、日光乾燥タバコ、火力乾燥タバコ、またはそれらの任意の組み合わせから得ることができる。
【0070】
一般的に、食用植物は、ニンニク、コーヒー、ショウガ、甘草、ルイボス、ステビア(ステビア・レバディアナ)、茶、カカオの木、カモミール、マテ、トウシキミ、ウイキョウ、シトロネラである。
【0071】
一般的に、芳香植物は、バジル、ウコン、クローブ、ローレル、オレガノ、ミント、ローズマリー、セージ、タイムである。
【0072】
一般的に、香気植物は、ラベンダー、バラ、ユーカリである。
【0073】
一般的に、薬用植物は、伝統的に使用されている薬用植物のリストAで示されているもの(「French pharmacopeia January 2016, published by the Agence Nationale de Securite du Medicament (ANSM) [French National Agency for Drug and Health Product Safety]」)、または、治療特性を有する化合物を含むことが知られている植物である。一般的に、薬用植物は、イチョウ、朝鮮人参、サワーチェリー、ペパーミント、ヤナギ、レッドバインである。
【0074】
一般的に、ユーカリは、治療特性を有する化合物を含有することが知られている薬用植物である。
【0075】
一般的に、本発明の再構成植物シートの植物繊維及び植物抽出物は、様々な植物部分に由来することができ、植物部分は、植物部分そのものであってもよいし、または様々な植物部分を処理したものであってもよい。一般的に、植物部分は、植物の全体であってもよいし、植物部分を細断、叩解、または混合して作製したデブリであってもよい。
【0076】
一般的に、植物部分は、エアロゾルに官能特性を付与する芳香化合物を最も豊富に含む植物部分から選択され得る。一般的に、そのような植物部分は、あらゆる植物における、例えば、花芽、枝の樹皮、幹の樹皮、葉、花、果実もしくはその花柄、種子、花弁、頭状花、地下部分(例えば、球根、根、根樹皮、根茎)、またはそれらの任意の組み合わせであり得る。また、植物部分は、1つ以上の植物部分の機械的処理、化学的処理、または機械化学的処理によって得られるもの、例えば、カカオ豆の殻を剥くプロセスで得られる、カカオ豆の保護殻(カカオシェル)などであってもよい。
【0077】
一般的に、タバコ植物の部分は、エアロゾルに官能特性を付与する芳香化合物が最も豊富な部分であり得る。一般的に、タバコ植物の部分は柔組織(葉身)であり得るが、任意選択でタバコ植物の茎を加えてもよい。一般的に、タバコ植物の部分は、タバコ植物の葉、または、タバコ植物の葉及び葉脈を細断、叩解、または混合して作製したデブリであってもよい。
【0078】
食品植物の中では、例えば、ニンニクの球根、コーヒーチェリー、トウシキミの果実、ショウガの根茎、甘草の根、ルイボスの葉、ステビア(ステビア・レバディアナ)、または、茶が、植物部分として選択され得る。
【0079】
芳香植物の中では、例えば、クローブ花芽(クローブ)、バジル、ローレルもしくはセージの葉や花、ミント、オレガノ、ローズマリーもしくはタイムの葉や頭状花、または、ウコンの根茎が、植物部分として選択され得る。
【0080】
一般的に、香気植物の中では、ラベンダーの花や頭状花、または、バラの花芽や花弁が、植物部分として選択され得る。
【0081】
例えば、フランス薬局方に収載されている薬用植物の中では、イチョウの葉、朝鮮人参の地下部分、サワーチェリーの果実の柄(サワーチェリーの茎)、ペパーミントの葉や頭状花、ヤナギの茎皮や葉、または、レッドバインの葉が、植物部分として選択され得る。
【0082】
特定の一実施形態では、本発明の再構成植物シートは、0.71~0.90g/cmの密度、360~460g/mの坪量、480~520μmの厚さ、19~21.5重量%のSAG、37~50重量%のSP、及び、58~70重量%のSP+SAGを有し、植物はタバコ植物である。
【0083】
特定の一実施形態では、本発明の再構成植物シートは、
微細化されたタバコ繊維及びタバコ抽出物を含む第1の繊維性支持体と、
微細化されたカカオ繊維及びカカオ抽出物を含む第2の繊維性支持体と、
第1の繊維性支持体及び第2の繊維性支持体間に介在するタバコ抽出物組成物と、を含み、
0.80~0.85g/cmの密度、310~320g/mの坪量、370~380μmの厚さ、16~17重量%のSAG、40~45重量%のSP、及び、55~65重量%のSP+SAGを有する。
【0084】
一般的に、本発明の再構成植物シートに含まれる微細化された植物繊維の固形分の総含有量は、15~50重量%であり、好ましくは25~45重量%、より好ましくは30~42重量%であり得る。
【0085】
一般的に、本発明の再構成植物シートの繊維性支持体は、セルロース系植物繊維も含み得る。
【0086】
セルロース系植物繊維は、例えば、木材パルプ、麻、または、一年生植物(例えば、亜麻)を、化学的処理、機械的処理、または熱機械的処理によって得られる繊維である。また、これらのセルロース系植物繊維の組み合わせを使用してもよい。
【0087】
有利なことに、これらのセルロース系植物繊維は、再構成植物シートの機械的強度特性を向上させることができる。
【0088】
一般的に、セルロース系植物繊維は、再構成植物シートの固形分の0.5~20重量%、好ましくは3~17.5重量%、より好ましくは5~15重量%を占めることができる。
【0089】
第2の主題によれば、本発明は、上述した本発明の再構成植物シートの製造方法であって、
(a)微細化された植物繊維を製紙機に通し、基材ウェブを作製するステップと、
(b)植物抽出物を基材ウェブに接触させ、繊維性支持体を形成ステップと、
(c)植物抽出組成物を2つの繊維性支持体の間に接触させ、湿潤した再構成植物シートを形成するステップと、
(d)湿潤した再構成植物シートを乾燥させ、再構成植物シートを製造するステップと、を含み、
上記のステップ(b)及び/または上記のステップ(c)において、シートにエアロゾル生成物質を組み込むステップをさらに含む、方法に関する。
【0090】
微細化された繊維、基材ウェブ、植物抽出物、繊維性支持体、植物抽出物組成物、及びエアロゾル生成物質は、本発明の再構成植物シートに関して上述した通りである。
【0091】
本発明では、繊維性支持体の基材ウェブは、製紙プロセスを用いて作製される。したがって、本発明の好ましい一実施形態では、本発明による再構成植物シートは、製紙プロセスを用いて製造された再構成植物シートである。
【0092】
一実施形態では、繊維性支持体及び植物抽出物の植物繊維は、
(e)1つ以上の植物部分を溶媒と混合して、植物繊維から植物抽出物を抽出するステップと、
(f)植物繊維から植物抽出物を分離するステップと、にしたがって得られる。
【0093】
したがって、植物抽出物及び植物繊維は、一般的に、分離プロセスを用いて得られる。上記のステップ(e)では、植物繊維から植物抽出物を抽出するために、1つ以上の植物部分を、例えば蒸解釜内で溶媒と混合させる。上記のステップ(f)では、植物抽出物は、例えばスクリュープレスに通すことによって植物繊維から分離され、一方では植物繊維が、他方では植物抽出物が分離して取得される。
【0094】
一般的に、溶媒は、非極性溶媒、非プロトン極性溶媒、プロトン極性溶媒、またはそれらの混合物であり、好ましくは、メタノール、ジクロロメタン、エタノール、アセトン、ブタノール、水、またはそれらの混合物、より好ましくは、エタノール、アセトン、水、またはそれらの混合物であり得る。
【0095】
特定の一実施形態では、溶媒は、水性溶媒であり、好ましくは水である。
【0096】
当業者は、上記のステップ(e)における溶媒の温度を、植物、植物部分、及び、処理される植物部分に適合させる方法を知っているであろう。一般的に、根や樹皮を処理するときの溶媒の温度は、葉や花弁を処理するときの溶媒の温度よりも高い温度に設定される。
【0097】
一般的に、上記のステップ(e)における溶媒の温度は、10~100°C、好ましくは30~90°C、より好ましくは50~80°Cであり得る。
【0098】
溶媒が水であり、植物がタバコである実施形態では、溶媒である水の温度は、例えば、30~80°Cに設定される。一般的に、溶媒である水の温度は、タバコ植物の柔組織を処理する場合は50~80°Cに設定され、タバコ植物の茎を処理する場合は30~70°Cに設定される。
【0099】
植物繊維を微細化装置(リファイナ)で微細化した後、製紙機に通すことにより、基材ウェブを作製することができる。
【0100】
微細化される植物繊維は、様々な植物に由来し得る。
【0101】
様々な植物における各植物の繊維は、上述の分離プロセスにしたがって別々に得ることができる。その後、各植物の繊維を混合した後、その混合物を製紙機に通すことにより、基材ウェブを作製することができる。また、様々な植物の1つまたは複数の部分を混合した後、その混合物を上述の分離プロセスに供することによって、様々な植物に由来する繊維を得ることができる。次に、水の温度を、処理する植物に適合する温度、とりわけ、その植物の抽出物を抽出するために必要な最高温度に設定する。この代替的な実施形態は、複数の分離プロセスを並行して行うことなく、様々な植物の繊維を得ることができるので、非常に有利である。
【0102】
一般的に、植物抽出物は、様々な植物の抽出物であり得る。
【0103】
様々な植物の抽出物は、上述の分離プロセスにしたがって別々に得られた様々な植物抽出物を混合することによって得ることができる。また、様々な植物の1つまたは複数の部分を混合した後、その混合物を上述の分離プロセスに供することによって、様々な植物の抽出物を得ることができる。次に、水の温度を、処理する植物に適合する温度、とりわけ、その植物の水溶性抽出物を抽出するために必要な最高温度に設定する。この代替的な実施形態は、複数の分離プロセスを並行して行うことなく、様々な植物の抽出物を得ることができるので、非常に有利である。これらの2つの場合は両方とも、様々な植物の抽出物は、上記のステップ(b)において、基材ウェブに接触させられる。
【0104】
一般的に、上述の分離プロセスにしたがって得られた様々な植物抽出物は、上記のステップ(b)において、別々に基材ウェブに接触させてもよい。
【0105】
一般的に、植物抽出物は、上記のステップ(b)において基材ウェブに接触させる前に、濃縮させてもよい。植物抽出物の濃縮は、真空蒸発装置などの装置を使用して行うことができる。
【0106】
上記のステップ(b)において基材ウェブにエアロゾル生成物質を組み込む場合、植物抽出物とエアロゾル生成物質とを順々に基材ウェブに接触させてもよいし、植物抽出物とエアロゾル生成物質とを混合させた混合物を基材ウェブに接触させてもよい。
【0107】
一般的に、植物抽出物を基材ウェブに接触させる上記のステップ(b)は、含浸またはスプレーによって、とりわけ含浸によって行うことができる。一般的に、含浸は、サイズプレスによって実施することができる。
【0108】
植物抽出物組成物を基材ウェブに接触させる上記のステップ(c)は、スプレーまたはコーティング、とりわけコーティングによって行うことができる。一般的に、コーティングは、ドクターブレード、スクリューロッド、コーティングバー、または、繊維製支持体上のコーティングを可能にする任意の他の機器、とりわけスクリューロッドを使用して実施することができる。
【0109】
上記のステップ(c)で使用される抽出物組成物は、上述の分離プロセスにしたがって得られた植物抽出物から取得され得る。一般的に、植物抽出物は、抽出物組成物に組み込まれる前に、濃縮され得る。植物抽出物の濃縮は、真空蒸発装置などの装置を使用して行うことができる。
【0110】
上記のステップ(b)において基材ウェブにエアロゾル生成物質を組み込む場合、エアロゾル生成物質と抽出物組成物とを混合させた混合物を基材ウェブに接触させてもよい。また、エアロゾル生成物質は、抽出物組成物を繊維性支持体に接触させる前に基材ウェブに接触させてもよいし、抽出物組成物を繊維性支持体に接触させた後に基材ウェブに接触させてもよい。
【0111】
抽出物組成物が添加剤を含む場合、上記のステップ(c)において、添加剤と抽出物組成物と混合させた混合物を繊維性支持体に接触させてもよいし、添加剤とエアロゾル生成物質と混合させた混合物を繊維性支持体に接触させてもよい。
【0112】
一実施形態では、植物抽出物組成物は、上記のステップ(c)において、まず、第1の繊維性支持体に接触させ、次いで、第2の繊維性支持体に接触させ、それにより、2つの繊維性支持体の間に植物抽出物組成物の層を介在させることによって、再構成植物シートを形成することができる。
【0113】
この実施形態では、上記のステップ(c)は、植物抽出物組成物を第1の繊維性支持体に接触させる工程と、植物抽出物組成物を第2の繊維性支持体に接触させる工程との間に、中間乾燥工程を含むことができる。この中間乾燥工程は、赤外線ランプ、アメリカンバッテリー乾燥ドラム、トンネル乾燥機における熱風乾燥、縦型乾燥機、流動床乾燥機、または空気乾燥機、とりわけ、トンネル乾燥機を使用して行うことができる。当業者であれば、この中間乾燥工程を実施するために動作状態を調節する方法を知っているであろう。
【0114】
別の実施形態では、上記のステップ(c)において、植物抽出物組成物の第1の部分を第1の繊維性支持体に接触させ、次に、植物抽出物組成物の第2の部分を第2の繊維性支持体に接触させ、その後、植物抽出物組成物の第1の部分及び第2の部分を互いに接触させ、それにより、2つの繊維性支持体の間に植物抽出物組成物の第1の部分及び第2の部分の層を介在させることにより、再構成植物シートを形成することができる。
【0115】
この別の実施形態では、上記のステップ(c)は、植物抽出物組成物の第2の部分を第2の繊維性支持体に接触させる工程と、植物抽出物組成物の第1の部分及び第2の部分を互いに接触させる工程との間に、中間乾燥工程を含むことができる。この中間乾燥工程は、赤外線ランプ、アメリカンバッテリー乾燥ドラム、トンネル乾燥機における熱風乾燥、縦型乾燥機、流動床乾燥機、または空気乾燥機、とりわけ、トンネル乾燥機を使用して行うことができる。当業者であれば、この中間乾燥工程を実施するために動作状態を調節する方法を知っているであろう。
【0116】
本発明の方法によって製造される再構成植物シートのSP及びSAGは、上記のステップ(b)及び(c)において使用される植物抽出物の量及びエアロゾル生成物質の量を調節することによって制御することができる。当業者であれば、目標のSP及びSAGを達成するために、上記のステップ(b)及び(c)において使用される植物抽出物の量及びエアロゾル生成物質の量を調節する方法を知っているであろう。
【0117】
上記のステップ(d)は、赤外線ランプ、アメリカンバッテリー乾燥ドラム、トンネル乾燥機における熱風乾燥、縦型乾燥機、流動床乾燥機、または空気乾燥機、とりわけ、トンネル乾燥機を使用して行うことができる。当業者であれば、上記のステップ(d)を実施するために動作状態を調節する方法を知っているであろう。
【0118】
一実施形態では、上記のステップ(b)で得られた繊維性支持体は、上記のステップ(b)と上記のステップ(c)との間で実施され得る中間乾燥ステップに供してもよい。この中間乾燥ステップは、赤外線ランプ、アメリカンバッテリー乾燥ドラム、トンネル乾燥機における熱風乾燥、縦型乾燥機、流動床乾燥機、または空気乾燥機、とりわけ、トンネル乾燥機を使用して行うことができる。当業者であれば、この中間乾燥ステップを実施するために動作状態を調節する方法を知っているであろう。
【0119】
本発明の再構成植物シートの製造方法により製造された再構成植物シートは、カレンダー処理ステップに供してもよい。
【0120】
したがって、本発明の一実施形態は、上記のステップ(d)で製造された再構成植物シートにカレンダー処理を施した、カレンダー処理された再構成植物シートの製造方法である。
【0121】
本明細書で使用するとき、「カレンダー処理ステップ」という用語は、再構成植物シートを、間隔を調節可能な2つの逆回転シリンダの間に通すステップを意味する。
【0122】
カレンダー処理ステップは、再構成植物シートの坪量を変えることなく、再構成植物シートの厚さを薄くすることができるという利点がある。したがって、必要に応じて、カレンダー処理ステップによって、構成植物シートの密度を増加させることができる。
【0123】
加えて、カレンダー処理ステップは、再構成植物シートの2つの繊維性支持体の結合を向上させることができるという利点がある。
【0124】
シリンダは、1~250バールの範囲の圧力、好ましくは14~140バール、より好ましくは25~40バールの範囲の圧力を再構成植物シートに加えることができる。
【0125】
有利なことに、シリンダを用いて上記の範囲の圧力を再構成植物シート加えるカレンダー処理ステップを実施することにより、再構成植物シートの劣化を抑制または防止することができる。
【0126】
シリンダは、50°C以下の温度、好ましくは30~50°C、より好ましくは40~45°Cの範囲の温度に加熱してもよい。
【0127】
有利なことに、上記の範囲の温度に加熱されたシリンダを用いてカレンダー処理ステップを実施することにより、再構成植物シートの劣化を抑制または防止することができる。
【0128】
次いで、本発明の再構成植物シートは、タバコのストリップと同様の葉やシートに切断してもよいし、またはロール状に巻いてもよい。また、複数のシートを組み合わせて、シート混合物を形成してもよい。
【0129】
本発明の再構成植物シートは、タバコを燃焼させることなく加熱する装置である非燃焼加熱式タバコに使用することができる。
【0130】
したがって、第3の主題によれば、本発明は、上記に定義した本発明の再構成植物シートを含む、非燃焼加熱式タバコ用の消耗品に関する。
【0131】
本明細書で使用するとき、「消耗品」という用語は、本発明による再構成植物シートそのもの、または本発明による再構成植物シートを含む容器を意味する。本発明の消耗品は、非燃焼加熱式タバコに導入されるように構成されており、当業者であれば、本発明の消耗品を非燃焼加熱式タバコに適合させる方法を知っているであろう。
【0132】
本発明による再構成植物シートは、消耗品として、非燃焼加熱式タバコに適合するような形状に構成することができる。例えば、本発明による再構成植物シートは、粒子状の形態、波形シートの形態、刻みタバコ状の形態、とりわけ、0.5~1mmの幅を有する刻みタバコ状の形態に構成することができる。
【0133】
容器は、本発明による再構成植物シートを受容する内部空間を画定する外側エンベロープから構成することができる。本発明による再構成植物シートは、容器の内部空間に、とりわけ、粒子状の形態、波形シートの形態、または刻みタバコ状の形態で収容され得る。
【0134】
一般的に、外側エンベロープは、円筒形、特に円形の底面を有する円筒形であり得る。
【0135】
外側エンベロープは、例えば、シガレットペーパー、シガレットロール紙、紙、植物繊維の紙、アルミニウムなどの金属、とりわけ、シガレットペーパーから作製され得る。
【0136】
消耗品としては、微粒子状の本発明による再構成植物シート、波形シート状の本発明による再構成植物シート、刻みタバコ状の本発明による再構成植物シート、本発明による再構成植物シートからなるパウチ、本発明による再構成植物シートからなるスティック、または、本発明による再構成植物シートからなるカプセル、とりわけ、刻みタバコ状の本発明による再構成植物シート、または、本発明による再構成植物シートからなるスティックが挙げられる。
【0137】
本発明による再構成植物シートは、例えば、パウチまたはカプセルに収容された粒子状の形態であり得る。本発明による再構成植物シートは、特に、スティック状の刻みタバコの形態であり得る。
【0138】
一実施形態では、消耗品に含まれる再構成植物シートは、上述した本発明の方法によって得ることができる。
【0139】
一般的に、本発明の再構成植物シートの質量と消耗品の内容積との比は、例えば、300mg/ml:500mg/ml、好ましくは355mg/ml:450mg/ml、より好ましくは375mg/ml:425mg/mlであり得る。
【0140】
有利なことに、本発明の再構成植物シートの質量と消耗品の内容積との比が、上記の値の範囲内である場合には、満足のいく官能特性を有するエアロゾルが生成される。本発明の再構成植物シートの質量と消耗品の内容積との比が、上記の値の範囲よりも小さい場合には、非常に顕著な官能特性を有するエアロゾルは生成されない。また、本発明の再構成植物シートの質量と消耗品の内容積との比が、上記の値の範囲よりも大きい場合には、吸引抵抗が大きすぎて、満足のいく喫煙ができなくなる。
【0141】
第4の主題によれば、本発明は、加熱装置、特に非燃焼加熱式タバコにおける、上記に定義した本発明による再構成植物シート、または、上記に定義した本発明による消耗品の使用に関する。
【0142】
一般的に、本発明による再構成植物シートは、単独で使用してもよいし、または、天然の植物葉や従来の再構成植物シート、とりわけ、天然のタバコ葉や従来の再構成タバコシートと組み合わせて使用してもよい。
【0143】
本明細書で使用するとき、「非燃焼加熱式タバコ(タバコを燃焼させることなく加熱する装置)」という用語は、ユーザによって吸入されるエアロゾルを生成することができる任意の装置を意味する。エアロゾルは煙に代わるものであり、ユーザは、植物の芳香を吸入することができ、それと同時に、ユーザの有害成分への曝露を著しく低減することができる。
【0144】
一般的に、加熱装置は、気流の方向に沿って、空気入口と、加熱部と、エアロゾル生成物質を含有する本発明の再構成植物シートを所定位置に収容して保持するための収容部と、ユーザの口腔内にエアロゾルを導入するための空気出口とを含む。一般的に、空気入口、加熱部、収容部、及び空気出口は、少なくとも互いに流体的に接続される。
【0145】
一般的に、加熱装置を使用する場合、ユーザが空気入口を介して加熱装置内に空気を吸い込むと、吸い込まれた空気は加熱部を通過して加熱され、加熱された空気が、収容部に保持されているエアロゾル生成物質を含有する本発明の再構成植物シートと接触してエアロゾルを生成し、その生成されたエアロゾルが空気出口を介してユーザに吸入される。植物が薬用植物である場合、生成されるエアロゾルは、治療特性を有する。
【0146】
さらに、加熱装置により、再構成植物シートの燃焼はない。したがって、ユーザは、植物の官能特性、また任意選択でタバコの官能特性を利用することができ、同時に、ユーザの有害成分への曝露を著しく低減することができる。
【0147】
実施例
【0148】
実施例1.1:本発明によるカレンダー処理された再構成タバコシート
【0149】
バージニア種のタバコの細片と茎との混合物を、65°Cの水に、攪拌しながら45分間接触させる。機械的プレスによって、繊維部分からタバコ抽出物を分離する。タバコ抽出物を、その固形分濃度が60重量%になるように、真空下で濃縮する。タバコ繊維を微細化した後、実験室の製紙機に通し、約86g/mの坪量を有する2つの基材ウェブを作製する。エアロゾル生成物質としてのグリセロールを、濃縮タバコ抽出物に添加する。グリセロールが添加された濃縮タバコ抽出物を、サイズプレスで含浸させて、2つの基材ウェブの各々に接触させ、それにより、2つの繊維性支持体が製造される。製造された繊維性支持体は、その後、実験室の乾燥プレート上で乾燥させる。
【0150】
濃縮抽出物とグリセリンとからタバコ抽出物組成物を作製する。作製したタバコ抽出物組成物を第1の繊維性支持体上に塗布し、次いで、第1の繊維性支持体上に塗布されたタバコ抽出物組成物上に第2の繊維性支持体を配置する。これにより、2つの繊維性支持体の間にタバコ抽出物組成物が介在され、タバコ抽出物組成物の層が形成される。その後、製造された再構成タバコシートを、実験室の乾燥プレート上で乾燥させる。
【0151】
再構成タバコシートを、シリンダを使用したカレンダー処理ステップに供し、34.5バールの圧力を加えてカレンダー処理された再構成タバコシートを製造する。その後、製造された再構成タバコシートを、実験室の乾燥プレート上で乾燥させる。
【0152】
カレンダー処理された再構成タバコシートのタバコ抽出物及びグリセロールの含有量は、SPが37.1重量%、SAGが21.2重量%、SAG+SPが58.3重量%になるように調節する。
【0153】
カレンダー処理された再構成タバコシートは、0.71g/cmの密度、368g/mの坪量、及び515μmの厚さを有する。
【0154】
実施例1.2:微細化されたタバコ繊維を含有する繊維性支持体、微細化されたカカオ繊維を含有する繊維性支持体、及びタバコ抽出物組成物を含む、本発明によるカレンダー処理された再構成植物シート。
【0155】
微細化されたタバコ繊維を含有する繊維性支持体、及び、タバコ抽出物組成物は、上述の方法にしたがって製造される。
【0156】
カカオシェル(カカオの殻)をナイフミルで粉砕して、1mm程度の粒子にする。続いて、粉砕したカカオシェルと水とを、カカオシェル:水の比を1/10にして、70°Cで20分間混合させる。次いで、水とカカオシェルとの混合物を遠心分離して、カカオ繊維からカカオ樹抽出物を分離する。そして、まず、カカオツリー抽出物を回収し、次に、カカオ殻繊維を回収する。カカオ繊維を微細化した後、実験室の製紙機に通して、約60g/mの坪量を有するカカオ基材ウェブを作製する。カカオツリー抽出物を、固形分濃度が19.5重量%になるように、真空下で濃縮する。濃縮されたカカオツリー抽出物に、エアロゾル生成物質としてのグリセロールを添加する。グリセロールが添加された濃縮カカオ抽出物を、サイズプレスで含浸させて、カカオ基材ウェブに接触させ、それにより、微細化されたカカオ繊維からなる繊維性支持体が製造される。
【0157】
微細化されたタバコ繊維を含む繊維性支持体上に、タバコ抽出物組成物の一部を塗布し、次いで、微細化されたカカオ繊維を含む繊維性支持体上に、タバコ抽出物組成物の残りの部分を塗布する。2つの繊維性支持体を、タバコ抽出物組成物が塗布された部分が互いに接触して繊維性支持体間に層を形成するように互いに重ね合わせる。このようにして製造された再構成タバコシートを、上記のカレンダー処理ステップに供する。
【0158】
再構成植物シートのタバコ抽出物、カカオ樹抽出物、及びグリセリンの含有量は、SPが43.6重量%、タバコ40.9重量%、カカオ2.7重量%、SAGが16.3重量%、SAG+SPの合計が59.9重量%になるように調節する。
【0159】
製造されたこの再構成植物シートは、0.83g/cmの密度、312g/mの坪量、及び376μmの厚さを有する。
【0160】
比較例1:本発明によらない再構成タバコシート
【0161】
本発明によらない再構成タバコシートは、上述したのと同様の製造方法を用いて製造した単一の繊維性支持体を含む。
【0162】
本発明によらない再構成タバコシートのタバコ抽出物及びグリセロールの含有量は、SPが29.4重量%、SAGが19重量%、SAG+SPの合計が48.4重量%になるように調節する。
【0163】
本発明によらない再構成タバコシートは、0.58g/cmの密度、151g/mの坪量、及び261μmの厚さを有する。
【0164】
本発明によらない再構成タバコシートの密度は0.6未満であり、実施例1.1の再構成タバコシートの密度及び実施例1.2の再構成植物シートの密度よりも低い。
【0165】
実施例2:実施例1.1のシートで生成されたエアロゾルと比較例1のシートで生成されたエアロゾルとの圧力損失及び官能特性の比較
【0166】
この実施例2では、様々なスティックを試験する。実施例1.1のシートからなるスティックを、実施例1.1のスティックと称する。比較例1のシートからなるスティックを、比較例1のスティックと称する。本発明による再構成タバコシート及び本発明によらない再構成タバコシートは、刻みタバコ状に切断され、次いで、所望の比になるように、glo(TM)用のNeo Navy Blueスティックシース内に所定の質量で導入される。
【0167】
圧力損失は、スティックの吸引抵抗を特徴付けることができるパラメータである。具体的には、このスティックを横切る圧力降下が大きいほど、スティックの吸引抵抗が大きくなる。圧力損失は、以下のようにして求められる。SMI社精のPDV SODIM装置を使用する。この装置は、再構成植物シートを含むスティックに空気流を17.5ml/sの一定の流量で通過させたときの圧力降下を測定することにより、吸引抵抗を測定する。吸引抵抗は、水柱ミリメートル(mmWC)で表される。
【0168】
試験した様々なスティックで生成されたエアロゾルの官能特性を、以下のプロトコルにしたがって、独立した専門家によって評価した。本発明によるタバコシートと、本発明によらないタバコシートは、独立した専門家によって、glo(TM)タイプの加熱システムで交互に評価し、エアロゾルの味を10段階で評価した。
【0169】
その結果を下記の表1に示す。
【0170】
【表1】
【0171】
表1の結果は、400mg/mlの比について、圧力降下が以下のとおりであったことを示している。
・実施例1.1のスティックの圧力降下は76であった。この値は許容範囲である。
・比較例1のスティックの圧力降下86であった。この値は、満足のいく喫煙をするには高すぎる値であった。
【0172】
比較例1のスティックの圧力損失が実施例1.1のスティックの圧力損失と同程度になるように、比を297mg/mlに減少させた。表1の結果は、同程度の圧力降下(76及び77)において、発生するエアロゾルを示している。
・実施例1.1のスティックで生成されたエアロゾルは、非常に満足のいく官能特性(グレード8/10)を有しており、特に、顕著なバージニアタバコの味、有利な振幅、まろやかでバランスの取れた味を有しており、これは、本発明によらないタバコシートで生成されるエアロゾルよりも優れていた。
・比較例1のスティックで生成されたエアロゾルの官能特性は不満足であり(グレード2/10)、特にタバコの味があまり感じられなかった。
【0173】
したがって、この実施例2は、本発明による再構成植物シートが、エアロゾルの吸引抵抗性と官能特性との間の良好な妥協を得ることを可能にすることを実証した。
【国際調査報告】