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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-03
(54)【発明の名称】哺乳類のための補充された動物飼料
(51)【国際特許分類】
   A23K 20/10 20160101AFI20230327BHJP
   A23K 50/10 20160101ALI20230327BHJP
   A23K 50/30 20160101ALI20230327BHJP
【FI】
A23K20/10
A23K50/10
A23K50/30
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022549426
(86)(22)【出願日】2021-02-15
(85)【翻訳文提出日】2022-09-27
(86)【国際出願番号】 CA2021050162
(87)【国際公開番号】W WO2021163786
(87)【国際公開日】2021-08-26
(31)【優先権主張番号】62/977,990
(32)【優先日】2020-02-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508298293
【氏名又は名称】アヴィヴァジェン インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】バートン,グラハム ウィリアム
(72)【発明者】
【氏名】ライリー,ウィリアム ダブリュ.
(72)【発明者】
【氏名】ニッカーソン,ジェームズ ゲイリー
【テーマコード(参考)】
2B005
2B150
【Fターム(参考)】
2B005BA01
2B005BA03
2B005BA05
2B005EA01
2B150AA01
2B150AA02
2B150AA03
2B150AA06
2B150AB10
2B150DA02
(57)【要約】
本発明は、(i)無症候性乳房炎の1つ又は複数の症状を改善する;(ii)完全な臨床的乳房炎に進行する無症候性乳房炎の頻度を減少させる;(iii)哺乳類の初乳又は乳汁中の細菌数を減少させる;(iv)哺乳類の生理学的ストレスを軽減する;(v)哺乳類の生殖能力を改善する;及び/又は(vi)哺乳類の子孫の健康を改善するための方法で使用するための有効量のカロテノイド-酸素コポリマーを含む動物飼料を特徴とする。本発明はまた、カロテノイド-酸素コポリマーが補充された動物飼料を給餌された哺乳類から、低温殺菌乳を製造するための方法を特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳類における無症候性乳房炎を治療するための方法であって、前記方法が、有効量のカロテノイド-酸素コポリマーを含む動物飼料を前記哺乳類に給餌することを含む、方法。
【請求項2】
前記哺乳類が、泌乳中及び/又は子孫に授乳中である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記哺乳類が、牛、馬、犬、猫、羊、又は豚である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記哺乳類が乳牛である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記乳牛が、ホルスタイン牛、ジャージー牛、ブラウンスイス牛、ガーンジー牛、エアシャー牛、ミルキングショートホーン牛、及びレッドアンドホワイトホルスタインから選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記哺乳類が豚である、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記給餌が、前記哺乳類からの乳の採取の10日~50日前である、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記給餌が、前記哺乳類からの乳の採取中に継続している、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記方法が、無症候性乳房炎の1つ又は複数の症状を改善することを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記方法が、前記哺乳類における完全な臨床的乳房炎に進行する無症候性乳房炎の頻度を減少させることを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
哺乳類の子孫の健康を改善する方法であって、前記方法が、前記哺乳類の妊娠後に有効量のカロテノイド-酸素コポリマーを含む動物飼料を前記哺乳類に給餌することを含む、方法。
【請求項12】
前記哺乳類が、牛、馬、犬、猫、羊、及び豚から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記哺乳類が豚である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記給餌が、前記哺乳類の妊娠の10日~30日前に始まる、請求項11~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記給餌が、前記子孫の妊娠期間を通して継続する、請求項11~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記哺乳類が、前記子孫に授乳する期間中、前記哺乳類に給餌を継続することをさらに含む、請求項14又は15に記載の方法。
【請求項17】
前記妊娠した哺乳類から前記子孫への受動免疫の伝達が増強される、請求項11~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記哺乳類が、前記妊娠の前又は後に無症候性乳房炎を有するか、又はそのリスクがある、請求項11~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
泌乳中の哺乳類における生理学的ストレスを軽減するための方法であって、前記方法が、前記哺乳類が泌乳している期間中、有効量のカロテノイド-酸素コポリマーを含む動物飼料を前記哺乳類に給餌することを含む、方法。
【請求項20】
前記哺乳類が子孫に授乳中である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記哺乳類が、牛、馬、犬、猫、羊、又は豚である、請求項19又は20に記載の方法。
【請求項22】
前記哺乳類が乳牛である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記乳牛が、ホルスタイン牛、ジャージー牛、ブラウンスイス牛、ガーンジー牛、エアシャー牛、ミルキングショートホーン牛、及びレッドアンドホワイトホルスタインから選択される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記哺乳類が豚である、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
生理学的ストレスを軽減することが、前記哺乳類における脂肪損失を軽減することを含む、請求項19~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記哺乳類が、前記泌乳中に無症候性乳房炎を有するか、又はそのリスクがある、請求項19~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
哺乳類による子孫の出産後の哺乳類の生殖能力を改善するための方法であって、前記方法が、有効量のカロテノイド-酸素コポリマーを含む動物飼料を前記哺乳類に給餌することを含む、方法。
【請求項28】
前記哺乳類が、牛、馬、犬、猫、羊、又は豚から選択される、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記哺乳類が乳牛である、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記乳牛が、ホルスタイン牛、ジャージー牛、ブラウンスイス牛、ガーンジー牛、エアシャー牛、ミルキングショートホーン牛、及びレッドアンドホワイトホルスタインから選択される、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記哺乳類が豚である、請求項28に記載の方法。
【請求項32】
生殖能力の改善が、前記哺乳類が発情期に戻るのに必要な日数を短縮させることである、請求項27~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記哺乳類が、前記哺乳類の妊娠の前又は後に無症候性乳房炎を有するか、又はそのリスクがある、請求項27~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
哺乳類の初乳又は乳汁中の細菌数を減少させるための方法であって、前記方法が、前記哺乳類に有効量のカロテノイド-酸素コポリマーを含む動物飼料を給餌することを含む、方法。
【請求項35】
前記哺乳類が、泌乳中及び/又は子孫に授乳中である、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記哺乳類が、牛、馬、犬、猫、羊、又は豚である、請求項34又は35に記載の方法。
【請求項37】
前記哺乳類が乳牛である、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記乳牛が、ホルスタイン牛、ジャージー牛、ブラウンスイス牛、ガーンジー牛、エアシャー牛、ミルキングショートホーン牛、及びレッドアンドホワイトホルスタインから選択される、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記哺乳類が豚である、請求項36に記載の方法。
【請求項40】
前記給餌が、前記哺乳類からの乳の採取の10日~50日前である、請求項34~39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記給餌が、前記哺乳類からの乳の採取中に継続している、請求項34~40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記乳の貯蔵寿命が延長される、請求項40又は41に記載の方法。
【請求項43】
前記哺乳類が、無症候性乳房炎を有するか、又はそのリスクがある、請求項34~42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
前記動物飼料が、0.0001%~0.005%(w/w)のカロテノイド-酸素コポリマーを含む、請求項1~43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
低温殺菌乳を製造するための方法であって、前記方法が、
(i)哺乳類から乳を採取する少なくとも10日~30日前に始まる期間中、有効量のカロテノイド-酸素コポリマーを含む動物飼料を給餌された哺乳類から得た乳を提供することと;
(ii)低温殺菌工程を用いて前記乳を処理し、前記低温殺菌乳を製造することと
を含む、方法。
【請求項46】
前記哺乳類からの乳の採取の少なくとも30日~50日前に始まる期間中、有効量のカロテノイド-酸素コポリマーを含む動物飼料が前記哺乳類に給餌された、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記哺乳類からの乳の採取の少なくとも35日~45日前に始まる期間中、有効量のカロテノイド-酸素コポリマーを含む動物飼料が前記哺乳類に給餌された、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記哺乳類からの乳の採取の少なくとも21日~42日前に始まる期間中、有効量のカロテノイド-酸素コポリマーを含む動物飼料が前記哺乳類に給餌された、請求項45に記載の方法。
【請求項49】
前記乳の貯蔵寿命が延長される、請求項45~48のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
前記乳中の細菌数が減少する、請求項45~48のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、その内容全体が参照により本明細書に援用される、2020年2月18日に出願された米国特許出願第62/977,990号明細書の優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
成長促進のために最適化された現代の条件下で飼育される哺乳類は、通常は大豆又は綿実粕の形態で、高比率のタンパク質と、トウモロコシ、又はソルガムの一種であるマイロなどの穀物を高百分率で含有する飼料を与えられる。飼料添加物は、妊娠中又は泌乳中の哺乳類をはじめとする、家畜の健康と福利を改善するために使用されてきた。飼料は、家畜の維持及び哺乳類からの食料の生産における比較的高価な費用要因である(典型的には、費用の50~70%)。したがって、乳をはじめとする食品への哺乳類の飼料の変換のあらゆる改善、又は哺乳類の生殖能力の増強は、食品製造業者の収益性を直接改善し得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
添加物の使用に問題がないわけではない。動物飼料に抗生物質が広く使用されることで、抗生物質耐性微生物の発生が促進される。飼料ロット中の抗生物質耐性菌の出現の増加と、抗生物質耐性菌によって引き起こされる疫病の可能性の結果として、動物飼料への抗生物質の使用を制限する政府の圧力が高まっている。
【0004】
その結果、妊娠又は泌乳中の哺乳類の健康と福利を改善するための、安全で効果的な新しい方法の必要性が急速に高まっている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、(i)無症候性乳房炎の1つ又は複数の症状を改善する;(ii)完全な臨床的乳房炎に進行する無症候性乳房炎の頻度を減少させる;(iii)哺乳類の初乳又は乳汁中の細菌数を減少させる;(iv)哺乳類の生理学的ストレスを軽減する;(v)哺乳類の生殖能力を改善する;及び/又は(vi)哺乳類の子孫の健康を改善するための方法で使用するための補充された動物飼料を特徴とする。
【0006】
第1の態様では、本発明は、哺乳類の無症候性乳房炎を治療するための方法を特徴とし、方法は、有効量のカロテノイド-酸素コポリマーを含む動物飼料を哺乳類に給餌することを含む。いくつかの実施形態では、哺乳類は泌乳中である。さらなる実施形態では、哺乳類は子孫に授乳中である。哺乳類は、牛、馬、犬、猫、羊、又は豚であり得る。いくつかの実施形態では、哺乳類は牛である。特定の実施形態では、哺乳類は乳牛である。乳牛は、ホルスタイン牛、ジャージー牛、ブラウンスイス牛、ガーンジー牛、エアシャー牛、ミルキングショートホーン牛、又はレッドアンドホワイトホルスタインであり得る。その他の実施形態では、哺乳類は豚である。いくつかの実施形態では、給餌は、哺乳類からの乳の採取前10日~30日(例えば、10日~15日、10日~20日、15日~20日、15日~25日、20日~25日、20日~30日、又は25日~30日)である。いくつかの実施形態では、給餌は、哺乳類からの乳の採取前30日~50日(例えば、30日~40日、35日~45日、40日~50日、30日~35日、35日~40日、40日~45日、又は45日~50日)である。なおもその他の実施形態では、給餌は、哺乳類からの乳の採取前20日~45日(例えば、20日~30日、25日~35日、30日~40日、35日~45日、21日~42日、21日~28日、又は28日~42日)である。いくつかの実施形態では、給餌は、哺乳類からの乳の採取中に継続している。いくつかの実施形態では、乳の貯蔵寿命が延長される。いくつかの実施形態では、方法は、無症候性乳房炎の1つ又は複数の症状を改善することを含む。特定の実施形態では、方法は、哺乳類における無症候性乳房炎から完全臨床的乳房炎に進行する頻度を(例えば、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、又はそれ以上)減少させることを含む。
【0007】
別の態様では、本発明は、哺乳類の子孫の健康を改善する方法を特徴とし、方法は、哺乳類の妊娠後に有効量のカロテノイド-酸素コポリマーを含む動物飼料を哺乳類に給餌することを含む。哺乳類は、牛、馬、犬、猫、羊、又は豚であり得る。いくつかの実施形態では、哺乳類は豚である。いくつかの実施形態では、給餌は、哺乳類の妊娠前10日~30日(例えば、10日~15日、10日~20日、15日~20日、15日~25日、20日~25日、20日~30日、又は25日~30日)である。いくつかの実施形態では、給餌は、子孫の妊娠期間中に継続される。いくつかの実施形態では、方法は、哺乳類が子孫に授乳する期間中、哺乳類に給餌を継続することをさらに含む。いくつかの実施形態では、妊娠した哺乳類から子孫への受動免疫の伝達が増強される。特定の実施形態では、哺乳類は、妊娠の前又は後に無症候性乳房炎を有するか、又はそのリスクがある。特定の実施形態では、子孫の健康を改善することは、(i)出産時の死産児又はミイラの数を減少させること:(ii)出産から離乳までの生きた子孫の生存率を高めること;(iii)出産から離乳までの子孫の体重増加を増加させること;及び/又は(iv)出産から離乳までの子孫の感染性疾患(例えば、下痢)の発生率を低下させることを含む。生存率の平均増加は、対照哺乳類の子孫と比較して、0.5%を超え、好ましくは1%、2%、3%、4%、又は5%を超え得る。出産から離乳までの子孫の体重増加の平均増加は、対照哺乳類の子孫と比較して、0.5%を超え、好ましくは1%、2%、3%、4%、又は5%を超え得る。出産から離乳までの子孫における感染症(例えば、下痢)の発生率の平均減少は、対照哺乳類の子孫と比較して、0.5%を超え、好ましくは1%、2%、3%、4%、又は5%を超え得る。
【0008】
別の態様では、本発明は、泌乳中の哺乳類の生理学的ストレスを軽減するための方法を特徴とし、方法は、哺乳類が泌乳している期間中、有効量のカロテノイド-酸素コポリマーを含む動物飼料を哺乳類に給餌することを含む。いくつかの実施形態では、哺乳類は子孫に授乳中である。哺乳類は、牛、馬、犬、猫、羊、又は豚であり得る。いくつかの実施形態では、哺乳類は牛である。特定の実施形態では、哺乳類は乳牛である。乳牛は、ホルスタイン牛、ジャージー牛、ブラウンスイス牛、ガーンジー牛、エアシャー牛、ミルキングショートホーン牛、又はレッドアンドホワイトホルスタインであり得る。その他の実施形態では、哺乳類は豚である。いくつかの実施形態では、生理学的ストレスを軽減することは、哺乳類における脂肪損失を低減することを含む。特定の実施形態では、哺乳類は、泌乳中に無症候性乳房炎を有するか、又はそのリスクがある。
【0009】
別の態様では、本発明は、哺乳類による子孫の出産後の哺乳類の生殖能力を改善するための方法を特徴とし、方法は、有効量のカロテノイド-酸素コポリマーを含む動物飼料を哺乳類に給餌することを含む。哺乳類は、牛、馬、犬、猫、羊、又は豚であり得る。いくつかの実施形態では、哺乳類は牛である。特定の実施形態では、哺乳類は乳牛である。乳牛は、ホルスタイン牛、ジャージー牛、ブラウンスイス牛、ガーンジー牛、エアシャー牛、ミルキングショートホーン牛、又はレッドアンドホワイトホルスタインであり得る。その他の実施形態では、哺乳類は豚である。いくつかの実施形態では、生殖能力の改善は、哺乳類が発情期に戻るのに必要な日数を短縮することである。特定の実施形態では、哺乳類は、哺乳類の妊娠の前又は後に無症候性乳房炎を有するか、又はそのリスクがある。
【0010】
本発明は、哺乳類の初乳又は乳汁中の細菌数を減少させるための方法をさらに特徴とし、方法は、有効量のカロテノイド-酸素コポリマーを含む動物飼料を哺乳類に給餌することを含む。いくつかの実施形態では、哺乳類は泌乳中である。さらなる実施形態では、哺乳類は子孫に授乳中である。哺乳類は、牛、馬、犬、猫、羊、又は豚であり得る。いくつかの実施形態では、哺乳類は牛である。特定の実施形態では、哺乳類は乳牛である。乳牛は、ホルスタイン牛、ジャージー牛、ブラウンスイス牛、ガーンジー牛、エアシャー牛、ミルキングショートホーン牛、又はレッドアンドホワイトホルスタインであり得る。その他の実施形態では、哺乳類は豚である。
【0011】
哺乳類が泌乳中である上記の方法の特定の実施形態では、方法は、有効量のカロテノイド-酸素コポリマーを含む動物飼料を哺乳類に給餌することを含み得て、給餌は、(i)哺乳類からの乳の採取前10日~30日(例えば、10日~15日、10日~20日、15日~20日、15日~25日、20日~25日、20日~30日、又は25日~30日);又は(ii)哺乳類からの乳の採取前30日~50日(例えば、30日~40日、35日~45日、40日~50日、30日~35日、35日~40日、40日~45日、又は45日~50日);又は(iii)哺乳類からの乳の採取前20日~45日(例えば、20日~30日、25日~35日、30日~40日、35日~45日、21日~42日、21日~28日、又は28日~42日)である。いくつかの実施形態では、給餌は、哺乳類からの乳の採取中に継続している。いくつかの実施形態では、乳の貯蔵寿命が延長される。
【0012】
哺乳類が妊娠している上記の方法の特定の実施形態では、方法は、有効量のカロテノイド-酸素コポリマーを含む動物飼料を哺乳類に給餌することを含み得て、給餌は、(i)哺乳類の妊娠前10日~30日(例えば、10日~15日、10日~20日、15日~20日、15日~25日、20日~25日、20日~30日、又は25日~30日);又は(ii)哺乳類の妊娠前30日~50日(例えば、30日~40日、35日~45日、40日~50日、30日~35日、35日~40日、40日~45日、又は45日~50日);又は(iii)哺乳類の妊娠前20日~45日(例えば、20日~30日、25日~35日、30日~40日、35日~45日、21日~42日、21日~28日、又は28日~42日)である。いくつかの実施形態では、給餌は、哺乳類の妊娠期間全体にわたって継続される(例えば、約115日の妊娠期間と同時に雌豚に給餌される)。その他の実施形態では、給餌は、哺乳類の妊娠期間の少なくとも前半の間継続される。なおもその他の実施形態では、給餌は、哺乳類の妊娠期間の少なくとも後半の間継続される。いくつかの実施形態では、結果として得られた子孫の健康が改善される。
【0013】
上記の方法のいずれかの特定の実施形態において、動物は、カロテノイド-酸素コポリマーが補充された動物飼料を主に(例えば、80%以上)給餌される。このアプローチでは、動物飼料は、0.0001%~0.005%(w/w)(例えば、0.0001%~0.003%(w/w)、0.0001%~0.001%(w/w)、0.0005%~0.003%(w/w)、0.0005%~0.001%(w/w)、0.001%~0.003%(w/w)、0.001%~0.005%(w/w)、又は0.003~0.005%(w/w))のカロテノイド-酸素コポリマーを含み得る。動物飼料は、0.0002%~0.001%(w/w)のカロテノイド-酸素コポリマーを含み得る。特定の実施形態では、動物飼料は、0.0004%~0.001%(w/w)のカロテノイド-酸素コポリマーを含む。
【0014】
上記の方法のいずれかのその他の実施形態において、動物は、カロテノイド-酸素コポリマーが補充されていない動物飼料を主に(例えば、80%以上)給餌されるが、カロテノイド-酸素コポリマーが補充された少なくとも1回の毎日の給餌を受ける。このアプローチでは、毎日の給餌は、0.01%~0.5%(w/w)(例えば、0.01%~0.1%(w/w)、0.05%~0.2%(w/w)、0.075%~0.4%(w/w)、0.15%~0.4%(w/w)、又は0.2~0.5%(w/w))のカロテノイド-酸素コポリマーを含有する高度に補充された動物飼料を含み得る。動物飼料は、0.02%~0.1%(w/w)のカロテノイド-酸素コポリマーを含み得る。特定の実施形態では、動物飼料は、0.05%~0.1%(w/w)のカロテノイド-酸素コポリマーを含む。例えば、哺乳類が牧草地の放牧によって給餌される牛である場合、本発明の方法は、高度に補充された動物飼料を毎日給餌することを含む。
【0015】
別の態様では、本発明は、(i)哺乳類から得られた乳を提供し、ここで、哺乳類は、哺乳類からの乳の採取の少なくとも10日~30日(例えば、10日~15日、10日~20日、15日~20日、15日~25日、20日~25日、20日~30日、又は25日~30日)前に始まる期間中、有効量のカロテノイド-酸素コポリマーを含む動物飼料を給餌されたことと、(ii)低温殺菌工程を用いて乳を処理し、低温殺菌乳を製造することとを含む、低温殺菌乳を製造するための方法を特徴とする。その他の実施形態では、哺乳類は、哺乳類からの乳の採取の少なくとも30日~50日(例えば、30日~40日、35日~45日、40日~50日、30日~35日、35日~40日、40日~45日、又は45日~50日)前に始まる期間中、有効量のカロテノイド-酸素コポリマーを含む動物飼料を給餌された。なおもその他の実施形態では、哺乳類は、哺乳類からの乳の採取の少なくとも20日~45日(例えば、20日~30日、25日~35日、30日~40日、35日~45日、21日~42日、21日~28日、又は28日~42日)前に始まる期間中、有効量のカロテノイド-酸素コポリマーを含む動物飼料を給餌された。いくつかの実施形態では、乳の貯蔵寿命が延長される。その他の実施形態では、乳汁中の細菌数が減少する。哺乳類は、牛、馬、犬、猫、羊、又は豚であり得る。いくつかの実施形態では、哺乳類は牛である。特定の実施形態では、哺乳類は乳牛である。乳牛は、ホルスタイン牛、ジャージー牛、ブラウンスイス牛、ガーンジー牛、エアシャー牛、ミルキングショートホーン牛、又はレッドアンドホワイトホルスタインであり得る。
【0016】
定義
「動物」とは、羊、豚、牛、及び鳥をはじめとするがこれらに限定されない、任意の動物を意味する。「哺乳類」とは、羊、豚、及び牛をはじめとするが、これらに限定されない、泌乳する能力を有する動物を意味する。
【0017】
本明細書の用法では「カロテノイド」とは、植物、藻類、細菌、並びに鳥及び甲殻類などの特定の動物に見いだされ得る、テルペノイド群の天然色素を指す。カロテノイドとしては、炭化水素(すなわち、酸素を含まない)であるカロテン、及びそれらの酸素化誘導体(すなわち、キサントフィル)が挙げられる。カロテノイドの例としては、リコピン;β-カロテン;ゼアキサンチン;エキネノン;イソゼアキサンチン;アスタキサンチン;カンタキサンチン;ルテイン;シトラナキサンチン;β-アポ-8’-カロテン(carotenic)酸エチルエステル;アロキサンチン、アポカロテノール、アスタセン、アスタキサンチン、カプサンチン、カプソルビン、カロテンジオール、カロテントリオール、カロテノール、クリプトキサンチン、デカプレノキサンチン、エピルテイン、フコキサンチン、ヒドロキシカロテノン、ヒドロキシエキネノン、ヒドロキシリコペン、ルテイン、リコキサンチン、ニューロスポリン、フィトエン、フィトフルオエン、ロドピン、スフェロイデン、トルレン、ビオラキサンチン、及びゼアキサンチンなどのヒドロキシカロテノイド;及びアポカロテン酸、13-アポ-8’-カロテン酸、アザフリン、ビキシン、カルボキシルカロテン、クロセチン、ジアポカロテン酸、ニューロスポラキサンチン、ノルビキシン、及びリコペン酸などのカルボキシルカロテノイドが挙げられる。
【0018】
本明細書の用法では、「カロテノイド-酸素コポリマー」とは、酸素分子との自発的な反応によってその反応性二重結合が完全に酸化されて、カロテノイドと酸素とのコポリマーを主生成物としてもたらすカロテノイドを指す。いくつかの実施形態では、カロテノイド-酸素コポリマーは、カロテノイドを最大6~8モル当量の酸素、又は別の酸化剤からの等量の酸素と反応させることによって形成される。このような反応は、ポリマー材料(すなわち、1,000ダルトンを超える分子量を有する材料)の大部分を生成する。ポリマー材料は、複数の二重結合から形成され得る様々な酸化型断片の多くの可能な化学的組み合わせによって形成されると考えられている。カロテノイド-酸素コポリマーの製造方法は、そのそれぞれが参照により本明細書に援用される、米国特許第5,475,006号明細書及び米国特許出願第08/527,039号明細書に記載されている。
【0019】
本明細書の用法では、乳の「低温殺菌」とは、乳の総細菌数を50%、好ましくは55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は99%減少させるのに十分な、一定時間(例えば、10分~1時間、20分~40分、30分~1時間、30分~40分、40分~1時間、1時間~2時間、又は1時間~3時間)にわたり、55℃~65℃(例えば、55℃~60℃、58℃~63℃、60℃~65℃、60℃~63℃、61℃~64℃、62℃~65℃、62℃~64℃、又は62℃~65℃)の範囲の温度で、乳を加熱する方法を指す。
【0020】
本明細書の用法では、哺乳類における「子孫の健康を改善する」とは、(i)出産時の死産児又はミイラの数を減少させること:(ii)出産から離乳までの生きた子孫の生存率を高めること;(iii)出産から離乳までの子孫の体重増加を増加させること;及び/又は(iv)出産から離乳までの子孫の感染性疾患(例えば、下痢)の発生率を低下させることを指す。改善は、対照哺乳類の飼料にカロテノイド-酸素ポリマーが補充されていないことを除き、同じ条件下で飼育された同じ種、齢数、健康状態(例えば、妊娠前、妊娠中、又は泌乳中)の対照哺乳類と比較した場合である。生存率の平均増加は、対照哺乳類の子孫と比較して、0.5%を超え、好ましくは1%、2%、3%、4%、又は5%を超え得る。出産から離乳までの子孫の体重増加の平均増加は、対照哺乳類の子孫と比較して、0.5%を超え、好ましくは1%、2%、3%、4%、又は5%を超え得る。出産から離乳までの子孫における感染症(例えば、下痢)の発生率の平均減少は、対照哺乳類の子孫と比較して、0.5%を超え、好ましくは1%、2%、3%、4%、又は5%を超え得る。
【0021】
本明細書の用法では、哺乳類における「飼料摂取量」は、哺乳類によって毎日摂取される飼料(例えば、kg/日/哺乳類)を指す。
【0022】
本明細書の用法では、哺乳類における「生理学的ストレスを軽減する」とは、(i)哺乳類の脂肪損失を減少させること;(ii)心拍数を低下させること;及び(iii)血圧を低下させることのいずれか1つを指す。改善は、対照哺乳類の飼料にカロテノイド-酸素コポリマーが補充されていないことを除き、同じ条件下で飼育された同じ種、齢数、健康状態(例えば、妊娠前、妊娠中、又は泌乳中)の対照哺乳類と比較した場合である。
【0023】
本明細書の用法では、哺乳類の「生殖能力を改善する」とは、対照哺乳類の飼料にカロテノイド-酸素コポリマーが補充されていないことを除き、同じ条件下で飼育された同じ種、齢数、及び健康状態の対照哺乳類と比較して、(i)哺乳類をより短期間で発情期に戻すこと;(ii)出産時に小さすぎる子孫の数を減少させること;及び/又は(iii)一腹当たりの子孫の数を増加させることを指す。
【0024】
本明細書の用法では、「OxBC」は、最大6~8モル当量の酸素とβ-カロテンの反応によって形成される、主にカロテノイド-酸素コポリマー(例えば、β-カロテン-酸素コポリマー)、並びに微量の多数の小分子酸化分解物を含有する合物である。いくつかの例では、OxBCは、市販品のOxC-beta(商標)Livestock 10%プレミックスとして投与される。
【0025】
本明細書の用法では、「無症候性乳房炎」という用語は、乳汁又は乳房に目に見える変化をもたらさない無症候性乳房内感染によって引き起こされる哺乳類の乳腺の炎症を指す。乳汁は正常に見えるが、無症候性感染牛は一般に乳生産量が少なく、乳質も低下する。
【0026】
本明細書の用法では、「無症候性乳房炎の治療」という用語は、(i)無症候性乳房炎の1つ又は複数の症状を改善すること、又は(ii)完全な臨床的乳房炎に進行する無症候性乳房炎の頻度を減少させることを指す。本発明の方法を用いて無症候性乳房炎に罹患している哺乳類を治療することにより、哺乳類の乳生産量が増加され得て、哺乳類の乳質が改善され得て、無症候性乳房炎が完全な臨床的乳房炎に進行するリスクが低減され得る(例えば、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、又はそれ以上)。(i)無症候性乳房炎の1つ又は複数の症状を改善すること、又は(ii)完全な臨床的乳房炎に進行する無症候性乳房炎の頻度を減少させることの効果は、対照哺乳類の飼料にカロテノイド-酸素コポリマーが補充されていないことを除き、同じ種、齢数、及び健康状態(例えば、無症候性乳房炎の重症度と状態が同じ、例えば、妊娠前、妊娠中、及び/又は泌乳中)の、同じ条件下で飼育されている対照哺乳類との比較である。
【0027】
本発明のその他の特徴及び利点は、以下の詳細な説明及び特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】実施例2における泌乳中の乳牛の3つの実験群:CTR2、T1、及びT2の乾物摂取量(DMI)に対するOxBCの効果を示す。
図2】実施例2における泌乳中の乳牛の3つの実験群:CTR2、T1、及びT2の乳生産量に対するOxBCの効果を示す。
図3】調査期間の気象データを示す。Tmax=24時間以内の最高温度;Tmin=24時間以内の最低温度;及びPrecip=24時間の総降水量)。
図4】給餌開始前(0日目)及び21日後と42日後に、OxBC又は対照を給餌された牛からの乳房区レベルSCCの自然対数のバイオリンプロットである。バイオリンプロットでは、白丸は中央値、黒棒は乳房区内範囲、ひげは乳房区内範囲の1.5倍の範囲、網掛けはデータのカーネル密度プロットを表す。
図5】給餌開始前(0日目)及び21日後と42日後に、OxBC(●)又は対照(△)を給餌された牛からの乳房区レベルSCCの自然対数の推定限界平均値を示す。
図6】OxBC(●)又は対照(△)食による給餌開始後21日目と42日目にSCC<200,000/mLとなった乳房区の推定平均比率を示す図である。
図7】OxBC又は対照食餌の給餌開始の前後における、自然対数牛レベル(牛群検定)SCCのバイオリンプロットである。
図8】OxBC(●)又は対照食餌(△)の給餌開始の前後における、自然対数牛レベル(牛群検験)SCCの推定限界平均値を示す。
図9】OxBC補充飼料(オレンジ色実線バー)又は対照飼料(青色影付きバー)を給餌された牛の給餌開始の前後に実施された牛群検査における、推定限界平均(95%信頼区間)日乳量(kg/牛/日)を示す。
図10】OxBC又は対照食餌の給餌開始の前後における、牛レベル(牛群検定)乳脂肪百分率のバイオリンプロットである。
図11】OxBC(●)又は対照(△)食餌の給餌開始の前後における、牛レベル(牛群検定)乳脂肪百分率の推定限界平均値を示す。
図12】OxBC又は対照食餌の給餌開始の前後における、牛レベル(牛群検定)乳タンパク質百分率のバイオリンプロットである。
図13】OxBC(●)又は対照(△)食餌の給餌開始の前後における、牛レベル(牛群検定)乳タンパク質百分率の推定限界平均値を示す
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明は、哺乳類にカロテノイド-酸素コポリマーを含む動物飼料を給餌することによって、無症候性乳房炎を治療し、哺乳類(例えば、牛、馬、犬、猫、羊、又は豚)の初乳又は乳汁中の細菌数を減少させる方法を特徴とする。本発明はまた、哺乳類にカロテノイド-酸素コポリマーを含む動物飼料を給餌することによって、生理学的ストレスを軽減し、生殖能力を改善し、子孫の健康を改善する方法を特徴とする。
【0030】
無症候性乳房内感染症(例えば、無症候性乳房炎)の細菌学的治癒率の増加は、無治療と比較して抗菌薬治療後に実証されている(Sol et al.,Journal of Dairy Science,80,2803-2808(1997);Oliver et al.,Journal of Dairy Science,87,2393-2400(2004);Deluyker et al.Journal of Dairy Science,88,604-614(2005);及びSteele and McDougall,New Zealand Veterinary Journal,62,38-46(2014)を参照されたい)。しかしながら、無症候性症例を抗菌薬で治療し、それに伴う乳の廃棄を行うことの経済性には疑問があり(Swinkels et al.,New Zealand Veterinary Journal,62,38-46(2005))、抗菌薬耐性の発生リスクが高まる可能性があることは、無症候性感染症の治療に抗菌薬を日常的に使用することが正当化されない可能性を示唆する(Barlow,Journal of Mammary Gland Biology and Neoplasia,16,385-407(2009))。したがって、代替の非抗菌薬プローチが好ましい。本発明の方法は、このような非抗菌薬アプローチを提供し得る。
【0031】
カロテノイド-酸素コポリマーの投与
本発明の方法を使用して、カロテノイド-酸素コポリマーは、無症候性乳房炎を治療し、及び/又は哺乳類の初乳又は乳汁中の細菌数を減少させるのに有効な量で哺乳類に給餌される。本発明のさらなる方法を使用して、カロテノイド-酸素コポリマーは、泌乳中の哺乳類の生理学的ストレスを軽減するのに有効な量で泌乳中の哺乳類に給餌される。本発明のその他の方法を使用して、カロテノイド-酸素コポリマーを哺乳類に給餌し、生殖能力を改善し、哺乳類の子孫の健康を増進する。
【0032】
カロテノイド-酸素コポリマーの場合、典型的な用量範囲は、1日当たり約5μg/kg~約50mg/kg体重である。望ましくは、1日当たり5μg/kg~5mg/kg体重、又は5μg/kg~0.5mg/kg体重の用量が、哺乳類に給餌される。投与されるカロテノイド-酸素コポリマーの正確な量は、哺乳類の種、食餌、及び健康状態(例えば、妊娠前、妊娠中、又は泌乳中)などの変数、及びカロテノイド-酸素コポリマーが、その他の飼料補給剤と組み合わされるか否かなどの変数に依存し得る。実施例に記載されるものなどの標準試験を使用して、カロテノイド-酸素コポリマーの用量及び投与頻度が最適化され得る。
【0033】
動物飼料
本発明の動物飼料は、哺乳類の初乳又は乳汁中の細菌数を減少させるか、又は鳥の卵中の細菌数を減少させるのに有効な量のカロテノイド-酸素コポリマーを含有し得る。本発明の動物飼料は、哺乳類の子孫の健康を改善し、及び/又は哺乳類の生殖能力を改善するのに有効な量のカロテノイド-酸素コポリマーを含有し得る。本発明の動物飼料は、泌乳中の哺乳類における生理学的ストレスを軽減するのに有効な量のカロテノイド-酸素コポリマーを含有し得る。
【0034】
動物飼料は、一般に、業界基準に従って栄養素を提供するように配合される。飼料は、市場価格及び入手可能性に従って選択される、様々な異なる飼料成分から配合されてもよい。したがって、飼料の一部の成分は、時間経過と共に変化してもよい。動物飼料の配合とNRCガイドラインに関する考察は、そのそれぞれが参照により本明細書に援用される、Church,Livestock Feeds and Feeding,O&B Books,Inc.,Corvallis Oreg.(1984)及びFeeds and Nutrition Digest,Ensminger,Oldfield and Heineman eds.,Ensminger Publishing Corporation,Clovis,Calif.(1990)を参照されたい。
【0035】
豚及びその他の動物の飼料は、伝統的に、タンパク質とエネルギーの要求量に基づいてバランス調整され、次に必要に応じてその他の要件を満たすように調整され、この要求は、哺乳類の異なる成長段階(例えば、妊娠前、妊娠中、又は泌乳期)及び哺乳類の維持管理によって変動する。いくつかの給餌状況では、適切なアミノ酸並びに全体的なタンパク質含有量を供給するように注意しなくてはならない。例えば、大量のとうもろこしを給餌された豚は、飼料中に十分なリジンが利用可能でなくてはならない。ほとんどの哺乳類の食餌では、エネルギー要件は穀物のデンプンによって満たされる。エネルギー要件はまた、飼料への脂肪添加によって満たされてもよい。カロテノイド-酸素コポリマーを含有する動物飼料は、特に、牛、馬、犬、猫、羊、及び鳥などのために調合されてもよい。
【0036】
その他の成分もまた必要に応じて動物飼料に添加され、哺乳類の健康と成長が促進されてもよい。成分としては、糖類、複合炭水化物、アミノ酸(特に、例えば、アルギニン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、スレオニン、トリプトファン、バリン、チロシン、アラニン、アスパラギン酸、ナトリウムグルタミン酸、グリシン、プロリン(praline)、セリン、及びシステイン)、ビタミン(特に、例えば、チアミン、リボフラビン、ピリドキシン、ナイアシン、ナイアシンアミド、イノシトール、塩化コリン、パントテン酸カルシウム、ビオチン、葉酸、アスコルビン酸、及びビタミンA、B、K、D、E)、ミネラル、タンパク質(例えば、肉粉、魚粉、液体又は粉末卵、魚の可溶物、ホエータンパク質濃縮物)、油(例えば、大豆油)、コーンスターチ、カルシウム、無機リン酸塩、硫酸銅、及び塩化ナトリウムが挙げられるが、これらに限定されない。抗生物質及びホルモンをはじめとするが、これらに限定されない、当該技術分野で公知の任意の薬剤成分もまた動物飼料に添加されてもよい。動物飼料のビタミン、ミネラル、及び抗生物質の補充については、Church,Livestock Feeds and Feeding,O&B Books,Inc.,Corvallis Oreg.(1984)を参照されたい。
【0037】
カモガヤ、オオアワガエリ、オニウシノケグサ、ライグラス、アルファルファ、イガマメ、クローバー及びカラスノエンドウなどの茎葉飼料;トウモロコシ、小麦、大麦ソルガム、ライコムギ、ライ麦、キャノーラ、及び大豆などの穀物飼料;作物残渣;穀類;豆類副産物;及びその他の農業副産物をはじめとするが、これらに限定されない、当該技術分野で公知の任意の動物飼料配合物が、本発明に従って使用され得る。得られた飼料が加工又は保存される状況では、飼料は加工又は保存の前にカロテノイド-酸素コポリマーで処理されてもよい。望ましくは、本発明の動物飼料は、ナタネ粕、綿実粕、大豆粕、又はコーンミールを含む。
【0038】
処理は、乾燥、サイロ貯蔵、細切、ペレット化、キューブ化、ベール包装、ローリング、テンパリング、粉砕、粗砕、ポッピング、押出し、微粉化、焙煎、圧偏処理、調理、及び/又は破裂を含んでもよい。例えば、ペレット飼料は、最初に飼料成分を混合し、次にダイを通して飼料成分を熱と圧力で圧縮し押し出すことによって作製される。本発明の動物飼料は、例えば、参照により本明細書に援用される、MacBain,Pelleting Animal Feed,American Feed Manufacturers Association,Arlington,Va.(1974)に記載されるようにペレット化され得る。
【0039】
妊娠前、妊娠中、及び/又は泌乳期の補充された食餌
本発明の方法(例えば、哺乳類に有効量のカロテノイド-酸素コポリマーを含む動物飼料を与える)を使用して、妊娠中又は泌乳中の哺乳類の健康及び福利が改善され得る。妊娠間近、妊娠中、及び/又は泌乳中の哺乳類の食餌を補充することの利点としては、(i)無症候性乳房炎の1つ又は複数の症状を改善すること;(ii)完全な臨床的乳房炎に進行する無症候性乳房炎の頻度を減少させること;(iii)哺乳類の初乳又は乳汁中の細菌数を減少させること;(iv)哺乳類の生理学的ストレスを軽減すること;(v)哺乳類の生殖能力を改善すること;及び(vi)向哺乳類の子孫の健康を改善することが挙げられる。
【0040】
無症候性乳房炎の症状を改善する
本発明は、泌乳中の哺乳類における無症候性乳房炎の1つ又は複数の症状を改善する方法を特徴とし、方法は、任意選択的に、哺乳類が泌乳している期間中、有効量のカロテノイド-酸素コポリマーを含む動物飼料を哺乳類に給餌することを含む。例えば、本発明の方法を用いて、無症候性乳房炎に罹患している哺乳類が治療され、哺乳類の乳生産量が増加され、及び/又は哺乳類の乳生産の質が改善され得る。
【0041】
無症候性乳房炎から完全な臨床的乳房炎への進行を減少させる
本発明は、泌乳中の哺乳類における無症候性乳房炎から完全臨床的乳房炎に進行する頻度を減少させる方法を特徴とし、方法は、哺乳類が泌乳している期間中、有効量のカロテノイド-酸素コポリマーを含む動物飼料を哺乳類に給餌することを含む。例えば、本発明の方法を用いて、無症候性乳房炎に罹患している哺乳類が治療され得て、無症候性乳房炎が完全な臨床的乳房炎に進行するリスクが、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、又はそれ以上減少される。
【0042】
生理学的ストレスを軽減させる
本発明は、泌乳中の哺乳類における生理学的ストレスを軽減する方法を特徴とし、方法は、哺乳類が泌乳している期間中、有効量のカロテノイド-酸素コポリマーを含む動物飼料を哺乳類に給餌することを含む。泌乳は哺乳類の生理学的ストレス(例えば、体重減少)を引き起こす。泌乳中の哺乳類の生理学的ストレスを軽減することは、哺乳類の健康と福利を向上させる。一例では、泌乳中の雌豚の生理学的ストレスは、雌豚の背部脂肪厚(例えば、背部脂肪のmm)によってモニターされる。
【0043】
生殖能力を改善し子孫の健康を改善する
本発明は、哺乳類による子孫の出産後の哺乳類の生殖能力を改善する方法を特徴とし、方法は、哺乳類が泌乳している期間中、有効量のカロテノイド-酸素コポリマーを含む動物飼料を哺乳類に給餌することを含む。生殖能力は、哺乳類が離乳後に発情期に戻るまでの早さ、出産時のサイズ不十分の子孫の数、又は一腹当たりの子孫の数によって測定される。
【0044】
例えば、雌豚では、繁殖能力の改善は、雌豚が離乳から7日(例えば、6日、5日、4日、3日、2日、又は1日)以内に発情期に戻ることによって示される。生殖能力はまた、出産時の虚弱な仔豚の数、及び一腹当たりの仔豚の総数によっても測定される。出産時に虚弱な仔豚は、出産時に体重が0.7kg未満の仔豚である。生殖能力はまた、子孫の死亡率によっても示される。子孫は生きていることもあれば、死産することもあり得る。
【0045】
乳汁中の細菌数を低下させる
本発明は、哺乳類の初乳又は乳汁中の細菌数を減少させるための方法を特徴とし、方法は、有効量のカロテノイド-酸素コポリマーを含む動物飼料を哺乳類に給餌することを含む。乳汁中の総細菌数を低下させると、乳の貯蔵寿命が延長され得る。
【0046】
低温殺菌乳のための補充された食餌
本発明は、有効量のカロテノイド-酸素コポリマーを含む動物飼料を哺乳類に給餌し、低温殺菌工程を用いて乳を処理する、哺乳類から低温殺菌乳を製造する方法をさらに特徴とする。
【0047】
乳汁は、細菌の増殖にとって優れた培地である。乳の殺菌は、典型的には、乳を高温(例えば、70℃~75℃)で、約15秒(例えば、約5秒、約10秒、約20秒、約25秒、又は約30秒)加熱することを含む。低温殺菌は、乳を低温(例えば、55℃~65℃)で加熱する工程である。低温殺菌では、乳は、約20分間(例えば、約10分間、約15分間、約25分間、又は約30分間)加熱される。
【0048】
乳を低温殺菌することで、乳の安全性が高まり、生乳と比較して乳の貯蔵寿命が延長される。
【実施例
【0049】
以下の実施例は、本明細書に記載される組成物及び方法がどのように使用、製造、及び評価されてもよいかの説明を当業者に提供するために提示され、本発明の純粋な例示を意図しており、本発明者らが彼らの発明と見なすものの範囲を限定することは意図されない。
【0050】
実施例1.経産雌豚の妊娠中及び泌乳中の食餌性OxBCの効果
以下の実施例は、経産雌豚の妊娠中及び泌乳中の食餌性OxBC補充が、生産性及び免疫状態に与える影響を調査するために実施された。
【0051】
材料
妊娠又は泌乳中の雌豚
妊娠85日目に第3出産歴から第8出産歴までの経産雌豚(ランドレース種×ヨークシャー種)150頭を、出産歴、過去の生殖能力、予測分娩日によって、1つの処置あたり50頭ずつで3つの食餌処置に無作為に割り当てた。対照群(CTR1)の動物には、補給剤を含まない基礎飼料を与えた;低用量のOxBC群(S1)の動物には、4mg/kgのOxBCを補充した基礎飼料を与えた:高用量OxBC群(S2)の動物には、8mg/kgのOxBCを補充した基礎飼料を与えた。3つの実験食餌のいずれにも、薬剤は補充しなかった。給餌試験は、妊娠85日目から泌乳21日目(離乳時)まで実行した。
【0052】
離乳後7日目に、泌乳中の雌豚の体重増加と発情率を記録した。雌豚の背部脂肪厚は、妊娠85日目及び110日目、並びに泌乳21日目に豚背部脂肪計(米国のRenco)を用いて測定した。泌乳中の雌豚の1日平均飼料摂取量もまた記録した。
【0053】
食餌
妊娠中及び泌乳中の雌豚のNRC(2012)要件を満たすか、又はそれを超えるように調合された市販のトウモロコシ-大豆粕の基礎飼料(表1)を、処置群1の基礎飼料(対照食)として使用した。処置群2及び3では、それぞれ4又は8ppmのOxBCを基礎飼料に添加した。飼料を介して投与されたOxBCは、市販のプレミックス製品であるOxC-beta(商標)Livestock 10%であった。OxBCは、トウモロコシを代償にして基礎飼料に添加した。妊娠85~112日目まで、雌豚を妊娠ストールに収容し、毎日3.0kgの飼料を与えた。分娩の2日前に、雌豚を分娩枠に移し、泌乳21日目に離乳するまで自由給餌した。
【0054】
【表1】
【0055】
【表2】
【0056】
方法
統計解析
雌豚の発情率を除く実験データについては、SPSS 21.0(米国イリノイ州シカゴ市のSPSS、INC.)の一方向ANOVA手順を使用して、処置間に有意な変動が存在するかどうかを判断した。全体的な違いが認められた場合、LSDの複数範囲検定を用いて、平均値間の違いを判定した。雌豚の発情率は、カイ二乗検定を用いて分析した。雌豚の発情率を百分率として表したことを除いて、結果は平均値とSEMで表した。
【0057】
0.05未満の確率は有意と見なされ、0.05超及び0.10未満の確率は処置間の傾向と見なされた。
【0058】
雌豚生産性-子孫
分娩(出産)から離乳までの子孫の以下の基準を測定し、記録した:出生数(合計、正常な生きた子孫(出生時体重が0.7kgを超える;先天異常なし)、死産、ミイラ、虚弱な生きた子孫(出生時体重が0.7kg未満;先天異常なし)、又は奇形の子孫(先天異常))。個々の仔豚の出生時体重を記録し、各同腹仔の平均出生時体重を計算した。離乳した仔豚の数、離乳前の仔豚の生存率、及び仔豚の下痢率もまた記録した。
【0059】
離乳時(泌乳21日目)に、離乳した仔豚の数、下痢の発生率、及び個々の仔豚の体重を記録した。各同腹仔の平均体重、仔豚の1日平均体量増、及び仔豚の生存率もまた測定した。
【0060】
血液サンプル
血液サンプルは、各食餌処置から10頭の雌豚(n=10)のサブセットから採取した。雌豚を無作為に選び、交配後85日目、分娩後0日目、14日目、21日目に耳静脈穿刺により血液(10mL)を採取した。各時期に同じ雌豚のサブセットを採血した。
【0061】
雌豚の血液を、交配後85日(「妊娠85日目」)、及び分娩後0日(「泌乳0日目」)、14日(「泌乳14日目」)、21日(「泌乳21日目」)の全4時点の白血球貪食活性について処理した。白血球の貪食活性は、フローサイトメーターを使用し、Phagotestキットを使用して、Leonard et al.,Effect of maternal fish oil and seaweed extract supplementation on colostrum and milk composition,humoral immune response,and performance of suckled piglets.Journal of Animal Science,88,2988-2997(2010)の手順に従って判定した。
【0062】
初乳及び乳汁サンプル
初乳及び乳汁は、血液サンプル採取のために選択された同じ雌豚から採取した。初乳は、分娩後12時間以内、泌乳14日目、及び20IUのオキシトシンの筋肉内注射後の泌乳18日目に、機能性腺から採取した。毎回およそ30mLを採取した。泌乳14日目の初乳及び乳汁について、体細胞数、栄養組成、免疫グロブリンレベル、サイトカインレベルを評価した。初乳及び乳汁中の体細胞数は、フローサイトメーター(米国のThermo Fisher)を使用して測定した。
【0063】
泌乳18日目の乳汁中のOxBC含有量をGC-MSで測定した。泌乳14日目の初乳及び乳汁中のsCD14(可溶性CD14)、サイトカイン(TNFα、IL-8、IL-18)、ロイコトリエンB4、IgM、IgA、及びIgGレベルをELISAによって測定した。
【0064】
初乳及び乳汁の脂肪、タンパク質、及び乳糖などの栄養組成もまた判定した。
【0065】
結果
妊娠又は泌乳中の雌豚
泌乳中の1日平均飼料摂取量、妊娠110日目と泌乳21日目の背部脂肪厚、及び泌乳中の背部脂肪厚の損失について、処置間で統計的に有意な差はなかった(表3)。しかしながら、ADFIと背部脂肪厚の双方に、用量依存的傾向があった。全給餌期間中、雌豚に食欲不振及び臨床的疾患の徴候は見られなかった。
【0066】
【表3】
【0067】
雌豚生産性-子孫
出生率及び発情率
OxBC処置は、一腹当たりの総出産数、死産数、ミイラ数、奇形数に影響を与えなかった。一腹当たりの虚弱な仔豚が減少し、出生時体重が増加する傾向があり、S1群とS2群では対照群CTR1よりも発情率の傾向がそれぞれ5%と6%高くなった。
【0068】
【表4】
【0069】
離乳
表5は、食餌性OxBC補充が、離乳時の同腹仔体重及び個々の仔豚の体重を増加させ、離乳前の生存率を高め、下痢率を低下させる傾向があることを示す。
【0070】
【表5】
【0071】
血液サンプル
表6に記載したように、雌豚の全血中の好中球貪食活性は、食餌性OxBC補充によって影響を受けなかった。
【0072】
食餌処置に関係なく、好中球貪食活性は妊娠85日目に最も高く、分娩時に最も低くなり、泌乳14日目と泌乳21日目により高い値に戻った。
【0073】
【表6】
【0074】
初乳及び乳汁サンプル
体細胞数(SCC)
表7と表8に要約したように、経産雌豚の初乳及び乳汁中の栄養組成及び体細胞数(SCC)の差は、統計的に有意に増加しなかったが、%脂肪が増加しSCCが減少する傾向があった。食餌性OxBCレベルの増加に伴い、泌乳14日目の乳汁中の乳糖濃度が増加する傾向があった(P=0.071)。
【0075】
【表7】
【0076】
【表8】
【0077】
免疫グロブリンレベル
表9及び表10は、妊娠後期及び泌乳期の食餌性OxBC補充が、経産雌豚の初乳及び乳汁中の免疫グロブリン濃度に与える影響を示す。食餌性OxBC補充は、泌乳14日目のIgM、IgA、及びIgGをはじめとする初乳免疫グロブリンレベル(P<0.05)、並びに乳汁中のIgM(P<0.05)及びIgG(P=0.052)のレベルを大幅に上昇させた。用量反応については、S2群の傾向はS1群に比べて、泌乳14日目の初乳中のIgM、IgA、及びIgGレベルが高く、泌乳14日目の乳汁中のIgM及びIgGレベルも高かった。
【0078】
【表9】
【0079】
【表10】
【0080】
サイトカインレベル
表11及び表12に示すように、妊娠後期及び泌乳期の食餌性OxBC補充が、初乳中のTNF-α及びIL8レベル、並びに乳汁中のTNF-α及びIL18レベルを低下させた(P<0.05)一方、泌乳14日目の乳汁中のsCD14レベルは増加する傾向にあった(P=0.055)。用量反応については、4mg/kgのOxBC食を給餌された雌豚と比較して、8mg/kgのOxBC食を給餌された雌豚は、泌乳14日目に初乳中のTNF-α、IL8レベルの減少、乳汁中のTNF-αレベルの減少、及びsCD14レベルの増加が見られたが、2つのOxBC処置群間のそれらの指標に統計的な差は認められなかった(P>0.05)。
【0081】
【表11】
【0082】
【表12】
【0083】
OxBCレベル
OxBC含有量は、ゲラン(geronic)酸含有量を測定することによって測定した。泌乳18日目に、10頭の雌豚/処置から30mLの乳汁/雌豚を採取した。しかしながら、ゲラン(geronic)酸の測定のために必要な乳汁の最小量は200mLである。したがって、10頭の雌豚からの同量(20mL)を混合して、1回の測定に十分な量(200mL)を得た。CTR1群、S1群、及びS2群の乳汁中のゲラン(geronic)酸含有量の値は、それぞれ5.99ng/mL、7.69ng/mL、及び11.02ng/mLであった。CTR1群、S1群、及びS2群の乳汁中のOxBC含有量の計算されたレベルは、それぞれ0.30mg/mL、0.38mg/mL、及び0.55mg/mLであった。
【0084】
結論
給餌期間を通じて、雌豚に食欲不振及び臨床的疾患の徴候は見られなかった。妊娠後期及び泌乳期にOxBCの食餌性補充は、経産雌豚の泌乳能力を向上させ、同腹仔体重及び個々の仔豚の体重を増加させることが示された。改善の背後の機序は、初乳及び乳汁中の免疫グロブリン(immunoglobin)レベルの改善、及び炎症促進性因子レベルの減少によって説明されてもよい。したがって、妊娠後期及び泌乳中の食餌性OxBC補充は、経産雌豚の免疫状態に有益な効果を示し、授乳中の子孫の健康をサポートする。
【0085】
実施例2.泌乳中の乳牛の乳房炎治療に対する食餌性OxBCの効果
以下の研究は、乳牛の乳房炎の予防又は軽減における、食餌性OxBC補充の能力を調査するために実施した。
【0086】
材料
臨床型乳房炎を有する泌乳中のホルスタイン乳牛(体重:655.3±81.9kg)30頭を、試験のために選択した。牛は試験開始前に10日間順化させ、ベースラインの体細胞数(SCC)を測定するのに十分な時間を確保した。牛は、対照、低用量OxBC、及び高用量OxBCの3つの食餌処置群(1処置あたり10頭)のいずれかに均等に分けた。
【0087】
各処置群の基礎飼料は、完全混合飼料(TMR)であった。対照群(CTR2)の動物には、補助食品又は薬剤を含まない基礎飼料を与え;低用量OxBC群(T1)の動物には、30ppmのOxBCを補充した基礎飼料を与え;高用量OxBC群(T2)の動物には、60ppmのOxBCを補充した基礎飼料を与えた。調査期間は、10日間の順応を含めて45日間続いた。
【0088】
方法
各牛には識別のための耳標が付けられた。全ての動物は、ワクチン接種、健康介入、食餌配合、及び飼料供給源をはじめとする、農場の標準操作手順(SOP)に従って管理した。
【0089】
評価基準には、以下が含まれた:動物の各群の乾物摂取量(DMI)を毎日測定した;各動物が生産した乳の総重量(kg)(乳量)を隔日で記録した;各動物から毎週採取した乳サンプルの体細胞数(SCC)、総細菌数(TBC)、及びタンパク質、脂肪、乳糖含有量を測定した。
【0090】
取得したデータは、SAS(バージョン9.4;米国のSAS Institute)のGLM手順に供した。ダンカンの有意差検定手順を用いて、平均値間の差を判定した。有意性はP≦0.05で宣言された。
【0091】
結果
乾物摂取量(DMI)
CTR2群のDMIは18.48kg/日であり、T1群及びT2群のDMIは、それぞれ17.96kg/日及び18.07kg/日であった。
【0092】
乳生産量
図2に示すように、CTR2群と、T1群又はT2群のどちらかとの間に、有意差は観察されなかった。乳生産量は5~25日目にかけてわずかに増加した。しかしながら、乳生産量は27日目から減少した。
【0093】
乳中の脂肪、タンパク質、及び乳糖。体細胞数(SCC)。
乳汁中の脂肪、タンパク質、及び乳糖の量、並びに体細胞数(SCC)に対するOxBCの影響を表13に示す。28日目及び35日目のタンパク質含有量(P<0.05)を除いて、3つの群(CTR2、T1、及びT2)にわたって有意差(P>0.05)は観察されなかった。T1群の乳タンパク質含有量は、CTR2群及びT2群よりも高かった。群間で統計的に有意な差はなかったが、T1群のSCCは、CTR2及びT2群よりも低い傾向があった。
【0094】
【表13】
【0095】
微生物学検査
総細菌数(TBC)に関する結果を表14に要約する。0~21日目まで、群間で差は有意でなかった(P>0.05)。28日目及び35日目に、T1及びT2群の総細菌数はCTR2群よりも低かった(P<0.05)。SCCとTBCの間の相関は、有意でなかった(SCC=0.07×TBC+2052.72;r=0.0011、P=0.8945、n=18)。
【0096】
【表14】
【0097】
結論
OxBCの添加は乳牛のDMIと乳生産量に影響を与えず(P>0.05)、乳生産量の変動は天候及び管理要因に関連していてもよい。本実験で得られた結果から、30ppmのOxBCが補充された飼料を給餌された牛は、CTR2群よりも高い乳タンパク質濃度を示した一方、T1群のSCCは、CTR2及びT2群に比べて1週目から低下したことが実証された。牛の乳房炎は、乳腺の炎症の結果である。現在のところ、SCCが牛の乳房の状態を監視する方法として選ばれている。T1群のSCCの減少は、乳房炎に対する30ppmのOxBC供給の治療効果を反映していた。
【0098】
本研究では、SCCとTBCの間の相関は有意でなかったが(P=0.8945、n=18)、T1及びT2群の乳汁の総細菌数は、一般にCTR2群よりも低かった。多くの要因が乳汁のTBCに影響を与え得る。炎症の程度は、原因物質の性質、及び動物の齢数、品種、免疫学的健康、及び泌乳状態に依存する((Viguier,et al.,(2009)Detection:current trends and future perspectives.Trends in Biotechnology,27,486-493)。
【0099】
結論として、30ppmのOxBCを補充すると乳タンパク質含有量が大幅に改善され、乳汁のSCCが減少した一方で、60ppmのOxBCを補充してもSCCに対する有意な効果は示さなかった。さらに、30ppm及び60ppmのOxBCの補充は、どちらも乳のTBCを減少させた。
【0100】
実施例3-泌乳中の乳牛群における無症候性乳房炎の治療に対する食餌性OxBCの効果
以下の研究は、乳牛における無症候性乳房炎の治療における食餌性OxBC補充の能力をさらに調査するために実施された。
【0101】
ネガティブコントロール介入研究
このネガティブコントロール介入研究は、ニュージーランド北島にある4つの商業的乳牛群から供給された牛を使用して実施した。
【0102】
牛は、直近の牛群(DHIA)検査でSCC>200,000細胞/mL以上であり、サンプル採取前14日間に抗菌剤又は非ステロイド系抗炎症剤による治療記録がないことに基づいて選択した。牛の乳頭端を検査し、細菌学及びSCC判定のために各乳房区から乳汁サンプルを採取した。
【0103】
SCC>200,000細胞/mLであり、細菌が分離された乳房区を登録した。牛を齢数(2歳対2歳超)によって区分し、牛群検定SCCでランク付けして、次に連続した牛の対の中で、3gのOxBCプレミックスを含む、又は含まないペレット化穀物ベースの飼料を0.5kg給餌するように無作為に割り当てた。この研究で使用したOxBCは、市販のOxC-beta(商標)Livestock 10%であった。牛群の飼い主は毎日牛を評価し、臨床的乳房炎の明らかな徴候がある牛は、微生物培養のために試料採取して、通常の農場プロトコルに従って治療した。登録された乳房区は、細菌学及びSCCの治療開始後21日目と42日目に再度試料採取した。
【0104】
OxBCをOxC-beta(商標)Livestock 10%の形態で牛の食餌へ42日間組み込むと、対照飼料を給餌した牛と比較して、細菌の治癒率(例えば、無症候性乳房炎の解消及び臨床的乳房炎のリスクの低下)が増加した。これらの効果は、OxBCが補充された牛の免疫機能が改善された結果であると解釈される。OxBCを補充することによって十分なレベルの免疫サポートβ-カロテンコポリマーを提供することは、OxBC群において免疫系が最適なレベルで機能することを助けた。OxBCは抗菌活性がないことが示されており、したがって細菌感染数の減少は、製品の直接的な抗菌活性によるものではないことに再度留意されたい。
【0105】
材料と方法
動物相の開始
動物の選択と試料採取は、牛群検定の6~15日後に行った。微生物学検査及びSCCの結果を得て、牛を治療に割り当てたら、給餌を開始した。
【0106】
動物
各牛は、各牛群内で一意の個別の管理番号(「牛番号」)によって識別した。識別はプラスチック製の耳タグで行った。さらに、全ての研究動物は、生涯ID及び電子識別(EID)タグを有した。順化は必要なかった。牛は、牛群で実施されている通常の予防衛生プログラムの対象とされた。表15は、研究における牛の組み入れ規準を示す。
【0107】
【表15】
【0108】
牛群
牛群は、以下に基づいて登録された:
●個々の牛の識別システムの存在と、牛の記録への電子アクセスを許可する意思;
●実験プロトコルに従う意思;
●牛群検定(DHIA)データの入手可能性;及び
●全ての動物の健康事象(代謝障害、乳房炎、跛行、遺残胎盤、子宮感染症)及び動物の健康処置の詳細を記録する意思。
【0109】
動物環境、給餌、及び管理
牛はニュージーランドの牧草地酪農管理システムの下で管理されており、家畜は牧草地で管理され、畜舎には入れられていない。牛は、主にライグラスとシロツメクサの牧草地で飼育された。補助給餌は牛群の所有者又は管理者の裁量に委ねられたが、双方の処置群の牛は、あらゆる補助飼料に平等にアクセスできるように管理されていた(表17を参照されたい)。水は無制限摂取させた。
【0110】
調査期間中のルアクラ気象観測所(緯度-37.7739、経度175.3052)からの毎日の最高気温と最低気温、及び24時間降水量を図3に示す。このデータは、NIWA(National Institute(Instituted)of Water and Atmospheric Research)から入手した。
【0111】
牛は、併用療法が上記及び下記で同定されるものと一致することを除いて、牛群の通常の畜養、健康、及び管理慣行の対象とされた。牛は、研究に登録されていない牛と共にグループで管理された。本研究に登録された牛は、研究サイトにおける通常の慣行と一致して、1日2回搾乳した。
【0112】
この研究に参加した全ての牛は、研究終了後も元の牛群に留まった。
【0113】
処置
牛群の所有者とスタッフは、動物が割り当てられた処置群について盲検化された。技術者は毎日農場に通って処置給餌を行い、処置飼料は色分けされており、処置の種類による標識はされていなかった。農場での処置シートも同様に色分けされていた。したがって、飼料を提供する技術者も、牛群の所有者又はそのスタッフも、処置の割り当てを認識していなかった。
【0114】
実験室のスタッフ(LIC,Cognosco)が動物の同一性又は処置群を認識しないように、サンプルに一意の識別子を割り当てた。
【0115】
臨床的乳房炎の診断の責任は、農場の所有者、管理者、及び/又はスタッフにあった。これらの個体盲検化されていたため、乳房炎の臨床的診断にバイアスは生じていないはずである。
【0116】
牛群内では、牛を齢数(2歳又は2歳超)によって区分し、先行する牛群検定SCCでランク付けして、次に2つの処置群に無作為に割り当てた。
【0117】
牛のデータは、電子データベース(ニュージーランド国ハミルトン市ニューステッドのMindapro,LIC)からデータをダウンロードして取得し、専用データベース(米国ワシントン州のマイクロソフトのAccess)にロードした。無作為化に続いて、初回サンプル採取のために選抜された牛のリストを作成し、牛群の所有者/管理者に提供した。
【0118】
これらの牛は訓練を受けた研究技術者に提示され、乳頭端スコアが評価された(Mein et al.,Evaluation of bovine teat condition in commercial dairy herds:1.Non-infectious factors.(2001))。この時点で、乳頭端に重度の損傷(スコア=「非常に粗い」)を有する動物は除外した。さらに、抗菌薬及びNSAID治療の電子記録及び農場での記録を評価し、過去14日間に治療を受けた牛は除外した。
【0119】
初回サンプル採取
乳頭端の無菌準備に続いて、選択した各牛の各乳房区から2つの乳汁サンプル(約5mL及び約25mL)を採取した。これらを4℃に保ち、採取から24時間以内に微生物学検査用に処理して、採取から72時間以内に乳房区レベルSCC判定のために提出した。
【0120】
1つ又は複数の乳房区が感染していることが確認された牛(すなわち、認識された細菌性乳房内感染症の存在及び乳房区レベルのSCC>200,000細胞/mL)を研究に組み入れ、上で概説した処置について無作為化した。
【0121】
処置
OxBC群に割り当てられた牛には、OxBCを含有する約0.5kgの穀物ベース濃縮ペレットを42日間毎日給餌した。対照群には、OxBCを含有しない約0.5kgの穀物ベース濃縮物を42日間毎日給餌した。
【0122】
穀物ベース濃縮ペレットは、市販の飼料工場(ニュージーランド国モリンズビルのSeales Winslow)によって配合され混合された。ペレットは、25%小麦、25%トウモロコシ、30%パーム核エクスペラー、8%broll、4%乾燥蒸留穀物残渣、8%糖蜜、及び0.02%甘味料(rumasweet)を含有した。治療食は、OxC-beta(商標)Livestock 10%プレミックスを0.6%含んだ。したがって、治療動物には、1日当たり牛当たり0.3gの活性OxBCに相当する、1日当たり牛当たり約3gのOxC-beta(商標)Livestock 10%市販品を給餌した。
【0123】
給餌は、適切な種類の飼料を搾乳室の個々の牛飼料容器に入れることによって行った。これは、各農場への毎日の訪問時に研究技術者によって行われた。飼料は、ポールに取り付けられた計量ジャグを使用して供給され、これにより、技術者は搾乳室の牛の後ろに立って、牛の前の餌箱に飼料を供給することができた。試験動物の識別を容易にするために、牛を飼料の種類に対応する2つの異なる色の「テール塗料」でマークした。登録された各動物への給餌日毎の給餌を個別に記録した。さらに、飼料が個々の動物によって消費されたかどうか、及び飼料が消費されなかった場所の視覚的評価を記録した。適切な量の飼料が供給されたことのクロスチェックとして、各牛群内の各群に毎日供給された飼料の量を、毎日の給餌の前後に飼料袋を計量することによって計算した。推定平均(±標準偏差(SD))飼料1日摂取量を表16に示す。
【0124】
【表16】
【0125】
試料採取後の手順及び観察
治療開始後21日目と42日目に、微生物学検査及びSCCのために、乳頭端の無菌準備に続いて、登録された各乳房区から乳房区レベルの乳汁サンプルを採取した。
【0126】
微生物学検査は、モリンズビルのAnexaFVCで訓練を受けた技術者によって行われた。微生物学検査は、米国のNational Mastitis Councilが推奨する手順に従って行われた。簡潔に述べると、10μLの乳汁を0.1%エスクリン(ニュージーランド国オークランドのFort Richard)を含有する5%血液寒天プレートの四半分上に画線塗抹し、37℃で48時間培養した。
【0127】
細菌の属は、コロニーの形態、グラム染色、及びカタラーゼ反応に基づいて判定した。グラム陽性、カタラーゼ陽性の分離株をコアグラーゼ試験で試験し、CNSをS.アウレウス(S.aureus)と区別した。グラム陽性、カタラーゼ陰性は、エスクリン反応、CAMP試験、及びイヌリンとSFブイヨン中の増殖によって評価した。大腸菌群は、マッコンキー寒天培地上で継代培養し、三糖鉄(triple iron sugar)、クエン酸、及び運動性試験を実施した。従来の生化学検査では分離株の同一性が不明確な場合、分離株をMALDI TOF試験に供した。サンプルは、専用のデータベース内から生成した一意のサンプル識別番号を使用して識別した。
【0128】
場合によっては、乳汁サンプルから2つの異なる細菌種が分離された。これらは個別に報告され、新しい乳房内感染率の解析に使用された。しかしながら、報告のためには、マイナー病原体(例えば、コアグラーゼ陰性のスタフィロコッカス属(Staphylococcus)(CNS)又はコリネバクテリウム属(Corynebacterium)種)と共に分離された場合は、それらは混合型メジャー感染(すなわち、メジャー病原体(例えば、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)、ストレプトコッカス・ユベリス(Streptococcus uberis)、ストレプトコッカス・ディスガラクチアエ(Streptococcus dysgalactiae)))として、或いは2つの異なるマイナー病原体が存在する場合、混合型マイナー感染としてコード化された。
【0129】
SCCは、LIC社(ハミルトン州リバーリー)の研究所でフッ素光学法(デンマーク国ヒレレズのFoss)を用いて測定した。結果は、専用データベースにロードされたコンマ区切り変数(CSV)ファイルとしてCognoscoに転送した。
【0130】
試験中に有害事象は発生しなかった。予想通り、以下に概説するように、数頭の動物が試験期間中に臨床的疾患(例えば、乳房炎及び跛行)の治療を受けた。試験期間中に、全身疾患を示した動物はいなかったので、登録された動物に追加の獣医の診察は行われなかった。
【0131】
試験中の併用療法
動物福祉が危険にさらされていると考えられる場合、抗生物質又は非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)を含有する製品を投与した。全ての治療の理由及び種類を記録した。各治療法は、試験結果への影響について評価した。
【0132】
試験中に死亡又は安楽死した登録動物はなく、したがって剖検は行われなかった。
【0133】
牛が研究から除外された理由
給餌開始後35日目の搾乳プロセスで1頭の牛が負傷した。この傷害のため、この牛は研究の35~42日目まで搾乳室に連れてこられなかった。したがって、この牛には適切な飼料が給餌されず、42日目には試料採取しなかった。この牛の乳房区の細菌学的(bacteriological)及びSCCは判定できず、牛は最終分析から除外された。
【0134】
結果
この研究の実験単位は、乳房区であった。
【0135】
先行する牛群試験でSCCが上昇していたことに基づいて、合計267頭の牛を初回の評価及びサンプル採取のために選択した。これらのうち、227頭の乳汁を試料採取した。残りの40頭は、間引かれたか、提示されなかったか、初回評価時に臨床的乳房炎と診断されたか、又は非常に粗い乳頭端を有したために試料採取されなかった。71頭の牛は、乳房区レベルの登録基準(すなわち、乳房区レベルSCC>200,000細胞/mL及び培養時の細菌の存在)を満たす乳房区がなく、登録されなかった。したがって、156頭の牛が登録基準を満たす1つ又は複数の乳房区を有し、次の齢数による区分を飼料処置に割り当てた。
【0136】
77頭対79頭の牛、及び135個対129個の乳房区を、それぞれ対照群と処置給餌群に割り当てた(表17)。3頭の牛は、初回の(initially)試料採取後、給餌開始前に臨床的乳房炎と診断された。これらの牛は、給餌開始前に研究から除外した。
【0137】
2頭の牛は、登録後に跛行のために全身抗菌薬で治療された(処置群に1頭、対照群に1頭、どちらも1乳房区のみ登録)。登録後、合計5頭の牛と7個の乳房区が臨床的乳房炎と診断された:対照群からの4頭の牛と6個の乳房区;及び処置群からの1頭の牛と1個の乳房区。
【0138】
【表17】
【0139】
結果変数
重要な結果変数は、細菌治癒率であった。細菌治癒率は、治療開始前に存在した細菌が、21日目又は42日目のどちらのサンプルからも分離されなかった場合に、発生したものと定義された。細菌治癒は、治療後の試料採取で異なる細菌種が同定された場合でも、発生するものとして定義された。給餌開始から42日以内に臨床的乳房炎と診断された登録乳房区は、細菌治癒率の失敗として定義された。汚染されていると定義された乳房区(n=3)又は動物が提示されなかったためにサンプルが採取されなかった乳房区(n=1)からの乳サンプルは、治療後の乳房区の状態が定義され得なかったので、細菌治癒はヌルとしてコード化した。
【0140】
乳房区レベル及び牛レベルのSCC、乳量、及び臨床的乳房炎の発生率も分析した。
【0141】
統計設計と解析
2つの処置群に割り当てられた動物のバランスは、牛群、齢数群(未経産雌牛(primiparous)対未経産雌牛(multiparous)として分類)、品種(≧12/16フリージアンはフリージアンとして、そうでなければ雑種又はジャージーとして分類)、及び給餌開始時の乳汁分泌日数(15~60、61~75、76~90、≧91日として分類))をはじめとするカテゴリ変数について、カイ二乗(chi-squared)分析を使用して評価し、給餌開始前の牛群検定での牛レベルのSCCの自然対数について、一元配置分散分析を使用して評価した。
【0142】
多変量モデルを用いて、治療の効果を推定した(つまり、OxBC対OxBC補充なし(対象)。齢数(すなわち、初産対経産)、品種(フリージアン対その他)、先行する乳房区レベルのSCC、乳房区位置(すなわち、後部腺対前部腺)、給餌開始時の乳汁分泌日数(DIM)、及び乳房内感染タイプ(メジャー対マイナーとして分類される)をはじめとする潜在的な交絡変数を、モデル化プロセス中に考慮した。最初に、細菌治癒率に関する潜在的な説明変数のそれぞれについて、カイ二乗分析(カテゴリー変数)又はロジスティック回帰(連続変数)を用いて二変量解析を行った.関連付けられたこれらの変数(P<0.2)を、次に手動の順方向ステップワイズモデル構築プロセスで使用した。変数が有意(すなわちP<0.05)であった場合、又は削除した場合、処置群の効果の係数が20%以上変化した場合は、最終モデルに残った。細菌治癒率については、最終モデルは、牛をランダム効果として含む混合効果バイナリロジスティック回帰モデルであった。3レベルモデル(すなわち、群れ内の牛内の乳房区)を作成する試みは、複数の乳房区が登録された牛の数が比較的少なかったことから、モデルの収束に失敗した。1つの牛群(Speldhurst)でもまた、初産動物が登録基準を満たしていなかったため、齢数を含めたモデルが収束に失敗したことに留意されたい。したがって、この変数はモデル化から除外した。最初のロジスティック回帰モデルでは、ホスマー・レメショウ検定、リンク検定を用いて、変数を含めた/除外した場合のBICの変化を評価することによって、モデルの適合性を評価した。データは、治療効果のオッズ比(OR)、推定限界平均、及び95%信頼区間として報告される。
【0143】
乳房区レベルSCCデータは、牛群内に入れ子にした牛内に入れ子にした腺を使用した、マルチレベル反復測定一般化線形回帰モデル化に先立って、自然対数(ln)変換した。固定効果には、処置群と、給餌開始に対する日数(すなわち、0日目、21日目、42日目)とを含めた。日毎の処置の相互作用は、強制的にモデルに取り込んだ。推定限界平均は、最終モデルと、ペアワイズ比較とボンフェローニ補正を用いて行われた、処置群及び実施日毎の周辺平均のペアワイズ比較とから導出した。
【0144】
給餌開始後42日以内の臨床的乳房炎診断の発生率は、牛群別に標準誤差を算出したロジスティック回帰を用いて分析した。
【0145】
乳房区レベルのSCCはまた、<200,000細胞/mL、又は≧200,000細胞/mLとして記録し、このカテゴリ変数は、牛群内に入れ子にした牛内に入れ子にした腺を使用した、マルチレベル反復測定ロジスティック回帰モデルを用いて分析した。固定効果には、処置群と、給餌開始に対する日数(すなわち、21日目、42日目)とを含めた。SCCが200,000細胞/超である乳房区のみを意図的に研究に含めたので、定義上、全ての乳房区は、0日目の時点でこれを超えるSCCを有したことに留意されたい。日毎の処置の相互作用は、強制的にモデルに取り込んだ。推定限界平均は、最終モデルと、ボンフェローニ補正を用いて行われた、処置群及び実施日毎の周辺平均のペアワイズ比較とから導出した。
【0146】
治療開始直前から、治療期間中又は治療直後の次の牛群検定までの、牛の複合(牛群検定)SCC、乳量(kg/牛/日)及び乳固形分(すなわち、乳脂肪と乳タンパク質の合計kg/牛/日)を、牛群内に入れ子にした牛を使用した、マルチレベル反復測定一般化線形回帰モデル化を用いて分析した。SCCは自然対数変換して解析した。固定効果には、処置と、検査が給餌開始の前か後かとを含めた。時間毎の処置の相互作用は、強制的にモデルに取り込んだ。その他の説明変数(例えば、初産対経産;フリージアン対その他としてコード化された品種;牛群検定時のDIM)をモデルに提供し、有意であった場合(P<0.05)及び/又は20%を超える治療係数の変化をもたらした場合に組み入れた。推定限界平均は、最終モデルと、ボンフェローニ補正を用いて行われた、処置群及び実施時間毎の周辺平均のペアワイズ比較とから導出した。農場B、D、A、及びCの牛群について、それぞれ、給餌開始後36、55、31、及び57日で、処置開始後の牛群検定を行った。
【0147】
分析は、STATA v16(米国テキサス州のカレッジステーションのSTATACorp)で行った。
【0148】
牛群データ
牛群のサイズ、乾物摂取量、及びカルシウムとマグネシウムの摂取量をはじめとする、登録された牛群に関する記述的データを表18に示す。
【0149】
【表18】
【0150】
群均衡
牛群、品種、齢数群、又は給餌開始時のDIM内の分布に関して、処置群間に差はなかった(全てP>0.8;表19)。給餌開始前の牛群検定SCCの自然対数に差はなかった(対照対OxBC処置群の対数牛群検定SCCで、それぞれ6.18(SD=0.77)対6.18(SD=0.72);P=0.96)。
【0151】
表19は、対照食又はOxBCを含有する食餌を給餌するように割り当てられた牛の数を、牛群、品種、齢数、及び給餌初日の乳汁分泌日数(DIM)毎に示す。P値は、カイ二乗分析からのものである。給餌処置に割り当てられたが、実際に給餌されなかった動物は除外されていることに留意されたい。
【0152】
【表19】
【0153】
記述的微生物学
マイナーな病原体(すなわち、CNS及びコリネバクテリウム属(Corynebacterium)種)は、給餌開始前(0日目)及び給餌開始後21日目と42日目の双方で、最も一般的な分離株であった(表21)。
【0154】
表20は、OxBCが添加された補助飼料(対照)又は添加されたOxBCを含有する補助飼料に割り当てられた牛からの乳房区の細菌診断を、給餌開始からの相対日数別に示したものである。0日目は給餌開始前の乳房区レベルのサンプル結果であるのに対し、21日目と42日目は給餌開始後に採取されたサンプルである。
【0155】
【表20】
【0156】
細菌治癒率
最初の二変量モデルでは、細菌治癒率と、処置、齢数、DIM、前部腺対後部腺、牛群、及び乳房区レベルSCCとの間に関連性が認められた。品種及び細菌種の前処理は、二変量レベルで細菌治癒率と関連していなかった。
【0157】
最終モデルでは、処置群のみがモデルに残った。OxBCを給餌した牛の乳房区は、対照飼料を給餌した牛の乳房区と比較して、細菌感染が治癒した(OxBC給餌対対照給餌牛の乳房区で、それぞれ13.9(95%CI 4.1~23.7)%対6.9(95%CI 4.8~9.1)%、;P=0.02;オッズ比=2.18(95%CI 1.14~4.17))。
【0158】
乳房区レベルSCC
乳房区レベル自然対数SCCでは、処置(P=0.34)又は日数(P=0.12)の影響はなく、日数による処置の相互作用(P=0.17)もなかった(図4及び図5)。
【0159】
SCC<200,000細胞/mLの乳房区の比率に対する、処置(P=0.56)又は日数(0.64)の影響はなかった。しかしながら、処置と日数の相互作用があった(P=0.05、図6)。未消散の乳房区と比較して、より多くの消散乳房区で、SCCが200,000細胞/mL未満になる傾向があった(P=0.07)(9/52(17.3%)対43/463(9.3%))。
【0160】
臨床的乳房炎発生率
OxBCを給餌された牛の乳房区は、対照を給餌された牛の乳房区と比較して、給餌開始後42日間の臨床的乳房炎の発症が少なかった[1/129(0.78(正確な二項95%CI 0.02~4.24)%)]対6/135[4.44(正確な二項95%CI 1.65~9.42)%)]。OxBCを給餌された牛の乳房区における乳房炎診断のオッズ比は、対照飼料を給餌された牛の乳房区と比較して、0.17(95%CI 0.03~0.82)であった。乳房炎と診断された処置群の1頭の牛の1つの乳房区は、給餌開始から41日後に診断された。この牛はスタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)に慢性的に感染していた。
【0161】
牛レベルの乳質及び乳量
牛レベルでの(牛群検定)SCCは給餌開始後に低下したが(P<0.001)、処置の影響はなく(P=0.66)、処置と時間の相互作用もなかった(P=0.56;図7及び図8)。
【0162】
乳量はOxBC給餌の影響を受けなかった(22.9(95%CI 21.0~24.8)対23.1(OxBC給餌群の牛対対照給餌群の牛で、それぞれ95%CI 21.2~25.1)kg/牛/日;P=0.71)。乳量は、処置後の生産記録でより低かった(処置後対処置前の牛群検定で、それぞれ21.0(95%CI 19.0~22.9)対25.0(95%CI 23.1~27.0)kg/牛/日;P<0.001)。処置と時間の相互作用はなかった(P=0.84;図6)。フリージアンは、雑種又はジャージー牛よりも多くの乳を生産し(フリージアン対その他の品種で、それぞれ24.4(95%CI 22.4~26.4)対22.3(95%CI 20.3~24.2)kg/牛/日;P=0.005)、初産動物は経産動物よりも少ない乳を生産した(初産牛対経産牛で、それぞれ19.2(95%CI 16.5~21.8)対23.4(95%CI 21.6~25.3)kg/牛/日;P<0.001)。
【0163】
乳脂肪百分率は、OxBC給餌の影響を受けなかった[OxBC給餌群の牛対対照給餌群の牛で、それぞれ4.72(95%CI 4.49~4.96)%対4.54(95%CI 4.41~4.89%);P=0.41;図7a]。乳脂肪率は、処置後の生産記録でより低かった[処置後対処置前の牛群検定で、それぞれ4.60(95%CI 4.36~4.82)%対4.78(95%CI 4.54~5.01)%;P=0.04]。処置と時間の相互作用はなかった(P=0.68;図7b)。フリージアンは、雑種又はジャージー牛よりも低い乳脂肪百分率を有した[フリージアン対その他の品種で、それぞれ4.55(95%CI 4.30~4.80)%vs4.76(95%CI 4.53~5.00)%;P=0.05]。
【0164】
乳タンパク質百分率は、OxBC給餌の影響を受けなかった[OxBC給餌群の牛対対照給餌群の牛で、それぞれ3.71(95%CI 3.64~3.78)%対3.71(95%CI 3.65~3.78%);P=0.92;図8a]。乳タンパク質率は、処置後の生産記録でより低かった[処置後対処置前の牛群検定で、それぞれ3.66(95%CI 3.59~3.72)%対3.77(95%CI 3.70~3.83)%;P=0.003]。処置と時間の相互作用はなく(P=0.83;図8b)、品種の影響もなかった(P=0.80)。
【0165】
考察
この無作為化介入対照研究は、無症候性乳房内感染がある泌乳中の乳牛にOxBCを経口補給することで、対照を給餌された牛と比較して、細菌感染の治癒率の増加とその後の臨床的乳房炎のリスクの減少をもたらすことを実証した。OxBC補給は、乳房区レベル又は牛レベルのSCC又は乳量に影響を与えなかった。
【0166】
合計135及び129の乳房区をそれぞれ処置群(OxBC)と対照群に割り当てた。細菌治癒率は、対照群では7%のみ、処置群では14%であった。本研究では、登録基準をより厳しくしたため、より重大な無症候性感染症が研究のために選択され、その結果、対照群における細菌治癒率がより低くなった可能性がある。
【0167】
細菌感染症の消散は、乳房区レベルSCCの低下に関連していた。しかしながら、OxBCを給餌された牛の乳房区における消散率がより高いにもかかわらず、飼料処置群間では、乳房区レベル又は牛レベルのSCCに差はなかった。消散した乳房区の20%未満が、42日目までにSCC<200,000細胞/mlを有したことも興味深く、細菌性病原体が明らかに除去されているにもかかわらず、乳腺で発生する長期間の炎症が例証される。
【0168】
泌乳中の乳牛にOxBCを経口補給すると、追加のOxBCを含有しない対照食を給餌した牛の乳房区よりも、無症候性乳房炎を有する乳房区における細菌治癒率が高くなり、その後の臨床的乳房炎の発生率が低くなると結論付けられた。OxBCは乳量又は乳組成には影響を与えなかった。
【0169】
その他の実施形態
本発明をその特定の実施形態に関連して説明してきたが、さらなる変更が可能であることが理解され、本出願は、一般に、本発明の原理に従う本発明の任意の変形、使用、又は適応を網羅することを意図し、本発明が関係する当該技術分野内の既知又は慣行の範囲内にあってここに規定された本質的特徴に適用されてもよい、発明からの逸脱を含み、特許請求の範囲に従う。その他の実施形態は、特許請求の範囲内である。
図1
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【国際調査報告】