IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ レーム・ゲーエムベーハーの特許一覧

特表2023-513839機械的特性が向上した、耐候性の高いアクリル系多層フォイル
<>
  • 特表-機械的特性が向上した、耐候性の高いアクリル系多層フォイル 図1
  • 特表-機械的特性が向上した、耐候性の高いアクリル系多層フォイル 図2
  • 特表-機械的特性が向上した、耐候性の高いアクリル系多層フォイル 図3
  • 特表-機械的特性が向上した、耐候性の高いアクリル系多層フォイル 図4
  • 特表-機械的特性が向上した、耐候性の高いアクリル系多層フォイル 図5
  • 特表-機械的特性が向上した、耐候性の高いアクリル系多層フォイル 図6
  • 特表-機械的特性が向上した、耐候性の高いアクリル系多層フォイル 図7
  • 特表-機械的特性が向上した、耐候性の高いアクリル系多層フォイル 図8
  • 特表-機械的特性が向上した、耐候性の高いアクリル系多層フォイル 図9
  • 特表-機械的特性が向上した、耐候性の高いアクリル系多層フォイル 図10
  • 特表-機械的特性が向上した、耐候性の高いアクリル系多層フォイル 図11
  • 特表-機械的特性が向上した、耐候性の高いアクリル系多層フォイル 図12
  • 特表-機械的特性が向上した、耐候性の高いアクリル系多層フォイル 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-03
(54)【発明の名称】機械的特性が向上した、耐候性の高いアクリル系多層フォイル
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/30 20060101AFI20230327BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20230327BHJP
【FI】
B32B27/30 A
B32B27/18 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022549444
(86)(22)【出願日】2021-02-18
(85)【翻訳文提出日】2022-09-16
(86)【国際出願番号】 EP2021053992
(87)【国際公開番号】W WO2021165379
(87)【国際公開日】2021-08-26
(31)【優先権主張番号】20157832.5
(32)【優先日】2020-02-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】319013746
【氏名又は名称】レーム・ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Roehm GmbH
【住所又は居所原語表記】Deutsche-Telekom-Allee 9, 64295 Darmstadt, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ジルメイ セイオム
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル エンダース
(72)【発明者】
【氏名】ヘアベアト グローテュス
(72)【発明者】
【氏名】クロード グエナンタン
(72)【発明者】
【氏名】キム シュトルーヴェ
(72)【発明者】
【氏名】ヘルムート ヘーリング
(72)【発明者】
【氏名】ジローラモ ムシ
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AA20A
4F100AA20C
4F100AG00B
4F100AG00C
4F100AK12A
4F100AK12B
4F100AK12C
4F100AK17A
4F100AK17B
4F100AK17C
4F100AK25A
4F100AK25B
4F100AK25C
4F100AK25D
4F100AK28A
4F100AK28B
4F100AK28C
4F100AK51A
4F100AK51B
4F100AK51C
4F100AK51D
4F100BA02
4F100BA03
4F100BA04
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10B
4F100BA10D
4F100CA05B
4F100CA07A
4F100CA07B
4F100CA07C
4F100DE01A
4F100DE01B
4F100DE01C
4F100EH20
4F100EH46
4F100EJ05
4F100EJ17
4F100EJ42
4F100GB08
4F100GB81
4F100JA07A
4F100JA07B
4F100YY00A
4F100YY00B
4F100YY00C
(57)【要約】
本発明は、アクリルポリマーマトリックス中にシリカ粒子が均一に分布した少なくとも1つの層と、少なくとも1つの更なる層とを含むアクリル系多層フォイルに関するものである。シリカ粒子を含む層の接着促進特性に基づき、多層フォイルは基材上に容易に適用または積層することができる。このフォイルは、高い耐風化性および優れた機械的特性を有する。したがって、本発明の多層フォイルは、ポリ塩化ビニル(PVC)などの材料の表面保護および高圧積層板(HPL)への使用に非常に適している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも層Aおよび層Bを有する多層フォイルであって、
前記層Aは、該層Aの総重量を基準として、
ポリアルキル(メタ)アクリレート0.0~78.0重量%と、
1種または数種の耐衝撃性改良剤20.0~98.0重量%と、
粒状シリカ2.0~40.0重量%と、
接着促進コポリマーであって、該接着促進コポリマーの重量を基準として、
(i)メチルメタクリレート70.0~99.5重量%と、
(ii)接着促進モノマー0.5~15.0重量%と、
(iii)ビニル官能基以外の官能基を有しない他のビニル共重合可能なモノマー0.0~25.0重量%と
を含む接着促進コポリマー0.0~20.0重量%と、
フルオロポリマー0.0~38.0重量%と、
1種または数種の紫外線吸収剤0.0~5.0重量%と、
1種または数種の紫外線安定剤0.0~5.0重量%と
を含む成形用組成物からなり、
前記層Aの前記成形用組成物中の前記ポリアルキル(メタ)アクリレートと1種または数種の耐衝撃性改良剤との累積含有量が、前記層Aの重量を基準として、少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも60重量%、より好ましくは少なくとも70重量%、さらにより好ましくは少なくとも80重量%、特に好ましくは少なくとも85重量%であり、
前記層Bは、該層Bの総重量を基準として、
ポリアルキル(メタ)アクリレート0.0~100.0重量%と、
1種または数種の耐衝撃性改良剤0.0~95.0重量%と、
フルオロポリマー0.0~40.0重量%と、
1種または数種の紫外線吸収剤0.0~5.0重量%と、
1種または数種の紫外線安定剤0.0~5.0重量%と、
接着促進コポリマーであって、該接着促進コポリマーの重量を基準として、
(i)メチルメタクリレート70.0~99.5重量%と、
(ii)接着促進モノマー0.5~15.0重量%と、
(iii)ビニル官能基以外の官能基を有しない他のビニル共重合可能なモノマー0.0~25.0重量%と
を含む接着促進コポリマー0.0~20.0重量%と
を含む成形用組成物からなり、
前記層Bの前記成形用組成物中のポリアルキル(メタ)アクリレートと1種または数種の耐衝撃性改良剤との累積含有量が、前記層Bの重量を基準として、少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも60重量%、より好ましくは少なくとも70重量%、さらにより好ましくは少なくとも80重量%、さらにより一層好ましくは少なくとも90重量%、特に好ましくは少なくとも95重量%である、
多層フォイル。
【請求項2】
少なくとも層Aおよび層Bを有する多層フォイルであって、
前記層Aは、該層Aの総重量を基準として、
ポリアルキル(メタ)アクリレート0.0~78.0重量%と、
1種または数種の耐衝撃性改良剤20.0~98.0重量%と、
粒状シリカ2.0~40.0重量%と、
接着促進コポリマーであって、該接着促進コポリマーの重量を基準として、
(i)メチルメタクリレート70.0~99.5重量%と、
(ii)接着促進モノマー0.5~15.0重量%と、
(iii)ビニル官能基以外の官能基を有しない他のビニル共重合可能なモノマー0.0~25.0重量%と
を含む接着促進コポリマー0.0~20.0重量%と、
フルオロポリマー0.0~38.0重量%と、
1種または数種の紫外線吸収剤0.0~5.0重量%と、
1種または数種の紫外線安定剤0.0~5.0重量%と
を含む成形用組成物からなり、
前記層Aの前記成形用組成物中の前記ポリアルキル(メタ)アクリレートと1種または数種の耐衝撃性改良剤との累積含有量が、前記層Aの重量を基準として、少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも60重量%、より好ましくは少なくとも70重量%、さらにより好ましくは少なくとも80重量%、特に好ましくは少なくとも85重量%であり、
前記層Bは、該層Bの総重量を基準として、
フルオロポリマー40.0~100.0重量%と、
ポリアルキル(メタ)アクリレート0.0~30.0重量%と、
ガラスビーズ0.0~30.0重量%と
を含む成形用組成物からなる、
多層フォイル。
【請求項3】
前記ポリアルキル(メタ)アクリレートフォイル中の1種または数種の耐衝撃性改良剤nimの、前記層Aの総重量を基準とした含有量(重量%)が、次の関係式:
0.01im≦nsi≦0.4im
[式中、nsiは、前記フォイル中の粒状シリカの含有量(重量%)である]によって表される、請求項1または2記載のフォイル。
【請求項4】
前記粒状シリカが、ISO 9277に準じたBET法で測定して、200m/g超、好ましくは300m/g超、より好ましくは400m/g超、さらにより好ましくは500m/g超の比表面積を有する、請求項1から3までのいずれか1項記載のフォイル。
【請求項5】
前記粒状シリカが、沈降シリカまたは焼成シリカであり、好ましくは親水性沈降シリカまたは親水性焼成シリカである、請求項1から4までのいずれか1項記載のフォイル。
【請求項6】
前記粒状シリカが、ISO 13320に準じたレーザー回折法で測定して、1.0μm~20.0μm、好ましくは2.0μm~15.0μmの重量平均粒子径d50を有する沈降シリカである、請求項1から5までのいずれか1項記載のフォイル。
【請求項7】
前記粒状シリカが、0.5SiOH/nm以上、より好ましくは0.5~20.0SiOH/nm、さらにより好ましくは1.0~15.0SiOH/nm、さらにより好ましくは1.5~10.0SiOH/nmのシラノール基密度を有する、請求項1から6までのいずれか1項記載のフォイル。
【請求項8】
前記粒状シリカが、ASTM D6854-12aに準じて測定して、100~500g/100g、好ましくは150~450g/100g、さらにより好ましくは150~400g/100gのDBP吸収量を有する、請求項1から7までのいずれか1項記載のフォイル。
【請求項9】
前記粒状シリカが、DIN EN ISO 787-11に従って決定された、10g/l~800g/l、より好ましくは40g/l~500g/l、さらにより好ましくは80g/l~300g/lのタップ密度を有する、請求項1から8までのいずれか1項記載のフォイル。
【請求項10】
前記ポリアルキル(メタ)アクリレートが、50,000g/mol~180,000g/mol、好ましくは80,000g/mol~160,000g/molの重量平均モル質量Mwを有するポリメチルメタクリレートであり、重合可能な成分が、重合可能な組成物の重量を基準として、
(a)メチルメタクリレート50.0~99.9重量%と、
(b)C1~C4アルコールのアクリル酸エステル0.1~50.0重量%と、
(c)前記モノマー(a)および(b)と共重合可能な少なくとも1種の更なるモノマー0.0~10.0重量%と
を含む組成物の重合によって得ることができる、請求項1から9までのいずれか1項記載のフォイル。
【請求項11】
1種または数種の耐衝撃性改良剤が、コア型、コア-シェル型、コア-シェル-シェル型およびコア-シェル-シェル-シェル型の耐衝撃性改良剤から選択される粒状耐衝撃性改良剤である、請求項1から10までのいずれか1項記載のフォイル。
【請求項12】
前記層Bが、該層Bの総重量を基準として、
第1の紫外線吸収剤としてベンゾトリアゾール型化合物0.5~4.0重量%と、
第2の紫外線吸収剤としてトリアジン型化合物0.5~3.0重量%と、
紫外線安定剤としてHALS型化合物0.2~2.0重量%と
を含む、請求項1から11までのいずれか1項記載のフォイル。
【請求項13】
前記フォイルが層Cをさらに有し、前記層Bが前記層Aと前記層Cとの間に位置し、
前記層Bは、該層Bの総重量を基準として、
ポリアルキル(メタ)アクリレート0.0~100.0重量%と、
1種または数種の耐衝撃性改良剤0.0~95.0重量%と、
フルオロポリマー0.0~40.0重量%と、
1種または数種の紫外線吸収剤0.0~5.0重量%と、
1種または数種の紫外線安定剤0.0~5.0重量%と
を含む成形用組成物からなり、
前記層Cは、
ポリアルキル(メタ)アクリレート0.0~78.0重量%と、
1種または数種の耐衝撃性改良剤20.0~98.0重量%と、
粒状シリカ0.0~40.0重量%と、
接着促進コポリマーであって、該接着促進コポリマーの重量を基準として、
(i)メチルメタクリレート70.0~99.5重量%と、
(ii)接着促進モノマー0.5~15.0重量%と、
(iii)ビニル官能基以外の官能基を有しない他のビニル共重合可能なモノマー0.0~25.0重量%と
を含む接着促進コポリマー0.0~40.0重量%と、
1種または数種の紫外線吸収剤0.0~5.0重量%と、
1種または数種の紫外線安定剤0.0~5.0重量%と
を含む成形用組成物からなり、
前記層Cの前記成形用組成物中の前記ポリアルキル(メタ)アクリレートと1種または数種の耐衝撃性改良剤との累積含有量が、前記層Cの重量を基準として、少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも60重量%、より好ましくは少なくとも70重量%、さらにより好ましくは少なくとも80重量%であり、
前記粒状シリカと前記接着促進コポリマーとの累積含有量が、前記層Cの重量を基準として、少なくとも2.0重量%、好ましくは少なくとも4.0重量%、より好ましくは少なくとも6.0重量%、さらにより好ましくは少なくとも8.0重量%である、請求項1および3から12までのいずれか1項記載のフォイル。
【請求項14】
前記フォイルが層Cをさらに含み、前記層Cが、該層Cの総重量を基準として、
フルオロポリマー40.0~100.0重量%と、
ポリアルキル(メタ)アクリレート0.0~30.0重量%と、
ガラスビーズ0.0~30.0重量%と
を含む成形用組成物からなる、請求項1および3から12までのいずれか1項記載のフォイル。
【請求項15】
前記層Aが1.0μm~30.0μmの厚さを有し、
前記層Bが、15.0μm~150.0μmの厚さを有し、
前記層Cが、存在する場合、1.0μm~30.0μmの厚さを有する、請求項1および3から14までのいずれか1項記載のフォイル。
【請求項16】
前記フォイルが、前記層Aに隣接するコーティング層Dをさらに含み、前記コーティング層Dは、架橋ポリウレタン、架橋ポリウレタン(メタ)アクリレート、架橋ポリ(メタ)アクリレートまたはそれらの混合物から選択される、少なくとも部分的に架橋された材料を含む、請求項1、3から13、および15のいずれか1項記載のフォイル。
【請求項17】
請求項1、3から13、15および16のいずれか1項記載のフォイルによって少なくとも部分的に覆われている基材を含む、外面を有する多層物品、好ましくは高圧積層板であって、前記多層物品の外面を起点として、以下の順序で、
- 存在する場合、前記多層物品の外面を形成する層D
- 層A
- 層B;および
- 存在する場合、層C
を含む、多層物品、好ましくは高圧積層板。
【請求項18】
請求項1から16までのいずれか1項記載のフォイルによって少なくとも部分的に覆われている基材を含む多層物品、好ましくは高圧積層板であって、外面を起点として、以下の順序で、
- 任意選択的に層C
- 層B;および
- 層A
を含む、多層物品、好ましくは高圧積層板。
【請求項19】
請求項17または18記載の多層物品の製造方法であって、共押出、積層または押出積層によって請求項1から16までのいずれか1項記載のフォイルで基材をコーティングするステップを含み、コーティング層Dの少なくとも部分的に架橋された材料は、存在する場合、好ましくは更なる架橋を受ける、製造方法。
【請求項20】
前記多層物品が高圧積層板であり、請求項1から16までのいずれか1項記載のフォイルで基材をコーティングするステップが、1MPa~20MPa、好ましくは4MPa~15MPa、より好ましくは6MPa~10MPaの圧力および120℃~220℃の温度で行われる、請求項19記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、アクリル系ポリマーマトリックス中に粒状シリカが均一に分布した少なくとも1つの層と、さらに少なくとも1つの層とを含むアクリル系多層フォイルに関するものである。この多層フォイルは、特に高い耐候性と優れた機械的特性とを有する。したがって、本発明のフォイルは、ポリ塩化ビニル(PVC)などの材料の表面保護や、高圧積層板(HPL)、特に連続圧積層板(CPL)への使用に非常に適している。
【0002】
先行技術
HPLは、テーブルトップ、ドア、家具、キッチンワークトップ、建物の壁、バルコニーまたはファサードのコーティング用シートなどの幅広い用途で使用されている。例えば、欧州特許出願公開第3094493号明細書および欧州特許出願公開第0166153号明細書には、屋内および屋外用途用のHPLが記載されている。
【0003】
屋内用途では、通常、紫外線からの保護は必要ないが、屋外用途用のHPLは、HPLのメラミン樹脂が太陽紫外線放射に短期間暴露された後でも急速に劣化するため、紫外線保護トップ層を必然的に備えていなければならない。最近では、数種の紫外線吸収剤のうちの1種を含むアクリル系フォイルが、トップ層としてこの目的に広く使用されている。
【0004】
アクリル系フォイルは、太陽紫外線に対して優れた固有の耐性は有しているが、機械的損傷に対する耐性は中程度のものしか有しておらず、容易に傷が付く可能性がある。一方、ポリメチルメタクリレート(PMMA)などの未処理のアクリル系材料には、一般的な耐擦傷性コーティングの接着性が不十分であり、そのため紫外線保護を備えた耐擦傷性HPLは市販されていない。したがって、建物の壁、バルコニー、ファサードのコーティングに使用されるHPLの耐擦傷性は中程度にすぎず、特に社会的に問題のある都市部では、破壊行為に対するそれらの脆弱性が長年にわたる課題となっていた。さらに、建物の壁、バルコニーおよびファサードは、鳥の糞や尿などの腐食性物質にさらされることが多い。したがって、適切な耐薬品性を有している必要がある。
【0005】
さらに、HPLの反応性樹脂コーティング紙にアクリル系フォイルを純粋に物理的に接着させるだけでは、何年にもわたってその安定性を保証するのに十分ではなく、そのため風化作用が原因でHPL表面からアクリル系フォイルが部分的または完全に剥離することさえある。この欠点を克服するために、欧州特許出願公開第1664191号明細書は、接着促進剤、例えばカルボン酸無水物単位を含むコポリマーを用いてHPL上のメラミン樹脂含浸紙にアクリル系フォイルを積層することを提案している。HPL調製手順中に、カルボン酸無水物単位がメラミン樹脂と化学的に反応する。HPLの反応性樹脂コーティング紙へのアクリル系フォイルの物理的および化学的結合の組み合わせと紫外線保護の使用とにより、屋外使用で何年も安定した装飾用HPLの調製が可能になる。
【0006】
国際公開第2015/180995号は、HPL基材への特に強い接着性と優れた光学特性とを有する三層構造のフォイルを開示している。このフォイルでは、最外層はフルオロポリマーを含む層であり、中間層は少なくとも1種の紫外線吸収剤および/または紫外線安定剤を含むPMMA層であり、最内層は基材への接着性を向上させる少なくとも1種の接着促進剤を含むPMMA層である。
【0007】
それでも、国際公開第2015/180995号に記載されたコポリマーの長期耐候安定性は、純粋なPMMAのものよりも低いことが多い。その結果、たとえそのようなコポリマーが紫外線吸収PMMA層の下に位置していても、そのような材料でコーティングされたHPLの剥離が、紫外線放射への長期暴露後に起こる可能性がある。これらのコポリマーがPMMA層の上に位置し、太陽紫外線放射に直接さらされる場合、これらのコポリマーの中程度の耐候安定性がさらに問題となる。この理由から、これらのコポリマーは、通常、屋外使用のためのアクリル系フォイルに耐擦傷性層を取り付けるのに採用することができない。
【0008】
発明の目的
したがって、本発明の目的は、HPLに積層したときに良好な初期接着力および長期接着力を示す新規なHPLの仕上げ用アクリル系フォイルを提供することであった。これらのHPLは、長期屋外使用後でも剥離の兆候を示さず、優れた機械的特性、特に、高い耐擦傷性を有するべきである。
【0009】
本発明のもう1つの目標は、高い固有の耐候性だけでなく、湿気、風、太陽紫外線放射および機械的損傷からHPLなどの物品を適切に保護することを確実に提供するアクリル系フォイルを提供することであった。
【0010】
本発明の更なる態様は、上記の特徴を有する屋外使用のためのHPLを提供することであった。
【0011】
最後に、本発明の別の目標は、所望の特性を有するHPLの製造のためのコスト効率の高い調製方法を提供することであった。
【0012】
発明の概要
本発明は、多層フォイルの耐衝撃性改質アクリル系層内に粒状シリカを実質的に均一に組み込むと、前述の層の接着特性の顕著な向上が可能になるという驚くべき知見に基づいている。この層は、液体コーティング組成物、例えば、耐擦傷性コーティングまたは落書き防止コーティングで直接コーティングすることができる。さらに、この層は、無水物ベースのコポリマーを備えた従来の接着促進層よりも有意に高い耐紫外線性を有する。したがって、そのようなフォイルを備えたHPLは、都市部での屋外使用のために非常に適している。
【0013】
当業者には容易に理解されるように、本明細書で使用される「フォイル」という用語は、5mm未満、より好ましくは1mm未満の厚さを有するシートを指す。本発明のフォイルは、保護コーティングとして有利に使用することができるが、本願で使用される「フォイル」という用語は、「フィルム」という用語とは一般的に区別されるべきである。フィルムは、典型的には、多層基材の最上層であり、前述の基材とは別個に取り扱うことができない。フィルムとは対照的に、本発明のフォイルは、必ずしも多層物品の層ではなく、すなわち、必ずしも任意の基材に取り付けられておらず、ひいては、別個に取り扱い、さまざまな異なる目的のために使用することができる。
【0014】
シリカ粒子は、層Aの成形用組成物中に実質的に均一に分散しているが、それらは優れた接着促進効果を引き起こす。本明細書で使用される「均一に」という用語は、層内のシリカ粒子の濃度が実質的に一定であることを意味する。シリカ粒子は、接着性を低下させるために、すなわち粘着防止剤として使用されることが多いため、この観察結果は非常に驚くべきものである。例えば、米国特許出願公開第2015/0044441号明細書は、SiO粒子などの粘着防止剤を0.01~0.5重量%含み得る多層PMMAフォイルについて記載している。この文献はまた、PMMA層におけるSiO粒子などの艶消剤0.5~20重量%の使用も記載している。
【0015】
本発明者らはさらに、本発明のフォイルの調製中、特に共押出方法によって、得られるフォイルの表面上にシリカ粒子が見えるままであることを見出した。好ましい実施形態では、シリカ粒子はフォイル表面から突出している(突き出ている)(図13を参照)。この現象が、観察された接着増強効果を担っていると考えられる。層Aの材料はまた、優れた耐熱性を有しており、したがって、共押出などの熱可塑性方法によって有利に加工して、層A、Bおよび任意選択的にCを有する多層フォイルを形成することができる。
【0016】
その第1の態様において、本発明は、少なくとも層Aおよび層Bを有する多層フォイルに関し、層Aは、該層Aの総重量を基準として、
ポリアルキル(メタ)アクリレート0.0~78.0重量%と、
1種または数種の耐衝撃性改良剤20.0~98.0重量%と、
粒状シリカ2.0~40.0重量%と、
接着促進コポリマーであって、該接着促進コポリマーの重量を基準として、
(i)メチルメタクリレート70.0~99.5重量%と、
(ii)接着促進モノマー0.5~15.0重量%と、
(iii)ビニル官能基以外の官能基を有しない他のビニル共重合可能なモノマー0.0~25.0重量%と
を含む接着促進コポリマー0.0~20.0重量%と、
フルオロポリマー0.0~38.0重量%と、
1種または数種の紫外線吸収剤0.0~5.0重量%と、
1種または数種の紫外線安定剤0.0~5.0重量%と
を含む成形用組成物からなり、
層Aの成形用組成物中のポリアルキル(メタ)アクリレートと1種または数種の耐衝撃性改良剤との累積含有量が、層Aの重量を基準として、少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも60重量%、より好ましくは少なくとも70重量%、さらにより好ましくは少なくとも80重量%、特に好ましくは少なくとも85重量%である。
【0017】
層Bは、該層Bの総重量を基準として、
ポリアルキル(メタ)アクリレート0.0~100.0重量%と、
1種または数種の耐衝撃性改良剤0.0~95.0重量%と、
フルオロポリマー0.0~40.0重量%と、
1種または数種の紫外線吸収剤0.0~5.0重量%と、
1種または数種の紫外線安定剤0.0~5.0重量%と、
接着促進コポリマーであって、該接着促進コポリマーの重量を基準として、
(i)メチルメタクリレート70.0~99.5重量%と、
(ii)接着促進モノマー0.5~15.0重量%と、
(iii)ビニル官能基以外の官能基を有しない他のビニル共重合可能なモノマー0.0~25.0重量%と
を含む接着促進コポリマー0.0~20.0重量%と
を含む成形用組成物からなり、
層Bの成形用組成物中のポリアルキル(メタ)アクリレートと1種または数種の耐衝撃性改良剤との累積含有量が、層Bの重量を基準として、少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも60重量%、より好ましくは少なくとも70重量%、さらにより好ましくは少なくとも80重量%、さらにより一層好ましくは少なくとも90重量%、特に好ましくは少なくとも95重量%である。本願では、ポリアルキル(メタ)アクリレートと1種または数種の耐衝撃性改良剤との累積含有量を、「耐衝撃性改良ポリアルキル(メタ)アクリレートの含有量」と呼ぶことにする。
【0018】
その更なる態様において、本発明は、少なくとも層Aおよび層Bを有する多層フォイルに関し、層Aは、該層Aの総重量を基準として、
ポリアルキル(メタ)アクリレート0.0~78.0重量%と、
1種または数種の耐衝撃性改良剤20.0~98.0重量%と、
粒状シリカ2.0~40.0重量%と、
接着促進コポリマーであって、該接着促進コポリマーの重量を基準として、
(i)メチルメタクリレート70.0~99.5重量%と、
(ii)接着促進モノマー0.5~15.0重量%と、
(iii)ビニル官能基以外の官能基を有しない他のビニル共重合可能なモノマー0.0~25.0重量%と
を含む接着促進コポリマー0.0~20.0重量%と、
フルオロポリマー0.0~38.0重量%と、
1種または数種の紫外線吸収剤0.0~5.0重量%と、
1種または数種の紫外線安定剤0.0~5.0重量%と
を含む成形用組成物からなり、
層Aの成形用組成物中の耐衝撃性改良ポリアルキル(メタ)アクリレートの累積含有量が、層Aの重量を基準として、少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも60重量%、より好ましくは少なくとも70重量%、さらにより好ましくは少なくとも80重量%、特に好ましくは少なくとも85重量%である。
【0019】
層Bは、該層Bの総重量を基準として、
フルオロポリマー40.0~100.0重量%と、
ポリアルキル(メタ)アクリレート0.0~30.0重量%と、
ガラスビーズ0.0~30.0重量%と
を含む成形用組成物からなる。
【0020】
本発明で使用される材料は優れた熱安定性を有するので、それらは押出成形、射出成形などの熱可塑性加工およびチルロール方法などのフォイル成形方法に非常に適している。層A、Bおよび任意選択的にCを有する多層フォイルは、通常、共押出によって製造される。
【0021】
本発明の多層フォイルは、市販されているフォイルよりも耐候性および機械抵抗の点で優れており、長期にわたる、典型的には10年を超える改善された安定性を有する。本明細書で使用される「安定性」という用語は、風化作用および機械的損傷に対するフォイルの固有の安定性だけでなく、その保護作用の持続性も指す。
【0022】
さらに、本発明の多層フォイルは、以下の利点を提供する:
- 多層フォイルは、さまざまな温度で、種々の積層技術を使用して、各種基材を積層するのに採用することができる。粒状シリカを含む層が基材に向けられる場合、それはフォイルと基材との間に優れた長期接着性を提供する。特に、該フォイルは、HPLなどのメラミン樹脂系およびフェノール樹脂系の基材に対して優れた接着性を有する。
- 粒状シリカを含む層は、液体コーティング組成物で直接均一にコーティングすることができ、それによってコーティング層と多層フォイルとの間に優れた接着性を提供する。これにより、特にコスト効率の高い手法で、耐擦傷性の向上などのフォイルの所望の特性を付与することが可能になる。
- 層A、Bおよび任意選択的にCを有するフォイルは、コスト効率の高い方法で押出成形工場で製造することができる。その後、層Dを、必要に応じて、層A上に液体コーティングとして均一に適用することができる。
- 該フォイルは、優れた耐候性を有し、また、化学薬品に対して耐性でもある。
- フルオロポリマーが最上層として使用される場合、該フォイルは、水蒸気に対して実質的に不透過性であり、汚れ防止特性、例えば、市販の洗浄組成物およびアルコール飲料に対して非常に良好な耐薬品性を有し、容易に洗浄することができる。
【0023】
その更なる態様において、本発明は、成形用組成物Aからなる層Aを有するフォイルの製造方法に関し、該フォイルは、フォイル成形方法、好ましくはチルロール方法において、
ポリアルキル(メタ)アクリレート0.0~78.0重量%と、
1種または数種の耐衝撃性改良剤20.0~98.0重量%と、
粒状シリカ2.0~40.0重量%と、
接着促進コポリマーであって、該接着促進コポリマーの重量を基準として、
(i)メチルメタクリレート70.0~99.5重量%と、
(ii)接着促進モノマー0.5~15.0重量%と、
(iii)ビニル官能基以外の官能基を有しない他のビニル共重合可能なモノマー0.0~25.0重量%と
を含む接着促進コポリマー0.0~20.0重量%と、
フルオロポリマー0.0~38.0重量%と、
1種または数種の紫外線吸収剤0.0~5.0重量%と、
1種または数種の紫外線安定剤0.0~5.0重量%と
を含む成形用組成物から成形され、
層Aの成形用組成物中の耐衝撃性改良ポリアルキル(メタ)アクリレートの累積含有量が、層Aの重量を基準として、少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも60重量%、より好ましくは少なくとも70重量%、さらにより好ましくは少なくとも80重量%、特に好ましくは少なくとも85重量%である。
【0024】
本発明のさらに別の態様は、上記で定義したようなフォイルによって少なくとも部分的に覆われている基材を備え、外面を起点として、以下の順序で層を含む多層物品、好ましくはHPLに関する:
- 多層物品の外面を形成する層D、
- 層A、
- 層Bおよび
- 存在する場合、層C。
【0025】
本発明のさらに別の態様は、上記で定義したようなフォイルによって少なくとも部分的に覆われている基材を備え、外面を起点として、以下の順序で層を含む多層物品、好ましくは高圧積層板に関する:
- 存在する場合、層C
- 層Bおよび
- 層A。
【0026】
最後に、本発明の更なる態様は、上記で定義したような多層物品の製造方法に関し、該方法は、共押出、積層または押出積層によって本発明のフォイルで基材をコーティングするステップを含む、コーティング層Dの少なくとも部分的に架橋された材料は、好ましくは更なる架橋を受ける。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】層AおよびBからなる本発明の多層フォイルを示す図である。
図2】層A、BおよびCを有する多層フォイルを示す図である。
図3】層AおよびBを備え、層Dでコーティングされた多層フォイルを示す図である。
図4】層A、BおよびCを備え、層Dでコーティングされた多層フォイルを示す図である。
図5】層A、BおよびCを有する多層フォイルを示す図である。
図6】層AおよびBを備え、層Dでコーティングされた本発明の多層フォイルでコーティングされた基材を示す図である。
図7】層A、BおよびCを備え、層Dでコーティングされた本発明の多層フォイルでコーティングされた基材を示す図である。
図8】層AおよびBを有する本発明の多層フォイルでコーティングされた基材を示す図である。
図9】層A、BおよびCを備え、層Dでコーティングされた本発明の多層フォイルでコーティングされた基材を示す図である。
図10】層A、BおよびCを備え、層Dでコーティングされた本発明の多層フォイルでコーティングされた基材を示す図である。
図11】層A、BおよびCを有する本発明の多層フォイルでコーティングされた基材を示す図である。
図12】層A、BおよびCを有する本発明の多層フォイルでコーティングされた基材を示す図である。
図13】走査型電子顕微鏡JEOL JSM IT 3000で得られた本発明の多層フォイルの顕微鏡写真を示す図である。倍率:750倍、10kV、SED検出器。フォイル試料を液体窒素中で凍結し、機械的に破砕し、新たに得られた表面を分析した。
【0028】
好ましい実施形態の詳細な説明
層A、Bおよび任意選択的にCを有するフォイルは、例えば共押出などの方法によって得ることができ、層Aは、シリカ粒子が耐衝撃性改良ポリアルキル(メタ)アクリレートマトリックス中に実質的に均一に分散した成形用組成物から形成される。層Dは、その後、液体コーティングとして層A上に適用することができる。
【0029】
本発明の多層フォイルの以下の実施形態は、特に有利な特性を示した。
【0030】
フォイルの実施形態1
多層フォイルは、層A、BおよびCからなる(図2を参照)。層Aは、該層Aの総重量を基準として、
ポリアルキル(メタ)アクリレート0.0~77.9重量%、好ましくは0.0~64.9重量%、より好ましくは0.0~52.9重量%、さらにより好ましくは0.0~42.9重量%、特に好ましくは0.0~32.9重量%と、
1種または数種の耐衝撃性改良剤20.0~97.9重量%、好ましくは30.0~94.9重量%、より好ましくは40.0~92.9重量%、さらにより好ましくは50.0~92.9重量%、特に好ましくは60.0~92.9重量%と、
粒状シリカ2.0~40.0重量%、好ましくは5.0~30.0重量%、より好ましくは7.0~20.0重量%と、
ベンゾトリアゾール型紫外線吸収剤0.1~5.0重量%と、
1種または数種の紫外線安定剤0.0~5.0重量%と
を含む成形用組成物からなる。
【0031】
層Bは、該層Bの総重量を基準として、
ポリアルキル(メタ)アクリレート0.0~99.9重量%、好ましくは10.0~89.9重量%と、
1種または数種の耐衝撃性改良剤0.0~95.0重量%、好ましくは10.0~90.0重量%と、
トリアジン型紫外線吸収剤0.1~5.0重量%、好ましくは0.2~4.0重量%、より好ましくは0.3~3.0重量%と、
1種または数種の紫外線安定剤0.0~5.0重量%、好ましくは0.2~4.0重量%、より好ましくは0.3~3.0重量%と
を含む成形用組成物からなる。
【0032】
層Cは、該層Cの総重量を基準として、
フルオロポリマー40.0~100.0重量%、好ましくは70.0~100.0重量%、より好ましくは85.0~100.0重量%と、
ポリアルキル(メタ)アクリレート0.0~60.0重量%、好ましくは0.0~30.0重量%、より好ましくは0.0~15.0重量%と
を含む成形用組成物からなる。
【0033】
フォイルの実施形態2
多層フォイルは、層A、BおよびCからなる(図2を参照)。層Aは、該層Aの総重量を基準として、
ポリアルキル(メタ)アクリレート0.0~77.9重量%、好ましくは0.0~64.9重量%、より好ましくは0.0~52.9重量%、さらにより好ましくは0.0~42.9重量%、特に好ましくは0.0~32.9重量%と、
1種または数種の耐衝撃性改良剤20.0~97.9重量%、好ましくは30.0~94.9重量%、より好ましくは40.0~92.9重量%、さらにより好ましくは50.0~92.9重量%、特に好ましくは60.0~92.9重量%と、
粒状シリカ2.0~40.0重量%、好ましくは5.0~30.0重量%、より好ましくは7.0~20.0重量%と、
ベンゾトリアゾール型紫外線吸収剤0.1~5.0重量%と、
1種または数種の紫外線安定剤0.0~5.0重量%と
を含む成形用組成物からなる。
【0034】
層Bは、該層Bの総重量を基準として、
ポリアルキル(メタ)アクリレート0.0~99.8重量%、好ましくは10.0~89.8重量%と、
1種または数種の衝撃性改良剤0.0~95.0重量%、好ましくは10.0~90.0重量%と、
ベンゾトリアゾール型紫外線吸収剤0.1~5.0重量%、好ましくは0.2~4.0重量%、より好ましくは0.3~3.0重量%と、
トリアジン型紫外線吸収剤0.1~5.0重量%、好ましくは0.2~4.0重量%、より好ましくは0.3~3.0重量%と、
1種または数種の紫外線安定剤0.0~5.0重量%、好ましくは0.2~4.0重量%、より好ましくは0.3~3.0重量%と
を含む成形用組成物からなる。
【0035】
層Cは、該層Cの総重量を基準として、
フルオロポリマー40.0~100.0重量%、好ましくは70.0~100.0重量%、より好ましくは85.0~100.0重量%と、
ポリアルキル(メタ)アクリレート0.0~60.0重量%、好ましくは0.0~30.0重量%、より好ましくは0.0~15.0重量%と
を含む成形用組成物からなる。
【0036】
フォイルの実施形態3
多層フォイルは、層A、BおよびCからなる(図2を参照)。層Aは、該層Aの総重量を基準として、
ポリアルキル(メタ)アクリレート0.0~77.9重量%、好ましくは0.0~64.9重量%、より好ましくは0.0~52.9重量%、さらにより好ましくは0.0~42.9重量%、特に好ましくは0.0~32.9重量%と、
1種または数種の耐衝撃性改良剤20.0~97.9重量%、好ましくは30.0~94.9重量%、より好ましくは40.0~92.9重量%、さらにより好ましくは50.0~92.9重量%、特に好ましくは60.0~92.9重量%と、
粒状シリカ2.0~40.0重量%、好ましくは5.0~30.0重量%、より好ましくは7.0~20.0重量%と、
ベンゾトリアゾール型紫外線吸収剤0.1~5.0重量%と、
1種または数種の紫外線安定剤0.0~5.0重量%と
を含む成形用組成物からなる。
【0037】
層Bは、該層Bの総重量を基準として、
ポリアルキル(メタ)アクリレート0.0~99.8重量%、好ましくは10.0~89.8重量%と、
1種または数種の衝撃性改良剤0.0~95.0重量%、好ましくは10.0~90.0重量%と、
フルオロポリマー0.0~40.0重量%、好ましくは0.0~30.0重量%、より好ましくは0.0~20.0重量%と、
ベンゾトリアゾール型紫外線吸収剤0.1~5.0重量%、好ましくは0.2~4.0重量%、より好ましくは0.3~3.0重量%と、
トリアジン型紫外線吸収剤0.1~5.0重量%、好ましくは0.2~4.0重量%、より好ましくは0.3~3.0重量%と、
1種または数種の紫外線安定剤0.0~5.0重量%、好ましくは0.2~4.0重量%、より好ましくは0.3~3.0重量%と、
を含む成形用組成物からなる。
【0038】
層Cは、該層Cの総重量を基準として、
フルオロポリマー40.0~100.0重量%、好ましくは70.0~100.0重量%、より好ましくは85.0~100.0重量%と、
ポリアルキル(メタ)アクリレート0.0~60.0重量%、好ましくは0.0~30.0重量%、より好ましくは0.0~15.0重量%と
を含む成形用組成物からなる。
【0039】
フォイルの実施形態4
多層フォイルは、層A、BおよびCからなる(図2を参照)。層Aは、該層Aの総重量を基準として、
ポリアルキル(メタ)アクリレート0.0~77.9重量%、好ましくは0.0~64.9重量%、より好ましくは0.0~52.9重量%、さらにより好ましくは0.0~42.9重量%、特に好ましくは0.0~32.9重量%と、
1種または数種の耐衝撃性改良剤20.0~97.9重量%、好ましくは30.0~94.9重量%、より好ましくは40.0~92.9重量%、さらにより好ましくは50.0~92.9重量%、特に好ましくは60.0~92.9重量%と、
粒状シリカ2.0~40.0重量%、好ましくは5.0~30.0重量%、より好ましくは7.0~20.0重量%と、
ベンゾトリアゾール型紫外線吸収剤0.1~5.0重量%と、
1種または数種の紫外線安定剤0.0~5.0重量%と
を含む成形用組成物からなる。
【0040】
層Bは、該層Bの総重量を基準として、
ポリアルキル(メタ)アクリレート0.0~99.8重量%、好ましくは10.0~89.8重量%と、
1種または数種の衝撃性改良剤0.0~95.0重量%、好ましくは10.0~90.0重量%と、
フルオロポリマー0.0~40.0重量%、好ましくは0.0~30.0重量%、より好ましくは0.0~20.0重量%と、
ベンゾトリアゾール型紫外線吸収剤0.1~5.0重量%、好ましくは0.2~4.0重量%、より好ましくは0.3~3.0重量%と、
トリアジン型紫外線吸収剤0.1~5.0重量%、好ましくは0.2~4.0重量%、より好ましくは0.3~3.0重量%と、
1種または数種の紫外線安定剤0.0~5.0重量%、好ましくは0.2~4.0重量%、より好ましくは0.3~3.0重量%と、
を含む成形用組成物からなる。
【0041】
層Cは、該層Cの総重量を基準として、
フルオロポリマー40.0~97.0重量%、好ましくは85.0~97.0重量%と、
ポリアルキル(メタ)アクリレート0.0~30.0重量%と、
ガラスビーズ3.0~30.0重量%、好ましくは3.0~15.0重量%と
を含む成形用組成物からなる。
【0042】
フォイルの実施形態5
多層フォイルは、層AおよびBからなる(図1を参照)。層Aは、該層Aの総重量を基準として、
ポリアルキル(メタ)アクリレート0.0~77.9重量%、好ましくは0.0~64.9重量%、より好ましくは0.0~52.9重量%、さらにより好ましくは0.0~42.9重量%、特に好ましくは0.0~32.9重量%と、
1種または数種の耐衝撃性改良剤20.0~97.9重量%、好ましくは30.0~94.9重量%、より好ましくは40.0~92.9重量%、さらにより好ましくは50.0~92.9重量%、特に好ましくは40.0~92.9重量%と、
粒状シリカ2.0~40.0重量%、好ましくは5.0~30.0重量%、より好ましくは7.0~20.0重量%と、
ベンゾトリアゾール型紫外線吸収剤0.1~5.0重量%と、
1種または数種の紫外線安定剤0.0~5.0重量%と、
を含む成形用組成物からなる。
【0043】
層Bは、該層Bの総重量を基準として、
フルオロポリマー40.0~100.0重量%、好ましくは70.0~100.0重量%、より好ましくは85.0~100.0重量%と、
ポリアルキル(メタ)アクリレート0.0~60.0重量%、好ましくは0.0~30.0重量%、より好ましくは0.0~15.0重量%と
を含む成形用組成物からなる。
【0044】
フォイルの実施形態6
多層フォイルは、層AおよびBからなる(図1を参照)。層Aは、該層Aの総重量を基準として、
ポリアルキル(メタ)アクリレート0.0~77.9重量%、好ましくは0.0~64.9重量%、より好ましくは0.0~52.9重量%、さらにより好ましくは0.0~42.9重量%、特に好ましくは0.0~32.9重量%と、
1種または数種の耐衝撃性改良剤20.0~97.9重量%、好ましくは30.0~94.9重量%、より好ましくは40.0~92.9重量%、さらにより好ましくは50.0~92.9重量%、特に好ましくは40.0~92.9重量%と、
粒状シリカ2.0~40.0重量%、好ましくは5.0~30.0重量%、より好ましくは7.0~20.0重量%と、
ベンゾトリアゾール型紫外線吸収剤0.1~5.0重量%と、
1種または数種の紫外線安定剤0.0~5.0重量%と
を含む成形用組成物からなる。
【0045】
層Bは、該層Bの総重量を基準として、
フルオロポリマー40.0~97.0重量%、好ましくは85.0~97.0重量%と、
ポリアルキル(メタ)アクリレート0.0~30.0重量%と、
ガラスビーズ3.0~30.0重量%、好ましくは3.0~15.0重量%と
を含む成形用組成物からなる。
【0046】
フォイルの実施形態7
多層フォイルは、層AおよびBからなる(図1を参照)。層Aは、該層Aの総重量を基準として、
ポリアルキル(メタ)アクリレート0.0~76.0重量%、好ましくは0.0~62.0重量%、より好ましくは0.0~50.0重量%、さらにより好ましくは0.0~40.0重量%、特に好ましくは0.0~30.0重量%と、
1種または数種の耐衝撃性改良剤20.0~96.0重量%、好ましくは30.0~92.0重量%、より好ましくは40.0~90.0重量%、さらにより好ましくは50.0~90.0重量%、特に好ましくは60.0~90.0重量%と、
粒状シリカ2.0~20.0重量%、好ましくは4.0~25.0重量%、より好ましくは5.0~20.0重量%と、
接着促進コポリマーであって、該接着促進コポリマーの重量を基準として、
(i)メチルメタクリレート70.0~99.5重量%と、
(ii)接着促進モノマー0.5~15.0重量%と、
(iii)ビニル官能基以外の官能基を有しない他のビニル共重合可能なモノマー0.0~25.0重量%と
を含む接着促進コポリマー2.0~20.0重量%、好ましくは4.0~25.0重量%、より好ましくは5.0~20.0重量%と、
1種または数種の紫外線吸収剤0.0~5.0重量%と、
1種または数種の紫外線安定剤0.0~5.0重量%と
を含む成形用組成物からなる。
【0047】
層Bは、該層Bの総重量を基準として、
フルオロポリマー40.0~100.0重量%、好ましくは70.0~100.0重量%、より好ましくは85.0~100.0重量%と、
ポリアルキル(メタ)アクリレート0.0~60.0重量%、好ましくは0.0~30.0重量%、より好ましくは0.0~15.0重量%と
を含む成形用組成物からなる。
【0048】
フォイルの実施形態8
多層フォイルは、層AおよびBからなる(図1を参照)。層Aは、該層Aの総重量を基準として、
ポリアルキル(メタ)アクリレート0.0~76.0重量%、好ましくは0.0~62.0重量%、より好ましくは0.0~50.0重量%、さらにより好ましくは0.0~40.0重量%、特に好ましくは0.0~30.0重量%と、
1種または数種の耐衝撃性改良剤20.0~96.0重量%、好ましくは30.0~92.0重量%、より好ましくは40.0~90.0重量%、さらにより好ましくは50.0~90.0重量%、特に好ましくは60.0~90.0重量%と、
粒状シリカ2.0~20.0重量%、好ましくは4.0~25.0重量%、より好ましくは5.0~20.0重量%と、
接着促進コポリマーであって、該接着促進コポリマーの重量を基準として、
(i)メチルメタクリレート70.0~99.5重量%と、
(ii)接着促進モノマー0.5~15.0重量%と、
(iii)ビニル官能基以外の官能基を有しない他のビニル共重合可能なモノマー0.0~25.0重量%と
を含む接着促進コポリマー2.0~20.0重量%、好ましくは4.0~25.0重量%、より好ましくは5.0~20.0重量%と、
1種または数種の紫外線吸収剤0.0~5.0重量%と、
1種または数種の紫外線安定剤0.0~5.0重量%と
を含む成形用組成物からなる。
【0049】
層Bは、該層Bの総重量を基準として、
フルオロポリマー40.0~97.0重量%、好ましくは85.0~97.0重量%と、
ポリアルキル(メタ)アクリレート0.0~30.0重量%と、
ガラスビーズ3.0~30.0重量%、好ましくは3.0~15.0重量%と
を含む成形用組成物からなる。
【0050】
フォイルの実施形態9
多層フォイルは、層AおよびBからなる(図1を参照)。層Aは、該層Aの総重量を基準として、
ポリアルキル(メタ)アクリレート0.0~77.9重量%、好ましくは0.0~64.9重量%、より好ましくは0.0~52.9重量%、さらにより好ましくは0.0~42.9重量%、特に好ましくは0.0~32.9重量%と、
1種または数種の耐衝撃性改良剤20.0~97.9重量%、好ましくは30.0~94.9重量%、より好ましくは40.0~92.9重量%、さらにより好ましくは50.0~92.9重量%、特に好ましくは60.0~92.9重量%と、
粒状シリカ2.0~40.0重量%、好ましくは5.0~30.0重量%、より好ましくは7.0~20.0重量%と、
ベンゾトリアゾール型紫外線吸収剤0.1~5.0重量%と、
1種または数種の紫外線安定剤0.0~5.0重量%と
を含む成形用組成物からなる。
【0051】
層Bは、該層Bの総重量を基準として、
ポリアルキル(メタ)アクリレート0.0~99.9重量%、好ましくは10.0~89.9重量%と、
1種または数種の耐衝撃性改良剤0.0~95.0重量%、好ましくは10.0~90.0重量%と、
トリアジン型紫外線吸収剤0.1~5.0重量%、好ましくは0.2~4.0重量%、より好ましくは0.3~3.0重量%と、
1種または数種の紫外線安定剤0.0~5.0重量%、好ましくは0.2~4.0重量%、より好ましくは0.3~3.0重量%と
を含む成形用組成物からなる。
【0052】
フォイルの実施形態10
多層フォイルは、層AおよびBからなる(図1を参照)。層Aは、該層Aの総重量を基準として、
ポリアルキル(メタ)アクリレート0.0~75.9重量%、好ましくは0.0~61.9重量%、より好ましくは0.0~49.9重量%、さらにより好ましくは0.0~39.9重量%、特に好ましくは0.0~29.9重量%と、
1種または数種の耐衝撃性改良剤20.0~96.0重量%、好ましくは30.0~92.0重量%、より好ましくは40.0~90.0重量%、さらにより好ましくは50.0~90.0重量%、特に好ましくは60.0~92.9重量%と、
粒状シリカ2.0~20.0重量%、好ましくは4.0~25.0重量%、より好ましくは5.0~20.0重量%と、
接着促進コポリマーであって、該接着促進コポリマーの重量を基準として、
(i)メチルメタクリレート70.0~99.5重量%と、
(ii)接着促進モノマー0.5~15.0重量%と、
(iii)ビニル官能基以外の官能基を有しない他のビニル共重合可能なモノマー0.0~25.0重量%と
を含む接着促進コポリマー2.0~20.0重量%、好ましくは4.0~25.0重量%、より好ましくは5.0~20.0重量%と、
ベンゾトリアゾール型紫外線吸収剤0.1~5.0重量%と、
1種または数種の紫外線安定剤0.0~5.0重量%と
を含む成形用組成物からなる。
【0053】
層Bは、該層Bの総重量を基準として、
ポリアルキル(メタ)アクリレート0.0~99.9重量%、好ましくは10.0~89.9重量%と、
1種または数種の耐衝撃性改良剤0.0~95.0重量%、好ましくは10.0~90.0重量%と、
トリアジン型紫外線吸収剤0.1~5.0重量%、好ましくは0.2~4.0重量%、より好ましくは0.3~3.0重量%と、
1種または数種の紫外線安定剤0.0~5.0重量%、好ましくは0.2~4.0重量%、より好ましくは0.3~3.0重量%と
を含む成形用組成物からなる。
【0054】
フォイルの実施形態11
多層フォイルは、層AおよびBからなる(図1を参照)。層Aは、該層Aの総重量を基準として、
ポリアルキル(メタ)アクリレート0.0~77.9重量%、好ましくは0.0~64.9重量%、より好ましくは0.0~52.9重量%、さらにより好ましくは0.0~42.9重量%、特に好ましくは0.0~32.9重量%と、
1種または数種の耐衝撃性改良剤20.0~97.9重量%、好ましくは30.0~94.9重量%、より好ましくは40.0~92.9重量%、さらにより好ましくは50.0~92.9重量%、特に好ましくは60.0~92.9重量%と、
粒状シリカ2.0~40.0重量%、好ましくは5.0~30.0重量%、より好ましくは7.0~20.0重量%と、
トリアジン型紫外線吸収剤0.1~5.0重量%と、
1種または数種の紫外線安定剤0.0~5.0重量%と
を含む成形用組成物からなる。
【0055】
層Bは、該層Bの総重量を基準として、
ポリアルキル(メタ)アクリレート0.0~77.9重量%、好ましくは0.0~64.8重量%、より好ましくは0.0~52.7重量%、さらにより好ましくは0.0~42.7重量%、特に好ましくは0.0~33.0重量%と、
1種または数種の耐衝撃性改良剤20.0~98.0重量%、好ましくは30.0~95.0重量%、より好ましくは40.0~93.0重量%、さらにより好ましくは50.0~93.0重量%、特に好ましくは60.0~93.0重量%と、
ベンゾトリアゾール型紫外線吸収剤0.1~5.0重量%、好ましくは0.2~4.0重量%、より好ましくは0.3~3.0重量%と、
接着促進コポリマーであって、該接着促進コポリマーの重量を基準として、
(i)メチルメタクリレート70.0~99.5重量%と、
(ii)接着促進モノマー0.5~15.0重量%と、
(iii)ビニル官能基以外の官能基を有しない他のビニル共重合可能なモノマー0.0~25.0重量%と
を含む接着促進コポリマー2.0~40.0重量%、好ましくは5.0~35.0重量%、より好ましくは7.0~30.0重量%と
を含む成形用組成物からなる。
【0056】
フォイルの実施形態12
多層フォイルは、層AおよびBからなる(図1を参照)。層Aは、該層Aの総重量を基準として、
ポリアルキル(メタ)アクリレート0.0~77.9重量%、好ましくは0.0~64.9重量%、より好ましくは0.0~52.9重量%、さらにより好ましくは0.0~42.9重量%、特に好ましくは0.0~32.9重量%と、
1種または数種の耐衝撃性改良剤20.0~97.9重量%、好ましくは30.0~94.9重量%、より好ましくは40.0~92.9重量%、さらにより好ましくは50.0~92.9重量%、特に好ましくは60.0~92.9重量%と、
粒状シリカ2.0~40.0重量%、好ましくは5.0~30.0重量%、より好ましくは7.0~20.0重量%と、
トリアジン型紫外線吸収剤0.1~5.0重量%と、
1種または数種の紫外線安定剤0.0~5.0重量%と
を含む成形用組成物からなる。
【0057】
層Bは、該層Bの総重量を基準として、
ポリアルキル(メタ)アクリレート0.0~79.9重量%、好ましくは0.0~66.8重量%、より好ましくは0.0~54.7重量%、さらにより好ましくは0.0~44.7重量%、特に好ましくは0.0~35.0重量%と、
1種または数種の耐衝撃性改良剤20.0~98.0重量%、好ましくは30.0~95.0重量%、より好ましくは40.0~93.0重量%、さらにより好ましくは50.0~93.0重量%、特に好ましくは60.0~93.0重量%と、
ベンゾトリアゾール型紫外線吸収剤0.1~5.0重量%、好ましくは0.2~4.0重量%、より好ましくは0.3~3.0重量%と
を含む成形用組成物からなる。
【0058】
フォイルの実施形態13
多層フォイルは、層A、BおよびCからなる(図5を参照)。層Aは、該層Aの総重量を基準として、
ポリアルキル(メタ)アクリレート0.0~77.9重量%、好ましくは0.0~64.9重量%、より好ましくは0.0~52.9重量%、さらにより好ましくは0.0~42.9重量%、特に好ましくは0.0~32.9重量%と、
1種または数種の耐衝撃性改良剤20.0~97.9重量%、好ましくは30.0~94.9重量%、より好ましくは40.0~92.9重量%、さらにより好ましくは50.0~92.9重量%、特に好ましくは60.0~92.9重量%と、
粒状シリカ2.0~40.0重量%、好ましくは5.0~30.0重量%、より好ましくは7.0~20.0重量%と、
トリアジン型紫外線吸収剤0.1~5.0重量%と、
1種または数種の紫外線安定剤0.0~5.0重量%と
を含む成形用組成物からなる。
【0059】
層Bは、該層Bの総重量を基準として、
ポリアルキル(メタ)アクリレート0.0~99.8重量%、好ましくは10.0~89.8重量%と、
1種または数種の衝撃性改良剤0.0~95.0重量%、好ましくは10.0~90.0重量%と、
ベンゾトリアゾール型紫外線吸収剤0.1~5.0重量%、好ましくは0.2~4.0重量%、より好ましくは0.3~3.0重量%と、
トリアジン型紫外線吸収剤0.1~5.0重量%、好ましくは0.2~4.0重量%、より好ましくは0.3~3.0重量%と、
1種または数種の紫外線安定剤0.0~5.0重量%、好ましくは0.2~4.0重量%、より好ましくは0.3~3.0重量%と
を含む成形用組成物からなる。
【0060】
層Cは、該層Cの総重量を基準として、
ポリアルキル(メタ)アクリレート0.0~77.9重量%と、
1種または数種の耐衝撃性改良剤20.0~97.9重量%と、
粒状シリカ2.0~40.0重量%と、
ベンゾトリアゾール型紫外線吸収剤0.1~5.0重量%と、
1種または数種の紫外線安定剤0.0~5.0重量%と
を含む成形用組成物からなる。
【0061】
フォイルの実施形態14
多層フォイルは、層A、BおよびCからなる(図2を参照)。層Aは、該層Aの総重量を基準として、
ポリアルキル(メタ)アクリレート0.0~77.9重量%、好ましくは0.0~64.9重量%、より好ましくは0.0~52.9重量%、さらにより好ましくは0.0~42.9重量%、特に好ましくは0.0~32.9重量%と、
1種または数種の耐衝撃性改良剤20.0~97.9重量%、好ましくは30.0~94.9重量%、より好ましくは40.0~92.9重量%、さらにより好ましくは50.0~92.9重量%、特に好ましくは60.0~92.9重量%と、
粒状シリカ2.0~40.0重量%、好ましくは5.0~30.0重量%、より好ましくは7.0~20.0重量%と、
トリアジン型紫外線吸収剤0.1~5.0重量%と、
1種または数種の紫外線安定剤0.0~5.0重量%と
を含む成形用組成物からなる。
【0062】
層Bは、該層Bの総重量を基準として、
ポリアルキル(メタ)アクリレート0.0~99.8重量%、好ましくは10.0~89.8重量%と、
1種または数種の衝撃性改良剤0.0~95.0重量%、好ましくは10.0~90.0重量%と、
ベンゾトリアゾール型紫外線吸収剤0.1~5.0重量%、好ましくは0.2~4.0重量%、より好ましくは0.3~3.0重量%と、
トリアジン型紫外線吸収剤0.1~5.0重量%、好ましくは0.2~4.0重量%、より好ましくは0.3~3.0重量%と、
1種または数種の紫外線安定剤0.0~5.0重量%、好ましくは0.2~4.0重量%、より好ましくは0.3~3.0重量%と
を含む成形用組成物からなる。
【0063】
層Cは、該層Cの総重量を基準として、
ポリアルキル(メタ)アクリレート0.0~77.9重量%、好ましくは0.0~64.8重量%、より好ましくは0.0~52.7重量%、さらにより好ましくは0.0~42.7重量%、特に好ましくは0.0~33.0重量%と、
1種または数種の耐衝撃性改良剤20.0~98.0重量%、好ましくは30.0~95.0重量%、より好ましくは40.0~93.0重量%、さらにより好ましくは50.0~93.0重量%、特に好ましくは60.0~93.0重量%と、
ベンゾトリアゾール型紫外線吸収剤0.1~5.0重量%、好ましくは0.2~4.0重量%、より好ましくは0.3~3.0重量%と、
接着促進コポリマーであって、該接着促進コポリマーの重量を基準として、
(i)メチルメタクリレート70.0~99.5重量%と、
(ii)マレイン酸無水物0.5~15.0重量%と、
(iii)ビニル官能基以外の官能基を有しない他のビニル共重合可能なモノマー0.0~25.0重量%と
を含む接着促進コポリマー2.0~40.0重量%、好ましくは5.0~35.0重量%、より好ましくは7.0~30.0重量%と
を含む成形用組成物からなる。
【0064】
フォイルの実施形態15
多層フォイルは、層D、AおよびBからなる(図3を参照)。
【0065】
層Dは、少なくとも部分的に架橋されたポリウレタン(メタ)アクリレートからなる。
【0066】
層AおよびBは、フォイルの実施形態11のものに対応する。
【0067】
フォイルの実施形態16
多層フォイルは、層D、AおよびBからなる(図3を参照)。
【0068】
層Dは、少なくとも部分的に架橋されたポリウレタン(メタ)アクリレートからなる。
【0069】
層AおよびBは、フォイルの実施形態12のものに対応する。
【0070】
フォイルの実施形態17
多層フォイルは、層D、A、BおよびCからなる(図4を参照)。
【0071】
層Dは、少なくとも部分的に架橋されたポリウレタン(メタ)アクリレートからなる。
【0072】
層A、BおよびCは、フォイルの実施形態14のものに対応する。
【0073】
フォイルの実施形態18
多層フォイルは、層D、A、BおよびCからなる(図4を参照)。
【0074】
層Dは、少なくとも部分的に架橋されたポリウレタン(メタ)アクリレートからなる。
【0075】
層A、BおよびCは、フォイルの実施形態13のものに対応する。
【0076】
以下、層A、B、CおよびDの組成について、より詳細に説明する。
【0077】
層A
本発明のフォイルは、耐衝撃性改良ポリアルキル(メタ)アクリレートマトリックス中にシリカ粒子が実質的に均一に分散した成形用組成物からなる層Aを有する。層A中の耐衝撃性改良ポリアルキル(メタ)アクリレートの含有量は、層Aの重量を基準として、少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも60重量%、より好ましくは少なくとも70重量%、さらにより好ましくは少なくとも80重量%、特に好ましくは少なくとも85重量%である。典型的には、ポリマーマトリックスはフルオロポリマーを一切含まない。
【0078】
本発明によれば、層Aの成形用組成物中に1種または数種の耐衝撃性改良剤が存在することが、フォイルの良好な耐引裂性と優れた接着特性とを保証するために必須である。したがって、層Aは、該層Aの重量を基準として、1種または数種の耐衝撃性改良剤20.0~98.0重量%、好ましくは30.0~95.0重量%、より好ましくは40.0~93.0重量%、さらにより好ましくは50.0~93.0重量%、特に好ましくは60.0~93.0重量%を含む。好ましくは、層Aの成形用組成物中の1種または数種の耐衝撃性改良剤のゴム分の量は、該層Aの重量を基準として、1種または数種の耐衝撃性改良剤の6.0~35.0重量%、好ましくは10.0~30.0重量%、より好ましくは12.0~25.0重量%、さらにより好ましくは15.0~20.0重量%、特に好ましくは60.0~93.0重量%である。したがって、層Aの成形用組成物中のポリアルキル(メタ)アクリレートの含有量は、該層Aの重量を基準として、0.0~78.0重量%、好ましくは0.0~65.0重量%、より好ましくは0.0~53.0重量%、さらにより好ましくは0.0~43.0重量%、特に好ましくは0.0~33.0重量%の範囲であり得る。
【0079】
層Aの成形用組成物は、該層Aの総重量を基準として、
ポリアルキル(メタ)アクリレート0.0~78.0重量%と、
1種または数種の耐衝撃性改良剤20.0~98.0重量%と、
粒状シリカ2.0~40.0重量%と、
フルオロポリマー0.0~38.0重量%と、
1種または数種の紫外線吸収剤0.0~5.0重量%と、
1種または数種の紫外線安定剤0.0~5.0重量%と、
好ましくは、
ポリアルキル(メタ)アクリレート0.0~65.0重量%と、
1種または数種の耐衝撃性改良剤30.0~95.0重量%と、
粒状シリカ5.0~30.0重量%と、
1種または数種の紫外線吸収剤0.0~5.0重量%と、
1種または数種の紫外線安定剤0.0~5.0重量%と、
より好ましくは、
ポリアルキル(メタ)アクリレート0.0~53.0重量%と、
1種または数種の耐衝撃性改良剤40.0~93.0重量%と、
粒状シリカ7.0~20.0重量%と、
1種または数種の紫外線吸収剤0.0~5.0重量%と、
1種または数種の紫外線安定剤0.0~5.0重量%と、
さらにより好ましくは、
ポリアルキル(メタ)アクリレート0.0~43.0重量%と、
1種または数種の耐衝撃性改良剤50.0~93.0重量%と、
粒状シリカ7.0~20.0重量%と、
1種または数種の紫外線吸収剤0.0~5.0重量%と、
1種または数種の紫外線安定剤0.0~5.0重量%と、
特に好ましくは、
ポリアルキル(メタ)アクリレート0.0~33.0重量%と、
1種または数種の耐衝撃性改良剤60.0~93.0重量%と、
粒状シリカ7.0~20.0重量%と、
1種または数種の紫外線吸収剤0.0~5.0重量%と、
1種または数種の紫外線安定剤0.0~5.0重量%と
を含み得る。
【0080】
本発明者らはさらに、層A中の粒状シリカの接着増強効果が、粒状シリカを接着促進コポリマーと組み合わせて用いることによって、さらに増強し得ることを見出した。この実施形態では、層Aの成形用組成物は、該層Aの総重量を基準として、
ポリアルキル(メタ)アクリレート0.0~76.0重量%と、
1種または数種の耐衝撃性改良剤20.0~96.0重量%と、
粒状シリカ2.0~20.0重量%と、
接着促進コポリマーであって、該接着促進コポリマーの重量を基準として、
(i)メチルメタクリレート70.0~99.5重量%と、
(ii)接着促進モノマー0.5~15.0重量%と、
(iii)ビニル官能基以外の官能基を有しない他のビニル共重合可能なモノマー0.0~25.0重量%と
を含む接着促進コポリマー2.0~20.0重量%と、
1種または数種の紫外線吸収剤0.0~5.0重量%と、
1種または数種の紫外線安定剤0.0~5.0重量%と、
好ましくは、
ポリアルキル(メタ)アクリレート0.0~62.0重量%と、
1種または数種の耐衝撃性改良剤30.0~92.0重量%と、
粒状シリカ4.0~25.0重量%と、
接着促進コポリマーであって、該接着促進コポリマーの重量を基準として、
(i)メチルメタクリレート70.0~99.5重量%と、
(ii)接着促進モノマー0.5~15.0重量%と、
(iii)ビニル官能基以外の官能基を有しない他のビニル共重合可能なモノマー0.0~25.0重量%と
を含む接着促進コポリマー4.0~25.0重量%と、
1種または数種の紫外線吸収剤0.0~5.0重量%と、
1種または数種の紫外線安定剤0.0~5.0重量%と、
より好ましくは、
ポリアルキル(メタ)アクリレート0.0~50.0重量%と、
1種または数種の耐衝撃性改良剤40.0~90.0重量%と、
粒状シリカ5.0~20.0重量%と、
接着促進コポリマーであって、該接着促進コポリマーの重量を基準として、
(i)メチルメタクリレート70.0~99.5重量%と、
(ii)接着促進モノマー0.5~15.0重量%と、
(iii)ビニル官能基以外の官能基を有しない他のビニル共重合可能なモノマー0.0~25.0重量%と
を含む接着促進コポリマー5.0~20.0重量%と、
1種または数種の紫外線吸収剤0.0~5.0重量%と、
1種または数種の紫外線安定剤0.0~5.0重量%と、
さらにより好ましくは、
ポリアルキル(メタ)アクリレート0.0~40.0重量%と、
1種または数種の衝撃性改良剤50.0~90.0重量%と、
粒状シリカ5.0~20.0重量%と、
接着促進コポリマーであって、該接着促進コポリマーの重量を基準として、
(i)メチルメタクリレート70.0~99.5重量%と、
(ii)接着促進モノマー0.5~15.0重量%と、
(iii)ビニル官能基以外の官能基を有しない他のビニル共重合可能なモノマー0.0~25.0重量%と
を含む接着促進コポリマー5.0~20.0重量%と、
1種または数種の紫外線吸収剤0.0~5.0重量%と、
1種または数種の紫外線安定剤0.0~5.0重量%と、
特に好ましくは、
ポリアルキル(メタ)アクリレート0.0~30.0重量%と、
1種または数種の耐衝撃性改良剤60.0~90.0重量%と、
粒状シリカ5.0~20.0重量%と、
接着促進コポリマーであって、該接着促進コポリマーの重量を基準として、
(i)メチルメタクリレート70.0~99.5重量%と、
(ii)接着促進モノマー0.5~15.0重量%と、
(iii)ビニル官能基以外の官能基を有しない他のビニル共重合可能なモノマー0.0~25.0重量%と
を含む接着促進コポリマー5.0~20.0重量%と、
1種または数種の紫外線吸収剤0.0~5.0重量%と、
1種または数種の紫外線安定剤0.0~5.0重量%と
を含み得る。
【0081】
さらに、層Aが少量のフルオロポリマーを追加で含んでいる場合、層Aの耐薬品性と耐衝撃性とがさらに改善され得る。したがって、いくつかの実施形態では、層Aのポリマーマトリックスは、少なくとも1種のフルオロポリマー、例えばPVDFを含んでいてよく、フルオロポリマーの含有量は、層Aの重量を基準として、典型的には0.0~38.0重量%、好ましくは0.0~28.0重量%、より好ましくは0.0~18.0重量%である。
【0082】
層B
本発明のフォイルは、典型的には層Aに直接隣接する層Bをさらに含む(図1を参照)。層B中の耐衝撃性改良ポリアルキル(メタ)アクリレートの含有量は、該層Bの重量を基準として、少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも60重量%、より好ましくは少なくとも70重量%、さらにより好ましくは少なくとも80重量%、さらにより一層好ましくは少なくとも90重量%、特に好ましくは少なくとも95重量%である。層Bは任意選択的にPVDFなどの少なくとも1種のフルオロポリマーを含んでいてもよいが、層Bの組成は、典型的には層Aの組成と異なる。さらに、層Bは少量の粒状シリカを含んでいてもよいが、粒状シリカは、通常、層Bに存在しない。
【0083】
本発明の一態様では、層Bの組成は、該層Bの総重量を基準として、次のように、
ポリアルキル(メタ)アクリレート0.0~100.0重量%、好ましくは10.0~90.0重量%と、
1種または数種の耐衝撃性改良剤0.0~95.0重量%、好ましくは10.0~90.0重量%と、
フルオロポリマー0.0~40.0重量%、好ましくは0.0~30.0重量%、より好ましくは0.0~20.0重量%と、
1種または数種の紫外線吸収剤0.0~5.0重量%、好ましくは0.2~4.0重量%、より好ましくは0.3~3.0重量%と、
1種または数種の紫外線安定剤0.0~5.0重量%、好ましくは0.2~4.0重量%、より好ましくは0.3~3.0重量%と、
接着促進コポリマーであって、該接着促進コポリマーの重量を基準として、
(i)メチルメタクリレート70.0~99.5重量%と、
(ii)接着促進モノマー0.5~15.0重量%と、
(iii)ビニル官能基以外の官能基を有しない他のビニル共重合可能なモノマー0.0~25.0重量%と
を含む接着促進コポリマー0.0~20.0重量%、好ましくは0.0~10.0重量%と
である。
【0084】
好ましくは、層Bのポリアルキル(メタ)アクリレートは後述するようなPMMAであり、フルオロポリマーはPVDFである。さらに、フォイルが適用される基材に応じて、層Bは接着促進コポリマーを実質的に含んでいなくてもよい。
【0085】
本発明のさらに別の態様では、層Bは、該層Bの総重量を基準として、
フルオロポリマー40.0~100.0重量%と、
ポリアルキル(メタ)アクリレート0.0~30.0重量%と、
ガラスビーズ0.0~30.0重量%と
を含む成形用組成物からなる。
【0086】
層Bの組成は、フォイルの所望の最終外観に関する要件を満たすようにさらに調整することができる。
【0087】
光沢のない外観を有するフォイルが所望される場合、層Bは、該層Bの総重量を基準として、
フルオロポリマー40.0~97.0重量%、好ましくは85.0~97.0重量%と、
ポリアルキル(メタ)アクリレート0.0~30.0重量%と、
ガラスビーズ3.0~30.0重量%、好ましくは3.0~15.0重量%と
を含む成形用組成物からなり得る。
【0088】
光沢のある外観を有するフォイルを得るために、層Bは、該層Bの総重量を基準として、
フルオロポリマー40.0~100.0重量%、好ましくは70.0~100.0重量%、より好ましくは85.0~100.0重量%と、
ポリアルキル(メタ)アクリレート0.0~60.0重量%、好ましくは0.0~30.0重量%、より好ましくは0.0~15.0重量%と
を含む成形用組成物からなり得る。
【0089】
さらに、上記の両方の実施形態では、層Bがポリアルキル(メタ)アクリレートを実質的に含まないことが、フォイルの耐薬品性の点で有利である。
【0090】
層Bのこの組成は、層Aが層Bに直接隣接し、フルオロポリマーをベースとする層Bが前述の基材の外面を形成し、それによって環境に面するように、本発明のフォイルが基材の保護に使用される場合、特に有利である。層Aは、層Bの下に位置し、すなわち基材の表面により近いところにある。したがって、層Aは接着促進層として機能する。
【0091】
この態様では、ガラスビーズは、層Bのポリマーマトリックス中に実質的に均一に分散している。一実施形態では、ポリマーマトリックスは、フルオロポリマー、例えばPVDFと、PMMAなどのポリアルキル(メタ)アクリレートなどの少なくとも1種の更なるポリマーとの組み合わせを含む。この実施形態では、フルオロポリマーの含有量は、層Bの総重量を基準として、典型的には40.0~100.0重量%であり、ポリアルキル(メタ)アクリレートの含有量は0.0~30.0重量%である。これは約1:1~約1:0のフルオロポリマー:ポリアルキル(メタ)アクリレート重量比に対応する。当業者は容易に理解するであろうように、層A中のポリマーマトリックスの正確な組成は、フォイルの使用目的に応じて調整することができる。PVDFとPMMAとの重量比が1.0:0.0~1:1(w/w)、より好ましくは1.0:0.0~1.0:0.40(w/w)、特に好ましくは1.0:0.0~1.0:0.30(w/w)である場合、PMMA/PVDFの組み合わせを用いることによって、特に耐候性フォイルを得ることができる。
【0092】
層C
接着促進層C
上述した層AおよびBに加えて、本発明の多層フォイルは、層Bが層Aと層Cとの間に位置するように、任意選択的に接着促進層Cを含んでいてもよい。この実施形態では、層Cは接着促進層として作用し、ひいては粒状シリカ、接着促進コポリマーまたはこれらの組み合わせを必然的に含む。一般に、多層フォイルが層Cを有する場合、層Bは、該層Bの重量を基準として、接着促進コポリマー3.0重量%未満、好ましくは1.0重量%未満を含む。
【0093】
HPLなどの基材に対するフォイルの優れた接着を達成するために、層C中の粒状シリカと接着促進コポリマーとの累積含有量は、該層Cの重量を基準として、少なくとも2.0重量%、好ましくは少なくとも4.0重量%、より好ましくは少なくとも6.0重量%、さらにより好ましくは少なくとも8.0重量%に選択され、層C中の耐衝撃性改良ポリアルキル(メタ)アクリレートの含有量は、該層Cの重量を基準として、少なくとも60重量%、好ましくは少なくとも60重量%、より好ましくは少なくとも70重量%、さらにより好ましくは少なくとも80重量%である。
【0094】
一般に、層Cは、
ポリアルキル(メタ)アクリレート0.0~78.0重量%と、
1種または数種の耐衝撃性改良剤20.0~98.0重量%と、
フルオロポリマー0.0~40.0重量%と、
粒状シリカ0.0~40.0重量%と、
接着促進コポリマーであって、該接着促進コポリマーの重量を基準として、
(i)メチルメタクリレート70.0~99.5重量%と、
(ii)接着促進モノマー0.5~15.0重量%と、
(iii)ビニル官能基以外の官能基を有しない他のビニル共重合可能なモノマー0.0~25.0重量%と
を含む接着促進コポリマー0.0~40.0重量%と、
1種または数種の紫外線吸収剤0.0~5.0重量%と、
1種または数種の紫外線安定剤0.0~5.0重量%と
を含む成形用組成物からなる。
【0095】
一実施形態では、層Cは、粒状シリカを含み、接着促進コポリマーを含まない。したがって、この実施形態では、層Cの組成は、層Aの組成に実質的に対応する。層Cは、
ポリアルキル(メタ)アクリレート0.0~78.0重量%、好ましくは0.0~65.0重量%、より好ましくは0.0~53.0重量%、さらにより好ましくは0.0~43.0重量%、特に好ましくは0.0~33.0重量%と、
1種または数種の耐衝撃性改良剤20.0~98.0重量%、好ましくは30.0~95.0重量%、より好ましくは40.0~93.0重量%、さらにより好ましくは50.0~93.0重量%、特に好ましくは60.0~93.0重量%と、
粒状シリカ2.0~40.0重量%、好ましくは5.0~30.0重量%、より好ましくは7.0~20.0重量%と、
1種または数種の紫外線吸収剤0.0~5.0重量%と、
1種または数種の紫外線安定剤0.0~5.0重量%と
を含む成形用組成物からなる。
【0096】
さらに別の実施形態では、層Cは、接着促進コポリマーを含み、粒状シリカを含まない。したがって、この実施形態では、層Cは、
ポリアルキル(メタ)アクリレート0.0~78.0重量%、好ましくは0.0~65.0重量%、より好ましくは0.0~53.0重量%、さらにより好ましくは0.0~43.0重量%、特に好ましくは0.0~33.0重量%と、
1種または数種の耐衝撃性改良剤20.0~98.0重量%、好ましくは30.0~95.0重量%、より好ましくは40.0~93.0重量%、さらにより好ましくは50.0~93.0重量%、特に好ましくは60.0~93.0重量%と、
接着促進コポリマーであって、該接着促進コポリマーの重量を基準として、
(i)メチルメタクリレート70.0~99.5重量%と、
(ii)接着促進モノマー0.5~15.0重量%と、
(iii)ビニル官能基以外の官能基を有しない他のビニル共重合可能なモノマー0.0~25.0重量%と
を含む接着促進コポリマー2.0~40.0重量%、好ましくは5.0~35.0重量%、より好ましくは7.0~30.0重量%と、
1種または数種の紫外線吸収剤0.0~5.0重量%と、
1種または数種の紫外線安定剤0.0~5.0重量%と
を含む成形用組成物からなる。
【0097】
この実施形態では、層Cは、該層Cの重量を基準として、接着促進コポリマー2.0~40.0重量%、好ましくは5.0~35.0重量%、より好ましくは7.0~30.0重量%を含む。したがって、層Cの成形用組成物中の接着促進モノマーの量は、該層Cの重量を基準として、典型的には0.1~10.0重量%、好ましくは0.5~8.0重量%、より好ましくは1.0~5.0重量%である。
【0098】
さらに別の実施形態では、層Cは、粒状シリカと組み合わせて接着促進コポリマーを含む。したがって、この実施形態では、層Cは、
ポリアルキル(メタ)アクリレート0.0~78.0重量%、好ましくは0.0~65.0重量%、より好ましくは0.0~53.0重量%、さらにより好ましくは0.0~43.0重量%、特に好ましくは0.0~33.0重量%と、
1種または数種の耐衝撃性改良剤20.0~98.0重量%、好ましくは30.0~95.0重量%、より好ましくは40.0~93.0重量%、さらにより好ましくは50.0~93.0重量%、特に好ましくは60.0~93.0重量%と、
粒状シリカ1.0~20.0重量%、好ましくは2.0~17.0重量%、より好ましくは4.0~15.0重量%と、
接着促進コポリマーであって、該接着促進コポリマーの重量を基準として、
(i)メチルメタクリレート70.0~99.5重量%と、
(ii)接着促進モノマー0.5~15.0重量%と、
(iii)ビニル官能基以外の官能基を有しない他のビニル共重合可能なモノマー0.0~25.0重量%と
を含む接着促進コポリマー1.0~20.0重量%、好ましくは3.0~20.0重量%、より好ましくは7.0~15.0重量%、
1種または数種の紫外線吸収剤0.0~5.0重量%と、
1種または数種の紫外線安定剤0.0~5.0重量%と
を含む成形用組成物からなる。
【0099】
この実施形態では、層Cは、該層Cの重量を基準として、接着促進コポリマー1.0~20.0重量%、好ましくは3.0~20.0重量%、より好ましくは7.0~15.0重量%を含む。したがって、層Cの成形用組成物中の接着促進モノマーの量は、該層Cの重量を基準として、典型的には0.05~5.0重量%、好ましくは0.25~4.0重量%、より好ましくは0.5~2.5重量%である。
【0100】
層Cの成形用組成物中に1種または数種の耐衝撃性改良剤が存在することが、フォイルの良好な耐引裂性と優れた接着性とを保証するために必須である。したがって、層Cは、該層Cの重量を基準として、1種または数種の耐衝撃性改良剤20.0~98.0重量%、好ましくは30.0~95.0重量%、より好ましくは40.0~93.0重量%、さらにより好ましくは50.0~93.0重量%、特に好ましくは60.0~93.0重量%を含む。好ましくは、層Cの成形用組成物中の1種または数種の耐衝撃性改良剤のゴム分の量は、該層Cの重量を基準として、1種または数種の耐衝撃性改良剤の6.0~35.0重量%、好ましくは10.0~30.0重量%、より好ましくは12.0~25.0重量%、さらにより好ましくは15.0~20.0重量%、特に好ましくは60.0~93.0重量%である。
【0101】
フルオロポリマーをベースとする層C
本発明の更なる実施形態では、層Cは、該層Cの総重量を基準として、
フルオロポリマー40.0~100.0重量%と、
ポリアルキル(メタ)アクリレート0.0~30.0重量%と、
ガラスビーズ0.0~30.0重量%と
を含む成形用組成物をなり得る。
【0102】
層Cの組成は、多層フォイルの所望の最終外観に関する要件を満たすようにさらに調整することができる。
【0103】
光沢のない外観を有するフォイルが所望される場合、層Cは、該層Cの総重量を基準として、
フルオロポリマー40.0~97.0重量%、好ましくは85.0~97.0重量%と、
ポリアルキル(メタ)アクリレート0.0~30.0重量%と、
ガラスビーズ3.0~30.0重量%、好ましくは3.0~15.0重量%と
を含む成形用組成物からなり得る。
【0104】
光沢のある外観を有するフォイルを得るために、層Cは、該層Cの総重量を基準として、
フルオロポリマー40.0~100.0重量%、好ましくは70.0~100.0重量%、より好ましくは85.0~100.0重量%と、
ポリアルキル(メタ)アクリレート0.0~60.0重量%、好ましくは0.0~30.0重量%、より好ましくは0.0~15.0重量%と
を含む成形用組成物からなり得る。
【0105】
さらに、上記の両方の実施形態では、層Cがポリアルキル(メタ)アクリレートを実質的に含まないことが、フォイルの耐薬品性の点で有利である。
【0106】
層Cのこの組成は、フルオロポリマーをベースとする層Cが前述の基材の外面を形成し、それによって環境に面するように、本発明のフォイルが基材の保護に使用される場合、特に有利である。層Aは、層CおよびBの下に位置し、すなわち基材の表面と直接接触している。したがって、この実施形態では、層Aは接着促進層として機能する。
【0107】
層D
本発明の多層フォイルは、層Aに隣接するコーティング層Dをさらに備えていてもよい。層A中のシリカ粒子の接着促進効果に基づき、コーティング層Dは、液体コーティング組成物として有利に均一に適用し、好ましくは、その後、少なくとも部分的に硬化させることができる。コーティング層Dは、架橋ポリウレタン、架橋ポリウレタン(メタ)アクリレート、架橋ポリ(メタ)アクリレートまたはそれらの混合物から選択される少なくとも部分的に架橋された材料を含み得る。
【0108】
コーティング層Dは、公知の方法、例えばローラーによって、コーティングとして層A上に適用することができる。コーティング層Dは、好ましくは、コーティング組成物の閉じたフィルムが層Aに形成されるように適用され、適用量は、好ましくは20~150g/mの範囲、特に好ましくは50~100g/mの範囲である。
【0109】
以下、層Dの組成について詳細に説明する。
【0110】
層A~Dの各成分の説明
シリカ粒子
層のポリマーマトリックス中に分散された粒状シリカの含有量は、対応する層の総重量を基準として、通常2.0~40.0重量%、より好ましくは5.0~30.0重量%、特に好ましくは7.0~20.0重量%である。
【0111】
本発明の多層フォイル中に粒状シリカが存在することで、いくつかの目的が果たされる。フォイルの層Aが粗くて親水性の表面を有し、液体コーティング組成物で容易にコーティングできるのは、規定量のシリカ粒子の存在に基づいている。コーティングは、浸漬法、噴霧法、ドクターナイフによるコーティング、フローコーティング法、およびローラーまたはロールによる適用など、先行技術において知られている任意の方法によって、実質的に層の表面上に適用することができる。コーティングは、ロール・ツー・ロール加工を用いることによって、特に容易かつコスト効率の高い方法でフォイル上に適用することができる。ロール・ツー・ロール製造技術は当業者に周知であり、フォイルが2つの移動するロール間を連続的に移送されながら連続加工されることを含む。好ましい実施形態では、中間層によるフォイルのコーティングは、60℃~90℃の範囲の温度で、1m/分~70m/分の速度、より好ましくは10m/分~30m/分の速度で行われる。
【0112】
さらに、粒状シリカを含む層は、メラミン樹脂系HPLなどの材料に対して驚くほど高い接着性を有する。したがって、本発明の多層フォイルは、層が基材に面した状態で適用することによって、HPLなどの各種基材の積層に直接使用することができる。重要なことは、この実施形態では、酸無水物のコポリマーを含むコポリマーの存在がもはや必須ではないことである。
【0113】
多層フォイルの良好な取り扱い特性と層の良好な接着特性との間の最適なバランスを達成するために、層中の1種または数種の耐衝撃性改良剤nimの含有量(重量%)が次の関係式に従うことを保証することが有利であることが示された:
0.01im≦nsi≦0.4im
siは、層中の粒状シリカの含有量(重量%)である。
【0114】
層中の粒状シリカnsiの含有量が0.01imよりも低い場合、多層フォイルは、原則として、まだ所望の目的に適うであろう。しかしながら、層への各種液体コーティングの接着性、および一部基材への層の接着性がいくらか低下する可能性がある。
【0115】
一方、層中の粒状シリカnsiの含有量が0.4imよりも高い場合、層の脆性が増加する。その結果、本発明の多層フォイルは、取り扱いがより難しくなる。
【0116】
さらに、層の接着特性とその脆性との間のさらにより良好なバランスを達成するために、層中の1種または数種の耐衝撃性改良剤nimの含有量(重量%)が次の関係式に従うことが特に有利である:
0.03im≦nsi≦0.3im
式中、層中の1種または数種の耐衝撃性改良剤nimの含有量(重量%)が次の関係に従うことが特に有利である:
0.05im≦nsi≦0.2im
siは、層中の粒状シリカの含有量(重量%)である。
【0117】
本発明で使用するための粒状シリカの選択は特に限定されず、沈降シリカと同様に焼成シリカも有利に使用することができる。それにもかかわらず、BET法、規格ISO 9277によって測定した比表面積が200m/g超、好ましくは300m/g超、より好ましくは400m/g超、さらにより好ましくは500m/g超の粒状シリカを選択することが接着促進特性の点で特に有利であることが示された。なお、粒状シリカの比表面積は、好ましくは850m/g以下である。
【0118】
さらに、本発明で使用するためのシリカの高いジブチルフタレート(DBP)吸収量は、その接着促進特性の点で有益であることが見出された。本発明で使用するためのシリカは、好ましくは100~500g/100gのDBP吸収量を有する。より好ましいのは、150~450g/100g、さらにより好ましくは150~400g/100gの範囲のDBP吸収量である。DBP吸収量は、方法ASTM D6854-12aに従って決定することができる。
【0119】
好ましい実施形態では、シリカ粒子は、1.0μm~20.0μm、より好ましくは2.0μm~15.0μmの範囲の重量平均粒子径d50を有する。重量平均粒子径d50は、当業者に公知の方法、例えば、Beckman Coulter Inc.社のLS 13 320レーザー回折式粒子径分布測定装置などの市販の機器を使用した上で、規格DIN ISO 13320-1に準じたレーザー回折法で決定することができる。
【0120】
好ましくは、シリカ粒子は、ISO 3262-19に従って測定した45μm篩残分が0.1重量%以下、より好ましくは0.01重量%以下であること、すなわち45μmよりも大きい粒子径を有するアグロメレートが実質的に存在しないことを示す。これにより、シリカ粒子は、得られるフォイルが実質的に均一な外観を示し、優れた機械的特性を有するように、大きなフィラーアグロメレートが存在することなく、特に均質な方法でポリ(メタ)アクリレートフォイルのマトリックス中に分散されることができる。層中にシリカ粒子のより大きなアグロメレートの相当量が存在すると、そのようなアグロメレートがフォイル亀裂を発生させる傾向にあり、それによってフォイルのランダムな位置での初期引裂強度を低下させるので不利である。
【0121】
本発明で使用するための粒状シリカは、典型的には、ISO 3262-19に基づくSiO含有量が95重量%以上、より好ましくは96重量%以上、さらにより好ましくは97重量%以上である。さらに、親水性シリカの使用が、接着促進特性の点で特に有利であることが示された。「親水性」シリカとは、水中に撹拌して取り込まれたときに表面が親水性挙動を示すもの、すなわち表面が完全に水に濡れ、ひいては水に対する23±2℃での接触角が90°未満であるものを意味する。シリカが「親水性」であるかどうかを決定する簡単な方法は、シリカを水中に撹拌することである。例えば、200mlの純水が入ったビーカーにシリカ0.5gを加え、約23±2℃の温度で、その混合物を激しく撹拌(直径3cmのインペラーを用いて約100rpmで撹拌)する。シリカが水中に分散している、すなわちシリカが表面に浮いていない場合、シリカは「親水性」であると言うことができ、これは肉眼で評価することができる。
【0122】
親水性沈降シリカおよび親水性焼成シリカは、非変性シリカとしても知られている。親水性シリカは、それらの表面のシラノール基がアルコキシ基などの疎水性官能基で10%未満、典型的には5%未満置換されている。これに対して、疎水性シリカは、親水性シリカをハロゲン化シラン、アルコキシシランまたはシラザンで処理して疎水性にすることによって得られる。疎水性シリカは、親水性シリカと異なり、シラノール基密度が低く、水蒸気吸着量が少ない。
【0123】
本発明者らは、シラノール基密度が粒状シリカの接着促進特性に強い影響を与えることを見出した。本発明者らは、理論に縛られることを望まないが、粒状シリカの表面のシラノール基は、コーティング層Dの材料、特にイソシアネート型硬化剤と化学的に相互作用し得ると考えている。また、粒状シリカを含む層が接着促進層として使用される場合、粒状シリカの表面のシラノール基は、各種基材と相互作用を起こすことが見込まれる。典型的には、シラノール基密度は、0.5SiOH/nm以上、より好ましくは0.5~20.0SiOH/nm、さらにより好ましくは1.0~15.0SiOH/nm、さらにより好ましくは1.5~10.0SiOH/nmであることが望ましい。
【0124】
シラノール基濃度を決定するために、まず、水素化リチウムアルミニウムによってシリカ表面のシラノール基の数が決定される。しかしながら、一般に表面積の大きい親水性沈降シリカは、表面積の小さい親水性沈降シリカよりもシラノール基の絶対数が多いので、シラノール基濃度だけでは意味がない。その結果、シラノール基の数をシリカの表面積に関連付ける必要がある。この目的に適した表面積はBET表面積であり、これは水などの比較的小さな分子に対しても利用可能な表面を表すからである。
【0125】
シラノール基密度は、以下の手順に従って決定することができる:
まず、ISO 787-2に従って、シリカ試料を105℃で2時間乾燥させることによって水分量を測定する。その後、試料2~4g(1mgの精度)を、圧力測定手段が取り付けられた耐圧性ガラス装置(滴下漏斗付きガラスフラスコ)に移す。この装置において、試料を減圧下(1hPa未満)、120℃で1時間乾燥させた。室温で、脱気した水素化リチウムアルミニウム2重量%のジグライム溶液を滴下漏斗から約40ml滴加する。さらに、必要に応じて、圧力の上昇が観察されなくなるまで、更なる溶液を滴加する。水素化リチウムアルミニウムがシリカのシラノール基と反応する際に発生する水素の結果としての圧力の上昇は、圧力測定によって(測定前の装置の較正の結果として知られている体積を用いて)≦1hPaの精度で決定される。この圧力上昇から、一般的な気体方程式を用いた計算によって、シリカの含水量を考慮したシリカのシラノール基濃度に戻すことが可能である。溶媒の蒸気圧の影響は、それに応じて補正する必要がある。シラノール基濃度は、次のように計算される:
シラノール基密度=シラノール基濃度/BET比表面積。
【0126】
一般に、採用された粒状シリカのタップ密度は、対応する層の接着促進特性に影響を及ぼす。このため、特に有利な接着促進特性を有するフォイルは、DIN EN ISO 787-11に従って測定した、10g/l~800g/l、より好ましくは40g/l~500g/l、さらにより好ましくは80g/l~300g/lのタップ密度を有する粒状シリカで得られる。
【0127】
例えば、Ullmann’s Encyclopaedia of Industrial Chemistry, 5th edition, vol. A23, p. 642-647に記載されているような沈降シリカを使用することが特に好ましい。沈降シリカは、BET法で測定した比表面積が850m/gまでであってもよく、少なくとも1種のシリケート、好ましくはアルカリ金属シリケートおよび/またはアルカリ土類金属シリケートを、少なくとも1種の酸性化剤、好ましくは少なくとも1種の鉱酸と反応させて得られる。シリカゲル(Ullmann’s Encyclopaedia of Industrial Chemistry, 5th edition, vol. A23, p. 629-635を参照)とは対照的に、沈降シリカは均質な三次元SiOネットワークから構成されるのではなく、個々のアグリゲートおよびアグロメレートから構成される。沈降シリカの特別な特徴は、いわゆる内部表面積の割合が高いことであり、それがミクロポアおよびメソポアを有する非常に多孔質な構造に反映されている。
【0128】
本発明で使用するための沈降シリカとしては、特に、SIPERNAT(登録商標)160、SIPERNAT(登録商標)310、SIPERNAT(登録商標)320、SIPERNAT(登録商標)320DS、SIPERNAT(登録商標)325C、SIPERNAT(登録商標)350、SIPERNAT(登録商標)360、SIPERNAT(登録商標)383DS、SIPERNAT(登録商標)500LS、SIPERNAT(登録商標)570、SIPERNAT(登録商標)700、SIPERNAT(登録商標)22、SIPERNAT(登録商標)22S、SIPERNAT(登録商標)50LOS、SIPERNAT(登録商標)22、Tixosil(登録商標)38、Tixosil(登録商標)38A、Tixosil(登録商標)38D、Tixosil(登録商標)38D、Tixosil(登録商標)38X、Tixosil(登録商標)38AB、Tixosil(登録商標)39、Tixosil(登録商標)43、Tixosil(登録商標)331、Tixosil(登録商標)365、Zeoosil(登録商標)175BB、Zeosil(登録商標)39、Zeosil(登録商標)39AB、Zeosil(登録商標)45、Flo-Gard(商標)FF320、Flo-Gard(商標)FF330、Flo-Gard(商標)FF350、Flo-Gard(商標)FF370、Flo-Gard(商標)FF390、Flo-Gard(商標)SP、Flo-Gard(商標)SP-D、Hi-Sil(商標)213、Hi-Sil(商標)ABS、Hi-Sil(商標)HOA、Hi-Sil(商標)HOA-D、Hi-Sil(商標)SC50-D、Hi-Sil(商標)60-M、Hi-Sil(商標)72、Hi-Sil(商標)T-600、Hi-Sil(商標)T650、Hi-Sil(商標)700、Hubersil(登録商標)5170、Hubersorb(登録商標)250、Hubersorb(登録商標)250NF、Hubersorb(登録商標)5121、Hubersorb(登録商標)600、Hubersorb(登録商標)E、ZEOFREE(登録商標)110SD、ZEOFREE(登録商標)153、ZEOFREE(登録商標)153B、ZEOFREE(登録商標)182、ZEOFREE(登録商標)51、ZEOFREE(登録商標)5111、ZEOFREE(登録商標)5112、ZEOFREE(登録商標)5161、ZEOFREE(登録商標)5161A、ZEOFREE(登録商標)5161S、ZEOFREE(登録商標)5175B、ZEOFREE(登録商標)5181、ZEOFREE(登録商標)5183、ZEOFREE(登録商標)80、ZEOFREE(登録商標)684が挙げられる。
【0129】
沈降シリカは焼成シリカとは異なり、層AおよびCに使用することもでき、AEROSIL(登録商標)として知られている(Ullmann’s Encyclopaedia of Industrial Chemistry, 5th edition, vol. A23, p. 635-642を参照)。焼成シリカは、四塩化ケイ素から火炎加水分解によって得られる。調製方法が全く異なるため、焼成シリカは、いくつかある特性の中でも特に、沈降シリカと異なる表面特性を有する。これは、例えば、表面のシラノール基密度が低いことに表れている。さらに、焼成シリカの製造では、多価アニオンは一切生じない。
【0130】
Evonik Industries AG社のAEROSIL(登録商標)型の適切な焼成シリカは、例えばAEROSIL(登録商標)90、AEROSIL(登録商標)130、AEROSIL(登録商標)150、AEROSIL(登録商標)200、AEROSIL(登録商標)300、AEROSIL(登録商標)380、AEROSIL(登録商標)Ox50であるが、Cab-O-Sil(登録商標)M5、Cab-O-Sil(登録商標)EH5、Cab-O-Sil(登録商標)S17、HDK T40、HDK N20、HDK N20Eも使用することができる。
【0131】
ポリアルキル(メタ)アクリレート
ポリアルキル(メタ)アクリレートは、通常、アルキル(メタ)アクリレート、典型的にはメチルメタクリレート(a)と少なくとも1種の更なる(メタ)アクリレート(b)とを含む混合物のフリーラジカル重合によって得られる。これらの混合物は、一般に、モノマーの重量を基準として、メチルメタクリレート(a)少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも60重量%、特に好ましくは少なくとも80重量%、さらにより好ましくは少なくとも90重量%を含む。一般に使用されるメチルメタクリレート(a)の量は、モノマーの重量を基準として、50.0重量%~99.9重量%、好ましくは80.0重量%~99.0重量%、特に好ましくは90.0重量%~99.0重量%である。
【0132】
ポリアルキル(メタ)アクリレートを製造するためのこれらの混合物は、メチルメタクリレート(a)と共重合可能な他の(メタ)アクリレート(b)を含み得る。本明細書で使用される「(メタ)アクリレート」という用語は、メタクリレート、アクリレートおよびそれらの混合物を包含することを意味する。(メタ)アクリレートは、飽和アルコール、例えば、メチルアクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ペンタイル(メタ)アクリレートおよび2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートから誘導され得るか、または不飽和アルコール、例えば、オレイル(メタ)アクリレート、2-プロピニル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、ビニル(メタ)アクリレート、同様にアリール(メタ)アクリレート、例えばベンジル(メタ)アクリレートまたはフェニル(メタ)アクリレート、シクロアルキル(メタ)アクリレート、例えば3-ビニルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、例えば3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3,4-ジヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリコールジ(メタ)アクリレート、例えば1,4-ブタンジオール(メタ)アクリレート、エーテルアルコールの(メタ)アクリレート、例えば、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ビニルオキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸のアミドおよびニトリルなどから誘導され得る。
【0133】
一般に使用される(メタ)アクリル系コモノマー(b)の量は、モノマーの重量を基準として、0.1重量%~50.0重量%、好ましくは1.0重量%~20.0重量%、特に好ましくは1.0重量%~10.0重量%であり、ここでの化合物は、単独または混合物の形態で使用することができる。
【0134】
重合反応は、一般に、既知のフリーラジカル開始剤によって開始される。好ましい開始剤の中でも、特に、当業者に周知のアゾ開始剤、例えば、AIBNおよび1,1-アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、ならびにペルオキシ化合物、例えばメチルエチルケトンペルオキシド、アセチルアセトンペルオキシド、ジラウリルペルオキシド、2-エチル過ヘキサン酸tert-ブチル、ケトンペルオキシド、メチルイソブチルケトンペルオキシド、シクロヘキサノンペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシド、ペルオキシ安息香酸tert-ブチル、炭酸tert-ブチルイソプロピル、2,5-ビス(2-エチルヘキサノイルペルオキシ)-2,5-ジメチルヘキサン、2-エチルペルオキシヘキサン酸tert-ブチル、3,5,5-トリメチルペルオキシヘキサノエート、ジクミルペルオキシド、1,1-ビス(tert-ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、1,1-ビス(tert-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、クミルヒドロペルオキシド、tert-ブチルヒドロペルオキシド、ビス(4-tert-ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネート、またはそれらの混合物である。
【0135】
重合される組成物は、上記のメチルメタクリレート(a)および(メタ)アクリレート(b)だけでなく、メチルメタクリレートおよび上述の(メタ)アクリレートと共重合可能な他の不飽和モノマーも含み得る。これらの中でも、特に、1-アルケン、例えば1-ヘキセン、1-ヘプテン、分枝状アルケン、例えばビニルシクロヘキサン、3,3-ジメチル-1-プロペン、3メチル-1-ジイソブチレン、4-メチル-1-ペンテン、アクリロニトリル、ビニルエステル、例えば酢酸ビニル、スチレン、側鎖にアルキル置換基を有する置換スチレン、例えば、α-メチルスチレンおよびα-エチルスチレン、マレイン酸誘導体、例えばマレイン酸無水物、メチルマレイン酸無水物、マレイミド、メチルマレイミドならびにジエン、例えばジビニルベンゼンである。
【0136】
一般に使用されるこれらのコモノマー(c)の量は、モノマーの重量を基準として、0.0重量%~10.0重量%、好ましくは0.0重量%~5.0重量%、特に好ましくは0.0重量%~2.0重量%であり、ここでの化合物は、個別にまたは混合物の形態で使用することができる。
【0137】
さらに好ましいのは、重合可能な成分として、
(a)メチルメタクリレート50.0重量%~99.9重量%と、
(b)C1~C4アルコールのアクリル酸エステル0.1重量%~50.0重量%と、
(c)(a)および(b)のモノマーと共重合可能なモノマー0.0重量%~10.0重量%と
を有する組成物の重合によって得ることができるポリアルキル(メタ)アクリレートである。
【0138】
さらに別の実施形態では、メチルメタクリレート85.0重量%~99.5重量%とメチルアクリレート0.5重量%~15.0重量%とから構成されるポリアルキル(メタ)アクリレートが好ましく、ここでの量は、重合可能な成分100重量%を基準としている。特に有利なコポリマーは、メチルメタクリレート90.0重量%~99.5重量%とメチルアクリレート0.5重量%~10.0重量%との共重合によって得ることができるものであり、この量は、重合可能な成分100重量%を基準としている。例えば、ポリアルキル(メタ)アクリレートは、メチルメタクリレート91.0重量%とメチルアクリレート9.0重量%とを、メチルメタクリレート96.0重量%とメチルアクリレート4.0重量%とを、またはメチルメタクリレート99.0重量%とメチルアクリレート1.0重量%とを含み得る。前述のポリアルキル(メタ)アクリレートのビカット軟化点VSP(ISO 306:2013、方法B50)は、典型的には、少なくとも90℃、好ましくは95℃~112℃である。
【0139】
ポリアルキル(メタ)アクリレートの重量平均モル質量Mwは、一般に50,000g/mol~300,000g/molの範囲にある。特に有利な機械的特性は、50,000g/mol~180,000g/mol、好ましくは80,000g/mol~160,000g/molの範囲の平均モル質量Mwを有するポリアルキル(メタ)アクリレートを含むフォイルから得られ、それぞれの場合において、PMMA較正標準と溶離液としてのTHFに対するGPCで決定される。さらに、ポリアルキル(メタ)アクリレートは、好ましくは、20重量%未満、より好ましくは10重量%未満、さらにより好ましくは5重量%未満、さらにより一層好ましくは3重量%未満、さらにより一層好ましくは1.5重量%未満の、PMMA標準に対するSECによって測定した300~1500g/mの重量平均モル質量を有するオリゴマーPMMAを含む。
【0140】
特に好ましい実施形態では、ポリアルキル(メタ)アクリレートは、重合可能な成分が、重合可能な組成物の重量を基準として、
(a)メチルメタクリレート80.0重量%~99.0重量%と、
(b)C1~C4アルコールのアクリル酸エステル1.0重量%~20.0重量%と
を含む組成物の重合によって得られることができる。
【0141】
耐衝撃性改良剤
本発明でそれ自体使用するための耐衝撃性改良剤は周知であり、異なる化学組成と異なるポリマー構造とを有していてもよい。耐衝撃性改良剤は、架橋されていても熱可塑性であってもよい。さらに、耐衝撃性改良剤は、コア-シェルとして、またはコア-シェル-シェル粒子としての粒状形態であってもよい。典型的には、粒状耐衝撃性改良剤は、20nm~500nm、好ましくは50nm~450nm、より好ましくは100nm~400nm、最も好ましくは150nm~350nmの平均粒子径を有する。ここでいう「粒状耐衝撃性改良剤」とは、一般に、コア、コア-シェル、コア-シェル-シェルまたはコア-シェル-シェル-シェル構造を有する架橋型耐衝撃性改良剤を意味する。粒状耐衝撃性改良剤の平均粒子径は、当業者に公知の方法、例えば、規格DIN ISO 13321:1996に従った光子相関分光法で決定することができる。
【0142】
最も単純な場合、粒状耐衝撃性改良剤は、平均粒子径が10nm~150nm、好ましくは20nm~100nm、特に30nm~90nmの範囲である乳化重合によって得られた架橋粒子である。これらは一般に、ブチルアクリレート少なくとも20.0重量%、好ましくは20.0重量%~99.0重量%、特に好ましくは30.0重量%~98.0重量%と、架橋性モノマー、例えば多官能性(メタ)アクリレート、例えばアリルメタクリレート0.1重量%~2.0重量%、好ましくは0.5重量%~1.0重量%と、必要に応じて、他のモノマー、例えば、C1~C4-アルキルメタクリレート、例えばエチルアクリレートもしくはブチルメタクリレート、好ましくはメチルアクリレート、または他のビニル重合可能なモノマー、例えばスチレン0.0重量%~10.0重量%、好ましくは0.5重量%~5.0重量%とから構成される。
【0143】
さらに好ましい耐衝撃性改良剤は、コア-シェルまたはコア-シェル-シェル構造を有することができ、乳化重合によって得られるポリマー粒子である(例えば、欧州特許出願公開第0113924号明細書、欧州特許出願公開第0522351号明細書、欧州特許出願公開第0465049号明細書および欧州特許出願公開第0683028号明細書を参照)。本発明では、典型的には、これらのエマルジョンポリマーの適切な平均粒子径が、20nm~500nm、好ましくは50nm~450nm、より好ましくは150nm~400nm、最も好ましくは200nm~350nmの範囲にあることが必要である。
【0144】
コアと2つのシェルとを有する三層構造または三相構造は、次のように調製することができる。最も内側の(硬質)シェルは、例えば、メチルメタクリレートと、少ない割合のコモノマー、例えばエチルアクリレートと、ある割合の架橋剤、例えばアリルメタクリレートとで構成され得る。中間(軟質)シェルは、例えば、ブチルアクリレートと、必要に応じてスチレンとを含むコポリマーで構成され得、一方、最も外側の(硬質)シェルはマトリックスポリマーと同じであり、したがって、マトリックスへの相溶性および良好な結合をもたらす。
【0145】
二層または三層コア-シェル構造の耐衝撃性改良剤のコアまたはシェル中のポリブチルアクリレートの割合は、耐衝撃改良作用にとって決定的に重要であり、耐衝撃性改良剤の総重量を基準として、好ましくは20.0重量%~99.0重量%、特に好ましくは30.0重量%~98.0重量%、さらにより好ましくは40.0重量%~97.0重量%の範囲である。
【0146】
ポリブチルアクリレートまたはポリブタジエンのコポリマーを含む粒状耐衝撃性改良剤に加えて、シロキサンを含む耐衝撃性改良剤の使用も可能である。しかしながら、そのような改良剤の使用は、それらがポリアルキル(メタ)アクリレートフォイル中に存在すると、フォイルの印刷性に不利になる傾向があるため、あまり有利ではない。
【0147】
熱可塑性耐衝撃性改良剤は、粒状耐衝撃性改良剤とは異なる作用機序を有する。それらは一般にマトリックス材料と混合される。例えばブロックコポリマーを使用した場合に起こるように、ドメインが形成される場合、これらのドメインの好ましいサイズ(そのサイズは、例えば電子顕微鏡で決定することができる)は、コア-シェル粒子の好ましいサイズに対応する。
【0148】
熱可塑性耐衝撃性改良剤にはさまざまなクラスがある。その一例が、脂肪族熱可塑性ポリウレタン(TPU)、例えば、Covestro AG社から市販されているDesmopan(登録商標)製品である。例えば、TPUのDesmopan(登録商標)WDP 85784A、WDP 85092A、WDP 89085AおよびWDP 89051Dは、いずれも屈折率が1.490~1.500であり、耐衝撃性改良剤として特に適している。
【0149】
耐衝撃性改良剤として本発明のフォイルに準じて使用するための熱可塑性ポリマーの更なるクラスが、メタクリレート-アクリレートブロックコポリマー、特にアクリル系TPEであり、これはPMMA-ポリ-n-ブチルアクリレート-PMMAトリブロックコポリマーを含み、Kuraray社からKurarity(登録商標)という製品名で市販されている。ポリ-n-ブチルアクリレートブロックは、ポリマーマトリックス中に10nm~20nmのサイズのナノドメインを形成する。
【0150】
上記の熱可塑性耐衝撃性改良剤に加えて、PVDFを含む熱可塑性耐衝撃性改良剤の使用も可能である。しかしながら、層AおよびC中でそのような改良剤を使用すると、層の接着促進特性を損なう傾向にあるため、あまり有利ではない。
【0151】
フルオロポリマー
本発明のフォイルの使用目的に応じて、フルオロポリマーは、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニル(PVF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)、フッ化エチレン-プロピレン(FEP)またはそれらの混合物から選択され得る。
【0152】
フォイルに使用されるPVDFポリマーは、一般に、透明な半結晶の熱可塑性フルオロポリマーである。有利には、PVDFは高い結晶融点を有する。PVDFの結晶融点が少なくとも150℃、より好ましくは少なくとも160℃である場合、フォイルの耐熱性が特に高くなる。結晶融点の上限は、好ましくは、PVDFの結晶融点と等しい175℃程度である。さらに好ましくは、PVDFの重量平均分子量Mwは、GPCで決定した場合、50,000~300,000g/mol、より好ましくは80,000~250,000g/mol、さらにより好ましくは150,000~250,000g/molの範囲である。
【0153】
PVDFの基本単位はフッ化ビニリデンであり、これを特定の触媒によって高純度水中で圧力および温度の制御条件下で重合させることによりPVDFが得られる。フッ化ビニリデンは、例えば、フッ化水素とメチルクロロホルムとを出発物質とし、クロロジフルオロエタンを前駆体として用いることによって得ることができる。原則として、Arkema社製のKynar(登録商標)グレード、Dyneon社製のDyneon(登録商標)グレード、Solvay社製のSolef(登録商標)グレードなど、PVDFの任意の市販グレードが本発明での使用に適している。例えば、以下の市販品を採用することができる:Arkema社製のKynar(登録商標)720(フッ化ビニリデン含有量:100重量%、結晶融点:169℃)およびKynar(登録商標)710(フッ化ビニリデン含有量:100重量%、結晶融点:169℃);株式会社クレハ製のT850(フッ化ビニリデン含有量:100重量%、結晶融点:173℃);Solvay Solexis社製のSolef(登録商標)1006(フッ化ビニリデン含有量:100重量%,結晶融点:174℃)およびSolef(登録商標)1008(商品名)(フッ化ビニリデン含有量:100重量%,結晶融点:174℃)。
【0154】
PVDFは、モノマーの結合様式として、head to head結合、tail to tail結合、およびhead to tail結合の3つの結合様式があり、このうちhead to head結合とtail to tail結合とは「ヘテロ結合」と呼ばれる。層Aの耐薬品性は、PVDF中の「ヘテロ結合の割合」が10mol%以下である場合に特に高くなる。ヘテロ結合の割合を低くする観点から、PVDFは、好ましくは、懸濁重合によって製造される樹脂である。ヘテロ結合の割合は、欧州特許出願公開第2756950号明細書に規定されるPVDFの19F-NMRスペクトルのピークから決定することができる。典型的には、フルオロポリマーは架橋されておらず、ひいては熱可塑性加工に適している。PVDFは、層Aの透明性を劣化させない程度に、艶消し剤を含んでいてもよい。艶消し剤としては、有機系艶消し剤および無機艶消し剤を使用することができる。
【0155】
一実施形態では、フルオロポリマーは、ヘイズ値が5よりも小さい、主に非晶質の、または微晶質のPVDFである。ヘイズ値は、この目的のために、ASTM D1003に従って、23℃で厚さ30μmの純粋なフルオロポリマー(PVDF)フォイル上で測定される。ヘイズ値が適切に低く、特に良好な適性を有するPVDF型の例は、Solvay社のSolef(登録商標)9009、Kureha社のT850およびArkema社のKynar(登録商標)9000HDである。
【0156】
紫外線吸収剤および紫外線安定剤
光安定剤は周知であり、Hans Zweifel, Plastics Additives Handbook, Hanser Verlag, 5th Edition, 2001, p. 141 ffに例として詳細に記載されている。光安定剤は、紫外線吸収剤、紫外線安定剤およびフリーラジカル捕捉剤を含むと理解される。
【0157】
紫外線吸収剤は、例えば、置換ベンゾフェノン、サリチル酸エステル、ケイ皮酸エステル、オキサニリド、ベンゾオキサジノン、ヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール、トリアジンまたはベンジリデンマロネートの群に由来し得る。紫外線安定剤/フリーラジカル捕捉剤の最もよく知られた代表例は、立体障害アミン(ヒンダードアミン光安定剤、HALS)の群によって提供される。
【0158】
好ましくは、紫外線吸収剤と紫外線安定剤との組み合わせは、以下の成分で構成される:
- ベンゾトリアゾール型の紫外線吸収剤、
- トリアジン型の紫外線吸収剤、
- 紫外線安定剤(HALS化合物)。
【0159】
これらの成分は、個々の物質の形態で、または混合物の形態で使用することができる。
【0160】
ベンゾトリアゾール型紫外線吸収剤は、先行技術において知られており、典型的には2-(2’-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾールである。対応する化合物としては、特に2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(3’,5’-ジ-tert-ブチル-2’-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(5’-tert-ブチル-2’-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェニル)ベンゾトリアゾール、2-(3’,5’-ジ-tert-ブチル-2’-ヒドロキシフェニル)-5-クロロ-ベンゾトリアゾール、2-(3’-tert-ブチル-2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)-5-クロロ-ベンゾトリアゾール、2-(3’-sec-ブチル-5’-tert-ブチル-2’-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-4’-オクチルオキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(3’,5’-ジ-tert-アミル-2’-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(3’,5’-ビス-(α,α-ジメチルベンジル)-2’-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(3’-tert-ブチル-2’-ヒドロキシ-5’-(2-オクチルオキシカルボニルエチル)フェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(3’-tert-ブチル-5’-[2-(2-エチルヘキシルオキシ)-カルボニルエチル]-2’-ヒドロキシフェニル)-5-クロロ-ベンゾトリアゾール、2-(3’-tert-ブチル-2’-ヒドロキシ-5’-(2-メトキシカルボニルエチル)フェニル)-5-クロロ-ベンゾトリアゾール、2-(3’-tert-ブチル-2’-ヒドロキシ-5’-(2-メトキシカルボニルエチル)フェニル)ベンゾトリアゾール、2-(3’-tert-ブチル-2’-ヒドロキシ-5’-(2-オクチルキシカルボニルエチル)フェニル)ベンゾトリアゾール、2-(3’-tert-ブチル-5’-[2-(2-エチルヘキシルオキシ)カルボニルエチル]-2’-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(3’-ドデシル-2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(3’-tert-ブチル-2’-ヒドロキシ-5’-(2-イソオクチルオキシカルボニルエチル)フェニルベンゾトリアゾール、2,2’-メチレン-ビス[4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-6-ベンゾトリアゾール-2-イルフェノール];2-[3’-tert-ブチル-5’-(2-メトキシカルボニルエチル)-2’-ヒドロキシフェニル]-2H-ベンゾトリアゾールとポリエチレングリコール300とのエステル交換生成物;[R-CHCH-COO-CHCH-、式中、R=3’-tert-ブチル-4’-ヒドロキシ-5’-2H-ベンゾトリアゾール-2-イルフェニル、2-[2’-ヒドロキシ-3’-(α,α-ジメチルベンジル)-5’-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-フェニル]-ベンゾトリアゾール;2-[2’-ヒドロキシ-3’-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-5’-(α,α-ジメチルベンジル)-フェニル]ベンゾトリアゾールが挙げられる。使用され得るベンゾトリアゾール型の紫外線吸収剤の更なる例は、2-(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-[2-ヒドロキシ-3,5-ジ(α,α-ジメチルベンジル)フェニル]ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ブチル-5-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ブチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3-sec-ブチル-5-tert-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾールおよび2-(2-ヒドロキシ-5-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、フェノール、2,2’-メチレンビス[6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)]である。これらの化合物は、BASF SE社(Ludwigshafen, Germany)から、例えば、Tinuvin(登録商標)360およびTinuvin(登録商標)234として市販されている。
【0161】
ベンゾトリアゾール型紫外線吸収剤は、他の紫外線吸収剤、例えばビスマロネート型紫外線吸収剤と組み合わせて使用することもできる。そのような組み合わせの例は、Eutec Chemical Co. Ltd.社から入手可能なEusorb(登録商標)BLA 4200M(Tinuvin(登録商標)329とHostavin(登録商標)B-CAPとを含む市販品)である。
【0162】
層B中のベンゾトリアゾール型紫外線吸収剤の量は、PMMAをベースとする層Bの重量を基準として、0.1~5.0重量%、好ましくは0.2~4.0重量%、非常に特に好ましくは0.5~3.0重量%である。また、異なるベンゾトリアゾール型紫外線吸収剤の混合物を使用することも可能である。
【0163】
トリアジン型紫外線吸収剤は、典型的には2-(2-ヒドロキシフェニル)-1,3,5-トリアジン誘導体である。好ましくは使用される2-(2-ヒドロキシフェニル)-1,3,5-トリアジンとしては、特に2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-4-オクチルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-(2-ヒドロキシ-4-オクチルオキシフェニル)-4,6-ビス(2、4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-(2,4-ジヒドロキシフェニル)-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(2-ヒドロキシ-4-プロピルオキシフェニル)-6-(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-(2-ヒドロキシ-4-オクチルオキシフェニル)-4,6-ビス(4-メチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-(2-ヒドロキシ-4-ドデシルオキシフェニル)-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-(2-ヒドロキシ-4-トリデシルオキシフェニル)-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-[2-ヒドロキシ-4-(2-ヒドロキシ-3-ブチルオキシプロポキシ)フェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチル)-1,3,5-トリアジン、2-[2-ヒドロキシ-4-(2-ヒドロキシ-3-オクチルオキシプロピルオキシ)フェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチル)-1,3,5-トリアジン、2-[4-(ドデシルオキシ/トリデシルオキシ-2-ヒドロキシプロポキシ)-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-[2-ヒドロキシ-4-(2-ヒドロキシ-3-ドデシルオキシプロポキシ)フェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-(2-ヒドロキシ-4-ヘキシルオキシ)フェニル-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン、2-(2-ヒドロキシ-4-メトキシフェニル)-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス[2-ヒドロキシ-4-(3-ブトキシ-2-ヒドロキシプロポキシ)フェニル]-1,3,5-トリアジン、2-(2-ヒドロキシフェニル)-4-(4-メトキシフェニル)-6-フェニル-1,3,5-トリアジン、2-{2-ヒドロキシ-4-[3-(2-エチルヘキシル-1-オキシ)-2-ヒドロキシプロピルオキシ]フェニル}-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(4-[2-エチルヘキシルオキシ]-2-ヒドロキシフェニル)-6-(4-メトキシフェニル)-1,3,5-トリアジンが挙げられる。トリアジン型紫外線吸収剤、例えば2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-ヘキシルオキシフェノールも使用することができる。これらの化合物は、例えば、BASF SE社(Ludwigshafen, Germany)からTinuvin(登録商標)1600、Tinuvin(登録商標)1577またはTinuvin(登録商標)1545の商標で市販されている。
【0164】
トリアジン型紫外線吸収剤の量は、層の重量を基準として、0.1~5.0重量%、好ましくは0.2~3.0重量%、非常に特に好ましくは0.5~2.0重量%の範囲である。また、異なるトリアジン型紫外線吸収剤の混合物を使用することも可能である。
【0165】
立体障害アミン、HALS(ヒンダードアミン光安定剤)紫外線安定剤は、それ自体既知である。それらは、塗料およびプラスチック、特にポリオレフィンプラスチック中で老化現象を抑制するために使用することができる(Kunststoffe, 74 (1984) 10, pp. 620-623; Farbe + Lack, Volume 96, 9/1990, pp. 689 693)。HALS化合物中に存在するテトラメチルピペリジン基が安定化効果を担っている。このクラスの化合物は、ピペリジン窒素上に置換基を有しないか、またはそうでなければピペリジン窒素上にアルキル基またはアシル基による置換基を有し得る。立体障害アミンは紫外域で吸収されない。立体障害アミンは、形成されたフリーラジカルを捕捉することができるが、紫外線吸収剤はこれを行うことができない。安定化効果を有し、混合物の形態で使用することもできるHALS化合物の例は、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、8-アセチル-3-ドデシル-7,7,9,9-テトラメチル-1,3,8-トリアザスピロ(4,5)-デカン-2,5-ジオン、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)スクシネート、ポリ(N-β-ヒドロキシエチル-2,2,6,6-テトラメチル-4-ヒドロキシピペリジンスクシネート)またはビス(N-メチル-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケートである。
【0166】
層A、BおよびCのそれぞれにおけるHALS化合物の使用量は、層Bの重量を基準として、典型的には0.0~5.0重量%、好ましくは0.1~3.0重量%、非常に特に好ましくは0.2~2.0重量%である。異なるHALS化合物の混合物を使用することも可能である。
【0167】
使用され得る他の共安定剤は、上記のHALS化合物、二亜硫酸ナトリウムなどの二亜硫酸塩、ならびに立体障害フェノールおよび亜リン酸塩である。そのような共安定剤は、層の重量を基準として、0.1~5.0重量%の濃度で存在してもよい。
【0168】
立体障害フェノールは、本発明のフォイル中で使用するのに特に適している。好ましい立体障害フェノールとしては、特に6-tert-ブチル-3-メチルフェニル誘導体、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール、2,6-tert-ブチル-4-エチルフェノール、2,2’-メチレンビス(4-エチル-6-tert-ブチルフェノール)、4、4’-ブチリデンビス(6-tert-ブチル-m-クレゾール)、4,4’-チオビス(6-tert-ブチル-m-クレゾール)、4,4’-ジヒドロキシジフェニルシクロヘキサン、アルキル化ビスフェノール、スチレン化フェノール、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール、n-オクタデシル-3-(3’,5’-ジ-tert-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、4,4’-チオビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェニル)、4,4’-ブチリデンビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、ステアリル-β(3,5-ジ-4-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ブタン、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3-5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス-[メチレン-3(3’,5’-ジ-tert-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンが挙げられる。市販の立体障害フェノールとしては、SUMILIZER BHT BP-76、WXR、GA-80およびBP-101(住友化学株式会社)、IRGANOX(登録商標)1076、IRGANOX(登録商標)565、IRGANOX(登録商標)1035、IRGANOX(登録商標)1425WL、IRGANOX(登録商標)3114、IRGANOX(登録商標)1330およびIRGANOX(登録商標)1010(BASF SE社)、MARK AO-50、-80、-30、-20、-330および-60(ADEKA ARGUS社)、ならびにTOMINOX SS、TT(吉富薬品株式会社)、IONOX WSP(ICI社)、SANTONOX(登録商標)(MONSANTO社)、ANTAGE CRYSTAL(川口化学工業株式会社)、NOCLIZER NS-6(大内新興化学工業株式会社)、TOPANOL(登録商標)CA(ICI社)、CYANOX(登録商標)1790(ACC社)が挙げられる。
【0169】
典型的には、層A、BまたはCは、層Bの総重量を基準として、
第1の紫外線吸収剤としてベンゾトリアゾール型化合物0.5~4.0重量%と、
第2の紫外線吸収剤としてトリアジン型化合物0.5~3.0重量%と、
紫外線安定剤としてHALS型化合物0.2~2.0重量%と
を含み得る。
【0170】
多層フォイルがポリメチル(メタ)アクリレートを含む2つ以上の層を有する本発明の実施形態では、環境に面する層が少なくとも1種のトリアジン型紫外線吸収剤を含み、その下の層が少なくとも1種のベンゾトリアゾール型紫外線吸収剤を含むことが耐候性および紫外線保護の強化の点で有利であることが示された。さらに、本発明者らは、トリアジン型紫外線吸収剤を、得られる多層フォイルの長期安定性に影響を与えることなく、二酸化チタン、二酸化スズまたはガラスビーズもしくはガラス粉末の形態のガラスなどの無機紫外線吸収剤で置き換えることができることを見出した。
【0171】
例えば、層Aが基材に面し、それによって接着促進層として作用するように多層フォイルを使用することが意図されている場合、層Aの成形用組成物が、該成形用組成物の重量を基準として、
ベンゾトリアゾール型紫外線吸収剤0.1~5.0重量%と、
1種または数種の紫外線安定剤0.0~5.0重量%と
を含み、
層Bの成形用組成物が、該成形用組成物の重量を基準として、
トリアジン型紫外線吸収剤0.1~5.0重量%と、
1種または数種の紫外線安定剤0.0~5.0重量%と
を含むことが有利である。
【0172】
層Aが層Dでコーティングされている実施形態では、層Aの成形用組成物が、該成形用組成物の重量を基準として、
トリアジン型紫外線吸収剤0.1~5.0重量%と、
1種または数種の紫外線安定剤0.0~5.0重量%と
を含み、
層Bの成形用組成物が、該成形用組成物の重量を基準として、
ベンゾトリアゾール型紫外線吸収剤0.1~5.0重量%と、
1種または数種の紫外線安定剤0.0~5.0重量%と
を含むことが有利である。
【0173】
接着促進コポリマー
典型的には、接着促進コポリマーは、該接着促進コポリマーの重量を基準として、
(i)メチルメタクリレート70.0~99.5重量%と、
(ii)接着促進モノマー0.5~15.0重量%と、
(iii)ビニル官能基以外の官能基を有しない他のビニル共重合可能なモノマー0.0~25.0重量%と
を含む。
【0174】
ビニル共重合可能なモノマー(iii)は、ビニル芳香族モノマーの群、例えばα-ハロゲンスチレン、p-メチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン、ビニルナフタレンと同様に、好ましくはα-メチルスチレンおよびスチレンとから選択することができ、スチレンが特に好ましい。
【0175】
本明細書で使用される「接着促進モノマー」(ii)という用語は、重合可能な二重結合を有するとともに、アミノ基またはメチロール基と反応可能な反応性官能基を有するモノマーを指す。したがって、接着促進コポリマーは、メチロールメラミンおよびその誘導体を含む材料、具体的にはメラミン樹脂またはその前駆体に接触させた状態で加熱反応を行うことによって、HPLのメラミン樹脂と化学的に相互作用させることができる。反応性官能基の反応温度は、触媒の有無、pH値などに応じて変化するが、好ましくは50~200℃、より好ましくは110~170℃である。HPLは一般に110~170℃で製造されるので、反応温度が110~170℃である場合、接着促進コポリマーがHPLのメラミン樹脂と化学的に反応する。
【0176】
アミノ基またはメチロール基に対する反応性官能基の例としては、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基、アミド基、酸無水物基、イミド基、およびエポキシ基が挙げられるが、これらに限定されず、酸無水物基およびカルボキシル基が特に有用である。したがって、本発明での使用に特に適した接着促進モノマーとしては、不飽和カルボン酸無水物、不飽和ジカルボン酸無水物および不飽和ジカルボン酸イミドが挙げられるが、これらに限定されない。マレイン酸無水物、メタクリル酸無水物、マレイン酸無水物またはイタコン酸無水物、N-フェニルマレイミド、およびN-シクロヘキシルマレイミドの使用により、特に有利な接着促進特性がもたらされることが示された。GMA(グリシジルメタクリレート)、マレイン酸誘導体、例えばマレイン酸、マレイン酸無水物(MA)、メチルマレイン酸無水物、マレイミド、メチルマレイミド、マレアミド(MA)、フェニルマレイミドおよびシクロヘキシルマレイミド、フマル酸誘導体、無水メタクリル酸、無水アクリル酸からなる群から選択されるものを使用することが特に有利である。最も有望な結果は、マレイン酸無水物とメタクリル酸無水物とで観察された。
【0177】
好ましい実施形態では、接着促進コポリマーは、
(i)メチルメタクリレート50.0~95.0重量%、好ましくは60.0~90.0重量%、より好ましくは70.0~85.0重量%、さらにより好ましくは70~80重量%と、
(ii)マレイン酸無水物0.2~25.0重量%、好ましくは0.5~20.0重量%、より好ましくは1.0~15.0重量%、さらにより好ましくは5.0~12.0重量%と、
(iii)ビニル官能基以外の官能基を有しない他のビニル共重合可能なモノマー0.0~25.0重量%、好ましくは2.0~15.0重量%と
を含む。
【0178】
最も好ましい実施形態では、接着促進コポリマーは、MMA、スチレンおよびマレイン酸無水物のコポリマーである。
【0179】
ガラスビーズ
いくつかの実施形態では、フォイルに審美的に魅力的な光沢のない外観を与えるために、フルオロポリマーのマトリックス中にガラスビーズが使用され得る。フォイルの所望の光沢度に応じて、ポリマーマトリックス中に分散されたガラスビーズの含有量は、対応する層の総重量を基準として、通常3.0~30.0重量%、より好ましくは5.0~20.0重量%、特に好ましくは10.0~15.0重量%である。
【0180】
ガラスビーズは、少なくとも約4:1、より好ましくは少なくとも約2:1のアスペクト比を有していてもよい。理想的には、ガラスビーズは実質的に球状であり、すなわち約1:1のアスペクト比を有する。
【0181】
ガラスビーズは、有利には、狭いサイズ分布を有する。サイズ分布は、Malvern社の粒子径分析器、例えばMastersizer 2000などの従来の装置によって測定することができる。典型的には、ガラスビーズは、固体(すなわち、非中空)ガラスビーズであり、いかなる化学組成にも限定されず、滑らかな表面またはエッチングされた表面のいずれかを有することができる。表面のエッチングは、表面の所望のエッチング度合いを与えるのに十分な時間、ガラスビーズを硝酸と接触させることによって便宜的に行うことができる。ガラスビーズとフルオロポリマー系マトリックスとの間の最適な接着を達成するために、ガラスビーズはシロキサン層を有していてもよい。
【0182】
フォイルの所望の光学特性および所望の表面粗さに応じて、ガラスビーズのサイズ(平均直径、重量平均)は、典型的には2.0μm~30.0μm、好ましくは5.0μm~20.0μm、さらにより好ましくは8.0μm~15.0μmに選択される。典型的には、平均直径が2.0μm未満のガラスビーズが使用される場合、得られるフォイルの表面はもはや光沢なしには見えない。一方、30.0μm超の平均直径を有するガラスビーズを使用すると、表面粗さが比較的大きくなり、これは多くの用途で望ましくない。
【0183】
ガラスビーズのサイズ-いわゆるd50値(つまり、粒子の50体積パーセントが、規定の平均粒子径未満の粒子径を有する)として示される-は、レーザー回折測定の標準規格ISO 13320(2009)に準じて測定することができる。典型的には、ガラスビーズのサイズは、それぞれの場合において(酢酸ブチル中の粒子の分散屈折率:1,462)、毎分2000回転のミニ分散機MS1を備えたMalvern Instruments社製のMalvern Mastersizer 2000を用いたレーザー光散乱(室温23℃)によって決定され、フラウンホーファー回折によって評価される。この目的のためにさらに同様に適した機器が、Beckman Coulter社製LS 13 320レーザー回折粒子径分析器である。
【0184】
本発明者らは、本発明のフォイルも、前述のフォイルを用いて積層された基材も、採用されたガラスビーズの重量を基準として、少なくとも20重量%、より好ましくは少なくとも40重量%、さらにより好ましくは少なくとも60重量%、場合によっては少なくとも80重量%のガラスビーズが、それらが位置している層の平均厚さよりも高い直径を有している場合、特に均一な艶消し外観を示すことを見出した。理論に縛られることを望まないが、そのような実施形態では、積層方法中の上昇した温度で外部機械的圧力に抵抗するガラスビーズの能力が特に高いと考えられる。
【0185】
フォイルの平均厚さおよび個々の層の平均厚さは、有利には、JEOL JSM-IT300(JEOL GmbH社, Freising, Germanyから市販されている)などの走査電子顕微鏡を用いて得られた顕微鏡写真を用いて決定される。測定に適したサイズの試料片は、フォイルを液体窒素中で凍結させ、機械的に破壊することによって得ることができる。新たに得られた破断面を、走査電子顕微鏡を用いて撮影する。
【0186】
フォイルの良好な機械的特性を達成するために、ガラスビーズは、好ましくは非中空、すなわち固体である。20℃でのNa-D線(589nm)について測定したガラスビーズの屈折率は、フルオロポリマーをベースとする層B中の高分子材料マトリックスの屈折率と0.01~0.2単位で異なるように選択される。
【0187】
ガラスビーズの化学組成は特に限定されず、市販されている任意の種類のガラスを実質的に採用することができる。これらのガラスとしては、特に、溶融シリカガラス、ソーダライムシリカガラス、ホウケイ酸ナトリウムガラス、酸化鉛ガラス、アルミノシリケートガラスおよび酸化物ガラスが挙げられ、ソーダライムシリカガラスを使用が特に好ましい。
【0188】
ソーダライムシリカガラスの屈折率は、通常、1.51~1.52である。特に好ましい実施形態では、ガラスビーズは、以下の組成:
SiO 70.0~75.0重量%、
NaO 12.0~15.0重量%、
O 0.0~1.5重量%、
CaO 7.0~12.0重量%、
MgO 0.0~5.0重量%、
Al 0.1~2.5重量%、
Fe 0.0~0.5重量%
を有する。
【0189】
適切なガラスビーズの例は、Potters Industries LLC.社から入手可能なSpheriglass(登録商標)製品、例えばSpheriglass(登録商標)7025およびSpheriglass(登録商標)5000、またはSovitec Mondial S.A.社から入手可能なOmicron(登録商標)ガラスビーズOmicron(登録商標)NP3およびOmicron(登録商標)NP5である。
【0190】
いくつかの実施形態では、フルオロポリマーをベースとする層のポリマーマトリックスは、PVDFなどの1種または数種のフルオロポリマーから実質的に構成される。これらの実施形態では、フルオロポリマーの含有量は、フルオロポリマーをベースとする層の総重量を基準として、典型的には85.0~97.0重量%、より好ましくは88.0~95.0重量%、特に好ましくは90.0重量%~92.0重量%である。したがって、フルオロポリマーをベースとする層は、フルオロポリマーをベースとする層Bの総重量を基準として、典型的には4.0~15.0重量%、好ましくは5.0~12.0重量%、特に好ましくは8.0~10.0重量%のガラスビーズを含む。
【0191】
コーティング層D
本発明の一実施形態では、フォイルは、層Aに隣接するコーティング層Dをさらに含む。層A中のシリカ粒子の接着促進効果に基づき、コーティング層Dは、液体コーティング組成物として有利に均一に適用し、好ましくは、その後、少なくとも部分的に硬化させることができる。さらに、コーティング層Dは、クロスハッチ試験において、3以下、好ましくは2以下、より好ましくは1以下の値によって特徴付けられる、層Aに対する優れた接着性を示す。
【0192】
コーティング層Dは、架橋ポリウレタン、架橋ポリウレタン(メタ)アクリレート、架橋ポリ(メタ)アクリレートまたはそれらの混合物から選択される、少なくとも部分的に架橋された材料を含んでいてもよい。
【0193】
架橋ポリウレタン
耐擦傷性コーティングとしての架橋ポリウレタンの使用は、先行技術として知られており、例えば、米国特許出願公開第2009/0085235号明細書に記載されている。これらの材料は、高度に耐候性のナノ-またはマイクロ構造化表面を形成するのに非常に適している。さらに、架橋ポリウレタンをベースとする層Dは、上記のとおり層A上に良好な接着性を示す。
【0194】
架橋ポリウレタン(メタ)アクリレート
更なる実施形態では、コーティング層Dは、少なくとも部分的に架橋されたポリウレタン(メタ)アクリレートを含んでいてもよい。架橋ポリウレタン(メタ)アクリレートは、先行技術において知られており、例えば、国際公開第2017/109118号および国際公開第97/49746号に記載されている。層Dを形成するコーティング組成物は、樹脂成分と、硬化剤成分と、任意選択的にラジカル開始剤などの更なる添加剤とを含む。樹脂成分と硬化剤成分とは、化学量論的量で存在する。
【0195】
これらの材料は、液体コーティング組成物の形態で層A上に適用され、明確に定義された昇温状態で乾燥させることができる。この条件下で、樹脂成分中の遊離ヒドロキシル基が硬化剤成分のイソシアネート基と反応し、ウレタン(メタ)アクリレートプレポリマーコーティングを形成する。重要なことは、この段階で樹脂成分の(メタ)アクリル系二重結合の反応性が保持されることである。これにより、取り扱いが容易で、ロール状で室温で十分な期間保管することができる、フレキシブルで粘着性のないコーティングされた多層フォイルが提供される。重要なことは、ロールの望ましくないブロッキングが起こらず、コーティングされた多層フォイルは、基材上に適用するために容易に巻き戻すことができることである。
【0196】
第2の反応ステップでは、典型的には、コーティングされたフォイルを基材上に適用する際に、層Dの樹脂成分中の(メタ)アクリル系二重結合の重合反応が起こり、これは、高温および高圧によって引き起こされる。この重合反応は、ラジカル開始剤の存在下で促進される。
【0197】
したがって、架橋ポリウレタン(メタ)アクリレートを含むコーティング剤は、通常、2つの別々のステップで硬化する。しかしながら、用途によっては、3回またはそれを上回る別々のステップで硬化し得る架橋ポリウレタン(メタ)アクリレートを使用することがより有利な場合がある。
【0198】
典型的には、樹脂成分は、遊離反応性(メタ)アクリル系二重結合と、1分子あたり少なくとも2個の反応性ヒドロキシル基とを含む。最も好ましくは、樹脂成分は、以下の一般式(I):
【化1】
(式中、Rは、アルキレンまたは脂肪族ポリエーテルまたはポリエステル基であり、RおよびRは、脂肪族基または脂環式基であり、i=2~6、好ましくは3~5である)を有する。
【0199】
一般式(I)の樹脂成分は、好ましくは、一般式(II):
【化2】
(式中、i=2~6、好ましくは3~5であり、Rは、アルキルまたは脂肪族ポリエーテルまたはポリエステル基であって、(メタ)アクリレートモノマー中の反応性ヒドロキシル基を基準として、2倍の化学量論的過剰量でジイソシアネートと反応することでウレタン基を形成する)に従う少なくとも1個の遊離ヒドロキシル基を有する多官能性(メタ)アクリレートモノマーから形成される。遊離イソシアネート基は、その後、3個の、好ましくは多官能性のアルコールと反応して、遊離反応性(メタ)アクリル系二重結合と1分子あたり少なくとも2個の反応性ヒドロキシル基との両方を含む第2のウレタン基を形成する。
【0200】
硬化剤成分は、一般式(III):
-[N=C=] (III)
(式中、jは、少なくとも2、好ましくは3であり、Rは、脂肪族残基または脂環式残基である)の三官能性イソシアネートであり、これは、通常、室温でその反応性がブロックされる。
【0201】
コーティング組成物は、さらに、室温で安定なラジカル形成剤とともに、(メタ)アクリル系二重結合の早期架橋反応を防止するための阻害剤を含む。組成物中の更なる任意の添加剤は、通常、充填剤、着色顔料、難燃剤、紫外線吸収剤、フリーラジカル捕捉剤である。
【0202】
第1の方法ステップでは、コーティング組成物を多層フォイルの層A上に適用し、好ましくは100℃未満の温度で部分的に硬化させる。この段階で、樹脂成分中の遊離ヒドロキシル基が、硬化剤成分のイソシアネート基と反応して、反応性(メタ)アクリル系二重結合を含むウレタンアクリレートプレポリマーコーティングが形成される。これらの(メタ)アクリル系二重結合の早期反応は、適切な阻害剤を添加することによってさらに有利に防止することができる。この方法ステップ中の反応温度の慎重な制御に基づいて、重付加反応は樹脂成分の遊離ヒドロキシル基と硬化剤成分の官能基との間でのみ起こるが、樹脂成分の(メタ)アクリル系二重結合の反応性は影響を受けないままである。これによって、部分的にコーティングされた層Dを含むフレキシブルな多層フォイルが製造される。このフォイルは、取り扱いが容易であり、望ましくないカールを生じることなく、十分に長い期間保管することができる。
【0203】
別の方法ステップでは、層Dに反応性(メタ)アクリル系二重結合を含むウレタンアクリレートプレポリマーコーティングを含む多層フォイルは、例えば、木材、プラスチック、または金属、およびプラスチックまたは金属フィルムであり得る基材上に積層される。好ましくは、基材は高圧積層板(HPL)である。プレススタックは、通常、合成樹脂を含浸させた複数の基材材料でできており、これは部分的に硬化された層Dを有する少なくとも1つの多層フォイル上にその最外層として有する。このプレススタックは、層D中の反応性(メタ)アクリル系二重結合の追加の架橋反応が起こって、ウレタンアクリレートポリマーが形成されるように、高圧および乾燥温度を上回る温度、好ましくは140℃超でプレスされる。したがって、硬化した層Dは、耐擦傷性のポリウレタン(メタ)アクリレートベースのコーティングを形成する。
【0204】
更なる実施形態では、コーティング組成物は、成分A~Cと、任意選択的にDとの混合物を含んでいてもよく、その場合、
- 成分Aは、(メタ)アクリル系二重結合を有する基を少なくとも2個有しかつ1分子あたりヒドロキシ基を有しない重合可能な(メタ)アクリレート化合物であり、
- 成分Bは、(メタ)アクリル系二重結合を有する基を1個以上有するとともに1分子あたり少なくとも2個のヒドロキシ基を有する重合可能な(メタ)アクリレート化合物であり、
- 成分Cは、1分子あたり少なくとも2個のヒドロキシ基を有しかつイソシアネート基を有しないポリウレタンプレポリマーであり、
- 成分Dは、存在する場合、1分子あたり少なくとも2個のヒドロキシ基を有するアミノプラスト構造を有する樹脂である。
【0205】
成分Aは、典型的には、式(A1)および(A2)から選択される化合物、より好ましくは、式(A1)および(A2)の化合物の混合物を含む。特に、成分Aは、式(A1)および(A2)の化合物から構成されることが好ましい:
【化3】
(式中、RおよびRは、それぞれ独立して、脂肪族炭化水素基、脂肪族ポリエーテル基、および脂肪族ポリエステル基から選択され、Rは、脂肪族基また脂環式炭化水素基であり、n=2~9、好ましくは2~4であり、m=2~9、好ましくは2~4である)。m個のアクリル酸エステル基HC=CH-C(O)-O-は、それぞれ基Rにエステル基を介して結合しており、基Rにn個のアクリル酸エステル基が結合している。
【0206】
好ましくは、RおよびRは、独立して、線状もしくは分枝状、好ましくは分枝状のアルキル基から選択され、特に好ましくは、3~10個、より好ましくは3~6個のC原子を有するアルキル基から選択される。Rは、好ましくは、開鎖(すなわち、線状もしくは分枝状)もしくは環状であるか、または開鎖もしくは分枝状の単位を組み合わせることができるアルキル基、特に好ましくは、3~20個、より好ましくは6~12個のC原子を有するアルキル基である。式(A1)中のアルキル基として好ましい形態のRは、例えば、隣接する基への結合のためにm+1個の価数を提供する。これは、コーティングシステムの他の成分にも同様に適用される。
【0207】
【化4】
(式中、Rは、脂肪族炭化水素基であり、o=2~6、好ましくは3~5である。好ましくは、Rは、線状もしくは分枝状、好ましくは分枝状のアルキル基であり、特に好ましくは、3~10個、より好ましくは3~6個のC原子を有するアルキル基である)。
【0208】
成分Bは、好ましくは、式(B1)の化合物を含み、特に好ましくは、式(B1)の化合物から構成される:
【化5】
(式中、Rは脂肪族炭化水素基、脂肪族ポリエーテル基または脂肪族ポリエステル基から選択され、RおよびR10は、独立して、脂肪族基また脂環式炭化水素基であり、p=2~9、好ましくは2~4である。p個のアクリル酸エステル基HC=CH-C(O)-O-は、それぞれ基Rにエステル基を介して結合しており、基R10に2個のヒドロキシ基が結合している。
【0209】
は、好ましくは、線状もしくは分枝状、好ましくは分枝状のアルキル基であり、特に好ましくは、3~10個、より好ましくは3~6個のC原子を有するアルキル基である。Rは、好ましくは、開鎖(すなわち、線状もしくは分枝状)もしくは環状であるか、または開鎖もしくは分枝状の単位を組み合わせることができるアルキル基、特に好ましくは、3~20個、より好ましくは6~12個のC原子を有するアルキル基である。R10は、好ましくは、開鎖(すなわち、線状もしくは分枝状)もしくは環状であるか、または開鎖もしくは分枝状の単位を組み合わせることができるアルキル基であり、特に好ましくは、3~20個、より好ましくは3~10個のC原子を有する線状もしくは分枝状のアルキル基である。
【0210】
成分Cは、1分子あたり少なくとも2個のヒドロキシ基を有しかつイソシアネート基を有しないポリウレタンプレポリマーであり、ヒドロキシ基は一般にアルコール性ヒドロキシ基である。ポリウレタンプレポリマーは、線状であっても分枝状であってもよい。好ましくは、2~4個、好ましくは2個のイソシアネート基を有するポリイソシアネートと、2~4個、好ましくは2または3個のアルコール性ヒドロキシ基を有するポリアルコールとから形成される。ポリイソシアネートおよび多価アルコールは、好ましくは脂肪族化合物である。ポリウレタンプレポリマー中の、ポリイソシアネートから形成されるサブユニットの数、およびポリアルコールから形成されるサブユニットの数は、好ましくはそれぞれ2~20であり、より好ましくは2~9である。ポリウレタンプレポリマーの1分子あたりのヒドロキシ基の数は、好ましくは2~9個であり、より好ましくは2~5個である。
【0211】
成分Cとして好ましいのは、少なくとも2個のヒドロキシ基に加えて、他の反応性基を一切含まないポリウレタンプレポリマーである。「反応性基」という用語は、コーティングシステムの成分間の可能な反応を指し、すなわち、成分Cのこれらの特に好ましいポリウレタンプレポリマーにおいて、少なくとも2個のヒドロキシ基は、コーティングシステムの他の成分と反応して共有結合を形成することができる唯一の基である。
【0212】
成分Cは、好ましくは、式(C1)および(C2)から選択されるポリウレタンプレポリマーを含み、すなわち、成分Cは、式(C1)の化合物および/または式(C2)の化合物を含む。特に、成分Cが、式(C1)および(C2)の化合物から選択されるポリウレタンプレポリマーから構成されることが好ましい。また、(C1)および(C2)の化合物の組み合わせも好ましい。
【0213】
【化6】
(式中、R11は、出現するごとに独立して、1個以上のヒドロキシル基で置換されていてもよい脂肪族炭化水素基、脂肪族ポリエーテル基、および脂肪族ポリエステル基から選択され、R12は、出現するごとに独立して、脂肪族基また脂環式炭化水素基から選択され、qは2~9である)。
【0214】
すべての基R11が同じであり、すべての基R12が同じであることが好ましい。
【0215】
好ましくは、R11は、線状もしくは分枝状、好ましくは分枝状のアルキル基であり、特に好ましくは、3~10個、より好ましくは3~6個のC原子を有するアルキル基である。また、アルキル基R11は、1個以上のヒドロキシ基で置換されていてもよい。好ましくは、そのようなヒドロキシ置換基が0、1または2個存在する。R12は、好ましくは、開鎖(すなわち、線状もしくは分枝状)もしくは環状であるか、または開鎖もしくは分枝状の単位を組み合わせることができるアルキル基であり、特に好ましくは、3~20個、より好ましくは6~12個のC原子を有する線状もしくは分枝状のアルキル基である。
【0216】
【化7】
(式中、R11およびR11aは、出現するごとに独立して、1個以上のOH基で置換されていてもよい脂肪族炭化水素基、脂肪族ポリエーテル基、および脂肪族ポリエステル基から選択され、R12は、出現するごとに独立して、脂肪族基また脂環式炭化水素基から選択され、qは2~9である)。
【0217】
式(C2)については、すべての基R11およびR11aが同じであり、すべての基R12が同じであることが好ましい。好ましくは、R11およびR11aは、それぞれ線状もしくは分枝状、好ましくは分枝状のアルキル基であり、特に好ましくは、3~10個、より好ましくは3~6個のC原子を有するアルキル基である。また、アルキル基R11およびR11aは、1個以上のヒドロキシ基で置換されていてもよい。好ましくは、R11は、1または2個のヒドロキシ置換基を有し、R11aは、0または1個のヒドロキシ置換基を有する。R12は、開鎖(すなわち、線状もしくは分枝状)もしくは環状であるか、または開鎖もしくは分枝状の単位を組み合わせることができるアルキル基であり、特に好ましくは、3~20個、より好ましくは6~12個のC原子を有する線状もしくは分枝状のアルキル基である。
【0218】
任意選択的な成分Dは、1分子あたり少なくとも2個のヒドロキシ基を有するアミノプラスト構造を有する樹脂であり、ヒドロキシ基は一般にアルコール性ヒドロキシ基である。また、成分Dの樹脂の基本構造は、ヒドロキシ基の反応によって形成される基、例えばエステル基またはウレタン基を持つことができる。好ましくは1分子あたり2~30個、より好ましくは10~30個のヒドロキシ基が存在する。アミノプラスト構造を有する樹脂は、好ましくは粉体の形態の硬化樹脂である。任意成分Dの樹脂の平均分子量(Mn)は、好ましくは1,000g/mol~1,000,000g/molである。アミノプラスト構造を有する樹脂は、ホルムアルデヒドと尿素との重合(特に重縮合)によって得ることができる尿素-ホルムアルデヒド樹脂構造を有する樹脂が好ましく、尿素-ホルムアルデヒド樹脂構造を有する粉体状の硬化樹脂がより好ましい。
【0219】
層Dを形成するためのコーティング組成物は、成分A、B、Cおよび任意選択的にDの混合物として、任意選択的に溶媒中に存在する。溶媒の例としては、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸2-ブトキシエチルなどのエステル、脂肪族、脂環式および芳香族炭化水素、アルコール、グリコール、グリコールエーテルまたはケトンが挙げられる。溶媒中の成分A~Cおよび存在する場合にはDの濃度は、例えば、溶液の総重量を基準として65重量%~95重量%であり得る。
【0220】
コーティング組成物の樹脂成分の調製のために、成分A~Cおよび存在する場合にはDを提供し、混合することができる。代わりに、特に成分A(例えば、式(A1)の化合物など)、BおよびCの提供のために、ポリオール、ポリイソシアネート、および/またはポリアクリレートなどの混合機能性化合物などの出発生成物を、成分A、BおよびCが樹脂成分の合成中に調製される1個以上のヒドロキシル基と混合することができる。例えば、樹脂成分は、30~130℃の温度での単段または多段合成によって調製することができる。好ましくは、樹脂成分の合成中に、成分Dとしてのアミノプラスト構造を有する樹脂は、合成の開始時から合成混合物中に存在する。
【0221】
樹脂成分の調製中、混合物は、アミノプラスト構造Dを有する樹脂の添加後、好ましくは30~130℃の温度まで熱的に加熱される。
【0222】
樹脂成分において、成分Aは、好ましくは、成分A~C、任意選択的にA~Dの総重量を100重量%として、40.0~80.0重量%の量で存在し、成分Bは、19.0~55.0重量%の量で存在し、成分Cは、0.5~5.0重量%の量で存在し、任意成分Dは、0.5~7.0重量%の量で存在する。より好ましい実施形態では、樹脂成分は、式(A1)の成分を15.0~45.0重量%の量で含み、式(A2)の成分を15.0~45.0重量%の量で含み(ここで、(A1)および(A2)の合計量は40.0~80.0重量%である)、式(B1)の成分を19.0~55.0重量%の量で含み、成分(C1)および(C2)を0.5~5.0重量%の合計量で含み、任意成分Dを0.5~7.0重量%の量で含む。ここでも、成分の合計は100重量%である。
【0223】
さらにより好ましい実施形態では、樹脂成分は、式(A1)の成分を20.0~40.0重量%の量で含み、式(A2)の成分を20.0~40.0重量%の量で含み(ここで、(A1)および(A2)の合計量は40.0~80.0重量%である)、式(B1)の成分を25.0~47.0重量%の量で含み、成分(C1)および(C2)を0.6~3.0重量%の合計量で含み、成分Dを1.0~5.0重量%の量で含む。ここでも、成分の合計は100重量%である。
【0224】
特に好ましい実施形態では、樹脂成分は、式(A1)の成分を25.0~35.0重量%の量で含み、式(A2)の成分を25.0~35.0重量%の量で含み(ここで、(A1)および(A2)の合計量は50.0~70.0重量%である)、式(B1)の成分を30.0~42.0重量%の量で含み、成分(C1)および(C2)を0.8~2.0重量%の合計量で含み、成分Dを2.0~4.5重量%の量で含む。ここでも、成分の合計は100重量%である。
【0225】
架橋ポリ(メタ)アクリレート
架橋ポリ(メタ)アクリレートも層Dを形成するのに適している。対応するコーティング組成物は従来技術で知られており、特に国際公開第2008/155149号に記載されている。前述のコーティング組成物は、通常、少なくとも2つの二重結合を有する少なくとも40重量%の(メタ)アクリレートと、2種の異なる重合開始剤、好ましくは少なくとも1種の光開始剤と少なくとも1種の熱開始剤とを含む。異なる温度で作用する2種の異なる熱開始剤の使用も可能である。(メタ)アクリレートは、好ましくは、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレートおよびペンタエリスリチルテトラアクリレートまたはそれらの混合物から選択され得る。
【0226】
コーティング組成物は、潤滑剤、着色剤、金属顔料、紫外線安定剤、充填剤またはナノ材料をさらに含んでいてもよい。
【0227】
ポリウレタン(メタ)アクリレートを含む組成物と同様に、架橋ポリ(メタ)アクリレートに基づくコーティングもまた、いくつかの異なる方法ステップで硬化させることができる。したがって、コーティングを層A上に適用した後、予備硬化が行われる。得られる材料は比較的フレキシブルであり、これは多層フォイルの取り扱いの点で有利である。コーティングされた多層フォイルが基材上に適用された後、コーティングの最終硬化が第2の方法ステップで行われる。得られる層Dは、高い架橋度に基づいて、高い耐擦傷性を有するものとなる。
【0228】
更なる添加剤
本発明のいずれかの層を形成する成形用組成物は、組成物の特性が以下の添加剤によって悪影響を受けないという条件で、着色剤、分散剤、流動性向上剤、潤滑剤、充填剤、熱安定剤などから選択される更なる添加剤をさらに任意選択的に含んでいてもよい。これらの化合物は当業者に周知であり、ここで詳細に説明する必要はない。
【0229】
フォイルの特性
想定される目的に応じて、本発明のフォイルは、1.0μm~300.0μm、より好ましくは1.0μm~200.0μm、さらにより好ましくは5.0μm~100.0μmの間の総厚を有することができる。
【0230】
本発明のフォイルおよびその層の厚さは、規格ISO 4593-1993に従った機械的走査で決定することができる。さらに、本発明のフォイルおよびその個々の層の厚さは、走査型電子顕微鏡を使用して決定することができる。この目的のために、フォイル試料は、液体窒素中で凍結し、機械的に破砕することができ、新たに得られた表面を分析する。
【0231】
層Aは、通常、1.0μm~30.0μm、好ましくは5.0μm~20.0μmの厚さを有する。
【0232】
層Bは、通常、10.0μm~200.0μm、好ましくは15.0μm~150.0μmの厚さを有する。
【0233】
接着促進層Cは、存在する場合、通常、1.0μm~30.0μm、好ましくは2.0μmから20.0μmの厚さを有する。
【0234】
層Aにおける突出したシリカ粒子の存在に基づき、多層フォイルの層Aの外面は、通常、少なくとも0.7μm、好ましくは1.0~50.0μm、より好ましくは2.0~40.0μm、さらにより好ましくは5.0~30.0μmのDIN 4768に準ずる粗さ値Rzを有する。粗さの測定は、Rank Taylor Hobson GmbH社製のForm Talysurf 50などの市販の機器を用いて行うことができる。
【0235】
層Aの外面のDIN 67530(01/1982)に準ずる光沢(R60°)は、通常、最大でも40、好ましくは最大でも30、特に15~30である。光沢の測定は、RL実験室用反射率計、例えば、Fa. Dr. Hach-Lange社の反射率計を用いて行うことができる。
【0236】
フォイルの製造方法
対象とする用途に応じて、本発明のフォイルは、任意の所望の厚さで製造することができる。ここでの驚くべき要因は、例えば積層方法中の上昇した温度での機械的圧力の下でさえ、均一な程度の艶消し性(matiness)を保持する能力、並外れた耐候性および機械的安定性、ならびに基材に提供される非常に高い耐風化性および機械的保護である。しかしながら、本発明の目的のために、10.0~200.0μmの範囲、好ましくは40.0~120.0μmの範囲、特に好ましくは50.0~90.0μmの範囲の厚さによって特徴付けられる比較的薄いプラスチック成形体、すなわちフィルムまたはフォイルが好ましい。
【0237】
層A、BおよびCの個々の成分の混合物は、粉状、顆粒状、または好ましくはペレット化された形態である成分の乾燥ブレンドを介して調製することができる。そのような混合物はまた、溶融状態の個々の成分の溶融および混合を介して、または個々の成分の乾燥プレミックスの溶融を介して加工されて、すぐに使用できる成形用組成物を与えることができる。例えば、これは一軸または二軸押出機で行うことができる。得られる押出物は、次いでペレット化することができる。従来の添加剤、助剤および/または充填剤は、直接混和してもよいし、必要に応じて最終使用者が後から添加してもよい。
【0238】
本発明の多層フォイルは、次いでそれ自体既知の方法によって製造することができ、例としては、共押出または積層、または押出積層によるものである。
【0239】
1つの特定の製造変形例は、本発明のフォイルが、フォイル成形方法、好ましくはチルロール方法で成形されるステップを含む方法に関するものである。
【0240】
多層フォイルの基材上への適用
本発明によるフォイルは、幅広い用途に使用することができる。フォイルの好ましい用途の1つは、プラスチック成形品または金属物品のコーティングである。特に、フォイルによって保護される基材は、メラミン樹脂含浸紙、任意選択的に繊維強化された高分子材料、好ましくはポリ塩化ビニル(PVC)、ポリカーボネート(PC)もしくはポリプロピレン(PP)、または金属、好ましくは鋼もしくはアルミニウムであってもよく、共押出フォイルが基材に直接適用される。
【0241】
この場合、PVCを含むか、またはPVCから構成されるプラスチック成形品をコーティングすることが特に有利である。保護された基材は、有利には、例えば、アルミニウム、木材、プラスチックまたは複合材料から構成される窓用形材であり、好ましくはPC、SANまたはPVCから構成される装飾フォイルを付着させることができる。次いで、この物品は、本発明によるフォイルを使用することによって風化から保護される。本発明によるフォイルの別の好ましい用途は、基材材料のための高仕様で耐久性のある表面仕上げの設計である。さらに、本発明によるフォイルは、有利には、交通規制材(TCM)に使用することができる。
【0242】
上記のとおり、本発明のフォイルは、層Aが基材の表面と直接接触するように基材上に適用し、それによって接着促進層として作用させることができる。この実施形態では、本発明のフォイルが実質的に層AおよびBから構成される場合、層Bは環境に面し、層Aは層Bと基材との間に位置する。本発明のフォイルが層Cをさらに含む場合、層Bは環境に面し、層Bは層Cと層Aとの間に位置する。したがって、層は、以下の順序で配置される:
- 層C(存在する場合)
- 層B
- 層A
- 基材。
【0243】
さらに、本発明の多層フォイルがコーティング層Dを含む場合、コーティング層Dは環境に面し、層は以下の順序である:
- 層D
- 層A
- 層B
- 層C(存在する場合)
- 基材。
【0244】
本発明の更なる態様は、コーティング物品の製造方法であって、前述の基材の表面上にフォイルを適用するステップを含む。このコーティング物品は、基材を含み、外面を有し、この基材は、フォイルによって少なくとも部分的に覆われており、前述のフォイルは、コーティング物品の外面を起点として、以下の順序で配置された層を有する:
- 層C(存在する場合)
- 層B
- 層A
- 基材
または、その代わりとして、
- 層D
- 層A
- 層B
- 層C(存在する場合)
- 基材。
【0245】
本発明によるフォイルの基材上への適用は、いずれの場合も比較的簡単である。フォイルは、好ましくは、保護されるべき基材に共押出によって適用される。保護されるべき材料へのフォイル積層によるフォイルの適用も可能である。保護されるべき材料にフォイルが押出積層によって適用されることを特徴とする使用も好ましい。好ましくは、押出積層は、120℃以上の温度で、1MPa以上、好ましくは2MPa以上、より好ましくは4MPa以上、より好ましくは6MPa以上、より好ましくは7MPa以上の機械圧力の適用時に行われる。
【0246】
本発明の一実施形態では、物品自体は、ロール状で便宜的に保管および/または取り扱うことができるフォイルまたはシートであってもよい。
【0247】
好ましい実施形態では、本発明のコーティング物品は、高圧積層板(HPL)、中圧積層板(MPL)または連続圧積層板(CPL)であってもよい。したがって、本発明の一態様は、上記のようなフォイルを用いた高圧積層板の製造方法に関するものである。特に好ましい実施形態では、本発明のフォイルを用いて得ることができる多層材料は、規格EN 438-2およびEN 438-6に従った装飾用高圧積層板(HPL)であり、これは硬化性樹脂を含浸した繊維状材料(例えば、紙)のウェブの層から構成され、これらは後述する高圧方法によって互いに結合される。片面または両面に装飾的な色または模様を有する材料の表面層には、アミノプラスチックに基づく樹脂、例えばメラミン樹脂が含浸されている。高圧方法中に装飾層に存在するアミノ基またはメチロールアミノ基は、次いで、表面仕上げ用のポリメタクリレート層(この場合はフォイル)に共有結合するための反応パートナーとして機能する。対応する高圧積層板は、特に米国特許出願公開第2017/0197391号明細書に記載されている。
【0248】
HPLの調製は、典型的には、1MPa~20MPa、好ましくは4MPa~15MPa、より好ましくは6MPa~10MPaの圧力および120℃~220℃の温度でバッチ式に行われる。これらの条件下で、コーティング層Dが存在する場合、典型的には、最終的な架橋を受け、それによって高い耐擦傷性を有するコーティングが形成される。
【0249】
高圧方法により、装飾層と本発明により適用されたポリメタクリレート層との間に長期にわたる結合が生じる。方法中に設定された温度と、それに伴うメラミン樹脂飽和装飾紙のフォイル中への相互浸透とは、共有結合の十分な形成、ひいては材料への長期間にわたる結合を保証する。
【0250】
高圧方法は、熱(120℃以上)および高圧(3MPa以上)の同時使用と定義され、その結果、硬化性樹脂が流動し、次いで硬化して、必要な表面構造を有する比較的高い密度(少なくとも1.35g/cm)の均質な無孔質材料が生じる。高圧方法は、バッチ式またはロール・ツー・ロール方法、すなわち連続的に行うことができる。後者の製品は、通常、連続圧積層板(CPL)と呼ばれる。
【0251】
CPLの製造方法は、硬化性樹脂ベースの支持体、例えば、フェノール樹脂ベースの支持体構造またはメラミン樹脂ベースの支持体構造を提供するステップを含む。支持体構造は、典型的には紙層であるいくつかの個々の層を含み得る。紙層は、厚紙層として利用可能である。これらの層のうちの1つまたはすべてが、好ましくは、フェノール樹脂またはメラミン樹脂を含む。支持構造体は、通常、0.1mm~2mm、さらに好ましくは0.2mm~1.5mm、さらに好ましくは0.3mm~1.2mm、さらに好ましくは0.4mm~1.0mm、さらに好ましくは0.5mm~0.8mmの厚さを有する。CPL方法は、本発明の多層フォイルを支持体とともにプレスすることを含む。材料が圧力および温度にさらされる時間は、通常、HPLバッチ方法よりも有意に短い。CPL方法では、例えば、両面加熱式ダブルベルトプレスを用いることによって、層を連続方法でプレスして一種のエンドレスプレートにすることができる。ダブルベルトプレスは、構造ベルト(すなわち、構造化/エンボス加工された表面を有するベルト)を含むことができる。プレス圧力は、HPLの製造の場合よりも低くすることができる。好ましくは、プレスはCPL方法では、1.0MPa~10MPa、さらに好ましくは1.5MPa~8.0MPa、さらに好ましくは2.0MPa~6.0MPa、さらに好ましくは2.5MPa~4.5MPa、最も好ましくは3.0MPa~3.5MPaの圧力で行われる。このステップの間の温度は、通常、120℃~200℃、さらに好ましくは140℃~180℃、さらに好ましくは150℃~170℃の範囲に保たれる。これらの条件下で、コーティング層Dは、存在する場合、典型的には、最終的な架橋を受け、それによって高い耐擦傷性を有するコーティングを形成する。
【0252】
以下の表1は、特に有利な特性を有する本発明の多層物品の実施形態を列挙したものである。多層物品は、上記の好ましい実施形態1~18の多層フォイルによってコーティングされた基材と、任意選択的にコーティング層Dとを含む。実施形態は、図6図12に概略的に示されている。
【0253】
【表1】
【0254】
SEM画像
SEM画像は、JEOL Ltd.社から市販されている走査型電子顕微鏡JEOL JSM IT300を用いて得た。フォイル試料を液体窒素中で凍結し、機械的に破断し、新たに得られた表面を分析した。
【0255】
測定パラメーターは以下のとおりであった:
タングステンフィラメント(陰極)からの電子の可変流
真空システム:ロータリーポンプ/油拡散ポンプ
X-Y-Z回転傾斜:全電動式
作動距離(WD):5~70mm(共通:10mm)
試料回転:360°
試料傾斜:-5~最大90°(WDに依存)
倍率:750倍
最大分解能:約3nm
検出器:二次電子検出器(SED)
後方散乱電子(BSE、5分割)
エネルギー分散型X線解析(EDS)
【0256】
試料の調製
フォイルの厚さを測定するために、液体窒素を用いて試料を凍結し、機械的に破断した。この目的のために、脆性破壊を行った。得られた破断面を分析した。
【0257】
導電層
すべての標準品を、導電性表面を得るために金でスパッタリングした。
【0258】
画像での測定
フォイルの平均厚さと個々の層の平均厚さとを、SEM画像で測定した。既存の画像を後から測定できるようにするために、関連する測定パラメーターと同様にすべての画像をSEM画像データベースに保存した。
【0259】
以下の実施例は、限定することなく、本発明をより詳細に説明する。
【0260】
実施例
多層フォイルは、直径35mmの単軸押出機と直径25mmの単軸共押出機とを用いて、240~250℃(押出ダイの溶融温度)、押出速度7.3m/分でチルロール方法を用いたアダプター共押出によって製造した。3層フォイルの場合は、第2の25mm径単軸共押出機を使用した。代わりに、複数のマニホールド共押出方法、またはアダプターおよび複数のマニホールド共押出の組み合わせによって製造を達成することができる。
【0261】
使用した接着促進剤は、MMA75重量%とスチレン15重量%とマレイン酸無水物10重量%とのコポリマーであった。このコポリマーの重量平均モル質量Mwは、約100,000g/mol(PMMA標準に対するGPCで決定)であった。
【0262】
粒状シリカとして、Evonik Industries AG社(Hanau)から入手可能な、約700m/gの比表面積(ISO 9277に基づくBET法で測定)を有する沈降親水性シリカを使用した。
【0263】
以下の実施例で言及されるPMMA1は、質量平均分子量Mwが155,000g/mol(PMMA標準に対するGPCで決定)のメチルメタクリレート96重量%とメチルアクリレート4重量%とのコポリマーであり、Roehm GmbH社(Darmstadt)から入手可能である。
【0264】
以下の実施例で言及されるPMMA2は、質量平均分子量Mwが110,000g/mol(PMMA標準に対するGPCで決定)のメチルメタクリレート99重量%とメチルアクリレート1重量%とのコポリマーであり、Roehm GmbH社(Darmstadt)から入手可能である。
【0265】
以下の実施例で言及されるPMMA3は、質量平均分子量Mwが115,000g/mol(PMMA標準に対するGPCで決定)のメチルメタクリレート96重量%とメチルアクリレート4重量%とのコポリマーであり、Roehm GmbH社(Darmstadt)から入手可能である。
【0266】
後述の実施例で言及される耐衝撃性改良剤1、3および4は、ブチルアクリレートをベースとするアクリル系コア-シェル型耐衝撃性改良剤である。
【0267】
後述の実施例で言及される耐衝撃性改良剤2は、ブチルアクリレートをベースとするアシェル系コア-シェル型耐衝撃性改良剤である。
【0268】
Tinuvin(登録商標)360(ベンゾトリアゾール型紫外線吸収剤)およびTinuvin(登録商標)1600(トリアジン型紫外線吸収剤)は、BASF SE社(Ludwigshafen)から市販されている。
【0269】
Chimassorb(登録商標)119は、ヒンダードアミン系光安定剤(HALS)であり、BASF SE社(Ludwigshafen)から市販されている。
【0270】
製造例1(本発明による)
層Aを形成する成形用コンパウンドを二軸押出機を用いて調製した。直径35mmの単軸押出機と直径25mmの単軸共押出機とを用いて、240~250℃(溶融温度)、押出速度7.3m/分によって押し出して、総厚75μmの三層フォイルを調製した。
【0271】
このフォイルは、以下の組成を有していた:
層Aの厚さは10μmであり、以下の組成を有していた:
a)87.0重量%の耐衝撃性改良剤1
b)10.0重量%の粒状シリカ
c)2.0重量%のTinuvin(登録商標)1600
d)1.0重量%の分散剤。
【0272】
層Bの厚さ60μmであり、以下の組成を有していた:
a)19.7重量%の耐衝撃性改良剤2
b)55.3重量%のPMMA1
c)22.2重量%のPMMA3
d)Tinuvin(登録商標)360とTinuvin(登録商標)1600とChimassorb(登録商標)119との2.7重量%の調製済み混合物。
【0273】
層Cの厚さは5μmであり、以下の組成を有していた:
a)78.5重量%の耐衝撃性改良剤1
b)20.0重量%の接着促進剤
c)1.3重量%のTinuvin(登録商標)360
d)0.2重量%のChimassorb(登録商標)119。
【0274】
製造例2(比較例)
製造例1と同じ条件で、総厚さ75μmの三層フォイルを調製した。このフォイルは、以下の組成を有していた:
層Aの厚さは10μmであり、以下の組成を有していた:
a)16.8重量%の耐衝撃性改良剤2
b)67.6重量%のPMMA2
c)10.0重量%の粒状シリカ
d)0.5重量%のTinuvin(登録商標)360
e)5.1重量%のIrganox(登録商標)1076と数種の分散剤との混合物。
【0275】
層Bの厚さは60μmであり、以下の組成を有していた:
a)19.7重量%の耐衝撃性改良剤2
b)55.3重量%のPMMA1
c)22.2重量%のPMMA3
d)Tinuvin(登録商標)360とTinuvin(登録商標)1600とChimassorb(登録商標)119との2.7重量%の調製済み混合物。
【0276】
層Cの厚さは5μmで、以下の組成を有していた:
a)78.5重量%の耐衝撃性改良剤1
b)20.0重量%の接着促進剤
c)1.3重量%のTinuvin(登録商標)360
d)0.2重量%のChimassorb(登録商標)119。
【0277】
製造例3(本発明による)
製造例1と同じ条件で、総厚さ75μmの三層フォイルを調製した。このフォイルは、以下の組成を有していた:
層Aの厚さは10μmであり、以下の組成を有していた:
a)65.6重量%の耐衝撃性改良剤1
b)11.3重量%の耐衝撃性改良剤3
c)11.3重量%のPMMA1
d)10.0重量%の粒状シリカ
e)Tinuvin(登録商標)360とTinuvin(登録商標)1600とChimassorb(登録商標)119との1.9重量%の調製済み混合物。
【0278】
層Bの厚さは60μmであり、以下の組成を有していた:
a)19.7重量%の耐衝撃性改良剤2
b)55.3重量%のPMMA1
c)22.2重量%のPMMA3
d)Tinuvin(登録商標)360とTinuvin(登録商標)1600とChimassorb(登録商標)119との2.7重量%の調製済み混合物。
【0279】
層Cの厚さは5μmであり、以下の組成を有していた:
a)78.5重量%の耐衝撃性改良剤1
b)20.0重量%の接着促進剤
c)1.3重量%のTinuvin(登録商標)360
d)0.2重量%のChimassorb(登録商標)119。
【0280】
製造例4(本発明による)
製造例1と同じ条件で、総厚さ75μmの三層フォイルを調製した。このフォイルは、以下の組成を有していた:
層Aの厚さは10μmであり、以下の組成を有していた:
a)92.5重量%の耐衝撃性改良剤1
b)7.5重量%の粒状シリカ。
【0281】
層Bの厚さは60μmであり、以下の組成を有していた:
a)19.7重量%の耐衝撃性改良剤2
b)55.3重量%のPMMA1
c)22.2重量%のPMMA3
d)Tinuvin(登録商標)360とTinuvin(登録商標)1600とChimassorb(登録商標)119との2.7重量%の調製済み混合物。
【0282】
層Cの厚さは5μmであり、以下の組成を有していた:
a)78.5重量%の耐衝撃性改良剤1
b)20.0重量%の接着促進剤
c)1.3重量%のTinuvin(登録商標)360
d)0.2重量%のChimassorb(登録商標)119。
【0283】
製造例5(本発明による)
製造例1と同じ条件で、総厚さ75μmの三層フォイルを調製した。このフォイルは、以下の組成を有していた:
層Aの厚さは10μmであり、以下の組成を有していた:
a)62.0重量%の耐衝撃性改良剤1
b)10.6重量%の耐衝撃性改良剤3
c)10.6重量%のPMMA1
d)15.0重量%の粒状シリカ
e)Tinuvin(登録商標)360とTinuvin(登録商標)1600とChimassorb(登録商標)119との1.8重量%の調製済み混合物。
【0284】
層Bの厚さは60μmであり、以下の組成を有していた:
a)19.7重量%の耐衝撃性改良剤2
b)55.3重量%のPMMA1
c)22.2重量%のPMMA3
d)Tinuvin(登録商標)360とTinuvin(登録商標)1600とChimassorb(登録商標)119との2.7重量%の調製済み混合物。
【0285】
層Cの厚さは5μmであり、以下の組成を有していた:
a)78.5重量%の耐衝撃性改良剤1
b)20.0重量%の接着促進剤
c)1.3重量%のTinuvin(登録商標)360
d)0.2重量%のChimassorb(登録商標)119。
【0286】
製造例6(比較例)
製造例1と同じ条件で、総厚さ45μmの二層フォイルを調製した。このフォイルは、以下の組成を有していた:
層Aの厚さは40μmであり、以下の組成を有していた:
a)18.6重量%の耐衝撃性改良剤2
b)75.1重量%のPMMA2
c)0.5重量%のTinuvin(登録商標)360
d)5.8重量%%のIrganox(登録商標)1076と分散剤との混合物。
【0287】
層Bの厚さは5μmであり、以下の組成を有していた:
a)78.5重量%の耐衝撃性改良剤1
b)20.0重量%の接着促進剤
c)1.3重量%のTinuvin(登録商標)360
d)0.2重量%のChimassorb(登録商標)119。
【0288】
製造例7(比較例)
製造例6のフォイルの層A上に、以下の手順に従って二層親水性コーティングを適用した:
中間層の調製
メチルメタクリレート88重量%とγ-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン12重量%とから構成される第1のコポリマーと、メチルメタクリレート20重量%とブチルメタクリレート80重量%とから構成される第2のコポリマーとを、酢酸ブチル中に1:1の比で溶解し、フォイルに薄膜として適用した。流し込んだ後、コーティングされたフォイルを80℃のオーブンで20分間乾燥させた。
【0289】
親水性コーティングの調製
アニオン性シリカゾル25重量%(固形分30重量%)にO-エチルジチオカルボン酸の3-スルホプロピルエステルのカリウム塩0.1重量%およびエトキシル化脂肪アルコール0.4重量%を加えたものを脱イオン水で100部とし、中間層を備えたフォイル上に薄膜で適用した。風乾後、中間層および親水性コーティングが施されたフォイルを80℃の対流式オーブンで20分間乾燥させる。
【0290】
製造例8(比較例)
製造例6のフォイルの層Aをコロナ処理に供した。
【0291】
製造例9(本発明による)
製造例1と同じ条件で、総厚さ75μmの二層フォイルを調製した。このフォイルは、以下の組成を有していた:
層Aの厚さは5μmであり、以下の組成を有していた:
a)82.8重量%の耐衝撃性改良剤1
b)10.0重量%の接着促進剤
c)5.0重量%の粒状シリカ
d)Tinuvin(登録商標)360とTinuvin(登録商標)1600とChimassorb(登録商標)119との1.8重量%の調製済み混合物
e)0.5重量%の分散剤。
【0292】
層Bの厚さは70μmであり、以下の組成を有していた:
a)10.3重量%の耐衝撃性改良剤2
b)89.5重量%のPMMA2
c)0.2重量%のChimassorb(登録商標)119。
【0293】
製造例10(比較例)
製造例1と同じ条件で、単層Aから構成されかつ機械的にテクスチャー加工した表面(テクスチャー加工したエンボスローラーで作製)を有する単層フォイルを調製した。このフォイルは、以下の組成を有していた:
a)30.0重量%の耐衝撃性改良剤1
b)10.0重量%の耐衝撃性改良剤2
c)45.3重量%のPMMA2
d)12.5重量%のPMMA3
e)Tinuvin(登録商標)360とChimassorb(登録商標)119との2.2重量%の調製済み混合物。
【0294】
製造例11(比較例)
製造例1と同じ条件で、単層Aから構成される単層フォイルを調製した。このフォイルは、以下の組成を有していた:
a)100.0重量%のPMMA1。
【0295】
製造例12(比較例)
製造例1と同じ条件で、単層Aから構成される単層フォイルを調製した。このフォイルは、以下の組成を有していた:
a)74.8重量%の耐衝撃性改良剤4
b)Evonik Industries AG社から入手可能な10.0重量%のDegacryl(登録商標)6615(アクリル系ビーズポリマー)
c)13.3重量%のPMMA1
d)Tinuvin(登録商標)360とTinuvin(登録商標)1600とChimassorb(登録商標)119との1.9重量%の調製済み混合物。
【0296】
製造例13(比較例)
製造例1と同じ条件で、単層Aから構成される単層フォイルを調製した。このフォイルは、以下の組成を有していた:
a)66.5重量%の耐衝撃性改良剤4
b)Evonik Industries AG社から入手可能な20.0重量%のDegacryl(登録商標)6615(アクリルビーズポリマー)
c)11.8重量%のPMMA1
d)Tinuvin(登録商標)360とTinuvin(登録商標)1600とChimassorb(登録商標)119との1.7重量%の調製済み混合物。
【0297】
製造例14(比較例)
製造例1と同じ条件で、単層Aから構成される単層フォイルを調製した。このフォイルは、以下の組成を有していた:
a)78.1重量%の耐衝撃性改良剤4
b)Potters Industries LLC社から入手可能な6.0重量%のSpheriglass(登録商標)Potters 5000 CP-01(ガラスビーズ)
c)13.9重量%のPMMA1
d)Tinuvin(登録商標)360とTinuvin(登録商標)1600とChimassorb(登録商標)119との2.0重量%の調製済み混合物。
【0298】
製造例15(比較例)
製造例1と同じ条件で、単層Aから構成される単層フォイルを調製した。このフォイルは、以下の組成を有していた:
a)70.6重量%の耐衝撃性改良剤4
b)Potters Industries LLC社から入手可能な15.0重量%のSpheriglass(登録商標)Potters 5000 CP-01(ガラスビーズ)
c)12.6重量%のPMMA1
d)Tinuvin(登録商標)360とTinuvin(登録商標)1600とChimassorb(登録商標)119との1.8重量%の調製済み混合物。
【0299】
製造例16(比較例)
製造例1と同じ条件で、単層Aから構成される単層フォイルを調製した。このフォイルは、以下の組成を有していた:
a)70.6重量%の耐衝撃性改良剤4
b)Sovitec Mondial SA社から入手可能な15.0重量%のP1コーティング付きOmicron(登録商標)NP3(ガラスビーズ)
c)12.6重量%のPMMA1
d)Tinuvin(登録商標)360とTinuvin(登録商標)1600とChimassorb(登録商標)119との調製済み混合物1.8重量%。
【0300】
製造例17(比較例)
製造例1と同じ条件で、単層Aから構成される単層フォイルを調製した。このフォイルは、以下の組成を有していた:
a)70.6重量%の耐衝撃性改良剤4
b)Evonik Industries AG社から入手可能な15.0重量%のSIPERNAT(登録商標)44MS(ゼオライト)
c)12.6重量%のPMMA1
d)Tinuvin(登録商標)360とTinuvin(登録商標)1600とChimassorb(登録商標)119との1.8重量%の調製済み混合物。
【0301】
製造例18(比較例)
製造例1と同じ条件で、単層Aから構成される単層フォイルを調製した。このフォイルは、以下の組成を有していた:
a)70.6重量%の耐衝撃性改良剤4
b)15.0重量%の粒状シリカ
c)12.6重量%のPMMA1
d)Tinuvin(登録商標)360とTinuvin(登録商標)1600とChimassorb(登録商標)119との1.8重量%の調製済み混合物。
【0302】
したがって、単層フォイルの組成は、本発明の多層フォイルの層Aの組成に対応する。
【0303】
製造例19(比較例)
製造例1と同じ条件で、単層Aから構成される単層フォイルを調製した。このフォイルは、以下の組成を有していた:
a)70.6重量%の耐衝撃性改良剤4
b)Quarzwerke GmbH社から入手可能な15.0重量%のSILBOND(登録商標)600 MST(シラン処理石英フィラー)
c)12.6重量%のPMMA1
d)Tinuvin(登録商標)360とTinuvin(登録商標)1600とChimassorb(登録商標)119との1.8重量%の調製済み混合物。
【0304】
製造例20(比較例)
製造例1と同じ条件で、単層Aから構成される単層フォイルを調製した。このフォイルは、以下の組成を有していた:
a)70.6重量%の耐衝撃性改良剤4
b)Quarzwerke GmbH社から入手可能な15.0重量%のSILBOND(登録商標)600 VST(シラン処理石英フィラー)
c)12.6重量%のPMMA1
d)Tinuvin(登録商標)360とTinuvin(登録商標)1600とChimassorb(登録商標)119との1.8重量%の調製済み混合物。
【0305】
製造例21(比較例)
製造例1と同じ条件で、単層Aから構成される単層フォイルを調製した。このフォイルは、以下の組成を有していた:
a)62.3重量%の耐衝撃性改良剤4
b)Potters Industries LLC社から入手可能な25.0重量%のSpheriglass(登録商標)Potters 7010 CP-01(ガラスビーズ)
c)11.1重量%のPMMA1
d)Tinuvin(登録商標)360とTinuvin(登録商標)1600とChimassorb(登録商標)119との1.6重量%の調製済み混合物。
【0306】
製造例22(比較例)
製造例1と同じ条件で、単層Aから構成される単層フォイルを調製した。このフォイルは、以下の組成を有していた:
a)62.3重量%の耐衝撃性改良剤4
b)PQ Corporation社から入手可能な25.0重量%のSpheriWhite(登録商標)5000 CP-01(ガラスビーズ)
c)11.1重量%のPMMA1
d)Tinuvin(登録商標)360とTinuvin(登録商標)1600とChimassorb(登録商標)119との1.6重量%の調製済み混合物。
【0307】
製造例23(比較例)
製造例1と同じ条件で、単層Aから構成される単層フォイルを調製した。このフォイルは、以下の組成を有していた:
a)62.3重量%の耐衝撃性改良剤4
b)PQ Corporation社から入手可能な25.0重量%のSpheriWhite(登録商標)3000 CP-01(ガラスビーズ)
c)11.1重量%のPMMA1
d)Tinuvin(登録商標)360とTinuvin(登録商標)1600とChimassorb(登録商標)119との1.6重量%の調製済み混合物。
【0308】
製造例24(比較例)
製造例1と同じ条件で、単層Aから構成される単層フォイルを調製した。このフォイルは、以下の組成を有していた:
a)62.3重量%の耐衝撃性改良剤4
b)PQ Corporation社から入手可能な25.0重量%のSpheriWhite(登録商標)3000 CP-01(ガラスビーズ)
c)11.1重量%のPMMA1
d)Tinuvin(登録商標)360とTinuvin(登録商標)1600とChimassorb(登録商標)119との1.6重量%の調製済み混合物。
【0309】
ポリウレタン-(メタ)アクリレートコーティング組成物の調製
プレポリマー溶液の調製
オーストリア国特許発明第404241号明細書、実施例1の手順に従って調製を行った。撹拌翼を備えたガラス製反応器を使用した。空の反応器を70℃に1時間加熱して、内部の反応器表面積を乾燥させた。反応中、乾燥空気を液面下の反応器内に供給した。その後、ジペンタエリスリテトラアクリレート591.3g、イソホロンジイソシアネート250.1g、酢酸n-ブチル118.3g、触媒としてジブチルスズジラウレート0.96gおよび重合禁止剤として4-メトキシフェノール5.41gを反応器に添加した。
【0310】
反応混合物を、ウレタン結合の形成に基づき遊離イソシアネート基の含有量が初期値の半分に減少するまで(DIN53185による決定)、温度60℃で約4時間撹拌した。次いで、2-エチル-2-(ヒドロキシメチル)-1,3-プロパンジオール150.8gを反応混合物に添加し、反応をさらに3時間、更なるウレタン結合の形成に基づきイソシアネート含有量が0.5%未満に低下するまで撹拌した。反応混合物を室温まで冷却し、酢酸n-ブチル150.5gに溶解した4-メトキシフェノール6.97gを添加した。
【0311】
コーティングシステムの調製
上記の樹脂成分溶液60.00重量部を、以下と混合した:
硬化剤成分としてTolonate(商標)HDT LV2(ヘキサメチレンジイソシアネート三量体をベースとする脂肪族ポリイソシアネート、Worlee-Chemie GmbH社(Hamburg)から入手可能)20.00重量部
ラジカル形成剤してtert-ブチルペルオキシベンゾエート1.20重量部
触媒としてのKosmos(登録商標)T12N(ジブチルスズジラウレート、Evonik Industries AG社より入手可能)0.14重量部
希釈剤としての酢酸n-ブチル18.66重量部。
【0312】
耐擦傷性組成物によるフォイルのコーティング
試験シリーズ(a)-60μm厚のコーティング層の適用
製造例1および6のフォイルの層A上に、ポリウレタン(メタ)アクリレートコーティングシステムを適用した。コーティング層Dの厚さは約60μmであった。得られるフォイルを90℃の温度で4分間乾燥させ、それによってコーティングの部分的な硬化が行われる。
【0313】
試験シリーズ(b)-20~30μm厚のコーティング層の適用
ポリウレタン(メタ)アクリレートコーティング組成物の更なる試料を、製造例1~24のフォイルの層A上および製造例6のフォイルの層B上に適用した。コーティング層Dの厚さは約20~30μmであった。得られるフォイルを100℃未満の温度で乾燥させ、それによってコーティングの部分的な硬化が行われる。
【0314】
HPLの調製および試験
試験シリーズ(a)の製造例1および6のフォイル、ならびに上記のようにコーティングされた試験シリーズ(b)の製造例1~24のフォイルを、HPLの調製のために使用した。HPLは、明細書に記載の条件に従って、フェノール樹脂含浸紙層と重ね合わせた保護フォイルとの同時積層によって製造した。層Cは、存在する場合、樹脂含浸紙層と直接接触し、それによって接着促進層として作用した。部分的に硬化したポリウレタン(メタ)アクリレートコーティング組成物(層D)でコーティングされた層Aは、コーティングされたHPLの外面を形成していた。HPLのコアは、フェノール樹脂含浸紙で構成されていた。これらと保護フォイルとの間には、メラミン樹脂含浸装飾紙があった。無煙炭色のHPLを調製し、その後の試験に使用した。
【0315】
HPL試料は、100℃の温水中で2時間、代わりに65℃で48時間保管した。その後、単一の切断ハンドツールを用いて、規格ISO EN 2409(2013)によりクロスハッチ試験を用いて接着性を試験した。
【0316】
クロスハッチ試験の結果では、次のように評価した:
0 カットエッジは完全に滑らかで、グリッドの正方形は1つも欠け落ちていない。
1 グリッド線の交点で、コーティングの小さな断片が欠け落ちている。欠け落ちた面積はグリッド面積の5%を超えない。
2 刃先および/またはグリッド線の交点に沿ってコーティングが剥がれ落ちている。剥がれ落ちた面積は、グリッド面積の5%を超えるが15%以下である。
3 刃先に沿ってコーティングが幅広い帯状になって部分的もしくは完全に剥離し、かつ/または一部の正方形が部分的もしくは完全に剥離している。剥離面積はクロスカット面積の15%を超えるが35%以下である。
4 幅広い帯状になって切断されたエッジに沿ってコーティングが欠け落ちており、かつ/または一部の正方形が完全にもしくは部分的に欠け落ちている。剥離面積はクロスカット面積の35%を超えるが65%以下である。
5 格子状切断の特徴4にもはや分類され得ない何らかの剥離がある。
【0317】
試験シリーズ(a)の結果を表2にまとめている。
【0318】
【表2】
【0319】
例1(本発明による例)の多層フォイルは、優れた初期接着力および湿潤環境下での長期耐性を示した。これに対して、例6(比較例)の多層フォイルは、初期接着力が不十分であり、長期試験には使用しなかった。
【0320】
試験シリーズ(b)の結果を表3にまとめている。
【0321】
【表3】
【0322】
例1、3~5、9の多層フォイル(本発明による例)および例18の単層フォイル(比較例)は、優れた初期接着力および湿潤環境下での長期耐性を示した。しかしながら、例18のフォイルは、脆くて取り扱いが困難であった。
【0323】
例11~13、15、16および21~24のフォイル(比較例)も、湿潤環境下での長期耐性は不十分であるものの、初期接着力には優れていた。
【0324】
更なる試験
試験シリーズ(b)の製造例1のフォイルを用いて得られたHPLは、更なる試験に供した。試験の結果を表4にまとめている。
【0325】
【表4】
【0326】
したがって、多層フォイルまたは例1は、優れた耐薬品性および高温湿潤環境下での長期耐性ならびに高い引張強度を示した。
【符号の説明】
【0327】
1 層A
2 耐衝撃性改良ポリアルキル(メタ)アクリレートのマトリックス
3 シリカ粒子
4 層B
5 層C
6 コーティング層D
7 耐衝撃性改良ポリアルキル(メタ)アクリレートのマトリックス
8 シリカ粒子を有する接着促進層C
9 基材
10 シリカ粒子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【国際調査報告】