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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-04
(54)【発明の名称】組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/16 20060101AFI20230328BHJP
   C07K 14/33 20060101ALI20230328BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20230328BHJP
   A61K 47/64 20170101ALI20230328BHJP
   A61K 47/60 20170101ALI20230328BHJP
   A61K 8/64 20060101ALN20230328BHJP
【FI】
A61K38/16
C07K14/33 ZNA
A61P21/00
A61K47/64
A61K47/60
A61K8/64
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022547181
(86)(22)【出願日】2021-02-03
(85)【翻訳文提出日】2022-09-30
(86)【国際出願番号】 AU2021050078
(87)【国際公開番号】W WO2021155427
(87)【国際公開日】2021-08-12
(31)【優先権主張番号】2020900283
(32)【優先日】2020-02-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521048060
【氏名又は名称】スノーレトックス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マクリーン,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】スムーカー,ピーター
(72)【発明者】
【氏名】ノーブリー,ルーク
(72)【発明者】
【氏名】コロエ,ピーター
(72)【発明者】
【氏名】コンジット,ラッセル
(72)【発明者】
【氏名】サッセ,アンソニー
【テーマコード(参考)】
4C076
4C083
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA99
4C076BB11
4C076CC09
4C076CC41
4C076EE59
4C076FF67
4C083AD411
4C083AD412
4C083CC01
4C083EE09
4C083FF01
4C084AA02
4C084AA03
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA22
4C084BA23
4C084BA44
4C084CA04
4C084DA33
4C084MA05
4C084MA66
4C084NA06
4C084NA07
4C084ZA94
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA57
4H045CA11
4H045DA83
4H045EA20
4H045FA10
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、(i)酸分解性連結を介して、又は(ii)マスキングポリペプチドを含む、少なくとも1つのマスキング部分にコンジュゲートした破傷風神経毒素(TeNT)を
含む、破傷風神経毒素(TeNT)コンジュゲートに関する。本発明は又、TeNTコンジュゲートを含む組成物、及び対象の筋緊張低下症を治療するための、又は筋力及び/又は筋緊張及び/又は筋治癒及び/又はスポーツのパフォーマンスを向上させるための、TeNTコンジュゲート又は組成物の治療上の使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸分解性連結を介して少なくとも1つのマスキング部分にコンジュゲートした破傷風神
経毒素(TeNT)を含む、破傷風神経毒素(TeNT)コンジュゲート。
【請求項2】
前記マスキング部分が、PEG及び/又はマスキングポリペプチドを含む、請求項1に
記載の破傷風神経毒素コンジュゲート。
【請求項3】
少なくとも1つのマスキング部分にコンジュゲートしたTeNTを含み、
前記マスキング部分がマスキングポリペプチドを含む、破傷風神経毒素(TeNT)コンジュゲート。
【請求項4】
酸分解性連結を介して少なくとも1つのマスキング部分にコンジュゲートした、請求項3に記載の破傷風神経毒素コンジュゲート。
【請求項5】
前記マスキング部分が、前記TeNTのリジン又はシステイン残基にコンジュゲートされている、請求項1~4のいずれか一項に記載の破傷風神経毒素コンジュゲート。
【請求項6】
前記システインが導入アミノ酸である、請求項5に記載の破傷風神経毒素コンジュゲート。
【請求項7】
前記破傷風神経毒素が、配列番号1で表されるアミノ酸配列を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の破傷風神経毒素コンジュゲート。
【請求項8】
前記導入システインが、配列番号1に対するセリンからシステインへのアミノ酸置換である、請求項7に記載の破傷風神経毒素コンジュゲート。
【請求項9】
前記酸分解性連結がヒドラゾンを含む、請求項1、2又は4~7のいずれか一項に記載の破傷風神経毒素コンジュゲート。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の破傷風神経毒素コンジュゲートを含む組成物。
【請求項11】
請求項1~9のいずれか一項に記載の破傷風神経毒素コンジュゲート又は請求項10に記載の組成物を投与することを含む、対象における筋緊張低下症の治療方法。
【請求項12】
請求項1~9のいずれか一項に記載の破傷風神経毒素コンジュゲート又は請求項10に記載の組成物を投与することを含む、対象の筋力及び/又は筋緊張及び/又は筋治癒及び/又はスポーツパフォーマンスを向上させる方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、破傷風神経毒素(TeNT)コンジュゲート、又はTeNTコンジュゲートを含む組成物に関する。本開示は又、TeNTコンジュゲート又は組成物の治療的使用に関する。
【背景技術】
【0002】
破傷風神経毒素(TeNT)は、クロストリジウム・テタニによって産生される。TeNTは脊髄に作用し、抑制性神経伝達物質であるγアミノ酪酸(GABA)及びグリシンの脊髄抑制性介在ニューロンにおける放出をブロックする。そのため、TeNTは痙性麻痺を引き起こす。TeNTは、複数の血清型では発生しない。
【0003】
TeNTの生物学的特性、又は少なくともTeNTの断片を治療に利用することが提案されている。しかしながら、タンパク質治療剤を使った長期治療の場合、標的免疫反応を引き起こす傾向がある。TeNTの血清型は1つしか知られていないため、血清型を切り替えて免疫を回避しようとすることは、TeNT系治療の選択肢にはならない。さらに、多くの人々がTeNTに対してワクチンを接種しているため、TeNTに基づく治療は不可能である。
【0004】
米国特許出願公開第2002/0197278(A1)明細書には、不適切な筋収縮の障害を治療するためにPEG化ボツリヌス毒素を使用することが開示されている。米国特許出願公開第2002/0197278(A1)明細書には又、不適切な筋収縮の障害、例えば偏頭痛又は斜視を治療するためにPEG化されたTeNTを使用することが提案されている。しかしながら、上述のように、TeNTは筋収縮を引き起こすので、PEG化されているか否かにかかわらず、不適切な筋収縮の障害治療には使用されていない。
【0005】
Wanら(Process Biochemistry(2017) 52:183-
191)は、PEG化タンパク質の投与によって生じる抗PEG免疫応答に対するPEG化の効果を開示しているが、その知見はいかなる治療にも生かされていない。
【0006】
国際公開第2016/001762(A1)号パンフレットには、筋肉量を増加させるためにPEG化TeNTフラグメントc(c)を使用することが開示されている。フラグメントc(50kDa)は、TeNTをパパインにより酵素反応的に切断した際に生成し、TeNT重鎖のC末端の451アミノ酸に相当する。フラグメントcは、未消化のTeNTの結合、内在化及び経シナプス輸送能力を保持するが、いかなる神経細胞プロセスも破壊せず、したがって非毒性である。
【0007】
破傷風トキソイドの免疫性を与えられた対象向けの、既存の抗TeNT免疫反応を回避するTeNT系の治療が必要とされている。
【0008】
本明細書中でいかなる先行技術文献が参照されたとしても、そのような参照により、当該文献がオーストラリア又は他の国における一般技術知識の一部として認められるものではないことが理解されるであろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明者らは、タンパク質治療剤の投与時に抗体反応が起こり、そのためにタンパク質治療剤の効力を減少させる適応免疫系があるがゆえに、TeNTの利用が十分に実現され
ていないことを理解している。適応免疫応答を、TeNTに対して免疫性を与えられた多くの集団によって実証されたように、ワクチン接種の結果として、意図的に発現させる場合がある。あるいは、適応免疫反応は、タンパク質治療薬に繰り返し曝されることによって生じる、意図的でない場合もある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、これらの問題に対処する改良型TeNTsのファミリーと治療レジメンを作製した。
【0011】
具体的には、本発明は、TeNTが中枢神経系の活性部位に到達するまで、それぞれが免疫系を回避するPEG化TeNT(PEG-TeNTs)又はペプチドマスク化TeNT(Pep-TeNTs)の一ファミリーを提供する。TeNTとマスキング部分(例えば、PEGや繰り返しペプチド)の間に酸分解性連結を組み込むことで、輸送小胞内のpHが低下により、抑制性介在ニューロンの細胞質基質に入る際にマスキング剤がTeNTから解離するまで免疫反応から保護される。このシステムにより、中枢神経系(CNS)に取り込まれる前に、免疫反応を回避した高活性TeNTを中枢神経系に送達することが可能となり、保護抗体反応を有する個々人の筋緊張低下の治療に有効である。
【0012】
第1の態様では、酸分解性連結を介して少なくとも1つのマスキング部分にコンジュゲ
ートした破傷風神経毒素(TeNT)を含む、破傷風神経毒素コンジュゲートが提供される。
【0013】
第1の態様の一実施形態では、マスキング部分は、ポリエチレングリコール(PEG)である。
【0014】
第1の態様の一実施形態では、マスキング部分は、マスキングポリぺプチドである。
【0015】
第2の態様では、マスキングポリぺプチドを含む少なくとも1つのマスキング部分にコンジュゲートしたTeNTを含み、前記マスキング部分がマスキングポリぺプチドを含む、破傷風神経毒素コンジュゲートが提供される。
【0016】
一実施形態では、マスキングポリペプチドは、短い繰り返しペプチド配列を含む。一実施形態では、短い繰り返しペプチド配列は、グリシン及びスレオニンを含む。
【0017】
第2の態様の一実施形態では、破傷風神経毒素コンジュゲートは、酸分解性連結を介して少なくとも1つのマスキング部分にコンジュゲートされる。
【0018】
一実施形態では、マスキング部分は、TeNT軽鎖(LC)、又はTeNT重鎖(HC)、又はTeNTフラグメントc(c)に連結されている。
【0019】
一実施形態では、TeNT軽鎖(LC)がPEG化されている、TeNT重鎖(HC)がPEG化されている、又はTeNTフラグメントc(c)がPEG化されている。一実施形態では、LCがPEG化されるとともにHCがPEG化される(PEG-TeNT-LC-HC)、又はLCがPEG化されるとともにcがPEG化される(PEG-TeNT-LC-c)。
【0020】
一実施形態では、PEGは、TeNTのリジン残基にコンジュゲートされている。別の実施形態では、PEGは、TeNTのシステイン残基にコンジュゲートされている。一実施形態では、PEGは、TeNTのシステイン残基にコンジュゲートされ、ここで、システイン残基は、既存するか、又は、任意選択で、配列番号1に対してセリン残基の代わり
に置換することにより導入される。
【0021】
一実施形態では、PEGは、約5kDa、約10kDa、又は約20kDa、又は約30kDaの分子量を有する。
【0022】
一実施形態において、マスキングポリペプチドは、TeNTのリジン残基にコンジュゲートされている。別の実施形態では、マスキングポリぺプチドは、TeNTのシステイン残基にコンジュゲートされている。一実施形態では、マスキングポリぺプチドは、TeNTのシステイン残基にコンジュゲートされ、ここで、システイン残基は、既存するか、又は、任意選択で、配列番号1に対してセリン残基の代わりに置換することにより導入される。
【0023】
一実施形態では、マスキングポリぺプチドは、短い反復アミノ酸配列を含み、TeNTのリジン残基にコンジュゲートされている。別の実施形態では、マスキングポリぺプチドは、短い、繰り返しアミノ酸配列を含み、そしてTeNTのシステイン残基にコンジュゲートされている。一実施形態では、マスキングポリぺプチドは、短い、繰り返しアミノ酸配列を含み、そしてTeNTのシステイン残基にコンジュゲートされるが、システイン残基は、既存するか、又は、任意選択で、配列番号1に対してセリン残基の代わりに置換することにより導入される。
【0024】
一実施形態では、マスキングポリペプチドは、約2kDa、約5kDa、約10kDa、又は約20kDa、又は約30kDaの分子量を有する。
【0025】
第3の態様では、第1又は第2の態様の破傷風神経毒素コンジュゲートを含む組成物が提供される。
【0026】
第4の態様では、以下の(a)及び(b)を含む組成物が提供される。
(a)以下を含む第1の破傷風コンジュゲート。
(i)酸分解性連結を介して少なくとも1つのマスキング部分にコンジュゲートされた破傷風神経毒素(TeNT)又はそのフラグメント;もしくは
(ii)非酸分解性連結を介して少なくとも1つのマスキングポリペプチドにコンジュゲートされた破傷風神経毒素(TeNT)又はそのフラグメント;及び
(b)破傷風神経毒素又は第2の破傷風神経毒素コンジュゲート。
【0027】
一実施形態では、本組成物は、治療用組成物である。
【0028】
別の実施形態では、本組成物は、化粧品組成物である。
【0029】
第5の態様では、筋緊張低下症を治療する方法が提供され、この方法には、第1もしくは第2の態様の破傷風神経毒素コンジュゲート、又は第3もしくは第4の態様の組成物を対象に投与することが含まれる。
【0030】
第5の態様では、代わりに、筋緊張低下症の治療に使用する、第1もしくは第2の態様の破傷風神経毒素コンジュゲート、又は第3もしくは第4の態様の組成物;又は筋緊張低下症を治療する医薬品の製造における、第1もしくは第2の態様の破傷風神経毒素コンジュゲート、又は第3もしくは第4の態様の組成物の使用、が提供される。
【0031】
第6の態様では、対象における筋緊張低下症を治療する方法が提供され、この方法には、第1又は第2の態様の破傷風神経毒素コンジュゲート、及び破傷風神経毒素、又は第4の態様の組成物を対象に投与することが含まれる。
【0032】
第6の態様では、代わりに、対象における筋緊張低下症の治療に使用する、第1又は第2の態様の破傷風神経毒素コンジュゲート、及び破傷風神経毒素、又は第4の態様の組成物;又は対象における筋緊張低下症を治療する医薬の製造における、第1又は第2の態様の破傷風神経毒素コンジュゲート、及び破傷風神経毒素、又は第4の態様の組成物の使用が提供される。
【0033】
一実施形態では、筋緊張低下症は、閉塞性睡眠時無呼吸症候群である。
【0034】
第7の態様では、筋緊張、筋力、筋治癒及び/又はスポーツパフォーマンスを高める方法が提供され、この方法では、第1又は第2の態様の破傷風神経毒素コンジュゲート、又は第3又は第4の態様の組成物を対象に投与することが含まれる。
【0035】
第7の態様では、代わりに、筋緊張、筋力、筋治癒及び/又はスポーツパフォーマンスを増強するために使用する、第1もしくは第2の態様の破傷風神経毒素コンジュゲート、又は第3もしくは第4の態様の組成物;又は筋緊張、筋力、筋治癒及び/又はスポーツパフォーマンスを高める医薬の製造における、第1もしくは第2の態様の破傷風神経毒素コンジュゲート、又は第3もしくは第4の態様の組成物の使用、が提供される。
【0036】
一実施形態では、第1のTeNTコンジュゲート又は第2のTeNTコンジュゲートは、PEG化TeNT軽鎖(LC)、PEG化TeNT重鎖(HC)、PEG化TeNT重鎖(HC)及びPEG化TeNT軽鎖(LC)、又はPEG化TeNTフラグメントc(c)を含む。一実施形態では、第1のTeNTコンジュゲート又は第2のTeNTコンジュゲートは、PEG-TeNT-LC-HCを含んでなる。
【0037】
他の実施形態では、第1のTeNTコンジュゲート又は第2のTeNTコンジュゲートは、PEG化HCを含んでなるPEG-TeNT-HCである。この実施形態では、LCはPEG化されていない。他の実施形態では、第1のTeNTコンジュゲート又は第2のTeNTコンジュゲートは、PEG化LC及びPEG化cを含んでなるPEG-TeNT-LC-cであり、この実施形態では、HNはPEG化されていない。
【0038】
さらなる実施形態において、第1のTeNTコンジュゲートは、PEG-TeNT-HCであり、第2のTeNTコンジュゲートは、PEG-TeNT-LC-cである。
【0039】
一実施形態では、治療することには、対象に以下を投与することが含まれる:有効性が低下するまでのPEG化cを含むTeNTコンジュゲート(PEG-TeNT-c);次に、有効性が低下するまでのPEG-TeNT-HC及びPEG-TeNT-LC-cを含む組成物;次にPEG化LC及びPEG化HCを含むTeNTコンジュゲート(PEG-TeNT-LC-HC)。
【0040】
一実施形態では、治療することには、対象に以下を投与し対応することが含まれる:PEG化cを含むTeNTコンジュゲート(PEG-TeNT-c);次にPEG-TeNT-HC及びPEG-TeNT-LC-cを含む組成物;次にPEG化LC及びPEG化HCを含むTeNTコンジュゲート(PEG-TeNT-LC-HC)を投与し、対象の抗TeNT抗体の免疫学的プロファイルを決定し、そのプロファイルに基づいてTeNTコンジュゲートの有効組成物を決定する。
【0041】
一実施形態では、治療することには、PEG化HCを含む第1のTeNTコンジュゲート(PEG-TeNT-HC)と、PEG化LC及びPEG化cを含む第2のTeNTコンジュゲート(PEG-TeNT-LC-c)を対象に投与することが含まれる。
【0042】
他の実施形態では、治療することには、PEG化cを含むTeNTコンジュゲート(PEG-TeNT-c);並びに/又はPEG化HCを含む第1のTeNTコンジュゲート(PEG-TeNT-HC)及びPEG化LC-cを含む第2のTeNTコンジュゲート(PEG-TeNT-LC-c);並びに/又はPEG化HCとPEG化LCとを含むTeNTコンジュゲート(PEG-TeNT-LC-HC)、を対象に投与することが含まれる。
【0043】
一実施形態では、治療することには対象に以下を投与することが含まれる:PEG化cを含むTeNTコンジュゲート(PEG-TeNT-c)をその有効性が低下するまで投与する。その後、治療することには対象に以下を投与することが含まれいてもよい:PEG-TeNT-HC及びPEG-TeNT-LC-cをそれらの有効性が低下するまで投与する。その後、治療することには対象に以下を投与することが含まれもよい:PEG化LC及びPEG化HCを含むTeNTコンジュゲート(PEG-TeNT-LC-HC)を投与する。
【0044】
一実施形態では、治療することには対象に以下を投与することが含まれる:有効性が低下するまでのPEG化cを含むTeNTコンジュゲート(PEG-TeNT-c);次に有効性が低下するまでのPEG-TeNT-HC及びPEG-TeNT-LC-c;次にPEG化LC及びPEG化HCを含むTeNTコンジュゲート(PEG-TeNT-LC-HC)。
【0045】
一実施形態において、治療することには、対象に以下を投与することが含まれる:有効性が低下するまでの約5kDaの分子量を有するPEGを含むPEG化c、を含むTeNTコンジュゲート(PEG-TeNT-c);次に、有効性が低下するまでの約10kDaの分子量を有するPEGを含むPEG化cを含む、TeNTコンジュゲート(PEG-TeNT-c);次に、有効性が低下するまでの約20kDaの分子量を有するPEGを含むPEG化cを含む、TeNTコンジュゲート(PEG-TeNT-c)。その後、治療することには、対象に以下を投与することが含まれていてもよい:有効性が低下するまでの、PEG-TeNT-HC及びPEG-TeNT-LC-cのいずれか又は両方が、5kDaの分子量を有するPEGを含むもの;次に、有効性が低下するまでの、PEG-TeNT-HC及びPEG-TeNT-LC-cのいずれか又は両方が、10kDaの分子量を有するPEGを含んでいるもの:そして次に、有効性が低下するまでの、PEG-TeNT-HC及びPEG-TeNT-LC-cのいずれか又は両方が、20kDaの分子量を有するPEGを含んでいるもの。その後、治療することには、対象に以下を投与することが含まれていてもよい:有効性が低下するまでの、PEG化LC及びPEG化HCのいずれか又は両方が5kDaの分子量を有するPEGを含む、TeNTコンジュゲート(PEG-TeNT-LC-HC);次に、PEG化LC及びPEG化HCのいずれか又は両方が10kDaの分子量を有するPEG含む、TeNTコンジュゲート(PEG-TeNT-LC-HC);そして次に、PEG化LC及びPEG化HCのいずれか又は両方が20kDaの分子量を有するPEGを含む、PEG-TeNT(PEG-TeNT-LC-HC)。
【0046】
一実施形態では、治療することは、対象に:PEG化cを含むTeNTコンジュゲート(PEG-TeNT-c);次にPEG-TeNT-HC及びPEG-TeNT-LC-cを含む組成物;次にPEG化LC及びPEG化HCを含むTeNTコンジュゲート(PEG-TeNT-LC-HC)、を投与して対象の抗NT抗体の免疫学的プロファイルを決定し、そのプロファイルに基づいてTeNTコンジュゲートの有効組成物を決めることが含まれる。
【0047】
一実施形態では、治療することには、まずHCにコンジュゲートされたマスキングポリペプチドを含む第1のTeNTコンジュゲート(PEP-TeNT-HC)を対象に投与し、そしてLCにコンジュゲートされたマスキングポリペプチド及びフラグメントcにコンジュゲートされたマスキングポリペプチドを含む第2のTeNTコンジュゲート(PEP-TeNT-LC-c)を対象に投与することが含まれる。
【0048】
別の実施形態では、治療することには、対象に以下を投与し対応することが含まれる:フラグメントcにコンジュゲートしたマスキングポリペプチドを含むTeNTコンジュゲ
ート(PEP-TeNT-c);並びに/又はHCにコンジュゲートしたマスキングポリペプチドを含む第1のTeNTコンジュゲート(PEP-TeNT-HC)及びLC-c
にコンジュゲートしたマスキングポリペプチドを含む第2のTeNTコンジュゲート(PEP-TeNT-LC-c);並びに/又は、HCにコンジュゲートしたマスキングポリペプチド及びLCにコンジュゲートしたマスキングポリペプチドを含むTeNTコンジュゲート(PEP-TeNT-LC-HC)。
【0049】
一実施形態では、治療することには、有効性が低下するまで、cにコンジュゲートしたマスキングポリペプチドを含むTeNTコンジュゲート(PEP-TeNT-c)を対象に投与することが含まれる。その後、治療することには、有効性が低下するまで、PEP-TeNT-HC及びPEP-TeNT-LC-cを対象に投与することが含まれていてもよい。その後、治療することには、LCにコンジュゲートしたマスキングポリペプチド及びHCにコンジュゲートしたマスキングポリペプチドとを含むTeNTコンジュゲート(PEP-TeNT-LC-HC)を対象に投与することが含まれていてもよい。
【0050】
一実施形態では、治療することには、対象に以下を投与することが含まれる:有効性が低下するまでのcにコンジュゲートしたマスキングポリペプチドを含むTeNTコンジュゲート(PEP-TeNT-c);次に有効性が低下するまでのPEP-TeNT-HC及びPEP-TeNT-LC-c;次にLCにコンジュゲートしたマスキングポリペプチド及びHCにコンジュゲートしたマスキングポリペプチドを含むTeNTコンジュゲート(PEP-TeNT-LC-HC)。
【0051】
一実施形態において、治療することには、対象に以下を投与することが含まれる。マスキングポリペプチドにコンジュゲートしたフラグメントcを含むTeNTコンジュゲート(PEP-TeNT-c)であって、マスキングポリペプチドが、約5kDaの分子量を有する短い、繰り返しアミノ酸配列のペプチドを含むものを、有効性が低下するまで投与する。次に、マスキングポリペプチドにコンジュゲートしたフラグメントcを含むTeNTコンジュゲート(PEP-TeNT-c)であり、マスキングポリペプチドが、約10kDaの分子量を有する短い、繰り返しアミノ酸配列のペプチドを含むものをその有効性が低下するまで投与する。次に、マスキングポリペプチドにコンジュゲートしたフラグメントcを含むTeNTコンジュゲート(PEP-TeNT-c)であって、マスキングポリペプチドが、約20kDaの分子量を有する短い、繰り返しアミノ酸配列のペプチドを含むものをその有効性が低下するまで投与する。その後は、治療することには、対象に以下を投与することが含まれていてもよい。PEP-TeNT-HC及びPEP-TeNT-LC-cのいずれか又は両方であって、約5kDaの分子量を有する短い、繰り返しアミノ酸配列のペプチドを含むものを、それらの有効性が低下するまで投与する;次にPEP-TeNT-HC及びPEP-TeNT-LC-cのいずれか又は両方であって、約10kDaの分子量を有するPEPを含むものを、それらの有効性が低下するまで投与する;次に、PEP-TeNT-HC及びPEP-TeNT-LC-cのいずれかまたは両方のうちの、約20kDaの分子量を有する短い、繰り返しアミノ酸配列のペプチドを含むものを、それらの有効性が低下するまで投与する。その後、治療することには、対象に以下を投与することが含まれていてもよい。LCにコンジュゲートしたマスキングポリペプ
チドとHCにコンジュゲートしたマスキングポリペプチドを含むTeNTコンジュゲート(PEP-TeNT-LC-HC)であって、マスキングポリペプチドの一方又は両方が約5kDaの分子量を有する短い繰り返しアミノ酸配列のペプチドを含むものを、その有効性が低下するまで投与する。次に、LCにコンジュゲートしたマスキングポリペプチドとHCにコンジュゲートしたマスキングポリペプチドを含むTeNTコンジュゲート(PEP-TeNT-LC-HC)であって、これらのコンジュゲートのいずれか又は両方が、約10kDaの分子量を有するマスキングポリペプチドを含むものを、それらの有効性が低下するまで投与する。次に、LCにコンジュゲートしたマスキングポリペプチドとHCにコンジュゲートしたマスキングポリペプチドを含むTeNTコンジュゲート(PEP-TeNT-LC-HC)であって、それらマスキングペプチドの一方又は両方が約20kDaの分子量を有する短い、繰り返しアミノ酸配列のペプチドを含んでいるものを投与する。
【0052】
一実施形態において、治療することには、対象に、cにコンジュゲートしたマスキングポリペプチドを含むTeNTコンジュゲート(PEP-TeNT-c);次にPEP-TeNT-HC及びPEP-TeNT-LC-cを含む組成物;次にLCにコンジュゲートしたマスキングポリペプチド及びHCにコンジュゲートしたマスキングポリペプチドを含むTeNTコンジュゲート(PEP-TeNT-LC-HC)を投与することによって、対象の抗TeNT抗体の免疫学的プロファイルを決定し、そのプロファイルに基づいてTeNTコンジュゲートの有効組成物を決定する、ことが含まれる。
【0053】
第10の態様では、第1又は第2の態様のTeNT、第3又は第4の態様の組成物を含むキットが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0054】
図1-1】図1は、ヒドラゾンPEG化、PEP化及びヒドラゾンPEP化後のTeNTsの図式表現図である。(A)PEG-HZN-TeNT-c;(B)PEP-TeNT-HC;(C)PEP-TeNT-LC-c;(D)PEP-TeNT-LC-HC;(E)PEP-HZN-TeNT-LC-HC;(F)PEP-TeNT-c;(G)PEG-HZN-TeNT-HC;(H)PEG-HZN-TeNT-LC-c;(I)PEG-HZN-TeNT-LC-HC。
図1-2】同上。
図1-3】同上。
図2図2は、pH分解性ヒドラゾン連結による、TeNTへのPEG付加反応の代表例を示す図である。
図3図3は、pH分解性ヒドラゾン連結による、TeNTへのマスキンググルコペプチドの付加反応の代表例を示す図である。
図4図4は、TeNTへのマスキングペプチドの付加反応代表例を示す図である。
図5図5は、本開示の例示的なPEG-TeNTの模式図である:(A)PEG-TeNT-c;(B)PEG-TeNT-HC;(C)PEG-TeNT-LC-c;(D)PEG-TeNT-LC-HC。
図6図6は、1314個のアミノ酸を含む成熟TeNTのアミノ酸配列(配列番号1)である。
図7-1】図7は、TeNTをエンコードするベクターpRSET-TeNTの核酸配列(配列番号2)である。
図7-2】同上。
図8図8は、TeNTをエンコードするベクターpRSET-TeNTのマップである。TeNTはN-末端His-tagで発現している。この核酸を、pRSET-Aベクターのマルチプルクローニング部位(MCS)内に挿入し、T7プロモーターの制御下で発現させた。
図9図9は、配列番号1のアミノ酸457~1314を含むHCのアミノ酸配列(配列番号3)である。
図10図10は、配列番号1のアミノ酸864~1314を含むcのアミノ酸配列(配列番号4)である。
図11図11は、配列番号1に対して、表面セリンからシステインへのアミノ酸置換S81C、S120C、S144C、S248C、S335C、S428C、S600C、S963C、S1041C、S1155C、及びS1187Cを含む、1314アミノ酸成熟TeNTのアミノ酸配列(配列番号5)である。
図12-1】図12は、図11の表面セリンからシステイン置換した成熟TeNT(配列番号5)をエンコードするベクターpRSET-TeNTの核酸配列(配列番号6)である。
図12-2】同上。
図13図13は、図11の表面セリンからシステイン置換した成熟TeNT(配列番号5)をエンコードする図12のベクターpRSET-TeNT(配列番号6)のマップである。表面セリンからシステイン置換のTeNTは、N-末端His-タグで発現する。この核酸をpRSET-AベクターのMCS内に挿入し、T7プロモーターの制御下で発現させた。
図14図14は、LC及びc領域において、配列番号1に対して、表面セリンからシステインへのアミノ酸置換S81C、S120C、S144C、S248C、S335C、S428C、S963C、S1041C、S1155C、及びS1187Cを含む、1314アミノ酸成熟TeNTのアミノ酸配列(配列番号7)である。
図15-1】図15は、図14の表面セリンからシステインに置換した成熟TeNT(配列番号7)をエンコードするベクターpRSET-TeNTの核酸配列(配列番号8)である。
図15-2】同上。
図15-3】同上。
図16図16は、図14の表面セリンからシステイン置換成熟TeNT(配列番号7)をエンコードする図15のベクターpRSET-TeNT(配列番号8)のマップである。表面セリンからシステインに置換したTeNTは、N-末端His-タグで発現する。この核酸をpRSET-AベクターのMCS内に挿入し、T7プロモーターの制御下で発現させた。
図17-1】図17は、配列番号1に対する、HC表面セリンからシステインへのアミノ酸置換S600C、S963C、S1041C、S1155C、及びS1187Cを含む、TeNTのアミノ酸配列(配列番号9)である。
図17-2】同上。
図18-1】図18は、図17の表面セリンからシステイン置換成熟TeNT(配列番号9)をエンコードするベクターpRSET-TeNTの核酸配列(配列番号10)である。
図18-2】同上。
図19図19は、図17の表面セリンからシステイン置換したTeNT(配列番号9)をエンコードする18ベクターpRSET-TeNT(配列番号10)のマップである。表面セリンからシステインに置換したTeNTは、N-末端His-タグで発現する。この核酸をpRSET-AベクターのMCS内に挿入し、T7プロモーターの制御下で発現させた。
図20図20は、LC及びc領域において、配列番号1に対して、表面セリンからシステインへのアミノ酸置換S81C、S120C、S144C、S248C、S335C、S428C、S963C、S1041C、S1155C、及びS1187Cを含む、1314アミノ酸成熟TeNTのアミノ酸配列(配列番号11)である。
図21-1】図21は、図20の表面セリンからシステインに置換された成熟TeNT(配列番号11)をエンコードするベクターpRSET-TeNTの核酸配列(配列番号12)である。
図21-2】同上。
図21-3】同上。
図22図22は、図20の表面セリンからシステイン置換成熟TeNT(配列番号11)をエンコードする図21のベクターpRSET-TeNT(配列番号12)のマップである。表面セリンからシステインに置換されたTeNTは、N-末端His-タグで発現する。この核酸をpRSET-AベクターのMCS内に挿入し、T7プロモーターの制御下で発現させた。
図23-1】図23は、配列番号1に対して、HC表面セリンからシステインへのアミノ酸置換S600C、S963C、S1041C、S1155C、及びS1187Cを含む、TeNTのアミノ酸配列(配列番号13)である。
図23-2】同上。
図24-1】図24は、図23の表面セリンからシステイン置換成熟TeNT(配列番号13)をエンコードするベクターpRSET-TeNTの核酸配列(配列番号14)である。
図24-2】同上。
図25図25は、図23の表面セリンからシステイン置換TeNT(配列番号13)をエンコードする図24のベクターpRSET-TeNT(配列番号14)のマップである。表面セリンからシステインに置換されたTeNTは、N-末端His-タグで発現する。核酸をpRSET-AベクターのMCS内に挿入し、T7プロモーターの制御下で発現させた。
図26図26は、da Silva Antunesら(2017)及びPalermoら(2017)によって同定された、主要ヒト抗体クロノタイプによって認識されるエピトープを、Discovery Studioを用いてモデル上にマッピングした、タンパク質データバンク(アクセッションID PDB:5N0B)に寄託された結晶学データ由来の、TeNTの三次元タンパク質構造モデルである。同定されたエピトープ中の又はその周辺の表面セリン残基を選択し、そのあとのPEG化に向けてシステインに変異させた。
図27図27は、(A)、PEGとTeNTの間に酸分解性ヒドラゾン連結を導入(PEG-HZN-TeNT-LC-HC)する、ヘテロ二官能性架橋剤であるスクシンイミジル6-ヒドラジノチナミドアセトンヒドラゾン(SANH)を使った、TeNTの表面リジン残基への5kDaのPEG-アルデヒドの結合を示す、SDS-PAGEゲルの写真であり、及び(B)トリプシン消化により活性型になった、PEG-HZN-TeNT-LC-HCを示すSDS-PAGEゲルの写真である。
【発明を実施するための形態】
【0055】
本発明は、一の形態として、酸性環境において放出される免疫マスキング部分を含む免疫回避TeNTコンジュゲートに関するものである。又、本発明は、免疫回避TeNTコンジュゲートを含む組成物、並びにそれらの治療上及び化粧品としての使用に関する。マスキング部分はTeNTがニューロンへ取り込まれるのに先立って機能し、CNS抑制性介在ニューロンへ取り込まれた後にコンジュゲートから放出され、その結果、CNSの活性部位に活性TeNTを放出する。理論に縛られることを望まないが、本発明者らの理解では、このことは、マスクされたTeNTが末梢神経からCNSに輸送される小胞で起こる。小胞が抑制性神経細胞に入ると、小胞は酸性化する。すると、TeNTはコンフォメーション変化を起こし、活性なTeNTを細胞質基質内に放出する。一実施形態では、本発明者らは、酸感受性マスキングを使用してこれを利用した。
【0056】
一実施形態において、本発明は、筋緊張低下症の治療に関して、任意選択で閉塞性睡眠時無呼吸症候群を治療することに関する。
【0057】
本明細書中では、破傷風トキソイドに対する保護免疫反応を示す対象の筋緊張低下症を治療するTeNTコンジュゲートの使用について説明する。その目的を達成するために、活性TeNTは、酸分解性連結を介して、PEG又はマスキングポリペプチドのようなマスキング部分にコンジュゲートされる。抑制性神経細胞内の酸性条件下、酸分解性連結は加水分解又は切断され、活性TeNTを放出する。したがって、本明細書に記載のTeNTコンジュゲートは、活性破傷風ニューロトロキシンの投与が有用である任意の機能系に使用することができる。例えば、コンジュゲートは、破傷風免疫患者などの対象における筋緊張を増強させるのに使用され得る。
【0058】
本明細書に記載のTeNTコンジュゲートは、コンジュゲートの単位規定用量、又はその組成物の投与によって活性化し、それと同じ単位用量では、TeNTはワクチン接種した対象においては活性を示さないか又はその活性が低下する。いくつかの実施形態では、マスキング部分の結合のために、変異体をTeNTに導入する。TeNTの三次元構造の分析に基いて、ポリペプチド又はPEG分子などのマスキング部分を指向性結合させるために表面に特定の変異体を導入することによって、ワクチン接種された対象に対して防御抗体反応によって標的化されることが知られている、特定のTeNTエピトープをマスキングすることができる。pH不依存性PEG化、ポリペプチドコンジュゲーション、及び部位指向性変異の組み合わせにより、ワクチン接種された哺乳類モデルにおける筋緊張を増強させるその分子の効果は、TeNTの等価単位投与と比較して、大幅に増加した。
【0059】
本発明者らはさらに、筋緊張の増強により、筋肉の回復及び治癒、筋力及び筋緊張、並びに最終的に強化されたスポーツパフォーマンスを高めることを想定している。したがって、又、本明細書に記載されることは、筋肉の回復、筋肉のパワー及び筋緊張、そしてスポーツパフォーマンスを高めるためのTeNTコンジュゲートを使用することである。
【0060】
米国特許出願公開第2002/0197278号明細書では、不適切な筋収縮の障害を治療する一連のPEG化ボツリヌス毒素が開示され、TeNTがボツリヌス毒素の代替物として使用され得ることが示唆された。しかし、TeNTは筋収縮の治療に使用することはできない。さらに、その開示の方法には、エピトープの部位指向性マスキングについては含まれておらず、本発明者らの知る限り、米国特許出願公開第2002/0197278号明細書の優先日において、TeNTエピトープの意図的マスキングに必要となるエピトープの三次元構造の解明及び同定はできなかったため、米国特許出願公開第2002/0197278号明細書で主張される発明内容は有効ではないようである。
【0061】
Wanらは、PEG化タンパク質の投与から生じる抗PEG免疫応答に対するPEG化の効果について検討しているが、いかなる治療にもその知見は活かすされていない。Wanらは、PEG化破傷風トキソイドが、非PEG化破傷風トキソイドと比較して免疫原性が減少することを開示しているが、Wanらは、治療関連の分子又は製剤を提示していない。さらに、破傷風トキソイドのPEG化は、活性TeNTの変性とは関係ない。これは、破傷風トキソイドが、ワクチン接種に用いられる生物学的に不活性なTeNTであり、TeNTのホルムアルデヒド架橋によって生成され得るからである。すなわち、PEG化されていようがいまいが、破傷風トキソイドは、活性型TeNTの、酵素活性、結合活性、及び転位活性を組み合わせで持ち合わせていない。
【0062】
当業者は、TeNTをPEG化することは、本開示のマスキングとは異なるプロセスであると理解するであろう。なぜならPEG化では、標的分子、例えばTeNTの活性を保持する必要がないためである。これに対して、本開示では、TeNTの活性を保持しつつ免疫原性を低下させる方法でマスキングすることが求められる。当業者であれば、後者が前者よりも困難であることを理解するであろう。
【0063】
国際公開第2016/001762(A1)号パンフレットには、TeNT c-フラグメント単体に関し記載されているが、これは、神経伝達物質と結合して神経細胞に入る以上の特定の活性を有しない分子である。
【0064】
破傷風トキソイドが免疫化された対象に対して、既存の抗TeNT免疫を回避する、TeNT系を使った新たな治療を行う必要がある。本明細書で開示されるのは、通常酸分解性連結を介して、マスキング部分にコンジュゲートしたTeNTを含む、マスキングされて、活性な、治療関連のTeNTコンジュゲートである。
【0065】
破傷風神経毒素(TeNT)
TeNTは約150kDaであり、tetX遺伝子から発現される。tetXのコード領域に対応するが開始メチオニンコドンを欠く、コドン最適化核酸配列は、図3のベクター配列(配列番号2)にて提供されている。TeNTは、翻訳後切断される1つのタンパク質として発現される-まず開始剤メチオニンを除去し、次に2つの部分:未切断タンパク質のN末端由来の50kDa軽鎖(LC又はA鎖)及び未切断タンパク質のC末端由来の100kDa重鎖(HC又はB鎖)に切断される。この2本の鎖は鎖間ジスルフィド結合でつながっており、神経毒性に必須である。成熟型TeNTの1314アミノ酸配列は図2(配列番号1)に示されている。
【0066】
LCは亜鉛エンドペプチダーゼ活性を持ち、小胞が膜と融合する上で必要となる小胞関連膜タンパク質(VAMP)を攻撃し、神経伝達物質の放出を阻害する。
【0067】
パパインで消化する際に、HCは、それぞれが50kDaの2つのドメインに切断され得る:HNと名付けられたN末端の転位ドメイン;及びフラグメントc(c)と名付けられたC末端のガングリオシド(膜)結合ドメインである。cを欠くTeNTは、本明細書においてLC-HNと称す。
【0068】
cは2つのポリシアロガングリオシド結合部位を持ち、神経細胞膜上のポリシアロガングリオシド(GD2 GD1b、GT1b)に結合する。したがって、cは、末梢運動軸索のシナプス前膜へのTeNTの結合を媒介し、その膜を越えてニューロンへのTeNTの移動を補助する。
【0069】
開始剤メチオニンを欠くTeNTアミノ酸配列は、図6(配列番号1)に示す。
HCのアミノ酸配列は、図9(配列番号3)に示す。
cのアミノ酸配列は、図10(配列番号4)に示す;及び
開始剤メチオニンを欠くTeNTをエンコードするベクターのコドン最適化核酸配列及びそのベクターマップは、図7(配列番号2)及び図8に示す;本明細書中、「TeNT」は、重鎖及び軽鎖からなる完全なTeNT分子に関して使用される。サブドメイン及びフラグメントは、本明細書ではそれらの略語で呼ばれる:軽鎖「LC」;重鎖「HC」;重鎖N末端ドメイン「HN」;重鎖フラグメントc「c」;軽鎖プラス重鎖N末端ドメイン「LC-HN」(すなわち、cを欠くTeNT分子)。任意のサブドメイン又はフラグメントがPEG化されている場合、接頭辞PEGが使用される。PEG-LC;PEG-HC;PEG-HN;PEG-C;PEG-LC-HN。PEG化されたフラグメント又はサブドメインを含む完全なTeNT分子では、接頭辞PEGが使用され、PEG化されたサブドメイン又はフラグメントが示される:PEG-TeNT-LC;PEG-TeNT-HC;PEG-TeNT-LC-HC;PEG-TeNT-HN;PEG-TeNT-c;PEG-TeNT-LC-c;PEG-TeNT-LC-HNなどのように示される。
【0070】
マスキングポリペプチドを含む完全なTeNT分子又はサブドメインに対しては、接頭辞PEPが使用され、PEP化されたサブドメイン又はフラグメントが示される:PEP-TeNT-LC;PEP-TeNT-HC;PEP-TeNT-LC-HC;PEP-TeNT-HN;PEP-TeNT-c;PEP-TeNT-LC-c;PEP-TeNT-LC-HN等である。
【0071】
サブドメイン及びフラグメントは、それぞれ特定の機能を持つので、完全なTeNTに対して互換できないことが理解されよう。
【0072】
本明細書に開示のTeNTは、活性であっても不活性であってもよい。活性なTeNTは、元々のTeNTと同じ生物学的活性を有する。不活性なTeNTは、元々のTeNTにある1つ以上の活性を欠く。一実施形態では、不活性なTeNTは、抑制性神経伝達物質の放出をブロックしない。不活性なTeNTは、破傷風トキソイドを含む。一実施形態では、不活性なTeNTは、本明細書に開示するような不活性なTeNTである。不活性TeNTは、適応免疫系に対してデコイとして作用するために、本開示の活性TeNTの活性を向上させることができる。
【0073】
一実施形態では、2つ以上のTeNTがコンジュゲートされてもよい。
【0074】
別の実施形態では、TeNTは、コンジュゲートされていない。本明細書に開示の組成物、方法及び使用の一実施形態では、第1のPEG-TeNTは、第2のTeNTとコンジュゲートしていない
【0075】
理論に拘束されることを望まないが、本発明者らは、本開示のTeNTには、コンジュゲートされないことで、少なくとも1つの明確かつ重要な利点が存在すると考える。
具体的には、使用における一実施形態では、本組成物は、対象の適応免疫応答からPEG化又はペプチドによってマスクされる1つの活性TeNTと、同時に適応免疫応答を引きつける、不活性でマスクされないデコイTeNTと組み合わせて提供される。これらのTeNTがコンジュゲートされた場合、適応免疫応答により、マスクされた活性TeNTの存在にもかかわらず、マスクされていないデコイTeNTの貢献により、そのコンジュゲートは不活性化されるだろう。したがって、一実施形態では、2つのTeNTがコンジュゲートされてないことが保証されることで、本組成物が活性であることが保証される。
【0076】
すなわち、一実施形態において、2つの機能が所望される場合、それぞれ機能は独立していることが意図され、よって本発明のTeNTはコンジュゲートされない。
【0077】
理論に拘束されることを望まないが、本発明者らは、2つのTeNTをコンジュゲートすることにより、活性TeNT又は活性TeNTの活性は、おそらくコンジュゲートのサイズに基づく免疫応答を引き起こすことで、損なわれかもしれないと考察している。
【0078】
これらの利点を認識した上ではあるが、一実施形態では、2つ以上のTeNTが互いにコンジュゲートされ得る。
【0079】
本明細書に開示され、図1に描かれている免疫回避PEG-TeNT及びPEP-TeNTは、以下を含む。
ヒドラゾンPEG化フラグメントc(PEG-HZN-TeNT-c)を有するTeNT(図1A)(実施例1)。
PEP化重鎖(PEP-TeNT-HC)を有するTeNT(図1B)(実施例9)。
PEP化軽鎖及びフラグメントc(PEP-TeNT-LC-c)を有するTeNT(図1C)(実施例10)。
PEP化された軽鎖及び重鎖(PEP-TeNT-LC-HC)を有するTeNT(図1D)(実施例11)。
ヒドラゾンPEP化軽鎖及び重鎖(PEP-HZN-TeNT-LC-HC)を有するTeNT(図1E)(実施例11);
PEP化フラグメントc(PEP-TeNT-c)を有するTeNT(図1F)(実施例8)。
ヒドラゾンPEG化重鎖(PEG-HZN-TeNT-HC)を有するTeNT(図1G)(実施例2);
ヒドラゾンPEG化軽鎖及びPEG化フラグメントc(PEG-HZN-TeNT-LC-c)を有するTeNT(図1H)(実施例3);及び
完全ヒドラゾンPEG化されたもの(PEG-HZN-TeNT-LC-HC)TeNT(図1I)(実施例5)。
【0080】
PEG-HZN-TeNT-cは、ワクチン接種された対象における適応免疫系の既存の免疫応答を回避するので有利である。一実施形態では、PEG-TeNT-cにより、有効性が低下するまで使用されることになる第一層の治療が提供される。
【0081】
PEG-TeNT-HC及びPEG-TeNT-LC-cは、ワクチン接種された対象における適応免疫系の既存の免疫応答を回避するか、又はPEG-TeNT-cへの反復曝露によって誘発される適応免疫系の免疫応答を回避するので有利である。
【0082】
一実施形態では、PEG-TeNT-HC及びPEG-TeNT-LC-cは一緒になって、それらの有効性が低下するまで使用されることになる第2層治療を提供する。
【0083】
PEG-TeNT-LC-HCは、ワクチン接種された対象における適応免疫系の既存の免疫応答を回避し、及びPEG-TeNT-c及びPEG-TeNT-HC、さらにPEG-TeNT-LC-cへの反復曝露によって誘発される適応免疫系の免疫応答も回避するので有利である。
【0084】
一実施形態では、PEG-TeNT-LC-HCにより、その有効性が低下するまで使用されることになる第3層の治療が提供される。
【0085】
又、PEG化軽鎖(PEG-TeNT-LC)を有するTeNT、PEG化LC及びHN(PEG-TeNT-LC-HN)を有するTeNT、及びPEG化HN(PEG-TeNT-HN)を有するTeNTが開示される。
【0086】
当業者によれば、PEG-TeNTの特定の組み合わせ及びそれらのPEG-TeNTの組み合わせによる処理の順序を変更できることが理解されるであろう。
【0087】
ポリエチレングリコール(PEG)
PEGを、酸分解性連結を介して以下のものにコンジュゲートしてもよく、それに該当するものとして、例えば、リジン(例えば、アミノ-PEG化)、システイン(例えば、チオール-PEG化及び橋渡しPEG化)、ヒスチジン、アルギニン、アスパラギン酸、アスパラギン(例えばN-糖PEG化)、グルタミン酸、グルタミン(例えば、トランスグルタミナーゼ媒介PEG化)、セリン(例えば、O-糖PEG化)、スレオニン(例えば、O-糖PEG化)、又はTeNTのチロシン残基が挙げられる。PEG化の例には、N末端PEG化及びC末端PEG化も含まれる。
【0088】
PEG化は、PEGをヒドロキシル反応性である官能基、例えば無水物、酸塩化物、クロロホルメート及び炭酸塩と反応させることにより行ってもよい。あるいは、PEG化は
、アルデヒド、エステル、及びアミドのような官能基により行ってもよい。
【0089】
PEGは直鎖状であっても分岐状であってもよい。
【0090】
PEGは、例えば、ポリ[オリゴ(エチレングリコール)メチルエーテルメタクリレート](POEGMA)等の変性PEGであってもよい。
【0091】
PEG化とは、部位特異的PEG化であってもよい。
【0092】
一実施形態では、TeNT又はTeNTフラグメントの表面セリン残基を、免疫原性エピトープにおける指向性PEGコンジュゲーションを促進するために、表面システイン残基へと変異させる。この文脈では、変異は置換と同義であり、例えば、セリンからシステインへの置換が挙げられる。そのような変異、又は置換は、任意の組み合わせであってよく、S81C;S120C;S144C;S248C;S335C;S428C;S600C;S963C;S1041C;S1155C;及びS1187Cのうちの1つ以上が含まれる。
【0093】
ヘテロ二官能性PEGの官能基としては、マレイミド、ビニルスルホン、ピリジルジスルフィド、アミン、カルボン酸、NHSエステルが挙げられる。
【0094】
一実施形態では、PEGは、カルボジイミド-EDC及びスルホ-NHSを用いたカルボキシル-アミン架橋によりTeNTにコンジュゲートされる。
【0095】
本発明では、TeNTの異なるサブドメイン又は断片にコンジュゲートされた、異なる分子量のPEGを含むPEG-TeNTも考えられる。
【0096】
例えば、PEGを本開示のTeNTに、4℃~25℃で2~6時間、コンジュゲート又は結合させることができる。一実施形態では、PEGをTeNTに、室温で6時間、コンジュゲートさせた。
【0097】
マスキングポリペプチド(PEP)
マスキングポリペプチドを以下のものにコンジュゲートしてもよい。その例としては、リジン(例えば、アミノ-PEP化)、システイン(例えば、チオール-PEP化及び橋渡しPEP化)、ヒスチジン、アルギニン、アスパラギン酸、アスパラギン(例えば、N-糖PEP化)、グルタミン酸、グルタミン(例えば、トランスグルタミナーゼ媒介PEP化)、セリン(例えば、O-グリ-PEP化)、スレオニン(例えば、O-糖PEP化)、又はTeNTのチロシン残基が挙げられる。PEP化の例には、N-末端PEP化及びC-末端PEP化も含まれる。
【0098】
PEP化は、PEPをヒドロキシル反応性である官能基、例えば無水物、酸塩化物、クロロホルメート及び炭酸塩と反応させることによって行われてもよい。あるいは、PEG化は、アルデヒド、エステル、及びアミドのような官能基を用いて行われてもよい。
【0099】
PEPは、直鎖状であっても分岐状であってもよい。
【0100】
PEPは、O-連結グリコシル化を伴う又は伴わない、グリシンとスレオニンの繰り返し(GT-PEP)又はランダムな配列であってもよい。
【0101】
PEP化は、部位特異的なPEP化であってもよい。
【0102】
一実施形態では、TeNT又はTeNT断片の表面セリン残基を表面システイン残基に変異させ、免疫原性エピトープにおける指向性PEPコンジュゲーションを容易にする。この文脈では、変異は置換と同義であり、例えば、セリンからシステインへの置換が挙げられる。そのような変異、又は置換には、S81C;S120C;S144C;S248C;S335C;S428C;S600C;S963C;S1041C;S1155C;及びS1187Cのうちの1つ以上の任意の組み合わせが含まれる。
【0103】
ヘテロ二官能性PEPの官能基としては、マレイミド、ビニルスルホン、ピリジルジスルフィド、アミン、カルボン酸、NHSエステルなどが挙げられる。
【0104】
一実施形態において、PEPは、カルボジイミド-EDC及びスルホ-NHSを用いたカルボキシル-アミン架橋を使用してTeNTにコンジュゲートされる。
【0105】
本発明では又、TeNTの異なるサブドメイン又は断片にコンジュゲートされた異なる分子量のPEPを含むPEP-TeNTが考えられる。
【0106】
PEPは、例えば、4℃~25℃の間で2~6時間、本開示のTeNTにコンジュゲート又は結合させることができる。一実施形態では、PEPを室温で6時間、TeNTにコンジュゲートした。
【0107】
理論に拘束されることを望まないが、本発明者らが考えるには、PEPは、PEGよりも免疫原性が低く、PEGにアレルギーがある対象において特に有用であり得、PEPは、例えば、TeNTの内因性溶解度付近での溶解度を維持し、及び/又は膜相互作用を最小化することによって、PEGよりもTeNT活性に対する有害性が低くあり得る。
【0108】
ヒドラゾン連結
ヒドラゾン連結は、PEG分子とTeNTとの間、又はマスキングポリペプチドとTeNTとの間に導入してもよく、ここでPEG又はポリペプチドは以下のものにコンジュゲートさせてもよい:それに該当するものとして、例えば、リジン(例えば、アミノ-PEG化、アミノ-PEP化)、システイン(例えば、チオール-PEG化及び橋渡しPEG化、チオール-PEG化及び橋渡しPEG化)、ヒスチジン、アルギニン、アスパラギン酸、アスパラギン(例えば、N-糖PEG化)、グルタミン酸、グルタミン(例えば、トランスグルタミナーゼを介したPEG化)、セリン(例えばO-糖PEG化)、スレオニン(例えばO-糖PEG化)、又はTeNTのチロシン残基が挙げられる。ヒドラゾンは、ヘテロ二官能性架橋剤、例えば、スクシンイミジル6-ヒドラジノニコチンアミドアセトンヒドラジン(SANH)、スクシンイミジル6-ヒドラジニウムニコチン塩酸塩(SHNH)、N-(β-マレイミドプロピオン酸)ヒドラジド(BMPH)、N-ε-マレイミドカプロン酸ヒドラジド(EMCH)又はN-κ-マレイミドウンデカン酸ヒドラジド(KMUH)と、TeNT上の表面リジン又はシステイン及びPEG又はペプチド上のアルデヒド基とを反応させることにより導入してもよい。ヒドラゾンは、TeNTの表面リジンやシステインにニコチンアミド基を導入し、PEGやペプチドのカルボニル基と連結することによる、化学的手法で導入することができる。PEG化の例としては、N末端PEG化、C末端PEG化も含まれる。ヒドラゾンは、グリコールペプチド上の酸化された炭水化物のカルボニル基とヒドラジドを反応させ、その後に、その後に、ヘテロ二官能性クロスリンカーでTeNT上のシステイン残基に架橋する。
【0109】
糖ペプチド
ペプチドは、炭水化物をN-連結型グリコシル化又はO-連結型グリコシル化によってペプチドに結合される真核生物宿主系において発現させることによって、糖ペプチドとして産生され得る。糖ペプチドを、マスキング剤として直接、たとえば以下のTeNTにコン
ジュゲートさせてもよい。その例としては、リジン(例えば、アミノ-PEG化、アミノ-PEP化)、システイン(例えば、チオール-PEG化及び橋渡しPEG化、チオール-PEG化及び橋渡しPEG化)、ヒスチジン、アルギニン、アスパラギン酸、アスパラギン(例えば、N-糖PEG化)、グルタミン酸、グルタミン(例えば、トランスグルタミナーゼ媒介PEG化)、セリン(例えば、O-糖PEG化)、スレオニン(例えば、O-糖PEG化)、又はTeNTのチロシン残基が挙げられる。PEG化の例としては、N末端PEG化及びC末端PEG化も挙げられる。糖タンパク質の炭水化物残基を酸化して、TeNTに直接糖ペプチドをコンジュゲートさせるのに使用するカルボニル基を導入してもよく、又は糖ペプチドとTeNTの間にpH分解性リンカーを導入してもよい。
【0110】
効能・効果
本明細書で使用される場合、「筋緊張低下」とは、抑制性神経伝達物質、例えばGABA又はグリシンを抑制することによって治療され得る、不随意の筋力低下を含む任意の障害を意味する。このように、「筋緊張低下症」には、神経駆動の低下、又は筋緊張、筋力、若しくは神経駆動の低下又は不具合を引き起こす他の原因や状態に伴う筋緊張の低下を含む。したがって、一実施形態では、筋緊張低下症は、神経性筋緊張低下症であってもよい。一実施形態では、筋緊張低下症は睡眠誘発性であってもよく、すなわち、筋肉が、覚醒期間中の同じ筋肉と比較して、睡眠中に低緊張性であってもよい。
【0111】
本開示に係るTeNTコンジュゲート、組成物又は方法により治療され得る筋緊張低下症としては、閉塞性睡眠時無呼吸、無呼吸、いびき、眼瞼下垂、ホルネル症候群、筋萎縮、神経学的障害筋、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、運動ニューロン疾患、任意の筋疾患、多発性硬化、重症筋無力症、顔面筋緊張の低下、任意の眼瞼外反、あらゆる原因による任意の骨格筋又は平滑筋の弛緩性麻痺又は弱化、後に人工呼吸器不全を伴う、あらゆる原因による呼吸筋肉弱化、外傷による筋力低下又は筋弛緩による不良姿勢、骨盤底筋弛緩又は弱化、又は鼻又は上気道弛緩、を挙げることができる。
【0112】
本開示に係るTeNTコンジュゲート、組成物又は方法により治療され得る他の障害としては、筋萎縮、又は筋肉量の減少を挙げることができる。
【0113】
本開示に係る治療されるべき障害が筋緊張低下症それ自体ではない場合、本開示のTeNTで治療することによって筋緊張を増強させ、障害の症状を緩和することができる。
【0114】
本明細書に記載のTeNTコンジュゲートの化粧品用途としては、腹筋の引き締め、大胸筋の引き締め、大殿筋の引き締め、骨格筋の引き締め、又は筋肉の弛緩によって引き起こされる顔の垂れ下がりの治療を挙げることができる。
【0115】
本開示のTeNTコンジュゲート、本開示に係る組成物又は方法により治療され得る平滑筋、骨格筋、組織又は器官としては、上部食道、食道壁、食道括約筋、下部食道括約筋、肛門括約筋、膀胱、膀胱括約筋、膣括約筋、幽門括約筋、オディ括約筋、回盲部括約筋、骨盤底筋、前立腺、顎下腺、耳下腺、舌下腺、口腔粘膜の小唾液腺、声帯、喉頭筋、表情筋、顎筋、顎挙筋、咀嚼筋、頭皮筋、胸筋、背筋、上肢筋、前腕筋、下肢筋、手筋、足筋、胃壁筋、大腸壁筋、頸部筋、咽頭拡張筋、咬筋、内側翼突筋、外側翼突筋、オトガイ舌骨筋、オトガイ舌筋、口蓋垂筋、口蓋帆張筋、茎突咽頭筋、顎舌骨筋、茎突舌骨筋、舌骨舌筋、顎二腹筋、胸鎖乳突筋、僧帽筋、側頭筋、輪状咽頭筋、子宮筋・子宮頸部、胃神経供給部、鼻内粘膜、肺粘膜、皮膚、胸腺、骨、冠動脈、肺平滑筋、心筋を挙げることができる。
【0116】
一実施形態では、喉頭片麻痺、再発性喉頭神経障害又はローラー症候群を、本開示のTeNTコンジュゲートにより治療してもよい。これらの兆候は、ウマ科又はイヌ科の対象
、特にウマ又はイヌにおいて治療されてもよい。
【0117】
本明細書に記載のTeNTコンジュゲートは、筋緊張、筋力、筋治癒及び/又はスポーツのパフォーマンスを高めるために使用することもできる。
【0118】
組成物及び投与
本開示の組成物は、治療用組成物又は化粧用組成物であってよい。すなわち、組成物を治療目的に又は化粧品用に使用してもよい。
【0119】
本明細書中、用語「治療用組成物」又は「化粧用組成物」は、本明細書に記載の対象における筋緊張低下症を抑制又は治療するTeNTを含む組成物を意味する。組成物は、対象へ投与するために製剤化されている。一実施形態では、組成物は、無菌である。一実施形態では、組成物は、パイロジェンフリーである。組成物は、薬剤的に許容可能な担体を含んでいてもよい。好ましくは、組成物は、GLP(Good Laboratory Practice)又はGMP(Good Manufacturing Practice)に従って製造される。
【0120】
本開示のTeNTコンジュゲートは、10mg/kgまで又はそれ以上投与してもよい。本開示のTeNTコンジュゲートは、約1fg/kg、約5fg/kg、約10fg/kg、約50fg/kg、約100fg/kg、約500fg/kg、約1pg/kg、約5pg/kg、約10pg/kg、約50pg/kg、約100pg/kg、約500pg/kg、約1ng/kg、約2ng/kg、約3ng/kg、約4ng/kg、約5ng/kg、約6ng/kg、約7ng/kg、約8ng/kg、約9ng/kg、約1
0ng/kg、約11ng/kg、約12ng/kg、約13ng/kg、約14ng/kg、約15ng/kg、約16ng/kg、約17ng/kg、約18ng/kg、約19ng/kg、約20ng/kg、約30ng/kg、約40ng/kg、約50ng/kg、約60ng/kg、約70ng/kg、約80ng/kg、約90ng/kg、約100ng/kg、約200ng/kg、約 300ng/kg、約400ng/kg
、約500ng/kg、約600ng/kg、約700ng/kg、約800ng/kg、約900ng/kg、約1μg/kg、約5μg/kg、約10μg/kg、約50μg/kg、約100μg/kg、約500μg/kg、約1mg/kg又は約10mg/
kg、の量を投与してもよい。本開示のTeNTコンジュゲートは、上記の用量のいずれかの範囲内で投与され得る。
【0121】
本開示のTeNTコンジュゲートは、1000IU/kgまで又はそれ以上投与してもよい。本開示のTeNTコンジュゲートは、約0.1IU/kg、約0.2IU/kg、約0.3IU/kg、約0.4IU/kg、約0.5IU/kg、約0.6IU/kg、約0.7IU/kg、約0.8IU/kg、約0.9IU/kg、約1IU/kg、約2
IU/kg、約3IU/kg、約4IU/kg、約5IU/kg、約6IU/kg、約7IU/kg、約8IU/kg、約9IU/kg、約10IU/kg、約11IU/kg、約12IU/kg、約13IU/kg、約14IU/kg、約15IU/kg、約16IU/kg、約17IU/kg、約18IU/kg、約19IU/kg、約20IU/kg、約30IU/kg、約40IU/kg、約50IU/kg、約60IU/kg、約70IU/kg、約80IU/kg、約90IU/kg、約100IU/kg、約200IU/kg、約300IU/kg、約400IU/kg、約500IU/kg、約600IU/kg、約700IU/kg、約800IU/kg、約900IU/kg、約1000IU/kg、の量を投与してもよい。本開示のTeNTコンジュゲートは、上記の用量のいずれかの範囲内で投与され得る。
【0122】
2つのTeNTコンジュゲートを含む組成物において、例えば、TeNT-HCがPE
G化されている(PEG-TeNT-HC)第1のTeNTコンジュゲートと、TeNT-LCがPEG化されており及びTeNT-cがPEG化されている(PEG-TeNT-LC-c)、第2のTeNTコンジュゲートを含む組成物では、第1のTeNTコンジュゲートの第2のTeNTコンジュゲートに対する割合は変化させることができる。例えば、第1のTeNTコンジュゲートの第2のTeNTコンジュゲートに対する比は、約1000:1、約500:1、約100:1、約50:1、約10:1、約5:1、約4:1、約3:1、約2:1、約1:1;約1:2、約1:3、約1:4、約1:5、約1:10、約1:50、約1:100、約1:500又は約1:1000であってもよい。
【0123】
組成物は、TeNTコンジュゲートの任意の組み合わせを含んでいてもよく、PEG-TeNT-HCとPEG-TeNT-LC-cの組み合わせに限定されるものではない。組成物は以下のものを含む:PEG-TeNT-c及びPEG-TeNT-HC;PEG-TeNT-c及びPEG-TeNT-LC-c;PEG-TeNT-c及びPEG-TeNT-LC-HC;そしてPEG-TeNT-LC-cとPEG-TeNT-LC-HCを含む。又、以下を含む組成物も開示される。PEG-TeNT-c、PEG-TeNT-HC及びPEG-TeNT-LC-c;PEG-TeNT-c、PEG-TeNT-HC及びPEG-TeNT-LC-HC;PEG-TeNT-c、PEG-TeNT-LC-c、及びPEG-TeNT-LC-HC;PEG-TeNT-HC、PEG-TeNT-LC-c及びPEG-TeNT-LC-HC;並びにPEG-TeNT-c、PEG-TeNT-HC、PEG-TeNT-LC-c及びPEG-TeNT-LC-HCである。組成物において、任意のTeNTが置換されてもよく、任意の組成物は、PEG-TeNT-LC、PEG-TeNT-LC-HN、及び/又はPEG-TeNT-HNをさらに含んでいてもよい。
【0124】
組成物は、以下を含んでいてもよい。PEP-TeNT-c及びPEP-TeNT-HC;PEP-TeNT-c及びPEP-TeNT-LC-c;PEP-TeNT-c及びPEP-TENT-LC-HC;PEP-TeNT-HC及びPEP-TeNT-LC-HC;及びPEP-TENT-LC-C及びPEP-TeNT-LC-HCを含む。又、以下を含む組成物も開示される。PEP-TeNT-C、PEP-TeNT-HC及びPEP-TeNT-LC-c;PEP-TeNT-c、PEP-TeNT-HC及びPEP-TeNT-LC-HC;PEP-TeNT-c、PEP-TENT-LC-c及びPEP-TeNT-LC-HC;PEP-TeNT-HC、PEP-TeNT-LC-c及びPEP-TeNT-LC-HC;並びにPEP-TeNT-c、PEP-TeNT-HC、PEP-TeNT-LC-c及びPEP-TeNT-LC-HC。
【0125】
本開示のTeNTコンジュゲート又は組成物は、週に1回、2回又は3回、月に1回、2回又は3回、四半期に1回、2回又は3回、6ヶ月に1回、2回又は3回、又は年に1回、2回又は3回投与されうる。
【0126】
TeNTコンジュゲート又は組成物は、単回投与、分割投与、又は複数回投与で投与することができる。筋肉が対として存在する場合、PEG-TeNTは、対の一方の筋肉の片側に投与されてもよく、又は対の両方の筋肉の両側に投与されてもよい。
【0127】
本開示の2つ以上のPEG-TeNTを含む組成物の代わるものとして、係る2つ以上のTeNTコンジュゲート又はその組成物を、順次又は同時に又組み合わせて投与してもよい。
【0128】
TeNTコンジュゲート又は組成物を、任意の適切な方法、例えば、注射、外科的移植、局所適用、又は鼻腔内投与によって、対象に局所的に投与してもよい。一実施形態では、TeNTコンジュゲートは、罹患した筋肉への注射によって筋肉内に投与される。
【0129】
TeNTコンジュゲート又は組成物は、良好な医療行為に準ずる様式で処方、投薬、および投与される。この文脈で考慮すべき要因としては、治療される特定のタイプの筋緊張低下症、治療される特定の対象、対象の臨床状態、投与部位、投与方法、投与のスケジュール、及び歯科を含む医療従事者に既知の他の要因が挙げられる。投与されるTeNTコンジュゲートの治療上有効な量は、そのような考慮事項によって決められるであろう。
【0130】
TeNTコンジュゲート又は組成物は、当業者に知られているようなサステイン放出製剤に配合することができる。
【0131】
薬剤的に許容可能な担体としては、水、緩衝水、例えば、正常生理食塩水又はハンクス液若しくはアール液のようなバランスのとれた溶液などの生理食塩水、グリシン、及びヒアルロン酸が挙げられる。
【0132】
TeNTコンジュゲート又は組成物は、筋肉内投与用に製剤化してもよい。筋肉内投与用の組成物は、薬剤的に許容可能な滅菌水性又は非水性溶液、分散液、懸濁液又はエマルション、並びに滅菌注射用溶液又は分散液に再構成するための滅菌粉末を含んでいてもよい。適切な水性及び非水性担体、溶媒、希釈剤又はビヒクルの例としては、水、エタノール、ポリオール(グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、カルボキシメチルセルロース及びその混合物、植物油(オリーブオイルなど)、注射用有機エステル(オレイン酸エチルなど)が挙げられる。
【0133】
本組成物は、TeNTのデリバリーを加速するために浸透性エンハンサーを含んでいてもよい。浸透増強剤としては、オレイン酸、ラウリン酸、カプリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、リノール酸、リノレン酸、ジカプレリン酸、リクリン酸、モノオレイン、ジラウリン、カプリン酸、アラキドン酸、グリセリル1モノカプリン酸、モ
ノ及びジグリセリドなどの脂肪酸並びにその生理学上許容可能な塩が挙げられる。
【0134】
本組成物は、例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、クエン酸、サリチル酸塩(例えば、サリチル酸ナトリウム、5-メトキシサリチル酸塩、ホモバニレート)などのキレート剤をさらに含んでもよい。
【0135】
提供されるものには、又、PEG-TeNT又はTeNTコンジュゲートを含む組成物を含んだ容器を含む、製造物品及び/又はキットが挙げられる。容器は、TeNTコンジュゲート又は組成物を含むボトル、バイアル又はシリンジであってもよく、任意に単位投与形態であってもよい。例えば、TeNTコンジュゲート又は組成物は、使い捨て容器、任意選択で注射器中の、注射可能な溶液の形態であってよい。製造品及び/又はキットは、本明細書に開示の方法に従って対象を治療することを示す、印刷された説明書及び/又はラベル等を更に含んでもよい。
【0136】
「治療上有効な量」という用語は、対象における筋緊張低下症を治療するのに有効なTeNTコンジュゲートの量を指す。
【0137】
「治療する」、「治療している」又は「治療」という用語は、治療的処置及び予防的又は防止的措置の両方を指し、その目的は、対象における筋緊張低下症を予防、低減、又は改善すること、又は対象における筋緊張低下症の進行を遅らせる(lessen)ことである。治療を必要とする対象には、筋緊張低下症を既に患っている対象だけでなく、筋緊張低下症を予防又は改善しようとする対象も含まれる。
【0138】
「予防している」、「予防」、「予防的」又は「予防的」という用語は、筋緊張低下症
の発生を抑えること、又は筋緊張低下症の発生を妨げること、それから防御すること、又はそれから保護することを意味する。予防を必要とする対象は、筋緊張低下症を発症しやすい場合がある。
【0139】
「改善する」又は「改善」という用語は、筋緊張低下症の減少、低減又は除去を意味する。
【0140】
筋緊張低下症は、定量化されてもよい。筋緊張低下症は、例えば0~5のような半定量的スケールで定量化されてもよく、ここで0は不在を表し、1~4は重症度を識別できるスケールを表し、5は最大の重症度を表す。あるいは、筋緊張低下を、二値事象、すなわち、存在又は不在、0又は1として定量化する場合もある。他の半定量的尺度は、当業者には容易に明らかであろう。別の実施形態では、筋緊張低下は、例えばフォースゲージを使用して、定量的スケールで定量化されてもよい。
【0141】
筋緊張低下症の定量化は、いずれも、コントロール、例えば、PEG-TeNTを投与されていない健常なコントロール対象、筋緊張低下症の治療を受けているがTeNTコンジュゲートによる治療を受けていない患部コントロール対象、又は集団と比較することができる。
【0142】
TeNTコンジュゲートを投与して筋緊張低下症を治療した場合、筋緊張低下症の減少率は、約1%減少、約2%減少、約3%減少、約4%減少、約5%減少、約6%減少、約7%減少、約8%減少、約9%減少、約10%減少、約20%減少、約30%減少、約40%減少、約50%減少、約60%減少、約70%減少、約80%減少、約90%減少又は約100%の減少でありうる。
【0143】
本明細書中、用語「対象」は、哺乳類を指す場合がある。哺乳類は、霊長類、特にヒトであってもよく、又は家畜、動物園、又はコンパニオン動物であってもよい。本明細書に開示のPEG-TeNT、組成物及び方法により、特にヒトに対して医学的治療を行うことを考えているが、馬、牛及び羊などの家畜、犬及び猫などのコンパニオン動物、又はネコ科、イヌ科、ウシ科及びウマ科などの動物園にいる動物の治療を含む獣医的治療にも適用することが可能である。
【0144】
本明細書において他に定義されない限り、本明細書中の技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって、及び公開文章を参照することによって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。
【0145】
用語「a」又は「an」は、1つ又は複数を意味し、例えば、「a TeNT」は、1つ又は複数のTeNTを表すと理解されることに留意されたい。このように、用語「a」又は「an」、「1つ以上」、及び「少なくとも1つ」は、本明細書において互換的に使用され得る。
【0146】
これに続く特許請求の範囲及び本発明の説明において、文脈が明示的な言語で記載される場合又は不可欠な意味を含む場合を除き、単語「comprise」又は「comprises」若しくは「comprising」等の変形は、包括的な意味で、即ち、記載した特徴の存在を特定するが、本発明の種々の実施形態におけるさらなる特徴の存在又は追加を排除しないという観点で使用される。
【0147】
本明細書中「約」という用語は、所与の数について、その数の大きさ±25%の値の範囲を表すものとする。他の実施形態では、用語「約」は、その数値の±20%、±15%、±10%、±5%、±4%、±3%、±2%、又は±1%の大きさの所定の数値の値の
範囲を設定する。例えば、一実施形態では、「約3グラム」は、2.7グラム~3.3グラム(すなわち、3グラム±10%)等の値を示す。
【0148】
同様に、事象のタイミング又は持続時間は、少なくとも25%変動させてもよい。例えば、特定のイベントが1日続くものとして一実施形態で開示されることがあるが、イベントは1日以上又は1日未満続くことがある。例えば、「1日」は、約18時間~約30時間の期間を含んでもよい。他の実施形態では、期間は、その期間の±20%、±15%、±10%、±5%、±4%、±3%、±2%、又は±1%だけ変化してもよい。
【実施例
【0149】
実施例1-PEG-HZN-TeNT-cの調製(図1A
この実施例では、TeNT-cの表面セリン残基を表面システイン残基に変異させ、免疫原性エピトープでの指向性PEGコンジュゲーション化をし易くして、図1Aの分子を生成させる。変異体は以下の通りである:S963C、S1041C、S1155C、及びS1187Cである。
【0150】
表面セリンからシステインへの置換S963C、S1041C、S1155C、及びS1187Cを有するTeNTの遺伝子は、商業プロバイダー、例えばIntegrated DNA Technologiesによって合成される。この遺伝子は、ベクターからの6xヒスチジンタグが変異体タンパク質のN末端に付加されるように、制限消化によりpRSET-A発現ベクターにサブクローニングされる。
【0151】
S963C、S1041C、S1155C、及びS1187Cを含むTeNTを、実施例5に従って発現、PEG化、精製し、PEG-TeNT-cを製造する。
【0152】
実施例2-PEG-HZN-TeNT-HC(図1G)の調製
この実施例では、TeNT-HCの表面セリン残基を表面システイン残基に変異させ、免疫原性エピトープにおける指向性PEGコンジュゲーション化をし易くし、図1Gの分子を生成させる。変異体は以下の通りである。S600C、S963C、S1041C、S1155C、及びS1187C(図24 配列番号16)である。
【0153】
表面セリンからシステインへの置換体S600C、S963C、S1041C、S1155C、及びS1187Cを有するTeNTの遺伝子は、商業プロバイダー、例えばIntegrated DNA Technologiesによって合成される。この遺伝子は、ベクターからの6xヒスチジンタグが変異タンパク質のN末端に付加されるように、制限消化によってpRSET-A発現ベクター(図25配列番号17、図26)にサブクローニングされる。
【0154】
S600C、S963C、S1041C、S1155C、及びS1187Cを含むTeNTを、実施例5に従って発現、PEG化、精製し、PEG-TeNT-HCを製造する。
【0155】
2.1-エンドトキシンの除去
実施例4に従って、TeNT-LC-cセリン変異体からエンドトキシンを除去した。
【0156】
2.2-PEG-HZN-マレイミドの生成
1.モル過剰のBMPH、EMCH又はKMUHを、約2kDa、約5kDa、約10k
Da又は約20kDaのPEG-プロピオンアルデヒドと、通常雰囲気、窒素雰囲気又はアルゴン雰囲気下で、PBS(pH6.5~7.5)又は10~100%DMF中で組み合わせる。
2.結合は、4~37℃、1~16時間の間で行う。
【0157】
2.3-システイン残基へのPEG結合
1.約2kDa、約5kDa、約10kDa又は約20kDaのPEGを有するモル過剰
のPEG-HZN-マレイミドを、PBS又は<10%DMF中、pH6.5~7.5でセリン変異体TeNT-LC-c(0.5-2mg/mL)と組み合わせた。
2.室温で6時間、結合を行った。
3.過剰なPEGはサイズ排除クロマトグラフィーで除去した。
【0158】
2.4-タンパク質のトリプシン消化活性化
TeNT-LC-cセリン変異体を活性化するトリプシン消化は、実施例4に従って行った。
【0159】
実施例3-PEG-HZN-TeNT-LC-cの調製(図1H)
この実施例では、LC及びcの表面セリン残基を表面システイン残基に変異させ、免疫原性エピトープにおける指向性PEGコンジュゲーション化をし易くして、図1Hの分子を生成する。その変異体はS81C、S120C、S144C、S248C、S335C、S428C、S963C、S1041C、S1155C、及びS1187C(図21 配列番号14)であった。
【0160】
LC及びcの表面セリンからシステインへの置換S81C、S120C、S144C、S248C、S335C、S428C、S963C、S1041C、S1155C及びS1187Cを有するTeNTの遺伝子は、商業プロバイダーのIntegrated DNA Technologiesによって合成される。この遺伝子は、ベクターからの6xヒスチジンタグが変異タンパク質のN末端に付加されるように、制限消化によりpRS
ET-A発現ベクター(図22 配列番号15、図23)にサブクローニング化される。
【0161】
S81C、S120C、S144C、S248C、S335C、S428C、S963C、S1041C、S1155C、及びS1187Cを含むTeNTを、実施例5に従って発現、PEG化および精製して、PEG-TeNT-LC-cを生成させる。
【0162】
3.1-エンドトキシンの除去
実施例4に従って、エンドトキシンをTeNT-LC-cセリン変異体から除去する。
【0163】
3.2-PEG-HZN-マレイミドの生成
1.モル過剰のBMPH、EMCH又はKMUHを、約2kDa、約5kDa、約10k
Da又は約20kDaのPEG-プロピオンアルデヒドと、通常雰囲気、窒素雰囲気又はアルゴン雰囲気下で、PBS(pH6.5~7.5)又は10~100%DMF中で結合させる。
2.結合は、4℃~37℃で1時間から16時間行う。
【0164】
3.3-システイン残基へのPEGの結合
1.約2kDa、約5kDa、約10kDa又は約20kDaのPEGを有するモル過剰
のPEG-HZN-マレイミドを、PBS又は<10%DMF中、pH6.5~7.5でセリン変異体TeNT-LC-c(0.5-2mg/mL)と組み合わせる。
2.結合は、室温で6時間行う。
3.過剰なPEGはサイズ排除クロマトグラフィーで除去する。
【0165】
3.4-タンパク質のトリプシン消化活性化
TeNT-LC-cセリン変異体を活性化するトリプシン消化は、実施例4に従って行う
【0166】
実施例4-PEG-HZN-TeNT-LC-HCの調製(図1I)(方法1)
4.1-TeNTの調製
1.大腸菌BL21 DE3 pLysS株をpRSET-TeNTベクターで電気形質
転換し、37℃で1時間、1mLのLB培地中に回収した。
2.前誘発培養液200mLに回収培養液を接種した。前誘発培養液 pH7.2-7.
4は、1.2%Tryptone;2.4%酵母エキス;2%グルコース;0.4%グリセロール;17mMのKHPO;72mMのKHPO;及び選択抗生物質(アンピシリンとクロラムフェニコール)を含んでいた。
3.培養物を30℃で一晩、高速振盪しながらインキュベートした。
4.4000g、10分間の遠心分離により、一晩培養したものを回収した。
5.ペレットを、1.2%Tryptone;2.4%酵母エキス;0.4%グリセロー
ル;1mMのIPTG;17mMのKHPO;72mMのKHPO;100μg/mLのアンピリシン;及び10μMのZnClを含む、200mLの発現培養液(p
H7.2-7.4)に再懸濁した。
6.30℃で6時間、高速振盪しながらタンパク質を発現させた。
7.4500g、15分間の遠心分離により細胞を回収し、ペレットを20mMのイミダ
ゾールを含む30mLのTBSに再懸濁した(pH8)。
8.超音波処理により細胞を溶解した。
9.細胞溶解液を4500g、20分間の遠心分離で清澄化し、0.45μmフィルター
で濾過した。
10.AKTA pure 25 FPLCシステム(GE)を用いたHis-tagア
フィニティークロマトグラフィーにより、タンパク質を精製した。
11.サイズ排除クロマトグラフィーでPBSに対して緩衝液交換を行った後、Supe
rdex 200 increase 10/300 GLカラムを用いたAKTA pure 25 FPLCでゲルろ過により2段階目の精製を行った。
【0167】
4.2-エンドトキシンの除去
1.0.5mLのエンドトキシン除去スピンカラムを室温へと平準化した。
2.カラム底部の栓を外し、カラムキャップを緩め、15mLのチューブに入れ、500
gで1分間遠心分離し、カラムから溶液を除いた。溶液は廃棄した。
3.カラム底部のプラグを交換し、カラムキャップを外し、95%エタノール中の0.2
NのNaOHを樹脂に添加し、カラムキャップを取り換え、カラムを数回転倒させて樹脂を再懸濁し、室温で1~2時間インキュベートした。
4.カラム底栓を除去し、カラムキャップを緩め、カラムを15mLのチューブに入れ、
500gで1分間遠心し、カラムから溶液を除去した。溶液は廃棄した。
5.カラム底部のプラグを交換し、カラムキャップを外し、エンドトキシンを含まない2
MのNaClを樹脂に添加し、カラムキャップを取り替えた後、カラムを数回転倒させて樹脂を再懸濁させた。
6.カラムの底栓を外し、カラムキャップを緩め、カラムを15mLのチューブに入れ、
500gで1分間遠心分離し、カラムから溶液を除去した。溶液は廃棄した。
7.カラム底部のプラグを交換し、カラムキャップを外し、エンドトキシンを含まない超
純水を樹脂に加え、カラムキャップを交換し、カラムを数回倒して樹脂を再懸濁させた。8.カラム底栓を除去し、カラムキャップを緩め、カラムを15mLのチューブに入れ、
500gで1分間遠心分離し、カラムから溶液を除去した。溶液は廃棄した。
9.カラム底部のプラグを交換し、カラムキャップを外し、エンドトキシンを含まないリ
ン酸緩衝液を樹脂に添加し、カラムキャップを取り替えた後、カラムを数回転倒させて樹脂を懸濁させた。
10.カラム底栓を除去し、カラムキャップを緩め、カラムを15mLのチューブに入れ
、500gで1分間遠心分離し、カラムから溶液を除去した。溶液は廃棄した。
11.リン酸塩緩衝液でさらに2回カラムを洗浄し、溶出液を廃棄した。
12.カラムの底栓を交換し、カラムキャップを外して、樹脂に試料を塗布し、カラムキ
ャップを交換し、カラムを数回倒して樹脂を再懸濁させた。
13.カラムを4℃で少なくとも1時間、端から端まで混合しながらインキュベートした

14.カラム底栓を外し、カラムキャップを緩め、カラムをエンドトキシンフリーの15
mLのチューブに入れ、500gで1分間遠心分離し、カラムから溶液を除去した。サンプルは保持した。
15.エンドトキシン除去手順を、すべての投与量に対して対象のキログラムあたり5E
U単位のエンドトキシンを含むように、サンプル中のエンドトキシンレベルがその量と同等又はより低いレベルになるまで、再生スピンカラムで繰り返し行った。
【0168】
4.3-mPEG-HZN-NHSの生成
1.モル過剰のSANH又はSHNHを、約2kDa、約5kDa、約10kDa又は約
20kDaのPEGを有するmPEG-プロピオンアルデヒドと、通常雰囲気、窒素雰囲気又はアルゴン雰囲気下で、PBS(pH6.5-7.5)又は10-100%DMF中で組み合わせた。
2.結合は4℃~37℃の間で1時間~16時間行った。
【0169】
4.4-PEG-HZN-TeNT-LC-HCの調製
1.総容量500μLの、PBS pH7又は10%DMFに、3μmolの精製TeN
T及び0.5mmolのmpeg-HZN-NHSを、2kDa、5kDa、10kDa、20kDa又は30kDaのPEGと組み合わせた。
2.サンプルを室温で3時間混合した。
3.過剰のPEGをサイズ排除クロマトグラフィーによって除去した。
【0170】
4.5-タンパク質のトリプシン消化による活性型への変換
1.タンパク質1mgを0.5mLの消化バッファー(0.1MのNHHCOバッフ
ァーを含む、pH8.0)又は0.1Mのトリスバッファー(pH8.5)に溶解させた。
2.0.10mL~0.25mLの固定化TPCKトリプシンを3×500μLの消化バ
ッファーで洗浄した。遠心分離により洗浄のたびにゲルをバッファーから分離した。
3.ゲルを約0.2mLの消化用緩衝液に再懸濁した。
4.固定化TPCKトリプシンをタンパク質サンプルに添加した。
5.反応混合物を37℃で2時間~18時間、高速で振盪するインキュベーターでインキ
ュベートした。
6.固定化TPCKトリプシンを遠心分離により分離した。
【0171】
実施例5-PEG-HZN-TeNT-LC-HC(図1I)の調製(方法2)。
この実施例では、TeNT-LC-HCの表面セリン残基を表面システイン残基に変異させ(S→C変異体)、免疫原性エピトープにおける指向性PEGコンジュゲーション化を促進した。TeNTの変異体は以下の通りである:配列番号1に対して、S81C;S120C;S144C;S248C;S335C;S428C;S600C;S963C;S1041C;S1155C;及びS1187Cであった。
【0172】
5.1-セリン変異体TeNT-LC-HCの調製
大腸菌BL21(DE3)pLysS株を、SからCへの変異を含む図11(配列番号6)のアミノ酸配列をエンコードするベクターpRSET-TeNT SC(図12及び13)で電気形質転換した。SからCへの変異を含むTeNT-LC-HCを、工程10と
11の間に、0.5mMのDTTを使った15分間の処理を行い、実施例4に従って発現及び精製した。
【0173】
5.2-エンドトキシンの除去
実施例4に従って、TeNT-LC-HCセリン変異体からエンドトキシンを除去した。
【0174】
5.3-システイン残基へのPEG結合
1.約2kDa、約5kDa、約10kDa又は約20kDaのPEGを有するモル過剰
のPEG-HZN-マレイミドを、PBS中のセリン変異体TeNT-LC(0.5~2mg/mL)とpH6.5-7.5で組み合わせる。
2.結合は、室温で2~16時間行う。
3.過剰なPEGはサイズ排除クロマトグラフィーによって除去する。
【0175】
5.4-タンパク質のトリプシン消化活性化
TeNT-LC-HCセリン変異体を活性化するトリプシン消化は、実施例4に従って行われる。
【0176】
実施例6 mPEG-HZN-NHSの合成
この例では、様々なサイズ(例えば、2kDa、5kDa、10kDa、20kDa又は30kDa)のメトキシ-ポリエチレングリコールを、pH分解性ヒドラゾン連結を介してスルホ-NHS基と組み合わせた。mPEG-プロピオンアルデヒドを、PBS、DMF又はDMSO中でモル過剰量のSANH又はSHNHクロスリンカーと組み合わせた。結合は、通常雰囲気、窒素雰囲気又はアルゴン雰囲気下で、室温で2~16時間行われた。未反応の架橋剤は、1/10モルのベンジルオキシベンジルアルデヒドビーズと室温で
4~8時間インキュベートすることにより除去することができる。
【0177】
実施例7 mPEG-HZN-マレイミドの合成
この実施例では、様々なサイズ(例えば、2kDa、5kDa、10kDa、20kDa又は30kDa)のメトキシ-ポリエチレングリコールを、pH分解性ヒドラゾン連結を
介してマレイミド基と結合した。DMF、DMSO又はPBS中でmPEG-プロピオンアルデヒドをnモル過剰のBMPH(N-β-マレイミドプロピオン酸ヒドラジド)EM
CH又はKMUHクロスリンカーと組み合わせた。結合は、通常雰囲気、窒素雰囲気又はアルゴン雰囲気下、室温で1~16時間行った。
【0178】
実施例8-PEP-TeNT-cの調製(図1F)
この実施例では、TeNT-cの表面セリン残基を表面システイン残基に変異させ、免疫原性エピトープにおける指向性GT-PEP結合を起こりやすくして、図1Fの分子を生成する。変異体は以下の通りである:S963C、S1041C、S1155C、及びS1187Cである。
【0179】
表面セリンからシステインへの置換体S963C、S1041C、S1155C、及びS1187Cを有するTeNTの遺伝子は、商業プロバイダー、例えばIntegrated DNA Technologiesによって合成される。この遺伝子は、ベクターからの6xヒスチジンタグが変異体タンパク質のN末端に付加されるように、制限消化によってpRSET-A発現ベクターにサブクローニングされる。
【0180】
S963C、S1041C、S1155C、及びS1187Cを含むTeNTは、実施例11に従って発現、GT-PEP化、精製して、PEP-TeNT-cを製造する。
【0181】
実施例9-PEP-TeNT-HC(図1B)の調製
この実施例では、TeNT-HCの表面セリン残基を表面システイン残基に変異させ、免疫原性エピトープにおける指向性PEGコンジュゲーション化を促進し、図1Bの分子を生成させる。変異体は以下の通りである:S600C、S963C、S1041C、S1155C、及びS1187C(図24 配列番号16)である。
【0182】
表面セリンからシステインへの置換S600C、S963C、S1041C、S1155C、及びS1187Cを有するTeNTの遺伝子は、商業プロバイダー、例えばIntegrated DNA Technologiesによって合成される。この遺伝子は、ベクターからの6xヒスチジンタグが変異タンパク質のN末端に付加されるように、制限消化によってpRSET-A発現ベクター(図25 配列番号17、図26)にサブクローニングされる。
【0183】
S600C、S963C、S1041C、S1155C、及びS1187Cを含むTeNTは、実施例11に従って発現、GT-PEP化、精製し、PEP-TeNT-HCを製造する。
【0184】
実施例10-PEP-TeNT-LC-cの調製(図1C)
この実施例では、LC及びcの表面セリン残基を表面システイン残基に変異させて、免疫原性エピトープにおける指向性PEGコンジュゲーション化を促進し、図1Cの分子を作製する。その変異体はS81C、S120C、S144C、S248C、S335C、S428C、S963C、S1041C、S1155C、及びS1187C(図21 配列番号14)であった。
【0185】
LC及びcの表面セリンからシステインへの置換S81C、S120C、S144C、S248C、S335C、S428C、S963C、S1041C、S1155C及びS1187Cを有するTeNTの遺伝子は、商業プロバイダーのIntegrated DNA Technologiesによって合成される。この遺伝子は、ベクターからの6xヒスチジンタグが変異タンパク質のN末端に付加されるように制限消化によってpRSET-A発現ベクター(図22 配列番号15、図23)にサブクローン化される。
【0186】
S81C、S120C、S144C、S248C、S335C、S428C、S963C、S1041C、S1155C、及びS1187Cを含むTeNTを実施例11に従って発現、GT-PEP化及び精製して、PEP-TeNT-LC-cを製造する。
【0187】
10.1-エンドトキシンの除去
エンドトキシンは、実施例4に従って、TeNT-LC-cセリン変異体から除去される。
【0188】
実施例11-PEP-TeNT-LC-HCの調製(図1E)(方法1)。
11.1-TeNTの調製
1.大腸菌BL21 DE3 pLysS株をpRSET-TeNT(配列番号2(図7
)ベクターで電気形質転換し、37℃で1時間かけて1mLのLB培地中に回収する。
2.前誘発培養液200mLに回収培養液を接種する。前誘発培養液 pH7.2-7.
4は、1.2%トリプトン;2.4%酵母エキス;2%グルコース;0.4%グリセロール;17mMのKHPO;72mMのKHPO;及び選択抗生物質(アンピシリンとクロラムフェニコール)を含んでいる。
3.培養物を30℃で一晩、高速振盪しながらインキュベートする。
4.4000g、10分間の遠心分離により、一晩培養したものを回収する。
5.ペレットを、1.2%Tryptone;2.4%酵母エキス;0.4%グリセロー
ル;1mMのIPTG;17mMのKHPO;72mMのKHPO;100μg
/mLのアンピリシン;及び10μMのZnClを含む、200mLの発現培養液(p
H7.2-7.4)に再懸濁する。
6.30℃で6時間、高速振盪しながらタンパク質を発現させる。
7.4500g、15分間の遠心分離により細胞を回収し、ペレットを20mMのイミダ
ゾールを含む30mLのTBSに再懸濁する(pH8)。
8.超音波処理により細胞を溶解する。
9.細胞溶解液を4500g、20分間の遠心分離で清澄化し、0.45μmフィルター
で濾過する。
10.AKTA pure 25 FPLCシステム(GE)を用いたHis-tagア
フィニティークロマトグラフィーにより、タンパク質を精製する。
11.サイズ排除クロマトグラフィーでPBSに緩衝液交換した後、Superdex
200 increase 10/300 GLカラムを用いたAKTA pure 25 FPLCでゲルろ過により2段階目の精製を行う。
【0189】
11.2-エンドトキシンの除去
1.0.5mLのエンドトキシン除去スピンカラムを室温に平準化する。
2.カラム底部の栓を外し、カラムキャップを緩め、15mLのチューブに入れ、500
gで1分間遠心分離し、カラムから溶液を除く。溶液は廃棄する。
3.カラム底部のプラグを交換し、カラムキャップを外し、95%エタノール中の0.2
NのNaOHを樹脂に添加し、カラムキャップを取り付け、カラムを数回転倒させて樹脂を再懸濁し、室温で1~2時間静置する。
4.カラム底栓を除去し、カラムキャップを緩め、カラムを15mLのチューブに入れ、
500gで1分間遠心し、カラムから溶液を除去する。溶液は廃棄する。
5.カラム底部のプラグを交換し、カラムキャップを外し、エンドトキシンを含まない2
MのNaClを樹脂に添加し、カラムキャップを取り替えた後、カラムを数回転倒させて樹脂を再懸濁させる。
6.カラムの底栓を外し、カラムキャップを緩め、カラムを15mLのチューブに入れ、
500gで1分間遠心分離し、カラムから溶液を除去する。溶液は廃棄する。
7.カラム底部のプラグを交換し、カラムキャップを外し、エンドトキシンを含まない超
純水を樹脂に加え、カラムキャップを交換し、カラムを数回反転させて樹脂を再懸濁させる。
8.カラム底栓を除去し、カラムキャップを緩め、カラムを15mLのチューブに入れ、
500gで1分間遠心分離し、カラムから溶液を除去する。溶液は廃棄する。
9.カラム底部のプラグを交換し、カラムキャップを外し、エンドトキシンを含まないリ
ン酸緩衝液を樹脂に添加し、カラムキャップを取り替えた後、カラムを数回転倒させて樹脂を懸濁させる。
10.カラム底栓を除去し、カラムキャップを緩め、カラムを15mLのチューブに入れ
、500gで1分間遠心分離し、カラムから溶液を除去する。溶液は廃棄する。
11.リン酸塩緩衝液でさらに2回カラムを洗浄し、溶出液を捨る。
12.カラムの底栓を交換し、カラムキャップを外して樹脂に試料を塗布し、カラムキャ
ップを交換し、カラムを数回倒して樹脂を再懸濁させる。
13.カラムを4℃で少なくとも1時間、端から端まで混合しながらインキュベートする

14.カラム底栓を外し、カラムキャップを緩め、カラムをエンドトキシンフリーの15
mLのチューブに入れ、500gで1分間遠心分離し、カラムから溶液を除去する。サンプルは保持する。
15.エンドトキシン除去手順を、サンプル中のエンドトキシンレベルが、すべての投与
量に対して対象のキログラムあたり5EU単位のエンドトキシンを含むようなレベル又はより低いレベルになるまで、再生したスピンカラムを用いて繰り返し行う。
【0190】
11.3-方法1
この例では、GT-PEP-NHSを、TeNTの表面のリジン残基上の一級アミン基に結合させて、図1Dからの分子を生成する。
1.約2kDa、約5kDa、約10kDa又は約20kDaのPEPを有するモル過剰のGT-PEP-NHSを、PBS中、pH6.5~7.5でセリン変異体TeNT-LC-c(0.5~2mg/mL)と組み合わせる。
2.結合は、室温で6時間行う。
3.過剰なPEGはサイズ排除クロマトグラフィーにより除去する。
【0191】
11.4-タンパク質のトリプシン消化活性化
PEP-TeNT-LC-HCセリン変異体を活性化するトリプシン消化は、実施例4に従って行われる。
【0192】
11.5-タンパク質のトリプシン消化による活性型への変換
1.タンパク質1mgを、0.5mLの消化バッファー(0.1MのNHHCOバッ
ファーを含む、pH8.0)又は0.1Mのトリスバッファー(pH8.5)に溶解させる。
2.0.10mL~0.25mLの固定化TPCKトリプシンを3×500μLの消化バ
ッファーで洗浄した。洗浄ごとに、遠心分離によりゲルをバッファーから分離する。
3.ゲルを約0.2mLの消化用緩衝液に再懸濁する。
4.固定化TPCKトリプシンをタンパク質サンプルに添加する。
5.反応混合物を37℃で2時間~18時間、高速で振盪するインキュベーターでインキ
ュベートする。
6.固定化TPCKトリプシンを遠心分離により分離する。
【0193】
11.6-方法2
この例では、TeNT-LC-HCの表面セリン残基を表面システイン残基に変異させ(S→C変異体)、免疫原性エピトープにおける指向性GT-PEPコンジュゲーション化を促進し、図1Dの分子を作製する。TeNTの変異体は以下の通りである:配列番号1に対して、S81C;S120C;S144C;S248C;S335C;S428C;S600C;S963C;S1041C;S1155C;及びS1187Cであった。
1.約2kDa、約5kDa、約10kDa又は約20kDaのPEPを有するモル過剰
のGT-PEP-マレイミドを、PBS中のセリン変異体TeNT-LC-c(0.5~2mg/mL)と組み合わせて、pH6.5-7.5とする。
2.結合は、室温で6時間行う。
3.過剰なPEGはサイズ排除クロマトグラフィーによって除去する。
【0194】
11.7-タンパク質のトリプシン消化活性化
TeNT-LC-cセリン変異体を活性化するトリプシン消化は、実施例4に従って行われる。
【0195】
11.8-タンパク質のトリプシン消化による活性型への変換
1.タンパク質1mgを0.5mLの消化バッファー(0.1MのNHHCOバッフ
ァーを含む、pH8.0)又は0.1Mのトリスバッファー(pH8.5)に溶解させる。
2.0.10mL~0.25mLの固定化TPCKトリプシンを3×500μLの消化バ
ッファーで洗浄した。洗浄のたびに、遠心分離によりゲルをバッファーから分離する。
3.ゲルを約0.2mLの消化用緩衝液に再懸濁する。
4.固定化TPCKトリプシンをタンパク質サンプルに添加する。
5.反応混合物を37℃で2時間~18時間、高速で振盪するインキュベーターでインキ
ュベートする。
6.固定化TPCKトリプシンを遠心分離により分離する。
【0196】
実施例12-GT-PEP-NHSの合成
1.約2kDa~30kDaのGT-ペプチドの遺伝子は、商業プロバイダーであるIn
tegrated DNA Technologiesによって合成する。この遺伝子は、ベクターからの6xヒスチジンタグが変異タンパク質のN末端に付加されるように、又は付加されないように、制限消化によって2つの発現ベクターにサブクローニングされる。
2.大腸菌BL21 DE3 pLysS株をGT-ペプチドベクターで電気形質質転換
し、1mLのLB培地中、37℃で1時間回収する。
3.前誘発培養液200mLに回収培養液を接種する。前誘発培養液 pH7.2-7.
4は、1.2%トリプトン;2.4%酵母エキス;2%グルコース;0.4%グリセロール;17mMのKHPO;72mMのKHPO;及び選択抗生物質(アンピシリンとクロラムフェニコール)を含む。
4.培養物を30℃で一晩、高速振盪しながらインキュベートする。
5.4000g、10分間の遠心分離により、一晩培養したものを回収する。
6.ペレットを、1.2%トリプトン;2.4%酵母エキス;0.4%グリセロール;1
mMのIPTG;17mMのKHPO;72mMのKHPO;100μg/mLのアンピリシンを含む、200mLの発現培養液(pH7.2-7.4)に再懸濁する。6.30℃で6時間、高速振盪しながらタンパク質を発現させる。
7.4500g、15分間の遠心分離により細胞を回収し、ペレットを20mMのイミダ
ゾールを含む30mLのTBSに再懸濁する(pH8)。
8.超音波処理により細胞を溶解する。
9.細胞溶解液を4500g、20分間の遠心分離で清澄化し、0.45μmフィルター
で濾過する。
10.AKTA pure 25 FPLCシステム(GE)を用いたHis-tagア
フィニティークロマトグラフィーにより、タンパク質を精製する。又は硫安沈殿により精製する。
11.精製されたタンパク質に対して、サイズ排除クロマトグラフィーによる緩衝液交換
とPBSへの濃縮を行う。
12.モル倍量のEDC(1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロカルボジイミド)
とPBS中のスルホ-NHS(1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジ
イミドを室温で2~8時間インキュベーションすることにより、スルホNHSエステルをGT-ペプチドのカルボキシル末端に付加させる。
13.過剰なEDC及びスルホHNSを、透析、脱塩又は緩衝液交換によって除去する。
【0197】
実施例13-GT-PEP-マレイミドの合成
1.約2kDa~30kDaのGT-ペプチドの遺伝子は、商業プロバイダーであるIn
tegrated DNA Technologiesによって合成する。この遺伝子は、ベクターからの6xヒスチジンタグが変異タンパク質のN末端に付加されるように、又は付加されないように、制限消化によって2つの発現ベクターにサブクローニングされる。
2.大腸菌BL21 DE3 pLysS株をGT-ペプチドベクターで電気形質質転換
し、37℃で1時間かけて1mLのLB培地に回収する。
3.前誘発培養液200mLに回収培養液を接種する。前誘発培養液 pH7.2-7.
4は、1.2%トリプトン;2.4%酵母エキス;2%グルコース;0.4%グリセロール;17mMのKHPO;72mMのKHPO;及び選択抗生物質(アンピシリンとクロラムフェニコール)を含む。
4.培養物を30℃で一晩、高速振盪しながらインキュベートする。
5.4000g、10分間の遠心分離により、一晩培養したものを回収する。
6.ペレットを、1.2%トリプトン;2.4%酵母エキス;0.4%グリセロール;1
mMのIPTG;17mMのKHPO;72mMのKHPO;100μg/mLのアンピリシンを含む、200mLの発現培養液(pH7.2-7.4)に再懸濁する。6.30℃で6時間、高速振盪しながらタンパク質を発現させる。
7.4500g、15分間の遠心分離により細胞を回収し、ペレットを20mMのイミダ
ゾールを含む30mLのTBSに再懸濁する(pH8)。
8.超音波処理により細胞を溶解する。
9.細胞溶解液を4500g、20分間の遠心分離で清澄化し、0.45μmフィルター
で濾過する。
10.AKTA pure 25 FPLCシステム(GE)を用いたHis-tagア
フィニティークロマトグラフィーにより、タンパク質を精製する。又は硫安沈殿により精製する。
11.精製されたタンパク質に対して、サイズ排除クロマトグラフィーによる緩衝液交換
とPBSへの濃縮を行う。
12.モル過剰の、PBS中のスルホ-SMCC(スルホスクシンイミジル4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート)と室温で2~8時間インキュベ
ートすることにより、マレイミド基をGT-ペプチドのアミノ末端に結合させる。
13.過剰なスルホ-SMCCを、透析、脱塩又は緩衝液交換によって除去する。
【0198】
実施例14 糖GT-HZN-PEP-NHSの合成
14.1 GlycoGTペプチドの生成
1.グリシンとトレオニンの繰り返し配列又はランダム配列をエンコードする遺伝子は、
市販合成品を使用し、酵母又は哺乳類の発現ベクターにクローニングする。
2.ペプチドを糖鎖形成酵母(サッカロマイセス・セレビシエなど)又は哺乳動物細胞(
チャイニーズハムスター卵巣細胞など)で発現させる。
3.ペプチドは、陰イオン交換やサイズエクスルージョンなどのクロマトグラフィー法に
より精製する。
【0199】
14.2 糖鎖ペプチドへのアルデヒド基の付加
糖鎖残基上にアルデヒド基が存在するように、GT-糖ペプチドをグリシン又はグルタチオンで酸化する。
【0200】
14.3 Gly-HZN-NHSの合成
1.糖GT-PEPは、pH分解性ヒドラゾン連結を介してNHSエステルに結合される

2.糖GT-PEPを、DMF、DMSO又はPBS中でnモル過剰のSHNH又はSA
NH架橋剤と組み合わせる。
3.通常雰囲気、窒素雰囲気又はアルゴン雰囲気下、室温で1~16時間程度結合が行わ
れる。
【0201】
実施例15-糖GT-HZN-PEP-マレイミドの合成
15.1 糖GTペプチドの生成
1.グリシンとトレオニンの繰り返し配列又はランダム配列をエンコードする遺伝子は、
市販合成品を使用し、酵母又は哺乳類の発現ベクターにクローニングする。
2.ペプチドを糖鎖形成酵母(サッカロマイセス・セレビシエなど)又は哺乳動物細胞(
チャイニーズハムスター卵巣細胞など)で発現させる。
3.ペプチドは、陰イオン交換やサイズエクスルージョンなどのクロマトグラフィー法に
より精製する。
【0202】
15.2 糖鎖ペプチドへのアルデヒド基の付加
糖残基上にアルデヒド基が存在するように、GT-糖ペプチドをグリシン又はグルタチオンで酸化する。
【0203】
15.3 Gly-HZN-マレイミドの合成
1.糖GT-PEPは、pH分解性ヒドラゾン連結を介してマレイミド基に結合される。
2.糖GT-PEPを、DMF、DMSO又はPBS中のnモル過剰のBMPH(N-β
-マレイミドプロピオン酸ヒドラジド)EMCH(3,3’-N-[ε-マレイミドカプロン酸]ヒドラジド)又はKMUH(N-κ-マレイミドウンデカン酸ヒドラジド)のクロスリンカーと組み合わせる。
3.結合は、通常雰囲気、窒素雰囲気又はアルゴン雰囲気下、室温で1~16時間行う。
【0204】
実施例16-PEG-HZN-TeNTの分析
実施例4に従ってTeNTを調製し、PEG化した後、SDS-PAGE(図27)により分析し、(A)クーマシーブルーを用いて、(B)ポリクローナル抗TeNT抗体を用いたウェスタンブロット、により検出した。図27(B)は、抗体結合親和性がPEG分子量に比例していることを示している。
【0205】
実施例17-PEG-HZN-TeNTのTeNTに対する免疫原性の低下
異なる分子量PEG(2kDa、5kDa、10kDa及び20kDa)をそれぞれ含む4つのPEG-HZN-TeNTを実施例4に従って調製し、PEG化する。次いで、PEG-TeNTを、TeNTに対する競合ELISAによってアッセイした。
【0206】
第1のアッセイ(図29A)において、TeNTは、ELISAプレートに吸着される。次いで、吸着されたTeNTは、4つのPEG-TeNT抗原(2kDa、5kDa、10kDa及び20kDa)の4つの濃度(10μg/mL、1μg/mL、0.1μg/mL及び0.01μg/mL)のそれぞれでプレインキュベートしたポリクローナル抗TeNT抗体でプローブされる。このアッセイでは、応答(OD 450nm)が高いほど、TeNTに対するより親和性が大きく、よって、PEG-TeNTの免疫原性が低下したことを示した。
【0207】
第2のアッセイ(図29B)において、各PEG-TeNTは、別々のELISAプレートに吸着される。吸着されたTeNTは、4つのPEG-TeNT抗原(2kDa、5kDa、10kDa及び20kDa)の4つの濃度(10μg/mL、1μg/mL、0.1μg/mL及び0.01μg/mL)のそれぞれでプレインキュベートしたポリクローナル抗TeNT抗体でプローブされる。このアッセイでは、応答(OD 450nm)が低いほど、TeNTに対する親和性が高く、したがってPEG-TeNTの免疫原性が低下しことを示した。
【0208】
この実施例では、抗TeNT抗体がTeNTに優先的に結合し、PEG化TeNTがTeNT(すなわち非PEG化)と比較して免疫原性を低下させることが示唆される。
【0209】
実施例18-PEG-HZN-TeNT-cセリン変異体対TeNT-LC-cセリン変異体の免疫原性の低下
TeNT-LC-cセリン変異体は、実施例4に従って調製される。TeNT-LC-cセリン変異体の4つのサンプルを実施例4に従ってPEG化し、各サンプルは異なる分子量のPEG(2kDa、5kDa、10kDa及び20kDa)を含む。PEG-HZN-TeNT-LC-cセリン変異体は、TeNT-LC-cセリン変異体に対する競合ELISAによってアッセイされる。
【0210】
最初のアッセイでは、TeNT-LC-cセリン変異体は、ELISAプレートに吸着される。吸着されたTeNTセリン変異体は、次に、4つのPEG-HZN-TeNT-cセリン変異体抗原(2kDa、5kDa、10kDa及び20kDa)の4つの濃度(10μg/mL、1μg/mL、0.1μg/mL及び0.01μg/mL)のそれぞれにおいてプレインキュベートしたポリクローナル抗TeNT抗体でプローブされる。このアッセイでは、応答(OD 450nm)が高いほど、TeNT-LC-cセリン変異体に対する親和性が高く、したがってPEG-HZN-TeNT-cセリン変異体の免疫原性が低下していることが示された。
【0211】
第2のアッセイにおいて、各PEG-HZN-TeNT-LC-cセリン変異体は、別々のELISAプレートに吸着される。次に、吸着された各PEG-HZN-TeNT-cセリン変異体(2kDa、5kDa、10kDa及び20kDa)は、各TeNT-cセリン変異体抗原の4つの濃度(10μg/mL、1μg/mL、0.1μg/mL及び0.01μg/mL)のそれぞれにおいてプレインキュベートした、ポリクローナル抗TeNT抗体でプローブされることになる。このアッセイにおいて、応答(OD 450nm)が低いほど、TeNT-LC-cセリン変異体に対する親和性が大きく示し、したがってPEG-HZN-TeNT-cセリン変異体の免疫原性が低下していることが示された。
【0212】
この実施例では、抗TeNT抗体がTeNT-LC-cセリン変異体に優先的に結合し、PEG-HZNTeNT-LC-cセリン変異体がTeNT-LC-Cセリン変異体(すなわち非PEG化)に対して免疫原性を低下させることが示される。
【0213】
実施例19-PEG-HZN-TeNT対TeNTの免疫原性の低下
ポリクローナル抗体を、過去12ヶ月以内にブースター破傷風トキソイドワクチン接種を受けた1人以上の対象から採取したヒト血清に置き換えることを除いて、実施例9に従って競合ELISAアッセイを実施する。血清中の抗体は、PEG-HZN-TeNTに対して、TeNT(すなわち、非PEG化TeNT)より大きな親和性を示す。
【0214】
実施例20-生体内モデル
PEG-HZN-TeNT-LC-HCを、PEG(約2kDa、5kDa、約10kDa又は約20kDa)を実施例4に従って、組換えTeNTの表面露出リジン残基に結合させることにより調製する。
【0215】
15μLのPBS中の1単位以上のPEG-HZN-TeNT-LC-HCを、雌のC57BL/6マウスの後肢に注射する。各動物は、注射後48時間以内に局所的な四肢のテタニーを示した。
【0216】
実施例21-生体内モデル
PEP-TeNT-LC-HCを、GT-ペプチド(約2kDa、5kDa、約10kDa又は約20kDa)を実施例11に従って、組換えTeNT又は組換えTeNTセリン変異体の表面露出リジン残基又はシステイン残基に結合させることにより調製する。
【0217】
15μLのPBS中の1単位以上のPEP-TeNT-LC-HCを、雌のC57BL/6マウスの後肢に注射する。各動物は、注射から48時間以内に局所的な四肢のテタニーを示す。
【0218】
実施例22
2kDa、5kDa、10kDa又は20kDaのPEGを含むPEG-HZN-TeNT-LC-HCを、50~500000ng/kgで、破傷風トキソイドで予め免疫化し
たマウスの後肢筋肉に投与する。筋収縮の増加が、注射された筋肉で3日間まで観察され、同じ単位のTeNTを投与したマウスで観察される効果より大きい。
【0219】
実施例23
2kDa、5kDa、10kDa又は20kDaのPEPを含むPEP-TeNT-LC-HCを、50~500000ng/kgの量、破傷風トキソイドで予め免疫化したマウスの後肢筋肉に筋肉内投与する。筋収縮の増加が、注射された筋肉で最大3日間観察され、同じ単位のTeNTを投与したマウスで観察される効果より大きい。
【0220】
実施例24
2kDa、5kDa、10kDa又は20kDaのPEPを含むPEP-HZN-TeNT-LC-HCを、50~500000ng/kgの量で、破傷風トキソイドで予め免疫化したマウスの後肢筋肉に筋肉内投与する。筋収縮の増加が、最大3日間、注射された筋肉で観察され、同じ単位のTeNT又はPEP-TeNT-LC-HCを投与したマウスで観察される効果より大きい。
【0221】
実施例25
2kDa、5kDa、10kDa又は20kDaのPEGを含む糖PEP-HZN-TeNT-LC-HCを、50~500000ng/kgの量で、破傷風トキソイドで予め免疫化したマウスの後肢筋肉に筋肉内投与する。筋収縮の増加が、最大3日間、注射された筋肉で観察され、同じ単位のTeNT又はPEP-TeNT-LC-HCを投与したマウスで観察される効果より大きい。
【0222】
実施例26
約30kgのブルドッグに、20kDaのPEGを含むPEG-HZN-TeNT-cを25~50000ng/kg、左右の殿筋に用量を分けて筋肉内投与する。投与後、PEG-HZN-TeNT投与動物では、ビヒクル単独投与動物に比べて閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)が減少することが確認された。ブルドッグは毎週OSAについて観察され、PEG-HZN-TeNT-cの投与は、その有効性-ビヒクル単独で治療した動物の場合と同様、OSAが回復することでもって決める-が、低下するまで必要に応じて繰り返される。
【0223】
その後、ブルドッグに、20kDaのPEGを含むPEG-HZN-TeNT-HCを25~50000ng/kgの量で、又は20kDaのPEGを含むPEG-HZN-TeNT-LC-cを25~50000ng/kgの量で、それぞれ左右の蝶形骨に両側から分けて投与する。投与後、PEG-HZN-TeNT投与動物では、ビヒクル単独投与動物に比べ、OSAが減少する。ブルドッグは、OSAについて毎週観察し、PEG-HZN-TeNT-HC及びPEG-HZN-TeNT-LC-cの投与は、それらの有効性-ビヒクル単独で治療した動物の場合と同様、OSAが回復することでもって決める-が、低下するまで必要に応じて繰り返される。
【0224】
その後、ブルドッグに、20kDaのPEGを含むPEG-HZN-TeNT-LC-HCを25~50000ng/kgの量で、左右の精巣に両側から分けて投与する。投与後、PEG-HZN-TeNT投与動物では、ビヒクル単独投与動物に比べ、OSAが減少する。ブルドッグは毎週OSAを観察し、PEG-HZN-TeNT-LC-HCの投与は、その有効性-ビヒクル単独で治療した動物の場合と同様、OSAが回復することでもって決める-が、低下するまで必要に応じて繰り返される。
【0225】
実施例27
約30kgのブルドッグに、20kDaのPEPを含む、PEP-TeNT-c又はPE
P-HZN-TeNT-cを、それぞれ25~50000ng/kgの量で、左右の殿筋に両側に分けて投与する。投与後、PEP-TeNT又はPEP-HZN-TeNT投与動物では、ビヒクルのみで投与した動物と比較して閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)が減少する。ブルドッグは毎週OSAを観察し、PEG-HZN-TeNT-cの投与は、その有効性-ビヒクル単独で治療した動物の場合と同様、OSAが回復することでもって決める-が、低下するまで必要に応じて繰り返される。
【0226】
その後、ブルドッグに、20kDaのPEPを含む、PEP-TeNT-HCもしくはPEP-HZN-TeNT-HCを25~50000ng/kgの量で、又は20kDaのPEPを含む、PEP-TeNT-LC-cもしくはPEP-HZN-TeNT-LC-cを25~50000ng/kgの量で、それぞれ左右の殿筋に両側に分けて投与する。投与後、PEP-TeNT又はPEP-HZN-TeNTを投与した動物では、ビヒクルのみで投与した動物に比べ、OSAが減少する。ブルドッグは、OSAについて毎週観察し、PEP-TeNT-HC又はPEP-HZN-TeNT-HC及びPEP-TeNT-LC-c又はPEP-HZN-TeNT-LC-cの投与は、それらの有効性-ビヒクル単独で治療した動物の場合と同様、OSAが回復することでもって決める-が、低下するまで必要に応じて繰り返される。
【0227】
その後、ブルドッグに、20kDaのPEPを含む、PEP-TeNT-LC-HC又はPEP-HZN-TeNT-LC-HCを25~50000ng/kgの量で、それぞれ左右の蝶形骨に両側から分けて投与する。投与後、PEP-TeNT又はPEP-HZN-TeNTを投与した動物では、ビヒクルのみで投与した動物と比較して、OSAが減少することが確認された。ブルドッグは、OSAについて毎週観察され、PEP-TeNT-LC-HC又はPEP-HZN-TeNT-LC-HCの投与は、それらの有効性-ビヒクル単独で治療した動物の場合と同様、OSAが回復することでもって決める-が、低下するまで必要に応じて繰り返される。
図1-1】
図1-2】
図1-3】
図2
図3
図4
図5
図6
図7-1】
図7-2】
図8
図9
図10
図11
図12-1】
図12-2】
図13
図14
図15-1】
図15-2】
図15-3】
図16
図17-1】
図17-2】
図18-1】
図18-2】
図19
図20
図21-1】
図21-2】
図21-3】
図22
図23-1】
図23-2】
図24-1】
図24-2】
図25
図26
図27
【配列表】
2023513895000001.app
【国際調査報告】