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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-04
(54)【発明の名称】療法において使用するための抗体
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20230328BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230328BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20230328BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20230328BHJP
   C07K 16/28 20060101ALN20230328BHJP
   C07K 16/46 20060101ALN20230328BHJP
【FI】
A61K39/395 T ZNA
A61P35/00
A61P35/02
A61P35/04
C07K16/28
C07K16/46
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022547184
(86)(22)【出願日】2021-02-04
(85)【翻訳文提出日】2022-09-21
(86)【国際出願番号】 EP2021052587
(87)【国際公開番号】W WO2021156326
(87)【国際公開日】2021-08-12
(31)【優先権主張番号】62/970,046
(32)【優先日】2020-02-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/027,702
(32)【優先日】2020-05-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/110,633
(32)【優先日】2020-11-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】507316398
【氏名又は名称】ジェンマブ エー/エス
(71)【出願人】
【識別番号】519011636
【氏名又は名称】ビオンテック エスエー
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【弁理士】
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【弁理士】
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【弁理士】
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】シャヒン ウール
(72)【発明者】
【氏名】ムイク アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】アルトゥンタシュ イシル
(72)【発明者】
【氏名】フォルスマン ウルフ
(72)【発明者】
【氏名】ササー ケイト
(72)【発明者】
【氏名】ユレ-クンケル マリア エヌ.
(72)【発明者】
【氏名】グプタ マニシュ
【テーマコード(参考)】
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C085AA14
4C085BB01
4C085BB36
4C085CC23
4C085DD62
4C085EE01
4C085GG02
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA75
4H045DA76
4H045EA20
4H045EA50
(57)【要約】
本発明は、腫瘍の進行を低減もしくは阻止するためまたはがんを処置するための方法に関する。前記方法は、ヒトCD137に結合する第1の結合領域とヒトPD-L1に結合する第2の結合領域とを含む結合物質を、対象に投与する工程を含む。それぞれの処置サイクルにおいて投与される結合物質の量は好ましくは、約0.3~5mg/kg体重または合計で約25~400mgである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象において腫瘍の進行を低減もしくは阻止するためまたはがんを処置するための方法であって、少なくとも1つの処置サイクルにおいて、ヒトCD137、例えば、SEQ ID NO:24に示した配列を有するヒトCD137に結合する第1の結合領域と、ヒトPD-L1、例えば、SEQ ID NO:26に示した配列を有するヒトPD-L1に結合する第2の結合領域とを含む結合物質を、適切な量で前記対象に投与する工程を含む、前記方法。
【請求項2】
それぞれの用量でかつ/または処置サイクルにおいて投与される結合物質の前記量によって、T細胞の増殖、サイトカイン産生、成熟、および長期生存がもたらされ、かつこのようなT細胞がPD-L1による阻害を受けにくくなる、請求項1記載の方法。
【請求項3】
それぞれの用量でかつ/または処置サイクルにおいて投与される結合物質の前記量が、
前記結合物質の5%超、好ましくは10%超、より好ましくは15%超、さらにより好ましくは20%超、さらにより好ましくは25%超、さらにより好ましくは30%超、さらにより好ましくは35%超、さらにより好ましくは40%超、さらにより好ましくは45%超、最も好ましくは50%超がCD137とPD-L1の両方に結合する範囲内
にある、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項4】
それぞれの用量でかつ/またはそれぞれの処置サイクルにおいて投与される結合物質の前記量が、
a)約0.3~5mg/kg体重もしくは合計で約25~400mg;および/または
b)約2.1×10-9~3.4×10-8mol/kg体重もしくは合計で約1.7×10-7~2.7×10-6mol
である、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項5】
それぞれの用量でかつ/またはそれぞれの処置サイクルにおいて投与される結合物質の前記量が、
a)約1.25mg/kg体重もしくは合計で約100mg;および/または
b)約8.5×10-9mol/kg体重もしくは合計で約6.8×10-7mol
である、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項6】
前記結合物質が、ヒトCD137に結合するとヒトCD137を活性化し、かつPD-L1に結合するとヒトPD-L1とヒトPD-1との結合を阻害する、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項7】
a)前記第1の結合領域が、SEQ ID NO:1のCDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)と、SEQ ID NO:5のCDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む軽鎖可変領域(VL)とを含み、かつ
b)前記第2の抗原結合領域が、SEQ ID NO:8のCDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)と、SEQ ID NO:12のCDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む軽鎖可変領域(VL)とを含む、
前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項8】
a)前記第1の結合領域が、SEQ ID NO:2に示したCDR1配列、SEQ ID NO:3に示したCDR2配列、およびSEQ ID NO:4に示したCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)と、SEQ ID NO:6に示したCDR1配列、GASとして示したCDR2配列、およびSEQ ID NO:7に示したCDR3配列を含む軽鎖可変領域(VL)と
を含み、かつ
b)前記第2の抗原結合領域が、SEQ ID NO:9に示したCDR1配列、SEQ ID NO:10に示したCDR2配列、およびSEQ ID NO:11に示したCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)と、SEQ ID NO:13に示したCDR1配列、DDNとして示したCDR2配列、およびSEQ ID NO:14に示したCDR3配列を含む軽鎖可変領域(VL)とを含む、
前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項9】
a)前記第1の結合領域が、SEQ ID NO:1に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)と、SEQ ID NO:5に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)領域とを含み、かつ
b)前記第2の結合領域が、SEQ ID NO:8に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)と、SEQ ID NO:12に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)領域とを含む、
前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項10】
a)前記第1の結合領域が、SEQ ID NO:1に示したアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)と、SEQ ID NO:5に示したアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)領域とを含み、かつ
b)前記第2の結合領域が、SEQ ID NO:8に示したアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)と、SEQ ID NO:12に示したアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)領域とを含む、
前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項11】
前記結合物質が抗体、多重特異性抗体、例えば、二重特異性抗体である、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項12】
前記結合物質が完全長抗体または抗体断片の形をとる、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項13】
それぞれの可変領域が、3つの相補性決定領域(CDR1、CDR2、およびCDR3)と4つのフレームワーク領域(FR1、FR2、FR3、およびFR4)とを含む、請求項7~12のいずれか一項記載の方法。
【請求項14】
前記相補性決定領域および前記フレームワーク領域が、アミノ末端からカルボキシ末端に向かって以下の順序:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4で配置されている、請求項13記載の方法。
【請求項15】
i)第1の重鎖可変領域(VH)および第1の重鎖定常領域(CH)を含むか、それらからなるか、またはそれらから本質的になる、ポリペプチド、ならびに
ii)第2の重鎖可変領域(VH)および第2の重鎖定常領域(CH)を含むか、それらからなるか、またはそれらから本質的になる、ポリペプチド
を含む、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項16】
i)第1の軽鎖可変領域(VL)を含み、かつ第1の軽鎖定常領域(CL)をさらに含む、ポリペプチド、および
ii)第2の軽鎖可変領域(VL)を含み、かつ第2の軽鎖定常領域(CL)をさらに含む、ポリペプチド
を含む、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項17】
前記結合物質が、第1の結合アームと第2の結合アームとを含む抗体であり、前記第1の結合アームが
i)前記第1の重鎖可変領域(VH)および前記第1の重鎖定常領域(CH)を含む、ポリペプチド、ならびに
ii)前記第1の軽鎖可変領域(VL)および前記第1の軽鎖定常領域(CL)を含む、ポリペプチド
を含み、かつ前記第2の結合アームが、
iii)前記第2の重鎖可変領域(VH)および前記第2の重鎖定常領域(CH)を含む、ポリペプチド、ならびに
iv)前記第2の軽鎖可変領域(VL)および前記第2の軽鎖定常領域(CL)を含む、ポリペプチド
を含む、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項18】
i)CD137に結合することができる前記抗原結合領域を含む、第1の重鎖および第1の軽鎖、ならびに
ii)PD-L1に結合することができる前記抗原結合領域を含む、第2の重鎖および第2の軽鎖
を含む、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項19】
前記結合物質が、
i)CD137に結合することができる前記抗原結合領域を含む、第1の重鎖および第1の軽鎖であって、前記第1の重鎖が第1の重鎖定常領域を含み、かつ前記第1の軽鎖が第1の軽鎖定常領域を含む、前記第1の重鎖および第1の軽鎖;ならびに
ii)PD-L1に結合することができる前記抗原結合領域を含む、第2の重鎖および第2の軽鎖であって、前記第2の重鎖が第2の重鎖定常領域を含み、かつ前記第2の軽鎖が第2の軽鎖定常領域を含む、前記第2の重鎖および第2の軽鎖
を含む、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項20】
前記第1の重鎖定常領域(CH)および第2の重鎖定常領域(CH)のそれぞれが、重鎖定常1(CH1)領域、ヒンジ領域、重鎖定常2(CH2)領域、および重鎖定常3(CH3)領域のうちの1つまたは複数、好ましくは、少なくともヒンジ領域、CH2領域、およびCH3領域を含む、請求項15~19のいずれか一項記載の方法。
【請求項21】
前記第1の重鎖定常領域(CH)および第2の重鎖定常領域(CH)のそれぞれがCH3領域を含み、かつ2つの前記CH3領域が非対称性変異を含む、請求項15~20のいずれか一項記載の方法。
【請求項22】
前記第1の重鎖定常領域(CH)において、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖のT366、L368、K370、D399、F405、Y407、およびK409からなる群より選択される位置に対応する位置におけるアミノ酸のうちの少なくとも1つが置換されており、かつ前記第2の重鎖定常領域(CH)において、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖のT366、L368、K370、D399、F405、Y407、およびK409からなる群より選択される位置に対応する位置におけるアミノ酸のうちの少なくとも1つが置換されており、かつ前記第1の重鎖および前記第2の重鎖が、同じ位置において置換されていない、請求項15~21のいずれか一項記載の方法。
【請求項23】
(i)EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖のF405に対応する位置におけるアミノ酸が前記第1の重鎖定常領域(CH)においてLであり、かつEUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖のK409に対応する位置におけるアミノ酸が前記第2の重鎖定常領域(CH)においてRであるか、または(ii)EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖のK409に対応する位置におけるアミノ酸が前記第1の重鎖においてRであり、かつEUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖のF405に対応する位置におけるアミノ酸が前記第2の重鎖においてLである、請求項22記載の方法。
【請求項24】
前記結合物質が、同じ第1の抗原結合領域および第2の抗原結合領域と、ヒトIgG1ヒンジ、CH2領域、およびCH3領域を含む2つの重鎖定常領域(CH)とを含む別の抗体と比較して低い程度で、Fcを介したエフェクター機能を誘導する、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項25】
前記抗体が、改変されていない第1の重鎖定常領域(CH)および第2の重鎖定常領域(CH)を含む以外は同一の抗体と比較して低い程度で、Fcを介したエフェクター機能を誘導するように、前記第1の重鎖定常領域(CH)および第2の重鎖定常領域(CH)が改変されている、請求項24記載の方法。
【請求項26】
前記改変されていない第1の重鎖定常領域(CH)および第2の重鎖定常領域(CH)のそれぞれが、SEQ ID NO:15に示したアミノ酸配列を含む、請求項25記載の方法。
【請求項27】
前記Fcを介したエフェクター機能が、Fcγ受容体への結合、C1qへの結合、またはFcを介したFcγ受容体の架橋結合の誘導によって測定される、請求項25~26のいずれか一項記載の方法。
【請求項28】
前記Fcを介したエフェクター機能がC1qへの結合によって測定される、請求項27記載の方法。
【請求項29】
C1qと前記抗体の結合が野生型抗体と比較して低下するように、好ましくは、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、または100%低下するように、前記第1の重鎖定常領域および第2の重鎖定常領域が改変されており、
C1q結合が好ましくは、ELISAによって測定される、
請求項24~28のいずれか一項記載の方法。
【請求項30】
前記第1の重鎖定常領域(CH)および第2の重鎖定常領域(CH)のうちの少なくとも1つにおいて、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖の位置L234、L235、D265、N297、およびP331に対応する位置における1つまたは複数のアミノ酸が、それぞれL、L、D、N、およびPでない、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項31】
EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖の位置L234およびL235に対応する位置が、それぞれ前記第1の重鎖および第2の重鎖においてFおよびEである、請求項30記載の方法。
【請求項32】
EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖の位置L234、L235、およびD265に対応する位置が、それぞれ、前記第1の重鎖定常領域および第2の重鎖定常領域(HC)においてF、E、およびAである、請求項30または31記載の方法。
【請求項33】
前記第1の重鎖定常領域および第2の重鎖定常領域の両方の、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖の位置L234およびL235に対応する位置が、それぞれFおよびEであり、かつ
(i)前記第1の重鎖定常領域のEUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖のF405に対応する位置がLであり、かつ前記第2の重鎖のEUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖のK409に対応する位置がRであるか、または
(ii)前記第1の重鎖定常領域のEUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖のK409に対応する位置がRであり、かつ前記第2の重鎖のEUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖のF405に対応する位置がLである、
請求項30~32のいずれか一項記載の方法。
【請求項34】
前記第1の重鎖定常領域および第2の重鎖定常領域の両方のEUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖の位置L234、L235、およびD265に対応する位置が、それぞれF、E、およびAであり、かつ
(i)前記第1の重鎖定常領域のEUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖のF405に対応する位置がLであり、かつ前記第2の重鎖定常領域のEUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖のK409に対応する位置がRであるか、または
(ii)前記第1の重鎖のEUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖のK409に対応する位置がRであり、かつ前記第2の重鎖のEUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖のF405に対応する位置がLである、
請求項30~33のいずれか一項記載の方法。
【請求項35】
前記第1の重鎖および/または第2の重鎖の定常領域が、
a)SEQ ID NO:15またはSEQ ID NO:30に示した配列[IgG1-FC];
b)a)における配列の部分配列、例えば、a)において定義された配列のN末端またはC末端から始めて1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、または10個の連続アミノ酸が欠失している部分配列;および
c)a)またはb)において定義されたアミノ酸配列と比較して最大で10個の置換、例えば、最大で9個の置換、最大で8個、最大で7個、最大で6個、最大で5個、最大で4個、最大で3個、最大で2個、または最大で1個の置換を有する配列
からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むか、それから本質的になるか、またはそれからなる、請求項15~34のいずれか一項記載の方法。
【請求項36】
前記第1の重鎖または第2の重鎖、例えば、前記第2の重鎖の定常領域が、
a)SEQ ID NO:16またはSEQ ID NO:31に示した配列[IgG1-F405L];
b)a)における配列の部分配列、例えば、a)において定義された配列のN末端またはC末端から始めて1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、または10個の連続アミノ酸が欠失している部分配列;および
c)a)またはb)において定義されたアミノ酸配列と比較して最大で9個の置換、例えば、最大で8個、最大で7個、最大で6個、最大で5個、最大で4個、最大で3個、最大で2個、または最大で1個の置換を有する配列
からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むか、それから本質的になるか、またはそれからなる、請求項15~35のいずれか一項記載の方法。
【請求項37】
前記第1の重鎖または第2の重鎖、例えば、前記第1の重鎖の定常領域が、
a)SEQ ID NO:17またはSEQ ID NO:32に示した配列[IgG1-F409R];
b)a)における配列の部分配列、例えば、a)において定義された配列のN末端またはC末端から始めて1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、または10個の連続アミノ酸が欠失している部分配列;および
c)a)またはb)において定義されたアミノ酸配列と比較して最大で10個の置換、例えば、最大で9個の置換、最大で8個、最大で7個、最大で6個、最大で5個、最大で4個の置換、最大で3個、最大で2個、または最大で1個の置換を有する配列
からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むか、それから本質的になるか、またはそれからなる、請求項15~36のいずれか一項記載の方法。
【請求項38】
前記第1の重鎖および/または第2の重鎖の定常領域が、
a)SEQ ID NO:18またはSEQ ID NO:33に示した配列[IgG1-Fc_FEA];
b)a)における配列の部分配列、例えば、a)において定義された配列のN末端またはC末端から始めて1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、または10個の連続アミノ酸が欠失している部分配列;および
c)a)またはb)において定義されたアミノ酸配列と比較して最大で7個の置換、例えば、最大で6個の置換、最大で5個、最大で4個、最大で3個、最大で2個、または最大で1個の置換を有する配列
からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むか、それから本質的になるか、またはそれからなる、請求項15~37のいずれか一項記載の方法。
【請求項39】
前記第1の重鎖および/または第2の重鎖、例えば、前記第2の重鎖の定常領域が、
a)SEQ ID NO:19またはSEQ ID NO:34に示した配列[IgG1-Fc_FEAL];
b)a)における配列の部分配列、例えば、a)において定義された配列のN末端またはC末端から始めて1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、または10個の連続アミノ酸が欠失している部分配列;および
c)a)またはb)において定義されたアミノ酸配列と比較して最大で6個の置換、例えば、最大で5個の置換、最大で4個の置換、最大で3個、最大で2個、または最大で1個の置換を有する配列
からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むか、それから本質的になるか、またはそれからなる、請求項15~38のいずれか一項記載の方法。
【請求項40】
前記第1の重鎖および/または第2の重鎖、例えば、前記第1の重鎖の定常領域が、
a)SEQ ID NO:20またはSEQ ID NO:35に示した配列[IgG1-Fc_FEAR];
b)a)における配列の部分配列、例えば、a)において定義された配列のN末端またはC末端から始めて1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、または10個の連続アミノ酸が欠失している部分配列;および
c)a)またはb)において定義されたアミノ酸配列と比較して最大で6個の置換、例えば、最大で5個の置換、最大で4個、最大で3個、最大で2個、または最大で1個の置換を有する配列
からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むか、それから本質的になるか、またはそれからなる、請求項15~39のいずれか一項記載の方法。
【請求項41】
前記結合物質がカッパ(κ)軽鎖定常領域を含む、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項42】
前記結合物質がラムダ(λ)軽鎖定常領域を含む、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項43】
前記第1の軽鎖定常領域がカッパ(κ)軽鎖定常領域である、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項44】
前記第2の軽鎖定常領域がラムダ(λ)軽鎖定常領域である、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項45】
前記第1の軽鎖定常領域がラムダ(λ)軽鎖定常領域である、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項46】
前記第2の軽鎖定常領域がカッパ(κ)軽鎖定常領域である、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項47】
前記カッパ(κ)軽鎖が、
a)SEQ ID NO:21に示した配列;
b)a)における配列の部分配列、例えば、a)において定義された配列のN末端またはC末端から始めて1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、または10個の連続アミノ酸が欠失している部分配列;および
c)a)またはb)において定義されたアミノ酸配列と比較して最大で10個の置換、例えば、最大で9個の置換、最大で8個、最大で7個、最大で6個、最大で5個、最大で4個の置換、最大で3個、最大で2個、または最大で1個の置換を有する配列
からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、請求項41~46のいずれか一項記載の方法。
【請求項48】
前記ラムダ(λ)軽鎖が、
a)SEQ ID NO:22に示した配列;
b)a)における配列の部分配列、例えば、a)において定義された配列のN末端またはC末端から始めて1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、または10個の連続アミノ酸が欠失している部分配列;および
c)a)またはb)において定義されたアミノ酸配列と比較して最大で10個の置換、例えば、最大で9個の置換、最大で8個、最大で7個、最大で6個、最大で5個、最大で4個の置換、最大で3個、最大で2個、または最大で1個の置換を有する配列
からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、請求項42~47のいずれか一項記載の方法。
【請求項49】
前記結合物質が、IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4からなる群より選択されるアイソタイプの結合物質である、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項50】
前記結合物質が完全長IgG1抗体である、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項51】
前記抗体がIgG1m(f)アロタイプの抗体である、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項52】
前記対象がヒト対象である、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項53】
前記腫瘍またはがんが固形腫瘍である、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項54】
前記腫瘍またはがんが、黒色腫、卵巣がん、肺がん(例えば、非小細胞肺がん(NSCLC)、結腸直腸がん、頭頸部がん、胃がん、乳がん、腎臓がん、尿路上皮がん、膀胱がん、食道がん、膵臓がん、肝臓がん、胸腺腫および胸腺がん、脳がん、神経膠腫、副腎皮質がん、甲状腺がん、他の皮膚がん、肉腫、多発性骨髄腫、白血病、リンパ腫、骨髄異形成症候群、卵巣がん、子宮内膜がん、前立腺がん、陰茎がん、子宮頸がん、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、メルケル細胞がん、ならびに中皮腫からなる群より選択される、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項55】
前記腫瘍またはがんが、肺がん(例えば、非小細胞肺がん(NSCLC)、尿路上皮がん(膀胱、尿管、尿道、または腎盂のがん)、子宮内膜がん(EC)、乳がん(例えば、トリプルネガティブ乳がん(TNBC))、頭頸部扁平上皮がん(SCCHN)(例えば、口腔、咽頭、または喉頭のがん)、および子宮頸がんからなる群より選択される、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項56】
前記腫瘍またはがんが肺がんである、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項57】
前記肺がんが非小細胞肺がん(NSCLC)、例えば、扁平上皮または非扁平上皮NSCLCである、請求項56記載の方法。
【請求項58】
前記NSCLCが、上皮細胞成長因子(EGFR)感受性増加変異および/または未分化リンパ腫(ALK)転座/ROS1再編成を有さない、請求項57記載の方法。
【請求項59】
前記対象が、進行性/転移性疾患に対する4つまでの全身前処置レジメンを受けたことがあり、かつ最後の全身前処置の最中または後に疾患進行、例えば、X線撮影により確認された疾患進行を経験したことがある、請求項56~58のいずれか一項記載の方法。
【請求項60】
前記対象が、白金ベースの化学療法を受けたことがある、請求項59記載の方法。
【請求項61】
前記対象が、白金ベースの療法の適格性がなく、かつ、別の化学療法、例えば、ゲムシタビン含有レジメンによる処置を受けている、請求項59記載の方法。
【請求項62】
前記対象が、チェックポイント阻害物質、例えば、PD-1/PD-Lを標的とする作用物質、例えば、PD-1/PD-L1阻害物質による前処置を受けたことがある、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項63】
前記対象が、チェックポイント阻害物質、例えば、PD-1/PD-Lを標的とする作用物質、例えば、PD-1/PD-L1阻害物質による処置の最中または後に疾患進行を経験したことがある、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項64】
前記対象が、チェックポイント阻害物質、例えば、PD-1/PD-Lを標的とする作用物質、例えば、PD-1/PD-L1阻害物質による最後の前処置の最中または後に疾患進行を経験したことがある、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項65】
前記対象が、最後の全身前処置の最中または後に疾患進行、例えば、X線撮影により確認された疾患進行を経験したことがある、請求項59~64のいずれか一項記載の方法。
【請求項66】
前記対象が、チェックポイント阻害物質、例えば、PD-1/PD-Lを標的とする作用物質、例えば、PD-1/PD-L1阻害物質による前処置を受けたことがない、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項67】
前記腫瘍またはがんが子宮内膜がんである、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項68】
前記対象が、類内膜がん、漿液性がん、扁平上皮がん、明細胞がん、またはがん肉腫を含む上皮子宮内膜組織構造を有する、請求項67記載の方法。
【請求項69】
前記対象が、進行性/転移性疾患に対する4つまでの全身前処置レジメンを受けたことがあり、かつ最後の全身前処置の最中または後に疾患進行、例えば、X線撮影により確認された疾患進行を経験したことがある、請求項67または68記載の方法。
【請求項70】
前記対象が、チェックポイント阻害物質、例えば、PD-1/PD-Lを標的とする作用物質、例えば、PD-1/PD-L1阻害物質による前処置を受けたことがない、請求項67~69のいずれか一項記載の方法。
【請求項71】
前記腫瘍またはがんが、膀胱、尿管、尿道、または腎盂のがんを含む尿路上皮がんである、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項72】
前記対象が、進行性/転移性疾患に対する4つまでの全身前処置レジメンを受けたことがあり、かつ最後の全身前処置の最中または後に疾患進行、例えば、X線撮影により確認された疾患進行を経験したことがある、請求項71記載の方法。
【請求項73】
前記対象が、チェックポイント阻害物質、例えば、PD-1/PD-Lを標的とする作用物質、例えば、PD-1/PD-L1阻害物質による前処置を受けたことがある、請求項71または72記載の方法。
【請求項74】
前記対象が、白金ベースの化学療法を受けたことがある、請求項71または72記載の方法。
【請求項75】
前記対象が、白金ベースの療法の適格性がなく、かつ、別の化学療法、例えば、ゲムシタビン含有レジメンによる処置を受けたことがある、請求項71または72のいずれか一項記載の方法。
【請求項76】
前記腫瘍またはがんが乳がん、例えば、トリプルネガティブ乳がん(TNBC)である、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項77】
前記TNBCが、HER2陰性、例えば、蛍光インサイチューハイブリダイゼーション(FISH)または免疫組織化学によるタンパク質発現の測定によって判定されたHER2陰性、プロゲステロン受容体陰性、エストロゲン受容体陰性である、請求項76記載の方法。
【請求項78】
前記対象が、局所進行性/転移性疾患に対する少なくとも1つの全身前処置レジメン、例えば、アントラサイクリン含有、タキサン含有、代謝拮抗物質含有、または微小管阻害物質含有レジメンを含む少なくとも1つの全身前処置レジメンを受けたことがある、請求項76または77記載の方法。
【請求項79】
アントラサイクリン含有、タキサン含有、代謝拮抗物質含有、または微小管阻害物質含有レジメンを含む少なくとも1つの全身前処置レジメンなどを含む、局所進行性/転移性疾患に対する最大で4つの全身前処置レジメンを、前記対象が受けたことがある、請求項78記載の方法。
【請求項80】
前記対象が、チェックポイント阻害物質、例えば、PD-1/PD-Lを標的とする作用物質、例えば、PD-1/PD-L1阻害物質による前処置を受けたことがある、請求項76~79のいずれか一項記載の方法。
【請求項81】
前記対象が、チェックポイント阻害物質による前記前処置の最中または後に疾患進行、例えば、X線撮影により確認された疾患進行を経験したことがある、請求項80記載の方法。
【請求項82】
前記対象が、チェックポイント阻害物質、例えば、PD-1/PD-Lを標的とする作用物質、例えば、PD-1/PD-L1阻害物質による前処置を受けたことがない、請求項76~79のいずれか一項記載の方法。
【請求項83】
前記腫瘍またはがんが頭頸部がん、例えば、頭頸部扁平上皮がん(SCCHN)である、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項84】
前記腫瘍またはがんが再発性または転移性のSCCHNである、請求項83記載の方法。
【請求項85】
前記腫瘍またはがんが口腔、咽頭、または喉頭のがんである、請求項83または84記載の方法。
【請求項86】
前記対象が、再発性/転移性疾患に対する4つまでの全身前処置レジメンを受けたことがあり、かつ最後の全身前処置の最中または後に疾患進行、例えば、X線撮影により確認された疾患進行を経験したことがある、請求項83~85のいずれか一項記載の方法。
【請求項87】
前記対象が、白金ベースの化学療法を受けたことがある、請求項86記載の方法。
【請求項88】
前記対象が、白金ベースの療法の適格性がなく、かつ別の化学療法を受けている、請求項86記載の方法。
【請求項89】
前記対象が、チェックポイント阻害物質、例えば、PD-1/PD-Lを標的とする作用物質、例えば、PD-1/PD-L1阻害物質による前処置を受けたことがある、請求項83~88のいずれか一項記載の方法。
【請求項90】
前記対象が、チェックポイント阻害物質による前記前処置の最中または後に疾患進行、例えば、X線撮影により確認された疾患進行を経験したことがある、請求項89記載の方法。
【請求項91】
前記対象が、チェックポイント阻害物質、例えば、PD-1/PD-Lを標的とする作用物質、例えば、PD-1/PD-L1阻害物質による前処置を受けたことがない、請求項83~88のいずれか一項記載の方法。
【請求項92】
前記腫瘍またはがんが子宮頸がんである、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項93】
前記子宮頸がんが扁平上皮細胞、腺がん、または腺扁平上皮組織構造の子宮頸がんである、請求項92記載の方法。
【請求項94】
前記対象が、再発性/転移性疾患に対する少なくとも1つの全身前処置レジメン、例えば、血管内皮増殖因子Aを標的とする処置、例えば、ベバシズマブによる処置と組み合わせた化学療法を受けたことがあり、かつ最後の全身前処置の最中または後に疾患進行、例えば、X線撮影により確認された疾患進行を経験したことがある、請求項92または93記載の方法。
【請求項95】
血管内皮増殖因子Aを標的とする処置、例えば、ベバシズマブによる処置と組み合わせた化学療法を含む、再発性/転移性疾患に対する最大で4つの全身前処置レジメンを、前記対象が受けたことがある、請求項94記載の方法。
【請求項96】
前記対象が、チェックポイント阻害物質、例えば、PD-1/PD-Lを標的とする作用物質、例えば、PD-1/PD-L1阻害物質による前処置を受けたことがない、請求項92または93記載の方法。
【請求項97】
前記結合物質が全身投与によって投与される、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項98】
前記結合物質が静脈内注射または静脈内注入によって投与される、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項99】
それぞれの処置サイクルが3週間(21日)である、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項100】
1用量が3週間ごとに(1Q3W)投与される、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項101】
1用量が、それぞれの処置サイクルの1日目に投与される、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項102】
それぞれの用量が、最低限30分にわたって、例えば、最低限60分、最低限90分、最低限120分、または最低限240分にわたって注入される、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項103】
ヒトCD137に結合する第1の結合領域とヒトPD-L1に結合する第2の結合領域とを含む結合物質を含む組成物であって、前記組成物中の結合物質の量が25~400mgまたは1.7×10-7~2.7×10-6molである、前記組成物。
【請求項104】
約80mgの前記結合物質を含む、請求項103記載の組成物。
【請求項105】
前記結合物質が、請求項1~102のいずれか一項において定義される結合物質である、請求項103~104のいずれか一項記載の組成物。
【請求項106】
全身投与用である、請求項103~105のいずれか一項記載の組成物。
【請求項107】
注射用または注入用、例えば、静脈内注射用または静脈内注入用である、請求項103~106のいずれか一項記載の組成物。
【請求項108】
前記結合物質が、体積50~500mL、例えば100~250mLの水溶液、例えば、0.9%のNaCl(食塩水)中に存在する、請求項103~107のいずれか一項記載の組成物。
【請求項109】
単位剤形である、請求項103~108のいずれか一項記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、ヒトCD137に結合する第1の結合領域とヒトPD-L1に結合する第2の結合領域とを含む結合物質を投与することによって、腫瘍の進行を低減もしくは阻止するためまたはがんを処置するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
CD137(4-1BB、TNFRSF9)は腫瘍壊死因子(TNF)受容体(TNFR)ファミリーのメンバーである。CD137は、CD8+T細胞およびCD4+T細胞、調節性T細胞(Treg)、ナチュラルキラー(NK)細胞およびNKT細胞、B細胞、ならびに好中球の表面上の共刺激分子である。T細胞上でCD137は構成的に発現していないが、T細胞受容体(TCR)が活性化されると誘導される。その天然リガンドである4-1BBLまたはアゴニスト抗体を介して刺激されると、アダプターとしてTNFR関連因子(TRAF)-2およびTRAF-1を用いるシグナル伝達が起こる。CD137による初期シグナル伝達は、最終的に核内因子(NF)-κBと分裂促進因子活性化タンパク質(MAP)-キナーゼ経路を活性化するK-63ポリ-ユビキチン結合反応を伴う。シグナル伝達によってT細胞共刺激、増殖、サイトカイン産生、成熟が増加し、かつCD8+T細胞の生存期間が延長する。CD137に対するアゴニスト抗体は様々な前臨床モデルにおいてT細胞による抗腫瘍管理を促進することが示されている(Murillo et al. 2008 Clin. Cancer Res. 14(21): 6895-6906(非特許文献1))。CD137を刺激する抗体はT細胞の生存および増殖を誘導することができ、それによって抗腫瘍免疫応答が強化される。CD137を刺激する抗体は先行技術に開示されており、ヒトIgG4抗体であるウレルマブ(WO2005035584(特許文献1))およびヒトIgG2抗体であるウトミルマブを含む(Fisher et al. 2012 Cancer Immunol. Immunother. 61: 1721-1733(非特許文献2))。
【0003】
プログラム細胞死リガンド1(PD-L1、PDL1、CD274、B7H1)は33kDaシングルパスI型膜タンパク質である。選択的スプライシングに基づいて3種類のPD-L1アイソフォームが述べられている。PD-L1は免疫グロブリン(Ig)スーパーファミリーに属し、1つのIg様C2型ドメインと、1つのIg様V型ドメインを含む。新鮮に単離されたT細胞およびB細胞はごくわずかな量のPD-L1しか発現せず、CD14+単球の一部(約16%)がPD-L1を構成的に発現する。しかしながら、インターフェロン-γ(IFNγ)が腫瘍細胞上のPD-L1をアップレギュレートすることが知られている。
【0004】
PD-L1は、1)活性化T細胞上のPD-L1受容体であるプログラム細胞死タンパク質1(PD-1)(CD279)に結合することで腫瘍反応性T細胞を寛容化することによって;2)腫瘍細胞発現PD-L1を介したPD-1シグナル伝達によりCD8+T細胞およびFasリガンド媒介性溶解に対して腫瘍細胞を耐性にすることによって;3)T細胞発現CD80(B7.1)を介した逆向きのシグナル伝達によりT細胞を寛容化することによって;ならびに4)誘導されたT調節細胞の発生および維持を促進することによって抗腫瘍免疫を妨げる。PD-L1は、黒色腫、卵巣がん、肺がん、および結腸がんを含む多くのヒトがんにおいて発現している(Latchman et al., 2004 Proc Natl Acad Sci USA 101, 10691-6(非特許文献3))。
【0005】
PD-L1遮断抗体は、PD-L1を過剰発現させることが知られている数種類のがん(黒色腫、NSCLCを含む)において臨床活性を示した。例えば、アテゾリズマブは、PD-L1に対するヒト化IgG1モノクローナル抗体である。現在、アテゾリズマブは、様々なタイプの固形腫瘍を含む数種類の適応症の免疫療法として臨床試験されており(例えば、Rittmeyer et al., 2017 Lancet 389:255-265(非特許文献4)を参照されたい)、非小細胞肺がんおよび膀胱がん適応症に対して認可されている。PD-L1抗体であるアベルマブ(Kaufman et al Lancet Oncol. 2016;17(10):1374-1385(非特許文献5))は、転移性メルケル細胞がんがある成人患者および12才またはそれ以上の小児患者の治療剤としてFDAに認可され、膀胱がん、胃がん、頭頸部がん、中皮腫、NSCLC、卵巣がん、および腎臓がんを含む数種類のがん適応症において臨床試験されている。PD-L1抗体であるデュルバルマブが局所進行性または転移性の尿路上皮がん適応症に対して認可されており、複数種の固形腫瘍および血液がんにおいて臨床開発されている(例えば、Massard et al., 2016 J Clin Oncol. 34(26):3119-25(非特許文献6)を参照されたい)。さらなる抗PD-L1抗体が、例えば、WO2004004771(特許文献2)において記載されている。
【0006】
Horton et al(J Immunother Cancer. 2015; 3(Suppl 2):O10(非特許文献7))はアゴニスト4-1BB抗体とPD-L1中和抗体の組み合わせを開示する。WO2019/025545(特許文献3)は、結合物質、例えば、ヒトPD-L1に結合し、ヒトCD137に結合する二重特異性抗体を提供する。
【0007】
しかしながら、当技術分野における、これらの進歩にもかかわらず、PD-L1とCD137を標的とする改善された療法が大いに必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】WO2005035584
【特許文献2】WO2004004771
【特許文献3】WO2019/025545
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Murillo et al. 2008 Clin. Cancer Res. 14(21): 6895-6906
【非特許文献2】Fisher et al. 2012 Cancer Immunol. Immunother. 61: 1721-1733
【非特許文献3】Latchman et al., 2004 Proc Natl Acad Sci USA 101, 10691-6
【非特許文献4】Rittmeyer et al., 2017 Lancet 389:255-265
【非特許文献5】Kaufman et al Lancet Oncol. 2016;17(10):1374-1385
【非特許文献6】Massard et al., 2016 J Clin Oncol. 34(26):3119-25
【非特許文献7】Horton et al, J Immunother Cancer. 2015; 3(Suppl 2):O10
【発明の概要】
【0010】
本発明の目的は、対象において腫瘍の進行を低減もしくは阻止するためまたはがんを処置するための方法であって、少なくとも1つの処置サイクルにおいて、ヒトCD137に結合する第1の結合領域とヒトPD-L1に結合する第2の結合領域とを含む結合物質を、適切な量で前記対象に投与する工程を含む、方法を提供することである。
【0011】
それぞれの用量でかつ/またはそれぞれの処置サイクルにおいて投与される結合物質の量は、
a)約0.3~5mg/kg体重もしくは合計で約25~400mg;および/または
b)約2.1×10-9~3.4×10-8mol/kg体重もしくは合計で約1.7×10-7~2.7×10-6mol
でもよい。
【0012】
本発明のさらなる目的は、ヒトCD137に結合する第1の結合領域とヒトPD-L1に結合する第2の結合領域とを含む結合物質を含む組成物であって、組成物中の結合物質の量が約25~400mgまたは約1.7×10-7~2.7×10-6molである、組成物を提供することである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】GEN1046がPD-L1発現K562細胞とCD137発現K562細胞に同時結合するとダブレット(doublet)の形成と釣鐘形の用量反応曲線が誘導される。同数の、CD137遺伝子を導入したCellTrace(商標)FarRed標識K562細胞(K562_h4-1BB)を、PD-L1遺伝子を導入したCellTrace(商標)Violet標識K562細胞(K562_hPD-L1)と0.001~100μg/mLのi)GEN1046またはii)対照抗体PD-L1-547-FEALxb12-FEARおよびb12-FEALxCD137-009-HC7LC2-FEARの組み合わせの存在下で15分間コインキュベートした。試料をフローサイトメトリーによって分析し、パーセントCellTrace(商標)FarRed/CellTrace(商標)Violet二重陽性ダブレット(A)をGEN1046濃度(B)の関数としてプロットした。示したデータはn=3のテクニカルレプリケートの平均±標準偏差である(おそらく、記号はSDを示すために小さくなる必要がある)。
図2】CD137xPD-L1二重特異性抗体の予想された作用機序の模式図。(A)PD-L1は抗原提示細胞(APC)ならびに腫瘍細胞の表面で発現している。PD-L1と、負の調節分子PD-1を発現するT細胞が結合するとT細胞活性化シグナルが効果的に無効化され、最終的にT細胞が阻害される。(B)CD137xPD-L1二重特異性抗体が添加されると阻害性のPD-1:PD-L1相互作用がPD-L1特異的アームによって遮断され、それと同時に、この二重特異性抗体は細胞間相互作用を介して、T細胞上で発現しているCD137にアゴニスト性シグナル伝達をもたらし、その結果として強力なT細胞共刺激が生じる。
図3】PD-L1発現腫瘍細胞株の存在下で行ったルシフェラーゼベースCD137活性化レポーターアッセイにおける抗体濃度の関数としての相対的ルミネセンス単位(RLU)。内因的にPD-L1を発現するヒト卵巣がん細胞株ES-2(A)と乳がん細胞株MDA-MB-231(B)をNFkB-Luc2P/4-1BBジャーカットレポーター細胞と共に0.00128~100μg/mLのi)GEN1046またはii)b12-FEAL対照抗体の存在下で6時間、同時培養した。ルシフェラーゼ発現誘導をルシフェラーゼ基質とのインキュベーションと相対的ルミネセンス単位の測定によって求めた。示したデータはn=3のテクニカルレプリケートの平均±標準偏差である。
図4】ポリクローナルT細胞増殖アッセイにおけるGEN1046と対照抗体PD-L1-547-FEALxb12-FEALまたはIgG1-b12-FEALとの比較。CFSE標識PBMCを最適以下の濃度の抗CD3抗体(0.03μg/mL)とインキュベートし、0.0032~10μg/mLのi)GEN1046、ii)PD-L1-547-FEALxb12-FEAR、またはiii)b12-FEAL対照抗体の存在下で4日間培養した。全T細胞(A)ならびに全T細胞(B)中のCCR7+CD45RO+セントラルメモリーおよびCCR7-CD45RO+エフェクターメモリーT細胞サブセットのT細胞増殖をフローサイトメトリーによって測定した。データは、FlowJo v10.4ソフトウェアを用いて計算した場合の、1人の代表ドナーからの、2回のレプリケートの増大指数(expansion index)の平均として示した。エラーバー(SD)は、この実験(1人のドナーからの細胞を用いた2回のレプリケート)のばらつきを示す。
図5】活性PD-1/PD-L1軸を用いた抗原特異的T細胞アッセイにおけるGEN1046によるPD-1/PD-L1を介したT細胞阻害の開放と、さらなるCD8+T細胞増殖共刺激。CD8+T細胞を、PD-1をコードするRNA(0.4~10μg)と共に、またはPD-1をコードするRNAを伴わずに(w/o PD-1)、CLDN6特異的TCRのα鎖およびβ鎖をコードするRNA(各10μg)で電気穿孔し、CFSEで標識し、0.3μg(A)または1μg(B)のCLDN6コードRNAで電気穿孔した未熟DCと同時培養した。電気穿孔したCD8+T細胞とiDCをGEN1046(0.00015~1μg/mL)またはb12-FEAL(1μg/mL)の存在下で4日間、同時培養した。T細胞増殖を、フローサイトメトリーを用いてCD8+T細胞のCFSE希釈度を分析することによって評価し、T細胞の増大指数(例えば、全T細胞集団が増殖によって増大した程度)をFlowJo(バージョン10.3)によって自動計算した。示されたデータは、2回の実験に組み入れられた4人のドナーのうちの1人のドナーに由来する3つの同じウェルの増大指数の平均±SDである。
図6】電気穿孔によってT細胞に導入したPD-1を伴う、または電気穿孔によってT細胞に導入したPD-1を伴わない抗原特異的T細胞アッセイにおける炎症性サイトカイン(IFNγ、TNFα、IL-13、およびIL-8)の分泌に対するGEN1046の効果。CD8+T細胞を、PD-1をコードするRNA(2μg)と共に、またはPD-1をコードするRNAを伴わずに(w/o PD-1)、CLDN6特異的TCRのα鎖およびβ鎖をコードするRNA(各10μg)で電気穿孔し、CFSEで標識し、1μgのCLDN6コードRNAで電気穿孔した未熟DCと同時培養した。電気穿孔したCD8+T細胞とiDCをGEN1046(0.00015~1μg/mL)またはb12-FEAL(1μg/mL)の存在下で同時培養した。抗体を添加して48時間後に、MSD V-Plex Human Proinflammatory panel 1(10-Plex)キットを用いたマルチプレックスサンドイッチイムノアッセイによって上清のサイトカインレベルを求めた。示されたデータは、この実験に組み入れられた2人のドナーのうちの1人の代表ドナーに由来する6つの同じウェルの濃度の平均±SDである。
図7】CD137-009-FEALxPD-L1-547-FEARによる、ヒト非小細胞肺がん組織切除に由来する腫瘍浸潤リンパ球(TIL)のエクスビボ増大。切除された組織に由来する腫瘍断片を10U/mL IL-2と示された濃度のCD137-009-FEALxPD-L1-547-FEARと共に培養した。10日間の培養後に細胞を回収し、フローサイトメトリーによって分析した。(A)1,000ビーズあたりのTIL数、(B)1,000ビーズあたりのCD3+CD8+T細胞数、(C)1,000ビーズあたりのCD3+CD4+T細胞数、(D)1,000ビーズあたりのCD3-CD56+NK細胞数。データを、出発物質として1ウェルにつき2つの腫瘍断片を用いた5つの個々のウェルの平均細胞数±SDである。*通常の一元配置ANOVAとダネット多重比較検定を用いてp<0.05。
図8】臨床試験デザインの概略図。
図9】用量漸増;ベースラインからの腫瘍サイズの最良パーセント変化、患者全員。データカットオフ:2020年9月29日。5人の患者についてはベースライン後のスキャンを行わなかった。aRECIST v1.1に従う最小奏効期間(5週間)に達しなかった。bPRは後のスキャンでは確認されなかった。NE、評価不可能;NSCLC、非小細胞肺がん;PD、進行;PD-(L)1、プログラム細胞死(リガンド)1;PR、部分奏効;SD、安定;SoD、径和;uPR、未確認の部分奏効。
図10】用量漸増;ベースラインからの腫瘍サイズの最良変化、NSCLC患者。データカットオフ:2020年9月29日。aPRは後のスキャンでは確認されなかった。bPD-L1発現を保存用腫瘍標本において評価した。BOR、最良総合効果;CR、完全奏効;ICI、免疫チェックポイント阻害剤;NA、入手不可能;PD、進行;PD-(L)1、プログラム細胞死(リガンド)1;PR、部分奏効;RECIST、固形がん効果判定基準(Response Evaluation Criteria in Solid Tumor);SD、安定;SoD、径和;TPS、腫瘍比率スコア(tumor proportion score);uPR、未確認の部分奏効。
図11】増大コホート1;A)ベースラインからの腫瘍サイズの最良変化、B)ベースラインからの標的病変部SoD変化。データカットオフ:2020年10月12日。*進行中の処置がある患者を示す。aPRは後のスキャンでは確認されなかった。bPD-L1発現は、GEN1046処置の開始前に得られた腫瘍生検材料において評価された(22C3 pharmDx アッセイ, HistoGeneX, Belgium)。少なくとも1回のベースライン後腫瘍評価を受け(スケジュールは6週間ごとである)、従って、臨床利益を評価することができた患者全員を組み入れている。12人の患者のうち6人は今なお処置を受けている。示されていない残りの12人の患者のうち3人の患者には最初の奏効評価前に臨床進行があり、9人の患者は今なお処置を受けており、最初の奏効評価を受けたことがなかった。RECIST1.1を用いて評価したBORおよび時点効果(time point response);NA:最初のPD後の評価。BOR、最良総合効果;ICI、免疫チェックポイント阻害物質;NA、入手不可能;NE、評価不可能;NSCLC、非小細胞肺がん;PD、進行;PD-(L)1、プログラム細胞死(リガンド)1;PR、部分奏効;RECIST、固形がん効果判定基準;SD、安定;SoD、径和;TPS、腫瘍比率スコア;uPR、未確認の部分奏効。
図12】100mg用量で3週間に1回(1Q3W)投与された場合のモデル予測された最大三量体形成およびPD-L1に対する受容体占有率。
図13】A~D: GEN1046の非盲検多施設安全性試験の用量漸増フェーズに登録した進行性固形腫瘍患者からの血液試料を用いて、インターフェロン-γ(IFN-γ)およびインターフェロン-γ誘導性タンパク質10 IP-10(A~B)、増殖エフェクターメモリーCD8 T細胞および全CD8 T細胞(C~D)の循環レベル変化を含む薬力学的評価を行った(NCT03917381;データカットオフ:2021年1月19日)。A~B. 血清試料中のIFN-γおよびIP-10の循環レベルをベースラインにおいて、ならびにサイクル1およびサイクル2におけるGEN1046投与後の複数の時点(1日目[投与して2時間後および4~6時間後]、2日目、3日目、8日目、ならびに15日目)で測定した。血清試料中のIFN-γおよびIP-10レベルをMeso Scale Discovery(MSD)マルチプレックス免疫アッセイによって求めた。示したデータは、サイクル1の間に測定したベースラインからの最大変化倍率である。統計解析をウィルコクソン-マンホイットニー検定を用いて行った。C~D. ベースラインにおいて、ならびにサイクル1およびサイクル2におけるGEN1046投与後の複数の時点(2日目、3日目、8日目、および15日目)で収集した全血中で末梢血の免疫表現型検査を行った。全血試料中の増殖(Ki67+)全CD8 T細胞およびエフェクターメモリーCD8 T細胞(CD8+CD45RA-CCR7-T細胞)の頻度をフローサイトメトリーによって評価した。示したデータは、サイクル1の間に測定したベースラインからの最大変化倍率である。統計解析をウィルコクソン-マンホイットニー検定を用いて行った。
【発明を実施するための形態】
【0014】
発明の詳細な説明
定義
本発明の状況において「結合物質」という用語は、望ましい抗原に結合することができる任意の作用物質を指す。本発明のある特定の態様では、結合物質は、抗体、抗体断片、またはその構築物である。結合物質はまた、合成部分、改変された部分、または非天然部分、特に、非ペプチド部分も含んでよい。このような部分は、例えば、望ましい抗原結合機能性または抗原結合領域、例えば、抗体または抗体断片を連結し得る。1つの態様において、結合物質は、抗原結合CDRまたは可変領域を含む合成構築物である。
【0015】
「免疫グロブリン」という用語は、一対が低分子量の軽(L)鎖、一対が重(H)鎖の二対のポリペプチド鎖からなり、4本全ての鎖がジスルフィド結合によって相互接続している構造上関連する糖タンパク質のクラスを指す。免疫グロブリンの構造は十分に特徴決定されている。例えば、Fundamental Immunology Ch. 7 (Paul, W., ed., 2nd ed. Raven Press, N.Y.(1989))を参照されたい。簡単に言うと、それぞれの重鎖は、典型的には、重鎖可変領域(本明細書中ではVHまたはVHと略す)と重鎖定常領域(本明細書中ではCHまたはCHと略す)で構成される。重鎖定常領域は典型的には3つのドメイン、CH1、CH2、およびCH3で構成される。ヒンジ領域は、重鎖のCH1ドメインとCH2ドメインとの間の領域であり、大きな可動性がある。ヒンジ領域中のジスルフィド結合はIgG分子中の2本の重鎖間の相互作用の一部である。それぞれの軽鎖は、典型的には、軽鎖可変領域(本明細書中ではVLまたはVLと略す)と軽鎖定常領域(本明細書中ではCLまたはCLと略す)で構成される。軽鎖定常領域は典型的には1つのドメインCLで構成される。VH領域とVL領域は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる保存された領域が点在している、相補性決定領域(CDR)とも呼ばれる超可変性領域(または配列が超可変性である、および/もしくは構造が規定されたループの形をしていることがある超可変領域)にさらに分けられることがある。それぞれのVHおよびVLは典型的には3つのCDRと4つのFRで構成され、アミノ末端からカルボキシ末端に向かって以下の順序:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4で配置されている(Chothia and Lesk J. Mol. Biol. 196, 901-917 (1987)も参照されたい)。特に定めのない限り、または文脈と矛盾しない限り、本明細書中のCDR配列は、IMGT規則に従い、DomainGapAlignを用いて特定される(Lefranc MP., Nucleic Acids Research 1999;27:209-212およびEhrenmann F., Kaas Q. and Lefranc M.-P. Nucleic Acids Res., 38, D301-307 (2010);インターネットhttpアドレスwww.imgt.org/.も参照されたい)。特に定めのない限り、または文脈と矛盾しない限り、本発明における定常領域のアミノ酸位置についての記載はEUナンバリングに従う(Edelman et al., Proc Natl Acad Sci U S A. 1969 May;63(l):78-85; Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, Fifth Edition. 1991 NIH Publication No. 91-3242)。例えば、本明細書中のSEQ ID NO:93は、IgG1m(f)重鎖定常領域の、EUナンバリングに従うアミノ酸位置118~447を示す。
【0016】
「アミノ酸」および「アミノ酸残基」という用語は本明細書において同義で用いられることがあり、限定するものと理解してはならない。アミノ酸は、アミン(-NH2)とカルボキシル(-COOH)官能基と、各アミノ酸に特有の側鎖(R基)を含有する有機化合物である。本発明の状況において、アミノ酸は構造および化学的特徴に基づいて分類され得る。従って、アミノ酸クラスは以下の表の一方または両方に反映され得る。
【0017】
(表1)R基の構造および一般的な化学的特徴決定に基づいた主な分類
【0018】
(表2)アミノ酸残基の別の物理的および機能的な分類
【0019】
あるアミノ酸を別のアミノ酸で置換することは保存的置換または非保存的置換で分類される場合がある。本発明の状況において「保存的置換」とは、あるアミノ酸を、類似する構造的特徴および/または化学的特徴をもつ別のアミノ酸で置換することである。このような、上記の2つの表のいずれかにおいて定義された、あるアミノ酸残基の、同じクラスの別のアミノ酸残基への置換:例えば、ロイシンとイソロイシンは両方とも脂肪族の分枝疎水性物質であるので、ロイシンはイソロイシンで置換され得る。同様に、アスパラギン酸とグルタミン酸は両方とも小さな負に荷電した残基であるので、アスパラギン酸はグルタミン酸で置換され得る。
【0020】
本明細書で使用する「位置…に対応するアミノ酸」という用語は、ヒトIgG1重鎖のアミノ酸位置番号を指す。他の免疫グロブリンにおける対応するアミノ酸位置はヒトIgG1とアラインメントすることによって見出されることがある。従って、別の配列中のアミノ酸またはセグメント「に対応する」、ある配列中のアミノ酸またはセグメントは、標準的な配列アラインメントプログラム、例えば、ALIGN、ClustalW、または類似物を用いて、典型的にはデフォルト設定を用いて他方のアミノ酸またはセグメントと一列に並び、かつヒトIgG1重鎖と少なくとも50%、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸またはセグメントである。配列内の配列またはセグメントをアラインメントし、それによって、本発明によるアミノ酸位置と対応する、配列内の位置を決定する手法は当技術分野において周知だとみなされる。
【0021】
本発明の状況において「抗体」(Ab)という用語は、免疫グロブリン分子、免疫グロブリン分子の断片、またはそのいずれかの誘導体を指し、これらは、代表的な生理学的条件下で、かなり長い時間の半減期、例えば、少なくとも約30分、少なくとも約45分、少なくとも約1時間、少なくとも約2時間、少なくとも約4時間、少なくとも約8時間、少なくとも約12時間、約24時間またはそれ以上、約48時間またはそれ以上、約3日、4日、5日、6日、7日、またはそれ以上など、あるいは他の任意の関連する、機能によって規定された期間(例えば、抗体と抗原との結合に関連する生理学的応答を誘導する、促進する、増強する、および/もしくは調節するのに十分な時間、ならびに/または抗体がエフェクター活性を高めるのに十分な時間)で抗原に特異的に結合する能力を有する。免疫グロブリン分子の重鎖および軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含む。本明細書で使用する「抗原結合領域」という用語は、抗原と相互作用する領域を指し、VH領域とVL領域を両方とも含む。抗体という用語が本明細書で用いられる場合、単一特異性抗体だけでなく、複数の、例えば、2つまたはそれ以上の、例えば、3つまたはそれ以上の、異なる抗原結合領域を含む多重特異性抗体も含む。抗体(Ab)の定常領域は、免疫グロブリンと、免疫系の様々な細胞(例えば、エフェクター細胞)および補体系成分、例えば、補体活性化の古典経路の第1の成分であるC1qを含む宿主組織または宿主因子との結合を媒介し得る。前記のように、本明細書において抗体という用語は、特に定めのない限り、または文脈と明らかに矛盾しない限り、抗原結合断片である、すなわち、抗原に特異的に結合する能力を保持している抗体断片を含む。抗体の抗原結合機能は完全長抗体の断片によって果たされ得ることが示されている。「抗体」という用語の中に含まれる抗原結合断片の例には、(i)Fab'またはFab断片、VL、VH、CL、およびCH1ドメインからなる一価断片、またはWO2007059782(Genmab)に記載の一価抗体;(ii)F(ab')2断片、2つのFab断片がヒンジ領域でのジスルフィド架橋によって連結された二価断片;(iii)VHおよびCH1ドメインから本質的になるFd断片;(iv)抗体のシングルアームのVLおよびVHドメインから本質的になるFv断片、(v)VHドメインから本質的になり、ドメイン抗体(Holt et al; Trends Biotechnol. 2003 Nov; 21(11):484-90)とも呼ばれる、dAb断片(Ward et al., Nature 341, 544-546(1989));(vi)キャメリドまたはナノボディ分子(Revets et al; Expert Opin Biol Ther. 2005 Jan; 5(1):111-24)、ならびに(vii)単離された相補性決定領域(CDR)が含まれる。さらに、Fv断片の2つのドメインであるVLおよびVHは別々の遺伝子によってコードされるが、VLおよびVH領域が対形成して一価分子(単鎖抗体または単鎖Fv(scFv)と知られる。例えば、Bird et al., Science 242, 423-426(1988)およびHuston et al., PNAS USA 85, 5879-5883(1988)を参照されたい)を形成する1本のタンパク質鎖として作られるのを可能にする合成リンカーによって組換え法を用いて接続されてもよい。このような単鎖抗体は、特に定めのない限り、または文脈によって明らかに示されない限り、抗体という用語の中に含まれる。このような断片は、一般的に、抗体の意味の中に含まれるが、ひとまとめにして、およびそれぞれ独立して、異なる生物学的な特性よび有用性を示す本発明の独特の特徴である。本発明の状況における、これらの抗体断片および他の有用な抗体断片ならびにこのような断片の二重特異性形式が本明細書においてさらに議論される。抗体という用語は、特に定めのない限り、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体(mAb)、抗体様ポリペプチド、例えば、キメラ抗体およびヒト化抗体、ならびに任意の公知の技法、例えば、酵素的切断、ペプチド合成、および組換え技法によって提供される、抗原に特異的に結合する能力を保持している抗体断片(抗原結合断片)も含むことも理解されるはずである。作製される抗体は任意のアイソタイプを有してよい。本明細書で使用する「アイソタイプ」という用語は、重鎖定常領域遺伝子によってコードされる免疫グロブリンクラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgD、IgA、IgE、またはIgM)を指す。特定のアイソタイプ、例えば、IgG1が本明細書において言及される時、この用語は、特定のアイソタイプ配列、例えば、特定のIgG1配列に限定されないが、抗体の配列が、他のアイソタイプよりも、そのアイソタイプ、例えば、IgG1に似ていることを示すために用いられる。従って、例えば、本発明のIgG1抗体は、定常領域の変化を含む、天然IgG1抗体の配列変種でもよい。
【0022】
本発明の状況において「二重特異性抗体」または「bs」という用語は、異なる抗体配列によって規定される2つの異なる抗原結合領域を有する抗体を指す。一部の態様において、前記の異なる抗原結合領域は同じ抗原上の異なるエピトープに結合する。しかしながら、好ましい態様では、前記の異なる抗原結合領域は異なる標的抗原に結合する。二重特異性抗体は、本明細書において以下で説明される任意の二重特異性抗体形式を含む任意の形式の二重特異性抗体でよい。
【0023】
「完全長」という用語は、抗体の状況で用いられる場合、抗体が断片ではなく、特定のアイソタイプについて天然で通常見られる特定のアイソタイプのドメインの全て、例えば、IgG1抗体の場合、VH、CH1、CH2、CH3、ヒンジ、VL、およびCLドメインを含有することを示す。一部の態様において、「完全長」という用語は、抗体の状況で用いられる場合、このアイソタイプの野生型抗体の重鎖-軽鎖対に通常見出される一対または二対の重鎖および軽鎖を含む抗体であって、それぞれの鎖が全ての、重鎖および軽鎖の定常ドメインおよび可変ドメインを含む、抗体(例えば、親抗体または変種抗体)を指す。完全長抗体において、重鎖および軽鎖の定常ドメインおよび可変ドメインは、完全長親抗体または野生型抗体と比較して抗体の機能的特性を改善するアミノ酸置換を含む場合がある。これらのアミノ酸置換には、抗体エフェクター機能を弱める目的の置換および多重特異性抗体、例えば、二重特異性抗体の組み立てを促進する置換が含まれる。本発明による完全長抗体は、(i)CDR配列を、完全重鎖配列および完全軽鎖配列を含む適切なベクターにクローニングする工程、ならびに(ii)完全重鎖配列および完全軽鎖配列を適切な発現系において発現させる工程を含む方法によって産生され得る。CDR配列または完全可変領域配列のいずれかからとりかかった場合に完全長抗体を産生することは当業者の知識の範囲内である。
【0024】
本明細書で使用する「ヒト抗体」という用語は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域およびフレームワーク領域と、ヒト免疫グロブリン定常ドメインを有する抗体を含むことが意図される。本発明のヒト抗体は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列によってコードされないアミノ酸残基(例えば、インビトロでのランダム変異誘発もしくは部位特異的変異誘発によって導入される、またはインビボでの体細胞変異によって導入される変異、挿入、または欠失)を含んでもよい。しかしながら、本明細書で使用する「ヒト抗体」という用語は、マウスなどの別の非ヒト種の生殖系列に由来するCDR配列がヒトフレームワーク配列に移植された抗体を含むことは意図されない。
【0025】
本明細書で使用する「ヒト化抗体」という用語は、ヒト抗体定常ドメインと、ヒト可変ドメインに対して高レベルの配列相同性を含むように改変された非ヒト可変ドメインを含有する、遺伝子操作された非ヒト抗体を指す。これは、一緒になって抗原結合部位を形成する6つの非ヒト抗体相補性決定領域(CDR)を相同なヒトアクセプターフレームワーク領域(FR)とつなぎ合わせることによって成し遂げることができる(WO92/22653およびEP0629240を参照されたい)。親抗体の結合親和性および特異性を完全に再現するために、親抗体(すなわち、非ヒト抗体)に由来するフレームワーク残基をヒトフレームワーク領域に代入(復帰突然変異)することが必要な場合がある。構造的相同性モデリングが、抗体の結合特性に重要なフレームワーク領域中のアミノ酸残基を特定するのに役立つ場合がある。従って、ヒト化抗体は、非ヒトCDR配列、主として、非ヒトアミノ酸配列への1つまたは複数のアミノ酸復帰突然変異を任意で含むヒトフレームワーク領域と、完全ヒト定常領域を含んでもよい。任意で、好ましい特徴、例えば、親和性および生化学的特性を有するヒト化抗体を得るために、さらなるアミノ酸修飾が適用される場合があるが、この修飾は必ずしも復帰突然変異だとは限らない。
【0026】
本明細書で使用する場合、文脈と矛盾しない限り、「Fc領域」という用語は、免疫グロブリンの重鎖の2つのFc配列からなる抗体領域を指し、前記Fc配列は、少なくとも、ヒンジ領域、CH2ドメイン、およびCH3ドメインを含む。
【0027】
本明細書で使用する「Fc領域」という用語は、抗体のN末端からC末端への方向で、少なくともヒンジ領域、CH2領域、およびCH3領域を含む領域を指す。抗体のFc領域は、免疫グロブリンと、免疫系の様々な細胞(例えば、エフェクター細胞)を含む宿主組織または因子および補体系の成分との結合を媒介し得る。
【0028】
本明細書で使用する「ヒンジ領域」という用語は免疫グロブリン重鎖のヒンジ領域を指す。従って、例えば、ヒトIgG1抗体のヒンジ領域は、Kabat(Kabat, E.A. et al., Sequences of proteins of immunological interest. 5th Edition - US Department of Health and Human Services, NIH publication No. 91-3242, pp 662,680,689(1991)に示したEuナンバリングに従うアミノ酸216~230に対応する。しかしながら、ヒンジ領域また、本明細書に記載の他のサブタイプのどのヒンジ領域でもよい。
【0029】
本明細書で使用する「CH1領域」または「CH1ドメイン」という用語は免疫グロブリン重鎖のCH1領域を指す。従って、例えば、ヒトIgG1抗体のCH1領域は、Kabat(同上)に示したEuナンバリングに従うアミノ酸118~215に対応する。しかしながら、CH1領域はまた、本明細書に記載の他のサブタイプのどのCH1領域でもよい。
【0030】
本明細書で使用する「CH2領域」または「CH2ドメイン」という用語は免疫グロブリン重鎖のCH2領域を指す。従って、例えば、ヒトIgG1抗体のCH2領域は、Kabat(同上)に示したEuナンバリングに従うアミノ酸231~340に対応する。しかしながら、CH2領域はまた、本明細書に記載の他のサブタイプのどのCH2領域でもよい。
【0031】
本明細書で使用する「CH3領域」または「CH3ドメイン」という用語は免疫グロブリン重鎖のCH3領域を指す。従って、例えば、ヒトIgG1抗体のCH3領域は、Kabat(同上)に示したEuナンバリングに従うアミノ酸341~447に対応する。しかしながら、CH3領域はまた、本明細書に記載の他のサブタイプのどのCH3領域でもよい。
【0032】
抗体と所定の抗原またはエピトープとの結合という面に関して、本明細書で使用する「結合」または「結合することができる」という用語は、典型的には、バイオレイヤー干渉法(BLI)を用いて測定された場合に、または、例えば、表面プラズモン共鳴(SPR)技術を用いてBIAcore 3000機器において、リガンドとして抗原を使用し、分析物として抗体を使用して測定された場合に、約10-7Mもしくはそれ未満、例えば、約10-8Mもしくはそれ未満、例えば、約10-9Mもしくはそれ未満、約10-10Mもしくはそれ未満、または約10-11Mもしくはさらにそれ未満のKDに対応する親和性での結合である。前記抗体は、所定の抗原または密接に関連する抗原以外の非特異的抗原(例えば、BSA、カゼイン)と結合するためのKDの少なくとも1/10、例えば、少なくとも1/100、例えば、少なくとも1/1,000、例えば、少なくとも1/10,000、例えば、少なくとも1/100,000であるKDに対応する親和性で所定の抗原に結合する。親和性が大きくなる量は抗体のKDに依存し、その結果、抗体のKDが非常に低い(すなわち、前記抗体が高特異性である)場合、抗原に対する親和性が非特異的抗原に対する親和性よりも小さくなる程度は少なくとも1/10,000になることがある。
【0033】
本明細書で使用する「kd」(sec-1)という用語は、特定の抗体-抗原相互作用の解離速度定数を指す。この値はkoff値とも呼ばれる。
【0034】
本明細書で使用する「KD」(M)という用語は特定の抗体-抗原相互作用の解離平衡定数を指す。
【0035】
「PD-L1」という用語は、本明細書で使用する場合、プログラム細胞死リガンド1タンパク質を指す。PD-L1はヒトおよび他の種において見出され、従って、「PD-L1」という用語は文脈と矛盾しない限りヒトPD-L1に限定されない。ヒトPD-L1配列はGenbankアクセッション番号NP_054862.1によって見出される。ヒトPD-L1の配列をSEQ ID NO:25にも示した。ここで、アミノ酸1-18はシグナルペプチドだと予測される。成熟ポリペプチド配列をSEQ ID NO:26に示した。
【0036】
「PD-1」という用語は、本明細書で使用する場合、CD279とも知られるヒトプログラム細胞死-1タンパク質を指す(UniProtKB Q15116)。
【0037】
「プログラム細胞死-1(PD-1)経路」または「PD-1経路」という用語は、細胞表面受容体PD-1とそのリガンドPD-L1およびPD-L2を含む分子シグナル伝達経路を指す。この経路の活性化は免疫寛容を誘導するのに対して、阻害はT細胞抑制を解除し、これによって免疫が活性化される可能性がある。
【0038】
本明細書で使用する「CD137」という用語はヒト表面抗原分類137タンパク質を指す。CD137(4-1BB)はTNFRSF9とも呼ばれ、リガンドTNFSF9/4-1BBLの受容体である。CD137はT細胞活性化に関与すると考えられている。ヒトCD137はUniProtアクセッション番号Q07011を有する。ヒトCD137の配列はSEQ ID NO:23にも示されており、アミノ酸1-23はシグナルペプチドだと予測された。ヒトCD137の成熟配列をSEQ ID NO:24に示した。
【0039】
「処置サイクル」は本明細書中では、結合物質の別々の投与量の効果が、その薬物動力学により加算する期間と定義される、または言い換えると、この期間の後に対象の身体が、投与されている結合物質から本質的に除去されているか、もしくは除去されている期間と定義される。短い時間ウィンドウで、例えば、短い2~24時間内、例えば、2~12時間内で、または同じ日に複数回の少量の用量は多量の単一用量と等しい場合がある。
【0040】
2つの配列間のパーセント同一性とは、2つの配列の最適アラインメントのために導入される必要のある、ギャップの数およびそれぞれのギャップの長さを考慮に入れた、これらの配列が共有する同一の位置の数の関数(すなわち、%相同性=同一の位置の数/位置の総数×100)である。2つのヌクレオチド配列間またはアミノ酸配列間のパーセント同一性は、例えば、ALIGNプログラム(バージョン2.0)の中に組み込まれている、E. Meyers and W. Miller, Comput. Appl. Biosci 4, 11-17(1988)のアルゴリズムを使用し、PAM120ウエイト残基表、ギャップレングスペナルティ 12、およびギャップペナルティ 4を用いて決定され得る。さらに、2つのアミノ酸配列間のパーセント同一性は、Needleman and Wunsch, J. Mol. Biol. 48, 444-453(1970))アルゴリズムを用いて決定され得る。
【0041】
本発明の状況において、特別の定めのない限り、変異を説明するために以下の表記法が用いられる。i)ある特定の位置におけるアミノ酸の置換は、例えば、タンパク質の位置409におけるリジンがアルギニンに置換されることを意味するK409Rと書かれる。ii)特定の変種については、任意のアミノ酸残基を示す符号XaaおよびXを含む特定の三文字表記または一文字表記が用いられる。従って、位置409におけるリジンからアルギニンへの置換はK409Rで示され、位置409におけるリジンから任意のアミノ酸残基への置換はK409Xで示される。位置409におけるリジンの欠失の場合、これはK409*で示される。
【0042】
本発明の状況において、「PD-L1とPD-1との結合の阻害」は、PD-L1とPD-1との結合が、PD-L1に結合することができる抗体の存在下では検出可能に有意に低減することを指す。典型的には、阻害とは、抗PD-L1抗体の存在によって引き起こされる、PD-L1とPD-1との間の結合の少なくとも約10%の低減、例えば、少なくとも約15%、例えば、少なくとも約20%、例えば、少なくとも40%の低減を意味する。PD-L1とPD-1との結合の阻害は任意の適切な技法によって判定することができる。1つの態様において、阻害はWO2019/025545の実施例6に記載のように判定される。
【0043】
「処置」という用語は、症状または疾患状態を緩和する、寛解させる、停止する、または根絶する(治癒する)目的で有効量の本発明の治療活性抗体を投与することを指す。
【0044】
本発明の結合物質による処置に対する耐性、本発明の結合物質による処置に応答できないこと、および/または本発明の結合物質による処置からの再発は、固形がん効果判定基準;バージョン1.1(RECIST判定基準v1.1)に従って判定することができる。RECIST判定基準を以下の表に示した。
【0045】
(表3)奏効の定義(RECIST判定基準v1.1)
【0046】
「最良総合効果」とは、処置の開始から疾患進行/再発までに記録された最良の奏効である(処置が開始してから記録された最小測定値がPDの基準として用いられる)。CRまたはPRの対象は客観的奏効であるとみなされる。CR、PR、またはSDの対象は疾患が管理されているとみなされる。NEの対象は非応答者として数えられる。最良総合効果とは、処置の開始から疾患進行/再発までに記録された最良の奏効である(処置が開始してから記録された最小測定値がPDの基準として用いられる)。CR、PR、またはSDの対象は疾患が管理されているとみなされる。NEの対象は非応答者として数えられる。
【0047】
「奏効期間(DOR)」は、確認された最良総合効果がCRまたはPRであり、客観的腫瘍奏効(CRまたはPR)が最初に記録されてから、最初のPDまたは基礎となるがんによる死亡の日までの時間と定義される。
【0048】
「無増悪生存期間(PFS)」とは、サイクル1の1日目から、最初に記録された進行またはあらゆる原因による死亡までの日数と定義される。
【0049】
「全生存期間(OS)」とは、サイクル1の1日目から、あらゆる原因による死亡までの日数と定義される。対象が死亡していることが分かっていなければ、OSは、対象が生存していることが分かっていた最後の日(カットオフ日またはカットオフ日の前)に修正される。
【0050】
本発明の状況において、「処置レジメン」という用語は、健康状態を改善および維持するためにデザインされた系統立てられた治療計画を指す。
【0051】
第1の局面において、本発明は、対象において腫瘍の進行を低減もしくは阻止するためまたはがんを処置するための方法であって、少なくとも1つの処置サイクルにおいて、ヒトCD137、例えば、SEQ ID NO:24に示した配列を有するヒトCD137に結合する第1の結合領域と、ヒトPD-L1、例えば、SEQ ID NO:26に示した配列を有するヒトPD-L1に結合する第2の結合領域とを含む結合物質を、適切な量で前記対象に投与する工程を含む、方法を提供する。
【0052】
好ましくは、それぞれの用量でかつ/または処置サイクルにおいて投与される結合物質の量によって、T細胞の増殖、サイトカイン産生、成熟、および長期生存がもたらされ、かつこのようなT細胞がPD-L1による阻害を受けにくくなる。
【0053】
それぞれの用量でかつ/または処置サイクルにおいて投与される結合物質の量は、特に、前記結合物質の5%超、好ましくは10%超、より好ましくは15%超、さらにより好ましくは20%超、さらにより好ましくは25%超、さらにより好ましくは30%超、さらにより好ましくは35%超、さらにより好ましくは40%超、さらにより好ましくは45%超、最も好ましくは50%超がCD137とPD-L1の両方に結合する範囲内にあってもよい。
【0054】
現在好ましい態様では、それぞれの用量でかつ/またはそれぞれの処置サイクルにおいて投与される結合物質の量は、
a)約0.3~5mg/kg体重もしくは合計で約25~400mg;および/または
b)約2.1×10-9~3.4×10-8mol/kg体重もしくは合計で約1.7×10-7~2.7×10-6mol
である。
【0055】
これらの態様によれば、mg/kgで定義される用量は、結合物質が投与される対象の体重の中央値が80kgであることに基づいて固定用量に変換することができ、逆もまた同じである。
【0056】
それぞれの用量でかつ/またはそれぞれの処置サイクルにおいて投与される結合物質の量は、特に、
約0.3~4.0mg/kg体重もしくは合計で約25~320mg;および/または
約2.1×10-9~2.7×10-8mol/kg体重もしくは合計で約1.7×10-7~2.2×10-6mol;
約0.38~4.0mg/kg体重もしくは合計で約30~320mg;および/または
約2.6×10-9~2.7×10-8mol/kg体重もしくは合計で約2.4×10-7~2.2×10-6mol;
約0.5~3.3mg/kg体重もしくは合計で約40~260mg;および/または
約3.4×10-9~2.2×10-8mol/kg体重もしくは合計で約2.7×10-7~1.8×10-6mol;
約0.6~2.5mg/kg体重もしくは合計で約50~200mg;および/または
約4.3×10-9~1.7×10-8mol/kg体重もしくは合計で約3.4×10-7~1.4×10-6mol;
約0.8~1.8mg/kg体重もしくは合計で約60~140mg;および/または
約5.1×10-9~1.2×10-8mol/kg体重もしくは合計で約4.1×10-7~9.5×10-7mol;
約0.9~1.8mg/kg体重もしくは合計で約70~140mg;および/または
約6.0×10-9~1.2×10-8mol/kg体重もしくは合計で約4.8×10-7~9.5×10-7mol;
約1~1.5mg/kg体重もしくは合計で約80~120mg;および/または
約6.8×10-9~1.0×10-8mol/kg体重もしくは合計で約5.5×10-7~8.2×10-7mol;
約1.1~1.4mg/kg体重もしくは合計で約90~110mg;および/または
約7.7×10-9~9.4×10-9mol/kg体重もしくは合計で約6.1×10-7~7.5×10-7mol;
約1.2~1.3mg/kg体重もしくは合計で約95~105mg;および/または
約6.8×10-9~8.9×10-9mol/kg体重もしくは合計で約6.5×10-7~7.2×10-7mol、
約0,8~1.5mg/kg体重もしくは合計で約65~120mg;および/または
約5.5×10-9~1.0×10-8mol/kg体重もしくは合計で約4.4×10-7~8.2×10-7mol;
約0.9~1.3mg/kg体重もしくは合計で約70~100mg;および/または
約6.0×10-9~8.5×10-9mol/kg体重もしくは合計で約4.8×10-7~6.8×10-7mol、
約0.9~1.1mg/kg体重もしくは合計で約75~90mg;および/または
約6.4×10-9~7.7×10-9mol/kg体重もしくは合計で約5.1×10-7~6.1×10-7mol
でもよい。
【0057】
さらに、それぞれの用量でかつ/またはそれぞれの処置サイクルにおいて投与される結合物質の量は、特に、
0.3~4.0mg/kg体重もしくは合計で25~320mg;および/または
2.1×10-9~2.7×10-8mol/kg体重もしくは合計で1.7×10-7~2.2×10-6mol;0.38~4.0mg/kg体重もしくは合計で30~320mg;および/または
2.6×10-9~2.7×10-8mol/kg体重もしくは合計で2.4×10-7~2.2×10-6mol;0.5~3.3mg/kg体重もしくは合計で40~260mg;および/または
3.4×10-9~2.2×10-8mol/kg体重もしくは合計で2.7×10-7~1.8×10-6mol;0.6~2.5mg/kg体重もしくは合計で50~200mg;および/または
4.3×10-9~1.7×10-8mol/kg体重もしくは合計で3.4×10-7~1.4×10-6mol;0.8~1.8mg/kg体重もしくは合計で60~140mg;および/または
5.1×10-9~1.2×10-8mol/kg体重もしくは合計で4.1×10-7~9.5×10-7mol;0.9~1.8mg/kg体重もしくは合計で70~140mg;および/または
6.0×10-9~1.2×10-8mol/kg体重もしくは合計で4.8×10-7~9.5×10-7mol;1~1.5mg/kg体重もしくは合計で80~120mg;および/または
6.8×10-9~1.0×10-8mol/kg体重もしくは合計で5.5×10-7~8.2×10-7mol;1.1~1.4mg/kg体重もしくは合計で90~110mg;および/または
7.7×10-9~9.4×10-9mol/kg体重もしくは合計で6.1×10-7~7.5×10-7mol;1.2~1.3mg/kg体重もしくは合計で95~105mg;および/または
6.8×10-9~8.9×10-9mol/kg体重もしくは合計で6.5×10-7~7.2×10-7mol、0,8~1.5mg/kg体重もしくは合計で65~120mg;および/または
5.5×10-9~1.0×10-8mol/kg体重もしくは合計で4.4×10-7~8.2×10-7mol;0.9~1.3mg/kg体重もしくは合計で70~100mg;および/または
6.0×10-9~8.5×10-9mol/kg体重もしくは合計で4.8×10-7~6.8×10-7mol、0.9~1.1mg/kg体重もしくは合計で75~90mg;および/または
6.4×10-9~7.7×10-9mol/kg体重もしくは合計で5.1×10-7~6.1×10-7mol
でもよい。
【0058】
それぞれの用量でかつ/またはそれぞれの処置サイクルにおいて投与される結合物質の量は、
a)約1.1mg/kg体重もしくは合計で約80mg;および/または
b)約6.8×10-9mol/kg体重もしくは合計で約5.5×10-7molである。
【0059】
それぞれの用量でかつ/またはそれぞれの処置サイクルにおいて投与される結合物質の量は、
a)1.1mg/kg体重もしくは合計で80mg;および/または
b)6.8×10-9mol/kg体重もしくは合計で5.5×10-7molである。
【0060】
それぞれの用量でかつ/またはそれぞれの処置サイクルにおいて投与される結合物質の量は、
a)約1.0mg/kg体重もしくは合計で約80mg;および/または
b)約6.8×10-9mol/kg体重もしくは合計で約5.5×10-7molである。
【0061】
それぞれの用量でかつ/またはそれぞれの処置サイクルにおいて投与される結合物質の量は、
a)1.0mg/kg体重もしくは合計で80mg;および/または
b)6.8×10-9mol/kg体重もしくは合計で5.5×10-7molである。
【0062】
それぞれの用量でかつ/またはそれぞれの処置サイクルにおいて投与される結合物質の量は、
a)約1.25mg/kg体重もしくは合計で約100mg;および/または
b)約8.5×10-9mol/kg体重もしくは合計で約6.8×10-7mol
であることが現在、好ましい。
【0063】
それぞれの用量でかつ/またはそれぞれの処置サイクルにおいて投与される結合物質の量は、
a)1.25mg/kg体重もしくは合計で100mg;および/または
b)8.5×10-9mol/kg体重もしくは合計で6.8×10-7mol
であることが等しく好ましい。
【0064】
前記結合物質は、ヒトCD137に結合するとヒトCD137を活性化しかつPD-L1に結合するとヒトPD-L1とヒトPD-1との結合を阻害するものでもよい。
【0065】
本発明による方法において、前記結合物質は、
a)第1の結合領域が、SEQ ID NO:1のCDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)、ならびに、SEQ ID NO:5のCDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含むか、それらからなるか、またはそれらから本質的になり;かつ
b)第2の抗原結合領域が、SEQ ID NO:8のCDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)、ならびに、SEQ ID NO:12のCDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含むか、それらからなるか、またはそれらから本質的になる
ものでもよい。
【0066】
本発明による方法において、前記結合物質は、
a)第1の結合領域が、SEQ ID NO:2に示したCDR1配列、SEQ ID NO:3に示したCDR2配列、およびSEQ ID NO:4に示したCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)、ならびに、SEQ ID NO:6に示したCDR1配列、GASとして示したCDR2配列、およびSEQ ID NO:7に示したCDR3配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含むか、それらからなるか、またはそれらから本質的になり;かつ
b)第2の抗原結合領域が、SEQ ID NO:9に示したCDR1配列、SEQ ID NO:10に示したCDR2配列、およびSEQ ID NO:11に示したCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)、ならびに、SEQ ID NO:13に示したCDR1配列、DDNとして示したCDR2配列、およびSEQ ID NO:14に示したCDR3 配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含むか、それらからなるか、またはそれらから本質的になる
ものでもよい。
【0067】
さらに、本発明による方法において、前記結合物質は、
a)第1の結合領域が、SEQ ID NO:1に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)、および、SEQ ID NO:5に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)領域を含むか、それらからなるか、またはそれらから本質的になり;かつ
b)第2の結合領域が、SEQ ID NO:8に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)、および、SEQ ID NO:12に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)領域を含むか、それらからなるか、またはそれらから本質的になる
ものでもよい。
【0068】
本発明による方法において、前記結合物質は、
a)第1の結合領域が、SEQ ID NO:1に示したアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)、および、SEQ ID NO:5に示したアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)領域を含むか、それらからなるか、またはそれらから本質的になり;かつ
b)第2の結合領域が、SEQ ID NO:8に示したアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)、および、SEQ ID NO:12に示したアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)領域を含むか、それらからなるか、またはそれらから本質的になる
ものである。
【0069】
前記結合物質は、特に、抗体、例えば、多重特異性抗体、または、例えば、二重特異性抗体でもよい。
【0070】
前記結合物質はまた完全長抗体または抗体断片の形をとってもよい。
【0071】
前記抗体はヒト抗体またはヒト化抗体であることがさらに好ましい。
【0072】
それぞれの可変領域は、3つの相補性決定領域(CDR1、CDR2、およびCDR3)と4つのフレームワーク領域(FR1、FR2、FR3、およびFR4)とを含んでもよい。
【0073】
相補性決定領域およびフレームワーク領域は、アミノ末端からカルボキシ末端に向かって以下の順序:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4で配置されてもよい。
【0074】
前記結合物質は、
i)前記第1の重鎖可変領域(VH)および第1の重鎖定常領域(CH)を含むか、それらからなるか、またはそれらから本質的になる、ポリペプチド、ならびに
ii)前記第2の重鎖可変領域(VH)および第2の重鎖定常領域(CH)を含むか、それらからなるか、またはそれらから本質的になる、ポリペプチド
を含んでもよい。
【0075】
本発明による方法において、前記結合物質は、
i)前記第1の軽鎖可変領域(VL)を含み、かつ第1の軽鎖定常領域(CL)をさらに含む、ポリペプチド、および
ii)前記第2の軽鎖可変領域(VL)を含み、かつ第2の軽鎖定常領域(CL)をさらに含む、ポリペプチド
を含んでもよいか、それらからなってもよいか、またはそれらから本質的になってもよい。
【0076】
前記結合物質は、第1の結合アームと第2の結合アームとを含む抗体でもよく、第1の結合アームは、
i)前記第1の重鎖可変領域(VH)および前記第1の重鎖定常領域(CH)を含む、ポリペプチド、ならびに
ii)前記第1の軽鎖可変領域(VL)および前記第1の軽鎖定常領域(CL)を含む、ポリペプチド
を含むか、それらからなるか、またはそれらから本質的になり、かつ第2の結合アームは、
iii)前記第2の重鎖可変領域(VH)および前記第2の重鎖定常領域(CH)を含む、ポリペプチド、ならびに
iv)前記第2の軽鎖可変領域(VL)および前記第2の軽鎖定常領域(CL)を含む、ポリペプチド
を含むか、それらからなるか、またはそれらから本質的になる。
【0077】
前記結合物質は、
i)CD137に結合することができる前記抗原結合領域を含む、第1の重鎖および第1の軽鎖、ならびに
ii)PD-L1に結合することができる前記抗原結合領域を含む、第2の重鎖および第2の軽鎖
を含んでもよいか、それらからなってもよいか、またはそれらから本質的になってもよい。
【0078】
前記結合物質は、
i)CD137に結合することができる前記抗原結合領域を含む、第1の重鎖および第1の軽鎖であって、第1の重鎖が第1の重鎖定常領域を含み、かつ第1の軽鎖が第1の軽鎖定常領域を含む、第1の重鎖および第1の軽鎖;ならびに
ii)PD-L1に結合することができる前記抗原結合領域を含む、第2の重鎖および第2の軽鎖であって、第2の重鎖が第2の重鎖定常領域を含み、かつ第2の軽鎖が第2の軽鎖定常領域を含む、第2の重鎖および第2の軽鎖
を含んでもよいか、それらからなってもよいか、またはそれらから本質的になってもよい。
【0079】
第1の重鎖定常領域(CH)および第2の重鎖定常領域(CH)のそれぞれが、重鎖定常1(CH1)領域、ヒンジ領域、重鎖定常2(CH2)領域、および重鎖定常3(CH3)領域のうちの1つまたは複数、好ましくは、少なくともヒンジ領域、CH2領域、およびCH3領域を含んでもよい。
【0080】
第1の重鎖定常領域(CH)および第2の重鎖定常領域(CH)のそれぞれがCH3領域を含んでもよく、かつ2つのCH3領域は非対称性変異を含む。
【0081】
前記第1の重鎖定常領域(CH)において、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖のT366、L368、K370、D399、F405、Y407、およびK409からなる群より選択される位置に対応する位置におけるアミノ酸のうちの少なくとも1つは置換されていてもよく、かつ前記第2の重鎖定常領域(CH)において、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖のT366、L368、K370、D399、F405、Y407、およびK409からなる群より選択される位置に対応する位置におけるアミノ酸のうちの少なくとも1つは置換されていてもよい。特定の態様において、第1の重鎖および第2の重鎖は同じ位置において置換されていない。
【0082】
前記結合物質は、(i)EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖のF405に対応する位置におけるアミノ酸が前記第1の重鎖定常領域(CH)においてLであり、かつEUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖のK409に対応する位置におけるアミノ酸が前記第2の重鎖定常領域(CH)においてRであるか、または(ii)EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖のK409に対応する位置におけるアミノ酸が前記第1の重鎖においてRであり、かつEUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖のF405に対応する位置におけるアミノ酸が前記第2の重鎖においてLである、結合物質でもよい。
【0083】
本発明による方法において、結合物質は、同じ第1の抗原結合領域および第2の抗原結合領域と、ヒトIgG1ヒンジ、CH2領域、およびCH3領域を含む2つの重鎖定常領域(CH)とを含む別の抗体と比較して低い程度で、Fcを介したエフェクター機能を誘導する、結合物質でもよい。
【0084】
特に、前記方法は、抗体が、改変されていない第1の重鎖定常領域(CH)および第2の重鎖定常領域(CH)を含む以外は同一の抗体と比較して低い程度で、Fcを介したエフェクター機能を誘導するように、前記第1の重鎖定常領域(CH)および第2の重鎖定常領域(CH)が改変されている、結合物質を使用してもよい。特に、前記改変されていない第1の重鎖定常領域(CH)および第2の重鎖定常領域(CH)の各々または両方は、SEQ ID NO:15に記載のアミノ酸配列を含むことができるか、それからなることができるか、またはそれから本質的になることができる。
【0085】
Fcを介したエフェクター機能は、Fcγ受容体への結合物質の結合、C1qへの結合、またはFcを介したFcγ受容体の架橋結合の誘導を測定することによって確認されてもよい。特に、Fcを介したエフェクター機能は、C1qへの結合物質の結合を測定することによって確認されてもよい。
【0086】
C1qと前記抗体の結合が野生型抗体と比較して低下するように、好ましくは、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、または100%低下するように前記結合物質の第1の重鎖定常領域および第2の重鎖定常領域は改変されていてもよく、C1q結合は好ましくは、ELISAによって測定される。
【0087】
本明細書において提供される方法において用いられる結合物質は、前記第1の重鎖定常領域(CH)および第2の重鎖定常領域(CH)のうちの少なくとも1つにおいて、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖の位置L234、L235、D265、N297、およびP331に対応する位置における1つまたは複数のアミノ酸が、それぞれL、L、D、N、およびPでない、結合物質でもよい。
【0088】
本発明に従って用いられる結合物質において、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖の位置L234およびL235に対応する位置は、それぞれ前記第1の重鎖および第2の重鎖においてFおよびEでもよい。
【0089】
特に、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖の位置L234、L235、およびD265に対応する位置は、それぞれ、前記第1の重鎖定常領域および第2の重鎖定常領域(HC)においてF、E、およびAでもよい。
【0090】
本発明による方法において用いられる結合物質は、第1の重鎖定常領域と第2の重鎖定常領域の両方のEUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖の位置L234およびL235に対応する位置が、それぞれFおよびEであり、かつ(i)第1の重鎖定常領域のEUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖のF405に対応する位置がLであり、かつ第2の重鎖のEUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖のK409に対応する位置がRであるか、または(ii)第1の重鎖定常領域のEUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖のK409に対応する位置がRであり、かつ第2の重鎖のEUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖のF405に対応する位置がLである、結合物質でもよい。
【0091】
本発明による方法において用いられる結合物質は、第1の重鎖定常領域と第2の重鎖定常領域の両方のEUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖の位置L234、L235、およびD265に対応する位置が、それぞれF、E、およびAであり、かつ(i)第1の重鎖定常領域のEUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖のF405に対応する位置がLであり、かつ第2の重鎖定常領域のEUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖のK409に対応する位置がRであるか、または(ii)第1の重鎖のEUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖のK409に対応する位置がRであり、かつ第2の重鎖のEUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖のF405に対応する位置がLである、結合物質でもよい。
【0092】
本発明による方法において用いられる結合物質は、前記第1の重鎖および/または第2の重鎖の定常領域が、
a)SEQ ID NO:15またはSEQ ID NO:30に示した配列[IgG1-FC]、
b)a)における配列の部分配列、例えば、a)において定義された配列のN末端またはC末端から始めて1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、または10個の連続アミノ酸が欠失している部分配列;および
c)a)またはb)において定義されたアミノ酸配列と比較して最大で10個の置換、例えば、最大で9個の置換、最大で8個、最大で7個、最大で6個、最大で5個、最大で4個、最大で3個、最大で2個、または最大で1個の置換を有する配列
からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むか、それから本質的になるか、またはそれからなる、結合物質でもよい。
【0093】
本発明による方法において用いられる結合物質は、前記第1の重鎖または第2の重鎖、例えば、第2の重鎖の定常領域が、
a)SEQ ID NO:16またはSEQ ID NO:31に示した配列[IgG1-F405L]、
b)a)における配列の部分配列、例えば、a)において定義された配列のN末端またはC末端から始めて1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、または10個の連続アミノ酸が欠失している部分配列;および
c)a)またはb)において定義されたアミノ酸配列と比較して最大で9個の置換、例えば、最大で8個、最大で7個、最大で6個、最大で5個、最大で4個、最大で3個、最大で2個、または最大で1個の置換を有する配列
からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むか、それから本質的になるか、またはそれからなる、結合物質でもよい。
【0094】
本発明による方法において用いられる結合物質は、前記第1の重鎖または第2の重鎖、例えば、第1の重鎖の定常領域が、
a)SEQ ID NO:17または32に示した配列[IgG1-F409R]
b)a)における配列の部分配列、例えば、a)において定義された配列のN末端またはC末端から始めて1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、または10個の連続アミノ酸が欠失している部分配列;および
c)a)またはb)において定義されたアミノ酸配列と比較して最大で10個の置換、例えば、最大で9個の置換、最大で8個、最大で7個、最大で6個、最大で5個、最大で4個の置換、最大で3個、最大で2個、または最大で1個の置換を有する配列
からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むか、それから本質的になるか、またはそれからなる、結合物質でもよい。
【0095】
本発明による方法において用いられる結合物質は、前記第1の重鎖および/または第2の重鎖の定常領域が、
a)SEQ ID NO:18またはSEQ ID NO:33に示した配列[IgG1-Fc_FEA]、
b)a)における配列の部分配列、例えば、a)において定義された配列のN末端またはC末端から始めて1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、または10個の連続アミノ酸が欠失している部分配列;および
c)a)またはb)において定義されたアミノ酸配列と比較して最大で7個の置換、例えば、最大で6個の置換、最大で5個、最大で4個、最大で3個、最大で2個、または最大で1個の置換を有する配列
からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むか、それから本質的になるか、またはそれからなる、結合物質でもよい。
【0096】
本発明による方法において用いられる結合物質は、前記第1の重鎖および/または第2の重鎖、例えば、第2の重鎖の定常領域が、
a)SEQ ID NO:19またはSEQ ID NO:34に示した配列[IgG1-Fc_FEAL]、
b)a)における配列の部分配列、例えば、a)において定義された配列のN末端またはC末端から始めて1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、または10個の連続アミノ酸が欠失している部分配列;および
c)a)またはb)において定義されたアミノ酸配列と比較して最大で6個の置換、例えば、最大で5個の置換、最大で4個の置換、最大で3個、最大で2個、または最大で1個の置換を有する配列
からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むか、それから本質的になるか、またはそれからなる、結合物質でもよい。
【0097】
本発明による方法において用いられる結合物質は、前記第1の重鎖および/または第2の重鎖、例えば、第1の重鎖の定常領域が、
a)SEQ ID NO:20またはSEQ ID NO:35に示した配列[IgG1-Fc_FEAR]、
b)a)における配列の部分配列、例えば、a)において定義された配列のN末端またはC末端から始めて1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、または10個の連続アミノ酸が欠失している部分配列;および
c)a)またはb)において定義されたアミノ酸配列と比較して最大で6個の置換、例えば、最大で5個の置換、最大で4個、最大で3個、最大で2個、または最大で1個の置換を有する配列
からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むか、それから本質的になるか、またはそれからなる、結合物質でもよい。
【0098】
本発明による方法において用いられる結合物質はカッパ(κ)軽鎖定常領域を含んでもよい。
【0099】
本発明による方法において用いられる結合物質はラムダ(λ)軽鎖定常領域を含んでもよい。
【0100】
本発明による方法において用いられる結合物質は、前記第1の軽鎖定常領域がカッパ(κ)軽鎖定常領域である結合物質でもよい。
【0101】
本発明による方法において用いられる結合物質は、前記第2の軽鎖定常領域がラムダ(λ)軽鎖定常領域である結合物質でもよい。
【0102】
本発明による方法において用いられる結合物質は、前記第1の軽鎖定常領域がラムダ(λ)軽鎖定常領域である結合物質でもよい。
【0103】
本発明による方法において用いられる結合物質は、第2の軽鎖定常領域がカッパ(κ)軽鎖定常領域である結合物質でもよい。
【0104】
本発明による方法において用いられる結合物質は、カッパ(κ)軽鎖が、
a)SEQ ID NO:21に示した配列、
b)a)における配列の部分配列、例えば、a)において定義された配列のN末端またはC末端から始めて1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、または10個の連続アミノ酸が欠失している部分配列;ならびに
c)a)またはb)において定義されたアミノ酸配列と比較して最大で10個の置換、例えば、最大で9個の置換、最大で8個、最大で7個、最大で6個、最大で5個、最大で4個の置換、最大で3個、最大で2個、または最大で1個の置換を有する配列
からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、結合物質でもよい。
【0105】
本発明による方法において用いられる結合物質は、ラムダ(λ)軽鎖が、
a)SEQ ID NO:22に示した配列、
b)a)における配列の部分配列、例えば、a)において定義された配列のN末端またはC末端から始めて1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、または10個の連続アミノ酸が欠失している部分配列;および
c)a)またはb)において定義されたアミノ酸配列と比較して最大で10個の置換、例えば、最大で9個の置換、最大で8個、最大で7個、最大で6個、最大で5個、最大で4個の置換、最大で3個、最大で2個、または最大で1個の置換を有する配列
からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、結合物質でもよい。
【0106】
前記結合物質は、IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4からなる群より選択されるアイソタイプの結合物質でもよい。
【0107】
特に、前記結合物質は完全長IgG1抗体でもよい。
【0108】
現在好ましい態様では、抗体はIgG1m(f)アロタイプの抗体である。
【0109】
本発明に従って処置される対象は好ましくはヒト対象である。
【0110】
腫瘍またはがんは固形腫瘍である。
【0111】
腫瘍またはがんは、黒色腫、卵巣がん、肺がん(例えば、非小細胞肺がん(NSCLC)、結腸直腸がん、頭頸部がん、胃がん、乳がん、腎臓がん、尿路上皮がん、膀胱がん、食道がん、膵臓がん、肝臓がん、胸腺腫および胸腺がん、脳がん、神経膠腫、副腎皮質がん、甲状腺がん、他の皮膚がん、肉腫、多発性骨髄腫、白血病、リンパ腫、骨髄異形成症候群、卵巣がん、子宮内膜またはがん、前立腺がん、陰茎がん、子宮頸がん、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、メルケル細胞がん、ならびに中皮腫からなる群より選択されてもよい。
【0112】
特定の態様において、腫瘍またはがんは、肺がん(例えば、非小細胞肺がん(NSCLC)、尿路上皮がん(膀胱、尿管、尿道、または腎盂のがん)、子宮内膜がん(EC)、乳がん(例えば、トリプルネガティブ乳がん(TNBC))、頭頸部扁平上皮がん(SCCHN)(例えば、口腔、咽頭、または喉頭のがん)、および子宮頸がんからなる群より選択される。
【0113】
腫瘍またはがんは特に肺がんでもよい。
【0114】
肺がんは、非小細胞肺がん(NSCLC)、例えば、扁平上皮または非扁平上皮NSCLCでもよい。
【0115】
肺がんは世界中で最もよく見られる悪性腫瘍であり、最もよく見られるがん死因である。非小細胞肺がん(NSCLC)は全肺がん症例の85~90%を占める(Jemal et al., 2011)。NSCLCの5年生存率は約18%(SEER, 2018)である。NSCLCの主要な組織学的サブタイプには、腺がん、扁平上皮がん、腺扁平上皮がん、大細胞がん、カルチノイド腫瘍、およびあまり一般的ではない他のサブタイプが含まれ、腺がんが最もよく見られる。
【0116】
標的療法時に進行してしまっているか、またはもはや標的療法の候補ではない進行性または転移性NSCLCがある患者の標準治療には、典型的に、白金ベースの化学療法が含まれる。白金組み合わせによって、約25~35%の全奏効率(ORR)、4 6ヶ月の無増悪期間(TTP)、および8~10ヶ月の生存期間中央値が得られている。
【0117】
腫瘍遺伝子変異/変化は特定されており、療法の選択に影響を及ぼす。未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)、上皮成長因子受容体(EGFR)、c-ROSがん遺伝子1(ROS1)、BRAF、KRAS、およびプログラム細胞死リガンド-1(PD-L1)などの腫瘍内の遺伝子の特異的な変異または変化の特定は、臨床利益を提供する可能性が低い療法の使用を避けながら潜在的に有効な標的療法を選択する一助となる(NCCN, 2018c)。活性化感受性増加EGFR変異は、EGFRチロシンキナーゼ阻害物質(TKI)(例えば、ゲフィチニブ、エルロチニブ、アファチニブ、およびオシメルチニブ)に対する応答を予測するものである。同様に、TKI(例えば、アレクチニブ、セリチニブ、およびクリゾチニブ)はALKおよびROS1変異に対する有効な療法であり、それぞれの変異に対する第1選択療法として認可されてもいる。PD-L1発現腫瘍をもつ進行性または転移性NSCLCがある患者を処置するために、PD 1とPD-L1の相互作用を遮断するチェックポイント阻害物質抗体(例えば、ペンブロリズマブおよびニボルマブ)もまた単独で、または化学療法と組み合わせて有効な処置だと示されている。
【0118】
複数の処置選択肢があるのにもかかわらず、ステージIV NSCLC患者の予後は最終的に不良であり、男性女性とも肺がんは第1位のがん死因のままである。患者ががんに屈した場合に、またはさらなる処置を不可能にする健康状態悪化を経験した場合に、治療率は各ラインの療法と共に低下する。
【0119】
肺がんはNSCLCでもよく、NSCLCは、上皮細胞成長因子(EGFR)感受性増加変異(epidermal growth factor (EGFR)-sensitizing mutation)および/または未分化リンパ腫(anaplastic lymphoma)(ALK)転座/ROS1再編成を有さない。EGFR感受性増加変異とは、EGFRチロシンキナーゼ阻害物質(TKI)、例えば、認可されたチロシンキナーゼ阻害物質であるエルロチニブ、オシメルチニブ、ゲフィンチニブ、オルムチニブ、ナザルチニブ、およびアビチニブに対する感受性を付与する変異を指す。
【0120】
上皮成長因子受容体(EGFR)アミノ酸配列は本明細書中ではSEQ ID NO:27として提供される。
【0121】
上皮成長因子受容体(EGFR)感受性増加変異のアミノ酸配列は、
i)位置746~751における1つまたは複数のアミノ酸のインフレーム欠失、任意で、挿入、例えば、表4において定義される欠失および挿入のいずれか、
ii)位置709、715、719、720、768、858、および861のいずれか1つにおける1個のアミノ酸の置換、例えば、表5において定義される欠失および挿入のいずれか、ならびに
iii)表6において定義される重複/挿入より選択されるインフレーム重複および/または挿入
からなる群より選択されてもよい。アミノ酸の数字はSEQ ID NO:27のアミノ酸の数字を指している。
【0122】
(表4)ヒトEGFR遺伝子のエキソン19内のインフレーム欠失(Shigematsu et al., Clinical and Biological Features Associated With Epidermal Growth Factor Receptor Gene Mutations in Lung Cancers, JNCI: Journal of the National Cancer Institute, Volume 97, Issue 5, 2 March 2005から改変)。del=欠失;ins=挿入。
【0123】
(表5)ヒトEGFR遺伝子のエキソン21内の一塩基置換および結果として生じるアミノ酸変化(Shigematsu et al., Clinical and Biological Features Associated With Epidermal Growth Factor Receptor Gene Mutations in Lung Cancers, JNCI : Journal of the National Cancer Institute, Volume 97, Issue 5, 2 March 2005から改変)
【0124】
(表6)ヒトEGFR遺伝子のエキソン20内のインフレーム重複および/または挿入(Shigematsu et al., Clinical and Biological Features Associated With Epidermal Growth Factor Receptor Gene Mutations in Lung Cancers, JNCI: Journal of the National Cancer Institute, Volume 97, Issue 5, 2 March 2005から改変)。ins=挿入。
【0125】
非小細胞肺がんは、L747S、D761Y、T790M、C797S、T854A、例えば、T790M、C797S、D761Y、ならびに二重変異T790M/D761YおよびT790/C797Sより選択される、EGFRアミノ酸配列中の少なくとも1つの変異を特徴としてもよい、ならびに/または処置を受けている対象は、L747S、D761Y、T790M、C797S、T854A、例えば、T790M、C797S、D761Y、ならびに二重変異T790M/D761YおよびT790/C797Sより選択される、EGFRアミノ酸配列中の少なくとも1つの変異を有してもよい。アミノ酸の番号はSEQ ID NO:27のアミノ酸の番号を指している。
【0126】
非小細胞肺がんは、
i.野生型ヒトEGFR;例えば、SEQ ID NO:27に示した配列を含むヒトEFGRまたはその成熟ポリペプチド;および
ii.項目iのEGFRの変種であり、項目iのEGFRと比較した場合に感受性増加変異を全く有さないヒトEGFR
からなる群より選択された上皮成長因子受容体(EGFR)の発現を特徴としてもよい。
【0127】
非小細胞肺がんは、
i)位置746~751における1つまたは複数のアミノ酸のインフレーム欠失、任意で、挿入、例えば、表4において定義された欠失および挿入のいずれか、
ii)位置709、715、719、720、768、858、および861のいずれか1つにおける1個のアミノ酸の置換、例えば、表5において定義された欠失および挿入のいずれか、ならびに
iii)表6において定義された重複/挿入より選択されるインフレーム重複および/または挿入
からなる群より選択される上皮成長因子受容体(EGFR)感受性増加変異を特徴としないがんでもよい。アミノ酸の番号はSEQ ID NO:27のアミノ酸の番号を指している。同様に、本発明による処置を受けている対象は、このようなEGFR感受性増加変異を有さない対象でもよい。
【0128】
非小細胞肺がんは、L747S、D761Y、T790M、C797S、T854A、例えば、T790M、C797S、D761Y、ならびに二重変異T790M/D761YおよびT790/C797Sより選択される、EGFRアミノ酸配列中の変異を特徴としないがんでもよい。アミノ酸の番号はSEQ ID NO:27のアミノ酸の番号を指している。同様に、本発明による処置を受けている対象は、前記変異を全く有さない対象でもよい。
【0129】
本発明による処置を受けている非小細胞肺がんおよび/または対象は、ALKチロシンキナーゼ(ALK)をコードする遺伝子(UniProt Q9UM73)と融合パートナーをコードする遺伝子との再編成を引き起こして融合がん遺伝子を形成する、ALKをコードする遺伝子中に変異を有することを特徴としてもよい。
【0130】
非小細胞肺がんは、ALKをコードする遺伝子とEchinoderm microtubule-associated protein-like 4(EMAPL4)をコードする遺伝子(EML4)(UniProt Q9HC35)との再編成(とEML4-ALK融合がん遺伝子の形成)を引き起こす、ALKをコードする遺伝子中の変異を特徴としてもよい、および/または本発明による処置を受けている対象は、ALKをコードする遺伝子とEchinoderm microtubule-associated protein-like 4(EMAPL4)をコードする遺伝子(EML4)(UniProt Q9HC35)との再編成(とEML4-ALK融合がん遺伝子の形成)を引き起こす、ALKをコードする遺伝子中に変異を有してもよい。
【0131】
非小細胞肺がんは、ALKチロシンキナーゼ(ALK)をコードする遺伝子と、
i.キネシン-1重鎖(KINH)をコードするKIF5B(UniProt P33176)、
ii.キネシン軽鎖1(KLC1)をコードするKLC1(UniProt Q07866)、
iii.タンパク質TFGをコードするTFG(UniProt Q92734)、
iv.核タンパク質TPRをコードするTPR(UniProt P12270)、
v.ハンチントン相互作用タンパク質1(HIP-1)をコードするHIP1(UniProtKB-O00291)、
vi.ストリアチンをコードするSTRN(UniProtKB-O43815)、
vii.ダイナクチンサブユニット1をコードするDCTN1(UniProt Q14203)、
viii.セクエストソーム-1をコードするSQSTM1(UniProtKB-Q13501)、
ix.ヌクレオフォスミンをコードするNPM1(UniProt P06748)、
x.B-cell lymphoma/leukemia 11AをコードするBCL11A(UniProt Q9H165)、および
xi.baculoviral IAP repeat-containing proteinをコードするBIRC6(UniProt Q13490)
からなる群より選択される遺伝子との再編成と、KIF5B-ALK融合がん遺伝子、KLC1-ALK融合がん遺伝子、TFG-ALK融合がん遺伝子、TPR-ALK融合がん遺伝子、HIP1-ALK融合がん遺伝子、STRN-ALK融合がん遺伝子、DCTN1-ALK融合がん遺伝子、SQSTM1-ALK融合がん遺伝子、NPM1-ALK融合がん遺伝子、BCL11A-ALK融合がん遺伝子、およびBIRC6-ALK融合がん遺伝子からなる群より選択される、それぞれの融合がん遺伝子の形成を引き起こす、ALKをコードする遺伝子中の変異を特徴としてもよい、ならびに/または本発明による処置を受けている対象は、ALKチロシンキナーゼ(ALK)をコードする遺伝子と、前記群より選択される遺伝子との再編成と、KIF5B-ALK融合がん遺伝子、KLC1-ALK融合がん遺伝子、TFG-ALK融合がん遺伝子、TPR-ALK融合がん遺伝子、HIP1-ALK融合がん遺伝子、STRN-ALK融合がん遺伝子、DCTN1-ALK融合がん遺伝子、SQSTM1-ALK融合がん遺伝子、NPM1-ALK融合がん遺伝子、BCL11A-ALK融合がん遺伝子、およびBIRC6-ALK融合がん遺伝子からなる群より選択される、それぞれの融合がん遺伝子の形成を引き起こす、ALKをコードする遺伝子中に変異を有してもよい。
【0132】
非小細胞肺がんは、野生型ヒトALKチロシンキナーゼ、例えば、UniProt Q9HC35で提供される配列を含むヒトALKチロシンキナーゼまたはその成熟ポリペプチドの発現を特徴としてもよい。
【0133】
非小細胞肺がんは、ALKチロシンキナーゼ(ALK)と融合パートナーとの再編成を引き起こして融合がん遺伝子を形成する、ALKをコードする遺伝子の変異を有さないことを特徴としてもよい、および/または対象は、このような変異を有さない。
【0134】
非小細胞肺がんは、Echinoderm microtubule-associated protein-like 4(EMAPL4)をコードする遺伝子(EML4)(UniProt Q9HC35)とALKチロシンキナーゼ(ALK)(UniProt Q9HC35)との再編成とEML4-ALK融合がん遺伝子の形成を引き起こす、ALKをコードする遺伝子中に変異を有さないことを特徴としてもよい、および/または前記対象は、このような変異を有さない対象でもよい。
【0135】
非小細胞肺がんは、ALKチロシンキナーゼ(ALK)をコードする遺伝子、Echinoderm microtubule-associated protein-like 4(EMAPL4)をコードする遺伝子(EML4)(UniProt Q9HC35)からなる群より選択される任意の遺伝子中に変異を有さないことを特徴としてもよい。
【0136】
非小細胞肺がんは、
- 上皮成長因子受容体(EGFR)感受性増加変異、
- EML4とALKとの再編成およびEML4-ALK融合がん遺伝子の形成につながる、ALKチロシンキナーゼ(ALK)をコードする遺伝子の変異、
- 1つまたは複数のEGFRチスロシン(tysrosine)キナーゼ阻害物質(EGFR-TKI)に対する前記対象の耐性を誘導または付与する、EGFRアミノ酸配列の変異
からなる群より選択される変異を特徴としないがんでもよく、対象は、プログラム細胞死-1(PD-1)/プログラム細胞死-1(PD-1)阻害物質(例えば、ニボルマブ、ゲノリムズマブ、アテゾリズマブ、デュルバルマブ、もしくはアベルマブ)によって、または化学療法(例えば、白金、タキサン、ペメトレキセド、および/もしくはゲムシタビンを含む化学療法)によって処置されたことがあってもよく、このような以前の処置が失敗したことがあってもよい。
【0137】
非小細胞肺がんは、
- 上皮成長因子受容体(EGFR)感受性増加変異、
- 1つまたは複数のEGFRチスロシンキナーゼ阻害物質(EGFR-TKI)に対する前記対象の耐性を誘導または付与する、EGFRアミノ酸配列の変異、
- EML4とALKとの再編成およびEML4-ALK融合がん遺伝子の形成につながる、ALKチロシンキナーゼ(ALK)をコードする遺伝子の変異
からなる群より選択される変異を特徴としてもよく、対象は、EGFR阻害物質(例えば、エルロチニブ、オシメルチニブ、ゲフィンチニブ、オルムチニブ、ナザルチニブ、およびアビチニブ)によって、またはPD-1/PD-L1阻害物質(例えば、ニボルマブ、ゲノリムズマブ、アテゾリズマブ、デュルバルマブ、もしくはアベルマブ)によって処置されたことがあり、このような以前の処置が失敗したことがあってもよい。
【0138】
対象は、肺がんを処置するために進行性/転移性疾患に対する4つまでの全身前処置レジメンを受けたことがあり、かつ最後の全身前処置の最中または後に疾患進行、例えば、X線撮影により確認された疾患進行を経験したことがある。
【0139】
本発明による処置を受ける前に、対象は、肺がんを処置するために白金ベースの化学療法を受けたことがある。または、対象は白金ベースの療法の適格性がなくてもよく、別の化学療法、例えば、ゲムシタビン含有レジメンによる処置を受けたことがある。
【0140】
対象は、肺がんを処置するためにチェックポイント阻害物質、例えば、プログラム細胞死-1(PD-1)/プログラム細胞死リガンド1(PD-L1)を標的とする作用物質、例えば、PD-1/PD-L1阻害物質による前処置を受けたことがあってもよい。好ましくは、対象は、PD-1/PD-L1阻害物質を単独で、または組み合わせて用いた前処置を1回だけ受けたことがなければならない。
【0141】
特に、対象は、チェックポイント阻害物質、例えば、PD-1/PD-Lを標的とする作用物質、例えば、PD-1/PD-L1阻害物質による処置の最中または後に疾患進行を経験したことがあってもよい。さらに、対象は、チェックポイント阻害物質、例えば、PD-1/PD-Lを標的とする作用物質、例えば、PD-1/PD-L1阻害物質による最後の前処置の最中または後に疾患進行を経験したことがある。
【0142】
PD-1および/またはPD-L1の阻害物質は、特に、PD-L1に結合することができる、抗体またはその抗原結合断片を含んでもよい。
【0143】
PD-1および/またはPD-L1の公知の阻害物質には、ペンブロリズマブ(Merck & Co)、CBT-501(ゲノリムズマブ; Genor Bio/CBT Pharma)、ニボルマブ(BMS)、REGN2810(セミプリマブ; Regeneron)、BGB-A317(チスレリズマブ; BeiGene/Celgene)、Amp-514(MEDI0680)(Amplimmune)、TSR-042(ドスタルリマブ; Tesaro/AnaptysBio)、JNJ-63723283/JNJ-3283(Johnson & Johnson)、PF-06801591(Pfizer)、JS-001(トリポリバマブ/トリパリマブ; Shanghai Junshi Bio)、SHR-1210/INCSHR-1210(カムレリズマブ; Incyte corp)、PDR001(スパルタリズマブ; Novartis)、BCD-100(BioCad)、AGEN2034(Agenus)、IBI-308(シンチリマブ; Innovent Biologics)、RG7446/MPDL-3280A(アテゾリズマブ; Roche)、MSB-0010718C(アベルマブ; Merck Serono/Pfizer)、およびMEDI-4736(デュルバルマブ; AstraZeneca)、KN-035(エンバフォリマブ; 3DMed/Alphamab Co.)が含まれる。
【0144】
特に、対象は、最後の全身前処置の最中または後に疾患進行、例えば、X線撮影により確認された疾患進行を経験したことがあってもよい。
【0145】
または、本発明による処置を受けている対象は、前記肺がんを処置するためにチェックポイント阻害物質、例えば、PD-1/PD-Lを標的とする作用物質、例えば、PD-1/PD-L1阻害物質、例えば、前記で列挙されたPD-1/PD-L1阻害物質のいずれかによる前処置を受けたことがない対象でもよい。
【0146】
他の態様において、腫瘍またはがんは子宮内膜がんである。米国ならびに他の先進国では子宮内膜がん(EC)は最もよく見られる婦人科悪性腫瘍であり、世界的に発生率が増加していた。米国では2016年に60,000件の推定新規症例と10,000件を上回る死亡が報告された。2012年に世界中で527,600人の女性が子宮ECと診断された。EC症例の大多数は初期段階で特定され、放射線療法または化学療法を伴う、または伴わない外科手術によって処置される。しかしながら、進行疾患がある患者の予後は不良であり、5年生存率はリンパ節転移がある患者については50%未満であり、腹膜転移または遠隔転移がある患者については20%未満である。
【0147】
転移性、再発性、またはハイリスク疾患には多剤化学療法が好ましい処置である。しかしながら、標準レジメンに関する合意はない。カルボプラチンおよびパクリタキセルは進行性/転移性または再発性ECに対する第1選択治療の状況でますます用いられるようになっている。カルボプラチンおよびパクリタキセルの奏効率は40%~62%であり、OSは約13~29ヶ月である。併用療法時に進行した、または多剤化学療法に耐えることができない患者は単一薬剤療法を受けるかもしれないが、この状況での化学療法選択肢は、特に、第2選択治療以降の状況では中程度の活性しか生じなかった。単一薬剤の奏効率は第1選択治療の状況では21%~36%であり、第2選択治療の状況では4%~27%である(NCCN, 2018d)。
【0148】
一番最近では、ペンブロリズマブは、標準療法時または標準療法後に進行を経験した局所進行性または転移性のPD-L1陽性ECがある患者において抗腫瘍活性を証明した。
【0149】
特に、本発明に従って処置される対象または子宮内膜がんは、類内膜がん、漿液性がん、扁平上皮がん、明細胞がん、またはがん肉腫を含む上皮子宮内膜組織構造を有してもよい。
【0150】
対象は、前記子宮内膜がんを処置するために進行性/転移性疾患に対する4つまでの全身前処置レジメンを受けたことがあってもよく、最後の全身前処置の最中または後に疾患進行、例えば、X線撮影により確認された疾患進行を経験したことがあってもよい。
【0151】
対象は、前記子宮内膜がんを処置するためにチェックポイント阻害物質、例えば、PD-1/PD-Lを標的とする作用物質、例えば、PD-1/PD-L1阻害物質による前処置を受けたことがない対象でもよい。例えば、PD-1/PD-L1阻害物質は、上記のPD-1/PD-L1阻害物質のリストより選択される。
【0152】
他の態様によれば、腫瘍またはがんは、膀胱、尿管、尿道、または腎盂のがんを含む尿路上皮がんである。
【0153】
対象は、前記尿路上皮がんを処置するために進行性/転移性疾患に対する4つまでの全身前処置レジメンを受けたことがあってもよく、最後の全身前処置の最中または後に疾患進行、例えば、X線撮影により確認された疾患進行を経験したことがあってもよい。
【0154】
対象は、前記尿路上皮がんを処置するためにチェックポイント阻害物質、例えば、PD-1/PD-Lを標的とする作用物質、例えば、PD-1/PD-L1阻害物質;例えば、上記で列挙されたPD-1/PD-L1阻害物質のいずれか1つによる前処置を受けたことがあってもよい。
【0155】
さらに、対象は、前記尿路上皮がんを処置するために白金ベースの化学療法、すなわち、白金の配位化合物である薬剤を用いた化学療法を受けたことがある対象でもよい。白金ベースの化学療法の例には、シスプラチン、オキサリプラチン、およびカルボプラチンによる処置が含まれる。
【0156】
対象は白金ベースの療法の適格性がなくてもよく、別の化学療法、例えば、ゲムシタビン含有レジメンによる処置を受けたことがある。
【0157】
本発明による他の態様において、腫瘍またはがんは、乳がん、例えば、トリプルネガティブ乳がん(TNBC)である。TNBCとは、一般的に、エストロゲン受容体(ER)、プロゲステロン受容体(PR)、およびヒト上皮成長因子受容体2(HER2)の発現が無い乳がんを指す。TNBCは特に、例えば、蛍光インサイチューハイブリダイゼーション(FISH)または免疫組織化学によるタンパク質発現の測定によって判定された、HER2陰性でもよい。
【0158】
対象は、前記乳がんを処置するために局所進行性/転移性疾患に対する少なくとも1つの全身前処置レジメン、例えば、アントラサイクリン含有、タキサン含有、代謝拮抗物質含有、または微小管阻害物質含有レジメンを含む少なくとも1つの全身前処置レジメンを受けたことがあってもよい。
【0159】
さらなる態様において、対象は、前記乳がんを処置するために局所進行性/転移性疾患に対する最大で4つの全身前処置レジメン、例えば、アントラサイクリン含有、タキサン含有、代謝拮抗物質含有、または微小管阻害物質含有レジメンなどを含む少なくとも1つの全身前処置レジメンを受けたことがあってもよい。
【0160】
対象は、乳がんを処置するためにチェックポイント阻害物質、例えば、PD-1/PD-Lを標的とする作用物質、例えば、PD-1/PD-L1阻害物質;例えば、上記で列挙されたPD-/PD-L1阻害物質のいずれか1つによる前処置を受けたことがあってもよい。
【0161】
対象は、乳がんを処置するためにチェックポイント阻害物質による前処置の最中または後に疾患進行、例えば、X線撮影により確認された疾患進行を経験したことがあってもよい。
【0162】
他の態様において、対象は、乳がんを処置するためにチェックポイント阻害物質による前処置を受けたことがない対象、例えば、PD-1/PD-Lを標的とする作用物質、例えば、PD-1/PD-L1阻害物質;例えば、上記で列挙されたPD-/PD-L1阻害物質による処置を受けたことがない対象でもよい。
【0163】
腫瘍またはがんは、頭頸部がん、例えば、頭頸部扁平上皮がん(SCCHN)でもよい。頭頸部扁平上皮がん(SCCHN)は主な死因の1つであり、世界中で毎年600,000件を上回る症例が診断されている。2018年に米国では約64,690人が口腔がん、咽頭がん、または喉頭がんを発症し、同じ期間で推定13,740人が死亡している。頭頸部がんは口腔、咽頭、喉頭、鼻腔、副鼻腔、甲状腺、および唾液腺において生じ得る。喫煙とアルコールが頭頸部がん発症のリスクを大幅に高める。さらに、ヒトパピローマウイルス(HPV)感染は中咽頭(特に、扁桃腺および舌の基部)の扁平上皮がんと因果関係があり、最近の証拠から、HPVは喉頭扁平上皮がんの高いリスクとも関連し得ることが示唆されている。局所HPV陽性頭頸部がんがある患者は、HPV陰性腫瘍と比較して、処置に対する応答、PFS、およびOSについて改善したアウトカムを有する。
【0164】
頭頸部がんの処置は複雑であり、集学的なアプローチを必要とする。再発性または転移性SCCHNがある患者の予後は一般的に不良であり、生存期間の中央値は患者のパフォーマンスステータスおよび疾患関連因子に応じて約6~12ヶ月である。適切な患者に対する第1選択療法には、セツキシマブとシスプラチンまたはカルボプラチン+5-フルオロウラシル(5-FU)が含まれる。セツキシマブを添加することで白金単独および5-FU単独と比較して生存期間が延長し(10.1ヶ月対7.4ヶ月)、mPFSが延長した(3.3ヶ月対5.6ヶ月)。パフォーマンスステータスが良くない患者については単一薬剤化学療法が推奨される。これまでに、最も広く用いられた単一薬剤には白金化合物、タキサン、nab-パクリタキセル、メトトレキセート、フルオロウラシル、およびセツキシマブが含まれた。
【0165】
米国ならびに他のいくつかの国では、白金含有化学療法後に進行(PD)した患者に対してはペンブロリズマブおよびニボルマブが認可されている。PD-1標的の単一薬剤活性を探索する試験からのデータは期待が持てるように見えたが、奏効率は低いままである。
【0166】
特に、腫瘍またはがんは転移性SCCHNの再発でもよい。
【0167】
SCCHNに関する特定の態様において、腫瘍またはがんは、口腔、咽頭、または喉頭のがんである。
【0168】
対象は、SCCHNを処置するために再発性/転移性疾患に対する4つまでの全身前処置レジメンを受けたことがあってもよく、最後の全身前処置の最中または後に疾患進行、例えば、X線撮影により確認された疾患進行を経験したことがあってもよい。
【0169】
対象は、SCCHNを処置するために白金ベースの化学療法、例えば、シスプラチン、オキサリプラチン、およびカルボプラチンによる処置による処置を受けたことがあってもよい。
【0170】
または、対象は白金ベースの療法の適格性がなくてもよく、SCCHNを処置するために別の化学療法を受けたことがあってもよい。
【0171】
対象は、SCCHNを処置するためにチェックポイント阻害物質、例えば、PD-1/PD-Lを標的とする作用物質、例えば、PD-1/PD-L1阻害物質;例えば、上記で列挙されたPD-/PD-L1阻害物質による前処置を受けたことがある対象でもよい。
【0172】
対象は、チェックポイント阻害物質による前処置の時または後に疾患進行、例えば、X線撮影により確認された疾患進行を経験したことがあってもよい。
【0173】
他の態様において、対象は、チェックポイント阻害物質による前処置、例えば、PD-1/PD-Lを標的とする作用物質、例えば、PD-1/PD-L1阻害物質を受けたことがない対象、例えば、上記で列挙された、どのPD-/PD-L1阻害物質による処置も受けたことがない対象でもよい。
【0174】
さらなる態様において、腫瘍またはがんは子宮頸がんである。子宮頸がんは世界中で重大な医療問題を突きつけており、推定発生数は500,000件を上回る新規症例である。米国では2017年に約12,800件の新規症例と4,210件の死亡が発生すると推定されている。米国での子宮頸がんの診断年齢の中央値は49歳であり、発展途上国ではもっと若い。米国では、限局性疾患と診断された患者の5年生存率は91%であるが、進行した疾患がある患者の予後は今なお不良である。進行性/転移性疾患の5年生存率は35%未満である。
【0175】
再発性または転移性子宮頸がんに対する第1選択治療は、パクリタキセルと白金(シスプラチンまたはカルボプラチン)とまたはパクリタキセルとトポテカンと組み合わせたベバシズマブで構成される。48%ORRと約18ヶ月のOS中央値にもかかわらず、この第1選択治療の後に、ほぼ全ての患者が再発する。第2選択療法については、米国では、化学療法時または化学療法後に疾患が進行した再発性または転移性の子宮頸がんがあり、FDAによって認可された試験で確認された場合にPD-L1発現腫瘍がある患者の処置のためにペンブロリズマブが認可されている。その他の認可された療法は利用できない。しかしながら、患者は、ペメトレキセド、トポテカン、ドセタキセル、nab-パクリタキセル、ビノレルビン、場合によっては、ベバシズマブを含むが、これに限定されない単一薬剤モダリティで処置されることが多い。単一薬剤処置による奏効率は非常に低く(範囲:0~15%)、この理由により子宮頸がんは今なお、未だ対処されていない非常に高い医学的必要性のある集団である。
【0176】
子宮頸がんは、特に、扁平上皮細胞、腺がん、または腺扁平上皮組織構造の子宮頸がんでもよい。
【0177】
本発明に従って処置される対象は、前記子宮頸がんを処置するために再発性/転移性疾患に対する少なくとも1つの全身前処置レジメン、例えば、血管内皮増殖因子Aを標的とする処置、例えば、ベバシズマブによる処置と組み合わせた化学療法を受けたことがあり、かつ最後の全身前処置の最中または後に疾患進行、例えば、X線撮影により確認された疾患進行を経験したことがある対象でもよい。
【0178】
本発明に従って処置される対象は、血管内皮増殖因子Aを標的とする処置、例えば、ベバシズマブによる処置と組み合わせた化学療法を含む、再発性/転移性疾患に対する最大で4つの全身前処置レジメンを受けたことがある対象でもよい。
【0179】
一部の態様において、本発明に従って処置される対象は、チェックポイント阻害物質、例えば、PD-1/PD-Lを標的とする作用物質、例えば、PD-1/PD-L1阻害物質による前処置を受けたことがない対象、例えば、上記で列挙されたPD-/PD-L1阻害物質による処置を全く受けたことがない対象である。
【0180】
好ましくは、対象は女性である。
【0181】
本発明に従って用いられる結合物質は、特に、全身投与によって投与されてもよい。
【0182】
好ましくは、前記結合物質は静脈内注射または静脈内注入によって前記対象に投与される。
【0183】
それぞれの処置サイクル処置サイクルは、2週間(14日)、3週間(21日)、または4週間(28日)でもよい。
【0184】
本発明の特定の態様において、それぞれの用量は、2週間ごとに(1Q2W)、3週間ごとに(1Q3W)、または4週間ごとに(1Q4W)投与または注入される。
【0185】
一部の態様において、1用量またはそれぞれの用量は、それぞれの処置サイクルの1日目に投与または注入される。
【0186】
それぞれの用量は、最低限30分にわたって、例えば、最低限60分、最低限90分、最低限120分、または最低限240分にわたって投与または注入されてもよい。
【0187】
本発明のさらなる局面は、ヒトCD137に結合する第1の結合領域とヒトPD-L1に結合する第2の結合領域とを含む結合物質を含む組成物、例えば、薬学的組成物を提供し、組成物中の結合物質の量が、約25~400mgまたは約1.7×10-7~2.7×10-6mol、例えば、25~400mgまたは1.7×10-7~2.7×10-6molである。
【0188】
前記組成物で投与される結合物質の量は、特に、約25~320mgまたは約1.7×10-7~2.2×10-6mol、例えば、25~320mgまたは1.7×10-7~2.2×10-6mol;約30~320mgまたは約2.4×10-7~2.2×10-6mol;例えば、30~320mgまたは2.4×10-7~2.2×10-6mol約40~260mgまたは約2.7×10-7~1.8×10-6mol、例えば、40~260mgまたは2.7×10-7~1.8×10-6mol;約50~200mgまたは約3.4×10-7~1.4×10-6mol、例えば、50~200mgまたは3.4×10-7~1.4×10-6mol;約60~140mgまたは約4.1×10-7~9.5×10-7mol、例えば、60~140mgまたは4.1×10-7~9.5×10-7mol;約70~140mgまたは約4.8×10-7~9.5×10-7mol、例えば、70~140mgまたは4.8×10-7~9.5×10-7mol;約80~120mgまたは約5.5×10-7~8.2×10-7mol、例えば、80~120mgまたは5.5×10-7~8.2×10-7mol;約90~110mgまたは約6.1×10-7~7.5×10-7mol、例えば、90~110mgまたは6.1×10-7~7.5×10-7mol;約95~105mgまたは約6.5×10-7~7.2×10-7mol、例えば、95~105mgまたは6.5×10-7~7.2×10-7mol;約65~120mgまたは約4.4×10-7~8.2×10-7mol、例えば、65~120mgまたは4.4×10-7~8.2×10-7mol;約70~100mgまたは約4.8×10-7~6.8×10-7mol、例えば、70~100mgまたは4.8×10-7~6.8×10-7mol;または約75~90mgまたは約5.1×10-7~6.1×10-7mol、例えば、75~90mgまたは5.1×10-7~6.1×10-7molでもよい。
【0189】
前記組成物または薬学的組成物は、従来の技法、例えば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 19thEdition, Gennaro, Ed., Mack Publishing Co., Easton, PA, 1995に開示される技法に従って、担体、賦形剤、および/または希釈剤、ならびに公知のアジュバントを含む薬学的組成物に適した他の任意の成分を用いて処方されてもよい。薬学的に許容される担体または希釈剤ならびに任意の公知のアジュバントおよび賦形剤は本発明の抗体または抗体結合体および選択された投与方法に適していなければならない。薬学的組成物の担体および他の成分に対する適性は、本発明の選択された化合物または薬学的組成物の望ましい生物学的特性に及ぼす重大な悪影響が無いこと(例えば、抗原結合時の大きな影響より小さい[10%またはそれ未満の相対的阻害、5%またはそれ未満の相対的阻害など])に基づいて決定される。
【0190】
本発明の薬学的組成物は、希釈剤、増量剤、塩、緩衝液、界面活性剤(例えば、非イオン性界面活性剤、例えば、Tween-20もしくはTween-80)、安定剤(例えば、糖もしくはタンパク質を含まないアミノ酸)、防腐剤、可溶化剤、ならびに/または薬学的組成物に含めるのに適した他の材料を含んでもよい。
【0191】
薬学的に許容される担体には、本発明の化合物と生理学的に適合する、任意のおよび全ての適切な溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤、酸化防止剤および吸収遅延剤などが含まれる。
【0192】
本発明の薬学的組成物において使用することができる適切な水性担体および非水性担体の例には、水、食塩水、リン酸緩衝食塩水、エタノール、デキストロース、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、およびその適切な混合物、植物油、例えば、オリーブ油、トウモロコシ油、ピーナッツ油、綿実油、およびゴマ油、カルボキシメチルセルロースコロイド溶液、トラガカントゴムおよび注射用有機エステル、例えば、オレイン酸エチル、ならびに/または様々な緩衝液が含まれる。他の担体は薬学分野において周知である。
【0193】
薬学的に許容される担体には、滅菌した水溶液または分散液、および滅菌した注射液または分散液を即時調製するための滅菌した散剤が含まれる。薬学的に活性な物質のための、このような媒体および作用物質の使用は当技術分野において公知である。従来の媒体または作用物質が活性化合物と適合しない場合を除き、本発明の薬学的組成物におけるその使用が意図される。
【0194】
本発明の薬学的組成物はまた、薬学的に許容される酸化防止剤、例えば、(1)水溶性の酸化防止剤、例えば、アスコルビン酸、塩酸システイン、重硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウムなど;(2)油溶性の酸化防止剤、例えば、アスコルビン酸パルミテート、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、α-トコフェロールなど;および(3)金属キレート剤、例えば、クエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸なども含んでよい。
【0195】
本発明の薬学的組成物はまた、組成物中に、等張剤、例えば、糖、多価アルコール、例えば、マンニトール、ソルビトール、グリセロール、または塩化ナトリウムも含んでよい。
【0196】
本発明の薬学的組成物はまた、前記組成物の貯蔵寿命または有効性を増強することができる、選択された投与経路に適した1種類または複数種の補助剤、例えば、防腐剤、湿潤剤、乳化剤、分散剤、防腐剤、または緩衝液も含んでよい。本発明の化合物の組み合わせは、急速に放出されないように化合物を保護する担体、例えば、移植片、経皮パッチ、およびマイクロカプセルに閉じ込めた送達系を含む徐放製剤を用いて調製されてもよい。このような担体は、ゼラチン、モノステアリン酸グリセリン、ジステアリン酸グリセリン、生分解性生体適合性ポリマー、例えば、エチレン酢酸ビニル、ポリ酸無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、およびポリ乳酸のみ、もしくはポリ乳酸とろう、または当技術分野において周知の他の材料を含んでもよい。このような製剤を調製するための方法は一般的に当業者に公知である。例えば、Sustained and Controlled Release Drug Delivery Systems, J.R. Robinson, ed., Marcel Dekker, Inc., New York, 1978を参照されたい。
【0197】
1つの態様において、本発明に従って用いられる結合物質はインビボで適切に分散するように処方することができる。非経口投与のための薬学的に許容される担体には、滅菌した水溶液または分散液、および滅菌した注射液または分散液を即時調製するための滅菌した散剤が含まれる。薬学的に活性な物質のための、このような媒体および作用物質の使用は当技術分野において公知である。従来の媒体または作用物質が活性化合物と適合しない場合を除き、本発明の組成物におけるその使用が意図される。他の活性化合物または治療用化合物も組成物に組み込むことができる。
【0198】
注射用の薬学的組成物は、典型的には、製造および保管の条件下で無菌かつ安定でなければならない。前記組成物は、溶液、マイクロエマルジョン、リポソーム、または高い薬物濃度に適した他の規則正しい構造として処方されてもよい。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)および適切なその混合物、植物油、例えば、オリーブ油、ならびに注射用有機エステル、例えば、オレイン酸エチルを含有する、水性および非水性の溶媒または分散媒でもよい。適切な流動性は、例えば、コーティング、例えば、レシチンを使用することによって、分散液の場合、必要な粒径を維持することによって、および界面活性剤を使用することによって維持することができる。多くの場合、前記組成物に、等張剤、例えば、糖、多価アルコール、例えば、グリセロール、マンニトール、ソルビトール、または塩化ナトリウムを含めることが好ましい。注射用組成物の長期吸収は、前記組成物に、吸収遅延剤、例えば、モノステアリン酸塩およびゼラチンを含めることによって引き起こすことができる。滅菌注射液は、必要とされる量の活性化合物を、必要に応じて、成分のうちの1つまたは成分の組み合わせ、例えば、前記で列挙されたものと共に適切な溶媒中に組み込んだ後に滅菌精密濾過を行うことによって調製することができる。一般的に、分散液は、活性化合物を、基本分散媒と必要とされる他の成分、例えば、前記で列挙されたものからの必要とされる他の成分を含有する滅菌ビヒクル中に組み込むことによって調製される。滅菌注射液を調製するための滅菌散剤の場合、調製方法の例は、予め濾過滅菌した活性成分+任意のさらなる望ましい成分の溶液から、活性成分+任意のさらなる望ましい成分の散剤を生じさせる真空乾燥およびフリーズドライ(凍結乾燥)である。
【0199】
滅菌注射液は、必要とされる量の活性化合物を、必要に応じて、前記で列挙された成分のうちの1つまたは前記成分の組み合わせと共に適切な溶媒中に組み込んだ後に滅菌精密濾過を行うことによって調製することができる。一般的に、分散液は、活性化合物を、基本分散媒と、前記で列挙されたものからの必要とされる他の成分を含有する滅菌ビヒクル中に組み込むことによって調製される。滅菌注射液を調製するための滅菌散剤の場合、調製方法の例は、予め濾過滅菌した活性成分+任意のさらなる望ましい成分の溶液から活性成分+任意のさらなる望ましい成分の散剤を生じさせる真空乾燥およびフリーズドライ(凍結乾燥)である。
【0200】
1つの態様において、本発明による組成物は、約5.5×10-7molまたは約80mg、例えば、5.5×10-7molまたは80mgの前記結合物質を含む。
【0201】
現在好ましい態様では、本発明による組成物は、約6.8×10-7molまたは約100mgの前記結合物質、例えば、6.8×10-7molまたは100mgの前記結合物質の前記結合物質を含む。
【0202】
本発明による組成物において、前記結合物質は前記で定義された通りでもよい。例えば、前記結合物質は、前記で定義された可変領域および定常領域のいずれを含んでもよい。
【0203】
本発明は、上記で開示された結合物質または組成物の単位剤形をさらに含む。
【0204】
好ましくは、単位剤形は全身投与用の単位剤形である。特定の態様において、単位剤形は、対象に注射または注入するための、例えば、静脈内注射または静脈内注入するためのものである。
【0205】
前記組成物または単位剤形において、前記結合物質は、好ましくは、水溶液、例えば、0.9%のNaCl(食塩水)中に存在する。単位剤形の体積は、50~500mL、例えば、50~250mL、50~500mL、100~500mL、または100~250mLでもよい。
【0206】
なおさらなる局面において、本願は、ヒトCD137に結合する第1の結合領域とヒトPD-L1に結合する第2の結合領域とを含む、がんの処置において使用するための結合物質を提供する。
【0207】
前記結合物質は適切な量で投与することができる。特に、それぞれの用量でかつ/またはそれぞれの処置サイクルにおいて投与される結合物質の量は、
a)約0.3~5mg/kg体重もしくは合計で約25~400mg;および/または
b)約2.1×10-9~3.4×10-8mol/kg体重もしくは合計で約1.7×10-7~2.7×10-6mol
でもよい。
【0208】
好ましくは、それぞれの用量でかつ/またはそれぞれの処置サイクルにおいて投与される結合物質の量は、
a)約1.25mg/kg体重もしくは合計で約100mg、例えば、1.25mg/kg体重もしくは合計で100mg;および/または
b)約8.5×10-9mol/kg体重もしくは合計で約6.8×10-7mol、例えば、8.5×10-9mol/kg体重もしくは合計で6.8×10-7mol
である。
【0209】
本開示のさらなる項目は以下を含む。
1. 対象において腫瘍の進行を低減もしくは阻止するためまたはがんを処置するための方法であって、治療的有効量の結合物質を前記対象に投与する工程を含み、前記結合物質が、ヒトCD137に結合する第1の抗原結合領域とヒトPD-L1に結合する第2の抗原結合領域を含み、かつ前記結合物質が、少なくとも1つの処置サイクルにおいて投与され、前記結合物質の治療的有効量が、
(i)合計で約25mg~約400mg;または
(ii)合計で約1.7×10-7mol~約2.7×10-6mol
である、方法。
2. 前記結合物質の治療的有効量が、
(i)合計で約80mg~約240mg;または
(ii)合計で約5.5×10-7mol~約1.6×10-6mol
である、項目1の方法。
3. 前記結合物質の治療的有効量が、
(i)合計で約80mg;または
(ii)合計で約5.5×10-7mol
である、項目1の方法。
4. 前記結合物質の治療的有効量が、
(i)合計で約100mg;または
(ii)合計で約6.8×10-7mol
である、項目1の方法。
5. a)第1の抗原結合領域が、CDR1(HCDR1)、CDR2(HCDR2)、およびCDR3(HCDR3)を含む重鎖可変領域(VH)と、CDR1(LCDR1)、CDR2(LCDR2)、およびCDR3(LCDR3)を含む軽鎖可変領域(VL)とを含み、
HCDR1が、SEQ ID NO:2に示したアミノ酸配列を含み、
HCDR2が、SEQ ID NO:3に示したアミノ酸配列を含み、
HCDR3が、SEQ ID NO:4に示したアミノ酸配列を含み、
LCDR1が、SEQ ID NO:6に示したアミノ酸配列を含み、
LCDR2が、アミノ酸配列GASを含み、かつ
LCDR3が、SEQ ID NO:7に示したアミノ酸配列を含み;
b)第2の抗原結合領域が、CDR1(HCDR1)、CDR2(HCDR2)、およびCDR3(HCDR3)を含む重鎖可変領域(VH)と、CDR1(LCDR1)、CDR2(LCDR2)、およびCDR3(LCDR3)を含む軽鎖可変領域(VL)とを含み、
HCDR1が、SEQ ID NO:9に示したアミノ酸配列を含み、
HCDR2が、SEQ ID NO:10に示したアミノ酸配列を含み、
HCDR3が、SEQ ID NO:11に示したアミノ酸配列を含み、
LCDR1が、SEQ ID NO:13に示したアミノ酸配列を含み、
LCDR2が、アミノ酸配列DDNを含み、かつ
LCDR3が、SEQ ID NO:14に示したアミノ酸配列を含む、
項目1~4のいずれかの方法。
6. 第1の結合領域が、
(i)SEQ ID NO:1に示したアミノ酸配列と少なくとも95%同一のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)と、
(ii)SEQ ID NO:5に示したアミノ酸配列と少なくとも95%同一のアミノ酸を含む軽鎖可変領域(VL)領域と
を含み、第2の結合領域が、
(iii)SEQ ID NO:8に示したアミノ酸配列と少なくとも95%同一のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)と、
(iv)SEQ ID NO:12に対して少なくとも95%のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)領域と
を含む、項目1~4のいずれかの方法。
7. 第1の結合領域が、
(i)SEQ ID NO:1に示したアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)と、
(ii)SEQ ID NO:5に示したアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)と
を含み、第2の結合領域が、
(iii)SEQ ID NO:8に示したアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)と、
(iv)SEQ ID NO:12に示したアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)と
を含む、項目1~6のいずれかの方法。
8. 結合物質が、
(1)(a)第1の重鎖可変領域(VH1)と第1の重鎖定常領域(CH1)を含む第1の重鎖、および
(b)第1の軽鎖可変領域(VL1)と第1の軽鎖定常領域(CL1)を含む第1の軽鎖
を含む、第1のポリペプチド;ならびに
(2)(c)第2の重鎖可変領域(VH2)と第2の重鎖定常領域(CH2)を含む第2の重鎖、および
(d)第2の軽鎖可変領域(VL2)と第2の軽鎖定常領域(CL2)を含む第2の軽鎖
を含む、第2のポリペプチド
を含み、
VH1が、SEQ ID NO:1に示したアミノ酸配列を含み、
VL1が、SEQ ID NO:5に示したアミノ酸配列を含み、
VH2が、SEQ ID NO:8に示したアミノ酸配列を含み、かつ
VL2が、SEQ ID NO:12に示したアミノ酸配列を含む、
項目1~7のいずれかの方法。
9. CH1が、SEQ ID NO:19または34のアミノ酸配列に示したアミノ酸配列と少なくとも95%同一のアミノ酸配列を含み、1~10個の連続アミノ酸が欠失しており、かつCH2が、SEQ ID NO:20または35のアミノ酸配列に示したアミノ酸配列と少なくとも95%同一のアミノ酸配列を含み、1~10個の連続アミノ酸が欠失している、項目8の方法。
10. 結合物質が抗体またはその断片である、項目1~9のいずれかの方法。
11. 対象中の腫瘍またはがんが非小細胞肺がん(NSCLC)である、項目1~10のいずれかの方法。
12. NSCLC対象が、
(i)進行性/転移性疾患に対する4つまでの全身前処置レジメンを受けたことがあり、かつ最後の全身前処置の最中または後に疾患進行を経験したことがあり;
(ii)上皮細胞成長因子(EGFR)感受性増加変異および/または未分化リンパ腫(ALK)転座/ROS1再編成を有さない非扁平上皮NSCLCの組織学的診断または細胞学的診断を有し;
(iii)白金ベースの療法を受けたことがあるか、または白金不適格性により別の化学療法を受けたことがあり;かつ
(iv)PD-1/PD-L1阻害物質による前処置を受けて疾患進行を示したことがある、
項目11の方法。
13. NSCLC対象が、
(i)進行性/転移性疾患に対する4つまでの全身前処置レジメンを受けたことがあり、かつ最後の全身前処置の最中または後に疾患進行を経験したことがあり;
(ii)上皮細胞成長因子(EGFR)感受性増加変異および/または未分化リンパ腫(ALK)転座/ROS1再編成を有さない非扁平上皮NSCLCの組織学的診断または細胞学的診断を有し;
(iii)白金ベースの療法を受けたことがあるか、または白金不適格性により別の化学療法を受けたことがあり;かつ
(iv)PD-1/PD-L1阻害物質による前処置を受けたことがない、
項目11の方法。
14. 対象における腫瘍またはがんが尿路上皮がん(UC)である、項目1~10のいずれかの方法。
15. UC対象が、
(i)進行性/転移性疾患に対する4つまでの全身前処置レジメンを受けたことがあり、かつ最後の全身前処置の最中または後に疾患進行を経験したことがあり;
(ii)PD-1/PD-L1阻害物質による前処置を受けて疾患進行を示したことがあり;かつ
(iii)白金ベースの化学療法を受けたことがあるか、または白金ベースの化学療法もシスプラチン含有化学療法の適格性もない、
項目14の方法。
16. 対象における腫瘍またはがんが子宮内膜がん(EC)である、項目1~10のいずれかの方法。
17. EC対象が、
(i)進行性/転移性疾患に対する4つまでの全身前処置レジメンを受けたことがあり、かつ最後の全身前処置の最中または後に疾患進行を経験したことがあり;
(ii)類内膜がん、漿液性がん、扁平上皮がん、明細胞がん、またはがん肉腫を含む上皮子宮内膜組織構造を有し;かつ
(iii)PD-1/PD-L1阻害物質による前処置を受けたことがない、
項目16の方法。
18. 対象における腫瘍またはがんがトリプルネガティブ乳がん(TNBC)である、項目1~10のいずれかの方法。
19. TNBC対象が、
(i)HER2陰性と定義されたTNBCを有し;
(ii)進行性/転移性疾患に対する1~4つの全身前処置レジメンを受けたことがあり、かつ最後の全身前処置の最中または後に疾患進行を経験したことがある、
項目18の方法。
20. TNBC対象が、PD-1/PD-L1阻害物質による前処置を受けて疾患進行を示したことがある、項目18の方法。
21. TNBC対象が、PD-1/PD-L1阻害物質による前処置を受けたことがない、項目18の方法。
22. 対象における腫瘍またはがんが頭頸部扁平上皮がん(SCCHN)である、項目1~10のいずれかの方法。
23. SCCHN対象が、
(i)進行性/転移性疾患に対する4つまでの全身前処置レジメンを受けたことがあり、かつ最後の全身前処置の最中または後に疾患進行を経験したことがあり、
(ii)白金ベースの化学療法による前処置を受けて疾患進行を示したことがあるか、または白金ベースの化学療法の適格性がなければ別の組み合わせによる前処置を受けて疾患進行を示したことがある、
項目22の方法。
24. 対象における腫瘍またはがんが子宮頸がんである、項目1~10のいずれかの方法。
25. 子宮頸がんの対象が、
(i)進行性/転移性疾患に対する1~4つの全身前処置レジメンを受けたことがあり、かつ最後の全身前処置の最中または後に疾患進行を経験したことがあり;
(ii)扁平上皮細胞、腺がん、または腺扁平上皮組織構造の子宮頸がんを有し;かつ
(iii)PD-1/PD-L1阻害物質による前処置を受けたことがない、
項目24の方法。
26. 治療的有効量の結合物質が、体重に関係なく一定用量で投与される、前記項目のいずれかの方法。
27. 結合物質が全身投与によって投与される、前記項目のいずれかの方法。
28. 結合物質が静脈内注射または静脈内注入によって投与される、前記項目のいずれかの方法。
29. それぞれの処置サイクルが3週間(21日)である、前記項目のいずれかの方法。
30. 1用量が3週間ごとに(1Q3W)投与される、前記項目のいずれかの方法。
31. 1用量が、それぞれの処置サイクルの1日目に投与される、前記項目のいずれかの方法。
【0210】
配列
(表7)
【0211】
本発明は以下の実施例によってさらに例示され、以下の実施例は本発明の範囲を限定すると解釈してはならない。
【実施例
【0212】
実施例1: CD137抗体の作製
WO2016/110584の実施例1に記載のように抗体CD137-005およびCD137-009を作製した。手短に言うと、ウサギを、ヒトCD137-Fc融合タンパク質を含有するタンパク質混合物で免疫した。単一B細胞を血液から選別し、CD137特異的抗体が産生されたかどうかELISAおよびフローサイトメトリーによってスクリーニングした。スクリーニング陽性B細胞からRNAを抽出し、配列決定を行った。重鎖および軽鎖の可変領域を遺伝子合成し、以下のアミノ酸変異:L234F、L235E、D265AおよびF405L(FEAL)またはF405L(FEAL)を含むヒトIgG1重鎖を含むヒトIgG1κ発現ベクターまたはヒトIgG1λ発現ベクターにクローニングした。アミノ酸位置の数字はEUナンバリングに従う(SEQ ID NO:20に対応する)。キメラCD137抗体(CD137-009)の可変領域配列を本明細書中の配列表SEQ ID NO:28およびSEQ ID NO:29に示した。
【0213】
実施例2: ウサギ(キメラ)CD137抗体のヒト化
ウサギ抗CD137-009からのヒト化抗体配列をAntitope(Cambridge, UK)において作製した。ヒト化抗体配列を、生殖系列ヒト化(CDRグラフティング)技術を用いて作製した。ヒト化V領域遺伝子は、ウサギ抗体のVHおよびVκアミノ酸配列と最も近い相同性をもつヒト生殖系列配列に基づいて設計した。一連の7つのVHおよび3つのVκ(VL)生殖系列ヒト化V領域遺伝子を設計した。非ヒト親抗体V領域の構造モデルをSwiss PDBを用いて作成し、抗体の結合特性に重要な可能性があるV領域フレームワーク中のアミノ酸を特定する目的で分析した。1つまたは複数の変種CDRがグラフトされた抗体に組み込むために、これらのアミノ酸に注目した。ヒト化設計の土台として使用した生殖系列配列を表8に示した。
【0214】
(表8)最もよくマッチするヒト生殖系列VセグメントおよびJセグメントの配列
【0215】
次いで、潜在的なT細胞エピトープの発生率が最も低い変種配列を、Antitopeの知的財産権下にあるインシリコ技術、iTope(商標)およびTCED(商標)(T Cell Epitope Database)を用いて選択した(Perry, L.C.A, Jones, T.D. and Baker, M.P. New Approaches to Prediction of Immune Responses to Therapeutic Proteins during Preclinical Development (2008). Drugs in R&D 9 (6): 385-396; 20 Bryson, C.J., Jones, T.D. and Baker, M.P. Prediction of Immunogenicity of Therapeutic Proteins (2010). Biodrugs 24 (1):1-8)。最後に、設計された変種のヌクレオチド配列はコドン最適化されている。
【0216】
ヒト化CD137抗体(CD137-009-HC7LC2)の可変領域配列を本明細書中の配列表SEQ ID NO:1およびSEQ ID NO:5に示した。
【0217】
実施例3: PD-L1抗体の作製
免疫化およびハイブリドーマ作製をAldevron GmbH(Freiburg, Germany)において行った。ヒトPD-L1のアミノ酸19~238をコードするcDNAをAldevronの知的財産権下にある発現プラスミドにクローニングした。抗体PD-L1-547は、手持ち式パーティクルボンバードメント装置(「遺伝子銃」)を用いたヒトPD-L1 cDNAコーティング金粒子の皮内適用を用いてOmniRat動物(完全ヒトイディオタイプをもつ多様な抗体レパートリーを発現するトランスジェニックラット; Ligand Pharmaceuticals Inc., San Diego, USA)を免疫することによって作製した。一連の免疫後に血清試料を収集し、ヒトPD-L1を発現させるために上記の発現プラスミドで一過的にトランスフェクトしたHEK細胞に対してフローサイトメトリーにおいて試験した。抗体産生細胞を単離し、標準的な手順に従ってマウスミエローマ細胞(Ag8)と融合させた。PD-L1特異的抗体を産生するハイブリドーマに由来するRNAを抽出し、配列決定を行った。重鎖および軽鎖の可変領域(SEQ ID NO:8および12)を遺伝子合成し、以下のアミノ酸変異:L234F、L235E、D265AおよびK409R(FEAR)を含むヒトIgG1重鎖を含むヒトIgG1λ発現ベクターにクローニングした。アミノ酸位置の番号はEUナンバリングに従う(SEQ ID NO:19に対応する)。
【0218】
実施例4: 2-MEA誘導性Fabアーム交換による二重特異性抗体の作製
二重特異性IgG1抗体を、管理された還元条件下でのFabアーム交換によって作製した。この方法の基盤は、WO2011/131746に記載のように特定のアッセイ条件下でヘテロ二量体形成を促進する相補的CH3ドメインを使用することである。相補的CH3ドメインを有する抗体ペアを作り出すために、F405LおよびK409R(EUナンバリング)変異を関連抗体に導入した。
【0219】
二重特異性抗体を作製するために、各抗体の最終濃度が0.5mg/mLである2種類の親相補的抗体を総体積100μLのPBS中で75mM 2-メルカプトエチルアミン-HCl(2-MEA)と31℃で5時間インキュベートした。スピンカラム(Microcon遠心フィルター,30k,Millipore)を用いて製造業者のプロトコールに従って還元剤2-MEAを除去することによって還元反応を止めた。
【0220】
二重特異性抗体を、実施例1および4からの以下の抗体を組み合わせることによって作製した。
- PD-L1-547-FEAR抗体と組み合わせたCD137-009-FEAL抗体
- CD137-009-FEAR抗体と組み合わせたPD-L1-547-FEAL抗体
- GEN1046(CD137-009-HC7LC2-FEAR抗体と組み合わせたPD-L1-547-FEAL抗体)
- 第1のアームとしてgp120特異的抗体である抗体b12(Barbas,CF.J Mol Biol.1993 Apr 5;230(3):812-23)を用いて、PD-L1-547-FEAR抗体、CD137-009-FEAR、またはCD137-009-HC7LC2-FEAR抗体と組み合わせたb12-FEAL抗体
- PD-L1-547-FEALまたはCD137-009-FEALとb12-FEAR抗体。
【0221】
実施例5: GEN1046とPD-L1発現細胞およびCD137発現細胞の同時結合
GEN1046とヒトPD-L1発現細胞およびCD137発現細胞の同時結合の用量反応を測定するために、トランスジェニックK562細胞を蛍光色素によって異なって標識し、ダブレットの形成をフローサイトメトリーによって分析した。
【0222】
ヒトPD-L1遺伝子を導入したK562細胞(K562_hPD-L1;6×106個の細胞)を、CellTrace(商標)Violet Cell Proliferation Kit(カタログ番号C34557, Thermo Fisher Scientific GmbH, Dreieich, Germany)を用いて2mLの2.5μM染色溶液に溶解して37℃で10分間、蛍光標識した。並行して、ヒトCD137遺伝子を導入したK562細胞(K562_h4-1BB; 6×106個の細胞)を、CellTrace(商標)Far Red Cell Proliferation Kit(カタログ番号C34564, Thermo Fisher Scientific GmbH, Dreieich, Germany)を用いて2mLの0.5μM染色溶液に溶解して37℃で10分間、蛍光標識した。4mLの胎仔ウシ血清(FBS;カタログ番号S0115, Biochrom GmbH, Berlin, Germany)を添加することで染色を止めた。10%FBSを加えたRPMI1640(カタログ番号11875093, Thermo Fisher Scientific GmbH, Dreieich, Germany)で1回洗浄した後、染色したK562_hPD-L1細胞とK562_h4-1BB細胞を1:1の比で組み合わせて、RPMI1640、10%FBSで1.25×106細胞/mLに調節した。組み合わされたK562_hPD-L1細胞とK562_h4-1BB細胞をポリスチレン5mL丸底チューブ(カタログ番号10579511, Fisher Scientific, Schwerte, Germany)に移した(1×106細胞/チューブ)。細胞を、RPMI1640、10%FBSに溶解した抗体の段階希釈液(10倍希釈段階で範囲0.001~100μg/mL)と37℃で15分間インキュベートした。形成したダブレットを保存するために事前に混合することなく、試料をすぐにFACS Canto(商標)IIフローサイトメーター(Becton Dickinson GmbH, Heidelberg, Germany)によって分析した。K562_hPD-L1/K562_h4-1BBダブレットがCellTrace(商標)Violet/CellTrace(商標)FarRed二重陽性集団としてFlowJo 10.4ソフトウェアによって特定された。パーセント二重陽性細胞を抗体濃度の関数としてGraphPad Prismバージョン8.01(GraphPad Software, Inc)を用いてプロットした。
【0223】
図1Aは、GEN1046の添加によってCellTrace(商標)Violet/CellTrace(商標)FarRed二重陽性ダブレットの形成が誘導されたことを示す。0.1μg/mLという中間濃度のGEN1046とインキュベートしたK562_hPD-L1/K562_h4-1BB同時培養物が最も顕著なダブレット形成を示したのに対して、0.001μg/mLという低いGEN1046濃度では中程度のダブレット形成しか観察されず、100μg/mLという高いGEN1046濃度では最小限のダブレット形成からダブレット無形成まで検出することができた。この観察は、0.001μg/mL~100μg/mLの試験された抗体濃度範囲をカバーする図1Bに示した釣鐘形の用量反応曲線に合致する。GEN1046とは対照的に、一価のPD-L1対照抗体およびCD137対照抗体であるPD-L1-547-FEALxb12-FEARおよびb12-FEALxCD137-009-HC7LC2-FEARを組み合わせても、試験した全ての濃度でダブレットは形成しなかった。
【0224】
実施例6: CD137レポーターアッセイにおけるGEN1046の効果
PD-L1xCD137二重特異性抗体の予想された作用機序の模式図を図2に示した。
【0225】
PD-L1結合依存性CD137アゴニスト活性を媒介するGEN1046の用量反応を測定するために、ルシフェラーゼベースのCD137活性化レポーターアッセイを、PD-L1供給源として付着性の増殖中のヒト腫瘍細胞株を用いて行った。
【0226】
内因的にPD-L1を発現するヒトES-2(卵巣明細胞がん;ATCC(登録商標)CRL-1978(商標))とMDA-MB-231(乳房腺がん;ATCC(登録商標)HTB-26(商標))細胞を、白色平底96ウェルプレート(カタログ番号136101, Thermo Fisher Scientific GmbH, Dreieich, Germany)の中に入っているDMEM(カタログ番号 10566016, Thermo Fisher Scientific GmbH, Dreieich, Germany)に3×104細胞/ウェルの密度で播種し、37℃で一晩インキュベートした。凍結保存されているThaw-and-use GloResponse(商標)NFkB-Luc2P/4-1BBジャーカットレポーター細胞(カタログ番号 CS196003, Promega GmbH, Walldorf, Germany)を翌日、解凍し、1個のバイアルの内容物を、1%FBSを加えた、9.5mLの予熱したRPMI-1640が入っている15mLチューブに移した。付着性のES-2細胞およびMDA-MB-231細胞の培養培地を捨て、50μLのNFkB-Luc2P/4-1BBジャーカット細胞懸濁液をES-2またはMDA-MB-231細胞単層の上部に播種することによって同時培養を開始した。細胞を、RPMI1640、10%FBSに溶解した抗体の段階希釈液(5倍希釈段階で0.00128~100μg/mLのアッセイ濃度範囲)と37℃で6時間インキュベートした。次に、アッセイプレートをインキュベーターから取り出し、室温(RT)まで10分間、平衡化した。Bio-Glo(商標)ルシフェラーゼ試薬(カタログ番号 G7941, Promega GmbH, Walldorf, Germany)を再構成し、RTまで予熱した。1ウェルにつき75μLのルシフェラーゼ試薬を添加し、RTで10分間、暗所でインキュベートした。誘導されたルミネセンスを、Infinite F200 Proプレートリーダー(Tecan Deutschland GmbH, Crailsheim, Germany)を用いて測定した。
【0227】
GEN1046をES-2:ジャーカット(図3A)およびMDA-MB-231:ジャーカットレポーター細胞同時培養物(図3B)に添加すると、CD137アゴニスト活性化の読み取り値であるルシフェラーゼ発現が釣鐘形の用量反応曲線に従って濃度依存的に効果的に誘導された。約0.1μg/mLという中間用量レベルのGEN1046は最も顕著なルミネセンスシグナルを生じたのに対して、これより低い用量レベルならびにこれより高い用量レベルはルシフェラーゼ発現を誘導する効果が弱かった。重要なことに、非常に低いGEN1046濃度(0.00128μg/mL GEN1046)および非常に高いGEN1046濃度(100μg/mL GEN1046)では、ルシフェラーゼ発現は検出できなかった。分析した両方の同時培養物について、b12-FEAL対照抗体とのインキュベーションによってルシフェラーゼ発現は生じなかった。
【0228】
実施例7: PD-L1とCD137に結合する二重特異性抗体の効果を測定するためのポリクローナルT細胞増殖アッセイ
ポリクローナル活性化T細胞におけるT細胞増殖誘導を測定するために、二重特異性抗体GEN1046または対照抗体と組み合わせた、T細胞を活性化するための最適以下の濃度の抗CD3抗体(クローンUCHT1)とPBMCをインキュベートした。PBMC集団内で、PD-L1を発現している細胞は二重特異性抗体のPD-L1特異的アームに結合することができる。これに対して、集団内の活性化T細胞はCD137特異的アームに結合することができる。このアッセイでは、二重特異性抗体を介したPD-L1発現細胞との架橋結合とPD-L1:PD-1相互作用の遮断によって誘導される、CD137特異的アームを介したT細胞トランス活性化をT細胞増殖として測定する。
【0229】
PBMCを健常ドナーのバフィーコート(Sanquin, Amsterdam, The Netherlands)からFicoll勾配(Lonza, lymphocyte separation medium, カタログ番号17-829E)を用いて入手した。PBMCを、PBSに溶解した0.5μMカルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル(CFSE)(Life technologies, カタログ番号C34554)を用いて製造業者の説明書に従って標識した。96ウェル丸底プレート(Greiner bio-one, カタログ番号650180)に1ウェルにつき75,000個のCFSE標識PBMCを播種し、5%ヒトAB血清および1%ペネシリン(penecilin)/ストレプトマイシンを加えたIMDM GlutaMAX 200μLに溶解した、最適以下のT細胞増殖を誘導すると予め決められた最適以下の濃度の抗CD3抗体(Stemcell, クローンUCHT1, カタログ番号60011; 0.03μg/mL最終濃度)、および二重特異性抗体または対照抗体(0.0032~10μg/mL)と、37℃、5%CO2で4日間インキュベートした。
【0230】
異なるT細胞サブセットの増殖をフローサイトメトリーによって分析した。細胞をPBSで洗浄し、死細胞を排除するためにFixable Viability Stain 510(50μL/ウェル; BD Biosciences, カタログ番号564406)で4℃で20分間染色した。FACS緩衝液でさらに1回洗浄した後に、様々な細胞サブセットを区別するために、細胞を、FACS緩衝液中で、PE-CF594結合CD56特異的抗体(BD BioSciences, カタログ番号564849)、Pacific Blue結合CD4特異的抗体(BioLegend, カタログ番号300521)、AF700結合CD8特異的抗体(BioLegend, カタログ番号301028)、BV711結合CD197特異的抗体(CCR7; BioLegend, カタログ番号353228)、PE-Cy7結合CD45RO特異的抗体(BioLegend, カタログ番号304230)、APC結合CD274特異的抗体(PD-L1; BioLegendカタログ番号329708)、およびBV605結合CD137特異的抗体(BioLegend, カタログ番号309822)で4℃で30分間染色した。細胞をFACS緩衝液で3回洗浄し、その後に、80μL FACS緩衝液に溶解してFACS Fortessa(BD Biosciences)によって測定した。CFSE希釈度を、全T細胞において、ならびに異なるT細胞サブセット(例えば、CCR7+CD45RO+セントラルメモリーT細胞およびCCR7-CD45RO+エフェクターメモリーT細胞)において測定した。細胞分裂を示すCFSEピークに基づいたT細胞増殖の詳細な分析をFlowJo 10.4ソフトウェアによって行った。エクスポートした増大指数値を用いてGraphPad Prismバージョン6.04(GraphPad Software, Inc)において用量反応曲線をプロットした。増大指数は培養全体の増大倍率を決定する。増大指数 2.0は細胞数が2倍になることを表している。これに対して、増大指数 1.0は全細胞数が変化しないことを表している。
【0231】
図4Aは、二重特異性抗体GEN1046がT細胞増大を誘導したことを示す。このT細胞増大は、CD3前刺激のみ、アイソタイプ対照抗体b12-FEAL、および1本の無関係のアームと親二価抗体PD-L1-547-FEARに対応する1本のアームを有する一価PD-L1-対照抗体PD-L1-547-FEALxb12-FEARと比較して増加した。GEN1046によって誘導されるT細胞増殖は0.4μg/mLで最適になったのに対して、これより低い濃度および高い濃度ではGEN1046によって誘導されるT細胞増大はあまり目立たなかった。CCR7+CD45RO+セントラルメモリーメモリーT細胞およびCCR7-CD45RO+エフェクターメモリーT細胞を別々に分析した場合に(図4B)、GEN1046がT細胞増殖を強化し、T細胞増殖が0.4μg/mLで最適になる同様のパターン現れた。
【0232】
実施例8: PD-L1とCD137に結合する二重特異性抗体による効果を測定するための抗原特異的CD8+T細胞増殖アッセイ
抗原特異的アッセイにおいてPD-L1とCD137を標的とする二重特異性抗体によるT細胞増殖の誘導を測定する目的で、クローディン-6抗原を発現させるために樹状細胞(DC)をクローディン-6インビトロ転写RNA(IVT-RNA)でトランスフェクトした。T細胞をPD-1 IVT-RNAとクローディン-6特異的HLA-A2拘束性T細胞受容体(TCR)でトランスフェクトした。このTCRは、DC上のHLA-A2において提示されたクローディン-6由来エピトープを認識することができる。PD-L1xCD137二重特異性抗体であるGEN1046は、単球由来樹状細胞上または腫瘍細胞上で内因的に発現しているPD-L1とT細胞上のCD137を架橋して、阻害性PD-1/PD-L1相互作用を阻害すると同時にCD137をクラスター化し、その結果としてT細胞を増殖することができる。T細胞上で発現しているCD137受容体がクラスター化するとCD137受容体が活性化され、それによって共刺激シグナルがT細胞に送達される。
【0233】
HLA-A2+末梢血単核球(PBMC)を健常ドナー(Transfusionszentrale, University Hospital, Mainz, Germany)から入手した。単球を、磁気活性化細胞選別(MACS)技術によって、抗CD14マイクロビーズ(Miltenyi;カタログ番号130-050-201)を用いて製造業者の説明書に従ってPBMCから単離した。末梢血リンパ球(PBL, CD14陰性画分)を将来のT細胞単離のために凍結した。未熟DC(iDC)に分化させるために、1×106単球/mlを、5%ヒトAB血清(Sigma-Aldrich Chemie GmbH,カタログ番号H4522-100ML)、ピルビン酸ナトリウム(Life technologies GmbH,カタログ番号11360-039)、非必須アミノ酸(Life technologies GmbH,カタログ番号11140-035)、100IU/mLペニシリン-ストレプトマイシン(Life technologies GmbH,カタログ番号15140-122)、1000IU/mL顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF; Miltenyi,カタログ番号130-093-868)、および1,000IU/mLインターロイキン-4(IL-4; Miltenyi,カタログ番号130-093-924)を含有するRPMI GlutaMAX(Life technologies GmbH,カタログ番号61870-044)の中で5日間培養した。これらの5日の間に1回、培地の半分を新鮮な培地と交換した。非付着細胞を収集することでiDCを採取し、2mM EDTAを含有するPBSと37℃で10分間インキュベートすることによって付着細胞を剥離した。洗浄後に、将来の抗原特異的T細胞アッセイのために、iDCを、10%v/v DMSO(AppliChem GmbH, カタログ番号A3672,0050)+50%v/vヒトAB血清を含有するRPMI GlutaMAXに入れて凍結した。
【0234】
抗原特異的CD8+T細胞増殖アッセイを開始する1日前に、同じドナーに由来する凍結したPBLおよびiDCを解凍した。CD8+T細胞を、抗CD8マイクロビーズ(Miltenyi、カタログ番号130-045-201)を用いたMACS技術によって製造業者の説明書に従ってPBLから単離した。BTX ECM(登録商標)830 Electroporation System装置(BTX; 500V、1×3msパルス)を用いて、250μL X-Vivo15(Biozym Scientific GmbH,カタログ番号881026)が入っている4mmエレクトロポレーションキュベット(VWR International GmbH,カタログ番号732-0023)の中で、約10~15×106個のCD8+T細胞をクローディン-6特異的マウスTCRのα鎖コードインビトロ翻訳(IVT)-RNA 10μgとβ鎖コードIVT-RNA 10μg(HLA-A2拘束性; WO2015150327A1に記載)と0.4~10μgのPD-1コードIVT-RNAで電気穿孔した。電気穿孔の直後に、細胞を、5%ヒトAB血清を加えた新鮮なIMDM培地(Life Technologies GmbH,カタログ番号12440-061)に移し、37℃、5%CO2で少なくとも1時間休ませた。T細胞を、PBSに溶解した1.6μMカルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル(CFSE; Invitrogen,カタログ番号C34564)を用いて製造業者の説明書に従って標識し、5%ヒトAB血清を加えたIMDM培地中でO/Nインキュベートした。
【0235】
250μLのX-Vivo15培地中で前記(300V, 1×12msパルス)のようにエレクトロポレーションシステムを用いて、5×106個までの解凍したiDCを0.3~1μgの完全長クローディン-6コードIVT-RNAで電気穿孔し、5%ヒトAB血清を加えたIMDM培地中でO/Nインキュベートした。
【0236】
翌日、細胞を収集した。DC上でのクローディン-6およびPD-L1の細胞表面発現と、T細胞上でのTCRおよびPD-1の細胞表面発現をフローサイトメトリーによってチェックした。DCをAlexa647結合CLDN6特異的抗体(非市販品; 社内で作製)および抗ヒトCD274抗体(PD-L1, eBioscienes,カタログ番号12-5983)で染色し、T細胞を抗マウスTCRβ鎖抗体(Becton Dickinson GmbH,カタログ番号553174)および抗ヒトCD279抗体(PD-1, eBioscienes,カタログ番号17-2799)で染色した。5%ヒトAB血清を加えたIMDM GlutaMAXが入っている96ウェル丸底プレートの中で、二重特異性抗体または対照抗体の存在下で5,000個の電気穿孔したDCを50,000個の電気穿孔したCFSE標識T細胞とインキュベートした。5日後にT細胞増殖をフローサイトメトリーによって測定した。細胞分裂を示すCFSEピークに基づくT細胞増殖の詳細な分析をFlowJo10.4ソフトウェアで行った。エクスポートした増大指数値を用いて、GraphPad Prismバージョン6.04(GraphPad Software, Inc)において用量反応曲線をプロットした。増大指数は培養全体の増大倍率を決定する。増大指数 2.0は細胞数が2倍になることを表している。これに対して、増大指数 1.0は全細胞数が変化しないことを表している。
【0237】
図5は、≧0.004μg/mLの濃度での増大指数増加により反映されるように、GEN1046がアイソタイプ対照抗体b12-FEALと比較してT細胞増殖を用量依存的に増強したことを示す。GEN1046によって誘導されるT細胞増殖は0.03~0.11μg/mLで最適であり、試験された最高濃度ではわずかに減少し、釣鐘形の用量反応曲線を示す。
【0238】
実施例9: PD-L1とCD137に結合する二重特異性抗体によって誘導されるサイトカイン放出を測定するための抗原特異的CD8+T細胞増殖アッセイ
PD-L1とCD137を標的とする二重特異性抗体GEN1046によるサイトカイン放出の誘導を、本質的に実施例8に記載のように行った抗原特異的アッセイにおいて測定した。
【0239】
T細胞を、2μgのPD-1コードIVT RNAと一緒に、または2μgのPD-1コードIVT RNAを伴わずに10μgのTCRα鎖コードRNAおよび10μgのβ鎖コードRNAで電気穿孔した。電気穿孔したT細胞を(前記のように)CFSE標識しなかったが、電気穿孔の直後に、5%ヒトAB血清を加えた新鮮なIMDM培地(Life Technologies GmbH, カタログ番号12440-061)に移した。iDCを、前記のように5μgのクローディン-6(CLDN6)コードRNAで電気穿孔した。O/Nインキュベーション後に、前記のように、DCをAlexa647結合CLDN6特異的抗体で染色し、T細胞を抗マウスTCRβ鎖抗体および抗ヒトCD279抗体で染色した。
【0240】
5%ヒトAB血清を加えたIMDM GlutaMAXが入っている96ウェル丸底プレートの中で、様々な濃度の二重特異性抗体GEN1046または対照抗体b12-FEALの存在下で、5,000個の電気穿孔したDCを50,000個の電気穿孔したT細胞とインキュベートした。48時間のインキュベーション期間後に、プレートを500×gで5分間遠心分離し、上清を各ウェルから新鮮な96ウェル丸底プレートに注意深く移し、MSD(登録商標)プラットフォームによるサイトカイン分析まで-80℃で保管した。抗原特異的増殖アッセイから収集した上清を、10種類の異なるサイトカインのサイトカインレベルについて、MESO QuickPlex SQ 120装置(Meso Scale Diagnostics, LLC.,カタログ番号R31QQ-3)においてMSD V-Plex Human Proinflammatory panel 1(10-Plex)キット(Meso Scale Diagnostics, LLC., カタログ番号K15049D-2)によって製造業者の説明書に従って分析した。
【0241】
GEN1046を添加すると、主としてIFN-γ、TNF-α、IL-13、およびIL-8の分泌が濃度依存的に増加した(図6)。これは0.04~0.33μg/mLの濃度で最適であった。これより低い用量レベルならびに1μg/mLという高い用量レベルは、これらのサイトカインを誘導するのにあまり効果がなく、釣鐘形の用量反応曲線を示す。T細胞をPD-1 RNAで電気穿孔しなかったT細胞:DC同時培養物を、T細胞を2μgのPD-1 RNAで電気穿孔したT細胞:DC同時培養と比較すると、PD-1 RNA電気穿孔がない同時培養物の方がわずかに高いサイトカインレベルを検出することができた。これは、GEN1046用量反応曲線ならびにb12-FEAL対照抗体値の両方について観察された。
【0242】
実施例10: 腫瘍浸潤リンパ球に対するCD137xPD-L1二重特異性抗体の効果を評価するためのエクスビボTIL増大アッセイ
腫瘍浸潤リンパ球(TIL)に対するCD137-009-FEALxPD-L1-547-FEARの効果を評価するために、ヒト腫瘍組織のエクスビボ培養を以下の通りに行った。新鮮なヒト腫瘍組織切除標本を、スパチュラまたはセロロジカルピペットを用いて、洗浄培地を含む6ウェルプレート(Fisher Scientificカタログ番号10110151)の1個のウェルから単離した腫瘍塊を次のウェルに移すことによって3回洗浄した。洗浄培地は、1%Pen/Strep(Thermo Fisher,カタログ番号15140-122)および1%Fungizone(Thermo Fisher,カタログ番号15290-026)を加えたX-VIVO 15(Biozym, カタログ番号881024)で構成された。次に、腫瘍を外科手術刀(Braun/Roth, カタログ番号5518091 BA223)で解剖し、直径が約1~2mmの断片に切断した。2つの断片をそれぞれ、1mL TIL培地(X-VIVO 15, 10%ヒト血清アルブミン(HSA, CSL Behring,カタログ番号PZN-6446518)、1%Pen/Strep、1%Fungizoneを含み、10U/mL IL-2(Proleukin(登録商標)S, Novartis Pharma,カタログ番号02238131))を加えた24ウェルプレート(VWR international,カタログ番号701605)の1個のウェルに入れた。CD137-009-FEALxPD-L1-547-FEARを、示された最終濃度で添加した。培養プレートを37℃および5%CO2でインキュベートした。72時間後に、示された濃度の二重特異性抗体を含有する新鮮なTIL培地1mLを各ウェルに添加した。TILクラスターが発生したかどうか1日おきにウェルを顕微鏡によってモニタリングした。それぞれのウェルに25個より多いTILマイクロクラスターが検出された場合にウェルを1つ1つ移した。TIL培養物を分割するために、24ウェルプレートのウェル中の細胞を2mL培地に再懸濁し、6ウェルプレートのウェルに移した。さらに、さらなる2mLのTIL培地を各ウェルに加えた。
【0243】
10~14日の全培養期間後に、TILをフローサイトメトリーによって収集および分析した。細胞を以下の試薬で染色した。全ての試薬を染色用緩衝液(staining-buffer)、(5%FCSおよび5mM EDTAを含有するD-PBS)、抗ヒトCD4-FITC(Miltenyi Biotec,カタログ番号130-080-501)、抗ヒトCD3-PE-Cy7(BD Pharmingen,カタログ番号563423)、7-アミノアクチマイシンD(7-AAD, Beckman Coulter,カタログ番号A07704)、抗ヒトCD56-APC(eBioscience,カタログ番号17-0567-42)、および抗ヒトCD8-PE(TONBO,カタログ50-0088)で1:50に希釈した。異なる治療群間で、得られた細胞を定量的に比較するために、BD(商標)CompBeads(BD biosciences,カタログ番号51-90-9001291)を加えたFACS緩衝液での最後の洗浄工程後に細胞ペレットを再懸濁した。フローサイトメトリー分析をBD FACSCanto(商標)IIフローサイトメーター(Becton Dickinson)によって行い、得られたデータを、FlowJo 7.6.5ソフトウェアを用いて分析した。得られたビーズ数に対して、得られた7AAD陰性細胞画分を基準化することによって、6ウェルプレートの対応するウェルに相関する1,000個のビーズあたりの相対的な生TIL数、CD3+CD8+T細胞数、CD3+CD4+T細胞数、およびCD3-CD56+NK細胞数を計算した。
【0244】
図7は、ヒト非小細胞肺がん組織標本からのTIL増大の分析を示す。ここでは、以下の濃度:0.01μg/mL、0.1μg/mL、および1μg/mLのCD137-009-FEALxPD-L1-547-FEARを添加した。抗体を添加しなかった同じ患者に由来する組織標本は負の対照として役立った。10日間培養した後にTILを収集し、フローサイトメトリーによって分析した。24ウェルプレートの異なるウェルに由来する各抗体濃度について5つの試料(5つの最初のウェルに由来する)を測定した。二重特異性抗体と共に培養した全ての試料において、生TIL数は、抗体が無い対照試料と比較して増加した。全体的に見て、0.1μg/mL CD137-009-FEALxPD-L1-547-FEARを培養物に添加した場合に、生TILの有意な増大(10倍まで)が観察された(図7A)。別々に分析した場合に、CD3+CD8+T細胞増大に対する強力な効果が観察され、これは0.1μg/mL CD137-009-FEALxPD-L1-547-FEARで有意であった(図7B; 対照と比べて7.4倍の増大)。CD3+CD4+T細胞はわずかにしか増大せず、これらの増大は、抗体のない培養物と比較して有意でなかった(図7C)。CD3-CD56+NK細胞については最も顕著なTIL増大が認められ(図7D; 対照と比較して64倍までの増大)、これは0.1μg/mL CD137-009-FEALxPD-L1-547-FEARで有意であった。
【0245】
実施例11: 進行性固形腫瘍患者における末梢血中のGEN1046の薬力学的評価
進行性腫瘍患者における様々な用量レベルのGEN1046の生物学的活性を調べるために、血液および血清試料をベースラインにおいて、および処置の複数の時点で収集した。GEN1046の作用機序に基づいて、生物学的活性がある用量レベルは、インターフェロン-γ(IFN-γ)およびインターフェロン-γ-誘導性タンパク質10(IP-10)の循環レベルを調節し、末梢CD8 T細胞の増殖を誘導すると予想された。
【0246】
(IFN-γ)およびIP-10の血清レベルを求めるために、ベースラインにおいて、ならびにサイクル1およびサイクル2におけるGEN1046投与後の複数の時点(1日目[投与して2時間後および4~6時間後]、2日目、3日目、8日目、ならびに15日目)で患者から血清試料を収集した。IFN-γおよびIP-10の血清レベルは、Meso Scale Discovery(MSD)マルチプレックス免疫アッセイ(カタログ番号K15209G)によって製造業者の説明書に従って測定した。
【0247】
免疫細胞サブセットの末梢調節を測定するために、ベースラインにおいて、ならびにサイクル1およびサイクル2におけるGEN1046投与後の複数の時点(2日目、3日目、8日目、および15日目)でEDTAチューブに収集した全血中で末梢血の免疫表現型検査を行った。100μLの全血を、細胞表面抗原に特異的に結合する蛍光色素結合モノクローナル抗体:CD45RA-FITC(クローンLEU-18, BD Biosciencesカタログ番号335039)、CCR7-BV510(クローン3D12, BD Biosciences, カタログ番号563449)、CD8-PerCP-Cy5.5(クローンRPA-T8, BD Biosciences, カタログ番号560662)に添加した。氷上でインキュベートした後に、染色した試料を、赤血球を溶解するためにFACS Lysing Solution(BD Biosciences, カタログ番号349202)で処理した。余分な抗体および細胞破片をStain Buffer(BD Biosciences, カタログ番号554656)で洗浄することによって除去した。溶解/洗浄後にPermeabilizing Solution 2 buffer(BD Biosciences,カタログ番号340973)とインキュベートすることによって細胞を固定および透過処理した。次に、細胞を洗浄し、Stain Bufferに再懸濁し、増殖細胞を検出するために氷上でKi67に対する抗体(BV421 B56, BD Biosciences, カタログ番号562899)とインキュベートした。インキュベーション後に、余分な抗体をStain Bufferで洗浄することによって除去した。細胞をStain Bufferに再懸濁し、染色して1時間以内にBD FACSCanto(商標)IIフローサイトメーター(Becton Dickinson)で取得した。
【0248】
GEN1046をがん患者に投与すると、IFN-γおよびIP-10ならびに増殖エフェクターメモリーCD8 T細胞の循環レベルが調節された(表9および図13)。表9に示した予備データセットでは、IFN-γレベルは、試験した全用量レベルにわたって1回目の処置サイクルでは2倍超増加した。最大の増加は50mgおよび80mg用量レベルで検出され、80mgコホートの患者のほとんど(75%)が2倍超増加した(表9)。GEN1046は、Ki67+CD8+CD45RA-CCR7-T細胞の頻度の増加によって測定された場合にエフェクターメモリーCD8+T細胞の増殖も誘発した。IFNγの循環レベルの調節と共に観察された変化と同等の、増殖CD8+エフェクターメモリーT細胞の最大の、かつより首尾一貫した調節が80mgコホートの患者において観察された。特に、400mgコホートではIFN-γと増殖エフェクターメモリーCD8 T細胞の両循環レベルの変化の規模が25~200mgコホートと比較して小さかった。これらの結果から、GEN1046は、抗腫瘍免疫応答の発生にとって重大な意味を持つ免疫エフェクター細胞と可溶性因子の調節を特徴とする免疫応答を誘発し、80mg用量レベルでは大きな規模の応答が生じることが分かった。
【0249】
図13に示したデータセットでは、1回目の処置サイクルの用量レベル≦200mgにおいてIFN-γおよびIP-10の増加が観察された(図13A~B)。≧400mgの用量レベルでもIFN-γとIP-10の増加が観察されたが、1回目の処置サイクル中のベースラインからの最大変化倍率はもっと低い用量レベルと比較してかなり少なかった。GEN1046はまた、Ki67+CD8+T細胞およびKi67+CD8+CD45RA-CCR7-T細胞の頻度の増加によって測定された場合に全CD8+T細胞とエフェクターメモリーCD8+T細胞の増殖も誘発した(図13C~D)。IFNγとIP-10の循環レベルの調節と共に観察された変化と同等の、増殖CD8+エフェクターメモリーT細胞の最大の、かつより首尾一貫した調節が≦200mgの用量レベルで処置された患者において観察された。≧400mgのコホートでは、増殖エフェクターメモリーCD8 T細胞と全CD8 T細胞の変化の規模は25~200mgコホートと比較してかなり少なかった。これらの結果から、GEN1046は、抗腫瘍免疫応答の発生にとって重大な意味を持つ免疫エフェクター細胞と可溶性因子の調節を特徴とする免疫応答を誘発し、≦200mg用量レベルのレベルでは大きな規模の応答が生じることが分かった。
【0250】
(表9)がん患者における末梢薬力学的エンドポイントのGEN1046調節:サイクル1の間の用量レベルによるベースラインからのピーク変化倍率a
2020年1月27日時点での予備データ。
n: 用量コホート1つあたりの患者数;最小値:最も小さな測定値;Q1: 25パーセンタイル;Q3: 75パーセンタイル;最大値:最大の測定値。
aインターフェロン-γおよびエフェクターメモリーT細胞の循環レベルの変化を含む薬力学的評価を、GEN1046の非盲検多施設安全性試験(NCT03917381)の用量漸増フェーズに登録した進行性固形腫瘍患者に由来する血液試料を用いて行った。
b血清試料中のインターフェロン-γの循環レベルをベースラインにおいて、ならびにサイクル1およびサイクル2におけるGEN1046投与後の複数の時点(1日目[投与して2時間後および4~6時間後]、2日目、3日目、8日目、ならびに15日目)で測定した。血清試料中のインターフェロン-γレベルをMeso Scale Discovery(MSD)マルチプレックス免疫アッセイによって求めた。
cベースラインにおいて、ならびにサイクル1およびサイクル2におけるGEN1046投与後の複数の時点(2日目、3日目、8日目、および15日目)で収集した全血中で末梢血の免疫表現型検査を行った。増殖(Ki67+)エフェクターメモリーCD8 T細胞(CD8+CD45RA-CCR7-T細胞)の頻度をフローサイトメトリーによって全血試料中で評価した。
【0251】
実施例12: 臨床試験からの予備データ:
試験デザイン
GCT1046-01(ClinicalTrials.gov Identifier: NCT03917381)に対する臨床試験を、進行中の用量漸増パートと計画された増大パートを含む2パート試験としてデザインした。
【0252】
この試験はGEN1046(DuoBody(登録商標) - PD-L1x4-1BB)の非盲検多施設第I/IIa相安全性試験としてデザインされた。この試験は2つのパート;ファースト・イン・ヒューマン(FIH)用量漸増(第I相)と増大(第IIa相)からなる。図8は臨床試験デザインの模式図を示す。
【0253】
用量漸増
用量漸増は、最大耐用量(MTD)もしくは最大投与量(MAD)および/または第2相試験推奨用量(RP2D)を求める目的で固形悪性腫瘍対象においてGEN1046を評価するようにデザインされた。
【0254】
用量漸増のために、対象は18歳以上の男性または女性であることが必要とされ、RECIST1.1に従って測定可能な疾患を有することが必要とされた。
【0255】
対象は、転移性の、または切除不能な組織学的または細胞学的に確認された非CNS固形腫瘍を有し、臨床利益を与える可能性が高い標準療法を利用できないか、またはこのような利用可能な療法の候補でない対象であり、かつ試験責任者の見解ではGEN1046による実験的療法が有益になり得る対象であることが必要とされた。
【0256】
用量漸増では、プロトコールによって規定された処置中止の判定基準、例えば、X線撮影による疾患進行または臨床進行が満たされるまで、対象に3週間ごとに1回(1Q3W)GEN1046を注入した。GEN1046は、それぞれの3週間処置サイクル(21日)の1日目に最低限60分間にわたるi.v.注入を用いて投与した。この試験のデザインのコンセプトを図8に示した。
【0257】
1Q3W用量漸増は、潜在的に(試験中に収集したデータに応じて)、GEN1046を7種類の主な用量レベル:一定の25mg、80mg、200mg、400mg、800mg、1200mg、および1600mgと6種類の任意の中間用量レベル:一定の50mg、140mg、300mg、600mg、1000mg、および1400mgで評価するようにデザインされた。
【0258】
第2相試験推奨用量(RP2D)は入手可能な安全性情報と投薬情報の再調査に基づいており、最大耐用量(MTD)より少なくすることができた。
【0259】
増大
増大の目的は、選択された用量/スケジュールの安全性、忍容性、MoA、PK、および抗腫瘍活性に関するさらなるデータを提供することである。
【0260】
増大は、6つまでの腫瘍タイプ(7つのパラレルコホート)、すなわち、NSCLC、EC、UC、TNBC、SCCHN、および子宮頸がんにおいて募集を開始するようにデザインされた。用量漸増で生じた予備効力シグナルに基づいて、追加の腫瘍タイプのさらなる増大コホートが設けられる場合がある。治験依頼者は用量漸増において得られたデータに基づいて疾患特異的増大コホートを設ける優先度を決定する。
【0261】
NSCLC増大コホート
NSCLC増大コホートは扁平上皮組織構造がある対象ならびに非扁平上皮組織構造がある対象を組み入れなければならない。
【0262】
奏効率と他の疾患関連アウトカムがPD-1/PD-L1ナイーブ集団対PD-1/L1前処置集団において異なる可能性があるので、予備効力の十分な証拠を確かなものにするためにNSCLC患者を異なるコホートに分けた。コホート2は、PD-1/L1阻害物質によるSOCが制限されているか、または利用できないPD-1/L1ナイーブNSCLC患者における予備効力を探索することを目標とする。データの全体性のDMC再調査により確認された場合に、未だ対処されていない非常に高い医学的必要性のある集団(例えば、PD-L1が少ないか、または陰性である)において、予備臨床証拠が、利用可能な療法を上回る大幅な改善を示唆するのであれば、治験依頼者は、PD-1/L1阻害物質へのアクセスが制限されていない地域においてコホート2を設けるように要請するかもしれない。
【0263】
UC増大コホート
UCコホートは、白金ベースの化学療法の適格性がある対象と、白金ベースの化学療法を受ける適格性がない対象を両方とも組み入れるようにデザインされた。
【0264】
SCCHNおよびTNBC増大コホート
SCCHNおよびTNBCコホートは、PD-1/PD-L1阻害物質による前処置を受けたことがある対象と、以前のPD-1/L1阻害物質による処置を受けたことがない対象を組み入れ得る。
【0265】
組み入れ規準
対象は、以下の判定基準の全てが当てはまる場合だけ試験に組み入れられる適格性がある。
【0266】
対象は18歳以上の男性または女性の対象でなければならず、RECIST1.1に従って、測定可能な疾患がなければならない。
【0267】
対象には、もはや標準療法の候補でないか、または標準療法を拒絶し(対象が、それぞれの処置を受けることができ、それぞれの処置の適格性があった場合)、かつ以下の通りに抗がん療法が失敗している、再発性または難治性の、進行性および/または転移性のNSCLC、EC、UC、TNBC、SCCHN、または子宮頸がんの組織学的確定診断または細胞学的確定診断がなければならない。
【0268】
増大コホート1(NSCLC):PD-1/L1によって前処置されている
進行性/転移性疾患に対する4つまでの全身前処置レジメン(アジュバント療法および維持療法は1つの治療ラインの一部とみなされる)を受けたことがあり、最後の前処置の最中または後にX線撮影による疾患進行がある、NSCLC対象。
【0269】
対象には、上皮細胞成長因子(EGFR)感受性増加変異および/または未分化リンパ腫(ALK)転座/ROS1再編成を有さない非扁平上皮NSCLCの組織学的診断または細胞学的診断がなければならない。EGFR感受性増加変異とは、認可されたチロシンキナーゼ阻害物質(TKI)による処置を受け入れる変異である。EGFRおよびALK状態の文書は地域の評価ごとに入手できなければならない。EGFRおよびALK状態の文書が入手できなければ、登録前に治験依頼者のメディカルモニターの認可が必要とされる。
【0270】
対象は白金ベースの療法(または白金不適格性により別の化学療法、例えば、ゲムシタビン含有レジメン)を受けたことがなければならない。
【0271】
対象は、PD-1/L1阻害物質による前処置を単独で、または組み合わせて受けたことがなければならず、処置時にX線撮影による疾患進行がなければならない。処置期間が16週間までのCPI含有レジメンの最中のSDまたはPDのBORがある対象については治験依頼者の認可が必要とされる。
【0272】
増大コホート2(NSCLC) - PD-1/L1ナイーブ
進行性/転移性疾患に対する4つまでの全身前処置レジメン(アジュバント療法および維持療法は1つの治療ラインの一部とみなされる)を受けたことがあり、最後の前処置の最中または後にX線撮影による疾患進行がある、NSCLC対象。
【0273】
対象には、上皮細胞成長因子(EGFR)感受性増加変異および/または未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)転座/ROS1再編成を有さない非扁平上皮NSCLCの組織学的診断または細胞学的診断がなければならない。EGFR感受性増加変異とは、認可されたチロシンキナーゼ阻害物質(TKI)による処置を受け入れる変異である。EGFRおよびALK状態の文書は地域の評価ごとに入手できなければならない。EGFRおよびALK状態の文書が入手できなければ、登録前に治験依頼者のメディカルモニターの認可が必要とされる。
【0274】
対象は白金ベースの療法(または白金不適格性により別の化学療法、例えば、ゲムシタビン含有レジメン)を受けたことがなければならない。
【0275】
対象は、PD-1/L1阻害物質による前処置を受けたことがあってはならない
【0276】
増大コホート3(UC):
局所進行性/転移性疾患に対する4つまでの全身前処置レジメン(アジュバント療法および維持療法は1つの治療ラインの一部とみなされる)を受けたことがあり、最後の前処置の最中または後にX線撮影による疾患進行がある(膀胱、尿管、尿道、または腎盂の)、UC対象。
【0277】
対象は、PD-1/L1阻害物質による前処置を単独で、または組み合わせて受けたことがなければならず、処置時にX線撮影による疾患進行がなければならない。処置期間が16週間までのCPI含有レジメンの最中のSDまたはPDのBORがある対象については治験依頼者の認可が必要とされる。
【0278】
直近のPD-L1試験からの地域結果が(入手可能であれば)登録前に提供されなければならない。
【0279】
コホート3a:白金ベースの療法を受ける適格性がある対象を対象とする:
対象は白金ベースの化学療法を受けたことがなければならない。
【0280】
コホート3b:白金ベースの療法を受ける適格性がない対象を対象とする:
対象には、白金ベースの化学療法の適格性もシスプラチン含有化学療法の適格性もあってはならない。
【0281】
増大コホート4(EC):
進行性/転移性疾患に対する4つまでの全身前処置レジメン(アジュバント療法および維持療法は1つの治療ラインの一部とみなされる)を受けたことがあり、最後の前処置の最中または後にX線撮影による疾患進行がある、EC対象。
【0282】
対象には、類内膜がん、漿液性がん、扁平上皮がん、明細胞がん、またはがん肉腫を含む上皮子宮内膜組織構造がなければならない。肉腫および間葉系ECは除外される。
【0283】
対象は、PD-1/L1阻害物質による前処置を受けたことがあってはならない(確立されている地域のラベル/アクセスが尊重される必要がある)。
【0284】
増大コホート5(TNBC):
HER2陰性[HER2はFISHにより陰性である]アッセイであると明らかにされたTNBC(HER2とCEP17の非増幅比<2.0、シングルプローブ平均HER2遺伝子コピー数<4シグナル/細胞)、または、代わりに、IHC結果によるHER2タンパク質発現は地域評価に従って1+陰性またはIHC0-陰性ならびにERおよびPgR陰性状態(IHC分析により<1%のホルモン受容体発現細胞と定義される)である。局所進行性/転移性疾患に対して、アントラサイクリン含有、タキサン含有、代謝拮抗物質含有、または微小管阻害物質含有レジメンを含むが、これに限定されない、少なくとも1つであるが、4つ以下の全身前処置レジメン(アジュバント療法および維持療法は1つの治療ラインの一部とみなされる)を受けたことがあり、最後の前処置の最中または後にX線撮影による疾患進行がある、対象。
【0285】
表現型が異なる乳がんの前病歴をもつ対象は、対象の最後の全身前療法後に得られた生検材料からTNBCが確認されていなければならない。
【0286】
コホート5a - PD-1/L1阻害物質による前処置を受けたことがある対象:
対象は、PD-1/L1阻害物質による前処置を単独で、または組み合わせて受けたことがなければならず、処置時にX線撮影による疾患進行がなければならない。
【0287】
コホート5b - PD-1/L1阻害物質による前処置を受けたことがない対象:
対象は、PD-1/L1阻害物質による前処置を受けたことがあってはならない
【0288】
増大コホート6(SCCHN):
再発性/転移性疾患に対する4つまでの全身前処置レジメン(アジュバント療法および維持療法は1つの治療ラインの一部とみなされる)を受けたことがあり、最後の前処置の最中または後にX線撮影によるPDがある、再発性または転移性SCCHN(口腔、咽頭、喉頭)対象。
【0289】
対象には、白金ベースの化学療法による前処置の最中または後に疾患進行がなければならない(対象の白金不適格性状態が記録されていれば、別の併用化学療法が許容される)。
【0290】
コホート6a - PD-1/L1阻害物質による前処置を受けたことがある対象:
対象は、PD-1/L1阻害物質による前処置を単独で、または組み合わせて受けたことがなければならず、処置時にX線撮影による疾患進行がなければならない。処置期間が16週間までのCPI含有レジメンの最中のSDまたはPDのBORがある対象については治験依頼者の認可が必要とされる。
【0291】
コホート6b - PD-1/L1阻害物質による前処置を受けたことがない対象:
対象は、PD-1/L1阻害物質による前処置を受けたことがあってはならない
【0292】
増大コホート7(子宮頸がん):
対象が地域の基準に従ってベバシズマブ不適格性でなければ化学療法とベバシズマブ(適用可能なラベリングに従う)の組み合わせを含む、再発性/転移性疾患に対する少なくとも1つであるが、4つ以下の全身前処置レジメンを受けたことがあり、最後の前処置の最中または後にX線撮影による疾患進行がある、子宮頸がん対象(アジュバントもしくはネオアジュバント状況において、または放射線療法を組み合わせて投与される化学療法は以前の療法ラインに入れてはならない)。
【0293】
対象は、扁平上皮細胞、腺がん、または腺扁平上皮組織構造の子宮頸がんを有さなければならない。
【0294】
対象は、PD-1/L1阻害物質による前処置を受けたことがあってはならない(確立されている地域のラベル/アクセスが尊重される必要がある)。
【0295】
結果
用量漸増
用量漸増中に以下の予備結果を入手した。表10は、合計30人の患者の登録時および投薬時の用量レベルによる最良総合効果(RECISTv1.1)を示す(データ抽出日:2020年2月3日)。
【0296】
表11および表12は、それぞれ、合計61人の患者の登録時および投薬時の用量レベルによる、客観的奏効率および確認された客観的奏効率を示す(RECISTv1.1)(データカットオフ:2020年10月12日)。
【0297】
患者全員におけるベースラインからの腫瘍サイズの最良のパーセント変化を図9に示した。用量漸増フェーズの40/61(65.6%)人の患者において疾患管理が発生した。トリプルネガティブ乳がん、卵巣がん、または非小細胞肺がん(NSCLC)がある4人の患者において部分奏効(PR)が認められた。36人の患者が安定を維持した。
【0298】
NSCLC患者において観察された臨床活動(ベースラインからの腫瘍サイズの最良変化)を図10に示した(データカットオフ:2020年10月12日)。全員が以前にチェックポイント免疫療法を受けている6人のNSCLC患者のうち、2人で未確認のPRが認められ、2人で安定が維持され、2人で進行が認められた。
【0299】
(表10)用量レベルによる最良総合効果(RECIST v1.1)
1uPR
【0300】
(表11)客観的奏効率 - 用量漸増
【0301】
(表12)確認された奏効率 - 用量漸増
【0302】
増大:
増大コホート1:
2020年10月12日の時点で24人の患者を増大コホート1に登録した。増大コホート1は、(PD-1/L1で前処置された)NSCLC患者を含む。チェックポイント阻害物質療法時またはチェックポイント阻害物質療法後に進行があると確認された12人の患者をベースライン後に評価することができた(図11)。
【0303】
結論:
GEN1046は、既存の4-1BBアゴニストとは異なり、容認できる安全性プロファイルと、期待の持てる初期の臨床活性があるファースト・イン・クラスの次世代PD-L1x4-1BB二重特異性抗体である。
【0304】
この第I/IIa相試験の用量漸増フェーズでは、GEN1046は、多数の前治療歴のある進行性固形腫集団において管理しやすい安全性プロファイルと予備臨床活性を証明した。
【0305】
ほとんどの有害事象は軽度から中程度であった。処置に関連するグレード3トランスアミナーゼ上昇はコルチコステロイによって消散した。処置に関連するビリルビン増加またはグレード4トランスアミナーゼ上昇は観察されなかった。6人の患者に用量制限毒性(DLT)があった。最大耐用量(MTD)には達しなかった。
【0306】
以前の免疫療法に対して耐性を示した患者および免疫チェックポイント阻害物質(ICI)に対して概して感受性を示さなかった腫瘍を有する患者を含む患者において、異なる用量レベルにわたる臨床利益が観察された。
【0307】
トリプルネガティブ乳がん(1)、卵巣がん(1)、およびICI前処置NSCLC(2)における部分奏効を含む患者の65.6%において疾患管理が成し遂げられた。
【0308】
広範囲の用量レベルにわたって薬力学的エンドポイントの調節が観察され、これにより生物学的活性が証明された。
【0309】
実施例13: 薬物動態学的/薬力学的モデル
中心PK区画および末梢PK区画へのGEN1046の分布ならびに腫瘍区画およびリンパ区画への分配を仮定する統合された半機械論的PK/PD(薬物動態学的/薬力学的)モデルを開発した。このモデルは、PD-L1および4-1BBの発現ならびにこれらの細胞へのT細胞輸送のパラメータ表示のために、文献からのPKおよび薬力学的データならびに生理学的パラメータを活用している。モデル区画は、十分に混合された2次元空間および3次元空間と全区画間の遊離薬物移動からなる。さらに、このモデルは、三量体(PD-L1および4-1BBとの架橋)形成ならびに腫瘍におけるPD-L1および4-1BBに対する受容体占有率(RO)を予測するためにGEN1046とPD-L1および4-1BBとの動的結合を組み込んでいる。シミュレーションから、三量体形成は80mgの用量で最適になることが分かった。腫瘍におけるPD-L1および4-1BBに対するモデル予測されたROは80~140mgの用量で十分になると思われた。用量を≧200mgに増やすと三量体形成が低下した。さらに、入手可能な臨床薬力学的データに基づいて、≦200mgの用量レベルでは、末梢薬力学的エンドポイント(IFNγおよび増殖Ki67+エフェクターメモリーCD8+T細胞)のより大きな規模と、首尾一貫した調節が認められた。PK/薬力学的モデリング予測と利用可能な臨床データを考慮すれば、GEN1046の最適用量は80~140mgの範囲内にあると予測された。100mg用量1Q3Wでは最大三量体形成とPD-L1に対する平均RO(%)が全投薬間隔の間に妥当なレベルで保たれる。
【0310】
100mg 1Q3WのPDL1についてのモデル予測された最大三量体形成および受容体占有率を図12に示した。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13A
図13B
図13C
図13D
【配列表】
2023513896000001.app
【国際調査報告】