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特表2023-513919バクテリオファージカクテル含有ハイドロゲル組成物並びにその製造及び使用方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-04
(54)【発明の名称】バクテリオファージカクテル含有ハイドロゲル組成物並びにその製造及び使用方法
(51)【国際特許分類】
   A61L 27/34 20060101AFI20230328BHJP
   A61L 27/54 20060101ALI20230328BHJP
   A61L 27/52 20060101ALI20230328BHJP
   A61L 29/08 20060101ALI20230328BHJP
   A61L 29/14 20060101ALI20230328BHJP
   A61L 29/16 20060101ALI20230328BHJP
   A61L 31/10 20060101ALI20230328BHJP
   A61L 31/14 20060101ALI20230328BHJP
   A61L 31/16 20060101ALI20230328BHJP
   A61K 35/76 20150101ALN20230328BHJP
   C12N 7/00 20060101ALN20230328BHJP
   C12N 11/04 20060101ALN20230328BHJP
【FI】
A61L27/34
A61L27/54
A61L27/52
A61L29/08 100
A61L29/14 300
A61L29/16
A61L31/10
A61L31/14 300
A61L31/16
A61K35/76
C12N7/00
C12N11/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022549193
(86)(22)【出願日】2021-02-15
(85)【翻訳文提出日】2022-10-07
(86)【国際出願番号】 US2021018113
(87)【国際公開番号】W WO2021163663
(87)【国際公開日】2021-08-19
(31)【優先権主張番号】62/976,663
(32)【優先日】2020-02-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522322480
【氏名又は名称】コルトン、ウィリアム
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100212705
【弁理士】
【氏名又は名称】矢頭 尚之
(74)【代理人】
【識別番号】100219542
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 郁治
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】コルトン、ウィリアム
【テーマコード(参考)】
4B033
4B065
4C081
4C087
【Fターム(参考)】
4B033NA02
4B033NA11
4B033NB02
4B033NB48
4B033NB62
4B033NC08
4B033NC13
4B033NC17
4B033ND04
4B033ND20
4B033NF05
4B065AA01X
4B065AA98X
4B065AC20
4B065BB02
4B065BB37
4B065BC03
4B065BC09
4B065BC26
4B065BC47
4B065BD12
4B065BD18
4B065CA34
4B065CA44
4B065CA54
4C081AB04
4C081AB12
4C081AB13
4C081AB22
4C081AB37
4C081AB38
4C081AC07
4C081AC08
4C081BA14
4C081BB06
4C081CD012
4C081CD041
4C081CD34
4C081CE01
4C081CF24
4C081DA12
4C081DC13
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC83
4C087MA21
4C087MA38
4C087MA67
4C087NA12
4C087ZB35
(57)【要約】
医療用インプラントと共に使用するための抗菌コーティング組成物が開示される。抗菌コーティング組成物は、ハイドロゲル内に埋め込まれたビーズにカプセル化されたバクテリオファージカクテルを含む。抗菌コーティング組成物を含むキット、並びにコーティング組成物を製造及び使用する方法も開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの医療用インプラントの表面に適用するための抗菌コーティング組成物であって、
ハイドロゲル;
前記ハイドロゲル内に埋め込まれたアルギン酸塩ビーズ;並びに
(i)少なくとも1つの大腸菌(E. coli)バクテリオファージ;及び
(ii)少なくとも1つの肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)バクテリオファージ
を含む、前記アルギン酸塩ビーズ内にカプセル化されたバクテリオファージカクテル
を含む、抗菌コーティング組成物。
【請求項2】
(i)及び(ii)はカウドウイルス目(Caudovirales)溶菌性バクテリオファージである、請求項1に記載の抗菌コーティング組成物。
【請求項3】
前記バクテリオファージカクテルは、
(iii)少なくとも1つのエンテロコッカス フェカリス(Enterococcus faecalis)バクテリオファージ;
(iv)少なくとも1つの緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)バクテリオファージ;
(v)少なくとも1つの黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)バクテリオファージ;
(vi)少なくとも1つの腐性ブドウ球菌(Staphylococcus saprophyticus)バクテリオファージ;
(vii)少なくとも1つのプロテウス ミラビリス(Proteus mirabilis)バクテリオファージ;及び
(viii)少なくとも1つのストレプトコッカス アガラクティアエ(Streptococcus agalactiae)バクテリオファージ
の少なくとも1つを更に含む、請求項1に記載の抗菌コーティング組成物。
【請求項4】
前記バクテリオファージカクテルは(iii)~(viii)の少なくとも2つを含む、請求項3に記載の抗菌コーティング組成物。
【請求項5】
前記バクテリオファージカクテルは少なくとも(iii)及び(iv)を含む、請求項4に記載の抗菌コーティング組成物。
【請求項6】
前記バクテリオファージカクテルは(iii)~(viii)の3つを含む、請求項3に記載の抗菌コーティング組成物。
【請求項7】
前記バクテリオファージカクテルは(iii)~(viii)の4つを含む、請求項3に記載の抗菌コーティング組成物。
【請求項8】
前記バクテリオファージカクテルは(iii)~(viii)の5つを含む、請求項3に記載の抗菌コーティング組成物。
【請求項9】
前記バクテリオファージカクテルは(iii)~(viii)を含む、請求項3に記載の抗菌コーティング組成物。
【請求項10】
(iii)、(iv)、(v)、(vi)、(vii)、及び(viii)の少なくとも1つが、カウドウイルス目(Caudovirales)溶菌性バクテリオファージである、請求項3に記載の抗菌コーティング組成物。
【請求項11】
持続放出抗菌コーティング組成物として更に限定される、請求項1に記載の抗菌コーティング組成物。
【請求項12】
前記バクテリオファージカクテルは、T4、LM33-P1、536_P1、536_P7、及びEC200PPバクテリオファージの少なくとも1つを更に含む、請求項1に記載の抗菌コーティング組成物。
【請求項13】
前記アルギン酸塩ビーズがアルギン酸ナトリウムビーズとして更に限定される、請求項1に記載の抗菌コーティング組成物。
【請求項14】
前記アルギン酸塩ビーズがキトサンコーティングを含む、請求項1に記載の抗菌コーティング組成物。
【請求項15】
前記ハイドロゲル内に埋め込まれた前記アルギン酸塩ビーズが実質的に脱水されており、体液に曝露されると実質的に再水和される、請求項1に記載の抗菌コーティング組成物。
【請求項16】
細菌が存在し、前記バクテリオファージカクテルと遭遇したことを示す検出可能な標識を更に含む、請求項1に記載の抗菌コーティング組成物。
【請求項17】
少なくとも1つの追加の抗微生物剤を更に含む、請求項1に記載の抗菌コーティング組成物。
【請求項18】
前記抗微生物剤が抗真菌剤である、請求項17に記載の抗菌コーティング組成物。
【請求項19】
前記ハイドロゲルがペクチンを含む、請求項1に記載の抗菌コーティング組成物。
【請求項20】
前記ハイドロゲルがバクテリオファージ緩衝溶媒中に懸濁している、請求項1に記載の抗菌コーティング組成物。
【請求項21】
前記バクテリオファージ緩衝溶媒がマグネシウムを含む、請求項20に記載の抗菌コーティング組成物。
【請求項22】
請求項1~21のいずれか一項に記載の抗菌コーティング組成物;及び
少なくとも1つの医療用インプラント
を含む、キット。
【請求項23】
前記医療用インプラントが、カテーテル、整形外科用デバイス、補綴デバイス、血管関連インプラント、冠状動脈関連インプラント、乳房インプラント、子宮内デバイス、鼓膜換気チューブ、眼内レンズ及びそれらの組合せからなる群から選択される、請求項22に記載のキット。
【請求項24】
前記医療用インプラントが尿道カテーテルである、請求項23に記載のキット。
【請求項25】
潤滑剤及び殺菌剤の少なくとも1つを更に含む、請求項23に記載のキット。
【請求項26】
請求項1~21のいずれか一項に記載の抗菌コーティング組成物;及び
医療用インプラント
を含み;
前記抗菌コーティング組成物は、前記医療用インプラントの少なくとも1つの表面の少なくとも一部に適用されている、アセンブリ。
【請求項27】
抗菌組成物を製造する方法であって、
バクテリオファージカクテルをアルギン酸塩ビーズ内にカプセル化する工程、ここで、前記バクテリオファージカクテルは、
(i)少なくとも1つの大腸菌(E. coli)バクテリオファージ;及び
(ii)少なくとも1つの肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)バクテリオファージ
を含む;
前記バクテリオファージカクテルを含むアルギン酸塩ビーズを脱水する工程;並びに
前記バクテリオファージカクテルを含む脱水されたアルギン酸塩ビーズをハイドロゲル内に埋め込む工程
を含む、方法。
【請求項28】
前記バクテリオファージカクテルは、
(iii)少なくとも1つのエンテロコッカス フェカリス(Enterococcus faecalis)バクテリオファージ;
(iv)少なくとも1つの緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)バクテリオファージ;
(v)少なくとも1つの黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)バクテリオファージ;
(vi)少なくとも1つの腐性ブドウ球菌(Staphylococcus saprophyticus)バクテリオファージ;
(vii)少なくとも1つのプロテウス ミラビリス(Proteus mirabilis)バクテリオファージ;及び
(viii)少なくとも1つのストレプトコッカス アガラクティアエ(Streptococcus agalactiae)バクテリオファージ
の少なくとも1つを更に含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記バクテリオファージカクテルは(iii)~(viii)の2つを含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記バクテリオファージカクテルは(iii)及び(iv)を含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記バクテリオファージカクテルは(iii)~(viii)の3つを含む、請求項28に記載の方法。
【請求項32】
前記バクテリオファージカクテルは(iii)~(viii)の4つを含む、請求項28に記載の方法。
【請求項33】
前記バクテリオファージカクテルは(iii)~(viii)の5つを含む、請求項28に記載の方法。
【請求項34】
前記バクテリオファージカクテルは(iii)~(viii)を含む、請求項28に記載の方法。
【請求項35】
前記バクテリオファージの少なくとも1つが、カウドウイルス目(Caudovirales)溶菌性バクテリオファージである、請求項27に記載の方法。
【請求項36】
抗菌コーティングを有する医療用インプラントの製造方法であって、
前記医療用インプラントの表面の少なくとも一部に、請求項1~21のいずれか一項に記載の抗菌コーティング組成物を適用する工程
を含む、方法。
【請求項37】
医療用インプラントの患者の体内への留置に伴う感染のリスクを低減する方法であって、
医療用インプラントを前記患者の体内に留置する工程、ここで、前記医療用インプラントは、その少なくとも1つの表面の少なくとも一部に適用されている請求項1~21のいずれか一項に記載の抗菌コーティング組成物を有する、
を含む、方法。
【請求項38】
尿道カテーテルの使用に伴う尿路感染の発生又は重症化を低減する方法であって、
尿道カテーテルを患者の尿路に挿入する工程、ここで、前記尿道カテーテルは、その少なくとも1つの表面の少なくとも一部に適用されている請求項1~21のいずれか一項に記載の抗菌コーティング組成物を有する
を含む、方法。
【請求項39】
前記抗菌コーティング組成物は、前記尿道カテーテルの外表面の少なくとも一部に適用されている、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記抗菌コーティング組成物は、前記尿道カテーテルの内表面の少なくとも一部に適用されている、請求項38に記載の方法。
【請求項41】
製造中に組み込まれた抗菌組成物を有する医療用インプラントを含むアセンブリであって、前記抗菌組成物は、
ハイドロゲル;
前記ハイドロゲル内に埋め込まれたアルギン酸塩ビーズ;並びに
(i)少なくとも1つの大腸菌(E. coli)バクテリオファージ;及び
(ii)少なくとも1つの肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)バクテリオファージ
を含む、前記アルギン酸塩ビーズ内にカプセル化されたバクテリオファージカクテル
を含む、アセンブリ。
【請求項42】
(i)及び(ii)はカウドウイルス目(Caudovirales)溶菌性バクテリオファージである、請求項41に記載のアセンブリ。
【請求項43】
前記バクテリオファージカクテルは、
(iii)少なくとも1つのエンテロコッカス フェカリス(Enterococcus faecalis)バクテリオファージ;
(iv)少なくとも1つの緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)バクテリオファージ;
(v)少なくとも1つの黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)バクテリオファージ;
(vi)少なくとも1つの腐性ブドウ球菌(Staphylococcus saprophyticus)バクテリオファージ;
(vii)少なくとも1つのプロテウス ミラビリス(Proteus mirabilis)バクテリオファージ;及び
(viii)少なくとも1つのストレプトコッカス アガラクティアエ(Streptococcus agalactiae)バクテリオファージ
の少なくとも1つを更に含む、請求項41に記載のアセンブリ。
【請求項44】
前記バクテリオファージカクテルは(iii)~(viii)の少なくとも2つを含む、請求項43に記載のアセンブリ。
【請求項45】
前記バクテリオファージカクテルは少なくとも(iii)及び(iv)を含む、請求項44に記載のアセンブリ。
【請求項46】
前記バクテリオファージカクテルは(iii)~(viii)の3つを含む、請求項43に記載のアセンブリ。
【請求項47】
前記バクテリオファージカクテルは(iii)~(viii)の4つを含む、請求項43に記載のアセンブリ。
【請求項48】
前記バクテリオファージカクテルは(iii)~(viii)の5つを含む、請求項43に記載のアセンブリ。
【請求項49】
前記バクテリオファージカクテルは(iii)~(viii)を含む、請求項43に記載のアセンブリ。
【請求項50】
前記医療用インプラントがボーンワックスである、請求項41に記載のアセンブリ。
【請求項51】
医療用インプラントの患者の体内への留置に伴う感染のリスクを低減する方法であって、
請求項41~50のいずれか一項に記載のアセンブリを前記患者の体内に留置する工程
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願に対する相互参照/参照による組込み
本出願は、2020年2月14日に出願された米国仮出願第62/976,663号の米国特許法第119条(e)及びPCT規則80.5に基づく利益を主張する。上記特許出願の全内容は、本明細書に明示的に組み込まれる。
【0002】
連邦政府が支援する研究又は開発に関する陳述
該当なし
【背景技術】
【0003】
留置医療デバイス(尿道カテーテルなど、ただしこれには限定されない)には、微生物がコロニー形成していることが多く、その結果、デバイスの上や周囲に微生物バイオフィルムが形成される。バイオフィルムは、細胞外ポリマー物質の複雑なマトリックスであり、抗菌剤がこのバリアに侵入し、バイオフィルム内の細菌を殺滅し、及び/又はその増殖を阻止することは困難である。加えて、バイオフィルムは、病原体、特にブドウ球菌属(Staphylococcus)、連鎖球菌属(Streptococcus)、シュードモナス属(Pseudomonas)、及びエンテロバクター属(Enterobacter)の庇護領域としての役割を果たす。さらに、バイオフィルムは、外被形成、閉塞、そして最終的にはデバイスの故障を引き起こす可能性がある。したがって、バイオフィルムの形成及び/又は成長を予防及び低減させ、それによって、留置医療デバイスの使用に伴うリスク又は罹患率及び死亡率を低減させながら、その耐久性を向上させ、デバイスの寿命を延長させる方法が、継続的に望まれている。
【0004】
特に、全尿路感染症の65%は、膀胱の尿道カテーテル挿入に関連している。最近の調査では、医療に関連する感染症の約9%がカテーテル関連尿路感染(CAUTI)であることが判明した(Magill et al., N Engl J Med (2014) 370:1198-1208)。一般にCAUTIで見られる微生物には、大腸菌(Escherichia coli)、エンテロコッカス フェカリス(Enterococcus faecalis)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)及び肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)、並びに複数のカンジダ属(Candida)が含まれる。さらに、CAUTIでは複数の種類の微生物が存在することが多い。CAUTI病因におけるカテーテル関連バイオフィルムの正確な役割はあまり判明していないが、そのようなバイオフィルムは、カテーテルが取り出された場合でも、抗微生物物質に耐性で排除が困難な尿路病原性微生物の安定したリザーバーとして重要な役割を果たしているという証拠がある(Lehman et al., Antimicrob Agents Chemother (2015) 59:1127-1137)。
【0005】
バイオフィルム形成の制御にバクテリオファージを使用することは、抗生物質に代わる天然の手段として以前に提案されている(例えば、Lehman et al., op. cit.; Fu et al., Antimicrob Agents Chemother (2010) 54:397-404、米国特許出願公開第2019/0032022号及び同第2009/0191254号を参照)。しかし、単一種のバクテリオファージの使用は、CAUTIに存在し得る複数の種類の尿路病原性細菌に対する広いスペクトルの保護を提供するものでない(また、存在し得る真菌種に対する効果もない)。さらに、バクテリオファージをカテーテルに共有結合させることは、バクテリオファージの有効性をそれが共有結合しているカテーテルの特定領域に制限される;言い換えれば、バクテリオファージが共有結合しているカテーテルのちょうどその位置に接触している細菌のみが殺滅される。さらに、医療用インプラントの表面に共有結合したバクテリオファージは、免疫系にさらされる(したがって、免疫系によって不活化される)。また、バクテリオファージは室温で不安定で(したがって、その保存が影響を受け)、体温でも分解される;そのため、共有結合したバクテリオファージは、通常、患者の体内で約1~2日間しか安定ではない。
【0006】
したがって、従来技術の欠陥及び欠点を克服する医療デバイス、例えば(限定されるものではないが)、カテーテルに配置するための、新規で改良されたバクテリオファージ含有製剤が所望されている。本開示が対象とするのは、そのようなバクテリオファージ含有組成物、それを含有するキット及びアセンブリ、並びにそれらの製造及び使用方法である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
詳細な説明
代表的な語句及び結果によって、本発明の概念の少なくとも1つの態様を詳細に説明する前に、本発明の概念は、その適用が、以下の説明に示される構成の詳細及び構成要素の配置に限定されないことを理解されたい。本発明の概念は、他の態様であることができ、さまざまな方法で実施又は実行できる。したがって、この明細書で使用される語句は、可能な限り広範な範囲及び意味を与えることが意図されており;態様は、例示的であることを意味するが、網羅的であることを意味しない。さらに、この明細書で利用される表現及び用語は、説明を目的とするものであり、制限するものとしてみなされるべきでないことが理解される。
【0008】
明細書で別途定義していない限り、本開示の発明の概念に関連して使用される科学的及び技術的な用語は、当業者によって一般的に理解される意味を有するものとする。さらに、文脈上別段の必要がない限り、単数形には複数形が含まれ、複数形には単数形が含まれるものとする。前述の技法及び手順は、一般に、当該技術分野で周知の従来の方法に従って、本明細書を通して引用及び考察されるさまざまな一般的及びより具体的な文献に記載されるように実施される。特別な定義が与えられない限り、明細書に記載の分析化学、合成有機化学、医化学及び製薬化学に関連して用いられる命名法、並びにそれらの実験手順及び技法は、周知であり、当該技術分野で一般に使用されているものである。化学合成及び化学分析については標準的技法が使用される。
【0009】
本明細書で言及される全ての特許、公開された特許出願、及び非特許文献は、本開示の発明の概念が属する当業者の技能のレベルを示す。本出願で参照される全ての特許、公開された特許出願、及び非特許文献は、いわば各個別の特許又は刊行物が具体的かつ個別に示されて参照によって組み込まれているのと同程度で、それらの全体が本明細書に明示的に組み込まれる。
【0010】
本明細書に開示した全ての組成物、キット、アセンブリ及び/又は方法は、本開示に照らして過度の実験なしで作製及び実行できる。本発明の概念の組成物、キット、アセンブリ及び方法は、特定の態様の観点から記載されているが、本発明の概念の考え、趣旨及び範囲から逸脱することなく、本明細書に記載の組成物及び/若しくは方法、又は方法の工程若しくは一連の工程に変形が適用され得ることは、当業者にとって明らかであろう。当業者に対して明白な、このような同様の置換及び修正は全て、特許請求の範囲に記載される本発明の概念の趣旨、範囲及び考え内にあるものとみなされる。
【0011】
本開示に従って使用される場合、以下の用語は、別段の指示がない限り、以下の意味を有するものと理解される。
【0012】
特許請求の範囲及び/又は明細書において用語「含む」と併せて使用される場合の用語「a」又は「an」の使用は、「1つ」を意味し得るが、「1つ以上」、「少なくとも1つ」及び「1つ又は2つ以上」の意味とも一致する。したがって、「a」、「an」及び「the」という用語は、文脈が明確に別のことを示さない限り、複数の指示対象を含む。したがって、例えば、「化合物」は、1つ以上の化合物、2つ以上の化合物、3つ以上の化合物、4つ以上の化合物、又はより多くの数の化合物を指し得る。「複数」という用語は、「2つ以上」を意味する。
【0013】
「少なくとも1つ」という用語の使用は、1つ、及び1つを超える量、例えば限定されるものではないが、2、3、4、5、10、15、20、30、40、50、100などを含むと理解される。「少なくとも1つ」という用語は、それが結合する用語に応じて、最大100又は1000以上に及ぶことができる;さらに、100/1000の量は、より高い限界でも満足のいく結果をもたらす可能性があるため、限定的に解釈されるべきではない。加えて、「X、V及びZの少なくとも1つ」という用語の使用は、X単独、Y単独及びZ単独、並びにX、V及びZの任意の組合せを含むと理解される。序数(すなわち、「第1の」、「第2の」、「第3の」、「第4の」など)の使用は、2つ以上の項目を区別する目的に過ぎず、例えば、任意の配列若しくは順序、1つの項目の他の項目を上回る重要性、又は任意の追加の順序を示唆するものではない。
【0014】
特許請求の範囲における「又は」という用語の使用は、代替物のみを指すことが明示的に示されない限り、又は代替物が相互に排他的でない限り、包括的な「及び/又は」を意味するために使用される。例えば、条件「A又はB」は、Aが真(又は存在する)かつBが偽(又は存在しない)、Aが偽(又は存在しない)かつBが真(又は存在する)、AとBの両者が真(又は存在する)のいずれかによって満たされる。
【0015】
本明細書では、「一態様」、「ある態様」、「一部の態様」、「一例」、「例えば」又は「ある例」は、態様に関連して説明される特定の要素、特長、構造又は特徴が少なくとも1つの態様に含まれることを意味する。例えば、本明細書のさまざまな場所における「一部の態様では」又は「一例」という語句は、必ずしも全てが同じ態様を指すわけではない。さらに、1つ以上の態様又は例に対する全ての参照は、特許請求の範囲を限定するものではないと解釈されるべきである。
【0016】
本出願において、「約」という用語は、値が、組成物/装置/デバイスについての誤差の固有の変動、値を決定するために利用される方法に固有の変動、又は研究対象の間に存在する変動を含むことを示すために用いられる。例えば限定されるものではないが、用語「約」が使用される場合、指定された値は、このような変動は開示された方法を実施するために適切であり、当業者によって理解されるように、指定された値からプラス若しくはマイナス20%、15%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%又は1%変動し得る。
【0017】
本明細書及び特許請求の範囲において、単語「含む(comprising)」(及びcomprisingの任意の形態、例えばcomprise及びcomprises)、「有する(having)」(及びhavingの任意の形態、例えばhave及びhas)、「含む(including)」(及びincludingの任意の形態、例えばincludes及びinclude)、又は「含有する(containing)」(及びcontainingの任意の形態、例えばcontains及びcontain)は、包括的又は開放的であり、追加の、列挙されていない要素又は工程を除外しない。
【0018】
本明細書における「又はその組合せ」という用語は、用語の前に列挙される項目の全ての順列及び組合せを指す。例えば、「A、B、C又はその組合せ」は、A、B、C、AB、AC、BC又はABCの少なくとも1つを含むことを意図しており、特定の文脈において順序が重要である場合、BA、CA、CB、CBA、BCA、ACB、BAC又はCABも含む。この例に続いて、1つ以上の項目又は用語の繰り返しを含む組合せ、例えば、BB、AAA、AAB、BBC、AAABCCCC、CBBAAA、CABABBなどが明示的に含まれる。当業者は、文脈から明らかでない限り、通常、任意の組合せの項目又は用語の数に制限がないことを理解するであろう。
【0019】
本明細書における「実質的に」という用語は、その後に記載される事象若しくは状況が完全に起こること、又はその後に記載される事象若しくは状況が相当な範囲若しくは程度で起こることを意味する。例えば、特定の事象又は状況に関連付けられるとき、「実質的に」という用語は、その後に記載される事象又は状況が、少なくとも80%の時間、少なくとも85%の時間、少なくとも90%の時間又は少なくとも95%の時間で起こることを意味する。例えば、「実質的に隣接する」という用語は、2つの項目が互いに100%隣接していること、2つの項目が互いに非常に近接しているが100%隣接していないこと、又は2つの項目のうちの1つの一部が他の項目に100%隣接していないが他の項目に非常に近接していることを意味し得る。
【0020】
本明細書における「ポリペプチド」という用語は、アミノ酸のポリマーを指すことが理解される。ポリマーは、アミノ酸のd-、l-又は人工的なバリアントを含んでいてもよい。加えて、「ポリペプチド」という用語は、ペプチド、タンパク質及び糖タンパク質を含むと理解される。
【0021】
本明細書における「ポリヌクレオチド」という用語は、2つ以上のヌクレオチドのポリマーを指すことが理解される。本明細書におけるヌクレオチドは、デオキシリボースヌクレオチド及び/又はリボースヌクレオチド、並びにその人工バリアントを含むことが理解される。ポリヌクレオチドという用語はまた、一本鎖及び二本鎖分子を含む。
【0022】
本明細書における「類似体」又は「バリアント」という用語は、分子の正常若しくは標準の形態又は野生型の形態の変形を指すことが理解される。ポリペプチド又はポリヌクレオチドに関して、類似体は、野生型ポリヌクレオチドのバリアント(多型)、変異体、及び/又は天然若しくは人工的に化学修飾された変形(上記の組合せを含む)であり得る。かかる類似体は、分子の通常の形態よりも高い、完全な、中間的若しくは低い活性を有してもよく、又は全く活性を有していなくてもよい。その代わりに、及び/又はそれに加えて、化学物質に関して、類似体は、異なる原子又は異性体配置を含む場合でも所望の官能基(コア部分の変更又は置換を含む)を有する任意の構造であってもよい。
【0023】
本明細書における「と会合した」及び「と結合した」という語句は、2つの部分の互いに直接的な会合/結合、及び2つの部分の互いに間接的な会合/結合の両者を含む。会合/結合の非限定的な例としては、例えば、直接結合によって又はスペーサー基を介して、ある部分が別の部分に共有結合すること、ある部分が別の部分に直接的に又はその部分に結合した特異的結合対のメンバーによって非共有結合すること、ある部分が別の部分に溶解することによる又は合成によるかのように別の部分に組み込まれること、及びある部分を別の部分にコーティングすることが挙げられる。
【0024】
本明細書における「実質的に純粋な」とは、物体種が、存在する主要な(すなわち、モル換算で、組成物中の他の種よりも豊富である)種であることを意味し、好ましくは、実質的に精製された画分が、物体種が存在する全ての巨大分子種の少なくとも約50%(モル換算で)を占める組成物である。一般に、実質的に純粋な組成物は、組成物中に存在する全ての巨大分子種の約80%超、より好ましくは約85%超、90%超、95%超及び99%超を占める。最も好ましくは、物体種が、組成物が本質的に単一の巨大分子種からなる、本質的に均質(混入物質種は、従来の検出方法によっては組成物中で検出できない)なものに精製される。
【0025】
「薬学的に許容される」という用語は、適切でない有害副作用、例えば(限定されるものではないが)、毒性、刺激及び/又はアレルギー反応を伴うことのない、妥当な利益/リスク比に相応する、ヒト及び/又は動物への投与に好適な化合物及び組成物を指す。
【0026】
「薬学的に許容される賦形剤」という用語は、本明細書で開示した組成物の溶解性、送達性、分散性、安定性及び/又は立体構造の完全性を改善し得る、当該技術分野で公知であるか、又は本明細書で予定されている担体、ビヒクル及び/又は希釈剤を指す。
【0027】
本明細書における「患者」という用語には、ヒト及び獣医学的対象が含まれる。治療目的の「哺乳動物」は、哺乳動物、例えば(限定されるものではないが)、ヒト、家畜及び農場動物、非ヒト霊長類、並びに乳房組織を有する他の動物に分類される動物を指す。
【0028】
「治療」という用語は、治療的処置と防御又は予防手段の両者を指す。治療を必要とする個体としては、既に特定の状態/疾患/感染を有する個体、及び特定の状態/疾患/感染に罹るリスクがある個体(例えば、防御/予防手段を必要とする個体)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。「治療すること」という用語は、治療及び/又は防御/予防目的のために、薬剤/要素/方法を患者に投与することを示す。
【0029】
「治療組成物」又は「医薬組成物」は、治療及び/又は防御/予防効果をもたらすためにin vivoで投与され得る薬剤を指す。
【0030】
治療有効量又は防御有効量を投与することは、疾患、状態及び/又は感染の、治療、予防及び/又は制御における治療的利益を提供することを意図する。治療的に有効な特定の量は、一般の医師によって容易に決定でき、当該技術分野で公知の要因、例えば(限定されるものではないが)、状態/疾患/感染の種類、患者の病歴及び年齢、状態/疾患/感染の段階、並びに他の薬剤の同時投与に応じて変動できる。
【0031】
本発明では、「有効量」という用語は、適切でない有害副作用[例えば(限定されるものではないが)、毒性、刺激及びアレルギー反応]を伴うことなく検出可能な治療効果を示すのに十分で、合理的な利益/リスク比に見合った、生物学的に活性な分子、コンジュゲート若しくはそれらの誘導体の量を指すか、又は治療プロトコール(すなわち、交互電界)の量を指す。治療効果としては、例えば限定されるものではないが、少なくとも1つの腫瘍及び/又はがんの発生を、予防、阻害又は低減することが挙げられ得る。対象の有効量は、対象の種類、対象のサイズ及び健康状態、治療される状態/疾患/感染の性質及び重症度、投与方法、治療期間、併用療法(もしあれば)の性質、使用される特定の製剤などに依存する。そのため、正確な有効量を事前に定めることは不可能である。しかし、所与の状況に対する有効量は、当業者であれば、本明細書が提供する情報に基づいて日常的な実験によって決定できる。
【0032】
本明細書における「併用療法」という用語は、「組合せ療法」及び「補助療法」という用語と互換的に使用され、治療を必要とする患者が、本開示の治療と併せて、状態/疾患/感染のために治療されるか又は別の薬物を投与されることを意味すると理解される。この併用療法は、患者を最初に1つの治療プロトコール/医薬組成物で治療し、次いで他の治療プロトコール/医薬組成物で治療する逐次療法であってもよく、又は2つの治療プロトコール/医薬組成物が同時に行われてもよい。
【0033】
「投与」及び「投与すること」という用語は、本明細書では、当該技術分野で公知の全ての投与経路、例えば限定されるものではないが、経口、局所、経皮、非経口、皮下、鼻腔内、粘膜、筋肉内、腹腔内、硝子体内及び静脈内経路、並びに局所及び全身適用の両者を含むと理解される。加えて、本開示の組成物(及び/又はその投与方法)は、当該技術分野で周知の製剤技法を使用して、遅延放出、制御放出又は持続放出をもたらすように設計され得る。
【0034】
ここで本発明の概念について言及すると、その特定の非限定的な態様は、少なくとも1つの医療用インプラントの表面に適用するため、及び/又は医療用インプラントにその製造中に組み込むための抗菌組成物を対象とする。抗菌組成物は、その中に埋め込まれたアルギン酸塩ビーズを有するハイドロゲルを含み;加えて、アルギン酸塩ビーズは、その中にカプセル化されたバクテリオファージカクテルを有する。バクテリオファージカクテルは、(i)少なくとも1つの大腸菌バクテリオファージ、及び(ii)少なくとも1つの肺炎桿菌バクテリオファージを含む。
【0035】
ある特定の非限定的な態様では、バクテリオファージカクテルは、1つ以上の追加のバクテリオファージを更に含んでいてもよく、例えば(限定されるものではないが)、バクテリオファージカクテルは、(iii)少なくとも1つのエンテロコッカス フェカリス バクテリオファージ;(iv)少なくとも1つの緑膿菌バクテリオファージ;(v)少なくとも1つの黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)バクテリオファージ;(vi)少なくとも1つの腐性ブドウ球菌(Staphylococcus saprophyticus)バクテリオファージ;(vii)少なくとも1つのプロテウス ミラビリス(Proteus mirabilis)バクテリオファージ;及び(viii)少なくとも1つのストレプトコッカス アガラクティアエ(Streptococcus agalactiae)バクテリオファージの少なくとも1つを更に含む。
【0036】
特定の(ただし非限定的な)態様では、バクテリオファージカクテルは、(iii)~(viii)の少なくとも2つ(例えば(iii)及び(iv)、ただしこれらには限定されない)を含む。他の特定の(ただし非限定的な)態様では、バクテリオファージカクテルは、(iii)~(viii)の3つ、4つ、5つ又は全てを含む。
【0037】
ある特定の非限定的な態様では、(i)~(viii)の少なくとも一部又は全ては、溶菌性バクテリオファージ(例えばカウドウイルス目(Caudovirales)溶菌性バクテリオファージ、ただしこれには限定されない)である。カウドウイルス目溶菌性バクテリオファージには、以下の3つの科が含まれる:ミオウイルス科(Myoviridae)、ポドウイルス科(Podoviridae)及びシポウイルス科(Siphoviridae)。
【0038】
ある特定の非限定的な態様では、バクテリオファージカクテルは少なくとも4つの溶菌性バクテリオファージを含む。
【0039】
ある特定の非限定的な態様では、カクテル中のバクテリオファージのそれぞれは、天然に存在する。ある特定の非限定的な態様では、カクテル中のバクテリオファージの少なくとも1つは、遺伝子的に修飾又は改変されたファージである。
【0040】
別の非限定的な態様では、バクテリオファージカクテルは、以下に更に詳細に記載されているように、(i)~(ii)を単独で、又は(iii)~(viii)の1つ以上との組合せで、及び更に1つ以上の他の追加のバクテリオファージとの組合せで含んでいてもよい。
【0041】
ハイドロゲルコーティングとアルギン酸塩ビーズへのカプセル化を介した、医療用インプラントとバクテリオファージの非共有結合は、従来技術を上回る複数の利点を提供する。第1に、本明細書に記載した特定のバクテリオファージカクテルの使用は、細菌のさまざまな受容体を標的とし、CAUTIに関連する細菌の最大で約95%~約99%を広範囲にカバーする。第2に、ハイドロゲル及びアルギン酸塩ビーズの使用は、バクテリオファージを保護し、室温でその安定性を維持する。第3に、アルギン酸塩ビーズは、ビーズが室温で安定である(すなわち、融解しない)ため、コーティングに持続放出機構をもたらすが、ハイドロゲルの温度が体温に上昇するにつれてバクテリオファージの徐放をもたらす。第4に、バクテリオファージを非共有結合的様式でハイドロゲル内に配置することにより、バクテリオファージが「自由に浮遊」することが可能になり、カテーテル全体で優れた抗菌保護が提供されるだけでなく、カテーテルの周囲に対して抗菌保護が提供される。第5に、アルギン酸塩ビーズ内のバクテリオファージのカプセル化は、免疫系からバクテリオファージを保護し、それによってバクテリオファージの安定性及び有効性を更に増加させる。したがって、バクテリオファージ-ハイドロゲルコーティングは、少なくとも約14日間(例えば少なくとも約30日間、ただしこれには限定されない)安定であり;本質的に、バクテリオファージ-ハイドロゲルコーティングは、カテーテルの寿命の間安定で、実質的に有効である。
【0042】
ある特定の非限定的な態様では、抗菌組成物は、持続放出抗菌組成物として更に定義される。
【0043】
上述したバクテリオファージに加え、ある特定の非限定的な態様では、バクテリオファージカクテルは、UTIに関連する1つ以上の微生物に対して有効であり得る1つ以上の追加のバクテリオファージを含み得る。バクテリオファージカクテルに含まれ得る追加のバクテリオファージの非限定的な例としては、T4、LM33-P1、536_P1、536_P7、EC200PP、KLPN1、ZCKP1、vB_Klp_5、vB_Klp_2、SRG1、EFD1及びEFLK1、並びにカウドウイルス目、ミオウイルス科及びポドウイルス科尾部ファージのいずれかが挙げられる。
【0044】
アルギン酸塩は、藻類から抽出される生物由来の多糖で、その好ましい特性、例えば(限定されるものではないが)、水溶性、非毒性及び生分解性のために、生物医学及び医薬用途のためのカプセル化媒体として広く使用されている。したがって、さまざまな種類のアルギン酸塩ビーズがカプセルとして有用であることが当該技術分野で公知である。そのように、生物医学的カプセルとして使用するために当該技術分野で公知であるか、又は本明細書で予定されているアルギン酸塩ビーズを、本開示に従って抗菌組成物の構成要素として活用できる。
【0045】
ある特定の非限定的な態様では、アルギン酸塩ビーズはアルギン酸ナトリウムビーズとして更に定義される。
【0046】
ある特定の非限定的な態様では、アルギン酸塩は、本開示に従って、ビーズが機能することを可能にする濃度でアルギン酸塩ビーズ中に存在する。例えば、アルギン酸塩は、少なくとも約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約97%、約98%、約99%又はそれ以上の濃度でビーズ中に存在してもよい;また、アルギン酸塩の濃度は、上記数値のうちの任意の2つの範囲(すなわち、約55%~約75%、約60%~約80%など)内、及び上記数値のうちの2つの間にそれぞれ入る2つの整数から形成される任意の範囲(すなわち、約62%~約76%、約58%~約83%など)内であってもよい。同様に、アルギン酸塩ビーズ内に存在する任意の他の成分(例えばペクチン、ただしこれには限定されない)は、少なくとも約1%、約2%、約3%、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%又はそれ以上の濃度でビーズ内に存在してもよく;濃度は、上記数値のうちの任意の2つの範囲(すなわち、約25%~約45%、約20%~約40%など)内、及び上記数値のうちの2つの間にそれぞれ入る2つの整数から形成される任意の範囲(すなわち、約24%~約38%、約17%~約42%など)内であってもよい。
【0047】
特定の(ただし非限定的な)態様では、アルギン酸塩ビーズは、アルギン酸塩及びペクチンを含み、アルギン酸塩は約60%~約80%の濃度で存在し、ペクチンは約20%~約40%の濃度で存在する。特定の(ただし非限定的な)態様では、アルギン酸塩ビーズは約70%のアルギン酸塩及び約30%のペクチンを含む。
【0048】
ある特定の非限定的な態様では、アルギン酸塩ビーズは、アルギン酸塩を更に安定化し、バクテリオファージの安定性も増加させるコーティングを更に含む。本開示に従って活用され得るコーティングの非限定的な例としては、キトサン及びペクチンが挙げられる。
【0049】
アルギン酸塩ビーズは、ビーズ及びその中にカプセル化されたバクテリオファージカクテルにさらなる安定性をもたらす形態で提供され得る。例えば(限定されるものではないが)アルギン酸塩ビーズは、実質的に脱水された形態でハイドロゲル内に埋め込まれてもよく、その後、体液に曝露されると実質的に再水和されてもよい。
【0050】
本明細書における「ハイドロゲル」という用語は、固体分散相(例えば、コラーゲン、ゼラチン、アガロース、アクリルアミド、デンプンといった巨大分子)が流体連続相と組み合わさってネットワークを形成し、流体が水であるコロイドを指す。生体適合性及び非免疫原性である、in vivoでの使用のために当該技術分野で公知であるか、又は本明細書で予定されているハイドロゲルが、本開示に従って活用され得る。
【0051】
例えば(限定されるものではないが)、ハイドロゲルは、本開示に従って抗菌組成物が機能することを可能にする親水性ポリマーから形成され得る。例えば(限定されるものではないが)、ハイドロゲルは、ポリアクリル酸ゲル、ポビドンゲル又はセルロースゲルであってもよい。加えて、ハイドロゲルは、キトサン、アルギン酸塩、ペクチン、アガロース、メチルセルロース、ヒアルロナン、コラーゲン、ラミニン、マトリゲル、フィブロネクチン、ビトロネクチン、ポリ-1-リジン、プロテオグリカン、フィブリン糊、操作された及び/又は天然組織の脱細胞化によって作製されたゲル、並びにそれらの組合せの少なくとも1つを含み得る。さらに、ハイドロゲルは、ポリグリコール酸(PGA)、ポリ乳酸(PLA)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエチレングリコール(PEG)、メチルメタクリレート、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)、ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)(PolyHEMA)、ポリ(グリセロールセバケート)、ポリウレタン、ポリ(イソプロピルアクリルアミド)、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)、又はそれらの組合せの少なくとも1つを含んでいてもよい。
【0052】
特定の(ただし非限定的な)態様では、ハイドロゲルはペクチンを含有してもよい。
【0053】
ハイドロゲルは、ハイドロゲルへの長期曝露時に、それが接触する患者の一部を損傷しないか又は患者に化学的刺激を引き起こさないpHで提供され得る。例えば(限定されるものではないが)、ゲルは、約6、約6.5、約7、約7.5、約8のpH、及び上記の値のいずれかから形成される範囲(すなわち、約6~約8、約6.5~約7.5など)を有し得る。
【0054】
ある特定の(ただし非限定的な)態様では、ハイドロゲルは、バクテリオファージ緩衝溶媒中に懸濁している。バクテリオファージ緩衝溶媒は、本開示に従って、ハイドロゲルが機能することを可能にする、当該技術分野で公知であるか又は本明細書で予定されている製剤と共に提供されてもよい。特定の(ただし非限定的な)例では、バクテリオファージ緩衝溶媒はマグネシウムを含む。
【0055】
ある特定の(ただし非限定的な)態様では、抗菌組成物は、バクテリオファージカクテル/アルギン酸塩ビーズに加えて、少なくとも1つの添加剤を更に含む。本開示に従って、ハイドロゲルが機能することを可能にし、組成物の特性を更に増強し得る添加剤を活用してもよい。活用され得る添加剤の非限定的な例としては、抗微生物剤、抗菌剤、抗ウイルス剤、抗真菌剤、潤滑剤又はそれらの組合せの少なくとも1つなどが挙げられる。
【0056】
例えば(限定するものではないが)、抗菌組成物は、コーティングの安定性及び/又はCAUTIに対するバクテリオファージの有効性を改善する1つ以上の薬剤を含んでいてもよい。特に、CAUTIは、1つ以上のカンジダ属を含んでいてもよい;ただし、バクテリオファージは酵母に対して無効である。したがって、抗菌組成物は、抗菌組成物が有効である微生物のスペクトルを更に増加させるために、抗真菌剤(例えば抗カンジダ(Candida)剤、ただしこれには限定されない)を更に含み得る。
【0057】
添加剤の別の非限定的な例では、抗菌組成物は、細菌が存在し、バクテリオファージカクテルと遭遇したことを示す検出可能な標識を更に含んでいてもよい。例えば(限定されるものではないが)、バクテリオファージを改変して、バクテリオファージタンパク質に結合したマーカー(例えば緑色蛍光タンパク質(GFP)、ただしこれには限定されない)のコンジュゲートが発現するようにしてもよい;細菌が殺滅されると、GFPは検出可能なシグナルを放出する。
【0058】
ある特定の(ただし非限定的な)態様では、抗菌組成物は、少なくとも約14日間の保存期間を有する。例えば(限定されるものではないが)、抗菌組成物は、少なくとも約30日間の保存期間を有する。
【0059】
本開示のある特定の非限定的な態様は、本明細書で開示されているか、予定されている抗菌組成物を含むキットを対象とする。本キットは、少なくとも1つの医療用インプラントを更に含み得る。ある特定の非限定的な態様では、キットは、抗菌組成物が事前に適用されたか又は中に組み込まれた、事前に組み立てられた医療用インプラントを含む;あるいは、キットは医療用インプラントとは別個に梱包された抗菌組成物を含む。
【0060】
バイオフィルム形成に対する広いスペクトルの保護が所望される医療用インプラントが、本開示に従って使用され得る。医療用インプラントの非限定的な例としては、カテーテル(例えば尿道カテーテル及び静脈内カテーテル、ただしこれらには限定されない);整形外科用デバイス(脊椎ネジ、ロッド及び人工ディスク;金属又はポリマーのネジ、ピン、プレート及びロッドなど、ただしこれらには限定されない);補綴デバイス(人工膝、人工股など、ただしこれらには限定されない);血管及び冠状動脈関連インプラント(冠状動脈ステント、植込み型心臓除細動器(ICD)、心臓ペースメーカーなど、ただしこれらには限定されない)、乳房インプラント及び他の造成インプラント;子宮内デバイス(IUD)及び他の婦人科インプラント;鼓膜換気チューブ;眼内レンズ;ボーンワックス;並びにそれらの組合せ;などが挙げられる。
【0061】
特定の(ただし非限定的な)態様では、医療用インプラントは尿道カテーテルである。
【0062】
医療用インプラントは、抗菌組成物がそれに付着する、及び/又はそれに組み込まれることができる限り、任意の材料から任意の方法で形成され得る。例えば(限定されるものではないが)、医療用インプラントは、ラテックス、ポリウレタン、シリコーンラテックス、シリコーン、ポリ塩化ビニル及びこれらの組合せからなる群から選択される材料などから形成されてもよい。
【0063】
抗菌組成物は、キットが本開示に従って実施することを可能にする形態で、キットに存在し得る。例えば限定されるものではないが、キットには、抗菌組成物が単一の個々の単位/量/アリコートで提供されてもよく、又は抗菌組成物の複数の単位/量/アリコートが提供されてもよい。
【0064】
上記で詳細に記載される構成要素に加えて、キットは、本明細書で記載されているか、予定されている特定の方法のいずれかを実行するための他の構成要素/試薬を更に含んでいてもよい。例えば(限定されるものではないが)、キットは、潤滑剤、及び/又はカテーテル挿入部位を取り囲む患者の皮膚を洗浄するための殺菌剤(ポビドンヨード、クロルヘキシジン、オクテニジン、アルコール又はそれらの組合せなど、ただしこれらには限定されない)を追加的に含んでいてもよい。他の非限定的な例では、キットは、抗微生物剤、抗菌剤、抗ウイルス剤、抗真菌剤(例えばカンジダ属に対して有効な薬剤、ただしこれには限定されない)、又はそれらの組合せの1つ以上などを含んでいてもよい。
【0065】
これらの追加の構成要素/試薬の性質は、特定の治療形式及び/又は治療される領域/器官に依存し、それらの同定は、十分に当業者の技能の範囲内であり;したがって、これ以上説明する必要はないと考えられる。また、キットに存在する構成要素/試薬は、構成要素/試薬の無菌性、交差反応性及び安定性に応じて、それぞれ別個の容器/区画内に入れられてもよく、又はさまざまな構成要素/試薬が、1つ以上の容器/区画で組み合わされてもよい。
【0066】
キットに存在する各構成要素/試薬は、滅菌されるべきである(バクテリオファージカクテルを除く)。
【0067】
加えて、キットは、キットの1つ以上の構成要素の使用方法を説明する書面による説明書を更に含んでいてもよい。このキットは、本明細書で記載されているか、予定されている方法で使用できる。
【0068】
本開示のある特定の非限定的な態様は、医療用インプラントの少なくとも1つの表面の少なくとも一部に適用された、本明細書で開示されているか、予定されている抗菌コーティング組成物を含むアセンブリ(本明細書における医療用インプラントは、本明細書で開示されているか、予定されている医療用インプラントである)、又は医療用インプラントが製造される製剤に組み込まれた、本明細書で開示されているか、予定されている抗菌組成物を含むアセンブリを対象とする。
【0069】
抗菌コーティング組成物が医療用インプラントに適用される場合、ハイドロゲルは、本開示に従ってゲルが機能することを可能にする厚さで提供され得る。本開示に従って活用され得る厚さの非限定的な例としては、約1mil、約5mil、約10mil、約15mil、約20mil、約25mil、約30mil、約35mil、約40mil、約45mil、約50mil、約55mil、約60mil、約65mil、約70mil、約75mil、約80mil、約85mil、約90mil、約95mil、約100mil、又はそれ以上、上記に参照される値のうちの任意の2つを組み合わせた範囲(すなわち、約10mil~約50milなど)、及び上記に参照される値のうちの2つの間に入る2つの整数を組み合わせた範囲(すなわち、約12mil~約48milなど)が挙げられる。
【0070】
本開示のある特定の非限定的な態様は、抗菌組成物を製造する方法を対象とする。本方法は、本明細書で開示されているか、予定されているバクテリオファージカクテルを、本明細書で開示されているか、予定されているアルギン酸塩ビーズ内にカプセル化することと、バクテリオファージカクテルを含むアルギン酸塩ビーズを脱水することと、バクテリオファージカクテルを含む脱水されたアルギン酸塩ビーズを、本明細書で開示されているか、予定されているハイドロゲル内に埋め込むこととを含む。
【0071】
アルギン酸塩ビーズ内の材料のカプセル化方法は、当該技術分野で周知であり、十分に当業者の技能の範囲内である。したがって、これ以上説明する必要はないと考えられる。
【0072】
ハイドロゲル内に材料を埋め込む方法は、当該技術分野で周知であり、十分に当業者の技能の範囲内である。したがって、これ以上説明する必要はないと考えられる。
【0073】
本開示のある特定の非限定的な態様は、抗菌コーティングを有する医療用インプラントの製造方法を対象とする。本方法は、本明細書で開示されているか、予定されている医療用インプラントの表面の少なくとも一部分に、本明細書で開示されているか、予定されている抗菌コーティング組成物を適用する工程を含む。
【0074】
本開示のある特定の非限定的な態様は、中に組み込まれた抗菌物質を有する医療用インプラントの製造方法を対象とする。本方法は、本明細書で開示されているか、予定されている抗菌組成物を製剤に加える工程と、製剤から、本明細書で開示されているか、予定されている医療用インプラントを製造する工程を含む。
【0075】
特定の(ただし非限定的な)態様では、医療用インプラントはカテーテルである。
【0076】
本開示のある特定の非限定的な態様は、医療用インプラントの患者の体内への留置に伴う感染のリスクを低減する方法を対象とする。本方法は、本明細書で開示されているか、予定されている医療用インプラントを患者の体内に留置する工程を含み、医療用インプラントは、その少なくとも1つの表面の少なくとも一部に適用されている、及び/又は医療用インプラント内に組み込まれている、本明細書で開示されているか、予定されている抗菌組成物を有する。
【0077】
特定の(ただし非限定的な)態様では、医療用インプラントはカテーテルである。
【0078】
本開示のある特定の非限定的な態様は、尿道カテーテルの使用に伴う尿路感染の発生又は重症化を低減する方法を対象とする。本方法は、尿道カテーテルを患者の尿路に挿入する工程を含み、尿道カテーテルは、その少なくとも1つの表面の少なくとも一部に適用されている、本明細書で開示されているか、予定されている抗菌コーティング組成物を有する。
【0079】
ある特定の非限定的な態様では、抗菌コーティング組成物は、尿道カテーテルの外表面の少なくとも一部に適用される。その代わりに、及び/又はそれに加えて、抗菌コーティング組成物は、尿道カテーテルの内表面の少なくとも一部に適用される。
【実施例
【0080】
以下に実施例を示す。しかし、本開示は、以下に示す具体的な実験、結果及び実験手順に限定されるものではないと理解されるべきである。むしろ、実施例は、単にさまざまな態様の1つとして示され、網羅的ではなく例示的であることを意図する。
【0081】
バクテリオファージ繁殖:
分離したコロニーを形成するために、(LB寒天+5mM CaClを含むプレートに)画線した新鮮な一晩培養した宿主細菌を、細菌の供給源として使用した。次いで、5mM CaClを含む5mLの滅菌LBブロスに、滅菌した接種ループを使用して、新鮮な一晩培養した細菌の単一コロニーを接種し、接種した液体培地を、宿主細菌に基づいて選択した速度及び温度(病原性宿主細菌では、通常約200rpm及び約37℃であるが、変動可能)で、振盪インキュベータ内に入れた。4~6時間インキュベートした後、50mlのバクテリオファージストックを細菌液体培養物に加え、混合物を同じ温度及び同じrpmで振盪インキュベータに戻し、12時間インキュベートした。12時間後、液体培養物を取り出し、0.2μmのフィルター膜を通過させてろ過滅菌し、残存する細菌を取り除いた。次いで、ろ過滅菌した生成物のプラーク形成単位を評価して、バクテリオファージの濃度を決定した。
【0082】
工業的生産のためには、更に精製して、液体培養物からエンドトキシンを除去する必要がある。
【0083】
マイクロカプセル化手順:
マイクロカプセル化装置(Inotech's Encapsulator IER-50又はEncapsulator BIOTECH(Inotech Biosystems International, Inc., Brandon, FL)など、ただしこれらには限定されない)を使用して、カルシウム-アルギン酸塩マイクロスフェアを作製した。高力価バクテリオファージストックの混合物を、バクテリオファージ緩衝溶媒を含む2%(重量/体積)の低粘度アルギン酸ナトリウム溶液に懸濁し、撹拌磁石バーを用いてマイクロカプセル化装置によって50mM CaClにスプレーした。マイクロスフェアは、300~600μmのカプセル化ノズルを使用して製造した。新鮮なマイクロスフェアを50mM CaCl溶液中で30分間硬化させた後、硬化したマイクロスフェアをキトサン又は他の天然非免疫原性コーティングの溶液(すなわち、0.4%(重量/体積)のキトサン)に20分間懸濁させて、アルギン酸塩マイクロスフェアの表面をコーティングした。コーティング後、マイクロスフェアを滅菌水で洗浄し、4℃で保管した滅菌容器に入れた。
【0084】
ゲルコーティングに組み込む前に、これらのマイクロスフェアを、バクテリオファージの感受性に応じて、凍結乾燥、又は、例えばアルコール勾配の増加による連続脱水法のいずれかによって脱水した。
【0085】
ペクチンベースの持続放出ゲル:
ペクチンベースの持続放出ゲルは、天然に存在する非免疫原性水溶性ポリマー[例えば(限定するものではないが)、ペクチン又はアガロース]で作製できる。このペクチンの例では、4%(重量/体積)のUVC滅菌ペクチン粉末を滅菌バクテリオファージ緩衝液と組み合わせ、完全に溶解するまで90℃で均質化した。溶解したら、マイクロカプセル化されたバクテリオファージの加熱をやめ、5分後に冷却溶液に加えた。これにより、カテーテル又は他の医療製品に適用される最終コーティングが得られる。
【0086】
上記の非限定的な方法の例に従って活用されるバクテリオファージ緩衝液は、10mlの1M Tris、pH7.5;10mlの1M MgSO;4gのNaCl;及び980mlのddHOを含有する。溶液は使用前にオートクレーブで滅菌される。
【0087】
上記の開示は、本明細書で示される特定の実験、結果及び語句と併せて本発明の概念を説明するが、多くの代替、修正及び変形が当業者にとって明らかであることは明白である。したがって、本開示の趣旨及び広範な範囲に入るそのような全ての代替、修正及び変形を包含することが意図されている。
【国際調査報告】