(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-04
(54)【発明の名称】コロナウイルス感染症の治療のための化合物
(51)【国際特許分類】
C07C 50/14 20060101AFI20230328BHJP
A61K 31/05 20060101ALI20230328BHJP
A61K 31/122 20060101ALI20230328BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20230328BHJP
A61K 31/198 20060101ALI20230328BHJP
A61K 9/127 20060101ALI20230328BHJP
A61K 47/24 20060101ALI20230328BHJP
A61P 31/14 20060101ALI20230328BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230328BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20230328BHJP
A61K 31/7034 20060101ALI20230328BHJP
【FI】
C07C50/14 CSP
A61K31/05
A61K31/122
A61K45/00
A61K31/198
A61K9/127
A61K47/24
A61P31/14
A61P43/00 111
A61P29/00
A61K31/7034
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022549215
(86)(22)【出願日】2021-02-15
(85)【翻訳文提出日】2022-10-13
(86)【国際出願番号】 IB2021051256
(87)【国際公開番号】W WO2021161283
(87)【国際公開日】2021-08-19
(32)【優先日】2020-02-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522318564
【氏名又は名称】エヌエルシー ファーマ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】NLC PHARMA LTD
【住所又は居所原語表記】B.S.R Tower No. 4, 7 Mesada Street, 26th Floor, Bnei-Brak, Israel
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アラド ドリト
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
4C206
4H006
【Fターム(参考)】
4C076AA19
4C076BB01
4C076BB13
4C076DD63
4C076FF67
4C084AA19
4C084MA24
4C084MA52
4C084MA66
4C084NA05
4C084ZB11
4C084ZB33
4C084ZC20
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086EA07
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA03
4C086MA04
4C086MA05
4C086MA24
4C086MA52
4C086MA66
4C086NA14
4C086ZB11
4C086ZB33
4C086ZC20
4C206AA01
4C206AA02
4C206AA03
4C206CB28
4C206JA59
4C206MA01
4C206MA02
4C206MA03
4C206MA04
4C206MA05
4C206MA44
4C206MA72
4C206MA86
4C206NA14
4C206ZB11
4C206ZB33
4C206ZC20
4H006AA01
4H006AA03
4H006AB20
(57)【要約】
下記式I:
【化1】
(式中、R
1~R
6は本明細書に記載の通りである。)
で表される、コロナウイルス感染症の治療用の化合物、式Iの化合物を3CLプロテアーゼと接触させることによって、コロナウイルスの3CLプロテアーゼを阻害する方法、加えて、式Iの化合物と少なくとも1種のリン脂質とを含む組成物であって、組成物中のリン脂質と化合物の重量比が10:1~1:10である医薬組成物や方法について記載する。コロナウイルスの3CLプロテアーゼ活性の阻害、対象の炎症の阻害、および対象のオートファジーの阻害の内の少なくとも2種を発揮する少なくとも1種の化合物を対象に投与することで、治療を必要とする対象のコロナウイルス感染症を治療する方法についても記載する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コロナウイルス感染症の治療用である、下記式Iで表される化合物。
【化1】
(式中、R
1~R
6は、それぞれ独立に、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、脂肪族ヘテロ環、ハロ、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、スルフィニル、スルホニル、スルホネート、硫酸塩、シアノ、ニトロ、アジド基、ホスホニル、ホスフィニル、カルボニル、チオカルボニル、尿素基、チオ尿素基、O-カルバミル、N-カルバミル、O-チオカルバミル、N-チオカルバミル、S-チオカルバミル、C-アミド、N-アミド、C-カルボキシ、O-カルボキシ、スルホンアミド、グアニル、グアニジニル、ヒドラジン、ヒドラジド、チオヒドラジド、およびアミノからなる群より選ばれる、あるいはR
1とR
2とがまとまって5員または6員の芳香族環または脂肪族環を形成する。)
【請求項2】
R
3およびR
6の少なくとも1種がOHである、請求項1に記載の治療用化合物。
【請求項3】
R
3およびR
6がそれぞれOHである、請求項1に記載の治療用化合物。
【請求項4】
R
1が下記式で表される、請求項1~3のいずれか一項に記載の治療用化合物。
【化2】
(式中、R’
1、R’’
1、およびR
7は、それぞれ独立に、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、脂肪族ヘテロ環、およびカルボニルからなる群より選ばれる。)
【請求項5】
R’
1がアルケニルである、請求項4に記載の治療用化合物。
【請求項6】
R’
1が-CH
2-CH=C(CH
3)
2である、請求項5に記載の治療用化合物。
【請求項7】
R
7が糖部分またはペプチド部分である、請求項4~6のいずれか一項に記載の治療用化合物。
【請求項8】
R
7が水素またはカルボニルである、請求項4~7のいずれか一項に記載の治療用化合物。
【請求項9】
R
2、R
4およびR
5が水素である、請求項1~8のいずれか一項に記載の治療用化合物。
【請求項10】
前記化合物がシコニンまたはシコニングリコシド、あるいはそれらのエステルである、請求項1に記載の治療用化合物。
【請求項11】
前記治療が、炎症の阻害が有益な対象の治療である、請求項1~10のいずれか一項に記載の治療用化合物。
【請求項12】
前記治療が前記化合物の静脈内投与を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の治療用化合物。
【請求項13】
前記治療が、0.04mg~400mgの範囲内の用量の前記化合物の投与を含む、請求項12に記載の治療用化合物。
【請求項14】
前記治療が、前記化合物の経口投与を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の治療用化合物。
【請求項15】
前記治療が、10mg~5グラムの範囲内の用量の前記化合物の投与を含む、請求項14に記載の治療用化合物。
【請求項16】
前記治療が、1日当たり2mg/kg~1日当たり200mg/kgの範囲内の用量の前記化合物の投与を含む、請求項14または15に記載の治療用化合物。
【請求項17】
下記式I:
【化3】
(式中、R
1~R
6は、それぞれ独立に、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、脂肪族ヘテロ環、ハロ、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、スルフィニル、スルホニル、スルホネート、硫酸塩、シアノ、ニトロ、アジド基、ホスホニル、ホスフィニル、カルボニル、チオカルボニル、尿素基、チオ尿素基、O-カルバミル、N-カルバミル、O-チオカルバミル、N-チオカルバミル、S-チオカルバミル、C-アミド、N-アミド、C-カルボキシ、O-カルボキシ、スルホンアミド、グアニル、グアニジニル、ヒドラジン、ヒドラジド、チオヒドラジド、およびアミノからなる群より選ばれる、あるいはR
1とR
2とがまとまって5員または6員の芳香族環または脂肪族環を形成する。)
で表される化合物と、
少なくとも1種のリン脂質と
を含む組成物であって、
前記組成物中の前記少なくとも1種のリン脂質の前記化合物に対する重量比が、10:1~1:10である、医薬組成物。
【請求項18】
リポソームをさらに含む、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
ビタミン、N-アセチルシステイン、抗凝固剤、抗炎症剤、解熱剤、抗ウイルス剤、およびプロテアーゼ阻害剤からなる群より選ばれる少なくとも1種の追加の活性成分をさらに含む、請求項17または18に記載の組成物。
【請求項20】
前記プロテアーゼ阻害剤が、3Cプロテアーゼおよび/または3CLプロテアーゼを阻害可能である、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
コロナウイルス感染症の治療用である、請求項17~20のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項22】
前記治療が、ビタミン、N-アセチルシステイン、抗凝固剤、抗炎症剤、解熱剤、抗ウイルス剤、およびプロテアーゼ阻害剤からなる群より選ばれる少なくとも1種の追加の活性成分の投与を含む、請求項1~16のいずれか一項に記載の治療用化合物または請求項21に記載の治療用の組成物。
【請求項23】
コロナウイルス3CLプロテアーゼの阻害方法であって、前記3CLプロテアーゼを下記式Iで表される化合物と接触させることを含む、方法。
【化4】
(式中、R
1~R
6は、それぞれ独立に、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、脂肪族ヘテロ環、ハロ、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、スルフィニル、スルホニル、スルホネート、硫酸塩、シアノ、ニトロ、アジド基、ホスホニル、ホスフィニル、カルボニル、チオカルボニル、尿素基、チオ尿素基、O-カルバミル、N-カルバミル、O-チオカルバミル、N-チオカルバミル、S-チオカルバミル、C-アミド、N-アミド、C-カルボキシ、O-カルボキシ、スルホンアミド、グアニル、グアニジニル、ヒドラジン、ヒドラジド、チオヒドラジド、およびアミノからなる群より選ばれる、あるいはR
1とR
2とがまとまって5員または6員の芳香族環または脂肪族環を形成する。)
【請求項24】
R
3およびR
6の少なくとも1種がOHである、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
R
3およびR
6がそれぞれOHである、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
R
1が下記式で表される、請求項23~25のいずれか一項に記載の方法。
【化5】
(式中、R’
1およびR’’
1は、それぞれ独立に、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、および脂肪族ヘテロ環からなる群より選ばれる。)
【請求項27】
R’
1がアルケニルである、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
R’
1が-CH
2-CH=C(CH
3)
2である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
R
7が糖部分またはペプチド部分である、請求項26~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
R
7が水素またはカルボニルである、請求項26~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
R
2、R
4およびR
5が水素である、請求項23~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記化合物がシコニンまたはシコニングリコシド、あるいはそれらのエステルである、請求項23に記載の方法。
【請求項33】
治療を必要とする対象に前記化合物を投与することを含む、請求項23~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記対象における炎症および/またはオートファジーの阻害をさらに含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記投与が静脈内投与を含む、請求項33または34に記載の方法。
【請求項36】
0.04mg~400mgの範囲内の用量の前記化合物の投与を含む、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記投与が、前記化合物の経口投与を含む、請求項33または34に記載の方法。
【請求項38】
10mg~5グラムの範囲内の用量の前記化合物の投与を含む、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
1日当たり2mg/kg~1日当たり200mg/kgの範囲内の用量の前記化合物の投与を含む、請求項37または38に記載の方法。
【請求項40】
前記化合物がリン脂質をさらに含む組成物の一部であり、前記少なくとも1種のリン脂質の前記化合物に対する重量比が10:1~1:10である、請求項33~39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記化合物がリポソームをさらに含む組成物の一部である、請求項33~40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
ビタミン、N-アセチルシステイン、抗凝固剤、抗炎症剤、解熱剤、抗ウイルス剤、およびプロテアーゼ阻害剤からなる群より選ばれる少なくとも1種の追加の活性成分の投与をさらに含む、請求項33~41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
治療を必要とする対象のコロナウイルス感染症を治療するための方法であって、下記(i)~(iii):
(i)前記コロナウイルスの3CLプロテアーゼ活性の阻害、
(ii)前記対象の炎症の阻害、および
(iii)前記対象のオートファジーの阻害
より選ばれる少なくとも2種を発揮する少なくとも1種の化合物を対象に投与し、前記コロナウイルス感染症を治療することを含む、方法。
【請求項44】
前記3CLプロテアーゼ活性の阻害、前記炎症の阻害、および前記オートファジーの阻害の内の少なくとも2種を達成可能な化合物の投与を含む、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記化合物が、前記3CLプロテアーゼ活性の阻害、前記炎症の阻害、および前記オートファジーの阻害のそれぞれを達成可能である、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記化合物が下記式Iで表される、請求項45に記載の方法。
【化6】
(式中、R
1~R
6は、それぞれ独立に、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、脂肪族ヘテロ環、ハロ、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、スルフィニル、スルホニル、スルホネート、硫酸塩、シアノ、ニトロ、アジド基、ホスホニル、ホスフィニル、カルボニル、チオカルボニル、尿素基、チオ尿素基、O-カルバミル、N-カルバミル、O-チオカルバミル、N-チオカルバミル、S-チオカルバミル、C-アミド、N-アミド、C-カルボキシ、O-カルボキシ、スルホンアミド、グアニル、グアニジニル、ヒドラジン、ヒドラジド、チオヒドラジド、およびアミノからなる群より選ばれる、あるいはR
1とR
2とがまとまって5員または6員の芳香族環または脂肪族環を形成する。)
【請求項47】
前記式Iの化合物、および前記3CLプロテアーゼ活性の阻害、前記炎症の阻害、および/または前記オートファジーの阻害を発揮する少なくとも1種の追加の薬剤の投与を含む、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記コロナウイルスがベータコロナウイルスである、請求項1~16および22のいずれか一項に記載の治療用化合物、請求項21または22に記載の治療用組成物、または請求項23~47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
前記コロナウイルスがSARS関連コロナウイルスである、請求項48に記載の治療用化合物、治療用組成物、または方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、2020年2月14日出願の米国仮特許出願第62/976,420号の優先権を主張するものであり、この特許出願の全内容を本明細書の一部を構成するものとしてここに援用する。
【0002】
技術分野
本発明は、そのいくつかの実施形態において、療法に関し、排他的ではなくより詳細には、COVID-19等のコロナウイルス関連疾患の治療のための化合物および組成物に関連する。
【背景技術】
【0003】
コロナウイルスは、(哺乳類に感染する)アルファコロナウイルスとベータコロナウイルス、および(主として鳥類に感染する)ガンマコロナウイルスとデルタコロナウイルスに分類される。アルファコロナウイルスには、ヒトコロナウイルス229EおよびNL63(一般的な風邪および他の呼吸器感染と関連する多くのウイルスの内の2種)が含まれ、ベータコロナウイルスには、ヒトコロナウイルスOC43およびHKU1(一般的な風邪および他の呼吸器感染と関連する追加のウイルス)のみならず、中東呼吸器症候群関連コロナウイルスおよび重症急性呼吸器症候群(SARS)関連コロナウイルス、例えば、(2002年~2004年のSARSの流行と関連付けられている)SARS-CoV-1および(COVID-19と関連付けられている)SARS-CoV-2、が含まれる。
【0004】
コロナウイルスは、ピコルナウイルス、カリシウイルスおよびコロナウイルスを含む、ピコルナウイルス様スーパークラスターの一部であるニドウイルス目に属する。これらウイルスは、典型的なキモトリプシン様の折り畳みおよびシステイン残基と求核基とを含む触媒性の3分子または2分子を一般的には含有するシステインプロテアーゼである、3Cプロテアーゼ(3Cpro)または3C様(3CL)プロテアーゼ(3CLpro)を保有する。これらプロテアーゼは、ウイルスの複製に必須である、ウイルス性ポリタンパク質の開裂を行う。
【0005】
3CLproはいくつかの研究において、コロナウイルス感染症の治療に効果的な薬物標的として同定されている[Yang et al., Curr Pharm Des 2006, 12:4573-4590]。世界流行をもたらしたSARS、MERSおよび2019年の武漢コロナウイルスの3CLproは、高い保存性を示す。例えば、SARSおよび2019年武漢コロナウイルスの3CLproの相同性は98%である。
【0006】
「シコニン」とは、5,8-ジヒドロキシ-2-(1-ヒドロキシ-4-メチルペンテ-3-エン-1-イル)ナフタレン-1,4-ジオンであり、より具体的には、その(R)-エナンチオマーであり、中国漢方において種々の炎症および感染症の治療に用いられる植物(「紫草」と呼ばれる)であるLithospermum erythrorhizon(ムラサキ)の根に存在する。(S)-エナンチオマーは、伝承医薬において膿瘍および炎症の治療に使用される植物である「アルカンニン」として知られ、ラセミ体混合物は「シカルキン」としても知られている。
【0007】
【0008】
シコニンは、癌や炎症の治療および創傷の治癒に関連する活性を発揮すること[Guo et al., Pharmacol Res 2019, 149:104463]のみならず、I型HIV、アデノウイルス3(AdV3)およびC型肝炎ウイルス(HCV)に対する抗ウイルス活性や、ロイコトリエンB4合成の阻害、マスト細胞の脱顆粒化の抑制、好中球呼吸器バーストの阻害、ホスファチジルイノシトール仲介性シグナル伝達の変更、およびCCR-1へのケモカイン結合の遮断[Andujar et al., Planta Med 2013, 79:1685]、並びにインターロイキン6、インターロイキン8およびケモカインC-Cモチーフリガンド(CCL)20の産生の減少[Shindo et al., Inflammation 2016, 39:1124-1129]といった明確な抗炎症メカニズムについても報告されている。
【0009】
米国特許出願公開第2004/0198716号明細書には、シコニンおよびアルカンニンを含む、キノン類およびキノン類似体が、カスパーゼおよび3Cシステインプロテアーゼ等のシステインプロテアーゼの阻害に有用であることが記載されている。
【0010】
米国特許出願公開第2008/0182900号明細書には、ウイルス(肝炎ウイルス、インフルエンザウイルス、ヘルペスウイルス、HIVおよびSARSウイルス等)またはマイコプラズマによる感染症、並びに悪性腫瘍の治療におけるシコニンおよびアルカンニン等の化合物の使用について記載されている。
【0011】
Jo et al.[Chem Biol Drug Des 2019, 94:2023-2030]には、ハーバセチン、イソババカルコン、ケルセチン3-β-D-グルコシド、およびヘリクリセチンによるMERSコロナウイルスの3CLproの阻害について記載され、フラボノールとカルコンが、MERSコロナウイルス3CLproの触媒部位と結合するための適切なスキャホールドであると結論付けている。
【0012】
Lu et al.[Asian J Pharm Sci 2019, 14:265-274]には、既定のモル比の活性成分と両親媒性リン脂質の複合体(「フィト-リン脂質複合体」または「フィトソーム」と記載されている)の形成による、植物から抽出した活性成分の吸収促進について記載されている。
【0013】
コロナウイルスは、ウイルス性ポリタンパク質を3CLプロテアーゼでは開裂されない特定の位置における開裂を担うパパイン様(PL)プロテアーゼをさらに含む[Pillaiyar et al., Med Chem 2015, 5:361-372]。加えて、数種のコロナウイルスは、細胞に侵入するために、ヒトセリンプロテアーゼであるTMPRSS2(膜貫通型プロテアーゼ、セリン2)による活性化を使用する。PLプロテアーゼおよびTMPRSS2の阻害剤について、抗ウイルス剤としての使用が提案されている。
【0014】
コロナウイルス感染症の治療に用いられている薬剤には、クロロキンおよびヒドロキシクロロキンが含まれる。これら薬剤について、多様なウイルスに対して中庸な抗ウイルス活性を発揮することが報告されており、多くのウイルスが自らの複製を促進するために使用する天然の細胞過程であるオートファジーの阻害と関連し得る。
【0015】
さらなる背景技術しては次が挙げられる:米国特許出願公開第2005/0222258号明細書、Assimopoulou et al.[Biomed Chromatogr 2009, 23:182-198]、Chen et al.[Phytother Res 2002, 16:199-209]、Dai et al.[Science 2020, 368:1331-1335]、Fan et al.[Pharm Biol 2018, 56:415-421]、Lu et al.[Eur J Pharmacol 2011, 658:242-247]、Papageorgiou et al.[Curr Med Chem 2008, 15:3248-3267]、Ramajayam et al.[Bioorg Med Chem Lett 2010, 20:3569-3572]、Xia et al.[Biosci Rep 2013, 33:e00020]、Xiong et al.[J Ethnopharmacol 2013, 145:573-580]、およびZhu et al.[ACS Pharmacol Transl Sci 2020, 3:1008-1016]。
【発明の概要】
【0016】
本発明のいくつかの実施形態の一態様において、コロナウイルス感染症の治療用化合物であって、下記式Iで表される化合物が提供される。
【化2】
(式中、R
1~R
6は、それぞれ独立に、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、脂肪族ヘテロ環、ハロ、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、スルフィニル、スロホニル、スルホネート、硫酸塩、シアノ、ニトロ、アジド基、ホスホニル、ホスフィニル、カルボニル、チオカルボニル、尿素基、チオ尿素基、O-カルバミル、N-カルバミル、O-チオカルバミル、N-チオカルバミル、S-チオカルバミル、C-アミド、N-アミド、C-カルボキシ、O-カルボキシ、スルホンアミド、グアニル、グアニジニル、ヒドラジン、ヒドラジド、チオヒドラジド、およびアミノからなる群より選ばれる、あるいはR
1とR
2とがまとまって5員または6員の芳香族環または脂肪族環を形成する。)
【0017】
本発明のいくつかの実施形態の一態様において、下記式I:
【化3】
(式中、R
1~R
6は、それぞれ独立に、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、脂肪族ヘテロ環、ハロ、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、スルフィニル、スロホニル、スルホネート、硫酸塩、シアノ、ニトロ、アジド基、ホスホニル、ホスフィニル、カルボニル、チオカルボニル、尿素基、チオ尿素基、O-カルバミル、N-カルバミル、O-チオカルバミル、N-チオカルバミル、S-チオカルバミル、C-アミド、N-アミド、C-カルボキシ、O-カルボキシ、スルホンアミド、グアニル、グアニジニル、ヒドラジン、ヒドラジド、チオヒドラジド、およびアミノからなる群より選ばれる、あるいはR
1とR
2とがまとまって5員または6員の芳香族環または脂肪族環を形成する。)
で表される化合物と、
少なくとも1種のリン脂質と
を含む組成物であって、組成物中の少なくとも1種のリン脂質の化合物に対する重量比が、10:1~1:10である、医薬組成物が提供される。
【0018】
本発明のいくつかの実施形態の一態様において、コロナウイルス3CLプロテア-ゼの阻害方法であって、3CLプロテア-ゼを下記式Iで表される化合物と接触させることを含む方法が提供される。
【化4】
(式中、R
1~R
6は、それぞれ独立に、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、脂肪族ヘテロ環、ハロ、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、スルフィニル、スロホニル、スルホネート、硫酸塩、シアノ、ニトロ、アジド基、ホスホニル、ホスフィニル、カルボニル、チオカルボニル、尿素基、チオ尿素基、O-カルバミル、N-カルバミル、O-チオカルバミル、N-チオカルバミル、S-チオカルバミル、C-アミド、N-アミド、C-カルボキシ、O-カルボキシ、スルホンアミド、グアニル、グアニジニル、ヒドラジン、ヒドラジド、チオヒドラジド、およびアミノからなる群より選ばれる、あるいはR
1とR
2とがまとまって5員または6員の芳香族環または脂肪族環を形成する。)
【0019】
本発明のいくつかの実施形態の一態様において、治療を必要とする対象のコロナウイルス感染症を治療するための方法であって、下記(i)~(iii):
(i)コロナウイルスの3CLプロテア-ゼ活性の阻害、
(ii)対象の炎症の阻害、および
(iii)対象のオ-トファジ-の阻害
より選ばれる少なくとも2種を発揮する少なくとも1種の化合物を対象に投与し、コロナウイルス感染症を治療することを含む方法が提供される。
【0020】
化合物の投与によってコロナウイルス感染症を治療する方法に関連する全ての実施形態の内のいくつかの実施形態において、化合物は下記式Iで表される。
【化5】
(式中、R
1~R
6は、それぞれ独立に、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、脂肪族ヘテロ環、ハロ、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、スルフィニル、スロホニル、スルホネート、硫酸塩、シアノ、ニトロ、アジド基、ホスホニル、ホスフィニル、カルボニル、チオカルボニル、尿素基、チオ尿素基、O-カルバミル、N-カルバミル、O-チオカルバミル、N-チオカルバミル、S-チオカルバミル、C-アミド、N-アミド、C-カルボキシ、O-カルボキシ、スルホンアミド、グアニル、グアニジニル、ヒドラジン、ヒドラジド、チオヒドラジド、およびアミノからなる群より選ばれる、あるいはR
1とR
2とがまとまって5員または6員の芳香族環または脂肪族環を形成する。)
【0021】
式Iに関連する全ての実施形態の内のいくつかの実施形態において、R3およびR6の少なくとも1種はOHである。
【0022】
式Iに関連する全ての実施形態の内のいくつかの実施形態において、R3およびR6はそれぞれOHである。
【0023】
式Iに関連する全ての実施形態の内のいくつかの実施形態において、R2、R4およびR5は水素である。
【0024】
式Iに関連する全ての実施形態の内のいくつかの実施形態において、R
1は下記式で表される。
【化6】
(式中、R’
1、R’’
1、およびR
7は、それぞれ独立に、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、脂肪族ヘテロ環、およびカルボニルからなる群より選ばれる。)
【0025】
全ての対応する実施形態の内のいくつかの実施形態において、R’1はアルケニルである。
【0026】
全ての対応する実施形態の内のいくつかの実施形態において、R’1は-CH2-CH=C(CH3)2である。
【0027】
全ての対応する実施形態の内のいくつかの実施形態において、R7は糖部分(例:グリコシル)またはペプチド部分である。
【0028】
全ての対応する実施形態の内のいくつかの実施形態において、R7が水素またはカルボニルである。
【0029】
化合物に関連して本願に記載した全ての実施形態の内のいくつかの実施形態において、化合物はシコニンまたはシコニングリコシド、あるいはそれらのエステルである。
【0030】
化合物または化合物を利用する方法に関連して本願に記載した全ての実施形態の内のいくつかの実施形態において、化合物は1以上のリン脂質をさらに含む組成物の一部であり、リン脂質の化合物に対する重量比は10:1~1:10である。
【0031】
化合物または化合物を利用する方法に関連して本願に記載した全ての実施形態の内のいくつかの実施形態において、化合物はリポソ-ムをさらに含む組成物の一部である。
【0032】
組成物に関連して本願に記載した全ての実施形態の内のいくつかの実施形態において、組成物はリポソ-ムをさらに含む。
【0033】
組成物に関連して本願に記載した全ての実施形態の内のいくつかの実施形態において、組成物は、ビタミン、N-アセチルシステイン、抗凝固剤、抗炎症剤、解熱剤、抗ウイルス剤、およびプロテア-ゼ阻害剤からなる群より選ばれる少なくとも1種の追加の活性成分をさらに含む。
【0034】
組成物に関連して本願に記載した全ての実施形態の内のいくつかの実施形態において、組成物は、コロナウイルス感染症の治療用である。
【0035】
コロナウイルスの3CLプロテアーゼを阻害する方法に関連して本願に記載した全ての実施形態の内のいくつかの実施形態において、方法は、治療を必要とする対象に化合物を投与することを含む。
【0036】
治療に関連して本願に記載した全ての実施形態の内のいくつかの実施形態において、治療は、炎症の阻害が有益な対象の治療である。
【0037】
治療またはコロナウイルスの3CLプロテアーゼを阻害する方法に関連して本願に記載した全ての実施形態の内のいくつかの実施形態において、治療または方法は、1日当たり2~6回の化合物の投与を含む。
【0038】
治療またはコロナウイルスの3CLプロテアーゼを阻害する方法に関連して本願に記載した全ての実施形態の内のいくつかの実施形態において、治療または方法は、化合物の静脈内投与を含む。
【0039】
治療またはコロナウイルスの3CLプロテアーゼを阻害する方法に関連して本願に記載した全ての実施形態の内のいくつかの実施形態において、治療または方法は、0.04mg~400mgの範囲内の用量の化合物の投与を含む。
【0040】
治療またはコロナウイルスの3CLプロテアーゼを阻害する方法に関連して本願に記載した全ての実施形態の内のいくつかの実施形態において、治療または方法は、化合物の経口投与を含む。
【0041】
治療またはコロナウイルスの3CLプロテアーゼを阻害する方法に関連して本願に記載した全ての実施形態の内のいくつかの実施形態において、治療または方法は、10mg~5グラムの範囲内の用量の化合物の投与を含む。
【0042】
治療またはコロナウイルスの3CLプロテアーゼを阻害する方法に関連して本願に記載した全ての実施形態の内のいくつかの実施形態において、治療または方法は、1日当たり2mg/kg~1日当たり200mg/kgの範囲内の用量の化合物の投与を含む。
【0043】
治療またはコロナウイルスの3CLプロテアーゼを阻害する方法に関連して本願に記載した全ての実施形態の内のいくつかの実施形態において、治療または方法は、ビタミン、N-アセチルシステイン、抗凝固剤、抗炎症剤、解熱剤、抗ウイルス剤、およびプロテア-ゼ阻害剤からなる群より選ばれる少なくとも1種の追加の活性成分の投与を含む。
【0044】
本願に記載の全ての対応する実施形態の内のいくつかの実施形態において、N-アセチルシステインの用量は、1日当たり0.2~6.4グラムの範囲内である。
【0045】
プロテアーゼ阻害剤である追加の活性成分に関連して本願に記載した全ての実施形態の内のいくつかの実施形態において、プロテアーゼ阻害剤は3Cプロテアーゼおよび/または3CLプロテアーゼを阻害可能である。
【0046】
治療またはコロナウイルスの3CLプロテアーゼを阻害する方法に関連して本願に記載した全ての実施形態の内のいくつかの実施形態において、治療または方法は、少なくとも1種の追加の活性成分を1日4回投与することを含む。
【0047】
治療またはコロナウイルスの3CLプロテアーゼを阻害する方法に関連して本願に記載した全ての実施形態の内のいくつかの実施形態において、治療または方法は、対象の炎症および/またはオートファジーの阻害をさらに含む。
【0048】
コロナウイルス感染症の治療方法に関連する全ての実施形態の内のいくつかの実施形態において、方法は、3CLプロテア-ゼ活性の阻害、炎症の阻害、およびオ-トファジ-の阻害の内の少なくとも2種を達成可能な化合物の投与を含む。
【0049】
コロナウイルス感染症の治療方法に関連する全ての実施形態の内のいくつかの実施形態において、化合物は、3CLプロテア-ゼ活性の阻害、炎症の阻害、およびオ-トファジ-の阻害のそれぞれを達成可能である。
【0050】
コロナウイルス感染症の治療方法に関連する全ての実施形態の内のいくつかの実施形態において、方法は、(上述した対応する全ての実施形態における)式Iの化合物、および3CLプロテア-ゼ活性の阻害、炎症の阻害、および/またはオ-トファジ-の阻害を発揮する少なくとも1種の追加の薬剤の投与を含む。
【0051】
コロナウイルスに関連して本願に記載した全ての実施形態の内のいくつかの実施形態において、コロナウイルスはベータコロナウイルスである。
【0052】
コロナウイルスに関連して本願に記載した全ての実施形態の内のいくつかの実施形態において、コロナウイルスはSARS関連コロナウイルスである。
【0053】
別段の指定がない限り、本明細書で使用される全ての技術的および/または科学的な用語は、本発明が関連する当業者により一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書で説明したものに類似した、または同等な方法および材料も本発明の実施形態の実施または試験で使用することができるが、例示的な方法および/または材料が後述される。矛盾がある場合、定義を含めて本特許明細書が優先される。加えて、材料、方法、および実施例は単なる例示にすぎず、必ずしも限定を意図するものではない。
【0054】
本発明のいくつかの実施形態について、その例示のみを目的として添付の図面を参照して本明細書に記載する。以下、特に図面を詳細に参照して示される事項は、例示を目的とし、また本発明の実施形態の詳細な説明を目的とすることを強調する。同様に、図面と共に示す説明は、本発明の実施形態をどのように実践し得るかを当業者に明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【
図1A】本発明のいくつかの実施形態における、例示的なナフトキノン化合物である。
【
図1B】本発明のいくつかの実施形態における、例示的なナフトキノン化合物である。
【
図2】ムラサキ抽出物を含む組成物(A群)またはビタミンCおよびスピルリナ栄養補助食品(B群)で処置されたCOVID-19患者におけるCRP、フィブリノーゲン、D-ダイマー、トロポニン(trop)およびフェリチンのそれぞれのレベルの最大値の平均を表す棒グラフであり、A群は10人の患者を含み、B群は19人の患者を含む。
【
図3】本発明のいくつかの実施形態において、3CLプロテアーゼ阻害剤と共に投与され得る例示的な追加活性成分を示す。
【
図4】本発明のいくつかの実施形態における、例示的な腸溶性コーティングされたシコニン錠剤の写真である。
【
図5】時間に対する、例示的な腸溶性コーティングされたシコニン錠剤からのシコニンの放出を示すグラフであり、初めの120分間は、シミュレーションされた胃内環境であり、次の120分間はシミュレーションされた腸内環境であった。
【発明を実施するための形態】
【0056】
本発明は、そのいくつかの実施形態において、療法に関し、排他的ではなくより詳細には、COVID-19等のコロナウイルス関連疾患の治療のための化合物および組成物に関連する。
【0057】
本発明の少なくとも1つの実施形態を詳細に説明する前に、本発明は、必ずしもその用途が、以下の記載によって提供される説明または実施例で示される具体例によって明示されるような詳細に限定されるものではないことを理解するべきである。本発明は、他の実施形態が可能であり、また、さまざまな方法で実践若しくは遂行することが可能である。
【0058】
副反応が許容可能なレベルである、コロナウイルス感染症の治療法を探索するにあたり、本発明者は、複数の天然化合物を含む一群のナフトキノン化合物を見出した。当該化合物群は、コロナウイルス感染症の治療において、抗ウイルス効果および/または抗炎症効果等の驚くべき性能を発揮した。
【0059】
本発明を実施するにあたり、本発明者は、SARS-コロナウイルス2の3CLプロテアーゼを阻害するシコニンの効能、およびシコニン誘導体を含有する植物抽出物のSARS-コロナウイルス2感染に対する治療能を明らかにした。
【0060】
本願の実施例に示したように、例示的な組成物は、シコニンまたはその誘導体を含むことが知られるムラサキ抽出物を含み、対照の治療法と比べて、COVID-19罹患患者の死亡率および炎症や他の疾患の症候を低下させた。さらに実施例で示したように、当該組成物はウイルス性3CLプロテアーゼに対する阻害能を発揮した。
【0061】
よって、本発明のいくつかの実施形態の一態様においては、コロナウイルス感染症等のウイルス感染の治療に有用となり得る、本願で説明する化合物を提供する。
【0062】
化合物:
本明細書に記載した対応する実施形態のいくつかにおける化合物は、下記式Iで表される。
【化7】
(式中、R
1~R
6は、それぞれ独立に、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、脂肪族ヘテロ環、ハロ、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、スルフィニル、スロホニル、スルホネート、硫酸塩、シアノ、ニトロ、アジド基、ホスホニル、ホスフィニル、カルボニル、チオカルボニル、尿素基、チオ尿素基、O-カルバミル、N-カルバミル、O-チオカルバミル、N-チオカルバミル、S-チオカルバミル、C-アミド、N-アミド、C-カルボキシ、O-カルボキシ、スルホンアミド、グアニル、グアニジニル、ヒドラジン、ヒドラジド、チオヒドラジド、およびアミノからなる群より選ばれる、あるいはR
1とR
2とがまとまって5員または6員の芳香族環または脂肪族環を形成する。)
【0063】
簡潔にするために、本願においては、「ナフトキノン化合物」を式Iで表される化合物と同等に使用する。
【0064】
本明細書に記載した対応する実施形態の任意のいくつかにおいて、R3およびR6の少なくとも1種がOHである。このような実施形態のいくつかにおいては、R3およびR6はそれぞれOHである。いくつかの実施形態において、R3およびR6がそれぞれOHであり、R2、R4およびR5がそれぞれ水素である。
【0065】
代わりに、R3およびR6の少なくとも1種(そして任意でR3およびR6の両方)が、O-カルボキシまたは糖部分(エステル結合の開列時にOHを形成し得るもの)等の(OHではなく)OHから誘導した官能基である。
【0066】
本明細書に記載した対応する実施形態の任意のいくつかにおいて、R3~R6のそれぞれは独立してOH(またはOHから誘導した官能基)あるいは水素である。
【0067】
本明細書に記載した対応する実施形態の任意のいくつかにおいて、R2,R4およびR5はそれぞれ水素である。
【0068】
R
1とR
2とがまとまって5員または6員の芳香族環または脂肪族環を形成する実施形態においては、環は未置換でも、例えば、シクロアルキル、脂肪族ヘテロ環、アリールまたはヘテロアリールについて本明細書に記載した置換基で置換されていてもよい。このような実施形態のいくつかにおいては、環は芳香族炭素環であり、化合物は置換または未置換の9,10-アントラキノンである。例示的な9,10-アントラキノンを
図1Bに示した。
【0069】
本明細書に記載した対応する実施形態の任意のいくつかにおいて、R1は置換または未置換のアルキルまたはアルケニルである。このような実施形態のいくつかにおいては、R2は水素である。
【0070】
本明細書に記載した対応する実施形態の任意のいくつかにおいて、R
1は下記式で表される。
【化8】
(式中、R’
1、R’’
1、およびR
7は、それぞれ独立に、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、脂肪族ヘテロ環、およびカルボニルからなる群より選ばれる。)「および/または」とは、化合物が立体異性体の一方または他方、あるいは両方の立体異性体がほぼ同じ割合で存在するラセミ混合物、あるいは立体異性体の一方が他方に対して富化されている混合物を含み得ることを意味する。
【0071】
本明細書に記載した対応する実施形態の任意のいくつかにおいて、R’1はアルケニル、例えば、-CH2-CH=C(CH3)2である。
【0072】
本明細書に記載した対応する実施形態の任意のいくつかにおいて、R’’1は水素である。
【0073】
本明細書に記載した対応する実施形態の任意のいくつかにおいて、R7は水素(例:シコニンのように)またはカルボニル基(例:シコニンのエステルのように)であり、カルボニル基は、アセチル(-C(=O)CH3)、プロピオニル(-C(=O)CH2CH3)、イソブチリル((-C(=O)CH(CH3)2)、イソバレリル(-C(=O)CH2CH(CH3)2)、β-ヒドロキシイソバレリル(-C(=O)CH2C(OH)(CH3)2)、α-メチル-n-ブチリル(-C(=O)CH(CH3)CH2CH3)、α,β-ジメチルアクリル((-C(=O)C(CH3)=CHCH3)および/またはβ,β-ジメチルアクリル((-C(=O)CH=C(CH3)2)等である。
【0074】
シコニンは、本発明の実施形態における例示的な化合物である(式中、R3とR6はOH、R2、R4とR5は水素、そしてR1は-CH(OH)-CH=C(CH3)2である)。
【0075】
本明細書に記載した対応する実施形態の任意のいくつかにおいて、R1は、例えば、デオキシシコニンのように、-CH2CH2CH=C(CH3)2である(式中、R3とR6はOH、およびR2、R4とR5は水素である)。
【0076】
シコニン(または本明細書に記載の任意の他のナフトキノン化合物)は、シコニングリコシド、例えば、シコニンの1以上のOHが糖部分(例:置換アルコキシ基の形態である)によって置換された形態、および/またはシコニンのエステル(またはシコニングリコシド)、例えば、シコニン(またはシコニングリコシド)の1以上のOHがO-カルボキシ基(例:-O-C(=O)CH3)によって置換された形態であってもよい。
【0077】
本願で使用する「グリコシル」という用語は、単糖のヘミアセタール官能基からヒドロキシル基を除去し、低級オリゴ糖(例:二糖、三糖等)の伸長によって得られる化学基を意味する。
【0078】
本願で使用する「グリコシド」という用語は、1以上の(本願で定義した)グリコシル基を含む化合物を意味する。例えば、「シコニングリコシド」は、1以上グリコシル基に結合したシコニンを意味する。
【0079】
本願で使用する「糖部分」という用語は、1以上の糖単位を含有する、本願で定義する部分である。
【0080】
本願で使用する「部分」とは、第1の分子の、他の分子に共有結合した主要な一部であって、その主要な構造的特徴および/または活性を維持する部分を意味する。よって、「部分」は、上述した第1の分子を1以上の他の分子に結合させることによって形成される分子の一部を意味し、結合産物中に第1の分子の一部が存在することを表す。例えば、糖部分は、1つのヒドロキシル基(例:グリコシルについて上述したもの)を除く全ての糖を含み得る。
【0081】
よって、「糖部分」とは、第2の分子(例:ナフトキノン化合物)をそこに結合した際に形成される糖分子の一部分である。
【0082】
本発明の例示的な実施形態において、糖部分は1つの糖単位を含有し、糖単位は単糖である。
【0083】
用語「単糖」は、本明細書で使用する場合、当業界において周知であり、より小さな糖構造単位(building blocks)または部分にこれ以上は分解できない単一の糖単位からなる糖の単純な形態を指す。単糖の一般的な例としては、グルコース(デキストロース)、フルクトース、ガラクトース、およびリボースが挙げられる。単糖は、炭水化物の炭素原子の数に従って分類することができる。すなわち、トリオースは、3個の炭素原子を有し、例えばグリセルアルデヒドおよびジヒドロキシアセトンなどでありである、テトロースは、4個の炭素原子を有し、例えばエリトロース、トレオースおよびエリトルロースなどであり、ペントースは、5個の炭素原子を有し、例えばアラビノース、リキソース、リボース、キシロース、リブロースおよびキシルロースなどでありである、ヘキソースは、6個の炭素原子を有し、例えばアロース、アルトロース、ガラクトース、グルコース、グロース、イドース、マンノース、タロース、フルクトース、プシコース、ソルボースおよびタガトースなどでありである、ヘプトースは、7個の炭素原子を有し、例えばマンノヘプツロース、セドヘプツロースなどでありである、オクトースは、8個の炭素原子を有し、例えば2-ケト-3-デオキシ-マンノ-オクトネート(octonate)などであり、ノノースは、9個の炭素原子を有し、例えばシアロースなどでありである、デコース、は、10個の炭素原子を有する。単糖は、スクロースのようなオリゴ糖(一般的な糖)および他の多糖(例えばセルロースおよびデンプンなど)の構造単位である。
【0084】
上記単糖はD-単糖およびL-単糖の両方を包含する。
【0085】
代わりに、単糖は、糖単位がヒドロキシル基以外の置換基を1以上含む単糖誘導体であり得る。このような誘導体は、エーテル類、エステル類、アミド類、酸類、リン酸塩類、およびアミン類であるが、これらに限定されない。アミン誘導体には、例えば、グルコサミン、ガラクトサミン、フルクトサミンおよびマンノサミンが含まれる。アミド誘導体には、例えば、糖のN-アセチル化アミン誘導体(例:N-アセチルグルコサミン、N-アセチルガラクトーサミン)が含まれる。
【0086】
用語「オリゴ糖」は、本明細書で使用する場合、2つ以上の連結した単糖単位を含む、本明細書において定義された化合物または部分を指す。本発明のいくつかの実施形態によると、オリゴ糖は、2~6個の単糖を含む。代わりに、オリゴ糖は、2~4個の単糖を含むか、あるいはさらに代わりに、オリゴ糖は、2つの単糖単位を有する二糖部分である。
【0087】
本明細書で使用する「二糖」という用語は、2つの連結した単糖単位を含む化合物または部分を意味する。
【0088】
本明細書で使用する「三糖」という用語は、3つの連結した単糖単位を含む化合物または部分を意味する。
【0089】
シコニングリコシド(例:シコニン-1’,8-ジ-O-β-D-グルコピラノシドおよびシコニン-1’-O-β-D-グルコピラノシド)の非限定的な例、およびそれらの製造において任意で使用できる技術は、Li et al.[Chem Pharm Bull (Tokyo) 2019, 67:1072-1075]およびSu et al.[Eur J Med Chem 2010, 45:2713-2718]によって提供されており、これらの開示の全て、特に記載されているグリコシド種については、本参照を持ってその内容を援用する。
【0090】
本願に記載する対応する全ての実施形態におけるグリコシドは、任意で、1以上(例:1、2または3)の単糖部分(例:グルコース部分、ガラクトース部分および/またはラムノース部分)、1以上の二糖部分(例:グルコシル-(1→2)-グルコシルおよび/またはルチノース部分)、および/または1以上の三糖部分(例:グルコシル-(1→2)-グルコシル-(1→2)-グルコシルおよび/またはa2G-ラムノシルルチノース部分)を含み得る。
【0091】
本明細書に記載した化合物および構造は、特定の立体異性体が具体的に示されていない限り、エナンチオマーおよびジアステレオマーを含む、本明細書に記載した化合物の任意の立体異性体を包含する。
【0092】
よって、例えば、本願において「シコニン」という用語は、特定のエナンチオマーが示されていない限り、5,8-ジヒドロキシ-2-(1-ヒドロキシ-4-メチルペンテ-3-エン-1-イル)ナフタレン-1,4-ジオンの(R)および(S)エナンチオマーの両方を包含する。例えば、「アルカンニン」という用語は、具体的に(S)エナンチオマーを意味する。
【0093】
用語「エナンチオマー」は、本明細書で使用する場合、化合物の立体異性体であって、互いの完全な反転/鏡映(鏡像)によってのみその対応構造と重ね合わせることができるものを指す。エナンチオマーは、互いに右手と左手のようであると述べられることから、「対掌性」を有すると言われている。エナンチオマーは、それ自体が対掌性を有する環境(例えばあらゆる生物系)に存在する場合を除いて、同じ化学的および物理的特性を有する。本発明の実施形態において、化合物は1つまたは複数のキラル中心を有してもよく、それぞれがR配置またはS配置であり、あらゆる組合せをでもよい。本発明の一部の実施形態に係る化合物は、R配置またはS配置を示す、あらゆるキラル中心を有し得る。
【0094】
用語「ジアステレオマー」は、本明細書で使用する場合、互いにエナンチオマーではない立体異性体を指す。ある化合物の2つ以上の立体異性体が、等価な(関連する)立体中心の全てではないが1つまたは複数で異なる配置を有し、互いに鏡像ではない場合に、ジアステレオマー特性(diastereomerism)を発揮する。2つのジアステレオ異性体が1つの立体中心のみで互いに異なる場合、それらは、エピマーである。各立体中心(キラル中心)は、2つの異なる配置、したがって2つの異なる立体異性体をもたらす。本発明の文脈において、本発明の実施形態は、立体配置のあらゆる組合せ、すなわち、あらゆるジアステレオマーで生じる、複数のキラル中心を有する化合物を包含する。
【0095】
本願に記載のナフトキノン化合物のイミン類およびヒドラゾン類、例:式Iの化合物の1以上のオキソ(=O)基が=N-R’(イミン)または=N-NR’R’’(ヒドラゾン)で置換され、R’およびR’’は本願の記載の通りであるもの、も本発明に包含される。このような化合物の例には、5-ヒドロキシキノンおよびヒドラジンカルボキシアミドから形成されたヒドラゾンあるいは
図1Bに示したような、3,5-ジニトロフェニルヒドラジンが挙げられる。
【0096】
全ての対応する実施形態のいくつかにおいて、R3またはR4またはR5またはR6は、式Iでも表されるナフトキノン部分であり、例えば、このような化合物は、R3またはR4またはR5またはR6が水素である化合物の二量体(あるいは、仮に上述したナフトキノン部分が別のナフトキノン部分に結合しているときは、当該化合物の三量体またはさらに長いオリゴマー)と見ることができる。このような実施形態のいくつかにおいては、R3およびR6はヒドロキシであり、R4またはR5上述したナフトキノン部分である。
【0097】
シコニン(アルカンニンを含む)のオリゴマー化については、Assimopoulou et al.[Biomed Chromatogr 2009, 23:182-198]により詳細に記載されており、本参照を持ってその内容(特に、そこに記載のアルカンニン/シコニン-誘導体化合物について)を援用する。
【0098】
このような実施形態のいくつかにおいては、ナフトキノン部分はアリールで置換される。例えば、このような化合物は互いに結合した2つの式Iのナフトキノンを含み、各ナフトキノンは、互いのR
4またはR
5置換基とみることができる。このような化合物の一例(2つのナフトキノン部分のそれぞれを、他方のナフトキノン部分のR
4置換基と見ることができる)を下記に示す。
【化9】
【0099】
このような実施形態のいくつかにおいては、ナフトキノン部分は置換アルキルである。例えば、アルキルは本願に記載する対応する全ての実施形態におけるR
1に対応し、アルキルはナフトキノン部分によって置換されている。このような実施形態のいくつかにおいては、(本願に記載する対応する全ての実施形態における)R
1に含まれるヒドロキシ基は、2つのナフトキノン部分を結合する共有結合によって置換される。このような化合物の一例を下記に示す(ここでは左のナフトキノン部分が、右のナフトキノン部分のR
4置換基を表す)。
【化10】
【0100】
当業者には容易に明らかであるように、三量体およびより長いオリゴマーは、上述した二量体について例示したものと実質的に同じ結合、および/またはシコニン以外のナフトキノン化合物を単量体単位としての使用(例:式Iで表されるいかなる化合物も、任意で単量体単位となり得る)によって形成することができる。
【0101】
全ての対応する実施形態のいくつかにおいて、組成物は分子量が約420~約260Daである化合物および/または分子量が約810~約850Daである化合物を含む。このような実施形態のいくつかにおいては、上記化合物はシコニン誘導体、例えば、糖部分で置換されたシコニン(例:分子量が約453Daになる単糖部分、または分子量が約828Daになる三糖部分)またはシコニン三量体である。
【0102】
例示的なナフトキノン化合物としては、プルンバギン(5-ヒドロキシ-2-メチル-1,4-ナフトキノン)、シコニン、アセチルシコニン、プロピオニルシコニン、イソブチリルシコニン、イソバレリルシコニン、β-ヒドロキシイソバレリルシコニン、α-メチル-n-ブチリルシコニン、α,β-ジメチルアクリルシコニン、β,β-ジメチルアクリルシコニン、シコニン-1’-O-ガラクトピラノシド、シコニン-1’-O-ラムノピラノシド、シコニン-1’-O-グルコピラノシド、シコニン-1’,8-ジ-O-グルコピラノシド、1’,5,8-トリ-O-グルコピラノシド、シコニン-1’-O-グルコシル-(1→2)-グルコピラノシド、シコニン-1’-O-グルコシル-(1→2)-グルコシル-(1→2)-グルコピラノシド、シコニン-1’-O-ルチノシド、シコニン-1’-O-2G-ラムノシルルチノシド、およびAssimopoulou et al.[Biomed Chromatogr 2009, 23:182-198]に記載の、全ての立体異性体を含むシコニンの任意の二量体または三量体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0103】
ナフトキノン化合物のさらなる例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない。
【0104】
a)式Iの化合物であって、R3およびR6がそれぞれOHであり、R2、R4およびR5がそれぞれ水素であり、且つ
R1が-CH=C(CH3)2である、
R1が-CH2CH=C(CH3)2である、
R1が-C(=O)CH2C=C(CH3)2である、
R1が-C(=NOH)CH2C=C(CH3)2である、
R1が-C(=N-NH2)CH2C=C(CH3)2である、
R1が-C(=NH)CH2C=C(CH3)2である、
R1が-CH(CO2R)CH2C=C(CH3)2(式中、Rは水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、脂肪族ヘテロ環、アリール、またはヘテロアリール)である、
R1が-CH(OH)CH2CH2CH(CH3)2である、
R1が-CH(OH)CH2CH(OH)C(CH3)2OHである、
R1が-CH(OH)CH2CH(OH)CH(CH3)2である、
R1が-CH(OH)CH2C(=O)CH(CH3)2である、
R1が-CH(OH)CH2CH2C(CH3)2OHである、
R1が-CH(OH)CH2C(=O)Hである、
R1が-CH(OH)CH2C(=O)OHである、
R1が-CH(OH)CH2CH=CH-Ar(式中、Arはアリールまたはヘテロアリール)である、
R1が-CH(OH)CH2CH=CR’R’’(式中、R’およびR’’はそれぞれ独立に、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、脂肪族ヘテロ環、アリール、またはヘテロアリール)である、
R1が-NHAr(式中、Arはアリールまたはヘテロアリール)である、
R1が-NHR(式中、Rは水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、または脂肪族ヘテロ環)である、
R1が-NHCH2Ar(式中、Arがアリールまたはヘテロアリール)である、
R1が-N(R’)C(=O)OR’’(式中、R’およびR’’はそれぞれ独立に、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、脂肪族ヘテロ環、アリール、またはヘテロアリール)である、
R1が-N(R’)C(=O)R’’(式中、R’およびR’’はそれぞれ独立に、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、脂肪族ヘテロ環、アリール、またはヘテロアリール)である、
R1が-N(R’)C(=O)NR’’R’’’(式中、R’、R’’およびR’’’はそれぞれ独立に、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、脂肪族ヘテロ環、アリール、またはヘテロアリール)である、
R1が-SR(式中、Rは水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、または脂肪族ヘテロ環)である、
R1が-SAr(式中、Arはアリールまたはヘテロアリール)である、
R1が-SCH2Ar(式中、Arはアリールまたはヘテロアリール)である、
R1が-S(=O)R(式中、Rは水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、脂肪族ヘテロ環、アリール、またはヘテロアリール)である、
R1が-S(=O)2R(式中、Rは水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、脂肪族ヘテロ環、アリール、またはヘテロアリール)である、
R1が水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、脂肪族ヘテロ環、アリール、またはヘテロアリールである、
R1が-CH(-OC(=O)NH2)CH2CH=CH(CH3)2である、
R1が-CH(-OC(=O)NHC(=O)CH3)CH2CH=CH(CH3)2である、
R1が-CH(-OC(=O)NHC(=O)CH2Cl)CH2CH=CH(CH3)2である、
R1が-CH(-OC(=O)R)CH2CH=CH(CH3)2(式中、Rは水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、脂肪族ヘテロ環、アリール、またはヘテロアリール)である、
R1が-CH(-OC(=O)NHR)CH2CH=CH(CH3)2(式中、Rは水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、または脂肪族ヘテロ環)である、
R1が-CH(-OC(=O)NHAr)CH2CH=CH(CH3)2(式中、Arはアリールまたはヘテロアリール)である、
R1が-O-Ar(式中、Arはアリールまたはヘテロアリール)である、
R1が-OR(式中、Rは水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、または脂肪族ヘテロ環)である、
R1が-OCH2Ar(式中、Arはアリールまたはヘテロアリール)である、あるいは
R1が-CH(OR’’)R’(式中、R’およびR’’はそれぞれ独立に水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、脂肪族ヘテロ環、アリール、またはヘテロアリール)である。
【0105】
b)式Iの化合物であって、R1が-CH(OH)CH2CH=C(CH3)2であり、R3およびR6がそれぞれOHであり、且つ
R2がハロまたはヒドロキシであり、R4およびR5がそれぞれ水素である、
R4がハロまたはヒドロキシであり、R2およびR5がそれぞれ水素である、あるいは
R5がハロまたはヒドロキシであり、R2およびR4がそれぞれ水素である。
【0106】
c)式Iの化合物であって、R3およびR6がそれぞれアルコキシであり、R2、R4およびR5がそれぞれ水素であり、且つ
R1が-CH(OR’)R’’(式中、R’およびR’’はそれぞれ独立に、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、脂肪族ヘテロ環、アリール、またはヘテロアリール)である、
R1が-CH(OH)R(式中、Rが水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、脂肪族ヘテロ環、アリール、またはヘテロアリール)である、あるいは
R1が-CHR’-OC(=O)OR’’(式中、R’およびR’’はそれぞれ独立に、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、脂肪族ヘテロ環、アリール、またはヘテロアリールであり、但し、R’’は水素ではない)である。
【0107】
d)式Iの化合物であって、R3およびR6がそれぞれアルコキシであり、R1、R2およびR4がそれぞれ水素であり、且つ
R5が-CH(OR’’)R’(式中、R’およびR’’はそれぞれ独立に、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、脂肪族ヘテロ環、アリール、またはヘテロアリール)である、あるいは
R5が-CH(OH)CH2CH2CH(CH3)2である。
【0108】
e)式Iの化合物であって、R3およびR6がそれぞれアルコキシであり、R2、R4およびR5がそれぞれ水素であり、且つ
R1が-CH(OR’’)R’(式中、R’およびR’’はそれぞれ独立に、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、脂肪族ヘテロ環、アリール、またはヘテロアリール)である、あるいは
R1が-CHR’-OC(=O)OR’’(式中、R’およびR’’はそれぞれ独立に、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、脂肪族ヘテロ環、アリール、またはヘテロアリールであり、但し、R’’は水素ではない)である。
【0109】
f)式Iの化合物であって、R2がメチルであり、R3~R6がそれぞれ水素であり、且つR1が、
-CH2CH=C(CH3)CH2CH2CH2CH(CH3)CH2CH2CH2CH(CH3)CH2CH2CH2CH(CH3)2、あるいは
-CH2CH=C(CH3)CH2CH2CH=C(CH3)CH2CH2CH=C(CH3)CH2CH2CH=C(CH3)2である。
【0110】
【0111】
特定の論理に縛られるものではないが、多くの市販のシコニンは、本願に記載の分子量を有する1以上化合物を有するシコニン誘導体を含む。このような誘導体の投与は、(任意でシコニンのプロドラッグとして機能することで(例:体内で分解されて、シコニンおよび遊離糖を形成して))、糖部分によるシコニンの水溶性の増加、および/または3CLプロテアーゼの活性部位に対して、活性部位とのより高いの適合性を提供することで、シコニンそのものと類似またはそれ以上の治療効果を提供し得るとさらに考えられる(例:シコニンの3つのヒドロキシ基のそれぞれが糖で置換されているとき)。
【0112】
(本願に記載する対応する全ての実施形態における)シコニンおよび関連化合物は、ムラサキ科(Boraginaceae)、任意でムラサキ(Boraginoideae)亜科、および任意でリポスペルミア(Lithospermeae)連の植物から任意で誘導することもできる。
【0113】
本発明の実施形態における(本願に記載する対応する全ての実施形態における)シコニンまたは関連化合物の原料として任意で使用することのできるムラサキ科の種としては、リソスペルマム属(Lithospermum)(例:Lithospermum erythrorhizon)、リトドラ属(Lithidora)、オノスマ属(Onosma)(例:Onosma visianii、Onosma heterophylla、Onosma panicolatum、Onosma echioides)、シャゼンムラサキ属(Echium)(例:Echium plantagineum)、アルネビア属(Arnebia)(例:Arnebia hispidissima、Arnebia euchroma、Arnebia tibetana、Arnebia guttata)、およびアルカンナ属(Alkanna)(例:Alkanna tinctoria)の種が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0114】
対応する全ての実施形態におけるナフトキノン化合物(例:シコニンまたはその誘導体)は、任意で、培養植物組織(例:培養毛状根)を使用し、Chaudhury & Pal[J Crop Sci Biotech 2010 13:99-106]および/またはSim & Chang[Biotechnol Lett 1993, 15:145-150]などに記載の方法を用いて製造され得る。
【0115】
本願に記載のいずれかの実施形態におけるナフトキノン化合物(例:シコニンまたはその誘導体)は、任意で、例えば、植物から発見、抽出物および/または単離された種々の化合物といった追加の成分と共に化合物を含む製品の形態をとり得る。
【0116】
例えば、本願に記載のいずれかの実施形態におけるナフトキノン化合物(例:シコニンまたはその誘導体)は、任意で、植物抽出物(例:エタノールおよび/または水の抽出物)の一部であって、例えば、約0.5%~約50重量%のナフトキノン化合物、および任意で約5%~約40%、および任意で約30重量%を含むものであってもよい。いくつかの実施形態において、植物抽出物中のナフトキノン化合物(例:シコニンまたはその誘導体)の少なくとも一部が、(本願に記載する対応する全ての実施形態における)グリコシドおよび/またはその二量体または三量体の形態である。シコニンおよび/またはその誘導体は、任意で、「紫草(zicao)」、「シソウ(zi cao)」、「イン シ ソウ(ying zi cao)」、アルネビアまたはその変種(例:「Radix Arnebia」または「Arnebia euchroma」)、「ムラサキ(purple gromwell)」、「ムラサキ(red gromwell)」、「ジチ(jichi)」、「ムラサキ(murasaki)」またはこれらの変種と呼ばれる組成物(例:植物抽出物)であってもよく、アルカンニンおよび/またはその誘導体は、任意で、「アルカネット(alkanet)抽出物」または「C.I. Natural Red 20」と呼ばれる組成物の形態でもよい。
【0117】
本願に記載のいずれかの実施形態におけるナフトキノン化合物(例:シコニンまたはその誘導体)は、任意で、比較的純度の高い製品として提供され得る(例:純度が少なくとも90%のまたは純度が少なくとも95%)。このように比較的純粋な製品は、(例:比較的純度の高い製品よりも植物抽出物の値段がかなり低いときに)植物抽出物中の活性化合物濃度を高めるために、任意で、活性化合物の濃度の低い組成物(例:本願に記載する対応する全ての実施形態における植物抽出物)と組み合わせることもできる。
【0118】
本願に記載のシコニン誘導体に関連するいずれかの実施形態のいくつかにおいて、シコニン誘導体は、植物原料、例えば、本願明細書に記載する対応する全ての実施形態における植物原料、から発見、抽出物および/または単離されたナフトキノン化合物である。
【0119】
本願に記載のいずれかの実施形態におけるナフトキノン化合物(例:シコニンまたはその誘導体)は、化学の分野で公知の手順を用いて、合成してもよい。
【0120】
適応症(Indications)および使用:
本願に記載する対応する全ての実施形態における式Iの化合物(例:上記の対応する項目に示したもの)は、任意で、ウイルス感染、例えば、コロナウイルス感染症、の治療用である。
【0121】
本発明の実施形態の一態様においては、本願に記載する対応する全ての実施形態における式Iの化合物(例:上記の対応する項目に示したもの)の、ウイルス感染、例えば、コロナウイルス感染症、の治療用の医薬の製造における使用が提供される。
【0122】
本発明の実施形態の一態様においては、治療を必要とする(ヒトまたはヒト以外の)対象におけるウイルス感染(例えば、コロナウイルス感染症)を治療するための方法であって、本願に記載する対応する全ての実施形態における式Iの化合物(例:上記の対応する項目に示したもの)を対照に投与することを含む方法が提供される。
【0123】
(本願に記載の態様のいずれかにおける)治療に関連する全ての実施形態のいくつかにおいては、炎症の阻害が有益な対象、例えば、(対象の生活の質および/または生存率等に対して)有害な、過剰な炎症性応答に苦しんでいると考えられる対象、の治療用である。
【0124】
治療に関連する全ての実施形態のいくつかにおいては、治療は、(本願に記載する対応する全ての実施形態における)化合物の少なくとも1日1回、任意で少なくとも1日2回の投与を含む。このような実施形態のいくつかにおいては、投与は1日2~6回、任意で、1日2、3または4回である。
【0125】
治療に関連する全ての実施形態のいくつかにおいては、治療は、(本願に記載する対応する全ての実施形態における)化合物の経口投与、例えば、少なくとも1日3回、任意で、1日4回実施される化合物の経口投与を含む。
【0126】
全ての対応する実施形態のいくつかにおいて、経口投与の用量は、10mg~5グラムの範囲内、任意で、50mg~1.5グラム、任意で、50mg~500mgの範囲内であり、さらに任意で、約200mgである。
【0127】
全ての対応する実施形態のいくつかにおいて、経口投与の用量は、1日当たり2mg/kg~1日当たり200mg/kgの範囲内、任意で、1日当たり5mg/kg~1日当たり100mg/kgの範囲内、さらに任意で、1日当たり約20mg/kgである。
【0128】
治療に関連する全ての実施形態のいくつかにおいては、治療は、(本願に記載する対応する全ての実施形態における)化合物の静脈内投与、例えば、0.04mg~400mgの範囲内、任意で、0.4mg~40mg、さらに任意で、約4mgの用量の投与を含む。
【0129】
治療に関連する全ての実施形態のいくつかにおいては、治療緊急度の違いに応じて異なる用量を使用する、例えば、比較的低用量(例:比較的少量の植物抽出物等の化合物を1日2回投与することを含む)を(例:ウイルスへの暴露がわかった後、および/またはウイルスへの暴露の可能性が比較的高い流行期に)予防として使用し、中用量(例:任意で、植物抽出物の、1日に3回の投与を含む)を軽い感染の治療に使用し、比較的高用量(例:化合物の比較的大量の投与を含む)を、例えば、肺炎によって特徴づけられる中症から重症の感染症に使用する。
【0130】
治療に関連する全ての実施形態のいくつかにおいては、ナフトキノン化合物は抗ウイルス活性、例えば、対象の体内のウイルス増殖を阻害する能力、を発揮する。このような実施形態のいくつかにおいては、ナフトキノン化合物はウイルスのプロテアーゼ(例:3CLプロテアーゼ、またはウイルス複製に必須の対応するウイルス)を阻害する(例:本願の実施例に記載したようなプロテアーゼ活性のためのアッセイによって決定する)。いくつかの実施形態において、ナフトキノン化合物はオートファジーを阻害する(例:それによって、増殖にオートファジーを利用するウイルスの増殖を阻害する)。いくつかの実施形態において、ナフトキノン化合物は、ウイルスのプロテアーゼ(例:3CLプロテアーゼ)を阻害し、オートファジーを阻害する。
【0131】
本願において「オートファジー」という用語は、細胞内成分が(「オートファゴソーム」と呼ばれる)ベシクルによって飲み込まれ、ベシクルは飲み込んだ成分を分解のためにリソソームに送達する、あるいはリソソームによって直接飲み込まれる、細胞内の天然の過程を意味する。
【0132】
治療に関連する全ての実施形態のいくつかにおいては、ナフトキノン化合物は、抗炎症効果、例えば、対象の体内の炎症性応答(例:C反応性タンパク質のレベル、インターロイキン17(IL-17)および/またはインターロイキン6(IL-6)のレベルによって決定される)を減少させる。抗炎症効果は、抗ウイルス効果の結果ではない、即ち、対象のウイルス負荷を初めに減少させることに依存しない。しかし、例えば、ウイルスは、その増殖を容易にするため(例:感染した細胞から脱出するためおよび/または免疫系による細胞の損傷の際に細胞内に侵入するため)に炎症効果を利用することから、抗炎症効果は任意で抗ウイルス効果を発揮し得る。いくつかの実施形態において、ナフトキノン化合物は、(本願に記載する対応する全ての実施形態における)抗炎症効果のみならず、(本願に記載する対応する全ての実施形態における)抗ウイルス効果、例えば、プロテアーゼ阻害および/またはオートファジー阻害、を発揮する。
【0133】
特定の論理に縛られるものではないが、抗炎症効果は、対照に対する危険の多くが過剰な炎症性応答、例えば、サイトカインストームに関連する病状である、いくつかのウイルス感染(例:COVID-19)の治療に特に有用であると考えられる。加えて、抗炎症効果と抗ウイルス効果は対象の治療において相乗効果を示すと考えられる。例えば、抗ウイルス効果によるウイルス複製の遅延は、ウイルスを除去するには効能が不十分であったとしても、サイトカインストームの危険度を低下させる上で効果を発揮し得る。
【0134】
治療効果の成功には、(例:C反応性タンパク質レベルが指標となる)炎症の減少、(例:過剰凝固の指標としての)D-ダイマーレベルの減少、(感染のための試験(例:RT-PCR検査)における負の結果が指標となる)治療までの時間の短縮、入院期間の短縮、(例:24時間維持される早期警戒スコア2(NEWS2)≦2によって定義される)臨床改善までの時間、および/または(例:プラセボに対する)対象からの気分に関する改善の報告が含まれるが、これらに限定されない。病状/健康を評価するための追加の任意のパラメーターとしては、例えば、血圧、心拍数、呼吸数、酸素飽和度および/または体温の変化、群内の死亡者数、症状の悪化および機械的呼吸を必要とする症例数、および/または追加酸素を必要とする症例および期間の長さが挙げられる。
【0135】
予防処置の効果の成功には、(個体における)感染防止、(集団における)感染率の低下、および(例:ウイルスに対する抗体の産生によって感染が示されるときの)感染した個体における症状の減少または除去が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0136】
本願に記載の治療に関連する全ての実施形態のいくつかにおいて、治療は、(例:本願に記載する対応する全ての実施形態における)ナフトキノン化合物の投与に加えて、少なくとも1種の追加の活性成分の投与を含む。追加の活性成分の投与は、任意で、ナフトキノン化合物の投与と同時、前、または後になり得る。いくつかの実施形態において、追加の活性成分の投与は、少なくとも1日2回、または少なくとも1日3回、または少なくとも1日4回、任意で、1日4回の投与を含む。
【0137】
少なくとも1種の追加の活性成分は、例えば、ビタミン、N-アセチルシステイン、抗凝固剤、抗炎症剤、解熱剤、抗ウイルス剤、および/またはプロテアーゼ阻害剤であり得る。
【0138】
プロテアーゼ阻害剤は、例えば、本参照をもって本願に援用される、米国特許出願公開第2004/0198716号明細書に記載の任意のプロテアーゼ阻害剤であり得、具体的には、本願に記載のナフトキノン化合物ではないプロテアーゼ阻害剤であり得る。5-メトキシクロモンはこのようなプロテアーゼ阻害剤の一例である。
【0139】
適切なビタミン類の例示としては、ビタミンD(例:ビタミンD3)およびビタミンC、任意で、リポソーム製剤に含まれているもの、が挙げられるが、これらに限定されない。
【0140】
適切な抗凝固剤としては、リバーロキサバン、ナファモスタット、オメガ3脂肪酸(およびそこから発生する脂質)、ヘパリンおよびその誘導体(例:エノキサパリンナトリウムまたはフォンダパリヌックス)、エポプロステノール、クロピドグレル、アルガトロバンおよびクルクミンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0141】
適切な抗炎症剤の例としては、ABX464;アプレミラスト;アトリズマブ;バリシチニブ;ベルベリン;カンナビジオール等のカンナビノイド;セラストロール;コルヒチン;クルクミン等のクルクミノイド、デシタビン;デフェロキサミン;ドルナーゼアルファ等のDNase;デュベリシブ;エストラジオール;N-アセチルシステイン(NAC)、フレセレスタット、シベレスタット、および/または
図3に示した他の化合物等のエラスターゼ阻害剤;ケルセチンおよびそのグリコシド(例:ケルシトリン、ヒペロシド、イソケルシトリンおよび/またはルチン)、デオキシケンペロールおよびそのグリコシド、および/または没食子酸エピガロカテキン等のフラボノイド(グリコシド等の置換フラボノイドを含む);インフリキシマブ;トラマドール等のオピオイド;パルミトイルエタノールアミド(PEA);ボスウェリア(Boswellia)抽出物およびヘナ(Lawsonia inermis)抽出物等の植物抽出物;エラグ酸等のポリフェノール;レスベラトールおよび/またはO-トリメチルレスベラトール等のスチルベノイド;VB-201;アスピリン、サリチル酸塩、サルサレート、ジフルニサル、イブプロフェン、ナプロキセン、フェノプロフェン、ケトプロフェン、フルルビプロフェン、オキサプロジン、ロキソプロフェン、インドメタシン、スリンダク、エトドラク、ジクロフェナク、アセクロフェナク、トルメティン、ケトロラク、ナブメトン、ピロキシカム、メロキシカム、テノキシカム、ドロキシカム、ロルノキシカム、イソキシカムメフェナム酸、メクロフェナム酸、フルフェナム酸、トルフェナム酸、セレコキシブ、ロフェコキシブ、バルデコキシブ、パレコキシブ、ルミラコキシブ、エトリコキシブ、ニメスリド、ニフルミン酸、リコフェナク(licofenac)および/またはクロニキシン等のNSAID(非ステロイド性抗炎症剤);および/またはアルクロメタゾンおよびそのプロドラッグ(例:アルクロメタゾンプロピオン酸エステル)、アムシノニド、ベクロメタゾンおよびそのエステル(例:ベクロメタゾンプロピオン酸エステル)、ベタメタゾン、ブデソニド、シクレソニド、クロロプレドニゾンおよびそのエステル(例:クロロプレドニゾン-21-酢酸エステル)、クロベタゾールおよびそのエステル(例:クロベタゾールプロピオン酸エステル)、クロベタゾン、クロコルトロンおよびそのエステル(例:クロコルトロンピバル酸エステル)、クロプレドノール、コルチゾール(ヒドロコルチゾンとも知られる)、コルチゾン、コルチバゾール、デフラザコルト、デソニド、デスオキシメタゾン、デキサメタゾン、ジフルコルトロンおよびそのエステル(例:ジフルコルトロン吉草酸エステル)、ジフロラゾンおよびそのエステル(例:ジフロラゾン酢酸エステル)、ジフルプレドナート、フルクロロロンおよびそのプロドラッグ(例:フルクロロロンアセトニド)、フルドロキシコルチド、フルメタゾンおよびそのエステル(例:フルメタゾンピバル酸エステル)、フルニソリド、フルオシノロンおよびそのプロドラッグ(例:フルオシノロンアセトニド)、フルオシノニド、フルオコルチン、フルオコルトロン、フルペロロンおよびそのエステル(例:酢酸フルペロロン)、フルプレドニデンおよびそのエステル(例:酢酸フルプレドニデン)、フルチカゾンおよびそのエステル(例:フルチカゾンフランカルボン酸エステルおよびフルチカゾンプロピオン酸エステル)、ホルモコータル、ハロメタゾン、ハルシノイド、ロテプレドノール、メチルプレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、モメタゾンおよびそのエステル(例:モメタゾンフランカルボン酸エステル)、パラメタゾン、プレドニゾロン、プレドニゾン、プレドニリデン、リメキソロン、RU-28362、チソコルトールおよびそのエステル(例:チソコルトールピバル酸エステル)、トリアムシノロンおよびそのプロドラッグ(例:トリアムシノロンアセトニド)、および/またはウロベタソールおよびそのエステル(例:ウロベタソールプロピオン酸エステル)等のグルココルチコイド類が挙げられるが、これらに限定されない。
【0142】
適切な解熱剤の例としてはNSAID(本願で列挙したもの)、パラセタモールおよびジピロンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0143】
適切な抗ウイルス剤(例:3CLpro阻害剤)としては、バムラニビマブ、カシリビマブ、クロロキン、クレブジン、コロナビル(coronavir)、DIFF-1(2-ヘキサノイル-4、6-ジクロロ-5-メトキシレゾルシノール)、ファビピラビル、イベルメクチン、GC376、ヒドロキシクロロキン、イムデビマブ、ロピナビル、ナリジクス酸、ニタゾキサニド、レムデシビル、リトナビル、ルピントリビル、テノホビルおよび/またはTMC-310911が挙げられるが、これらに限定されない。
【0144】
加えた、追加の活性成分は、任意で、2021年2月14日にダウンロードした下記ウエブサイトにおいて臨床試験における使用が記載されているいずれかの薬剤でもよく、当該ウエブサイトの記載、特にコロナウイルス感染症の治療用薬剤に関する記載は、本参照をもってその全てをここに援用する。www(dot)clinicaltrials(dot)gov/ct2/results?cond=COVID-19
【0145】
全ての対応する実施形態のいくつかにおいて、N-アセチルシステインは、1日当たり0.2~6.4グラムの範囲内、さらに任意で、1日当たり0.8~1.6グラムの用量で投与される。
【0146】
本願に記載の組成物、方法および使用のいずれかについて本願に記載の実施形態のいくつかにおいては、本願で定義したナフトキノン化合物(例:式Iの化合物)は、ビタミン(例:本願に記載のビタミンDまたはビタミンC)と組み合わせて使用される。このような実施形態のいくつかにおいては、ナフトキノン化合物は、(例:本願に記載する対応する全ての実施形態における)N-アセチルシステイン、抗凝固剤、抗炎症薬、解熱剤、抗ウイルス薬および/またはプロテアーゼ阻害剤とさらに組み合わせて使用される。
【0147】
本願に記載の組成物、方法および使用のいずれかについて本願に記載の実施形態のいくつかにおいては、本願で定義したナフトキノン化合物(例:式Iの化合物)は抗凝固剤(例:本願に記載する対応する全ての実施形態における抗凝固剤)と組み合わせて使用される。このような実施形態のいくつかにおいては、ナフトキノン化合物は、(例:本願に記載する対応する全ての実施形態における)ビタミン、N-アセチルシステイン、抗炎症薬、解熱剤、抗ウイルス薬および/またはプロテアーゼ阻害剤とさらに組み合わせて使用される。
【0148】
本願に記載の組成物、方法および使用のいずれかについて本願に記載の実施形態のいくつかにおいては、本願で定義したナフトキノン化合物(例:式Iの化合物)は、抗炎症薬(例:本願に記載する対応する全ての実施形態における抗炎症薬)と組み合わせて使用される。このような実施形態のいくつかにおいては、ナフトキノン化合物は、(例:本願に記載する対応する全ての実施形態における)ビタミン、N-アセチルシステイン、抗凝固剤、解熱剤、抗ウイルス薬および/またはプロテアーゼ阻害剤とさらに組み合わせて使用される。
【0149】
本願に記載の組成物、方法および使用のいずれかについて本願に記載の実施形態のいくつかにおいては、本願で定義したナフトキノン化合物(例:式Iの化合物)は、解熱剤(例:本願に記載する対応する全ての実施形態における解熱剤)と組み合わせて使用される。このような実施形態のいくつかにおいては、ナフトキノン化合物は、(例:本願に記載する対応する全ての実施形態における)ビタミン、N-アセチルシステイン、抗凝固剤、抗炎症薬、抗ウイルス薬および/またはプロテアーゼ阻害剤とさらに組み合わせて使用される。
【0150】
本願に記載の組成物、方法および使用のいずれかについて本願に記載の実施形態のいくつかにおいては、本願で定義したナフトキノン化合物(例:式Iの化合物)は、抗ウイルス薬(例:本願に記載する対応する全ての実施形態における抗ウイルス薬)と組み合わせて使用される。このような実施形態のいくつかにおいては、ナフトキノン化合物は、(例:本願に記載する対応する全ての実施形態における)ビタミン、N-アセチルシステイン、抗凝固剤、抗炎症薬、解熱剤、および/またはプロテアーゼ阻害剤とさらに組み合わせて使用される。
【0151】
本願に記載の組成物、方法および使用のいずれかについて本願に記載の実施形態のいくつかにおいては、本願で定義したナフトキノン化合物(例:式Iの化合物)は、プロテアーゼ阻害剤(例:本願に記載する対応する全ての実施形態におけるプロテアーゼ阻害剤)と組み合わせて使用される。このような実施形態のいくつかにおいては、ナフトキノン化合物は、(例:本願に記載する対応する全ての実施形態における)ビタミン、N-アセチルシステイン、抗凝固剤、抗炎症薬、解熱剤、および/または抗ウイルス薬とさらに組み合わせて使用される。
【0152】
いくつかの実施形態の一態様においては、コロナウイルス3CLプロテアーゼの阻害方法であって、3CLプロテアーゼを本願に記載する対応する全ての実施形態において式Iで表される化合物(例:上記の対応する項目に示したもの)と接触させることを含む、方法が提供される。
【0153】
コロナウイルスの3CLプロテアーゼを阻害する方法は、任意で、in vitroおよび/またはin vivo、ヒトまたはヒト以外の対象(例:哺乳動物)で実施され得る。いくつかの実施形態において、方法は、(例:対象、治療レジメンおよび/または適応症に関連する本願に記載のいずれかの実施形態における)治療を必要とする対象に対して、(本願に記載する対応する全ての実施形態における)化合物を投与することを含む。
【0154】
対象において3CL活性が阻害されるとき、本態様に係る方法は、任意で、(本願に記載する対応する全ての実施形態における)対象の炎症および/またはオートファジーの阻害をさらに含む。
【0155】
いくつかの実施形態の一態様において、治療を必要とする対象におけるコロナウイルス感染症を治療するための方法であって、下記(i)~(iii)の少なくとも2種(そして任意でそれぞれを)を発揮する少なくとも1種の化合物を対象に投与することを含む方法が提供される。
(i)コロナウイルスの3CLプロテアーゼ活性の阻害、
(ii)対象の炎症の阻害(任意で、Janusキナーゼ(JAK)等のキナーゼの阻害による、サイトカインストームの減少および/または予防を含む)、および
(iii)対象のオートファジーの阻害。
【0156】
少なくとも1種の化合物は、任意で、本願に記載の少なくとも2種の性質を発揮する単一化合物を含む、または本願に記載の少なくとも2種の性質を発揮する複数の化合物を含む、および/または種々の性質を発揮する化合物、例えば、少なくとも2種の性質が化合物単独ではなく、化合物の組み合わせによって発揮されるもの、を含むことができる。
【0157】
この態様における少なくとも1種の化合物は、任意であって、必須ではないが、本願に記載する対応する全ての実施形態における式Iで表される化合物を含む。いくつかの実施形態において、治療は、式Iで表される化合物の投与に加えて、上述した3CLプロテアーゼ活性の阻害、炎症の阻害、および/またはオートファジーの阻害を発揮する少なくとも1種の追加の活性成分の投与をさらに含み、任意で、式Iの化合物においては弱いか存在しない1種または2種の阻害活性を補う。
【0158】
いくつかの実施形態において、治療は、式Iで表される化合物の投与に加えて、上述した3CLプロテアーゼ活性の阻害、および任意で、炎症の阻害および/またはオートファジーの阻害も発揮する少なくとも1種の追加の薬剤の投与を含む。
【0159】
いくつかの実施形態において、治療は、式Iで表される化合物の投与に加えて、上述した炎症の阻害、および任意で、3CLプロテアーゼ活性の阻害および/またはオートファジーの阻害も発揮する少なくとも1種の追加の薬剤の投与を含む。
【0160】
いくつかの実施形態において、治療は、式Iで表される化合物の投与に加えて、上述したオートファジーの阻害、および任意で、3CLプロテアーゼ活性の阻害および/または炎症の阻害も発揮する少なくとも1種の追加の薬剤の投与を含む。
【0161】
本願に記載する対応する全ての実施形態におけるコロナウイルスは、任意で、ベータコロナウイルス、例えば、エンベコウイルス(系統Aとしても知られる)、サルベコウイルス(系統Bとしても知られる)、メルベコウイルス(系統Cとしても知られる)、ノベコウイルス(系統Dとしても知られる)、およびヒベコウイルスである。例示的なベータコロナウイルスとしては、SARS関連コロナウイルス(サルベコウイルスの種である)、ヒトコロナウイルスOC43、およびヒトコロナウイルスHKU1、およびこれらの任意の種(例:SARS-CoV-2)を含む。
【0162】
代替として、または追加として、コロナウイルスは、任意で、一般的な風邪と関連するもの、例えば、229E、NL63、HKU1およびOC43コロナウイルスであり得る。
【0163】
いくつかの実施形態において、本願に記載のナフトキノン化合物によって治療可能なウイルス感染は、コロナウイルス以外のウイルス、例えば、CMV(サイトメガロウイルス)、HRV(ヒトライノウイルス)、A型肝炎ウイルス、HMV(ヒト髄膜炎ウイルス)、および/またはHIV(ヒト免疫不全ウイルス)に関連する。
【0164】
医薬組成物:
本願に記載の使用および/または適応症に対して、本発明のいくつかの実施形態のナフトキノン化合物および/または追加の活性成分は、それ自体で、または適した担体もしくは賦形剤を任意でさらに含む医薬組成物の形態で、生物に投与することができる。
【0165】
本願において、「医薬組成物」とは、本願に記載の1種または複数種の有効成分の、生理学的に適した担体および賦形剤などのその他の化学成分との製剤を指す。医薬組成物の目的は、生物への化合物の投与を容易にすることである。
【0166】
本願において「有効成分」という用語は、生物学的効果を担う1以上薬剤、例えば、本願に記載する対応する全ての実施形態におけるナフトキノン化合物および/または追加の活性成分を意味する。組成物に関連する全ての実施形態の内のいくつかにおいて、組成物は、1以上の(本願に記載する対応する全ての実施形態における)ナフトキノン化合物および1以上の(本願に記載する対応する全ての実施形態における)追加の活性成分を含む。
【0167】
以下、互換的に使用される「生理学的に許容される担体」と「薬学的に許容される担体」という語句は、生物に対して重大な刺激を引き起こさず、投与された化合物の生物学的活性および特性を抑制しない担体又は希釈剤を意味する。このような語句にはアジュバントが含まれている。
【0168】
本明細書において用語「賦形剤」とは、有効成分の投与をさらに容易にするために医薬組成物に添加する不活性物質を指す。賦形剤の、限定的ではない例として、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、種々の糖およびデンプンの種類、セルロース誘導体、ゼラチン、植物油およびポリエチレングリコールが挙げられる。
【0169】
本願に記載の全ての実施形態の内のいくつかの実施形態において、(本願に記載する対応する全ての実施形態における)ナフトキノン化合物および/または追加の活性成分は単一の医薬組成物に共処方される。
【0170】
代わりに、本願に記載の全ての実施形態の内のいくつかの実施形態において、(本願に記載する対応する全ての実施形態における)ナフトキノン化合物および/または追加の活性成分は、個別に医薬組成物に処方される。ナフトキノン化合物を含む組成物は、任意で、追加の活性成分を含む1以上の組成物と共に投与され得る。
【0171】
組成物中に存在するナフトキノン化合物は実質的にいかなる濃度でもよく、例えば、0.01重量%~99.99重量%、任意で、0.1重量%~50重量%である。
【0172】
本願に記載の対応する全ての実施形態の内のいずれかの実施形態において、ナフトキノン化合物を含む組成物は、リン脂質をさらに含む。組成物中のリン脂質とナフトキノン化合物との重量比は、任意で、10:1~1:10の範囲内であり、さらに任意で、3:1~1:3である。いくつかの例示的な実施形態において、リン脂質とナフトキノンとの重量比は約1:1である。
【0173】
(本願に記載する対応する全ての実施形態における)リン脂質は、任意で、主としてホスファチジルコリンからなるものである、即ち、リン脂質の少なくとも50%(重量換算)がホスファチジルコリンである。任意で、リン脂質の少なくとも60%、または少なくとも70%、または少なくとも80%、または少なくとも90%がホスファチジルコリンである(重量換算)。
【0174】
(本願に記載する対応する全ての実施形態における)リン脂質は、任意で、ホスファチジルセリンを含み、例えば、リン脂質の少なくとも10重量%または少なくとも20重量%がホスファチジルセリンである。いくつかの例示的な実施形態においては、リン脂質中のホスファチジルセリンの割合は約20重量%である。上記実施形態のいくつかにおいて、リン脂質は、任意で、(本願に記載する対応する全ての実施形態における)ホスファチジルコリンで主として構成されている。
【0175】
特定の論理に縛られるものではないが、(例:本願に記載の量の)リン脂質は、(例:経口投与の際に)血液による有効成分の吸収を容易にする。
【0176】
本願に記載の対応する全ての実施形態の内のいずれかの実施形態において、組成物はリポソームをさらに含み、リポソームは、任意で、有効成分の少なくとも一部を封入している。リポソームは、任意で、(例:本願に記載する対応する全ての実施形態における)リン脂質を、例えば、水性担体との組み合わせで含み得る。
【0177】
代わりに、組成物は、任意で、水と接触した際にリポソームを形成する乾燥組成物であり得る。
【0178】
(本願に記載の本発明の実施形態の全ての態様における)薬物の製剤化および投与の技術は、参照により本明細書に組み込まれる、“Remington's Pharmaceutical Sciences,” Mack Publishing Co., Easton, PA、最新版に見い出すことができる。
【0179】
適した投与経路として、例えば、経口、直腸、経粘膜、特に経鼻、腸管または筋肉内、皮下および髄様内注射を含む非経口送達、ならびにくも膜下腔内、直接脳室内、心臓内(例えば、右または左心室腔へ、総頸動脈へ)、静脈内、腹腔内、鼻腔内または眼球内注射を挙げることができる。
【0180】
本願に記載の全ての実施形態の内のいくつかの実施形態において、ナフトキノン化合物および/または追加の活性成分の投与は全身的である。
【0181】
あるいは、全身よりも局所で、例えば、患者の組織領域への医薬組成物の注射によって医薬組成物を投与してもよい。
【0182】
本発明のいくつかの実施形態の医薬組成物は、当技術分野で周知のプロセスによって、例えば、従来の混合、溶解、造粒、糖衣錠作製、すりつぶし、乳化、カプセル化、封入または凍結乾燥プロセスによって製造され得る。
【0183】
したがって、本発明のいくつかの実施形態に従って使用するための医薬組成物は、賦形剤および補助剤を含む1種または複数の生理学的に許容される担体を使用して従来方法で製剤化することができる。当該担体は、有効成分の薬学的に許容される製剤への加工を容易にする。適切な製剤は、選択された投与経路に応じて変わる。
【0184】
注射のために、医薬組成物の有効成分は、水溶液中で、好ましくは、ハンクス溶液、リンゲル液または生理学的塩バッファーなどの生理学的に適合するバッファー中で製剤化され得る。経粘膜投与のために、透過されるべきバリアに適切な浸透剤が製剤化において使用される。このような浸透剤は、一般に、当技術分野で公知である。
【0185】
経口投与のために、医薬組成物は、活性化合物を、当技術分野で周知の薬学的に許容される担体と組み合わせることによって容易に製剤化され得る。このような担体は、患者による経口摂取のために、医薬組成物が、錠剤、丸剤、糖衣錠、カプセル剤、液体、ゲル、シロップ(例:子供への投与用、任意で健康な個体の予防的処置用)、スラリー、懸濁液等として製剤化することを可能にする。経口使用のための薬理学的製剤は、錠剤または糖衣錠コアを得るために、必要に応じて適した補助剤を添加した後に、固体賦形剤を使用して、任意選択で、得られた混合物を粉砕し、混合物を顆粒に加工して作製され得る。適した賦形剤として、特に、ラクトース、スクロース、マンニトールまたはソルビトールを含む糖類、例えば、トウモロコシデンプン、コムギデンプン、イネデンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガカントゴム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチル-セルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロースなどのセルロース製剤および/またはポリビニルピロリドン(PVP)などの生理学的に許容されるポリマーなどの増量剤がある。必要に応じて、架橋ポリビニルピロリドン、寒天またはアルギン酸またはアルギン酸ナトリウムなどのその塩などの崩壊剤が添加され得る。
【0186】
糖衣錠コアは適したコーティングと共に提供される。この目的のために、任意選択で、アラビアガム、タルク、ポリビニルピロリドン、カーボポールゲル、ポリエチレングリコール、二酸化チタン、ラッカー溶液および適した有機溶媒または溶媒混合物を含有し得る濃縮糖溶液が使用され得る。同定のため、または活性化合物用量の異なる組合せを特徴付けるために、錠剤または糖衣錠コーティングに色素または顔料が添加され得る。
【0187】
経口的に使用され得る医薬組成物として、ゼラチンから製造されたプッシュフィットカプセル剤ならびにゼラチンおよびグリセロールまたはソルビトールなどの可塑剤から製造されたソフト密閉カプセル剤が挙げられる。プッシュフィットカプセル剤は、ラクトースなどの増量剤、デンプンなどの結合剤、タルクまたはステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤および任意選択で、安定化剤との混合物中に有効成分を含有し得る。ソフトカプセル剤中で、有効成分は、脂肪オイル、流動パラフィンまたは液体ポリエチレングリコールなどの適した液体中に溶解または懸濁され得る。さらに、安定化剤が添加され得る。経口投与用のすべての製剤は、選択された投与経路に適した投与量とすべきである。
【0188】
頬側投与のために、組成物は、従来法で製剤化された錠剤またはトローチ剤の形態をとり得る。
【0189】
鼻腔吸入による投与のために、本発明のいくつかの実施形態に従って使用するための有効成分は、適した噴射剤、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタンまたは二酸化炭素を用いて加圧パックまたは噴霧器からエアゾールスプレー製剤の形態で送達されることが好都合である。加圧エアロゾルの場合には、投与量単位は、計量された量を送達するためのバルブを提供することによって決定され得る。ディスペンサーにおいて使用するための、化合物およびラクトースまたはデンプンなどの適した粉末基剤の粉末混合物を含有する、例えばゼラチンのカプセル剤およびカートリッジ剤が製剤化され得る。
【0190】
本明細書に記載の医薬組成物は、例えば、ボーラス注射または連続注入による非経口投与のために製剤化され得る。注射用製剤は、単位投与形で、例えば、アンプルまたは複数用量容器で、任意選択で、防腐剤の添加と共に提供され得る。組成物は、油性または水性媒体中の懸濁液、溶液またはエマルジョンであり得、懸濁剤、安定化剤および/または分散剤などの製剤用薬剤を含有し得る。
【0191】
非経口投与のための医薬組成物は、水溶性形態の活性製剤の水溶液を含む。さらに、有効成分の懸濁液は、適当な油性または水ベースの注射懸濁液として調製され得る。適した親油性溶媒または媒体として、ゴマ油などの脂肪オイルまたはオレイン酸エチル、トリグリセリドまたはリポソームなどの合成脂肪酸エステルが挙げられる。水性注射用懸濁液は、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ソルビトールまたはデキストランなどの懸濁液の粘度を増大する作用物質を含有し得る。任意選択で、懸濁液はまた、適した安定化剤または高度に濃縮された溶液の製剤を可能にするために有効成分の溶解度を増大する薬剤を含有し得る。
【0192】
あるいは、有効成分は、使用前に、適した媒体、例えば、滅菌パイロジェンフリー水ベースの溶液を用いて構成するための粉末形態であり得る。
【0193】
本発明のいくつかの実施形態の医薬組成物はまた、例えば、ココアバターまたはその他のグリセリドなどの従来の坐剤基剤を使用して坐剤または保留浣腸などの直腸組成物に製剤化され得る。
【0194】
本発明のいくつかの実施形態に関連して使用するのに適した医薬組成物として、有効成分(本願に記載のナフトキノン化合物および/または追加の活性成分)が、意図される目的を達成するのに有効な量で含有される組成物が挙げられる。より具体的には、治療上有効な量とは、治療されている対象の障害(例えば、コロナウイルス感染症)の症状を防ぐ、軽減するもしくは寛解させる、またはその生存を延長するのに有効な有効成分(単数または複数)の量を意味する。
【0195】
治療上有効な量の決定は、特に、本明細書において提供される詳細な開示内容を考慮して、十分に当業者の能力の範囲内である。
【0196】
本発明の方法において使用される任意の製剤について、治療上有効な量または用量は、in vitroおよび細胞培養アッセイから最初に推定され得る。例えば、用量は、所望の濃度または力価を達成するように動物モデルにおいて製剤化され得る。このような情報は、ヒトにおける有用な用量をより正確に決定するために使用され得る。
【0197】
本明細書に記載の有効成分の毒性および治療効力は、in vitroで、細胞培養物で、または実験動物で、標準医薬手順によって決定され得る。これらのin vitroおよび細胞培養アッセイおよび動物研究から得られたデータは、ヒトにおいて使用するための投与量の範囲の製剤において使用され得る。投与量は、使用される投与形態および利用される投与経路に応じて変わり得る。正確な製剤、投与経路および投与量は、患者の状態を考慮して個々の医師によって選択され得る(例えば、Fingl et al. (1975), in “The Pharmacological Basis of Therapeutics”, Ch. 1 p.1を参照)。
【0198】
投与量および投与間隔は、有効成分レベルが、生物学的効果を誘導または抑制するのに十分な量(最小有効濃度、MEC)となるように、個別に調整することができる。MECは、各製剤によって変化するが、in vitroデータに基づいて推定することができる。MECを達成するのに必要な投与量は、個々の特徴および投与経路に応じて変化する。血漿中濃度を調べるために、検出アッセイが使用され得る。
【0199】
治療されるべき状態の重症度および応答性に応じて、投与量は、数日から数週間持続する治療の過程で、または治癒が達成されるもしくは疾患状態の消失が達成されるまでに、単回または複数回投与のものであり得る。
【0200】
投与する組成物の量は、当然ながら、治療される対象、苦痛の重症度、投与方式、担当医師の判断などに依存するものである。
【0201】
本発明のいくつかの実施形態の組成物は、必要に応じて、FDA(米国食品医薬品局)により承認されたキット等のパックまたはディスペンサーデバイスに入れて提供してもよく、このようなパックまたはデバイスは、活性成分を含有する1つまたは複数の単位剤形を含有してもよい。パックは、例えば、金属箔またはプラスチック箔を含むブリスターパックなどでもよい。パックまたはディスペンサーデバイスは、投与のための説明書が添付されていてもよい。パックまたはディスペンサーはまた、医薬品の製造、使用または販売を規制する政府機関により規定された形態で容器に付随する通知が添付されていてもよく、この通知は、組成物の形態がヒトまたは動物への投与用として当該機関により承認されていることを反映するものである。このような通知は、例えば、処方薬に関して米国食品医薬品局により承認されたラベルの形態であってもよいし、または承認された製品の差し込み物の形態であってもよい。また、本発明の製剤を含み、適合可能な医薬用担体中に製剤化された組成物を調製し、適切な容器中に入れて、上記で詳述したように、表示した病態の治療または診断用であることを標識してもよい。
【0202】
追加の定義:
本願全体を通して使用される用語「アルキル」は、直鎖および分岐鎖の基を含む任意の飽和脂肪族炭化水素を示す。アルキル基は、1~20個の炭素原子を有することが好ましい。本明細書で数値範囲、例えば「1~20」が述べられる場合、この範囲は置換基、この場合は炭化水素が、1個の炭素原子、2個の炭素原子、3個の炭素原子等、20個迄の炭素原子を含みうることを意味する。より好ましくは、アルキルは、炭素原子数が1~10の中間サイズのアルキルである。最も好ましくは、特に示さない限り、アルキルは、炭素原子数が1~4の低級アルキルである。アルキル基は、置換されていても、非置換であってもよい。置換されている場合、置換基は、例えば、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、複素脂環基、ハロ、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、スルフィニル、スロホニル、スルホネート、硫酸塩、シアノ、ニトロ、アジド基、ホスホニル、ホスフィニル、オキソイミン、オキシム、ヒドラゾン、カルボニル、チオカルボニル、尿素基、チオ尿素基、O-カルバミル、N-カルバミル、O-チオカルバミル、N-チオカルバミル、S-チオカルバミル、C-アミド、N-アミド、C-カルボキシ、O-カルボキシ、スルホンアミド、グアニル、グアニジニル、ヒドラジン、ヒドラジド、チオヒドラジド、およびアミノであり得、これらの用語は本願において定義した通りである。
【0203】
本願において用語「アルケニル」は、直鎖または分岐鎖の基を含む、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を含む不飽和脂肪族炭化水素を示す。好ましくは、アルケニル基は、炭素原子数が2~20である。より好ましくは、アルケニルは、炭素原子数が2~10の中間サイズのアルケニルである。最も好ましくは、特に示さない限り、アルケニルは、炭素原子数が2~6の低級アルケニルである。アルケニルは置換されていても、非置換であってもよい。置換されたアルケニルは1以上の置換基を有していてもよく、置換基は、それぞれ独立に、例えば、アルキニル、シクロアルキル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、脂肪族ヘテロ環、ハロ、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、スルフィニル、スロホニル、スルホネート、硫酸塩、シアノ、ニトロ、アジド基、ホスホニル、ホスフィニル、オキソ、イミン、オキシム、ヒドラゾン、カルボニル、チオカルボニル、尿素基、チオ尿素基、O-カルバミル、N-カルバミル、O-チオカルバミル、N-チオカルバミル、S-チオカルバミル、C-アミド、N-アミド、C-カルボキシ、O-カルボキシ、スルホンアミド、グアニル、グアニジニル、ヒドラジン、ヒドラジド、チオヒドラジド、およびアミノであり得る。
【0204】
本願において用語「アルキニル」は、直鎖または分岐鎖の基を含む、少なくとも1つの炭素-炭素三重結合を含む不飽和脂肪族炭化水素を示す。好ましくは、アルキニル基は、炭素原子数が2~20である。より好ましくは、アルキニル基は、炭素原子数が2~10の中間サイズのアルキニルである。最も好ましくは、特に示さない限り、アルキニルは炭素原子数が2~4の低級アルキニルである。アルキニルは置換されていても、非置換であってもよい。置換されたアルキニルは1以上の置換基を有していてもよく、置換基は、それぞれ独立に、例えば、シクロアルキル、アルケニル、アリール、ヘテロアリール、脂肪族ヘテロ環、ハロ、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、スルフィニル、スロホニル、スルホネート、硫酸塩、シアノ、ニトロ、アジド基、ホスホニル、ホスフィニル、オキソ、イミン、オキシム、ヒドラゾン、カルボニル、チオカルボニル、尿素基、チオ尿素基、O-カルバミル、N-カルバミル、O-チオカルバミル、N-チオカルバミル、S-チオカルバミル、C-アミド、N-アミド、C-カルボキシ、O-カルボキシ、スルホンアミド、グアニル、グアニジニル、ヒドラジン、ヒドラジド、チオヒドラジド、およびアミノであり得る。
【0205】
用語「シクロアルキル」基は、炭素のみからなる単環基または縮合環基(即ち、隣接する炭素原子対を共有する環)であって、環のうちの1つ以上が、完全に共役したπ電子系を有さないものを示す。シクロアルキル基の例としては、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロペンテン、シクロヘキサン、シクロヘキサジエン、シクロヘプタン、シクロヘプタトリエンおよびアダマンタンが挙げられるが、これらに限定されるものではない。シクロアルキル基は、置換されたものでも、非置換のものでもよい。置換されている場合、置換基は、例えば、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、脂肪族ヘテロ環、ハロ、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、スルフィニル、スロホニル、スルホネート、硫酸塩、シアノ、ニトロ、アジド基、ホスホニル、ホスフィニル、オキソ、イミン、オキシム、ヒドラゾン、カルボニル、チオカルボニル、尿素基、チオ尿素基、O-カルバミル、N-カルバミル、O-チオカルバミル、N-チオカルバミル、S-チオカルバミル、C-アミド、N-アミド、C-カルボキシ、O-カルボキシ、スルホンアミド、グアニル、グアニジニル、ヒドラジン、ヒドラジド、チオヒドラジド、およびアミノであり得、これらの用語は本願において定義した通りである。シクロアルキル基が不飽和の場合、少なくとも1種の炭素-炭素二重結合および/または少なくとも1種の炭素-炭素三重結合を含んでもよい。
【0206】
用語「アリール」は、完全に共役したπ電子系を有する、炭素のみからなる単環基または縮合多環基(即ち、隣接する炭素原子対を共有する環)を示す。アリール基の例としては、フェニル、ナフタレニル、およびアントラセニル等の基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。アリール基は、置換されたものでも、非置換のものでもよい。置換されている場合、置換基は、例えば、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、複素脂環基、ハロ、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、スルフィニル、スロホニル、スルホネート、硫酸塩、シアノ、ニトロ、アジド基、ホスホニル、ホスフィニル、オキソイミン、オキシム、ヒドラゾン、カルボニル、チオカルボニル、尿素基、チオ尿素基、O-カルバミル、N-カルバミル、O-チオカルバミル、N-チオカルバミル、S-チオカルバミル、C-アミド、N-アミド、C-カルボキシ、O-カルボキシ、スルホンアミド、グアニル、グアニジニル、ヒドラジン、ヒドラジド、チオヒドラジド、およびアミノであり得、これらの用語は本願において定義した通りである。
【0207】
「ヘテロアリール」基は、(1つまたは複数の)環内に1種以上の原子、例えば窒素、酸素および硫黄等、を有し、更に完全に共役したπ電子系を有する単環または縮合環(即ち、隣接する炭素原子対を共有する環)を示す。ヘテロアリール基の例としては、ピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、ピラゾール、ピリジン、ピリミジン、トリアジン、テトラジン、キノリン、イソキノリンおよびプリンが挙げられるが、これらに限定されるものではない。ヘテロアリール基は、置換されていても、非置換であってもよい。置換されている場合、置換基は、例えば、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、複素脂環基、ハロ、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、スルフィニル、スロホニル、スルホネート、硫酸塩、シアノ、ニトロ、アジド基、ホスホニル、ホスフィニル、オキソイミン、オキシム、ヒドラゾン、カルボニル、チオカルボニル、尿素基、チオ尿素基、O-カルバミル、N-カルバミル、O-チオカルバミル、N-チオカルバミル、S-チオカルバミル、C-アミド、N-アミド、C-カルボキシ、O-カルボキシ、スルホンアミド、グアニル、グアニジニル、ヒドラジン、ヒドラジド、チオヒドラジド、およびアミノであり得、これらの用語は本願において定義した通りである。
【0208】
「脂肪族ヘテロ環」基は、(1つまたは複数の)環内に1種以上の原子、例えば窒素、酸素および硫黄等、を有する、単環または縮合環を示す。環は1以上の二重結合を有してもよい。しかし、環は、完全に共役したπ電子系を有していない。脂肪族ヘテロ環は、置換されていても、非置換であってもよい。置換されている場合、置換基は、例えば、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、複素脂環基、ハロ、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、スルフィニル、スロホニル、スルホネート、硫酸塩、シアノ、ニトロ、アジド基、ホスホニル、ホスフィニル、オキソイミン、オキシム、ヒドラゾン、カルボニル、チオカルボニル、尿素基、チオ尿素基、O-カルバミル、N-カルバミル、O-チオカルバミル、N-チオカルバミル、S-チオカルバミル、C-アミド、N-アミド、C-カルボキシ、O-カルボキシ、スルホンアミド、グアニル、グアニジニル、ヒドラジン、ヒドラジド、チオヒドラジド、およびアミノであり得、これらの用語は本願において定義した通りである。代表例はピぺリジン、ピペラジン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、モルホリン等である。
【0209】
本願で使用する用語「アミン」および「アミノ」は、それぞれ、-NR’R’’基または-N+R’R’’R’’’基を示し、式中、R’、R’’およびR’’’は、それぞれ、水素、あるいは置換または未置換のアルキル,アルケニル,アルキニル,シクロアルキル,脂肪族ヘテロ環(その環内の炭素を介してアミンの窒素に結合)、またはアリール、またはヘテロアリール(その環内の炭素を介してアミンの窒素に結合)であり、これらの用語は本願において定義した通りである。任意で、R’、R’’およびR’’’は水素または炭素原子数1~4のアルキルである。任意で、R’およびR’’(および存在する場合はR’’’)は水素である。置換されている場合、アミンの窒素に結合している、R’、R’’またはR’’’の炭化水素部分の炭素は、(特に具体的に記載されていない限り)、オキソでは置換されず、R’、R’’およびR’’’は(例えば)カルボニル、C-カルボキシまたはアミドではなく、これらの用語は本願において定義した通りである。
【0210】
「アジド基」基は、-N=N+=N-基を示す。
【0211】
「アルコキシ」基は、本願で定義した、-O-アルキル、-O-アルケニル、-O-アルキニル、-O-シクロアルキル、および-O-脂肪族ヘテロ環のいずれかの基を示す。
【0212】
「アリールオキシ」基は、本願で定義した、-O-アリールおよび-O-ヘテロアリールの両方の基を示す。
【0213】
「ヒドロキシ」基は-OH基を示す。
【0214】
「チオヒドロキシ」基または「チオール」基は-SH基を示す。
【0215】
「チオアルコキシ」基は、本願で定義した、-S-アルキル、-S-アルケニル、-S-アルキニル、-S-シクロアルキル、および-S-脂肪族ヘテロ環のいずれかの基を示す。
【0216】
「チオアリールオキシ」基は、本願で定義した、-S-アリールおよび-S-ヘテロアリールの両方の基を示す。
【0217】
「カルボニル」基は-C(=O)-R’基を示し、式中のR’は上記で定義した通りである。
【0218】
「チオカルボニル」基は-C(=S)-R’基を示し、式中のR’は本願で定義した通りである。
【0219】
「カルボキシ」基は-C(=O)-O-R’基を示し、式中のR’は本願で定義した通りである。
【0220】
「O-カルボキシ」基はR’C(=O)-O-基を示し、式中のR’は本願で定義した通りである。
【0221】
「カルボン酸」基は-C(=O)OH基を示す。
【0222】
「オキソ」基は=O基を示す。
【0223】
「イミン」基は=N-R’基を示し、式中のR’は本願で定義した通りである。
【0224】
「オキシム」基は=N-OH基を示す。
【0225】
「ヒドラゾン」基は=N-NR’R’’基を示し、式中のR’およびR’’は本願で定義した通りである。
【0226】
「ハロ」基はフッ素、塩素、ホウ素、またはヨウ素を示す。
【0227】
「スルフィニル」基は-S(=O)-R’基を示し、式中のR’は本願で定義した通りである。
【0228】
「スルホニル」基は-S(=O)2-R’基を示し、式中のR’は本願で定義した通りである。
【0229】
「スルホネート」基は-S(=O)2-O-R’基を示し、式中のR’は本願で定義した通りである。
【0230】
「硫酸塩」基は-O-S(=O)2-O-R’基を示し、式中のR’は本願で定義した通りである。
【0231】
「スルホンアミド(sulfonamide)」または「スルホンアミド(sulfonamido)」基は、本願で定義したS-スルホンアミドおよびN-スルホンアミドの両方の基を包含する。
【0232】
「S-スルホンアミド」基は-S(=O)2-NR’R’’基を示し、式中のR’およびR’’のそれぞれは上記で定義した通りである。
【0233】
「N-スルホンアミド」基はR’S(=O)2-NR’’-基を示し、式中のR’およびR’’のそれぞれは本願で定義した通りである。
【0234】
「O-カルバミル」基は-OC(=O)-NR’R’’基を示し、式中のR’およびR’’のそれぞれは本願で定義した通りである。
【0235】
「N-カルバミル」基はR’OC(=O)-NR’’-基を示し、式中のR’およびR’’のそれぞれは本願で定義した通りである。
【0236】
「O-チオカルバミル」基は-OC(=S)-NR’R’’基を示し、式中のR’およびR’’のそれぞれは本願で定義した通りである。
【0237】
「N-チオカルバミル」基はR’OC(=S)NR’’-基を示し、式中のR’およびR’’のそれぞれは本願で定義した通りである。
【0238】
「S-チオカルバミル」基は-SC(=O)-NR’R’’基を示し、式中のR’およびR’’のそれぞれは本願で定義した通りである。
【0239】
「アミド(amide)」基または「アミド(amido)」基は、本願で定義したC-アミドおよびN-アミドの両方の基を包含する。
【0240】
「C-アミド」基は-C(=O)-NR’R’’基を示し、式中のR’およびR’’のそれぞれは本願で定義した通りである。
【0241】
「N-アミド」基はR’C(=O)-NR’’-基を示し、式中のR’およびR’’のそれぞれは本願で定義した通りである。
【0242】
「尿素基」は-N(R’)-C(=O)-NR’’R’’’基を示し、式中のR’、R’’およびR’’’のそれぞれは本願で定義した通りである。
【0243】
「チオ尿素基」は-N(R’)-C(=S)-NR’’R’’’基を示し、式中のR’、R’’およびR’’’のそれぞれは本願で定義した通りである。
【0244】
「ニトロ」基は-NO2基を示す。
【0245】
「シアノ」基は-C≡N基を示す。
【0246】
「ホスホニル」または「ホスホネート」という用語は、P(=O)(OR’)(OR’’)基を示し、式中のR’およびR’’はそれぞれ上記で定義した通りである。
【0247】
「リン酸塩」という用語は、-O-P(=O)(OR’)(OR’’)基を示し、式中のR’およびR’’はそれぞれ上記で定義した通りである。
【0248】
「ホスフィニル」という用語は、-PR’R’’基を示し、式中のR’およびR’’はそれぞれ上記で定義した通りである。
【0249】
「ヒドラジン」という用語は、-NR’-NR’’R’’’基を示し、式中のR’、R’’およびR’’’は本願で定義した通りである。
【0250】
本願で使用する「ヒドラジド」という用語は、-C(=O)-NR’-NR’’R’’’基を示し、式中のR’、R’’およびR’’’は本願で定義した通りである。
【0251】
本願で使用する「チオヒドラジド」という用語は、-C(=S)-NR’-NR’’R’’’基を示し、式中のR’、R’’およびR’’’は本願で定義した通りである。
【0252】
「グアニジニル」基は-RaNC(=NRd)-NRbRc基を示し、式中のRa、Rb、RcおよびRdはそれぞれ、R’およびR’’について本願で定義したものとなり得る。
【0253】
「グアニル」基または「グアニン」基はRaRbNC(=NRd)-基を示し、式中のRa、RbおよびRdは本願で定義した通りである。
【0254】
本明細書に記載の実施形態のいずれかについて、本明細書に記載の化合物は、塩、例えば、その薬学的に許容される塩の形態および/またはそのプロドラッグの形態であり得る。
【0255】
本明細書において、語句「薬学的に許容される塩」とは、親化合物の荷電種とその対イオンを指し、通常、投与化合物の生物活性および特性を抑制することなく、親化合物の溶解特性を変更するため、および/または親化合物によって生物で生じる顕著な刺激を低減するために使用される。代わりに、本願に記載の化合物の薬学的に許容される塩は、例えば、反応混合物から化合物を単離するか、化合物を再結晶化する過程といった、化合物の合成途中に形成することもできる。
【0256】
本発明の実施形態の一部の態様において、本明細書に記載の化合物の薬学的に許容される塩は、任意選択で酸付加塩および/または塩基付加塩であってもよい。
【0257】
酸付加塩は、正電荷を有する形態(例えば、塩基性基がプロトン化されている形態)の本化合物の少なくとも1つの塩基性基(例えば、アミンおよび/またはグアニジン)と、薬学的に許容される塩を形成する、選択した塩基から誘導された少なくとも1つの対イオンとの組合せを含む。それゆえに本願に記載の化合物の酸付加塩は、化合物の1つまたは複数の塩基性基と、それと当量の1つまたは複数の酸とで形成された複合体であり得る。
【0258】
塩基付加塩は、負電荷を有する形態(例えば、酸性基が脱プロトン化されている形態)の本化合物の少なくとも1つの酸性基(例えば、カルボン酸基)と、薬学的に許容される塩を形成する、選択した酸性基から誘導された少なくとも1つの対イオンとの組合せを含む。それゆえに本明細書に記載の化合物の塩基付加塩は、化合物の1つまたは複数の酸性基と、それと当量の1つまたは複数の塩基とで形成された複合体であり得る。
【0259】
本化合物中の電荷を有する基と、塩における対イオンとの化学量論的な割合に応じて、酸付加塩および/または塩基付加塩は、モノ付加塩(mono-addition salt)またはポリ付加塩(poly-addition salt)のいずれかであり得る。
【0260】
用語「モノ付加塩」は、本明細書で使用する場合、対イオンと、電荷を有する形態の本化合物との化学量論的な比率が1:1である塩であって、1モル当量の本化合物当たり1モル当量の対イオンを包含する塩を指す。
【0261】
語句「ポリ付加塩」は、本明細書で使用する場合、対イオンと、電荷を有する形態の化合物との化学量論的な比率が1:1より大きく、例えば、2:1、3:1、4:1等である塩であって、1モル当量の化合物当たり2モル当量以上の対イオンを包含する塩を指す。
【0262】
薬学的に許容される塩の例としては、アンモニウムカチオンまたはグアニジニウムカチオンおよびそれらの酸付加塩、および/またはカルボン酸アニオンおよびその塩基付加塩が考えられるが、これらに限定されるものではない。
【0263】
塩基付加塩としては、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、マグネシウム等のカチオン対イオンといった、薬学的に許容される塩を形成するものが挙げられる。
【0264】
酸付加塩としては、これらに限定されるものではないが、塩酸付加塩を提供する塩酸、臭化水素酸付加塩を提供する臭化水素酸、酢酸付加塩を提供する酢酸、アスコルビン酸付加塩を提供するアスコルビン酸、ベシレート付加塩を提供するベンゼンスルホン酸、カンファースルホン酸付加塩を提供するカンファースルホン酸、クエン酸付加塩を提供するクエン酸、マレイン酸付加塩を提供するマレイン酸、リンゴ酸付加塩を提供するリンゴ酸、メタンスルホン酸(メシレート)付加塩を提供するメタンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸付加塩を提供するナフタレンスルホン酸、シュウ酸付加塩を提供するシュウ酸、リン酸付加塩を提供するリン酸、p-トルエンスルホン酸付加塩を提供するトルエンスルホン酸、コハク酸付加塩を提供するコハク酸、硫酸付加塩を提供する硫酸、酒石酸付加塩を提供する酒石酸およびトリフルオロ酢酸付加塩を提供するトリフルオロ酢酸などの種々の有機および無機酸を含み得る。これらの酸付加塩の各々は、本明細書において定義するような、モノ付加塩またはポリ付加塩のいずれでもよい。
【0265】
本明細書において、用語「プロドラッグ」とは、体内において活性化合物(例えば、上述した式で表される化合物)に変換される化合物を指す。プロドラッグは、通常、例えば、吸収を増強することによって、投与を促進するように設計される。プロドラッグは、例えば、エステル基で修飾された(例えば、化合物の任意の1つもしくは複数のヒドロキシル基が、エステル基を形成するようにアシル基、任意選択で、(C1~4)アシル(例えば、アセチル)基によって修飾されている、および/または化合物の任意の1つもしくは複数のカルボン酸基が、エステル基を形成するようにアルコキシ基もしくはアリールオキシ基、任意選択で、(C1~4)アルコキシ(例えば、メチル、エチル)基によって修飾されている)活性化合物を含み得る。
【0266】
さらに、本明細書に記載の化合物の各々は、その塩も含み、その溶媒和物または水和物の形態であり得る。
【0267】
用語「溶媒和物」は、溶質(本明細書に記載の複素環式化合物)と溶媒によって形成される、可変の化学量論(例えば、ジ、トリ、テトラ、ペンタ、ヘキサなど)を有する複合体であって、溶媒が溶質の生物活性を妨害しないものを指す。
【0268】
用語「水和物」は、溶媒が水である、上記溶媒和物を指す。
【0269】
本明細書に記載の化合物は、多形体として使用してもよく、本実施形態は、化合物の任意の同形体およびそれらの任意の組合せをさらに包含する。
【0270】
本願で使用する「約」という用語は±20%または±10%を表す。
【0271】
用語「含む(comprise)」、「含んでいる(comprising)」、「含む(include)」「含んでいる(including)」、「有している(having)」およびそれらの活用形は、「含むが、限定されない」ことを意味する。
【0272】
用語「からなる」は、「含み、限定される」ことを意味する。
【0273】
用語「から実質的になる」は、組成物、方法または構造が追加の成分、工程および/または部分を含み得ることを意味する。しかし、追加の成分、工程および/または部分は、特許請求される組成物、方法または構造の基本的かつ新規な特性を実質的に変更しない場合に限られる。
【0274】
本明細書で使用する単数形「a」、「an」および「the」は、文脈が明らかに他方を示さない限り、複数を包含する。例えば、「化合物(a compound)」または「少なくとも1種の化合物」には、複数の化合物を含むことができ、それらの混合物をも含み得る。
【0275】
本願全体を通して、本発明のさまざまな実施形態は、範囲形式にて示され得る。範囲形式での記載は、単に利便性および簡潔さのためであり、本発明の範囲の柔軟性を欠く制限でではないことを理解されたい。従って、範囲の記載は、可能な下位の範囲の全部、およびその範囲内の個々の数値を特異的に開示していると考えるべきである。例えば、1~6等の範囲の記載は、1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6等の部分範囲のみならず、その範囲内の個々の数値、例えば1、2、3、4、5および6も特異的に開示するものとする。これは、範囲の大きさに関わらず適用される。
【0276】
本明細書に数値範囲が示される場合、それは常に示される範囲内の任意の引用数(分数または整数)を含むことを意図する。第1の指示数と第2の指示数「との間の範囲」という表現と、第1の指示数「から」第2の指示数「の範囲」という表現は、本明細書で代替可能に使用され、第1の指示数および第2の指示数と、それらの間の分数および整数の全部を含むことを意図する。
【0277】
本明細書で使用する「方法」という用語は、所定の課題を達成するための様式、手段、技術および手順を意味し、化学、薬理学、生物学、生化学および医療の各分野の従事者に既知のもの、または既知の様式、手段、技術および手順から従事者が容易に開発できるものが含まれるが、これらに限定されない。
【0278】
本発明の特徴であって、明確にするために個別の実施形態のとして記載したものは、組み合わせて1つの実施形態としても提供可能であることを理解されたい。逆に、簡潔にするために1つの実施形態として記載した本発明の様々な特徴を、個別に、または任意の適切な部分組合せで、または本発明で記載した他の実施形態との適切な組み合わせとして提供することもできる。様々な実施形態に関連して記載された特徴は、その特徴なしでは実施形態が動作不能でない限り、それらの実施形態の必須要件とは見なさない。
【0279】
上述したように本明細書に記載され、下記特許請求の範囲によって請求される本発明のさまざまな実施形態および態様は、以下の実施例によって実験的に支持されるものである。
【実施例】
【0280】
以下の実施例を次に参照するが、これらは上記説明と共に、本発明のいくつかの実施形態を限定することなく例示するものである。
【0281】
実施例1
一般的な手順として、シコニン、あるいはシコニンまたはその誘導体を含む組成物をカプセル剤に製剤化し、任意で、レシチン(主としてホスファチジルコリンを含むリン脂質)と共に製剤化する(例:シコニン対レシチンの重量比が約1:1)。シコニンまたはその誘導体は、(合成または天然由来の)実質的に純粋なもの、あるいはLithospermum erythrorhizon、Arnebia euchromaまたはムラサキ科の他の植物等の植物抽出物の一部であり得る。
【0282】
上記の一般手順を使用し、適切な溶媒を使用してムラサキ(Lithospermum erythrorhizon)の根(紫根)の抽出物を調製し、続いてスプレー乾燥と篩にかけ、紫色の粉末を得た。約30%のシコニンおよび/またはその誘導体を含む175mgの粉末化ムラサキ抽出物を同じ重量のレシチン(Lipoid(登録商標)PS P 20X、Lipoid GmbHより入手)をCapsugel(登録商標)遅延放出(DR)カプセルに入れた。
【0283】
カプセル剤の代わりに、レシチンとシコニン(純度95%)を5:1のレシチン:シコニン比で含み、溶媒としての44%アルコールおよびはちみつを含むシロップ剤を調製した。
【0284】
文献の報告によると、1日当たり8グラム以下の用量では、シコニンの毒性は発生しないと考えられた。
【0285】
実施例2
In vitroアッセイにおける、SARS-コロナウイルス2の3CLプロテアーゼに対するシコニンの影響
SARS-コロナウイルス2(COVID-19関連コロナウイルス)の3CLプロテアーゼの活性に対する阻害を市販のキット(BPS cat. 79955-1)に基づくアッセイで決定した。150ngの3CLプロテアーゼを漸減する濃度のシコニンと共に30分間インキュベートした。シコニンはNLC pharmaから入手し、純度は95%であった。50μlの50μMのキット基質(終濃度は25μM)の添加によって反応を開始し、CLARIOstar(登録商標)Plusプレートリーダー(BMG Labtech)を用いて、(340nmの励起波長、510nmの発光波長で)蛍光をモニタリングした。3CLプロテアーゼ活性は、相対蛍光単位/分として定量した。
【0286】
表1に示したように、シコニンが3CLプロテアーゼの50%を阻害した濃度(IC50)は約10μMであり、3CLプロテアーゼのほぼ完全な阻害は濃度100μMのシコニンが発揮した。
【0287】
これら結果は、シコニンがSARS-コロナウイルス2の3CLプロテアーゼを阻害し得ることを示している。
【0288】
表1: 蛍光アッセイ(平均±標準偏差)で求めた、種々の濃度のシコニンの存在下における3CLプロテアーゼの酵素活性
【表1】
【0289】
実施例3
COVID-19患者に対するムラサキ抽出物の効果
実施例1に記載したように調製し、カプセル剤に製剤化した例示的なムラサキ抽出物の効能をCOVID-19に罹患した患者の臨床試験で評価した。1つの群では、10人の患者が175mgのムラサキ抽出物およびレシチンを1日当たり4~8回投与された。他方の群では、19人の患者がビタミンCおよびスピルリナ栄養補助食品を与えられた(対照群)。全ての患者の年齢は60~90歳の範囲内であった。
【0290】
ムラサキ抽出物で処置した群においては、10人の患者すべてが生存し、10人中1人(10%)が人工呼吸器を必要とし、退院するまでの平均時間は約6~7日であった。一方、他方の群においては、5人の患者(26%)が死亡し、5人(26%)が人工呼吸器を必要とし、退院するまでの平均時間は約3週間であった。
【0291】
図2に示したように、ムラサキ抽出物で処置された患者は、対照患者と比べて、顕著に低いレベルのC反応性タンパク質(CRP)およびフェリチン(両方とも炎症に関連するタンパク質である)を示した。
【0292】
実際、大部分の症例において、ムラサキ抽出物処置患者のCRPレベルは、数日のうちに正常化し、退院する際の典型的なレベルは4~20mg/リットルであった。
【0293】
高いD-ダイマーレベルが6人の患者で観察された。6人のうちの1人をムラサキ抽出物で処置したところ、D-ダイマーレベルは正常に戻り、一方、5人は対照処置を受け、5人中誰も生存することができなかった。
【0294】
これらの結果は、ムラサキ抽出物がCOVID-19等のウイルス性疾患の治療および臨床状況における炎症の減少に効果的であることを示す。
【0295】
加えて、以下の症例研究を提供する。
【0296】
症例1: 74歳男性、気管支喘息およびCOPD(酸素による治療を含む毎日の治療有)、高血圧および糖尿病の既往歴あり、に対してCOVID-19流行期の6か月間、毎日、ムラサキ抽出物を含むカプセル剤を予防として投与した(他の抗ウイルス性処置無し)。対象は社会的に非常に活動的で、多くの人と接触した。対象のアシスタント2人と運転手は、彼の傍で働いているときにCOVID-19に感染したが、対象は感染の兆候を示さなかった(正常なCPR試験結果を含む)。
【0297】
症例2: 60歳男性、虚血性心疾患、高血圧、過体重、および適切な治療(血栓溶解剤の注射を含む)の既往歴有、がCOVID-19と(PCR検査)によって診断され、続いて咳、虚弱、および(x線による)両側拡張性気管支肺炎の所見が見られた。抗生物質およびステロイドによる処置の24時間後には、病状が悪化し、ビタミン類およびムラサキ抽出物を含むカプセル剤の投与を開始した。約48~72時間後には、状況が改善し始め、さらに4日後には、息切れと咳がほとんどなくなった。
【0298】
症例3: 68歳男性、適応する既往歴無し、が酸素飽和度59%で入院した。COVID-19および広範囲にわたる両側性気管支肺炎が認められ、抗生物質、ステロイドおよび血栓溶解剤による処置が開始された。病状が悪化し(酸素飽和度10~20%)、挿管され、ICUの人工呼吸器に入れられた。48時間の人工呼吸の間に改善は見られなかった。シコニンを含むシロップ剤(実施例1の記載のように調製)を次に経鼻胃管を介して投与した。この段階でCRPのレベルは約300であった。約48~72時間後にCRPレベルは65に低下し、その数日後には正常値に戻った。その短期間後に酸素飽和度は上昇した。対象は回復し、3週間後に退院した。
【0299】
症例4: 81歳女性、高血圧、糖尿病および末梢血管疾患(脳のカテーテル留置有)の既往歴有、が進行性の息切れの悪化後に(PCR検査によって)COVID-19と診断された。自宅での酸素吸入とステロイドによる治療を開始した。次に対象は発熱と咳を発症し、肺炎と診断され、抗生物質の投与を受けた。4日後、対象の健康状態はさらに悪化し、入院した。酸素飽和度は85%であり、呼吸器とレミデシビルによる治療が開始された。5日後に病状はさらに悪化し、CRPレベルは120になった。対象は次にムラサキ抽出物カプセル剤を投与され、ECMO装置に取り付けられた。約12時間後、酸素飽和度は約98%で安定し、次の朝にはCRPレベルが65に低下した。4日後には、CRPレベルはさらに15に低下し、その後、正常値まで低下し、臨床改善が観察された。ムラサキ抽出物治療の開始から8~9日後の対象は退院することができた。
【0300】
実施例4
例示的なカプセル製剤の調製
(胃を通過し、小腸で分解することが可能な)RX型カプセル剤を200mgのシコニングリコシド、200mgのレシチンおよび少量のステアリン酸マグネシウム(潤滑剤)で調製した。シコニングリコシドは約40重量%のモノグルコシルシコニンおよび約60重量%のトリグルコシルシコニンを含み、比較的水溶性であった。
【0301】
実施例5
例示的なカプセル製剤の調製
250mgの根抽出物粉末(実施例1の記載に従って調製または市販品を入手)および約20%のホスファチジルセリン(Lipoid(登録商標)PSP20X、LipoidGmbHより入手)を含む250mgのレシチンでカプセル剤を調製した。根抽出物粉末は、任意で、約30重量%のシコニンまたはその誘導体を含み、活性成分の量は約75mgであった。
【0302】
実施例6
例示的なカプセル製剤の調製
サイズ00の酸耐性カプセル(CapsCanadaより入手)に下記成分の混合物を充填した。
135mgの微小結晶性セルロース(Avicel(登録商標)PH102、DuPont Nutritionより入手)、
約20%のホスファチジルセリン(Lipoid(登録商標)PS P 20X、Lipoid GmbHより入手)を含む100mgのレシチン、
48mgのポリエチレングリコール(PEG 3000、Merckより入手)、
33mgのポロクサマー407(Kolliphor(登録商標)P407、BASFより入手)、
120mgのシコニン(有効性84.7%、Henan Steeda Industrial Co.Ltd.より入手)、および
100mgのムラサキ根抽出物粉末(Imaherbより入手)。
【0303】
微小結晶性セルロース、シコニン、ポロクサマーおよびポリエチレングリコールを粉砕し、レシチンおよび根抽出物粉末と適切な比率で混合した。例えば、カプセル当たり536mg(±27mg)の混合物で7000個のカプセルを充填するために、3752グラムの均一な混合物を使用した。
【0304】
比較的純度の高い120mgのシコニンは、比較的高用量のシコニンを可能にし、これは根抽出物粉末のみの使用ではより難しかった。このように高用量の製剤は、例えば、中症および重症のコロナウイルス感染症の症例の治療に特に適している。
【0305】
実施例7
COVID-19患者に対する例示的な製剤の効果
例示的なシコニン含有組成物の効能を、SARS-CoV-2感染が(RT-PCR検査によって)確認された入院中のCOVID-19患者に対する乱数化二重盲目プラセボ対照臨床試験によって求めた。投与された組成物は、実施例6に記載の方法で調製したシコニンのリポソーム製剤であった。
【0306】
体重が60kg未満の患者に対して2個のカプセル剤を1日当たり3回(1日当たり6個のカプセル剤を)投与し、体重が60~80kgの患者に対しては、2個のカプセル剤を1日当たり4回(1日当たり8個のカプセル剤を)投与し、体重が80kg超の患者に対しては、3個のカプセル剤を1日当たり4回(1日当たり12個のカプセル剤を)投与した。投与は、患者の入院期間の1~10日目に実施した。プラセボのカプセル剤(活性成分無しで同じ担体を含む)は、同等の体重の患者群に対して投与した。両方の群は、カプセル剤に加えて、COVID-19に対する標準的な医療を受けた。
【0307】
シコニン含有組成物の病気の重症度に対する影響を(プラセボに対して)求めた。病の重症度は、退院までの時間および/または24時間維持される早期警戒スコア2(NEWS2)≦2によって定義される臨床改善までの時間で評価した。
【0308】
病気/健康を評価するための追加のパラメーターとしては、例えば、血圧、心拍数、呼吸数、酸素飽和度および/または体温の変化、治療の1日目から(RT-PCR検査で)ウイルスについて負の試験結果が出るまでの期間、群内の死亡者数、症状の悪化および機械的呼吸を必要とする症例数、および/または追加酸素を必要とする症例数および/または期間が挙げられる。
【0309】
実施例8
In vitroアッセイにおける、SARS-コロナウイルス2の3CLプロテアーゼに対するArnebia euchroma抽出物の効果
SARS-コロナウイルス2の組換え3CLプロテアーゼの活性に対するArnebia euchroma抽出物による活性阻害を決定した。抽出物は、製造者によって30%のシコニンを含有すると同定されているが、HPLCの検査によると、グリコシドの形態、例えば、分子量約800Daのシコニンのみを含んでいた。
【0310】
96穴の黒色非結合平底プレート(Greiner Bio-One)を使用し、反応容積を100μlとして蛍光アッセイを実施した。50μlの150ngの3CLプロテアーゼを抽出物と共に、反応バッファー中、室温で30分間インキュベートした。反応は、50μlの、反応バッファー(5mMのBolt(商標)、50mMのTris,pH8.0、0.75MのNa2SO4)中のペプチド基質(1μM)の溶液の添加によって開始した。基質はCBR1_488またはCovidyte(商標)TF670であり、3CLプロテアーゼによる開裂によって、それぞれ、488nmまたは670nmの蛍光をもたらした。蛍光はSynergy(商標)HTプレートリーダー(BioTek)でモニタリングし、発光/励起波長は、それぞれ、485/525nmまたは590/645nmとした。示した濃度は、製造者の報告したシコニンの濃度(即ち、原料抽出物が30%のシコニンを含有すると想定したもの)であった。
【0311】
表2に示したように、抽出物は3CLプロテアーゼを阻害し、IC50は、488nmで検出したアッセイでは1.25と2.5μMの間、670nmで検出したアッセイでは5と10μMの間であった。
【0312】
表2: 488および670nmの蛍光アッセイで求めた、種々の量のArnebia euchroma抽出物の存在下におけるSARS-CoV-2の3CLプロテアーゼの酵素活性(名目シコニン濃度は、製造者の報告した30%のシコニンを含有する抽出物に基づく)
【表2】
【0313】
これらの結果は、Arnebia euchroma抽出物がSARS-CoV-2の3CLプロテアーゼを阻害し、シコニンよりも強力であり得るシコニン誘導体を含むことを示した。
【0314】
実施例9
例示的な腸溶性コート錠剤製剤の調製
錠剤のコアは、次のように調製した。錠剤当たり30mgの微小結晶性セルロース(Avicel(登録商標)101)、錠剤当たり10mgのコロイド状二酸化ケイ素(Aerosil(登録商標)200、Evonik社より入手)、錠剤当たり250mgのホスファチジルセリン、および錠剤当たり275mgの純度約95%のシコニン(Henan社より入手)を、40mgのエタノールの補助下、湿式造粒法で混合した。錠剤当たり200mgのマニトールDC(Merck社より入手)、錠剤当たり10mgのコロイド状二酸化ケイ素(Aerosil(登録商標)200)、錠剤当たり100mgの微小結晶性セルロース(Avicel(登録商標)102、Mingtai社より入手)、錠剤当たり20mgのクロスポビドン(Kollidon(登録商標)CL)、および錠剤当たり10mgのステアリン酸マグネシウムを乾式造粒法で混合した。錠剤コアは、Dio/Punchセットno.3542x7480/19.5×9mm、楕円形標準、カプセル型を用いて打錠した。
【0315】
次に錠剤のコアを、28グラムのEudragit(登録商標)L100腸溶性ポリマー、5.6グラムのクエン酸トリエチル、193.2グラムの1-プロパノール、113.2グラムのアセトン、1.5グラムのレッドポンソーを含む組成物でコートし、
図4に示した、赤色で、平滑なコーティングを有する錠剤を得た。
【0316】
追加の錠剤は、湿式造粒法および乾式造粒法を下記表3に示した原料を用いて実施し、本願において上述したように調製した。
【0317】
【0318】
錠剤コアは、Dio/Punchセットno.3543x6496/16x9mm、楕円形標準、カプセル型を用いて打錠した。
【0319】
次に錠剤コアは、本願で上述したコーティング組成物でコートした。
【0320】
錠剤(約250mgのシコニンを含む)を、HPLCとUV分光法および溶出試験機II(USP)を用いて分析した。錠剤を、シミュレーションされた胃液(pH1.0~1.2、0.1NのHCl)に120分、続いてシミュレーションされた腸液(pH6.8、バッファー中の0.1 SLS)に120分暴露した。
【0321】
図5に示したように、2時間の間に、シミュレーションされた胃内環境にほとんどシコニンの放出はなく、一方、2時間の間に、シミュレーションされた腸内環境にシコニンの約75%が放出された。
【0322】
(表3に記載の)組成物A、BおよびCで調製した錠剤の溶出を、本願で上述したように分析した。
【0323】
表4に示したように、組成物A、BおよびCのそれぞれで調製した錠剤は、含まれているシコニンの大部分がシミュレーションされた腸内環境への暴露によって放出され、一方、シミュレーションされた胃内環境ではシコニンの放出はほとんどなかった。組成物C(約5%のポロクサマーを含む)の錠剤は、特に急速に溶解したが、組成物AおよびBの錠剤はより穏やかに溶解した。
【0324】
表4: シミュレーションされた胃内環境(pH1.0)への2時間の暴露、および続くシミュレーションされた腸内環境(pH6.8)への6時間の暴露において、例示的な錠剤から放出されたシコニンのパーセンテージ
【表4】
【0325】
これら結果は、錠剤が効果的且つ高く制御された手法でシコニンを放出し、ポロクサマー等の適切な賦形剤の使用によって溶出速度が制御可能であることを示す。
【0326】
実施例10
例示的なカプセル製剤の調製
Lithospermum erythrorhizon抽出物を含む、リン脂質含有、フィトソーム様組成物を表5に示したように調製し、サイズ0のカプセルを(半自動カプセル充填機)で充填するために使用した。表5に詳細を示したように、原料を湿式造粒法で混合し、いくつかの例では乾式造粒法で混合した。カプセル含有成分の重量は、顆粒のカプセルへの最適流入が達成されるように選択した。
【0327】
【0328】
(表5に示した)組成物I、IIおよびIIIを充填したカプセル剤の溶出を、実施例9に記載した手順などに基づき解析した。
【0329】
表6に示したように、シミュレーションされた腸内環境組において、組成物Iはゆっくりとした放出を示し(植物抽出物の効果と関連する可能性あり)、一方、組成物IIおよびIIIは、約1~2時間後に完全な放出を示した。シミュレーションされた胃内環境においては有意な放出は見られなかった。
【0330】
表6: シミュレーションされた胃内環境(pH1.0)への2時間の暴露、および続くシミュレーションされた腸内環境(pH6.8)への6時間の暴露において、例示的なカプセル剤から放出されたシコニンのパーセンテージ
【表6】
【0331】
これら結果は、カプセル剤が効果的且つ高く制御された手法でシコニンを放出することができることを示す。
【0332】
実施例11
追加活性成分を含む例示的な製剤
実施例1、4、5および6のいずれかの手順で組成物を調製するが、但し、組成物は、3Cプロテアーゼ阻害活性を有する活性成分(例:2-ヘキサノイル-4,6-ジクロロ-5-メトキシレソルシノールとしても知られる「DIFF-1」)および/または下記の抗炎症活性を有する活性成分の少なくとも1種をさらに含む。
【0333】
IL6および/またはIL17阻害剤、任意で、1以上のフラボノイド(例:デオキシケンペロールまたはケルセチン)、置換フラボノイド(例:没食子酸エピガロカテキン(EGCG)および/またはケルシトリン)、スチルベノイド(例:レスベラトールおよび/またはO-トリメチルレスベラトール)、ポリフェノール(例:エラグ酸)、クルクミノイド(例:クルクミン)、ベルベリン、セラストールおよび/または植物抽出物(例:ムラサキ(Boswellia)抽出物および/またはヘナ(Lawsonia inermis)抽出物)、および/または
エラスターゼ阻害剤、任意で、N-アセチルシステインおよび/または
図3に示した1以上の化合物。
【0334】
組成物について、任意で、(例:実施例2または8に記載の方法によって)in vitroでおよび/または臨床で(例:実施例3または7に記載の方法によって)活性を試験する。ナフトキノン(例:シコニンまたはその誘導体)単独と、ナフトキノン無しの上記追加活性成分との活性の比較によって、組成物の相乗活性を評価してもよい。
【0335】
代わりに、実施例1に記載したような組成物を、1以上の上述した活性成分を含む1以上の組成物と組み合わせて使用する。
【0336】
2以上の組成物の活性を、(例:実施例2または8に記載の方法によって)in vitroで3CLプロテアーゼと組成物とを同時に又は連続的に接触させて試験する、および/または(例:実施例3または7に記載の方法によって)臨床で2以上の組成物を同時に又は連続的に患者に投与して試験する。組み合わせ療法については、ナフトキノン単独の活性と、ナフトキノン無しの上記の追加の活性成分の活性との比較によって、相乗活性を評価してもよい。
【0337】
実施例12
リポソーム製剤
適切な公知の技術に従って、リポソームを調製し、シコニンまたはその誘導体(例:植物抽出物由来)をロードした。リポソームの量は任意であり、組成物内のリポソームの脂質(例:レシチン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリンおよび/またはPEG化脂質)の重量は、シコニン(またはその誘導体)の重量の2%~100%(例:5~500mgのリポソーム脂質)とする。リポソーム製剤は任意で、実施例8に記載のような1以上の追加活性成分をさらに含む。
【0338】
リポソームは本願において上述したような方法、例えば、リポソームを含む液状組成物をカプセルの殻に入れることで、任意に製剤化される。
【0339】
「フィトソーム」製剤の形成には、ホスファチジルコリンおよび/またはホスファチジルセリン、および本願に記載の植物抽出物(シコニンまたはその誘導体を含むもの)を、任意で、エタノール中に溶解し、激しく混合した、次にろ過し、その後、溶媒を蒸発させる(例:室温)。得られた個体を80ミクロン未満のサイズの顆粒に粉砕し、そして均質化する。
【0340】
リポソーム組成物について、任意で、(例:実施例2または8に記載の方法によって)in vitro、および/または(例:実施例3または7に記載の方法によって)臨床で活性を試験する。リポソームの効果は、リポソームなしの対応する組成物の活性と比較することで決定してもよい。
【0341】
実施例13
追加のナフトキノン誘導体を含む組成物
実施例1、4、5、6、11および/または12のいずれかの手順で組成物を調製するが、但し、組成物は、本願で上記した活性成分の代わりに(または加えて)、アルカンニン(例:合成または天然原料由来の精製アルカンニン、あるいは植物(Alkanna tinctoriaや他のムラサキ科植物)抽出物の一部であるアルカンニン)、デオキシシコニンまたはそのエステル(例:酢酸エステル、イソブチル酸エステル、イソ吉草酸エステル、2-メチル酪酸エステル、β-ヒドロキシ、またはβ,β-ジメチルアクリル酸エステル)等の、シコニンまたはアルカンニンの関連化合物を使用する。
【0342】
組成物について、任意で、(例:実施例2または8に記載の方法によって)in vitro、および/または(例:実施例3または7に記載の方法によって)臨床で活性を試験する。
【0343】
本発明をその特定の実施形態との関連で記載してきたが、多数の変更、修正および変化が当業者には明らかであろう。従って、そのような変更、修正および変化の全ては、添付の特許請求の範囲の趣旨および広い範囲内に含まれることを意図するものである。
【0344】
本明細書で言及される全ての刊行物、特許および特許出願は、個々の刊行物、特許および特許出願のそれぞれが具体的および個別に参照により本明細書に組み込まれる場合と同程度に、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。加えて、本明細書中の任意の参考文献の引用または特定は、それらの参考文献が本発明の先行技術として使用できることの容認として解釈されるべきではない。また、各節の表題が使用される範囲において、必ずしも限定するものとして解釈されるべきではない。さらに本願の基礎出願に係る書類も、本参照をもってその全体を本明細書に援用する完全に組み込まれたものとする。
【国際調査報告】