(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-04
(54)【発明の名称】5-メトキシ-N,N-ジメチルトリプタミンを含むエアロゾル
(51)【国際特許分類】
A61K 31/4045 20060101AFI20230328BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230328BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20230328BHJP
A61K 9/12 20060101ALI20230328BHJP
A61K 47/04 20060101ALI20230328BHJP
【FI】
A61K31/4045
A61P43/00 111
A61P11/00
A61K9/12
A61K47/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022549753
(86)(22)【出願日】2021-02-24
(85)【翻訳文提出日】2022-10-13
(86)【国際出願番号】 EP2021054502
(87)【国際公開番号】W WO2021170614
(87)【国際公開日】2021-09-02
(32)【優先日】2020-02-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521370802
【氏名又は名称】ジーエイチ リサーチ アイルランド リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100227008
【氏名又は名称】大賀 沙央里
(72)【発明者】
【氏名】ターウェイ,タイス
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA24
4C076BB27
4C076CC15
4C076CC29
4C076DD21
4C086AA01
4C086BC13
4C086MA02
4C086MA05
4C086MA13
4C086MA56
4C086NA10
4C086ZA59
4C086ZC41
(57)【要約】
吸入経路を介した患者への投与に有用な5-メトキシ-N,N-ジメチルトリプタミン(5-MeO-DMT)または薬学的に許容されるその塩のエアロゾルが提供される。エアロゾルは、約0.5mg/L~約12.5mg/Lの範囲のエアロゾル粒子質量密度を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)薬学的に許容される気体、(b)5-メトキシ-N,N-ジメチルトリプタミン(5-MeO-DMT)または薬学的に許容されるその塩のエアロゾル粒子を含むエアロゾルであって、前記エアロゾルが約0.5mg/L~約12.5mg/Lのエアロゾル粒子質量密度を有する、エアロゾル。
【請求項2】
前記エアロゾル粒子質量密度が約1.3mg/L~約10mg/L、特に約2mg/L~約9mg/Lである、請求項1に記載のエアロゾル。
【請求項3】
前記薬学的に許容される気体が空気である、請求項1または2に記載のエアロゾル。
【請求項4】
前記エアロゾル粒子の質量の合計に対する、5μm以下の空気動力学径を有するエアロゾル粒子の重量パーセンテージとして決定される微粒子画分(FPF)が少なくとも90wt%である、請求項1~3のいずれか一項に記載のエアロゾル。
【請求項5】
前記エアロゾル粒子が1wt%未満の不純物、特に0.5wt%未満の不純物を含有する、請求項1~4のいずれか一項に記載のエアロゾル。
【請求項6】
エアロゾル形成中の化学反応の結果として生じる5-MeO-DMTの化学修飾から得られる0.5wt%未満の5-MeO-DMT分解産物、特に0.2wt%未満の5-MeO-DMT分解産物を含有する、請求項1~5のいずれか一項に記載のエアロゾル。
【請求項7】
(a)空気、(b)5-MeO-DMTまたは薬学的に許容されるその塩のエアロゾル粒子から本質的になる、請求項1~6のいずれか一項に記載のエアロゾル。
【請求項8】
前記エアロゾル粒子が遊離塩基の形態の5-MeO-DMTを含有する、請求項1~7のいずれか一項に記載のエアロゾル。
【請求項9】
3ミクロン未満かつ0.1ミクロンより大きい空気動力学的質量中央径、特に2ミクロン未満かつ0.1ミクロンより大きい空気動力学的質量中央径によって特徴付けられる、請求項1~8のいずれか一項に記載のエアロゾル。
【請求項10】
a)固体支持体上に構成された5-MeO-DMTまたは薬学的に許容されるその塩の薄層を熱エネルギーに曝露すること、およびb)5-MeO-DMTの薄層に空気を流してエアロゾル粒子を生成することによって形成される、請求項1~9のいずれか一項に記載のエアロゾル。
【請求項11】
前記薄層が約10μm未満、特に約7.5μm未満の厚さを有し、前記厚さが5-MeO-DMTまたは薬学的に許容されるその塩の量および前記支持体の表面積に基づいて計算される、請求項10に記載のエアロゾル。
【請求項12】
前記薄層が0.1μm~10μmの範囲、特に0.3μm~7.5μmの範囲の厚さを有する、請求項11に記載のエアロゾル。
【請求項13】
固体支持体上に構成された5-MeO-DMTの前記薄層が、前記薄層に流す前記空気を介して熱エネルギーに曝露される、請求項10~12のいずれか一項に記載のエアロゾル。
【請求項14】
固体支持体上に構成された5-MeO-DMTの前記薄層が、前記固体支持体を介して熱エネルギーに曝露される、請求項10~12のいずれか一項に記載のエアロゾル。
【請求項15】
前記薄層に流す前記空気が、約180℃~約240℃の範囲の温度を有する、請求項14に記載のエアロゾル。
【請求項16】
前記薄層に流す前記空気が約210℃の温度を有し、約12L/分の速度で約15秒の継続時間にわたって前記薄層に流される、請求項15に記載のエアロゾル。
【請求項17】
前記エアロゾル粒子が、約3リットル以下の体積、特に約2~約3リットルの体積で含有される、請求項1~16のいずれか一項に記載のエアロゾル。
【請求項18】
治療に使用される、請求項1~17のいずれか一項に記載のエアロゾル。
【請求項19】
前記エアロゾルが1回の吸入によって患者に送達される、請求項18に記載のエアロゾル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬物のエアロゾルに関する。より詳細には、本発明は、吸入経路を介した患者への投与に有用な5-メトキシ-N,N-ジメチルトリプタミン(5-MeO-DMT)または薬学的に許容されるその塩のエアロゾルであって、それにより肺を介して5-MeO-DMTまたは薬学的に許容されるその塩が患者に全身送達されるエアロゾルに関する。
【背景技術】
【0002】
5-MeO-DMTは、5-HT1Aおよび5-HT2A受容体アゴニストとして作用する天然に生じるセロトニン作用性トリプタミンである。5-MeO-DMTおよび他の活性構成成分に加えて5-MeO-DMTを含む組成物は、娯楽用として長い歴史を持ち、強力な意識状態の質的変性(多幸感、トランス、時空間の超越、霊的経験、自己の境界の崩壊またはさらには臨死経験を含む、いわゆる「サイケデリック」効果)を誘導するそれらの能力が、霊的または自己探索的な状況で適用されてきた。
【0003】
娯楽の状況で最も一般的に記載される5-MeO-DMTの投与経路は、5-MeO-DMTを含む「蒸気」を肺に吸入し、最終的に5-MeO-DMTを血流に吸収させ全身に分布させることである。5-MeO-DMTを含む「蒸気」は、5-MeO-DMTを含有する材料を、例えばトーチライターを使用してガラスパイプの中でより長時間にわたって高温に曝露することによって最も一般的に生成される。
【0004】
5-MeO-DMTの薬理活性に基づき、近年ではその潜在的な医学的用途、例えばヒト臨床試験での潜在的な医学的用途の調査に関心が持たれている。このようなヒト臨床試験での使用、および患者の処置のために承認された医療製品における潜在的な使用には、高純度の5-MeO-DMTの投与が必要である。
【0005】
上述の「気化」は、いかなる医学的利用にも適さない。気化は、既定量の5-MeO-DMTの投与を可能としない。多くの場合、「気化」に供される材料の正確な5-MeO-DMTの含有量およびその純度さえも不明である。
【0006】
「気化」される5-MeO-DMTの割合も同様に不明であり、「蒸気」の特性も不明確である。
【0007】
さらに、上記に示したように、現在娯楽の状況で適用されている条件は、5-MeO-DMTを不定の高温に、より長時間にわたって曝露することを含む。これは、熱による5-MeO-DMT分解産物の形成を誘導し、この分解産物も吸入される。このような分解産物は、未知の薬理作用を有し、有害である可能性がある。また、強烈な味をもたらす。5-MeO-DMTの「蒸気」を生成するために娯楽の状況で現在適用されている条件のさらなる欠点は、それらの「蒸気」の吸入がしばしば咳を引き起こす場合があり、これが1回の吸入での5-MeO-DMTの全標的投与量の摂取を妨げ、5-MeO-DMTによる肺組織の曝露期間を制限し、したがってその吸収を制限することである。
【0008】
これらの問題のそれぞれは独立して、かつ組合せで、5-MeO-DMTの非効率的かつ予測不可能な全身送達に寄与し、これは5-MeO-DMTを医薬として使用する可能性がある状況では、最適以下の臨床効果および副作用のリスク上昇をもたらす場合があるため許容されない。潜在的な医学的用途、例えば、ヒトの臨床試験での使用または患者の処置のために承認された医療製品における使用では、サイケデリック効果の発現が非常に急速であり、多くの場合患者が2回目の吸入を正確に行う(すなわち、2回目の深呼吸をとる)ことができないため、1回の吸入で(すなわち、1回の深呼吸のうちに)5-MeO-DMTの完全またはほぼ完全な標的投与量を患者に与えることが重要である。5-MeO-DMTは、十分に制御され、標準化され、かつ再現可能な条件下で提供されなければならない。これは、先行技術で対処されていない。
【0009】
いくつかの薬物の熱的に生成された凝縮エアロゾルおよびそのようなエアロゾルの送達のためのデバイスが、例えば米国特許第7,090,830号明細書、欧州特許第1389098号明細書、および米国特許第8,955,512号明細書に開示されているが、これらの特許は、5-MeO-DMTを含有するエアロゾルを教示または示唆していない。試験された化合物は、分解産物の量(例えば、80%より多くから1%未満の分解産物の量)、収率(例えば、25%未満から90%より多くの収率)、および生成されたエアロゾルの物理的特性(空気動力学的質量中央径など)について変動の大きい結果が報告される。
【0010】
こうした背景から、5-MeO-DMTまたは薬学的に許容されるその塩を、特に吸入経路で投与するための再現可能な方法に対する必要性が残っている。特に、治療有効用量のエアロゾルを1回の吸入で患者に投与できるように、好適なエアロゾル粒子質量密度を有する5-MeO-DMTまたは薬学的に許容されるその塩のエアロゾルに対する必要性が存在する。
【発明の概要】
【0011】
本発明は、(a)薬学的に許容される気体、(b)5-メトキシ-N,N-ジメチルトリプタミン(5-MeO-DMT)または薬学的に許容されるその塩のエアロゾル粒子を含むエアロゾルであって、エアロゾルが約0.5mg/L~約12.5mg/L、好ましくは約1.3mg/L~約10mg/L、特に約2mg/L~約9mg/Lのエアロゾル粒子質量密度を有するエアロゾルに関する。薬学的に許容される気体は、好ましくは空気である。
【0012】
エアロゾル粒子は、好ましくは1wt%未満の不純物、特に0.5wt%未満の不純物を含有する。それらはさらに、好ましくはエアロゾルの形成中の化学反応の結果として生じる5-MeO-DMTの化学修飾によって得られる0.5wt%未満の5-MeO-DMT分解産物、特に0.2wt%未満の5-MeO-DMT分解産物を含有する。
【0013】
本発明のさらなる好ましい態様では、エアロゾルは(a)空気、(b)5-MeO-DMTまたは薬学的に許容されるその塩のエアロゾル粒子から本質的になる。
【0014】
エアロゾル粒子は、好ましくは遊離塩基の形態の5-MeO-DMTを含有する。
【0015】
エアロゾルは、好ましくは3ミクロン未満かつ0.1ミクロンを超える空気動力学的質量中央径、特に2ミクロン未満かつ0.1ミクロンを超える空気動力学的質量中央径によって特徴付けられる。
【0016】
エアロゾルは、a)固体支持体上に構成された5-MeO-DMTまたは薬学的に許容されるその塩の薄層を熱エネルギーに曝露すること、およびb)5-MeO-DMTの薄層に空気を通して、エアロゾル粒子を作製することによって形成されてもよい。薄層は約10μm未満、特に約7.5μm未満の厚さを有してもよい。薄層は、約0.1μm~約10μmの範囲、特に約0.3μm~約7.5μmの範囲の厚さを有してもよい。
【0017】
固体支持体上に構成された5-MeO-DMTの薄層は、薄層を通る空気を介して熱エネルギーに曝露されてもよい。代替的に、固体支持体上に構成された5-MeO-DMTの薄層は、固体支持体を介して熱エネルギーに曝露されてもよい。
【0018】
薄層を通る空気は、約180℃~約260℃の範囲の温度を有してもよい。薄層を通る空気は、特に約210℃の温度を有してもよく、約12L/分の速度で約15秒間の継続時間にわたって薄層を通ってもよい。
【0019】
エアロゾル粒子は、約3リットル以下の体積、例えば約1.5~約2リットルの体積、特に約2~約3リットルの体積で含有されてもよい。エアロゾルは、特に治療で使用するためのものである。エアロゾルは、好ましくは1回の吸入によって患者に送達される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】HPLCによって決定されるピーク面積を、試料中の5-MeO-DMTの濃度に対してプロットすることによって得られる図である。
【
図2】Next Generation Impactor(NGI)USP<601>Apparatus 6を示す。
【
図3】典型的な用量サンプリング装置USP<601>Apparatus Aを示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、医療の状況での吸入に好適な形態の5-MeO-DMTまたは薬学的に許容されるその塩を提供することを目的とする。本発明は、特にエアロゾルの形態の5-MeO-DMTおよび薬学的に許容されるその塩を提供する。これらのエアロゾルは、治療有効用量のエアロゾルを1回の吸入によって患者に投与することが可能になるように好適なエアロゾル粒子質量密度を有する。
【0022】
本発明に有用なエアロゾルは、熱エネルギーを使用して形成することができる。熱エネルギーを使用して化合物のエアロゾルを形成するとき、特にエアロゾルが肺を介した患者へのその化合物の全身送達に使用される場合、どの条件が安全で効率的かつ予測可能なエアロゾル化に好適であるかを予測するのは非常に困難である。この文脈で関連する変数は、a)化合物の用量、b)その化合物がエアロゾル化のために利用可能になる形態学的状態(例えば、結晶形態または薄層としての形態)、c)化合物が曝露される熱エネルギーの量(温度および曝露の継続時間によって定義される)およびd)エアロゾルをもたらすために導入される空気の体積(流量および空気流の継続時間によって定義される)を含む。
【0023】
一般に、本発明は、吸入による患者への5-MeO-DMTまたは薬学的に許容されるその塩の安全で効率的かつ予測可能な全身送達のための組成物および方法を提供することを目的とする。技術的課題の文脈で、「安全」は、エアロゾル粒子がごく少量のみの不純物および5-MeO-DMT分解産物を含有すべきであることを意味し、「効率的」は、投与量が既定の程度まで、かつ好ましくはほぼ完全にまたは完全にエアロゾル化されること、エアロゾルが、主に肺胞における吸収による肺を介した5-MeO-DMTまたは薬学的に許容されるその塩の全身送達に望ましい物理的特性を有すること、およびエアロゾルが1回の吸入で(すなわち、1回の深呼吸のうちに)患者によって吸入可能であることを意味し、「予測可能」は、分解産物の量、エアロゾル化の程度、およびエアロゾルの物理的特性にほぼまたは全く変動が生じるべきではないことを意味する。
【0024】
より詳細には、本発明は、a)5-MeO-DMTの投薬量、b)5-MeO-DMTがエアロゾル化のために利用可能になる形態学的状態、b)5-MeO-DMTが曝露される熱エネルギーの量、およびc)5-MeO-DMTのエアロゾルをもたらすために導入される空気の体積のための特定のパラメータを提供することを目的とする。
【0025】
本発明者は、5-MeO-DMTをエアロゾルの形態で提供することにより、5-MeO-DMTの患者への安全で効率的かつ予測可能な全身送達が達成され得ることを認識した。本発明のエアロゾルは、単位体積あたりの5-MeO-DMTの既定の質量を含有し、既定の空気動力学的質量中央径、および既定の最大量の不純物、例えば5-MeO-DMTの分解産物を有する。エアロゾルは、肺への吸入により、好ましくは1回の吸入で投与される。
【0026】
好適なエアロゾルは、a)治療有効量の5-MeO-DMTを薄層として固体支持体に設けること、b)5-MeO-DMTの薄層を、制御された昇温に短い継続時間にわたって曝露すること、およびc)エアロゾルが形成されるように制御された量の空気を提供することによって達成されてもよい。
【0027】
本発明は、患者の吸入療法に有用な5-MeO-DMTを含むエアロゾルを提供するための組成物および方法であって、組成物に含有される治療上有効な5-MeO-DMTの投薬量が完全にまたはほぼ完全にエアロゾル化され、エアロゾル粒子がごく少量のみの不純物および5-MeO-DMT分解産物を含有し、エアロゾルが、主に呼吸肺胞での吸収により、肺を介して5-MeO-DMTを全身送達するために望ましい物理的特性を有し、エアロゾルが1回の吸入で患者によって吸入可能であり、エアロゾル化の程度、分解産物の量、およびエアロゾルの物理的特性の変動が制限された組成物および方法を提供し、これらはすべて最新技術で達成されていない。
【0028】
定義
本発明の文脈で使用される場合、別段記述されない限り、「5-MeO-DMT」という用語は、遊離塩基である5-MeO-DMTを指す。5-MeO-DMTの薬学的に許容される塩も使用できることが企図される。そのような塩の例は、塩酸塩である。投与される塩の適切な重量は、等モル量が使用されると仮定し遊離塩基の重量から計算されてもよい。
【0029】
本明細書で使用される場合、「エアロゾル」は、気体媒体(空気などの薬学的に許容される気体)ならびに微小の懸濁された固体および/または液体粒子からなる安定した系を意味し、本明細書では液滴とも称される。
【0030】
本発明の文脈で使用される場合、別段記述されない限り、「分解産物」という用語は、エアロゾル形成中の化学反応の結果として生じる5-MeO-DMTの化学修飾から得られる化合物を指す。そのような反応として、限定することなく酸化が挙げられる。
【0031】
「分解産物」のパーセンテージが本発明の文脈で記載される場合、試料中に存在する5-MeO-DMT分解産物の分量を試料中に存在する5-MeO-DMTと5-MeO-DMT分解産物の分量を加算したもので除し、これに100%を乗じたもの、すなわち(試料中に存在するすべての5-MeO-DMT分解産物の分量の合計)/((試料中に存在する5-MeO-DMTの分量)+(試料中に存在するすべての5-MeO-DMT分解産物の分量の合計))×100%を指す。
【0032】
本明細書で使用される場合、「不純物」という用語は、5-MeO-DMT(または薬学的に許容されるその塩)の試料に混入する望まれない化合物を指す。不純物は、エアロゾル形成の前に出発材料に含有されてもよく、または分解産物であってもよい。
【0033】
本発明の文脈で使用される場合、別段記述されない限り、「純度」という用語は、存在するすべての5-MeO-DMT分解産物とすべての他の不純物のパーセントを100%から減算したもの、すなわち(100%-(存在するすべての5-MeO-DMT分解産物の分量の合計+存在するすべての他の不純物の分量の合計)/(存在する5-MeO-DMTの分量+存在するすべての5-MeO-DMT分解産物の分量の合計+存在するすべての他の不純物の分量の合計)×100%を指す。
【0034】
本発明の文脈で使用される場合、処置される「患者」は、受け入れられている医療行為に従い、有資格専門家(例えば、医師)により疾患、障害または状態を患うと診断され、処置を求めるもしくは必要とする可能性があるか、処置を要求するか、処置を受けているか、または処置を受けるヒト対象である。
【0035】
本発明の文脈で使用される場合、別段記述されない限り、「処置すること」および「処置」および「治療」という用語は、疾患、状態または障害に対抗することを目的とした患者の管理およびケアを含み、かつ兆候および/もしくは症状を緩和する、または疾患、状態もしくは障害を排除するための本発明による化合物の投与および方法を含む。
【0036】
本発明の文脈で使用される場合、別段記述されない限り、「治療有効量」という用語は、処置されている疾患、状態または障害の兆候および/または症状の緩和を含む、患者における臨床応答を誘発する活性化合物または医薬成分の量を意味する。
【0037】
本発明の文脈で使用される場合、別段記述されない限り、「投与」という用語は、所定量であってもよい量の活性化合物または医薬成分を、肺への吸入によって患者に導入することを意味する。
【0038】
本発明の文脈で使用される場合、別段記述されない限り、「用量」および「投与量」および「投薬量」という用語は、個々の投与で患者に投与される活性化合物または医薬成分の量を意味する。
【0039】
本発明の文脈で使用される場合、別段記述されない限り、「空気動力学的質量中央径」(MMAD)という用語は、エアロゾルに存在する粒子の50%がこの計算された直径より大きくなり、50%が小さくなる直径である。
【0040】
本発明の文脈で使用される場合、別段記述されない限り、「エアロゾル粒子質量密度」という用語は、エアロゾルの単位体積あたりのエアロゾル粒子の質量を指す。
【0041】
本発明の文脈で使用される場合、別段記述されない限り、「エアロゾル粒子の形成速度」という用語は、エアロゾル化時間の単位あたりのエアロゾル化された5-MeO-DMTの質量を指す。
【0042】
本明細書では、「約1mg~約25mg」などの範囲が記載される場合、本発明者は、それらの一部が詳細に言及されるが、単に簡潔性のためにそれらのすべては言及されないその範囲内のすべての個別の値を企図することに留意されたい。
【0043】
本発明の組成物の態様では、治療有効量の5-MeO-DMTの送達のための組成物はエアロゾルを含み、エアロゾルは、a)固体支持体上に構成された5-MeO-DMTの薄層を熱エネルギーに曝露すること、およびb)5-MeO-DMTの薄層に空気を流すことによって形成され、前記エアロゾルは、以下の特性:1)3ミクロン未満の空気動力学的質量中央径によって特徴付けられるエアロゾル粒子を含有する、2)1wt%未満の不純物および0.5%未満の5-MeO-DMT分解産物によって特徴付けられるエアロゾル粒子を含有する、3)1回の吸入によって患者に送達することができる、の1つまたは複数を有する。
【0044】
本発明の方法の態様では、治療有効量の5-MeO-DMTは、吸入経路によって患者に送達される。方法は、a)固体支持体上に構成された5-MeO-DMTの薄層を熱エネルギーに曝露すること、およびb)5-MeO-DMTの薄層に空気を流すことを含み、前記エアロゾルは、以下の特性:1)3ミクロン未満の空気動力学的質量中央径によって特徴付けられるエアロゾル粒子を含有する、2)1wt%未満の不純物および0.5wt%未満の5-MeO-DMT分解産物によって特徴付けられるエアロゾル粒子を含有する、3)1回の吸入によって患者に送達することができる、の1つまたは複数を有する。
【0045】
本発明の組成物、方法およびキットの態様において、1回の吸入によって患者に送達することができるエアロゾルの体積中の、3ミクロン未満の空気動力学的質量中央径によって特徴付けられ、1wt%未満の不純物および0.5%未満の5-MeO-DMT薬物分解産物を有するエアロゾル粒子の生成は、a)5-MeO-DMTの薄層に含有される5-MeO-DMTの投薬量、b)5-MeO-DMTの薄層の厚さ、c)5-MeO-DMTの薄層が曝露される熱エネルギー(温度および曝露の継続時間によって定義される)およびd)5-MeO-DMTの薄層を通る空気の合計量(空気流量および空気流の継続時間によって定義される)を定義することによって達成される。
【0046】
好ましくは、本発明の組成物、方法およびキットの態様において、5-MeO-DMTの薄層は、薄層を通る空気を介して熱エネルギーに曝露され、この場合空気は加熱される。薄層に流す加熱された空気は、約180℃~約260℃の範囲の温度を有してもよい。薄層に流す空気は、特に約210℃の温度を有してもよい。
【0047】
代替的に、本発明の組成物、方法およびキットの態様において、5-MeO-DMTの薄層は固体支持体を介して熱エネルギーに曝露され、この場合薄層に流す空気は加熱されず、固体支持体が加熱される。加熱された固体支持体は、約180℃~約420℃の範囲の温度を有してもよい。
【0048】
好ましくは、本発明の組成物、方法およびキットの態様において、固体支持体上の薄層の形成に使用される5-MeO-DMTは、高度に純粋であり、少なくとも99%、好ましくは少なくとも99.5%の純度を有する。
【0049】
好ましくは、本発明の組成物、方法およびキットの態様において、固体支持体上に構成された5-MeO-DMTの薄層に含有される5-MeO-DMTの投薬量は、約1mg~約25mg、好ましくは約2mg~約20mg、より好ましくは約4mg~約20mgである。有用な特定の量は、例えば約4mg、約6mg、約8mg、約10mg、約12mg、約14mg、約16mg、約18mgおよび約20mgである。好ましい特定の量は、例えば約6mg、約12mgおよび約18mgである。
【0050】
5-MeO-DMTまたは薬学的に許容されるその塩が設けられる固体支持体は、様々な形状を有してもよい。そのような形状の例として、限定することなく、直径1.0mm未満の円筒、厚さ1.0mm未満の箱、および小さい(例えば、1.0mm未満のサイズの)孔によって透過される実質的にすべての形状が挙げられる。好ましくは、固体支持体は、大きい表面対体積比(例えば、メートルあたり100より大きい)および大きい表面対質量比(例えば、グラムあたり1cm2より大きい)をもたらす。
【0051】
1つの形状の固体支持体は、異なる特性を有する別の形状へと変換することもできる。例えば、0.25mmの厚さの平面シートは、メートルあたりおよそ8,000の表面対体積比を有する。シートを直径1cmの中空円筒へと丸めることにより、元のシートの高い表面対質量比を保持するが、より低い表面対体積比(メートルあたり約400)を有する支持体が作製される。
【0052】
固体支持体を構築するために、多数の異なる材料が使用される。そのような材料のクラスは、限定することなく金属、無機材料、炭素材料およびポリマーを含む。以下は、材料のクラスの例である:アルミニウム、銀、金、ステンレス鋼、銅およびタングステン、シリカ、ガラス、シリコンおよびアルミナ、グラファイト、多孔質炭素、カーボン糸およびカーボンフェルト、ポリテトラフルオロエチレンおよびポリエチレングリコール。材料の組合せおよび材料のコーティングされた変形も使用される。
【0053】
固体支持体としてアルミニウムが使用される場合、アルミニウム箔が好適な材料である。シリカ、アルミナおよびシリコンベースの材料の例として、非晶質シリカS-5631(Sigma、ミズーリ州セントルイス)、BCR171(Aldrich、ミズーリ州セントルイス製の2m2/gより大きい既定表面積を有するアルミナ)および半導体産業で使用されるシリコンウェハが挙げられる。カーボン糸およびカーボンフェルトは、American Kynol,Inc.、ニューヨーク州ニューヨークから入手可能である。
【0054】
好ましくは、固体支持体上に構成された5-MeO-DMTの薄層の厚さは約10μm未満、特に約7.5μm未満である。薄層は、約0.1μm~約10μmの範囲、特に0.3μm~7.5μmの範囲の厚さを有してもよい。
【0055】
好ましくは、本発明の組成物、方法およびキットの態様において、5-MeO-DMTの薄層に流す空気の合計量は、1分あたり約6リットル~1分あたり約80リットル、例えば1分あたり約6リットル~1分あたり約40リットル、好ましくは1分あたり約8リットル~1分あたり約16リットルの流量によって定義され、空気流の継続時間は、エアロゾルの合計体積が約3リットルを超えない、好ましくは約2リットル~3リットルであるように選択される、例えば、1分あたり約6リットルの空気流量では、空気流の継続時間は約30秒未満であるべきである。有用な特定の空気流量および継続時間は、1分あたり約12リットルおよび約15秒であり、これにより約3リットルのエアロゾルの体積がもたらされる。別の有用な特定の空気流量および継続時間は、1分あたり10リットルおよび約15秒であり、これにより約2.5リットルのエアロゾルの体積がもたらされる。別の有用な特定の空気流量および継続時間は、1分あたり8リットルおよび約15秒であり、これにより約2リットルのエアロゾルの体積がもたらされる。別の有用な特定の空気流量および継続時間は、1分あたり10リットルおよび約12秒であり、これにより約2リットルのエアロゾルの体積がもたらされる。
【0056】
エアロゾルの形成速度は、0.1mg/秒より速い。
【0057】
本発明の組成物、方法およびキットの態様において、エアロゾルは、約0.5mg/L~約12.5mg/L、好ましくは約1.3mg/L~約10mg/L、特に約2mg/L~約9mg/Lのエアロゾル粒子質量密度を有する。
【0058】
本発明の組成物、方法およびキットの態様において、5-MeO-DMTエアロゾル粒子は、3ミクロン未満かつ0.1ミクロンを超える、好ましくは2.5ミクロン未満かつ0.1ミクロンを超える、最も好ましくは2ミクロン未満かつ0.1ミクロンを超える空気動力学的質量中央径によって特徴付けられる。
【0059】
本発明の組成物、方法およびキットの態様において、5-MeO-DMTエアロゾル粒子は、1wt%未満の不純物、好ましくは0.5wt%未満の不純物によって特徴付けられる。本発明の組成物、方法およびキットの態様において、5-MeO-DMTエアロゾル粒子は、0.5wt%未満の5-MeO-DMT分解産物、好ましくは0.2wt%未満の5-MeO-DMT分解産物によって特徴付けられる。
【0060】
本発明の特定の組成物の態様において、治療有効量の5-MeO-DMTの送達のための組成物はエアロゾルを含み、エアロゾルは、a)固体支持体上に厚さ5ミクロン未満の薄層として構成された12mgの投薬量の5-MeO-DMTを、加熱された空気を15秒の継続時間にわたり薄層に流すことで210℃の温度に曝露することによって形成され、前記エアロゾルは、以下の特性:1)3ミクロン未満の空気動力学的質量中央径によって特徴付けられるエアロゾル粒子を含有する、2)1%未満の不純物および0.5wt%未満の5-MeO-DMT分解産物によって特徴付けられるエアロゾル粒子を含有する、3)1回の吸入によって患者に送達することができる、の1つまたは複数を有する。
【0061】
本発明で定義されるエアロゾルの特徴およびエアロゾル化条件を熟知する当業者は、必要とされるエアロゾルの特徴をもたらす好適な気化デバイスまたはシステムを特定することができる。そのような好適な気化デバイスまたはシステムの例として、例えばドリップパッドを有する付随の投薬カプセルを備えたVolcano Medic Vaporization System(Storz&Bickel、ドイツ;例えば欧州特許第0933093号明細書および欧州特許第1884254号明細書および登録共同体意匠003387299-0001に開示される)ならびにStaccatoデバイス(Alexza Pharmaceuticals、マウンテンビュー、米国;例えば米国特許第7,458,374号明細書、米国特許第9,370,629号明細書および米国特許第9,687,487号明細書に開示される)が挙げられる。
【0062】
生成されたエアロゾルはバルーンに収集され、バルーンから患者によって吸入されてもよい。
【実施例】
【0063】
[実施例1]
5-MeO-DMTエアロゾルの生成および投与
Volcano Medic Vaporization System
Volcano Medic Vaporization System(Storz & Bickel、ドイツ)を用いて薬物を揮発させることにより、5-MeO-DMTエアロゾルを生成した。デバイスは、熱風生成装置および患者がそこからエアロゾルを吸入する着脱式弁バルーンからなる。熱風生成装置は、約40℃~約210℃で調節可能な温度を生じることができ、空気流量は1分あたり約12リットルである。デバイスの中央部は、エタノール溶液中の適切な用量の5-MeO-DMTが適用される投薬カプセルであり、カプセルは次いでデバイスの充填チャンバに適用され、そこで熱風によって加熱される。投薬カプセルは、緊密に詰め込まれたステンレス鋼ワイヤメッシュ(ドリップパッドまたは液体パッドと呼ばれる)から作られる小さな円盤を含有する。投薬カプセルの底部および蓋は穴を有し、それにより空気流が投薬カプセルを通ることが可能になる。投薬カプセルおよびドリップパッドは、10個の試料カプセルの測定値に基づき以下の特徴を有する:
【0064】
【0065】
5-MeO-DMTエアロゾルの生成および投与
ステップ1:吸入によって患者に投与される標的投与量の5-MeO-DMT遊離塩基が200μLの溶液体積に含有されるように、100%エタノール中の5-MeO-DMT遊離塩基のストック溶液をメスフラスコ中で調製する。典型的な標的投与量は、1mg~25mgの5-MeO-DMTである。例えば、18mgの5-MeO-DMTの標的投与量に対して、最終溶液の体積が1mLになるように90mgの5-MeO-DMTを100%エタノールに溶解する。その後、ストック溶液のアリコートをさらなる使用までバイアル中で保管してもよい。
【0066】
ステップ2:200μLの溶液をドリップパッドを含有する投薬カプセル(Storz&Bickel、ドイツ)に移し、投薬カプセルを蓋で閉じる。
【0067】
ステップ3:5-MeO-DMTエタノール溶液が充填された投薬カプセルを、55℃に設定された温度で事前加熱されていた第1のVolcano Medic Vaporizerの充填チャンバに移す。次に、気化装置の空気流を、約12L/分の事前設定速度で60秒間オンにする。加熱された空気は投薬カプセルを通って流れ、それによりエタノールが蒸発し、標的投与量の5-MeO-DMTがステンレス鋼ワイヤメッシュを覆う薄層としてカプセルに残される。投薬カプセルの正確な調製は、空のカプセルの重量と比較したカプセルの最終重量増加が、5-MeO-DMTの標的投与量に一致することを実証することによって確認することができる。
【0068】
ステップ4:調製された投薬カプセルを充填チャンバから取り外す。次いで、投薬カプセルを第2のVolcano Medic Vaporizerの充填チャンバに移す(210℃に設定された温度で事前加熱されており、空気流を少なくとも5分間オンにし、移す直前にオフにする)。弁付き吸入バルーン(Storz&Bickel、ドイツ)を充填チャンバのソケットに取り付け、充填チャンバを密封し、その直後に空気流を約12L/分の事前設定速度で正確に15秒間オンにし、その後オフにする。これにより5-MeO-DMTの全用量がエアロゾル化され、吸入バルーン内でおよそ3リットルの空気中に分配される。5-MeO-DMTの正確なエアロゾル化は、カプセル重量がほぼその開始重量に戻ったことを実証することによって確認することができる。
【0069】
ステップ5:次に、バルーンを充填チャンバから外すことによって自動的に弁が閉じる。バルーンに口金を装着すると、エアロゾルは、すぐに患者に投与するか、またはすぐに分析手順を行う準備ができる。
【0070】
ステップ6:投与に備え、患者にまず1~2回深く息を吸って完全に吐き出し、その連続を深く吐き出して終えるよう求める。次に、口金をしっかり唇に当て、吸入バルーンの全体積を完全に1回の吸入で吸入し、息を10(±2.5)秒止め、自然に吐き出す。この吸入手順の終了後、患者に横になるよう指示する。
【0071】
[実施例2]
5-MeO-DMTの投薬カプセルへの装填およびエアロゾル化用量の決定
使い捨てバイアル中200μLのアリコートとして保管された5-MeO-DMTのストック溶液を使用し、2mgおよび18mgの5-MeO-DMTの標的投与量を含む投薬カプセルの3つ組を実施例1のステップ1~3に記載されるように調製した。標的投与量の5-MeO-DMTが投薬カプセルに正確に装填されたことを確認するために、ステップ3後のカプセルの重量から空のカプセルのベースライン重量を減算し、5-MeO-DMTの標的用量の約94%がカプセルに装填され、変動は最小限のみであったことが確認された(実施例2、表1)。標的用量の100%が達成されなかったという事実は、5-MeO-DMTストック溶液の保管に使用されたバイアル(約2μLの体積が残存していた)中での材料の損失、および溶液をバイアルからカプセルに移すために使用されたピペットチップでのさらなる損失によって説明できる。しかし、そのような損失は、より大きな体積のストック溶液から分注し、分注技術を最適化することによって防ぐことが可能である。
【0072】
次に、実施例1のステップ4および5に記載されるように、投薬カプセルから5-MeO-DMTをエアロゾル化した。5-MeO-DMTの投薬カプセルからの正確なエアロゾル化を確認するために、ステップ3後の重量からステップ4後の重量を減算し、装填用量の96%~100%がエアロゾル化されたことを確認した(実施例2、表1)。
【0073】
【0074】
投薬カプセルを5-MeO-DMT層の形成前後に秤量することにより、5-MeO-DMTの標的用量の投薬カプセルへの装填を決定する代わりに、装填は、代替的に投薬カプセルから薬物を抽出し、量を分析測定することによって決定することもできる。
【0075】
カプセルを5-MeO-DMT層の形成前後、さらにエアロゾル化後に再び秤量することにより、5-MeO-DMTの標的用量のカプセルからのエアロゾル化の程度を決定する代わりに、代替的に5-MeO-DMTを含有するエアロゾルを密閉チャンバに送達し、チャンバに収集された5-MeO-DMTの量を分析測定することにより5-MeO-DMTの放出された用量を決定することもできる。
【0076】
[実施例3]
5-MeO-DMT層の厚さ
エタノール溶媒の蒸発後にステンレス鋼ワイヤメッシュを覆う5-MeO-DMT層の厚さは、以下の通り計算することができる:5-MeO-DMT層の厚さ(μm)=5-MeO-DMTの装填用量(mg)/[5-MeO-DMTの密度(mg/cm3)×ワイヤの表面積(cm2)]*10000。ワイヤの表面積は、ワイヤの長さ(測定することもでき、またはワイヤメッシュの重量から計算することもできる)およびワイヤの直径(測定することができる)に基づいて計算することができる。
【0077】
実施例2で調製された投薬カプセルに関して、以下の層厚さが決定された:
【0078】
【0079】
2mgの標的装填用量では、37.78cm2の平均ワイヤ表面積に基づく5-MeO-DMT層の厚さは0.48μmと計算することができ、20mgの標的装填用量では、5-MeO-DMT層の厚さは4.8μmと計算することができる。
【0080】
[実施例4]
エアロゾル粒子の形成速度およびエアロゾル5-MeO-DMTの質量密度の決定
エアロゾル粒子の形成速度は、以下の通り計算することができる:エアロゾル粒子の形成速度=エアロゾル化用量/エアロゾル化時間。実施例2からのエアロゾル化用量のデータおよび15秒のエアロゾル化時間では、以下のエアロゾル粒子の形成速度が決定された:
【0081】
【0082】
2mgの標的エアロゾル化用量および15秒のエアロゾル化時間では、エアロゾル粒子の形成速度は0.13mg/秒と計算することができ、20mgの標的エアロゾル化用量および15秒のエアロゾル化時間では、粒子の形成速度は1.33mg/秒と計算することができる。
【0083】
エアロゾル5-MeO-DMTの質量密度は、以下の通り計算することができる:エアロゾル5-MeO-DMTの質量密度=エアロゾル化用量/エアロゾル体積。実施例2からのエアロゾル化用量のデータおよび約3リットルのエアロゾル体積では、以下のエアロゾル5-MeO-DMTの質量密度が決定された:
【0084】
【0085】
3リットル中2mgの標的エアロゾル化用量では、エアロゾル5-MeO-DMTの質量密度は0.66mg/Lと計算することができ、3リットル中20mgの標的エアロゾル化用量では、エアロゾル5-MeO-DMTの質量密度は6.66mg/Lと計算することができる。2リットル中2mgの標的エアロゾル化用量では、エアロゾル5-MeO-DMTの質量密度は1mg/Lと計算することができ、2リットル中20mgの標的エアロゾル化用量では、エアロゾル5-MeO-DMTの質量密度は10mg/Lと計算することができる。
【0086】
[実施例5]
5-MeO-DMTの純度の決定のためのHPLCアッセイ
5-MeO-DMTの純度の決定を可能にするためのHPLCアッセイを開発した。アッセイを直線性および精度について試験した。結果に基づき、方法は目的に適合するとみなされた。
【0087】
以下の方法パラメータを使用した:
【0088】
【0089】
【0090】
HPLC方法の直線性に関する試験:
5-MeO-DMTのストック溶液をメタノール中で調製した。0.15mg/mLの公称濃度を得た。
【0091】
【0092】
HPLC方法の直線性
公称濃度のY切片%は0.8%と計算された。
図1に示されるように、方法は直線性であるとみなされる。
【0093】
HPLC方法の精度に関する試験:
6つの試料溶液を公称濃度で調製した(100mLメタノール中12~18mg)。純度の結果は以下であった:
【0094】
【0095】
6つの試料間の純度値の許容基準は1%RSDであり、実際の読み取り値は0.07%であった。したがって、分析方法は適切な精度を示すとみなされる。
【0096】
[実施例6]
5-MeO-DMTエアロゾルの純度および分解産物の評価
2mLのエタノール中180.7mgの5-MeO-DMT遊離塩基のストック溶液(90.4mg/mL)を使用し、そのうち200μLをカプセル内のドリップパッドに分注して、実施例1のステップ1~3に記載されるように18mgの5-MeO-DMTの標的投与量を含む投薬カプセルの2つ組を調製した。HPLCによって決定された5-MeO-DMT出発材料の純度は99.605%であり、3種のわずかな比率の不純物が含まれた(実施例6、表1)。
【0097】
【0098】
次に、Volcano Medic Vaporizerを1つのみ使用したことを除き、実施例1のステップ4および5に記載されるように投薬カプセルから5-MeO-DMTをエアロゾル化した(すなわち、ステップ3およびステップ4の気化装置は同じであり、カプセルの調製とエアロゾルの生成の間の事前加熱を使用説明書に従って実施した)。
【0099】
エアロゾルの純度分析では、エアロゾルを含有する弁バルーンの複製物のそれぞれをSolid Phase Extraction(SPE)カートリッジ(Discovery(登録商標)DSC-18)に連結させた。次いで、バルーンが完全にしぼむまで真空を印加した。5mLのメタノールの4つのアリコートをカートリッジに添加し、抽出物をHPLCによってそのまま分析した。直線範囲の応答が達成されるように抽出物1をさらに希釈した(1mL~10mL)。
【0100】
複製物1、抽出物1(実施例6、表1)に関して、エアロゾルの純度は出発材料の純度よりさらに高いこと(99.710%vs.99.605%)、既存の不純物2および3は検出不可能であったが、既存の不純物1は最小限のみ増加したこと(0.206%vs.0.099%)、および最小量のみの新たな5-MeO-DMT分解産物が生じ(分解産物1:0.039%、分解産物2:0.044%)、エアロゾル中の5-MeO-DMT分解産物の合計パーセンテージは0.19%であったこと(不純物1の追加量を含む)が見出された。他の複製物の結果は近似しており、他の抽出物の結果によって結論は変わらなかった。
【0101】
【0102】
結論として、本明細書に記載される方法および組成物に基づき、最小量のみの分解産物を含む高純度のエアロゾルを生成することができる。
【0103】
[実施例7]
1回の吸入での5-MeO-DMTの標的用量の吸入および急速な全身吸収の臨床エビデンス
臨床試験を実施し、処置抵抗性大うつ病性障害(TRD)を有する患者に5-MeO-DMT遊離塩基(純度99%以上)を投与した。試験に募集された患者は、単一エピソードまたは反復性大うつ病性障害のDSM-5診断基準を満たし、かつ処置抵抗性である必要があり、いずれの側面も精神科医または臨床心理士によって評価された。投与日に、12mgの5-MeO-DMTの単回用量を、実施例1に記載のように1回の吸入によって患者に投与した。投与後、患者を3.5時間注意深くモニタリングし、投薬の1日後および7日後に追加のフォローアップ訪問を行った。
【0104】
大うつ病性障害を有する2名の患者を研究に募集した。吸入手順は両患者によって1回の吸入で適切に実施され、吸入関連の有害事象を伴わず、特に咳を伴わずに忍容性が良好であった。吸入直後に、観察者によって判定される最初のサイケデリック症状が発生した。サイケデリック経験は非常に強力であり、両患者が30項目の改訂神秘的経験質問票(MEQ30)によって判定されるピークサイケデリック経験を達成した(Barrett FS, J Psychopharmacol. 2015;29(11):1182-90に記載の通り)。外部観察者によって判断されるサイケデリック経験の継続時間は、患者1で16分間、患者2で40分間であった。
【0105】
驚くべきことに、両患者は、モンゴメリ・アスベルグうつ病評定尺度(MADRS)の10以下のスコアによって判定されるように、それらのうつ病症状の正式な寛解を、薬物投与後2時間目の最初の判定時点で既に報告し、その効果は1日目および7日目のフォローアップ訪問でさらに深まった。
【0106】
このデータは、実施例1に記載のように生成された5-MeO-DMTエアロゾル粒子を含有するエアロゾルの吸入(すなわち、12リットル/分の流量で210℃に加熱した空気を薄層上に15秒間流すことによる5-MeO-DMTの薄層のエアロゾル化)の忍容性が良好であり、1回の吸入で吸入できることを実証する。また、このようなエアロゾル粒子からの5-MeO-DMTは、吸入開始後数秒でサイケデリック効果が急速に発現することによって証明されるように、急速に全身に吸収されることが実証される。このような急速な全身吸収は、肺胞を介して行われると考えられる。
【0107】
[実施例8]
5-MeO-DMTエアロゾルの空気動力学的質量中央径の評価
本発明の組成物および方法によって生成される5-MeO-DMTエアロゾル粒子の粒径分布は、
図2に示すように、Next Generation Impactor(NGI)(米国薬局方(USP)<601>Apparatus 6)を使用して米国薬局方(USP)の方法に従って決定される。
【0108】
このデバイスは、送達されたボーラスエアロゾルを、粒子または液滴の慣性に基づいて離散的な一連のサイズ範囲に分画し、生じたエアロゾル液滴の空気動力学径の測定値を提供する。NGIの各段によって捕捉される液滴のサイズ範囲は、使用される測定空気流に依存してもよい。本分析では、30リットル/分(実験1および3)、ならびに15リットル/分(実験2および4)の空気流を使用して実験を行う。
【0109】
粒径の対数正規分布に基づき、空気力学的サイズ分布は、空気動力学的質量中央径(MMAD)および幾何標準偏差(GSD)により特徴付けられる。さらに、微粒子画分(FPF)は、インパクター上の液滴の合計に対する、5μm以下の空気動力学径を有する液滴の重量パーセンテージとして決定される。
【0110】
[実施例8]
実験1
第1の実験は、6mgの5-MeO-DMT遊離塩基/カプセルの公称薬物装填量を有する投薬カプセルを用いて、実施例1に記載のようにVolcano Medic Vaporization Systemを使用して行う。バルーン内に回収されたエアロゾルは、30リットル/分の流量を使用して作動させたNGIを使用して測定される。
【0111】
実験は三連で実施する。
【0112】
結果を以下の表に示す。
【0113】
【0114】
[実施例8]
実験2
第2の実験も、6mgの5-MeO-DMT遊離塩基/カプセルの公称薬物装填量を有する投薬カプセルを用いて、実施例1に記載のようにVolcano Medic Vaporization Systemを使用して行う。バルーン内に回収されたエアロゾルは、15リットル/分の流量を使用して作動させたNGIを使用して測定される。
【0115】
この実験では、生じ得る液滴の再混入を防ぐため、NGIのカップをグリセロールでコーティングした。また、対応するNGI Stage Jetsの下に配置した各濾紙に、水中30%グリセロールをおよそ8滴添加した。
【0116】
実験は三連で実施する。
【0117】
結果を以下の表に示す。
【0118】
【0119】
[実施例8]
実験3
18mg/カプセルの公称薬物装填量を有するカプセルを使用して実験1を繰り返す。結果を以下の表に示す。
【0120】
【0121】
[実施例8]
実験4
18mg/カプセルの公称薬物装填量を有するカプセルを使用して実験2を繰り返す。結果を以下の表に示す。
【0122】
【0123】
上記のデータは、MMADが3μm未満かつ0.1μmより大きい、特に2.5μm未満かつ0.1μmより大きい、特に2μm未満かつ0.1μmより大きいことを示す。エアロゾル粒子(液滴)の少なくとも80wt%、特に少なくとも85wt%、特に少なくとも90wt%は、5μm以下の空気動力学径を有する。
【0124】
[実施例9]
送達用量の決定-仮想例
本発明による組成物および方法によって患者に送達される5-MeO-DMTの量は、
図3に示される米国USP<601>Apparatus Aなどの好適なエアロゾルサンプリング装置でエアロゾルを収集することにより、米国薬局方(USP)の方法に従って確認される。エアロゾルは典型的に、28.3リットル/分の流量でサンプリングされる。エアロゾルのサンプリングが完了したら、投薬管の両端をキャップし、好適な回収溶媒を使用してフィルターから薬物を抽出し、好適に検証された分析技術を使用してアッセイする。
【0125】
[実施例10]
出発材料の調製
5-MeO-DMT(2.0g)を35~40℃でMTBE(4mL、2.0体積)に溶解し、その後30分かけて室温に冷却した。室温で50分間撹拌後、結晶化が観察されなかったため、バッチ温度を30分かけて7~12℃に下げた。7~12℃で10分間撹拌すると、結晶化が生じた。次に、7~12℃で1時間の撹拌に続きバッチを濾過した。7~12℃でMTBE(1mL、0.5体積)で洗浄後、バッチを真空下で3.5時間吸引乾燥し、1.02gの淡橙色固体を得た(回収率50%)。単離した固体をHPLCによって純度について分析した。純度は99.74面積%であると見出された。
【0126】
下の表は、単離した材料の不純物プロファイルを示す。
【0127】
【0128】
分析の結果により、材料の全体的な純度が増加し、RRT1.18およびRRT1.24の不純物が0.10%未満に除去されたことが示された。RRT2.38の不純物も、NMT0.10%の目標未満に低減した。
【0129】
試料の溶媒分析により、NMT5000ppmの予想限界に対し、17ppmのMTBEレベルが示された。
【国際調査報告】