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特表2023-513956人との接触時のロボットマニピュレータの制御
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  • 特表-人との接触時のロボットマニピュレータの制御 図1
  • 特表-人との接触時のロボットマニピュレータの制御 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-04
(54)【発明の名称】人との接触時のロボットマニピュレータの制御
(51)【国際特許分類】
   B25J 19/06 20060101AFI20230328BHJP
【FI】
B25J19/06
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022549771
(86)(22)【出願日】2021-02-10
(85)【翻訳文提出日】2022-10-19
(86)【国際出願番号】 EP2021053124
(87)【国際公開番号】W WO2021165105
(87)【国際公開日】2021-08-26
(31)【優先権主張番号】102020104364.3
(32)【優先日】2020-02-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521181769
【氏名又は名称】フランカ エーミカ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】FRANKA EMIKA GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100122426
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 清志
(72)【発明者】
【氏名】スペニンガー、アンドレアス
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707KS11
3C707KS21
3C707KS36
3C707KT02
3C707KT04
3C707KX10
3C707LT00
3C707LU06
3C707MS06
3C707MS14
3C707MS15
3C707MS27
3C707MS29
(57)【要約】
本発明は、ロボットマニピュレータ(1)を制御するための方法に関し、以下のステップを含む:-人の身体ゾーンを含むデータベースを提供し(S1)、身体ゾーンの各々は、それぞれの最大許容接触圧値を割り当てられており、-ロボットマニピュレータ(1)と人の現在又は未来の接触事象を決定し(S2)、接触した人の身体ゾーンを決定し、-人の身体に対して固定された基準位置を決定し(S3)、基準位置は、人との接触事象において、人の組織の押し込みの空間的な進行の開始位置を示し、および、-決定された基準位置がロボットマニピュレータ(1)のインピーダンス調節の人工バネ成分のゼロ位置として機能し、最大許容接触圧を限界値として超えないように、ロボットマニピュレータ(1)をインピーダンス調節制御(S4)する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットマニピュレータ(1)を制御するための方法であって、以下のステップ:
-人の身体ゾーンを含むデータベースを提供し(S1)、ここで、それぞれの前記身体ゾーンには、それぞれ接触圧の最大許容値が割り当てられており、
-前記ロボットマニピュレータ(1)の前記人との現在又は未来の接触事象を決定し(S2)、接触される前記人の前記身体ゾーンを決定し、
-前記人の身体に対して固定された基準位置を決定し(S3)、ここで、前記基準位置は、人物接触事象時の人の組織の押し込みの空間的な進行の開始を示し、および、
-決定された基準位置が前記ロボットマニピュレータ(1)のインピーダンス調節の人工バネ成分のゼロ位置として機能し、最大許容接触圧が限界値として超えないような、前記ロボットマニピュレータ(1)のインピーダンス調節制御(S4)、
を含む、方法。
【請求項2】
前記ロボットマニピュレータ(1)上の、前記人と接触する位置のエッジ形状を決定し(S5)、決定された前記エッジ形状に応じて前記最大許容接触圧を決定又は調整するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記インピーダンス調節を前記最大許容接触圧まで行う場合、前記最大許容接触圧は、前記ロボットマニピュレータ(1)が前記人と接触する位置の前記人に対する速度の関数として決定又は低減される、請求項1~請求項2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項4】
前記ロボットマニピュレータ(1)の前記インピーダンス調節制御は、前記人の組織が押されているときに、所定の制動距離を超えないように行われる、請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
指定制動距離は,前記人の組織の押し込みが進行する間に前記最大許容接触圧に到達する前記基準位置からの距離を予測することによって決定される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記ロボットマニピュレータ(1)の前記インピーダンス調節制御は、前記ロボットマニピュレータ(1)上の前記人が接触する位置と前記人上の現在の基準位置との相対位置ベクトルを地球固定座標系における接続ベクトルとして決定するように、地球固定座標系に対するインピーダンス調節によって行われる、請求項1~請求項5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記ロボットマニピュレータ(1)上の前記人と接触する位置の硬度および/又は弾性率を決定し(S6)、決定された硬度および/又は弾性率に応じて前記最大許容接触圧が決定又は調整されるステップをさらに含む、請求項1~請求項6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記ロボットマニピュレータ(1)上の、前記人と接触する位置を有する成分の温度を決定し(S7)、決定された温度に応じて前記最大許容接触圧を決定又は調整するステップをさらに含む、請求項1~請求項7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記インピーダンス調節は、非線形人工バネ成分を有し、偏向が大きくなると、偏向に不釣り合いに増加する反力が前記ロボットマニピュレータ(1)に作用する、請求項1~請求項8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
ロボットマニピュレータ(1)を制御するための制御ユニット(3)であって、
各身体ゾーンはそれぞれの最大許容接触圧値が割り当てられ、人の身体ゾーンを有するデータベースへのインタフェース(5)と、演算ユニット(7)を有し、
前記演算ユニット(7)は、前記人の身体に対する固定基準位置を決定するために、前記ロボットマニピュレータ(1)の前記人に対する現在又は未来の接触事象を決定、および、接触された前記人の身体ゾーンを決定するように設計され、前記基準位置は、前記人との接触事象の間の前記人の組織の押し込みの空間的進行の開始を示し、前記ロボットマニピュレータ(1)のインピーダンス調節制御のために、決定された基準位置が前記ロボットマニピュレータ(1)のインピーダンス調節の人工バネ成分のゼロ位置として機能し、前記最大許容接触圧を限界値として超えないようにする、制御ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットマニピュレータの制御方法及びロボットマニピュレータを制御する制御ユニットに関する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
本発明の目的は、ロボットマニピュレータと人との接触事象が発生した場合のロボットマニピュレータの挙動を改善し、特にこの挙動をより安全なものにすることである。
【0003】
本発明は、独立請求項の特徴から生じるものである。有利な改良および実施形態は、従属請求項の主題である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の第1の態様は、ロボットマニピュレータを制御するための方法であって、以下のステップ:
-人の身体ゾーンを含むデータベースを提供し、ここで、それぞれの身体ゾーンには、それぞれ接触圧の最大許容値が割り当てられており、
-ロボットマニピュレータの人との現在又は未来の接触事象を決定し、接触される人の身体ゾーンを決定し、
-人の身体に対して固定された基準位置を決定し、ここで、基準位置は、人物接触事象時の人の組織の押し込みの空間的な進行の開始を示し、および、
-決定された基準位置がロボットマニピュレータのインピーダンス調節の人工バネ成分のゼロ位置として機能し、最大許容接触圧が限界値として超えないような、ロボットマニピュレータのインピーダンス調節制御、
を含む。
【0005】
身体ゾーンは、特に、大腿部、下腿部、手、足、腹部、胸部、背中上部、背中下部、顔および/又は目、鼻などの顔の一部など、人の身体の表面上のゾーンを含む。あるいは、これらの本体部分から切り離された身体ゾーンが好ましく使用される。データベースに格納された身体ゾーンは、特定の個人に限定されないように、一般の人々に対して有効なものである。しかし、特に子供など、特定の集団がロボットマニピュレータに接触する場合、その集団のために特別に定義された身体ゾーンを持つ特別なデータベースを提供することが好都合である。
【0006】
これらの身体ゾーンのそれぞれには、データベースに従って、それぞれの身体ゾーンにおける最大許容接触圧を示す値が関連付けられている。接触圧は、特に本体部の表面に対する法線方向で定義される。接触圧とは、人の体に外部から作用する圧力のことである。圧力は単位面積あたりの力として定義されるため、原則的に接触圧と接触力とは置き換え可能である。一実施形態では、「接触圧」という用語は、一貫して、以前および以下において「接触力」という用語に置き換えられている。接触圧の各値に加えて、データベースは、好ましくは、それぞれの身体ゾーンに作用する力および/又はトルクの接線成分としての剪断応力の各値を有する。
【0007】
接触事象は、好ましくは予測、特にシミュレーションによって決定される。そのためには、ロボットマニピュレータの姿勢、特にロボットマニピュレータの未来の姿勢と、人物の姿勢、特に人物の未来の姿勢に関する情報とが常に必要である。ロボットマニピュレータ又は人の現在の姿勢からロボットマニピュレータ又は人の未来の姿勢を推測するために、ロボットマニピュレータの移動経路を予測するために、特に、ロボットマニピュレータの予め定められた目標移動経路および/又はロボットマニピュレータの速度および/又は加速度が使用される。人物の場合も同様であることが好ましい。人の場合、まず人の意図が必ずしもわからないこと、また人の動作シーケンスも特に反射的に無意識に制御されることが多いことから、人の計画的軌道を想定することは一般に不可能である。その代わりに、人物の現在の姿勢および/又は人物の動き(特に速度/加速度)が、特にカメラによって取得されることが好ましく、人物の現在の姿勢および/又は人物の現在の動きから未来の可能性のある姿勢が推論される。
【0008】
現在認識されている接触事象の場合、例えばロボットマニピュレータのトルクセンサーによって関節で検出された関節トルクベクトルに基づいて外力ねじを決定するなど、共通の衝突検出を介して実行することもできるため、予測やシミュレーションは不要である。
【0009】
現在又は未来の接触事象の検出の種類に関係なく、そのような検出は、データベースに定義された人のどの身体ゾーンが接触事象によって影響を受けるか、又は受ける予定であるかについての情報も提供する。身体ゾーンのそれぞれには、データベースの情報に従って接触圧の最大許容値が個別に割り当てられているので、ロボットマニピュレータと人の身体との接触事象の発生位置によって、接触事象によって生じ得る最大許容接触圧も判明している。
【0010】
これは、本発明において、考慮されている。この目的のために、人の体、特に人の体の表面に対して固定的に配置される基準位置が定義される。したがって、この身体固定基準位置は、当然、人がロボットマニピュレータの接触を感じることができる人の表面上の位置に対応する。ロボットマニピュレータが人の体表面に対して非ゼロの法線成分で移動する過程で、人の組織の押し込みが発生し、人はこれを接触圧として感じることができる。人の組織はもともと粘性減衰性があり、また少なくとも部分的に弾性反発性がある(また、特定の状況下では、少なくとも一時的に部分的に可塑化されるが、これが組織の永久的な損傷誘発性の不可逆的な変形を構成することはない)。
【0011】
本発明によれば、ロボットマニピュレータは、少なくとも接触事象中の人の組織の押し込みの局所的な進行の開始から、インピーダンス調節された態様で制御される。したがって、一方では、人の組織は弾性要素を有し、他方では、ロボットマニピュレータのインピーダンス調節は、少なくとも人の体の表面に垂直な成分において基準点から出発して、増加する復元力を構築し、したがって少なくともこの垂直成分の方向に運動エネルギーを減少させる人工バネ成分を含んでいる。
【0012】
この場合、インピーダンス調節は、特に、基準位置とロボットマニピュレータ上の所定の位置との間の相対位置に基づいて実施される。この位置ベクトルの長さの値によって、特に、人工バネ部品を用いて、偏向に依存した抵抗力を発生させるための偏向量が決定される。
【0013】
インピーダンス調節は、好ましくは、人物上の基準位置に対するロボットマニピュレータ上の位置の現在位置から始まる、2つのチャネルを用いて決定された相対位置に基づいて行われる。2チャンネル性は、特に関節角センサーを含むロボット固有のセンサーセットと、一方では外部センサーユニット、好ましくはカメラユニットによって得られる。また、2つ以上のカメラユニットを使用することも可能である。このような2チャンネルシステムでは、特に位置情報が少なくとも2つのソースから取得され、次に、特に比較ユニットによってデータの整合性がチェックされる。2つのソースに矛盾がある場合、少なくともどちらかのセンサーユニットが故障していることになり、ロボットマニピュレータの安全な動作が保証されなくなる。このような場合、好ましくは警告が発せられ、および/又はロボットマニピュレータの動作が直ちに停止される。
【0014】
基準位置は、好ましくは、インピーダンス調節、特にインピーダンス調節の人工バネ成分のための半径方向に対称なゼロ位置として機能する。この場合、インピーダンス調節は、ゼロ位置からの偏向を、偏向の方向に関係なく等しく扱う。代替的に、インピーダンス調節は、好ましくは、ゼロ位置としての基準位置から出発して、方向の関数として、特にインピーダンス調節の人工バネ成分として実施される。インピーダンス調節の人工バネ成分は、好ましくは、人の患部身体ゾーンの表面に対して法線、すなわち直角である1方向についてのみ適用され、わずかな調整は、好ましくは、基準位置に達するまで、インピーダンス調節を適用する前にロボットマニピュレータによって使用された、法線成分と異なる他の方向において適用される。一方ではインピーダンス調節そのものであり、他方では力制御、位置制御、アドミタンス制御など、従来技術で知られている制御形態であってもよい。
【0015】
好ましくは、人工バネ成分に加えて、ロボットマニピュレータのインピーダンス調節は、定義上、速度に依存した抗力を発生させる人工ダンピング成分も含んでいる。
【0016】
さらに、本発明によれば、ロボットマニピュレータが人に及ぼす力(/圧力)は、接触事象の影響を受ける身体ゾーンに対する接触圧の最大許容値を超えないように制限される。これは特に、ロボットマニピュレータのアクチュエータの帯域幅の範囲内で行われ、通常、十分な速さでこのような反応を確保することができる。
【0017】
したがって、ロボットマニピュレータと人とが接触した場合、ロボットマニピュレータの動きが弾力的に、特に減衰的に減少し、人がインパルス伝送の際に柔らかい衝撃を感じるだけであることは、本発明の有利な効果である。また、ロボットマニピュレータ自体からの接触圧を制限することで、怪我を回避することにも有利になる。一方、ロボットマニピュレータに運動エネルギーがなく、代わりに人の運動エネルギーによって運動量が伝達される場合は、ロボットマニピュレータがインピーダンス調節のゼロ位置から反対方向に偏向される以外は、上述と同様の効果があり、インパルス伝送の弾力性、特に減衰性は維持されている。人とロボットマニピュレータとの間の準静的な動力伝達においても、インピーダンス調節が人の体表面の基準位置を起点とした偏向依存の抵抗を伴うため、ロボットマニピュレータとの主観的な柔らかい接触が人に有利に提供される。
【0018】
有利な実施形態によれば、本方法はまた、以下のステップを有する:
-ロボットマニピュレータ上の人と接触する場所のエッジ形状を決定し、決定されたエッジ形状に応じて最大許容接触圧を決定又は調整する。
【0019】
データベースは、好ましくは、身体ゾーンのそれぞれについて値のセットを有し、値のセットからの各要素は、特定のエッジ形状に割り当てられるか、又は人と接触するロボットマニピュレータ上のその位置のエッジ形状に少なくともほぼ割り当てられている。有利には、人の身体ゾーンの感度だけでなく、身体ゾーンに接触するエッジ形状に関連する感度も考慮される。このように、細く鋭い輪郭は、その性質上、鈍い面による接触事象とは対照的に、接触圧を高めなくても傷害を引き起こしやすい。データベースの値のセットの代替として、データベースからの各身体ゾーンの固定値は、決定されたエッジの形状に応じて調整される。これは、好ましくは、エッジ形状の逆尖鋭度を反映した係数を乗じることによって行われ、一定の最大許容接触圧と比較して,鋭利なエッジはより高い実接触圧と関連づけられる。
【0020】
さらなる有利な実施形態によれば、インピーダンス調節が最大許容接触圧まで実施される場合、最大許容接触圧は、人と接触するロボットマニピュレータの位置の、人に対する相対的な速度の関数として決定又は低減される。この実施形態は、人の組織を押し込むような急激な動作は、ゆっくりとした動作よりも不快に感じられることを有利に考慮したものである。したがって、先の実施形態と同様に、エッジ形状の代わりに、ロボットマニピュレータと人物との接触事象が発生した場合の速度が考慮される。この場合も、この実施形態によれば、速度の有限集合に適用されるか、又はそれらに近似したデータベースに様々なエントリが存在することができる。代替的に、各ケースの単一のデータベースエントリは、特に係数又は他の関数によって適宜調整される。
【0021】
さらなる有利な実施形態によれば、ロボットマニピュレータのインピーダンス調節制御は、人の組織が押し込まれているときに所定の制動距離を超えないように行われる。制動距離は、特にロボットマニピュレータと人の組織との間のインパルス伝送に依存し、人の組織に対するロボットマニピュレータの圧入の深さと相関している。制動距離の限界により、人の組織が規定以上に押し込まれることがないようにする。これは特に、ロボットマニピュレータのアクチュエータを適切に制御することによって行われ、限界値に達したときにロボットマニピュレータが引き込み動作を行うようにする。
【0022】
さらなる有利な実施形態によれば、指定制動距離は、人の組織の押し込みの進行中に、基準位置からどの距離で最大許容接触圧に達するかを予測することによって決定される。そのため、実際に発揮される接触圧は、有利には最大許容接触圧に対応し、同時に制動距離の限界値にも対応するため、許容範囲全体において、人にできるだけ自然に見えるロボットマニピュレータの動作が利用される。
【0023】
さらなる有利な実施形態によれば、ロボットマニピュレータのインピーダンス調節制御は、固定座標系に関するインピーダンス調節によって行われるので、ロボットマニピュレータ上の人物に接触する位置と人物上の現在の基準位置との間の相対位置ベクトルは、固定座標系における接続ベクトルとして決定される。地球固定座標系は、特に直交座標系である。
【0024】
有利な実施形態によれば、本方法はまた、以下のステップを有する:
-ロボットマニピュレータの人と接触する部分の硬度および/又は弾性率を決定し、決定された硬度および/又は弾性率に応じて最大許容接触圧を決定又は調整する。硬度は、物体の貫通に対する抵抗力を決定するもので、ビッカース単位で規定することが望ましい。一方、弾性率は、ロボットマニピュレータの材料に発生する応力に対する伸びの度合いを示す応力定数である。本実施形態によれば、接触事象が人によって主観的にどのように知覚されるかに材料特性は大きな影響を有するため、この材料特性又は人と接触するロボットマニピュレータの位置の材料特性は、有利には、データベース内のデータの値セットを介して、又はデータベースからそれぞれの有効値を適合させることによって、特に係数又は別の関数を乗じることによって考慮される。
【0025】
有利な実施形態によれば、本方法はまた、以下のステップを有する:
-人と接触するロボットマニピュレータ上の位置の部品の温度を決定し、決定した温度に応じて最大許容接触圧を決定又は調整する。また、ロボットマニピュレータが人に接触する場所の部品の温度は、ロボットマニピュレータとの接触事象に対する人の主観的な感覚に相応の影響を与える。極端な温度では、人は接触事象をむしろ不快なものとして知覚する。ここでも、異なる温度に対して、それぞれの身体ゾーンに対して異なる値をデータベースに格納することができ、あるいは、それぞれの身体ゾーンに対するデータベースの個々の値は、それに応じて調整される。
【0026】
さらなる有利な実施形態によれば、インピーダンス調節は、非線形人工バネ成分を有し、偏向が増加すると、偏向に不釣り合いに増加する反力がロボットマニピュレータに作用する。特に人体の組織は非線形な力学的特性も持っているため(例えば血液は非ニュートン流体であり、腱および/又は骨および/又は靭帯が当たると組織を押すときの抵抗が急に大きくなる)、この人体の特性も特にインピーダンス調節によって反映されることになる。その結果、有利には、接触事象が発生した際のロボットマニピュレータの挙動が、人によって著しく快適なものとして認識される。
【0027】
本発明のさらなる態様は、ロボットマニピュレータを制御するための制御ユニットに関し、身体ゾーンの各々に接触圧のそれぞれの最大許容値が割り当てられている、人の身体ゾーンを有するデータベースへのインターフェースと、演算ユニットとを有し、演算ユニットは、人の身体に対する固定基準位置を決定し、基準位置は人との接触事象の間に人の組織の押し込みの空間進行の開始を示す、および、決定された基準位置がロボットマニピュレータのインピーダンス調節の人工バネ成分のゼロ位置として機能し、最大許容接触圧が限界値として超過されないように、ロボットマニピュレータをインピーダンス調節制御するためロボットマニピュレータの人との現在又は未来の接触事象を決定し、人の接触した身体ゾーンを決定するよう設計される。
【0028】
提案された制御ユニットの利点と好ましい改良は、提案された方法と関連して上記でなされた記述の類推的かつ対応する移転から生じるものである。
【0029】
さらなる利点、特徴、および詳細は、以下の説明から明らかになり、その中で、場合によっては図面を参照しながら、少なくとも1つの例示的な実施形態が詳細に説明される。同一、類似、および/又は機能的に同一の部品には、同一の参照番号を付す。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1図1は、本発明の例示的な実施形態によるロボットマニピュレータの制御方法を示す図である。
図2図2は、図1による方法を実行するための制御ユニットを示す図である。
【0031】
図中のイラストは模式的なものであり、縮尺通りではない。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1は、ロボットマニピュレータ1の制御方法を示す。この方法は、制御ユニット3において実行される。したがって、以下に示すステップは、図2にも転用でき、図2の参照記号も使用することができる。この方法は、次のような手順で行われる:
-人の身体ゾーンを含むデータベースを提供しS1、ここで、身体ゾーンの各々に接触圧のそれぞれの最大許容値が割り当てられており、
-ロボットマニピュレータ1と人とが関わる現在又は未来の接触事象を判定しS2、人の接触身体ゾーンを決定し、
-人の身体に対して固定された基準位置を決定しS3、ここで、基準位置は、人との接触事象との間、人の組織の押し込みの空間的進行の開始を示し、および、
-ロボットマニピュレータ上の人と接触する位置のエッジ形状を決定しS5、ここで、決定されたエッジ形状に応じて最大許容接触圧が決定又は調整され、
-ロボットマニピュレータの人と接触する位置の硬度および/又は弾性率を決定しS6、決定された硬度および/又は弾性率に応じて最大許容接触圧が決定又は調整され、
-人と接触するロボットマニピュレータの位置の部品の温度を決定しS7、決定された温度に応じて最大許容接触圧が決定又は調整され、
-決定された基準位置がロボットマニピュレータ1のインピーダンス調節の人工バネ成分のゼロ位置として使用され、限界値としての最大許容接触圧を超えないように、ロボットマニピュレータ1をインピーダンス調節制御するS4。
【0033】
図2は、ロボットマニピュレータ1を制御するための制御ユニット3を示し、身体ゾーンの各々が接触圧のそれぞれの最大許容値を割り当てられている、人の身体ゾーンを有するデータベースへのインターフェース5と、演算ユニット7とを有し、演算ユニット7は、ロボットマニピュレータ1の人への現在又は未来の接触事象を決定し、人の接触身体ゾーンを決定するために使用される。また、演算ユニット7は、人の身体に対して固定される基準位置を決定し、基準位置は、人との接触事象の間、人の組織の押し込みの空間的な進行の開始を示す。これは、人とロボットマニピュレータ1との両方の現在の動作シーケンスを外挿することによって、未来の動作シーケンスをシミュレートすることによって行われる。さらに、演算ユニット7は、決定した基準位置がロボットマニピュレータ1のインピーダンス調節の人工バネ成分のゼロ位置として機能し、限界値としての最大許容接触圧を超えないように、インピーダンス調節でロボットマニピュレータ1を制御する。
【0034】
本発明は、好ましい例示的な実施形態によってさらに詳細に例示および説明されてきたが、本発明は、開示された例によって限定されず、本発明の範囲から逸脱することなく、当業者によって他の変形形態をそこから導き出すことができる。したがって、考えられる変形形態が多数存在することは明らかである。例として言及された実施形態は、実際には例を表すだけであり、保護の範囲、可能な用途、又は本発明の構成を制限するものとして決して解釈されるべきではないことも明らかである。むしろ、前述の記述および図の説明は、当業者が例示的な実施形態を実施することを可能にし、開示された本発明の概念を知っている当業者は、明細書のより広範な説明など、特許請求の範囲およびそれらの法的同等物によって定義される範囲から逸脱することなく、例えば、例示的な実施形態で引用される個々の要素の機能又は配置に関して、様々な変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0035】
1:ロボットマニピュレータ
3:制御ユニット
5:インターフェース
7:演算ユニット

S1:提供
S2:決定
S3:決定
S4:制御
S5:決定
S6:決定
S7:決定
図1
図2
【国際調査報告】