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特表2023-513965リング精紡機またはリング加撚機用の巻取り加撚装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-04
(54)【発明の名称】リング精紡機またはリング加撚機用の巻取り加撚装置
(51)【国際特許分類】
   D01H 7/52 20060101AFI20230328BHJP
   D01H 7/60 20060101ALI20230328BHJP
【FI】
D01H7/52
D01H7/60 Z
D01H7/60 B
D01H7/60 E
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022549948
(86)(22)【出願日】2021-02-18
(85)【翻訳文提出日】2022-10-18
(86)【国際出願番号】 EP2021053981
(87)【国際公開番号】W WO2021165374
(87)【国際公開日】2021-08-26
(31)【優先権主張番号】20158383.8
(32)【優先日】2020-02-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520223538
【氏名又は名称】サンコ・テクスタイル・アイレットメレリ・サナーイ・ベ・ティジャレット・アノニム・シルケティ
【氏名又は名称原語表記】SANKO TEKSTIL ISLETMELERI SANAYI VE TICARET ANONIM SIRKETI
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アブドカデル,アンワル
(72)【発明者】
【氏名】ホサイン,マフムド
(72)【発明者】
【氏名】バルドマン,マルティン
(72)【発明者】
【氏名】シェリフ,ショクリ
【テーマコード(参考)】
4L056
【Fターム(参考)】
4L056AA02
4L056AA31
4L056BD01
4L056BD02
4L056BD49
4L056BD50
4L056BD54
4L056DA00
(57)【要約】
本発明は、超伝導材料を含むステータと、ステータ冷却装置と、磁場を発生させるように構成されるロータと、回転可能なスピンドルとを備えるリング精紡機またはリング加撚機用の巻取り加撚装置を提供し、ロータおよびステータは、スピンドルと同軸に配置され、ロータは、その上に取り付けられたリング/トラベラシステムを有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
超伝導材料(211,311)を含むステータ(210)と、
ステータ冷却装置(240)と、
磁場を発生させるように構成されるロータ(220)と、
回転可能なスピンドル(208)と
を備え、
前記ロータおよび前記ステータは、前記スピンドルと同軸に配置され、
前記ロータは、前記ロータの上に取り付けられたリング/トラベラシステム(230,330)を有する
ことを特徴とする、
リング精紡機またはリング加撚機用の巻取り加撚装置(200)。
【請求項2】
前記リング/トラベラシステム(230,330)が、前記ロータ(220)に取り外し可能に取り付けられる、請求項1に記載の巻取り加撚装置(200)。
【請求項3】
前記リング/トラベラシステム(230,330)が、ロックおよび/または摩擦係合によって前記ロータ(220)に取り付けられる、請求項2に記載の巻取り加撚装置(200)。
【請求項4】
前記ロータ(220)が、特に環状の永久磁石(221,321)を備える、請求項1から3のいずれか1項に記載の巻取り加撚装置(200)。
【請求項5】
前記リング/トラベラシステム(230,330)の前記リングが、前記ロータ(220)の内側部分に機械的に接続されるように構成される円形基部(233a)を有する、先行する請求項のいずれか1項に記載の巻取り加撚装置(200)。
【請求項6】
前記円形基部(233a)が、前記ロータ(220)の前記内側部分に挿入されるように構成される、請求項5に記載の巻取り加撚装置(200)。
【請求項7】
前記円形基部(233a)が、前記ロータ(220)の前記内側部分の内側(225)に摩擦係合するように構成される、請求項6に記載の巻取り加撚装置(200)。
【請求項8】
前記円形基部(233a)が、前記ロータ(220)の前記内側部分の内側に嵌合するように変形可能である、請求項6または7に記載の巻取り加撚装置(200)。
【請求項9】
前記円形基部(233a)には、変形可能であるように、1つまたは複数の、特に軸方向のスロット(233b)が設けられる、請求項5から8のいずれか1項に記載の巻取り加撚装置(200)。
【請求項10】
前記円形基部(233a)が、前記ロータ(220)の前記内側部分に圧入されるように構成される、請求項5から9のいずれか1項に記載の巻取り加撚装置(200)。
【請求項11】
前記リング(231,331)が非磁性である、請求項2から10のいずれか1項に記載の巻取り加撚装置(200)。
【請求項12】
前記リング(231,331)が、1つまたは複数の非強磁性金属および/または合金で作られる、請求項11に記載の巻取り加撚装置(200)。
【請求項13】
前記トラベラ(232,332)が非磁性である、請求項2から12のいずれか1項に記載の巻取り加撚装置(200)。
【請求項14】
前記トラベラ(232,332)が、50mg未満、好ましくは20mg未満の質量を有する、請求項2から13のいずれか1項に記載の巻取り加撚装置(200)。
【請求項15】
先行する請求項のいずれか1項に記載の複数の巻取り加撚装置(200)と、
前記複数の巻取り加撚装置の前記スピンドルをまとめて駆動するように構成されるスピンドル駆動システムと
を備える、リング精紡機またはリング加撚機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、リング精紡機およびリング加撚機において糸を生成し巻き取るための装置に関し、糸は、加撚要素によって回転させられ、スピンドルおよびボビンに対する速度差によりボビンに巻き取られる。
【背景技術】
【0002】
先行技術
従来のリング精紡プロセスでは、糸を撚ってボビンに巻き付けるために、ドラフトされたロービングがリング/トラベラシステムに送られる。図1は、従来のリング精紡装置100の概略図を示す。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ドラフトされたロービングは、送出ローラ101によって糸ガイド102を通ってスピンドル組立体まで送られ、そこでトラベラ106と呼ばれる小さなリングに通される。糸ガイドとトラベラとの間で、糸は、リング精紡機の動作中に糸バルーン104のサイズを制限するバルーン制御リング103を通過する。
【0004】
減衰された繊維は、引張強度を付与するために、撚りを挿入することによって一緒に保持されて連続ストランド、すなわち糸を形成する。トラベラ106は、自身の駆動装置を持たない。それは、取り付けられた糸を介して、対応するスピンドル駆動モータによって駆動されるスピンドル108の回転によって引きずられる。リング/トラベラ方式におけるリング105に沿ったトラベラの各循環は、糸に撚りを挿入する。トラベラの循環は、リング上のトラベラの比較的高い摩擦、および糸ガイドとトラベラとの間の糸の空気抵抗のために、スピンドル108の回転よりもいくらか遅れる。スピンドルとトラベラとの速度の差は、スピンドル上に固定されたコップまたはボビンに糸を巻き付けることになる。
【0005】
回転に関して、固定リング105は、トラベラ106を保持するためにスピンドル108の周りに設けられる。リング105は、通常、垂直方向に変位可能なリングレール107に取り付けられ、リングレールの上下運動は、ボビンに通された糸パッケージの形状を決定する。リング紡績糸は、一般的に高品質の糸であり、主に10tex~100texの全番手で生産される。
【0006】
糸の巻取り速度はスピンドル速度に依存するが、それらはリングに沿ったトラベラの速度と直接相関し、したがってリング紡糸の生産性を制限する。リングとトラベラとの間の摩擦ならびに摩耗は、より速いスピンドル速度で急激に増加する。紡糸中、リングとトラベラとの間で高い接触圧力が発生する。この圧力は強い摩擦力を含み、これが次に熱を発生させる。この熱は、リング/トラベラシステムの急速な摩耗を回避するために高速で放散されなければならない。トラベラの質量が低いと、利用可能な短時間で発生した熱を放散することができず、トラベラおよびリングの実質的な摩耗をもたらす。これは、特に中撚りおよび高撚りの綿および混紡糸を中番手および細番手で紡糸する場合、プロセスに有害である。
【0007】
リング精紡における生産性の著しい制限は、主にリング/トラベラシステムにおいて、リング、トラベラおよび糸の間の作用力によって引き起こされる。重要な制限因子を以下のように要約することができる。
【0008】
○トラベラとリングとの間の摩擦熱(人造繊維における融点)
○リング/トラベラシステム、特にトラベラの摩耗
トラベラの速度の制限は、糸の送出速度をそれ以上増加させることができないことを意味し、その結果、既存のリング/トラベラシステムは、リング精紡機およびリング加撚機の能力を制限する。
【0009】
国際公開第2012/100964号パンフレットから、リングとトラベラとの間の摩擦が磁気浮揚によって除去され、寿命を大幅に延ばし、衝撃力を低減する、リング精紡機またはリング加撚機の巻取り加撚装置が知られている。超伝導材料およびステータ冷却装置を有するリング状ステータは、ステータに対して回転することができ、かつ磁場を生成する、リング状ロータと同じ方法でボビンと同軸に配置され、ロータはループ状の糸案内要素を有する。ステータの超伝導材料が転移温度未満に冷却されると、ステータに入ったロータの磁束が凍結し、その結果、最初は機械的に支持されていたロータの本質的に安定した受動的支持を、磁気浮揚によって達成することができる。回転ロータの非接触支持のために、従来のリング/トラベラシステムのリングは、摩擦熱の生成のために生産性を制限する重要な構成要素として省略することができる。代わりに、糸案内要素を有するロータ全体がここで高速で回転させられ、この場合、回転は、弱い磁気摩擦および空気抵抗を除いて本質的に摩擦がなく、したがって、著しく高いスピンドル速度を可能にする。
【0010】
しかしながら、磁石リングとして形成されたロータは、かなりの自重を有し、これをスピンドルの始動中に加速しなければならない。結局、磁石リング上に設置される糸案内要素は、スピンドルの速度によっては問題となり得る不均衡を構成する。
【0011】
国際公開第2012/100964号パンフレットに記載されている巻取り加撚装置は、既存のリング/トラベラ加撚システムの摩擦問題を排除することができるが、それには依然としていくつかの制限がある。
【0012】
従来のリング精紡装置のように、精紡プロセスの加速段階中に糸を継ぐことは不可能である。数ミリグラムの質量を有する従来のトラベラと比較して、国際公開第2012/100964号パンフレットの巻取り加撚装置のロータの質量ははるかに大きい。そのより高い慣性モーメントのために、ロータは、スピンドルの加速度に調整するのにより多くの時間を必要とする。これを補償するために、スピンドルのより遅いランプ設定を選択してロータのランプ設定に調整することができる。しかしながら、このような設定は、糸継ぎ時間を延長し、したがって、糸継ぎのための機械の総停止時間を増加させ、それはリング精紡機またはリング加撚機の生産性を低下させる。
【0013】
任意のスピンドル位置で糸切れが発生した場合、糸継ぎのために、国際公開第2012/100964号の巻取り加撚装置を実装している機械全体を停止させなければならない。あるいは、各スピンドルを専用の駆動モータで駆動することもできるが、リング精紡機の設置および運用コストが大幅に増加する。
【0014】
その結果、本発明は、リング精紡機またはリング加撚機用の巻取り加撚装置を提供することを目的とし、これは、高容量での機械の迅速な始動を可能にし、さらに設置および運用コストを低減する。非常に一般的な用語では、本発明は、リング精紡機およびリング加撚機の生産性をさらに高めるという目的に基づいている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
発明の説明
上記課題は、請求項1に記載のリング精紡機またはリング加撚機用の巻取り加撚装置によって解決される。有利な変形形態およびさらなる発展形態は、従属請求項に記載されている。
【0016】
本発明によるリング精紡機またはリング加撚機用の巻取り加撚装置は、超伝導材料を含むステータと、ステータ冷却装置と、磁場を発生させるように構成されるロータと、回転可能なスピンドルとを備え、ロータおよびステータは、スピンドルと同軸に配置され、ロータは、ロータの上に取り付けられたリング/トラベラシステムを有する。
【0017】
以下により詳細に説明するように、ロータは、磁場を発生させる永久磁性材料を有する少なくともサブセクションを備えることができる。これは、ロータが少なくとも部分的に磁化されていること、またはロータが1つまたは複数の永久磁石を有することを意味する。磁化部分または永久磁石は、回転対称磁場を発生させるために、環状サブセクションとして、すなわちロータの回転軸に対して回転対称に形成される。ステータおよびロータの他のサブセクションは、他の、例えば非磁性材料で作られてもよい。ロータの浮揚を容易にするために、特にロータの重量を低減する材料を使用することができる。
【0018】
ステータの少なくとも一部における超伝導状態の形成を可能にするために、ステータは、少なくとも1つの超伝導材料を含むか、または少なくとも1つの超伝導材料で作られ、超伝導材料の転移温度未満の温度にステータを冷却するときに少なくとも1つの超伝導セクションがステータに形成される。ステータは、ロータの磁束がステータに入ることを可能にするように形成および配置され、ステータを冷却するためのステータ冷却装置が設けられる。
【0019】
このステータ冷却装置は、超伝導材料の超伝導状態の形成に必要な低温を生成するように構成され、超伝導材料の転移温度を下回るまでステータの超伝導領域の温度を低下させることができるように形成される。
【0020】
本発明の変形例では、冷却装置は、77Kを超える転移温度を有する高温超伝導体が使用される場合に液体窒素で充填され得る浴クライオスタットとして形成されてもよく、他の変形例では、低温ガスによって冷却が行われる気化クライオスタット、またはクライオリキッドが不要な冷凍クライオスタットなどの他のクライオスタットも使用され得る。低温の生成のために異なる物理的効果を利用することにおいて異なる、複数の冷却装置の異なる組み合わせにより、クライオスタットは、システムの信頼性を高めるために冗長に相互接続することもできる。これに関連して、少なくとも1つの超伝導材料は、ステータ冷却装置の一部として形成することができる冷却損失を最小限に抑えるために適切な断熱材によって囲まれ、および/またはコーティングすることができる。
【0021】
ロータおよびステータは、動作中の磁気浮揚によりロータを非接触で位置決めできるように形成および配置されてもよい。これは、ステータの超伝導領域の冷却後、ロータの支持体が自由に浮遊し、したがって非接触であると理解されるべきである。
【0022】
互いに面するロータおよびステータの領域を画定する領域の最適な距離を維持することによって、および超伝導材料の温度をその転移温度未満に低下させるときにステータを透過するロータによって発生する不均一な磁場の磁束管のピン止めを通して、ロータの本質的に安定した受動的支持が、ロータの回転があってもなくても可能である。
【0023】
したがって、ロータの能動的な軸受制御のための複雑な制御および/またはセンサユニットを省略することができる。最適な距離を介して摩耗がないことが保証され、その結果、高い信頼性および堅牢性が得られる。ロータの非接触支持のおかげで、スピンドルの回転によって駆動される循環糸によってほぼ摩擦のない回転を引き起こすことができる。その結果、糸およびスピンドルの回転速度を大幅に増加させることができ、ひいては、ボビンの直径増加の可能性に関連して生産性の大幅な向上をもたらす。
【0024】
ロータの本質的に安定した受動的支持は、ステータの超伝導材料に対する磁束管の位置および向きの変化ならびにピン止め力によって引き起こされる復元力の平衡から生じる。
【0025】
特に、ロータは、ロータの回転軸に対して回転対称な磁場を生成する永久磁性材料を有する1つまたは複数の環状サブセクションを有することができる。1つまたは複数のサブセクションは、特に、スピンドル軸と同軸に配置された1つまたは複数の環状永久磁石として形成されてもよい。さらに、ロータは、浮揚を容易にするために特に軽い方法で形成することができる1つまたは複数の非磁性セグメントを有することができる。非磁性セグメントは、環状に形成されてもよいし、環状に形成されなくてもよい。例として、ロータの一部としての環状永久磁石の外側または内側(半径方向)に非磁性補強リングを設けることができる。非磁性セグメントの環状形状は、本質的に不均衡のないロータを形成するように選択されてもよい。
【0026】
ステータは、スピンドルの周方向に互いに間隔を置いて配置された1つの環状超伝導領域または複数の超伝導サブセクションを有することができる。したがって、超伝導部分は、必ずしも全周にわたって延在する必要はなく、その結果、ステータ冷却装置は、著しく小型で省エネルギーであり得る。超伝導サブセクションは、超伝導材料としてタイプII超伝導体を有する。一実施形態では、これらは、希土類バリウム-銅酸化物(RE)BaCuOもしくはイットリウム-バリウム-銅酸化物(YBaCuO)のグループからの、またはビスマス-ストロンチウム-カルシウム-銅酸化物(BiSrCaCuO)のグループからのセラミック高温超伝導体であり得る。さらに、ステータのサブセクションにおいて、既に述べたグループよりもさらに高い転移温度を有する超伝導材料を有する本発明の変形形態が可能である。したがって、ステータ冷却装置の性能パラメータを低減することができ、これは、記載されている巻取り加撚装置のエネルギー効率の向上につながる。これに関連して、超伝導サブセクションは、冷却損失を最小限に抑えるために使用される断熱材によって囲まれてもよい。
【0027】
通常導電性および/または絶縁性材料のセグメントは、超伝導サブセクション間に配置されてもよい。しかしながら、材料を節約するために、これらの中間セグメントは完全に省略されてもよい。特に、超伝導サブセクションは、スピンドルの周囲に、すなわちスピンドル軸の周りの円に沿って、一定の間隔で配置されてもよい。これにより、ロータの特に安定した設置が可能になる。あるいは、ステータの少なくとも1つの環状超伝導領域は、スピンドル軸と同軸に配置されてもよい。超伝導磁気軸受の軸受力を最大にするために、ロータは、環状永久磁石を備えてもよく、および/またはステータは、スピンドル軸と同軸に配置された環状超伝導サブセクションを備えてもよい。さらに、環状永久磁石および環状超伝導サブセクションは、互いに対向する対応する表面が本質的に同じ表面積を有するように形成されてもよい。
【0028】
一実施形態によれば、ロータおよびステータは、ロータを囲むステータと同一平面上に配置されてもよい。「上方」および「下方」という用語は、取り付け面上に立つリング精紡機またはリング加撚機に関して、本明細書および以下で理解されるものとする。繊維材料および/または糸は、通常、上方からボビンに案内され、スリーブ上に巻き付けられ、その過程で、糸の高速回転によりいわゆる糸バルーンが形成される。同一平面配置では、ロータは、半径方向に見てステータの内側に位置する。内側から外方向に見ると、この配置は特に、
a)永久磁性材料を有するロータの環状の、すなわちリング形状のセグメント、
b)環状永久磁石を取り囲んで支持するロータの環状支持または補強要素、
c)環状エアギャップ、および
d)少なくとも1つの、特に環状の超伝導セグメント/サブセクションを備える環状ステータ
のように見えてもよい。
【0029】
別の実施形態によれば、ロータおよびステータは、スピンドル軸に沿って互いに軸方向距離を置いて平行に配置されてもよい。「内側」および「外側」という用語は、本開示ではスピンドル軸に関して見られるものとする。糸が上方からボビンに案内される従来の構成では、ロータをステータの上方に位置するように配置することができ、ステータとロータとの間の軸方向距離は、ロータの磁場がステータの超伝導領域に入ることを可能にするのに十分に小さい。ロータとステータとの間の軸方向距離により、ロータとステータとの間にエアギャップが形成される。
【0030】
超伝導磁気軸受のいずれの実施形態においても、ロータおよびステータは、スピンドル軸および互いに対して同軸に配置される。
【0031】
上述の超伝導磁気軸受の品質を指定する最も関連するパラメータは、軸方向にシフトした配置の場合は縦方向および横方向の変位に対する、同一平面上の配置の場合は軸方向および半径方向の変位に対する、静的軸受力および剛性である。
【0032】
同一平面配置は、超伝導材料の十分に長い円筒がステータに使用される場合、軸方向にシフトした配置よりも剛性が高いという利点を有する。軸方向にシフトした配置は、設置が簡単であるという利点を有する。
【0033】
いずれの構成においても、ロータは、スピンドル回転のランプアップおよびランプダウン中に対応する慣性を示す実質的な質量を有する。
【0034】
本発明によれば、ロータは、その上に取り付けられたリング/トラベラシステムを有する。言い換えれば、リングと、リング上に移動可能に配置されたトラベラとを備えるリング/トラベラシステムは、ロータに機械的に接続される。リング/トラベラシステムは、ロータの上面に、または以下でより詳細に説明するように、ロータの半径方向内側部分と機械的に接触して取り付けられてもよい。リング/トラベラシステムは、糸が、特にバルーン制御リングから、リング/トラベラシステムのトラベラを通ってボビンに案内され得るように、ロータに取り付けられる。したがって、糸が上方から案内される従来の構成では、トラベラがロータの上面の上方に設けられるように、リング/トラベラシステムをロータに取り付けることができる。
【0035】
超伝導磁気軸受を介して浮揚するロータにリング/トラベラシステムを取り付けることは、いくつかの利点を提供する。リング精紡プロセス中、トラベラ、リングおよびロータは、糸とトラベラとの摩擦およびトラベラとロータに取り付けられたリングとの摩擦を介してスピンドル回転によって駆動される。これにより、糸に撚りが付与される。
【0036】
ロータの質量と比較してトラベラの質量が比較的小さいため、トラベラは、ランプアップおよびランプダウン中などにスピンドルの回転速度の変化に迅速に反応することができる。しかしながら、リングとトラベラとの間に摩擦および摩擦熱が存在するのは、加速段階および減速段階の間のみであり、例えば糸継ぎ中など、比較的短い時間、例えば10秒未満の間である。
【0037】
リングとトラベラとの間の摩擦熱の問題は、場合によっては複数のスピンドル-加速度ランプと共に、スピンドル速度の段階的な増分(多速度)を適用するスピンドルのプログラムされた制御を使用して解決することができ、その結果、加速段階中にトラベラにおける重大な発熱は発生しない。スピンドル速度の段階的な増分のプログラムされた制御は、スピンドルを目標スピンドル速度まで徐々に加速させることを可能にする。スピンドル速度の段階的な増分ごとに、複数の加速度ランプを設定値として使用することができる。この設定により、糸継ぎ時のリングとトラベラとの間の発熱を低減するだけでなく、特に加速時にトラベラから飛び出すなどの不都合の発生を防止することもできる。さらに、リング上のトラベラは、スピンドル速度の段階ごとにその速度をスピンドルの速度に調整するのに十分な時間を有する。
【0038】
通常動作中、ロータとトラベラとの間の摩擦がほぼゼロに減少するように、ロータとトラベラとはほぼ同一の回転周波数で回転する。さらに、ロータが超伝導磁気軸受に起因してほぼ無摩擦で回転するため、本発明による巻取り加撚装置において、ロータリング/トラベラ組立体の著しく高い回転速度を達成することができる。その結果、本発明の巻取り加撚装置の生産性を高めることができる。
【0039】
さらに、スピンドル加速中のリングとトラベラとの間の摩擦のみが存在するため、トラベラの寿命は、従来のリング/トラベラシステムと比較して大幅に延長される。また、より高速なスピンドル回転であっても、リング紡績糸の高品質を保証することができる。
【0040】
最後に、特に糸切れの場合の糸の糸継ぎプロセスは、既存のリング精紡機の場合のように複数のスピンドルが一緒に駆動される場合でも、リング精紡機またはリング加撚機全体を停止させることなく実行することができる。したがって、本発明の巻取り加撚装置は、個々のスピンドル駆動装置を提供する実質的な投資コストなしに、超伝導磁気軸受を有する既存のリング精紡機をアップグレードすることを可能にする。
【0041】
本発明の巻取り加撚装置は、従来のリング精紡機と同様の方法で糸継ぎプロセスを行うことを可能にする。糸継ぎ中、リング上に配置されたトラベラは、スピンドル回転のランプアップと同期して回転し始め、ロータが回転し始める前に糸に必要な撚りを付与する。短時間で、トラベラとリングとの間の摩擦は、スピンドルの回転周波数にほぼ一致するまで、角速度の増加と共にロータを回転させる。最終回転周波数に達した後、トラベラとリングとの間に摩擦がほとんど存在しないように、ロータ、すなわちリングとトラベラとの間の相対運動はほとんど存在しない。したがって、本発明のロータ-リング/トラベラ組立体は、従来のリング/トラベラシステムのランプアップ時間に対してランプアップ時間を最小限に抑える。
【0042】
本発明の巻取り加撚装置の定常状態動作中のトラベラとリングとの間の摩擦が大幅に低減されるため、リング精紡プロセス中に糸張力が大幅に低減され、それによって糸切れのリスクが低減され、および/またはスピンドル回転数の増加が可能になる。ランプアップ段階の最初からトラベラとリングとの間の摩擦が従来のリング/トラベラシステムと比較して低減されると、設定されているロータの回転により、従来のリング精紡機と比較してスピンドル回転のランプアップ中に糸張力がさらに低減される。これにより、リング精紡機の信頼性が向上し、ランプアップ時間を短縮することができる。
【0043】
同様の考慮事項が、例えば糸継ぎのためのスピンドル回転のランプダウンにも当てはまる。
【0044】
一実施形態によれば、リング/トラベラシステムは、ロータに解放可能に取り付けられてもよい。例として、リング/トラベラシステムは、特にポジティブロック、例えばナットハブ、スロット、ノッチなどによるロック、および/または例えばねじ止めによる摩擦係合によってロータに取り付けられてもよい。リング/トラベラシステムを解放可能に取り付けることにより、リング/トラベラシステムを、異なる糸を紡糸するために必要とされるトラベラの軌道の異なる内径のリング/トラベラシステムと迅速に交換することが可能になる。リング/トラベラシステムが本発明によるロータに取り付けられると、リング/トラベラシステムは、ロータのセンタリングの結果としてスピンドル軸に対して自動的にセンタリングされる。その結果、リング/トラベラシステムを交換し、それによって異なる糸または糸品質に切り替えることが非常に容易になる。
【0045】
上述のように、ロータは、1つまたは複数の、特に環状の永久磁石を備えることができる。
【0046】
さらなる実施形態によれば、リング/トラベラシステムのリングは、ロータの内側部分に機械的に接続されるように構成される円形基部を有することができる。言い換えれば、ロータの内側に半径方向に設けられたロータの一部は、円形断面を有するリング/トラベラシステムの対応する基部に機械的に接続される。例として、リング/トラベラシステムの円筒部は、円形基部として設けられてもよく、円筒部は、環状ロータの垂直内面などのロータの垂直内側部に機械的に接続される。あるいは、リング/トラベラシステムのリングは、ロータの外側部分に機械的に接続されるように構成される円形基部を有することができる。ただし、基部をロータの内側部分に機械的に接続するときに、糸張力の低減を達成することができる。
【0047】
ロータの内側部分に機械的に接続されるように構成される円形基部は、リング/トラベラシステムをロータに接続することによってリング/トラベラシステムを自動的にセンタリングすることを可能にする。さらに、このような円形基部を使用して、特に軽量のリング/トラベラシステムを設計することができる。
【0048】
特定の実施形態によれば、円形基部は、ロータの内側部分に挿入されるように構成されてもよい。言い換えれば、円形基部は、円形基部をロータの軸に沿ってロータの内側部分と十分にまたは完全に接触するまで移動させることによって、ロータの内側部分と接触するように挿入されるように構成されてもよい。
【0049】
円形基部は、ロータの内側部分の内側に摩擦係合するように構成されてもよい。言い換えれば、リング精紡動作中に確実に係合するのに十分な摩擦を提供するように、円形基部および/またはロータの内側部分の対応する内側の設計および/または表面特性を選択することができる。一例として、円筒形の基部を設けて、ロータの対応する内面に摩擦係合することができる。
【0050】
追加的または代替的に、円形基部は、ポジティブロックによってロータの内側部分の内側に係合するように構成されてもよい。この目的のために、基部およびロータの内側部分は、特に軸方向に配置された突起および対応する凹部などのインターロック要素を含むことができる。例として、確実な嵌合を提供するために、舌部および対応する溝またはキーおよび対応するスロットが、基部の外面および内側部分の内面にそれぞれ配置されてもよい。
【0051】
円形基部は、ロータの内側部分の内側に嵌合するように変形可能であってもよい。特に、円形基部は、非連結状態のロータの内側部分の最小直径よりもわずかに大きい基部の最大直径が、基部を変形させることによって、特に基部を手動で変形させることによって、ロータの内側部分の直径に一致するように減少するように弾性変形可能であってもよい。
【0052】
円形基部には特に、変形可能であるように、1つまたは複数の、特に軸方向のスロットが設けられてもよい。言い換えれば、1つまたは複数の、特に軸方向に配置された、すなわち垂直なスロットが円形基部に設けられて、追加の周方向空間がロータの内側部分に挿入するために円形基部を圧縮することを可能にする。軸方向スロットは、円形基部の垂直範囲の一部または全体に沿って、特に円形基部の縁部まで下方に達するように設けられてもよい。代替的または追加的に、周方向に向けられたラグの有無にかかわらず、周方向に配置された1つまたは複数のスロットが、円形基部の必要な変形性のために設けられてもよい。
【0053】
対応して形成された円形基部は、リング/トラベラシステムを交換するときに、例えばトラベラの軌道の異なる直径に切り替えるために、ロータの内側部分に容易に挿入され、ロータの内側部分から容易に取り外され得る。
【0054】
一実施形態によれば、円形基部は、ロータの内側部分に圧入されるように構成されてもよい。この目的のために、円形基部は、円形基部をロータの内側部分に圧入することによってロータの内側部分と摩擦係合する、円筒形またはわずかに円錐形の外面を有することができる。円形基部をロータの内側部分に圧入することにより、リング/トラベラシステムをロータに迅速に接続するための非常に便利な機構が提供され、リングはスピンドル軸に対して自動的にセンタリングされる。
【0055】
リング/トラベラシステムのリングは、円形基部とトラベラが配置されるリング状上部との間に設けられた円錐部を備えることができる。円錐部は、ロータの内側部分の直径と一致するように構成される基部の直径から、トラベラの軌道の所望の直径に移行するように形成されてもよい。円錐部の円錐角、すなわち円筒形基部に対する円錐部の傾斜を変更することによって、軌道の異なる直径を実現することができる。したがって、異なる円錐角を有する異なるリング/トラベラシステムを使用して、異なる糸または糸品質に迅速に変更することができる。
【0056】
リングは、非磁性であってもよく、すなわち1つまたは複数の非磁性材料で作られてもよい。結果として、リングは、ロータステータ組立体によって提供される超伝導磁気軸受の静的軸受力と干渉しない。
【0057】
リングは、特に、1つまたは複数の非強磁性金属および/または合金で作られてもよい。非強磁性材料は、ロータの1つなどの永久磁石の磁場に曝されたときに磁化されない。
【0058】
さらなる実施形態によれば、トラベラは、非磁性であってもよく、すなわち、1つまたは複数の非磁性材料で作られてもよい。リングと同様に、非磁性トラベラは、超伝導磁気軸受の軸受力と干渉しない。特に、リングに沿ったトラベラの移動は、トラベラとリングとの間の摩擦の増加をもたらし得る、ロータの永久磁石とトラベラとの間の磁気相互作用によって妨げられない。
【0059】
トラベラは、50mg未満、好ましくは20mg未満の質量を有し得る。軽量トラベラを使用すると、トラベラとリングとの間の摩擦、およびロータ-リング/トラベラ組立体の残りの不均衡の両方が減少する。その結果、残りの不均衡による振動が低減される。
【0060】
さらなる実施形態によれば、糸と接触するトラベラの表面の少なくとも一部は、コーティングされてもよい。特に、トラベラ全体がコーティングされてもよい。これに関連して、コーティングは、糸とトラベラとの間およびトラベラとリングとの間の摩擦を最小限に抑えるように選択されてもよい。例えば、コーティングは、DIN EN ISO4287:2010-07に従って、Ra=0.025(ラッピング)からRa=0.5(予備研磨)の範囲の平均粗さ値Ra(μm)を有することができる。あるいは、トラベラのコーティングは、動摩擦係数μが0.1よりも小さく、好ましくは0.05よりも小さくなるように選択されてもよい。
【0061】
さらに、トラベラは、プラスチック材料または軽金属で作られてもよく、またはプラスチック材料および/または軽金属を含んでもよい。
【0062】
さらなる実施形態によれば、ステータは、巻取り加撚装置の保持装置によって保持することができ、保持装置には固定位置が形成され、ボビンを有するスピンドルは、糸をボビンに巻き取るために、固定されたステータに対して軸方向に、すなわちスピンドル軸に沿って移動することができる。しかしながら、本発明の別の実施形態では、ボビンを有するスピンドルは固定され、ステータ保持装置はステータ変位装置に接続され、それにより、リング精紡機およびリング加撚機用の巻取り加撚装置は、スピンドルおよびボビンに対して軸方向に、すなわちスピンドル軸に沿って移動することができる。
【0063】
ステータ保持装置に関して、ボビンと、ステータまたはロータの内側半径方向画定領域との間の半径方向距離は、どちらがより小さい半径を有するかに応じて維持されるべきである。ボビンに糸または撚りを巻き付ける期間中に糸バルーンによって生成される空気抵抗を一定に保つために、移動する巻取り加撚装置を有する実施形態は、糸ガイドが巻取り加撚装置と共に軸方向に変位することができるように、ステータ保持装置に固定的に接続されるか、またはステータに直接固定されるように、糸ガイドを糸バルーンの上端に配置することが可能である。その結果、ロータからの糸ガイドの距離、ひいては糸バルーンの拡張は、巻取りプロセス中に一定のままである。
【0064】
本開示は、上述の実施形態のいずれか1つによる複数の巻取り加撚装置と、複数の巻取り加撚装置のスピンドルをまとめて駆動するように構成されるスピンドル駆動システムとを備えるリング精紡機またはリング加撚機をさらに提供する。
【0065】
そのようなリング精紡機またはリング加撚機は、上述の実施形態のうちの1つによる100個を超える、潜在的には1000個を超える巻取り加撚装置を有することができる。当技術分野で知られているように、本開示に記載されている巻取り加撚装置と組み合わせて、スピンドル駆動システムを提供することができる。特に、ベルト駆動装置を使用して、単一の駆動モータで複数のスピンドルを駆動することができる。
【0066】
本開示のさらなる特徴および例示的な実施形態ならびに利点を、図面を参照して詳細に説明する。本開示は、以下の実施形態の説明によって限定されると解釈されるべきではないことが理解される。さらに、以下に記載される特徴の一部またはすべては、代替的な方法で組み合わされてもよいことを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0067】
図1】従来のリング精紡システムの概略3次元図を示す。
図2】本発明による巻取り加撚装置の概略3次元図を示す。
図3】本発明による巻取り加撚装置の概略図を示す。
図4】本発明による巻取り加撚装置の2つの代替的な構成の3次元図を示す。
図5】本発明によるリング/トラベラシステムの3次元図を示す。
図6】本発明による巻取り加撚装置の糸張力の測定値を示す。
【発明を実施するための形態】
【0068】
図中、同一符号は同一または類似の構成要素を示す。
図2は、本発明による巻取り加撚装置の概略3次元図を示す。図2の表示は、特定の実施形態に関して限定することなく、本発明の原理を実証するために簡略化されている。巻取り加撚装置200の垂直軸は、ここでは円筒として示されているボビン209によって示されている。
【0069】
ステータの環状超伝導要素211および環状ロータ220は、スピンドル軸に対して同軸に配置される。図示の非限定的な実施形態は、ステータおよびロータ220の軸方向にシフトした配置を示す。ロータ220は、動作中にステータとロータとの間にエアギャップを提供するためにスピンドル軸に沿ってシフトされた、ステータの超伝導要素211と同じ半径方向範囲を有する環状永久磁石221を備える。ロータ220は、ここでは永久磁石221を周方向に取り囲むように示されている任意選択の環状補強要素222をさらに備える。環状補強要素は、永久磁石に安定性を与えてもよく、導電性材料をさらに含んでもよく、または導電性材料で作られてもよい。環状補強要素の側面に回転速度制御装置256を設けて、導電材料に渦電流を誘導して、制動によってロータ220の回転速度に能動的に影響を及ぼすことができる。
【0070】
図示の非限定的な実施形態では、本発明によるリング/トラベラシステム230は、ロータ220の内面に摩擦係合するように環状永久磁石221の内径に挿入される。代替的または追加的に、リング/トラベラシステム230と摩擦係合する環状永久磁石221の内側に補強要素が設けられてもよいことが理解される。
【0071】
図では、リング/トラベラシステム230は、ロータの内径に挿入することによってロータ220に取り付けられている。しかしながら、リング/トラベラシステムは、ロックまたはねじ止めなどの他の機械的手段によって、特にリング/トラベラシステムをロータに解放可能に取り付けることによって、ロータ220に取り付けてもよいことが理解される。
【0072】
リング/トラベラシステム230自体は、リング231と、リング231に移動可能に取り付けられたトラベラ232とを備える。リング231の断面は、リング精紡機の動作中にリングの円周に沿ったトラベラ232の自由な移動を可能にするように選択することができ、トラベラは、一般に知られているように、スピンドルの回転によりトラベラを通って案内される糸によって沿って運ばれる。上述したように、リング231およびトラベラ232の両方は、環状永久磁石221によって発生する磁場との干渉を回避するために非磁性材料で作られてもよい。
【0073】
巻取り加撚装置200のより詳細な図は、図3の断面側面図として示されている。ここでも、ボビン209およびスピンドル軸208は、図に概略的に示されている。スピンドル208は、スピンドル保持装置によって保持され、スピンドル回転装置254によって回転させられる。上述したように、スピンドル回転装置254として、個別のスピンドル駆動装置を使用することができる。あるいは、複数のスピンドルは、例えばベルトを使用して、共同のスピンドル駆動装置によって一緒に回転されてもよい。糸は、ボビン209に巻き取られるために、糸ガイド202を通り、バルーン制御リング203およびトラベラ232を通って続く。糸がトラベラ232を通って案内されるとき、スピンドル208の回転は、本発明によるリング/トラベラシステム230のリング231に沿ってトラベラ232を運ぶ。上述したように、循環トラベラ232とリング231の表面との間の初期摩擦は、リング精紡機のランプアップ中にロータ220全体をスピンアップする。ロータの終末回転周波数に達した後、トラベラ232とロータ220、すなわちリング231との間の相対運動はほとんど残らず、トラベラとリングとの間の摩擦はほぼゼロに減少する。この摩擦の減少は、ステータ210の超伝導磁気軸受によるロータ220のほぼ摩擦のない支持に起因する。
【0074】
リングとトラベラとの間の摩擦熱の問題は、場合によっては複数のスピンドル-加速度ランプと共に、スピンドル速度の段階的な増分(多速度)を適用するスピンドルのプログラムされた制御を使用して解決することができ、その結果、加速段階中にトラベラにおける重大な発熱は発生しない。スピンドル速度の段階的な増分のプログラムされた制御は、スピンドルを目標スピンドル速度まで徐々に加速させることを可能にする。スピンドル速度の段階的な増分ごとに、複数の加速度ランプを設定値として使用することができる。この設定により、糸継ぎ時のリングとトラベラとの間の発熱を低減するだけでなく、特に加速時にトラベラから飛び出すなどの不都合の発生を防止することもできる。さらに、リング上のトラベラは、スピンドル速度の段階ごとにその速度をスピンドルの速度に調整するのに十分な時間を有する。ロータ220とスピンドル208との間の回転周波数の残りの差、ならびに形成された糸バルーン204の空気摩擦が、ボビン209上に糸を巻き付ける一方で、糸バルーン204の循環が糸に所望の撚りを付与する。
【0075】
図2のように、ロータ220は、ステータ210に対して軸方向にシフトされる。図3に例として環状超伝導要素として示されている少なくとも1つの超伝導材料211を含むステータ210は、スピンドルおよび/またはスピンドル軸208と同軸に配置され、ステータ冷却装置240によって超伝導材料211の転移温度未満に冷却される。この例示的な展開においてロータ220の下方に配置されたステータ210は、概略的にのみ示されているステータ保持装置250によって保持される。図3の例示的な実施形態では、ステータ210は、環状超伝導要素211に加えて、超伝導要素を少なくとも部分的に包囲して環境に対する断熱を提供する絶縁要素を備える。
【0076】
図2に関して説明したように、ロータ220は、環状永久磁石221と、永久磁石221を円周方向に取り囲んで支持する環状補強要素222とを含むことができる。さらに、ロータ220の内側部分、より具体的には垂直に配置された内面225が図に示されている。内面225は、基部をロータの内側部分に挿入した後に、リング/トラベラシステム230の円筒形基部233aと摩擦係合する。上述したように、円筒形基部233aは、ロータの内側部分225の内径よりもわずかに大きい外径を備え、ロータの内側部分に挿入可能であるように変形可能であってもよい。基部233aの特定の非限定的な実施形態を図5に示す。
【0077】
図3の例示的な実施形態によれば、ロータ220およびステータ210は、互いに接触せず、かつロータの環状永久磁石221によって生成された磁場がステータ210の超伝導材料211に入ることができるように、互いに平行に軸方向距離を置いて配置される。ロータ220の下面224とステータ210の上面212との間にリング状チャネル223が形成され、ロータ220はステータ210の超伝導要素211内の磁束のピン止めによって浮揚する。ロータ220とステータ210との間のこのエアギャップは、図に示すようにステータ210を上下に移動させても、超伝導磁気軸受力により動作中に維持される。
【0078】
巻取り加撚装置200の始動および停止のために、ロータ220は、ロータ保持装置252によってステータ210と一定の距離を置いて同軸に保持され、超伝導要素211の温度は、超伝導材料の転移温度よりも低下し、その後、ロータ220は、ロータ保持装置252によって解放される。この目的のために、概略的に表示された機械的接続部253を、動作中に引き込むことができる。
【0079】
ボビン209上に糸を巻き取るために、本発明の変形例では、ステータ保持装置250は、ステータ変位装置251によってスピンドル軸に沿って変位され、糸ガイド202および任意選択的にバルーン制御リング203は、スピンドルがリング精紡機に対してその位置を変化させない間に、任意選択的な剛性接続部260(概略的に示す)によって移動されてもよい。本発明の別の変形例では、ボビン209を有するスピンドル208がスピンドル変位装置255によってスピンドル軸に沿って変位されている間、リング精紡機に対する巻取り加撚装置の位置は固定されたままである。
【0080】
図4は、本発明による巻取り加撚装置の2つの代替的な構成の3次元図を示す。図4aに示す構成は、ここでは環状永久磁石221として示されているロータ220が、ここでは超伝導要素211として示されているステータ210に対して垂直にシフトされている、図2および図3に示す構成に対応する。永久磁石221および超伝導要素211の両方は、ボビン209によって表されるスピンドル軸に対して同軸に配置される。図2のように、リング231およびトラベラ232を含むリング/トラベラシステム230は、特にリングの円形基部をロータの内径に挿入することによって、ロータ220に取り付けられる。結果として、リング231はロータ220と同期して回転し、一方、トラベラ232は、例えば糸継ぎプロセスのための、高速ランプアップおよびランプダウンに必要な追加の柔軟性を提供する。
【0081】
別の実施形態が図4bに示されており、ロータおよびステータは同一平面内に、すなわち同じ水平面内に配置されている。図4aによる構成のように、ロータおよびステータは、スピンドル軸に対して同軸に配置される。ここでも、リング331およびトラベラ332を含むリング/トラベラシステム330は、例えばリング331の円形基部と永久磁石321の内面との間の摩擦係合によって、またはナットハブによって、ここでは環状永久磁石321として示されているロータに取り付けられる。
【0082】
上述したように、超伝導材料311の十分に長い円筒がステータに使用される場合、図4bの同一平面配置は、図4aの軸方向にシフトした配置よりも高い剛性を有する。対照的に、図4aの軸方向にシフトした配置は、設置が簡単であるという利点を有する。本発明のリング/トラベラシステムは、いずれかの実施形態のロータに取り付けることができ、図4aによる構成は、(所望の糸品質に応じて)トラベラの軌道の同一の内径に基づいて隣接するスピンドルのゲージに関してよりコンパクトな構成を提供する。
【0083】
図5は、本発明によるリング/トラベラシステム230の3次元概略図を示す。上述したように、リング/トラベラシステム230は、リング231と、リング上に移動可能に配置されたトラベラ232とを備える。リング231およびトラベラ232の形状および断面は、リングとトラベラとの間の所望の糸品質および残留摩擦に従って選択することができる。
【0084】
図5の例示的な実施形態によれば、リング/トラベラシステム230は、ロータの内側部分に挿入されるように構成される円形基部233aを有する。ロータに容易かつ取り外し可能に取り付けることができるように、特定の基部233aには、ロータの内側部分への挿入中に基部をわずかに変形させることを可能にする、複数の軸方向すなわち垂直方向のスロット233bが設けられている。言い換えれば、基部233aは、ロータ220の内側部分の内径よりもわずかに大きい直径を備え、スロット233bは、基部をロータの内側部分に挿入するために手動変形によって基部の直径を縮小することを可能にする。代替の実施形態を考えることができ、本開示に含まれる。例として、対応するラグの有無にかかわらず、周方向に配置された1つまたは複数のスロットを設けて、ロータの内側部分に挿入するために基部を変形させることができる。
【0085】
図6は、本発明による巻取り加撚装置の糸張力の測定値を示す。図は、時間に対するcNでの糸張力の実験結果を反映する4つの曲線281から284を示す。図6の4つの曲線は、それぞれ15,000rpm、20,000rpm、25,000rpm、および30,000rpmの角スピンドル速度に対する糸張力を示す。図から分かるように、糸張力は、スピンドルの回転周波数と共にほぼ直線的に増加する。より重要なことには、トラベラとリングとの間の摩擦が著しく減少したため、本発明の巻取り加撚装置を使用して、最大30,000rpmの著しく高い回転周波数が達成された。これにより、従来のリング精紡プロセスと比較して、糸張力を50%まで下げることができる。さらに、従来のリング精紡システムにおける糸張力ピークは、本発明のリング/トラベラシステムを使用することによって回避することができる。
【0086】
さらに、本発明のリング/トラベラシステムを浮揚ロータに取り付けることにより、例えば糸切れの場合に、従来の糸継ぎプロセスを実行することが可能になる。さらに、リング/トラベラシステムをロータに解放可能に取り付けるための上述の実施形態は、異なる糸および/または異なる糸品質に変更するための切り替え時間を大幅に短縮する。さらに、リングレール移動の各サイクル中の糸張力の迅速な変化、すなわち糸張力変動は、磁石上の本発明のリング/トラベラシステムを使用して、振動なしに回転磁石の円滑な走行と共に調整することができる。
図1
図2
図3
図4a
図4b
図5
図6
【国際調査報告】