(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-05
(54)【発明の名称】シタグリプチン及びダパグリフロジンを含む複合製剤及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/4985 20060101AFI20230329BHJP
A61K 31/351 20060101ALI20230329BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20230329BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20230329BHJP
A61K 9/48 20060101ALI20230329BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20230329BHJP
A61K 47/14 20170101ALI20230329BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20230329BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20230329BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20230329BHJP
【FI】
A61K31/4985
A61K31/351
A61K9/14
A61K9/20
A61K9/48
A61K47/12
A61K47/14
A61K47/38
A61K47/10
A61K47/32
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022535788
(86)(22)【出願日】2020-12-22
(85)【翻訳文提出日】2022-06-10
(86)【国際出願番号】 KR2020018871
(87)【国際公開番号】W WO2021133023
(87)【国際公開日】2021-07-01
(31)【優先権主張番号】10-2019-0174277
(32)【優先日】2019-12-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2020-0038569
(32)【優先日】2020-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516132149
【氏名又は名称】ハンミ ファーマシューティカルズ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チャン、ソン フン
(72)【発明者】
【氏名】イ、カン ヨン
(72)【発明者】
【氏名】キム、チェ ホ
(72)【発明者】
【氏名】チョ、チュン ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ヨン イル
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA31
4C076AA36
4C076AA53
4C076BB01
4C076CC16
4C076CC21
4C076DD38A
4C076DD41C
4C076DD47C
4C076EE16A
4C076EE31A
4C076EE32A
4C076EE38A
4C076FF04
4C076FF09
4C076FF33
4C076FF63
4C076GG01
4C076GG12
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA07
4C086CB05
4C086GA14
4C086MA03
4C086MA06
4C086MA35
4C086MA37
4C086MA41
4C086MA52
4C086NA03
4C086NA11
4C086ZA70
4C086ZC35
4C086ZC75
(57)【要約】
シタグリプチン及びダパグリフロジンを含む複合製剤及びその製造方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シタグリプチン、または薬剤学的に許容可能なその塩、またはそれらの水和物、及び
ダパグリフロジン、または薬剤学的に許容可能なその塩、またはそれらの水和物を含む複合製剤であり、
滑沢剤として、フマル酸ステアリルナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、またはそれらの組み合わせを含む、複合製剤。
【請求項2】
前記滑沢剤として、フマル酸ステアリルナトリウムを含む、請求項1に記載の複合製剤。
【請求項3】
前記シタグリプチン、または薬剤学的に許容可能なその塩、またはそれらの水和物は、シタグリプチンリン酸塩水和物である、請求項1に記載の複合製剤。
【請求項4】
前記ダパグリフロジン、または薬剤学的に許容可能なその塩、またはそれらの水和物は、ダパグリフロジンL-プロリンである、請求項1に記載の複合製剤。
【請求項5】
前記フマル酸ステアリルナトリウムが、複合製剤総重量対比で、3ないし8重量%含まれる、請求項1に記載の複合製剤。
【請求項6】
微結晶セルロース(MCC)、マンニトール、前糊化澱粉、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(L-HPC)、クロスポビドン、架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム(cross-linked CMC Na)、及びそれらの混合物のうちから選択される賦形剤を含む、請求項1に記載の複合製剤。
【請求項7】
前記複合製剤は、錠剤、カプセル剤または顆粒剤の形態である、請求項1に記載の複合製剤。
【請求項8】
前記複合製剤は、シタグリプチン、または薬剤学的に許容可能なその塩、またはそれらの水和物;ダパグリフロジン、または薬剤学的に許容可能なその塩、またはそれらの水和物;及びフマル酸ステアリルナトリウムを含む圧縮顆粒を含む、請求項1に記載の複合製剤。
【請求項9】
前記複合製剤は、横縦長が、それぞれ5ないし15mmであり、厚みが3ないし8mmの形態である、請求項1に記載の複合製剤。
【請求項10】
前記シタグリプチン、または薬剤学的に許容可能なその塩、またはそれらの水和物は、複合製剤総重量において、10ないし40重量%で含まれる、請求項1に記載の複合製剤。
【請求項11】
前記ダパグリフロジン、または薬剤学的に許容可能なその塩、またはそれらの水和物は、複合製剤総重量において、2ないし10重量%で含まれる、請求項1に記載の複合製剤。
【請求項12】
メトホルミン、または薬剤学的に許容可能なその塩、またはそれらの水和物をさらに含む、請求項1に記載の複合製剤。
【請求項13】
シタグリプチン、または薬剤学的に許容可能なその塩、またはそれらの水和物、ダパグリフロジン、または薬剤学的に許容可能なその塩、またはそれらの水和物;賦形剤及び滑沢剤;を含む混合部を製造する段階と、
前記混合部を顆粒化させる段階と、
前記顆粒物に滑沢剤をさらに付加して混合する段階と、を含む、請求項1ないし12のうちいずれか1項に記載の複合製剤の製造方法。
【請求項14】
シタグリプチン、または薬剤学的に許容可能なその塩、またはそれらの水和物;賦形剤及び滑沢剤;を含む第1混合部を製造する段階と、
ダパグリフロジン、または薬剤学的に許容可能なその塩、またはそれらの水和物;賦形剤及び滑沢剤;を含む第2混合部を製造する段階と、
前記第1混合部及び/または前記第2混合部をそれぞれ個別的に顆粒化させる段階と、
得られた顆粒物に、非顆粒化混合部、及びさらなる滑沢剤を混合する段階と、を含む、請求項1ないし12のうちいずれか1項に記載の複合製剤の製造方法。
【請求項15】
前記顆粒化させる段階は、ローラ圧着機(ローラコンパクタ)を利用し、圧着物を形成する段階を含む、請求項13に記載の製造方法。
【請求項16】
さらなる滑沢剤を混合した混合物を打錠する段階をさらに含む、請求項13に記載の複合製剤の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シタグリプチン及びダパグリフロジンを含む複合製剤及びその製造方法に係り、さらに具体的には、安定性、生産性、溶出率及び配合適合性にすぐれながらも、大きさを小型化させることができる複合製剤及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
第二型糖尿患者は、一般的に、過体重、腹部肥満、高血圧を伴うことになり、それによって糖尿病は、高血圧、高脂血症、心筋梗塞、脳卒中のような二次的な慢性疾患あるいは代謝症侯群を引き起こす疾病と知られており、大韓糖尿病学会の診療指針によれば、症状改善増大のために、薬物併合療法が積極的に勧告されている。特に、DPP-4抑制剤系薬物とSGLT-2抑制剤系薬物との併用は、最近、学界で糖尿病治療において、すぐれた効能と効果とを立証され、メトホルミン(metformin)との三剤治療までも研究されている分野である。
【0003】
シタグリプチン(sitagliptin)(製品名:ジャヌビア錠)は、ジペブチジルペブチダーゼ-4(DPP-4)抑制剤系薬剤であり、化合物名は、(R)-3-アミノ-1-(3-(トリフルオロメチル)-5,6-ジヒドロ-[1,2,4]トリアゾロ[4,3-a]ピラジン-7(8H)-イル)-4-(2,4,5-トリフルオロフェニル)ブタン-1-オンである。シタグリプチンは、インクレチンという胃腸管ホルモンの分解を抑制し、インシュリンとグルカゴンとを調節するインクレチンの機能が、体内において良好になされるようにすることにより、血糖を調節し、第二型糖尿病患者にシタグリプチンを経口投与するといき、HbA1cレベルが有意的に低下し、空腹時血糖及び食後血糖の分泌が低減すると知られている。
【0004】
ダパグリフロジン(dapagliflozin)(製品名:フォシーガ錠)は、ナトリウム・グルコース共輸送体2(SGLT-2:sodium-glucose linked transporter 2)抑制剤系薬剤であり、化合物名は、(2S,3R,4R,5S,6R)-2-[4-クロロ-3-(4-エトキシベンジル)フェニル]-6-(ヒドロキシメチル)テトラヒドロ-2H-ピラン-3,4,5-トリオールである。ダパグリフロジンは、腎臓においてSGLT2を選択的に抑制し、尿においてグルコース排出を増強させ、それにより、インシュリン感受性を改善させ、糖尿病合併症の発病を遅延させることにより、血漿グルコースレベルを正常化させることができる。原開発社であるアストラゼネカABにおいて、ダパグリフロジンプロピレングリコール水和物を有効成分にする錠剤形態(フォシーガ錠)として市販されている。
【0005】
シタグリプチン及びダパグリフロジンは、低血糖の危険性なしに、血糖を降下させる主効果以外にも、シタグリプチンの場合、膵臓ベータ細胞保護効果、GLP-1増大効果があり、ダパグリフロジンの場合、体重低減効果、血圧降下効果があり、2つの有効成分の組み合わせが相乗的な効果を示す臨床的結果として紹介されている。また、糖尿病患者の場合、糖尿が進むほど、血糖調節が困難であり、合併症を伴うことになり、特に、高齢者糖尿病患者の場合、高血圧、肥満、高脂血症を共に病んでいる可能性が高い。そのような糖尿患者の特性上、服薬順応度は非常に重要な要素であり、服薬順応度が低下する患者の生活の質を落とすだけではなく、患者の治療率が低下させ、個人医療費増大と、保険財政の悪化とをもたらしてしまう。従って、シタグリプチンとダパグリフロジンとを含む複合製剤開発が必要である。
【0006】
ところで、前記複合製剤の開発は、各主成分(API)の物性、錠剤の大きさのような山積みされた問題点により、いまだに試みされていない。シタグリプチン主成分の場合、1錠当たり含有される量が多く、粘性を有するために、生産工程において、パンチ付着(sticking)が起こりやすいという問題点がある。また、ダパグリフロジン主成分の場合、密度が低く、少量にもかかわらず、主成分の体積が大きく、生産性が良好ではなく、他の主成分、及び賦形剤との層分離が生じる可能性が高く、主成分が互いに塊となる特性があり、凝集体形成の可能性が高いために、製剤均一性を確保し難いという問題点がある。
【0007】
さらに、シタグリプチンとダパグリフロジンとの各主成分を含む代表的な錠剤の総質量(シタグリプチンとして100mgを含むジャヌビア錠100mgの総量:約416.1mg、ダパグリフロジンとして10mgを含むフォシーガ錠10mgの総量:約260mg)を考慮するとき、各主成分を含む複合製剤とする場合、主成分と賦形剤とを含む総量が増大し、それによる錠剤サイズ自体が大きくなることにより、服薬順応度が下がるという問題点がある。または、複合製剤総量と錠剤サイズとを過度に小さくする場合、賦形剤対比の主成分比率上昇により、製品生産時、主成分の物性克服が困難となる。また、複合製剤に含まれる互いに異なる2つの成分いずれにも対する配合適合性を満足させる賦形剤を選別することは、複合製剤開発分野において、最も重要でありつつも、解決が困難出る問題点中の一つである。さらに、シタグリプチンとダパグリフロジンとの2つの薬物成分それぞれが示す、血漿において、薬物が最高濃度になる時間(Tmax)がいずれも1時間ほど(シタグリプチン1~4時間/ダパグリフロジン1~2時間)であるということを示すので、2つの成分をいずれも含むと共に、すぐれた溶出率を有する複合製剤を開発する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】韓国特許公開公報第10-2016-0111237号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
一態様は、安定性、生産性、溶出性及び配合適合性にすぐれながらも、同時に剤形サイズの小型化が可能であり、それにより、服薬順応度を高めることができる、シタグリプチン、または薬剤学的に許容可能なその塩、またはそれらの水和物、並びにダパグリフロジン、または薬剤学的に許容可能なその塩、またはそれらの水和物を含む複合製剤を提供するものである。
【0010】
他の一態様は、前記複合製剤の製造方法を提供するものである。
【0011】
本出願の他の目的及び利点は、添付された請求範囲と共に、下記の詳細な説明により、さらに明確になるであろう。本明細書に記載されていない内容は、本出願の技術分野、または類似した技術分野において、当業者であるならば、十分に認識して類推することができるものであるので、その説明を省略する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
一態様は、
シタグリプチン、または薬剤学的に許容可能なその塩、またはそれらの水和物、及び
ダパグリフロジン、または薬剤学的に許容可能なその塩、またはそれらの水和物を含む複合製剤であり、
滑沢剤として、フマル酸ステアリルナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、またはそれらの組み合わせを含む複合製剤を提供する。
【0013】
他の一態様は、
シタグリプチン、または薬剤学的に許容可能なその塩、またはそれらの水和物、並びにダパグリフロジン、または薬剤学的に許容可能なその塩、またはそれらの水和物;賦形剤及び滑沢剤;を含む混合部を製造する段階と、
前記混合部を顆粒化(granulation)させる段階と、
前記顆粒物に滑沢剤をさらに付加して混合する段階と、を含む前述の一態様による複合製剤の製造方法を提供する。
【0014】
さらに他の一態様は、
シタグリプチン、または薬剤学的に許容可能なその塩、またはそれらの水和物;賦形剤及び滑沢剤;を含む第1混合部を製造する段階と、
ダパグリフロジン、または薬剤学的に許容可能なその塩、またはそれらの水和物;賦形剤及び滑沢剤;を含む第2混合部を製造する段階と、
前記第1混合部及び/または前記第2混合部をそれぞれ個別的に顆粒化させる段階と、
得られた顆粒物に、非顆粒化(non-granulation)混合部、及びさらなる滑沢剤を混合する段階と、を含む前述の一態様による複合製剤の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0015】
一態様によるシタグリプチン及びダパグリフロジンを含む複合製剤は、安定性、生産性、溶出性及び配合適合性にすぐれながらも、同時に剤形サイズの小型化が可能であり、それにより、服薬順応度を高めることができる。一態様による製造方法は、複合製剤のフロー性及び打錠性のような製剤学的特性を改善させ、製造生産性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】シタグリプチン及びダパグリフロジンの複合成分に対し、ステアリン酸マグネシウム存在いかんを異ならせて製造した圧着フレーク及び錠剤を撮影した写真である。
【
図2】シタグリプチン及び乳糖を混合して打錠した錠剤、並びにシタグリプチン及び乳糖以外の賦形剤と混合して打錠した錠剤の写真である。
【
図3】フマル酸ステアリルナトリウム(PRUV(登録商標))の量を異ならせた実施例5及び比較例5の打錠後の錠剤性状を撮影した写真、及びそれぞれの錠剤打錠時、顆粒排出所要時間を測定した結果を示した図である。
【
図4】実施例5~8、並びに比較例6及び8のシタグリプチン溶出試験結果を示したグラフである。
【
図5】実施例5~8、並びに比較例6及び8のダパグルリプロジン溶出試験結果を示したグラフである。
【
図6】実施例9ないし12の複合錠剤を製造する工程を示す工程図である。
図6に表示された数字は、表18(実施例9及び10)並びに表19(実施例11及び12)に表示された成分の数字を示したものである。
【
図7】実施例11及び実施例12で製造した顆粒を利用し、粒度分布(mesh profile)を測定した結果を示したグラフである。
【
図8】(a)ジャヌビア100mg(シタグリプチンとして、100mg)、(b)フォシーガ10mg(ダパグリフロジンプロパンジオール水和物12.3mg)、及び(c)実施例13で製造した複合錠剤を撮影した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
【0018】
本明細書で使用される全ての技術用語は、異なって定義されない以上、関連分野で通常の当業者が一般的に理解するような意味で使用される。また、本明細書には、望ましい方法や試料が記載されるが、それと類似しているか、あるいは同等なものも、本明細書の範疇に含まれる。また、本明細書に記載された数値は、明示されていなくとも、「約」の意味を含むと見なす。本明細書に参考文献として記載される全ての刊行物の内容は、全体が本明細書に参照として統合される。本明細書で使用された用語「約」は、言及される値がある程度変わりうるということを意味する。例えば、前記値は、10%、5%、2%または1%にも変わるのである。例えば、「約5」は、4.5と5.5との間、4.75と5.25との間、または4.9と5.1との間、または4.95と5.05との任意の値を含むことを意味する。本明細書で使用された用語「有する」、「有することができる」、「含む」または「含むものでもある」というような表現は、当該特徴(例:数値、または成分のような構成要素)の存在を示し、さらなる特徴の存在を排除するものではない。
【0019】
一態様は、シタグリプチン、または薬剤学的に許容可能なその塩、またはそれらの水和物、並びにダパグリフロジン、または薬剤学的に許容可能なその塩、またはそれらの水和物を含む複合製剤であり、
滑沢剤として、フマル酸ステアリルナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、またはそれらの組み合わせを含む複合製剤を提供する。
【0020】
一具体例において、前記複合製剤は、滑沢剤として、フマル酸ステアリルナトリウムを含む。
【0021】
主成分である前記シタグリプチンまたは前記ダパグリフロジンは、それらの結晶形、水和物、共結晶、溶媒化物、塩、部分立体異性体または鏡像異性体をいずれも含むものである。
【0022】
前記薬剤学的に許容可能なその塩は、当該技術分野で一般的に使用されうる任意の薬剤学的に許容される塩を称する。
【0023】
一具体例において、前記シタグリプチン、または薬剤学的に許容可能なその塩、またはそれらの水和物は、シタグリプチンリン酸塩水和物でありうる。
【0024】
一具体例において、前記ダパグリフロジン、または薬剤学的に許容可能なその塩、またはそれらの水和物は、薬剤学的に許容可能なダパグリフロジンの共結晶でありうる。一具体例において、前記ダパグリフロジン、または薬剤学的に許容可能なその塩は、ダパグリフロジンL-プロリンまたはダパグリフロジンプロパンジオール水和物でありうる。一具体例において、ダパグリフロジンL-プロリンでありうる。
【0025】
一具体例において、前記シタグリプチン、または薬剤学的に許容可能なその塩、またはそれらの水和物は、複合製剤総重量において、10ないし40重量%、例えば、25ないし35重量%で含むものでもある。
【0026】
一具体例において、前記ダパグリフロジン、または薬剤学的に許容可能なその塩、またはそれらの水和物は、複合製剤総重量において、2ないし10重量%、例えば、2ないし6重量%で含むものでもある。
【0027】
一具体例において、前記滑沢剤として、フマル酸ステアリルナトリウムは、複合製剤総重量につき、3ないし8重量%含まれるものでもある。
【0028】
滑沢剤として、最も汎用されるステアリン酸マグネシウムは、本出願の複合製剤の生産性及び打錠性を上昇させるものの、主成分の類縁物質を経時的に増加させるために、非常に不利であると確認された(試験例1及び3)。それに反し、フマル酸ステアリルナトリウムは、生産性及び打錠性を上昇させるだけでなく、類縁物質の基準を満足させることができるほどに安定した複合製剤を形成することができる(試験例3)。前記フマル酸ステアリルナトリウムは、複合製剤総重量につき、3ないし8重量%含まれるものでもある。3重量%に及んでいない場合、十分な安定性及び生産性が確保されえない憂いがあり、8重量%を超える場合、主成分の溶出率低下が憂慮されうる(試験例4,5及び6)。
【0029】
前記複合製剤は、希釈剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤及び放出調節剤のうちから選択される1種以上の賦形剤を含んでもよい。
【0030】
前記希釈剤は、例えば、D-マンニトール、前糊化澱粉、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(L-HPC)、微結晶セルロース(MCC)、スクロース、ソルビトール、キシリトール、グルコース、及びそれらの任意混合物からなる群のうちからも選択されるが、それらに限定されるものではない。
【0031】
一具体例において、前記希釈剤は、D-マンニトール、前糊化澱粉、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(L-HPC)、微結晶セルロース、及びそれらの任意組み合わせによって構成された群のうちからも選択される。
【0032】
前記崩壊剤は、例えば、クロスポビドン、架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム(cross-linked CMC Na、C.CMC Na;またはクロスカルメロースナトリウム)、とうもろこし澱粉、カルボキシメチルセルロースカルシウム、澱粉グリコール酸ナトリウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(L-HPC)、及びそれらの任意混合物からなる群のうちからも選択されるが、それらに限定されるものではない。一具体例において、前記崩壊剤は、架橋カルボキシメチルセルロースナトリウムである。
【0033】
前記結合剤は、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ゼラチン、ポビドン、及びそれらの任意混合物からなる群のうちからも選択されるが、それらに限定されるものではない。一具体例において、前記結合剤は、ヒドロキシプロピルセルロースである。
【0034】
前記放出調節剤は、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシビニル高分子、ポリビニルアルコール、キサンタンガム、グアーガム、カルボキシメチルセルロース及びその誘導体、メチルセルロース及びその誘導体、ポビドン・ポリ酢酸ビニル共重合体、及びそれらの任意混合物からなる群のうちからも選択されるが、それらに限定されるものではない。一具体例において、前記放出調節剤は、ヒドロキシプロピルセルロースである。
【0035】
一具体例において、前記複合製剤は、微結晶セルロース(MCC)、マンニトール、前糊化澱粉、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(L-HPC)、クロスポビドン、架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム(cross-linked CMC Na)、及びそれらの任意混合物のうちから選択される賦形剤を含んでもよい。
【0036】
前記複合製剤は、錠剤、カプセル剤または顆粒剤の形態でありうる。一具体例による複合製剤は、混合錠または二層錠でありうる。
【0037】
一具体例において、前記複合製剤は、主成分及び賦形剤を含む圧縮顆粒を含む錠剤の形態でありうる。該圧縮顆粒を含む錠剤の場合、直打型錠剤に比べ、打錠時、キャビティ内部に供給される混合物のフロー性にすぐれ、生産性にすぐれ、含量均一性にすぐれていると確認された(試験例7)。
【0038】
前記複合製剤は、さらなる薬学的に許容可能な賦形剤を含んでもよく、前記さらなる薬学的に許容可能な賦形剤としては、抗酸化剤、甘味剤、保存剤、コーティング剤、粘度調節剤、及びそれらの任意組み合わせからなる群のうちから選択される成分を使用することができる。
【0039】
前記複合製剤は、横縦長がそれぞれ約5ないし15mmである形態でありうる。前記複合製剤の厚みは、約3ないし8mmでありうる。一具体例による複合製剤は、横縦長がそれぞれ約5ないし15mmであり、厚みが約3ないし8mmの形態でありうる。一具体例による複合製剤は、横約10ないし15mm、縦約5ないし10mm、厚み約3ないし8mmである形態でありうる。前記複合製剤の横長は、例えば、約10,11,12,13,14または15mmでありうる。前記縦複合製剤の縦長は、例えば、約5,6,7,8,8または10mmでありうる。前記複合製剤の厚みは、例えば、約3,4,5,6,7または8mmでありうる。
【0040】
前記複合製剤は、長方形の楕円錠剤でありうる。前記複合製剤は、2つの有効成分をそれぞれ含む2個の錠剤を服用する場合より、飲み込みやすいのである。一般的には、薬物投与後、人体の喉の狭い部位を通過するとき、錠剤は、最小断面積を維持して喉を下っていく。このとき、錠剤の小断面積を維持するためには、錠剤の横縦・厚みのうち、小さい値を有する2つの変数を維持して喉を下っていくことになる。例えば、
図8は、(a)ジャヌビア錠(シタグリプチン100mg)、(b)フォシーガ錠(ダパグリフロジンプロパンジオール水和物12.3mg)、及び(c)実施例13で製造した錠剤のイメージは、喉を下るときに整列されると予測されるそれぞれの錠剤の様子を示す。一具体例によるシタグリプチン及びダパグリフロジンの2つの有効成分を含む複合製剤は、それぞれの有効成分を単一成分として含む個別的な錠剤を同時に服用する場合と比較し、薬の大きさ、重さ、喉越え時の断面積を小さくすることができ、大きい錠剤の喉越えに不都合を覚える患者の服用便宜性を高めることができる。
【0041】
前記複合製剤は、1以上の糖尿病治療剤をさらに含んでもよい。例えば、前記複合製剤は、メトホルミン、または薬剤学的に許容可能なその塩をさらに含んでもよい。一具体例による複合製剤は、シタグリプチン、ダパグリフロジン及びメトホルミンを含む三剤複合製剤でありうる。
【0042】
他の一態様は、前記複合製剤の製造方法を提供する。
【0043】
一具体例による前記製造方法は、
シタグリプチン、または薬剤学的に許容可能なその塩、またはそれらの水和物、並びにダパグリフロジン、または薬剤学的に許容可能なその塩、またはそれらの水和物;賦形剤及び滑沢剤;を含む混合部を製造する段階と、
前記混合部を顆粒化(granulation)させる段階と、
前記顆粒物に滑沢剤をさらに付加して混合する段階と、を含んでもよい。
【0044】
他の一具体例による前記製造方法は、
シタグリプチン、または薬剤学的に許容可能なその塩、またはそれらの水和物;賦形剤及び滑沢剤;を含む第1混合部を製造する段階と、
ダパグリフロジン、または薬剤学的に許容可能なその塩、またはそれらの水和物;賦形剤及び滑沢剤;を含む第2混合部を製造する段階と、
前記第1混合部及び/または前記第2混合部をそれぞれ個別的に顆粒化させる段階と、
得られた顆粒物に、非顆粒化(non-granulation)混合部、及びさらなる滑沢剤を混合する段階と、を含んでもよい。
【0045】
一具体例において、前記顆粒化させる段階は、乾式顆粒法によって遂行されうる。前記乾式顆粒法は、ローラ圧着機(roller compactor)を利用し、圧着フレーク(flake)を形成する段階を含むものでもある。
【0046】
一具体例において、前記製造方法は、さらなる滑沢剤を混合した混合物を打錠する段階をさらに含むことにもなる。
【実施例】
【0047】
以下、本発明について、実施例によって詳細に説明する。しかし、それら実施例は、単に例示的なものであり、本発明は、それら実施例によって制限されると意図されるものではない。
【0048】
試験方法
下記試験例において、類縁物質分析、溶出分析及び含量分析条件は、次のような方法で遂行した。
【0049】
【0050】
【0051】
【0052】
試験例1:滑沢剤による類縁物質試験
一般的に広く使用するステアリン酸マグネシウムを滑沢剤として使用する場合による複合製剤の安定性について試験した。下記表1による処方でもって、下記[サンプル製法]によって錠剤を製造した。その後、各サンプルにつき、類縁物質を測定し(表1ないし3)、ステアリン酸マグネシウム存在いかんによる圧着フレーク及び錠剤の性状を比較した(
図1)。
図1は、ステアリン酸マグネシウム存在いかんによる圧着フレーク及び錠剤を撮影した写真である。
【0053】
[サンプル製法]
(1)秤量:各成分1,000T分量を秤量した。
(2)篩分け:最終混合に投入する滑沢剤除いた全ての賦形剤につき、30メッシュ篩を通過させて篩分けを行った。
(3)混合:篩を通過した粉末を、Bin Mixerを利用し、17rpmで30分間混合した。
(4)圧縮(compacting):ローラコンパクタ(roller compactor)を利用し、ロールrpm3.0/スクリューrpm35.0rpm、油圧2.5Mpaを利用し、圧着フレークを形成した。
(5)整粒:オシレータ(oscillator)を利用し、前記(4)段階で製造されたフレークを20メッシュで整粒した。
(6)最終混合:前記(5)段階で製造された結果物と、残っている最終混合滑沢剤とを投入し、Bin Mixerを利用し、17rpmで5分間混合した。
(7)打錠:AutoTab-200TR(市橋精機(株)、日本)を利用し、直径8.0mmの円形パンチを利用し、錠剤硬度10~12kpで打錠した。
【0054】
【0055】
【0056】
【0057】
前記実験結果によれば、シタグリプチン及びダパグリフロジンが共に含まれた混合顆粒において、滑沢剤として、ステアリン酸マグネシウムが使用される場合、加速保管条件において類縁物質が大きく増加し、またステアリン酸マグネシウムを除く場合、顆粒工程及び製品打錠時、パンチ及び生産設備に接着されるイシューによる生産性低下が生じた。従って、該滑沢剤は、生産性及び打錠性のために必要であるが、ステアリン酸マグネシウムは、主成分の安定性を低下させ、適切ではないと確認された。
【0058】
試験例2:賦形剤による類縁物質試験
製造例1
シタグリプチンとダパグリフロジンとの2つの主成分の共存時、安定性を評価するために、シタグリプチンリン酸塩水和物128.5mg(シタグリプチンとして、100mg)と、ダパグリフロジンL-プロリン15.6mg(ダパグリフロジンとして、10mg)とを含む錠剤を圧着して製造した。AutoTab-200TR(市橋精機(株)、日本)打錠機を使用し、フレークを形成し、加速条件(40℃/75% RH)1ヵ月/2ヵ月で類縁物質発生量を測定し、安定性を確認した。
【0059】
製造例2
主成分シタグリプチンと賦形剤との配合適合性を知るために、賦形剤の種類を異ならせ、シタグリプチンと混合した。前述の賦形剤と主成分シタグリプチンとを20メッシュ篩分けした後、Tubular Mixerを使用し、各30分ずつ混合した。その後、他の主成分であるダパグリフロジンを投入し、混合及び圧着し、錠剤に製造した。AutoTab-200TR(市橋精機(株)、日本)打錠機を使用し、フレークを形成し、加速条件(40℃/75% RH)1ヵ月/2ヵ月で類縁物質発生量を測定し、安定性を確認した。
【0060】
製造例3
主成分ダパグリフロジンと賦形剤との配合適合性を知るために、賦形剤の種類を異ならせ、ダパグリフロジンと混合した。前述の賦形剤と主成分ダパグリフロジンとを20メッシュ篩分けした後、Tubular Mixerを使用し、各30分ずつ混合した。その後、他の主成分であるシタグリプチンを投入し、混合及び圧着して錠剤に製造した。AutoTab-200TR(市橋精機(株)、日本)打錠機を使用し、フレークを形成し、加速条件(40℃/75% RH)1ヵ月/2ヵ月で類縁物質発生量を測定し、安定性を確認した。
【0061】
総類縁物質含量基準
常用される総類縁物質含量基準は、国内許可された類縁物質基準により、シタグリプチンの場合、総類縁物質0.2%未満であり、ダパグリフロジンの場合、総類縁物質2.0%未満であるとする。
【0062】
【0063】
製造例1及び製造例2で製造した錠剤を利用して測定した類縁物質試験結果を、前記表4に示した。前記表4でのように、シタグリプチンの場合、賦形剤として、乳糖水和物またはジカルシウムホスフェート水和物(DCP水和物)を含む場合、総類縁物質含量がそれぞれ0.2%超過であり、基準を満足させることができなかった。
【0064】
特に、シタグリプチンと乳糖水和物とを混合する場合、加速2ヵ月において、性状を観察するとき、高温で褐色物質を作り出すメイラード反応(Maillard reaction)による褐変現象を示し、処方に適さないということを確認した(
図2)。
図2は、シタグリプチン及び乳糖を混合して打錠した錠剤を、乳糖以外の賦形剤と混合して打錠した錠剤の写真である。
【0065】
【0066】
製造例1及び製造例3で製造した錠剤を利用して測定した類縁物質試験結果を、前記表5に示した。前記表5でのように、ダパグリフロジンの場合、賦形剤として、ジカルシウムホスフェート無水物(DCP無水物)を含む場合、総類縁物質含量がそれぞれ2.0%超過であり、基準を満足させることができなかった。また、賦形剤として、ジカルシウムホスフェート水和物(DCP水和物)を含む場合にも、総類縁物質含量基準は満足させたが、他の賦形剤対比で、類縁物質発生量が多かった。
【0067】
試験例3:滑沢剤及び賦形剤による類縁物質試験
前記試験例1及び2における処方別安定性比較結果を基に、生産に適し、安定性が確保された滑沢剤ないし賦形剤の選定が必要であるということを確認した。従って、さまざままな種類の滑沢剤及び賦形剤の種類による安定性試験を行った。錠剤生産を完了した後、加速条件及び苛酷条件において安定性評価を進めた。
【0068】
下記表6による処方で、下記[サンプル製法]によって錠剤を製造した。
【0069】
[サンプル製法]
(1)秤量:各成分1,000T分量を秤量した。
(2)篩分け:最終混合に投入する滑沢剤を除いた全ての賦形剤及び主成分につき、30メッシュ篩を通過させて篩分けを行った。
(3)混合:篩を通過した粉末を、Bin Mixerを利用し、17rpmで30分間混合した。
(4)圧縮:ローラコンパクタを利用し、ロールrpm3.0/スクリューrpm35.0rpm、油圧2.5Mpaを利用し、圧着フレークを形成した。
(5)整粒:オシレータを利用し、前記(4)段階で製造されたフレークを、20メッシュで整粒した。
(6)最終混合:前記(5)段階で製造された結果物と、残っている最終混合滑沢剤とを投入し、Bin Mixerを利用し、17rpmで5分間混合した。
(7)打錠:AutoTab-200TR(市橋精機(株)、日本)を利用し、横12.8mm、縦7.0mmの長方形パンチを利用し、錠剤硬度12~14kpで打錠した。
【0070】
【0071】
加速条件(40℃、相対湿度75%)で保管するとき、シタグリプチンの総類縁物質を評価した結果を、下記表7に示した。
【0072】
【0073】
加速条件(40℃、相対湿度75%)で保管するとき、ダパグリフロジンの総類縁物質を評価した結果を、下記表8に示した。
【0074】
【0075】
苛酷条件(60℃)で保管するとき、シタグリプチンの総類縁物質を評価した結果を、下記表9に示した。
【0076】
【0077】
苛酷条件(60℃)で保管するとき、ダパグルリプロジンの総類縁物質を評価した結果を、下記表10に示した。
【0078】
【0079】
前記表7~10の結果によれば、滑沢剤として、フマル酸ステアリルナトリウム(PRUV(登録商標))を使用する場合(実施例1~3)、類縁物質基準を満足させると分かり、安定性を阻害しない適切な滑沢剤であると確認された。それに反し、比較例1~4によれば、他の滑沢剤であるモノステアリン酸グリセリル、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸スクロースのいずれにおいても、加速条件及び苛酷条件の基準に不適であることを確認した。
【0080】
また、フマル酸ステアリルナトリウム(PRUV(登録商標))と共に、賦形剤として、微結晶セルロース、D-マンニトール及び/または低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを使用した場合、類縁物質安定性が確保されたが(実施例1~3)、フマル酸ステアリルナトリウム(PRUV(登録商標))と共に、賦形剤として、リン酸二カルシウム無水物を使用した場合(実施例4)、加速条件及び苛酷条件のダパグリフロジン類縁物質基準を満足させることができなかった。
【0081】
試験例4:滑沢剤量による生産性評価
前記試験例4で安定性が確保されたフマル酸ステアリルナトリウム(PRUV(登録商標))、微結晶セルロース、D-マンニトール、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを対象に、滑沢剤量による生産性評価を進めた。また、サンプル製造完了後、加速条件及び苛酷条件において、安定性評価を進め、前記サンプル製造は、前記試験例3の方法と同一に行った。
【0082】
【0083】
実施例5及び比較例5の打錠後の錠剤性状を写真撮影し、各錠剤の打錠時の顆粒排出所要時間を測定し、その結果を
図3に示した。前述の「打錠時の顆粒排出所要時間」とは、打錠進行中、フィーダ(feeder)内部に充填された顆粒が、全部錠剤に打錠され、フィーダ内部顆粒がいずれも消尽されるのに所要される時間を言い、本試験においては、フィーダに一杯に充填された顆粒の量が420gであるときを基準に評価した。
【0084】
試験例5:滑沢剤量による安定性評価
前記表11によって製造されたサンプルにつき、加速条件(40℃、相対湿度75%)で保管するとき、滑沢剤の量による錠剤のシタグリプチンの総類縁物質を評価した結果を、下記表12に示した。
【0085】
【0086】
加速条件(40℃、相対湿度75%)で保管するとき、滑沢剤の量による錠剤のダパグリフロジンの総類縁物質を評価した結果を、下記表13に示した。
【0087】
【0088】
苛酷条件(60℃)で保管するとき、滑沢剤の量による錠剤のシタグリプチンの総類縁物質を評価した結果を、下記表14に示した。
【0089】
【0090】
苛酷条件(60℃)で保管するとき、滑沢剤の量による錠剤のダパグリフロジンの総類縁物質を評価した結果を、下記表15に示した。
【0091】
【0092】
試験例6:滑沢剤量による溶出率評価
前記表11によって製造されたサンプルにつき、溶出率評価を行い、その結果を、
図4及び5に示した。
【0093】
図4は、実施例5~8、並びに比較例6及び8のシタグリプチン溶出試験結果を示したグラフである。
【0094】
図5は、実施例5~8、並びに比較例6及び8のダパグルリプロジン溶出試験結果を示したグラフである。
【0095】
それと共に、実施例5~8、並びに比較例6及び8の主成分の含量を評価した。その結果を、下記表16及び17に示した。
【0096】
【0097】
【0098】
前記試験例4の試験結果によれば、フマル酸ステアリルナトリウムが、錠剤総重量の3%に及んでいない場合(比較例5及び7)、滑沢剤の量が不足し、錠剤打錠時、打錠障害が生じた。また、打錠工程の進行時、打錠時、顆粒排出所要時間が遅延されるために、生産性が落ちると確認された。それに反し、フマル酸ステアリルナトリウムが、錠剤総重量の3%以上である場合(実施例5~8、及び比較例6、比較例8)は、打錠障害なしに、錠剤が打錠された。
図3によれば、フマル酸ステアリルナトリウムが、錠剤総重量の3%以上である実施例5の場合は、3重量%未満の比較例5の場合に比べ、打錠障害なしに、円滑に錠剤が製造され、混合粉末排出時間も、顕著に低いということを確認することができる。
【0099】
前記試験例5の試験結果によれば、比較例5~8と実施例5~8は、加速条件及び苛酷条件において、基準に適する類縁物質安定性が確保されることはされたが、滑沢剤の比率が相対的に多い比較例6及び比較例8は、苛酷条件において、シタグリプチン及びダパグリフロジンの両成分いずれにおいても、類縁物質基準に近接するように増加する傾向を示した
【0100】
前記試験例6の試験結果によれば、フマル酸ステアリルナトリウムが、錠剤総重量の8%を超えて存在する場合、主成分の溶出率低下が示されると確認された。具体的には、比較例6及び比較例8は、実施例6及び実施例8と溶出様相を比較するとき、溶出率の低下が示された(
図4及び5参照)。さらには、試験例6の含量評価結果によれば、各錠剤において、主成分の含量低下がないと確認された(表16及び17参照)。それらを総合するとき、顆粒の過滑沢により、溶出率低下が示されていると判断された。
【0101】
試験例7:製剤均一性試験
実施例9及び実施例10の1錠当たり含量は、下記表18の通りであり、次の順序で製造した。
【0102】
【0103】
実施例9の製造
(1)各成分1,000T分量を秤量した。
(2)フマル酸ステアリルナトリウム(PRUV(登録商標))28.0mgを除いた全ての成分につき、30メッシュ篩を通過させて篩分けを行った。
(3)篩を通過した粉末を、Bin Mixerを利用し、17rpmで30分間混合した。
(4)フマル酸ステアリルナトリウム(PRUV(登録商標))と、前記(3)段階で製造された結果物とを、Bin Mixerを利用し、17rpm、5分間混合した。
(5)AutoTab-200TR(市橋精機(株)、日本)を利用し、横12.8mm、縦7.0mmの長方形パンチを利用し、錠剤硬度12~14kpで打錠した。
【0104】
実施例10の製造
(1)各成分1,000T分量を秤量した。
(2)フマル酸ステアリルナトリウム(PRUV(登録商標))8.0mgを除いた全ての成分につき、30メッシュ篩を通過させて篩分けを行った。
(3)篩を通過した粉末を、Bin Mixerを利用し、17rpmで30分間混合した。
(4)ローラコンパクタを利用し、ロールrpm3.0/スクリューrpm35.0rpm、油圧2.5Mpaを利用し、圧着フレークを形成した。
(5)オシレータを利用し、前記(4)段階で製造されたフレークに対し、20メッシュで篩分けを行った。
(6)残ったフマル酸ステアリルナトリウム(PRUV(登録商標))8.0mgと、前記(5)段階で製造された結果物とを、Bin Mixerを利用し、17rpm、5分間混合した。
(7)AutoTab-200TR(市橋精機(株)、日本)を利用し、横12.8mm、縦7.0mmの長方形パンチを利用し、錠剤硬度12~14kpで打錠した。
【0105】
今後の性状比較のために、錠剤総質量の約3%に該当する量を、PVA基剤にする商品名Opadryフィルムコーティング基剤を利用し、製品温度40℃でコーティング工程を進めた(実施例13)。
【0106】
実施例11及び実施例12の製造
実施例11及び実施例12の1錠当たり含量は、下記表19の通りであり、次の順序で製造した。
【0107】
【0108】
実施例11の製造
(1)各成分1,000T分量を秤量した。
(2)シタグリプチンリン酸塩水和物128.5mg、微結晶セルロース60.8mg、D-マンニトール102.0mg、クロスカルメロースナトリウム4.0mg及びフマル酸ステアリルナトリウム20.0mgに対し、30メッシュ篩を通過させて篩分けを行った。
(3)篩を通過した粉末を、Bin Mixerを利用し、17rpmで30分間混合した。
(4)ローラコンパクタを利用し、ロールrpm3.0/スクリューrpm35.0rpm、油圧2.5Mpaを利用し、圧着フレークを形成した。
(5)オシレータを利用し、前記(4)段階で製造されたフレークに対し、20メッシュで篩分けを行った。
(6)残ったダパグリフロジンL-プロリン15.6mg、微結晶セルロース56.8mg、クロスカルメロースナトリウム4.3mg、フマル酸ステアリルナトリウム8.0mgと、前記(5)段階で製造された結果物とを、Bin Mixerを利用し、17rpm、5分間混合した。
(7)AutoTab-200TR(市橋精機(株)、日本)を利用し、横12.8mm、縦7.0mmの長方形パンチを利用し、錠剤硬度12~14kpで打錠した。
【0109】
実施例12の製造
(1)各成分1,000T分量を秤量した。
(2)ダパグリフロジンL-プロリン15.6mg、微結晶セルロース60.8mg、D-マンニトール102.0mg、クロスカルメロースナトリウム4.0mg及びフマル酸ステアリルナトリウム20.0mgに対し、30メッシュ篩を通過させて篩分けを行った。
(3)篩を通過した粉末を、Bin Mixerを利用し、17rpmで30分間混合した。
(4)ローラコンパクタを利用し、ロールrpm3.0/スクリューrpm35.0rpm、油圧2.5Mpaを利用し、圧着フレークを形成した。
(5)オシレータを利用し、前記(4)段階で製造されたフレークに対し、20メッシュで篩分けを行った。
(6)(2)で除外されたシタグリプチンリン酸塩水和物128.5mg、微結晶セルロース56.8mg、クロスカルメロースナトリウム4.3mg、フマル酸ステアリルナトリウム8.0mgと、前記(5)段階で製造された結果物とを、Bin Mixerを利用し、17rpm、5分間混合した。
(7)AutoTab-200TR(市橋精機(株)、日本)を利用し、横12.8mm、縦7.0mmの長方形パンチを利用し、錠剤硬度12~14kpで打錠した。
【0110】
図6は、実施例9ないし12の複合錠剤を製造する工程を示す工程図である。
図6に表示された数字は、表18(実施例9及び10)及び表19(実施例11及び12)に表示された成分の数字を示したものである。実施例9の錠剤は、直打法によって製造し、実施例10ないし12の複合製剤は、圧着工程(roller compaction)によって製造した。
【0111】
含量均一性試験
サンプル製造
実施例9ないし12で製造した錠剤20錠を取って砕き、10錠該当量を取り、500mL容量フラスコに入れ、300mLを入れた後、マグネチックバーを入れ、60分間撹拌して完全に溶解させた後、マグネチックバーを除去し、希釈液で標線を合わせる。該液4mLを取り、50mL容量フラスコに入れ、希釈液で標線まで合わせ、0.45μmメンブレンフィルタで濾過して検液にした。以下の条件で試験した。
【0112】
移動相
pH2.0緩衝液:アセトニトリル(ACN)=15:5(v/v)
希釈液
移動相と同一である
【0113】
HPLC条件
カラム:15cmx4.6mm、5μm CNカラム、またはそれと同等なカラム
ポンプ:1.0mL/分
注入量(injection volume):20μL
UV ramp:205nm
分析時間:30分
【0114】
実施例9ないし12で製造した錠剤に係わる製剤均一性試験結果を、下記表に記載した。大韓民国薬典第11改訂一般試験法製剤均一性試験のうち、含量均一性試験の判定方法によって判定するとき、判定値15%以下(n=10)であるとき、適合判定した。
【0115】
【0116】
【0117】
表20及び表21でのように、前記実施例9による直打法によって製造した錠剤の場合、錠剤の含量均一性が基準を超えるか、あるいは基準に近接すると知ることができる。それは、シタグリプチン及びダパグリフロジンの低い密度特性(粒度が低く、体積が大きい)によって生じるものであり、実施例9の製造方法による場合、顆粒自体のフロー性が大きく阻害され、打錠時、打錠ディスク充填時、均一ではなく、また混合中及び移送中、混合粉間に層分離が生じると予想される。
【0118】
それと比較し、シタグリプチン及びダパグリフロジンを共に混合し、圧着工程(roller compaction)法で製造した実施例10で製造した錠剤の場合、含量均一性側面において優れていると分かった。良好に混合された粉末に対し、強圧で塊を形成した後、一定サイズに粉砕し、主成分と賦形剤との分離、及び微粉粒子と大粒子との層分離のような問題になっっていた物性を改善させ、製品品質を向上させることができた。
【0119】
一方、ダパグリフロジン及び賦形剤を含む混合部を、別途に圧着(compacting)した一実施例12においては、ダパグリフロジンの消失は少なく、シタグリプチン原料が、ダパグリフロジンに比べて粒子が大きく、量が多く、シタグリプチンの含量均一性が、ダパグリフロジンの含量均一性に比べて優秀に示されていると見られる。また、圧着(compacting)されたダパグリフロジン混合部の顆粒化により、フロー性が若干改善され、質量偏差も、良好である結果を示しているように見られる。ただし、滑沢剤により、滑沢されなければならない製剤の総表面積が増大し、最終製造された錠剤の表面滑沢が不十分に見られる様子を示した。
【0120】
また、シタグリプチン及び賦形剤を含む混合部を、別途に圧着(compacting)した実施例11においては、シタグリプチン及びダパグリフロジンのいずれの含量均一性も、ダパグリフロジン及び賦形剤を含む混合部を、別途に圧着した実施例12に比べ、若干すぐれていると確認された。それは、ダパグルリプロジンがシタグリプチンに比べ、錠剤において占める比率が低く、顆粒化過程なしに、単純混合だけ進められたためであると見られる。
【0121】
密度及び粒度分布試験
実施例11及び実施例12で製造した顆粒を利用し、体積密度(bulk density)及びタップ密度(tapped density)を測定し、表22に示し、粒度分布(mesh profile)を測定し、
図7に示した。
【0122】
【0123】
表22でのように、実施例11及び実施例12について測定した体積密度値とタップ密度値とから、Hausner比(タップ密度/体積密度)を測定した。その結果、実施例12は、実施例11においてよりHausner比値が小さく、良好なフロー性を示し、打錠性を改善させることができるということが分かる。また、
図7でのように、実施例12のサンプルは、実施例11におけるサンプルより、粒度分布が均一であるということが分かる。実施例11と比較し、実施例12においては、30ないし60メッシュの顆粒物が増大し、実施例11対比の粒度が上昇し、粒度サイズ偏差が小さいということを確認することができる。
【0124】
試験例8:錠剤サイズ測定試験
実施例13の製造
前記実施例10と同一の含量及び順序でもって、実施例13の複合製剤を製造した。次に、性状比較のために、錠剤総質量の約3%に該当する量をPVA基剤にする商品名Opadryフィルムコーティング基剤を利用し、温度40℃でコーティング工程を進めた。
【0125】
錠剤サイズ測定
実施例13で製造した錠剤と、ジャヌビア錠及びフォシーガ錠との横縦、厚み及び質量を測定した。
図8は、(a)ジャヌビア100mg(シタグリプチンとして、100mg)、(b)フォシーガ10mg(ダパグリフロジンプロパンジオール水和物12.3mg)、及び(c)実施例13で製造した錠剤を撮影した写真である。
【0126】
【0127】
前述の表23及び
図8でのように、実施例13の場合、シタグリプチン100mgとダパグリフロジン10mgとの成分を同時に含みながらも、その大きさが、肉眼上または数字上において、2つの錠剤に比べて増加幅が大きくない。また、実施例13の場合、ジャヌビアの円形錠剤対比で、横が約30%増大したが、縦長が約30%低減し、類似した面積を有しており、長方形錠剤で喉越えするとき、喉断面を通過するとき、3種錠剤のうち、最小の断面積を有して食道を通過するように設計されている。それを介し、ジャヌビア錠またはフォシーガ錠の2つの錠剤を同時に服用するところに比べ、薬の大きさ、重さ、喉越え時の断面積を画期的に改善したものであることが分かる。
【0128】
当業者であるならば、本発明が、その思想、または本質的な特性を外れずに、他の特定形態に具体化されうるということを認識するであろう。記述された実施例は、全ての面において、単に例示的なものであり、制限的ではない。従って、本発明の範囲は、前述の説明よりは、請求範囲によって提示される。該請求範囲と均等な意味内及び範囲内にある全ての変更は、本発明の範囲内に含まれるものである。
【国際調査報告】