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特表2023-514011カプセル封入された香料組成物を含むシートおよびその製造方法
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  • 特表-カプセル封入された香料組成物を含むシートおよびその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-05
(54)【発明の名称】カプセル封入された香料組成物を含むシートおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C11B 9/00 20060101AFI20230329BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20230329BHJP
【FI】
C11B9/00 Z
B32B27/18 F
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022537647
(86)(22)【出願日】2020-12-10
(85)【翻訳文提出日】2022-06-17
(86)【国際出願番号】 EP2020085566
(87)【国際公開番号】W WO2021170277
(87)【国際公開日】2021-09-02
(31)【優先権主張番号】20158941.3
(32)【優先日】2020-02-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390009287
【氏名又は名称】フイルメニツヒ ソシエテ アノニム
【氏名又は名称原語表記】Firmenich SA
【住所又は居所原語表記】7,Rue de la Bergere,1242 Satigny,Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】マイケル ピストン
(72)【発明者】
【氏名】セオドア アナスタシウ
【テーマコード(参考)】
4F100
4H059
【Fターム(参考)】
4F100AK01C
4F100AK36B
4F100AT00A
4F100BA02
4F100BA03
4F100CA11B
4F100CA30B
4F100CC01B
4F100DE04B
4F100DG15A
4F100EH46
4F100GB71
4H059BC10
4H059CA53
4H059DA09
4H059EA35
(57)【要約】
本明細書で提示される様々な態様は、香料の分野に関する。特に、本開示は、カプセル封入された香料組成物を含むドライヤーシートを提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)ウェブを含む基材と;
b)前記基材の少なくとも1つの表面に塗布された、カプセル封入された香料組成物を含むワニス層と;
を含む製品。
【請求項2】
前記カプセル封入された香料組成物が、アミノプラストベースのマイクロカプセルにカプセル封入されている、請求項1記載の製品。
【請求項3】
前記基材の少なくとも1つの表面に塗布されたカプセル封入された香料組成物を含有する前記ワニス層の上面に、さらに保護用オーバープリント層を含む、請求項1または2記載の製品。
【請求項4】
少なくとも1つの帯電防止剤、少なくとも1つの色移り防止剤、少なくとも1つの増白剤、少なくとも1つの酵素、少なくとも1つの防汚剤、少なくとも1つのしわ軽減剤、および少なくとも1つの繊維柔軟剤からなる群から選択される少なくとも1つの薬剤をさらに含む、請求項1から3までのいずれか1項記載の製品。
【請求項5】
前記基材が不織布ウェブを含む、請求項1から4までのいずれか1項記載の製品。
【請求項6】
ドライヤーシートである、請求項1から5までのいずれか1項記載の製品。
【請求項7】
ワイプである、請求項1から6までのいずれか1項記載の製品。
【請求項8】
請求項1から7までのいずれか1項記載の物品の製造方法であって、
a)ウェブを含むロール状基材を準備する工程;
b)前記ロール状基材の一部を巻き出す工程;
c)第1のコーティング工程において、カプセル封入された香料組成物を含有するワニスを前記ロール状基材の巻き出された部分に塗布する工程;
を含む、方法。
【請求項9】
後続のコーティング工程において、少なくとも1つの帯電防止剤、少なくとも1つの色移り防止剤、少なくとも1つの増白剤、少なくとも1つの酵素、少なくとも1つの防汚剤、少なくとも1つのしわ軽減剤、および少なくとも1つの繊維柔軟剤からなる群から選択される少なくとも1つの薬剤を、前記ロール状基材の前記巻き出された部分に添加する工程を含む、請求項8記載の方法。
【請求項10】
後続のコーティング工程において前記ワニス層の上に保護用オーバープリント層を添加する工程を含む、請求項8または9記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、香料の分野に関する。本開示は特に、カプセル封入された香料組成物を含む柔軟剤またはドライヤーシートを製造するための組成物および方法を提供する。
【0002】
発明の背景
洗濯業界でよく知られている商品は、繊維柔軟剤またはドライヤーシートである。使用の際に、消費者は一般的に洗濯プロセスの乾燥サイクルで少なくとも1枚のシートを使用する。柔軟剤またはドライヤーシートは、通常ウェブなどの基材材料を含み、基材は、衣類に所望の利益を付与するために1つ以上の成分を保持する。これらの成分としては、例えば、香料、帯電防止剤、色移り防止剤、増白剤、酵素、防汚剤、しわ軽減剤、繊維柔軟剤などを挙げることができる。
【0003】
柔軟剤またはドライヤーシートを製造するための一般的なプロセスでは、ウェブ材料の大きなロールが、様々なコーティング、平滑化、および乾燥/冷却ステップを経由して高速で導かれ、その際に1つ以上の成分がウェブに塗布される。しかし従来の製造方法では、多くの場合、自動衣類乾燥機で乾燥された布地に香りを効果的に移すことができない。
【0004】
本発明は、自動衣類乾燥機で乾燥された布地への香料の受け渡しを改善するために製品に塗布することができる組成物に関する。
【0005】
発明の概要
一態様では、本開示は、
a)ウェブを含むロール状基材を準備する工程;
b)ロール状基材の一部を巻き出す工程;
c)第1のコーティング工程において、カプセル封入された香料組成物を含有するワニスをロール状基材の巻き出された部分に塗布する工程;
を含む方法を提供する。
【0006】
さらなる態様では、前記方法は、後続のコーティング工程において、少なくとも1つの帯電防止剤、少なくとも1つの色移り防止剤、少なくとも1つの増白剤、少なくとも1つの酵素、少なくとも1つの防汚剤、少なくとも1つのしわ軽減剤、および少なくとも1つの繊維柔軟剤からなる群から選択される少なくとも1つの薬剤を、ロール状基材の巻き出された部分に添加する工程をさらに含む。
【0007】
さらなる態様では、前記方法は、後続のコーティング工程においてワニス層の上に保護用オーバープリント層を添加する工程をさらに含む。
【0008】
一態様では、本開示は、
a)ウェブを含む基材と;
b)基材の少なくとも1つの表面に塗布されたカプセル封入された香料組成物を含むワニス層と;
を含む製品を提供する。
【0009】
さらなる態様では、前記製品は、基材の少なくとも1つの表面に塗布されたカプセル封入された香料組成物を含有するワニス層の上面に、保護用オーバープリント層をさらに含む。
【0010】
さらなる態様では、前記製品は、少なくとも1つの帯電防止剤、少なくとも1つの色移り防止剤、少なくとも1つの増白剤、少なくとも1つの酵素、少なくとも1つの防汚剤、少なくとも1つのしわ軽減剤、および少なくとも1つの繊維柔軟剤からなる群から選択される少なくとも1つの薬剤をさらに含む。
【0011】
さらなる態様では、基材は不織布ウェブを含む。
【0012】
さらなる態様では、製品はドライヤーシートである。
【0013】
さらなる態様では、製品はワイプである。
【0014】
本明細書の末尾には、本発明を具体的に特定し、明確に主張する特許請求の範囲が記載されているが、本発明は、添付の図面についての以下の説明からよりよく理解されると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本明細書で提示する一態様による方法によって製造されたドライヤーシートから官能試験パネルにおいて被験者が知覚した香りの強度と、従来の方法によって製造されたドライヤーシートから官能試験パネルにおいて被験者が知覚した香りの強度との比較を示す図である。
図2】本明細書で提示する一態様による方法によって製造されたドライヤーシートの性能を、市販のドライヤーシート(左の2列)と比較して評価した官能パネルの結果を示す図である。誤差は信頼区間(95%)によって計算された。本明細書で提示する一態様による方法によって製造されたドライヤーシートは、香油A(左から2番目の2列)、香油B(右から2番目の2列)、および香油C(右2列)を含むマイクロカプセルを含むドライヤーシートであった。
図3】本明細書で提示する態様による方法によって製造されたドライヤーシートの性能を、市販のドライヤーシート(左の2列)と比較して評価した官能パネルの結果を示す図である。誤差は信頼区間(95%)によって計算された。本明細書で提示される一態様による方法によって製造されたドライヤーシートは、香油A(左から2番目の2列)および香油B(右から2番目の2列)を含むマイクロカプセルを含むドライヤーシートであった。
図4a】市販のドライヤーシートへのワックスおよび香料カプセルの付着に対する洗浄の影響の結果を示す図である。
図4b】市販のドライヤーシートへのワックスおよび香料カプセルの付着に対する洗浄の影響の結果を示す図である。
図5a】本明細書で提示する一態様による方法によって製造されたドライヤーシートへのワックスおよび香料カプセルの付着に対する洗浄の影響の結果を示す図である。
図5b】本明細書で提示する一態様による方法によって製造されたドライヤーシートへのワックスおよび香料カプセルの付着に対する洗浄の影響の結果を示す図である。
【0016】
詳細な説明
以下の説明では、実施され得る特定の実施形態を参照するが、これは例示の目的で示すものである。これらの実施形態は、当業者が本明細書に記載の発明を実施できるように詳細に説明され、また他の実施形態を利用することができ、本明細書で提示される態様の範囲から逸脱することなく論理的変更を行い得ることが理解される。したがって、例示的な実施形態の以下の説明は、限定的な意味で解釈されるべきではなく、本明細書で提示される様々な態様の範囲は、添付の特許請求の範囲によって規定される。
【0017】
要約書は、読み手が技術的開示の性質および要点を迅速に確認できるようにするために、37C.F.R.§1.72(b)に従うように提供されている。要約書は、請求項の範囲または意味を解釈または制限するために使用されないことを理解した上で提出される。
【0018】
方法:いくつかの態様では、カプセル封入された香料組成物を含むシートは、カプセル封入された香料組成物と、任意選択的な、少なくとも1つの帯電防止剤、少なくとも1つの色移り防止剤、少なくとも1つの増白剤、少なくとも1つの酵素、少なくとも1つの防汚剤、少なくとも1つのしわ軽減剤、および少なくとも1つの繊維柔軟剤からなる群から選択される少なくとも1つの薬剤とでコーティングされている。一態様では、ウェブを含むロール状基材は、カプセル封入された香料組成物と、任意選択的な、少なくとも1つの帯電防止剤、少なくとも1つの色移り防止剤、少なくとも1つの増白剤、少なくとも1つの酵素、少なくとも1つの防汚剤、少なくとも1つのしわ軽減剤、および少なくとも1つの繊維柔軟剤からなる群から選択される少なくとも1つの薬剤とによりコーティングされているアプリケータローラを逐次的に通過させることによって、カプセル封入された香料組成物と、任意選択的な、少なくとも1つの帯電防止剤、少なくとも1つの色移り防止剤、少なくとも1つの増白剤、少なくとも1つの酵素、少なくとも1つの防汚剤、少なくとも1つのしわ軽減剤、および少なくとも1つの繊維柔軟剤からなる群から選択される少なくとも1つの薬剤とでコーティングすることができる。
【0019】
いくつかの態様では、ウェブを含むロール状基材を保護用オーバープリント層でコーティングされたローラの上に通過させることによって、保護用オーバープリント層を添加することができる。
【0020】
一態様では、本開示は、
a)ウェブを含むロール状基材を準備する工程;
b)ロール状基材の一部を巻き出す工程;
c)第1のコーティング工程において、カプセル封入された香料組成物を含有するワニスをロール状基材の巻き出された部分に塗布する工程;
を含む方法を提供する。
【0021】
一態様では、カプセル封入された香料組成物を含むワニスは、フレキソ印刷によってロール状基材の巻き出された部分に塗布される。そのような一実施形態では、アニロックスロールが、カプセル封入された香料組成物を含むワニスのスラリーでコーティングされ、ロール状基材の巻き出された部分が、60~105フィート/分の範囲の速度でアニロックスロールの上を通過し、その際に、スラリーが、ロール状基材の巻き出された部分の表面に付着する。速度は、不織布の機械方向強度によって許容される許容範囲まで増加させることができる。
【0022】
当業者は、例えば、ロール状基材の巻き出された部分がアニロックスロールの上を通過する速度、アニロックスロールの搬送量、アニロックスセルの数、サイズ、および形状などの複数のパラメータを変更することによって、ロール状基材の巻き出された部分の表面に付着するスラリーの量を変えることができることを容易に理解することができる。
【0023】
一態様では、アニロックスロールの搬送量は、1平方インチあたり10億~200億立方ミクロンである。
【0024】
さらなる態様では、前記方法は、後続のコーティング工程においてワニス層の上に保護用オーバープリント層を添加する工程をさらに含む。一態様では、保護用オーバープリント層は、PEG溶液を含む。いくつかの態様では、PEG溶液は水中で60%の濃度である。
【0025】
さらなる態様では、前記方法は、後続のコーティング工程で、少なくとも1つの帯電防止剤、少なくとも1つの色移り防止剤、少なくとも1つの増白剤、少なくとも1つの酵素、少なくとも1つの防汚剤、少なくとも1つのしわ軽減剤、および少なくとも1つの繊維柔軟剤からなる群から選択される少なくとも1つの薬剤を、ロール状基材の巻き出された部分に添加する工程をさらに含む。少なくとも1つの薬剤の非限定的な例は、米国特許第5246603号明細書および同第6297210号明細書に開示されている。
【0026】
基材:基材として使用できる適切な材料としては、スポンジ、紙、ならびに織布および不織布などが挙げられる。一態様では、基材は不織布基材である。本明細書において使用される不織布基材は、ウェブまたはカーディングされた繊維構造(繊維強度がカーディングを可能にするのに適している場合)を有する結合繊維またはフィラメント状製品を含んでいてよく、あるいは繊維またはフィラメントが無秩序にもしくはランダムな配列に分布している(すなわち、繊維の部分的な配向が頻繁に存在するカーディングされたウェブ内の繊維の配列、および完全に無秩序な分布配向)か、または実質的に整列している繊維マットを含み得る。繊維またはフィラメントは、天然のもの(例えば羊毛、絹、ジュート、ヘンプ、綿、リネン、サイザル、またはラミー)であっても、合成されたもの(例えばレーヨン、セルロースエステル、ポリビニル誘導体、ポリオレフィン、ポリアミド、またはポリエステル)であってもよい。
【0027】
基材は、例えば、吸収性、引張強さ、厚さなどのような、所望の物理的特性が得られるように構成することができる。特定の理論に限定されることを意図するものではないが、所望の吸収性は、例えば布の厚さを増すことによって、すなわち必要な吸収特性を得るのに十分な厚さになるまで複数のカーディングされたウェブまたはマットを重ね合わせることによって、または十分な厚さの繊維をスクリーン上に付着させることによって達成することができる。
【0028】
不織布基材は、当業者によって容易に選択される任意の方法によって製造することができる。例としては、米国特許第5246603号に開示されている方法が挙げられる。
【0029】
カプセル封入された香料を含むロール状基材は、その後、例えばワイプ、ティッシュ、ドライヤーシートなどの製品を提供するために加工することができる。
【0030】
したがって、一態様では、カプセル封入された香料を含むロール状基材は、自動衣類乾燥機で布地をコンディショニングするように構成された製品を提供するためにさらに加工される。そのような一態様では、製品はドライヤーシートである。
【0031】
本明細書に開示される方法による製造に適したドライヤーシートの例は、米国特許第5246603号明細書に開示されているドライヤーシートである。本明細書に開示される方法による製造に適したドライヤーシートの別の例は、米国特許第6297210号明細書に開示されているドライヤーシートである。
【0032】
あるいは一態様では、カプセル封入された香料を含むロール状基材は、香料を表面に受け渡すように構成された製品を提供するためにさらに加工される。そのような一態様では、製品はワイプである。
【0033】
本明細書に開示される方法による製造に適したワイプの例は、米国特許第7285520号明細書に開示されているワイプである。本明細書に開示される方法による製造に適したワイプの別の例は、米国特許第5863663号明細書に開示されているワイプである。
【0034】
カプセル封入された香料組成物:いくつかの態様では、香料組成物は、以下の一般的な工程を含む方法によってカプセル封入される:最初に、油相中に可溶性のモノマーまたはポリマー(ポリイソシアネートなど)および水相に可溶性のポリマー(ポリアミンやポリオールなど)を用いて、水中油型エマルジョンまたは油中水型エマルジョンが調製される。次いで、特定の条件下(温度やpHなど)で、これらのポリマーが油-水界面で互いに反応して、ポリマーシェルを形成する。その結果、水性コア-シェルマイクロカプセルスラリーが得られ、香料組成物は、マイクロカプセルのコア内に含まれる。
【0035】
特定の理論に限定されることを意図するものではないが、マイクロカプセルのシェルの性質は、油相および水相にそれぞれ存在するモノマーまたはポリマーの性質に依存する。例えば、ポリ尿素シェルは、ポリイソシアネートがポリアミンと反応するときに得られる一方で、ポリウレタンシェルは、ポリイソシアネートがポリオールと反応するときに得られる。
【0036】
このようなマイクロカプセルを製造する方法は、先行技術において広く開示されている。ポリ尿素およびポリウレタンベースのマイクロカプセルスラリーの調製方法の例は、例えば、国際公開第2007/004166号、欧州特許第2300146号明細書、または欧州特許第2579976号明細書に記載されている。
【0037】
香料組成物をカプセル封入する材料は、先行技術において広く記載されているマイクロカプセル、好ましくはポリマーシェルを有するコア-シェルタイプのものであってよい。
【0038】
本開示のマイクロカプセルからのポリマーシェルの性質は様々であってよい。非限定的な例として、シェルは、アミノプラストベース、ポリ尿素ベース、またはポリウレタンベースであってよい。シェルは、ハイブリッド、すなわち架橋された少なくとも2つのタイプの無機粒子から構成されるハイブリッドシェルなどの有機-無機ハイブリッド、さらにはポリアルコキシシランマクロモノマー組成物の加水分解および縮合反応から得られるシェルであってよい。
【0039】
一態様によれば、シェルは、メラミン-ホルムアルデヒドまたは尿素-ホルムアルデヒドまたは架橋メラミンホルムアルデヒドまたはメラミングリオキサールなどのアミノプラストコポリマーを含む。
【0040】
別の態様によれば、シェルは、例えば、限定するものではないが、イソシアネートベースのモノマーおよびアミン含有架橋剤、例えば炭酸グアニジンおよび/またはグアナゾールから製造されるポリ尿素ベースである。特定のポリ尿素マイクロカプセルは、少なくとも2つのイソシアネート官能基を含む少なくとも1種のポリイソシアネートと、アミン(例えば水溶性グアニジン塩およびグアニジン)からなる群から選択される少なくとも1種の反応物との間の重合反応生成物であるポリ尿素壁;コロイド安定剤または乳化剤;およびカプセル封入された香料を含む。ただし、アミンの使用は省略することができる。
【0041】
別の実施形態によれば、マイクロカプセルは、国際公開第2019243426号に記載されているようなシェルを有する。
【0042】
特定の態様によれば、コロイド安定剤は、0.1%~0.4%のポリビニルアルコールと、0.6%~1%のビニルピロリドンおよび四級化ビニルイミダゾールのカチオン性コポリマーとの水溶液を含む(全てのパーセント割合は、コロイド安定剤の総重量に対する重量によって規定される)。別の態様によれば、乳化剤は、アニオン性または両親媒性の生体高分子であり、これは、一態様では、アラビアガム、大豆タンパク質、ゼラチン、カゼインナトリウム、およびこれらの混合物からなる群から選択することができる。
【0043】
別の態様によれば、シェルは、例えば、限定するものではないが、ポリイソシアネートおよびポリオール、ポリアミド、ポリエステルなどから製造されるポリウレタンベースである。
【0044】
別の実施形態によれば、マイクロカプセルは、国際公開第2014044840号に記載されているような、シェルが架橋されている場合がある複雑なコアセルベーションにより得られるポリマーシェルを有する。
【0045】
コア-シェルマイクロカプセルの水性分散液/スラリーの調製は、当業者に周知である。一態様では、マイクロカプセル壁材料は、任意の適切な樹脂を含むことができ、特にメラミン、グリオキサール、ポリ尿素、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエステルなどを含み得る。適切な樹脂には、アルデヒドとアミンとの反応生成物が含まれ、適切なアルデヒドには、ホルムアルデヒドおよびグリオキサールが含まれる。適切なアミンには、メラミン、尿素、ベンゾグアナミン、グリコールウリル、およびこれらの混合物が含まれる。適切なメラミンには、メチロールメラミン、メチル化メチロールメラミン、イミノメラミン、およびこれらの混合物が含まれる。適切な尿素には、ジメチロール尿素、メチル化ジメチロール尿素、尿素-レゾルシノール、およびこれらの混合物が含まれる。製造に適した材料は、以下の会社:Solutia Inc.(St Louis, Missouri U.S.A.)、Cytec Industries (West Paterson, New Jersey U.S.A.)、Sigma-Aldrich (St. Louis, Missouri U.S.A.)のうちの1社以上から入手することができる。
【0046】
一態様によれば、マイクロカプセルは、以下の工程を含むプロセスによって得られる1シェル型アミノプラストコア-シェルマイクロカプセルである:
1)香油を、少なくとも2つのイソシアネート官能基を有する少なくとも1種のポリイソシアネートと混合して、油相を形成する工程;
2)アミノプラスト樹脂および任意選択的な安定剤を水に分散または溶解して、水相を形成する工程;
3)油相と水相とを混合することにより、平均液滴サイズが1~100ミクロンに含まれる水中油型分散液を調製する工程;
4)硬化工程を行って前記マイクロカプセルの壁を形成する工程;ならびに
5)任意選択的に、最終分散液を乾燥させて、乾燥したコア-シェルマイクロカプセルを得る工程。
【0047】
一態様によれば、コア-シェルマイクロカプセルは、ホルムアルデヒドを含まないカプセルである。ホルムアルデヒドを含まないアミノプラストマイクロカプセルスラリーを調製するための一般的なプロセスは、以下の工程を含む:
1)
a.メラミンまたはメラミンと2つのNH官能基を含む少なくとも1種のC~C化合物との混合物の形態のポリアミン成分;
b.グリオキサールと、C4~6の2,2-ジアルコキシ-エタナールと、任意選択的なグリオキサレートとの混合物の形態のアルデヒド成分であって、前記混合物が、1/1~10/1に含まれるグリオキサール/C4~62,2-ジアルコキシ-エタナールのモル比を有するアルデヒド成分;および
c.プロトン酸触媒;
の反応生成物を含む、またはこれらを一緒に反応することによって得られる、オリゴマー組成物を調製する工程;
2)
a.油;
b.水媒体:
c.工程1で得られた少なくとも1種のオリゴマー組成物、
d.
i.C~C12芳香族または脂肪族ジイソシアネートまたはトリイソシアネートおよびそれらのビウレット、トリウレット、トリマー、トリメチロールプロパン付加物、およびそれらの混合物;ならびに/または
ii.下記式のジ-またはトリ-オキシラン化合物:
A-(オキシラン-2-イルメチル)
[式中、は2または3を表し、1は任意選択的に2~6個の窒素原子および/または酸素原子を含むC~C基を表す]
の中から選択される少なくとも1種の架橋剤:
e.任意選択的な、2つのNH官能基を含むC~C化合物;
を含む、液滴サイズが1~600ミクロンに含まれる水中油型分散液を調製する工程;
3)分散液を加熱する工程;
4)分散液を冷却する工程。
【0048】
上記プロセスは、国際公開第2013/068255号により詳しく記載されている。
【0049】
別の態様によれば、マイクロカプセルのシェルは、ポリ尿素またはポリウレタンベースである。ポリ尿素およびポリ尿素ベースのマイクロカプセルスラリーを調製するためのプロセスの例は、例えば国際公開第2007/004166号、欧州特許出願公開第2300146号明細書、および欧州特許出願公開第25799号明細書に記載されている。一般的には、ポリ尿素またはポリウレタンベースのマイクロカプセルスラリーを調製するプロセスは、以下の工程を含む:
a)少なくとも2つのイソシアネート基を有する少なくとも1種のポリイソシアネートを油に溶解して油相を形成する工程;
b)水相を形成するための乳化剤またはコロイド安定剤の水溶液を調製する工程;
c)油相を水相に添加して水中油型分散液を形成する工程であって、平均液滴サイズが1~500μm、好ましくは5~50μmに含まれる工程;ならびに
d)界面重合を誘発し、スラリーの形態でマイクロカプセルを形成するのに十分な条件を適用する工程。
【0050】
本発明の特定の態様によれば、マイクロカプセルは、多糖、生体高分子、カチオン性ポリマー、およびそれらの混合物からなる群から選択されるポリマーでコーティングされて、マイクロカプセルの外側コーティングを形成する。
【0051】
多糖ポリマーは、当業者に周知である。非イオン性多糖の例としては、限定するものではないが、ローカストビーンガム、キシログルカン、グアーガム、ヒドロキシプロピルグアー、ヒドロキシプロピルセルロースおよびヒドロキシプロピルメチルセルロース、ペクチン、ならびにこれらの混合物からなる群が挙げられる。
【0052】
特定の態様によれば、コーティングはカチオン性コーティングからなる。
【0053】
カチオン性ポリマーは、当業者に周知でもある。いくつかの態様では、カチオン性ポリマーは、少なくとも0.5meq/g、あるいは少なくとも約1.5meq/g、あるいは約7meq/g未満、あるいは約6.2meq/g未満のカチオン電荷密度を有する。カチオン性ポリマーのカチオン電荷密度は、窒素測定のための化学試験として米国薬局方に記載されているケルダール法によって測定することができる。いくつかの態様では、カチオン性ポリマーは、ポリマー主鎖の一部を形成することができるか、それに直接連結された側置換基が有することができる、一級、二級、三級、および/または四級アミン基を含む単位を含むものから選択される。いくつかの態様では、カチオン性ポリマーの重量平均(Mw)分子量は、10,000~3.5Mダルトン、あるいは50,000~2Mダルトンである。
【0054】
特定の態様によれば、アクリルアミド、メタクリルアミド、N-ビニルピロリドン、四級化N,N-ジメチルアミノメタクリレート、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド、四級化ビニルイミダゾール(3-メチル-1-ビニル-1H-イミダゾール-3-イウムウクロリド)、ビニルピロリドン、アクリルアミドプロピルトリモニウムクロリド、カッシアヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド、グァーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリドまたはポリガラクトマンナン、2-ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリドエーテル、デンプンヒドロキシプロピルトリモニウムクロリドおよびセルロースヒドロキシプロピルトリモニウムクロリドに基づくカチオン性ポリマーが使用される。いくつかの態様では、コポリマーは、ポリクオタニウム-5、ポリクオタニウム-6、ポリクオタニウム-7、ポリクオタニウム10、ポリクオタニウム-11、ポリクオタニウム-16、ポリクオタニウム-22、ポリクオタニウム-28、ポリクオタニウム-43、ポリクオタニウム-44、ポリクオタニウム-46、カッシアヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド、グァーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリドまたはポリガラクトマンナン2-ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリドエーテル、デンプンヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド、およびセルロースヒドロキシプロピルトリモニウムクロリドからなる群から選択する必要がある。
【0055】
市販の製品の具体例としては、Salcare(登録商標)SC60(アクリルアミドプロピルトリモニウムクロリドとアクリルアミドのカチオン性コポリマー、供給元:BASF)またはLuviquat(登録商標)、例えば、PQ 11N、FC 550、またはStyle(ポリクオタニウム-11~68またはビニルピロリドンの四級化コポリマー、供給元:BASF)、またはJaguar(登録商標)(C13SまたはC17、供給元:Rhodia)を挙げることができる。
【0056】
上記の態様のいずれかによれば、約0%~5%w/w、さらには約0.1%~2%w/wに含まれる量の上述したポリマーが添加され、このパーセント割合は、マイクロカプセルスラリーの総重量に対するw/wベースで表されている。
【0057】
「香油」(または「香料」)の本明細書における意味は、約20℃で液体である成分または組成物である。上の態様のいずれかによれば、香油は、賦香成分のみであってよく、あるいは賦香組成物の形態の成分の混合物であってもよい。「賦香成分」とは、本明細書では、匂いを付与または調節することを主な目的として使用される化合物を意味する。言い換えると、そのような成分は、賦香成分であるとみなされるためには、匂いを有するだけでなく、組成物の匂いを肯定的な形または心地よい形で少なくとも付与または修飾できると当業者によって認識されなければならない。本開示の目的のためには、香油には、賦香成分と、香料前駆体、エマルジョン、または分散液などの賦香成分の送達を一緒に改善、強化、または修飾する物質との組み合わせのみならず、匂いを修飾または付与すること以上の追加の利益、例えば持続性、ブルーミング、悪臭抑制、抗菌効果、微生物安定性、害虫防除を与える組み合わせも含まれる。
【0058】
疎水性の内相に存在する賦香成分の性質および種類は、本明細書でより詳細な説明を保証するものではなく、いずれの場合においても網羅的ではなく、当業者はその一般常識に基づいて、ならびに使用目的または用途および望まれる官能効果に従って選択することができる。一般的な用語では、これらの賦香成分は、アルコール、アルデヒド、ケトン、エステル、エーテル、アセテート、ニトリル、テルペノイド、窒素または硫黄のヘテロ環化合物、および精油などの多様な化学的分類に属しており、賦香併用成分は天然であっても合成起源であってもよい。これらの併用成分の多くは、いずれの場合も、S. Arctanderによる書籍であるPerfume and Flavor Chemicals, 1969, Montclair, New Jersey, USAもしくはそのより最近のバージョンなどの関連テキスト、または同様の性質の他の著作物、ならびに香料分野の豊富な特許文献の中に列挙されている。前記成分は、制御された方法で様々なタイプの賦香化合物を放出することが知られている化合物であってもよいことも理解される。
【0059】
特に、以下のような香料配合物で一般的に使用されている賦香成分を挙げることができる:
アルデヒド成分:デカナール、ドデカナール、2-メチル-ウンデカナール、10-ウンデセナール、オクタナール、ノナナール、および/またはノネナール;
芳香性ハーブ成分:ユーカリ油、樟脳、ユーカリプトール、5-メチルトリシクロ[6.2.1.0~2,7~]ウンデカン-4-オン、1-メトキシ-3-ヘキサンチオール、2-エチル-4,4-ジメチル-1,3-オキサチアン、2,2,7/8,9/10-テトラメチルスピロ[5.5]ウンデク-8-エン-1-オン、メントール、および/またはアルファ-ピネン;
バルサム成分:クマリン、エチルバニリン、および/またはバニリン;
柑橘成分:ジヒドロミルセノール、シトラール、オレンジ油、酢酸リナリル、シトロネリルニトリル、オレンジテルペン、リモネン、1-p-メンテン-8-イルアセテート、および/または1,4(8)-p-メンタジエン;
フローラル成分:ジヒドロジャスモン酸メチル、リナロール、シトロネロール、フェニルエタノール、3-(4-tert-ブチルフェニル)-2-メチルプロパナール、ヘキシルシンナムアルデヒド、酢酸ベンジル、サリチル酸ベンジル、テトラヒドロ-2-イソブチル-4-メチル-4(2H)-ピラノール、ベータイオノン、2-(メチルアミノ)安息香酸メチル、(E)-3-メチル-4-(2,6,6-トリメチル-2-シクロヘキセン-1-イル)-3-ブテン-2-オン、(1E)-1-(2,6,6-トリメチル-2-シクロヘキセン-1-イル)-1-ペンテン-3-オン、1-(2,6,6-トリメチル-1,3-シクロヘキサジエン-1-イル)-2-ブテン-1-オン、(2E)-1-(2,6,6-トリメチル-2-シクロヘキセン-1-イル)-2-ブテン-1-オン、(2E)-1-[2,6,6-トリメチル-3-シクロヘキセン-1-イル]-2-ブテン-1-オン、(2E)-1-(2,6,6-トリメチル-1-シクロヘキセン-1-イル)-2-ブテン-1-オン、2,5-ジメチル-2-インダンメタノール、2,6,6-トリメチル-3-シクロヘキセン-1-カルボキシレート、3-(4,4-ジメチル-1-シクロヘキセン-1-イル)プロパナール、サリチル酸ヘキシル、3,7-ジメチル-1,6-ノナジエン-3-オール、3-(4-イソプロピルフェニル)-2-メチルプロパナール、酢酸ベルジル、ゲラニオール、p-メンス-1-エン-8-オール、4-(1,1-ジメチルエチル)-1-シクロヘキシルアセテート、1,1-ジメチル-2-フェニルエチルアセテート、4-シクロヘキシル-2-メチル-2-ブタノール、サリチル酸アミル、高シスジヒドロジャスモン酸メチル、3-メチル-5-フェニル-1-ペンタノール、ベルジルプロプリオネート(proprionate)、酢酸ゲラニル、テトラヒドロリナロール、cis-7-p-メンタノール、プロピル(S)-2-(1,1-ジメチルプロポキシ)プロパノエート、2-メトキシナフタレン、2,2,2-トリクロロ-1-フェニルエチルアセテート、4/3-(4-ヒドロキシ-4-メチルペンチル)-3-シクロヘキセン-1-カルバルデヒド、アミルシンナムアルデヒド、8-デセン-5-オリド、4-フェニル-2-ブタノン、酢酸イソノニル、酢酸4-(1,1-ジメチルエチル)-1-シクロヘキシル、イソ酪酸ベルジル、および/またはメチルイオノン異性体混合物;
フルーティー成分:ガンマ-ウンデカラクトン、2,2,5-トリメチル-5-ペンチルシクロペンタノン、2-メチル-4-プロピル-1,3-オキサチアン、4-デカノリド、2-メチル-ペンタン酸エチル、酢酸ヘキシル、2-メチルブタン酸エチル、ガンマ-ノナラクトン、ヘプタン酸アリル、イソ酪酸2-フェノキシエチル、エチル2-メチル-1,3-ジオキソラン-2-アセテート、3-(3,3/1,1-ジメチル-5-インダニル)プロパナール、ジエチル1,4-シクロヘキサンジカルボキシレート、3-メチル-2-ヘキセン-1-イルアセテート、1-[3,3-ジメチルシクロヘキシル]エチル[3-エチル-2-オキシラニル]アセテート、および/またはジエチル1,4-シクロヘキサンジカルボキシレート;
グリーン成分:2-メチル-3-ヘキサノン(E)-オキシム、2,4-ジメチル-3-シクロヘキセン-1-カルバルデヒド、2-tert-ブチル-1-シクロヘキシルアセテート、スチラリルアセテート、アリル(2-メチルブトキシ)アセテート、4-メチル-3-デセン-5-オール、ジフェニルエーテル、(Z)-3-ヘキセン-1-オール、および/または1-(5,5-ジメチル-1-シクロヘキセン-1-イル)-4-ペンテン-1-オン;
ムスク成分:1,4-ジオキサ-5,17-シクロヘプタデカンジオン、(Z)-4-シクロペンタデセン-1-オン、3-メチルシクロペンタデカノン、1-オキサ-12-シクロヘキサデセン-2-オン、1-オキサ-13-シクロヘキサデセン-2-オン、(9Z)-9-シクロヘプタデセン-1-オン、2-{1S)-1-[(1R)-3,3-ジメチルシクロヘキシル]エトキシ}-2-オキソエチルプロピオネート3-メチル-5-シクロペンタデセン-1-オン、1,3,4,6,7,8-ヘキサヒドロ-4,6,6,7,8,8-ヘキサメチル-シクロペンタ-g-2-ベンゾピラン、(1S,1’R)-2-[1-(3’,3’-ジメチル-1’-シクロヘキシル)エトキシ]-2-メチルプロピルプロパノエート、オキサシクロヘキサデカン-2-オン、および/または(1S,1’R)-[1-(3’,3’-ジメチル-1’-シクロヘキシル)エトキシカルボニル]メチルプロパノエート;
ウッディ成分:1-[(1RS,6SR)-2,2,6-トリメチルシクロヘキシル]-3-ヘキサノール、3,3-ジメチル-5-[(1R)-2,2,3-トリメチル-3-シクロペンテン-1-イル]-4-ペンテン-2-オール、3,4’-ジメチルスピロ[オキシラン-2,9’-トリシクロ[6.2.1.02,7]ウンデク[4]エン、(1-エトキシエトキシ)シクロドデカン、2,2,9,11-テトラメチルスピロ[5.5]ウンデク-8-エン-1-イルアセテート、1-(オクタヒドロ-2,3,8,8-テトラメチル-2-ナフタレニル)-1-エタノン、パチョリ油、パチョリ油のテルペン画分、clearwood(登録商標)、(1’R,E)-2-エチル-4-(2’,2’,3’-トリメチル-3’-シクロペンテン-1’-イル)-2-ブテン-1-オール、2-エチル-4-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペンテン-1-イル)-2-ブテン-1-オール、メチルセドリルケトン、5-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペンテニル)-3-メチルペンタン-2-オール、1-(2,3,8,8-テトラメチル-1,2,3,4,6,7,8,8a-オクタヒドロナフタレン-2-イル)エタン-1-オン、および/またはイソボルニルアセテート;
他の成分(例えば琥珀色の、粉末状の、スパイシーな、または水っぽい):ドデカヒドロ-3a,6,6,9a-テトラメチル-ナフト[2,1-b]フランおよびその任意の立体異性体、ヘリオトロピン、アニスアルデヒド、オイゲノール、シンナムアルデヒド、クローブ油、3-(1,3-ベンゾジオキソール-5-イル)-2-メチルプロパナール、7-メチル-2H-1,5-ベンゾジオキセピン-3(4H)-オン、2,5,5-トリメチル-1,2,3,4,4a,5,6,7-オクタヒドロ-2-ナフタレノール、1-フェニルビニルアセテート、6-メチル-7-オキサ-1-チア-4-アザスピロ[4.4]ノナン、および/または3-(3-イソプロピル-1-フェニル)ブタナール。
【0060】
本開示による香料ベースは、上記賦香成分に限定されない場合があり、いずれにせよ、これらの併用成分の他の多くは、S. Arctanderによる書籍であるPerfume and Flavor Chemicals, 1969, Montclair, New Jersey, USAもしくはその最近のバージョンなどの関連テキスト、または同様の性質の他の著作物、ならびに香料分野における豊富な特許文献に記載されている。前記成分は、プロパフュームまたはプロフレグランスとしても知られている様々なタイプの賦香化合物を制御された方法で放出することが知られている化合物であってもよいことも理解される。適切なプロパフュームの非限定的な例としては、4-(ドデシルチオ)-4-(2,6,6-トリメチル-2-シクロヘキセン-1-イル)-2-ブタノン、4-(ドデシルチオ)-4-(2,6,6-トリメチル-1-シクロヘキセン-1-イル)-2-ブタノン、トランス-3-(ドデシルチオ)-1-(2,6,6-トリメチル-3-シクロヘキセン-1-イル)-1-ブタノン、2-フェニルエチルオキソ(フェニル)アセテート、またはそれらの混合物を挙げることができる。
【0061】
高強度香料:別の実施形態によれば、油相(または油性コア)は、
Log Tが-4未満の高強度香料原料を少なくとも15重量%含有する香油を25~100重量%、ならびに
密度が1.07g/cmより大きい密度平衡材料を0~75重量%、
含む。
【0062】
Log T<-4である高強度香料原料および1.07g/cmより大きい密度を有する密度平衡材料の性質は、国際公開第2018115250号に記載されており、その内容は参照により含まれる。
【0063】
賦香成分は、香料産業で現在使用されている溶媒に溶解することができる。このような溶媒の例は、フタル酸ジエチル、ミリスチン酸イソプロピル、Abalyn(登録商標)(ロジン樹脂、Eastmanから入手可能)、安息香酸ベンジル、クエン酸エチル、リモネン、またはその他のテルペン、またはイソパラフィンである。一態様では、溶媒は、例えばAbalyn(登録商標)または安息香酸ベンジルのように、非常に疎水性かつ高度に立体障害を有する。一態様では、香料は、30%未満の溶媒を含む。別の態様では、香料は、20%未満、あるいは10%未満の溶媒を含み、これらのパーセント割合は全て香料の総重量に対する重量によって規定される。一態様では、香料は溶媒を本質的に含まない。
【0064】
図1は、従来の方法によって製造されたドライヤーシート(市販のドライヤーシート)からの官能試験パネルにおいて被験者によって知覚される香りの強度と比較した、本明細書で提示される一態様による方法によって製造されたドライヤーシートからの官能試験パネルにおいて被験者によって知覚された香りの強度を示す。
【0065】
本明細書で提示される一態様による方法は、1平方インチあたり172億立方ミクロンを有するオープンチャネルの、六角形セルのアニロックスローラを使用するフレキソ印刷法を含み、スラリー状のカプセル封入された香料が不織布の上に印刷され、溶融した四級アンモニウム塩が、その後、ウェブのロールから巻き出された部分に塗布される。
【0066】
本発明は以下の実施例で最もよく説明されるが、これらに限定されない。
【0067】
実施例
実施例1:本明細書で提示された態様による方法によるドライヤーシートの製造
APEXローラ、17.2BCMを使用して、印刷されたドライヤーシートを製造した:テンションローラあり、オーバープリントなし、w/インクおよびカプセル封入された香油のスラリー(0.15%w/wのカプセル封入された香料-サンプル1-左2列-図1)、UV400Vを使用、w/加熱ファン、ブロワをトレイからブロック。次いで、浴ローラ法を使用して、印刷されたシートに1.5gのクアットを穏やかにローラ塗布した。対照として、クアット中に予備混合された市販のカプセル封入物(0.4%w/wのカプセル封入された香料1-サンプル2-中央の2列-図1)でドライヤーシートを処理し、浴ローラ法を使用してシート上で穏やかにローラ塗布した。最後に、市販のドライヤーシートを追加の対照として含めた-サンプル3(右2列-図1)。
【0068】
印刷されたドライヤーシートの性能を、対照および市販のドライヤーシートと比較した。結果を図1に示す。注意すべき点は、本明細書で提示した態様の組成物を使用して製造されたドライヤーシート(サンプル1)で、擦る前に同等の性能が観察され、擦った後に大幅に高い性能が観察されたことであり、印刷されたシート上でサンプル2および3よりも16.7~37.5%高い香りのレベルである。さらに、顕微鏡観察により、使用後にサンプル1にカプセルが残っていないこと、すなわち100%の付着が示されたが、サンプル2および3は依然としてウェブ中に目に見えるカプセルを有していること、すなわち非効率的な付着を示した。
【0069】
実施例2:本明細書に提示された一態様による方法によるドライヤーシートの性能
別々の香料配合物を以下の方法でカプセル封入した:ポリイソシアネート(キシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物、Takenate(登録商標)D-110N、供給元:三井化学)を、香油から構成されるコア油と混合することにより油相を調製した。油相は、2%のTakenate(登録商標)D-110Nと98%のコア油とから構成されていた。Takenate(登録商標)D-110Nをカプセル封入して使用した後、メラミン-ホルムアルデヒド壁を架橋する。
【0070】
カプセルスラリーを製造するために、アクリルアミドおよびアクリル酸コポリマーならびに2つのメラミン-ホルムアルデヒド樹脂のブレンドを水に溶解して水相を形成した。次いで、この溶液に香料プレミックスオイルを添加し、酢酸でpHを5に調整した。カプセルを硬化させるために、2時間にわたって温度を90℃まで上げた。この時点で、カプセルが形成され、架橋され、安定していた。その後、水中の3%のSalcare SC60(アクリルアミドプロピルトリモニウムクロリド/アクリルアミドコポリマー)溶液を90℃で混合物に添加し、90℃で1時間反応させた。その後、アミノプラストカプセルで通常行われるように、残留遊離ホルムアルデヒドを捕捉するための薬剤としてエチレン尿素の溶液(水中50重量%)を添加した。最終的なスラリーは、スラリーの重量に対して約3%w/wのエチレン尿素を含んでいた。混合物を室温まで放冷した。水酸化ナトリウムで最終pHを7に調整した。
【0071】
【表1】
【0072】
異なる香料組成物を別々にカプセル封入した:香油A(表1を参照)、香油B(表2を参照)、および香油C(表3を参照)。カプセル封入された香料組成物を別々のドライヤーシートに付着させた。試験用ドライヤーシートは、1.5gのエステルクアット中で1.38%の有効カプセル添加量になるような大きさにした。柔軟剤は、3.00%の濃度の香油Dと共にドライヤーシートに付着させた。このフリーのオイル/カプセル封入されたオイルの添加量は、市販のドライヤーシートの最新の公知のオイルレベルと一致する。32枚の13”×13”の綿タオルの洗濯物を、64リットルのドラム容量のMaytagの積み重ね型洗濯機/乾燥機で洗浄した。通常の熱で50分間実行した乾燥サイクルの各洗濯物に1枚のシートを追加した。
【0073】
【表2-1】
【表2-2】
【0074】
【表3】
【0075】
【表4-1】
【表4-2】
【0076】
サンプルはブラインドコード化した。パネリストは、ランダムな順序でタオルを評価するように指示された。彼らは、各サンプルの擦る前の強さを評価した。その後、パネリストはタオルを擦り、擦った後の強さを評価するように指示された。
【0077】
スケールは0~10であり、0は香りなしであり、5は中程度の香りであり、10は非常に強い香りである。結果を図2図3に示す。
香油A、香油B、および香油Cを含むマイクロカプセルを含むドライヤーシートは、単一の市販のドライヤーシートと比較して、擦った後の性能が著しく優れていることが判明した。カプセル封入された香油Cを含むドライヤーシートは、擦る前の性能が著しく優れていることが判明した。さらに、知覚される強度の変化は、市販のドライヤーシートと比較して、香油Aおよび香油Bを含むマイクロカプセルで大きかった。市販のドライヤーシートに対して、香油Aおよび香油Bを含むマイクロカプセルでは、擦った後の性能は依然として大幅に優れていた。
【0078】
実施例3:本明細書に提示された一態様による方法によるドライヤーシートの性能-ANOVA試験
サンプルは、ドライシート用途の従来の「浴」および「スプレー」方法を使用して、(i)1.38%の濃度の香料Bを含有するマイクロカプセル、3.0%の濃度のカプセル封入されていない柔軟剤あり(1.5gエステルクアット中の有効量)(サンプル1)、および(i)1.38%の濃度の香料Aを含有するマイクロカプセル、3.0%の濃度のカプセル封入されていない柔軟剤あり(1.5gエステルクアット中の有効量)(サンプル2)を用いて製造した。マイクロカプセルを溶融クアットの中に撹拌し、次いで、これをホットプレート上で不織布にローラ塗布した。柔軟剤は、エアロゾルボトルから噴霧することによって添加した。洗浄/乾燥方法は、上記の実施例2に記載のものと同じであった。データは、3セルANOVAを使用してスコアリングした。対照(コントロール)として市販のドライヤーシートが含まれていた。結果を以下に示す。
【0079】
【表5】
【0080】
印刷により塗布されたサンプル2は、擦る前かつ擦った後の両方の段階で統計的に有意に強いことが分かった。擦る前の段階の最中に、浴プロセスにより塗布されたサンプル2とベンチマークは、統計的に同等であることが分かった。擦った後では、浴を介して塗布されたサンプル2は、ベンチマークよりも統計的に有意に強いことが分かった。これは、香料系と塗布方法の両方が、市販のドライヤーシートと比較して性能を向上させることを示唆している。
【0081】
印刷により塗布されたサンプル1は、擦る前かつ擦った後の両方の段階で統計的に有意に強いことが分かった。擦る前の段階で、浴プロセスにより塗布されたサンプル1とベンチマークは、ベンチマークよりも統計的に有意に強いことが分かった。擦った後でも、浴を介して塗布されたサンプル1は、ベンチマークよりも統計的に有意に強いことが分かった。これは、香料系と塗布方法の両方が、市販のドライヤーシートと比較して性能を向上させることを示唆している。
【0082】
ANOVA試験の目標は、印刷プロセスが従来の浴プロセスよりも強い強度を生み出すことを示すことであった。
【0083】
実施例4:市販のドライヤーシートと比較した、本明細書に提示された一態様による方法によるドライヤーシートの顕微鏡分析
印刷されたドライヤーシートのサンプルを、上述した方法に従って製造した。洗浄前後の不織布の同じ領域を撮影するために、黒いマーカーを使用してシートに小さな印をつけた。シートの深さが比較的大きいため(約5mil、すなわち0.127mm)、様々な焦点レベルで多数の写真を撮影した。洗浄/乾燥方法は、上述した実施例2に記載されているものと同じであった。市販のドライヤーシートの結果は図4aおよび図4bに示されている。上述した方法に従って製造した印刷されたドライヤーシートの結果は図5aおよび図5bに示されている。
【0084】
図4aおよび図4bを参照すると、洗浄後、特に複数の糸が一緒になっている場合、ワックスおよびカプセルの大きなクラスターが依然として見られる。対照的に、図5aおよび図5bを参照すると、ワックスおよびカプセルは見えなかった。
【0085】
実施例5:本明細書で提示される態様による方法によるドライヤーシートの性能に対するマイクロカプセルの厚さおよび架橋度の影響
下の表を参照すると、香油は、上述した実施例に記載されているカプセルよりも薄い壁を有するマイクロカプセルにカプセル封入された。シート1枚あたりの目標添加量は約1.00%であったが、塗布後の残存量は非常に少なく、ほとんどの場合で0.02%前後であった。残存カプセルの安定性のため、これらのデータは、カプセルの大部分が最初の場所に付着しなかったか、塗布中に破壊されたことを示唆している。
【0086】
【表6】
【0087】
この文書全体で引用されている刊行物は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。本発明の様々な態様を、実施例および好ましい実施形態を参照することによって上で例示してきたが、本発明の範囲は、前述した説明ではなく、特許法の原理の下で適切に解釈される以下の特許請求の範囲によって定義されることが理解されるであろう。
図1
図2
図3
図4a
図4b
図5a
図5b
【国際調査報告】