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特表2023-514027デジタルマイクロ流体(DMF)システム、DMFカートリッジ、および集積型光ファイバーセンシングを含む方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-05
(54)【発明の名称】デジタルマイクロ流体(DMF)システム、DMFカートリッジ、および集積型光ファイバーセンシングを含む方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/08 20060101AFI20230329BHJP
   G01N 37/00 20060101ALI20230329BHJP
【FI】
G01N35/08 B
G01N35/08 D
G01N37/00 101
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022540571
(86)(22)【出願日】2021-01-20
(85)【翻訳文提出日】2022-08-19
(86)【国際出願番号】 CA2021050059
(87)【国際公開番号】W WO2021146804
(87)【国際公開日】2021-07-29
(31)【優先権主張番号】62/964,424
(32)【優先日】2020-01-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】521093303
【氏名又は名称】ニコヤ ライフサイエンシーズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】NICOYA LIFESCIENCES, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100225060
【弁理士】
【氏名又は名称】屋代 直樹
(72)【発明者】
【氏名】クリシュナ アイヤー
(72)【発明者】
【氏名】ゴードン ホール
(72)【発明者】
【氏名】チャンピカ サマラセケラ
(72)【発明者】
【氏名】ライアン デノーム
【テーマコード(参考)】
2G058
【Fターム(参考)】
2G058DA02
2G058DA07
2G058GA01
(57)【要約】
流体の測定を実施するための器機と共に使用するためのカートリッジであって、このカートリッジは、液滴操作ギャップ内の液体液滴に対して液滴操作を実施するように動作する複数のエレクトロウェッティング電極を備えるデジタルマイクロ流体基板と、液滴操作ギャップを形成するためにデジタルマイクロ流体基板から分離され、また液滴操作ギャップ内に液体を注入するための開口部を備えるトッププレートと、液滴操作ギャップ内に突入し、かつ、1つ以上のエレクトロウェッティング電極に近接して配置されたセンシング端部を有する光ファイバープローブを含むファイバーアセンブリと、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
器機と共に使用するためのカートリッジであって、
液滴操作ギャップ内の液体液滴に対して液滴操作を実施するように動作する複数のエレクトロウェッティング電極を有するデジタルマイクロ流体と、及び
2つ以上の前記エレクトロウェッティング電極のセットに近接した前記液滴操作ギャップに突入する光ファイバープローブであり、2つ以上の該電極のセットのうち任意な電極の上に位置する液滴が該光ファイバープローブに接触することができる、光ファイバープローブと、
を備える、カートリッジ。
【請求項2】
器機と共に使用するためのカートリッジであって、
液滴操作ギャップ内の液体液滴に対して液滴操作を実施するように動作する複数のエレクトロウェッティング電極を有するデジタルマイクロ流体基板と、
液滴操作ギャップを形成するために該デジタルマイクロ流体基板から分離され、また該液滴操作ギャップ内に液体を注入するための開口部を有するトッププレートと、
前記液滴操作ギャップ内に突入し、また1つ以上の前記エレクトロウェッティング電極に近接して配置されたセンシング端部がある光ファイバープローブを有するファイバーアセンブリと、
を備える、カートリッジ。
【請求項3】
請求項1または2に記載のカートリッジにおいて、前記液滴操作ギャップに突入する光ファイバープローブは、2つ以上の前記エレクトロウェッティング電極のセットに近接して配置され、2つ以上の該電極のセットのうち任意な電極の上に位置する液滴が該光ファイバープローブに接触することができる、カートリッジ。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載のカートリッジにおいて、前記プローブはリガンドを含む、カートリッジ。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載のカートリッジにおいて、さらに、前記光ファイバープローブへの接触を前記エレクトロウェッティング電極によって制御可能である液滴を備える、カートリッジ。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載のカートリッジにおいて、さらに、前記ギャップを充填する低粘度オイルを備える、カートリッジ。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載のカートリッジにおいて、前記トッププレートは、2つ以上の溝または開口部を備え、それぞれがファイバーアセンブリからの光ファイバープローブを整列させる、カートリッジ。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載のカートリッジにおいて、前記センシング端部はナノ粒子センサー表面を含む、カートリッジ。
【請求項9】
アッセイを実行する方法であって、
リガンドを含む光ファイバープローブを準備するステップと、
体積が約1000nL未満であり、また前記リガンドに対して潜在的に親和性を有する検体を含む液滴を準備するステップと、
前記液滴を前記プローブの端部に接触させ、該液滴を該プローブとの接触から離れることなく該液滴を振動させるステップと、
を含む、方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法において、振動範囲は約0.5~約15Hzである、方法。
【請求項11】
請求項9または10に記載の方法において、振動範囲は約4~約10Hzである、方法。
【請求項12】
請求項9~11のいずれか一項に記載の方法において、前記液滴の体積は約900nL未満である、方法。
【請求項13】
請求項9~11のいずれか一項に記載の方法において、前記液滴の体積は約800nL未満である、方法。
【請求項14】
請求項9~11のいずれか一項に記載の方法において、前記液滴の体積は約700nL未満である、方法。
【請求項15】
請求項9~11のいずれか一項に記載の方法において、前記液滴の体積は約600nL未満である、方法。
【請求項16】
請求項9~11のいずれか一項に記載の方法において、前記液滴の体積は約500nL未満である、方法。
【請求項17】
請求項9~11のいずれか一項に記載の方法において、前記液滴の体積は約400nL未満である、方法。
【請求項18】
請求項9~17のいずれか一項に記載の方法において、さらに、
前記光ファイバープローブを介して前記液滴からの信号を測定し、コンピュータを使用して該信号から応答曲線を計算するステップ
を含む、方法。
【請求項19】
請求項9~18のいずれか一項に記載の方法において、前記光ファイバープローブは複数のリガンドを含み、前記液滴は複数の検体を含む、方法。
【請求項20】
請求項9~19のいずれか一項に記載の方法において、前記準備の操作は、さらに、複数の光ファイバープローブおよび複数の液滴を準備するステップと、該複数の液滴のそれぞれを対応する光ファイバープローブと接触させるステップと、該対応する光ファイバープローブと接触する該複数の液滴のそれぞれを振動させるステップと、を含む、方法。
【請求項21】
請求項9~20のいずれか一項に記載の方法において、振動は、エレクトロウェッティング電極を介してなされる、方法。
【請求項22】
請求項21に記載の方法において、各光ファイバープローブは、端部がエレクトロウェッティング電極に隣接するように整列される、方法。
【請求項23】
請求項21または22に記載の方法において、各光ファイバープローブは、端部がエレクトロウェッティング電極の端縁に近接するように整列される、方法。
【請求項24】
請求項9~23のいずれか一項に記載の方法において、前記振動は、デジタルマイクロ流体(DMF)カートリッジの液滴操作ギャップ内のエレクトロウェッティング電極を介してなされる、方法。
【請求項25】
請求項9~24のいずれか一項に記載の方法において、前記振動は、前記光ファイバープローブの長さに沿って延在するラインに対してほぼ直交する、方法。
【請求項26】
請求項9~24のいずれか一項に記載の方法において、前記振動は、前記光ファイバープローブの長さに沿って延在するラインとほぼ一致している、方法。
【請求項27】
請求項9~24のいずれか一項に記載の方法において、前記振動は多方向である、方法。
【請求項28】
請求項27に記載の方法において、前記振動は、前記光ファイバープローブの長さに沿って延在するラインに平行な平面内で多方向である、方法。
【請求項29】
請求項9~28のいずれか一項に記載の方法において、前記振動は細長く伸長された液滴を用いて実行される、方法。
【請求項30】
請求項29に記載の方法において、前記伸長された液滴は2Xの液滴である、方法。
【請求項31】
請求項29に記載の方法において、前記伸長された液滴は3Xの液滴である、方法。
【請求項32】
請求項9~31のいずれか一項に記載の方法において、前記アッセイは、以下、すなわち、分子ライブラリースクリーニングアッセイ、結合反応速度アッセイ、親和性決定アッセイ、結合部位マッピングアッセイ、熱力学調査、サンドイッチアッセイ、競合分析アッセイ、特異性決定アッセイ、および抗体結合の特性評価、ならびにそれらの組み合わせ、から選択される、方法。
【請求項33】
DMFシステムにおいて、該システムは、
カートリッジであって、
液滴操作ギャップ内の液体液滴に対して液滴操作を実施するように動作する複数のエレクトロウェッティング電極を有するデジタルマイクロ流体、
2つ以上の前記エレクトロウェッティング電極のセットに近接した前記液滴操作ギャップに突入する光ファイバープローブであり、2つ以上の該電極のセットのうち任意な電極の上に位置する液滴が該光ファイバープローブに接触することができる、光ファイバープローブ、
を備える、カートリッジと、
前記エレクトロウェッティング電極および前記光ファイバープローブに操作上結合されたコントローラと、
前記液滴操作ギャップ内の1つ以上の液滴を照明するように配置された照明源と、
前記光ファイバープローブに光学的に結合され、該光ファイバープローブから信号を受信するように配置された光学測定デバイスと、
を備える、DMFシステム。
【請求項34】
デジタルマイクロ流体(DMF)カートリッジであって、
液滴操作を実行するための1つ以上のエレクトロウェッティング電極を有する第1基板と、
前記第1基板からオフセットされた第2基板と、
前記第1基板と前記第2基板との間に画定された液滴操作ギャップであり、前記1つ以上のエレクトロウェッティング電極が、該液滴操作ギャップ内の液体液滴に対して液滴操作を実施するように動作する、液滴操作ギャップと、
前記液体液滴と接触するための前記液滴操作ギャップ内のセンシング領域と、
第1照明源から前記センシング領域に励起光を供給し、また該センシング領域から第1光学測定デバイスに放出光を供給する光ファイバープローブと、
を備える、DMFカートリッジ。
【請求項35】
請求項34に記載のDMFカートリッジにおいて、前記センシング領域は、前記光ファイバープローブの末端表面部分に配置されたセンサー表面を含む、DMFカートリッジ。
【請求項36】
請求項34または35に記載のDMFカートリッジにおいて、前記センシング領域は、前記液体液滴が該センシング領域に接触するように、前記1つ以上のエレクトロウェッティング電極に近接する前記液滴操作ギャップ内に配置される、DMFカートリッジ。
【請求項37】
請求項34~36のいずれか一項に記載のDMFカートリッジにおいて、前記光ファイバープローブは、前記第1基板に貫通し、前記液滴操作ギャップ内に前記センシング領域を配置する、DMFカートリッジ。
【請求項38】
請求項34~37のいずれか一項に記載のDMFカートリッジにおいて、前記光ファイバープローブは、前記第2基板に貫通し、前記液滴操作ギャップ内に前記センシング領域を配置する、DMFカートリッジ。
【請求項39】
請求項34~38のいずれか一項に記載のDMFカートリッジにおいて、前記光ファイバープローブは、前記第1基板および前記第2基板にほぼ平行な、該第1基板と該第2基板との間における液滴操作ギャップ内に突入し、該液滴操作ギャップ内に前記センシング領域を配置する、DMFカートリッジ。
【請求項40】
請求項34~39のいずれか一項に記載のDMFカートリッジにおいて、前記第1基板または前記第2基板のうち少なくとも一方は、前記液滴操作ギャップ内に液体を導入するための少なくとも1つの開口部を有する、DMFカートリッジ。
【請求項41】
請求項34~40のいずれか一項に記載のDMFカートリッジにおいて、前記センシング領域はリガンドを含む、DMFカートリッジ。
【請求項42】
請求項34~41のいずれか一項に記載のDMFカートリッジにおいて、前記センシング領域はナノ粒子センサー表面を含む、DMFカートリッジ。
【請求項43】
請求項34~42のいずれか一項に記載のDMFカートリッジにおいて、前記光ファイバープローブは、前記末端表面部分に1つ以上の光学要素を含む、DMFカートリッジ。
【請求項44】
請求項34~43のいずれか一項に記載のDMFカートリッジにおいて、前記液滴操作ギャップは、前記液体液滴と混和しない充填剤物質を含有する、DMFカートリッジ。
【請求項45】
請求項34~44のいずれか一項に記載のDMFカートリッジにおいて、前記第1基板および前記第2基板は、第2照明源からの励起光が該第1基板を通過して前記センシング領域に到達し、また該センシング領域からの放出光が該第2基板を通過して第2光学測定デバイスに到達することを可能にするのに十分に透明な材料を含む、DMFカートリッジ。
【請求項46】
デジタルマイクロ流体(DMF)システムであって、
請求項34~45のいずれか一項に記載のDMFカートリッジと、
光ファイバープローブを介して前記DMFカートリッジのセンシング領域に励起光を供給する、1つ以上の照明源と、
前記光ファイバープローブを介して前記センシング領域からの放出光を受光し、処理する、1つ以上の光学測定デバイスと、
を備える、DMFシステム。
【請求項47】
請求項48に記載のDMFシステムにおいて、さらに、
1つ以上のエレクトロウェッティング電極による液滴操作の実行を制御するために、該1つ以上のエレクトロウェッティング電極と動作可能に通信するコントローラ
を備える、DMFシステム。
【発明の詳細な説明】
【関連出願への相互参照】
【0001】
本出願は、2020年1月22日に出願された米国特許出願第62/964,424号に対し優先権を主張し、これは参照により本明細書に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本開示は、デジタルマイクロ流体(DMF)システム、DMFカートリッジ、および集積型光ファイバーセンシングの使用方法に関する。
【背景技術】
【0003】
デジタルマイクロ流体システムは、様々なラボオンチップ(lab-on-a-chip)用途のために液滴を取扱い操作するのに役立つ。光センシング技術は、例えば、液滴内における検体の検出のために、デジタルマイクロ流体システムで一般的に使用される。単純な光ファイバーセンサーが、デジタルマイクロ流体システムにおける光の検出に使用するために説明されている。しかしながら、当技術分野では、デジタルマイクロ流体を使用して複雑な分析を実行するための光ファイバーセンシング能力を増強する必要性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、流体の測定を実施するための器機と共に使用するためのカートリッジ、該カートリッジを操作するための器機、および該カートリッジを作製および使用する方法を提供する。本開示はまた、本開示のカートリッジを組み立てるために有用なファイバーアセンブリを含む。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施形態において、カートリッジは、液滴操作ギャップ内の液体液滴に対して液滴操作を実施するように動作する複数のエレクトロウェッティング電極を有するデジタルマイクロ流体を含む。カートリッジはまた、2つ以上のエレクトロウェッティング電極のセットに近接した液滴操作ギャップに突入する光ファイバープローブを含むことができ、これにより2つ以上の該電極のセットのうち任意な電極上に位置する液滴が該光ファイバープローブに接触することができる。
【0006】
別の実施形態において、カートリッジは、液滴操作ギャップ内の液体液滴に対して液滴操作を実施するように動作する複数のエレクトロウェッティング電極を備えるデジタルマイクロ流体基板と、液滴操作ギャップを形成するために該デジタルマイクロ流体基板から分離され、また液滴操作ギャップ内に液体を注入するための開口部を有するトッププレートと、を備える。カートリッジはまた、液滴操作ギャップ内に突入し、かつ、1つ以上のエレクトロウェッティング電極に近接して配置されたセンシング端部がある光ファイバープローブを有するファイバーアセンブリを含むことができる。
【0007】
若干の実施形態において、液滴操作ギャップに突入する光ファイバープローブは、2つ以上のエレクトロウェッティング電極のセットに近接して配置され、2つ以上の該電極のセットのうち任意な電極上に位置する液滴が該光ファイバープローブに接触することができる。プローブはリガンドを含むことができる。カートリッジ内の液滴は、エレクトロウェッティング電極によって光ファイバープローブに接触するよう制御可能である。低粘度のオイルまたは他の充填剤物質(例えば、充填剤流体)を使用して、液滴の周りのギャップ(隙間)を充填することができる。
【0008】
本開示はまた、アッセイを実行する方法を提供する。該方法は、リガンドを含む光ファイバープローブを準備するステップと、体積が約1000nL未満であり、またリガンドに対して潜在的に親和性を有する検体を含む液滴を準備するステップと、液滴をプローブの端部に接触させ、また液滴をプローブとの接触から離れることなく液滴を振動させるステップと、を備えることができる。ある場合では、振動(oscillating)範囲は、約0.5~約15Hz、または約4~約10Hzである。ある場合では、液滴の体積は、約900nL未満、または約800nL未満、または約700nL未満、または約600nL未満、または約500nL未満、または約400nL未満である。ある場合では、液滴の体積は、200~400nLである。
【0009】
ある場合では、光ファイバープローブは複数のリガンドを含み、液滴は複数の検体を含む。ある場合では、該方法は、複数の光ファイバープローブおよび複数の液滴を準備するステップと、複数の液滴のそれぞれを対応する光ファイバープローブと接触させ、また該対応する光ファイバープローブと接触する該複数の液滴のそれぞれを振動させるステップと、を含む。別の実施形態において、一連のアッセイのために、単一の液滴を、あるプローブから別のプローブに輸送することができる。
【0010】
ある場合では、振動はエレクトロウェッティング電極を介してなされる。ある場合では、振動は、液滴アクチュエータまたはエレクトロウェッティングカートリッジの液滴操作ギャップ内のエレクトロウェッティング電極を介してなされる。ある場合では、光ファイバープローブは、端部が液滴操作電極に隣接するように整列される。ある場合では、光ファイバープローブは、端部が液滴操作電極の端縁(edge)に近接するように整列される。ある場合では、振動は、光ファイバープローブの長さに沿って延在するラインに対してほぼ直交する。ある場合では、振動は、光ファイバープローブの長さに沿って延在するラインとほぼ一致している。ある場合では、振動は多方向である。ある場合では、振動は、光ファイバープローブの長さに沿って延在するラインに平行な平面内で多方向である。ある場合では、振動は、例えば2X、3X、4Xまたはそれ以上に長い、細長く伸長された液滴を用いて実行され、ここで、Xは、液滴を伸長するために使用されるエレクトロウェッティング電極の個数である。
【0011】
ある場合では、アッセイは、以下のもの、すなわち、分子ライブラリースクリーニングアッセイ、結合反応速度(binding kinetics)アッセイ、親和性決定(affinity determination)アッセイ、結合部位マッピング(binding site mapping)アッセイ、競合分析(competition analysis)アッセイ、特異性決定(specificity determination)アッセイ、および抗体結合(antibody binding)の特性評価、ならびに上記の組み合わせ、から選択される。ある場合では、アッセイは応答曲線を生成する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
以上、発明要旨を一般的な用語で説明してきたが、以下に必ずしも縮尺どおりには描かれていない添付図面につき説明する。
図1】集積型光ファイバーセンシングを含むDMFシステムの実施例のブロック図を図示する。
図2図2Aは、DMF器機に関連するDMFカートリッジの実施例を示し、また光ファイバーインターフェースの実施例を示す。図2Bは、DMF器機に関連するDMFカートリッジの実施例、および光ファイバーインターフェースの実施例を図示する。
図3】光ファイバープローブが上部からギャップに導入された、DMFシステムのDMFカートリッジの実施例の一部分における側面図である。
図4】光ファイバープローブが下部からギャップに導入された、DMFシステムのDMFカートリッジの実施例の一部分における側面図である。
図5】光ファイバープローブが側部からギャップに導入された、DMFシステムのDMFカートリッジの実施例の一部分における側面図である。
図6】光ファイバープローブがギャップに導入され、光センシング操作が反射モードで実施されている、DMFシステムのDMFカートリッジの実施例の一部分における側面図である。
図7A】センサー表面が光ファイバープローブの先端に設けられている、DMFシステムのDMFカートリッジの実施例の一部分における側面図を図示する。
図7B】センサー表面が光ファイバープローブの先端に設けられている、DMFシステムのDMFカートリッジの実施例の一部分における側面図を図示する。
図8】1つ以上の光学素子が光ファイバープローブの先端に設けられている、DMFシステムのDMFカートリッジの実施例の一部分における側面図を図示する。
図9】一次光学測定デバイスおよび二次光学測定デバイスの双方を含むDMFシステムのDMFカートリッジの実施例の側面図を図示する。
図10】集積型光ファイバーセンシングを含むDMFシステムおよび/またはDMFカートリッジの使用方法の実施例におけるフロー図を図示する。
図11】液滴操作電極上で前後に振動し、光ファイバープローブと接触しているサンプル液滴の例を図示する。
図12A】集積型ファイバーセンシングを含むDMFカートリッジの例示的なインスタンス化の頂部側から見た斜視図を図示する。
図12B】集積型ファイバーセンシングを含むDMFカートリッジの例示的なインスタンス化の底部側から見た斜視図を図示する。
図13A】集積型ファイバーセンシングを含むDMFカートリッジの例示的なインスタンス化の頂部側からみた分解図を図示する。
図13B】集積型ファイバーセンシングを含むDMFカートリッジの例示的なインスタンス化の底部側から見た分解図を図示する。
図14A図14Aおよび図14Bは、DMFカートリッジのファイバーアセンブリの様々な実施例のうち1つを図示する。
図14B】DMFカートリッジのファイバーアセンブリの様々な実施例のうち1つを図示する。
図15】ファイバーセンシング試作のプロセスの実施例を示す。
図16】ナノ粒子センサー表面の例の電子顕微鏡写真を示す。
図17図17Aおよび図17Bは、DMFデバイス内で光ファイバーベースの表面プラズモン共鳴検出法を使用して、プロテインAおよびIgGの親和性を決定した例示的な試験結果のプロットを示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、デジタルマイクロ流体(DMF)システム、DMFカートリッジ、および集積型光ファイバーセンシングを含む方法に関する。
【0014】
DMFシステムおよびDMFカートリッジは、例えば、DMFカートリッジの液滴操作ギャップに直接的に挿入された光ファイバープローブを含むことができる。DMFシステムは、例えば、DMFカートリッジ、1つ以上の照明源、1つ以上の光学測定デバイス、およびコントローラを含むことができる。DMFカートリッジは、DMFカートリッジの液滴操作ギャップに直接的に挿入された光ファイバープローブをさらに含むことができる。
【0015】
いくつかの実施形態において、DMFシステム、DMFカートリッジ、および方法は、光ファイバープローブの先端がDMFカートリッジの液滴操作ギャップに直接的に挿入される光ファイバープローブを提供する。
【0016】
いくつかの実施形態において、DMFシステム、DMFカートリッジ、および方法は、DMFカートリッジの上面、下面および/または側面を通して挿入される光ファイバープローブを提供し得る。
【0017】
いくつかの実施形態において、本開示は、DMFカートリッジの液滴操作ギャップ内のセンシング領域に出入りする光の導管として機能し得る単一の光ファイバープローブを提供する。
【0018】
本開示のアッセイで使用される液滴は、多くの従来のアッセイよりもはるかに小さい量、例えば、約1000nL未満、または約900nL未満、または約800nL未満、または約700nL未満、または600nL未満、または約500nL未満、または約400nL未満、または約300nL未満、または約200nL未満、または約100nL未満であり得る。
【0019】
本開示のSPRアッセイで使用される液滴は、多くの従来のSPRアッセイよりもはるかに小さい量、例えば、約1000nL未満、または約900nL未満、または約800nL未満、または約700nL未満、または600nL未満、または約500nL未満、または約400nL未満、または約300nL未満、または約200nL未満、または約100nL未満であり得る。
【0020】
本開示のSPR生体分子相互作用アッセイで使用される液滴は、多くの従来のSPR生体分子相互作用アッセイよりもはるかに小さい量、例えば、約1000nL未満、または約900nL未満、または約800nL未満、または約700nL未満、または600nL未満、または約500nL未満、または約400nL未満、または約300nL未満、または約200nL未満、または約100nL未満であり得る。SPR生体分子相互作用アッセイの例としては、分子ライブラリースクリーニングアッセイ、結合反応速度アッセイ、親和性決定アッセイ、結合部位マッピングアッセイ、競合分析アッセイ、特異性決定アッセイ、および抗体結合の特性評価が挙げられる。
【0021】
いくつかの実施形態において、本開示は、光ファイバープローブに励起光を供給するための1つ以上の照明源と、同じ光ファイバープローブからの放出光を受光および処理するための1つ以上の光学測定デバイスと、を提供し得る。
【0022】
いくつかの実施形態において、本開示は、自由空間光学系を使用して励起光を供給するための1つ以上の照明源と、放出光を受光および処理するための1つ以上の光ファイバープローブと、を提供し得る。同様に、いくつかの実施形態において、本開示は、光ファイバープローブに結合された励起光を供給するための1つ以上の照明源と、自由空間光学を使用して放出光を受光および処理するための1つ以上の光学測定デバイスと、を提供し得る。
【0023】
いくつかの実施形態において、本開示は、DMFカートリッジの液滴操作ギャップに直接的に挿入された光ファイバープローブであって、光センシング操作が反射モード、透過モード、または、反射モードおよび透過モードの両方で起こり得る光ファイバープローブを提供する。
【0024】
いくつかの実施形態において、本開示は、DMFカートリッジの液滴操作ギャップ内の光ファイバープローブの先端に、他の構成要素および/または要素(例えば、センシング層、光学要素)を提供する。
【0025】
さらに、本開示は、集積型光ファイバーセンシングが設けられる場合のDMFシステムおよびDMFカートリッジの使用方法を提供する。
【0026】
図1は、集積型光ファイバーセンシングを含むDMFシステム100の実施例のブロック図である。DMFシステム100は、例えば、検体の分析のためのプラズモン共鳴(PR)システムおよび/または局在表面プラズモン共鳴(LSPR)システムであり得る。分析とは、例えば、検体の検出、同定、定量化、もしくは測定、ならびに/または結合反応速度および熱力学などの他の物質と検体との相互作用を意味し得る。例示的な検体としては、小分子、タンパク質、ペプチド、原子、およびイオンなどを含み得るが、これらに限定されない。例えば、DMFシステム100を使用して、受容体などの高分子へのリガンドの結合反応速度を測定し得る。
【0027】
DMFシステム100は、同様に、バイオレイヤー干渉法(BLI)または単色リフレクトメトリー(SCORE)などの反射干渉計センサーとして構成され得る。これらの干渉計センサーは、化学蒸着(CVD)または物理蒸着(PVD)などの技術を使用して、硫化亜鉛、二酸化チタン、フッ化マグネシウム、二酸化ケイ素などの薄膜コーティングに使用される一般的な材料を用いて、金などのプラズモニック金属の究極の金属層と共に光ファイバーの先端に蒸着される。例えば、リガンドはファイバーの先端に固定化され得る。リガンドと相互作用する検体の有無によって、センサーから反射された光に関して波長のシフトまたは干渉パターンの変化が引き起こされる。分析とは、例えば、検体の検出、同定、定量化、もしくは測定、ならびに/または結合反応速度などの他の物質と検体との相互作用を意味し得る。例示的な検体としては、小分子、タンパク質、ペプチド、原子、およびイオンを含み得るが、これらに限定されない。例えば、DMFシステム100を使用して、受容体などの高分子へのリガンドの結合速度論を測定し得る。1つの分析実施形態において、検体に露出されたBLIファイバーセンサーによって反射された光は、検体に露出されていないBLIファイバーセンサーによって反射された光と比較され得る。
【0028】
DMFシステム100は、同様に、蛍光測定システムとして構成され得る。この場合のセンサーは、未修正センサーとすることができる、または蛍光物質(fluorophore)をファイバーの先端に固定化することができる。別の例では、ファイバーの先端は、クエンチによって、またはフォースター共鳴エネルギー転移などのエネルギー転移によって、蛍光物質の発光特性を修正するコーティングを用いてコーティングすることができる。1つまたは複数の蛍光物質は、互いに組み合わせて同時に使用することができる。そのような設定により、蛍光の強度および/または寿命を測定することができる。蛍光を示すサンプルは、溶液中にあるか、または光ファイバーの先端で捕捉されるかのいずれかであり得る。蛍光は、サンプルに固有のものである可能性もあるし、または、検体に結合するか、それ以外の相互作用をする、小分子、量子ドットなどの蛍光物質を使用して生成される可能性もある。分析とは、例えば、検体の検出、同定、定量化、もしくは測定、ならびに/または結合反応速度などの他の物質と検体との相互作用を意味し得る。例示的な検体としては、小分子、タンパク質、ペプチド、原子、およびイオンを含み得るが、これらに限定されない。例えば、DMFシステム100を使用して、受容体などの高分子へのリガンドの結合反応速度を測定し得る。
【0029】
DMFシステム100は、光ファイバーベースのセンサーとデジタルマイクロ流体との統合を特徴としている。例えば、DMFシステム100は、DMFカートリッジ110を含み得る。DMFカートリッジ110は、例えば、液滴の合体、分割、分注、および希釈などの液滴操作を一般的に実行するためのDMF機能を設ける液滴アクチュエータデバイスであり得る。これらDMF機能の1つのアプリケーションは、サンプル調製である。ただし、DMF機能は、廃棄物の除去または実行の間のフラッシングなどの他のプロセスに使用されてもよい。DMFカートリッジ110は、光ファイバープローブ130に結合され得るオンボードセンシング領域158を含み得る。DMFカートリッジ110において、単一の光ファイバープローブ130は、オンボードセンシング領域158に出入りする光の導管として機能し得る。光ファイバープローブ130は、1つの光ファイバーまたは複数の光ファイバーの束を含み得る。DMFカートリッジ110、オンボードセンシング領域158、および光ファイバープローブ130の詳細は、図3図9につき以下に示され、説明される。
【0030】
様々な実施形態において、光ファイバープローブ130のセンシング端部は、該端部が液滴操作電極120に隣接するように整列される。様々な実施形態において、光ファイバープローブ130の端部は、該端部が液滴操作電極120の端縁に近接するように整列される。様々な実施形態において、光ファイバープローブ130の端部は、該端部が液滴操作電極120の端縁と一直線になるように整列される。
【0031】
DMFシステム100は、さらに、コントローラ150、DMFインターフェース152、照明源154、および光学測定デバイス156を含むことができる。コントローラ150は、DMFカートリッジ110、照明源154、および光学測定デバイス156などの、DMFシステム100の様々なハードウェア構成要素に電気的に結合され得る。例えば、コントローラ150は、DMFインターフェース152を介してDMFカートリッジ110に電気的に結合することができ、ここで、DMFインターフェース152は、例えば、DMFカートリッジ110に機械的および電気的に接続するためのプラグ接続可能なインターフェースとすることができる。DMFカートリッジ110、コントローラ150、DMFインターフェース152、照明源154、および光学測定デバイス156は、ともにDMF器機105を形成する。
【0032】
コントローラ150は、例えば、汎用コンピュータ、専用コンピュータ、パーソナルコンピュータ、マイクロプロセッサ、または他のプログラム可能なデータ処理装置とすることができる。コントローラ150は、ソフトウェア命令の保存、解釈、および/または実行などの処理能力を提供するとともに、DMFシステム100の全体的な動作を制御するのに役立つ。コントローラ150は、これらデバイスのデータおよび/または電力の局面を制御するように構成およびプログラムすることができる。例えば、コントローラ150は、電極をアクティブ化/非アクティブ化することによって、DMFカートリッジ110内の液滴操作を制御する。一般に、コントローラ150は、DMFシステム100の任意な機能のために使用され得る。例えば、コントローラ150は、プリンタ製造業者が自身のブランドのインクカートリッジをチェックする方法と同様の方法でDMFカートリッジ110を認証するために使用することができ、コントローラ150は、DMFカートリッジ110が有効期限を過ぎていないことを検証するために使用することができ、コントローラ150は、その目的のためのプロトコルを実行することによってDMFカートリッジ110の清浄度を確認するために使用することができる、等々である。
【0033】
コントローラ150は、処理ユニットを入力デバイスに接続する1つ以上の入力インターフェースを含み得る。入力インターフェースにより、DMFシステム100のユーザーがコマンドをプロセッサーに通信することを可能にする。そのような例示的なコマンドの1つは、プログラムコードの実行である。入力デバイスは、キーボード、マウスデバイス、音声起動システム、タッチスクリーン、および/または当業者に知られている他の適切なデバイスの形態をとり得る。
【0034】
いくつかの実施形態において、コントローラ150は、グラフィカルユーザインターフェース(GUI)などの、処理ユニットを出力デバイスに接続する1つ以上の出力インターフェースを含み得る。これにより、DMFシステム100は、実験結果などの様々な処理操作の結果をユーザーに通信することが可能となる。ソフトウェア命令は、コントローラ150のメモリユニットに保存することができ、従来の半導体ランダムアクセスメモリ(RAM)または当技術分野で知られている他の形態のメモリを含み得る、および/または、ソフトウェア命令は、ハードドライブ、USBドライブ、読み取り/書き込みCD-ROM、DVD、テープドライブ、フラッシュドライブ、光学ドライブなどの1つ以上のコンピュータ可読記憶媒体にプログラムコードの形式で保存され得る。これらの命令は、入力デバイスを介してDMFシステム100とユーザーとの相互作用に応答して実行され得る。
【0035】
いくつかの実施形態において、DMFカートリッジ110は、容量性フィードバックセンシングを含み得る。つまり、液滴の位置および体積を検出できる容量センサーからの信号である。さらに、他の実施形態においては、容量性フィードバックセンシングの代わりに、またはそれに加えて、DMFカートリッジ110は、液滴の位置および体積の光学的測定をもたらすカメラを含むことができ、この測定値は、コントローラ150をトリガーして、液滴を適切な位置に再経路付けし得る。
【0036】
いくつかの実施形態において、DMFカートリッジ110は、加熱ゾーン(図示せず)を含むことができる。様々なサンプル調製ステップおよびアッセイが温度制御の恩恵を受けることが理解されよう。参照により本明細書に組み込まれる米国特許第8,658,111号に記載されているように、熱制御は、一般に、以下の3つのやり方、すなわち、(1)DMFカートリッジ110全体の熱制御、(2)制御された領域と接触しているかまたは制御されている領域に近接しているヒーターを使用する、DMFカートリッジ110のある領域の熱制御、および、(3)DMFカートリッジ110に集積されたヒーターを使用する、DMFカートリッジ110のある領域またはDMFカートリッジ110全体の熱制御(例えば、電極の経路若しくはアレイを含む基板内、および/または上部基板が存在するとき、DMFカートリッジ110の該上部基板内)のやり方で得ることができる。上述した手法の組み合わせも可能である。加熱技術の例としては、カートリッジに隣接する器機に取り付けられたヒーターバー、およびカートリッジ自体に集積されたヒーターが挙げられる。
【0037】
集積されたヒーター手法では、DMFカートリッジ110に直接的に集積された熱制御要素を使用して、温度ゾーンを作成および制御することができる。熱制御要素(加熱および/または冷却)は、DMFカートリッジ110の下部基板および/もしくは上部基板(存在する場合)、ならびにいずれかの基板の下面および/もしくは上面に集積することができる、または、いずれかの基板の構造内に集積することができる、または基板間に配置することができる。ある場合では、熱制御要素は、コントローラ150に電子的に結合し、また制御することができる。熱ゾーンは、別個の加熱要素を使用して作成することができ、したがって、DMFカートリッジ110内の別個の熱ゾーンとして機能し得る。この配置により、サンプル調製および熱サイクルなどの分析における複数ステップが可能となり、DMFカートリッジ110の異なる熱ゾーンにおいて異なる温度で同時に実施されるように異なる温度を必要とする。例えば、エレクトロウェッティングを介した液滴操作を使用して、液滴は物理的に輸送されるか、または異なる固定温度の熱ゾーン間を往復させて、増幅反応のための熱サイクルを実施し得る。
【0038】
一実施形態において、熱ゾーンのヒーターは、薄い導電性フィルムを使用して形成することができる。適切な薄膜の例には、Ptヒーターワイヤおよび透明な酸化インジウムスズ(ITO)が挙げられる。一実施形態において、DMFカートリッジ110の基板内の金属(例えば、銅)ビアが使用される。
【0039】
温度調節用の熱電対を使用して、熱ゾーンの温度を制御することもできる。温度プローブを使用して、熱ゾーンの温度を測定し、コントローラに温度測定値を供給して、コントローラが関連する熱ゾーンの温度を正確に制御できるようにし得る。
【0040】
DMF器機105はネットワークに接続することができる。例えば、コントローラ150は、ネットワーク162を介してネットワーク化されたコンピュータ160と通信し得る。ネットワーク化されたコンピュータ160は、例えば、任意の集中型サーバーまたはクラウドサーバーとすることができる。ネットワーク162は、例えば、インターネットに接続するためのローカルエリアネットワーク(LAN)またはワイドエリアネットワーク(WAN)とすることができる。
【0041】
DMFシステム100では、照明源154および光学測定デバイス156は、DMFカートリッジ110のオンボードセンシング領域158および/または光ファイバープローブ130に関連して配置することができる。照明源154としては、以下に限定されないが、例えば、白色発光ダイオード(LED)、ハロゲン電球、アークランプ、白熱灯、およびレーザーなどがあり、可視範囲(波長400~800nm)の光源とすることができる。照明源154は、白色光源に限定されない。照明源154は、DMFシステム100で有用な任意の色光とすることができる。照明源154は、DMFカートリッジ110のオンボードセンシング領域158に励起光132を供給する。
【0042】
光学測定デバイス156は、例えば、光強度の読み取り値を得るために使用される任意の光学変換器デバイスとすることができる。光学測定デバイス156は、例えば、電荷結合デバイス、光検出器、分光計、フォトダイオードアレイ、カメラ、またはそれらの任意の組み合わせとすることができる。さらに、DMFシステム100は、1つの照明源154および1つの光学測定デバイス156のみに限定されない。DMFシステム100は、DMFシステム100および/またはDMFカートリッジ110における任意の検出操作を支援するために、複数の照明源154および/または複数の光学測定デバイス156を含むことができる。光学測定デバイス156は、DMFカートリッジ110のオンボードセンシング領域158からの放出光134を受光し、また処理する。したがって、DMFカートリッジ110の単一の光ファイバープローブ130は、オンボードセンシング領域158への励起光132およびオンボードセンシング領域158からの放出光134の両方のための導管として機能し得る。
【0043】
DMFシステム100および/またはDMF器機105の構成要素は、DMFカートリッジ110のオンボードセンシング領域158および/または光ファイバープローブ130に光学的に結合することができ、また減結合(decoupling)することができる。この光学的な結合/減結合(coupling/decoupling)は、例えば、光ファイバーコネクタ、光ファイバーカプラ、および/または自由空間光カプラとすることができる。
【0044】
DMFデバイスからの光刺激の従来の測定方法では、自由空間光学を使用して刺激を捕捉する。本文脈での自由空間光学の制限は、主に迷光および光損失の結果としてパフォーマンスが比較的低下することによるものである。パフォーマンスの低下は、レンズ、フィルター、その他の同様の光学的コンポーネントなどの光学的コンポーネントを使用することで克服されることがしばしばあるが、これらのコンポーネントはシステムのコストを押し上げる。従来の方法と比較して、DMFに対する光ファイバーセンサーの集積には若干の利点がある。例えば、光ファイバーベースのセンサーとデジタルマイクロ流体との集積を特徴とするDMFシステム100の利点としては、以下に限定しないが、局所的な光学調査技術を可能にすること、高い光学性能を達成する低コストの方法(例えば、低コストのためコンポーネント数の低減)を提供すること、信号を改善するためにシステム内の光損失を制限すること、および、低ノイズのために迷光の収集を制限することがあり得る。
【0045】
DMFシステム100では、光ファイバープローブ130は、光ファイバープローブ130の先端がDMFカートリッジ110の液滴操作ギャップに直接的に存在するように、DMFカートリッジ110に集積される(図3図9を参照)。このようにして、光ファイバープローブ130の先端は、DMFカートリッジ110で処理されている液滴と直接的に相互作用し得る。したがって、光ファイバープローブ130の先端は、オンボードセンシング領域158を形成し、ここで、DMFカートリッジ110は、オンボードセンシング領域158との間で液滴を移動させることができる。DMFシステム100および/またはDMFカートリッジ110は、1つの光ファイバープローブ130および1つのオンボードセンシング領域158のみに限定されない。これは単なる例示である。DMFシステム100および/またはDMFカートリッジ110は、任意の数の光ファイバープローブ130および/またはオンボードセンシング領域158を含み得る。さらに、1つ以上の光ファイバープローブ130は、ファイバーアセンブリ125の形態で設けることができる(図14Aおよび図14Bを参照)。DMFカートリッジの液滴操作ギャップにおける光ファイバープローブ130の実施例のさらなる詳細は、図3図9につき以下に示され、また説明される。
【0046】
図2Aおよび図2Bは、光ファイバーインターフェースの実施例を示すDMF器機105に関連するDMFカートリッジ110の実施形態を図示する。この実施例では、DMFカートリッジ110は、DMF器機105などの対応するDMF器機105にドロップインするように設計することができる。この例では、DMF器機105は、DMFカートリッジ110を受け入れるための凹んだ領域164を含む。すなわち、DMFカートリッジ110は、DMF器機105の凹んだ領域164に適合するようにサイズ決定される。このようにして、DMFカートリッジ110は、DMF器機105に流体結合、光学結合、および/または電気結合され得る。この実施形態は、カートリッジを器機に結合することにより、カートリッジの光ファイバー要素が器機の光ファイバー要素と自動的に整列する様々な実施形態の例示である。一実施形態において(図示せず)、整列は、器機の対応する支柱(post)または開口部と嵌合するDMFファイバーインターフェースの支柱または開口部、および当業者に明らかである様々な同様の手法によって高まり得る。
【0047】
例えば、光結合に関して、DMFカートリッジ110の光ファイバープローブ130は、1つの光ファイバーまたは複数の光ファイバーの束を含むことができる。さらに、光ファイバーは、マルチモードもしくはシングルモード、または2つの組み合わせ(複数のコアおよび/またはクラッド層を有する)とすることができる。DMFカートリッジ110は、1つ以上の光ファイバーをDMF器機105に結合することを可能にするために、1つまたは複数のインターフェースを含むことができる。光インターフェースは、例えば、光ファイバーコネクタ、光ファイバーカプラ、および/または自由空間光カプラとすることができる。例えば、図2Aおよび図2Bは、DMFカートリッジ110がDMF器機105の凹んだ領域164に装荷されるとき、DMFカートリッジ110内の光ファイバープローブ130の外側端部が、例えば、照明源154および/または光学測定デバイス156につながる1つ以上の光ファイバー166とほぼ一直線になり得ることを示す。システムおよびカートリッジは、DMFカートリッジが器機に結合されたときに、器機の光ファイバー要素とカートリッジとの間の光接続が光学的に結合されることを確実にするために、整列要素を含むことができる。例えば、DMFカートリッジ110がDMF器機105に挿入されると、DMF器機105は、DMFカートリッジ110内のファイバーとDMF器機105内のファイバーとの間の結合効率を最大化するための整列ステップを自動的に実施することができる。カートリッジを器機に電気的および光学的に結合するために、多種多様なメカニズムが可能であることは理解されよう。
【0048】
図3図4図5は、図1に示されるDMFシステム100のDMFカートリッジ110の一部における実施例の側面図を示し、光ファイバープローブ130は、それぞれ、上部、下部、および側部からギャップに導入される。DMFカートリッジ110は、液滴操作ギャップ116によって分離された下部基板112および上部基板114を含むことができる。液滴操作ギャップ116は、液滴と十分に混和しないガスまたは液体のような充填剤流体であって、所望の分析プロセスをほぼ妨害しない、該充填剤流体で満たすことができる。一実施形態において、充填剤流体は、シリコーンオイルまたはヘキサデカンなどの低粘度オイルである。さらに、液滴操作電極120(例えば、エレクトロウェッティング電極)の配置が、下部基板112の上に設けることができる。DMFカートリッジ110は、液滴操作電極120の任意のラインまたは経路を含むことができる。
【0049】
一つの実施例では、下部基板112は、白色光(または任意の色採光)に対してほぼ透明性を示す材料とすることができる。例えば、下部基板112は、ガラス、プラスチック、または熱可塑性エラストマー(TPE)として知られているポリマー類で形成することができる。別の例では、下部基板112は、ほぼ透明であるプリント回路基板(PCB)とするか、または光透過を可能にする穴または開口部を含むPCBとすることができる。下部基板112と同様に、上部基板114は、白色光(または任意な色採光)に対してほぼ透明性を示す材料で形成することができる。例えば、上部基板114は、ガラス、プラスチック、またはTPEで形成することができる。さらに、上部基板114の内面は、透明導電層(例えば、酸化インジウムスズ(ITO)、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)ポリスチレンスルホン酸塩(PEDOT:PSS))、または他の同様の透明もしくは非透明(例えば、不透明)導電性コーティングなどの導電層118でコーティングすることができる。他の実施形態において、DMFカートリッジ110のすべての領域は、ほぼ透明な基板および/またはコーティングもしくは層を含む必要はない。例えば、基板および/またはコーティングもしくは層は、検出領域を除いて、透明、半透明、および/または不透明でなくてよい。ある場合では、このような基板は、透明な層を必要とし得る自由空間光プローブである場合は不適切であろう。このことは、透明性を有しない光ファイバープローブを使用することができ、これにより基板および製造技術の選択融通性がより増すために、この本開示の利点である。
【0050】
「上部(top)」、「下部(bottom)」、「~の上方(over)」、「~の下方(under)」、「~内(in)」、および「~上(on)」という用語は、DMFカートリッジの上部基板および下部基板の相対位置のように、DMFカートリッジの構成要素の相対位置について明細書全体にわたり使用される。DMFカートリッジは、空間内におけるその向きに関係なく機能することが理解されよう。
【0051】
DMFカートリッジ110では、液滴操作ギャップ116は、液滴操作を介して任意の関心対象液体、例えば、以下に限定されないが、液体試薬、緩衝液、サンプル流体等々を処理するための空間とすることができる。ギャップの高さは、例えば、数100ミクロンとすることができる。液滴操作電極120は、エレクトロウェッティングを介して液滴操作を実施するために使用することができる。「液滴操作(droplet operations))」とは、デジタルマイクロ流体デバイスまたはカートリッジ上における任意な液滴操作を意味する。液滴操作としては、例えば、デジタルマイクロ流体デバイス内への液滴装荷、ソース液滴からの1つ以上の液滴分注、1つの液滴を2つ以上の液滴への分割、分離もしくは分裂(dividing)、液滴をある場所から別の場所へと任意な方向に輸送、2つ以上の液滴を1つの液滴へと合体もしくは結合、液滴希釈、液滴混合、液滴攪拌、液滴変形、液滴の所定位置での保持、液滴インキュベート、液滴加熱、液滴蒸発、液滴冷却、液滴廃棄、DMFカートリッジ110からの液滴輸送、本明細書に記載した他の液滴操作、および/または上述した操作の任意な組み合わせ、を挙げることができる。さらに、液滴操作ギャップ116で生起するプロセスの温度を制御するために、ペルチェヒートポンプ(Peltier heat pump)などの温度制御素子(図示せず)を、DMFカートリッジ110と組み合わせて使用することができる。
【0052】
さらに、図3図4図5は、エレクトロウェッティング法(例えば、液滴操作電極120を使用する)を介して液滴を操作するものとしてDMFカートリッジ110を説明しているが、これは単なる例示である。他の実施形態において、液滴は、他の方法、例えば、以下に限定されないが、光学的方法、磁気的方法、熱毛細管法、弾性表面波法、および誘電泳動などの他の電気的方法、ならびにそれらの任意の組み合わせのような他の方法を介して、DMFカートリッジ110内で取扱い操作することができる。
【0053】
ここで図3を参照すると、これはDMFシステム100のDMFカートリッジ110が示され、光ファイバープローブ130が上部から液滴操作ギャップ116に導入される(例えば、上部基板114を通って、DMFカートリッジ110の平面に対してほぼ垂直である)。サンプル液滴140は、液滴操作ギャップ116内、および特定の液滴操作電極120の上に存在する。光ファイバープローブ130の先端は、サンプル液滴140内に/サンプル液滴140と直接的に相互作用し、それにより、オンボードセンシング領域158を形成し得る。DMFカートリッジ110は、液滴操作を介して、オンボードセンシング領域158との間で液滴を移動させるために使用することができる。光ファイバープローブ130を液滴操作ギャップ116内に直接、およびサンプル液滴140の経路に集積することにより、局所的な光学的調査技術が可能になる。図3は、光ファイバープローブ130を介してサンプル液滴140に送達される励起光132を示している。さらに、サンプル液滴140からの放出光134は、光ファイバープローブ130を介して射出する。この場合も、光ファイバープローブ130は、1つの光ファイバーまたは複数の光ファイバーの束を含むことができる。
【0054】
ここで図4を参照すると、DMFシステム100のDMFカートリッジ110が示され、光ファイバープローブ130が下部から液滴操作ギャップ116に導入される(例えば、下部基板112を通って、DMFカートリッジ110の平面に対してほぼ垂直である)。
【0055】
ここで図5を参照すると、DMFシステム100のDMFカートリッジ110が示され、光ファイバープローブ130が側部から液滴操作ギャップ116に導入される(例えば、下部基板112と上部基板114との間で、DMFカートリッジ110の平面に対してほぼ平行である)。
【0056】
ここで図6を参照すると、DMFシステム100のDMFカートリッジ110の例の側面図であり、光ファイバープローブ130が液滴操作ギャップ116に導入され、光センシング操作が反射モードで実施されている。図6は、図5に示された光ファイバープローブ130の構成を示しているが、図4および図5に示された光ファイバープローブ130の構成は、反射モードでの操作に関して等しく適用可能である。
【0057】
図6は、励起光132が、光ファイバープローブ130を介して照明源154からサンプル液滴140に送達されていることを示している。さらに、サンプル液滴140からの放出光134が、光ファイバープローブ130を介して光学測定デバイス156に射出する。DMFシステム100およびDMFカートリッジ110のこの構成は、液体の光学特性(例えば、サンプル液滴140の光学特性)の反射センシングを可能にする様態で、DMFカートリッジと共に集積された光ファイバーを提供する。光ファイバープローブ130は、デジタルマイクロ流体に必要な他の構成要素をも含むDMFカートリッジ110の一部である。
【0058】
この場合も、照明源154は1つまたは複数の光源とすることができる。光源は単色性又は多色性とすることができる。これら光源としては、以下に限定しないが、発光ダイオード(LED)、レーザー、白熱光源、蛍光光源、またはそれらの任意の組み合わせが挙げられる。光源は、非常に迅速に強度を調整できるように変調することができる。光源はまた、明るさを調整するために、光検出器などの1つ以上のセンサーを含むことができる。光源はまた、入射光の品質を確保するための追加のフィルターも含有し得る。さらに、光源は、複数の個別の発光要素の組み合わせとすることができる。これらの要素は、同じまたは異なる波長でアクティブになることができる。
【0059】
この場合も、光学測定デバイス156は、1つまたは複数の光学センサーとすることができる。光学測定デバイス156は、例えば、狭帯域センサーまたは広帯域センサーとすることができる。光学測定デバイス156は、光信号をさらに処理され得る電子信号に変換する。光学測定デバイス156はまた、光スペクトルの様々な部分に敏感な複数のセンサーを使用することができる。これは、電磁スペクトルの様々な部分に増感される分光計または複数の個別センサーの形式とすることができる。光学測定デバイス156は、最高の性能を確保するために必要な追加の光学フィルターを含有し得る。光学測定デバイス156は、相関器などの閉ループ制御を使用して照明源154の制御を可能にする追加の構成要素を含むことができる。
【0060】
操作中、照明源154からの励起光132は、光ファイバープローブ130を通過する。光ファイバープローブ130は、調査されている液滴(例えば、サンプル液滴140)に入射光を導く。放出光134は、システムの構成に応じて、ファイバーの同じコア(core)に沿って、または異なるコアに沿って、液滴から反射されて戻る。光ファイバープローブ130は、単一または複数のコアを有することができる。これらコアは、例えば、シングルモードまたはマルチモード(または2つの任意の組み合わせ)とすることができる。この反射された放出光134は、光学測定デバイス156に結合される。
【0061】
光学センシング操作が反射モードで実行されている、図3図4図5に示されたDMFカートリッジ110内の光ファイバープローブ130の構成は、以下のような、しかしこれらに限定されない、液滴特性付けのための特定技術、すなわち、
(1)赤外分光法などの反射分光法、
(2)光路長可変分光法、
(3)酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)の読み取りおよびポリメラーゼ連鎖反応(PCR)の読み取りに使用されるような吸光度分光法、
(4)ラマン分光法、
(5)レーザー誘起破壊分光法および原子発光分光法などの光電子分光法、
(6)ELISAの読み取りおよびPCRの読み取りに使用されるような蛍光分光法、
(7)濁度測定、
(8)光子相関分光法および蛍光相関分光法などの時間分解分光法、
(9)マイクロスケール熱泳動、
の使用を可能にする。
【0062】
図7Aは、DMFシステム100のDMFカートリッジ110の例の側面図であり、センサー表面142は、液滴操作ギャップ116内にある光ファイバープローブ130の先端に設けられる。
【0063】
光ファイバーを用いたセンサーの製造には、様々な技術が有用であることが知られている。一実施形態では、本開示は、非特許文献1(Jeong, Hyeon-Ho & Erdene, Norov & Lee, Seung Ki & Jeong, Dae & Park, Jae-Hyoung. (2011) Fabrication of fiber-optic localized surface plasmon resonance sensor and its application to detect antibody-antigen reaction of interferon-gamma. Optical Engineering. 50. 124405-124405. 10.1117/1.3662418.)に記載されている技術を利用する。非特許文献2(Proll, G., Markovic, G., Steinle, L., & Gauglitz, G. (2009). Reflectometric Interference Spectroscopy. Methods in Molecular Biology: Biosensors and Biodetection , 503, 167-178. doi: 10.1007/978-1-60327-567-5_8.)も参照されたい。ヨング氏ら(Jeonget al.)およびプロル氏ら(Prollet al.)の開示全体は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0064】
センサー表面142は、例えば、液滴または液滴中の検体の特性を光学応答に変換することができる光学層とすることができる。例えば、光学応答に変換された特性としては、検体の存在、温度、温度変化、検体または溶液の特性変化、等々を挙げることができる。
【0065】
一例では、センサー表面142は干渉フィルターを使用し得る。干渉フィルターは、真空堆積技術を使用してファイバー上に堆積され得る。干渉フィルターは、単色強度もしくは位相測定または多色分光測定を用いて、表面への結合の測定を可能にする。
【0066】
本開示の光ファイバープローブに有用なフィルターを製造するための技術の一例は、非特許文献3(Proll G., Markovic G., Steinle L., Gauglitz G. (2009) Reflectometric Interference Spectroscopy. In: Rasooly A., Herold K.E. (eds) Biosensors and Biodetection. Methods in Molecular BiologyTM, vol 503. Humana Press)に記載され、その開示全体は参照により本明細書に組み込まれる。
【0067】
別の実施例では、センサー表面142は、湿式化学を使用して堆積され得る干渉フィルターまたは光学材料とし得る。光学材料は、金属ナノ粒子を含み得るが、これに限定されない。表面プラズモン共鳴または表面増強ラマン分光法などの特性を使用して、液滴および/または液滴中の検体を分析し得る。センサー表面142の他の例は、リソグラフィー技術を使用するナノ構造化表面の堆積を含むことができる。材料の例としては、金属(例:プラズモニックナノ粒子)、ガラス(例:回折要素)、プラスチック(例:ナノインプリントされた回折要素)が挙げられる。さらに、センサー表面142は、励起光132をより小さな領域に集束させるために使用される誘電体ミクロスフェアの形態とし得る。
【0068】
光学センサー表面142は、増強された信号に対して溶液から表面へ検体が結合することに関与する層を含み得る。例えば、この層は、光学センサー表面142の上に堆積させることができる。この層はまた、検体からの光信号を増強するよう、ファイバーの先端に検体を集中させるための層として、光学センサー表面142なしでも使用され得る。一実施例では、層は、結合部位の増加を促進するゲルマトリックスである。別の実施例では、層は、検体の表面濃度の増加を促進するための多孔質材料である。結合部位(例えば、疎水性部位)を増加させるか、または特異的結合部位(例えば、抗体/抗原またはアプタマー/検体)を追加するための様々な化学的増強が当業者に知られている。多孔質材料は、ある場合では、ポリマーブラシ、ゲル、ナノ粒子、またはその他の高表面積構造などの生来的な有機物であり得る。これらの有機多孔質媒体は、ポリジメチルシロキサン、ジビニルベンゼン、ポリエチレングリコールなどの合成ポリマーとし得る。別の実施形態では、多孔質媒体は、セルロース、キチン、コラーゲンなどのように生物由来とし得る。
【0069】
代案として、多孔質媒体は、ナノ構造炭素、シリカ、チタニアなど実際上無機物とすることができる。多孔質媒体は、これら材料を任意に組み合わせることができ、検体の固有の化学的特性を活用して、それらの表面濃度を増加させることができる。
【0070】
別の例では、センサー表面142は、1つ以上の捕捉分子で機能化されたLSPRセンサー層とし得る。LSPRセンサー層は、金属ナノ構造および/または層の1つが金属である多層ナノ構造から構成し得る。LSPRセンサーに通常使用される金属の例としては、金、銀、白金、パラジウムおよび、銅のナノ粒子が挙げられる。一例では、捕捉分子は、LSPRセンサー層の表面に固定化されたリガンドである。例えば、リガンドとしてタンパク質、抗体、抗原またはアプタマーが、カルボキシル、NTA、またはストレプトアビジン表面付着化学を使用して、金属ナノ粒子センサー層に付着し得る。この例では、リガンドは2つの結合パートナーのうちの1つであり、他方の結合パートナーは、サンプル液滴140中の標的検体144である。
【0071】
別の例では、センサー表面142は、ゲルマトリックスに含有されるフルオレセインなどのpH感受性光学層とし得る。これらpH感受性ゲルの光学特性は、それらが発生する環境のpHに関連している。結果として、光信号の読み出し値は、サンプル液滴140のpHに基づいて変化することができる。
【0072】
別の例では、センサー表面142は、熱変色性コーティングなどの感熱層、または酸化ケイ素などの不動態化層でコーティングされたLSPRセンサーでさえあり得る。これらセンサーの光学特性は、それらが置かれている環境の温度と強く相関している。その結果、光信号は、サンプル液滴140の温度の関数として変化することができる。
【0073】
センサー表面142がDMFカートリッジ110内の光ファイバープローブ130の先端に存在する、図7Aに示される構成は、以下のような、しかしこれらに限定されない、特定の特性付け技術、すなわち、
(1)単色リフレクトメトリー、
(2)バイオレイヤー干渉法および単色リフレクトメトリー(SCORE)などの反射型干渉分光法、
(3)表面増強ラマン分光法、
(4)表面プラズモン共鳴、
(5)回折光学測定、
(6)固相マイクロ抽出(光学的読み出し法との組み合わせ)、
(7)温度測定、
を可能にする。
【0074】
図7Bは、光ファイバープローブ130の先端にナノ粒子センサー表面143を含むDMFシステム100のDMFカートリッジ110の実施例の側面図である。例示的なナノ粒子センサー表面143の詳細は、図15を参照して以下に示されている。
【0075】
ここで図8を参照すると、DMFシステム100のDMFカートリッジ110の実施例の側面図であり、1つ以上の光学要素148は、液滴操作ギャップ116内にある光ファイバープローブ130の先端に設けられる。1つ以上の光学要素148は、単独で、または図7に示されるセンサー表面142に加えて設けられ得る。1つ以上の光学要素148を使用して、光をサンプル液滴140および/またはセンサー表面142(内に、および/または、の外へ)、より効果的に結合し得る。1つ以上の光学要素148は、限定しないが、以下を含む、すなわち、
(1)円錐状テーパーなどのテーパー光ファイバー、
(2)U字型光ファイバー、
(3)半球レンズ、ボールレンズ、GRINレンズ、および非球面レンズなどのレンズ、
(4)ATRプリズムおよびクレッチマン(Kretschmann)プリズムなどのプリズム、
(5)サイドポリッシュおよびウェッジポリッシュなどの角度付きポリッシュ、
(6)拡散要素、
(7)ファブリペローエタロンおよび半透過(transflection)キャビティなどの反射キャビティ、
を含むことができる。
【0076】
図9は、第2照明源154’および第2光学測定デバイス156’を追加した以外は、図6に示されるものとほぼ同様に構成されるDMFシステム100のDMFカートリッジ110の実施例の側面図である。この実施例では、照明源154’および/または光学測定デバイス156’は、独立して、または照明源154および光学測定デバイス156に結合された光ファイバープローブ130と組み合わせて使用し得る。
【0077】
光学測定デバイス156と同様に、光学測定デバイス156’は、光検出器、カメラ、分光計またはハイパースペクトル画像器などの光測定デバイスの形態とし得る。光学測定デバイス156’は、時間分解測定を行い得る。さらに、光学測定デバイス156’からの入力を使用して、照明源154および/または照明源154’を制御し得る。
【0078】
第2照明源154’および第2光学測定デバイス156’の存在が、様々な操作モードを可能にする。一例では、第1照明源154および第1光学測定デバイス156を使用して、光センシング操作は、完全に光ファイバープローブ130を介して反射モードで実施し得る。すなわち、光ファイバープローブ130を使用して、照明および収集の両方を行う。別の例では、第1照明源154および第2光学測定デバイス156’を使用して、光センシング操作は透過モードで実施し得る。すなわち、光ファイバープローブ130および第1照明源154を使用して照明するが、外部の第2光学測定デバイス156’を使用して収集する。さらに別の例では、第2照明源154’および第1光学測定デバイス156を使用して、光センシング操作は再び透過モードで実施し得る。すなわち、外部第2照明源154’を使用して照明するが、光ファイバープローブ130および第1光学測定デバイス156を使用して収集する。
【0079】
ここで図10を参照すると、集積された光ファイバーセンシングを含むDMFシステム100および/またはDMFカートリッジ110を使用する方法200の実施例のフロー図である。方法200は、限定しないが、以下のステップを含み得る。
【0080】
ステップ210で、集積型RIセンシングを含むDMFシステムおよび/またはDMFカートリッジを準備する。例えば、DMFカートリッジ110の液滴操作ギャップ116に集積された光ファイバープローブ130を含むDMFシステム100および/またはDMFカートリッジ110を、例えば、図1図9に示されるように準備する。
【0081】
ステップ215で、処理される液滴は、DMFカートリッジのセンシング領域に輸送される。例えば、ここで図3図9を参照すると、処理されるサンプル液滴140は、液滴操作を使用して、DMFカートリッジ110のオンボードセンシング領域158に輸送され得るが、ここで、オンボードセンシング領域158は、光ファイバープローブ130の先端にある。
【0082】
ステップ220で、光センシング操作は、集積型光ファイバーセンシングを使用してDMFカートリッジ内で実施される。例えば、ここで図6図9を参照すると、光センシング操作は、DMFカートリッジ110の液滴操作ギャップ116、照明源154、および光学測定デバイス156に集積型光ファイバープローブ130を使用して、DMFカートリッジ110において実施される。操作中、照明源154からの励起光132は、光ファイバープローブ130を通過し、調査されているサンプル液滴140に向かい、その中へ進む。次いで、放出光134は、サンプル液滴140から光ファイバープローブ130に沿って反射されて光学測定デバイス156に戻り、光学測定デバイス156は、処理のために光学読み取り値を捕捉する。一例では、DMFカートリッジ110内の光センシング操作は、図6図7および図8に示されるように、反射モードで生じ得る。別の実施例では、DMFカートリッジ110内の光センシング操作は、図9に示されて説明されるように、反射モード、透過モード、または反射モードと透過モードとの両方で生じ得る。
【0083】
特定の実施形態において、液滴がセンサーと接触している間に液滴を振動させることが有用であり得る。例えば、一実施形態において、第1の反応電極および第2の反応電極が交互に活性化されて、第1の反応電極と第2の反応電極との間で液滴の振動を誘発し、SPRセンサー表面に対する液滴の動きを誘発する。一実施形態において、第1の反応電極と第2の反応電極との間の液滴の振動は線形である。一実施形態において、振動は、約0.5~約15Hzの範囲である。別の実施形態において、振動は、約4~約10Hzの範囲である。
【0084】
別の実施形態において、SPRセンサー表面は、3つ以上の反応電極の間に配置され、3つ以上の反応電極が交互に活性化されて、3つ以上の反応電極間で液滴の振動を誘発し、SPRセンサー表面に対する液滴の動きを誘発する。別の実施形態において、3つ以上の反応電極間の液滴の振動は円形である。
【0085】
一実施形態において、電極のセットは、液滴をセット内のある電極から次の電極に移動させることによる振動が液滴をセンサーのセンシング先端と接触させたまま保持するように、センサーのセンシング先端に対して配置される。
【0086】
図11は、液滴操作電極120上で前後に振動し、かつ光ファイバープローブ130と接触している2Xサンプル液滴140の例を示している。図11では、液滴は、一般に、液滴操作電極120の経路に沿って、光ファイバープローブ130の長さに沿ったライン(図示せず)に対して直交する方向に移動している。本開示の範囲内では、他の種類の移動、例えば、光ファイバープローブ130の長さに沿ったライン(図示せず)と一致する方向、様々な方向への移動が可能であることが理解されよう。また、振動は、液滴の伸長および短縮を含み得る。さらに、画像は2倍の伸長を示しているが、伸長は3倍、4倍、またはそれ以上であり得ることが理解されよう(X = 液滴を伸長するために使用される活性化電極の数)。
【0087】
図12Aおよび図12Bは、集積型ファイバーセンシングを含むDMFカートリッジ110の例示的なインスタンス化のそれぞれ、上面斜視図および下面斜視図を示している。例えば、図12Aおよび図12Bは、DMFカートリッジ110の上部基板114、ファイバーアセンブリ125、および光ファイバーコア146の実施例を示している。
【0088】
ファイバーアセンブリ125は、アセンブリの第1端縁から延在するファイバー、及びアセンブリの第2端縁から延在するファイバーのセットとして構成し得る。ファイバーアセンブリ125がDMFカートリッジ110と共に組み立てられると、上部基板114と下部基板112との間の液滴操作ギャップ116が密封され、光ファイバープローブがギャップ内に延在する。理想的には、ファイバーは、1つ以上のエレクトロウェッティング電極120であって、1つ以上のエレクトロウェッティング電極120と相互作用する液滴が光ファイバープローブの端部に接触する、該1つ以上のエレクトロウェッティング電極120と十分に近接して延在する。液滴の振動を必要とするアッセイの場合、電極のセットは、液滴をセット内のある電極から次の電極に移動させることによる振動が液滴をセンサーのセンシング先端と接触させたまま保持するように、プローブのセンシング先端に対して配置し得る。
【0089】
図13Aおよび図13Bは、それぞれ、DMFカートリッジ110の実施例の上部分解図および下部分解図を示している。上部基板114は、緩衝液、試薬およびサンプルをDMFカートリッジ110内に堆積させるための開口部を含む。試薬、緩衝液およびサンプルをDMFカートリッジ110に導入するためのマルチチャネルピペッターの使用を可能にするために、開口部は離間されている。DMFカートリッジ110のフットプリントは、ウェルプレートで使用される器機で使用するために最適化し得る。下部基板112は、液滴の作動を制御するためにその中にパターン化された電極を備えたプリント回路基板である。下部基板112は、DMFのエレクトロウェッティング力を最適化するための疎水性コーティングを有する。上部基板114は、ポリカーボネート、アクリル、環状オレフィンコポリマーなどの射出成形ポリマーから作製されている。上部基板114は、その導電性を増強するために、酸化インジウムスズなどの導電性コーティングを適用する。上部基板114は、シリコーンなどのエラストマー接着剤を使用して下部基板112に密封されている。ファイバーは、ファイバーの整列に役立つ上部基板114のV字溝を介してカートリッジに導入される。上記のエラストマー接着剤はまた、ファイバーが上部基板114と下部基板112との間のギャップに入るため、ファイバーの周囲を密封する。ファイバーアセンブリ125は、接着剤、留め具、超音波溶接、ヒートステーキング、または他の固着方法のいずれかを使用して、上部基板114に固定される。
【0090】
図14Aおよび図14Bは、DMFカートリッジ110のファイバーアセンブリ125の実施例の様々な図である。図14Aは、ファイバーアセンブリ125の分解図および断面図を示している。図14Bは、ファイバーアセンブリ125の斜視図を示している。ファイバーアセンブリ125は、2つの主要な構成要素;複数の光ファイバー180(すなわち、光ファイバープローブ130、およびファイバーホルダー182を形成するためのもの)を含み得る。ファイバーホルダー182はまた、各端部に1つずつ、2つの位置合わせ(alignment)穴184を含む。ファイバーアセンブリ125を製造するために、光ファイバー180は、ある長さに切断され、ファイバーホルダー182に接着される。光ファイバー180は、ファイバーホルダー182の一方の面(センサー端部)から約20mm延在し、反対側(器機の嵌合面186)から約5mm延在する。器機側の余分なファイバーは、ルビースクライブで切断して器機の嵌合面186と同一平面にした後、研磨し得る。光ファイバー180が長さに劈開(cleave)されている場合、その他方の端部(センサー端部)を研磨する。次いで、センサー端部は、光ファイバープローブ130を形成するためにさらなる処理を受ける。例えば、処理は、センサー端部の先端にナノ粒子をコーティングすることを含み得る。
【0091】
要約すると、ここで再び図1図14Bを参照すると、DMFシステム100、DMFカートリッジ110、および/または方法200は、使い捨てカートリッジ(例えば、DMFカートリッジ110)に直接的に集積された光ファイバー(例えば、光ファイバープローブ130)を使用して、局所的な光調査技術を可能にする。従来の方法と比較して、DMFシステム100における光ファイバーセンサーとデジタルマイクロ流体の統合により、局所的な光学的調査技術が可能になり、高い光学性能を達成するための低コストの方法を提供し(例えば、低コストのために構成要素数を減らし)、信号を改善するためにシステム内の光損失を制限し、および低ノイズのために迷光の収集を制限する。
【実施例
【0092】
[実施例1]
ここで図15を参照すると、これはセンサーファイバーを作製するプロセス300の実施例である。プロセス300は、(1)ファイバーを所定長さまで剥き出して劈開する(strip and cleave fibers to length)ステップ、(2)ジグにファイバーを固定するステップ、(3)ファイバーの先端にセンサーを堆積するステップ、および(4)光学特性、ファイバーの完全性、および結合特性をテストするステップを含み得るが、これらに限定されない。これは、DMFカートリッジの液滴操作ギャップに挿入するための光ファイバープローブをどのように作製して準備するかの方法の一例である。
【0093】
[実施例2]
この実験は、DMFデバイス内の光ファイバーベースの表面プラズモン共鳴検出法を使用して、一般的なタンパク質-タンパク質間相互作用であるプロテインAとIgGとの親和性を決定するためのものであった。該実験は、DMFデバイスの自律的処理および少量であるという利点、ならびに光ファイバー検出の低バックグラウンド、制限された構成要素、および整列の利点の両方を実証した。
【0094】
[材料]
直径125μmの光ファイバーを劈開および処理して、ファイバーの先端に金ナノ粒子を堆積させ、次いで、それらのナノ粒子をカルボキシル基で表面仕上げした。要約すると、光ファイバーを徹底的に洗浄し、酸化した。酸化の例示的な方法としては、水酸化ナトリウムへの曝露などの高塩基性の溶液への曝露、オゾン曝露、または酸素プラズマ曝露が挙げられる。次に、自己組織化されたインターフェース層を堆積させ、金をセンサーに結合する。この例では、(3-メルカプトプロピル)トリメトキシシランなどのメルカプトシラン化合物を使用した。最後に、光ファイバーを、所望のサイズおよび形状の金ナノ粒子を含有する溶液に浸漬した。この場合、直径10nmの金ナノ粒子を使用した。金の堆積後、チオール化合物を使用して、将来の化学のための官能基を発現させた。様々な化合物を使用でき、例えば、片側にチオール基、反対側にヒドロキシ基を有する化合物は、将来の化学反応のためにカルボキシル表面を発現する。3-メルカプト-1-プロパノールを使用した。例えば、図16は、ナノ粒子センサー表面143の例の詳細を示している(図7Bを参照)。図16は、得られた光ファイバープローブの先端の電子顕微鏡写真を示しており、光ファイバークラッド145、光ファイバーコア146、およびナノ粒子コーティング147を示している。
【0095】
表面仕上げ後、先端が電極の端縁に整列するようにセンサーをDMFカートリッジのギャップに挿入した。収集されたデータの各チャネルは、様々な光ファイバーセンサーを参照する。
【0096】
DMFカートリッジに2センチストークスのポリジメチルシロキサンを装荷し、DMFデバイスにオイル環境を準備した。DMFデバイスのウェルを、100μLのpH7.4リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、35μLのエタノールアミン、35μLのpH1.5グリシン+塩酸(HCl)、35μLのプロテインA(使用したリガンド)で充填した。また、カートリッジには、ファイバー感度キャリブレーション用の8μLのPBS中の10%グリセロールおよびPBS中の16%グリセロール、センサーのカルボキシル表面を活性化するための8μLの1-エチル-3-(-3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC)および8μLのN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)、ならびに分析用に8μLの900nM IgGを装荷した。ただし、このプロトコルに必要なのは2μLのみである。すべての試薬には、オイルと水との界面を安定させるために0.1%のTween-20界面活性剤を含ませた。
【0097】
図11に示すように、液滴をプローブと接触している間に振動させた。エレクトロウェッティング電極を使用して、液滴を2X液滴に伸長し、プローブとの接触を維持しながら、10Hzで10分間、3つの電極上を往復させた。
【0098】
[方法]
実験全体は、DMFカートリッジによって自動的に実行した。まず、センサーの感度をグリセロールで校正した。この手順は以下のこと、すなわち、
(1)ベースラインのために700nLのPBSを導入し、
(2)700nLの10%グリセロールの屈折率シフトを測定し、
(3)700nLのPBSでセンサーをリンスし、
(4)700nLの16%グリセロールの屈折率シフトを測定し、また
(5)700nLのPBSでセンサーをリンスする
ものであった。
【0099】
上記は、既知の屈折率がもたらす信号シフトの程度を評価する。次に、カートリッジはシステムの結合反応速度を自動的に測定する。これは、以下のステップを含む。時間の最適化のために、多くのステップが他のステップと並行して実行されたことに留意されたい。
(1)700nLのPBSでセンサーを調節するステップ、
(2)700nLのグリシン-HClでセンサーを洗浄するステップ、
(3)700nL PBSでファイバーをリンスするステップ、
(4)350nLの1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドを350nLのユニット N-ヒドロキシスクシンイミドと各チャネルで混合し、センサーのカルボキシル表面を混合物で活性化するステップ、
(5)700nL PBSでファイバーをリンスするステップ、
(6)700nLのプロテインA溶液を各センサーに導入する。これにより、プロテインAがセンサー表面に固定化され、プロテインA抗体のリガンドとして機能するステップ、
(7)700nL PBSでファイバーをリンスするステップ、
(8)以下の方法でIgGサンプルを作成するステップであり、すなわち、
(a)350nLの900nM IgGを採取し、700nLのPBSで希釈する。上記配合を完全に混合し、片や、700nLの混合物に分割して、300nMのサンプルを作成し、
(b)8aから残りの350nLを採取し、700nLのPBSで希釈する。同様に、配合を混合し、700nLに分割して、100nMサンプル用に確保し、350nLのドロップでさらに希釈し、また
(c)8bを繰り返して、33nM、11nM、および3.67nMのサンプルを作成する。残りの350nLのドロップは廃棄する
ことによって、IgGサンプルを作成するステップ、
(9)700nLのIgGサンプルを様々なセンサーに導入する。IgGとプロテインAとの会合(association)をリアルタイムで測定ステップ、及び
(10)700nL PBSでファイバーをリンスする。プロテインAからのIgGの解離(dissociation)をリアルタイムで測定するステップ。
【0100】
[結果および分析]
上記ステップを使用して、各IgGサンプルの応答曲線を作成した。これらの曲線は、最初にグリセロール補正から得られた屈折率シフトに対する感度について調整し、次いで、実験中に測定されたセンサーに固定化されたプロテインAの量について調整した。結果は、図17Aに示されたプロット400に示されている。プロット400は、応答曲線A、B、C、D、E、およびFを示している。凡例410は、応答曲線Aが0nMの親和性に対応し、応答曲線Bが3.67nMの親和性に、応答曲線Cが11nMの親和性に、応答曲線Dが33nMの親和性に、応答曲線Eが100nMの親和性に、および応答曲線Fが3000nMの親和性に対応している。
【0101】
このデータに1:1の反応速度モデルを適用し、適合させた。図17Bに示されたプロット405に示されるように、これが、他の器機での同じサンプルの測定と一致する、非常に密接な相関および2nMの測定された親和性という結果をもたらす。ただし、他の器機とは異なり、サンプル調製を含むこの実験全体は、前または後のサンプルとの相互汚染のリスクなしに、使い捨ての流体カートリッジで自律的に実行された。さらに、実験では検体溶液をたった350nLしか消費せず、他のシステムと比較して容量が劇的に減少した。
【0102】
本発明は、ハードウェア、ソフトウェア、またはそれらの組み合わせを使用して実装され得、1つ以上のコンピュータシステムまたは他の処理システムに実装され得る。一態様では、本発明は、本明細書に記載の機能を実行することができる1つ以上のコンピュータシステムを企図する。
【0103】
「好ましくは(preferably)」、「一般的に(commonly)」、および「典型的に(typically)」のような用語は、請求される実施形態の範囲を制限するため、または特定の特徴が請求される実施形態の構造もしくは機能にとって重要もしくは必須であることを意味するために本明細書で使用されるものではない。これらの用語は、本開示の特定の実施形態で利用される場合もされない場合もある代替または追加の特徴を強調することを意図している。
【0104】
「ほぼ(substantially)」という用語は、本明細書では、任意の定量的比較、値、測定、または他の表現に起因し得る固有の不確実性の程度を表すために、および、問題となる対象物の基本的な機能に変化をもたらすことなく定量的表現が記載された参照から変化し得る程度を表すために使用される。
【0105】
「a」、「an」、および「the」という用語は、特許請求の範囲を含めて、本出願で使用される場合、「1つ以上(one or more)」を指す。したがって、例えば、「対象物(a subject)」への言及は、文脈が明らかに反対である場合(例えば、複数の対象物)等々を除いて、複数の対象物を含む。
【0106】
「含む、備える(“comprise”, “comprises”, & “comprising”)」、および「含む(“include”, “includes”, “including”)」という用語は、非限定的であることが意図されており、リスト内の項目の記載は、リストされた項目に置き換えられたり追加されたりし得る他の同様の項目を除外するものではない。
【0107】
上記の明細書で言及されているすべての刊行物は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0108】
本発明の開示された方法、組成物および使用の様々な修正および変形が、本発明の範囲および精神から逸脱することなく、本開示および特許請求の範囲を検討することにより当業者に明らかになるであろう。本発明は、特定の好ましい態様または実施形態に関連して本明細書に開示されてきたが、請求される本発明は、そのような特定の実施形態に過度に限定されるべきではないことを理解されたい。


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8
図9
図10
図11
図12A
図12B
図13A
図13B
図14A
図14B
図15
図16
図17
【国際調査報告】