(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-05
(54)【発明の名称】空気圧グリップシステム及び空気圧グリップシステムを備える材料試験システム
(51)【国際特許分類】
G01N 3/04 20060101AFI20230329BHJP
【FI】
G01N3/04 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022544367
(86)(22)【出願日】2021-02-09
(85)【翻訳文提出日】2022-07-21
(86)【国際出願番号】 US2021017241
(87)【国際公開番号】W WO2021159120
(87)【国際公開日】2021-08-12
(32)【優先日】2020-02-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-02-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】591203428
【氏名又は名称】イリノイ トゥール ワークス インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【氏名又は名称】森本 有一
(74)【代理人】
【識別番号】100211177
【氏名又は名称】赤木 啓二
(72)【発明者】
【氏名】キース トレンブレイ
(72)【発明者】
【氏名】リチャード コンティ
【テーマコード(参考)】
2G061
【Fターム(参考)】
2G061AA01
2G061AA02
2G061AB01
2G061CC01
2G061EA01
2G061EA02
2G061EB05
(57)【要約】
一例示の材料試験システムが、供給される圧力に基づいて試験対象試料を把持するように構成される空気圧グリップと、プロセッサであって、供給される圧力を増加させるように充填弁を制御することと、供給される圧力を各増加後に安定させることと、加圧中に、予想される圧力増加を実際の圧力増加と比較することに基づいて加圧の時間を調整することとを繰り返すことによって、空気圧グリップに供給される圧力を制御するように構成される、プロセッサとを備える。
【選択図】
図15
【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給される圧力に基づいて試験対象試料を把持するように構成される空気圧グリップと、
プロセッサであって、
前記供給される圧力を増加させるように充填弁を制御することと、
前記供給される圧力を各増加後に安定させることと、
加圧中に、予想される圧力増加を実際の圧力増加と比較することに基づいて前記加圧の時間を調整することと、
を繰り返すことによって、前記空気圧グリップに供給される前記圧力を制御するように構成される、プロセッサと、
を備える、材料試験システム。
【請求項2】
前記空気圧グリップは、第1のグリップ及び第2のグリップを備え、前記プロセッサは、前記第1のグリップ又は前記第2のグリップのうちの少なくとも一方への前記圧力を制御することによって、前記空気圧グリップに供給される前記圧力を制御するように構成される、請求項1に記載の材料試験システム。
【請求項3】
第2の充填弁を更に備え、前記充填弁は、ガス供給部から前記第2の充填弁へのガスフローを制御するように構成され、前記第2の充填弁は、前記充填弁から前記第1のグリップへのガスフローを制御するように構成される、請求項2に記載の材料試験システム。
【請求項4】
前記プロセッサは、圧力の増加、圧力の維持、又は排気部を介した圧力の解除を選択的に行うように前記第2の充填弁を制御するように構成される、請求項3に記載の材料試験システム。
【請求項5】
前記充填弁から前記第2のグリップへのガスフローを制御するように構成される第3の充填弁を更に備える、請求項3に記載の材料試験システム。
【請求項6】
前記プロセッサは、前記充填弁及び前記第2の充填弁を閉じることによって、前記供給される圧力を各増加後に安定させるように構成される、請求項3に記載の材料試験システム。
【請求項7】
前記空気圧グリップから圧力を排出するように構成される放出弁を更に備える、請求項1に記載の材料試験システム。
【請求項8】
前記充填弁は第1のソレノイドを備え、前記放出弁は第2のソレノイドを備え、前記プロセッサは、前記空気圧グリップから圧力を解除するように構成されるデフォルト状態を有するように前記第1のソレノイド及び前記第2のソレノイドを制御するように構成される、請求項1に記載の材料試験システム。
【請求項9】
前記プロセッサは、前記供給される圧力が安定したことを該圧力の変化率に基づいて判断するように構成される、請求項1に記載の材料試験システム。
【請求項10】
前記プロセッサは、前記供給される圧力が安定したことを、該圧力の前記変化率が閾値率未満であるときに判断するように構成される、請求項9に記載の材料試験システム。
【請求項11】
材料試験システムの空気圧デバイスに供給される圧力を、
前記供給される圧力を増加させるように充填弁を制御することと、
前記供給される圧力を各増加後に安定させることと、
加圧中に、予想される圧力増加を実際の圧力増加と比較することに基づいて前記加圧の時間を調整することと、
をプロセッサを介して繰り返すことによって、前記プロセッサを用いて制御すること、
を含む、材料試験システムにおける空気圧デバイスを制御する方法。
【請求項12】
前記空気圧グリップは、第1のグリップ及び第2のグリップを備え、前記空気圧グリップに供給される前記圧力を前記制御することは、前記第1のグリップ又は前記第2のグリップのうちの少なくとも一方への前記圧力を制御することを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記供給される圧力を増加させるように前記充填弁を前記制御することは、
ガス供給部から第2の充填弁へのガスフローを制御することと、
前記充填弁から前記第1のグリップへのガスフローを制御するように前記第2の充填弁を制御することと、
を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
圧力の増加、圧力の維持、又は排気部を介した圧力の解除を選択的に行うように前記第2の充填弁を制御することを更に含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記供給される圧力を増加させるように前記充填弁を前記制御することは、第3の充填弁を制御することによって前記充填弁から前記第2のグリップへのガスフローを制御することを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記供給される圧力を前記安定させることは、前記充填弁及び前記第2の充填弁を閉じることを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記空気圧グリップから圧力を排出するように放出弁を制御することを更に含む、請求項11に記載の方法。
【請求項18】
前記充填弁は第1のソレノイドを備え、前記放出弁は第2のソレノイドを備え、前記方法は、前記空気圧グリップから圧力を解除するように構成されるデフォルト状態を有するように前記第1のソレノイド及び前記第2のソレノイドを制御することを更に含む、請求項11に記載の方法。
【請求項19】
前記供給される圧力が安定したことを該圧力の変化率に基づいて判断することを更に含む、請求項11に記載の方法。
【請求項20】
前記供給される圧力が安定したことを前記判断することは、該圧力の前記変化率が閾値率未満であることを判断したことに応答して行われる、請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願]
本出願は、「PNEUMATIC GRIP SYSTEMS AND MATERIAL TESTING SYSTEMS INCLUDING PNEUMATIC GRIP SYSTEMS」と題する2021年2月8日付けで出願された米国特許出願第17/170,170号及び「PNEUMATIC GRIP SYSTEMS AND MATERIAL TESTING SYSTEMS INCLUDING PNEUMATIC GRIP SYSTEMS」と題する2020年2月9日付けで出願された米国仮特許出願第62/972,054号の利益を主張する。米国特許出願第17/170,170号及び米国仮特許出願第62/972,054号の全体は、引用することにより本明細書の一部をなす。
【背景技術】
【0002】
本開示は、包括的には、材料試験に関し、より詳細には、空気圧グリップシステム及び空気圧グリップシステムを備える材料試験システムに関する。
【0003】
万能試験機械は、機械試験、例えば、圧縮強さ試験又は引張強さ試験を材料又は構成要素に対して実行するのに用いられる。
【発明の概要】
【0004】
空気圧グリップシステム及び空気圧グリップシステムを備える材料試験システムが、実質的に図面のうちの少なくとも1つによって図示されるとともにその図に関して説明され、特許請求の範囲においてより完全に明記されるように開示される。
【図面の簡単な説明】
【0005】
本開示のこれらの特徴、態様、及び利点並びに他の特徴、態様、及び利点は、以下の詳細な説明が添付図面を参照して読まれるとより良好に理解され、図面を通して同様の参照符号は同様の部分を表す。
【0006】
【
図1】本開示の態様による、機械特性試験を実行する一例示の試験デバイスの図である。
【
図2】
図1の試験デバイスの一例示の実施態様のブロック図である。
【
図3】
図2の安全システムの一例示の実施態様のブロック図である。
【
図4A】
図1~
図3の材料試験システムの状態を制御するために
図3の安全プロセッサによって実行することができる例示の機械可読命令を表すフローチャートである。
【
図4B】
図1~
図3の材料試験システムの状態を制御するために
図3の安全プロセッサによって実行することができる例示の機械可読命令を表すフローチャートである。
【
図5】
図1~
図3のオペレーターインターフェースを実施するために使用することができる一例示のオペレーターインターフェースを示す図である。
【
図6】
図1~
図3のオペレーターインターフェースを実施するために使用することができる別の例示のオペレーターインターフェースを示す図である。
【
図7】材料試験システムのスタートアップルーチン中における
図1の例示の材料試験システムと、
図5及び
図6のオペレーターインターフェースとを示す図である。
【
図8】材料試験システムのセットアップ状態における
図1の例示の材料試験システムと、
図5及び
図6のオペレーターインターフェースとを示す図である。
【
図9】セットアップ状態において制限された作動を用いてクロスヘッドをジョグさせている間の
図1の例示の材料試験システムと、
図5及び
図6のオペレーターインターフェースとを示す図である。
【
図10】注意状態又は試験状態において低減された制限を用いてクロスヘッドをジョグさせている間の
図1の例示の材料試験システムと、
図5及び
図6のオペレーターインターフェースとを示す図である。
【
図11】セットアップ状態において制限された作動を用いて空気圧グリップの作動を制御している間の
図1の例示の材料試験システムと、
図5及び
図6のオペレーターインターフェースとを示す図である。
【
図12】注意状態又は試験状態において低減された制限を用いて空気圧グリップの作動を制御している間の
図1の例示の材料試験システムと、
図5及び
図6のオペレーターインターフェースとを示す図である。
【
図13A】材料試験を開始するためにセットアップ状態から注意状態及び試験状態に進んでいる間の
図1の例示の材料試験システムと、
図5及び
図6のオペレーターインターフェースとを示す図である。
【
図13B】材料試験を開始するためにセットアップ状態から注意状態及び試験状態に進んでいる間の
図1の例示の材料試験システムと、
図5及び
図6のオペレーターインターフェースとを示す図である。
【
図13C】材料試験を開始するためにセットアップ状態から注意状態及び試験状態に進んでいる間の
図1の例示の材料試験システムと、
図5及び
図6のオペレーターインターフェースとを示す図である。
【
図14A】クロスヘッドを所望の状態に復帰させるためにセットアップ状態から注意状態及び試験状態に進んでいる間の
図1の例示の材料試験システムと、
図5及び
図6のオペレーターインターフェースとを示す図である。
【
図14B】クロスヘッドを所望の状態に復帰させるためにセットアップ状態から注意状態及び試験状態に進んでいる間の
図1の例示の材料試験システムと、
図5及び
図6のオペレーターインターフェースとを示す図である。
【
図14C】クロスヘッドを所望の状態に復帰させるためにセットアップ状態から注意状態及び試験状態に進んでいる間の
図1の例示の材料試験システムと、
図5及び
図6のオペレーターインターフェースとを示す図である。
【
図15】
図3の安全システムの一部分を実施するのに使用することができる一例示の空気圧グリップシステムのブロック図である。
【
図16A】従来の空気圧グリップ加圧プロセス中のマニホルド圧力及びグリップ圧力を示すグラフである。
【
図16B】開示される例示の空気圧グリップ加圧プロセス中のマニホルド圧力及びグリップ圧力を示すグラフである。
【0007】
図面は、必ずしも正確な縮尺ではない。適切な場合は、同様の又は同一の参照番号を使用して、同様の又は同一の構成要素を指す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
従来の材料試験システムは、オペレーターの安全性を改善するために、構成スイッチ、ガード(guarding:防御)、力制限制御、運動制限、及び/又は保護等の緩和技法を使用する。しかしながら、従来の材料試験システムは、国際規格に完全に準拠するとは限らないことが頻繁にある。従来の緩和技法では、オペレーターが、安全な相互作用又は試験等の適切な動作モードにシステムを置く必要がある。多くの従来の安全技法は、プログラマブルロジックコントローラー(PLC:programmable logic controller)及び/又はリレー等の既製の安全構成要素を使用して実施することができる。PLC及びリレーは、通常、かなりのコストを材料試験システムに付加する。
【0009】
開示される例示の材料試験システムは、供給される圧力に基づいて試験対象試料を把持するように構成される空気圧グリップと、プロセッサであって、供給される圧力を増加させるように充填弁を制御することと、供給される圧力を各増加後に安定させることと、加圧中に、予想される圧力増加を実際の圧力増加と比較することに基づいて加圧の時間を調整することとを繰り返すことによって、空気圧グリップに供給される圧力を制御するように構成される、プロセッサとを備える。
【0010】
いくつかの例示の材料試験システムにおいて、空気圧グリップは、第1のグリップ及び第2のグリップを備え、プロセッサは、第1のグリップ又は第2のグリップのうちの少なくとも一方への圧力を制御することによって、空気圧グリップに供給される圧力を制御するように構成される。いくつかの例示の材料試験システムは、第2の充填弁を更に備え、充填弁は、ガス供給部から第2の充填弁へのガスフローを制御するように構成され、第2の充填弁は、充填弁から第1のグリップへのガスフローを制御するように構成される。
【0011】
いくつかの例示の材料試験システムにおいて、プロセッサは、圧力の増加、圧力の維持、又は排気部を介した圧力の解除を選択的に行うように第2の充填弁を制御するように構成される。いくつかの例示の材料試験システムは、充填弁から第2のグリップへのガスフローを制御するように構成される第3の充填弁を更に備える。いくつかの例示の材料試験システムにおいて、プロセッサは、充填弁及び第2の充填弁を閉じることによって、供給される圧力を各増加後に安定させるように構成される。
【0012】
いくつかの例示の材料試験システムは、空気圧グリップから圧力を排出するように構成される放出弁を更に備える。いくつかの例示の材料試験システムにおいて、充填弁は第1のソレノイドを備え、放出弁は第2のソレノイドを備え、プロセッサは、空気圧グリップから圧力を解除するように構成されるデフォルト状態を有するように第1のソレノイド及び第2のソレノイドを制御するように構成される。いくつかの例示の材料試験システムにおいて、プロセッサは、供給される圧力が安定したことを圧力の変化率に基づいて判断するように構成される。いくつかの例示の材料試験システムにおいて、プロセッサは、供給される圧力が安定したことを、圧力の変化率が閾値率未満であるときに判断するように構成される。
【0013】
材料試験システムにおける空気圧デバイスを制御する例示の方法が、本明細書において開示され、本方法は、材料試験システムの空気圧デバイスに供給される圧力を、供給される圧力を増加させるように充填弁を制御することと、供給される圧力を各増加後に安定させることと、加圧中に、予想される圧力増加を実際の圧力増加と比較することに基づいて加圧の時間を調整することとをプロセッサを介して繰り返すことによって、プロセッサを用いて制御することを含む。
【0014】
いくつかの例示の方法において、空気圧グリップは、第1のグリップ及び第2のグリップを備え、空気圧グリップに供給される圧力を制御することは、第1のグリップ又は第2のグリップのうちの少なくとも一方への圧力を制御することを含む。いくつかの例示の方法において、供給される圧力を増加させるように充填弁を制御することは、ガス供給部から第2の充填弁へのガスフローを制御することと、充填弁から第1のグリップへのガスフローを制御するように第2の充填弁を制御することとを含む。
【0015】
いくつかの例示の方法は、圧力の増加、圧力の維持、又は排気部を介した圧力の解除を選択的に行うように第2の充填弁を制御することを更に含む。いくつかの例示の方法において、供給される圧力を増加させるように充填弁を制御することは、第3の充填弁を制御することによって充填弁から第2のグリップへのガスフローを制御することを含む。いくつかの例示の方法において、供給される圧力を安定させることは、充填弁及び第2の充填弁を閉じることを含む。
【0016】
いくつかの例示の方法は、空気圧グリップから圧力を排出するように放出弁を制御することを更に含む。いくつかの例示の方法において、充填弁は第1のソレノイドを備え、放出弁は第2のソレノイドを備え、方法は、空気圧グリップから圧力を解除するように構成されるデフォルト状態を有するように第1のソレノイド及び第2のソレノイドを制御することを更に含む。いくつかの例示の方法は、供給される圧力が安定したことを圧力の変化率に基づいて判断することを更に含む。いくつかの例示の方法において、供給される圧力が安定したことを判断することは、圧力の変化率が閾値率未満であることを判断したことに応答して行われる。
【0017】
開示される例示の材料試験システムは、国際規格に準拠する安全システムを材料試験システム内に内蔵又は統合する。安全システムは材料試験システム内に統合されるので、開示される例示の材料試験システムは、安全性の改善をもたらし、安全システムは材料試験システムの既存の電子機器、半導体、及び/又は回路基板内に統合されるので、既製の部品を使用して行われるよりもはるかに低いコストをもたらす。統合によって、信頼性は更に改善され、これによって、購入される安全構成要素間の外部配線が削減又は除去される。
【0018】
以下でより詳細に説明するように、材料試験システムの開示される例示の安全システムは、動作制限の観点から試験機械の状態を視覚的に示す機械状態インジケーターを備える。材料試験システムの開示される例示の安全システムは、高い信頼性と、材料試験システム内の内部障害チェック及び/又は電源診断を含むことができる機械制御点において監視されるアクティブ化メカニズムとを提供する。いくつかの例では、空気圧グリップに、2段階グリップ圧力制御及び監視が設けられる。開示される例示の材料試験システムは、冗長性な又はそれぞれ異なる接点を有するインターロック式ガードシステムと互換性がある。そのようなガードシステムは、冗長な、それぞれ異なる、及び/又は動的なリアルタイムでの監視を使用することによってISO安全規格に準拠する。開示される例示の材料試験システムは、冗長なクロスヘッド移動量限界監視部を備える。開示される例の材料試験システムシャットダウン回路類は、ISO13849-1を含む国際安全規格に準拠している。
【0019】
加えて、PLCとともに使用される従来の既製の安全リレー構成要素は、PLC内のファームウェアの余分なレイヤを使用して、緊急停止イベント中に可動構成要素の運動を停止する。材料試験システムの開示される例示の安全システムは、安全プロセッサ内の組み込みファームウェアが動作しているか否かを問わず、ハードウェア(例えば、緊急停止ボタン)がアクチュエーター(複数の場合もある)に対する電力増幅器の駆動を直接シャットダウンすることを可能にするように構成される。
【0020】
回路類、アクチュエーター、及び/又は他のハードウェアの無効化は、ハードウェア、ソフトウェア(ファームウェアを含む)、又はハードウェア及びソフトウェアの組み合わせを介して行うことができ、物理的な接続解除、通電遮断、及び/又はコマンドが回路類、アクチュエーター、及び/又は他のハードウェアをアクティブ化するために実施されることを制限するソフトウェア制御を含むことができる。同様に、回路類、アクチュエーター、及び/又は他のハードウェアの有効化は、無効化に使用されるメカニズムと同じメカニズムを使用して、ハードウェア、ソフトウェア(ファームウェアを含む)、又はハードウェア及びソフトウェアの組み合わせを介して行うことができる。ファームウェアは、安全適合組み込みソフトウェア(SRESW:Safety Rated Embedded Software)及び/又は安全適合アプリケーションソフトウェア(SRASW:Safety Rated Application Software)等の記憶された命令を含むことができる。
【0021】
開示される例示の材料試験システムは、「制御システムの安全関連部品(Safety Related Parts of Control Systems)」に関するISO13849-1規格に規定されたルールに従った欧州機械指令(European Machinery Directive)に準拠している。システムリスク解析によって特定される以下の機能は、材料試験システム内に組み込まれる。安全システムは、駆動クロスヘッドからエネルギーを除去する無効駆動状態と、把持システムからエネルギーを除去する無効駆動状態と、オペレーターセットアップ用の制限駆動状態とを提供する。制限駆動状態では、例示の安全システムは、クロスヘッド速度を上限速度未満に維持するためにクロスヘッド速度を監視し、クロスヘッドの意図的な手動による移動(ジョグ)を監視し、閉じるときの低減された把持圧力を監視し、及び/又は意図的なグリップ閉鎖を監視する。
【0022】
本明細書において使用される場合、「クロスヘッド」は、方向のある力(軸方向力)及び/又は回転力を試料に印加する材料試験システムの構成要素を指す。材料試験システムは、1つ以上のクロスヘッドを有することができ、クロスヘッド(複数の場合もある)は、材料試験システムにおいて任意の適切な位置及び/又は方位に配置することができる。
【0023】
開示される例示の材料試験システムは、制限駆動状態におけるチェックを取り除くことを可能にする非制限駆動状態を更に含む。いくつかの例では、非制限駆動状態には、デュアルアクティブ化メカニズムを介して入ることができ、この状態では、材料試験機能が実行され、オペレーターはシステムとインタラクトしない。
【0024】
開示される例示の材料試験システムは、オペレーターがインタラクトすることができるとき及び危険が存在するときを明確に示すために、あらゆる機械における無効状態表示、セットアップ状態(例えば、制限駆動モード)表示、注意状態(例えば、非制限駆動モード)表示、及び試験状態(例えば、非制限駆動モード)表示等の種々の状態のインジケーターを備える。
【0025】
開示される例示の材料試験システムは、クロスヘッド又はグリップ等の構成要素の運動の開始及び/又は継続に優先するように構成される1つ以上の停止機能を備える。さらに、1つ以上の停止機能は、安全システムのソフトウェア部分が無効にされているときであっても、これらの停止機能が材料試験システムを無効にするのに有効であるようにハードウェアを介して冗長に構成することができる。開示されるシステムに含めることができるそのような停止機能の例は、インターロックされたガード及び/又は緊急停止スイッチを含む。
【0026】
いくつかの開示される例示の材料試験システムは、材料試験フレーム及び/又は把持システムを開始するための単一の制御点の選択及び実施を含む。いくつかの例示のシステムは、電力が復旧すると、システムが非制限動作を停止し、材料試験システムを無効駆動状態に置くことを確保するために、電力障害監視及び/又は保護を提供する。いくつかの例では、電力障害に応答して、任意の空気圧試料把持の通電が自動的に遮断される。
【0027】
開示される例示の安全システム及び材料試験システムは、増加された内部診断と、機器の機能不良又は冗長入力、冗長出力、及び/又は冗長プロセス間の不一致等のシステム内の重大のエラーのオペレーターへの報告とを含む。開示される例示の材料試験システムは、材料試験システムを無効にすることもなく、ガードドアを必要とすることもなく、試験空間内でオペレーターの動作を可能にする試験機械の安全なセットアップモードに起因して、従来の材料試験システムよりも高速な試料の除去及び/又は挿入を可能にする。開示される例示のシステムは、試験空間内部でシステムをセットアップ及び構成するときに、クロスヘッドの運動及び/又はグリップによって作用させることができる限定された運動及び/又は力を制限するセットアップ状態の使用に少なくとも部分的に起因して、オペレーターの安全性を更に改善する。
【0028】
開示される材料試験システム及び安全システムは、開示される例示の構成において利用されて、特定されたリスク緩和を達成するように特別に構成することができる。開示される材料試験システムは、汎用的な既製の個別の安全構成要素を購入するよりも大幅に効率的であり、材料試験向けである。
【0029】
開示される材料試験システム及び安全システムは、非制限状態がアクティブに使用されていないときは常に制限状態に戻るように構成され、及び/又は、制限状態から非制限状態に遷移するにはオペレーターによる意図的な動作を必要とするように構成される。例示の材料試験システム及び安全システムは、非制限状態がアクティブ化される時にアクティブ警告通知を提供する。例示のアクティブ警告通知は、(例えば、静的なラベル又は他の静的な視覚表示物を材料試験システム上に提供することとは対照的に)オペレーターが観察を行っている可能性が高いロケーションに現れ及び/又は消滅する通知として定義されるものを含む。さらに、開示される例示の通知は、材料試験システムの状態を知らせるために一般に理解される配色(例えば、緑色、黄色、赤色)を提供すること等によって直感的である。
【0030】
図1は、機械特性試験を実行する一例示の材料試験システム100を示している。例示の材料試験システム100は、例えば、静止機械試験が可能である万能試験システムとすることができる。材料試験システム100は、例えば、圧縮強さ試験、引張強さ試験、せん断強さ試験、曲げ強さ試験、撓み強さ試験、引裂強さ試験、剥離強さ試験(例えば、接着剤結合の強さ)、ねじり強さ試験、及び/又は他の任意の圧縮及び/又は引張試験を実行することができる。加えて又は代替的に、材料試験システム100は、動的試験を実行することができる。
【0031】
例示の材料試験システム100は、試験装置102と、試験装置102に通信可能に結合されたコンピューティングデバイス104とを備える。試験装置102は、試験対象材料106に負荷を印加し、試験対象材料106の変位及び/又は試験対象材料106に印加された力等の試験の機械特性を測定する。例示の試験装置102は、デュアルカラム装置として示されているが、シングルカラム試験装置等の他の装置も使用することができる。
【0032】
例示のコンピューティングデバイス104は、試験装置102を構成し、試験装置102を制御し、及び/又は、処理、表示、報告、及び/又は他の任意の所望の目的で、試験装置102から測定データ(例えば、力及び変位等のトランスデューサー測定値)及び/又は試験結果(例えば、ピーク力、破断変位(break displacement)等)を受信するのに用いることができる。
【0033】
図2は、
図1の材料試験システム100の一例示の実施態様のブロック図である。
図2の例示の材料試験システム100は、試験装置102と、コンピューティングデバイス104とを備える。例示のコンピューティングデバイス104は、汎用コンピューター、ラップトップコンピューター、タブレットコンピューター、モバイルデバイス、サーバー、オールインワンコンピューター、及び/又は他の任意のタイプのコンピューティングデバイスとすることができる。
【0034】
図2の例示のコンピューティングデバイス104は、プロセッサ202を備える。例示のプロセッサ202は、任意の製造者からの任意の汎用中央処理装置(CPU:central processing unit)とすることができる。他のいくつかの例では、プロセッサ202は、ARMコアを有するRISCプロセッサ、画像処理装置、デジタル信号プロセッサ、及び/又はシステムオンチップ(SoC)等の1つ以上の専用処理装置を含むことができる。プロセッサ202は、プロセッサにおいて(例えば、内蔵キャッシュ又はSoCに)、ランダムアクセスメモリ206(又は他の揮発性メモリ)に、リードオンリーメモリ208(又はフラッシュメモリ等の他の不揮発性メモリ)に、及び/又はマスストレージデバイス210にローカルに記憶することができる機械可読命令204を実行する。例示のマスストレージデバイス210は、ハードドライブ、ソリッドステートストレージドライブ、ハイブリッドドライブ、RAIDアレイ、及び/又は他の任意のマスデータストレージデバイスとすることができる。
【0035】
バス212は、プロセッサ202、RAM206、ROM208、マスストレージデバイス210、ネットワークインターフェース214、及び/又は入力/出力インターフェース216間の通信を可能にする。
【0036】
例示のネットワークインターフェース214は、コンピューティングデバイス104を、インターネット等の通信ネットワーク218に接続するハードウェア、ファームウェア、及び/又はソフトウェアを含む。例えば、ネットワークインターフェース214は、通信を送信及び/又は受信するために、IEEE 202.X準拠無線及び/又は有線通信ハードウェアを含むことができる。
【0037】
図2の例示のI/Oインターフェース216は、プロセッサ202に入力を提供する及び/又はプロセッサ202から出力を提供するために、1つ以上の入力/出力デバイス220をプロセッサ202に接続するハードウェア、ファームウェア、及び/又はソフトウェアを含む。例えば、I/Oインターフェース216は、ディスプレイデバイスとインターフェース接続する画像処理装置、1つ以上のUSB準拠デバイスとインターフェース接続するユニバーサルシリアルバスポート、FireWire(登録商標)、フィールドバス、及び/又は他の任意のタイプのインターフェースを含むことができる。例示の材料試験システム100は、I/Oインターフェース216に結合されたディスプレイデバイス224(例えば、LCDスクリーン)を備える。他の例示のI/Oデバイス(複数の場合もある)220は、キーボード、キーパッド、マウス、トラックボール、ポインティングデバイス、マイクロフォン、オーディオスピーカー、ディスプレイデバイス、光メディアドライブ、マルチタッチタッチスクリーン、ジェスチャー認識インターフェース、磁気メディアドライブ、及び/又は他の任意のタイプの入力及び/又は出力デバイスを含むことができる。
【0038】
例示のコンピューティングデバイス104は、I/Oインターフェース216及び/又はI/Oデバイス(複数の場合もある)220を介して非一時的機械可読媒体222にアクセスすることができる。
図2の機械可読媒体222の例は、光ディスク(例えば、コンパクトディスク(CD)、デジタルバーサタイル/ビデオディスク(DVD)、Blu-rayディスク(登録商標)等)、磁気メディア(例えば、フロッピーディスク(登録商標))、ポータブル記憶媒体(例えば、ポータブルフラッシュドライブ、セキュアデジタル(SD)カード等)、及び/又は他の任意のタイプの取り外し可能及び/又はインストール済み機械可読媒体を含む。
【0039】
図1の例示の材料試験システム100は、コンピューティングデバイス104に結合された試験装置102を更に含む。
図2の例では、試験装置102は、USBポート、Thunderboltポート、FireWire(IEEE 1394)ポート、及び/又は他の任意のタイプのシリアル又はパラレルデータポート等のI/Oインターフェース216を介して、コンピューティングデバイスに結合される。他のいくつかの例では、試験装置102は、直接又はネットワーク218を介して、有線又は無線接続(例えば、Ethernet(登録商標)、Wi-Fi等)を介してネットワークインターフェース214及び/又はI/Oインターフェース216に結合される。
【0040】
図2の試験装置102は、フレーム228と、ロードセル230と、変位トランスデューサー232と、クロスメンバーローダー234と、材料固定具236と、制御プロセッサ238と、安全システム240とを備える。フレーム228は、試験を実行する試験装置102の他の構成要素の剛性構造支持を提供する。ロードセル230は、グリップ236を介して、クロスメンバーローダー234によって試験対象材料に印加された力を測定する。クロスメンバーローダー234は、試験対象材料に力を印加し、一方、材料固定具236(グリップとも称される)は、試験対象材料を把持するか、又は別の方法で試験対象材料をクロスメンバーローダー234に結合する。例示のクロスメンバーローダー234は、モーター242(又は他のアクチュエーター)及びクロスヘッド244を備える。クロスヘッド244は、材料固定具236をフレーム228に結合し、モーター242は、クロスヘッドをフレームに対して移動させて材料固定具236を位置決めし、及び/又は、試験対象材料に力を印加する。材料試験システム100の構成要素の力及び/又は運動を与えるのに使用することができる例示のアクチュエーターは、電気モーター、空気圧アクチュエーター、油圧アクチュエーター、圧電アクチュエーター、リレー、及び/又はスイッチを含む。
【0041】
例示のグリップ236は、試験されている機械特性及び/又は試験対象材料に応じて、圧縮プラテン、顎部又は他のタイプの固定具を含む。グリップ236は、手動で構成することもできるし、手動入力を介して制御することもできるし、及び/又は制御プロセッサ238によって自動的に制御することもできる。クロスヘッド244及びグリップ236は、オペレーターアクセス可能構成要素である。
【0042】
例示の制御プロセッサ238は、コンピューティングデバイス104と通信して、例えば、コンピューティングデバイス104から試験パラメーターを受信し、及び/又は測定値及び/又は他の結果をコンピューティングデバイス104に報告する。例えば、制御プロセッサ238は、コンピューティングデバイス104との通信を可能にする1つ以上の通信又はI/Oインターフェースを含むことができる。制御プロセッサ238は、印加される力を増減させるようにクロスメンバーローダー234を制御し、試験対象材料を把持又は解放するように固定具(複数の場合もある)236を制御し、及び/又は変位トランスデューサー232、ロードセル230及び/又は他のトランスデューサーから測定値を受信することができる。
【0043】
例示の安全システム240は、監視及び制御の追加のレイヤを試験装置102に提供する。安全システム240は、オペレーター入力及び試験装置102の状態を監視する。
図2の例では、安全システム240は、機械が適切な状態にあるときにのみ試験装置102がユーザーによって制御可能であるように、ユーザーによる試験装置102の操作を制限する。1つ以上の状態を検出したことに応答して、安全システム240は、試験装置102に制限状態(例えば、危険な状態を提示することができる全ての電力及び運動を無効にする制限されたセットアップ状態等)に自動的に進ませる。
【0044】
以下でより詳細に論述するように、安全システム240は、材料試験システム100からの入力信号、安全システム240からの入力信号、及び/又は制御プロセッサ238からの制御信号を監視することに基づいて材料試験システムの動作に対する制限を選択的に追加し、除去し、増加し、及び/又は減少させる。安全システム240は、材料試験システム100が任意の所与の時点において動作される状態を複数の所定の状態から決定することによって、材料試験システム100の動作を制御する。例示の所定の状態は、材料試験システム100の1つ以上の動作が制限される(例えば、無効にされる、限定される等)1つ以上の制限状態と、制限状態の制限が削減及び/又は除去される1つ以上の非制限状態とを含む。
図2の例では、安全プロセッサ240は、制御プロセッサ238によるクロスメンバーローダー234及び/又は固定具(複数の場合もある)236の制御に付随し及び/又はこの制御に割り込みをかける。いくつかの他の例では、安全システム240は、アクチュエーターに対して任意の適用可能な制限を実施しながらクロスメンバーローダー234及び/又は固定具(複数の場合もある)236を直接制御することができる。
【0045】
例示の制限状態は、セットアップ状態及び無効状態を含む。セットアップ状態では、安全システム240は、1つ以上のアクチュエーター(例えば、モーター242及び/又はグリップアクチュエーター(複数の場合もある)246)を制限し、オペレーター入力に応答してこれらのアクチュエーターを制御する(又はこれらのアクチュエーターの制御を可能にする)。モーター242及び/又はクロスヘッド244に対する例示の制限は、試験装置102に対するクロスヘッド244の上限速度、及び/又は上限位置若しくは下限位置を含むことができる。グリップアクチュエーター(複数の場合もある)246に対する例示の制限は、上限圧力及び/又は上限グリップ力を含むことができる。無効状態では、安全システム240はアクチュエーターを制限し、制御プロセッサ238は、オペレーター入力に応答してアクチュエーターを制御しない(例えば、モーター242及び/又はグリップアクチュエーター(複数の場合もある)246の制御を試みないか、又は通電遮断を介してモーター242及び/又はグリップアクチュエーター(複数の場合もある)246の制御を妨げられる)。
【0046】
例示の非制限状態は、注意状態及び試験状態を含む。例示の注意状態では、安全システム240は、アクチュエーター(例えば、モーター242及び/又はグリップアクチュエーター(複数の場合もある)246)に対する制限を削減し、アクチュエーター(複数の場合もある)モーター242及び/又はグリップアクチュエーター(複数の場合もある)246を制御しない。注意状態では、制御プロセッサ238は、クロスヘッド244の高速ジョグ及び/又は空気圧グリップ248によるグリップ力の増加等の動作を実行するようにアクチュエーター(複数の場合もある)を制御することができ、そのため、オペレーターは、クロスヘッド244及び/又は空気圧グリップ248に物理的に近接するべきでない。例示の試験状態では、安全システム240は、アクチュエーターに対する制限を削減するとともに、制御プロセッサ238は、(例えば、制御プロセッサ238によって実行される材料試験手順又はプログラムに従って)試験を行うようにアクチュエーター(複数の場合もある)を制御する。
【0047】
図2の例示の材料試験システム100は、複数の状態インジケーター252と1つ以上のモードスイッチ254とを備える1つ以上の制御パネル250を更に備えることができる。モードスイッチ254は、ボタン、スイッチ、及び/又はオペレーター制御パネル上に配置される他の入力デバイスを含むことができる。例えば、モードスイッチ254は、クロスヘッド244をフレーム228上の特定の位置にジョグさせる(例えば、位置決めする)ようにモーター242を制御するボタン、空気圧グリップ248を開閉するようにグリップアクチュエーター246を制御するスイッチ(例えば、フットスイッチ)、安全システム240が非制限状態において動作を許可することを可能にする別のボタンとともに押下されるモード制御ボタン、及び/又は非制限状態において動作をもたらすことができる他の任意の入力デバイスを含むことができる。
【0048】
状態インジケーター252は、安全システム240が材料試験システム100に対して設定することができる一組の所定の状態(例えば、上述した無効状態、セットアップ状態、注意状態、及び試験状態)に対応する。以下でより詳細に説明するように、安全システム240は、安全システム240によって判断される材料試験システム100の現在の状態に関する表示を提供するように状態インジケーター252を制御する。状態インジケーター252は、ライト、ディスプレイ、オーディオ、機械システム、及び/又はオペレーターが識別することができる他の任意の表示を含むことができる。
【0049】
図3は、
図2の安全システム240の一例示の実施態様のブロック図である。
図3に示すように、安全システム240は安全プロセッサ302を備える。
【0050】
例示の安全プロセッサ302は、複数の冗長処理コア304a、304bを備える。処理コア304a、304bは、試験装置102の通常動作中は、実質的に同一の出力を生成するように、冗長命令306a、306bを実行し、冗長入力を受信する。安全プロセッサ302は、(例えば、冗長コア304a、304bを介して)複数の入力を監視し、これらの入力に基づいて材料試験システム100の状態を判断する。安全プロセッサ302は、冗長命令306a、306bの出力を比較し、この出力の比較に基づいて材料試験システム100の状態を制御することができる。
【0051】
例示の安全プロセッサ302及び/又は冗長処理コア304a、304bは、任意の製造業者が提供している汎用中央処理装置(CPU)を含むことができる。いくつかの他の例では、安全プロセッサ302及び/又は冗長処理コア304a、304bは、ARMコアを有するRISCプロセッサ、画像処理装置、デジタル信号プロセッサ及び、/又はシステムオンチップ(SoC)等の1つ以上の専用処理装置を含むことができる。安全プロセッサ302及び/又は冗長処理コア304a、304bは、プロセッサにおいて(例えば、内蔵キャッシュ又はSoCに)、ランダムアクセスメモリ、リードオンリーメモリ、及び/又はマスストレージデバイス等の記憶デバイスにローカルに記憶することができる、冗長命令306a、306b等の機械可読命令を実行する。
【0052】
冗長処理コア304a、304b及び冗長命令306a、306bは、冗長な及び/又はそれぞれ異なる入力及び出力を安全システム240によって処理することを可能にし、これによって、高い信頼性を有する予測可能なシステムが提供される。したがって、
図3には代表的な入力及び出力が示されているが、これらの入力及び/又は出力は、冗長処理コア304a、304b及び冗長命令306a、306bをサポートするために複製することができる。安全プロセッサ302によって実行される冗長命令306a、306b(例えば、組み込みソフトウェア、オペレーティングシステム、及び生成されたコード)は、国際規格に概説されたプロセスに準拠している。これらの国際規格には、「制御システムの安全関連部品」に関するISO13849-1が含まれるが、これに限定されるものではない。例示の安全プロセッサ302は、複数の冗長処理コアを備えるが、他の例では、安全プロセッサ302は、単一の処理コア、又は複数の非冗長処理コアを備えることができる。
【0053】
図3の安全システム240は、電力増幅器310がクロスヘッド244のモーター242にエネルギーを提供することを選択的に無効にするアクチュエーター無効回路308を更に備える。加えて又は代替的に、アクチュエーター無効回路308(又は別のアクチュエーター無効回路)は、グリップアクチュエーター(複数の場合もある)246がエネルギーを空気圧グリップ(複数の場合もある)248に提供することを無効にすることができる。電力増幅器310は、モーター242に対する入力電力及び出力電力を受信し、クロスヘッド244の移動を制御する。例示のアクチュエーター無効回路308及び電力増幅器310は、安全適合安全トルクオフ(STO:Safe Torque Off)高信頼性サーボ電力増幅器を使用して実施することができる。制御プロセッサ238は、電力増幅器310へのモーター制御信号312を介してモーター242及びクロスヘッド244の移動を制御することができる。
【0054】
安全プロセッサ302からのSTO信号314に応答して、アクチュエーター無効回路308は、接続されたアクチュエーター(例えば、モーター242)を無効にする。例えば、アクチュエーター無効回路308は、或る特定の定められた期間よりも短い期間において、モーター242(及び/又は材料試験システム100内の他の可動部分)への全てのエネルギーを接続解除することができる。例示のアクチュエーター無効回路308は、このアクチュエーター無効回路308が現在アクチュエーターを無効にしているか否かを示すSTOフィードバック信号315を安全プロセッサ302に提供することができる。安全プロセッサ302は、STO信号314をSTOフィードバック信号315と比較して、障害を検出することができる。
【0055】
例示の材料試験システム100では、可動クロスヘッド244及び任意の内部構成要素の移動は、国際規格によって指定されるように、STO信号314のアクティブ化後に停止される。本明細書に開示される安全システム240のサブシステムのほとんどは、機械を安全に停止させるためにアクチュエーター無効回路308をアクティブ化する。加えて、電力増幅器310は、STO信号314を印加する前にモーター242を減速するモーター制動回路316を備えることができる。モーター制動回路316は、駆動電力の遮断後の機械的慣性による継続した移動を除去することによって、モーター242がより制御された方法で停止することを可能にする。制動の事前無効化を使用することによって、モーター242への通電遮断後のクロスヘッド244の運動が低減又は最小化される。したがって、例示のアクチュエーター無効回路308及びモーター制動回路316は、「機械類の電気安全規格(Electrical Safety Standard for Machinery)」であるIEC60204-1規格に定義されているカテゴリー1の停止を提供する。
【0056】
例示の安全プロセッサ302は、制動の事前無効化が行われている間、モーター242及び/又はモーター制動回路316を監視して、モーター242が制動していることを確認する。安全プロセッサ302が、モーター242が制動中に減速していないと判断した場合には、安全プロセッサ302は、制動を中止してモーター242への通電を直ちに遮断する制動故障軽減を実行する。2段階無効シーケンスに対して制動故障軽減を実施することによって、安全プロセッサ302は、制動の効果がない状況において停止距離を短くすることができる。制動の事前無効化が作用しているときに停止距離が最短となるが、制動の事前無効化が完全に作用しているわけではないとき、作用していない制動の事前無効化を伴う2段階シーケンスは、単一段階シーケンス(例えば、接続解除のみ)よりも長い停止距離を有する可能性がある。制動故障軽減の副次的な利点は、この軽減によって、より広範囲の構成要素及びシステムを、制動システムの故障を捕らえることができる制動故障軽減プロセスとともに、高性能の制動に使用することができるという点で、2段階無効シーケンスを実施する際の柔軟性をより高くすることができるということである。
【0057】
例示の安全システム240は、緊急停止入力信号320を安全プロセッサ302に提供する緊急停止部318(例えば、ボタン、スイッチ等)を更に備える。緊急停止部318は、相補型安全機能である、手動操作される緊急停止ボタンとすることができる。緊急停止部318は、シグナリング用の2チャネル冗長性を有する。緊急停止部318は、緊急停止スイッチ322と、緊急停止検出回路324と、アクチュエーター無効回路326とを備えることができる。緊急停止部318は、安全プロセッサ302のハードウェア及び組み込みソフトウェアを使用して独立して制御可能である。例えば、緊急停止検出器324からの緊急停止入力信号320の検出に応答して、安全プロセッサ302は、材料試験システム100の状態を無効状態に設定し、緊急停止出力信号321を緊急停止部318(例えば、緊急停止スイッチ322)に与える。
【0058】
緊急停止スイッチ322は、緊急停止出力信号321に応答して、モーター242を停止させるようにアクチュエーター無効回路314及び/又はモーター制動回路314を制御するようアクチュエーター無効回路326を制御する。例示のアクチュエーター無効回路326は、モーター制動回路314への第1の接続と、アクチュエーター無効回路308への第2の冗長接続とを有することができる。アクチュエーター無効回路326がトリガーされると、アクチュエーター無効回路326は、モーター制動回路314をアクティブ化し、制動が行われることを可能にする時間の間、遅延を実施し、その後、アクチュエーター無効回路308をアクティブ化し、適用可能なアクチュエーターの通電を遮断する。
【0059】
安全プロセッサ302を介した制御に加えて又はその代わりに、緊急停止スイッチ322は、安全プロセッサ302とアクチュエーター無効回路308との間のSTO信号314の物理的な割り込み等によって電力増幅器310内のアクチュエーター無効回路308を直接作動させることができる。安全プロセッサ302は、緊急停止検出回路324を監視し、ハードウェアの冗長モニターとしての役割を果たす。緊急停止スイッチ322が解除されても、材料試験システム100が無効状態(例えば制限状態)に留まり、モーター242の動作を再度有効にするにはユーザー相互作用を必要とするように、安全プロセッサ302は、STO信号314を出力し、モーター242を無効にし続けるようにアクチュエーター無効回路308を制御する。
【0060】
例示の材料試験システム100(例えば、試験装置102)は、冗長な又はそれぞれ異なる接点を有するインターロック式ガードシステムと互換性がある。例示の安全システム240は、非制限状態において動作している間に材料試験システム100へのオペレーターアクセスに対する物理的バリア及び/又は仮想的バリアを提供するように構成される1つ以上のガード328及びガードインターロック330を備えることができる。例えば、ガード328は、空気圧グリップ248及び/又はクロスヘッド244(及び/又は他の可動構成要素)の周囲の体積領域(volume)へのアクセスを制御するために開閉される物理的バリアを含むことができる。例示の物理的バリアは、冗長安全スイッチを使用して、保護体積領域をガードするドアが開放されているのか又は閉鎖されているのかを監視することができるガードドアを含む。各ドアスイッチは、(例えば、ガードインターロック330によって)動的にパルス化することができ、及び/又は、それ以外に入力装置として収容することができる機械的にリンクされた通常時開放型接点及び通常時閉鎖型接点を有する。パルス化によって、リアルタイムでのガードドアスイッチの妥当性(plausibility)診断チェックが可能になる。
【0061】
加えて又は代替的に、ガード328は、体積領域内への侵入の有無について、空気圧グリップ248及び/又はクロスヘッド244の周囲の体積領域を監視する仮想的ガードを含むことができる。例示の仮想的ガードは、ライトカーテン、近接センサー、及び/又は圧力パッドを含むことができる。仮想的ガードは、アクセスを物理的に妨げるものではないが、仮想的ガードは、ガード信号をガードインターロック330に出力し、ガードインターロック330は、インターロック信号332を安全プロセッサ302及び/又はアクチュエーター無効回路308に出力する(例えば、上述した緊急停止スイッチ322と同様)。
【0062】
インターロック330は、アクチュエーター無効回路308をトリガーして、モーター242の通電を遮断することができる。いくつかの例では、ガードインターロック330がもはやトリガーされていないとき、上述した緊急停止スイッチ322と同様の方法で、安全プロセッサ302は電力増幅器310の再有効化を制御する。
【0063】
加えて又は代替的に、例示の安全システム240は、オペレーターが材料試験システム100の保護体積領域に入ると、デフォルトで、制限された「セットアップ」状態になることができる。システム100のアクチュエーターを無効にするか又はこのアクチュエーターの通電を遮断する代わりに、このセットアップ状態は、速度、圧力、又は他の活動に対して制限を実施する。
【0064】
例示の安全システム240は、複数の状態インジケーター252及びモードスイッチ254を備える。例示の安全プロセッサ302は、例えば、モードスイッチ254を動的にパルス化してモードスイッチ入力信号338(例えば、モードスイッチ254のそれぞれについて1つ以上のモードスイッチ入力)を生成又は取得することによってモードスイッチ254を監視する。いくつかの例では、モードスイッチ254は高信頼性スイッチである。安全プロセッサ302は、周期的に、非周期的に、イベント(例えば、材料試験機械の始動時)に応答して、所定のスケジュールに基づいて、及び/又は他の任意の時点に、短絡又は他の障害状態の有無についてモードスイッチ254を試験することができる。
【0065】
例示の安全プロセッサ302は、材料試験システム100の状態をオペレーターに示すように状態インジケーター252を制御する。例えば、安全プロセッサ302は、インジケーター信号342を状態インジケーター252に出力することができる。状態インジケーター252がライトである場合には、出力インジケーター信号342は、例えば、オン状態、オフ状態、点滅状態、及び/又はライトの他の任意の出力状態になるようにライトのそれぞれを制御することができる。いくつかの例では、安全プロセッサ302は、インジケーターフィードバック信号340を介してインジケーターの状態を判断する。例示のインジケーターフィードバック信号340は、状態インジケーター252のそれぞれがオンであるのか、オフであるのか、短絡しているのか、開回路であるのか、及び/又はインジケーター252の他の任意のステータス若しくは状態であるのかを安全プロセッサ302に示すことができる。状態インジケーター252のうちの1つ以上が命令された適切な状態にないとプロセッサが判断した場合には、安全プロセッサ302は、制限状態になるように材料試験システムを制御し、通知を(例えば、制御パネル250又は他の通知を介して)オペレーターに提供する。
【0066】
安全システム240は、材料試験システム100の構成要素に電力を提供する電源(例えば、DC電源及びAC電源)を監視する電源モニター344を備える。電源モニター344は、監視される電源がそれぞれの電圧範囲内及び/又は電流範囲内にあるか否かを示す1つ以上の電源ステータス信号346を安全プロセッサ302及び/又はウォッチドッグ回路362(以下で説明される)に提供する。電源のうちの1つ以上が許容範囲外にあると電源モニター344が判断した場合には、安全プロセッサ302及び/又はウォッチドッグ回路362は、材料試験システム100を無効にし、オペレーターにアラートすることができる。
【0067】
例示の安全システム240は、1つ以上の速度センサー348を更に備える。例示の速度センサー(複数の場合もある)348は、一体化された速度監視センサー、冗長の速度監視センサー、及び/又はそれぞれ異なる速度監視センサーとすることができる。速度センサー(複数の場合もある)348は、クロスヘッド速度を表す速度信号(複数の場合もある)350を安全プロセッサ302に提供する。安全プロセッサ302は、クロスヘッド244が、機械の現在の動作モードによって決まる上限速度(例えば、クロスヘッド移動量限界(複数の場合もある)352)を越えないことを確保するために、速度信号(複数の場合もある)350を監視する。例えば、上限速度の値は、材料試験システム100が制限状態にあるのか又は非制限状態にあるのかに依存することができる。いくつかの例では、異なる原理で動作する2つの速度センサーを材料試験システム100において使用して、センサー348が共通の原因故障を被ることを防止することができる。各速度センサー348の速度信号350は、安全プロセッサ302によって読み取られて比較され、速度信号350が一致していることが検証される。1つの速度センサー348が、別の速度センサー350と異なる速度を示している場合には、安全プロセッサ302は、(例えば、アクチュエーター無効回路308を介して)材料試験システム100を無効にする。
【0068】
例示のクロスヘッド移動量限界(複数の場合もある)352は、クロスヘッド244の位置に関する限界を指定する移動量限界を含むことができる。クロスヘッド移動量限界(複数の場合もある)352に達すると、安全プロセッサ302は、クロスヘッド244の運動を停止する。いくつかの例では、クロスヘッド移動量限界(複数の場合もある)352は、トリガーされる限界の数が、クロスヘッド移動量限界(複数の場合もある)352をどの程度越えているかを示すマルチレベル限界である。いくつかの例では、第1レベル限界は、モーター242等の適用可能なアクチュエーター(又は全てのアクチュエーター)の動作を停止させるように安全プロセッサ302によってハンドリングされる。クロスヘッド244が、第1レベル限界を越えて移動し続け、第2レベル限界(例えば、許容可能範囲の外側の第1レベル限界よりも遠くにある)に達すると、クロスヘッド移動量限界352は、アクチュエーター無効回路308及び/又はモーター制動回路316、及び/又はアクチュエーター無効回路326への直接接続(例えば、ハードウェア接続)をトリガーして、モーター242の2相無効化をトリガーすることができる。
【0069】
材料試験システム100が自動把持(例えば、空気圧動力供給型グリップ、油圧動力供給型グリップ、電気動力供給型グリップ、電気機械動力供給型グリップ、電磁動力供給型グリップ等)を備えるいくつかの例では、安全システム240は、マルチ圧力把持方式に従ってグリップアクチュエーターを制御するグリップコントローラー354を備える。マルチ圧力把持方式は、材料試験試料を材料試験システム100の空気圧グリップ248に設置するときにオペレーターへの傷害のリスクを低減(例えば、最小化、除去)する。
【0070】
安全プロセッサ302が、セットアップ状態において材料試験システム100を制御しているとき、安全プロセッサ302は、圧力信号356をグリップコントローラー354に提供する。グリップコントローラー354は、グリップアクチュエーター(複数の場合もある)246を制御することによって、グリップ248を介して印加することができる圧力に関する上限を制御する。圧力信号356(試料把持力に正比例することができる)は、グリップ248を介して試料を把持するには十分な圧力であるが、オペレーターに重傷をもたらすには十分でない圧力を可能にするように制限される。逆に、安全プロセッサ302が、注意状態又は試験状態において材料試験システム100を制御しているとき、安全プロセッサ202は、試験中に試験試料を把持するのに使用されるより高い圧力をグリップコントローラー354に可能にさせる圧力信号356を提供する。例示のグリップコントローラー354は、メインシステム圧力を(例えば、圧力センサー(複数の場合もある)358を介して)監視することができ、及び/又は、空気圧グリップ(複数の場合もある)248(例えば、上側グリップ及び下側グリップ)における圧力(複数の場合もある)を監視することができる。グリップコントローラー354は、命令された圧力が実施されていることを検証するために、圧力信号360を安全プロセッサ302に供給する。
【0071】
いくつかの例では、グリップコントローラー354は、フットペダルスイッチを使用したオペレーター入力を介して制御される。例えば、フットペダルスイッチは、空気圧グリップ(複数の場合もある)248を介した圧力印加及び圧力解除を行う個別のスイッチを備えることができる。これらのスイッチは、スイッチ間の妥当性のチェック及び/又はスイッチ内の潜在的な障害(例えば、電気的障害)の監視を行うために動的にパルス化することができる機械的にリンクされたスイッチとすることができる。
【0072】
安全プロセッサ302は、材料試験システム100への電力が無効にされると、グリップアクチュエーター(複数の場合もある)246の通電を遮断するようにグリップコントローラー354を更に制御する。例えば、安全プロセッサ302は、電力供給を受けているときに加圧を可能にするが、空気圧アクチュエーターの場合に、材料試験システム100が電力供給を受けていないときは空気圧グリップ(複数の場合もある)248が把持力を印加することが妨げられるように通常時は減圧されるように、(例えば、1つ以上の弁、リレー等を介して)グリップアクチュエーター(複数の場合もある)246を制御することができる。
【0073】
例示の安全システム240は、ウォッチドッグ回路362を更に備える。ウォッチドッグ回路362は、周期的に、非周期的に、1つ以上のイベント若しくはトリガーに応答して、及び/又は他の任意の時点に安全プロセッサ302と通信して、安全プロセッサ302の動作を検証する。例えば、安全プロセッサ302は、ハートビート信号、又はウォッチドッグ回路362からの問いかけに対する応答を通信し、安全システム240が適切に動作していることをウォッチドッグ回路362に示すことができる。ウォッチドッグ回路362が、予想された信号を安全プロセッサ302から受信しない場合には、ウォッチドッグ回路362は、材料試験システム100を無効にし、オペレーターに通知する。
【0074】
例示の安全プロセッサ302、例示の緊急停止部322、例示のガードインターロック330、例示のクロスヘッド移動量限界(複数の場合もある)352、及び/又は例示のウォッチドッグ回路362は、アクチュエーター無効回路326に結合される(例えば、ハードウェアを介して接続される)。安全プロセッサ302、緊急停止部322、ガードインターロック330、クロスヘッド移動量限界(複数の場合もある)352、及び/又はウォッチドッグ回路362のうちのいずれかが、それぞれの条件が、材料試験システム100を無効にするために(例えば、緊急停止スイッチ322のアクティブ化、ガード328のトリッピング、クロスヘッド移動量限界352の超過、及び/又はウォッチドッグ回路362のトリガー)満たされていると判断すると、アクチュエーター無効回路326が使用されて、モーター制動回路316及びアクチュエーター無効回路308がアクティブ化される。安全プロセッサ302は、材料試験システム100の状態が無効状態であると判断することができる。
【0075】
例示の制御プロセッサ238及び安全プロセッサ302は、別々のプロセッサとして示されているが、他の例では、制御プロセッサ238及び安全プロセッサ302は、単一のプロセッサ、又は、制御機能及び安全機能に分割されない一組のプロセッサに組み合わせることができる。さらに、制御プロセッサ238、安全プロセッサ302、及び/又は組み合わされたプロセッサは、1つ以上の専用機能を実行するアナログ回路類及び/又はデジタル回路類等の非処理回路類を備えることができる。
【0076】
図4A及び
図4Bは、
図1~
図3の材料試験システムの状態を制御するために
図3の安全プロセッサ302によって実行することができる例示の機械可読命令400を表すフローチャートを示している。例示の命令400は、複数の所定の状態から材料試験システムの状態を決定し、アクチュエーターに対して制限を実施し、アクチュエーターの制御を伴う動作の完了に応答して材料試験システムの状態を制限状態のうちの1つに自動的に設定するために実行することができる。
【0077】
ブロック402において、材料試験システム100及び/又は1つ以上のサブシステムの電源をオンにすることができる。材料試験システム100の電源がオンにされていない場合には、ブロック402は、材料試験システム100がオンにされるまで反復する。材料試験システム100の電源をオンにされると(ブロック402)、ブロック404において、安全システム240は、材料試験システム100の状態を無効状態に設定し、1つ以上のアクチュエーター(例えば、モーター242、グリップアクチュエーター(複数の場合もある)246)を無効にする。例えば、安全システム240は、アクチュエーター無効化回路308をモーター242の通電遮断にデフォルト設定することができる。
【0078】
ブロック406において、安全プロセッサ302が初期化される。例えば、安全プロセッサ302は、障害チェック(例えば、入力、出力、及び/又は付属デバイスの開回路及び/又は閉回路のチェック)、冗長性チェック(例えば、冗長入力及び/又は冗長出力が一致しているとの判断)、及び/又は他の初期化プロセスを実行することができる。
【0079】
ブロック408において、安全プロセッサ302は、何らかの障害が安全システム240に検出される(例えば、初期化プロセス中に検出される)か否かを判断する。障害が検出された場合には(ブロック408)、ブロック410において、安全プロセッサ302は障害アラートを(例えば、制御パネル250、コンピューティングデバイス104等を介して)出力する。例示の命令400は、その後、終了することができる。
【0080】
障害が検出されないときは(ブロック408)、ブロック411において、安全プロセッサ302は、材料試験システム100を無効状態からセットアップ状態に遷移させるオペレーター入力が受信されているか否かを判断する。例えば、安全プロセッサ302は、無効状態から遷移するために1つ以上の指定された入力(例えば、ロック解除ボタンの押圧)を必要とすることができる。オペレーター入力が受信されていない場合には(ブロック411)、ブロック411は、材料試験システム100が無効モードに留まっている間反復し、オペレーター入力を待ち受ける。
【0081】
オペレーター入力が受信されると(ブロック411)、ブロック412において、安全プロセッサ302は、材料試験システム100の状態をセットアップ状態に設定する。このセットアップ状態の設定に従って、安全プロセッサ302は、アクチュエーター(複数の場合もある)(例えば、モーター242)を有効にし、アクチュエーター(複数の場合もある)を制限し、状態を(例えば、状態インジケーター252を介して)セットアップ状態として示す。いくつかの例では、安全プロセッサ302は、材料試験システム100の状態がセットアップ状態であることに基づいて、オペレーター選択可能入力のうちの対応する入力(例えば、モードスイッチ254)を選択的に強調するように制御パネル250上の1つ以上の視覚インジケーターを制御する。例えば、安全プロセッサ302は、セットアップモードにおいてオペレーターが使用することができる入力を強調するとともに、セットアップモードにおいて使用することができない入力をあまり強調しないように視覚インジケーターを制御することができる。
【0082】
ブロック414において、安全プロセッサ302は、安全システム240の入力信号(例えば、センサー信号320、332、338、346、350)、フィードバック信号(例えば、フィードバック信号315、340、360)、及び/又は制御信号(例えば、制御プロセッサ238からの信号)を監視する。安全プロセッサ302は、例えば、安全プロセッサ302に材料試験システム100の状態の変化を認識させるオペレーターコマンド及び/又は状態を識別するために上記信号を監視することができる。
【0083】
ブロック416において、安全プロセッサ302及び/又は制御プロセッサ238は、制限を用いて(例えば、低速度又は低圧力において)アクチュエーター(複数の場合もある)を作動させるオペレーター制御信号が受信されているか否かを判断する。例えば、オペレーターは、モーター242を介して低速ジョグでクロスヘッド244を作動させる1つ以上のモードスイッチ254を選択することができる。アクチュエーターを作動させるオペレーター制御信号が受信されている場合には(ブロック416)、ブロック418において、制御プロセッサ238は、安全プロセッサ302によって適用される制限(例えば、速度制限、力制限、オペレータークリアランス制限)に従ってアクチュエーターを制御する。
【0084】
ブロック420において、安全プロセッサ302は、制御される作動の表示を出力する。例えば、安全プロセッサ302は、点滅するように状態インジケーター252のうちの1つ以上を制御し、コンピューティングデバイス104に作動の表示を出力させ、及び/又は他の任意の表示(複数の場合もある)を提供することができる。
【0085】
ブロック422において、安全プロセッサ302は、安全システム240の入力信号(例えば、センサー信号320、332、338、346、350)、フィードバック信号(例えば、フィードバック信号315、340、360)、及び/又は制御信号(例えば、制御プロセッサ238からの信号)を監視する。ブロック424において、安全プロセッサ302は、作動が終了したか否かを判断する。例えば、安全プロセッサ302は、モードスイッチ254をパルス化して、オペレーター制御信号のうちの1つ以上が変化したか否かを判断することができ、及び/又は、入力信号及びフィードバック信号を監視して、ガード及び/又はインターロックのトリガー、障害、及び/又は作動の中断を引き起こす他の任意のイベントを識別することができる。作動が終了していない場合には(ブロック418)、制御はブロック418に戻り、アクチュエーターの制御を継続する。
【0086】
作動が終了すると(ブロック424)、安全プロセッサ302は制御をブロック412に戻す。
【0087】
図4Bを参照すると、制限を用いてアクチュエーター(複数の場合もある)を作動させるオペレーター制御信号が受信されていない場合には(ブロック416)、ブロック426において、安全プロセッサ302及び/又は制御プロセッサ238は、低減された制限を用いて(例えば、高速度又は高圧力において)アクチュエーター(複数の場合もある)を作動させるオペレーター制御信号が受信されているか否かを判断する。例えば、クロスヘッド244をより高速でジョグさせるオペレーター入力及び/又は空気圧グリップ248を介してより高いクランプ圧力を試験試料に印加するオペレーター入力を受信することができる。加えて又は代替的に、材料試験を行うオペレーター入力及び/又はプログラム入力は、試験状態に入って試験を行う前の期間の間、材料試験システム100の状態を注意状態として設定することを伴うことができる。低減された制限を用いてアクチュエーター(複数の場合もある)を作動させるオペレーター制御信号が受信されていない場合には(ブロック426)、制御はブロック412に戻る。
【0088】
低減された制限を用いてアクチュエーター(複数の場合もある)を作動させるオペレーター制御信号が受信された場合には(ブロック426)、ブロック428において、安全プロセッサ302は、材料試験システム100の状態を注意状態に設定し、アクチュエーター制限(複数の場合もある)(例えば、グリップアクチュエーター(複数の場合もある)246に対する制限)を低減する。いくつかの例では、安全プロセッサ302は、注意状態において、モーター242及び/又はグリップアクチュエーター(複数の場合もある)246を制御プロセッサ238によって制御することを可能にすることもできる。例示の安全プロセッサ302は、材料試験システム100が注意状態にあることを示すように状態インジケーター252を更に制御する。
【0089】
ブロック430において、安全プロセッサ302及び/又は制御プロセッサ238は、材料試験(例えば、低減された制限を用いる)及び/又は低減された制限を用いる別の動作(例えば、クロスヘッド244の高速ジョグ)を行うオペレーター制御信号が受信されたか否かを判断する。例えば、大きな力及び/又は高い圧力を伴うプログラミングされた材料試験を行うオペレーター入力及び/又はコンピューティングデバイス104からの入力を受信することができる。
【0090】
材料試験及び/又は別の動作を行うオペレーター制御信号が受信された場合には(ブロック430)、ブロック432において、安全プロセッサ302は、材料試験システム100の状態を試験状態に設定し、アクチュエーター(複数の場合もある)(例えば、モーター242、グリップアクチュエーター(複数の場合もある)246)を有効にする。例示の安全プロセッサ302は、材料試験システム100が試験状態にあることを示すように状態インジケーター252を更に制御する。
【0091】
ブロック434において、制御プロセッサ238は、プログラミングされた試験及び/又は別の動作(例えば、低減及び/又は除去された制限を用いる)を行うようにアクチュエーターを制御する。ブロック436において、安全プロセッサ302は、進行中の材料試験の表示を出力する。例えば、安全プロセッサ302は、点滅するように状態インジケーター252のうちの1つ以上を制御することができ、コンピューティングデバイス104に非制限作動の表示を出力させることができ、及び/又は他の任意の表示(複数の場合もある)を提供することができる。
【0092】
ブロック438において、安全プロセッサ302は、安全システム240の入力信号(例えば、センサー信号320、332、338、346、350)、フィードバック信号(例えば、フィードバック信号315、340、360)、及び/又は制御信号(例えば、制御プロセッサ238からの信号)を監視する。ブロック440において、安全プロセッサ302は、材料試験及び/又は他の動作が終了したか否かを判断する。例えば、安全プロセッサ302は、モードスイッチ254をパルス化して、オペレーター制御信号のうちの1つ以上が変化したか否かを判断することができ、及び/又は入力信号及びフィードバック信号を監視して、ガード及び/又はインターロックのトリガー、障害、及び/又は作動の中断を引き起こす他の任意のイベントを識別することができる。作動が終了した場合には(ブロック440)、制御は、ブロック434に戻って、材料試験及び/又は他の動作を行うことを継続する。
【0093】
作動が終了すると(ブロック440)、安全プロセッサ302は、状態をセットアップ状態等の制限状態に自動的に変更し、制御をブロック412に戻す。
【0094】
図5は、
図2及び
図3の制御パネル250を実装するのに使用することができる一例示のオペレーターインターフェース500を示している。オペレーターインターフェース500は、例示の試験装置102に取り付けることもできるし、試験装置に近接して配置することもできるし、及び/又は試験装置102から遠隔に配置することもできる。例えば、オペレーターインターフェース500は、試験装置102のベース上に組み込み式のオペレーターパネル又はスイッチとして実装することができる。
【0095】
例示のオペレーターインターフェース500は、入力を
図2及び/又は
図3の制御プロセッサ238及び/又は安全システム240に提供する複数の入力デバイス(例えば、ボタン、スイッチ等)を備える。例示の入力デバイスは、状態制御ボタン502を備える。この状態制御ボタン502は、制限状態(例えば、セットアップ状態)から非制限状態(例えば、注意状態、試験状態)への遷移を制御し、非制限状態を伴う動作を実行するために使用されることが要求される場合がある。状態制御ボタン502は、非制限状態での材料試験システムの使用を可能にする「ロック解除」ボタン又は安全入力装置とみなすことができる。
【0096】
ジョグボタン504、506は、クロスヘッド244を上方向若しくは下方向(若しくは左方向及び右方向、若しくは他の任意の方位に基づく方向)(方向クロスヘッド移動の場合)、及び/又は、右回転方向若しくは左回転方向(回転クロスヘッド移動の場合)にジョグさせるようにモーター242を制御する。ジョグボタン504、506は、個別に押下されると、クロスヘッド244を低速(例えば、安全プロセッサ302によって決定される)で上方又は下方に移動させるように制御する。ジョグボタン504、506が、状態制御ボタン502と同時に押下されると、安全プロセッサ302は、モーター242に対する速度制限を削減し、より高速でのクロスヘッド244のジョグを可能にすることができる。例示のジョグボタン504、506は、方向入力装置としての機能を果たすことができる。クロスヘッド244が回転力又は回転運動を提供する例では、方向入力装置は、右回転及び左回転等の回転入力装置を含むことができる。
【0097】
本明細書において使用される場合、「同時に」受信されるとは、双方の入力が任意の所与の時点にアクティブ化又は押下されることを指し、双方のボタンが最初に正確に同じ瞬間に押下されなければならないことを必ずしも指さない。
【0098】
開始ボタン508は、材料試験を開始するように制御プロセッサ238を制御する。復帰ボタン510は、クロスヘッド244を所定の位置に復帰させるように制御プロセッサ238を制御し、この復帰は、低速又は高速で行うことができる。いくつかの例では、安全プロセッサ302は、開始ボタン508及び/又は復帰ボタン510が状態制御ボタン502とともに押下されることを必要とする。停止ボタン512は、動作中の試験を停止又は一時停止するように制御プロセッサ238を制御する。緊急停止スイッチ514は、
図3の緊急停止スイッチ322を実装するために含めることができる。
【0099】
オペレーターインターフェース500は、材料試験システム100の現在の状態の表示を出力する状態インジケーター516~522を更に備える。例示の状態インジケーター516~522は、安全プロセッサ302が判断することができる材料試験システム100の状態のそれぞれを表すライトである。
図5の例では、オペレーターインターフェース500は、無効状態インジケーター516と、セットアップ状態インジケーター518と、注意状態インジケーター520と、試験状態インジケーター522とを備える。状態インジケーター516~522のそれぞれは、材料試験システム100が対応する状態にあると安全プロセッサ302が判断したときに点灯され、現在の状態に対応していない状態インジケーター516~522は消灯される。
【0100】
図6は、
図2及び
図3の制御パネル250を実装するのに使用することができる別の例示のオペレーターインターフェース600を示している。この例示のオペレーターインターフェース600は、限られた一組の入力デバイス(例えば、ボタン、スイッチ等)を有するハンドセットとすることができる。オペレーターインターフェース600は、例示の試験装置102に取り付けることもできるし、試験装置に近接して配置することもできるし、及び/又は試験装置102から遠隔に配置することもできる。オペレーターインターフェース600は、状態制御ボタン602(例えば、
図5の状態制御ボタン502と類似又は同一)と、ジョグボタン604、606(例えば、ジョグボタン504、506と類似又は同一)と、開始ボタン608(例えば、開始ボタン508と類似又は同一)と、復帰ボタン610(例えば、復帰ボタン510と類似又は同一)とを備える。
【0101】
オペレーターインターフェース500、600は、プログラマブル機能をオペレーターに提供するカスタムボタン612、又はソフトキーを備えることができる。いくつかの例では、プログラマブル機能は、制限状態のうちの1つ以上の制限を受ける。
【0102】
図7は、材料試験システム100のスタートアップルーチン中の
図1の例示の材料試験システム100と、
図5及び
図6のオペレーターインターフェースとを示している。材料試験システム100は、電源を投入され、無効状態において初期化される。無効状態では、無効インジケーター516が(例えば、白色に)点灯され、材料試験システムが無効状態にあることを示す。加えて、
図1及び
図2のコンピューティングデバイス104、200上で実行されるユーザーインターフェース700は、材料試験システム100が無効状態にあることを示す目立つ(prominent)動作インジケーター702も含む。例示のオペレーターインターフェース500及び600は、押圧されたときに機能を提供するボタンのみを点灯又は強調する。電源投入ステージ(例えば、無効状態)においては、状態制御ボタン602のみが機能している。電力投入イベントに加えて、無効状態は、緊急停止スイッチがトリガーされたとき、ガードシステムがトリガーされたとき、障害に応答して、及び/又は状態を無効状態に設定することによって安全プロセッサ302が応答する他の任意のイベントに応答して生じることができる。
【0103】
オペレーターが状態制御ボタン602を押圧すると、安全プロセッサ302は、システムをセットアップ状態に変更する。
図8は、材料試験システム100のセットアップ状態における
図1の例示の材料試験システム100と、
図5及び
図6のオペレーターインターフェース500、600とを示している。安全プロセッサ302が状態をセットアップ状態に設定した後、安全プロセッサ302は、(例えば、青色又は緑色に)点灯してセットアップ状態をオペレーターに示すようにセットアップインジケーター518を制御する。加えて、ユーザーインターフェース700は、材料試験システム100がセットアップ状態(例えば、セットアップの準備完了)にあることを示す目立つ表示802を含む。セットアップ状態では、追加の制御ボタンが強調又は点灯され(例えば、ジョグ)、追加の機能が現在利用可能であることを示す。
【0104】
図9は、セットアップ状態において制限された作動を用いてクロスヘッド244をジョグさせている間の
図1の例示の材料試験システム100と、オペレーターインターフェース500、600とを示している。材料試験システム100がセットアップ状態(例えば、
図8に示す)にある間、オペレーターは、オペレーターインターフェース600上のジョグボタン604、606のいずれかを押し、クロスヘッド244を所望の位置に移動させるように制御プロセッサ238に命令することができる。ジョグボタン604、606のいずれかが押圧されると、安全プロセッサ302は、クロスヘッド244の(モーター242を介した)移動を限定されたジョグ速度に制限する。ジョグしている間、ユーザーインターフェース700は、材料試験システム100がジョグ移動を行っていることを示す目立つ表示902を含む。これは、テキスト、表示902及び/又はセットアップインジケーター518の点滅、及び/又は他の任意の強調を含むことができる。
【0105】
図10は、注意状態又は試験状態において低減された制限を用いてクロスヘッド244をジョグさせている間の
図1の例示の材料試験システム100と、
図5及び
図6のオペレーターインターフェースとを示している。例えば、いくつかの用途では、クロスヘッド244を比較的長い距離移動させなければならず、これには、制限された速度でかなりの時間量を要する可能性がある。実際的な必要性に対応し、進行時間を削減し、安全システム240を回避しようとする動機をなくすために、安全プロセッサ302は、1つ以上の非制限状態において制限を低減して、クロスヘッド244の高速ジョグを可能にすることができる。材料試験システム100が、
図9に示すセットアップ状態にある間、オペレーターは、状態制御ボタン602とジョグボタン604、606のうちの一方とを同時に押圧することができる。ボタン602と604又は606との組み合わせに応答して、制御プロセッサ238は、クロスヘッド244を移動させるようにモーター242を制御し、安全プロセッサ302は、材料試験システム100の状態を試験状態(又は注意状態)に設定し、モーター242に適用される制限を低減する。その結果、モーター242は、命令された方向により高速でクロスヘッドを移動させることが可能になる。安全プロセッサ302は、試験インジケーター522(又は注意インジケーター520)を点灯及び/又は点滅するように更に制御し、ユーザーインターフェースソフトウェアは、材料試験システム100がジョグ移動を行っていることを示す目立つ危険インジケーター1002を含む。これは、テキスト、表示1002及び/又は試験インジケーター522(又は注意インジケーター520)の点滅、及び/又は他の任意の強調を含むことができる。いくつかの例では、危険インジケーター1002は、特定の潜在的な危険を警告するアクティブ警告ラベルを連続して表示することができる。
【0106】
オペレーターが状態制御ボタン602を解除した場合には、ジョグ移動は、試験状態において低減された制限を用いて継続することができる。オペレーターがジョグボタン604、606を解除すると、制御プロセッサ238はジョグ移動を停止し、安全プロセッサ302は、材料試験システム100の状態をセットアップ状態に自動的に設定し、制限を元に戻す。いくつかの他の例では、オペレーターが状態制御ボタン602又はジョグボタン604、606のいずれかを解除すると、安全プロセッサ302は、材料試験システム100の状態をセットアップ状態に自動的に設定し、対応する制限を元に戻す。
【0107】
図11は、セットアップ状態において制限された作動を用いて空気圧グリップ(例えば、
図2の空気圧グリップ248)の作動を制御している間の
図1の例示の材料試験システム100と、オペレーターインターフェース500、600とを示している。
図11に示すように、材料試験システム100は、点灯されたセットアップインジケーター518及びユーザーインターフェース700におけるインジケーター802によって示すように、セットアップ状態にある(
図8と同様)。
図11の例は、空気圧グリップ(複数の場合もある)248を閉じる及び/又は開くようにグリップアクチュエーター(複数の場合もある)246を制御するためにオペレーターによって使用することができるフットペダル1102の形態のオペレーターインターフェースを更に含む。オペレーターは、試料1104を挿入し、フットペダル1102を押下して空気圧グリップ248を閉じる。例示の制御プロセッサ238は、試料1104に対して空気圧グリップ248を閉じるようにグリップアクチュエーター246を制御する。セットアップ状態では、安全プロセッサ302は、グリップアクチュエーター(複数の場合もある)246によって印加することができる空気圧と、空気圧グリップ(複数の場合もある)248によって印加することができるグリップ力とを制限するようにグリップコントローラー354を制御する。材料処理システム100の状態がセットアップ状態に留まっている間、安全プロセッサ302は、空気圧が上限を越えないことを確保するために、印加される圧力を(例えば、圧力センサー358を介して)監視する。
【0108】
図12は、注意状態又は試験状態において低減された制限を用いて空気圧グリップ248の作動を制御している間の
図1の例示の材料試験システム100と、オペレーターインターフェース500、600とを示している。
図12の例では、試料1104は、空気圧グリップ248に握持され、(
図11に関して論述したように)低い圧力設定で閉じられる。オペレーターは、状態制御ボタン602を押圧することによって高圧力クランププロセスを開始することができる。安全プロセッサ302は、状態制御ボタン602が押されたことを確認し、これに応答して、グリップアクチュエーター246に対する制限を低減し、グリップ圧力の増加を可能にする。安全プロセッサ302は、注意インジケーター520も制御し(例えば、黄色)、ユーザーインターフェース700は、材料試験システム100が注意状態(又は別の非制限状態)にあることを示す目立つインジケーター1202を表示する。これは、テキスト、表示1202及び/又は注意インジケーター520の点滅、及び/又は他の任意の強調を含むことができる。安全プロセッサ302及び/又は制御プロセッサ238は、開始ボタン508、608及び/又は復帰ボタン510、610を強調して、ボタン508、608、510、610がオペレーターによる使用に利用可能である(例えば、押されると機能を実行する)ことを示すことができる。
【0109】
高圧力クランプを行った後、例示の安全プロセッサ302は、材料試験システム100の状態をセットアップ状態に設定し、関連付けられた制限をアクチュエーター(複数の場合もある)242、246に適用することができる。
【0110】
図13A、
図13B、及び
図13Cは、材料試験を開始するためにセットアップ状態から注意状態及び試験状態に進行中の
図1の例示の材料試験システム100と、オペレーターインターフェース500、600とを示している。
図13Aに示す例示のセットアップ状態は、試料1302がグリップ248に握持され、高圧力設定で閉じられていることを除いて、
図8に示すセットアップ状態と同様又は同一のものとすることができる。
【0111】
オペレーターは、最初に状態制御ボタン602を押圧し、次に開始ボタン608を押圧することによって材料試験を開始することができる。安全プロセッサ302は、状態制御ボタン602の押圧に応答して注意インジケーター520を点灯するように制御し(
図13B)、ユーザーインターフェース700は、注意状態の表示1304(例えば、黄色の枠線及び/又はアクティブ警告のオーバーレイ)を表示する。開始ボタン608のその後の押圧に応答して、安全プロセッサ302は、次に、試験インジケーター522の点灯に移行し(
図13C)、ユーザーインターフェース700は、試験状態の表示1306(例えば、赤色の枠線及び/又はアクティブ警告のオーバーレイ)を表示する。制御プロセッサ238は、次に、安全プロセッサ302が状態を試験状態(例えば、非制限駆動モード)に設定すると、構成された試験の実行に進むことができる。ユーザーインターフェース700におけるオーバーレイは、ユーザーが進行中の試験測定をユーザーインターフェース700上で観察することを可能にするために、或る期間の後に除去することができる。一方、安全プロセッサ302は、試験中に他の視覚警告、可聴警告、及び/又はそれ以外の知覚可能警告の提供(例えば、試験インジケーター522の表示又は点滅、ユーザーインターフェース700上の表示1306のような赤色の枠線の表示又は点滅)を継続することができる。
【0112】
いくつかの例では、制御プロセッサ238は、伸び計の除去等の試料1302とのオペレーターインタラクション用に試験を一時停止する試験方法を用いて構成することができる。試験が、インタラクションが必要とされる点に達すると、制御プロセッサ238は、試験を一時停止する(例えば、モーター242による作動を中止する)。一時停止点に達すると、安全プロセッサ302は、材料試験システム100をセットアップ状態に設定し、ユーザーインターフェース700は、試験が一時停止されていることを示すものを表示する。加えて又は代替的に、安全プロセッサ302は、試験が一時停止状態にあり、完了していないことを視覚的に示す(例えば、ライトアップする、点滅する)ようにセットアップインジケーター518を制御することができる。
【0113】
オペレーターは、その後、状態制御ボタン602(例えば、ロック解除)と開始ボタン608とを同時に押圧することによって試験を再開することができる。安全プロセッサ302及び制御プロセッサ238は、その後、上述したような試験の開始と同じインジケーターのシーケンスを使用して試験を再開することができる。いくつかの例では、状態制御ボタン602が押圧されると、ユーザーインターフェース700は、システムが注意状態にあることと、試験が一時停止されていることとを示すものを表示する。
【0114】
試験が完了すると、安全プロセッサ302は、状態をセットアップ状態に自動的に設定し、関連付けられた制限を適用する。
【0115】
図14A、
図14B、及び
図14Cは、クロスヘッド244を所望の位置に復帰させるためにセットアップ状態から注意状態及び試験状態に進んでいる間の
図1の例示の材料試験システムと、
図5及び
図6のオペレーターインターフェース500、600とを示している。以前の試験が終了した後、材料試験システム100は、セットアップインジケーター518の点灯によって示されるセットアップ状態に設定される。クロスヘッド244は、例えば、前の試験が完了したロケーションに位置決めすることができる。セットアップ状態では、オペレーターは、安全プロセッサ302によって適用される制限を用いて、試料を除去し、及び/又は、試験装置102及び/又はオペレーターインターフェース500、600とインタラクトすることが可能になる。
【0116】
オペレーターがクロスヘッド244を所望の位置に復帰させる(例えば、別の試験を行う)準備ができると、オペレーターは、状態制御ボタン602と復帰ボタン610とを同時に又は順次押圧することによって復帰を開始することができる。安全プロセッサ302は、状態制御ボタン602の押圧に応答して注意インジケーター520を点灯する(
図14B)ように制御し、ユーザーインターフェース700は、注意状態の表示1402(例えば、黄色の枠線及び/又はアクティブ警告のオーバーレイ)を表示する。復帰ボタン610のその後の押圧に応答して、安全プロセッサ302は、次に、試験インジケーター522の点灯(
図14C)に移行し、ユーザーインターフェース700は、試験状態の表示1404(例えば、赤色の枠線及び/又はアクティブ警告のオーバーレイ)を表示する。制御プロセッサ238は、次に、安全プロセッサ302が状態を試験状態(例えば、非制限駆動モード)に設定すると、クロスヘッド244を低減又は除去された速度制限を用いて移動させるようにモーター242を制御することに進むことができる。
【0117】
クロスヘッド244が所望の位置(例えば、試験開始位置)に到達した後、安全プロセッサ302は、状態をセットアップ状態に自動的に設定する。
【0118】
材料試験システム100は、有効にされ動作する安全機能を一貫して(例えば、絶えず)有するが、安全システム240によって使用されるパラメーターのうちのいくつかは、所望のインタラクション(例えば、デフォルトのジョグ速度よりも低速のジョグ速度)を提供するように調整可能とすることができる。例示のコンピューティングデバイス104は、アドミニストレーター又は他の権限を有するオペレーターが安全システム240のいくつかのパラメーターを制御することを可能にすることができる。
【0119】
コンピューティングシステム104は、安全システムパラメーターの構成のためのインターフェースを提供することができるが、例示のコンピューティングシステム104は、パラメーターの実施に参加しない。安全システム240のパラメーターをデフォルトパラメーターから変更するには、権限を有するオペレーター又はアドミニストレーターは、変更を加えようとする権限を有するオペレーターを認証するソフトウェアセキュリティシステムを有効にすることが必要とされる場合がある。
【0120】
セキュリティシステムが有効にされると、オペレーターは、ジョグレート、グリップ圧力、制御点(例えば、ローカル又はリモート)、インターロック挙動(可動ガード)、及び/又は材料試験の開始等の動作を行うときの通知を却下するか否か等のパラメーターを変更することができる。変更前及び/又は変更後に、セキュリティシステムは、設定の変更を実施のために安全システム240に委ねることを可能にする有効な認証情報の入力を必要とする。安全システム240は、構成変更を記憶するためにシャットダウンされる場合があり、その結果、材料試験システム100の状態は無効状態に変化する。
【0121】
変更用のセキュリティシステムは、アドミニストレーター又は他の権限を有するオペレーターが特定のリスクアセスメントと一致した方法で安全システムを構成することを可能にするキーレスシステムであり、標準的なオペレーターがこれらの設定を無効にすることを防止する。キーレス管理機能は、キー又は選択制御を使用する従来の安全システムに起こる可能性がある偶然の誤用及び/又は意図的な誤用を防止する。
【0122】
図3に戻ると、いくつかの例では、グリップアクチュエーター(複数の場合もある)246は、空気圧グリップ(複数の場合もある)248への空気圧の印加及び/又は解除を制御するマニホルド並びに複数の充填弁及び/又は排気弁及び/又は圧力センサー及び/又は圧力スイッチを使用して実施される。グリップアクチュエーター(複数の場合もある)246を実施するのに使用することができる一例示のマニホルド、例示の充填弁及び排気弁、並びに例示の圧力スイッチは、2017年3月31日付けで出願された米国特許出願公開第2019/0113427号に開示されている。この米国特許出願公開第2019/0113427号の全体は、引用することによって本明細書の一部をなす。
【0123】
例示のマニホルド並びに複数の充填弁及び/又は排気弁及び/又は圧力センサー及び/又は圧力スイッチは、上述した状態に基づいて空気圧グリップ(複数の場合もある)の高圧力状態及び/又は低圧力状態を制御する安全プロセッサ302に結合することができる。
【0124】
図15は、
図3の安全システムの一部分を実施するのに使用することができる一例示の空気圧グリップシステム1500のブロック図である。この例示の空気圧グリップシステム1500は、メイン圧力センサー1502と、上部空気圧グリップ1508における圧力センサー1504及び下部空気圧グリップ1510における圧力センサー1506とから入力を受信する安全プロセッサ302を備える。
【0125】
安全プロセッサ302は、空気を上部グリップ又は下部グリップに誘導することができるマニホルド1514内への空気圧の印加を選択的に可能にするように充填弁1512も制御する。安全プロセッサ302は、システムを減圧するように放出弁1516を制御する。安全プロセッサ302は、空気圧を上部グリップ1508に誘導し及び/又は排気部1520を介して上部グリップ1508から圧力を解除するように上部グリップ弁1518も制御し、空気圧を下部グリップ1510に誘導し及び/又は排気部1520を介して下部グリップ1510から圧力を解除するように下部グリップ弁1522も制御する。放出弁1516、上部グリップ弁1518、及び下部グリップ弁1520の排気部1520は、組み合わされた排気チャネルであってもよいし、個別の排気チャネルであってもよい。
【0126】
グリップ充填制御弁1512、1516、1518、1522は、安全プロセッサ302及び/又は別のプロセッサによって制御することができ、これらのプロセッサのいずれか一方が、グリップ圧力を制御するタスク又はサブルーチンを実施することができる。充填弁及び/又は排気弁に使用することができる例示の弁は、比例弁等のソレノイド弁である。動作中、安全プロセッサ302は、充填弁1512、1518、1522及び排気弁1516を制御する。充填弁1512の充填ソレノイドが通電遮断されると(例えば、FALSE(偽)コマンド値)、室内に流入する空気供給が遮断される。充填弁1512の充填ソレノイドが通電されると(例えば、TRUE(真)コマンド値)、空気供給がメイン内部マニホルド配管に通される。放出弁1516の放出ソレノイドが通電遮断されると(例えば、FALSEコマンド値)、メイン内部マニホルド配管が外部排気ポートに接続される。放出弁1516の放出ソレノイドが通電されると(例えば、TRUEコマンド値)、メイン内部マニホルド配管が排気ポートから遮断される。これらのソレノイドは4つの可能な状態を有する。
充填コマンド=偽、放出コマンド=偽:圧力放出(デフォルト状態)
充填コマンド=偽、放出コマンド=真:圧力保持
充填コマンド=真、放出コマンド=偽:不使用。この状態は、入力空気供給を排気ポートから直接排気させるので回避されるべきである。
充填コマンド=真、放出コマンド=真:圧力充填
【0127】
安全プロセッサ302によって制御することができる3つの動作状態は、充填、放出、及び保持である。システムを充填状態に制御することによって、内部圧力は、充填状態にある時間の量に従って増加する。システムを放出状態に制御することによって、内部圧力は、放出状態にある時間の量に従って減少する。システムを保持状態に制御することによって、現在の内部圧力は、空気の少量の漏れがある場合にはその漏れを引いたもの又は更なる整定に維持される。
【0128】
電気機械式ソレノイドは、状態を瞬時に変化させないので、安全プロセッサ302は、遷移時間を使用して、充填状態、放出状態、及び保持状態の遷移のタイミングを調整することができる。
【0129】
圧力センサー1502、1504、1506は、アナログ/デジタル変換器を使用して実施することができる。このアナログ/デジタル変換器は、アナログ空気圧サンプルを圧力センサーから受信し、このアナログサンプルをデジタルサンプル値に変換する。
【0130】
従来の空気圧グリップシステムの1つの欠点は、圧力センサーがマニホルド内に配置されており、グリップの本体に配置されておらず、従来の制御システムが、空気圧がマニホルドに入ってから空気圧が空気圧グリップに到達するまでの遅延を考慮していないということである。
図16Aに示すように、従来の空気圧グリップ制御システムは、第1の圧力に向かうように指令される。マニホルド内に配置された圧力センサーは、増加した圧力をほぼ即時に読み取る。しかしながら、マニホルドをグリップの本体に接続するホースがあり、これにより、グリップを加圧する際に大幅な遅延が生まれる。例えば、グリップがマニホルドと同じ圧力に達するのに数百ミリ秒~数秒の遅延が存在し得る。その結果、加圧中に、グリップにおける真の圧力は分からない。
【0131】
開示される例は、時間間隔を置いて空気圧を印加することによって、圧力情報の遅延を克服する。例えば、安全プロセッサ302は、グリップソレノイドに数回通電して空気の短いバースト又はパルスをグリップ内に通し、その後、保持してシステムを安定させることによって、充填弁1512、上部グリップ弁1518、及び/又は下部グリップ弁1522を制御することができる。
図16Bは、グリップ圧力を増加させるのに使用される空気のバーストを示す一例示のグラフを示している。安全プロセッサ302は、圧力が保持中に低下するときに、圧力の変化率(例えば、傾き)を監視する。ラインの傾きが安定化されたとき(例えば、傾きが十分平坦であるとき、又は閾値未満であるとき)、グリップ1508、1510の本体の真の圧力読み取り値に達している。
【0132】
メイン圧力センサー1502は、全圧力空気吸気口の非常に近くに配置されているので、メイン圧力センサー1502によって測定される圧力は、充填弁1512、1518、1522が充填状態にある限り、急速に上昇して外部圧力近くになる。センサー1504、1506は、弁1512、1518、1522が、システム内の圧力を安定させるために或る期間の間保持状態に切り替えられない限り、グリップ1508、1510内の圧力を正確に反映しない。保持時間は大きく変動することが分かっていた。変動のほとんどは、異なるサイズのグリップの空気チャンバー内に必要とされる空気の容積の差に起因した使用中の特定のグリップに依存する。別の変動源は、グリップ内への空気の流入が可能にされる時間の量に関係している。この全体的な整定時間は、最小のグリップでも50msを越え、最大のグリップでも600msを下回ることが実験的に求められていた。600msの固定時間を使用すると、それよりも小さなグリップの動作が不必要に低速になる。保持中の圧力の変化率を監視することによって(例えば、
図16B参照)、安全プロセッサ302は、空気圧の安定化を検出することができる。例えば、圧力が安定化に近づくにつれて、変化率(又は傾き)はゼロに接近する。変化率が所定の閾値を下回ると、保持は終了する。
【0133】
例示の安全プロセッサ302は、空気圧が安定化するのに要する時間に基づいて各待機期間(例えば、空気圧バースト後の整定時間)の遅延を調整することができる。例えば、安全プロセッサ302は、現在の圧力と目標圧力との間の差に基づく、及び/又はシステムが所望の設定点と異なっていた全体時間に基づく利得を有する比例及び/又は積分制御を実施することができる。待機時間を調整することによって、安全プロセッサ302は、所望の圧力に達する時間を大幅に増加させる固定の長い遅延を有することを回避することができる。
【0134】
待機時間の終わりに、グリップ圧力が所望の圧力を下回っている場合には、安全プロセッサ302は、空気圧のバーストを繰り返すことができる。逆に、グリップ圧力が所定の許容範囲内にある場合には、安全プロセッサ302は、空気圧を維持するように弁を制御することができる。例示の制御プロセッサ302は、グリップ圧力の状態を使用して、グリップ圧力及び/又は上述したような他のシステム状態に基づいて動作を行うことができる。例えば、グリップが、より低い圧力で閉じられているとき、安全プロセッサ302は、グリップ圧力のより高い圧力への増加及び/又は制限状態若しくは無制限状態に基づく試験の開始の許可を可能にすることができる。
【0135】
例示の制御プロセッサ302は、バーストで圧力を下げること等によって、圧力を増加させるのと同様の方法でグリップの加圧を下げることができる。例えば、過剰に多くの空気がシステム内に流入されている場合、及び/又は、設定点圧力が下げられている場合に、制御プロセッサ302は、空気圧のバーストをグリップから排気し、その後、圧力を安定させるために保持状態に入るように放出弁(複数の場合もある)を制御(例えば、通電、通電遮断)することができる。システムの測定された圧力が、所望の設定点を依然として上回っている場合には、制御プロセッサ302は、所望の設定点圧力に達するまで、別の空気のバーストをシステムから排気させることができる。
【0136】
いくつかの例では、安全プロセッサ302は、最後の充填サイクル(例えば、空気圧バースト)における予想圧力増加と、最後の充填サイクルにおける実際の圧力増加とに基づいて利得を動的に調整する。実際の圧力増加が予想圧力増加未満であった場合には、安全プロセッサ302は利得を増加させる。逆に、実際の圧力増加が予想圧力増加よりも大きかった場合には、安全プロセッサ302は利得を減少させる。その結果、安全プロセッサ302は、ユーザーがグリップサイズに情報を提供することなく、50ニュートン(N)~10000Nのグリップ圧力を有するグリップ等の種々のサイズのグリップと同時使用することができる。50Nのグリップは小さな容積を有し、小さな空気圧バーストを用いて効果的に充填される。他方、10000Nのグリップは大きな容積を有し、50Nのグリップに使用される同じ継続時間の空気圧バーストを用いると、充填に非常に長い時間を要する。したがって、安全プロセッサ302は、サイズ容積がそれに関係していると判断(例えば、学習)し、空気圧充填パラメーターを調整する。
【0137】
本方法及びシステムは、ハードウェア、ソフトウェア、及び/又はハードウェア及びソフトウェアの組み合わせで実現することができる。本方法及び/又はシステムは、少なくとも1つのコンピューティングシステムにおいて集中的に、又はいくつかの相互接続されたコンピューティングシステムにわたって異なる要素が分散される分散的に、実現することができる。本明細書に記載した方法を実行するように適合された任意の種類のコンピューティングシステム又は他の装置が適している。ハードウェア及びソフトウェアの典型的な組み合わせは、汎用コンピューティングシステムを、ロードされ実行されるとコンピューティングシステムを本明細書に記載した方法を実行するように制御するプログラム又は他のコードとともに、含むことができる。別の典型的な実施態様は、特定用途向け集積回路又はチップを含むことができる。いくつかの実施態様は、非一時的機械可読(例えば、コンピューター可読)媒体(例えば、フラッシュドライブ、光ディスク、磁気記憶ディスク等)を含むことができ、そうした非一時的機械可読媒体は、機械によって実行可能なコードの1つ以上のラインを記憶し、それにより、機械に、本明細書に記載したようなプロセスを実施させる。本明細書において使用される場合、「非一時的機械可読媒体」という用語は、全てのタイプの機械可読記憶媒体を含み、伝播信号を排除するように定義される。
【0138】
本明細書において使用される場合、「回路」及び「回路類」という用語は、物理的な電子構成要素(すなわち、ハードウェア)と、ハードウェアを構成することができ、ハードウェアが実行することができ、及び/又は他の方法でハードウェアに関連付けることができる、任意のソフトウェア及び/又はファームウェア(「コード」)とを指す。本明細書において使用される場合、例えば特定のプロセッサ及びメモリは、コードの第1の1つ以上のラインを実行しているとき、第1の「回路」を含むことができ、コードの第2の1つ以上のラインを実行しているとき、第2の「回路」を含むことができる。本明細書において使用される場合、「及び/又は」は、「及び/又は」によって連結されるリストにおける項目のうちの任意の1つ以上の項目を意味する。一例として、「x及び/又はy」は、3つの要素の組{(x),(y),(x,y)}のうちの任意の要素を意味する。言い換えれば、「x及び/又はy」は、「x及びyのうちの一方又は両方」を意味する。別の例として、「x、y及び/又はz」は、7つの要素の組{(x),(y),(z),(x,y),(x,z),(y,z),(x,y,z)}のうちの任意の要素を意味する。言い換えれば、「x、y及び/又はz」は、「x、y及びzのうちの1つ以上」を意味する。本明細書において使用される場合、「例示的な」という用語は、非限定的な例、事例又は例証としての役割を果たすことを意味する。本明細書において使用される場合、「例えば」という用語は、1つ以上の非限定的な例、事例又は例証のリストを開始する。本明細書において使用される場合、回路類は、或る機能を実施するために必要なハードウェア及びコード(いずれかが必要である場合)を含む場合はいつでも、その機能の実施が(例えば、ユーザーが構成可能な設定、工場トリム等により)無効にされる又は有効にされていないか否かにかかわらず、回路類はその機能を実行するように「動作可能」である。
【0139】
本方法及び/又はシステムを、或る特定の実施態様を参照して記載してきたが、当業者であれば、本方法及び/又はシステムの範囲から逸脱することなく、種々の変更を行うことができること及び均等物に置き換えることができることを理解するであろう。例えば、開示した例のブロック及び/又は構成要素を、組み合わせ、分割し、再配置し、及び/又は他の方法で変更することができる。加えて、本開示の範囲から逸脱することなく、本開示の教示に対して特定の状況又は材料を適合させるように多くの改変を行うことができる。したがって、本方法及び/又はシステムは、開示されている特定の実施態様に限定されない。代わりに、本方法及び/又はシステムは、字義どおりにでも均等論のもとにおいても、添付の特許請求の範囲内に入る全ての実施態様を含む。
【国際調査報告】