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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-05
(54)【発明の名称】診断方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/10 20060101AFI20230329BHJP
【FI】
A61B3/10 300
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022544648
(86)(22)【出願日】2021-01-22
(85)【翻訳文提出日】2022-09-21
(86)【国際出願番号】 EP2021051527
(87)【国際公開番号】W WO2021148653
(87)【国際公開日】2021-07-29
(31)【優先権主張番号】2000926.2
(32)【優先日】2020-01-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507299817
【氏名又は名称】ユーシーエル ビジネス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100165803
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100170900
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 渉
(72)【発明者】
【氏名】コーデイロ,マリア フランチェスカ
(72)【発明者】
【氏名】マディッソン,ジョン
【テーマコード(参考)】
4C316
【Fターム(参考)】
4C316AA09
4C316AB06
4C316AB07
4C316AB12
4C316AB16
4C316FB21
4C316FB23
4C316FB27
4C316FC12
(57)【要約】
本発明は、網膜におけるミクログリア細胞の状態を特定し、該状態を疾患の段階に関連させるステップを含む、疾患、特に、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、及び緑内障などの眼神経変性疾患の段階を判定する方法に関する。また、眼において細胞を同定する方法、標識したマーカー及びその使用を提供する。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
疾患、特に神経変性疾患の段階を判定する方法であって、
(a) 対象の眼におけるミクログリア細胞の活性化状態のイメージを生成するステップと
(b) 前記細胞の前記状態を疾患の段階と関連させるステップとを含む方法。
【請求項2】
(c) 生成した前記イメージにおける活性化ミクログリア、分岐状ミクログリア、及び/又はアメーバ状ミクログリアの数をカウントするステップと、
(d) 前記イメージにおいて検出された活性化ミクログリア細胞、分岐状ミクログリア細胞、又はアメーバ状ミクログリア細胞の数又はパーセンテージを、これまでに得たイメージ、又は活性化ミクログリア、分岐状ミクログリア、若しくはアメーバ状ミクログリアの予想される数若しくはパーセンテージと比較するステップのうちの1つ又は両方をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記眼における細胞の状態のパターンを特定し、前記パターンを疾患の状態に関連させるステップをさらに含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記対象は、標識したマーカーを投与した対象である、請求項1~3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記対象に標識したマーカーを投与するステップをさらに含む、請求項1~3のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記標識したマーカーは、アポトーシスマーカー、特に標識したアネキシン、より具体的にはアネキシン5である、請求項4又は5に記載の方法。
【請求項7】
前記標識は、可視標識、特に波長最適化標識、より具体的にはD-776である、請求項4、5、又は6に記載の方法。
【請求項8】
アポトーシス細胞のイメージを生成するステップと、任意で、アポトーシス細胞の数をカウントする及び/又はアポトーシス細胞のパターンを観察するステップと、任意で、前記アポトーシス細胞の数又は前記アポトーシス細胞のパターンを、予想される数若しくはパターン、又はこれまでに前記対象から生成したイメージにおけるアポトーシス細胞の数若しくはパターンと比較するステップとをさらに含む、請求項1~7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記イメージを、以前の時点で得た前記対象の眼の1つのイメージ又は1つを超えるイメージと比較するステップ、
1つのイメージにおける活性化ミクログリア及び/又はアメーバ状ミクログリアの数又はパターンを、これまでのイメージと比較するステップ、
1つのイメージにおける特定の細胞を、これまでのイメージにおける同じ細胞と比較するステップ、並びに
1つのイメージにおける、アポトーシス細胞の数若しくはパターン、又は、特定の細胞を、以前のイメージにおける同じ細胞と比較するステップのうちの1つ以上をさらに含む、請求項1~8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
1つのイメージを、1つ、2つ、3つ以上のさらなるイメージと重ね合わせるステップを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記疾患は、眼神経変性疾患である、請求項1~10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記対象の適切な処置を判定するステップ、及び/又は、特に緑内障若しくは他の神経変性疾患の処置を前記対象に行うステップをさらに含む、請求項1~11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
ミクログリア活性化状態の特定における使用のための標識したアポトーシスマーカー。
【請求項14】
網膜のイメージにおいて細胞を同定する方法であって、
(a) 対象の網膜のイメージを提供するステップと、
(b) 標識した細胞の候補としてそれぞれの前記イメージにおいて1つ以上のスポットを特定するステップと、
(c) 選択したものを選別するステップと、任意で、
(d) 強度のばらつきに対して結果を正規化するステップとを含む方法。
【請求項15】
前記対象の網膜の1つを超えるイメージを提供するステップをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
1つのイメージに見られる細胞が他のイメージに見られる細胞と確実にアライメントされるように、前記イメージをアライメントするステップをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
誤った候補を識別させ得る既知の変形物に対応するステップをさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記ステップの少なくとも1つを、自動化した手段によって行い、任意で、前記自動化した手段は、これ以降の結果を向上させるように訓練される、請求項14~17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
前記標識した細胞は、ミクログリア細胞、網膜神経細胞、特に網膜神経節細胞、又はその両方である、請求項14~18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
例えば疾患の段階を判定するため、網膜における細胞の状態を特定する、コンピューターにより実施される方法であって、
(a) 対象の網膜のイメージを提供するステップと、
(b) 標識した細胞の候補としてそれぞれの前記イメージにおいて1つ以上のスポットを特定するステップと、
(c) オブジェクト分類フィルターを使用して、テンプレートマッチングによってなされた選択を選別するステップと、任意で、
(d) 強度のばらつきに対して結果を正規化するステップとを含む方法。
【請求項21】
例えば疾患の段階を判定するため、網膜における細胞の状態を特定するコンピュータープログラムであって、前記コンピュータープログラムは、処理システムによって実行すると、該処理システムに、
(a) 対象の網膜のイメージを提供すること、
(b) テンプレートマッチングを使用して、標識した細胞の候補としてそれぞれの前記イメージにおいて1つ以上のスポットを特定すること、
(c) オブジェクト分類フィルターを使用して、テンプレートマッチングによってなされた選択を選別すること、及び、
(d) 強度のばらつきに対して結果を正規化することを行わせる、コンピュータープログラム。
【請求項22】
処理システムによって実行すると、該処理システムに請求項14~19のいずれか1項に記載の方法を行わせる一式のコンピューター可読指示を格納した、非一時的なコンピューター可読記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に眼における細胞死及び/又は活性化状態のイメージを使用する、診断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
細胞死及び神経細胞喪失は、アルツハイマー病(AD)、パーキンソン病、ハンチントン病、及び緑内障などの病態における神経変性の主要な病理学的促進要因である。ADは、今後20年間にわたって罹患するアメリカ人が400万人から1200万人に増加すると予測される、最も一般的な単一形態の認知症である。緑内障は、全世界において不可逆的な失明の主要な原因であり、40歳以上の人の2%が罹患している。この病態は、その沈黙性と進行性のゆえに著しい罹患率を有し、しばしば診断と処置の遅れを生じさせる。
【0003】
生細胞イメージングは、in vitroでの培養細胞における神経機能障害を調査するために広く使用されており、蛍光多重標識とともに、様々な細胞活性及び特定の分子局在化パターンを可視化可能である。本発明者らは、標識したアポトーシスマーカーを使用して、網膜神経節細胞死を観察できること(特許文献1)、及び所定の病態の診断において細胞死を監視する有用性(特許文献2)をこれまでに報告している。本発明者らは、眼における他の細胞型の状態、特にミクログリア細胞の活性化状態も観察可能であることを驚いたことに見出した。さらに、本発明者らは、所定の期間にわたって細胞の状態を正確に監視可能であることを見出した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2009/077790号
【特許文献2】国際公開第2011/055121号
【発明の概要】
【0005】
本発明の第1の態様は、疾患、特に神経変性疾患の段階を判定する方法を提供し、該方法は、対象の眼におけるミクログリア細胞の活性化状態を特定し、該細胞の状態を疾患の段階と関連させるステップを含む。活性化状態を特定するステップは、ミクログリア細胞のイメージを生成することを含むことができる。
【0006】
ミクログリア細胞は、脳及び脊髄の各所に見受けられる。上述の細胞は、反応又は休止(分岐状)状態であり得る。反応ミクログリアは、活性化ミクログリア、及び活性化ミクログリアになることができるミクログリアであるアメーバを含む。活性化ミクログリアは、抗原提示性、細胞傷害性、及び炎症媒介性シグナリング能を有し、異物を貪食することができる。また、アメーバ状ミクログリアも異物を貪食することができるが、抗原提示活性を有しない。分岐状ミクログリアは貪食できない。
【0007】
本発明者らは、反応ミクログリアと分岐ミクログリアと識別することができることを見出した。さらに、本発明者らは、アメーバ状ミクログリア、分岐状ミクログリア、又は活性化ミクログリアの数及び/又は位置を、疾患の段階の指標を得るために使用できることを見出した。活性化ミクログリアの存在は、一般に、若年及び又は健康な人に関連する一方、アメーバの存在は疾患に関連する。対象の年齢又は健康状態に基づいて予想され得るよりも、少数若しくは低パーセンテージの活性化ミクログリア及び/又は多数若しくは高パーセンテージのアメーバ状ミクログリアが見つかった場合、該対象が神経変性疾患を有し得ること又は神経変性疾患を発症する可能性があることの指標となる。
【0008】
上述の方法は、生成したイメージにおける活性化ミクログリア、分岐状ミクログリア、及び/又はアメーバ状ミクログリアの数をカウントするステップを含むことができる。また、上述の方法は、イメージにおいて検出された活性化ミクログリア細胞、分岐状ミクログリア細胞、又はアメーバ状ミクログリア細胞の数又はパーセンテージを、これまでに得たイメージ、又は活性化ミクログリア、分岐状ミクログリア、若しくはアメーバ状ミクログリアの予想される数若しくはパーセンテージと比較することを含むことができる。活性化ミクログリア、分岐状ミクログリア、又はアメーバ状ミクログリアの予想される数又はパーセンテージは、同じ対象のこれまでのイメージに基づいて予測したミクログリアの数若しくはパーセンテージ、又は同様の年齢の同様の対象若しくは多数の対象において検出したこれらのミクログリアの平均数も若しくは平均パーセンテージとすることができる。
【0009】
また、本発明者らは、活性化ミクログリア、分岐状ミクログリア、及び/又はアメーバ状ミクログリアのパターンを、疾患状態及び特定の疾患と結びつけることができるということを特定した。例えば、本発明者らは、健康な対象が、網膜にわたる活性化ミクログリアの規則的かつ通常の分布を有するが、神経変性疾患を有する対象は、網膜にわたる活性化ミクログリアの拡散した不規則なパターンを有するか、又は多数のアメーバ状ミクログリアを含む領域を有する可能性が高い。本発明者らは、緑内障において、貪食性ミクログリアが概して乳頭黄斑線維束周りに見受けられる一方、AMDにおいて、これらは黄斑周りに見受けられる。したがって、イメージにおいて検出されたパターン、又はパターンの変化は、対象が神経変性疾患を有すること、又はその疾患の悪化若しくは改善を示すことができる。上述の方法は、眼における細胞の状態のパターンを特定し、該パターンを疾患の状態に関連させるステップを含むことができる。
【0010】
眼におけるミクログリアの状態は、マーカー、特に標識したマーカーを対象に投与することによって特定することができる。したがって、上述の対象は、標識したマーカーを投与した対象とすることができる。あるいは、上述の方法はまた、標識したマーカーを対象に投与することを含むことができる。上述のマーカーは、任意の適切な方法、特に静脈内注入、経局所、又は点鼻によって投与することができる。
【0011】
本発明者らは、上述の標識したマーカーがアポトーシスマーカーであり得るということを驚いたことに見出した。「アポトーシスマーカー」という用語は、アポトーシスする細胞を生細胞及び好ましくはネクローシス細胞から識別することができるマーカーを指す。アポトーシスマーカーは、例えばアネキシンファミリーのタンパク質を含む。アネキシンは、陽イオンの存在下で細胞膜に可逆的に結合するタンパク質である。本発明において有用なアネキシンは、天然又は組換えであることができる。上述のタンパク質は、全タンパク質、又は機能性フラグメント、すなわち全タンパク質と同じ分子に特異的に結合するアネキシンのフラグメント若しくは部分とすることができる。また、そうしたタンパク質の機能性誘導体を使用することもできる。米国特許出願公開第2006/0134001号に記載されているものなどの、種々のアネキシンが利用可能である。好ましいアネキシンは、当該分野において周知のアネキシン5である。アポトーシスマーカーとして使用し得る他のアネキシンは、アネキシン1、2及び6を含む。他のアポトーシスマーカーは当該分野において知られており、例えばシナプトタグミン-IのC2Aドメイン、デュラマイシン、非ペプチド系イサチンスルホンアミド類似体、例えばWC-Il-89、並びにアポセンス、例えばNST-732、DDC、及びML-10(Saint-Hubert el ai,2009)を含む。
【0012】
アポトーシスマーカーは、好ましくは可視標識で標識する。特に、標識は、好ましくは波長最適化標識である。「波長最適化標識」という用語は、励起に反応して光を放出する物質であるともに、光毒性作用を回避するため光暴露安全性基準を順守しながら、高いシグナル対ノイズ比、そしてそれによるイメージ解像度及び感度の向上との理由から使用において選択された蛍光物質を指す。最適化波長は、赤外波長及び近赤外波長を含む。そうした標識は当該分野で周知であり、IRDye700、IRDye800、D-776及びD-781などの色素を含む。また、そうした色素を、タンパク質及び核酸などの他の分子にコンジュゲートすることによって形成される蛍光物質も含む。最適化波長は、投与したとき炎症をほとんど又は全く生じさせないことが好ましい。好ましい波長最適化標識はD-776であり、これは、他の色素が炎症を生じさせ得るのに対し、D-776は眼においてほとんど又は全く炎症を生じさせないことが分かっているためである。また、最適化色素は、好ましくは、組織学的に検出され得る蛍光のレベルとインビボで検出され得る蛍光のレベルとの間の密接な相関を明らかにする。組織学的蛍光とインビボでの蛍光との間に実質的な相関、特に1:1の相関が存在することが特に好ましい。
【0013】
特定の実施形態において、マーカーはD-776で標識したアネキシン5である。アネキシン5は、野生型アネキシン5又は修飾アネキシン5とすることができる。特定の実施形態において、アネキシン5は、アネキシンの一分子が正確な細胞のカウントを可能にする標識の一分子と確実にコンジュゲートするように修飾されている。
【0014】
標識したアポトーシスマーカーは、波長最適化標識をマーカー化合物とコンジュゲートする標準的な技術を使用して調整することができる。そうした標識は、Dyomics社などの周知のソースから取得することができる。標識をマーカーにコンジュゲートする適切な技術は、当該分野で知られており、標識の製造者から得ることができる。
【0015】
アポトーシスマーカーを使用する利点は、上述の方法がアポトーシス及びミクログリアの状態を特定又は監視するためにも使用できることである。本発明者らは、マーカーを結合したアポトーシス細胞とマーカーを貪食したミクログリア細胞とをさらに識別することができるということを驚いたことに見出した。マーカーを結合したアポトーシス細胞は、概して、中心に孔を有する円形のリング形状のように見える。活性化ミクログリアは2つの形態で現れ、その複数のプロセスによって認識できる。アメーバ状ミクログリアは、活性化ミクログリアと比較すると大きい。
【0016】
細胞の状態のイメージを生成するステップは、アポトーシス細胞のイメージを生成することを含むことができる。また、上述の方法は、アポトーシス細胞の数をカウントすること、及び/又はアポトーシス細胞のパターンを観察することを含むことができる。また、上述の方法は、アポトーシス細胞の数又はパターンを、予想される数若しくはパターン、又はこれまでに対象から生成したイメージにおけるアポトーシス細胞の数若しくはパターンと比較することを含むことができる。上述のアポトーシス細胞は、特に、網膜神経節細胞(RGC)、双極細胞、アマクリン細胞、水平細胞、及び光受容体細胞などの網膜神経細胞とすることができる。一実施形態において、上述の細胞は網膜神経節細胞である。アポトーシス網膜神経細胞とミクログリア活性化状態との両方の組合せの使用により、診断を向上させる。
【0017】
特定の細胞を経時で比較することによって得られる疾患の進行又は処置の効果を監視可能であることが特に好ましい。したがって、上述の方法は、イメージを、以前の時点で得た対象の眼のイメージ又は1つを超えるイメージと比較するステップをさらに含むことができる。上述の方法は、1つのイメージにおける活性化ミクログリア及び/若しくはアメーバ状ミクログリアの数若しくはパターンを、これまでのイメージと比較することを含むことができ、並びに/又は1つのイメージにおける特定の細胞を、これまでのイメージにおける同じ細胞と比較することを含むことができる。以前のイメージと後のイメージとの間におけるミクログリア細胞の活性化状態における変化は、疾患の進行を示し得る。また、上述の方法は、1つのイメージにおける、アポトーシス細胞の数若しくはパターン、又は、特定の細胞を、以前のイメージにおける同じ細胞と比較して、また疾患の進行又は処置の効果を監視することを含むことができる。活性化ミクログリア若しくはアメーバ状ミクログリア、及び/又はアポトーシス細胞の数又はパターンにおける変化は、臨床医に疾患の進行についての情報を与えることができるアメーバ状ミクログリア及び/又はアポトーシス細胞の数の増加は、疾患の進行を示し得る。同様に、疾患がその後期段階に達すると、アメーバ状細胞又はアポトーシス細胞の数の減少が見受けられ得る。熟練した臨床医は、1つのイメージにおいて見られる細胞の数に従って、又は1つ以上のさらなるイメージとの比較を用いて、段階を識別可能である。
【0018】
特定の細胞を比較するとき、1つのイメージを他のものと正確に重ね合わせることができるということが有利である。上述の方法は、1つ、2つ、又は3つ以上のさらなるイメージを伴って、このステップを含むことができる。
【0019】
上述の疾患は、好ましくは眼神経変性疾患である。「眼神経変性疾患」という用語は当業者に周知であり、眼神経の漸進性及び進行性の喪失によって生じる疾患を指す。これらは、緑内障、糖尿病性網膜症、AMD、アルツハイマー病、パーキンソン病、及び多発性硬化症を含むがこれらに限定されない。
【0020】
細胞のイメージを生成するため、標識マーカーは、例えば静脈内注入、局所投与、又は点鼻によって対象に投与される。イメージングする対象の領域である眼は、検眼鏡、特に共焦点走査型レーザー検眼鏡などの医療イメージング装置の検出フィールド内に配置される。その後、標識マーカーの発光波長をイメージングし、細胞死の領域マップを得るようにイメージを構成する。イメージの生成を所定の期間にわたって繰り返すことができる。これは、リアルタイムで監視することができる。
【0021】
特定の処置方針を選択し、任意で監視することができるので、疾患を段階分け又は診断できることは特に有用である。したがって、上述の方法は、任意で、緑内障又は他の神経変性疾患の処置を対象に行うことを含む。緑内障の処置は、当該分野で周知である。緑内障の処置の例を発明の詳細な説明に記載する。他の処置も適切であり得、熟練した臨床医は難なく選択することができ得る。
【0022】
また、本発明は、ミクログリア活性化状態の特定における使用のための、本明細書に記載するような標識したアポトーシスマーカーを提供する。
【0023】
本発明者らは、網膜のイメージにおいて細胞を同定する方法に対する改良をさらに行った。例えば、本発明者らは、検眼鏡を使用して生成されるイメージにおいて細胞の状態を監視する方法における改良を行った。特に、細胞を、本明細書に記載の波長最適化標識で標識することができた。目的の細胞型は、例えばミクログリア及び網膜神経節細胞を含む。上述の方法は、好ましくは、
(a) 対象の網膜のイメージを提供するステップと、
(b) 標識した細胞の候補として各イメージにおいて1つ以上のスポットを特定するステップと、
(c) 選択したものを選別するステップと、任意で、
(d) 強度のばらつきに対して結果を正規化するステップとを含む。
【0024】
上述のスポットは、任意の適切な方法で特定することができる。小塊検出のためのものなどの既知の方法は、畳み込みによるテンプレートマッチング、しきい値処理(静的又は動的)後の連結成分分析、分水嶺検出、ラプラシアン・ガウシアン、一般化ハフ変換、及びスポークフィルターを含む。一実施形態において、上述のスポットは、テンプレートマッチングによって特定される。
【0025】
選択したものを選別するステップは、例えば、任意で例えばオートエンコーダーを使用して自動的に算出することができる、静的固定しきい値フィルター、ディシジョンツリー、サポートベクターマシン、及びランダムフォレストなど、算出した既知の画像メトリックに基づいて選別すること、又はイメージ全体及び自動算出した特徴を使用し、Mobilenet、Vgg16、ResNet、及びInceptionなどの深層学習法を使用して選別することを含む、任意の適切な方法によって行うことができる。
【0026】
上述の方法は、対象の網膜の1つを超えるイメージを提供する、例えば別の時間区分に撮ったイメージを提供するステップを含むことができる。上述のイメージは、数ミリ秒、数秒、数分、数時間、数日、又はさらに数週隔てて得ることができる。1つを超えるイメージを使用する場合、上述の方法はまた、1つのイメージに見られる細胞が他のイメージに見られる細胞と確実にアライメントされるように、イメージをアライメントするステップを含むことができる。本発明者らは、経時で個々の細胞の状態を監視するため、イメージをアライメントすることが重要であることを見出した。網膜のイメージを繰り返し撮って、各イメージにおいて網膜をまったく同じ向きに留めることは極めて困難である。また、患者及び眼の位置及び向きの物理的違いに適応することも必要である。本発明者らは、別の時点で撮ったイメージをアライメントし、個々の細胞の変化を見ることが可能であるということを驚いたことに見出した。イメージをアライメントするステップは、それらを積み重ねるステップを含むことができる。
【0027】
上述の方法は、誤った候補を識別させ得る既知の変形物に対応するステップをさらに含むことができる。これは、標識した細胞を誤って識別する可能性を低めるため、網膜の特徴又は他の変形物を考慮することができることを意味する。そうした変形物は、非線形強度変化、光学的なぶれ、位置合わせのぶれ、及び微光ノイズ、並びに脈絡膜血管構造のパターン、血管、白内障によるぼやけなどの生物学的な複雑性を含む。
【0028】
上述の方法のステップは、任意の適切な機構又は手段によって行うことができる。例えば、これは、手作業で又は自動化した方法を使用して行うことができる。分類ステップは、特に、例えば人工ニューラルネットワークを使用して、自動化した手段によって行うことができる。
【0029】
上述の方法のステップを自動化した手段によって行う場合、該自動化した手段は、これ以降の結果を向上させるように訓練することができる。例えば、上述の方法は、自動化した手段によって特定又は分類したスポットを、人による観察又は他の自動化した手段によって特定又は分類したスポットと比較し、標識した細胞の候補をより良好に特定するように第1の自動化した機構を訓練するためにその結果を使用するステップをさらに含むことができる。
【0030】
ステップ(a)は、対象の網膜をイメージングするステップを含むことができる。網膜は、例えば1回、2回、3回、4回、5回以上イメージングすることができる。
【0031】
標識した細胞は、ミクログリア細胞、網膜神経細胞、特に網膜神経節細胞、又はその両方とすることができる。
【0032】
また、本発明は、他の態様において、例えば疾患の段階を判定するため、網膜における細胞の状態を特定する、コンピューターにより実施される方法を提供し、該方法は、上述のように、
(a) 対象の網膜のイメージを提供するステップと、
(b) 標識した細胞の候補として各イメージにおいて1つ以上のスポットを特定するステップと、
(c) 選択したものを選別するステップと、任意で、
(d) 強度のばらつきに対して結果を正規化するステップとを含む。
【0033】
本発明は、他の態様において、例えば疾患の段階を判定するため、網膜における細胞の状態を特定するコンピュータープログラムをさらに提供し、該コンピュータープログラムは、処理システムによって実行すると、該処理システムに、
(a) 対象の網膜のイメージを提供すること、
(b) テンプレートマッチングを使用して、標識した細胞の候補として各イメージにおいて1つ以上のスポットを特定すること、
(c) オブジェクト分類フィルターを使用して、テンプレートマッチングによってなされた選択を選別すること、及び任意で、
(d) 強度のばらつきに対して結果を正規化することを行わせる。
【0034】
本明細書に記載する疾患の段階を判定する方法は、処理システム又はプロセッサーにおいて動作するコンピューター処理を使用して実施することができる。これらの方法は、上述の態様を実行するように適応させた、コンピュータープログラム、特にキャリア上又はキャリア内のコンピュータープログラムに拡張することができる。上述のプログラムは、非一時的なソースコード、オブジェクトコード、コード中間ソース、及び部分的にコンパイルした形態などのオブジェクトコードの形態、又は本明細書に記載の処理の実施における使用に適した任意の他の非一時的な形態とすることができる。上述のキャリアは、プログラムを含むことができる任意のエンティティ又はデバイスとすることができる。例えば、上述のキャリアは、ソリッドステートドライブ(SSD)又は他の半導体ベースのRAM、ROM、例えばCD ROM又は半導体ROM、磁気記録媒体、例えばフロッピーディスク又はハードディスク、光学メモリデバイス一般などの記憶媒体を含むことができる。
【0035】
実施形態において、処理システムによって実行すると、該処理システムに疾患の段階を判定する方法を行わせる一式のコンピューター可読指示を格納した、非一時的なコンピューター可読記憶媒体を提供し、該方法は、テンプレートマッチングを使用して、標識した細胞の候補として対象の網膜の1つ以上のイメージにおいて1つ以上のスポットを特定するステップ、オブジェクト分類フィルターを使用して、テンプレートマッチングによってなされた選択を選別するステップ、及び強度のばらつきに対して結果を正規化するステップを含む。記載する例は、(非一時的な)メモリに格納したコンピューターソフトウェアによって少なくとも部分的に実施することができ、プロセッサー、又はハードウェア、又は実体的に格納したソフトウェア及びハードウェア(及び実体的に格納したファームウェア)の組合せによって実行可能であり得る。また、上述の方法は、対象の網膜の1つ以上のイメージを提供するステップを含むことができる。
【0036】
本発明を、ここで、添付の図面に関して、例のみとして、詳細に記載する。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1図1は、ナイーブラット、及び緑内障モデルラットの両眼(OHT及びIVT)のミクログリアを示す。
図2図2は、老齢及びIVTのアルツハイマー3×TGマウスモデルにおけるミクログリアを示す。
図3図3は、中年及びIVTのDARC及びアルツハイマー3×TGマウスモデルを示す。
図4図4は、アネキシンVによるミクログリア染色を示す。
図5図5は、経鼻DARCによるDARC及びアルツハイマー3×TGマウスモデルの結果を示す。
図6図6は、緑内障及びコントロールのコホート対象及びDARCイメージ分析を示すConsort模式図である。
図7図7は、DARCイメージの分析段階を示すCNN支援アルゴリズムフローチャートである。
図8図8は、ありうるスポット候補の代表的な網膜イメージである候補のスポットは、テンプレートマッチング及び相関マップを使用して検出した。極大値を選択し、相関係数及び強度標準偏差(スポットの輝度に対応する)のしきい値で選別した。このしきい値を極めて低く設定して、人により観察したスポットよりも多くのスポット候補を生成した(約50-1)。
図9図9は、CNN訓練及び検証の段階を示す。CNN訓練(A)及び検証(B)の曲線を示す。良好な正確度が200のエポック(訓練サイクル)で得られる一方、訓練は安定性を検証するため300のエポックまで行った。また、マッチング検証正確度も過剰訓練の徴候なく同様の正確度を示す。正確度は97%であると分かり、感度が91.1%及び特異度が97.1%であった。
図10図10は、人による観察とCNNアルゴリズムとのDARCスポットの代表的な比較である。CNNによって見つかったスポットと、少なくとも2人の人による観察によって見つかったスポットとを、当初の網膜イメージにおいて示す。(A)患者6、左眼。進行している緑内障(OCT全RFNL3.5リングによって測定した)。(B)患者31、左眼。安定した緑内障。緑色の丸は、人による観察のみであり(偽陰性)、青色の丸は、CNN支援アルゴリズムのみであり(偽陽性)、青緑色の丸は、アルゴリズムと人による観察の一致である(真陽性)。
図11図11は、人による観察とCNNアルゴリズムとの分析における緑内障進行のROC曲線を示す。18か月における緑内障進行の予測値を試験するため、受信者動作特性(ROC)曲線を、CNN支援アルゴリズム(A)及び人による観察における2人の一致以上(B)との両方について構成した。進行率(RoP)を、DARC後の緑内障患者の18か月の経過観察における視神経乳頭の3.5mmにおいてSpectralis OCT全網膜神経線維層(RNFL)測定値から計算した。有意な(p<0.05)負のスロープを有するこれらの患者を、安定しているとして定めたそれを有しない患者と比較して進行しているとして定めた。最大感度(0.85%)及び特異度(71.43%)を、12のDARCカウントにおいて、0.79のAUCを伴って得た、人による観察のカウントに対して、最大感度(90.0%)及び特異度(85.71%)を、CNNアルゴリズムにおいて、23のDARCカウントにおいて、0.89のAUCを伴って得て、CNN支援アルゴリズムが優れて実施されることを示した。
図12図12は、安定である患者と比較して、進行している緑内障患者において有意に増加したCNNのDARCカウントを示す。(A)CNNのDARCカウントは、CNN支援アルゴリズムを使用して、安定である患者(平均9.71)と比較して、18か月において進行している患者(平均26.13)において有意に多いものであった(p=0.02)。DARCカウントは、ベースラインスポットを減算した後、120分の網膜イメージにおいて見受けられるANX776陽性スポットの数として定めた。(B)トレンドは、人による観察(2人の一致以上)のDARCカウントと同様であったが、安定した(平均4.38)緑内障患者と比較して、18か月で進行している患者(平均12.25)の間で有意差はなかった(p=0.0692)。OCT全RFNL3.5リングによって測定される有意なRoPあり及びなしの緑内障患者における個々のデータポイントを示す箱ひげ図を示す。アスタリスクは、マン・ホイットニー試験による有意性のレベルを示す。水平のラインは、中央値並びに最小及び最大範囲を示し、すべての個々のデータポイントを示す。
【発明を実施するための形態】
【0038】
実施例1
標識したアネキシンVを国際公開第2009/077750号に記載されるように調製した。標識したアネキシンを、Cordeiro MF、Guo L、Luong V,et al.,Real-time imaging of single nerve cell apoptosis in retinal neurodegeneration.Proc Natl Acad Sci USA 2004; 101: 13352-13356に記載されるように投与した。
【0039】
Iba-1(イオン化カルシウム結合アダプター分子1(Iba1))を、当該分野で既知の技術を用いて、ミクログリアのマーカーとして使用した。
【0040】
Brn3aを、当該分野で既知の技術を用いて、網膜神経節細胞のマーカーとして使用した。
【0041】
使用した動物には、ナイーブラット、緑内障モデルラット(OHT)、アルツハイマーモデルマウス、及び緑内障モデルマウスを含んでいた。そうしたモデルは当該分野で既知である。国際公開第2011/055121号に例が記載されている。
【0042】
図1は、(a)ナイーブコントロール、(b)片眼においてIOPを外科的に上昇させたラットの反対の眼(高眼圧OHTモデル)、(c)同じ動物のOHTの眼からの、ラットの網膜ホールマウントにおける免疫染色(Iba1)の結果を示す。分岐状、活性化、及びアメーバ状のミクログリアを同定することができる。
【0043】
図2において、16か月齢のアルツハイマートリプル・トランスジェニックマウスの網膜ホールマウントにおいてミクログリアを同定するため、Iba1を使用した。PBSを硝子体内(IVT)注入した後、ミクログリアの形態はアメーバ状ミクログリアを含む一方、同じ年齢で、未注入の眼(IVTなし)は活性化形態を示す。
【0044】
図3に見受けられるように、本発明者らは、標識したアネキシンという同じ染色を使用して網膜神経節細胞とミクログリアとの両方を同定することができること見出した。図に示すように、RGC及びミクログリアの染色の両方が、アネキシン5と共局在して見受けられる。図4において、アネキシン5は、組織学的顕微鏡で検出可能な、488蛍光フルオロフォアにより蛍光標識する。RGCのアネキシン染色は細胞周りとなり、細胞内ではない。
【0045】
図4及び図5にから見てとれるように、アネキシンVによるミクログリアの染色は細胞質側であり、すなわち、アネキシンが細胞内又はRGCに見られるように細胞膜の外側にある。
【0046】
実施例2
医療、特に眼科学において、人工知能をますます使用するようになっている(Poplin et al.,2018)(Ting et al.,2019)。機械学習アルゴリズムは、網膜イメージングにおける重要な分析支援となっており、その使用により診断及び監視の感度及び特異度の両方を最適化すると考えられている、糖尿病性網膜症、加齢黄斑変性、及び緑内障のマネージメントにおいて、しばしば推奨されている(Sebastian A Banegas et al.,2015)(Quellec et al.,2017;Schmidt-Erfurth,Bogunovic,et al., 2018;Schmidt-Erfurth,Waldstein,et al.,2018;Orlando et al.,2019)。失明病態における深層学習の使用は、その健康及び社会経済上の影響を少なくするような進歩として先触れとなっているが、その正確度は、データセットのサイズ及び不十分な参照基準によって妨げられている(Orlando et al.,2019)。
【0047】
緑内障は、進行性で緩やかに進む眼球神経変性疾患であり、これは世界的な不可逆性の失明の主要な原因となっており、6050万人の人に影響を及ぼし、高齢者人口が増えるにつれ、2040年までに倍増すると予測される(Quigley and Broman,2006;Tham et al.,2014)。過去数年にわたる緑内障研究の主要な目的は、急速な進行及び失明のリスクを有する人を特定することである。これには、構造(光干渉断層撮影(OCT)、乳頭イメージング)及び機能(視野又は標準自動視野検査(SAP))の評価を含む複数のレベルのデータに関与する方法を含んでいた。しかしながら、いくつかの研究において、臨床医のなかでも、SAP、OCT、及び視神経乳頭ステレオ撮影を含む標準評価を使用する進行に対する意見の大きなばらつきがあることを示している(A C Viswanathan et al.,2003)(Moreno-Montanes et al.,2017)(Sebastian A Banegas et al.,2015)。しかしながら、臨床におけるグレーディングは、実際の診療において及び深層学習のデータセットにおいてゴールドスタンダードと考えられている(Jiang et al.,2018;Kucur, Hollo and Sznitman,2018;Asaoka et al.,2019a;Ian J C MacCormick et al.,2019;Medeiros,Jammal and Thompson,2019a;Thompson, Jammal and Medeiros,2019;Wang et al.,2019)。さらに、OCT及びSAPの両方が、多数の網膜神経節細胞(RGC)の著しい死の後にのみ変化することが認められており(Harwerth et al.,2007)、このため、疾患のより早期のマーカーに対する対処されていない要求がある。
【0048】
近年、DARC(アポトーシスしている網膜細胞の検出)と呼ばれる、ヒトの網膜においてアポトーシス性網膜細胞を可視化する新しい方法を報告した(Cordeiro et al.,2017)。上述の技術に使用する分子マーカーは蛍光標識したアネキシンA5であり、これは、ストレスを受けてアポトーシスの早期段階にある細胞の表面に現れるホスファチジルセリンに高い親和性を有する。公開されているフェーズ1の結果は、網膜の蛍光イメージに見られるDARC陽性染色細胞の数を、緑内障疾患活性の評価に使用することができ得、また、少数の患者でも、今後の緑内障疾患進行に相関させることができ得るということを示唆した。DARCは、近年、フェーズ2の臨床試験においてさらなる対象で試験されている(ISRCTN10751859)。
【0049】
本明細書において、CNNを使用して開発し、対象のコントロールコホートにおいて訓練してから、DARCのフェーズ2の臨床試験において緑内障患者で試験した、DARCスポット検出の自動的方法を記載する。CNNは、医療用イメージ分類を含む医学におけるコンピュータービジョンタスクにおいて高い性能を示している。
【0050】
[材料及び方法]
[協力者]
DARCのフェーズ2の臨床試験は、ウェスタンアイ病院、インペリアルカレッジヘルスケアNHSトラストにおいて、2017年2月15日~2017年6月30日の間、対象がそれぞれ蛍光アネキシン5(ANX776、0.4mg)の単回の静脈内注射を受けるという、単一施設でのオープンラベルの研究として行った。健康な対象及び進行している緑内障の対象の両方を試験のために募り、上述の研究がブレント研究倫理委員会に承認された後、ヘルシンキ宣言に従って告知に基づく同意を得た(ISRCTN10751859)。
【0051】
すべての緑内障の対象は、ウェスタンアイ病院の緑内障科で既に治療を受けていた。患者は、緑内障以外の眼球又は全身性疾患が存在せず、網膜光干渉断層撮影(Spectralis SD OCT, software version 6.0.0.2; Heidelberg Engineering, Inc.,Heidelberg,Germany)及びSwedish interactive threshold algorithm standard 24-2を使用した標準自動視野検査(SAP,HFA 640i,Humphrey Field Analyzer;Carl Zeiss Meditec,Dublin,CA)による、最少で3回の連続の評価を少し前に受けた場合、研究への受入れを考慮した。患者の適格性は、表1及び表2にまとめた任意のパラメーターについての少なくとも1つの眼における進行性の疾患のエビデンスが存在すると分かった場合にあると考えられ、進行は、進行率(RoP)における有意な(*p<0.05;**p<0.01)負のスロープによって定めた。SAPパラメーターは、視野指標(VFI)及び平均偏差(MD)を含むものであった。OCTパラメーターは、視神経乳頭の3つの異なる直径(3.5、4.1、及び4.7mm)における網膜神経線維層(RNFL)測定値及びブルッフ膜開口端最小リム幅(MRW)を含むものであった。評価の介入前期間があることにより、進行率を定めるためにマシンインビルトソフトウェアを使用できない場合、経時における各パラメーターにおける変化の線形率を、最小二乗法を使用して算出した(Wang et al.,no date;Pathak,Demirel and Gardiner,2013)。
【0052】
健康なボランティアは、初め、クリニックまで患者に付き添ってきた人、及びPICとして機能する地域の検眼サービスの紹介から募った。また、健康なボランティアを、インペリアルカレッジヘルスケアNHSトラストの健康なボランティアのデータベースからも募った。可能性のある協力者に連絡を取り、参加するように招待レターを渡した。コンタクトを取ることに同意したPICの協力者に研究チームが連絡を取り、試験について話し合うためアポイントを取った。発明者らが選択した受入れ及び除外の条件に従って一連の協力者が適格であると考えられると、登録を行った。簡潔に説明すると、健康な対象は、彼らのGPが認めるように眼球又は全身性疾患がない場合、視神経乳頭、RNFL(網膜神経線維層)、又は視野異常のいずれかに、及び正常なIOP(眼内圧)に任意の緑内障性プロセスのエビデンスがない場合、並びに反復可能及び確実なイメージング及び視野を有する場合、受け入れた。
【0053】
[DARCイメージ]
すべての協力者は、瞳孔拡大(1%トロピカミド及び2.5%フェニレフリン)後に静脈内注射によって単一用量の0.4mgのANX776を投与され、フェーズ1と同様のプロトコールを使用して評価した(Cordeiro et al.,2017)。簡潔に説明すると、網膜イメージを、cSLO(HRA+OCT Spectralis,Heidelberg Engineering GmbH,Heidelberg,Germany)を使用して、高解像度モードにおいて、ICGA赤外蛍光設定(ダイオードレーザー786nm励起、800nmバリアフィルターを有する光検出器)で取得した。ベースラインの赤外自家蛍光イメージを、ANX776投与の前、その後、ANX776注射時、及び注射後15分、120分、及び240分で取得した。100フレームのシーケンスの平均イメージを、各時点で記録した。すべてのイメージは、任意の分析を行う前に匿名にした。CNNアルゴリズムの開発のため、コントロールと緑内障対象のベースラインと120分のイメージのみを使用した。
【0054】
分析したイメージの分類は、図6の「Consort」模式図に示す。CNN訓練のため、120分における73のコントロールの眼が分析に利用可能であった。同様に、静脈内ANX776を投与した20人の緑内障患者のうち、ベースライン及び120分の時点で27の眼においてイメージを利用可能であった。
【0055】
[人による観察の分析]
匿名にしたイメージを、同じ照明条件において同じコンピューターに無作為に表示し、ImageJ(National Institutes of Mental Health,USA)を使用して5人の盲検の作業者によって人によるイメージ検討を行った(「ImageJ」、日付なし)。ImageJの「マルチポイント」ツールを、観察者がANX776陽性スポットとして標識したいイメージの各構造を特定するために使用した。各陽性スポットをベクトル座標によって特定した。各イメージにおける人による観察のスポットを比較した。別々の観察者によるスポットは、互いから30画素内にある場合、同じスポットであると考えた。2人以上の観察者の一致があった場合、これを、システムを訓練し比較するために使用するスポットの基準として自動アプリケーション内で使用した。
【0056】
自動イメージ分析概要(図7
DARC標識細胞を検出するため、候補のスポットを網膜イメージにおいて特定し、人による観察によって特定された候補及びスポットを使用して訓練したアルゴリズムを使用して、「DARC」又は「非DARC」として分類した。図7はプロセスの概要を示す。
【0057】
(A)イメージ最適化
各眼において、アフィン変換、その後の非剛体変換を使用して、120分のイメージをベースラインのイメージとアライメントした。その後、イメージは、アライメントアーチファクトを取り除くためクロップした。その後、クロップしたイメージは、照明の違いを許容するため各イメージをZスコア化することで強度を標準化した。最後に、高周波ノイズを、シグマが5画素のガウシアンぼかしによってイメージから取り除いた。
【0058】
(B)スポット候補検出
テンプレートマッチング、特にゼロ正規化相互相関(ZNCC)は、候補のスポットを見つけるための簡単な方法である。人による観察が特定したスポットの30×30画素のイメージは、平均イメージ関数を使用して組み合わせて、スポットのテンプレートを作成した。このテンプレートを網膜イメージに適用して、相関マップを作成した。その後、極大値を選択し、相関係数及び強度標準偏差(スポットの輝度に対応する)のしきい値で選別した。これらのしきい値は、人による観察が見るすべてのスポットを含むように十分に低く設定した。人による観察の一部は、極めてかすかなものであり(おそらくスポットではない)、完全に区別されるスポットでは、相関が血管に近いため低いものであった。これは、しきい値を極めて低く設定して、人により観察したスポットよりも多くのスポット候補を生成する必要があったということを意味する(約50-1)。
【0059】
図8から見てとれるように、スポット候補は網膜イメージの大部分を覆うが、これは、分類する点の数を1500倍減少させる(毎画素を見ることと比較して)。ZNCCの極大値を使用して、各候補の検出は、典型的に中心に最も明るい部分を有する、スポット状物体を中心としている。これは、分類には、中心が外れたスポットを許容する必要がないことを意味する。これはまた、分類の測定正確度が、DARCスポットをイメージの無作為の部分から識別する能力だけでなく、DARCスポットを他のスポット状物体から識別する能力を反映することから、より意味のあるものとなることを意味する。
【0060】
(C)スポット分類
どのスポット候補がDARC細胞であるかを判定するため、スポットを、MobileNet v2と呼ばれる認知された畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を使用して分類した(Sandler et al.,2018;Chen et al.,2019;Pan,Agarwal and Merck,2019;Pang et al.,2019)。このCNNは、400を超えるスポットイメージを単一バッチで処理することができる。各バッチが約4つのDARCスポットを有すると考えられるので、これにより、50-1の不均衡なデータに対応することができる。
【0061】
MobileNet v2アーキテクチャを使用したが、最初及び最後の層は改変した。最初の層は、64×64画素のスポット候補イメージを取るため64×64×1の入力層となった(このサイズは、ネットワークにある程度コンテクストを与えるためスポット周りのさらなる領域を含めるように選択した)。最後の層は、多重分類ではなく二値分類(DARCスポットか否か)を可能にするためシグモイド活性化を含む緻密層と置き換えた。MobileNetの0.85のα値が最適であると分かり、各層におけるフィルターの数を適切に調整した。
【0062】
(D)訓練
コントロールの眼にのみ訓練を行った。簡潔に説明すると、網膜イメージを、50%のコントロールの患者の120分のイメージから無作為に選択した。CNNを、2人以上の人による観察がスポットを観察した場合にDARCとした候補スポットを使用して訓練した。58,730個のスポット候補を、これらのイメージから取り出した(1022個の2人が一致した人による観察のDARCスポットを含む)。これらのスポットの70%を訓練に、30%を検証に使用した。残りの50%のコントロールの患者からの網膜イメージは、分類正確度を試験するために使用した(48610個の候補スポット、そのうち898個は2人が一致した人による観察のものであった)。
【0063】
回転、反射、及びスポットイメージの強度の変化によってネットワークの許容度を上げるようにデータを拡張した。50-1の不均衡なデータに対して補正するため、DARCスポットのクラスの重みを、スポットでは50、及び他の物体では1に設定した。
【0064】
また、訓練検証正確度が高まり、マッチング検証正確度も過剰訓練の徴候なく同様の正確度を示す。訓練曲線が示すように(図9参照)、良好な正確度が200のエポックで得られる一方、訓練は安定性を検証するため300のエポックまで行った。
【0065】
3つの訓練工程を行い、3つのCNNモデルを作成した。推論のため、3つのモデルを組み合わせ、各スポットを3つのモデルのそれぞれによって得た平均確率に基づいて分類した。
【0066】
(E)緑内障DARCイメージにおける試験
CNN支援アルゴリズムを開発すると、緑内障の患者のコホートにおいてベースライン及び120分で取得したイメージにてテストした。スポットを人による観察及びアルゴリズムによって特定した。DARCカウントは、ベースラインスポットを減算した後、120分の網膜イメージにおいて見受けられるANX776陽性スポットの数として定めた。
【0067】
[緑内障進行評価]
進行率を、DARCの18か月後に緑内障患者の連続するOCTから算出した。有意な(p<0.05)負のスロープを有するこれらの患者を、安定しているとして定めたそれを有しない患者と比較して進行しているとして定めた。さらに、評価を、視野、OCT、及び視神経乳頭測定を使用して盲検で5人の臨床医が行った。
【0068】
[結果]
[患者の人口動態]
60人の緑内障の患者を、設定した受入れ/除外の条件に従ってスクリーニングし、進行している緑内障(少なくとも1つの眼における任意のパラメーターの有意な(p<0.05)負のスロープによって定めた)を有する20人の患者が静脈内DARCを受けた。これらの緑内障患者のベースラインの特徴を表2に示す。38の眼を受入れに適格とし、そのうち3つが人による観察のカウントに利用可能なイメージを有さず、2つは低解像度モードで取得したイメージを有し、他の2つは著しい内因性自家蛍光を有していた。2人を除くすべての患者を、眼科にて経過観察し、データを進行のポストホック評価を行うために利用可能とした。
【0069】
[スポット分類の試験]
図9の結果は、試験のために確保した(及び訓練には使用しなかった)50%のコントロールの眼でCNN支援アルゴリズムを試験したときに得られた。正確度は97%であると分かり、感度が91.1%及び特異度が97.1%であった。
【0070】
感度及び特異度は、特に、訓練し試験した人による観察のデータが、高い水準で観察者間のばらつきがあることを示していたことから、期待がもてるように高いものであった。イメージ及び人による観察/アルゴリズムのスポットの典型的な例を、図10に示す。
【0071】
[緑内障コホートにおける分類試験]
進行を定めるため18か月目に行ったOCT全RNFL進行率(RoP 3.5リング)のみを使用して、緑内障コホートを進行している及び安定している群に分けた。臨床における意見の一致は観察者間で良好ではなく、ゆえに、客観的で簡単である単一のOCTパラメーターを使用した。有意な(p<0.05)負のスロープを有するこれらの患者を、安定しているとして定めたそれを有しない患者と比較して進行しているとして定め、表3aに詳しく示す。分析した29の緑内障の眼のうち、この定義によって、8つが進行しており、21が安定していると分かった。
【0072】
この緑内障進行の定義を使用して、DARCカウントが18か月において緑内障進行を予測するかどうかを検討するため、受信者動作特性(ROC)曲線を、CNN支援アルゴリズム及び人による観察の2人の一致との両方について構成し、図6に示す。最大感度(71.4%)及び特異度(87.5%)を、12を超えるDARCカウントにおいて、0.79のAUCを伴って得た、人による観察に対して、最大感度(85.7%)及び特異度(91.7%)を、CNNアルゴリズムにおいて、24を超えるDARCカウントにおいて、0.88のAUCを伴って得て、CNN支援アルゴリズムが優れて実施されることを示した。
【0073】
[緑内障進行の予測因子としてのDARCカウント]
CNN支援アルゴリズムによる安定及び進行している緑内障群の両方におけるDARCカウントを図7aに示し、人によるDARCカウント(観察者2人が一致)を図7bに示す。DARCカウントは、CNN支援アルゴリズムを使用して、安定である患者(平均9.71)と比較して、後に18か月において進行していると分かった患者(平均26.13)において有意に多いと分かった(p=0.02、Mann Whitney)。比較すると、人による観察(2人の一致以上)のDARCカウントは、安定した(平均4.38)緑内障患者と比較して、18か月で進行している患者(平均12.25)においてより高いものであったが、これは、統計的有意に達しなかった(p=0.0692、Mann Whitney)。
【0074】
[検討]
緑内障の管理における主な目的は、視力喪失を防ぐことである。疾患が数年にわたって緩やかに進行すると、変化の評価の現在のゴールドスタンダードは、開発に時間がかかるだけでなく、著しい構造及び機能の障害が既に起こった後となる(Cordeiro et al.,2017)。緑内障において、今後の進行のリスク及び処置の有効性を評価する確実な尺度に対する対処されていない要求がある(Weinreb and Kaufman,2009,2011)。本明細書において、網膜細胞アポトーシスのマーカーであるDARCと組み合わせると、18か月後の、OCTにおいてRNFL薄化によって定められる緑内障の進行を予測することができる、新しいCNN支援アルゴリズムを記載する。この方法は、DARCと共に使用すると、自動の客観的なバイオマーカーを提供することができる。
【0075】
代用マーカーの開発は、主に、これを臨床アウトカムの予測因子として使用する癌である。緑内障において、最も多い臨床アウトカムの尺度は、処置効果を評価する、視力喪失、その後のクオリティ・オブ・ライフの低下である。代用物は、より早期の診断、より早期の処置、及びまた、より短期であり、ゆえにより経済的な臨床試験を可能にすると考えられる。しかしながら、有効な代替マーカーとするため、測定が正確であることを示す必要がある。例えば、OCTは、広範な使用において、良好な反復性に加え(DeLeon Ortega et al.,2007)(Tan et al.,2012)、著しいRNFL異常を検出するため、それぞれ83%及び88%の感度及び特異度を有する(Chang et al.,2009)ことが分かっている。比較すると、本願のCNNアルゴリズムは、緑内障の進行に対して85.7%の感度及び91.7%の特異度を有していた。
【0076】
フェーズ1の結果は、予測されるある程度のレベルのDARCがあることを示唆したが、これは、0.1、0.2、0.4、及び0.5mgの様々な用量のAnx776で、群につき最大4つの緑内障の眼において、0.4mgの群においては3つしかないというように、極めて少ないデータセットにおいて行われた(Cordeiro et al.,2017)この本願の研究において、すべての対象に0.4mgのAnx776を投与し、27の眼を分析した。
【0077】
臨床診療において、緑内障患者は、進行のリスクについて、加齢、眼内圧上昇(IOP、そうした個人において高すぎる)、民族性、緑内障の陽性家族歴、疾患の段階、及び強度近視を含むリスク因子の存在を明らかにすることに基づいて評価する(Jonas et al., 2017)。さらに高度な疾患のリスクは、陥凹:乳頭比>0.7、0.2dB増加毎の視野のパターン標準偏差、両眼罹患及び乳頭非対称性、また、乳頭出血及び偽落屑の存在を含むものであった(Gordon et al.,2002,2003;Budenz et al.,2006;Levine et al.,2006;Miglior et al.,2007)。しかしながら、これらのいずれも、個人の進行を確実に予測するために使用できない。
【0078】
客観的な評価は、技術的な支援があっても臨床医の間で意見のばらつきがあることから、緑内障においてますます重要であるとして認められている。意見のばらつきがあることは、視野、OCT、及びステレオ撮影を使用して患者の進行を定めることに関して示されている(A.C.Viswanathan et al.,2003)(Sebastian A.Banegas et al.,2015)(Blumberg et al.,2016)(Moreno-Montanes et al.,2017)。実際に、この研究において、5人の盲検の上級緑内障専門医(共著者)に、視神経乳頭評価、OCT、及び視野に基づくその臨床における判断を用いて、患者の進行についてグレーディングするように依頼したが、残念ながら、彼らの間で意見にばらつきがあった(未掲載のデータ)。このため、進行率の単一の客観的な指標(Tatham and Medeiros,2017)を使用して、CNN支援アルゴリズムを試験するために用いた群を定義した。
【0079】
進行の分析はポストホックであり、経過観察の18か月の期間、処置する臨床医をガイドするプロトコールはなかった。経口のメマンチン試験と同様に(Weinreb et al., 2018)、患者の管理を、特にIOP低下に関して、緑内障専門医の裁量に任せ、通常の標準治療に従った。しかしながら、これにもかかわらず、またOCT全RFNL3.5リングRoPを使用して、29の眼のうちの8つが18か月で進行していた。
【0080】
進行を特定する臨床医の間での意見のばらつきにより、この数年で、視神経乳頭の写真(Jiang et al.,2018)(Ian J.C.MacCormick et al.,2019)(Thompson,Jammal and Medeiros,2019)、視野(Pang et al.,2019)(Kucur,Hollo and Sznitman,2018)、及びOCT(Asaoka et al.,2019b)(Medeiros,Jammal and Thompson,2019b)と共にAIを使用して緑内障診断及び予後を支援する人工知能の使用に対する大きな関心を引き出している。Medeiros他による近年の研究は、OCTのRNFL厚測定値を使用してCNNを訓練することで得られた、推定したRNFL厚の予測に基づいて眼底の写真を評価するアルゴリズムを記載した(Medeiros, Jammal and Thompson,2019b)。95%の特異度において、予測した測定値は76%の感度を有する一方、実際のSD OCT測定値は73%の感度を有していた。80%の特異度では、予測した測定値は、90%の感度を有するOCT測定と比較して90%の感度を有していた。著者らは、その方法が、視神経乳頭の写真から進行の情報を抽出するために場合によって使用でき得ることを示唆しているが、本願の研究のように、長期のデータセットでのさらなる検証が必要であると述べている。
【0081】
テンプレートマッチングは、顕微鏡観察における細胞の追跡に通常使用されており、同様の評価が本研究にて長期におけるインビボのシングルセルの分析に必要とされる。本明細書のテンプレートマッチングでは、30×30画素のテンプレートを使用し、CNNでは64×64画素のイメージを使用した。このサイズの違いの理由は、テンプレートマッチングが血管に対して感度が高いので、血管を含む可能性を下げるために小さいテンプレートが有利であるということである。CNNでは、分類に有用であり得るスポット周りの領域のさらなるコンテクストをCNNに与えるため、より大きいイメージが有用である。
【0082】
アルゴリズムは良好に動作し、他の方法より18か月先行して進行性の緑内障を検出する実行可能な方法を提供するものの、これを最適化できる領域が存在すると考え、その一部を以下に記載する。
【0083】
サポートベクターマシン(SVM)又はランダムフォレストなどのMobileNetV2の代わりの分類アルゴリズムは、非線形強度変化、光学的なぶれ、位置合わせのぶれ、及び微光ノイズなどのイメージ取得に起因とする複雑性、並びに脈絡膜血管構造のパターン、血管、白内障によるぼやけなどの生物学的な複雑性に対応する必要があることから作製が困難である「手作りの」機能を必要とする。ネットワークは、当初の網膜イメージの強度にいくらかバイアスがある。強度標準化に注視すること、及びより大きいデータセットを用いてより現実的に強度を変化させることでデータを拡張することによって、結果を向上させることができると考える。VGG16などの他のネットワークの性能を、MobileNetV2が最も良好に動作すると分かったと記載したときに評価した。このネットワークがこの要求に最適であるかどうかを引き続き評価している。比較すると、別のCNNであるVGG16は、バッチにおいて64個のスポットに限られ得、これは、バッチがDARCスポットを有しないことを意味し得、訓練を妨げる。検出及びセグメンテーションアルゴリズムであるYOLO3を使用して単一のステップでスポットを検出及び分類する他の方法がある。これは、より多くのデータを用いることでより効果的かつ有効な方法であり得ると考えるが、この段階では、YOLOで得られた最高の正確度はこの文書に記載した方法ほど良好ではない。
【0084】
[結論]
この研究では、緑内障患者の網膜イメージにおいて網膜細胞アポトーシスのマーカーとしてDARCを分析するCNN支援アルゴリズムを記載している。上述のアルゴリズムはDARCカウントを算出することを可能にし、これは、患者において試験すると、18か月後のOCTのRNFL緑内障進行を正常に予測すると分かった。このデータは、広範な臨床用途の可能性を伴う、自動の客観的なバイオマーカーを提供するこの方法の使用を裏付けるものである。
【0085】
【表1】
【表1b】
【表2】
【表3a】
【表3b】
【0086】
参考文献

図1
図2
図3
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図5
図6
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図7-2】
図8
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【国際調査報告】