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特表2023-514072アクリレート-シロキサンコポリマー粒子の水性分散液の調製
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-05
(54)【発明の名称】アクリレート-シロキサンコポリマー粒子の水性分散液の調製
(51)【国際特許分類】
   C08F 230/08 20060101AFI20230329BHJP
   C08F 222/20 20060101ALI20230329BHJP
   C08F 222/10 20060101ALI20230329BHJP
【FI】
C08F230/08
C08F222/20
C08F222/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022544796
(86)(22)【出願日】2021-02-10
(85)【翻訳文提出日】2022-08-18
(86)【国際出願番号】 US2021017313
(87)【国際公開番号】W WO2021163086
(87)【国際公開日】2021-08-19
(31)【優先権主張番号】62/976,400
(32)【優先日】2020-02-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(71)【出願人】
【識別番号】590001418
【氏名又は名称】ダウ シリコーンズ コーポレーション
(71)【出願人】
【識別番号】590002035
【氏名又は名称】ローム アンド ハース カンパニー
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110000589
【氏名又は名称】弁理士法人センダ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】バス、ヒルダ ジー.
(72)【発明者】
【氏名】カーター、マシュー
(72)【発明者】
【氏名】イーヴン、ラルフ シー.
(72)【発明者】
【氏名】フィスク、ジェイソン エス.
(72)【発明者】
【氏名】クオ、ツー-チー
(72)【発明者】
【氏名】ラン、ティアン
(72)【発明者】
【氏名】マッカロク、ブライアン エル.
(72)【発明者】
【氏名】メッカ、ジョディ エム.
(72)【発明者】
【氏名】ノウバハル、アラシュ アール.
(72)【発明者】
【氏名】ラタニ、タンヴィ エス.
(72)【発明者】
【氏名】ウッドワース、リチャード ピー.
(72)【発明者】
【氏名】ツォン、ファンウェン
【テーマコード(参考)】
4J100
【Fターム(参考)】
4J100AL03Q
4J100AL03R
4J100AL03S
4J100AL03T
4J100AL08P
4J100BA02P
4J100BA80P
4J100CA03
4J100CA06
4J100EA06
4J100FA03
4J100FA04
4J100FA20
4J100FA28
4J100JA01
(57)【要約】

本発明は、a)アクリレートモノマーと、b)酸モノマーと、c)式(I)のシロキサン-アクリレートモノマーであって、式中、R、R、R、Y、及びxが、本明細書で定義される、シロキサン-アクリレートモノマーと、の構造単位を含むコポリマー粒子の水性分散液を調製するための方法である。本方法はまた、本明細書に記載のアニオン性及び非イオン性界面活性剤に対する特別なクラスの使用を必要とする。本発明の方法によって調製される水性分散液は、建築用コーティングからパーソナルケア製品までの範囲の様々な用途において有用である。
【化1】
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリレート-シロキサンコポリマー粒子の水性分散液を調製する方法であって、
1)水性モノマーエマルジョンの第1の部分を、水及びアニオン性界面活性剤を含有する容器に添加するステップであって、前記容器の内容物が、60℃~95℃の範囲の温度で撹拌及び制御される、ステップと、
2)開始剤の第1の部分を前記容器に添加して、経時的にシードコポリマー粒子の水性分散液を形成するステップと、次いで
3)前記モノマーエマルジョンの第2の部分及び前記開始剤の第2の部分を前記容器に添加するステップと、次いで
4)前記容器の内容物の温度を、前記モノマーの構造単位を含むポリマー粒子への前記モノマーエマルジョン中のモノマーの実質的に完全な変換を達成するのに十分な時間、60℃~95℃の範囲に維持するステップと、を含み、
前記モノマーエマルジョンが、1μm~30μmの範囲の平均モノマー液滴サイズを有し、かつモノマーの重量に基づいて、a)40~98.8重量パーセントのアクリレートモノマーと、b)0.1~5重量パーセントの酸モノマーと、c)から1~59.8重量パーセントのシロキサンアクリレートモノマーと、0.5~5重量パーセントの非イオン性界面活性剤と、0.5~5重量パーセントの前記アニオン性界面活性剤と、を含み、
前記シロキサンアクリレートモノマーが、以下の式Iによって表され、
【化1】
式中、Rが、H又はCHであり、
が、H又はCHであり、
各Rが、独立してCH又はO-Si(CHであり、
Yが、-CH-又は-CHCH-であり、
xが、0又は1であり、
ただし、xが1である場合、RがHであり、Yが-CH-である場合、Rが、Hであり、Yが-CHCH-である場合、Rが、CHであり、かつxが0であることを条件とし、
前記非イオン性界面活性剤が、式IIによって表され、
【化2】
式中、nが、0~10であり、pが、2~30であり、ただし、p≧nであることを条件とし、Rが、直鎖又は分岐鎖C~C16-アルキル基であり、
前記アニオン性界面活性剤が、式IIIによって表され、
【化3】
式中、Rが、C~C20-アルキルであり、mが、0~10であり、Mが、Li、Na、又はKである、方法。
【請求項2】
前記シロキサン-アクリレートモノマーが、
【化4】
である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
nが、0~5の範囲であり、pが、3~16の範囲であり、式IIIの前記アニオン性界面活性剤が、直鎖C10~C14-アルキル硫酸塩であり、式中、mが、0であり、前記シロキサン-アクリレートモノマーの構造単位の重量パーセントが、前記コポリマー粒子の重量に基づいて、20~55重量パーセントの範囲である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記アクリレートモノマーが、ブチルアクリレート及びメチルメタクリレートであり、前記酸モノマーが、メタクリル酸であり、ブチルアクリレート対メチルメタクリレートの重量対重量比が、45:55~55:45の範囲であり、ブチルアクリレート及びメチルメタクリレート対メタクリル酸の重量対重量比が、99.5:0.5~97:3の範囲である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
式IIの前記非イオン性界面活性剤及び式IIIの前記アニオン性界面活性剤の濃度が、各々、前記モノマーの重量に基づいて、1~3重量パーセントの範囲であり、前記非イオン性界面活性剤対前記アニオン性界面活性剤の重量対重量比が、1:2~2:1の範囲であり、前記非イオン性界面活性剤が、
【化5】
であり、
式中、pが、3、8、又は11である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記非イオン性界面活性剤が、以下によって表され、
【化6】
前記アニオン性界面活性剤が、ラウリル硫酸ナトリウムであり、式Iの前記シロキサン-アクリレートモノマーが、
【化7】
である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
ステップ1)において、水及び式IIIの前記アニオン性界面活性剤を含有する前記容器が、式IIの非イオン性界面活性剤を更に含有し、前記容器の内容物が、80℃~95℃の範囲の温度で撹拌及び制御される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
ステップ4)の後、レドックス開始剤パッケージが、前記容器に添加される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
ステップ4)の後、レドックス開始剤パッケージを前記容器に添加し、続いて中和剤を添加する、請求項7に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクリレートモノマー及びシロキサン-アクリレートモノマーの構造単位を含むコポリマー粒子の水性分散液に関する。本発明の組成物は、コーティング及びパーソナルケア用途に有用である。
【背景技術】
【0002】
アクリレート基及びシロキサン基で官能化されたコポリマー粒子を含む水性ハイブリッドラテックス組成物は、すべてのアクリル組成物と比較して、改善された染色及び耐溶剤性、水及び油性、非バイオファウリング特性、並びに高い触覚などのコーティング及び化粧品用途において改善された性能を提供する。
【0003】
Xiao,J.et al.,Prog.Org.Coat.2018,116,1-6及びZhang,B.et al.,Appl.Surf.Sci.2007,254,452-458は、シロキサン-アクリルハイブリッド粒子のポリマー分散液の調製を報告している。しかしながら、これらの分散液を調製するために使用されるプロセスは、高レベルのゲル及び未反応モノマーを有するラテックスをもたらすことが本発明者らによって示されている。非効率的なプロセスの強い指標である高濃度のゲルの形成は、反応器の汚損につながり、最終コーティングの劣った特性に寄与する可能性があり、更に、これらの報告されたプロセスの各々における組み込まれたシロキサン含有モノマーの濃度は、分散液の有効性を制限する10重量パーセントを大幅に下回った。最終分散コポリマー粒子中の比較的高レベルの組み込まれたシロキサン含有モノマー(例えば、>20重量%)を達成することにより、所望の特性関連シロキサン含有オリゴマー及びポリマーの改善を示すコーティング及びパーソナルケア配合物添加剤が得られることが広く認められている。
【0004】
したがって、シロキサン含有モノマーの比較的高濃度の構造単位で官能化されたシロキサン-アクリレートコポリマー粒子の水性分散液を調製することが有利であろう。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、
1)水性モノマーエマルジョンの第1の部分を、水及びアニオン性界面活性剤を含有する容器に添加するステップであって、容器の内容物が、60℃~95℃の範囲の温度で撹拌及び制御される、ステップと、
2)開始剤の第1の部分を容器に添加して、経時的にシードコポリマー粒子の水性分散液を形成するステップと、次いで
3)モノマーエマルジョンの第2の部分及び開始剤の第2の部分を容器に添加するステップと、次いで
4)容器の内容物の温度を、モノマーの構造単位を含むポリマー粒子へのモノマーエマルジョン中のモノマーの実質的に完全な変換を達成するのに十分な時間、60℃~95℃の範囲に維持するステップと、を含む、アクリレート-シロキサンコポリマー粒子の水性分散液を調製する方法を提供することにより、当技術分野における必要性に対処し、
モノマーエマルジョンは、1μm~30μmの範囲の平均モノマー液滴サイズを有し、かつモノマーの重量に基づいて、a)40~98.8重量パーセントのアクリレートモノマーと、b)0.1~5重量パーセントの酸モノマーと、c)から1~59.8重量パーセントのシロキサンアクリレートモノマーと、0.5~5重量パーセントの非イオン性界面活性剤と、0.5~5重量パーセントのアニオン性界面活性剤と、を含み、
シロキサンアクリレートモノマーは、以下の式Iによって表され、
【0006】
【化1】
式中、Rは、H又はCHであり、
は、H又はCHであり、
各Rは、独立して、CH又はO-Si(CHであり、
Yは、-CH-又は-CHCH-であり、
xは、0又は1であり、
ただし、xが1である場合、RがHであり、Yが-CH-である場合、RがHであり、Yが-CHCH-である場合、RがCHであり、かつxが0であることを条件とし、
非イオン性界面活性剤は、式IIによって表され、
【0007】
【化2】
式中、nは0~10であり、pは、2~30であり、ただし、p≧nであることを条件とし、Rは、直鎖又は分岐鎖C~C16-アルキル基であり、
アニオン性界面活性剤は、式IIIによって表され、
【0008】
【化3】
式中、Rは、C~C20-アルキルであり、mは、0~10であり、Mは、Li、Na、又はKである。
【0009】
本発明は、ゲル形成が最小限であるコポリマー粒子へのシロキサン系モノマーの組み込みを増加させる方法を提供することによって、当該技術分野における必要性に対処する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、
1)水性モノマーエマルジョンの第1の部分を、水及びアニオン性界面活性剤を含有する容器に添加するステップであって、容器の内容物が、60℃~95℃の範囲の温度で撹拌及び制御される、ステップと、
2)開始剤の第1の部分を容器に添加して、経時的に、シードポリマー粒子の水性分散液を形成するステップと、次いで
3)モノマーエマルジョンの第2の部分及び開始剤の第2の部分を容器に添加するステップと、次いで
4)容器の内容物の温度を、モノマーの構造単位を含むポリマー粒子へのモノマーエマルジョン中のモノマーの実質的に完全な変換を達成するのに十分な時間、60℃~95℃の範囲に維持するステップと、を含む、アクリレート-シロキサンコポリマー粒子の水性分散液を調製する方法であり、
モノマーエマルジョンは、1μm~30μmの範囲の平均モノマー液滴サイズを有し、かつモノマーの重量に基づいて、a)40~98.8重量パーセントのアクリレートモノマーと、b)0.1~5重量パーセントの酸モノマーと、c)から1~59.8重量パーセントのシロキサンアクリレートモノマーと、0.5~5重量パーセントの非イオン性界面活性剤と、0.5~5重量パーセントのアニオン性界面活性剤と、を含み、
シロキサンアクリレートモノマーは、以下の式Iによって表され、
【0011】
【化4】
式中、Rは、H又はCHであり、
は、H又はCHであり、
各Rは、独立して、CHCH又はO-Si(CHであり、
Yは、-CH-又は-CHCH-であり、
xは、0又は1であり、
ただし、xが1である場合、RがHであり、Yが-CH-である場合、RがHであり、Yが-CHCH-である場合、RがCHであり、かつxが0であることを条件とし、
非イオン性界面活性剤は、式IIによって表され、
【0012】
【化5】
式中、nは0~10であり、pは、2~30であり、ただし、p≧nであることを条件とし、Rは、直鎖又は分岐鎖C~C16-アルキル基であり、
アニオン性界面活性剤は、式IIIによって表され、
【0013】
【化6】
式中、Rは、C~C20-アルキルであり、mは、0~10であり、Mは、Li、Na、又はKである。
【0014】
本明細書で使用される場合、列挙されたモノマーの用語「構造単位」は、重合後のモノマーの残存物を指す。例えば、メチルメタクリレート(methyl methacrylate、MMA)の構造単位は、以下に示されるとおりであり、
【0015】
【化7】
式中、点線は、構造単位のポリマー骨格への結合点を表す。
【0016】
本明細書で使用される場合、「モノマーの実質的に完全な変換」は、全モノマーのコポリマー粒子への少なくとも98%、好ましくは少なくとも99%の変換を指す。
【0017】
本明細書で使用される場合、用語「アクリレートモノマー」は、1つ以上のアクリレート及び/又はメタクリレートモノマーを指す。好適なアクリレートモノマーの例は、MMA、n-ブチルメタクリレート(butyl methacrylate、BMA)、エチルアクリレート(ethyl acrylate、EA)、n-ブチルアクリレート(butyl acrylate、BA)、及び2-エチルヘキシルアクリレート(2-ethylhexyl acrylate、2-EHA)を含む。好ましくは、少なくとも80、より好ましくは少なくとも90重量パーセントのアクリレートモノマーは、MMAとBAとの組み合わせである。
【0018】
好適な酸モノマーの例には、カルボン酸モノマー、リン酸モノマー、及び硫黄酸モノマーが含まれる。好ましいカルボン酸モノマーの例には、アクリル酸(acrylic acid、AA)、メタクリル酸(methacrylic acid、MAA)、及びイタコン酸(itaconic acid、IA)、並びにそれらの塩が含まれる。
【0019】
好適なリン酸モノマーの例には、アルコールが重合可能なビニル若しくはオレフィン基を含有するか、又はそれらで置換されるアルコールのホスホネート及び二水素ホスフェートエステルが含まれる。好ましいリン酸二水素エステルは、ホスホエチルメタクリレート(phosphoethyl methacrylate、PEM)及びホスホプロピルメタクリレートを含むヒドロキシアルキルアクリレート又はメタクリレートのリン酸塩である。
【0020】
好適な硫黄酸モノマーの例には、スルホエチルメタクリレート、スルホプロピルメタクリレート、スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸、及び2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸(AMPS)、並びにそれらの塩が含まれる。
【0021】
一態様では、BA対MMAの重量対重量比は、45:55~55:45の範囲であり、別の態様では、アクリレートモノマー、好ましくはBA及びMMA対酸モノマー、好ましくはMAAの重量対重量比は、99.95:0.05、より好ましくは99.5:0.5~97:3、より好ましくは98:2の範囲である。
【0022】
式Iのシロキサンアクリレートモノマーの好ましい範囲は、適用依存性である。化粧品、ヘアケア、及びスキンケアなどの家庭用及びパーソナルケア用途の場合、例えば、総モノマーの重量に基づく式Iのモノマーの重量パーセントは、好ましくは、コポリマー粒子の重量に基づいて、20、より好ましくは30、最も好ましくは45重量パーセント~55重量パーセントの範囲である。コーティング用途では、好ましい重量パーセントは、コポリマー粒子の重量に基づいて、2重量パーセント、より好ましくは3重量パーセント~20重量パーセント、より好ましくは15重量パーセント、最も好ましくは10重量パーセントの範囲である。
【0023】
式Iのモノマーの例には、以下が含まれる。
【0024】
【化8】
【0025】
式IIの非イオン性界面活性剤は、好ましくは、分岐アルキル基を含み、nは、好ましくは0~5の範囲であり、pは、好ましくは3~16の範囲である。好適な市販の非イオン性界面活性剤の例には、TERGITOL(商標)15-S-9非イオン性界面活性剤(15-S-9、The Dow Chemical Company又はその関連会社の商標)、TERGITOL TMN-3非イオン性界面活性剤(TMN-3)、TERGITOL TMN-6 非イオン性界面活性剤(TMN-6)、TERGITOL TMN-10 非イオン性界面活性剤(TMN-10)、ECOSURF(商標)EH-6 非イオン性界面活性剤(EH-6、The Dow Chemical Company又はその関連会社の商標)が含まれる。これらの界面活性剤の構造は、以下に示されるとおりである:
【0026】
【化9】
【0027】
式IIIのアニオン性界面活性剤は、好ましくは直鎖C10~C14-アルキル硫酸塩であり、mは0である。好ましいアニオン性界面活性剤は、ラウリル硫酸ナトリウム(sodium lauryl sulfate、SLS)である。式IIIのアニオン性界面活性剤の濃度は、好ましくは、モノマーの重量に基づいて、1~3重量パーセントの範囲であり、好ましくは、アニオン性界面活性剤対非イオン性界面活性剤の重量対重量比は、1:2~2:1の範囲である。
【0028】
アクリレート-シロキサンコポリマー粒子の水性分散液を調製するための好ましい方法は、
1)水性モノマーエマルジョンの第1の部分を、水、アニオン性界面活性剤、及び好ましくは非イオン性界面活性剤を含有する容器に添加するステップであって、容器の内容物が、好ましくは80℃~95℃の範囲の温度で撹拌及び制御される、ステップと、
2)開始剤の第1の部分を容器に添加して、経時的に、シードポリマー粒子の水性分散液を形成するステップと、次いで
3)モノマーエマルジョンの第2の部分及び開始剤の第2の部分を容器に徐々に添加するステップと、次いで
4)容器の内容物の温度を、モノマーの構造単位を含むコポリマー粒子へのモノマーの少なくとも99%の変換を達成するのに十分な時間、好ましくは80℃~95℃の範囲に維持するステップと、を含む。
【0029】
好ましくは、ステップ4)の後、レドックス開始剤パッケージが容器に添加され、ステップ4)の後、水性分散液を6.5~7.5の範囲のpHに中和することも好ましい。ステップ4)の後、レドックス開始剤パッケージを添加し、続いて中和することがより好ましい。
【0030】
驚くべきことに、式Iの高レベルのシロキサンアクリレートモノマーのシロキサン-アクリレートコポリマーへの効率的な組み込みは、重量測定的によって決定される凝固物(ゲル)及び大径粒子(すなわち、本明細書に記載の単一粒子光学感知によって決定される粒子サイズ直径>1μmかつ<40μmを有する粒子)を実質的に形成することなく、本発明のプロセスによって達成することができることが発見された。
【0031】
AccuSizerによる懸濁液ポリマーレベルの決定
コポリマー粒子分散液中の懸濁ポリマーの量は、AccuSizer 7000 APS単一粒子光センサー機器(Particle Sizing Systems(PSS),Entegris Company、Port Richey,FL)を使用して測定した。コポリマー粒子分散液をMilliQ水で1000倍に希釈し、次いで機器のサンプル室に注入した。実験方法は、注入されたサンプルの2段階希釈を適用し、予備希釈チャンバ中で21.6の第1の希釈、及び機器の第2段階希釈ゾーン中で78.4の第2の希釈を適用した。データ収集が完了した後、サンプル室をMilliQ水で、ミリリットル当たり200カウント未満のベースライン閾値が観察されるまでフラッシュした。サンプリング方法は、約100000の総カウントを測定するように設定し、直径が>1μmで測定された粒子は、懸濁ポリマーとして定義した。サンプルを二重に実行し、データを平均として提示した。データを収集し、PSSソフトウェア(バージョン2.3.1.6)を使用して処理した。
【0032】
実施例1-SLSと15-S-9非イオン性界面活性剤との混合物を使用したハイブリッドコポリマー粒子の水性分散液の調製
脱イオン水(150.0g)、Polystep B-5-Nラウリル硫酸ナトリウム(SLS、3.0g、水中28.0%)、及び15-S-9(3.0g)を、凝縮器、オーバーヘッドスターラー、及び熱電対を備えた500mLの4口丸底フラスコに添加した。反応器の内容物を250rpmで撹拌し、N下で88℃に加熱した。別の容器では、脱イオン水(180.0g)、SLS(14.1g、水中28.0%)、15-S-9(3.0g)、BA(73.5g)、MMA(73.5g)、MAA(3.0g)、MD’M-ALMA(150.0g)、n-ドデシルメルカプタン(n-DDM、0.15g)、水酸化アンモニウム溶液(2.8g、水中28%活性)、及び酢酸ナトリウム(0.9g)を含有するモノマーエマルジョン(monomer emulsion、ME)を、オーバーヘッドミキサーを使用して調製し、続いてハンドヘルドホモジナイザー(Tissue Tearor、モデル985370、Biospec Products Inc.)で1分間処理して、光学顕微鏡によって決定する平均液滴サイズが約2~15μmのMEを生成する。ME(20.0g)の一部をすすぎながら(5.0gの水)反応器に添加し、続いて過硫酸アンモニウム
(APS、0.09g)をすすぎながら(2.0gの水)添加した。MEの残り及びAPSの溶液(24.0gの水中0.32g)を、87~88℃の温度で120分かけて反応器に同時に供給した。供給が完了すると、次いで、反応器を87~88℃で更に30分間保持した。次いで、反応器を60℃に冷却し、その後、(i)Luperox TAH 85 t-アミルヒドロペルオキシド(t-AHP、0.29g、水中85重量%活性)、SLS(0.06g、水中28%活性)、及び脱イオン水(3.0g)と、(ii)イソアスコルビン酸(IAA、0.15g)、VERSENE(商標)EDTA(EDTA、Dow,Inc.又はその関連会社の商標、0.3g、水中1%活性)と、の分離溶液並びに硫酸鉄(II)溶液(2.1g、水中0.15%活性)を反応器に添加した。次いで、反応器を室温まで冷却し、水酸化アンモニウム溶液(水中28%活性)を滴下して、pHを約7.0に調整した。水性分散液を、細孔サイズ840μm、150μm、及び40μmのステンレス鋼メッシュスクリーンを通して連続的に濾過した。最終水性粒子分散液は、43.0%の固体、DLSによって決定される103nmのz平均粒子サイズ、0.11重量%の最終ポリマー凝固物(ゲル)レベル(モノマーに基づく、各メッシュサイズで収集されたゲルの合計)、及びAccusizer特性評価によって決定される0.43重量%の懸濁ポリマー(モノマーに基づく)を有した。サンプル中の残留MD’M-ALMAのレベルは、UHPLCによって決定される<30ppmであった。
【0033】
実施例2-SLSとTMN-6非イオン性界面活性剤との混合物を使用したハイブリッドコポリマー粒子の水性分散液の調製
500mLの4口丸底フラスコ及びME中の15-S-9非イオン性界面活性剤を、等しい質量のTMN-6非イオン性界面活性剤で置き換えたことを除いて、実施例1を繰り返した。最終水性粒子分散液は、42.8%の固体、DLSによって決定される100nmのz平均粒子サイズ、0.12重量%の最終ポリマーゲルレベル(モノマーに基づく、各メッシュサイズで収集されたゲルの合計)、及びAccusizer特性評価によって決定される1.75重量%の懸濁ポリマー(モノマーに基づく)を有した。サンプル中の残留MD’M-ALMAのレベルは、UHPLCによって決定される<30ppmであった。
【0034】
実施例3-SLSとTMN-10非イオン性界面活性剤との混合物を使用したハイブリッドコポリマー粒子の水性分散液の調製
500mLの4口丸底フラスコ及びME中の15-S-9非イオン性界面活性剤を、等しい質量のTMN-10非イオン性界面活性剤で置き換えたことを除いて、実施例1を繰り返した。最終水性粒子分散液は、42.7%の固体、DLSによって決定される115nmのz平均粒子サイズ、0.18重量%の最終ポリマーゲルレベル(モノマーに基づく、各メッシュサイズで収集されたゲルの合計)、及びAccusizer特性評価によって決定される1.01重量%の懸濁ポリマー(モノマーに基づく)を有した。サンプル中の残留MD’M-ALMAのレベルは、UHPLCによって決定される<30ppmであった。
【0035】
実施例4-SLSとEH-6非イオン性界面活性剤との混合物を使用したハイブリッドコポリマー粒子の水性分散液の調製
500mLの4口丸底フラスコ及びME中の15-S-9非イオン性界面活性剤を、等しい質量のEH-6非イオン性界面活性剤で置き換えたことを除いて、実施例1を繰り返した。最終水性粒子分散液は、42.5%の固体、DLSによって決定される103nmのz平均粒子サイズ、0.18重量%の最終ポリマーゲルレベル(モノマーに基づく、各メッシュサイズで収集されたゲルの合計)、及びAccusizer特性評価によって決定される1.75重量%の懸濁ポリマー(モノマーに基づく)を有した。サンプル中の残留MD’M-ALMAのレベルは、UHPLCによって決定される<30ppmであった。
【0036】
比較例1-SLSを使用したハイブリッドコポリマー粒子の水性分散液の調製
SLSを500mLの4口丸底フラスコ(モノマーに基づいて13.36g、1.29重量%)及びME(モノマーに基づいて24.45g、2.36重量%)の両方に添加したことを除いて、実施例1を繰り返した。最終水性コポリマー粒子分散液は、37.8%の固体、DLSによって決定される78nmのz平均粒子サイズ、2.50重量%の最終ポリマーゲルレベル(モノマーに基づく、各メッシュサイズで収集されたゲルの合計)、及びAccusizer特性評価によって決定される1.60重量%の懸濁ポリマー(モノマーに基づく)を有した。サンプル中の残留MD’M-ALMAのレベルは、UHPLCによって決定される2500ppmであった。
【0037】
比較例2-15-S-9非アニオン性界面活性剤を使用したハイブリッドコポリマー粒子の水性分散液の調製
15-S-9を500mLの4口丸底フラスコ(モノマーに基づいて6.00g、2.00重量%)及びME(モノマーに基づいて17.1g、5.70重量%)の両方に添加したことを除いて、実施例1を繰り返した。コポリマー粒子分散液は、ME供給物に約100分で不可逆的にゲル化した。(46.2%の固体理論値実際19.8%)
【0038】
比較例3-Xiaoプロセスによるハイブリッドコポリマー粒子の水性分散液の調製
Xiao,J.et al.,Prog.Org.Coatings 2018,116,1-6に記載のハイブリッド粒子の水性分散液を調製するプロセスを再現した。凝縮器、オーバーヘッドスターラー、及び熱電対を備えた500mLの4つ口丸底フラスコを使用して合成を行った。脱イオン水(19.0g)及びSLS(1.43g、水中28.0%)、TRITON(商標)X-100ポリエチレングリコール、t-オクチルフェニルエーテル(Dow,Inc.又はその関連会社の商標、0.80g)、及び重炭酸ナトリウム(NaHCO、0.40g)をフラスコに添加した。反応器の内容物を100rpmで撹拌し、N下で60℃に加熱した。別個の容器で、脱イオン水(48.5g)、SLS(2.14g、水中28.0%)、Triton X-100(1.20g)、BA(BA、44.8g)、MMA(42.3g)、スチレン(10.1g)、及びAA(1.9g)を含有するMEを、オーバーヘッドミキサーを使用して調製した。ME(15.1g)の一部を反応器に添加し、続いて、脱イオン水(10.0g)中のAPS(0.13g)を添加し、反応器の温度を10分かけて80℃に上げた。MEの残り及びAPSの溶液(20.0gの水中0.27g)を、80~81℃の温度でそれぞれ4.5時間及び5時間かけて反応器に同時に供給した(すなわち、ME供給の完了後30分間、APS供給を続けた)。供給の3時間マークにおいて、MD’M ALMAを反応器(10.0g)に添加した。APS供給が完了すると、次いで、反応器を80℃で更に30分間保持した。次いで、反応器を室温に冷却し、水酸化アンモニウム溶液(水中28%活性)を滴下してpHを約8.5に上昇させた。水性分散液を、150μm及び40μmの細孔サイズのステンレス鋼メッシュスクリーンを通して連続的に濾過した。最終水性粒子分散液は、44.3%(理論値=53.0%)の固体、DLSによって決定される135nmのz平均粒子サイズ、0.80重量%の最終ポリマーゲルレベル(モノマーに基づく、各メッシュサイズで収集されたゲルの合計)、及びAccusizer特性評価によって決定される2.69重量%の懸濁ポリマー(モノマーに基づく)を有した。血清相中の残留MD’M-ALMAのレベルは、UHPLCによって決定される13,700ppmであった。
【0039】
比較例4-Zhangプロセスによるハイブリッドコポリマー粒子の水性分散液の調製
Zhang,B.et al.,Appl.Surf.Sci.2007,254,452-458に記載されているようなハイブリッド粒子の水性分散液を調製するプロセスを再現した。脱イオン水(60.0g)、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(0.30g)、及びSpan20ソルビタンモノラウリン酸塩(0.50g)を、凝縮器、オーバーヘッドスターラー、及び熱電対を装備した100mLのガラス反応器に添加した。この反応器の内容物を100rpmで撹拌し、80℃に加熱し、30分間にわたってNでスパージした。別個の容器では、MMA(12.0g)、BA(12.0g)、及びMD’M-ALMA(1.2g)で構成されるモノマー混合物を調製した。モノマー混合物及びAPSの溶液(10.0gの水中0.05g)を、80~81℃の温度で、120分かけて反応器に同時に供給した。供給が完了すると、次いで、反応器を80~81℃で更に6時間保持した。次いで、反応器を室温まで冷却し、水酸化アンモニウム溶液(水中の28%活性)を滴下してpHを約7.0に上昇させた。最終水性粒子分散液は、22.8%(理論値=27.1%)の固体、DLSによって決定される64nmのz平均粒子サイズ、1.97重量%の最終ポリマーゲルレベル(モノマーに基づく、各メッシュサイズで収集されたゲルの合計)、及びAccusizer特性評価によって決定される0.66重量%の懸濁ポリマー(モノマーに基づく)を有した。血清相中の残留MD’M-ALMAのレベルは、UHPLCによって決定される13,700ppmであった。
【0040】
表1は、モノマーエマルジョン(ME)及び/又はケトルに添加された、モノマーに基づく界面活性剤のタイプ及び対応する質量、未反応残留シロキサン-アクリレートモノマー(最終MD’M-ALMA)の量、モノマーに基づいて、直径>1μmかつ<40μm(懸濁ポリマーppm)を有して形成された懸濁コポリマー粒子の濃度、モノマーに基づく、形成されたゲルの濃度(ゲルppm)並びにモノマーに基づいて重量パーセントとして表されるゲル及び懸濁コポリマー粒子の両方の濃度の合計(懸濁+ゲル%)、を示している。NDは、モノマー量が30ppmを超えて検出されなかったことを示す(検出限界)。モノマーエマルジョン(ME)及びケトル中の出発材料のパーセンテージは、モノマーの重量に基づく。この表は、ゲル形成を減少させ、シロキサンアクリレートモノマーMD’M-ALMAの変換を改善するプロセスにおいて非イオン性界面活性剤及びアニオン性界面活性剤の両方を使用することについての重要性を示している。
【0041】
【表1】
【0042】
データは、高濃度のシロキサン-アクリレートモノマーが、比較的低いゲル形成及び低残留モノマーを有するコポリマー粒子に組み込まれ得ることを示している。
【国際調査報告】