IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ メトリオファーム アーゲーの特許一覧

特表2023-514074炎症性肺疾患の吸入治療における5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンの使用
<>
  • 特表-炎症性肺疾患の吸入治療における5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンの使用 図1
  • 特表-炎症性肺疾患の吸入治療における5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンの使用 図2
  • 特表-炎症性肺疾患の吸入治療における5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンの使用 図3
  • 特表-炎症性肺疾患の吸入治療における5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンの使用 図4
  • 特表-炎症性肺疾患の吸入治療における5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンの使用 図5
  • 特表-炎症性肺疾患の吸入治療における5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンの使用 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-05
(54)【発明の名称】炎症性肺疾患の吸入治療における5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンの使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/502 20060101AFI20230329BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20230329BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20230329BHJP
   A61K 9/72 20060101ALI20230329BHJP
   A61M 11/00 20060101ALI20230329BHJP
【FI】
A61K31/502
A61P11/00
A61P29/00
A61K9/72
A61M11/00 300A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022544841
(86)(22)【出願日】2021-01-29
(85)【翻訳文提出日】2022-08-30
(86)【国際出願番号】 EP2021000009
(87)【国際公開番号】W WO2021151619
(87)【国際公開日】2021-08-05
(31)【優先権主張番号】20000051.1
(32)【優先日】2020-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512205898
【氏名又は名称】メトリオファーム アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100116850
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 隆行
(74)【代理人】
【識別番号】100165847
【弁理士】
【氏名又は名称】関 大祐
(72)【発明者】
【氏名】ブリシュ ヴォルフガング
(72)【発明者】
【氏名】カイザー アストリド
(72)【発明者】
【氏名】シュルツ ペトラ
(72)【発明者】
【氏名】シューマン サラ
(72)【発明者】
【氏名】フォン ウェーゲーナー ヨーグ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA93
4C076BB27
4C076CC15
4C076FF68
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC41
4C086GA15
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA13
4C086NA14
4C086ZA59
4C086ZB11
(57)【要約】
本発明は、炎症性肺疾患の吸入治療における5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオン又はその薬学的に許容され得る塩の使用に関する。本発明は、特に、当該目的のための5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンナトリウム塩の使用に関する。5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオン又はその薬学的に許容され得る塩を含有するエアロゾルの有利な特徴及び当該エアロゾルを製造する方法が開示される。本発明は更に、炎症性肺疾患の吸入治療用キットに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸入投与による炎症性肺疾患の予防又は治療に使用するための5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオン又はその薬学的に許容され得る塩の1つであって、
振動メッシュ式ネブライザーが、吸入投与のために、5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオン又はその薬学的に許容され得る塩の1つの液滴を含有するエアロゾルを放出し、
前記エアロゾルの前記液滴の空気動力学的中央粒子径が3.0μm~3.3μmであり、
前記エアロゾルは、微粒子質量が前記エアロゾルの前記液滴の少なくとも50%であって、前記微粒子質量が、1.0~5.0μmの範囲の直径を有する前記液滴の割合を示すことを特徴とする、
5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオン又はその薬学的に許容され得る塩の1つ。
【請求項2】
前記メッシュ式ネブライザーが振動メッシュ式ネブライザーである、
請求項1に記載の使用のための5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオン又はその薬学的に許容され得る塩の1つ。
【請求項3】
前記エアロゾルの前記液滴の少なくとも50%が1.0μm~3.2μmの質量空気動力学的粒子径を有する、
請求項1又は2に記載の使用のための5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオン又はその薬学的に許容され得る塩の1つ。
【請求項4】
前記5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンの薬学的に許容され得る塩が5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンナトリウム塩である、
請求項1~3のいずれか一項に記載の使用のための5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオン又はその薬学的に許容され得る塩の1つ。
【請求項5】
5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンナトリウム塩が、X線粉末図:
形態Iの場合、d値:13.5;6.9;5.2;4.6;3.9;3.5;3.4;3.3;3.1;3.0及び/又は
2θ値:6.5;12.7;16.9;19.3;22.8;25.8;26.6;27.2;28.7;30.3、
形態IIの場合、d値:12.9;7.9;7.1;6.5;5.3;4.0;3.7;3.6;3.3;3.2及び/又は
2θ値:6.8;11.2;12.5;13.7;16.7;22.4;24.3;24.9;27.2;27.8、
並びに
形態IIIの場合、d値:13.131;7.987;7.186;6.566;6.512;5.372;3.994;3.662;3.406;3.288;3.283;3.222;3.215;3.127;2.889及び/又は
2θ値:6.73;11.07;12.31;13.48;13.59;16.49;22.24;24.29;26.14;27.10;27.14;27.67;27.72;28.52;30.93
によって決定される結晶学的数値を特徴とする結晶性無水物多形形態I、II又はIIIの1つとして提供される、
請求項4に記載の使用のための5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオン又はその薬学的に許容され得る塩の1つ。
【請求項6】
前記炎症性肺疾患が、細菌、ウイルス、真菌又は寄生虫の感染による下気道の炎症、慢性下気道疾患、外部作用物質による肺疾患、主に間質に影響を及ぼす呼吸器疾患、下気道の化膿及び/又は壊死状態、胸膜疾患、術後又は関連する下気道疾患、周産期に特異的な肺疾患、下気道及び/又は胸郭の外傷及び傷害、並びに下気道の悪性新生物を含む群から選択される、
請求項1~5のいずれか一項に記載の使用のための5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオン又はその薬学的に許容され得る塩の1つ。
【請求項7】
前記炎症性肺疾患が、慢性閉塞性肺疾患、喘息、肺のサルコイドーシス、嚢胞性線維症、気管支拡張症、成人呼吸窮迫症候群、肺線維症、ベリリウム肺症、慢性肺同種移植片機能不全、肺水腫、肺虚血再灌流傷害及び肺移植後の原発性移植片機能不全を含む群から選択される、
請求項1~6のいずれか一項に記載の使用のための5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオン又はその薬学的に許容され得る塩の1つ。
【請求項8】
炎症性肺疾患を予防又は治療するための吸入投与用エアロゾルに使用するための5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオン又はその薬学的に許容され得る塩の1つであって、
前記エアロゾルの前記液滴の空気動力学的中央粒子径が3.0μm~3.3μmであり、
前記エアロゾルは、微粒子質量が前記エアロゾルの前記液滴の少なくとも50%であって、前記微粒子質量が、1.0~5.0μmの範囲の直径を有する前記液滴の割合を示すことを特徴とする、
5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオン又はその薬学的に許容され得る塩の1つ。
【請求項9】
重量あたり0.01%~10%の範囲の5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオン又はその薬学的に許容され得る塩の1つと、重量あたり70%~重量あたり99.99%の範囲の水溶液と、任意に重量あたり0%~重量あたり20%の範囲の少なくとも1つの薬学的に許容され得る賦形剤とを含有する振動メッシュ式ネブライザーによって生成されるエアロゾルであって、
前記割合が合計して100%になり、
前記エアロゾルの前記液滴の空気動力学的中央粒子径が3.0μm~3.3μmであり、前記エアロゾルは、微粒子質量が前記エアロゾルの前記液滴の少なくとも50%であって前記微粒子質量が1.0~5.0μmの範囲の直径を有する液滴の割合を示すことを特徴とする、
エアロゾル。
【請求項10】
以下:
a)5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオン又はその薬学的に許容され得る塩の1つと、任意に、少なくとも1つの薬学的に許容され得る賦形剤とを含有する水溶液0.1ml~5mlをメッシュ式ネブライザーの噴霧チャンバに充填する工程、
b)80kHz~200kHzの周波数で前記メッシュ式ネブライザーのメッシュの振動を開始する工程、及び
c)前記生成されたエアロゾルを、前記メッシュ式ネブライザーの前記メッシュの前記噴霧チャンバとは反対側に排出することを特徴とする工程
を含む、
請求項9に記載のアロゾルを製造するための方法。
【請求項11】
前記水溶液に含まれる重量基準で少なくとも90%の5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオン又はその薬学的に許容され得る塩の1つが、前記生成されたエアロゾル中に噴霧されることを特徴とする、
請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記生成されたエアロゾルの少なくとも80%が、前記メッシュ式ネブライザー内で噴霧を開始した後の3分間に生成されることを特徴とする、
請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
振動メッシュ式ネブライザーと、5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオン又はその薬学的に許容され得る塩の1つと、任意に少なくとも1つの薬学的に許容され得る賦形剤とを含有する水溶液を有する薬学的に許容され得る容器とを含むキットであって、
前記振動メッシュ式ネブライザーが、前記水溶液からエアロゾルを生成することができ、前記水溶液が前記エアロゾルの前記液滴の空気動力学的中央粒子径が3.0μm~3.3μmであること、及び
微粒子質量が前記エアロゾルの前記液滴の少なくとも50%であって、前記微粒子質量が1.0~5.0μmの範囲の直径を有する液滴の割合を示すことを特徴とする、
キット。
【請求項14】
振動メッシュ式ネブライザーと、注射用水又は生理食塩水を含む第1の薬学的に許容され得る容器と、5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオン又はその薬学的に許容され得る塩の固体形態を含む第2の薬学的に許容され得る容器とを含むキットであって、
任意に、少なくとも1つの薬学的に許容され得る賦形剤が、前記第1の薬学的に許容され得る容器及び/又は前記第2の薬学的に許容され得る容器に収容され、
前記振動メッシュ式ネブライザーが、前記第1の容器及び前記第2の容器の内容物の混合から生じる溶液からエアロゾルを生成することができ、
前記エアロゾルが、前記エアロゾルの前記液滴の空気動力学的中央粒子径が3.0μm~3.3μmであること、及び
前記微粒子質量が前記エアロゾルの液滴の少なくとも50%であって、
前記微粒子質量が、1.0μm~5.0μmの範囲にある直径を有する液滴の割合を示すことを特徴とする、
キット。
【請求項15】
前記メッシュ式ネブライザーへの吸入フィッティングのためのマウスピースを更に含む、
請求項13又は14に記載のキット。
【請求項16】
炎症性肺疾患の治療方法であって、
a)メッシュ式ネブライザーによる噴霧によって請求項9に記載のエアロゾルを提供する工程、及び
b)治療有効量の前記エアロゾルを、それを必要とする患者に、患者による自己吸入による前記メッシュ式ネブライザーへの吸入フィッティングのためのマウスピースを介して投与する工程を含む、
治療方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炎症性肺疾患の吸入治療における5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオン又はその薬学的に許容され得る塩の使用に関する。本発明は、特に、当該目的のための5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンナトリウム塩の使用に関する。5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオン又はその薬学的に許容され得る塩を含有するエアロゾルの有利な特徴及び当該エアロゾルを製造する方法が開示される。本発明は更に、炎症性肺疾患の吸入治療用キットに関する。
【背景技術】
【0002】
肺疾患は、呼吸器系の下気道、特に肺に影響を及ぼす。この用語は、哺乳動物の肺又は気管支におけるガス交換を損なう病理学的状態を包含する。一般に、それらは閉塞性及び拘束性肺疾患に区別される。閉塞性肺疾患は気道閉塞を特徴とする。これは、炎症に起因する気管支樹の狭窄のために肺胞に入ることができる空気の量を制限する。拘束性肺疾患は、肺コンプライアンスの喪失を特徴とし、不完全な肺拡張及び肺硬直の増加を引き起こす。
【0003】
それらはまた、気道疾患、肺組織疾患、肺感染症及び肺増殖性疾患として分類することもできる。気道疾患は、酸素及び他のガスを肺の内外に運ぶ管に影響を及ぼす。それらは通常、気道の狭窄又は閉塞を引き起こす。典型的な気道疾患として、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)及び気管支拡張症が挙げられる。肺組織疾患は、肺組織の構造に影響を及ぼす。組織の瘢痕化又は炎症は、肺を完全に拡張できなくさせる。これはガス交換を複雑にする。その結果、これらの患者は深く呼吸することができない。肺線維症及びサルコイドーシスがその代表例である。肺感染症は、下気道の感染によって引き起こされる障害、例えば肺炎を指す。肺増殖性疾患には、下気道の全ての腫瘍又は新生物が含まれる。
【0004】
気道疾患のほとんどは、根底にある炎症によって引き起こされるか、又は少なくとも炎症性成分を含む。肺組織疾患は、気道の直接的な物理的障害によって引き起こされない限り、しばしば炎症性成分も有する。肺の感染性及び増殖性疾患はまた、しばしば感染又は根底にある悪性腫瘍に続発する炎症性成分を有し得る。
【0005】
したがって、これらの炎症性肺疾患は、抗炎症薬によって薬理学的に治療することができるという共通点を有する。しかしながら、治療的有効性は、肺の炎症部位における薬物の不十分な利用可能性、それぞれの効能によって妨げられることが多い。全身投与、例えば経口投与又は非経口投与は、多くの場合、治療成功をもたらさないか、又は不十分な治療成功しかもたらさない。
【0006】
代替的な投与経路は吸入である。定量吸入器(MDI)は、例えば喘息の治療において広く使用されている。それらは、医薬製剤用の容器、それぞれキャニスタ、分配された量を計量するための計量バルブ、及び吸入用のマウスピースを有するために使用する。医薬製剤は、薬物と、ヒドロフルオロアルカン等の液化ガス噴射剤と、任意に薬学的に許容され得る賦形剤とからなる。
【0007】
MDIの特定のグループは、乾燥粉末吸入器(DPI)である。それらは、乾燥粉末の形態で肺に薬物を送達する。ほとんどのDPIは、患者の吸入力に依存して装置から粉末を取り込み、続いて粉末を肺に到達するのに十分小さい粒子に分解する。このため、患者の吸入流量が不十分であると、用量送達が減少し、粉末の分解が不完全になり、装置の性能が不十分になる可能性がある。したがって、ほとんどのDPIは、適切な使用のために最小限の吸気努力を必要とする。したがって、それらの使用は、年長児及び成人に限定される。
【0008】
気管支又は下気道の上部に影響を及ぼす障害は、このようにして、例えば喘息スプレーによって対処することができるが、ガス交換が行われる肺胞に影響を及ぼす障害は、無効な吸入投与、例えばCOPDのために不十分にしか治療することができない。投与された薬物粒子は、少なくとも治療有効量では、吸入によって肺の底部に到達することができない。
【0009】
ネブライザーは、活性成分を肺に吸入されるミストの形態で投与するために使用する。物理的には、このミストはエアロゾルである。これは、溶液及び懸濁液を装置のマウスピースから直接吸入できる小さなエアロゾル液滴に分解することによってネブライザー内で生成される。従来のネブライザーでは、エアロゾルは、機械的力、例えばソフトミストネブライザにおけるばね力、又は電気力によって生成することができる。ジェット式ネブライザーでは、圧縮機が酸素又は圧縮空気を能動原理で水溶液に高速で流し、このようにしてエアロゾルを生成する。変形例は、加圧式定量吸入器(pMDIs)である。超音波ネブライザーは、能動原理により液体リザーバ内に超音波を発生させるために、高周波で圧電素子を振動させる電子発振器を使用する。
【0010】
最も有望な技術は、振動メッシュ式ネブライザーである。それらは、メッシュを使用し、ポリマー膜はそれぞれ非常に多数のレーザ穿孔された孔を有する。この膜は、液体リザーバとエアロゾルチャンバとの間に配置される。膜上に配置された圧電素子は、膜の高周波振動を誘発し、水溶液中に液滴を形成し、膜の孔を通してこれらの液滴をエアロゾルチャンバ内に加圧する。この技術では、非常に小さな液滴サイズを生成することができる。更に、患者の吸入時間をこうして大幅に短縮することができ、これは患者のコンプライアンスを大幅に向上させる特徴である。これらのメッシュ式ネブライザーのみが、所望のサイズ範囲の有効成分を有する液滴を生成し、合理的な時間内に治療有効量で患者の肺胞に導入することができると考えられる。
【0011】
振動メッシュエアロゾル発生器の特性評価の概要は、Kuo et al.(2019)Aerosol and Air Quality Research 19:1678-1687に記載されている。本発明の物質も、本発明の物質のエアロゾルパラメータの特定の範囲も、そこには開示されていない。
【0012】
しかしながら、炎症性肺疾患の薬学的治療に有効であり得る全ての薬剤がメッシュ噴霧技術に適しているわけではない。例えば、いくつかの薬剤は水にほとんど不溶性であるか、又はそれらの固有の物理化学的分子特性が所望の粒径範囲のエアロゾルの生成を可能にしない。したがって、多くの噴霧された抗炎症剤は、炎症性肺疾患の治療においてある程度の成功しか収めなかった。
【0013】
したがって、炎症性肺疾患の治療において高い効能を示すと同時に、それを必要とする患者の肺胞に到達することができるように所望の粒径範囲のエアロゾルの生成を可能にする医薬品を見出す医学的必要性がある。
【0014】
驚くべきことに、この課題は、5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオン又はその薬学的に許容され得る塩若しくは溶媒和物、水和物、結晶多形、互変異性体若しくは同位体の濃縮形態の1つの噴霧によって解決することができた。
【発明を実施するための形態】
【0015】
5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンは、フタラジンジオンの医薬クラスに属する。このクラスの化合物は、有益な抗炎症作用が知られている。5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンは、ルミノールという名称でも知られている。ルミノールは、優れた化学発光特性を有する。これは、検出手段としての診断アッセイ及び法医学、例えば血液スポットの追跡に広く適用されている。医学では、5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンがナトリウム塩の形態で開発されている。いくつかの国では、5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンは、例えば(a.o.)、特に腸管の細菌及びウイルス起源の急性感染症、B型肝炎及びC型肝炎、胃腸炎、前立腺炎、子宮内膜症、喉の炎症、気管支喘息、肺炎、歯周炎、腎盂腎炎等の炎症、並びにクローン病、潰瘍性大腸炎、紅斑性狼瘡及び強皮症等の自己免疫疾患を含む、広範囲の急性及び慢性炎症性障害について承認されている。更に、科学文献及び特許文献には、5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンナトリウム塩が申し立てによると試験されたか、又は有益な使用が示唆されたとされる治療における適応症の長いリストが依然として存在する(例えば(a.o.)、国際公開第2004/041169号;国際公開第2007/018546号;国際公開第2012/127441号;国際公開第2017/202496号;国際公開第2018/082814号を参照)。
【0016】
例えば、5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンナトリウム塩の全身投与による慢性閉塞性肺疾患の治療が示唆されている。しかしながら、全身投与による治療的有効性の証拠は依然として不足している。
【0017】
ロシア登録特許第2266119号C2には、結核の吸入治療における5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンナトリウム塩若しくはカリウム塩又はそれらの混合物の使用が記載されている。しかしながら、この文書は、物質がどの吸入方法及び装置によって投与されたかについても、この目的のために使用されたエアロゾルの組成及びパラメータについても言及していない。
【0018】
しかしながら、噴霧エアロゾルの吸入投与による炎症性肺疾患の予防又は治療に使用するための5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンナトリウム塩は、まだ記載されていない。
【0019】
ほとんどの従来の免疫調節薬は重篤な有害反応を示すか、又は長期治療において少なくとも問題となるが、5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオン及びその薬学的に許容され得る塩は忍容性が高く、投与される投与量に関して安全域が高い。
【0020】
より良好な溶解性及びバイオアベイラビリティを確実にするために、5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンの薬学的に許容され得る塩が使用される。ナトリウム塩、カリウム塩及びリチウム塩が、治療用途に関して記載されている(国際公開第2010/082858号を参照)。リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、ルビジウム塩及びセシウム塩の結晶構造は、Guzei et al.(2013)Journal of Coordination Chemistry 66,3722-3739に記載されている。したがって、本特許出願は、5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンの全ての薬学的に許容され得る塩の使用にも言及する。
【0021】
5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンは、水和物、例えばナトリウム塩二水和物として使用されることが多い。したがって、本特許出願は、5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオン及びその薬学的に許容され得る塩の全ての水和物及び他の溶媒和物の使用にも言及する。5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオン及びその薬学的に許容され得る塩は、適切な配位子との錯体を構築し得る。したがって、本特許出願は、このような錯体にも言及している。
【0022】
再現性のある標準化されたAPI製造を確実にし、活性剤の改善された安定性特徴を提供するために、無水製剤がしばしば好ましい。5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンナトリウム塩の無水物形態は、国際公開第2011/107295号(形態I、形態II)及び国際公開第2016/096143号(形態III)に結晶多形として記載されている。これらの結晶多形は、実質的に相不純物を含まず、X線粉末回折によって特徴付けられた。この方法は、ブラッグ反射が起こる平面間間隔[Å]及び対応する2シータ(2θ)角度[°]を示す特性d値のセットをもたらす。これにより、それぞれの多形体の一意で明確なフィンガープリントが得られる。
【0023】
形態Iについて、以下の値を決定した:
d値:13.5;6.9;5.2;4.6;3.9;3.5;3.4;3.3;3.1;3.0及び/又は
2θ値:6.5;12.7;16.9;19.3;22.8;25.8;26.6;27.2;28.7;30.3。
【0024】
形態IIは、以下の値を特徴とする。
d値:12.9;7.9;7.1;6.5;5.3;4.0;3.7;3.6;3.3;3.2及び/又は
2θ値:6.8;11.2;12.5;13.7;16.7;22.4;24.3;24.9;27.2;27.8。
【0025】
形態IIIは、以下の値をもたらした:
d値:13.131;7.987;7.186;6.566;6.512;5.372;3.994;3.662;3.406;3.288;3.283;3.222;3.215;3.127;2.889及び/又は
2θ値:6.73;11.07;12.31;13.48;13.59;16.49;22.24;24.29;26.14;27.10;27.14;27.67;27.72;28.52;30.93。
【0026】
5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオン自体も多型を示す。形態I(Paradies(1992)Ber.Bunsen-Ges.Phys.Chem 96:1027-1031)及び形態II(国際公開第2017/140430号)が開示されている。
【0027】
したがって、本特許出願は、5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオン及びその薬学的に許容され得る塩の全ての結晶形態及びその多形の本発明による使用にも言及する。
【0028】
5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンの誘導体の種々のフタラジンジオン及びその薬学的に許容され得る塩についても、同様の治療効果が知られている。一例は、6-アミノ-2,3-ジヒドロフタラジン-1,4-ジオン(イソルミノール)である。適切なフタラジンジオンの概要は、国際公開第2007/018546号に示される。これらの化合物は、本発明による治療用途に使用される場合、同等の効果を示すと仮定することが合理的である。
【0029】
互変異性は、水素原子又はプロトンが化合物の内部に形式的に移動する有機化合物の急速な内部転換に関する。これは、単結合及び隣接する二重結合の切り替えを伴う。単一の形態は互変異性体と呼ばれる。例えば、ケト-エノール互変異性は、5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンで起こる(Proescher and Moody(1939)J Lab Clin Med,1183-1189)。したがって、本特許出願は、5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオン及びその薬学的に許容され得る塩の全ての互変異性体の使用にも言及する。
【0030】
異性体とは、化学式は同じであるが化学構造が異なる分子の総称である。それらは、構成(構造)異性体(原子又は官能基の交換が起こる)及び立体異性体に区別することができる。立体異性体は、エナンチオマー(同じ分子の重ね合わせることができない鏡像)及びジアステレオマー(1つ以上の立体中心に異なる配置を有する同じ分子)に細分することができる。ジアステレオマーは、シス/トランス異性体(分子内の官能基の相対的な配向を指す)、並びに他方で配座異性体(形式的に単結合の周りの回転)及び回転異性体(単結合の周りの異なる回転配置)に細分することができる。5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンの構成異性体の例は、6-アミノ-2,3-ジヒドロフタラジン-1,4-ジオン(イソルミノール)である。フタラジンジオン誘導体には立体異性体が存在し得る。したがって、本特許出願は、5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンの全ての異性体、その誘導体、及び薬学的に許容され得る塩の使用にも言及する。
【0031】
いくつかの用途では、本発明の化合物の同位体濃縮形態が、例えば診断目的のために使用されることが望ましい場合がある。したがって、本特許出願は、本発明の化合物のそのような同位体濃縮形態にも言及する。
【0032】
薬物動態学的観点から、又は製造理論的根拠のため、プロドラッグを剤形として使用することが好ましい場合がある。プロドラッグは、薬理学的に不活性な形態で投与され、体内で代謝的に活性な形態に変換される。この変換は、全身的又は局所的に起こり得る。したがって、本特許出願は、本発明の化合物のプロドラッグにも言及する。
【0033】
本出願を通して使用される場合、「5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオン又はその薬学的に許容され得る塩」という用語は、5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンの全ての前述の分子変異体、すなわち5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオン、又はその薬学的に許容され得る塩、又は溶媒和物、水和物、結晶多形、互変異性体若しくは同位体濃縮形態の1つを包含するものとする。
【0034】
本出願の範囲では、エアロゾルは、空気と固体又は液体粒子との混合物である。特に、「5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオン又はその薬学的に許容され得る塩の1つを含有するエアロゾル」という用語は、5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオン又はその薬学的に許容され得る塩の1つを含有する水溶液の噴霧によって生成されたエアロゾルを指す。
【0035】
特に明記しない限り、本発明で使用される技術的又は科学的用語は、関連する技術分野の当業者がそれらに帰する意味を有する。
【0036】
本出願によれば、「原薬」、「活性物質」、「活性剤」、「薬学的活性剤」、「有効成分」又は「医薬品有効成分」(API)という用語は、特に明記されていないか又は一般的な意味で使用されている場合、5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオン又はその薬学的に許容され得る塩を指す。
【0037】
「組成物」又は「医薬組成物」という用語は、少なくとも1つの薬学的に許容され得る賦形剤と共に任意の薬理学的に許容され得る規定の投与量及び剤形中における少なくとも1つの有効成分を含み、また同様に、組み合わせ、蓄積、複合体若しくは結晶として、又は他の反応若しくは相互作用の結果として、直接又は間接的に以下に概説される成分から生成される全ての薬剤と並んで、任意に以下に列挙される少なくとも1つの更なる医薬薬物も含む。
【0038】
「賦形剤」という用語は、薬学的に活性な原理を除く医薬組成物の任意の成分を説明するために本出願で使用される。適切な賦形剤の選択は、組成物の剤形、投与量、所望の溶解度及び安定性等の様々な因子に依存する。
【0039】
本明細書で言及される本発明の物質又は任意の他の活性物質に関する「効果」、「治療効果」、「作用」、「治療作用」、「効能」及び「有効性」という用語は、前記物質が以前に投与されたことがある生物において因果的に生じる有益な結果を指す。
【0040】
本発明によれば、「有効量」及び「治療有効量」という用語は、そのような治療を必要とする対象において所望の有益な効果を引き起こすのに十分に大きい本発明の物質の量を指す。
【0041】
「治療」及び「治療法」という用語は、投与の時系列とは無関係に、少なくとも本発明の物質を単独で、又は少なくとも1つの更なる調合薬と組み合わせて投与することを含む。そのような投与は、疾患を完全に治癒することによって、又は疾患の経過中に障害の増加を停止若しくは減速することによって、炎症性肺疾患の疾患経過を実質的に改善することを意図している。
【0042】
「予防」又は「予防的処置」という用語は、炎症性肺疾患に起因する症状の発現を予防又は抑制するために、投与の時系列とは無関係に、少なくとも本発明の物質を単独で又は少なくとも1つの更なる調合薬と組み合わせて投与することを含む。それは、特に、そのような症状の発現が合理的な確率で遠い又は近い将来に起こると予想される患者の病状を指す。
【0043】
「対象」及び「患者」という用語は、炎症性肺疾患に関連する疾患症状又は障害に罹患している個体を含み、当該診断は承認された診断である又は疑わしいと診断されたものである。個体は哺乳動物、特にヒトである。
【0044】
本出願の範囲において、「医学」という用語は、ヒト及び獣医学を含むものとする。
【0045】
本特許出願の意味において、「炎症性疾患」又は「炎症性肺疾患」という用語は、特に肺の炎症が主な症状として現れる疾患、障害又は他の身体状態を指す。炎症は、刺激(外因性又は内因性の病毒)又は傷害に対する身体組織の応答である。これは、とりわけ、機械的外傷、放射線損傷、腐食性化学物質、極端な熱又は寒さ、細菌、ウイルス、真菌及び他の病原性微生物又はそれらの一部等の感染因子を含む物理的、化学的及び生物学的刺激によって誘発され得る。炎症は、罹患組織(複数可)において有益な(例えば、創傷治癒の範囲内)及び/又は有害な影響を有し得る。第1の段階では、炎症は急性と見なされる。しばらくしても消散しない場合、炎症は慢性化する可能性がある。炎症の典型的な徴候は、発赤、腫脹、発熱、疼痛及び機能低下である。これは、患部組織の機能の喪失にさえつながる可能性がある。
【0046】
炎症は、例えば感染又は変性した内因性細胞によって活性化された免疫系の最初の応答の1つである。自然免疫系は、非特異的応答、とりわけ一般的な炎症応答を媒介するが、適応免疫系はそれぞれの病原体に特異的な反応を提供し、これはその後免疫系によって記憶される。生物は免疫不全状態にある可能性があり、すなわち、免疫応答は前述の刺激又は損傷に満足のいく方法で対処することができない。一方、免疫系は、自己免疫疾患の場合のように、過活動になり、内因性組織に対する防御を変化させる可能性がある。
【0047】
本特許出願の意味において、「変性疾患」又は「変性肺疾患」という用語は、連続的なプロセスが変性細胞変化をもたらす疾患、障害又は他の身体状態を指す。罹患組織又は器官は、経時的に連続的に劣化する。そのような変性は、特定の脆弱な身体構造、生活様式、食習慣、年齢、先天性疾患又は他の内因性原因の身体的又は生理学的な過剰運動に起因し得る。変性は、それぞれの組織又は器官、特に肺の萎縮又はジストロフィーによって引き起こされるか、又はそれらを伴う場合がある。多くの場合、機能の喪失及び/又は罹患組織又は罹患器官の不可逆的損傷が起こる。
【0048】
本特許出願の意味において、「病変」、「微小病変」及び「外傷」という用語は、罹患肺組織における異なるサイズ及び範囲の損傷を指す。それらは、衝撃力又は回転力が組織損傷をもたらす自発的な物理的衝撃によって引き起こされ得る。しかし、それらはまた、罹患した肺組織の以前の変性疾患の最終的な結果であり得、又はその逆に、微小病変は、微小病変の後に続くそのような変性疾患の起点であり得る。また、罹患肺組織の炎症は、そのような微小病変又は外傷に有利であり得るか、又はそれらの後遺症であり得る。したがって、これらの用語は、炎症及び変性疾患と相互に関連している。
【0049】
本特許出願の意味において、例えば「原発性炎症性又は変性疾患」としての「原発性」疾患という用語は、自己免疫媒介性ではない肺疾患を指す。
【0050】
健常者が炎症性若しくは変性疾患に罹患している若しくは罹患しやすいこと、又はそれぞれの組織若しくは器官の一定の過剰緊張に起因して組織損傷が予想されることが分かっている場合、予想される障害若しくは損傷を予防するために、又は少なくとも緩和するために予防薬を投与することが示され得る。したがって、本特許出願は、本発明による予防的使用にも言及する。
【0051】
炎症性肺疾患が変性疾患をもたらす場合もある。したがって、以下に実施例を更に示す。したがって、本特許出願は、炎症性及び/又は変性肺疾患の予防及び/又は治療、特に原発性炎症性及び/又は変性肺疾患の治療における本発明による使用を指す。
【0052】
本出願の範囲において、「肺」という用語は、下気道の器官及び組織を指す。下気道の器官及び組織の例は、限定されるものではないが、肺葉、肺尖、小舌及び肺胞を含む肺;呼吸細気管支を含む気管支;気管分岐部を含む気管輪及び気管支輪;肺血管(lung vessels)及び気管支血管(bronchial vessels)を含む肺血管(pulmonary vessels)並びに気管支血管;気管支肺リンパ節;肺の自律神経系である。
【0053】
本出願の範囲では、「肺」は更に、機能的又は構造的に下気道及び/又は胸郭に密接に関連しており、したがって吸入によって優れた薬学的アクセスが可能な隣接器官及び組織を指す。例は、限定されるものではないが、胸膜及び横隔膜である。
【0054】
本出願の範囲において、「肺胞」(alveoli)及び「肺胞」(alveolar)という用語は、肺気道の底部の組織構造を指す。肺胞は、ガス交換が行われる肺実質に見られる中空のカップ形状の空洞である。更に、それらは、呼吸細気管支上にまばらに位置し、肺胞管の壁を裏打ちし、盲端の肺胞嚢においてより数が多い。肺胞膜は、毛細管のネットワークによって囲まれたガス交換表面である。膜を越えて、酸素が毛細管内に拡散され、二酸化炭素が毛細管から肺胞に放出されて吐き出される。肺胞は、単層扁平上皮の上皮層と、毛細血管に囲まれた細胞外マトリックスとからなる。上皮内層は、肺胞膜の一部であり、呼吸器膜としても知られている。
【0055】
I型及びII型肺細胞は、肺胞壁に見られる。肺胞マクロファージは、肺胞内腔及びそれらの間の結合組織内を動き回る免疫細胞である。I型細胞は扁平上皮細胞であり、薄く扁平であり、肺胞の構造を形成する。II型細胞(杯細胞)は肺サーファクタントを放出して表面張力を低下させる。
【0056】
典型的な対のヒト肺は、約3億個の肺胞を含み、70mの表面積をもたらす。各肺胞は、その面積の約70%を覆う毛細血管の微細メッシュに包まれている。典型的な健康な肺胞の直径は、200~500μmである。
【0057】
実施例1では、ex vivoでマウス肺をタバコ煙に5分間にわたって曝露した。タバコ煙は、多数の細胞毒性剤を含むことが知られており、例えば(a.o.)罹患肺組織における活性酸素種(ROS)及び活性窒素種(RNS)の劇的な細胞内増加をもたらす。ROS/RNSは、更なる細胞分子のラジカル形成、過酸化物形成、脂質過酸化、細胞膜及び細胞内膜の損傷、DNA損傷、望ましくないタンパク質修飾及びアポトーシスの誘導等の複数の細胞損傷を引き起こすことが知られている。一方、それらは、細胞、それぞれ組織又は生物全体が生体異物(例えば、タバコ煙に由来する毒素)及び感染に対処するのを助ける免疫応答を開始するための重要なメディエーターである。問題は、急性又は慢性炎症の前述の症状を引き起こす免疫反応のオーバーシュートである。したがって、過剰な細胞内ROS/RNSレベルの低下は、一般に抗炎症療法のための有望なアプローチであることが一般に認識されている。具体的には、炎症性肺疾患についても同様である。したがって、実施例1で使用されるex vivo肺モデルは、COPD等のタバコ煙によって引き起こされる肺疾患における治療的有効性を示すだけでなく、全ての炎症性肺疾患を示す。
【0058】
このタバコ煙刺激マウス肺への5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンナトリウム塩の投与は、タバコ煙曝露前の対照レベルまでROS/RNSレベルの用量依存的減少を示した。これは、5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオン及び特に5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンナトリウム塩が、炎症性肺疾患における予防的及び治療的有効性の大きな可能性を有することを証明している。
【0059】
炎症性肺疾患は、以下のように分類することができる(ICD-10 Chapter X:Diseases of the respiratory system(J00-J99),Version 2016による、2020年1月10日現在):
【0060】
a)細菌、ウイルス、真菌又は寄生虫の感染による下気道の炎症
これらの疾患は、限定されるものではないが、同定された鳥インフルエンザウイルスによるインフルエンザ;肺炎を伴うインフルエンザ(同定されたインフルエンザウイルス);他の呼吸器症状を伴うインフルエンザ(同定されたインフルエンザウイルス);他の症状を伴うインフルエンザ(同定されたインフルエンザウイルス);肺炎を伴うインフルエンザ(ウイルスが同定されない);他の呼吸器症状を伴うインフルエンザ(ウイルスが同定されない);他の症状を伴うインフルエンザ(ウイルスが同定されない);アデノウイルス性肺炎;ストレプトコッカス・ニューモニエ(Streptococcus pneumoniae)による肺炎;ヘモフィルス・インフルエンザエ(Haemophilus influenzae)による肺炎;クレブシエラ・ニューモニエ(Klebsiella pneumoniae)による肺炎;シュードモナス(Pseudomonas)による肺炎;スタフィロコッカス(Staphylococcus)による肺炎;B群連鎖球菌(Streptococcus,group B)による肺炎;他の連鎖球菌による肺炎;大腸菌(Escherichia coli)による肺炎;他の好気性グラム陰性菌による肺炎;マイコプラズマ・ニューモニエ(Mycoplasma pneumoniae)による肺炎;他の細菌性肺炎;細菌性肺炎(不特定);クラミジア性肺炎;他の特定の感染性生物による肺炎;他で分類される細菌性疾患における肺炎;他で分類されるウイルス性疾患の肺炎;真菌症における肺炎;寄生虫疾患における肺炎;他で分類される他の疾患における肺炎;気管支肺炎(不特定);大葉性肺炎(不特定);低増殖性肺炎(不特定);他の肺炎(生物の不特定);肺炎(不特定);急性気管支炎;急性細気管支炎;詳細不明の急性下気道感染症を含む。
【0061】
b)慢性下気道疾患
これらの疾患は、限定されるものではないが、急性又は慢性として特定されない気管支炎;単純かつ粘液膿性の慢性気管支炎;慢性気管支炎;慢性気管炎;慢性気管気管支炎;気腫;慢性閉塞性肺疾患(COPD);喘息;喘息状態;気管支拡張症;肺のサルコイドーシス;肺胞微石症を含む。
【0062】
c)外部作用物質による肺疾患
これらの疾患は、限定されるものではないが、炭坑夫塵肺症;石綿肺症;滑石粉塵による塵肺症;珪肺症;アルミニウム肺症;ボーキサイト肺線維症;ベリリウム肺症;黒鉛肺線維症、鉄沈着症;錫沈着症;他の特定の無機粉塵による塵肺症;不特定の塵肺;結核を伴う塵肺症;綿肺;リンネル着用病;麻線維沈着症;他の特定の有機粉塵による気道疾患;農夫肺;砂糖キビ肺症;鳥飼病;コルク肺;麦芽労働者肺;キノコ栽培者肺;カエデ樹皮加工者肺;空調肺及び加湿器肺;チーズ製造者肺、コーヒー作業者肺、魚粉飼料作業者肺(fishmeal-worker lung)、毛皮職人肺(furrier lung)及びセキオシス(sequiosis)等の他の有機粉塵による過敏性肺炎;アレルギー性肺胞炎及び過敏性肺炎等の不特定の有機粉塵による及び過敏性肺炎;化学物質、ガス、煙及び蒸気の吸入による呼吸器状態;固体及び液体による肺炎、放射線肺炎、放射線照射後の肺線維症、急性薬物誘発性間質性肺障害;慢性薬物誘発性間質性肺障害;薬物誘発性間質性肺障害(詳細不明);他の特定された外部作用物質による呼吸状態;不特定の外部作用物質による呼吸状態を含む。
【0063】
d)主に間質に影響を及ぼす呼吸器疾患
これらの疾患は、限定されるものではないが、成人呼吸窮迫症候群;心原性肺水腫、肺透過性水種及び高地肺水腫等の肺水腫;好酸球性喘息(eosinophilic asthma);レフラー肺炎(Loffler´s pneumonia);熱帯性肺好酸球増多症;肺胞及び壁在性肺胞の状態、ハンマン・リッチ(Hamman-Rich)症候群;肺線維症;特発性肺線維症;他の特定の間質性肺疾患;間質性肺疾患(詳細不明)を含む。
【0064】
e)下気道の化膿及び/又は壊死状態
これらの疾患は、限定されるものではないが、肺炎、気胸及び膿腫を伴う肺の膿瘍を含む。
【0065】
f)胸膜疾患
これらの疾患は、限定されるものではないが、胸水を伴う胸膜炎;他で分類された状態の胸水;胸膜プラーク;気胸;乳び胸;線維胸;血胸;血気胸;水胸;胸膜状態(詳細不明)を含む。
【0066】
g)術後又は関連する下気道疾患
これらの疾患は、限定されるものではないが、胸部外科手術後の急性肺機能不全;非胸部手術後の急性肺機能不全;手術後の慢性肺機能不全;肺移植後の宿主対移植片疾患;肺移植後の移植片対宿主病;慢性肺同種移植片機能不全(CLAD)、慢性肺同種移植片機能不全-閉塞性細気管支炎症候群(CLAD-BOS);肺虚血再灌流傷害;肺移植後の原発性移植片機能不全;メンデルソン症候群;他の術後呼吸障害;術後の呼吸器障害(詳細不明);呼吸不全(他に分類されないもの);気管支疾患(他に分類されないもの);肺虚脱;無気肺;間質性気腫;縦隔気腫;代償性気腫;縦隔炎;横隔膜の障害を含む
【0067】
h)周産期に特異的な肺疾患
これらの疾患は、限定されるものではないが、新生児の呼吸窮迫症候群;新生児一過性多呼吸;ウイルス剤による先天性肺炎;クラミジア(Chlamydia)による先天性肺炎;ブドウ球菌(Staphylococcus)による先天性肺炎;B群連鎖球菌(Streptococcus group B)による先天性肺炎;大腸菌(Escherichia coli)による先天性肺炎;シュードモナス(Pseudomonas)による先天性肺炎;ヘモフィルス・インフルエンザエ(Haemophilus influenzae)、クレブシエラ・ニューモニエ(Klebsiella pneumoniae)、マイコプラズマ(Mycoplasma)、B群以外の連鎖球菌による先天性肺炎;他の生物による先天性肺炎;詳細不明の先天性肺炎;新生児胎便吸入、周産期に生じる間質性肺気腫;周産期に生じる気胸;周産期に生じる縦隔気腫;周産期に由来する間質性気腫に関連する他の状態;周産期に生じる肺出血;ウィルソン・ミキティ症候群;周産期に起源を有する気管支肺異形成;周産期に生じる詳細不明の慢性呼吸器疾患を含む。
【0068】
i)下気道及び/又は胸郭の外傷及び傷害
これらの状態は、限定されるものではないが、肺血管の傷害、外傷性気胸;外傷性血胸;外傷性血気胸;肺の他の傷害;気管支の傷害;胸膜の傷害;横隔膜の傷害;胸部の圧挫損傷及び胸部の一部の外傷性切断を含む。
【0069】
j)下気道の悪性新生物
これらの疾患は、限定されるものではないが、気管支及び肺の悪性新生物;肺癌;非小細胞肺癌;腺癌;扁平上皮肺癌;大細胞肺癌;肺腸腺癌;細気管支肺胞癌;ヒツジ肺腺癌;小細胞肺癌;気管支内平滑筋腫;気管支癌;パンコースト腫瘍;肺カルチノイド腫瘍;胸膜肺芽腫;肺の神経内分泌腫瘍;肺リンパ腫;肺リンパ管腫症;肺肉腫;肺胞軟部肉腫;肺の血管腫瘍;縦隔腫瘍;胸膜腫瘍;肺への転移を含む。
【0070】
詳細には、本出願は、吸入投与による炎症性肺疾患の予防又は治療に使用するための5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオン又はその薬学的に許容され得る塩に関し、該炎症性肺疾患は、細菌、ウイルス、真菌又は寄生虫の感染による下気道の炎症、慢性下気道疾患、外部作用物質による肺疾患、主に間質に影響を及ぼす呼吸器疾患、下気道の化膿及び/又は壊死状態、胸膜疾患、術後又は関連する下気道疾患、周産期に特異的な肺疾患、下気道及び/又は胸郭の外傷及び傷害、並びに下気道の悪性新生物を含む群から選択される。
【0071】
特に、本出願は、吸入投与による炎症性肺疾患の予防又は治療に使用するための5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオン又はその薬学的に許容され得る塩に言及し、該炎症性肺疾患は、細菌、ウイルス、真菌又は寄生虫の感染による下気道の炎症である。
【0072】
特に、本出願は、吸入投与による炎症性肺疾患の予防又は治療に使用するための5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオン又はその薬学的に許容され得る塩に言及し、該炎症性肺疾患は慢性下気道疾患である。
【0073】
特に、本出願は、吸入投与による炎症性肺疾患の予防又は治療に使用するための5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオン又はその薬学的に許容され得る塩に言及し、該炎症性肺疾患は、外部作用物質に起因する肺疾患である。
【0074】
特に、本出願は、吸入投与による炎症性肺疾患の予防又は治療に使用するための5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオン又はその薬学的に許容され得る塩に言及し、該炎症性肺疾患は、主に間質に影響を及ぼす呼吸器疾患であるである。
【0075】
特に、本出願は、吸入投与による炎症性肺疾患の予防又は治療に使用するための5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオン又はその薬学的に許容され得る塩に言及し、該炎症性肺疾患は、下気道の化膿状態及び/又は壊死状態である。
【0076】
特に、本出願は、吸入投与による炎症性肺疾患の予防又は治療に使用するための5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオン又はその薬学的に許容され得る塩に言及し、該炎症性肺疾患は胸膜疾患である。
【0077】
特に、本出願は、吸入投与による炎症性肺疾患の予防又は治療に使用するための5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオン又はその薬学的に許容され得る塩に言及し、該炎症性肺疾患は術後又は関連する下気道疾患である。
【0078】
特に、本出願は、吸入投与による炎症性肺疾患の予防又は治療に使用するための5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオン又はその薬学的に許容され得る塩に言及し、該炎症性肺疾患は周産期に特異的な肺疾患である。
【0079】
特に、本出願は、吸入投与による炎症性肺疾患の予防又は治療に使用するための5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオン又はその薬学的に許容され得る塩に言及し、該炎症性肺疾患は、下気道及び/又は胸郭の外傷及び/又は傷害に起因する状態である。
【0080】
特に、本出願は、吸入投与による炎症性肺疾患の予防又は治療に使用するための5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオン又はその薬学的に許容され得る塩に言及し、該炎症性肺疾患は下気道の悪性新生物である。
【0081】
本出願の範囲では、COPDも特に関心がある。COPDは、完全に可逆的ではない気流制限の進行性の進展である。ほとんどのCOPD患者は、3つの病理学的状態:気管支炎、気腫及び粘液閉塞に罹患している。この疾患は、強制肺活量(FVC)が相対的に維持された状態で、呼気の最初の1秒(FEV 1)における強制呼気量のゆっくりと進行する不可逆的な減少を特徴とする。喘息及びCOPDの両方において、気道の有意であるが異なるリモデリングがある。気流閉塞の大部分は、肺胞破壊(気腫)及び小気道閉塞(慢性閉塞性気管支炎)の2つの主要な構成要素に起因する。COPDは、主に著しい粘液細胞過形成を特徴とする。COPDの主な特徴は、患者の肺への好中球浸潤である。TNF-アルファ等の炎症促進性サイトカイン、特にインターロイキン-8(IL-8)等のケモカインのレベル上昇は、COPDの病因において顕著な役割を果たす。血小板トロンボキサン合成は、COPD患者において増強されることが見出された。組織損傷の大部分は、好中球の活性化とそれに続くマトリックスメタロプロテイナーゼの放出、並びにROS及びRNSの産生増加によって引き起こされる。
【0082】
気腫は、気腔の拡大及び肺胞表面領域の喪失を伴う肺構造の破壊を表す。肺の損傷は、肺内の空気袋を弱くして破壊することによって引き起こされる。いくつかの隣接する肺胞が破裂し、多くの小さい空間ではなく1つの大きな空間を形成することがある。より大きな空間は、ブラ(bulla)と呼ばれる更に大きな空洞になる可能性がある。結果として、肺組織の自然な弾性が失われ、過度の伸張及び破裂につながり、したがって肺コンプライアンスを最小限に抑える。また、小さい気管支の引っ張りも少なく、これは、それらの崩壊を引き起こし、空気流を妨げる可能性がある。次の呼吸サイクルの前に吐き出されなかった空気は肺に閉じ込められ、呼吸不足につながる。呼気時に空気を肺から押し出すのにかかる莫大な労力により、患者は消耗する。
【0083】
COPDの最も一般的な症状としては、息切れ、慢性咳、胸部圧迫感、呼吸するためのより大きな努力、粘液産生の増加及び頻繁な咳払いが挙げられる。患者は、通常の日常活動を行うことができなくなる。
【0084】
長期喫煙はCOPDの最も一般的な原因であり、全症例の80~90%を占める。他の危険因子は、遺伝、受動喫煙、空気汚染、及び頻繁な小児呼吸器感染の病歴である。COPDは進行性であり、時には不可逆性であり、現在のところ治癒法はない。
【0085】
COPDの臨床開発は、典型的には3つの段階で記載される。
【0086】
段階1:肺機能(FEV1によって測定)が予測される正常な肺機能の50%以上である。健康関連の生活の質への影響は最小限である。症状はこの段階で進行することがあり、患者は重度の息切れを経験し始め、肺専門医による評価を必要とすることがある。
【0087】
段階2:FEV1肺機能は、予測される正常な肺機能の35~49%であり、健康関連の生活の質に有意な影響がある。
【0088】
段階3:FEV1肺機能は、予測される正常な肺機能の35%未満であり、健康関連の生活の質に大きな影響がある。
【0089】
対症療法としては、気管支拡張剤、糖質コルチコイド及びPDE4阻害剤の投与が挙げられる。適切な気管支拡張剤は、例えば、短時間作用型フェノテロール及びサルブタモール、並びに長時間作用型サルメテロール及びホルモテロール等のβ-2アドレナリン作動薬、臭化イプラトロピウム及び臭化チオトロピウム等のムスカリン性抗コリン薬、並びにテオフィリン等のメチルキサンチンである。
【0090】
適切なグルココルチコイドとしては、ブデソニド、ベクロメタゾン及びフルチカゾン等の吸入グルココルチコイド、プレドニゾロン等の経口投与グルココルチコイド、及びプレドニゾロン等の静脈内投与グルココルチコイドが挙げられる。
【0091】
適切なPDE(ホスホジエステラーゼ)4阻害剤は、ロフルミラストである。
【0092】
したがって、本出願は、吸入投与によるCOPDの予防又は治療における使用のための5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオン又はその薬学的に許容され得る塩にも言及する。
【0093】
本出願の範囲では、喘息にも特に関心がある。喘息は、下気道の慢性炎症性疾患である。それは主に、可逆的気流閉塞及び容易に引き起こされる気管支攣縮等の再発性症状を特徴とする。症状には、喘鳴、咳、胸部圧迫及び呼吸困難のエピソードが含まれる。
【0094】
喘息は、遺伝的要因と環境的要因の組み合わせによって引き起こされると考えられている。環境要因としては、大気汚染及びアレルゲンへの曝露が挙げられる。他の潜在的なトリガは医原性であり得る。
【0095】
喘息は、症状の頻度に基づいて、間欠性、軽度持続性、中等度持続性及び重度持続性に臨床的に分類される。最も重要なパラメータは、FEV1及びピーク呼気流量である。
【0096】
これまで喘息を治癒することはできなかった。長期治療法の場合、喘息状態等の症状は、アレルゲン及び刺激物等のトリガを回避することによって、及び吸入コルチコステロイドの使用によって薬理学的に予防することができる。長時間作用型β-2アゴニスト(LABA)又は抗ロイコトリエン剤を更に使用してもよい。最も一般的な吸入コルチコステロイドには、ベクロメタゾン、ブデソニド、フルチカゾン、モメタゾン及びシクレソニドが含まれる。適切なLABAとしては、サルメテロール及びホルモテロールが挙げられる。モンテルカスト、プランルカスト及びザフィルルカスト等のロイコトリエン受容体拮抗薬は経口投与される。適切な5-リポキシゲナーゼ(5-LOX)阻害剤としては、メクロフェナメートナトリウム及びジロートンが挙げられる。喘息の重度の段階では、プレドニゾロン等の静脈内コルチコステロイドが推奨される。
【0097】
急性喘息発作(喘息発作重積状態)は、サルブタモール等の吸入短時間作用型β-2アゴニストで最もよく治療される。イプラトロピウムブロミドを更に吸入することができる。静脈内に、コルチコステロイドを投与することができる。
【0098】
吸入投与は、一般に、定量吸入器、それぞれ乾燥粉末吸入器を介して行われる。
【0099】
したがって、本出願は、吸入投与による喘息の予防又は治療における5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオン又はその薬学的に許容され得る塩にも言及する。
【0100】
本出願の範囲では、肺のサルコイドーシスにも特に関心がある。肺のサルコイドーシス(本明細書で互換的に使用される:肺サルコイドーシス、PS)は、肺に肉芽腫として知られる塊を形成する炎症細胞の異常な集合を特徴とする。サルコイドーシスの原因は不明である。この疾患は、通常、肺、皮膚又はリンパ節で始まり、全身に現れることがある。最も一般的な症状は、疾患活動が停止したとしても、長期持続性の疲労である。全体的な倦怠感、息切れ、関節の愁訴、体温上昇、体重減少及び皮膚の愁訴が存在し得る。一般に、予後は良好である。特に急性型は、愁訴が自然に徐々に減少するため、通常は問題をほとんど引き起こさない。サルコイドーシスが心臓、腎臓、肝臓及び/又は中枢神経系に存在するか、又は肺に広範囲に現れる場合、転帰はあまり好ましくない。一般に、サルコイドーシスは、胸部X線撮影によって判定される4段階に分類される。しかしながら、これらの段階は重症度と相関しない。1.肺門リンパ節症(リンパ節の肉芽腫);2.肺門リンパ節症及び網状結節性の浸潤(肺の肉芽腫);3.両側性肺浸潤物(リンパ節ではなく肺の肉芽腫);4.典型的には上向きの肺門後退、嚢胞性及び水疱性変化を伴う線維嚢胞性サルコイドーシス(肺における不可逆的な瘢痕化、すなわち肺線維症)。段階2及び3の患者は、しばしば慢性進行性疾患経過を示す。
【0101】
肺のサルコイドーシスの対症療法としては、プレドニゾン及びプレドニゾロン等のコルチコステロイド、TNF-アルファ阻害剤(エタネルセプト、アダリムマブ、ゴリムマブ、インフリキシマブ)、シクロホスファミド、クラドリビン、シクロスポリン、クロラムブシル及びクロロキン等の免疫抑制剤、チルドラキズマブ及びグセルクマブ等のIL-23阻害剤、ミコフェノール酸、レフルノミド、アザチオプリン及びメトトレキサート等の代謝拮抗薬の投与が挙げられる。ロフグレン症候群(Lofgren´s syndrome)等のサブタイプでは、アセチルサリチル酸、ジクロフェナク又はイブプロフェン等のCOX阻害剤が使用される。これらの活性剤は全て、現在まで全身投与されている。
【0102】
したがって、本出願は、吸入投与による肺のサルコイドーシスの予防又は治療における使用のための5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオン又はその薬学的に許容され得る塩にも言及する。
【0103】
本出願の範囲では、嚢胞性線維症も特に関心がある。嚢胞性線維症は、粘液過剰分泌を伴う慢性気管支炎の遺伝型であり、一般に気道分泌物のクリアランス不良、気流の閉塞及び気道の慢性細菌感染を伴い、一般にシュードモナス・エルギノーザ(Pseudomonas aeruginosa)によるものである。嚢胞性線維症患者の痰及び気管支肺胞洗浄液は、好中球がこれらの細菌を死滅させる能力を低下させることが知られている。そのような分泌物による気道の閉塞は、呼吸困難を引き起こす可能性があり、場合によっては、呼吸不全及び死につながる可能性がある。更なる症状としては、副鼻腔感染症、成長不良、脂肪便、手指及び足指のばち指、並びに男性不妊症が挙げられる。
【0104】
嚢胞性線維症は、嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子(CFTR)タンパク質の遺伝子の変異によって引き起こされる常染色体劣性遺伝性疾患である。CFTRは、汗、消化液及び粘液の産生に関与している。CFTRは、肺内部の細胞の内外へのHO及びClイオンの流れを制御するチャネルタンパク質である。CFTRタンパク質が正しく機能しているとき、イオンは細胞の内外に自由に流れる。しかしながら、CFTRタンパク質が機能不全であるとき、これらのイオンは、遮断されたチャネルのために細胞から流出することができない。これは、肺に濃い粘液が蓄積することを特徴とする嚢胞性線維症を引き起こす。
【0105】
嚢胞性線維症の治療法は知られていない。静脈内、吸入、及び経口抗生物質は、慢性及び急性感染症を治療するために使用される。機械的装置及び吸入薬を使用して、肥厚した粘液を変更及び除去する。これらの治療は、効果的であるが、非常に時間がかかる可能性がある。家庭での酸素療法は、有意に低い酸素レベルを有する人に推奨される。吸入抗生物質としては、例えば、レボフロキサシン、トブラマイシン、アズトレオナム及びコリスチンが挙げられる。経口投与される抗生物質としては、例えば、シプロフロキサシン及びアジスロマイシンが挙げられる。突然変異特異的CFTR増強剤は、イバカフター及びテザカフターである。
【0106】
したがって、本出願は、吸入投与による嚢胞性線維症の予防又は治療における使用のための5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオン又はその薬学的に許容され得る塩にも言及する。
【0107】
本出願の範囲では、気管支拡張症も特に関心がある。気管支拡張症は特発性疾患であると考えられている。形態学的に、それは、下気道の部分の永久的な拡大を特徴とする。病的状態として、例えば(a.o.)、感染後、免疫不全、過剰な免疫応答、先天性異常、炎症性肺炎、線維症及び機械的閉塞が検討される。症状としては、日々の粘液の産生を伴う慢性咳が挙げられる。したがって、嚢胞性線維症に似ているが、特徴的な遺伝子変異はない。肺機能検査の結果は、一般に、中程度から重度の範囲の気流閉塞を示す。更なる症状としては、呼吸困難、喀血(coughing up blood)、胸痛、喀血(hemoptysis)、疲労及び体重減少が挙げられる。
【0108】
気管支拡張症の治療は、感染症及び気管支分泌物の制御、気道閉塞の軽減、手術又は動脈塞栓術による肺の罹患部分の除去を目的とする。必要に応じて、抗生物質、特にマクロライド系抗生物質を投与する。粘液の過剰産生は、粘液溶解薬によって対処することができる。気管支拡張剤は呼吸を促進するために使用される。持続吸入コルチコステロイドは、痰の産生を減少させ、気道狭窄を減少させ、疾患の進行を予防するのにある程度役立つ。
【0109】
したがって、本出願は、吸入投与による気管支拡張症の予防又は治療における5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオン又はその薬学的に許容され得る塩にも言及する。
【0110】
本出願の範囲では、成人呼吸窮迫症候群も特に関心がある。成人呼吸窮迫症候群(ARDS)は、呼吸不全症候群である。それは、肺炎、外傷、重症熱傷、輸血、吸引、敗血症、膵炎等の様々な原因を有し得るか、又は特定の薬物に対する反応として生じ得る。肺胞内のガス交換は、肺胞内皮細胞の傷害、サーファクタント機能不全、免疫系のオーバーシュート反応及び凝固障害により深刻に障害される。罹患肺組織への好中球及びTリンパ球の急速な移動が観察される。急性症状としては、呼吸困難、頻呼吸及び青ざめた色の皮膚が挙げられる。患者が生存した場合、肺機能が永続的に損なわれることが多い。急性治療は、主に集中治療室における機械換気、及び必要に応じて抗生物質の投与に基づく。一酸化窒素吸入は、血液の酸素化を改善するのに役立ち得るが、他の欠点を有する。体外式膜型人工肺(ECMO)は、生存率を高めるのに役立つ。しかしながら、例えばコルチコステロイドによる薬学的治療は議論の余地がある。
【0111】
したがって、本出願は、吸入投与による成人呼吸窮迫症候群の予防又は治療に使用するための5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオン又はその薬学的に許容され得る塩にも言及する。
【0112】
本出願の範囲では、肺線維症も特に関心がある。ここで、肺組織に瘢痕が形成され、深刻な呼吸障害につながる。瘢痕形成、それぞれ過剰な線維性結合組織の蓄積は、壁の肥厚をもたらし、したがって血液中の酸素供給の減少を引き起こす。その結果が慢性進行性の呼吸困難である。肺線維症は、他の肺疾患、例えば間質性肺障害、肺の自己免疫疾患、環境及び職業性汚染物質の吸入、又は特定の感染症に続発することが多い。それ以外は特発性肺線維症に分類される。
【0113】
肺線維症は、肺実質を線維性組織と徐々に入れ替わることを含む。瘢痕組織は、酸素拡散能力の不可逆的な低下を引き起こし、肺の硬さ又はコンプライアンスの低下をもたらす。肺線維症は、異常な創傷治癒によって持続する。
【0114】
これまで、肺線維症の一般的な薬学的治療はない。いくつかのサブタイプは、プレドニゾン等のコルチコステロイド、ピルフェニドン及びニンテダニブ等の抗線維化剤、又はシクロホスファミド、アザチオプリン、メトトレキサート、ペニシラミン及びシクロスポリン等の免疫抑制剤に反応する。
【0115】
したがって、本出願は、吸入投与による肺線維症、それぞれ特発性肺線維症の予防又は治療における使用のための5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオン又はその薬学的に許容され得る塩にも言及する。
【0116】
外部作用物質によって引き起こされる典型的な炎症性疾患は、ベリリウム肺症(本明細書では互換的に、慢性ベリリウム疾患、CBD)である。この職業性疾患の治療法はなく、対症療法のみである。
【0117】
吸入による長時間の曝露は、肺をベリリウムに感作させ、肉芽腫と呼ばれる小さな炎症性結節の発生につながる可能性がある。典型的には、CBD肉芽腫は壊死を特徴とせず、したがって乾酪性の外観を示さない。最終的に、このプロセスは肺拡散能の低下をもたらす。典型的な症状は、咳及び呼吸困難である。他の症状としては、胸痛、関節痛、体重減少及び発熱が挙げられる。患者のT細胞はベリリウムに感作される。病理学的免疫応答は、肺におけるCD4+ヘルパーTリンパ球及びマクロファージの蓄積をもたらす。そこでそれらは一緒に凝集し、肉芽腫を形成する。最終的に、これは肺線維症をもたらす。治療の選択肢としては、酸素投与及び経口投与コルチコステロイドが挙げられる。
【0118】
したがって、本出願は、吸入投与によるベリリウム肺症の予防又は治療における使用のための5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオン又はその薬学的に許容され得る塩にも言及する。
【0119】
本出願の範囲では、慢性肺同種移植片機能不全も特に興味深い。慢性肺同種移植片機能不全(CLAD)、それぞれ慢性肺同種移植片機能不全-閉塞性細気管支炎症候群(CLAD-BOS)は、肺移植レシピエントの長期管理における主要な問題である。同種免疫依存性因子(拒絶)及び同種免疫非依存性因子の両方がCLADの発症に寄与する。それは、既知の原因(持続的な急性拒絶、感染、吻合部狭窄、又は疾患再発、胸膜疾患、横隔膜機能不全、又は生来の肺の過膨張)を排除した後の慢性肺機能低下の全ての形態を包含する。したがって、それは、2つの主要な表現型:閉塞性細気管支炎症候群(BOS)(FEV1の持続的な減少、及び閉塞性機能パターンによって定義される)が現在同定されている異種実体である。
【0120】
診断後にCLADを逆転させるために現在利用可能な治療はない。症状の薬学的治療は、アジスロマイシン(第一選択)、あるいはモンテルカストを用いて行う。治療法抵抗性の場合、フォトフェレーシスが適用される。
【0121】
したがって、本出願は、吸入投与によるCLAD、それぞれCLAD-BOSの予防又は治療における使用のための5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオン又はその薬学的に許容され得る塩にも言及する。
【0122】
本出願の範囲では、肺水腫も特に関心がある。肺水腫は、異なる原因を有し得る。体液の蓄積は、肺の組織及び空気空間に起こり、ガス交換の障害につながり、最悪の場合、呼吸不全につながる。肺水腫の治療法は、主に、例えば気管挿管及び機械的換気による重要な機能の維持に焦点を当てている。低酸素症状は酸素補給によって対処することができる。
【0123】
心原性肺水腫は、鬱血性心不全の結果であり得、鬱血性心不全は、心臓が十分な速度で肺循環から血液を送り出すことができず、楔入圧の上昇及び肺水腫をもたらすためである。根本的な原因は、左心室不全、不整脈、又は例えば腎不全若しくは静脈内療法による体液過剰であり得る。血圧の上昇及び左心室への後負荷の増加が順方向の流れを妨げ、楔圧の上昇及びそれに続く肺水腫を引き起こすので、これは高血圧性クリーゼによっても引き起こされ得る。急性の場合、フロセミド等のループ利尿薬が、呼吸窮迫を軽減するためにしばしばモルヒネと共に投与される。利尿薬及びモルヒネの両方が血管拡張作用を有し得るが、静脈内グリセリルトリニトレート又はイソソルビドジニトレート等の特定の一酸化窒素血管拡張薬も使用され得る。
【0124】
肺透過性水種は、肺胞Na取り込み能の低下及び毛細血管バリア機能障害を特徴とし、例えば、リステリオリシンによって誘発されるリステリア症において潜在的に致死的な合併症である。肺尖のNa取り込みは、主に上皮ナトリウムチャネル(ENaC)によって媒介され、肺胞液クリアランスを開始する。
【0125】
高地肺水腫(HAPE)は、通常2,500メートルを超える高度で他の点では健康な人々に発生し、生命を脅かす可能性がある。高度が急速に上昇した後、症状としては、安静時の息切れ、咳、衰弱又は運動能力の低下、胸部圧迫又は鬱血、クラックル(crackles)又は喘鳴、中心の青ざめた皮膚の色(central blue skin color)、頻呼吸及び頻脈が含まれ得る。標高の高いところでは気圧が低いため、動脈酸素分圧が低下する。低酸素肺血管収縮に続発する低酸素血症肺高血圧症のために、毛細血管圧の上昇が生じる。これは、その後の細胞及びタンパク質の肺胞への漏出をもたらす。低酸素性肺血管収縮がびまん性に起こり、肺の全ての領域で動脈血管収縮をもたらす。
【0126】
第1の医学的措置は、可能な限り迅速に低い高度まで降下することである。あるいは、SpO2を90%超に維持するための酸素補給が可能である。
【0127】
HAPEの薬学的予防としては、ニフェジピン等のカルシウムチャネル遮断薬、シルデナフィル及びタダラフィル等のPDE5阻害剤、並びにサルメテロール等の吸入β-2アゴニストが挙げられる
【0128】
ENaC機能を増強するための新しい薬学的アプローチは、例えばペプチド薬物ソルナチドである。
【0129】
したがって、本出願は、吸入投与による肺水腫の予防又は治療、特に心原性肺水腫、肺透過性水種及び高地肺水腫の予防又は治療に使用するための5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオン又はその薬学的に許容され得る塩の使用にも言及する。
【0130】
本出願の範囲では、肺虚血再灌流傷害も特に関心がある。肺移植では、臓器虚血及びその後の再灌流は避けられず、一般に虚血-再灌流(IR)傷害と呼ばれる移植後の急性無菌炎症をもたらす。重度のIR傷害は、原発性移植片機能不全(PGD)をもたらし、これは、肺移植後の短期及び長期の罹患率及び死亡率の両方の主要な原因である。現在、IR傷害を特異的に予防するために臨床的に利用されている治療薬はなく、治療戦略は支持療法に限定されている。実行可能であれば、ドナー肺、それぞれドナーを、5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオン又はその薬学的に許容され得る塩の1つで予防的に治療することができる。
【0131】
内皮細胞機能不全及び内皮障壁の破壊は、肺IR傷害の顕著な特徴である。内皮細胞膜の脱分極は、ROS産生並びにその後の炎症及び白血球の遊出を誘導する。NADPHオキシダーゼ(NOX2)の活性化、一酸化窒素(NO)産生の誘導、及びインテグリンαvβ5の活性化は、ROS/RNS産生を介して血管透過性を促進する。肺胞マクロファージが活性化される。内皮細胞及び好中球上のケモカイン濃度及び接着分子発現の上昇は、好中球の結合及び浸潤をもたらし、サイトカイン、ROSを放出し、好中球細胞外トラップ(NETs)を形成することができる。
【0132】
肺移植前の最近の予防戦略としては、抗酸化剤(フリーラジカルスカベンジャー)又は酸化剤産生酵素(例えば、メチレンブルー又はN-アセチルシステイン)の阻害剤の臓器レシピエントへの投与、炎症促進性転写因子又は炎症性メディエーターの阻害剤を使用する抗炎症戦略、一酸化炭素又は吸入麻酔薬セボフルラン等の気体分子による換気、クレアチン等の成長因子又は栄養補助食品、並びに間葉系幹細胞の投与等の細胞ベースの治療が挙げられる。
【0133】
したがって、本出願は、吸入投与による肺虚血再灌流傷害の予の予防又は治療における5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオン又はその薬学的に許容され得る塩の使用にも言及する。
【0134】
本出願の範囲では、肺移植後の原発性移植片機能不全も特に関心がある。原発性移植片機能不全(PGD)は、肺移植後の最初の数時間~数日に患者の約10%~25%を冒す破壊的な形態の急性肺傷害である。臨床的及び病理学的に、それは成人呼吸窮迫症候群(ARDS)を模倣し、最大50%の死亡率を有する症候群である。PGDは、前述の虚血再灌流傷害、上皮細胞死、内皮細胞機能不全、先天性免疫活性化、酸化ストレス、炎症性サイトカイン及びケモカインの放出、並びに機械的換気及び血液成分の輸血等の医原性因子等の異なる原因を有し得る。自然免疫系活性化の活性化は、虚血再灌流傷害の発症及び拡大中に実証されている。本明細書では、PGDはToll様受容体媒介性傷害の自然免疫経路に関連する。
【0135】
PGDの分子マーカーとしては、細胞内接着分子-1、サーファクタントタンパク質-1、プラスミノーゲン活性化抑制因子、糖化最終産物の可溶性受容体及びタンパク質Cが挙げられる。
【0136】
PGD発症を回避するためのアプローチとしては、再灌流最適化、プロスタグランジン濃度の調節、血行動態制御、ホルモン補充、人工呼吸器管理及びドナー肺調製戦略が挙げられる。PGD発生率を低下させるために、プロスタグランジン、一酸化窒素、界面活性剤、アデノシンの使用、又は炎症促進性メディエーターの阻害及び/又は遊離酸素ラジカルの除去等の戦略が使用されている。更に、好中球及び好中球媒介性メディエーターの阻害について、遊離酸素ラジカル、サイトカイン、プロテアーゼ、脂質メディエーター、接着分子及び補体カスケード阻害剤が研究されている。吸入された一酸化窒素は、全身血圧に影響を及ぼすことなく肺動脈圧を低下させることができる。最後の救命手段の選択肢として、体外式膜型人工肺(ECMO)が、PGD誘発低酸素血症を矯正するために、及び必要なガス交換を提供することによって使用される。
【0137】
したがって、本出願は、吸入投与による肺移植後の原発性移植片機能不全の予防又は治療における使用のための5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオン又はその薬学的に許容され得る塩にも言及する。
【0138】
上述の炎症性肺疾患の効果的な予防的又は治療的治療のため、5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオン又はその薬学的に許容され得る塩は、患者の肺胞に到達しなければならない。したがって、粒子サイズは、肺組織の気道の最も低い部分に達するのに十分に小さくなければならない。薬学的活性剤の吸入投与のための最良の吸入装置クラスは、前述のいわゆるメッシュ式ネブライザーである。本出願の範囲では、咳及び風邪のための、又は嗜好目的のためのむしろ単純な使い捨てメッシュ式ネブライザーから、下気道の重篤な疾患又は状態の臨床的又は家庭内治療のための洗練されたハイエンドメッシュ式ネブライザーまで、当該技術分野で知られている実質的に全てのメッシュ式ネブライザーを使用することができる。
【0139】
適切な市販のメッシュ式ネブライザー、ジェット式ネブライザー、超音波ネブライザー、乾燥粉末吸入器及び(加圧式)定量吸入器は、限定されるものではないが、eFlow(登録商標)rapid、PARI LC STAR(登録商標)、PARI Velox及びPARI Velox Junior(PARI GmbH、ドイツ国シュタルンベルク)、Philips Respironics I-neb及びPhilips InnoSpire Go(Koninklijke Philips N.V.、オランダ国アイントホーフェン)、VENTA-NEB(登録商標)-ir、OPTI-NEB(登録商標)、M-neb(登録商標)doseメッシュ式ネブライザー吸入MN-300/8、M-Neb Flow+及びM-neb(登録商標)メッシュ式ネブライザーMN-300/X(NEBU-TEC、ドイツ国アインスフェルト)、Hcmed Deepro HCM-86C及びHCM860(HCmed Innovations Co.、Ltd、台湾、台北)、OMRON MicroAir U22及びU100(OMRON、日本国京都)、Aerogen(登録商標)Solo、Aerogen(登録商標)Ultra及びAerogen(登録商標)PRO(Aerogen、アイルランド国ゴールウェー)、KTMED NePlus NE-SM1(KTMED Inc.、韓国ソウル)、Vectura Bayer Breelib(商標)(Bayer AG、ドイツ国レーバークーゼン)、Vectura Fox、MPV Truma及びMicroDrop(登録商標)Smarty(MPV MEDICAL GmbH、ドイツ国キルヒハイム)、MOBI MESH(APEX Medical、台湾、新北市)、B.Well WN-114、TH-134及びTH-135(B.Well Swiss AG、スイス国ヴィドナウ)、Babybelle Asia BBU01(Babybelle Asia Ltd.、香港)、CA-MI Kiwi及びその他(CA-MI sri、イタリア国ランギラーノ)、Diagnosis PRO MESH(Diagnosis S.A.、ポーランド国ビャウィストク)、DIGI O(DigiO International Co.、Ltd.、台湾新北市)、feellife AIR PLUS、AEROCENTRE+、AIR 360+、AIR GARDEN、AIRICU、AIR MASK、AIRGEL BOY、AIR ANGEL、AIRGEL GIRL及びAIR PRO 4(Feellife Health Inc.、中国深せん市)、Hannox MA-02(Hannox International Corp.、台湾台北)、Health and Life HL100及びHL100A(HEALTH&LIFE Co.,Ltd.、台湾新北市)、Honsun NB-810B(Honsun Co.、Ltd.,Nantong、China)、K-jump(登録商標)KN-9100(K-jump Health Co.、Ltd.、台湾新北市)、microlife NEB-800(Microlife AG、スイス国ヴィドナウ)、OK Biotech Docspray(OK Biotech Co.,Ltd.、台湾新竹市)、Prodigy Mini-Mist(登録商標)(Prodigy Diabetes Care、LLC、米国シャーロット)、Quatek NM211、NE203、NE320及びNE403(Big Eagle Holding Ltd.、台湾台北)、Simzo NBM-1及びNBM-2(Simzo Electronic Technology Ltd.、中国東莞市)、Mexus(登録商標)BBU01及びBBU02(Tai Yu International Manufactory Ltd.、中国東莞市)、TaiDoc TD-7001(TaiDoc Technology Co.、台湾新北市)、Vibralung(登録商標)及びHIFLO Miniheart Circulaire II(Westmed Medical Group、米国パーチェス)、KEJIAN(Xuzhou Kejian Hi-Tech Co.,Ltd.、中国徐州)、YM-252、P&S-T45及びP&S-360(TEKCELEO、フランス国ヴァルボンヌ)、Maxwell YS-31(Maxwell India、インド国ジャイプール)、Kernmed(登録商標)JLN-MB001(Kernmed、ドイツ国ドゥルマースハイム)を含む。
【0140】
噴霧プロセスの圧電作動によるメッシュ式ネブライザー、それぞれ振動メッシュ式ネブライザーが好ましい。
【0141】
メッシュ式ネブライザーは、患者との相互作用に従って、連続モードデバイスとトリガ作動デバイスの2つのグループに分類することができる。連続モードメッシュ式ネブライザーでは、噴霧されたエアロゾルはマウスピース内に連続的に放出され、患者は提供されたエアロゾルを吸入しなければならない。トリガ作動式装置では、規定量のエアロゾルは、能動的かつ深い吸気呼吸時にのみ放出される。このようにして、連続モード装置よりもはるかに大量の活性剤含有エアロゾルが吸入され、最も低い気道に到達する。後者は、エアロゾル放出が呼吸サイクルに結合されないので、周囲又は上気道の通路のいずれかに大量の活性剤含有エアロゾルを失う。
【0142】
したがって、トリガ作動メッシュ式ネブライザー、特に振動メッシュ式ネブライザーが好ましい。
【0143】
噴霧プロセスの圧電作動によるトリガ作動メッシュ式ネブライザーが特に好ましい。
【0144】
メッシュ式ネブライザーモデルPARI eFlow(登録商標)rapid、Philips Respironics I-neb、Philips InnoSpire Go、M-neb(登録商標)dosemesh nebulizer inhalation MN-300/8、Hcmed Deepro HCM-86C及びHCM860、OMRON MicroAir U100、Aerogen(登録商標)Solo、KTMED NePlus NE-SM1、Vectura Fox、Vectura Bayer Breelib(商標)が好ましい。
【0145】
最も好ましい振動メッシュ式ネブライザーモデルは、PARI eFlow(登録商標)rapid、PARI Velox、Philips Respironics I-neb、M-neb(登録商標)dosemesh nebulizer inhalation MN-300/8、Aerogen(登録商標)Solo、Vectura Fox、Vectura Bayer Breelib(商標)等のハイエンドモデルである。
【0146】
したがって、本出願は、吸入投与による炎症性肺疾患の予防又は治療に使用するための5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオン又はその薬学的に許容され得る塩の1つにも言及し、メッシュ式ネブライザーは、吸入投与のために、5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオン又はその薬学的に許容され得る塩の1つの液滴を含有するエアロゾルを放出する。これは、前述のサブタイプの炎症性肺疾患並びに前述の単一の炎症性肺疾患にもそれぞれ当てはまる。
【0147】
平均液滴サイズは、通常、MMAD(空気動力学的中央粒子径)として特徴付けられる。個々の液滴サイズは、MAD(質量空気動力学的粒子径)と呼ばれる。この値は、噴霧された粒子(液滴)の50%以下の直径を示す。MMAD>10μmの粒子は通常、下気道に到達せず、しばしば喉に詰まる。5μm超10μm未満のMMADを有する粒子は、通常、気管支に到達するが、肺胞には到達しない。100nm~1μmのMMAD間の粒子は肺胞に沈着せず、直ちに吐き出される。したがって、最適範囲は1μm~5μmのMMADである。最近の刊行物は、3.0μm~4.0μmのより狭い範囲を更に支持している(Amirav et al.(2010)J Allergy Clin Immunol 25:1206-1211;Haidl et al.(2012)Pneumologie 66:356-360を参照)。
【0148】
したがって、噴霧された5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオン又はその薬学的に許容され得る塩の1つのMMADは、3.0μm~4.0μm、好ましくは3.0μm~3.5μm、より好ましくは3.0~3.4μm、更により好ましくは3.0μm~3.3μm、最も好ましくは3.0μm~3.2μmであるべきである。
【0149】
同様に、本発明によるエアロゾルの液滴の少なくとも50%は、1μm~5μmのMADを有するべきである。好ましくは、本発明によるエアロゾルの液滴の少なくとも50%は、1μm~4μmのMADを有するべきであり、更に好ましくは、本発明によるエアロゾルの液滴の少なくとも50%は、1μm~3.5μmのMADを有するべきであり、最も好ましくは、本発明によるエアロゾルの液滴の少なくとも50%は、1μm~3.3μmのMADを有するべきである。
【0150】
更に一般的に受け入れられている品質パラメータは、1μm~5μmの範囲の直径を有する生成されたエアロゾル中の粒子の割合である(FPM;微粒子質量)。FPMは、粒子分布の尺度である。これは、5μm未満の範囲の直径を有する生成されたエアロゾル中の粒子の全パーセンテージから1μm未満の範囲の直径を有する生成されたエアロゾル中の粒子のパーセンテージを減算することによって計算される(FPF;微粒子画分)。
【0151】
したがって、噴霧化5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオン又はその薬学的に許容され得る塩の1つのFPMは、少なくとも50%、好ましくは少なくとも55%、より好ましくは少なくとも60%、最も好ましくは少なくとも65%なくてはならない。
【0152】
本明細書に開示される値及び範囲は、4°Cに冷却されたカスケードインパクタ(次世代インパクタ、NGI)によるMMAD、FPF及びFPMの測定値を指すことが明確に述べられる。
【0153】
メッシュ式ネブライザーと5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンナトリウム塩との組み合わせがこの目的を満たすことができるかどうかを試験するために、このようにして生成されたエアロゾル中のFPMを決定した。実施例2に示すように、最初に形態I(上記参照)から調製した5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンナトリウム塩の20mg/ml生理食塩水5mlを噴霧した。驚くべきことに、これらの条件下で、粒子の69.0%(FPM)が目標範囲内であることが見出された。これは、多くの他の薬学的に活性な薬剤について見られるようなはるかに好ましい粒径分布パーセンテージである。この割合は、当然ながら、選択された水溶液、温度、メッシュ式ネブライザーモデル、選択された圧電励起周波数、出口形状及び適用ごとの投与量に従ってわずかに変化し得る。更に、驚くべきことに、この噴霧化のためのMMADが3.1μmであることが同じ実験において見出された。したがって、このMMADは所望の範囲を完全に満たす。
【0154】
この噴霧化のためのMMADは、周囲温度、噴霧化される医薬製剤の温度、薬学的活性剤の濃度、賦形剤の任意の選択等の条件に従ってわずかに変化し得ることが理解される。
【0155】
本出願は、吸入投与による炎症性肺疾患の予防又は治療に使用するための5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオン又はその薬学的に許容され得る塩の1つにも言及し、メッシュ式ネブライザーは、吸入投与のために、5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオン又はその薬学的に許容され得る塩の1つの液滴を含有するエアロゾルを放出し、エアロゾルの液滴の少なくとも50%は直径1μm~5μmのサイズ範囲にある。
【0156】
より好ましい実施形態では、エアロゾルの液滴の少なくとも55%は、直径1μm~5μmのサイズ範囲にある。
【0157】
より好ましい実施形態では、エアロゾルの液滴の少なくとも60%は、直径1μm~5μmのサイズ範囲にある。
【0158】
特に好ましい実施形態では、エアロゾルの液滴の少なくとも65%は、直径1μm~5μmのサイズ範囲にある。
【0159】
本出願は、吸入投与による炎症性肺疾患の予防又は治療に使用するための5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオン又はその薬学的に許容され得る塩の1つにも言及し、メッシュ式ネブライザーは、吸入投与のために、5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオン又はその薬学的に許容され得る塩の1つの液滴を含有するエアロゾルを放出し、これらの液滴の空気動力学的中央粒子径は3μm~4μmの範囲にある。
【0160】
好ましい実施形態では、これらの液滴の空気動力学的中央粒子径は、3μm~3.5μmの範囲内である。
【0161】
より好ましい実施形態では、これらの液滴の空気動力学的中央粒子径は、3μm~3.4μmの範囲にある。
【0162】
更により好ましい実施形態では、これらの液滴の空気動力学的中央粒子径は、3μm~3.3μmの範囲にある。
【0163】
特に好ましい実施形態では、これらの液滴の空気動力学的中央粒子径は、3μm~3.2μmの範囲内である。
【0164】
したがって、本出願は、吸入投与による炎症性肺疾患の予防又は治療に使用するための5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオン又はその薬学的に許容され得る塩の1つに言及し、メッシュ式ネブライザーは、吸入投与のために、5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオン又はその薬学的に許容され得る塩の1つの液滴を含有するエアロゾルを放出し、当該エアロゾルは、微粒子質量がエアロゾルの液滴の少なくとも50%であることを特徴とする。
【0165】
したがって、本出願は、吸入投与による炎症性肺疾患の予防又は治療に使用するための5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオン又はその薬学的に許容され得る塩の1つに言及し、メッシュ式ネブライザーは、吸入投与のために、5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオン又はその薬学的に許容され得る塩の1つの液滴を含有するエアロゾルを放出し、当該エアロゾルは、エアロゾルの液滴の空気動力学的中央粒子径が3.0μm~3.3μmであることを特徴とする。
【0166】
したがって、本出願は、吸入投与による炎症性肺疾患の予防又は治療に使用するための5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオン又はその薬学的に許容され得る塩の1つに言及し、振動メッシュ式ネブライザーが、吸入投与のために、5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオン又はその薬学的に許容され得る塩の1つの液滴を含有するエアロゾルを放出し、エアロゾルの液滴の空気動力学的中央粒子径は3.0μm~3.3μmであり、当該エアロゾルが、微粒子質量がエアロゾルの液滴の少なくとも50%であることを特徴とし、当該微粒子質量は、1.0~5.0μmの範囲の直径を有する液滴の割合を示す。
【0167】
好ましい実施形態では、当該エアロゾルは、エアロゾルの液滴の空気動力学的中央粒子径が3.0μm~3.2μmであることを特徴とする。
【0168】
別の態様では、本出願は、炎症性肺疾患を予防又は治療するための吸入投与用エアロゾルに使用するための5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオン又はその薬学的に許容され得る塩の1つに言及し、当該エアロゾルの液滴の空気動力学的中央粒子径は3.0μm~3.3μmであり、当該エアロゾルは、微粒子質量がエアロゾルの液滴の少なくとも50%であることを特徴とし、当該微粒子質量は、1.0~5.0μmの範囲の直径を有する液滴の割合を示す。
【0169】
好ましい実施形態では、前述のエアロゾルは、エアロゾルの液滴の空気動力学的中央粒子径が3.0μm~3.2μmであることを特徴とする。
【0170】
これは、前述のサブタイプの炎症性肺疾患並びに前述の単一の炎症性肺疾患にもそれぞれ当てはまる。
【0171】
優先的には、本出願は、5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンナトリウム塩が使用される前述の実施形態を指す。
【0172】
より好ましくは、本出願は、X線粉末図によって決定されるそれぞれのd値及び/又は2θ値によって上で定義される5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンナトリウム塩の結晶多形形態I、II又はIIIが使用される前述の実施形態を指す。
【0173】
最も好ましくは、本出願は、X線粉末図によって決定されるそれぞれのd値及び/又は2θ値によって上で定義される5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンナトリウム塩の結晶多形形態Iが使用される前述の実施形態を指す。
【0174】
本発明の別の態様では、本出願は、重量あたり0.01%~重量あたり10%の範囲の5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオン又はその薬学的に許容され得る塩の1つと
重量あたり70%~重量あたり99.99%の範囲の水溶液と、
任意に、重量あたり0%~重量あたり20%の範囲の少なくとも1つの薬学的に許容され得る賦形剤とを含有するメッシュ式ネブライザーによって生成されるエアロゾルに言及し、当該パーセンテージの合計は100%である。
【0175】
特に、本出願は、重量あたり0.01%~重量あたり10%の範囲の5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオン又はその薬学的に許容され得る塩の1つと、重量あたり70%~重量あたり99.99%の範囲の水溶液と、任意に重量あたり0%~重量あたり20%の範囲の少なくとも1つの薬学的に許容され得る賦形剤とを含有する振動メッシュ式ネブライザーによって生成されるエアロゾルに言及し、当該割合は合計して100%になり、エアロゾルの液滴の空気動力学的中央粒子径は3.0μm~3.3μmであり、エアロゾルは、微粒子質量がエアロゾルの液滴の少なくとも50%であることを特徴とし、微粒子質量は1.0~5.0μmの範囲の直径を有する液滴の割合を示す。
【0176】
本発明の別の態様では、本出願は、重量あたり0.01%~重量あたり10%の範囲の5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオン又はその薬学的に許容され得る塩の1つと
重量あたり70%~重量あたり99.99%の範囲の水溶液と、
任意に、重量あたり0%~重量あたり20%の範囲の少なくとも1つの薬学的に許容され得る賦形剤とを含有する水溶液からネブライザーによって生成されるエアロゾルを含む炎症性肺疾患の予防又は治療における使用のための医薬組成物にも言及し、当該パーセンテージの合計は100%である。
【0177】
本発明の別の態様において、本出願はまた、炎症性肺疾患の治療方法であって、
a)メッシュ式ネブライザーによる噴霧によって本発明によるエアロゾルを提供する工程、及び
b)治療有効量の当該エアロゾルを、それを必要とする患者に、患者による自己吸入による当該メッシュ式ネブライザーへの吸入フィッティングのためのマウスピースを介して投与する工程を含む、方法に言及する。
【0178】
5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオン又はその薬学的に許容され得る塩の製剤は、少なくとも1つの薬学的に許容され得る賦形剤を含有し得る。
【0179】
「医薬賦形剤」という用語は、薬学的活性剤と共に医薬製剤に添加される天然又は合成化合物を指す。それらは、製剤を嵩高くするのに役立ち、製剤の所望の薬物動態特性又は安定性を向上させ、製造プロセスにおいて有益であり得る。本発明による賦形剤の有利なクラスは、着色剤、緩衝剤、保存剤、酸化防止剤、pH調整剤、溶媒、等張化剤、乳白剤、芳香族及び香味物質を含む。
【0180】
着色剤は、医薬製剤に着色を与える賦形剤である。これらの賦形剤は、食品着色剤であり得る。それらは、粘土又は酸化アルミニウム等の適切な吸着手段に吸着することができる。着色剤の更なる利点は、洗浄を容易にするために噴霧器及び/又はマウスピース上にこぼれた水溶液を視覚化することができることである。着色剤の量は、医薬組成物の重量あたり0.01~10%、好ましくは重量あたり0.05~6%、より好ましくは重量あたり0.1~4%、最も好ましくは重量あたり0.1~1%で変動し得る。
【0181】
適切な医薬着色剤は、例えば、クルクミン、リボフラビン、リボフラビン-5´-ホスフェート、タルトラジン、アルカンニン、キノリオンイエローWS、ファーストイエローAB、リボフラビン-5´-ナトリウムホスファート、イエロー2G、サンセットイエローFCF、オレンジGGN、コチニール、カルミン酸、シトラスレッド2、カルモイシン、アマランス、ポンソー4R、ポンソーSX、ポンソー6R、エリスロシン、レッド2G、アルラレッドAC、インダスレンブルーRS、パテントブルーV、インジゴカルミン、ブリリアントブルーFCF、クロロフィル及びクロロフィリン、クロロフィル及びクロロフィリンの銅錯体、グリーンS、ファーストグリーンFCF、プレーンカラメル、カウスチックサルファイトカラメル、アンモニアカラメル、サルファイトアンモニアカラメル、ブラックPN、カーボンブラック、植物性炭素、ブラウンFK、ブラウンHT、アルファ-カロテン、ベータ-カロテン、ガンマ-カロテン、アナト、ビキシン、ノルビキシン、パプリカオレオレオレジン、カプサンチン、カプソルビン、リコペン、ベータ-アポ-8´-カロテナール、ベータ-アポ-8´-カロテン酸のエチルエステル、フラボキサンチン、ルテイン、クリプトキサンチン、ルビキサンチン、ビオラキサンチン、ロドキサンチン、カンタキサンチン、ゼアキサンチン、シトラナキサンチン、アスタキサンチン、ベタニン、アントシアニン、サフラン、炭酸カルシウム、二酸化チタン、酸化鉄、水酸化鉄、アルミニウム、銀、金、顔料ルビン、タンニン、オルセイン、グルコン酸鉄、乳酸第一鉄である。
【0182】
更に、緩衝液は、液体製剤、特に医薬液体製剤に好ましい。特に水溶液の緩衝液、緩衝系及び緩衝液という用語は、酸又は塩基の添加による、又は溶媒による希釈によるpH変化に抵抗する系の能力を指す。好ましい緩衝系は、ギ酸塩、乳酸塩、安息香酸、シュウ酸塩、フマル酸塩、アニリン、酢酸塩緩衝液、クエン酸塩緩衝液、グルタミン酸塩緩衝液、リン酸塩緩衝液、コハク酸塩、ピリジン、フタル酸塩、ヒスチジン、MES(2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸、マレイン酸、カコジル酸塩(ヒ酸ジメチル)、炭酸、ADA(N-(2-アセトアミド)イミノ二酢酸、PIPES(4-ピペラジン-ビス-エタンスルホン酸)、BIS-TRISプロパン(1,3-ビス[トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミノール]プロパン)、エチレンジアミン、ACES(2-[(アミノ-2-オキソエチル)アミノ]エタンスルホン酸)、イミダゾール、MOPS(3-(N-モルフィノ)-プロパンスルホン酸、ジエチルマロン酸、TES(2-[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]アミノエタンスルホン酸、HEPES(N-2-ヒドロキシエチルピペラジン-N´-2-エタンスルホン酸)、並びに3.8~7.7のpKを有する他の緩衝液を含む群から選択され得る。
【0183】
酢酸緩衝液等の炭酸緩衝液及びフマル酸塩、酒石酸塩及びフタル酸塩等のジカルボン酸緩衝液、並びにクエン酸塩等のトリカルボン酸緩衝液が好ましい。
【0184】
好ましい緩衝剤の更なる群は、硫酸塩水酸化物、ホウ酸塩水酸化物、炭酸塩水酸化物、シュウ酸塩水酸化物、水酸化カルシウム及びリン酸緩衝剤等の無機緩衝剤である。好ましい緩衝剤の別の群は、イミダゾール、ジエチレンジアミン及びピペラジン等の窒素含有緩衝液である。更に好ましいのは、スルホン酸緩衝液、例えばTES、HEPES、ACES、PIPES、[(2-ヒドロキシ-1,1-ビス-(ヒドロキシメチル)エチル)アミノ]-1-プロパンスルホン酸(TAPS)、4-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-1-プロパンスルホン酸(EEPS)、4-モルホリノ-プロパンスルホン酸(MOPS)及びN,N-ビス-(2-ヒドロキシエチル)-2-アミノエタンスルホン酸(BES)である。好ましい緩衝剤の別の群は、グリシン、グリシル-グリシン、グリシル-グリシル-グリシン、N,N-ビス-(2-ヒドロキシエチル)グリシン及びN-[2-ヒドロキシ-1,1-ビス(ヒドロキシメチル)エチル]グリシン(トリシン)である。グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、トレオニン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、リジン、アルギニン、ヒスチジン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、グルタミン、システイン、メチオニン、プロリン、4-ヒドロキシプロリン、N,N,N-トリメチルリジン、3-メチルヒスチジン、5-ヒドロキシ-リジン、o-ホスホセリン、ガンマ-カルボキシグルタメート、[エプシロン]-N-アセチルリジン、[オメガ]-N-メチルアルギニン、シトルリン、オルニチン及びそれらの誘導体等のアミノ酸緩衝液も好ましい。
【0185】
液体及び/又は固体剤形用の防腐剤は、要求に応じて使用することができる。それらは、限定されるものではないが、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、ソルビン酸ナトリウム、ソルビン酸カルシウム、メチルパラベン、エチルパラベン、メチルエチルパラベン、プロピルパラベン、安息香酸、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸カルシウム、p-ヒドロキシ安息香酸ヘプチル、パラヒドロキシ安息香酸メチルナトリウム、パラヒドロキシ安息香酸エチルナトリウム、パラヒドロキシ安息香酸プロピルナトリウム、ベンジルアルコール、塩化ベンザルコニウム、フェニルエチルアルコール、クレゾール、塩化セチルピリジニウム、クロロブタノール、チオメル(2-(エチルメルクリチオ)安息香酸ナトリウム)、二酸化硫黄、亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸カリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸カルシウム、亜硫酸水素カルシウム、亜硫酸水素カリウム、ビフェニル、オルトフェニルフェノール、オルトフェニルフェノールナトリウム、チアベンダゾール、ナイシン、ナタマイシン、ギ酸、ギ酸ナトリウム、ギ酸カルシウム、ヘキサミン、ホルムアルデヒド、二炭酸ジメチル、亜硝酸カリウム、亜硝酸ナトリウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、酢酸、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、二酢酸ナトリウム、酢酸カルシウム、酢酸アンモニウム、デヒドロ酢酸、デヒドロ酢酸ナトリウム、乳酸、プロピオン酸、プロピオン酸ナトリウム、プロピオン酸カルシウム、プロピオン酸カリウム、ホウ酸、四ホウ酸ナトリウム、二酸化炭素、リンゴ酸、フマル酸、リゾチーム、銅-(II)-硫酸、塩素、二酸化塩素、及び当業者に知られている他の適切な物質又は組成物を含む群から選択され得る。
【0186】
適切な溶媒は、水、炭酸水、注射用水、等張化剤を含む水、生理食塩水、等張性生理食塩水、アルコール、特にエチル及びn-ブチルアルコール、並びにそれらの混合物を含む群から選択され得るが、これらに限定されない。
【0187】
適切な等張化剤は、例えば、薬学的に許容され得る塩、特に塩化ナトリウム及び塩化カリウム、グルコース又はラクトース等の糖、マンニトール及びソルビトール等の糖アルコール、クエン酸塩、リン酸塩、ホウ酸塩及びそれらの混合物である。
【0188】
十分な量の酸化防止剤の添加は、液体剤形に特に好ましい。抗酸化剤の好適な例としては、メタ重亜硫酸ナトリウム、アルファ-トコフェロール、アスコルビン酸、マレイン酸、アスコルビン酸ナトリウム、パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、フマル酸又は没食子酸プロピルが挙げられる。アルファ-トコフェロール及びパルミチン酸アスコルビルの使用が好ましい。
【0189】
液体剤形に適したpH調節剤は、例えば、水酸化ナトリウム、塩酸、リン酸二水素ナトリウム又はリン酸水素二ナトリウム等の緩衝物質である。
【0190】
適切な芳香族及び香味物質は、この目的のために使用することができる全ての精油を含む。一般に、この用語は、それぞれの特徴的な匂いを有する植物又は植物の一部からの揮発性抽出物を指す。それらは、水蒸気蒸留によって植物又は植物の一部から抽出することができる。
【0191】
適切な例は、それぞれ、セージ、クローブ、カモミール、アニス、スターアニス、タイム、ティーツリー、ペパーミント、ミント油、メントール、シネオール、ボルネオール、ジンゲロール、ユーカリ油、マンゴー、イチジク、ラベンダー油、カモミールの花、松葉、ヒノキ、オレンジ、ローズウッド、プラム、カラント、サクランボ、カバノキの葉、シナモン、ライム、グレープフルーツ、タンジェリン、ジュニパー、バレリアン、レモンバーム、レモングラス、パルマロサ、クランベリー、ザクロ、ローズマリー、ショウガ、パイナップル、グアバ、エキナセア、アイビーの葉抽出物、ブルーベリー、カキ、メロン等の精油、それぞれの芳香族、又はそれらの混合物、並びにメントールとペパーミントとスターアニス油又はメントー及びサクランボ風味の混合物である。
【0192】
これらの芳香族又は香味物質は、組成物全体に対して、重量あたり0.0001~10%(特に組成物中)、好ましくは重量あたり0.001~6%、より好ましくは重量あたり0.001~4%、最も好ましくは重量あたり0.01~1%の範囲で含まれ得る。適用又は単一の場合に関連して、異なる量を使用することが有利であり得る。
【0193】
乳白剤は、必要に応じて、液体投与量を不透明にする物質である。それらは、溶媒、ほとんどの場合ここでは水と実質的に異なる屈折率を有さなければならない。同時に、それらは組成物の他の成分に対して不活性であるべきである。適切な例としては、二酸化チタン、タルク、炭酸カルシウム、ベヘン酸、セチルアルコール、又はそれらの混合物が挙げられる。
【0194】
本発明によれば、上述の賦形剤及び賦形剤のクラスの全ては、本発明の使用が妨げられない限り、毒性作用が起こり得るか、又はそれぞれの国の法律に背く限り、単独で又はそれらの任意の考えられる組み合わせで制限なく使用することができる。
【0195】
本発明の別の態様では、本出願はまた、本発明によるエアロゾルを製造するための方法であって、
a)5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオン又はその薬学的に許容され得る塩の1つと、任意に少なくとも1つの薬学的に許容され得る賦形剤とを含有する水溶液0.1ml~5mlをメッシュ式ネブライザーの噴霧チャンバに充填する工程、
b)80kHz~200kHzの周波数でメッシュ式ネブライザーのメッシュの振動を開始する工程、及び
c)生成されたエアロゾルを、メッシュ式ネブライザーのメッシュの前記噴霧チャンバとは反対側に排出することを特徴とする工程
を含む方法にも言及する。
【0196】
振動メッシュ式ネブライザーの振動周波数は、通常、80kHz~200kHz、好ましくは90kHz~180kHz、より好ましくは100kHz~160kHz、最も好ましくは105kHz~130kHzの範囲である(Chen,The Aerosol Society:DDL2019;Gardenshire et al.(2017)A Guide to Aerosol Delivery Devices for Respiratory Therapists,4th ed.を参照)。
【0197】
したがって、前述の方法はまた、前記振動周波数範囲と共に開示される。
【0198】
実施例2に示すエアロゾル分析に見られるように、本発明の方法は、提供された水溶液から高い割合の薬学的活性剤を噴霧するのに特に有効であることが判明した。したがって、噴霧工程中の薬学的活性剤の損失は比較的小さい。
【0199】
したがって、本発明による方法は、前記水溶液に含まれる、重量基準で少なくとも80%、好ましくは重量基準で少なくとも85%、最も好ましくは重量基準で少なくとも90%の5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオン又はその薬学的に許容され得る塩の1つが、生成されたエアロゾル中に噴霧されることを特徴とする。
【0200】
実施例2のエアロゾル分析及びそれぞれの実験設定に見られるように、本発明の方法は、短時間の間に提供された水溶液から高い割合の薬学的活性剤を噴霧するのに特に有効であることが証明された。これは、患者のコンプライアンスにとって重要な特徴である。患者集団のかなりの割合が、吸入プロセスが不快で、うんざりしており、体力がいることに気付いている。一方、患者の能動的な協力は、効果的で標的化された吸入用途に不可欠である。したがって、治療上十分な量が可能な限り短い期間に投与されることが望ましい。驚くべきことに、3分間の時間幅の間に、水溶液中に提供された物質の95%を噴霧できることが示された。これは、高い患者コンプライアンスにとって理想的な期間である。
【0201】
したがって、本発明による方法は、生成されたエアロゾルの少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、最も好ましくは少なくとも90%が、メッシュ式ネブライザーでの噴霧開始後3分間に生成されることを特徴とする。
【0202】
薬学的活性剤は通常、噴霧手順ごとに単一の投与容器で提供されるが、噴霧器及び/又はマウスピースは一定期間にわたって使用することができ、一定の間隔で交換する必要がある。噴霧器及びマウスピースの洗浄は、各噴霧後にデフォルトで推奨される。しかし、本明細書では、患者のコンプライアンスを合理的に認めることはできない。しかしながら、慎重な洗浄の後でさえ、噴霧チャンバ、出口及び/又はマウスピース内にエアロゾルのいくらかの堆積物が常に存在する。エアロゾルは水溶液から生成されるため、これらの堆積物は、吸入されたエアロゾルを汚染する可能性がある細菌のバイオバーデンを生成するリスクを有する。堆積物はまた、メッシュ式ネブライザーのメッシュ膜の孔を塞いでもよい。一般に、ネブライザー及び/又はマウスピースは、1週間又は2週間ごとに交換しなければならない。したがって、医薬品とネブライザーとを組み合わせた製品として提供すると便利である。
【0203】
したがって、本発明の別の態様では、本出願はまた、振動メッシュ式ネブライザーと、5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオン又はその薬学的に許容され得る塩の1つと、任意に少なくとも1つの薬学的に許容され得る賦形剤とを含有する水溶液を含む、薬学的に許容され得る容器とを含むキットにも言及する。
【0204】
特に、本出願は、振動メッシュ式ネブライザーと、5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオン又はその薬学的に許容され得る塩の1つと、任意に少なくとも1つの薬学的に許容され得る賦形剤とを含有する水溶液を有する薬学的に許容され得る容器とを含むキットに言及し、当該振動メッシュ式ネブライザーは、当該水溶液からエアロゾルを生成することができ、当該水溶液は、エアロゾルの液滴の空気動力学的中央粒子径が3.0μm~3.3μmであること、及び微粒子質量がエアロゾルの液滴の少なくとも50%であることを特徴とし、微粒子質量は1.0~5.0μmの範囲の直径を有する液滴の割合を示す。
【0205】
別のキットでは、5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオン又はその薬学的に許容され得る塩の1つは、水溶液の形態ではなく、2つの分離された容器で提供され、1つは活性剤の固体形態であり、もう1つは水溶液である。最終水溶液は、最終溶液中に活性剤を溶解することによって新たに調製される。これにより、最終的な水溶液がメッシュ式ネブライザーの噴霧チャンバに充填される。これらの2つの容器は、完全に分離された容器、例えば2つのバイアル、又は例えばデュアルチャンバーバイアルであり得る。活性剤を解決するために、例えば、2つのチャンバ間の膜が穿孔されて、両方のチャンバの内容物の混合を可能にする。
【0206】
したがって、本出願はまた、振動メッシュ式ネブライザーと、注射用水又は生理食塩水を含む第1の薬学的に許容され得る容器と、5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオン又はその薬学的に許容され得る塩の1つの固体形態を含む第2の薬学的に許容され得る容器とを含むキットであって、任意に、少なくとも1つの薬学的に許容され得る賦形剤が第1の薬学的に許容され得る容器及び/又は第2の薬学的に許容され得る容器に収容されるキットを開示する。
【0207】
特に、本開示は、振動メッシュ式ネブライザーと、注射用水又は生理食塩水を含む第1の薬学的に許容され得る容器と、5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオン又はその薬学的に許容され得る塩の固体形態を含む第2の薬学的に許容され得る容器とを含むキットに言及し、任意に、少なくとも1つの薬学的に許容され得る賦形剤は、第1の薬学的に許容され得る容器及び/又は第2の薬学的に許容され得る容器に収容され、当該振動メッシュ式ネブライザーは、第1の容器及び第2の容器の内容物の混合から生じる溶液からエアロゾルを生成することができ、当該エアロゾルは、エアロゾルの液滴の空気動力学的中央粒子径が3.0μm~3.3μmであること、及び微粒子質量がエアロゾルの液滴の少なくとも50%であることを特徴とし、当該微粒子質量は、1.0μm~5.0μmの範囲にある直径を有する液滴の割合を示す。
【0208】
本発明による方法によって生成されたエアロゾルは、マウスピースによってそれぞれ投与され、自己投与される。必要に応じて、そのようなマウスピースは、前述のキットに更に含まれ得る。
【0209】
提供された水溶液又は最終水溶液をメッシュ式ネブライザーの噴霧チャンバ内に移送する一般的な方法は、注射針を備えたシリンジによって行われる。まず、水溶液をシリンジ内に引き上げた後、噴霧チャンバ内に注入する。任意に、そのようなシリンジ及び/又は注射針は、前述のキットに更に含めることができる。限定されるものではないが、ポリエチレン、ポリプロピレン又は環状オレフィンコポリマーで作られた典型的なシリンジを使用することができ、ステンレス鋼注射針の典型的なゲージは14~27の範囲内である。
【実施例
【0210】
5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンナトリウム塩形態Iは、ドイツ国ベルリンのMetrioPharm Deutschland GmbHによって提供された。サルブタモール及び臭化イプラトロピウムは、イツ国ダルムシュタットMerck KGaAから購入した。
【0211】
実施例1:
5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンナトリウム塩形態Iを、タバコの煙で刺激した単離し、換気し、灌流したマウス肺システムで試験した。
【0212】
単離し、換気し、灌流したマウス肺システム(ILU)は、肺実質及び脈管構造に対する様々な状態及び薬物の急性効果を研究するための確立されたモデルである。それは主に、低酸素の効果を調べるため、及び低酸素肺血管反応に対する潜在的な薬物の効能を評価するために使用される(Weissmann et al.(2006)Proc Natl Acad Sci USA 103:19093-19098参照。)。この実験設定からの結果は、COPDの治療を示すだけでなく、下気道の全ての炎症性障害を示すと見なされる。
【0213】
C57BL/6Jマウス(n=25、群あたり5;雄/雌、3~6ヶ月、20~30g;Charles River GmbH、ドイツ国ズルツフェルト)を、ヘパリン(50 I.E.ヘパリン/g体重;Ratiopharm GmbH、ドイツ国ウルム)を含有するケタミン(100mg/kg体重)及びキシラジン(20mg/kg体重)の腹腔内注射(Ceva Tiergesundheit GmbH、ドイツ国デュッセルドルフ)で麻酔した。肺及び心臓を胸腔から取り出し、ILUシステム(図1A及び図1Bを参照)に置いた。肺を、正常酸素圧ガス(21%O、5%CO、74%N;3cm HOのPEEP(呼気終末陽圧換気)で毎分150回の呼吸)を使用して単離したチャンバ内で換気し、37℃の温度で改変クレブス-ヘンゼライト緩衝液(120.0mM NaCl、4.3mM KCl、1.1mM KHPO、2.4mM CaCl、1.3mM MgCl、13.14mMグルコース、0.25mMヒドロキシエチルデンプン20万/0.5、25.0mM NaHCO、800mM L-アルギニン、7.37~7.40の一定pH範囲に調整;Serag-Wissner GmbH&Co.KG、ドイツ国ナイラ)で灌流した。肺重量、右及び左心室圧、並びに換気圧を、実験手順全体の間に監視及び記録した。5~10分後、肺を適切に洗い流し、全てのパラメータが安定したら、5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンナトリウム塩を、150μlの原液を15mlの循環灌流緩衝液に添加することによって投与した。この物質を、最初のタバコ煙の適用の10分前に投与した。肺を5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンナトリウム塩を含有する緩衝液で灌流しながら、タバコ煙を気管を介して投与した。タバコ煙は、1l/分の流量で正常酸素圧ガスを使用して1分間で1本のタバコ(米国ケンタッキー大学の研究用紙巻たばこ3R4F)を燃焼させることによって、各投与の前に新たに調製し、シガレットの煙から水分を除去するために5gのシリカゲルを含む1lガラス瓶に収集した。50mlのタバコ煙をシリンジを介して採取し、5分間の期間にわたって深い呼吸(3~4秒間の周期的な膨張)で気管(図1A)を介して肺に投与した。投与は、肺の損傷を避けるために吸気圧を慎重に監視しながら手動で行った。タバコ煙の投与を、1時間の中断を挟んで3回繰り返した。
【0214】
5つの処置群(それぞれn=5)を調査した:
A:室内空気暴露
B:タバコ煙+希釈剤(緩衝液)
C:タバコ煙+0.5mM 5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンナトリウム塩
D:タバコ煙+1mM 5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンナトリウム塩
E:タバコ煙+2mM 5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンナトリウム塩
【0215】
5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンナトリウム塩形態Iを注射用水(ビヒクル)に上記の所要濃度で溶解した。原液を注射用水中で調製した。改変クレブス-ヘンゼライト緩衝液(上記を参照)を用いて更に1:100希釈を行った。原液を適切なアリコートで-70℃で保存した。必要量の原液を解凍し、対応する使用液を即時使用のために調製した。
【0216】
第3のタバコ煙適用の1時間後、肺を系から取り出し、12~15cm HOの圧力でホルマリン溶液で膨張させることによって(気管を介して)室温で2時間固定した。その後、更に脱水及びパラフィン包埋するまで、固定した肺をPBS(リン酸緩衝生理食塩水、以下を参照)中に+4℃で維持した。パラフィンブロックを厚さ3μmに切断し、37℃で一晩乾燥させ、3-ニトロチロシン(3-NT)に対して染色した。
【0217】
タバコ煙中の毒素及び生体異物は、活性酸素種(ROS)及び活性窒素種(RNS)の劇的な増加をもたらす。酸化ストレス及びニトロソ化ストレスは、炎症性肺疾患の重症度と相関する。それらは炎症応答を上昇させ、タンパク質分解活性と抗タンパク質分解活性の不均衡を引き起こし、アポトーシス細胞の数を増加させ、増殖を減少させる。これらの酸化剤は、抗酸化防御を圧倒し、様々な機構によって炎症を開始することができる(Foronjy and D´Armiento(2006)Clinical and Applied Immunology Reviews 6:53-72)。最も強力なRNSペルオキシナイトライト(ONOO)は、一酸化窒素(NO)とスーパーオキシドアニオンラジカル(O )との間の反応によって形成される(Szabo et al.(2007)Nat Rev Drug Discov 6:662-680)。ONOOは、好ましくは、タンパク質中のチロシン残基を攻撃して、安定な付加物3-ニトロチロシン(Ricciardolo et al.(2004)Physiol Rev 84:731-765;Seimetz et al.(2011)Cell 147:293-305;Tsoumakidou et al.(2005)Chest 127:1911-1918)を形成する。痰のタンパク質中の3-NTのレベルは、COPD患者のFEV1と負の相関があることが分かっている(Ricciardolo et al.(2004)Physiol Rev 84:731-765;Tsoumakidou et al.(2005)Chest 127:1911-1918)。ニトロ化チロシン残基は細胞シグナル伝達を変化させ、3-NTがニトロソ化ストレスのマーカーであるだけでなく、炎症性気道疾患の病態生理学との機能的関係も有し得ることを示唆している(Davis et al.(2002);J Virol 76:8347-8359;Murata and Kawanishi(2004)Biochem Biophys Res Comm 316:123-128;Sugiura et al.(2004)Free Radic Res 38:49-57;)。3-NTは気道過敏性及び上皮損傷に寄与し(Tsoumakidou et al.(2005)Chest 127:1911-1918)、気道リモデリングの発生において主要な役割を果たすことが提案されている(Ichinose et al.(2000)Am J Respir Crit Care Med 162:701-706)。
【0218】
3-ニトロチロシンの免疫組織化学的染色を以下のプロトコルに従って行った:
【表1】
【0219】
キシロールは、Carl Roth GmbH+Co.KG(ドイツ国カールスルーエ)から購入した。エタノール(96%及び99.6%)は、Otto Fischar GmbH&Co.KG(ドイツ国ザールブリュッケン)から購入した。エタノール(70%)は、ドイツ国フリンツバッハ・アム・インのSAV Liquid Production GmbHから購入した。過酸化水素は、ドイツ国ダルムシュタットのMerck KGaAから購入した。メタノール、ウシ血清アルブミン(BSA)、DAPI(4´,6-ジアミジノ-2-フェニリドン)及び抗ニトロチロシン抗体(N0409;バッチ:120M4825)は、ドイツ国ダルムシュタットのSigma-Aldrich Co.から購入した。げっ歯類用デクロエーカー緩衝液(10倍)及びWarp Red Chromogen Kitを、米国カリフォルニア州パチェーコのBiocare Medicalから購入した。トリス洗浄緩衝液(TBS)、CATヘマトキシリン染色溶液及びAP Polymer System(マウス/ウサギ)は、ドイツ国ベルリンのZytomed Systems GmbHから購入した。Dako Fluorescent Mounting Mediumは、米国カリフォルニア州ヴィラレアルカーピンテリアDako North America Inc.から購入した。TruStain fcX(抗マウスCD16/32;DR Fcブロック)は、米国カリフォルニア州サンディエゴのBioLegend Inc.から購入した。PBS(リン酸緩衝生理食塩水)を、8g/lの塩化ナトリウム(Carl Roth GmbH+Co.KG、ドイツ国カールスルーエ)、0.2g/lの塩化カリウム(Carl Roth GmbH+Co.KG、ドイツ国カールスルーエ)、1.42g/lのリン酸水素二ナトリウム(Merck KGaA、ドイツ国ダルムシュタット)及び0.27g/lのリン酸二水素カリウム(Merck KGaA、ドイツ国ダルムシュタット)を用いて調製した。
【0220】
染色された組織学的サンプルを光学顕微鏡によって盲目的に分析した。肺実質における3-ニトロチロシンレベルを、染色された表面積のパーセンテージとして定量した。大きい気管支及び血管を除外して、5~10個の無作為に選択した視野において200倍の倍率で定量化を行った。群間の比較のために、ボンフェローニ補正による一元配置ANOVA統計検定を行った。p<0.05の差を統計学的に有意と見なした。
【0221】
気管を介して適用されたタバコ煙は、対照としての室内空気(図2A)と比較して、暴露した肺の中隔における3-ニトロチロシンの有意な増加をもたらす(図2B)。5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンナトリウム塩を、タバコ煙を適用する前に灌流緩衝液に添加し、実験全体にわたって維持した。タバコ煙によって誘発される3-ニトロチロシン形成は、1mMの5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンナトリウム塩(図2D)又は2mMの5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンナトリウム塩(図2E)を含有する緩衝液を灌流した肺ではほぼ完全に消失させることができたが、最も低い5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンナトリウム塩濃度(0.5mM;図2C)は中程度の効果をもたらした。
【0222】
染色の定量化:
【表2】
【0223】
結果を図3に棒グラフとして示す。値(平均±SEM)は、評価した組織学的サンプル(1群あたり5匹のマウス;マウス1匹あたり5~6個の評価された組織学的サンプル)における染色表面のパーセンテージを示す。
【0224】
この実験から、5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンナトリウム塩による前処理は、ILUモデルの肺実質におけるタバコ煙誘発性3-ニトロチロシン形成を防止すると結論付けることができる。
【0225】
これは、5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンナトリウム塩が急性タバコ煙誘発性肺傷害に対する保護効果を有することを示唆している。したがって、これらの結果は、全ての炎症性肺疾患の吸入予防又は治療における5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオン及びその薬学的に許容され得る塩の有益な効果を予測すると見なすことができる。
【0226】
実施例2:
5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンナトリウム塩を含む水溶液から生成されたエアロゾルの粒径分布(FPM)及び空気動力学的中央粒子径(MMAD)を分析した。
【0227】
5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンナトリウム塩の結晶多形I形を生理食塩水(0.9%NaClを含有する再蒸留水)に溶解した。最終濃度溶液は、20mg/mlの5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンナトリウム塩であった。
【0228】
実験手順は、欧州薬局方2.9.44(噴霧化のための調製:特性評価)に従って行った。カスケードインパクタ(Next Generation Impactor(NGI)、Copley Scientific Ltd.、英国ノッティンガム)を使用して、噴霧化粒子の各画分に対するそれぞれの割合を決定した。測定のために、カスケードインパクタを4℃に冷却した。
【0229】
NGIは、以下の特徴を含む。
1)吸入試験のために製薬業界及びバイオテクノロジー業界によって設計され、受け入れられている;
2)全ての欧州薬局方及び米国薬局方の規格に適合し、それを超える;
3)0.24~11.7μmの粒径範囲(流速に依存する);
4)7段階のうち5段階は30~100l/分の流量で0.54~6.12μmのカットオフを有する;
5)30~100l/分の較正された流量範囲;
6)ネブライザー用途のための15l/分での更なる較正;
7)フルステージ測定報告書(システム適合性)を提出;
8)良好な薬物回収のための低い段間壁損失(質量バランス);
9)導電性であり、静電気の影響を受けない;
NGIカスケードインパクタ自体は、以下の3つの主要部分を備える:
a)分析前にサンプルを収集するために使用される8つの収集カップを含むカップトレイ
b)カップトレイを支持するために使用される底部フレーム
c)蓋は、段間通路と、ノズルを定位置に保持するシール体とを含む。
【0230】
この5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンナトリウム塩水溶液の噴霧は、振動メッシュ式ネブライザー(M-neb-dose+、NEBU-TEC、ドイツ国アイセンフェルト)を用いて行った。このようにして生成されたエアロゾルは、マウスピース(SK-211、NEBU-TEC、ドイツ国アイセンフェルト)によってカスケードインパクタに送達された。
【0231】
噴霧チャンバ(イエロースタンプ、250μl液体排出)を充填した。呼気シミュレータで構成されたパフプロファイルは、ネブライザーによる吸入の正確なシミュレーションが保証されるように選択された。対応する時間を記録した。
【0232】
カスケード当たりの噴霧化5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンナトリウム塩の定量化は、カスケードパン(ステージ1~8)からの抽出後に、外部標準較正曲線(範囲0~200μg/ml;相関係数:0.9999)を参照してHPLCによって行った。
【0233】
各カスケードについて得られた単一の値を加えた。マウスピース内に残留量の5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンナトリウム塩は見られなかった。得られた値からMMAD、FPF及びFPMを算出した。
【表3】
【0234】
累積粒径分布を図4Aに示し、相対粒径分布を図4Bに示す。
【0235】
エアロゾルを、以下のように更に特徴付けることができる:
-4.7mgのマウスピースでの放出された投与量は、公称値の95%に相当する
-エアロゾル放出時間は3分(30回のストローク/呼吸に相当)であった。
-MMAD<1μmの粒子とMMAD>1μmの粒子の比は5:95である。
【0236】
実施例3:
比較のために、サルブタモール硫酸塩を含有する生理食塩水から生成されたエアロゾルの粒径分布(FPF及びFPM)及び空気動力学的質量中央径(MMAD)を分析した(本発明の一部ではない)。手順は実施例2に記載したものと同じであった。
【0237】
サルブタモール(アルブテロール)は、短期気管支拡張剤である。それは、β-2受容体アゴニストとして作用する薬理学的に活性な(R)-(-)-エナンチオマーと代謝的に活性な(S)-(+)-エナンチオマーとのラセミ混合物からなる。β-2受容体の活性化は、アデニリルシクラーゼを介したATPのサイクリックAMP(cAMP)への変換をもたらし、ミオシンリン酸化の阻害及びCa2+の細胞内濃度の低下をもたらす細胞内シグナル伝達経路を引き起こす。cAMPの増加はまた、気道内の炎症細胞が炎症メディエーター及びサイトカインを放出するのを阻害する。サルブタモールはまた、Ca2+チャネル及びKチャネルのコンダクタンスを増加させ、過分極及び気管支平滑筋の弛緩をもたらす。
【0238】
サルブタモールは、急性喘息発作に最も広く使用されている物質の1つである。それはしばしば定量吸入器を介して投与される。したがって、粒径分布を決定するために、硫酸サルブタモールの生理食塩水を試験した。180μg(90μg/スプレー適用、吸入セッションあたり2スプレー適用)の標準用量(硫酸アルブトール)を生理食塩水に溶解した。
【0239】
各カスケードについて得られた単一の値を加えた。マウスピースに残存量の硫酸サルブタモールは見られなかった。得られた値からMMAD、FPF及びFPMを算出した。
【表4】
【0240】
累積粒径分布を図5Aに示し、相対粒径分布を図5Bに示す。
【0241】
エアロゾルを、以下のように更に特徴付けることができる:
-166μgのマウスピースでの放出された投与量は、公称値の92%に相当する
-エアロゾル放出時間は3分(30回のストローク/呼吸に相当)であった。
-MMAD<1μmの粒子とMMAD>1μmの粒子の比は4:96である。
【0242】
比較すると、5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンナトリウム塩は、サルブタモール硫酸塩よりも明らかに小さいMMADを示す。FPFは5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンナトリウム塩でわずかに高く、FPMは同様の範囲にある。
【0243】
実施例4:
比較のために、イプラトロピウムブロミドを含有する生理食塩水から生成されたエアロゾルの粒径分布(FPF及びFPM)及び空気動力学的質量中央径(MMAD)を分析した(本発明の一部ではない)。手順は実施例2に記載したものと同じであった。
【0244】
イプラトロピウムブロミドは、COPD及び不整脈の治療に使用される薬学的に活性な薬剤である。これは、ムスカリン性アセチルコリン受容体、M受容体の気管支の肺血管上皮の平滑筋において競合的アンタゴニストとして作用する。M受容体はG共役しており、イノシトール三リン酸(IP)の増加、続いて細胞内カルシウム貯蔵部からのCa2+放出をもたらす。したがって、M受容体の遮断は気管支拡張を引き起こす。
【0245】
臭化イプラトロピウムは、ネブライザー及び鼻腔スプレーを介して投与されることが多い。そこで、粒度分布を測定するために、イプラトロピウムブロミドの生理食塩水を試験した。18μg/スプレー適用の標準用量(Atrovent)を生理食塩水に溶解した。
【0246】
各カスケードについて得られた単一の値を加えた。マウスピースには臭化イプラトロピウムの残留量は見られなかった。得られた値からMMAD、FPF及びFPMを算出した。
【表5】
【0247】
累積粒径分布を図6Aに示し、相対粒径分布を図6Bに示す。
【0248】
エアロゾルを、以下のように更に特徴付けることができる:
-15μgのマウスピースでの放出された投与量は、公称値の86%に相当する
-エアロゾル放出時間は3分(30回のストローク/呼吸に相当)であった。
-MMAD<1μmの粒子とMMAD>1μmの粒子の比は4:96である。
【0249】
比較すると、5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンナトリウム塩は、イプラトロピウムブロミドよりも明らかに小さいMMADを示す。FPFは5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンナトリウム塩でわずかに高く、FPMはわずかに小さい。
【図面の簡単な説明】
【0250】
図1】A:実施例1の実験装置の概略図。 1-タバコ煙 2-換気装置 3-気管 4-肺 5-心臓 6-リザーバ 7-5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンナトリウム塩の水溶液 8-ローラポンプ B:実施例1の実験装置の写真。
図2】実施例1の代表的なサンプルの免疫組織化学染色。 左パネル:倍率200倍 右パネル:倍率400倍、左パネルより詳細拡大。 A:室内空気 B:タバコ煙+希釈剤(緩衝液) C:タバコ煙+0.5mM 5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンナトリウム塩 D:タバコ煙+1mM 5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンナトリウム塩 E:タバコ煙+2mM 5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンナトリウム塩 右パネルでは、炎症領域が強調表示されている。
図3】実施例1のサンプルの免疫組織化学染色の統計的評価。染色された表面積のパーセンテージは、炎症のグレード(n=5;平均±SEM)に対応する。アスタリスクを付したバーは、両群間の有意差が高いことを示す(p<0.001)。 A:室内空気 B:タバコ煙+希釈剤(緩衝液) C:タバコ煙+0.5mM 5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンナトリウム塩 D:タバコ煙+1mM 5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンナトリウム塩 E:タバコ煙+2mM 5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンナトリウム塩
図4】MMADとして決定された、実施例2で生成されたエアロゾルの粒径分布(μm)。 A:累積MMAD B:相対MMAD
図5】MMADとして決定された、実施例3で生成されたエアロゾルの粒径分布(μm)。 A:累積MMAD B:相対MMAD
図6】MMADとして決定された、実施例4で生成されたエアロゾルの粒径分布(μm)。 A:累積MMAD B:相対MMAD
【0251】
略語一覧:
【表6】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】