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特表2023-514131ガス化供給原料を乾燥させるためのガス発酵のテールガス
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  • 特表-ガス化供給原料を乾燥させるためのガス発酵のテールガス 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-05
(54)【発明の名称】ガス化供給原料を乾燥させるためのガス発酵のテールガス
(51)【国際特許分類】
   C10J 3/00 20060101AFI20230329BHJP
   C12P 5/02 20060101ALI20230329BHJP
   C12N 1/20 20060101ALI20230329BHJP
   C12M 1/107 20060101ALI20230329BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20230329BHJP
   C12P 1/04 20060101ALI20230329BHJP
   C10J 3/02 20060101ALI20230329BHJP
【FI】
C10J3/00 F
C12P5/02
C12N1/20 F
C12M1/107
C12M1/00 D
C12P1/04 Z
C10J3/02 J
C10J3/00 D
C10J3/02 G
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022547180
(86)(22)【出願日】2021-03-04
(85)【翻訳文提出日】2022-08-03
(86)【国際出願番号】 US2021020799
(87)【国際公開番号】W WO2021188300
(87)【国際公開日】2021-09-23
(31)【優先権主張番号】62/990,148
(32)【優先日】2020-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/180,619
(32)【優先日】2021-02-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518403425
【氏名又は名称】ランザテク,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100196966
【弁理士】
【氏名又は名称】植田 渉
(72)【発明者】
【氏名】ガオ,アラン ハイミン
(72)【発明者】
【氏名】コンラッド,ロバート ジョン
【テーマコード(参考)】
4B029
4B064
4B065
【Fターム(参考)】
4B029AA01
4B029BB02
4B029DG10
4B029GA08
4B029GB10
4B064AA02
4B064AA03
4B064AB03
4B064CA02
4B064CC21
4B064DA16
4B065AA01X
4B065AA02X
4B065AA23X
(57)【要約】
本開示は、ガス発酵プロセスのガス化プロセスとの統合を提供し、それによって、ガス発酵プロセスからのテールガスがガス化プロセスの乾燥機に再循環される。ガス発酵プロセスからのテールガスは、熱を生成するために利用され、この熱は、次に、ガス化プロセスへの供給原料を乾燥させるために使用される。熱は、典型的に、空気などの乾燥ガスを加熱するために使用され、次いで、ガス化供給原料と直接または間接的に接触して、ガス化供給原料を乾燥させる。乾燥したガス化供給原料は、乾燥していないガス化供給原料と比較して、合成ガスの改善された収率および改善された品質を提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
方法であって、
a.乾燥ガスを加熱することと、
b.ガス化供給原料を含有する乾燥機に前記加熱された乾燥ガスを提供して、乾燥ガス化供給原料を生成することと、
c.前記乾燥ガス化供給原料の少なくとも一部をガス化して、合成ガスを生成することと、
d.微生物を使用して、バイオリアクター内で少なくとも一部の前記合成ガスを発酵させて、少なくとも1つの生成物およびテールガスを生成することと、
e.前記テールガスの少なくとも一部を利用して、前記乾燥ガスを加熱するための熱を提供することと、を含む、方法。
【請求項2】
前記ガス化供給原料が、分別された都市固形廃棄物、分別されていない都市固形廃棄物、産業固形廃棄物、農業廃棄物、森林廃棄物、微生物バイオマス、リグノセルロース材料、下水、廃水処理からの汚泥、またはこれらの任意の組み合わせである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記テールガスが、二酸化炭素を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記テールガスが、一酸化炭素、水素、窒素、およびメタンをさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記微生物が、1つ以上のC1固定微生物である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
C1固定微生物が、Moorella、Clostridium、Ruminococcus、Acetobacterium、Eubacterium、Butyribacterium、Oxobacter、Methanosarcina、およびDesulfotomaculumから選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記微生物バイオマスが、1つ以上のC1固定微生物を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項8】
前記C1固定微生物が、Moorella、Clostridium、Ruminococcus、Acetobacterium、Eubacterium、Butyribacterium、Oxobacter、Methanosarcina、およびDesulfotomaculumから選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記微生物バイオマスが、廃水処理プラントからのものである、請求項2に記載の方法。
【請求項10】
前記乾燥ガスが、空気である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記ガス化が、前記ガス化供給原料を乾燥させずにガス化することと比較して、より高い合成ガスの収率を生成する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記ガス化が、前記ガス化供給原料を乾燥させずにガス化することと比較して、より高品質の合成ガスを生成する、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記テールガスが、燃焼されて、前記乾燥ガスを加熱するための熱を提供する、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記テールガスが、バーナー内で燃焼されて、前記乾燥ガスを加熱するための熱を提供する、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
装置であって、
a.乾燥ガスを加熱するための1つ以上のバーナーを有する乾燥機であって、供給原料導管と連通している乾燥機と、
b.前記乾燥機と連通しているガス化装置と、
c.前記ガス化装置と流体連通しているバイオリアクターと、
d.前記バイオリアクターと流体連通している生成物導管およびテールガス導管と、
e.前記1つ以上のバーナーとも流体連通している前記テールガス導管と、を備える、装置。
【請求項16】
前記乾燥機と連通しており、かつ少なくとも1つのバーナーと熱交換可能に連通している、乾燥機ガス導管をさらに備える、請求項15に記載の装置。
【請求項17】
廃水処理ユニットと流体連通している生成物回収ユニットと、前記廃水処理ユニットから前記乾燥機への第1の再循環導管と、をさらに備える、請求項15に記載の装置。
【請求項18】
前記第1の再循環導管と流体連通しているバイオガス処理ユニットをさらに備える、請求項17に記載の装置。
【請求項19】
前記生成物回収ユニットから前記乾燥機への第2の再循環導管をさらに備える、請求項15に記載の装置。
【請求項20】
少なくとも前記ガス化装置および前記バイオリアクターと流体連通している少なくとも1つの除去ユニットをさらに備える、請求項15に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年3月16日に出願された米国仮特許出願第62/990,148号および2021年2月19日に出願された米国特許出願第17/180,619号の利益を主張する。両方の出願の内容は、それらの全体が参照により本明細書に明示的に組み込まれる。
【0002】
本開示は、ガス発酵とガス化との統合を改善するためのプロセスに関する。特に、本開示は、ガス発酵プロセスのテールガスの少なくとも一部をガス化プロセス用の供給原料のための乾燥機に再循環させることに関する。
【背景技術】
【0003】
世界の人口が増加するにつれて、そのような人口によってもたらされる廃棄物がますます大きな懸念点となっている。廃棄物処理の解決策の1つは、ガス化である。ガス化とは、有機または化石燃料系の炭素質材料を、一酸化炭素、二酸化炭素、および水素を含む合成ガスに変換するプロセスである。ガス化は、有利には、最終的に埋め立て処分される廃棄物の量を減らし、また1つ以上の後続のプロセスによって有用な生成物に変換可能な生成物、合成ガスを生成する。
【0004】
ガス化によって生成された合成ガスは、フィッシャー・トロプシュを含む多くのプロセスで利用され得る。フィッシャー・トロプシュプロセスは、一酸化炭素の接触水素化を提供して、炭化水素、アルコール、または他の含酸素炭化水素を含む様々な生成物を生成する。しかしながら、フィッシャー・トロプシュプロセスにおける触媒床は、ガス化供給原料に応じて合成ガス流中にあり得る様々な成分に特に敏感である。そのような成分の1つは硫黄である。フィッシャー・トロプシュプロセスに送る前に合成ガス流から硫黄が除去されない場合、硫黄は、フィッシャー・トロプシュ反応に必要な触媒を失活させる場合がある。したがって、フィッシャー・トロプシュプロセスに好適なガスに達するには、多くの場合、大規模なガス浄化技術が必要になる。
【0005】
フィッシャー・トロプシュプロセスの代替案の1つは、ガス発酵である。ガス発酵は、合成ガスを含むガスの生物学的固定を提供し、1つ以上の生成物になる。ガス発酵には、フィッシャー・トロプシュプロセスに比べて様々な利点がある。まず、フィッシャー・トロプシュでは、高温(150~350℃)、高圧(30bar)、およびコバルト、ルテニウム、および鉄などの不均一系触媒が利用される。それに比べて、ガス発酵は、約37℃で行われ、多くの場合、大気圧で実施されるので、フィッシャー・トロプシュプロセスに比べて大幅なエネルギーおよびコストの節約になる。さらに、フィッシャー・トロプシュプロセスでは、合成ガスにおける比較的固定されたH:CO比(約2:1)が必要であるが、ガス発酵では、H:CO比が変化する様々な範囲の基質を受容して利用することができる。
【0006】
合成ガスを生成するためのガス化とガス発酵とを統合する場合、生成された合成ガスのタイプを制御するための措置を取ることができる。例えば、バイオマスの乾燥は、Li,H.Chen,Q.,Zhang,X.Finney,K.N.,Sharifi,V.N.,Swithenbank,J.(2012)Evaluation of a biomass drying process using waste heat from process industries:A case study.Applied Thermal Engineering,35,71-80において考察されている。熱分解およびガス化の分野では、操作パラメータおよび水分含有量は、Dong,J.,Chi,Y.,Tang,Y.Ni,M.Nzihou,A.,Weiss-Hortala,E.Huang,Q.(2016)Effect of operating parameters and moisture content on municipal solid waste pyrolysis and gasification.Energy&Fuels,30(5),3994-4001において研究された。
【0007】
しかしながら、一方の操作の廃棄物流が他方の操作によって最も有益な手法で使用されるように、ガス化操作とガス発酵操作との間のより高いレベルの統合に対する必要性が依然として存在する。ガス発酵操作からのテールガスの予想外に有益な使用は、テールガスの少なくとも一部を採用して、乾燥ガスを加熱し、これを次にガス化操作の供給原料を乾燥させるために使用することである。ガス化操作の供給原料を乾燥させることにより、より高い収率およびより高品質の合成ガスが提供され、それにより、統合されたガス化およびガス発酵操作からの所望の生成物のシステム全体の生成が増加する。驚くべきことに、エネルギーの観点から、テールガスからのエネルギーの回収は、電気または蒸気を生成する場合と比較して、供給原料を乾燥させるために使用した場合に大幅に大きくなる。
【発明の概要】
【0008】
本開示は、乾燥ガスを加熱することと、ガス化供給原料を含有する乾燥機に加熱された乾燥ガスを提供して、乾燥ガス化供給原料を生成することと、乾燥ガス化供給原料の少なくとも一部をガス化して、合成ガスを生成することと、微生物を使用して、バイオリアクター内で合成ガスの少なくとも一部を発酵させて、少なくとも1つの生成物およびテールガスを生成することと、テールガスの少なくとも一部を利用して、乾燥ガスを加熱するための熱を提供することと、を含む、方法を伴う。ある実施形態では、ガス化供給原料は、都市固形廃棄物、農業廃棄物、微生物バイオマス、またはこれらの任意の組み合わせである。ある実施形態では、テールガスは、二酸化炭素、一酸化炭素、水素、窒素、およびメタンを含む。
【0009】
本開示は、装置であって、乾燥ガスを加熱するための1つ以上のバーナーを有する乾燥機であって、供給原料導管と連通している乾燥機と、乾燥機と連通しているガス化装置と、ガス化装置と流体連通しているバイオリアクターと、バイオリアクターと流体連通している生成物導管およびテールガス導管と、1つ以上のバーナーとも流体連通しているテールガス導管と、を備える、装置をさらに伴う。
【0010】
一実施形態では、発酵プロセスは、ガス化によって生成された合成ガスなどのC1含有ガス状基質を発酵するのに好適な1つ以上のC1固定微生物を利用する。様々な実施形態において、C1固定微生物は、Moorella、Clostridium、Ruminococcus、Acetobacterium、Eubacterium、Butyribacterium、Oxobacter、Methanosarcina、およびDesulfotomaculumから成る群から選択される。微生物は、Clostridium属のメンバーであり得る。ある特定の例では、微生物は、Clostridium autoethanogenumである。
【0011】
様々な実施形態では、ガス化供給原料は、都市固形廃棄物、産業固形廃棄物、農業廃棄物、リグノセルロース材料、微生物バイオマス、またはこれらの任意の組み合わせである。ガス化供給原料を乾燥機内で乾燥させ、次いで、ガス化して、合成ガス流を生成する。合成ガス流の少なくとも一部を発酵プロセスに渡し、1つ以上の生成物および/または場合により、少なくとも1つの副生成物を生成する。いくつかの実施形態では、発酵プロセスから生成された微生物バイオマスを、ガス化への供給原料としてガス化操作に渡す。
【0012】
いくつかの実施形態では、発酵プロセスによって生成された微生物バイオマスの実質的にすべてを、生成物の回収後に発酵プロセスに再循環させるか、廃水処理プロセスによって処理するか、および/またはガス化プロセスに送り、合成ガスを生成する。特定の例では、ガス化プロセスは、発酵プロセスからの微生物バイオマスの少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または実質的にすべてを受容する。
【0013】
いくつかの実施形態では、廃水処理プロセスから生成された微生物バイオマスをガス化プロセスに送る。廃水処理プロセスから生成された微生物バイオマスを、少なくとも部分的に、廃水処理プロセスにおける嫌気性消化槽プロセスから回収することができる。様々な例において、廃水処理プロセスからの微生物バイオマスの少なくとも一部を、ガス化プロセスに渡す前に乾燥させる。特定の例では、廃水処理プロセスからの微生物バイオマスの実質的にすべてを、ガス化プロセスに渡す前に乾燥させる。
【0014】
特定の実施形態では、発酵プロセスからの微生物バイオマス低減水の少なくとも一部をガス化プロセスに送る。様々な例において、微生物バイオマス低減水をガス化プロセスに送り、合成ガス流におけるH:CO比を増加させる。好ましくは、微生物バイオマス低減水の少なくとも一部をガス化プロセスに送り、合成ガス流におけるH:CO比を、少なくとも2:1、少なくとも3:1、または少なくとも4:1に増加させる。微生物バイオマス低減水をガス化プロセスに送り、合成ガス流におけるH:CO比を増加させることで、ガス発酵プロセスによって生成されるエタノールに対する選択率を増加させること、微生物バイオマスの生成に対する選択率を減少させること、発酵反応による水の消費量を減少させること、および/または廃水処理プロセスへのブリード流(bleed flow)を低減させることができる。
【0015】
特定の実施形態では、発酵プロセスから生成された廃水の少なくとも一部をガス化プロセスに送る。この廃水は、微生物バイオマスを含むがこれに限定されることのない、1つ以上の生成物および/または副生成物を含有し得る。様々な例において、発酵プロセスから生成された廃水をガス化プロセスに送り、合成ガス流におけるH:CO比を増加させる。好ましくは、発酵プロセスから生成された廃水の少なくとも一部をガス化プロセスに送り、合成ガス流におけるH:CO比を、少なくとも2:1、少なくとも3:1、または少なくとも4:1に増加させる。発酵プロセスから生成された廃水をガス化プロセスに送り、合成ガス流におけるH:CO比を増加させることで、ガス発酵プロセスによって生成されるエタノールに対する選択率を増加させること、微生物バイオマスの生成に対する選択率を減少させること、発酵反応による水の消費量を減少させること、および/または廃水処理プロセスへのブリード流を低減させることができる。
【0016】
特定の実施形態では、廃水処理プロセスからの浄化水の少なくとも一部をガス化プロセスに送る。様々な例において、廃水処理プロセスからの浄化水をガス化プロセスに送り、合成ガス流におけるH:CO比を増加させる。好ましくは、廃水処理プロセスからの浄化水の少なくとも一部をガス化プロセスに送り、合成ガス流におけるH:CO比を、少なくとも2:1、少なくとも3:1、または少なくとも4:1に増加させる。廃水処理プロセスからの浄化水をガス化プロセスに送り、合成ガス流におけるH:CO比を増加させることで、ガス発酵プロセスによって生成されるエタノールに対する選択率を増加させること、微生物バイオマスの生成に対する選択率を減少させること、発酵反応による水の消費量を減少させること、および/または廃水処理プロセスへのブリード流を低減させることができる。
【0017】
好ましくは、発酵プロセスおよび/または廃水処理プロセスからの少なくとも1つの流出物の少なくとも一部によって、ガス化プロセスに必要なプロセス水の少なくとも一部を置き換える。特定の例では、ガス化プロセスに必要なプロセス水を少なくとも45%低減させる。少なくとも1つの実施形態では、ガス化プロセスに必要なプロセス水を45~100パーセント低減させる。特定の実施形態では、ガス化プロセスに必要なプロセス水を、45~75パーセント、55~75パーセント、65~75パーセント、55~100パーセント、65~100パーセント、または75~100パーセント低減させる。
【0018】
特定の例では、少なくとも1つの流出物の少なくとも一部が、合成ガス流の温度を低下させるために、ガス化プロセスによって生成された合成ガス流に注入される。好ましくは、ガス化プロセスによって生成された合成ガス流に注入される流出物は、微生物バイオマス低減水、発酵プロセスから生成された廃水、および廃水処理プラントからの浄化水から成る群から選択される。好ましくは、合成ガス流の温度を少なくとも摂氏100度低下させる。少なくとも1つの実施形態では、ガス化プロセスから出る合成ガス流は、800℃~1200℃である。好ましくは、合成ガス流の温度を、さらなるガス処理および/または発酵に好適な温度範囲内で低下させる。様々な例において、少なくとも1つの微粒子を合成ガス流から除去するために、合成ガス流への少なくとも1つの流出物の注入を完了する。
【0019】
特定の例では、合成ガス流を部分的に急冷する。好ましくは、合成ガス流を、微生物バイオマス低減水、発酵プロセスから生成された廃水、および廃水処理プラントからの浄化水から成る群から選択される1つ以上の流出物を合成ガス流に注入することによって部分的に急冷する。様々な実施形態において、合成ガス流を部分的に急冷して、合成ガス流の温度を700~800℃まで低下させる。様々な実施形態において、この温度の低下には、1000℃で開始する場合、急冷される合成ガス10,000Nm当たり約1.2トンのプロセス水が必要とされる。好ましくは、このプロセス水の少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または実質的にすべてを、1つ以上の流出物を合成ガス流に注入することによって置き換える。
【0020】
特定の例では、合成ガス流を完全に急冷する。好ましくは、合成ガス流を、微生物バイオマス低減水、発酵プロセスから生成された廃水、および廃水処理プラントからの浄化水から成る群から選択される1つ以上の流出物を合成ガス流に注入することによって完全に急冷する。様々な実施形態において、合成ガス流を完全に急冷して、合成ガス流の温度を300℃未満まで低下させる。様々な実施形態において、この温度の低下には、1000℃で開始する場合、急冷される合成ガス10,000Nm当たり約4トンのプロセス水が必要とされる。好ましくは、このプロセス水の少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または実質的にすべてを、1つ以上の流出物を合成ガス流に注入することによって置き換える。
【0021】
特定の実施形態では、廃水処理プロセスから生成されたバイオガスの少なくとも一部をガス化プロセスに送る。このバイオガスは、メタン、二酸化炭素、一酸化炭素、アンモニア、および硫黄化合物から成る群から選択される1つ以上の成分を含有し得る。様々な例において、この硫黄化合物は、硫化水素である。少なくとも1つの実施形態では、バイオガスは、約60パーセントのメタンおよび約40パーセントの二酸化炭素を含む。少なくとも1つの実施形態では、バイオガスは、約65パーセントのメタンおよび約35パーセントの二酸化炭素を含む。
【0022】
特定の実施形態では、廃水処理プロセスから生成されたバイオガスの少なくとも一部を加熱源として使用する。好ましくは、廃水処理プロセスから生成されたバイオガスの少なくとも一部をガス化プロセスによって加熱源として使用する。様々な例において、ガス化プロセスに送られたバイオガスの少なくとも一部を、ガス化プロセスによって生成されるスラグの少なくとも一部を溶融するための加熱源として使用する。1つ以上の実施形態では、廃水処理プロセスからのバイオガスを、ガス化プロセスに送る前に除去プロセスに送る。様々な例において、除去プロセスは、バイオガス流中の少なくとも1つの構成要素の量を除去、変換、および/または低減することが可能な1つ以上の除去ユニットを含む。好ましくは、除去プロセスで、バイオガス流をガス化プロセスに送る前に、少なくとも1つの硫黄化合物の少なくとも一部をバイオガス流から除去する。
【0023】
特定の実施形態では、ガス化プロセスによってガス化した後に、バイオガス中のメタンの少なくとも一部をCOおよびHに改質する。様々な例において、メタンは、合成ガスに含有された水分と反応して、一酸化炭素および水素を生成する。
【0024】
ある実施形態では、発酵プロセスから生成されたテールガス、ガス化プロセスによって生成された未使用の合成ガス、生成物回収プロセスからの粗エタノール、および/または生成物回収プロセスからのフーゼル油の少なくとも一部を加熱源として使用する。好ましくは、これらの流出物のうちの少なくとも1つの少なくとも一部をガス化プロセスによって加熱源として使用する。様々な例において、これらの流出物のうちの少なくとも1つの少なくとも一部をガス化プロセスに送り、ガス化プロセスによって生成されるスラグの少なくとも一部を溶融するための加熱源として使用すべきである。1つ以上の実施形態では、これらの流出物を、ガス化プロセスに送る前に除去プロセスによって処理する。様々な例において、除去プロセスは、流出物中の少なくとも1つの構成要素の量を除去、変換、および/または低減することが可能な1つ以上の除去ユニットを含む。
【0025】
廃水処理プロセスからの浄化水の少なくとも一部をガス化プロセスに渡すことに加えて、廃水処理プロセスからの浄化水の少なくとも一部を発酵プロセスに渡し得る。特定の例では、廃水処理プロセスからの浄化水の実質的にすべてをガス化プロセスおよび/または発酵プロセスのいずれかに再循環させる。特定の例では、ガス化プロセスは、廃水処理プロセスからの浄化水の少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または実質的にすべてを受容する。特定の例では、発酵プロセスは、廃水処理プロセスからの浄化水の少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または実質的にすべてを受容する。
【0026】
好ましくは、発酵プロセスは、ガス化プロセスからの合成ガスの少なくとも一部を利用して、1つ以上の燃料または化学物質を生成する。発酵プロセスによって生成された生成物のうちの少なくとも1つは、エタノール、アセテート、ブタノール、ブチレート、2,3-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、ラクテート、ブテン、ブタジエン、メチルエチルケトン、エチレン、アセトン、イソプロパノール、脂質、3-ヒドロキシプロピオネート、テルペン(イソプレンを含むがこれに限定されない)、脂肪酸、2-ブタノール、イソブチレン、イソブタノール、1,2-プロパンジオール、1-プロパノール、およびC6~C12アルコールを含む群から選択され得る。
【0027】
1つ以上の実施形態では、発酵プロセスによって生成された微生物バイオマスの少なくとも一部を単一細胞タンパク質(SCP)に変換する場合がある。
【0028】
様々な例において、1つ以上の燃料または化学物質の少なくとも一部を二次変換プロセスに送る。好ましくは、二次変換プロセスで、1つ以上の燃料または化学物質の少なくとも一部を、ディーゼル燃料、ジェット燃料、ガソリン、プロピレン、ナイロン6-6、ゴム、および/または樹脂の少なくとも1つの成分にさらに変換する。
【0029】
1つ以上の実施形態では、ガス化プロセスからの合成ガスを、発酵プロセスに送る前に除去プロセスに送る。様々な例において、除去プロセスは、合成ガス流に含有された微生物阻害剤および/または触媒阻害剤の量を除去、変換、および/または低減することが可能な1つ以上の除去ユニットを含む。
【0030】
好ましくは、除去プロセスによって合成ガス流において除去、変換、または低減される少なくとも1つの構成要素は、硫黄化合物、芳香族化合物、アルキン、アルケン、アルカン、オレフィン、窒素化合物、リン含有化合物、微粒子状物質、固形物、酸素、ハロゲン化化合物、ケイ素含有化合物、カルボニル、金属、アルコール、エステル、ケトン、過酸化物、アルデヒド、エーテル、およびタールを含む群から選択される。
【0031】
好ましくは、除去プロセスは、加水分解ユニット、酸性ガス除去ユニット、脱酸素ユニット、接触水素化ユニット、微粒子除去ユニット、塩化物除去ユニット、タール除去ユニット、およびシアン化水素研磨ユニットを含む群から選択される少なくとも1つの除去ユニットを含む。様々な例において、除去プロセスは、少なくとも2つの除去ユニットを含む。
【0032】
本発明はさらに、プロセスにおける1つ以上の点での合成ガス流の圧力の増加および/または減少を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】ガス化プロセス、ガス発酵プロセス、生成物回収プロセス、および廃水処理プロセスの統合を図示する、本開示の一実施形態による、プロセス統合スキームを示す。
図2】ガス化プロセスとガス発酵プロセスとの間に除去プロセスをさらに含む、本開示の一実施形態による、図1からのプロセス統合スキームを示す。
図3】廃水処理プロセス後に除去プロセスをさらに含む、本開示の一実施形態による、図2からのプロセス統合スキームを示す。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本開示は、ガス化プロセスおよび発酵プロセス、ならびに任意選択で廃水処理プロセスとの統合について記載している。発酵プロセスからのテールガスは、ガス化プロセスの供給原料乾燥機内のバーナー用の燃料としてガス化プロセスに再循環され、それによって、統合プロセスに対する効率および相乗効果に実質的に予想外の利点を提供する。
【0035】
「効率を高める」、「効率が高められた」などの用語は、発酵プロセスに関して使用される場合、発酵を触媒する微生物の増殖速度を増加させること、上昇した生成物濃度における増殖および/または生成物生成速度を増加させること、消費される基質の体積当たりに生成される所望の生成物の体積を増加させること、所望の生成物の生成速度または生成レベルを増加させること、発酵の他の副生成物と比較して生成される所望の生成物の相対的割合を増加させること、プロセスによって消費される水の量を減少させること、ならびにプロセスによって利用されるエネルギーの量を減少させることのうちの1つ以上を含むが、これらに限定されない。
【0036】
「効率を高める」、「効率が高められた」などの用語は、ガス化プロセスに関連して使用される場合、プロセスによって生成される合成ガスの量を増加させること、プロセスによって利用される水の供給量を減少させること、ガス発酵のために合成ガス流を最適化すること、温室効果ガスの排出量を減少させること、およびプロセスによって利用される外部燃料を含むがこれに限定されないエネルギーの量を減少させることを含むが、これらに限定されない。
【0037】
「効率を高める」、「効率が高められた」などの用語は、廃水処理プロセスに関連して使用される場合、プロセスにおける水の保持時間を短縮すること、プロセスによって生成されるバイオガスの利用を増加させること、廃水処理プロセスに送られる流出物の量を減少させること、プロセスの量的要件を減少させること、プロセスによるアンモニア分離の必要性を減少させること、およびプロセスによって利用されるエネルギーの量を減少させることを含むが、これらに限定されない。
【0038】
「発酵」、「ガス発酵」などの用語は、ガス化によって生成された合成ガスなどの1つ以上の基質を受容し、1つ以上のC1固定微生物を利用して1つ以上の生成物を生成するプロセスとして解釈されるべきである。好ましくは、発酵プロセスは、1つ以上のバイオリアクターの使用を含む。発酵プロセスは、「バッチ」または「連続」のいずれかとして説明され得る。「バッチ発酵」は、バイオリアクターが微生物とともに原材料、すなわち炭素源で満たされ、発酵が完了するまで生成物がバイオリアクター内に留まる発酵プロセスを説明するために使用される。「バッチ」プロセスでは、発酵が完了した後に、生成物を抽出し、次の「バッチ」が始まる前にバイオリアクターを洗浄する。「連続発酵」は、発酵プロセスがより長期間にわたって延長され、発酵中に生成物および/または代謝物が抽出される発酵プロセスを説明するために使用される。好ましくは、発酵プロセスは連続的である。
【0039】
「廃水処理」などの用語は、発酵プロセスからの流出物からの成分を分離して浄化水を生成するプロセスとして解釈されるべきである。廃水処理プロセスは、滞留時間が変化する1つ以上の嫌気性消化槽、および1つ以上のアンモニアストリッピングプロセスを含み得るが、これらに限定されることはない。
【0040】
「ガス化」などの用語は、有機または化石燃料系の炭素質材料を一酸化炭素(CO)、水素(H)、および二酸化炭素(CO)に変換するプロセスとして解釈されるべきである。ガス化プロセスは、向流式固定床ガス化装置、並流式固定床ガス化装置、流動床反応器、同伴流ガス化装置、およびプラズマガス化装置を含むがこれらに限定されない様々な技術を含み得る。ガス化プロセスでは、合成ガス流を生成することができる任意の供給物が利用され得る。「ガス化プロセス」という用語は、ガス化装置用の加熱源を含むガス化に関連する単位操作と一緒になったガス化装置自体および合成ガス急冷プロセスを包含する。
【0041】
「合成ガス流」、「合成流」などは、ガス化プロセスから出るガス状基質を指す。合成ガス流は、主に、一酸化炭素(CO)、水素(H)、および二酸化炭素(CO)から成るべきである。合成ガス流の組成は、関連する供給原料およびガス化プロセスに応じて非常に様々であり得るが、合成ガスの典型的な組成は、30~60パーセント(30~60%)の一酸化炭素(CO)、25~30パーセント(25~30%)の水素(H)、0~5パーセント(0~5%)のメタン(CH)、5~15パーセント(5~15%)の二酸化炭素(CO)、およびより少ないまたは多い量の水蒸気、より少ない量の硫黄化合物、硫化水素(HS)、硫化カルボニル(COS)、アンモニア(NH)、および他の微量の汚染物質を含む。
【0042】
特定の実施形態では、水素の存在は、発酵プロセスによるアルコール生成の改善された全体的な効率をもたらす。
【0043】
合成ガスの組成を改善して、所望のまたは最適なH:CO:CO比を提供することができる。合成ガスの組成は、ガス化プロセスに供給される原料を調整することによって、改善され得る。望ましいH:CO:CO比は、発酵プロセスの所望の発酵生成物に依存する。エタノールの場合、最適なH:CO:CO比は、
【数1】

のようになり、式中、x>2yであり、エタノール生成のための化学量論を満たすために、以下のようになる
【数2】
【0044】
水素の存在下で発酵プロセスを操作することには、発酵プロセスによって生成されるCOの量が低減されるというさらなる利点がある。例えば、最小限のHを含むガス状基質は、典型的に、以下の化学量論[6CO+3HO→COH+4CO]に従って、エタノールおよびCOを生成するであろう。C1固定細菌によって利用される水素の量が増加すると、生成されるCOの量は減少する[例えば、2CO+4H→COH+HO]。
【0045】
COがエタノール生成の唯一の炭素およびエネルギー源である場合、以下のように炭素の一部がCOに失われる:
6CO+3HO→COH+4CO(ΔG°=-224.90kJ/モル エタノール)
【0046】
基質で利用可能なHの量が増加すると、生成されるCOの量は減少する。化学量論比が2:1(H:CO)の場合、COの生成は完全に回避される。
5CO+1H+2HO→1COH+3CO(ΔG°=-204.80kJ/モル エタノール)
4CO+2H+1HO→1COH+2CO(ΔG°=-184.70kJ/モル エタノール)
3CO+3H→1COH+1CO(ΔG°=-164.60kJ/モル エタノール)
【0047】
「流」とは、例えば、あるプロセスから別のプロセスへ、あるユニットから別のユニットへ、および/またはあるプロセスから炭素捕捉手段へ渡すことが可能である任意の基質を指す。
【0048】
本明細書で使用される場合、「反応物質」とは、化学反応中の変化に関与し、化学反応中に変化する物質を指す。特定の実施形態では、反応物質としては、COおよび/またはHが挙げられるが、これらに限定されない。
【0049】
本明細書で使用される場合、「微生物阻害剤」とは、微生物を含む特定の化学反応または別のプロセスを減速または防止する1つ以上の構成要素を指す。特定の実施形態では、微生物阻害剤としては、酸素(O)、シアン化水素(HCN)、アセチレン(C)、およびBTEX(ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0050】
本明細書で使用される場合、「触媒阻害剤」、「吸着性阻害剤」などは、化学反応の速度を低下させるか、または化学反応を防止する1つ以上の物質を指す。特定の実施形態では、触媒阻害剤および/または吸着阻害剤としては、硫化水素(HS)および硫化カルボニル(COS)が挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0051】
「除去プロセス」、「除去ユニット」、「洗浄ユニット」などとしては、ガス流からの微生物阻害剤および/または触媒阻害剤の変換および/または除去のいずれかを行うことが可能である技術が挙げられる。特定の実施形態では、下流の除去ユニットにおける1つ以上の触媒の阻害を阻止するために、触媒阻害剤を上流の除去ユニットによって除去する必要がある。
【0052】
本明細書で使用される場合、「構成要素」、「汚染物質」などの用語は、ガス流中に見られ得る微生物阻害剤および/または触媒阻害剤を指す。特定の実施形態では、構成要素としては、硫黄化合物、芳香族化合物、アルキン、アルケン、アルカン、オレフィン、窒素化合物、リン含有化合物、微粒子状物質、固形物、酸素、ハロゲン化化合物、ケイ素含有化合物、カルボニル、金属、アルコール、エステル、ケトン、過酸化物、アルデヒド、エーテル、およびタールが挙げられるが、これらに限定されない。
【0053】
「処理済みガス」、「処理済み流」などの用語は、少なくとも1つの除去ユニットを通過し、かつ1つ以上の構成要素が除去および/または変換されたガス流を指す。
【0054】
本明細書で使用される場合、「炭素捕捉」という用語は、COおよび/もしくはCOを含む流からのCOおよび/もしくはCOを含む炭素化合物の隔離、ならびに
COおよび/もしくはCOを生成物に変換すること、または
COおよび/もしくはCOを長期貯蔵に好適な物質に変換すること、または
COおよび/もしくはCOを長期貯蔵に好適な物質中に閉じ込めること、または
これらのプロセスの組み合わせのいずれかを指す。
【0055】
「バイオリアクター」、「リアクター」などの用語は、連続撹拌槽反応器(Continuous Stirred Tank Reactor(CSTR))、固定化細胞リアクター(Immobilized Cell Reactor(ICR))、トリクルベッドリアクター(Trickle Bed Reactor(TBR))、気泡塔(Bubble Column)、ガスリフト発酵槽(Gas Lift Fermenter)、スタティックミキサ(Static Mixer)、循環ループリアクター、中空繊維膜バイオリアクター(Hollow Fibre Membrane Bioreactor(HFM BR))などの膜リアクター、または気液接触に好適な他の槽もしくは他のデバイスを含む、1つ以上の槽および/もしくは塔、または配管配置から成る発酵デバイスを含む。反応器は、好ましくは、COもしくはCOもしくはHまたはそれらの混合物を含むガス状基質を受容するように適合される。反応器は、並列または直列のいずれかで、複数の反応器(段)を備え得る。例えば、反応器は、細菌が培養される第1の増殖反応器と、増殖反応器からの発酵ブロスが供給され、発酵生成物の大部分が生成され得る第2の発酵反応器とを備えることができる。
【0056】
「栄養培地(Nutrient media)」または「栄養培地(Nutrient medium)」は、細菌増殖培地を説明するために使用される。好ましくは、発酵プロセスは、バイオリアクターにおいて栄養培地を利用する。一般に、この用語は、培養微生物の増殖に適した栄養素および他の成分を含有する培地を指す。「栄養素」という用語は、微生物の代謝経路において利用され得る任意の物質を含む。例示的な栄養素としては、カリウム、ビタミンB、微量金属、およびアミノ酸が挙げられる。
【0057】
「発酵ブロス」または「ブロス」という用語は、栄養培地および培養物または1つ以上の微生物を含む成分の混合物を包含することを意図する。好ましくは、発酵プロセスで、発酵ブロスを利用して、合成ガス流を1つ以上の生成物に発酵させる。
【0058】
本明細書で使用される「酸」という用語は、本明細書に記載の発酵ブロス中に存在する遊離酢酸と酢酸塩との混合物など、カルボン酸および関連するカルボン酸アニオンの両方を含む。発酵ブロス中の分子酸とカルボン酸との比は、系のpHに依存する。さらに、「アセテート」という用語は、酢酸塩単独、および本明細書に記載の発酵ブロス中に存在する酢酸塩と遊離酢酸との混合物などの分子または遊離酢酸と酢酸塩との混合物の両方を含む。
【0059】
「所望の組成」という用語は、例えば、合成ガスを含むがこれに限定されないガス流などの物質における構成成分の所望のレベルおよび種類を指すために使用される。より具体的には、ガスは、これが特定の成分(例えば、CO、H、および/もしくはCO)を含有する場合、ならびに/または特定の成分を特定の割合で含有する場合、ならびに/または特定の成分(例えば、微生物に有害な汚染物質)を含有しない場合、ならびに/または特定の成分を特定の割合で含有しない場合、「所望の組成」を有すると考えられる。ガス流が所望の組成を有しているかどうかを判定する際に、2つ以上の成分が考慮され得る。
【0060】
文脈上別段の要求がない限り、本明細書で使用される場合、「発酵」、「発酵プロセス」、または「発酵反応」などの句は、ガス状基質の増殖期および生成物生合成期の両方を包含することを意図する。
【0061】
「微生物」は、顕微鏡生物、特に、細菌、古細菌、ウイルス、または真菌である。本開示の微生物は、典型的に細菌である。本明細書で使用される場合、「微生物」という用語の列挙は、「細菌」を包含すると考えられるべきである。微生物という用語および細菌という用語は、本明細書を通じて互換的に使用されることに留意されたい。
【0062】
「親微生物」は、本開示の微生物を生成するために使用される微生物である。親微生物は、天然に存在する微生物(例えば、野生型微生物)、または以前に修飾された微生物(例えば、変異体または組換え微生物)であってもよい。本開示の微生物は、親微生物において発現または過剰発現しなかった1つ以上の酵素を発現または過剰発現するように修飾され得る。同様に、本開示の微生物は、親微生物が含有しなかった1つ以上の遺伝子を含有するように修飾され得る。本開示の微生物は、また、親微生物において発現された1つ以上の酵素を発現しないまたはより少ない量を発現させるように修飾され得る。一実施形態において、親微生物は、Clostridium autoethanogenum、Clostridium ljungdahlii、またはClostridium ragsdaleiである。ある実施形態では、親微生物は、2010年6月7日にInhoffenstraBe 7B,D-38124 Braunschweig,Germanyに位置するDeutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH(DSMZ)にブダペスト条約の条項下で2010年6月7日に寄託され、受託番号DSM23693を付与されたClostridium autoethanogenum LZ1561である。この株については、国際特許出願第PCT/NZ2011/000144号に記載されており、WO2012/015317として公開される。
【0063】
「から由来する」という用語は、核酸、タンパク質、または微生物が異なる(例えば、親もしくは野生型)核酸、タンパク質、または微生物から修飾または適合されて、新しい核酸、タンパク質、または微生物を生成することを示す。そのような修飾または適合は、典型的に、核酸または遺伝子の挿入、欠失、変異、または置換を含む。一般に、本開示の微生物は、親微生物に由来する。一実施形態では、本開示の微生物は、Clostridium autoethanogenum、Clostridium ljungdahlii、またはClostridium ragsdaleiに由来する。ある実施形態では、本開示の微生物は、DSMZ受託番号DSM23693の下で寄託される、Clostridium autoethanogenum LZ1561に由来する。
【0064】
「Wood-Ljungdahl」とは、例えば、Ragsdale,Biochim Biophys Acta,1784:1873-1898,2008に記載されている炭素固定のWood-Ljungdahl経路を指す。「Wood-Ljungdahl微生物」は、予想通り、Wood-Ljungdahl経路を含む微生物を指す。一般に、本開示の微生物は天然のWood-Ljungdahl経路を含有する。本明細書では、Wood-Ljungdahl経路は、天然の未修飾のWood-Ljungdahl経路であってもよく、またはCO、CO、および/もしくはHをアセチル-CoAに変換するように依然として機能する限り、ある程度の遺伝子修飾(例えば、過剰発現、異種発現、遺伝子欠損など)を有するWood-Ljungdahl経路であってもよい。
【0065】
「C1」は、1炭素分子、例えば、CO、CO、CH、またはCHOHを指す。「C1酸素化物」は、少なくとも1つの酸素原子も含む1炭素分子、例えば、CO、CO、またはCHOHを指す。「C1炭素源」は、本開示の微生物のための部分的または唯一の炭素源として機能する1炭素分子を指す。例えば、C1炭素源は、CO、CO、CH、CHOH、またはCHのうちの1つ以上を含み得る。好ましくは、C1炭素源は、COおよびCOのうちの一方または両方を含む。「C1固定微生物」は、C1炭素源から1つ以上の生成物を生成する能力を有する微生物である。典型的に、本開示の微生物はC1固定細菌である。
【0066】
「嫌気性菌」は、増殖のために酸素を必要としない微生物である。嫌気性菌は、酸素が特定の閾値を超えて存在する場合、負の反応を起こし得るか、もしくは死滅し得る。しかしながら、いくつかの嫌気性菌は、低レベルの酸素(例えば、0.000001~5%の酸素)を許容可能である。典型的に、本開示の微生物は嫌気性菌である。
【0067】
「アセトゲン」は、エネルギー節約のため、ならびにアセテートなどのアセチル-CoAおよびアセチル-CoA由来生成物の合成のために、それらの主要機構として、Wood-Ljungdahl経路を使用する、偏性嫌気性細菌である(Ragsdale,Biochim Biophys Acta,1784:1873-1898,2008)。特に、アセトゲンは、Wood-Ljungdahl経路を、(1)COからのアセチル-CoAの還元合成のための機構、(2)末端電子受容、省エネルギープロセス、(3)細胞炭素の合成におけるCOの固定(同化)のための機構として使用する(Drake,Acetogenic Prokaryotes,In:The Prokaryotes,3rd edition,p.354,New York,NY,2006)。天然に存在するすべてのアセトゲンは、C1固定、嫌気性、独立栄養性、および非メタン資化性である。典型的に、本開示の微生物はアセトゲンである。
【0068】
「エタノロゲン(ethanologen)」は、エタノールを産生する、または産生することが可能である微生物である。典型的に、本開示の微生物はエタノロゲンである。
【0069】
「独立栄養生物」は、有機炭素の不在下で増殖することが可能な微生物である。代わりに、独立栄養生物は、COおよび/またはCOなどの無機炭素源を使用する。典型的に、本開示の微生物は独立栄養生物である。
【0070】
「カルボキシド栄養生物」は、炭素およびエネルギーの唯一の供給源としてCOを利用することが可能な微生物である。典型的に、本開示の微生物はカルボキシド栄養生物である。
【0071】
「メタン資化性菌」は、炭素およびエネルギーの唯一の供給源としてメタンを利用することが可能な微生物である。特定の実施形態では、本開示の微生物は、メタン資化性菌であるか、またはメタン資化性菌から誘導される。他の実施形態では、本開示の微生物は、メタン資化性菌ではないか、メタン資化性菌から誘導されない。
【0072】
「基質」は、本開示の微生物のための炭素および/またはエネルギー源を指す。典型的に、基質は、ガス状であり、C1炭素源、例えば、CO、CO、および/またはCHを含む。好ましくは、基質は、COまたはCO+COのC1炭素源を含む。基質は、HまたはNなどの他の非炭素成分をさらに含み得る。
【0073】
「共基質」という用語は、必ずしも生成物合成のための一次エネルギーおよび材料供給源ではないが、一次基質などの別の基質に添加された場合に生成物合成に利用され得る物質を指す。
【0074】
基質の組成は、反応の効率および/またはコストに著しい影響を及ぼし得る。例えば、酸素(O)の存在は、嫌気性発酵プロセスの効率を低減させ得る。基質の組成に応じて、基質を処理、スクラブ、または濾過して、毒素、望ましくない構成成分、またはちり粒子等のいかなる望ましくない不純物も除去すること、および/または所望の構成成分の濃度を増加させることが望ましくあり得る。
【0075】
特定の実施形態では、発酵は、糖、デンプン、リグニン、セルロース、またはヘミセルロースなどの炭水化物基質の不在下で実施される。
【0076】
本開示の微生物は、1つ以上の生成物を生成するようにガス流とともに培養され得る。例えば、本開示の微生物は、エタノール(WO2007/117157)、アセテート(WO2007/117157)、ブタノール(WO2008/115080およびWO2012/053905)、ブチレート(WO2008/115080)、2,3-ブタンジオール(WO2009/151342およびWO2016/094334)、ラクテート(WO2011/112103)、ブテン(WO2012/024522)、ブタジエン(WO2012/024522)、メチルエチルケトン(2-ブタノン)(WO2012/024522およびWO2013/185123)、エチレン(WO2012/026833)、アセトン(WO2012/115527)、イソプロパノール(WO2012/115527)、脂質(WO2013/036147)、3-ヒドロキシプロピオネート(3-HP)(WO2013/180581)、イソプレンを含むテルペン(WO2013/180584)、脂肪酸(WO2013/191567)、2-ブタノール(WO2013/185123)、1,2-プロパンジオール(WO2014/036152)、1-プロパノール(WO2014/0369152)、コリスメート由来生成物(WO2016/191625)、3-ヒドロキシブチレート(WO2017/066498)、および1,3-ブタンジオール(WO2017/0066498)を生成することができるか、または生成するように操作され得る。特定の実施形態では、微生物バイオマス自体が生成物とみなされ得る。これらの生成物はさらに変換されて、ディーゼル、ジェット燃料、および/またはガソリンのうちの少なくとも1つの成分を生成し得る。加えて、微生物バイオマスはさらに処理されて、単細胞タンパク質(SCP)を生成し得る。
【0077】
「単細胞タンパク質」(SCP)は、タンパク質が豊富なヒトおよび/または動物用飼料に使用され得る微生物バイオマスを指し、多くの場合、大豆または魚粉などの従来のタンパク質補給源に取って代わる。単細胞タンパク質または他の生成物を生成するために、プロセスは、追加の分離、加工、または処理ステップを含み得る。例えば、本方法は、微生物バイオマスを滅菌すること、微生物バイオマスを遠心分離すること、および/または微生物バイオマスを乾燥させることを含み得る。特定の実施形態では、微生物バイオマスは、噴霧乾燥またはパドル乾燥を使用して乾燥される。核酸含有量の高い食事を摂取すると、核酸分解生成物の蓄積および/または胃腸障害が生じ得るため、本方法は、当技術分野で既知の任意の方法を使用して、微生物バイオマスの核酸含有量を低減させることも含み得る。単細胞タンパク質は、家畜やペットなどの動物への給餌に好適であり得る。特に、動物用飼料は、1頭以上の肉用牛、乳用牛、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、ラバ、ロバ、シカ、バッファロー/バイソン、ラマ、アルパカ、トナカイ、ラクダ、バンテン、ガヤル、ヤク、ニワトリ、シチメンチョウ、アヒル、ガチョウ、ウズラ、ホロホロドリ、ひなバト/ハト、サカナ、エビ、甲殻類、ネコ、イヌ、およびげっ歯類に給餌するのに好適であり得る。動物用飼料の組成は、異なる動物の栄養要件に合わせて調整され得る。さらに、プロセスは、微生物バイオマスを1つ以上の賦形剤と混合することまたは組み合わせることを含み得る。
【0078】
「賦形剤」は、動物用飼料の形態、特性、または栄養含有量を強化または変更するために、微生物バイオマスに添加され得る任意の物質を指し得る。例えば、賦形剤は、炭水化物、繊維、脂肪、タンパク質、ビタミン、ミネラル、水、香料、甘味料、酸化防止剤、酵素、防腐剤、プロバイオティクス、または抗生物質のうちの1つ以上を含み得る。いくつかの実施形態では、賦形剤は、干し草、わら、貯蔵生牧草、穀物、油もしくは脂肪、または他の植物材料であってもよい。賦形剤は、Chiba,Section 18:Diet Formulation and Common Feed Ingredients,Animal Nutrition Handbook,3rd revision,pages 575-633,2014に特定される、任意の飼料成分であってもよい。
【0079】
「天然生成物」は、遺伝子修飾されていない微生物によって生成される生成物である。例えば、エタノール、アセテート、および2,3-ブタンジオールは、Clostridium autoethanogenum、Clostridium ljungdahlii、およびClostridium ragsdaleiの天然生成物である。「非天然生成物」は、遺伝子組換えされた微生物によって生成されるが、遺伝子組換えされた微生物が由来する遺伝子組換えされない微生物によって生成されない生成物である。
【0080】
「選択性」は、微生物によって生成される全発酵生成物の生成に対する標的生成物の生成の比率を指す。本開示の微生物は、ある特定の選択性で、または最小の選択性で生成物を生成するように操作され得る。一実施形態では、標的生成物は、本開示の微生物によって生成される全発酵生成物の少なくとも約5%、10%、15%、20%、30%、50%、または75%を占める。一実施形態では、標的生成物は、本開示の微生物が少なくとも10%の標的生成物に対して選択性を有するように、本開示の微生物によって生成される全発酵生成物の少なくとも10%を占める。別の実施形態では、標的生成物は、本開示の微生物が少なくとも30%の標的生成物に対して選択性を有するように、本開示の微生物によって生成される全発酵生成物の少なくとも30%を占める。
【0081】
培養物は概して、微生物の増殖を可能にするのに十分な栄養素、ビタミン、および/または無機物を含有する水性培地中で維持される。好ましくは、水性培養培地は、最小嫌気性微生物増殖培地などの嫌気性微生物増殖培地である。
【0082】
培養/発酵は、望ましくは、標的生成物の生成に適切な条件下で実施されるべきである。典型的に、培養/発酵は、嫌気性条件下で実施される。考慮すべき反応条件は、圧力(または分圧)、温度、ガス流速、液体流速、培地pH、培地酸化還元電位、撹拌速度(連続撹拌槽反応器を使用する場合)、接種レベル、液相中のガスが制限的にならないことを確実にするための最大ガス基質濃度、および生成物阻害を回避するための最大生成物濃度を含む。特に、基質の導入速度は、生成物がガス制限条件下での培養によって消費され得るため、液相中のガスの濃度が制限的にならないことを確実にするように制御され得る。
【0083】
上昇した圧力でバイオリアクターを操作することは、気相から液相へのガス物質移動の増加した速度を可能にする。したがって、概して、大気圧よりも高い圧力で培養/発酵を実施することが好ましい。また、所与のガス変換速度が部分的に基質保持時間の関数であり、かつ保持時間がバイオリアクターの必要な容積を示すため、加圧システムの使用は、必要なバイオリアクターの容積、およびその結果として培養/発酵装置の資本コストを大幅に削減することができる。これはさらに、バイオリアクター中の液体体積を入力ガス流量で除算したものとして定義される保持時間が、バイオリアクターが大気圧よりも上昇した圧力に維持されるときに減少され得ることを意味する。最適反応条件は、使用される特定の微生物に部分的に依存する。しかしながら、一般的には、大気圧より高い圧力で発酵を行うことが好ましい。また、所与のガス変換速度が部分的に基質保持時間の関数であり、かつ所望の保持時間を達成することが同様にバイオリアクターの必要な容積を示すため、加圧システムの使用は、必要なバイオリアクターの容積、およびその結果として発酵装置の資本コストを大幅に削減することができる。
【0084】
標的生成物は、例えば、分留、真空蒸留、蒸発、浸透気化、ガスストリッピング、相分離、および例えば、液-液抽出を含む抽出発酵を含む、当該技術分野において既知の方法または方法の組み合わせを利用し得る好適な任意の除去プロセスを使用して、発酵ブロスから分離または精製することができる。特定の実施形態において、標的生成物は、ブロスの一部をバイオリアクターから連続的に取り出し、微生物細胞をブロスから(濾過により簡便に)分離し、1つ以上の標的生成物をブロスから回収することによって、発酵ブロスから回収される。アルコールおよび/またはアセトンは、例えば、蒸留によって回収され得る。酸は、例えば、活性炭上での吸着によって回収され得る。分離された微生物細胞をバイオリアクターに返送することができる。標的生成物が取り出された後に残存している無細胞透過液もバイオリアクターに返送することができる。追加の栄養素(ビタミンBなど)を、無細胞透過液に添加して、培地を補充した後にバイオリアクターに返送することができる。
【0085】
本開示は、ガス化操作および発酵操作を統合システムに統合することにより、予想外の相乗効果が統合システムの全体的な効率の改善をもたらすことを示している。より具体的には、本開示は、発酵操作のテールガスが乾燥ガスを加熱するために使用され、次いで、ガス化操作への供給原料を乾燥させるために使用される統合を特定する。
【0086】
発酵プロセスからのテールガスは、電気または蒸気の生成に使用することができるが、せいぜい、操作者はテールガスのエネルギーの約60%を回収することができ、電気の場合は約40%および蒸気の場合は約20%に分けられる。驚くべきことに、および上記とは対照的に、ガス化操作への供給原料を乾燥させるためにテールガスを使用すると、操作者は、ガス化操作からの合成ガスにおける改善された収率として、約92%ものテールガスエネルギーを回収することができる。
【0087】
51.2%から9.2%まで供給原料を乾燥させると、コールドガス効率、すなわち、エネルギー基準でガス化供給原料から生成された合成ガスの量を45%から70%まで改善することができることが以前に示されている。加えて、生成された合成ガスのエネルギー基準は、3.8MJ/Nmから4.9MJ/Nmに増加し、COおよびHなどの発酵可能な種の濃度も増加することを示す。これは、圧縮および発酵を含むシステムの下流部における追加のコスト節約の利点を有する。例えば、これにより、より希薄なガスがより少量のエタノール生成物を生成するために同じ圧縮および反応器容積を必要とする下流の発酵における特定のエネルギー使用量が減少する。
【0088】
さらに、本開示は、蒸気生成または電力生成のためにテールガスを使用することと比較して、より大きい経済的利益を生み出す合成ガスの収率および品質を改善する。より具体的には、ガス化装置への供給原料を乾燥させる際にテールガスを使用すると、ガス化装置からのより多い合成ガス生成がもたらされる。より多い合成ガス生成は、発酵プロセスへのより多量およびより良好な品質の供給物、したがって、発酵プロセスにおけるより多くの生成物生成をもたらす。発酵プロセスからの生成物の増加量の価値は、乾燥操作に使用されていないテールガスを有したテールガスによって生成されている電気または蒸気の価値を超える。
【0089】
ガス化装置への供給原料を乾燥させるためにテールガスを使用することからの予想収益の、電気および流を生成するためにテールガスを使用することからの予想収益に対する比較が以下の表に示される。この比較は、41.7トン/時(TPH)のガス化装置、および11MJ/kgの供給原料エネルギー密度を有する1000トン/日(TPD)の供給原料ガス発酵ユニットに基づく。
【表1】

【表2】
【0090】
テールガスは、電力生成に使用するには希薄すぎる場合があり、この場合、ガス化装置への供給原料を乾燥させるために使用する価値がさらに大きくなることにも留意されたい。
【0091】
他の実施形態は、廃水処理プロセスから生成されたバイオガス、発酵プロセスから生成されたテールガス、ガス化プロセスによって生成された未使用の合成ガス、発酵プロセスから生成された微生物バイオマス、廃水処理プロセスから生成された微生物バイオマス、生成物回収プロセスからの粗エタノール、生成物回収プロセスからのフーゼル油、微生物バイオマス低減水、発酵プロセスから生成された廃水、および廃水処理プロセスからの浄化水から選択される1つ以上の流出物を含み、これらは、合成ガス流を生成するために、ガス化プロセスに送られ得、ガス化プロセスによって加熱源として使用され得、および/または合成ガス流を急冷するために、ガス化プロセスによって使用され得る。合成ガス流は、好ましくは、ガス発酵に好適である。
【0092】
これらの様々な流出物は、発酵プロセスの最中またはその下流のいずれかで生成される。発酵プロセスでは、微生物バイオマス、エタノール、アセテート、および2-3ブタンジオールなどの有機代謝物、ならびに塩および微量金属などの様々な無機化合物を含む廃水流が生成される。この廃水流は、多くの場合、廃水処理プロセスに送られる。典型的な廃水処理プロセスは、以下のステップを含む:(i)懸濁固形物である微生物バイオマスを分離すること、(ii)個別の長い滞留時間(約30日)の嫌気性消化槽において微生物バイオマス固形物を濃縮すること、(iii)溶解性有機物を含有する、微生物バイオマス固形物の量が低減された、浄化された流出物を、より短い滞留時間(約2~3日)の嫌気性消化槽において濃縮すること。典型的に、これらの嫌気性消化槽は、供給物中の有機物の大部分、好ましくは80%超を消費し、バイオガス生成物を生成する。バイオガス生成物は、主に、メタン(CH)および二酸化炭素(CO)から成る。
【0093】
このバイオガス生成物は、発電に有用であり得る。しかしながら、バイオガスを発電に使用するには、典型的に、バイオガスを1つ以上の除去ユニットで処理する必要がある。さらに、後に説明されるように、微生物バイオマスを使用してバイオガスを生成することは、微生物バイオマスをガス化する可能性と比較した場合、比較的価値の低い微生物バイオマス使用であることが見出された。
【0094】
前述のステップに加えて、廃水処理プロセスはまた、嫌気性消化槽に続く追加の処理ステップを含み得る。典型的に、嫌気性消化槽からの処理済みの流出物は、好気性処理、ストルバイト回収、窒素回収、および場合によっては逆浸透を含む追加の処理にかけられる。廃水処理プロセスによって生成された浄化水は、再利用および/または排出に好適である。この浄化水を使用する好適な手法の1つは、浄化水を発酵プロセスおよび/またはガス化プロセスに再循環させることである。
【0095】
廃水処理プロセスは、発酵プロセスからの廃水を問題なく処理して浄化水を生成することができるが、廃水流中の有機代謝物は、多くの場合、いくつかの課題を呈する。具体的には、廃水処理プロセスによる廃水流中の微生物バイオマスの処理は、(i)嫌気性消化中のタンパク質含有量が高いこと、したがってアンモニアの生成が多いこと、および(ii)廃水処理プロセスを収容するのに必要な区画スペースが大きいことを原因として、設計上の課題を呈する場合がある。
【0096】
アンモニアは、高濃度の場合、嫌気性消化プロセス中のメタン生成の阻害に関連するため、嫌気性消化に課題を呈する。アンモニアの阻害濃度は、2~3g/Lの範囲であると分かっている。分離された微生物バイオマスが消化されると、アンモニア濃度が20g/L超になり得るため、この閾値を大幅に上回り得る。したがって、廃水処理プロセスによって微生物バイオマスを処理するためには、多くの場合、アンモニアストリッピングプロセスが、アンモニア濃度を阻害レベル未満に下げるために必要とされる。
【0097】
区画スペースが大きいという要件は、土地が高価な地域で重大な問題を呈する。廃水処理プロセスの各成分は、処理される量が多いため、かなりのスペースを必要とする。例えば、長い滞留時間の嫌気性消化槽は、場合によっては、7,000mを超えることがある。
【0098】
本発明者等は、微生物バイオマスの少なくとも一部をガス化プロセスに再循環させることによって、これらの課題を克服することができると見出した。嫌気性消化に送られる微生物バイオマスがより少なくなると、生成されるアンモニアがより少なくなるため、アンモニアストリッピングプロセスの必要性が低減および/または排除される。さらに、発酵プロセスからより多くの量の流出物がガス化プロセスに送られるので、より少ない量の流出物が廃水処理プロセスに送られる。廃水処理プロセスによって処理される流出物の量がより少なくなると、必要な量および対応する区画スペースの要件が低減され、土地が高価な地域について設計が有利になる。
【0099】
前述の課題を克服することに加えて、微生物バイオマスをガス化プロセスに再循環させると、以下の有利な結果が得られる:(i)バイオマスに含まれたエネルギーの大部分が回収される点、(ii)得られる合成ガス流におけるH:CO比が増加する点、(iii)通常は廃水処理プロセスによる追加の処理ステップを必要とし得る、微生物バイオマス中の無機含有量、金属化合物、およびアルカリ元素が、すでに処分が必要な灰分の一部分としてガス化プロセスにおいて都合良く回収され、したがって、全体的な廃棄物処理が低減される点、(iv)バイオマスに含まれている窒素が、既存の除去プロセスと良好に統合されるガス化装置内で反応して、N、NH、および微量のHCNになる点。
【0100】
本発明者等はまた、驚くべきことに、バイオガスの生成におけるバイオマスの使用と比較した場合、バイオマスをガス化に再循環させる際に収益が増加することを見出した。具体的には、本発明者等は、合成ガス中のバイオマスの利用とバイオガスの生成におけるバイオマスの利用とを比較すると、収益が321%増加することを見出した。
【0101】
この収益増加のパーセンテージは、以下の表に最も良く示される。表3は、各経路を通って得られた20GJ/時のバイオマスから生成された値を示す。
【表3】
【0102】
上記の表に示される計算では、嫌気性消化によるバイオマスからバイオガスへの変換の値と、ガス化によるバイオマスから合成ガスへの変換の値とを比較する。嫌気性消化によってバイオマスからバイオガスを生成する変換効率は、約60パーセント(60%)である。ガス化によってバイオマスから合成ガスを生成する変換効率は、約75パーセント(75%)であり、これは、使用されるガス化技術に応じて異なる。GJ/時生成物ガスは、GJ/時バイオマスに各変換効率を乗算したものを表す。GJ/時エタノールは、GJ/時生成物ガスにガス発酵の変換効率を乗算したものを表す。エタノールを生成するためのガス発酵の変換効率は、控えめに言って、約55パーセント(55%)である。この変換効率によって、GJ/時エタノールは、8.25であると分かった。再生可能インセンティブが存在しないバイオガスの現在の価格は、2018年11月5日の時点で、米国の4ドル($4)~EUの10ドル($10)の範囲にある。分析の目的で、バイオガス1ギガジュール当たり8ドル($8/GJ生成物価値)の価格を使用する。低炭素エタノールの価格は、2018年11月5日現在、EUで850ドル/トン(エタノール)、中国で1100ドル/トン(エタノール)、および米国で1200ドル/トン(エタノール)である。分析の目的で、$37.30/GJに相当する1000ドル/トン(エタノール)の価格を使用する。$/時収益は、GJ/時生成物ガスに$/GJ生成物価値を乗算したものである。%収益増加は、バイオガスにする嫌気性消化の$/時収益と、合成ガスにするガス化の$/時収益との比較値である。$GJバイオマス価値は、このプロセスが選択されることを考慮した場合のバイオマスの価値を示す。これは、$/時収益をGJ/時バイオマスで割ることによって計算される。示されるように、バイオマスを利用してガス化によって合成ガスを生成することによって、バイオマスの収益および価値の両方が大幅に改善される。
【0103】
微生物バイオマスをガス化プロセスに供給することのさらなる利点は、微生物バイオマスが、発酵プロセスを適切に供給するために必要とされ得る補足量の合成ガスを提供するのに役立ち得ることである。例えば、現在の設計パラメータに基づいて、100,000トン/年のエタノール生成発酵プロセスに必要な合成ガスを供給するためには、1時間当たり50乾燥トンに相当する1日当たり約1,200乾燥トンのガス化装置供給速度が必要である。この規模の発酵プロセスによって生成されるバイオマスは、典型的に、1,000~1,200kg/時である。この量のバイオマスは、かなりの量である。バイオマスのガス化によって生成可能な補足量の合成ガスは、ガス化装置供給原料が限られている場合または供給原料の価格が高い場合に、特に有益であり得る。
【0104】
発酵プロセスによって生成されたバイオマスは、バイオマス含有量のパーセンテージを増加させるために、ガス化装置に渡す前に追加の乾燥ステップを必要とする場合がある。ガス化装置の要件によっては、バイオマスが20重量%超を占めるまで、バイオマスを乾燥させる必要がある場合がある。
【0105】
しかしながら、増加した水分含有量を有するバイオマスをガス化することには、生成される合成ガスにおけるH:CO比が増加するというさらなる利点がある。ガス化供給原料における水分が約15重量%の場合、得られる合成ガス流は、1:1のH:CO比を含む。ガス化供給原料における水分が40重量%まで増加すると、得られる合成ガス流は、2:1のH:CO比を含む。前述のように、発酵プロセスに供給される合成ガス流におけるH:CO比が増加すると、発酵プロセスの効率が増加する。
【0106】
前述の利点を達成するために、本開示は、以下のものから成る群から選択される以下の流出物のうちの1つ以上を再循環させる:廃水処理プロセスから生成されたバイオガス、発酵プロセスから生成されたテールガス、ガス化プロセスによって生成された未使用の合成ガス、発酵プロセスから生成された微生物バイオマス、廃水処理プロセスから生成された微生物バイオマス、生成物回収プロセスからの粗エタノール、生成物回収プロセスからのフーゼル油、微生物バイオマス低減水、発酵プロセスから生成された廃水、および廃水処理プロセスからの浄化水。これらの流出物のうちの1つ以上は、合成ガス流を生成するために、ガス化プロセスに送られ得、ガス化プロセスによって加熱源として使用され得、および/または生成ガス流を急冷するために、ガス化プロセスによって使用され得る。この合成ガス流は、好ましくはガス発酵に好適である。
【0107】
図1は、乾燥機10を有するガス化プロセス300、ガス発酵プロセス100、生成物回収プロセス400、および廃水処理プロセス200の統合を図示する、本開示の一実施形態による、プロセス統合スキームを示す。これらのプロセスは、驚くべき相乗効果および利点を提供する手法で統合される。ガス化プロセス300で、合成ガス流302を生成するためにガス化することが可能な任意の好適な材料であり得るガス化供給物301を受容する。様々な例において、ガス化供給物301は、少なくとも部分的に、分別されたおよび/または分別されていない都市固体廃棄物で構成される。他の例では、ガス化供給物301は、少なくとも部分的に、森林および/または農業廃棄物で構成される。様々な例において、ガス化供給物301は、少なくとも部分的に、産業固体廃棄物で構成される。特定の実施形態では、ガス化供給物301は、以下のうちの2つ以上のうちの1つまたはそれらの組み合わせで構成される:分別された都市固体廃棄物、分別されていない都市固体廃棄物、産業固体廃棄物、森林廃棄物、農業廃棄物、廃水処理に由来する汚泥、下水、リグノセルロース材料、微生物バイオマス、発酵プロセス100からの少なくとも1つの流出物、生成物回収プロセス400からの少なくとも1つの流出物、および廃水処理プロセス200からの少なくとも1つの流出物。
【0108】
ガス化供給物は、ガス化装置内でのガス化プロセス300の一部分として乾燥機10内で乾燥させる。乾燥機10は、例えば空気などの乾燥機ガスを使用して操作し、ガス化供給物を乾燥させる。空気などの乾燥機ガスは、加熱され、一実施形態では、ガス化供給物と接触して、ガス化供給物を乾燥させる。他の実施形態では、ガス化供給物は、乾燥ガスと直接接触することなく加熱され得ることが想定される。空気または他の乾燥ガスは、バーナーの使用によって加熱することができる。乾燥機ガス導管8内の乾燥機ガスは、少なくとも1つのバーナーと熱交換可能に連通している。バーナーへの燃料は、導管104、124、および125内のテールガスによって提供される。
【0109】
ガス化プロセス300で、ガス化供給物301を受容し、ガス発酵プロセス100による発酵に好適である合成ガス流302を生成する。発酵プロセス100で、この流を、1つ以上の排出流102、104に少なくとも部分的に含有され得る1つ以上の生成物を生成するための炭素源として利用する。様々な例において、発酵プロセス100からの流出物は、発酵ブロスである。発酵プロセス100によって生成された1つ以上の生成物を、生成物回収ユニット内での生成物回収プロセス400によって発酵ブロスから除去および/または分離する。好ましくは、生成物回収プロセス400で、1つ以上の生成物406を除去し、低減された量の少なくとも1つの生成物を含む少なくとも1つの流出物402、404、408を生成する。この流出物を、導管402を介して廃水処理プロセス200に送って、ガス化プロセス300および/または発酵プロセス100に再循環させることができる再循環導管内で少なくとも1つの流出物202を生成することができる。
【0110】
発酵プロセス100からの流出物は、発酵プロセス100によって生成されたテールガスである。このテールガスの少なくとも一部は、導管104、124、および125を介してガス化プロセス300に送られ、乾燥ガスを加熱するための乾燥機10のバーナー用の燃料として乾燥機10で使用される。任意選択的な実施形態では、テールガスの少なくとも一部は、導管124によってガス化プロセス300に送られ、ガス化供給物301の一部分として使用され得る。別の任意選択的な実施形態では、テールガスの少なくとも一部は、導管114を介してガス化プロセス300に送られ、合成ガス流302を急冷し得る。
【0111】
少なくとも1つの実施形態では、発酵プロセス100からの流出物は、発酵ブロスである。発酵ブロスの少なくとも一部は、導管102を介して、生成物回収プロセス400に送られる。少なくとも1つの実施形態では、生成物回収プロセス400は、微生物バイオマスの少なくとも一部を発酵プロセス100から分離する。様々な実施形態では、発酵ブロスから分離される微生物バイオマスの少なくとも一部は、導管404を介して発酵プロセス100に再循環される。様々な実施形態では、発酵ブロスから分離された微生物バイオマスの少なくとも一部は、導管428を介してガス化プロセス300に送られる。微生物バイオマスの少なくとも一部は、ガス化供給物301の一部分として使用され得る。
【0112】
様々な任意選択の実施形態では、発酵プロセス100からの、微生物バイオマスを含有し得る発酵ブロスを含む廃水流の少なくとも一部は、生成物回収プロセス400に渡すことなく、導管104を介してガス化プロセス300に直接送られ得る。廃水の少なくとも一部は、導管124によってガス化プロセス300に送られ、ガス化供給物301の一部分として使用され得る。発酵ブロスの少なくとも一部は、導管114を介してガス化プロセス300に送られ、合成ガス流302を急冷し得る。
【0113】
発酵ブロスを生成物回収プロセス400によって処理する場合、発酵ブロスからの微生物バイオマスの除去によって生成された微生物バイオマス低減水の少なくとも一部は、導管404を介して発酵プロセス100に返送され得、および/または導管408を介してガス化プロセス300に送られ得る。微生物バイオマス低減水の少なくとも一部は、導管428を介してガス化プロセス300に送られ、ガス化供給物301の一部分として使用され得る。微生物バイオマス低減水の少なくとも一部は、導管418を介して送られ、合成ガス流302を急冷し得る。さらに、生成物回収プロセス400からの流出物の少なくとも一部は、導管402を介して廃水処理プロセス200に送られ得る。好ましくは、生成物回収プロセス400からの流出物は、低減された量の生成物および/または微生物バイオマスを含む。
【0114】
好ましくは、廃水処理プロセス200は、1つ以上のプロセスからの流出物を受容および処理し、浄化水を生成する。この浄化水を、導管202を介して1つ以上のプロセスに送ることができる。特定の例では、浄化水の少なくとも一部は、導管212を介して発酵プロセスに送られる。浄化水の少なくとも一部は、導管232によってガス化プロセス300に送られ、ガス化供給物301の一部分として使用され得る。浄化水の少なくとも一部は、導管222を介してガス化プロセス300に送られ、合成ガス流302を急冷し得る。
【0115】
特定の例では、廃水処理プロセス200は、処理プロセスの一部分として微生物バイオマスを生成する。この微生物バイオマスの少なくとも一部は、導管232を介してガス化プロセス300に送られ得る。好ましくは、ガス化プロセス300は、ガス化供給物301の一部分として、廃水処理プロセス200によって生成された微生物バイオマスの少なくとも一部を利用する。
【0116】
廃水処理プロセス200は、微生物バイオマスの処理の副生成物としてバイオガスが生成する。このバイオガスの少なくとも一部を、導管202を介してガス化プロセス300に送ることができる。特定の例では、バイオガスの少なくとも一部は、導管232を介してガス化プロセス300に送られ、ガス化供給物301の一部分として使用される。バイオガスの少なくとも一部は、導管222を介してガス化プロセス300に送られ、合成ガス流302を急冷し得る。
【0117】
好ましくは、ガス化プロセス300は、発酵プロセス100、生成物回収プロセス400、および/または廃水処理プロセス200から1つ以上の流出物を受容し、合成ガス流302を生成する。この合成ガス流302は、好ましくは、ガス発酵プロセス100の供給原料として使用するのに好適である。
【0118】
ガス発酵プロセス100の原料として使用するのに好適であるために、合成ガス流302は、好ましくは、所望の組成を有するべきである。特定の例では、ガス化プロセス300によって生成された合成ガス302は、除去および/または変換する必要のある1つ以上の構成要素を含有する。
【0119】
除去および/または変換する必要のあり得る、合成ガス302中に見られる典型的な構成要素としては、硫黄化合物、芳香族化合物、アルキン、アルケン、アルカン、オレフィン、窒素化合物、リン含有化合物、微粒子状物質、固形物、酸素、ハロゲン化化合物、ケイ素含有化合物、カルボニル、金属、アルコール、エステル、ケトン、過酸化物、アルデヒド、エーテル、およびタールが挙げられるが、これらに限定されない。これらの構成要素は、1つ以上の除去プロセスによって除去され得る。
【0120】
図2は、ガス化プロセス300とガス発酵プロセス100との間に除去プロセス500をさらに含む、本開示の一態様による、図1からのプロセス統合スキームを示す。
【0121】
好ましくは、除去プロセス500は、以下の除去ユニットのうちの1つ以上を含む:加水分解ユニット、酸性ガス除去ユニット、脱酸素ユニット、接触水素化ユニット、微粒子除去ユニット、塩化物除去ユニット、タール除去ユニット、およびシアン化水素研磨ユニット。
【0122】
除去プロセス500を組み込む場合、ガス化プロセス300からの合成ガス302の少なくとも一部を除去プロセス500に送り、合成ガス流302中に見られる少なくとも1つの構成要素の少なくとも一部を除去および/または変換する。好ましくは、除去プロセス500で、発酵プロセス100による発酵に好適な処理済み流502を生成するように、構成要素を許容レベル内にする。
【0123】
様々な例において、除去プロセス500は、加水分解ユニット、酸性ガス除去ユニット、脱酸素ユニット、接触水素化ユニット、微粒子除去ユニット、塩化物除去ユニット、タール除去ユニット、およびシアン化水素研磨ユニットを含む群から選択される2つ以上の除去ユニットを含む。特定の例では、これらの除去ユニットのうちの1つ以上を使用して、下流のプロセス、例えば、下流の発酵プロセス100および/または除去プロセス500における下流の除去ユニットに悪影響を及ぼし得る1つ以上の構成要素をガス流から除去する。
【0124】
除去プロセス500によって除去および/または変換された1つ以上の構成要素は、微生物バイオマスのガス化によって導入および/または濃縮され得る。特定の例では、除去プロセス500は、アンモニア(NH)および/またはシアン化水素(HCN)を除去し得る。このアンモニアおよび/またはシアン化水素は、微生物バイオマスをガス化プロセス300によってガス化する際に導入および/または濃縮され得る。アンモニアおよびシアン化水素を、微生物バイオマスに含有された窒素(これは、ガス化プロセス300において反応して、N、NH、および微量のHCNになる)から生成することができる。
【0125】
典型的に、発酵プロセス100に供給される合成ガス流は、ガス状である。しかしながら、合成ガス流は、代替的な形態で提供され得る。例えば、合成ガス流は、合成ガスで飽和した液体に溶解され得、次いで、これは、発酵プロセス100に供給され得る。さらなる例として、基質が、固体担体上に吸着され得る。
【0126】
好ましくは、発酵プロセス100は、C1固定微生物を利用して、合成ガス流302を発酵させ、1つ以上の生成物を生成する。発酵プロセス100におけるC1固定微生物は、典型的に、カルボキシド栄養性細菌である。特定の実施形態では、カルボキシド栄養性細菌は、Moorella、Clostridium、Ruminococcus、Acetobacterium、Eubacterium、Butyribacterium、Oxobacter、Methanosarcina、Methanosarcina、およびDesulfotomaculumを含む群から選択される。様々な実施形態では、カルボキシド栄養性細菌は、Clostridium autoethanogenumである。
【0127】
特定の例では、これらのプロセスのうちの1つ以上を、1つのプロセスからの少なくとも1つの流出物の少なくとも一部を少なくとも1つの他のプロセスの加熱源として利用することによって統合する。
【0128】
図3は、ガス化プロセス300、ガス発酵プロセス100、生成物回収プロセス400、および廃水処理プロセス200の統合を図示する、本開示の一態様による、プロセス統合スキームを示す。様々な例において、これらのプロセスを、少なくとも1つのプロセスからの少なくとも1つの流出物を少なくとも1つの他のプロセスの加熱源として利用することによって統合する。特定の実施形態では、廃水処理プロセス200によって生成されたバイオガスを1つ以上のプロセスの加熱源として利用する。好ましくは、廃水処理プロセス200によって生成されたバイオガスの少なくとも一部をガス化プロセス300の加熱源として利用する。特定の例では、ガス化プロセス300で、廃水処理プロセス200によって生成されたバイオガスの少なくとも一部を利用して、ガス化プロセス300によって生成されるスラグの少なくとも一部を溶融する。1つ以上の実施形態では、廃水処理プロセス200によって生成されたバイオガスの少なくとも一部をガス発酵プロセス100の加熱源として利用する。1つ以上の実施形態では、廃水処理プロセス200によって生成されたバイオガスの少なくとも一部を生成物回収プロセス400の加熱源として利用する。1つ以上の実施形態では、廃水処理プロセス200によって生成されたバイオガスの少なくとも一部を除去プロセス500の加熱源として利用する。
【0129】
様々な例において、廃水処理プロセス200からのバイオガス流を、1つ以上のプロセスに送る前に、導管202を介して少なくとも1つの除去プロセス600に送る。好ましくは、除去プロセス600で、バイオガス流中の少なくとも1つの硫黄化合物の量を低減させる。
【0130】
廃水処理プロセス200に続いて除去プロセス600を組み込む場合、廃水処理プロセス200からのバイオガスの少なくとも一部を除去プロセス600に送り、バイオガス処理ユニット内のバイオガス流中に見られる少なくとも1つの構成要素の少なくとも一部を除去および/または変換する。好ましくは、除去プロセス600で、それぞれ後続の1つ以上のプロセス400、100、500、および/または300によって使用するのに好適な処理済み流642、612、622、および/または632を生成するように、構成要素を許容レベル内にする。
【0131】
特定の実施形態では、発酵プロセス100によって生成されたテールガスを1つ以上のプロセスの加熱源として使用することもできる。例えば、発酵プロセス100によって生成されたテールガスの少なくとも一部をガス化プロセス300の加熱源として利用することができる。特定の例では、ガス化プロセス300で、発酵プロセス100によって生成されたテールガスの少なくとも一部を利用して、ガス化プロセス300によって生成されるスラグの少なくとも一部を溶融する。1つ以上の実施形態では、発酵プロセス100によって生成されたテールガスの少なくとも一部を生成物回収プロセス400の加熱源として利用する。様々な例において、発酵プロセス100からのテールガスを、1つ以上のプロセスに送る前に、少なくとも1つの除去プロセスに送る。
【0132】
特定の実施形態では、ガス化プロセス300によって生成された未使用の合成ガスを1つ以上のプロセスの加熱源として利用する。好ましくは、ガス化プロセス300によって生成された未使用の合成ガスの少なくとも一部をガス化プロセス300の加熱源として利用する。特定の例では、ガス化プロセス300で、ガス化プロセス300によって生成された未使用の合成ガスの少なくとも一部を利用して、ガス化プロセス300によって生成されるスラグの少なくとも一部を溶融する。1つ以上の実施形態では、ガス化プロセス300によって生成された未使用の合成ガスの少なくとも一部を生成物回収プロセス400の加熱源として利用する。様々な例において、ガス化プロセス300からの未使用の合成ガスを、1つ以上のプロセスに送る前に、少なくとも1つの除去プロセスに送る。
【0133】
発酵プロセス100で、好ましくは、様々な生成物を生成することができる。これらの生成物は、好ましくは、生成物回収プロセス400を使用することによって分離することが可能である。様々な例において、発酵プロセス100によって生成された生成物のうちの少なくとも1つの少なくとも一部を1つ以上のプロセスの供給源として使用することができる。特定の例では、生成物回収プロセス400からのエタノールの少なくとも一部をガス化プロセス300の加熱源として利用する。好ましくは、1つ以上のプロセスの加熱源として利用されるエタノールは、燃料グレードのエタノールの仕様要件を満たしていない粗エタノールである。特定の例では、ガス化プロセス300で、生成物回収プロセス400からの粗エタノールの少なくとも一部を利用して、ガス化プロセス300によって生成されるスラグの少なくとも一部を溶融する。
【0134】
特定の例では、発酵プロセス100でフーゼル油を生成する。このフーゼル油は、任意の好適な手段を介して生成物回収プロセス400によって回収することができる。例えば、蒸留装置の精留塔内。少なくとも1つの実施形態では、生成物回収プロセス400からのフーゼル油の少なくとも一部を1つ以上のプロセスの加熱源として使用する。特定の例では、生成物回収プロセス400からのフーゼル油の少なくとも一部をガス化プロセス300の加熱源として利用する。好ましくは、ガス化プロセス300で、生成物回収プロセス400からのフーゼル油の少なくとも一部を利用して、ガス化プロセス300によって生成されるスラグの少なくとも一部を溶融する。
【0135】
第1の実施形態は、a)乾燥ガスを加熱することと、b)ガス化供給原料を含有する乾燥機に加熱された乾燥ガスを提供して、乾燥ガス化供給原料を生成することと、c)乾燥ガス化供給原料の少なくとも一部をガス化して、合成ガスを生成することと、d)微生物を使用して、バイオリアクター内で少なくとも一部の合成ガスを発酵させて、少なくとも1つの生成物およびテールガスを生成することと、e)テールガスの少なくとも一部を利用して、乾燥ガスを加熱するための熱を提供することと、を含む、方法を含む。
【0136】
第1の実施形態に記載の方法は、分別された都市固形廃棄物、分別されていない都市固形廃棄物、産業固形廃棄物、農業廃棄物、森林廃棄物、微生物バイオマス、リグノセルロース材料、下水、廃水処理からの汚泥、またはそれらの任意の組み合わせとしてガス化供給原料を有し得る。
【0137】
第1の実施形態に記載の方法は、テールガスが二酸化炭素を含むものを有し得る。テールガスは、一酸化炭素、水素、窒素、およびメタンをさらに含み得る。
【0138】
第1の実施形態に記載の方法は、1つ以上のC1固定微生物として微生物を有し得る。C1固定微生物は、Moorella、Clostridium、Ruminococcus、Acetobacterium、Eubacterium、Butyribacterium、Oxobacter、Methanosarcina、およびDesulfotomaculumから選択され得る。
【0139】
ガス化供給原料は、1つ以上のC1固定微生物を含み得る微生物バイオマスであり得る。C1固定微生物は、Moorella、Clostridium、Ruminococcus、Acetobacterium、Eubacterium、Butyribacterium、Oxobacter、Methanosarcina、およびDesulfotomaculumから選択され得る。ガス化供給原料は、廃水処理プラントからのものであり得る微生物バイオマスであり得る。
【0140】
第1の実施形態に記載の方法は、空気である乾燥ガスを有することができる。
【0141】
ガス化が、ガス化供給原料を乾燥させずにガス化することと比較して、より高い合成ガスの収率を生成する、第1の実施形態に記載の方法。
【0142】
ガス化が、ガス化供給原料を乾燥させずにガス化することと比較して、より高品質の合成ガスを生成する、第1の実施形態に記載の方法。
【0143】
テールガスが、燃焼されて、乾燥ガスを加熱するための熱を提供する、第1の実施形態に記載の方法。
【0144】
テールガスが、バーナー内で燃焼されて、乾燥ガスを加熱するための熱を提供する、第1の実施形態に記載の方法。
【0145】
第2の実施形態は、a)乾燥ガスを加熱するための1つ以上のバーナーを有する乾燥機であって、供給原料導管と連通している乾燥機と、b)乾燥機と連通しているガス化装置と、c)ガス化装置と流体連通しているバイオリアクターと、d)バイオリアクターと流体連通している生成物導管およびテールガス導管と、e)1つ以上のバーナーとも流体連通しているテールガス導管と、を備える、装置を含む。
【0146】
第2の実施形態に記載の装置は、乾燥機と連通し、少なくとも1つのバーナーと熱交換可能に連通している乾燥機ガス導管をさらに備え得る。
【0147】
第2の実施形態に記載の装置は、廃水処理ユニットと流体連通している生成物回収ユニットと、廃水処理ユニットから乾燥機への第1の再循環導管と、をさらに備え得る。装置は、第1の再循環導管と流体連通しているバイオガス処理ユニットをさらに備え得る。
【0148】
第2の実施形態に記載の装置は、生成物回収ユニットから乾燥機への第2の再循環導管をさらに備え得る。
【0149】
第2の実施形態のそれは、少なくともガス化装置およびバイオリアクターと流体連通している少なくとも1つの除去ユニットをさらに備え得る。
【0150】
本明細書に列挙される公表文献、特許出願、および特許を含むすべての参考文献は、各参考文献があたかも参照により組み込まれることが個々にかつ具体的に示され、かつその全体が本明細書中に記載された場合と同じ程度まで、参照により本明細書に組み込まれる。本明細書におけるいかなる先行技術への言及も、その先行技術がいかなる国の努力傾注分野において共通の一般知識の一部分をなすという認識ではなく、かつそのように解釈されるべきではない。
【0151】
本開示を説明する文脈において(特に、以下の特許請求の範囲の文脈において)、「1つの(aおよびan)」および「その(the)」という用語ならびに同様の指示語の使用は、本明細書中に他に指示がない限り、または文脈と明らかに相反することがない限り、単数および複数の両方を包含すると解釈されるものとする。「含む」、「有する」、「含む」、および「含有する」という用語は、特に断りのない限り、非限定的な用語(例えば、「を含むがこれらに限定されることはない」を意味する)と解釈されるものとする。「から本質的になる」という用語は、組成物、プロセス、または方法の範囲を、特定の材料、またはステップ、または組成物、プロセスもしくは方法の基本的および新規の特性に実質的に影響しないものに限定する。代替語(例えば、「または」)の使用は、代替語の一方、両方、またはこれらの任意の組み合わせを意味すると理解されるべきである。本明細書で使用される場合、「約」という用語は、別段の指示がない限り、指示された範囲、値、または構造の±20%を意味する。
【0152】
本明細書の値の範囲の列挙は、本明細書で別段の指示がない限り、範囲内に入る各別個の値を個々に言及する簡略法としての機能を果たすことを単に意図し、各別個の値は、あたかも本明細書に個々に列挙されたかのように、本明細書中に組み込まれる。例えば、任意の濃度範囲、パーセンテージ範囲、比率範囲、整数範囲、サイズ範囲、または厚さ範囲は、別段の指示がない限り、列挙された範囲内の任意の整数の値、および適切な場合、その分数(整数の10分の1および100分の1など)を含むと理解されるべきである。
【0153】
本明細書に記載されるすべての方法は、本明細書に別段の指示がない限り、または文脈によって明らかに相反することがない限り、任意の好適な順序で実施され得る。本明細書に提供されるありとあらゆる例または例示的な言葉(例えば、「など」)の使用は、本開示をより良く解明することを単に意図し、別段、特許請求されない限り、本開示の範囲を制限しない。本明細書におけるいかなる言葉も、本開示の実施に不可欠ないかなる非特許請求要素を示すものと解釈されるべきではない。
【0154】
本開示の実施形態が本明細書に記載される。それらの実施形態の変化形態は、上記の説明を読むことによって当業者に明らかとなり得る。本発明者等は、当業者が必要に応じてそのような変化形を採用することを予想し、本発明者等は、本開示が本明細書に具体的に記載されるものとは別の方法で実施されることを意図する。したがって、本開示は、適用法によって許可された通り、本明細書に添付される特許請求の範囲に記載される主題のすべての修正物および均等物を含む。さらに、その実施形態のすべての考えられる変化形における上記の要素のあらゆる組み合わせは、本明細書で別段の指示がない限り、または文脈と明らかに相反することがない限り、本開示によって包含される。
図1
図2
図3
【国際調査報告】