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特表2023-514137横隔膜の上に位置する血管からステント-グラフトを導入するためのシステム及び方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-05
(54)【発明の名称】横隔膜の上に位置する血管からステント-グラフトを導入するためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/07 20130101AFI20230329BHJP
   A61F 2/95 20130101ALI20230329BHJP
【FI】
A61F2/07
A61F2/95
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022547298
(86)(22)【出願日】2021-02-19
(85)【翻訳文提出日】2022-08-02
(86)【国際出願番号】 US2021018777
(87)【国際公開番号】W WO2021168248
(87)【国際公開日】2021-08-26
(31)【優先権主張番号】62/979,008
(32)【優先日】2020-02-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/067,678
(32)【優先日】2020-08-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522308587
【氏名又は名称】メジャー メディカル デバイシズ,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100147762
【弁理士】
【氏名又は名称】藤 拓也
(72)【発明者】
【氏名】カー,アンドルー
(72)【発明者】
【氏名】メジャーカック,デイビッド シー.
【テーマコード(参考)】
4C097
4C267
【Fターム(参考)】
4C097AA15
4C097BB01
4C097BB04
4C097MM09
4C267AA56
4C267CC10
(57)【要約】
【解決手段】 動脈瘤(例えば、腹部動脈瘤)を修復するためのシステム及び方法が提供される。システム及び方法は、第1のステント及び主グラフト本体を有するステント-グラフトシステムを提供し、主グラフト本体は、患者の横隔膜の上に位置する血管を通って標的血管に挿入されるように構成される。いくつかの実施例では、第1のステント及び主グラフト本体は、実質的に終端が接続された構成であり得る。いくつかの場合では、ステント-グラフトシステム及び方法は、例えば、同じ患者または対象からの大腿動脈の直径より小さいまたは同等の直径を有する血管での単一の動脈穿刺または切開における使用のために構成される。
【選択図】 図12B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の標的血管の動脈瘤の修復のためのステント-グラフトシステムであって、第1のステントと、主グラフト本体とを含み、前記主グラフト本体は、前記患者の横隔膜の上に位置する挿入部位血管の単一の動脈穿刺または切開を通して挿入されるように構成される、前記ステント-グラフトシステム。
【請求項2】
前記標的血管が、腎動脈下方、傍腎動脈、腎動脈部、胸部大動脈、または腎動脈上方からなる群から選択される、請求項1に記載のステント-グラフトシステム。
【請求項3】
前記第1のステント及び前記主グラフト本体が、実質的に終端が接続された構成である、請求項1に記載のステント-グラフトシステム。
【請求項4】
前記挿入部位血管が、前記患者の大腿動脈の直径より小さいまたは同等の直径を有する、請求項1に記載のステント-グラフトシステム。
【請求項5】
拘束された構成における前記ステント-グラフトシステムの前記直径が、約13~約22フレンチである、請求項1に記載のステント-グラフトシステム。
【請求項6】
前記主グラフト本体が高密度化された材料を含む、請求項1に記載のステント-グラフトシステム。
【請求項7】
前記第1のステントは、高密度化された材料内に封入される、請求項1に記載のステント-グラフトシステム。
【請求項8】
前記高密度化された材料がePTFEである、請求項7に記載のステント-グラフトシステム。
【請求項9】
前記ePTFEが実質的に孔を有さない、請求項8に記載のステント-グラフトシステム。
【請求項10】
前記第1のステントが、ePTFEの少なくとも2つの層内に封入される、請求項7に記載のステント-グラフトシステム。
【請求項11】
前記挿入部位血管が、上腕動脈、橈骨動脈、尺骨動脈、腋窩動脈、及び頸動脈からなる群から選択される、請求項1に記載のステント-グラフトシステム。
【請求項12】
前記挿入部位血管が腋窩動脈である、請求項11に記載のステント-グラフトシステム。
【請求項13】
前記挿入部位血管が腋窩動脈の第2部または近位第3部である、請求項12に記載のステント-グラフトシステム。
【請求項14】
前記挿入部位血管が鎖骨下動脈である、請求項1に記載のステント-グラフトシステム。
【請求項15】
複数のレセプタクルを受容するように適合された複数のコネクタを含む連結リングをさらに含み、前記連結リングが前記主グラフト本体に配置される、請求項1に記載のステント-グラフトシステム。
【請求項16】
前記複数のコネクタ及び複数のレセプタクルが、ステントと一体的に作られるか、または所定の位置にスポット溶接される、請求項15に記載のステント-グラフトシステム。
【請求項17】
前記複数のコネクタ及び前記複数のレセプタクルの周りに配置された複数の縫合糸をさらに含む、請求項15に記載のステント-グラフトシステム。
【請求項18】
前記連結リングの膨張角が約90度より大きい、請求項15に記載のステント-グラフトシステム。
【請求項19】
前記ステント-グラフトシステムが、第1の四肢ゲート及び第2の四肢ゲートをさらに含む、請求項1に記載のステント-グラフトシステム。
【請求項20】
前記第1の四肢ゲートが第1の腸骨脚コンポーネントをさらに含む、請求項19に記載のステント-グラフトシステム。
【請求項21】
前記第2の四肢ゲートは、第2の腸骨脚コンポーネントを含む、請求項20に記載のステント-グラフトシステム。
【請求項22】
前記第1の腸骨脚コンポーネントの前記第1の四肢ゲートとの重なりは、前記第2腸骨コンポーネントの前記第2の四肢ゲートとの重なりより直径が大きくない、請求項21に記載のステント-グラフトシステム。
【請求項23】
第1の腸骨脚コンポーネント及び第2の腸骨脚コンポーネントのうちの1つまたはそれ以上に配置されたバーブを、前記第1の腸骨脚コンポーネント及び前記第2の腸骨脚コンポーネントのうちの1つまたはそれ以上を血管に固定するためにさらに含む、請求項21に記載のステント-グラフトシステム。
【請求項24】
前記第1の腸骨コンポーネント及び第2の前記腸骨コンポーネントが高密度化された材料を含む、請求項21に記載のステント-グラフトシステム。
【請求項25】
前記高密度化された材料がePTFEである、請求項24に記載のステント-グラフトシステム。
【請求項26】
前記第1の四肢ゲートの尾側端部に連結された第2のステントと、前記第2の四肢ゲートの尾側端部に連結された第3のステントとをさらに含む、請求項19に記載のステント-グラフトシステム。
【請求項27】
尾側位置決めシステムに連結するための、前記主グラフト本体、前記第2ステント、及び前記第3ステントの各々の尾側端部に配置されたテザーをさらに含む、請求項26に記載のステントグラフトシステム。
【請求項28】
前記主グラフト本体の内部に配置された環状要素と、前記環状要素上の複数の場所に関連付けられた複数の連結部材とをさらに含み、前記第1のステントが第1の軸方向ステント端部と第2の軸方向ステント端部とを有し、前記主グラフト本体が第1軸方向グラフト端部と第2軸方向グラフト端部とを有し、前記環状要素は、前記第1の軸方向グラフト端部に実質的に隣接する位置にあり、前記複数の連結部材は、前記第1の軸方向ステント端部に連結して、前記第1のステントと前記主グラフト本体との間の実質的に終端が接続された軸方向連結を維持するように構成される、請求項1記載のステント-グラフトシステム。
【請求項29】
前記複数の連結部材が前記第1の軸方向グラフト端部を越えて突出する、請求項28に記載のステント-グラフトシステム。
【請求項30】
前記複数の連結部材が周方向に間隔を空けて配置される、請求項29に記載のステント-グラフトシステム。
【請求項31】
前記実質的に終端が接続された構成が、前記第1のステントと前記第1の軸方向グラフト端部との間のギャップを含む、請求項28に記載のステント-グラフトシステム。
【請求項32】
前記ギャップが約0~2mmである、請求項31に記載のステント-グラフトシステム。
【請求項33】
前記複数の連結部材のうちの少なくとも1つが前記ギャップにわたって延長する、請求項32に記載のステント-グラフトシステム。
【請求項34】
腎動脈下方内に配置され拡張されるように適合されたセンタリングデバイスを更に含み、前記センタリングデバイスが拡張された後に、前記主グラフト本体が腎動脈下方内で再位置決めされ得る、請求項1に記載のステント-グラフトシステム。
【請求項35】
前記センタリングデバイスがセンタリングバスケット及びセンタリングバルーンからなる群から選択される、請求項34に記載のステント-グラフトシステム。
【請求項36】
前記センタリングバスケットが拡張可能であり、前記センタリングバスケットの少なくとも一部が前記腎動脈上方の動脈壁と係合する、請求項35に記載のステント-グラフトシステム。
【請求項37】
前記センタリングバルーンが膨張可能であり、前記センタリングバルーンの少なくとも一部が前記腎動脈上方の動脈壁と係合する、請求項35に記載のステント-グラフトシステム。
【請求項38】
患者の腹部大動脈瘤を修復する方法であって、
前記患者の横隔膜の上に位置する挿入部位の血管を穿刺し、前記挿入部位血管に通路を形成すること、
前記挿入部位血管の通路にステント-グラフトシステムを挿入することであって、前記ステント-グラフトシステムが、第1のステント、主グラフト本体、第1の四肢ゲート、及び第2の四肢ゲートを含む、前記挿入すること、
前記ステント-グラフトシステムの前記主グラフト本体を前記患者の標的血管内に位置決めすること、及び
前記ステント-グラフトシステムの前記主グラフト本体を前記患者の標的血管に展開すること、を含む方法。
【請求項39】
前記標的血管が、腎動脈下方、傍腎動脈、腎動脈部、胸部大動脈、または腎動脈上方からなる群から選択される、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記第1のステント及び前記主グラフト本体が、実質的に終端が接続された構成である、請求項38に記載の方法。
【請求項41】
前記挿入部位血管が、前記患者からの大腿動脈の直径より小さいまたは同等の直径を有する、請求項38に記載の方法。
【請求項42】
前記ステント-グラフトシステムの前記主グラフト本体が、前記標的血管の壁に対して実質的に血液封止である、請求項38に記載の方法。
【請求項43】
前記ステント-グラフトシステムが、第1の腸骨脚コンポーネント及び第2の腸骨脚コンポーネントをさらに含み、前記方法が
前記第1の腸骨脚コンポーネントを腸骨動脈の第1の枝に位置決めして展開すること、及び
前記第2の腸骨脚コンポーネントを腸骨動脈の第2の枝に位置決めして展開すること、をさらに含む、請求項38に記載の方法。
【請求項44】
前記第1の腸骨脚コンポーネントが、前記腸骨動脈の前記第1の枝及び前記本体グラフトに対して実質的に血液封止である、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記第2の腸骨脚コンポーネントが、前記腸骨動脈の前記第2の枝及び前記本体グラフトに対して実質的に血液封止である、請求項43に記載の方法。
【請求項46】
前記主グラフト本体が、ガイドワイヤを用いて拘束された状態で前記標的血管内に位置決めされる、請求項38に記載の方法。
【請求項47】
前記主グラフト本体を部分的に鞘から外すことにより、前記主グラフト本体を前記標的血管内にさらに位置決めする、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記主グラフト本体が前記標的血管内に展開された後、前記主グラフト本体が非拘束である、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記主グラフト本体内に封止ステントを展開することをさらに含む、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
ガイドワイヤを用いて、前記主グラフト本体を通して拘束された状態で、前記第1の腸骨脚コンポーネントを前記腸骨動脈の前記第1の枝に位置決めする、請求項43に記載の方法。
【請求項51】
前記第1の腸骨脚コンポーネントを部分的に鞘から外すことによって、前記第1の腸骨動脈の前記第1の枝にさらに位置決めする、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記第1の腸骨脚コンポーネントが前記腸骨動脈の前記第1の枝に展開された後、前記第1の腸骨脚コンポーネントが非拘束である、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
ガイドワイヤを用いて、前記主グラフト本体を通して拘束された状態で、前記第2の腸骨脚コンポーネントを前記腸骨動脈の前記第2の枝に位置決めする、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記第2の腸骨脚コンポーネントを部分的に鞘から外すことによって、前記第2の腸骨動脈の前記第2の枝にさらに位置決めする、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記第2の腸骨脚コンポーネントが前記腸骨動脈の前記第2の枝に展開された後、前記第2の腸骨脚コンポーネントが非拘束である、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記ステント-グラフトシステムが連結リングをさらに含み、前記第1のステントが複数のレセプタクルを含み、前記連結リングが前記複数のレセプタクルを受容するように適合された複数のコネクタを含み、前記連結リングが前記主グラフト本体に配置され、及び前記第1のステント及び前記主グラフト本体が、実質的に終端が接続された構成である、請求項38に記載の方法。
【請求項57】
前記複数のコネクタは、前記複数のレセプタクルに対して角度が付けられる、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記複数のコネクタ及び複数のレセプタクルの周囲に配置された複数の縫合糸をさらに含む、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記第1の腸骨脚コンポーネント及び前記第2の腸骨脚コンポーネントの1つまたはそれ以上を血管に固定するために、前記第1の腸骨脚コンポーネント及び前記第2の腸骨脚コンポーネントの1つまたはそれ以上に配置されたバーブをさらに含む、請求項43に記載の方法。
【請求項60】
前記ステント-グラフトシステムが、前記第1の四肢ゲートの尾側端部に連結された第2のステントと、前記第2の四肢ゲートの尾側端部に連結された第3のステントとをさらに含む、請求項38に記載の方法。
【請求項61】
前記ステント-グラフトシステムが、位置決めシステムに連結するために、前記主グラフト本体、前記第2ステント、及び前記第3ステントの各々の前記尾側端部に配置されたテザーをさらに含む、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
前記挿入部位血管が、上腕動脈、橈骨動脈、尺骨動脈、腋窩動脈、及び頸動脈からなる群から選択される、請求項38に記載の方法。
【請求項63】
前記挿入部位血管が前記腋窩動脈である、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
前記挿入部位血管が前記腋窩動脈の第2部または近位第3部である、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
前記挿入部位血管が鎖骨下動脈である、請求項38に記載の方法。
【請求項66】
前記環状要素が前記主グラフト本体の内部に配置され、複数の連結部材が前記環状要素上の複数の場所に関連付けられ、前記第1のステントが第1の軸方向ステント端部及び第2の軸方向ステント端部を有し、前記主体グラフトが第1の軸方向グラフト端部及び第2の軸方向グラフト端部を有し、前記環状要素は、前記第1の軸方向グラフト端部に実質的に隣接する位置に配置され、前記複数の連結部材は、前記第1の軸方向ステント端部に連結して前記第1のステントと前記主グラフト本体との間の実質的に終端が接続された軸方向連結を維持するように構成される、請求項38に記載の方法。
【請求項67】
前記複数の連結部材が、前記第1の軸方向グラフト端部を越えて突出する、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
前記複数の連結部材は、周方向に間隔を空けて配置される、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
前記実質的に終端が接続された構成が、前記第1のステントと前記第1の軸方向グラフト端との間のギャップを含む、請求項66に記載の方法。
【請求項70】
前記ギャップが約0~2mmである、請求項69に記載の方法。
【請求項71】
前記複数の連結部材の少なくとも1つは、前記ギャップにわたって延長する、請求項69に記載の方法。
【請求項72】
対象の標的血管にエンドグラフトを展開するためのエンドグラフト展開システムであって、
エンドグラフトを含む中央内側部材と、テザーワイヤを含むキャリアチューブであって、前記テザーワイヤが、尾側端部及びより頭側部を有する、前記キャリアチューブと、を含む前記外側チューブ、
前記中央内側部材を囲むトップステントであって、前記トップステントは、複数のレセプタクルを有する複数のフックを含む、前記トップステント、及び
複数の縫合糸であって、少なくとも第1の縫合糸の第1の端部は、前記トップステントを拘束された構成に保持するための前記複数のレセプタクルのうちの1つを通って配置され、前記第1の縫合糸の第2の端部は、前記テザーワイヤの前記より頭側部に付着される、前記複数の縫合糸、を含み、
前記テザーワイヤの移動が、前記複数のレセプタクルから前記複数の縫合糸の除去を制御し、前記トップステントを拘束された構成から非拘束の構成に解放し、前記複数の縫合糸を前記対象の前記血管から除去することができる、エンドグラフト展開システム。
【請求項73】
前記少なくとも第1の縫合糸の前記第1の端部がループに形成され、前記ループが前記テザーワイヤの尾側端部の周りに配置される、請求項72に記載のエンドグラフト展開システム。
【請求項74】
前記少なくとも第1の縫合糸の前記第1の端部の下に配置された棚部を、前記少なくとも第1の縫合糸の前記第1の端部を前記棚部の上に最初に保持し、前記少なくとも第1の縫合糸の前記第2の端部を前記棚部の下に保持するためにさらに含む、請求項72に記載のエンドグラフト展開システム。
【請求項75】
前記棚部が、前記中央内側部材を受容するための第1の開口部をさらに含む、請求項74に記載のエンドグラフト展開システム。
【請求項76】
前記キャリアチューブを受け入れるための第2の開口部をさらに含む、請求項75に記載のエンドグラフト展開システム。
【請求項77】
前記複数の縫合糸のうちの少なくとも1つを受け入れるための第3の開口部をさらに含む、請求項76に記載のエンドグラフト展開システム。
【請求項78】
患者においてステント-グラフトを展開する方法であって、
第1の大腿動脈と第2の大腿動脈に穿刺し、前記大腿動脈の各々に通路を形成すること、
ステント-グラフト展開システムで前記第1の大腿動脈または前記第2の大腿動脈のいずれかの通路にステント-グラフトを挿入することであって、前記ステント-グラフト展開システムが、エンドグラフト含む中央内側部材と、テザーワイヤを含むキャリアチューブであって、前記テザーワイヤが尾側端部及びより頭側部を有する、前記キャリアチューブ、を含む前記外側チューブ、前記中央内側部材を取り囲むトップステントであって、前記トップステントは、複数のレセプタクルを有する複数のフックを含む、前記前記トップステント、及び複数の縫合糸であって、少なくとも前記第1の縫合糸の第1の端部は、前記トップステントを拘束された構成で保持するために前記複数のレセプタクルの1つを通って配置され、前記第1の縫合糸の第2の端部は前記テザーワイヤのより頭側部に付着される、前記複数の縫合糸、を含む、前記挿入すること、
前記テザーワイヤを動かして、前記複数のレセプタクルから前記複数の縫合糸を取り除き、前記トップステントを拘束された構成から非拘束の構成に解放すること、及び
前記複数の縫合糸を前記対象の血管から取り除くこと、を含む、方法。
【請求項79】
前記少なくとも第1の縫合糸の前記第1の端部はループに形成され、前記ループは前記テザーワイヤの前記尾側端部の周りに配置される、請求項78に記載の方法。
【請求項80】
前記少なくとも第1の縫合糸の前記第1の端部の下に配置された棚部を、前記少なくとも第1の縫合糸の前記第1の端部を前記棚部の上に最初に保持するためにさらに含む、請求項78に記載の方法。
【請求項81】
前記棚部が、前記中央内側部材を受け入れるための第1の開口部をさらに含む、請求項80に記載の方法。
【請求項82】
前記キャリアチューブを受け入れるための第2の開口部をさらに含む、請求項81に記載の方法。
【請求項83】
前記複数の縫合糸のうちの少なくとも1つを受け入れるための第3の開口部をさらに含む、請求項82に記載の方法。
【請求項84】
主グラフト本体を含む標的血管内の動脈瘤の修復のためのステント-グラフトシステムであって、前記主グラフト本体が、前記主グラフト本体に少なくとも部分的に配置された封止ステントを含み、患者の横隔膜の上に位置する挿入部位血管の単一の動脈穿刺または切開を通して挿入されるように構成される、前記ステント-グラフトシステム。
【請求項85】
前記封止ステントが複数のストラットを有し、前記複数のストラットが約0.013~0.016インチのストラット幅を有する、請求項84に記載のステント-グラフトシステム。
【請求項86】
前記封止ステントが複数のストラットを有し、前記複数のストラットが約0.016~約0.020インチのストラット壁厚を有する、請求項84に記載のステント-グラフトシステム。
【請求項87】
前記主グラフト本体が、第1の軸方向端部及び第2の軸方向端部を有し、前記封止ステントが前記第1の軸方向端部に隣接して配置され、前記封止ステントが複数のフックをさらに含む、請求項84に記載のステント-グラフトシステム。
【請求項88】
前記複数のフックの各々が、前記主グラフト本体の前記第1の軸方向端部を越えて延長する、請求項87に記載のステント-グラフトシステム。
【請求項89】
前記複数のフックの各々は、放射線不透過性マーカーをさらに含む、請求項87に記載のステント-グラフトシステム。
【請求項90】
前記複数のフックの各々は、右手の向きまたは左手の向きに配向され得る、請求項87に記載のステント-グラフトシステム。
【請求項91】
前記複数のフックの各々の向きが隣接するフックと異なる、請求項90に記載のステント-グラフトシステム。
【請求項92】
前記複数のフックが、腎動脈下方における前記主グラフト本体の再位置決めのためにループ状ワイヤによって可逆的に保持されるように適合される、請求項87に記載のステント-グラフトシステム。
【請求項93】
前記ループ状ワイヤが、再捕捉シースを通して前記標的血管に挿入される、請求項92に記載のステント-グラフトシステム。
【請求項94】
前記再捕捉シースが約2~4フレンチである、請求項93に記載のステント-グラフトシステム。
【請求項95】
前記複数のフックが、複数のフックアイレットをさらに含む、請求項92に記載のステント-グラフトシステム。
【請求項96】
前記ループ状ワイヤが前記複数のフックアイレットのうちの少なくとも1つを通して取り外し可能に挿入される、請求項95に記載のステント-グラフトシステム。
【請求項97】
ステント-グラフトシステムの主グラフト本体を対象の標的血管内に位置決めする方法であって、
主グラフト本体送達システムを前記標的血管の標的場所に前進させることであって、前記主グラフト本体送達システムが、前記主グラフト本体とセンタリングデバイスとを含む、前記前進させること、
前記標的血管内の前記主グラフト本体を前記標的場所の第1の位置に位置決めすること、
前記主グラフト本体の前記第1の位置が前記標的血管内の前記標的場所の中心にあるかどうかを決定すること、
前記主グラフト本体の第1の位置が前記標的血管内の前記標的場所の中心にない場合、前記標的血管内の前記センタリングデバイスを中心となる位置に展開すること、及び
前記主グラフト本体の前記第1の位置が前記標的血管内の前記標的場所の中心にない場合、前記標的血管内の前記主グラフト本体を前記中心位置から決定された第2の位置に再配置すること、を含む、前記方法。
【請求項98】
前記センタリングデバイスが、センタリングバスケット及びセンタリングバルーンからなる群から選択される、請求項97に記載の方法。
【請求項99】
前記センタリングバスケットが拡張可能であり、前記センタリングバスケットの少なくとも一部が前記標的血管の壁と係合する、請求項98に記載の方法。
【請求項100】
前記センタリングバルーンが膨張可能であり、前記センタリングバルーンの少なくとも一部が前記標的血管の壁と係合する、請求項98に記載の方法。
【請求項101】
前記主グラフト本体送達システムが、前記主グラフト本体を含むシースをさらに含み、前記シースを引っ込ませることにより、前記主体グラフトを前記標的血管に位置付ける前に、前記主グラフト本体を前記腎動脈下方に露出させる、請求項97に記載の方法。
【請求項102】
前記シースが、前記センタリングデバイスをさらに含み、前記シースをさらに引っ込ませることにより、前記センタリングデバイスを展開する前に、前記標的血管内で前記センタリングデバイスを露出させる、請求項98に記載の方法。
【請求項103】
前記主グラフト送達システムが、主グラフト本体拘束デバイス及び主グラフト本体解放デバイスをさらに含み、前記主グラフト本体拘束デバイスが前記主グラフト本体頭側端部を拘束された構成に維持し、前記主グラフト本体解放デバイスが前記主グラフト本体の非拘束の構成への解放を誘導する、請求項97に記載の方法。
【請求項104】
前記拘束デバイスが、前記主グラフト本体の前記位置を制御するように適合された主グラフト本体拘束ワイヤを含む、請求項103に記載の方法。
【請求項105】
前記主グラフト本体解放デバイスが、前記標的血管内で前記主グラフトを解放するように適合されたスネアループを含む、請求項103に記載の方法。
【請求項106】
前記スネアループが、前記主グラフト本体頭側端部の拡張後に前記主グラフト本体頭側端部を再拘束し、前記標的血管内での前記主グラフト本体の再位置決めを制御し得る、請求項105に記載の方法。
【請求項107】
前記スネアループを前記対象から取り外すことをさらに含む、請求項105に記載の方法。
【請求項108】
前記主グラフト本体には尾側端部と頭側端部があり、前記第1の位置の場所は前記主グラフト本体の前記頭状端部にあるマーカーの場所によって決定される、請求項97に記載の方法。
【請求項109】
前記マーカーの位置が腎動脈に対して尾側である、請求項108に記載の方法。
【請求項110】
前記主グラフト本体の尾側端部をトリガーワイヤで前記主グラフト本体拘束デバイスに固定することをさらに含む、請求項103に記載の方法。
【請求項111】
標的血管の動脈瘤を修復するためのステント-グラフトシステムであって、
複数の位置決めのためのレセプタクルを有するトップステントと、
主グラフト本体であって、前記トップステント及び前記主グラフト本体が、実質的に終端が接続された構成であり、前記トップステント及び前記主グラフト本体が内側部材の周りに配置される、前記主グラフト本体と、
スネアループを含むスネアチューブであって、前記スネアループの第1の端部が前記スネアチューブ内に配置され、前記スネアループの第2の端部が前記スネアチューブから前記位置決めレセプタクルを通って、前記内側部材の周りにスネアチューブ内に配置され、前記スネアチューブが前記内側部材に平行で、前記スネアループの前記第1の端部がスネアループの第2の端部と隣接する、前記スネアチューブと、と含み、
前記ステント-グラフトシステムが、患者の横隔膜の上に位置する挿入部位血管における単一の動脈穿刺または切開を通して挿入されるように構成される、前記ステント-グラフトシステム。
【請求項112】
前記複数の位置決めレセプタクルの各々がアイレットをさらに含み、前記スネアループの前記第2の端部が少なくとも1つのアイレットを通って配置される、請求項111に記載のステント-グラフトシステム。
【請求項113】
前記内側部材の周囲に配置された外側シースをさらに含む、請求項111に記載のステント-グラフトシステム。
【請求項114】
前記挿入部位血管が前記患者の大腿動脈の直径より小さいまたは同等の直径を有する、請求項111に記載のステント-グラフトシステム。
【請求項115】
拘束された構成における前記ステント-グラフトシステムの直径が、約13~約22フレンチである、請求項111に記載のステント-グラフトシステム。
【請求項116】
前記主グラフト本体が高密度化された材料を含む、請求項111に記載のステント-グラフトシステム。
【請求項117】
前記主グラフト本体が分岐し、第1の四肢ゲート及び第2の四肢ゲートをさらに含む、請求項111に記載のステント-グラフトシステム。
【請求項118】
前記第1の四肢ゲートが第1の腸骨脚コンポーネントを含む、請求項117に記載のステント-グラフトシステム。
【請求項119】
前記第2の四肢ゲートが第2の腸骨脚コンポーネントを含む、請求項118に記載のステント-グラフトシステム。
【請求項120】
前記トップステント及び前記主グラフト本体が、実質的に終端が接続された構成である、請求項111に記載のステント-グラフトシステム。
【請求項121】
前記第1の四肢ゲート及び前記第2の四肢ゲートを位置決めするためのトリガーワイヤをさらに含む、請求項117に記載のステント-グラフトシステム。
【請求項122】
第1の四肢ゲートテザー及び第2の四肢ゲートテザーをさらに含む、請求項121に記載のステント-グラフトシステム。
【請求項123】
前記第1の四肢ゲートテザー及び前記第2の四肢ゲートテザーが、前記トリガーワイヤによって保持され得る、請求項122に記載のステント-グラフトシステム。
【請求項124】
前記主グラフト本体を腎動脈下方内でセンタリングするためのセンタリングデバイスをさらに含む、請求項111に記載のステント-グラフトシステム。
【請求項125】
請求項113に記載のステント-グラフトシステムを標的血管内に位置決めする方法であって、
前記スネアループの長さを短くすることであって、前記トップステントが展開された構成から拘束された構成に折り畳まれ、前記トップステントが外側シース内に移動される、前記スネアループの長さを短くすること、
前記標的血管における前記ステント-グラフトシステムの場所を調整すること、及び
前記スネアループを長くすることであって、前記トップステントが前記外側シースから移動され、前記トップステントが前記標的血管において拘束された構成から展開された構成に拡張される、前記スネアループを長くすること、を含む、前記方法。
【請求項126】
標的血管内の動脈瘤を修復するためのステント-グラフトシステムであって、
複数の位置決めレセプタクルを有するトップステントと、
主グラフト本体であって、前記トップステント及び前記主グラフト本体が、実質的に終端が接続された構成であり、前記トップステント及び前記主グラフト本体が内側部材の周りに配置される、前記主グラフト本体と、
スネアループであって、360度より大きいトップステントの周りの回転度で前記位置決めレセプタクルを通して配置され、前記スネアループの第1の端部が、前記内側部材に対して実質的に対称に配置される、前記スネアループと、を含み、
前記主グラフト本体が、患者の横隔膜の上に位置する挿入部位血管の単一の動脈穿刺または切開を通して挿入されるように構成される、前記ステント-グラフトシステム。
【請求項127】
前記複数の位置決めレセプタクルの各々がアイレットをさらに含み、前記スネアループの第2端が少なくとも1つのアイレットを通して配置される、請求項126に記載のステント-グラフトシステム。
【請求項128】
前記内側部材の周囲に配置された外側シースをさらに含む、請求項126に記載のステント-グラフトシステム。
【請求項129】
前記挿入部位血管が、前記患者の大腿動脈の直径よりも小さいまたは同等の直径を有する、請求項126に記載のステントグラフトシステム。
【請求項130】
拘束された構成における前記ステント-グラフトシステムの直径が約13~約22フレンチである、請求項126に記載のステント-グラフトシステム。
【請求項131】
前記主グラフト本体が高密度化された材料を含む、請求項126に記載のステント-グラフトシステム。
【請求項132】
前記主グラフト本体が分岐し、第1の四肢ゲート及び第2の四肢ゲートをさらに含む、請求項126に記載のステント-グラフトシステム。
【請求項133】
前記第1の四肢ゲートが第1の腸骨脚コンポーネントを含む、請求項132に記載のステント-グラフトシステム。
【請求項134】
前記第2の四肢ゲートが第2の腸骨脚コンポーネントを含む、請求項133に記載のステント-グラフトシステム。
【請求項135】
前記トップステント及び前記主グラフト本体が、実質的に終端が接続された構成である、請求項126に記載のステント-グラフトシステム。
【請求項136】
前記第1の四肢ゲート及び第2の四肢ゲートを位置決めするためのトリガーワイヤをさらに含む、請求項132に記載のステント-グラフトシステム。
【請求項137】
第1の四肢ゲートテザー及び第2の四肢ゲートテザーをさらに含む、請求項136に記載のステント-グラフトシステム。
【請求項138】
前記第1の四肢ゲートテザー及び前記第2の四肢ゲートテザーは、前記トリガーワイヤによって保持され得る、請求項137に記載のステント-グラフトシステム。
【請求項139】
請求項128に記載のステント-グラフトシステムを標的血管内に位置決めする方法であって、
前記スネアループの長さを短くすることであって、前記トップステントが展開された構成から拘束された構成に折り畳まれ、前記トップステントが前記外側シース内に移動される、前記スネアループの長さを短くすること、
前記標的血管における前記ステント-グラフトシステムの前記場所を調整すること、及び
前記スネアループを長くすることであって、前記トップステントが前記外側シースから移動され、前記トップステントが前記標的血管において拘束された構成から展開された構成に拡張される、前記スネアループを長くすること、を含む、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
特許及び特許出願を含むがこれらに限定されない、本明細書に引用されるすべての文献は、その全体が参照により組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
動脈瘤は、血管の異常な肥大または膨張のことである。大動脈瘤は、枝血管への塞栓、大動脈血栓症、及び大動脈破裂を引き起こす可能性がある。損傷した血管は、手術または血管エンドグラフト設置によって治療または修復される。
【0003】
大動脈は、心臓の左心室から発し、腹部へ伸びる体内で最大の動脈である。それは、2本の腸骨動脈に分岐する。動脈瘤(AA)は、大動脈とその分枝のあらゆる部位に発生する。Sabiston Textbook of Townsend,et al.,Surgery:The Biological Basis of Modem Surgical Practice 20th Edition,pp.1722-1753(2017)。
【0004】
AAは通常、開腹手術または血管内動脈瘤修復術(EVAR)により修復される。EVARは、AAを修復するためにステント-グラフトデバイスを利用する低侵襲な処置としてもてはやされている。ステント-グラフトデバイスは、血管の損傷を修復するために一緒に展開され得るように互いに連結されたステント部分とグラフト部分とを含む組み合わせデバイスである。
【0005】
ステントは、典型的には、血管に挿入され、収縮、損傷または閉塞した血管を開くために拡張される拡張可能な金属格子デバイスである。血管を開くことに加えて、ステントは、血管が再び閉じることを防止するための剛性構造支持体を提供し得る。ステントは、しばしばバルーン血管形成術と併用される。
【0006】
人工グラフトは、病気の血管を交換または修復するために使用し得る医療デバイスである。グラフトは、合成材料(例えば、ePTFE、ポリエステル)で作られ、修復を必要とする血管の直径に近似するように拡張され得る。このグラフト材料は、漏れることなく正常な血流を支えることができるように、血液封止を提供する。
【0007】
ステント-グラフトデバイスは、通常の血流の圧力下でステント-グラフトデバイスが外れるのを防止するために、グラフトからの実質的に血液封止とステントの支持構造との組合せを提供し得る。ステントと人工グラフトとの組み合わせは、動脈瘤の頸部を横切って配置された時に動脈瘤を液圧的に隔離するために使用することができる。しかしながら、ステント-グラフトデバイスのコンポーネントの連結及び展開は、困難であることが証明されており、なぜならステント-グラフトデバイスの送達システムプロファイル(すなわち、送達シースの外径)がかなり大きく、デバイスを挿入し、標的解剖学的構造を通って進み、及び展開することがより困難となり得るからである。これらの課題を対処するために、いくつかの細いステント-グラフトデバイスが、本願の発明者によって開発されており、例えば、米国特許第10,105,209号、第9,050,182号、第8,257,423号、第7,105,017号、第7,175,651号、第6,981,982号、第6,015,422号、第6,102,918号、及び第6,168,620号に記載される。
【0008】
AAは、無症状であることが多く、65歳より高齢の人に頻繁に発生する。AAは未治療の場合、死亡率が高く、そのため、早期発見と修復が重要である。EVARが、適切な候補者である大動脈瘤の患者にとって、より低侵襲な選択肢として開腹手術よりも好ましい。EVARは開腹手術に比べ、安全、迅速、低侵襲ではあるものの、難易度が高く、時間がかかり、及び術後の有病率も高くなる可能性がある。
【0009】
腎動脈下位の大動脈瘤のEVAR処置は、典型的には、各大腿動脈に1回の穿刺または切開を必要とし、その後、拘束されたステント-グラフトデバイスを上方頭側方向(大腿アプローチ)に操作し、イントロデューサシース内に拘束されたガイドワイヤ上、腎動脈下方の所定の位置に移動させる。ステント-グラフトデバイスの一部は、腎動脈下方に展開される。次に、ステント-グラフトデバイスを一方の腸骨動脈に位置決めし、展開する。次に、別のステント-グラフトデバイスが、他方の大腿動脈の穿刺または切開を介して他方第2の腸骨動脈に位置決め及び展開される。このような処置は、対象または患者の横隔膜の下からのステント-グラフトデバイスの挿入及び展開に依存する。
【0010】
要約すると、標準的なEVAR手順は、大腿アプローチ方向から(横隔膜の下から)ステント-グラフトデバイスのための細かい位置決め動作を行うことに加えて、動脈アクセスのために両側の大腿穿刺(すなわち、各大腿動脈に1つの穿刺または切開)を必要とする。EVARは開腹手術より優れているが、上述のように、アクセスのために使用される両側の大腿穿刺からの患者の回復が必要とされる。患者はしばしば数日間安静が必要で、痛み止めの服用が必要であり、それにより(例えば、入院費、薬代、労働時間のロス)などの追加費用がかかる。
【0011】
現在利用可能なステント-グラフトデバイスの送達システムプロファイルは、これらのデバイスの導入のターゲットとなり得る血管を制限する。このようなデバイスは、ステント-グラフトデバイスのコンポーネントがその送達に使用されるカテーテルベースのシステムにおいてどのように配置されるか、及び/または互いに連結されるかに部分的に起因して、広い直径を有する。
【0012】
必要とされているのは、現在利用可能なステント-グラフトデバイスよりも細く、そのためより低径血管に展開し易く、処置後の有病率及び患者の不快感が少ない、改良された細いステント-グラフトシステム及び動脈瘤を修復する方法である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
本明細書に記載のステント-グラフトシステム及び方法は、いくつかの態様において、患者の横隔膜の上に位置する血管内に導入/挿入され、「トップダウン」アプローチで展開されるように構成された細いステント-グラフトデバイスを提供する。最初の展開の後に標的血管(例えば、腎動脈下方、傍腎動脈、腎動脈部、胸部大動脈、または腎動脈上方)内のステント-グラフトデバイスの配置を調整するための例示的なシステム及び方法も提供される。さらなる態様は、標的血管におけるステント-グラフトデバイスの展開された場所を中心化するのに使用するための中心化デバイスを記載する。
【0014】
本明細書に記載される1つの態様は、第1のステントと、主グラフト本体とを有する標的血管における動脈瘤の修復のための第1のステント-グラフトシステムを対象とし、ステント-グラフトシステムは、患者の横隔膜の上に位置する挿入部位血管における単一の動脈穿刺または切開を通して挿入されるように構成され得る。
【0015】
別の態様は、患者の横隔膜の上に位置する挿入部位血管を穿刺し、挿入部位血管に通路を形成することによって、患者の腹部大動脈瘤を修復する第1の方法を提供する。ステント-グラフトシステムは、挿入部位血管の通路に挿入され得る。ステント-グラフトシステムは、第1の四肢ゲートと第2の四肢ゲートとに分岐する主グラフト本体を含み得る。ステント-グラフトシステムの主グラフト本体は、例えば、患者の標的血管内に位置決めして展開することが可能である。
【0016】
更なる態様は、患者または対象の標的血管にエンドグラフトを展開するための第2のステント-グラフトシステム(例えば、エンドグラフト展開システム)を提供する。第2のステント-グラフトシステムのいくつかの実施例では、エンドグラフトは患者や対象の横隔膜の下から展開し得る。エンドグラフト展開システムは、エンドグラフトを含む中央内側部材と、テザーワイヤを含むキャリアチューブとを含む外側チューブを有し得る。テザーワイヤは、尾側端部及びより頭側部(すなわち、頭部または体の頂部に最も近い端部)を有し得る。エンドグラフト展開システムは、中央内側部材を取り囲むトップステントを有し得、トップステントは、複数のレセプタクルを有する複数のフック及び複数の縫合糸を含む。
【0017】
第2のステント-グラフトシステムのいくつかの実施例では、少なくとも第1の縫合糸の第1の端部は、拘束された構成でトップステントを保持するための複数のレセプタクルのうちの1つを通して配置され得る。第1の縫合糸の第2の端部は、テザーワイヤのより頭側部に取り付けられ得る。テザーワイヤの動きは、複数のレセプタクルからの複数の縫合糸の除去を制御し、トップステントを拘束された構成から非拘束の構成に解放し、患者または対象の血管から複数の縫合糸を除去し得る。
【0018】
本明細書に記載される1つの態様は、第1の大腿動脈及び第2の大腿動脈に穿刺し、大腿動脈の各々に通路を形成し、及びステント-グラフトを第1の大腿動脈または第2の大腿動脈のいずれかの通路に挿入し、エンドグラフトを含む中央内側部材と、テザーワイヤを含むキャリアチューブと、を含む外側チューブを含むステント-グラフト展開システムで、患者または対象にステント-グラフトを展開する第2の方法を提供する。第2の方法のいくつかの実施例では、エンドグラフトは、患者または対象の横隔膜の上または横隔膜の下から展開され得る。
【0019】
第2の方法のいくつかの実施例では、テザーワイヤは、尾側端部と、より頭側部とを有する。トップステントは、中央内側部材を取り囲むことができ、トップステントは、複数のレセプタクルを有する複数のフックを含む。第2の方法のいくつかの実施例は、複数の縫合糸をさらに含むことができ、少なくとも第1の縫合糸の第1の端部は、拘束された構成でトップステントを保持するために複数のレセプタクルのうちの1つを通して配置され、第1の縫合糸の第2の端部は、テザーワイヤのより頭側部に貼り付けられる。
【0020】
テザーワイヤは、複数のレセプタクルから複数の縫合糸を除去し、トップステントを拘束された構成から非拘束の構成に解除し、及び患者または対象の血管から複数の縫合糸を除去するために動かすことができる。いくつかの実施例では、テザーワイヤが除去され、縫合糸は患者の中に残すことが可能である。
【0021】
本明細書に記載される態様は、主グラフト本体内に少なくとも部分的に配置された封止ステントを含む主グラフト本体を含む、標的血管内での動脈瘤の修復のための第3のステント-グラフトシステムを提供し、ステント-グラフトシステムは、患者の横隔膜の上に位置する挿入部位血管内の単一の動脈穿刺または切開を通して挿入されるよう構成され得る。主グラフト本体は、患者の横隔膜の上に位置する挿入部位血管における単一の動脈穿刺または切開を通じて挿入されるように構成される。
【0022】
本明細書に記載されるさらなる態様は、主グラフト本体送達システムを標的血管内の標的場所に前進させることによって、ステント-グラフトシステムの主グラフト本体を対象の標的血管(例えば、腎動脈下方、傍腎動脈、腎動脈部、胸部大動脈、または腎動脈上方)内に位置決めする第3の方法を提供する。主グラフト本体送達システムは、主グラフト本体及びセンタリングデバイスを含み得る。主グラフト本体は、標的場所の第1の位置で標的血管内に位置決めすることができ、主グラフト本体の第1の位置が標的場所の標的血管内で中心にあるかどうかを判定することができる。いくつかの実施例では、第3の方法は、患者の横隔膜の上に位置する挿入血管における単一の動脈穿刺または切開を通して主グラフト本体を挿入することを対象とする。
【0023】
センタリングデバイスは、主グラフト本体の第1の位置が標的場所において標的血管内で中心にいない場合、中心にいる位置で標的血管内に展開することができる。主グラフト本体は、主グラフト本体の第1の位置が標的場所において標的血管の中心にない場合、中心位置から決定された第2の位置において標的血管内で再位置決めすることができる。
【0024】
本明細書に記載される態様は、複数の位置決めレセプタクルを有するトップステントと主グラフト本体とを含む、標的血管内の動脈瘤を修復するための第4のステント-グラフトシステムを提供し、トップステント及びメイングラフト本体は実質的に終端が接続された構成である。トップステント及び主グラフト本体は、内側部材の周囲に配置され得る。ステント-グラフトシステムは、スネアループを含むスネアチューブを含む。スネアループの第1の端部は、スネアチューブ内に配置され得る。スネアループの第2の端部は、スネアチューブから、位置決めレセプタクルを通り、内側部材の周囲を回って、スネアチューブの中に配置され得る。スネアチューブは内側部材と平行とし、スネアループの第1の端部はスネアループの第2の端部に隣接することができる。ステント-グラフトシステムは、患者の横隔膜の上に位置する挿入部位の血管における単一の動脈穿刺または切開を通して挿入されるように構成され得る。
【0025】
さらなる態様は、複数の位置決めレセプタクルを有するトップステントと主グラフト本体とを含む、標的血管内の動脈瘤を修復するための第5のステント-グラフトシステムを提供し、トップステント及びメイングラフト本体が実質的に終端が接続された構成であり、トップステント及び主グラフト本体は内側部材の周りに配置される。ステント-グラフトシステムは、360度より大きいトップステント周囲の回転度で、位置決めレセプタクルを介して配置されたスネアループを含み得る。スネアループの第1の端部は内側部材に対して実質的に対称的に配置され得る。ステント-グラフトシステムは、患者の横隔膜の上に位置する挿入部位血管における単一の動脈穿刺または切開を通して挿入されるように構成し得る。別の態様では、主グラフト本体は、患者の横隔膜の上に位置する挿入部血管における単一の動脈穿刺または切開を通して挿入されるように構成される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】下行胸部大動脈、腎動脈上位の腹部大動脈、腎動脈、腎動脈下方、ならびに同側及び対側腸骨動脈の例示的な図面である。
図2A】本明細書に記載される態様による例示的なステント-グラフトデバイスの正面図である。、図2は、平坦化された側面図を示す。
図2B】本明細書に記載される態様による例示的なステント-グラフトデバイスの平坦化された側面図を示す。
図3A】コネクタ及びレセプタクルを含む、例示的なステント-グラフトデバイスの例示的なトップステント部を示す。
図3B】例示的なステント-グラフトデバイスにおいて、トップステントを連結リングに連結する例示的なコネクタ及びレセプタクル部分の拡大図を示す。
図3C】例示的なコネクタ及びレセプタクルの代替構成を示す。
図3D】例示的なコネクタ及びレセプタクルの代替構成を示す。
図4】例示的な連結リングのアームの代替的な構成を示す。
図5】腸骨脚コンポーネントの例示的な構成を示す。
図6A】典型的なEVAR処置におけるステント-グラフトデバイスの大腿骨位置決め及び展開を示す。
図6B】典型的なEVAR処置におけるステント-グラフトデバイスの大腿骨位置決め及び展開を示す。
図7A】本明細書に記載の態様によるステント-グラフトデバイスの例示的展開を示す(前記デバイスは、横隔膜の上のアクセスポイント(例えば、腋窩動脈または上腕動脈)から挿入/導入される)。
図7B】本明細書に記載の態様によるステント-グラフトデバイスの例示的展開を示す(前記デバイスは、横隔膜の上のアクセスポイント(例えば、腋窩動脈または上腕動脈)から挿入/導入される)。
図7C】本明細書に記載の態様によるステント-グラフトデバイスの例示的展開を示す(前記デバイスは、横隔膜の上のアクセスポイント(例えば、腋窩動脈または上腕動脈)から挿入/導入される)。
図7D】本明細書に記載の態様によるステント-グラフトデバイスの例示的展開を示す(前記デバイスは、横隔膜の上のアクセスポイント(例えば、腋窩動脈または上腕動脈)から挿入/導入される)。
図8A】本明細書に記載される態様によるステント-グラフトデバイスの本体の例示的な細かい位置決めを示す。
図8B図8Aの実施例の拡大図を示す。
図9】例示的なステント-グラフトの導入及び位置決めをガイドするために使用される縫合糸の除去を確実にする代替的なステント-グラフト展開システムを示す。
図10図9に示す代替ステント-グラフト展開システムと共に使用するための任意の棚部の上面図を示す。
図11】血管内のステント-グラフトシステムの軸方向位置を調整するために内側部材の周りに非対称に配置されたスネアチューブ内のスネアループを有する例示的なステント-グラフトデバイスを示す。
図12A】任意のセンタリングデバイスが示される、図11の例示的なステント-グラフトデバイスを示す。
図12B図12Aのデバイスの代替実施形態を示す。
図13】540度の回転度を有するトップステント上のアイレットを通して配置されたスネアループと、内側部材の周りに対称的に配置されたスネアループ端部とを有する例示的なステント-グラフトデバイスを示す。
図14図11及び図12Aの例示的なデバイスの断面図を示す。
図15図13の例示的なデバイスの断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
ステント-グラフトシステム及び方法が、動脈瘤の修復のための、ステント-グラフトデバイスの導入、位置決め、及び展開を改善するために、本明細書において提供される。本明細書に記載される態様によるステント-グラフトデバイスは、血管へのアクセスが横隔膜の下に位置する動脈を通した、任意の適当な血管における動脈瘤を修復するために使用され得ることが理解される。
【0028】
現代のステント-グラフトシステムは、14~24F(フレンチ)の外径を有し、横隔膜の下からのステント-グラフトシステムの挿入を介して、EVAR処置に使用される。現在の典型的なEVAR手術では、それぞれの大腿動脈に1本ずつ、2箇所の穿刺または切開を行う。各穿刺のカニュレーションに続いて、各穿刺を通してガイドワイヤを配置及び展開するため、さらに時間を要し、ばらつきやエラーの潜在的リスクが高まる。さらに、両方の大腿動脈における前記穿刺の閉鎖は痛みを伴うことがあり、EVAR処置に関連する有病率の増加問題を増加させ、それによって患者の回復を長引かせることがある。
【0029】
したがって、本明細書に記載される態様に従って、ステント-グラフトデバイス(またはそのコンポーネント)は、患者または対象の横隔膜の上(例えば、より小さい口径の動脈内)で単一の穿刺または切開を通して挿入されるように構成される。本明細書に記載されるように、これらの例示的なステント-グラフトデバイスは、より小さい直径(例えば、約6~約13フレンチまたは約13~約22フレンチの外径プロファイルの範囲)を有し、例えば、腎動脈下方及び左及び右腸骨動脈においてより容易かつ迅速に位置付け及び展開するために「トップダウン」方向で腎動脈下方に配置することが可能である。「トップダウン」という用語は、本明細書に記載されるように、患者の横隔膜の上に位置する挿入血管にステント-グラフトデバイスを導入または挿入することを意味する。
【0030】
[トップダウン」アプローチは、典型的な両側の大腿動脈アプローチによってもたらされるアクセス時間及び課題を大幅に低減することが期待され、なぜなら両側のアプローチは、患者の両脚におけるデバイスのアクセス及びデバイスの装着を必要とし、腹部動脈瘤(例えば)に苦しむ患者の脚の動脈は、しばしば高度な角度及び疾患を有し、介入医にとってEVAR手順の設定を著しく複雑なものにするからである。この態様において、処置は迅速で、ミスが起こりにくく、患者の横隔膜の上に位置する動脈を穿刺または切開からの患者の回復をもたらす。アクセス場所(横隔膜の上)は、典型的なEVAR処置の解剖学的課題の多くに立ち向かうものである。本明細書に記載される態様は、EVAR処置を可能にする必要なアクセスデバイス/インスツルメントのカニュレーション及び配置に関連する、より少ない屈曲性及び疾患の低リスクが提供される。本明細書に記載される態様を使用すると、本明細書に企図される単一の穿刺(横隔膜の上のアクセス)技術を使用して「トップダウン」アクセスを達成することができるので、患者はまた、より少ない不快感及びより速い回復を有することになる。
【0031】
本明細書に記載される一態様は、第1のステント、及び主グラフト本体を含む、患者の標的血管における動脈瘤の修復のための第1のステント-グラフトシステムを提供する。第1のステント-グラフトシステムのいくつかの実施例では、ステント-グラフトシステムは、対象または患者の横隔膜の上に位置する挿入部位血管における単一の動脈穿刺または切開を通して挿入されるように構成され得る。一態様において、挿入部位血管は患者の大腿動脈の直径より小さいまたは同等の直径を有する。
【0032】
「挿入部位血管」という用語は、血管の修復のための処置(例えば、EVAR処置)の間にステント-グラフトデバイスが最初に挿入される血管を指す。
【0033】
「標的血管」という用語は、疾患または状態(例えば、大動脈瘤)に対する修復部位である血管を指す。標的血管は、腎動脈下方、傍腎動脈、腎動脈部、胸部大動脈、または腎動脈上方を含むことができるが、これらに限定されるものではない。
【0034】
「ステント」という用語は、例えば、超弾性ニチノール細ワイヤまたはチューブからレーザー切断したもの(または、例えば、チタン、またはクロムコバルト合金などの任意の他の適切な材料)からなるメッシュまたは格子チューブ構造を指し、拘束された状態で血管に挿入でき、非拘束の状態で展開させることができる。
【0035】
「拘束された」という用語は、ステント-グラフトシステムの完全に拡張されたまたは「非拘束の」構成と比較してその直径が最小またはより小さいような、ステント-グラフトシステムの構成またはステント-グラフトシステムのコンポーネントを指す。ステント-グラフトシステムの拘束された構成は、横隔膜の上に位置する挿入部位血管に導入されるのに十分小さい直径であること、及び/または、患者の大腿動脈の直径より小さいまたは同等である直径を有することであり得る。
【0036】
第1のステント-グラフトシステムのいくつかの実施形態では、標的血管は、腎動脈下方、傍腎動脈、腎動脈部、胸部大動脈、または腎動脈上方からなる群から選択される。
【0037】
第1のステント-グラフトシステムのいくつかの実施形態では、第1のステント及び主グラフト本体は、実質的に終端が接続された構成である。第1のステント-グラフトシステムのいくつかの実施形態において、挿入部位血管は患者の横隔膜の上に位置する。第1のステント-グラフトデバイスの別の実施形態では、拘束された構成におけるステント-グラフトシステムの直径は約13~約22フレンチとし得る。別の実施形態では、拘束された構成におけるステント-グラフトシステムの直径は約6フレンチ~約13フレンチであり得る。
【0038】
第1のステント-グラフトデバイスのさらなる実施態様では、主グラフト本体は、高密度化の材料を含む。いくつかの実施態様では、第1のステントは、高密度化の材料(例えば、ポリテトラフルオロエチレンまたはePTFEの少なくとも1層または2層)内に封入される。いくつかの実施例では、ePTFEは、実質的に孔を有さない。
【0039】
「高密度化の材料」という用語は、改質されていない同じ材料と比較して密度を増加させるように改質された材料(例えば、ePTFE)を指す。例えば、高密度化の材料は、少なくとも5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、または95パーセントの増加した密度を有し得る。一例として、ePTFEは、機械的な圧縮力の適用によって高密度化されても良い。
【0040】
高密度化の材料は、非高密度化の材料と同じかそれ以上の引張強度を有し、高密度化されていない材料よりも薄くすることができる。本明細書に記載されるように、高密度化の材料は、患者または対象の横隔膜の上の挿入部位血管の場所または同じ患者または対象からの大腿動脈の直径より小さいまたは同等の直径の血管への挿入に適した直径に圧縮され得るグラフト材料を作るために使用することができる。
【0041】
いくつかの実施例では、挿入部位血管(すなわち、患者の横隔膜の上に位置する血管、小血管)は、上腕動脈、橈骨動脈、尺骨動脈、腋窩動脈、及び頸動脈からなる群から選択される。いくつかの実施例では、挿入部位血管は、腋窩動脈である。一態様において、挿入部位血管または小血管の直径は、2~8mmである。別の実施例では、挿入部位血管は鎖骨下動脈である。
【0042】
代替の実施形態では、ガイドワイヤを、対象または患者の横隔膜の上に位置する挿入部位血管に導入して、腎動脈下方などの標的血管に導入し得る。カテーテル及び/またはワイヤを、枝血管(例えば、上腸間膜動脈、腹腔動脈、腎動脈、及び下腸間膜動脈)に挿入することができ、開窓型グラフトを、各ワイヤが柵状突起から出て枝の1つに入る状態でカテーテル及び/またはワイヤ上で、大動脈などの標的血管に前進させることができる。
【0043】
あるいは、開窓型グラフトは、開窓型グラフトの開窓を通るワイヤがない状態で、対象または患者の横隔膜の上に位置する挿入部位血管に、腎動脈下方などの標的血管に導入することができる。分岐血管は、任意にカテーテル連結することができる。
【0044】
別の代替として、デバイスが装填された時にシース内の各開窓からワイヤが突出するが、本体デバイスが展開される後まで分岐血管がカテーテル連結しないことがある。
【0045】
第1ステント-グラフトシステムのいくつかの実施形態は、複数のレセプタクルを受容するように適合された複数のコネクタを含む連結リングを含む。連結リングは、主グラフト本体内に配置され得る。複数のコネクタ及び複数のレセプタクルは、ステントと一体化することができる(例えば、所定の位置にスポット溶接される)。
【0046】
第1ステント-グラフトシステムのさらなる実施形態は、複数のコネクタ及び複数のレセプタクルの周囲に配置された複数の縫合糸を含む。連結リングの拡張角度は約90度より大きくすることが可能である。
【0047】
「連結リング」という用語は、第1のステントに連結するように適合され、主グラフト本体内に配置される構造(例えば、リング)を指す。連結リングは、環状リングとも呼ばれ得る。連結リングは、第1のステントを主グラフト本体に連結し、一次封止を提供し、第1のステント及び主グラフト本体が実質的に終端が接続された構成にある細いステント-グラフトデバイスを形成するのを助ける。
【0048】
「コネクタ」という用語は、例えば、2つのコンポーネントを連結するために適合された構造を指す。例えば、連結リング上に配置されたコネクタ(例えば、ジグザグまたは他の構造)は、例えば、図3A~3Dに示すように、第1のステント上に配置されたレセプタクル上の孔に嵌まるように適合させることが可能である。
【0049】
第1ステントと連結リングとの間の軸方向負荷力の大部分を支えるために、任意の適切なコネクタ-レセプタクルシステムが採用され得ることが理解されるであろう。例えば、コネクタは、フック、半円、三角形等の形状とすることができ、レセプタクルは、フック、半円、三角形等を受け入れるように適合された穴とすることができる。必要に応じて、例示的なコネクタ-レセプタクルシステムの代わりに、またはそれに加えて、安定性を提供するために、任意の縫合糸を提供し得る。
【0050】
「終端が接続された構成」という用語は、ステントグラフトのコンポーネントをその縁で別のコンポーネントに連結することを指す(例えば、横に並べて、または終端から終端に)。終端が接続された構成は、ステント-グラフトイントロデューサシースにおけるコンポーネントの重なり(すなわち、同軸)を回避することができる。例えば、厚くて強いトップステントは、ePTFEグラフトまたは高密度化ePTFEグラフトと組み合わされることができる。一態様では、コンポーネントは、同軸ではなく直列に配置される。コンポーネントの同軸構成は、より大きな直径の導入器シース、血管における大きな穴、及び潜在的にステント-グラフトを導入するためのより大きな血管を必要とする。本明細書に記載されるように、この例示的な構成は、例えば、横隔膜の上に位置する動脈及び/または小動脈において使用され得る、より小さい直径のステント-グラフトデバイスをもたらす。この態様において、第1のステントは、主グラフト本体と重なる向きではないため、より厚く、より堅牢であり得る。
【0051】
本明細書に記載のステント-グラフトシステム及びデバイスに関する「終端が接続された構成」という用語は、主グラフト本体に配置された連結リングの壁厚が、第1のステントとグラフトとの間の連結部における壁厚よりも小さい状況、または、いくつかの実施例では、複数のコネクタが複数のレセプタクルを受容した際の連結リングを指すこともできる。
【0052】
第1のステント-グラフトシステムのいくつかの実施形態において、連結リング上の複数のコネクタと第1のステント上の複数のレセプタクルとの間の連結は、デバイスの全体の直径を増大させることなく安定した構成を提供する。さらに、この構成は、約90度より大きい連結リングの拡張角度をサポートする。例えば、この構成は、送達シースにおける圧着時に非常に安定であり、連結リングの安定化を可能にする(終端が接続された取り付けのため)。連結リングがトップステントによって安定化されていない場合、圧着時にそれほど安定せず、潜在的に損傷を引き起こし、及び/または予期されるまたは所望の圧着直径を達成しないであろう。
【0053】
第1のステント-グラフトシステムの別の実施形態では、主グラフト本体は第1の四肢ゲート及び第2の四肢ゲートを含む2つの枝に分岐する。この態様において、第1の四肢ゲート及び第2の四肢ゲートは、例えば、図1に示すように、同側腸骨動脈18に配置されるように適合させることができる。別の態様では、主グラフト分岐部は分岐せず、胸部大動脈または腸骨分岐部まで延びない大動脈以外の血管または腎内動脈瘤、または大動脈-一腸骨チューブエンドグラフトを大動脈及び一腸骨動脈に配置するように構成することができる。
【0054】
第1のステント-グラフトシステムの実施形態は、少なくとも第1の腸骨脚コンポーネントをさらに含む。ステント-グラフトシステムは、少なくとも第2の腸骨脚コンポーネントを含み得る。腸骨脚コンポーネントは、例えば、横隔膜または小動脈の上に位置する挿入部位血管を通り、主グラフト本体を通り、非拘束の状態で展開できる第1の四肢ゲートまたは第2の四肢ゲートのいずれかを通って同側または対側の腸骨動脈のいずれかに拘束された状態で位置決めされるように適合させることができる。
【0055】
第1のステント-グラフトシステムのいくつかの実施形態において、第1の腸骨脚コンポーネントの第1の四肢ゲートとの重なりは、第2の腸骨コンポーネントの第2の四肢ゲートとの重なりよりも直径が大きくない。
【0056】
第1のステント-グラフトシステムの別の実施形態は、第1の腸骨脚コンポーネント及び第2の腸骨脚コンポーネントのうちの1つまたはそれ以上を血管に固定するために、第1の腸骨脚コンポーネント及び第2の腸骨脚コンポーネントのうちの1つまたはそれ以上に配置されたバーブを含む。
【0057】
第1のステント-グラフトシステムのいくつかの実施形態において、第1の腸骨コンポーネント及び第2の腸骨コンポーネントは、高密度化した材料(例えば、高密度化したePTFE)を含む。
【0058】
第1のステント-グラフトシステムのさらに別の実施形態は、第1の四肢ゲートの尾側(すなわち、本体の尾部または底部に最も近い端部)端部に連結された第2のステントと、第2の四肢ゲートの尾側端部に連結された第3のステントとを含む。この実施形態は、尾側(すなわち、身体の末端または後部に向かう)位置決めシステムに連結するために、主グラフト本体、第2ステント、及び第3ステントの各々の尾側端部に配置されたテザーをさらに含み得る。
【0059】
「尾側位置決めシステム」という用語は、ステント-グラフトシステムの尾側端部と係合して、オペレータ(すなわち、医師)が標的血管内のステント-グラフトシステムの位置を制御及び調整できるように構成されたツール(例えば、カテーテル、ガイドワイヤ、トリガーまたはテザーワイヤ等)を指すことができる。
【0060】
第1のステント-グラフトシステムのさらに別の実施形態は、複数のコネクタ及び複数のレセプタクルの周りに配置された複数の縫合糸をさらに含む。縫合糸は代替的または付加的な場所に配置され得ることが理解される。
【0061】
第1のステント-グラフトシステムは、第1の腸骨脚コンポーネント及び第2の腸骨脚コンポーネントのうちの1つまたはそれ以上を血管に固定するために、第1の腸骨脚コンポーネント及び第2の腸骨脚コンポーネントのうちの1つまたはそれ以上に配置されたバーブをさらに含み得る。
【0062】
「バーブ」という用語は、血管内のステント-グラフトデバイスまたはステント-グラフトデバイスのコンポーネントを互いに取り付け、関連付け、または固定するように構成された鋭利な突起を指す。この態様において、複数のバーブは、所望の場所からのステント-グラフトデバイスの意図しない移動を防止するように機能し得る。バーブは設計と一体である(すなわち、別々に作られてから取り付けられるのではない)か、または所定の位置にスポット溶接されることが可能である。複数のバーブは、互いに対して交互に異なる高さを有するように構成され得る。別の態様では、複数のバーブの各々は、互いに対して異なる方向に配向させることができる。
【0063】
第1のステント-グラフトシステムの別の実施形態では、第1の腸骨脚コンポーネントの第1の四肢ゲートとの重なり、及び第2の腸骨コンポーネントの第2の四肢ゲートとの重なりは、直径でより大きくなることはない(例えば、過大とならない)。
【0064】
任意のテザーは、例えば、位置決めシステム(例えば、ガイドワイヤ、カテーテル、トリガーワイヤ)による操作を可能にし、血管内でステント-グラフトデバイスを操縦し、所望の場所にステント-グラフトシステムをより正確に位置決めすることを補助するために用いることが可能である。この態様において、テザーは、血管を通してステント-グラフトシステムを押したり引いたりするために、位置決めシステムに取り外し可能に取り付けられ得る。
【0065】
「テザー」という用語は、例えば、位置決めシステムの一部に取り外し可能に取り付け、ステント-グラフトデバイスの位置決め及び展開を支援するために使用できるループ(複数可)または類似の構造を指す。テザーは、任意の適切な縫合材料または細い金属ワイヤから作ることができ、剛性または可撓性であり得る。
【0066】
第1のステント-グラフトデバイスのいくつかの実施形態において、ステント-グラフトシステムは、主グラフト本体の内部に配置された任意の環状要素、及び環状要素上の複数の場所に関連付けられた複数の連結部材をさらに含む。この態様において、第1のステントは、第1の軸方向ステント端部及び第2の軸方向ステント端部を有し、本体グラフトは、第1の軸方向グラフト端部及び第2の軸方向グラフト端部を有する。環状要素は、任意の適切な材料で作ることができ、または、グラフトに一体化させることができる。環状要素は、連続的または不連続的であり得、グラフトの円周またはグラフトの円周の一部の周囲に配置され得る。
【0067】
環状要素は、第1の軸方向グラフト端部に実質的に隣接する位置に配置することができる。複数の連結部材は、第1の軸方向ステント端部に連結し、第1のステントと主グラフト本体との間の実質的に終端が接続された軸方向連結を維持するように構成し得る。環状要素は、任意の適切な材料(例えば、グラフト材料、生体適合性金属、ePTFE)で作られ得、グラフト材料と比較して異なる特性(例えば、異なる密度)を有する別個の環状要素であり得る。
【0068】
一態様では、連結部材は、環状要素を必要とせずに、主グラフト本体内部の場所に取り付けることができる。これらの場所は、主グラフト本体内部の周りの円周の様態を含む任意の所望のパターンで配置し得る。
【0069】
「連結するように構成された連結部材」という用語は、実質的に終端が接続された配置でステント端と係合し、それによって保持される連結部材の機構を指す。第1の軸方向ステント端部に連結するように構成された連結部材の例を、例えば、図3A、3B、3C、及び3Dに示す。
【0070】
いくつかの実施例では、複数のコネクタは、第1の軸方向グラフト端部を越えて突出する。いくつかの実施例において、複数のコネクタは、周方向に間隔を空けて配置される。さらなる態様において、複数のコネクタは湾曲する。さらに別の態様では、複数のコネクタの各々は、別のコネクタと(例えば、長さ、曲率、材料が)異なることができる。
【0071】
1つの態様において、実質的に終端が接続された構成は、第1のステントと第1の軸方向グラフト端との間のギャップを含む。いくつかの実施態様では、隙間は0~2mmである。他の実施態様では、複数のコネクタのうちの少なくとも1つは、ギャップにわたって延長する。
【0072】
第1のステント-グラフトデバイスの実施形態は、腎動脈上方に配置され拡張されるように適合されたセンタリングデバイスを更に含み、センタリングデバイスが拡張された後に主グラフト本体が腎動脈下方内に再位置決めされ得る。
【0073】
「センタリングデバイス」という用語は、別のデバイス(例えば、ステント-グラフトデバイス)がセンタリングデバイスを基準にして血管の別の部分でセンタリングされることを可能にするために、動脈または血管(例えば、腎動脈上方)において取り外し可能または一時的に展開及び拡張できる構造を指す。
【0074】
1つの態様において、センタリングデバイスは、複数のアームを有するデバイスとすることができ、各アームは血管の壁に接触することができる半径方向に拡張することができる。別の態様では、センタリングデバイスは、バルーンであり得、バルーンは、拡張され、血管の壁に接触し得る。
【0075】
センタリングデバイス(例えば、バスケット、バルーン)は、例えば、センタリングデバイスを血管の壁と係合するように拡張することによって、オペレータ(例えば、医師)がステント-グラフトデバイスを標的血管内で位置決めするのを助けるために使用することができる。オペレータは、センタリングデバイスが血管内で拡張された時に、センタリングデバイスの中点を基準にして第2のデバイス(例えば、ステント-グラフトデバイス)の位置を調整することができる。
【0076】
センタリングデバイスは、例えば、血管の解剖学的構造に曲がりまたは角度がある状況において使用することができる(例えば、腎動脈上方の角化、例えば、Mathlouthi et al.,Clinical research study Abdominal aortic and iliac artery aneurysms, Impact of suprarenal neck angulation on endovascular aneurysm repair outcomes,Journal of Vascular Surgery,Volume 71,ISSUE 6,P1900-1906,June 01,2020を参照)。この状況において、センタリングデバイスは、センタリングデバイスを基準として第2のデバイスをセンタリングすることをさらに助けるために、テザー、縫合糸、または他の連結によって第2のデバイスに連結され得る。
【0077】
いくつかの実施例では、センタリングデバイスは、センタリングデバイスの対称的な拡張のために中心部材を囲むことができ、またはセンタリングデバイスの偏心拡張を可能にするために中心部材の円周上の1点のみに取り付けられることが可能である。この実施例では、センタリングデバイスは、大動脈の角化の影響を打ち消すために、中心部材を大動脈の一方の側から押し退けるように構成される。
【0078】
いくつかの実施例では、センタリングデバイスは、センタリングバスケット及びセンタリングバルーンからなる群から選択される。いくつかの実施例において、センタリングバスケットは膨張させることができ、センタリングバスケットの少なくとも一部が、腎動脈上方の動脈壁と係合する。いくつかの実施例において、センタリングバルーンは膨張させることができ、センタリングバルーンの少なくとも一部は、腎動脈上方の動脈壁と係合する。
【0079】
さらなる態様は、横隔膜の上の挿入部位血管を穿刺し、挿入部位血管に通路を形成することによって、患者の腹部大動脈瘤を修復することを含む、第1の方法を提供する。次に、ステント-グラフトシステムを挿入部位血管の通路に挿入することができる。ステント-グラフトシステムは、主グラフト本体と、第1の四肢ゲートと、及び第2の四肢ゲートとを含むことができる。ステント-グラフトシステムの主グラフト本体は、患者の標的血管(例えば、腎動脈下方、傍腎動脈、腎動脈部、胸部大動脈、または腎動脈上方)内に位置決めされて展開され得る。
【0080】
本明細書に記載の第1の方法は、例えば、横隔膜の上に位置する挿入部位血管に直管状ステント-グラフトを挿入するために使用し得る。いくつかの実施例では、挿入部位血管は、例えば、より小さい血管(すなわち、同じ患者の大腿動脈よりも直径が小さいかまたは同じである血管)、動脈(例えば、総大腿動脈、浅大腿動脈、膝窩動脈、前脛骨動脈、後脛骨動脈、腓骨動脈、腋窩動脈、及び腸骨動脈)及び静脈(例えば、上大静脈、下大静脈、大腿静脈、及び膝窩静脈、橈骨静脈、頭静脈、橈側皮静脈、及び尺側皮静脈)である。いくつかの実施例では、挿入部位血管は鎖骨下動脈である。いくつかの実施態様において、本明細書に記載の方法は、血液透析グラフト及び/または他の人工血管グラフトを挿入するために使用することができる。
【0081】
第1の方法のいくつかの実施例では、ステント-グラフトシステムは、対象または患者の横隔膜の上に位置する単一の動脈穿刺または切開を通して挿入されるように適合される。このようなステント-グラフトシステムの使用により、複数の動脈穿刺または切開を必要とする先行システムの欠点が回避される。第1の方法のいくつかの実施例において、第1のステント及び主グラフト本体は、実質的に終端が接続された構成である。
【0082】
本明細書に記載のステント-グラフトシステムの挿入部位血管は、腋窩動脈の第2部または近位第3部とすることができる。この挿入部位は、肩甲骨下動脈の起始部に近接した(例えば、心臓に近い)腋窩動脈である。この挿入部位の使用は、例えば、腕神経叢の枝を損傷することを回避することができる。
【0083】
第1の方法の別の実施例では、大腿動脈はステント-グラフトデバイスの挿入に使用されない。その代わりに、ステント-グラフトデバイスは、脚部に位置しない横隔膜の上に位置する挿入部位血管(例えば、本明細書に記載の「小動脈」)における単一の穿刺または切開を介して挿入し得る。このような処置は、患者がすぐに歩くことができるので、大腿動脈の穿刺または切開に伴う回復時間及び不快感を回避することができる。
【0084】
さらに、上述のように、ステント-グラフトデバイスは、例えば腹部大動脈瘤の修復のために、大動脈内の「トップダウン」方向から両脚へとより容易に調整及び位置決めすることが可能である。従って、処置に要する時間が短く、ミスが起こりにくく、患者に痛みの少ない短い回復期間を提供することができる。
【0085】
第1の方法のいくつかの実施例では、単一の動脈穿刺または切開が、小動脈(例えば、同じ患者からの大腿動脈より直径が小さいまたは同等の動脈)において行われる。小動脈は、横隔膜の上方に位置することができる。動脈は、上腕動脈、橈骨動脈、尺骨動脈、大腿動脈、腸骨動脈、腋窩動脈、及び頸動脈からなる群から選択することができる。さらに別の態様では、動脈は上腕動脈である。さらなる態様において、動脈は、大腿動脈または鎖骨下動脈である。別の態様では、動脈は、腋窩動脈の第2部または近位第3部である。
【0086】
さらに別の態様では、ステント-グラフトシステムは、腎動脈下位の腹部大動脈瘤を治療するために腎動脈上位の腹部大動脈に展開することができる。例えば、腎動脈、腹腔動脈、及び上腸間膜動脈に対して側部グラフト分岐を提供することができる。
【0087】
「位置決めする」という用語は、任意の適切な機構(例えば、位置決めシステム)を用いて、ステント-グラフトデバイスを(例えば、拘束された構成または部分的に拘束された構成で)血管を通って血管内の所望の場所(例えば、軸方向の位置)まで移動させることを指す。位置決めシステムは、ガイドワイヤ、ガイドワイヤ上のシース、1つまたはそれ以上のカテーテル、トリガーワイヤ、及びステント-グラフトデバイスを押し、引き、及び展開することができる他のコンポーネントを含む。医師は、適宜配置された放射線不透過性マーカーを介して、血管造影、透視、または他の視覚化システムにより、位置決めシステム及びステント-グラフトデバイスの進行状況を視覚化することができる。
【0088】
第1の方法のいくつかの実施例では、主グラフト本体ステント-グラフトシステムは、最低腎動脈より下方に、対側四肢ゲートにアクセスするように適合された向きで位置決めされ得る。マーカー(例えば、放射線不透過性マーカー)が、透視誘導下で対側ゲートの方向付けのために使用され得る。別の態様では、デバイスは腎動脈の上に展開され得る。
【0089】
第1の方法のいくつかの実施例では、ステント-グラフトシステムの主グラフト本体は、腎動脈下方内に展開され得、ステント-グラフトシステムの主グラフト本体は、腎動脈下方の動脈壁に対して実質的に血液封止である。「展開された」または「展開する」という用語は、ステントグラフトデバイスが拘束された構成から、動脈瘤または他の状態を治療することができる非拘束または開放された構成に変形させることを意味する。
【0090】
ステント-グラフトシステムはまた、第1の腸骨脚コンポーネント及び第2の腸骨脚コンポーネントを含み得る。第1の腸骨脚コンポーネントは、腸骨動脈の第1の枝に位置決めされ、展開され得る。次に、第2の腸骨脚コンポーネントは、腸骨動脈の第2の枝に位置決めされ、展開され得る。この態様において、第1及び第2の腸骨脚コンポーネントは、主グラフト本体に対して(例えば、グラフト分岐を介して)実質的に血液封止であり得る。
【0091】
第1の腸骨脚コンポーネントは、腸骨動脈の第1の枝に対して実質的に血液封止であり得る。第2の腸骨脚コンポーネントはまた、腸骨動脈の第2の枝に対して実質的に血液封止であり得る。
【0092】
「実質的に血液封止」という用語は、エンドリーク(例えば、EVAR処置後に動脈瘤嚢に戻る血液漏れ)を制限(例えば、95、90、85、または80%)または排除することを意味する。
【0093】
第1の方法の別の実施例では、主グラフト本体は、ガイドワイヤを用いて拘束された状態で標的血管(例えば、腎動脈下方、傍腎動脈、腎動脈部、胸部大動脈、または腎動脈上方)内に位置決めされる。主グラフト本体は、主グラフト本体の鞘を部分的に外すことによって、標的血管(例えば、腎動脈下方、傍腎動脈、腎動脈部、胸部大動脈、または腎動脈上方)内にさらに位置決めされ得る。一態様では、主グラフト本体は、主グラフト本体が腎動脈下方に展開された後、非拘束の状態である。
【0094】
第1の方法のいくつかの実施例では、封止ステントを主グラフト本体に展開することができる。「封止ステント」という用語は、エンドリークを制限または防止するように構成されたステントを指す。
【0095】
第1の腸骨脚コンポーネントは、ガイドワイヤを用いて、主グラフト本体を通して拘束された状態で腸骨動脈の第1の枝内に位置決めすることができる。また、第1の腸骨脚コンポーネントは、第1の腸骨脚コンポーネントの鞘を部分的に外すことによって、腸骨動脈の第1の枝にさらに位置決めすることができる。この態様において、第1の腸骨脚コンポーネントは、例えば、完全に鞘を外し、腸骨動脈の第1の枝に配置された後、拘束されない。
【0096】
第2の腸骨脚コンポーネントは、ガイドワイヤを用いて、主グラフト本体を通して拘束された状態で腸骨動脈の第2の枝内に位置決めすることができる。また、第2の腸骨脚コンポーネントは、第2の腸骨脚コンポーネントの鞘を部分的に外すことによって、腸骨動脈の第2の枝にさらに位置決めすることができる。この態様において、第2の腸骨脚コンポーネントは、例えば、完全に鞘を外し、腸骨動脈の第2の枝に配置された後、拘束されない。
【0097】
第1の方法のいくつかの実施例では、ステント-グラフトシステムは、第1のステント及び連結リングを更に含む。第1のステントは複数のレセプタクルを有することができ、連結リングは複数のレセプタクルを受容するように適合された複数のコネクタを有することができる。この態様において、連結リングは、主グラフト本体に配置され得、第1のステント及び主グラフト本体は、実質的に終端が接続された構成である。
【0098】
第1の方法のいくつかの実施例では、任意の環状要素が本体グラフトの内部に配置され、複数の連結部材が環状要素上の複数の場所に関連付けられる。この態様において、第1のステントは、第1の軸方向ステント端部と第2の軸方向ステント端部とを有し、本体グラフトは、第1の軸方向グラフト端部と第2の軸方向グラフト端部とを有する。環状要素は、第1の軸方向グラフト端部に実質的に隣接する位置に配置され得る。環状要素は、任意の適切な材料で作ることができ、または、グラフトに一体化させることができる。環状要素は、連続的または不連続的であり得、グラフトの円周またはグラフトの円周の一部の周囲に配置され得る。
【0099】
環状要素は、第1の軸方向グラフト端部に実質的に隣接する位置に配置することができる。複数の連結部材は、第1の軸方向ステント端部に連結して、第1のステントと主グラフト本体との間の実質的に終端が接続された軸方向連結を維持するように構成し得る。環状要素は、任意の適切な材料(例えば、グラフト材料、生体適合性金属、ePTFE)で作られ得、グラフト材料と比較して異なる特性(例えば、異なる密度)を有する分離した環状要素であり得る。
【0100】
第1の方法のさらなる実施例では、連結部材は、環状要素を必要とせずに、主グラフト本体内部の場所に取り付けることができる。これらの場所は、主グラフト本体内部の周りの円周の様態を含む任意の所望のパターンで配置することができる。
【0101】
連結部材は、第1の軸方向ステント端部に連結して、第1のステントと主グラフト本体との間の実質的に終端が接続された軸方向連結を維持するように構成され得る。
【0102】
第1の方法のいくつかの実施例では、複数のコネクタは、第1の軸方向グラフト端部を越えて突出する。いくつかの実施例では、複数のコネクタ及び複数のレセプタクルは、円周方向に間隔を空けて配置される。
【0103】
実質的に終端が接続された構成は、第1のステントとグラフトとの間のギャップ(例えば、0より大きい~2mmまで)を含み得る。いくつかの実施例では、複数のコネクタは、ギャップにわたって延長する。
【0104】
更なる態様は、患者または対象の標的血管(例えば、腎動脈下方、傍腎動脈、腎動脈部、胸部大動脈、または腎動脈上方)内にエンドグラフトを展開するためのエンドグラフト展開システムを有する第2のステント-グラフトシステムを提供する。エンドグラフト展開システムは、エンドグラフトを含む中央内側部材と、尾側端部及びより頭側部を有するテザーワイヤを含むキャリアチューブと、を有する外側チューブと、中央内側部材を囲むトップステントであって、トップステントは複数のレセプタクルを有する複数のフックを含む、トップステントと、及び複数の縫合糸であって、少なくとも第1の縫合糸の第1の端部は拘束された構成でトップステントを保持するために複数のレセプタクルのうちの1つを通して配置され、第1の縫合糸の第2の端部は、テザーワイヤのより頭側部に貼り付けられる、複数の縫合糸と、を含む。少なくとも第1の縫合糸の第1の端部は、例えば、テザーワイヤに取り付けられることができる。テザーワイヤの動きは、複数のレセプタクルからの複数の縫合糸の除去を制御し、トップステントを拘束された構成から非拘束の構成に解放し、対象の血管から複数の縫合糸を除去し得る。いくつかの実施例では、縫合糸を患者の中に残したまま、テザーワイヤを除去しても良い。
【0105】
本明細書に記載される態様は、ステント-グラフトシステムの展開後に、対象の血管から縫合糸を実質的に除去するステント-グラフトシステム及び方法を提供する。いくつかの実施例では、少なくとも第1の縫合糸の第1の端部は、ループに形成され、ループは、テザーワイヤの尾側端部の周りに配置される。
【0106】
縫合糸は、EVARを含む多くの外科的処置にとって重要または必須の構成要素となり得る。しかしながら、心臓血管外科処置後の縫合糸または縫合糸の一部の存在は、塞栓症、血管治癒への悪影響、及び冠動脈の損傷を含む重大な副作用を引き起こす可能性がある。例えば、Lee et al.Suture knot embolism-a rare complication of percutaneous arterial closure device,Cardiovascular Pathology Volume 19,Issue 1,January-February 2010, Pages 63-64、Osama Hazim Al Hayini,Effect of different suture materials on healing of blood vessels in dogs,Iraqi Journal of Veterinary Sciences 26:77-82(January 2012)、Annuloplasty Rings 510(k)Submissions-Final Guidance for Industry and FDA(Food and Drug Administration)Staff,US FDA Guidance January 31,2001.を参照。
【0107】
いくつかの実施例において、エンドグラフト展開システムは、少なくとも第1の縫合糸の第1の端部の下に配置された棚部を、少なくとも第1の縫合糸の第1の端部を棚部の上に最初に保持するために、さらに含む。いくつかの実施例では、棚部は、中央内側部材を受容するための第1の開口部をさらに含む。エンドグラフト展開システムは、キャリアチューブを受容するための第2の開口部を含み得る。エンドグラフト展開システムは、複数の縫合糸のうちの少なくとも1つを受容するための第3の開口部を含み得る。いくつかの実施例では、第3の開口部は、3つの部分的開口部を含む。
【0108】
本明細書に記載の態様は、大腿動脈を穿刺して大腿動脈に通路を形成すること、エンドグラフトを含む中央内側部材を含む外側チューブと、テザーワイヤを含むキャリアチューブとを有するステント-グラフト展開システムを用いて大腿動脈の通路にステント-グラフトを挿入すること、を含む、第2の方法を提供する。
【0109】
この態様において、テザーワイヤは、尾側端部及びより頭側部を有し得る。ステント-グラフト展開システムは、中央内側部材を取り囲むトップステントをさらに含むことができ、トップステントは、複数のレセプタクルを有する複数のフック及び複数の縫合糸を含む。この態様では、少なくとも第1の縫合糸の第1の端部は、拘束された構成でトップステントを保持するために複数のレセプタクルのうちの1つを通して配置され、第1の縫合糸の第2の端部は、テザーワイヤのより頭側部に貼り付けられる。少なくとも第1の縫合糸の第1の端部は、例えば、テザーワイヤに取り付けられ得る。
【0110】
テザーワイヤは、複数のレセプタクルから複数の縫合糸を取り除き、トップステントを拘束された状態から非拘束の状態に解放し、複数の縫合糸を対象の血管から取り除くために移動させることができる。
【0111】
少なくとも第1の縫合糸の第1の端部は、ループに形成することができ、そのループは、テザーワイヤの尾側端部の周りに配置することができる。
【0112】
ステント-グラフトデバイスの第1の四肢ゲートは、腸骨動脈の第1の枝に位置付けられ、展開され得、ステント-グラフトデバイスの第1の四肢ゲートは、腸骨動脈の第1の枝の壁及び主グラフト本体に対して、実質的に血液封止である。
【0113】
ステント-グラフトデバイスの第2の四肢ゲートは、腸骨動脈の第2の枝に位置決め及び展開することができる。本明細書に記載するように、腸骨動脈の第2の枝における第2の四肢ゲートの位置決め及び展開は、対応する大腿動脈における第2の穿刺または切開を必要とすることなく達成することが可能である。この態様において、ステント-グラフトデバイスは、腸骨動脈の第2枝の壁に対して実質的に血液封止であり得る。
【0114】
本明細書に記載される態様は、大腿動脈を穿刺しまたは切開し、大腿動脈に通路を形成することによって患者の腹部大動脈瘤を修復する代替方法をも提供する。この態様では、ステント-グラフトシステム(例えば、主グラフト本体、第1の四肢ゲート及び第2の四肢ゲート)を大腿動脈の通路に挿入することができる。ステント-グラフトシステムの主グラフト本体は、患者の腎動脈下方に位置付けられ、展開され得る。
【0115】
ステント-グラフトシステムの主グラフト本体は、腎動脈下方の動脈壁に対して実質的に血液封止であり得る。この態様において、ステント-グラフトシステムは、第1の腸骨脚コンポーネント及び第2の腸骨脚コンポーネントを有し得る。第1の腸骨脚コンポーネントは、腸骨動脈の第1の枝に位置付けられ、展開され得、第2の腸骨脚コンポーネントは、腸骨動脈の第2の枝及び本体グラフトに位置付けられ得る。
【0116】
この態様において、第1の腸骨脚コンポーネントは、腸骨動脈の第1の枝に対して実質的に血液封止であることができ、第2の腸骨脚コンポーネントは、腸骨動脈の第2の枝に対して実質的に血液封止であり得る。
【0117】
別の態様では、対側四肢ゲート(すなわち、第2の四肢ゲートの出口)は、操縦可能なガイドワイヤ及び操縦可能なカテーテルを用いて、患者または対象の横隔膜の上に位置する挿入部位血管(例えば、腋窩動脈)からのアクセスを用いて「トップダウン」アプローチからカニュレーションすることが可能である。あるいは、カテーテルとガイドワイヤを組み合わせて使用する代わりに、ノーズコーン付近に曲げ部を有するガイドワイヤを使用しても良い。実施例によっては、逆行性大腿動脈アプローチを使用することができる。
【0118】
別の態様では、主グラフト本体は、ガイドワイヤを用いて拘束された状態で腎動脈下方内に位置決めされる。別の態様では、主グラフト本体は、さらに、主グラフト本体を部分的に鞘から外すことによって、腎動脈下方内に位置決めされる。さらに別の態様では、主グラフト本体は、主グラフト本体が腎動脈下方に展開された後、非拘束の状態である。
【0119】
態様は、大腿動脈を穿刺し、大腿動脈に通路を形成することによって、患者の腹部大動脈瘤を修復するさらなる代替方法を提供する。ステント-グラフトデバイスは、大腿動脈の通路に挿入され得る。この態様において、ステント-グラフトデバイスは、主グラフト本体と、第1の四肢ゲートと、第2の四肢ゲートとを含み得る。ステント-グラフトデバイスの主グラフト本体は、患者の標的血管(例えば、腎動脈下方、傍腎動脈、腎動脈部、胸部大動脈、または腎動脈上方)内に位置付けられ、展開され得る。この態様において、ステント-グラフトデバイスの主グラフト本体は、腎動脈下方の動脈壁に対して実質的に血液封止である。ステント-グラフトデバイスの主グラフト本体は、標的血管の壁に対して実質的に血液封止を有し得る。別の態様では、1つの大腿動脈のみが穿刺される。
【0120】
本明細書に記載される態様は、主グラフト本体内に少なくとも部分的に配置された封止ステントを含む主グラフト本体を有する標的血管内の動脈瘤を修復するための第3のステント-グラフトシステムを提供する。この態様において、ステント-グラフトシステムは、患者の横隔膜の上に位置する挿入部位血管における単一の動脈穿刺または切開を通して挿入されるように構成され得る。いくつかの実施態様では、拘束された構成におけるステント-グラフトシステムの直径は、小さな動脈(例えば、同じ患者からの大腿動脈よりも直径が小さいまたは同等の動脈)内に挿入されるように適合される。いくつかの実施例では、拘束された構成におけるステント-グラフトシステムの直径は、約13~約22フレンチまたは6~約13フレンチである。
【0121】
1つの態様において、封止ステントは、複数のストラットを有する。複数のストラットは、約0.013~0.016インチのストラット幅を有し得る。いくつかの実施例において、封止ステントは複数のストラットを有し、複数のストラットは約0.016~約0.020インチのストラット壁厚を有し得る。
【0122】
いくつかの実施例において、主グラフト本体は、第1の軸方向端部及び第2の軸方向端部を有する。封止ステントは、第1の軸方向端部に隣接して配置され得る。封止ステントは、複数のフックをさらに含み得る。
【0123】
いくつかの実施例では、複数のフックは、主グラフト本体の第1の軸方向端部を越えて延長する。いくつかの実施例では、複数のフックの各々は、放射線不透過性マーカーをさらに含む。
【0124】
さらなる態様において、複数のフックの各々は、右手の向きまたは左手の向きに配向され得る。さらに別の実施例では、複数のフックの各々の向きは、隣接するフックと異なる。いくつかの態様において、複数のフックは、腎動脈下方における主グラフト本体の再位置決めのためにループ状ワイヤによって可逆的に保持されるように適合される。
【0125】
いくつかの実施例では、ループ状ワイヤは、再捕捉シースを通して標的血管に挿入される。再捕捉シースは、約2~4フレンチとすることができる。一態様では、ステント-グラフトデバイスの再捕捉及びステント-グラフトデバイスの再位置決めは、患者または対象の横隔膜の上に位置する挿入部位血管からのみ生じ得る。
【0126】
複数のフックは、複数のフックアイレットをさらに含み得る。ループ状ワイヤは、複数のフックアイレットのうちの少なくとも1つを介して取り外し可能に挿入され得る。
【0127】
いくつかの実施例では、例えば10フレンチシースを用いて、処置を中止する必要がある状況で、ステント-グラフトデバイス(例えば、エンドグラフト)全体を再捕捉することが可能である。別の実施例では、シースは、処置中に、より大きいサイズのシースと交換され、処置全体を中止する必要がある場合に、ステント-グラフトデバイス全体を再捕捉することが可能である。
【0128】
本明細書に記載される態様は、(a)約3フレンチの第1のアクセスプロファイルで小動脈に第1のガイドワイヤを挿入すること、(b)約5フレンチの第2のアクセスプロファイルで同側腸骨動脈にカテーテルを挿入すること、(c)約10フレンチの第3のアクセスプロファイルで患者の腎動脈下方に主要グラフト本体展開システムから主要グラフト本体を展開すること、(d)主グラフト本体展開システムの内部コンポーネントを取り除き、腎動脈下方に第1のシース及び第1のガイドワイヤを残すこと、(e)第1シース及び第1ガイドワイヤを用いて同側腸骨動脈に第1の四肢ゲートを展開すること、(f)第1のガイドワイヤを同側腸骨動脈から対側腸骨動脈に移動すること、及び(g)第1シースと第1のガイドワイヤを用いて対側腸骨動脈に四肢ゲートを展開すること、による患者の腹部大動脈瘤を修復する代替方法を提供する。
【0129】
さらなる態様は、(a)患者の同側腸骨動脈の中の小動脈に第1のガイドワイヤを挿入すること、(b)本体グラフト及び第1のシースを、第1のガイドワイヤ上で腎動脈下方に挿入すること、(c)患者の腎動脈下方に本体グラフトを展開すること、(d)患者の同側腸骨動脈に第1の四肢ゲートを挿入し、第1の四肢ゲートを展開すること、(e)同側腸骨動脈から第1のガイドワイヤを除去すること、(f)第1のシースを通して4~5フレンチの方向性カテーテルを挿入すること、(g)第1のガイドワイヤで対側腸骨ゲート及び対側腸骨動脈をカニュレーションすること、(h)対側腸骨動脈に第2の四肢ゲートを挿入すること、及び(i)対側腸骨動脈に第2の四肢ゲートを展開すること、によって患者の腹部大動脈瘤を修復する代替方法を提供する。
【0130】
いくつかの実施態様では、方法は、腎動脈下方に1つまたはそれ以上の封止ステントを展開することを更に含む。封止ステントは、エンドリークを防止または最小化することができる。
【0131】
本明細書に記載の態様は、主グラフト本体送達システムを標的場所に前進させることによって、ステント-グラフトシステムの主グラフト本体を対象の腎動脈下方内に位置付けることを含み、主グラフト本体送達システムは主グラフト本体とセンタリングデバイスとを含む第3の方法を提供する。次に、主グラフト本体は、標的場所の第1の位置で腎動脈下方内に位置決めすることができ、主グラフト本体の第1の位置が標的場所の腎動脈下方内で中心にあるかどうかを決定し得る。センタリングデバイスは、主グラフト本体の第1の位置が標的位置の腎動脈下方の中心にない場合、中心にある位置の腎動脈上方に展開され得る。主グラフト本体は、主グラフト本体の第1の位置が標的における腎動脈下方において中心にいない場合、中心位置から決定される第2の位置で腎動脈下方において再位置決めされ得る。
【0132】
第3の方法のいくつかの実施例では、ステント-グラフトデバイスの挿入部位血管は、患者の横隔膜の上に位置する。
【0133】
第3の方法のいくつかの実施例では、センタリングデバイスは、センタリングバスケット及びセンタリングバルーンからなる群から選択される。いくつかの実施例では、センタリングバスケットは膨張させることができ、センタリングバスケットの少なくとも一部は、腎動脈上方の動脈壁と係合する。いくつかの実施例において、センタリングバルーンは膨張させることができ、センタリングバルーンの少なくとも一部は、腎動脈上方の動脈壁と係合する。いくつかの実施例において、センタリングバスケットまたはセンタリングバルーンの外面によって及ぼされる外向きの力は、血管の湾曲に適合するときにシースまたは他の送達デバイスによって及ぼされる長手方向の力よりも大きい。
【0134】
第3の方法のいくつかの実施例において、主グラフト本体送達システムは、主グラフト本体を構成するシースをさらに含み、シースを引っ込ませることにより、主グラフト本体を腎動脈下方に位置決めする前に、腎動脈下方に主グラフト本体を露出させる。
【0135】
第3の方法のいくつかの実施例において、シースは、センタリングデバイスをさらに含み、シースをさらに引っ込ませることにより、センタリングデバイスを展開する前に、センタリングデバイスを腎動脈上方に露出させる。
【0136】
第3の方法のいくつかの実施例において、主グラフト本体送達システムは、主グラフト本体拘束デバイスと主グラフト本体解放デバイスとをさらに含む。主グラフト本体拘束デバイスは、主グラフト本体頭側端部を拘束された構成に維持することができる。主グラフト本体解放デバイスは、主グラフト本体を非拘束の構成に解放することを誘導し得る。
【0137】
例えば、拘束デバイスは、主グラフト本体位置を制御するように適合された主グラフト本体拘束ワイヤを含むことができる。「制御するように適合された」という用語は、例えば、オペレータ(例えば、医師)が拘束ワイヤを動脈内の主グラフト本体位置を変更するように動かす(例えば、主グラフト本体を尾側または頭側方向に動かす)能力を意味する。
【0138】
第3の方法のいくつかの実施例では、主グラフト本体解放デバイスは、腎動脈下方内の主グラフト本体を解放するように適合されたスネアループを含む。「スネアループ」という用語は、ループの直径が標的の周りで縮小できるループまたは円形の形状に構成された材料(例えば、ワイヤ、縫合糸)を指す。例えば、米国特許第8,628,540号を参照。手術という文脈において、ループは、標的の周囲または標的を貫通して配置され、標的を除去または操作するために閉じられることができる(例えば、ステントに取り付けられたアイレットを介して配置されたスネアループ)。
【0139】
いくつかの実施例において、スネアループは、主グラフト本体頭側端部の拡張後に主グラフト本体頭側端部を再拘束し、腎動脈下方における主グラフト本体軸方向位置の再位置決めを制御することが可能である。この態様では、オペレータにより、主グラフト本体を腎動脈下方内に位置決め及び再位置決めすることができる。一態様では、スネアループは、対象から取り外すことができる。別の態様では、主グラフト本体の尾側端部は、トリガーワイヤによって送達システムシャフトに固定することができる。
【0140】
第3の方法のさらなる実施例では、主グラフト本体には尾側端部と頭側端部があり、第1の位置の場所は主グラフト本体の頭側端部にあるマーカー(例えば放射線不透過マーカー)の場所によって決定される。いくつかの実施態様では、マーカーの場所は、腎動脈に対して尾側である。いくつかの実施例では、本方法は、主グラフト本体拘束デバイスに主グラフト本体の尾側端部をトリガーワイヤで固定することをさらに含む。
【0141】
いくつかの実施例では、ステント-グラフトデバイスの再位置決めは、患者または対象の横隔膜の上に位置する挿入部位血管からのみ生じ得る。
【0142】
本明細書に記載される態様は、複数の位置決めレセプタクルを有するトップステントと、主グラフト本体であって、トップステント及び主グラフト本体が、実質的に終端が接続された構成であり、トップステント及び主グラフト本体が内側部材の周りに配置される、主グラフト本体と、スネアループを含むスネアチューブであって、スネアループの第1の端がスネアチューブ内に配置され、スネアループの第2の端がスネアチューブから、位置決めレセプタクルを通って、内側部材を周って、及びスネアチューブの中に配置され、スネアチューブが内側部材に平行で、スネアループの第1の端部がスネアループの第2の端部に隣接する、スネアチューブと、を有する、標的血管(例えば、腎動脈下方、傍腎動脈、腎動脈部、胸部大動脈または腎動脈上方)の動脈瘤を修復するための第4のステント-グラフトシステムを提供する。
【0143】
第4のステント-グラフトシステムの1つの実施形態では、ステント-グラフトシステムは任意に、患者の横隔膜の上に位置する挿入部位血管における単一の動脈穿刺または切開を通して挿入されるように構成することができる。このステント-グラフトシステムの一実施例を図11に示す。
【0144】
第4のステント-グラフトシステムの別の実施態様では、複数の位置決めレセプタクルの各々はアイレットをさらに含み、スネアループの第2の端部は少なくとも1つのアイレットを通して配置される。いくつかの実施例では、ステント-グラフトシステムは、内側部材の周りに配置された外側シースをさらに含む。
【0145】
挿入部位血管は、患者の大腿動脈の直径より小さいまたは同等の直径を有することができる。拘束された構成におけるステント-グラフトシステムの直径は、約13~約22フレンチまたは約6~約13フレンチであり得る。主グラフト本体は高密度化の材料から成ることができる。
【0146】
第4のステント-グラフトシステムの実施形態において、主グラフト本体は分岐し、第1の四肢ゲート及び第2の四肢ゲートをさらに含む。第1の四肢ゲートは第1の腸骨脚コンポーネントを含み得る。第2の四肢ゲートは、第2の腸骨脚コンポーネントを含み得る。トップステント及び主グラフト本体は、実質的に終端が接続された構成である。
【0147】
第4のステント-グラフトシステムのさらなる実施形態において、ステント-グラフトシステムは、第1の四肢ゲート及び第2の四肢ゲートを位置決めするためのトリガーまたはテザーワイヤをさらに含む。位置決めシステムは、第1の四肢ゲートテザー及び第2の四肢ゲートテザーを更に含み得る。第1の四肢ゲートテザー及び第2の四肢ゲートテザーは、トリガーワイヤによって保持され得る。
【0148】
第4のステント-グラフトシステムは、例えば、図12Aに図示するように、腎動脈下方内で主グラフト本体をセンタリングするためのセンタリングデバイスをさらに含み得る。
【0149】
主グラフト本体、トップステント、及びセンタリングデバイスは、当初、外側シース内に収容し得る。外側シースが主グラフト本体及びトップステントから取り外されると、トップステントが展開され、センタリングデバイスが尾側の軸方向に大動脈頸部(例えば、動脈瘤の上の非拡張領域)及び主グラフト本体内に押し込まれ得る。センタリングデバイスは、心臓に最も近い主グラフト本体の部分でグラフト内に展開することができる。次いで、センタリングデバイスを引っ込めて、スネアループを解放して、トップステントを展開させ得る。
【0150】
代替態様は、スネアループの長さを短くすることであって、トップステントが展開された構成から拘束された構成に折り畳まれ、トップステントが外側シース内に移動される、スネアループの長さを短くすること、腎動脈下方内のステント-グラフトシステムの場所を調整すること、及びスネアループを長くすることであって、トップステントが外側シースの外に移動され、トップステントが標的血管内で拘束された構成から展開された構成に拡大される、スネアループを長くすることによって、本明細書に記載される(例えば、図11)標的血管内にステント-グラフトシステムを位置決めする方法を提供する。いくつかの実施例では、ステント-グラフトデバイスの再位置決めは、患者または対象の横隔膜の上に位置する挿入部位血管からのみ生じ得る。
【0151】
腎臓上部の高い角度が最適でない展開(例えば、腎動脈から始まる角度)をもたらす状況では、スネアループを開くことができ、センタリングデバイスは、グラフトの最も頭側部まで腎動脈下方内に尾側方向に移動することが可能である。スネアループを閉じて、フックを再拘束させ、センタリングデバイスが腎動脈下方内でエンドグラフトをセンタリングすることを可能にすることができる。スネアループは、センタリングデバイスを引っ込めるために開くことができる。センタリングデバイスは、エンドグラフトの上端を均一に開くのを助けることができる。
【0152】
いくつかの実施例(例えば、図12A)において、スネアループ及びスネアチューブが、センタリングデバイスの外周の外側及び外側シースの外周の内側に配置される。この実施例では、センタリングバスケットが押し下げられると、スネアループ、トップステントの中心を通り、内側部材の中に入ることになる。
【0153】
本明細書に記載される態様は、複数の位置決めレセプタクルを含むトップステントと、主グラフト本体であって、トップステント及び主グラフト本体が、実質的に終端が接続された構成であり、トップステント及びメイングラフト本体が内側部材の周りに配置される前記主グラフト本体と、スネアループであって、トップステントの周りの回転度が360度よりも大きく(例えば、300~800度、540度)、スネアループが位置決めレセプタクルを介して配置され、スネアループの第1の端部は、内側部材に対して実質的に対称に(例えば、同心円状に)配置される、スネアループと、を有する標的血管(例えば、腎動脈下方、傍腎動脈、傍大動脈、胸部大動脈、または腎動脈上方)内の動脈瘤を修復するための第5ステント-グラフトシステムを提供する。第5のステント-グラフトシステムの一実施形態において、ステント-グラフトシステムは、患者の横隔膜の上に位置する挿入部位血管における単一の動脈穿刺または切開を通して挿入されるように構成され得る。
【0154】
第5のステント-グラフトシステムのさらなる実施形態において、複数の位置決めレセプタクルの各々はアイレットをさらに含み、スネアループの第2の端部は少なくとも1つのアイレットを通して配置される。ステント-グラフトシステムは、内側部材の周りに配置された外側シースを含み得る。挿入部位血管は、患者の大腿動脈の直径より小さいまたは同等の直径を有し得る。拘束された構成におけるステント-グラフトシステムの直径は、約13~約22フレンチまたは約6~約13フレンチとし得る。主グラフト本体は高密度化の材料を含む。
【0155】
第5のステント-グラフトシステムの一実施形態において、主グラフト本体は分岐し、第1の四肢ゲート及び第2の四肢ゲートをさらに含む。第1の四肢ゲートは第1の腸骨脚コンポーネントを含み得る。第2の四肢ゲートは、第2の腸骨脚コンポーネントを含み得る。
【0156】
第5のステント-グラフトシステムのいくつかの実施形態において、トップステント及び主グラフト本体は、実質的に終端が接続された構成である。ステント-グラフトシステムは、第1の四肢ゲート及び第2の四肢ゲートを位置決めするためのトリガーまたはテザーワイヤをさらに含む。ステント-グラフトシステムは、第1の四肢ゲートテザー及び第2の四肢ゲートテザーをさらに含む。第1の四肢ゲートテザー及び第2の四肢ゲートテザーは、トリガーワイヤによって保持され得る。
【0157】
本明細書に記載される態様は、スネアループの長さを短くすることであって、トップステントが展開された構成から拘束された構成に折り畳まれ、トップステントが外側シース内に移動する、スネアループの長さを短くすること、標的血管内のステント-グラフトシステムの場所を調整すること、及びスネアループを長くすることであって、トップステントが外側シースから移動し、トップステントが標的血管内で拘束された構成から展開された構成に拡大する、スネアループを長くすることによって、本明細書に記載される(例えば、図13)標的血管内にステント-グラフトシステムを位置付ける方法を提供する。この態様では、ステント-グラフトデバイスの再位置決めは、患者または対象の横隔膜の上に位置する挿入部位血管から実行され得る。
【0158】
図1は、下行胸部大動脈10、腎動脈上位の腹部大動脈12、腎動脈14、腎動脈下位の動脈瘤性大動脈16、及び同側腸骨動脈18と対側腸骨動脈19を含む大動脈の一部の解剖学的構造を示す。
【0159】
図2Aは、本明細書に記載の第1のステント-グラフトシステムのいくつかの実施例による例示的なステント-グラフトデバイス20を示す。この実施例では、ステント-グラフトデバイス20は、グラフト21、第1のステント22、連結リング24、主グラフト本体26、連結バー28、第1の四肢ゲート30、第2の四肢ゲート32、第2のステント34、第3のステント36、第1のテザー38、及び第2のテザー40を含む。連結リング24及びステント(22、34及び36)は、グラフト本体材料26に完全に封入されるか、またはグラフト本体材料26に部分的に封入されるか、またはグラフト本体材料26に全く封入されないことが可能である。
【0160】
図2Bは、本明細書に記載される態様による図2Aの例示的なステント-グラフトデバイスの平坦化された側面図である。
【0161】
図3Aは、下部バーブ42及び上部バーブ44並びにレセプタクル46を有する第1のステント22の例示的な一部を示す。コネクタ48は、グラフト21内に埋め込まれた連結リング24上に示される。
【0162】
図3Bは、レセプタクル46の角度のあるジグザグ構成がコネクタ48と係合し、嵌るように適合されたレセプタクル46及びコネクタ48の拡大正面図及び側面図を示す。任意の縫合糸50が、レセプタクル46内のコネクタ48の周りに巻かれて示される。任意のレセプタクルスタビライザ52は、追加の軸方向支持を提供するためにコネクタ48に隣接して示される。
【0163】
図3Cは、第1のステント22の一部、連結リング24の一部、レセプタクル46、コネクタ48、縫合糸50、及びレセプタクルスタビライザ52に合うように適合された任意のコネクタスタビライザ54を有するレセプタクルスタビライザ52の代替構成の拡大正面図を示す。
【0164】
図3Dは、第1のステント22の一部、連結リング24の一部、レセプタクル46、及びコネクタ48の代替的構成の拡大正面図を示し、コネクタ48は三角形状のレセプタクル46に合うように適合された三角形状の形状を有する。
【0165】
図4は、連結リングまたは第1のステント24のアーム56が互いに対して110度の角度を有する代替的な態様を示す。従来のステント-グラフトデバイスは、連結リングまたはステントのアーム間の角度が60度より大きい場合、不安定になり得る。
【0166】
約60度より大きいステントアーム間の角度を使用する終端が接続された構成の従来のステント-グラフトデバイスは、不安定になる可能性がある。図4は、隣接するアーム56が90度より大きい角度にある連結リング24を示す。独立型のzステントは、典型的には、60度より大きい角度で不安定である。この態様において、コネクタ/レセプタクルを介した、堅牢で安定した第1のステント(例えば、図3Aに見られる第1のステント22等)への連結リングの取り付けにより、連結リングの増加した角度をもたらす。増加した角度は、短縮されたステントの長さをもたらし、したがって、より短い封止の長さをもたらす。理論に束縛されることなく、封止長は、グラフトの頭蓋縁からステント付勢の最初の全体のリングまでの長さと結合されると考えられる。短形頸部動脈瘤は、封止域に長いステントを有するいくつかの設計に基づいては治療することができない。いくつかの実施態様において、連結リング及びステントは、グラフトに封入され得るか、グラフトに封入されないか、またはグラフトに部分的に封入され得る。
【0167】
図5は、脚部コンポーネントテザー60、脚部コンポーネントトップステント62、脚部コンポーネントモジュラー接合バーブ64、脚部コンポーネント連結リング66、脚部コンポーネントコネクタ68、下部バーブ74及び上部バーブ76を有する脚部コンポーネント外側ステント72上の脚部コンポーネントレセプタクル70を有する腸骨脚コンポーネント58の例示的な構成を示す。腸骨脚コンポーネント58は、脚部コンポーネントテザー60を用いて操縦され、位置決めされることができる。
【0168】
腸骨脚コンポーネント58の展開は、腸骨脚コンポーネント58が拘束された構成から非拘束の構成に移動すると、脚部コンポーネントトップステント62及び脚部コンポーネント外側ステント72を拡張させる。非拘束の構成では、腸骨脚コンポーネント58は、腸骨動脈に対して実質的に血液封止を形成し得る。脚部コンポーネントバーブ64は、本体分枝内に腸骨脚コンポーネント58を位置決めすることに関してさらなる安定性を提供することができる。脚部コンポーネント連結リング66は、脚部コンポーネント外側ステント72上の脚部コンポーネントレセプタクル70に合うように適合された脚部コンポーネント68を有することを含む連結リング24と同様に構成することができる。腸骨脚コンポーネント58は、患者の必要性に応じて、対側腸骨動脈、同側腸骨動脈、またはその両方に展開され得る。
【0169】
図6Aは、腹部大動脈瘤を修復する典型的なEVAR法を用いて現代の(現在典型的な)主グラフト本体を位置決めし展開する実施例を示す図である。パネル1において、ガイドワイヤ78は、「ボトムアップ」アプローチで、腸骨動脈18、腎動脈下位の動脈瘤性大動脈16、腎動脈14を過ぎて、腎動脈上位の動脈瘤性大動脈12に大腿穿刺または切開を介して挿入される。パネル2において、主グラフト本体82を含む送達システムシース80は、ガイドワイヤ78の上で挿入され、ガイドワイヤ上を腎動脈上位の腹部大動脈12内へと追跡される。パネル3において、主グラフト本体82は、位置決めされ、部分的に鞘が外され、最終的な解放の前にその位置が調節され得る。パネル4において、主本体82は、腎動脈14の真下に示されるように、完全に鞘が外され、腎動脈上位の腹部大動脈12に展開される。
【0170】
図6Bは、腹部大動脈瘤を修復する現在典型的なEVAR方法を用いて、現在典型的な腸骨脚コンポーネントを位置付け、展開する実施例を示す。送達システムシース80は所定の位置に残される。パネル1に示すように、脚部コンポーネント84は、送達システムシース80に挿入され、ガイドワイヤ78を越えて「ボトムアップ」アプローチで大腿動脈の穿刺または切開を通して主グラフト本体82のグラフト分岐に挿入される。腸骨脚コンポーネントシース84は、位置決めされ、部分的に引っ込められ、腸骨脚コンポーネントがオーバーラップゾーンで拡張することを可能にする。パネル2において、脚部コンポーネント84は、完全に鞘を外され、腸骨動脈18の1つの脚部に展開される。
【0171】
パネル3では、ガイドワイヤ78を第2の大腿動脈穿刺または切開に「ボトムアップ」アプローチで挿入して、主グラフト本体82の別の脚部分岐に位置付ける(カニュレーションと称する)。「ボトムアップアプローチ」でのカニュレーションによる脚部コンポーネント84の正確な位置決めは、非常に困難である場合がある。パネル4では、ガイドワイヤでカニュレーションが達成されると、脚部コンポーネント84は、腸骨動脈18の別の脚部に位置決めされ、展開される。
【0172】
図6A及び図6Bに示されたEVARアプローチとは対照的に、図7Aのパネル1~4は、患者の横隔膜の上に位置する挿入血管からの本体グラフトモジュールの例示的な挿入及び展開を示す。
【0173】
パネル1では、「トップダウン」アプローチを用いて患者の横隔膜の上に位置する血管において穿刺または切開を行い、方向指示カテーテル(図示せず)を除去した後に送達シース80を挿入する。対側腸骨動脈19に器具を付けないまま、ガイドワイヤ78を、内側部材79を通して挿入し、腎動脈14を過ぎて腎動脈上位の腹部大動脈12を下り、腎動脈下位の動脈瘤性大動脈16を横切って同側腸骨動脈18に進む。
【0174】
パネル2において、内腔内に主グラフト26(図示せず)を含む/拘束する送達シース80を、第1のノーズコーン86の内腔を介して留置ガイドワイヤ78上に通し、続いて前記小動脈穿刺(血管アクセスポイント)を介して導入/挿入し、腎動脈14を超えて腎動脈上位の腹部大動脈12下に前進する。引き続き対側腸骨動脈19に器具を付けないまま、実質的に腎動脈下位の動脈瘤性大動脈16を横切って、第1のノーズコーン86を同側腸骨動脈18のすぐ上に位置させる。
【0175】
図7Aのパネル3及び4は、腎動脈下位の動脈瘤性大動脈16における送達シース80の展開及び主グラフト26の最初の送達/解放を示す。
【0176】
図7Aのパネル3において、放射線不透過性マーカー88を有する主グラフト本体26、第1の四肢ゲート30及び第2の四肢ゲート32が、部分的に展開され、標的解剖学構造において所望のように軸方向及び回転方向の両方に配向された状態で示される。放射線不透過性マーカー88は、蛍光透視下でデバイスを方向付ける際の補助として機能する。部分的な展開は、腎動脈下位の動脈瘤性大動脈16における主グラフト本体26及び第1のノーズコーン86を有する内側部材(図示せず)の静止位置を概ね維持しながら、腎動脈14に対して腎動脈より上位の腹部大動脈12に向かう方向に送達シース80を部分的に引っ込めることにより達成することができる。同側腸骨動脈18内のガイドワイヤ78の位置も維持される。
【0177】
第1のテザー38及び第2のテザー40が、主グラフト本体26の遠位端部を第1のノーズコーン86に実質的に固定して牽引を可能にし、展開中に主グラフト本体26のクランピングまたは「乗り上げ」を回避するために使用される。先に記載したように、パネル3は、送達シース80の引き出し(または近位)後退によるエンドグラフトの部分的な展開を描く。
【0178】
図7Aのパネル4に示されるように、主グラフト本体26の近位端部及び遠位端部が拘束されたままであるということを例外として、送達シース80が完全に引き込まれ、主グラフト本体26が解放され、自己拡張する時を示す。これは、テザーワイヤ(図示せず)を用いて遠位端部の第1のテザー38及び第2のテザー40を第1のノーズコーン86に固定的に拘束し、近位端部の第1のステント22に同様のシステムまたは配置(図示せず)を使用することによって達成される。このようにして、主グラフト本体26のクランプリングが、位置決め及び展開の間に回避される。
【0179】
図7Bは、主グラフト本体の展開と同様の方法で右腸骨四肢コンポーネントの展開順序を示す。図7Bのパネル1は、トップステントを含む主グラフト本体が完全に解放された状態を示す。図7Bのパネル2は、シースが右外腸骨動脈に前進したことを示す。図7Cのパネル3は、シースが部分的に引き出され、右腸骨四肢ゲートを部分的に解放していることを示す。図7Bのパネル4は、右腸骨四肢ゲートが完全に解放されていることを示す。
【0180】
図7Bのパネル1では、主グラフト本体26の近位端部と遠位端部の両方で遠位端部の第1のノーズコーン86と近位端部の固定システムから第1のテザー38と第2のテザー40を解放することによって、主グラフト本体26、第1の四肢ゲート30、及び第2の四肢ゲート32が完全に展開される(すなわち、第1のテザー38、第2のテザー40及び第1のステント22がもはや拘束されない)。このパネルに示すように、主グラフト本体26は完全に非拘束であり、ステント-グラフトが現在血管内に移植された状態で送達シース80から解放される。
【0181】
図7Bのパネル1は、さらに、腎動脈下位の動脈瘤性大動脈16と実質的に血液封止(図示せず)を形成する状態にある主グラフト本体26を描く。図7Bのパネル1における第1のステント22は、主グラフト本体26の被覆部分がこれらの重要な血管への灌流を妨げたり、血液の流れを阻害したりすることなく腎動脈14をまたいで示される。さらに、図7Bパネル1~4に記載される展開操作の間中、ガイドワイヤ78の位置は一般に同側腸骨動脈18内に維持される。
【0182】
図7Bのパネル1における主グラフト本体26の完全な展開の完了時に、送達システムは、慎重に引っ込められ、取り外されれ、第1のノーズコーン86がこの操作の間に同側脚部コンポーネント98の縁を横切ることを確実にする。第1のノーズコーン86は、内側部材79に取り付けられる。第1のノーズコーン86はまた、この手順操作の間の透視によるノーズコーンの引き込みの観察を通じて、主グラフト本体26からの送達システムの安全な引っ込みを確実にするために、放射線不透過性とされ得ることが想定される。
【0183】
図7B(パネル2から始まる)及び図7Cは、主グラフト本体26内のそれぞれの展開の間に脚部コンポーネントの相対的静止位置を概して維持しながら送達シース80が近位に引き出される、図7Aの主グラフト本体26展開について説明したのと類似の方法での、同側脚部コンポーネント98及び対側脚部コンポーネント106(図示せず)の例示的な位置付け及び展開を説明する。
【0184】
図7Bのパネル2において、送達シース80は定位置に残され、送達シース80を介して横隔膜の上の挿入部位血管の場所の穿刺または切開を通して拘束された形で同側脚コンポーネント98を装填し、ガイドワイヤ78上を、「トップダウン」方向から主グラフト本体26及び第1の四肢ゲート30を通して、脱鞘用に位置決めされる。ガイドワイヤ78は、第2のノーズコーン96を通して挿入されるのを示す。
【0185】
図7Bのパネル3において、同側脚部コンポーネント98は、同側腸骨動脈18内で部分的に鞘が外され、細かく位置決めされる。同側脚部コンポーネント98の遠位端部は、例えば、同側脚部コンポーネント98の遠位端部上のテザー(図示せず)を、テザーワイヤ(図示せず)を使用して第2のノーズコーン96に固定的に拘束することにより、図7Aに記載したのと同様の方法で拘束される。この段階では、同側脚部コンポーネント98の近位端部は、送達シース80内にまだ拘束される。
【0186】
図7Bのパネル4に示すように、同側脚部コンポーネント98は、完全に鞘を外し、同側腸骨動脈18に展開される。
【0187】
図7Cのパネル1及び2は、図7Bで説明したのと同じ方法での、対側腸骨動脈19における対側脚部コンポーネント99の同等の完全な展開(すなわち、移植)を示す。図7Cのパネル1は、ガイドワイヤ78が左外腸骨動脈19の中に進入したことを示す。図7Cのパネル2は、完全に展開された対側脚部コンポーネント99を示す。
【0188】
図7Dは、自己拡張型追加ステント105が、例えば、実質的な血液封止をさらに強化するために頭蓋グラフト縁にまたがる封止ゾーンに展開され得る代替案を示す。
【0189】
図8A及び図8Bは、代替展開システムを断面(図8A)及び拡大図(図8B)で示す。この実施例では、第1のテザー38及び第2のテザー40は、第1の四肢ゲート30、及び第2の四肢ゲート32を制御するために、テザーワイヤ107の周りに、及び棚部103にループ状に取り付けられる。第1のテザー38、第2のテザー40は、第1の四肢ゲート30及び第2の四肢ゲート32のそれぞれの円周上のどこに配置されても良い。棚部103は、内部部材79に固定的に連結される。テザーワイヤ107の先端を第1ノーズコーン86の内側から棚部103までの位置または近位の位置までキャリアカテーテル(図示せず)に引っ込ませると、主グラフト本体26の展開に先立って第1のテザー38及び第2のテザー40が解放される。
【0190】
図9は、対象の標的血管内にステントグラフト118を展開するための第2のステントグラフトシステムに従った例示的なステントグラフト展開システム108を示す図である。本明細書に記載の第2のステントグラフトシステムは、大腿動脈内に挿入されるように構成され得る。このシステムは、中央内側部材112の周囲の外側チューブ110と、キャリアチューブ114とを含む。中央内側部材112は、先端部を有する尾側端部115及び頭側端部116を有し、ステント-グラフト118によって取り囲まれる。キャリアチューブ114は、テザーワイヤ117を含む。テザーワイヤ117は、尾側端部と、より頭側部とを有する。
【0191】
トップステント119が、中央内側部材112を取り囲むように示される。トップステント119は、複数のレセプタクル122を有する複数のフック120を含む。この実施例では、レセプタクル122は、フック120と一体である。レセプタクル122は、例えば、フック120にスポット溶接することができる。フック120はまた、レセプタクルとして機能するように曲げられるか、または配置されることができる。複数の縫合糸124であって、少なくとも第1の縫合糸の第1の端部は、トップステント119を拘束された構成で保持するために複数のレセプタクル122のうちの1つを通して配置され、第1の縫合糸の第2の端部は、テザーワイヤ117のより頭側部に貼り付けられる。任意の棚部126は、キャリアチューブ114と内側部材112を一緒に保持するために、内側部材112とキャリアチューブ114の周りに配置され得る。
【0192】
図10に示すように、内側部材112は、棚部126の内側部材孔128を通して配置されることができ、キャリアチューブ114は、棚部126のキャリアチューブ孔130を通して配置され得る。棚部126は、レセプタクル122を通して縫合糸124を通すための支持体として、また、内側部材112及びキャリアチューブ114を実質的に一緒に保持し、システムにさらなる径方向の安定性を加えるために機能し得る。レセプタクル孔132は、例えば、レセプタクル122を通して配置された縫合糸124を有するレセプタクル122の一部を受容し得る。
【0193】
テザーワイヤ117の動きは、複数のレセプタクルからの複数の縫合糸の除去を制御し、トップステント117を拘束された構成から非拘束の構成へと解放することができる。複数の縫合糸124は、対象の血管から取り外すことができる。いくつかの実施例では、例えば、縫合糸または縫合糸の一部が一定期間対象内に残ることによるマイナスの副作用から対象を保護するために、縫合糸の全てが血管から除去される。
【0194】
図11は、標的血管内の主グラフト本体の軸方向場所を調節するための例示的なスネアループ位置決めを含む第4ステント-グラフトデバイスの一実施形態を示す図である。外側シース134は内側部材164及びスネアチューブ136を包含する。センタリングデバイス(図示せず)もまた、外側シース134によって包含される。スネアループ138は、オペレータによって制御され得る端部を有するスネアチューブ136の中及びそれを通して配置される。スネアループ138は、複数のアイレット140に通されて示される。トップステント142は、アイレット140に配置された複数のフック144を含んで示される。示される構成において、トップステント142は、拘束された構成または閉じた構成にある。ガイドワイヤ160は、第3のノーズコーン158を通って配置されて示される。
【0195】
トップステント142は、主グラフト本体144と実質的に終端が接続された構成で示される。主グラフト本体144は、高密度化の材料(例えば、高密度化のePTFE)で作られ得る。テザーワイヤ146は、外側シース124及び主グラフト本体144を通って配置されて示され、同側四肢ゲート148は、トリガーワイヤホルダー156に連結されているように示される。対側テザー152は、対側四肢ゲート150を通って配置され、テザーワイヤ146に連結されるように示される。同側テザー154は、同側四肢ゲート148を通って配置され、テザーワイヤ146に取り付けられることが示される。この実施例では、テザーワイヤ146は、対側テザー152と同側テザー154を使用して対側四肢ゲート150と同側四肢ゲート148の位置を調整するために使用し得る。
【0196】
図11の例を用いて、オペレータは、例えば、横隔膜の上に位置する小動脈の単一の穿刺で、ステント-グラフトデバイスを挿入し、ステント-グラフトデバイスの第3ノーズコーン158を腎動脈下方に「トップダウン」することが可能である。使用において、スネアループ138は、引っ込められ、フック144を使用して外側シース134内にトップステント142を引き込むことができる。ステントグラフトは、任意に、オペレータが所望するように血管内で軸方向に再位置決めすることができる。スネアループ138を解放することにより、ステント-グラフトがオペレータによって所望の場所に位置決めされると、展開された構成でトップステント142を解放することができる。この例示的な方法で、ステント-グラフトの位置を、必要に応じて調整及び再調整することができる。図11に示すように、スネアループ138は引っ込められ、トップステント142は拘束された構成にあり、トップステント142は外側シース134の中に引っ込めることができる。その後、ステント-グラフトデバイスの位置が調整され得る。
【0197】
図12Aは、第4のステント-グラフトシステムの一実施形態を示す。この例では、外側シース134の引っ込みは、センタリングバスケット162を示す。スネアループ138は引っ込められず、トップステント142は非拘束の構成で展開される。センタリングバスケット162は、例えば、腎動脈下方における主グラフト本体144のセンタリング及び位置決めを容易にすることができる。センタリングバスケット162のアームは、外側シース134を引っ込ませることによってセンタリングバスケット162が展開される時、腎動脈上方の動脈壁と係合する。このようにして、ステント-グラフトデバイス全体の場所を、主グラフト本体144が例えば、腎動脈下方の中心に位置するように調整することができる。本明細書に記載されるように、センタリングバスケット162はセンタリングデバイス(例えば、バスケット、バルーンまたは類似物)であり得ることが理解される。
【0198】
図12Aは、トップステント142を展開する非拘束のまたは解放された構成にあるスネアループ138を描く。オペレータが主グラフト本体144の位置を調節することを望む場合、スネアループ138は、トップステント142の再拘束をもたらすように締め付けられることが可能である。次いで、主グラフト本体144は、腎動脈下方におけるより所望の場所に到達するまで、軸方向に(頭側または尾側の方向に)再位置決めされ得る。次いで、スネアループ138は、緩められるかまたは解放され得、その結果、新しい場所におけるトップステント142の再展開をもたらす。図11及び図12Aの例示的なデバイスは、内側部材164に対して非対称な構成にあるスネアチューブ136を示す。
【0199】
図11及び12Aの実施例では、対側テザー152及び同側テザー154は、テザー152及びテザー154が上方に押されないようにテザーワイヤ146に固定されるように示される。代替的に、対側テザー152及び同側テザー154は、カテーテル内に配置され得る。テザーワイヤは、テザーのすぐ上のカテーテルから出ることができる。テザーワイヤは、テザーの中心を通って、対側テザー152及び同側テザー154のすぐ下のカテーテル内の穴を通ってカテーテル内に戻って配置されることができる。このようにして、対側テザー152及び同側テザー154は、そのカテーテルの外側のワイヤの小さな長さにピン留めすることができる。対側テザー152及び同側テザー154は、テザーワイヤ146が除去された時に解放することができる。
【0200】
さらなる代替例では、主グラフト本体144、トップステント142、及びセンタリングバスケット162は、最初に外側シース134内に収容される。この態様において、外側シース134が主グラフト本体144から取り外されると、トップステント142が展開され、センタリングバスケット162が大動脈頸部に尾側方向に軸方向に押されて主グラフト本体144内に入れられることが可能である。センタリングバスケット162は、心臓に最も近い主グラフト本体144の部分において主グラフト本体144の内部に展開され得る。センタリングバスケット162は、次いで、引っ込められ得、そして、スネアループ138は、トップステント142を展開するために解放され得る。
【0201】
第4のステント-グラフトデバイスの代替実施形態が、図12Bに示される。図12Bは、スネアループ138及びスネアチューブ136がセンタリングバスケット162の外周の外側であるが外側シース134の外周の内側に配置される図12Aのステント-グラフトデバイスに対する例示的な代替例を示す。この実施例では、センタリングバスケット162が押し下げられると、スネアループ135の中心、トップステント142、及び内側部材164の中を通過することになる。
【0202】
理論に縛られることなく、血管内で使用されるシースは、自然に直線に沿ってまっすぐになる傾向があると考えられる。シースが湾曲した血管に挿入された時、シースは、まっすぐにしようと血管の壁に押し付けられることがある。血管壁に対するシースの力は、材料とその厚みにより得る。一態様において、例示的なセンタリングデバイス(例えば、バスケット、バルーン)のワイヤまたは外壁は、センタリングデバイスが血管の側面に対して崩壊しないように、シースの外側への「まっすぐにする」力より大きい。このようにして、ステント-グラフトデバイスは、例示的なセンタリングデバイスを用いて血管内でセンタリングされ得る。
【0203】
1つの態様では、センタリングバスケットのワイヤまたはセンタリングバルーンの外壁によって及ぼされる圧力は、シースの力に逆らって血管の中心にトップステントを保持するのに十分な力を発揮する。別の態様では、シースによって長手方向に及ぼされる力は、シースがそれ自体で崩壊しないように十分である(例えば、これは、シースを前進させるため及びエンドグラフトを解放するために有用であり得る)。同時に、シースは、「横から横への」移動に関しては柔軟であるが、シースの直線化力を最小にするために長手方向にはより剛性であることが可能である。「横から横への」移動のための追加の柔軟性は、ステント-グラフトデバイスが血管の壁に反して押されて、対称的に展開されないという状況を回避し得る。この態様では、エンドリークを最小化することができる。
【0204】
図13は、内側部材164に対してスネアループ138の対称的な構成を有する第5のステント-グラフトデバイスの実施例を示す。この実施例では、図13は、フック144の上に貼られたアイレット140を通して通されたスネアループ138を有するトップステント142を有し、スネアループ138が360度より大きいトップステント142の周りの回転の程度を有する、ステントグラフトデバイスを例示する。一態様において、回転の程度は、360度から800度、または約540度の回転の程度とすることができる。このようにして、図13に示すように、スネアループ138は、内側部材164に対して対称に配置され得る。
【0205】
スネアループ138が、オペレータによって外側シース134内にトップステント142を引き込むか、または外側シース134からトップステント142を所望の場所に展開するために使用される時、トップステント142は片側に引き寄せられるのではなく、対称的に内側に引き寄せられる。このようにして、ステント-グラフトデバイスは、標的血管に対してより中心的な構成に維持され得る。
【0206】
いくつかの実施例では、ステント-グラフトデバイスの脚部の底部は、トリガーワイヤによってイントロデューサに固定することができる。トリガーワイヤは、ステント-グラフトデバイスをつぶすことなく大動脈内でエンドグラフト全体を上下に移動させるのに使用することができる。ステント-グラフトデバイスは、その上部と下部の両方で、上部のラッソと下部のトリガーワイヤとの間で固定することができる(両方とも最終展開時に解除することができる)。
【0207】
図14は、スネアループ138が内側部材164に対して非対称にスネアチューブ136内に配置された状態を示す図11及び12Aに示した態様の断面図である。図14の右パネルに示されるように、スネアチューブ136は、内側部材164の一方の側に示される。
【0208】
図15は、スネアループ138の端部が内側部材164に対して対称に配置される図13に示される態様の例示的な断面図を提供する。図15に示すように、スネアループ138の2つの糸は、実質的に対称的な構成で同心円状の内側部材164のどちらかの側に配置される。
【0209】
一態様では、主グラフト本体、第1の四肢ゲート、及び第2の枝グラフトはePTFE(ポリテトラフルオロエチレン)を含む。別の態様では、ePTFEは、例えば、約0.00015インチと薄い層を有する最大10プライ層またはそれ以上からなる超薄型複合体である。焼結を、すべてのePTFE層を付着させるために圧縮を伴う高温下で行うことができる。この態様では、ePTFEは、クリープを防止する層の配向を有する単一方向の強度を有する。この態様において、グラフトの連続的な拡張を可能にするので、ePTFEのクリープまたは移動は、回避または最小化されるべきである。別の態様において、ePTFEは、実質的に血液封止を提供するために、例えば、FEP(フッ化エチレンプロピレン)層(複数可)の追加によって、血液血清に対して不透過性となるように構成することが可能である。さらなる態様では、焼結したePTFEの全厚さは約0.0015である。
【0210】
いくつかの実施例において、主グラフト本体、第1の四肢ゲート、及び第2の四肢ゲートは、ヒトまたは動物組織または人工組織で作ることができる。例えば、Deeken et.al.,Differentiation of Biologic Scaffold Materials Through Physicomechanical,Thermal,and Enzymatic Degradation Techniques.Annals of Surgery,March 2012、米国特許出願公開第US20180326120号を参照されたい。
【0211】
本明細書に記載される態様が、ある特定の実施形態を参照して開示されたが、記載された態様に対する多数の修正、代替、及び変更が、添付の請求項に定義される本開示の範囲から逸脱することなく可能である。したがって、本開示が記載された態様に限定されるのではなく、以下の特許請求の範囲の文言によって定義される全範囲を有することが意図される、及びそれと同等である。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図3D
図4
図5
図6A
図6B
図7A
図7B
図7C
図7D
図8A
図8B
図9
図10
図11
図12A
図12B
図13
図14
図15
【国際調査報告】