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  • 特表-連続溶融還元製鉄法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-05
(54)【発明の名称】連続溶融還元製鉄法
(51)【国際特許分類】
   C21B 11/02 20060101AFI20230329BHJP
【FI】
C21B11/02
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022547308
(86)(22)【出願日】2021-02-02
(85)【翻訳文提出日】2022-09-08
(86)【国際出願番号】 CN2021074867
(87)【国際公開番号】W WO2021164543
(87)【国際公開日】2021-08-26
(31)【優先権主張番号】202010108136.X
(32)【優先日】2020-02-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510000839
【氏名又は名称】東北大学
【氏名又は名称原語表記】Northeastern University
【住所又は居所原語表記】NO.11, LANE3, WENHUA ROAD, HEPING DISTRICT, SHENYANG, LIAONING, CHINA
(71)【出願人】
【識別番号】522308646
【氏名又は名称】東大有色固廃技術研究院(遼寧)有限公司
【氏名又は名称原語表記】DONGDA NONFERROUS SOLID WASTE TECHNOLOGY RESEARCH INSTITUTE (LIAOLING) CO., LTD
【住所又は居所原語表記】25A,Wanghu North Road, Heping District Shenyang, Liaoning 110004 (CN)
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】張廷安
(72)【発明者】
【氏名】豆志河
(72)【発明者】
【氏名】劉燕
(72)【発明者】
【氏名】呂国志
(72)【発明者】
【氏名】趙秋月
(72)【発明者】
【氏名】張子木
【テーマコード(参考)】
4K012
【Fターム(参考)】
4K012CB02
4K012CB04
(57)【要約】
鉄含有鉱物粉、還元剤及びスラグ形成剤を混合して得られた混合粉末を、連続原料投入システムに入れる、工程(1)と、出発材料を還元炉に投入し、溶融状態に加熱して出発溶融池を形成する、工程(2)と、攪拌パドルを出発溶融池に下降させ、攪拌を開始し、混合粉末を還元炉に搬送し、還元炉内に酸素富化燃料を吹付けて加熱する、工程(3)と、溶銑と還元スラグを攪拌してスラグ層と溶銑層を形成し、溶銑が緩衝槽に入り、昇降装置により攪拌パドルをスラグ層まで調整し、スラグ層を攪拌して渦を形成する、工程(4)と、溶銑が連続的かつ安定的に排出されるように、攪拌速度と混合粉末の搬送量を調整し、溶銑と還元スラグがそれぞれ連続的に排出されるように、攪拌パドルの位置、攪拌速度、及び混合粉末の搬送量を調整する、工程(5)と、を含む連続溶融還元製鉄法である。本発明の方法は、プロセスが簡単で、投資が少なく、省エネルギーで環境に優しく、コストが低く、経済的価値が高いという利点を有し、効率的な非高炉製鉄技術である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程を含むことを特徴とする、連続溶融還元製鉄法。
(1)鉄含有鉱物粉、還元剤及びスラグ形成剤を均一に混合して、混合粉末を得、混合粉末を連続原料投入システムに入れ、前記連続原料投入システムとしては、材料を計量・搬送できる装置であり、スクリューフィーダーまたは計量ポンプ付きの供給ビンが使用され、鉄含有鉱物粉は鉄鉱石粉、または全鉄品位≧30%の鉄含有尾鉱粉または鉄含有製錬スラグであり、還元剤は石炭粉であり、スラグ形成剤は石灰であり、混合粉末において、還元剤の使用量は、鉄含有鉱物粉中のFeと還元剤中のCとの完全な反応に必要な総C量の1.1~1.3倍で添加され、スラグ形成剤の使用量は、混合粉末の塩基度が2~3となるように添加され、前記完全な反応の反応式は次のとおりである。
Fe+yC=yCO+xFe、
Fe+yCO=yCO+xFe、及び
Fe+y/2C=y/2CO+xFe
(2)出発材料を還元炉に投入し、前記還元炉の上部に密閉カバーが装備され、かつ攪拌装置が設けられており、攪拌装置は還元炉外部の昇降装置と組み立てられており、攪拌装置のシャフトは、密閉カバーを通じて還元炉内に挿入され、シャフトの底端に攪拌パドルが装備されており、密閉カバーには、吸気通路と排気口がさらに設けられ、かつ原料投入パイプは、密閉カバーを通じて還元炉内に挿入され、前記還元炉の側壁の上部にスラグオーバーフロー口が設けられ、底部に出銑口が設けられ、出銑口はサイフォンパイプと連通し、サイフォンパイプは緩衝槽と連通しており、出発材料を溶融状態に加熱して出発溶融池を形成し、出発材料は銑鉄、または工程(1)における混合粉末であり、出発材料が出発溶融池を形成する際、出発溶融池の温度≧1450℃、出発溶融池の体積が還元炉の総容積の20~30%となるように制御し、出発材料が銑鉄である場合、誘導加熱を採用して出発材料を加熱し、出発材料が混合粉末である場合、吸気通路を通じて還元炉内に酸素富化燃料を吹付けることで、出発材料を加熱し、前記酸素富化燃料は石炭粉と酸素ガスの混合物、または天然ガスと酸素ガスの混合物であり、酸素富化燃料中のC元素とO元素の質量比は3:(4~8)であり、原料投入パイプの出口端はシャフトの近くにあり、工程(4)で高温溶融池に渦が形成される時、還元炉に入った混合粉末は渦の中心に落下し、この時、原料投入パイプの出口端は渦の上方にある。
(3)昇降装置により攪拌パドルを出発溶融池に下降させ、攪拌装置を作動させて出発溶融池を攪拌し、昇降装置により攪拌パドルの位置を調整し、攪拌パドルと出発溶融池の液面との間の垂直距離が出発溶融池の高さの1/3~1/2となるように制御し、それと同時に、連続原料投入システムを介して混合粉末を原料投入パイプを通じて還元炉内に連続的に搬送するとともに、吸気通路を通じて還元炉内に酸素富化燃料を吹付けて還元炉内の混合粉末を加熱し、前記酸素富化燃料は石炭粉と酸素ガスの混合物、または天然ガスと酸素ガスの混合物であり、混合粉末は還元炉内で熱溶融され、出発溶融池とともに高温溶融池を形成すると同時に、混合粉末は還元反応を起こして溶銑と還元スラグを生成し、酸素富化燃料の仕込み量は、高温溶融池の温度が≧1450℃に制御されるような量である。
(4)攪拌の遠心力作用下で、並びに溶銑及び還元スラグの重力差との組み合わせの作用下で、溶銑と還元スラグは急速に分離し、上部のスラグ層と下部の溶銑層を形成し、溶銑層の溶銑は出銑口からサイフォンパイプを経由して緩衝槽に入り、高温溶融池の液面上昇に伴い、緩衝槽の出口から溶銑が排出されると、昇降装置により攪拌パドルの位置を調整し、攪拌パドルをスラグ層内まで上昇させ、攪拌パドルによりスラグ層を渦攪拌し、スラグ層に渦を形成させる。
(5)溶銑が連続的かつ安定的に排出されるように、攪拌速度と混合粉末の搬送量を調整し、この時、溶銑層の液面は一定となり、スラグ層の渦の上端がスラグオーバーフロー口にある場合、還元スラグはスラグオーバーフロー口から排出され、攪拌パドルと溶銑層の液面との間の垂直距離が溶銑層の高さの1/3~1/2になるように、昇降装置により攪拌パドルの位置を調整し、溶銑と還元スラグがそれぞれ緩衝槽の出口とスラグオーバーフロー口から連続的に排出されるように、攪拌速度と混合粉末の搬送量を調整する。
【請求項2】
工程(3)において、酸素富化燃料中のC元素とO元素の質量比が3:(4~8)であることを特徴とする、請求項1に記載の連続溶融還元製鉄法。
【請求項3】
工程(4)において、渦が形成される時、渦の高さと直径の比が0.5~2.5であり、渦が形成された後、還元炉に入った混合粉末は渦中心の負圧の作用下で高温溶融池に吸い込まれ、渦攪拌の作用下で均一に分散されることを特徴とする、請求項1に記載の連続溶融還元製鉄法。
【請求項4】
前記攪拌パドルによって渦攪拌する時、攪拌速度が50~200r/minであることを特徴とする、請求項1に記載の連続溶融還元製鉄法。
【請求項5】
鉄還元率は≧95.5%であり、還元スラグに含まれる鉄の質量パーセントは≦0.35%であることを特徴とする、請求項1に記載の連続溶融還元製鉄法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冶金技術の分野に属し、具体的には、連続溶融還元製鉄法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鉄鋼生産能力や環境保護に対する要求がますます厳しくなるにつれて、どのようにコストを削減し、作業環境を改善することが最優先事項である。高炉製鉄の還元剤は主に無煙石炭粉であり、羽口から高炉内に吹付けられる。石炭粉の密度が低いため、反応過程において大量の石炭粉が表面に浮き上がり、鉄の酸化物と十分に反応せず、石炭粉の利用率が低いとともに、発生する煙道ガスに大量の未反応の粉塵が含まれ、原料を浪費するだけでなく、大気及び現場環境にも悪い影響を与える。
【0003】
現在、高炉製鉄プロセスの成熟により製鉄コストは安定しているものの、一部の条件の改善により銑鉄のコストはわずかな範囲でしか変化せず、利益率は非常に小さい。したがって、製鉄は鉄鋼生産の重要な部分として、どのように非コークス、低炭素、クリーンな製錬を実現するかは、常にショートプロセスのグリーン製鉄・製鋼の目標であり、COREXに代表される予備還元-溶融分分離の2段階法の溶融還元プロセスなどのような溶融還元製鉄は、現在最も人気のある新規な製鉄プロセスである。また、プロセス操作と設備の開発において、連続溶融還元のプロセス操作と設備も、研究の焦点であり難点であり、例えば、出願番号201110374492.7、出願番号201210112813.0などの中国特許出願には、自動化されかつ連続的に操作される、いわゆる連続還元製鉄のプロセス設備が開示されているが、ペレット化、ペレット焼結・予備還元、溶融分還元などの部分を経る必要があり、原料投入後の連続的かつ安定的な連続還元操作は実際に実現されていない。
【0004】
そこで、真の連続還元製鉄プロセスと設備の開発は、将来の非高炉グリーン製鉄で直面して解決しなければならない技術的難題である。出願番号201420208229.Xの中国特許出願に、連続的に排出できる中周波炉が開示され、出願番号201611225035の中国特許出願に、連続高温溶融岩/ミネラルウール原料用の誘導炉が開示されているが、いずれもペレット化・焼結-予備還元-溶融分還元の製鉄操作に適さない。出願番号201610854514.2の中国特許出願に、「渦攪拌による溶融還元製鉄法」が開示されており、この方法は、KR攪拌脱硫プロセスの利点を組み合わせて、ペレット化・焼結-高炉還元及び予備還元-溶融分還元の製鉄プロセスを完全に変更し、ペレット焼結プロセスをなくし、粉末を直接炉に投入して効率的に還元するプロセスで技術的なブレークスルーを達成し、かつ鉄含有資源の品位要求を大幅に削減し、鉄含有尾鉱や鉄含有製錬スラグなどの低品位の非伝統的な鉄鉱石資源への適用に成功し、効率的な総合利用を実現した。しかし、前記特許出願では、鉄含有資源の渦攪拌による溶融還元のみを実現しており、操作上に溶銑出口は還元炉の底部に設置された開放出口であり、溶融状態で製錬操作を行うため、原料投入・還元製錬の過程では溶銑出口を塞ぐ必要があるため、間欠操作しか採用できず、すなわち、毎回炉を満たした後、攪拌して高温還元溶錬を行い、その後、攪拌を停止して溶銑を排出する。溶錬環境を確保するためには、実際の溶錬過程において製錬に必要な金スラグ雰囲気のバランスを保つために、スラグ排出口も塞ぐ必要があり、スラグ排出と溶銑排出は両方とも、1炉バッチごとに1回排出されるため、粉末を直接炉に投入して還元することを実現しただけで、熱力学の原理で連続溶融還元を実現しなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、連続原料投入、連続還元、連続金スラグ分離のプロセスを設けることにより、既存の製鉄技術におけるペレット焼結プロセスをなくすだけでなく、粉末を直接炉に投入して効率的に還元することを実現し、安定した連続還元操作の効果を達成し、連続溶融還元の原理でブレークスルーを達成する、連続溶融還元製鉄法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の方法は、以下のステップを含む。
1、鉄含有鉱物粉、還元剤及びスラグ形成剤を均一に混合して、混合粉末を得る。混合粉末を連続原料投入システムに入れ、前記連続原料投入システムとしては、材料を計量・搬送できる装置であり、スクリューフィーダーまたは計量ポンプ付きの供給ビンが使用される。
2、出発材料(furnace starting material)を還元炉に投入し、前記還元炉の上部に密閉カバーが装備され、かつ攪拌装置が設けられている。攪拌装置は還元炉外部の昇降装置と組み立てられており、攪拌装置のシャフトは、密閉カバーを通じて還元炉内に挿入され、シャフトの底端に攪拌パドルが装備されている。密閉カバーには、吸気通路と排気口がさらに設けられ、かつ原料投入パイプは、密閉カバーを通じて還元炉内に挿入される。前記還元炉の側壁の上部にスラグオーバーフロー口が設けられ、底部に出銑口が設けられ、出銑口はサイフォンパイプと連通し、サイフォンパイプは緩衝槽と連通している。出発材料を溶融状態に加熱して出発溶融池を形成する。
3、昇降装置により攪拌パドルを出発溶融池に下降させ、攪拌装置を作動させて出発溶融池を攪拌する。昇降装置により攪拌パドルの位置を調整し、攪拌パドルと出発溶融池の液面との間の垂直距離を出発溶融池の高さの1/3~1/2に制御する。それと同時に、連続原料投入システムを介して混合粉末を原料投入パイプを通じて還元炉内に連続的に搬送するとともに、吸気通路を通じて還元炉内に酸素富化燃料を吹付けて還元炉内の混合粉末を加熱し、前記酸素富化燃料は石炭粉と酸素ガスの混合物、または天然ガスと酸素ガスの混合物である。混合粉末は還元炉内で熱溶融され、出発溶融池とともに高温溶融池を形成すると同時に、混合粉末は還元反応を起こして溶銑と還元スラグを生成する。酸素富化燃料の仕込み量は、高温溶融池の温度が≧1450℃に制御されるような量である。
4、攪拌の遠心力作用下で、並びに溶銑及び還元スラグの重力差との組み合わせの作用下で、溶銑と還元スラグは急速に分離し、上部のスラグ層と下部の溶銑層を形成する。溶銑層の溶銑は出銑口からサイフォンパイプを経由して緩衝槽に入る。高温溶融池の液面上昇に伴い、緩衝槽の出口から溶銑が排出されると、昇降装置により攪拌パドルの位置を調整し、攪拌パドルをスラグ層内まで上昇させ、攪拌パドルによりスラグ層を渦攪拌し、スラグ層に渦を形成させる。
5、溶銑が連続的かつ安定的に排出されるように、攪拌速度と混合粉末の搬送量を調整し、この時、溶銑層の液面は一定となる。スラグ層の渦の上端がスラグオーバーフロー口にある場合、還元スラグはスラグオーバーフロー口から排出される。攪拌パドルと溶銑層の液面との間の垂直距離が溶銑層の高さの1/3~1/2になるように、昇降装置により攪拌パドルの位置を調整し、溶銑と還元スラグがそれぞれ緩衝槽の出口とスラグオーバーフロー口から連続的に排出されるように、攪拌速度と混合粉末の搬送量を調整する。
【0007】
上記の工程1において、鉄含有鉱物粉は鉄鉱石粉、または全鉄品位≧30%の鉄含有尾鉱粉または鉄含有製錬スラグである。
【0008】
上記の工程1において、還元剤は石炭粉であり、スラグ形成剤は石灰である。混合粉末において、還元剤の使用量は、鉄含有鉱物粉中のFeと還元剤中のCとの完全な反応に必要な総C量の1.1~1.3倍で添加され、スラグ形成剤の使用量は、混合粉末の塩基度(CaO/SiOの質量比)が2~3となるように添加される。前記完全な反応の反応式は次のとおりである。
Fe+yC=yCO+xFe、
Fe+yCO=yCO+xFe、及び
Fe+y/2C=y/2CO+xFe。
【0009】
上記の工程2において、出発材料は銑鉄、または工程1における混合粉末である。出発材料が出発溶融池を形成する際、出発溶融池の温度≧1450℃、出発溶融池の体積が還元炉の総容積の20~30%となるように制御する。出発材料が銑鉄である場合、誘導加熱を採用して出発材料を加熱する。出発材料が混合粉末である場合、吸気通路を通じて還元炉内に酸素富化燃料を吹付けることで、出発材料を加熱する。前記酸素富化燃料は石炭粉と酸素ガスの混合物、または天然ガスと酸素ガスの混合物であり、酸素富化燃料中のC元素とO元素の質量比は3:(4~8)である。
【0010】
上記の工程2において、原料投入パイプの出口端はシャフトの近くにある。工程4で高温溶融池に渦が形成される時、還元炉に入った混合粉末は渦の中心に落下し、この時、原料投入パイプの出口端は渦の上方にある。
【0011】
上記の工程3において、酸素富化燃料中のC元素とO元素の質量比は3:(4~8)である。
【0012】
上記の工程4において、渦が形成される時、渦の高さと直径の比が0.5~2.5であり、渦が形成された後、還元炉に入った混合粉末は渦中心の負圧の作用下で高温溶融池に吸い込まれ、渦攪拌の作用下で均一に分散される。
【0013】
上記方法では、還元炉での反応により生成された製錬テールガスは、排気口から排出された後、まず余熱回収システムに入って余熱を回収する。温度が200~300℃に下がると、煙道ガス浄化システムに入って、運ばれた粉塵を除去する。最後に送風機を介して煙突に搬送されて排出される。
【0014】
上記の工程4において、溶銑は緩衝槽の出口から排出された後、溶銑取鍋に入り、溶銑を炉外精錬して、製鋼に使用される適格な溶銑が得られる。
【0015】
上記の工程5において、還元スラグの主成分はCaO、SiO、及びAlであり、還元スラグは、スラグオーバーフロー口から排出された後、スラグ取鍋に入り、その後、調質・徐冷され、さらに水焼入れされてセメントクリンカーが得られる。
【0016】
上記の工程4において、攪拌パドルによって渦攪拌する時、攪拌速度は50~200r/minである。
【0017】
上記方法において、鉄含有鉱物粉の鉄還元率は≧95.5%であり、還元スラグに含まれる鉄の質量パーセントは≦0.35%である。
【0018】
上記の工程3において、吸気通路は、独立した吸気通路であり、または攪拌装置のシャフト内に吸気通路として通路が設けられる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の連続還元プロセスは、連続原料投入、連続還元、連続金スラグ分離などの工程を含み、混合粉末は、正確に計量する連続原料投入システムによって還元炉内の溶融池の渦中心に直接投入される。渦中心の負圧作用により、混合粉末は溶融池内に急速に吸い込まれ、攪拌作用下で急速に分散して溶融還元する。還元によって生成された溶銑とスラグは急速に分離し、それぞれ排出される。粉末を直接炉に投入して効率的に還元することを実現し、安定した連続還元操作の効果を達成し、最終的に熱力学的に連続溶融還元プロセスの原理的ブレークスルーを実現し、連続原料投入-連続溶融還元-連続金スラグ分離のショートフローの連続操作プロセスのブレークスルーを実現する。本発明は、以下の有益な効果を有する。
【0020】
(1)連続溶融還元製鉄技術は、既存の製鉄技術におけるペレット焼結プロセスをなくし、粉末を直接炉に投入して効率的に還元するブレークスルーを実現し、従来の高炉製鉄プロセスフローを大幅に短縮する。
【0021】
(2)混合した粉状の鉄含有鉱物、還元剤、及びスラグ形成剤の反応混合粉末は、連続原料投入システムを介して溶融体表面で機械的に攪拌することによって形成された渦の中心に直接投入され、すぐに溶融池に巻き込まれる。それと同時に、攪拌して巻き込んだ反応材料を完全に接触させることができ、反応の進行を速くして、製鉄サイクルを短縮する。
【0022】
(3)連続溶融還元製鉄法では、連続原料投入、連続還元、連続金スラグ分離などの重要なステップが直列に統合されており、高炉製鉄プロセスと既存の非高炉溶融還元ではペレット焼結を経なければならないというプロセス制限を完全に打ち破り、熱力学的に連続溶融還元製鉄プロセスの原理的ブレークスルーを実現し、連続原料投入、連続還元、及び連続金スラグ分離を統合するショートプロセスで定常状態操作のグリーンな溶融還元製鉄の技術的ブレークスルーと革新を実現する。
【0023】
(4)連続溶融還元製鉄法は、既存の製鉄プロセス(高炉と非高炉プロセス)の鉄鉱石の品位への厳格な要求というプロセス制限を克服し、従来の鉄鉱石の処理に使用できるだけでなく、全鉄品位が30%(またはそれより低い)以上の鉄含有尾鉱や鉄含有製錬スラグなどの低品位の非伝統的な鉄含有資源の処理などの総合利用に直接使用でき、鉄鋼業界のプロセス技術と設備をアップグレードするために技術と設備基礎を向上させるとともに、鉄含有尾鉱や鉄含有製錬スラグなどの低品位の鉄含有バルク産業固形廃棄物を高価値化して総合的に利用する。
【0024】
(5)連続溶融還元製鉄法では、金スラグ分離後、還元スラグは還元炉上部のスラグ排出口から徐冷スラグ取鍋にオーバーフローして排出され、直接調質・徐冷され、その後水焼入れされてセメントクリンカーが得られる。還元溶銑は、高温パイプを通ってサイフォンの作用下で溶銑取鍋にオーバーフローし、溶銑を直接炉外精錬して後続の製鋼プロセスに使用される適格な溶銑が得られ、スラグのないショートプロセスのクリーニング製鉄とショートプロセスのクリーニングな製鋼のプロセス革新を実現することができる。
【0025】
(6)この方法は、プロセスが簡単で、投資が少なく、省エネルギーで環境に優しく、コストが低く、経済的価値が高く、還元剤の利用率を大幅に向上させるという利点を有し、効率的な非高炉製鉄技術である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の実施例1における連続溶融還元製鉄の装置構造概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の実施形態では、酸素富化燃料は、空気圧縮機による吹付けによって導入される。
【0028】
本発明の実施形態では、鉄含有鉱物粉は鉄鉱石粉、または鉄品位≧30%の鉄含有尾鉱粉または鉄含有製錬スラグである。
【0029】
本発明の実施形態では、完全な反応の反応式は次のとおりである。
Fe+yC=yCO+xFe、
Fe+yCO=yCO+xFe、及び
Fe+y/2C=y/2CO+xFe。
【0030】
本発明の実施形態では、原料投入パイプの出口端はシャフトの近くにある。高温溶融池に渦が形成される時、還元炉に入った混合粉末は渦の中心に落下し、この時、原料投入パイプの出口端は渦の上方にある。
【0031】
本発明の実施形態では、溶銑は緩衝槽の出口から排出された後、溶銑取鍋に入り、溶銑を炉外精錬して、製鋼に使用される適格な溶銑が得られる。
【0032】
本発明の実施形態では、還元スラグの主成分はCaO、SiO、及びAlであり、還元スラグは、スラグオーバーフロー口から排出された後、スラグ取鍋に入り、その後、調質・徐冷され、水焼入れされてセメントクリンカーが得られる。
【0033】
本発明の実施形態では、攪拌パドルによって渦攪拌する時、攪拌速度は50~200r/minである。
【0034】
本発明の実施形態では、鉄含有鉱物粉の鉄還元率は≧95.5%であり、還元スラグに含まれる鉄の質量パーセントは≦0.35%である。
【0035】
本発明の実施形態では、出発溶融池及び高温溶融池の温度は1450~1550℃である。
【0036】
本発明の実施形態では、シャフトは還元炉の軸線に位置している。
【実施例
【0037】
実施例1
使用される装置の構造は図1に示され、サイロ1-2、スクリューフィーダー1-1、還元炉2-1、攪拌装置2-2、緩衝槽3-2、余熱回収システム4-1、煙道ガス浄化システム4-4、及び煙突4-5を含み、還元炉2-1の上部に密閉カバーが装備され、攪拌装置2-2は還元炉2-1外部の昇降装置と組み立てられており、攪拌装置2-2のシャフトは、密閉カバーを通じて還元炉2-1内に挿入され、攪拌装置2-2のシャフトの底端に攪拌パドルが装備されている。
【0038】
サイロ1-2の出口は、スクリューフィーダー1-1の入口と連通し、スクリューフィーダー1-1の出口は、原料投入パイプ1-3の入口と連通しており、原料投入パイプ1-3は、密閉カバーを通じて還元炉2-1の内部に挿入される。
【0039】
密閉カバーに排気口が設けられ、還元炉2-1の側壁の上部にスラグオーバーフロー口3-4が設けられ、還元炉2-1の底部に、サイフォンパイプ3-1と連通する出銑口が設けられ、サイフォンパイプ3-1は、緩衝槽3-2の底部と連通している。
【0040】
攪拌装置2-2のシャフト内に吸気通路として通路が設けられ、吸気通路は空気圧縮機2-5と連通している。
【0041】
スラグオーバーフロー口3-4の底端はスラグ取鍋3-5に対向し、緩衝槽3-2の出口から延びるパイプの底端は、溶銑取鍋3-3に対向する。
【0042】
排気口は、パイプを介して余熱回収システム4-1と連通し、余熱回収システム4-1は、パイプを介して煙道ガス浄化システム4-2と連通し、煙道ガス浄化システム4-2は送風機の入口と連通し、送風機の出口は煙突4-3と連通している。
【0043】
上記の装置を使用して、鉄含有鉱物粉、還元剤及びスラグ形成剤を均一に混合して、混合粉末を得る。混合粉末を連続原料投入システムのスクリューフィーダーに入れる。還元剤は石炭粉であり、スラグ形成剤は石灰である。混合粉末において、還元剤の使用量は、鉄含有鉱物粉中のFeと還元剤中のCとの完全な反応に必要な総C量の1.1倍で添加され、スラグ形成剤の使用量は、混合粉末の塩基度が2となるように添加される。
【0044】
出発材料を還元炉に投入し、出発材料を溶融状態に加熱して出発溶融池を形成する。出発材料は銑鉄であり、出発材料が出発溶融池を形成する際、出発溶融池の温度≧1450℃、出発溶融池の体積が還元炉の総容積の20%となるように制御し、誘導加熱を採用して出発材料を加熱する。
【0045】
昇降装置により攪拌パドルを出発溶融池に下降させ、攪拌装置を作動させて出発溶融池を攪拌する。昇降装置により攪拌パドルの位置を調整し、攪拌パドルと出発溶融池の液面との間の垂直距離が出発溶融池の高さの1/3となるように制御する。それと同時に、連続原料投入システムを介して混合粉末を原料投入パイプを通じて還元炉内に連続的に搬送するとともに、吸気通路を通じて還元炉内に酸素富化燃料を吹付けて還元炉内の混合粉末を加熱し、酸素富化燃料は石炭粉と酸素ガスの混合物である。混合粉末は還元炉内で熱溶融され、出発溶融池とともに高温溶融池を形成すると同時に、混合粉末は還元反応を起こして溶銑と還元スラグを生成する。酸素富化燃料の仕込み量は、高温溶融池の温度が≧1450℃に制御されるような量であり、酸素富化燃料中のC元素とO元素の質量比は3:4である。
【0046】
攪拌の遠心力作用下で、並びに溶銑及び還元スラグの重力差との組み合わせの作用下で、溶銑と還元スラグは急速に分離し、上部のスラグ層と下部の溶銑層を形成する。溶銑層の溶銑は出銑口からサイフォンパイプを経由して緩衝槽に入る。高温溶融池の液面上昇に伴い、緩衝槽の出口から溶銑が排出されると、昇降装置により攪拌パドルの位置を調整し、攪拌パドルをスラグ層内まで上昇させ、攪拌パドルによりスラグ層を渦攪拌し、スラグ層に渦を形成させる。渦が形成される時、渦の高さと直径の比は0.5である。
【0047】
溶銑が連続的かつ安定的に排出されるように、攪拌速度と混合粉末の搬送量を調整し、この時、溶銑層の液面は一定となる。スラグ層の渦の上端がスラグオーバーフロー口にある場合、還元スラグはスラグオーバーフロー口から排出される。攪拌パドルと溶銑層の液面との間の垂直距離が溶銑層の高さの1/2となるように、昇降装置により攪拌パドルの位置を調整し、溶銑と還元スラグがそれぞれ緩衝槽の出口とスラグオーバーフロー口から連続的に排出されるように、攪拌速度と混合粉末の搬送量を調整する。
【0048】
還元炉での反応により生成された製錬テールガスは、排気口から排出された後、まず余熱回収システムに入って余熱を回収する。温度が200~300℃に下がると、煙道ガス浄化システムに入って、運ばれた粉塵を除去する。最後に送風機を介して煙突に搬送されて排出される。
【0049】
実施例2
使用される装置は、次の点を除いて、実施例1と同じである。
(1)吸気通路は、独立した吸気通路である。
(2)連続原料投入システムは、計量ポンプ付きの供給ビンである。
【0050】
方法は、次の点を除いて、実施例1と同じである。
(1)混合粉末を供給ビンに入れ、計量ポンプを介して吸気パイプに搬送してから、還元炉に入る。
(2)還元剤の使用量は、鉄含有鉱物粉中のFeと還元剤中のCとの完全な反応に必要な総C量の1.2倍で添加され、スラグ形成剤の使用量は、混合粉末の塩基度が2.4となるように添加される。
(3)出発材料は混合粉末である。出発溶融池の体積は還元炉の総容積の25%である。吸気通路を通じて還元炉内に酸素富化燃料を吹付けることで、出発材料を加熱する。酸素富化燃料は天然ガスと酸素ガスの混合物であり、酸素富化燃料中のC元素とO元素の質量比は3:8である。昇降装置により攪拌パドルの位置を調整し、攪拌パドルと出発溶融池の液面との間の垂直距離が出発溶融池の高さの1/2となるように制御する。
(4)高温溶融池を形成する際に導入される酸素富化燃料は、天然ガスと酸素ガスの混合物であり、酸素富化燃料中のC元素とO元素の質量比は3:8である。
(5)渦の高さと直径の比は1である。
(6)溶銑層の液面と攪拌パドルとの間の垂直距離は、溶銑層の高さの1/3である。
【0051】
実施例3
使用される装置は実施例1と同じである。
【0052】
方法は、次の点を除いて、実施例1と同じである。
(1)還元剤の使用量は、鉄含有鉱物粉中のFeと還元剤中のCとの完全な反応に必要な総C量の1.2倍で添加され、スラグ形成剤の使用量は、混合粉末の塩基度が2.8となるように添加される。
(2)出発溶融池の体積は還元炉の総容積の30%である。昇降装置により攪拌パドルの位置を調整し、攪拌パドルと出発溶融池の液面との間の垂直距離が出発溶融池の高さの1/2となるように制御する。
(3)酸素富化燃料中のC元素とO元素の質量比は3:5である。
(4)渦の高さと直径の比は1.5である。
【0053】
実施例4
使用される装置は実施例1と同じである。
【0054】
方法は、次の点を除いて、実施例1と同じである。
(1)還元剤の使用量は、鉄含有鉱物粉中のFeと還元剤中のCとの完全な反応に必要な総C量の1.3倍で添加され、スラグ形成剤の使用量は、混合粉末の塩基度が3となるように添加される。
(2)出発材料は混合粉末である。出発溶融池の体積は還元炉の総容積の30%である。吸気通路を通じて還元炉内に酸素富化燃料を吹付けることで、出発材料を加熱する。酸素富化燃料は天然ガスと酸素ガスの混合物であり、酸素富化燃料中のC元素とO元素の質量比は3:6である。昇降装置により攪拌パドルの位置を調整し、攪拌パドルと出発溶融池の液面との間の垂直距離が出発溶融池の高さの1/2となるように制御する。
(3)高温溶融池を形成する際に導入される酸素富化燃料は、天然ガスと酸素ガスの混合物であり、酸素富化燃料中のC元素とO元素の質量比は3:6である。
(4)渦の高さと直径の比は2.5である。
(5)溶銑層の液面と攪拌パドルとの間の垂直距離は、溶銑層の高さの1/3である。
【符号の説明】
【0055】
1-1...スクリューフィーダー、1-2...サイロ、1-3...原料投入パイプ、2-1...還元炉、2-2...攪拌装置(攪拌パドルとシャフトを含む)、2-3...溶銑層、2-4...スラグ層、2-5...空気圧縮機、3-1...サイフォンパイプ、3-2...緩衝槽、3-3...溶銑取鍋、3-4...スラグオーバーフロー口、3-5...スラグ取鍋、4-1...余熱回収システム、4-2...煙道ガス浄化システム、4-3...煙突。
図1
【国際調査報告】