(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-05
(54)【発明の名称】フレクシャ上へのアクチュエータ取り付けプロセスのための三段階設計
(51)【国際特許分類】
G11B 21/21 20060101AFI20230329BHJP
G11B 21/10 20060101ALI20230329BHJP
【FI】
G11B21/21 C
G11B21/21 D
G11B21/10 N
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022548014
(86)(22)【出願日】2021-02-03
(85)【翻訳文提出日】2022-09-14
(86)【国際出願番号】 US2021016447
(87)【国際公開番号】W WO2021158683
(87)【国際公開日】2021-08-12
(32)【優先日】2020-02-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-02-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517151084
【氏名又は名称】マグネコンプ コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】MAGNECOMPCORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】ハーン、ピーター
(72)【発明者】
【氏名】グラース、デイビッド
(72)【発明者】
【氏名】イー、クエン チー
(72)【発明者】
【氏名】タナンピー、ベンジャパ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァンダーリー、キース アラン
(72)【発明者】
【氏名】スダチュン、プリーチャー
(72)【発明者】
【氏名】プー、ジョナサン
(57)【要約】
三段階アセンブリを製造する方法が提供される。本方法は、PZTオンフレクシャプロセス(POF)中に、第1のマイクロアクチュエータ及び第2のマイクロアクチュエータをフレクシャへのトレースジンバルに取り付けるステップを含む。第1のマイクロアクチュエータはフレクシャの先端に位置し、第2のマイクロアクチュエータはフレクシャの基端に位置する。本方法はまた、第1のマイクロアクチュエータ及び第2のマイクロアクチュエータを含むトレースジンバルを固定するために、トレースジンバルをベースプレート及びロードビームに溶接するステップを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
三段階アセンブリを製造する方法であって、
PZTオンフレクシャプロセス(POF)中に、第1のマイクロアクチュエータ及び第2のマイクロアクチュエータをフレクシャへのトレースジンバルに取り付けるステップであって、前記第1のマイクロアクチュエータは前記フレクシャの先端に位置し、前記第2のマイクロアクチュエータは前記フレクシャの基端に位置する、ステップと、
前記第1のマイクロアクチュエータ及び前記第2のマイクロアクチュエータを含む前記トレースジンバルを固定するために、前記トレースジンバルをベースプレート及びロードビームに溶接するステップと、を含む、方法。
【請求項2】
前記ベースプレートは、ステンレス鋼により構成される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1のマイクロアクチュエータ及び前記第2のマイクロアクチュエータは、横モード、剪断モード又は曲げモードで前記フレクシャに取り付けられる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第2のマイクロアクチュエータは、前記トレースジンバルのジンバルヘッドに位置する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第1のマイクロアクチュエータは、ロードビーム領域において前記トレースジンバルの前記ジンバルヘッドの反対側に位置する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記第1のマイクロアクチュエータ及び前記第2のマイクロアクチュエータを前記トレースジンバルに取り付けるステップの前に、折り畳み特徴部を備える棚を前記トレースジンバルに溶接するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記折り畳み特徴部は、前記ロードビームに対して60度から85度の角度で配置される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記折り畳み特徴部は、前記ロードビームに対して80度に配置される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
受動的減衰を提供するために減衰材料を取り付けるステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
フレクシャ上に形成された三段階アセンブリであって、
前記フレクシャの先端に位置する第1のマイクロアクチュエータであって、前記第1のマイクロアクチュエータは基端及び先端を含む、第1のマイクロアクチュエータと、
前記第1のマイクロアクチュエータの上面に取り付けられた第1の電極及び前記第1のマイクロアクチュエータの底面に取り付けられた第2の電極と、
前記第1の電極をトレースジンバルに接続するために、前記基端で前記第1の電極の少なくとも一部に接触するように構成された第1の導電性接着剤と、
前記第2の電極を前記トレースジンバルに接続するために、前記第2の電極の少なくとも一部に接触するように構成された第2の導電性接着剤と、を備える、三段階アセンブリ。
【請求項11】
前記第1のマイクロアクチュエータをマウントプレートに固定するために、前記基端で前記第2の電極及び前記第1のマイクロアクチュエータの少なくとも一部と接触するように構成された第1の非導電性接着剤をさらに含む、請求項10に記載の三段階アセンブリ。
【請求項12】
前記先端で前記第2の電極の少なくとも一部と接触するように構成された第2の非導電性接着剤をさらに含む、請求項10に記載の三段階アセンブリ。
【請求項13】
第2の非導電性接着剤に接続するように構成された前記トレースジンバル上の棚特徴部をさらに含む、請求項12に記載の三段階アセンブリ。
【請求項14】
前記第2の導電性接着剤は、前記第2の電極を前記トレースジンバルに接続するために前記先端に位置する、請求項13に記載の三段階アセンブリ。
【請求項15】
前記第2の導電性接着剤は、前記第2の電極を前記トレースジンバルに接続するために前記基端と前記先端との間に位置する、請求項13に記載の三段階アセンブリ。
【請求項16】
前記第1のマイクロアクチュエータの反対側の、前記フレクシャの基端に位置する第2のマイクロアクチュエータをさらに備える、請求項10に記載の三段階アセンブリ。
【請求項17】
前記第2のマイクロアクチュエータは、前記フレクシャのジンバルヘッドに位置する、請求項16に記載の三段階アセンブリ。
【請求項18】
前記第1のマイクロアクチュエータは、ロードビーム領域において前記フレクシャの前記ジンバルヘッドの反対側に位置する、請求項17に記載の三段階アセンブリ。
【請求項19】
前記トレースジンバルは、前記第1の電極、前記第1のマイクロアクチュエータ、及び前記第1の導電性接着剤の間の電気的接続を可能にするための折り畳み特徴部を備える、請求項10に記載の三段階アセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、概して、アクチュエータをサスペンションに取り付ける改良されたプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
ハードディスクドライブ(HDD:hard-disk drive)は、保護筐体内に収容され、磁気表面を有する1つ又は複数の円形ディスク(ディスクはプラッタと呼ばれることもある)上にデジタル符号化データを記憶する不揮発性記憶装置である。HDDの動作時には、各磁気記録ディスクはスピンドルシステムによって高速回転される。データは、アクチュエータによってディスクの特定の位置の上に位置決めされる読み取り/書き込みヘッドを使用して磁気記録ディスクから読み取られ、磁気記録ディスクに書き込まれる。
【0003】
読み取り/書き込みヘッドは、磁気記録ディスクの表面からデータを読み取り、磁気記録ディスクの表面にデータを書き込むために磁界を使用する。磁気双極子場は磁極からの距離とともに急速に減少するので、スライダに収容された読み取り/書き込みヘッドと磁気記録ディスクの表面との間の距離は厳密に制御されなければならない。アクチュエータは、磁気記録ディスクが回転する間、読み取り/書き込みヘッドと磁気記録ディスクの表面との間の適切な距離(「浮上高さ」)を提供するために、スライダ上のサスペンションの力及びスライダ気体軸受面(ABS:air bearing surface)の空気力学的特性を部分的に利用する。
【0004】
面密度(ディスク表面の所与の領域上に記憶され得る情報ビットの量の尺度)の増加は、比較的粗い位置決めを提供する一次ボイスコイルモータ(VCM:voice coil motor)アクチュエータに加えて、比較的細かい位置決めを通じて改善されたヘッドの位置決めのための二次アクチュエータ及び三次アクチュエータの必要な開発及び実装をもたらした。いくつかのハードディスクドライブは、マイクロアクチュエータ又はミリアクチュエータ設計を採用して、記録ヘッドの第2段階及び/又は第3段階の作動を提供し、記録トラックに対するヘッドのより正確な位置決めを可能にする。ミリアクチュエータは、サスペンションの前端全体、すなわちばね、ロードビーム、フレクシャ及びスライダを移動させるアクチュエータとして広く分類され、典型的には第2段階のアクチュエータとして使用される。マイクロアクチュエータは、典型的には第3段階のアクチュエータとして使用され、スライダのみを移動させるアクチュエータ、サスペンション及びロードビームに対してスライダを移動させるアクチュエータ、又はスライダ本体に対して読み書き素子のみを移動させるアクチュエータとして広く分類される。第3段階のアクチュエータは、より正確なヘッドの位置決めのために、第1段階のアクチュエータ(例えば、VCM)及び第2段階のアクチュエータ(例えば、ミリアクチュエータ)とともに使用される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
改良されたサスペンションが引き続き必要とされている。性能が向上したサスペンションが望まれている。サスペンションは、効率的に製造することができるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
三段階(tri-stage)アセンブリを製造する方法が提供される。本方法は、PZTオンフレクシャプロセス(POF:PZT on flexure)中に第1のアクチュエータ(例えばmPZT)及び第2のアクチュエータ(例えばuPZT)をトレースジンバル(trace gimbal)に取り付けることを含む。mPZTはuPZTの基端に位置する。本方法はまた、ベースプレートと、ロードビーム(load beam)と、トレースジンバルとを溶接することを含み、その後、ダンパ材料の取り付け及び他のプロセス技術を含むがこれらに限定されない後続のサスペンション製造プロセスに移る。
【0007】
いくつかの実装形態では、ベースプレートはステンレス鋼により構成される。さらに、mPZT及びuPZTマイクロアクチュエータは、横モード、剪断モード又は曲げモードで動作可能であってもよい。uPZTは、トレースジンバルのジンバルヘッドに位置してもよい。さらに、mPZTは、ロードビーム領域においてトレースジンバルのジンバルヘッドに対向して位置してもよい。
【0008】
本方法はまた、mPZT及びuPZTをトレースジンバルに取り付ける前に、折り畳み特徴部を備える棚をトレースジンバルに溶接することを含んでもよい。いくつかの実装形態では、折り畳み特徴部は、ロードビームに対して80度に配置される。
【0009】
三段階アセンブリがまた提供される。三段階アセンブリは、基端及び先端を含むマイクロアクチュエータを含む。三段階アセンブリはまた、マイクロアクチュエータの上面に取り付けられた第1の電極及びマイクロアクチュエータの底面に取り付けられた第2の電極を含んでもよい。三段階アセンブリはまた、第1の電極をトレースジンバルに接続するために基端で第1の電極の少なくとも一部に接触する第1の導電性接着剤と、第2の電極をトレースジンバルに接続するために第2の電極の少なくとも一部に接触する第2の導電性接着剤とを含んでもよい。
【0010】
三段階アセンブリはまた、マイクロアクチュエータをトレースジンバルに固定するために、基端で第2の電極及びマイクロアクチュエータの少なくとも一部と接触する第1の非導電性接着剤を含んでもよい。第2の非導電性接着剤もまた、先端で第2の電極の少なくとも一部と接触するように含まれてもよい。三段階アセンブリはまた、第2の非導電性接着剤に接続するように構成されたトレースジンバル上の棚特徴部を含んでもよい。
【0011】
いくつかの実装形態では、第2の導電性接着剤は、第2の電極をトレースジンバルに接続するために先端に位置する。他の実装形態では、第2の電極をトレースジンバルに接続するために、第2の導電性接着剤が基端と先端との間に位置してもよい。
【0012】
本発明の実装形態の他の特徴及び利点は、添付の図面及び以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
本発明の実装形態は、添付図面の図において限定ではなく例として示され、図面では同様の参照符号は同様の要素を示す。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】一実装形態による三段階作動構造を備えたフレクシャを有するサスペンションの斜視図である。
【
図2】
図1の三段階作動構造の下側の斜視図である。
【
図3】三段階作動構造を製造するための一実装形態によるプロセスを説明するフローチャートである。
【
図4】一実装形態による、例示的な第1のトレースジンバル設計を示す図である。
【
図5】一実装形態による、
図4のトレースジンバルに取り付けられた第1のマイクロアクチュエータの断面図である。
【
図6】一実装形態による、
図4のトレースジンバル設計を備えた三段階作動構造を製造するためのプロセスを説明するフローチャートである。
【
図7】一実装形態による、例示的な第2のトレースジンバル設計を示す図である。
【
図8】一実装形態による、
図7の第2のトレースジンバル設計に取り付けられた第1のマイクロアクチュエータの断面図である。
【
図9】一実装形態による、
図7の第2のトレースジンバル設計を備えた三段階作動構造を製造するためのプロセスを説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
第1のマイクロアクチュエータとトレースジンバルとの間の直接取付けを可能にする、開示されたサスペンション構造及び製造プロセスの好ましい実装形態。取り付け後、トレースジンバルはマウントプレート(mount plate)に溶接され、第1のマイクロアクチュエータを固定する。その結果、本プロセスは、第1のマイクロアクチュエータをベースプレートに固定するための不必要な接着剤の注入を必要としない。接着剤は、ディスクドライブサスペンションクリーンルームアセンブリ環境内で潜在的な汚染問題を引き起こす。その結果、接着剤の使用を最小限に抑えることは、製造の複雑さ及びコストを低減し、ディスクドライブアセンブリの信頼性を高めるのに役立つ。
【0015】
図1は、同じ場所に位置する又はジンバルベースの作動構造16を有するサスペンション2の斜視図である。
図2は、サスペンション2の下側の斜視図である。サスペンション2は、フレクシャ4及びベースプレート6を含んでもよい。ベースプレート6は、基端取付構造として構成してもよい。サスペンション2はまた、剛性又はビーム領域10を有するロードビーム8を含んでもよい。ビーム領域10は、ばね又はヒンジ領域12に沿ってベースプレート6に連結されてもよい。ロードビーム8は、ステンレス鋼から形成してもよい。
【0016】
フレクシャ4は、フレクシャ4の先端にトレースジンバル14を含んでもよい。作動構造16は、ロードビーム8の先端に隣接して、トレースジンバル14上に位置してもよい。説明のために、基端及び先端という用語は、サスペンション2の長手方向軸に沿った相対的な方向を指す。例えば、ベースプレート6はロードビーム8の基端にある。軸キー13は、
図1及び
図2におけるX軸、Y軸及びZ軸を示す。サスペンション2は、概して、基端方向及び先端方向のX軸に沿って細長い。Y軸は左右の横方向を表す。フレクシャ4を含むサスペンション2は、X軸及びY軸によって規定されるX-Y平面とほぼ同一平面上にある。Z軸は、高さ並びに底部及び上部の向きを表す。
【0017】
サスペンション2はまた、第1のマイクロアクチュエータ17(例えばmPZT)を含んでもよい。第1のマイクロアクチュエータ17は、ベースプレート6上に取り付けられ、ロードビーム8を移動させるように構成されてもよい。第1のマイクロアクチュエータ17の伸縮により、サスペンション2のロードビーム8が移動する、より具体的にはロードビーム8全体が回転する。ベースプレート6は、擬似特徴部19を含んでもよく、第1のマイクロアクチュエータ17を受けて固定するように構成されてもよい。具体的には、擬似特徴部19は、第1のマイクロアクチュエータ17の質量、質量分布、及び剛性のバランスを取る。擬似特徴部19は、別個に製造され、次いでレーザ溶接又は接着剤等によってベースプレート6に固定されてもよい。擬似特徴部19はまた、部分的に又は全体的にベースプレート6と一体的に製造されてもよい。ベースプレート6は、典型的にはステンレス鋼(SST)製であるので、擬似特徴部は、単一のステンレス鋼片からベースプレート6と一体的に形成されてもよい。エッチング又はレーザアブレーションは、擬似特徴部19内に、より大きい及びより小さい厚さ並びに幅の領域を生成することがある。さらに、レーザ処理は、擬似特徴部19内のステンレス鋼の機械的特性を局所的に変化させることができ、例えば局所的により柔らかい領域を生成し、擬似特徴部19の特性を微調整するのに役立つ。
【0018】
第1のマイクロアクチュエータ17は、非導電性接着剤を用いてベースプレート6に固定されている。例えば、エポキシ接着剤のような非導電性接着剤を塗布して第1のマイクロアクチュエータ17を取り付けてもよく、導電性接着剤を塗布して銅パッドを第1のマイクロアクチュエータ17の上面に電気的に橋渡ししてもよく、これがマイクロアクチュエータの駆動電圧電極を画定する。第2のマイクロアクチュエータ又はマイクロアクチュエータ対、例えば拘束層構造マイクロアクチュエータ(CLC(constraining layer construction) PZT)は、収容空間18においてトレースジンバル14に取り付けてもよい。トレースジンバル14の両側のマイクロアクチュエータ対は、ジンバルに対してプッシュプル方式で作用してヘッドスライダを回転させる。ヘッドスライダは、それぞれ、ディスクドライブプラッタからデータを読み取り、ディスクドライブプラッタにデータを書き込むために、磁気読み取りトランスデューサ及び磁気書き込みトランスデューサを含む。第1のマイクロアクチュエータ17は、ベースプレート6とロードビーム8との間に取り付けられているので、粗動を行うように構成してもよい(m段階)。第2のマイクロアクチュエータは、フレクシャ4上に取り付けられているので、微調整を行うように構成してもよい(u段階)。
【0019】
図3は、
図1及び
図2のサスペンション2を製造するためのプロセス200を説明する例示的なフローチャートを示す。プロセス200は、
図1及び
図2のサスペンション2の構成要素を参照して詳細に説明される。最初の事項として、ステップ201において、第2のマイクロアクチュエータが収容空間18でトレースジンバル14に取り付けられる。具体的には、エポキシ接着剤等の接着剤の領域を収容空間18に塗布してもよく、導電性接着剤を塗布して銅パッドを第2のマイクロアクチュエータの上面に電気的に橋渡しし、第2のマイクロアクチュエータの駆動電圧電極を画定する。ステップ202において、ベースプレート6とロードビーム8とトレースジンバル14とを溶接する。ステップ203において、減衰材料がサスペンション2に取り付けられる。例えば、減衰材料は、受動的減衰を提供するために第2のマイクロアクチュエータとサスペンションとの間に挿入された粘弾性減衰層である。最近の高性能ハードディスクドライブにおけるスピンドルモータの速度は、この要求を満たすために絶えず増加している。しかし、高速回転によりドライブ内に空気流が発生する。これはヘッドの位置決め精度に大きな影響を与える。サスペンションに取り付けられた粘弾性層は、空気流によって励起されるサスペンションの構造共振モードを抑制し、外部衝撃によって励起されるキャリッジアームからサスペンションへの振動の伝達を低減する。さらに、制御されたマイクロアクチュエータ素子及びVCMからもたらされる能動制御と、粘弾性層からの受動的減衰との両方が、トラック探索及び追従中の精密な位置決め及び振動抑制に寄与することができる。
【0020】
次に、ステップ204において、第1のマイクロアクチュエータ17は、ベースプレート6に取り付けられる。ステップ201と同様に、第1のマイクロアクチュエータ17用の収容空間にエポキシ接着剤等の接着剤の領域が塗布され、導電性接着剤を塗布して銅パッドを第1のマイクロアクチュエータの上面に電気的に橋渡しし、そのマイクロアクチュエータの駆動電圧電極を画定する。本明細書に示すように、第1及び第2のマイクロアクチュエータの取り付けは、2つの別個のプロセスステップで実行される。結果として、製造プロセスは、余分な製造コストと、溶接プロセス(ステップ202)後の追加の接着剤の注入とを必要とする。本明細書に開示される実装形態は、第1のマイクロアクチュエータ17をフレクシャ4に取り付けることを可能にするトレースジンバル設計を提供する。
【0021】
図4は、一実装形態による、例示的な第1のトレースジンバル400を示す。この図は単なる例であり、本特許請求の範囲を過度に限定するものではない。当業者であれば、多くの他の変形、修正、及び代替を認識するであろう。図示のように、トレースジンバル400は、ヘッド部分403を含む。単なる例として、一対のPZT素子402は、ジンバル400のヘッド部分403に取り付けられる。PZT素子402は、当技術分野で知られているものを含む技法を使用して、同じ場所に配置されたuDSAフレクシャ設計上に取り付けてもよい。第1のマイクロアクチュエータ及び第2のマイクロアクチュエータ又はマイクロアクチュエータ対(uPZT)は、横モード、剪断モード又は曲げモードで動作可能である。スライダの回転中、PZT作動装置の一方は長さが増加し、他方は長さが減少することで、回転運動が発生する。当然のことながら、多くの他の変形、代替、及び修正が存在し得る。
【0022】
第3のマイクロアクチュエータ(mPZT)405も、トレースジンバル400に直接取り付けてもよい。第1、第2、及び第3のマイクロアクチュエータがトレースジンバル400に取り付けられると、トレースジンバル400をベースプレートに溶接することができる。以下に詳述するように、マイクロアクチュエータ対(uPZT)及び第3のマイクロアクチュエータ(mPZT)の取り付けは、1つのステップで実行される。特に
図4を参照すると、トレースジンバル400の全幅Wは、1.5mmから3mmの間である。いくつかの例では、トレースジンバル400の全幅Wは2.040mmである。いくつかの実装形態では、パネル密度への影響を回避するために、2つ以上のmPZTに狭いプロファイルを設けてもよい。追加のmPZTの取り付けは、マイクロアクチュエータ対(uPZT)及び第3のマイクロアクチュエータ(mPZT)の取り付けと同じステップで行われる。ベースプレートの構成は、トレースジンバル400を考慮して修正してもよい。
【0023】
図5は、一実装形態による、トレースジンバル400に取り付けられたマイクロアクチュエータ417(例えば、mPZT)の断面図を示す。マイクロアクチュエータ417は、基端及び先端を含んでもよい。第1の電極418は、マイクロアクチュエータ417の上面に取り付けられてもよい。さらに、第2の電極は、マイクロアクチュエータ417の底面に取り付けられてもよい。第1の導電性接着剤416Aは、基端で第1の電極418Aの少なくとも一部に取り付けられてもよい。第1の導電性接着剤416Aは、第1の電極418Aをトレースジンバル400に接続することができる。第2の導電性接着剤416Bは、第2の電極418Bの少なくとも一部と接触するように構成される。第2の導電性接着剤416Bは、第2の電極418Bをトレースジンバル400に接続することができる。この構成に特有のものとして、第2の導電性接着剤416Bは、第2の電極418Bをトレースジンバル400に接続するために先端に位置する。他の様々な実装形態は、
図8に関して以下で説明される。
【0024】
第1の非導電性接着剤415は、基端で第2の電極418B及びマイクロアクチュエータ417の少なくとも一部と接触するように構成されてもよい。第1の非導電性接着剤415は、マイクロアクチュエータ417をトレースジンバル400に対する定位置に固定する役割を果たす。導電性接着剤416Bは、トレース要素、すなわち銅414、及びポリイミド層等の絶縁層413に接続してもよい。
【0025】
いくつかの実装形態では、トレースジンバル400は、第1の電極418A、マイクロアクチュエータ417、及び第1の導電性接着剤416Aの間の電気的接続を可能にするための折り畳み特徴部401を含んでもよい。折り畳み特徴部401は、トレースジンバル400に対してその位置を変動させることができる。いくつかの実装形態では、折り畳み特徴部401は、トレースジンバル400に対して60度から85度(例えば80度)の角度であってもよい。代替的な実装形態では、マイクロアクチュエータ417は、第1及び第2の電極418の両方がアクセス可能であり、折り畳み特徴部401の必要性を排除するように構成されてもよい。
【0026】
図6は、トレースジンバル400の設計を備えるサスペンションを製造するためのプロセス600を説明するフローチャートである。プロセス600は、
図4のトレースジンバル400を含むサスペンションの構成要素を参照して詳細に説明される。最初の事項として、ステップ601において、トレースジンバル400には、取り付けられた第1のマイクロアクチュエータ(mPZT)及び第2のマイクロアクチュエータ(uPZT)が設けられる。ステップ602において、ベースプレート406とロードビーム408とを溶接する。ステップ603において、減衰材料を取り付けてもよい。減衰材料は、例えば、粘弾性減衰層を含んでもよい。粘弾性減衰層は、受動的減衰を提供するために、第1のマイクロアクチュエータ(mPZT)及び第2のマイクロアクチュエータ(uPZT)とサスペンションとの間に挿入される。サスペンションに取り付けられた粘弾性層は、空気流によって励起されるサスペンションの構造共振モードを抑制し、外部衝撃によって励起されるキャリッジアームからサスペンションへの振動の伝達を低減する。プリグラム(pre-gram)形成及び他のサスペンションプロセスを含むがこれらに限定されない他のプロセスが、ステップ603の後に続いてもよい。
【0027】
本明細書に示すように、取り付け後、トレースジンバルはマウントプレートに溶接され、第1のマイクロアクチュエータを固定する。結果として、第1及び第2のマイクロアクチュエータの取り付けは、単一のプロセスステップで実行される。さらに、本プロセスは、第1のマイクロアクチュエータをベースプレートに固定するための不必要な接着剤の注入を必要としない。接着剤は、ディスクドライブサスペンションクリーンルームアセンブリ環境内で潜在的な汚染問題を引き起こすため、接着剤の使用を最小限に抑えることは、製造の複雑さ及びコストを低減し、ディスクドライブアセンブリの信頼性を高めるのに役立つ。したがって、本製造プロセスは、製造ステップ及び関連するコストを削減する。
【0028】
図7は、一実装形態による、例示的な第2のトレースジンバル700の設計を示す。第1及び第2のマイクロアクチュエータは、トレースジンバル700に直接取り付けてもよい。上述したように、第1のマイクロアクチュエータ(mPZT)及び第2のマイクロアクチュエータ(uPZT)の取り付けは、1つのステップで行われる。トレースジンバル400と比較して、トレースジンバル700は、棚特徴部702を含む。
【0029】
図8は、一実装形態による、トレースジンバル700に取り付けられた第1のマイクロアクチュエータ717の断面図を示す。上述のように、第1のマイクロアクチュエータ717は、基端及び先端を含んでもよい。
図5の第1のマイクロアクチュエータ417と
図8の第1のマイクロアクチュエータ717との間の顕著な違いは、トレースジンバル700の棚特徴部702の追加である。さらに、第2の導電性接着剤716Bは、第2の電極718Bをトレースジンバル700に接続するために、基端と先端との間に配置される。
【0030】
第1の非導電性接着剤715Aは、基端で第2の電極718B及び第1のマイクロアクチュエータ717の少なくとも一部と接触するように構成されてもよい。第1の非導電性接着剤715Aは、第1のマイクロアクチュエータ717をトレースジンバル700に対する定位置に固定する役割を果たす。第2の導電性接着剤716Bは、トレース要素、すなわち銅714、及びポリイミド層等の絶縁層713に接続してもよい。
【0031】
第2の非導電性接着剤715Bは、先端で第2の電極718Bの少なくとも一部と接触するように構成されてもよい。トレースジンバル700の棚特徴部702は、第2の非導電性接着剤718Bに接続し、それを支持するように構成されてもよい。
【0032】
棚特徴部702及び折り畳み特徴部701は協働して、第1のマイクロアクチュエータ717の第1の電極718Aと第2の電極718Bとの間の電気的接続を可能にする。上で詳述したように、折り畳み特徴部701は、トレースジンバル700に対してその位置を変動させることができる。
【0033】
図9は、トレースジンバル700を備えるサスペンションを製造するためのプロセス900を説明するフローチャートである。プロセス900は、
図7のトレースジンバル700を含むサスペンションの構成要素を参照して詳細に説明される。最初の事項として、ステップ901において、トレースジンバル700には、溶接によって棚特徴部702が設けられる。ステップ902において、第1及び第2のマイクロアクチュエータが取り付けられる。ステップ903において、ベースプレート706と、ロードビーム708と、トレースジンバル700とを溶接する。ステップ904において、減衰材料がサスペンションに取り付けられる。上述したように、減衰材料は、例えば、粘弾性減衰層を含んでもよい。粘弾性減衰層は、受動的減衰のためにサスペンションに取り付けられる。サスペンションに取り付けられた粘弾性層は、空気流によって励起されるサスペンションの構造共振モードを抑制し、外部衝撃によって励起されるキャリッジアームからサスペンションへの振動の伝達を低減する。
【0034】
本明細書に示すように、第1及び第2のマイクロアクチュエータの取り付けは、単一のプロセスステップで実行される。結果として、本製造プロセスは、製造ステップ及び関連するコストを削減する。さらに、本製造プロセスは、一般的に見られるような、溶接ステップ後の追加の接着剤注入を含まない。また、本明細書に記載の実装形態によるサスペンションは、現行のサスペンションよりも揺れ周波数が低減される。したがって、本明細書に記載のサスペンションは、改善された動作性能を有する。
【0035】
いくつかの実装形態によれば、本明細書に記載のプロセスは、機械的構造及び電気機械的構造のいずれかのうちの1つ又は複数を形成するために使用される。これらの実装形態に関連して説明したが、当業者であれば、本発明の主旨及び範囲を逸脱せずに形状や細部を変更できると理解するであろう。
【国際調査報告】