(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-05
(54)【発明の名称】一酸化グラフェン組成物及びそれを含む電極
(51)【国際特許分類】
C01B 32/198 20170101AFI20230329BHJP
C01G 39/02 20060101ALI20230329BHJP
H01M 4/587 20100101ALI20230329BHJP
H01M 4/133 20100101ALI20230329BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20230329BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20230329BHJP
【FI】
C01B32/198
C01G39/02
H01M4/587
H01M4/133
H01M4/36 A
H01M10/052
H01M4/36 D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022548198
(86)(22)【出願日】2021-01-13
(85)【翻訳文提出日】2022-10-04
(86)【国際出願番号】 US2021013274
(87)【国際公開番号】W WO2021206779
(87)【国際公開日】2021-10-14
(32)【優先日】2020-02-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522315035
【氏名又は名称】コノベート,インコーポレイティド
(71)【出願人】
【識別番号】515076769
【氏名又は名称】ユーダブリューエム・リサーチ・ファウンデーション,インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100217179
【氏名又は名称】村上 智史
(72)【発明者】
【氏名】キャロル ジェイ.ヒルシュムーグル
(72)【発明者】
【氏名】マリヤ ガイダードジスカ-ジョシフォブスカ
(72)【発明者】
【氏名】マービン スコフィールド
(72)【発明者】
【氏名】ヤコブ クトソブスキー
(72)【発明者】
【氏名】シンカン ホアン
(72)【発明者】
【氏名】ダニーロ ラデビチ
【テーマコード(参考)】
4G048
4G146
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
4G048AA08
4G048AB02
4G048AC04
4G048AD03
4G048AD06
4G048AE05
4G146AA01
4G146AB07
4G146AC07A
4G146AC07B
4G146AC08A
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4G146AC11B
4G146AC16A
4G146AC16B
4G146AC17A
4G146AC17B
4G146AC27B
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4G146CB19
4G146CB32
4G146CB35
5H029AJ02
5H029AJ03
5H029AJ05
5H029AJ14
5H029AK03
5H029AL06
5H029AL18
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5H050AA02
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5H050GA02
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5H050HA15
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5H050HA19
(57)【要約】
一酸化グラフェンの1つの原子層の少なくとも1つの領域によって特徴付けられるグラフェン系ナノ材料の組成物であって、一酸化グラフェンに存在する酸素分子の少なくとも一部が特定の結晶構造部分に組み込まれている組成物と、当該組成物の製造方法、当該組成物を組み込んだ電気化学装置における電極、並びに、電極のサイクリングから生じる材料を含む、リチウムと一酸化グラフェンの組成物。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一酸化グラフェンの少なくとも1つの原子層を含む組成物であって、前記一酸化グラフェンに存在する酸素分子の少なくとも一部が、化学部分を有する構造に組み込まれており、前記化学部分が、1,3-ジオキセタン環、1,5-ジオキサ-シクロオクタン環、1,4,7-トリオキサ-シクロノナン環、(3,5,8,10)-テトラオキサ-(1,6)-シクロデカジエン環及びポリカルボニル鎖からなる群から選択された、組成物。
【請求項2】
前記化学部分は、約1:1の炭素対酸素原子比を有する二次元一酸化グラフェン結晶構造の1又は複数の相において原子的に秩序化されており、
前記結晶構造の原子間格子間隔は、0.39~0.42Å
-1及び0.68~0.76Å
-1;0.39Å
-1及び0.45Å
-1;0.33Å
-1及び0.88Å
-1;並びに0.38~0.33Å
-1及び0.77~0.78Å
-1からなる群から選択された制限視野電子回折シグネチャーを示す、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
さらに、少なくとも1種の遷移金属酸化物を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記遷移金属酸化物が、Ti、V、Cr、Zr、Nb、Mo、Fe、Co、Ni、Hf、Ta及びWからなる群から選択された遷移金属を含む、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記結晶構造の原子間格子間隔は、0.39~0.42Å
-1及び0.68~0.76Å
-1;0.39Å
-1及び0.45Å
-1;0.33Å
-1及び0.88Å
-1;並びに0.38~0.33Å
-1及び0.77~0.78Å
-1からなる群から選択された制限視野電子回折シグネチャーを示す、請求項3に記載の組成物。
【請求項6】
前記結晶構造の原子間格子間隔が、赤外分光法において約1,200cm
-1~1,400cm
-1にピークがある炭素‐酸素振動を示す、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記組成物が、約116ppmに
13C固体NMR化学シフトを示す、請求項3に記載の組成物。
【請求項8】
約100m
2/g以下のブルナウアー-エメット-テラー(BET)表面積を有する、請求項3に記載の組成物。
【請求項9】
約100m
2/g~約600m
2/gのブルナウアー-エメット-テラー(BET)表面積を有する、請求項3に記載の組成物。
【請求項10】
さらに、グラフェンの少なくとも1つの原子層を含み、前記グラフェンの少なくとも1つの原子層は、多層を形成する際にAB又はAAスタックとしてランダムにスタック又は局所的に秩序化しうる、請求項3に記載の組成物。
【請求項11】
前記一酸化グラフェンは結晶質又は非晶質であり、
前記グラフェンの少なくとも一部は結晶質であり、及び
前記遷移金属酸化物は非晶質であり、前記組成物全体に実質的に均一に分布しているか、又は電子回折及びX線回折によって検出可能なナノ結晶として前記組成物中に存在する、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
さらに、一酸化グラフェンの前記原子層中に挿入された又は一酸化グラフェンの前記原子層上に吸着されたリチウムイオン又はリチウム原子を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
前記リチウムイオン又はリチウム原子が、前記一酸化グラフェンの炭素原子及び酸素原子に対して、Li
2C
6O
6からLiC
50O
50までの比で存在する、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
前記リチウムイオン又はリチウム原子が、前記一酸化グラフェンの炭素原子及び酸素原子に対して、Li
2C
2O
2、Li
2C
6O
6、Li
2C
8O
8、LiC
6O
6、LiC
8O
8、Li
2C
18O
18、Li
2C
32O
32、LiC
18O
18、LiC
32O
32及びLiC
50O
50から選択された比で存在する、請求項12に記載の組成物。
【請求項15】
前記リチウムイオン又はリチウム原子の少なくとも一部が、前記一酸化グラフェンに対してHサイトを占有する、請求項12に記載の組成物。
【請求項16】
前記リチウムイオン又はリチウム原子の少なくとも一部が、前記一酸化グラフェンに対してSサイトを占有する、請求項12に記載の組成物。
【請求項17】
前記組成物中の前記リチウムイオン又はリチウム原子のΔE
Liが約-0.04eVから約-0.59eVまでの範囲に及ぶ、請求項12に記載の組成物。
【請求項18】
(a)炭素及び酸素源材料を含む第1の溶液、懸濁液又は粉末を、少なくとも1種の遷移金属化合物を含む第2の溶液、懸濁液又は粉末と混合して、混合物を生じさせる工程、及び
(b)一酸化グラフェンを含む組成物を生じる環境、時間、温度及び圧力で、工程(a)の混合物を熱処理する工程、
を含む一連の工程で製造された組成物であって、前記一酸化グラフェンに存在する酸素分子の少なくとも一部が化学部分に組み込まれており、前記化学部分は、1,3-ジオキセタン環、1,5-ジオキサ-シクロオクタン環、1,4,7-トリオキサ-シクロノナン環、(3,5,8,10)-テトラオキサ-(1,6)-シクロデカジエン環及びポリカルボニル鎖からなる群から選択される、組成物。
【請求項19】
前記炭素源材料が、約20%以上の原子状酸素対炭素比を有し、酸化グラフェン、多糖類及びフェノール系ポリマーからなる群から選択される、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
前記遷移金属酸化物が、Ti、V、Cr、Zr、Nb、Mo、Fe、Co、Ni、Hf、Ta及びWからなる群から選択された遷移金属を含む、請求項18に記載の組成物。
【請求項21】
工程(a)において金属原子対炭素原子の原子比「x」を有し、0.05≦「x」≦0.3である、請求項18に記載の組成物。
【請求項22】
工程(a)が、さらに、酸化剤を含む第3の溶液、懸濁液又は粉末を、前記第1及び第2の溶液、懸濁液又は粉末と混合する工程を含む、請求項18に記載の組成物。
【請求項23】
工程(a)が約100℃未満の温度で行われる、請求項18に記載の組成物。
【請求項24】
工程(b)が、工程(a)の前記混合物を約100℃未満の温度で加熱することを含む、請求項18に記載の組成物。
【請求項25】
工程(b)が、工程(a)の前記混合物を約20℃~約350℃の温度に加熱することを含む、請求項18に記載の組成物。
【請求項26】
工程(b)が、工程(a)の前記混合物を約20℃~約800℃の温度に加熱することを含む、請求項18に記載の組成物。
【請求項27】
工程(b)が、工程(a)の前記混合物を約20℃~約1,000℃の温度に加熱することを含む、請求項18に記載の組成物。
【請求項28】
さらに、前記組成物のサイズを減少させることを含む、請求項18に記載の組成物。
【請求項29】
工程(b)において、前記混合物が、350℃に加熱された場合に、約300J/g未満の発熱を示す、請求項18に記載の組成物。
【請求項30】
工程(b)が、一定又は可変の加熱速度で、約21℃~約800℃の温度範囲で前記混合物を加熱することを含む、請求項18に記載の組成物。
【請求項31】
工程(b)において、前記混合物が、800℃に加熱された場合に、300J/g未満の発熱を示す、請求項30に記載の組成物。
【請求項32】
前記組成物内の構造の原子間格子間隔は、0.39~0.42Å
-1及び0.68~0.76Å
-1;0.39Å
-1及び0.45Å
-1;0.33Å
-1及び0.88Å
-1;並びに0.38~0.33Å
-1及び0.77~0.78Å
-1からなる群から選択された制限視野電子回折シグネチャーを示す、請求項18に記載の組成物。
【請求項33】
前記組成物内の構造の原子間格子間隔が、赤外分光法において約1,200cm
-1~1,400cm
-1にピークがある炭素-酸素振動を示す、請求項18に記載の組成物。
【請求項34】
前記組成物が、約116ppmに
13C固体NMR化学シフトを示す、請求項18に記載の組成物。
【請求項35】
約100m
2/g以下のブルナウアー-エメット-テラー(BET)表面積を有する、請求項18に記載の組成物。
【請求項36】
約100m
2/g~約600m
2/gのブルナウアー-エメット-テラー(BET)表面積を有する、請求項18に記載の組成物。
【請求項37】
工程(b)が、大気圧未満の圧力で前記組成物を熱処理することを含む、請求項18に記載の組成物。
【請求項38】
工程(b)が、約2×10
-6torr(2.67×10
-4Pa)以下の圧力で前記組成物を熱処理することを含む、請求項37に記載の組成物。
【請求項39】
工程(b)が、不活性雰囲気下で前記組成物を熱処理することを含む、請求項18に記載の組成物。
【請求項40】
請求項1に記載の組成物を含む電極。
【請求項41】
請求項3に記載の組成物を含む電極。
【請求項42】
請求項18に記載の組成物を含む電極。
【請求項43】
請求項40に記載の電極を含む電荷蓄積装置であって、グラファイトのみのアノードを含む対応する電荷蓄積装置よりも、1C以上で、より速い充電レートを有する、電荷蓄積装置。
【請求項44】
請求項41に記載の電極を含む電荷蓄積装置であって、グラファイトのみのアノードを含む対応する電荷蓄積装置よりも、1C以上で、より速い充電レートを有する、電荷蓄積装置。
【請求項45】
請求項42に記載の電極を含む電荷蓄積装置であって、グラファイトのみのアノードを含む対応する電荷蓄積装置よりも、1C以上で、より速い充電レートを有する、電荷蓄積装置。
【請求項46】
請求項40に記載の電極を含む電荷蓄積装置であって、前記電荷蓄積装置は、約0℃~約-20℃の温度で充電されたグラファイトのみのアノードを含む対応する電荷蓄積装置よりも、約0℃~約-20℃の温度で、より速い充電レート及びより高い充電容量を有する、電荷蓄積装置。
【請求項47】
請求項41に記載の電極を含む電荷蓄積装置であって、前記電荷蓄積装置は、約0℃~約-20℃の温度で充電されたグラファイトのみのアノードを含む対応する電荷蓄積装置よりも、約0℃~約-20℃の温度で、より速い充電レート及びより高い充電容量を有する、電荷蓄積装置。
【請求項48】
請求項42に記載の電極を含む電荷蓄積装置であって、前記電荷蓄積装置は、約0℃~約-20℃の温度で充電されたグラファイトのみのアノードを含む対応する電荷蓄積装置よりも、約0℃~約-20℃の温度で、より速い充電レート及びより高い充電容量を有する、電荷蓄積装置。
【請求項49】
請求項40に記載の電極を含む電荷蓄積装置であって、前記エネルギー蓄積セルが、単調に減少する電位対比容量曲線を示す、電荷蓄積装置。
【請求項50】
請求項41に記載の電極を含む電荷蓄積装置であって、前記エネルギー蓄積セルが、単調に減少する電位対比容量曲線を示す、電荷蓄積装置。
【請求項51】
請求項42に記載の電極を含む電荷蓄積装置であって、前記エネルギー蓄積セルが、単調に減少する電位対比容量曲線を示す、電荷蓄積装置。
【請求項52】
リチウムイオン電池の性能を改善する方法であって、リチウムイオン電池内の既存の電極を請求項40に記載の電極に置換することを含む、方法。
【請求項53】
リチウムイオン電池の性能を改善する方法であって、リチウムイオン電池内の既存の電極を請求項41に記載の電極に置換することを含む、方法。
【請求項54】
リチウムイオン電池の性能を改善する方法であって、リチウムイオン電池内の既存の電極を請求項42に記載の電極に置換することを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
連邦政府の資金提供に関する声明
本発明は、米国科学財団によって授与された1843306号及び米国エネルギー省によって授与されたDE-SC0018795号の下で政府の支援を受けてなされた。政府は、本発明において一定の権利を有する。
【0002】
関連出願への相互参照
本願は、2020年2月6日に出願された米国仮出願第62/971,074号の優先権を主張し、その内容を参照により本明細書に援用する。
【背景技術】
【0003】
グラフェン由来の生成物が最近商品化されている。この材料群のうちの重要な部分としては、酸素化グラフェン材料が挙げられる。酸素化グラフェン系材料は、ランダムに分布したエポキシド基、カルボニル基、カルボキシル基、及びヒドロキシル基などの、炭素原子に結合した酸素官能基と、グラフェンとして知られている六方晶ハニカム炭素骨格に多くの構造欠陥を含む配列を有する複数の炭素原子を含み、酸化グラフェン、部分的に還元された酸化グラフェン、還元された酸化グラフェンと呼ぶことができる。これらは、酸素含有量が最も高いものから最も低いものの順に列挙され、代表的な酸素含有量は、約0.5:1の原子状酸素:炭素から約0.05:1の原子状酸素:炭素比の範囲内である。酸素化グラフェン材料は、センサ、水フィルタ、電気化学セルの電極、防食コーティング、ゴムやプラスチックへの添加剤など、多くの用途向けに大規模に製造されている。グラフェン及び酸素化グラフェン材料の注目すべき特徴の1つは、高い表面積を有することである。
【0004】
酸化グラフェンの製造又は合成の主な方法は、制御された温度でグラファイトを酸及び酸化剤により処理して(例えば、Hummer法)、個々の欠損のある酸素化されたグラフェンシートに分離することを含む。酸化グラフェン粉末は、酸化グラフェンに存在する様々な酸素官能基により150℃~250℃で大きな発熱を示すため、乾燥粉末を必要とする用途でのその使用は困難である。通常、酸化グラフェン分散液は、部分的に還元された酸化グラフェン又は還元された酸化グラフェンを生成するために熱処理される。
【0005】
一酸化グラフェンは、一酸化炭素の固体形態であり、1:1の酸素対炭素原子比を有し得る酸素化グラフェン材料群の唯一の構成員である。酸化グラフェンと同様に、本開示に記載の一酸化グラフェン材料は、本開示で実現される電気化学セルのような多くの用途に使用することができるプラットフォーム材料である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
グラフェン(G)は、グラファイトの単一の原子層である。グラファイト(Gr)の三次元結晶構造が六方最密充填であるのに対し、単一グラファイト層又はグラフェンは、炭素原子のみからなる六方晶ハニカムの構造を有する。より広いグラフェン群の材料には、酸素含有量の降順でいくつかの異なる酸化形態が含まれる:一酸化グラフェン(GmO)、酸化グラフェン(GO)、部分的に還元された酸化グラフェン(prGO)、及び還元された酸化グラフェン(rGO)。このグラフェン材料群の構造は、量子ナノレベルと巨視的レベルとの両方で望ましい特性を提供する。ここに開示される組成物は、1:1の平均原子状炭素対酸素比を有するGmOや、GmOとGの調整された複合材料に基づく。いくつかの実施形態では、これらの組成物は、GOから始まるプロセスの産物である。
【0007】
GOがG材料群の出発材料として使用する場合、従来の処理方法のほとんどは、欠陥のあるグラフェン結晶ネットワークに無秩序に結合している4種類の酸素官能基を除去するように設計されている。これらの方法は、残存酸素の原子百分率が低い場合にグラフェンとして表示及び販売されるrGOを製造することを目的とする。GOのいくつかの用途は、官能基の同じ性質を維持しながら、GO及びrGOと比較して中間の量の酸素を含むprGOを生成するその官能基の限定的な減少を必要とする。GmOの酸素官能基は、GO、prGO及びrGOの酸素官能基よりも多く、GO、prGO、rGOの酸素官能基とは異なる。いくつかの実施形態では、ここに開示されるGmO系複合材料は、GmO、G、及び遷移金属酸化物(TMO)から構成され、GmGT材料と命名される。
【0008】
秩序化されたGmOの結晶性単層は、2つの刊行物において、密度汎関数理論(DFT)によって予測されており(Xiang, H.J. et al (2010) “Structural motifs in oxidized graphene: a genetic algorithm study based on density functional theory,” Physical Review B 035416:82(3)及びMattson, E. C. et al. (2011) “Evidence of nanocrystalline semiconducting graphene monoxide during thermal reduction of graphene oxide in vacuum,” ACS Nano 5:9710-9717)、これらの参考文献の1つ(Mattson, E. C. et al. (2011))及び特許(Chenらの米国特許第9,236,633号)で実験的に報告されている。しかしながら、この合成方法は拡張性がなく、わずかに数ナノグラムのGmO系材料の生成が可能である。(この方法は、電子顕微鏡の真空中で高エネルギー電子及びX線制動放射シャワーを照射して実施される。)上掲のChenらの特許は、金属グリッド上にGmO相を生成させることを記述している。
【0009】
本開示で製造される結晶性GmOと、GmO:G比及びGmO:TMO比は、Chenらの材料と構造上異なり、グラムスケールでの製造が可能である。ここに開示される方法は、さらなる工業的スケールアップに適合し、製造される材料の量は、電気化学セルの作製を達成するのに充分である。
【0010】
本開示は、GmGT複合材料群を得る方法による組成物の生成と、これらの材料の特性評価を報告する。いくつかの実施形態において、純GmOの新規組成物は、4つの異なる結晶相及びそれらの化学構築ブロック群として提示され、処理方法における摂動(perturbations)と関連する。製造された材料は、電極に組み込まれ、充電速度、質量容量、低温動作、及びリチウム(Li)デンドライトの成長を最低限に抑えることにおいて、他の炭素系電極よりも優れた電気化学セルの性能を示す。単一又は複数のリチウム化(充電)と脱リチウム化(放電)のサイクルで電池内でサイクルされたGmGTアノード材料を試験して、GmOフィンガープリントが検出可能なままであることを示す。新規な組成物は、Li及びGmOの相互作用が予測され、これらのLi-GmO材料の理論比容量は約957mAh/gである。
【0011】
電気化学的用途に加えて、GmO含有材料一般及び特定のGmGT群の材料は、幅広い用途のプラットフォーム材料である。これらの材料の特性は、他の炭素-酸素材料とは異なり、触媒用途、核燃料の包装、一般的吸着及び吸収用途、耐食性、電気センシング用途、膜及びろ過用途、フォトニクス、3D印刷可能な材料、並びに複合材料の用途で有益な性能を発揮し、機械的、電気的及び熱的性能を向上させる。GmO含有材料の柔軟な性質は、柔軟でウェアラブルな電子機器、テキスタイル、柔軟な膜、及びポリマー材料の挿入を可能にする。
【0012】
したがって、本開示で開示されるのは、以下である。
1.一酸化グラフェンの少なくとも1つの原子層を含む組成物であって、一酸化グラフェンに存在する酸素分子の少なくとも一部が、化学部分(chemical moieties)を有する構造体に組み込まれており、化学部分が、1,3-ジオキセタン環、1,5-ジオキサ-シクロオクタン環、1,4,7-トリオキサ-シクロノナン環、(3,5,8,10)-テトラオキサ-(1,6)-シクロデカジエン環、及びポリカルボニル鎖からなる群から選択された、組成物。
【0013】
2.化学部分は、約1:1の炭素対酸素原子比を有する二次元一酸化グラフェン結晶構造の1又は複数の相において原子的に秩序化されており、
結晶構造の原子間格子間隔は、0.39~0.42Å-1及び0.68~0.76Å-1;0.39Å-1及び0.45Å-1;0.33Å-1及び0.88Å-1;並びに0.38~0.33Å-1及び0.77~0.78Å-1からなる群から選択された制限視野電子回折シグネチャー(selected area electron diffraction signature)を示す、請求項1に記載の組成物。
【0014】
3.さらに、少なくとも1種の遷移金属酸化物を含む、請求項1に記載の組成物。
【0015】
4.遷移金属酸化物が、Ti、V、Cr、Zr、Nb、Mo、Fe、Co、Ni、Hf、Ta及びWからなる群から選択された遷移金属を含む、請求項3に記載の組成物。
【0016】
5.結晶構造の原子間格子間隔は、0.39~0.42Å-1及び0.68~0.76Å-1;0.39Å-1及び0.45Å-1;0.33Å-1及び0.88Å-1;並びに0.38~0.33Å-1及び0.77~0.78Å-1からなる群から選択された制限視野電子回折シグネチャーを示す、請求項3に記載の組成物。
【0017】
6.結晶構造の原子間格子間隔が、赤外分光法において約1,200cm-1~1,400cm-1にピークがある炭素-酸素振動を示す、請求項5に記載の組成物。
【0018】
7.組成物が、約116ppmに13C固体NMR化学シフトを示す、請求項3に記載の組成物。
【0019】
8.約100m2/g以下のブルナウアー-エメット-テラー(BET)表面積を有する、請求項3に記載の組成物。
【0020】
9.約100m2/g~約600m2/gのブルナウアー-エメット-テラー(BET)表面積を有する、請求項3に記載の組成物。
【0021】
10.さらに、グラフェンの少なくとも1つの原子層を含み、当該グラフェンの少なくとも1つの原子層は、多層を形成する際にAB又はAAスタックとしてランダムにスタック又は局所的に秩序化しうる、請求項3に記載の組成物。
【0022】
11.一酸化グラフェンは結晶質又は非晶質であり、
グラフェンの少なくとも一部は結晶質であり、及び
遷移金属酸化物は非晶質であり、組成物全体に実質的に均一に分布しているか、又は電子回折及びX線回折によって検出可能なナノ結晶として組成物中に存在する、請求項10に記載の組成物。
【0023】
12.さらに、一酸化グラフェンの前記原子層中に挿入された又は一酸化グラフェンの前記原子層上に吸着されたリチウムイオン又はリチウム原子をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【0024】
13.リチウムイオン又はリチウム原子が、一酸化グラフェンの炭素原子及び酸素原子に対して、Li2C6O6からLiC50O50までの比で存在する、請求項12に記載の組成物。
【0025】
14.リチウムイオン又はリチウム原子が、一酸化グラフェングラフェンの炭素原子及び酸素原子に対して、Li2C2O2、Li2C6O6、Li2C8O8、LiC6O6、LiC8O8、Li2C18O18、Li2C32O32、LiC18O18、LiC32O32、及びLiC50O50から選択された比で存在する、請求項12に記載の組成物。
【0026】
15.リチウムイオン又はリチウム原子の少なくとも一部が、一酸化グラフェンに対してHサイトを占有する、請求項12に記載の組成物。
【0027】
16.リチウムイオン又はリチウム原子の少なくとも一部が、一酸化グラフェンに対してSサイトを占有する、請求項12に記載の組成物。
【0028】
17.組成物中のリチウムイオン又はリチウム原子のΔELiが約-0.04eV(約-6.4×10-21J)から約-0.59eV(約-9.45×10-20J)までの範囲に及ぶ、請求項12に記載の組成物。
【0029】
18.(a)炭素及び酸素源材料を含む第1の溶液、懸濁液又は粉末を、少なくとも1種の遷移金属化合物を含む第2の溶液、懸濁液又は粉末と混合して、混合物を生じさせる工程、及び
(b)一酸化グラフェンを含む組成物を生じる環境、時間、温度及び圧力で、工程(a)の混合物を熱処理する工程、
を含む一連の工程で製造された組成物であって、一酸化グラフェンに存在する酸素分子の少なくとも一部が化学部分に組み込まれており、化学部分は、1,3-オキセタン環、1,5-ジオキサ-シクロオクタン環、1,4,7-トリオキサ-シクロノナン環、(3,5,8,10)-テトラオキサ-(1,6)-シクロデカジエン環、及びポリカルボニル鎖からなる群から選択される、組成物。
【0030】
19.炭素源材料が、約20%以上の原子状酸素対炭素比を有し、酸化グラフェン、多糖類及びフェノール系ポリマーからなる群から選択される、請求項18に記載の組成物。
【0031】
20.遷移金属酸化物が、Ti、V、Cr、Zr、Nb、Mo、Fe、Co、Ni、Hf、Ta及びWからなる群から選択された遷移金属を含む、請求項18に記載の組成物。
【0032】
21.工程(a)において金属原子対炭素原子の原子比xを有し、0.05≦x≦0.3である、請求項18に記載の組成物。
【0033】
22.工程(a)が、さらに、酸化剤を含む第3の溶液、懸濁液又は粉末を、第1及び第2の溶液、懸濁液又は粉末と混合する工程を含む、請求項18に記載の組成物。
【0034】
23.工程(a)が約100℃未満の温度で行われる、請求項18に記載の組成物。
【0035】
24.工程(b)が、工程(a)の混合物を約100℃未満の温度で加熱することを含む、請求項18に記載の組成物。
【0036】
25.工程(b)が、工程(a)の混合物を約20℃~約350℃の温度に加熱することを含む、請求項18に記載の組成物。
【0037】
26.工程(b)が、工程(a)の混合物を約20℃~約800℃の温度に加熱することを含む、請求項18に記載の組成物。
【0038】
27.工程(b)が、工程(a)の混合物を約20℃~約1,000℃の温度に加熱することを含む、請求項18に記載の組成物。
【0039】
28.さらに、組成物のサイズを減少させることを含む、請求項18に記載の組成物。
【0040】
29.工程(b)において、混合物が、350℃に加熱された場合に、約300J/g未満の発熱を示す、請求項18に記載の組成物。
【0041】
30.工程(b)が、一定又は可変の加熱速度で、約21℃~約800℃の温度範囲で混合物を加熱することを含む、請求項18に記載の組成物。
【0042】
31.工程(b)において、混合物が、800℃に加熱された場合に、300J/g未満の発熱を示す、請求項30に記載の組成物。
【0043】
32.組成物中の構造の原子間格子間隔は、0.39~0.42Å-1及び0.68~0.76Å-1;0.39Å-1及び0.45Å-1;0.33Å-1及び0.88Å-1;並びに0.38~0.33Å-1及び0.77~0.78Å-1からなる群から選択された制限視野電子回折シグネチャーを示す、請求項18に記載の組成物。
【0044】
33.組成物中の構造の原子間格子間隔が、赤外分光法において約1,200cm-1~1,400cm-1にピークがある炭素-酸素振動を示す、請求項18に記載の組成物。
【0045】
34.組成物が約116ppmに13C固体NMR化学シフトを示す、請求項18に記載の組成物。
【0046】
35.約100m2/g以下のブルナウアー-エメット-テラー(BET)表面積を有する、請求項18に記載の組成物。
【0047】
36.約100m2/g~約600m2/gのブルナウアー-エメット-テラー(BET)表面積を有する、請求項18に記載の組成物。
【0048】
37.工程(b)が、大気圧未満の圧力で組成物を熱処理することを含む、請求項18に記載の組成物。
【0049】
38.工程(b)が、約2×10-6torr(約2.67×10-4Pa)以下の圧力で組成物を熱処理することを含む、請求項37に記載の組成物。
【0050】
39.工程(b)が、不活性雰囲気下で組成物を熱処理することを含む、請求項18に記載の組成物。
【0051】
40.請求項1に記載の組成物を含む電極。
【0052】
41.請求項3に記載の組成物を含む電極。
【0053】
42.請求項18に記載の組成物を含む電極。
【0054】
43.請求項40に記載の電極を含む電荷蓄積装置であって、グラファイトのみのアノードを含む対応する電荷蓄積装置よりも、1C以上で、より速い充電レートを有する、電荷蓄積装置。
【0055】
44.請求項41に記載の電極を含む電荷蓄積装置であって、グラファイトのみのアノードを含む対応する電荷蓄積装置よりも、1C以上で、より速い充電レートを有する、電荷蓄積装置。
【0056】
45.請求項42に記載の電極を含む電荷蓄積装置であって、グラファイトのみのアノードを含む対応する電荷蓄積装置よりも、1C以上で、より速い充電レートを有する、電荷蓄積装置。
【0057】
46.請求項40に記載の電極を含む電荷蓄積装置であって、前記電荷蓄積装置は、約0℃~約-20℃の温度で充電されたグラファイトのみのアノードを含む対応する電荷蓄積装置よりも、約0℃~約-20℃の温度で、より速い充電レート及びより高い充電容量を有する、電荷蓄積装置。
【0058】
47.請求項41に記載の電極を含む電荷蓄積装置であって、電荷蓄積装置は、約0℃~約-20℃の温度で充電されたグラファイトのみのアノードを含む対応する電荷蓄積装置よりも、約0℃~約-20℃の温度で、より速い充電レート及びより高い充電容量を有する、電荷蓄積装置。
【0059】
48.請求項42に記載の電極を含む電荷蓄積装置であって、電荷蓄積装置は、約0℃~約-20℃の温度で充電されたグラファイトのみのアノードを含む対応する電荷蓄積装置よりも、約0℃~約-20℃の温度で、より速い充電レート及びより高い充電容量を有する、電荷蓄積装置。
【0060】
49.請求項40に記載の電極を含む電荷蓄積装置であって、エネルギー蓄積セルが、単調に減少する電位対比容量曲線を示す、電荷蓄積装置。
【0061】
50.請求項41に記載の電極を含む電荷蓄積装置であって、エネルギー蓄積セルが、単調に減少する電位対比容量曲線を示す、電荷蓄積装置。
【0062】
51.請求項42に記載の電極を含む電荷蓄積装置であって、エネルギー蓄積セルが、単調に減少する電位対比容量曲線を示す、電荷蓄積装置。
【0063】
52.リチウムイオン電池の性能を改善する方法であって、リチウムイオン電池内の既存の電極を請求項40に記載の電極に置換することを含む方法。
【0064】
53.リチウムイオン電池の性能を改善する方法であって、リチウムイオン電池内の既存の電極を請求項41に記載の電極に置換することを含む方法。
【0065】
54.リチウムイオン電池の性能を改善する方法であって、リチウムイオン電池内の既存の電極を請求項42に記載の電極に置換することを含む方法。
【0066】
プロセスによる材料のGmGT組成物
GOからrGOを製造する方法は多数あり、prGOを製造する方法は少ない[Claudia Backes et al “Production and processing of graphene and related materials” 2020 2D Mater. 7 022001]。大半は、水溶液中の固体(p)rGO層の懸濁液である生成物を生じる液体溶液中の化学的還元プロセスに基づく。GO及び(p)rGOの懸濁液の加熱は安全であると考えられている。しかしながら、GOの未還元乾燥粉末を加熱することは、発熱反応を伴い、この発熱反応は、粉末及び加熱のパラメーターが充分な制御で制限されない場合、暴走爆発を引き起こし得る[Y. Qiu, et al. “Explosive thermal reduction of graphene oxide-based materials: Mechanism and safety implications”, CARBON 72 (2014) 215-223]。
【0067】
本開示において、GOが炭素の出発源として使用される場合、他に類のない最終処理目標は、できるだけ高い酸素含有量を得ること、及び安全な材料中のGmOの特徴的な官能基に酸素及び炭素部分を生じさせることである。さらなる目標は、結晶性GmO相(以下、「GmGT-X」)及びその無秩序な(非晶質の)変種(variants)(以下、「GmGT-A」)、並びに析出したTMOナノ結晶(以下、「GmGT-NC」)を含む、GmGTの組成物を生成させることである。発熱反応を排除又は最小限に抑え、GmO系材料を実用的な規模で製造可能にする、不動態化された前駆体材料(以下、「pre-GmGT」)を生成させるための安全な処理方法が開発された。最終生成物の材料は、高温に曝される可能性のある用途での使用に安全である。GOを炭素源材料として使用しないGmO系材料の他の実施形態も提示される。
【0068】
いくつかの実施形態において、GmGT材料は、室温で、塩基、酸又は酸化剤、及び1種以上のTM含有源と混合されたGOの市販の水中懸濁液から出発して製造することができる。TM含有源に応じて、GmO部分の数を調整するために、混合時間は、約20℃~約80℃の温度で5分間~数日間の範囲内であることができる。以下で説明するように、最終的なGmGT材料を微調整するためにTMとCとの原子比「x」を使用することができる。
【0069】
いくつかの実施形態では、得られた材料を約20℃から100℃未満までの温度で乾燥させて、乾燥材料のシートを製造する。必要に応じて、これらをフィルム、フレークとして使用したり、乾燥粉末に粉砕してもよい。適切な方法としては、トレイ乾燥、噴霧乾燥、凍結乾燥又はドラム乾燥が挙げられる。これらの方法は、バッチ、セミバッチ又は連続モードで実施することができる。いくつかの実施形態では、この段階で回収された材料は、pre-GmGT材料をもたらす。他の実施形態では、高又は低真空下、あるいは周囲又は不活性雰囲気下で、最高約300℃までの熱処理により、pre-GmGTをもたらす。
【0070】
継続するプロセス又は別の工程として、真空又は不活性雰囲気下でより高い温度までのさらなる制御された熱処理によって、臨界温度領域での加熱速度によって区別される2つの主な部類の最終生成物材料:GmGT(I)及びGmGT(II)が生じる。第1の部類には、温度上昇により発現する3つの異なる組成物がある:a)結晶性G及び分子TMOとともに、さらなるアニーリングにより結晶性α-GmOを生じる非晶質GmOの領域を含むGmGT(I)-A;b)結晶性G及び分子TMOとともに、結晶性α-GmOの領域を含むGmGT(I)-X;及びc)結晶性GmOと、Gと、TMOの析出したナノ結晶とを含むGmGT(I)-NC。第2の部類は、温度上昇によって、成分の結晶性について同様に説明されるGmGT(II)-A及びGmGT(II)-NCの2つの異なる組成物のみを生じる。
【0071】
一実施形態では、Cに対するTMの原子比「x」が、x<約0.05である場合、GmOの特性評価シグネチャーは、上に定義した特定のプロセスの完了時に観察されない。約0.05~約0.3のxの中間範囲では、このプロセス法はGmOの形成をもたらし、TMOナノ微結晶(「NC」)の析出を回避し、GmGT-A又はGmGT-X材料を生じる。xが約0.3を超える場合、TMO NCの核形成及び成長が起こり、サイズは約10nmより大きくなり、プロセスによって最終的なGmGT-NC組成物が生じる。
【0072】
予測モデリングによる組成物
本開示では、炭素に結合した酸素含有部分を含む酸素化グラフェン材料であって、化学部分が、1,3-ジオキセタン環、1,5-ジオキサ-シクロオクタン環、1,4,7-トリオキサ-シクロノナン環、(3,5,8,10)-テトラオキサ-(1,6)-シクロデカジエン環又はポリカルボニル鎖からなる酸素複素環式環の群から選択された酸素化グラフェン材料が開示される(下記
図1及び
図2を参照)。これらの部分は、一酸化グラフェンと呼ばれる二次元層に結合されていてもよく、結晶性ドメインにおいて秩序化されていても、あるいは、非晶質ドメインにおいて無秩序化されていてもよい。非晶質又は秩序化GmO層におけるこれらの原子構造及びそれらの配列は、GO層、prGO層、rGO層又はG層に存在しない。
【0073】
GmO材料及びGmO系複合材料の背後にある技術革新は、2D層の性質が固相の安定性をもたらすことである。これらのGmO層は、炭素原子と酸素原子の独特な配置を示し、GmO単層として、又は、ナノ、マイクロ及びマクロスケールの三次元固体を構築することができるGmO多層として、周囲温度及び高温条件下で安定である、一酸化炭素(CO)の固体形態が形成される。さらに、GmOは高温及び低圧で安定である。GmOの固体の性質とは異なり、COは周囲条件下で気体であり、非常に低い温度(大気圧で-205℃の凝固点)又は非常に高い圧力で3D固体になり得る。COの多数の固体3D結晶相と同様に、GmOは、α-、β-、γ-、及びδ-GmO結晶構造と、本開示に記載されるそれらの分子構築ブロックとを含む複数の2D結晶相を形成することもできる。C2O2構築ブロックとして1,3-ジオキセタン環を有するα-GmOを含む組成物は、本開示に記載される合成プロセスにおいて最も頻繁に形成される。
【0074】
源材料及び生成物組成シグネチャーの特性評価
選択した出発炭素源の特性評価としては、溶液及び懸濁液についてのpH測定、特性振動吸収スペクトル線についての乾燥材料及び粉末の赤外分光法による評価、モルホロジーについての光学及び透過型電子顕微鏡法、結晶性についての電子回折法、元素組成についてのエネルギー分散分光法、並びに、本開示に記載の処理で使用される温度まで加熱された場合の乾燥粉末の質量損失及びエンタルピープロファイルを決定する熱重量分析法及び示差走査熱量測定法又は熱示差分析法が挙げられる。
【0075】
選択したTM溶液の特性評価としては、pHの測定、色の光学的評価のためのUV-VIS分光法、及び、溶液中の遷移金属の計算濃度を検証するための誘導結合プラズマ質量分析法が挙げられる。乾燥溶液及び他の粉末は、特性振動吸収スペクトル線についての赤外分光法、モルホロジーについての光学及び透過型電子顕微鏡法、結晶性についての電子回折法、並びに、本開示に記載の処理で使用される温度まで加熱された場合の粉末の質量損失及びエンタルピープロファイルを決定する熱重量分析法及び示差走査熱量測定法によって評価される。
【0076】
プロセスによる組成物は、それらの物理的及び化学的特性を実証するために、様々な特性評価技術によって一意的に記述される。本開示でカバーされる全ての組成物の予測的計算は、結晶質物質の原子構造(電子及びX線回折)と、結晶質及び非晶質物質の分子振動(赤外線分光法)とに基づいて、体系的に使用される技術のシグネチャーフィンガープリントを予測する。前駆体(pre-GmGT)及び最終(GmGT)材料に特に注意を払いながら、これらの部類の材料とは異なるフィンガープリントを同定するために、様々なさらなる技術を展開した。
【0077】
例えば、酸素化グラフェンにおける新規な化学部分として酸素複素環式環又はポリカルボニル鎖を含むGmGT試料は特性振動を有し得る。それ自体又はα-GmO結晶の1,5-ジオキサシクロオクタン繰返し単位中にある1,3-ジオキセタン環部分の分子振動は、拡散反射フーリエ変換赤外分光法(DR-FTIR)、減衰全反射FTIR(ATR-FTIR)、及び透過型FTIR(T-FTIR)(以下、「IR」)によって体系的に研究されたほとんどの組成物に存在する。これらのIR技術は、実用規模で合成された複合材料のG領域や特定のTMO振動にも敏感である。
【0078】
GmGT複合材料におけるGmO及びGの結晶性は、組成物並びに関連する特性及び機能にとって重要である。GmO層及びG層の秩序化結晶質領域は、TEM(透過型電子顕微鏡)のSAED(制限視野電子回折)などの回折によって検出されるそれらの独特な2D回折ピークを使用して体系的に確認される。原子間間隔は、回折リング及び/又はスポットのSAED測定から決定され、DFTにより予測される計算された間隔と比較される。GmGT-NC材料では、SAEDは、TMOナノ結晶からの独特な回折リング又はスポットを検出し、それらの構造及び化学量論を特定することができる。GmGT多層のc軸間隔も、TEMーSAED及び実験室ベースのX線回折及びシンクロトロンX線回折によって測定され、平均してグラファイトよりも大きい。無秩序なGmO及びG分子部分と結晶欠陥は、バルク材料全体に実質的に均一に分布する分子又は非晶質TMOとともに、SAEDバックグラウンドに寄与する。TEMーSAEDパターンにGmO固有の回折ピークがないことは、GmOが特定の処理で結晶相を形成していないことを示す決定的なサインである。
【0079】
材料自体及び電極の一部としての材料の表面形態は、二次電子及び後方散乱電子を用いた走査型電子顕微鏡(SEM)によって特徴付けられる。エネルギー分散型X線分光法(EDS)からの元素分析マップは、GmGT複合材料中の金属の均一な分布を示す。
【0080】
本開示で開示される材料のいくつかのバージョンでは、周期表のTM列は、個々のTMO又はTMOの組み合わせを形成し得る。いくつかの実施形態では、これらの好ましい金属酸化物としては、Ti、V、Cr、Zr、Nb、Moと、他の可能なメンバーとしてNi、Fe、Co、Hf、Ta及びW、のうちの1種又は2種以上が挙げられる。広域X線吸収微細構造分光法(EXAFS)によって、TM原子の具体例と炭素原子との間に化学結合がないことが示される。GmGT材料のこれらのバージョンでは、金属原子は炭素に結合しておらず、金属炭酸塩、金属炭化物、又は他の金属-炭素種は形成されない。この例の場合、GO層と密接しているTMの存在が、C原子及びO原子の化学変換と、1,3-ジオキセタン環、1,5-ジオキサ-シクロオクタン環、1,4,7-トリオキサ-シクロノナン環、(3,5,8,10)-テトラオキサ-(1,6)-シクロデカジエン環又はポリカルボニル鎖からなる酸素複素環の形成を促進すると考えられる。化学変換は、TM化合物の触媒作用、又は炭素源原子とのそれらの直接的な化学反応を含む場合がある。
【0081】
中間GmO含有材料形態(pre-GmGT)及び最終GmO含有生成物(GmGT)材料の特性評価としては、熱重量測定法(TGA)及び示差走査(DSC)熱量測定法又は熱示差分析法(TDA)が挙げられ、材料の質量損失及びエンタルピープロファイルを決定し、添加剤及び処理パラメーターによる安全性の向上を評価する。ブルナウアー-エメット-テラー(BET)表面積測定は、比表面積を特徴付け、細孔サイズを評価するために使用される。マジック角回転13C固体核磁気共鳴(NMR)を使用して、炭素原子の周囲の局所的化学環境を検出する。プロトンNMR測定により、GOの酸素官能基の一部に存在する水素を決定する。この水素は、出発炭素源材料がGOに由来した場合、GmGT材料を生成するために使用される処理工程によって実質的に除去される。
【0082】
GmGT材料を用いて作製された電気化学セル:実施化及びセルの性能特性
上記のGmO系材料及び複合材料は、実用規模で製造された場合、(例えば)高電力密度の電動工具及び自動車輸送並びに高エネルギー密度の家庭用電化製品などの、商用、レジャー、軍事及び宇宙産業で使用するための電池の急速充電及び低温性能の向上に使用することができる。
【0083】
概して、これらの材料は、層間の間隔がグラファイト材料よりも大きく、容易に大きくなるため、燃料電池、スーパーキャパシタ、固体電解質電池、ナトリウムイオン電池、リチウム硫黄電池、リチウム空気電池をより良好に機能させることができる。
【0084】
本開示で開示される材料は、追加の比容量及び/又はレート能力増強粒子(例えばシリコンナノ粒子など)を必要に応じて含んでいてもよいリチウム及びナトリウムイオン電池アノードの完全な代替品又は添加剤として使用することができる。
【0085】
GmGT複合材料をそのままで含むか、さらにグラファイト微結晶(Gr)及びシリコンナノ粒子(Si)と複合体化されたGmGT複合材料を含むアノードを有するリチウムイオン電池(LIB)の実施形態では、GmGTは、LIBの多数の性能特性を改善する。高速充電(1C~10Cの範囲内)及び低温動作(下は-20℃まで)に加えて、Grと比べてGmOの質量比容量も改善され(例えば、α-GmOは、Grの372mAh/gと比べて2.6倍優れた957mAh/gの理論容量を有する)、著しく低いLi金属デンドライト成長により、サイクル性及び安全性を改善する。
【0086】
被検セルのSAEDによるGmGTとのリチウム相互作用及び新規組成物LGmに関するDFT予測
本開示では、リチウム原子との組み合わせでGmOの1つの原子層の領域を少なくとも含むGmO系材料を含む組成物、並びにこれらの新規なリチウムとGmOに基づく組成物(以下、「LGm」及び「LGmGT」)を合成する方法も開示される。それらの結晶回折シグネチャーは、TEM-SAEDによって検出可能であり、リチウムイオン及び/又はリチウム原子がGmOの原子層に挿入又は吸着される。
【0087】
GmO単層とのリチウム原子相互作用の密度汎関数理論予測計算は、GmO単層がリチウム原子を保持し得ることを示し、これはGの単層の場合に該当せず、Liイオン電池の場合のこの新規なアノード材料の最大理論容量は、Li2C2O2組成物の場合に957mAh/gであることを予測する。
【0088】
リチウムイオン及び/又はリチウム原子は、一酸化グラフェンの炭素原子及び酸素原子に対してLi2C2O2からLiC50O50までの比でLGm組成物中に存在し得る。例えば、リチウムイオン及び/又はリチウム原子は、Li2C2O2、LiC2O2、Li2C6O6、LiC4O4、Li2C8O8、LiC6O6、LiC8O8、Li2C18O18、Li2C32O32、LiC18O18、LiC32O32及びLiC50O50から選択された比で存在してもよい。本発明の意図は、これらすべての形態を、本発明によって可能になる新規組成物として認識させることである。
【0089】
組成物の好ましいバージョンでは、リチウムイオン及び/又はリチウム原子の少なくとも一部が、一酸化グラフェン炭素副格子に対してHサイトを占有する。組成物の別のバージョンでは、リチウムイオン及び/又はリチウム原子の少なくとも一部が、一酸化グラフェン酸素副格子に関してSサイトを占有する。組成物のさらに他のバージョンでは、リチウムイオン及び/又はリチウム原子の少なくとも一部が、一酸化グラフェンに関してHサイト及びSサイトを占有する。Liの輸送は、GmGT材料を用いて作製された電池の急速充電特性をサポートするGmO層と平行して容易に起こる。
【0090】
組成物は、当該組成物が導電性であるように原子的に配置された炭素原子、酸素原子、及びリチウム原子のみからなるか、又はそれらから本質的になることとしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【
図1-1】
図1:
図2に示す構築ブロックから生成され、α-GmO(A)からδ-GmO(D)と表示された固体COの4つの二次元結晶構造相。各構造は、上面投影図、2つの側面投影図、1つの原子構造透視図で表されている。炭素(酸素)原子は、薄い(濃い)灰色の球体として描かれている。
【0092】
【
図2】
図2:
図1に示した二次元一酸化グラフェン結晶の分子構築ブロック。1,3-ジオキセタン(A)は、2つの酸素及び2つの炭素を有する4員複素環である。これは、1,5-ジオキサシクロオクタン(B)及び1,4,7-トリオキサシクロノナンのサブブロックである。2つのさらなる部分は、3,5,8,10-テトラオキサ-1,6-シクロデカジエン(D)及びポリカルボニル鎖(E)である。
【0093】
【
図3-1】
図3:pre-GmGT(I)前駆体材料の特性評価シグネチャー。(A):SAED強度プロファイル(黒色の実線)及びグラフェンのピーク位置(濃灰色の破線)。結晶性α-GmO(薄灰色の実線)のピークがないことに注意。(B):(A)から求められた回折ピーク位置(k)、格子間隔(d)及び強度(I)。(C):結晶性Gのランダムにスタックした多層の回折リングを示すSAEDパターン(スケールバー=10 1/nm)。(D):明視野TEM画像(スケールバー=1μm)。(E):IR吸光度スペクトル。(F):大きなフレークの断面を示すSEM画像(スケールバー=40μm)。シート状のより厚い形態は、文献に記載されている薄いrGOの形態と異なる。(G):アルゴンガス流下で材料が300℃まで加熱された場合の質量損失のTGA曲線。(H):187.5℃にピークがあるが、強い発熱反応がなく、300℃未満でGOで通常見られるよりもエンタルピーがかなり低い関連する熱流のDSC曲線。
【0094】
【
図4-1】
図4:GmGT(I)-A生成物材料の特性評価シグネチャー。(A):SAED強度プロファイル(黒色の実線)及びグラフェンのピーク位置(濃灰色の破線)。結晶性α-GmO(薄灰色の実線)のピークがないことに注意。(B):(A)から求められた回折ピーク位置(k)、格子間隔(d)及び強度(I)。(C):Gの回折リング及びα-GmOリングの欠如を示すSAEDパターン(スケールバー=10 1/nm)。さらなる加熱により、GmGT(I)-A材料をGmGT(I)-Xに変換することができ、結晶性α-GmOの回折シグネチャーを示すことがあることに注意。(D):明視野TEM画像(スケールバー=1μm)。(F):文献に記載されている薄いrGO形態とは異なる、粉末状材料に存在する厚いシート形態を示すSEM画像(スケールバー=20μm)。
【0095】
【
図5-1】
図5:GmGT(I)-X生成物材料の特性評価シグネチャー。(A):SAED強度プロファイル(黒色の実線)並びにα-GmO(薄灰色の実線)及びグラフェンのピーク位置(濃灰色の破線)。(B):(A)から求められた回折ピーク位置(k)、格子間隔(d)及び強度(I)。(C):α-GmO及びGの回折リングを示すSAEDパターン(スケールバー=10 1/nm)。(D):明視野TEM画像(スケールバー=1μm)。(E):IR吸光度スペクトル。(F):文献に記載されている薄いrGO形態とは異なる、粉末状材料に存在する厚いシート形態を示すSEM画像(スケールバー=100μm)。
【0096】
【
図6-1】
図6:GmGT(II)-A生成物材料の特性評価シグネチャー。(A):SAED強度プロファイル(黒色の実線)及びグラフェン(濃灰色の破線)。α-GmO(薄灰色の実線)のピークがないことに注意。(B):(A)から求められた回折ピーク位置(k)、格子間隔(d)及び強度(I)。(C):Gの回折リング及びα-GmOリングの欠如を示すSAEDパターン(スケールバー=10 1/nm)。さらなる加熱により、結晶性α-GmOの回折シグネチャーは生成しないことに注意。(D):明視野TEM画像(スケールバー=1μm)。(E):IR吸光度スペクトル。
【0097】
【
図7-1】
図7:室温から600℃まで10℃/分の速度で加熱し、次いで、600℃から1100℃まで3℃/分の速度で加熱を続けた、GmGT(I)-X生成物材料とGmGT(II)-A生成物材料のブレンドの熱特性評価。(A):温度の関数としての試料の質量損失を示すTGA曲線。最も速い損失は、727℃~750℃で起こり、最高温度で58.7%の質量を保持。(B):GOについて典型的に観測される主発熱ピークのない熱流を示すDSC曲線。(C):出発ブレンド材料の炭素原子の周囲の化学シフトを示す
13C固体NMRスペクトル。
【0098】
【
図8-1】
図8:GmO含有試料の対照材料として使用した部分的に還元された酸化グラフェン(prGO)(試料6.6の摂動)の特性評価シグネチャー。(A):SAED強度プロファイル(黒色の実線)及びグラフェン(濃灰色の破線)。α-GmO(明灰色の実線)のピークがないことに注意。(B):(A)から求められた回折ピーク位置(k)、格子間隔(d)、及び強度(I)。(C):Gの回折リング及びα-GmOリングの欠如を示すSAEDパターン(スケールバー=10 1/nm)。(D):明視野TEM画像(スケールバー=1μm)。(E):IR吸光度スペクトル。
【0099】
【
図9-1】
図9:GmGT(I)-X(試料6.2の摂動)の特性評価シグネチャー。(A):SAED強度プロファイル(黒色の実線)並びにα-GmO(薄灰色の実線)及びグラフェンのピーク位置(濃灰色の破線)。(B):(A)から求められた回折ピーク位置(k)、格子間隔(d)及び強度(I)。(C):α-GmO及びGの回折リングを示すSAEDパターン(スケールバー=10 1/nm)。(D):明視野TEM画像(スケールバー=1μm)。(E):IR吸光度スペクトル。
【0100】
【
図10-1】
図10:リグニンの出発炭素源から生成されたGmGT(I)-X(試料6.3の摂動)の特性評価シグネチャー。(A):SAED強度プロファイル(黒色の実線)並びにα-GmO(薄灰色の実線)及びグラフェンのピーク位置(濃灰色の破線)。(B):(A)から求められた回折ピーク位置(k)、格子間隔(d)及び強度(I)。(C):α-GmO及びGの回折リングを示すSAEDパターン(スケールバー=10 1/nm)。(D):明視野TEM画像(スケールバー=1μm)。(E):IR吸光度スペクトル。
【0101】
【
図11-1】
図11:バイオ再生可能資源から水熱的に生成されたGOからのGmGT(I)-X(試料6.7の摂動)の特性評価シグネチャー。(A):SAED強度プロファイル(黒色の実線)並びにα-GmO(薄灰色の実線)及びグラフェンのピーク位置(濃灰色の破線)。(B):(A)から求められた回折ピーク位置(k)、格子間隔(d)及び強度(I)。(C):α-GmO及びGの回折リングを示すSAEDパターン(スケールバー=10 1/nm)。(D):明視野TEM画像(スケールバー=1μm)。(E):IR吸光度スペクトル。
【0102】
【
図12-1】
図12:有機金属TM源を使用して生成されたGmGT(I)-X(試料6.12の摂動)の特性評価シグネチャー。(A):SAED強度プロファイル(黒色の実線)並びにα-GmO(薄灰色の実線)及びグラフェンのピーク位置(濃灰色の破線)。(B):(A)から求められた回折ピーク位置(k)、格子間隔(d)及び強度(I)。(C):α-GmO及びGの回折リングを示すSAEDパターン(スケールバー=10 1/nm)。(D):明視野TEM画像(スケールバー=1μm)。(E):IR吸光度スペクトル。
【0103】
【
図13-1】
図13:過酸化物添加剤を使用して生成されたGmGT(I)-X(試料6.13の摂動)の特性評価シグネチャー。(A):SAED強度プロファイル(黒色の実線)並びにα-GmO(薄灰色の実線)及びグラフェンのピーク位置(濃灰色の破線)。(B):(A)から求められた回折ピーク位置(k)、格子間隔(d)及び強度(I)。(C):α-GmO及びGの回折リングを示すSAEDパターン(スケールバー=10 1/nm)。(D):明視野TEM画像(スケールバー=1μm)。(E):IR吸光度スペクトル。
【0104】
【
図14-1】
図14:酸性添加剤を使用して生成されたGmGT(I)-X(試料6.14の摂動)の特性評価シグネチャー。(A):SAED強度プロファイル(黒色の実線)並びにα-GmO(薄灰色の実線)及びグラフェンのピーク位置(濃灰色の破線)。(B):(A)から求められた回折ピーク位置(k)、格子間隔(d)及び強度(I)。(C):α-GmO及びGの回折リングを示すSAEDパターン(スケールバー=10 1/nm)。(D):明視野TEM画像(スケールバー=1μm)。(E):IR吸光度スペクトル。
【0105】
【
図15】
図15:アノード活物質が100%GrSiGmGT(II)-Aであるアノードハーフセルの充電/放電曲線。ハーフセル試験を通じて、GrSiGmGT(II)-Aのこのバッチの比容量は540mAh/gであると求められた。黒色の線は、C/20レートでの2つの形成サイクルを表す。灰色の線は、C/3レートでの形成後のサイクルを表す。実線はリチウム化を表し、破線は脱リチウム化を表す。
【0106】
【
図16】
図16:グラファイトアノードハーフセルの充電/放電曲線。このセルの比容量は、約C/20での電流で351mAh/gであった。このグラフは、C/20での2つの形成サイクルと、それに続くC/3でのサイクルデータを示す。このグラファイトハーフセルは約0.2Vの特徴的な電圧プラトーを示す。黒色の線はリチウム化を表し、灰色の線は脱リチウム化を表し、サイクル数は図の凡例で示されている。
【0107】
【
図17-1】
図17:パウチフルセルLiイオン電池におけるGmGTアノード材料と対を成したニッケルマンガンコバルト酸化物(NMC622)カソード及びニッケルコバルトアルミニウム酸化物(NCA)カソードの充電/放電曲線。(A):4.3Vの上限電圧カットオフでサイクルされたNMCは、165mAh/gのC/10比容量及び87%の初期クーロン効率(initial Coulombic efficiency)を示した。(B):4.5Vの上限電圧カットオフでサイクルされたNMCは、187mAh/gのC/10比容量及び85%の初期クーロン効率を示した。(C):4.3Vの上限電圧カットオフでサイクルされたNCAは、194mAh/gのC/10比容量及び90.4%の初期クーロン効率を示した。(D):4.3Vの上限電圧カットオフでサイクルされたNCAは、194mAh/gのC/10比容量及び90.4%の初期クーロン効率を示した。黒色の線はC/10レートでの形成を表す。灰色の線は、a1Cレートでの形成後のサイクリングを表す。実線は脱リチウム化を表し、破線はリチウム化を表す。
【0108】
【
図18-1】
図18:(A)は、グラファイト(Gr)アノード又はGrSiGmGT(II)-A複合材料アノード(1C=200mAh)を備えたパウチセルのレート能力を示すグラフである。灰色ベタ塗りの四角形は、グラファイト対照の充電を表す。灰色の白抜き菱形は、グラファイト対照の放電を表す。黒色ベタ塗りの丸は、87%グラファイト/3%シリコン/10%GmGT(II)-Aの充電を表す。黒色の+記号は、87%グラファイト/3%シリコン/10%GmGT(II)-Aの放電を表す。(B)は、実際のレート能力を直接比較するために、C/10での容量に基づいて正規化された
図18Aの6に示されるレート能力を示すグラフである。灰色ベタ塗りの四角形は、グラファイト対照の充電を表す。灰色の白抜き菱形は、グラファイト対照の放電を表す。黒色ベタ塗りの丸は、87%グラファイト/3%シリコン/10%GmGT(II)-Aの充電を表す。黒色の+記号は、87%グラファイト/3%シリコン/10%GmGT(II)-Aの放電を表す。(C)は、Gr対87%グラファイト/3%シリコン/10%GmGT(II)-Aアノードを備えたパウチセルの充電/放電曲線である。濃色の実線は、グラファイト対照の充放電を表す。薄色の点線は、87%グラファイト/3%シリコン/10%GmGT(II)-A充放電を表す。
【0109】
【
図19-1】
図19:(A)は、C/10で1サイクル形成した後、5℃でサイクリングした後の試験3(a)(本文を参照)のサイクル性能を示すグラフ。灰色ベタ塗りの四角形は、グラファイト対照の充電を表す。灰色の白抜き菱形は、グラファイト対照の放電を表す。黒色ベタ塗りの丸は、87%グラファイト/3%シリコン/10%GmGT(II)-Aの充電を表す。黒色の+記号は、87%グラファイト/3%シリコン/10%GmGT(II)-Aの放電を表す。(B)は、可逆容量に基づいて正規化された、試験3(a)のサイクル挙動を示すグラフである。灰色ベタ塗りの三角形は、87%グラファイト/3%シリコン/10%GmGT(II)-Aの充電を表す。灰色のX記号は、87%グラファイト/3%シリコン/10%GmGT(II)-Aの放電を表す。(C)は、試験3(b)の容量を示すグラフである。灰色ベタ塗りの四角形は、グラファイト対照の充電を表す。灰色の白抜き菱形は、グラファイト対照の放電を表す。黒色ベタ塗りの丸は、87%グラファイト/3%シリコン/10%GmGT(II)-Aの充電を表す。黒色の+記号は、87%グラファイト/3%シリコン/10%GmGT(II)-Aの放電を表す。(D)は、試験3(b)の正規化容量を示すグラフである。灰色ベタ塗りの三角形は、87%グラファイト/3%シリコン/10%GmGT(II)-Aの充電を表す。灰色のX記号は、87%グラファイト/3%シリコン/10%GmGT(II)-Aの放電を表す。(E)は、活物質として97%グラファイト/3%シリコンを有するが、より低いサイクルカウントでのアノードハーフセルの充電容量及び放電容量を示すグラフである。黒丸は充電を表し、灰色のX記号は放電を表す。
【0110】
【
図20】
図20:対象のGmGT(II)-Aを添加剤として使用して作製されたセルについて、-20℃でセルをC/2レートで充電し、C/3レートで放電することを10サイクル行った後、0℃で充電/放電サイクルを100回行ったときの容量(ミリアンペア時間)対サイクル数を示すグラフ。(A):グラファイトアノードを使用したセル。灰色ベタ塗りの丸は、グラファイト対照の充電を表す。灰色のX記号は、グラファイト対照の放電を表す。(B):GmGT(II)-Aアノードを使用したセル。黒色ベタ塗りの四角形は、87%グラファイト/3%シリコン/10%GmGT(II)-Aの充電を表す。黒色の+記号は、87%グラファイト/3%シリコン/10%GmGT(II)-A材料の放電を表す。
【0111】
【
図21】
図21:一連のLi-GmO及びLi-Gr複合材料セルの充電レートの関数としての活物質1グラムあたりの容量を示すグラフ。各黒色の線は、pre-GmGT(II)とGmGT(II)-Aのブレンド10%/グラファイト90%のアノードを含むハーフセルを表し、各灰色の線は、Grアノードを含む対照セルを表す。
【0112】
【
図22】
図22:グラファイトマトリックス中のGmGT(II)-A粒子(明るいフィーチャ)の均一な分布を示す低倍率の後方散乱電子SEM画像。これらのGmO系粒子の相対濃度は、10/90のGmGT/Grの活性アノード組成と整合する(スケールバー=100μm)。
【0113】
【
図23】
図23:二次元のフレーク様形態の証拠を示すGmGT(II)-A粒子(大きな中央粒子)の高倍率二次電子SEM画像。隣接する粒子(主にグラファイト)は、GmGT(II)-A粒子によく結合されている(スケールバー=5μm)。
【0114】
【
図24】
図24:対応するBSE画像(左上のパネル)とともに、炭素分布(右上パネルの明るい領域)、モリブデン分布(左下パネルの明るい領域)及び酸素分布(右下パネルの明るい領域)の一連の元素マップ(マップ間の強度スケールは定量的ではない)。BSE画像(高Z)で明るく見える粒子は、対応する元素マップのモリブデン(Mo)及び酸素(O)に富む領域に対応する。これは、GmGT(II)-A粒子が化学的又は機械的分解なしに電極調製物に組み込まれることのはっきりとした証拠である(スケールバー=9μm)。
【0115】
【
図25】
図25:LCOカソードと、10%の本開示で開示される本発明の材料(pre-GmGT(II)及びGmGT(II)-A)及び90%のグラファイト(Gr)を含むカソードを使用して作製された200mAhパウチ電池のサイクル性能を示す一連のグラフ。(A):200mAhのマイルストーンを達成したことを実証する、C/2及びRTでの、Grアノード、Gr/pre-GmGT(II)アノード、及びGr/GmGT(II)-Aアノードを有するパウチセルの充電/放電曲線。(B):これらの同じ電池のサイクル性能。パウチセルはC/10でフォーマットされ、C/2で9サイクルで調整された後、インピーダンス分析のために50%充電状態に充電された。(C):純グラファイト(Gr)アノード、pre-GmGT(II)を含むGrアノード、及びGmGT(II)-Aを含むGrアノードを有するパウチセルの充電/放電曲線の比較。セルは、10Cで充電し、C/3で放電することにより可能性のある超高速充電及び通常の運転EV状態を模倣した。(D):A~Cにおいて使用した条件の対応するサイクル性能。(E)は、-20℃での充電/放電プロファイル。セルは、1Cで充電し、C/3で放電したところ、33mAhの容量を示した。これは、室温での容量の約20%である。(F)は、Eの電池の対応するサイクル性能を示す。
【0116】
【
図26】
図26は、サイクルした200mAhのグラファイトのみの活性アノードパウチセルから回収したセパレータを示す写真を示す。この写真は、リチウム粉末の堆積をはっきりと示す(茶色の領域)。
【0117】
【
図27】
図27は、サイクルした200mAhのGr/Si/GmGT(II)-A活性アノードパウチセルから回収したセパレータの写真を示す。この写真は、
図26と比較してリチウム粉末の堆積がかなり少ないことを示す。
【0118】
【
図28】
図28は、
図26及び
図27に示したとおりのGr/Si/GmGT(II)-A(左側)及び純Gr(右側)の同じパウチセルについてのアノード表面へのリチウム堆積の写真比較である。Grアノードの金色/黄褐色(右側)は、顕著なLiめっきを示す。本発明の材料を含むアノードの暗褐色は、健全な電池性能を示す。
【0119】
【
図29】
図29は、LIBハーフセルのアノードにおけるGmGT(I)-X材料及びGmGT(II)-A材料についてのリチウム化の初回サイクル後の電子回折を示す。(A):被検材料からのSAEDパターンが、α-GmO及びGリングが保持され、動作セルでのリチウム化後にアノード複合材料で5つのさらなるリングが存在することを示す。(B):4つの主なGmO及びG回折ピーク(I~IVと表示)並びにリチウム化による5つの新たな回折ピーク(a~dと表示)の位置及び強度を示すSAED強度プロファイル。薄灰色の強度プロファイルはGmGT(I)-Xアノードからのものであり、濃灰色はGmGT(II)-Aアノードからのものである。
【0120】
【
図30】
図30は、GmGT(I)-X材料及びGmGT(II)-A材料についてのLIBハーフセルのアノードにおける中程度(100)及び多数(800)のリチウム化サイクル後の電子回折データを示す。(A):被検材料からのSAEDパターンが、初回リチウム化サイクル後に見られた独特な回折リングが残存することを示す。(B):4つの主なα-GmO及びG回折ピーク(I~IVと表示)並びにリチウム化プロセスによる5つの新たな回折ピーク(a~dと表示)の位置及び強度を示すSAED強度プロファイル。グラフェンのピーク(I及びII)は同じ位置に留まり、α-GmOのピーク(III及びIV)はわずかにより小さい散乱角にシフトし、5つの追加の回折リングの強度が強くなった。薄灰色の強度プロファイルはGmGT(I)-Xアノードからのものであり、濃灰色の強度プロファイルはGmGT(II)-Aアノードからのものである。
【0121】
【
図31】
図31:GmO単層への単一Li原子の吸着にとって有利な計算された格子サイト。(A):最低エネルギーサイトは空洞のHサイトである。(B):2番目に低いエネルギーサイトはSサイト、すなわち3つの隣接するO原子によって形成される三角形の重心である。等価なα-GmO単位胞は黒色で表示されている。上面図において、C原子は薄灰色、O原子は黒色、Li原子は濃灰色である。
【0122】
【
図32】
図32:Li及びα-GmOによって形成された新規な組成物の計算された構造。(A):最大理論容量372mAh/gを有する最大限にリチウム化されたグラファイトのhexal構造に相当する新規なLi
2C
6O
6構造。(B):グラファイトの2.6倍である957mAh/gの最大理論比容量を有する、GmOに基づく最大限にリチウム化された新規なLi
2C
2O
2構造。上面図(左側)及び斜視図(右側)では、C原子は薄灰色、O原子は黒色、Li原子は濃灰色である。
【0123】
【
図33】
図33:半導体である完全緩和α-GmO単層の状態密度(GmO式単位あたり)と、0eV(0J)に表示したフェルミエネルギーで状態を有することから導電性であると予測される3つの代表的なLiC
6O
6構造、Li
2C
6O
6構造及びLi
2C
2O
2構造の状態密度。(純α-GmO単層は、フェルミエネルギーで状態を有しないが、バンドギャップは小さい。)
【発明を実施するための形態】
【0124】
略語及び定義:
本明細書及び添付の特許請求の範囲において、要素を説明する文脈での(特に特許請求の範囲の文脈での)「1つ(a)」及び「1つ(an)」並びに「前記(the)」などの単数形の冠詞及び同様の指示対象は、本明細書に別段の記載がない限り、又は文脈に明らかに矛盾しない限り、単数形及び複数形の両方をカバーするものと解釈されるべきである。本明細書における数値範囲の記述は、本明細書に別段の記載がない限り、その範囲内にある各個別の値を個別に参照する簡略化された方法として役立つことを単に意図し、各個別の値は、本明細書に個別に記載されているかの如く本明細書に組み込まれている。本明細書に記載の全ての方法は、本明細書に別段の記載がない限り、又は文脈によって明らかに矛盾しない限り、任意の適切な順序で実施することができる。本明細書で提供される任意及び全ての例、又は例示的な言語(例えば、「など」)の使用は、単に実施形態をより明らかにすることを意図しており、特に明記しない限り、特許請求の範囲を限定するものではない。本明細書におけるいかなる文言も、特許請求されていない要素を必須とするものであるとしと解釈されるべきではない。
【0125】
本明細書において、「約」は当業者によって理解され、それが使用される状況に応じてある程度変化する。当業者には明らかでない用語の使用がある場合、それが使用される文脈を考慮すると、「約」は、その特定の用語の最大±10%を意味する。
【0126】
概して、水素や炭素などの特定の元素への言及は、天然及び人工のその元素の全ての同位体を包含する。例えば、R基が水素を含むように定義されている場合、その水素には、重水素(2H)及びトリチウム(3H)も含まれる。したがって、トリチウム、14C、32P及び35Sなどの放射性同位元素を含む化合物は、本発明の技術の範囲内にある。本発明の技術の化合物にそのような標識を導入するための手順は、本明細書の開示に基づいて当業者はすぐに分かるであろう。
【0127】
2D=二次元。3D=三次元。ATR-FTIR=減衰全反射フーリエ変換赤外分光法。BCC=体心立方格子。BSE-SEM=後方散乱電子走査型電子顕微鏡法。DFT=密度汎関数理論。DR-FTIR=拡散反射フーリエ変換赤外分光法。EDS=エネルギー分散型X線分光法。EXAFS=広域X線吸収微細構造分光法。GmO=COの固体2D形態である一酸化グラフェンを含む組成物。α-、β-、γ-、δ-GmO=GmOの4つの結晶相。GmGT(I)-X=結晶性グラフェン(G)及び分子状遷移金属酸化物(TMO)を有する、結晶性一酸化グラフェン(α-GmOが優勢)の領域を含む組成物。GmGT(I)-A=結晶性G及び分子状TMOを有する、さらなるアニーリングにより結晶性α-GmOを生成する非晶質GmOの領域を含む組成物。GmGT(I)-NC=結晶性G及びナノ結晶性TMOを有する、結晶性GmO(α-GmOが優勢)の領域を含む組成物。GmGT(II)-A=結晶性グラフェン及び分子TMOを有する、非晶質GmOの領域を含む組成物。GmGT(II)-NC=結晶性グラフェン及び結晶性TMOを有する、非晶質GmOの領域を含む組成物。GO=酸化グラフェン。GrSiGmGT=グラファイト/シリコン/GmGT複合材料を含む組成物。HDPE=高密度ポリエチレン。LGm=リチウムグラフェン一酸化物(LixC2O2)を含む組成物。LCO=コバルト酸リチウム(LiCoO2)。NCA=リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物。NMC=ニッケルマンガンコバルト酸化物。NMR=核磁気共鳴。RGA=残留ガス分析計。rGO=還元型酸化グラフェン。prGO=部分的還元型酸化グラフェン。PTFE=ポリテトラフルオロエチレン。SEM=走査電子顕微鏡法。TDA=示差熱分析法。TEM=透過型電子顕微鏡法。TEM-SAED=透過型電子顕微鏡法-制限視野電子回折法。TGA=熱重量分析法。T-FTIR=透過型フーリエ変換赤外分光法。TM=遷移金属。TMO=遷移金属酸化物。
【0128】
本明細書において、「一酸化グラフェン」又は「GmO」は、炭素原子及び酸素原子を、約1:1の化学量論で、及び、特定の構造構築ブロックで含む二次元結晶又は非晶質グラフェン系ナノ材料を指す。結晶性GmOのα相(α-GmO)は、面心長方格子結晶構造を有し、各単位胞は4つの酸素(O)原子及び4つの炭素(C)原子を含む。同じ格子は、2つの酸素原子及び2つの炭素原子を有する準六方晶系の基本単位格子で説明することもできる。各C2O2ユニットの結合は、単一の単位胞内の原子が1,3-オキセタン環を形成するようになっている。各酸素原子は2つの炭素原子を架橋し、2つの炭素原子のそれぞれと単結合を形成している。このようにして、α-GmO中の炭素原子は単一の平面を形成し、酸素原子は炭素平面の上下に存在する。
【0129】
α-GmOに加えて、β-GmO、γ-GmO及びδ-GmOと称される他の結晶形のGmOも本明細書に記載されており、それらの独特な構造構築ブロック及び結晶格子単位胞が定義されている。結晶性GmO及び非晶質GmOの全ての相は、周囲温度及び圧力条件を含む広範囲の温度及び圧力で安定である一酸化炭素の固体形態として理解することができる。GmOは高温及び/又は低圧でも存在するが、固体の三次元CO結晶の全ての公知の相は、非常に低い温度及び/又は非常に高い圧力でのみ存在する。
【0130】
α-GmO=Cmmm対称性と、緩和した直方晶系(拘束された六方晶系)条件の場合の0.313nm(0.295nm)の格子定数及び130°(120°)の角度を有するGmOの結晶相。
【0131】
β-GmO=P6/mmm対称性と、0.507nmの六方晶格子定数及び120°の角度を有するGmOの結晶相。
【0132】
γ-GmO=C222対称性と、緩和した直方晶系(拘束された六方晶系)条件の場合の0.313nm(0.295nm)の格子定数及び130°(120°)の角度を有するGmOの結晶相。この構造は超格子(2×2及び4×4)を形成し得る。
【0133】
δ-GmO=Cmma対称性と、0.333nmの直方晶格子定数及び135°の角度を有するGmOの結晶相。
【0134】
「グラフェン」とは、グラファイトの単一層(すなわち、グラフェン単層)、あるいは、ランダムにスタックしたグラフェン層(すなわち、数層又は多層のグラフェン)、又はABスタックもしくはAAスタックとして局所的に秩序化したグラフェン層(すなわち、グラファイト又はグラファイト様)を指す(以下「G」)。
【0135】
「遷移金属」とは、周期表の第3~12族の元素に加えて、周期表のランタニド系列(ランタンからルテチウムまで)及びアクチニド系列(アクチニウムからローレンシウムまで)の元素を指す。
【0136】
組成物:
GmGT系材料の合成についての概説:
GmGT材料の合成の通常の処理要素には、以下の2つの段階がある:I)各種成分の準備及び混合;及び、II)大気、圧力、温度及び加熱速度の特定の条件下での混合物の熱処理。各段階は、望ましい結果を達成するために複数の工程で実施されてもよい。GmGT系材料の好ましい合成例は、以下のように概説される3つの大まかな工程からなる:1)供給材料を準備し、組み合わせること;2)温度T1までの制御された可変加熱速度による低温熱処理;及び、3)最終温度Tfまでの酸素制御環境における制御された可変加熱速度による高温熱処理。この場合の熱処理ステップは、独自の温度プロファイル及び環境条件による2つの異なる熱処理ステップに分けられている。
【0137】
好ましいルートにおける工程1は、酸素化炭素材料、遷移金属材料、及び/又は添加剤材料を混合することを含む。炭素源は、構造の一部として炭素に結合して炭素源材料全体に分布する原子状酸素を含む必要がある。実質的に酸素フリーの環境で加熱を行う場合、酸素と炭素との相対的な原子数比は、約0.15:1より高く、好ましくは約0.3:1より高くする必要がある。実験室規模での好ましい合成方法は、炭素材料が酸化グラフェンの水性懸濁液であり、TM材料が、炭素源相全体に実質的に均一に分布させることができるTM酸化物化合物の溶質又は粉末であることを必要とする。この分布は、機械的撹拌(mechanical agitation)、かき混ぜ(stirring)、超音波処理、遊星混合又はミリングなどの公知の最先端技術のうちの任意の適切な方法を使用する混合工程を通じて達成することができる(Backes, Claudia, et al. “Production and Processing of Graphene and Related Materials.” 2D Materials, vol. 7, no. 2, 2020, p. 022001., doi:10.1088/2053-1583/ab1e0a.)。遷移金属源材料の有効性は、GmO系材料の形成をサポート可能な複数の酸化状態の利用可能性に起因し得る。いくつかの実施形態では、炭素源、TM源、及び/又は、炭素/TM源の混合物の特性を変更するために添加剤が組み込まれる。添加剤は、個別に、組み合わせて、又は、順に使用される酸、塩基、過酸化物、及び/又は、他の酸化剤及び/又は還元剤である。
【0138】
好ましいルートの工程2は、工程1で生成した混合物の低温(T1以下)熱処理を含む。これは、工程1で生成した混合物がペレット化又は造粒方法を採用可能にする充分なコンシステンシーを有する場合、又は、工程1の混合物が完全に粉末からなる場合、室温超での熱処理の前に、混合物から水分を実質的に除去するための明確な乾燥工程を含んでもよく、あるいは、明確な工程として省略されてもよい。明確な工程として、乾燥は、トレイ乾燥、噴霧乾燥、赤外線乾燥、凍結乾燥又はドラム乾燥などの任意の適切な従来法によって行うことができる。実験室での合成に好ましい方法は、ホウケイ酸ガラストレイ内で生成した混合物を約20℃から最高100℃までの温度で、材料の量及びトレイの表面積に応じて数時間~数日間までの時間乾燥させて、厚さが数十ミクロンのオーダーの材料の薄膜を作製するというものである。
【0139】
工程2は、材料生成物の形態、サイズ及び特徴的寸法を制御するため、あるいは、室温超での安全な熱処理を容易にするために、明確なサイズ調整工程を含んでもよい。サイズ調整は、水分含有量及び/又は形態と後続の処理工程に望まれる材料の特徴的な寸法に応じて、例えば機械的チョッピング、カッティング、グラインディング、ミリング、造粒、又は押出/ペレット化などの任意の適切な従来法によって行うことができる。実験室での合成に好ましい方法は、横方向寸法がミリメートルスケールのフレーク様材料を生じる機械的チョッピング及び/又は粗グラインディングである。
【0140】
工程2の低温熱処理は、温度T1への制御された加熱に適した最先端技術で公知の任意の炉/オーブンのタイプ及び構成で行うことができる。能動的な加熱は、対流、伝導又は輻射の性質を有することができ、マイクロ波又は赤外線加熱などが挙げられる。この熱処理工程中の材料の環境は、静的であるか、又は、流動する空気、不活性ガスもしくはそれらの混合物、あるいは、低真空もしくは高真空環境であることができる。GmGT系材料を製造するために必要な加熱速度は、熱処理中に発生するガスの流量、及びそれらの発生したガスが処理中の材料の近くから離れる速度に依存する。したがって、加熱速度は、炉/オーブンの構成、処理される材料の量及び格納容器、材料の形状因子及び特徴的な寸法、並びに材料の調製に使用された供給原料に依存する。実験室での合成に好ましい方法は、PID温度制御ユニットを備えた低真空ボックス型オーブン、又はリモートプログラム外部電源による抵抗加熱を容易にするために電気フィードスルーを備えた高真空チャンバである。
【0141】
工程3は、工程2で製造された材料の高温(T1を超える)熱処理を含み、酸素フリー環境下での最終温度Tfへの制御された加熱に適した最先端技術で公知の任意の炉/オーブンのタイプ及び構成で行うことができる。能動的な加熱は、対流、伝導又は輻射の性質を有することができ、マイクロ波又は赤外線加熱などが挙げられる。この熱処理工程中の材料の環境は、静的であるが、又は、流動する不活性もしくは非反応性ガス、あるいは、高真空環境であることができる。GmGT系材料を製造するために必要な加熱速度は、熱処理中に発生するガスの流量、及びそれらの発生したガスが処理中の材料の近くから離れる速度に依存する。したがって、加熱速度は、炉/オーブンの構成、処理される材料の量及び格納容器、材料の形状因子及び特徴的な寸法、並びに材料の調製に使用された供給原料に依存する。実験室での合成に好ましい方法は、窒素又はアルゴンガス流用に構成され、PID温度制御ユニットを備えた炉、又はリモートプログラム外部電源による抵抗加熱を容易にするために電気フィードスルーを備えた高真空チャンバである。
【0142】
工程3は、所望により、材料生成物の形態、サイズ及び特徴的な寸法を制御するため、あるいは、高温処理を効率的又は効果的に促進するために、熱処理の前に(工程2について上述したように)明確なサイズ調整工程を含んでもよい。工程3でサイズ調整工程が望ましくない場合、酸素制御環境において、必要な最終温度Tfまで加熱可能な炉を適切に選択して、工程2の低温熱処理の明確な継続として高温処理を行うことができる。例えば、実験室規模での1つの好ましい方法は、電気フィードスルーを備えた高真空チャンバを使用して、合成プロセスの単一段階工程として熱処理を提供することである。GmGT材料のいくつかのバージョンは、例えば、急速熱処理アプローチを利用するなど、他の単一段階の加熱方法を使用することができる。噴霧又は超音波噴霧技術を使用する、工程1から生成された懸濁液のスプレー噴射も、単一工程熱処理として実施することができ、そのようにして生成された液滴は、窒素などの不活性キャリアガスによってマルチゾーンの管状の炉構成に噴射される。このアプローチにおける小さな液滴サイズは安全な加熱を促進し、マルチゾーン加熱は最終生成物の合成を促進する。
【0143】
以下の説明は、GmGT系材料を合成するための追加情報及び詳細を提示する。
【0144】
酸化グラフェン源に由来する炭素含有懸濁液:
表1は、GmGT系材料の合成に好適な市販のGO源に由来する炭素系材料を調製する特定の例示的なバージョンをまとめたものである。炭素含有懸濁液(表1では懸濁液1~8と称される)の組成物は、様々な固形分GO濃度で単層、二層及び数層のGOの水性懸濁液を含む複数の市販のGO源から得られる。低粘度のGO懸濁液はメスシリンダーで計量され、高粘度のGO懸濁液は秤で計量される。市販のGO懸濁液は、最終懸濁液の調製前に、数分間、手動でかき混ぜられるか、又はガラス棒で撹拌される。メスシリンダーで計量された蒸留脱イオン水は、いくつかの実施形態では、市販のGO懸濁液を希釈するために使用される。添加剤は、いくつかの実施形態において、液体又は粉末の形態で組み込まれ、それらの量は、液体を計量するためのメスシリンダー及び粉末を計量するための秤を使用して、各実施形態に応じて定量される。添加剤は、出発GOに存在する酸素官能基を制御し、最終製品である複合材料の仕様に影響を与えるために、個別に、組み合わせて、又は順に使用される酸、塩基、過酸化物、及び/又は、他の酸化剤及び/又は還元剤であることができる。特定の添加剤、たとえばアミノ酸の使用は、炭素源材料の酸素官能基を修飾する能力に加えて、GmO含有材料の安全な合成を可能にする特定の温度ウィンドウでのそれらの吸熱特性により、さらなる利点をもたらすことができる。表1の例における具体的な添加剤としては、アスコルビン酸、酢酸及び過酸化水素が挙げられる。添加剤成分を含む懸濁液を、パラフィンプラスチックフィルムで覆い、特定の温度に維持しながらPTFE被覆磁気撹拌機により特定の時間混合した。21℃を超える温度の場合、混合物は水浴中で所望の温度に維持される。pHメーターは、選択した懸濁液のpH値を測定するために使用される。
【0145】
1つのバージョンでは、個別の懸濁液の準備の前に、100gの市販の42質量%GO水性懸濁液(The Sixth Element (Changzhou) Materials Technology Co.,Ltd.,中国常州市)を、138mLの脱イオン蒸留水の添加により10質量%GO濃度に希釈し、スムースなコンシステンシーになるまでガラス撹拌棒を用いて約10分間混合した。希釈したGO溶液を、密閉式HDPEボトル内に保管した。懸濁液1.2を製造するために、10質量%GOを、その500mgをホウケイ酸ガラスビーカーに量り入れる前に撹拌した。この500mgは50mgの固体GO及び0.450mLの水に相当する。第2のホウケイ酸ガラスビーカーに、メスシリンダーで計量した15mLの脱イオン蒸留水を加え、そこに500mgのアスコルビン酸粉末を加え、溶解するまでガラス棒を用いて撹拌した。アスコルビン酸溶液を最初のビーカーに加え、PTFE被覆磁気撹拌棒を混合物に加え、ビーカーをパラフィンプラスチックフィルムで覆った。ビーカーを磁気撹拌プレート上に室温で96時間置いた。表1に、酸化グラフェン(GO)から出発する複数のバージョンの例を示す。他の炭素含有溶液及び粉末は、以下の摂動セクションに含まれる(表5を参照)。
【0146】
【0147】
TM含有溶液及び粉末を合成するための方法:
表2は、GmGT系材料の合成に好適な市販のTM含有源に由来するTM系材料を調製する特定の実験バージョンをまとめたものである。表2を参照すると、TM含有溶液の組成物は、メスシリンダーで計量された溶媒と、秤で計量された前駆体(多くの場合、粉末)とを含む。溶媒及び前駆体を、特定の温度に維持しながら、特定の時間、磁気撹拌機により混合するか、定期的に手動でかき混ぜるか、ガラス棒で撹拌して、平衡化し、場合によっては、漏斗及びろ紙を使用して残留固形物からデカントする。いくつかのバージョンでは、第2の前駆体を、質量によって秤量するか又は体積によって計量し、第1の溶液に加え、特定の温度に維持しながらで特定の時間撹拌して、平衡化する。いくつかの実施形態において、第2の溶液も、漏斗及びろ紙を使用して、残留固形物からデカントされる。最終的な溶液は、mol-TM/Lとして記述されるある範囲の濃度の遷移金属を含む。いくつかの実施形態では、最終溶液を、特定の温度で脱水器内の浅いガラストレイ上で乾燥させ、粉末形態に変換する。他の実施形態では、TM含有粉末の特定の組成物は、材料及び化学薬品の供給業者から商業的に調達される。
【0148】
表2に記載されている例は、モリブデン及びクロムに基づく。TM溶液及び粉末の同様の実施形態は、バナジウム及びニオブ、又は他の関連する金属に基づいて作製することができる。これらのTM含有溶液及び/又は粉末の任意の組み合わせも、GmGT系材料の形成を可能にすることができる。
【0149】
溶液2.1(表2を参照)を製造するための一実施形態では、以下の配合に従った。1Lの脱イオン蒸留水(溶媒)を約3gの三酸化モリブデン(MoO3)粉末(前駆体1)と混合し、次いで、覆いをして21℃に維持しながら、磁気撹拌機により1日当たり1分間で6日間撹拌した。溶液を、漏斗及びろ紙に通して第2のフラスコにデカントして、析出物を除去した。第2のフラスコに、約3gのモリブデン(Mo)金属粉末(前駆体2)を加え、覆いをして21℃に維持しながら、6日間撹拌した。第2の溶液を漏斗及びろ紙に通して最終フラスコにデカントし、溶液中に懸濁するおそれのある析出物を除去し、覆いをして室温で保管した。このように調製された溶液は濃青色であり、測定されたpH値は3.0であった。別のバージョンでは、溶液2.1をホウケイ酸ガラスビーカーに注ぎ、脱水器内で52℃で加熱すると、粉末2.2が生じた。
【0150】
【0151】
【0152】
Pre-GmGT(I)材料及びPre-GmGT(II)材料を合成する方法:
混合:特定量の炭素源及びTM源を組み合わせる。混合は、材料を均一で均質な状態に混合するのに適した任意の公知の最先端技術によって達成することができる。表3に示す具体例では、炭素源を手動で数分間かき混ぜてから、質量又は体積でビーカーに計量する。所望のC/TM原子比になるように、TM源を質量又は体積で計量し、炭素源を含むビーカーに加える。いくつかのバージョンでは、TM源の濃度は、表2に記載した供給源の調製物から水を省略することによって調節される。他のバージョンでは、メスシリンダーで計量した量の脱イオン蒸留水をC/TM混合物に加える。組み合わせた混合物を、室温で特定の時間にわたって、磁気撹拌棒を用いて撹拌するか、又は超音波処理する。
【0153】
乾燥及び回収:混合ビーカーからの材料懸濁液を、大気に開放された脱水器内に配置されたホウケイ酸ガラストレイに慎重に注ぎ入れる。液体懸濁液はトレイ領域全体を覆うため、所望の厚さの乾燥した材料が得られるように液体懸濁液の体積及びトレイの総面積をty調節する。脱水器を特定温度に設定し、材料を一晩乾燥させる。
【0154】
いくつかのバージョンでは、材料は乾燥トレイから明確に回収されず、むしろ、乾燥した材料のトレイは、後続の低温処理ステップに直接供給される。この方法は、例えば材料を掻き取って収集することによる、材料を明確に回収する工程を必要としないため、より速い処理を可能にする。これは、乾燥トレイと同じサイズの横方向寸法(lateral dimensions)の層状形態を有するコンパクトな材料を生じさせやすい。この方法で製造された材料は、この大きなフィルム様フォーマットで有利に処理されるか、あるいは、カッティングもしくはグラインディングによるさらなる制御されたサイズ調整に使用される。この処理ルートは、いくつかの用途に有利であり、一定厚さ(数ミクロン~数十ミクロン又はそれ以上)の、例えばカッティングによる制御された横方向形状などの、大きな巨視的な横方向寸法である材料を製造する労力を軽減する。
【0155】
他のバージョンでは、乾燥した材料を剃刀の刃先でガラストレイから掻き取り、バラバラになった材料をトレイ上に収集し、粗フレークに切り刻み、さらなる処理のために保管する。炭素含有層は互いに同様に乾燥され、フレークの厚さは非常に均一でなる。トレイ乾燥は、また、別のタイプの不活性トレイ材料の使用、別の乾燥温度及び時間、又は乾燥プロセスのための制御された環境の実現などの、公知の最先端技術の任意の別法によって達成することができる。同様に、トレイからの乾燥材料の回収は、別の掻き取り器具又は機構の使用を含む、そのようなプロセスに適した公知の最先端技術によって行うことができる。この乾燥方法は、電池のアノードへの適用に適した非常にコンパクトな最終材料を生じる。この方法は拡張可能であり、産業規模の自動バッチ処理に適する。
【0156】
あるいは、材料懸濁液を噴霧乾燥させ(例えば、乾燥チャンバで測定した場合、70℃で1kg/時の割合で)、乾燥機の収集サイクロンの出口から粉末形態で収集する。乾燥粒子の特徴的な直径は、噴霧及び乾燥プロセスのパラメーターによって制御され、折り重なった個々の炭素含有層を生じる。噴霧乾燥は拡張可能であり、特定の用途の目的に合わせた調整を可能にする、出発材料のサイズ、形状及び内部形態の制御を提供する。いくつかの応用例では、この方法は、材料のさらなるサイズ調整を必要としない。バッチ処理用の乾燥材料の製造に加えて、この方法は、液滴が異なる温度領域を不活性ガスによって搬送され、pre-GmGT及び最終GmGT材料の乾燥粒子を順に生じ、連続反応器の出口で最終材料の収集を可能にする連続スプレー反応器における最初の工程としても好適である。
【0157】
あるいは、材料懸濁液を凍結乾燥し(例えば、50℃で20L/時の蒸発速度)、次いで、従来の方法によりトレイから機械的に回収してもよい。材料を乾燥させて回収するこの方法は、従来のトレイ乾燥方法と比較して、より多量の水を含む出発溶液のより迅速な乾燥を可能にする。凍結乾燥(例えば、棚温度を制御することによる)の公知の最先端技術の別法は、乾燥材料のより密度の低い形態を提供するか、又は乾燥材料の形態/多孔性の調整を可能にすることができる。
【0158】
あるいは、材料懸濁液は、従来の装置を使用するミリング又は回転法によって乾燥される。一例では、C/TM混合物を、50~70℃で加熱しながら、乳鉢と乳棒によって、機械的に1時間ミリングする。このミリング支援熱乾燥法は粉末をもたらし、粉末は、乳鉢から収集される。この方法は、拡張可能であり、トレイの乾燥よりも速く、また、乾燥材料の形態及びサイズのさらなる制御を提供する。
【0159】
サイズ調整:いくつかの実施形態では、材料の特徴的な横方向サイズの制御は、さらなる処理のために適切な格納容器に材料を装入するため、均一な処理を促進するため、粒子の形態及びサイズを制御するため、又は、低温熱処理工程中の発熱プロセスの制御を容易にするために必要である。乳鉢と乳棒を用いたグラインディング方法、機械的ミリング、チョッピングなどの、乾燥材料をサイズ調整するための従来の装置が使用される。いくつかの実施例では、乾燥材料を剃刀の刃で切り刻んで、特徴的な横方向寸法が約5~10mmのフレークにした。他の実施形態では、乾燥工程から回収した材料を、サイズ調整のために自動乳鉢及び乳棒(Netzsch RM 200セラミック乳鉢及び乳棒)に移した。この場合、グラインディング媒体は加えなかった。乳鉢と乳棒との間に穏やかな接触圧力が生じる(下向きの力に0を設定し、横方向圧力を可能な10回転のうち6回転に設定する)。材料を5分間処理して、乾燥材料を約1~10mmの特徴的な横方向のフレークサイズのフレークに生成した。竹の棒に取り付けられた小さな正方形のセルロイドフィルムからなる自家製のへらを使用して、材料を手動でグラインディングパスに連続的に供給した。いくつかの実施形態では、材料は、乳鉢と乳棒との間の圧力を増加させる段階でさらに処理され、篩にかけられて、25μmの粉末を生じた。いくつかの実施形態では、合成のこの段階では、能動的なサイズ調整は行わなかった。
【0160】
合成のいくつかのバージョンは、炭素材料/TM材料混合物の粘稠なペースト様又は粘土様のコンシステンシーをもたらすことがあり、乾燥前に造粒又は押出/ペレット化サイズ調整工程を行うか、あるいは、低温熱処理工程に直接供給することができる。このアプローチは、低含水量合成ルートを利用可能であるため、費用効率と時間効率が著しく高い大規模生産をもたらす。GO材料が出発原料の一部を成す場合、この方法を、実験室を越えて実際に実施するには、概して、100℃超での熱処理中に発生するGOの大きな発熱性を化学的にパッシベートするために、炭素材料フィードの調製時に添加剤を含める必要がある。この化学的パッシベーションの1つのバージョンは、溶液1.2及び溶液1.3を介して表1に示されており、それらの場合に、アスコルビン酸処理を使用して、アスコルビン酸処理なしの同等の混合物と比較して、混合C/TM材料のその後の発熱性が明らかに低減した。
【0161】
低温熱処理:上記の工程で乾燥及びサイズ調整された材料組成物を、熱処理で使用する前に、巨視的な均一性について評価する。材料組成物を計量し、開放状態か蓋で覆われる非反応性材料格納容器に入れる。装入量は平均材料質量/面積として求められ、装入した材料の形状因子は、その材料の特徴的な横方向寸法に応じて、フレーク、粒子又はフィルムとして記録される。材料を室温から約300℃以下の最終温度まで加熱するために、低真空ボックス、高真空チャンバ、不活性ガス管又はマッフルエアなど、最新技術で公知の様々な種類の炉を使用することができる。最大質量損失率Tmの温度は、不活性ガス及び低真空条件の熱重量測定(TGA)と、高真空での残留ガス分析(RGA)とによって決定される。加熱速度は、Tmに近づく時及びTmを離れる時に制御する必要があるが、他の温度間隔での速度はそれほど重要ではない。最終温度は、使用される炭素源及びTM源の組み合わせ、並びに所望の複合材料最終生成物材料に基づいて選択される。材料は、巨視的及び微視的スケールの両方で、プロセス全体を通して評価される。低温熱処理工程までのいずれかの段階で、巨視的スケールで材料が不均一であるようならば、処理工程又は材料フィードは最適ではないと見なされ、好ましくない。TMのナノスケール結晶性も電子線回折によって観察され、処理工程又は材料フィードが、TM成分の有意な結晶性をもたらす場合は、処理工程又は材料フィードは最適ではないと見なされ、好ましくない。この処理工程の最終目標は、暴走熱反応(それが存在する場合)を回避して、大量に高温に加熱して最終的なGmGT材料(表4)を生成することができる安全なpre-GmGT材料(表3)を製造することである。2種類の生成物材料、pre-GmGT(I)又はpre-GmGT(II)が望ましい成果であると考えられ、表4の所望の生成物材料の生成の基礎を成す。可能性のある発熱挙動を超える温度まで材料を安全に処理するために必要な加熱速度は、加熱環境(例えば、高真空、低真空、不活性ガス、空気)、材料の総質量及び質量装入量、材料の厚さ及び形状因子を含む特徴的寸法、格納容器が覆われているか開放されているか、及び成分出発材料(GOなど)に依存する。
【0162】
表3の試料3.0は、代表的な実施例を提供し、表3のさらなる実施例は、pre-GmGT(I)材料を生成することができる処理変数の範囲を示す。この中間生成物材料は、結晶性GmGT系材料を生成させるための安全な前駆体として重要である。このプロセス(表3の試料3.0により例示)は、上記配合に水を加えるか、あるいは、上記配合から水を除き、175mLの炭素含有源(懸濁液1.1、表1)を140mLのTM含有源(溶液2.1、表2)と混合することから始まる。懸濁液1.1を手動で数分間かき混ぜ、ビーカーに計り入れる。懸濁液1.1と同じビーカーに溶液2.1を計り入れて、混合物を磁気撹拌棒を用いて撹拌する。液体内容物に浅い渦が形成されるように撹拌速度を調整し、室温(21℃)で3~4分間混合する。
【0163】
混合ビーカーからの材料懸濁液を、脱水器内に配置された清浄なホウケイ酸ガラストレイに慎重に注ぎ入れる。トレイの測定表面積は約722cm2であり、液体懸濁液がトレイ領域全体を覆っている。すなわち、混合物が乾燥して、およそ25μmの均一な厚さのフィルムが生じる。脱水機を52℃の乾燥温度に設定し、材料を一晩(24時間)乾燥させる。乾燥した材料を剃刀の刃先でガラストレイから掻き取り、バラバラになった材料をトレイ上に積み重ねる。積み重ねられた材料を、剃刀の刃で掬い取り、特徴的な横方向寸法が約5~10mmであり、厚さが約25μmである粗フレークに切り刻む。これは、総固形分とトレイの寸法とを選択することによって乾燥工程中に制御した。収集した材料を、タンタルカバーを取り付けたアルミナ被覆タンタルボートに入れ、次いで、高真空中で約300℃まで抵抗加熱する。印加電流の関数としての抵抗加熱タンタルボートの温度は、個別の較正ランで較正される。較正ランでは、引用温度は、500℃超で約5℃の増分ごとにボートカバーの中央及び端に向けられ、2~6次の平滑化多項式によって室温に補間された高温計から読み取られた平均温度を含む。引用温度の不確かさは、補間多項式フィットの広がりと、引用温度に外挿された格納容器全体の測定温度の変動を反映している。この実施形態では、最大質量損失時の温度は230±45℃であり、0.1℃/分の対称的な緩やかな傾斜でこの臨界温度に近づいて、この臨界温度から離れた。この例では、TM種は非結晶性であることが判明した。この処理例の成果はpre-GmGT(I)である。
【0164】
pre-GmGT(I)材料の場合と同じ出発供給源を使用し、同じ乾燥、収集及びサイズ調整プロセスを使用して、pre-GmGT(II)材料を生成させる場合の、主な違いは加熱速度にある。表3の試料3.1は、最大質量損失時の温度Tmが230±45℃であることを再度示すが、この場合、Tmは0.5℃/分で5倍速く近づき、非対称傾斜プロファイルで同じ遅い速度0.1℃/分となった。この中間生成物pre-GmGT(II)は、非晶質GmGT系材料を生成させるための安全な前駆体として重要である。
【0165】
試料3.8、試料3.9及び試料3.10(表3)は、粉末の形態にある特定のTM源を加えることは、乾燥試料の不均一さをもたらし、所望の最終組成物を生じる確立されたプロセスが以降失敗に終わることがあることを示す。試料3.3及び試料3.4は、他の特定のTM粉末が成功する可能性があるという逆の正例を示す。試料3.11は、TM源を省略すると、pre-GmGT(I)又はpre-GmGT(II)のいずれかの材料を生成できないという別の負例である。
【0166】
図3は、表3の代表的なpre-GmGT(I)材料の特性評価を示しており、以下の例1の例示セクションで詳細に説明される。
【0167】
【0168】
【0169】
【0170】
【0171】
【0172】
GmGT(I)材料及びGmGT(II)材料を合成する方法:
GmGT(I)材料又はGmGT(II)材料を生成させるために、それぞれのpre-GmGT(I)材料又はpre-GmGT(II)材料から始めて、生成したままの形態で保持するか、より小さな特徴的なサイズに小さくして、さらなる加熱処理にかける。実質的に酸素フリーの雰囲気で材料を約600~1,000℃又はそれ以上の最終温度に加熱するために使用することができる公知の最先端技術の任意の炉タイプ、例えば、回転炉、高温スプレー/霧化管状炉、高真空チャンバ状炉又は不活性ガス/真空管状炉などを、この処理工程に使用できる。材料は、開放タイプ又は覆い有りのタイプの非反応性格納容器に入れられ、面積あたりの平均質量は、装入材料の秤量質量を容器の底面積で除することによって決定される。材料の形状因子は、フィルム、フレーク又は粉末のいずれかとして記録される。充填した容器を炉に入れ、最終温度まで加熱し、一定時間そのまま保持する。表4に提示される具体例は、主に、高真空チャンバ炉の実施形態及び不活性ガス管状炉の場合について示されている。加熱時間は、最大質量損失率(Tm)の温度から最終温度(Tf)までの平均加熱速度を反映する。所望の圧力及び試料近傍から離れる物質移動を維持するように、各実施形態で使用される加熱速度は、単位面積あたりの質量によって決定される被加熱材料の量、材料が開放タイプの容器又は覆い有りのタイプの容器のどちらに含まれているか、及び、発生ガスが炉から除去される速度に基づく。真空炉の基準圧は2×10-6torr(2.67×10-4Pa)である。管状炉のガス設備は、生成物の形成を反応的に制御するために供給ガスを水蒸気で飽和させることを含む、窒素とアルゴン間の切り替えに対応しており、ガス流量の制御を可能にする。二酸化炭素又は一酸化炭素を含む供給ガスも、これらのプロセスによって合成された材料システムに対して有効に不活性なガスとして利用することができる。材料を室温まで冷却して炉から取り出し、電極材料又は他の用途の仕様に合うようにサイズをさらに調整することができる。最終生成物材料は、以下に説明する多数の方法で特徴付けられる。
【0173】
2つの広範な部類の材料であるGmGT(I)及びGmGT(II)は、それらの前駆体材料であるpre-GmGT(I)又はpre-GmGT(II)にそれぞれ使用される加熱速度に基づいて得られる。各部類には、順に生成するサブクラスがある。第1のシリーズの材料は、pre-GmGT(I)材料を生成させるために低速の熱ランプレートを使用する場合から始まる。生成物材料GmGT(I)シリーズは、以下の3つのメンバーを有する:
GmGT(I)-A:約675℃未満*の温度で生成。非晶質GmOとして定義される。これらの組成物は、グラフェン及び分子TMOの範囲を含みうる。
GmGT(I)-X:約675~800℃*でさらにアニールすると、結晶形態のGmOが形成される。これらの組成物は、グラフェン及び分子TMOの範囲を含みうる。
GmGT(I)-NC:高濃度のTMを使用するか、又は温度をさらに上げると、GmGT(I)系材料はTMOナノ結晶を帯びる。
*ここで引用されている温度範囲は、表4で使用した供給源材料及びプロセスパラメーターに固有のものである。
【0174】
第2シリーズの材料は、特定のpre-GmGT(II)材料を生成させるために高速の熱ランプレートが使用される場合に得られる。生成物材料GmGT(II)シリーズは2つのメンバーを有する:
GmGT(II)-A:600℃未満*の温度で、又は600~800℃*でのさらなるアニーリングにより生成する。これらの組成物は、グラフェン及び分子TMOの範囲を含みうる。
GmGT(II)-NC:高濃度のTMを使用するか、又は温度をさらに上げると、非晶質GmGT(II)系材料はTMOナノ結晶を帯びる。
*ここで引用されている温度範囲は、表4で使用した供給源材料及びプロセスパラメーターに固有のものである。
【0175】
逐次2段階加熱プロセスの結果として表4に記載されている最終生成物のGmGT材料(例えば、pre-GmGT(I)が1つの加熱系で生成され、別の加熱系に送られて、GmGT(I)を生成する)は、pre-GmGT(I)の合成から最終生成物GmGT(I)の合成までの連続熱処理に必要な条件を、中断のない熱処理で可能にするように設計された同じオーブン/炉内で1段階プロセスで生成することも可能であることに留意することが重要である。
【0176】
表4の試料4.1は、GmGT(I)材料の形成を可能にする例示的な例である。これは、表3の試料3.0により例示されているpre-GmGT(I)材料から始まり、高真空チャンバ内でのさらなる加熱処理にかけられる。材料は、タンタルカバー付きの非反応性アルミナで裏打ちされたタンタルボートに入れられる。材料使用量は33mg/cm2で、材料の形状因子はフレークである。充填したタンタルボートを、抵抗加熱用に設計された真空炉の電極間に装入し、基準圧を2×10-6torr(2.67×10-4Pa)に設定し、試料を、高温計で計測した場合に730±20℃の最終温度(Tf)に加熱し、Tfで10分間保持する。系のほぼ一定の全圧を維持するための可変加熱速度は、最大質量損失率の温度(Tm)からTfに到達するまで15時間17分の合計時間使用され、この温度範囲にわたる平均加熱速度を反映する。この温度範囲(Tm~Tf)における加熱プロファイルの詳細は、残留ガス分析較正実験によって決定した場合に、ほぼ均一で連続的な質量損失を維持するように選択される。室温まで冷却して真空炉から取り出すと、材料は電極材料の仕様に合うようにさらにサイズ調整される。最終生成物は、以下に説明する多数の方法で特徴付けられる。
【0177】
表4の試料4.2は、GmGT(II)材料を生成する方法の実例である。これは、表3の試料3.1に例示されているpre-GmGT(II)材料から始まり、高真空チャンバ内でのさらなる加熱処理にかけられる。材料は、タンタルカバー付きの非反応性アルミナで裏打ちされたタンタルボートに入れられる。材料使用量は33mg/cm2で、材料の形状因子はフレークである。充填したタンタルボートを、抵抗加熱用に設計された真空炉の電極間に装入し、基準圧を2×10-6torr(2.67×10-4Pa)に設定し、試料を高温計で計測した場合に730±20℃の最終温度(Tf)に加熱し、Tfで10分間保持する。系のほぼ一定の全圧を維持するための可変加熱速度は、最大質量損失率の温度(Tm)からTfに到達するまで20時間47分の合計時間使用され、この温度範囲にわたる平均加熱速度を反映する。この温度範囲(Tm~Tf)にわたる加熱プロファイルの詳細は、残留ガス分析較正実験によって決定した場合に、ほぼ均一で連続的な質量損失を維持するように選択される。室温まで冷却して真空炉から取り出すと、材料は電極材料の仕様に合うようにさらにサイズ調整される。最終生成物は、多数の方法で特徴付けられる。
【0178】
図4~
図7は、表4の代表的なGmGT生成物材料の特性評価を示す。これらの図は、以下の実施例のセクションで実施例2で詳細に説明されているが、実施例4及び5は、図なしでより具体的な詳細を与える。
【0179】
【0180】
【0181】
【0182】
【0183】
【0184】
GmGT(I)材料及びGmGT(II)材料の合成に対する炭素源、添加剤、TM源、及びプロセス条件の変動の影響:
本セクションのプロセス概説は、表1~表4に記載されている上記のセクションのプロセスの説明とそれらの実例に従うが、1つの重要な相違点がある。ここでは、出発供給源への意図的で制御された摂動からの結果と、いくつかの実施形態で、上記のセクションで詳述した供給源組成及びプロセスパラメーターの範囲を超えるプロセスパラメーターを示す。
【0185】
炭素源及び添加剤:表1に示したように、出発炭素源としてGOの市販の水性懸濁液を使用することに加えて、懸濁液1.1、1.2、1.3、1.5、1.6、1.7及び1.8を再び使用し、確立されたプロセスへの原料としていくつかの代替炭素源をさらに含む表5に詳述されているとおりのさらなるプロセス摂動にかける。乾燥時間を短縮するために濃縮酸化グラフェン水性懸濁液及び粉末を探索すること、懸濁液のpHを変更するために確立されたC/TM混合物に酸又は塩基を添加すること、化学的に処理された部分還元GOを市販の供給源から探索すること、及び熱水法を使用してGOを実験室規模で砂糖溶液から作製することなど、代替炭素源のいくつかは、GOに酷似している。市販の黒鉛及び膨張黒鉛粉末も検討した。リグニン粉末は、グラフェン層又は酸化グラフェン層を含まないため、最も異なる供給源であった。
【0186】
TM源:表5に特定されているように、遷移金属酸化物が炭素及び添加剤源に添加されるかどうかにかかわらず、最終的な複合材料の構成成分の原子比又はモル比の望ましい範囲を設計する。TM含有溶液の調製は、表2及び付随する本文に記載されている。
【0187】
混合、乾燥、収集、及びサイズ調整:添加剤の有無にかかわらず、炭素及びTM源の混合は、特定量で行われ、特定の温度で特定の時間撹拌される。乾燥は、脱水器のトレイ上で、噴霧乾燥により、凍結乾燥により、熱支援ミリングにより、又は公知の最先端技術の他の方法によって行われる。収集は、乾燥方法が異なれば異なり、乾燥方法に適した公知の最先端技術に従って行うことができる。材料は、熱処理工程の要求及び生成物材料の最終的な意図された用途に応じて最適化するために、一回で又は逐次工程でサイズ調整され、乾燥又は実質的に乾燥した材料のサイズ調整に適した任意の公知の最先端の方法を使用して行うことができる。
【0188】
熱処理:上記工程で乾燥及びサイズ調整した材料組成物を、2つの異なるタイプでの2段階熱処理、又は同じ炉での1段階熱処理で使用する前に、巨視的な均一性について評価するが、加熱速度は低温域と高温域で制御する。公知の最先端技術からの炉のタイプを上記のように使用することができる。発熱反応を制御して低温熱処理工程における制御された摂動の暴走を回避すること、及び、実質的に酸素フリーの環境を高温熱処理工程で提供することが重要である。
【0189】
図8~
図14は、表5からのGmGT材料に関連する特定の摂動の特性評価を示す。これらの図は、以下の実施例6~実施例11の例示セクションで詳細に説明されている。
【0190】
【0191】
【0192】
【0193】
【0194】
【0195】
表5における表形式のプロセスの説明の実例として、試料6.2の実施形態が、GmGT(I)-Xを合成するプロセスの一例として明示的に記載されている。0.5質量%GO懸濁液(20mL)を炭素源として使用し、25mLのTM源としての溶液2.1と組み合わせた。脱イオン蒸留水(330mL)を混合物に加え、ガラス棒で室温で3~4分間撹拌した。溶液をホウケイ酸ガラストレイ内で49℃で24時間乾燥させ、掻き取って約5~10mmの横方向寸法に切り刻み、蓋付きのアルミナ被覆タンタルボートにフレーク状で10mg/cm2で装入した。覆った材料装入物を、2×10-6torr(2.67×10-4Pa)の開始基準圧で高真空中で、異なる温度ウィンドウで変動加熱速度で抵抗加熱した。Tmに近づいてTmから離れる際の加熱速度、すなわち230±45℃の最大質量損失温度での加熱速度は、0.1℃/分で対称的に遅く、最終アニーリングは温度Tf=780±20℃で4時間行った。TmからTfに到達する時間は15時間45分であった。室温まで冷却し、真空炉から取り出して、生成した材料を特性評価し、GmGT(I)-X材料と一致することが判った。
【0196】
予測モデリングによる組成物-GmO結晶相及びそれらの化学部分:
本開示で開示されるように、GmOは、GmGTと名付けられたGmO系複合材料の一部として、上記のプロセスを用いて実用的な巨視的スケールで製造することができる。2つの群GmGT(I)及びGmGT(II)は、GmO成分が結晶性(GmGT(I)-X)又は非晶質(GmGT(I)-A及びGmGT(II)-A)であることができる組成物で詳細に示されている。生成された結晶性GmO系組成物の大部分は、独特な測定回折シグネチャーをもたらす独特な原子間間隔を有し、その結果、電気化学セルにおいて明示した望ましい特性をもたらす。処理パラメーターへのいくつかの摂動は、支配的なGmO相(以下、α-GmO)の観察可能な2D回折及び振動シグネチャーに変動をもたらす場合がある。DFTを利用した予測モデリングにより、新規なGmO結晶構造及びそれらの成分の化学部分が同定される。
【0197】
Quantum ESPRESSO 6.4.1(Giannozzi, et al. “Advanced capabilities for materials modelling with quantum ESPRESSO,” Journal of Physics: Condensed Matter 29:465901 (2017))を使用して予測DFT計算を行った。Perdew-Burke-Ernzerhof(PBE)一般化勾配近似交換相関を用いた射影補強波(PAW)スカラー相対論的擬ポテンシャルを、PSlibrary 1.0.0(A. D. Corso “Pseudopotentials periodic table: From H to Pu,” Computational Materials Science 95:337 (2014))から、炭素、酸素及びリチウム原子について生成させた。波動関数の拡張には、50Ry(180eV(2.88×10
-17J))の平面波運動エネルギーカットオフを使用し、電荷密度及びポテンシャルについて326Ry(1175eV(1.883×10
-16J))の運動エネルギーカットオフを使用した。Quantum ESPRESSOは、3方向すべての周期境界条件で機能するため、GmOの単層をモデル化する方法は、隣接するGmO層間の距離をz方向に適度に大きくすることであった(例えば、これらの計算では20Å)。
図1は、α、β、γ及びδと表示されるGmOの4つの相についての予測された結晶原子構造の原子モデルの概略図(上面図、2つの側面図、及び斜視図)を示し、
図2は、それらを構成する炭素及び酸素構築ブロックの概略図を示す。
【0198】
GmOの結晶相:
α-GmOは、
図1Aに示すように、各環が、互いに平行であり、かつ、カーボン副格子アームチェア方向に整列している2つの架橋1,3-ジオキセタン(
図2Aに示す)を含む8員複素環(
図2Bに示す)で構成される。対称要素は、#65 D2h-19 Cmmmである。直方晶系の単位胞は、炭素原子面からの酸素距離が±0.104nmで完全に緩和している場合、0.313nmの格子定数及び130°の角度を有する。六方晶状に拘束されている場合、上記のパラメーターは、それぞれ0.295nm、120°、及び±0.108nmである。この構造は、ジオキセタン対が3つのアームチェア型共鳴配置の1つにある場合に、3つの等価なドメインに現れることがある。α-GmO構造中の全ての炭素はsp
3混成状態にある。
【0199】
β-GmOは、
図1Bに示すように、各環が、酸素を含まない六角形の炭素環と交互するアームチェア方向に3つの架橋1,3-ジオキセタン(
図2Aに示す)を含む9員複素環(
図2Cに示す)で構成される。対称要素は、#191 D6h-1 P6/mmmである。直方晶系の単位胞は、炭素原子面からの酸素距離が±0.104nmで、0.507nmの格子定数及び120°の角度を有する。β-GmO構造の全ての炭素はsp
3混成状態にある。
【0200】
γ-GmOは、
図1Cに示すように、平面ジグザグ方向に架橋酸素を有する10員複素環(
図2Dに示す)で構成される。対称要素は、#21 D2-6 C222である。直方晶系の単位胞は、炭素原子面からの酸素距離が±0.065nmで完全に緩和している場合、0.344nmの格子定数及び119°の角度を有する。六方晶状に拘束されている場合、上記のパラメーターは、それぞれ、0.344nm、120°及び±0.066nmである。この構造は、酸素が炭素の平面の上/下に配置される順序に基づいて超格子配列を形成することができる。2×2及び4×4超格子構造のパラメーターを以下に示す。γ-GmO構造の全ての炭素はsp
2混成状態にある。
【0201】
γ-GmO(2×2):対称要素は、#53 D2h-7 Pmnaである。直方晶系の単位胞は、炭素原子面からの酸素距離が±0.074nmで完全に緩和している場合、0.668nmの格子定数及び114°の角度を有する。六方晶状に拘束されている場合、上記のパラメーターは、それぞれ0.688nm、120°及び±0.076nmである。γ-GmO構造の全ての炭素はsp2混成状態にある。
【0202】
γ-GmO(4×4):対称要素は、#49 D2h-3 Pccmである。直方晶系の単位胞は、炭素原子面からの酸素距離が±0.060nmで完全に緩和している場合、1.378nmの格子定数及び109°の角度を有する。γ-GmO構造の全ての炭素はsp2混成状態にある。
【0203】
δ-GmOは、
図1Dに示すように、垂直なジグザグ方向の直鎖状一酸化炭素(
図2Eに示す)で構成される。対称要素は、#67 D2h-21 Cmmaである。直方晶系の単位胞は、炭素原子面からの酸素距離が±0.121nmで完全に緩和している場合、0.333nmの格子定数及び135°の角度を有する。δ-GmO構造の全ての炭素はsp
3混成状態にある。
【0204】
表6は、構築ブロックの予測される結合の長さ及び角度、並びにこれらの二次元GmO結晶相の単位胞の寸法をまとめたものである。また、最も強いブラッグビームの予測回折ピーク位置を示し、最も強いピークに対するそれらの相対強度も与える。好ましい熱力学的及び速度論的条件下でこれらの構造を形成する可能性を示す予測された形成エネルギーが含まれており、全て負である。一部の構造については、NMR同位体シフトも予測された。
【0205】
【0206】
図2は、
図1に示した二次元GmOの様々な結晶相の構築ブロックである化学部分の概略図を示す。これらの部分、又はそれらの変種(variants)もしくはサブ構造成分は、非晶質GmOにも存在する場合がある。
【0207】
炭素及び酸素を含む複素環式構成単位(
図1A~D):
a)2つの酸素原子を有する4員複素環(
図2A):1,3-ジオキセタン;
b)2つの架橋ジオキセタンを含む8員複素環(
図2B):(
図1A)で定義されるジオキセタンを構成する(2,8)位及び(4,6)位に2つのさらなる架橋酸素を有する1,5-ジオキサ-シクロオクタン;
c)3つの架橋ジオキセタンを有する9員複素環(
図2C):(
図1A)で定義されるジオキセタンを構成する(2,9)位、(3,5)位及び(6,8)位に3つの架橋酸素を有する1,4,7-トリオキサ-シクロノナン;
d)4つの酸素原子を有する10員複素環(
図2D):さらなる架橋酸素なし及びジオキセタンなしの(3,5,8,10)テトラオキサ-(1,6)-シクロデカジエン。
炭素及び酸素を含む鎖の構成単位(
図2E):
e)ジグザグ鎖(
図2E):各C=O結合双極子モーメントがその前のC=O結合双極子モーメントと反対であるポリカルボニル。
【0208】
本発明の材料を使用して作製された電荷蓄積装置:
一実施形態では、これらの材料は、グラファイトに対する改善された電極性能を有する。概して、電荷蓄積装置用のセルの構築は、例えば、アノード配合物、カソード選択、電解質配合物、電極使用量、及び/又はそれらの組み合わせを調整することによって、最適な性能特性のために調整することができる。これらの本発明の材料の改善された性能を実証するために、アノード配合物、カソード選択、使用量及び電解質配合物が、グラファイト又はグラファイト/シリコンセルの構築に典型的であり、かつ、グラファイト又はグラファイト/シリコンセルの構築によく適合するように選択される。これらの本発明の材料の性能をさらに改善することができるセル構築の選択肢は、異なるアノード配合物、カソード選択、使用量、電解質配合物、セルフォーマット、又はそれらの組み合わせを包含し得る。
【0209】
具体例として、パウチセル内において、純グラファイト(Gr)、3%(質量%)のシリコンを含むグラファイト(GrSi3)、及び、3%のシリコンと10%の本開示で開示される対象のGmGT(II)-A材料とを含むグラファイト(GrSi3GmGT(II)-A)の3つの活性アノード組成物を検討した。ハーフセル試験を通じて、純GmGT(II)-A材料の比容量は540mAh/gとした。
図15及び
図16を参照。
【0210】
図15は、アノード活物質が100%GmGT(II)-Aで構成されるアノードハーフセルの充電/放電曲線を示す。C/20での2回の形成サイクルにより、GmGT(II)-A材料の容量は540mAh/gとなった。この値は、パウチセルで使用される複合アノードの理論容量を決定するために後述の計算で使用した。この材料の注目すべき特徴は、その傾斜した電位プロファイルである。これにより、リチウムに対する電位を定義することが困難になる。しかし、プロファイル形状は、電圧の関数として電池の容量を予測するのに有利な場合がある。比較すると、グラファイトアノードハーフセル(
図16)は、およそC/20の間の電流で351mAh/gの容量を示した。このグラフは、C/20での2つの形成サイクルと、それに続くC/3でのサイクルデータを示す。グラファイトハーフセルは、約0.2Vの特徴的な電圧プラトーを示す。
【0211】
この結果を使用して、本発明の複合材料GrSiGmGT(II)-Aの比容量は445mAh/gと決定された。この値は、それぞれ340mAh/g及び425mAh/gであるグラファイト及びGrSi3の比容量よりも高い。パウチセルでサイクルした材料の概要を表7に示す。
【0212】
【0213】
これらの試験で使用したカソードはLiNiCoAlO
2(NCA)であった。カソード材料として検討された代替物は、グラファイト/Si合金負極におけるSi合金を安定化してサイクル性能及びクーロン効率の向上をもたらすとして文献(Chevrier et al. (19 Sept. 2018) “Design of Positive Electrodes for Li-Ion Full Cells with Silicon,” J. Electrochem. Soc. 165(13): A2968-A2977)に提案されているLi(Ni
0.6Mn
0.2Co
0.2)O
2(NMC622)であった。NCAカソード及びNMC622カソードの両方についてハーフセル試験を実施後に、NCAを選択した。試験は、2.7~4.3V及び2.7~4.5Vの電圧範囲で実施した。各ハーフセルは、C/10レートで2サイクル、続いて1Cレートで2サイクルを受けた。NMC622電極の平均容量負荷は、1.90mAh/cm
2であった。NCA電極の平均容量負荷は1.99mAh/cm
2であった。サイクリングの結果を
図17(old 5)(A~D)に示す。
【0214】
図17Aは、4.3Vの上限電圧カットオフでサイクルされたNMC622の充電/放電曲線である。C/10比容量は165mAh/gであり、初期クーロン効率は87%であった。
図17Bは、4.5Vの上限電圧カットオフでサイクルされたNMC622の充電/放電曲線である。C/10比容量は187mAh/gであり、初期クーロン効率は85%であった。
図17Cは、4.3Vの上限電圧カットオフでサイクルされたNCAの充電/放電曲線である。C/10比容量は194mAh/gであり、初期クーロン効率は90.4%であった。
図17Dは、4.3Vの上限電圧カットオフでサイクルされたNCAの充電/放電曲線である。C/10比容量は207mAh/gであり初期クーロン効率は90.4%であった。
【0215】
アノードスラリーは、94%の活物質と、純グラファイト、グラファイトとシリコンの97:3混合物、又は、グラファイトとシリコンと本開示で開示される活物質の87:3:10混合物のいずれかとを含んでいた。スラリーに含まれていた不活性材料は、グラファイト用の標準的な導電剤であるカーボンブラック3%と、合計で3%の水系バインダー(1.5%のカルボキシメチルセルロースナトリウム、1.5%のスチレンブタジエンゴム)であった。アノードスラリーを12μmのCu箔上にキャストした。ハーフセルの場合、電極をCR2032コイン電池のサイズに合わせて打ち抜いた。
【0216】
200mAhパウチ電池では、試験対象のアノードを、20μmアルミ箔上にキャストしたリチウムニッケルコバルトアルミニウムオキシド(NCA)カソードと対にした。活性カソード及びアノードのスラリーは、バインダーとカーボンブラックから調製し、アルミニウム箔及び銅箔上にそれぞれ広げ、乾燥させた。カソード厚はアノード厚よりも大きかったが(カソードの比容量がより低いため)、カソードの長さ及び幅はアノードの厚さ及び幅よりも小さかった。
【0217】
使用したN:P比は1.1であった。この比は、フルコインセルでの試験によって事前に決定した。アノードの容量は、アノード表面へのリチウムの堆積を防ぐために、カソードの容量と比較して過剰であった。サイズは、NCAの理論容量と、ハーフセル試験によって決定された、本開示で開示される本発明の材料の実験による容量とに基づいて選択した。
【0218】
電極を一晩乾燥させた後、それらをパウチ電池に組み立てた。この段階で電解質を加え、パウチを密閉した。次に、電池をC/20の電流レートで2日間サイクルさせて、固体電解質界面(SEI)を形成し、電極を活性化した。その後、電池を脱気して再密閉した。
【0219】
全体として、11個のフルパウチ電池を製造した。3個はグラファイトアノード、3個はGrSi3アノード、5個はGrSi3GmGT(II)-Aアノードである。サイクルしたセル及びそれらの電極の概要を、電極対情報を含めて表8に示す。
【0220】
【0221】
0℃及び-20℃での低温充放電性能も試験した。様々な試験条件の完全なリストについては、表9を参照されたい。
【0222】
【0223】
各パウチセルは、特定の試験に供する前にコンディショニングにかけた。設計容量は約190~200mAhであったが、GrSiの容量負荷が予想よりわずかに高かったため、GrSiでは約220mAhであった。全てのアノードを、1:1のN/P比を使用して、カソードと組み合わせた。比容量負荷は、GrSiと組み合わせるカソードで2.05~2.2mAh/cm2及び2.35mAh/cm2であった。セルをC/10で1サイクル、続いてC/2で9サイクル、サイクルさせた。比較的低い初期クーロン効率のために、GmGT(II)-Aセルは、形成後、C/10で約175mAh/gの容量を示した。
【0224】
試験1は、純グラファイトと比較した本発明の材料のレート能力を評価するために実施した。セルを5Cまでの様々なレートで充電し、C/3レートで放電した。サイクリングは、故障するまで、セルがまだ機能している最高レートで続けた。試験1の結果を
図18(A~C)に示す。
【0225】
図18Aは、レート能力のグラフである。
図18Bは、実際のレート能力を直接比較するために、C/10での容量に基づいて正規化されたレート能力を示す。
図18Cは、グラファイト(Gr)及びグラファイト/シリコン/GmGT(II)-A複合材料(GrSiGmGT(II)-A)アノード(1C=200mAh)を用いたパウチセルの高レートでの充電/放電曲線を示すグラフである。グラファイトを使用したパウチセルの容量は設計値(200mAh)に近いのに対し、GrSiGmGT(II)-Aを使用したパウチセルは154mAhである。これは、不可逆的な容量損失によるものであり、事前リチウム化(pre-lithiation)技術により改善することができる。
図18Aに示すように、GrSiGmGT(II)-Aセルの容量はGrセルよりもC/10で低いが、GrSiGmGT(II)-Aセルは5Cの高レートで高い容量を示す。より直接的には、
図18Bから、GrSiGmGT(II)-Aセルは、電流レートがC/2よりも高い場合、Grセルよりも優れたレート能力を示す。電池テスターに機械的エラーが発生したため、
図18A及び
図18BのC/5での3サイクルのうち2サイクルの容量は記録されなかった。
図18Cは、Gr及びGrSiGmGT(II)-Aを使用したパウチセル間の充放電曲線を比較するものである。GrSiGmGT(II)-Aを用いたセルは、充電時にGrセルよりも大幅に低い電圧プラトーを示す。これは、アノードへの可能性のあるリチウム堆積を軽減するのに非常に役立つ。
【0226】
試験2は、本開示で開示される本発明のGmGT(II)-A材料を含むセルのサイクル寿命を、グラファイトのみ及びGrSi3セルと比較するために実施した。電子機器の典型的な使用条件下での寿命を評価するために、セルを多サイクルでC/2レートで充電及び放電した。結果を
図19(A~D)に示す。
【0227】
正規化容量:試験3を用いて、GmGT(II)-A材料の複合アノードが、純グラファイトとグラファイト-Siとの組み合わせと比較して、急速充電条件下でどのように機能するかを検討した。セルを5Cで充電し、C/3で多サイクルで放電し、典型的使用法及び寿命の下での急速充電を評価した。この試験は、結果を再現するために2回実施した。結果を
図19Eに示す。
【0228】
図19Aは、C/10で1サイクルの形成後、5Cでサイクリングした後の、試験3aから得られたサイクル性能を示す。
図19Bは、可逆容量に基づいて正規化された、試験3aから得られたサイクル挙動を示す。
図19C及び
図19Dは、それぞれ、試験3bの容量及び正規化容量を示し、
図19Eは、サイクル数は少ないものの、セルGrSi3セルで実施した同じ試験を示す。設計容量は200mAhで、N:P比は1:1であった。GrSi3GmGT(II)-Aセルは、形成中の不可逆的な容量損失のため、最初は低い容量を示した。しかし、5Cサイクリング中、GrSi3GmGT(II)-Aセルは、高い百分率の可逆容量を維持した:グラファイトの場合の42mAh(可逆容量の21%)と比較して、GrSi3GmGT(II)-Aの場合は42mAh(可逆容量の28%)。GrSi3の5C容量は約110mAhであったが、サイクル14までに約70mAh(可逆容量の64%)に減少した。比較すると、サイクル14で、GrSi3GmGT(II)-Aは約25%の容量維持率を示した。
【0229】
試験4を、C/2レートで充電し、C/3レートで-20℃で10サイクル放電した後、0℃で寿命サイクリングを行うことにより実施して、典型的な使用法での低温挙動を評価した。グラファイトの場合、電圧範囲は1.5V~4.3Vであった。GrSi3GmGT(II)-Aの場合、0℃でのサイクリングは1.5V~4.2Vの電圧範囲で実施し、再び上限電圧カットオフを4.3Vに変更した。
図20A、
図20B及び
図21を参照。
【0230】
図22~
図24は、本開示で開示されるGmGT(II)-A材料で製造された電極の原子組成及び形態を特徴付ける一連のSEM画像及び元素マップである。
図22は、グラファイトマトリックスにおける本発明の粒子(明るいフィーチャ)の均一な分布を示す低倍率の後方散乱電子(BSE)SEM画像である。粒子マトリックスへの良好な結合性及びスラリー粒子の良好な充填密度が見られる。
図23は、二次元のフレーク様形態の証拠を示すGmGT(II)-A粒子(大きな中央粒子)の高倍率二次電子SEM画像である。隣接する粒子(主にグラファイト)は、GmGT(II)-A粒子によく結合されている。
図24は、左上パネルのBSE画像及び電極の同じ領域からの一連の3つの元素マップを示す。炭素分布(右上のパネル)、モリブデン分布(左下のパネル)及び酸素分布(右下のパネル)を示す。
図24に示すマップ間の強度スケールは定量的ではない。これは、GmGT(II)-A材料が化学的又は機械的分解なしに電極調製物に組み込まれることのはっきりとした証拠である。
【0231】
図25は、LCOカソード、及び、10%の本開示で開示される本発明の材料(GmGT(I)-X及びGmGT(II)-A)と90%のグラファイト(Gr)を含むカソードを使用して作製された200mAhパウチ電池のサイクル性能を示す一連のグラフである。パウチセルはC/10でフォーマットされ、C/2で9サイクル調整された後、インピーダンス分析のために50%の充電状態に充電された。この一連のグラフで特に注目すべきは、パネル(c)が、純グラファイト(Gr)、GmGT(I)-Xを有するGr、及びGmGT(II)-Aを有するGrのアノードを有するGrを用いたパウチセルの充電/放電曲線の比較を示すことである。これらのセルを、超高速充電及び通常運転のEV条件(すなわち、電気自動車に電力を供給する電池にとって商業的に望ましい性能特性)を模倣するように、10Cで充電し、C/3で放電した。パネル(d)は、これらの条件下で充電及び放電された電池の対応するサイクル性能を示す。グラファイトアノードを備えた電池は急速に充電できないことは周知である。予想通り、これらの充電条件下では、グラファイトアノードを備えたパウチセルは10℃でほとんど充電されなかった(わずか2mAh)。対照的に、10質量%の本開示で開示されるGmGT材料を用いた場合には、GmGT(I)-X/Gr及びGmGT(II)-A/Grを有するパウチセルは、それぞれ16mAh及び21mAhに充電された(10Cで)。これは、C/10で得られる容量の約10%である。要するに、本開示で開示される本発明のアノード材料を組み込んだ電池は、有望な超高速充電能力を示す。この電池はまた、低温で優れた性能を発揮する。
図25のパネル(e)及びパネル(f)は、-20℃での充電/放電プロファイル及びサイクル性能を示す。ここでは、セルは1Cで充電され、C/3で放電され、33mAhの容量を示した。これは、同じレートで、但し室温で、充電/放電した場合の容量のおよそ20%である。
【0232】
図26、
図27及び
図28は、本開示に従って作製されたセパレータ及びサイクリング後の従来のグラファイトセパレータの一連の写真であり、リチウム堆積の程度を示す。
図26は、サイクルした200mAhのグラファイトのみの活性アノードパウチセルから回収した従来のグラファイトセパレータの写真である。写真はリチウム粉末の堆積をはっきりと示す(茶色の領域)。対照的に、
図27は、本開示に従って作製し、同一の条件下でサイクルしたセパレータを示す。
図27は、
図26と比較してリチウム粉末の堆積が著しく少ないことを示す。
図28は、本発明のセパレータ(左側)及び従来のグラファイトセパレータ(右側)を並べて比較したものである。従来のアノードのより明るいコントラストは、有意なリチウム(Li)メッキを示す(目視検査で金色/黄褐色として観察される)。本発明の材料を含むアノードの暗褐色は、健全な電池性能を示す(目視検査で暗褐色/黒色として観察される)。
【0233】
LiとGmOとの相互作用の予測モデリング:
本開示で開示されるのは、リチウム原子との組み合わせでGmO系材料を含む組成物、及びこれらの材料を形成する方法である。上記の合成方法を使用して、結晶性グラフェン及び分子TMOを含む、結晶性GmGT(I)-X複合材料及び非晶質GmGT(II)-A複合材料を形成した。これらの材料を使用して、単一セルリチウムイオン電池(LIB)のアノードを形成して、セルを様々なサイクル数でサイクルし、リチウム化(充電)及び脱リチウム化(放電)時の材料の結晶シグネチャーを分析するために試験した。具体例が、単一サイクル(
図29)の場合、中程度のサイクル数の場合、及び多サイクル数の場合(
図30)で示されている。結晶バージョン又は非晶質バージョンを出発材料としたかに関係なく、どちらの場合も結晶性α-GmO及びGシグネチャーはサイクリング後に存在する。5つの追加のピークが新たな回折シグネチャーを形成することが認められる。
【0234】
Quantum ESPRESSO 6.4.1(Giannozzi, et al. “Advanced capabilities for materials modelling with quantum ESPRESSO,” Journal of Physics: Condensed Matter 29:465901 (2017))を使用して予測DFT計算を行った。Perdew-Burke-Ernzerhof(PBE)一般化勾配近似交換相関を用いた射影補強波(PAW)スカラー相対論的擬ポテンシャルを、PSlibrary 1.0.0(A. D. Corso “Pseudopotentials periodic table: From H to Pu,” Computational Materials Science 95:337 (2014))から、炭素、酸素及びリチウム原子について生成させた。波動関数の拡張には、50Ry(180eV(2.88×10-17J))の平面波運動エネルギーカットオフを使用し、電荷密度及びポテンシャルについて326Ry(1175eV(1.883×10-16J))の運動エネルギーカットオフを使用した。リチウム原子の濃度が異なる場合は、1×1、2×2、3×3、4×4及び5×5の周期的スーパーセルを使用し、リチウム原子の濃度が異なる場合のエネルギーを比較できるようにするk点を慎重に選択した。Quantum ESPRESSOは、3方向すべての周期境界条件で機能するため、モデルα-GmOの単層との複数のリチウム原子の相互作用をモデル化する方法は、隣接するGmO層間の距離をz方向に適度に大きくすることであった(例えば、これらの計算では20Å)。長距離の電気双極子効果を回避するために、単層の上方のリチウム原子の数がその単層の下方のリチウム原子の数よりも多い(又は少ない)場合、スーパーセルあたり2層のα-GmOを使用した。同じスーパーセル内で上下にリチウム原子の数が反転したα-GmOの第2層を追加すると、z方向の周期構造によって生じた可能性のある長距離電気双極子がキャンセルされる。どちらの場合も、隣接するα-GmO層間の距離は20Åに保った。1つのリチウム原子が純Li構造を離れてα-GmO単層の表面に吸着する際の1つのリチウム原子のエネルギーの変化ΔELiは、GmOの1つの(スーパー)セルの総エネルギーEGmOを計算して、ELi=-204.67eV(-3.2792×10-17J)は、純リチウム結晶(体心又は六方最密充填)内の1つのリチウム原子の総エネルギーであることを理解すること、GmOの1つの(スーパー)セルの総エネルギーとしてEGmO+Liを計算すること、及び挿入されたリチウム原子の数としてNLiを計数することによって求められる。
【0235】
α-GmO単層とのリチウム原子の相互作用に関するDFT予測計算の目標は以下の通りである:1)GmOの単層が複数のリチウム原子を保持することができるかどうかを判断すること、及び2)リチウムイオン電池用のこの新規なアノード材料の最大理論容量を予測すること。以下に示す結果は、グラフェン単層とは異なり、α-GmO単層がLi-O結合を形成することによって複数のリチウム原子を保持することを予測するものである。以下の表及び図には、α-GmO結晶性単層のみが示されている。しかしながら、GmOの他の結晶相(β、γ及びδ)の予測計算でも、Li-O結合の形成が確認される。複数のリチウム原子は、単層の片側又は両側のいずれかで、GmO単層に吸着される。各GmO六角形のHサイトの上方及び下方での、単一リチウム原子の場合から複数のリチウム原子による完全カバーまでの広範囲のリチウム濃度を検討した。
【0236】
GmO単層近くの単一リチウム原子:
複数のGmO単層との複数のリチウム原子の相互作用を理解するための最初のステップは、他のリチウム原子の非存在下、α-GmO単層上への単一リチウム原子の吸着に好ましいサイトを探索することである。最低エネルギー配置は、以下の高対称性サイトから始まる:i)OはO原子直上のサイトである;ii)TはC原子上のトップサイトである;iii)Bサイト(架橋サイト)はC-C架橋の中央上方にある;iv)Hサイト(空洞サイト)は、準六方晶系の空洞の直上にある(
図31A)、すなわち、炭素副格子の空洞サイトである;及びv)Sサイト(特殊なサイト)は、3つの隣接するO原子によって形成される三角形の重心上にある(
図31B)、すなわち、Sは酸素副格子の空洞サイトである。
【0237】
【0238】
表10は、単一リチウム原子のエネルギーの変化及び一定の単位胞パラメーター(α=130°及びαlat=3.13Å)に拘束されたGmO単層の高対称性サイト上のその座標を示す。Hサイトは、単一の吸着したリチウム原子にとって最低エネルギーサイトである。Hサイトの場合よりもSサイト及びBサイトの場合にΔELiは、負の程度がより小さいが、バルクリチウム金属よりもリチウム原子の方がエネルギー的により好ましい。したがって、Sサイト及びBサイトは、より高濃度でのリチウム吸着中に占有される場合がある。
【0239】
他の好ましいサイトを見逃していないかどうかを確認するために、単一リチウム原子のz座標を、格子定数の対応するx成分及びy成分に沿って、一定の小刻みのステップでGmO単層上の複数の点の上で最適化した。この情報から、GmO単層上のリチウム原子のエネルギー及び高さの変化がx,y座標にマッピングされた(ここでは示さない)。この計算により、Hサイトが単一リチウム原子にとって最もエネルギー的に好ましいサイトであり、リチウム原子がSサイト上でGmO単層に最近接していることが確認される。したがって、複数のリチウム原子をGmO層間に密に充填しなければならない場合、多層系にはSサイトが好ましいであろう。
【0240】
Hサイト上のリチウム原子の場合、GmO単層とリチウム原子のみに対するGmO単層+単一Liの系の電子密度分布の変化を計算して、Li-O結合の電子電荷密度のゲインを求める。リチウム原子は、構造体から離れてLi+イオンに変わる際に、比較的簡単にその電子を離す。このような挙動は、GmOがリチウムイオン電池においてアノードとして機能するために必要である。スーパーセルの領域全体にわたって電子電荷密度ρを積分すると、z軸に沿って線形の電子電荷密度が得られ(ここでは示さない)、リチウム原子がその電子電荷をGmO単層と共有するという知見が確認される。リチウム原子周囲の実際の電子電荷密度分布から、酸素原子が最高の状態密度を有することが判る。この意味で、単一リチウム原子とGmOの単層との相互作用は、グラフェン単層との相互作用と比較した場合、Liイオン電池にとってより強力で有利である。
【0241】
1つのGmO単層上の複数のリチウム原子の様々な濃度のパラメーター:
リチウム挿入グラファイトの用語を使用すると、リチウムについての最大容量(したがって電荷の最大容量)の場合は、LiC
6のhexal秩序化として表され、新規なLi
2C
nO
n構造は、同じ空洞サイトの上方及び下方に複数のリチウム原子対を有し、LiC
nO
n構造はGmO単層の片側にのみ複数のリチウム原子を有する。GmO単層とリチウム構造の一例として、Li
2C
6O
6(Li
0.67C
2O
2)及びLi
2C
2O
2の立体配置を
図32A及び
図32Bに示す。表11は、完全緩和構造のリチウム原子エネルギーの平均変化を示し、リチウム原子が、概して、低リチウム濃度(低電荷容量に対応)でGmO単層により多く結合していることを示す。表11は、複数のリチウム原子が、単層上にリチウム金属クラスターを形成するというよりもむしろ、互いに離れて留まる傾向があることも示唆している。リチウム原子間の反発挙動は、GmOでのLi輸送及び電池の急速充電への応用の可能性にとって重要である。
【0242】
理論容量は、表11中のサンプリングした全ての組成物について計算した。リチウム原子がGmO単層の各空洞サイトの上下に配置されている場合、Li2C2O2配置について957mAh/gの最大理論容量が予測された。この容量は、グラファイトの理論容量(LiC6の場合372mAh/g)の2.6倍である。各空洞サイトがGmO単層の片側だけにリチウム原子を保持している場合は、グラファイトの1.3倍の容量を有する。他の全ての配置は、グラファイトよりも容量が小さい。表11の下から上に向かって容量が徐々に増加することは、LiC6の最終的なhexal秩序化に到達するまでより多くのリチウムが挿入されるにつれて、グラファイトの容量が増加することに等しい。
【0243】
【0244】
表11の最大容量のLi2C2O2及びLiC2O2構造は全てΔELi>0eVである(したがって、バルクリチウム金属よりも大きくリチウム原子を引き付けない)が、これらのエネルギーは、グラフェンにおけるそれらの等価体(equivalents)よりも0eVにはるかに近い。例えば、グラフェンの両側のリチウム原子に相当するhexal構造(Li2C6)の予測エネルギーは+0.60eV(9.61×10-20J)であるが、GmO(Li2C6O6)における同じ構造のΔELiは、-0.04eV(-6.4×10-21J)である。さらに、グラフェン及びグラファイトを用いた以前の経験から、これらの構造が、GmO系アノード材料で作製された電池で上に示したように、リチウムイオン電池のアノードで使用されるGmOの多層で実現可能であることが示される。
【0245】
したがって、複数のリチウム原子の場合、より低い濃度であるほど、高濃度の場合よりもエネルギー的により安定である。リチウム原子は互いに離れる傾向にある。反発挙動は、GmO含有電極を使用したリチウムイオン電池で観察される急速充電に大きく寄与することができる。Li2C2O2配置で検討した最大リチウム濃度は、957mAh/gの優れた充電容量を有し、グラファイトの2.6倍である。報告のあった非経験的(ab initio)研究では、Li2C6O6配置がエネルギー的に安定であるのに対し、グラフェン(Li2C6)の場合の等価な配置は好ましくないことは、注目に値する。
【0246】
上記のリチウム化GmO材料は、その後サイクルされる製造されたLIBセルにGmGT材料を組み込む以外の方法で生成させることができる。LGm材料は、例えば、電気化学的挿入法によって製造することができる。あるいは、pre-GmGT材料をLi2CO3の水溶液中に懸濁させ、乾燥させ、上記のGmO系材料を製造するのに充分な高温で熱処理してもよい。あるいは、最終生成物のGmGT材料を、Li2CO3の水溶液中に懸濁させ、上記の方法により乾燥させてもよい。この修飾GmGT粉末は、従来の形成サイクルを容易にし、リチウムの不可逆的な損失を低減するために、上記のようにLIB電極形成に直接使用することができる。
【0247】
バンド構造、状態密度及び電子伝導率:
リチウム化(Li
xC
2O
2)組成物及び未リチウム化(α-GmO)組成物のエネルギーバンドを比較して、純粋なα-GmO単層は半導体であることを確認し[参考文献:Mattson et al. (2011). “Evidence of nanocrystalline semiconducting graphene monoxide during thermal reduction of graphene oxide in vacuum,” ACS Nano 5:9710及びPu et al. (2013) “Strain-induced band-gap engineering of graphene monoxide and its effect on graphene, Phys. Rev. B 87:085417]、Li
2C
32O
32のように低濃度のリチウム原子でも、組成物は導体であることを明らかにした。
図32BのLi
2C
2O
2におけるリチウムの検討した最大濃度は、最高の金属特性を有し、Liの添加が半導体GmO単層のエネルギーバンドギャップを閉じ、この新規組成物を導体に変えることを示す。完全緩和GmO単層、LiC
6O
6、Li
2C
6O
6及びLi
2C
2O
2構造の状態密度を
図33に示す。リチウム化構造は、フェルミエネルギー周辺により多くの状態を有し、伝導性であり、バンド構造と一致しており、電池アノードに望ましい。
【0248】
したがって、バンド構造及び状態密度の分析により、Li2C32O32のような低濃度でも組成物の伝導特性が確認され。フェルミエネルギー周辺の様々な構造の状態密度の統合及び電荷密度の再分布の分析により、リチウム原子は、GmOから離れつつ、電子を容易に供与してLi+イオンになることができることが証明された。これにより、GmOはリチウムイオン電池の適切な電池アノード材料となる。
【0249】
GmO単層近くのLi移動:
α-GmO単層付近のリチウム輸送のエネルギープロットを、Quantum ESPRESSOで実装されたナッジ弾性バンド(nudged elastic band、NEB)法を使用して得た[Henkelman and Jonsson (2000) “A climbing image nudged elastic band method for finding saddle points and minimum energy paths,” J. Chem. Phys. 113: 9901-9904]。4.5eV(7.21×10-19J)のエネルギー障壁(ここでは示さず)のために、GmO空洞を通してのリチウム原子の転移は起こりにくいが、GmO単層の表面でのリチウム移動は、Sサイト、Bサイト及びSサイトを通して、1つのHサイトから次のHサイトへと容易に進行する。最高のエネルギー障壁は、Bサイトで0.34eV(5.45×10-20J)の高さを有していた。このことは、リチウムがGmO層と平行に高速で移動できることを示している。
【0250】
したがって、ナッジ弾性バンド(nudged elastic band)法で考慮されるリチウム原子の移動は、高いエネルギー障壁のために、GmO格子の空洞を通してのリチウム移動を除外する。GmOの表面では、リチウム移動は、Sサイト、Bサイト及びSサイトを介して隣接するHサイト間で高速に行われる。この結果は、同等に構築されたグラファイトアノードよりもはるかに速い充電を示す、GmO系材料を用いて作製された電気化学セルについての測定結果を裏付けている。
【実施例】
【0251】
以下の実施例は、上記の発明を説明することを意図しており、その範囲を狭めるように解釈されるべきではない。当業者は、実施例が本発明を実施することができる他の方法を示唆し得ることを容易に認識するであろう。本発明の範囲内に留まりながら、様々な変形及び変更を行うことができることを理解されたい。
【0252】
実施例1.pre-GmGT材料の合成及び特性評価:
表3の試料3.18は、pre-GmGT(I)材料を製造するための合成プロセスの典型である。この例では、懸濁液1.1を、典型的な比で溶液2.1と組み合わせ、その後、低真空オーブン内で典型的な低温処理を行った。試料3.18は、試料4.13として表4に記載したさらなる高温処理によりGmGT(I)-Xをもたらすことが判った。
図3に、いくつかの特性評価からのpre-GmGT(I)材料の同定フィンガープリントをまとめられている。
【0253】
図3A~
図3Dは、pre-GmGT(I)材料についての、例えばHitachi H‐9000NAR 300keV透過型電子顕微鏡から収集されたTEMデータと、その後のデータ分析を示す。
図3Cに示されているSAEDパターンに認められるリングは、pre-GmGT(I)材料のG成分に特徴的なものである。これは、pre-GmGT(I)複合材料のG成分が本質的に結晶性であり、TEMの直径1.5μmのアパーチャによって選択された試料の領域内にいくつかの異なる配向ドメインを有すること(リングのスポットで示される)、及び異なる回折スポット間の回折リングの滑らかさによって示されるように、結晶性Gの多数のより小さな配向ドメインも存在することを示す。結晶性TM化合物の領域に関連する可能性のある検出可能な回折フィーチャは存在しない。
図3Dは、SAEDデータに対応する領域の明視野TEM画像であり、材料のコンパクトなフレーク様の状態を示す。さらに、TM含有ナノ粒子のナノ結晶又は凝集体を示すものはない。
図3Aは、SAEDパターンから、回折パターンをセンタリングすること、強度分布を回転平均化すること、どこでも生データ強度未満に抑えられた区分的線形バックグラウンドを差し引くこと、及び較正された空間周波数の関数としての結果をプロットすることを行って得られた。SAEDパターン(
図3B)に存在するリングに対応するピーク位置の測定により、グラファイト又はグラフェンの面内間隔に対応する空間周波数及び原子間隔が確認される。試料のこの領域に結晶性TM粒子が存在するという証拠はなく、これはpre-GmGT材料に特徴的なことである。
【0254】
図3Eは、例えば、市販のFTIR(Bruker Vertex)赤外線分光計を用いて拡散反射法(PIKE instrumentsからのDIFFIR)を使用して、pre-GmGT(I)材料から収集された代表的なIRデータを示す。約1~5質量%の粉砕した試料を計量し、5mgの臭化カリウム粉末に加え、反射率測定のためにカップに入れた。5mgの臭化カリウム粉末のバックグラウンド測定値を前例と同様に測定し、前の測定値から差し引いて、試料の反射/散乱赤外線強度を得た。このデータは、任意単位の赤外線吸収スペクトルに類似しており、試料の振動フィンガープリントシグネチャーを提供する。スペクトルは、pre-GmGT材料に特有の典型的なフィンガープリントフィーチャを示す:1)MoO
3結合形態でのMo-O振動に典型的な1,000cm
-1直下にある比較的シャープな吸収線;2)C-O-C型振動に典型的な1250cm
-1の領域のブロードなフィーチャ;及び、3)欠陥sp2 C-C振動を示唆する1700cm
-1付近の誘導体様フィーチャ。
【0255】
図3Fは、例えば、15keVで動作するHitachi S-4800 FE-SEMを使用して、pre-GmGT(I)材料から収集された代表的なSEMデータを示す。この場合の特定の実験試料は、粉末状の材料を製造するためのサイズ調整工程は行わずに、試料3.18と同じプロセスで得られた。pre-GmGT(I)材料の典型的なSEM画像(例えば、
図3F)は、文献に記載されている薄いG又はrGO形態とは異なるコンパクトな層状のシート様の形態を有する大きなフレークを示す。
【0256】
図3G及び
図3Hは、SEM試料材料について
図3Fで説明したのと同様に製造されたpre-GmGT(I)材料のTGA及びDSCデータをそれぞれ示す。TGA/DSCデータは、例えば、TA Instruments Discovery SDT 650同時TGA/DSC装置を使用して収集した。アルゴンガスの100mL/分の流れのもとで、室温から300℃まで10℃/分の速度で、材料試料を加熱した。この試料は、酸化グラフェンで典型的に観察される300℃未満の発熱ピークを示さなかった。122~266℃の温度範囲で熱流曲線を積分することにより計算されたエンタルピーは、ベースラインの差し引きなしで、149.7J/gであった。2.243W/gの熱流ピークは187.5℃で生じた。最大質量損失率は、加熱プロファイルが終了したときに生じた。これらのフィーチャは、pre-GmGT材料の特徴的フィンガープリントを表している。すなわち、この材料について発熱性は実質的に存在しない。300℃への加熱の終了時に、試料は開始質量の86.6%及びpre-GmGT材料のフィンガープリントを保持していた。
【0257】
例えば、pre-GmGT(I)材料(試料3.18)のBET測定では、Micromiritics ASAP 2020 BET表面積/細孔サイズ分析器を使用して、完全な窒素吸着等温線を得た。脱気は、90℃で50mmHg/sから10μmHgまで90分間排気した後、10℃/分の速度で加熱し、次いで、100mmHgの保持圧で240℃で240分間保持して行った。pre-GmGT(I)材料の場合、BET表面積はこの例では6.5m2/gであった。pre-GmGT材料のフィンガープリントは、測定されたBET表面積であり、このBET表面積は、グラファイトのような比表面積を有するコンパクトな材料を示し、使用済みのグラファイト、グラフェン、又は典型的なrGO材料の比表面積とは明らかに異なる。
【0258】
この例では、pre-GmGT材料は、BET表面積測定によって決定した場合に低い比表面積(グラファイトと同様)を有し、TGA/DSC測定で決定した場合に約300℃に加熱されたときに実質的に発熱性がないコンパクトな層状材料(SEM及びTEMにより確認される)として典型的に表される。pre-GmGT材料のGm成分は、FTIR測定によって決定した場合にC-O-C部分に関連する官能基を含み、このことは、さらに、pre-GmGTのT成分が少なくとも部分的に完全酸化されたTMOであることを示している。pre-GmGTのG成分は実質的に結晶性であるが、T成分は実質的に非結晶性であり、SAED測定及びイメージングによって決定した場合に材料中に均一に分布している。
【0259】
実施例2.GmGT(I)材料及びGmGT(II)材料の合成及び特性評価:
GmGT(I)材料及びGmGT(II)材料の例を使用して、標準的測定からのフィンガープリントを示す。表3及び表4に概説したプロセスで製造された選択例は、上記の詳細な説明に記載されている。ここでは、試料の特性評価について説明する。
【0260】
図4は、表4の試料4.1に従うが、最終温度を約625℃にして、GmGT(I)-Aについて収集されたデータを示す。
図4Cに示すSAEDパターンに認められるリングは、GmGT(I)材料のG成分に特徴的なものである。これは、GmGT(I)複合材料のG成分が本質的に結晶性であり、TEMの直径1.5μmのアパーチャによって選択された試料の領域内にいくつかの異なる配向ドメインを有すること(リングのスポットで示される)、及び、異なる回折スポット間の回折リングの滑らかさによって示されるように、結晶性Gの多数のより小さな配向ドメインも存在することを示す。結晶性TM化合物又は結晶性GmO化合物の領域に関連する可能性のある検出可能な回折フィーチャは存在しない。
図4Dは、対応する明視野TEM画像であり、材料のコンパクトなフレーク様の状態を示す。小さな暗色の斑点は、結晶回折フィーチャを示さないため、おそらく大きなフレークの小さな断片であろう。暗色のフィーチャは、TM含有ナノ粒子の凝集体である可能性がある。
図4Aは、SAED強度ラインプロファイルの回転平均(上記の実施例1を参照)であり、ラインプロファイルから求められた
図4Bにより、グラファイト又はグラフェンの面内間隔に対応する空間周波数及び原子間隔が確認される。試料のこの領域に結晶性TM粒子が存在するという証拠はなく、これはGmGT(I)-A材料に特徴的なことである。
【0261】
図4Eは、GmGT(I)-A材料に特有の典型的なフィンガープリントフィーチャを有する以下の代表的なIRデータを示す:1)C-O-C型振動に典型的な1250cm
-1の領域のブロードなフィーチャ;及び、2)欠陥sp2 C-C振動を示唆する1700cm
-1の付近の誘導体様のフィーチャ。pre-GmGT材料に存在する特有なMo-Oフィーチャは、処理温度がかなり高いこの材料では著しく減少し、大幅に広がった。
【0262】
図4Fは、GmGT(I)-A材料から収集された代表的なSEMデータを示す。GmGT(I)-A材料の代表的なSEM画像は、薄いG又はrGO形態とは異なるコンパクトな層状のシート様の形態を有する大きなフレークを示す。
【0263】
図5は、表4の試料4.1に従ってGmGT(I)-Xについて収集されたデータを示す。
図5Cに示すSAEDパターンに認められるスポット/リングと微かなリングは、それぞれGmGT(I)-X材料のG成分とGmO成分に特徴的なものである。これらのスポットは、GmGT(I)-X複合材料のG成分が本質的に結晶性であり、TEMの直径1.5μmのアパーチャによって選択された試料の領域内に主に1つの配向ドメインを有すること(スポットで示される)、及び、複合材料のGmO成分は、本質的に結晶性であり、試料の領域内にいくつかの配向ドメインを有し、回折リングの滑らかさによって示されるように、結晶性GmOの多数のより小さな配向ドメインを有することを示す。結晶性TM化合物の領域に関連する可能性のある検出可能な回折フィーチャは存在しない。
図5Dは、対応する明視野TEM画像であり、材料のコンパクトなフレーク様の状態を示す。TM含有ナノ粒子のナノ結晶又は凝集体を示すものはほとんど又は全くない。
図5AはSAEDラインスキャンであり、
図5Bにより、グラファイト又はグラフェンの面内間隔に対応する測定された空間周波数及び原子間隔が確認される。
【0264】
図5Eは、GmGT(I)-X材料に特有の典型的なフィンガープリントフィーチャを有する以下の代表的なIRデータを示す:1)C-O-C型振動に典型的な1250cm
-1の領域のブロードなフィーチャ;及び、2)欠陥sp2 C-C振動を示唆する1700cm
-1の付近の誘導体様フィーチャ。GmGT(I)-X材料に存在する特有なMo-Oフィーチャは、上記のGmGT(I)-A材料と同様に著しく減少し、大幅に広がった。
【0265】
図5Fは、GmGT(I)-X材料から収集された代表的なSEMデータを示す。GmGT(I)-X材料の典型的なSEM画像は、薄いG又はrGO形態とは異なるコンパクトな層状のシート様の形態を持つ大きなフレークを示す。
【0266】
GmGT(I)-NCの合成は、例えば、表4の試料4.1に準じた処理工程に従うが、最終温度は800℃を超える。SAEDパターン(図示せず)に認められるリングは、GmGT(I)材料のG成分に特徴的なものであり、MoO2ナノ結晶の回折シグネチャーに整合するさらなるリングを有する。特徴的なα-GmOリングは、MoO2リングのいくつかに近い位置にあり、ナノ結晶の数が少ない試料で認められるが、TM:C原子の比が大きくなり、ナノ結晶の数が多くなり、サイズが大きくなるにつれて、不明瞭になる場合がある。
【0267】
IRデータ(ここでは示さない)は、GmGT(I)-Xで観察されたものに類似するGmGT(I)-NC材料に特有のフィンガープリントフィーチャを示す:1)C-O-C型振動に典型的な1250cm-1の領域のブロードなフィーチャ;2)欠陥sp2 C-C振動を示唆する1700cm-1の付近の誘導体様フィーチャ;及び、3)未還元MoO3を有する出発材料に見られるMoO3に起因するMo-O振動の欠如。MoO2に起因するMo-O振動は、弱い双極子のため、スペクトルで検出するには弱すぎる。
【0268】
図6は、表4の試料4.2に従ってGmGT(II)-Aについて収集されたデータを示す。
図6Cに示すSAEDパターンに認められるリングは、GmGT(II)-A材料のG成分に特徴的なものである。これは、GmGT(II)複合材料のG成分が本質的に結晶性であり、TEMの直径1.5μmのアパーチャによって選択された試料の領域内に、いくつかの配向ドメインを、回折リングの滑らかさによって示されるように、多数のより小さな配向ドメインとともに有すること(リングに沿って強度が変化することにより示される)を示す。結晶性TM化合物又は充分に秩序化された結晶学的GmO化合物の領域に関連する可能性のある検出可能な回折性質は存在しない。
図6Dは、対応する明視野TEM画像であり、有孔カーボングリッド上の材料のコンパクトなフレーク様の状態を示す。
図6AはSAEDラインスキャンであり、
図6Bにより、グラファイト又はグラフェンの面内間隔に対応する空間周波数及び原子間隔が確認される。試料のこの領域に顕著な結晶性TM粒子が存在するという証拠はなく、これはGmGT(II)-A材料に特徴的なことである。
【0269】
図6Eは、GmGT(II)-A材料に特有の典型的なフィンガープリントフィーチャを有する以下の代表的なIRデータを示す:1)C-O-C型振動に典型的な1250cm
-1の領域のブロードなフィーチャ;及び、2)欠陥sp2 C-C振動を示唆する1700cm
-1付近の誘導体様のフィーチャ。
【0270】
実施例1に記載したように、BET測定によって、GmGT(I)-X材料のBET表面積は8.4m2/gであることが示された。GmGT(I)-X材料とGmGT(II)-A材料のブレンドの場合に、BET表面積は8.5m2/gであった。GmGT材料のフィンガープリントは、BET表面積で測定され、グラファイトのような比表面積を有するコンパクトな材料を示し、使用済みのグラファイト、グラフェン、又は典型的なrGO材料の比表面積とは明らかに異なる。
【0271】
図7A及びBは、GmGT(I)-X材料及びGmGT(II)-A材料のブレンドのTGA及びDSCデータをそれぞれ示す。TGA/DSCデータは、例えば、TA Instruments Discovery SDT 650同時TGA/DSC装置を使用して収集した。試料材料を、室温から600℃まで10℃/分の速度で加熱し、次いで、600℃から1100℃まで3℃/分の速度で加熱を続けた。試料は、酸化グラフェンで典型的に見られる300℃未満の発熱ピークを示さなかった。熱流曲線を122~266℃で積分した場合、エンタルピーは、ベースラインを差し引きなしで、263.7J/gであった。3.307W/gの熱流ピークは191.94℃で生じた。これらのフィーチャ(室温~300℃)は、GmGT材料の特徴的フィンガープリントを表している。すなわち、この材料の発熱性は実質的に存在しない。この例での加熱終了時に、試料は開始質量の58.7%を保持していた。質量損失は727~750℃で最大速度で生じ、これはGmGT材料の特徴的フィンガープリントである。
【0272】
図7Cは、GmGT(I)-X材料とGmGT(II)-A材料とのブレンドについての
13C固体NMRデータを示す。材料粉末を、例えば、3.2mmのローターに充填し、Bruker Avance III HD600MHz装置で20kHzで0.5秒のリサイクル遅延で128回のスキャンを得た。炭素及び水素のNMRによる前実験では、GmGT材料は少量の水素を有し、導電性を示し、高出力デカップリングが不要であることが示された。短いリサイクル遅延は、約117ppm及び約160ppmの化学シフトでのピークと同様に、GmGT材料のフィンガープリントである。アスタリスクを付した
図7Cにおけるピークは、117ppm及び160ppmのピークのサイドバンドとして充分に解釈される。
【0273】
実施例3.原子百分率のEDS測定からの複合GmGT生成物材料の成分の相対的な割合の決定:
【0274】
【0275】
表12は、最終複合材料及び中間複合材料における、炭素、酸素及びモリブデンの原子百分率の定量的測定値と、GmO様成分(C2O2として計算)、G様成分(C6として計算)、及びTMO成分(MoO2として計算)を含むGmGT系材料の相対分子百分率の導出値とを示す。EDSによって得られたC、O及びMoの測定原子百分率は、個々の原子種の相対百分率の合計が1になるように正規化される。この推定では、不純物は無視される。次に、相対的な酸素含有量を、2つの異なるタイプの酸素化学種の部分に分割する:酸素化学種の1つは、MoO2としてMo原子に関連付けられると想定され、残りの酸素含有量は、C2O2としてGmO様材料に関連付けられる種であると想定される。この酸素種の指定は、同様に炭素を2つの種に分割する:1つの種は、前述のGmO様材料にC2O2として関連付けられ、残りの炭素含有量は、C6としてグラフェン様材料に関連付けられる種であると想定される。酸素原子及び炭素原子をそれぞれ2つの異なる種として人工的に分離し、この方法で分子を割り当てることにより、最終複合材料又は中間複合材料のG成分、GmO様成分及びTMO成分の相対的な分子百分率を大まかに特徴付けることが可能であり、供給原料及び合成プロセスの関数としての材料組成に半定量的にアクセス可能となる。重要なことに、これらの生成物-材料複合材料中のGmO様成分のモル濃度は概して相当なものである。Mo:C配合比10:1の試料の場合、TEM/SAED特性評価(図示せず)によって決定した場合にTMOが相当量析出し、材料のフレーク全体にわたって、サイズが数10ミクロンのMoO2ナノ結晶(SAED測定によって決定した場合)を帯びる。
【0276】
実施例4.不活性ガス環境を使用したGmGT-X生成物材料の合成:
表4の試料4.4は、窒素ガス流下、管状炉でGmGT(I)材料を生成させる第2の例を提供する。出発原料は、表3の試料3.17であり、粉末の形状因子で、16mg/cm2の質量使用量で開放石英るつぼに入れ、超高純度窒素ガスの3.1L/分の流量を確立する前に管状炉の中央温度ゾーンに配置した。725℃の最終温度(Tf)を10分間維持した。TmからTfに到達するまでの時間は1時間32分であり、真空アニールに比べてかなり短く、炉の製造元が推奨する最速温度ランピングとして選択される。少なくとも部分的には、覆われていない格納容器(石英るつぼ)及びその後の流動ガス供給の能力のため、より速い加熱速度によって、発生ガスを試料領域から迅速に移動させることが可能である。室温まで冷却し、管状炉から取り出す際に、材料は、電池電極材料の形成に組み込まれるのに既に望ましいサイズ及び形態になっている。最終生成物は、GmGT(I)材料の特性を有することを示すために上記実施例と同様の方法で多くの方法で特徴付けられる。
【0277】
実施例5.GmGT材料を製造するプロセスを使用したrGOの合成:
表4の試料4.8は、前駆体材料(表3の試料3.11)から始まり、最高温度(Tfで4時間)に長く留まり、全ての他の真空炉熱処理パラメーターは、試料4.1と実質的に同じである:カバー付きの同じ非反応性タンタルボート、31mg/cm2の材料使用量、フレークの形状因子、2×10-6torr(2.67×10-4Pa)の基準圧、780±20℃の最終温度(Tf)、TmからTfに到達するまでのランプ時間15時間45分。最終生成物は、GmGT材料の特性評価フィンガープリントは示さなかった。GmGT材料を製造することに失敗したことは、合成プロセスが使用可能なTM成分を必要とすることを示す。
【0278】
実施例6.代替炭素源としての市販のGO粉末及びprGO粉末の使用:
(表5の試料6.6):市販の部分に還元された酸化グラフェン(prGO)を、Graphenea(米国マサチューセッツ州ケンブリッジ)から調達し、化学的方法を使用して、材料中に13~17%の酸素を含むprGOを生成させるために炭素源として使用した。400mgのprGOを、TM源としての80mLの溶液2.1と混合し、磁気撹拌機により室温で3~4分間撹拌した。溶液をホウケイ酸ガラストレイで52℃で24時間乾燥させ、掻き取り、蓋付きのアルミナ被覆タンタルボートに粉末状で40mg/cm
2で装入した。覆った材料装入物を、2×10
-6torr(2.67×10
-4Pa)の開始基準圧で、高真空中で、異なる温度ウィンドウで変動加熱速度で抵抗加熱した。T
mに近づいてT
mから離れる際の加熱速度、すなわち最大質量損失温度の230±45℃での加熱速度は、0.1℃/分で対称的に遅く、最終アニーリングは温度T
f=780±20℃で4時間行った。T
mからT
fに到達する時間は15時間45分であった。室温まで冷却して真空炉から取り出して、生成された材料を特性評価した。この材料の特性評価は
図8に含まれている。
【0279】
図8Cに示すSAEDパターンに認められるリングはprGO様材料に特徴的なものであり、ここで、複合材料のG様成分は、本質的に結晶性であり、明確なスポット間の回折リングの滑らかさによって示されるように、多数のより小さな配向ドメインを有する。
図8Cに散在スポットとして認められる結晶性TMOの領域に関連付けられる制限回折フィーチャが存在する。
図8Dは、対応する明視野TEM画像であり、prGO材料に特徴的な材料の薄い状態と、明らかないくつかのTMOナノ結晶とを示す。
図8AはSAEDラインスキャンであり、
図8Bにより、prGOの面内間隔に対応する測定された空間周波数及び原子間隔が確認される。
【0280】
図8Eは、prGO材料に残存するC-O-C型振動に典型的な1250cm
-1の領域のブロードなフィーチャ、prGOに存在する欠陥sp2 C-C振動を示唆する1700cm
-1付近の誘導体様フィーチャ、及び不均一に組み込まれたTMOとして材料に残存するMoO
3に特徴的な比較的はっきりしたMo-O振動を有する代表的なIRデータを示す。これらのIRフィーチャの一部はGmGT材料で共有されるが、TEM/SAED又はBET表面積測定(図示せず)と組み合わせると、GmGT材料のコンセンサスフィンガープリント基準(consensus fingerprint criteria)が満たされない。
【0281】
この例は、所望の組成物を製造するために市販のprGOを使用できないことを示すため、この例は重要である。この場合の出発炭素材料についての酸素と炭素の相対原子比は約0.15:1であり、真空で処理される場合に、GmO系材料を合成するために必要な下限を提示す。
【0282】
図9は、出発炭素源としてGO粉末を使用した表5の試料6.8に従って生成されたGmGT(I)-Xについて収集されたデータを示す。
図9Cに示すSAEDパターンに認められるリングは、GmGT(I)-X材料のG成分及びα-GmO成分に特徴的なものである。これは、GmGT(I)-X複合材料のG成分及びGmO成分が、本質的に結晶性であり、回折リングの滑らかさによって示されるように、多数の小さな配向ドメインを有することを示す。結晶性TM化合物の領域に関連付けることのできる検出可能な回折フィーチャは存在しない。
図9Dは、対応する明視野TEM画像であり、材料のコンパクトなフレーク様の状態を示す。
図9AはSAEDラインスキャンであり、
図9Bにより、α-GmO及びグラファイト又はグラフェンの面内間隔に対応する測定された空間周波数及び原子間隔が確認される。試料のこの領域に結晶性TM粒子が存在するという証拠はなく、これはGmGT(I)-X材料に特徴的なことである。
【0283】
図9Eは、GmGT(I)-X材料に特有の典型的なフィンガープリントフィーチャを有する以下の代表的なIRデータを示す:1)C-O-C型振動に典型的な1250cm
-1の領域のブロードなフィーチャ;2)欠陥sp2 C-C振動を示唆する1700cm
-1付近の誘導体様フィーチャ;及び、3)MoO
3を示す1000cm
-1未満のブロードなMo-Oフィーチャが存在するか又はMoO
3を示す1000cm
-1未満のブロードなMo-Oフィーチャが存在しない。
【0284】
この例は、出発炭素源としてGOの粉末を使用できることを示し、これにより、低濃度の水性GOルートよりも高速でより経済的な低含水合成ルートが可能になる。
【0285】
実施例7.GmGT(I)-X材料を製造するためのバイオ再生可能(bio-renewable)な炭素源としてのリグニンの使用:
表5には、GmGT(I)-X材料を生成するための出発炭素源としてリグニンを使用した試料6.3の実施形態が使用される。リグニン粉末(26mg)を炭素源として使用し、これを、TM源としての5.2mLの溶液2.1と組み合わせ、室温で2分間ガラス棒で撹拌した。溶液をシリコントレイで室温で24時間乾燥させ、掻き取り、蓋付きのアルミナ被覆タンタルボートに粉末形態で2.2mg/cm2で装入した。覆った材料装入物を、2×10-6torr(2.67×10-4Pa)の開始基準圧で、高真空中で、異なる温度ウィンドウで変動加熱速度で抵抗加熱した。Tmに近づいてTmから離れる際の加熱速度、すなわち最大質量損失温度の230±45℃での加熱速度は、0.05℃/分で対称的に遅く、最終アニーリングは温度Tf=705±20℃で10分間行った。この場合の熱処理パラメーターは、GO系炭素源を出発材料として使用した場合にGmGT(I)-X材料を生成することが知られている熱プロファイルと一致するように選択した。この場合のTm値は、必ずしも最大質量損失率の温度に直接対応するわけではない。TmからTfに到達する時間は16時間45分であった。室温まで冷却し、真空炉から取り出して、生成材料を特性評価し、GmGT(I)-X材料と一致することが判った。
【0286】
図10は、リグニンから生成されたGmGT(I)-Xについて収集されたデータを示す。
図10Cに示すSAEDパターンに認められるリングは、GmGT(II)-X材料のG成分及びα-GmO成分に特徴的なものである。これは、GmGT(I)-X複合材料のG成分及びGmO成分が、本質的に結晶性であり、回折リングの滑らかさ及び広がりによって示されるように、多数の非常に小さな配向ドメインを有することを示す。結晶性TM化合物の領域に関連付けることのできる検出可能な回折フィーチャは存在しない。
図10Dは、対応する明視野TEM画像であり、試料の最も薄い領域での、重なった状態をとっていると理解できる小さな粒子様構造の凝集した集合体を示す。
図10AはSAEDラインスキャンであり、
図10Bにより、α-GmO及びグラファイト又はグラフェンの面内間隔に対応する空間周波数及び原子間隔の測定値が確認される。試料のこの領域に結晶性TM粒子が存在するという証拠はなく、これはGmGT(I)-X材料に特徴的なことである。
【0287】
図10Eは、リグニン及びGmOに特有の典型的なフィンガープリントフィーチャを有する代表的なIRデータを示す。IR測定は、数ミリグラムの材料の巨視的測定であり、顕微鏡TEMは微視的な結晶性を検出することができる。IRスペクトルは、C-O-C型振動に典型的な1250cm
-1の領域のブロードなフィーチャや、欠陥sp2 C-C型振動を示唆する1700cm
-1付近の誘導体様フィーチャなど、GmOの特徴的フィーチャに加えて、リグニンのいくつかのさらなるフィーチャを含む。
【0288】
図10A~Dは、透過型電子顕微鏡法及び分析によって得られた、グラフェンの結晶層と共存するα-GmOの結晶層の特徴的シグネチャーを示す。分子MoO
2は均一に分布し、EDSによって検出可能であるが(図示せず)、SAEDからTM成分の結晶性の証拠はない。IRデータ(
図10E)は、GO由来の出発炭素源から合成されたGmGT材料の同じ特徴的な吸収フィーチャを示す。この例は、経済的な出発源材料への道筋を開くため、この例は重要である。リグニンと同じ又は類似の材料群からの代替炭素源も、この合成ルートの原料として使用することができる。
【0289】
実施例8.バイオ再生可能な炭素源から水熱的に生成されたGOを使用してGmGT材料を生成:
(表5の試料6.7):実験室における砂糖の熱水処理を使用してGO層を合成し、液体の表面張力を利用してそれらを他の生成物から分離した。このGOを回収し、水中に再懸濁させ、10mLのこの懸濁液を、40mLのTM含有溶液2.1と組み合わせた。磁気撹拌を室温で3~4分間用い、溶液をホウケイ酸ガラストレイで49℃で24時間乾燥させた。乾燥物を掻き取り、蓋付きのアルミナ被覆タンタルボートにフレーク状で2.5mg/cm2で装入した。覆った材料装入物を、2×10-6torr(2.67×10-4Pa)の開始基準圧で、高真空中で、異なる温度ウィンドウで変動加熱速度で抵抗加熱した。GOに基づく処理のTmに近づいてTmから離れる際の加熱速度、すなわち最大質量損失温度230±45℃での加熱速度は、0.1℃/分で対称的に遅く、最終アニーリングは温度Tf=780±20℃で4時間行った。TmからTfに到達する時間は15時間45分であった。
【0290】
図11は、表5の試料6.7に従って合成したGmGT(I)-Xについて収集されたデータを示す。
図11Cに示すSAEDパターンに認められるスポット及びかすかなリングは、それぞれGmGT(I)-X材料のG成分とGmO成分に特徴的なものである。スポットは、GmGT(I)-X複合材料のG成分が、主にTEMの直径1μmのアパーチャによって選択された試料の領域内の単一の配向ドメインにおいて、本質的に結晶であること(リングのスポットで示される)、及び、複合材料のGmO成分は本質的に結晶性であり、試料のこの領域内にいくつかの配向ドメインを有し、回折リングの滑らかさによって示されるように、結晶性GmOの多数のより小さな配向ドメインも存在することを示す。図に示されているSAEDデータは、フレークの特徴のない領域から得られたものであり(
図11Dを参照)、その結果、結晶性TM化合物に関連付けることができる検出可能な回折フィーチャは存在しない。フレーク上の粒子の凝集体であるように見える近隣領域から収集されたSAEDデータ(図示せず)により、これらのフィーチャがMoO
2ナノ粒子であることが確認された。
図11Dは、対応する明視野TEM画像であり、試料の数層フレーク(few layered flake)を示し、凝集したTMOナノ粒子である暗い領域がある。
図11AはSAEDラインスキャンであり、
図11Bにより、グラファイト又はグラフェンとα-GmOの面内間隔に対応する測定された空間周波数及び原子間隔が確認される。
【0291】
図11Eは、グルコース及びGmO系材料に特有のフィーチャを有する代表的なIRデータを示す。IR測定は、数ミリグラムの材料の巨視的測定であり、顕微鏡TEMは微視的フィンガープリントを検出することができる。IRスペクトルは、不均一に組み込まれたTMO及びGmOの特徴的フィーチャに加えて、グルコースのいくつかのさらなるシグネチャーを含む:1)MoO
3結合形態でのMo-O振動に典型的な1,000cm
-1直下にある比較的シャープな吸収線;2)C-O-C型振動に典型的な1250cm
-1の領域のブロードなフィーチャ;及び、3)欠陥sp2 C-C振動を示唆する1700cm
-1付近の誘導体様フィーチャ。
【0292】
この例は、砂糖の形態の再生可能な生物起源の炭素源が、所望の組成物を生成するより安価で環境に優しい原料として使用できることを示すため、この例は重要である。
【0293】
実施例9.GmGT材料を生成するための選択肢としての有機金属TM粉末:
GmGT(I)-X(表5の試料6.12)を生成させるために有機金属粉末をTM源として使用:
表1のGO懸濁液1.1(25mL)を、128mgの乾燥C10H14MoO6粉末(表2の粉末2.6)及び375mLの水と組み合わせて、有機金属MoのTM源の有用性を立証した。磁気撹拌を室温で3~4分間用い、溶液をホウケイ酸ガラストレイで52℃で24時間乾燥させた。乾燥物を掻き取り、5~10mmサイズのフレークに切り刻み、蓋付きのアルミナ被覆タンタルボートに5.8mg/cm2で装入した。覆った材料装入物を、2×10-6torr(2.67×10-4Pa)の開始基準圧で高真空中で、異なる温度ウィンドウで変動加熱速度で抵抗加熱した。Tmに近づいてTmから離れる際の加熱速度、すなわち最大質量損失温度230±45℃での加熱速度は、0.1℃/分で対称的に遅く、最終アニーリングは温度Tf=780±20℃で4時間行った。TmからTfに到達する時間は15時間45分であった。
【0294】
図12は、表5の試料6.12に従って作製したGmGT(I)-Xについて収集されたデータを示す。
図12Cに示すSAEDパターンに認められるリングは、GmGT(I)-X材料のG成分及びGmO成分に特徴的なものである。これは、GmGT(I)-X複合材料のG成分及びGmO成分が、本質的に結晶性であり、回折リングの滑らかさによって示されるように、多数のより小さな配向ドメインを有することを示す。結晶性TM化合物の領域に関連付けることができる検出可能な回折フィーチャは存在しない。
図12Dは、対応する明視野TEM画像であり、材料のコンパクトなフレーク様の状態を示す。
図12AはTEMラインスキャンであり、
図12Bにより、α-GmO及びグラファイト又はグラフェンの面内間隔に対応する測定された空間周波数及び原子間隔が確認される。試料のこの領域に結晶性TM粒子が存在するという証拠はなく、これはGmGT(I)-X材料に特徴的なことである。
【0295】
図12Eは、以下のGmGT(I)-X材料に特有の典型的なフィンガープリントフィーチャを有する代表的なIRデータを示す:1)C-O-C型の振動に典型的な1250cm
-1の領域のブロードなフィーチャ;及び、2)欠陥sp2 C-C振動を示唆する1700cm
-1付近の誘導体様のフィーチャ。
【0296】
TEMデータ及びIRデータで観察されたフィンガープリントから明らかなように、炭素含有溶液と組み合わされた有機金属TM源が、GmGT(I)-Xを製造する別のパスであると実証されたため、この例は重要である。
【0297】
実施例10.GO炭素源への添加剤としての過酸化水素の使用:
(表5の試料6.13):表1の懸濁液1.8(336mL)は、市販のGO及びH2O2を含むものであった。この懸濁液を、50mLの表2の溶液2.1及び50mLの脱イオン蒸留水と組み合わせた。磁気撹拌を室温で3~4分間用い、溶液をホウケイ酸ガラストレイで52℃で24時間乾燥させた。乾燥物を掻き取り、5~10mmサイズのフレークに切り刻み、蓋付きのアルミナ被覆タンタルボートに13mg/cm2で装入した。覆った材料装入物を、2×10-6torr(2.67×10-4Pa)の開始基準圧で、高真空中で、異なる温度ウィンドウで変動加熱速度で抵抗加熱した。Tmに近づいてTmから離れる際の加熱速度、すなわち最大質量損失温度230±45℃での加熱速度は、0.1℃/分で対称的に遅く、最終アニーリングは温度Tf=705±20℃で10分間行った。TmからTfに到達する時間は20時間50分であった。
【0298】
図13は、表5の試料6.13に従って作製したGmGT(I)-Xについて収集されたデータを示す。
図13Cに示すSAEDパターンに認められるリングは、GmGT(I)-X材料のG成分及びGmO成分に特徴的なものである。これは、GmGT(I)-X複合材料のG成分及びGmO成分が、本質的に結晶性であり、回折リングの滑らかさによって示されるように、多数のより小さな配向ドメインを有することを示す。結晶性TM化合物の領域に関連付けることができる検出可能な回折フィーチャは存在しない。
図13Dは、対応する明視野TEM画像であり、材料のコンパクトなフレーク様の状態を示す。画像内の暗い斑点のいくつかの領域は、TMO粒子のわずかな析出物の証拠でありうる。
図13AはSAEDラインスキャンであり、
図13Bにより、α-GmO及びグラファイト又はグラフェンの面内間隔に対応する測定された空間周波数及び原子間隔が確認される。試料のこの領域に結晶性TM粒子が存在するという証拠はなく、これはGmGT(I)-X材料に特徴的なことである。
【0299】
図13Eは、以下のGmGT(I)-X材料に特有の典型的なフィンガープリントフィーチャを有する以下の代表的なIRデータを示す:1)C-O-C型振動に典型的な1250cm
-1の領域のブロードなフィーチャ;及び、2)欠陥sp2 C-C振動を示唆する1700cm
-1付近の誘導体様フィーチャ。この例は、上記の特定の標準的なプロセスに加えられる酸化剤は、TEMデータ及びIRデータで観察されたフィンガープリントから明らかなように、GmGT(I)-Xを製造する別のパスであることを実証し、化学的不動態化(還元剤)と、その後の、GmGT製造を可能にするために必要な酸素又は調整された酸素官能基をGOに付与する酸化段階とを行う2段階プロセスで還元剤とともに使用できることを示すため、この例は重要である。
【0300】
実施例11.M2/C2混合後の酢酸:
表5の試料6.14に記載されている材料の特性評価は、GmGT(I)-Xについて収集されたデータを示す
図14に含まれている。
図14Cに示されているSAEDパターンに認められるリングは、GmGT(I)-X材料のG成分及びGmO成分に特徴的なものである。これは、GmGT(I)-X複合材料のG成分及びGmO成分が、本質的に結晶性であり、回折リングの滑らかさによって示されるように、多数のより小さな配向ドメインを有することを示す。ナノ結晶MoO
2の領域に関連付けられる少数の回折フィーチャ(G又はα-GmO面間隔に対応しない空間周波数での孤立したスポット)が存在する。
図14Cは、対応する明視野TEM画像であり、材料のコンパクトなフレーク様の状態を示し、いくつかの孤立した小さな結晶を観察できる。
図14AはSAEDラインスキャンであり、
図14Bにより、α-GmO及びグラファイト又はグラフェンの面内間隔に対応する測定された空間周波数及び原子間隔が確認される。
【0301】
図14Eは、GmGT(I)-X材料に特有の典型的なフィンガープリントフィーチャを有する以下の代表的なIRデータを示す:1)C-O-C型振動に典型的な1250cm
-1の領域のブロードなフィーチャ;及び2)欠陥sp2 C-C振動を示唆する1700cm
-1付近の誘導体様フィーチャ。
【0302】
この例は、TEMデータ及びIRデータで観察されたフィンガープリントから明らかなように、上記の特定の標準的プロセスで出発炭素/TM材料の混合物に酸を加えること(基本的に添加剤の酸によりpHを調整すること)が、GmGT(I)-Xを製造する別のパスであることを実証するため、この例は重要である。同様の結果が、水酸化アンモニウムの添加によりpHを中性の塩基性側に調整した場合に得られる。
【0303】
実施例12.パウチリチウムイオン電池セルにおいてGmGT(II)-Aを添加剤活性アノード材料として使用:
特定の実施例では、材料は、94%の活物質と、対照セルの場合におけるグラファイトとシリコンの97:3(質量比)混合物、又は、グラファイトとGmGT(II)-A材料の90:10の混合物、もしくはグラファイトとシリコンとGmGT(II)-A材料の87:3:10の混合物のいずれかとを含むアノードスラリーである。
スラリーに含まれていた不活性材料は、グラファイト用の標準的な導電剤であるカーボンブラック3%と、合計で3%の水系バインダー(1.5%のカルボキシメチルセルロースナトリウム、1.5%のスチレンブタジエンゴム)であった。スラリーを超音波ミキサーで混合した。アノードスラリーを12μmのCu箔上にキャストし、乾燥させた。電極箔をカレンダー加工し、コイン及びパウチセル構築用のサイズにカットした。ハーフセルでは、材料はCR2032コインセルのサイズに合わせて打ち抜いた。200mAhのパウチ電池では、試験対象のアノードは、20μmのアルミ箔上にキャストされたリチウムニッケルコバルトアルミニウムオキシド(NCA)カソードと対にした。活性カソード及びアノードのスラリーは、バインダー及びカーボンブラックから調製し、アルミニウム箔及び銅箔上に広げ(それぞれ)、乾燥させた。カソードの厚さはアノードの厚さよりも厚かったが(カソードの比容量が小さいため)、カソードの長さと幅はアノードの長さと幅よりも概して小さかった。使用したN:P比は1.1であり、アノードの容量は、アノード表面へのリチウムの堆積を防ぐために、カソードの容量と比較して過剰であった。サイズは、NCAの理論容量と、GmGT(II)-A材料の経験的容量(ハーフセル試験によって決定)とに基づいて選択した。電極を一晩乾燥させた後、それらをドライラボに移してパウチ電池に組み立てた。この段階で電解質を加え、パウチを密閉した。
【0304】
実施例13.リチウム金属ハーフセルにおける活性アノード材料としてのGmGT材料:
電極は、表13に記載されている具体例で、混合及びコーティング技術を使用して作製することができる。例えば、FlackTek遊星型遠心混合機を使用して、固形分が約50%で、粘度が約6450mPaのスラリー分散液を作製した。得られた分散液は、従来の方法(例えば、ドロップコーティング、ディップコーティング、スプレーコーティングなど)を使用して、適切な電極基板材料上に簡単にコーティングされる。得られた電極は、良好な電子的挙動を示し、均一な物理的特性を示し、例えば、大きな粒子は数が限られており、ピンホールがほとんど又は全くないため、現在の商業プロセスにおけるグラファイトのドロップイン代替物となる。
【0305】
一実施形態では、これらのGmO系材料は、Li金属電極に対向する電極として、TMOナノ粒子を含む膨張黒鉛、TMOナノ粒子を含むprGO、膨張黒鉛及びprGOと比較した場合、改善された性能を有する。一般的に、電荷蓄積装置のためのセル構築は、例えば、アノード配合物、カソード選択、電解質配合物、電極使用量、及び/又はそれらの組み合わせを調整することによって、最適な性能特性を得るために調整することができる。
【0306】
これらの発明材料の改善された性能を実証するために、標準的な電解質とLi金属とともにGmGT材料を使用した様々な電極配合物を、様々な炭素系材料又は炭素とTMOとを組み合わせた材料で配合された電極を用いて組み立てられたハーフセルと比較した。これらの電極は、電気化学セルに組み込まれた場合に望ましい性能を発揮する(表13を参照)。
【0307】
【0308】
【0309】
【0310】
アノードハーフセルを試験して、材料合成の摂動が電池性能にどのように影響するかを評価し、市販品及び実験室で作製した対照と比較した。材料は、CR2032コインセルで試験した。活性アノード材料は様々で(表13)、対電極はリチウム金属であり、セパレータはCelgardであり、電解質は2:4:4のEC:DEC:DMC中の1.0M LiPF6であった。
【0311】
形成及びサイクリングの手順は、セット全体で一定に保った。セルの性能を表13にまとめた、この表において、第1サイクルリチウム化容量及び可逆的なリチウム化容量は、それぞれ、第1回リチウム化と第2回脱リチウム化での形成中にどの程度の量のリチウムが消費されたかをそれぞれ規定する。第1及び第2サイクルクーロン効率は、それぞれ第1及び第2回の形成サイクル中の脱リチウム化中に維持されたリチウム化容量の百分率を報告するものである。同様に、比容量及びクーロン効率は、サイクル寿命中の異なる時点で、様々な充電/放電レートの下で、各材料について報告されている。
【0312】
試験した材料は、GmGT材料;Gr、prGO及び膨張黒鉛(EG)の市販対照;TMOを市販のprGO、市販のEGに添加し、GmGT材料と同様に処理することにより実験室で調製された対照材料:並びに、他の対照として実験室で合成されたpre-GmGT(I)及び社内で熱的に合成されたrGOを含んでいた。これらの対照はそれぞれ、上記の特定のプロセスにおける特定の工程の必要性を示しており、電池でGmGT性能を達成するには全ての工程が必要であり、市販の対照はハーフセルでGmGTと異なる挙動を示すことを示している。
【0313】
市販のprGO+TMO及びEG+TMOを使用したハーフセルの結果は、TMOを添加したとしても、rGO又はGrよりもむしろ酸素含有量の高い開始GOがプロセスに必要であることを示した。TMOを含まない実験室で熱的に合成されたrGOを含むハーフセルは、加熱プロファイルだけではGmGTの電池性能よりも劣る電池性能をもたらすことを示したため、TM源は材料合成に必要な成分である。オーブンで約245℃までしか加熱されなかったPre-GmGT(I)も、GmGTと比較して劣った電池性能をもたらした。このことは、GmGT電池性能を達成するためには、上記の特定のプロセスにおける最終的な高温アニーリング工程が必要であることを示している。
【0314】
10%の活物質を含み残りの90%がグラファイトである、アノードハーフセルにおけるグラファイトへの添加剤として、2種類のGmGTを試験した。GmGT(II)-X及びGmGT(I)-Aはどちらも、10%の添加剤として使用すると、純グラファイトの明確な性能向上を示した。
【0315】
合成プロセスの様々な工程に対する材料処理の摂動は、電池の性能に影響を与えた。再生可能な原料を使用してGmGT(I)-Xを製造した場合、全ての性能測定値はベースラインの材料ブレンドの場合よりも低かった。GmGT(I)-Xを製造するプロセスで中間材料を噴霧乾燥した場合、GmGT(I)-Xは、温度制御された環境で生成したものと同等であった。GmGT(I)-Xを不活性環境でアニールした場合、ハーフセルの性能は、予備試験で、標準的なブレンドの性能から逸脱した。特に、この材料は10℃では機能しなかった。代替手段:形成後、様々なレートで材料の比容量を維持しながらICEを大幅に増加させた2つの摂動は、粉末状の触媒を使用して製造されたGmGT(I)-Xと、高濃度の出発GO源を使用して製造されたGmGT(I)-Xであった。
【0316】
実施例14.TM成分を実質的に含まないGmO系材料の合成:
金属を含まないか又は実質的に含まないGmO系材料を合成するために、表4又は表5に詳述されている適切な合成ルートのいずれかを介して得られた材料であるGmGT(I)-Xから開始し、材料をさらに処理して生成物材料からTM成分を除去することができる。例えば、GmGT材料は、約800℃の温度で加熱しながら、ある分圧の、当該技術分野で知られているように塩素ガスを含むか、又は水素などの他の反応性ガスを含む流動窒素ガス下で処理することができる。あるいは、固体GmGT(I)-X材料を、その中に存在するTM種を溶解する溶媒中に懸濁させてもよい。可能な溶媒として、水及びアルコール類(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールなど)が挙げられる。水性溶媒のpH調整は、遷移金属の溶解度を高め、遷移金属の酸化状態を変えて好ましくはそれを溶液に溶解させることにも利用することができる。TM成分の溶解度を高める手段として、標準的な洗浄による除去の前に、酸化性(例えば、酸素又は空気)又は還元性(例えば、H2、N2H4)雰囲気の任意の組み合わせで、穏やかな加熱による遷移金属酸化物のさらなる酸化も利用することができる。
【0317】
実施例15.Snの存在下でのGmGT(I)-X材料の合成:
表1の懸濁液1.7を表2の溶液2.1とそれぞれ100mL及び80mLの体積割合で混合した。表3及び4の試料3.0及び4.1にそれぞれ対応する欄で典型例が詳しく示されている、GmGT(I)-X材料を製造する公知のプロセスに従って、混合物を処理した。有意な違いは、材料混合物をSn硬化シリコーントレイで室温で6日間乾燥させたことである。このように合成された最終生成物材料は、α-GmO成分が、Sn硬化シリコーントレイでの乾燥なしの典型的処理の場合よりも強い(SAEDによって観察した場合、ここには示さず)GmGT(I)-X材料であった。EDS測定値は、混合物が乾燥するにつれて混合物中に浸出することが後で確認されたかなりのSn「不純物」を示した。これは、反応性のトレイが生成物材料の形成に有益な金属酸化物を提供することができる一例である。
【0318】
上に開示したように、GmGT材料合成のTM成分は、炭素材料に対する酸素相互作用を調整する多価金属カチオンを提供し、これは、説明した処理工程から所望の材料を得るための重要な特徴であると考えられる。複数の酸化状態がTMO材料の特徴の1つであるため、TMO材料は、当然に、この特徴を示す。この例におけるSnは、それ自体で、又は意図的に合成ルートに供給されたMo系TMOとともに、複数の酸化状態を有する金属酸化物と同様の役割を果たした可能性がある。したがって、一般的な特徴として、この例は、本開示で別途開示されているTM源の代わりに、又は本開示で別途開示されているTM源に加えて、他の非TM材料源を使用できることを示すものである。遷移金属以外の可能な候補としては、Al、Si又はSnが挙げられるが、これらに限定されない。高い比容量を提供する電池性能を改善するために、金属酸化物成分が析出する場合があることについては注意を要する。
【0319】
実施例16.δ-GmO拘束構造の存在下でのGmGT(I)-X材料の合成:
表4の試料4.7に従った合成は、0.38Å-1、0.66Å-1及び0.77Å-1に測定ピークを有するδ-GmO拘束構造と整合する明確なSAED(ここでは示さず)回折シグネチャーを示す。これらのピーク位置は、表6の理論上の予測位置と整合する。この例は、さらなるGmO結晶構造とそれらの関連する化学部分を、炭素源とTM源とを組み合わせて選択することで調整できることを示す。
【国際調査報告】