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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-05
(54)【発明の名称】改善された隔離を備える増幅器
(51)【国際特許分類】
   H03F 3/45 20060101AFI20230329BHJP
   H03G 3/10 20060101ALI20230329BHJP
【FI】
H03F3/45
H03G3/10 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022548574
(86)(22)【出願日】2021-02-01
(85)【翻訳文提出日】2022-10-03
(86)【国際出願番号】 US2021016001
(87)【国際公開番号】W WO2021162881
(87)【国際公開日】2021-08-19
(31)【優先権主張番号】16/785,725
(32)【優先日】2020-02-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507107291
【氏名又は名称】テキサス インスツルメンツ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】230129078
【弁護士】
【氏名又は名称】佐藤 仁
(72)【発明者】
【氏名】カラン シンハ バティア
【テーマコード(参考)】
5J100
5J500
【Fターム(参考)】
5J100AA15
5J100AA23
5J100BA05
5J100BB02
5J100BB16
5J100BC02
5J100BC04
5J100BC08
5J100DA10
5J100EA02
5J100FA01
5J100FA02
5J500AA01
5J500AA12
5J500AA51
5J500AC52
5J500AC92
5J500AF07
5J500AF09
5J500AF10
5J500AF18
5J500AH10
5J500AH37
5J500AH39
5J500AK12
5J500AK47
5J500AM17
5J500AM21
5J500AS13
5J500AS14
5J500AT03
5J500AT06
5J500DN01
5J500DN22
5J500DP02
(57)【要約】
増幅器(700)が、第1(720)及び第2の(725)入力に結合される共通エミッタ段と、共通エミッタ段及び第1(730)及び第2の(735)出力に結合される共通ベース段と、共通エミッタ段及び共通ベース段に並びに第1及び第2の出力に結合される相殺経路とを含む。相殺経路は、第1の出力において第1の漏れ信号とは位相が180度がずれた第1の相殺信号と、第2の出力において第2の漏れ信号とは位相が180度がずれた第2の相殺信号とを生成する。相殺経路は、共通エミッタ段に及び共通ベース段並びに第1の出力に結合される第1の相殺トランジスタ(M6)と、共通エミッタ段及び共通ベース段に並びに第2の出力に結合される第2の相殺トランジスタ(M5)とを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
増幅器であって、
第1の入力に結合される第1のトランジスタと、
第2の入力に結合される第2のトランジスタと、
前記第1のトランジスタと第1の出力とに結合される第3のトランジスタと、
前記第2のトランジスタと第2の出力とに結合される第4のトランジスタと、
前記第1及び第3のトランジスタと前記第2の出力とに結合される第5のトランジスタと、
前記第2及び第4のトランジスタと前記第1の出力とに結合される第6のトランジスタと、
を含む、増幅器。
【請求項2】
請求項1に記載の増幅器であって、前記第5のトランジスタの特性が前記第4のトランジスタの特性と一致し、前記第6のトランジスタの特性が前記第3のトランジスタの特性と一致し、前記特性が、閾値電圧、ジオメトリ、回転、及びバイアスを含む、増幅器。
【請求項3】
請求項1に記載の増幅器であって、前記増幅器が隔離モードで動作する間、前記第5及び第6のトランジスタがオンにバイアスされる、増幅器。
【請求項4】
請求項1に記載の増幅器であって、前記増幅器が隔離モードで動作しない間、前記第5及び第6のトランジスタがオフにバイアスされる、増幅器。
【請求項5】
請求項4に記載の増幅器であって、前記第5及び第6のトランジスタが、金属酸化物半導体電界効果トランジスタを含み、バイアスされており、そのため前記第5及び第6のトランジスタのゲート‐ドレイン電圧が前記第5及び第6のトランジスタにおけるゲート酸化物破壊を引き起こさないようになっている、増幅器。
【請求項6】
請求項1に記載の増幅器であって、前記第3及び第4のトランジスタがオンにされるようにバイアスされる、増幅器。
【請求項7】
請求項1に記載の増幅器であって、前記第1及び第2の入力が、変圧器の二次巻線に結合されるように構成される、増幅器。
【請求項8】
請求項1に記載の増幅器であって、前記第1及び第2の出力が、変圧器の一次巻線に結合されるように構成される、増幅器。
【請求項9】
増幅器であって、
第1の入力及び第2の入力に結合される共通エミッタ段と、
前記共通エミッタ段と第1の出力と第2の出力とに結合される共通ベース段と、
前記共通エミッタ段及び前記共通ベース段に、並びに前記第1及び第2の出力に結合される相殺経路であって、前記相殺経路が、前記第1の出力における第1の漏れ信号とは位相が180度がずれた第1の相殺信号と、前記第2の出力における第2の漏れ信号とは位相が180度がずれた第2の相殺信号とを生成するように構成される、前記相殺経路と、
を含む、増幅器。
【請求項10】
請求項9に記載の増幅器であって、前記相殺経路が、
前記共通エミッタ段及び前記共通ベース段に結合され、前記第1の出力に結合される第1の相殺トランジスタと、
前記共通エミッタ段及び前記共通ベース段に並びに前記第2の出力に結合される第2の相殺トランジスタと、
を含む、増幅器。
【請求項11】
請求項10に記載の増幅器であって、前記増幅器が隔離モードで動作する間、前記第1及び第2の相殺トランジスタがオンになるようにバイアスされる、増幅器。
【請求項12】
請求項10に記載の増幅器であって、前記増幅器が隔離モードで動作しない間、前記第1及び第2の相殺トランジスタがオフにバイアスされる、増幅器。
【請求項13】
請求項12に記載の増幅器であって、前記第1及び第2の相殺トランジスタが、金属酸化物半導体電界効果トランジスタを含み、前記増幅器が前記隔離モードで動作しない間バイアス電圧によってバイアスされ、そのため、前記第1及び第2の相殺トランジスタのゲート‐ソース電圧が、前記第1及び第2の相殺トランジスタの閾値電圧未満となり、前記第1及び第2の相殺トランジスタのゲート‐ドレイン電圧が、前記第1及び第2の相殺トランジスタの最大ゲート‐ドレイン電圧未満となる、増幅器。
【請求項14】
請求項10に記載の増幅器であって、前記共通エミッタ段が、
前記第1の入力に結合され、前記共通ベース段及び前記第2の相殺トランジスタに結合される第1のトランジスタと、
前記第2の入力に結合され、前記共通ベース段及び前記第1の相殺トランジスタに結合される第2のトランジスタと、
を含む、増幅器。
【請求項15】
請求項10に記載の増幅器であって、前記共通ベース段が、
前記共通エミッタ段及び前記第2の相殺トランジスタに並びに第1出力に結合される第1のトランジスタと、
前記共通エミッタ段及び前記第1の相殺トランジスタに並びに前記第2の出力に結合される第2のトランジスタと、
を含む、増幅器。
【請求項16】
請求項15に記載の増幅器であって、前記第1及び第2のトランジスタが、オンにされるようにバイアスされる、増幅器。
【請求項17】
増幅器であって、
前記第1の入力に結合される第1のトランジスタと、
前記第2の入力に結合される第2のトランジスタと、
前記第1のトランジスタと前記第1の出力とに結合される第3のトランジスタと、
前記第2のトランジスタと前記第2の出力とに結合される第4のトランジスタと、
前記第1及び第3のトランジスタと前記第2の出力との間の第1の相殺経路であって、前記第2及び第4のトランジスタを介する第1の漏れ信号とは位相が180度がずれた第1の相殺信号を生成するように構成される前記第1の相殺経路と、
前記第2及び第4のトランジスタと前記第1の出力との間の第2の相殺経路であって、前記第1及び第3のトランジスタを介する第2の漏れ信号とは位相が180度ずれた第2の相殺信号を生成するように構成される前記第2の相殺経路と、
を含む、増幅器。
【請求項18】
請求項17に記載の増幅器であって、前記増幅器が隔離モードで動作する間、前記第1及び第2の相殺経路が、前記第1及び第2の相殺信号を生成するように構成される、増幅器。
【請求項19】
請求項17に記載の増幅器であって、前記増幅器が隔離モードで動作しない間、前記第1及び第2の相殺経路が、前記第1及び第2の相殺信号を生成しないように構成される、増幅器。
【請求項20】
請求項17に記載の増幅器であって、前記第1の相殺経路が、前記第1及び第3のトランジスタと前記第2の出力とに結合される第1の相殺トランジスタを含み、前記第2の相殺経路が、前記第2及び第4のトランジスタと前記第1の出力とに結合される第2の相殺トランジスタを含む、増幅器。
【請求項21】
請求項20に記載の増幅器であって、前記第1の相殺トランジスタの特性が前記第4のトランジスタの特性と一致し、前記第2の相殺トランジスタの特性が前記第3のトランジスタの特性と一致し、前記特性が、閾値電圧、ジオメトリ、回転、及びバイアスを含む、増幅器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
多くの無線周波数フロントエンドアーキテクチャは、複数の動作モードをサポートするために、信号経路の様々な部分を結合、分割、隔離するために増幅器を用いる。例えば、特定の信号経路をオフにして隔離することができる増幅器を用いて、同相及び直交信号レシーバを実際の信号のみのレシーバに再構成して、電力消費を低減し、マルチチャネル無線のための特定のレシーバチャネルを選択し、複数ソース間の特定のクロック信号又は局部発振器信号を、時分割多重化システムにおけるトランスミッタ及びレシーバ経路における従来のスイッチの代わりとして選択することができる。しかしながら、トランジスタの寄生容量は、信号経路間の信号漏れを引き起こす可能性があり、これにより、ミリメートル(mm)波周波数において、1つの信号経路を別の信号経路から隔離することが困難になる。また、従来の信号多重化方式は、デバイス信頼性の問題が生じる可能性がある。
【発明の概要】
【0002】
幾つかの実装において、増幅器が、6つのトランジスタを含む。第1のトランジスタは第1の入力に結合され、第2のトランジスタは第2の入力に結合される。第3のトランジスタは、第1のトランジスタ及び第1の出力に結合され、第4のトランジスタは、第2のトランジスタ及び第2の出力に結合される。第5のトランジスタは、第1及び第3のトランジスタと第2の出力とに結合され、第6のトランジスタは、第2及び第4のトランジスタと第1の出力とに結合される。第5のトランジスタの閾値電圧、ジオメトリ、回転、及びバイアスなどの特性は、第4のトランジスタの対応する特性に一致するように選択される。同様に、第6のトランジスタの特性は、第3のトランジスタの対応する特性に一致するように選択される。
【0003】
幾つかの実装において、第5及び第6のトランジスタは、増幅器が隔離モードで動作する間、オンにバイアスされ、増幅器が隔離モードで動作しない間、オフにバイアスされる。幾つかの例において、第5及び第6のトランジスタは、金属酸化物半導体電界効果トランジスタを含み、第5及び第6のトランジスタのゲート‐ドレイン電圧が第5及び第6のトランジスタのゲート酸化物破壊を引き起こさないように、バイアスされる。
【図面の簡単な説明】
【0004】
種々の例の詳細な説明のため、ここで、添付の図面を参照する。
【0005】
図1A】信号合成、分割を実施するために増幅器を用いる例示の信号経路を図示する。
図1B】信号隔離を実施するために増幅器を用いる例示の信号経路を図示する。
【0006】
図2A】カスコード増幅器を図示する。
図2B】通常動作モードでの増幅器出力信号のプロットを示す。
図2C】隔離動作モードでの増幅器出力信号のプロットを示す。
【0007】
図3】隔離カスコード増幅器を図示する。
【0008】
図4】2段のカスケード増幅器を図示する。
【0009】
図5A】差動短絡スイッチを備えるカスコード増幅器を図示する。
図5B】隔離動作モードでの増幅器出力信号のプロットを示す。
【0010】
図6A】AC短絡スイッチを備えるカスコード増幅器を図示する。
図6B】隔離動作モードでの増幅器出力信号のプロットを示す。
【0011】
図7A】相殺経路を備える例示の増幅器を図示する。
図7B】通常動作モードでの増幅器出力信号の電圧のプロットを示す。
図7C】通常動作モードでの増幅器出力信号の周波数スペクトルを図示する。
図7D】隔離動作モードでの増幅器出力信号の電圧のプロットを示す。
図7E】隔離動作モードでの増幅器出力信号の周波数スペクトルのプロットを示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
開示される増幅器は、漏れ信号とは位相が180度がずれた複製信号を生成することによって、隔離動作モードにおいて無線周波数(RF)漏れ信号を能動的に相殺する。開示される増幅器は、増幅器の入力インピーダンスを変化させることなく、また、増幅器によって占有される電力消費及び半導体ダイ面積の実質的な増加なしに、改善された信号隔離を提供する。本明細書に開示される或る増幅器が、6つのトランジスタを含む。第1のトランジスタが第1の入力に結合され、第2のトランジスタが第2の入力に結合される。第3のトランジスタが、第1のトランジスタ及び第1の出力に結合される。第4のトランジスタが、第2のトランジスタ及び第2の出力に結合される。
【0013】
第5のトランジスタが、第1及び第3のトランジスタ及び第2の出力に結合され、第2及び第4のトランジスタを介する信号漏れとは位相が180度がずれた複製信号を生成し、それを相殺する。第6のトランジスタが、第2及び第4のトランジスタに及び第1の出力に結合され、第1及び第3のトランジスタを介する信号漏れとは位相が180度がずれた複製信号を生成し、それを相殺する。第5及び第6のトランジスタは、通常動作モードではオフにバイアスされ、隔離動作モードではオンにバイアスされる。
【0014】
図1A及び図1Bは、信号合成、分割、及び隔離を実施するために増幅器を用いる例示の信号経路を図示する。図1Aは、信号合成段110及び信号分割段140を図示する。信号合成段110は増幅器115及び120を含み、これらの増幅器は、それぞれの入力信号を増幅し、増幅された出力信号を増幅器130の単一入力に入力する。合成された信号は、増幅器130において増幅される。信号分割段140において、増幅器130の出力は増幅器145及び150両方に提供され、合成された信号を2つの入力信号に分割する。増幅器145及び150は、それぞれの入力信号を増幅する。
【0015】
図1Bは信号隔離段160を図示する。多くのフロントエンドアーキテクチャにおいて、異なる信号機能を実装するために、異なる動作モードにおいて信号経路が改変される。例えば、信号結合段110は、信号隔離段160を実装するために、隔離動作モードで改変される。増幅器170が隔離モードに置かれ、増幅器170からの寄与なしに、増幅器180への入力を増幅器165のみの出力にする。しかしながら、1つの信号経路を別の信号経路から隔離することは、20ギガヘルツ(GHz)を超える周波数では困難であり得る。増幅器内のトランジスタの寄生容量は、隔離動作モードにおいてさえ、信号経路間の信号漏れを引き起こす可能性があり、従来の信号多重化方式では、デバイス信頼性の問題が生じる可能性がある。
【0016】
図2A図2Cは、カスコード増幅器200と、通常動作モード及び隔離動作モードでの増幅器出力信号のプロットとを図示する。図2Aはカスコード増幅器200を図示する。信号源205は、変圧器210の一次巻線に結合される。変圧器210の二次巻線は、増幅器200の入力220及び225に結合される。通常動作モードでは、第1のバイアス電圧源215が電圧Vbias1によって変圧器210の二次巻線をバイアスする。隔離動作モードでは、第1のバイアス電圧源215は、変圧器210の二次巻線を接地に結合する。増幅器200の出力230及び235は、変圧器240の一次巻線に結合され、変圧器240の一次巻線は、通常動作モードと隔離動作モードとの間で一定である電圧Vbias2 245によってバイアスされる。
【0017】
増幅器200は、金属酸化物半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)であるトランジスタM1~M4を含む。M1~M4は、この例ではn型MOSFET(NMOS)である。他の例において、M1~M4のうちの1つ又は複数が、p型MOSFET(PMOS)又はバイポーラ接合トランジスタである。バイポーラ接合トランジスタは、ゲート端子に対応するベースと、ドレイン端子及びソース端子に対応するコレクタ及びエミッタとを含む。バイポーラ接合トランジスタのベース、及びMOSFETのゲート端子は、制御入力とも呼ばれる。バイポーラ接合トランジスタのコレクタ及びエミッタ、並びにMOSFETのドレイン及びソース端子は、電流端子とも呼ばれる。
【0018】
M1のゲート端子は入力220に結合され、M2のゲート端子は入力225に結合される。M1及びM2のソース端子は、この実装では接地に結合される。他の例において、M1及びM2のソース端子は電流源に結合される。M3のソース端子はM1のドレイン端子に結合され、M4のソース端子はM2のドレイン端子に結合される。M3及びM4のゲート端子は制御信号CTLを受信し、制御信号CTLは、通常動作モードではオンになるようにM3及びM4をバイアスし、隔離動作モードではM3及びM4のゲート端子を接地に結合する。M3のドレイン端子は出力230に結合され、M4のドレイン端子は出力235に結合される。
【0019】
図2Bは、通常動作モードでの出力230及び235における増幅器出力信号のプロットを示す。M3及びM4がオンにされ、変圧器210の二次巻線がVbias1にバイアスされる。出力信号の電圧スイングは、2.4V程度の高さとすることができる。図2Cは、隔離動作モードでの出力230及び235における増幅器出力信号のプロットを示す。変圧器210の次巻線及びM1~M4のゲート端子は、接地にバイアスされる。増幅器200は、約25デシベル(dB)の隔離を提供する。しかしながら、出力230及び235におけるRF信号漏れが、約62mVの平均電圧二乗平均平方根Vrms値を有し得、これは意図された信号経路内の信号を破損させるのに十分な大きさである。
【0020】
図3は、信号経路300をつくるために並列に接続された2つのカスコード増幅器を図示する。信号経路300内の第1のカスコード増幅器350は、通常動作モードにおいて図2Aに示される増幅器200と同様である。変圧器310の二次巻線は、通常動作モードと隔離動作モードの両方において電圧Vbias1 315にバイアスされる。M3及びM4のゲート端子は、電圧Vbias2 345によってバイアスされて、通常動作モード及び隔離動作モードの両方においてオンにされる。信号経路300の第2のカスコード増幅器380は、トランジスタM5~M8を含み、隔離動作モードの増幅器200と同様である。M7及びM8のゲート端子は接地に結合される。カスコード増幅器350及び380は共に、ネットワーク構成において、信号経路300の出力330及び335で並列に結合される。増幅器350は、出力330及び335への意図された信号経路である。増幅器380は約25dBの隔離を提供する代替信号経路であり、これは、意図された信号経路における信号破損を防止するには不十分な隔離であり得る。
【0021】
通常動作モードでは、それぞれ、M3及びM4のドレイン端子からの出力330及び335における出力信号のピーク電圧スイングが約2.4Vであり得る。幾つかの実装において、ピーク電圧スイングは、カスコード増幅器380内のトランジスタM7及びM8についての最大ゲート‐ドレイン間電圧Vgd定格よりも大きく、M7及びM8においてゲート酸化物破壊を引き起こす。加えて、増幅器380内のM5及びM6のゲート端子を接地することは、RF周波数における増幅器380の入力インピーダンスに著しい変化を引き起こし得、増幅器380の前の信号ネットワークの整合を損なう可能性がある。
【0022】
図4は、隔離モードの2つの段を備えるカスケード増幅器400を図示する。第1の段450はトランジスタM1~M4を含み、第2の段470はトランジスタM5~M8を含む。変圧器410の二次巻線は、通常動作モード及び隔離動作モードの両方において、第1の段450におけるM1及びM2のゲート端子と同様に、電圧Vbias1 415によってバイアスされる。M1及びM2のソース端子は、この実装では接地に結合される。他の例において、M1及びM2のソース端子は電流源に結合される。M3及びM4のゲート端子は、隔離モードでは接地に結合され、通常動作モードでは電圧Vbias2 445によってバイアスされる。第1の段450の出力は、Vbias2 445によってバイアスされる変圧器460の一次巻線に結合される。第2の段470は、接地に結合される変圧器460の二次巻線に結合される。
【0023】
第2の段470において、M5及びM6のゲート端子は、隔離モードでは接地に結合され、通常動作モードではVbias2 445によってバイアスされる。M5及びM6のソース端子は、この実装では接地に結合される。他の例において、M1及びM2のソース端子は電流源に結合される。M7及びM8のゲート端子はVbias2 445を受信し、これは、M7及びM8を、通常動作モード及び隔離動作モードの両方においてオンになるようにバイアスする。第1の段450のM1~M2及び第2の段470のM7~M8のゲート電圧は一定であるので、増幅器400が通常モード又は隔離モードで動作しているかにかかわらず、入力及び出力インピーダンス整合及び増幅器の信頼性が維持される。しかしながら、直列の2つの段は、通常動作モードでの増幅器の電力消費を2倍にし、増幅器400を含む半導体ダイの大きな面積を占める。
【0024】
図5A及び図5Bは、差動短絡スイッチを備えるカスコード増幅器500と、隔離動作モードでの増幅器出力信号のプロットとを図示する。増幅器500は、通常動作モードにおいて図2Aに示される増幅器200と同様である。M3及びM4のゲート端子は、通常動作モード及び隔離動作モードの両方において、この例ではVbias2 545によってオンになるようにバイアスされる。トランジスタM5は、差動短絡スイッチとして作用する。M5のドレイン端子は、M1のドレイン端子及びM3のソース端子に結合される。M5のソース端子は、M2のドレイン端子及びM4のソース端子に結合される。
【0025】
M5のゲート端子は制御信号CTLを受信し、制御信号CTLは、通常動作モードでオフにされ、隔離動作モードでオンにされるように、M5をバイアスする。図5Bは、隔離動作モードでの出力530及び535における増幅器出力信号のプロットを示す。隔離動作モードでは、出力530及び535におけるRF信号漏れは、約219mVの平均Vrms値を有し得る。増幅器500は、わずか約14dBの隔離を提供する。差動短絡スイッチM5は増幅器500の隔離を改善するためにより大きくし得るが、ダイ面積を増加させ、寄生容量を増加させることが犠牲となる。
【0026】
図6A及び図6Bは、AC短絡スイッチを備えるカスコード増幅器600と、隔離動作モードでの増幅器出力信号のプロットとを図示する。増幅器600は、通常動作モードにおいて図2Aに示される増幅器200と同様である。M3及びM4のゲート端子は、通常動作モード及び隔離動作モードの両方において、この例ではVbias2 645によって、オンになるようにバイアスされる。トランジスタM5及びM6は、AC短絡スイッチとして機能する。M5のドレイン端子は、M1のドレイン端子及びM3のソース端子に結合される。M5のソース端子はコンデンサ650に結合され、コンデンサ650は接地にさらに結合される。M6のドレイン端子は、M2のドレイン端子及びM4のソース端子に結合される。M6のソース端子は、コンデンサ655に結合され、コンデンサ655はさらに接地に結合される。M5及びM6のゲート端子は制御信号CTLを受信し、制御信号CTLはM5及びM6をバイアスして、通常動作モードでオフにし、隔離動作モードでオンにする。
【0027】
図6Bは、隔離動作モードでの出力630及び635における増幅器出力信号のプロットを示す。出力630及び635におけるRF信号漏れは、約380mVの平均Vrms値を有し得る。増幅器600は、約9dBのみの隔離を提供する。AC短絡スイッチM5及びM6は増幅器600の隔離を改善するためにより大きくし得るが、ダイ面積を増加させ、寄生容量を増加させることが犠牲となる。同様に、コンデンサ650及び655の静電容量値は、増幅器600の隔離を改善するために増大し得るが、コンデンサによって占有されるダイエリアも増大する。
【0028】
図7A図7Eは、相殺経路を備える例示の増幅器700と、通常動作モード及び隔離動作モードでの増幅器出力信号の電圧及び周波数スペクトルのプロットとを図示する。図7Aは例示の増幅器700を図示する。信号源705は、変圧器710の一次巻線に結合される。変圧器710の二次巻線は、増幅器700の入力720及び725に結合され、通常動作モードと隔離動作モードの両方の間で一定である電圧Vbias1 715によってバイアスされる。増幅器700の出力730及び735は、変圧器740の一次巻線に結合され、変圧器740の一次巻線は、通常動作モードと隔離動作モードとの間で一定である電圧Vbias2 745によってバイアスされる。
【0029】
増幅器700は、この例ではNMOSであるトランジスタM1~M6を含む。他の例において、M1~M6のうちの1つ又は複数が、PMOS又はバイポーラ接合トランジスタである。M1のゲート端子は入力720に結合され、M2のゲート端子は入力725に結合される。M1及びM2のソース端子は、この実装では接地に結合される。他の例において、M1及びM2のソース端子は電流源に結合される。M3のソース端子はM1のドレイン端子に結合され、M4のソース端子はM2のドレイン端子に結合される。M3及びM4のゲート端子は、通常動作モード及び隔離動作モードの両方において、この例ではVbias2 745によって、オンになるようにバイアスされる。M3のドレイン端子は出力730に結合され、M4のドレイン端子は出力735に結合される。
【0030】
トランジスタM5及びM6は相殺経路750を形成する。M5は、第1の信号経路、入力720、及びM1から、出力735への相殺経路を形成する。M5の特性は、閾値電圧Vth、ジオメトリ、回転、及びバイアスを含む、M4の特性に一致するように選択される。M5のソース端子は、M1のドレイン端子及びM3のソース端子に結合される。M5のドレイン端子は出力735に結合される。M6は、第2の信号経路、入力725、及びM2から、出力730への相殺経路を形成する。M6の特性は、Vth、ジオメトリ、回転、及びバイアスを含む、M3の特性に一致するように選択される。M6のソース端子は、M2のドレイン端子及びM4のソース端子に結合される。M6のドレイン端子は出力730に結合される。
【0031】
M5及びM6のゲート端子は、制御信号CTLを受信し、制御信号CTLは、M5及びM6をバイアスして、隔離動作モードでオンにし通常動作モードでオフにする。図7Bは、通常動作モードでの出力730及び735における増幅器出力信号のプロットを示す。M5及びM6はオフにされる。出力信号の電圧スイングは、2.4V程度の高さとし得る。図7Cは、約20GHzを中心とする、通常動作モードでの出力730及び735における増幅器出力信号のスペクトルのプロットを示す。
【0032】
隔離動作モードでは、CTLがM5及びM6をバイアスしてオンにする。M5は、第2の信号経路を介する漏れ信号とは位相が180度ずれた複製信号を伝搬し、それを実質的に相殺し、M6は、第1の信号経路を介する漏れ信号とは位相が180度ずれた複製信号を伝搬し、それを実質的に相殺する。図7Dは、隔離動作モードでの出力730及び735における増幅器出力信号のプロットを示す。M5及びM6を介する複製信号は、出力730及び735における漏れ信号を実質的に相殺し、増幅器700に対して約58dBの隔離を提供する。図7Eは、隔離動作モードでの出力730及び735における増幅器出力信号のスペクトルのプロットを示す。20GHzでの信号漏れは2mV未満である。40GHzでの第2の高調波は後続の増幅器段によってフィルタ除去されるが、後続の増幅器段は、それを行うために改変される必要はない。
【0033】
幾つかの実装において、CTLは、ゲート‐ソース間電圧VgsがVth未満でありVgdが最大Vgd定格未満であるように、M5及びM6をバイアスし、ゲート酸化物破壊を防止する。例示の実装において、M5及びM6の最大Vgd定格は約2Vであり、M5及びM6のVthは約0.7Vである。通常動作モードでの出力730及び735における信号のピーク電圧スイングは、約2.4Vである。通常動作モードでは、CTLは、M5及びM6のゲート端子を、Vth=0.7V未満の約0.6Vにバイアスして、M5及びM6をオフに維持する。ピーク電圧におけるM5及びM6のVgdは1.8Vであり、2Vの最大Vgd定格よりも小さい。
【0034】
「結合する」という用語が本明細書を通して用いられている。この用語は、本開示の説明と一貫した機能的な関係を可能にする、接続、通信、又は信号経路を包含し得る。例えば、デバイスAが或る行為を行なうためにデバイスBを制御するための信号を生成する場合、第1の例において、デバイスAはデバイスBに結合されるか、又は第2の例において、介在構成要素CがデバイスAとデバイスBとの間の機能関係を実質的に変化させない場合にデバイスBがデバイスAによって生成される制御信号を介してデバイスAによって制御されるように、デバイスAは介在構成要素Cを介してデバイスBに結合される。
【0035】
本発明の特許請求の範囲内で、説明した例示の実施例に改変が成され得、他の実施例が可能である。
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図7C
図7D
図7E
【国際調査報告】