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特表2023-514201治療剤の改善された送達のための方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-05
(54)【発明の名称】治療剤の改善された送達のための方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/19 20060101AFI20230329BHJP
   C12N 15/09 20060101ALI20230329BHJP
   C12N 15/85 20060101ALI20230329BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20230329BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20230329BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20230329BHJP
   A61K 38/20 20060101ALI20230329BHJP
   A61K 35/12 20150101ALI20230329BHJP
   A61K 38/19 20060101ALI20230329BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230329BHJP
   A61P 35/00 20060101ALN20230329BHJP
   A61P 37/02 20060101ALN20230329BHJP
【FI】
C12N15/19 ZNA
C12N15/09 110
C12N15/85 Z
C12N5/10
C12M1/00 A
A61K48/00
A61K38/20
A61K35/12
A61K38/19
A61P43/00 111
A61P35/00
A61P37/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022548578
(86)(22)【出願日】2021-02-11
(85)【翻訳文提出日】2022-09-21
(86)【国際出願番号】 US2021017535
(87)【国際公開番号】W WO2021163242
(87)【国際公開日】2021-08-19
(31)【優先権主張番号】62/972,944
(32)【優先日】2020-02-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510166102
【氏名又は名称】ウィリアム マーシュ ライス ユニバーシティ
【氏名又は名称原語表記】WILLIAM MARSH RICE UNIVERSITY
【住所又は居所原語表記】6100 Main Street,Houston,TX 77005, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【弁理士】
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【弁理士】
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【弁理士】
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】ベイセ オミド
(72)【発明者】
【氏名】ナッシュ アマンダ
(72)【発明者】
【氏名】バシャフ バギャシュリー キショー
(72)【発明者】
【氏名】オリゲル マルモレホ カルロス アルベルト
(72)【発明者】
【氏名】ベルマン ダモン
(72)【発明者】
【氏名】シュライブ クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】セガトリ ローラ
(72)【発明者】
【氏名】トルベルヤ アレン
(72)【発明者】
【氏名】イーゴシン オレグ エイ.
(72)【発明者】
【氏名】ヘヒト アンドルー ディー.
【テーマコード(参考)】
4B029
4B065
4C084
4C087
【Fターム(参考)】
4B029AA01
4B029AA27
4B029BB11
4B029CC02
4B029CC03
4B065AA93X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA01
4B065CA24
4B065CA44
4C084AA13
4C084DA14
4C084NA14
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB65
4C087MA52
4C087MA55
4C087NA14
4C087ZB07
4C087ZB26
(57)【要約】
本開示は、操作された細胞からの治療用タンパク質の発現を提供するように設計された発現構築物を提供する。操作された細胞は、移植可能な要素の中にカプセル化されてもよく、これにより、カプセルを移植した患者の免疫系から細胞を保護しながら、治療用タンパク質がカプセルから放出されるようになる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作された細胞、または前記操作された細胞を含む移植可能な要素であって、
前記操作された細胞が、治療用タンパク質をコードするコード配列を有する外因性核酸を含み、前記治療用タンパク質が、サイトカインであり、前記サイトカインのコード配列が、抑制可能なプロモーターに作動可能に連結され、前記操作された細胞が、前記抑制可能なプロモーターに結合することができる転写リプレッサーをコードする少なくとも1つのコード配列をさらに含み、かつ前記転写リプレッサーのコード配列が、前記サイトカインの受容体を介したシグナル伝達の結果として活性化されるプロモーターに作動可能に連結されている、
操作された細胞、または前記操作された細胞を含む移植可能な要素。
【請求項2】
前記外因性核酸が、前記操作された細胞の染色体に組み込まれている、請求項1に記載の操作された細胞、または前記操作された細胞を含む移植可能な要素。
【請求項3】
前記操作された細胞が、選択マーカーをコードする少なくとも1つのコード配列をさらに含む、請求項1に記載の操作された細胞、または前記操作された細胞を含む移植可能な要素。
【請求項4】
前記サイトカインのコード配列が、小分子活性化プロモーターに作動可能に連結されている、請求項1に記載の操作された細胞、または前記操作された細胞を含む移植可能な要素。
【請求項5】
前記サイトカインのコード配列が、小分子依存性の機能的高次構造を活性化または抑制することを含む、請求項1に記載の操作された細胞、または前記操作された細胞を含む移植可能な要素。
【請求項6】
前記サイトカインのコード配列が、小分子支援シャットオフシステム配列を含む、請求項1に記載の操作された細胞、または前記操作された細胞を含む移植可能な要素。
【請求項7】
前記サイトカインのコード配列が、合成転写因子によって活性化される合成プロモーターに作動可能に連結されている、請求項1に記載の操作された細胞、または前記操作された細胞を含む移植可能な要素。
【請求項8】
前記合成転写因子が、転写活性化ドメインに融合された触媒不活性Cas9(dCas9)を含む、請求項7に記載の操作された細胞、または前記操作された細胞を含む移植可能な要素。
【請求項9】
前記合成転写因子のコード配列が、小分子活性化プロモーターに作動可能に連結されている、請求項7に記載の操作された細胞、または前記操作された細胞を含む移植可能な要素。
【請求項10】
前記合成転写因子のコード配列が、小分子依存性の機能的高次構造を活性化または抑制することを含む、請求項7に記載の操作された細胞、または前記操作された細胞を含む移植可能な要素。
【請求項11】
前記合成転写因子のコード配列が、小分子支援シャットオフシステム配列を含む、請求項7に記載の操作された細胞、または前記操作された細胞を含む移植可能な要素。
【請求項12】
前記移植可能な要素が、内側ゾーンおよび外側ゾーンを含み、前記操作された細胞が、前記内側ゾーンに存在する、請求項1に記載の操作された細胞を含む移植可能な要素。
【請求項13】
前記外側ゾーンが、移植の初期相または遮蔽相では、宿主免疫エフェクター分子または細胞と抗原物質との接触を妨げるように構成されているが、移植の後続相または非遮蔽相では、宿主免疫エフェクター分子または細胞と前記抗原物質との接触を可能にするように構成されている、請求項12に記載の操作された細胞を含む移植可能な要素。
【請求項14】
前記外側ゾーンが、分解性の実体を含む、請求項12に記載の操作された細胞を含む移植可能な要素。
【請求項15】
前記遮蔽相が、0.5日間~30日間、1日間~14日間、または1日間~7日間持続する、請求項13に記載の操作された細胞を含む移植可能な要素。
【請求項16】
前記外側ゾーンの厚さが、前記遮蔽相の長さ/持続時間と相関する、請求項13に記載の操作された細胞を含む移植可能な要素。
【請求項17】
前記移植可能な構築物が、前記治療用タンパク質の持続放出を提供する、請求項1に記載の操作された細胞を含む移植可能な要素。
【請求項18】
前記移植可能な構築物が、前記治療用タンパク質の実質的に非拍動性の放出を提供する、請求項1に記載の操作された細胞を含む移植可能な要素。
【請求項19】
ポリマーヒドロゲルをさらに含む、請求項1に記載の操作された細胞を含む移植可能な要素。
【請求項20】
前記外側ゾーンが、ポリマーヒドロゲルを含む、請求項19に記載の操作された細胞を含む移植可能な要素。
【請求項21】
前記内側ゾーンが、ポリマーヒドロゲルを含む、請求項19に記載の操作された細胞を含む移植可能な要素。
【請求項22】
前記内側ゾーンおよび前記外側ゾーンが、同じポリマーヒドロゲルを含む、請求項19に記載の操作された細胞を含む移植可能な要素。
【請求項23】
前記内側ゾーンおよび前記外側ゾーンが、2種類の異なるポリマーヒドロゲルを含む、請求項19に記載の操作された細胞を含む移植可能な要素。
【請求項24】
前記移植可能な要素が、少なくとも約10,000、15,000、または20,000個の操作された細胞を含む、請求項1に記載の操作された細胞を含む移植可能な要素。
【請求項25】
請求項1に記載の操作された細胞を含む、バイオリアクター。
【請求項26】
複数の、請求項1に記載の移植可能な要素
を含む、移植可能な要素の調製物。
【請求項27】
移植可能な要素を患者に提供する方法であって、請求項1に記載の移植可能な要素を、前記対象に移植すること、または前記対象に提供することを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の参照
本出願は、2020年2月11日に出願された米国仮出願第62/972,944号の優先権の利益を主張し、その内容全体が、参照により本明細書に援用される。
【0002】
連邦政府による資金提供を受けた研究に関する声明
本発明は、National Institutes of Healthによって付与された助成金番号R01DK120459、National Science Foundationによって付与された助成金番号MCB-1615562およびCBET-1805317、ならびにDepartment of Defenseによって付与された助成金番号HR001119S0027およびN6600119C4020の下で、政府の支援を受けて行われた。政府は、本発明において一定の権利を有する。
【0003】
配列表の参照
本出願は、ASCII形式で電子的に提出された配列表を含み、その全体が参照によって本明細書に援用される。2021年2月8日に作成されたASCIIコピーは、RICEP0069WO_ST25という名前で、サイズが74.0キロバイトである。
【0004】
本開示の開発は、部分的には、助成金番号RR160047の下で、Cancer Prevention and Research Institute of Texas(CPRIT)によって、および助成金番号C-1995の下で、Welch Foundationによって資金提供された。
【0005】
1.技術分野
この開示は、概して、生物学、医学、生物工学、および細胞カプセル化の分野に関する。より具体的には、様々なサイズおよび機能の生物学的分子を送達するための組成物および方法に関する。本方法は、細胞工学ならびに生体材料合成を含む。
【背景技術】
【0006】
2.背景技術
モノクローナル抗体は、バイオ医薬品の最も販売されているクラスのうちの1つである。しかしながら、デバイスの外部シェル上の免疫調節薬を使用して免疫攻撃を防止するヒドロゲルデバイスにおいて、安定した抗体またはサイトカインの長期産生を組み込む技術が不足している。
【発明の概要】
【0007】
概要
本明細書において、コアシェルである免疫調節性アルギネートの中にカプセル化された操作された細胞の組成物が提供される。これらの組成物は、がん免疫療法または自己免疫障害のための、サイトカインまたはモノクローナル抗体などの様々な生物学的分子および治療用分子の、適応性がありかつプログラム可能な持続送達を提供する。
【0008】
一実施形態では、操作された細胞、または操作された細胞を含む移植可能な要素が本明細書に提供され、操作された細胞が、治療用タンパク質をコードするコード配列を有する外因性核酸を含む。一部の態様では、外因性核酸は、操作された細胞の染色体に組み込まれる。一部の態様では、治療用タンパク質は、抗体またはサイトカインである。
【0009】
一部の態様では、治療用タンパク質は、抗体である。一部の態様では、抗体の重鎖および抗体の軽鎖は、2つの異なるプロモーターに作動可能に連結された2つの異なるオープンリーディングフレームによって発現される。一部の態様では、両方のプロモーターは強力であり、操作された細胞内のプロモーターを構成する。一部の態様では、オープンリーディングフレームの各々は、別個の外因性核酸上に存在する。一部の態様では、オープンリーディングフレームの各々は、同じ外因性核酸上に存在する。一部の態様では、重鎖および軽鎖は、単一のオープンリーディングフレームで発現され、各鎖のコード配列は、内部リボソーム進入部位によって分離されている。一部の態様では、操作された細胞において、プロモーターは、強力で構成的なプロモーターである。
【0010】
一部の態様では、操作された細胞は、選択マーカーをコードする少なくとも1つのコード配列をさらに含む。一部の態様では、選択マーカーは、抗生物質耐性遺伝子である。一部の態様では、選択マーカーをコードするコード配列は、治療用タンパク質をコードするコード配列を含む各外因性核酸上に存在する。一部の態様では、選択マーカーをコードするコード配列は、治療用タンパク質をコードするコード配列に作動可能に連結されているプロモーターとは別個のプロモーターに作動可能に連結されている。一部の態様では、選択マーカーをコードするコード配列は、治療用タンパク質をコードするコード配列と同じプロモーターに作動可能に連結されている。一部の態様では、選択マーカーをコードするコード配列および治療用タンパク質をコードするコード配列は、内部リボソーム侵入部位によって分離されている。一部の態様では、抗体は、抗PD-1、抗PD-L1、抗CTLA4、抗TNFα、または抗VEGF抗体である。
【0011】
一部の態様では、治療用タンパク質は、サイトカインである。一部の態様では、サイトカインは、IL-1、IL-1α、IL-1β、IL-1RA、IL-2、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、IL-11、IL-12、IL-12a、IL-12b、IL-13、IL-14、IL-16、IL-17、G-CSF、GM-CSF、IL-20、IFN-α、IFN-β、IFN-γ、CD154、LT-β、CD70、CD153、CD178、TRAIL、TNF-α、TNF-β、SCF、M-CSF、MSP、4-1BBL、LIF、またはOSMである。一部の態様では、サイトカインは、IL-2である。
【0012】
一部の態様では、サイトカインのコード配列は、抑制可能なプロモーターに作動可能に連結されている。一部の態様では、操作された細胞は、抑制可能なプロモーターに結合することができる転写リプレッサーをコードする少なくとも1つのコード配列をさらに含み、転写リプレッサーのコード配列は、サイトカインの受容体を介したシグナル伝達の結果として活性化されるプロモーターに作動可能に連結されている。一部の態様では、サイトカインのコード配列は、その5’非翻訳領域に翻訳調節高次構造を含む。一部の態様では、操作された細胞は、高次構造に結合することができるRNA結合翻訳リプレッサーをコードする少なくとも1つのコード配列をさらに含み、RNA結合翻訳リプレッサーのコード配列は、サイトカインの受容体を介したシグナル伝達の結果として活性化されるプロモーターに作動可能に連結されている。一部の態様では、サイトカインのコード配列は、その3’非翻訳領域に1つ以上のmiRNA結合部位を含む。一部の態様では、操作された細胞は、miRNA結合部位に結合することができるmiRNAをコードする少なくとも1つのコード配列をさらに含み、miRNAコード配列は、サイトカインの受容体を介したシグナル伝達の結果として活性化されるプロモーターに作動可能に連結されている。一部の態様では、操作された細胞は、サイトカインに結合することができるユビキチンリガーゼをコードする少なくとも1つのコード配列をさらに含み、ユビキチンリガーゼのコード配列は、サイトカインの受容体を介したシグナル伝達の結果として活性化されるプロモーターに作動可能に連結されている。一部の態様では、サイトカインのコード配列は、小分子活性化プロモーターに作動可能に連結されている。一部の態様では、サイトカインのコード配列は、小分子依存性の機能的高次構造を活性化または抑制することを含む。一部の態様では、サイトカインのコード配列は、小分子支援シャットオフシステム配列を含む。一部の態様では、サイトカインのコード配列は、合成転写因子によって活性化される合成プロモーターに作動可能に連結されている。一部の態様では、合成転写因子は、転写活性化ドメインに融合された触媒不活性Cas9(dCas9)を含む。一部の態様では、合成転写因子のコード配列は、小分子活性化プロモーターに作動可能に連結されている。一部の態様では、合成転写因子のコード配列は、小分子依存性機能的高次構造を活性化または抑制することを含む。一部の態様では、合成転写因子のコード配列は、小分子支援シャットオフシステム配列を含む。
【0013】
一部の態様では、サイトカイン産生細胞(例えば、IL-2産生RPE細胞)からのサイトカインの産生は、第2の構成要素のレベルに応答して調節される。一部の態様では、第2の構成要素は、インターフェロンγ(IFN-γ)などのタンパク質であり得る。一部の態様では、分解事象、例えば、アポトーシスは、第2の構成要素(例えば、タンパク質、例えば、IFN-γ)の検出時、例えば、第2の構成要素のレベル(例えば、閾値レベル)の検出時に、サイトカイン産生細胞(例えば、IL-2産生RPE細胞)で誘発される。
【0014】
一部の態様では、本開示は、フィードバックループの特徴をモデリングする方法をさらに含む。例えば、モデリングする方法(例えば、アルゴリズム)は、フィードバックループ内の事象のタイミング、例えば、第2の構成要素(例えば、タンパク質、例えば、IFN-γ)の検出とアポトーシス経路の開始との間の時間遅延の長さが様々であり得ることを予測するために使用され得る。
【0015】
一部の実施形態では、フィードバックループの制御は、標的遺伝子に応答した転写リプレッサーの発現を含む。一部の実施形態では、転写リプレッサーは、EKRABである。一部の実施形態では、標的遺伝子は、IFN-γ応答遺伝子(例えば、RPE65)である。一部の実施形態では、アポトーシス促進遺伝子は、転写リプレッサーの制御下で発現される。一部の実施形態では、アポトーシス促進遺伝子は、baxである。
【0016】
一部の態様では、操作された細胞は、1つを超える治療用タンパク質を発現する。一部の態様では、操作された細胞は、3つの治療用タンパク質を発現する。一部の態様では、操作された細胞は、4つの治療用タンパク質を発現する。
【0017】
一部の態様では、操作された細胞は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、ヒト胎児腎臓(HEK)細胞、網膜色素上皮(ARPE-10)細胞、間葉系幹細胞(MSC)、ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)、マウス骨髄腫NS0およびSp2/0細胞、BABL/3T3細胞、MDCK細胞、またはPER.C6細胞である。
【0018】
一部の態様では、外因性核酸は、発現ベクターである。一部の態様では、発現ベクターは、pcDNA3.1である。一部の態様では、外因性核酸は、ウイルスベクターである。一部の態様では、ウイルスベクターは、レンチウイルスベクターである。
【0019】
一部の態様では、外因性核酸は、トランスポゾンシステムである。一部の態様では、トランスポゾンシステムは、piggyBac発現システムである。
【0020】
一部の態様では、操作された細胞は、キルスイッチをコードするコード配列を有する外因性核酸をさらに含む。一部の態様では、キルスイッチは、リミドゥシド(rimiducid)誘導スイッチに融合されたキメラカスパーゼ9である。
【0021】
一部の態様では、操作された細胞は、その免疫原性を増加させるようにさらに操作される。一部の態様では、操作された細胞は、治療用タンパク質を放出する。
【0022】
一部の態様では、移植可能な要素は、内側ゾーンおよび外側ゾーンを含み、操作された細胞は、内側ゾーンに存在する。一部の態様では、外側ゾーンは、移植の初期相または遮蔽相では、宿主免疫エフェクター分子または細胞と抗原物質との接触を妨げるように構成されるが、移植の後続相または非遮蔽相では、宿主免疫エフェクター分子または細胞と抗原物質との接触を可能にするように構成される。一部の態様では、外側ゾーンは、分解性の実体を含む。一部の態様では、遮蔽相は、1時間、12時間、1日間、2日間、3日間、6日間、または12日間以下持続する。一部の態様では、遮蔽相は、0.5日間~30日間、1日間~14日間、および1日間~7日間持続する。一部の態様では、外側ゾーンの厚さは、遮断相の長さ/持続時間と相関する。
【0023】
一部の態様では、移植可能な構築物は、治療用タンパク質の持続放出を提供する。一部の態様では、移植可能な構築物は、治療用タンパク質の実質的に非拍動性の放出を提供する。一部の態様では、移植可能な要素は、ポリマーヒドロゲルをさらに含む。一部の態様では、外側ゾーンは、ポリマーヒドロゲルを含む。一部の態様では、内側ゾーンは、ポリマーヒドロゲルを含む。一部の態様では、内側ゾーンおよび外側ゾーンは、同じポリマーヒドロゲルを含む。一部の態様では、内側ゾーンおよび外側ゾーンは、2種類の異なるポリマーヒドロゲルを含む。一部の態様では、ポリマーヒドロゲルは、キトサン、セルロース、ヒアルロン酸、またはアルギネートを含む。
【0024】
一部の態様では、移植可能な要素は、単一タイプの治療用タンパク質を産生する操作された細胞を含む。一部の態様では、移植可能な要素は、複数の治療用タンパク質を産生する操作された細胞を含む。一部の態様では、移植可能な要素は、異なる治療用タンパク質を各々産生する、第1の操作された細胞および第2の操作された細胞を含む。一部の態様では、第1の操作された細胞は、第1の治療用抗体を産生し、第2の操作された細胞は、第2の治療用タンパク質を産生する。
【0025】
一部の態様では、移植可能な要素は、少なくとも約10,000、15,000、または20,000個の操作された細胞を含む。一部の態様では、移植可能な要素は、追加の治療剤をさらに含む。一部の態様では、追加の治療剤は、化学療法剤または免疫調節剤である。
【0026】
一実施形態では、本実施形態のいずれか1つに記載の操作された細胞を含むバイオリアクターが本明細書に提供される。一実施形態では、複数の、本実施形態のいずれか1つに記載の移植可能な要素を含む、移植可能な要素の調製物が、本明細書に提供される。一部の態様では、調製物は、薬学的に許容される調製物である。
【0027】
一実施形態では、移植可能な要素を患者に提供する方法が本明細書に提供され、本方法は、本実施形態のいずれか1つに記載の移植可能な要素を、対象に移植すること、または対象に提供することを含む。一部の態様では、本方法は、望ましくない細胞増殖を含む障害について患者を治療する。
【0028】
一実施形態では、がんを有する患者に免疫チェックポイント阻害剤を投与する方法が本明細書に提供され、本方法は、本実施形態のいずれか1つに記載の移植可能な要素を患者の腹腔に移植することを含み、移植可能な要素は、免疫チェックポイント阻害剤を放出するように構成される。一部の態様では、免疫チェックポイント阻害剤は、PD-L1抗体、PD-1抗体、またはCTLA4抗体である。一部の態様では、本方法は、患者に抗がん療法を施すことをさらに含む。一部の態様では、抗がん療法は、外科療法、化学療法、放射線療法、凍結療法、ホルモン療法、毒素療法、免疫療法、またはサイトカイン療法である。一部の態様では、がんは、大腸がん、神経芽腫、乳がん、膵臓がん、脳がん、肺がん、胃がん、皮膚がん、睾丸がん、前立腺がん、卵巣がん、肝臓がん、食道がん、子宮頸がん、頭頸部がん、黒色腫、または膠芽腫である。
【0029】
一実施形態では、患者におけるがんを治療する方法が本明細書に提供され、本方法は、本実施形態のいずれか1つに記載の移植可能な要素を患者の腹腔に移植することを含み、移植可能な要素は、がんに対する免疫エフェクター細胞媒介性攻撃を促進するのに十分であるが、がんにおけるTregレベルを促進するには十分ではないレベルで、治療用タンパク質を放出するように構成される。一部の態様では、治療用タンパク質は、免疫チェックポイント阻害剤である。一部の態様では、免疫チェックポイント阻害剤は、PD-L1抗体、PD-1抗体、またはCTLA4抗体である。一部の態様では、本方法は、患者に抗がん療法を施すことをさらに含む。一部の態様では、抗がん療法は、外科療法、化学療法、放射線療法、凍結療法、ホルモン療法、毒素療法、免疫療法、またはサイトカイン療法である。一部の態様では、がんは、大腸がん、神経芽腫、乳がん、膵臓がん、脳がん、肺がん、胃がん、皮膚がん、睾丸がん、前立腺がん、卵巣がん、肝臓がん、食道がん、子宮頸がん、頭頸部がん、黒色腫、または膠芽腫である。
【0030】
本開示を、以下の番号付けした実施形態にさらに記載する:
1.操作された細胞、または操作された細胞を含む移植可能な要素であって、
操作された細胞が、治療用タンパク質をコードするコード配列を有する外因性核酸を含む、
操作された細胞、または操作された細胞を含む移植可能な要素。
2.外因性核酸が、操作された細胞の染色体に組み込まれている、実施形態1に記載の操作された細胞、または操作された細胞を含む移植可能な要素。
3.治療用タンパク質が、抗体またはサイトカインである、実施形態1または2に記載の操作された細胞、または操作された細胞を含む移植可能な要素。
4.治療用タンパク質が、抗体である、実施形態3に記載の操作された細胞、または操作された細胞を含む移植可能な要素。
5.抗体の重鎖および抗体の軽鎖が、2つの異なるプロモーターに作動可能に連結された2つの異なるオープンリーディングフレームによって発現される、実施形態4に記載の操作された細胞、または操作された細胞を含む移植可能な要素。
6.両方のプロモーターが強力であり、操作された細胞内のプロモーターを構成する、実施形態5に記載の操作された細胞、または操作された細胞を含む移植可能な要素。
7.オープンリーディングフレームの各々が、別個の外因性核酸上に存在する、実施形態5または6に記載の操作された細胞、または操作された細胞を含む移植可能な要素。
8.オープンリーディングフレームの各々が、同じ外因性核酸上に存在する、実施形態5または6に記載の操作された細胞、または操作された細胞を含む移植可能な要素。
9.重鎖および軽鎖が、単一のオープンリーディングフレームで発現され、各鎖のコード配列が、内部リボソーム進入部位によって分離されている、実施形態4に記載の操作された細胞、または操作された細胞を含む移植可能な要素。
10.プロモーターが、操作された細胞における強力な構成的プロモーターである、実施形態9に記載の操作された細胞、または操作された細胞を含む移植可能な要素。
11.操作された細胞が、選択マーカーをコードする少なくとも1つのコード配列をさらに含む、実施形態1~10のいずれか1つに記載の操作された細胞、または操作された細胞を含む移植可能な要素。
12.選択マーカーが、抗生物質耐性遺伝子である、実施形態11に記載の操作された細胞、または操作された細胞を含む移植可能な要素。
13.選択マーカーをコードするコード配列が、治療用タンパク質をコードするコード配列を含む各外因性核酸上に存在する、実施形態11または12に記載の操作された細胞、または操作された細胞を含む移植可能な要素。
14.選択マーカーをコードするコード配列が、治療用タンパク質をコードするコード配列に作動可能に連結されているプロモーターとは別個のプロモーターに作動可能に連結されている、実施形態13に記載の操作された細胞、または操作された細胞を含む移植可能な要素。
15.選択マーカーをコードするコード配列が、治療用タンパク質をコードするコード配列と同じプロモーターに作動可能に連結されている、実施形態13に記載の操作された細胞、または操作された細胞を含む移植可能な要素。
16.選択マーカーをコードするコード配列および治療用タンパク質をコードするコード配列が、内部リボソーム侵入部位によって分離されている、実施形態15に記載の操作された細胞、または操作された細胞を含む移植可能な要素。
17.抗体が、抗PD-1、抗PD-L1、抗CTLA4、抗TNFα、または抗VEGF抗体である、実施形態4~16のいずれか1つに記載の操作された細胞、または操作された細胞を含む移植可能な要素。
18.治療用タンパク質が、サイトカインである、実施形態3に記載の操作された細胞、または操作された細胞を含む移植可能な要素。
19.サイトカインが、IL-1、IL-1α、IL-1β、IL-1RA、IL-2、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、IL-11、IL-12、IL-12a、IL-12b、IL-13、IL-14、IL-16、IL-17、G-CSF、GM-CSF、IL-20、IFN-α、IFN-β、IFN-γ、CD154、LT-β、CD70、CD153、CD178、TRAIL、TNF-α、TNF-β、SCF、M-CSF、MSP、4-1BBL、LIF、またはOSMである、実施形態18に記載の操作された細胞、または操作された細胞を含む移植可能な要素。
20.サイトカインのコード配列が、抑制可能なプロモーターに作動可能に連結されている、実施形態18または19に記載の操作された細胞、または操作された細胞を含む移植可能な要素。
21.操作された細胞が、抑制可能なプロモーターに結合することができる転写リプレッサーをコードする少なくとも1つのコード配列をさらに含み、転写リプレッサーのコード配列が、サイトカインの受容体を介したシグナル伝達の結果として活性化されるプロモーターに作動可能に連結されている、実施形態20に記載の操作された細胞、または操作された細胞を含む移植可能な要素。
22.サイトカインのコード配列が、その5’非翻訳領域に翻訳調節高次構造を含む、実施形態18または19に記載の操作された細胞、または操作された細胞を含む移植可能な要素。
23.操作された細胞が、高次構造に結合することができるRNA結合翻訳リプレッサーをコードする少なくとも1つのコード配列をさらに含み、RNA結合翻訳リプレッサーのコード配列が、サイトカインの受容体を介したシグナル伝達の結果として活性化されるプロモーターに作動可能に連結されている、実施形態22に記載の操作された細胞、または操作された細胞を含む移植可能な要素。
24.サイトカインのコード配列が、その3’非翻訳領域に1つ以上のmiRNA結合部位を含む、実施形態18または19に記載の操作された細胞、または操作された細胞を含む移植可能な要素。
25.サイトカインの産生が、第2の構成要素のレベルに応答して調節される、実施形態20~24のいずれか1つに記載の操作された細胞、または操作された細胞を含む移植可能な要素。
26.第2の構成要素がタンパク質(例えばIFN-γ)である、実施形態25に記載の操作された細胞、または操作された細胞を含む移植可能な要素。
27.第2の構成要素の検出が、細胞における分解事象(例えば、アポトーシス)を誘発する、実施形態25または26に記載の操作された細胞、または操作された細胞を含む移植可能な要素。
28.操作された細胞が、miRNAの結合部位に結合することができるmiRNAをコードする少なくとも1つのコード配列をさらに含み、miRNAのコード配列が、サイトカインの受容体を介したシグナル伝達の結果として活性化されるプロモーターに作動可能に連結されている、実施形態24に記載の操作された細胞、または操作された細胞を含む移植可能な要素。
29.操作された細胞が、サイトカインに結合することができるユビキチンリガーゼをコードする少なくとも1つのコード配列をさらに含み、ユビキチンリガーゼのコード配列が、サイトカインの受容体を介したシグナル伝達の結果として活性化されるプロモーターに作動可能に連結されている、実施形態18または19に記載の操作された細胞、または操作された細胞を含む移植可能な要素。
30.サイトカインのコード配列が、小分子活性化プロモーターに作動可能に連結されている、実施形態18~29のいずれか1つに記載の操作された細胞、または操作された細胞を含む移植可能な要素。
31.サイトカインのコード配列が、小分子依存性の機能的高次構造を活性化または抑制することを含む、実施形態18~30のいずれか1つに記載の操作された細胞、または操作された細胞を含む移植可能な要素。
32.サイトカインのコード配列が、小分子支援シャットオフシステム配列を含む、実施形態18~31のいずれか1つに記載の操作された細胞、または操作された細胞を含む移植可能な要素。
33.サイトカインのコード配列が、合成転写因子によって活性化される合成プロモーターに作動可能に連結されている、実施形態18~31のいずれか1つに記載の操作された細胞、または操作された細胞を含む移植可能な要素。
34.合成転写因子が、転写活性化ドメインに融合された触媒不活性Cas9(dCas9)を含む、実施形態33に記載の操作された細胞、または操作された細胞を含む移植可能な要素。
35.合成転写因子のコード配列が、小分子活性化プロモーターに作動可能に連結されている、実施形態33または34に記載の操作された細胞、または操作された細胞を含む移植可能な要素。
36.合成転写因子のコード配列が、小分子依存性の機能的高次構造を活性化または抑制することを含む、実施形態33~35のいずれか1つに記載の操作された細胞、または操作された細胞を含む移植可能な要素。
37.合成転写因子のコード配列が、小分子支援シャットオフシステム配列を含む、実施形態33~36のいずれか1つに記載の操作された細胞、または操作された細胞を含む移植可能な要素。
38.操作された細胞が、2つ以上の治療用タンパク質を発現する、実施形態1~19のいずれか1つに記載の操作された細胞、または操作された細胞を含む移植可能な要素。
39.操作された細胞が、3つの治療用タンパク質を発現する、実施形態1~38のいずれか1つに記載の操作された細胞、または操作された細胞を含む移植可能な要素。
40.操作された細胞が、4つの治療用タンパク質を発現する、実施形態1~38のいずれか1つに記載の操作された細胞、または操作された細胞を含む移植可能な要素。
41.操作された細胞が、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、ヒト胎児腎臓(HEK)細胞、網膜色素上皮(ARPE-10)細胞、間葉系幹細胞(MSC)、ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)、マウス骨髄腫NS0およびSp2/0細胞、BABL/3T3細胞、MDCK細胞、またはPER.C6細胞である、実施形態1~40のいずれか1つに記載の操作された細胞、または操作された細胞を含む移植可能な要素。
42.外因性核酸が、発現ベクターである、実施形態1~41のいずれか1つに記載の操作された細胞、または操作された細胞を含む移植可能な要素。
43.発現ベクターが、pcDNA3.1である、実施形態42に記載の操作された細胞、または操作された細胞を含む移植可能な要素。
44.外因性核酸が、ウイルスベクターである、実施形態1~41のいずれか1つに記載の操作された細胞、または操作された細胞を含む移植可能な要素。
45.ウイルスベクターが、レンチウイルスベクターである、実施形態44に記載の操作された細胞、または操作された細胞を含む移植可能な要素。
46.外因性核酸が、トランスポゾンシステムである、実施形態1~41のいずれか1つに記載の操作された細胞、または操作された細胞を含む移植可能な要素。
47.トランスポゾンシステムが、piggyBac発現システムである、実施形態46に記載の操作された細胞、または操作された細胞を含む移植可能な要素。
48.操作された細胞が、キルスイッチをコードするコード配列を有する外因性核酸をさらに含む、実施形態1~47のいずれか1つに記載の操作された細胞、または操作された細胞を含む移植可能な要素。
49.キルスイッチが、リミドゥシド誘導スイッチに融合されたキメラカスパーゼ9である、実施形態48に記載の操作された細胞、または操作された細胞を含む移植可能な要素。
50.操作された細胞が、その免疫原性を増加させるようにさらに操作される、実施形態1~49のいずれか1つに記載の操作された細胞、または操作された細胞を含む移植可能な要素。
51.操作された細胞が、治療用タンパク質を放出する、実施形態1~50のいずれか1つに記載の操作された細胞、または操作された細胞を含む移植可能な要素。
52.移植可能な要素が、内側ゾーンおよび外側ゾーンを含み、操作された細胞が、内側ゾーンに存在する、実施形態1~51のいずれか1つに記載の操作された細胞を含む移植可能な要素。
53.外側ゾーンが、移植の初期相または遮蔽相では、宿主免疫エフェクター分子または細胞と抗原物質との接触を妨げるように構成されているが、移植の後続相または非遮蔽相では、宿主免疫エフェクター分子または細胞と抗原物質との接触を可能にするように構成されている、実施形態52に記載の操作された細胞を含む移植可能な要素。
54.外側ゾーンが、分解性の実体を含む、実施形態52または53に記載の操作された細胞を含む移植可能な要素。
55.遮蔽相が、1時間、12時間、1日間、2日間、3日間、6日間、または12日間以下持続する、実施形態53に記載の操作された細胞を含む移植可能な要素。
56.遮蔽相が、0.5日間~30日間、1日間~14日間、および1日間~7日間持続する、実施形態53に記載の操作された細胞を含む移植可能な要素。
57.外側ゾーンの厚さが、遮蔽相の長さ/持続時間と相関する、実施形態53~56のいずれか1つに記載の操作された細胞を含む移植可能な要素。
58.移植可能な構築物が、治療用タンパク質の持続放出を提供する、実施形態1~57のいずれか1つに記載の操作された細胞を含む移植可能な要素。
59.移植可能な構築物が、治療用タンパク質の実質的に非拍動性の放出を提供する、実施形態1~57のいずれか1つに記載の移植可能な要素。
60.ポリマーヒドロゲルをさらに含む、実施形態1~59のいずれか1つに記載の移植可能な要素。
61.外側ゾーンが、ポリマーヒドロゲルを含む、実施形態60に記載の移植可能な要素。
62.内側ゾーンが、ポリマーヒドロゲルを含む、実施形態60に記載の移植可能な要素。
63.内側ゾーンおよび外側ゾーンが、同じポリマーヒドロゲルを含む、実施形態60~62のいずれか1つに記載の移植可能な要素。
64.内側ゾーンおよび外側ゾーンが、2種類の異なるポリマーヒドロゲルを含む、実施形態60~62のいずれか1つに記載の移植可能な要素。
65.ポリマーヒドロゲルが、キトサン、セルロース、ヒアルロン酸、またはアルギネートを含む、実施形態60~64のいずれか1つに記載の移植可能な要素。
66.単一タイプの治療用タンパク質を産生する操作された細胞を含む、実施形態1~65のいずれか1つに記載の移植可能な要素。
67.複数の治療用タンパク質を産生する操作された細胞を含む、実施形態1~65のいずれか1つに記載の移植可能な要素。
68.異なる治療用タンパク質を各々産生する第1の操作された細胞および第2の操作された細胞を含む、実施形態1~65のいずれか1つに記載の移植可能な要素。
69.第1の操作された細胞が、第1の治療用抗体を産生し、第2の操作された細胞が、第2の治療用タンパク質を産生する、実施形態68に記載の移植可能な要素。
70.少なくとも約10,000、15,000、または20,000個の操作された細胞を含む、実施形態1~65のいずれか1つに記載の移植可能な要素。
71.追加の治療剤をさらに含む、実施形態1~70のいずれか1つに記載の移植可能な要素。
72.追加の治療剤が、化学療法剤または免疫調節剤である、実施形態1~71のいずれか1つに記載の移植可能な要素。
73.実施形態1~51のいずれか1つに記載の操作された細胞を含む、バイオリアクター。
74.複数の、実施形態1~72のいずれか1つに記載の移植可能な要素
を含む、移植可能な要素の調製物。
75.薬学的に許容される調製物である、実施形態74に記載の調製物。
76.移植可能な要素を患者に提供する方法であって、実施形態1~72のいずれか1つに記載の移植可能な要素を、対象に移植すること、または対象に提供することを含む、方法。
77.望ましくない細胞増殖を含む障害について患者を治療する、実施形態76に記載の方法。
78.がんを有する患者に免疫チェックポイント阻害剤を投与する方法であって、
方法が、患者の腹腔に、実施形態1~72のいずれか1つに記載の移植可能な要素を移植することを含み、移植可能な要素が、免疫チェックポイント阻害剤を放出するように構成されている、
方法。
79.免疫チェックポイント阻害剤が、PD-L1抗体、PD-1抗体、またはCTLA4抗体である、実施形態78に記載の方法。
80.患者に抗がん療法を施すことをさらに含む、実施形態78または79に記載の方法。
81.抗がん療法が、外科療法、化学療法、放射線療法、凍結療法、ホルモン療法、毒素療法、免疫療法、またはサイトカイン療法である、実施形態80に記載の方法。
82.がんが、大腸がん、神経芽腫、乳がん、膵臓がん、脳がん、肺がん、胃がん、皮膚がん、精巣がん、前立腺がん、卵巣がん、肝臓がん、食道がん、子宮頸がん、頭頸部がん、黒色腫、または膠芽腫である、実施形態78~81のいずれか1つに記載の方法。
83.患者におけるがんを治療する方法であって、
方法が、患者の腹腔に、実施形態1~72のいずれか1つに記載の移植可能な要素を移植することを含み、移植可能な要素が、がんに対する免疫エフェクター細胞媒介性攻撃を促進するのに十分であるが、がんにおけるTregレベルを促進するには十分ではないレベルで、治療用タンパク質を放出するように構成されている、
方法。
84.治療用タンパク質が、免疫チェックポイント阻害剤である、実施形態83に記載の方法。
85.免疫チェックポイント阻害剤が、PD-L1抗体、PD-1抗体、またはCTLA4抗体である、実施形態84に記載の方法。
86.患者に抗がん療法を施すことをさらに含む、実施形態83~85のいずれか1つに記載の方法。
87.抗がん療法が、外科療法、化学療法、放射線療法、凍結療法、ホルモン療法、毒素療法、免疫療法、またはサイトカイン療法である、実施形態86に記載の方法。
88.がんが、大腸がん、神経芽腫、乳がん、膵臓がん、脳がん、肺がん、胃がん、皮膚がん、精巣がん、前立腺がん、卵巣がん、肝臓がん、食道がん、子宮頸がん、頭頸部がん、黒色腫、または膠芽腫である、実施形態83~87のいずれか1つに記載の方法。
【0031】
本明細書で使用される場合、特定の成分に関して「本質的に含まない」とは、特定の点で成分のいずれも、意図的に組成物に製剤化されておらず、かつ/または汚染物質としてのみ存在するかもしは微量存在することを意味するように本明細書で使用される。したがって、組成物の任意の意図しない汚染から生じる特定の成分の総量は、0.05%をはるかに下回り、好ましくは0.01%を下回る。最も好ましくは、標準的な分析方法では特定の成分の量を検出することができない組成物である。
【0032】
本明細書で使用される場合、「1つの(a)」または「1つの(an)」は、1つ以上を意味し得る。本明細書で特許請求の範囲で使用される場合、単語「含む(comprising)」とともに使用される場合、単語「1つの(a)」または「1つの(an)」は、1つまたは1つ以上を意味し得る。
【0033】
特許請求の範囲における「または」という用語の使用は、代替物のみを指すように明示的に示されない限り、または代替物が相互に排他的である場合を除いて、「および/または」を意味するように使用されるが、本開示は、代替物のみおよび「および/または」のみを指す定義も支持する。本明細書で使用される場合、「別の」とは、少なくとも第2の、またはそれ以上を意味し得る。
【0034】
本出願全体を通して、「約」という用語は、ある値が、デバイスの誤差の固有の変動、値を決定するために用いられる方法、研究対象間に存在する変動、または記載された値の10%以内の値を含むことを示すために使用される。
【0035】
本発明の他の目的、特徴および利点は、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。しかしながら、詳細な説明から、本発明の趣旨および範囲内の様々な変更および修正が当業者に明らかになるため、詳細な説明および好ましい実施例は、本発明の特定の実施形態を示しながら、例示としてのみ与えられることを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0036】
以下の図面は、本明細書の一部を形成し、本発明の特定の態様をさらに実証するために含まれている。本発明は、本明細書に提示される特定の実施形態の詳細な説明と組み合わせて、これらの図面の1つ以上を参照することによって、よりよく理解され得る。
【0037】
図1】単一遺伝子デュアルベクターシステムの概略図。
図2】単一ベクターデュアル遺伝子システムの概略図。
図3】バイシストロニック単一ORFシステムの概略図。
図4】トリシストロニック単一ORFシステムの概略図。
図5】オペレーター/リプレッサーを使用したデュアルORF自動調節システムの概略図。
図6】RNA結合タンパク質を使用したデュアルORF自動調節システムの概略図。
図7】miRNAを使用したデュアルORF自動調節システムの概略図。
図8】ユビキチンリガーゼを使用したデュアルORF自動調節システムの概略図。
図9】RT-PCRによって監視した、0、1、または10ng/mLの組換えヒトIFN-γで20時間処理したRPE細胞におけるRPEレベルを示すグラフ。
図10】EKRABおよびBAX分解速度の経時的変動を示すグラフである。アポトーシスの活性化前に、調整可能な遅延を可能にする。
図11図11A~B - IL-2濃度の予測される薬物動態モデルを示すグラフ。図11Aは、腹腔および全身における経時的なIL-2濃度の予測される動態を図示し、一方、図11Bは、経時的な用量とピークIL-2濃度との間の差を予測する。
図12】STAT5誘導性プロモーターの制御下でIL-2およびGFPを発現するようにトランスフェクトされたIL-2αβγ受容体を発現するHEK293細胞(GFP、IL-2)、およびIL-2を欠く対照細胞(GFP)のフローサイトメトリー分析を示すグラフ。
図13図13A~D - STAT5活性化に応答したIL-2産生の抑制を実行する4つの合成回路トポロジーの概略図。
図14A図14A~C - 調節されたサイトカイン回路の特徴付け。図14Aは、本明細書に記載の例示的な回路の正規化された用量応答および応答時間(挿入図)を示すグラフである。図14Bは、モデル化のための例示的な方程式を示す。図14Cは、a=0.35の場合の各回路の腹腔内IL-2濃度の刺激された薬物動態のグラフである。投薬量をスケーリングして、同様のピークIL-2濃度を確保した。挿入図は、産生および細胞死に対する感度分析を示す。
図14B図14Aの説明を参照のこと。
図14C図14Aの説明を参照のこと。
図15図15A~D - 例示的な発現システムの概略図。図15Aは、EKRABの発現のためのカセットを示す。図15B~Dは、IL-2およびfTAの発現のためのカセットを示す。
【発明を実施するための形態】
【0038】
詳細な説明
目的の分子を安定して発現する操作された細胞が本明細書に提供される。これは、がん免疫療法、自己免疫障害治療、および産業用バイオリアクターのためのデバイスとして、抗VEGF、抗TNF-α、抗PD-1、抗PD-L1、および抗CTLA4抗体を含む、いくつかのナノボディ、サイトカイン、および抗体を安定して産生するように操作されたプラスミドをトランスフェクションすることよって達成される。
【0039】
piggybacトランスポゾンシステム、レンチウイルスベクター、およびpcDNA3.1ベクターシステムを含む、サイトカイン、ナノボディ、または抗体の安定した産生のために、いくつかのベクターシステムを利用してもよく、それによって、いくつかの哺乳動物細胞株におけるそれらの産生を可能にする。例えば、抗体発現の場合、重鎖および軽鎖は、2つの異なるプロモーターを使用して2つの異なるベクターから発現され得、各ベクターは選択マーカーを有する。代替的に、重鎖および軽鎖は、2つの異なるプロモーターを使用して単一のベクターから発現され得る。さらに別の代替例では、重鎖および軽鎖は、バイシストロニックオープンリーディングフレームとして発現され得、2つの鎖のコード配列は、IRESによって分離されている。この場合、選択マーカーは、同じベクターからではあるが、別個のオープンリーディングフレームから発現される。さらに別の代替例として、重鎖、軽鎖、および選択マーカーは、トリシストロニックオープンリーディングフレームとして発現されてよく、2つの鎖の各々のコード配列および選択マーカーは、IRES要素によって分離されている。
【0040】
遺伝子システムがサイトカインを発現する実施形態では、サイトカインの毒性レベルの分泌を防止するために、サイトカイン産生のレベルが自動調節されることが望ましい。これを達成する1つの方法は、第1のORFのサイトカイン遺伝子とそのプロモーターとの間のDNA領域に、オペレーター部位を導入することである。サイトカインの受容体を介したシグナル伝達の結果として活性化されるプロモーターの制御下で、オペレーター部位に結合する転写リプレッサーをコードする第2のORFを使用する。例えば、サイトカインがIL-2である場合、転写リプレッサーの発現を制御するプロモーターは、STAT転写因子であり得る(図5)。このようにして、細胞は、既に十分なサイトカインが存在する場合、それらの環境におけるサイトカインを感知し、それらのサイトカインの産生を減少させることができる。
【0041】
別の考えられる戦略は、サイトカイン遺伝子の5’非翻訳領域(5’UTR)に高次構造を形成する配列を導入することである。次いで、サイトカインの受容体を介したシグナル伝達の結果として活性化されるプロモーターの制御下で、高次構造に結合し、翻訳を抑制するRNA結合タンパク質をコードする第2のORFを使用する。例えば、サイトカインがIL-2である場合、RNA結合タンパク質の発現を制御するプロモーターは、STAT転写因子であり得る(図6)。
【0042】
別の考えられる戦略は、合成マイクロRNA(miRNA)の標的部位のいくつかの反復を、サイトカイン遺伝子の3’非翻訳領域(3’UTR)に導入することである。次いで、サイトカインの受容体を介したシグナル伝達の結果として活性化されるプロモーターの制御下で、miRNAをコードする第2のORFを使用する。例えば、サイトカインがIL-2である場合、miRNAの発現を制御するプロモーターは、STAT転写因子であり得る(図7)。
【0043】
別の考えられる戦略は、サイトカインを標的とし、サイトカインの受容体を介したシグナル伝達の結果として活性化されるプロモーターの制御下で、ユビキチン媒介性タンパク質分解をもたらす、合成ユビキチンリガーゼをコードする第2のORFを使用することである。例えば、サイトカインがIL-2である場合、ユビキチンリガーゼの発現を制御するプロモーターは、STAT転写因子であり得る(図8)。この場合、サイトカイン遺伝子は、合成ユビキチンリガーゼによって認識可能なサイトカインを生成するために必要であれば、追加のタンパク質ドメインを含むように改変され得る。理想的には、任意の追加のタンパク質ドメインの付加は、サイトカインの免疫学的機能を変化させない。
【0044】
これらの自己調節制御戦略は、サイトカイン産生にさらなるレベルの制御を提供するために、小分子ベースの戦略と組み合わせることができる。サイトカインの発現を駆動するために小分子活性化プロモーター(例えば、TRE/テトラサイクリンシステム)を使用することで、小分子の投与によるサイトカイン産生の外部調節が可能になるであろう。サイトカイン発現の転写後の制御は、小分子依存性リボスイッチを使用しても可能である。リボスイッチは、サイトカイン遺伝子の5’または3’UTRに付加され得る短い配列であり、小分子依存性の機能的高次構造(例えば、フレームシフトアプタマーまたはmRNA切断アプタザイム)を形成し、同様のサイトカイン産生の外部制御を可能にする(これらのシステムの、小分子の添加時にフレームシフトまたは切断をオンにする例、および小分子の存在下でオフにする例がある)。このタイプの制御は、小分子によって安定化され得る不安定化ドメインの配列をサイトカインの遺伝子の先頭または末端に付加することによって、タンパク質レベルでも可能であり、これは、小分子が存在しない場合、サイトカインの標的化分解をもたらすであろう。逆に、切断を防止し、サイトカインの分解をもたらす小分子プロテアーゼ阻害剤の存在下を除いて、不安定化ドメインと、サイトカインから不安定化ドメインを切断する非哺乳動物プロテアーゼとを含む、小分子支援シャットオフ(SMASh)システムの配列を用いてサイトカインの遺伝子を増強することによっても可能である。タンパク質構造に対するすべてのこれらの改変は、代わりに、サイトカインの発現を制御するプロモーターを活性化する合成転写因子を改変することによって間接的に行うこともでき、これは、すべてのこれらのタンパク質改変が、分泌されて、これらの非天然タンパク質ドメインに対する免疫応答を潜在的に生成する代わりに、治療用細胞内に留まることを確実にする。この目的のために使用される考えられる合成転写因子の1つは、転写アクチベーターであるVP64、p65、およびRta(VPR)と触媒不活性化Cas9(dCas9)との間の融合物であり、これは、ガイドRNA(gRNA)と共発現された場合、VPR複合体を、gRNAと相補性を有する合成プロモーターに局在化させて、サイトカイン遺伝子の転写を活性化する。
【0045】
細胞は、様々なタイプが企図され、修飾アルギネートコアシェル中にカプセル化され得る。二層ヒドロゲルは、望ましくない免疫応答を防止するために、免疫調節性小分子で装飾され得る。コアシェルアルギネートプラットフォームは、コアシェルの最適な形成を可能にする様々なサイズを有する一方、細胞のために、拡散を介して栄養素へのアクセスを最大化する。コアシェルは、時限分解を可能にするように修飾され得る。
【0046】
I.操作された細胞によって発現される治療剤
本明細書に記載されるカプセル化細胞組成物は、細胞によって産生または分泌される治療剤を含み得る。治療剤は、核酸(例えば、RNA、DNA、またはオリゴヌクレオチド)、タンパク質(例えば、抗体、酵素、サイトカイン、ホルモン、受容体)、脂質、小分子、代謝剤、オリゴ糖、ペプチド、アミノ酸、抗原を含み得る。一実施形態では、カプセル化細胞組成物は、治療剤を産生または分泌するように遺伝子操作されている細胞または複数の細胞を含む。
【0047】
一実施形態では、カプセル化細胞組成物は、タンパク質を産生または分泌する細胞を含む。タンパク質は、例えば、約100Da、200Da、250Da、500Da、750Da、1KDa、1.5kDa、2kDa、2.5kDa、3kDa、4kDa、5kDa、6kDa、7kDa、8kDa、9kDa、10kDa、15kDa、20kDa、25kDa、30kDa、35kDa、40kDa、45kDa、50kDa、55kDa、60kDa、65kDa、70kDa、75kDa、80kDa、85kDa、90kDa、95kDa、100kDa、125kDa、150kDa、200kDa、200kDa、250kDa、300kDa、400kDa、500kDa、600kDa、700kDa、800Da、900kDa、またはそれ以上を超える任意のサイズであり得る。一実施形態では、タンパク質は、単一のサブユニットまたは複数のサブユニット(例えば、二量体、三量体、四量体など)から構成される。細胞によって産生または分泌されるタンパク質は、例えば、グリコシル化、メチル化、または他の既知の天然または合成タンパク質修飾によって修飾され得る。タンパク質は、プレタンパク質として、または不活性形態で産生または分泌され得、それを活性形態に変換するためにさらなる修飾を必要とし得る。
【0048】
細胞によって産生または分泌されるタンパク質は、抗体または抗体断片(例えば、抗体のFc領域または可変領域)を含み得る。抗体は、免疫チェックポイント阻害剤であり得る。例示的な抗体としては、抗PD-1、抗PD-L1、抗CTLA4、抗TNFα、および抗VEGF抗体が挙げられる。抗体は、モノクローナルまたはポリクローナルであり得る。抗体は、ナノボディであり得る。表Aに、例示的な抗体およびナノボディの配列を提供する。
【0049】
免疫チェックポイントは、シグナル(例えば、共刺激分子)を上げるか、またはシグナルを下げるかのいずれかである。免疫チェックポイント遮断剤によって標的とされ得る免疫チェックポイントタンパク質には、アデノシンA2A受容体(A2AR)、B7-H3(CD276としても知られる)、BおよびTリンパ球アテニュエーター(BTLA)、CCL5、CD27、CD38、CD8A、CMKLR1、細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA-4、CD152としても知られる)、CXCL9、CXCR5、グルココルチコイド誘導性腫瘍壊死因子受容体関連タンパク質(GITR)、HLA-DRB1、ICOS(CD278としても知られる)、HLA-DQA1、HLA-E、インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ1(IDO1)、キラー免疫グロブリン(KIR)、リンパ球活性化遺伝子-3(LAG-3、CD223としても知られる)、Merチロシンキナーゼ(MerTK)、NKG7、OX40(CD134としても知られる)、プログラム死1(PD-1)、プログラム死リガンド1(PD-L1、CD274としても知られる)、PDCD1LG2、PSMB10、STAT1、IgおよびITIMドメインを有するT細胞免疫受容体(TIGIT)、T細胞免疫グロブリンドメインおよびムチンドメイン3(TIM-3)、およびT細胞活性化のVドメインIgサプレッサー(VISTA、C10orf54としても知られる)が含まれる。特に、免疫チェックポイント阻害剤は、PD-1軸および/またはCTLA-4を標的とする。
【0050】
免疫チェックポイント阻害剤は、薬物(例えば、小分子、組換え形態のリガンドもしくは受容体)または抗体(例えば、ヒト抗体)であり得る(例えば、国際特許公開第2015/016718号、Pardoll,Nat Rev Cancer,12(4):252-264,2012;いずれも参照により本明細書に援用される)。免疫チェックポイントタンパク質またはその類似体の既知の阻害剤を使用してもよく、特に、抗体のキメラ化、ヒト化、またはヒト形態を使用してもよい。当業者であれば分かるように、代替名および/または等価名は、本開示で言及される特定の抗体のために使用され得る。かかる代替名および/または等価名は、本開示の文脈において互換的である。例えば、ランブロリズマブは、MK-3475およびペムブロリズマブという代替名および等価名で知られている。
【0051】
一部の実施形態では、PD-1結合アンタゴニストは、PD-1のそのリガンド結合パートナーへの結合を阻害する分子である。特定の態様では、PD-1リガンド結合パートナーは、PD-L1および/またはPD-L2である。別の実施形態では、PD-L1結合アンタゴニストは、PD-L1のその結合パートナーへの結合を阻害する分子である。特定の態様では、PD-L1結合パートナーは、PD-1および/またはB7-1である。別の実施形態では、PD-L2結合アンタゴニストは、PD-L2のその結合パートナーへの結合を阻害する分子である。特定の態様では、PD-L2結合パートナーは、PD-1である。アンタゴニストは、抗体、その抗原結合断片、イムノアドヘシン、融合タンパク質、またはオリゴペプチドであり得る。例示的な抗体は、米国特許第8,735,553号、同第8,354,509号、および同第8,008,449号に記載されている(これらはすべて、参照により本明細書に援用される)。本明細書に提供される方法において使用するための他のPD-1軸アンタゴニストは、当該技術分野で既知であり、例えば、米国特許出願公開第2014/0294898号、同第2014/022021号、および同第2011/0008369号に記載されている(これらはすべて、参照により本明細書に援用される)。
【0052】
一部の実施形態では、PD-1結合アンタゴニストは、抗PD-1抗体(例えば、ヒト抗体、ヒト化抗体、またはキメラ抗体)である。一部の実施形態では、抗PD-1抗体は、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、およびCT-011からなる群から選択される。一部の実施形態では、PD-1結合アンタゴニストは、イムノアドヘシン(例えば、定常領域(例えば、免疫グロブリン配列のFc領域)に融合されたPD-L1もしくはPD-L2の細胞外部分またはPD-1結合部分を含むイムノアドヘシン)である。一部の実施形態では、PD-1結合アンタゴニストは、AMP-224である。ニボルマブは、MDX-1106-04、MDX-1106、ONO-4538、BMS-936558、およびOPDIVO(登録商標)としても知られ、WO2006/121168に記載されている抗PD-1抗体である。ペムブロリズマブは、MK-3475、Merck3475、ランブロリズマブ、KEYTRUDA(登録商標)、およびSCH-900475としても知られ、WO2009/114335に記載されている抗PD-1抗体である。CT-011は、hBATまたはhBAT-1としても知られ、WO2009/101611に記載されている抗PD-1抗体である。AMP-224は、B7-DCIgとしても知られ、WO2010/027827およびWO2011/066342に記載されているPD-L2-Fc融合可溶性受容体である。
【0053】
本明細書に提供される方法で標的とされ得る別の免疫チェックポイントタンパク質は、細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA-4)であり、CD152としても知られている。ヒトCTLA-4の完全なcDNA配列は、Genbankアクセッション番号L15006を有する。CTLA-4は、T細胞の表面上に見られ、抗原提示細胞の表面上のCD80またはCD86に結合した場合、「オフ」スイッチとして作用する。CTLA-4は、T細胞共刺激タンパク質であるCD28に類似し、両方の分子は、抗原提示細胞上のCD80およびCD86(それぞれ、B7-1およびB7-2とも呼ばれる)に結合する。CTLA-4は、T細胞に抑制性シグナルを伝達し、一方、CD28は、刺激性シグナルを伝達する。細胞内CTLA-4は、制御性T細胞にも見出され、それらの機能に重要であり得る。T細胞受容体およびCD28を介したT細胞の活性化は、B7分子の抑制性受容体であるCTLA-4の発現の増加をもたらす。
【0054】
一部の実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、抗CTLA-4抗体(例えば、ヒト抗体、ヒト化抗体、またはキメラ抗体)、その抗原結合断片、イムノアドヘシン、融合タンパク質、またはオリゴペプチドである。本方法における使用に好適な抗ヒトCTLA-4抗体(または、それに由来するVHおよび/またはVLドメイン)は、当該技術分野で周知の方法を使用して生成され得る。代替的に、当該技術分野で認識されている抗CTLA-4抗体が使用され得る。例えば、抗CTLA-4抗体(米国特許第8,119,129号、PCT公開第01/14424号、WO98/42752、WO00/37504(CP675,206、トレメリムマブとしても知られる、旧チシリムマブ)、米国特許第6,207,156号、Hurwitz et al.(1998)Proc Natl Acad Sci USA,95(17):10067-10071;Camacho et al.(2004)J Clin Oncology,22(145):Abstract No.2505(antibody CP-675206)、およびMokyr et al.(1998)Cancer Res,58:5301-5304に開示されている)を、本明細書に開示される方法で使用することができる。前述の刊行物の各々の教示は、参照により本明細書に援用される。これらの技術分野で認識されているCTLA-4への結合に対する抗体のうちのいずれかと競合する抗体も使用することができる。例えば、ヒト化CTLA-4抗体は、国際特許出願第2001/014424号、WO2000/037504、および米国特許第8,017,114号に記載されている(これらはすべて、参照により本明細書に援用される)。
【0055】
例示的な抗CTLA-4抗体は、イピリムマブ(10D1、MDX-010、MDX-101、およびYervoy(登録商標)としても知られる)またはその抗原結合断片およびバリアントである(例えば、WO01/14424を参照されたい)。他の実施形態では、抗体は、イピリムマブの重鎖および軽鎖のCDRまたはVRを含む。したがって、一実施形態では、抗体は、イピリムマブのVH領域のCDR1、CDR2、およびCDR3ドメイン、ならびにイピリムマブのVL領域のCDR1、CDR2、およびCDR3ドメインを含む。別の実施形態では、抗体は、上述の抗体と同じCTLA-4上のエピトープとの結合に対して競合し、かつ/またはそれに結合する。別の実施形態では、抗体は、上記抗体と少なくとも約90%の可変領域アミノ酸配列同一性(例えば、イピリムマブと少なくとも約90%、95%、または99%の可変領域同一性)を有する。CTLA-4を調節するための他の分子としては、CTLA-4リガンドおよび受容体(例えば、米国特許第5844905号、同第5885796号、および国際特許出願第1995/001994号およびWO1998/042752に記載されている;これらはすべて、参照により本明細書に援用される)、ならびにイムノアドヘシン(例えば、米国特許第8329867号に記載されている;参照により本明細書に援用される)が挙げられる。
【0056】
本明細書に提供される方法で標的とされ得る別の免疫チェックポイントタンパク質は、リンパ球活性化遺伝子3(LAG-3)であり、CD223としても知られている。ヒトLAG-3の完全なタンパク質配列は、Genbankアクセッション番号NP-002277を有する。LAG-3は、活性化T細胞、ナチュラルキラー細胞、B細胞、および形質細胞様樹状細胞の表面に見出される。LAG-3は、抗原提示細胞の表面上のMHCクラスIIに結合した場合、「オフ」スイッチとして作用する。LAG-3の阻害は、エフェクターT細胞と抑制性制御性T細胞の両方を活性化する。一部の実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、抗LAG-3抗体(例えば、ヒト抗体、ヒト化抗体、またはキメラ抗体)、その抗原結合断片、イムノアドヘシン、融合タンパク質、またはオリゴペプチドである。本方法における使用に好適な抗ヒトLAG-3抗体(または、それに由来するVHおよび/またはVLドメイン)は、当該技術分野で周知の方法を使用して生成され得る。代替的に、当該技術分野で認識されている抗LAG-3抗体が使用され得る。例示的な抗LAG-3抗体は、レラトリマブ(BMS-986016としても知られる)またはその抗原結合断片およびバリアントである(例えば、WO2015/116539を参照されたい)。他の例示的な抗LAG-3抗体としては、TSR-033(例えば、WO2018/201096を参照されたい)、MK-4280、およびREGN3767が挙げられる。MGD013は、WO2017/019846に記載されている抗LAG-3/PD-1二重特異性抗体である。FS118は、WO2017/220569に記載されている抗LAG-3/PD-L1二重特異性抗体である。
【0057】
本明細書に提供される方法で標的とされ得る別の免疫チェックポイントタンパク質は、T細胞活性化のVドメインIgリプレッサー(VISTA)であり、C10orf54としても知られている。ヒトVISTAの完全なタンパク質配列は、Genbankアクセッション番号NP_071436を有する。VISTAは、白血球に見られ、T細胞のエフェクター機能を抑制する。一部の実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、抗VISTA3抗体(例えば、ヒト抗体、ヒト化抗体、またはキメラ抗体)、その抗原結合断片、イムノアドヘシン、融合タンパク質、またはオリゴペプチドである。本方法における使用に好適な抗ヒトVISTA抗体(または、それに由来するVHおよび/またはVLドメイン)は、当該技術分野で周知の方法を使用して生成され得る。代替的に、当該技術分野で認識されている抗VISTA抗体が使用され得る。例示的な抗VISTA抗体は、JNJ-61610588(オンバチリマブとしても知られる)である(例えば、WO2015/097536、WO2016/207717、WO2017/137830、WO2017/175058を参照されたい)。VISTAはまた、PD-L1およびVISTAの両方を選択的に標的とする小分子CA-170で阻害され得る(例えば、WO2015/033299、WO2015/033301を参照されたい)。
【0058】
本明細書に提供される方法で標的とされ得る別の免疫チェックポイントタンパク質は、インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)である。ヒトIDOの完全なタンパク質配列は、Genbankアクセッション番号NP_002155を有する。一部の実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、小分子IDO阻害剤である。例示的な小分子としては、BMS-986205、エパカドスタット(INCB24360)、およびナボキシモド(GDC-0919)が挙げられる。
【0059】
本明細書に提供される方法で標的とされ得る別の免疫チェックポイントタンパク質は、CD38である。ヒトCD38の完全なタンパク質配列は、Genbankアクセッション番号NP_001766を有する。一部の実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、抗CD38抗体(例えば、ヒト抗体、ヒト化抗体、またはキメラ抗体)、その抗原結合断片、イムノアドヘシン、融合タンパク質、またはオリゴペプチドである。本方法における使用に好適な抗ヒトCD38抗体(または、それに由来するVHおよび/またはVLドメイン)は、当該技術分野で周知の方法を使用して生成され得る。代替的に、当該技術分野で認識されている抗CD38抗体が使用され得る。例示的な抗CD38抗体は、ダラツムマブである(例えば、米国特許第7,829,673号を参照されたい)。
【0060】
本明細書に提供される方法で標的とされ得る別の免疫チェックポイントタンパク質は、ICOSであり、CD278としても知られている。ヒトICOSの完全なタンパク質配列は、Genbankアクセッション番号NP_036224を有する。一部の実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、抗ICOS抗体(例えば、ヒト抗体、ヒト化抗体、またはキメラ抗体)、その抗原結合断片、イムノアドヘシン、融合タンパク質、またはオリゴペプチドである。本方法における使用に好適な抗ヒトICOS抗体(または、それに由来するVHおよび/またはVLドメイン)は、当該技術分野で周知の方法を使用して生成され得る。代替的に、当該技術分野で認識されている抗ICOS抗体が使用され得る。例示的な抗ICOS抗体としては、JTX-2011(例えば、WO2016/154177、WO2018/187191を参照されたい)およびGSK3359609(例えば、WO2016/059602を参照されたい)が挙げられる。
【0061】
本明細書に提供される方法で標的とされ得る別の免疫チェックポイントタンパク質は、IgおよびITIMドメインを有するT細胞免疫受容体(TIGIT)である。ヒトTIGITの完全なタンパク質配列は、Genbankアクセッション番号NP_776160を有する。一部の実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、抗TIGIT抗体(例えば、ヒト抗体、ヒト化抗体、またはキメラ抗体)、その抗原結合断片、イムノアドヘシン、融合タンパク質、またはオリゴペプチドである。本方法における使用に好適な抗ヒトTIGIT抗体(または、それに由来するVHおよび/またはVLドメイン)は、当該技術分野で周知の方法を使用して生成され得る。代替的に、当該技術分野で認識されている抗TIGIT抗体が使用され得る。例示的な抗TIGIT抗体は、MK-7684である(例えば、WO2017/030823、WO2016/028656を参照されたい)。
【0062】
本明細書に提供される方法で標的とされ得る別の免疫チェックポイントタンパク質は、OX40であり、CD134としても知られている。ヒトOX40の完全なタンパク質配列は、Genbankアクセッション番号NP_003318を有する。一部の実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、抗OX40抗体(例えば、ヒト抗体、ヒト化抗体、またはキメラ抗体)、その抗原結合断片、イムノアドヘシン、融合タンパク質、またはオリゴペプチドである。本方法における使用に好適な抗ヒトOX40抗体(または、それに由来するVHおよび/またはVLドメイン)は、当該技術分野で周知の方法を使用して生成され得る。代替的に、当該技術分野で認識されている抗OX40抗体が使用され得る。例示的な抗OX40抗体は、PF-04518600である(例えば、WO2017/130076を参照されたい)。ATOR-1015は、CTLA4およびOX40を標的とする二重特異性抗体である(例えば、WO2017/182672、WO2018/091740、WO2018/202649、WO2018/002339を参照されたい)。
【0063】
本明細書に提供される方法で標的とされ得る別の免疫チェックポイントタンパク質は、グルココルチコイド誘導性腫瘍壊死因子受容体関連タンパク質(GITR)であり、TNFRSF18およびAITRとしても知られている。ヒトGITRの完全なタンパク質配列は、Genbankアクセッション番号NP_004186を有する。一部の実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、抗GITR抗体(例えば、ヒト抗体、ヒト化抗体、またはキメラ抗体)、その抗原結合断片、イムノアドヘシン、融合タンパク質、またはオリゴペプチドである。本方法における使用に好適な抗ヒトGITR抗体(または、それに由来するVHおよび/またはVLドメイン)は、当該技術分野で周知の方法を使用して生成され得る。代替的に、当該技術分野で認識されている抗GITR抗体が使用され得る。例示的な抗GITR抗体は、TRX518である(例えば、WO2006/105021を参照されたい)。
【0064】
(表A)例示的な抗体配列
【0065】
細胞によって産生または分泌されるタンパク質には、サイトカインが含まれ得る。サイトカインは、炎症促進性サイトカインまたは抗炎症性サイトカインであり得る。サイトカインの例としては、IL-1、IL-1α、IL-1β、IL-1RA、IL-2、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、IL-11、IL-12、IL-12a、IL-12b、IL-13、IL-14、IL-16、IL-17、G-CSF、GM-CSF、IL-20、IFN-α、IFN-β、IFN-γ、CD154、LT-β、CD70、CD153、CD178、TRAIL、TNF-α、TNF-β、SCF、M-CSF、MSP、4-1BBL、LIF、OSM、およびその他が挙げられる。例えば、サイトカインには、M.J.Cameron and D.J.Kelvin,Cytokines,Chemokines,and Their Receptors(2013),Landes Biosciences(その全体が参照により本明細書に援用される)に記載の任意のサイトカインが含まれ得る。表Bに、例示的なサイトカイン配列を提供する。
【0066】
(表B)例示的なサイトカイン配列
【0067】
カプセル化細胞組成物は、単一のタイプの治療剤(例えば、単一のタンパク質もしくは核酸)を発現する細胞を含んでもよく、または2つ以上のタイプの治療剤(例えば、複数のタンパク質もしくは核酸)を発現してもよい。一実施形態では、移植可能な構築物は、2種類の治療剤(例えば、2種類のタンパク質または核酸)を発現する細胞を含む。
【0068】
一実施形態では、カプセル化細胞組成物は、単一の種類のタンパク質を発現する細胞、または2つ以上の種類のタンパク質(例えば、複数のタンパク質)を発現し得る細胞を含む。一実施形態では、カプセル化細胞組成物は、2種類のタンパク質を発現する細胞を含む。
【0069】
一実施形態では、カプセル化細胞組成物は、単一の種類の抗体もしくは抗体断片を発現する細胞、または2つ以上の種類の抗体もしくは抗体断片(例えば、複数の抗体もしくは抗体断片)を発現し得る細胞を含む。一実施形態では、カプセル化細胞組成物は、2種類の抗体または抗体断片を発現する細胞を含む。一実施形態では、カプセル化細胞組成物は、3種類の抗体または抗体断片を発現する細胞を含む。一実施形態では、カプセル化細胞組成物は、4種類の抗体または抗体断片を発現する細胞を含む。
【0070】
一実施形態では、カプセル化細胞組成物は、単一の種類のサイトカインを発現する細胞、または2つ以上の種類のサイトカイン(例えば、複数のサイトカイン)を発現し得る細胞を含む。実施形態では、カプセル化細胞組成物は、2種類のサイトカインを発現する細胞を含む。実施形態では、カプセル化細胞組成物は、3種類のサイトカインを発現する細胞を含む。実施形態では、カプセル化細胞組成物は、4種類のサイトカインを発現する細胞を含む。
【0071】
II.操作された細胞を生成するためのベクターシステム
当業者は、標準的な組換え技術を通してベクターを構築するために十分な設備を備えているであろう。ベクターとしては、プラスミド、コスミド、ウイルス(バクテリオファージ、動物ウイルス、および植物ウイルス)、ならびに人工染色体(例えば、YAC)、例えば、レトロウイルスベクター(例えば、モロニーマウス白血病ウイルスベクター(MoMLV)、MSCV、SFFV、MPSV、SNVなどに由来する)、レンチウイルスベクター(例えば、HIV-1、HIV-2、SIV、BIV、FIVなどに由来する)、複製能のある形態、その複製欠損およびガットレス(gutless)形態を含むアデノウイルス(Ad)ベクター、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、サルウイルス40(SV-40)ベクター、ウシパピローマウイルスベクター、エプスタイン・バーウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクター、ハーベイマウス肉腫ウイルスベクター、マウス乳がんウイルスベクター、マウス腫瘍ウイルスベクター、ラウス肉腫ウイルスベクターが挙げられるが、これらに限定されない。
【0072】
特に、pcDNA3.1、レンチウイルス、およびpiggybac発現システムは、例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、ヒト胎児腎臓(HEK)細胞、網膜色素上皮(ARPE-10)細胞、間葉系幹細胞(MSC)、ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)、マウス骨髄腫NS0およびSp2/0細胞、BABL/3T3細胞、MDCK細胞、およびPER.C6細胞などの哺乳動物細胞においてモノクローナル抗体、ナノボディ、およびサイトカインを発現するために使用され得る。すべてのベクターは、サンガー配列決定を使用して配列を検証することができる。
【0073】
A.発現ベクター
場合によっては、様々な細胞型における高レベルの構成的発現のために設計されたベクターなど、哺乳動物発現ベクターが使用されてもよい。例えば、pcDNA3.1ベクターは、目的の分子のコード配列に作動可能に連結されたCMVプロモーター、BGHポリAシグナル、および哺乳動物選択のためのネオマイシン耐性遺伝子を有するプラスミドである。pcDNA3.1骨格を有する構築物は、DH5α大腸菌コンピテント細胞において形質転換され得る。
【0074】
B.トランスポゾンシステム
piggyBacなどのトランスポゾンは、多種多様な生物における挿入変異誘発およびトランスジェネシスによるゲノム操作に広く使用されている。piggyBacトランスポゾンは、トランスポザーゼによって結合され、一対の反復配列を含む。特定の実施形態では、第1の反復は、典型的には、核酸発現カセットの上流に位置し、第2の反復は、典型的には、核酸発現カセットの下流に位置する。したがって、第2の反復は、第1の反復と同じ配列を表すが、第1の反復と比較して反対の読み取り方向を示す(相補的な二本鎖配列の5’末端および3’末端が交換される)。次いで、これらの反復は、両方の反復がちょうど逆の反復配列であるという事実から、「逆方向反復」(IR)と称される。特定の実施形態では、反復は、上述の核酸発現カセットの上流および下流の複数の数で生じ得る。好ましくは、上述の核酸発現カセットの上流および下流に位置する反復の数は同一である。特定の実施形態では、反復は、短く、10~20塩基対の間であり、好ましくは15塩基対である。
【0075】
反復(IR)は、細胞のDNAに挿入される核酸発現カセットに隣接する。核酸発現カセットは、遺伝子のオープンリーディングフレームの全部もしくは一部(すなわち、タンパク質コード遺伝子の部分)、1つ以上の発現制御配列(すなわち、核酸の調節領域)を単独で、またはオープンリーディングフレームの全部もしくは一部と一緒に含むことができる。好ましい発現制御配列には、プロモーター、エンハンサー、境界制御エレメント、遺伝子座制御領域、またはサイレンサーが含まれるが、これらに限定されない。好ましい実施形態では、核酸発現カセットは、オープンリーディングフレームの少なくとも一部に作動可能に連結されたプロモーターを含む。
【0076】
トランスポザーゼは、ポリペプチドとして存在し得る。代替的に、トランスポザーゼは、トランスポザーゼをコードするコード配列を含むポリヌクレオチドとして存在する。ポリヌクレオチドは、RNA(例えば、トランスポザーゼをコードするmRNA)またはDNA(例えば、トランスポザーゼをコードするコード配列)であり得る。トランスポザーゼがトランスポザーゼをコードするコード配列として存在する場合、本発明の一部の態様では、コード配列は、トランスポゾンを含む同じベクター上に(すなわち、シスで)存在し得る。本発明の他の態様では、トランスポザーゼのコード配列は、第2のベクター上に(すなわち、トランスで)存在し得る。特定の好ましい実施形態では、トランスポザーゼは、哺乳動物piggyBacトランスポザーゼである。
【0077】
トランスポザーゼは、トランスポゾンベクターの両端に位置するトランスポゾン特異的逆位末端反復配列(ITR)を認識し、元の部位から内容物を移動させ、「カット」および「ペースト」機構を介してTTAA染色体部位にそれらを組み込む。
【0078】
piggybac構築物は、Stbl3大腸菌(E.coli)コンピテント細胞において形質転換され得る。
【0079】
C.ウイルスシステム
組換えウイルスベクターを生成する際に、非必須遺伝子は、典型的には、異種(または非天然)タンパク質の遺伝子またはコード配列で置き換えられる。ウイルスベクターは、ウイルス配列を利用して核酸および場合によってはタンパク質を細胞に導入する、一種の発現構築物である。受容体媒介性エンドサイトーシスを介して細胞に感染するかまたは細胞に侵入し、ウイルス遺伝子を宿主細胞のゲノムに組み込み、安定かつ効率的に発現させる、特定のウイルスの能力は、外来核酸を細胞(例、哺乳動物細胞)に導入するための魅力的な候補となっている。本発明の特定の態様の核酸を送達するために使用され得るウイルスベクターの非限定的な例が、以下に記載される。
【0080】
レトロウイルスは、それらの遺伝子を宿主ゲノムに組み込み、大量の外来遺伝物質を導入し、広範囲の種および細胞型に感染し、特別な細胞株にパッケージングされるそれらの能力により、遺伝子送達ベクターとしての有望性を有する。
【0081】
レトロウイルスベクターを構築するために、核酸が、特定のウイルス配列の代わりに、ウイルスゲノムに挿入されて、複製欠損であるウイルスを産生する。ビリオンを産生するためには、gag、pol、およびenv遺伝子を含むが、LTRおよびパッケージング成分を含まないパッケージング細胞株を構築する。レトロウイルスのLTRおよびパッケージング配列と一緒に、cDNAを含む組換えプラスミドが、特別な細胞株に導入された場合(例えば、リン酸カルシウム沈殿により)、パッケージング配列により、ウイルス粒子への組換えプラスミドのRNA転写物のパッケージングが可能になり、次いで、培養培地に分泌される。次いで、組換えレトロウイルスを含む培地を回収し、任意選択的に濃縮し、遺伝子導入に使用する。レトロウイルスベクターは、様々な種類の細胞に感染することができる。しかしながら、組み込みおよび安定した発現には、宿主細胞の分裂を必要とする。
【0082】
レンチウイルスは、複雑なレトロウイルスであり、一般的なレトロウイルス遺伝子gag、pol、およびenvに加えて、調節機能または構造機能を有する他の遺伝子を含む。組換えレンチウイルスベクターは、非分裂細胞に感染することができ、インビボとエクスビボの両方で、遺伝子導入および核酸配列の発現に使用することができる。例えば、好適な宿主細胞に、パッケージング機能(すなわち、gag、pol、およびenv)ならびにrevおよびtatを有する2つ以上のベクターをトランスフェクトする場合、組換えレンチウイルスは、非分裂細胞に感染することができる。これは、米国特許第5,994,136号に記載されている(参照により本明細書に援用される)。
【0083】
第3世代のレンチウイルスは、HEK293T細胞(ATCC)を播種し、JetPrime(Polyplus transfection)を使用して、所望の抗体をコードするプラスミド、ならびにパッケージングプラスミドpMLg/PRRE(Addgene プラスミド#12251)、pRSV-Rev(Addgene プラスミド#12253)、およびpMD2.g(Addgene プラスミド#12259)を、それぞれ2:5:2.5:3の比率で、同時トランスフェクションすることによって生成することができる。トランスフェクションの8時間後、培地を新鮮な培地と交換し、48時間後、ウイルスを含む培地を回収する。ウイルスは、製造元のプロトコルに従って、Lenti-X濃縮器(Clontech)を使用して濃縮する。抗体を発現する安定細胞株を生成するために、HEK293細胞にそれぞれのウイルスを形質導入し、1mg/mlのジェネティシンで2週間選択する。抗生物質による選択後、選別を行って、最高量の抗体を発現する細胞を回収する。
【0084】
レンチウイルス構築物は、Stbl3大腸菌コンピテント細胞において形質転換され得る。
【0085】
III.抗体の特徴付けおよび精製
カプセル化細胞を培養し、標的タンパク質の産生レベルについて上清をアッセイすることができる。
【0086】
A.抗体の精製
抗体は、製造元のプロトコルに従って、HiTrap MabSelect SuRe(GE Healthcare)を使用して精製することができる。これらのカラムには、大量の試料からmAbを捕捉するためのバイオプロセス樹脂であるMab Selectが予め充填されている。
【0087】
B.酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)
細胞によって分泌される抗体の量は、ELISAキット(Invitrogen,カタログ番号991000)を使用して、製造元のプロトコルに従って定量化することができる。ELISAキットは、産生される抗体のクローンに特異的であり、感度を増すためにサンドイッチ形式であり得る。
【0088】
C.PD-1/PD-L1遮断アッセイ
前述の哺乳動物細胞株で発現される抗PD-1および抗PD-L1抗体の効力および安定性は、製造元のプロトコルに従って、PD-1/PD-L1遮断バイオアッセイ(カタログ番号J1250,Promega)を使用することによって測定することができる。このアッセイは、2つの遺伝子操作された細胞株からなり、免疫チェックポイントシグナルを遮断する生物製剤の能力、ならびにPD-1/PD-L1相互作用を遮断するように設計された抗体の効力および安定性を測定する。
【0089】
D.CTLA遮断アッセイ
前述の哺乳動物細胞株で発現される抗CTLA4抗体の効力および安定性は、製造元のプロトコルに従って、CTLA4遮断バイオアッセイ(Catalog#JA3001,Promega)を使用することによって測定することができる。このアッセイは、CTLA-4とそのリガンドであるCD80およびCD86との相互作用を遮断するように設計された生物製剤の作用機構を反映することを除いて、上述のPD-1/PD-L1と非常に類似している。
【0090】
E.ウエスタンブロット
異なるプラスミド構築物を発現する細胞から分泌される重鎖および軽鎖ポリペプチドのウエスタンブロット分析は、還元および非還元条件下で行うことができる(Ho et al.,2012)。タンパク質を消化してゲルで泳動し、続いて、重鎖および軽鎖を標的とする抗体を用いて定量することができる。
【0091】
F.抗体特異的生産性の評価
抗体特異的生産性は、以下の式を使用して計算される:
式中、mmAbは、その分泌抗体を表し、Nは、初期生存細胞値を表し、Nは、最終生存細胞値を表し、tは、培養日数を表す(Chusainow et al.,2009)。
【0092】
G.グリコシル化パターン分析
精製されたモノクローナル抗体のグリコシル化パターンは、前述のプロトコル(Ho et al.,2012)に従って、マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析計を使用して分析することができる。糖タンパク質の特徴付けは、ペプチドマッピング、構造の決定、ならびに総糖含有量を介したグリコシル化部位の特定を伴う。
【0093】
H.凝集分析
精製抗体の凝集は、以前に記載されているように、サイズ排除クロマトグラフィーを使用して分析することができる(Ho et al.,2012)。
【0094】
IV.サイトカイン活性の特徴付け
インターロイキンの生物学的活性は、CellTrace CFSE細胞増殖キット(ThermoFisher カタログ番号C34554)を使用して評価することができる。これは、分泌されたインターロイキンを含む細胞上清を回収し、続いて、単離された脾細胞と7日間にわたって共培養しながら、CFSE(色素希釈によって増殖細胞の異なる世代を監視するために使用される細胞膜色素)とインキュベーションすることを伴う。少なくとも6世代の細胞が、蛍光シグナルの異なるピークによって特定され得る。
【0095】
V.薬物送達および放出動態の制御
ベクターシステムは、CART細胞用に設計されたキルスイッチと同様に、治療を停止させるためのキルスイッチをさらに含み得る。2つの操作されたタンパク質は、カプセル化細胞内に位置し、リミドゥシドと呼ばれる小分子薬に曝露されると、二量体化する。この薬物は、カスパーゼ9と呼ばれるタンパク質を活性化し、細胞死を誘導する。
【0096】
小分子による二量化の化学的誘導(CID)は、細胞生理機能を変化させるタンパク質機能のスイッチを生成するために使用される効果的な技術である。特異性が高く効率的なダイマライザーは、リミドゥシド(AP1903)であり、これは、テール-テール型で配置された2つの同一のタンパク質結合表面を有し、各々が、FKBP12の変異体またはバリアント:FKBP12(F36V)(FKBP12v36、FV36またはFV)に対して高い親和性および特異性を有する。通常、ホモ二量体化に依存する1つ以上の細胞シグナル伝達分子への1つ以上のFVドメインの結合は、そのタンパク質をリミドゥシド制御に変換することができる。例えば、アポトーシス促進性ポリペプチド(例えば、カスパーゼ-9)を、リミドゥシドで活性化する選択肢を提供する分子スイッチが提供され、キメラアポトーシス促進性ポリペプチドが、リミドゥシド誘導スイッチを含む。
【0097】
スイッチ技術の一実施形態では、AP1903(リミドゥシド)などのホモダイマライザーは、安全スイッチを活性化し、改変細胞のアポトーシスを引き起こす。本実施形態では、例えば、FKBP12多量体化領域を含むキメラアポトーシス促進性ポリペプチド(例えば、カスパーゼ-9など)が、細胞で発現される。細胞をFv領域に結合するダイマライザーと接触させると、キメラポリペプチドは、二量体化または多量体化し、細胞を活性化する。細胞は、例えば、抗体またはサイトカインを発現する操作された細胞であり得る。
【0098】
加えて、ネオ抗原は、細胞表面に導入され得、それによって、細胞がカプセルから脱出した場合、またはカプセルが分解した場合に、破壊用に細胞をマーキングする。
【0099】
さらに、膜貫通センサーをサイトカイン分泌細胞に操作して、サイトカインの出力を調節するためのフィードバックループを作製することができる。膜貫通センサーは、目的のタンパク質の様々な濃度に応答し、誘導性プロモーターの助けで、目的のサイトカインの転写を抑制するために負のフィードバックループを使用する。これにより、目的のタンパク質の局在化送達の微調整が可能となり、目的のタンパク質の過剰発現がないことを確実にする。使用されるアルギネート生体材料は、内側シェルおよび外側シェルにわたる迅速な拡散を可能にして、この感知と応答の遺伝的細胞回路に、リアルタイムのフィードバックを与える。
【0100】
スイッチ技術の別の実施形態では、サイトカイン産生細胞(例えば、IL-2産生RPE細胞)からのサイトカインの産生は、第2の構成要素のレベルに応答して調節される。例えば、第2の構成要素は、インターフェロンγ(IFN-γ)などのタンパク質であってもよい。IFN-γは、療法が達成されると、対象の腫瘍細胞によって局所的に産生され得る。一部の実施形態では、サイトカイン産生細胞(例えば、IL-2産生RPE細胞)の破壊は、第2の構成要素(例えば、IFN-γ)の検出時に達成される。一部の実施形態では、サイトカイン産生細胞からのサイトカイン(例えば、IL-2)のレベルは、第2の構成要素(例えば、IFN-γ)の検出まで一定のままであるか、または増加する。一部の実施形態では、サイトカイン産生細胞は、第2の構成要素(例えば、IFN-γ)の検出時に、アポトーシス経路を活性化するように操作される。このフィードバックループにおける第2の構成要素の検出とアポトーシス経路をインターフェースすることで、移植可能な要素の感度および応答時間を制御することができる。
【0101】
一部の実施形態では、アルゴリズム(例えば、予測モデリング)は、このフィードバックループの特定の特徴を予測するために使用される。例えば、第2の構成要素(例えば、IFN-γ)の検出とアポトーシス経路の開始との間の時間遅延は、長さが様々であり得る。
【0102】
一部の実施形態では、フィードバックループの制御は、標的遺伝子に応答した転写リプレッサーの発現を含む。一部の実施形態では、転写リプレッサーは、EKRABである。一部の実施形態では、標的遺伝子は、IFN-γ応答遺伝子(例えば、RPE65)である。一部の実施形態では、アポトーシス促進遺伝子は、転写リプレッサーの制御下で発現される。一部の実施形態では、アポトーシス促進遺伝子は、baxである。
【0103】
VI.コアシェルアルギネートヒドロゲルを使用した細胞のカプセル化
細胞カプセル化材料および方法に関する開示は、少なくとも米国特許第9,555,007号、米国特許公開第2019/0184067号、米国特許公開第2017/0355799号、米国特許公開第2016/0280827号、およびPCT公開第2019/067766号に見出すことができる(これらの各々は、参照によりその全体が本明細書に援用される)。
【0104】
「ヒドロゲル」は、有機ポリマー(天然または合成)が共有結合、イオン結合、または水素結合を介して架橋され、水分子を捕捉してゲルを形成する三次元開放格子構造が生成されたときに形成される物質を指す。生体適合性ヒドロゲルは、生細胞に対して毒性がなく、生存を維持するために、捕捉された細胞への酸素および栄養素の十分な拡散を可能にするゲルを形成するポリマーを指す。
【0105】
「アルギネート」は、任意のM/G比率でβ-D-マンヌロネートおよびα-L-グルロネートから形成される直鎖多糖、ならびにそれらの塩および誘導体を指すために使用される総称である。本明細書で使用される「アルギネート」という用語は、以下に示される構造を有する任意のポリマー、ならびにその塩を包含する。
【0106】
「生体適合性」とは、概して、レシピエントに対して概して無毒であり、対象にいかなる重大な副作用を引き起こさない材料および任意の代謝産物またはその分解産物を指す。
【0107】
「生分解性」とは、概して、生理学的条件下での加水分解または酵素作用によって、対象によって代謝、排除、または排泄され得るより小さな単位または化学種に分解または腐食される材料を指す。分解時間は、ポリマー組成および形態の関数である。
【0108】
「抗炎症薬」は、組織の炎症を直接的または間接的に低減する薬物を指す。この用語は、免疫抑制性である薬物を含むが、これに限定されない。この用語は、リンパ球の増殖を阻害する薬物などの抗増殖性免疫抑制薬を含む。
【0109】
「免疫抑制薬」は、対象における異物に対する免疫応答を阻害または防止する薬物を指す。免疫抑制薬は、概して、T細胞の活性化を阻害する、増殖を妨げる、または炎症を抑制することによって作用する。免疫抑制を受けているヒトは免疫不全であると言われる。
【0110】
「哺乳動物細胞」は、同じまたは異なる対象への移植に好適な哺乳動物対象に由来する任意の細胞を指す。細胞は、異種細胞、自己細胞、または同種細胞であり得る。細胞は、哺乳動物対象から直接得られた初代細胞であり得る。細胞は、対象から得られた細胞の培養および増殖に由来する細胞であり得る。例えば、細胞は、幹細胞であり得る。不死化細胞も、この定義に含まれる。一部の実施形態では、細胞は、組換えタンパク質および/または核酸を発現するように遺伝子操作されている。
【0111】
「自己」は、同じ個体から採取された移植された生物学的物質を指す。
【0112】
「同種」とは、同じ種の異なる個体から採取された移植された生物学的物質を指す。
【0113】
「異種」とは、異なる種から採取された移植された生物学的物質を指す。
【0114】
「移植」とは、細胞、組織、または臓器を、別の供給源から対象に導入することを指す。この用語は、特定の導入様式に限定されない。カプセル化細胞は、注射または外科移植などの任意の好適な方法によって移植され得る。
【0115】
A.細胞をカプセル化するための生体適合性ポリマー
開示される組成物は、移植される細胞をカプセル化する生体適合性のヒドロゲル形成ポリマーから形成される。好適なヒドロゲルを形成するために使用することができる材料の例としては、多糖類(例えば、アルギネート、コラーゲン、キトサン、セルロース硫酸ナトリウム、ゼラチン、およびアガロース)、水溶性ポリアクリレート、ポリホスファジン、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタクリル酸)、ポリ(アルキレンオキシド)、ポリ(酢酸ビニル)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ならびに各々のコポリマーおよびブレンドが挙げられる。例えば、米国特許第5,709,854号、同第6,129,761号、および同第6,858,229号を参照されたい。
【0116】
一般に、これらのポリマーは、荷電側基またはそれらの一価イオン塩を有する、水、緩衝塩溶液、またはアルコール水溶液などの水溶液中に少なくとも部分的に可溶性である。カチオンと反応し得る酸性側基を有するポリマーの例としては、ポリ(ホスファゼン)、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタクリル酸)、ポリ(酢酸ビニル)、およびスルホン化ポリマー(例えば、スルホン化ポリスチレン)が挙げられる。アクリルまたはメタクリル酸と、ビニルエーテル単量体またはポリマーとの反応によって形成される酸性側基を有するコポリマーも使用され得る。酸性基の例は、カルボン酸基およびスルホン酸基である。
【0117】
アニオンと反応し得る塩基性側基を有するポリマーの例としては、ポリ(ビニルアミン)、ポリ(ビニルピリジン)、ポリ(ビニルイミダゾール)、およびいくつかのイミノ置換ポリホスファゼンが挙げられる。ポリマーのアンモニウム塩または四級塩はまた、主鎖窒素または側鎖イミノ基から形成され得る。塩基性側基の例は、アミノ基およびイミノ基である。
【0118】
生体適合性ヒドロゲル形成ポリマーは、好ましくは水溶性ゲル化剤である。好ましい実施形態では、水溶性ゲル化剤は、多糖ガム、より好ましくはポリアニオン性ポリマーである。
【0119】
操作された細胞は、好ましくは、ヒドロゲル層(例えば、コア)を提供するために、アニオン性ポリマー(例えば、アルギネート)を使用してカプセル化され、ヒドロゲル層は、その後、ポリカチオン性ポリマー(例えば、ポリリシンなどのアミノ酸ポリマー)と架橋されて、シェルを形成する。例えば、Goosenらの米国特許第4,806,355号、同第4,689,293号、および同第4,673,566号、Limらの米国特許第4,409,331号、同第4,407,957号、同第4,391,909号、および同第4,352,883号、Rhaらの米国特許第4,749,620号および同第4,744,933号、ならびにWangらの米国特許第5,427,935号を参照されたい。ヒドロゲル形成ポリマー(例えば、アルギネート)を架橋するために使用され得るアミノ酸ポリマーには、ポリリシン、ポリアルギニン、ポリオルニチン、ならびにそれらコポリマーおよびブレンドなどのカチオン性ポリ(アミノ酸)が含まれる。
【0120】
1.多糖類
細胞のカプセル化のために、いくつかの哺乳動物多糖および非哺乳動物多糖が検討されてきた。細胞のカプセル化に好適な例示的な多糖としては、アルギネート、キトサン、ヒアルロナン(HA)、およびコンドロイチン硫酸が挙げられる。アルギネートおよびキトサンは、特定の溶液条件下で架橋ヒドロゲルを形成し、一方、HAおよびコンドロイチン硫酸は、好ましくは、架橋可能な基を含ませて、ヒドロゲルを形成するように修飾される。
【0121】
好ましい実施形態では、細胞をカプセル化する生体適合性ヒドロゲル形成ポリマーは、アルギネートである。アルギネートは、乾燥重量の約20%~40%で細胞外および細胞内に生じる、主に褐藻由来の非分岐アニオン性多糖類のファミリーである。1,4-結合α-1-グルロネート(G)およびβ-d-マンヌロネート(M)は、ホモポリマーブロック構造(GGGブロックおよびMMMブロック)またはヘテロポリマーブロック構造(MGMブロック)で配置される。また、褐藻の細胞壁には、フコイダン(1-フコース4-硫酸ブロックを主成分とする分岐多糖硫酸エステル)も5%~20%含まれる。商業的なアルギネートは、多くの場合、海岸に打ち上げられた藻類から抽出され、その性質は採取および抽出プロセスに依存する。
【0122】
アルギネートは、二価カチオンの存在下、イオン架橋を介してゲルを形成する。ヒドロゲルの特性は、アルギネート前駆体(分子量、組成物、およびマクロマー濃度)の変化を通してある程度制御することができるが、アルギネートは分解せず、むしろ二価カチオンが一価イオンによって置き換えられると、溶解する。さらに、アルギネートは、細胞の相互作用を促進しない。
【0123】
特に好ましい組成物は、ポリリジンシェルを有するアルギネートのコアに固定化された細胞を含むマイクロカプセルである。好ましいマイクロカプセルは、多層アルギネート/ポリリジン-アルギネート/アルギネートの細胞マイクロカプセルを形成するために、追加の外部アルギネート層(例えば、エンベロープ)を含んでもよい。ポリリジンと架橋したアルギネートヒドロゲルの記載については、Limらの米国特許第4,391,909号を参照されたい。ポリリジンの代わりに架橋剤として使用するのに好適な他のカチオン性ポリマーとしては、ポリ(β-アミノアルコール)(PBAA)(Ma M,et al.Adv.Mater.23:H189-94(2011))が挙げられる。
【0124】
キトサンは、天然の非哺乳動物多糖であるキチンを部分的に脱アセチル化することによって生成され、哺乳動物多糖によく似ており、細胞のカプセル化に魅力的である。キトサンは、アセチル化残基の加水分解を通して、主にリゾチームによって分解される。脱アセチル化の程度が高いと、分解時間が遅くなるが、疎水性が増加するため、細胞接着が改善される。希酸条件下(pH<6)では、キトサンは正に荷電しており、水溶性であるが、生理学的pHでは、キトサンは中性で疎水性であり、物理的に架橋されたヒドロゲルの固体の形成につながる。ポリオール塩の添加は、ゲル化が温度に依存するようになる、中性pHでの細胞のカプセル化を可能にする。
【0125】
キトサンは、修飾され得る多くのアミン基およびヒドロキシル基を有する。例えば、キトサンは、メタクリル酸をグラフト化して架橋性マクロマーを生成し、一方、乳酸をグラフト化して、生理的pHで、その水溶性を向上させることによって修飾されている。この架橋キトサンヒドロゲルは、リゾチームおよび軟骨細胞の存在下で分解する。光重合性キトサンマクロマーは、光反応性アジド安息香酸基でキトサンを修飾することによって合成することができる。任意の開始剤の不在下で紫外線に曝露すると、反応性ニトレン基が形成され、これらが互いに反応して、またはキトサン上の他のアミン基と反応して、アゾ架橋を形成する。
【0126】
ヒアルロナン(HA)は、全身にわたって多くの組織に存在するグリコサミノグリカンであり、胚発生、創傷治癒、および血管新生において重要な役割を果たす。加えて、HAは、細胞表面受容体を介して細胞と相互作用し、細胞内シグナル伝達経路に影響を与える。まとめると、これらの質は、組織工学上のスカフォールドとしてのHAを魅力的にする。HAは、細胞のカプセル化のために、メタクリレートおよびチオールなどの架橋性部分を用いて改変することができる。架橋されたHAゲルは、HAを様々な分子量のオリゴ糖断片に分解するヒアルロニダーゼによって分解されやすいままである。耳介軟骨細胞は、マクロマー濃度およびマクロマー分子量によってゲル構造が制御される光重合HAヒドロゲル中にカプセル化することができる。加えて、光重合したHAおよびデキストランヒドロゲルは、未分化ヒト胚性幹細胞の長期培養を維持する。HAヒドロゲルはまた、アクリレート化HAをPEG-テトラチオールと反応させるか、またはチオール修飾HAをPEGジアクリレートと反応させるマイケル型付加反応機構を介して製造されている。
【0127】
コンドロイチン硫酸は、皮膚、軟骨、腱、および心臓弁を含む多くの組織に見られる構造プロテオグリカンの大きな割合を占め、様々な組織工学用途に魅力的なバイオポリマーとなる。光架橋コンドロイチン硫酸ヒドロゲルは、メタクリレート基でコンドロイチン硫酸を修飾することによって調製することができる。重合前の溶液中のメタクリレート置換の程度およびマクロマー濃度によって、ヒドロゲル特性が容易に制御された。さらに、負に帯電したポリマーは、ゲルが、その機械的特性を犠牲にすることなく、より多くの水を吸収することを可能にする、増加した膨潤圧を生じさせる。コンドロイチン硫酸および不活性ポリマー(例えば、PEGまたはPVA)のコポリマーヒドロゲルも使用され得る。
【0128】
2.合成ポリマー
ポリエチレングリコール(PEG)は、細胞のカプセル化用のマクロマーを生成するために最も広く使用されてきた合成ポリマーである。いくつかの研究では、ポリ(エチレングリコール)ジ(メタ)アクリレートを使用して、様々な細胞がカプセル化されている。生分解性PEGヒドロゲルは、架橋を可能にすることができる(メタ)アクリレート官能基でエンドキャップされたポリ(α-ヒドロキシエステル)-b-ポリ(エチレングリコール)-b-ポリ(α-ヒドロキシエステル)のトリブロック共重合体から調製され得る。PLAおよびポリ(8-カプロラクトン)(PCL)は、細胞のカプセル化のための生分解性PEGマクロマーを生成する際に、最も一般的に使用されてきたポリ(α-ヒドロキシエステル)である。分解プロファイルおよび速度は、分解性ブロックおよび化学物質の長さを介して制御される。エステル結合はまた、血清中に存在するエステラーゼによって分解され得、これは分解を加速する。
【0129】
生分解性PEGヒドロゲルはまた、PEG-ビス-[2-アクリロイルオキシプロパノエート]の前駆体から製造することができる。直鎖PEGマクロマーの代替例として、PEG分子ごとに複数の反応性ビニル基を含むポリ(グリセロール-コハク酸)-PEGのPEG系デンドリマーを使用することができる。これらの材料の魅力的な特徴は、分岐の程度を制御する能力であり、結果として、ヒドロゲルの全体的な構造的特性およびその分解に影響を与える。分解は、デンドリマー骨格に存在するエステル結合を介して起こる。
【0130】
生体適合性ヒドロゲル形成ポリマーは、ポリホスホエステルまたはポリホスフェートを含むことができ、ホスホエステル結合は、加水分解を受けやすく、リン酸の放出をもたらす。例えば、ホスホエステルを、架橋性PEGマクロマーであるポリ(エチレングリコール)-ジ[エチルホスファチジル(エチレングリコール)メタクリレート](PhosPEG-dMA)の骨格に組み込んで、生分解性ヒドロゲルを形成することができる。骨細胞によって合成されるECM成分であるアルカリホスファターゼを添加すると、分解が促進される。分解生成物であるリン酸は、培地中のカルシウムイオンと反応して、ヒドロゲル内で自己石灰化を誘導する不溶性のリン酸カルシウムを生成する。ポリホスホエステルであるポリ(6-アミノエチルプロピレンホスフェート)を、メタクリレートで修飾して、マルチビニルマクロマーを生成することができ、分解速度が、ポリホスホエステルポリマーの誘導体化の程度によって制御された。
【0131】
ポリホスファゼンは、単結合および二重結合によって交互に分離された窒素およびリンからなる骨格を有するポリマーである。各リン原子は、2つの側鎖に共有結合している。架橋に好適なポリホスファゼンは、酸性で、二価カチオンまたは三価カチオンと塩橋を形成することができる側鎖基の大部分を有する。好ましい酸性側基の例は、カルボン酸基およびスルホン酸基である。加水分解的に安定なポリホスファゼンは、Ca2+またはAl3+などの二価カチオンまたは三価カチオンによって架橋されるカルボン酸側基を有する単量体から形成される。イミダゾール、アミノ酸エステル、またはグリセロール側基を有する単量体を組み込むことによって、加水分解によって分解するポリマーを合成することができる。生侵食性ポリホスファジンは、少なくとも2つの異なる種類の側鎖、多価カチオンと塩橋を形成することができる酸性側基、およびインビボ条件下で加水分解する側基(例えば、イミダゾール基、アミノ酸エステル、グリセロール、およびグルコシル)を有する。側鎖の加水分解は、ポリマーの侵食をもたらす。加水分解性側鎖の例としては、非置換および置換イミジゾールならびにアミノ酸エステルであり、基が、アミノ結合を介してリン原子に結合している(このようにして両方のR基が結合しているポリホスファゼンポリマーは、ポリアミノホスファゼンとして知られている)。ポリイミダゾールホスファゼンの場合、ポリホスファゼン骨格上のいくつかの「R」基は、環窒素原子を介して骨格内のリンに結合したイミダゾール環である。
【0132】
B.免疫調節性外部
本明細書に記載のカプセル化細胞組成物は、内部に配置された治療剤との反応(例えば、免疫調節反応など)を低減または阻害する材料を含み得る。例えば、移植可能な構築物は、治療剤を、宿主組織、宿主細胞、または宿主細胞産物などの周囲環境への曝露から遮蔽するゾーンまたは層を含む。一実施形態では、移植可能な構築物は、例えば、移植可能な構築物内に配置されていない類似の治療剤と比較して、移植可能な構築物内に配置された治療剤を対象とする宿主応答(例えば、免疫応答)の効果を最小化する。
【0133】
カプセル化細胞組成物は、移植可能な構築物の内外の溶液の流れを制御するために、透過性、半透過性、または不透過性の材料を含み得る。例えば、材料は、栄養素および老廃物などの小分子が構築物の内外へ自由に通過できるようにするために、透過性または半透過性であり得る。加えて、材料は、抗原物質または治療剤を移植可能な構築物から輸送することを可能にするために、透過性または半透過性であり得る。例示的な材料には、ポリマー、金属、セラミックス、およびそれらの組み合わせが含まれる。
【0134】
一実施形態では、カプセル化細胞組成物は、ポリマー(例えば、天然に存在するポリマーまたは合成ポリマー)を含む。例えば、ポリマーは、ポリスチレン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフルオロカーボン、ナイロン、ポリアセチレン、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリオレフィン、ポリウレタン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリメチルメタクリレート、ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリシロキサン、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリヒドロキシアルカノエート、PEEK(登録商標)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレングリコール、ポリスルホン、ポリアクリロニトリル、コラーゲン、セルロース、セルロース系ポリマー、多糖類、ポリグリコール酸、ポリ(L-乳酸)(PLLA)、ポリ(乳酸グリコール酸)(PLGA)、ポリジオキサノン(PDA)、ポリ(乳酸)、ヒアルロン酸、アガロース、アルギネート、キトサン、またはそれらのブレンドもしくはコポリマーを含み得る。一実施形態では、移植可能な構築物は、多糖類(例えば、アルギネート、セルロース、ヒアルロン酸、またはキトサン)を含む。一実施形態では、カプセル化細胞組成物は、アルギネートを含む。一部の実施形態では、ポリマーの平均分子量は、約2kDa~約500kDa(例えば、約2.5kDa~約175kDa、約5kDa~約150kDa、約10kDa~約125kDa、約12.5kDa~約100kDa、約15kDa~約90kDa、約17.5kDa~約80kDa、約20kDa~約70kDa、約22.5kDa~約60kDa、または約25kDa~約50kDa)である。カプセル化細胞組成物は、少なくとも0.5%、1%、2%、3%、4%、5%、7.5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、またはそれ以上のポリマー(例えば、本明細書に記載のポリマー)を含み得る。
【0135】
一実施形態では、カプセル化細胞組成物は、金属または金属合金を含む。例示的な金属または金属合金としては、チタン(例えば、ニチノール、ニッケルチタン合金、熱記憶合金材料)、白金、白金族合金、ステンレス鋼、タンタル、パラジウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、ニッケル-クロム、コバルト、タンタル、クロムモリブデン合金、ニッケル-チタン合金、およびコバルトクロム合金が挙げられる。一実施形態では、移植可能な構築物は、ステンレス鋼グレードを含む。カプセル化細胞組成物は、少なくとも0.5%、1%、2%、3%、4%、5%、7.5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、またはそれ以上の金属または金属合金(例えば、本明細書に記載の金属または金属合金)を含み得る。
【0136】
一実施形態では、カプセル化細胞組成物は、セラミックを含む。例示的なセラミックスとしては、炭化物、窒化物、シリカ、または酸化物材料(例えば、酸化チタン、酸化ハフニウム、酸化イリジウム、酸化クロム、酸化アルミニウム、および酸化ジルコニウム)が挙げられる。カプセル化細胞組成物は、少なくとも0.5%、1%、2%、3%、4%、5%、7.5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、またはそれ以上のセラミック(例えば、本明細書に記載のセラミック)を含み得る。
【0137】
一実施形態では、カプセル化細胞組成物は、ガラスを含み得る。カプセル化細胞組成物は、少なくとも0.5%、1%、2%、3%、4%、5%、7.5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、またはそれ以上のガラスを含み得る。
【0138】
カプセル化細胞組成物内の材料は、例えば、化学修飾により、さらに修飾され得る。例えば、材料は、免疫調節特徴または抗線維化特徴などの特定の特徴を提供する化学修飾によりコーティングまたは誘導体化され得る。例示的な化学修飾としては、小分子、ペプチド、タンパク質、核酸、脂質、またはオリゴ糖が挙げられる。カプセル化細胞組成物は、少なくとも0.5%、1%、2%、3%、4%、5%、7.5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、またはそれ以上(例えば、本明細書に記載の化学修飾で)化学修飾されている材料を含み得る。
【0139】
一部の実施形態では、材料は、特定の密度の修飾で、化学的に修飾される。特定の密度の化学修飾は、所与の領域当たりの結合した化学修飾の平均数として記載され得る。例えば、本明細書に記載の移植可能な構築物中、上、または内の材料上の化学修飾の密度は、平方μmまたは平方mm当たり0.01、0.1、0.5、1、5、10、15、20、50、75、100、200、400、500、750、1,000、2,500、または5,000個の化学修飾であり得る。
【0140】
一実施形態では、材料の化学修飾は、リンカーまたは他の結合部分を含み得る。これらのリンカーは、架橋剤、アミン含有リンカー、エステル含有リンカー、光分解性リンカー、ペプチド含有リンカー、ジスルフィド含有リンカー、アミド含有リンカー、ホスホリル含有リンカー、またはそれらの組み合わせを含み得る。リンカーは、分解性であり得る(例えば、加水分解性であり得る)。例示的なリンカーまたは他の結合部分は、Bioconjugate Techniques(3rd ed,Greg T.Hermanson,Waltham,MA:Elsevier,Inc,2013)にまとめられている(参照によりその全体が本明細書に援用される)。
【0141】
C.カプセル
カプセルは、2層または3層カプセルであり得る。好ましくは、カプセルは、1mm超、好ましくは1.5mm以上の平均直径を有する。一部の実施形態では、カプセルは、直径が8mmもの大きさであり得る。
【0142】
細胞の生存に必要な分子がカプセルに入る速度、および治療剤および老廃物がカプセル膜を出る速度は、マクロカプセルの透過性を調節することによって選択することができる。マクロカプセルの透過性を変更して、免疫細胞、抗体、およびサイトカインのカプセルへの侵入を制限することもできる。
【0143】
異なる細胞型では代謝要件も異なるため、ヒドロゲル中にカプセル化された細胞型に基づいて、膜の透過性を最適化する必要がある。マイクロカプセルの直径は、細胞カプセルに対する免疫応答ならびにカプセル膜を横切る物質輸送の両方に影響を与える重要な要因である。
【0144】
本明細書に記載のカプセル化細胞組成物は、任意の好適な形状または形態をとることができる。例えば、移植可能な構築物は、球、スフェロイド、チューブ、コード、弦、楕円体、ディスク、円柱、シート、トーラス、立方体、スタジアム型、円錐、ピラミッド、三角形、矩形、正方形、またはロッドであってもよい。カプセル化細胞組成物は、湾曲したまたは平坦な区域を含み得る。一実施形態では、カプセル化細胞組成物は、鋳型の使用によって調製することができ、カスタムの形状が得られる。
【0145】
カプセル化細胞組成物は、例えば、使用または移植部位に応じて、サイズが様々であり得る。例えば、移植可能な構築物は、0.1mm超(例えば、0.25mm、0.5mm、0.75、1mm、1.5mm、2mm、3mm、4mm、5mm、6mm、7mm、8mm、9mm、10mm、20mm、30mm、40mm、50mm超、もしくはそれ以上)の平均直径またはサイズを有し得る。一実施形態では、カプセル化細胞組成物は、0.1mm超(例えば、0.25mm、0.5mm、0.75、1mm、1.5mm、2mm、3mm、4mm、5mm、6mm、7mm、8mm、9mm、10mm、20mm、30mm、40mm、50mm超、もしくはそれ以上)の平均直径またはサイズを有する区域もしくは領域を有し得る。一実施形態では、移植可能な構築物は、1cm未満(例えば、50mm、40mm、30mm、20mm、10mm、7.5mm、5mm、2.5mm、1mm、0.5mm未満、もしくはそれ以下)の平均直径またはサイズを有し得る。一実施形態では、移植可能な構築物は、平均直径またはサイズが1cm未満(例えば、50mm、40mm、30mm、20mm、10mm、7.5mm、5mm、2.5mm、1mm、0.5mm未満、もしくはそれ以下)の区域または領域を有し得る。
【0146】
カプセル化細胞組成物は、外部環境(例えば、宿主エフェクター細胞または組織)から、カプセル化された治療剤の曝露を防止することができる少なくとも1つのゾーンを含む。一実施形態では、カプセル化細胞組成物は、内側ゾーン(IZ)を含む。一実施形態では、カプセル化細胞組成物は、外側ゾーン(OZ)を含む。一実施形態では、内側ゾーン(IZ)または外側ゾーン(OZ)のいずれかは、侵食性または分解性であり得る。一実施形態では、内側ゾーン(IZ)は、侵食性または分解性である。一実施形態では、外側ゾーン(OZ)は、侵食性または分解性である。一実施形態では、カプセル化細胞組成物は、内側ゾーン(IZ)および外側ゾーン(OZ)の両方を含み、いずれも侵食性または分解性であり得る。一実施形態では、カプセル化細胞組成物は、内側ゾーン(IZ)および外側ゾーン(OZ)の両方を含み、外側ゾーンが、侵食性または分解性である。一実施形態では、カプセル化細胞組成物は、内側ゾーン(IZ)および外側ゾーン(OZ)の両方を含み、内側ゾーンが、侵食性または分解性である。ゾーン(例えば、内側ゾーンまたは外側ゾーン)のいずれかの厚さは、カプセル化された治療剤が外部環境(例えば、宿主エフェクター細胞または組織)から保護または遮蔽される「遮蔽された」相の長さまたは持続時間と相関し得る。
【0147】
カプセル化細胞組成物のゾーン(例えば、内側ゾーンまたは外側ゾーン)は、分解性の実体(例えば、分解することができる実体)を含み得る。分解性の実体は、酵素切断部位、光分解性部位、pH感受性部位、または時間とともに侵食または含まれ得る他の分解性領域を含むことができる。一実施形態では、分解性の実体は、第2の条件(例えば、第2の環境、例えば、第2のpHまたは第2の酵素への曝露)と比較して、第1の条件(例えば、第1の環境、例えば、第1のpHまたは第1の酵素への曝露)への曝露時に優先的に分解される。一実施形態では、分解性の実体は、第2の条件と比較して、第1の条件への曝露時に、少なくとも2、5、10、20、30、40、50、60、70、80、または100倍速く分解される。一実施形態では、分解性の実体は、酵素切断部位(例えば、タンパク質分解部位)である。一実施形態では、分解性の実体は、ポリマー(例えば、合成ポリマーまたは天然ポリマー、例えば、ペプチドまたは多糖)である。一実施形態では、分解性の実体は、内因性宿主成分(例えば、分解酵素、例えば、リモデリング酵素、例えば、コラーゲナーゼまたはメタロプロテアーゼ)の基質である。一実施形態では、分解性の実体は、ポリマーに埋め込まれた切断可能なリンカーまたは切断可能な区域を含む。
【0148】
一実施形態では、カプセル化細胞組成物は、小分子(例えば、栄養素または老廃物)、タンパク質、または核酸などの物体の通過を可能にするための細孔または開口部を含む。例えば、カプセル化細胞組成物中または上の細孔は、0.1nm超、10μm未満であり得る。一実施形態では、移植可能な構築物は、0.1μm~10μm、0.1μm~9μm、0.1μm~8μm、0.1μm~7μm、0.1μm~6μm、0.1μm~5μm、0.1μm~4μm、0.1μm~3μm、0.1μm~2μmのサイズ範囲の細孔または開口部を含む。
【0149】
本明細書に記載のカプセル化細胞組成物は、任意の封入材料内または上に化学修飾を含み得る。例示的な化学修飾としては、小分子、ペプチド、タンパク質、核酸、脂質、またはオリゴ糖が挙げられる。移植可能な構築物は、少なくとも0.5%、1%、2%、3%、4%、5%、7.5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、またはそれ以上の(例えば、本明細書に記載の化学修飾で)化学修飾されている材料を含み得る。カプセル化細胞組成物は、化学修飾で部分的にコーティングされ得る(例えば、化学修飾で少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%、または99.9%コーティングされ得る)。
【0150】
一実施形態では、カプセル化細胞組成物は、治療剤の放出の持続時間が調節可能であるように製剤化される。例えば、カプセル化細胞組成物は、経時的に、特定の量の治療剤を、特定の様式で(例えば、持続的なまたは制御された様式で)放出するように構成され得る。一実施形態では、カプセル化細胞組成物は、分解性であるゾーン(例えば、内側ゾーンまたは外側ゾーン)を含み、これは、カプセル化された細胞の免疫保護を徐々に終わらせることによって、または治療剤を徐々に放出させることによって、構築物からの治療剤の放出の持続時間を制御する。
【0151】
一部の実施形態では、カプセル化細胞組成物は、特定の密度の修飾で化学的に修飾される。特定の密度の化学修飾は、所与の領域当たりの結合した化学修飾の平均数として記載され得る。例えば、移植可能な構築物上または中の化学修飾の密度は、平方μmまたは平方mm当たり0.01、0.1、0.5、1、5、10、15、20、50、75、100、200、400、500、750、1,000、2,500、または5,000個の化学修飾であり得る。
【0152】
カプセル化細胞組成物は、対象の任意の臓器、組織、細胞、または部分に移植されるように製剤化され得るか、または構成され得る。例えば、カプセル化細胞組成物は、対象の腹腔に移植または配置され得る。カプセル化細胞組成物は、対象における腫瘍もしくは他の増殖物に移植または配置されてもよく、あるいは対象における腫瘍もしくは他の増殖物から約0.1mm、0.5mm、1mm、0.25mm、0.5mm、0.75、1mm、1.5mm、2mm、3mm、4mm、5mm、6mm、7mm、8mm、9mm、10mm、20mm、30mm、40mm、50mm、1cm、5、cm、10cm、もしくはより離れて移植または配置され得る。カプセル化細胞組成物は、皮膚、粘膜表面、体腔、中枢神経系(例えば、脳または脊髄)、臓器(例えば、心臓、眼、肝臓、腎臓、脾臓、肺、卵巣、乳房、子宮)、リンパ系、血管系、口腔、鼻腔、消化管、骨、筋肉、脂肪組織、皮膚、もしくは他の領域上または中に移植または配置されるように構成され得る。
【0153】
カプセル化細胞組成物は、任意の期間の使用のために製剤化され得る。例えば、カプセル化細胞組成物は、1時間、2時間、4時間、6時間、12時間、1日間、36時間、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、2ヶ月間、3ヶ月間、4ヶ月間、5ヶ月間、6ヶ月間、1年間、またはそれ以上使用され得る。移植可能な構築物は、限定された曝露(例えば、2日間未満、例えば、2日間未満、1日間、24時間、20時間、16時間、12時間、10時間、8時間、6時間、5時間、4時間、3時間、2時間、1時間、または以下)用に構成され得る。カプセル化細胞組成物は、長期曝露(例えば、少なくとも2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、1ヶ月間、2ヶ月間、3ヶ月間、4ヶ月間、5ヶ月間、6ヶ月間、7ヶ月間、8ヶ月間、9ヶ月間、10ヶ月間、11ヶ月間、12ヶ月間、13ヶ月間、14ヶ月間、15ヶ月間、16ヶ月間、17ヶ月間、18ヶ月間、19ヶ月間、20ヶ月間、21ヶ月間、22ヶ月間、23ヶ月間、24ヶ月間、1年間、1.5年間、2年間、2.5年間、3年間、3.5年間、4年間、またはそれ以上)用に構成され得る。カプセル化細胞組成物は、永久曝露(例えば、少なくとも6ヶ月間、7ヶ月間、8ヶ月間、9ヶ月間、10ヶ月間、11ヶ月間、12ヶ月間、13ヶ月間、14ヶ月間、15ヶ月間、16ヶ月間、17ヶ月間、18ヶ月間、19ヶ月間、20ヶ月間、21ヶ月間、22ヶ月間、23ヶ月間、24ヶ月間、1年間、1.5年間、2年間、2.5年間、3年間、3.5年間、4年間、またはそれ以上)用に構成され得る。
【0154】
D.細胞
本明細書に記載されるカプセル化細胞組成物は、細胞(例えば、操作された細胞)を含み得る。細胞は、脳、神経、神経節、脊椎、眼、心臓、肝臓、腎臓、肺、脾臓、骨、胸腺、リンパ系、皮膚、筋肉、膵臓、胃、腸、血液、卵巣、子宮、または精巣を含む任意の哺乳動物の臓器または組織に由来し得る。
【0155】
細胞は、ドナー(例えば、同種細胞)に由来し、対象(例えば、自己細胞)に由来し、または別の種(例えば、異種細胞)に由来し得る。一実施形態では、細胞は、細胞培養で増殖され得るか、樹立された細胞培養株から調製され得るか、またはドナー(例えば、生きているドナーまたは死体)に由来し得る。一実施形態では、細胞は、遺伝子操作される。別の実施形態では、細胞は、遺伝子操作されない。細胞は、幹細胞(例えば、初期化幹細胞、または誘導多能性細胞)を含み得る。例示的な細胞としては、間葉系幹細胞(MSC)、線維芽細胞(例えば、初代線維芽細胞)が挙げられる。HEK細胞(例えば、HEK293T)、Jurkat細胞、HeLa細胞、網膜色素上皮(RPE)細胞、HUVEC細胞、NIH3T3細胞、CHO-K1細胞、COS-1細胞、COS-7細胞、PC-3細胞、HCT116細胞、A549MCF-7細胞、HuH-7細胞、U-2 OS細胞、HepG2細胞、Neuro-2a細胞、およびSF9細胞。
【0156】
移植可能な構築物に含まれる細胞は、治療用治療剤を産生または分泌し得る。一実施形態では、移植可能な構築物に含まれる細胞は、単一の種類の治療剤または複数の治療剤を産生または分泌し得る。一実施形態では、移植可能な構築物は、治療剤の発現配列を含む核酸(例えば、ベクター)を形質導入またはトランスフェクトされた細胞を含み得る。例えば、細胞に、レンチウイルスを形質導入またはトランスフェクトすることができる。(例えば、形質導入またはトランスフェクションによって)細胞に導入される核酸は、核酸送達システム(例えば、プラスミド)に組み込まれ得るか、または直接送達され得る。一実施形態では、(例えば、プラスミドの一部として)細胞に導入される核酸は、治療剤の発現を増強する領域、および/または標的指向もしくは分泌を指示する領域(例えば、プロモーター配列、アクチベーター配列、もしくは細胞シグナル伝達ペプチド、もしくは細胞輸出ペプチド)を含み得る。例示的なプロモーターとしては、EF-1a、CMV、Ubc、hPGK、VMD2、およびCAGが挙げられる。
【0157】
本明細書に記載のカプセル化細胞組成物は、細胞または複数の細胞を含み得る。複数の細胞の場合、濃度および総細胞数は、カプセル化細胞組成物の細胞型、移植位置、および予想寿命などのいくつかの因子に応じて様々であり得る。一実施形態では、カプセル化細胞組成物に含まれる細胞の総数は、約2、4、6、8、10、20、30、40、50、75、100、200、250、500、750、1000、1500、2000、5000、10000、またはそれ以上である。一実施形態では、カプセル化細胞組成物に含まれる細胞の総数は、約1.0×10、1.0×10、1.0×10、1.0×10、1.0×10、1.0×10、1.0×10、1.0×10、1.0×1010超、またはそれ以上である。一実施形態では、カプセル化細胞組成物に含まれる細胞の総数は、約10000、5000、2500、2000、1500、1000、750、500、250、200、100、75、50、40、30、20、10、8、6、4、2未満、またはそれ以下である。一実施形態では、カプセル化細胞組成物に含まれる細胞の総数は、約1.0×1010、1.0×10、1.0×10、1.0×10、1.0×10、1.0×10、1.0×10、1.0×10、1.0×10未満、またはそれ以下である。一実施形態では、複数の細胞は、凝集体として存在する。一実施形態では、複数の細胞は、細胞分散体として存在する。
【0158】
カプセル化細胞組成物内に含まれる細胞の特定の特徴は、例えば、移植可能な構築物への組み込みの前および/または後に決定され得る。例えば、細胞生存率、細胞密度、または細胞の発現レベルが評価され得る。一実施形態では、細胞の生存率、細胞密度、および細胞の発現レベルは、細胞の顕微鏡法、蛍光顕微鏡法、組織学的または生化学的アッセイなどの標準的な技術を使用して決定され得る。
【0159】
E.カプセルを作製する方法
細胞をヒドロゲル中にカプセル化する方法は、既知である。好ましい実施形態では、ヒドロゲルは、多糖である。例えば、哺乳動物細胞をアルギネートポリマー中にカプセル化する方法は周知であり、以下に簡潔に説明する。例えば、Limの米国特許第4,352,883号を参照されたい。
【0160】
アルギネートは、水中、室温で、二価カチオンとイオン的に架橋されて、ヒドロゲルマトリックスを形成することができる。カプセル化する生体材料を含む水溶液は、水溶性ポリマーの溶液に懸濁され、懸濁液は、液滴に形成され(これは、多価カチオンとの接触によって別個のマイクロカプセルに構成される)、次いで、マイクロカプセルの表面が、ポリアミノ酸と架橋され、カプセル化された材料の周囲に半透過性の膜を形成する。
【0161】
荷電側基を有する水溶性ポリマーは、ポリマーが酸性側基を有する場合は多価カチオン、または塩基性側基を有する場合は多価アニオンのいずれかの反対電荷の多価イオンを含む水溶液と反応させることによって架橋される。ヒドロゲルを形成するようにポリマーと酸性側基とを架橋するための好ましいカチオンは、銅、カルシウム、アルミニウム、マグネシウム、ストロンチウム、バリウム、およびスズなどの二価カチオンまたは三価カチオンであるが、アルキルアンモニウム塩などの二官能性、三官能性、または四官能性有機カチオン、例えば、
も使用され得る。これらのカチオンの塩の水溶液をポリマーに添加して、軟質で高度に膨張したヒドロゲルおよび膜を形成する。カチオンの濃度が高いほど、または価数が高いほど、ポリマーの架橋の程度が大きくなる。0.005Mもの低い濃度から、ポリマーが架橋することが示されている。より高い濃度は、塩の溶解度によって制限される。
【0162】
ヒドロゲルを形成するために塩基性側鎖を含むポリマーを架橋するための好ましいアニオンは、低分子量ジカルボン酸(例えば、テレフタル酸)、硫酸イオン、および炭酸イオンなどの二価アニオンおよび三価アニオンである。これらのアニオンの塩の水溶液をポリマーに添加して、カチオンに関して記載されるように、柔軟で高度に膨張したヒドロゲルおよび膜を形成する。
【0163】
様々なポリカチオンを使用して、複合体化させ、それによって、ポリマーヒドロゲルを半透過性の表面膜へと安定化することができる。使用することができる材料の例としては、アミンまたはイミン基などの塩基性反応性基を有し、3,000~100,000の好ましい分子量を有するポリマー(例えば、ポリエチレンイミンおよびポリリジン)が挙げられる。これらは市販されている。1つのポリカチオンは、ポリ(L-リジン)であり、合成ポリアミンの例は、ポリエチレンイミン、ポリ(ビニルアミン)、およびポリ(アリルアミン)である。また、多糖類、キトサンなどの天然ポリカチオンもある。
【0164】
ポリマーヒドロゲル上の塩基性表面基との反応によって半透過性の膜を形成するために使用することができるポリアニオンには、アクリル酸、メタクリル酸、およびアクリル酸の他の誘導体のポリマーおよびコポリマー、スルホン化ポリスチレンなどのペンダントSO3H基を有するポリマー、ならびにカルボン酸基を有するポリスチレンが含まれる。
【0165】
好ましい実施形態では、アルギネートカプセルは、カプセル化剤(例えば、Inotechカプセル化剤)を使用して、懸濁した細胞を含むアルギネートの溶液から製造される。一部の実施形態では、アルギネートは、Ca2+、Ba2+、またはSr2+などの多価カチオンとイオン的に架橋される。特に好ましい実施形態では、アルギネートは、BaCl2を使用して架橋される。一部の実施形態では、カプセルは、形成後にさらに精製される。好ましい実施形態では、カプセルは、例えば、HEPES溶液、Krebs溶液、および/またはRPMI-1640培地で洗浄される。
【0166】
細胞は、ドナーから直接得るか、ドナー由来の細胞の細胞培養から得るか、または確立された細胞培養株から得ることができる。好ましい実施形態では、細胞は、ドナーから直接得られ、洗浄され、ポリマー材料と組み合わせて直接移植される。細胞は、組織培養の分野の当業者に既知の技術を使用して、培養される。
【0167】
細胞の付着および生存率は、組織学的検査および蛍光顕微鏡法などの標準的な技術を使用して評価することができる。移植された細胞の機能は、上記の技術と機能アッセイの組み合わせを使用して決定することができる。例えば、肝細胞の場合、カニューレをレシピエントの総胆管に配置することによって、インビボの肝機能試験を行うことができる。その後、胆汁を段階的に採取することができる。胆汁色素は、誘導体化されていないテトラピロールを検出する高圧液体クロマトグラフィーによって、またはP-グルクロニダーゼの有無のいずれかで、ジアゾ化アゾジピロールのアントラニル酸エチルとの反応によってアゾジピロールに変換した後で、薄層クロマトグラフィーによって分析することができる。二抱合型および一抱合型のビリルビンは、抱合胆汁色素のアルカリ性メタノリシス後、薄層クロマトグラフィーによっても測定することができる。一般に、機能している移植肝細胞の数が増えると、抱合型ビリルビンのレベルが上がる。簡単な肝機能検査(アルブミン産生など)は、血液試料でも行うことができる。類似の臓器機能試験は、移植後の細胞機能の程度を決定するために必要とされるように、当業者に既知の技術を使用して実施することができる。例えば、膵臓の膵島細胞を、肝細胞を移植するために特に使用されるものと同様の様式で送達して、糖尿病を治療するために、インスリンの適切な分泌によってグルコースの調節を達成することができる。他の内分泌組織も移植することができる。
【0168】
細胞が移植される1つまたは複数の部位は、必要な細胞数と同様に、個々の必要性に基づいて決定される。臓器機能を有する細胞(例えば、肝細胞または膵島細胞)の場合、混合物を、腸間膜、皮下組織、後腹膜、腹膜前腔、および筋肉内腔に注入することができる。
【0169】
必要に応じて、マイクロカプセルの耐久性を増加させるために、マイクロカプセルに含まれる細胞の生理学的応答性を保持するかまたは過度に損なうことなく、マイクロカプセルを、硫酸ナトリウムまたは同様の薬剤などの生理学的に許容される塩で処理またはインキュベートすることができる。「生理学的に許容される塩」とは、マイクロカプセル中にカプセル化された細胞の生理学的応答性に過度に有害ではない塩を意味する。一般に、かかる塩は、カプセルに含まれる細胞の機能および/または生存率を実質的に損なうことなく、カプセルを安定化するのに十分な、カルシウムイオンに結合するアニオンを有する塩である。硫酸ナトリウムおよび硫酸カリウムなどの硫酸塩が好ましく、硫酸ナトリウムが最も好ましい。インキュベーションステップは、上記のように、カプセルに含まれる細胞の機能および/または生存能を実質的に損なうことなく、カプセルを安定化するのに有効な量の生理学的塩を含む水溶液中で実施される。一般に、塩は、約0.1または1ミリモル濃度~最大約20または100ミリモル濃度、最も好ましくは約2~10ミリモル濃度の量で含まれる。インキュベーションステップの持続時間は重要ではなく、約1もしくは10分間から約1もしくは2時間、またはそれ以上(例えば、一晩)であってもよい。インキュベーションステップが実施される温度は、同様に重要ではなく、典型的には、約4℃から最大約37℃、好ましくは室温(約21℃)である。
【0170】
VII.疾患または障害の治療
カプセル化細胞は、疾患または障害を治療するために、それを必要とする患者に投与(例えば、注射または移植)することができる。一部の実施形態では、疾患は、増殖性疾患である。一実施形態では、増殖性疾患は、がんである。がんは、上皮性、間葉性、または血液の悪性腫瘍であり得る。がんとしては、一次悪性細胞または腫瘍(例えば、その細胞が、元の悪性腫瘍または腫瘍の部位以外の対象の体内の部位に移行していないもの)および二次悪性細胞または腫瘍(例えば、転移、悪性細胞または腫瘍細胞の元の腫瘍の部位とは異なる二次的な部位への移行から生じるもの)が挙げられる。一実施形態では、がんは、固形腫瘍(例えば、カルチノイド、がん腫、または肉腫)、軟部腫瘍(例えば、血液悪性腫瘍)、または転移性病変(例えば、本明細書に開示されるがんのうちのいずれかの転移性病変)である。一実施形態では、がんは、線維性または線維形成性固形腫瘍である。
【0171】
例示的ながんには、がん腫、リンパ腫、芽腫、肉腫、および白血病またはリンパ系悪性腫瘍が含まれる。一実施形態では、がんは、身体のシステム、例えば、神経系(例えば、末梢神経系(PNS)または中枢神経系(CNS))、血管系、骨格系、呼吸器系、内分泌系、リンパ系、生殖器系、または消化管に影響を及ぼす。一部の実施形態では、がんは、身体の一部、例えば、血液、眼、脳、皮膚、肺、胃、口、耳、脚、足、手、肝臓、心臓、腎臓、骨、膵臓、脾臓、大腸、小腸、脊髄、筋肉、卵巣、子宮、膣、または陰茎に影響を及ぼす。かかるがんのより具体的な例としては、扁平上皮がん(例えば、上皮性扁平上皮がん)、肺がん(小細胞肺がん、非小細胞肺がん、肺腺がん、および肺扁平上皮がんを含む)、腹膜がん、肝細胞がん、胃がんまたは胃がん(gastric or stomach cancer)(消化管がんを含む)、膵臓がん、神経膠芽腫、子宮頸がん、卵巣がん、肝臓がん、膀胱がん、ヘパトーマ、乳がん、結腸がん、直腸がん、大腸がん、子宮内膜がん、または子宮がん、唾液腺がん、腎臓がんまたは腎臓がん(kidney or renal cancer)、前立腺がん、外陰部がん、甲状腺がん、肝がん、肛門がん、陰茎がん、ならびに頭頸部がんが挙げられる。
【0172】
がんの他の例には、以下が含まれるが、これに限定されない:急性小児リンパ性白血病、急性リンパ芽球性白血病、急性リンパ球性白血病、急性骨髄性白血病、副腎皮質がん、成人(原発性)肝細胞がん、成人性(原発性)肝臓がん、成人急性リンパ性白血病、成人急性骨髄性白血病、成人ホジキン病、成人ホジキンリンパ腫、成人リンパ球性白血病、成人非ホジキンリンパ腫、成人原発性肝臓がん、成人軟部組織肉腫、AIDS関連リンパ腫、AIDS関連悪性腫瘍、肛門がん、星状細胞腫、胆管がん、膀胱がん、骨がん、脳幹神経膠腫、脳腫瘍、乳がん、腎盂尿管がん、中枢神経系(原発性)リンパ腫、中枢神経系リンパ腫、小脳星状細胞腫、大脳星細胞腫、子宮頸がん、小児(原発性)肝細胞がん、小児(原発性)肝臓がん、小児急性リンパ芽球性白血病、小児急性骨髄性白血病、小児脳幹神経膠腫、小児小脳星状細胞腫、小児大脳星状細胞腫、小児大脳星状細胞腫、小児頭蓋外胚細胞腫瘍、小児ホジキン病、小児ホジキンリンパ腫、小児視床下部および視覚路神経膠腫、小児リンパ芽球性白血病、小児髄芽腫、小児非ホジキンリンリンパ腫、小児松果体およびテント上原始神経外胚葉性腫瘍、小児原発性肝臓がん、小児横紋筋肉腫、小児軟部組織肉腫、小児視覚路および視床下部神経膠腫、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄性白血病、結腸がん、皮膚T細胞リンパ腫、内分泌膵島細胞がん、子宮内膜がん、上衣腫、上皮がん、食道がん、ユーイング肉腫および関連腫瘍、膵外分泌がん、頭蓋外胚細胞腫瘍、性腺外胚細胞腫瘍、肝外胆管がん、眼がん、女性乳がん、ゴーシェ病、胆嚢がん、胃がん、消化管カルチノイド腫瘍、胃腸腫瘍、胚細胞腫瘍、妊娠性絨毛性腫瘍、有毛細胞白血病、頭頸部がん、肝細胞がん、ホジキン病、ホジキンリンパ腫、高ガンマグロブリン血症、下咽頭がん、腸がん、眼内黒色腫、膵島細胞腫、膵島細胞がん、カポジ肉腫、腎臓がん、喉頭がん、口唇がんおよび口腔がん、肝臓がん、肺がん、リンパ増殖性障害、マクログロブリン血症、男性乳がん、悪性中皮腫、悪性胸腺腫、髄芽腫、黒色腫、中皮腫、転移性原発不明扁平上皮頸部がん、転移性原発性扁平上皮頸部がん、転移性扁平上皮頸部がん、多発性骨髄腫、多発性骨髄腫/形質細胞腫瘍、骨髄異形成症候群、骨髄性白血病、骨髄球性白血病、骨髄増殖性障害、鼻腔および副鼻腔がん、鼻咽頭がん、神経芽腫、妊娠中の非ホジキンリンパ腫、非黒色腫皮膚がん、非小細胞肺がん、原発不明転移性扁平上皮頸部がん、中咽頭がん、骨/悪性線維肉腫、骨肉腫/悪性線維性組織球腫、骨の骨肉腫/悪性線維性組織球腫、卵巣上皮がん、卵巣胚細胞腫瘍、卵巣低悪性度腫瘍、膵臓がん、異常蛋白血症、紫斑病、副甲状腺がん、陰茎がん、褐色細胞腫、下垂体腫瘍、形質細胞腫瘍/多発性骨髄腫、原発性中枢神経系リンパ腫、原発性肝臓がん、前立腺がん、直腸がん、腎細胞がん、腎盂および尿管がん、網膜芽腫、横紋筋肉腫、唾液腺がん、サルコイドーシス肉腫、セザリー症候群、皮膚がん、小細胞肺がん、小腸がん、軟部組織肉腫、扁平上皮頸部がん、胃がん、テント上原始神経外胚葉性および松果体腫瘍、T細胞リンパ腫、精巣がん、胸腺腫、甲状腺がん、腎盂および尿管の移行細胞がん、移行性腎盂および尿管がん、絨毛性腫瘍、尿管および腎盂細胞がん、尿道がん、子宮がん、子宮肉腫、膣がん、視覚路および視床下部神経膠腫、外陰がん、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、ウィルムス腫瘍、ならびに上に列挙された臓器系に位置する腫瘍以外の他の任意の過剰繁殖性疾患。
【0173】
一実施形態では、移植可能な構築物は、対象における自己免疫疾患(例えば、糖尿病、多発性硬化症、狼瘡、閉塞、莢膜収縮)を治療するために使用される。一部の実施形態では、疾患は、糖尿病(例えば、1型糖尿病または2型糖尿病)である。一部の実施形態では、状態は、線維症である。一部の実施形態では、状態は、炎症である。
【0174】
本明細書に記載の移植可能な構築物は、対象における免疫応答を調節(例えば、上方調節)する方法で使用され得る。例えば、対象への投与時に、移植可能な構築物(またはその中に配置された抗原物質および/または治療剤)は、対象における免疫系の構成要素のレベルを調節(例えば、上方調節)し得る(例えば、構成要素のレベルを増加または減少させ得る)。本明細書に記載の方法によって調節され得る例示的な免疫系の構成要素には、T細胞(例えば、侵襲性T細胞、キラーT細胞、エフェクターT細胞、メモリーT細胞、ガンマデルタT細胞、ヘルパーT細胞)、B細胞、抗体、または他の別の構成要素が含まれる。
【0175】
本明細書に記載の移植可能な構築物は、追加の薬剤、例えば、併用療法で使用するための、抗増殖剤、抗がん剤、抗炎症剤、免疫調節剤、または鎮痛剤などをさらに含むことができる。追加の薬剤は、移植可能な構築物中または上に配置され得るか、または移植可能な構築物中または上に配置された細胞によって産生され得る。一実施形態では、追加の薬剤は、小分子、タンパク質、ペプチド、核酸、オリゴ糖、または他の薬剤である。
【0176】
一実施形態では、追加の薬剤は、抗がん剤である。一部の実施形態では、抗がん剤は、小分子、キナーゼ阻害剤、アルキル化剤、血管破壊剤、微小管標的指向剤、分裂阻害剤、トポイソメラーゼ阻害剤、抗血管新生剤、または抗代謝剤である。一実施形態では、抗がん剤は、タキサン(例えば、パクリタキセル、ドセタキセル、ラロタキセル、またはカバジタキセル)である。一実施形態では、抗がん剤は、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシン)である。一部の実施形態では、抗がん剤は、白金系薬剤(例えば、シスプラチンまたはオキサリプラチン)である。一部の実施形態では、抗がん剤は、ピリミジン類似体(例えば、ゲムシタビン)である。一部の実施形態では、抗がん剤は、カンプトテシン、イリノテカン、ラパマイシン、FK506、5-FU、ロイコボリン、またはそれらの組み合わせから選択される。他の実施形態では、抗がん剤は、タンパク質生物製剤(例えば、抗体分子)、または核酸療法(例えば、アンチセンスまたは抑制性二本鎖RNA分子)である。
【0177】
VIII.薬学的組成物
本開示は、薬学的組成物を特徴とし、ゾーン(例えば、内側ゾーンおよび任意選択的に外側ゾーン、その両方が分解性であり得る)を含む移植可能な構築物と、治療剤および任意選択的に薬学的に許容される賦形剤と、を含む。一部の実施形態では、移植可能な構築物は、薬学的組成物において、有効量で提供される。一部の実施形態では、有効量は、治療有効量である。一部の実施形態では、有効量は、予防有効量である。
【0178】
本明細書に記載の薬学的組成物は、薬理学の分野で既知の任意の方法によって調製され得る。一般に、かかる調製方法は、移植可能な構築物を、担体および/または1つ以上の他の副成分と会合させるステップと、次いで、必要に応じて、および/または望ましい場合、生成物を所望の単回もしくは複数回用量単位に成形および/または包装するステップと、を含む。
【0179】
薬学的組成物は、バルクで、単一の単位用量として、および/または複数の単位用量として、調製、包装、および/または販売することができる。本明細書で使用される場合、「単位用量」は、所定量の活性成分を含む個別の量の薬学的組成物である。移植可能な構築物の量は、概して、対象に投与される抗原物質および/もしくは治療剤の投薬量、ならびに/またはかかる投薬量の簡便な割合(例えば、かかる投薬量の2分の1または3分の1)と同等であり得る。
【0180】
本発明の薬学的組成物中の移植可能な構築物、薬学的に許容される賦形剤、および/または任意の追加の成分の相対量は、治療される対象の同一性、サイズ、および/または状態に応じて、さらに組成物が投与される経路に応じて変化するであろう。例として、組成物は、任意の成分を0.1%~100%(w/w)含むことができる。
【0181】
移植可能な構築物およびその薬学的組成物は、経口的に、非経口的に(皮下、筋肉内、静脈内、および皮内を含む)、吸入スプレーによって、局所的に、直腸的に、経鼻的に、口腔的に、膣的に、または埋込型リザーバーを介して、投与もしくは移植され得る。一部の実施形態では、提供される化合物または組成物は、静脈内投与および/または経口投与可能である。一実施形態では、移植可能な構築物は、皮下に注入される。一実施形態では、移植可能な構築物は、腹腔に注入される。一実施形態では、移植可能な構築物は、腹腔に注入される。
【0182】
本明細書で使用される「非経口」という用語は、皮下、静脈内、筋肉内、眼内、硝子体内、関節内、滑液内、胸骨内、髄腔内、肝臓内、腹腔内、病巣内、および頭蓋内注射または注入技術を含む。好ましくは、組成物は、経口、皮下、腹腔内、または静脈内に投与される。本発明の組成物の滅菌注射用形態は、水性または油性懸濁液であり得る。これらの懸濁液は、好適な分散剤または湿潤剤および懸濁剤を使用して、当該技術分野で既知の技術に従って製剤化され得る。滅菌注射用調製物はまた、例えば1,3-ブタンジオール中の溶液として、非毒性の非経口的に許容される希釈剤または溶媒中の注射用滅菌溶液または懸濁液でもあり得る。用いることができる許容されるビヒクルおよび溶媒の中には、水、リンゲル液、および等張塩化ナトリウム溶液がある。加えて、滅菌固定油は、溶媒または懸濁媒体として従来用いられている。
【0183】
眼科的使用では、提供される化合物、組成物、およびデバイスは、微紛化懸濁液として、または軟膏(例えば、ワセリン)中に製剤化され得る。
【0184】
一実施形態では、抗原物質、治療剤、または追加の薬剤の放出は、持続的な様式で放出される。特定の薬剤の効果を延長するために、多くの場合、注射からの薬剤の吸収を遅延させることが望ましい。これは、水溶性が低い結晶性材料または非晶質材料の液体懸濁液を使用することによって達成することができる。次いで、薬剤の吸収速度は、その溶解速度に依存し、すると、その溶解速度は、結晶サイズおよび結晶形態に依存し得る。代替的に、非経口投与された薬物形態の遅延吸収は、薬物を油性ビヒクルに溶解または懸濁することによって達成される。
【0185】
本明細書に提供される薬学的組成物の説明は、主に、ヒトへの投与に好適である薬学的組成物を対象とするが、かかる組成物が一般に、あらゆる種類の動物への投与に好適であることが当業者によって理解されるであろう。様々な動物への投与に好適な組成物を提供するために、ヒトへの投与に好適な薬学的組成物の修飾が十分に理解されており、通常の熟練した獣医薬理学者であれば、通常の実験により、かかる修飾を設計および/または実施することができる。
【0186】
本明細書に提供される移植可能な構築物は、典型的には、投与の容易さおよび投薬量の均一性のために、単位剤形、例えば、単一の単位剤形で製剤化される。しかしながら、本発明の組成物の1日の総使用量は、健全な医学的判断の範囲内で主治医によって決定されることが理解されるであろう。任意の特定の対象または生物の特定の治療有効用量レベルは、治療される疾患および障害の重症度、用いられる特定の活性成分の活性、用いられる特定の組成物、対象の年齢、体重、健康全般、性別、および食事、用いられる特定の活性成分の投与時間、投与経路、および排泄速度、治療期間、用いられる特定の治療剤と組み合わせてまたは同時に使用される薬物、ならびに医学分野で周知の同様の要因を含む、様々な要因に依存するであろう。
【0187】
移植可能な構築物から放出される治療剤の有効量は、単位剤形当たり(例えば、移植可能な構築物当たり)約0.0001mg~約3000mg、約0.0001mg~約2000mg、約0.0001mg~約1000mg、約0.001mg~約1000mg、約0.01mg~約1000mg、約0.1mg~約1000mg、約1mg~約1000mg、約1mg~約100mg、約10mg~約1000mg、または約100mg~約1000mgの治療剤を含み得る。
【0188】
投与される治療剤は、所望の治療効果を得るのに十分な投薬量レベルで、1日1回以上、1日当たり約0.001mg/kg~約100mg/kg、約0.01mg/kg~約50mg/kg、好ましくは約0.1mg/kg~約40mg/kg、好ましくは約0.5mg/kg~約30mg/kg、約0.01mg/kg~約10mg/kg、約0.1mg/kg~約10mg/kg、より好ましくは約1mg/kg~約25mg/kg対象の体重を送達され得る。
【0189】
本明細書に記載される用量範囲は、成人に提供される薬学的組成物を投与するための手引きを提供することが理解されるであろう。例えば、子供または青少年に投与される量は、医師または当業者によって決定することができ、成人に投与される量よりも低いか、または同じであり得る。
【実施例
【0190】
IX.実施例
以下の実施例は、本発明の好ましい実施形態を実証するために含まれている。以下の実施例に開示される技術は、本発明の実施において十分に機能することが発明者によって発見された技術を表し、したがって、その実施のための好ましい態様を構成するとみなすことができることを当業者に理解されるべきである。しかしながら、当業者は、本開示に照らして、開示される特定の実施形態では多くの変更を行うことができ、それでも本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく類似または同様の結果を得ることができることを理解すべきである。
【0191】
実施例1 - 単一遺伝子、デュアルベクターシステム
図1に示されるように、抗体の重鎖(HC)および軽鎖(LC)は、2つの異なるベクターから発現される。HCは、ヒトサイトメガロウイルス(CMV)プロモーターを使用して発現され、LCは、CMV初期エンハンサー/ニワトリβアクチン(CAG)プロモーターを使用して発現される。HCのベクターはまた、より弱いSV40プロモーターを使用してゼオシン選択マーカーを発現し、LCのベクターは、ネオマイシン選択マーカーカセットも発現する。
【0192】
実施例2 - 単一ベクター、デュアル遺伝子システム
図2に示されるように、LCおよびHCは、それぞれCAGプロモーターおよびCMVプロモーターを使用して単一のベクターから発現される。ネオマイシン選択マーカーカセットは、同じベクター上のより弱いSV40プロモーターを使用して発現される。
【0193】
実施例3 - バイシストロニック単一ORFシステム
図3に示されるように、LCおよびHCは、内部リボソーム進入部位(IRES)によって分離され、CAGプロモーターを使用して発現される。より弱いSV40プロモーターは、同じベクター上に存在するネオマイシン選択マーカーカセットを発現するために使用される。
【0194】
実施例4 - トリシストロニック単一ORFシステム
図4に示されるように、トリシストロンベクターを生成して、CAGプロモーターの制御下、2つのIRESによって媒介される同じ転写物中でLC、HCおよびネオマイシン選択マーカーカセットを発現させる。
【0195】
実施例5 - 自己調節遺伝子システム
遺伝子システムがサイトカインを発現する実施形態では、サイトカインの毒性レベルの分泌を防止するために、サイトカイン産生のレベルが自動調節されることが望ましい。これを達成する1つの方法は、第1のORFのサイトカイン遺伝子とそのプロモーターとの間のDNA領域に、オペレーター部位を導入することである。サイトカインの受容体を介したシグナル伝達の結果として活性化されるプロモーターの制御下で、オペレーター部位に結合する転写リプレッサーをコードする第2のORFを使用する。例えば、サイトカインがIL-2である場合、転写リプレッサーの発現を制御するプロモーターは、STAT転写因子であり得る(図5)。このようにして、細胞は、既に十分なサイトカインが存在する場合、それらの環境におけるサイトカインを感知し、それらのサイトカインの産生を減少させることができる。
【0196】
別の考えられる戦略は、サイトカイン遺伝子の5’非翻訳領域(5’UTR)に高次構造を形成する配列を導入することである。次いで、サイトカインの受容体を介したシグナル伝達の結果として活性化されるプロモーターの制御下で、高次構造に結合し、翻訳を抑制するRNA結合タンパク質をコードする第2のORFを使用する。例えば、サイトカインがIL-2である場合、RNA結合タンパク質の発現を制御するプロモーターは、STAT転写因子であり得る(図6)。
【0197】
別の考えられる戦略は、合成マイクロRNA(miRNA)の標的部位のいくつかの反復を、サイトカイン遺伝子の3’非翻訳領域(3’UTR)に導入することである。次いで、サイトカインの受容体を介したシグナル伝達の結果として活性化されるプロモーターの制御下で、miRNAをコードする第2のORFを使用する。例えば、サイトカインがIL-2である場合、miRNAの発現を制御するプロモーターは、STAT転写因子であり得る(図7)。
【0198】
別の考えられる戦略は、サイトカインを標的とし、サイトカインの受容体を介したシグナル伝達の結果として活性化されるプロモーターの制御下で、ユビキチン媒介性タンパク質分解をもたらす、合成ユビキチンリガーゼをコードする第2のORFを使用することである。例えば、サイトカインがIL-2である場合、ユビキチンリガーゼの発現を制御するプロモーターは、STAT転写因子であり得る(図8)。この場合、サイトカイン遺伝子は、合成ユビキチンリガーゼによって認識可能なサイトカインを生成するために必要であれば、追加のタンパク質ドメインを含むように改変され得る。理想的には、任意の追加のタンパク質ドメインの付加は、サイトカインの免疫学的機能を変化させない。
【0199】
実施例6 - インサイツでIFN-γを感知および報告する細胞株の操作
療法のインサイツ薬力学をよりよく解明するために、インターフェロンγ(IFNγ)媒介性応答の検出のためのRPE細胞ベースのセンサーを開発した。本発明者らは、組換えヒトIFNγに曝露されたRPE細胞におけるRPE65の下方調節を検証し(図9)、IFNγ転写の徴候の検出を利用し、治療有効性をインサイツで監視するためにTMTDカプセル中にカプセル化することができる、RPE細胞ベースのIFNγ応答センサーを開発することを目的とする、提案された研究の実現可能性を支持した。
【0200】
薬力学的研究に適したINFγ応答の細胞センサーを開発するために、RPE細胞を操作して、ウミシイタケ(renilla)ルシフェラーゼ遺伝子(lux)の発現を、IFNγ応答の検証済みマーカーであるRPE65の発現と関連付けた(図9)。次いで、RPE、RPE-IL-2、およびRPE-IL-2-ksを、エリスロマイシン依存性トランスレプレッサー(EKRAB)によって調節されるETRオペレーターの制御下のlux、および選択目的のピューロマイシン耐性遺伝子の発現のためにトランスフェクトする。次いで、細胞を選択し、EKRABの不在化で構成的に発現されるルシフェラーゼのシグナルを監視することによって細胞をスクリーニングする。得られた安定細胞株を、以前に示されているように、EKRABおよびRPE65の3’側のブラストサイジン耐性遺伝子の発現用のカセットを組み込むように操作する。細胞を、ブラストサイジンで選択し、安定細胞株を、組換えIFNγでの処理時のルシフェラーゼシグナルを監視することによって、および/またはエリスロマイシンでEKRABの組み込みを確かめることによって検証する。染色体への組み込みは、ゲノムPCRにより検証する。このレポーターは、基質としてセレンテラジンを利用することができ、これにより、IVISイメージングを使用して、腫瘍体積の監視に使用するホタルルシフェラーゼのシグナルとは別に、IFNγレポーターカプセルの活性を特異的に測定することができる。
【0201】
実施例7 - IFNγの検出をアポトーシスの誘導と関連付ける遺伝子回路の設計
IFNγ応答の検出に応答したアポトーシスの誘導を達成するために、実施例6に記載のように、遺伝子回路を設計および構築する。ここで、転写リプレッサーであるEKRABの発現は、IFNγ応答性標的遺伝子であるRPE65の発現と関連付けられる(図9)。加えて、アポトーシス促進性のbax遺伝子は、転写リプレッサーの制御下で発現される。その結果、RPE65の下方調節により、EKRABの発現の低下およびBAXの発現の増加がもたらされる。
【0202】
計算モデルを設計した。ここで、RPE65の抑制が2倍および5倍のヒル(Hill)係数を用い、EKRABの抑制を100倍と仮定して、IFNγに応答して達成されるbax発現の活性化が10倍超と予測される(図9)。このモデルにより、転写リプレッサーの分解速度を調節することで、回路応答時間を3~30時間に調整することが可能になることも予測された(図10)。この調整可能な遅延と、より高い投薬量で最大10日間の調整可能なPKの遅延(図11A~B)とを組み合わせることにより、本発明者らは、PK/PDインビボ研究に基づいて、必要に応じて、IFNγ検出と治療終了の間で所望の遅延を達成することができる。
【0203】
この目標を達成するために、IL-2を発現するRPE細胞(RPE/IL-2細胞)は、RPE65に連結された転写調節因子を発現するように操作される。具体的には、検出目的の内部リボソーム進入部位(IRES)を介した蛍光レポーター(iRFP)の発現に連結されたEKRABまたはTetRが、選択目的のブラストサイジン耐性遺伝子を含む一連の細胞株が調製される。この目的のために、異なるIRESバリアントの制御下でEKRAB/TetRおよびiRFPをコードする遺伝子を含む組み込みカセットを構築し、前述のように半減期を調節するために異なるデグロンタグに融合する。得られた構築物を、既知の手順を使用して、RPE/IL-2細胞の染色体のRPE65の3’側に組み込み、RPE65の発現と関連付けられたEKRABまたはTetRを発現する一連の細胞株を生成する。プラグ・アンド・プレイアプローチを通して大型DNAカセットの迅速な生成を可能にするモジュールアセンブリツールキットが使用される。細胞を、ブラストサイジンを使用して選択し、安定細胞株を、EKRAB/TetRの制御下のGFPの発現のための一過的なトランスフェクションの際にiRFPのシグナルを監視し、組換えIFNγおよび/またはエリスロマイシン/テトラサイクリンで処理してEKRAB/TetRの組み込みを確かめることによって検証する。染色体への組み込みは、ゲノムPCRにより検証する。次に、EKRAB/TetRを発現する安定細胞株に、EKRAB/TetR(それぞれ、ETRおよびTO)の制御下で、アポトーシス促進性遺伝子であるbaxを発現させるためにトランスフェクトする。IRESを介して蛍光レポーター(eqFP650)に連結されたbaxをコードし、選択目的のためのピューロマイシン耐性を含むカセットを使用して、2A自己切断ペプチドを介してeqFP65に連結する。細胞を、ピューロマイシンを使用して選択し、単一クローンを、モノクローナル集団の選択のために増殖させる。細胞を組換えIFNγおよび/またはエリスロマイシン/テトラサイクリンに曝露する際に、eqFP650シグナルならびに早期および後期アポトーシスのマーカー(アネキシンVおよびPI結合)を監視して、baxの発現を確かめることによって、安定した細胞株を検証する。
【0204】
次いで、細胞蛍光、タンパク質レベル(IL-2レベルを含む)を、ウエスタンブロットおよびELISAアッセイを使用して、および配列決定分析を通して監視することによって、回路を検証する。次いで、培養培地中のIFNγの濃度、IL-2の産生、ならびに早期および後期アポトーシスのマーカーの間の関係を確立する。これらの測定値の結果は、回路の数理モデルを絞り込むために使用する。ここで開発されたPK/PDモデルに結合されたこれらの結果は、最適なインビボ性能をもたらすと予測される回路の設計ルールのさらなる絞り込みを可能にする。これらの設計ルールは、インビボで最適に機能すると予測されるEKRAB/TetRの翻訳速度および分解速度を有する安定細胞株の選択を知らせるものである。
【0205】
さらに、本研究で生成された細胞株は、記載のように、卵巣がんマウスモデルを使用してインビボで検証される。IPがんマウスモデルの各々において、10個の群を移植して、再現性および統計学的有意性を確保する。最初の試行は、ID8 Fluc腫瘍の使用に焦点を当て、KPCおよびBP腫瘍モデルを使用してリードを検証し、様々な変異負荷を有する腫瘍全体にわたる有効性を確保する。各IP腫瘍研究について、10匹のマウスの5つの群を使用して、抗腫瘍有効性および安全性を評価する。次いで、IL-2の投薬とIL-2産生細胞の自己破壊時間との間の相関を決定する。したがって、研究で開発された細胞株および適切な対照(RPE-IL2-IFNγ-KS、およびシャムの手術対照)を含むカプセルの5回の投薬を試験する。各群について3匹の追加のマウスを注射して、10匹の群が同様のサイズの腫瘍を有することを確実にする。130匹のC57BL/6マウス研究(N=(5つの実験群)×(n=13)=65匹のマウス)を研究する。各IPがん研究を、少なくとも1回繰り返し、結果の再現性を確保する。これらの研究が終了したら、血液およびIP細胞ならびに流体を、フローサイトメトリー測定ベースの免疫プロファイリングのために回収し、カプセルを外植し、画像化し、ELISAを使用してタンパク質産生についてアッセイする。
【0206】
この研究は、アポトーシスの遅延した活性化を誘導し、したがって、IFNγ応答の検出に対する治療応答の終了を誘導する、感知と応答の細胞デバイスを生成する。予測モデリングおよび実験的試験を統合することで、IFNγ応答の所望の活性化レベルを検出した際のアポトーシス応答の最適な調整のための細胞制御システムの設計ルールを定義することが可能になる。これらの結果は、患者固有の変動に対処するために時間的に調節されたIL-2送達の持続時間のためのインビボプラットフォームの設計を支持するであろう。
【0207】
実施例8 - インビボ連続フィードバック調節送達のための細胞ベースのプラットフォームの操作
IL-2受容体の検出時に生成されるフィードバックシグナルに基づいて、IL-2産生を連続的に調節する細胞デバイスを設計するために、中等度親和性IL-2βγ受容体を発現するRPE細胞を、STAT5活性化(IL-2βγ受容体の活性化時にJAK-STATシグナル伝達によって活性化される)に応答してIL-2発現を抑制するように操作した。このフレームワークは、IL-2レベルを中等度親和性受容体の活性化に必要な濃度に維持する機構を提供する。これらの細胞デバイスにおけるIL-2発現は、中等度親和性受容体を活性化するIL-2濃度が蓄積したときに速やかに中断し、血管漏出症候群につながる毒性をもたらすIL-2濃度の蓄積を防止すると仮定された。この目的のために、異なる回路トポロジーを、自己調整IL-2産生を達成するように設計した。この戦略は、免疫抑制効果のリスクなしに、または毒性量に到達することなく、より多くの用量のカプセルもしくはより多くの細胞数を有するカプセルを投与することを可能にし、患者のためのより堅牢で耐久性のある療法レジメンをもたらす。
【0208】
IL-2フィードバック制御機構の実現可能性を確立するために、IL-2レベルに応答して、STAT5によって媒介されるレポーター遺伝子(GFP)の制御を評価した。IL-2αβγ受容体を発現するHEK-293細胞(HEK-Blue(商標)IL-2細胞,InvivoGen)を、STAT5誘導性プロモーターの下で、IL-2およびGFPを構成的に発現するように操作した。STAT5(TTCtggGAA)のコンセンサス結合部位を含むSTAT5応答エレメント(STAT5-RE)をタンデム配置した。フローサイトメトリー分析により、IL-2を欠く対照細胞と比較して、GPFシグナルの劇的な増加が明らかになり(図12)、STAT5依存性出力のIL-2媒介性調節に基づいて、提案されたアプローチの実現可能性を示した。
【0209】
高親和性IL-2受容体の活性化に応答してIL-2の抑制を達成するために、図13A~Dに示されるように、STAT5の活性化に応答してIL-2産生の抑制を実行する、4つの合成回路トポロジーを設計した:(A)IL-2は、基底条件下で構成的に発現される。STAT5は、IL-2の発現を抑制するEKRABの発現を活性化する;(B)IL-2は、基底条件下でtTAによって活性化される。STAT5は、tTAの発現を抑制するEKRABの発現を活性化する;(C)IL-2は、tTAによって活性化され、STAT5は、EKRABの発現を活性化する。tTAおよびEKRABは、システムの二重安定性をもたらすと予想されるトグルスイッチ様の構成で互いに抑制する;(D)IL-2は、基底条件下でtTAによって活性化される。STAT5は、tTAの発現を抑制するEKRABの発現を活性化する。tTA自己増幅ループは、STAT5の不在下で(非誘導条件下で)、定常状態のtTAの産生を加速させると予想される。
【0210】
これらの設計を計算的に評価するために、タンパク質産生および分解を含む数理モデルを組み立てた。モデルの最初の反復では、JAK-STATシグナル伝達は、細胞外IL-2のレベルと転写的に活性なSTAT5の割合との間のヒル方程式によって記述される即時応答を仮定して、現象学的にモデル化される。オープンループ設定におけるトポロジーを最初に評価する。ここでは、外部制御されたIL-2レベルを有する環境に細胞が配置され、細胞内IL-2産生に影響を及ぼすこれらのIL-2レベルの変化が決定されると仮定した。予備的な結果は、異なるトポロジーが、異なるオープンループの用量応答曲線(図14A)および応答時間の差(図14A、挿入物)をもたらすことを示す。本発明者らの結果は、トポロジー「A」が、細胞外IL-2の変化に最速で応答するのに対し、トポロジー「C」は、最も急な用量応答曲線を有し、クローズドループモデルで堅牢性を示す典型的な特徴であることを示す。
【0211】
次に、IL-2の輸送流動を導入し、IL-2のIPレベルをSTATシグナルの入力とすることによって、細胞内モデルをPKモデルと結合した(図14B)。移植前にカプセル内の細胞が高レベルのIL-2を産生し、その結果、抑制された初期条件およびその後の移植がもたらされると仮定して得られたかかるモデルの結果は、IP空間へのIL-2の流動により、細胞が曝露されるIL-2のレベルが減少し、部分的な脱抑制および継続的なIL-2産生がもたらされることを示した(図14C)。感度分析は、すべての負のフィードバック回路が、投薬の変化、および移植後の細胞死に起因する産生の減少に対して改善された堅牢性を示すことを示した(図14C、挿入図)。細胞死後のIL-2の部分的な脱抑制は、治療ウィンドウを延長することができる。これらの予備的な結果は、トポロジー「A」の実験的試験を支持する。
【0212】
4つの回路トポロジー(図13)を実験的に試験するために、RPE細胞は、ヒトIL-2Rβ、IL-2Rγ遺伝子によるRPE細胞の安定なトランスフェクションを通して、IL-2シグナル伝達経路を発現するように操作され、それによって、中等度親和性IL-2受容体(RPE-ILR)の活性化をもたらすIL-2用量に応答する細胞株が生成される。図12のように、STA5応答性エレメントの制御下のGFPを用いた一過的なトランスフェクションにより、安定細胞株を検証する。
【0213】
IL-2フィードバック制御システムを開発し、特徴付け、数理モデルを微調整するために、トポロジーA、B、およびDの構築用に、STAT5によって調節されるか(図15A、上)、またはトポロジーCの構築用に、ハイブリッドプロモーターの制御下でSTAT5によって活性化されかつtTAによって抑制されるかのいずれかで、主要なレギュレーターであるEKRABを発現するRPEマスター細胞株を生成する(図15B、下)。EKRABの発現は、内部リボソーム進入部位(IRES)を介して、検出目的の蛍光レポーター(iRFP)の発現と関連付けられる。この研究で使用したIRESは、1:3のタンパク質発現比をもたらす。発現システムは、2A自己切断ペプチドを介してiRFPに連結された選択目的のブラストサイジン耐性遺伝子を含む。得られたEKRAB発現カセットは、プラスミドトランスフェクションを介して、RPE-IL2R細胞のゲノムに組み込まれる。細胞を、ブラストサイジンを使用して選択し、単一クローンを増殖させ、モノクローナル集団の選択のためにスクリーニングする。予備的なモデリングの結果により、関連する設計パラメータとして回路構成要素の発現レベルが指摘されたため、tTAの発現のための一過的なトランスフェクションおよび組換えIL-2による処置(STAT5を活性化するため)時のiRFPシグナルを監視することによって、モノクローナル集団をスクリーニングし、一過的なトランスフェクション/IL-2処置時に最大のiRFP動的範囲を示す細胞株を選択する。得られたモノクローナル集団(STAT RE_EKRAB[図15A、上]およびSTAT RE_TetO_EKRAB[図15A、下])は、回路構成要素のその後の組み込みのためのマスター細胞株として使用される。
【0214】
マスター細胞株STAT RE_EKRABおよびSTAT RE_TetO_EKRABは、IL-2、tTA、IL-2の発現を監視するための蛍光レポーター(GFP)、およびピューロマイシン耐性遺伝子をコードするカセットの迅速かつ容易な挿入のための「ランディングパッド」を確立するように操作される(図14B)。一対の直交セリンインテグラーゼによるゲノム組み込みを可能にするデュアルインテグラーゼカセット交換システム(DICE)を使用する。まず、自己切断ペプチド2Aを介して連結され、哺乳動物ユビキチンC(UBC)プロモーターの制御下にあるレポーター遺伝子(eqFP650)および選択マーカー(ゼオシン耐性遺伝子、Zeo)からなるランディングパッドカセットを調製する。このカセットは、phiC31インテグラーゼおよびBxb1インテグラーゼのためのattP認識部位に隣接する。CRISPR-Cas9編集ツールを使用して、ランディングパッドカセットを、AAVS1遺伝子座(ヒト細胞において十分に確立されたセーフハーバー遺伝子座)に組み込む。得られた細胞を、ゼオシンで選択し、モノクローナル集団を、「ランディングパッド」の安定的な組み込みについて、フローサイトメトリーによってスクリーニングする。染色体への組み込みを、ゲノムPCRにより検証する。
【0215】
続いて、「ランディングパッド」を含むマスター細胞株を使用して、eqFP650_Zeoカセットを、異なるプロモーター/オペレーターバリアント(図18B~D、淡灰色)からのIL-2/tTAをコードする遺伝子を含み、phiC31およびBxb1インテグラーゼ部位に隣接する、一連のカセットと交換することによって、IL-2/tTAの発現のための細胞株を生成する。プラグ・アンド・プレイアプローチを通して大型DNAカセットを迅速に生成するためのモジュールアセンブリツールキットが使用される。回路構成要素(すなわち、異なるプロモーター/オペレーターバリアントからのtTAおよびIL-2)の発現は、合成速度を調節することを可能にする。具体的には、STAT RE_EKRAB細胞に、(i)トポロジーAを生成するETR_IL-2_IRES_GFP[図18B](ii)トポロジーBを生成する7TO_IL-2_IRES_GFP_ETR_tTA[図14C]、(iii)トポロジー3を生成する7TO_IL-2_IRES_GFP_ETR_7TO_tTA[図14D]をコードする「デスティネーションベクター」をトランスフェクトする。STAT RE_TetO_EKRAB細胞に、(i)7TO_IL-2_IRES_GFP_ETR_tTA[図14C]をコードする「デスティネーションベクター」をトランスフェクトして、トポロジー4を生成することができる。すべてのトランスフェクション反応は、Phi31およびBxb1インテグラーゼをコードするベクターを含む。
【0216】
加えて、回路は、ウエスタンブロットアッセイおよびELISAアッセイを使用して、および配列解析を通して、細胞蛍光、タンパク質レベル(IL-2およびIFNγレベルを含む)を監視することによって検証される。細胞数および培養時間の関数として、STAT5活性(iRFPシグナルを監視することによって評価される)とIL-2産生(IL-2タンパク質レベルおよびGPFシグナルを監視することによって評価される)との間の相関を行う。これらの結果は、数理モデルを絞り込むために使用される。IL-2輸送のPKモデルと組み合わせて、本モデルは、IL-2産生のための堅牢なフィードバック制御システムの設計ルールをインビボで策定するために使用される。すると、これは、最適な回路設計および回路構成要素の発現レベルを有する安定細胞株の選択を導く。
【0217】
加えて、IL-2受容体媒介性フィードバックに基づいてIL-2発現が常に調整され、IFNγ応答の検出に基づいて細胞デバイスが時間的に調節される、細胞ベースのIL-2送達プラットフォームの使用を探索するために、IL-2産生細胞株を、トポロジーAで操作して、まず、RPE65の3’側の2A自己切断ペプチドを介してiRFPに連結されたTetRおよびブラストサイジン耐性遺伝子をコードするカセットを組み込む。得られた細胞を選択し、特徴付けて、TOの制御下のIRESを介して蛍光レポーター(eqFP650)に連結されたbaxおよび選択目的のピューロマイシン耐性をコードするプラスミドをトランスフェクトする。IL-2媒介性およびIFNγ媒介性の両方の制御システムを含む細胞株は、小分子誘導物質の関数として、ウエスタンブロットおよびELISAアッセイを使用して、細胞蛍光、タンパク質レベル(IL-2レベルを含む)を監視することによって検証される。
【0218】
この目的で構築された細胞療法は、卵巣がんマウスモデルを使用して検証される。IPがんマウスモデルの各々において、10個の群を移植して、再現性および統計学的有意性を確保する。最初の試行は、ID8 Fluc腫瘍に焦点を当て、続いて、KPCおよびBP腫瘍モデルを使用してリードを検証し、様々な変異負荷を有する腫瘍全体にわたる有効性を確保する。IL-2の投薬は、腫瘍療法または毒性の結果とは相関しないことが予想される。したがって、5つの構築物および適切な対照(RPE-IL2-REG-KS(5用量)、およびシャムの手術対照)の投薬を実施する。本試験における、130匹のC57BL/6マウス(N=(5つの実験群)×(n=13)=65匹のマウス)。各IPがん研究を、少なくとも1回繰り返し、結果の再現性を確保する。これらの研究の終了時に、フローサイトメトリー測定ベースの免疫プロファイリング用に血液およびIP細胞ならびに流体を採取し、カプセルを外植し、画像化し、ELISAを使用してタンパク質産生についてアッセイする。
【0219】
本明細書に開示および請求されるすべての方法は、本開示に照らして、過度の実験なしに作製および実施することができる。本発明の組成物および方法は、好ましい実施形態に関して説明されてきたが、当業者には、本明細書に記載の方法およびステップまたは方法の一連のステップに、本発明の概念、趣旨および範囲から逸脱することなく、変形例が適用され得ることが明らかであろう。より具体的には、化学的および生理学的の両方に関連する特定の薬剤が、同じまたは同様の結果が達成されるとともに、本明細書に記載の薬剤と置き換えられ得ることが明らかであろう。当業者に明らかなかかる類似の置換および変更はすべて、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の趣旨、範囲および概念の範囲内であるとみなされる。
【0220】
参考文献
以下の参考文献は、それらが本明細書に記載されたものを補足する例示的な手順または他の詳細を提供する範囲で、参照により本明細書に具体的に援用される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14A
図14B
図14C
図15
【配列表】
2023514201000001.app
【国際調査報告】