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特表2023-514204CDKL5欠損障害を処置するための遺伝子治療
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-05
(54)【発明の名称】CDKL5欠損障害を処置するための遺伝子治療
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/864 20060101AFI20230329BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20230329BHJP
   C12N 7/01 20060101ALI20230329BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20230329BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20230329BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230329BHJP
   A61P 25/08 20060101ALI20230329BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20230329BHJP
   A61P 25/20 20060101ALI20230329BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20230329BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20230329BHJP
   A61K 31/573 20060101ALI20230329BHJP
   A61K 38/48 20060101ALI20230329BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20230329BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20230329BHJP
   C07J 5/00 20060101ALN20230329BHJP
【FI】
C12N15/864 100Z
C12N15/63 Z ZNA
C12N7/01
A61K35/76
A61K9/08
A61P43/00 111
A61P25/08
A61P25/28
A61P25/20
A61P1/00
A61P11/00
A61P43/00 121
A61K31/573
A61K38/48
A61K48/00
A61K31/7088
C07J5/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022548652
(86)(22)【出願日】2021-02-11
(85)【翻訳文提出日】2022-09-21
(86)【国際出願番号】 US2021017656
(87)【国際公開番号】W WO2021163322
(87)【国際公開日】2021-08-19
(31)【優先権主張番号】62/976,483
(32)【優先日】2020-02-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/090,492
(32)【優先日】2020-10-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513252910
【氏名又は名称】ウルトラジェニックス ファーマシューティカル インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100143638
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷部 真久
(72)【発明者】
【氏名】ファイフ-マリチッチ, シャリル リン
(72)【発明者】
【氏名】フラー, マシュー スコット
(72)【発明者】
【氏名】ライト, マーガレット キャロライン
(72)【発明者】
【氏名】ストイカ, ローレライ イオアナ
(72)【発明者】
【氏名】クレイグ, スチュワート
(72)【発明者】
【氏名】ドーハティ, ショーン クリストファー
【テーマコード(参考)】
4B065
4C076
4C084
4C086
4C087
4C091
【Fターム(参考)】
4B065AA95X
4B065AA95Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065AC20
4B065BA02
4B065CA44
4B065CA60
4C076AA11
4C076AA95
4C076BB11
4C076BB13
4C076BB15
4C076BB16
4C076BB21
4C076CC01
4C076CC15
4C076CC16
4C076FF11
4C076FF68
4C084AA02
4C084AA03
4C084AA13
4C084BA44
4C084DC02
4C084MA16
4C084MA55
4C084MA65
4C084MA66
4C084NA05
4C084NA13
4C084NA14
4C084ZA02
4C084ZA05
4C084ZA06
4C084ZA15
4C084ZA59
4C084ZA66
4C084ZC41
4C084ZC51
4C084ZC75
4C086AA01
4C086AA02
4C086DA10
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA16
4C086MA55
4C086MA65
4C086MA66
4C086NA05
4C086NA13
4C086NA14
4C086ZA02
4C086ZA05
4C086ZA06
4C086ZA15
4C086ZA59
4C086ZA66
4C086ZC41
4C086ZC51
4C086ZC75
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB65
4C087CA12
4C087CA20
4C087MA16
4C087MA55
4C087MA65
4C087MA66
4C087NA05
4C087NA13
4C087NA14
4C087ZA02
4C087ZA05
4C087ZA06
4C087ZA15
4C087ZA59
4C087ZA66
4C087ZC41
4C087ZC51
4C087ZC75
4C091BB03
4C091BB05
4C091CC01
4C091DD01
4C091EE07
4C091FF01
4C091GG01
4C091HH01
4C091JJ03
4C091KK02
4C091KK12
4C091LL01
4C091MM03
4C091NN01
4C091PA02
4C091PA05
4C091PB02
4C091QQ01
(57)【要約】
本開示は、アデノ随伴ウイルスベクター、組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)、およびCDKL5欠損障害(CDD)を処置するための遺伝子治療におけるそれらの使用法を提供する。本発明のrAAVおよび薬学的に受容可能なキャリアまたは賦形剤を含む医薬組成物がまた、提供される。これらの医薬組成物は、CDKLにおける変異によって引き起こされるCDDの処置のための遺伝子治療において有用であり得る。本発明は、遺伝子治療における組成物およびそれらの使用法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)であって、ここで前記rAAVは、AAVキャプシドおよび前記AAVキャプシド内にパッケージされたベクターゲノムを含み、ここで前記ベクターゲノムは、
(a)プロモーター配列;および
(b)CDKL5のコード配列であって、ここで前記コード配列は、配列番号1、2、3、4、5、6、7、および8から選択される配列と少なくとも95%同一である配列を含むCDKL5のコード配列、
を含む、rAAV。
【請求項2】
前記AAVキャプシドは、血清型1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、rh10、またはhu37のAAVに由来する、請求項1に記載のrAAV。
【請求項3】
前記AAVキャプシドは、AAV9に由来する、請求項2に記載のrAAV。
【請求項4】
前記AAVキャプシドは、AAV8に由来する、請求項2に記載のrAAV。
【請求項5】
前記AAVキャプシドは、AAV9バリアントキャプシドである、請求項1に記載のrAAV。
【請求項6】
前記プロモーターは、ニューロン特異的プロモーターである、請求項1~5のいずれかに記載のrAAV。
【請求項7】
前記ニューロン特異的プロモーターは、ヒトシナプシン1(SYN1)プロモーター、マウスカルシウム/カルモジュリン依存性プロテインキナーゼII(CaMKII)プロモーター、ラットチューブリンαI(Ta1)プロモーター、ラットニューロン特異的エノラーゼ(NSE)プロモーター、ヒトニューロン特異的エノラーゼ(ENO2)プロモーター、ヒト血小板由来成長因子β鎖(PDGF)プロモーター、ヒトBM88プロモーター、およびニューロンニコチン性受容体β2(CHRNB2)プロモーターから選択される、請求項6に記載のrAAV。
【請求項8】
前記ニューロン特異的プロモーターは、前記ヒトSYN1プロモーターである、請求項7に記載のrAAV。
【請求項9】
前記ヒトSYN1プロモーターは、配列番号12を含む核酸配列を有する、請求項8に記載のrAAV。
【請求項10】
前記ヒトSYN1プロモーターは、配列番号12からなる核酸配列を有する、請求項8に記載のrAAV。
【請求項11】
前記プロモーターは、ニワトリβ-アクチン(CBA)プロモーター、サイトメガロウイルス(CMV)最初期遺伝子プロモーター、トランスサイレチン(TTR)プロモーター、サイロキシン結合グロブリン(TBG)プロモーター、およびα-1アンチトリプシン(A1AT)プロモーターから選択される、請求項1~5のいずれかに記載のrAAV。
【請求項12】
前記プロモーターは、前記CBAプロモーターである、請求項11に記載のrAAV。
【請求項13】
前記CBAプロモーターは、配列番号13を含む核酸配列を有する、請求項12に記載のrAAV。
【請求項14】
前記CBAプロモーターは、配列番号13からなる核酸配列を有する、請求項12に記載のrAAV。
【請求項15】
前記プロモーターは、CDKL5遺伝子特異的内因性プロモーターである、請求項1~5のいずれかに記載のrAAV。
【請求項16】
前記CDKL5遺伝子特異的内因性プロモーターは、少なくとも15個の連続するヌクレオチドのヌクレオチド配列であって、配列番号14の等しい長さの領域と少なくとも95%同一であるヌクレオチド配列を含む、請求項15に記載のrAAV。
【請求項17】
前記ベクターゲノムは、5’-ITR配列をさらに含む、請求項1~16のいずれかに記載のrAAV。
【請求項18】
前記ベクターゲノムは、3’-ITR配列をさらに含む、請求項1~17のいずれかに記載のrAAV。
【請求項19】
前記5’-ITR配列および/または前記3’-ITR配列は、AAV2に由来する、請求項17~18のいずれかに記載のrAAV。
【請求項20】
前記5’-ITR配列および前記3’-ITR配列は、配列番号11を含むかまたはそれからなる、請求項19に記載のrAAV。
【請求項21】
前記5’-ITR配列および/または前記3’-ITR配列は、非AAV2供給源に由来する、請求項17~18のいずれかに記載のrAAV。
【請求項22】
前記ベクターゲノムは、ポリアデニル化シグナル配列をさらに含む、請求項1~21のいずれかに記載のrAAV。
【請求項23】
前記ポリアデニル化シグナル配列は、SV40ポリアデニル化シグナル配列、ウシ成長ホルモン(BGH)ポリアデニル化シグナル配列、およびウサギβグロビンポリアデニル化シグナル配列から選択される、請求項22に記載のrAAV。
【請求項24】
前記ポリアデニル化シグナル配列は、前記SV40ポリアデニル化シグナル配列である、請求項23に記載のrAAV。
【請求項25】
前記SV40ポリアデニル化シグナル配列は、配列番号15を含むかまたはそれからなる、請求項24に記載のrAAV。
【請求項26】
前記ベクターゲノムは、1またはこれより多くのエンハンサー配列をさらに含む、請求項1~25のいずれかに記載のrAAV。
【請求項27】
前記エンハンサーは、サイトメガロウイルス(CMV)最初期遺伝子エンハンサー、トランスサイレチンエンハンサー(enTTR)、ニワトリβ-アクチン(CBA)エンハンサー、En34エンハンサー、およびアポリポタンパク質E(ApoE)エンハンサーから選択される、請求項26に記載のrAAV。
【請求項28】
前記エンハンサーは、前記CMV最初期遺伝子エンハンサーである、請求項27に記載のrAAV。
【請求項29】
前記エンハンサーは、配列番号17を含むかまたはそれからなる配列を有する、請求項28に記載のrAAV。
【請求項30】
前記エンハンサーは、前記プロモーター配列の上流に位置する、請求項26~29のいずれかに記載のrAAV。
【請求項31】
前記ベクターゲノムは、1またはこれより多くのイントロン配列をさらに含む、請求項1~30のいずれかに記載のrAAV。
【請求項32】
前記イントロンは、SV40 Small Tイントロン、ウサギヘモグロビンサブユニットβ(rHBB)イントロン、ヒトβグロビンIVS2イントロン、β-グロビン/IgGキメライントロン、およびhFIXイントロンから選択される、請求項31に記載のrAAV。
【請求項33】
前記イントロンは、前記SV40 Small Tイントロンである、請求項32に記載のrAAV。
【請求項34】
前記SV40 Small Tイントロンは、配列番号18を含むかまたはそれからなる配列を有する、請求項33に記載のrAAV。
【請求項35】
前記請求項のいずれかに記載のrAAVおよび薬学的に受容可能なキャリアを含む医薬組成物。
【請求項36】
ヒト被験体においてCDKL5欠損障害(CDD)を処置する方法であって、前記方法は、前記ヒト被験体に、治療上有効な量の、請求項1~34のいずれかに記載のrAAVまたは請求項35に記載の組成物を投与することを包含する方法。
【請求項37】
前記rAAVまたは前記組成物は、皮下に、筋肉内に、皮内に、腹腔内に、髄腔内に、脳室内に、静脈内に、または大槽内送達を介して投与される、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記rAAVまたは前記組成物は、髄腔内に投与される、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記rAAVまたは前記組成物は、大槽内送達を介して投与される、請求項37に記載の方法。
【請求項40】
前記rAAVは、約1×1011~約1×1014 ゲノムコピー(GC)/kgの用量で投与される、請求項37~39のいずれかに記載の方法。
【請求項41】
ヒト被験体においてCDKL5欠損障害(CDD)を処置する方法であって、前記方法は、前記ヒト被験体に、コルチコステロイドを先ず投与すること、および次いで、治療上有効な量の組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)を引き続いて投与することを包含し、ここで前記rAAVは、AAVキャプシドおよび前記AAVキャプシド内にパッケージされたベクターゲノムを含み、ここで前記ベクターゲノムは、プロモーター配列およびCDKL5のコード配列を含む、方法。
【請求項42】
ヒト被験体においてCDKL5欠損障害(CDD)を処置する方法であって、前記方法は、
ヒト被験体に、治療上有効な量の組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)を投与すること、
を包含し、
ここで前記rAAVは、AAVキャプシドおよび前記AAVキャプシド内にパッケージされたベクターゲノムを含み、
ここで前記ベクターゲノムは、プロモーター配列およびCDKL5のコード配列を含み、
ここで前記ヒト被験体は、コルチコステロイドを投与されている、
方法。
【請求項43】
ヒト被験体においてCDKL5欠損障害(CDD)を処置する方法であって、前記方法は、前記ヒト被験体に、コルチコステロイドを先ず投与すること、および次いで、治療上有効な量の請求項1~34のいずれかに記載のrAAVまたは請求項35に記載の組成物を引き続いて投与することを包含する方法。
【請求項44】
ヒト被験体においてCDKL5欠損障害(CDD)を処置する方法であって、前記方法は、治療上有効な量の、請求項1~34のいずれかに記載のrAAVまたは請求項35に記載の組成物を投与することを包含し、ここで前記ヒト被験体は、コルチコステロイドを投与されている、方法。
【請求項45】
前記コルチコステロイドは、プレドニゾロン、プレドニゾン、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン、トリアムシノロン、メチルプレドニゾロン、ブデソニド、ベタメタゾン、およびデフラザコートから選択される、請求項41~44のいずれかに記載の方法。
【請求項46】
前記コルチコステロイドは、プレドニゾロンである、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
ヒト被験体においてCDKL5欠損障害(CDD)を処置する方法であって、前記方法は、前記ヒト被験体に、IgG分解プロテアーゼを先ず投与すること、および次いで、治療上有効な量の、請求項1~34のいずれかに記載のrAAVまたは請求項35に記載の組成物を引き続いて投与することを包含する方法。
【請求項48】
ヒト被験体においてCDKL5欠損障害(CDD)を処置する方法であって、前記方法は、治療上有効な量の、請求項1~34のいずれかに記載のrAAVまたは請求項35に記載の組成物を投与することを包含し、ここで前記ヒト被験体は、IgG分解プロテアーゼを投与されている方法。
【請求項49】
前記IgG分解プロテアーゼは、Streptococcus pyogenesのIdeSまたはその操作されたバリアントである、請求項47または48に記載の方法。
【請求項50】
前記IgG分解プロテアーゼは、Streptococcus equiのIdeZまたはその操作されたバリアントである、請求項47または48に記載の方法。
【請求項51】
配列番号19の配列と少なくとも95%同一の核酸配列を含む、ポリヌクレオチド。
【請求項52】
配列番号19の配列と少なくとも95%同一の核酸配列を含む、ポリヌクレオチド。
【請求項53】
核酸配列が配列番号19を含むポリヌクレオチド。
【請求項54】
核酸配列が配列番号19からなるポリヌクレオチド。
【請求項55】
配列番号20と少なくとも95%同一の核酸配列を含む、ポリヌクレオチド。
【請求項56】
核酸配列が配列番号20を含むポリヌクレオチド。
【請求項57】
核酸配列が配列番号20からなるポリヌクレオチド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年2月14日出願の米国仮特許出願第62/976,483号;および2020年10月12日出願の米国仮特許出願第63/090,492号(これらの開示は、全ての目的のためにそれらの全体において本明細書に参考として援用される)の利益および優先権を主張する。
【0002】
配列表
本出願は、ASCII形式において電子提出され、その全体において参考として援用される配列表を含む。上記ASCIIコピー(作成日:2021年2月8日)は、名称ULP-007WO_SL.txtであり、大きさが80,765バイトである。
【0003】
発明の技術分野
本開示は一般に、組換えアデノ随伴ウイルスベクター、組換えアデノ随伴ウイルス、およびCDKL5欠損障害を処置するための遺伝子治療におけるそれらの使用法に関する。
【背景技術】
【0004】
発明の背景
CDKL5欠損障害(CDD)は、広い範囲の臨床症状および重篤度において出現し得るCDKL5遺伝子における変異によって引き起こされる希少神経発達性疾患である。CDDの特徴としては、乳児発症難治性てんかん、発達遅延、知的障害、視覚障害、失語、緊張低下、運動機能障害、睡眠障害、消化管機能障害、および呼吸困難が挙げられる。希少であるにもかかわらず、その発生は、40,000~60,000人の生児出生においておよそ1人であると考えられ、遺伝性のてんかんの最も一般的な形態のうちの1つになっている。
【0005】
CDKL5遺伝子は、正常な脳の発生および機能に必須であるサイクリン依存性キナーゼ様5(CDKL5)タンパク質をコードする。CDKL5タンパク質は、脳におけるニューロンの形成、成長、および移動に関与する。それは、脳において、主に、ニューロンおよび樹状突起において広く発現され、細胞増殖、ニューロン移動、軸索成長、樹状突起の形態形成、およびシナプス発生において役割を有する。
【0006】
CDDは、欠失、短縮、スプライスバリアント、およびミスセンス変異を含むCDKL5遺伝子における病原性のバリアントによって引き起こされる。Olsonら, 2019, Pediatric Neurology 97: 18-25を参照のこと。これらのバリアントは、機能的CDKL5タンパク質の量を低減し得るおよび/またはニューロンにおけるその活性を減少させ得る。CDKL5遺伝子において150を超える変異が、CDDを引き起こすことが見出されている。Del Rossoら, 2017, The EuroBiotech Journal 1(2): 122-127を参照のこと。
【0007】
今日までに、CDDの根底にある原因、すなわち、CDKL5の欠損症に対処する処置は存在しない。現在では、CDD患者は、顕著な運動機能障害および知的障害に起因して、24時間年中無休のケア(24/7 care)を概して必要とする。さらに、CDD患者が経験する発作は、代表的には、既存の抗てんかん薬で十分に制御されない。よって、上記疾患-機能的CDKL5の欠損症-の根底にある原因に対処する治療アプローチが至急必要である。
本発明は、CDDを有する患者への、機能的CDKL5をコードする遺伝子の移入を媒介するアデノ随伴ウイルスベクターの作製を介して、この必要性に対処する。本発明はまた、機能的CDKL5をコードする遺伝子を、CDDを有する患者に送達する組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)の作製を説明する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Olsonら, 2019, Pediatric Neurology 97: 18-25
【非特許文献2】Del Rossoら, 2017, The EuroBiotech Journal 1(2): 122-127
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明の要旨
本発明は、遺伝子治療における組成物およびそれらの使用法を提供する。より具体的には、CDDの処置に有用な、アデノ随伴ウイルス(AAV)キャプシドおよび上記AAVキャプシド内にパッケージされたベクターゲノムを含む組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)が、本明細書で提供される。
【0010】
1つの局面において、本開示は、AAVキャプシドおよび上記AAVキャプシド内にパッケージされたベクターゲノムを含む組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)であって、ここで上記ベクターゲノムは、(a)プロモーター配列および(b)CDKL5もしくはそのアイソフォーム、またはその機能的フラグメントもしくは機能的バリアントの部分的なまたは完全なコード配列を含む、rAAVを提供する。
【0011】
別の局面において、本開示は、AAVキャプシドおよび上記AAVキャプシド内にパッケージされたベクターゲノムを含む組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)であって、ここで上記ベクターゲノムは、(a)5’-逆方向末端反復配列(5’-ITR)配列;(b)プロモーター配列;(c)CDKL5もしくはそのアイソフォーム、またはその機能的フラグメントもしくは機能的バリアントの部分的なまたは完全なコード配列;および(d)3’-逆方向末端反復配列(3’-ITR)配列を含む、rAAVを提供する。
【0012】
さらに別の局面において、本開示は、AAVキャプシドおよび上記AAVキャプシド内にパッケージされたベクターゲノムを含むrAAVであって、ここで上記ベクターゲノムは、(a)5’-ITR配列;(b)プロモーター配列;(c)CDKL5もしくはそのアイソフォーム、またはその機能的フラグメントもしくは機能的バリアントの部分的なまたは完全なコード配列;(d)ポリアデニル化シグナル配列;および(e)3’-ITR配列を含む、rAAVを提供する。
【0013】
さらに別の局面において、本開示は、AAVキャプシドおよび上記AAVキャプシド内にパッケージされたベクターゲノムを含むrAAVであって、ここで上記ベクターゲノムは、(a)5’-ITR配列;(b)エンハンサー配列;(c)プロモーター配列;(d)イントロン配列;(e)CDKL5もしくはそのアイソフォーム、またはその機能的フラグメントもしくは機能的バリアントの部分的なまたは完全なコード配列;(f)ポリアデニル化シグナル配列;および(g)3’-ITR配列を含む、rAAVを提供する。
【0014】
1つの実施形態において、CDKL5の上記部分的なまたは完全なコード配列は、野生型コード配列である。代替の実施形態において、CDKL5の上記部分的なまたは完全なコード配列は、コドン最適化されたコード配列である。1つの例示的な実施形態において、CDKL5の上記部分的なまたは完全なコード配列は、ヒトにおける発現のためにコード最適化される。いくつかの実施形態において、CDKL5の上記部分的なまたは完全なコード配列は、配列番号1~8から選択される配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%またはこれより高く同一である配列を含む。
【0015】
いくつかの実施形態において、本開示は、AAVキャプシドおよび上記AAVキャプシド内にパッケージされたベクターゲノムを含むrAAVであって、ここで上記ベクターゲノムは、(a)プロモーター配列および(b)配列番号1、2、3、4、5、6、7、および8から選択される配列と少なくとも95%同一である配列を含むCDKL5のコード配列を含む、rAAVを提供する。
【0016】
いくつかの実施形態において、CDKL5は、配列番号1に示される野生型コード配列によってコードされる。別の実施形態において、CDKL5のバリアントまたは代替の天然のアイソフォームを発現するコード配列が使用され得る(例えば、配列番号2に示されるコード配列)。ある特定の実施形態において、CDKL5は、コドン最適化されたコード配列によってコードされる。いくつかの実施形態において、CDKL5は、配列番号1または配列番号2に示される野生型コード配列と80%未満同一であるコドン最適化されたコード配列によってコードされる。いくつかの例示的な実施形態において、CDKL5は、配列番号3~8から選択されるコドン最適化されたコード配列によってコードされる。いくつかの実施形態において、CDKL5は、配列番号3~8から選択される配列と少なくとも80%同一であるコドン最適化されたコード配列によってコードされる。いくつかの実施形態において、CDKL5は、配列番号3~8から選択される配列と少なくとも90%同一であるコドン最適化されたコード配列によってコードされる。いくつかの実施形態において、CDKL5は、配列番号3~8から選択される配列と少なくとも95%同一であるコドン最適化したコード配列によってコードされる。いくつかの実施形態において、CDKL5の上記コード配列は、3’末端において終止コドン(TGA、TAA、またはTAG)をさらに含み得る。いくつかの実施形態において、その発現されるCDKL5タンパク質は、配列番号9のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる。いくつかの実施形態において、その発現されるCDKL5タンパク質は、配列番号10のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる。
【0017】
いくつかの実施形態において、上記プロモーターは、ニューロン特異的プロモーターである。1つの実施形態において、上記ニューロン特異的プロモーターは、ヒトシナプシン1(SYN1)プロモーター、マウスカルシウム/カルモジュリン依存性プロテインキナーゼII(CaMKII)プロモーター、ラットチューブリンαI(Ta1)プロモーター、ラットニューロン特異的エノラーゼ(NSE)プロモーター、ヒトニューロン特異的エノラーゼ(ENO2)プロモーター、ヒト血小板由来成長因子β鎖(PDGF)プロモーター、ヒトBM88プロモーター、およびニューロンニコチン性受容体β2(CHRNB2)プロモーターから選択される。
【0018】
例示的な実施形態において、上記ニューロン特異的プロモーターは、SYN1プロモーター(例えば、ヒトSYN1プロモーター)である。1つの実施形態において、上記SYN1プロモーター(例えば、ヒトSYN1プロモーター)は、配列番号12を含むかまたはそれからなる核酸配列を有する。
【0019】
いくつかの実施形態において、上記プロモーターは、ニワトリβ-アクチン(CBA)プロモーター、サイトメガロウイルス(CMV)最初期遺伝子プロモーター、トランスサイレチン(TTR)プロモーター、サイロキシン結合グロブリン(TBG)プロモーター、およびα-1アンチトリプシン(A1AT)プロモーターから選択される。
【0020】
例示的な実施形態において、上記プロモーターは、上記CBAプロモーターである。1つの実施形態において、上記CBAプロモーターは、配列番号13を含むかまたはそれからなる核酸配列を有する。
【0021】
いくつかの実施形態において、上記プロモーターは、遺伝子特異的内因性プロモーターである。1つの実施形態において、上記プロモーターは、天然の遺伝子プロモーターエレメントを含む。例示的な実施形態において、上記プロモーターは、少なくとも15個の連続するヌクレオチドのヌクレオチド配列を含み、配列番号14の等しい長さの領域と少なくとも95%同一である、CDKL5遺伝子特異的内因性プロモーターである。
【0022】
いくつかの実施形態において、上記パッケージされたベクターゲノムは、5’-ITR配列および/または3’-ITR配列を含む。ある特定の実施形態において、上記5’-ITR配列は、AAV2に由来する。いくつかの実施形態において、上記3’-ITR配列は、AAV2に由来する。いくつかの実施形態において、上記5’-ITR配列および/または上記3’-ITR配列は、AAV2に由来する。いくつかの実施形態において、上記5’-ITR配列および/または上記3’-ITR配列は、配列番号11を含むかまたはそれからなる。他の実施形態において、上記5’-ITR配列および/または上記3’-ITR配列は、非AAV2供給源に由来する。
【0023】
いくつかの実施形態において、上記パッケージされたベクターゲノムは、ポリアデニル化シグナル配列を含む。1つの実施形態において、上記ポリアデニル化シグナル配列は、SV40ポリアデニル化シグナル配列、ウシ成長ホルモン(BGH)ポリアデニル化シグナル配列、およびウサギβグロビンポリアデニル化シグナル配列から選択される。例示的な実施形態において、上記ポリアデニル化シグナル配列は、SV40ポリアデニル化シグナル配列である。1つの実施形態において、上記SV40ポリアデニル化シグナル配列は、配列番号15を含むかまたはそれからなる。
【0024】
いくつかの実施形態において、上記パッケージされたベクターゲノムは、コンセンサスKozak配列を含む。1つの実施形態において、上記コンセンサスKozak配列は、GCCGCCACC(配列番号16)である。ある特定の実施形態において、上記コンセンサスKozak配列は、CDKL5のコード配列の上流に位置する。
【0025】
いくつかの実施形態において、上記パッケージされたベクターゲノムは、1またはこれより多くのエンハンサー配列を含む。1つの実施形態において、上記エンハンサーは、サイトメガロウイルス(CMV)最初期遺伝子エンハンサー、トランスサイレチンエンハンサー(enTTR)、ニワトリβ-アクチン(CBA)エンハンサー、En34エンハンサー、およびアポリポタンパク質E(ApoE)エンハンサーから選択される。例示的な実施形態において、上記エンハンサーは、CMVエンハンサー(例えば、上記CMV最初期遺伝子エンハンサー)である。1つの実施形態において、上記CMVエンハンサー(例えば、上記CMV最初期遺伝子エンハンサー)は、配列番号17を含むかまたはそれからなる配列を有する。ある特定の実施形態において、上記エンハンサーは、上記プロモーター配列の上流に位置する。
【0026】
いくつかの実施形態において、上記パッケージされたベクターゲノムは、1またはこれより多くのイントロン配列を含む。1つの実施形態において、上記イントロンは、SV40 Small Tイントロン、ウサギヘモグロビンサブユニットβ(rHBB)イントロン、ヒトβグロビンIVS2イントロン、β-グロビン/IgGキメライントロン、およびhFIXイントロンから選択される。1つの例示的な実施形態において、上記イントロンは、上記SV40 Small Tイントロンである。1つの実施形態において、上記SV40 Small Tイントロン配列は、配列番号18を含むかまたはそれからなる。
【0027】
いくつかの実施形態において、上記AAVキャプシドは、血清型1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、rh10、hu37のAAV(すなわち、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、AAVrh10、AAVhu37)、またはその操作されたバリアントに由来する。例示的な実施形態において、上記AAVキャプシドは、AAV血清型9(AAV9)キャプシド、AAV9バリアントキャプシド、AAV血清型8(AAV8)キャプシド、AAV8バリアントキャプシド、またはAAV血清型hu37(AAVhu37)キャプシドである。
【0028】
いくつかの局面において、本開示は、CDKL5をコードする新規なコドン最適化した核酸配列を提供する。1つの実施形態において、CDKL5をコードするコドン最適化した核酸配列は、配列番号1または配列番号2に示される野生型コード配列と80%未満同一である。いくつかの実施形態において、CDKL5をコードするコドン最適化した核酸配列は、配列番号3~8から選択される配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%またはこれより高く同一である。いくつかの実施形態において、本開示は、配列番号1または配列番号2に示される野生型コード配列と80%未満同一であり、配列番号3~8から選択される配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%またはこれより高く同一である核酸配列を提供する。例示的な実施形態において、本開示は、配列番号3~8から選択される配列から選択されるCDKL5をコードする核酸配列を提供する。機能的CDKL5活性を有するポリペプチドをコードする、配列番号3~8に示される核酸配列のフラグメントがさらに提供される。いくつかの実施形態において、CDKL5をコードする核酸配列は、3’末端に終止コドン(TGA、TAA、またはTAG)をさらに含み得る。
【0029】
いくつかの局面において、本開示は、CDDの処置において有用な新規なベクターゲノム構築物を提供する。いくつかの実施形態において、本開示は、配列番号19~20から選択される核酸配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%またはこれより高く同一であるCDKL5をコードするベクターゲノム構築物(すなわち、ポリヌクレオチド)を提供する。1つの実施形態において、本開示は、配列番号19と少なくとも95%同一の核酸配列を含むポリヌクレオチドを提供する。1つの実施形態において、本開示は、核酸配列が、配列番号19を含むかまたはそれからなるポリヌクレオチドを提供する。1つの実施形態において、本開示は、配列番号20と少なくとも95%同一の核酸配列を含むポリヌクレオチドを提供する。別の実施形態において、本開示は、核酸配列が、配列番号20を含むかまたはそれからなるポリヌクレオチドを提供する。
【0030】
ある特定の実施形態において、本開示は、CDDの処置における遺伝子治療のための薬剤として有用な組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)を提供し、ここで上記rAAVは、AAVキャプシドおよび上記AAVキャプシド内にパッケージされる本明細書で記載されるとおりのベクターゲノムを含む。いくつかの実施形態において、上記AAVキャプシドは、血清型1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、rh10、hu37のAAV(すなわち、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、AAVrh10、AAVhu37)、またはその操作されたバリアントに由来する。例示的な実施形態において、上記AAVキャプシドは、AAV血清型9(AAV9)キャプシド、AAV9バリアントキャプシド、AAV血清型8(AAV8)キャプシド、AAV8バリアントキャプシド、またはAAV血清型hu37(AAVhu37)キャプシドである。
【0031】
ある特定の実施形態において、本開示は、CDKL5欠損障害(CDD)の処置に有用なrAAVを提供し、ここで上記rAAVは、AAVキャプシドおよび上記AAVキャプシド内にパッケージされたベクターゲノムを含み、ここで上記ベクターゲノムは、(a)プロモーター配列および(b)CDKL5もしくはそのアイソフォーム、またはその機能的フラグメントもしくは機能的バリアントの部分的なまたは完全なコード配列を含む。いくつかの実施形態において、CDKL5の上記コード配列は、配列番号1~8から選択される配列と少なくとも95%同一である配列を含む。
【0032】
ある特定の実施形態において、本開示は、CDKL5欠損障害(CDD)の処置に有用なrAAVを提供し、ここで上記rAAVは、AAVキャプシドおよび上記AAVキャプシド内にパッケージされたベクターゲノムを含み、ここで上記ベクターゲノムは、(a)5’-ITR配列;(b)プロモーター配列;(c)配列番号1~8から選択される配列と少なくとも95%同一である配列を含むCDKL5のコード配列;(d)ポリアデニル化シグナル配列;および(e)3’-ITR配列を含む。
【0033】
ある特定の実施形態において、本開示は、CDKL5欠損障害(CDD)の処置に有用なrAAVを提供し、ここで上記rAAVは、AAV9キャプシドおよび上記AAV9キャプシド内にパッケージされたベクターゲノムを含み、ここで上記ベクターゲノムは、(a)5’-ITR配列;(b)プロモーター配列;(c)配列番号1~8から選択される配列と少なくとも95%同一である配列を含むCDKL5のコード配列;(d)ポリアデニル化シグナル配列;および(e)3’-ITR配列を含む。
【0034】
ある特定の実施形態において、本開示は、CDKL5欠損障害(CDD)の処置に有用なrAAVを提供し、ここで上記rAAVは、AAV9キャプシドおよび上記AAV9キャプシド内にパッケージされたベクターゲノムを含み、ここで上記ベクターゲノムは、(a)AAV2 5’-ITR配列;(b)SYN1プロモーター配列(例えば、ヒトSYN1プロモーター配列);(c)配列番号1~8から選択される配列と少なくとも95%同一である配列を含むCDKL5のコード配列;(d)SV40ポリアデニル化シグナル配列;および(e)AAV2 3’-ITR配列を含む。例示的な実施形態において、CDKL5の上記コード配列は、配列番号1を含むかまたはそれからなる。
【0035】
ある特定の実施形態において、本開示は、CDKL5欠損障害(CDD)の処置に有用なrAAVを提供し、ここで上記rAAVは、AAV9キャプシドおよび上記AAV9キャプシド内にパッケージされたベクターゲノムを含み、ここで上記ベクターゲノムは、(a)5’-ITR配列;(b)エンハンサー配列;(c)プロモーター配列;(d)イントロン配列;(e)配列番号1~8から選択される配列と少なくとも95%同一である配列を含むCDKL5のコード配列;(f)ポリアデニル化シグナル配列;および(g)3’-ITR配列を含む。
【0036】
ある特定の実施形態において、本開示は、CDKL5欠損障害(CDD)の処置に有用なrAAVを提供し、ここで上記rAAVは、AAV9キャプシドおよび上記AAV9キャプシド内にパッケージされたベクターゲノムを含み、ここで上記ベクターゲノムは、(a)AAV2 5’-ITR配列;(b)CMVエンハンサー配列(例えば、CMV最初期遺伝子配列);(c)CBAプロモーター配列;(d)SV40 Small Tイントロン配列;(e)配列番号1~8から選択される配列と少なくとも95%同一である配列を含むCDKL5のコード配列;(f)SV40ポリアデニル化シグナル配列;および(g)AAV2 3’-ITR配列を含む。例示的な実施形態において、CDKL5の上記コード配列は、配列番号1を含むかまたはそれからなる。
【0037】
いくつかの局面において、本開示は、CDDの処置のための本明細書で開示されるrAAVの使用を提供し、ここで上記rAAVは、AAVキャプシドおよび上記AAVキャプシド内にパッケージされたベクターゲノムを含む。いくつかの実施形態において、上記rAAVは、5’-ITR、プロモーター配列、CDKL5もしくはそのアイソフォーム、またはその機能的フラグメントもしくは機能的バリアントの部分的なまたは完全なコード配列、および3’-ITRを、作動可能に連結された構成要素として含むパッケージされたゲノムを含む。いくつかの実施形態において、上記パッケージされたゲノムはまた、以下のエレメントのうちの少なくとも1つを含む:(a)上記プロモーター配列の上流にあるエンハンサー配列、(b)上記プロモーターの下流にあるイントロン、および(c)上記3’-ITRの上流にあるポリアデニル化配列。1つの例示的な実施形態において、上記rAAVは、AAV2 5’-ITR配列、SYN1プロモーター(例えば、ヒトSYN1プロモーター)、CDKL5のコード配列、SV40ポリアデニル化シグナル配列、およびAAV2 3’-ITRを作動可能に連結された構成要素として含むパッケージされたゲノムを含む。いくつかの実施形態において、CDKL5の上記コード配列は、配列番号1~8から選択される配列と少なくとも95%同一である配列を含む。いくつかの実施形態において、上記キャプシドは、AAV9キャプシドである。
【0038】
本開示はさらに、本明細書で開示されるrAAVを含む医薬組成物に関する。いくつかの実施形態において、上記医薬組成物は、薬学的に受容可能なキャリアまたは賦形剤を含む。いくつかの実施形態において、rAAVを含む上記医薬組成物は、皮下、筋肉内、皮内、腹腔内、髄腔内、脳室内、静脈内投与するために製剤化される。例示的な実施形態において、上記医薬組成物は、髄腔内投与のために製剤化される。
【0039】
さらに別の局面において、本開示は、ヒト被験体においてCDDを処置する方法であって、上記方法は、上記ヒト被験体に、治療上有効な量の、少なくとも1種の本明細書で開示されるrAAVを投与することを包含する方法を提供する。1つの実施形態において、本開示は、CDDを処置する方法であって、上記方法は、AAVキャプシドおよび上記AAVキャプシド内にパッケージされたベクターゲノムを含むrAAVを投与することを包含し、ここで上記ベクターゲノムは、CDKL5またはそのアイソフォーム、またはその機能的フラグメントもしくは機能的バリアントの部分的なまたは完全なコード配列を含む方法を提供する。いくつかの実施形態において、上記方法は、上記rAAVを投与する前に、IgG分解プロテアーゼ(例えば、Streptococcus pyogenes IdeSまたはStreptococcus equi IdeZ)の投与をさらに包含し得る。いくつかの実施形態において、本開示は、ヒト被験体においてCDKL5欠損障害(CDD)を処置する方法であって、上記方法は、治療上有効な量の、少なくとも1種の本明細書で開示されるrAAVを投与することを包含し、ここで上記ヒト被験体は、IgG分解プロテアーゼを投与されている、方法を提供する。
【0040】
さらに別の局面において、本開示は、ヒト被験体においてCNS障害を処置する方法であって、上記方法は、上記被験体に、コルチコステロイドを先ず投与すること、および次いで、治療上有効な量の、上記CNSの処置のために設計された少なくとも1種のrAAVを引き続いて投与することを包含し、ここで上記rAAVは、髄腔内に、脳室内に、または大槽内(intracisterna magna)送達を介して投与される方法を提供する。いくつかの実施形態において、本開示は、ヒト被験体においてCDKL5欠損障害(CDD)を処置する方法であって、上記方法は、ヒト被験体に、治療上有効な量の組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)を投与することを包含し、ここで上記rAAVは、AAVキャプシドおよび上記AAVキャプシド内にパッケージされたベクターゲノムを含み、ここで上記ベクターゲノムは、プロモーター配列およびCDKL5のコード配列を含み、ここで上記ヒト被験体は、コルチコステロイドを投与されている方法を提供する。1つの実施形態において、上記コルチコステロイドは、プレドニゾロン、プレドニゾン、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン、トリアムシノロン、メチルプレドニゾロン、ブデソニド、ベタメタゾン、およびデフラザコートから選択される。例示的な実施形態において、上記コルチコステロイドは、プレドニゾロンである。1つの実施形態において、上記CNS障害は、CDD、アンジェルマン症候群、バッテン病、クラッベ病、パーキンソン病、アルツハイマー病、脊髄性筋萎縮症(SMA)I型、II型、III型、およびIV型、X連鎖性ミオチュブラーミオパチー、フリードライヒ運動失調症、カナバン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、副腎白質ジストロフィー、ハンチントン病、レット症候群、ならびに脊髄小脳失調症から選択される。例示的な実施形態において、上記CNS障害は、CDDであり、上記rAAVは、本明細書で記載されるCDDの処置のために有用なrAAVを含む。
【0041】
ある特定の実施形態において、本開示は、ヒト被験体においてCDDを処置する方法であって、上記方法は、CDKL5において少なくとも1つの変異を有すると診断されたヒト被験体に、治療上有効な量の少なくとも1種の本明細書で開示されるrAAVを投与することを包含する方法を提供する。1つの実施形態において、本開示は、CDKL5において少なくとも1つの変異を有すると診断されたヒト被験体においてCDDを処置する方法であって、上記方法は、AAVキャプシドおよび上記AAVキャプシド内にパッケージされたベクターゲノムを含むrAAVを投与することを包含し、ここで上記ベクターゲノムは、CDKL5またはそのアイソフォーム、またはその機能的フラグメントもしくは機能的バリアントの部分的なまたは完全なコード配列を含む方法を提供する。いくつかの実施形態において、CDKL5の上記コード配列は、配列番号1~8から選択される。いくつかの実施形態において、上記キャプシドは、AAV9キャプシドである。
【0042】
いくつかの実施形態において、上記rAAVは、皮下に、筋肉内に、皮内に、腹腔内に、髄腔内に、脳室内に、静脈内に、または大槽内送達を介して投与される。例示的な実施形態において、上記rAAVは、髄腔内に投与される。別の例示的な実施形態において、上記rAAVは、大槽を介して投与される。いくつかの実施形態において、上記rAAVは、約1×1011~約1×1014 ゲノムコピー(GC)/kgの用量で投与される。さらなる実施形態において、上記rAAVは、約1×1012~約1×1013 ゲノムコピー(GC)/kgの用量で投与される。いくつかの実施形態において、単回用量のrAAVが投与される。他の実施形態において、複数回用量のrAAVが投与される。
【0043】
いくつかの局面において、組換え核酸分子、AAVベクター、または本明細書で開示されるrAAVを含む宿主細胞が、本明細書で提供される。具体的実施形態において、上記宿主細胞は、AAVの増殖に適切であり得る。ある特定の実施形態において、上記宿主細胞は、HeLa細胞、Cos-7細胞、HEK293細胞、A549細胞、BHK細胞、Vero細胞、RD細胞、HT-1080細胞、ARPE-19細胞、およびMRC-5細胞から選択される。
【0044】
本開示のこれらおよび他の局面ならびに特徴は、本出願の以下の節において記載される。
【0045】
本発明は、以下の図面を参照してより完全に理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0046】
図1図1は、SYNプロモーターの制御下でCDKL5のコード配列を含む第1の例示的なパッケージされたベクターゲノム構築物を示す説明図である。図中で使用した略語: ITR- 逆方向末端反復; hSyn- ヒトシナプシン1プロモーター; SV40ポリ(A)シグナル- SV40ポリアデニル化シグナル。
【0047】
図2図2は、ニワトリβ-アクチン(CBA)プロモーターの制御下でCDKL5のコード配列を含む第2の例示的なパッケージされたベクターゲノム構築物を示す説明図である。図中で使用した略語: ITR- 逆方向末端反復; CMV- サイトメガロウイルス; SV40ポリ(A)シグナル- SV40ポリアデニル化シグナル。
【0048】
図3図3は、ヒトCDKL5が、Neuro2a細胞をプラスミドDNAでトランスフェクションした後に過剰発現される場合のホスホ-EB2(pEB2)レベルの変化を示す画像である。EB2(CDKL5の下流の標的)は、ヒトCDKL5がこれらの細胞において過剰発現される場合に、リン酸化の増加を示す。左の2つのパネルは、非処理細胞を表す。右の2つのパネルは、CBAプロモーターの制御下で、ヒトCDKL5でトランスフェクトした細胞を表す。
【0049】
図4図4は、rAAV9-CBA-eGFP(左のパネル)またはrAAV9-SYN-eGFP(右のパネル)を脳室内に投与したCDKL5欠損マウスにおける増強緑色蛍光タンパク質(eGFP)の分布を示す画像である。両方のベクターは、海馬および線条体領域、ならびに皮質および小脳中の少数のeGFP陽性細胞において高いeGFPレベルを生じた。
【0050】
図5図5は、CBAおよびSYNプロモーターに並んで、内因性CDKL5プロモーターを使用して、Neuro2a細胞における緑色蛍光タンパク質(GFP)およびhCDKL5プラスミドの発現を示す画像である。上記内因性CDKL5プロモーターは、これらの細胞においてCBAおよびSYNプロモーターの中間のレベルでhCDKL5の発現を駆動する。上記画像は、左から右に以下のとおり示される(上の4つのパネル): トランスフェクトされていない、CBA-GFPでトランスフェクト、SYN-GFPでトランスフェクト、および内因性CDKL5プロモーターおよびeGFP(Endo-eGFP)でトランスフェクト。下の4つのパネルに関しては、その画像は、左から右に以下のとおり示される: トランスフェクトされていない、CBA-hCDKL5でトランスフェクト、SYN-hCDKL5でトランスフェクト、および内因性CDKL5プロモーターおよびhCDKL5(Endo-hCDKL5)でトランスフェクト。
【0051】
図6A図6Aのパネルは、rAAV9-CBA-hCDKL5(図6Aの左のパネルの画像)またはrAAV9-SYN-hCDKL5(図6Aの右のパネルの画像)を、脳室内経路を介して投与したCDKL5欠損マウスにおける蛍光RNAスコープによって検出される場合のhCDKL5 mRNAの分布を示す画像である。図6Bのパネルは、脳室内経路を介してrAAV9-CBA-hCDKL5(四角5および6)またはrAAV9-SYN-hCDKL5(四角7および8)を投与したCDKL5欠損マウスにおける蛍光RNAスコープによって検出される場合のhCDKL5 mRNAの分布を示すRNAスコープインサチュハイブリダイゼーションからの代表的画像である。脳室内経路を介してビヒクルを投与したCDKL5ノックアウト(KO)マウスは、四角3および4に示される。いかなるビヒクルもいずれのベクター(ナイーブ)も投与しなかったCDKL5野生型(WT)マウスは、四角1および2に示される。
図6B図6Aのパネルは、rAAV9-CBA-hCDKL5(図6Aの左のパネルの画像)またはrAAV9-SYN-hCDKL5(図6Aの右のパネルの画像)を、脳室内経路を介して投与したCDKL5欠損マウスにおける蛍光RNAスコープによって検出される場合のhCDKL5 mRNAの分布を示す画像である。図6Bのパネルは、脳室内経路を介してrAAV9-CBA-hCDKL5(四角5および6)またはrAAV9-SYN-hCDKL5(四角7および8)を投与したCDKL5欠損マウスにおける蛍光RNAスコープによって検出される場合のhCDKL5 mRNAの分布を示すRNAスコープインサチュハイブリダイゼーションからの代表的画像である。脳室内経路を介してビヒクルを投与したCDKL5ノックアウト(KO)マウスは、四角3および4に示される。いかなるビヒクルもいずれのベクター(ナイーブ)も投与しなかったCDKL5野生型(WT)マウスは、四角1および2に示される。
【0052】
図7図7は、Cdkl5ノックアウトマウスがrAAV9-SYN-hCDKL5またはrAAV9-CBA-hCDKL5(1.6e12 ベクターゲノム(vg))の1回の脳室内注射を投与されて2週間後に該マウスの前頭皮質から単離されたCDKL5タンパク質およびリン酸化EB2(pEB2)のレベルを示すウェスタンブロットである。処置したマウスは、ビヒクル処置コントロールと比較して、CDKL5のレベルの増加を示す。CDKL5の下流の標的であるEB2のリン酸化から、CDKL5が機能的キナーゼとして作用していることが確認される。
【0053】
図8図8は、非ヒト霊長類(NHP)被験体が腰椎髄腔内注射によってrAAV9-CBA-eGFP(CBA-eGFP)またはrAAV9-SYN-eGFP(SYN-eGFP)を投与されて2週間後の、該被験体からのCNSおよび末梢組織中の組織DNAの1μgあたりのベクターゲノムのコピー数の定量を示す棒グラフである。両方のベクターは、組織あたり、類似の量のベクターゲノムを生じた。棒の各セットにおいて、CBA-eGFPは、左側の棒として示される(または髄質の場合には、中央の棒)。その一方で、SYN-eGFPは、右側の棒として示される。
【0054】
図9図9は、NHP被験体が、腰椎髄腔内注射によって、rAAV9-CBA-eGFP(左の3つのパネル)またはrAAV9-SYN-eGFP(右の3つのパネル)を投与された2週間後の、該被験体からのeGFPに関して免疫染色した脳組織の代表的明視野顕微鏡画像を示す画像である。rAAV9-CBA-eGFPを投与した被験体からのeGFP陽性細胞は、星細胞/グリアの形態を有した(左下のパネル)。その一方で、rAAV9-SYN-eGFPを投与した被験体からのeGFP陽性細胞は、ニューロンの形態を有した(右下のパネル)。
【0055】
図10A-10C】図10A~10Cは、投与しておよそ3ヶ月後のウェスタンブロットを使用したCDKL5欠損マウス脳の種々の領域(前頭皮質:図10A; 海馬:図10B; および脳幹:図10C)において定量されるCDKL5の量を示すグラフを示す。処置したマウスの脳にわたるヒトCDKL5タンパク質の中程度の長時間持続性の増加(前頭皮質および脳幹においてWTレベルの20~30%、海馬において35~70%)を、投与の3ヶ月後に観察した。
【0056】
図11A-11D】図11A~11Dは、rAAV9-SYN-hCDKL5処置マウス(SYN-hCDKL5)が、ビヒクル処置(CDD-PBS)コントロール同腹仔と比較して、学習、記憶、および運動機能の課題に対してより良好な成績であることを実証するグラフを示す。不安様行動(図11A)、運動機能(図11B)、および協調(図11C)における改善、ならびに学習および記憶における正常化(図11D)が認められた。
【0057】
図12図12は、8.06×1013 ベクターゲノム(vg)の髄腔内(IT)送達(UX055-18-0001)または7.76×1013 vgのrAAV9-SYN-eGFPの大槽内(CM)送達(UX055-19-0002)のいずれかをトレンデレンブルグ体位において与えられた2週間後の、1~2歳齢の雌性非ヒト霊長類(NHP)のCNSにおいて1μgのDNAあたりのゲノムコピー(GC)を図示する棒グラフである。そのグラフは、大槽内送達が、種々の脳組織(頭頂葉(10×)、線条体(10×)、および視床(8×)を含む)におけるNHP CNS中のベクターゲノムの数の増加を生じることを図示する。このグラフに示されるデータは、2回の独立した試験の一部として集めた。
【0058】
図13A図13Aは、7.92×1013 vgのrAAV9-SYN-CDKL5の大槽内(CM)送達(UX055-19-003)を、-4日目から28日目まで1mg/kg プレドニゾロン(経口胃管栄養法による)の投与ありおよびなしで、トレンデレンブルグ体位において与えて4週間後の、1歳齢の雌性非ヒト霊長類(NHP)のCNS中のDNA1μgあたりのゲノムコピー(GC)を図示する棒グラフである。そのグラフは、数が増加したベクターゲノム(qPCRによって測定)が、プレドニゾロンを投与したNHPの種々の脳組織(線条体(20×)、海馬(5×)、髄質(6×)、および小脳(5×)における増加を含む)に存在したことを図示する。図13Bは、上記ベクターに対するプローブでのBaseScope分析(インサイチュハイブリダイゼーション)を使用して試験した同じNHPに由来する後頭葉皮質および小脳を含む脳の大きな切片を示す。パネル1および3は、プレドニゾロンを投与しなかったNHPに由来する切片を表す一方で、パネル2および4は、プレドニゾロンを投与したNHPに由来する切片を表す。少なくとも1つのベクターゲノムを有する細胞の数を、各NHPに対して半分の冠状切片全体から計数し、矢印を画像に付け加えて、各陽性細胞に印を付け、可視化を補助した。図13Cは、プレドニゾロンなしのものと比較して、プレドニゾロンで処置したNHPにおいて少なくとも1つのベクターゲノムを含む細胞の数を示すグラフである。全体的に、プレドニゾロンなしのものと比較して、プレドニゾロンで処置したNHPにおいて少なくとも1つのベクターゲノムを含む細胞の数が増加する傾向にあったが、動物間で有意な変動性があった。非常に多数のベクターゲノム陽性細胞を有する1匹のアウトライアーNHPは、非プレドニゾロン群において認められた。
図13B図13Aは、7.92×1013 vgのrAAV9-SYN-CDKL5の大槽内(CM)送達(UX055-19-003)を、-4日目から28日目まで1mg/kg プレドニゾロン(経口胃管栄養法による)の投与ありおよびなしで、トレンデレンブルグ体位において与えて4週間後の、1歳齢の雌性非ヒト霊長類(NHP)のCNS中のDNA1μgあたりのゲノムコピー(GC)を図示する棒グラフである。そのグラフは、数が増加したベクターゲノム(qPCRによって測定)が、プレドニゾロンを投与したNHPの種々の脳組織(線条体(20×)、海馬(5×)、髄質(6×)、および小脳(5×)における増加を含む)に存在したことを図示する。図13Bは、上記ベクターに対するプローブでのBaseScope分析(インサイチュハイブリダイゼーション)を使用して試験した同じNHPに由来する後頭葉皮質および小脳を含む脳の大きな切片を示す。パネル1および3は、プレドニゾロンを投与しなかったNHPに由来する切片を表す一方で、パネル2および4は、プレドニゾロンを投与したNHPに由来する切片を表す。少なくとも1つのベクターゲノムを有する細胞の数を、各NHPに対して半分の冠状切片全体から計数し、矢印を画像に付け加えて、各陽性細胞に印を付け、可視化を補助した。図13Cは、プレドニゾロンなしのものと比較して、プレドニゾロンで処置したNHPにおいて少なくとも1つのベクターゲノムを含む細胞の数を示すグラフである。全体的に、プレドニゾロンなしのものと比較して、プレドニゾロンで処置したNHPにおいて少なくとも1つのベクターゲノムを含む細胞の数が増加する傾向にあったが、動物間で有意な変動性があった。非常に多数のベクターゲノム陽性細胞を有する1匹のアウトライアーNHPは、非プレドニゾロン群において認められた。
図13C図13Aは、7.92×1013 vgのrAAV9-SYN-CDKL5の大槽内(CM)送達(UX055-19-003)を、-4日目から28日目まで1mg/kg プレドニゾロン(経口胃管栄養法による)の投与ありおよびなしで、トレンデレンブルグ体位において与えて4週間後の、1歳齢の雌性非ヒト霊長類(NHP)のCNS中のDNA1μgあたりのゲノムコピー(GC)を図示する棒グラフである。そのグラフは、数が増加したベクターゲノム(qPCRによって測定)が、プレドニゾロンを投与したNHPの種々の脳組織(線条体(20×)、海馬(5×)、髄質(6×)、および小脳(5×)における増加を含む)に存在したことを図示する。図13Bは、上記ベクターに対するプローブでのBaseScope分析(インサイチュハイブリダイゼーション)を使用して試験した同じNHPに由来する後頭葉皮質および小脳を含む脳の大きな切片を示す。パネル1および3は、プレドニゾロンを投与しなかったNHPに由来する切片を表す一方で、パネル2および4は、プレドニゾロンを投与したNHPに由来する切片を表す。少なくとも1つのベクターゲノムを有する細胞の数を、各NHPに対して半分の冠状切片全体から計数し、矢印を画像に付け加えて、各陽性細胞に印を付け、可視化を補助した。図13Cは、プレドニゾロンなしのものと比較して、プレドニゾロンで処置したNHPにおいて少なくとも1つのベクターゲノムを含む細胞の数を示すグラフである。全体的に、プレドニゾロンなしのものと比較して、プレドニゾロンで処置したNHPにおいて少なくとも1つのベクターゲノムを含む細胞の数が増加する傾向にあったが、動物間で有意な変動性があった。非常に多数のベクターゲノム陽性細胞を有する1匹のアウトライアーNHPは、非プレドニゾロン群において認められた。
【発明を実施するための形態】
【0059】
発明の詳細な説明
本発明は、治療適用のために使用されるべきある範囲の新規な薬剤および組成物を提供する。本発明の核酸配列、ベクター、組換えウイルス、および関連する組成物は、本明細書で記載されるとおりのCDKL5欠損障害(CDD)を改善、防止、または処置するために使用され得る。
【0060】
別段注記されなければ、技術用語は、従来の使用法に従って使用される。分子生物学において共通する用語の定義は、Benjamin Lewin, Genes V、発行 Oxford University Press 1994(ISBN 0-19-854287-9);Kendrewら(編), The Encyclopedia of Molecular Biology, 発行 Blackwell Science Ltd., 1994(ISBN 0-632-02182-9);およびRobert A. Meyers(編), Molecular Biology and Biotechnology: a Comprehensive Desk Reference, 発行 VCH Publishers, Inc., 1995(ISBN 1-56081-569-8)において見出され得る。
【0061】
本開示の種々の実施形態の検討を促進するために、具体的な用語の以下の説明が提供される:
【0062】
アデノ随伴ウイルス(AAV): ヒトおよびいくらかの他の霊長類の種に感染する、小さな複製欠損性の、エンベロープのないウイルス。AAVは、疾患を引き起こすことは知られておらず、非常に軽度の免疫応答を誘発する。AAVを利用する遺伝子治療ベクターは、分裂中の細胞および休止細胞の両方に感染し得、宿主細胞のゲノムへと組み込まれることなく、染色体外状態で持続し得る。これらの特徴は、AAVを遺伝子治療のための魅力的なウイルスベクターにしている。現在では、12の認識されているAAV血清型(AAV1~12)が存在する。
【0063】
投与/投与する: 被験体に任意の効果的な経路によって薬剤(例えば、治療剤(例えば、組換えAAV))を提供するまたは与えること。例示的な投与経路としては、注射(例えば、皮下、筋肉内、皮内、腹腔内、髄腔内、脳室内または静脈内での投与)、経口、管内、舌下、直腸、経皮、鼻内、膣および吸入経路が挙げられるが、これらに限定されない。
【0064】
コード配列: 「コード配列」とは、適切な調節配列に作動可能に連結される場合に、インビトロまたはインビボでポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を意味する。コード配列は、そのコード領域の前および後ろの領域(例えば、5’非翻訳(5’ UTR)配列および3’非翻訳(3’ UTR)配列、ならびに個々のコードセグメント(エキソン)間の介在配列(イントロン))を含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。
【0065】
コドン最適化した: 「コドン最適化した」核酸とは、そのコドンが、特定のシステム(例えば、特定の種または種の群)における発現のために最適であるように変化させた核酸配列に言及する。例えば、核酸配列は、哺乳動物細胞または特定の哺乳動物種(例えば、ヒト細胞)における発現のために最適化され得る。コドン最適化は、そのコードされるタンパク質のアミノ酸配列を変化させない。
【0066】
エンハンサー: プロモーターの活性を増大させることによって、転写速度を増大させる核酸配列。
【0067】
イントロン: タンパク質のコード情報を含まない遺伝子内のDNAの伸長部。イントロンは、メッセンジャーRNAの翻訳前に除去される。
【0068】
逆位末端反復配列(ITR): 効率的な複製のために必要とされるアデノ随伴ウイルスのゲノムにおける対称的な核酸配列。ITR配列は、AAV DNAゲノムの各末端に位置する。ITRは、ウイルスDNA合成の複製起点として働き、AAV組み込みベクターを生成するために必須のcis構成要素である。
【0069】
単離された: 「単離された」生物学的構成要素(例えば、核酸分子、タンパク質、ウイルスまたは細胞)は、その構成要素が天然に存在する生物の細胞もしくは組織、または生物自体における他の生物学的構成要素(例えば、他の染色体および染色体外DNAおよびRNA、タンパク質ならびに細胞)から実質的に分離または精製されている。「単離された」核酸分子およびタンパク質は、標準的な精製法によって精製されたものを含む。上記用語はまた、宿主細胞において組換え発現によって調製された核酸分子およびタンパク、ならびに化学合成された核酸分子およびタンパク質を含む。
【0070】
作動可能に連結された: 第1の核酸配列は、この第1の核酸配列が、第2の核酸配列と機能的な関係性に配置されている場合に、この第2の核酸配列と作動可能に連結されている。例えば、プロモーターは、このプロモーターが、コード配列の転写または発現に影響を及ぼす場合に、そのコード配列に作動可能に連結されている。概して、作動可能に連結されたDNA配列は連続しており、2つのタンパク質コード領域を結合する必要がある場合、同じリーディングフレームにある。
【0071】
薬学的に受容可能なキャリア: 本開示において有用な薬学的に受容可能なキャリア(ビヒクル)は、従来どおりである。E. W. MartinによるRemington’s Pharmaceutical Sciences(Mack Publishing Co., Easton, Pa., 第15版(1975))は、1またはこれより多くの治療用化合物、分子または薬剤の薬学的送達に適した組成物および製剤を記載する。
【0072】
概して、上記キャリアの性質は、使用されている特定の投与様式に依存する。例えば、非経口製剤は通常、薬学的におよび生理学的に受容可能な流体(例えば、水、生理食塩水、平衡化塩類溶液、水性デキストロース、グリセロールなど)をビヒクルとして含む注射用流体を含む。固形の組成物(例えば、散剤、丸剤、錠剤またはカプセル剤の形態)に関しては、従来の非毒性固体キャリアは、例えば、製薬グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、またはステアリン酸マグネシウムを含み得る。生物学的に中性のキャリアに加えて、投与されるべき医薬組成物は、微量の非毒性補助物質(例えば、湿潤剤または乳化剤、保存剤、およびpH緩衝化剤など(例えば、酢酸ナトリウムまたはソルビタンモノラウレート))を含み得る。
【0073】
疾患を防止する、処置する、または改善する: 疾患(例えば、CDD)を「防止する」とは、疾患の完全な発生を阻害することをいう。「処置する」とは、疾患または病的状態(例えば、CDD)が発生し始めた後の疾患または病的状態の徴候または症状を改善する、治療的介入をいう。「改善する」とは、疾患(例えば、CDD)の徴候または症状の数または重篤度の低減をいう。
【0074】
プロモーター: 核酸(例えば、遺伝子)の転写を指示する/開始するDNAの領域。プロモーターは、転写開始部位の近くに必要な核酸配列を含む。多くのプロモーター配列は、当業者に公知であり、さらには、人工核酸分子中に異なるプロモーター配列の組み合わせが可能である。本明細書で使用される場合、遺伝子特異的内因性プロモーターとは、目的の内因性遺伝子の発現を調節する天然のプロモーターエレメントをいう。1つの実施形態において、CDKL5遺伝子特異的内因性プロモーターは、CDKL5遺伝子の発現を調節する。
【0075】
精製された: 用語「精製された」は、絶対的な純度を要求しない;むしろ、それは相対的な用語として意図される。従って、例えば、精製されたペプチド、タンパク質、ウイルス、または他の活性化合物は、天然に関連付けられたタンパク質および他の夾雑物から完全にまたは部分的に単離されているものである。ある特定の実施形態において、用語「実質的に精製された」とは、細胞、細胞培養培地、または他の粗製調製物から単離され、その最初の調製物の種々の構成要素(例えば、タンパク質、細胞デブリ、および他の構成要素)を除去するために分画に供された、ペプチド、タンパク質、ウイルスまたは他の活性化合物に言及する。
【0076】
組換え: 組換え核酸分子は、天然に存在しない配列を有するか、または2つの別の方法で分離された配列セグメントの人工的な組み合わせによって作製される配列を有するものである。この人工的な組み合わせは、化学合成によって、または核酸分子の単離されたセグメントの人工的な操作によって(例えば、遺伝子工学技術によって)達成され得る。
【0077】
同様に、組換えウイルスは、天然に存在しない配列(例えば、ゲノム配列)または異なる由来の少なくとも2つの配列の人工的組み合わせによって作製される配列を含むウイルスである。用語「組換え」はまた、天然の核酸分子、タンパク質またはウイルスの一部の付加、置換、または欠失によってのみ変更された核酸、タンパク質およびウイルスを含む。本明細書で使用される場合、「組換えAAV」とは、組換え核酸分子(例えば、CDKL5をコードする組換え核酸分子)がパッケージされたAAV粒子をいう。
【0078】
配列同一性: 2もしくはこれより多くの核酸配列、または2もしくはこれより多くのアミノ酸配列の間の同一性または類似性は、その配列間の同一性または類似性に関して表される。配列同一性は、パーセンテージ同一性に関して測定され得る;パーセンテージが高いほど、配列はより同一である。配列類似性は、パーセンテージ類似性に関して測定され得る(保存的アミノ酸置換が考慮される);パーセンテージが高いほど、配列はより類似である。核酸またはアミノ酸配列のホモログまたはオルソログは、標準的方法を使用して整列される場合、比較的高い程度の配列同一性/類似性を有する。この相同性は、そのオルソログのタンパク質またはcDNAが、関係性がより遠い種(例えば、ヒト配列およびC.elegans配列)と比較して、関係性がより近い種(例えば、ヒト配列およびマウス配列)に由来する場合により顕著である。
【0079】
比較のための配列のアラインメント法は、当該分野で周知である。種々のプログラムおよびアラインメントアルゴリズムは、以下に記載される: Smith & Waterman, Adv. Appl. Math. 2:482, 1981; Needleman & Wunsch, J. Mol. Biol. 48:443, 1970: Pearson & Lipman, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:2444, 1988; Higgins & Sharp, Gene, 73:237-44, 1988; Higgins & Sharp, CABIOS5:151-3, 1989; Corpetら, Nuc. Acids Res. 16:10881-90, 1988; Huangら Computer Appls. in the Biosciences 8, 155-65, 1992:およびPearsonら, Meth. Mol. Rio. 24:307-31, 1994。Altschulら, J. Mol. Biol. 215:403-10, 1990は、配列アラインメント法および相同性計算の詳細な考慮事項を示す。
【0080】
NCBI Basic Local Alignment Search Tool(BLAST)(Altschulら, J. Mol. Biol. 215:403-10, 1990)は、配列分析プログラム、blastp、blastn、blastx、tblastnおよびtblastxとともに使用するために、National Center for Biological Information(NCBI)を含むいくつかの情報源から、およびインターネット上で入手可能である。さらなる情報は、NCBIウェブサイトで見出され得る。
【0081】
血清型: 抗原の特徴的なセットによって区別される、関連性が近い微生物(例えば、ウイルス)の群。
【0082】
Stuffer配列: 2つの核酸特徴の間に(例えば、プロモーターとコード配列との間に)所望の間隔を作り出すために、または核酸分子が所望の長さのものであるように、核酸分子を伸長させるために代表的には使用されるより大きな核酸分子(例えば、ベクター)内部に含まれるヌクレオチドの配列をいう。Stuffer配列は、タンパク質コード情報を含まず、未知/合成由来/および/またはより大きな核酸分子の内部の他の核酸配列に関連しないものであり得る。
【0083】
被験体: 生きている多細胞の脊椎のある生物(ヒトおよび非ヒト哺乳動物を含むカテゴリー)。いくつかの実施形態において、上記被験体は、ヒトである。1つの実施形態において、上記ヒト被験体は、成人被験体、すなわち、18歳齢を超えているヒト被験体である。1つの実施形態において、上記ヒト被験体は、小児被験体、すなわち、0~18歳齢(両端を含む)のヒト被験体である。いくつかの実施形態において、上記被験体(例えば、ヒト被験体)は、コルチコステロイドを投与されている。いくつかの実施形態において、上記被験体(例えば、ヒト被験体)は、IgG分解プロテアーゼを投与されている。いくつかの実施形態において、上記被験体(例えば、ヒト被験体)は、コルチコステロイド投与されており、IgG分解プロテアーゼをも投与されている。
【0084】
合成の: 実験室において人工的手段によって生成される。例えば、合成核酸は、実験室において化学合成され得る。
【0085】
非翻訳領域(UTR): 代表的なmRNAは、上記コード配列の上流および下流に、それぞれ、5’非翻訳領域(5’ UTR)および3’非翻訳領域(3’ UTR)を含む(Mignone F.ら, (2002) Genome Biol 3:REVIEWS0004を参照のこと)。
【0086】
治療上有効な量: 薬剤で処置される被験体において、または細胞において、所望の効果を達成するために十分な、特定の医薬または治療剤(例えば、組換えAAV)の量。上記薬剤の有効量は、処置されている被験体または細胞、および治療用組成物の投与様式が挙げられるが、これらに限定されないいくつかの要因に依存する。
【0087】
ベクター: ベクターは、ベクターが宿主細胞において複製するおよび/または組み込まれる能力を破壊することなく、外来核酸の挿入を可能にする核酸分子である。ベクターは、宿主細胞において複製することを可能にする核酸配列(例えば、複製起点)を含み得る。ベクターはまた、1またはこれより多くの選択マーカー遺伝子および他の遺伝的エレメントを含み得る。発現ベクターは、挿入された遺伝子の転写および翻訳を可能にするために必要な調節配列を含むベクターである。本明細書中のいくつかの実施形態において、上記ベクターは、AAVベクターである。
【0088】
別段説明されなければ、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、本開示が属する分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。単数形「1つの、ある(a)」、「1つの、ある(an)」、および「その、この、上記(the)」は、文脈が別段明確に示さなければ、複数形への言及を含む。「AまたはBを含む」とは、A、またはB、またはAおよびBを含むことを意味する。核酸またはポリペプチドに関して与えられる全ての塩基サイズまたはアミノ酸サイズ、および全ての分子量または分子質量値が、近似値であり、説明のために提供されることは、さらに理解されるべきである。本明細書で記載されるものに類似または等価な方法および材料が本開示の実施または試験において使用され得るものの、適切な方法および材料は、以下に記載される。本明細書で言及される全ての刊行物、特許出願、特許、および他の参考文献は、それらの全体において参考として援用される。矛盾する場合、本明細書(用語の説明を含む)が優先する、さらに、上記材料、方法および例は、例証に過ぎず、限定ではないことが意図される。
【0089】
組換えAAV(rAAV):
本発明は、遺伝子治療における組成物およびその使用法を提供する。より具体的には、CDDの処置のために有用な、アデノ随伴ウイルス(AAV)キャプシドおよび上記AAVキャプシド内にパッケージされたベクターゲノムを含む組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)が、本明細書で提供される。
【0090】
1つの局面において、本開示は、組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)を提供し、ここで上記rAAVは、AAVキャプシドおよび上記AAVキャプシド内にパッケージされたベクターゲノムを含み、ここで上記ベクターゲノムは、(a)プロモーター配列;および(b)CDKL5もしくはそのアイソフォーム、またはその機能的フラグメントもしくは機能的バリアントの部分的なまたは完全なコード配列を含む。例示的な実施形態において、上記コード配列は、配列番号1~8から選択される配列と少なくとも95%同一である配列を含む。
【0091】
いくつかの実施形態において、上記パッケージされたベクターゲノムは、本明細書で記載されるように、5’-ITR配列、エンハンサー、イントロン、コンセンサスKozak配列、ポリアデニル化シグナル、および/または3’-ITR配列をさらに含み得る。いくつかの実施形態において、上記組換えベクターは、1またはこれより多くのスタッファー核酸配列をさらに含み得る。1つの実施形態において、スタッファー核酸配列は、イントロンとCDKL5の上記部分的なまたは完全なコード配列との間に位置される。
【0092】
本明細書で記載される種々の実施形態において、上記rAAVは、AAVキャプシドを含む。上記AAVキャプシドは、血清型1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、rh10、hu37のAAV(すなわち、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、AAVrh10、AAVhu37)、ならびにヒトおよび非ヒト霊長類組織から単離された100を超えるバリアントのうちのいずれか1つに由来し得る。例えば、Choiら, 2005, Curr Gene Ther. 5: 299-310, 2005およびGaoら, 2005, Curr Gene Ther. 5: 285-297を参照のこと。
【0093】
前述のキャプシドの他に、1またはこれより多くの有益な治療特性(例えば、選択された組織に対する改善された標的化、免疫応答を逃れる能力の増大、中和抗体の刺激の低減など)を有するように操作されているバリアントAAVキャプシドが、本発明の範囲内に含まれる。このような操作されたバリアントキャプシドの非限定的な例は、米国特許第9,506,083号、同第9,585,971号、同第9,587,282号、同第9,611,302号、同第9,725,485号、同第9,856,539号、同第9,909,142号、同第9,920,097号、同第10,011,640号、同第10,081,659号、同第10,179,176号、同第10,202,657号、同第10,214,566号、同第10,214,785号、同第10,266,845号、同第10,294,281号、同第10,301,648号、同第10,385,320号、および同第10,392,632号に、ならびにPCT公開番号WO/2017/165859、WO/2018/022905、WO/2018/156654、WO/2018/222503、およびWO/2018/226602(これらの開示は、本明細書に参考として援用される)に記載される。
【0094】
ある特定の例示的な実施形態において、本発明に従って投与されるrAAVは、AAV9キャプシドを含む。上記AAV9キャプシドは、複数のAAV9 vpタンパク質から構成される自己集合したAAVキャプシドである。上記AAV9 vpタンパク質は、代表的には、配列番号22のvp1アミノ酸配列(GenBankアクセッション: AAS99264)をコードする配列番号21の核酸配列またはこれと少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%同一である配列によってコードされる選択的スプライスバリアントとして発現される。これらのスプライスバリアントは、配列番号22の異なる長さのタンパク質を生じる。本明細書で使用される場合、AAV9バリアントは、例えば、WO/2016/049230、米国特許第8,927,514号、米国特許公開第2015/0344911号、および米国特許第8,734,809に記載されるものを含む。
【0095】
本明細書で示されるように、本発明に従って投与されるrAAVは、いくつかの実施形態において、AAV9キャプシドを含み得る。しかし、他の実施形態において、別のAAVキャプシドが選択される。組織特異性は、キャプシドタイプによって決定される。適切な標的(例えば、肝臓、筋、肺、またはCNS)を形質導入するAAV血清型は、AAVウイルスベクター(例えば、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV6.2、AAV7、AAV8、AAV9、AAVrh10、AAVrh64Rl、AAVrh64R2、AAVrh8が挙げられる)のキャプシドの供給源として選択され得る。例えば、米国特許公開第2007/0036760号;米国特許公開第2009/0197338号;およびEP1310571を参照のこと。WO 2003/042397(AAV7および他のシミアンAAV)、米国特許第7282199号および同第7790449号(AAV8)も参照のこと。さらに、未だ発見されていないAAV、またはこれに基づく組換えAAVが、AAVキャプシドの供給源として使用されてもよい。これらの文書はまた、AAVを生成するために選択され得る他のAAVを説明し、参考として援用される。いくつかの実施形態において、ウイルスベクターにおける使用のためのAAVキャプシドは、前述のAAVキャプシドまたはそのコード核酸のうちの一方の変異誘発によって(すなわち、挿入、欠失、または置換によって)生成され得る。いくつかの実施形態において、上記AAVキャプシドは、前述のAAVキャプシドタンパク質のうちの2つまたは3つまたは4つまたはこれより多くに由来するドメインを含む、キメラである。いくつかの実施形態において、上記AAVキャプシドは、2種または3種の異なるAAVまたは組換えAAVに由来するVp1、Vp2、およびVp3モノマーのモザイクである。いくつかの実施形態において、rAAV組成物は、前述のキャプシドのうちの1つより多くを含む。
【0096】
逆方向末端反復(ITR):
いくつかの実施形態において、rAAVは、AAV ITR配列を含むパッケージされたベクターゲノムを含み、これは、AAVおよびアデノウイルスヘルパー機能がtransで提供される場合に、ベクターDNA複製起点およびベクターゲノムのパッケージングシグナルの両方として機能する。さらに、上記ITRは、大きなRepタンパク質による1本鎖ヌクレオチド内部ニック形成(single-stranded endonucleatic nicking)の標的として働き、個々のゲノムを複製中間体から分離する。
【0097】
いくつかの実施形態において、上記5’-ITR配列は、AAV2に由来する。いくつかの実施形態において、上記3’-ITR配列は、AAV2に由来する。いくつかの実施形態において、上記5’-ITR配列および上記3’-ITR配列は、AAV2に由来する。いくつかの実施形態において、上記5’-ITR配列および/または上記3’-ITR配列は、AAV2に由来し、配列番号11を含むかまたはそれからなる。他の実施形態において、上記5’-ITR配列および/または上記3’-ITR配列は、非AAV2供給源に由来する。
【0098】
プロモーター:
本明細書で記載される種々の局面において、上記rAAVは、CDKL5発現の駆動および調節を助けるプロモーター配列を含むパッケージされたベクターゲノムを含む。例示的な実施形態において、上記プロモーター配列は、5’-ITR配列とCDKL5の上記部分的なまたは完全なコード配列との間に位置する。いくつかの実施形態において、上記プロモーター配列は、エンハンサー配列の下流に位置する。いくつかの実施形態において、上記プロモーター配列は、イントロン配列の上流に位置する。
【0099】
いくつかの実施形態において、上記プロモーターは、ニューロン特異的プロモーターである。1つの実施形態において、上記ニューロン特異的プロモーターは、ヒトシナプシン1(SYN1)プロモーター、マウスカルシウム/カルモジュリン依存性プロテインキナーゼII(CaMKII)プロモーター、ラットチューブリンαI(Ta1)プロモーター、ラットニューロン特異的エノラーゼ(NSE)プロモーター、ヒトニューロン特異的エノラーゼ(ENO2)プロモーター、ヒト血小板由来成長因子β鎖(PDGF)プロモーター、ヒトBM88プロモーター、およびニューロンニコチン性受容体β2(CHRNB2)プロモーターから選択される。
【0100】
例示的な実施形態において、上記ニューロン特異的プロモーターは、上記SYN1プロモーター(例えば、ヒトSYN1プロモーター)である。1つの実施形態において、上記SYN1プロモーター(例えば、ヒトSYN1プロモーター)は、配列番号12と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%またはこれより高く同一である。例示的な実施形態において、上記SYN1プロモーター(例えば、ヒトSYN1プロモーター)は、配列番号12を含むかまたはそれからなる。
【0101】
いくつかの実施形態において、上記プロモーターは、ニワトリβ-アクチン(CBA)プロモーター、サイトメガロウイルス(CMV)最初期遺伝子プロモーター、トランスサイレチン(TTR)プロモーター、サイロキシン結合グロブリン(TBG)プロモーター、およびα-1アンチトリプシン(A1AT)プロモーターから選択される。
【0102】
例示的な実施形態において、上記プロモーターは、CBAプロモーターである。1つの実施形態において、上記CBAプロモーターは、配列番号13を含むかまたはそれからなる。
【0103】
いくつかの実施形態において、上記プロモーターは、遺伝子特異的内因性プロモーターである。1つの実施形態において、上記プロモーターは、天然の遺伝子プロモーターエレメントを含む。いくつかの例示的実施形態において、本明細書で記載されるパッケージされたゲノムは、少なくとも15個の連続するヌクレオチドのヌクレオチド配列を含むCDKL5遺伝子特異的内因性プロモーターであって、配列番号14の等しい長さの領域と少なくとも95%同一であるプロモーターを含む。ある特定の実施形態において、本明細書で記載されるパッケージされたゲノムは、少なくとも約15個の連続するヌクレオチド(例えば、約30個、約45個、約60個、約70個、約80個、約90個、約100個、約110個、約120個、約130個、約140個、約150個、約160個、約170個、約180個、約190個、約200個、約210個、約220個、約230個、約240個、約250個、約260個、約270個、約280個、約290個、約300個、約325個、約350個、約375個、約400個、約425個、約450個、約475個、約500個、約525個、約550個、約575個、約600個、約625個、約650個、約675個、約700個、約800個、約900個、約1000個、約1100個、約1200個、約1300個、約1400個、または約1500個)のヌクレオチド配列を含むCDKL5遺伝子特異的内因性プロモーターであって、配列番号14の等しい長さの領域と少なくとも95%同一であるプロモーターを含む。いくつかの例示的な実施形態において、本明細書で記載されるパッケージされたゲノムは、少なくとも15個の連続するヌクレオチドのヌクレオチド配列を含むCDKL5遺伝子特異的内因性プロモーターであって、配列番号14の等しい長さの領域と100%同一であるプロモーターを含む。
【0104】
他のベクターエレメント:
プロモーターおよびCDKL5のコード配列に加えて、パッケージされたゲノムは、他の適切な転写開始配列、終結配列、エンハンサー配列、および効率的RNAプロセシングシグナルを含み得る。以下でさらに詳細に記載されるように、このような配列は、スプライシングシグナルおよびポリアデニル化(ポリA)シグナル、発現を増強する調節エレメント、細胞質mRNAを安定化する配列、翻訳効率を増強する(すなわち、Kozakコンセンサス配列)、およびタンパク質安定性を増強する配列を含む。
【0105】
いくつかの実施形態において、上記rAAVは、1またはこれより多くのエンハンサー配列を含むパッケージされたベクターゲノムを含む。1つの実施形態において、上記エンハンサーは、サイトメガロウイルス最初期遺伝子(CMV)エンハンサー、トランスサイレチンエンハンサー(enTTR)、ニワトリβ-アクチン(CBA)エンハンサー、En34エンハンサー、およびApoEエンハンサーから選択される。例示的な実施形態において、上記エンハンサーは、上記CMVエンハンサー(例えば、CMV最初期遺伝子エンハンサー)である。1つの実施形態において、上記CMVエンハンサー(例えば、CMV最初期遺伝子エンハンサー)は、配列番号17を含むかまたはそれからなる。
【0106】
いくつかの実施形態において、上記rAAVは、1またはこれより多くのイントロン配列を含むパッケージされたベクターゲノムを含む。1つの実施形態において、上記イントロンは、SV40 Small Tイントロン、ウサギヘモグロビンサブユニットβ(rHBB)イントロン、ヒトβグロビンIVS2イントロン、β-グロビン/IgGキメライントロン、およびhFIXイントロンから選択される。1つの例示的な実施形態において、上記イントロンは、上記SV40 Small Tイントロンである。1つの実施形態において、上記SV40 Small Tイントロン配列は、配列番号18を含むかまたはそれからなる。
【0107】
いくつかの実施形態において、上記rAAVは、コンセンサスKozak配列を含むパッケージされたベクターゲノムを含む。いくつかの実施形態において、上記コンセンサスKozak配列は、イントロン配列の下流に位置する。1つの実施形態において、上記コンセンサスKozak配列は、GCCGCCACC(配列番号16)である。
【0108】
いくつかの実施形態において、上記rAAVは、ポリアデニル化シグナル配列を含むパッケージされたベクターゲノムを含む。1つの実施形態において、上記ポリアデニル化シグナル配列は、ウシ成長ホルモン(BGH)ポリアデニル化シグナル配列、SV40ポリアデニル化シグナル配列、ウサギβグロビンポリアデニル化シグナル配列、およびCDKL5遺伝子特異的内因性ポリアデニル化シグナル配列から選択される。例示的な実施形態において、上記ポリアデニル化シグナル配列は、上記SV40ポリアデニル化シグナル配列である。1つの実施形態において、上記SV40ポリアデニル化シグナル配列は、配列番号15を含むかまたはそれからなる。
【0109】
CDKL5ポリペプチドおよびポリヌクレオチド:
本明細書で記載されるように、本発明の局面は、プロモーター配列およびCDKL5もしくはそのアイソフォーム、またはその機能的フラグメントもしくは機能的バリアントの部分的なまたは完全なコード配列を含むパッケージされたゲノムを含む組換えベクターを提供する。
【0110】
1つの実施形態において、CDKL5の上記部分的なまたは完全なコード配列は、野生型コード配列である。本明細書で使用される場合、用語「野生型」とは、天然に存在する生体ポリマー(例えば、ポリペプチド配列またはポリヌクレオチド配列)と同じである生体ポリマー(例えば、ポリペプチド配列またはポリヌクレオチド配列)をいう。
【0111】
代替の実施形態において、CDKL5の上記部分的なまたは完全なコード配列は、コドン最適化したコード配列である。1つの実施形態において、CDKL5の上記部分的なまたは完全なコード配列は、ヒトにおける発現のためにコドン最適化される。
【0112】
本明細書で記載される種々の実施形態において、CDKL5のコード配列を含むパッケージされたゲノムを含むベクターが、提供される。本明細書で記載されるベクターとともに送達されるポリペプチドは、哺乳動物(ヒトが挙げられる)の処置において有用であり得るCDKL5ポリペプチドを包含する。
【0113】
いくつかの実施形態において、本明細書で記載されるベクターで発現されるポリペプチドは、CDKL5アイソフォーム2(配列番号9、GenBankアクセッション番号NP_001310218.1、960アミノ酸)またはその機能的フラグメントもしくは機能的バリアントである。いくつかの実施形態において、本明細書で記載されるベクターで発現されるポリペプチドは、CDKL5アイソフォーム2であり、配列番号9を含むかまたはそれからなる。1つの実施形態において、上記CDKL5アイソフォーム2ポリペプチドは、配列番号1に示される野生型コード配列によってコードされる。代替の実施形態において、上記CDKL5アイソフォーム2ポリペプチドは、コドン最適化したコード配列によってコードされる。いくつかの実施形態において、上記CDKL5アイソフォーム2ポリペプチドは、配列番号1に示される野生型コード配列と80%未満同一であるコドン最適化したコード配列によってコードされる。いくつかの例示的な実施形態において、上記CDKL5アイソフォーム2ポリペプチドは、配列番号3~5から選択されるコドン最適化したコード配列によってコードされる。いくつかの実施形態において、CDKL5アイソフォーム2の上記コード配列は、3’末端において終止コドン(TGA、TAA、またはTAG)をさらに含み得る。
【0114】
いくつかの実施形態において、本明細書で記載されるベクターで発現されるポリペプチドは、CDKL5アイソフォーム1(配列番号10、GenBankアクセッション番号NP_001032420.1、1030アミノ酸)またはその機能的フラグメントもしくは機能的バリアントである。いくつかの実施形態において、本明細書で記載されるベクターで発現されるポリペプチドは、CDKL5アイソフォーム1であり、配列番号10を含むかまたはそれからなる。1つの実施形態において、上記CDKL5アイソフォーム1ポリペプチドは、配列番号2に示される野生型コード配列によってコードされる。代替の実施形態において、上記CDKL5アイソフォーム1ポリペプチドは、コドン最適化したコード配列によってコードされる。いくつかの実施形態において、上記CDKL5アイソフォーム1ポリペプチドは、配列番号2に示される野生型コード配列と80%未満同一であるコドン最適化したコード配列によってコードされる。いくつかの例示的な実施形態において、上記CDKL5アイソフォーム1ポリペプチドは、配列番号6~8から選択されるコドン最適化したコード配列によってコードされる。いくつかの実施形態において、CDKL5アイソフォーム1の上記コード配列は、3’末端において終止コドン(TGA、TAA、またはTAG)をさらに含み得る。
【0115】
種々の局面において、本発明は、本明細書で記載される上記CDKL5ポリペプチドのフラグメント、バリアント、アイソフォーム、または融合物を送達するために使用され得る。
【0116】
いくつかの実施形態において、本発明は、CDKL5ポリペプチドのフラグメント(これは、少なくとも50個、少なくとも100個、少なくとも150個、少なくとも200個、少なくとも250個、少なくとも300個、少なくとも350個、少なくとも400個、少なくとも450個、少なくとも500個、少なくとも550個、または少なくとも600個のアミノ酸残基を含み、全長ポリペプチドと関連する1またはこれより多くの活性(例えば、CDKL5の場合にはキナーゼ活性)を保持する)を送達するために使用され得る。このようなフラグメントは、当該分野で慣用的かつ周知の組換え技術によって得られ得る。さらに、このようなフラグメントは、当業者に公知の慣用的なインビトロアッセイによって活性に関して試験され得る。例えば、CDKL5活性は、Linら, 2005, Human Mol Genet 14(24): 3775-86において記載されるとおりのインビトロ自己リン酸化キナーゼアッセイによってアッセイされ得る。簡潔には、500μgの異所性に発現されたFLAGタグ化CDKL5は、5μgのM2結合アガロースとともに4時間インキュベートされ得る。ビーズは、TLBで3回、およびキナーゼ緩衝液(25mM HEPES,pH7.4、10mM MgCl、10mM MnCl、10mM ジチオスレイトール、0.2mM バナジン酸ナトリウムおよび10mM ニトロ-フェニル-ホスフェート)で2回洗浄され得る。次いで、FLAGペプチドは、CDKL5を溶離するために使用され得る。次いで、得られたビーズは、30μlのキナーゼ緩衝液中、100μM ATP、5μCiの[γ-32P]-ATP(NEN)および基質を添加して再懸濁され得る。キナーゼアッセイは、15分間、30℃において行われ得、SDS-PAGEタンパク質負荷緩衝液を添加することで終了され得る。
【0117】
いくつかの局面において、本開示はまた、上記のポリペプチドフラグメントをコードする核酸分子を提供する。
【0118】
いくつかの実施形態において、本発明は、CDKL5ポリペプチドのバリアントを送達するために使用され得る。いくつかの実施形態において、上記バリアントポリペプチドは、野生型治療用ポリペプチド(例えば、配列番号9の野生型CDKL5アイソフォーム2ポリペプチドまたは配列番号10の野生型CDKL5アイソフォーム1ポリペプチド)と少なくとも80%(例えば、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%、または100%)同一であり得る。いくつかの実施形態において、上記バリアント治療用ポリペプチドは、それぞれの野生型ポリペプチドと比較して、少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも11個、少なくとも12個、少なくとも13個、少なくとも14個、少なくとも15個、少なくとも16個、少なくとも17個、少なくとも18個、少なくとも19個、少なくとも20個、少なくとも21個、少なくとも22個、少なくとも23個、少なくとも少なくとも24個、少なくとも25個、少なくとも26個、少なくとも27個、少なくとも28個、少なくとも29個、少なくとも30個、少なくとも31個、少なくとも 32個、少なくとも33個、少なくとも34個、少なくとも35個、少なくとも36個、少なくとも37個、少なくとも38個、少なくとも39個、または少なくとも40個の異なる残基を有し得る。このようなバリアントは、当該分野で慣用的かつ周知の組換え技術によって得られ得る。さらに、このようなバリアントは、当業者に公知の慣用的なインビトロアッセイによってキナーゼ活性に関して試験され得る。CDKL5キナーゼ活性アッセイの説明の関しては、例えば、Linら, 2005, Human Mol Genet 14(24): 3775-86を参照のこと。
【0119】
いくつかの局面において、本開示はまた、上記の治療用ポリペプチドバリアントをコードする核酸分子を提供する。
【0120】
新規なコドン最適化した配列:
いくつかの局面において、本開示は、CDKL5アイソフォーム2をコードする新規なコドン最適化した核酸配列を提供する。1つの実施形態において、CDKL5アイソフォーム2をコードする上記コドン最適化した核酸配列は、配列番号1に示される野生型コード配列と80%未満同一である。いくつかの実施形態において、CDKL5アイソフォーム2をコードする上記コドン最適化した核酸配列は、配列番号3~5と少なくとも80%(例えば、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%、または100%)同一である。いくつかの実施形態において、CDKL5アイソフォーム2をコードする上記コドン最適化した核酸配列は、配列番号3~5から選択される配列と100%同一である。いくつかの実施形態において、本開示は、配列番号1に示される野生型コード配列と80%未満同一であり、配列番号3~5と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%またはこれより高く同一である核酸配列を提供する。例示的な実施形態において、本開示は、配列番号3~5から選択されるCDKL5アイソフォーム2をコードする核酸配列を提供する。配列番号3~5に示され、機能的CDKL5活性を有するポリペプチドをコードする核酸配列のフラグメントがさらに提供される。いくつかの実施形態において、CDKL5アイソフォーム2をコードする上記核酸配列は、3’末端において終止コドン(TGA、TAA、またはTAG)をさらに含み得る。
【0121】
いくつかの局面において、本開示は、CDKL5アイソフォーム1をコードする新規なコドン最適化した核酸配列を提供する。1つの実施形態において、CDKL5アイソフォーム1をコードする上記コドン最適化した核酸配列は、配列番号2に示される野生型コード配列と80%未満同一である。いくつかの実施形態において、CDKL5アイソフォーム1をコードする上記コドン最適化した核酸配列は、配列番号6~8と少なくとも80%(例えば、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%、または100%)同一である。いくつかの実施形態において、CDKL5アイソフォーム1をコードする上記コドン最適化した核酸配列は、配列番号6~8から選択される配列と100%同一である。いくつかの実施形態において、本開示は、配列番号2に示される野生型コード配列と80%未満同一であり、配列番号6~8から選択される配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%またはこれより高く同一である核酸配列を提供する。例示的な実施形態において、本開示は、配列番号6~8から選択されるCDKL5アイソフォーム1をコードする核酸配列を提供する。配列番号6~8に示され、機能的CDKL5活性を有するポリペプチドをコードする核酸配列のフラグメントがさらに提供される。いくつかの実施形態において、CDKL5アイソフォーム1をコードする上記核酸配列は、3’末端において終止コドン(TGA、TAA、またはTAG)をさらに含み得る。
【0122】
組換え核酸分子を含む宿主細胞:
いくつかの局面において、組換え核酸分子、ウイルスベクター、例えば、AAVベクター、または本明細書で開示されるrAAVを含む宿主細胞が、本明細書で提供される。具体的実施形態において、上記宿主細胞は、AAVの増殖に適切であり得る。
【0123】
非常に広い範囲の宿主細胞が使用され得る(例えば、細菌、酵母、昆虫、哺乳動物の細胞など)。いくつかの実施形態において、上記宿主細胞は、組換えAAV(rAAV)の生成に適した細胞(または細胞株)、例えば、HeLa、Cos-7、HEK293、A549、BHK、Vero、RD、HT-1080、ARPE-19、またはMRC-5細胞であり得る。
【0124】
上記組換え核酸分子またはベクターは、当該分野で公知の任意の適切な方法を使用して、宿主細胞培養物に送達され得る。いくつかの実施形態において、ゲノムに挿入された上記組換え核酸分子またはベクターを有する適切な宿主細胞株が、生成される。いくつかの実施形態において、本明細書で開示されるrAAVベクターを含む適切な宿主細胞株が生成される。上記宿主培養物へのrAAVベクターのトランスフェクション後に、上記rAAVの、上記宿主ゲノムへの組み込みは、Nakaiら, Nature Genetics (2003) 34, 297-302; Philpottら, Journal of Virology (2002) 76(11):5411-5421、およびHowdenら, J Gene Med 2008; 10:42-50によって記載されるように、種々の方法(例えば、抗生物質選択、蛍光活性化セルソーティング、サザンブロット、PCRベースの検出、蛍光インサイチュハイブリダイゼーション)によってアッセイされ得る。さらに、安定な細胞株が、当該分野で周知のプロトコール(例えば、Clark, Kidney International Vol 61 (2002):S9-S15、およびYuanら, Human Gene Therapy 2011 May;22(5):613-24に記載されるもの)に従って樹立され得る。
【0125】
遺伝子治療のための組換えAAV:
AAVは、Parvoviridae科およびDependovirus属に属する。AAVは、直線状の1本鎖DNAゲノムをパッケージする、小さなエンベロープのないウイルスである。AAV DNAのセンス鎖およびアンチセンス鎖の両方が、等しい頻度でAAVキャプシドへとパッケージされる。
【0126】
上記AAVゲノムは、2つのオープンリーディングフレーム(ORF)に隣接する2つの逆位末端反復配列(ITR)によって特徴づけられる。上記AAV2ゲノムにおいて、例えば、上記ITRの最初の125ヌクレオチドは、パリンドロームであり、これは、塩基対合を最大にするようにそれら自体を折りたたんで、T字型ヘアピン構造を形成する。上記ITRの他の20塩基(D配列といわれる)は、対合しないままである。上記ITRは、AAV DNA複製にとって重要なcis作用性配列である;上記ITRは複製起点であり、DNAポリメラーゼによる第2鎖合成のプライマーとして働く。この合成の間に形成される2本鎖DNA(これは、複製形態モノマーといわれる)は、第2回の自己感作複製のために使用され、複製形態ダイマーを形成する。これらの2本鎖中間体は、鎖置換機構を介して処理され、パッケージングに使用される1本鎖DNAおよび転写に使用される2本鎖DNAを生じる。Rep結合エレメントおよび末端分離部位(TRS)が、ITR内に位置する。これらの特徴は、2本鎖中間体を処理するために、AAV複製の間にウイルス調節タンパク質Repによって使用される。AAV複製におけるそれらの役割に加えて、上記ITRはまた、AAVゲノムパッケージング、転写、許容できない条件下での負の調節、および部位特異的組み込みにとって必須である(Days and Berns, Clin Microbiol Rev 21(4):583-593, 2008)。
【0127】
AAVの左側のORFは、4つのタンパク質- Rep78、Rep68、Rep52およびRep40をコードするRep遺伝子を含む。右側のORFは、3つのウイルスキャプシドタンパク質(VP1、VP2およびVP3)を生成するCap遺伝子を含む。そのAAVキャプシドは、正二十面体対称へと配置される60のウイルスキャプシドタンパク質を含む。VP1、VP2およびVP3は、1:1:10モル比で存在する(Daya and Berns, Clin Microbiol Rev 21(4):583-593, 2008)。
【0128】
AAVは、現在のところ、遺伝子治療のために最も頻繁に使用されるウイルスのうちの1つである。AAVは、ヒトおよび数種の他の霊長類種に感染するものの、疾患を引き起こすことは知られておらず、非常に軽度の免疫応答を誘発する。AAVを利用する遺伝子治療ベクターは、分裂中の細胞および休止細胞の両方に感染し得、宿主細胞のゲノムに組み込まれることなく、染色体外の状態で持続する。AAVの有利な特徴が原因で、本開示は、本明細書で開示される組換え核酸分子および方法のためのAAVの使用を企図する。
【0129】
AAVは、標的細胞に結合し、進入し、核に入る能力、長期間にわたって核において発現される能力、および低毒性を含め、遺伝子治療ベクターのいくつかの望ましい特徴を有する。しかし、AAVゲノムのサイズは小さいことから、組み込まれ得る異種DNAのサイズは制限がある。この問題を最小限にするために、Repおよび組み込み効率エレメント(IEE)をコードしないAAVベクターは、構築されている。上記ITRは、これらがパッキングに必要とされるcisシグナルであることから保持される(Daya and Berns, Clin Microbiol Rev, 21(4):583-593, 2008)。
【0130】
遺伝子治療に適したrAAVを生成するための方法は、当該分野で周知であり(例えば、米国特許出願公開2012/0100606;同第2012/0135515;同第2011/0229971;および同第2013/0072548;ならびにGhoshら, Gene Ther 13(4):321-329, 2006を参照のこと)、本明細書で開示される組換え核酸分子および方法とともに利用され得る。
【0131】
いくつかの局面において、本開示は、CDKL5欠損障害(CDD)の処置のための本明細書で開示されるrAAVの使用を提供し、ここで上記rAAVは、AAVキャプシドおよび上記AAVキャプシド内にパッケージされたベクターゲノムを含む。いくつかの実施形態において、上記rAAVは、作動可能に連結された構成要素として、5’から3’の順序において:5’-ITR、プロモーター配列、CDKL5、またはその機能的フラグメントもしくは機能的バリアントの部分的なまたは完全なコード配列、および3’-ITRを含むパッケージされたゲノムを含む。いくつかの実施形態において、CDKL5の上記コード配列は、配列番号1~8、またはこれらと少なくとも95%同一の配列から選択される。
【0132】
例示的な実施形態において、CDKL5の上記コード配列は、配列番号1を含むかまたはそれからなる。いくつかの実施形態において、上記プロモーター配列は、配列番号12~14から選択される。例示的な実施形態において、上記プロモーター配列は、配列番号12を含むかまたはそれからなる。いくつかの実施形態において、上記キャプシドは、AAV9キャプシドである。いくつかの実施形態において、上記キャプシドは、AAV8キャプシドである。いくつかの実施形態において、上記キャプシドは、AAV9バリアントキャプシドである。いくつかの実施形態において、上記5’-ITR配列および/または上記3’-ITR配列は、AAV2に由来する。いくつかの実施形態において、上記5’-ITR配列および/または上記3’-ITR配列は、配列番号11を含むかまたはそれからなる。
【0133】
例示的な実施形態において、CDKL5の上記コード配列は、配列番号2を含むかまたはそれからなる。いくつかの実施形態において、上記プロモーター配列は、配列番号12~14から選択される。例示的な実施形態において、上記プロモーター配列は、配列番号12を含むかまたはそれからなる。いくつかの実施形態において、上記キャプシドは、AAV9キャプシドである。いくつかの実施形態において、上記キャプシドは、AAV8キャプシドである。いくつかの実施形態において、上記キャプシドは、AAV9バリアントキャプシドである。いくつかの実施形態において、上記5’-ITR配列および/または上記3’-ITR配列は、AAV2に由来する。いくつかの実施形態において、上記5’-ITR配列および/または上記3’-ITR配列は、配列番号11を含むかまたはそれからなる。
【0134】
例示的な実施形態において、CDKL5の上記コード配列は、配列番号3を含むかまたはそれからなる。いくつかの実施形態において、上記プロモーター配列は、配列番号12~14から選択される。例示的な実施形態において、上記プロモーター配列は、配列番号12を含むかまたはそれからなる。いくつかの実施形態において、上記キャプシドは、AAV9キャプシドである。いくつかの実施形態において、上記キャプシドは、AAV8キャプシドである。いくつかの実施形態において、上記キャプシドは、AAV9バリアントキャプシドである。いくつかの実施形態において、上記5’-ITR配列および/または上記3’-ITR配列は、AAV2に由来する。いくつかの実施形態において、上記5’-ITR配列および/または上記3’-ITR配列は、配列番号11を含むかまたはそれからなる。
【0135】
例示的な実施形態において、CDKL5の上記コード配列は、配列番号4を含むかまたはそれからなる。いくつかの実施形態において、上記プロモーター配列は、配列番号12~14から選択される。例示的な実施形態において、上記プロモーター配列は、配列番号12を含むかまたはそれからなる。いくつかの実施形態において、上記キャプシドは、AAV9キャプシドである。いくつかの実施形態において、上記キャプシドは、AAV8キャプシドである。いくつかの実施形態において、上記キャプシドは、AAV9バリアントキャプシドである。いくつかの実施形態において、上記5’-ITR配列および/または上記3’-ITR配列は、AAV2に由来する。いくつかの実施形態において、上記5’-ITR配列および/または上記3’-ITR配列は、配列番号11を含むかまたはそれからなる。
【0136】
例示的な実施形態において、CDKL5の上記コード配列は、配列番号5を含むかまたはそれからなる。いくつかの実施形態において、上記プロモーター配列は、配列番号12~14から選択される。例示的な実施形態において、上記プロモーター配列は、配列番号12を含むかまたはそれからなる。いくつかの実施形態において、上記キャプシドは、AAV9キャプシドである。いくつかの実施形態において、上記キャプシドは、AAV8キャプシドである。いくつかの実施形態において、上記キャプシドは、AAV9バリアントキャプシドである。いくつかの実施形態において、上記5’-ITR配列および/または上記3’-ITR配列は、AAV2に由来する。いくつかの実施形態において、上記5’-ITR配列および/または上記3’-ITR配列は、配列番号11を含むかまたはそれからなる。
【0137】
例示的な実施形態において、CDKL5の上記コード配列は、配列番号6を含むかまたはそれからなる。いくつかの実施形態において、上記プロモーター配列は、配列番号12~14から選択される。例示的な実施形態において、上記プロモーター配列は、配列番号12を含むかまたはそれからなる。いくつかの実施形態において、上記キャプシドは、AAV9キャプシドである。いくつかの実施形態において、上記キャプシドは、AAV8キャプシドである。いくつかの実施形態において、上記キャプシドは、AAV9バリアントキャプシドである。いくつかの実施形態において、上記5’-ITR配列および/または上記3’-ITR配列は、AAV2に由来する。いくつかの実施形態において、上記5’-ITR配列および/または上記3’-ITR配列は、配列番号11を含むかまたはそれからなる。
【0138】
例示的な実施形態において、CDKL5の上記コード配列は、配列番号7を含むかまたはそれからなる。いくつかの実施形態において、上記プロモーター配列は、配列番号12~14から選択される。例示的な実施形態において、上記プロモーター配列は、配列番号12を含むかまたはそれからなる。いくつかの実施形態において、上記キャプシドは、AAV9キャプシドである。いくつかの実施形態において、上記キャプシドは、AAV8キャプシドである。いくつかの実施形態において、上記キャプシドは、AAV9バリアントキャプシドである。いくつかの実施形態において、上記5’-ITR配列および/または上記3’-ITR配列は、AAV2に由来する。いくつかの実施形態において、上記5’-ITR配列および/または上記3’-ITR配列は、配列番号11を含むかまたはそれからなる。
【0139】
例示的な実施形態において、CDKL5の上記コード配列は、配列番号8を含むかまたはそれからなる。いくつかの実施形態において、上記プロモーター配列は、配列番号12~14から選択される。例示的な実施形態において、上記プロモーター配列は、配列番号12を含むかまたはそれからなる。いくつかの実施形態において、上記キャプシドは、AAV9キャプシドである。いくつかの実施形態において、上記キャプシドは、AAV8キャプシドである。いくつかの実施形態において、上記キャプシドは、AAV9バリアントキャプシドである。いくつかの実施形態において、上記5’-ITR配列および/または上記3’-ITR配列は、AAV2に由来する。いくつかの実施形態において、上記5’-ITR配列および/または上記3’-ITR配列は、配列番号11を含むかまたはそれからなる。
【0140】
CDKL5の発現のための例示的なパッケージされたベクターゲノム構築物を示す説明図は、図1に提供される。上記構築物は、5’から3’の順番において:5’-ITR、SYN1プロモーター、CDKL5コード配列、SV40ポリアデニル化シグナル配列、および3’-ITRを示す。この例示的なパッケージされたベクターゲノム構築物の3,828bpの配列は、配列番号19において提供される。
【0141】
CDKL5の発現のための例示的なパッケージされたベクターゲノム構築物を示す別の説明図は、図2に提供される。上記構築物は、5’から3’の順番において:5’-ITR、CMVエンハンサー(例えば、CMV最初期遺伝子エンハンサー)、CBAプロモーター、SV40 Small Tイントロン、CDKL5コード配列、SV40ポリアデニル化シグナル配列、および3’-ITRを示す。この例示的なパッケージされたベクターゲノム構築物の4,057bpの配列は、配列番号20に提供される。
【0142】
医薬組成物:
いくつかの局面において、本開示は、本発明のrAAV(例えば、CDKL5の送達のためのrAAV)および薬学的に受容可能なキャリアまたは賦形剤を含む医薬組成物を提供する。いくつかの実施形態において、本発明のrAAV(例えば、CDKL5の送達のためのrAAV)を含む上記医薬組成物は、皮下、筋肉内、皮内、腹腔内、髄腔内、脳室内、静脈内、または大槽内投与のために製剤化される。例示的な実施形態において、上記医薬組成物は、髄腔内投与のために製剤化される。別の例示的な実施形態において、上記医薬組成物は、大槽内投与のために製剤化される。
【0143】
いくつかの実施形態において、上記rAAVは、ヒト被験体における注入に適した緩衝液/キャリア中に製剤化される。上記緩衝液/キャリアは、rAAVが注入チューブに貼り付くことを防止するが、インビボでのrAAV結合活性に干渉しない構成要素を含むべきである。種々の適切な溶液が、以下のうちの1またはこれより多くを含み得る:緩衝化食塩水、界面活性剤、および約100mM 塩化ナトリウム(NaCl)~約250mM 塩化ナトリウムに等しいイオン強度に調節された生理学的に適合性の塩または塩の混合物、または等しいイオン濃度に調節された生理学的に適合性の塩。そのpHは、6.5~8.5、または7~8.5、または7.5~8の範囲にあり得る。適切な界面活性剤または界面活性剤の組み合わせは、ポロキサマー、すなわち、ポリオキシエチレン(ポリ(エチレンオキシド))の2本の親水性鎖が隣接したポリオキシプリピレン10(ポリ(プロピレンオキシド))の中心疎水性鎖から構成される非イオン性トリブロックコポリマー、SOLUTOL HS 15(マクロゴール-15ヒドロキシステアレート)、LABRASOL(ポリオキシカプリル酸グリセリド)、ポリオキシ10オレイルエーテル、TWEEN(登録商標)(ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル)、エタノールおよびポリエチレングリコールから選択され得る。
【0144】
例示的な実施形態において、上記rAAVは、NaCl(例えば、200mM NaCl)、MgCl(例えば、1mM MgCl)、Tris(例えば、20mM Tris)、pH 8.0、およびポロキサマー188(例えば、0.005%または0.01% ポロキサマー188)を含む溶液中に製剤化される。
【0145】
いくつかの実施形態において、上記rAAVは、少なくとも1種の二価アルコールまたは多価アルコールを含む医薬組成物中に製剤化される。1つの実施形態において、上記二価アルコールまたは多価アルコールは、ポリエチレングリコール、プロピレングリコールおよびソルビトールからなる群より選択される1種またはこれより多くのアルコールである。
【0146】
例示的な実施形態において、上記rAAVは、ソルビトールを含む医薬組成物中に製剤化される。1つの実施形態において、ソルビトールは、0.5重量%~20重量%の範囲で上記製剤に存在する。1つの実施形態において、ソルビトールは、1重量%~10重量%の範囲で上記製剤に存在する。1つの実施形態において、ソルビトールは、約1重量%、約2重量%、約3重量%、約4重量%、約5重量%、約6重量%、約7重量%、約8重量%、約9重量%、または約10重量%で上記製剤に存在する。
【0147】
例示的な実施形態において、上記rAAVは、5重量% ソルビトールおよびポロキサマー188(例えば、0.005%または0.01% ポロキサマー188)を含む医薬組成物中に製剤化される。
【0148】
CDKL5欠損障害(CDD)を処置する方法:
さらに別の局面において、本開示は、ヒト被験体においてCDKL5欠損障害(CDD)を処置する方法であって、上記方法は、上記ヒト被験体に、治療上有効な量の、少なくとも1種の本明細書で開示されるrAAVを投与することを包含する方法を提供する。
【0149】
1つの実施形態において、本開示は、CDDを処置する方法であって、上記方法は、AAVキャプシドおよび上記AAVキャプシド内にパッケージされたベクターゲノムを含むrAAVを投与することを包含し、ここで上記ベクターゲノムは、CDKL5、またはその機能的フラグメントもしくは機能的バリアントの部分的なまたは完全なコード配列を含む方法を提供する。いくつかの実施形態において、CDKL5の上記コード配列は、配列番号1~8、またはこれらと少なくとも95%同一な配列から選択される。例示的な実施形態において、CDKL5の上記コード配列は、配列番号1を含むかまたはそれからなる。いくつかの実施形態において、上記プロモーター配列は、配列番号12~14から選択される。例示的な実施形態において、上記プロモーター配列は、配列番号12を含むかまたはそれからなる。いくつかの実施形態において、上記キャプシドは、AAV9キャプシドである。
【0150】
ある特定の実施形態において、本開示は、ヒト被験体においてCDDを処置する方法であって、上記方法は、CDKL5において少なくとも1つの変異を有すると診断されたヒト被験体に、治療上有効な量の、少なくとも1種の本明細書で開示されるrAAVを投与することを包含する方法を提供する。CDKL5における病原性変異の非限定的なリストは、Hectorら, 2017, Neurol Genet 3(6): e200、Russoら, 2009, Neurogenetics 10(3): 241-50、およびLeiden Open Variation Database(LOVD) Global Variome for CDKL5に記載される。
【0151】
1つの実施形態において、本開示は、CDKL5において少なくとも1つの変異を有すると診断されたヒト被験体においてCDDを処置する方法であって、上記方法は、AAVキャプシドおよび上記AAVキャプシド内にパッケージされたベクターゲノムを含むrAAVを投与することを包含し、ここで上記ベクターゲノムは、CDKL5、またはその機能的フラグメントもしくは機能的バリアントの部分的なまたは完全なコード配列を含む方法を提供する。いくつかの実施形態において、CDKL5の上記コード配列は、配列番号1~8、またはこれらと少なくとも95%同一な配列から選択される。例示的な実施形態において、CDKL5の上記コード配列は、配列番号1を含むかまたはそれからなる。いくつかの実施形態において、上記プロモーター配列は、配列番号12~14から選択される。例示的な実施形態において、上記プロモーター配列は、配列番号12を含むかまたはそれからなる。いくつかの実施形態において、上記キャプシドは、AAV9キャプシドである。
【0152】
任意の適切な方補または経路は、本明細書で記載されるrAAVまたはrAAV含有組成物を投与するために使用され得る。投与経路としては、例えば、皮下に、皮内に、腹腔内に、髄腔内に、脳室内に、静脈内に、大槽内(intracisterna magna)、および他の非経口投与経路が挙げられる。例示的な実施形態において、上記rAAVは、髄腔内に投与される。別の例示的な実施形態において、上記rAAVは、大槽を介して投与される。
【0153】
1つの実施形態において、上記rAAVは、大槽・髄腔内経路(cisternal intrathecal route)を介して投与され得る。別の実施形態において、上記rAAVは、腰椎髄腔内経路を介して投与され得る。いくつかの実施形態において、上記rAAVは、自動髄腔内インジェクターを使用して投与され得る。例えば、CSFダイナミクス、生理学的拍動性、および容積変位(volume displacement)に対して影響力を与えるインジェクターが、rAAVを髄腔内に送達するために利用され得る。本発明の方法において使用するための1つの可能なインジェクターの例は、Alcyone Lifesciences, Inc.が開発したPulsarTM Smart Intrathecal Delivery Platformである。
【0154】
投与される具体的用量は、各患者に対して均一な用量、患者1名あたり例えば、1.0×1011~1.0×1014 ゲノムコピー(GC)のウイルスであり得る。あるいは、患者の用量は、上記患者のおおよその体重または表面積に合わせて調節され得る。適切な投与量を決定することにおける他の要因としては、処置または防止される疾患または状態、疾患の重篤度、投与経路、および上記患者の年齢、性別および医学的状態が挙げられ得る。処置に適切な投与量を決定するために必要な計算のさらなる改良は、当業者によって、特に、本明細書で開示される投与量情報およびアッセイに鑑みて慣用的に行われる。上記投与量はまた、適切な用量-応答データとともに使用される投与量を決定するために公知のアッセイの使用を通じて決定され得る。個々の患者の投与量はまた、上記疾患の進行がモニターされるにつれて調節され得る。
【0155】
いくつかの実施形態において、上記rAAVは、qPCRまたは液滴デジタルPCR(ddPCR)によって測定されるように、例えば、約1.0×1011 ゲノムコピー/kg 患者体重(GC/kg)~約1×1014 GC/kg、約5×1011 ゲノムコピー/kg 患者体重(GC/kg)~約5×1013 GC/kg、または約1×1012~約1×1013 GC/kgの用量で投与される。いくつかの実施形態において、上記rAAVは、約1×1012~約1×1013 ゲノムコピー(GC)/kgの用量で投与される。いくつかの実施形態において、上記rAAVは、約1.1×1011、約1.3×1011、約1.6×1011、約1.9×1011、約2×1011、約2.5×1011、約3.0×1011、約3.5×1011、約4.0×1011、約4.5×1011、約5.0×1011、約5.5×1011、約6.0×1011、約6.5×1011、約7.0×1011、約7.5×1011、約8.0×1011、約8.5×1011、約9.0×1011、約9.5×1011、約1.0×1012、約1.5×1012、約2.0×1012、約2.5×1012、約3.0×1012、約3.5×1012、約4.0×1012、約4.5×1012、約5.0×1012、約5.5×1012、約6.0×1012、約6.5×1012、約7.0×1012、約7.5×1012、約8.0×1012、約8.5×1012、約9.0×1012、約9.5×1012、約1.0×1013、約1.5×1013、約2.0×1013、約2.5×1013、約3.0×1013、約3.5×1013、約4.0×1013、約4.5×1013、約5.0×1013、約5.5×1013、約6.0×1013、約6.5×1013、約7.0×1013、約7.5×1013、約8.0×1013、約8.5×1013、約9.0×1013、約9.5×1013ゲノムコピー(GC)/kgの用量で投与される。上記rAAVは、単回用量で、または所望の治療結果にとって必要とされる場合は、複数回用量(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10またはより多くの用量)で投与され得る。
【0156】
いくつかの実施形態において、本発明に従うCDDを処置する方法は、本明細書で記載されるrAAVを投与する前に、IgG分解プロテアーゼの投与をさらに含み得る。よって、本開示は、CDDを処置する方法であって、上記方法は、IgG分解プロテアーゼを先ず投与すること、および次いで、AAVキャプシドおよび上記AAVキャプシド内にパッケージされたベクターゲノムを含むrAAVを引き続いて投与することを包含し、ここで上記ベクターゲノムは、CDKL5、またはその機能的フラグメントもしくは機能的バリアントの部分的なまたは完全なコード配列を含む方法を提供する。
【0157】
いくつかの実施形態において、本発明に従うCDDを処置する方法は、IgG分解プロテアーゼを投与されているヒト被験体に対して行われる。
【0158】
本発明において使用され得るプロテアーゼの例としては、例えば、WO/2020/016318および/またはWO/2020/159970に記載されるもの(例えば、Streptococcus pyogenes、Streptococcus equi、Mycoplasma canis、Streptococcus agalactiae、Streptococcus pseudoporcinus、またはPseudomonas putidaに由来するシステインプロテーゼが挙げられる)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0159】
ある特定の実施形態において、上記IgG分解プロテアーゼは、Streptococcus pyogenesに由来するIdeS(配列番号23)、または配列番号23と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%同一であるプロテアーゼである。いくつかの実施形態において、上記プロテアーゼは、配列番号23の操作されたバリアントである。操作されたIdeSプロテアーゼの例は、WO/2020/016318ならびに米国特許公開第20180023070号および同第20180037962号に記載される。いくつかの実施形態において、上記操作されたIdeSバリアントは、配列番号20に対して1個、2個、3個、4個、5個、またはこれより多くのアミノ酸改変を有し得る。
【0160】
ある特定の実施形態において、上記IgG分解プロテアーゼは、Streptococcus equiに由来するIdeZ(配列番号24)または配列番号24と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%同一であるプロテアーゼである。いくつかの実施形態において、上記プロテアーゼは、配列番号24の操作されたバリアントである。操作されたIdeZプロテアーゼの例は、WO/2020/016318に記載される。いくつかの実施形態において、上記操作されたIdeZバリアントは、配列番号21に対して1個、2個、3個、4個、5個、またはこれより多くのアミノ酸改変を有し得る。
【0161】
本発明において使用され得る他のプロテアーゼとしては、例えば、WO/2017/134274に記載される、Streptococcus suis、Streptococcus porcinus、およびStreptococcus equiに由来するIgdE酵素が挙げられるが、これらに限定されない。
【0162】
いくつかの実施形態において、上記IgG分解プロテアーゼは、リポソーム、ナノ粒子、脂質ナノ粒子(LNP)、ポリマー、微粒子、マイクロカプセル、ミセル、もしくは細胞外小胞の中に被包され得るか、またはこれらと複合体化され得る。
【0163】
コルチコステロイドの使用を含むCNS障害を処置する方法:
本発明者らは驚くべきことに、rAAV投与の前にコルチコステロイド、プレドニゾロンを投与することが、種々の脳組織に存在するベクターゲノムの数の増加をもたらすことを観察した。理論によって拘束されないが、コルチコステロイドは、CNS組織における炎症を低減するように作用し、これは、上記rAAVが、コルチコステロイド投与が存在しない別の方法では到達しがたいであろう深部CNS組織に透過することを可能にするという仮説が立てられる。よって、さらに別の局面において、本開示は、ヒト被験体においてCNS障害を処置する方法であって、上記方法は、上記被験体に、コルチコステロイドを先ず投与すること、および次いで、治療上有効な量の、上記CNS障害の処置のために設計された少なくとも1種のrAAVを引き続いて投与することを包含し、ここで上記rAAVは、髄腔内に、脳室内に、または大槽内送達を介して投与される方法を提供する。ヒト被験体においてCNS障害を処置する方法であって、上記方法は、治療上有効な量の、上記CNS障害の処置のために設計された少なくとも1種のrAAVを投与することを包含し、ここで上記被験体は、コルチコステロイドを投与されており;必要に応じて、上記rAAVは、髄腔内に、脳室内に、または大槽内送達を介して投与される方法がまた、提供される。
【0164】
この局面に従う種々の実施形態において、上記コルチコステロイドは、プレドニゾロン、プレドニゾン、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン、トリアムシノロン、メチルプレドニゾロン、ブデソニド、ベタメタゾン、およびデフラザコートから選択され得る。例示的な実施形態において、上記コルチコステロイドは、プレドニゾロンである。
【0165】
この局面に従う種々の実施形態において、上記コルチコステロイドは、上記rAAVの投与の少なくとも約12時間前に、上記被験体に投与される。別の実施形態において、上記コルチコステロイドは、上記rAAVの投与の少なくとも約24時間前に、上記被験体に投与される。さらに別の実施形態において、上記コルチコステロイドは、上記rAAVの投与の少なくとも約2日前に、上記被験体に投与される。さらに別の実施形態において、上記コルチコステロイドは、上記rAAVの投与の少なくとも約3日前、4日前、5日前、6日前、7日前、または7日より前に、上記被験体に投与される。さらに別の実施形態において、上記コルチコステロイドは、上記rAAVの投与の少なくとも約7日前、14日前、21日前、または21日より前に、上記被験体に投与される。さらに別の実施形態において、上記コルチコステロイドは、上記rAAVの投与の少なくとも約1ヶ月前、少なくとも約2ヶ月前、または少なくとも約3ヶ月前に、上記被験体に投与される。
【0166】
1つの実施形態において、上記コルチコステロイドは、上記rAAVを投与する前に1回投与される。別の実施形態において、上記コルチコステロイドは、上記rAAVを投与する前に2回投与される。さらに別の実施形態において、上記コルチコステロイドは、上記rAAVを投与する前に3回、4回、5回、またはそれより多くの回数、投与される。
【0167】
ヒト被験体への上記コルチコステロイドの投与は、任意の経路によるものであり得る(経口、静脈内、皮内、経皮、皮下、筋肉内、吸入(例えば、エアロゾルを介する)、頬側(例えば、舌下)、局所(すなわち、皮膚および粘膜表面(気道表面を含む)の両方)、髄腔内、関節内、胸膜内(intraplural)、脳内、動脈内、腹腔内、または鼻内投与が挙げられるが、これらに限定されない)。例示的な実施形態において、上記コルチコステロイドは、経口投与される。
【0168】
ある特定の実施形態において、コルチコステロイドの用量は、mg/kg 被験体体重の単位で測定される。他の実施形態において、コルチコステロイドの用量は、被験体に投与される用量あたりのmg単位で測定される。本発明の組成物および方法とともに使用され得る用量の任意の測定値ならびに投与単位は、当該分野で標準的な手段によって変換され得る。
【0169】
ある特定の実施形態において、上記コルチコステロイドは、約1mg~約1000mgの用量で投与され得る。いくつかの実施形態において、上記コルチコステロイドは、約3mg~約300mgの用量で投与される。いくつかの実施形態において、上記コルチコステロイドは、約5mg~約150mgの用量で投与される。いくつかの実施形態において、上記コルチコステロイドは、約10mg~約100mgの用量で投与される。いくつかの実施形態において、上記コルチコステロイドは、約15mg~約80mgの用量で投与される。いくつかの実施形態において、上記コルチコステロイドは、約20mg~約60mgの用量で投与される。
【0170】
ある特定の実施形態において、上記コルチコステロイドは、約1mg、約2mg、約3mg、約4mg、約5mg、約6mg、約7mg、約8mg、約9 mg、約10mg、約11mg、約12mg、約13mg、約14mg、約15mg、約16mg、約17mg、約18mg、約19mg、約20mg、約21mg、約22mg、約23mg、約24mg、約25mg、約26mg、約27mg、約28mg、約29mg、約30mg、約31mg、約32mg、約33mg、約34mg、約35mg、約36mg、約37mg、約38mg、約39mg、約40mg、約45mg、約50mg、約55mg、約60mg、約65mg、約70mg、約75mg、約80mg、約85mg、約90mg、約95mg、約100mg、約150mg、約200mg、約250mg、約300mg、約350mg、約400mg、約450mg、約500mg、約600mg、約700mg、約800mg、約900mg、または約1000mgの用量で投与され得る。
【0171】
ある特定の実施形態において、上記コルチコステロイドは、約0.1mg/kg~約100mg/kg 被験体体重の用量で投与され得る。いくつかの実施形態において、抗CD19抗体は、約0.2mg/kg~約10mg/kgの用量で投与される。いくつかの実施形態において、上記抗CD19抗体は、約0.5mg/kg~約5mg/kgの用量で投与される。いくつかの実施形態において、上記抗CD19抗体は、約0.2mg/kg、約0.3mg/kg、約0.4mg/kg、約0.5mg/kg、約0.6mg/kg、約0.7mg/kg、約0.8mg/kg、約0.9mg/kg、約1mg/kg、約1.1mg/kg、約1.2mg/kg、約1.3mg/kg、約1.4mg/kg、約1.5mg/kg、約2mg/kg、約3mg/kg、約4mg/kg、約5mg/kg、または約10mg/kg 被験体体重の用量で投与される。
【0172】
いくつかの実施形態において、上記コルチコステロイドは、上記rAAVの投与の前に、合計で少なくとも1日間、少なくとも2日間、少なくとも3日間、少なくとも4日間、少なくとも5日間、少なくとも6日間、少なくとも7日間、少なくとも8日間、少なくとも9日間、少なくとも10日間、またはそれより多くの日数、投与され得る。例えば、ある特定の例示的な実施形態において、上記コルチコステロイドは、上記rAAVを投与する前に5日間、1mg/kg/日で投与され得る。
【0173】
いくつかの実施形態において、上記コルチコステロイドは、1mg/kg/日で4週間にわたって投与されてもよく、最初の投与は、上記rAAVの投与の5日前に行う。いくつかの実施形態において、上記コルチコステロイドは、1mg/kg/日で4週間にわたって投与されてもよく、最初の投与は、上記rAAVの投与の5日前に行い、続いて、さらに4週間にわたってコルチコステロイドの漸減を行う。
【0174】
この局面に従う方法は、遺伝子治療が適切であり得る任意のCNS障害を処置するために使用され得る。いくつかの実施形態において、上記CNS障害は、CDD、アンジェルマン症候群、バッテン病、クラッベ病、パーキンソン病、アルツハイマー病、脊髄性筋萎縮症(SMA)I型、II型、III型、およびIV型、X連鎖性ミオチュブラーミオパチー、フリードライヒ運動失調症、カナバン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、副腎白質ジストロフィー、ハンチントン病、レット症候群、ならびに脊髄小脳失調症から選択される。例示的な実施形態において、上記CNS障害は、CDDである。別の例示的な実施形態において、この局面に従う方法における使用のための上記rAAVは、本明細書で記載されるCDDの処置のために有用なrAAVを含む。例えば、rAAVは、AAVキャプシド(例えば、AAV9キャプシド)および上記AAVキャプシド内にパッケージされたベクターゲノムを含んでいてもよく、ここで上記ベクターゲノムは、(a)プロモーター配列(例えば、SYN1プロモーター配列、例えば、ヒトSYN1プロモーター配列);および(b)CDKL5もしくはそのアイソフォーム、またはその機能的フラグメントもしくは機能的バリアントの部分的なまたは完全なコード配列を含む。いくつかの実施形態において、上記コード配列は、配列番号1~8から選択される配列と少なくとも95%同一である配列を含む。
【0175】
詳細な説明全体を通じて、組成物が、特定の構成要素を有する、包含する、もしくは含むと記載される場合、またはプロセスおよび方法が、特定の工程を有する、包含する、もしくは含むと記載される場合、さらに、その記載される構成要素から本質的になるかまたはそれからなる本発明の組成物が存在すること、ならびにその記載される処理工程から本質的になるかまたはそれからなる本発明に従うプロセスおよび方法が存在することは、企図される。
【0176】
本開示において、要素または構成要素が、記載される要素または構成要素のリストの中に含まれるおよび/またはリストから選択されるといわれる場合、その要素もしくは構成要素が、その記載される要素もしくは構成要素のうちのいずれか1つであり得るか、またはその要素もしくは構成要素が、その記載される要素もしくは構成要素のうちの2もしくはこれより多くからなる群より選択され得ることは、理解されるべきである。
【0177】
さらに、本明細書で記載される組成物または方法の要素および/または特徴が、本明細書で明示的であろうと暗示的であろうと、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく種々の方法において組み合わされ得ることは、理解されるべきである。例えば、特定の化合物に対して言及がなされる場合、その化合物は文脈から別段理解されなければ、本発明の組成物の種々の実施形態においておよび/または本発明の方法において使用され得る。言い換えると、本開示の中で、実施形態は、明確かつ簡潔な開示が書かれ、描かれることを可能にする方法で記載され、示されているが、実施形態が、本教示および本発明から切り離されることなく、種々に組み合わされてもよいし、分離されてもよいことは、意図され、認識される。例えば、本明細書で記載され、示される全ての特徴が、本明細書で記載され、示される本発明の全ての局面に適用可能であり得ることは、認識される。
【0178】
表現「のうちの少なくとも1」が、文脈および用途から別段理解されなければ、その表現の後に来る記載される物体の各々、およびその記載される物体のうちの2またはこれより多くの種々の実施形態を個々に含むことは、理解されるべきである。3またはこれより多くの記載される物体に関連して、表現「および/または」は、文脈から別段理解されなければ、同じ意味を有することが理解されるべきである。
【0179】
用語「含む、包含する(include)」、「含む、包含する(includes)」、「含む、包含する(including)」、「有する(have)」、「有する(having)」、「含む、含有する(contain)」、「含む、含有する(contains)」または「含む、含有する(containing)」の使用は、これらの文法上等価なものを含め、概して制限がなくかつ非限定的である、例えば、別段具体的に述べられなければ、または文脈から理解されなければ、さらなる記載されない要素または工程を排除しないと概して理解されるべきである。
【0180】
用語「約」が定量的値の前で使用される場合、本発明はまた、別段具体的に述べられなければ、その特定の定量的値自体を含む。本明細書で使用される場合、用語「約」とは、別段示されなければまたは推測されなければ、名目上の値からの±10% 変動に言及する。
【0181】
工程の順序またはある特定の行為を行うための順序は、本発明が実施可能なままである限りにおいて、重要ではないことが理解されるべきである。さらに、2またはこれより多くの工程または行為は、同時と見做されてもよい。
【0182】
任意のおよび全ての例、または例示的な文言、例えば、「のような、例えば(such as)」または「が挙げられる(including)」の本明細書での使用は、本発明をよりよく例証することを意図するに過ぎず、別段特許請求されなければ、本発明の範囲に対する限定を課すものではない。本明細書中のいかなる文言も、任意の特許請求されていない要素を本発明の実施に必須として示すと解釈されるべきではない。
【実施例
【0183】
ここで一般的に記載されている開示は、以下の実施例を参照することによってより容易に理解される。実施例は、本開示のある特定の局面および実施形態を例証する目的で含められるに過ぎず、いかなる方法によっても本開示の範囲を限定することは意図されない。
【0184】
実施例1:
この実施例の目的は、Neuro2a(マウス神経芽腫)細胞へのCBA-hCDKL5プラスミドの送達が、CDKL5の発現の増加およびCDKL5の下流の標的であるEB2(微小管関連タンパク質RP/EBファミリーメンバー2)のリン酸化の引き続く増加をもたらすことを実証することである。
【0185】
この実施例では、Neuro2a細胞を、ヒトCDKL5 cDNAの上流にCBAプロモーターを含むプラスミドで48時間、一過性にトランスフェクトしたか、またはトランスフェクトせずに静置した。細胞を固定し、抗CDKL5抗体および抗ホスホ-EB2抗体を使用して免疫組織化学を行った。Zeiss Axio Imager M2蛍光顕微鏡を使用して、画像化を行った。
【0186】
図3に示されるように、高レベルのhCDKL5を発現するNeuro2a細胞は、増強されたレベルのリン酸化EB2タンパク質(CDKL5の下流の標的)を示す。これは、Neuro2a細胞へのCDKL5の送達が、CDKL5標的(例えば、EB2)の活性に正の影響を及ぼし得ることを示す。
【0187】
実施例2:
この実施例の目的は、rAAV9-CBA-eGFPまたはrAAV9-SYN-eGFPで処置したCdkl5 KOマウスの種々のCNS組織における増強緑色蛍光タンパク質(eGFP)の発現を実証することである。
【0188】
この実施例では、CDKL5欠損マウスに、(1)AAV9キャプシドならびにCBAプロモーターおよびeGFPコード配列を含むベクターゲノムを含むrAAV[rAAV9-CBA-eGFP]、または(2)AAV9キャプシドならびにSYNプロモーターおよびeGFPコード配列を含むベクターゲノムを含むrAAV[rAAV9-SYN-eGFP]を投与した。マウスに、脳室内(ICV)注射によってrAAVを投与した。組織を、分析のために、投与の2~4週間後に回収した。脳を固定し、スライスし、eGFPの検出のために免疫染色した。
【0189】
図4に示されるように、eGFPを、海馬、線条体、前頭皮質、および小脳を含め、投与したマウスの脳の多数の領域において検出した。全てのマウスは、海馬および線条体において最高濃度のeGFPを有した。rAAV9-CBA-eGFPを投与したマウスは、皮質においてわずかな細胞を有し、小脳においてわずかに多くの細胞を有した;rAAV9-SYN-eGFPを投与したマウスは、小脳においてわずかな細胞を有し、皮質においてわずかに多くの細胞を有した。
【0190】
この実施例は、ICV注射によるrAAV9-CBA-eGFPおよびrAAV9-SYN-eGFPの投与が、海馬および線条体の細胞において高レベルのeGFPタンパク質、ならびに皮質および小脳の細胞において低レベルのeGFPタンパク質を生じることを示す。
【0191】
実施例3:
この実施例の目的は、ヒトシナプシン(SYN)プロモーター、構成的プロモーター(CBA)、または内因性CDKL5プロモーターが全て、Neuro2a細胞におけるCDKL5タンパク質発現を駆動し得ることを実証することである。
【0192】
この実施例では、Neuro2a細胞を、eGFPまたはhCDKL5を発現するプラスミドで48時間、一過性にトランスフェクトした。形質導入しなかったNeuro2a細胞を、コントロールとして供した。細胞を固定し、抗CDKL5抗体を使用して免疫細胞化学検査を行った。Zeiss Axio Imager M2蛍光顕微鏡を使用して画像化を行った。
【0193】
図5に示されるように、hCDKL5およびeGFPは、CBAプロモーターでの最高の発現レベルおよびSYNプロモーターからの低い発現レベルと比較して、内因性CDKL5プロモーター(それぞれ、Endo-hCDKL5およびEndo-eGFP)を使用してトランスフェクトしたNeuro2a細胞において中間のレベルで発現される。この実施例は、ヒトCDKL5転写開始部位の上流にあるヌクレオチド(すなわち、内因性CDKL5プロモーター)が、Neuro2a細胞においてeGFPならびにhCDKL5の発現を駆動し得ることを示す。
【0194】
実施例4:
この実施例の目的は、CDKL5欠損マウスへのrAAV9-SYN-hCDKL5およびrAAV9-CBA-hCDKL5のCSF送達が、脳全体にわたるhCDKL5 mRNAおよびcDNAの頑健な分布を生じることを実証することである。
【0195】
この実施例では、CDKL5欠損マウスに、(1)AAV9キャプシドならびにCBAプロモーターおよびhCDKL5コード配列を含むベクターゲノムを含むrAAV[rAAV9-CBA-hCDKL5]または(2)AAV9キャプシドならびにSYNプロモーターおよびhCDKL5コード配列を含むベクターゲノムを含むrAAV[rAAV9-SYN-hCDKL5]を投与した。脳室内(ICV)注射によってマウスに投与した。投与の2週間後または3ヶ月後のいずれかに、組織を回収した。脳を固定し、スライスし、RNAスコープインサイチュハイブリダイゼーションによって処理して、hCDKL5 mRNAおよびcDNA、ならびにRbfox3 mRNA(ニューロンマーカー)を検出した。
【0196】
図6Aに示されるように、両方のベクターが、海馬および線条体領域において高いレベルのhCDKL5を生じた。両方のベクターはまた、皮質全体を通じてニューロンにおいてhCDKL5を発現させたことが、共標識から確認された(図6B)。図6Bに示されるように、ICV注射によってrAAV9-CBA-hCDKL5(図6Bの四角5)またはrAAV9-SYN-hCDKL5(図6Bの四角7)で処置したマウスは、海馬、線条体、および皮質においてhCDKL5 mRNAおよびcDNAを有した。上記2種のベクター間で、全体的な分布の類似性が認められ、両方のベクターが、ニューロンマーカーRbfox3での共標識を示す図6Bによって示されるように、ニューロンにおいて発現を駆動した。図6Bの四角6は、rAAV9-CBA-hCDKL5ベクターから発現したhCDKL5およびニューロンマーカーRbfox3の共標識を示す。図6Bの四角8は、rAAV9-SYN-hCDKL5ベクターから発現したhCDKL5およびニューロンマーカーRbfox3の共標識を示す。
【0197】
この実施例において示されるデータは、ICV注射によるrAAV9-CBA-hCDKL5およびrAAV9-SYN-hCDKL5ベクターの投与が、海馬、線条体、および前頭皮質全体を通じてニューロンにおいてhCDKL5 mRNAおよびcDNAをもたらすことを示す。
【0198】
実施例5:
この実施例の目的は、AAV9-SYN-hCDKL5およびAAV9-CBA-hCDKL5 rAAVが、マウス脳へ機能的CDKL5タンパク質を送達し得ることを実証することである。
【0199】
この実施例では、CDKL5欠損マウスに、脳室内(ICV)注射によってrAAV9-CBA-hCDKL5またはrAAV9-SYN-hCDKL5を投与し、投与の2週間後に組織を回収した。脳を顕微解剖し、前頭皮質をホモジネートし、ウェスタンブロットを行い、CDKL5、pEB2およびβ-チューブリンに対する抗体でプローブした。
【0200】
図7に示されるように、rAAV9-SYN-hCDKL5またはrAAV9-CBA-hCDKL5で処置したCDKL5欠損マウスは、ビヒクルコントロールと比較して、増加したレベルのCDKL5タンパク質およびリン酸化EB2(pEB2)タンパク質を示した。CDKL5下流標的であるEB2のリン酸化から、送達されたCDKL5が、機能的キナーゼとして作用していることが確認される。
【0201】
実施例6:
この実施例の目的は、AAV9-CBA-eGFPおよびAAV9-SYN-eGFPが、腰椎髄腔内送達後に、非ヒト霊長類(NHP)脳にわたって細胞を形質導入し得ることを実証することである。
【0202】
この実施例では、若年の雌性NHP被験体(n=2/ベクター)に、腰椎髄腔内注射によって、rAAV9-CBA-eGFPまたはrAAV9-SYN-eGFPを投与した。投与の2週間後に、定量的PCRによるベクターゲノム定量のために種々の組織を回収した。
【0203】
1×10~1×10 コピーの間のvg/μg 組織DNAが、処置されたNHPからのCNSおよび末梢組織において定量された。図8に示されるように、rAAV9-CBA-eGFP投与およびrAAV9-SYN-eGFP投与の両方が、異なる組織間で類似のコピー数を生じた。
【0204】
この実施例は、髄腔内送達によるrAAV9-CBA-eGFPおよびrAAV9-SYN-eGFPの投与が、ベクター間で広い生体分布の区別なしに、分析した全ての脳および末梢領域においてベクターゲノムを生じることを示す。
【0205】
実施例7:
この実施例の目的は、NHP皮質において、AAV9-CBA-eGFPが、グリア形態を有する細胞において主に発現を駆動する一方で、AAV9-SYN-eGFPが、ニューロン形態を有する細胞において主に発現を駆動することを実証することである。
【0206】
この実施例では、若年の雌性NHP被験体(n=2/ベクター)に、腰椎髄腔内注射によってrAAV9-CBA-eGFPまたはrAAV9-SYN-eGFPを投与した。投与の2週間後に、脳を回収し、固定し、切片化し、浮動性色素形成検出(free-floating chromogenic detection)によってeGFPに関して免疫染色した。
【0207】
eGFP陽性細胞を、rAAV9-CBA-eGFPおよびrAAV9-SYN-eGFPの両方を投与したNHP被験体に由来する脳切片において検出した。eGFP陽性細胞は、単独で最も一般に認められたが、ときおり、集団で認められた。図9に示されるように、rAAV9-CBA-eGFPを投与したNHP被験体に由来するeGFP陽性細胞は、種々の形態を有したが、大部分は、広い分枝および小さな細胞体を有するグリア細胞の外見を有した。これは、CBAプロモーターが、星細胞様のグリア細胞(すなわち、非ニューロン細胞)においてeGFPペイロードを優先的に発現することを示唆する。一方で、rAAV9-SYN-eGFPを投与したNHP被験体に由来するeGFP陽性細胞は、丸い細胞体および少ない分枝を有するニューロンの外見を有した。これは、SYNプロモーターが、所望の標的細胞タイプ(すなわち、ニューロン)においてeGFPペイロードを発現するにあたってより有効であることを示唆する。
【0208】
髄腔内投与によるrAAV9-CBA-eGFPの投与は、eGFP陽性の星細胞様のグリア細胞を主に生じる一方で、rAAV9-SYN-eGFPの投与は、eGFP陽性ニューロンを主に生じる。この実施例におけるデータは、非ヒト霊長類において、SYNプロモーターが、構成的CBAプロモーターと比較してニューロン細胞においてCDKL5の送達および発現にとって有利であり得ることを示唆する。
【0209】
実施例8:
この実施例の目的は、幼若CDKL5欠損マウスのCSFへのrAAV9-SYN-hCDKL5送達が、学習、記憶、および運動機能を改善し得ることを実証することである。
【0210】
この実施例では、単一の高用量(1.6e12 vg/マウス)の、AAV9キャプシドおよびSYNプロモーターの制御下でヒトCDKL5遺伝子を発現するベクターゲノム(図1に示されるパッケージされたゲノム、配列番号19、3,828bp)を含む組換えAAVを、脳室内(ICV)注射によって3~5週齢の間の(早期症候性)幼若雄性および雌性CDKL5欠損マウスのCSFに注射した。マウスがいったん2~3ヶ月齢(成体)に達したら、該マウスに一組の行動試験を受けさせた。行動試験後に、脳を、CDKL5タンパク質発現のウェスタンブロット分析のために採取した。
【0211】
多数の脳領域からの顕微解剖した組織のウェスタンブロット分析によって、投与の約3ヶ月後に、処置したマウスの脳にわたってヒトCDKL5タンパク質の中程度の長時間持続性の増加(前頭皮質および脳幹ではWTレベルの20~30%、海馬では35~70%)を示した。CDKL5欠損マウス脳の異なる領域(前頭皮質:図10A; 海馬:図10B;および脳幹:図10C)において定量されたCDKL5の量を示すグラフを示す図10A~10Cを参照のこと。図11A~11Dに示されるように、rAAV9-SYN-hCDKL5処置した雄性および雌性のマウスは、不安様行動(図11A)、運動機能(図11B)および協調(図11C)における改善を、ならびに学習および記憶において正常化を(図11D)示した。
【0212】
この実施例において強調した所見は、機能的CDKL5の一様の中程度のレベルが、rAAV9-SYN-hCDKL5を介して、幼若の症候性CDKL5欠損マウスに送達された場合に、有意に改善された脳機能をもたらし得ることを示唆する。
【0213】
実施例9:
この実施例の目的は、非ヒト霊長類(NHP)のいくつかのCNS領域へのrAAV9-SYN-eGFP送達が、腰椎髄腔内投与と比較して、大槽内投与経路を経るベクター粒子の投与によって増加し得ることを示すことである。
【0214】
この実施例では、若年の雌性NHP被験体に、rAAV9-SYN-eGFPを、腰椎髄腔内(IT)注射(n=2)によって(上記の実施例6から抽出したデータ)、または大槽内(CM)投与(n=3)によって(この実施例9において新たに生成したデータ)投与した。全てのNHPを、投与の間および投与完了後15分間にわたって、トレンデレンブルグ体位に置いた。投与の2週間後に、定量的PCRによるベクターゲノム定量のために種々の組織を回収した。図12は、トレンデレンブルグ体位において与えたrAAV9-SYN-eGFPの8.06×1013 ベクターゲノム(vg)の髄腔内(IT)送達(UX055-18-0001)または7.76×1013 vgの大槽内(CM)送達(UX055-19-0002)のいずれかの2週間後に、1~2歳齢の雌性非ヒト霊長類(NHP)のCNSにおいてDNA1μgあたりのゲノムコピー(GC)を図示する棒グラフである。グラフは、大槽内送達が、頭頂葉(10×)、線条体(10×)、および視床(8×)を含め、種々の脳組織においてNHP CNSにおけるベクターゲノムの数の増加を生じることを図示する。このグラフに示されるデータは、2回の独立した試験の一部として集めた。
【0215】
組織DNA1μgあたり1×10~1×10コピーの間のvgが、処置したNHPからの脳および脊髄組織において定量された。図12に示されるように、大槽へのrAAV9-SYN-eGFP投与は、多くのCNS組織にわたって腰椎髄腔内送達より高いコピー数を生じた。
【0216】
この実施例において強調した所見は、NHPにおけるいくつかのCNS領域へのrAAV送達の増加が、大槽内投与経路を介して達成され得ることを示す。
【0217】
実施例10:
この実施例の目的は、プレドニゾロンが、驚くべきことに、大槽内注射後にNHPにおける多くのCNS領域に送達されたrAAV9-SYN-hCDKL5(UX055-19-003)ベクターゲノムの数を増加させることを実証することである。
【0218】
この実施例では、若年の雌性NHP被験体に、プレドニゾロンあり(n=3)またはなし(n=3)で、トレンデレンブルグ体位での大槽内(CM)投与によってrAAV9-SYN-hCDKL5を投与した。プレドニゾロン処置群のNHPは、経口胃管栄養法によってrAAV9-SYN-hCDKL5投与の4日前に開始して1mg/kg プレドニゾロンの1回の1日用量を受け、試験の終了まで継続した。投与後4週間で、脳の半分から定量的PCRによるベクターゲノム定量のために種々の組織を回収し、その脳の残りの半分を、インサイチュハイブリダイゼーションを使用して、形質導入された細胞数を分析するために冠状に切片化した。プローブを設計して、ベクターDNAに特異的に結合させ、ヘマトキシリン対比染色を使用して、個々の細胞を可視化した。
【0219】
組織DNA1μgあたり1×10~1×10 コピーの間のvgを、処置したNHPからのいくつかの脳領域、脊髄、および後根神経節(DRG)において定量した。図13Aに示されるように、前処置および持続したプレドニゾロンは、大槽へのrAAV9-SYN-hCDKL5投与と組み合わせた場合、驚くべきことに、rAAV9-SYN-hCDKL5単独と比較して、多くのCNS組織にわたってより高いコピー数をもたらした。これらの結果は、形質導入の増加が予測されなかったことから驚くべきことであった。
【0220】
図13Bに示されるように、後頭皮質および小脳を含む切片に対するBaseScope(インサイチュハイブリダイゼーション)分析は、プレドニゾロンで処置したNHPにおける形質導入した細胞の数の増加傾向を示した(パネル2および4)。しかし、動物間での有意な変動性が、非プレドニゾロン群にいて1匹のアウトライアーNHPで認められた(パネル1および3)。図13Cに示されるように、非常に多数のベクターゲノム陽性細胞を有する1匹のアウトライアーNHPは、非プレドニゾロン群において認められた。
【0221】
理論によって拘束されないが、プレドニゾロンが先天的免疫系を阻害する能力が、この所見に寄与し得る、および/またはプレドニゾロンが炎症を抑制する能力が脳の中へとより深部に上記rAAVが透過することを可能にし得、ベクターゲノムコピー数によって測定される場合の形質導入の観察される増加を生じるという仮説が立てられる。
【0222】
この実施例において強調される所見は、NHPにおけるいくつかのCNS領域へのrAAV送達の増加が、コルチコステロイドであるプレドニゾロンがrAAV投与の前および投与の間に与えられる場合に達成され得ることを示す。
【0223】
番号付けした実施形態
本明細書で開示される実施形態は、本開示の番号付けした実施形態に提供されるとおりの実施形態P1~P53を含む。
【0224】
実施形態P1: 組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)であって、ここで前記rAAVは、AAVキャプシドおよび前記AAVキャプシド内にパッケージされたベクターゲノムを含み、ここで前記ベクターゲノムは、
(a)プロモーター配列;および
(b)CDKL5のコード配列であって、ここで前記コード配列は、配列番号1~8と少なくとも95%同一である配列を含むCDKL5のコード配列、
を含む、rAAV。
【0225】
実施形態P2: 前記AAVキャプシドは、血清型1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、rh10、またはhu37のAAVに由来する、実施形態P1に記載のrAAV。
【0226】
実施形態P3: 前記AAVキャプシドは、AAV9に由来する、実施形態P2に記載のrAAV。
【0227】
実施形態P4: 前記AAVキャプシドは、AAV8に由来する、実施形態P2に記載のrAAV。
【0228】
実施形態P5: 前記AAVキャプシドは、AAV9バリアントキャプシドである、実施形態P1に記載のrAAV。
【0229】
実施形態P6: 前記プロモーターは、ニューロン特異的プロモーターである、実施形態P1~P5のいずれかに記載のrAAV。
【0230】
実施形態P7: 前記ニューロン特異的プロモーターは、ヒトシナプシン1(SYN1)プロモーター、マウスカルシウム/カルモジュリン依存性プロテインキナーゼII(CaMKII)プロモーター、ラットチューブリンαI(Ta1)プロモーター、ラットニューロン特異的エノラーゼ(NSE)プロモーター、ヒトニューロン特異的エノラーゼ(ENO2)プロモーター、ヒト血小板由来成長因子β鎖(PDGF)プロモーター、ヒトBM88プロモーター、およびニューロンニコチン性受容体β2(CHRNB2)プロモーターから選択される、実施形態P6に記載のrAAV。
【0231】
実施形態P8: 前記ニューロン特異的プロモーターは、前記SYN1プロモーターである、実施形態P7に記載のrAAV。
【0232】
実施形態P9: 前記SYN1プロモーター配列は、配列番号12を含む、実施形態P8に記載のrAAV。
【0233】
実施形態P10: 前記SYN1プロモーター配列は、配列番号12からなる、実施形態P8に記載のrAAV。
【0234】
実施形態P11: 前記プロモーターは、ニワトリβ-アクチン(CBA)プロモーター、サイトメガロウイルス(CMV)最初期遺伝子プロモーター、トランスサイレチン(TTR)プロモーター、サイロキシン結合グロブリン(TBG)プロモーター、およびα-1アンチトリプシン(A1AT)プロモーターから選択される、実施形態P1~P5のいずれかに記載のrAAV。
【0235】
実施形態P12: 前記プロモーターは、前記CBAプロモーターである、実施形態P11に記載のrAAV。
【0236】
実施形態P13: 前記CBAプロモーター配列は、配列番号13を含む、実施形態P12に記載のrAAV。
【0237】
実施形態P14: 前記CBAプロモーター配列は、配列番号13からなる、実施形態P12に記載のrAAV。
【0238】
実施形態P15: 前記プロモーターは、CDKL5遺伝子特異的内因性プロモーターである、実施形態P1~P5のいずれかに記載のrAAV。
【0239】
実施形態P16: 前記CDKL5遺伝子特異的内因性プロモーターは、少なくとも15個の連続するヌクレオチドのヌクレオチド配列であって、配列番号14の等しい長さの領域と少なくとも95%同一であるヌクレオチド配列を含む、実施形態P15に記載のrAAV。
【0240】
実施形態P17: 前記ベクターゲノムは、5’-ITR配列をさらに含む、実施形態P1~P16のいずれかに記載のrAAV。
【0241】
実施形態P18: 前記ベクターゲノムは、3’-ITR配列をさらに含む、実施形態P1~P17のいずれかに記載のrAAV。
【0242】
実施形態P19: 前記5’-ITR配列および/または前記3’-ITR配列は、AAV2に由来する、実施形態P17~P18のいずれかに記載のrAAV。
【0243】
実施形態P20: 前記5’-ITR配列および前記3’-ITR配列は、配列番号11を含むかまたはそれからなる、実施形態P19に記載のrAAV。
【0244】
実施形態P21: 前記5’-ITR配列および/または前記3’-ITR配列は、非AAV2供給源に由来する、実施形態P17~P18のいずれかに記載のrAAV。
【0245】
実施形態P22: 前記ベクターゲノムは、ポリアデニル化シグナル配列をさらに含む、実施形態P1~P21のいずれかに記載のrAAV。
【0246】
実施形態P23: 前記ポリアデニル化シグナル配列は、SV40ポリアデニル化シグナル配列、ウシ成長ホルモン(BGH)ポリアデニル化シグナル配列、およびウサギβグロビンポリアデニル化シグナル配列から選択される、実施形態P22に記載のrAAV。
【0247】
実施形態P24: 前記ポリアデニル化シグナル配列は、前記SV40ポリアデニル化シグナル配列である、実施形態P23に記載のrAAV。
【0248】
実施形態P25: 前記SV40ポリアデニル化シグナル配列は、配列番号15を含むかまたはそれからなる、実施形態P24に記載のrAAV。
【0249】
実施形態P26: 前記ベクターゲノムは、1またはこれより多くのエンハンサー配列をさらに含む、実施形態P1~P25のいずれかに記載のrAAV。
【0250】
実施形態P27: 前記エンハンサーは、サイトメガロウイルス(CMV)最初期遺伝子エンハンサー、トランスサイレチンエンハンサー(enTTR)、ニワトリβ-アクチン(CBA)エンハンサー、En34エンハンサー、およびアポリポタンパク質E(ApoE)エンハンサーから選択される、実施形態P26に記載のrAAV。
【0251】
実施形態P28: 前記エンハンサーは、前記CMVエンハンサーである、実施形態P27に記載のrAAV。
【0252】
実施形態P29: 前記エンハンサー配列は、配列番号17を含むかまたはそれからなる、実施形態P28に記載のrAAV。
【0253】
実施形態P30: 前記エンハンサーは、前記プロモーター配列の上流に位置する、実施形態P26~P29に記載のrAAV。
【0254】
実施形態P31: 前記ベクターゲノムは、1またはこれより多くのイントロン配列をさらに含む、実施形態P1~P30のいずれかに記載のrAAV。
【0255】
実施形態P32: 前記イントロンは、SV40 Small Tイントロン、ウサギヘモグロビンサブユニットβ(rHBB)イントロン、ヒトβグロビンIVS2イントロン、β-グロビン/IgGキメライントロン、またはhFIXイントロンから選択される、実施形態P31に記載のrAAV。
【0256】
実施形態P33: 前記イントロンは、前記SV40 Small Tイントロンである、実施形態P32に記載のrAAV。
【0257】
実施形態P34: 前記SV40 Small Tイントロン配列は、配列番号18を含むかまたはそれからなる、実施形態P33に記載のrAAV。
【0258】
実施形態P35: 前記実施形態のいずれかに記載のrAAVおよび薬学的に受容可能なキャリアを含む医薬組成物。
【0259】
実施形態P36: ヒト被験体においてCDKL5欠損障害(CDD)を処置する方法であって、前記方法は、前記ヒト被験体に、治療上有効な量の、実施形態P1~P34のいずれかに記載のrAAVまたは実施形態P35に記載の組成物を投与することを包含する方法。
【0260】
実施形態P37: 前記rAAVまたは前記組成物は、皮下に、筋肉内に、皮内に、腹腔内に、髄腔内に、脳室内に、静脈内に、または大槽内に投与される、実施形態P36に記載の方法。
【0261】
実施形態P38: 前記rAAVまたは前記組成物は、髄腔内に投与される、実施形態P37に記載の方法。
【0262】
実施形態P39: 前記rAAVまたは前記組成物は、大槽内に投与される、実施形態P37に記載の方法。
【0263】
実施形態P40: 前記rAAVは、約1×1011~約1×1014 ゲノムコピー(GC)/kgの用量で投与される、実施形態P37~P39のいずれかに記載の方法。
【0264】
実施形態P41: ヒト被験体においてCDKL5欠損障害(CDD)を処置する方法であって、前記方法は、前記ヒト被験体に、コルチコステロイドを先ず投与すること、および次いで、治療上有効な量の組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)を引き続いて投与することを包含し、ここで前記rAAVは、AAVキャプシドおよび前記AAVキャプシド内にパッケージされたベクターゲノムを含み、ここで前記ベクターゲノムは、プロモーター配列およびCDKL5のコード配列を含む、方法。
【0265】
実施形態P42: ヒト被験体においてCDKL5欠損障害(CDD)を処置する方法であって、前記方法は、前記ヒト被験体に、コルチコステロイドを先ず投与すること、および次いで、治療上有効な量の実施形態P1~P34のいずれかに記載のrAAVまたは実施形態P35に記載の組成物を引き続いて投与することを包含する方法。
【0266】
実施形態P43: 前記コルチコステロイドは、プレドニゾロン、プレドニゾン、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン、トリアムシノロン、メチルプレドニゾロン、ブデソニド、ベタメタゾン、およびデフラザコートから選択される、実施形態P41~P42のいずれかに記載の方法。
【0267】
実施形態P44: 前記コルチコステロイドは、プレドニゾロンである、実施形態P43に記載の方法。
【0268】
実施形態P45: ヒト被験体においてCDKL5欠損障害(CDD)を処置する方法であって、前記方法は、前記ヒト被験体に、IgG分解プロテアーゼを先ず投与すること、および次いで、治療上有効な量の、実施形態P1~P34のいずれかに記載のrAAVまたは実施形態P35に記載の組成物を引き続いて投与することを包含する方法。
【0269】
実施形態P46: 前記IgG分解プロテアーゼは、Streptococcus pyogenesのIdeSまたはその操作されたバリアントである、実施形態P45に記載の方法。
【0270】
実施形態P47: 前記IgG分解プロテアーゼは、Streptococcus equiのIdeZまたはその操作されたバリアントである、実施形態P45に記載の方法。
【0271】
実施形態P48: 配列番号19と少なくとも95%同一の核酸配列を含む、ポリヌクレオチド。
【0272】
実施形態P49: 配列番号19を含むポリヌクレオチド。
【0273】
実施形態P50: 配列番号19からなるポリヌクレオチド。
【0274】
実施形態P51: 配列番号20と少なくとも95%同一の核酸配列を含む、ポリヌクレオチド。
【0275】
実施形態P52: 配列番号20を含むポリヌクレオチド。
【0276】
実施形態P53: 配列番号20からなるポリヌクレオチド。
【0277】
参照による援用
本明細書で言及される特許文書および科学論文の各々の開示全体は、全ての目的のために参照により援用される。
【0278】
均等物
本開示は、その趣旨および本質的な特徴から逸脱することなく、他の具体的形態において具現化され得る。従って、前述の実施形態は、全ての点において、本明細書で記載される開示を限定するのではなく例証であるとみなされるべきである。異なる実施形態の種々の構造的要素および種々の開示される方法の工程は、種々の組み合わせおよび並べ替えにおいて利用され得、全てのこのような改変は、本開示の形態であるとみなされるべきである。本開示の範囲は、従って、前述の説明によるのではなく添付の特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲の意味および均等の範囲内に入る全ての変更は、その中に包含されることが意図される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10A-10C】
図11A-11D】
図12
図13A
図13B
図13C
【配列表】
2023514204000001.app
【国際調査報告】