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特表2023-514223多孔質膜におけるセラミック架橋コーティング
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-05
(54)【発明の名称】多孔質膜におけるセラミック架橋コーティング
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/451 20210101AFI20230329BHJP
   H01M 50/434 20210101ALI20230329BHJP
   H01M 50/489 20210101ALI20230329BHJP
   H01M 50/443 20210101ALI20230329BHJP
   H01M 50/42 20210101ALI20230329BHJP
   H01M 50/426 20210101ALI20230329BHJP
   H01M 50/403 20210101ALI20230329BHJP
   H01M 50/446 20210101ALI20230329BHJP
   H01M 50/417 20210101ALN20230329BHJP
【FI】
H01M50/451
H01M50/434
H01M50/489
H01M50/443 B
H01M50/443 E
H01M50/42
H01M50/426
H01M50/403 D
H01M50/403 E
H01M50/403 A
H01M50/446
H01M50/443 M
H01M50/417
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022548785
(86)(22)【出願日】2021-02-12
(85)【翻訳文提出日】2022-10-07
(86)【国際出願番号】 US2021017853
(87)【国際公開番号】W WO2021163478
(87)【国際公開日】2021-08-19
(31)【優先権主張番号】63/016,163
(32)【優先日】2020-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/976,200
(32)【優先日】2020-02-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】598064680
【氏名又は名称】セルガード エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100115679
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 勇毅
(74)【代理人】
【識別番号】100114177
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】イン,ウェンビン
(72)【発明者】
【氏名】ラプリー,ジェームス
(72)【発明者】
【氏名】ユー,シャン
(72)【発明者】
【氏名】ライナルツ,ステファン
(72)【発明者】
【氏名】増井 勇二
(72)【発明者】
【氏名】成嶋 大介
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 祐也
【テーマコード(参考)】
5H021
【Fターム(参考)】
5H021BB01
5H021BB12
5H021BB15
5H021CC04
5H021EE04
5H021EE06
5H021EE10
5H021EE17
5H021EE22
5H021EE32
5H021EE39
5H021HH01
5H021HH03
5H021HH06
(57)【要約】
【課題】本発明は、多孔質膜における架橋されたセラミックコーティングおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】少なくとも片側に架橋されたセラミックコーティングを有する多孔質膜を開示する。コーティングされた多孔質膜は、電池セパレータとして、特にリチウムイオン電池用の電池セパレータとして使用され得る。コーティングは、少なくとも架橋剤とセラミックとを含む。架橋剤は、微粒子状のポリマー性バインダ架橋剤、PEO(PEG)架橋剤、またはPOSS架橋剤であってよい。コーティングされた膜は、電池セパレータとしての使用に有利となり得る、改善された特性を示す。例えば、コーティングされた多孔質膜は、改善された収縮特性および高温耐性を示し得る。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質膜と、
前記多孔質膜の少なくとも片側における架橋されたセラミックコーティングと、
を含むコーティングされた電池セパレータであって、
前記架橋されたセラミックコーティングが5ミクロン以下の厚さであり、150℃における機械方向(MD)熱収縮が10%未満である、コーティングされた電池セパレータ。
【請求項2】
前記150℃におけるMD熱収縮が5%未満である、請求項1に記載されたコーティングされた電池セパレータ。
【請求項3】
前記架橋されたセラミックコーティングが4ミクロン以下の厚みを有する、請求項1または2に記載されたコーティングされた電池セパレータ。
【請求項4】
前記架橋されたセラミックコーティングが3ミクロン以下の厚みを有する、請求項1または2に記載されたコーティングされた電池セパレータ。
【請求項5】
前記架橋されたセラミックコーティングが2ミクロン以下の厚みを有する、請求項1または2に記載されたコーティングされた電池セパレータ。
【請求項6】
前記架橋されたセラミックコーティングが1ミクロン以下の厚みを有する、請求項1または2に記載されたコーティングされた電池セパレータ。
【請求項7】
前記多孔質膜の両側に前記架橋されたセラミックコーティングを備える、請求項1に記載されたコーティングされた電池セパレータ。
【請求項8】
前記多孔質膜が微多孔質膜である、請求項1に記載されたコーティングされた電池セパレータ。
【請求項9】
前記多孔質膜が乾式法多孔質膜である、請求項1に記載されたコーティングされた電池セパレータ。
【請求項10】
前記多孔質膜が湿式法多孔質膜である、請求項1に記載されたコーティングされた電池セパレータ。
【請求項11】
多孔質膜と、
前記多孔質膜の少なくとも片側における架橋されたセラミックコーティングと、
を含むコーティングされた電池セパレータであって、
DMCまたはDECの低粘度の電解質内で2日経過後、荷重増加が250%未満である、コーティングされた電池セパレータ。
【請求項12】
DMCまたはDECの低粘度の電解質内で2日経過した後、前記荷重増加が200%未満である、請求項11に記載されたコーティングされた電池セパレータ。
【請求項13】
DMCまたはDECの低粘度の電解質内で2日経過した後、前記荷重増加が150%未満である、請求項11に記載されたコーティングされた電池セパレータ。
【請求項14】
DMCまたはDECの低粘度の電解質内で2日経過した後、前記荷重増加が100%未満である、請求項11に記載されたコーティングされた電池セパレータ。
【請求項15】
DMCまたはDECの低粘度の電解質内で2日経過した後、前記荷重増加が60%未満である、請求項11に記載されたコーティングされた電池セパレータ。
【請求項16】
前記多孔質膜の両側に前記架橋されたセラミックコーティングを備える、請求項11に記載されたコーティングされた電池セパレータ。
【請求項17】
前記多孔質膜が乾式法多孔質膜である、請求項11に記載されたコーティングされた電池セパレータ。
【請求項18】
前記多孔質膜が微多孔質膜である、請求項11に記載されたコーティングされた電池セパレータ。
【請求項19】
前記多孔質膜が湿式法多孔質膜である、請求項11に記載されたコーティングされた電池セパレータ。
【請求項20】
多孔質膜と、
前記多孔質膜の少なくとも片側における架橋されたセラミックコーティングと、
を含むコーティングされた電池セパレータであって、
前記コーティングされた電池セパレータが、高い熱安定性、高温での高粘度、薄膜による低い全含水率、低い粉落下、および低下した膨潤によりセパレータの機械的特性および電解質の親和性を維持させること、の少なくとも1つを示す、コーティングされた電池セパレータ。
【請求項21】
多孔質膜と、
前記多孔質膜の少なくとも片側における架橋されたセラミックコーティングと、
を含むコーティングされた電池セパレータであって、
前記架橋されたセラミックコーティングが、セラミック粒子と、微粒子状のポリマー性バインダ架橋剤または架橋試薬とを含む、コーティングされた電池セパレータ。
【請求項22】
前記セラミック粒子が、二酸化ケイ素(SiO)、酸化チタン(TiO)、ベーマイト、酸化アルミニウム(Al)、酸化マグネシウム(MgO)、BaSO、および炭酸カルシウム(CaCO)からなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項21に記載されたコーティングされた電池セパレータ。
【請求項23】
前記微粒子状のポリマー性バインダ架橋剤または架橋試薬が、微粒子状のアクリル系バインダ架橋剤または架橋試薬を含む、請求項21に記載されたコーティングされた電池セパレータ。
【請求項24】
前記微粒子状のポリマー性バインダ架橋剤または架橋試薬が、エポキシ基、ビニル基、アミノ基、およびイソシアネート基からなる官能基の群から少なくとも1つを表面上に含む、請求項21に記載されたコーティングされた電池セパレータ。
【請求項25】
前記微粒子状のアクリル系バインダ架橋剤または架橋試薬が、エポキシ基、アミノ基、およびイソシアネート基からなる官能基の群から少なくとも1つを表面上に含む、請求項23に記載されたコーティングされた電池セパレータ。
【請求項26】
前記架橋されたセラミックコーティングが、セラミック粒子100重量部あたり0.01~100重量部の量の前記微粒子状のポリマー性バインダ架橋剤または架橋試薬を含む、請求項21に記載されたコーティングされた電池セパレータ。
【請求項27】
前記架橋されたセラミックコーティングが、セラミック粒子100重量部あたり0.01~100重量部の量の前記微粒子状のポリマー性バインダ架橋剤または架橋試薬を含む、請求項21に記載されたコーティングされた電池セパレータ。
【請求項28】
前記架橋されたセラミックコーティングが、セラミック粒子100重量部あたり0.01~50重量部の量の前記微粒子状のポリマー性バインダ架橋剤または架橋試薬を含む、請求項21に記載されたコーティングされた電池セパレータ。
【請求項29】
前記架橋されたセラミックコーティングが、セラミック粒子100重量部あたり0.01~25重量部の量の前記微粒子状のポリマー性バインダ架橋剤または架橋試薬を含む、請求項21に記載されたコーティングされた電池セパレータ。
【請求項30】
前記架橋されたセラミックコーティングが、セラミック粒子100重量部あたり0.01~15重量部の量の前記微粒子状のポリマー性バインダ架橋剤または架橋試薬を含む、請求項21に記載されたコーティングされた電池セパレータ。
【請求項31】
前記架橋されたセラミックコーティングが、セラミック粒子100重量部あたり0.01~10重量部の量の前記微粒子状のポリマー性バインダ架橋剤または架橋試薬を含む、請求項21に記載されたコーティングされた電池セパレータ。
【請求項32】
前記架橋されたセラミックコーティングが、セラミック粒子100重量部あたり0.01~5重量部の量の前記微粒子状のポリマー性バインダ架橋剤または架橋試薬を含む、請求項21に記載されたコーティングされた電池セパレータ。
【請求項33】
前記架橋されたセラミックコーティングが、増粘剤、接着促進剤、界面活性剤、および分散剤から選択される少なくとも1つをさらに含む、請求項21に記載されたコーティングされた電池セパレータ。
【請求項34】
前記架橋されたセラミックコーティングが増粘剤をさらに含む、請求項33に記載されたコーティングされた電池セパレータ。
【請求項35】
前記増粘剤が、セルロース系の増粘剤である、請求項34に記載されたコーティングされた電池セパレータ。
【請求項36】
前記架橋されたセラミックコーティングが接着促進剤をさらに含む、請求項33に記載されたコーティングされた電池セパレータ。
【請求項37】
前記接着促進剤が、PVDFホモポリマーまたはコポリマー、またはPVDFホモポリマー若しくはコポリマーを含む粒子である、請求項36に記載されたコーティングされた電池セパレータ。
【請求項38】
前記架橋されたセラミックコーティングが界面活性剤をさらに含む、請求項33に記載されたコーティングされた電池セパレータ。
【請求項39】
前記界面活性剤が、ジアニオン、トリアニオン、またはポリアニオン界面活性剤である、請求項38に記載されたコーティングされた電池セパレータ。
【請求項40】
前記界面活性剤がジアニオン界面活性剤である、請求項39に記載されたコーティングされた電池セパレータ。
【請求項41】
前記ジアニオン界面活性剤が、ジカルボン酸塩構造、二硫酸塩構造、ジスルホン酸塩構造および二リン酸塩構造の少なくとも1つを有する、請求項40に記載されたコーティングされた電池セパレータ。
【請求項42】
前記ジアニオン界面活性剤が次の化学式の構造を有する、請求項41に記載されたコーティングされた電池セパレータ。
【化42】
上記式中、Xはアニオン基であり、RはC1からC10の飽和または不飽和の分枝または直鎖のアルキル基であり、RはC1からC10の飽和または不飽和の分枝または直鎖のアルキル基であり、RはC1からC10の飽和または不飽和の分枝または直鎖のアルキル基であり、およびRはアルキン基、アルケン基、アルケニル基またはアルキニル基である。
【請求項43】
前記ジアニオン界面活性剤が次の化学式の構造を有する、請求項42に記載されたコーティングされた電池セパレータ。
【化43】
【請求項44】
前記架橋されたセラミックコーティングが分散剤をさらに含む、請求項33に記載されたコーティングされた電池セパレータ。
【請求項45】
前記架橋されたセラミックコーティングが0.1~10ミクロンの厚みを有する、請求項21に記載されたコーティングされた電池セパレータ。
【請求項46】
架橋されたセラミックコーティングを多孔質膜の両側に有する、コーティングされた電池セパレータであって、
前記架橋されたセラミックコーティングが同一または異なるものである、請求項21に記載されたコーティングされた電池セパレータ。
【請求項47】
前記多孔質膜の反対側に異なるコーティングを備える、請求項21に記載されたコーティングされた電池セパレータ。
【請求項48】
前記多孔質膜が微多孔質膜である、請求項21に記載されたコーティングされた電池セパレータ。
【請求項49】
前記多孔質膜が乾式法微多孔質膜である、請求項21に記載されたコーティングされた電池セパレータ。
【請求項50】
前記多孔質膜が湿式法微多孔質膜である、請求項21に記載されたコーティングされた電池セパレータ。
【請求項51】
前記架橋されたセラミックコーティングが、コーティングスラリーを多孔質膜に塗布し、熱、光(UV光を含む)、またはその両方を用いて、光増感剤または光開始剤を加えまたは加えずに、架橋することによって形成された、請求項21に記載されたコーティングされた電池セパレータ。
【請求項52】
前記コーティングスラリーが、水性コーティングスラリー、または溶媒が水と10体積%未満の有機溶媒および/またはアルコールとのコーティングスラリーである、請求項51に記載されたコーティングされた電池セパレータ。
【請求項53】
多孔質膜と、
前記多孔質膜の少なくとも片側における架橋されたセラミックコーティングと、
を含むコーティングされた電池セパレータであって、
前記架橋されたセラミックコーティングが、セラミック粒子と、2以上の反応基を有するポリマー/ポリへドラルオリゴメリックシルセスキオキサン(POSS)架橋剤または架橋試薬とを含む、コーティングされた電池セパレータ。
【請求項54】
前記POSSが4以上の反応基を有する、請求項53に記載されたコーティングされた電池セパレータ。
【請求項55】
前記POSSが6以上の反応基を有する、請求項53に記載されたコーティングされた電池セパレータ。
【請求項56】
前記POSSが8以上の反応基を有する、請求項53に記載されたコーティングされた電池セパレータ。
【請求項57】
前記反応基が、エポキシ基、アミノ基、ビニル基、(メタ)アクリロキシ基、イソシアネート基、およびメルカプト基から選択される少なくとも1つを含む、請求項53に記載されたコーティングされた電池セパレータ。
【請求項58】
前記反応基が少なくともエポキシ基である、請求項53に記載されたコーティングされた電池セパレータ。
【請求項59】
前記POSS架橋剤または架橋試薬中のPOSSが、ランダム構造、かご型構造、開かご構造、ラダー状構造、またはダブルデッカー構造を有する、請求項53に記載されたコーティングされた電池セパレータ。
【請求項60】
前記POSSがランダム構造を有する、請求項59に記載されたコーティングされた電池セパレータ。
【請求項61】
前記POSSがかご型構造を有する、請求項59に記載されたコーティングされた電池セパレータ。
【請求項62】
前記POSSが開かご構造を有する、請求項59に記載されたコーティングされた電池セパレータ。
【請求項63】
前記POSSがラダー状構造を有する、請求項59に記載されたコーティングされた電池セパレータ。
【請求項64】
前記POSSがダブルデッカー構造を有する、請求項59に記載されたコーティングされた電池セパレータ。
【請求項65】
前記POSS架橋剤または架橋試薬が次の化学式で示される一般構造を有する、請求項53に記載されたコーティングされた電池セパレータ。
【化44】
上記式中、前記POSSは、ランダム構造、かご型構造、開かご構造、ラダー状構造、またはダブルデッカー構造を有することができ、nは2より上の整数であり、RはC1~C10の飽和または不飽和のアルキル基であり、Xは反応基であり、および上記式中の(R-O-X)は、POSSの酸素またはケイ素と結合している。
【請求項66】
前記POSS架橋剤または架橋試薬が次の化学式の構造を有する、請求項65に記載されたコーティングされた電池セパレータ。
【化45】
【請求項67】
前記POSS架橋剤または架橋試薬が次の化学式の構造を有する、請求項65に記載されたコーティングされた電池セパレータ。
【化46】
【請求項68】
nが5より大きい整数である、請求項65に記載されたコーティングされた電池セパレータ。
【請求項69】
前記セラミック粒子が、二酸化ケイ素(SiO)、酸化チタン(TiO)、ベーマイト、酸化アルミニウム(Al)、酸化マグネシウム(MgO)、BaSO、および炭酸カルシウム(CaCO)からなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項53に記載されたコーティングされた電池セパレータ。
【請求項70】
前記架橋されたセラミックコーティングが、セラミック粒子100重量部あたり0.01~100重量部の量の前記POSSバインダ架橋剤または架橋試薬を含む、請求項53に記載されたコーティングされた電池セパレータ。
【請求項71】
前記架橋されたセラミックコーティングが、セラミック粒子100重量部あたり0.01~50重量部の量の前記POSSバインダ架橋剤または架橋試薬を含む、請求項53に記載されたコーティングされた電池セパレータ。
【請求項72】
前記架橋されたセラミックコーティングが、セラミック粒子100重量部あたり0.01~25重量部の量の前記POSSバインダ架橋剤または架橋試薬を含む、請求項53に記載されたコーティングされた電池セパレータ。
【請求項73】
前記架橋されたセラミックコーティングが、セラミック粒子100重量部あたり0.01~15重量部の量の前記POSSバインダ架橋剤または架橋試薬を含む、請求項53に記載されたコーティングされた電池セパレータ。
【請求項74】
前記架橋されたセラミックコーティングが、セラミック粒子100重量部あたり0.01~10重量部の量の前記POSSバインダ架橋剤または架橋試薬を含む、請求項53に記載されたコーティングされた電池セパレータ。
【請求項75】
前記架橋されたセラミックコーティングが、セラミック粒子100重量部あたり0.01~5重量部の量の前記POSSバインダ架橋剤または架橋試薬を含む、請求項53に記載されたコーティングされた電池セパレータ。
【請求項76】
前記架橋されたセラミックコーティングが、バインダ、増粘剤、接着促進剤、界面活性剤、および分散剤の少なくとも1つをさらに含む、請求項53に記載されたコーティングされた電池セパレータ。
【請求項77】
前記架橋されたセラミックコーティングが0.1~10ミクロンの厚みを有する、請求項53に記載されたコーティングされた電池セパレータ。
【請求項78】
架橋されたセラミックコーティングを多孔質膜の両側に有する、コーティングされた電池セパレータであって、
前記架橋されたセラミックコーティングが同一または異なるものである、請求項53に記載されたコーティングされた電池セパレータ。
【請求項79】
前記多孔質膜の反対側に異なるコーティングを備える、請求項53に記載されたコーティングされた電池セパレータ。
【請求項80】
前記多孔質膜が微多孔質膜である、請求項53に記載されたコーティングされた電池セパレータ。
【請求項81】
前記多孔質膜が乾式法微多孔質膜である、請求項53に記載されたコーティングされた電池セパレータ。
【請求項82】
前記多孔質膜が湿式法微多孔質膜である、請求項53に記載されたコーティングされた電池セパレータ。
【請求項83】
前記架橋されたセラミックコーティングが、コーティングスラリーを多孔質膜に塗布し、熱、光(UV光を含む)、またはその両方を用いて、光増感剤または光開始剤を加えまたは加えずに、架橋することによって形成された、請求項53に記載されたコーティングされた電池セパレータ。
【請求項84】
前記コーティングスラリーが、水性コーティングスラリー、または溶媒が水と10体積%未満の有機溶媒および/またはアルコールとのコーティングスラリーである、請求項51に記載されたコーティングされた電池セパレータ。
【請求項85】
多孔質膜と、
前記多孔質膜の少なくとも片側における架橋されたセラミックコーティングと、
を含むコーティングされた電池セパレータであって、
前記架橋されたセラミックコーティングが、セラミック粒子と、2以上の反応基を有するポリエチレンオキシド(PEO)/ポリエチレングリコール(PEG)架橋剤または架橋試薬とを含む、コーティングされた電池セパレータ。
【請求項86】
PEO(PEG)架橋剤または架橋試薬が4以上の反応基を有する、請求項85に記載のコーティングされた電池セパレータ。
【請求項87】
PEO(PEG)架橋剤または架橋試薬が6以上の反応基を有する、請求項85に記載のコーティングされた電池セパレータ。
【請求項88】
PEO(PEG)架橋剤または架橋試薬が8以上の反応基を有する、請求項85に記載のコーティングされた電池セパレータ。
【請求項89】
前記反応基が、エポキシ基、ビニル基、アミノ基、およびイソシアネート基の少なくとも1つを含む、請求項85~88のいずれか1項に記載のコーティングされた電池セパレータ。
【請求項90】
前記PEO(PEG)架橋剤または架橋試薬が次のいずれかの化学式の構造を有する、請求項85に記載のコーティングされた電池セパレータ。
【化47】
【化48】
【化49】
【化50】
【化51】
【化52】
または
【化53】
【請求項91】
前記PEO(PEG)架橋剤または架橋試薬が次の化学式の構造を有する、請求項85に記載のコーティングされた電池セパレータ。
【化54】
上記式中、nは1から100000、またはそれ以上の整数である。
【請求項92】
前記PEO(PEG)架橋剤または架橋試薬が次の化学式の構造を有する、請求項85に記載のコーティングされた電池セパレータ。
【化55】
上記式中、nは1から100000、またはそれ以上の整数である。
【請求項93】
前記PEO(PEG)架橋剤または架橋試薬が次のいずれかの化学式の構造を有する、請求項85に記載のコーティングされた電池セパレータ。
【化56】
【化57】
【化58】
【化59】
または
【化60】
【請求項94】
前記PEO(PEG)架橋剤または架橋試薬が、ジ、トリ、テトラ、またはポリグリシジルエーテルである、請求項85に記載のコーティングされた電池セパレータ。
【請求項95】
前記PEO(PEG)架橋剤または架橋試薬が、ジ、トリ、テトラ、またはポリアクリレートである、請求項85に記載のコーティングされた電池セパレータ。
【請求項96】
前記セラミック粒子が、二酸化ケイ素(SiO)、酸化チタン(TiO)、ベーマイト、酸化アルミニウム(Al)、酸化マグネシウム(MgO)、BaSO、および炭酸カルシウム(CaCO)からなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項85に記載されたコーティングされた電池セパレータ。
【請求項97】
前記架橋されたセラミックコーティングが、セラミック粒子100重量部あたり0.01~100重量部の量の前記微粒子状のPEO(PEG)架橋剤または架橋試薬を含む、請求項85に記載されたコーティングされた電池セパレータ。
【請求項98】
前記架橋されたセラミックコーティングが、セラミック粒子100重量部あたり0.01~50重量部の量の前記微粒子状のPEO(PEG)架橋剤または架橋試薬を含む、請求項85に記載されたコーティングされた電池セパレータ。
【請求項99】
前記架橋されたセラミックコーティングが、セラミック粒子100重量部あたり0.01~25重量部の量の前記微粒子状のPEO(PEG)架橋剤または架橋試薬を含む、請求項53に記載されたコーティングされた電池セパレータ。
【請求項100】
前記架橋されたセラミックコーティングが、セラミック粒子100重量部あたり0.01~15重量部の量の前記微粒子状のPEO(PEG)架橋剤または架橋試薬を含む、請求項85に記載されたコーティングされた電池セパレータ。
【請求項101】
前記架橋されたセラミックコーティングが、セラミック粒子100重量部あたり0.01~10重量部の量の前記微粒子状のPEO(PEG)架橋剤または架橋試薬を含む、請求項85に記載されたコーティングされた電池セパレータ。
【請求項102】
前記架橋されたセラミックコーティングが、セラミック粒子100重量部あたり0.01~5重量部の量の前記微粒子状のPEO(PEG)架橋剤または架橋試薬を含む、請求項85に記載されたコーティングされた電池セパレータ。
【請求項103】
前記架橋されたセラミックコーティングが、バインダ、増粘剤、接着促進剤、界面活性剤、および分散剤の少なくとも1つをさらに含む、請求項85に記載されたコーティングされた電池セパレータ。
【請求項104】
前記架橋されたセラミックコーティングが0.1~10ミクロンの厚みを有する、請求項85に記載されたコーティングされた電池セパレータ。
【請求項105】
架橋されたセラミックコーティングを多孔質膜の両側に有する、コーティングされた電池セパレータであって、
前記架橋されたセラミックコーティングが同一または異なるものである、請求項85に記載されたコーティングされた電池セパレータ。
【請求項106】
前記多孔質膜の反対側に異なるコーティングを備える、請求項85に記載されたコーティングされた電池セパレータ。
【請求項107】
前記多孔質膜が微多孔質膜である、請求項85に記載されたコーティングされた電池セパレータ。
【請求項108】
前記多孔質膜が乾式法微多孔質膜である、請求項85に記載されたコーティングされた電池セパレータ。
【請求項109】
前記多孔質膜が湿式法微多孔質膜である、請求項85に記載されたコーティングされた電池セパレータ。
【請求項110】
前記架橋されたセラミックコーティングが、コーティングスラリーを多孔質膜に塗布し、熱、光(UV光を含む)、またはその両方を用いて、光増感剤または光開始剤を加えまたは加えずに、架橋することによって形成された、請求項85に記載されたコーティングされた電池セパレータ。
【請求項111】
前記コーティングスラリーが、水性コーティングスラリー、または溶媒が水と10体積%未満の有機溶媒および/またはアルコールとのコーティングスラリーである、請求項110に記載されたコーティングされた電池セパレータ。
【請求項112】
PEO(PEG)架橋剤が、次の化学式で表される長鎖PEO(PEG)、短鎖PEO(PEG)、または長鎖と短鎖のPEOの混合物を有する、請求項85に記載されたコーティングされた電池セパレータ。
【化61】
上記式中、nが1000未満のものを短鎖PEO、nが1000より大きいものを長鎖PEOとする。
【請求項113】
多孔質膜と、
前記多孔質膜の少なくとも片側における架橋されたセラミックコーティングと、
を含むコーティングされた電池セパレータであって、
前記架橋されたセラミックコーティングがセラミック粒子、架橋剤または架橋試薬、およびジアニオン、トリアニオンまたはポリアニオン界面活性剤を含む、コーティングされた電池セパレータ。
【請求項114】
前記界面活性剤がジアニオン界面活性剤である、請求項113に記載されたコーティングされた電池セパレータ。
【請求項115】
前記ジアニオン界面活性剤が、ジカルボン酸塩構造、二硫酸塩構造、ジスルホン酸塩構造および二リン酸塩構造の少なくとも1つを有する、請求項114に記載されたコーティングされた電池セパレータ。
【請求項116】
前記ジアニオン界面活性剤が次の化学式の構造を有する、請求項114に記載されたコーティングされた電池セパレータ。
【化62】
上記式中、Xはアニオン基であり、RはC1からC10の飽和または不飽和の分枝または直鎖のアルキル基であり、RはC1からC10の飽和または不飽和の分枝または直鎖のアルキル基であり、RはC1からC10の飽和または不飽和の分枝または直鎖のアルキル基であり、およびRはアルキン基、アルケン基、アルケニル基またはアルキニル基である。
【請求項117】
前記ジアニオン界面活性剤が次の化学式の構造を有する、請求項114に記載されたコーティングされた電池セパレータ。
【化63】
【請求項118】
前記界面活性剤がトリアニオン界面活性剤である、請求項113に記載されたコーティングされた電池セパレータ。
【請求項119】
前記界面活性剤がポリアニオン界面活性剤である、請求項113に記載されたコーティングされた電池セパレータ。
【請求項120】
多孔質膜の少なくとも片側にスラリー層を形成するために、セラミック粒子、架橋剤または架橋試薬、および溶媒を含むスラリーを塗布すること、
および架橋されたセラミック層を形成するために、スラリー層の乾燥前または乾燥後に架橋すること、
を含むコーティングされた電池セパレータの製造方法。
【請求項121】
前記架橋剤または架橋試薬が微粒子状のポリマー性バインダ架橋剤または架橋試薬である、請求項120に記載されたコーティングされた電池セパレータの製造方法。
【請求項122】
前記架橋剤または架橋試薬がPOSS架橋剤または架橋試薬である、請求項120に記載されたコーティングされた電池セパレータの製造方法。
【請求項123】
前記架橋剤または架橋試薬がPEO(PEG)架橋剤または架橋試薬である、請求項120に記載されたコーティングされた電池セパレータの製造方法。
【請求項124】
前記セラミック粒子が、二酸化ケイ素(SiO)、酸化チタン(TiO)、ベーマイト、酸化アルミニウム(Al)、酸化マグネシウム(MgO)、BaSO、および炭酸カルシウム(CaCO)からなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項120に記載されたコーティングされた電池セパレータの製造方法。
【請求項125】
前記スラリーが増粘剤、接着促進剤、界面活性剤、および分散剤から選択される少なくとも1つをさらに含む、請求項120に記載されたコーティングされた電池セパレータの製造方法。
【請求項126】
前記スラリーが増粘剤をさらに含む、請求項125に記載されたコーティングされた電池セパレータの製造方法。
【請求項127】
前記増粘剤がセルロース系の増粘剤である、請求項126に記載されたコーティングされた電池セパレータの製造方法。
【請求項128】
前記スラリーが接着促進剤をさらに含む、請求項125に記載されたコーティングされた電池セパレータの製造方法。
【請求項129】
前記接着促進剤がPVDFホモポリマーまたはコポリマーまたはPVDFホモポリマーもしくはコポリマーを含む粒子である、請求項128に記載されたコーティングされた電池セパレータの製造方法。
【請求項130】
前記スラリーが界面活性剤をさらに含む、請求項125に記載されたコーティングされた電池セパレータの製造方法。
【請求項131】
前記界面活性剤がジアニオン、トリアニオン、またはポリアニオン界面活性剤である、請求項130に記載されたコーティングされた電池セパレータの製造方法。
【請求項132】
前記界面活性剤がジアニオン界面活性剤である、請求項131に記載されたコーティングされた電池セパレータの製造方法。
【請求項133】
前記ジアニオン界面活性剤が、ジカルボン酸塩構造、二硫酸塩構造、ジスルホン酸塩構造、および二リン酸塩構造の少なくとも1つを有する、請求項132に記載されたコーティングされた電池セパレータの製造方法。
【請求項134】
前記ジアニオン界面活性剤が以下の化学式の構造を有する、請求項133に記載されたコーティングされた電池セパレータの製造方法。
【化64】
上記式中、Xはアニオン基であり、RはC1からC10の飽和または不飽和の分枝または直鎖のアルキル基であり、RはC1からC10の飽和または不飽和の分枝または直鎖のアルキル基であり、RはC1からC10の飽和または不飽和の分枝または直鎖のアルキル基であり、およびRはアルキン基、アルケン基、アルケニル基またはアルキニル基である。
【請求項135】
前記ジアニオン界面活性剤が以下の化学式の構造を有する、請求項134に記載されたコーティングされた電池セパレータの製造方法。
【化65】
【請求項136】
前記スラリーが分散剤をさらに含む、請求項125に記載されたコーティングされた電池セパレータの製造方法。
【請求項137】
前記架橋剤または架橋試薬がセラミック粒子100重量部あたり0.01~100重量部の量の前記架橋剤または架橋試薬である、請求項120に記載されたコーティングされた電池セパレータの製造方法。
【請求項138】
前記架橋剤または架橋試薬がセラミック粒子100重量部あたり0.01~50重量部の量の前記架橋剤または架橋試薬である、請求項120に記載されたコーティングされた電池セパレータの製造方法。
【請求項139】
前記架橋剤または架橋試薬がセラミック粒子100重量部あたり0.01~25重量部の量の前記架橋剤または架橋試薬である、請求項120に記載されたコーティングされた電池セパレータの製造方法。
【請求項140】
前記架橋剤または架橋試薬がセラミック粒子100重量部あたり0.01~15重量部の量の前記架橋剤または架橋試薬である、請求項120に記載されたコーティングされた電池セパレータの製造方法。
【請求項141】
前記架橋剤または架橋試薬がセラミック粒子100重量部あたり0.01~10重量部の量の前記架橋剤または架橋試薬である、請求項120に記載されたコーティングされた電池セパレータの製造方法。
【請求項142】
前記架橋剤または架橋試薬がセラミック粒子100重量部あたり0.01~5重量部の量の前記架橋剤または架橋試薬である、請求項120に記載されたコーティングされた電池セパレータの製造方法。
【請求項143】
前記スラリーが唯一の溶媒として水を含む水性スラリーである、請求項120に記載されたコーティングされた電池セパレータの製造方法。
【請求項144】
前記スラリーが非水性スラリーである、請求項120に記載されたコーティングされた電池セパレータの製造方法。
【請求項145】
前記スラリーの溶媒が、水と10体積%未満の有機溶媒および/またはアルコールとからなる、請求項120に記載されたコーティングされた電池セパレータの製造方法。
【請求項146】
架橋することの前または後に前記スラリー層を乾燥させることを含む、請求項120に記載されたコーティングされた電池セパレータの製造方法。
【請求項147】
架橋することが、前記スラリー層に光(UV光を含む)当てること、および熱を加えることの少なくとも1つを含む、および請求項120に記載されたコーティングされた電池セパレータの製造方法。
【請求項148】
前記スラリーが光開始剤または光増感剤をさらに含む、請求項120に記載されたコーティングされた電池セパレータの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、リチウムイオン電池などの二次電池のセパレータとして使用することができるコーティングされた多孔質膜に関する。より詳細には、本願発明は、多孔質膜上にコーティングされ得る新規な架橋されたセラミックコーティングと、その製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
セルガード社に譲渡された米国特許第6692586号(現在はRE47520号である)をはじめとして、二次電池産業、特にリチウムイオン電池産業では、セラミックコーティングセパレータが主流になっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、今日の電池のエネルギー密度増加に伴い、従来のセラミックコーティングセパレータによって提供され得るよりも、さらに高いセパレータの熱安定性が求められている。加えて、セラミックコーティングセパレータを使用する電池の種類に応じて、さらなる特性の改善が望まれ得る。
【課題を解決するための手段】
【0004】
ある態様において、改良されたセラミックコーティングセパレータが本明細書に記載されている。改良されたセラミックコーティングセパレータは、多孔質膜と、多孔質膜の少なくとも片側に設けられた架橋されたセラミック層またはコーティングとを含む。
【0005】
上記多孔質膜は、乾式法または湿式法多孔質膜であってよい。いくつかの実施形態において、この多孔質膜は、微多孔質膜であってよく、特に、乾式法微多孔質膜であってよい。
【0006】
いくつかの実施形態において、この架橋されたセラミックコーティングは、5ミクロン以下を含む、10ミクロン以下の厚さであってよい。
【0007】
いくつかの実施形態において、この架橋されたセラミックコーティングをその多孔質膜の両側に備えてもよく、または、その多孔質膜のセラミックコーティングされた側とは反対側に異なる種類のコーティングを備えてもよい。
【0008】
この架橋されたセラミックコーティングは、好ましくは、水性のコーティングスラリー、または、溶媒が水と10体積%以下の有機溶媒もしくはアルコールであるコーティングスラリーから形成され得る。また、この架橋されたセラミックコーティングは、溶媒が主に有機溶媒またはアルコールである非水性コーティングスラリーを用いて形成されてもよい。
【0009】
この架橋されたセラミックコーティングは、セラミック粒子と、少なくとも1つの架橋剤または架橋試薬とを含み得る。これは、コーティングが架橋された後も、少なくとも一部の架橋剤または架橋剤が未反応のまま残ることを認めるものである。反応が完了することはなく、かわりに反応物が残る不完全な状態である。
【0010】
この架橋されたセラミックコーティングは、増粘剤、接着促進剤、界面活性剤、および分散剤から選択される少なくとも1つを含む。増粘剤は、セルロース系増粘剤であってよい。接着促進剤は、PVDFホモポリマーまたはコポリマー、またはPVDFホモポリマーもしくはコポリマーを含む粒子であってよい。界面活性剤は、ジアニオン、トリアニオン、またはポリアニオン界面活性剤であってよい。いくつかの実施形態では、この界面活性剤は、ジカルボン酸塩構造、二硫酸塩構造、ジスルホン酸塩構造、および二リン酸塩構造を有するジアニオン界面活性剤であってよい。いくつかの実施形態では、ジアニオン界面活性剤は、次の化学式(1)の構造を有し得る。
【0011】
【化1】
【0012】
上記式中、Xはアニオン基であり、RはC1からC10の飽和または不飽和の分枝または直鎖のアルキル基であり、RはC1からC10の飽和または不飽和の分枝または直鎖のアルキル基であり、RはC1からC10の飽和または不飽和の分枝または直鎖のアルキル基であり、およびRはアルキン基、アルケン基、アルケニル基またはアルキニル基である。いくつかの実施形態では、そのジアニオン界面活性剤は、次の化学式(2)の構造を有する。
【0013】
【化2】
【0014】
上記式中、R、RおよびRは、上記化学式(1)の通りである。いくつかの好ましい実施形態において、Rはアルキン基である。
【0015】
上記セラミック粒子は、二酸化ケイ素(SiO)、酸化チタン(TiO)、ベーマイト(AlOOH)、酸化アルミニウム(Al)、酸化マグネシウム(MgO)、BaSO、および炭酸カルシウム(CaCO)からなる群から選択される少なくとも1つを含み得る。
【0016】
架橋剤または架橋試薬は、架橋されたコーティング内に、架橋されたコーティングを形成するために使用されるスラリー内に、または(架橋される前の)多孔質膜にコーティングされたスラリー層内に、セラミック粒子100重量部あたり、0.01~100、0.01~50、0.01~25、0.01~15、0.01~10、または0.01~5重量部の量で存在し得る。
【0017】
架橋剤または架橋試薬は、2個以上、4個以上、6個以上、8個以上、または10個以上の反応性基を含む化合物であってよい。架橋剤または架橋試薬の反応性基は、エポキシ基、ビニル基、アミノ基、およびイソシアネート基の少なくとも1つを含み得る。いくつかの好ましい実施形態では、この反応性基は、エポキシ基、アミノ基、およびイソシアネート基の少なくとも1つを含み得る。
【0018】
いくつかの好ましい実施形態において、その架橋剤または架橋試薬は、微粒子状のポリマー性バインダ架橋剤または架橋試薬、POSS架橋剤または架橋試薬、PEO(PEG)架橋剤または架橋試薬、およびそれらの混合物の少なくとも1つであり得る。
【0019】
いくつかの好ましい実施形態において、その微粒子状のポリマー性バインダ架橋剤または架橋試薬は、微粒子状のアクリル系バインダ架橋剤または架橋試薬であってよい。その微粒子状のポリマー性バインダ架橋剤または架橋試薬、または微粒子状のアクリル系バインダ粒子は、表面に、エポキシ基、ビニル基、アミノ基、およびイソシアネート基の少なくとも1つの反応性基を有する、ポリマー性またはアクリル系バインダ粒子から構成され得る。この粒子は、5~500nm、10~400nm、15~300nm、20~200nm、または25~100nmの、いずれの大きさであってよい。
【0020】
POSS架橋剤または架橋試薬は、2個以上、4個以上、6個以上、8個以上、または10個以上の反応性基を有してよい。POSS架橋剤または架橋試薬のPOSSは、ランダム構造、かご型構造、開かご構造、ラダー状構造、またはダブルデッカー構造を有し得る。いくつかの実施形態において、POSS架橋剤または架橋試薬は、次の一般的な化学式(3)の構造を有していてよい。
【0021】
【化3】
【0022】
上記式中、このPOSSは、ランダム構造、かご型構造、開かご構造、ラダー状構造、またはダブルデッカー構造を有することができ、nは2より大きいまたは5より大きい整数であり、RはC1~C10の飽和または不飽和のアルキル基であり、Xは反応性基であり、および上記式中の(R-O-X)はPOSSの酸素またはケイ素と結合している。時折、このPOSS架橋剤または架橋試薬は、次の化学式(4)の構造を有する。
【0023】
【化4】
【0024】
時折、そのPOSS架橋剤または架橋試薬は、次の化学式(5)の構造を有する。
【0025】
【化5】
【0026】
いくつかの実施形態では、上記PEOまたはPEGの架橋剤または架橋試薬は、2個以上、4個以上、6個以上、8個以上、または10個以上の反応性基を有してよい。その架橋試薬または架橋剤の反応性基は、エポキシ基、ビニル基、アミノ基、およびイソシアネート基の少なくとも1つを含み得る。いくつかの好ましい実施形態では、反応性基は、エポキシ基、アミノ基、およびイソシアネート基の少なくとも1つを含み得る。
【0027】
このPEOまたはPEGの架橋剤または架橋試薬は、ジ、トリ、テトラ、またはポリグリシジルエーテル、またはジ、トリ、テトラ、またはポリアクリレートであってよい。いくつかの実施形態では、PEOまたはPEGの架橋剤または架橋試薬は、次の化学式の構造のいずれか1つを有し得る。
【0028】
【化6】
【0029】
【化7】
【0030】
【化8】
【0031】
【化9】
【0032】
【化10】
【0033】
【化11】
【0034】
【化12】
【0035】
【化13】
【0036】
【化14】
【0037】
【化15】
【0038】
【化16】
【0039】
または、
【0040】
【化17】
【0041】
いくつかの実施形態では、PEO(PEG)架橋剤または架橋試薬は、次の化学式(18)の構造を有し得る。
【0042】
【化18】
【0043】
上記式中、nは、1~100000、またはそれ以上の整数である。
【0044】
また、PEOまたはPEGの架橋剤または架橋試薬は、次の化学式(19)の構造を有し得る。
【0045】
【化19】
【0046】
上記式中、nは、1から100000、またはそれ以上の整数である。
【0047】
いくつかの実施形態では、PEO(PEG)架橋剤に加えて、長鎖PEO、短鎖PEO、またはそれらの混合物を加えてもよい。長鎖および短鎖PEOは、次の化学式(20)の構造を有し得る。
【0048】
【化20】
【0049】
上記式中、nは、短鎖では1000未満、および長鎖では1000以上(高くとも100000まで)である。
【0050】
別の態様において、架橋されたセラミックコーティングを有するコーティングされた電池セパレータを形成するための方法を本明細書に記載する。本方法は、(1)多孔質膜の少なくとも片側にスラリー層を形成するためにスラリーを塗布すること、および(2)そのスラリー層を架橋することを含むことができ、そのスラリーは、セラミック粒子、架橋剤または架橋試薬、および溶媒を含む。そのセラミック粒子は、本明細書に記載されている通りである。その架橋剤または架橋試薬は、本明細書に記載されている通りである。その溶媒は、水のみの水性溶媒か、または水と10体積%未満のアルコールまたは有機溶媒かのどちらでもよい。また、その溶媒は、アルコールまたは有機溶媒を主成分とする非水性溶媒であってもよい。上記スラリーは、増粘剤、接着促進剤、界面活性剤および分散剤から選択される少なくとも1つをさらに含んでもよく、いずれも本明細書に記載の通りである。
【0051】
本方法は、架橋前、架橋後、または架橋前および架橋後に、スラリー層を乾燥させることをさらに含んでいてもよい。架橋には、スラリー層に光(UV光を含む)、熱、または光(UV光を含む)および熱を加えることを含み得る。いくつかの実施形態において、スラリーは、架橋反応を開始または加速させるために、光開始剤または光増感剤を含んでいてもよい。
【発明の効果】
【0052】
改良されたセラミックコーティングセパレータは、セラミックコーティングがかなり薄い、約5ミクロン以下のようなときの150℃における機械方向(MD)熱収縮を含む、改善された特性を示す。150℃におけるMD熱収縮率は、10%未満または5%未満であり得る。これは、セパレータがより高い熱安定性を有することを示す指標である。改良されたセラミックコーティングセパレータは、従来のセラミックコーティングと比べて高温で高粘度であること(より高い熱安定性の別の指標)、薄膜による低い全含水率、低い粉落下、および低い膨潤のいずれかを示すこともでき、これはセパレータの機械特性および電解液に対する親和性を維持させる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
図1図1は、本明細書に記載のいくつかの実施形態によるデータを含む表である。
図2図2は、本明細書に記載のいくつかの実施形態によるデータを含む表である。
図3図3は、本明細書に記載のいくつかの実施形態によるデータを含む表である。
図4図4は、本明細書に記載のいくつかの実施形態によるデータを含む表である。
図5A図5Aは、本明細書に記載のいくつかの実施形態によるデータを説明し、かつ含む、チャートおよび図を含む。
図5B図5Bは、本明細書に記載のいくつかの実施形態によるデータを説明し、かつ含む、チャートおよび図を含む。
図6図6は、本明細書に記載のいくつかの実施形態におけるPOSS構造の図を含む。
図7図7は、好ましい界面活性剤を含む、ジアニオン界面活性剤の例を示す。
図8図8は、本明細書において開示される本発明および比較例の実施形態についての、界面活性剤量vsアルミナ(%)の範囲に対して測定された接触角のグラフである。
図9図9は、コーティングが塗布された面の接触角(膜およびスラリー接触角)が異なる場合のコーティングの平滑性を示す画像を含む。
図10図10は、本明細書において開示されるいくつかの実施形態における、界面活性剤量の範囲に対する150℃におけるMD熱収縮および誘電破壊のグラフを含む。
図11図11は、本明細書において開示されるいくつかの実施形態による架橋試薬の形成を描写し、本明細書において開示されるいくつかの実施形態による架橋反応を示す。
図12図12は、本明細書に記載の比較例の実施形態および本発明の実施形態に関係するデータを含む表を含む。また、本明細書に記載の実施例の改善された熱収縮特性を示す画像も含む。
図13図13は、本明細書に記載の比較例および実施例のcTMA(MD)データを含むグラフである。
図14図14は、本明細書に記載の比較例および実施例のcTMA(TD)データを含むグラフである。
図15図15は、本明細書に記載の比較例および実施例のサイクル試験結果(あるサイクル数後の容量)を示すグラフである。
図16図16は、本明細書に記載の実施例および比較例のデータを含む表である。また、本明細書において開示されるいくつかの実施形態のtTMA(MD)およびtTMA(TD)のグラフも含む。
【発明を実施するための形態】
【0054】
コーティングされた多孔質膜
本明細書で開示されるのは、(1)多孔質膜と、(2)多孔質膜の少なくとも片側に架橋されたセラミックコーティングとを含む、それらからなる、または本質的にそれらからなる、改良されたコーティングされた多孔質膜またはコーティングされた電池セパレータである。いくつかの実施形態において、架橋されたセラミックコーティングを多孔質膜の両側に備えてもよく、異なる架橋されたセラミックコーティングを多孔質膜の2つの側に備えてもよく、または多孔質膜の片側に架橋されたセラミックコーティングを備え、他の側に異なるコーティング、例えば、セラミックコーティングまたはポリマー性コーティングを備えてもよい。
【0055】
架橋されたセラミックコーティングの厚さは、0.1~10ミクロン、0.1~9ミクロン、0.1~8ミクロン、0.1~7ミクロン、0.1~6ミクロン、0.1~5ミクロン、0.1~4ミクロン、0.1~3ミクロン、0.1~2ミクロン、0.1~1ミクロン、または0.1~0.5ミクロンであってよい。
【0056】
さらに、コーティングされた多孔質膜の全体の厚さは、1~50ミクロン、1~40ミクロン、1~30ミクロン、1~25ミクロン、1~20ミクロン、1~15ミクロン、1~10ミクロン、または1~5ミクロンであってよい。
【0057】
コーティングは、水性コーティングまたは非水性コーティングであってよい。水性コーティングは、水が溶媒であるスラリー、または水と10体積%未満のアルコールとが溶媒であるスラリーから形成される。非水性コーティングは、溶媒が主に有機溶媒であるスラリーから形成される。水性および非水性のコーティングの間には、構造的な違いが見られることがある。
【0058】
多孔質膜
多孔質膜は、さほど限定されない。いくつかの実施形態では、多孔質膜は、マクロポーラス、マイクロポーラス、またはナノポーラスであってよい。いくつかの実施形態では、膜は、0.1~1ミクロンの平均孔径を有していてよい。
【0059】
多孔質膜中の細孔の形状は、さほど限定されない。例えば、その細孔は、スリット状、円形、実質的に円形、台形、および/または不規則であってよい。
【0060】
多孔質膜は、乾式法で製造された膜であってよい。ある特定の乾式法は、セルガード(登録商標)乾式法として知られており、少なくとも押出(または共押出)および延伸の工程を含む。延伸は、一方向、双方向、または多方向であってよい。通常、乾式法は、好ましくは、溶媒または油剤の使用を含まない。乾式法は、微粒子状の細孔形成剤の使用を含んでもよいし、含まなくてもよい。例えば、ベータ核形成二軸延伸多孔質膜を用いてもよく、例えば、ベータ核形成二軸延伸ポリプロピレン(BNBOPP)フィルムによって形成された膜を用いてもよい。
【0061】
多孔質膜は湿式法で作成されてよく、これは細孔を形成するために溶媒または油剤を用いる。
【0062】
多孔質膜は、織布または不織布であってもよい。
【0063】
乾式法、湿式法、織布、および不織布の各膜は、それぞれ非常に異なる構造を有している。
【0064】
多孔質膜は、単層、2層、3層、または多層の多孔質膜であってよい。
【0065】
この多孔質膜の厚さは、1~50ミクロン、1~40ミクロン、1~30ミクロン、1~25ミクロン、1~20ミクロン、1~15ミクロン、1~10ミクロン、1~5ミクロンであってよい。
【0066】
この多孔質膜はポリマー性多孔質膜であってよく、そのポリマーはさほど限定されない。いくつかの好ましい実施形態におけるポリマーは、ポリエチレン、ポリプロピレン、または、コポリマー、ターポリマー、または、同一および/または別のポリマーを含むブレンドを含むポリオレフィンであってよい。
【0067】
架橋されたコーティング
架橋されたコーティングはさほど限定されず、少なくとも架橋剤または架橋試薬を含む。いくつかの好ましい実施形態において、この架橋されたコーティングは、(1)セラミックと(2)架橋剤または架橋試薬を含み、それらからなる、またはこれらから本質的になる、架橋されたセラミックコーティングである。いくつかの実施形態では、この架橋されたセラミックコーティングは、さらに、(3)増粘剤、(4)接着促進剤、(5)界面活性剤、(6)分散剤、(7)バインダ、およびその組み合わせの少なくとも1つを含んでいても、これらからなっていても、または、これらから本質的になっていてもよい。
【0068】
セラミックに対する架橋剤または架橋試薬の比率は、セラミック100部に対して架橋剤または架橋試薬0.1~100部、セラミック100部に対して架橋剤または架橋試薬0.1~90部、セラミック100部に対して架橋剤または架橋試薬0.1~80部、セラミック100部に対して架橋剤または架橋試薬0.1~70部、セラミック100部に対して架橋剤または架橋試薬0.1~60部、セラミック100部に対して架橋剤または架橋試薬0.1~50部、セラミック100部に対して架橋剤または架橋試薬0.1~40部、セラミック100部に対して架橋剤または架橋試薬0.1~30部、セラミック100部に対して架橋剤または架橋試薬0.1~25部、セラミック100部に対して架橋剤または架橋試薬0.1~20部、セラミック100部に対して架橋剤または架橋試薬0.1~10部、セラミック100部に対して架橋剤または架橋試薬0.1~5部、セラミック100部に対して架橋剤または架橋試薬0.1~4部、セラミック100部に対して架橋剤または架橋試薬0.1~3部、セラミック100部に対して架橋剤または架橋試薬0.1~2部、セラミック100部に対して架橋剤または架橋試薬0.1~1部、セラミック100部に対して架橋剤または架橋試薬0.1~0.5部の範囲であってよい。
【0069】
(1)セラミック
セラミックは、さほど限定されず、従来からセラミックコーティングで使用されているいずれのセラミックでもよい。いくつかの実施形態では、このセラミックは、二酸化ケイ素(SiO)、酸化チタン(TiO)、ベーマイト、酸化アルミニウム(Al)、酸化マグネシウム(MgO)、BaSO、および炭酸カルシウム(CaCO)からなる群から選択される少なくとも1つを含む。いくつかの実施形態では、セラミック粒子またはフレークを加えてもよい。このセラミックの大きさは、さほど限定されず、好ましい実施形態において、ナノサイズまたはマイクロサイズであり得る。
【0070】
このセラミックの大きさは、さほど限定されない。例えば、セラミックは、ナノサイズまたはマイクロサイズであってよい。加えて、小さいセラミック粒子と大きいセラミック粒子との混合物を使用してもよい。これは、充填された大きい粒子の間に残った空隙を小さい粒子が埋めることによって、より緻密なセラミックコーティングを形成させ得る。
【0071】
(2)架橋剤または架橋試薬
本明細書に記載の架橋剤または架橋試薬は、さほど限定されないが、架橋剤は、好ましくは、2以上、3以上、4以上、5以上、6以上、7以上、8以上、9以上、10以上、11以上、12以上、13以上、14以上、15以上、16以上、17以上、18以上、19以上、または20以上の反応性官能基を含む。この官能基は、すべて同じでもよく、一部は他と異なっていてもよい。
【0072】
この官能基は、さほど限定されず、いくつかの実施形態において、セパレータ内で水酸基(OH)およびカルボキシ基(COOH)と反応することができる基であり得る。例えば、カルボキシ基または水酸基は、多孔質膜の外側または内側の表面上、分散剤の分子上、増粘剤の分子上、セラミック上、またはバインダ上に存在し得る。水酸基およびカルボキシ基と反応することができる上記反応基のいくつかの実施例は、エポキシ基、アミノ基、およびイソシアネート基が含むが、これらに限定されるわけではない。いくつかの好ましい実施形態において、この反応性官能基は、エポキシ基、およびアミノ基、ビニル基、(メタ)アクリロキシ基、イソシアネート基、およびメルカプト基から選択される少なくとも1つであり得る。
【0073】
いくつかの特定の架橋剤または架橋試薬が本明細書に記載されているが、本明細書はこれらに限定されない。これら特定の実施例は、(a)微粒子状のポリマー性バインダ架橋剤または架橋試薬、(b)POSS架橋剤または架橋試薬、および(c)PEO(PEG)架橋剤または架橋試薬である。これらの各々について、本明細書において以下で詳細に説明する。
【0074】
(a)微粒子状のポリマー性バインダ架橋剤または架橋試薬
微粒子状のポリマー性バインダ架橋剤または架橋試薬は、さほど限定されず、ポリマー性粒子の内側および外側の表面のいずれかまたは両側に、2以上、3以上、4以上、5以上、6以上、7以上、8以上、9以上、10以上、11以上、12以上、13以上、14以上、15以上、16以上、17以上、18以上、19以上、または20以上の反応性官能基を有するポリマー性粒子を含み得る。好ましくは、2以上の反応性官能基がポリマー性粒子の表面に存在する。微粒子状のポリマー性バインダ架橋剤または架橋試薬がどのように製造されるかの簡単な概要は、本明細書の実施例に開示されている。1つまたは複数の微粒子状のポリマー性バインダ架橋剤または架橋試薬が使用され得る。
【0075】
ポリマー性粒子の大きさは、20~500nm、20~450nm、20~400nm、20~350nm、20~300nm、20~250nm、20~200nm、20~150nm、20~100nm、または20~50nmの範囲内であってよい。
【0076】
ポリマー性粒子のポリマーは、さほど限定されないが、好ましい実施形態においては、アクリル系ポリマーまたはコポリマー、オレフィン系ポリマーまたはコポリマー、PVDF、およびそれに類するものであってもよい。バインダ粒子がその表面に本明細書に記載の反応性官能基を有することが可能であるか、または有する限り、電池用セパレータのセラミックコーティング中のバインダとして使用されることが知られているいずれのポリマー性粒子も使用することができる。
【0077】
いくつかの好ましい実施形態では、微粒子状のポリマー性バインダ架橋剤または架橋試薬は、反応性官能基であるエポキシ基、アミノ基、またはイソシアネート基の少なくとも1つをその表面に有するアクリル系バインダ粒子を含む。
【0078】
(b)POSS架橋剤または架橋試薬
本明細書に記載のPOSS架橋剤または架橋試薬は、さほど限定されず、2以上、3以上、4以上、5以上、6以上、7以上、8以上、9以上、10以上、11以上、12以上、13以上、14以上、15以上、16以上、17以上、18以上、19以上、または20以上の反応性官能基を有するポリオクタヘドラルシルセスキオキサン(POSS)を含んでよい。1つまたは複数のPOSS架橋剤または架橋試薬が使用され得る。
【0079】
POSS架橋剤または架橋試薬は、次の化学式(3)による構造を有し得る。
【0080】
【化21】
【0081】
化学式(3)中、上記POSSは、ランダム構造、かご型構造、開かご構造、ラダー状構造、またはダブルデッカー構造を有し得る。これらの構造の例を図6に示す。化学式(3)中、nは、2より大きい、3より大きい、4より大きい、5より大きい、6より大きい、7より大きい、8より大きい、9より大きい、10より大きい、11より大きい、12より大きい、13より大きい、14より大きい、15より大きい、16より大きい、17より大きい、18より大きい、19より大きい、または20より大きい整数であってよい。上記化学式(3)中、Rは、C1、C2、C3、C4、C5、C6、C7、C8、C9、またはC10の飽和または不飽和の分枝または直鎖のアルキル基である。Xは、本明細書に記載の反応性官能基である。上記化学式(3)中、(R-O-X)は、POSSの酸素またはケイ素と結合している。この結合は、好ましくは共有結合である。
【0082】
いくつかの好ましい実施形態では、このPOSS架橋剤または架橋試薬は、次の化学式(4)または化学式(5)の構造を有し得る。
【0083】
【化22】
【0084】
【化23】
【0085】
(c)PEO(PEG)架橋剤または架橋試薬
本出願の目的から、PEOおよびPEGは、類似の構造を有することが理解されるが、PEGは、一般的に分子量が約100000未満の材料を指すために用いられ、一方PEOは、しばしば分子量が約100000以上の高分子量材料を指すために用いられる。
【0086】
このPEO(PEG)架橋剤は、さほど限定されないが、好ましくは、2以上、3以上、4以上、5以上、6以上、7以上、8以上、9以上、10以上、11以上、12以上、13以上、14以上、15以上、16以上、17以上、18以上、19以上、または20以上の反応性官能基を有するPEOまたはPEGを含む。1つまたは複数のPEO(PEG)架橋剤または架橋試薬が使用され得る。
【0087】
その反応性官能基は、本明細書に記載されるものの少なくとも1つであり、反応性官能基は、同一でもよく、異なっていてもよい。
【0088】
いくつかの実施形態では、上記PEO(PEG)架橋剤または架橋試薬は、ジ、トリ、テトラ、またはポリグリシジルエーテルである。ポリは、グリシジルエーテル官能基について、5~20、5~15、5~10の整数を意味し得る。いくつかのさらなる実施形態では、このPEO(PEG)架橋剤または架橋試薬は、ジ、トリ、テトラ、またはポリアクリレートである。ポリは、アクリレート官能基について、5~20、5~15、5~10の整数を意味し得る。
【0089】
いくつかの実施形態では、PEOまたはPEGの架橋剤または架橋試薬は、次のいずれか1つの化学式の構造を有し得る。
【0090】
【化24】
【0091】
【化25】
【0092】
【化26】
【0093】
【化27】
【0094】
【化28】
【0095】
【化29】
【0096】
【化30】
【0097】
【化31】
【0098】
【化32】
【0099】
【化33】
【0100】
【化34】
【0101】
または、
【0102】
【化35】
【0103】
いくつかの実施形態では、このPEO(PEG)架橋剤または架橋試薬は、次の化学式(18)の構造を有し得る。
【0104】
【化36】
【0105】
上記式中、nは、1~100000、1~90000、1~80000、1~70000、1~60000、1~50000、1~40000、1~30000、1~20000、1~10000、1~9000、1~8000、1~7000、1~6000、1~5000、1~4000、1~3000、1~2000、1~1000、またはそれ以上の整数である。
【0106】
また、このPEOまたはPEGの架橋剤または架橋試薬は、次の化学式(19)の構造を有してもよい。
【0107】
【化37】
【0108】
上記式中、nは、1~100000、1~90000、1~80000、1~70000、1~60000、1~50000、1~40000、1~30000、1~20000、1~10000、1~9000、1~8000、1~7000、1~6000、1~5000、1~4000、1~3000、1~2000、1~1000、またはそれ以上の整数である。
【0109】
PEO(PEG)架橋剤または架橋試薬を使用するいくつかの実施形態では、長鎖PEO、短鎖PEO、またはそれらの混合物を、そのPEO(PEG)架橋剤に加えてもよい。長鎖および短鎖PEO(PEG)は、次の化学式(20)の構造を有し得る。
【0110】
【化38】
【0111】
上記式中、nは、短鎖では、1000未満、900以下、800以下、700以下、600以下、500以下、400以下、300以下、200以下、または100以下であり、長鎖では、1000以上、5000以上、10000以上、15000以上、25000以上、35000以上、45000以上、55000以上、65000以上、75000以上、85000以上、95000以上、または高くとも100000である。混合物を使用するとき、長鎖と短鎖のPEO(PEG)の比率は、1:100から100:1であり、これは50:50、25:75、75:25を含む。
【0112】
いずれの特定の理論によっても拘束されることを望まないが、長鎖および/または短鎖PEO(PEG)の添加が、結果として生じるコーティングされた膜製品のピン除去を改善し得ると考えられる。ピン除去は、電池メーカー、特に円筒形セル型電池を製造するメーカーにとって重要な特性である。
【0113】
(3)増粘剤
増粘剤は、さほど限定されず、セラミックコーティングにおける使用に適した任意の増粘剤が使用され得る。いくつかの好ましい実施形態では、増粘剤は、本明細書に記載の架橋剤または架橋試薬が有する反応性官能基に反応可能な官能基を含む構造を有し得る。例えば、増粘剤は、カルボキシ基または水酸基を含み得る。いくつかの実施形態では、カルボキシ基または水酸基を含む増粘化剤は、カルボキシメチルセルロース(CMC)のようなセルロース系増粘化剤であってよい。
【0114】
(4)接着促進剤
接着促進剤は、さほど限定されず、結果として生じるコーティングされた膜の湿潤接着性または乾燥接着性を向上させる任意の化合物を含む。乾燥接着性とは、電解液を添加する前の電池電極材料へのコーティングの接着性を指し得る。湿潤接着性とは、電池セル内で電解質を添加した後の電極へのコーティングの接着性を指し得る。この目的のために、任意の既知の材料が使用されてもよい。
【0115】
いくつかの実施形態では、接着促進剤は、微粒子状の材料を含んでいてもよい。微粒子状の材料は、PVDFホモポリマー、またはPVDFのコポリマーもしくはターポリマーから形成され得る。例えば、PVDF-HFP、PVDF-CTFE、およびそれに類するものは、PVDFコポリマーの一例である。
【0116】
(5)界面活性剤
本明細書で使用される界面活性剤は、さほど限定されず、従来からセラミックコーティングに使用されているいずれの界面活性剤でも許容される。
【0117】
好ましい実施形態において、本明細書で使用される界面活性剤は、ジアニオン(2つのアニオン基)、トリアニオン(3つのアニオン基)、またはポリアニオン(4以上、5以上、6以上、7以上、8以上、9以上、および最大10までのアニオン基)である。アニオン基は、同一または異なるものであってよい。例えば、いくつかの実施形態において、アニオン基は、カルボキシレート基、硫酸基、スルホン酸基、およびリン酸基から選択され得る。
【0118】
いくつかの好ましい実施形態では、界面活性剤は、ジアニオン界面活性剤である。例えば、界面活性剤は、ジカルボン酸塩構造、二硫酸塩構造、ジスルホン酸塩構造、または二リン酸塩構造を有し得る。
【0119】
いくつかの実施形態では、ジアニオン界面活性剤は、次の化学式(1)による構造を有する。
【0120】
【化39】
【0121】
上記式中、Xはアニオン基であり、Rは、C1からC10、C1からC9、C1からC8、C1からC7、C1からC6、C1からC5、C1からC4、C1からC3、C1からC2、またはC1の飽和または不飽和の分枝または直鎖のアルキル基であり、Rは、C1からC10、C1からC9、C1からC8、C1からC7、C1からC6、C1からC5、C1からC4、C1からC3、C1からC2、またはC1の飽和または不飽和の分枝または直鎖のアルキル基であり、Rは、C1からC10、C1からC9、C1からC8、C1からC7、C1からC6、C1からC5、C1からC4、C1からC3、C1からC2、またはC1の飽和または不飽和の分枝または直鎖のアルキル基であり、およびRは、アルキン基、アルケン基、アルケニル基またはアルキニル基である。
【0122】
いくつかの実施形態では、そのジアニオン界面活性剤は、次の化学式(2)による構造を有する。
【0123】
【化40】
【0124】
上記式中、R、R、およびRは、上記と同様である。いくつかの好ましい実施形態では、Rは、アルキン基またはアルケン基であり得る。
【0125】
本明細書に記載のアニオン界面活性剤が、例えばH、Mなどの妥当なカチオンを有するコーティングスラリーに添加され得ると理解される。
【0126】
いずれの特定の理論によっても拘束されることを望まないが、本明細書のアニオン界面活性剤のある望ましい特性は、好ましくはその構造の片側に閉じ込められた2以上のアニオン基を含む、2以上のアニオン基の存在であると考えられる。上記化学式(1)および(2)の構造において、この閉じ込めは、Rについての回転が禁止され、分子内のアニオン基の位置が固定されるようにRを選択することによって達成される。アニオン基の固定化のメカニズムは、例えば、図7(これをより詳細に説明する)を見てほしいが、アルキン基の使用に限定されない。これらの種類の界面活性剤の使用により、結果として生じるコーティングの濡れ性を改善することができ、結果として生じるコーティングの動的表面張力特性を低下することができ、および/またはコーティングの形成に用いられるコーティングスラリーの起泡を抑制することができる。これは望ましい特性である。いずれの特定の理論によっても拘束されることを望まないが、これは、界面活性剤分子の片側にアニオン基を固定することで生じた界面活性剤の大きな親水性部分に起因し得る。
【0127】
(6)分散剤
分散剤は、さほど限定されず、従来からセラミックコーティングに使用されているいずれの分散剤も許容される。いくつかの好ましい実施形態では、この分散剤は、カルボキシ基または水酸基の少なくとも1つを含み得る。
【0128】
(7)バインダ
バインダは、さほど限定されず、従来からセラミックコーティングに使用されているいずれのバインダも許容される。いくつかの実施例において、バインダの一部は微粒子状のポリマー性バインダ架橋剤または架橋試薬であってよく、および、一部はそうではなくてもよい。
【0129】
コーティングされた膜の製造方法
本明細書に記載のコーティングされた膜の製造方法は、さほど限定されないが、(1)コーティングスラリーを形成すること、(2)そのコーティングスラリーを多孔質膜の少なくとも片側に塗布すること、(3)塗布したコーティングスラリーを架橋すること、(4)架橋する前または架橋した後に塗布したコーティングスラリーを乾燥させること、を含んでいてよく、これらからなっていてよく、または、これらから本質的になっていてよい。
【0130】
(1)コーティングスラリーを形成すること
このステップは、さほど限定されないが、好ましい実施形態では、少なくともセラミックと、架橋剤または架橋試薬とを溶媒に加えることを含んでいてよく、これらからなっていてよく、または、これらから本質的になっていてよい。溶媒は、水であってよく、水に加えて10体積%以下のアルコールまたは有機溶媒であってよく、または溶媒が主に(すなわち、50%以上の)有機溶媒であってよい。好ましい実施形態において、この溶媒は、水、または水と10体積%以下のアルコールまたは有機溶媒とを加えたものである。
【0131】
また、増粘剤、接着促進剤、界面活性剤、分散剤、バインダ、およびその組み合わせも、このコーティングスラリーに加えてよい。
【0132】
このコーティングスラリーは、高固形分コーティングスラリーであってもよく、低固形分コーティングスラリーであってもよい。高固形分は、固形分が50%より多く、残りが溶媒であり得る。低固形分は、固形分が50%以下で、残りが溶媒であり得る。
【0133】
(2)コーティングスラリーを多孔質膜の少なくとも片側に塗布すること
このステップは、さほど限定されず、任意の既知の塗布方法が、微多孔質膜の表面にコーティングスラリーを塗布するために使用され得る。
【0134】
いくつかの実施形態では、多孔質膜の側面にコーティングスラリーを塗布する前に、その側面に対してコロナ処理を行うことがあり、および行わないこともある。一般に、コロナ処理を行うと界面活性剤は不要となり得るが、特に薄型の多孔質膜を使用した場合、コロナ処理により問題が生じることがある。
【0135】
(3)塗布したコーティングスラリーを架橋すること
このステップでは、光、熱、または光と熱の組み合わせが、塗布したコーティングスラリーを架橋することに用いられ得る。いくつかの実施形態において、光は、紫外(UV)光であってよい。
【0136】
いくつかの実施形態では、加える光または熱がないことにより架橋が開始できない場合、塗布されたコーティングスラリーは、光開始剤または光増感剤を含まなくてはならない。例えば、本明細書に記載の架橋剤または架橋試薬が反応性官能基であるビニル基を含むとき、光開始剤または光増感剤の使用が必要となり得る。この場合、光開始剤または光増感剤が吸収する光を、光開始剤または光増感剤を含む塗布されたコーティングスラリーに加えることができ、ラジカル種を発生させることができ、架橋が開始し得る。
【0137】
(4)塗布したコーティングスラリーを乾燥させること
このステップは、さほど限定されず、架橋する前、架橋した後、架橋中、架橋する前および架橋した後、架橋する前および架橋中、架橋中および架橋した後、または、架橋する前、架橋中および架橋した後に行われ得る。いくつかの実施形態では、乾燥させることは、塗布したコーティングスラリーに空気を吹き付けること、塗布したコーティングスラリーに熱を加えること、または、塗布したコーティングスラリーに空気を吹き付け、熱を加えることにより、達成される。
【実施例
【0138】
微粒子状のアクリル系架橋剤または架橋試薬による実施例
実施例では、微粒子状のポリマー性架橋剤または架橋試薬が、反応性ビニル基を有するアクリル系ポリマーが次の化学式(21)のような反応性モノマーに反応する少なくとも1つのステップにより形成され得る。
【0139】
【化41】
【0140】
このようにして、表面にエポキシ基を有する微粒子状のアクリル系架橋剤または架橋試薬が形成され得る。水性スラリーは、その後、セラミックとしてアルミナと、ジカルボン酸塩界面活性剤とを用いて形成される。アルミナを100部として比較したそれぞれの成分の量を、図1の表に示す。
【0141】
比較例のスラリーは、少なくとも架橋剤または架橋試薬を含まず、ジカルボン酸塩界面活性剤を含まずに形成した。
【0142】
実施例および比較例のスラリーは、セルガード(登録商標)ベースフィルム1上にコーティングされた(ベースフィルム1)。実施例のスラリーは、熱を用いて架橋された。実施例1および比較例1は、このようにして、それぞれ形成された。
【0143】
コーティングされたフィルムとコーティングされていないベースフィルムの特性が得られ、図2および図3に記載する。これらの表中の情報からわかるように、実施例における高温収縮率、たとえば150℃での収縮率は、比較例のそれと比較して5倍近く低い。これらの表の結果は重要であり、本明細書に記載する本発明のセパレータの熱安定性の向上を示す。これは重要である。電池内セパレータの収縮は、短絡を引き起こし得る。
【0144】
また、本発明および比較例のスラリーを第2のセルガード(登録商標)ベースフィルム上にコーティングし(ベースフィルム2)、それぞれ実施例2および3、ならびに比較例2および3を形成した。ベースフィルム2は、約12ミクロンの厚さを有していた。2.5ミクロンおよび4ミクロンのコーティング厚さの例(実施例2および3、ならびに比較例2および3)を形成した。本発明のコーティングを、実施例2および3に架橋し、形成した。特性を測定し、図4の表にて報告する。図4の表に見られるように、薄いコーティングである比較例2の高温熱収縮率は、同程度の厚さのコーティングである実施例2のほぼ3倍である。良い高温収縮率を得るためには、例えば比較例3のように、2.5ミクロンより厚いコーティングを形成しなければならない。この表の結果は、薄いコーティングで良好な高温収縮率が得られ得ることを示しているため、重要である。より薄いコーティングを使用する能力は、より薄いセパレータを形成する能力をもたらす。より薄いセパレータは、より高いエネルギー密度の電池を形成することができるため、産業界ではより薄いセパレーターが望まれている。
【0145】
ジアニオンアセチレン界面活性剤による実施例
実施例4および5は、ジアニオンアセチレン界面活性剤1およびジアニオンアセチレン界面活性剤2を用いて形成したものである。例えば、本明細書に記載の化学式(1)または(2)で示される構造であってよく、式中、Rがアルキン基である。比較例4、5および6は、非イオンPEO型界面活性剤、非イオンアセチレン界面活性剤1、および非イオンアセチレン界面活性剤2から形成されたものである。図8のデータは、ジカルボン酸界面活性剤を含むコーティングスラリーの接触角が、これらを用いていないものに比べて低いことを示している。接触角の低いコーティングは濡れ性が高くなり、これは電池用セパレータとして好ましい特性である。また、図9に示すように、接触角が低いと、滑らかなコーティング表面または高いコーティング均一性ももたらす。界面活性剤の量が少なくても接触角が低くなることから、コーティング膜の良好な特性を維持し得る。特に、電池のセパレータとして使用する場合、界面活性剤の量を少なくすることは、良好な特性を得るために重要である。図10は、界面活性剤の添加量を増やした場合の効果を示している。ジカルボン酸塩界面活性剤では、他の界面活性剤よりも低い量の界面活性剤で良好な濡れ性が達成される。
【0146】
PEO系架橋剤または架橋試薬による実施例
図11(AおよびB参照)に記載される微粒子状のPEO系架橋剤または架橋試薬を用いること以外は、実施例1と同様にして、実施例6および実施例7のスラリーを形成した。また、カルボキシメチルセルロース(CMC)を増粘剤として用いた。微粒子状のPEO系架橋剤または架橋試薬とCMCとの架橋反応を図11に示す。実施例8のスラリーは、実施例1のスラリーと同様であり、同一のアクリル系架橋剤または架橋試薬を使用している。比較例7のスラリーは、比較例1のスラリーと同様である。
【0147】
比較例および実施例の各スラリーをベースフィルム1に塗布した。これら実施例6および比較例7のデータを、図12図15に示す。PEO系架橋剤または架橋試薬によるこれらの実施例も、優れた高温安定性を示している。これは、例えば、高温収縮データを見ることによって示される。図12は、比較例および実施例の収縮率の差を視覚的に示したものであり、これは、加熱前は同じ大きさから開始したものである。しかしながら、アクリル系架橋剤を用いた実施例とは異なり、これらの実施例も低いピン除去力を示す。低いピン抜去力は、電池メーカーにとって重要なセパレータの特性である。特に、円筒型セルの組み立てにおいて、低いピン抜去力は重要であり、スムーズにピンを抜去することができる。
【0148】
図16に示すように、ここでの実施例、すなわちPEO架橋剤による実施例7は、本明細書に開示する他の実施例、すなわちアクリル架橋剤を用いた実施例8と比較して、改善された特性も有している。例えば、実施例7は、低い含水率を有する。低水分は、電池のサイクル寿命にとって重要である。電池セパレータ中の水分(HO)は、電池内でガスおよび/またはHFを形成する恐れがある。さらに、これらの実施例に使用されるスラリーは、例えば、実施例1に使用されるものよりも反応性が低いことがわかった。これは、製造上の利点である。スラリーは、すぐには反応せず、機械を詰まらせない。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
【手続補正書】
【提出日】2022-10-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質膜または微多孔質膜と、
前記多孔質膜の少なくとも片側における架橋されたセラミックコーティングと、
を含むコーティングされた電池セパレータであって、
前記架橋されたセラミックコーティングが5ミクロン以下、4ミクロン以下、3ミクロン以下、2ミクロン以下、または1ミクロン以下の厚さであり、150℃における機械方向(MD)熱収縮が10%未満である、コーティングされた電池セパレータ。
【請求項2】
前記150℃におけるMD熱収縮が5%未満である、請求項1に記載されたコーティングされた電池セパレータ。
【請求項3】
多孔質膜または微多孔質膜と、
前記多孔質膜の少なくとも片側における架橋されたセラミックコーティングと、
を含むコーティングされた電池セパレータであって、
DMCまたはDECの低粘度の電解質内で2日経過後、荷重増加が250%未満、200%未満、150%未満、100%未満、または60%未満である、コーティングされた電池セパレータ。
【請求項4】
多孔質膜または微多孔質膜と、
前記多孔質膜の少なくとも片側における架橋されたセラミックコーティングと、
を含むコーティングされた電池セパレータであって、
前記架橋されたセラミックコーティングが、セラミック粒子と、微粒子状のポリマー性バインダ架橋剤または架橋試薬とを含み、
前記セラミック粒子が、二酸化ケイ素(SiO 2 )、酸化チタン(TiO 2 )、ベーマイト、酸化アルミニウム(Al 2 3 )、酸化マグネシウム(MgO)、BaSO 4 、および炭酸カルシウム(CaCO 3 )からなる群から選択される少なくとも1つを含み、
前記架橋されたセラミックコーティングが0.1~10ミクロンの厚みを有する、コーティングされた電池セパレータ。
【請求項5】
前記微粒子状のポリマー性バインダ架橋剤または架橋試薬が、微粒子状のアクリル系バインダ架橋剤または架橋試薬を含む、請求項に記載されたコーティングされた電池セパレータ。
【請求項6】
前記微粒子状のポリマー性バインダ架橋剤または架橋試薬が、エポキシ基、ビニル基、アミノ基、およびイソシアネート基からなる官能基の群から少なくとも1つを表面上に含む、請求項に記載されたコーティングされた電池セパレータ。
【請求項7】
前記微粒子状のアクリル系バインダ架橋剤または架橋試薬が、エポキシ基、アミノ基、およびイソシアネート基からなる官能基の群から少なくとも1つを表面上に含む、請求項に記載されたコーティングされた電池セパレータ。
【請求項8】
前記架橋されたセラミックコーティングが、セラミック粒子100重量部あたり0.01~100重量部の量、セラミック粒子100重量部あたり0.01~50重量部の量、セラミック粒子100重量部あたり0.01~25重量部の量、セラミック粒子100重量部あたり0.01~15重量部の量、セラミック粒子100重量部あたり0.01~10重量部、またはセラミック粒子100重量部あたり0.01~5重量部の量の前記微粒子状のポリマー性バインダ架橋剤または架橋試薬を含む、請求項に記載されたコーティングされた電池セパレータ。
【請求項9】
前記架橋されたセラミックコーティングが、増粘剤、接着促進剤、界面活性剤、および分散剤からなる群から選択される少なくとも1つをさらに含む、請求項に記載されたコーティングされた電池セパレータ。
【請求項10】
接着促進剤を含み、前記接着促進剤が、PVDFホモポリマーまたはコポリマー、またはPVDFホモポリマー若しくはコポリマーを含む粒子である、請求項に記載されたコーティングされた電池セパレータ。
【請求項11】
前記架橋されたセラミックコーティングが界面活性剤をさらに含み、
前記界面活性剤が、ジアニオン、トリアニオン、もしくはポリアニオン界面活性剤であるか、
前記界面活性剤がジアニオン界面活性剤であって、前記ジアニオン界面活性剤が、ジカルボン酸塩構造、二硫酸塩構造、ジスルホン酸塩構造および二リン酸塩構造の少なくとも1つを有するか、
前記ジアニオン界面活性剤が次の化学式の構造を有するものであって、
【化1】
上記式中、Xはアニオン類であり、R 3 はC1からC10の飽和もしくは不飽和の分枝もしくは直鎖のアルキル基であり、R 4 はC1からC10の飽和もしくは不飽和の分枝もしくは直鎖のアルキル基であり、R 2 はC1からC10の飽和もしくは不飽和の分枝もしくは直鎖のアルキル基であり、およびR 1 はアルキン基、アルケン基、アルケニル基もしくはアルキニル基であるか、
または、前記ジアニオン界面活性剤が次の化学式の構造を有する
【化2】
請求項に記載されたコーティングされた電池セパレータ。
【請求項12】
前記架橋されたセラミックコーティングが、コーティングスラリーを多孔質膜に塗布し、熱、光(UV光を含む)、またはその両方を用いて、光増感剤または光開始剤を加えまたは加えずに、架橋することによって形成され、
前記コーティングスラリーが、選択的に、水性コーティングスラリー、または溶媒が水と10体積%未満の有機溶媒および/またはアルコールとのコーティングスラリーである、請求項に記載されたコーティングされた電池セパレータ。
【請求項13】
多孔質膜または微多孔質膜と、
前記多孔質膜の少なくとも片側における架橋されたセラミックコーティングと、
を含むコーティングされた電池セパレータであって、
前記架橋されたセラミックコーティングが、セラミック粒子と、2以上、4以上、6以上、または8以上の反応基を有するポリへドラルオリゴメリックシルセスキオキサン(POSS)架橋剤または架橋試薬とを含み
前記セラミック粒子が、二酸化ケイ素(SiO 2 )、酸化チタン(TiO 2 )、ベーマイト、酸化アルミニウム(Al 2 3 )、酸化マグネシウム(MgO)、BaSO 4 、および炭酸カルシウム(CaCO 3 )からなる群から選択される少なくとも1つを含み、
前記架橋されたセラミックコーティングが0.1~10ミクロンの厚みを有する、コーティングされた電池セパレータ。
【請求項14】
前記反応基が、エポキシ基、アミノ基、ビニル基、(メタ)アクリロキシ基、イソシアネート基、およびメルカプト基から選択される少なくとも1つを含む、請求項13に記載されたコーティングされた電池セパレータ。
【請求項15】
前記POSS架橋剤または架橋試薬中のPOSSが、ランダム構造、かご型構造、開かご構造、ラダー状構造、またはダブルデッカー構造を有する、請求項13に記載されたコーティングされた電池セパレータ。
【請求項16】
前記POSS架橋剤もしくは架橋試薬が次の化学式で示される一般構造を有するものであって
【化3】
上記式中、前記POSSは、ランダム構造、かご型構造、開かご構造、ラダー状構造、もしくはダブルデッカー構造を有することができ、nは2より上もしくは5より上の整数であり、RはC1~C10の飽和もしくは不飽和のアルキル基であり、Xは反応基であり、上記式中の(R-O-X)は、POSSの酸素もしくはケイ素と結合しているか、
前記POSS架橋剤もしくは架橋試薬が次の化学式の構造を有するものであるか、
【化4】
または、前記POSS架橋剤もしくは架橋試薬が次の化学式の構造を有する、請求項13に記載されたコーティングされた電池セパレータ。
【化5】
【請求項17】
前記架橋されたセラミックコーティングが、セラミック粒子100重量部あたり0.01~100、0.01~50、0.01~25、0.01~15、0.01~10、または0.01~5重量部の量の前記POSSバインダ架橋剤または架橋試薬を含む、請求項13に記載されたコーティングされた電池セパレータ。
【請求項18】
前記架橋されたセラミックコーティングが、バインダ、増粘剤、接着促進剤、界面活性剤、および分散剤の少なくとも1つをさらに含む、請求項13に記載されたコーティングされた電池セパレータ。
【請求項19】
前記架橋されたセラミックコーティングが、コーティングスラリーを多孔質膜に塗布し、熱、光(UV光を含む)、またはその両方を用いて、光増感剤または光開始剤を加えまたは加えずに、架橋することによって形成され
前記コーティングスラリーが、選択的に、水性コーティングスラリー、または溶媒が水と10体積%未満の有機溶媒および/もしくはアルコールとのコーティングスラリーである、請求項13に記載されたコーティングされた電池セパレータ。
【請求項20】
多孔質膜または微多孔質膜と、
前記多孔質膜の少なくとも片側における架橋されたセラミックコーティングと、
を含むコーティングされた電池セパレータであって、
前記架橋されたセラミックコーティングが、セラミック粒子と、2以上、4以上、6以上、または8以上の反応基を有するポリエチレンオキシド(PEO)/ポリエチレングリコール(PEG)架橋剤または架橋試薬とを含み
前記セラミック粒子が、二酸化ケイ素(SiO 2 )、酸化チタン(TiO 2 )、ベーマイト、酸化アルミニウム(Al 2 3 )、酸化マグネシウム(MgO)、BaSO 4 、および炭酸カルシウム(CaCO 3 )からなる群から選択される少なくとも1つを含み、
前記架橋されたセラミックコーティングが0.1~10ミクロンの厚みを有する、コーティングされた電池セパレータ。
【請求項21】
前記反応基が、エポキシ基、ビニル基、アミノ基、およびイソシアネート基の少なくとも1つを含む、請求項20に記載のコーティングされた電池セパレータ。
【請求項22】
前記PEO(PEG)架橋剤もしくは架橋試薬が次のいずれかの化学式の構造を有するか、
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
【化10】
【化11】
もしくは
【化12】
前記PEO(PEG)架橋剤もしくは架橋試薬が次の化学式の構造を有するものであって、
【化13】
上記式中、nは1から100000、もしくはそれ以上の整数であるか、
前記PEO(PEG)架橋剤もしくは架橋試薬が次の化学式の構造を有するものであって、
【化14】
上記式中、nは1から100000、もしくはそれ以上の整数であるか、
前記PEO(PEG)架橋剤もしくは架橋試薬が次のいずれかの化学式の構造を有するか、
【化15】
【化16】
【化17】
【化18】
もしくは
【化19】
前記PEO(PEG)架橋剤もしくは架橋試薬が、ジ、トリ、テトラ、もしくはポリグリシジルエーテルであるか、
または、前記PEO(PEG)架橋剤もしくは架橋試薬が、ジ、トリ、テトラ、もしくはポリアクリレートである、請求項20に記載のコーティングされた電池セパレータ。
【請求項23】
前記架橋されたセラミックコーティングが、セラミック粒子100重量部あたり0.01~100、0.01~50、0.01~25、0.01~15、0.01~10、または0.01~5重量部の量の前記PEO(PEG)架橋剤または架橋試薬を含む、請求項20に記載されたコーティングされた電池セパレータ。
【請求項24】
前記架橋されたセラミックコーティングが、バインダ、増粘剤、接着促進剤、界面活性剤、および分散剤の少なくとも1つをさらに含む、請求項20に記載されたコーティングされた電池セパレータ。
【請求項25】
前記架橋されたセラミックコーティングが、コーティングスラリーを多孔質膜に塗布し、熱、光(UV光を含む)、またはその両方を用いて、光増感剤または光開始剤を加えまたは加えずに、架橋することによって形成され
前記コーティングスラリーが、選択的に、水性コーティングスラリー、または溶媒が水と10体積%未満の有機溶媒および/もしくはアルコールとのコーティングスラリーである、請求項20に記載されたコーティングされた電池セパレータ。
【請求項26】
PEO(PEG)架橋剤が、次の化学式で表される長鎖PEO(PEG)、短鎖PEO(PEG)、または長鎖と短鎖のPEOの混合物を有する、請求項20に記載されたコーティングされた電池セパレータ。
【化20】
上記式中、nが1000未満のものを短鎖PEO、nが1000より大きいものを長鎖PEOとする。
【請求項27】
多孔質膜と、
前記多孔質膜の少なくとも片側における架橋されたセラミックコーティングと、
を含むコーティングされた電池セパレータであって、
前記架橋されたセラミックコーティングがセラミック粒子、架橋剤または架橋試薬、およびジアニオン、トリアニオンまたはポリアニオン界面活性剤を含む、コーティングされた電池セパレータ。
【請求項28】
前記界面活性剤がジアニオン界面活性剤であって、
前記ジアニオン界面活性剤が、ジカルボン酸塩構造、二硫酸塩構造、ジスルホン酸塩構造および二リン酸塩構造の少なくとも1つを有するか、
前記ジアニオン界面活性剤が次の化学式の構造を有するものであって、
【化21】
上記式中、Xはアニオン類であり、R 3 はC1からC10の飽和もしくは不飽和の分枝もしくは直鎖のアルキル基であり、R 4 はC1からC10の飽和もしくは不飽和の分枝もしくは直鎖のアルキル基であり、R 2 はC1からC10の飽和もしくは不飽和の分枝もしくは直鎖のアルキル基であり、およびR 1 はアルキン基、アルケン基、アルケニル基もしくはアルキニル基であるか、
または前記ジアニオン界面活性剤が次の化学式の構造を有する
請求項27に記載されたコーティングされた電池セパレータ。
【化22】
【国際調査報告】