(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-05
(54)【発明の名称】物体の厚さをマッピングするための方法及び装置
(51)【国際特許分類】
G01B 11/06 20060101AFI20230329BHJP
【FI】
G01B11/06 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022548928
(86)(22)【出願日】2021-02-12
(85)【翻訳文提出日】2022-09-08
(86)【国際出願番号】 EP2021053553
(87)【国際公開番号】W WO2021160861
(87)【国際公開日】2021-08-19
(32)【優先日】2020-02-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】509025832
【氏名又は名称】サントル ナシオナル ドゥ ラ ルシェルシェ シアンティフィク
【氏名又は名称原語表記】CENTRE NATIONAL DE LA RECHERCHE SCIENTIFIQUE
(71)【出願人】
【識別番号】516065504
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ グルノーブル アルプ
(74)【代理人】
【識別番号】100139594
【氏名又は名称】山口 健次郎
(72)【発明者】
【氏名】グーリエ,オーレリアン
(72)【発明者】
【氏名】モロー,フィリップ
【テーマコード(参考)】
2F065
【Fターム(参考)】
2F065AA30
2F065BB13
2F065FF09
2F065FF43
2F065FF67
2F065GG04
2F065GG12
2F065HH04
2F065HH12
2F065JJ03
2F065JJ05
2F065JJ08
2F065JJ18
2F065JJ26
2F065MM02
2F065MM06
(57)【要約】
本発明は、物体(4)の厚さマップを作成するための方法(10)に関する。本方法は、少なくとも1対の測定経路(2、3)を介して実施される。本方法は、2つの基準面の位置の基準信号を取得するために、基準物体(30)の2つの対向面によって反射及び/又は拡散された光を、光学センサによって測定するステップと、複数の測定点において、物体の2つの面の位置の測定信号を取得するために、被測定物体(4)の2つの対向面によって反射及び/又は拡散された光を光学センサによって測定するステップと、測定信号及び基準厚さに基づいて、測定点の厚さ値を決定するステップと、厚さ値に基づいて物体の厚さマップを作成するステップとを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体の厚さマップを確立するための方法(10)であって、前記方法(10)は、
少なくとも1対の測定経路(2、3)であって、各測定経路(2、3)が、測定光ビーム(5、6)を生成するように構成された光源(7a、8a)と、距離測定値を生成するように構成された光学センサ(7b、8b)とを備える、測定経路(2、3)と、
被測定物体(4)の受容領域であって、物体平面及び/又は軸線(9)を含む、受容領域と、
を備える非接触測定装置(1)によって実施され、
2つの測定経路(2、3)が、前記物体平面及び/又は物体軸(9)の両側に配置されて、2つの対向する側で前記物体(4)を測定することができ、前記光源(7a、8a)、前記光学センサ(7b、8b)及び前記光ビーム(5、6)をそれぞれ含む前記測定経路(7、8)の前記平面が非平行になる、方法(10)において、
2つの基準面の位置の第1及び第2の基準信号を取得するために、既知の厚さe
REFの基準物体(30)の2つの対向面の前記光ビームによって照射された領域によって反射及び/又は拡散された前記光を、前記光学センサ(7b、8b)によって測定するステップ(12)と、
前記物体(4)上の複数の測定点において、前記物体(4)の前記2つの面の位置の第1及び第2の測定信号を取得するために、前記被測定物体(4)の2つの対向面の前記光ビームによって照射された前記領域によって反射及び/又は拡散された光を、前記光学センサ(7b、8b)によって測定するステップ(16)と、
前記第1及び第2の測定信号から、並びに、前記基準厚さe
REFから、前記複数の測定点についての複数の厚さ値eを決定するステップ(18)と、
前記被測定物体(4)の前記複数の厚さ値から前記物体(4)の厚さマップを確立するステップ(22)と、
を含み、
前記物体(4)の1つの面の前記測定(16)が、前記物体(4)の別の面の前記測定(16)から非同期化されていることを特徴とする、方法(10)。
【請求項2】
前記厚さ測定値を前記物体(4)の両側の対応する測定点の位置と相関させるステップをさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法(10)。
【請求項3】
前記相関ステップが、基準分解能物体によって、前記光学センサ(7b、8b)のうちの1つの位置を別の光学センサ(7b,8b)の位置に対して較正することによって実行されることを特徴とする、請求項2に記載の方法(10)。
【請求項4】
前記物体(4)の厚さ値を決定する前記ステップ(18)及び前記厚さマップを確立する前記ステップ(22)がリアルタイムで実行されることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法(10)。
【請求項5】
前記相関ステップが、前記複数の測定点の少なくともいくつかについて、前記物体(4)の第1の側の測定値を前記物体(4)の第2の側の測定値と相関させることによって実行されることを特徴とする、請求項2に記載の方法(10)。
【請求項6】
前記複数の測定点の少なくともいくつかについて決定された前記厚さ値の補間ステップをさらに含むことを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法(10)。
【請求項7】
物体の厚さマップを確立するための装置(1)であって、
少なくとも1対の測定経路(2、3)であって、各測定経路(2、3)が、測定光ビーム(5、6)を生成するように構成された光源(7a、8a)と、距離測定値を生成するように構成された光学センサ(7b,8b)とを備える、測定経路(2、3)と、
被測定物体(4)の受容領域であって、前記受容領域は、物体平面及び/又は軸線(9)を含み、前記2つの測定経路(2、3)が、前記物体平面及び/又は物体軸(9)の両側に配置されて、2つの対向する側から前記物体(4)を測定することができ、前記光源(7a、8a)、前記光学センサ(7b、8b)及び前記光ビーム(5、6)をそれぞれ含む前記測定経路(7、8)の前記平面が非平行になる、受容領域と、
前記測定経路に対して前記物体平面内に、及び/又は前記物体軸(9)に沿って前記物体(4)を変位させるように構成された変位手段(11)、又は前記物体平面及び/又は物体軸(9)の両側で、前記物体(4)に対して前記測定経路を変位させるように構成された変位手段(11)と、
前記距離測定値を処理するように構成された処理モジュール(50)と、
を備える、請求項1から6のいずれか一項に記載の前記方法(10)のすべてのステップを実施するように配置されている、装置(1)。
【請求項8】
各測定経路(2、3)が、ほぼ平行な、又は集束された測定ビーム(5、6)を生成する光源(7a,8a)、好ましくは、レーザを備えることを特徴とする、請求項7に記載の装置(1)。
【請求項9】
各光学センサ(7b、8b)が、ピンホール又はレンズタイプの1つ又は複数のリフォーカス光学素子と、位置センサとを備えることを特徴とする、請求項7及び8のいずれか一項に記載の装置(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体、特に化学的及び物理的に不均一な物体の厚さマップを確立するための方法に関する。本発明はまた、そのような方法を実施する非接触測定装置に関する。
本発明の分野は、非限定的に、非接触計測測定及びトポロジカルイメージングの分野である。
【背景技術】
【0002】
物体の厚さの様々なタイプの測定が知られており、それらは2つのカテゴリ、すなわち接触あり及び接触なしの測定に分類され得る。
【0003】
接触による厚さ測定の機械的技術は、主に、測定装置の2つの剛性面の間(例えば、基準面と球面先端部との間又は2つの平坦なアームの間)に配置された被測定物体の両側への圧力の印加に基づく。次いで、装置の2つの面と接触している物体の領域の厚さの平均測定値が、較正後のこれらの接触面の相対変位を測定することによって得られる(例えば、器具の2つの測定面が直接接触しているときに厚さを0として定義する)。一般に、2つの接触面の一方は固定され、測定値は第2の接触面の変位によって決定される。センサと組み合わされたはさみゲージ、マイクロメータ又は定盤などの装置は、このカテゴリに属する。
【0004】
接触による厚さ測定の精度は、第1の近似値に対して、装置の一方又は両方の接触面の変位の較正及び測定の品質に依存する。しかしながら、この精度は、物体の硬度及び測定装置によって加えられる圧力に依存する。大きな接触力及び/又は小さな接触面の場合、物体に加えられる圧力によって、塑性変形を誘発され、測定値が歪んだり、物体が破損したりする可能性がある。これは、特に柔らかい物体(例えば、ポリマー又は可鍛性金属)、及び壊れやすい試料(例えば、基材、セラミック又は多孔質体上の薄層)に当てはまる。
【0005】
非接触厚さ測定により、物体に対する損傷のこれらの問題を解決することが可能になる。プローブと物体との間の相互作用の測定を共通の特徴とする多種多様な方法がある。使用される主な装置は、音響、光学、X線又はテラヘルツ測定に基づく。プローブの性質及び関連する検出技術は、本質的に測定精度を決定する。例えばマイクロメートル程度の厚さに高い精度が要求される場合、光学的な解決策がしばしば有利である。
【0006】
しかしながら、厚さ測定のこれらの非接触技術には、物体の性質に応じて限界がある。したがって、光干渉法は、屈折率の変動を伴う不均一な物体にはあまり適していないので、主に、均一で透明な物体(例えば、プラスチックフィルム)の測定のために使用される。したがって、不均一な性質の物体は、使用されるプローブの性質に応じて、測定がより複雑であることが判明し得る。
【0007】
物体の厚さが均一でない場合、異なる位置で物体を測定する必要がある。実行される測定回数は、物体の幾何学的形状に関する仮定に依存する。十分な統計精度を得るためには、試料の厚さマップを再構築する必要がある。これにより、特に、当初は疑われなかった物体の厚さの変化を、又は逆に、厚さの局所的な変化が大きいと仮定される場合の物体の厚さの変化を検出できる可能性がある。
【0008】
非接触測定のための既存の技術では、不均一材料からなる物体について、(少なくとも1μm程度の)厚さに関する高い精度と高い横方向精度(<10μm)との両方を有するマッピングができない。
【0009】
本発明の目的は、これらの欠点の少なくとも1つを克服することを可能にする、物体の厚さをマッピングするための方法及び装置を提供することである。
【発明の開示】
【0010】
本発明の1つの目的は、不均一であり得る物体の厚さの非接触マッピングを可能にする方法及び装置を提案することである。
本発明の別の目的は、厚さのサブミクロンサイズの精度及び約10μm以下のマップの精度を達成することを可能にする方法及び装置を提案することである。
【0011】
これらの目的の少なくとも1つは、物体の厚さマップを確立するための方法によって達成され、この方法は、
少なくとも1対の測定経路であって、各測定経路が測定光ビームを生成するように構成された光源と、距離測定値を生成するように構成された光学センサとを備える、測定経路と、
被測定物体の受容領域であって、物体平面及び/又は軸線を含む、受容領域と、
を備える非接触測定装置によって実施され、
2つの測定経路が物体平面及び/又は軸線の両側に配置されて、2つの対向する側から物体を測定することができ、光源、光学センサ及び光ビームをそれぞれ含む測定経路の平面は非平行になり、前記方法は、
2つの基準面の位置の第1及び第2の基準信号を取得するために、既知の厚さeREFの基準物体の2つの対向面の光ビームによって照射された領域によって反射及び/又は拡散された光を、光学センサによって測定するステップと、
物体上の複数の測定点において、物体の2つの面の位置の第1及び第2の測定信号を取得するために、被測定物体の2つの対向面の光ビームによって照射された領域によって反射及び/又は拡散された光を、光学センサによって測定するステップと、
第1及び第2の測定信号から、並びに、前記基準厚さeREFから、前記複数の測定点についての複数の厚さ値eを決定するステップと、
被測定物体の複数の厚さ値から、物体の厚さマップを確立するステップと、
を含み、
物体(4)の1つの面の測定(16)は、物体(4)の別の面の測定(16)から非同期化されている。
【0012】
本発明による方法は、物体の厚さの非接触光学マッピングの方法を構成する。本発明による方法は、物体の2つの面上でトポロジカルイメージングを実行することを可能にする。この方法は、物体の対向する面のそれぞれにおける光点の鏡面反射又は拡散反射の検出に基づいており、これらの面の位置をいくつかの測定点で決定するものである。
【0013】
厚さマップの確立は、厚さ測定の繰り返しに基づいており、物体の関心領域をカバーすることができる。これは、光学プローブに対して物体を相対的に変位させることによって、又は逆に、物体に対して光学プローブを相対的に変位させることによって、実行することができる。したがって、厚さについて得られる精度は、プローブ又は物体の変位とは無関係であり、測定経路を含む厚さ測定システムのみに依存する。マッピングの精度に関しては、測定システムの寸法(例えば、物体の表面上の光点のサイズ)及び物体上の測定点の間隔の両方に依存する。間隔は、測定点に従って物体を走査するための技術によって決定される。この場合、厚さマップの確立は、しばしばマイクロイメージングと呼ばれる走査による撮像の形態に類似している。
【0014】
本発明は、光干渉法の使用を大幅に制限する物体内の光学指数の変動の問題を回避しつつ、光学分解能の内在精度を組み合わせることを可能にする。
【0015】
物体は、特に、2次元に延在してもよく、すなわち、他の2つの次元に対して、厚みが薄くてもよい。したがって、物体は、2つの対向面を有するフィルム、薄層、薄片(section)、又はプレートタイプのものであってもよく、その厚さは、横方向及び縦方向の延在部の一部又は全体にわたって決定されなければならない。被測定物体の厚さは、物体の2つの面の各々の位置の差動測定によって決定される。
【0016】
物体はまた、ロッド、ケーブル又はワイヤなどの円筒対称又は球形対称の物体であってもよい。この場合、「2つの対向する側」又は「2つの対向面」という用語は、測定経路が物体の両側に配置されることにより、例えば単一の円筒面であっても、これらの2つの側から物体を測定することを可能にするという意味で使用されている。
【0017】
本発明による方法では、物体の一方の側からの測定は、物体の他方の側からの測定に対して時間的にシフトされる。測定のこの非同期化と、非平行な平面内の測定経路の配置との組み合わせは、物体の一方又は他方の側から来る光点を適切に識別し、したがって区別することを可能にする。検出誤差は回避することができ、したがって測定の精度を高めることができる。
【0018】
実際、1つの測定経路の測定ビームが別の測定経路によって検出されるのを回避することによって、2つの測定経路間の信号干渉が回避される。
【0019】
本発明による方法は、任意の種類の物体の厚さをマッピングすることを可能にする。有利には、物体は、化学組成及び/又は物理的特性が不均一であってもよい。物体は、特に、透明及び不透明な領域、又は弾性的及び硬質若しくは脆い領域を含むことができ、屈折率、吸収などの空間的変化を有する。本発明による方法により、特に、複合材料、多相材料又は生物材料から作成された物体、並びに非常に薄い及び/又は部分的に透明な物体の厚さをマッピングすることが可能になる。
【0020】
物体が1つ又は別の面の一部に高さ変動を有する場合、厚さマップはトポグラフィックイメージングと同様である。このような物体は、部品の幾何学的形状の視覚化を本発明による方法によって基板の両側にマッピングすることができる回路基板タイプであってもよい。
【0021】
物体はまた、対称軸を有してもよく、スクリュー、チューブ、物体に穿孔されたコア試料、若しくは外科用インプラントなど、この軸線に沿った、又はその直径に沿った厚さ若しくは高さの変動を表示してもよい。
【0022】
測定ビームは、それらのそれぞれの光学センサを用いて、物体上の距離又は位置の測定を実行することができるように適合される。これは、測定ビームの直径又は横方向の広がりが、被測定物体のサイズ又は寸法と比較して小さいことを意味する。
【0023】
一実施形態によれば、本発明による方法では、1対又は複数対の追加の測定経路を利用することができる。これらの追加の対は、第1の対に対して相補的な測定を実行することを可能にし、それによって物体の測定時間を短縮し、又は測定精度を高めることができる。
【0024】
有利には、本発明による方法は、厚さ測定値を物体の両側の対応する測定点の位置と相関させるステップをさらに含むことができる。
【0025】
このステップにより、物体の両側における2つの対応する測定値が厚さ値を決定するために使用されることを保証することができる。
【0026】
一例によれば、相関ステップは、基準分解能物体によって、光学センサのうちの1つの位置を別の光学センサの位置に対して較正することによって実行され得る。
【0027】
別の例によれば、相関ステップは、複数の測定点の少なくともいくつかについて、被測定物体の第1の側の測定値を物体の第2の側の測定値と相関させることによって実行され得る。
【0028】
一実施形態によれば、この方法は、複数の測定点の少なくともいくつかについて決定された厚さ値の補間ステップをさらに含むことができる。したがって、厚さマップは、厚さが測定されていない物体の場所でも定義される。
【0029】
本発明の別の態様によれば、物体の厚さマップを確立するための装置が提案され、本装置は、
少なくとも1対の測定経路であって、各測定経路が、測定光ビームを生成するように構成された光源と、距離測定値を生成するように構成された光学センサとを備える、測定経路と、
被測定物体の受容領域であって、受容領域は、物体平面及び/又は軸線を含み、2つの測定経路が物体平面及び/又は物体軸の両側に配置されて、2つの対向する側から物体を測定することができ、光源、光学センサ及び光ビームをそれぞれ含む測定経路の平面は非平行になり、
測定経路に対して物体平面内に、及び/又は物体軸に沿って物体を変位させるように構成された変位手段、又は物体平面及び/又は物体軸の両側で、物体に対して測定経路を変位させるように構成された変位手段と、
前記距離測定値を処理するように構成された処理モジュールと、
を備え、
本発明による方法のすべてのステップを実行するように構成されている。
【0030】
有利には、各測定経路は、ほぼ平行な、又は集束された測定ビームを生成する光源を含むことができる。
【0031】
この光源は、好ましくはレーザ光源である。
【0032】
有利な実施形態によれば、各光学センサは、ピンホール又はレンズタイプの1つ又は複数の光学リフォーカス素子と、位置センサとを備えることができる。
【0033】
位置センサは、例えば、CMOS型又はCCD型のセンサであってもよい。
【0034】
本発明による方法及び装置は、特に、組織学スライドなどの生物学的試料の厚さをマッピングするための計量測定、生体材料の開発、又は材料の分野における品質管理のために実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
他の利点及び特徴は、非限定的な例の詳細な説明及び添付の図を検討することで明らかになるであろう。
【
図1】
図1は、本発明による装置の非限定的な実施形態例の図表示である。
【
図2】
図2は、本発明による方法の非限定的な実施形態例の図表示である。
【
図3】
図3a~3dは、本発明の実施形態による方法のステップを示す図である。
【
図4】
図4は、本発明の実施形態による方法のさらに別のステップを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下に説明される実施形態は決して限定的ではないことが十分に理解される。本発明の変形例は、特に、この特徴の選択が技術的利点を与えるのに十分か、又は先行技術に対して本発明を区別するのに十分である場合、記載される他の特徴とは別に、以下に記載される特徴の選択のみを含むと推測することができる。この選択は、少なくとも1つの、好ましくは機能的な、構造詳細のない特徴、又は構造詳細の一部のみが技術的利点を与えるのに十分か、又は先行技術に対して本発明を区別するのに十分である場合、この構造詳細の一部のみを有する特徴を含む。
【0037】
特に、記載されたすべての変形例及びすべての実施形態は、技術的観点からこの組み合わせに異議がなければ、一緒に組み合わせることができる。
【0038】
図において、いくつかの図に共通する要素は同じ参照番号を保持している。
【0039】
図1は、本発明による装置の非限定的な実施形態例の図表示である。
本発明による装置は、物体の厚さを測定し、物体の厚さのマップを確立するように配置される。
【0040】
物体4は、1つ又は2つの軸線に沿って延びる物体であってもよい。
図1は、物体軸9(ここではx軸に対応する)に沿って延びる物体4の断面を示す。それは、特に、組織学スライド又は複合材料若しくは生体材料のフィルムであり得る。より一般的には、物体は、壊れやすく、弾性のある、及び/又は不均一な試料であり得る。
【0041】
装置1は、2つの測定経路2、3を備える。各測定経路2、3は、コリメートされ得る又は集束され得る測定光ビーム5、6を放射する光源7a、8aと、光学距離センサ7b、8bとを備える。
【0042】
光源7a、8aはレーザであってもよく、そこからのビームは1つ又は複数のレンズ及び/又はコリメータ(図示せず)によって成形される。
【0043】
図示の実施形態では、光学センサ7b、8bにより、反射光ビーム又は拡散光ビームの位置の検出が可能になる。これらのセンサは、例えば、相補型金属酸化膜半導体(Complementary Metal Oxide Semiconductor:CMOS)技術に基づくダイオードであってもよい。反射ビーム又は拡散ビームを検出器に集束させ、したがって試料の表面上の光点の位置を検出するために、レンズ又はピンホールのシステム(図示せず)がセンサ7b、8bの前に配置される。
【0044】
受容領域は、装置1の2つの測定経路2、3の間に配置される。受容領域は、被測定物体4を収容することを可能にする。これは、例えば、物体を固定するための支持体11によって形成される。受容領域は、物体4がその中に存在するとき、測定ビームの鏡面反射又は拡散反射を生成し、物体4の2つの対向する側の各々で検出することができるように配置される。そして、各光学センサ上のある位置に光点が現れる。
【0045】
好ましくは、光源7a、8a及び光学センサ7b、8bは、1つの同じモジュール又はセンサヘッド7、8内に配置される。これらのセンサヘッド7、8は、被測定物体4をこれらのヘッド7、8の間に配置することができるように単に頭尾方向に配置され、その結果、被測定物体4の両側に配置されることになる。
当然のことながら、光源7a、8a及び光学センサ7b、8bは、独立したモジュールを構成してもよい。
【0046】
図1に示す実施形態では、センサヘッド7、8は非平行に配置されている。光源7a、8a、光学センサ7b、8b及び測定ビーム5、6によってそれぞれ形成される測定経路又はセンサヘッド平面は、互いに垂直である。一方の測定ヘッドは、x’-z’平面に配置され、他方の測定ヘッドは、y’’-z’’平面に配置される。
【0047】
しかしながら、物体平面9に対して対称ではなく、測定ヘッド又は経路の非平行な平面を有する他の構成は、当然ながら装置1にも想定され得る。
【0048】
装置1は、物体4を測定経路に対してx軸及び/又はy軸に沿って変位させることを可能にする変位手段を備える。x軸を中心とした回転Ωもまた、ほぼ円筒形の物体にも想定され得る。これにより、測定ビーム5、6によって生成された光点を物体の両側に変位させ、したがって物体の異なる場所で厚さの測定を実行することが可能になる。物体支持体11は、変位手段の一部を形成してもよい。
【0049】
あるいは、変位手段は、x’-y’-z’及びx’’-y’’-z’’の基準座標系内の2つのセンサを変位させるように構成されてもよく、物体4は固定されている。
【0050】
本発明による装置1はまた、処理モジュール50を備える。処理モジュール50により、物体4の厚さマップを作成するために、光学センサ7、8によって行われた測定から、物体4の異なる場所における厚さ値を決定することが可能になる。この処理モジュール50は、マイクロコントローラ、中央処理装置又は計算ユニット、マイクロプロセッサ、及び/又は適切なソフトウェア手段を備えることができる。
【0051】
本発明による装置は、物体の厚さマップを確立するための本発明による方法のすべてのステップを実施するように構成される。
【0052】
図1に示す実施形態による装置1は、以下に説明する本発明による厚さマップを確立するための方法のステップを実施するために特に使用することができる。本発明の実施形態による方法を、
図2、
図3a、
図3b、
図3c、
図3d及び
図4を参照して説明する。
図3a~
図3d及び
図4では、測定ビーム、並びに反射ビーム、及び/又は拡散ビームは、より見やすいようにx-z平面でのみ示されている。しかしながら、測定ヘッドの平面又は装置1の経路は、常に非平行な平面内にある。
【0053】
図2は、本発明による測定方法の非限定的な実施形態例の図表示である。
【0054】
方法10は、基準物体からの反射光及び/又は拡散光を光学センサによって測定するステップ12を含む。
【0055】
図3aに示す基準物体30は、例えば、認定された厚さの2つの対向する平行な面を有するプレートからなるゲージブロックであってもよい。ゲージブロックは、プラスチック、セラミック、シリコンなどから作成することができる。
【0056】
基準物体30の2つの対向する側の各々において、反射光及び/又は拡散光が測定点で測定される。したがって、光学センサ7b、8bは、それぞれ第1及び第2の基準信号を検出する。
【0057】
基準信号は、基準物体30の各表面の決定された位置、したがって光学センサ7b、8b上の決定された位置で検出された光点に対応する。基準物体30の厚さe
REF並びに光源7a、8a及び光学センサ7b、8bの位置が既知であるため、この基準厚さe
REFに対して光学センサ7b、8bの位置を較正することが可能である。
図2に示す方法10のステップ16において、基準物体30は、被測定物体4に置き換わる。物体4の測定のこのステップ16は、
図3bに示されている。
【0058】
被測定物体4のそれぞれの側から反射及び/又は拡散された光は、検出器7b、8b上の光点の位置と同様に光学センサ7b、8bによって検出される。光点の位置は、基準物体30に対する光点の位置を基準として決定される。このように、第1及び第2の測定信号がそれぞれ得られる。
【0059】
被測定物体の性質(不透明度、均一性など)に応じて、光学センサは、物体の外面から反射及び/又は拡散された光だけでなく、例えば物体内の異なる領域を分離するインタフェース(異なる密度を有するか、又は異なる材料で作られた透明/不透明な領域)によって、物体の内部から反射及び/又は拡散された光も取り込むことが可能である。これらの異なる光点を識別し、外面から来る光だけを選択する1つの可能性は、最も強い光点だけをセンサが考慮することである。当然のことながら、他の識別技術が使用されてもよい。
【0060】
方法10のステップ18において、以下のように、基準厚さe
REFに対する第1の測定信号の変化量Δe
1及び第2の測定信号の変化量Δe
2から、被測定物体4の厚さ値eが決定される。
e=e
REF+Δe
1+Δe
2
このステップ18は、
図3bにも示されている。
【0061】
決定ステップ18を正確に実行できるようにするために、各センサが、それに面する物体の側に位置する光点、したがって対応する光源から来る光を検出することを保証する必要がある。
【0062】
この目的のために、測定の空間的(又は角度的)分離が実行され、一方のセンサヘッドから他方のセンサヘッドのセンサに測定ビームを向けることが回避される。この目的のために、センサヘッドは、
図1を参照して上述したように、非平行平面内に配置される。したがって、測定ビームは平行ではない。
【0063】
測定の時間的分離も行われる。したがって、物体の一方の側の測定は、物体の他方の側の測定に対して時間的にシフトされる、すなわち非同期となる。好ましくは、各測定点について、測定は、最初に物体の一方の側で、次いで他方の側で行われる。当然のことながら、他のタイプの非同期化も可能である。
【0064】
物体上で測定するステップ16及び厚さeを計算するステップ18は、複数の厚さ値(e
1、e
2、e
3など)を得るために、物体4上の複数の測定点に対して実行される。このために、本方法の変位ステップ20において、物体4は、x軸及び/又はy軸に沿って、必要に応じて何度も測定ビーム5、6に対して変位される。x軸に沿った変位を
図3cに示す。次いで、測定ステップ16及び計算ステップ18は、必要に応じて何度も繰り返すことができる。
【0065】
変位は、x軸及び/又はy軸に沿って、物体4、又はすべての光源及びセンサのいずれかを変位させることによって実施され得る。変位方法の選択は、特に物体の性質及び寸法に依存する。
【0066】
円筒形の物体の場合、物体は、その軸線がx軸に沿って配置されることが好ましい。相対変位は、物体の軸線に沿った並進と、この軸線を中心とした回転とを組み合わせることによって実現される。2つの測定経路の使用によって、回転を180度に制限することが可能になる。
【0067】
当然のことながら、複数の測定点について物体4の厚さを決定することができるようにするために、測定点は、物体の両方の測定面上に同一に分布しなければならない。
測定ステップ16、厚さの計算ステップ18、及び変位ステップ20は、順序が異なっていてもよい。
【0068】
第1の例によれば、
図2に示すように、測定ステップ16、計算ステップ18及び変位ステップ20の繰り返し19は、複数の測定点のうちの各測定点に対してこれらのステップ16、18、20を次々に実行するように行われる。方法10のこの実施形態は、特に、測定中にリアルタイムで物体の厚さの画像を得ることを可能にする。
【0069】
第2の例によれば、物体を測定するステップ16は、まず、測定点の各々について、各新規測定の前に測定経路に対して物体を相対的に変位させることによって実行される。測定された点のクラウドは、物体のそれぞれの側について得られる。次に、すべての測定点について物体の厚さを計算するためにすべての測定値が使用され、したがって物体の厚さマップが得られる。
【0070】
複数の厚さ値から、方法10のステップ22において複数の厚さ値を物体の相対変位と相関させることによって、物体の厚さマップが確立される。厚さマップは、すべての測定点における厚さを表す被測定物体4の画像に相当する。
【0071】
厚さに関して得られる精度は、測定の精度及びゲージブロックに対して定義された精度に依存する。マップの横方向分解能は、試料上の横方向分解能Δxを規定する測定ビーム5、6の寸法φ、及び様々な測定点間の差を含む要因の組み合わせに依存する。
図3dに示すように、物体4がビーム内でより細かく変位される場合、マッピングについて、より高い精度が得られる。したがって、厚さマップは、2つの測定ビーム5、6の間の物体4の2つの実際の表面間の空間の近似値を表す。
【0072】
この原理を
図4に示す。2次元に延在し、厚さが不規則な平坦な物体4が、測定ビーム5、6によって点線として表される2つの測定経路によってマッピングされる。したがって、物体4の基本体積の厚さe
ijは、物体平面内の距離Δx及びΔyの変位のグリッドに従って測定され、i及びjは、マッピンググリッドの行列インデックス(1<i<M、1<j<N)に対応する。ここでは、距離Δx及びΔyは、第1の近似値として、物体4の表面におけるビーム5、6の光点の直径の投影を表す。配置の対称性により、これらの値Δx及びΔyは、物体の両側でほぼ同一である。スキャンされた物体4の領域は、物体4の上面に点線で示されている。厚さ値e
ijは、基本体積毎に計算される。したがって、グリッドのパターンに対応する物体の厚さの画像は、測定点e
ijの集合を含んで取得され得る。
【0073】
この実施形態によれば、本発明による方法10の厚さマップを計算するステップ22は、補間ステップを含むことができる。このステップの間、複数の対の測定点から得られた厚さ値は、測定値の補間によって他の厚さ値を決定するために使用される。
【0074】
次いで、異なるパターンの測定点、特に不規則なパターンを利用し、補間ステップにより完全な厚さマップを得ることが可能である。補間ステップは、使用することができず破棄しなければならない測定値にもかかわらず、厚さマップを確立することも可能にする。
【0075】
物体の一方の側の各測定点に、他方の側の対応する測定点を属性付けることができるように、方法10は、測定点の2つのクラウドを相関させるための相関ステップをさらに含むことができる。
【0076】
方法10の一実施形態によれば、相関ステップ6は、2つの光学センサの位置を較正することによって実行される。この目的のために、既知の幾何学的形状を有する分解能物体を基準物体として使用することができる。この分解能物体は、例えば、ゲージブロックの両側に明確な寸法のエッチングによって構成されてもよい。エッチングは、貫通孔であってもよい。すべての場合において、分解能物体の幾何学的形状は、少なくとも測定ビーム5、6の横寸法と同等の精度で知られていなければならない。2つのセンサによる分解能物体の両側の測定値は、それぞれ、2つのセンサの互いに対する位置を参照するために使用される。
【0077】
別の実施形態によれば、相関ステップは、複数の測定点のうちの少なくとも2つ/いくつかについて、被測定物体の第1の側の測定値を物体の第2の側の測定値と相関させることによって実行される。本実施形態による相関は、画像の相関に相当する。被測定物体のそれぞれの側の測定点は、それぞれの側の点のクラウドを形成する。2つのクラウドは、例えば物体の縁部、又は物体の両側の既知の位置の任意の他の幾何学的基準などの、特定の共通の特徴を識別するために比較され得る。したがって、物体の一方の側の縁部の測定点を、物体の他方の側の対応する測定点と関連付けることが可能である。これにより、他のすべての対応する測定点を関連付けることが可能になる。次いで、異なる厚さ値の決定は、適切な対の点を用いて実行することができる。
【0078】
当然のことながら、本発明は、これまで説明してきた例に限定されず、本発明の範囲を超えることなく、これらの例に対して多くの修正を行うことができる。
【国際調査報告】