IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ザ・チルドレンズ・ホスピタル・オブ・フィラデルフィアの特許一覧

特表2023-514242遺伝子発現の誘導性選択的スプライシング調節のための組成物および方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-05
(54)【発明の名称】遺伝子発現の誘導性選択的スプライシング調節のための組成物および方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/62 20060101AFI20230329BHJP
   C12N 15/85 20060101ALI20230329BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20230329BHJP
   C12N 15/864 20060101ALI20230329BHJP
   C12P 19/34 20060101ALI20230329BHJP
   C12P 21/02 20060101ALI20230329BHJP
   C12N 7/01 20060101ALI20230329BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20230329BHJP
   C12N 15/113 20100101ALI20230329BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20230329BHJP
   A61K 31/7105 20060101ALI20230329BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20230329BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20230329BHJP
   A61K 47/69 20170101ALI20230329BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20230329BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230329BHJP
   A61K 31/501 20060101ALI20230329BHJP
   A61K 31/519 20060101ALI20230329BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20230329BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20230329BHJP
   C12N 15/09 20060101ALN20230329BHJP
   C07D 401/14 20060101ALN20230329BHJP
   C07D 519/00 20060101ALN20230329BHJP
【FI】
C12N15/62 Z ZNA
C12N15/85 Z
C12N5/10
C12N15/864 100Z
C12P19/34 A
C12P21/02 C
C12N7/01
C12N15/12
C12N15/113 Z
A61K31/7088
A61K31/7105
A61K48/00
A61K35/76
A61K47/69
A61K45/00
A61P43/00 121
A61K31/501
A61K31/519
A61K9/08
A61P25/00
C12N15/09 110
C07D401/14
C07D519/00 311
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022548941
(86)(22)【出願日】2021-02-12
(85)【翻訳文提出日】2022-10-11
(86)【国際出願番号】 US2021017950
(87)【国際公開番号】W WO2021163556
(87)【国際公開日】2021-08-19
(31)【優先権主張番号】62/975,400
(32)【優先日】2020-02-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
2.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】301040958
【氏名又は名称】ザ・チルドレンズ・ホスピタル・オブ・フィラデルフィア
【氏名又は名称原語表記】THE CHILDREN’S HOSPITAL OF PHILADELPHIA
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【弁理士】
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【弁理士】
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【弁理士】
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】デービッドソン ビバリー エル.
(72)【発明者】
【氏名】モンティス アレハンドロ マス
(72)【発明者】
【氏名】ハンドリー アミール エイ.
(72)【発明者】
【氏名】ラナム ポール ティー.
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C063
4C072
4C076
4C084
4C086
4C087
【Fターム(参考)】
4B064AG01
4B064AG18
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA01
4B065AA93X
4B065AB01
4B065AC14
4B065AC20
4B065BA02
4B065CA23
4B065CA24
4B065CA44
4B065CA46
4C063AA03
4C063BB08
4C063CC28
4C063DD10
4C063EE01
4C072MM02
4C072UU01
4C076AA11
4C076AA95
4C076BB11
4C076BB21
4C076CC01
4C076CC47
4C076EE41
4C076FF34
4C084AA13
4C084AA19
4C084MA01
4C084MA16
4C084MA66
4C084NA05
4C084NA13
4C084NA14
4C084ZA01
4C084ZC75
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC41
4C086CB09
4C086EA16
4C086GA07
4C086GA12
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA06
4C086MA16
4C086MA66
4C086NA05
4C086NA13
4C086NA14
4C086ZA01
4C086ZC75
4C087AA01
4C087AA02
4C087CA12
4C087CA20
4C087MA01
4C087MA16
4C087MA66
4C087NA05
4C087NA13
4C087NA14
4C087ZA01
4C087ZC75
(57)【要約】
本明細書において、選択的スプライシングによりコードされている遺伝子が発現されるかどうかを決定するキメラミニ遺伝子が提供される。特に、ミニ遺伝子は、コードされている遺伝子がスプライシング修飾薬の存在下でのみ発現されるように、スプライシング修飾薬に応答して選択的スプライシングを受ける。コードされている遺伝子は、阻害性RNA、CRISPR-Cas9タンパク質、トランス活性化因子、または治療タンパク質をコードしうる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
5'から3'に向かって、
(a)選択的スプライシングを受けるエクソンを有するミニ遺伝子、および
(b)コードされている遺伝子
を含む第1発現カセット
を含む、核酸分子。
【請求項2】
前記選択的スプライシングを受けるエクソンが、シュードエクソンである、請求項1記載の核酸分子。
【請求項3】
前記ミニ遺伝子が、5'から3'に向かって、エクソン1、イントロン1、エクソン2、イントロン2、およびエクソン3を含み、エクソン2が、選択的スプライシングを受けるエクソンであり、かつエクソン2が、翻訳開始調節配列を含む、請求項1記載の核酸分子。
【請求項4】
エクソン2を含むことで、フレームシフトが引き起こされる、請求項1~3のいずれか一項記載の核酸分子。
【請求項5】
エクソン2中に存在するヌクレオチドの数が、3で割り切れない、請求項1~3のいずれか一項記載の核酸分子。
【請求項6】
エクソン3が、エクソン2がスキップされた場合にインフレームである終止コドンを含む、請求項1~5のいずれか一項記載の核酸分子。
【請求項7】
前記コードされている遺伝子が、エクソン2中の翻訳開始調節配列とインフレームである、請求項1~6のいずれか一項記載の核酸分子。
【請求項8】
前記コードされている遺伝子が、シグナルペプチドをコードし、エクソン2によってコードされているアミノ酸が、予測シグナルペプチドの配列に対応する、請求項1~6のいずれか一項記載の核酸分子。
【請求項9】
前記予測シグナルペプチドの配列が、コードされている遺伝子のネイティブシグナルペプチドに対応する、請求項8記載の核酸分子。
【請求項10】
前記予測シグナルペプチドの配列が、コードされている遺伝子のシグナルペプチドに対して異種である、請求項8記載の核酸分子。
【請求項11】
前記コードされている遺伝子のネイティブシグナルペプチドの少なくとも一部分が、欠失されている、請求項8~10のいずれか一項記載の核酸分子。
【請求項12】
エクソン2が、SEQ ID NO: 1のヌクレオチド1203~1257位の配列、またはそれに対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の同一性を有するその断片を含む、請求項1~7のいずれか一項記載の核酸分子。
【請求項13】
イントロン1が、SEQ ID NO: 1のヌクレオチド159~1202位の配列、またはそれに対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の同一性を有するその断片を含む、請求項12記載の核酸分子。
【請求項14】
イントロン2が、SEQ ID NO: 1のヌクレオチド1258~1701位の配列、またはそれに対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の同一性を有するその断片を含む、請求項12または13記載の核酸分子。
【請求項15】
前記ミニ遺伝子が、SEQ ID NO: 1の配列を含む、請求項1~14のいずれか一項記載の核酸分子。
【請求項16】
エクソン2が、SEQ ID NO: 4のヌクレオチド595~653位の配列、またはそれに対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の同一性を有するその断片を含む、請求項1~7のいずれか一項記載の核酸分子。
【請求項17】
イントロン1が、SEQ ID NO: 4のヌクレオチド97~594位の配列、またはそれに対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の同一性を有するその断片を含む、請求項16記載の核酸分子。
【請求項18】
イントロン2が、SEQ ID NO: 4のヌクレオチド654~1153位の配列、またはそれに対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の同一性を有するその断片を含む、請求項16または17記載の核酸分子。
【請求項19】
前記ミニ遺伝子が、SEQ ID NO: 4の配列を含む、請求項1~7および16~18のいずれか一項記載の核酸分子。
【請求項20】
エクソン2が、SEQ ID NO: 10のヌクレオチド427~471位の配列、またはそれに対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の同一性を有するその断片を含む、請求項1~7のいずれか一項記載の核酸分子。
【請求項21】
イントロン1が、SEQ ID NO: 10のヌクレオチド103~426位の配列、またはそれに対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の同一性を有するその断片を含む、請求項20記載の核酸分子。
【請求項22】
イントロン2が、SEQ ID NO: 10のヌクレオチド472~834位の配列、またはそれに対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の同一性を有するその断片を含む、請求項20または21記載の核酸分子。
【請求項23】
前記ミニ遺伝子が、SEQ ID NO: 10の配列を含む、請求項1~7および20~22のいずれか一項記載の核酸分子。
【請求項24】
エクソン2が、SEQ ID NO: 11のヌクレオチド621~759位の配列、またはそれに対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の同一性を有するその断片を含む、請求項1~7のいずれか一項記載の核酸分子。
【請求項25】
イントロン1が、SEQ ID NO: 11のヌクレオチド119~620位の配列、またはそれに対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の同一性を有するその断片を含む、請求項24記載の核酸分子。
【請求項26】
イントロン2が、SEQ ID NO: 11のヌクレオチド760~1228位の配列、またはそれに対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の同一性を有するその断片を含む、請求項24または25記載の核酸分子。
【請求項27】
前記ミニ遺伝子が、SEQ ID NO: 11の配列を含む、請求項1~7および24~26のいずれか一項記載の核酸分子。
【請求項28】
エクソン2が、SEQ ID NO: 12のヌクレオチド750~817位の配列、またはそれに対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の同一性を有するその断片を含む、請求項1~7のいずれか一項記載の核酸分子。
【請求項29】
イントロン1が、SEQ ID NO: 12のヌクレオチド99~749位の配列、またはそれに対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の同一性を有するその断片を含む、請求項28記載の核酸分子。
【請求項30】
イントロン2が、SEQ ID NO: 12のヌクレオチド818~936位の配列、またはそれに対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の同一性を有するその断片を含む、請求項28または29記載の核酸分子。
【請求項31】
前記ミニ遺伝子が、SEQ ID NO: 12の配列を含む、請求項1~7および28~30のいずれか一項記載の核酸分子。
【請求項32】
エクソン2が、SEQ ID NO: 13のヌクレオチド593~650位の配列、またはそれに対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の同一性を有するその断片を含む、請求項1~8のいずれか一項記載の核酸分子。
【請求項33】
エクソン3が、SEQ ID NO: 13のヌクレオチド1149~1153位の配列、またはそれに対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の同一性を有するその断片を含む、請求項32記載の核酸分子。
【請求項34】
エクソン3が、SEQ ID NO: 14のヌクレオチド1149~1153位の配列、またはそれに対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の同一性を有するその断片を含む、請求項32記載の核酸分子。
【請求項35】
エクソン3が、SEQ ID NO: 15のヌクレオチド1149~1153位の配列、またはそれに対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の同一性を有するその断片を含む、請求項32記載の核酸分子。
【請求項36】
イントロン1が、SEQ ID NO: 13のヌクレオチド96~592位の配列、またはそれに対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の同一性を有するその断片を含む、請求項32~35のいずれか一項記載の核酸分子。
【請求項37】
イントロン2が、SEQ ID NO: 13のヌクレオチド651~1148位の配列、またはそれに対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の同一性を有するその断片を含む、請求項32~36のいずれか一項記載の核酸分子。
【請求項38】
前記ミニ遺伝子が、SEQ ID NO: 13~15のいずれかの配列を含む、請求項1~8および32~37のいずれか一項記載の核酸分子。
【請求項39】
前記ミニ遺伝子が、2000個未満、1900個未満、1800個未満、1700個未満、1600個未満、1500個未満、1400個未満、1300個未満、1200個未満、1100個未満、1000個未満、900個未満、800個未満、700個未満、600個未満、または500個未満のヌクレオチドを含む、請求項1~38のいずれか一項記載の核酸分子。
【請求項40】
前記コードされている遺伝子の発現が、いかなる外因性調節タンパク質の同時発現も必要としない、請求項1~39のいずれか一項記載の核酸分子。
【請求項41】
前記コードされている遺伝子が、阻害性RNA、治療タンパク質、Cas9タンパク質、またはトランス活性化因子タンパク質をコードする、請求項1~40のいずれか一項記載の核酸分子。
【請求項42】
前記阻害性RNAが、siRNA、shRNA、またはmiRNAである、請求項41記載の核酸分子。
【請求項43】
前記阻害性RNAが、疾患に関連する異常タンパク質または正常でないタンパク質の発現を阻害するかまたは減少させる、請求項42記載の核酸分子。
【請求項44】
前記治療タンパク質が、その欠損が疾患に関連するタンパク質である、請求項41記載の核酸分子。
【請求項45】
前記ミニ遺伝子と前記コードされている遺伝子とが、切断可能ペプチドによって分離されている、請求項1~44のいずれか一項記載の核酸分子。
【請求項46】
前記第1発現カセットが、第1プロモーターに機能的に連結されている、請求項1~45のいずれか一項記載の核酸分子。
【請求項47】
前記第1プロモーターが構成的プロモーターである、請求項46記載の核酸分子。
【請求項48】
前記第1プロモーターが、ラウス肉腫ウイルス(RSV)プロモーター、ホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK)プロモーター、JeTプロモーター、CBAプロモーター、シナプシンプロモーター、または最小サイトメガロウイルス(mCMV)プロモーターである、請求項47記載の核酸分子。
【請求項49】
第2発現カセットをさらに含む、請求項1~49のいずれか一項記載の核酸分子。
【請求項50】
前記第2発現カセットが、第2プロモーターに機能的に連結されたガイドRNAをコードする核酸配列を含む、請求項49記載の核酸分子。
【請求項51】
前記第2発現カセットが、治療タンパク質、阻害性RNA、またはCas9タンパク質をコードする核酸配列を含み、該核酸配列が、第2プロモーターに機能的に連結されており、該第2プロモーターが、第1発現カセットによってコードされているトランス活性化因子によって活性化される、請求項49記載の核酸分子。
【請求項52】
請求項1~51のいずれか一項記載の核酸分子を含む、細胞。
【請求項53】
AAVキャプシドタンパク質と、請求項1~51のいずれか一項記載の核酸分子とを含む、組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクター。
【請求項54】
請求項52記載の細胞において、コードされている遺伝子の発現を誘導する方法であって、該細胞をスプライシング修飾薬と接触させる工程を含む、前記方法。
【請求項55】
前記スプライシング修飾薬の存在下で、第2エクソンが核酸のmRNA産物に含まれ、該スプライシング修飾薬の非存在下で、該エクソンが核酸のmRNA産物に含まれない、請求項54記載の方法。
【請求項56】
前記スプライシング修飾薬が、LMI070またはRG7800/RG7619である、請求項54または55記載の方法。
【請求項57】
コードされている遺伝子をその必要がある患者に投与する方法であって、請求項1~51のいずれか一項記載の核酸分子を該患者に投与する工程を含む、前記方法。
【請求項58】
前記コードされている遺伝子を投与する工程が、請求項53記載のrAAVを患者に投与することを含む、請求項57記載の方法。
【請求項59】
前記コードされている遺伝子の発現が、患者における疾患状態によって調節される、請求項57または58記載の方法。
【請求項60】
エクソン2が、罹患細胞にのみ含まれる、請求項59記載の方法。
【請求項61】
前記コードされている遺伝子の発現が、細胞タイプまたは組織タイプによって調節される、請求項57または58記載の方法。
【請求項62】
エクソン2が、前記細胞タイプまたは組織タイプにのみ含まれる、請求項61記載の方法。
【請求項63】
前記コードされている遺伝子の発現を誘導するために、スプライシング修飾薬を前記患者に投与する工程をさらに含む、請求項57または58記載の方法。
【請求項64】
前記スプライシング修飾薬が、LMI070またはRG7800/RG7619である、請求項63記載の方法。
【請求項65】
前記スプライシング修飾薬を投与する工程が、1回より多く行われる、請求項63または64記載の方法。
【請求項66】
前記スプライシング修飾薬を投与する工程が、規則的な間隔で行われる、請求項63~65のいずれか一項記載の方法。
【請求項67】
前記スプライシング修飾薬を投与する工程が、コードされている遺伝子の発現の少なくとも20倍の増加を引き起こす、請求項63~66のいずれか一項記載の方法。
【請求項68】
前記rAAVベクターが、AAVキャプシドタンパク質を含むAAV粒子を含み、かつ前記第1発現カセットおよび/または前記第2発現カセットが、一対のAAV逆方向末端反復(inverted terminal repeat)(ITR)の間に挿入されている、請求項58記載の方法。
【請求項69】
前記AAVキャプシドタンパク質が、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、AAV-rh74、AAV-rh10、およびAAV-2i8のVP1、VP2、および/もしくはVP3キャプシドタンパク質、またはAAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、AAV-rh74、AAV-Rh10、もしくはAAV-2i8のVP1、VP2、および/もしくはVP3キャプシドタンパク質に対して70%以上の同一性を有するキャプシドタンパク質からなる群に由来するか、または前記群より選択される、請求項68記載の方法。
【請求項70】
前記一対のAAV ITRが、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、AAV-rh74、AAV-rh10、もしくはAAV-2i8のITR、またはAAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、AAV-rh74、AAV-Rh10、もしくはAAV-2i8のITR配列に対して70%以上の同一性を有するITRに由来するか、前記ITRを含むか、または前記ITRからなる、請求項68記載の方法。
【請求項71】
複数のウイルスベクターが投与される、請求項68~70のいずれか一項記載の方法。
【請求項72】
前記ウイルスベクターが、1キログラムあたり約1×106~約1×1018のベクターゲノム(vg/kg)の用量で投与される、請求項71記載の方法。
【請求項73】
前記ウイルスベクターが、約1×107~1×1017、約1×108~1×1016、約1×109~1×1015、約1×1010~1×1014、約1×1010~1×1013、約1×1010~1×1013、約1×1010~1×1011、約1×1011~1×1012、約1×1012~×1013、または約1×1013~1×1014 vg/kg患者の用量で投与される、請求項71記載の方法。
【請求項74】
前記ウイルスベクターが、約0.5~4 mlの1×106~1×1016 vg/mlの用量で投与される、請求項71記載の方法。
【請求項75】
複数の空のウイルスキャプシドを投与する工程をさらに含む、請求項68~74のいずれか一項記載の方法。
【請求項76】
前記空のウイルスキャプシドが、患者に投与されるウイルス粒子と共に製剤化される、請求項75記載の方法。
【請求項77】
前記空のウイルスキャプシドが、1.0~100倍過剰量のウイルスベクター粒子または空のウイルスキャプシドと共に投与または製剤化される、請求項75または76記載の方法。
【請求項78】
前記空のウイルスキャプシドが、空のウイルスキャプシドに対して1.0~100倍過剰量のウイルスベクター粒子と共に投与または製剤化される、請求項75または76記載の方法。
【請求項79】
前記空のウイルスキャプシドが、ウイルスベクター粒子に対して約1.0~100倍過剰量の空のウイルスキャプシドと共に投与または製剤化される、請求項75または76記載の方法。
【請求項80】
前記投与が、中枢神経系への投与である、請求項68~79のいずれか一項記載の方法。
【請求項81】
前記投与が、脳への投与である、請求項68~80のいずれか一項記載の方法。
【請求項82】
前記投与が、大槽、脳室内腔、上衣、脳室、くも膜下腔、および/または髄腔内腔への投与である、請求項68~81のいずれか一項記載の方法。
【請求項83】
前記脳室が、吻側側脳室、および/または尾側側脳室、および/または右側脳室、および/または左側脳室、および/または右吻側側脳室、および/または左吻側側脳室、および/または右尾側側脳室、および/または左尾側側脳室である、請求項82記載の方法。
【請求項84】
前記投与する工程が、脳室内注射および/または実質内注射を含む、請求項68~81のいずれか一項記載の方法。
【請求項85】
前記投与が、脳内の単一箇所における投与である、請求項68~84のいずれか一項記載の方法。
【請求項86】
前記投与が、脳内の1~5箇所における投与である、請求項68~84のいずれか一項記載の方法。
【請求項87】
前記患者がヒトである、請求項68~86のいずれか一項記載の方法。
【請求項88】
1つまたは複数の免疫抑制剤を投与する工程をさらに含む、請求項68~87のいずれか一項記載の方法。
【請求項89】
前記免疫抑制剤が、発現カセットの投与の前に、またはその投与と同時に投与される、請求項88記載の方法。
【請求項90】
前記免疫抑制剤が抗炎症剤である、請求項88記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の参照
本願は、2020年2月12日に出願された米国特許仮出願第62/975,400号に基づく優先権の恩典を主張し、この全内容は参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
配列表の参照
本願は、配列表を含有し、これは、EFS-Webを介してASCII形式で提出されており、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。2021年2月12日に作成された前記ASCIIコピーは、CHOPP0041WO_ST25.txtという名称であり、サイズが36.4キロバイトである。
【0003】
1. 分野
本発明は概して、分子生物学および医学の分野に関する。より具体的には、本発明は、選択的スプライシング調節を使用して治療遺伝子の発現を調整するための組成物および方法に関係する。
【背景技術】
【0004】
2. 関連技術の説明
遺伝子治療のためのウイルスアプローチおよび非ウイルスアプローチが、過去20年にわたって大きく進歩してきた間、主な焦点は、カーゴ送達システム;例えば、アデノ随伴ウイルス(AAV)についてのウイルスキャプシドの進化および工学、レンチウイルスについての細胞ターゲティングエンベロープの展望の拡大、ならびに取り込みの改善のための脂質ナノ粒子の改良にあった。しかし、カーゴ自体、およびより重要なことにそのカーゴからの発現を制御する要素は、一定の細胞タイプに発現を制限するために工学的に操作されたプロモーターまたは3'調節要素を使用することを除いて、ほとんど手が付けられていない(Brown et al., 2006;Domenger & Grimm, 2019)。したがって、カーゴ送達システムにおいて治療遺伝子の発現を調整するための組成物および方法が必要とされている。
【発明の概要】
【0005】
概要
薬物誘導性選択的スプライシングスイッチを介して遺伝子発現を精巧に制御するための組成物および方法が、本明細書において提供される。重要なことに、これらの組成物および方法は、調節のためにいかなる細菌要素もまたは他の外部要素も必要としない。これらの組成物および方法は、細胞または動物において関心対象の任意の遺伝的要素に適用することができ、経口で生物学的に利用可能である、かつヒトが使用する薬物を、利用することができる。
【0006】
一態様において、5'から3'に向かって、(a)選択的スプライシングを受けるエクソンを有するミニ遺伝子、および(b)コードされている遺伝子、を含む第1発現カセットを含む核酸分子が、本明細書において提供される。いくつかの局面において、選択的スプライシングを受けるエクソンは、シュードエクソンである。いくつかの局面において、ミニ遺伝子は、5'から3'に向かって、エクソン1、イントロン1、エクソン2、イントロン2、およびエクソン3を含み、エクソン2は、選択的スプライシングを受けるエクソンであり、かつエクソン2は、翻訳開始調節配列を含む。
【0007】
いくつかの局面において、エクソン2の包含は、フレームシフトを引き起こす。いくつかの局面において、エクソン2中に存在するヌクレオチドの数は、3で割り切れない。いくつかの局面において、エクソン3は、エクソン2がスキップされた場合にインフレームである終止コドンを含む。いくつかの局面において、コードされている遺伝子は、エクソン2中の翻訳開始調節配列とインフレームである。
【0008】
いくつかの局面において、コードされている遺伝子は、コードされているタンパク質が分泌経路に入るように、シグナルペプチドをコードしている。いくつかの局面において、ミニ遺伝子のエクソン2によってコードされているアミノ酸は、予測シグナルペプチドの配列に対応する。予測シグナルペプチドの配列は、コードされている遺伝子のネイティブシグナルペプチドに、またはコードされている遺伝子に対して異種であるシグナルペプチドに対応しうる。いくつかの局面において、コードされている遺伝子のネイティブシグナルペプチドの少なくとも一部分は、産生されるタンパク質が、ミニ遺伝子のエクソン2および3によって部分的にコードされ、かつコードされている遺伝子によって部分的にコードされているシグナルペプチドを有するように、欠失されている。
【0009】
いくつかの局面において、エクソン2は、SEQ ID NO: 1のヌクレオチド1203~1257位の配列を含む。いくつかの局面において、イントロン1は、SEQ ID NO: 1のヌクレオチド159~1202位の配列、またはそれに対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の同一性を有するその断片を含む。いくつかの局面において、イントロン2は、SEQ ID NO: 1のヌクレオチド1258~1701位の配列、またはそれに対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の同一性を有するその断片を含む。いくつかの局面において、ミニ遺伝子は、SEQ ID NO: 1の配列を含む。
【0010】
いくつかの局面において、エクソン2は、SEQ ID NO: 4のヌクレオチド595~653位の配列、またはそれに対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の同一性を有するその断片を含む。いくつかの局面において、イントロン1は、SEQ ID NO: 4のヌクレオチド97~594位の配列、またはそれに対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の同一性を有するその断片を含む。いくつかの局面において、イントロン2は、SEQ ID NO: 4のヌクレオチド654~1153位の配列、またはそれに対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の同一性を有するその断片を含む。いくつかの局面において、ミニ遺伝子は、SEQ ID NO: 4の配列を含む。
【0011】
いくつかの局面において、エクソン2は、SEQ ID NO: 10のヌクレオチド427~471位の配列、またはそれに対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の同一性を有するその断片を含む。いくつかの局面において、イントロン1は、SEQ ID NO: 10のヌクレオチド103~426位の配列、またはそれに対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の同一性を有するその断片を含む。いくつかの局面において、イントロン2は、SEQ ID NO: 10のヌクレオチド472~834位の配列、またはそれに対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の同一性を有するその断片を含む。いくつかの局面において、ミニ遺伝子は、SEQ ID NO: 10の配列を含む。
【0012】
いくつかの局面において、エクソン2は、SEQ ID NO: 11のヌクレオチド621~759位の配列、またはそれに対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の同一性を有するその断片を含む。いくつかの局面において、イントロン1は、SEQ ID NO: 11のヌクレオチド119~620位の配列、またはそれに対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の同一性を有するその断片を含む。いくつかの局面において、イントロン2は、SEQ ID NO: 11のヌクレオチド760~1228位の配列、またはそれに対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の同一性を有するその断片を含む。いくつかの局面において、ミニ遺伝子は、SEQ ID NO: 11の配列を含む。
【0013】
いくつかの局面において、エクソン2は、SEQ ID NO: 12のヌクレオチド750~817位の配列、またはそれに対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の同一性を有するその断片を含む。いくつかの局面において、イントロン1は、SEQ ID NO: 12のヌクレオチド99~749位の配列を含む。いくつかの局面において、イントロン2は、SEQ ID NO: 12のヌクレオチド818~936位の配列、またはそれに対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の同一性を有するその断片を含む。いくつかの局面において、ミニ遺伝子は、SEQ ID NO: 12の配列を含む。
【0014】
いくつかの局面において、エクソン2は、SEQ ID NO: 13のヌクレオチド593~650位の配列、またはそれに対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の同一性を有するその断片を含む。いくつかの局面において、エクソン3は、SEQ ID NO: 13~15のいずれかのヌクレオチド1149~1153位の配列、またはそれに対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の同一性を有するその断片を含む。いくつかの局面において、イントロン1は、SEQ ID NO: 13のヌクレオチド96~592位の配列、またはそれに対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の同一性を有するその断片を含む。いくつかの局面において、イントロン2は、SEQ ID NO: 13のヌクレオチド651~1148位の配列、またはそれに対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の同一性を有するその断片を含む。いくつかの局面において、ミニ遺伝子は、SEQ ID NO: 13~15のいずれかの配列を含む。
【0015】
いくつかの局面において、ミニ遺伝子は、2000個未満、1900個未満、1800個未満、1700個未満、1600個未満、1500個未満、1400個未満、1300個未満、1200個未満、1100個未満、1000個未満、900個未満、800個未満、700個未満、600個未満、または500個未満のヌクレオチドを含む。
【0016】
いくつかの局面において、コードされている遺伝子の発現は、いかなる外因性調節タンパク質の同時発現も必要としない。いくつかの局面において、コードされている遺伝子は、阻害性RNA、治療タンパク質、Cas9タンパク質、またはトランス活性化因子タンパク質をコードする。いくつかの局面において、阻害性RNAは、siRNA、shRNA、またはmiRNAである。いくつかの局面において、阻害性RNAは、疾患に関連する異常タンパク質または正常でないタンパク質の発現を阻害するかまたは減少させる。いくつかの局面において、治療タンパク質は、その欠損が疾患に関連するタンパク質である。いくつかの局面において、コードされているものは、レポーターではない。
【0017】
いくつかの局面において、ミニ遺伝子とコードされている遺伝子とは、切断可能ペプチドによって分離されている。
【0018】
いくつかの局面において、第1発現カセットは、第1プロモーターに機能的に連結されている。いくつかの局面において、第1プロモーターは構成的プロモーターである。いくつかの局面において、第1プロモーターは、ラウス肉腫ウイルス(RSV)プロモーター、ホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK)プロモーター、JeTプロモーター、CBAプロモーター、シナプシンプロモーター、または最小サイトメガロウイルス(mCMV)プロモーターである。
【0019】
いくつかの局面において、核酸分子は、第2発現カセットをさらに含む。いくつかの局面において、第2発現カセットは、第2プロモーターに機能的に連結されたガイドRNAをコードする核酸配列を含む。いくつかの局面において、第2発現カセットは、治療タンパク質、阻害性RNA、またはCas9タンパク質をコードする核酸配列を含み、該核酸配列は、第2プロモーターに機能的に連結されており、該第2プロモーターは、第1発現カセットによってコードされているトランス活性化因子によって活性化される。
【0020】
一態様において、本発明の態様のいずれか1つの核酸分子を含む細胞が、本明細書において提供される。
【0021】
一態様において、AAVキャプシドタンパク質と、本発明の態様のいずれか1つの核酸分子とを含む、組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクターが、本明細書において提供される。
【0022】
一態様において、本発明の態様のいずれか1つの細胞において、コードされている遺伝子の発現を誘導する方法であって、該細胞をスプライシング修飾薬と接触させる工程を含む方法が、本明細書において提供される。いくつかの局面において、スプライシング修飾薬の存在下で、第2エクソンは核酸のmRNA産物に含まれ、該スプライシング修飾薬の非存在下で、該エクソンは核酸のmRNA産物に含まれない。いくつかの局面において、スプライシング修飾薬は、LMI070またはRG7800/RG7619である。
【0023】
一態様において、コードされている遺伝子をその必要がある患者に投与する方法であって、本発明の態様のいずれか1つの核酸分子を該患者に投与する工程を含む方法が、本明細書において提供される。いくつかの局面において、コードされている遺伝子を投与する工程は、本発明の態様のいずれか1つのrAAVの患者への投与を含む。
【0024】
いくつかの局面において、コードされている遺伝子の発現は、患者における疾患状態によって調節される。いくつかの局面において、エクソン2は、コードされている遺伝子が罹患細胞においてのみ発現されるように、罹患細胞にのみ含まれる。例えば、ミニ遺伝子は、コードされている遺伝子が変異型HTTを発現する細胞においてのみ発現されるように、PCDH1(5:141869432-141878222)を含みうる。
【0025】
いくつかの局面において、コードされている遺伝子の発現は、細胞タイプまたは組織タイプによって調節される。いくつかの局面において、エクソン2は、前記細胞タイプまたは組織タイプにのみ含まれる。
【0026】
いくつかの局面において、方法は、コードされている遺伝子の発現を誘導するために、スプライシング修飾薬を患者に投与する工程をさらに含む。いくつかの局面において、スプライシング修飾薬は、LMI070またはRG7800/RG7619である。いくつかの局面において、スプライシング修飾薬を投与する工程は、1回より多く行われる。いくつかの局面において、スプライシング修飾薬を投与する工程は、規則的な間隔で行われる。いくつかの局面において、スプライシング修飾薬を投与する工程は、例えば、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、50、または100倍の、コードされている遺伝子の発現の増加を引き起こす。いくつかの局面において、スプライシング修飾薬を投与する工程は、コードされている遺伝子の発現の、少なくとも20倍の増加を引き起こす。
【0027】
いくつかの局面において、rAAVベクターは、AAVキャプシドタンパク質を含むAAV粒子を含み、かつ第1発現カセットおよび/または第2発現カセットは、一対のAAV逆方向末端反復(inverted terminal repeat)(ITR)の間に挿入されている。いくつかの局面において、rAAVは自己相補型AAV(scAAV)ベクターである。いくつかの局面において、rAAVは一本鎖AAV(ssAAV)である。いくつかの局面において、AAVキャプシドタンパク質は、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、AAV-rh74、AAV-rh10、およびAAV-2i8のVP1、VP2、および/もしくはVP3キャプシドタンパク質、またはAAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、AAV-rh74、AAV-Rh10、もしくはAAV-2i8のVP1、VP2、および/もしくはVP3キャプシドタンパク質に対して70%以上の同一性を有するキャプシドタンパク質からなる群に由来するか、または前記群より選択される。いくつかの局面において、一対のAAV ITRは、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、AAV-rh74、AAV-rh10、もしくはAAV-2i8のITR、またはAAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、AAV-rh74、AAV-Rh10、もしくはAAV-2i8のITR配列に対して70%以上の同一性を有するITRに由来するか、前記ITRを含むか、または前記ITRからなる。
【0028】
いくつかの局面において、複数のウイルスベクターが投与される。いくつかの局面において、ウイルスベクターは、1キログラムあたり約1×106~約1×1018のベクターゲノム(vg/kg)の用量で投与される。いくつかの局面において、ウイルスベクターは、約1×107~1×1017、約1×108~1×1016、約1×109~1×1015、約1×1010~1×1014、約1×1010~1×1013、約1×1010~1×1013、約1×1010~1×1011、約1×1011~1×1012、約1×1012~×1013、または約1×1013~1×1014 vg/kg患者の用量で投与される。いくつかの局面において、ウイルスベクターは、約0.5~4 mlの1×106~1×1016 vg/mlの用量で投与される。
【0029】
いくつかの局面において、方法は、複数の空のウイルスキャプシドを投与する工程をさらに含む。いくつかの局面において、空のウイルスキャプシドは、患者に投与されるウイルス粒子と共に製剤化される。いくつかの局面において、空のウイルスキャプシドは、1.0~100倍過剰量のウイルスベクター粒子または空のウイルスキャプシドと共に投与または製剤化される。いくつかの局面において、空のウイルスキャプシドは、空のウイルスキャプシドに対して1.0~100倍過剰量のウイルスベクター粒子と共に投与または製剤化される。いくつかの局面において、空のウイルスキャプシドは、ウイルスベクター粒子に対して約1.0~100倍過剰量の空のウイルスキャプシドと共に投与または製剤化される。
【0030】
いくつかの局面において、投与は、中枢神経系への投与である。いくつかの局面において、投与は、脳への投与である。いくつかの局面において、投与は、大槽、脳室内腔、上衣、脳室、くも膜下腔、および/または髄腔内腔への投与である。いくつかの局面において、脳室は、吻側側脳室、および/または尾側側脳室、および/または右側脳室、および/または左側脳室、および/または右吻側側脳室、および/または左吻側側脳室、および/または右尾側側脳室、および/または左尾側側脳室である。いくつかの局面において、投与する工程は、脳室内注射および/または実質内注射を含む。いくつかの局面において、投与は、脳内の単一箇所における投与である。いくつかの局面において、投与は、脳内の1~5箇所における投与である。
【0031】
いくつかの局面において、患者はヒトである。
【0032】
いくつかの局面において、方法は、1つまたは複数の免疫抑制剤を投与する工程をさらに含む。いくつかの局面において、免疫抑制剤は、発現カセットの投与の前に、またはその投与と同時に投与される。いくつかの局面において、免疫抑制剤は抗炎症剤である。
【0033】
本明細書において使用する場合、指定された構成要素に関して「本質的に含まない」とは、本明細書において、指定されたその構成要素が組成物中に意図的に製剤化されているわけではないこと、および/または夾雑物として存在するにすぎないこと、もしくは微量にしか存在しないことを意味するために使用される。それゆえに、組成物の何らかの意図せぬ汚染に起因する指定された構成要素の総量は、0.05%よりはるかに低く、好ましくは0.01%未満である。最も好ましいのは、指定された構成要素の量を標準的な分析方法では検出することができない組成物である。
【0034】
本願明細書において使用する場合、「1つ(a)」または「1つ(an)」は、1つまたは複数を意味しうる。本願特許請求の範囲において使用する場合、単語「含む(comprising)」と一緒に使用される単語「1つ(a)」または「1つ(an)」は、1つまたは1つより大きい数を意味しうる。
【0035】
特許請求の範囲における「または」という用語の使用は、代替的選択肢だけを指すと明示的に示されている場合または代替的選択肢が相互に排他的である場合を除き、「および/または」を意味するために使用される。ただし本開示は、代替的選択肢だけを指す定義も、「および/または」を指す定義もサポートする。本明細書において使用する場合、「別の(another)」とは、少なくとももう一つの、またはそれ以上の、を意味しうる。
【0036】
本願の全体を通して、「約」という用語は、値が、その値を決定するために使用される器具、方法に固有の誤差の変動、研究対象間に存在する変動、または述べられた値の10%以内である値を含むことを示すために使用される。
【0037】
本発明の他の目的、特徴および利点は、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。ただし、本発明の要旨および範囲内にあるさまざまな改変および修飾は、この詳細な説明から当業者には明らかになるため、詳細な説明および具体的実施例は、本発明の好ましい態様を示してはいるものの、単なる例示であることを理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0038】
添付の図面は、本明細書の一部を形成し、本発明の一定の局面をさらに明示するために含まれる。本明細書において提示する具体的態様の詳細な説明と組み合わせてこれらの図面の1つまたは複数を参照することにより、本発明はより良く理解されうる。
【0039】
図1-1】SMN2-onカセットの生成および評価。(図1A)SMN2-onカセットおよびその作用機序を示す模式図。エクソン7(e7)の非存在下では、エクソン6/8転写産物(e6/8)における未成熟終止コドンが、ルシフェラーゼcDNA配列の翻訳を遮断するが、LMI070またはRG7800による選択的スプライシングエクソン7の包含(矢印により図示されている)は、e6/7/8:ホタルルシフェラーゼ融合タンパク質の翻訳を可能にする。(図1B)そのネイティブ配列におけるSMN2エクソン7(SEQ ID NO: 1の1196~1206位および1254~1262位参照)、または構成的包含のために導入されたスプライス部位改変を有するSMN2エクソン7(5'ドナースプライス部位、actSMN2)(SEQ ID NO: 3の1196~1206位および1254~1262位参照)、または低減したバックグラウンドレベルのエクソン7包含のためのSMN2エクソン7(3'アクセプタースプライス部位、indSMN2)(SEQ ID NO: 2の1196~1206位および1254~1262位参照)を示す模式図。(図1C)LMI070の非存在下でのSMN2-onカセットによるエクソン7包含を示す、代表的なRT-PCR反応。エクソン7スプライスイン転写産物またはエクソン7スプライスアウト転写産物の定量を図示し、6つの生物学的反復の平均値±SEMである。(図1D)異なる濃度のLMI070に応答したindSMN2カセットのエクソン7包含を示す、代表的なRT-PCR反応。エクソン7スプライスイン転写産物またはエクソン7スプライスアウト転写産物の定量は、9つの生物学的反復の相対的転写産物レベル(平均値±SEM)である。(図1E)対照DMSO処理細胞と比べた、LMI070(100 nM)に応答したSMN2カセットおよびindSMN2カセットのホタルルシフェラーゼ誘導。DMSO処理対照細胞に対するLMI070処理試料におけるルシフェラーゼ活性の倍率変化を示す。すべての試料は、ウミシイタケ(Renilla)ルシフェラーゼ活性に対して正規化されている。データは、8つの生物学的反復の平均値±SEMである。(図1F)LMI070用量に応答したSMN2カセットのエクソン7スプライシング。LMI070用量の関数としての、エクソン7含有の代表的なRT-PCR反応。エクソン7スプライスイン転写産物またはエクソン7スプライスアウト転写産物の定量は、9つの生物学的反復の平均値±SEMとして提示される相対的転写産物レベルである。(図1G)RG7800用量に応答したindSMN2カセットのエクソン7スプライシング。RG7800用量の関数としてエクソン7包含を示す、代表的なRT-PCR反応。e7スプライスイン転写産物またはe7スプライスアウト転写産物の定量は、8つの生物学的反復の平均値±SEMとして提示される相対的転写産物レベルである。(図1H)LMI070に応答したSMN2カセットおよびindSMN2カセットのルシフェラーゼ活性。グラフは、DMSOまたはLMI070(100 nM)で処理した細胞における、SMN2-onカセットまたはindSMN2-onカセットから発現されたホタルルシフェラーゼの相対的発現を示す。トランスフェクション対照のウミシイタケルシフェラーゼカセットの活性を、棒グラフの上の線として表す。データは、9つの生物学的反復の平均値±SEMである。
図1-2】図1-1の説明を参照のこと。
図1-3】図1-1の説明を参照のこと。
図2A】LMI070応答性シュードエクソンの発見のためのRNA-Seq。(図2A)25 nM LMI070で処理したHEK293細胞におけるRNA-Seqによって特定された、イベントにおいてスプライシングされた上位候補を示す表。遺伝子ID、LMI070誘導性エクソンおよび隣接イントロンの位置、平均イントロンカウント、およびU1 LMI070標的結合配列を示す(SEQ ID NO: 24~31参照)。
図2B】LMI070応答性シュードエクソンの発見のためのRNA-Seq。(図2B)25 nM LMI070の非存在下の(赤色)または25 nM LMI070に応答した(青色)、SF3B3スプライシングイベントを図示するSashimiプロット。SF3B3についてのLMI070スプライスインエクソンのゲノム位置を示し(黄色のバー)、イントロンカウントの数字を示す。
図2C】LMI070応答性シュードエクソンの発見のためのRNA-Seq。(図2C)RNA-Seqによって特定された45個のスプライスインエクソンからの、LMI070が標的とするU1 RNA結合配列の配列ロゴ。
図2D】LMI070応答性シュードエクソンの発見のためのRNA-Seq。(図2D)DMSOまたはLMI070で処理したHEK293細胞から増幅されたcDNAは、SF3B3、BENC1、GXYLT1、C12orf4、およびPDXDC2についてスプライスインイベントを示し、これを、サンガーシーケンシングによって確認した。アスタリスクは、PCR反応から増幅された非特異的なバンドに印をつける。
図2E】LMI070応答性シュードエクソンの発見のためのRNA-Seq。(図2E)DMSO処理細胞とLMI070処理細胞との間で差次的に発現される遺伝子を図解する、Volcanoプロット。y軸から延びる水平のバーは、-log10スケールでプロットした0.05の有意性を表す。-0.1および0.1の倍率変化の閾値を、赤色の垂直バーによって示す。有意性および最小倍率変化の要求について閾値を満たす遺伝子を標識する。
図2F】LMI070応答性シュードエクソンの発見のためのRNA-Seq。(図2F~2N)RNA-Seqによって特定された上位ランクの遺伝子について、新規LMI070スプライスインエクソンを図示するSashimiプロット。LMI070スプライスインエクソンのゲノム上の場所および位置を示す。(図2F)BENC1。
図2G】LMI070応答性シュードエクソンの発見のためのRNA-Seq。(図2F~2N)RNA-Seqによって特定された上位ランクの遺伝子について、新規LMI070スプライスインエクソンを図示するSashimiプロット。LMI070スプライスインエクソンのゲノム上の場所および位置を示す。(図2G)GXYLT1。
図2H】LMI070応答性シュードエクソンの発見のためのRNA-Seq。(図2F~2N)RNA-Seqによって特定された上位ランクの遺伝子について、新規LMI070スプライスインエクソンを図示するSashimiプロット。LMI070スプライスインエクソンのゲノム上の場所および位置を示す。(図2H)C12ORF4。
図2I】LMI070応答性シュードエクソンの発見のためのRNA-Seq。(図2F~2N)RNA-Seqによって特定された上位ランクの遺伝子について、新規LMI070スプライスインエクソンを図示するSashimiプロット。LMI070スプライスインエクソンのゲノム上の場所および位置を示す。(図2I)PDXDC2。
図2J】LMI070応答性シュードエクソンの発見のためのRNA-Seq。(図2F~2N)RNA-Seqによって特定された上位ランクの遺伝子について、新規LMI070スプライスインエクソンを図示するSashimiプロット。LMI070スプライスインエクソンのゲノム上の場所および位置を示す。(図2J)RARS。
図2K】LMI070応答性シュードエクソンの発見のためのRNA-Seq。(図2F~2N)RNA-Seqによって特定された上位ランクの遺伝子について、新規LMI070スプライスインエクソンを図示するSashimiプロット。LMI070スプライスインエクソンのゲノム上の場所および位置を示す。(図2K)WNK1。
図2L】LMI070応答性シュードエクソンの発見のためのRNA-Seq。(図2F~2N)RNA-Seqによって特定された上位ランクの遺伝子について、新規LMI070スプライスインエクソンを図示するSashimiプロット。LMI070スプライスインエクソンのゲノム上の場所および位置を示す。(図2L)WDR27。
図2M】LMI070応答性シュードエクソンの発見のためのRNA-Seq。(図2F~2N)RNA-Seqによって特定された上位ランクの遺伝子について、新規LMI070スプライスインエクソンを図示するSashimiプロット。LMI070スプライスインエクソンのゲノム上の場所および位置を示す。(図2M)CIP2A。
図2N】LMI070応答性シュードエクソンの発見のためのRNA-Seq。(図2F~2N)RNA-Seqによって特定された上位ランクの遺伝子について、新規LMI070スプライスインエクソンを図示するSashimiプロット。LMI070スプライスインエクソンのゲノム上の場所および位置を示す。(図2N)IFT57。
図3A】LMI070に対する候補ミニ遺伝子カセットの応答。(図3A)RNA-Seq解析からの、すべての場合にLMI070誘導性シュードエクソンの5'のエクソンを指すe1を伴う、ホタルルシフェラーゼの翻訳を制御するための候補ミニ遺伝子の構成を示す模式図(図2Bおよび図2F~2N参照)。薬物に応答してだけ翻訳を開始するように、KozakおよびATG開始コドンは、LMI070スプライスインエクソン内に位置付けられた。
図3B】LMI070に対する候補ミニ遺伝子カセットの応答。(図3B)SF3B3、BENC1、C12ORF4、およびPDXDC2についてのミニ遺伝子カセットのルシフェラーゼ誘導。LMI070処理試料(+と図示されている)におけるルシフェラーゼ活性の倍率変化は、DMSO処理細胞(-と図示されている)に相対的であり、データはウミシイタケルシフェラーゼに対して正規化されている。データは、8つの生物学的反復の平均値±SEMである。
図3C】LMI070に対する候補ミニ遺伝子カセットの応答。(図3C)eGFP発現を制御するミニ遺伝子カセットを示す模式図。薬物での処理後にだけ翻訳を開始するように、KozakおよびATG開始コドンは、LMI070誘導性エクソン内に位置付けられた。
図3D】LMI070に対する候補ミニ遺伝子カセットの応答。(図3D)SF3B3ミニ遺伝子カセット(Xon-eGFP)をトランスフェクトし、24時間後にDMSO(左)またはLMI070(右)で処理したHEK293細胞におけるeGFP発現。
図3E】LMI070に対する候補ミニ遺伝子カセットの応答。(図3E)SF3B3、BENC1、C12ORF4、およびPDXDC2についてのミニ遺伝子カセットのルシフェラーゼ活性。データは、ウミシイタケルシフェラーゼ活性と比べた、DMSO(-と図示されている)またはLMI070(+と図示されている)での処理に応答したミニ遺伝子からのホタルルシフェラーゼの発現を示す。データは、8つの生物学的反復の平均値±SEMである。
図3F-1】LMI070に対する候補ミニ遺伝子カセットの応答。(図3F)非AUG開始コドン(CITE)の使用頻度、ならびにSF3B3(SEQ ID NO: 16および17参照)、BENC1(SEQ ID NO: 18および19参照)、C12orf4(SEQ ID NO: 20および21参照)、またはPDXDC2(SEQ ID NO: 22および23参照)のミニ遺伝子に由来する転写産物におけるルシフェラーゼcDNA配列とインフレームのものの図示。
図3F-2】図3F-1の続きの図。
図3G】LMI070に対する候補ミニ遺伝子カセットの応答。(図3G)DMSO処理またはLMI070処理に応答した、LMI070誘導性SF3B3エクソンの包含を示す、代表的なRT-PCR反応。LMI070スプライスインエクソンの包含は、LMI070誘導性エクソンに隣接するエクソンに結合するプライマーを用いて(左)、または新規エクソン配列内に結合するプライマーを用いて(右)検出した。
図3H】LMI070に対する候補ミニ遺伝子カセットの応答。(図3H)SF3B3イントロン内の予測エンハンサーおよびサイレンサーイントロン配列の位置を図示するグラフ。要素は、Human splicing finderウェブサイト(world wide webのumd.be/HSF3/index.htmlで利用可能)によって特定した。LMI070誘導性エクソン(PSEx)および高密度のサイレンサー配列を有するイントロン領域の位置を示す。灰色および赤色の網掛けの丸は、SF3B3 Xonミニ遺伝子、ならびにSF3B3int、SF3B3i1、SF3B3i2、およびSF3B3i3カセットに含有される高密度のサイレンサー配列を有するイントロン領域を示す。
図3I】LMI070に対する候補ミニ遺伝子カセットの応答。(図3I)元のミニ遺伝子カセット(SF3B3)、完全イントロン配列(SF3B3int)、高密度のイントロンサイレンサー配列を有するバージョン(赤丸;SF3B3i1、SF3B3i2、SF3B3i3)、またはこれらの同じサイレンサー配列を欠いた対照配列(SF3B3i4)を含有するSF3B3ミニ遺伝子カセットを示す模式図。
図3J】LMI070に対する候補ミニ遺伝子カセットの応答。(図3J)追加のSF3B3イントロン領域を含有するさまざまなSF3B3ミニ遺伝子コンストラクトのルシフェラーゼ活性。HEK293細胞に、等モル量のプラスミドをトランスフェクトして、トランスフェクションの24時間後にルシフェラーゼ活性を測定した。グラフは、DMSO処理(左)またはLMI070処理(右)の後の新しいSF3B3カセットのルシフェラーゼ活性を示し、元のSF3B3ミニ遺伝子スイッチに相対的である(それぞれ、DMSOまたはLMI070について青色および桃色)。データは、8つの生物学的反復の平均値±SEMである。
図3K】LMI070に対する候補ミニ遺伝子カセットの応答。(図3K)SF3B3ミニ遺伝子コンストラクトのルシフェラーゼの誘導倍率。LMI070処理試料におけるルシフェラーゼ活性の倍率変化は、DMSO処理細胞に相対的である。すべての試料は、ウミシイタケルシフェラーゼ活性に対して正規化されている。元のSF3B3ミニ遺伝子スイッチを表示する(桃色)。データは、8つの生物学的反復の平均値±SEMである。
図3L】LMI070に対する候補ミニ遺伝子カセットの応答。(図3L~3M)LMI070誘導性シュードエクソンについてのPCRアッセイを示す代表的なゲル。プライミングは、シュードエクソンに隣接するエクソン(図3L)であった。
図3M】LMI070に対する候補ミニ遺伝子カセットの応答。(図3L~3M)LMI070誘導性シュードエクソンについてのPCRアッセイを示す代表的なゲル。プライミングは、シュードエクソン配列内(図3M)であった。
図4A】さまざまなプロモーターで発現された場合のSF3B3-Xonカセットの活性およびLMI070の用量に対するその応答性。(図4A)示されたSF3B3-Xon-ルシフェラーゼ発現カセットを含有するプラスミドのHEK293細胞中へのトランスフェクション、その後のLMI070での処理(100 nM、+と表示されている)またはDMSOでの処理(-と表示されている)の後のルシフェラーゼ誘導。すべての試料は、ウミシイタケルシフェラーゼ活性に対して正規化されており、DMSO処理細胞に相対的である。データは、8つの生物学的反復の平均値±SEMである。
図4B】さまざまなプロモーターで発現された場合のSF3B3-Xonカセットの活性およびLMI070の用量に対するその応答性。(図4B)示されたSF3B3-Xonカセットを含有するプラスミドをトランスフェクトし、さまざまな用量のLMI070で処理したHEK293細胞におけるルシフェラーゼ誘導。すべての試料は、ウミシイタケルシフェラーゼ活性に対して正規化されており、DMSO処理細胞(0 nM)に相対的である。データは、8つの生物学的反復の平均値±SEMである。
図4C】さまざまなプロモーターで発現された場合のSF3B3-Xonカセットの活性およびLMI070の用量に対するその応答性。(図4C)さまざまな用量のLMI070に応答した、示されたプロモーターから発現されたLMI070誘導性シュードエクソンの評価のための、RT-PCR解析からの代表的なゲル。シュードエクソンの包含を、シュードエクソンに隣接するプライマーを用いて検出した。スプライシングを定量し、転写産物レベルを、8つの生物学的反復の平均値±SEMとして提示した。
図4D】さまざまなプロモーターで発現された場合のSF3B3-Xonカセットの活性およびLMI070の用量に対するその応答性。(図4D)ウミシイタケルシフェラーゼ(灰色の線)と比べた、DMSO処理またはLMI070処理(それぞれ、-、+)に応答したXonカセットからのホタルルシフェラーゼ。
図4E】さまざまなプロモーターで発現された場合のSF3B3-Xonカセットの活性およびLMI070の用量に対するその応答性。(図4E)ウミシイタケルシフェラーゼ(灰色の線)と比べた、さまざまな用量のLMI070に応答したXonカセットからのホタルルシフェラーゼ。データは、8つの生物学的反復の平均値±SEMである。
図4F】さまざまなプロモーターで発現された場合のSF3B3-Xonカセットの活性およびLMI070の用量に対するその応答性。(図4F)さまざまな用量のLMI070に応答した、示されたプロモーターから発現されたLMI070誘導性シュードエクソンの評価のための、RT-PCR解析からの代表的なゲル。シュードエクソンの包含を、LMI070誘導性シュードエクソンおよび下流エクソン内に結合するプライマーを用いて検出した。スプライシングを定量し、転写産物レベルを、8つの生物学的反復の平均値±SEMとして提示した。
図5-1】Xonのインビボ活性。(図5A)AAV9.Xon.eGFPまたはAAVPHPeB.Xon.eGFPのいずれかを用いたインビボ研究の模式図。マウスにiv注射し、4週間後に、5または50 mg/kg LMI070の単回投与で処置し、24時間後に組織を採取して、スプライシング、転写産物レベル、およびタンパク質発現を評価した。(図5B)5または50 mg/KgのLMI070での処置の24時間後の肝臓におけるeGFPを示す、肝臓組織切片の代表的な顕微鏡写真(スケールバー100μm)。(図5C)eGFPタンパク質レベルの代表的なウエスタン解析(2試料を示す;4マウス/群)。β-カテニンをローディング対照として示す。(図5D)AAV9.Xon.eGFP遺伝子移入後のXonカセットからのLMI070誘導性転写産物およびeGFPの発現レベルを定量するために設計された、Xonアッセイを示す模式図。(図5E)PCRアッセイからの代表的なゲルは、LMI070に応答したスプライシング活性の包含を実証する。データは、図5Dに図示されるXon遺伝子発現アッセイを用いた、eGFP発現またはLMI070誘導性発現についての平均Ct値を示す。スプライシングされた発現カセットの倍率変化を、AAV9.Xon.eGFPを注射し、媒体で処置したマウスにおけるベースレベルと比べて示す。(図5F図5Cからのウエスタンブロットの長期露光。(図5G)4週間前にAAVPHBeB.Xon.eGFPでiv処置したマウス由来の脳における、5または50 mg/kgのLMI070での処置の24時間後のeGFP発現を示す、組織切片の顕微鏡写真。海馬および皮質におけるeGFPを示す(スケールバー100μm)。(図5H)PCRアッセイからの代表的なゲルは、LMI070に応答した、AAVPHBeB.Xon.eGFP遺伝子送達後のスプライシング活性の包含を実証する。データは、図5Dに図示されるXon遺伝子発現アッセイを用いた、eGFP発現またはLMI070誘導性発現についての平均Ct値を示す。スプライシングされた発現カセットの倍率変化を、AAVPHBeB.Xon.eGFPを注射し、媒体で処置したマウスにおけるベースレベルと比べて示す。(図5I)AAV9.Xon.eGFPを用いた再投与インビボ研究の模式図。マウスにiv注射し、4週間後に、50 mg/kg LMI070の単回投与で処置した。LMI070で処置したマウスの群を、1週間放置して薬物をウォッシュアウトし、その後再投与した。組織を、24時間後に採取して、スプライシング、転写産物レベル、およびタンパク質発現を評価した。予測eGFPタンパク質レベルもまた示す。(図5J)LMI070または媒体の各投与の24時間後の肝臓から採取した切片におけるeGFP発現を示す、肝臓組織切片の代表的な顕微鏡写真(スケールバー100μm)。(図5K)LMI070または媒体の投与の24時間後の肝臓におけるeGFP誘導を実証する、eGFPの代表的なウエスタンブロット。β-カテニンをローディング対照として示す。(図5L)PCRアッセイからの代表的なゲルは、各投与後にLMI070に応答したスプライシング活性の包含を実証する。(図5M)スプライシングされた発現カセットの肝臓組織におけるベースライン(媒体処置)を上回る倍率変化を、AAV9.Xon.eGFPを注射し、媒体または薬物で処置したマウスにおいて各投与後に示す。(図5N)LMI070(50 mg/Kg)の単回投与の24時間後の心臓におけるeGFP発現を示す、心臓組織切片の代表的な顕微鏡写真(スケールバー200μm、挿入画50μm)。(図5O)スプライシングされた発現カセットの倍率変化を、心臓および骨格筋組織の両方において、AAV9.Xon.eGFPを注射し、媒体で処置したマウスにおけるベースレベルと比べて示す。(図5P)PCRアッセイからの代表的なゲルは、LMI070に応答した心臓および骨格筋におけるAAV9.Xon.eGFP遺伝子送達後の新規エクソンの包含を実証する。(図5Q)各々のLMI070または媒体の投与の24時間後の肝臓におけるeGFPタンパク質レベルの、図5Kに示したウエスタンブロットの長期露光。(図5R)脳においてXonシステムを発現するためにAAVPHPeB.Xon.eGFPを用いたインビボ研究の模式図。マウスにiv注射し、4週間後に、5または50 mg/kg LMI070の単回投与で処置し、24時間後に脳を採取して、スプライシング、転写産物レベル、およびタンパク質発現を評価した。(図5S)4週間前にAAVPHPeB.Xon.eGFPでiv処置したマウス由来の、媒体または5もしくは50 mg/kgのLMI070での処置の24時間後のeGFP発現を示す、顕微鏡写真。40μm厚の矢状切片の代表的な顕微鏡写真において、eGFP蛍光が明らかである。(図5T)4週間前にAAVPHPeB.Xon.eGFPをiv注射したマウス由来の、媒体または5もしくは50 mg/kgのLMI070での処置の24時間後の、視床(Th)、海馬(Hc)、小脳(Cb)、および顔面神経運動核(VII)の切片からの、より高倍率の顕微鏡写真(スケールバー=100μm、挿入画:スケールバー25μm)。海馬において、*および**は、特定の海馬領域における発現の証拠である。小脳において、*は、深部小脳核における陽性である細胞を意味する。(図5U)経口摂取したLMI070に応答した、AAVPHPeB.Xon.eGFP遺伝子送達後の新規エクソンの包含を実証するPCR増幅を示す、代表的なアガロースゲルの写真。データは、皮質および海馬から採取した組織由来である。(図5V)データは、Xonカセットを用いたeGFP発現またはLMI070誘導性発現についての平均Ct値を示す。スプライシングされた発現カセットの皮質および海馬における倍率変化を、AAVPHPeB.Xon.eGFPを注射し、媒体で処置したマウスにおけるベースレベルと比べて示す。(図5W)AAVPHPeB.Xon.eGFPを注射し、媒体または5もしくは50 mg/KgのLMIで処置したマウス由来の皮質および海馬の試料における、eGFPタンパク質レベルの代表的なウエスタン解析。β-カテニンをローディング対照として示す。(図5X)4週間前にAAVPHPeB.Xon.eGFPでiv処置したマウス由来の、媒体または5もしくは50 mg/kgのLMI070での処置の24時間後のeGFP発現を示す、顕微鏡写真。皮質(Cx)、線条体(Str)、黒質(SN)、および前庭神経内側核(MV)におけるeGFPを示す(スケールバー100μm、挿入画:スケールバー25μm)。
図5-2】図5-1の説明を参照のこと。
図5-3】図5-1の説明を参照のこと。
図5-4】図5-1の説明を参照のこと。
図5-5】図5-1の説明を参照のこと。
図5-6】図5-1の説明を参照のこと。
図5-7】図5-1の説明を参照のこと。
図5-8】図5-1の説明を参照のこと。
図5-9】図5-1の説明を参照のこと。
図6-1】ハンチントン病のための調節されたSaCas9編集。(図6A)変異型HTT発現を排除するためのアレル特異的編集戦略を示す模式図。HTTエクソン1の上流のPAM配列内のSNPは、ヘテロ接合性で存在する場合の変異型アレルの標的欠失を可能にする。DNA修復後に、変異型HTTエクソン1は、エクソン1の上流および下流に結合する一対のsgRNA/Cas9複合体によって欠失される。(図6B)sgRNA配列、SaCas9(構成的にまたはXonスイッチと共に)、および選択的レポーターeGFP/ピューロマイシン発現カセットを同時発現させるために用いられるプラスミドを示す模式図。(図6C)CBh.Xon.SaCas9、またはCBhpSaCas9発現カセットをCMVeGFP発現カセットと共に含有するバイシストロニックプラスミドを、HEK293細胞にトランスフェクトして、さまざまな用量のLMI070で処理し、SaCas9レベルを、24時間後にウエスタンブロットによって測定した。eGFPタンパク質レベルが、トランスフェクション対照として機能した。ブロットは、4つの技術的反復のうちの2つを表す。(図6D)HTT編集を評価するための調節されたCRISPRの模式図。HEK293細胞に、sgRNA配列、SaCas9(構成的にまたはXonスイッチを介して)、および選択的レポーターeGFP/ピューロマイシン発現カセットを発現するプラスミドをトランスフェクトした。4時間後に、細胞を100 nM LMI070で処理し、24時間後に3μMピューロマイシンで処理した。細胞選択の24時間後に、ピューロマイシンを除去し、細胞を4日間拡大増殖させ、その後、ゲノムDNA、タンパク質、およびRNAの単離のために細胞を収集した。(図6E)対照(Ctl)sgRNAまたは935/i3 sgRNA配列を用いた、構成的SaCas9 CRISPRプラスミドまたはXon-SaCas9 CRISPRプラスミド、および選択的レポーターeGFP/ピューロマイシン発現カセットのトランスフェクション後のPCRアッセイによって評価した、HTTエクソン1標的欠失を図示する代表的なゲル(5つの生物学的反復のうちの2つ)。(図6F)構成的SaCas9 CRISPRカセットまたはXon-SaCas9 CRISPRカセットをトランスフェクトしたHEK293細胞からのHTT mRNAレベルの、RT-qPCR解析で評価した転写産物レベル。試料は、ヒトGAPDHに対して正規化されており、データは、対照sgRNA配列を発現する構成的SaCas9 CRISPRカセットを含有するプラスミドをトランスフェクトした細胞と比べた、平均値±SEMである(n=8生物学的反復;*p<0.0001、ボンフェローニ(Bonferroni)の事後検定がその後続く一元配置分散分析(one-way ANOVA))。(図6G)構成的SaCas9 CRISPRカセットまたはXon-SaCas9 CRISPRカセットをトランスフェクトしたHEK293細胞のピューロマイシン選択および拡大増殖後のHTT、SaCas9、およびeGFPのタンパク質レベルについての代表的なウエスタンブロット(4つの生物学的反復のうちの2つ)。sgRNA発現カセットを含有する構成的カセットをトランスフェクトした細胞を、対照として用いた。β-カテニンが、ローディング対照として機能した。(図6H)変異型HTTエクソン1の標的欠失のためのアレル特異的編集戦略を示す模式図。HTTエクソン1の上流のSaCas9 PAM配列内のSNPは、ヘテロ接合性で存在する場合の変異型アレルの選択的編集を可能にする。DNA修復後に、変異型HTTエクソン1は、エクソン1の上流および下流に結合する一対のsgRNA/SaCas9複合体によって除去される。SNP(935と呼ばれる)に注釈がつけられている。(図6I)HTTエクソン1隣接配列を標的とする構成的SaCas9 CRISPRカセットをトランスフェクトしたHEK293細胞における、RT-qPCRによって評価したHTT mRNAレベル。試料は、ヒトGAPDHに対して正規化されており、データは、対照sgRNA配列と一緒にSaCas9 CRISPR発現プラスミドをトランスフェクトした細胞と比べた、平均値±SEMである(n=8生物学的反復;*p<0.0001、ボンフェローニの事後検定がその後続く一元配置分散分析)。(図6J)対照sgRNA配列またはHTTエクソン1の隣接配列を標的とするsgRNA配列と一緒のSaCas9 CRISPR発現プラスミド、および選択的レポーターeGFP/ピューロマイシン発現カセットをトランスフェクトした細胞における、HTTエクソン1標的欠失を示す代表的なゲル。小さなPCR産物のサンガーシーケンシングの結果により、DNA切断部位でのHTTエクソン1の欠失が確認された。(図6K)SaCas9 CRISPRプラスミドおよび示されたsgRNAをトランスフェクトした細胞における、HTTエクソン1レベルを示す代表的なウエスタンブロット。SaCas9およびbカテニンを、それぞれ、タンパク質ローディング対照として用いた。(図6L図6Bからのブロットの長期露光。(図6M図6GからのSaCas9発現の長期露光。
図6-2】図6-1の説明を参照のこと。
図6-3】図6-1の説明を参照のこと。
図6-4】図6-1の説明を参照のこと。
図7A】AAV8.Xon.mEpoを用いたインビボ研究の模式図。マウスにiv注射し、4週間後に、LMI070の3回の連続投与で処置した。示したように、マウスEpoおよびヘマトクリットパーセンテージを、LMI070または媒体での処置の前後のさまざまな時点で測定した。
図7B】マウスEpo(pg/ml)(左)およびヘマトクリットレベル(右)を、LMI070処置または媒体処置の前(ベース)または後に測定した。
図7C】AAV8.Xon.SaCas9ベクターおよびAAV8sgAi9.eGFPベクターを用いたインビボ研究の模式図。Ai14マウスにiv注射し、4週間後に、LMI070(25 mg/ml)の単回投与で処置した。LMI070でのSaCas9誘導の1週間後にマウスを安楽死させて、マウスゲノムにおけるAi14レポーター配列の編集の程度を測定した。
図7D】AAV8.Xon.SaCas9ベクター+AAV8.sgAi9 eGFPベクターを注射したAi14レポーターマウス由来の肝臓溶解物のPCRを介した、ゲノムDNA編集の実証。編集は、LMI070に応答して明らかである。
図7E】媒体または25 mg/kgのLMI070での処置後の、AAV8.Xon.SaCas9ベクター+AAV8.sgAi9 eGFPベクターでiv処置したマウスからの、eGFPおよびtdTomatoの発現を示す顕微鏡写真。
図7F】AAV8.Xon.mEpoを用いたインビボ再投与研究の模式図。LMI070再投与は、ヘマトクリットレベルがベースレベルに戻った後に再投与した。
図7G】最初の処置後のLMI070に応答したEpoレベル(pg/ml)。
図7H】LMI070または媒体での処置後のマウスヘマトクリットレベルの経時変化。
図8A】SF3B3.XonカセットおよびSF3B3.Xon100カセットの構造およびサイズを示す模式図。イントロン配列に隣接する新規エクソンのサイズを示す。
図8B】ウミシイタケルシフェラーゼと比べた、LMI070に応答したSF3B3.XonカセットおよびSF3B3.Xon100カセットのホタルルシフェラーゼ誘導。データは、8つの生物学的反復の平均値±SEMである。
図8C】SF3B3.Xon.100カセットおよびSF3B3.Xonカセットのルシフェラーゼ活性。データは、ウミシイタケルシフェラーゼ活性と比べた、DMSO処理またはLMI070処理に応答したミニ遺伝子からのホタルルシフェラーゼの発現を示す。データは、8つの生物学的反復の平均値±SEMである。
図8D】SF3B3.Xonの発現と比べた、SF3B3.Xon.100カセットからのルシフェラーゼ発現。データは、SF3B3.Xon100の発現が、オフ状態およびオン状態でSF3B3.Xonの発現に匹敵していることを示す。
図8E】SF3B3.Xon100およびSF3B3.XonにおけるDMSO処理またはLMI070処理に応答したLMI070誘導性SF3B3エクソンの包含を示す、代表的なRT-PCRデータ。LMI070スプライスインエクソンを、LMI070誘導性エクソンに隣接するプライマーを用いて検出した。
図8F】SF3B3.Xon100およびSF3B3.XonにおけるDMSO処理またはLMI070処理に応答したLMI070誘導性SF3B3エクソンの包含を示す、代表的なRT-PCRデータ。LMI070スプライスインエクソンの包含を、新規エクソン配列内の1つのプライマーと隣接エクソン中の1つのプライマーとを用いて検出した。
図9A】AAVPHPeB.Xon.SaCas9ベクターおよびAAVPHPeB sgAi9.eGFPベクターを用いたインビボ研究の模式図。Ai14マウスにiv注射し、4週間後に、LMI070(25 mg/ml)の3回投与で処置した。LMI070でのSaCas9誘導の1週間後にマウスを安楽死させて、マウスゲノムにおけるAi14レポーター配列の編集を測定した。
図9B】媒体または25 mg/kgのLMI070の3回投与での処置後の、AAVPHPeB.Xon.SaCas9ベクター+AAVPHPeB.sgAi9 eGFPベクターでiv処置したマウス由来の皮質および海馬における、tdTomato発現を示す顕微鏡写真。
図9C】AAVPHPeB.Xon.SaCas9ベクターおよびAAVPHPeB sg4/i3.eGFPベクターを用いたインビボ研究の模式図。BacHDマウスにiv注射し、3週間後に、LMI070(25 mg/ml)の3回投与で処置した。LMI070でのSaCas9誘導の3週間後にマウスを安楽死させて、ハンチントン遺伝子座の編集を測定した。
図9D】媒体処置した動物と比べた、最後の処置の24時間後のBacHDマウスにおけるLMI070処置に応答したLMI070誘導性SF3B3エクソンの包含を示す、代表的なRT-PCRデータ。
図10】分泌タンパク質のための最適化されたミニ遺伝子カセット - LMI070に対する応答。(図10A)最適化されたSF3B3ミニ遺伝子カセットをトランスフェクトし、24時間後にDMSO(左)またはLMI070(右)で処理したHEK293細胞におけるeGFP発現。(図10B)最適化されたミニ遺伝子におけるDMSO処理またはLMI070処理に応答したLMI070誘導性SF3B3エクソンの包含を示す、代表的なRT-PCR反応。LMI070スプライスインエクソンの包含を、LMI070誘導性エクソンに隣接するエクソンに結合するプライマーを用いて(左)、または新規エクソン配列内に結合する1つのプライマーと隣接エクソンに結合する1つのプライマーとを用いて(右)検出した。
図11A】ミニ遺伝子配列。上流エクソン(エクソン1またはe1)、新規エクソン(エクソン2またはe2)、および下流エクソン(エクソン3またはe3)を、太文字で示す。上流エクソンと新規エクソンとの間の配列は、イントロン1であり、新規エクソンと下流エクソンとの間の配列は、イントロン2である。開始コドンに、実線で下線が引いてある。Kozak配列に、破線で下線が引いてある。(図11A)SMN2ミニ遺伝子配列。
図11B】ミニ遺伝子配列。上流エクソン(エクソン1またはe1)、新規エクソン(エクソン2またはe2)、および下流エクソン(エクソン3またはe3)を、太文字で示す。上流エクソンと新規エクソンとの間の配列は、イントロン1であり、新規エクソンと下流エクソンとの間の配列は、イントロン2である。開始コドンに、実線で下線が引いてある。Kozak配列に、破線で下線が引いてある。(図11B)SMN2indミニ遺伝子配列。
図11C】ミニ遺伝子配列。上流エクソン(エクソン1またはe1)、新規エクソン(エクソン2またはe2)、および下流エクソン(エクソン3またはe3)を、太文字で示す。上流エクソンと新規エクソンとの間の配列は、イントロン1であり、新規エクソンと下流エクソンとの間の配列は、イントロン2である。開始コドンに、実線で下線が引いてある。Kozak配列に、破線で下線が引いてある。(図11C)SMN2actミニ遺伝子配列。
図11D】ミニ遺伝子配列。上流エクソン(エクソン1またはe1)、新規エクソン(エクソン2またはe2)、および下流エクソン(エクソン3またはe3)を、太文字で示す。上流エクソンと新規エクソンとの間の配列は、イントロン1であり、新規エクソンと下流エクソンとの間の配列は、イントロン2である。開始コドンに、実線で下線が引いてある。Kozak配列に、破線で下線が引いてある。(図11D)SF3B3ミニ遺伝子配列。
図11E】ミニ遺伝子配列。上流エクソン(エクソン1またはe1)、新規エクソン(エクソン2またはe2)、および下流エクソン(エクソン3またはe3)を、太文字で示す。上流エクソンと新規エクソンとの間の配列は、イントロン1であり、新規エクソンと下流エクソンとの間の配列は、イントロン2である。開始コドンに、実線で下線が引いてある。Kozak配列に、破線で下線が引いてある。(図11E)SF3B3intミニ遺伝子配列。
図11F】ミニ遺伝子配列。上流エクソン(エクソン1またはe1)、新規エクソン(エクソン2またはe2)、および下流エクソン(エクソン3またはe3)を、太文字で示す。上流エクソンと新規エクソンとの間の配列は、イントロン1であり、新規エクソンと下流エクソンとの間の配列は、イントロン2である。開始コドンに、実線で下線が引いてある。Kozak配列に、破線で下線が引いてある。(図11F)SF3B3int1ミニ遺伝子配列。
図11G】ミニ遺伝子配列。上流エクソン(エクソン1またはe1)、新規エクソン(エクソン2またはe2)、および下流エクソン(エクソン3またはe3)を、太文字で示す。上流エクソンと新規エクソンとの間の配列は、イントロン1であり、新規エクソンと下流エクソンとの間の配列は、イントロン2である。開始コドンに、実線で下線が引いてある。Kozak配列に、破線で下線が引いてある。(図11G)SF3B3int2ミニ遺伝子配列。
図11H】ミニ遺伝子配列。上流エクソン(エクソン1またはe1)、新規エクソン(エクソン2またはe2)、および下流エクソン(エクソン3またはe3)を、太文字で示す。上流エクソンと新規エクソンとの間の配列は、イントロン1であり、新規エクソンと下流エクソンとの間の配列は、イントロン2である。開始コドンに、実線で下線が引いてある。Kozak配列に、破線で下線が引いてある。(図11H)SF3B3i3ミニ遺伝子配列。
図11I】ミニ遺伝子配列。上流エクソン(エクソン1またはe1)、新規エクソン(エクソン2またはe2)、および下流エクソン(エクソン3またはe3)を、太文字で示す。上流エクソンと新規エクソンとの間の配列は、イントロン1であり、新規エクソンと下流エクソンとの間の配列は、イントロン2である。開始コドンに、実線で下線が引いてある。Kozak配列に、破線で下線が引いてある。(図11I)SF3B3i4ミニ遺伝子配列。
図11J】ミニ遺伝子配列。上流エクソン(エクソン1またはe1)、新規エクソン(エクソン2またはe2)、および下流エクソン(エクソン3またはe3)を、太文字で示す。上流エクソンと新規エクソンとの間の配列は、イントロン1であり、新規エクソンと下流エクソンとの間の配列は、イントロン2である。開始コドンに、実線で下線が引いてある。Kozak配列に、破線で下線が引いてある。(図11J)Benc1ミニ遺伝子配列。
図11K】ミニ遺伝子配列。上流エクソン(エクソン1またはe1)、新規エクソン(エクソン2またはe2)、および下流エクソン(エクソン3またはe3)を、太文字で示す。上流エクソンと新規エクソンとの間の配列は、イントロン1であり、新規エクソンと下流エクソンとの間の配列は、イントロン2である。開始コドンに、実線で下線が引いてある。Kozak配列に、破線で下線が引いてある。(図11K)C12orf4ミニ遺伝子配列。
図11L】ミニ遺伝子配列。上流エクソン(エクソン1またはe1)、新規エクソン(エクソン2またはe2)、および下流エクソン(エクソン3またはe3)を、太文字で示す。上流エクソンと新規エクソンとの間の配列は、イントロン1であり、新規エクソンと下流エクソンとの間の配列は、イントロン2である。開始コドンに、実線で下線が引いてある。Kozak配列に、破線で下線が引いてある。(図11L)PDXDC2ミニ遺伝子配列。
図11M】ミニ遺伝子配列。上流エクソン(エクソン1またはe1)、新規エクソン(エクソン2またはe2)、および下流エクソン(エクソン3またはe3)を、太文字で示す。上流エクソンと新規エクソンとの間の配列は、イントロン1であり、新規エクソンと下流エクソンとの間の配列は、イントロン2である。開始コドンに、実線で下線が引いてある。Kozak配列に、破線で下線が引いてある。(図11M)SF3B3.OPTXONNGSミニ遺伝子配列。図11M~Oにおいて、シグナルペプチドのN末端部分をコードする最初のコーディング配列を四角で囲み、それぞれN、K、またはRをコードするコドンに、二重下線が引いてある。
図11N】ミニ遺伝子配列。上流エクソン(エクソン1またはe1)、新規エクソン(エクソン2またはe2)、および下流エクソン(エクソン3またはe3)を、太文字で示す。上流エクソンと新規エクソンとの間の配列は、イントロン1であり、新規エクソンと下流エクソンとの間の配列は、イントロン2である。開始コドンに、実線で下線が引いてある。Kozak配列に、破線で下線が引いてある。(図11N)SF3B3.OPTXONKGSミニ遺伝子配列。図11M~Oにおいて、シグナルペプチドのN末端部分をコードする最初のコーディング配列を四角で囲み、それぞれN、K、またはRをコードするコドンに、二重下線が引いてある。
図11O】ミニ遺伝子配列。上流エクソン(エクソン1またはe1)、新規エクソン(エクソン2またはe2)、および下流エクソン(エクソン3またはe3)を、太文字で示す。上流エクソンと新規エクソンとの間の配列は、イントロン1であり、新規エクソンと下流エクソンとの間の配列は、イントロン2である。開始コドンに、実線で下線が引いてある。Kozak配列に、破線で下線が引いてある。(図11O)SF3B3.OPTXONRGSミニ遺伝子配列。図11M~Oにおいて、シグナルペプチドのN末端部分をコードする最初のコーディング配列を四角で囲み、それぞれN、K、またはRをコードするコドンに、二重下線が引いてある。
【発明を実施するための形態】
【0040】
詳細な説明
今日まで、ヒトへの適用のための遺伝子治療は、精巧に制御することができない、工学的に操作されたプロモーターに依拠している。低分子への曝露後の遺伝子サイレンシングまたは遺伝子置換の正確な制御を可能にするユニバーサルスイッチ要素が、本明細書において提供される。重要なことに、これらの低分子誘導因子は、ヒトで使用されており、動物またはヒトに与えられる時に経口で生物学的に利用可能であり、末梢組織および脳の両方に到達することができる。さらに、スイッチシステム(Xon)は、いかなる調節タンパク質の同時発現も必要としない。Xonを使用すると、遺伝子ノックダウンまたは遺伝子置換のための望ましい要素の翻訳が、単回の経口投与後に起こり、発現レベルは、薬物用量によってまたは反復薬物摂取の波で制御することができる。このユニバーサルスイッチは、細胞生物学応用および動物研究に適合させることができる遺伝子編集機構および遺伝子付加カセットの一時的な制御を提供することができる。さらに、使用される薬物の経口生物学的利用能および安全性により、Xonスイッチは、より適当なヒトへの適用のために遺伝子治療を改良する前例のない機会を提供する。
【0041】
I. 選択的スプライシングにより調節されるトランスジーン発現
本明細書において、選択的スプライシングにより、下流のコードされている遺伝子が発現されるかどうかを決定するキメラミニ遺伝子が開示される。コードされている遺伝子は、阻害性RNA、CRISPR-Cas9タンパク質、治療タンパク質、またはトランス活性化因子でありうる。
【0042】
一例において、ミニ遺伝子は3つのエクソン、エクソン1~3を含み、エクソン2は基礎状態ではスキップされる。翻訳開始調節配列はエクソン2に位置するため、エクソン2がスキップされると、下流のコードされている遺伝子は生産されない。したがって、コードされているタンパク質の翻訳は開始されない。コードされている遺伝子の発現をオンにするには、スキップされるエクソンの包含が誘導されなければならない。それは、低分子スプライシング修飾剤の存在の結果として起こることができる。例えば、ミニ遺伝子は、SMN2遺伝子のエクソン6~8を含んでもよく、この場合、エクソン7は基礎状態ではスキップされる。しかし、一定のスプライシング修飾剤低分子(例えば、LMI070またはRG7800/RG7619)の存在下では、エクソン7が含まれる。したがって、下流のコードされている遺伝子は、LMI070またはRG7800/RG7619の存在下では発現されるが、その非存在下では発現されないことになる。別の例として、ミニ遺伝子は、SF3B3由来の上流エクソンおよび下流エクソンを、介在するシュードエクソンに加えて含んでもよく、この場合、シュードエクソンは基礎状態ではスキップされる。しかし、一定のスプライシング修飾剤低分子(例えば、LMI070またはRG7800/RG7619)の存在下では、シュードエクソンが含まれる。したがって、これらの例の両方において、下流のコードされている遺伝子は、LMI070またはRG7800/RG7619の存在下では発現されるが、その非存在下では発現されないことになる。
【0043】
別の選択肢として、スキップされるエクソンの包含は、一定の疾患状態によって誘導されうる。例えば、ハンチントン病は、選択的スプライシングによって生成する転写産物アイソフォームの生成をもたらす。したがって、ミニ遺伝子は、健常細胞において通常スキップされるエクソンが、その代わりに含まれるように、ハンチントン病においてスプライシングが変化している遺伝子、すなわち、変異型HTTが発現している場合の遺伝子由来のエクソンを含みうる(例えば、PCDH1(5:141869432-141878222))。必要であれば、コードされている遺伝子が非罹患細胞において発現されないことを保証するために、選択的スプライシングを受けるエクソンの下流のエクソン中に、終止コドンを工学的に操作してもよい。その結果、コードされている遺伝子は、変異型HTTが存在する場合にのみ発現されることになる。この例において、コードされている遺伝子は、変異型HTTの発現をノックダウンする阻害性RNAをコードし、よって自己調節的フィードバックループを作出しうる。すなわち、変異型HTTの存在は、変異型HTTを標的とする阻害性RNAの発現を誘導し、それによって、変異型HTTレベルを、ミニ遺伝子のスプライシングを非罹患状態まで戻させるレベルに低減させ、それによって、阻害性RNAの発現をオフにして変異型HTTの発現を可能にし、それが阻害性RNAの発現を誘導するレベルに到達するなどということになる。あるいは、標的遺伝子は、HTT遺伝子の転写を抑制するCRISPR-Cas9システムをコードしうる。
【0044】
キメラミニ遺伝子の発現は、所望の発現パターンに応じて、さまざまなタイプのプロモーターによって調節されうる。例えば、プロモーターは、普遍的に構成的なプロモーター、例えばハウスキーピング遺伝子(例えば、ACTB)のプロモーターでありうる。別の例として、プロモーターは、細胞タイプ特異的プロモーター、例えばニューロン発現用のシナプシンのプロモーターでありうる。さらに別の例として、プロモーターは誘導性プロモーターでありうる。
【0045】
キメラミニ遺伝子は、ミニ遺伝子とコードされている遺伝子との間に位置する切断可能ペプチドを有しうる。場合により、切断可能ペプチドは、例えば2Aペプチドなどの、自己切断可能ペプチドでありうる。2Aペプチドは、T2Aペプチド、P2Aペプチド、E2Aペプチド、またはF2Aペプチドでありうる。このペプチドが存在すると、ミニ遺伝子にコードされているペプチドは、翻訳後に、コードされているタンパク質から分離されることになる。場合により、切断可能ペプチドは、例えばフューリン、プロホルモン転換酵素7(PC7)、ペアード塩基性アミノ酸切断酵素(paired basic amino-acid cleaving enzyme)4(PACE4)、またはサブチリシンケキシンアイソザイム2(SKI-1)などの、広く発現している内在性エンドプロテアーゼの切断部位でありうる。場合により、切断可能ペプチドは、組織特異的エンドプロテアーゼまたは細胞特異的エンドプロテアーゼ(例えば、プロホルモン転換酵素2(PC2;主に内分泌組織および脳において発現している)、プロホルモン転換酵素1/3(PC1/3;主に内分泌組織および脳において発現している)、プロホルモン転換酵素4(PC4;主に精巣および卵巣において発現している)、ならびにプロタンパク質転換酵素サブチリシンケキシン9(PSCK9;主に肺および肝臓において発現している)など)の切断部位でありうる。
【0046】
II. LMI070誘導性シュードエクソン
表1A~1Eは、候補LMI070誘導性エクソンのゲノム位置およびRNA-Seqデータセットからのイベントの頻度を提供する。DMSOまたはLMI070(25 nM)のいずれかで処理したHEK293細胞のRNA-Seqによって特定される、差次的に発現される候補 LMI070誘導性スプライシング位置をここに要約する。示した候補はすべて、エクソンスイッチングゲノムミニ遺伝子の構築へのその適性、LMI070条件に対するその排他性、およびDMSO処理細胞におけるその最小レベルから検出不能レベルに基づいて、バイオインフォマティクスで生成された上位ヒットのリストから手動で選択した。各表の上部25行は、LMI070曝露時に排他的に観察されたヒットを示す。各表の次の22行は、スプライシングが強化されたが、LMI070処理に対して完全に排他的ではなかった候補を示す。
【0047】
表1Aは、スプライスイベント含有ゲノムミニ遺伝子を作出するために使用されたGRCh38ゲノム位置、LMI070誘導性スプライシングによって作出されたシュードエクソンのGRCh38ゲノム位置、DMSO処理で観察されたエクソン-エクソンジャンクションスパンニングリード(spanning read)の数、およびLMI070処理で観察されたエクソン-エクソンジャンクションスパンニングリードの数を提供する。LMI070誘導性イベントが起こる頻度を評価するために、ヒトの組織および状態の多様なセットを表す、21,504個のヒトRNA-Seq試料にわたって観察されたスプライシングイベントの頻度を含有するデータベースである、Introlopolis(Nellore et al., 2016)に照会した。Intropolisデータベースに使用される参照ゲノムはGRCh37であり、そのため、UCSCゲノムブラウザのLiftOverの特徴を用いて、GRCh38座標をGRCh37に変換した。
【0048】
表1Bは、各ミニ遺伝子のGRCh37ゲノム位置、シュードエクソンのGRCh37ゲノム位置、およびシュードエクソン中のLMI070結合配列のDNA配列を提供する。
【0049】
表1Cは、正準スプライスジャンクション(CJ)の位置、各正準スプライスイベントが観察されたIntropolis RNA-Seqデータセットの数、および各正準スプライス部位について特定された観察の総数を提供する。
【0050】
表1Dは、ジャンクション1(J1)、正準エクソンをLMI070誘導性シュードエクソンに接続する第1のLMI070誘導性エクソン-エクソンジャンクション(ゲノム位置によって選別される)の位置を提供する。14および15は、各S1スプライスイベントが観察されたIntropolisデータセットの数およびパーセンテージを示す。また、各S1スプライスイベントが観察された総カウントの数およびパーセンテージも示される。
【0051】
表1Eは、ジャンクション2(J2)、LMI070誘導性シュードエクソンを正準エクソンに接続する第2のLMI070誘導性エクソン-エクソンジャンクション(ゲノム位置によって選別される)の位置を提供する。また、LMI070誘導性スプライスイベントが観察されたIntropolisデータセットの数およびパーセンテージも列記される。また、Intropolisデータセットにおける各ジャンクションを含有するリードの総数およびパーセンテージも示される。
【0052】
(表1A)GRCh38ゲノムミニ遺伝子
【0053】
(表1B)GRCh37(hg19)ゲノムミニ遺伝子
【0054】
(表1C)GRCh37(hg19)- 正準ジャンクション測定基準
【0055】
(表1D)GRCh37(hg19)- LMI070ジャンクション1測定基準
【0056】
(表1E)GRCh37(hg19)- LMI070ジャンクション2測定基準
【0057】
III. 選択的スプライシング調節のための標的遺伝子
A. 阻害性RNA
「RNA干渉(RNAi)」は、siRNAによって開始される配列特異的な転写後遺伝子サイレンシングのプロセスである。RNAi中に、siRNAは標的mRNAの分解を誘導し、その結果、遺伝子発現の配列特異的阻害が起こる。本開示の発現システムを使って発現を阻害しうる遺伝子の例として、HTT(ハンチントン病の場合)、SCA(脊髄小脳失調症(1、2、3、6、7型)の場合)、FXTAS(脆弱X失調症候群の場合)、およびFMRP(脆弱Xの場合)が挙げられるが、それらに限定されるわけではない。
【0058】
「阻害性RNA」、「RNAi」、「低分子干渉RNA」または「短鎖干渉RNA」または「siRNA」分子、「短鎖ヘアピンRNA」または「shRNA」分子、または「miRNA」は、関心対象の核酸配列にターゲティングされるヌクレオチドのRNA二重鎖である。本明細書において使用する場合、「siRNA」という用語はshRNAおよびmiRNAの部分集合を包含する一般名である。「RNA二重鎖」とは、RNA分子の2つの領域間の相補的ペアリングによって形成される構造を指す。siRNAの二重鎖部分のヌクレオチド配列は標的となる遺伝子のヌクレオチド配列に相補的であるので、siRNAはその遺伝子に「ターゲティング」される。一定の態様において、siRNAはハンチントンをコードする配列にターゲティングされる。いくつかの態様において、siRNAの二重鎖の長さは30塩基対未満である。いくつかの態様において、二重鎖は、29、28、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11または10塩基対長であることができる。いくつかの態様において、二重鎖の長さは19~25塩基対長である。一定の態様において、二重鎖の長さは19塩基対長または21塩基対長である。siRNAのRNA二重鎖部分はヘアピン構造の一部であることができる。ヘアピン構造は、二重鎖部分に加えて、二重鎖を形成する2つの配列の間に位置するループ部分を含有する。ループの長さはさまざまでありうる。いくつかの態様において、ループは5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24または25ヌクレオチド長である。一定の態様において、ループは18ヌクレオチド長である。ヘアピン構造は3'オーバーハング部分および/または5'オーバーハング部分も含有することができる。いくつかの態様において、オーバーハングは、0、1、2、3、4または5ヌクレオチド長の3'オーバーハングおよび/または5'オーバーハングである。
【0059】
shRNAは、5'隣接領域、siRNA領域セグメント、ループ領域、3'siRNA領域および3'隣接領域を含有するように設計されたステム-ループ構造で構成される。大半のRNAi発現戦略では、強力なpolIII系プロモーターによって駆動される短鎖ヘアピンRNA(shRNA)が利用されてきた。多くのshRNAはインビトロでもインビボでも標的配列の効果的なノックダウンを示すが、標的遺伝子の効果的なノックダウンを示す一部のshRNAは、インビボで毒性を有することも見いだされた。
【0060】
miRNAは、前駆体ステムループ転写産物からプロセシングされる小さな細胞性RNA(約22nt)である。公知のmiRNAステムループは、関心対象の遺伝子に特異的なRNAi配列を含有するように改変することができる。miRNA分子はshRNA分子より好ましい場合がある。なぜならmiRNAは内因性に発現されるからである。それゆえに、miRNA分子は、dsRNA応答性インターフェロン経路を誘導する可能性が低く、shRNAより効率よくプロセシングされ、shRNAよりも80%効果的にサイレンシングを行うことが示されている。
【0061】
最近発見された代替的アプローチは、RNAiベクターとしての人工miRNA(siRNA配列をシャトルするpri-miRNAスキャフォールド)の使用である。人工miRNAの方が、内在性RNAi基質と、より自然に類似し、Pol-II転写(例えばRNAiの組織特異的発現が可能になる)およびポリシストロニック戦略(例えば複数のsiRNA配列の送達が可能になる)にも、より適している。参照により本明細書に組み入れられる米国特許第10,093,927号を参照されたい。
【0062】
「shRNA」の転写単位は、不対ヌクレオチドのループでつながれたセンス配列とアンチセンス配列とで構成される。shRNAはエクスポーチン-5によって核から搬出され、細胞質に入るとダイサー(Dicer)によるプロセシングを受けて、機能的siRNAを生成する。「miRNA」のステム-ループは不対ヌクレオチドのループでつながれたセンス配列とアンチセンス配列とで構成され、これは、典型的には、より大きな一次転写産物(pri-miRNA)の一部として発現され、それがドローシャ-DGCR8複合体によって切り出されてpre-miRNAとして公知の中間体を生成し、次にそれがエクスポーチン-5によって核から搬出され、細胞質に入ると、ダイサーによるプロセシングを受けて、機能的siRNAを生成する。本明細書において相互可換的に使用する場合、「人工miRNA」または「人工miRNAシャトルベクター」とは、ドローシャおよびダイサープロセシングによって切り出される二重鎖ステムループの領域(少なくとも約9~20ヌクレオチド)が、効果的なドローシャプロセシングに必要なステムループ内の構造要素を保ちつつ、標的遺伝子用のsiRNA配列で置き換えられている一次miRNA転写産物を指す。「人工」という用語は、隣接配列(上流の約35ヌクレオチドおよび下流の約40ヌクレオチド)がsiRNAのマルチクローニング部位内の制限酵素部位に由来するという事実に由来している。本明細書において使用する場合「miRNA」という用語は、天然のmiRNA配列と、人工的に作製されたmiRNAシャトルベクターを、どちらも包含する。
【0063】
siRNAは核酸配列によってコードすることができ、その核酸配列はプロモーターも含むことができる。該核酸配列はポリアデニル化シグナルも含むことができる。いくつかの態様において、ポリアデニル化シグナルは合成最小ポリアデニル化シグナルまたは6つのTの配列である。
【0064】
RNAiの設計では、siRNAの性質、サイレンシング効果の永続性および送達システムの選択など、考慮する必要のある因子が、いくつかある。RNAi効果を生じさせるために、生物に導入されるsiRNAは典型的にはエクソン配列(exonic sequence)を含有するだろう。さらにまた、RNAiプロセスは相同性に依存するので、配列は、相同的ではあるが遺伝子特異的ではない配列間の交差干渉の可能性を最小限に抑えつつ遺伝子特異性が最大になるように、注意深く選択されなければならない。好ましくは、siRNAは、siRNAの配列と阻害されるべき遺伝子との間に、80%、85%、90%、95%または98%より大きい同一性、さらには100%の同一性を呈する。標的遺伝子に対する同一性が約80%未満である配列は有効性がかなり低い。したがって、siRNAと阻害されるべき遺伝子との間の相同性が高いほど、無関係な遺伝子の発現が影響を受ける可能性は低くなる。
【0065】
加えて、siRNAのサイズも重要な考慮事項である。いくつかの態様において、本発明は、少なくとも約19~25ヌクレオチドを含み、遺伝子発現を調整することができる、siRNA分子に関する。本発明に関して、siRNAは、好ましくは、500、200、100、50または25ヌクレオチド長未満である。より好ましくはsiRNAは約19ヌクレオチド~約25ヌクレオチド長である。
【0066】
siRNA標的とは、一般に、ポリペプチドをコードする領域を含むポリヌクレオチド、または複製、転写もしくは翻訳もしくはポリペプチドの発現にとって重要な他のプロセスを調節するポリヌクレオチド領域を含むポリヌクレオチド、またはポリペプチドをコードする領域とそれに機能的に連結された領域であって発現を調節するものとをどちらも含むポリヌクレオチドを意味する。細胞中で発現する遺伝子はどれでも標的とすることができる。好ましくは、標的遺伝子は、疾患にとって重要な細胞活動の進行、または研究対象として特に関心がある細胞活動の進行に、関与または関連するものである。
【0067】
B. CRISPRシステム
遺伝子編集は生細胞内での標的遺伝子の改変を可能にする技術である。近年、細菌のCRISPR免疫システムを利用するオンデマンド遺伝子編集の実施は、科学者がゲノム編集にアプローチする方法に大きな変革をもたらした。RNAガイド型DNAエンドヌクレアーゼであるCRISPRシステムのCas9タンパク質は、そのガイドRNA配列を変化させることによって比較的容易に、新しい部位を標的とするように工学的に操作することができる。この発見により、配列特異的遺伝子編集は、機能的に有効になった。
【0068】
一般に「CRISPRシステム」とは、CRISPR関連(「Cas」)遺伝子の発現またはその活性の方向付けに関与する転写産物および他の要素、例えばCas遺伝子をコードする配列、tracr(トランス活性化CRISPR)配列(例えばtracrRNAまたは活性な部分tracrRNA)、tracr-mate配列(「ダイレクトリピート」および内在性CRISPRシステムの場合はtracrRNAプロセシングを受けた部分ダイレクトリピートを包含する)、ガイド配列(内在性CRISPRシステムの場合は「スペーサー」とも呼ばれる)ならびに/またはCRISPR遺伝子座からの他の配列および転写産物を、集合的に指す。本開示のCRISPR発現システムを使ってその発現を阻害しまたはその配列を編集しうる遺伝子の例として、HTT(ハンチントン病の場合)、SCA(脊髄小脳失調症(1、2、3、6、7型)の場合)、FXTAS(脆弱X失調症候群の場合)、およびFMRP(脆弱Xの場合)が挙げられるが、それらに限定されるわけではない。
【0069】
CRISPR/CasヌクレアーゼまたはCRISPR/Casヌクレアーゼシステムは、DNAに配列特異的に結合する非コードRNA分子(ガイド)RNAと、ヌクレアーゼ機能性(例えば2つのヌクレアーゼドメイン)を持つCasタンパク質(例えばCas9)とを含むことができる。CRISPR/Casシステムは、6つのタイプおよび数多くのサブタイプを含む、2つのクラスに分類される。分類は、CRISPR/Cas遺伝子座におけるすべてのcas遺伝子を特定すること、および各CRISPR/Cas遺伝子座におけるシグネチャー遺伝子を決定することに基づき、究極的には、エフェクターモジュール、すなわち、干渉段階に関与するタンパク質をコードする遺伝子に基づいて、CRISPR/Casシステムを、クラス1またはクラス2のいずれかに配置できると決定する。クラス1システムは、複数サブユニットcrRNA-エフェクター複合体を有するのに対して、クラス2システムは、Cas9、Cpf1、C2c1、C2c2、C2c3、またはcrRNA-エフェクター複合体などの単一タンパク質を有する。クラス1システムは、I型、III型、およびIV型システムを含む。クラス2システムは、II型、V型、およびVI型システムを含む。したがって、CRISPRシステムの1つまたは複数の要素は、CRISPRシステムの任意のクラスまたはタイプに由来することができ、例えば、化膿レンサ球菌(Streptococcus pyogenes)などの内在性CRISPRシステムを含む特定生物に由来することができる。
【0070】
CRISPRシステムは、本明細書において議論するように、標的部位における二本鎖切断(double stranded break:DSB)と、それに続く分断を誘導することができる。別の態様では、標的部位において一本の鎖にニックを入れるために、「ニッカーゼ」とみなされるCas9バリアントが使用される。例えば特異性を改良するなどの目的で、ニックが同時に導入された場合に5'オーバーハングが導入されるような形で配列を標的とする一対の異なるgRNAによってそれぞれが方向付けられるニッカーゼのペアを使用することができる。別の態様では、触媒的に不活性なCas9が、遺伝子発現に影響を及ぼすために、転写抑制因子(例えばKRAB)または転写活性化因子などの異種エフェクタードメインに融合される。あるいは、触媒的に不活性なCas9によるCRISPRシステムは、リボソーム結合タンパク質に融合された転写抑制因子または転写活性因子をさらに含む。
【0071】
いくつかの局面において、CasヌクレアーゼおよびgRNA(標的配列に特異的なcrRNAと不変のtracrRNAとの融合物を含む)が細胞に導入される。一般に、gRNAの5'端にある標的部位は、相補的塩基対合を使って、Casヌクレアーゼを標的部位、例えば遺伝子へとターゲティングする。標的部位は、プロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)配列、例えば典型的にはNGGまたはNAGのすぐ5'側というその位置に基づいて選択されうる。この点において、gRNAは、ガイドRNAの最初の20、19、18、17、16、15、14、14、12、11または10ヌクレオチドを標的DNA配列に対応するように改変することによって、所望の配列にターゲティングされる。一般にCRISPRシステムは、標的配列の部位におけるCRISPR複合体の形成を促進する要素によって特徴づけられる。通例、「標的配列」とは、一般に、ガイド配列がそれに対する相補性を有するように設計される配列を指し、標的配列とガイド配列との間のハイブリダイゼーションが、CRISPR複合体の形成を促進する。ハイブリダイゼーションを引き起こしてCRISPR複合体の形成を促進するのに十分な相補性があるならば、完全な相補性は必ずしも必要ではない。
【0072】
標的配列は、DNAポリヌクレオチドまたはRNAポリヌクレオチドなど、任意のポリヌクレオチドを含みうる。標的配列は、細胞の小器官内など、細胞の核内または細胞質内に位置しうる。一般に、標的配列を含む標的となる遺伝子座への組換えのために使用されうる配列またはテンプレートは、「編集テンプレート」または「編集ポリヌクレオチド」または「編集配列」と呼ばれる。いくつかの局面において、外因性テンプレートポリヌクレオチドは編集テンプレートと呼びうる。いくつかの局面において、組換えは相同組換えである。
【0073】
通例、内在性CRISPRシステムの場合、CRISPR複合体(標的配列にハイブリダイズして1つまたは複数のCasタンパク質との複合体を形成しているガイド配列を含む)の形成は、標的配列内または標的配列近傍(例えば標的配列から1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、50塩基対以内またはそれ以上)における一方または両方の鎖の開裂をもたらす。野生型tracr配列の全部もしくは一部(例えば野生型tracr配列のうちの約20、26、32、45、48、54、63、67、85ヌクレオチドまたはそれ以上の部分)を含みうるまたはそれらからなりうるtracr配列も、例えばtracr配列の少なくとも一部分に沿った、ガイド配列に機能的に連結されたtracr mate配列の全部または一部へのハイブリダイゼーションなどによって、CRISPR複合体の一部を形成しうる。tracr配列は、tracr mate配列に対して、ハイブリダイズしてCRISPR複合体の形成に参加するのに十分な相補性、例えば最適にアラインメントした場合にtracr mate配列の全長にわたって少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%または99%の配列相補性を有する。
【0074】
CRISPRシステムの1つまたは複数の要素の発現を駆動する1つまたは複数のベクターを細胞中に導入して、CRISPRシステムのそれら要素の発現が、1つまたは複数の標的部位におけるCRISPR複合体の形成を指示するようにすることができる。構成要素をタンパク質および/またはRNAとして細胞に送達することもできる。例えばCas酵素、tracr-mate配列に連結されたガイド配列、およびtracr配列を、それぞれ別々のベクター上の別々の調節要素に機能的に連結することができるだろう。Cas酵素は、キメラ標的遺伝子ミニ遺伝子としてまたはキメラミニ遺伝子トランス活性化因子にとっての標的遺伝子として本明細書において開示する調節選択的スプライシングイベントの制御を受ける標的遺伝子でありうる。gRNAは構成的プロモーターの制御を受けうる。
【0075】
あるいは、同じ調節要素または異なる調節要素から発現される2つ以上の要素を一つのベクター中で組み合わせ、1つまたは複数の追加ベクターが第1ベクター中に含まれていないCRISPRシステムの任意の構成要素を提供してもよい。ベクターは、制限エンドヌクレアーゼ認識配列(「クローニング部位」ともいう)など、1つまたは複数の挿入部位を含みうる。いくつかの態様において、1つまたは複数の挿入部位は、1つまたは複数のベクターの1つまたは複数の配列要素の上流および/または下流に位置する。複数の異なるガイド配列を使用すれば、単一の発現コンストラクト使って、CRISPR活性を細胞内の対応する複数の標的配列へとターゲティングしうる。
【0076】
ベクターは、Casタンパク質などのCRISPR酵素をコードする酵素コード配列に機能的に連結された調節要素を含みうる。Casタンパク質の非限定的な例として、Cas1、Cas1B、Cas2、Cas3、Cas4、Cas5、Cas6、Cas7、Cas8、Cas9(Csn1およびCsx12としても公知である)、Cas10、Csy1、Csy2、Csy3、Cse1、Cse2、Csc1、Csc2、Csa5、Csn2、Csm2、Csm3、Csm4、Csm5、Csm6、Cmr1、Cmr3、Cmr4、Cmr5、Cmr6、Csb1、Csb2、Csb3、Csx17、Csx14、Csx10、Csx16、CsaX、Csx3、Csx1、Csx15、Csfl、Csf2、Csf3、Csf4、それらのホモログ、またはそれらの改変型が挙げられる。これらの酵素は公知である。例えば化膿レンサ球菌(S. pyogenes)Cas9タンパク質のアミノ酸配列は、SwissProtデータベースにアクセッション番号Q99ZW2として見いだしうる。
【0077】
CRISPR酵素はCas9(例えば化膿レンサ球菌または肺炎球菌(S. pneumonia)由来のもの)であることができる。CRISPR酵素は、標的配列の場所、例えば標的配列内および/または標的配列の相補鎖内において、一方または両方の鎖の開裂を指示することができる。ベクターは、対応する野生型酵素と比較して突然変異型CRISPR酵素が標的配列を含有する標的ポリヌクレオチドの一方または両方の鎖を開裂する能力を欠くように変異させたCRISPR酵素をコードすることができる。例えば、化膿レンサ球菌由来のCas9のRuvC I触媒ドメインにおけるアスパラギン酸からアラニンへの置換(D10A)は、Cas9を、両方の鎖を開裂するヌクレアーゼからニッカーゼ(一本の鎖を開裂するもの)へと変換する。いくつかの態様において、Cas9ニッカーゼは、ガイド配列と組み合わせて、例えばDNA標的のセンス鎖とアンチセンス鎖をそれぞれ標的とする2つのガイド配列と組み合わせて、使用しうる。この組合せは、両方の鎖にニックを入れて、それらをNHEJまたはHDRの誘導に使用することを可能にする。
【0078】
いくつかの態様において、CRISPR酵素をコードする酵素コード配列は、真核細胞などの特定細胞における発現に関してコドン最適化される。真核細胞は、例えば限定するわけではないがヒト、マウス、ラット、ウサギ、イヌまたは非ヒト霊長類を含む哺乳動物などといった特定生物のものであるか、それら特定生物に由来しうる。一般に、コドン最適化とは、関心対象の宿主細胞における発現を強化するために、ネイティブ配列の少なくとも1つのコドンを、ネイティブアミノ酸配列を維持しつつ、当該宿主細胞の遺伝子中でより高頻度にまたは最も高頻度に使用されているコドンで置き換えることによって核酸配列に改変を加えるプロセスを指す。さまざまな種が、特定アミノ酸の一定のコドンに対して、特定のバイアスを呈する。コドンバイアス(生物間でのコドン使用頻度の相違)は、多くの場合、メッセンジャーRNA(mRNA)の翻訳効率と相関し、そしてそれは、なかんずく、翻訳されるコドンの特性および特定トランスファーRNA(tRNA)分子の利用可能性に依存すると考えられている。ある細胞における選ばれたtRNAの優勢は、一般に、ペプチド合成において最も高頻度に使用されるコドンの反映である。したがって遺伝子は、コドン最適化に基づいて、所与の生物における最適な遺伝子発現に適合させることができる。
【0079】
一般にガイド配列は、ターゲット配列とハイブリダイズして、ターゲット配列へのCRISPR複合体の配列特異的結合を指示するのに十分な、ターゲットポリヌクレオチド配列との相補性を有する任意のポリヌクレオチド配列である。いくつかの態様において、ガイド配列とその対応標的配列との間の相補性の程度は、適切なアラインメントアルゴリズムを使って最適にアラインメントした場合に、約50%、60%、75%、80%、85%、90%、95%、97.5%、99%、またはそれらを上回る。
【0080】
最適なアラインメントは、配列をアラインメントするための任意の適切なアルゴリズムを使って決定することができ、そのようなアルゴリズムの非限定的な例として、Smith-Watermanアルゴリズム、Needleman-Wunschアルゴリズム、Burrows-Wheeler変換に基づくアルゴリズム(例えばBurrows Wheeler Aligner)、ClustalW、Clustal X、BLAT、Novoalign(Novocraft Technologies)、ELAND(Illumina、カリフォルニア州サンディエゴ)、SOAP(soap.genomics.org.cnで利用可能)およびMaq(maq.sourceforge.netで利用可能)が挙げられる。
【0081】
CRISPR酵素は、1つまたは複数の異種タンパク質ドメインを含む融合タンパク質の一部であってもよい。CRISPR酵素融合タンパク質は、任意の追加タンパク質配列と、任意で、任意の2つのドメイン間にあるリンカー配列とを含みうる。CRISPR酵素に融合されうるタンパク質ドメインの例としては、エピトープタグ、レポーター遺伝子配列、および以下の活性のうちの1つまたは複数を有するタンパク質ドメインが挙げられるが、それらに限定されるわけではない:メチラーゼ活性、デメチラーゼ活性、転写活性化活性、転写抑制活性、転写終結因子活性、ヒストン修飾活性、RNA切断活性および核酸結合活性。エピトープタグの非限定的な例として、ヒスチジン(His)タグ、V5タグ、FLAGタグ、インフルエンザヘマグルチニン(HA)タグ、Mycタグ、VSV-Gタグ、およびチオレドキシン(Trx)タグが挙げられる。レポーター遺伝子の例としては、グルタチオン-5-トランスフェラーゼ(GST)、セイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)βガラクトシダーゼ、βグルクロニダーゼ、ルシフェラーゼ、緑色蛍光タンパク質(GFP)、HcRed、DsRed、シアン蛍光タンパク質(CFP)、黄色蛍光タンパク質(YFP)、および青色蛍光タンパク質(BFP)を含む自家蛍光タンパク質が挙げられるが、それらに限定されるわけではない。CRISPR酵素は、DNA分子に結合するか他の細胞性分子に結合するタンパク質またはそのようなタンパク質のフラグメント、例えば限定するわけではないが、マルトース結合タンパク質(MBP)、S-タグ、Lex A DNA結合ドメイン(DBD)融合物、GAL4A DNA結合ドメイン融合物、および単純ヘルペスウイルス(HSV)BP16タンパク質融合物などをコードする遺伝子配列に融合されうる。CRISPR酵素を含む融合タンパク質の一部を形成しうるさらなるドメインは、参照により本明細書に組み入れられるUS 20110059502に記載されている。
【0082】
C. 治療タンパク質
いくつかの態様は組換えタンパク質および組換えポリペプチドの発現に関する。本開示の発現システムを使って発現されうるタンパク質の例としては、STXBP1(Munc18-1としても公知である;STXBP1欠損症、新生児てんかんの一形態、発育遅延の一形態の場合)、SCN1a(遺伝性てんかん性脳症としても公知であり、乳児重症ミオクロニーてんかん(SMEI)としても公知であるドラベ症候群の場合;Nav1.1中の変異);SCN1b(Nav1.1βサブユニット中の変異);SCN2b(家族性心房細動の場合;II型電位作動性ナトリウムチャネルのβ2サブユニット);KCNA1(顕性遺伝性発作性運動失調症の場合;失調を伴うまたは失調を伴わない硬直性筋れん縮(muscle spasms with rigidity));KCNQ2(KCNQ2関連てんかん);GABRB3(早期発症型てんかん;GABAA受容体のβ3サブユニット);CACNA1A(家族性失調症および片麻痺性片頭痛の場合;P/Q型電位作動性カルシウムチャネルの膜貫通ポア形成サブユニット);CHRNA2(常染色体顕性夜間前頭葉てんかんの場合;ニューロンのニコチン性コリン作動性受容体(nAChR)のαサブユニット);KCNT1(常染色体顕性夜間前頭葉てんかん(ADNFLE)および乳児悪性焦点移動性部分発作(MMPSI)の場合;ナトリウム活性化カリウムチャネル);SCN8A(てんかんおよび神経発達障害の場合;Nav1.6欠損症、電位依存性ナトリウムチャネル);CHRNA4-αサブユニット(常染色体顕性夜間前頭葉てんかんの場合;ニコチン性アセチルコリン受容体のαサブユニット中の変異);CHRNB2-b2サブユニット(常染色体顕性夜間前頭葉てんかんの場合;ニコチン性アセチルコリン受容体のαサブユニット中の変異);ARX(Otohara症候群の場合、ARX遺伝子中のポリAla伸長);MECP2(レット症候群の場合);FMRP(脆弱Xの場合);およびCLN3(若年型バッテン病としても公知であり、JNCLとしても公知であるCLN病の場合)が挙げられるが、それらに限定されるわけではない。本開示の発現システムを用いて発現されうる治療タンパク質の他の例としては、エリスロポエチン(EPO、貧血の場合)、プログラニュリン(GRN、神経変性疾患の場合)、トリペプチジルペプチダーゼ1(TPP1、リソソーム蓄積症の場合)、第IX因子(F9、血友病の場合)、ヒトα-ガラクトシダーゼ(GLA、ファブリー病の場合)、α-1-アンチトリプシン(A1AT、α-1-アンチトリプシン欠損症の場合)、ヒト成長ホルモン(HGH、成長ホルモン欠損症の場合)、イオンチャネル、補体経路の構成要素、サイトカイン、ケモカイン、化学誘引物質、タンパク質ホルモン(例えば、EGF、PDF)、血清のタンパク質構成要素、抗体、分泌性toll様受容体、凝固因子、キナーゼ成長因子、および他のシグナル伝達分子が挙げられる。本開示の発現システムを用いて発現されうるタンパク質の他の例は、Lindy et al.(2018)およびHeyne et al.(2018)、ならびに米国特許出願公開第2018/0353616号に見いだすことができ、その各々は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0083】
本発明が有用である障害としては、ポンペ病、ゴーシェ病、ベータサラセミア、ハンチントン病;パーキンソン病;筋ジストロフィー(例えば、デュシェンヌ型およびベッカー型など);血友病疾患(例えば、血友病B(FIX)、血友病A(FVIII)など);SMN1関連脊髄性筋萎縮症(SMA);筋萎縮性側索硬化症(ALS);GALT関連ガラクトース血症;嚢胞性線維症(CF);シスチン尿症を含むSLC3A1関連障害;アルポート症候群を含むCOL4A5関連障害;ガラクトセレブロシダーゼ欠損症;X連鎖副腎白質ジストロフィーおよび副腎脊髄ニューロパチー;フリードライヒ運動失調症;ペリツェウス・メルツバッハ病;TSC1およびTSC2関連結節硬化症;サンフィリッポB症候群(MPS IIIB);CTNS関連シスチン症;脆弱X症候群、脆弱X関連振戦/運動失調症候群、および脆弱X早期卵巣不全症候群を含む、FMR1関連障害;プラダー・ウィリ症候群;遺伝性出血性末梢血管拡張症 (AT);ニーマン・ピック病C1型;若年性神経セロイドリポフスチン症(JNCL)、若年性バッテン病、サンタビューリ・ハルティア(Santavuori-Haltia)病、ヤンスキー・ビールショースキー病、ならびにPTT-1およびTPP1欠損症を含む、神経セロイドリポフスチン症関連疾患;中枢神経系の髄鞘形成不全/白質消失を伴う、EIF2B1、EIF2B2、EIF2B3、EIF2B4、およびEIF2B5関連小児期運動失調症;CACNA1AおよびCACNB4関連反復発作性運動失調症2型;古典的レット症候群、MECP2関連重症新生児脳症、およびPPM-X症候群を含む、MECP2関連障害;CDKL5関連非定型レット症候群;ケネディ病(SBMA);Notch-3関連の皮質下梗塞と白質脳症を伴う常染色体優性脳動脈症(CADASIL);SCN1AおよびSCN1B関連発作障害;アルパース・ヒュッテンロッチャー(Alpers-Huttenlocher)症候群、POLG関連感覚失調性ニューロパチー、構音障害、および眼麻痺(ophthalmoparesis)、およびミトコンドリアDNA欠失を伴う常染色体優性および劣性進行性外眼筋麻痺を含む、ポリメラーゼG関連障害;X連鎖副腎低形成;X連鎖無ガンマグロブリン血症;ウィルソン病;ならびにファブリー病などの障害が挙げられるが、それらに限定されるわけではない。
【0084】
いくつかの局面では、血清中安定性を増加させるために、タンパク質またはポリペプチドを改変しうる。したがって、本願が「改変タンパク質」または「改変ポリペプチド」の機能または活性に言及する場合、それが、例えば無改変のタンパク質またはポリペプチドと比べて付加的な利点を有するタンパク質またはポリペプチドを包含することは、当業者には理解されるだろう。「改変タンパク質」に関する態様は「改変ポリペプチド」についても実施することができ、逆もまたそうであると、特に考えられる。
【0085】
組換えタンパク質はアミノ酸の欠失および/または置換を有しうる。したがって、欠失を持つタンパク質、置換を持つタンパク質、および欠失と置換とを持つタンパク質は、改変タンパク質である。いくつかの態様において、これらのタンパク質は、例えば融合タンパク質またはリンカーを持つタンパク質など、挿入または付加されたアミノ酸を、さらに含みうる。「改変欠失タンパク質」は、ネイティブタンパク質の1つまたは複数の残基を欠くが、ネイティブタンパク質の特異性および/または活性は有しうる。「改変欠失タンパク質」は低減した免疫原性または抗原性も有しうる。改変欠失タンパク質の例は、少なくとも1つの抗原領域から、すなわち特定の生物において、例えば改変タンパク質が投与されうるタイプの生物において、抗原性であると決定されたタンパク質の領域から、アミノ酸残基が欠失されているものである。
【0086】
置換(substitution)バリアントまたは置き換え(replacement)バリアントは、典型的には、タンパク質内の1つまたは複数の部位におけるあるアミノ酸と別のアミノ酸との交換を含有し、ポリペプチドの1つまたは複数の性質、特にそのエフェクター機能および/またはバイオアベイラビリティを調整するように設計されうる。置換は保存的置換、すなわちあるアミノ酸が類似する形状および電荷を持つもので置き換えられる置換であってもよいし、そうでなくてもよい。保存的置換は当技術分野において周知であり、これには、例えばアラニンからセリンへの変化、アルギニンからリジンへの変化、アスパラギンからグルタミンまたはヒスチジンへの変化、アスパラギン酸からグルタミン酸への変化、システインからセリンへの変化、グルタミンからアスパラギンへの変化、グルタミン酸からアスパラギン酸への変化、グリシンからプロリンへの変化、ヒスチジンからアスパラギンまたはグルタミンへの変化、イソロイシンからロイシンまたはバリンへの変化、ロイシンからバリンまたはイソロイシンへの変化、リジンからアルギニンへの変化、メチオニンからロイシンまたはイソロイシンへの変化、フェニルアラニンからチロシン、ロイシンまたはメチオニンへの変化、セリンからスレオニンへの変化、スレオニンからセリンへの変化、トリプトファンからチロシンへの変化、チロシンからトリプトファンまたはフェニルアラニンへの変化、およびバリンからイソロイシンまたはロイシンへの変化が含まれる。
【0087】
欠失または置換に加えて、改変タンパク質は残基の挿入を有しうる。これは、典型的には、ポリペプチドにおける少なくとも1つの残基の付加を伴う。これには、ターゲティング(targeting)ペプチドまたはターゲティングポリペプチドの挿入または単なる単一残基の挿入が含まれうる。融合タンパク質と呼ばれる末端付加については後述する。
【0088】
「生物学的に機能的な等価物」という用語は、当技術分野においてよく理解されており、本明細書においてもさらに詳述する。したがって、約70%~約80%、または約81%~約90%、さらには約91%~約99%のアミノ酸が、対照ポリペプチドのアミノ酸と同一であるか機能的に等価である配列は、そのタンパク質の生物学的活性が維持されている限り、包含される。組換えタンパク質は、一定の局面において、対応するネイティブタンパク質に対する生物学的に機能的な等価物でありうる。
【0089】
アミノ酸配列および核酸配列が追加残基、例えば追加のN末端アミノ酸もしくはC末端アミノ酸、または5'配列もしくは3'配列を含みうること、そしてそれでもなお、その配列が、タンパク質発現が関係する場合であれば生物学的なタンパク質活性の維持を含む上述の基準を満たす限り、本質的に本明細書において開示する配列の一つにおいて説明するとおりであることも理解されるだろう。末端配列の付加は、例えばコード領域の5'部分または3'部分のどちらかに隣接するさまざまな非コード配列を含むか、または遺伝子内に存在することが公知であるさまざまな内部配列、すなわちイントロンを含みうる核酸配列に、特に当てはまる。
【0090】
本明細書において使用する場合、タンパク質またはペプチドは一般に、遺伝子から翻訳される約200アミノ酸超、最大で完全長配列までのタンパク質;約100アミノ酸を超えるポリペプチド;および/または約3~約100アミノ酸のペプチドを指すが、それらに限定されるわけではない。便宜上、「タンパク質」、「ポリペプチド」および「ペプチド」という用語は、本明細書において相互可換的に使用される。
【0091】
本明細書において使用する場合、「アミノ酸残基」とは、任意の天然アミノ酸、任意のアミノ酸誘導体、または当技術分野において公知である任意のアミノ酸模倣物(mimic)を指す。一定の態様において、タンパク質またはペプチドの残基は、アミノ酸残基の配列を中断する非アミノ酸配列を何も持たず、連続的である。別の態様では、配列が1つまたは複数の非アミノ酸部分を含みうる。特定の態様では、タンパク質またはペプチドの残基の配列が、1つまたは複数の非アミノ酸部分で中断されていてもよい。
【0092】
したがって「タンパク質またはペプチド」という用語は、天然タンパク質中に見いだされる20種の一般的アミノ酸のうちの少なくとも1つ、または少なくとも1つの修飾アミノ酸もしくは異常アミノ酸を含む、アミノ酸配列を包含する。
【0093】
本発明の一定の態様は融合タンパク質に関する。これらの分子は、N末端またはC末端において異種ドメインに連結された治療タンパク質を有しうる。例えば融合物には、異種宿主におけるタンパク質の組換え発現が可能になるように、他の種からのリーダー配列も使用しうる。他の有用な融合物は、タンパク質の精製が容易になるように、好ましくは切断可能な、血清アルブミンアフィニティータグもしくは6つのヒスチジン残基などといったタンパク質アフィニティータグ、または抗体エピトープなどの免疫学的に活性なドメインの付加を含む。アフィニティータグの非限定的な例として、ポリヒスチジン、キチン結合タンパク質(CBP)、マルトース結合タンパク質(MBP)、およびグルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)が挙げられる。
【0094】
融合タンパク質を作製する方法は当業者には周知である。そのようなタンパク質は、例えば完全な融合タンパク質のデノボ合成によって、または異種ドメインをコードするDNA配列の取り付けと、それに続く無傷の融合タンパク質の発現とによって、生産することができる。
【0095】
親タンパク質の機能的活性を回復する融合タンパク質の生産は、タンデムにつながれたポリペプチド間に接合されるペプチドリンカーをコードする橋渡しDNAセグメントで遺伝子をつなぐことによって、容易にすることができる。リンカーは、結果として生じる融合タンパク質の適正なフォールディングを可能とするのに十分な長さのものであるだろう。
【0096】
IV. スプライシング修飾剤
代表的なスプライス修飾剤はLMI070(5-(1H-ピラゾール-4-イル)-2-(6-((2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)オキシ)ピリダジン-3-イル)フェノール;スピンラザ(Spinraza)(商標);Novartis 31 )である。これは血液脳関門を透過することができ、以下の構造を有する。
【0097】
新規エクソンがLMI070の存在下でのみ包含され、本開示のシステムにおける遺伝子発現の制御に使用することができる、選択的スプライシングイベントの例としては、SF3B3(chr16:70,526,657~70,529,199)、BENC1(chr17:42,810,759~42,811,797)、GXYLT1(chr12:42,087,786~42,097,614)、SKP1(chr5:134,173,809~134,177,053)、C12orf4(chr12:4,536,017~4,538,508)、SSBP1(chr7:141,739,167~141,742,229)、RARS(chr5:168,517,815~168,519,190)、PDXDC2P(chr16:70,030,988~70,031,968)、STRADB(chr2:201,469,953~201,473,076)、WNK1(chr12:894,562~896,732)、WDR27(chr6:169,660,663~169,662,424)、CIP2A(chr3:108,565,355~108,566,638)、IFT57(chr3:108,191,521~108,206,696)、WDR27(chr6:169,660,649~169,662,458)、HTT(chr4:3,212,555~3,214,145)、SKA2(chr17:59,112,228~59,119,514)、EVC(chr4:5,733,318~5,741,822)、DYRK1A(chr21:37,420,144~37,473,056)、GNAQ(chr9:77,814,652~77,923,557)、ZMYM6(chr1:35,019,257~35,020,472)、CYB5B(chr16:69,448,031~69,459,160)、MMS22L(chr6:97,186,342~97,229,533)、MEMO1(chr2:31,883,262~31,892,301)およびPNISR(chr6:99,416,278~99,425,413)が挙げられるが、それらに限定されるわけではない。LMI070の存在下では新規エクソンの包含が強化され、本開示のシステムにおける遺伝子発現の制御に使用することができる、選択的スプライシングイベントの例としては、CACNA2D1(chr7:82,066,406~82,084,958)、SSBP1(chr7:141,739,083~141,742,248)、DDX42(chr17:63,805,048~63,806,672)、ASAP1(chr8:130,159,817~130,167,688)、DUXAP10(chr14:19,294,564~19,307,199)、AVL9(chr7:32,558,783~32,570,372)、DYRK1A(chr21:37,419,920~37,472,960)、FAM3A(chrX:154,512,311~154,512,939)、FHOD3(chr18:36,740,620~36,742,886)、TBCA(chr5:77,707,994~77,777,000)、MZT1(chr13:72,718,939~72,727,611)、LINC01296(chr14:19,092,877~19,096,652)、SF3B3(chr16:70,541,627~70,544,553)、SAFB(chr19:5,654,060~5,654,457)、GCFC2(chr2:75,702,163~75,706,652)、MRPL45(chr17:38,306,450~38,319,088)、SPIDR(chr8:47,260,788~47,280,196)、DUXAP8(chr22:15,815,315~15,828,713)、PDXDC1(chr16:15,008,772~15,009,763)、MAN1A2(chr1:117,442,104~117,461,030)、RAF1(chr3:12,600,376~12,604,350)およびERGIC3(chr20:35,548,787~35,554,452)が挙げられるが、それらに限定されるわけではない。上記のリストについて、各ゲノム位置は、LMI070が標的とする上流および下流のエクソンおよび介在イントロン配列を含む。
【0098】
例えば以下に挙げるように、LMI070などのスプライス修飾剤の類似体であって同様に使用することができるものも含まれる:6-(ナフタレン-2-イル)-N-(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)ピリダジン-3-アミン、6-(ベンゾ[b]チオ-フェン-2-イル)-N-メチル-N-(2,2,6,6-テトラ-メチルピペリジン-4-イル)ピリダジン-3-アミン、2-(6-(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イルアミノ)-ピリダジン-3-イル)フェノール、2-(6-(メチル-(2,2,6,6-テトラ-メチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)ベンゾ[b]-チオフェン-5-カルボニトリル、6-(キノリン-3-イル)-N-(2,2,6,6-テトラメチル-ピペリジン-4-イル)ピリダジン-3-アミン、3-(ベンゾ[b]-チオフェン-2-イル)-6-(2,2,6,6-テトラ-メチルピペリジン-4-イルオキシ)ピリダジン、2-(6-(メチル-(2,2,6,6-テトラ-メチルピペリジン-4-イル)アミノ)-ピリダジン-3-イル)フェノール、6-(6-(メチル-(2,2,6,6-テトラ-メチルピペリジン-4-イル)アミノ)-ピリダジン-3-イル)ナフタレン-2-オール、6-(ベンゾ[b]-チオフェン-2-イル)-N-(2,2,6,6-テトラ-メチルピペリジン-4-イル)ピリダジン-3-アミン、7-(6-((2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)オキシ)ピリダジン-3-イル)イソキノリン、6-(6-((2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)オキシ)ピリダジン-3-イル)イソキノリン、N-メチル-6-(キノリン-7-イル)-N-(2,2,6,6-テトラメチル-ピペリジン-4-イル)ピリダジン-3-アミン、N-メチル-6-(キノリン-6-イル)-N-(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)ピリダジン-3-アミン、6-(イソキノリン-7-イル)-N-メチル-N-(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)ピリダジン-3-アミン、6-(イソキノリン-6-イル)-N-メチル-N-(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)ピリダジン-3-アミン、6-(イミダゾ[1,2-a]ピリジン-6-イル-ピリダジン-3-イル)-メチル-(2,2,6,6-テトラメチル-ピペリジン-4-イル)-アミン、メチル-[6-(6-フェニル-ピリジン-3-イル)-ピリダジン-3-イル]-(2,2,6,6-テトラメチル-ピペリジン-4-イル)-アミン、メチル-[6-(6-ピロール-1-イル-ピリジン-3-イル)-ピリダジン-3-イル]-(2,2,6,6-テトラメチル-ピペリジン-4-イル)-アミン、メチル-[6-(6-ピラゾール-1-イル-ピリジン-3-イル)-ピリダジン-3-イル]-(2,2,6,6-テトラメチル-ピペリジン-4-イル)-アミン、メチル-(6-キノキサリン-2-イル-ピリダジン-3-イル)-(2,2,6,6-テトラメチル-ピペリジン-4-イル)-アミン、メチル-(6-キノリン-3-イル-ピリダジン-3-イル)-(2,2,6,6-テトラメチル-ピペリジン-4-イル)-アミン、N-メチル-6-(フタラジン-6-イル)-N-(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)ピリダジン-3-アミン、6-(ベンゾ[c][1,2,5]オキサ-ジアゾール-5-イル)-N-(2,2,6,6-テトラメチル-ピペリジン-4-イル)ピリダジン-3-アミン、6-(ベンゾ[d]チアゾール-5-イル)-N-(2,2,6,6-テトラメチル-ピペリジン-4-イル)ピリダジン-3-アミン、6-(2-メチルベンゾ-[d]オキサゾール-6-イル)-N-(2,2,6,6-テトラメチル-ピペリジン-4-イル)ピリダジン-3-アミン、3-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)ナフタレン-2-オール、5-クロロ-2-(6-(メチル(1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)フェノール、3-(6-(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イルアミノ)ピリダジン-3-イル)ナフタレン-2-オール、5-クロロ-2-(6-(1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン-4-イルアミノ)ピリダジン-3-イル)フェノール、4-ヒドロキシ-3-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)ベンゾニトリル、3-[6-(2,2,6,6-テトラメチル-ピペリジン-4-イルオキシ)-ピリダジン-3-イル]-ナフタレン-2-オール、2-{6-[メチル-(2,2,6,6-テトラメチル-ピペリジン-4-イル)-アミノ]-ピリダジン-3-イル}-4-トリフルオロメチル-フェノール、2-フルオロ-6-{6-[メチル-(2,2,6,6-テトラメチル-ピペリジン-4-イル)-アミノ]-ピリダジン-3-イル}-フェノール、3,5-ジメトキシ-2-{6-[メチル-(2,2,6,6-テトラメチル-ピペリジン-4-イル)-アミノ]-ピリダジン-3-イル}-フェノール、4,5-ジメトキシ-2-{6-[メチル-(2,2,6,6-テトラメチル-ピペリジン-4-イル)-アミノ]-ピリダジン-3-イル}-フェノール、5-メトキシ-2-{6-[メチル-(2,2,6,6-テトラメチル-ピペリジン-4-イル)-アミノ]ピリダジン-3-イル}-フェノール、4,5-ジフルオロ-2-{6-[メチル-(2,2,6,6-テトラメチル-ピペリジン-4-イル)-アミノ]-ピリダジン-3-イル}-フェノール、5-フルオロ-2-{6-[メチル-(2,2,6,6-テトラメチル-ピペリジン-4-イル)-アミノ]-ピリダジン-3-イル}-フェノール、3-ヒドロキシ-4-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)ベンゾニトリル、1-アリル-6-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)ナフタレン-2-オール、6-(ベンゾ[b]チオフェン-2-イル)-N-(1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン-4-イル)ピリダジン-3-アミン、N-アリル-3-ヒドロキシ-4-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)ベンズアミド、2-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)-5-(1H-ピラゾール-1-イル)フェノール、5-(5-メチル-オキサゾール-2-イル)-2-{6-[メチル-(2,2,6,6-テトラメチル-ピペリジン-4-イル)-アミノ]ピリダジン-3-イル}-フェノール、5-(4-ヒドロキシメチル)-1H-ピラゾール-1-イル)-2-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)フェノール、5-(1H-イミダゾール-1-イル)-2-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチル-ピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)フェノール、5-(4-アミノ-1H-ピラゾール-1-イル)-2-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)フェノール、5-(4-アミノ-1H-ピラゾール-1-イル)-2-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)フェノール、5-(3-アミノ-ピラゾール-1-イル)-2-{6-[メチル-(2,2,6,6-テトラメチル-ピペリジン-4-イル)-アミノ]ピリダジン-3-イル}-フェノール、2-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)-5-(1-(2-モルホリノ-エチル)-1H-ピラゾール-4-イル)フェノール、
2-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)-5-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)フェノール、5-(5-アミノ-1H-ピラゾール-1-イル)-2-(6-(メチル-(2,2,6,6-テトラメチル-ピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)フェノール、2-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)-4-(1H-ピラゾール-1-イル)フェノール、2-{6-[(2-ヒドロキシ-エチル)-(2,2,6,6-テトラメチル-ピペリジン-4-イル)-アミノ]ピリダジン-3-イル}-5-ピラゾール-1-イル-フェノール、2-(6-(ピペリジン-4-イルオキシ)ピリダジン-3-イル)-5-(1H-ピラゾール-1-イル)フェノール、2-(6-(((2S,4R,6R)-2,6-ジメチルピペリジン-4-イル)オキシ)ピリダジン-3-イル)-5-(1H-ピラゾール-1-イル)フェノール、2-(6-((-2,6-ジメチルピペリジン-4-イル)オキシ)ピリダジン-3-イル)-5-(1H-ピラゾール-1-イル)フェノール、2-(6-((-2,6-ジメチルピペリジン-4-イル)オキシ)ピリダジン-3-イル)-5-(1H-ピラゾール-1-イル)フェノール、5-(1H-ピラゾール-1-イル)-2-(6-(ピロリジン-3-イルオキシ)ピリダジン-3-イル)フェノール、2-(6-((-2-メチルピペリジン-4-イル)オキシ)ピリダジン-3-イル)-5-(1H-ピラゾール-1-イル)フェノール、(S)-5-(1H-ピラゾール-1-イル)-2-(6-(ピロリジン-3-イルメトキシ)ピリダジン-3-イル)フェノール、(R)-5-(1H-ピラゾール-1-イル)-2-(6-(ピロリジン-3-イルメトキシ)ピリダジン-3-イル)フェノール、2-(6-((3-フルオロピペリジン-4-イル)オキシ)ピリダジン-3-イル)-5-(1H-ピラゾール-1-イル)-フェノール、2-[6-(1,2,2,6,6-ペンタメチル-ピペリジン-4-イルオキシ)-ピリダジン-3-イル]-5-ピラゾール-1-イル-フェノール、5-ピラゾール-1-イル-2-[6-(2,2,6,6-テトラメチル-ピペリジン-4-イルオキシ)-ピリダジン-3-イル]-フェノール、5-(1H-ピラゾール-4-イル)-2-(6-((2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)オキシ)ピリダジン-3-イル)フェノール、2-(6-ピペラジン-1-イル-ピリダジン-3-イル)-5-ピラゾール-1-イル-フェノール、3-[6-(アゼチジン-3-イルアミノ)-ピリダジン-3-イル]-ナフタレン-2-オール、2-[6-(アゼチジン-3-イルアミノ)-ピリダジン-3-イル]-5-ピラゾール-1-イル-フェノール、2-[6-(3,5-ジメチル-ピペラジン-1-イル)-ピリダジン-3-イル]-5-ピラゾール-1-イル-フェノール、2-[6-(7-メチル-2,7-ジアザ-スピロ[4.4]ノナ-2-イル)-ピリダジン-3-イル]-5-ピラゾール-1-イル-フェノール、2-(6-[1,4]ジアゼパン-1-イル-ピリダジン-3-イル)-5-ピラゾール-1-イル-フェノール、2-{6-[4-(2-ヒドロキシ-エチル)-ピペラジン-1-イル]-ピリダジン-3-イル}-5-ピラゾール-1-イル-フェノール、2-[6-(3,6-ジアザ-ビシクロ[3.2.1]オクタ-3-イル)-ピリダジン-3-イル]-5-ピラゾール-1-イル-フェノール、2-[6-(2,7-ジアザ-スピロ[3.5]ノナ-7-イル)-ピリダジン-3-イル]-5-ピラゾール-1-イル-フェノール、2-[6-(3-ヒドロキシ-メチル-ピペラジン-1-イル)-ピリダジン-3-イル]-5-ピラゾール-1-イル-フェノール、2-[6-(1,7-ジアザ-スピロ[4.4]ノナ-7-イル)-ピリダジン-3-イル]-5-ピラゾール-1-イル-フェノール、2-[6-(4-アミノ-4-メチル-ピペリジン-1-イル)-ピリダジン-3-イル]-5-ピラゾール-1-イル-フェノール、2-[6-(3-ジメチル-アミノ-ピペリジン-1-イル)-ピリダジン-3-イル]-5-ピラゾール-1-イル-フェノール、2-[6-(1,2,2,6,6-ペンタメチル-ピペリジン-4-イルアミノ)-ピリダジン-3-イル]-5-ピラゾール-1-イル-フェノール、2-[6-(3,3-ジメチル-ピペラジン-1-イル)-ピリダジン-3-イル]-5-ピラゾール-1-イル-フェノール、2-(6-(7-(2-ヒドロキシエチル)-2,7-ジアザスピロ[4.4]-ノナン-2-イル)ピリダジン-3-イル)-5-(1H-ピラゾール-1-イル)フェノール、2-(6-((3aR,6aS)-ヘキサヒドロピロロ[3,4-c]ピロール-2(1H)-イル)ピリダジン-3-イル)-5-(1H-ピラゾール-1-イル)フェノール、3-(6-(ピペラジン-1-イル)ピリダジン-3-イル)ナフタレン-2,7-ジオール、5-ピラゾール-1-イル-2-[6-(1,2,3,6-テトラヒドロ-ピリジン-4-イル)-ピリダジン-3-イル]-フェノール、2-(6-ピペリジン-4-イル-ピリダジン-3-イル)-5-ピラゾール-1-イル-フェノール、3-(6-(1,2,3,6-テトラ-ヒドロピリジン-4-イル)ピリダジン-3-イル)ナフタレン-2-オール、3-(6-(1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-4-イル)ピリダジン-3-イル)ナフタレン-2,7-ジオール、3-(6-(2,2,6,6-テトラメチル-1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-4-イル)ピリダジン-3-イル)ナフタレン-2,7-ジオール、3-(6-(1-メチル-1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-4-イル)ピリダジン-3-イル)ナフタレン-2,7-ジオール、3-(6-(ピペリジン-4-イル)ピリダジン-3-イル)ナフタレン-2,7-ジオール、3-(6-((2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)オキシ)ピリダジン-3-イル)ナフタレン-2,7-ジオール、3-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)ナフタレン-2,7-ジオール、3-(6-((2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)ナフタレン-2,7-ジオール、[3-(7-ヒドロキシ-6-{6-[メチル-(2,2,6,6-テトラメチル-ピペリジン-4-イル)-アミノ]-ピリダジン-3-イル}-ナフタレン-2-イルオキシ)-プロピル]-カルバミン酸tert-ブチルエステル、7-(3-アミノ-プロポキシ)-3-{6-[メチル-(2,2,6,6-テトラメチル-ピペリジン-4-イル)-アミノ]-ピリダジン-3-イル}-ナフタレン-2-オール、N-[3-(7-ヒドロキシ-6-{6[メチル-(2,2,6,6-テトラメチル-ピペリジン-4-イル)-アミノ]-ピリダジン-3-イル}-ナフタレン-2-イルオキシ)-プロピル]-アセトアミド、7-(3-ヒドロキシプロポキシ)-3-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)ナフタレン-2-オール、7-(3-メトキシプロポキシ)-3-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)ナフタレン-2-オール、7-(2-モルホリノエトキシ)-3-(6-((2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)オキシ)ピリダジン-3-イル)ナフタレン-2-オール、3-(6-(ピペリジン-4-イルメチル)ピリダジン-3-イル)ナフタレン-2-オール、5-(1H-ピラゾール-1-イル)-2-(6-((2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)メチル)ピリダジン-3-イル)フェノール、3-メトキシ-2-(6-(メチル(2,2,6-トリメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)-5-(5-メチルオキサゾール-2-イル)フェノール、2-(6-((6S)-6-((S)-1-ヒドロキシエチル)-2,2-ジメチルピペリジン-4-イルオキシ)ピリダジン-3-イル)-5-(1H-ピラゾール-1-イル)フェノール、7-ヒドロキシ-6-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)-2-ナフトニトリル、3-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)-7-(ピペリジン-1-イルメチル)ナフタレン-2-オール、3-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)-7-(ピロリジン-1-イルメチル)ナフタレン-2-オール、1-ブロモ-6-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)ナフタレン-2,7-ジオール、
1-クロロ-6-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)ナフタレン-2,7-ジオール、7-メトキシ-3-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)ナフタレン-2-オール、7-メトキシ-3-(6-(メチル(1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)ナフタレン-2-オール、7-(3,6-ジヒドロ-2H-ピラン-4-イル)-3-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)ナフタレン-2-オール、3-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)-7-(テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)ナフタレン-2-オール、7-(ジフルオロメチル)-3-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)ナフタレン-2-オール、7-((4-ヒドロキシ-2-メチルブタン-2-イル)オキシ)-3-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)ナフタレン-2-オール、7-(3-ヒドロキシ-3-メチルブトキシ)-3-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)ナフタレン-2-オール、2-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)-5-(1H-ピラゾール-4-イル)ベンゼン-1,3-ジオール、3-メトキシ-2-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)-5-(1H-ピラゾール-4-イル)フェノール、5-(1H-ピラゾール-4-イル)-2-(6-((2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)-3-(トリフルオロメトキシ)フェノール、2-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)-5-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)-3-(トリフルオロメトキシ)フェノール、2-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)-5-(1H-ピラゾール-4-イル)-3-(トリフルオロメトキシ)フェノール、4-(3-ヒドロキシ-4-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)-5-(トリフルオロメトキシ)フェニル)-1-メチルピリジン-2(1H)-オン、3-メトキシ-2-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)-5-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)フェノール、3-メトキシ-2-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)-5-(5,6,7,8-テトラヒドロイミダゾ[1,2-a]ピリジン-3-イル)フェノール、3-メトキシ-2-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)-5-(ピリジン-3-イル)フェノール、5-(1-シクロペンチル-1H-ピラゾール-4-イル)-3-メトキシ-2-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)フェノール、3',5-ジメトキシ-4-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)-[1,1'-ビフェニル]-3-オール、3-(ベンジルオキシ)-2-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)-5-(5-メチルオキサゾール-2-イル)フェノール、3-エトキシ-2-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)-5-(5-メチルオキサゾール-2-イル)フェノール、3-(シクロプロピルメトキシ)-2-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)-ピリダジン-3-イル)-5-(5-メチルオキサゾール-2-イル)フェノール、2-メチル-5-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-6-オール、5-クロロ-2-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)フェノール、5-(1H-ピラゾール-1-イル)-2-(6-((2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)フェノール、3-ヒドロキシ-4-(6-((2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)ベンゾニトリル、2-(6-((2,2-ジメチルピペリジン-4-イル)オキシ)ピリダジン-3-イル)-5-(1H-ピラゾール-1-イル)フェノール、2-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)-4-(1H-ピラゾール-4-イル)フェノール、2-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)-4-(4,5,6,7-テトラヒドロピラゾロ[1,5-a]ピリジン-3-イル)フェノール、2-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)-4-(4,5,6,7-テトラヒドロピラゾロ[1,5-a]ピラジン-3-イル)フェノール、4-(1H-インドール-2-イル)-2-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)フェノール、4-(シクロペンタ-1-エン-1-イル)-2-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)フェノール、2-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)-4-(1H-ピラゾール-3-イル)フェノール、4-(4-ヒドロキシ-3-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)フェニル)ピリジン-2-オール、4-(4-ヒドロキシ-3-(6-((2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)オキシ)ピリダジン-3-イル)フェニル)-1-メチルピリジン-2(1H)-オン、4-(4-ヒドロキシ-3-(6-((2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)オキシ)ピリダジン-3-イル)フェニル)ピリジン-2-オール、5-(1H-インダゾール-7-イル)-2-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)フェノール、4-クロロ-2-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)-5-(1H-ピラゾール-4-イル)フェノール、4-フルオロ-2-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)-5-(1H-ピラゾール-4-イル)フェノール、5-フルオロ-4-(1H-イミダゾール-4-イル)-2-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)フェノール、5-フルオロ-2-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)-4-(1H-ピラゾール-4-イル)フェノール、5-フルオロ-2-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)-4-(1H-ピラゾール-5-イル)フェノール、6-ヒドロキシ-5-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-オン、6-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)-1,4-ジヒドロインデノ[1,2-c]ピラゾール-7-オール、6-ヒドロキシ-5-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-オンオキシム塩酸塩、5-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1,6-ジオール、2-アミノ-6-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)-8H-インデノ[1,2-d]チアゾール-5-オール塩酸塩、9-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)-5,6-ジヒドロイミダゾ[5,1-a]イソキノリン-8-オール塩酸塩、4-ヒドロキシ-3-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)-N-((1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)メチル)ベンズアミド、4-(4-(ヒドロキシメチル)-1H-ピラゾール-1-イル)-2-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)フェノール、5-(1H-ピラゾール-4-イル)-2-(6-((2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)メチル)ピリダジン-3-イル)フェノール、6-(3-(ベンジルオキシ)イソキノリン-6-イル)-N-メチル-N-(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)ピリダジン-3-アミン、6-(1-(ベンジルオキシ)イソキノリン-7-イル)-N-メチル-N-(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)ピリダジン-3-アミン、3-フルオロ-5-(2-メトキシピリジン-4-イル)-2-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)フェノール塩酸塩、4-(3-フルオロ-5-ヒドロキシ-4-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)フェニル)ピリジン-2(1H)-オン塩酸塩、4-(3-フルオロ-5-ヒドロキシ-4-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)フェニル)-1-メチルピリジン-2(1H)-オン塩酸塩、5-(3-フルオロ-5-ヒドロキシ-4-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)フェニル)-1-メチルピリジン-2(1H)-オン塩酸塩、3-フルオロ-5-(1H-ピラゾール-4-イル)-2-(6-((2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)オキシ)ピリダジン-3-イル)フェノール塩酸塩、5-クロロ-3-フルオロ-2-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)フェノール塩酸塩、3-フルオロ-2-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)-5-(1H-ピラゾール-4-イル)フェノール塩酸塩、3-フルオロ-2-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)-5-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)フェノール塩酸塩、5-(5-メトキシピリジン-3-イル)-2-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)フェノール、5-(3-ヒドロキシ-4-(6-メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)フェニル)ピリジン-2-オール、4-(3-ヒドロキシ-4-(6-メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)フェニル)ピリジン-2-オール、5-(6-メトキシピリジン-3-イル)-2-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)フェノール、5-(3-ヒドロキシ-4-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)フェニル)-3-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-オール、5-(3-ヒドロキシ-4-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)フェニル)-1-メチルピリジン-2(1H)-オン、4-(3-ヒドロキシ-4-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)フェニル)-1-メチルピリジン-2(1H)-オン、5-(2-メトキシピリジン-4-イル)-2-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)フェノール、4-(3-ヒドロキシ-4-(6-((2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)オキシ)ピリダジン-3-イル)フェニル)ピリジン-2-オール、5-(6-(ジメチルアミノ)ピリジン-3-イル)-2-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)フェノール、4-(3-ヒドロキシ-4-(6-((2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)オキシ)ピリダジン-3-イル)フェニル)-1-メチルピリジン-2(1H)-オン、2-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)-5-(ピリミジン-5-イル)フェノール、
5-(3-ヒドロキシ-4-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)フェニル)ピリジン-3-オール、1-シクロプロピル-4-(3-ヒドロキシ-4-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)フェニル)ピリジン-2(1H)-オン、2-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)-5-(1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-4-イル)フェノール、5-(シクロペンタ-1-エン-1-イル)-2-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)フェノール、5-(3,6-ジヒドロ-2H-ピラン-4-イル)-2-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)フェノール、5-(イミダゾ[1,5-a]ピリジン-7-イル)-2-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)フェノール、5-(イミダゾ[1,2-a]ピリジン-7-イル)-2-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)フェノール、2-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)-5-(2-メチルピリジン-4-イル)フェノール、5-(1H-イミダゾール-2-イル)-2-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)フェノール、5-(1H-イミダゾール-4-イル)-2-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)フェノール、5-(イミダゾ[1,2-a]ピラジン-3-イル)-2-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)フェノール、2-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)-5-(5,6,7,8-テトラヒドロイミダゾ[1,2-a]ピラジン-3-イル)フェノール、2-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)-5-(4-メチル-1H-イミダゾール-2-イル)フェノール、2-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)-5-(1-メチル-1H-イミダゾール-4-イル)フェノール、2-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)-5-(1-メチル-1H-イミダゾール-5-イル)フェノール、2-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)-5-(4-ニトロ-1H-イミダゾール-2-イル)フェノール、2-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)-5-(2-メチル-1H-イミダゾール-4-イル)フェノール、5-(1,2-ジメチル-1H-イミダゾール-4-イル)-2-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)フェノール、1-(3-ヒドロキシ-4-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)フェニル)-1H-ピラゾール-4-カルボキサミド、2-(6-((3aR,6aS)-5-(2-ヒドロキシエチル)ヘキサヒドロピロロ[3,4-c]ピロール-2(1H)-イル)ピリダジン-3-イル)-5-(1H-ピラゾール-4-イル)フェノール、2-(6-((3aR,6aS)-ヘキサヒドロピロロ[3,4-c]ピロール-2(1H)-イル)ピリダジン-3-イル)-5-(1H-ピラゾール-4-イル)フェノール、2-(6-((3aR,6aS)-5-メチルヘキサヒドロピロロ[3,4-c]ピロール-2(1H)-イル)ピリダジン-3-イル)-5-(1H-ピラゾール-4-イル)フェノール、4-(3-ヒドロキシ-4-(6-(5-メチルヘキサヒドロピロロ[3,4-c]ピロール-2(1H)-イル)ピリダジン-3-イル)フェニル)-1-メチルピリジン-2(1H)-オン、4-(3-ヒドロキシ-4-(6-((3aR,6aR)-1-メチルヘキサヒドロピロロ[3,4-b]ピロール-5(1H)-イル)ピリダジン-3-イル)フェニル)-1-メチルピリジン-2(1H)-オン、2-(6-(2,7-ジアザスピロ[4.5]デカン-2-イル)ピリダジン-3-イル)-5-(1H-ピラゾール-4-イル)フェノール、および4-(4-(6-(2,7-ジアザスピロ[4.5]デカン-2-イル)ピリダジン-3-イル)-3-ヒドロキシフェニル)-1-メチルピリジン-2(1H)-オン。
【0099】
他の代表的スプライス修飾剤は、以下の構造を有するRG7916(Roche/PTC/SMAF35、7-(4,7-ジアザスピロ[2.5]オクタン-7-イル)-2-(2,8-ジメチルイミダゾ[1,2-b]ピリダジン-6-イル)-4H-ピリド[1,2-a]ピリミジン-4-オン)である。
【0100】
他の代表的スプライス修飾剤は、以下の構造を有するRG7800(Roche)である。
【0101】
例えば以下に挙げるように、RG7916およびRG7800などのスプライス修飾剤の類似体であって、同様に使用することができるものも含まれる:2-(2-メチルイミダゾ[1,2-b]ピリダジン-6-イル)-7-(4-メチルピペラジン-1-イル)ピリド[1,2-a]ピリミジン-4-オン、7-[(8aR)-3,4,6,7,8,8a-ヘキサヒドロ-1H-ピロロ[1,2-a]ピラジン-2-イル]-2-(2-メチルイミダゾ[1,2-b]ピリダジン-6-イル)ピリド[1,2-a]ピリミジン-4-オン、7-[(8aS)-3,4,6,7,8,8a-ヘキサヒドロ-1H-ピロロ[1,2-a]ピラジン-2-イル]-2-(2,8-ジメチルイミダゾ[1,2-b]ピリダジン-6-イル)ピリド[1,2-a]ピリミジン-4-オン、7-[(8aR)-3,4,6,7,8,8a-ヘキサヒドロ-1H-ピロロ[1,2-a]ピラジン-2-イル]-2-(2,8-ジメチルイミダゾ[1,2-b]ピリダジン-6-イル)ピリド[1,2-a]ピリミジン-4-オン、7-[(8aS)-8a-メチル-1,3,4,6,7,8-ヘキサヒドロピロロ[1,2-a]ピラジン-2-イル]-2-(2,8-ジメチルイミダゾ[1,2-b]ピリダジン-6-イル)ピリド[1,2-a]ピリミジン-4-オン、7-[(8aR)-8a-メチル-1,3,4,6,7,8-ヘキサヒドロピロロ[1,2-a]ピラジン-2-イル]-2-(2,8-ジメチルイミダゾ[1,2-b]ピリダジン-6-イル)ピリド[1,2-a]ピリミジン-4-オン、2-(2,8-ジメチルイミダゾ[1,2-b]ピリダジン-6-イル)-7-[(3S,5R)-3,5-ジメチルピペラジン-1-イル]ピリド[1,2-a]ピリミジン-4-オン、2-(2,8-ジメチルイミダゾ[1,2-b]ピリダジン-6-イル)-7-[(3S)-3-メチルピペラジン-1-イル]ピリド[1,2-a]ピリミジン-4-オン、2-(2,8-ジメチルイミダゾ[1,2-b]ピリダジン-6-イル)-7-[(3R)-3-メチルピペラジン-1-イル]ピリド[1,2-a]ピリミジン-4-オン、7-(1,4-ジアゼパン-1-イル)-2-(2,8-ジメチルイミダゾ[1,2-b]ピリダジン-6-イル)ピリド[1,2-a]ピリミジン-4-オン、2-(2-メチルイミダゾ[1,2-b]ピリダジン-6-イル)-7-[(3S)-3-メチルピペラジン-1-イル]ピリド[1,2-a]ピリミジン-4-オン、2-(2-メチルイミダゾ[1,2-b]ピリダジン-6-イル)-7-[(3R)-3-メチルピペラジン-1-イル]ピリド[1,2-a]ピリミジン-4-オン、7-(1,4-ジアゼパン-1-イル)-2-(2-メチルイミダゾ[1,2-b]ピリダジン-6-イル)ピリド[1,2-a]ピリミジン-4-オン、7-[(3R,5S)-3,5-ジメチルピペラジン-1-イル]-2-(2-メチルイミダゾ[1,2-b]ピリダジン-6-イル)ピリド[1,2-a]ピリミジン-4-オン、7-[(8aS)-3,4,6,7,8,8a-ヘキサヒドロ-1H-ピロロ[1,2-a]ピラジン-2-イル]-2-(2-メチルイミダゾ[1,2-b]ピリダジン-6-イル)ピリド[1,2-a]ピリミジン-4-オン、7-[(8aS)-8a-メチル-1,3,4,6,7,8-ヘキサヒドロピロロ[1,2-a]ピラジン-2-イル]-2-(2-メチルイミダゾ[1,2-b]ピリダジン-6-イル)ピリド[1,2-a]ピリミジン-4-オン、7-[(8aR)-8a-メチル-1,3,4,6,7,8-ヘキサヒドロピロロ[1,2-a]ピラジン-2-イル]-2-(2-メチルイミダゾ[1,2-b]ピリダジン-6-イル)ピリド[1,2-a]ピリミジン-4-オン、2-(2,8-ジメチルイミダゾ[1,2-b]ピリダジン-6-イル)-7-[(3R)-3-ピロリジン-1-イルピロリジン-1-イル]ピリド[1,2-a]ピリミジン-4-オン、7-(4,7-ジアザスピロ[2.5]オクタン-7-イル)-2-(2-メチルイミダゾ[1,2-b]ピリダジン-6-イル)ピリド[1,2-a]ピリミジン-4-オン、7-(4,7-ジアザスピロ[2.5]オクタン-7-イル)-2-(2,8-ジメチルイミダゾ[1,2-b]ピリダジン-6-イル)ピリド[1,2-a]ピリミジン-4-オン、2-(2-メチルイミダゾ[1,2-b]ピリダジン-6-イル)-7-[(3R)-3-ピロリジン-1-イルピロリジン-1-イル]ピリド[1,2-a]ピリミジン-4-オン、2-(2,8-ジメチルイミダゾ[1,2-b]ピリダジン-6-イル)-7-(3,3-ジメチルピペラジン-1-イル)ピリド[1,2-a]ピリミジン-4-オン、7-(3,3-ジメチルピペラジン-1-イル)-2-(2-メチルイミダゾ[1,2-b]ピリダジン-6-イル)ピリド[1,2-a]ピリミジン-4-オン、2-(2,8-ジメチルイミダゾ[1,2-b]ピリダジン-6-イル)-9-メチル-7-[(3S)-3-メチルピペラジン-1-イル]ピリド[1,2-a]ピリミジン-4-オン、2-(2,8-ジメチルイミダゾ[1,2-b]ピリダジン-6-イル)-9-メチル-7-[(3R)-3-メチルピペラジン-1-イル]ピリド[1,2-a]ピリミジン-4-オン、2-(2,8-ジメチルイミダゾ[1,2-b]ピリダジン-6-イル)-7-[(3R,5S)-3,5-ジメチルピペラジン-1-イル]-9-メチル-ピリド[1,2-a]ピリミジン-4-オン、2-(2,8-ジメチルイミダゾ[1,2-b]ピリダジン-6-イル)-7-(3,3-ジメチルピペラジン-1-イル)-9-メチル-ピリド[1,2-a]ピリミジン-4-オン、7-(4,7-ジアザスピロ[2.5]オクタン-7-イル)-2-(2,8-ジメチルイミダゾ[1,2-b]ピリダジン-6-イル)-9-メチル-ピリド[1,2-a]ピリミジン-4-オン、2-(2,8-ジメチルイミダゾ[1,2-b]ピリダジン-6-イル)-7-[(3S,5S)-3,5-ジメチルピペラジン-1-イル]ピリド[1,2-a]ピリミジン-4-オン、2-(2,8-ジメチルイミダゾ[1,2-b]ピリダジン-6-イル)-7-[(3S)-3-ピロリジン-1-イルピロリジン-1-イル]ピリド[1,2-a]ピリミジン-4-オン、2-(2-メチルイミダゾ[1,2-b]ピリダジン-6-イル)-7-[(3S)-3-ピロリジン-1-イルピロリジン-1-イル]ピリド[1,2-a]ピリミジン-4-オン、7-[(3S,5S)-3,5-ジメチルピペラジン-1-イル]-2-(2-メチルイミダゾ[1,2-b]ピリダジン-6-イル)ピリド[1,2-a]ピリミジン-4-オン、9-メチル-2-(2-メチルイミダゾ[1,2-b]ピリダジン-6-イル)-7-[(3S)-3-メチルピペラジン-1-イル]ピリド[1,2-a]ピリミジン-4-オン、9-メチル-2-(2-メチルイミダゾ[1,2-b]ピリダジン-6-イル)-7-[(3R)-3-メチルピペラジン-1-イル]ピリド[1,2-a]ピリミジン-4-オン、7-[(3R,5S)-3,5-ジメチルピペラジン-1-イル]-9-メチル-2-(2-メチルイミダゾ[1,2-b]ピリダジン-6-イル)ピリド[1,2-a]ピリミジン-4-オン、7-(3,3-ジメチルピペラジン-1-イル)-9-メチル-2-(2-メチルイミダゾ[1,2-b]ピリダジン-6-イル)ピリド[1,2-a]ピリミジン-4-オン、7-(4,7-ジアザスピロ[2.5]オクタン-7-イル)-9-メチル-2-(2-メチルイミダゾ[1,2-b]ピリダジン-6-イル)ピリド[1,2-a]ピリミジン-4-オン、7-[(3S,5S)-3,5-ジメチルピペラジン-1-イル]-9-メチル-2-(2-メチルイミダゾ[1,2-b]ピリダジン-6-イル)ピリド[1,2-a]ピリミジン-4-オン、および7-[(3R)-3-エチルピペラジン-1-イル]-2-(2-メチルイミダゾ[1,2-b]ピリダジン-6-イル)ピリド[1,2-a]ピリミジン-4-オン、7-[(8aS)-3,4,6,7,8,8a-ヘキサヒドロ-1H-ピロロ[1,2-a]ピラジン-2-イル]-2-(2,8-ジメチルイミダゾ[1,2-b]ピリダジン-6-イル)ピリド[1,2-a]ピリミジン-4-オン、7-[(8aR)-3,4,6,7,8,8a-ヘキサヒドロ-1H-ピロロ[1,2-a]ピラジン-2-イル]-2-(2,8-ジメチルイミダゾ[1,2-b]ピリダジン-6-イル)ピリド[1,2-a]ピリミジン-4-オン、2-(2,8-ジメチルイミダゾ[1,2-b]ピリダジン-6-イル)-7-[(3S,5R)-3,5-ジメチルピペラジン-1-イル]ピリド[1,2-a]ピリミジン-4-オン、7-[(3R,5S)-3,5-ジメチルピペラジン-1-イル]-2-(2-メチルイミダゾ[1,2-b]ピリダジン-6-イル)ピリド[1,2-a]ピリミジン-4-オン、7-[(8aS)-3,4,6,7,8,8a-ヘキサヒドロ-1H-ピロロ[1,2-a]ピラジン-2-イル]-2-(2-メチルイミダゾ[1,2-b]ピリダジン-6-イル)ピリド[1,2-a]ピリミジン-4-オン、2-(2,8-ジメチルイミダゾ[1,2-b]ピリダジン-6-イル)-9-メチル-7-[(3S)-3-メチルピペラジン-1-イル]ピリド[1,2-a]ピリミジン-4-オン、7-フルオロ-2-(2-メチルイミダゾ[1,2-b]ピリダジン-6-イル)ピリド[1,2-a]ピリミジン-4-オン、2-(2,8-ジメチルイミダゾ[1,2-b]ピリダジン-6-イル)-7-フルオロ-ピリド[1,2-a]ピリミジン-4-オン、7-フルオロ-9-メチル-2-(2-メチルイミダゾ[1,2-b]ピリダジン-6-イル)ピリド[1,2-a]ピリミジン-4-オン、2-(2,8-ジメチルイミダゾ[1,2-b]ピリダジン-6-イル)-7-フルオロ-9-メチル-ピリド[1,2-a]ピリミジン-4-オン、またはそれらの薬学的に許容される塩。
【0102】
V. 投与の方法
本明細書において記載の方法または使用によって任意の適切な細胞または哺乳動物に投与または処置を行うことができる。典型的には、疾患状態と関連する異常タンパク質または正常でないタンパク質を有しまたは発現すると疑われる哺乳動物が、本明細書において記載の方法を必要とする。
【0103】
哺乳動物の非限定的な例として、ヒト、非ヒト霊長類(類人猿、テナガザル、チンパンジー、オランウータン、サル(monkey)、マカクなど)、家畜(例えばイヌおよびネコ)、農用動物(例えばウマ、ウシ、ヤギ、ヒツジ、ブタ)および実験動物(例えばマウス、ラット、ウサギ、モルモット)が挙げられる。一定の態様において、哺乳動物はヒトである。一定の態様において、哺乳動物は非齧歯類哺乳動物(例えばヒト、ブタ、ヤギ、ヒツジ、ウマ、イヌなど)である。一定の態様において、非齧歯類哺乳動物はヒトである。哺乳動物は任意の齢または任意の発育段階にあることができる(例えば成人、ティーンエイジャー、小児、乳児または子宮内の哺乳動物)。哺乳動物は雄または雌であることができる。一定の態様において、哺乳動物は、例えば疾患状態と関連する異常タンパク質もしくは正常でないタンパク質を有するもしくは発現する動物モデル、またはタンパク質の発現が不十分であってそれが疾患の原因となる動物モデルなどといった、動物疾患モデルであることができる。
【0104】
本明細書において記載する方法または組成物で処置される哺乳動物(対象)には、成人(18歳以上)および小児(18歳未満)が含まれる。成人には高齢者が含まれる。代表的な成人は50歳以上である。小児の年齢は、1~2歳または2~4歳、4~6歳、6~18歳、8~10歳、10~12歳、12~15歳および15~18歳の範囲にある。小児には乳児も含まれる。乳児は典型的には1~12月齢の範囲にある。
【0105】
一定の態様において、本方法は、本明細書において説明するように、複数のウイルス粒子またはナノ粒子を哺乳動物に投与する工程を含み、神経変性疾患などの疾患状態の1つまたは複数の症状の重症度、頻度、進行または発症の時間を、減少させるか、低減させるか、防止するか、阻害するか、または遅延させる。一定の態様において、本方法は、神経変性疾患などの疾患状態の有害な症状を処置するために、複数のウイルス粒子またはナノ粒子を哺乳動物に投与する工程を含む。一定の態様において、本方法は、神経変性疾患などの疾患状態の悪化または進行または逆転および有害な症状を安定化し、遅延させ、または防止するために、複数のウイルス粒子またはナノ粒子を哺乳動物に投与する工程を含む。
【0106】
一定の態様において、本方法は、本明細書において説明するように、複数のウイルス粒子またはナノ粒子を中枢神経系またはその一部分に投与する工程を含み、神経変性疾患などの疾患状態の1つまたは複数の症状の重症度、頻度、進行または発症の時間を減少させるか、低減させるか、防止するか、阻害するか、または少なくとも約5~約10日、約10~約25日、約25~約50日もしくは約50~約100日は遅延させる。
【0107】
一定の態様において、症状または有害な効果は、初期症状、中期症状もしくは後期症状、行動症状、パーソナリティ症状もしくは言語症状、嚥下、運動、発作、振戦または落ち着きのない症状、失調、および/または記憶、系統立てる能力などの認知症状を含む。
【0108】
いくつかの態様において、哺乳類細胞または哺乳類標的組織に核酸を導入するには、ウイルスベースおよび非ウイルスベースの遺伝子移入方法を使用することができる。そのような方法は、阻害性RNA、治療タンパク質、またはCRISPRシステムの構成要素をコードする核酸を、培養物中または宿主生物中の細胞に投与するために使用することができる。非ウイルスベクター送達システムとしては、DNAプラスミド、RNA(例えば本明細書において記載するベクターの転写産物)、裸の核酸、およびリポソームなどの送達媒体との複合体を形成した核酸が挙げられる。ウイルスベクター送達システムとしては、細胞への送達後に、エピソームゲノムを有するか、組み込まれたゲノムを有する、DNAウイルスおよびRNAウイルスが挙げられる。遺伝子治療の手順を概観するには、Anderson,1992、Nabel&Feigner,1993、Mitani&Caskey,1993、Dillon,1993、Miller,1992、Van Brunt,1988、Vigne,1995、Kremer&Perricaudet,1995、Haddada et al.,1995およびYu et al.,1994を参照されたい。
【0109】
核酸の非ウイルス送達の方法としては、エクソソーム、リポフェクション、ヌクレオフェクション、マイクロインジェクション、バイオリスティック法、ビロゾーム、リポソーム、イムノリポソーム、ポリカチオンまたは脂質:核酸コンジュゲート、裸のDNA、人工ビリオン、および作用物質によって強化された(agent-enhanced)DNAの取り込みが挙げられる。リポフェクションは(例えば米国特許第5,049,386号、同第4,946,787号および同第4,897,355号)に記載されており、リポフェクション試薬は市販されている(例えばTransfectam(商標)およびLipofectin(商標))。ポリヌクレオチドの効率的な受容体認識リポフェクションに適したカチオン性脂質および中性脂質には、FeignerのWO 91117424、WO 91116024のものが挙げられる。送達は細胞(例えばインビトロ投与またはエクスビボ投与)または標的組織(例えばインビボ投与)への送達であることができる。
【0110】
いくつかの態様において、送達は、RNAウイルスまたはDNAウイルスに基づく核酸送達のためのシステムの使用による。いくつかの局面において、ウイルスベクターは患者に直接(インビボ)投与してもよいし、インビトロまたはエクスビボの細胞を処理するために使用してから、患者に投与することもできる。いくつかの態様において、ウイルスに基づくシステムとしては、遺伝子移入のためのレトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、および単純ヘルペスウイルスベクターが挙げられる。
【0111】
A. ウイルスベクター
「ベクター」という用語は、小さな担体核酸分子、プラスミド、ウイルス(例えばAAVベクター、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター)、または核酸の挿入もしくは組入れによって操作することができる他の媒体を指す。ウイルスベクターなどのベクターは、核酸を、細胞によってその核酸内の核酸配列が転写され、それがタンパク質をコードしているのであれば、続いて翻訳されるように、細胞に導入/移入するために使用することができる。
【0112】
「発現ベクター」は、遺伝子または核酸配列を宿主細胞における発現に必要な必須の調節領域と共に含有する特殊なベクターである。発現ベクターは、少なくとも細胞内で増殖するための複製起点と、任意で追加の要素、例えば異種核酸配列、発現制御要素(例えばプロモーター、エンハンサー)、イントロン、ITR、およびポリアデニル化シグナルを含有しうる。
【0113】
ウイルスベクターは、ウイルスゲノムを構成する1つまたは複数の核酸要素に由来するか、またはそれらに基づく。例示的なウイルスベクターとして、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、レトロウイルスベクター、およびレンチウイルスベクターが挙げられる。
【0114】
組換えウイルスベクター、例えば組換えレンチウイルスまたは組換えパルボウイルス(例えばAAV)ベクターなどといった、ベクターの修飾語としての「組換え」という用語、ならびに組換え核酸配列または組換えポリペプチドなどといった配列の修飾語としての「組換え」という用語は、その組成物が、自然界では一般に起こらないような形で操作(すなわち工学的に操作)されていることを意味する。AAVベクター、レトロウイルスベクターまたはレンチウイルスベクターなどの組換えベクターの特定例は、野生型ウイルスゲノムに通常は存在しない核酸配列がウイルスゲノム内に挿入されているものだろう。組換え核酸配列の一例は、核酸(例えば遺伝子)が、ウイルスゲノム内でその遺伝子が通常伴っている5'領域、3'領域および/またはイントロン領域と共に、またはそれらを伴わずに、ベクター中にクローニングされた阻害性RNAをコードするものだろう。「組換え」という用語は、ウイルスベクターなどのベクターおよびポリヌクレオチドなどの配列に関して、本明細書において常に使用されるわけではないが、核酸配列、ポリヌクレオチド、トランスジーンなどを含む「組換え」型は、そのような省略があっても、明らかに包含される。
【0115】
組換えウイルス「ベクター」は、分子法を使用して、ウイルスから野生型ゲノムを除去して核酸配列などの非ネイティブ核酸で置き換えることにより、AAV、レトロウイルスまたはレンチウイルスなどのウイルスの野生型ゲノムから導かれる。典型的には、例えばAAVの場合であれば、AAVゲノムの一方または両方の逆方向末端反復(ITR)配列が、組換えAAVベクターにおいて保持される。「組換え」ウイルスベクター(例えばrAAV)は、ウイルスゲノムの全部または一部が、ウイルスゲノム核酸と比較して、トランス活性化因子をコードする核酸または阻害性RNAをコードする核酸または治療タンパク質をコードする核酸などの非ネイティブ配列で置き換えられている点で、ウイルス(例えばAAV)ゲノムとは区別される。それゆえに、そのような非ネイティブ核酸配列の組入れがそのウイルスベクターを「組換え」ベクターと規定し、AAVの場合であればそれを「rAAVベクター」と呼ぶことができる。
【0116】
1. アデノ随伴ウイルス
アデノ随伴ウイルス(AAV)はパルボウイルス科の小さな非病原性ウイルスである。現在までに、血清学的に異なる数多くのAAVが同定されており、ヒトまたは霊長類からも12以上が同定されている。AAVは、複製をヘルパーウイルスに依存する点で、この科の他のメンバーとは異なる。
【0117】
AAVゲノムは、宿主細胞のゲノムに組み込まれることなく染色体外状態で存在すること、幅広い宿主域を有すること、インビトロおよびインビボで分裂細胞と非分裂細胞のどちらにも形質導入すること、および形質導入された遺伝子の高レベルな発現を維持することができる。AAVウイルス粒子は熱安定性を有し、溶媒、洗浄剤、pHおよび温度の変化に対して耐性であり、カラム精製することおよび/またはCsCl勾配もしくは他の手段によって濃縮することができる。AAVゲノムは、プラス鎖またはマイナス鎖の一本鎖デオキシリボ核酸(ssDNA)を含む。AAVのおよそ5kbのゲノムは、極性がプラスまたはマイナスである一本鎖DNAの1セグメントからなる。ゲノムの両端は、ヘアピン構造に折り畳まれてウイルスDNA複製の起点として機能することができる短い逆方向末端反復(ITR)である。
【0118】
AAV「ゲノム」とは、最終的にはパッケージングまたは封入されてAAV粒子を形成する組換え核酸配列を指す。AAV粒子は、多くの場合、AAVキャプシドタンパク質でパッケージングされたAAVゲノムを含む。組換えベクターを構築または製造するために組換えプラスミドが使用される場合、AAVベクターゲノムは、「プラスミド」のうち、組換えプラスミドのベクターゲノム配列に対応しない部分は含まない。組換えプラスミドのこの非ベクターゲノム部分は、「プラスミドバックボーン」と呼ばれ、これは、増殖と組換えウイルスの生産にとって必要なプロセスであるプラスミドのクローニングと増幅にとって重要であるが、それ自体がウイルス粒子にパッケージングまたは封入されることはない。したがってAAVベクター「ゲノム」とは、AAVキャプシドタンパク質によってパッケージングまたは封入される核酸を指す。
【0119】
AAVビリオン(粒子)は、直径がおよそ25nmの無エンベロープ正二十面体粒子である。AAV粒子は、互いに相互作用してキャプシドを形成する3種の関連キャプシドタンパク質VP1、VP2およびVP3で構成された正二十面体対称性を含む。右側のORFは、多くの場合、キャプシドタンパク質VP1、VP2およびVP3をコードする。これらのタンパク質は、多くの場合、それぞれ1:1:10の比で見いだされるが、比は異なる場合もあり、いずれも右側ORFに由来する。VP1、VP2およびVP3キャプシドタンパク質は、選択的スプライシングと珍しいスタートコドンの使用によって、互いに異なる。欠失解析により、選択的スプライシングを受けるメッセージから翻訳されるVP1の除去または改造は、感染性粒子の収量の低減をもたらすことが示されている。VP3コード領域内の変異は、一本鎖子孫DNAまたは感染性粒子の生産不全をもたらす。
【0120】
AAV粒子はAAVキャプシドを含むウイルス粒子である。一定の態様において、AAV粒子のゲノムは、VP1、VP2およびVP3ポリペプチドのうちの1つ、2つまたは全部をコードする。
【0121】
大半のネイティブAAVのゲノムは、2つのオープンリーディングフレーム(ORF)を含有することが多く、これらは左ORFおよび右ORFと呼ばれることもある。左ORFは、多くの場合、一本鎖子孫ゲノムの生産に加えて複製および転写の調節に関与する非構造Repタンパク質Rep40、Rep52、Rep68およびRep78をコードする。Repタンパク質のうちの2つは、ヒト第19染色体のq腕の一領域へのAAVゲノムの優先的包含と関連付けられている。Rep68/78は、DNAヘリカーゼ活性およびRNAヘリカーゼ活性に加えてNTP結合活性を有することが示されている。いくつかのRepタンパク質は、いくつかの潜在的リン酸化部位と共に、核局在化シグナルを有する。一定の態様において、AAV(例えばrAAV)のゲノムは、Repタンパク質のうちの一部または全部をコードする。一定の態様において、AAV(例えばrAAV)のゲノムはRepタンパク質をコードしない。一定の態様において、Repタンパク質のうちの1つまたは複数は、トランスに送達することができるので、ポリペプチドをコードする核酸を含むAAV粒子には含まれない。
【0122】
AAVゲノムの末端は、ウイルスDNA複製の基点として役立つT字型ヘアピン構造に折り畳まれる潜在能力を有する短い逆方向末端反復(ITR)を含む。したがってAAVのゲノムは、一本鎖ウイルスDNAゲノムに隣接する1つまたは複数(例えば一対)のITR配列を含む。ITR配列は、それぞれ約145塩基の長さを有することが多い。ITR領域内では、ITRの機能にとって中核であると考えられる2つの要素、GAGCリピートモチーフと末端解離部位(terminal resolution site:trs)が記載されている。リピートモチーフは、ITRが線状コンフォメーションまたはヘアピンコンフォメーションのどちらかにあるときに、Repに結合することが示されている。この結合は、部位および鎖特異的に起こるtrsでの開裂のためにRep68/78を位置決めすると考えられる。これら2つの要素は、複製におけるその役割に加えて、ウイルスの包含にとっても中核であると思われる。第19染色体組込座位にはtrsが隣接するRep結合部位が含まれている。これらの要素は、機能的であり、座位特異的な包含にとって必要であることが示されている。
【0123】
一定の態様において、AAV(例えばrAAV)は2つのITRを含む。一定の態様において、AAV(例えばrAAV)は一対のITRを含む。一定の態様において、AAV(例えばrAAV)は、少なくとも機能または活性を有するポリペプチドをコードする核酸配列に隣接する(すなわち核酸配列の5'端および3'端にそれぞれ存在する)一対のITRを含む。
【0124】
AAVベクター(例えばrAAVベクター)はパッケージングされることができ、本明細書においてはそれを、エクスビボ、インビトロまたはインビボでの細胞の感染(形質導入)のための「AAV粒子」という。組換えAAVベクターがAAV粒子中に封入またはパッケージングされる場合は、その粒子を「rAAV粒子」と言うこともできる。一定の態様において、AAV粒子はrAAV粒子である。rAAV粒子は、多くの場合、rAAVベクターまたはその一部分を含む。rAAV粒子は、1つまたは複数のrAAV粒子(例えば複数のAAV粒子)であることができる。rAAV粒子は、典型的には、rAAVベクターゲノムを封入またはパッケージングするタンパク質(例えばキャプシドタンパク質)を含む。rAAVベクターへの言及はrAAV粒子に言及するためにも使用できることに留意されたい。
【0125】
本明細書における方法または使用には、任意の適切なAAV粒子(例えばrAAV粒子)を使用することができる。rAAV粒子および/またはそこに含まれるゲノムは、AAVの任意の適切な血清型または株に由来することができる。rAAV粒子および/またはそこに含まれるゲノムは、AAVの2つ以上の血清型または株に由来することができる。したがってrAAVは、AAVの任意の血清型または株のタンパク質および/もしくは核酸またはそれらの一部分を含むことができ、そのAAV粒子は哺乳動物細胞の感染および/または形質導入に適している。AAV血清型の非限定的な例とし、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、AAV-rh74、AAV-rh10およびAAV-2i8が挙げられる。
【0126】
一定の態様において、複数のrAAV粒子は、同じ株もしくは血清型(またはサブグループもしくはバリアント)の粒子、または同じ株もしくは血清型(またはサブグループもしくはバリアント)に由来する粒子を含む。一定の態様において、複数のrAAV粒子は、2種以上の異なる(例えば異なる血清型および/または異なる株の)rAAV粒子の混合物を含む。
【0127】
本明細書において使用する場合、「血清型」という用語は、他のAAV血清型とは血清学的に異なるキャプシドを有するAAVを指すために使用される特質である。血清学的特質は、別のAAVと比べてあるAAVに対する抗体間の交差反応性の欠如に基づいて決定される。そのような交差反応性の相違は、通常、キャプシドタンパク質配列/抗原決定基の相違による(例えばAAV血清型のVP1、VP2および/またはVP3配列の相違による)。キャプシドバリアントを含むAAVバリアントがリファレンスAAV血清型または他のAAV血清型と血清学的に異ならない可能性はあっても、それらは、リファレンス血清型または他のAAV血清型と比べて、少なくとも1つのヌクレオチド残基またはアミノ酸残基が異なる。
【0128】
一定の態様において、rAAV粒子からは、一定の血清型が除外される。一態様において、rAAV粒子はAAV4粒子ではない。一定の態様において、rAAV粒子は抗原的にまたは免疫学的にAAV4とは異なる。異なっていることは標準的方法で決定することができる。例えば、ウイルス粒子がAAV4とは抗原的または免疫学的に異なるかどうかを決定するために、ELISAおよびウェスタンブロットを使用することができる。さらにまた、一定の態様において、rAAV2粒子は、AAV4とは異なる組織指向性を保っている。
【0129】
一定の態様において、第1血清型ゲノムに基づくrAAVベクターは、ベクターをパッケージングするキャプシドタンパク質のうちの1つまたは複数の血清型に対応する。例えば、AAVベクターゲノムを構成する1つまたは複数のAAV核酸(例えばITR)の血清型は、rAAV粒子を構成するキャプシドの血清型に対応する。
【0130】
一定の態様において、rAAVベクターゲノムは、ベクターをパッケージングするAAVキャプシドタンパク質のうちの1つまたは複数の血清型に由来するAAV(例えばAAV2)血清型ゲノムに基づくことができる。例えばrAAVベクターゲノムはAAV2由来の核酸(例えばITR)を含むことができ、一方、3つのキャプシドタンパク質のうちの少なくとも1つまたは複数は、異なる血清型、例えばAAV1、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、Rh10、Rh74もしくはAAV-2i8血清型またはそれらのバリアントに由来する。
【0131】
一定の態様において、リファレンス血清型に関連するrAAV粒子またはそのベクターゲノムは、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、Rh10、Rh74またはAAV-2i8粒子のポリヌクレオチド、ポリペプチドまたは部分配列と少なくとも60%以上(例えば65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%など)同一である配列を含むかまたはそのような配列からなるポリヌクレオチド、ポリペプチドまたはそれらの部分配列を有する。特定の態様において、リファレンス血清型に関連するrAAV粒子またはそのベクターゲノムは、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、Rh10、Rh74またはAAV-2i8血清型のキャプシドまたはITR配列と少なくとも60%以上(例えば65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%など)同一である配列を含むかまたはそのような配列からなるキャプシドまたはITR配列を有する。
【0132】
一定の態様において、本明細書における方法は、rAAV1、rAAV2、rAAV3、rAAV4、rAAV5、rAAV6、rAAV7、rAAV8、rAAV9、rAAV10、rAAV11、rAAV12、rRh10、rRh74またはrAAV-2i8粒子の使用、投与または送達を含む。
【0133】
一定の態様において、本明細書における方法は、rAAV2粒子の使用、投与または送達を含む。一定の態様において、rAAV2粒子はAAV2キャプシドを含む。一定の態様において、rAAV2粒子は、ネイティブAAV2粒子または野生型AAV2粒子の対応するキャプシドタンパク質と少なくとも60%、65%、70%、75%以上同一、例えば80%、85%、85%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%など、最大100%同一である、1つまたは複数のキャプシドタンパク質(例えばVP1、VP2および/またはVP3)を含む。一定の態様において、rAAV2粒子は、ネイティブAAV2粒子または野生型AAV2粒子の対応するキャプシドタンパク質と少なくとも75%以上同一、例えば80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%など、最大100%同一である、VP1、VP2およびVP3キャプシドタンパク質を含む。一定の態様において、rAAV2粒子はネイティブAAV2粒子または野生型AAV2粒子のバリアントである。いくつかの局面において、AAV2バリアントの1つまたは複数のキャプシドタンパク質は、ネイティブAAV2粒子または野生型AAV2粒子のキャプシドタンパク質と比べて、1、2、3、4、5、5~10、10~15、15~20個またはそれ以上のアミノ酸置換を有する。
【0134】
一定の態様において、rAAV9粒子はAAV9キャプシドを含む。一定の態様において、rAAV9粒子は、ネイティブAAV9粒子または野生型AAV9粒子の対応するキャプシドタンパク質と少なくとも60%、65%、70%、75%以上同一、例えば80%、85%、85%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%など、最大100%同一である、1つまたは複数のキャプシドタンパク質(例えばVP1、VP2および/またはVP3)を含む。一定の態様において、rAAV9粒子は、ネイティブAAV9粒子または野生型AAV9粒子の対応するキャプシドタンパク質と少なくとも75%以上同一、例えば80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%など、最大100%同一である、VP1、VP2およびVP3キャプシドタンパク質を含む。一定の態様において、rAAV9粒子はネイティブAAV9粒子または野生型AAV9粒子のバリアントである。いくつかの局面において、AAV9バリアントの1つまたは複数のキャプシドタンパク質は、ネイティブAAV9粒子または野生型AAV9粒子のキャプシドタンパク質と比べて、1、2、3、4、5、5~10、10~15、15~20個またはそれ以上のアミノ酸置換を有する。
【0135】
一定の態様において、rAAV粒子は、それらが1つまたは複数の所望のITR機能(例えばDNA複製を可能にするヘアピンを形成する能力、宿主細胞ゲノムへのAAV DNAの包含、および/または所望であればパッケージング)を保持している限り、ネイティブのまたは野生型のAAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、AAV-rh74、AAV-rh10またはAAV-2i8の対応するITRと少なくとも75%以上同一、例えば80%、85%、85%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%など、最大100%同一である、1つまたは2つのITR(例えば一対のITR)を含む。
【0136】
一定の態様において、rAAV2粒子は、それらが1つまたは複数の所望のITR機能(例えばDNA複製を可能にするヘアピンを形成する能力、宿主細胞ゲノムへのAAV DNAの包含、および/または所望であればパッケージング)を保持している限り、ネイティブのまたは野生型のAAV2粒子の対応するITRと少なくとも75%以上同一、例えば80%、85%、85%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%など、最大100%同一である、1つまたは2つのITR(例えば一対のITR)を含む。
【0137】
一定の態様において、rAAV9粒子は、それらが1つまたは複数の所望のITR機能(例えばDNA複製を可能にするヘアピンを形成する能力、宿主細胞ゲノムへのAAV DNAの包含、および/または所望であればパッケージング)を保持している限り、ネイティブのまたは野生型のAAV2粒子の対応するITRと少なくとも75%以上同一、例えば80%、85%、85%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%など、最大100%同一である、1つまたは2つのITR(例えば一対のITR)を含む。
【0138】
rAAV粒子は、任意の適切な数の「GAGC」リピートを有するITRを含むことができる。一定の態様において、AAV2粒子のITRは1、2、3、4、5、6、7、8、9個もしくは10個またはそれ以上の「GAGC」リピートを含む。一定の態様において、rAAV2粒子は3つの「GAGC」リピートを含むITRを含む。一定の態様において、rAAV2粒子は、4つ未満の「GAGC」リピートを有するITRを含む。一定の態様において、rAAV2粒子は、4つより多い「GAGC」リピートを有するITRを含む。一定の態様において、rAAV2粒子のITRは、最初の2つの「GAGC」リピートにおける4番目のヌクレオチドがTではなくCであるRep結合部位を含む。
【0139】
rAAV粒子へのパッケージング/キャプシド化のためにrAAVベクターに組み入れることができるDNAの適切な長さの例は、約5キロベース(kb)以下であることができる。特定の態様において、DNAの長さは、約5kb未満、約4.5kb未満、約4kb未満、約3.5kb未満、約3kb未満、または約2.5kb未満である。
【0140】
RNAiまたはポリペプチドの発現を指示する核酸配列を含むrAAVベクターは、当技術分野において公知の適切な組換え技法を使って作製することができる(例えばSambrook et al.,1989参照)。組換えAAVベクターは、典型的には、形質導入可能なAAV粒子にパッケージングされ、AAVウイルスパッケージングシステムを使って増殖される。形質導入可能なAAV粒子は、哺乳動物細胞に結合して進入し、続いてその核酸カーゴ(例えば異種遺伝子)を細胞の核に送達する能力を有する。したがって、形質導入可能である無傷のrAAV粒子は、哺乳動物細胞に形質導入するように構成される。哺乳動物細胞に形質導入するように構成されたrAAV粒子は、複製可能でないことが多く、自己複製するには追加のタンパク質機構を必要とする。したがって、哺乳動物細胞に形質導入するように構成されたrAAV粒子は、哺乳動物細胞に結合して進入し、その細胞に核酸を送達するように工学的に操作されており、送達される核酸は、多くの場合、rAAVゲノム中の一対のAAV ITRの間に配置されている。
【0141】
形質導入可能なAAV粒子を生産するための適切な宿主細胞としては、異種rAAVベクターのレシピエントとして使用することができるか、または異種rAAVベクターのレシピエントとして使用されたものである微生物、酵母細胞、昆虫細胞および哺乳動物細胞が挙げられるが、それらに限定されるわけではない。安定ヒト細胞株HEK293(例えばAmerican Type Culture Collectionから受託番号ATCC CRL1573の下に容易に入手できる)を使用することができる。一定の態様では、アデノウイルス5型DNAフラグメントで形質転換されていてアデノウイルスのE1a遺伝子とE1b遺伝子を発現させる改変ヒト胎児腎臓細胞株(例えばHEK293)が、組換えAAV粒子を作製するために使用される。改変HEK293細胞株は容易にトランスフェクトされ、rAAV粒子を生産するためのとりわけ好都合なプラットフォームになる。哺乳動物細胞に形質導入する能力を有する高力価のAAV粒子を作製する方法は当技術分野において公知である。例えばAAV粒子はWright,2008およびWright,2009に説明されているように作ることができる。
【0142】
一定の態様において、AAVヘルパー機能は、AAV発現ベクターのトランスフェクションの前に、またはAAV発現ベクターのトランスフェクションと同時に、AAVヘルパーコンストラクトを宿主細胞にトランスフェクトすることによって、宿主細胞に導入される。このように、場合によっては、生産的AAV形質導入に必要な欠落したAAV機能を補完する目的で、AAVのrep遺伝子および/またはcap遺伝子を少なくとも一過性に発現させるために、AAVヘルパーコンストラクトが使用される。AAVヘルパーコンストラクトは、多くの場合、AAV ITRを欠き、複製することも自分自身をパッケージングすることもできない。これらのコンストラクトは、プラスミド、ファージ、トランスポゾン、コスミド、ウイルス、またはビリオンの形態をとることができる。Rep発現産物とCap発現産物をどちらもコードするよく使用されるプラスミドpAAV/AdおよびpIM29+45など、いくつかのAAVヘルパーコンストラクトが記載されている。Rep発現産物および/またはCap発現産物をコードするいくつかの他のベクターも公知である。
【0143】
2. レトロウイルス
本明細書における方法、組成物および使用において、送達される作用物質として使用されるウイルスベクターには、レトロウイルスベクターが含まれる(例えばMiller(1992)Nature,357:455-460参照)。レトロウイルスベクターは、再編成されていない単一コピー遺伝子を、広範な齧歯類、霊長類およびヒトの体細胞に送達する能力を持つため、細胞への核酸の送達によく適している。レトロウイルスベクターは宿主細胞のゲノムに組み込まれる。他のウイルスベクターとは異なり、それらは分裂細胞にしか感染しない。
【0144】
レトロウイルスはRNAウイルスであるので、そのウイルスゲノムはRNAである。宿主細胞がレトロウイルスに感染すると、ゲノムRNAはDNA中間体へと逆転写され、それが極めて効率よく、感染細胞の染色体DNA中に組み込まれる。組み込まれたこのDNA中間体をプロウイルスという。プロウイルスの転写と感染性ウイルスへの組立ては、適当なヘルパーウイルスの存在下で起こるか、または夾雑ヘルパーウイルスの同時生産を伴わない封入を可能にする適当な配列を含有する細胞株中で起こる。封入のための配列が適当なベクターの同時トランスフェクションによって提供されるのであれば、ヘルパーウイルスは組換えレトロウイルスの生産には必要ない。
【0145】
レトロウイルスゲノムおよびプロウイルスDNAは、3つの遺伝子gag、polおよびenvを有し、それらは2つの長末端反復(LTR)配列で挟まれている。gag遺伝子は内部構造(マトリックス、キャプシドおよびヌクレオキャプシド)タンパク質をコードし、env遺伝子はウイルスのエンベロープ糖タンパク質をコードする。pol遺伝子は、ウイルスのRNAを二本鎖DNAに転写するRNA指向性DNAポリメラーゼ逆転写酵素、逆転写酵素によって生産されたDNAを宿主染色体DNAに組み込むインテグラーゼ、およびコードされているgagおよびpol遺伝子をプロセシングするように作用するプロテアーゼを含む産物をコードする。5'LTRおよび3'LTRは、ビリオンRNAの転写およびポリアデニル化を促進するのに役立つ。LTRは、ウイルス複製に必要な他のシス作用配列をすべて含有している。
【0146】
レトロウイルスベクターはCoffin et al.,Retroviruses,Cold Spring Harbor Laboratory Press(1997)に記載されている。レトロウイルスの代表例はモロニーマウス白血病ウイルス(MMLV)またはマウス幹細胞ウイルス(MSCV)である。レトロウイルスベクターは複製可能である場合も、複製欠損性である場合もある。典型的には、レトロウイルスベクターは複製欠損性であって、ビリオンの複製およびパッケージングの新たなラウンドに必要な遺伝子のコード領域が欠失されているか他の遺伝子で置き換えられている。その結果、ウイルスは初期標的細胞に感染しても、典型的な細胞溶解経路を続けることができない。そのようなレトロウイルスベクターとそのようなウイルスを生産するために必要な作用物質(例えばパッケージング細胞株)は市販されている(例えばClontechから入手することができるカタログ番号634401、631503、631501などのレトロウイルスベクターおよびレトロウイルスシステム(Clontech、カリフォルニア州マウンテンビュー)を参照されたい)。
【0147】
そのようなレトロウイルスベクターは、複製に必要なウイルス遺伝子を、送達しようとする核酸分子で置き換えることにより、送達される作用物質として生産することができる。結果として得られるゲノムは両末端にLTRを含有し、それらの間に1つまたは複数の所望の遺伝子を持つ。レトロウイルスを生産する方法は当業者には公知である(例えば国際公開されたPCT出願WO1995/026411を参照されたい)。レトロウイルスベクターは、1つまたは複数のヘルパープラスミドを含有するパッケージング細胞株において生産することができる。パッケージング細胞株は、ベクターのキャプシド生産およびビリオン成熟に必要なウイルスタンパク質(例えばgag、polおよびenv遺伝子)を提供する。典型的には、ベクタープラスミド間での組換えが起こりえないように、少なくとも2つの別個のヘルパープラスミド(gag遺伝子およびpol遺伝子とenv遺伝子とを別々に含有するもの)が使用される。例えばレトロウイルスベクターは、リン酸カルシウムによるトランスフェクションなどの標準的なトランスフェクション法を使って、パッケージング細胞株中に移入することができる。パッケージング細胞株は当業者には周知であり、市販されている。例示的なパッケージング細胞株はGP2-293パッケージング細胞株(カタログ番号631505、631507、631512、Clontech)である。ビリオン産物にとって十分な時間の後、ウイルスが収穫される。所望であれば、収穫されたウイルスを使って、例えば宿主指向性が異なるウイルスを生産するために第2のパッケージング細胞株を感染させることもできる。最終結果は、関心対象の核酸を含むが、宿主細胞中で新しいウイルスが形成されえないように他の構造遺伝子を欠く、複製能を持たない(replicative incompetent)組換えレトロウイルスである。
【0148】
遺伝子治療におけるレトロウイルスベクターの使用を例証する参考文献として、Clowes et al.,(1994)J.Clin.Invest.93:644-651、Kiem et al.,(1994)Blood 83:1467-1473、Salmons and Gunzberg(1993)Human Gene Therapy 4:129-141、Grossman and Wilson(1993)Curr.Opin.in Genetics and Devel.3:110-114、Sheridan(2011)Nature Biotechnology,29:121、Cassani et al.(2009)Blood,114:3546-3556が挙げられる。
【0149】
3. レンチウイルス
レンチウイルスは、一般的なレトロウイルス遺伝子gag、polおよびenvに加えて、調節機能または構造機能を持つ他の遺伝子も含有する複合型レトロウイルス(complex retrovirus)である。その高い複雑さにより、このウイルスは、潜伏感染の経過に見られるように、その生活環を調整することができる。レンチウイルスの例として、ヒト免疫不全ウイルス:HIV-1、HIV-2や、サル免疫不全ウイルス:SIVが挙げられる。レンチウイルスベクターはHIVビルレンス遺伝子を多重に弱毒化することによって作製されたものであり、例えば遺伝子env、vif、vpr、vpuおよびnefを欠失させることで、ベクターは生物学的に安全になっている。レンチウイルスベクターは当技術分野において周知である(例えば米国特許第6,013,516号および同第5,994,136号を参照されたい)。
【0150】
組換えレンチウイルスベクターは、非分裂細胞に感染する能力を有し、インビボでもエクスビボでも、遺伝子移入と核酸配列の発現とに使用することができる。例えば、非分裂細胞に感染する能力を有する組換えレンチウイルスであって、適切な宿主細胞には、パッケージング機能を担う2つ以上のベクター、すなわちgag、polおよびenvならびにrevおよびtatがトランスフェクトされているものが、参照により本明細書に組み入れられる米国特許第5,994,136号に記載されている。
【0151】
レンチウイルスゲノムおよびプロウイルスDNAは、レトロウイルス中に見いだされる3つの遺伝子gag、polおよびenvを有し、それらは2つの長末端反復(LTR)配列で挟まれている。gag遺伝子は内部構造(マトリックス、キャプシドおよびヌクレオキャプシド)タンパク質をコードし、pol遺伝子はRNA指向性DNAポリメラーゼ(逆転写酵素)、プロテアーゼおよびインテグラーゼをコードし、env遺伝子はウイルスのエンベロープ糖タンパク質をコードする。5'LTRおよび3'LTRは、ビリオンRNAの転写およびポリアデニル化を促進するのに役立つ。LTRは、ウイルス複製に必要な他のシス作用配列をすべて含有している。レンチウイルスはvif、vpr、tat、rev、vpu、nefおよびvpxを含む追加の遺伝子を有する。
【0152】
5'LTRには、ゲノムの逆転写に必要な配列(tRNAプライマー結合部位)と、ウイルスRNAが粒子へと効率のよくキャプシド化されるのに必要な配列(Psi部位)が隣接している。キャプシド化(またはレトロウイルスRNAの感染性ビリオンへのパッケージング)に必要な配列がウイルスゲノムから欠落している場合、シス欠陥(cis defect)によりゲノムRNAのキャプシド化が妨げられる。しかし、その結果生じる変異体は、依然として、全ビリオンタンパク質の合成を指示する能力を保っている。
【0153】
4. 他のウイルスベクター
遺伝子送達用のウイルスベクターの開発と有用性は絶え間なく改良され進歩している。ポックスウイルス、例えばワクシニアウイルス(Gnant et al.,1999、Gnant et al.,1999)、アルファウイルス、例えばシンドビスウイルス、セムリキ森林ウイルス(Lundstrom,1999)、レオウイルス(Coffey et al.,1998)およびインフルエンザAウイルス(Neumann et al.,1999)などの他のウイルスベクターも、本開示における使用が考えられ、標的システムに要求される性質に応じて選択されうる。
【0154】
5. キメラウイルスベクター
キメラウイルスベクターまたはハイブリッドウイルスベクターが、治療遺伝子送達における使用のために開発されており、本開示におけるそれらの使用が考えられる。キメラプロウイルス/レトロウイルスベクター(Holzer et al.,1999)、アデノウイルス/レトロウイルスベクター(Feng et al.,1997、Bilbao et al.,1997、Caplen et al.,2000)およびアデノウイルス/アデノ随伴ウイルスベクター(Fisher et al.,1996、米国特許第5,871,982号)が記載されている。これらの「キメラ」ウイルス遺伝子移入システムでは、2種以上の親ウイルス種の好ましい特徴を活用することができる。例えばWilsonらは、アデノウイルスの一部分、AAVの5'ITR配列および3'ITR配列、ならびに選択されたトランスジーンを含む、後述のキメラベクターコンストラクトを提供している(米国特許第5,871,983号、これは特に参照により本明細書に組み入れられる)。
【0155】
B. ナノ粒子
1. 脂質ベースのナノ粒子
いくつかの態様において、脂質ベースのナノ粒子はリポソーム、エクソソーム、脂質調製物、または他の脂質ベースのナノ粒子、例えば脂質ベースのベシクル(例えばDOTAP:コレステロールベシクル)である。脂質ベースのナノ粒子は、正に荷電している場合も、負に荷電している場合も、中性である場合もある。
【0156】
a. リポソーム
「リポソーム」は、閉じた脂質二重層または脂質集合体の生成によって形成されるさまざまな単層脂質媒体および多層脂質媒体を包含する総称である。リポソームは、一般にリン脂質を含む二重層膜と一般に水性組成物を含む内側の媒質とによるベシクル構造を有すると特徴づけることができる。本明細書において提供されるリポソームには、単層(unilamellar)リポソーム、多層(multilamellar)リポソームおよびマルチベシクル(multivesicular)リポソームが含まれる。本明細書において提供されるリポソームは、正に荷電している場合も、負に荷電している場合も、中性に荷電している場合もある。一定の態様において、リポソームは電荷的に中性である。
【0157】
多層リポソームは水性媒質で分離された多重脂質層を有する。そのようなリポソームは、リン脂質を含む脂質を過剰量の水溶液に懸濁すると、自発的に形成される。脂質構成要素は閉じた構造の形成の前に自己再配列を起こし、水と溶解している溶質とを脂質二重層の間に捕捉する。親油性分子または親油性領域を持つ分子も、脂質二重層に溶解するか、脂質二重層と会合しうる。
【0158】
具体的局面において、ポリペプチド、核酸または低分子薬は、例えばリポソームの水性内部に封入したり、リポソームに脂質二重層内に散在させたり、リポソームとポリペプチド/核酸との両方に会合する連結分子を介してリポソームに取り付けたり、リポソーム内に捕捉したり、リポソームとの複合体を形成させたりすることができる。
【0159】
本態様に従って使用されるリポソームは、当業者には公知であるだろうさまざまな方法で作ることができる。例えばリン脂質、例えば中性リン脂質ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)などを、tert-ブタノールに溶解する。次に、該脂質をポリペプチド、核酸および/または他の構成要素と混合する。この脂質混合物にTween 20が組成物重量の約5%になるようにTween 20を加える。この混合物に過剰量のtert-ブタノールを、tert-ブタノールの体積が少なくとも95%になるように加える。その混合物をボルテックスし、ドライアイス/アセトン浴で凍結し、一晩凍結乾燥する。凍結乾燥された調製物は-20℃で保存され、最長3ヶ月は使用することができる。必要になれば、凍結乾燥されたリポソームを0.9%食塩水に再構成する。
【0160】
上記に代えて、ガラス製梨型フラスコなどの容器において溶媒中の脂質を混合することによって、リポソームを調製することもできる。容器は、予想されるリポソーム懸濁液の体積の10倍大きい容積を有するべきである。ロータリーエバポレーターを使って、減圧下に、およそ40℃で溶媒を除去する。溶媒は通常、所望のリポソームの体積に依存して、約5分~2時間以内に除去される。その組成物をデシケーター中、真空下で、さらに乾燥することができる。乾燥された脂質は、時間の経過と共に劣化する傾向があるので、一般に、約1週間後には廃棄される。
【0161】
乾燥された脂質は、無菌パイロジェンフリー水中、約25~50mMリン脂質で、脂質薄膜が再懸濁されるまで振とうすることによって水和させることができる。次に、水性リポソームを小分けして、それぞれをバイアルに入れ、凍結乾燥し、真空下で密封することができる。
【0162】
上述のように調製された乾燥脂質または凍結乾燥リポソームは脱水されており、タンパク質またはペプチドの溶液中で再構成させて、適切な溶媒、例えばDPBSで、適当な濃度に希釈しうる。次に、その混合物をボルテックスミキサーで激しく撹拌する。封入されていない追加材料、例えば限定するわけではないが、ホルモン、薬物、核酸コンストラクトなどを含む作用物質は、29,000×gでの遠心分離によって除去され、リポソームペレットが洗浄される。洗浄されたリポソームは、適当な総脂質濃度、例えば約50~200mMで、再懸濁される。封入された追加材料または追加活性作用物質の量は、標準的方法に従って決定することができる。リポソーム調製物に封入された追加材料または追加活性作用物質の量の決定後に、リポソームを適当な濃度に希釈し、使用時まで4℃で保存することができる。リポソームを含む薬学的組成物は、通常は、無菌の薬学的に許容される担体または希釈剤、例えば水または食塩溶液を含むだろう。
【0163】
本態様で役立ちうるさらなるリポソームとして、カチオン性リポソーム、例えばWO02/100435A1、米国特許第5,962,016号、米国特許出願公開第2004/0208921号、WO03/015757A1、WO04029213A2、米国特許第5,030,453号および米国特許第6,680,068号に記載されているものが挙げられ、これらの特許文献は参照によりその全体が例外なく本明細書に組み入れられる。
【0164】
そのようなリポソームを調製する際には、本明細書において記載する任意のプロトコールまたは当業者に公知であるだろう任意のプロトコールを使用しうる。リポソーム調製のさらなる非限定的な例は、米国特許第4,728,578号、同第4,728,575号、同第4,737,323号、同第4,533,254号、同第4,162,282号、同第4,310,505号および同第4,921,706号、国際出願PCT/US85/01161および同PCT/US89/05040に記載されており、それぞれ参照により本明細書に組み入れられる。
【0165】
一定の態様において、脂質ベースのナノ粒子は中性リポソーム(例えばDOPCリポソーム)である。本明細書において使用する場合、「中性リポソーム」または「非荷電リポソーム」は、本質的に中性の正味の電荷を与える(実質的に非荷電の)1種または複数種の脂質構成要素を有するリポソームと定義される。「本質的に中性」または「本質的に非荷電」とは、所与の集団(例えばリポソームの集団)内の脂質構成要素のうち、別の構成要素の反対電荷によって相殺されない電荷を含むものが、仮に存在するとしても、ごくわずかである(すなわち、構成要素のうちの10%未満、より好ましくは5%未満、最も好ましくは1%未満が、相殺されない電荷を含む)ことを意味する。一定の態様において、中性リポソームは、主として、生理的条件(すなわち約pH7)では、それ自身が中性である脂質および/またはリン脂質を含みうる。
【0166】
本態様のリポソームおよび/または脂質ベースのナノ粒子は、リン脂質を含みうる。一定の態様では、リポソームの作出に一種類のリン脂質を使用しうる(例えばDOPCなどの中性リン脂質を使って中性リポソームを作製しうる)。別の態様では、2種以上のリン脂質を使ってリポソームを作出しうる。リン脂質は天然供給源または合成供給源に由来しうる。リン脂質としては、例えばホスファチジルコリン、ホスファチジルグリセロールおよびホスファチジルエタノールアミンが挙げられる。ホスファチジルエタノールアミンとホスファチジルコリンは、生理的条件下(すなわち約pH7)で非荷電であるから、これらの化合物は中性リポソームを作製するのにとりわけ役立ちうる。一定の態様では、リン脂質DOPCを使って非荷電リポソームが生産される。一定の態様では、リン脂質ではない脂質(例えばコレステロール)を使用しうる。
【0167】
リン脂質としては、グリセロリン脂質および一定のスフィンゴリピドが挙げられる。リン脂質としては、ジオレオイルホスファチジルコリン(「DOPC」)、卵ホスファチジルコリン(「EPC」)、ジラウリルオイルホスファチジルコリン(「DLPC」)、ジミリストイルホスファチジルコリン(「DMPC」)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(「DPPC」)、ジステアロイルホスファチジルコリン(「DSPC」)、1-ミリストイル-2-パルミトイルホスファチジルコリン(「MPPC」)、1-パルミトイル-2-ミリストイルホスファチジルコリン(「PMPC」)、1-パルミトイル-2-ステアロイルホスファチジルコリン(「PSPC」)、1-ステアロイル-2-パルミトイルホスファチジルコリン(「SPPC」)、ジラウリルオイルホスファチジルグリセロール(「DLPG」)、ジミリストイルホスファチジルグリセロール(「DMPG」)、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(「DPPG」)、ジステアロイルホスファチジルグリセロール(「DSPG」)、ジステアロイルスフィンゴミエリン(「DSSP」)、ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(「DSPE」)、ジオレオイルホスファチジルグリセロール(「DOPG」)、ジミリストイルホスファチジン酸(「DMPA」)、ジパルミトイルホスファチジン酸(「DPPA」)、ジミリストイルホスファチジルエタノールアミン(「DMPE」)、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(「DPPE」)、ジミリストイルホスファチジルセリン(「DMPS」)、ジパルミトイルホスファチジルセリン(「DPPS」)、脳ホスファチジルセリン(「BPS」)、脳スフィンゴミエリン(「BSP」)、ジパルミトイルスフィンゴミエリン(「DPSP」)、ジミリスチルホスファチジルコリン(「DMPC」)、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(「DAPC」)、1,2-ジアラキドイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(「DBPC」)、1,2-ジエイコセノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(「DEPC」)、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(「DOPE」)、パルミトイルオレオイル(palmitoyloeoyl)ホスファチジルコリン(「POPC」)、パルミトイルオレオイル(palmitoyloeoyl)ホスファチジルエタノールアミン(「POPE」)、リゾホスファチジルコリン、リゾホスファチジルエタノールアミンおよびジリノレオイルホスファチジルコリンが挙げられるが、それらに限定されるわけではない。
【0168】
b. エクソソーム
「細胞外ベシクル」および「EV」とは、細胞由来で細胞が分泌するマイクロベシクルであり、これには種類として、エクソソーム、エクソソーム様ベシクル、エクトソーム(形質膜から直接的にベシクルが出芽することによって生じる)、マイクロパーティクル、マイクロベシクル、シェディング(shedding)マイクロベシクル(SMV)、ナノ粒子、さらには(大きい)アポトーシスブレブ(apoptotic bleb)もしくはアポトーシス小体(細胞死によって生じる)または膜粒子が含まれる。
【0169】
本明細書において使用する場合、「マイクロベシクル」および「エクソソーム」という用語は、約10nm~約5000nm、より典型的には30nm~1000nm、最も典型的には約50nm~750nmの直径(または粒子がスフェロイドでない場合には最大寸法)を有する膜粒子を指し、エクソソームの膜の少なくとも一部は細胞から直接的に得られる。最も一般的には、エクソソームは、ドナー細胞のサイズの5%までのサイズ(平均直径)を有するだろう。それゆえに、特に考えられるエクソソームとして、細胞から排出(shed)されたものが挙げられる。
【0170】
エクソソームは、例えば体液など、任意の適切な試料タイプに検出され、またはそこから単離されうる。本明細書において使用する場合、「単離(された)」という用語は、その自然環境からの分離を指し、少なくとも部分精製を包含するものとし、実質的精製を包含しうる。本明細書において使用する場合、「試料」という用語は、本発明が提供する方法に適した任意の試料を指す。試料は、検出または単離に適したエクソソームを含む任意の試料でありうる。試料の供給源としては、血液、骨髄、胸水、腹腔液、脳脊髄液、尿、唾液、羊水、悪性腹水、気管支肺胞洗浄液、滑液、乳汁、汗、涙、関節液および気管支洗浄液が挙げられる。一局面において、試料は、例えば全血またはその任意の画分もしくは構成要素を含む血液試料である。本発明での使用に適した血液試料は、例えば静脈血、動脈血、末梢血、組織血、臍帯血など、血球またはその構成要素を含む任意の公知供給源から抽出されうる。例えば試料は、周知の日常的臨床方法(例えば全血を採血して加工するための手順)を使って採取し、加工しうる。一局面において、例示的な試料は、がんを持つ対象から採血された末梢血でありうる。
【0171】
エクソソームは、組織試料、例えば外科試料、生検試料、組織、糞便、および培養細胞からも単離しうる。組織供給源からエクソソームを単離する場合は、単一細胞懸濁液を得るために組織をホモジナイズし、次に、それらの細胞を溶解してエクソソームを遊離させる必要があるだろう。組織試料からエクソソームを単離する場合は、エクソソームの分断をもたらさないホモジナイゼーションと溶解の手法を選択することが重要である。本明細書において想定されるエクソソームは、好ましくは、生理学的に許容される溶液、例えば緩衝食塩水、成長培地、さまざまな水性媒質などに、体液から単離される。
【0172】
エクソソームは、新たに収集された試料から、または冷凍保存もしくは冷蔵保存されていた試料から単離されうる。いくつかの態様において、エクソソームは細胞培養培地から単離されうる。必要ではないが、試料からあらゆる破片を除去するために、体積排除ポリマー(volume-excluding polymer)による沈殿前に液体試料を清澄化すれば、より高純度なエクソソームが得られるだろう。清澄化の方法として、遠心分離、超遠心分離、濾過、または限外濾過が挙げられる。最も典型的には、エクソソームは、当技術分野において周知の数多くの方法によって単離することができる。好ましい一方法は、体液または細胞培養上清からの分画遠心分離である。例示的なエクソソーム単離方法は(Losche et al.,2004、Mesri and Altieri,1998、Morel et al.,2004)に記載されている。あるいは、(Combes et al.,1997)に記載されているように、エクソソームをフローサイトメトリーによって単離してもよい。
【0173】
一般に是認されているエクソソーム単離プロトコールの一つは、超遠心分離を含み、これはしばしば、比較的低密度のエクソソームを浮かせるためのスクロース密度勾配またはスクロースクッションと組み合わされる。逐次的分画遠心分離によるエクソソームの単離は、他のマイクロベシクルまたは高分子複合体とサイズ分布がオーバーラップする可能性により、困難になる。さらにまた、遠心分離は、ベシクルをそれらのサイズに基づいて分離する手段としては、不十分な場合もある。しかし逐次的遠心分離を、スクロース勾配超遠心分離と組み合わせれば、エクソソームの高濃縮を得ることができる。
【0174】
超遠心分離に代わる方法を使ったサイズに基づくエクソソームの単離は、もう一つの選択肢である。超遠心分離より所要時間が短く、特別な設備を使用する必要もない、限外濾過手法を使ったエクソソームの精製の成功が報告されている。同様に、陽圧を使って流体を駆動することで、1つのマイクロフィルタでの細胞、血小板および細胞片の除去と、第2のマイクロフィルタでの30nmより大きなベシクルの捕捉とを可能にする市販のキットも利用できる(EXOMIR(商標)、Bioo Scientific)。ただし、このプロセスの場合、エクソソームは回収されず、それらのRNA内容物は、第2のマイクロフィルタ上に捕捉された材料から直接的に抽出され、それをPCR分析に使用することができる。HPLCベースのプロトコールにより、潜在的には、高純度なエクソソームを得ることが可能になるだろうが、これらのプロセスは専用の設備を必要とし、スケールアップが難しい。重大な問題は、血液と細胞培養培地はどちらも、エクソソームと同じサイズ範囲に多数のナノ粒子(一部は非ベシクル状のもの)を含有していることである。例えば、一部のmiRNAは、エクソソーム以外の細胞外タンパク質複合体内に含有されうるが、プロテアーゼ(例えばプロテイナーゼK)による処理を行うことで、考えうる「エクソソーム外」タンパク質の混入を取り除くことができる。
【0175】
別の一態様では、試料をエクソソームについて濃縮するために一般に使用される技法、例えば免疫特異的相互作用を伴う技法(例えば免疫磁気捕捉)によって、エクソソームを捕捉しうる。免疫磁気捕捉は免疫磁気細胞分離としても公知であり、典型的には、特定細胞タイプ上に見いだされるタンパク質に対する抗体を小さな常磁性ビーズに取り付けることを必要とする。抗体被覆ビーズを血液などの試料と混合すると、それらはその特定細胞に結合し、それらを取り囲む。次に、試料を強い磁場に入れて、ビーズを一方向にペレット化させる。血液の除去後も、捕捉された細胞はビーズと共に保持される。当技術分野においてこの一般的方法の変法が数多く周知であり、それらはエクソソームを単離するための使用に適している。ある例では、エクソソームを磁気ビーズ(例えばアルデヒド/サルフェートビーズ)に結合させてから、その混合物に抗体を加えて、ビーズに結合しているエクソソームの表面上のエピトープを認識させる。
【0176】
当業者には理解されるであろうが、カーゴを負荷する前に、またはカーゴを負荷した後に、カーゴを送達するための媒体としてのその有用性を高める目的で、ターゲティング部分を含めることによって、エクソソームをさらに変化させてもよい。これに関連して、特定の細胞タイプまたは組織タイプを特異的に標的とする実体を組み入れるために、エクソソームを工学的に操作してもよい。この標的特異的実体、例えば標的細胞または標的組織上の受容体またはリガンドに対するアフィニティーを有するペプチドは、例えば当技術分野において確立された方法を使ったエクソソーム膜マーカーへの融合などによって、エクソソームの膜に組み込まれうる。
【0177】
2. 非脂質ナノ粒子
球状核酸(Spherical Nucleic Acid)(SNA(商標))コンストラクトおよび他のナノ粒子(特に金ナノ粒子)も、意図した標的細胞にキメラミニ遺伝子を送達するための手段として考えられる。それらは充填が密であるため、カーゴ(例えばDNA)の大半は細胞内部でコンストラクトに結合したままであり、核酸に安定性と酵素分解に対する耐性とを付与する。研究されたすべての細胞タイプ(例えばニューロン、腫瘍細胞株など)で、これらのコンストラクトは、単体またはトランスフェクション剤を必要とすることなく、99%のトランスフェクション効率を示す。このコンストラクトのユニークな標的結合アフィニティーおよび特異性が、適合した標的配列に対するすばらしい特異性(すなわち限定的オフターゲット効果)を可能にする。これらのコンストラクトは、主要な従来のトランスフェクション試薬(Lipofectamine 2000およびCytofectin)よりも、有意に優れている。これらのコンストラクトは、明白な毒性を伴わずに、さまざまな培養細胞、初代細胞および組織に進入することができる。これらのコンストラクトが誘発する、全ゲノムマイクロアレイ研究およびサイトカイン特異的タンパク質アッセイによって測定される網羅的遺伝子発現の変化は、ごくわずかでしかない。これらのコンストラクトの表面のテーラリングには、単一のまたは組合せの作用物質(例えばタンパク質、ペプチド、低分子)をいくつでも使用することができる。例えばJensen et al.,Sci.Transl.Med.5,209ra152(2013)を参照されたい。
【0178】
核酸カーゴを持つ自己集合性ナノ粒子は、PEG化されたポリエチレンイミン(PEI)を使用し、ポリエチレングリコール(PEG)の遠位端にArg-Gly-Asp(RGD)ペプチドリガンドを取り付けることで構築されうる。ナノプレックスは、カチオン性ポリマーの水溶液と核酸の水溶液を等体積ずつ混合して、リン酸塩(核酸)に対してイオン化可能な窒素(ポリマー)を2~6の範囲にわたって正味のモル過剰にすることによって調製されうる。カチオン性ポリマーと核酸との間の静電相互作用がポリプレックスの形成をもたらした。これは約100nmの平均粒子サイズ分布を持つので、ナノプレックスと呼ばれる(例えばBartlett et al.,PNAS,104:39,2007を参照されたい)。
【0179】
C. カプセル化細胞移植
本明細書におけるキメラミニ遺伝子はエクスビボで細胞に送達することができ、次に、それは、患者に標的遺伝子を送達するためにカプセル化され、移植される。例えば、患者またはドナーから単離された細胞に外因性異種核酸を導入したものを、カプセル化細胞の移植によって患者に直接送達することができる。カプセル化細胞を移植することの利点は、細胞に対する免疫応答がカプセル化によって低減されることである。したがって本明細書において、遺伝子改変細胞を対称に投与する方法が提供される。送達される細胞の数は所望の効果、具体的核酸、処置される対象、その他類似する因子に依存し、当業者はそれを決定することができる。
【0180】
遺伝子治療のために核酸が導入される細胞には、任意の望ましい利用可能な細胞タイプが包含され、例えば上皮細胞、内皮細胞、ケラチノサイト、線維芽細胞、筋細胞、肝細胞;血液細胞、例えばTリンパ球、Bリンパ球、単球、マクロファージ、好中球、好酸球、巨核球、顆粒球;さまざまな幹細胞または前駆細胞、特に造血幹細胞または造血前駆細胞、例えば骨髄、臍帯血、末梢血または胎児肝臓から得られるものが挙げられるが、それらに限定されるわけではない。例えば遺伝子改変細胞は、多能性幹細胞または全能性幹細胞(誘導多能性幹細胞を含む)であるか、胚性細胞、胎児細胞または完全分化細胞であることができる。遺伝子改変細胞は、レシピエント対象と同じ対象からの細胞であるか、レシピエント対象と同じ種または異なる種からの細胞であることができる。好ましい一例において、遺伝子治療に使用される細胞は患者にとって自家細胞である。細胞を遺伝子改変する方法および細胞を移植する方法は当技術分野において公知である。
【0181】
典型的には、まず核酸が細胞に導入されてから、その結果生じた組換え細胞がインビボ投与される。そのような導入は、当技術分野において公知の任意の方法によって、例えば限定するわけではないが、トランスフェクション、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、核酸配列を含有するウイルスベクターまたはバクテリオファージベクターによる感染、細胞融合、染色体媒介遺伝子移入(chromosome-mediated gene transfer)、マイクロセル媒介遺伝子移入(microcell-mediated gene transfer)、スフェロプラスト融合などによって、実行することができる。外来遺伝子を細胞に導入するための数多くの技法が当技術分野において公知であり(例えばLoeffler and Behr,Meth.Enzymol.(1993)217:599-618、Cotten et al.,Meth.Enzymol.(1993)217:618-644、Cline,Pharmac.Ther.(1985)29:69-92を参照されたい)、レシピエント細胞の必要な発生機能および生理機能を乱さないのであれば、それらを使用することができる。特定の例において、本方法は、細胞への核酸の安定な移入を可能にするものであるので、核酸はその細胞による発現が可能であり、かつその子孫細胞への遺伝およびその子孫細胞による発現も可能である。
【0182】
カプセル化は、アルギネート/ポリリジン複合体で被覆されたアルギネートマイクロカプセルを使って行うことができる。ヒドロゲルマイクロカプセルは、組織工学および再生医学のための生細胞または生細胞集合体のカプセル化に関して、広く研究されてきた(Orive,et al.Nat.Medicine 2003,9,104、Paul,et al.,Regen.Med.2009,4,733、Read,et al.Biotechnol.2001,19,29)。一般にカプセルは、細胞によって分泌される治療タンパク質を放出しつつ、カプセル化細胞への酸素と栄養素の容易な拡散が可能になるように、また免疫系による攻撃から細胞を保護するように、設計される。これらは、I型糖尿病、がんおよびパーキンソン病などの神経変性障害を含む一連の疾患のための治療薬候補として開発されてきた(Wilson et al.Adv.Drug.Deliv.Rev.2008,60,124、Joki,et al.Nat.Biotech.2001,19,35、Kishima,et al.Neurobiol.Dis.2004,16,428)。最も一般的なカプセル製剤の一つは、アルギネートヒドロゲルに基づき、これはイオン架橋によって形成させることができる。典型的なプロセスでは、まず、細胞に粘稠なアルギネート溶液を配合する。次に、その細胞懸濁液を、空気せん断(air shear)、音響振動または静電液滴形成などといったさまざまな方法を使って、微小滴に加工する(Rabanel et al.Biotechnol.Prog.2009,25,946)。アルギネート液滴は、Ca2+またはBa2+などの二価イオンの溶液と接触させると、ゲル化する。
【0183】
対象に哺乳動物細胞を移植するためのカプセルが開示される。カプセルは、移植される細胞をカプセル化する生体適合性ヒドロゲル形成ポリマーから形成される。カプセル状過成長(capsular overgrowth)(線維形成)を阻害するために、カプセルの構造は、細胞性材料がカプセル表面に位置するのを妨げる。加えて、カプセルの構造は、細胞では十分なガス交換が起こること、およびその中にカプセル化されている細胞が栄養素を受け取ることを保証する。任意で、カプセルは、徐放されるようにその中に封入された1種または複数種の抗炎症薬も含有する。
【0184】
開示される組成物は、移植される細胞をカプセル化する生体適合性ヒドロゲル形成ポリマーから形成される。適切なヒドロゲルを形成させるために使用することができる材料の例としては、多糖、例えばアルギネート、コラーゲン、キトサン、セルロース硫酸ナトリウム、ゼラチンおよびアガロース、水溶性ポリアクリレート、ポリホスファジン、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタクリル酸)、ポリ(アルキレンオキシド)、ポリ(酢酸ビニル)、ポリビニルピロリドン(PVP)、およびそれらのコポリマーおよび配合物が挙げられる。例えば米国特許第5,709,854号、同第6,129,761号、同第6,858,229号および同第9,555,007号を参照されたい。
【0185】
VI. 薬学的組成物
本明細書において使用する場合「薬学的に許容される」および「生理学的に許容される」という用語は、1つまたは複数の投与経路、インビボ送達またはインビボ接触に適した生物学的に許容される組成物、製剤、液状物もしくは固形物、またはそれらの混合物を意味する。「薬学的に許容される」組成物または「生理学的に許容される」組成物は、生物学的にも他の面でも望ましくないことのない材料であり、例えばこの材料は、実質的に望ましくない生物学的効果を引き起こすことなく対象に投与されうる。そのような組成物、「薬学的に許容される」および「生理学的に許容される」製剤および組成物は、無菌であることができる。そのような薬学的製剤および薬学的組成物は、例えばウイルス粒子またはナノ粒子を対象に投与する際に使用しうる。
【0186】
そのような製剤および組成物は、薬学的投与またはインビボでの接触もしくは送達に適合する、溶媒(水性または非水性)、溶液(水性または非水性)、エマルション(例えば水中油型または油中水型)、懸濁液、シロップ、エリキシル、分散媒および懸濁媒、コーティング、等張化および吸収促進または吸収遅延剤を含む。水性および非水性の溶媒、溶液および懸濁液は、懸濁化剤および増粘剤を含みうる。補助的活性化合物(例えば保存剤、抗細菌剤、抗ウイルス剤および抗真菌剤)も、製剤および組成物に組み入れることができる。
【0187】
薬学的組成物は、典型的には、薬学的に許容される賦形剤を含有する。そのような賦形剤は、その組成物を投与される個体に有害な抗体の生産をそれ自体は誘導せず、過度の毒性を伴わずに投与しうる、任意の薬学的作用物質を含む。薬学的に許容される賦形剤としては、ソルビトール、Tween80、水、食塩水、グリセロールおよびエタノールなどの液体が挙げられるが、それらに限定されるわけではない。そこには、薬学的に許容される塩、例えば塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩、硫酸塩などの鉱酸塩、および酢酸塩、プロピオン酸塩、マロン酸塩、安息香酸塩などの有機酸の塩が含まれうる。さらにまた、補助物質、例えば界面活性剤、湿潤剤または乳化剤、pH緩衝物質なども、そのような媒体中に存在しうる。
【0188】
薬学的組成物は、本明細書において示すまたは当業者に公知の特定投与経路または特定送達経路に適合するように製剤化することができる。したがって薬学的組成物は、さまざまな経路による投与または送達に適した担体、希釈剤または賦形剤を含む。
【0189】
ウイルス粒子またはナノ粒子の注射に適した医薬剤形としては、無菌の注射もしくは注入可能な溶液または分散体の即時調製に適応しており、任意でリポソーム中にカプセル化された、無菌の水性溶液または水性分散体を挙げることができる。いずれの場合も、最終的な剤形は無菌の流体であり、製造、使用および貯蔵条件下で安定であるべきである。液状の担体または媒体は、例えば水、エタノール、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコール、液状ポリエチレングリコールなど)、植物油、無毒性グリセリルエステル、およびそれらの適切な混合物を含む溶媒または液状分散媒であることができる。適正な流動性は、例えばリポソームの形成によって、分散体の場合は必要とされる粒子サイズの維持によって、または界面活性剤の使用によって、維持することができる。等張化剤、例えば糖類、緩衝剤または塩類(例えば塩化ナトリウム)を含めることができる。注射可能な組成物の持続的吸収は、吸収を遅延させる作用物質、例えばモノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンを、組成物に使用することによって生じさせることができる。
【0190】
ウイルス粒子またはナノ粒子の溶液または懸濁液は、任意で、以下の構成要素のうちの1つまたは複数を含むことができる:無菌希釈剤、例えば注射用水、食塩溶液、例えばリン酸緩衝食塩水(PBS)、人工的CSF、界面活性剤、固定油、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコールおよび液状ポリエチレングリコールなど)、グリセリン、または他の合成溶媒、抗菌および抗真菌剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸など;酸化防止剤、例えばアスコルビン酸または亜硫酸水素ナトリウム;キレート剤、例えばエチレンジアミン四酢酸;緩衝剤、例えば酢酸塩、クエン酸塩またはリン酸塩、ならびに張性を適合させるための作用物質、例えば塩化ナトリウムまたはデキストロース。
【0191】
本発明の組成物、方法および使用に適した薬学的製剤、組成物および送達システムは、当技術分野において公知である(例えばRemington:The Science and Practice of Pharmacy(2003)20th ed.,Mack Publishing Co.,ペンシルベニア州イーストン、Remington's Pharmaceutical Sciences(1990)18th ed.,Mack Publishing Co.,ペンシルベニア州イーストン、The Merck Index(1996)12th ed.,Merck Publishing Group,ニュージャージー州ホワイトハウス、Pharmaceutical Principles of Solid Dosage Forms(1993),Technonic Publishing Co.,Inc.,ペンシルベニア州ランカスター、Ansel and Stoklosa,Pharmaceutical Calculations(2001)11th ed.,Lippincott Williams&Wilkins,メリーランド州ボルチモア、およびPoznansky et al.,Drug Delivery Systems(1980)、R.L.Juliano,ed.,Oxford,ニューヨーク,pp.253-315を参照されたい)。
【0192】
ウイルス粒子、ナノ粒子およびそれらの組成物は、投与を容易にすると共に投薬量が均一になるように、投薬単位形(dosage unit form)に製剤化されうる。本明細書において使用する場合「投薬単位形」とは、処置される個体への単位投薬量として好適な物理的に離散した単位を指し、各単位は、所望の治療効果を生じるように計算された予め決定された分量の活性化合物を必要な薬学的担体と共に含有する。投薬単位形は、所望の効果を生じさせるために必要と考えられるウイルス粒子またはナノ粒子の数に依存する。必要な量は、単回投与で処方するか、複数の投薬単位で処方することができる。用量は、適切なウイルス粒子濃度またはナノ粒子濃度になるように調節し、任意で抗炎症剤と組み合わせ、使用のために梱包しうる。
【0193】
一態様において、薬学的組成物は、治療有効量、すなわち問題の疾患状態の症状もしくは有害な効果を低減させるかもしくは改善するのに十分な量、または所望の利益を与えるのに十分な量を提供するのに十分な遺伝物質を含むだろう。
【0194】
本明細書において使用する場合「単位剤形(unit dosage form)」とは、処置される対象への単位投薬量として好適な物理的に離散した単位を指し、各単位は、1回または複数回投与された場合に所望の効果(例えば予防効果または治療効果)を生じると計算された予め決定された分量を、任意で薬学的担体(賦形剤、希釈剤、媒体または充填剤)と共に含有する。単位剤形は、例えば、液状組成物、冷凍乾燥状態または凍結乾燥状態にある組成物を含みうるアンプルおよびバイアルに入っていてよく、インビボ投与またはインビボ送達の前に、例えば無菌液状担体を加えることができる。個々の単位剤形は、多用量型のキットまたは容器に含めることができる。したがって例えばウイルス粒子、ナノ粒子およびそれらの薬学的組成物は、投与を容易にすると共に投薬量が均一になるように、単一のまたは複数の単位剤形に梱包することができる。
【0195】
ウイルス粒子またはナノ粒子を含有する製剤は、通例、有効量を含有し、有効量は当業者によって容易に決定される。ウイルス粒子またはナノ粒子は、典型的には、組成物の約1%~約95%(w/w)、または適切であればさらに高い範囲にありうる。投与される分量は、処置が考慮されている哺乳動物またはヒト対象の齢、体重および健康状態などの因子に依存する。当業者は用量応答曲線を確立する日常的な試験によって有効投薬量を確立することができる。
【0196】
VII. 定義
「ポリヌクレオチド」、「核酸」および「トランスジーン」という用語は、本明細書において、デオキシリボ核酸(DNA)およびリボ核酸(RNA)ならびにそれらのポリマーを含むあらゆる形態の核酸、オリゴヌクレオチドを指すために相互可換的に使用される。ポリヌクレオチドには、ゲノムDNA、cDNAおよびアンチセンスDNA、ならびにスプライシングされたまたはスプライシングされていないmRNA、rRNA、tRNAおよび阻害性DNAまたは阻害性RNA(RNAi、例えば低分子または短鎖ヘアピン(sh)RNA、マイクロRNA(miRNA)、低分子または短鎖干渉(si)RNA、トランススプライシングRNAまたはアンチセンスRNA)が含まれる。ポリヌクレオチドは、天然の、合成の、および意図的に改変または改造された、ポリヌクレオチド(例えばバリアント核酸)を含むことができる。ポリヌクレオチドは一本鎖、二本鎖または三重鎖の線状または環状であることができ、任意の適切な長さであることができる。ポリヌクレオチドの議論において、特定ポリヌクレオチドの配列または構造は、本明細書において、5'→3'方向に配列を記載する慣習に従って記載されうる。
【0197】
ポリペプチドをコードする核酸は、多くの場合、ポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームを含む。別段の表示がある場合を除き、ある特定核酸配列には、縮重コドン置換も含まれる。
【0198】
核酸は、オープンリーディングフレームに機能的に連結された1つまたは複数の発現制御要素または発現調節要素を含むことができ、それら1つまたは複数の調節要素は、哺乳動物細胞においてそのオープンリーディングフレームがコードするポリペプチドの転写および翻訳を指示するように構成される。発現制御/調節要素の非限定的な例として、転写開始配列(例えばプロモーター、エンハンサー、TATAボックスなど)、翻訳開始配列、mRNA安定性配列、ポリA配列、分泌配列などが挙げられる。発現制御/調節配列は任意の適切な生物のゲノムから得ることができる。
【0199】
「プロモーター」とは、通常はコード配列の上流(5'側)にあって、RNAポリメラーゼおよび適正な転写に必要な他の因子に認識部位を提供することによってコード配列の発現を指示および/または制御するヌクレオチド配列を指す。「プロモーター」は、TATAボックスと、任意で転写開始部位を指定する働きをする他の配列とで構成される短いDNA配列である最小プロモーターを含み、そこに発現を制御するための調節要素が付加される。
【0200】
「エンハンサー」は転写活性を刺激できるDNA配列であり、発現のレベルまたは発現の組織特異性を強化する、プロモーター固有の要素または異種要素であることができる。これはどちらの方向にも作動することができ(5'→3'または3'→5')、プロモーターの上流または下流のどちらに配置されても機能する能力を有する。
【0201】
プロモーターおよび/またはエンハンサーはその全体がネイティブ遺伝子に由来してもよいし、自然界に見いだされる異なる要素に由来する異なる要素で構成されてもよいし、さらには合成DNAセグメントで構成されてもよい。プロモーターまたはエンハンサーは、刺激、生理学的条件または発生的条件に応答して転写開始の有効性を調整/制御する、タンパク質因子の結合に関与するDNA配列を含みうる。
【0202】
非限定的な例として、SV40初期プロモーター、マウス乳房腫瘍ウイルスLTRプロモーター、アデノウイルス主要後期プロモーター(Ad MLP)、単純ヘルペスウイルス(HSV)プロモーター、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、例えばCMV前初期プロモーター領域(CMVIE)、ラウス肉腫ウイルス(RSV)プロモーター、pol IIプロモーター、pol IIIプロモーター、合成プロモーター、ハイブリッドプロモーターなどが挙げられる。加えて、非ウイルス遺伝子由来の配列、例えばマウスメタロチオネイン遺伝子も、ここでは役立つだろう。例示的な構成的プロモーターとしては、一定の構成的機能または「ハウスキーピング」機能をコードする以下の遺伝子のプロモーター、および当業者に公知の他の構成的プロモーターが挙げられる:ヒポキサンチンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HPRT)、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)、アデノシンデアミナーゼ、ホスホグリセロールキナーゼ(PGK)、ピルビン酸キナーゼ、ホスホグリセロールムターゼ、アクチンプロモーター。加えて、多くのウイルスプロモーターが真核細胞では構成的に機能する。それらには、なかんずく、SV40の初期および後期プロモーター、モロニー白血病ウイルスおよび他のレトロウイルスの長末端反復(LTR)、ならびに単純ヘルペスウイルスのチミジンキナーゼプロモーターなどがある。したがって、上述の構成的プロモーターはいずれも、異種遺伝子インサートの転写を制御するために使用することができる。
【0203】
本明細書において、細胞または生物に導入されるまたは導入された核酸配列/ポリヌクレオチドを指して、便宜上、「トランスジーン」という。トランスジーンには、任意の核酸、例えば阻害性RNAまたはポリペプチドもしくはタンパク質をコードする遺伝子が包含され、それらは一般的には天然のAAVゲノム配列に対して異種である。
【0204】
「形質導入」という用語は、ベクター(例えばウイルス粒子)による細胞または宿主生物への核酸配列の導入を指す。したがって、ウイルス粒子による細胞へのトランスジーンの導入は、細胞の「形質導入」ということができる。トランスジーンは、形質導入された細胞のゲノム核酸に組み込まれても組み込まれなくてもよい。導入されたトランスジーンがレシピエント細胞またはレシピエント生物の核酸(ゲノムDNA)に組み込まれる場合、それはその細胞または生物に安定に維持されることが可能になり、レシピエント細胞またはレシピエント生物の子孫細胞または子孫生物にさらに伝えられまたは受け継がれる。最後に、導入されたトランスジーンはレシピエント細胞またはレシピエント宿主生物において染色体外に存在するか、または一過性にのみ存在する場合もある。それゆえ、「形質導入細胞」とは、形質導入によってトランスジーンが導入された細胞である。したがって「形質導入」細胞は、トランスジーンが導入された細胞またはその子孫である。形質導入細胞を増殖させ、トランスジーンを転写し、コードされている阻害性RNAまたはタンパク質を発現させることができる。遺伝子治療での使用および遺伝子治療の方法の場合、形質導入細胞は哺乳動物中に存在することができる。
【0205】
誘導性プロモーターの制御を受けるトランスジーンは誘導剤の存在下でのみ発現するか、誘導剤の存在下ではより強く発現する(例えばメタロチオネインプロモーターの制御を受ける転写は一定の金属イオンの存在下で著しく増加する)。誘導性プロモーターは、それぞれの誘導因子が結合した場合に転写を刺激する応答性要素(responsive element:RE)を含む。例えば、血清因子、ステロイドホルモン、レチノイン酸およびサイクリックAMPに対するREがある。誘導性の応答を得るために特定のREを含有するプロモーターを選ぶことができ、場合により、REそのものを異なるプロモーターに結合することによって、その組換え遺伝子に誘導性を付与してもよい。したがって、適切なプロモーター(構成的プロモーターか誘導性プロモーターか、強いプロモーターか弱いプロモーターか)を選択することにより、遺伝子改変細胞におけるポリペプチドの存在と発現レベルの両方を制御することが可能である。ポリペプチドをコードする遺伝子が誘導性プロモーターの制御を受ける場合、インサイチューでのポリペプチドの送達は、インサイチューの遺伝子改変細胞を、ポリペプチドの転写を許す条件に暴露することによって、例えば作用物質の転写を制御する誘導性プロモーターの特異的誘導因子を腹腔内注射することによって、トリガーされる。例えば、メタロチオネインプロモーターの制御を受ける遺伝子がコードするポリペプチドの、遺伝子改変細胞によるインサイチュー発現は、遺伝子改変細胞を適当な(すなわち誘導性の)金属イオンを含有する溶液とインサイチューで接触させることによって強化される。
【0206】
核酸/トランスジーンは、それが別の核酸配列と機能的な関係に置かれた場合に、「機能的に連結」されているという。RNAiもしくはポリペプチドをコードする核酸/トランスジーンまたはポリペプチドの発現を指示する核酸は、コードされているポリペプチドの転写を制御するために、誘導性プロモーターまたは組織特異的プロモーターを含みうる。発現制御要素に機能的に連結された核酸は発現カセットと呼ぶこともできる。
【0207】
一定の態様において、本明細書において記載する方法および使用では、CNS特異的なまたは誘導性のプロモーター、エンハンサーなどが使用される。CNS特異的プロモーターの非限定的な例としては、ミエリン塩基性タンパク質(MBP)、グリア線維性酸性タンパク質(GFAP)、およびニューロン特異的エノラーゼ(NSE)の遺伝子から単離されたものが挙げられる。誘導性プロモーターの非限定的な例としては、エクジソン、テトラサイクリン、低酸素症およびIFNに対するDNA応答性要素が挙げられる。
【0208】
一定の態様において、発現制御要素はCMVエンハンサーを含む。一定の態様において、発現制御要素はβアクチンプロモーターを含む。一定の態様において、発現制御要素は、ニワトリβアクチンプロモーターを含む。一定の態様において、発現制御要素はCMVエンハンサーとニワトリβアクチンプロモーターとを含む。
【0209】
本明細書において使用する場合、「改変する」または「バリアント」という用語およびそれらの文法上の異形は、核酸、ポリペプチドまたはその部分配列がリファレンス配列から逸脱していることを意味する。それゆえに、改変配列およびバリアント配列は、発現量、活性または機能が、リファレンス配列と比べて、実質的に同じことも、大きいことも、小さいこともありうるが、リファレンス配列の活性または機能を少なくとも部分的には保持している。特定タイプのバリアントは変異型タンパク質であり、これは、例えばミスセンス変異またはナンセンス変異などの突然変異を有する遺伝子によってコードされているタンパク質を指す。
【0210】
「核酸」バリアントまたは「ポリヌクレオチド」バリアントとは、野生型と比較すると遺伝子が変化している改変配列を指す。配列は、コードされているタンパク質配列を変化させることなく遺伝子改変されうる。あるいは、配列は、バリアントタンパク質をコードするように遺伝子改変されうる。核酸バリアントまたはポリヌクレオチドバリアントは、野生型タンパク質配列などのリファレンス配列に対して少なくとも部分的な配列同一性を依然として保持しているタンパク質をコードするようにコドン改変され、かつバリアントタンパク質をコードするようにもコドン改変されている組合せ配列も指すことができる。例えば、そのような核酸バリアントの一部のコドンは、それによってコードされているタンパク質のアミノ酸を変化させないように変化し、核酸バリアントの一部のコドンは変化して、その結果、それがコードするタンパク質のアミノ酸を変化させるだろう。
【0211】
「タンパク質」という用語と「ポリペプチド」という用語は本明細書において相互可換的に使用される。本明細書において開示する「核酸」または「ポリヌクレオチド」または「トランスジーン」がコードする「ポリペプチド」には、部分長または完全長のネイティブ配列、ならびに天然の野生型および機能的多形タンパク質、それらの機能的部分配列(フラグメント)、ならびにそれらの配列バリアントが、そのポリペプチドがある程度の機能または活性を保持している限り、含まれる。したがって、本発明の方法および使用において、核酸配列によってコードされているそのようなポリペプチドは、欠損性である内在性タンパク質、またはその活性、機能もしくは発現が処置される哺乳動物において不十分であり、欠乏しており、もしくは存在しない内在性タンパク質と、同一である必要はない。
【0212】
改変の非限定的な例として、1つまたは複数のヌクレオチドまたはアミノ酸の置換(例えば約1~約3、約3~約5、約5~約10、約10~約15、約15~約20、約20~約25、約25~約30、約30~約40、約40~約50、約50~約100、約100~約150、約150~約200、約200~約250、約250~約500、約500~約750、約750~約1000個またはそれ以上のヌクレオチドまたは残基)が挙げられる。
【0213】
アミノ酸改変の例は保存的アミノ酸置換または欠失である。特定の態様において、改変された配列またはバリアント配列は、無改変の配列(例えば野生型配列)の機能または活性の少なくとも一部を保持している。
【0214】
アミノ酸改変の他の例は、ウイルス粒子のキャプシドタンパク質に導入されるターゲティングペプチドである。組換えウイルスベクターまたはナノ粒子を中枢神経系、例えば血管内皮細胞へとターゲティングするペプチドが同定されている。したがって、改変組換えウイルス粒子またはナノ粒子は、例えば脳血管を裏打する内皮細胞を標的とすることができる。
【0215】
そのように改変された組換えウイルスは、あるタイプの組織(例えばCNS組織)に、別のタイプの組織(例えば肝臓組織)よりも優先的に結合しうる。一定の態様において、改変キャプシドタンパク質を保持する組換えウイルスは、匹敵する無改変キャプシドタンパク質より高いレベルで結合することにより、脳血管上皮組織を「標的とする」ことができる。例えば、改変キャプシドタンパク質を有する組換えウイルスは、無改変組換えウイルスよりも50%~100%高いレベルで脳血管上皮組織に結合しうる。
【0216】
「核酸フラグメント」とは所与の核酸分子の一部分である。大半の生物ではデオキシリボ核酸(DNA)が遺伝物質であり、一方、リボ核酸(RNA)は、DNA内に含有される情報のタンパク質への移動に関与する。開示されるヌクレオチド配列のフラグメントおよびバリアントならびにそれによってコードされるタンパク質または部分長タンパク質も、本発明に包含される。「フラグメント」または「部分」とは、完全長の、または完全長未満の、ポリペプチドもしくはタンパク質をコードするヌクレオチド配列またはポリペプチドもしくはタンパク質のアミノ酸配列を意味する。一定の態様において、フラグメントまたは部分は、生物学的に機能的である(すなわち野生型の活性または機能のうち、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%または100%を保持している)。
【0217】
ある分子の「バリアント」は、ネイティブ分子の配列と実質的に類似している配列である。ヌクレオチド配列の場合、バリアントには、遺伝コードの縮重ゆえにネイティブタンパク質と同一のアミノ酸配列をコードする配列が包含される。そのような天然のアレルバリアントは、例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)およびハイブリダイゼーション技法などといった分子生物学の技法を利用して同定することができる。バリアントヌクレオチド配列には、合成由来のヌクレオチド配列、例えば指定部位突然変異誘発法を使って作製された、ネイティブタンパク質をコードするもの、ならびにアミノ酸置換を有するポリペプチドをコードするものなども包含される。一般に、本発明のヌクレオチド配列バリアントは、ネイティブ(内在性)ヌクレオチド配列に対して少なくとも40%、50%、60%、ないし70%、例えば71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、ないし79%、一般的には少なくとも80%、例えば81%~84%、少なくとも85%、例えば86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、ないし98%の配列同一性を有する。一定の態様において、バリアントは生物学的に機能的である(すなわち野生型の活性または機能の5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%または100%を保持している)。
【0218】
特定の核酸配列の「保存的置換」とは、同一または本質的に同一であるアミノ酸配列をコードする核酸配列を指す。遺伝暗号は縮重しているので、任意の所与のポリペプチドは、機能的に同一な多数の核酸によってコードされる。例えばコドンCGT、CGC、CGA、CGG、AGAおよびAGGは、いずれもアミノ酸アルギニンをコードする。したがって、コドンによってアルギニンが指定される位置ではどこでも、コードされるタンパク質を変化させることなく、記載した対応コドンのいずれかに、コドンを変化させることができる。そのような核酸バリエーションは「サイレントバリエーション」であり、これは「保存的に改変されたバリエーション」の一種である。ポリペプチドをコードする本明細書において記載の核酸配列はいずれも、別段の注記がある場合を除き、考えうるすべてのサイレントバリエーションを表す。核酸中の各コドン(通常は唯一のメチオニンコドンであるATGを除く)を、標準的技法によって機能的に同一な分子が得られるように改変できることは、当業者にはわかるだろう。したがって、ポリペプチドをコードする核酸の各「サイレントバリエーション」は、記載された各配列に暗に示されている。
【0219】
ポリヌクレオチド配列の「実質的同一性」という用語は、ポリヌクレオチドが、記載のアラインメントプログラムの1つを標準的パラメータで使用することでリファレンス配列と比較した場合に、少なくとも70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、もしくは79%、または少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、もしくは89%、または少なくとも90%、91%、92%、93%、もしくは94%、さらには少なくとも95%、96%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を有する配列を含むことを意味する。2つのヌクレオチド配列によってコードされるタンパク質の対応する同一性を決定するために、コドンの縮重、アミノ酸の類似性、読み枠の位置などを考慮して、これらの値を適宜適合させうることは、当業者には理解されるだろう。これらの目的の場合、アミノ酸配列の実質的同一性とは、通常、少なくとも70%、少なくとも80%、90%、さらには少なくとも95%の配列同一性を意味する。
【0220】
ポリペプチドに関して「実質的同一性」という用語は、ポリペプチドが、指定された比較ウィンドウにおいて、リファレンス配列に対して、少なくとも70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、もしくは79%、または80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、もしくは89%、または少なくとも90%、91%、92%、93%、もしくは94%、さらには95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を持つ配列を含むことを示す。2つのポリペプチド配列が同一であることの目安は、一方のポリペプチドが、他方のポリペプチドに対して生じさせた抗体と免疫学的に反応することである。したがって、例えば2つのポリペプチドの相違が保存的置換だけである場合、ポリペプチドはもう一つのポリペプチドと同一である。
【0221】
「処置する」および「処置」という用語は治療的処置と予防措置または防止措置の両方を指し、その目的は、望ましくない生理学的変化または生理学的障害、例えば障害の発生、進行または悪化を、防止するか、阻害するか、低減させるか、または減少させることである。本発明の場合、有益なまたは望ましい臨床結果としては、検出可能であるか検出不可能であるかを問わず、症状の緩和、疾患の程度の縮小、疾患の症状または有害な効果の安定化(すなわち悪化または進行がないこと)、疾患進行の遅延または減速、疾患状態の改善または緩和、および寛解(部分的であるか完全であるかを問わない)が挙げられるが、それらに限定されるわけではない。「処置」は、処置を受けていない場合に予想される生存期間と比較した生存期間の延長も意味することができる。処置を必要とするものとしては、状態または障害を既に持っているもの、ならびに素因(例えば遺伝子アッセイによって決定されるもの)を持つものが挙げられる。
【0222】
「含む(comprising)」、「有する(having)」、「包含する(including)」および「含有する(containing)」という用語は、別段の注記がある場合を除き、非限定的用語(すなわち「含むが、それらに限定されない」を意味する)と解釈されるべきである。
【0223】
本明細書において記載するすべての方法および使用は、本明細書において別段の表示がある場合を除き、または文脈上明らかに矛盾する場合を除き、任意の適切な順序で行うことができる。本明細書において提供されるありとあらゆる実施例または例示表現(例えば「など」または「例えば」)の使用には、本発明をより良く解明しようとする意図しかなく、別段の主張がある場合を除き、本発明の範囲に制約を課すものではない。本明細書におけるどの表現も、クレームされていない何らかの要素が本発明の実施に不可欠であることを示していると解釈されるべきではない。
【0224】
本明細書において開示する特徴はすべて、任意の組合せで組み合わせうる。本明細書に開示する各特徴は、同じ目的、等価な目的または類似する目的を果たす代替的特徴で置き換えうる。したがって、別段の明示的言明がある場合を除き、開示された特徴(例えば改変核酸、ベクター、プラスミド、組換えベクター配列、ベクターゲノム、またはウイルス粒子)は、等価な特徴または類似する特徴の類概念の一例である。
【0225】
本明細書において使用する場合、「1つの(a)」、「および(and)」および「その(the)」という形態は、文脈上そうでないことが明らかである場合を除き、単数および複数の指示対象を包含する。したがって、例えば「1つの核酸(a nucleic acid)」への言及は、複数のそのような核酸を包含し、「1つのベクター(a vector)」への言及は、複数のそのようなベクターを包含し、「1つのウイルス(a virus)」または「AAVまたはrAAV粒子(AAV or rAAV particle)」への言及は複数のそのようなビリオン/AAVまたはrAAV粒子を包含する。
【0226】
本明細書において使用する「約」という用語は、基準値の10%(プラスまたはマイナス)以内の値を指す。
【0227】
本明細書における値の範囲の具陳は、本明細書に別段の表示がある場合を除き、その範囲に含まれる個々の値について個別に言及することを簡略化した方法として役立つことを意図しているに過ぎず、個々の値は、それが本明細書において個別に具陳されているかのように、本明細書に組み入れられる。
【0228】
したがって、すべての数値または数値範囲は、文脈上そうでないことが明らかである場合を除き、そのような値の範囲内の整数、およびそれらの値または範囲内の整数の端数を包含する。したがって例えば、80%以上の同一性とは、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%などを包含すると共に、81.1%、81.2%、81.3%、81.4%、81.5%など、82.1%、82.2%、82.3%、82.4%、82.5%なども包含するなどである。
【0229】
より多い(より大きい)またはより小さいという文言と共に整数に言及する場合、それは、その基準数より大きいまたは小さいすべての数字を包含する。したがって例えば、100未満と言えば、99、98、97などから数字1までのすべてを包含し、10未満といえば、9、8、7などから数字1までのすべてを包含する。
【0230】
本明細書において使用する場合、すべての数値または数値範囲は、文脈上そうでないことが明らかである場合を除き、それらの値の端数ならびにそのような範囲内の整数およびそのような範囲内の整数の端数を包含する。したがって例えば1~10などの数値範囲への言及は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、ならびに1.1、1.2、1.3、1.4、1.5などを包含する。それゆえに1~50の範囲への言及は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20など、最大50であり50を含み、ならびに1.1、1.2、1.3、1.4、1.5など、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5などを包含する。
【0231】
一連の範囲への言及は、その中の異なる範囲の境界の値を組み合わせた範囲を包含する。したがって例えば、1~10、10~20、20~30、30~40、40~50、50~60、60~75、75~100、100~150、150~200、200~250、250~300、300~400、400~500、500~750、750~1,000、1,000~1,500、1,500~2,000、2,000~2,500、2,500~3,000、3,000~3,500、3,500~4,000、4,000~4,500、4,500~5,000、5,500~6,000、6,000~7,000、7,000~8,000、または8,000~9,000などといった一連の範囲への言及は、10~20、10~50、30~50、50~100、100~300、100~1,000、1,000~3,000、2,000~4,000、4,000~6,000などの範囲を包含する。
【0232】
VIII. キット
本発明は、梱包材とその中の1つまたは複数の構成要素とを伴うキットを提供する。キットは、典型的には、そこに含まれる構成要素の記載またはそこに含まれる構成要素のインビトロ、インビボ、もしくはエクスビボでの使用に関する指示を含むラベルまたは添付文書を含む。キットは、そのような構成要素、例えば核酸、組換えベクター、ウイルス粒子、スプライシング修飾剤分子、および任意で第2の活性作用物質、例えば別の化合物、作用物質、薬物または組成物を揃えたものを含むことができる。
【0233】
キットとは、キットの1つまたは複数の構成要素を収容する物理的構造を指す。梱包材は、構成要素を無菌的に維持することができ、そのような目的のために一般に使用される材料(例えば紙、ダンボール、ガラス、プラスチック、ホイル、アンプル、バイアル、チューブなど)製であることができる。
【0234】
ラベルまたは添付文書は、そこに含まれている1つまたは複数の構成要素の識別情報、投薬量、活性成分の臨床薬理、例えば作用機序、薬物動態および薬力学を含むことができる。ラベルまたは添付文書は、製造者、ロット番号、製造場所および製造日、使用期限を確認する情報を含むことができる。ラベルまたは添付文書は、製造者情報、ロット番号、製造場所および製造日を確認する情報を含むことができる。ラベルまたは添付文書は、キットの構成要素を使用しうる疾患に関する情報を含むことができる。ラベルまたは添付文書は、キットの構成要素のうちの1つまたは複数を、方法、使用または処置プロトコールもしくは治療レジメンにおいて使用するための、臨床家または対象に対する指示を含むことができる。指示は、投薬量、投薬頻度または継続期間、および本明細書において記載の方法、使用、処置プロトコールまたは予防レジメンもしくは治療レジメンのいずれかを実施するための指示を含むことができる。
【0235】
ラベルまたは添付文書は、構成要素が提供しうる利益、例えば予防的利益または治療的利益に関する情報を含むことができる。ラベルまたは添付文書は、潜在的に有害な副作用、合併症または反応に関する情報、例えば、特定の組成物を使用することが適当ではないであろう状況に関する対象または臨床家への警告を含むことができる。有害な副作用または合併症は、対象が当該組成物とは不適合でありうる1種または複数の他の医薬を過去に服用していたか今後服用するか現在服用している場合にも、または対象が当該組成物とは不適合であるだろう別の処置プロトコールもしくは治療レジメンを過去に受けていたか今後受けるか現在受けている場合にも起こりうるので、指示には、そのような不適合に関する情報も含まれうる。
【0236】
ラベルまたは添付文書は、独立した、または構成要素、キットもしくは梱包材(例えば箱)に添付された、またはキットの構成要素が入っているアンプル、チューブもしくはバイアルに添付された、「印刷物」、例えば紙または厚紙を含む。ラベルまたは添付文書は、コンピュータ可読媒体、例えばバーコード付き印刷ラベル、ディスク、光学ディスク、例えばCD-もしくはDVD-ROM/RAM、DVD、MP3、または電子記憶媒体、例えばRAMおよびROM、またはそれらのハイブリッド、例えば磁気/光学記憶媒体、フラッシュメモリ、ハイブリッドおよびメモリ型カードをさらに含むことができる。
【実施例
【0237】
IX. 実施例
以下の実施例は、本発明の好ましい態様を実証するために含まれる。以下の実施例において開示される技術は、本発明の実施において十分に機能することが本発明者によって発見された技術を表し、したがって、その実施のための好ましい様式を構成するとみなされうることを、当業者は認識するべきである。しかし、当業者は、本開示に照らして、開示されている具体的な態様において多くの変更を行うことができ、かつ依然として、本発明の要旨および範囲から逸脱することなく同様または類似の結果を得ることができると認識するべきである。
【0238】
実施例1‐材料および方法
細胞培養、トランスフェクション、およびLMI070/RG7800処理。ヒト胎児腎臓 (HEK293)細胞(CHOP Research Vector Coreストックから入手)は、10%胎児ウシ血清(FBS)、1% L-グルタミン、および1%ペニシリン/ストレプトマイシンを含有するDMEM培地において、37℃、5% CO2で維持した。細胞を、24ウェルプレートにおいて培養し、製造業者のプロトコールに従って、Lipofectamine 2000トランスフェクション試薬を用いて80~90%コンフルエンスでトランスフェクトした。すべての実験について、プラスミドトランスフェクションの4時間後に、細胞を、示された濃度のLMI070(MedChemExpress, HY-19620、DMSOに懸濁)またはRG7800(MedChemExpress, HY-101792A、H2Oに懸濁)で処理した。細胞は、Research Vector Coreがマイコプラズマについて試験した。研究に用いた細胞のいずれも、一般に誤認された細胞株のICLACデータベースに列記されていなかった。
【0239】
プラスミド、プライマー、および特別注文のTaqMan遺伝子発現アッセイ。SF3B3 新規エクソンの包含を測定するためのプラスミド、プライマー配列、およびカスタムTaqman遺伝子発現アッセイはすべて、要求に応じて利用可能である。プライマーおよびカスタムTaqman遺伝子発現アッセイは、IDT Integrated DNA Technologiesから入手した。
【0240】
インビトロルシフェラーゼアッセイ。HEK293細胞を、24ウェルプレートにおいて、DMEM(10% FBS(v/v)、1% Pen/Strep(v/v)、および1% L-グルタミン(v/v)中で培養した。70%~80%コンフルエンスで、細胞に、Xon.ホタルルシフェラーゼカセット(0.3μg/ウェル)およびトランスフェクション対照としてのSV40p-ウミシイタケルシフェラーゼカセット(0.02μg/ウェル)を同時トランスフェクトした。トランスフェクションの4時間後に、細胞を、示された濃度のLMI070またはRG7800のいずれかで処理した。トランスフェクションの24時間後に、細胞を、氷冷PBSでリンスし、ウミシイタケルシフェラーゼおよびホタルルシフェラーゼの活性を、製造業者の説明書に従って、Dual-Luciferase Reporter Assay System(Promega)を用いて評価した。発光の読み取りは、Monolight 3010ルミノメーター(Pharmigen)で得た。相対光単位(RLU)を、ウミシイタケル/ホタルRLUの商として計算し、結果を、モック処理対照細胞と比べて表現した。
【0241】
動物および組織学。動物プロトコールは、The Children's Hospital of Philadelphia Institutional Animal Care and Use Committeeによって承認された。5~6週齢の雄のC57Bl6/jマウスを、Jackson Laboratories(Bar Harbor, ME, USA)から入手した。AAVベクター(AAV9.Xon.eGFPまたはAAVPHBeB.Xon.eGFP;CHOP Research Vector Coreで生成)を、7~8週齢で後眼窩注射によって投与し、150μL中の合計3E11 vgを注入した。4週間後に、LMI070(5または50 mg/kg、MedChemExpress HY-19620)または媒体溶液の単一用量を、経口強制投与によって投与した。18~24時間後に、生化学的または分子的な研究に用いるマウスを麻酔し、2 mlのRNAlater(Ambion)溶液と混合した0.9%の冷生理食塩水で灌流した。脳および肝臓試料を収集し、液体窒素中で急速冷凍し、使用するまで-80℃で保存した。免疫組織化学研究のためには、マウスを、15 mLの氷冷0.1 M PBS、続いて15 mLの4%パラホルムアルデヒドで灌流した。脳切片について、ウサギ抗GFP抗体(Invitrogen、1:200)、続いて Alexa488コンジュゲートヤギ抗ウサギ(Invitrogen、1:500)およびAlexa488コンジュゲートニワトリ抗ヤギ(Invitrogen、1:500)を用いたIHCによって、eGFP可視化を行った。スライスを、Superfrost plusスライド上にマウントし、fluoro-gel mounting mediaを用いてカバーガラスをマウントした。切片を、L5 ETフィルターキューブ(470±20:525±15 nmのex:emおよびダイクロイック495 nm)、Sola Light Engine LED光源(Lumencor)に接続された20X HC APO PLAN(N.A. 0.70)レンズを装備したDM6000B Leica顕微鏡を用いて解析した。画像は、Leica LAS X(v.3.0.3)ソフトウェアによって制御されるHammatsu Orca flash4.0モノクロカメラで収集した。脳の画像は、ブラインドアルゴリズムの3反復によってデコンボリューションされた7.98μm厚のzスタックを表す。
【0242】
RNA抽出、RT-PCR、およびスプライシングアッセイ。全RNAを、製造業者のプロトコールに従ってTrizol(Life Technologies)を用い、イソプロパノール沈殿工程で水相に加えた1μLのGlycoblue(Life Technologies)、および冷70%エタノールでの1回の洗浄の例外を伴って抽出した。トランスフェクション後のHTT発現レベルを測定するために、RNA試料を分光光度法で定量し、その後、ランダムヘキサマー(TaqMan RT試薬、Applied Biosystems)で1 mgの全RNAからcDNAを生成した。HEK293細胞におけるヒトHTT発現レベルを測定するために、Applied Biosystemsから入手したヒトHTTおよびグリセルアルデヒド3-リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)のmRNA用のTaqManプローブを用いた。相対的なHTT遺伝子発現を、ddCt法を用いて測定した。SMN2-onスイッチおよびXonスイッチのスプライシングを測定するために、HEK293細胞または組織試料由来の2μgの全RNAを、DNAseI Freeキット(Thermofisher)で処理し、続いてHigh capacity cDNAキット(Thermofisher)を用いてcDNA生成を行った。スプライシングを、Phusion High-Fidelityポリメラーゼ(Thermofisher)を用いたPCRによって測定し、PCR産物を、EtBrで事前染色した2.5%アガロースゲル上で分離して、ChemiDoc Imaging System(BioRad)およびImage Lab解析ソフトウェアを用いてスプライスインバンドおよびスプライスアウトバンドの濃度測定を行った。マウス組織からのスプライシング誘導を、総mRNA転写産物またはLMI070スプライスインmRNA転写産物を測定するために設計された2つのカスタムTaqManアッセイを用いて測定した。誘導のパーセンテージは、AAVウイルス+媒体を注射した対照動物と比べて、平均Ct新規エクソンおよび平均Ct合計を割ることによって決定した。
【0243】
ウエスタンブロット。HEK293細胞をリンスして、Passive Lysis Buffer(PBL, Promega)で溶解し、DCタンパク質アッセイ(Bio-Rad)を用いてタンパク質濃度を測定し、10~20μgのタンパク質を、トリス酢酸緩衝液中の3%~8% NuPAGEトリス-酢酸ゲル(NuPAGE Tris-Acetate Gel)(Novex Life Technologies)またはMES緩衝液中の4%~12% NuPAGEトリス-ビスNuPAGEゲル(NuPAGE TrisBis NuPAGE gel)(Novex Life Technologies)にロードして、それぞれ、HTT、SaCas9、またはeGFPのタンパク質レベルを、β-カテニンをローディング対照として測定した。肝臓を、Completeプロテアーゼ阻害剤(Roche)を含むRIPA緩衝液(最終濃度:50 mMトリス、150 mM NaCl、1% Triton-X100、0.1% SDS、0.5%デオキシコール酸ナトリウム)においてホモジナイズし、試料を、4℃で1時間回転させてインキュベートし、次いで、10,000×gで10分間の遠心分離によって清澄化した。総タンパク質濃度を、DCタンパク質アッセイ(BioRad)によって測定し、30μgを、MES緩衝液中の4~12% NuPAGEビス-トリスゲル(NuPAGE Bis-tris gel)(Novex Life Technologies)にロードして、eGFPおよびβ-カテニンのレベルを測定した。電気泳動後に、タンパク質を0.2μm PVDF(Bio-Rad)に転写した。メンブレンを、PBS-T中の5%ミルクでブロッキングし、次いで、マウス抗HTT(MAB2166、希釈:1:5,000;Millipore)、ウサギ抗β-カテニン(Ab2365、希釈:1:5,000;Abcam)、SaCas9タンパク質に対するHAタグ抗体(2-2.2.14、Thermofisher)、ウサギ抗GFP(A11122、Invitrogen)、続いてホースラディッシュペルオキシダーゼ結合抗体(ヤギ抗マウス:115-035-146、希釈:1:10,000、またはヤギ抗ウサギ:111-035-144、希釈:1:50,000;Jackson ImmunoResearch)でブロットした。ブロットを、ECL Plus試薬(Amersham Pharmacia)で現像し、ChemiDoc Imaging System(BioRad)で画像化した。
【0244】
RNA-Seq法。4つのLMI070処理HEK293細胞群および4つのDMSO処理HEK293細胞群からのデータを、Illumina Hi-Seq 4000で実行した2つのレーンにわたるシーケンシング後に得た。結果として生じたfastqファイルを、STARアライナー(Dobin & Gingeras, 2015)を用いて、Ensemblから得られたGRCh38ヒトゲノムに対して整列させた。STARによるスプライスジャンクションのアウトプットを、LMI070処理に特有のスプライシングイベントを特定するように設計されたカスタムRスクリプトを用いて定量した。上位ランクのLMI070排他的スプライスイベントを、スプライシングスイッチとして機能するその適用性について手動で評価した。この評価の主な要件は、2つのスプライスイベント(ドナーおよびアクセプター)を、LMI070処理細胞において排他的または強化されていると特定し、妥当なサイズのシュードエクソンの包含を作出することであった。候補スプライスイベントを、IGVにおいて利用可能なSashimiプロット機能を用いて視覚的に評価した(Thorvaldsdottir et al., 2013;Katz et al., 2015)。
【0245】
LMI070処理に対するLMI070誘導性スプライス部位の排他性を評価するために、候補スプライスジャンクションが、sequence read archive(SRA)に寄託された多様なヒトRNA-Seqデータセットにおいて以前に特定された頻度を評価した。この解析は、SRAアーカイブ中の21,504個のヒトRNA-Seq試料由来のエクソン-エクソンジャンクションのデータベースである、Intropolisを用いて行った。Intropolisデータベースは、GRCh37ゲノム位置によって索引付けされており、そのため、UCSCゲノムブラウザのLiftOverツールを用いて、GRCh38位置を最初にGRCh37に変換した(Kent et al., 2002)。次いで、カスタムpythonスクリプトを用いて、LMI070誘導性スプライス部位を、Intropolisデータベースに対して照会した。各LMI070候補スプライスイベントの結果を、表1に要約する。
【0246】
差次的遺伝子発現解析を、DESeq2を用いて行って、LMI070条件およびDMSO条件からの試料を比較した(Love et al., 2014)。有意義な差次的に発現される遺伝子の存在度を視覚化するために、volcanoプロットを、0.05のベンジャミーニ・ホッホベルク(Benjamini-Hochberg)調整p値閾値および0.1 logの倍率変化閾値で生成した。
【0247】
データ利用可能性。カスタムRスクリプトおよびPythonスクリプトは、Github で利用可能になる。RNA-Seqデータセットは、NCBI Gene Expression Omnibus(GEO)にアーカイブされる。
【0248】
統計解析。統計解析を、GraphPad Prism v5.0ソフトウェアを用いて行った。外れ値の試料を、グラブス検定(Grubb's test)を用いて検出した(a=0.05)。試料の正規分布は、ダゴスティーノ(D'Agostino)とピアソン(Pearson)の正規性検定を用いることによって決定した。データを、ボンフェローニの事後検定がその後続く一元配置分散分析を用いて解析した。統計的有意性は、p<0.05で考慮した。結果はすべて、平均値±SEMとして示す。
【0249】
実施例2‐薬物誘導性スイッチでの遺伝子治療の調節制御
本アプローチを試験する最初の実験を、脊髄性筋萎縮症(SMA)治療のために、薬物の実際の標的であるSMN2遺伝子を用いて行った。SMAは、遺伝子SMN1における変異によるものである。ヒトは、非常に類似した遺伝子であるSMN2を有し、これは、患者のゲノムに存在するSMN2コピーの数に応じて、SMN1欠損症の重症度を変えるように機能することができる。しかし、SMN2は、SMN1とは異なり、エクソン7の包含を損なう変動を受けているため、SMN1を完全に置き換えることはできない。結果として、SMN2の約10%のみが、正確にスプライシングされる(Cartegnie et al., 2006;Cartegni & Krainer, 2002)。LMI070(Cheung et al., 2018)およびRG7800/RG7619(Ratni et al., 2016)の2つの薬物は、エクソン7の包含を改善することができ、後期の臨床試験中である。エクソン6/7/8カセットは、SMN2タンパク質ではなく、関心対象の遺伝子の発現を制御するために、選ばれ、改良されうると理論的に考えられた。
【0250】
このために、薬物誘導性レポーター遺伝子発現を提供するようにSMN2-onカセットを生成した。HEK293細胞に、SMN2-on発現カセットをトランスフェクトし、さまざまな用量のLMI070またはRG7800に応答したルシフェラーゼ活性を評価した。図1Aに図示するように、ホタルルシフェラーゼ活性は、エクソン7の包含で期待されるが、エクソン7の排除は、未成熟終止コドンの存在およびシグナルの欠如を結果としてもたらす。SMN2-onスイッチを、そのネイティブフォーマットで試験したか、または、SMN2エクソン7のドナースプライス部位もしくはアクセプタースプライス部位をそれぞれ改変することによって、構成的な包含もしくはバックグラウンドエキソン7包含の低減のために変更した(図1B~1Cおよび11A~11C)。RG7800およびLMI070は両方とも、SMN2-onミニ遺伝子からルシフェラーゼ活性を誘導し、完全なスプライシングスイッチは、1μMよりも高い薬物濃度で明らかであり(図1C、1F、および1G)、改良されたSMN2-onスイッチシステムについておよそ20倍の全体の誘導があった(図1D、1E、および1H)。 SMN2-onカセットの設定において、LMI070は、RG7800よりも活性が高く(図1D、1F、および1G)、これは、それらの異なる作用機序による可能性がある(Palacino et al., 2015;Wang et al., 2018)。
【0251】
次に、非標的スプライスイベントを低減させるためのLMI070に対してより感受性であるエクソンを、探し出した。HEK293細胞を、25 nM LMI070で12時間処理し、誘導されたスプライシングの変化を、RNA-Seqを用いて確認した。4つの対照および4つのLMI070処理試料から得られたリードを、STARアライナー(Dobin & Gingeras, 2015)を用いてゲノムに対して整列させ、LMI070処理試料に排他的なスプライシングイベントを特定した(図2Aおよび2F~2N;表1)。合計で45個の新規スプライシングイベントが、LMI070処理後に特定され、それらは、LMI070処理試料における5個よりも多い新規イントロンスプライシングイベントの平均の閾値よりも上であった(図2A~2D;表1)。それらの中で、23個のイベントは、排他的にかつすべてのLMI070処理試料において見いだされ、残りの22個は、すべての処理試料において、および対照の未処理試料のうちの1つにおいて明らかであった(表1)。45個の特定された候補位置のLMI070処理に対する排他性を評価するために、染色体位置を、21,504個のヒトRNA-Seqデータセットにおいて見いだされたすべてのエクソン-エクソンジャンクションのリストを含有するリソースである、Intropolis(Nellore et al., 2016)において評価した。一例では、SF3B3における正準エクソン-エクソンジャンクション(図2B;表1)は、12,872個のデータセットにおいて、データセットあたり64カウントの平均頻度で観察され、他方、LMI070誘導性スプライスイベントは、5'および3'のエクソン-エクソンジャンクションについて、それぞれ10個および1個のデータセットにおいて観察された。5'エクソン-エクソンジャンクションについてのデータセットあたりの平均カウントは1.3であり、他方、3'エクソン-エクソンジャンクションは、21,504セットすべてにおいて1回しか観察されなかった(表1)。
【0252】
LMI070処理試料において特定されたシュードエクソンは、LMI070が標的とする以前に特定されたU1 RNA結合部位と一致する、強い3' AGAGUAモチーフを共有する(図2C)(Cheung et al., 2018)。特定されたLMI070誘導性スプライシングイベントを実験的に検証するために、上位5つの候補遺伝子の隣接エクソンに結合するプライマーペア(図2Aおよび2F~2J)を生成した。新規エクソンの堅牢な増幅が、LMI070で処理したHEK293細胞から生成されたcDNA試料について排他的に、PCRによって検出された(図2D)。全体的な遺伝子発現に対するLMI070処理の影響を、差次的発現解析を評価することによって評価した。DESeq2は、著しく少数の差次的に発現される遺伝子を明らかにし、6個の上方制御された遺伝子および24個の下方制御された遺伝子のみが、有意性の閾値を超えた(p<0.05;ベンジャミン・ホッホベルク多重検定補正)9。低い倍率変化値(<0.1倍)を有する遺伝子を除外した後、5個の上方制御された遺伝子および9個の下方制御された遺伝子のみが特定された(図2E)。
【0253】
次に、一連のスイッチオンカセットを、RNA-Seqデータセットにおいて見いだされた上位4つのLMI070応答エクソンから開発した。このために、SF3B3(図11E)、BENC1(図11J)、C12orf4(図11K)、およびPDXDC2(図11L)におけるシュードエクソンのスプライシングを反復するのに必要な最小のイントロン介在配列を、ルシフェラーゼcDNAまたはeGFP cDNAの上流にクローニングした(図3Aおよび3C)。翻訳を薬物に応答するだけであるように限定するために、AUG開始コドンがその後続くKozak配列を、LMI070結合に応答して含まれる新規エクソン内に位置付けた(図3Aおよび3C)。HEK293細胞に、候補カセットをトランスフェクトし、LMI070で処理して、24時間後にルシフェラーゼ活性またはeGFP発現を測定した。増加したルシフェラーゼ発現が、LMI070に応答して各候補カセットについて観察され、SF3B3-onスイッチは、100倍よりも大きい誘導を示した(図3B)。特に、これは、SMN2-onカセットによってもたらされる20倍の誘導の5倍である(図1E)。同様に、eGFP発現は、SF3B3-on-eGFPカセットをトランスフェクトした細胞において、LMI070処理に応答して検出されただけであった(図3D)。
【0254】
候補カセットすべてについて、LMI070の非存在下で測定可能なベースラインルシフェラーゼ活性があったが、SF3B3カセットは、最も少ないバックグラウンドを有していた(図3E)。リボソームフットプリンティングを用いた最近の研究により、非AUG開始コドンが翻訳開始を提供することが明らかになったため(Ingolia et al., 2009)、薬物の非存在下でルシフェラーゼ翻訳を駆動することができるインフレーム非AUG開始コドンの存在を評価した。すべてのカセットは、インフレーム非AUGコドンを含有していたが、SF3B3カセットには、インフレーム非AUGコドンが1つだけあった(図3F)。
【0255】
工学的に操作されたスイッチカセットからのベースラインのスプライシングを評価するために、2つの異なるPCRアッセイを行い、1つは、すべての転写産物を検出するための隣接エクソンに結合するプライマーを用い、もう1つは、新規のスプライシングされたエクソン内に結合するプライマーを用いた(図3G)。LMI070でスプライシングされたエクソンは、隣接エクソンに結合するプライマーペアでは検出されなかったが、新規エクソン配列を特異的にプライミングした時には、かすかなシグナルがあった(図3G)。全体的に、これらの結果は、Intropolisデータセットにおいて見いだされたものを反映して、LMI070の非存在下で、選択的エクソンが転写産物の小さな画分に含まれうることを示唆する(表1)。
【0256】
5'および3'のスプライス部位ペアのスプライシング機構選択は、潜在的なまたは正確なスプライス部位の選択を抑制または促進するサイレンサーおよびエンハンサースプライシング配列の組み合わせを含む、「スプライシングコード」を集合的に含むいくつかのシス作用配列によって定義される。Human Splicing Finderウェブサイト(Desmet et al., 2009)を用いて、SF3B3イントロン配列を、SF3B3のLMI070でスプライシングされたシュードエクソンの包含を調整することができる推定のサイレンサー配列およびエンハンサー配列についてスクリーニングした(図3H)。薬物の非存在下でスプライシングを抑制することができるサイレンシング配列が豊富な3つのイントロン領域が、シュードエクソンの下流で特定された。薬物誘導性制御に対するそれらの影響を試験するために、完全イントロン配列(SF3B3int;図11E)、サイレンサー配列が豊富なイントロン断片(SF3B3i1(図11F)、SF3B3i2(図11G)、およびSF3B3i3(図11H))、またはイントロンサイレンサー配列があまり豊富ではないイントロン断片(SF3B3i4(図11I))を含有するSF3B3-onレポーターカセットを生成した(図3I)。HEK293細胞に、元のSF3B3-onスイッチまたは代替イントロン配列を含有するカセットをトランスフェクトし、24時間後にスプライシングおよびルシフェラーゼ活性を測定した。SF3B3i4をトランスフェクトした細胞は、元のSF3B3-onコンストラクトと同様の活性を示したが、ルシフェラーゼ活性は、薬物処理に関係なく、他の群すべてにおいて低減した(図3Jおよび3K)。LMI070に応答したルシフェラーゼ活性の倍率変化は、元のイントロンを含有するプラスミドをトランスフェクトした細胞において、有意により高かった(>200倍、図3K)。驚くべきことに、ルシフェラーゼ活性の低減は、新規エクソンのスプライシング抑制とは関係がなかったが、薬物の非存在下での追加のスプライシングされた転写産物の生成と関係していた(図3Lおよび3M)。元のSF3B3-onカセット(以下、Xonと呼ぶ)を、すべてのさらなる研究に用いた。
【0257】
次に、Xonを、さまざまな強さのプロモーターから発現させた場合の応答性について試験した。HEK293細胞に、ラウス肉腫ウイルス(RSV)、ホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK)、または最小サイトメガロウイルス(mCMV)のプロモーターの制御下にXonルシフェラーゼをコードするカセットを含有する発現プラスミドをトランスフェクトした。すべてのプロモーターは、誘導性発現を駆動し(図4A)、ルシフェラーゼ活性の倍率変化における明らかな用量応答があり(図4B、4D、および4E)、これはスプライシング評価によって反映された(図4Cおよび4F)。全体的に、これらのコンストラクトは、誘導の勾配をRSV>PGK>mCMVで提供する。
【0258】
インビボでXonシステムを評価するために、AAV Xonベクターを開発して、AAV9中にパッケージングした(AAV9.RSV.Xon.eGFP)。AAV9.Xon.eGFP(3E11 vg/マウス)をマウスに静脈内(IV)投与し、4週間後に、動物に媒体または5もしくは50 mg/kgのLMI070の単一用量を与え、24時間後にeGFP発現を評価した(図5A)。肝臓由来の切片において、顕著なeGFP発現があった(図5B)。顕微鏡観察により組織において示されたeGFPシグナルの用量応答を、ウエスタンブロット(図5Cおよび5K)ならびにスプライシングアッセイ(図5D)によって確認した。累積的に、これらのデータは、インビボで、Xonカセットを、薬物の単回投与後にAAVベクターからの遺伝子発現を駆動するために使用できることを示す。重要なことに、タンパク質レベルおよび新規エクソンスプライシングは、LMI070用量と直接相関していた(図5E~5F)。
【0259】
脳標的遺伝子治療に対するこのシステムの適用性を評価するために、Xonを、AAVPHPeB(Chan et al., 2017)中にパッケージングし(AAVPHPeB.Xon.eGFP)、マウスにIV送達した(3E11 vg/マウス)。再び、eGFP発現および新規エクソンスプライシングが、薬物に応答してのみ、かつ用量応答様式で明らかであった(図5Gおよび5H)。重要なことに、Xon誘導性および遺伝子発現制御はまた、組織学、ウエスタンブロット、およびスプライシングアッセイによって測定されたように、より強いプロモーター(すなわち、CAGプロモーター)の発現下でも維持された(図5R、5S、5T、5U、5V、5W、5X)。
【0260】
次に、いくつかの遺伝子治療応用には反復投与が必要とされうるため、Xonを、LMI070の2回目の投与に対するその応答性について試験した(図5I)。マウスを、AAV9.Xon.eGFPでIV処置し、4週間後に、媒体またはLMI070(50 mg/kg)のいずれかの1回の経口用量を与えた。1日後に、いくつかの動物を安楽死させ、誘導を、組織学およびスプライシングアッセイによって評価した。残りのマウスは、1 週間の薬物ウォッシュアウトを受け、その後、LMI070(50 mg/kg)または媒体のいずれかの2回目の経口用量を与えた。誘導は、組織学、ウエスタンブロットによって、およびスプライシングアッセイによって評価されたように、1回目および2回目の投与後の肝臓において明らかであった(図5J、5K、5L、5M、5Q)。骨格筋および心臓における誘導もまた、組織学(図5N)ならびにスプライシングアッセイ(図5Oおよび5P)によって評価されたように注目に値し、誘導の相対レベルは、心臓および肝臓で最大であった(それぞれ、約3000倍および1000倍)。
【0261】
遺伝子編集アプローチは、疾患アレルを変更するかまたは除去する大きな機会を提供するが、ウイルスベクターからの編集機構の長期の発現は、問題となる場合がある。編集酵素は、外来タンパク質であり、免疫応答を誘導する可能性があり、長期の遺伝子発現は、オフターゲット編集の機会を増加させることになる(Charlesworth et al., 2019;Vakulskas et al., 2018)。編集を調節するためのXonシステムの有用性は、例として、ハンチントン病(HD)のための遺伝子サイレンシングアプローチの標的であるハンチンチン(HTT)を用いて試験された(Tabrizi et al., 2019)。
【0262】
最初に、gRNAを、変異型HTT(mHTT)エクソン1のSaCas9媒介性欠失を媒介するように設計した。このために、SaCas9プロトスペーサー隣接モチーフを作出する、mHTTエクソン1に対して5'の一塩基多型(SNP)を用いた(PAM;sg935、図6Aおよび6G)。下流イントロンを標的とするsgRNA(sgi3、図6Aおよび6G)(Monteys et al., 2017)と組み合わせて用いると、これらのgRNAは、SaCas9を介してHTTエクソン1を編集し、HTTのmRNAレベルおよびタンパク質レベルを低下させる(図6H~6K)。次に、薬物誘導性SaCas9発現のためのXonスイッチを生成し、構成的に活性なカセットと比較した(図6B)。LMI070でのSaCas9発現の明らかな用量応答があった(図6C)。次いで、Xon-SaCas9+関連するgRNAを、HEK293細胞にトランスフェクトし、HTT遺伝子座、HTT mRNA、およびHTTタンパク質のレベルを評価した(図6D)。LMI070で処理した試料と、SaCas9を構成的に発現する試料との間には、同等の編集があった(図6E)。さらに重要なことに、LMI070処理時に、RNAレベルで同時の低減があり、HTT転写産物は、構成的に活性な編集発現カセットをトランスフェクトした細胞において示された程度と同様に、50%低減した(図6F)。タンパク質レベルは、同様に低減した(図6G)。かつ、最小の編集が、活性gRNAおよびXon-SaCas9をトランスフェクトし、DMSOで処理した細胞について検出された(図6E)が、転写産物およびタンパク質のレベルは、影響を受けないままであった(図6F)。まとめると、これらのデータは、Xonスイッチが、mHTTに対するアレル特異的gRNAと共に、HD処置に重要な進歩をもたらすことを示す。
【0263】
肝臓標的療法に対するXonの適用性を評価するために、AAV8.Xon.EpoベクターおよびAAV8.Xon.SaCas9ベクターを生成し、C57Bl6およびAi14レポーターマウスにそれぞれ送達した(図7A、7C、7F)。マウスEpoの誘導およびヘマトクリットレベルは、最後のLMI070投与の24時間後に、AAV8.Xon.Epoを注射したC57Bl6マウスにおいてのみ検出された(図7B、7G、7H)。同様に、Ai14レポーターゲノム遺伝子座の編集は、ゲノムAi14遺伝子座の編集を検出するPCRおよびtdTomatoレポーター遺伝子の発現によって測定されたように、AAV8.Xon.SaCas9ウイルスを注射し、LMI070で処置したマウスでのみ観察された(図7D、7E)。
【0264】
大きい遺伝子の発現を制御するために、LMI誘導性エクソンに隣接する最小化されたイントロン配列を有する、SF3B3.Xonカセットの圧縮バージョンを生成した(図8A)。ルシフェラーゼ活性およびスプライシングアッセイによって測定されたように、SF3B3.Xon100カセットとSF3B3.Xonカセットとの間に、いかなる有意な差も観察されなかった(図8B、8C、8D、8E、8F)。
【0265】
脳標的療法に対するXonの適用性を評価するために、SF3B3.Xonを、AAVPHPeBベクター中にパッケージングしてSaCas9タンパク質の発現を制御し、トランスジェニックAi14レポーターマウスおよびBacHDマウスに送達した(図9A、9C)。 Ai14レポーターゲノム遺伝子座の編集は、Ai14ゲノム遺伝子座の編集の結果としてのtdTomatoタンパク質の発現によって実証されたように、LMI070で処置したマウスでのみ観察された(図9B)。
【0266】
要約すると、任意のタンパク質のインビトロ細胞生物学応用およびインビボ評価、ならびに新しい治療法の試験のための、調節された遺伝子発現用の単純な高度に適応可能なツールが提供される。遺伝子付加および遺伝子編集のためのXonシステムの有用性が示され、AAV送達を介した培養中の細胞におけるまたは組織におけるそのすばらしい制御が実証されている。研究者は、発現の追加の波を試験するために細胞または動物においてXonを用いることができ、さまざまなレベルの誘導性のために異なるプロモーターおよび薬物用量を用いることができる。Xonツールはまた、構成的に発現された場合に毒性である遺伝子産物を試験する手段を、研究者に与える。実際に、Xonシステムは、精巧な発現制御が望ましい任意の生物学的問題に適用することができる。
【0267】
実施例3‐薬物誘導性スイッチでの分泌タンパク質の調節制御
ほとんどの分泌タンパク質は、そのN末端に、新生ポリペプチドを分泌経路に向けるシグナルペプチドを有する。ミニ遺伝子におけるAUG開始コドンは、薬物に応答して含まれる新規エクソン(PSEx)内に位置付けられるため、標的タンパク質の最初のいくつかのアミノ酸は、ミニ遺伝子の新規エクソン(PSEx)およびエクソン2(e2)の一部分によってコードされる。したがって、分泌されるタンパク質については、これが、シグナルペプチドの認識を阻止することによって、標的タンパク質が分泌経路に妥当に入ることを阻止しうると考えられた。一例として、マウスエリスロポエチン(mEpo)は、SignalP 5.0によって、アミノ酸26 と27との間に切断部位を有する(92.03%)、シグナルペプチドを有すると予測されている(99.25%)。mEpoをSF3B3.Xonを用いて発現させた場合に起こるであろうミニ遺伝子配列の付加により、シグナルペプチドの予測は57.81%に落下し、アミノ酸49と50との間に予測切断部位を有していた(53.52%)。
【0268】
したがって、SF3B3の新しいエクソンの改変を、分泌タンパク質に適応させるように行った。第1に、KozacATGの位置を、新規エクソン(PSEx)内でさらに3'にシフトさせて、PSExが、最初のMetを含む5個のアミノ酸のみをコードするようにした。第2に、KozacATGの下流のPSExの配列を、マウスEpoと同じ最初の5個のアミノ酸をコードするように改変した。第3に、ミニ遺伝子のエクソン2(e2)を、1個のアミノ酸のみをコードするように最小化した。最小化されたe2の1つのコドンによってコードされるアミノ酸のバリエーションを、スプライス部位を維持するために必要とされる配列を保存しながら作製した。したがって、この単一コドンe2は、アスパラギン(SEQ ID NO: 13の通り)、アルギニン(SEQ ID NO: 15の通り)、またはリジン(SEQ ID NO: 14の通り)をコードすることができる。最後に、グリシンおよびセリンをコードするBamHI切断部位を、最小化されたe2のすぐ下流に保った。
【0269】
予測される分泌に対する効果を予測するために、コドン7から始まるmEpo配列を、BamHI部位の下流に挿入した。e2によってコードされているアスパラギンにより、シグナルペプチドの予測は98.32%に増加し、アミノ酸28と29との間に予測切断部位を有していた(91.08%)。e2によってコードされているリジンにより、シグナルペプチドの予測は98.83%に増加し、アミノ酸28と29との間に予測切断部位を有していた(91.58%)。e2によってコードされているアルギニンにより、シグナルペプチドの予測は98.89%に増加し、アミノ酸28と29との間に予測切断部位を有していた(91.58%)。
【0270】
別の例として、プログラニュリンは、SignalP 5.0によって、アミノ酸17と18との間に切断部位を有する(84.34%)、シグナルペプチドを有すると予測されている(99.91%)。プログラニュリンをSF3B3.Xonを用いて発現させた場合に起こるであろうミニ遺伝子配列の付加により、シグナルペプチドの予測は53.31%に落下し、アミノ酸40と41との間に予測切断部位を有していた(42.16%)。mEpoのためのものと同じ最適化されたミニ遺伝子設計を用いて、プログラニュリン配列をBamHI部位の下流に挿入し、予測される分泌に対する効果を測定した。e2によってコードされているアスパラギンにより、シグナルペプチドの予測は97.90%に増加し、アミノ酸24と25との間に予測切断部位を有していた(79.54%)。e2によってコードされているリジンにより、シグナルペプチドの予測は99.25%に増加し、アミノ酸24と25との間に予測切断部位を有していた(82.27%)。e2によってコードされているアルギニンにより、シグナルペプチドの予測は99.45%に増加し、アミノ酸24と25との間に予測切断部位を有していた(82.57%)。
【0271】
別の例として、TPP1は、SignalP 5.0によって、アミノ酸19と20との間に切断部位を有する(63.83%)、シグナルペプチドを有すると予測されている(98.21%)。TPP1をSF3B3.Xonを用いて発現させた場合に起こるであろうミニ遺伝子配列の付加により、シグナルペプチドの予測は14.27%に落下し、いかなる予測切断部位も有しなかった。mEpoのためのものと同じ最適化されたミニ遺伝子設計を用いて、TPP1配列をBamHI部位の下流に挿入し、予測される分泌に対する効果を測定した。e2によってコードされているアスパラギンにより、シグナルペプチドの予測は84.58%に増加し、アミノ酸26と27との間に予測切断部位を有していた(54.96%)。e2によってコードされているリジンにより、シグナルペプチドの予測は89.39%に増加し、アミノ酸26と27との間に予測切断部位を有していた(58.58%)。e2によってコードされているアルギニンにより、シグナルペプチドの予測は90.04%に増加し、アミノ酸26と27との間に予測切断部位を有していた(59.17%)。
【0272】
分泌タンパク質のために最適化されたミニ遺伝子設計が、タンパク質を誘導的に発現できるかどうかを判定するために、eGFPをBamHI部位の下流にクローニングした。図10Aに示すように、最適化されたミニ遺伝子からのタンパク質発現レベルは、元と比較して低減したが、誘導性は維持されていた。より強いプロモーターの使用は、減少した発現レベルを補うことができた。最適化されたスイッチカセットからのベースラインのスプライシングを評価するために、2つの異なるPCRアッセイを行い、1つは、すべての転写産物を検出するための隣接エクソンに結合するプライマーを用い、もう1つは、新規のスプライシングされたエクソン内に結合するプライマーを用いた(図10B)。
【0273】
本明細書において開示し特許請求する方法はすべて、本開示に照らして、過度な実験を行うことなく、それらを作製し、実施することができる。本発明の組成物および方法を好ましい態様に関して説明したが、本明細書において記載した方法および方法の工程もしくは工程の順序に、本発明の概念、要旨および範囲から逸脱することなく、変更を加えうることは、当業者には明らかであるだろう。より具体的に述べると、本明細書において記載した作用物質の代わりに、化学的にも生理学的にも関連する一定の作用物質を使用することができ、それでも同じまたは類似する結果が達成されるであろうことは、明らかであるだろう。当業者にとって明白なそれら類似の代替物および変更はすべて、添付の特許請求の範囲に規定される本発明の要旨、範囲および概念内にあるとみなされる。
【0274】
参考文献
以下の参考文献は、それらが本明細書における記載を補う例示的な手順の詳細または他の詳細を与える限りにおいて、参照により特に本明細書に組み入れられる。
図1-1】
図1-2】
図1-3】
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図2G
図2H
図2I
図2J
図2K
図2L
図2M
図2N
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F-1】
図3F-2】
図3G
図3H
図3I
図3J
図3K
図3L
図3M
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図4F
図5-1】
図5-2】
図5-3】
図5-4】
図5-5】
図5-6】
図5-7】
図5-8】
図5-9】
図6-1】
図6-2】
図6-3】
図6-4】
図7A
図7B
図7C
図7D
図7E
図7F
図7G
図7H
図8A
図8B
図8C
図8D
図8E
図8F
図9A
図9B
図9C
図9D
図10
図11A
図11B
図11C
図11D
図11E
図11F
図11G
図11H
図11I
図11J
図11K
図11L
図11M
図11N
図11O
【配列表】
2023514242000001.app
【手続補正書】
【提出日】2022-11-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】変更
【補正の内容】
【配列表】
2023514242000001.app
【国際調査報告】