(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-05
(54)【発明の名称】免疫グロブリン検出と関連する療法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/53 20060101AFI20230329BHJP
G01N 33/543 20060101ALI20230329BHJP
A61K 38/48 20060101ALI20230329BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20230329BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20230329BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230329BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20230329BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20230329BHJP
C12M 1/34 20060101ALN20230329BHJP
【FI】
G01N33/53 N ZNA
G01N33/543 545A
G01N33/543 595
A61K38/48
A61P29/00
A61P9/00
A61P35/00
A61P13/12
A61P37/02
C12M1/34 F
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022549095
(86)(22)【出願日】2021-02-12
(85)【翻訳文提出日】2022-10-11
(86)【国際出願番号】 EP2021053462
(87)【国際公開番号】W WO2021160805
(87)【国際公開日】2021-08-19
(32)【優先日】2020-02-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】517280580
【氏名又は名称】ハンサ バイオファーマ エービー
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100151301
【氏名又は名称】戸崎 富哉
(74)【代理人】
【識別番号】100152308
【氏名又は名称】中 正道
(74)【代理人】
【識別番号】100201558
【氏名又は名称】亀井 恵二郎
(72)【発明者】
【氏名】ルンストレーム、アナ
(72)【発明者】
【氏名】ボッケルマン、ローベルト
(72)【発明者】
【氏名】フェーホルム、クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】ルーペ、マルクス
(72)【発明者】
【氏名】シェルマン、クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】ローラント、トーマス
【テーマコード(参考)】
4B029
4C084
【Fターム(参考)】
4B029AA07
4B029BB15
4B029BB16
4B029CC03
4B029FA12
4B029FA15
4C084AA02
4C084AA03
4C084BA44
4C084CA04
4C084DC07
4C084NA14
4C084ZA36
4C084ZA81
4C084ZB07
4C084ZB11
4C084ZB26
(57)【要約】
本発明は、免疫グロブリンM(IgM)、免疫グロブリンA(IgA)および免疫グロブリンE(IgE)抗体の改良された検出方法、ならびに病原性抗体および抗体複合体を介する疾患および状態に対する新しい療法に関する。
【選択図】
図15
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料中のIgM抗体、IgA抗体またはIgE抗体を検出するための方法であって、以下を含む方法:
a.IgGシステインプロテアーゼ活性の発生を可能にする条件下で、前記試料をIgGシステインプロテアーゼと接触させること;および
b.前記試料をIgM抗体、IgA抗体またはIgE抗体を検出するのに適した剤と接触させること。
【請求項2】
前記IgGシステインプロテアーゼが、IdeSまたはIdeZポリペプチドである、請求項1の方法。
【請求項3】
前記IgGシステインプロテアーゼが、配列番号2、4または5と少なくとも80%同一、例えば少なくとも85%、90%、95%または99%同一である配列を有するポリペプチドである、あるいは前記IgGシステインプロテアーゼが、配列番号6から25および55から69のいずれか1つの配列を含むまたはそれからなり、任意で前記配列が、N末端に追加のメチオニンおよび/またはC末端にヒスチジンタグを含む、請求項1または2の方法。
【請求項4】
前記IgM抗体、IgA抗体またはIgE抗体を検出するのに適した剤が、抗IgM抗体、抗IgA抗体または抗IgE抗体であり、任意にビーズまたはプレートなどの固体基材に固定されている、先行するいずれかの請求項の方法。
【請求項5】
前記試料を、ヒト白血球抗原(HLA)、赤血球抗原または薬剤抗原などの目的の抗原と、目的の抗原に特異的に結合する抗体の単離を可能にする条件下で接触させ、任意に前記目的の抗原がビーズまたはプレートなどの固体基材に固定されている、先行するいずれかの請求項の方法。
【請求項6】
前記試料が、血清試料などの患者から得られた試料であり、任意に前記試料が、臓器移植を必要とすると診断されている患者、または表Aから選択される疾患と診断された患者から得られた試料である、先行するいずれかの請求項の方法。
【請求項7】
方法が、ELISA、単一抗原ビーズアッセイ、表面プラズモン共鳴アッセイ、ネフェロメトリーアッセイまたはバイオレイヤー干渉アッセイである、先行するいずれかの請求項の方法。
【請求項8】
IgGシステインプロテアーゼおよびIgM抗体、IgA抗体またはIgE抗体を検出するための剤を含む、先行するいずれかの請求項の方法を実施するためのキットであって、任意でさらに、ヒト白血球抗原(HLA)、赤血球抗原または薬剤抗原などの目的の抗原を含む、キット。
【請求項9】
対象において、病原性IgM抗体、病原性IgAまたは病原性IgE抗体によって全体的または部分的に媒介される疾患または状態を治療するための方法であって、IgGシステインプロテアーゼを投与することを含む、方法。
【請求項10】
抗IgG IgM抗体、抗IgG IgA抗体または抗IgG IgE抗体を示すと判定された対象において、病原性IgG抗体によって全体的または部分的に媒介される疾患または状態を治療するための方法であって、IgGシステインプロテアーゼを投与することを含む、方法。
【請求項11】
IgG抗体およびIgM、IgAまたはIgE抗体との複合体によって全体的または部分的に媒介される疾患または状態を治療するための方法であって、IgGシステインプロテアーゼを投与することを含む、方法。
【請求項12】
病原性抗体が、抗HLA抗体、抗赤血球抗原抗体または抗薬剤抗体である、請求項9または10の方法。
【請求項13】
前記対象が、有意なレベルの抗自己IgG抗体を示さない、または前記対象が、病原性IgM抗体、病原性IgA抗体または病原性IgE抗体の上昇したレベルを示すと決定される、請求項9~12のいずれか一項の方法。
【請求項14】
前記疾患または状態が、表Aからなるリストから選択される、請求項9~13のいずれか一項の方法。
【請求項15】
前記疾患または状態が、血管炎、多発性血管炎を伴う肉芽腫症(ウェゲナー肉芽腫症)、IgA腎症および全身性エリテマトーデスからなるリストから選択される、請求項11の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、免疫グロブリンM(IgM)、免疫グロブリンA(IgA)および免疫グロブリンE(IgE)抗体の改良された検出方法、ならびに病原性抗体および抗体複合体を介する疾患および状態に対する新しい治療に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
自己免疫疾患やその他の病原性内因性抗体を介する状態は、複雑な治療上の課題を提起している。腎不全、肝不全または心不全などを患う患者の最後の選択肢は臓器移植であることが多いが、ヒト白血球抗原(HLA)感作が臓器移植に大きな障壁となっている。感作の強い患者は高レベルの抗HLA抗体を持っており、これが移植された臓器を標的にし、該臓器を大きく損なう可能性が高い。かかる抗体の多さは、適合するドナー臓器が見つかる可能性に直接影響する。例えば、腎不全を患う多くの高感作患者は、長期間の透析により衰弱した病状がいつまでも続き、高いコスト、生活の質の低下、死亡率の上昇を伴う。免疫抑制剤は、急性拒絶反応による早期の移植片喪失を抑えることができるが、慢性拒絶反応による移植片喪失にはあまり効果がなく、生命を脅かす感染症や癌などの重篤な合併症のリスクを高める。
【0003】
病原性内因性抗体や免疫複合体は、広範囲の自己免疫疾患や状態の原因ともなり、それによって、患者は自己抗原を認識する抗体を持ち、これらの抗体は炎症や組織損傷を媒介する。
【0004】
自己免疫疾患やその他の病原性内因性を介する状態の診断や治療には、病原性内因性抗体を検出するための高感度アッセイおよびその抗体の有害な作用を軽減するための治療法が必要である。しかしながら、抗体は複雑な分子であり、それを検出するための現在のイムノアッセイは、信頼性が低く、感度が不十分である場合がある。抗HLA IgM抗体などのIgM抗体を検出するための現在の方法は、IgG抗体を検出するための方法から転用されている(Paantjens, et al., Pulm. Med., 2011)。IgGを検出する方法において干渉の問題が疑われる場合、ジチオスレイトール(DTT)などの還元剤を使用してIgMを破壊し、IgMがIgGをブロックするのを防ぐことが一般的である(Paantjens, et al., Pulm. Med., 2011)。抗体を検出するための改良されたアッセイ、特にIgM抗体およびIgG以外の更なるクラスの抗体を検出するための方法に対する要求が存在する。また、病原性抗体を持つ患者を治療するための新しい方法も求められている。
【0005】
免疫グロブリンG分解システインプロテアーゼであるイムリフィダーゼ(IdeS)は、現在、腎臓移植における迅速な減感作治療として開発中のIgGエンドペプチダーゼである。イムリフィダーゼは特異性が高く、ヒトIgGのすべてのサブクラスを切断する。また、イムリフィダーゼは病的な抗HLA IgMも切断することが示唆されている(Zhang et al. 2019, Am J Transplant. 2019; 19 (suppl 3))。
【発明の概要】
【0006】
発明の要約
本発明は、IgGシステインプロテアーゼ活性の発生を可能にする条件下で、前記試料をIgGシステインプロテアーゼと接触させること、および前記試料をIgM抗体、IgA抗体またはIgE抗体を検出するのに適した剤と接触させることを含む、試料中のIgM抗体、IgA抗体またはIgE抗体を検出する改良された方法を提供する。
【0007】
好ましい態様では、本発明の方法はIgM抗体を検出するためのものである。本発明者らは、IgM抗体が、抗原特異的IgM抗体の検出を干渉するIgGとの免疫複合体を形成し得ることを実施例において示している。これらの複合体は、IgGシステインプロテアーゼによって切断され得るので、IgGシステインプロテアーゼの使用は、IgM抗体を検出するためのいかなる方法にも改良を提供するだろう。
【0008】
特定の態様では、本発明の方法は、IgA抗体を検出するためのものである。IgA抗体は、IgM抗体と同様の方法で、IgGと免疫複合体を形成することが知られている。かかる複合体は、抗原特異的IgA抗体を検出するいかなる方法にも干渉を引き起こすかもしれないので、IgGシステインプロテアーゼの使用は、実施例においてIgM抗体について実証したように、IgA抗体を検出するいかなる方法にも改良を提供するだろう。
【0009】
特定の態様では、本発明の方法は、IgE抗体を検出するためのものである。IgE抗体は、IgM抗体と同様の方法で、IgGと免疫複合体を形成することが知られている。かかる複合体は、抗原特異的IgE抗体を検出するいかなる方法にも干渉を引き起こすかもしれないので、IgGシステインプロテアーゼの使用は、実施例においてIgM抗体について実証したように、IgE抗体を検出するいかなる方法にも改良を提供するだろう。
【0010】
好ましい態様では、IgGシステインプロテアーゼ、IdeSまたはIdeZポリペプチド、例えば配列番号2、4または5と少なくとも80%同一である配列を有するポリペプチド、少なくとも85%、90%、95%または99%同一である配列を有するポリペプチドなど。これらのポリペプチドは、実施例で確認された、IgGに対する特異性を確立しているので、IgM、IgAまたはIgEレベルに影響を与えずにIgG干渉を根絶するために有効である。
【0011】
特定の態様では、IgM抗体、IgA抗体またはIgE抗体を検出するのに適した前記剤は、抗IgM抗体、抗IgA抗体または抗IgE抗体である。かかる抗体は容易に入手することができる。抗体は、試料の取り扱いを助け、スループットを向上させるために、ビーズまたはプレートなどの固体基材に固定されていてもよい。特定の態様では、IgM抗体、IgA抗体またはIgE抗体の検出に適した剤は、検出を助けるために、標識されている。
【0012】
本発明の方法は、特異的抗原に対するIgM抗体、IgA抗体またはIgE抗体を検出するために特に有用である。実施例は、IgGシステインプロテアーゼによって切断されるIgM-IgG免疫複合体が、標的特異的抗体についてのアッセイにおいて偽陽性結果を提供し得ることを実証している。したがって、特定の態様では、試料は、目的の抗原に特異的に結合する抗体の単離を可能にする条件下で、目的の抗原と接触される。目的の抗原は、例えば、ヒト白血球抗原(HLA)、赤血球抗原または薬剤抗原であってもよい。
【0013】
本発明の方法は、例えば、臓器移植を必要とすると診断されている患者または表Aから選択される疾患と診断された患者からの血清試料などの患者試料を分析するために特に有用である。
【0014】
本発明はまた、IgGシステインプロテアーゼと、IgM抗体、IgA抗体またはIgE抗体を検出するための剤とを含み、任意に、ヒト白血球抗原(HLA)、赤血球抗原または薬剤抗原などの目的の抗原を含む、本発明の方法を実施するためのキットを提供する。
【0015】
本発明はまた、病原性IgM抗体、病原性IgA抗体または病原性IgE抗体によって全体的または部分的に媒介される疾患または状態を治療する方法を提供し、この方法は、IgGシステインプロテアーゼを投与することを含む。本発明者らは、IgM抗体が、IgGシステインプロテアーゼで切断され得るIgG抗体と免疫複合体を形成し得ることを実施例において実証している。IgAおよびIgE抗体は、おそらくIgG抗体と同様の複合体を形成するであろう。これらの免疫複合体は、疾患プロセスを媒介すると予想されるので、IgGシステインプロテアーゼは、病原性IgM抗体、病原性IgA抗体または病原性IgE抗体が媒介する疾患または状態の治療に有用であろう。本発明はまた、病原性IgM抗体、病原性IgA抗体または病原性IgE抗体によって全体的または部分的に媒介される疾患または状態を治療する方法において使用するための、IgGシステインプロテアーゼを、提供する。
【0016】
本発明はまた、病原性IgG抗体によって全体的または部分的に媒介される疾患または状態を対象において治療する方法を提供し、前記対象は抗IgG IgM抗体、抗IgG IgA抗体または抗IgG IgE抗体を示すと決定され、この方法はIgGシステインプロテアーゼを投与することを含む。本発明者らは、IgM抗体が、IgGシステインプロテアーゼで切断され得るIgG抗体と免疫複合体を形成し得ることを実施例において実証している。IgAおよびIgE抗体は、おそらくIgG抗体と同様の複合体を形成するだろう。これらの免疫複合体は、病原性IgG抗体の効果を増幅すると予想されるので、IgGシステインプロテアーゼは、抗IgG IgM抗体または抗IgG IgA抗体を有する患者の治療に特に有効であろう。さらなる好ましい態様では、本発明は、病原性IgG抗体によって全体的または部分的に媒介される疾患または状態を対象において治療する方法における使用のための、IgGシステインプロテアーゼを提供し、前記対象は抗IgG IgM抗体、抗IgG IgA抗体または抗IgG IgE抗体を示すと決定される。
【0017】
本発明はまた、IgG抗体とIgM、IgAまたはIgE抗体との複合体によって全体的または部分的に媒介される疾患または状態を対象において治療する方法を提供し、該方法は、IgGシステインプロテアーゼを投与することを含む。本発明者らは、IgM抗体が、IgGシステインプロテアーゼで切断され得るIgG抗体と免疫複合体を形成し得ることを実施例において実証している。IgAおよびIgE抗体は、おそらくIgG抗体と同様の複合体を形成するであろう。これらの免疫複合体は、疾患プロセスを媒介する可能性があるので、IgGシステインプロテアーゼは、IgG抗体とIgM、IgAまたはIgE抗体との複合体によって媒介される疾患の治療に有効であろう。さらなる好ましい態様では、本発明は、IgG抗体とIgM、IgAまたはIgE抗体との複合体によって全体的または部分的に媒介される疾患または状態を対象において治療する方法における使用のための、IgGシステインプロテアーゼを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1-IgMとそのジスルフィド結合を示す模式図
【
図2】
図2-イムリフィダーゼとのインキュベーション後、ヒトIgMの切断は見られなかった。
【
図3】
図3-CaptureSelect IgG- CH1 Affinity Matrixを用いて、血清中のIgGを精製することに成功した。
【
図4】
図4-HLA I + II 抗体(IgG、HI)にイムリフィダーゼの効果が見られた。MFIカットオフ>3000
【
図5】
図5-HLA I + II 抗体(IgG、EDTA)対HLA I + II 抗体(IgM、EDTA)
【
図6】
図6-ニート血清とIgG除去後の抗HLA IgM抗体に見られる効果の比較
【
図7】
図7-アッセイの検出限界-抗ヒトIgM(PE)
【
図8】
図8-感作された患者において、イムリフィダーゼはヒトIgMを消化しない
【
図9】
図9-A)感作ESRD患者のイムリフィダーゼ投与前血清試料に対する投与24時間後血清試料のSAB-HLAクラスIおよびII特異的IgMの相対強度(MFI)。各ポイントは患者血清中のSAB-HLAビーズを表す。陽性ビーズのカットオフは、試料のエーテル中500であり、陽性ビーズのみが解析に含まれる。B)24時間試料中で増加したビーズ。C)24時間試料中で減少したビーズ。参考までに、投与前血清のIgG SAB- HLAもグラフに含まれている。個々のHLAビーズは線で結ばれている。個々の患者は、異なる点と線のタイプでラベル付けしている。
【
図10】
図10-精製したヒトIgMとIgGの消化をSDS-PAGEゲル(4-20%)で解析した。精製したヒトIgM(A)とIgG(B)を、幅広い濃度のイムリフィダーゼと一緒に37℃で2時間インキュベートした。高分子量IgM試料(A)はDTTで還元し、SDS-PAGEゲルで分離した。IgG試料(B)は3分間加熱し、還元せずにSDS-PAGEゲルで分離した。
【
図11】
図11-ESRD患者4名の血清試料を高濃度のイムリフィダーゼと一緒にインキュベートした。ヒトIgMの消化は、SDS-PAGEゲル(A)およびウェスタンブロット(B)により解析された。
【
図12】
図12-IgGの除去前と後の両方の血清試料のSDS-PAGE評価。A)は、患者02-922、患者02-923、患者02-925および患者02-926の試料フォームを含む。B)は、患者02-927、患者02-928および患者02-929の試料フォームを含む。
【
図13】
図13-SAB-HLAクラスIおよびII(IgM)について分析した感作されたESRD患者からのイムリフィダーゼ投与前および投与後24時間のIgG除去血清試料。図中のNは、その特定の患者の投与前血清中(ニート血清中のIgMに関する分析[
図4]から)1000MFIの閾値に達した単一抗原ビーズの数で、陽性ビーズのみが分析に含まれている。A)患者02-922。B)患者02-923。C)患者02-925。D)患者02-926。E)患者02-927。F)患者02-928。G)患者02-929。
【
図14】
図14-1人の感作されたESRD患者(02-927)からのイムリフィダーゼ投与前および投与後24時間の血清試料を、6および30μg/mLのイムリフィダーゼでの1時間インキュベーションするインビトロ処理で比較した。血清試料は、SAB-HLAクラスIおよびII(IgGおよびIgM)について分析された。
【
図15】
図15-我々が提案するメカニズムは、IgG-DSA複合体化IgMがSAB-HLAビーズに結合することである。IgM検出抗体は複合体中のIgMを認識し、その結果、偽のIgMシグナルが得られる。イムリフィダーゼ処置後、これらのIgG-IgM複合体は切断され、SAB HLAアッセイでは、はるかに低いが真のIgMシグナルが記録されるだろう。
【
図16】
図16-SAB-HLAクラスIおよびII特異的IgGについて分析した感作されたESRD患者からのイムリフィダーゼ投与前および投与後24時間の血清試料。明確化のため投与前の血清中3000MFIの閾値に達した単一抗原ビーズのみが分析に含まれる。Nは、患者02-922(A)、02-923(B)、02-925(C)、02-926(D)、02-927(E)、02-928(F)および02-929(G)の陽性ビーズの数を示す。
【
図17】
図17-IgMの投与前と投与後でわずかに変化するビーズ。線と形は凡例による。
【0019】
配列の簡単な説明
配列番号1は、N末端メチオニンおよびシグナル配列を含むIdeSの全配列である。それはNCBI参照配列番号WP_010922160.1としても利用できる。
配列番号2は、N末端メチオニンおよびシグナル配列を欠く、IdeSの成熟配列である。それはGenbank受入番号ADF13949.1としても利用できる。
配列番号3は、N末端メチオニンおよびシグナル配列を含むIdeSの全配列である。それはNCBI参照配列番号WP_014622780.1としても利用できる。
配列番号4は、N末端メチオニンおよびシグナル配列を欠く、IdeZの成熟配列である。
配列番号5は、ハイブリッドIdeS/Zの配列である。N末端は、N末端メチオニンおよびシグナル配列を欠くIdeZに基づいている。
配列番号6から25は、本発明の方法に使用するための例示的なプロテアーゼの配列である。
配列番号26は、IdeSポリペプチドの配列である。追加のN末端メチオニンおよびヒスチジンタグを伴う、配列番号2の配列(内部標準のpCART124)を含む。
配列番号27は、IdeSポリペプチドの配列である。追加のN末端メチオニンおよびヒスチジンタグを伴う、配列番号4の配列(内部標準のpCART144)を含む。
配列番号28は、IdeS/Zポリペプチドの配列である。追加のN末端メチオニンおよびヒスチジンタグを伴う、配列番号5の配列(内部標準のpCART145)を含む。
配列番号29は、配列番号3の63位~73位に対応する連続配列PLTPEQFRYNNである。
配列番号30は、配列番号1の58位~65位に対応する連続配列PPANFTQGである。
配列番号31は、配列番号3の35位~54位に対応する連続配列DDYQRNATEAYAKEVPHQITである。
配列番号32は、配列番号1の30位~49位に対応する連続配列DSFSANQEIRYSEVTPYHVTである。
配列番号33から55は、上記に設定されたプロテアーゼをコードするヌクレオチド配列である。
配列番号56から69は、本発明の方法に使用するための例示的なプロテアーゼの配列である。
配列番号70は、配列番号1の336位~339位に対応する連続配列NQTNである。
配列番号71は、配列番号1の30位~49位に対応する連続配列DSFSANQEIR YSEVTPYHVTである。
配列番号72から86は、本明細書に開示のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列である。
配列番号87は、配列番号1の31位~49位に対応する配列SFSANQEIRY SEVTPYHVTである。
配列番号88は、IdeZ ポリペプチドNCBI参照配列番号WP_014622780.1の36位~54位に対応する、配列DYQRNATEAY AKEVPHQITである。
配列番号89は、本発明のポリペプチドのN末端に存在し得る配列DDYQRNATEA YAKEVPHQITである。
【0020】
発明の詳細な説明
抗体を検出する方法
本発明者らは、IgM抗体がIgG抗体と免疫複合体を形成し得ることを実施例において実証している。かかる免疫複合体は、標的抗原と反応するIgM抗体が存在しない場合、標的抗原とIgMを検出するための剤の両方に結合することができる。したがって、かかる免疫複合体は、IgM抗体、特に抗原特異的IgM抗体を検出するためのアッセイにおいて偽陽性の結果を生じさせるかもしれない。実施例はまた、これらの問題のある複合体がIgGシステインプロテアーゼで切断され得ることを実証している。IgAおよびIgE抗体は、IgMと同様の方法でIgGと複合体を形成することが知られている。したがって、本発明は、IgGシステインプロテアーゼ活性の発生を可能にする条件下で、前記試料をIgGシステインプロテアーゼと接触させることを含む、IgM、IgAおよびIgE抗体を検出するための改良された方法を提供する。
【0021】
本発明者らが発見した干渉は、シグナルの遮断ではなく、不適切なシグナルの増加をもたらすという珍しいものである。IgGシステインプロテアーゼを用いて本発明者らが開発した解決策は、検出すべきIgM、IgAまたはIgE抗体のいずれにも影響を与えないので、特に有効である。本発明者らによって特定された干渉に対処するための他の技術、例えば抗IgG抗体による除去またはカラムによる除去は、IgM、IgAおよび/またはIgEレベルの減少をおそらくもたらすだろう。
【0022】
本発明は、試料中のIgM抗体、IgA抗体またはIgE抗体を検出する方法であって、IgGシステインプロテアーゼ活性の発生を可能にする条件下で、前記試料をIgGシステインプロテアーゼと接触させること;および前記試料をIgM抗体、IgA抗体またはIgE抗体を検出するのに適した剤と接触させることを含む、方法を提供する。
【0023】
IgM、IgAおよびIgE抗体を検出するための様々なイムノアッセイが利用可能であり、試料をIgGシステインプロテアーゼと接触させる工程を追加するよう適合させることができる。
【0024】
特定の態様では、本発明の方法は、ELISAなどの固相アッセイにおいて用いられ、抗体を検出するための剤は、プレートのウェルに固定化される。試料とIgGシステインプロテアーゼとの接触は、同じウェルで行われてもよい。
【0025】
特定の態様では、本発明の方法は、マルチプレックスビーズアッセイなどの固相アッセイにおいて用いられ、抗体を検出するための剤はビーズ上に固定化される。抗体を検出するための異なる剤および/または異なる目的の抗原は、異なるビーズに固定化されてもよい。特定の態様では、本発明の方法は、単一抗原ビーズアッセイにおいて使用される。特定の態様では、本発明の方法は、Luminex(登録商標)プラットフォームを使用する。
【0026】
特定の態様では、本発明の方法は、ELISAまたはCAP FEIA(ImmunoCAP)試験などの固相アッセイにおいて用いられ、目的の標的抗原は、ウェルまたはセルロースなどの固体基材上に固定化される。次いで、試料を、固定化された抗原と接触させ、IgGシステインプロテアーゼと接触させ、目的の抗体クラスを検出するための剤と接触させる。
【0027】
特定の態様では、本発明の方法は、表面プラズモン共鳴アッセイにおいて用いられ、抗体を検出するための剤は、センサーチップ表面に固定化される。
【0028】
特定の態様では、本発明の方法は、ネフェロメトリーアッセイにおいて使用され、抗体を検出するのに適した剤と試料との接触は、溶液中で行われる。
【0029】
特定の態様では、本発明の方法は、バイオレイヤー干渉法アッセイにおいて使用され、抗体を検出するための剤は、バイオセンサーチップ上に固定化される。
【0030】
好ましい態様では、IgM抗体、IgA抗体またはIgE抗体を検出するために適した剤は、抗IgM抗体、抗IgA抗体または抗IgE抗体である。かかる抗体は、周知であり、広く入手可能である。特定の態様では、IgM、IgAまたはIgE抗体を検出するのに適した剤は、標識化されている。標識は、検出を補助するために使用することができる。
【0031】
好ましい態様では、本発明の方法は、目的の標的に特異的なIgM抗体、IgA抗体またはIgE抗体を検出するためのものである。上記に示したように、かかる抗体を検出するための様々なイムノアッセイが知られており、試料をIgGシステインプロテアーゼと接触させる工程を含むように適合させることができる。一般に、標的特異的抗体は、目的の抗原に特異的に結合する抗体の単離を可能にする条件下で、試料を目的の抗原と接触させることによって検出することができる。特定の態様では、目的の抗原は、ビーズまたはプレートなどの固体基材または固相マトリックスに固定される。抗原は、固体基材上にコーティングされてもよい。特定の態様では、ビーズまたはプレートはポリスチレンである。特定の態様では、ビーズは、または常磁性ミクロスフェアである。特定の態様では、ビーズは標識されている。複数のビーズは、異なるビーズの区別および単一のアッセイにおける複数の異なる抗体の検出を可能にするために、異なるように標識されてもよい。特定の態様では、本発明の方法は、フローサイトメトリーを用いてビーズを選別することを含む。
【0032】
IgGシステインプロテアーゼによる切断の工程を利用するいかなるイムノアッセイについても、適切なカットオフ値を決定することは、当業者の通常の能力の範囲内である。多くの場合、カットオフ>1000MFIが使用され、>3000MFIが実施例で使用された。
【0033】
特定の態様では、本発明の方法は、複数の目的の抗原および/またはIgM、IgAもしくはIgE抗体を検出するための複数の剤を利用する。かかる多様なアッセイは、多数の異なる抗原に対する抗体を単一のアッセイで検出することを可能にし、このようなアッセイは、IgGシステインプロテアーゼの使用によって提供される改良から恩恵を受けるであろう。例えば、特定の態様では、方法は、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9または10の抗原など複数のHLAクラスIおよび/またはHLAクラスII抗原と試料を接触させることを含む。例示的なアッセイでは、ビーズをコーティングし、それにより細胞表面で観察されるのと同様の発現率を維持する各遺伝子座HLA-A、-Bおよび-C;またはHLA-DR、-DQおよび-DPの2つの対立遺伝子と一緒にビーズを使用してもよい。また、ビーズは単一抗原の複数コピーでコーティングされてもよい。
【0034】
したがって、本発明は、試料中の目的の抗原に特異的なIgM抗体、IgA抗体またはIgE抗体を検出する以下を含む方法を提供する:IgGシステインプロテアーゼ活性の発生を可能にする条件下で、前記試料をIgGシステインプロテアーゼと接触させること、前記試料を、任意にプレートまたはビーズなどの固体基材に固定した目的の抗原と接触させること、および前記試料をIgM抗体、IgA抗体またはIgE抗体を検出するのに適した剤と接触させること。かかる方法は、一般に、標準的な洗浄工程も含むだろう。試料をIgGシステインプロテアーゼと接触させる工程は、試料を目的の抗原と接触させる前でも後でもよいが、一般的には試料をIgM抗体、IgA抗体またはIgE抗体を検出するのに適した剤と接触させる前に行われるであろう。
【0035】
特定の態様では、本発明の方法は、ELISAフォーマットで実施される。かかるアッセイでは、アッセイプレートのウェルは、典型的には、抗体標的でコーティングされるであろう。次に、IgGプロテアーゼをウェルに添加し、続いて、ウェルをコーティングしている標的に特異的なIgM、IgAまたはIgE抗体について試験される試料を添加する。プロテアーゼと試料は、IgGシステインプロテアーゼ活性に適した条件下で相互作用させる。適切な間隔の後、アッセイプレートを洗浄し、IgM、IgAまたはIgE抗体に特異的に結合する検出抗体を、標的特異的抗体への結合に適した条件下で添加する。検出抗体は、各ウェル中の標的に結合している、任意の無傷の標的特異的抗体に結合する。洗浄後、あるウェル中に存在する検出抗体の量は、そのウェルに結合した標的特異的抗体の量に比例する。検出抗体は、直接または間接的に標識や他のレポーター系(酵素など)と結合させることができ、各ウェル中に残存する検出抗体の量を決定することができる。
【0036】
IgM、IgAまたはIgE抗体を含む、あるいは含むと疑われる任意の適切な試料は、本発明の方法において使用することができる。好ましい態様では、試料は、血清試料など、患者から得られた試料である。
【0037】
標的特異的抗体の検出
好ましい態様では、本発明の方法は、特定の標的または標的のセットに特異的なIgM抗体、IgA抗体またはIgE抗体の存在を検出する。上記に示したように、かかる抗体を検出するための様々なイムノアッセイが知られており、試料をIgGシステインプロテアーゼと接触させる工程を含むように適合させることができる。一般に、標的特異的抗体は、目的の抗原に特異的に結合する抗体の単離を可能にする条件下で、試料を目的の抗原と接触させることによって検出することができる。
【0038】
好ましい態様では、目的の抗原は、ヒト抗原である。かかるヒト抗原に対する内因性抗体は、しばしば病原性であり、例えば、自己抗原は自己免疫疾患を引き起こし得るし、ドナー特異的抗原は移植拒絶を引き起こし得る。好ましい態様では、目的の抗原は、ヒト白血球抗原(HLA)、赤血球抗原または以下の表Aから選択される抗原などの自己免疫疾患に関連する抗原である。かかる抗体の検出は困難であり、特に正確さが要求される。なぜなら臨床医は、自己免疫疾患を診断する際、または患者が特定のドナーから移植を受けることができるかどうかを決定する際に、患者の抗体シグネチャーの正確かつ微妙な評価を行う必要が多いためである。したがって、本発明の方法によって達成される改良は、これらのHLA、赤血球抗原または自己免疫疾患と関連する抗原に特異的なIgM抗体、IgA抗体またはIgE抗体を検出するために特に有用である。
【0039】
さらに好ましい態様では、本発明の方法は、抗薬剤抗体を検出するのに使用するためのものである。かかる態様では、目的の抗原は、抗体またはペプチド薬剤などの薬剤であり、その薬剤に対するIgM、IgAまたはIgE抗体が検出される。かかる抗薬剤抗体は、薬物の効力を低下させることがあるので、その検出は、効力を維持するために要求されるように治療が調整されうることを確実にするのに有用である。治療法を適切に調整するためには、高い精度が要求されるため、本発明の方法は抗薬剤抗体の検出に特に有用である。
【0040】
病原性抗体および免疫複合体によって媒介される疾患または状態を治療する方法
好ましい態様では、本発明は、病原性IgM抗体、病原性IgA抗体または病原性IgE抗体によって全体的または部分的に媒介される疾患または状態を対象において治療する方法を提供し、この方法は、IgGシステインプロテアーゼを投与することを含む。本発明者らは、IgM抗体が、IgGシステインプロテアーゼで切断され得るIgG抗体と免疫複合体を形成し得ることを実施例において実証している。IgAおよびIgE抗体は、おそらくIgG抗体と同様の複合体を形成するであろう。これらの免疫複合体は、疾患プロセスを媒介すると予想されるので、IgGシステインプロテアーゼは、病原性IgM抗体、病原性IgA抗体または病原性IgE抗体によって媒介される疾患または状態の治療に有用であろう。
【0041】
本発明はまた、病原性IgM抗体、病原性IgA抗体または病原性IgE抗体によって全体的または部分的に媒介される疾患または状態を治療する方法における使用のための、IgGシステインプロテアーゼを提供する。本発明はまた、病原性IgM抗体、病原性IgA抗体または病原性IgE抗体によって全体的または部分的に媒介される疾患または状態を治療する方法における使用のための医薬の製造におけるIgGシステインプロテアーゼの使用を提供する。
【0042】
特定の態様では、病原性IgM抗体、病原性IgA抗体または病原性IgE抗体によって全体的または部分的に媒介される疾患または状態は、表Aから選択される疾患である。
【0043】
特定の態様では、本発明に従って治療される、病原性IgM抗体、病原性IgAまたは病原性IgE抗体によって全体的または部分的に媒介される疾患または状態を有する患者は、有意なレベルの抗自己IgG抗体を示さない。特定の態様では、本発明に従って治療されるべき病原性IgM抗体、病原性IgAまたは病原性IgE抗体によって全体的または部分的に媒介される疾患または状態を有する患者は、病原性以下または正常範囲内の抗自己IgG抗体または他のIgG抗体のレベルを示している。実施例において本発明者らによって同定された免疫複合体は、抗自己IgG抗体の非存在下で疾患を媒介する可能性があり、したがってIgGシステインプロテアーゼは、有意レベルの抗自己IgG抗体の非存在下でかかる疾患または状態を治療するために有用であろう。
【0044】
さらなる好ましい態様では、本発明は、病原性IgG抗体によって全体的または部分的に媒介される疾患または状態を対象において治療する方法を提供し、ここで前記対象は、抗IgG IgM抗体、抗IgG IgA抗体または抗IgG IgE抗体を示すと決定され、この方法は、IgGシステインプロテアーゼを投与することを含む。本発明者らは、IgM抗体がIgGシステインプロテアーゼで切断され得るIgG抗体と免疫複合体を形成し得ることを実施例で実証している。IgAおよびIgE抗体もおそらくIgG抗体と同様の複合体を形成するだろう。これらの免疫複合体は病原性IgG抗体の作用を増幅すると予想されるので、IgGシステインプロテアーゼは、抗IgG IgM抗体、抗IgG IgA抗体または抗IgG IgE抗体を有する患者の治療に特に有効であろう。
【0045】
本発明はまた、病原性IgG抗体によって全体的または部分的に媒介される疾患または状態を対象において治療する方法における使用のためのIgGシステインプロテアーゼであって、前記対象が抗IgG IgM抗体、抗IgG IgA抗体または抗IgG IgE抗体を示すと決定される、IgGシステインプロテアーゼを提供する。本発明はまた、病原性IgG抗体によって全体的または部分的に媒介される疾患または状態を対象において治療する方法において使用するための医薬の製造におけるIgGシステインプロテアーゼの使用を提供し、ここで前記対象は、抗IgG IgM抗体、抗IgG IgA抗体または抗IgG IgE抗体を示すことが決定される。
【0046】
さらなる好ましい態様では、本発明は、IgG抗体とIgM、IgAまたはIgE抗体との複合体によって全体的または部分的に媒介される疾患または状態を対象において治療する方法を提供し、この方法は、IgGシステインプロテアーゼを投与することを含む。本発明者らは、IgM抗体およびIgG抗体が、IgGシステインプロテアーゼによって切断され得る複合体を形成し得ることを実施例において確認した。IgA抗体およびIgE抗体も同様の複合体を形成すると予想される。かかる免疫複合体は、病原性であり、例えば、腎臓または血管における疾患を引き起こす可能性がある。したがって、好ましいそのような態様において、本発明は、IgGシステインプロテアーゼを投与することを含む、血管炎、多発血管炎性肉芽腫症(ウェゲナー肉芽腫症)、IgA腎症または全身性エリテマトーデスを治療するための方法を提供する。IgA腎症は、腎臓におけるIgA抗体の蓄積によって引き起こされ、この蓄積は、実施例で確認されたものと同様のIgAとIgGの複合体によって部分的に引き起こされるのかもしれない。実施例で実証されたように、IgGシステインプロテアーゼでそのような複合体を切断することは、腎臓におけるIgAの蓄積を減少または防止し、それによって疾患の症状を予防、治療または軽減するかもしれない。血管炎、多発性血管炎を伴う肉芽腫症および全身性エリテマトーデスは、本発明に従ってIgGシステインプロテアーゼによって切断され得る自己抗体および免疫複合体によって引き起こされるのかもしれない。IgGとIgEの複合体は、急性アレルギー反応または慢性炎症性アレルギー疾患を引き起こすかまたは悪化させるかもしれない、したがって、特定の態様では、本発明は、急性アレルギー反応または慢性炎症性アレルギー疾患を治療または予防する方法において使用するための、IgGシステインプロテアーゼを提供する。特定のかかる態様では、治療される対象は、有意なレベルの抗自己IgG抗体または他の病原性IgG抗体を示さないか、または全く示さないかもしれない。その代わりに、IgG抗体とIgM、IgAまたはIgE抗体との複合体は、それ自体が病原性である。
【0047】
本発明はまた、IgG抗体とIgM、IgAまたはIgE抗体との複合体によって全体的または部分的に媒介される疾患または状態を対象において治療する方法における使用のための、IgGシステインプロテアーゼを提供する。本発明はまた、IgG抗体とIgM、IgAまたはIgE抗体との複合体によって全体的または部分的に媒介される疾患または状態を対象において治療する方法における使用のための医薬の製造におけるIgGシステインプロテアーゼの使用も提供する。
【0048】
本発明による切断可能で治療可能な免疫複合体を形成する病原性IgG、IgM、IgAまたはIgE抗体は、典型的には、抗体によって全体的または部分的に媒介される自己免疫疾患または他の状態において標的とされる抗原に対して特異的であり得る。表Aは、そのような疾患および関連する抗原のリストを示している。本発明のプロテアーゼは、これらの疾患または状態のいずれかを治療するために使用することができる。該プロテアーゼは、病原性IgG抗体によって全体的または部分的に媒介される自己免疫疾患の治療または予防に特に有効である。さらに、該プロテアーゼは、抗IgG IgM抗体、抗IgG IgA抗体または抗IgG IgE抗体を有する患者におけるかかる疾患の治療に特に有効である。またプロテアーゼは、病原性IgM抗体、IgA抗体またはIgE抗体によって全体的または部分的に媒介される自己免疫疾患の治療または予防に特に有効である。
【0049】
【0050】
【0051】
【0052】
本発明によるIgGシステインプロテアーゼはまた、療法または予防に使用され得る。療法上の用途では、プロテアーゼは、既に障害または状態に罹患している対象に、状態またはその症状の1つ以上を治癒、緩和または部分的に停止させるのに十分な量で投与される。かかる療法的処置は、疾患症状の重症度の減少、または無症状期間の頻度もしくは期間の増加をもたらすかもしれない。これを達成するのに十分な量は、「治療有効量」と定義される。予防的な用途では、プロテアーゼは、障害または状態の症状をまだ示していない対象に、症状の発生を予防または遅延させるのに十分な量で投与される。このような量は、「予防有効量」と定義される。対象は、任意の適切な手段により、疾患または状態を発症する危険性があると同定されていてもよい。
【0053】
本発明の方法において、プロテアーゼは、免疫抑制剤と共投与されてもよい。本発明の方法において、プロテアーゼは、好ましくは静脈内注入により投与されるが、例えば、皮内、皮下、経皮、筋肉内、動脈内、腹腔内、関節内、骨内または他の適切な投与経路など任意の適切な経路により投与されてもよい。投与されるプロテアーゼの量は、0.01mg/kgBWと2mg/kgBWの間、0.05と1.5mg/kgBWの間、0.1mg/kgBWと1mg/kgBWの間、好ましくは0.15mg/kgと0.7mg/kgBWの間、最も好ましくは0.2mg/kgと0.3mg/kgBWの間、特に0.25mg/kgBWであってもよい。プロテアーゼは、プロテアーゼと結合可能な対象の血清中の抗薬剤抗体(ADA)の量が、臨床医が決定する閾値を超えないことを条件として、同一の対象に複数回投与してもよい。プロテアーゼと結合可能な対象の血清中のADAの量は、剤特異的CAP FEIA(ImmunoCAP)試験やタイターアッセイなど、任意の適切な方法によって決定されてもよい。
【0054】
臓器移植
本発明の治療方法は、臓器移植の文脈において特に有用であり得る。臓器は、腎臓、肝臓、心臓、膵臓、肺または小腸から選択され得る。治療される対象は、好ましくは、感作されるかまたは高感作され得る。「感作された」とは、対象がヒト主要組織適合性(MHC)抗原(ヒト白血球抗原(HLA)とも呼ばれる)に対する抗体を発現していることを意味する。対象は、IgM、IgAまたはIgE抗HLA抗体を有していてもよく、または対象は、IgG抗HLA抗体および抗IgG IgM、IgAまたはIgE抗体を有していてもよい。抗HLA抗体は、同種感作B細胞に由来し、通常、輸血、以前の移植または妊娠により、以前に感作された患者に存在する(Jordan et al., 2003)。
【0055】
移植レシピエントの候補が感作されているか否かは、任意の好適な方法によって決定され得る。レシピエントが感作されているか否かを判定するために、例えば、パネル反応性抗体(PRA)試験が用いられ得る。PRAスコア>30%は、典型的には、患者が「高い免疫学的リスク」または「感作性」であることを意味すると解される。あるいは、移植ドナー候補の血液の試料と、意図されたレシピエントの試料と混合する交差適合試験が行なわれ得る。交差適合陽性は、レシピエントがドナー試料に反応する抗体を有することを意味し、レシピエントが感作され、移植が行われるべきでないことを示す。交差適合試験は、典型的には、移植直前の最終チェックとして行われる。
【0056】
IgGシステインプロテアーゼ
本発明者らは、IgM、IgAまたはIgE抗体を検出する方法においてIgGシステインプロテアーゼを使用すると、プロテアーゼがIgM、IgAおよびIgE抗体の検出を干渉し得る免疫複合体を切断することができるので、特異性および感度の改善につながることを実証している。本発明で使用するためのIgGシステインプロテアーゼは、IgGに特異的であり、検出されるべき抗体に対して有意な切断活性を有しない。したがって、特定の態様では、プロテアーゼは、IgGを切断し、IgMを切断しない。特定の態様では、プロテアーゼは、IgGを切断し、IgAを切断しない。特定の態様では、プロテアーゼは、IgGを切断し、IgEを切断しない。特定の態様では、プロテアーゼは、IgGを切断し、IgM、IgAまたはIgEを切断しない。
【0057】
好ましい態様では、本発明の方法において使用するためのプロテアーゼは、イムリフィダーゼ(IdeS)(S. pyogenesの免疫グロブリンG分解酵素)である。IdeSは、ヒトの病原体であるS. pyogenesが産生する細胞外システインプロテアーゼである。IdeSはもともと血清型M1のA群レンサ球菌から分離されたが、現在では試験したすべてのA群レンサ球菌からideS遺伝子が同定されている。IdeSは非常に高い基質特異性を持っており、その唯一の基質はIgGと同定された。IdeSは、ヒトIgGのすべてのサブクラスの重鎖の下部ヒンジ領域において、単一のタンパク質分解切断を触媒する。また、IdeSは、様々な動物のIgGのいくつかのサブクラスの重鎖の同等の切断を触媒する。IdeSは、2段階の機構でIgGをFcおよびF(ab’)2フラグメントに効率的に切断する。第一段階では、IgGの1本(第一)重鎖が切断され、Fc分子が非共有結合した1本の切断型IgG(scIgG)分子が生成される。scIgG分子は実質的に中間生成物であり、元のIgG分子の残りの(第二)重鎖を保持している。メカニズムの第二段階では、この第二重鎖がIdeSによって切断され、F(ab’)2フラグメントとホモダイマーFcフラグメントが放出される。これらは、生理的条件下で一般に観察される生成物である。還元条件下では、F(ab’)2フラグメントは2つのFabフラグメントに解離し、ホモダイマーFcはその構成単量体に解離するかもしれない。配列番号1は、N末端メチオニンおよびシグナル配列を含むIdeSの全配列である。また、NCBI参照配列番号WP_010922160.1としても利用できる。配列番号2は、N末端メチオニンおよびシグナル配列を欠く、IdeSの成熟配列である。また、Genbank受入番号ADF13949.1としても利用できる。
【0058】
代替の態様では、本発明の方法において使用するためのプロテアーゼは、馬に主に見られる細菌であるStreptococcus equi ssp. Zooepidemicusによって産生されるIgGシステインプロテアーゼである、IdeZである。配列番号3は、N末端メチオニンおよびシグナル配列を含むIdeZの全配列である。また、NCB参照配列番号WP_014622780.1としても利用できる。配列番号4は、N末端メチオニンおよびシグナル配列を欠く、IdeZの成熟配列である。
【0059】
代替の態様において、本発明の方法において使用するためのプロテアーゼは、配列番号5の配列のようなハイブリッドIdeS/Zである。N末端は、N末端メチオニンおよびシグナル配列を欠くIdeZに基づく。
【0060】
好ましい態様では、本発明で使用するためのプロテアーゼは、配列番号2、4または5を含むまたはそれからなってもよい。本発明で使用するためのプロテアーゼは、標準的な細菌発現系における発現およびそこからの単離を助けるために、N末端に追加のメチオニン(M)残基および/またはC末端にタグを含んでいてもよい。適切なタグとしては、ポリペプチドのC末端に直接結合してもよいし、3、4または5個のグリシン残基などの任意の適切なリンカー配列によって間接的に結合してもよい、ヒスチジンタグが挙げられる。ヒスチジンタグは、典型的には6個のヒスチジン残基からなるが、これより長く、典型的には最大7、8、9、10または20アミノ酸、あるいは短く、例えば5、4、3、2または1アミノ酸であり得る。
【0061】
さらなる好ましい態様では、本発明で使用するためのプロテアーゼは、配列番号6から25のいずれか1つの配列を含む、実質的にそれからなる、またはそれからなり得る。これらの配列は、プロテアーゼ活性の増加および/または免疫原性の減少を伴うIdeSおよびIdeZポリペプチドを表す。配列番号6から25の各々は、任意に、N末端に追加のメチオニンおよび/またはC末端にヒスチジンタグを含んでもよい。ヒスチジンタグは、好ましくは、6つのヒスチジン残基からなる。ヒスチジンタグは、好ましくは、3xグリシン残基または5xグリシン残基のリンカーによってC末端に連結される。
【0062】
さらなる好ましい態様では、本発明で使用するためのプロテアーゼは、配列番号56から69のいずれか1つの配列を含む、実質的にそれからなる、またはそれからなり得る。これらの配列は、プロテアーゼ活性の増加および/または免疫原性の減少を伴うIdeSポリペプチドを表す。配列番号56から69の各々は、任意に、N末端に追加のメチオニンおよび/またはC末端にヒスチジンタグを含んでもよい。ヒスチジンタグは、好ましくは、6個のヒスチジン残基からなる。ヒスチジンタグは、好ましくは、3xグリシンまたは5xグリシン残基のリンカーによってC末端に連結される。
【0063】
さらなる好ましい態様では、本発明で使用するためのプロテアーゼは、最大3つ(1、2または3など)のアミノ酸置換を伴ってもよい配列番号6から25のいずれか1つの配列を含む、実質的にそれからなる、またはそれからなり得る。配列番号6から25の各々およびその変異体は、任意に、N末端に追加のメチオニンおよび/またはC末端にヒスチジンタグを含んでもよい。
【0064】
さらなる好ましい態様では、本発明で使用するためのプロテアーゼは、最大3つ(1、2または3など)のアミノ酸置換を伴ってもよい配列番号56から69のいずれか1つの配列を含む、実質的にそれからなる、またはそれからなり得る。配列番号56から69の各々およびその変異体は、任意に、N末端に追加のメチオニンおよび/またはC末端にヒスチジンタグを含んでもよい。
【0065】
本発明のポリペプチドは、典型的には、長さが、少なくとも100、150、200、250、260、270、280、290、300または310アミノ酸である。本発明のポリペプチドは、典型的には、長さが400、350、340、330、320または315アミノ酸以下である。上に列挙した下限のいずれかが、上に列挙した上限のいずれかと組み合わされて、本発明のポリペプチドの長さについての範囲が提供され得ることが理解される。例えば、ポリペプチドは、長さが100から400アミノ酸、または長さが250から350アミノ酸であり得る。ポリペプチドは、好ましくは、長さが290から320アミノ酸、最も好ましくは、長さが300から315アミノ酸である。
【0066】
本発明のプロテアーゼの一次構造(アミノ酸配列)は、IdeS、IdeZまたはIdeS/Zの一次構造に、具体的にはそれぞれ配列番号2、4または5のアミノ酸配列に基づく。本発明のプロテアーゼの配列は、配列番号2、4または5のアミノ酸配列と少なくとも80%同一である、配列番号2、4または5のアミノ酸配列の変異体を含み得る。変異体配列は、配列番号2、4または5の配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%または少なくとも99%同一であり得る。変異体は、WO2016/128558またはWO2016/128559で同定された1つ以上の特定の改変を含むことを除いて、配列番号2、4または5の配列と同一であり得る。配列番号2、4または5の配列に対する同一性は、配列番号2、4または5に示される配列の少なくとも50、少なくとも100、少なくとも200、少なくとも300またはそれ以上の連続したアミノ酸の領域にわたって、またはより好ましくは配列番号4または5の全長にわたって測定され得る。
【0067】
本発明で使用するためのプロテアーゼは、配列番号2、4または5の配列に対してアミノ酸の付加、欠失または置換などの改変がなされる、配列番号2、4または5のアミノ酸配列の変異体を含む、IdeS、IdeZまたはIdeS/Zポリペプチドであり得る。かかる改変は、好ましくは保存的アミノ酸置換である。保存的置換は、アミノ酸を、類似の化学構造、類似の化学的特性または類似の側鎖の嵩の、他のアミノ酸で置換する。導入されるアミノ酸は、それらが置換するアミノ酸に類似の極性、親水性、疎水性、塩基性度、酸性度、中性度または電荷を有し得る。あるいは、保存的置換は、既存の芳香族または脂肪族のアミノ酸の代わりに芳香族または脂肪族である別のアミノ酸を導入し得る。保存的なアミノ酸の変化は当該技術分野で周知である。
【0068】
IgGシステインプロテアーゼ活性は、例えば、ポリペプチドをIgGを含む試料とインキュベートし、IgG切断産物の存在を判定することによって、任意の適切な方法によって評価されてもよい。好適な方法は、WO2016/128559号公報に記載されている。好適なアッセイとしては、WO2016/128559に記載されているような、ELISAベースのアッセイが挙げられる。かかるアッセイでは、アッセイプレートのウェルは、典型的には、ウシ血清アルブミン(BSA)などの抗体標的で被覆される。次に、試験されるポリペプチドの試料がウェルに加えられ、次いで、本実施例ではBSAに特異的な抗体である標的特異的抗体の試料が加えられる。ポリペプチドおよび抗体は、IgGシステインプロテアーゼ活性に適した条件下で相互作用させる。適当な時間経過後、アッセイプレートを洗浄し、標的特異的抗体と特異的に結合する検出抗体を、標的特異的抗体への結合に適した条件下で添加する。検出抗体は、各ウェル中で標的に結合している、任意の無傷な標的特異的抗体に結合する。洗浄後、あるウェルに存在する検出抗体の量は、そのウェルに結合した標的特異的抗体の量に比例する。検出抗体は、直接または間接的に標識や他のレポーター系(酵素など)と結合させることができ、各ウェルに残存する検出抗体の量を測定することができる。ウェルに含まれる試験ポリペプチドの効力が高いほど、無傷の標的特異的抗体は少なくなり、したがって検出抗体も少なくなる。典型的には、所定のアッセイプレート上の少なくとも1つのウェルには、試験されるポリペプチドの代わりにIdeSが含まれ、試験ポリペプチドの効力をIdeSの効力に直接比較することができるようにする。また、IdeZやIdeS/Zも比較のために含まれることがある。
【0069】
他のアッセイは、試験ポリペプチドによるIgGの切断から生じるIgGのフラグメントを直接可視化および/または定量化することによって、試験ポリペプチドの効力を決定し得る。このタイプのアッセイは、WO2016/128559にも記載されている。かかるアッセイは、典型的には、IgGの試料を、滴定系において異なる濃度の試験ポリペプチド(または対照としてIdeS、IdeZおよびIdeS/Zの1つ以上)と共にインキュベートする。その後各濃度でのインキュベーションから生じた生成物は、ゲル電気泳動、例えばSDS-PAGEを用いて分離される。その後全IgGおよびIgGの切断から生じるフラグメントは、サイズによって識別され、適切な色素による染色の強度によって定量化される。切断フラグメントの量が多いほど、所定の濃度における試験ポリペプチドの効力は大きくなる。本発明のポリペプチドは、典型的には、IdeZおよび/またはIdeSよりも低い濃度(滴定系のより低いポイント)で検出可能な量の切断フラグメントを生成するであろう。この種のアッセイはまた、各切断事象から生じる異なるフラグメントの量も決定され得るので、IgG分子の第1重鎖または第2重鎖を切断するのにより有効な試験ポリペプチドの同定を可能にし得る。本発明のポリペプチドは、特にIgGがIgG2アイソタイプである場合、IgG分子の第1鎖を第2鎖よりも切断するのに有効かもしれない。本発明のポリペプチドは、IgG2よりもIgG1の切断により有効でありえる。
【0070】
ポリペプチドの製造
本明細書に開示されるようなポリペプチドは、いかなる適切な手段によって製造されてもよい。例えば、ポリペプチドは、Fmoc固相化学、Boc固相化学、または溶液相ペプチド合成など、当技術分野で知られている標準的な技術を用いて直接合成されてもよい。あるいは、ポリペプチドは、前記ポリペプチドをコードする核酸分子またはベクターで細胞、典型的には細菌細胞を形質転換することにより製造されてもよい。細菌宿主細胞における発現によるポリペプチドの製造は、WO2016/128559に記載され、例示されている。
【0071】
ポリペプチドを含む組成物および製剤
本発明はまた、本発明の治療方法において使用するための、プロテアーゼを含む組成物を提供する。例えば、本発明は、本発明の1つ以上のポリペプチドと、少なくとも1つの医薬上許容される担体または希釈剤とを含む組成物を提供する。担体(複数可)は、組成物の他の成分と適合し、組成物が投与される対象に対して劇的に変化しないという意味で、「許容される」でなければならない。典型的には、担体および最終組成物は、無菌でパイロジェンフリーである。
【0072】
適切な組成物の製剤は、標準的な医薬製剤化学および方法論を用いて実施することができ、これらはすべて当業者が容易に利用可能である。例えば、剤は、1つ以上の医薬上許容される賦形剤またはビヒクルと組み合わせることができる。湿潤剤または乳化剤、pH緩衝化物質、還元剤などの補助物質が賦形剤またはビヒクル中に存在してもよい。好適な還元剤としては、システイン、チオグリセロール、チオレデューシン(thioreducin)、グルタチオンなどが挙げられる。賦形剤、ビヒクルおよび補助物質は、一般に、組成物を受け取る個体に免疫反応を誘発しない医薬であり、それらは過度の毒性なしに投与され得る。医薬上許容される賦形剤には、水、生理食塩水、ポリエチレングリコール、ヒアルロン酸、グリセロール、チオグリセロールおよびエタノールなどの液体が挙げられるが、これらに限定されない。医薬上許容される塩、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩、硫酸塩などの鉱酸塩;および酢酸塩、プロピオン酸塩、マロン酸塩、安息香酸塩などの有機酸の塩などもそこに含まれ得る。医薬上許容される賦形剤、ビヒクルおよび補助物質に関する完全な考察は、Remington's Pharmaceutical Sciences (Mack Pub. Co., N.J. 1991)で入手可能である。
【0073】
かかる組成物は、ボーラス投与または連続投与に適した形態で調製、包装または販売されてもよい。注射用組成物は、防腐剤を含むアンプルまたはマルチドーズ容器などの単位投与形態で調製、包装または販売されてもよい。組成物には、懸濁液、溶液、油性または水性ビヒクル中のエマルジョン、ペースト、および埋め込み可能な徐放性または生分解性製剤が挙げられるが、これらに限定されない。かかる組成物は、懸濁剤、安定化剤または分散剤など、1つ以上の追加成分をさらに含んでもよいが、これらに限定されない。非経口投与用組成物の一実施形態においては、有効成分は、好適なビヒクル(例えば、滅菌の発熱物質フリーの水)で再構成するために、乾燥形態(例えば、粉末又は顆粒)で提供され、後に再構成された組成物が非経口投与される。組成物は、滅菌注射可能な水性または油性の懸濁液または溶液の形態で調製、包装または販売されてもよい。この懸濁液または溶液は、公知技術に従って製剤化することができ、有効成分に加えて、本明細書に記載の分散剤、湿潤剤または懸濁剤などの追加の成分を含んでいてもよい。かかる無菌注射製剤は、例えば、水または1,3-ブタンジオールなどの非毒性の非経口的に許容される希釈剤または溶媒を使用して調製してもよい。他の許容される希釈剤および溶媒としては、リンゲル液、等張塩化ナトリウム溶液および合成モノまたはジグリセリドなどの固定油などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0074】
他の有用で非経口投与可能な(parentally-administrable)組成物としては、有効成分を微結晶形態で、リポソーム製剤で、または生分解性ポリマー系の成分として含んでいるものが挙げられる。徐放または埋め込みのための組成物は、エマルジョン、イオン交換樹脂、難溶性ポリマーまたは難溶性塩などの医薬上許容されるポリマー材料または疎水性材料を含んでもよい。組成物は、例えば、皮内、皮下、経皮、筋肉内、動脈内、腹腔内、関節内、骨膜内または他の適切な投与経路などのいずれかの適切な経路による投与に適するかもしれない。好ましい組成物は、静脈内注入による投与に適している。
【0075】
キット
本発明はまた、本発明の方法を実施するためのキットを提供する。本発明のキットは、上記で定義および考察したようなIgGシステインプロテアーゼと、上記で定義および考察したようなIgM抗体、IgA抗体またはIgE抗体を検出するための剤。特定の態様では、キットは、ヒト白血球抗原(HLA)、赤血球抗原または薬剤抗原などの目的の抗原も含む。上述したように、目的の抗原は、プレートまたはビーズなどの固体基材上に、コーティングなど固定されてもよい。
【0076】
一般事項
開示された生成物及び方法の異なる用途は、当該技術分野の特定のニーズに合わせて調整され得ることが理解されるべきである。本明細書で用いられる用語は、本発明の特定の態様を説明するためのみのものであり、限定することを意図するものではないことが理解されるべきである。
【0077】
更に、本明細書及び添付の特許請求の範囲で用いられる場合、単数形「a」、「an」及び「the」は、その内容が特に明確に指示しない限り、複数の指示対象を含む。従って、例えば、「ポリペプチド」への言及は、「ポリペプチド(複数)」を含む、などとなる。
【0078】
特に禁止されない限り、本明細書に開示される方法の工程は、任意の適切な順序で実行されてもよく、工程が記載される順序は、限定的であるとみなされるべきではない。
【0079】
「ポリペプチド」は、本明細書においては、その最も広い意味において、2つ以上のサブユニットのアミノ酸、アミノ酸類縁体または他のペプチド模倣体の化合物を指すために用いられる。従って、用語「ポリペプチド」は、短いペプチド配列、また並びにより長いポリペプチド及びタンパク質を含む。本明細書で用いられる場合、用語「アミノ酸」は、DまたはLの光学異性体の両方、並びにアミノ酸類縁体及びペプチド模倣体などの、天然及び/若しくは非天然または合成のアミノ酸のいずれかを指す。
【0080】
用語「患者」及び「対象」は交換可能に用いられ、典型的には、ヒトを指す。IgGへの言及は、特に断らない限り、典型的にはヒトIgGを指す。
【0081】
アミノ酸の同一性は、任意の好適なアルゴリズムを用いて算出され得る。例えば、PILEUPおよびBLASTアルゴリズムは、例えば、Altschul S.F.(1993)J Mol Evol 36:290-300;Altschul,S,F et al(1990)J Mol Biol 215:403-10に記載の通り、(典型的にはそれらの初期設定で)相同性を算出し、または配列を整列する(line up)(均等または対応する配列を同定する等)ために使用され得る。BLAST解析を行うためのソフトウェアは、National Center for Biotechnology Information(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)によって公に利用可能である。このアルゴリズムは、データベース配列中の同一の長さのワードとアライメントされた場合に、ある正の値の(positive-valued)閾値スコアTに一致するか、またはこれを満たすかのいずれかの、クエリ配列(query sequence)中の長さWの短いワードを同定することにより、最初に、スコアの高い配列ペア(high scoring sequence pair,HSP)を同定することを含む。Tは、近傍ワードスコア閾値(neighbourhood word score threshold)と呼ばれる(Altschul et al、上記)。これらの最初の近傍ワードのヒットは、それらを含有するHSPを発見する検索を開始するためのシードとして機能する。累積アライメントスコア(cumulative alignment score)が増加し得る限り、該ワードヒットが、各配列に沿って両方向に伸長される。ワードヒットの各方向への伸長は、以下の場合に停止する:累積アライメントスコアがその最大達成値(maximum achieved value)から量Xだけ低下するとき;1以上の負のスコアの残基アライメント(residue alignment)の累積に起因して累積スコアがゼロ以下になるとき;またはいずれかの配列の端部に到達するとき。BLASTアルゴリズムのパラメータW、TおよびXは、アラインメントの感度(sensitivity)および速度を決定する。BLASTプログラムは、初期設定として、ワード長(W)11、BLOSUM62スコアリングマトリックス(Henikoff and Henikoff (1992) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:10915-10919参照)アライメント(B)50、期待値(E)10、M=5、N=4、および両鎖の比較を使用する。
【0082】
BLASTアルゴリズムは、2配列間の類似性(similarity)の統計解析を行う(例、Karlin and Altschul(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:5873-5787参照)。BLASTアルゴリズムによって提供される類似性の1基準(measure)は、ポリヌクレオチドまたはアミノ酸の2配列間の一致が偶然に起こる確率の目安を提供する、最小合計確率(smallest sum probability,P(N))である。ある配列が、別の配列と類似であるとみなされるのは、例えば、第1の配列と第2の配列との比較において、最小合計確率が約1未満である場合、好ましくは約0.1未満である場合、より好ましくは約0.01未満である場合、および最も好ましくは約0.001未満である場合である。あるいは、UWGCGパッケージは、同一性を算出するために用いられ得るBESTFITプログラム(例えば、その初期設定で用いられる)を提供する(Devereux et al(1984)Nucleic Acids Research 12:387-395)。
【0083】
本明細書で引用された全ての刊行物、特許及び特許出願は、上記のものか下記のものかにかかわらず、参照によりその全体が、本明細書に組み込まれる。
【実施例】
【0084】
実施例1
特に断りのない限り、使用した方法は標準的な生化学および分子生物学の技術である。適切な方法論の教科書の例としては、Sambrookら、Molecular Cloning, A Laboratory Manual(1989)およびAusubelら、Current Protocols in Molecular Biology(1995)、John Wiley and Sons, Inc.が挙げられる。
【0085】
イントロダクション
免疫グロブリンG分解システインプロテアーゼであるイムリフィダーゼ(IdeS)は、現在、腎臓移植における迅速な減感作療法として開発中のIgGエンドペプチダーゼである。イムリフィダーゼは特異性が高く、ヒトIgGのすべてのサブクラスを切断する。その特異的なプロテアーゼ活性により、イムリフィダーゼは、抗体依存性細胞貪食(ADCP)、抗体依存性細胞傷害(ADCC)および補体依存性細胞傷害(CDC)などのIgGのFcを介したエフェクター機能を有効に阻害することが知られている。
【0086】
本研究の目的は、特に感作された末期腎不全(ESRD)患者において、イムリフィダーゼがIgM抗体(Abs)に影響を与えるかどうかをさらに評価し、イムリフィダーゼの新しい用途を特定することである。
【0087】
材料と方法
感作された末期腎不全患者(ESRD)の血清試料
臨床第II相試験(13-HMedIdeS-02;NCT02224820)に登録され、イムリフィダーゼを0.12または0.25mg/kgで投与された感作された末期腎不全患者の血清試料を調査した。試験は、イムリフィダーゼ投与前と投与24時間後に調査された。
【0088】
イムリフィダーゼでの処置
インビトロ処置にはイムリフィダーゼ(P16-0041701)を使用した。
【0089】
SDS-PAGEおよびイムノブロット
イムリフィダーゼ切断精製ヒトIgM(1mg/mL)(#16-16-090713-M、Athens Research & Technology)または感作されたESRD患者からの血清試料中のヒトIgGおよびIgMをトリス-グリシン-SDS緩衝液中の4~20%Mini-PROTEAN TGX Stain-Free gel(Bio-Rad)で非還元条件下に分離させた。ゲルを0.45μmニトロセルロース膜に移し、5%脱脂乳(NFM)でブロックした後、PE標識ロバ抗ヒトIgM(#IGM-PEC1, One Lambda)とPBS-Tweenでインキュベーションした。膜を洗浄し、PEに適したブロット設定で分析した。シグナルは、ChemiDoc MP system(Bio-Rad)を用いて取得した。
【0090】
CaptureSelect Affinity Matrixを用いたIgG精製
血清試料の精製には、CaptureSelectTM IgG-CH1 Affinity Matrix(#194320005, ThermoFisher Scientfic)を使用した。CaptureSelectTMAffinity Matrixは、複雑な原料から組換えヒトFabフラグメントおよびIgGをワンステップで精製する。該アフィニティーマトリックスは、軽鎖のタイプ(カッパー/ラムダ)に関係なく、IgGの4つのサブクラス(IgG1、IgG2、IgG3およびIgG4)すべてを認識する。血清試料を、IgGの評価と精製のためにSDS-PAGEで解析した。
【0091】
クラスIおよびクラスII用単一抗原ビーズHLAアッセイ(One Lambda / ThermoFisher)
イムリフィダーゼを0.12または0.25mg/kgで処置した感作ESRD患者の血清試料を調査した。イムリフィダーゼ投与前と投与後24時間の試験試料を検討した。すべての血清試料は、プロゾーン効果を克服するためにEDTAで前処理された。血清は、Luminexプラットフォームの市販Single antigen Beads (LABScreen Single antigen, #LS1A04, #LS2A01, One Lambda)を用いてHLAクラスIとクラスIIの両方の抗HLA抗体について試験した。血清はまずLABScreenビーズと一緒に30分間インキュベートし、洗浄緩衝液で3回洗浄した。フィコエリルチン(PE)標識ヤギ抗ヒトIgGまたはPE標識ロバ抗ヒトIgMを添加し、30分間インキュベートし、2回洗浄した。LABScan 100アナライザーを用いて、各ビーズからのPEの蛍光発光を検出した。試験血清の反応パターンを、抗原配列を定義したロット別ワークシートと比較し、HLA特異性を割り出した。結果はHLA Fusionソフトウェア(One Lambda)を用いて解釈し、平均蛍光強度(MFI)として表示した。
【0092】
リウマトイド因子(RF)
感作ESRD患者からの血清試料をリウマトイド因子(IgM-RF)についてスクリーニングした(Labmedicin Skane, Clinical Immunology and Transfusion Medicine, Lund, Sweden)。
【0093】
免疫グロブリン(Ig)クラスとIgGサブクラス
健康なボランティア2名の血清試料をCaptureSelect Matrixにより精製前と精製後の免疫グロブリンクラスとIgGサブクラスについて測定した(Labmedicin Skane, Clinical Immunology and Transfusion Medicine, Lund, Sweden)。
【0094】
結果
イムリフィダーゼとのインキュベーション後、精製したヒトIgMの切断は確認されなかった
SDS-PAGEゲル上で試験品を分離し、イムリフィダーゼの精製ヒトIgMの切断能を評価した。加熱前にDTTを加えてIgMを消化し、ジスルフィド結合を破壊した(
図1参照)。高濃度(最大200μg/mL)のイムリフィダーゼと37℃で2時間インキュベートしても、精製したヒトIgMの消化は見られなかった(
図2参照)。
【0095】
CaptureSelect Affinity Matrix を用いて、血清中のIgGを精製することに成功した
CaptureSelect IgG-CH1 Affinity Matrixを用いた血清試料の精製に成功し、未処理の血清試料と比較して、SDS-PAGEゲル上に無傷のIgGバンドを検出することができなかった(
図3参照)。
【0096】
イムリフィダーゼによる処置はIgG特異性の循環抗HLA抗体のレベルに大きな影響を与える
イムリフィダーゼのIgGを切断することによるドナー特異的抗体(DSA)の能力は、死亡ドナーとのクロスマッチが陽性である患者が移植前に数週間の治療を必要とせずに移植を受けることができることは先に発表されている(Jordan et al., 2017; Lonze et al., 2018; Lorant et al., 2018)。
【0097】
感作ESRD患者のイムリフィダーゼ投与前と投与24時間後の血清試料を検討した。この研究でもイムリフィダーゼによる抗HLA IgG抗体の切断が検出することができた。クラスIとクラスIIの両方の循環抗HLA IgG抗体のレベルの明らかな減少が、7人の患者すべてで見られた(
図4参照)。
【0098】
イムリフィダーゼによる治療はIgM特異性を持つ抗HLA抗体の循環レベルに影響を与えない
イムリフィダーゼのIgMを切断することによるIgM特異性を持つドナー特異的抗体(DSA)の能力が、ATCミーティング2019で発表された(X. Zhang, S. Jordan, 2019. Anti-HLA IgM Antibodies Are Reduced in Highly-HLA Sensitized Patients Transplanted after Imlifidase (IdeS) Treatment)。
【0099】
イムリフィダーゼ治療を受けた感作ESRD患者のイムリフィダーゼ投与前および投与後24時間の血清試料を検討した。イムリフィダーゼ治療後の循環抗HLA IgM抗体の減少は、7人の患者のうち2人(対象02-927および対象02-929)で検出された(
図5を参照)。
【0100】
しかしながら、血清試料をCaptureSelect Matrixで精製(IgG除去)した場合、イムリフィダーゼ処置後の循環抗HLA IgM抗体のレベルには影響が見られなかった(
図6参照)。
【0101】
イムリフィダーゼによるヒトIgMの切断は検出されなかった
精製したヒトIgMを滴定し(1250から4.8ng/ウェル)、アッセイの検出限界を確認した。DTT還元型ヒトIgMを無染色SDS-PAGEゲル上で分離した。還元型重鎖は75kDaに位置し、使用した設定値では39ng/ウェルまで見える。ニトロセルロース膜に移した後、タンパク質の再配置をニトロセルロース膜の無染色ゲル設定を使用してチェックした。膜をブロックし、PE標識したロバ抗ヒトIgM(One Lambda)で現像した。75kDaの重鎖は19ng/ウェルまで見える。IgMの最高濃度におけるいくつかのバンドは、約200kDaと50kDaにも見える(
図7参照)。
【0102】
4人の感作ESRD患者(02-925、02-927、02-928および02-929)の血清をイムリフィダーゼ、それぞれPBSでインビトロ処理した。血清試料と精製IgMをDTT処理し、SDS-PAGEゲルで分離し、ニトロセルロース膜に移し、PE標識ロバ抗ヒトIgM(One Lambda)でブロックし、現像した。75kDaの重鎖バンドは明確に染色され、イムリフィダーゼ処置の有無による差は見られない(
図8参照)。
【0103】
リウマトイド因子(RF)の測定
このレポートのために調査されたすべての血清試料は、リウマトイド因子(IgM-RF)陰性と診断された。
【0104】
CaptureSelect Matrixによる精製後の免疫グロビン(Ig)クラスおよびIgGサブクラスの測定
CaptureSelect IgG-CH1 Affinity Matrixによる精製がヒト血清中のIg組成に影響を与えるかどうかを決定するため、2名の健康なボランティアの血清試料を、CaptureSelect Matrixによる精製前と精製後の免疫グロブリンクラスとIgGサブクラスについて測定した。その結果を表Bに示す。
【0105】
【0106】
結論
一部の患者では、IgGシステインプロテアーゼで処理した後に抗HLA IgMシグナルが減少した。しかし、このHLA-IgMシグナルの減少は、IgGを除去した血清では観察されなかった。最初に高い抗HLA IgMシグナルは、おそらくLABScreen HLAビーズ表面のIgG複合体化IgMの結果であると思われる。したがって、ヒトIgMはIgGシステインプロテアーゼによって切断されないが、IgG複合体化IgMはIgMを検出する方法を干渉し、誤ったシグナルを発生させる可能性がある。IgGシステインプロテアーゼで処理した後に特定の患者で観察された抗HLA IgMシグナルの減少は、IgGシステインプロテアーゼが問題となる複合体を切断することができることを示す。
【0107】
Zhangらの抄録(2019, Am J Transplant. 19 (suppl 3))は、IgGシステインプロテアーゼのイムリフィダーゼが病的な抗HLA IgMを低減できると主張しているが、この場合、イムリフィダーゼはいかなる抗原特異的IgMの検出にも有用ではなく、IgGおよびIgMの複合体により媒介される疾患の治療には有用ではないだろう。本研究では驚くべきことに、IgGシステインプロテアーゼが、IgGを切断することにより、IgGとIgMからなる抗原複合体を減少させることができることを実証している。また、IgM抗体を検出するためのアッセイにおいて、真のIgMシグナルを確実に得ようとするならば、IgGを除去させる方法が必要であり、IgG分解システインプロテアーゼを用いることがこの目的に特に適していることを該データは強調している。同様に、IgGシステインプロテアーゼは、おそらくIgGと他のIgアイソタイプ、例えばIgM、IgAまたはIgEからなる抗体複合体を低減することを目的とした治療において有用である。
【0108】
実施例2
イントロダクション
この研究の目的は、感作ESRD患者におけるヒト抗HLA IgMに何らかの影響があるかどうか、または臨床で日常的に使用されているアッセイにおける抗HLA IgM SABシグナルにイムリフィダーゼが何らかの間接的影響を及ぼし得るかどうかを調査することによってイムリフィダーゼの特異性を更に評価することであった。実施例1で得られたデータおよび試料をより詳細に分析し、さらなる実験を行った。
【0109】
材料と方法
感作された末期腎不全(ESRD)患者の血清試料
スウェーデンのウプサラ大学病院外科、移植外科で腎臓移植の待機者となっている透析中のESRD患者は、少なくとも2回に分けて、単一抗原ビーズ分析で、1つ以上が平均蛍光強度(MFI)3000超えの≧2同定抗HLA抗体に対する抗体反応性を有していれば臨床試験(13-HMedIdeS-02;NCT02224820)に適格とされた。登録時の患者8名に、イムリフィダーゼを1または2回、連日点滴静注した(0.12mg/kg体重×2[n=3];0.25mg/kg×1[n=3],または0.25mg/kg×2[n=2])。本臨床試験は,ヘルシンキ宣言に由来する倫理原則に従って実施された。いずれの患者から試験に関連する処置にさらされる前に,すべての倫理的および規制上の承認が得られた。科学研究のための臨床試料使用に関するIRB承認(EudraCT Number: 2013-005417-13; Diary Number: 2014/131, approved EPN 2014-04-16)を受け、すべての試料はリマークされ匿名化された。
【0110】
イムリフィダーゼによるインビトロ処理
インビトロ処理には、イムリフィダーゼ(Idefirix(登録商標), Hansa Biopharma AB, Sweden)を使用した。35kDaの単量体活性物質であるイムリフィダーゼは、大腸菌で発現させた組換えタンパク質である。報告されたインビトロ研究では、イムリフィダーゼをPBSのみまたはPBS(BSA0.05%)で最終濃度0.002-200μg/mLに希釈し、試料を37℃で1時間または2時間インキュベートした。
【0111】
SDS-PAGEおよびイムノブロット
イムリフィダーゼ処置精製ヒトIgM(1mg/mL)(#16-16-090713-M, Athens Research & Technology)またはヒトIgG(1mg/mL)(IVIg, Gamunex(登録商標)と感作ESRD患者からの血清試料中のIgMは、DTT(#D9163, Sigma)処理(IgMのみ)後、Tris- Glycine-SDS緩衝液(#161-0732, Bio-Rad)中の4-20%Mini-PROTEAN TGX Stain-Free gels(#456-8093, Bio-Rad)上で分離した。ゲルを0.45μmニトロセルロース膜(#LC2001, Novex)に移し、5%脱脂乳(Skim milk powder, OXOID)でブロックし、PBS-Tween中のPE標識ロバ抗ヒトIgM(#IGM- 30 PEC1, One Lambda)とインキュベーションした。膜を洗浄し、フィコエリトリン(PE)に適したブロット設定で分析した。シグナルはChemiDoc MP system (Bio- Rad)を用いて取得した。
【0112】
CaptureSelectTMAffinity Matrixを用いたIgG精製
血清試料の精製には、CaptureSelectTM AffinityMatrix(#194320005, ThermoFisher Scientific)を使用した。CaptureSelectTM AffinityMatrixは、複雑な原料から組換えヒトFabフラグメントおよびIgGをワンステップで精製する。このAffinity Matrixは、軽鎖のタイプ(カッパー/ラムダ)に関係なく、IgGの4つのサブクラス(IgG1、IgG2、IgG3およびIgG4)すべてを認識することができる。血清試料を、IgGの評価と精製のためにSDS-PAGEで解析した。
【0113】
クラスIおよびII抗HLA抗体の単一抗原ビーズHLAアッセイ(One Lambda)
イムリフィダーゼを0.12または0.25mg/kgで処置した感作ESRD患者の血清試料を調査した。イムリフィダーゼ投与前と投与後24時間の試験試料を検討した。すべての血清試料を、プロゾーン効果を克服するために、5mM溶液による最終溶液でエチレンジアミン四酢酸(Ultrapure 0.5 M EDTA, pH 8.0, REF 15575-038, Invitrogen, Grand Island, NY, USA)で前処理した。血清をLuminexプラットフォーム上のSingle antigen Beads (LABScreen Single antigen, #LS1A04, lot 010, #LS2A01 lot 012, One Lambda, Canoga Park, CA)を用いてHLAクラスIとクラスII両方の抗HLA抗体について試験した。血清はまずLABScreenビーズと一緒に30分間インキュベートし、その後ビーズを洗浄緩衝液で3回洗浄した。フィコエリトリン(PE)標識ヤギ抗ヒトIgG(#LS-AB2, One Lambda, Canoga Park, CA)またはPE標識ロバ抗ヒトIgM(#IGM-PEC1, One Lambda, Canoga Park, CA)を添加し、30分間インキュベートし、2回洗浄した。LABScan 200アナライザーを用いて、各ビーズからのPEの蛍光発光を検出した。試験血清の反応パターンを抗原配列を定義したロット別ワークシートと比較し、HLA特異性を割り出した。結果はHLA Fusionソフトウェア(バージョン4.3、One Lambda)を用いて解釈し、生データの平均蛍光強度(MFI)として表示した。
【0114】
単一抗原ビーズHLAアッセイのデータ分析
各抗体の特異性に関する平均蛍光強度(MFI)値は、HLA Fusion 4.3 ソフトウェア(OneLambda)内のベースライン式を用いて決定した。ベースラインMFI閾値3,000を使用して、すべてのレポーター抗体(IgG-PEおよびIgM-PE)で陽性反応を割り当てた。各試験血清のベースライン生MFIデータを異なる試験条件間の分析と比較のためにMicrosoft Office Excelソフトウェア(Microsoft)のスプレッドシートに転送した。
【0115】
リウマトイド因子(RF)
ESRDの感作患者からの血清試料をリウマトイド因子(IgM-RF)について診断した(Labmedicin Skane, Clinical Immunology and Transfusion Medicine, Lund, Sweden)。
【0116】
免疫グロビン(Ig)クラスおよびIgGサブクラス分析
健康なボランティア2名の血清試料をCaptureSelectTM Matrixによる精製前と精製後の免疫グロブリンクラスとIgGサブクラスについて測定した(Labmedicin Skane, Clinical Immunology and Transfusion Medicine, Lund, Sweden)。
【0117】
結果
イムリフィダーゼは循環抗HLA IgG抗体を切断する
感作ESRD患者(N=7)のイムリフィダーゼ投与前と24時間後の血清試料を検討した。以前の研究(Jordan et al., 2017; Lonze et al., 2018; Lorant et al., 2018; Jordan et al., 2020, Schinstock, 2020)で確立したように、抗HLA IgG抗体などのIgGを切断するイムリフィダーゼの能力は、確認された(
図16)。試験したすべての患者において、循環抗HLA IgGのレベルの明確な減少が観察された(
図16)。
【0118】
イムリフィダーゼ処置はニート血清を用いた場合の抗HLA IgM SABアッセイにおけるアッセイシグナルに影響を与える
試料はSAB-HLA IgMについても分析された(
図10)。試験患者7例中2例で、イムリフィダーゼ投与前と投与24時間後の抗HLA IgMシグナルの減少が観察された(
図10Eおよび10G;患者02-927および02-929)。患者02-927と02-929の抗原MFI値には、それぞれ平均で約26倍(32抗原)と15倍(7抗原)の減少があった。これらの抗原に共通するのは、IgG SAB-HLAアッセイにおいて、ビーズに対応する投与前値の強度が同じ抗原で非常に高かった(最小11000 MFI)ことであった。
【0119】
患者02-923と02-925では(
図10Bと10C)、投与後24時間のSAB-HLA IgMアッセイで増加したビーズがあった。患者02-923では、HLA-AおよびHLA-B抗原(13抗原)を含むビーズで増加が観察され、平均で投与前の値の5倍に増加した。患者02-925では、HLA-DQ抗原(10抗原)を含むビーズで増加が観察され、平均して投与前値の2倍の増加であった。IgG SAB-HLAアッセイビーズ中の同じ抗原の投与前値は、ビーズの予想飽和(一般に>20000 MFIで発生)の範囲にある極めて高い値(最小22000MFI)であった(McCaughan et al., 2019)。したがって、高レベルのIgGの存在は、アッセイにおける低親和性IgMの利用可能な結合部位の数に悪影響を及ぼすかもしれない。SAB-HLAビーズがIgGアッセイで低レベルである場合、投与前と24時間後の試料間のIgMアッセイでは一般にほとんど差がなかった(
図17)。
【0120】
精製ヒトIgMはイムリフィダーゼ処置に影響されない
SDS-PAGEを用いて、イムリフィダーゼが精製ヒトIgMを切断する能力を有するかどうかを試験した。200μg/mLまでの高濃度でも、イムリフィダーゼによる精製ヒトIgMの切断は見られなかった(
図10A)。一方、同じ処理を行ったヒトIgGは、0.2μg/mLですでにscIgGに切断され、2μg/mLでIgGは完全に切断された(
図10B)。
【0121】
イムリフィダーゼで処置したヒト血清中のIgMは切断されない
4名の感作ESRD患者(02-925、02-927、02-928および02-929)の血清試料中のヒトIgMの切断を高濃度イムリフィダーゼでのインビトロ処理後に調査した。イムリフィダーゼ処置後の血清試料(および精製IgM)を還元し、SDS-PAGE上で分離し(
図11A)、PE標識抗ヒトIgMを用いたウェスタンブロットに供した(
図11B)。無傷のヒトIgMの無傷の75kDa重鎖バンドは明確に染色され、イムリフィダーゼ処置の有無による強度差は見られず、血清中のIgMはインビトロでイムリフィダーゼにより切断されないことが明確に示された。
【0122】
CaptureSelect
TMAffinity Matrixを用いた血清からのIgGの精製
7名の患者から得たすべての血清試料は、CaptureSelect
TM AffinityMatrixを用いてIgGを除去することに成功した。未処理の血清試料と比較して、ゲル上でIgGを検出することはできなかった(
図4)。本報告のために調査したすべての血清試料は、使用した臨床検査法(Analysportalen Skane, Lund Sweden)により、リウマチ因子(IgM-RF)陰性と診断された。
【0123】
CaptureSelect Matrixが主にIgGを除去し、他の免疫グロブリンを除去しないことを確認するため、血清試料をIgG、IgA、IgMおよびIgGサブクラスについて測定した。この分析に必要な血清量のため、ゲルとの組み合わせによる原理の証明として、患者試料の代わりに健康なボランティアが使用された(
図12)。IgGのすべてのサブクラスは検出限界以下に除去された。他の免疫グロブリンクラスは、この手順により初期値の約50%減少した。
【0124】
イムリフィダーゼの処置はIgG除去後の血清中の抗HLA IgM抗体に影響を与えない
図1で観察された投与前と投与後の影響は、IgG除去試料では完全に除かれた(
図13)。抗HLA IgMのシグナルは、IgG除去試料では除去前と比較して全般的に低く(~80%)なっており(
図9と
図13の比較)、おそらく除去プロトコルの洗浄による希釈が原因であろう。患者02-925では、いくつかのHLA-DQ抗原について、除去前(
図9B)と同様、除去後(
図13)にも投与前と比較して24時間後の試料で増加する類似のパターンが観察されたが、増加は115%ではなく46%であり減少している。患者02-927(
図13)では、24時間の試料と比較して、IgG除去前の投与でより高い(平均で3倍)ビーズが依然として10個残っていた。これらは、除去前に最も減少したビーズで(
図9C)、これらのビーズの平均MFIは、IgG除去前と後でそれぞれ15186と1023であった。同じビーズの24時間試料のMFIは、IgG除去前と後で同じであった。02-929でも同じパターンが見られたが、ビーズは少なかった。これらのビーズの減少が依然として存在するのは、これらのIgM抗体がHLAではなくIgGに親和性を持つため、IgGと共除去されるためかもしれない。SAB-HLA IgG/IgM試験の前に血清試料をイムリフィダーゼでインビトロ処理すると、IgG除去と同等の結果が得られる(
図14)。
【0125】
考察
実施例2に示されたデータは、実施例1においてなされた結論を確認するものである。この研究では、IgMに関するイムリフィダーゼ活性の特異性を評価した。我々は、理想的な条件下でのPBS緩衝系におけるインビトロでさえ、イムリフィダーゼはIgMに対して検出可能な活性を有さないと確信を持って結論付けることができる。
【0126】
本明細書に示したデータは、SAB-HLA IgMアッセイで起こるイムリフィダーゼ処置後のIgMシグナルの減少は、おそらくイムリフィダーゼ処置によって解消されるアーチファクト(artefact)によるものであることを実証する。
【0127】
我々が提案するメカニズムは、IgG-DSA複合体化IgMがSAB-HLAビーズに結合することである(
図15)。IgM検出抗体は複合体中のIgMを認識する結果アーチファクト的な(artefactual)IgMシグナルが生まれる。イムリフィダーゼ処置後、これらのIgG-IgM複合体は切断され、SAB HLAアッセイでは、はるかに低いが真のIgMシグナルが記録されるだろう。したがって、これらのデータは、IgM抗体を検出する際のイムリフィダーゼ処置の有用性を実証する。
【0128】
このモデルは、我々のいくつかの観察により支持される。
【0129】
第一に、理想的な条件下では、非常に高濃度のイムリフィダーゼを用いても、ヒトIgMに検出可能な酵素活性は存在しない。
【0130】
第二に、一部の患者におけるアーチファクトの出現は、明らかに、IgMと特に高いIgG DSAレベルの存在に明確に関連づけられ得る。この組み合わせは、偽陽性IgMシグナルの発生に必要な条件であるように思われ、また、テストを実行する前に、投与前の患者血清試料をインビトロでイムリフィダーゼ処置すると、このシグナルが消失した。
【0131】
第三に、投与前試料における偽陽性シグナルは、IgG除去後、観察されたすべてのケースでも消失する。さらに、この偽陽性IgMシグナルの減少は、SAB-IgGアッセイで特に高いレベルのIgG DSAシグナルが存在する抗原ビーズで主として見ることができる。
【0132】
RFの存在は、標準的な臨床検査法を用いても患者に検出されなかったのは興味深い。
【0133】
我々の結果から、イムリフィダーゼの酵素活性は、IgMとIgGの複合体を効率的に溶解することができることが明らかである。このことは、IgGとIgMの複合体形成が自己免疫疾患の症状の悪化に寄与している患者において、臨床的な意味を持つかもしれない。
【0134】
興味深いことに、先ほどの偽陽性シグナルとは対照的に、一部の患者では、特に高いIgGシグナルを持つ抗原ビーズを見たときに、イムリフィダーゼ処置後のIgMシグナルの増加も観察できた。これは、DSA IgGの立体障害が減少することにより、イムリフィダーゼ処置後の血清Igレベルが低下した後に、DSA IgMが結合してシグナルを発生することが可能になったと説明される。
【0135】
したがって、IgG DSA濃度が高い場合、SAB-HLA IgM試験において偽陽性および偽陰性のIgM DSAシグナルの両方が発生するリスクがあるように思われる。これは最悪の場合、医師が正しい臨床判断を下すことを危うくしたり、不正確なデータに基づく判断につながる可能性がある。
【0136】
IgMアッセイは現在、臨床的な意思決定にはあまり使用されていないが、IgG SAB HLAにおけるIgG IgM凝集体の存在は、同様の方法で、IgG DSAシグナルを誤って増加させ、その結果、これらの患者の待ちリストの時間を不必要に長くすることにつながる可能性がある。
【0137】
HLAセンターの中には、プロゾーン効果の問題を克服するために、EDTAの添加、熱不活性化、DTT(Dithiothreitol)の添加および連続希釈などの方法を採用している研究所もあり、これらの方法はSAB-HLAアッセイの予測精度を向上できる。この結果から、SAB-HLA試験を実施する前に試験試料をイムリフィダーゼまたはIgG-除去でインビトロ処理することにより、一部のビーズ上のシグナルを改善し、偽陰性のリスクを低減すると同時に、偽陽性のIgMシグナルのリスクを低減することができることを我々の結果は示している。したがって、試験前に試料をイムリフィダーゼでインビトロ処理することは、IgM SAB-HLAアッセイの精度および信頼性を向上させる新しい方法の可能性がある。結論として、我々が確認したIgG/IgM複合体に対するイムリフィダーゼの効果は、臨床および診断の両面で利用できるものと期待される。
【配列表】
【国際調査報告】